明 細 書
ラタトシルセラミドを生産する遺伝子組換え植物、およびその利用 技術分野
[0001] 本発明は、動物型スフインゴ糖脂質の生合成の主要な出発物質である、ラタトシル セラミドを生産する組換え植物体、および、該植物体を用いる動物型のスフインゴ糖 脂質の生産に関するものである。
背景技術
[0002] 動物型のスフインゴ糖脂質は医薬品やィ匕粧品原材料の化成品として利用されてい る。また、糖鎖力 Sインフルエンザ等の各種ウィルスや細菌毒素のレセプターとなること から (非特許文献 1)、これらの感染症に対して抗生物質や合成医薬品原体に頼らな い新規治療薬として早期の実用化が期待されているところである (特許文献 1および 2)。例えば、セラミドトリへキソシドはべ口毒素(大腸菌 0-157が生産する毒素)や志 賀毒素 (赤痢菌が生産する毒素)が細胞表面に結合するためのレセプターであること (非特許文献 2および 3)、また、ラタトシルセラミドは淋菌やプロピオン酸菌 (皮膚炎の 原因菌)が細胞に感染する際のレセプターであること (非特許文献 4および 5)が知ら れて 、る。し力し動物の脳力 採取する従来の生産方法では BSE (狂牛病)等の感染 症の問題があり、また人工合成が困難かつ高コストと!/ヽぅ欠点がある。
[0003] 近年、遺伝子組換え植物を用いた有用物質生産の研究例が報告されて 、る (非特 許文献 6〜10)。この方法のメリットは低コストで二酸ィ匕炭素を排出せず、しかも動物 の感染症に汚染される心配がないことである。
[0004] ほとんど全種類のスフインゴ糖脂質の基本構造部分はラタトシルセラミドであり、この ラタトシルセラミドに更に糖鎖が付加して 300種類以上と言われる様々なスフインゴ糖 脂質が動物組織内で生合成される。ラタトシルセラミドは、その前駆体であるダルコシ ルセラミドから、 β 1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ( |8 1.4GT)による糖転移反応に より合成できることが判明している(特許文献 3)。一方、植物体にはダルコシルセラミ ドは存在するが j8 1,4GTを欠いているためラタトシルセラミドが生産できず、結果とし て動物型の糖脂質が生産できな 、。
[0005] また、タバコの液体培養細胞 (植物個体では無 、)に β 1,4GTのァイソザィムである h j8 - 1,4- GalT 1 (ァクセッション番号: X55415または X13223)を導入し、タンパク質に ガラクトースを転移させる研究例は報告されているが (非特許文献 11)、脂質に糖転 移された例はない。
[0006] なお、本出願の発明に関連する先行技術文献情報を以下に示す。
特許文献 1:特表 2003-535965
特許文献 2:特表平 10-50347
特許文献 3:特開平 10-295371
特干文献 1 : Karlson, K. A. Animal glycosphingolipids as membrane attachment sit e for bacteria. Ann. Rev. Biochem. 58, 309-350, 1989
非特許文献 2 : Cohen A, Hannigan GE, Williams BR, Lingwood CA. J Biol Chem. 19 87 Dec 15;262(35):17088-91. Related Articles, Links Roles of globotriosyl- and gal abiosylceramide in verotoxin binding ana high affinity interferon receptor.
非特許文献 3 : Lindberg AA, Brown JE, Stromberg N, Westling- Ryd M, Schultz JE, Karlsson KA. J Biol Chem. 1987 Feb 5;262(4): 1779-85. Related Articles, Links Ide ntification of the carbohydrate receptor for Shiga toxin produced by Shigella dysente riae type 1.
非特許文献 4 : Stromberg N, Deal C, Nyberg G, Normark S, So M, Karlsson KA. Pro c Natl Acad Sci U S A. 1988 Jul;85(13):4902— 6. Related Articles, Links Identificatio n of carbohydrate structures that are possible receptors for Neisseria gonorrhoeae. 非特許文献 5 : Stromberg N, Ryd M, Lindberg AA, Karlsson KA. FEBS Lett. 1988 M ay 9;232(l):193-8. Related Articles, Links Studies on the binding of bacteria to gly colipids. Two species of Propionibacterium apparently recognize separate epitopes o n lactose or lactosylceramide .
非特許文献 6 : Voelker, T. A. et al.: Fatty acid biosynthesis redirected to medium ch ains in transgenic oilseed plants, Science, 257, 72-74(1992)
非特許文献 7 : Sayanova, O. et al.: Expression of a borage desaturase cDNA containi ng and N— terminal cytochrome b5 domain results in the accumulation of high levels
of Δ 6— desaturated fatty acids in transgenic tobacco, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. , 94, 4211-4216(1997)
非特言午文献 8 :Ye, X. et al.: Engineering the provitamin A ( -carotene) biosyntheti c pathway into (carotenoid-free) rice endosperm, Science, 287, 303-305(2000) 非特言午文献 9 : Datta, Κ·: Bioengineerea golden indica rice cultivars with β -carot ene methabolismin the endosperm with hygromycin and mannose selection systems, Plant Biotech. J., 1, 81—90(2003)
非特許文献 10 : Tozawa, Y. et al.: Characterization of rice anthranilate synthase a- s ubunit genes OAbAl and OASA2. Tryptopan accumulation in transgenic rice expres sing a feedback-insensitive mutant of OASAl, Plant Physiology, 126, 1493—1506(20 01)
非特言午文献 11 : Nirianne Q. Palacpac et al., Stable expression of human 1,4- galac tosyltransferase in plant cells modifies N— linked glycosylation patterns, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 96, 4692-4697 (1999)
非特言午文献 12 :Watarai, S. et al" Inhibition of vero cell cytotoxic activity in Escheri chia colli 0157:H7 lysates by globotriaosylceramide, Gb3, from bovine milk. Biosci. Biotechnol. Biochem. 65, 414—419 (2001).
非特許文献 13 : Hasegawa, A" Morita, M., Kojima, Y" Ishida, H. & Kiso, M., Synthe sis of cerebroside, lactosylceramide, and ganglioside GM3 analogs containing β -thio glycosidically linked. Carbonhydr. Res. 214, 43—53 (1991).
非特許文献 14 : Ν· Stromberg et al.,(著者名 Strombergの oはウムラウトが付く) (1988) Two species or ropionibactenum apparently recognize separate epitopes on lactos e of lactosylceramide FEBS Lett. 232, 193—198·
非特許文献 15 : Κ· Furukawa and Τ· Sato, (1999) j8 - 1,4- Galactosylation of N-glyca ns is a complex process. Biochim. Biophys. Acta. 1473, 54—66.
非特言午文献 lb : M. Amado et al., (1999) Identification and characterization of large g alactosyltransferase gene families: galactosyltransferase for all functions. Biochi. βίο phys. Acta. 1473, 35—53.
非特許文献 17 : Harwood, J.L., (1998) What's so special about plant lipids? In Plant
Lipid Biosynthesis, ed. Harwood, J.L., 1—26. Cambridge University Press.
