NADPHォキシダーゼ活性を抑制する色素上皮由来因子の新規治療用 途
技術分野
[0001] 本発明は、血管障害を予防または治療するための医薬組成物またはベクターに関 する。特に、色素上皮由来因子 (PEDF)またはその変異体を活性成分として含有する 医薬組成物および PEDFまたはその変異体をコードする核酸を含むベクターに関す る。
背景技術
[0002] 色素上皮由来因子 (PEDF)はセリンプロテアーゼインヒビターのスーパーファミリー に属する糖タンパク質であり、当初、ヒト網膜芽細胞腫細胞において強力な神経分ィ匕 活性を有する因子としてヒト網膜色素上皮細胞の培養上清力も精製された (文献 1)。 最近、 PEDFが細胞培養および動物モデルにぉ 、て血管形成を非常に効果的に阻 害することが示されている。 PEDFは、網膜上皮細胞の成長および移動を阻害し、虚 血誘発網膜新血管形成を抑制した (文献 2, 3)。
[0003] 網膜は眼球に栄養や酸素を供給するための細小血管がネットワークを構成してい るが、糖尿病などで高血糖状態が長く続くとこれらの血管が障害され、透過性の亢進 を生じる。この病態がさらに進行し虚血領域が拡大していくと、新生血管を伴う増殖 性糖尿病網膜症に至る。 PEDFは硝子体に存在しており、そのレベルは眼血管形成 疾患にお ヽて減少して ヽることから、眼に存在する PEDFは増殖性糖尿病網膜症の 発症において機能的に重要であることが示唆される (文献 4)。しかしながら、 PEDFが どのように上皮細胞 (EC)の成長および機能を調節するのかは完全には理解されてい ない。
[0004] ァテローム性動脈硬化症も同様に ECに関連する炎症性繊維増殖疾患であり (文献
5)、その病因は、 ECにおいて血栓性および炎症性反応を誘導する TNF- o;および IL-1のような古典的炎症誘発性サイト力インであると考えられる (文献 6, 7)。 ECはこれ らサイト力インに暴露されると、 IL-6産生、接着分子の発現および凝血促進活性の誘
導を含む、決定的な機能的変化を起こす (文献 8- 10)。これらサイト力インのシグナル 伝達および遺伝子発現は、 ECにおける活性酸素種 (ROS)の生成に大きく依存してい る (文献 11 , 12)。 ROSは、網膜症およびァテローム性動脈硬化症において主要な役 割を果たす酸ィ匕的ストレスを引き起こす。
[0005] 血管細胞における ROSは主として、 NADPHォキシダーゼにより産生され (文献 31)、 NADPHォキシダーゼは、細胞の成長、接着分子やサイト力インの遺伝子発現を含む 、細胞の病態生理学的応答において不可欠であることが知られている (文献 31)。実 際、 NADPHォキシダーゼは終末糖ィ匕産物 (AGE) (糖尿病において形成が加速され る老齢巨大タンパク質誘導体)によって活性化され、それにより酸ィ匕的ストレスと ECに おける遺伝子発現の変化とが関連付けられ、糖尿病性ミクロおよびマクロ血管障害 が発症すると考えられている (文献 32)。
発明の開示
課題を解決するための手段
[0006] 本発明者らは最近、 PEDFが ROS生成を抑制することによって AGE誘発周皮細胞ァ ポトーシスおよび微小血管上皮細胞傷害を有意に阻害することを示した (文献 15, 33) そこで、本発明者らは、 PEDFが、 NADPHォキシダーゼ仲介細胞内シグナル経路を 遮断することによって、糖尿病性血管合併症を含む様々なタイプの血管障害の進行 を予防し得ると考えた。本発明者らの PEDFについての研究により、 PEDFは実際には NADPHォキシダーゼ活性を抑制すること、特に、ヒト臍帯静脈内皮細胞 (以下、 HUVECと表記する)において PEDFが Rac活性ィ匕を抑制することにより TNF- α誘発性 NADPHォキシダーゼ活性を阻害し、その結果 NF- κ B活性化、 IL-6発現、アンジォ テンシン II活性および Zまたは終末糖ィ匕産物 (AGE)情報伝達を阻害することが明らか となり、それによつて本発明を完成させた。
[0007] 即ち本願は、以下の発明を提供する:
( 1) a)色素上皮由来因子;
b)色素上皮由来因子 (a)と機能的に同等な性質を有する該因子の変異体;および c)該因子 (a)または該変異体 (b)をコードする核酸分子を含むベクター
より成る群カゝら選択される活性成分を含有する、 NADPHォキシダーゼ活性を抑制 するための医薬組成物; NADPHォキシダーゼ仲介活性酸素種の生成を抑制する 該医薬組成物; NADPHォキシダーゼ活性を抑制することにより、 NF- κ B活性化、 IL-6発現、 TNF- α活性、アンジォテンシン II活性、および/または終末糖化産物情 報伝達を阻害する、該医薬組成物;
