明細書
生体內精子形成細胞への遺伝子導入方法 技術分野
本発明は、 目的遺伝子が導入された生殖細胞、 特に精原幹細胞を保持する非ヒト 脊椎動物の製造方法、 該方法により製造された目的遺伝子が導入された生殖細胞を 保持する非ヒト脊椎動物、 トランスジエニック精子の製造方法、 該製造方法により 製造されたトランスジエニック精子、 トランスジエニック動物の製造方法、 該製造 方法により製造されたトランスジエニック動物等に関する。 背景技術
生殖細胞は、 子孫に親のゲノム情報を伝達する独特の能力を有する。 生殖系列の 修飾は、 過去 2 0年間、 かなりの注目を集めてきた。 それは、 インビボで遺伝子を 操作するストラテジーを提供するからである。 その適用は、 基礎生物医学研究から 農業生産までの範囲にわたる(Manipulating the Mouse Embro, (Cold Spring Harb or Press, New York) , ppl- 29, 2003)。 生殖系列細胞を修飾するための現在の技術は、 雌から得られる卵母細胞、 卵または初期胚に基づいている。 卵培養と移入技術の発 展により、 雌個体から得られる生殖系列細胞の修飾の基礎が された。 しかし、 該技術は、 マウスで最も広範に使用されるが、 他の動物種のために雌から得られる 生殖細胞を使用する試みは、 異なる生殖挙動と、 卵の獲得および操作の困難性故に P艮定されてきた (Reproduction in farm animals, (Lippincott Silliams & Willin s, Philadelphia, Pennsylvania), ppl- 40, 2000)。 注入胚の 1 %超のトランスジェ ニック動物を得ることは困難である。 従って、 広範な適用を有する生殖系列修飾の 新規プロトコルを確立する必要性が明白に存在している。
雌性生殖細胞は、 出生前に増殖を終える力 全ての雄性生殖細胞は、 自己更新す る能力を有する精原幹細胞を起源としている(J. Androl. , 21, 776-798, 2000)。 こ れらの細胞は、 生涯を通して増殖し続け、 精子形成を支持する。 P艮定された寿命を 有する分化した生殖細胞とは対照的に、 幹細胞に基づレヽた遺伝子導入は、 トランス
フエタトされた幹細胞が、 莫大数のトランスジェニック精子を継続的に産生するで あろうという点で明白な利点を有する。 導入遺伝子を有する単一のラット幹細胞は、 約 2 0 0 0のトランスジエニック精子を産生し得る(Histological and Histophath ological Evaluation of the Testis, (Cache River Press, Clearwater, Florid a) , pp. 1-40, 1990)。 従って、 多数のトランスジエニック動物が、 初代 (founder) 雄から産生され得る。 この目的を ベく、 多くのグループは、 インビトロで精原 幹細胞へ形質導入することによって、 トランスジエニック動物を作出することに成 功した。 マウスおよびラット力らの精原幹細胞力 短期間培養において、 レトロゥ ィルスにより形質導入され、 精子形成を行うために、 不稔レシピエント動物に移植 された(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 98, 13090-13095, 2001; Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 99, 14931 - 14936, 2002)。 雌と交配することによって、 雌ベースのトラ ンスジエニック方法と同等の効率をもって、 レシピエントはトランスジェニック動 物を産生した。
この技術は、 雄性生殖系列操作の新たな可能性を示したが、 幾つかの限界を有す る。 インビトロ形質導入アプローチの主要な欠点は、 精原細胞移植後のレシピエン ト動物の低生殖率である(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 91, 11298-11302, 1994)。 理由の一つは、 ドナー細胞の効率的な定着に不可欠な内因性精子形成の除去は、 ド ナー細胞定着のためのレシピエント精巣の環境にダメージをしばしば与えるという ことである(Tissue Cell, 31, 461-472, 1999; Biol. Reprod. , 69, 412-420, 200 3 ; Dev. Biol. , 263, 253 - 263, 2003 ; Hum. Reprod. , 18, 2660 - 2667, 2003)。更に、 幹細胞の最適培養条件が存在しなかったことにより、 幹細胞数のかなりの減少が起 こり(Biol. Reprod. , 67, 874—879, 2002; Biol. Reprod. , 68, 2207—2214, 2003)、 該非存在はまた、 低生殖力をもたらす。 幹細胞のほんの 1 0〜 2 0 %だけが、 1週 の間、 インビト口で生存する(Biol. Reprod. , 67, 874-879, 2002; Biol. Reprod. , 68, 2207-2214, 2003)。 また、 同種異系のドナー細胞の拒絶のために(Biol. Repro d. , 68, 167-173, 2003; Reproduction, 126, 765—774, 2003; Biol. Reprod., 69, 1940-1944, 2003)、 精原細胞移植の適用は、 免疫適合性レシピエントが容易には入 手できない他の動物種の大部分においては、 尚限定されている。 これらの理由のた
めに、 精原細胞移植後の生殖力の回復効率は限定され、 該効率により、 遺伝子導入 のための該技術の実際的適用が妨げられている。
精原幹細胞により トランスジエニック動物を作出するための潜在的に競争力のあ る代替策は、インビポで幹細胞に遺伝子を導入することである。このアプローチは、 幹細胞の移植も培養も必要としないからである。 しかし、 精原幹細胞のこのような 直接的形質導入の試みは、 殆ど成功していない (Mol. Reprod. Dev, 233, 45-49, 19 97 ; J. Virol. , 63, 2134-2142, 1989; FEBS Lett. , 475, 7—10, 2000; FEBS Lett. , 487, 248-251, 2000; Hum. Gene Ther., 9, 1571-1585, 1998; Gene Dev. , 1, 366 -375, 1987; Biochem. Biophys. Res. Commun. , 233, 45-49, 1997)。 一研究では、 導入遺伝子は、 ィンビボェレクトロボレーシヨンによつて生殖系列に組み込まれた 力 発現は長く続かず、 導入遺伝子は、 分化した生殖細胞に導入されたことを示唆 した (Biol. Reprod. , 59, 1439-1444, 1998)。 別の研究では、 導入遺伝子は、 生殖 系列に組み込まれず、 主にセルトリ細胞で発現することが知見された (Biol, Repro d., 67, 712-717, 2002)。 