非特許文献 18 : Shimojima, M., Ohta, H" Iwamatsu, A" Masuda, T" Shioi, Y" and T akamiya, Κ·, (1997) Cloning of the gene for monogalactosyldiacylglycerol synthase a nd its evolutionary origin. Proc. Natl. Acad. Asi. USA. 94, 333—337.
非特許文献 19 : Miego, C., Marechal, Ε·, Shimojima, M., Block, M.A., Ohta, Η·, Ta kamiya, K., Douce, R., and Joyard, J. ,(1999) Biochemichal and topological propertie s of type A MGDG synthase, a spinach chloroplast envelope enzyme catalyzing the synthesis of both prokaryotic and eukaryotic MGDG. Eur. J. Biochem. 365, 990—10
01.
非特許文献 20 : Kelly, Α·Α·, Froehlich, J.E., and Dormann, P.,(著者名 Dormannの o はウムラウト力 S付く), (2003) Disruption of the two digalactosyldiacylglycerol synthase genes DGD1 and DGD2 in Arabidopsis reveals the existence of and additional enzy me of galactolipid synthesis. Plant Cell, 15, 2694-2706.
非特許文献 21 : Bligh, E.G. and Dyer, W.J., (1959) A rapid method of total lipid extr action and purification. Can. J. Biochem. Physiol. 37, 911—917.
非特許文献 22 : Francois, C., Marshall, R.D., and Neuberger, A., (1962) Carbonhydr ates in protein. 4. The determination of mannose in hen's- egg albumin by radioisoto pe dilution. Biochem. J., 83, 335 - 341.
非特許文献 23 : Ohnishi, M., Ito, S., and Fujino, Υ·, (1983) Characterization of sphin golipids in spinach leaves. Biochim. Biophys. Acta. , 752, 416-422.
非特言午文献 24 : Lynch, D. V., (1993) in Lipid metabolism in plants. Sphingolipids. C RC press, 285—308.
非特許文献 25 : Kelly, A. A., and Dormann, P.,(著者名 Dormannの。はウムラウトが付 く), (2004) Green light for galactolipid trafficking. Curr. Opinions Plant Biol., 7, 262 -269.
非特許文献 26 : Imai, Η·, Ohnishi, M., Kinoshita, M., Kojima, M., and Ito, S. (1995) Structure and distribution of cerebroside containing unsaturated hydroxyl fatty acids
in plant leaves. Biosci. Biotech. Biochem., 59, 1309—1313.
特許文献 27 : Sanders, P. R., Winter, J. A., Barnason, A. R., Rogers, S. G., and F raley, R. T. (1984) Comparison of cauliflower mosaic virus 35S and nopaline synthas e promoters in transgenic plants. Nucleic Acid Res., 15, 1543—1558.
非特許文献 28 : Trinchera, M., Fiorilli, A., and Ghidoni, R. (1991) Localyzation in th e golgi apparatus of rat liver UDP— Gal:glucosylceramide β 1,4— galactosyltransferase . Biochemistry, 30, 2719-2724.
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0007] 本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、その目的は動物固有の糖 脂質であるラタトシルセラミドを、動物由来感染症の危険が無い安全な状態で、大量 に合成する方法を提供することにある。具体的には、ラタトシルセラミドを生産する能 力を有する組換え植物体、および、該植物体を用いてラタトシルセラミドを生産する 方法を提供することを課題とする。
課題を解決するための手段
[0008] 上記課題を解決するために、本発明者らは、ヒト由来 j8 1,4-ガラクトシルトランスフエ ラーゼ(i8 14GT)の cDNAをタバコに導入し、ラタトシルセラミドの生産を試みた。しか しながら、 j8 14GTを導入された形質転換タバコからは、ラタトシルセラミドは全く合成 されないか、あるいは極めて少量しカゝ合成されなカゝつた。そこで、本発明者らは、ヒト 由来の j8 1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼのァイソフォーム遺伝子( j8 1,4GT5)を組 換えタバコに導入し、ラタトシルセラミドの生産を試みた。
[0009] その結果、選別された組換えタバコの葉からはラタトシルセラミドが検出され、その 量は、組換えタバコ生葉 lgあたり 200 g以上と大量であった (従来の方法と比べて約 2000倍)。すなわち、ヒト由来の β 1,4GT5を導入することによって、組換え植物体に おいてラタトシルセラミドを大量に合成することが可能となった(図 7)。より詳しくは、 本発明は以下の〔1〕〜〔7〕を提供するものである。
〔1〕植物細胞で発現可能なプロモーター領域の下流に、下記 (a)から(c)の 、ずれ かに記載のヒト由来の DNAが機能的に結合したベクター。
(a)配列番号: 2に記載のアミノ酸配列力 なるタンパク質をコードする DNA
(b)配列番号: 1に記載の塩基配列のコード領域を含む DNA
(c)配列番号: 2に記載のアミノ酸配列において 1または複数のアミノ酸が置換、欠失 、付加、および Zまたは挿入されたアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする DNA 〔2〕〔1〕に記載のベクターが導入された形質転換植物細胞。
〔3〕〔2〕に記載の形質転 ^¾物細胞から再生された、ラタトシルセラミドを生産する能 力を有する植物体。
〔4〕〔3〕に記載の植物体の子孫またはクローンである、ラタトシルセラミドを生産する 能力を有する植物体。
〔5〕〔3〕または〔4〕に記載のラタトシルセラミドを生産する能力を有する植物体の繁殖 材料。
〔6〕ラタトシルセラミドを生産する能力を有する植物体の製造方法であって、
(i)〔1〕に記載のベクターを植物細胞に導入する工程、および
(ii)工程 (i)においてベクターが導入された形質転換植物細胞から植物体を再生す る工程、
を含む方法。
〔7〕〔2〕に記載の形質転換植物細胞、〔3〕もしくは〔4〕に記載の植物体、または〔5〕 に記載の繁殖材料を用いることを特徴とする、ラタトシルセラミドの製造方法。
さらに本発明は、以下の〔8〕〜〔10〕を提供するものである。
〔8〕以下の工程 (i)〜 (iii)を少なくとも含む、ラタトシルセラミドの製造方法。
(i)〔1〕に記載のベクターを植物細胞に導入する工程
(ii)工程 (i)においてベクターが導入された形質転換植物細胞から植物体を再生す る工程
(iii)工程 (ii)において再生された植物体力ゝらラタトシルセラミドを抽出し精製する工程 〔9〕〔2〕に記載の形質転換植物細胞、〔3〕もしくは〔4〕に記載の植物体、または〔5〕 に記載の繁殖材料を有効成分として含有する、ラタトシルセラミド製造用組成物。 〔10〕〔2〕に記載の形質転換植物細胞、〔3〕もしくは〔4〕に記載の植物体、または〔5〕 に記載の繁殖材料の、ラタトシルセラミド製造における使用。
図面の簡単な説明
[0010] [図 l]pBE/bl4GT5の T- DNA領域を示す図である。 KmRはカナマイシン抵抗性のネオ マイシンリン酸転移酵素遺伝子を示す。 E12はカリフラワーモザイクウィルス (CaMV) 3 5Sプロモーターの 5'上流領域(-419から- 90)を 2つつなげた配列を示し、 P35Sは Ca MV 35Sプロモーターの 5,上流領域(-90から- 1)を示す。 Ω配列は、タバコモザイクゥ ィルスの 5'上流領域である。 Tnosは、ノパリン合成酵素のポリアデ-ルイ匕領域を示す
[図 2]形質転換タバコのゲノム DNAを铸型にした PCR解析写真である。
[図 3]形質転換タバコの RNAを铸型にした RT-PCR解析写真である。
[図 4]形質転換タバコのスフインゴ糖脂質の分析写真である。動物由来のスフインゴ脂 質 (市販の標品) ( *印)は植物内で合成される脂質と比較して脂肪酸鎖が異なる (鎖 長、 OH-基の有無など)ため TLC上の移動度が微妙に異なる。
[図 5]形質転換タバコのラタトシルセラミドの糖鎖分析写真である。
[図 6]ヒト由来 /3 1,4GT5遺伝子を発現している形質転換タバコのラタトシルセラミドの T
OFF- MAS分析図である。
[図 7]動物型スフインゴ糖脂質を生産するために従来技術で抱えて 、た問題点、スフ インゴ糖脂質の生合成経路 (動植物間の比較)と病原体レセプター、それに本発明の ヒト由来 j8 1 ,4GT5遺伝子を発現して 、る形質転換タバコにつ 、て示す図である。 発明を実施するための最良の形態
[0011] 本発明は、ヒト由来 j8 1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼのァイソフォーム遺伝子( β 1,4GT5)のコード領域を含む、植物細胞で発現可能なベクターを提供する。具体 的には、植物細胞で発現可能なプロモーター領域の下流に、ヒト由来の β 1,4GT5を コードする DNAが機能的に結合したベクターを提供する。 β 1,4GT5の cDNA配列を 配列番号: 1に、該 DNAによって合成されるタンパク質を配列番号: 2に示す。
[0012] ここで「機能的に結合した」とは、植物細胞内で外来遺伝子であるヒト由来の β 1,4G T5をコードする DNAの発現が誘導されるように、植物細胞で発現可能なプロモータ 一領域の下流にヒト由来の β 1,4GT5をコードする DNAが結合していることをいう。
[0013] 本発明のベクターに含まれる β 1,4GT5のコード領域は、好ましくは、 β 1,4GT5の c
DNA配列である。 cDNAの調製は、当業者にとって常套手段を利用して行うことが可 能である。例えば、 i8 1,4GT5の公知の塩基配列情報力 適当なプライマー対を設計 して、ヒトから調製した mRNAを铸型に PCRを行い、得られる増幅 DNA断片をプローブ として用いて cDNAライブラリーをスクリーニングすることにより、 13 1,4GT5の cDNAを 調製することができる。さらに市販の DNA合成機を用いれば、 目的の DNAを合成によ り調製することも可能である。
[0014] 本発明のベクターに含まれる DNAとしては、ダルコシルセラミドに作用し糖転移反 応によってラタトシルセラミドを合成する能力を有している限り、ヒト由来の j8 1,4GT5 ( 配列番号: 2)に構造的に類似したタンパク質をコードする DNA (例えば、変異体、誘 導体、アレル、ノ リアントおよびホモログ)を用いることもできる。このような DNAには、 例えば、配列番号: 2に記載のアミノ酸配列において 1若しくは複数のアミノ酸が置換 、欠失、付加および/または挿入されたアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする D NAが含まれる。
[0015] あるアミノ酸配列に対する 1又は複数個のアミノ酸残基の欠失、付加及び Z又は他 のアミノ酸による置換により修飾されたアミノ酸配列を有するタンパク質がその生物学 的機能(活性)を維持し得ることはすでに知られている(Mark, D. F. et al, Proc. Natl . Acad. Sci. USA (1984) 81, 5662-5666、 Zoller, M. J. & Smith, M. Nucleic Acids Re search (1982) 10, 6487—6500、 Wang, A. et al., Science 224, 1431—1433、 Dalbadie— McFarland, G. et al" Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1982) 79, 6409—6413)。
[0016] アミノ酸配列が改変されたタンパク質をコードする DNAを調製するための当業者に よく知られた方法としては、例えば、 site-directed mutagenesis法(Kramer, W. & Fritz, H.-J. (1987) Oligonucleotide- directed construction of mutagenesis via gapped duple x DNA.Methods in Enzymology, 154: 350-367)が挙げられる。またタンパク質中のァ ミノ酸配列に変異を導入する方法として、例えば部位特異的変異誘発法 (Current Pr otocols in Molecular Biology edit. Ausubel et al. (1987) Publish. Jhon Wily & Sons b ection 8.1-8.5))が挙げられる。また、塩基配列の変異によりコードするタンパク質の アミノ酸配列が変異することは、自然界においても生じ得る。このように天然型の j8 1, 4GT5をコードするアミノ酸配列(配列番号: 2)において 1もしくは複数のアミノ酸が置
換、欠失もしくは付加したアミノ酸配列を有するタンパク質をコードする DNAであって も、天然型のタンパク質と同等の機能を有するタンパク質をコードする限り、本発明の DNAに含まれる。
[0017] ここで「同等の機能を有する」とは、対象となるタンパク質が、例えば j8 1,4GT5をコ ードするアミノ酸配列からなるタンパク質と同等の生物学的機能 (活性)を有している ことを意味する。本発明においては、対象となるタンパク質が、例えばダルコシルセラ ミドに作用し糖転移反応によってラタトシルセラミドを合成する能力を有することを意 味する。