インビポで精原幹細胞をトランスフエタトする困難性は、 精巣において幹細胞の数が少ないこと (1 0 4精巣細胞当たり 2〜3個の幹細胞) に よってのみでは説明できない(Cell and Molecular Bology of the Testis, (Oxfor d University Press, New York) , pp266- 295, 1993; Mutation Res. , 290, 193-200, 1993) 0 より効率的なウイノレスベースのアプローチによっても可能ではなかったか らである。 成体の精巣の精細管中への種々のタイプのウイノレスベクターの微 に よっても、 インビボで生殖系列細胞に形質導入することができず (Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 99, 7524-7529, 2002; Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 99, 1383-1388, 2002)、 動物実験は、 このアプローチを用いた生殖系列伝達を示さなかった。 幹細胞 は、 生殖系列二ッシェ (niche) 内に保護され、 それが、 幹細胞への導入遺伝子又は ウィルス粒子の接近を阻害していると現在は考えられている(FEBS Lett. , 475, 7- 10, 2000; Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 99, 7524-7529, 2002)。
上記事情に鑑み、 本発明は、 雄性の生殖細胞、 特に精原幹細胞へ目的遺伝子をよ り効率よく導入し、 目的遺伝子が導入された生殖細胞を保持する非ヒト脊椎動物を 高い効率で製造する方法を することを目的とする。
発明の開示
上記目的を達成すベく鋭意研究した結果、 セルトリ細胞間のタイトジャンクショ ンが存在していなレヽ脊椎動物の精巣に目的遺伝子を注入することにより、 極めて効 率的に生殖細胞へ該目的遺伝子を導入することができることを見出し、 本発明を完 成させるに至った。
即ち、 本発明は以下に関する。
(1) 目的遺伝子が導入された生殖細胞を保持する非ヒト脊椎動物の製造方法であ つて、 セルトリ細胞間のタイトジャンクションが していない非ヒト脊椎動物の 精巣へ該目的遺伝子を注入することにより生殖細胞へ該目的遺伝子を導入し、 該生 殖細胞を保持する非ヒト脊椎動物を得ることを特徴とする、 方法。
(2) 該生殖細胞が精原幹細胞である、 上記 (1) に記載の方法。
(3) 該目的遺伝子が注入される該非ヒト脊椎動物が幼若である、 上記 (1) に記 載の方法。
(4) 該目的遺伝子を精細管内へ注入する、 上記 (1) に記載の方法。
(5) 該目的遺伝子がベクターに組み込まれている、 上記 (1) に記載の方法。
(6) 該ベクターがウィルスベクターである、 上記 (5) に記載の方法。
(7) 該ウィルスベクターがレトロウイルスベクターである、 上記 (6) に記載の 方法。
(8) 該ベクターがプラスミドベクターである、 上記 (5) に記載の方法。
(9) 該目的遺伝子が該生殖細胞の染色体へ組み込まれるように導入される、 上記 (1) に記載の方法。
(10) 上記 (1) に記載の方法により製造された、 目的遺伝子が導入された生殖 細胞を保持する非ヒト脊椎動物。
(11) トランスジエニック精子の製造方法であつて、 セノレトリ細胞間のタイトジ ヤンクションが存在していない非ヒト脊椎動物の精巣へ目的遺伝子を注入すること により生殖細胞へ該目的遺伝子を導入し、 該生殖細胞由来の精子を得ることを特徴 とする、 トランスジエニック精子の製造方法。
(12) 上記 (1 1) に記載の方法により製造された、 トランスジェユック精子。
(13) 非ヒトトランスジエニック脊椎動物の製造方法であって、 セルトリ細胞間 のタイトジャンクションが存在していない非ヒト脊椎動物の精巣へ目的遺伝子を注 入することにより生殖細胞へ該目的遺伝子を導入し、 該生殖細胞由来の精子を得、 該精子と卵を受精させることにより該目的遺伝子が導入された動物個体を得ること を特徴とする、 非ヒトトランスジエニック脊椎動物の製造方法。
(14) 自然交配により該精子と卵を受精させる、 上記 (13) に記載の方法。
(15) 顕微受精により該精子と卵を受精させる、 上記 (13) に記載の方法。
(16) 該目的遺伝子が該動物個体の子孫に伝達される、 上記 (13) に記載の方 法。
(17) 上記 (13) に記載の方法により製造された非ヒトトランスジエニック脊 椎動物。
(18) 以下の (i) 及び (i i) を含む、 目的遺伝子が導入された生殖細胞を保 持する非ヒト脊椎動物の製造用キット :
( i ) セルトリ細胞間のタイトジャンクションが存在していな 、非ヒト脊椎動物; (i i) 該脊椎動物の精巣へ該目的遺伝子を ¾λすることにより生殖細胞へ該目的 遺伝子を導入し、 該生殖細胞を保持する非ヒト脊椎動物を得ることによって、 該目 的遺伝子が導入された生殖細胞を保持する非ヒト脊椎動物を製造できる、 または製 造すべきであることを記載した記載物。
(19) 以下の (i) 及び (i i) を含むトランスジエニック精子製造用キット: ( i ) セルトリ細胞間のタイトジャンクションが していない非ヒト脊椎動物; ( i i ) 該脊椎動物の精巣へ目的遺伝子を注入することにより生殖細胞へ該目的遺 伝子を導入し、 該生殖細胞由来の精子を得ることによって、 トランスジエニック精 子を製造できる、 または製造すべきであることを記載した記載物。
( 20) 以下の (i) 及び (i i) を含む非ヒトトランスジエニック脊椎動物製造 用キット:
( i ) セルトリ細胞間のタイトジャンクションが していない非ヒト脊椎動物;
( i i ) 該脊椎動物の精巣へ目的遺伝子を注入することにより生殖細胞へ該目的遺 伝子を導入し、 該生殖細胞由来の精子を得、 該精子と卵を受精させることにより該 目的遺伝子が導入された動物個体を得ることによってトランスジエニック脊椎動物 を製造できる、 または製造すべきであることを記載した記載物。
本発明の方法を用いれば、 これまでィンビトロでの形質導入が困難であった動物 種や系統においても、 目的遺伝子が導入された生殖細胞、 特に精原幹細胞を保持す る個体を極めて高い効率で得ることが可能である。 また、 精巣内の精原幹細胞の数 を減らすことなく遺伝子導入が達成されるので、 インビトロでの生殖細胞への形質 導入時と比較して、 遺伝子が注入される雄の生殖力が保持され、 トランスジェニッ ク精子やトランスジエニック動物を容易に作製することが可能である。 図面の簡単な説明
図 1は未成熟及び成熟精巣の肉眼的及び組織学的舰を示す図である。 仔 (A及 び C) 及び成体 (B及び D) の精巣を示す。 Aは仔の精巣の肉眼的外観である。 B は成体の精巣の肉眼的外観である。 Cは仔の精巣の組織学的外観である。 Dは成体 の精巣の組織学的外観である。 矢印は精原細胞を示す。 仔の精巣では分化した生殖 細胞が存在せず、 精細管の構造が成体のそれと異なっている。 パーは A及び Bにお いては 1隨に、 C及ぴ Dにおいては 50 μ ιηにそれぞれ相当する。 染色:へマトキ シリンおよぴェォシン染色。