[0018] 改変されるアミノ酸の数は、改変後のタンパク質力 ダルコシルセラミドに作用し糖 転移反応によってラタトシルセラミドを合成する能力を有している限り、特に制限はな いが、一般的には、 50アミノ酸以内、好ましくは 30アミノ酸以内、より好ましくは 10ァミノ 酸以内(例えば、 5アミノ酸以内、 3アミノ酸以内)である。アミノ酸の改変は、好ましくは 保存的置換である。改変前と改変後の各アミノ酸についての hydropathic index (Kyte and Doolitte,(1982) J Mol Biol. 1982 May 5; 157(1): 105—32)や Hydrophilicity value ( 米国特許第 4,554,101号)の数値は、 ±2以内が好ましぐさらに好ましくは ± 1以内で あり、最も好ましくは ±0.5以内である。
また、たとえ、塩基配列が変異した場合でも、それがタンパク質中のアミノ酸の変異 を伴わない場合 (縮重変異)もあり、このような縮重変異体も本発明の DNAに含まれる
[0019] 改変するアミノ酸残基の種類としては、改変前のアミノ酸の性質が保存されている 他のアミノ酸 (改変前のアミノ酸と類似のアミノ酸)に改変されることが望ましい。例え ばアミノ酸側鎖の性質としては、疎水性アミノ酸 (A、 I、 L、 M、 F、 P、 W、 Y、 V)、親水 性アミノ酸 (R、 D、 N、 C、 E、 Q、 G、 H、 K、 S、 T)、脂肪族側鎖を有するアミノ酸 (G、 Aゝ V、 L、 I、 P)、水酸基含有側鎖を有するアミノ酸 (S、 T、 Υ)、硫黄原子含有側鎖を有す るアミノ酸 (C、 M)、カルボン酸及びアミド含有側鎖を有するアミノ酸 (D、 N、 E、 Q)、塩 基含有側鎖を有するアミノ離 (R、 K、 Η)、芳香族含有側鎖を有するアミノ酸 (H、 F、 Y 、 W)を挙げることができる (括弧内はいずれもアミノ酸の一文字表記を表す)。
[0020] 上記 β 1,4GT5をコードするアミノ酸配列に複数個のアミノ酸残基が付加されたアミ
ノ酸配列を有するタンパク質をコードする DNAには、これらタンパク質を含む融合タン パク質をコードする DNAが含まれる。融合タンパク質は、 13 1,4GT5をコードするァミノ 酸配列からなるタンパク質と他のアミノ酸配列力 なるタンパク質とが融合したもので ある。融合タンパク質を作製する方法は、上記 j8 1,4GT5をコードする DNAと他のタン ノ ク質をコードする DNAをフレームが一致するように連結してこれを発現ベクターに 導入し、宿主で発現させればよぐ当業者に公知の手法を用いることができる。上記 i8 1,4GT5をコードするアミノ酸配列力 なるタンパク質との融合に付される他のタンパ ク質は、特に制限されない。
[0021] 上記 β 1,4GT5をコードするアミノ酸配列力 なるタンパク質との融合に付される他 のタンパク質は、例えば、該タンパク質の単離'精製、あるいは応用研究等の種々の 目的に応じて、適宜選択することができる。例えば FLAG (Hopp, T. P. et al, BioTec hnology (1988) 6, 1204- 1210)、 6個の His (ヒスチジン)残基からなる 6 X His、 10 X His 、インフルエンザ凝集素(HA)、ヒト c-mycの断片、 VSV-GPの断片、 pl8HIVの断片、 T7- tag、 HSV- tag、 E- tag、 SV40T抗原の断片、 lck tag, a -tubulinの断片、 B- tag、 Pr otein Cの断片等の公知のタンパク質を使用することができる。また、 13 1,4GT5をコー ドするアミノ酸配列からなるタンパク質との融合に付される他のタンパク質としては、例 えば、 GST (ダルタチオン一 S トランスフェラーゼ)、 HA (インフルエンザ凝集素)、ィ ムノグロブリン定常領域、 /3 ガラクトシダーゼ、 MBP (マルトース結合タンパク質)等 が挙げられる。巿販されて ヽるこれらタンパク質又はタンパク質をコードする DNAを、 1,4GT5をコードする DNAと融合させ、これにより調製された融合 DNAを発現させる ことにより、融合タンパク質を調製することができる。
[0022] 上記 β 1,4GT5をコードするアミノ酸は、天然に存在する状態から修飾されていない もの、及び修飾されているものの双方を含む。修飾としては、ァセチル化、ァシル化、 ADP-リボシル化、アミド化、フラビンの共有結合、ヘム部分の共有結合、ヌクレオチド 又はヌクレオチド誘導体の共有結合、脂質又は脂質誘導体の共有結合、ホスファチ ジルイノシトールの共有結合、架橋、環化、ジスルフイド結合の形成、メチル化、脱メ チル化、共有架橋の形成、シスチンの形成、ピログルタメートの形成、ホルミル化、 γ -カルボキシル化、グリコシル化、 GPIアンカー形成、ヒドロキシル化、ヨウ素化、メチル
ィ匕、ミリストイル化、酸化、タンパク質分解処理、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレ ノィル化、硫酸化、アルギニルィ匕のようなタンパク質へのアミノ酸の転移 RNA媒介付 カロ、ュビキチンィ匕等が含まれる。
[0023] また、あるタンパク質と同等な機能を有するタンパク質を調製する当業者によく知ら れた他の方法としては、ハイブリダィゼーシヨン技術(SambrookJ et al., Molecular CI oning 2nd ed" 9.47-9.58, Cold Spring Harbor Lab. press, 1989)を利用する方法が 挙げられる。即ち、当業者であれば、上記 j8 1,4GT5をコードする DNAもしくはその一 部をもとに、種々の生物由来 (例えば、ヒト由来)の DNA試料、あるいは人工的に合成 されたペプチドライブラリ一等から、これと相同性の高い DNAを単離して、該 DNAから i8 1,4GT5をコードするアミノ酸配列力もなるタンパク質と同等の機能を有するタンパク 質を単離することも通常行 ヽうることである。
本発明の DNAには、本発明の配列番号: 2に記載のアミノ酸配列力 なるタンパク 質をコードする DNAとハイブリダィズする DNAであって、配列番号: 2に記載のァミノ 酸配列からなるタンパク質と同等な機能を有するタンパク質をコードする DNAが含ま れる。
配列番号: 2に記載のアミノ酸配列力もなるタンパク質と同等な機能を有するタンパ ク質をコードする DNAを単離するためのハイブリダィゼーシヨンの条件は、当業者で あれば適宜選択することができる。ハイブリダィゼーシヨンの条件としては、例えば、 低ストリンジヱントな条件が挙げられる。低ストリンジヱントな条件とは、ノ、イブリダィゼ ーシヨン後の洗浄において、例えば 42°C、 0.1 X SSC、 0.1%SDSの条件であり、好まし くは 50°C、 0.1 X SSC、 0.1%SDSの条件である。より好ましいハイブリダィゼーシヨンの 条件としては、高ストリンジェントな条件が挙げられる。高ストリンジェントな条件とは、 例えば 65°C、 5 X SSC及び 0.1%SDSの条件である。これらの条件において、温度を上 げる程に高い相同性を有する DNAが効率的に得られることが期待できる。但し、ノ、ィ ブリダィゼーシヨンのストリンジエンシーに影響を及ぼす要素としては温度や塩濃度な ど複数の要素が考えられ、当業者であればこれら要素を適宜選択することで同様の ストリンジエンシーを実現することが可能である。
[0024] また、ハイブリダィゼーシヨンにかえて、遺伝子増幅技術 (PCR) (Current protocols