図 2はィンビポでの精原幹細胞のレトロウィルス形質導入を示す図である。 青い 管は、 形質導入された精原幹細胞からのコロニーを示す。 Αはレトロウイルスによ つて形質導入された精巣の肉眼的外観である。 B〜 Eは感染細胞の増殖パターンで ある。 Bは形質導入された精巣中の典型的なコロニーである。 該コロニーは、 末端 で非対称である。 Cは同一精巣での同様の非対称コロニーである。 Dは異なる精巣 での青い細胞のクラスターである (矢印) 。 B又は Cのものと比較して、 コロニー の末端 (矢頭) での異なる染色パターンが認められる。 Eは精巣での青細胞のクラ スターである。 それは、 Dと同様である。 Fは形質導入された精巣からの精細管の 切片の組織学的^^である。 正常な精子形成の出現が認められる。 細長い精子細胞
が観察される。 Gは #2Bからの精巣の肉眼的 である。 Hは #2Bと野生型雌との交 配から得られる F 1子孫からの精巣である。 生殖系列の伝達と導入遺伝子の発現を 示している。バーは A、 Gおよび Hにおいては lramに、 B〜Eにおいては 100 /z mに、 Fにおいては 20M mにそれぞれ相当する。 染色: X— G a 1 (A〜H) ;へマトキ シリンおよびェォシン (F ) 。
図 3は #2B由来の仔からの B a mH I消化一尾ゲノム D NAのサザンプロット解 析を示す図である。 Aは野生型雌と #2B雄性マウス由来の F 1子孫からの DNAの解 析結果である。 1 4匹の代表的子孫の 2匹 (雌 #29及び雄 #37) は、 L a c Z導入遺 伝子を含んでいた。 Bは F 2世代へのウィルス導入遺伝子の伝達を示す。 #29 ( F 1 雌) と #37 (F 1雄) は、 F 2世代に導入遺伝子を伝達した。 発明の詳細な説明
本発明に係る目的遺伝子が導入された生殖細胞を保持する非ヒト脊椎動物の製造 方法は、 セルトリ細胞間のタイトジャンクションが存在していない脊椎動物の精巣 へ目的遺伝子を注入することにより生殖細胞へ該目的遺伝子を導入し、 該生殖細胞 を保持する非ヒト脊椎動物を得ることを特徴とする方法である。
本発明において用いられる脊椎動物としては、 例えば、 哺乳動物、 鳥、 魚、 両生 動物および爬虫類動物が挙げられる。 哺乳動物としては、 特に限られないが、 例え ば、マウス、 ラット、ハムスター、 モルモット等のげつ歯類やゥサギ等の実験動物、 ブタ、 ゥシ、 ャギ、 ゥマ、 ヒッジ、 ミンク等の家畜、 ィヌ、 ネコ等のペット、 サル、 ァカゲザノレ、 マーモセット、 オランウータン、 チンパンジーなどの霊長類を挙げる ことが出来る。 鳥類としては、 ニヮトリ、 ゥズラ、 ァヒル、 ガチョウ、 シチメンチ ヨウ、 オーストリッチ、 エミュ、 ダチョウ、 ホロホロ鳥、 ノヽト等を挙げることがで きる。 脊椎動物は、 好ましくは哺乳動物である。
本発明の方法において用いられる目的遺伝子は特に限定されず、 導入が望まれる 任意の遺伝子であってよい。 例えば、 ポリペプチドをコードする遺伝子、 アンチセ ンス核酸や siRNA、 miRNA, stRNA、 リポザィム、 デコイ核酸のような機能的な核酸分
子をコードする遺伝子等が挙げられる。 当該遺伝子は核酸 (D NA又は R NA) と して供せられる。
目的遺伝子の起源も特に限定はされず、 該目的遺伝子が導入される生殖細胞と同 種の生物由来のもの、 異種の生物由来のもの、 化学的に合成されたもの、 さらには これらの組合せであっても良い。 また、 目的遺伝子のサイズも、 本発明の方法によ つて生殖細胞へ該目的遺伝子を導入することができる範囲であれば特に限定されな レ、。
また、これらの目的遺伝子には、その発現を調節するための適当なプロモーター、 ェンハンサ一等の調節要素が付加されていても良い。
該プロモーターは、 生殖細胞内で、 あるいは目的遺伝子が導入された生殖細胞に 由来する子孫動物の細胞内で該目的遺伝子の発現を調節できるものであれば特に限 定されない。 組織非特異的プロモーターを用いれば、 生殖細胞やその生殖細胞に由 来する子孫動物の広汎な組織において目的遺伝子の発現を調節することが可能であ る。 組織非特異的プロモーターとしては、 例えば、 C AGプロモーター、 S R プ 口モーター、 E F l aプロモーター、 CMVプロモーター、 P G Kプロモーター、 U 6プロモーター、 t R NAプロモーター等が挙げられ、 目的に応じて、 あるいは 発現させる目的遺伝子の種類に応じて適宜選択することができる。 また、 特異 的プロモーターを用いれば、 目的遺伝子が導入された生殖細胞に由来する子孫動物 において、 糸! ^特異的に目的遺伝子を発現させることができ、 例えば肝臓特異的プ 口モーターであるひ 1 ATプロモーターを用いれば、 肝細胞特異的に、 骨格筋特異 的 α—ァクチンプロモーターを用いれば骨格筋特異的に、 神経特異的エノラーゼプ 口モーターを用いれば神経特異的に、 血管内皮細胞特異的 t i eプロモーターを用 いれば血管内皮細胞特異的にそれぞれ発現させることができる。
また、 目的遺伝子と共にマーカー遺伝子を導入することができる。 マーカー遺伝 子を用いることにより、 目的遺伝子が導入された生殖細胞を容易に選別することが 可能となる。 マーカー遺伝子としては、 緑色蛍光タンパク質 (Green Fluorescent P rotein) 、 青色蛍光タンパク質 (Blue Fluorescent Protein) 、 黄色蛍光タンパク 質 (Yellow Fluorescent Protein) 、 シアン蛍光タンパク質 (Cyan Fluorescent Pr
otein) 、赤色蛍光タンパク質 (Red Fluorescent Protein) 等の蛍光タンパク質や、 β—ガラクトシダーゼ等の酵素等が挙げられる。
本発明の方法においては、 導入に用いられる目的遺伝子はべクターに組み込まれ ていてもよい。 ベクターとしては、 プラスミドベクター、 P A C、 B A C、 YA C、 ウィルスベクター等が挙げられ、 適宜選択することが出来る。
ウィルスベクターとしてはモロニ一マウス白血病ウィルス、 レンチウィルス等の レトロウイルス、 アデノウイルス、 ヘルぺスウィルス、 アデノ随伴ウィルス、 パノレ ボウイルス、 セムリキ森林ウィルス、 ワクシニアウィルス、 センダイウィルス等が 挙げられる。 特に、 レトロウイルスによる遺伝子導入は、 遺伝子が染色体へ組み込 まれるように導入されるので、 好ましい。 また、 レンチウィルスは分裂及び非分裂 細胞の両方に感染し、 遺伝子を導入することができる。
目的遺伝子は遺伝子導入試薬と共に精巣に注入することができる。 遺伝子導入試 薬とは、 遺伝子や遺伝子が組み込まれたベクターと複合体を形成する等の機序によ り、 細胞内への遺伝子の導入を促進する試薬である。
遺伝子導入にウィルスベクター特にレトロウィルスベクターを用いる場合には、 遺伝子導入試薬としてはレトロネクチン、 ファイブロネクチン、 ポリプレン等を用 いることができる。
また、 遺伝子導入においてプラスミドベクター等を用いる場合、 遺伝子導入試薬 としては、 リポフエクチン、 リプフエクタミン (lipfectamine) 、 DIMRIEC、 スーパ 一フエクト及ぴエフエタチン (Qiagen) 、 ュニフエクチン、 マキシフエクチン、 DOT MA、 DOGS (トランスフエクタム;ジォクトアデシルァミドグリシルスペルミン) 、 D 0PE (1, 2—ジオールェオイノレ- sn-グリセ口- 3-ホスホエタノールァミン) 、 D0TAP (1, 2-ジオールェオイ/レ- 3-トリメチルアンモユウムプロパン) 、 DDAB (ジメチルジオタ トァデシルアンモェゥム臭化物) 、 DHDEAB (Ν, Ν-ジ- n-へキサァデシル- N,N -ジヒド ロキシェチルアンモニゥム臭化物) 、 HDEAB (N- n-へキサアデシル- Ν, Ν -ジヒドロキ シェチノレアンモニゥム臭化物) 、 ポリプレン、 あるいはポリ (エチレンィミン) (ΡΕ I)等を用いることが出来る。
本発明におレヽては、 目的遺伝子がセルトリ細胞間のタイトジャンクションが存在 していない脊椎動物の精巣へ ί¾Λされる。 そのような精巣においては、 注入された 遺伝子の精細管の腔側からの生殖細胞、 特に精原幹細胞への接近性が高く、 当該細 胞へ効率よく目的遺伝子を導入することができる。 セルトリ細胞間のタイトジヤン クションが存在していない脊椎動物としては、 同種の健康な成体の野生型脊椎動物 のセルトリ細胞間のタイトジャンクシヨンと比較して、 その形態や機能が不完全な 雄性脊椎動物であれば特に限定されない。 セルトリ細胞間のタイトジャンクション が存在しているカゝ否かは、 摘出した精巣を組織学的に角晰すること等により当業者 であれば容易に決定することができる。
セルトリ細胞間のタイトジャンクションが存在していない脊椎動物としては、 例 えば幼若動物 (本明細書中、 未成熟動物又は仔 (pup) という場合がある) や、 カド ミゥムやサイトカラシン等の薬剤によって該タイトジャンクションが石皮壌された動 物、 セルトリ細胞間のタイトジャンクションの形成にかかわる因子が欠損した動物 等が挙げられる。
本発明において、 幼若動物とは、 動物の成長過程において、 セルトリ細胞間のタ ィトジャンクションが形成される時期より若い出生後動物をいう。 該タイトジヤン クシヨンが形成される時期は、脊椎動物の種類により異なるため、 一概に定めるこ とは出来ないが、マウスでは 2週齢、ラットでは 2〜 3週齢、 ゥサギでは 1 0週齢、 ゥシでは 2 0〜3 2週齢、 ァカゲザルでは 1 0〜1 5月齢、 マーモセット (Marmose t monkey) では 5〜 6月齢などが例示される。
また、 幼若動物のセルトリ細胞の間には、 成体動物に見られるような分ィ匕した生 殖細胞の多層も存在しておらず、 このことも精細管の腔側からの精原幹細胞等の生 殖細胞への目的遺伝子の接近性を向上させ、 目的遺伝子の生殖細胞への導入効率の 向上に寄与し得る。 更に、 幼若動物の生殖細胞、 特に精原幹細胞は、 成体動物のそ れと比較してより活発に分裂しており、 遺伝子導入への感受性が高く、 目的遺伝子 の導入効率の向上に寄与し得、 特にレトロウイルスベクターによる遺伝子導入にお いて有利である。
本発明の方法においては、 目的遺伝子が生殖細胞と接触するように精巣内に注入 されるのであれば、 注入箇所は特に限定されないが、 セルトリ細胞間のタイトジャ ンクシヨンが存在していない動物においては、 精細管内からの生殖細胞への接近性 が高いので、 好ましくは目的遺伝子は精細管内へ注入される。
このとき、 目的遺伝子の注入方法としては、 特に限定されないが、 例えば、 精細 管内への直接注入、 輸出管からの注入、 精巣網からの注入等が挙げられ、 注入対象 である動物の種類や、 操作の容易性等を考慮して適宜選択できる。 例えばマウス等 のげつ歯類においては、 輸出管からの注入が好ましく用いられ、 ゥシ等の家畜にお いては精巣網からの注入が好ましく用いられる。 上述の方法により目的遺伝子を注 入することで、 該遺伝子は効率よく精細管内に浸潤し、 生殖細胞へ到 る。
また、 目的遺伝子の精巣への注入の後に、 該精巣への電気パルス付加を行うこと によっても、 効率よく生殖細胞へ該目的遺伝子を導入し得る (例えば特開 2001- 309 736号公報参照) 。
本発明の方法において目的遺伝子が導入され得る生殖細胞としては、 雄性の生殖 細胞であれば特に限定されないが、 例えば精原幹細胞、 精原細胞、 雄性生殖細胞 (g onocyte) 、 精袓細胞、 ϋ#»細胞、 精娘細胞、 精細胞、 精子等が挙げられる。 特に、 精原幹細胞は自己更新能力を有し、 生涯を通して増殖し続け、 精子形成を支持する ため、 目的遺伝子が導入された該細胞は該目的遺伝子が導入された莫大数の精子を 継続的に産生し得るため、 生殖細胞としては精原幹細胞が好ましい。
また、 上述の方法により、 生殖細胞へ目的遺伝子を導入し、 該生殖細胞由来の精 子を得ることにより、 当該目的遺伝子が導入されたトランスジエニック精子を製造 することができる。 本発明はこのようなトランスジエニック精子の製造方法を提供 する。
目的遺伝子が生殖細胞へ導入されたカゝ否かは、 本発明の方法により製造された脊 椎動物から生殖細胞や精子を採取し、 当該細胞中に導入された遺伝子に由来する領 域が存在する力否かを検出することにより行うことができる。 より具体的には、 採 取した生殖細胞等から染色体 D Ν Αを採取し、 導入遺伝子特異的なプライマーペア を用いた P C R法による増幅や、 導入遺伝子特異的なプローブを用いたサザンプロ
ット法等により該遺伝子の存在を検出することが出来る。 あるいは目的遺伝子の産 物 (タンパク質等) を検出することによつても、 目的遺伝子が導入された力否かを 判另リすることが出来る。
また、 目的遺伝子と共にマーカー遺伝子が導入された場合は、 該マーカー遺伝子 の を検出することによって、 目的遺伝子が導入された力否かを判另 IJすることが 出来る。 例えばマーカー遺伝子が蛍光タンパク質である場合は、 該蛍光を検出する ことによって、 またマーカー遺伝子が βガラクトシダーゼ等の酵素である場合は、 該酵素に対応する発色基質を用いることにより、 目的遺伝子の導入の有無を判別す ることが出来る。
あるいは、 マーカー遺伝子を指標にすることにより、 自体公知の方法によって、 目的遺伝子が導入された生殖細胞や精子を選別し、 単離することも出来る。
生殖細胞へ導入された遺伝子が染色体に組み込まれない場合は、 細胞内や組織中 に存在する DNA分解酵素により^ されるため短期間 (約 2週間) で消失する。 この期間を超えて導入された遺伝子が生殖細胞内に存在する場合は、 該遺伝子は染 色体に組み込まれているものと考えられる。 本発明の方法によれば、 目的遺伝子は 生殖細胞へ一過的に導入されるばかりでなく、 染色体に組み込まれるように導入さ れ得る。 生殖細胞の染色体へ組み込まれた遺伝子は、 生殖細胞由来の精子や子孫に まで安定して伝達され得る。