in Molecular Biology edit. Ausubel et al. (1987) Publish. John Wiley & Sons Section 6.1-6.4)を用いて、配列番号: 2に記載のアミノ酸配列力 なるタンパク質をコードす る DNAの一部を基にプライマーを設計し、該 DNAと相同性の高 ヽ DNA断片を単離し 、該 DNAを基に配列番号: 2に記載のアミノ酸配列力 なるタンパク質と同等の機能 を有するタンパク質をコードする DNAを取得することも可能である。
[0025] 上述のハイブリダィゼーシヨン技術や遺伝子増幅技術により単離される DNAがコー ドする、配列番号: 2に記載のアミノ酸配列力もなるタンパク質と同等な機能を有する タンパク質は、通常、該タンパク質とアミノ酸配列において、通常高い相同性を有す る。本発明の配列番号: 2に記載のアミノ酸配列力もなるタンパク質をコードする DNA には、配列番号: 2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質と同等な機能を有し、か っ該タンパク質のアミノ酸配列と高い相同性を有するタンパク質をコードする DNAも 含まれる。高い相同性とは、アミノ酸レベルにおいて、通常、少なくとも 50%以上の同 一性、好ましくは 75%以上の同一性、さらに好ましくは 85%以上の同一性、さらに好 ましくは 95%以上(例えば、 96%以上、 97%以上、 98%以上、 99%以上)の同一性を指す 。タンパク質の相同性を決定するには、文献(Wilbur, W. J. and Lipman, D. J. Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1983) 80, 726-730)に記載のアルゴリズムに従えばよい。
[0026] アミノ酸配列の同一性は、例えば、 Karlin and Altschulによるアルゴリズム BLAST ( Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:2264-2268, 1990、 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:587 3-5877, 1993)によって決定することができる。このアルゴリズムに基づいて、 BLASTX と呼ばれるプログラムが開発されている (Altschul et al. J. Mol. Biol.215: 403-410, 19 90)。 BLASTXによってアミノ酸配列を解析する場合には、パラメータ一は例えば、 sco re = 50、 wordlength = 3とする。 BLASTと Gapped BLASTプログラムを用いる場合には 、各プログラムのデフォルトパラメーターを用いる。これらの解析方法の具体的な手法 は公知で &)る (nttp://www.ncbi. nlm.nih.gov.)。
[0027] ある DNAによってコードされるタンパク質が「ダルコシルセラミドに作用し糖転移反 応によってラタトシルセラミドを合成する能力を有して 、る」か否かは、変異タンパク質 をコードする DNAを含むベクターを植物細胞に導入することによって、導入された細 胞の内在性のダルコシルセラミドカゝらラタトシルセラミドが合成されるかどうかで判断で
きる。一例としては、実施例 6〜10のように、該タンパク質をコードする DNAを含むベ クタ一を導入された細胞力 再生された植物体力 ラタトシルセラミドが検出されるか 否かで判断することができる。
[0028] 本発明のベクターとしては、植物細胞で外来遺伝子の発現を可能にするプロモー ター領域を含むものであれば特に制限されない。例えば、植物細胞内での恒常的な 遺伝子発現を行うためのプロモーターとして以下のものが挙げられる:
カリフラワーモザイクウィルス(CaMV)の 35Sプロモーター(例えば、 Odelら, Nature,31 3:810, 1985 ; Dekeyserら, Plant Cell, 2:591, 1990 ;Terada and Shimamoto, Mol. GeN . Genet. 220:389, 1990 ;および Benfey and Chua, Science, 250:959-966, 1990を参 照)、ノパリン合成酵素プロモーター(Anら, Plant Physiol. 88:547, 1988)、ォクトピン 合成酵素プロモーター(Frommら, plant Cell, 1:977,1989)、および、翻訳ェンハンサ 一配列をもつ 2x CaMV/35Sプロモーター(Kayら, Science, 236:1299-1302, 1987)。
[0029] また、外的な刺激により誘導的に活性ィ匕されるプロモーターも、植物細胞における 外来遺伝子の発現に使用することができる。このようなプロモーターの例として以下 のものが挙げられる:
(a)熱により誘導されるプロモーター(Callisら, Plant Physiol, 88:965, 1988 ; Ainleyら, Plant Mol. Biol, 22:13-23, 1993 ;および Gilmartinら, The Plant Cell, 4:839-949, 199 2)、(b)光により誘導されるプロモーター(例えば、エンドゥの rbcS-3Aプロモーター; Kuhlemeierら、 Plant Cell, 1:471, 1989、およびトウモロコシの rbcSプロモーター; Schaf i er & SheeN, Plant Cell, 3:997、 1991)、(c)ホルモンにより誘導されるプロモーター( 例えばアブシジン酸により誘導されるプロモーター; Marcotteら, Plant Cell. 1: 471, 1 989)、 (d)傷により誘導されるプロモーター(例えばジャガイモの Pinllプロモーター; K eilら, Nucl. Acids. Res. 14: 5641—5650, 1986、ァグロバタテリゥム (Agrobacterium)の m asプロモーター; Langridgeら, Bio/Technology 10:305-308, 1989、およびブドウの vstl プロモーター; Weiseら, Plant Mol. Biol, 26:667-677,1994)、および(e)ジャスモン酸 メチルまたはサリチル酸など化学物質により誘導されるプロモーター(Gatzら, Plant Mol. Biol. 48:89-108, 1997)。
[0030] また、ュビキチンプロモーター、大豆緑斑紋ウィルスプロモーター、レトロトランスポ
ゾンプロモーター、 LHCPIIプロモーターなどを利用することもできる。
また、ベクターへの遺伝子の挿入は、常法により、例えば、制限酵素サイトを用いた リガーゼ反応により行うことができる (Current protocols in Molecular Biology edit. Au subel et al. (1987) Publish. John Wiley & Sons. Section 11.4—11.11)。
[0031] 本発明のベクターには、例えば β 1,4GT5のコード領域の上流または下流に位置す るイントロンなどの RNAプロセシングシグナルも含めることができる。また、 mRNAの安 定性を高めるための 3 '端ターミネータ一領域などの植物遺伝子の 3 '端の非翻訳領 域に由来する付カ卩的な調節配列も含めることができる。例として、ジャガイモの ΡΙ-Πタ ーミネーター領域、またはォクトピン合成酵素もしくはノパリン合成酵素 (NOS)の 3 '端 ターミネータ一領域などがある。
[0032] さらに本発明のベクターには、形質転換体の速やかな選択を可能とするための優 性選択マーカー遺伝子を含めることもできる。優性選択マーカー遺伝子には、抗生 物質耐性遺伝子(例えばハイグロマイシン、カナマイシン、ブレオマイシン、 G418、ス トレプトマイシンまたはスぺクチノマイシンに対する耐性)をコードする遺伝子、および 、除草剤耐性遺伝子 (例えば、ホスフィノスリシンァセチル基転移酵素)が含まれる。
[0033] 上記ベクターを導入する植物細胞の種類としては、好ましくはタバコ、コムギ、イネ、 トウモロコシ、ァズキ、コンニヤク等があげられる力 細胞内でラタトシルセラミドを合成 可能であり、形質転換が可能である限り、これらに制限されない。
[0034] 本発明のベクターは、当業者に公知の方法によって、植物細胞に導入することがで きる。例えばタバコに導入する場合は、実施例に記載のァグロパクテリゥムを用いた 形質転換法や、パーティクルガン法、エレクト口ポレーシヨン法、単子葉植物のァグロ ノ クテリゥムを用いた形質転換法、ポリカチオン法、植物のプロトプラストの形質転換 法(ポリエチレングリコール法)、リン酸カルシウム沈殿法、リボフヱクタミン法(GIBCO- BRL社製)、マイクロインジェクション法などの方法が挙げられる。ァグロバタテリゥム法 は、イネ(Hiei Y et al. Plant Mol Biol. Sep; 35(1-2): 205-218)、ォォムギ(Higuchi K et al. Plant J Jan;25(2):159— 167)、ナタネ(Damgaard O & Rasmussen O et al. Plant Mol Boil 1991 Jul;17(l) 1—8)、ジャガイモ(Yu J & Langridge W Transgenic Res. 2003 Apr, 12 (2): 163- 169)、アスパラガス(Ignacimuthu S Indian J Exp Biol. 2000 May;38
(5):493- 498)、ナス(Rotino GL et al. Nat Biotechnol. 1997 Dec;15(13): 1398-1401) 、トウガラシ(Shin R. et al. Transgenic Res. 2002 Apr; 11 (2): 215- 219)、トマト、サッ マイモ、メロン(3種とも Mihalka V. et al. Plant Cell Rep 2003 Apr;21(8):778-784)、ダ ィズ(Zeng P et al Plant Cell Rep 2004 Feb;22(7) 478-482)、サトウキビ(Manickavasa gam M et al. Plant Cell Rep. 2004 May 5)、ソノレガム (Zhao ZY et al. Plant Mol Biol 2 000 Dec;44(6): 789—798)、ソバ (Kojima M et al. Biosci Biotechnol Biochem. 2000 A pr;64(4):845— 847)、ニンジン(Koyama H et al. Plant Cell Physiol 1999 May;40(5):48 2- 484)、リンゴ(Szankowski I et al. Plant Cell Rep. 2003 Sep;22(2):141- 149)などへ の遺伝子導入にも利用できる。また、エレクト口ポレーシヨンまたはパーティクルガン 法は、イネ(Shimamoto K et al. Nature 338, 274-276 (1989))、トウモロコシ(Kyozuka J et al. MolGen Genet. Aug228(l- 2): 40- 48)などへの遺伝子導入に利用でき、パー ティクルガン法はバナナ(Sagi L et al. Biotechnology (NY). 1995 May;13(5):481- 485 )、ライ麦(Popelka JC et al. Transgenic Res. 2003 Oct;12(5):587- 596)などへの遺伝 子導入に利用できる。
[0035] 本発明は、上記ベクターが導入された形質転換植物細胞を提供する。本発明にお ける形質転^ ¾物細胞は、上記ベクターが導入された植物の細胞または細胞の集 合であってラタトシルセラミドを生産する能力を有する細胞であれば、その形態を問 わない。該細胞は、形質転換植物体を作製する場合には、植物体を再生する能力を 有する細胞である。例えば、液体培養細胞、プロトプラスト、葉の切片、カルスなどは 本発明における植物細胞に含まれる。
[0036] 本発明は、上記形質転換細胞力 再生された、ラタトシルセラミドを生産する能力を 有する植物体を提供する。本発明における「ラタトシルセラミドを生産する能力を有す る植物体」とは、本来植物では合成されることのないラタトシルセラミドを、内在性のグ ルコシルセラミドからの糖転移反応により合成することができるように改変された植物 体をいう。
[0037] 本発明のヒト由来 j8 1,4GT5が導入された形質転^ ¾物体に、さらに、動物におけ るラタトシルセラミドからスフインゴ糖脂質の生合成経路に関わる酵素をコードする遺 伝子を導入することにより、植物体内において、ラタトシルセラミドに順次糖を結合さ
せて、動物のスフインゴ糖脂質 (ガンダリオ系列、グロボ系列、ラクト系列の糖脂質)を 合成することが可能となる (岩瀬仁勇他共著、培風館「糖鎖の科学入門」 65ページ「 図 3-18主なスフインゴ糖脂質の生合成経路」参照)。ガンダリオ系列のスフインゴ糖 脂質を合成するための酵素としては、 a 2, 3-シァリルトランスフェラーゼと |8 1 , 4-N -ァセチルガラタトサミントランスフェラーゼが挙げられ、グロボ系列のスフインゴ糖脂 質を合成するための酵素としては、 α ΐ , 4-ガラクトシルトランスフェラーゼが挙げられ 、ラクト系列のスフインゴ糖脂質を合成するための酵素としては、 β 1 , 3-Ν-ァセチル ダルコサミントランスフェラーゼが挙げられる。本発明の「ラタトシルセラミドを生産する 能力を有する植物体」には、このような、ヒト由来 j8 1 ,4GT5にカ卩えて、動物におけるラ クトシルセラミドからスフインゴ糖脂質の生合成経路に関わる酵素をコードする遺伝子 が導入された形質転換植物体も含まれる。
[0038] また本発明は、上記ベクターが導入された細胞力 再生された植物体のみならず、 その子孫あるいはクローンをも提供する。ー且、ゲノム内に上記ベクターが導入され た形質転換植物体が得られれば、該植物体から有性生殖または無性生殖により子 孫あるいはクローンを得ることが可能である。また、該植物体やその子孫あるいはクロ ーン力 繁殖材料 (例えば、種子、果実、切穂、塊茎、塊根、株、カルス、プロトプラス ト等)を得て、それらを基に該植物体を量産することも可能である。
[0039] さらに本発明は、ラタトシルセラミドを生産する能力を有する植物体の製造方法を提 供する。本方法は、上記ベクターを植物細胞に導入する工程およびベクターを導入 された細胞から植物体を再生する工程を含む。
[0040] 形質転 ^¾物細胞から植物体を再生する工程は、植物の種類に応じて当業者に 公知の方法で行うことが可能である。例えば、タバコの場合は、実施例 3のように、リ ーフディスク法によって上記ベクターを感染させた後、感染時に用いた菌体を除去す るためタバコの葉を抗生物質であるカナマイシンとカルべ-シリンを含む MS液体培地 で洗い、続いてこれら抗生物質を加えた再分化用 MS寒天培地上で培養し、形質転 換タバコのシュートを得ることができる。一般に、形質転換用ベクターに組み込まれた 優性選択マーカーは、形質転換植物の芽生えに抗生物質耐性をもたらし、芽生えを 適切な濃度の抗生物質に曝すことで形質転換体を選抜することができる。形質転換
体の選抜に用いられる抗生物質としては、上述のカナマイシンのほかにハイグロマイ シンなども挙げられる。その他の選抜方法としては、 MATベクター法などがある。