また、 精原幹細胞以外の生殖細胞 (すなわち分化した生殖細胞) は自己更新能を 有さないため、 該細胞から産生された精子は、 精子形成の 1サイクルに要する期間 (マウスにおいては約 3 5日) までに消失すると考えられている (J. Androl. , 21, 776-798, 2000、 Cell and Molecular Biology of the Testis, (Oxford Universit y Press, New York) , pp. 266-295, 1993、 Histological and Histopathological E valuation of the Testis, (Cache River Press, Clearwater, Florida) , pp. 1-40. 1990参照)。 したがって、目的遺伝子を注入後、当該期間が経過した後においても、 該遺伝子の存在が生殖細胞中に確認される場合は、 該遺伝子が精原幹細胞へ導入さ れたことを示す。 精原幹細胞は自己更新能力を有し、 生涯を通して増殖し続け、 精 子形成を支持するため、 目的遺伝子が導入された該細胞は該目的遺伝子が導入され
た莫大数の精子を継続的に産生し得る。 一方、 精原幹細胞以外の生殖細胞に目的遺 伝子が導入された場合は、 当該遺伝子が導入された精子は一過性に産生されること になる。
更に、 上述の方法により、 生殖細胞へ目的遺伝子を導入し、 該生殖細胞由来の精 子を得、 該精子と卵を受精させて該目的遺伝子が導入された動物個体を得ることに より、 トランスジエニック動物を製造することが出来る。 本発明はこのようなトラ ンスジエニック動物の製造方法を # ^する。
卵とは精子が受精可能な雌性配偶子をいう。 卵としては、 例えば、 卵細胞、 卵母 細胞等が挙げられる。
精子と卵の受精は、 自然交配、 顕微受精、 I V F等の周知の方法により行うこと ができ、 特に限定されないが、 技術的に容易である点を考慮すると自然交配により 行われることが好ましい。 該自然交配は通常、 目的遺伝子が注入された雄と野生型 雌とを交配させることにより行われる。
目的遺伝子と共にマーカー遺伝子が生殖細胞へ導入される場合などは、 当該マー カー遺伝子を指標として目的遺伝子が導入された精子を選別、 単離し、 当該精子を 卵と人工受精(顕微受精、 I V F等) し、偽妊娠動物の子宮に移入することにより、 目的遺伝子が導入された動物個体を高い効率で得ることが出来る。
また、 目的遺伝子の精巣への注入の後に、 該精巣への電気パルス付力卩を行う場合 においても、 顕微受精により精子と卵を受精させることが好まし 、。
得られた動物個体に目的遺伝子が伝達されているか否かは、 得られた動物個体か ら染色体 D NAを採取し、 導入遺伝子特異的なプライマーペアを用いた P C R法に よる増幅や、 導入遺伝子特異的なプローブを用いたサザンプロット法等により該遺 伝子の存在を検出することにより判別することが出来る。 あるいは目的遺伝子の産 物 (タンパク質) を検出することによつても、 目的遺伝子が動物個体に伝達された 力否かを判別することが出来る。
更に、 得られたトランスジェエック動物を同種の野生型動物と、 あるいはトラン スジェニック動物同士を交配することにより、 導入された遺伝子はさらにそれらの 子孫へ伝達される。
また、 本発明は、 以下の (i ) 及ぴ (i i ) :
( i ) セルトリ細胞間のタイトジャンクションが存在していない非ヒト脊椎動物; ( i i ) 上述の方法により、 該脊椎動物の精巣へ該目的遺伝子を ¾Λすることによ り生殖細胞へ該目的遺伝子を導入し、 該生殖細胞を保持する非ヒト脊椎動物を得る ことによって、 該目的遺伝子が導入された生殖細胞を保持する非ヒト脊椎動物を製 造できる、 または製造すべきであることを記載した記載物;
を含む、 目的遺伝子が導入された生殖細胞を保持する非ヒト脊椎動物の製造用キッ トを提供する。 当該キットは、 更に、 任意の遺伝子、 コントローノ W童伝子 (生殖細 胞内への導入が容易に確認できる遺伝子;例えば上述のマーカー遺伝子) 、 ベクタ 一、遺伝子導入試薬等を含んでいてもよい。 当該キットを用いれば、 上述の方法に より、 容易に任意の遺伝子が導入された生殖細胞を保持する非ヒト脊椎動物を製造 することが可能である。
また、 本発明は、 以下の ( i ) 及ぴ ( i i ) :
( i ) セルトリ細胞間のタイトジャンクションが存在していない非ヒト脊椎動物; ( i i ) 上述の方法により、 該脊椎動物の精巣へ目的遺伝子を注入することにより 生殖細胞へ該目的遺伝子を導入し、 該生殖細胞由来の精子を得ることによって、 ト ランスジェニック精子を製造できる、 または製造すべきであることを記載した記載 物;
を含むトランスジエニック精子製造用キットを提供する。 当該キットは、 更に、 任 意の遺伝子、 コント口一 /Ht伝子(生殖細胞内への導入が容易に確認できる遺伝子; 例えば上述のマーカー遺伝子)、ベクター、遺伝子導入試薬等を含んでいてもよい。 当該キットを用いれば、 上述の方法により、 容易に任意の遺伝子が導入されたトラ ンスジェエック精子を製造することが可能である。
更に、 本発明は、 以下の ( i ) 及び ( i i ) :
( i ) セルトリ細胞間のタイトジャンクションが存在していない非ヒト脊椎動物; ( i i ) 上述の方法により、 該脊椎動物の精巣へ目的遺伝子を注入することにより 生殖細胞へ該目的遺伝子を導入し、 該生殖細胞由来の精子を得、 該精子と卵を受精
させることにより該目的遺伝子が導入された動物個体を得ることによってトランス ジエニック動物を製造できる、 または製造すべきであることを記載した記載物; を含む非ヒトトランスジエニック動物製造用キットを^する。 当該キットは、 更 に、 交配用雌性動物、 任意の遺伝子、 コントロール遺伝子 (生殖細胞内への導入が 容易に確認できる遺伝子;例えば上述のマーカー遺伝子) 、 ベクター、 遺伝子導入 試薬等を含んでいてもよい。 当該キットを用いれば、 上述の方法により、 容易に任 意の遺伝子が導入されたトランスジェニック動物を製造することが可能である。 上述の目的遺伝子が導入された生殖細胞を保持する非ヒト脊椎動物の製造用キッ ト、 トランスジエニック精子製造用キット、 トランスジエニック動物製造用キット の構成要素は、 全体が一つのパッケージとして提供されていてもよいが、 複数のパ ッケージに分離して提供されてもよい。
以下、 実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、 本発明は以下に示す実 施例によつて何ら限定されるものではな!/、。 実施例
実験材料及び方法
(動物及び微注入方法)