[0041] さらに本発明は、上記形質転,物細胞または形質転,物体を用いることを特 徴とする、ラタトシルセラミドの製造方法を提供する。該植物細胞または植物体からの ラタトシルセラミドの回収は、当業者に公知の方法で行なうことができる。
本発明のラタトシルセラミドの製造方法の一態様として、例えば以下の工程 (i)〜 (m )を含む方法が挙げられる。
ω本発明のベクターを植物細胞に導入する工程
(ii)工程 (i)においてベクターが導入された形質転換植物細胞から植物体を再生す る工程
(iii)工程 (ii)において再生された植物体力ゝらラタトシルセラミドを抽出し精製する工程 例えば本発明のベクターが導入された形質転換植物細胞を培養し、該形質転換植 物細胞またはその培養上清から、ラタトシルセラミドを回収する工程も、本発明に含ま れる。
さらに一例として、タバコにおけるラタトシルセラミドの抽出方法を以下に記載する。
[0042] まず、クロ口ホルム/メタノールによって植物体力も総脂質を抽出する。具体的には、 タバコ葉 5〜10gを 100 mlのクロ口ホルム:メタノール(1 : 2/容積比)に浸し、ポリトロン ホモジナイザーで約 2分間破砕後、破砕液を 4重に重ねたミラクロスでろ過する。分 液ロートに移し、クロ口ホルム:メタノール:水の容積比が 1 : 1 : 0. 9になるようにクロ口 ホルムと水をカ卩え、下層を回収し (2層分離)ロータリーエバポレーターで濃縮すること で、総脂質を抽出できる。
[0043] 次に、弱アルカリ分解法を用いて、総脂質画分からスフインゴ脂質を得る。具体的 には、上記方法で得た総脂質の一部、約 0.5 ml (総脂質 0.8 gを含む)に 0.4 M KOH を含有したメタノール 30 mlを混合し、 37°Cで 2時間反応する。この間はグリセ口脂質 のみが分解されスフインゴ脂質は分解されない。反応液を分液ロートに移し 30 mlのク ロロホルム、 27 mlの水を加え、混和後に下層を回収し(2層分離)ロータリーエバポレ 一ターで濃縮することで、スフインゴ脂質画分を得ることができる。
[0044] 最後に、シリカゲルカラムを用いてラタトシルセラミドを精製する。具体的には、内径
2 cmのクロマト用ガラスカラムにシリカゲル (ィアト口ビーズ、ャトロン製 6RS-8060)を高 さ 1.5 cmの高さまで充填する。 0.5 mlのクロ口ホルム:メタノール(90 : 10)に溶解したス フインゴ脂質をカラムに載せ、クロロホノレム:メタノール溶液を(90: 10)から(70: 30)の 割合までグラジェントに変化させながら流す。最初に色素とダルコシルセラミドが溶出 し、それに続 、て (80: 20あたり)ラタトシルセラミドが溶出する。
[0045] このような方法により得られたラタトシルセラミドもまた、本発明に含まれる。
[0046] また本発明は、本発明の形質転換植物細胞または形質転換植物体を有効成分と して含有する、ラタトシルセラミド製造用組成物を提供する。組成物には、これら形質 転換植物細胞または形質転換植物体の形状を安定に保ち得る生理学的に許容され る物質が含まれていてもよいが、特に制限されない。例えば、水、無機塩類、アミノ酸 類、糖類等を含む溶液、培地、あるいはバッファ一等が含まれていてもよい。
また本発明は、本発明の形質転換植物細胞または形質転換植物体の、ラタトシル セラミド製造における使用を提供する。
実施例
[0047] 次に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例になん ら制限されるものではない。
[0048] [実施例 1]ヒト由来の β 1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼのァイソフォーム遺伝子( β
1,4GT5)の単離方法
ヒト心臓由来の polyA+ mRNA (STRATAGENE)を铸型に用いて、オリゴ dTプライマ 一を使い 1st- strand cDNAを逆転写合成した。この cDNAを铸型に用いて PCR法によ り 13 1.4GT5 (Accession No. NM.004776 (NCBI))の ORF全長(1,167 bp)を増幅した。 この PCRにはプライマーとして W4GT5/27F (5 '— ATGCGCGCCCGCCGGGGGCTG CTGCGG-3, /配列番号: 3)と W4GT5/27R (5, - TCAGTACTCGTTCACCTGAGC CAGCTC- 3,Z配列番号: 4)を用いた。 PCR反応にはミスが少ない KOD Plus DNA p olymerase (TOYOBO)を用い、 PCRサイクルは 94°Cで 2分間処理した後、 94°C 15秒 間、 68°C 2分間を 35回繰り返した。得られた単一バンドをプラスミド pBluescript II KS+ の EcoRVサイトに挿入して pBS/ jS 14GT5クローンを得た。この cDNAクローンの配列 は制限酵素サイトの確認と ABI PRISM Big Dye Terminator Ver3 (Applied Biosystems
, California, USA)を用いたシークェンシングにより確認した。
ヒト β 1,4GT5の DNA配列とアミノ酸配列を配列番号: 1、配列番号: 2にそれぞれ示 す。
[0049] [実施例 2]ヒト由来 |8 1,4GT5の植物発現ベクターの構築
Tiプラスミドベクター pBE2113を制限酵素 BamHIと Saclで消化し、電気泳動により分 画して GUSカートリッジを抜き去った断片 pBE2113 A GUSを得た。 pBS/ j8 14GT5をこ の断片に挿入する目的で BamHIと Saclサイト付カ卩のための PCRを行った。プライマー には BHl/bl4GT5 (5,— TTG GGATCC ATGCGCGCCCGCCGGGGGGGZ配列番 号: 5)と bl4GT5/Scl (5,— AAGGAGCTCTCAGTACTCGTTCACCTGAGCZ配列番 号: 6)を用い、反応は上記と同条件で行った。得られた PCR産物を BamHIと Saclで消 化し、断片 pBE2113 A GUS断片にライゲーシヨンして植物発現ベクター ρΒΕ/ β GT5 を構築した。このクローンの配列は上記と同じ方法でシークェンシングを行 ヽミスが無 いことを確認した。挿入された j8 1,4GT5の cDNAの発現はカリフラワーモザイクウィル ス 35Sプロモーター(35S)と Ω配列、そしてノパリンシンターゼのターミネータ一(NOS) により制御される構造である。また形質転換体の選択マーカーとしてカナマイシン耐 性遺伝子を含んでいる。
ヒト 13 1,4GT5の植物発現ベクターを図 1に示す。
[0050] [実施例 3]タバコの形質転換
タノくコ (Nicotiana tabacum cv. Blight Yellow)の开質転換は Agrobacteriumを使!、リ ーフディスク法を用いて行った。無菌的に育成したタバコの葉から一辺約 1 cmのリー フディスクを切り出し、 ρΒΕ/ β GT5を持った Agrobacterium tumefacience LBA4404株 の菌液に浸して 2日間 MS寒天培地上で共存培養して感染させた。 3日目に 50 mg/1 カナマイシンと 500 mg/1カルべ-シリンを含む MS液体培地でリーフディスクを洗い Ag robacterium菌体を除去したうえ、これら抗生物質を加えた再分化用 MS寒天培地上 で培養し、形質転換タバコのシュートを得た。
[0051] [実施例 4] β 1,4GT5を導入した組換えタバコのゲノム DNAの解析
ヒト j8 1,4GT5がタバコの染色体ゲノムに挿入されていることを確認するために PCRを 行った。カナマイシン抵抗性が確認された 62系統の各組み換えタバコの葉約 0.1 gか