C57BL/6 (B6) 、 BALB/C, C 3 H及び Aマウスは、 日本 SLC (静 岡、 日本) 力、ら購入された。 未成熟仔マウス (5— 10日齢) と成体マウス (4— 6週齢) の両方が、 ウィルス感染のために用いられた。 一部の実験では、 手術され たマウスは、野生型 B 6雌と交配させられ、 トランスジエニック子孫が産生された。 精巣注入のために、 レトロウイルス粒子含有 DMEMZl 0%ゥシ胎仔血清 (DM EM/FCS) の約 2 1力 S、 未成熟精巣の精細管に導入され、 10 1力 成熟 精巣の精細管に導入された。 後者はより大きいからである。 微注入は精巣輸出管注 入を伴い (Int. J. Dev. Biol. 41, 111-122, 1997参照) 、 各レシピエント精巣中 において管の 75— 85%を満たした。 成体マウスは、 Av e r t i n注射 (64 Omg/k g) を用いて麻酔された。 仔マウスは、 氷上に置かれ、 低温誘導麻酔が 引き起こされた (Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 98, 6186 - 6191, 2001参照)。一部
の実験では、 氷への長期間暴露を避けるために、 一方の精巣のみ力 S微注入された。 仔マウスは、 手術後、 に戻され、 少なくとも 6週後に、 交配のために使用され た。
(レトロウイルスの調製)
複製欠損でェコトロピックなモロニ一白血病レトロゥイノレスである Ge n— p g k ]3 g a 1力 精原幹細胞を感染させるのに用いられた (J. Virol. , 65, 2314-231 9, 1991参照)。 このレトロウイルスは、 ホスホグリセレートキナーゼ 1 (Pg k) 遺伝子のプロモーターの下、 E. c o 1 i La c Z遺伝子を発現する;当該レト ロウィルスは、 精原幹細胞を感染させるのに以前用いられている (Proc. Natl. Aca d. Sci. USA, 98, 6186-6191, 2001及ぴ FEBS Lett., 475, 7 - 10, 2000参照) 。 ゥ ィルス粒子は、 DMEM/FCS中、 GP + E 86レトロウイルスパッケージング 細胞から安定に産生された (J. Virol. , 65, 2314-2319, 1991参照) 。 最初のウイ ルスカ価は、 3 X 105コロニー形成単位 Zm 1 (N I H 3 T 3細胞) であった。 ウィルス馴化培地 (virus-conditioned medium) は、 コンフルェントな細胞の 48 時間培養物から回収され、 0. 45 μ mフィルターを通され、 夾雑細胞残渣が除去 され、 使用まで一 80°Cで凍結された。 ウィルス濃縮の方法は以前に記載されてい る (Hum. Gene Ther., 7, 1735-1742, 1996参照) 。 端的に言えば、凍結融解ウィル スストックは、 ポリプレン (シグマ) 10 μ g/m 1が添加され、 ウイノレス上清 2 00mlが 6000Xgで 16時間遠心分離された。 ウィルスペレツトは、 25 G 針を用い、 DMEMZFCS 1— 2 m 1中に懸濁され、 エツペンドルフチューブ に分注された。 ウィルス上清は、 6000Xgで 16時間更に遠心分離され、 20 -3 Ομ 1に懸濁された。 ウィルス上清は、 採取後直ちに使用した。 レトロウィル ス濃縮物の最終力価は、約 109コロニー形成単位/; m 1であった。 レトロウイルス 調製の全ての作業は 4 °Cで行われた。 当該ウィルスの力価は、 以前の研究 (Proc. Na tl. Acad. Sci. USA, 98, 13090—13095, 2001、 FEBS Lett. , 475, 7-10, 2000)で使 用されたものよりも有意に高く、 遺伝子導入効率の増加に寄与し得る。
(精巣の分析)
感染細胞を可視化するために、 レトロウイルス感染を受けた精巣は、 (Biol. Repr od. , 60, 1429-1436, 1999)に記載されたように、 5—ブロモ一 4一クロロー 3—ィ ンドリル Ρ— Ό一ガラク トシド (X— g a 1 ) (和光純薬工業、 大阪、 曰本) によ つて、 L a c Z発現に関し染色された。 生殖細胞のクラスタ一は、 管の基底面の 5 0 %超を占め、 長さが少なくとも 0 . 1 mmであるとき、 コロニーとして定義され た。 コロニー化の効率は、 立体顕微鏡下、 コロニーの合計数を計測することによつ て評価された。 全ての切片は、 へマトキシリンとェォシンで染色された。 統計的解 析は、 スチューデント t—テストによって行われた。
(サザンブロット)
ゲノム D NAは、 フエノーノレ /クロロホノレム抽出、 次いで、 エタノール沈殿によ つて、 各子孫からの尾サンプルから単離された。 D NA 1 0 μ gが B a mH Iで消 化され、 1 . 0 %ァガロースゲルで分離された。 D N Aの転写及びハイブリダィゼ ーションは、 通常のプロトコルに従って行われた。 L a c Z c D NAのB a mH I一 N c o Iフラグメント (約 2 2 0 0塩基対) 力 ハイブリダィゼーシヨンのプ ローブとして用いられた。 結果
(精細管へのレトロウィルス注入による精原幹細胞の感染)
成熟精細管のセルトリ細胞間には生殖細胞の多層とタイトジャンクションが存在 する (Histological and Histopathological Evaluation of the Testis, (Cache R iver Press, Clearwater, Florida) , pp. 1-40, 1990参照)。 対照的に、未成熟精巣 は、 1層の精原細胞し力有せず、 タイトジャンクションを欠いていた (図 1 ) 。 こ れらの構造的な差異に基づき、 未成熟精細管中に微注入されたレト口ウィルスは、 成熟精細管中に注入されたときと比較して、 幹細胞を含む精原細胞により良き接近 性を有するであろう、 という仮説を本発明者は立てた。 この可能性を検討するため に、濃縮 G e n— p g k ]3 g a 1 レトロウイルスが、 B 6マウスの未成熟および成熟 精巣の精細管内に微注入され、 導入効率が比較された。 微注入 2月後、 マウスは屠 殺され、 精巣は L a c Z活性について染色され、 感染細胞の存在が検査された。 8
個の成熟精巣のいずれも、 L a c Z染色を示さなかったが (データは示さず) 、 6 個の未成熟精巣のうち 3個は、 L a c Z H†生細胞のクラスターを示し (図 2 A) 、 レトロウイルス感染が成功裏に生じたことが示された。 L a c Z染色のパターンは、 これらの精巣で変動があった(図 2 B— E)。 ; L a c Z発現クラスターの幾つかは、 精細管の長く、 青い広がりであって、 移植された精原幹細胞からの精子形成コロニ 一に類似していた (Biol. Reprod. , 66, 1491-1497, 2003参照) 。 これらのコロニ 一は、 非対称末端を有し、 しばしば、 中央で暗い染色領域を有し、 それは、 生殖細 胞分化が起こったことを示した (図 2 Β及び C) 。 更に、 精細管中に広範に散在し た L a c Ζ隞生細胞の他のクラスタ—が存在した (図 2 D及び E ) 。 糸!^学的解析 は、 L a c Z染色を有する精子形成を示し、 精原幹細胞は、 本発明の方法によって 感染されることができることが確認された (図 2 F) 。