ら DNAを抽出し(DNeasy Plant Mini Kit, QIAGEN)、その一部を铸型に用いて PCRを 行った。プライマーは j8 1,4GT5の ORF全長を含むように bl4GT5/27F (5,- ATGCGC GCCCGCCGGGGGCTGCTGCGG/配列番号: 3)と W4GT5/27R (5, -TCAGTACT CGTTCACCTGAGCCAGCTCZ配列番号: 4)を用いた。 PCR反応には TAKARA E X Taq Polymeraseを使い、 94°C 30秒間、 65°C 30秒間、 72°C 1.5分間を 40回繰り返し た。 16クローンについて調べたところ、 16クローン全てにイソ型 j8 1,4-ガラクトシルトラ ンスフェラーゼ遺伝子固有のバンドが現れ、確かに核ゲノムに遺伝子が挿入されて 、ることを確認した。
PCRの結果を図 2に示す。
[0052] [実施例 5] β 1,4GT5を導入した組換えタバコの RNAの解析
ヒト j8 1,4GT5がタバコの染色体ゲノムに挿入されていることを確認するために RT-P CRを行った。カナマイシン抵抗性が確認された 62系統の各組み換えタバコの葉約 0. 1 gから Total RNAを抽出(RNeasy Plant Mini Kit, QIAGEN)し、その一部を铸型に用 いて PCRを行った。プライマーは bl4GT5sqpl (5'- TGGATTACATTCATGAACTC/ 配列番号: 7)と W4GT5/27R (5, - TCAGTACTCGTTCACCTGAGCCAGCTCZ配 列番号: 4)を用いた。 RT- PCR反応には Ready- To- Go RT- PCR Beads (アマシャム) を使い、 42°C、 30分間逆転写反応させて 95°Cで 5分間処理し酵素を失活させた後、 9 5°C、 30秒、 55°C、 30秒、 72°C、 2分の PCR反応を 40サイクル繰り返した。 27クローンに ついて調べたところ、 5クローンに j8 1,4GT5固有のバンドが現れ、確かに RNAが転写 されていることを確認した。
RT- PCRの結果を図 3に示す。
[0053] [実施例 6]組換えタバコの脂質の解析
タバコの葉約 10 gを約 1 cm四方の大きさに切った後、 100 mlのクロ口ホルム/メタノ ール(1: 2)を加えポリトロンで 1分間破砕した。これをブフナロートに敷いた 4重ミラク ロスで吸引濾過し、 Bligh-Dyer法に従ってクロ口ホルムと水をカ卩えて 2層分配しクロ口 ホルム層を回収した。これを減圧下で乾固させた後、 1 mlのクロ口ホルム/メタノール( 2 : 1)に溶解し総脂質画分とした。
[0054] 総脂質画分からスフインゴ脂質を得るために弱アルカリ分解法を用いた。上で得ら
れた総脂質に 10 mlの 0.4 M KOHのメタノール溶液をカ卩ぇ 37°Cで 2時間反応させた。 これにクロ口ホルムと水をカ卩ぇ 2層分配を行ってアルカリに耐性な脂質を回収し、減圧 乾固後に少量のクロ口ホルム/メタノール(2 : 1)に溶解して総スフインゴ脂質画分とし た。
[0055] [実施例 7]TLC分画されたラタトシルセラミドの同定
スフインゴ脂質を脂質クラスに分離するためにシリカゲル TLCにかけた。総スフイン ゴ脂質画分をシリカゲル TLCに載せ展開溶媒としてクロ口ホルム/メタノール/水(65: 16: 1)を用いて展開した。脂質の検出はプリムリン法とオルシノール硫酸法を用いた 。その結果、タバコの葉の脂質にはダルコシルセラミドと共に新規合成されたラタトシ ルセラミドのスポットが確認された。
TLCのスポットの写真を図 4に示す。
[0056] [実施例 8]ラタトシルセラミドの糖鎖の分析
得られたラタトシルセラミドを TLCから分離回収し糖鎖構造の分析を行った。エンド グリコセラミダーゼ (タカラ)を用いて糖鎖を切断して TLCに展開したところ、糖鎖構造 力 Sラタトースであることが確認された。
TLC写真を図 5に示す。
[0057] [実施例 9]ラタトシルセラミドの TOFF- MAS分析
得られたラタトシルセラミドを TOFF-MASで分析したところ、ラタトシルセラミド特有の ピーク( *で示す)が検出された。
TOFF- MASのクロマトグラムを図 6に示す。
[0058] [実施例 10]ラタトシルセラミド含量の分析
TLCで分離したスフインゴ脂質をオルシノール硫酸法で発色させ、デンシトメーター を用いる方法でラタトシルセラミド含量を定量した。図 4の TLCのオルシノールの発色 をデンシトメ一ターで読み込み、各脂質を定量して各脂質の相対量とラタトシルセラミ ドの絶対量を分析した。以下の表 1に糖脂質の組成にっ 、て示す。
[0059] [表 1]
形質転換タバコ 野生株 bl4GT-l bl4GT-9 bl4GT-10
(重量 %)
MGDG 55 .0 50 .7 (±1 .0) 48 ■ 8 (±0 .7) 50 .7 (±1 .2)
DGDG 33 .4 34 .2 (±1 .3) 33 .6 (±1 .2) 34 , 1 (±1 •1)
SQDG 6. 4 4. .8 (±0. .5) 4. , 8 (±0. 2) 5. ,7 (±0. .3)
SteGlc 2. , 1 0.3) 3. .3 (±0. .2) 4. .0 (±0. ,3) 2. ,6 (±0. .2)
GlcCer 3. .9 o 0. .6 (±0. 1) 0. .3 (±0. .1) 0. ,8 (±0. .1) n i o
LacCer-1 0 (±0) t 1. .2 (±0. .3) 2. .2 (±0. ■ 2) 1. ,7 (±0. .2)
LacCer-2 0 (±0) 5. .3 (±0. .2) 6. .8 (±0. 4) 5. , 0 (±0. .5)
[0060] 平均値 (士標準誤差); n=7回の実験結果; tr, 0.4%以下; MGDG,モノガラクトシルジ ァシルグリセロール; DGDG,ジガラタトシルジァシルグリセロール; SQDG,スルフォキ ノボシルジァシルグリセロール; SteGlc,ステリルダルコシド; LacCer,ラタトシルセラミド
[0061] また以下の表 2に形質転換タバコのラタトシルセラミド含量 g/g、生葉あたり)につ いて示す。
[0062] [表 2] 野生株 0 (± 0)
bl4GT-l 258 (± 49)
bl4GT-9 231 (± 33)
bl4GT-10 214 (± 41)
[0063] 平均値 (士標準誤差); n=6回の実験結果。
[0064] その結果、ヒト β 1,4GT5が導入された組換えタバコには、生葉 lgあたり約 200 g( 個体差 157〜263 μ g)のラタトシルセラミドが含まれていた。
[0065] 以前、本発明者らは、 131,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ(Accession No. AF0971 59 (NCBI))をタバコに導入し、ラタトシルセラミドの合成を試みた力 その際得られた ラタトシルセラミドは生葉 lgあたり約 0.1 μ gであり、産業上利用可能な収量ではなかつ た。一方、本発明ではその約 2000倍という大量のラタトシルセラミドが得られたことか ら、これまでの方法と比べてはるかに有用であるといえる。
産業上の利用可能性
本発明により、組換え植物を用いてラタトシルセラミドを大量に合成することが可能 となった。ラタトシルセラミドは本来植物では生産されな 、動物固有のスフインゴ糖脂 質の共通の前躯体である。このラタトシルセラミドが植物で生産可能になったことによ り、これまで産業上有用であるにもかかわらずコストおよび安全性の問題により生産 が困難であった動物固有のスフインゴ糖脂質を、大量かつ安価に生産することが可 能になった。本発明の方法は生産の過程で植物を用いるため、安全性の面でも優れ ている。