(レトロウイルス感染精原幹細胞からのトランスジエニックマウスの製造) 感染した幹細胞が、 トランスジェ-ック動物を産生できるかどうかを本発明者は 次に検討した。 レトロウイルスが、 5— 1 0日齢の B6、 C3H、 BALB/C及ぴ Aマウス (初代マウス) の精細管に微注入された。 各系統について、 少なくとも 2回の別々 の実験が行われた。 6〜8週間後、 当該動物は、 子孫を産生するために、 2〜3匹 の野生型雌マウスと共にケージに入れられた。 結果を表 1及び 2に示す。 表 1
表 1は異なるマウス系統からのトランスジエニックマウス産生の効率を示す, *は 2〜 6回の試験からの結果を示す。
表 2
表 2はインビボで感染した精原幹細胞からのトランスジエニックマウスの創生を 示す。
R , 右精巣; L , 左精巣。 動物のうちの 2匹 ( 1 N及び 2 0) は両側にウイノレス注 入を受けている。
NAa, 角晰前に動物が死んだため該当しない (ウィルス注入後 3 1 4日) 。
b各精巣における青いコロニーの数, 生殖細胞のクラスタ一は、 管の基底面の 5 0 % 超を占め、 長さが少なくとも 0 . 1 mmであるとき、 コロニーとして定義された。 e移植から、 該動物が生ませた最初のトランスジエニック子孫の誕生までの日数。 d分子はトランスジエニック子孫の数;分母は個々の動物からの子孫の全数。 ' 感染した動物の一部は、 手術に付随するヘルニアのため、 子孫を生ませることが できなかったが (Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 98, 6186-6191, 2001参照)、 レト ロウィルスを受け取った動物の平均 8 6 %は子孫を生ませた (表 1 ) 。 精巣の重量 は、 正常で未処理マウスのそれと同等であった。 野生型雌との交配から生じた全て の子孫は、 L a c Z遺伝子特異的プローブを用いたサザンプロティングによって導 入遺伝子の存在について検討され、 各初代マウスからの 4 0〜1 3 2匹の子孫が、 手術後 6〜 1 6月の間にわたり試験された。
合計で、 生殖力のある動物の 26% (8/31) は、 角军析期間中、 導入遺伝子を 有する子孫を生ませた (表 1) 。 初代雄から産生されたトランスジエニック動物の 割合は、 0. 8 (1/127) 〜6. 6% (4/61) の範囲で、 平均 2. 8%で あった (表 2) 。 親のクロモソームの半分しか、 精原幹細胞から子孫に伝達されな いので、 精子の 5. 6%が、 形質導入幹細胞から由来することを結果は示す。 幹細 胞に形質導入するのに使用された系統の遺伝学的効果を結論するためには、 動物数 が少なすぎるかもしれないが、 4匹の C 3 Hマウスのうち 2匹 (50%) は、 トラ ンスジェニック子孫を産生した (表 1) 。 対照的に、 9匹の BALB/Cマウスの うち 1匹 (11%) I La cZ導入遺伝子を有する子孫を産生した。 最初の導入 遺伝子は、 早くもレトロウイルス感染後 50日で BALB/C初代マウスからの子 孫において出現したが、 平均は 1 14日であった。 導入遺伝子は、 レトロウイルス によって感染された精原幹細胞からの起源であった。 なぜなら、 分化した生殖細胞 から産生された精子は、 35日までに消失するであろうからである(J. Androl. , 21, 776-798, 2000、 Cell and Molecular Biology of the Testis, (Oxford Universit y Press, New York) , pp. 266 - 29D, 1993、 Histological and Histopathological E valuation of the Testis, (Cache River Press, Clearwater, Florida), pp.1-40, 1990参照)。 - 初代動物は 259〜479日後に屠殺され、 レトロウィルス感染の程度を検討し た。 動物がトランスジェニック子孫を産生したかどうかにかかわらず、 La c Z染 色は精巣において見出された (図 2G) 。 し力 し、 青コロニー数は、 非トランスジ エニック子孫の初代動物よりも、 トランスジエニック子孫を産生した初代動物に関 し有意に大きかった (3. 44±2. 22 V s 0. 03±0. 03 コロニー /精巣;平均値土標準誤差; Pく 0. 05) 。 一方、 コロニー数と、 初代マウスか らのトランスジエニック子孫の割合との間の有意な連関は無かった。 興味深いこと に、 トランスジエニック子孫を産生したレシピエントの 2匹 (# 3 Iおよび 3 J) においては、 検査時には青コロニーが見出されず、 導入遺伝子を有する幹細胞が増 殖を終えたか消失したことが示唆された。 し力 し、 他の初代マウスからの精巣の組 織学的角晰は、 正常と認められる組織化を有する完全な精子形成を示した (データ
は示さず) 。 半接合 F 1マウスでの L a c Z導入遺伝子の発現が、 異なる動物の多 くの器官において観察された (図 2 H) 。
最後に、導入遺伝子が次世代に伝達されうるかどうかを検討した。 #2B初代マウス 力 らの雄と雌の両方の子孫を使用し、 各トランスジエニックマウスは、 非トランス ジエニック野生型 B 6マウスと交配させられ、 F 2子孫を産生した。 雄性トランス ジエニックマウスからの 8匹の子孫のうち 6匹と、 雌マウスからの 3匹の子孫のう ち 1匹は、 サザンプロット解析において導入遺伝子の存在を示し (図 3 ) 、 導入遺 伝子の安定な伝達が確認された。 F 2動物での L a c Z導入遺伝子の発現は、 F 1 世代のそれと同様であった。
(考察)
本発明の方法に^れば、 精原幹細胞等の生殖細胞へ、 インビボで形質導入するこ とができ、 トランスジエニック動物を産生できる。
本発明の方法が、 従来法であるインビトロトランスフエクシヨン法と比較して優 れている点としては、 精巣内の精原幹細胞の数を減らすことなく遺伝子導入が達成 されるので、 遺伝子が ¾Λされる雄の生殖力が保持されることが挙げられる。 精原 細胞移植では、 ドナー細胞の広範な定着力 生殖力の回復に不可欠である。 幹細胞 の少なくとも 1 5 %が、 除去処置後、 生殖力を回復するのに必要であると推定され ている。 しかし、 これは、 達成するのは困難である。 幹細胞数は、 短時間培養中で さえ、 減少し、 細胞の限定量のみが、 精細管中に導入できるからである。 更に、 移 植のための内因性幹細胞の除去は、 生殖力回復のための生殖細胞環境にダメージを 与えるばかり力 \ 全身毒性を発揮し、 レシピエント動物の死をもたらす。 実際、 除 去への感受性における系統又は年齢差異のため、 除去プロトコルは最適化するのが 困難である。 対照的に、 本願発明のアプローチは、 無処理 (intact) で、 野生型の 動物を用いる。 それらの精巣は、 幹細胞の正常数を有するので、 それらは、 目的遺 伝子を注入後、 効率的に子孫を生ませることができよう。
また、 本発明の方法の重要なもう一つの利点は、 該方法が、 動物の遺伝的背景に 依存しないことである。 インビトロ形質導入アプローチの成功は、 精原細胞移植に 付随する問題のために、 遺伝学的背景に影響される。 実際、 マウス精原幹細胞から
のトランスジエニック子孫は、 宿主の調製の困難性およぴドナー細胞の拒絶のため に、 遺伝学的に不稔の変異レシピエントから得られたのみであった (Proc. Natl. A cad. Sci. USA, 98, 13090-13095, 2001)。 対照的に、 本発明の方法を用いた場合、 4つの異なる系統でトランスジエニック子孫を産生できたので、 この問題を解決す る有望な方向が示唆される。 トランスジェニック子孫を産生する動物の割合は、 ィ ンビトロアプローチを使用するものよりも低レ、が (上記実施例での 2 2 % 対以前 の研究での 3 3— 3 8 %) 、 このことは、 より高い力価の調製物を使用することに よって、 そして、 レンチウイルスなどの特定タイブのレトロウイルスを使用するこ とによって、 改良され得よう。 従って、 本発明の方法は、 インビトロ遺伝子導入ァ ブローチに付随する困難性を克服し、 精原幹細胞等の生殖細胞を操作する機会を増 加させる。
上記実施例の興味深レ、観察は、 レトロウィルスに感染した精巣における L a c Z 染色の変動するパターンである。 幹細胞を枯渴させた精巣で発達したコ口ニーは、 一般的には均一で、対称性末端を有するが(Biol. Reprod. , 60, 1429-1436, 1999)、 上記実施例で観察されたものは、変動するパターンを示し、非対称性末端を有した。 L a c Z染色は、 おそらく単一の幹細胞の形質導入を起源としているので、 上記実 施例の結果は、 野生型の精巣での精原幹細胞は、 除去された環境でのドナー幹細胞 とは異なる様式で増殖し、 精原細胞又は精原幹細胞の挙動は、 正常な精子の形成過 程で非常に変動性でありうることを示唆する。 このことは、 移植幹細胞からの精子 形成のパターンは、 精細管での他の生殖細胞の存在によって影響されるという最近 の報告 (Biol. Reprod. , 66, 1491 - 1497, 2003)と一致している。 事実、 上記実施例 におけるコロニーパターンは、 精原細胞移植後、 野生型レシピエント精巣で観察さ れるドナー細胞由来コロニーと顕著な類似性を示した。 生殖細胞間のこのような相 互作用は、 幾つかの他の研究で以前に示され (Biol. Reprod. , 66, 1491-1497, 2003. Cell Tissue Kinet. , 7, 165-172, 1974、 Arch. B cell Pathol. Include. Mol. Pa thol. , 33, 67-80, 1980)、 幹細胞増殖の組織特異的インヒビターである 「シヤロー ン (chalone) 」 によって媒介されると考えられた。 幹細胞の増殖力イネティックス は、 レトロウイルスにより個々の幹細胞に特異的に印を付けることによって、 他の
自己更新組織でよく研究されているが(Genes Dev. , 4, 220 - 232, 1990、 J. Invest. Dermatol. , 109, 377-383, 1997)、 精原幹細胞増殖とその制御のダイナミクスにつ いては殆ど知られていない。 本発明の方法によるインビボ幹細胞形質導入を用いた 更なる研究は、 このような角科斤に有用であろう。
本発明の方法の潜在的に重要な適用は、 通常のトランスジェニック技術が不可能 か又は非効率的であることが証明されている動物 (Reproduction in farm animals, (Lippincott Silliams & Willins, Pniladelphia, Pennsylvania) , pp. 1-40, 20 00) の遺伝子導入である。 マウス及び雄ゥシでの精原幹細胞の長期間培養系の最近 の確立は、 インビトロでの形質導入方法を改良し得、 動物の遺伝子導入での新たな 宪展を潜在的に導き得るが(Biol. Reprod. , 68, 272-281, 2003、 Biol. Reprod. , 6 9, 612-616, 2003、 J. Androl. , 24, 661-669, 2003)、 このような培養系は、 他の 多くの種では培養条件の更なる改善を要する可能性があり、 また精原細胞移植に付 随する問題を、 解決する必要がある。 特に、 内因性生殖細胞の除去は、 大きな身体 サイズ、 異なる精對冓造及び内分泌環境のため、 大動物では困難である。 更に、 幹 細胞を濃縮する幾つかの方法が、 げっ歯類で確立され、 生殖力回復率を増大するの に使用できょうが(Proc. Natl. Acad. Sci USA, 97, 8346-8351, 2000、 EMB0 Rep. 3, 753 - 759, 2002、 Biol. Reprod. , 70, 70-75, 2004)、他の動物での精原幹細胞は、 より少なくしかキャラクタライズされておらず、 幹細胞の濃縮方法は利用できない。 しかし、微注入技術は、多くの動物種で既に確立されているので (Hum. Reprod. , 17, 55-62, 2002、 Hum. Reprod. , 14, 144-150, 1999)、 未成熟動物への遺伝子の微注 入は、 他の動物種に容易に拡張できる。 家畜等の大動物の未成熟精巣は一般的に、 精細管への注入の流れに対する抵抗がより少なく、 本技術の適用を容易にする(Hum. Reprod. , 14, 144-150, 1999)。従って、精原幹細胞のインビボ形質導入は、今や、 精原幹細胞の操作の新たな戦略を し、 この価値ある細胞集団を理解し、 使用す る努力を加速する。
産業上の利用可能性
本発明の方法を用いれば、 これまでィンビトロでの形質導入が困難であった動物 種や系統においても、 目的遺伝子が導入された生殖細胞、 特に精原幹細胞を保持す る個体を極めて高い効率で得ることが可能である。 また、 精巣内の精原幹細胞の数 を減らすことなく遺伝子導入が達成されるので、 インビト口での生殖細胞への形質 導入時と比較して、 遺伝子が注入される雄の生殖力が保持され、 トランスジェニッ ク精子やトランスジエニック動物を容易に作製することが可能である。 従って、 本 発明の方法を用いて、 家畜に任意の遺伝子を導入することにより家畜の品種改良を することが可能であり農業分野において有用である。また、本発明の方法を用いて、 動物に種々の有用物質の産生を行わせることが可能であり、 医薬医療分野において 有用である。 本出願は日本で出願された特願 2 0 0 4—1 5 8 1 7 4 (出願日 : 2 0 0 4年 5 月 2 7日) を基礎としており、 その内容は本明細書に全て包含されるものである。