具体的には、
NADPHォキシダーゼに起因する疾患を予防または治療するための、本発明の医 薬組成物;より具体的には、 NADPHォキシダーゼに起因する疾患が、血管障害、 NF- κ B活性化一関連疾患、 IL-6発現一関連疾患、 TNF- a活性一関連疾患、アン ジォテンシン II活性一関連疾患、および終末糖化産物情報伝達 関連疾患より成る 群から選択される、該医薬組成物;
さらに具体的には、
血管障害が、血管炎、ァテローム性動脈硬化症、急性冠動脈イベント、高血圧、ィ ンシュリン抵抗性、肥満、糖尿病性血管合併症、および脳梗塞より成る群から選択さ れる、本発明の医薬組成物; NF- κ B活性ィ匕—関連疾患が、血管炎、ァテローム性 動脈硬化症、急性冠動脈イベント、高血圧、インシュリン抵抗性、肥満、糖尿病性血 管合併症、癌、炎症、関節リウマチ、肝疾患、腎疾患、および脳梗塞より成る群から 選択される、本発明の医薬組成物; IL-6発現一関連疾患が、冠動脈イベント、血管 炎、ァテローム性動脈硬化症、急性冠動脈イベント、高血圧、インシュリン抵抗性、肥 満、糖尿病性血管合併症、癌、炎症、関節リウマチ、肝疾患、腎疾患、脳梗塞、およ び悪性骨髄腫より成る群から選択される、本発明の医薬組成物; TNF- α活性一関 連疾患が、血管炎、ァテローム性動脈硬化症、急性冠動脈イベント、高血圧、インシ ュリン抵抗性、肥満、糖尿病性血管合併症、癌、炎症、関節リウマチ、肝疾患、腎疾 患、および脳梗塞より成る群から選択される、本発明の医薬組成物; アンジォテンシ ン II活性一関連疾患が、血管炎、ァテローム性動脈硬化症、急性冠動脈イベント、高 血圧、インシュリン抵抗性、肥満、糖尿病性血管合併症、および脳梗塞より成る群か ら選択される、本発明の医薬組成物; NADPHォキシダーゼ活性を抑制することによ り、終末糖ィヒ産物生成に伴う糖尿病性血管合併症を治療するための本発明の医薬
組成物; 終末糖化産物情報伝達一関連疾患が、終末糖化産物生成に伴う糖尿病 性血管合併症である、本発明の医薬組成物;
(2) a)色素上皮由来因子;または
b)色素上皮由来因子 (a)と機能的に同等な性質を有する該因子の変異体 をコードする核酸を含む、 NADPHォキシダーゼ活性を抑制するためのベクター; NADPHォキシダーゼ仲介活性酸素種生成を抑制するベクター; NADPHォキシダ ーゼ活性を抑制することにより、 NF- κ B活性化、 IL-6発現、 TNF- o;活性アンジォテ ンシン II活性および Zまたは終末糖ィ匕産物情報伝達を阻害するベクター;
具体的には、
NADPHォキシダーゼに起因する疾患を予防または治療するための、本発明のベタ ター;より具体的には、 NADPHォキシダーゼに起因する疾患力 血管障害、 NF- κ B 活性化一関連疾患、 IL-6発現一関連疾患、 TNF- α活性一関連疾患、アンジォテン シン II活性一関連疾患、および終末糖化産物情報伝達 関連疾患より成る群から選 択される、該ベクター;
さらに具体的には、
血管障害が、血管炎、ァテローム性動脈硬化症、急性冠動脈イベント、高血圧、ィ ンシュリン抵抗性、肥満、糖尿病性血管合併症、および脳梗塞より成る群から選択さ れる、本発明のベクター; NF- κ B活性ィ匕一関連疾患力 血管炎、ァテローム性動 脈硬化症、急性冠動脈イベント、高血圧、インシュリン抵抗性、肥満、糖尿病性血管 合併症、癌、炎症、関節リウマチ、肝疾患、腎疾患、および脳梗塞より成る群から選 択される、本発明のベクター; IL-6発現一関連疾患が、冠動脈イベント、血管炎、ァ テローム性動脈硬化症、急性冠動脈イベント、高血圧、インシュリン抵抗性、肥満、糖 尿病性血管合併症、癌、炎症、関節リウマチ、肝疾患、腎疾患、脳梗塞、および悪性 骨髄腫より成る群から選択される、本発明のベクター; TNF- α活性—関連疾患が、 血管炎、ァテローム性動脈硬化症、急性冠動脈イベント、高血圧、インシュリン抵抗 性、肥満、糖尿病性血管合併症、癌、炎症、関節リウマチ、肝疾患、腎疾患、および 脳梗塞より成る群から選択される、本発明のベクター; アンジォテンシン II活性—関 連疾患が、血管炎、ァテローム性動脈硬化症、急性冠動脈イベント、高血圧、インシ
ュリン抵抗性、肥満、糖尿病性血管合併症、および脳梗塞より成る群から選択される 、本発明のベクター; NADPHォキシダーゼ活性を抑制することにより、終末糖化産 物生成に伴う糖尿病性血管合併症を治療するための本発明のベクター; 終末糖化 産物情報伝達 関連疾患が、終末糖化産物生成に伴う糖尿病性血管合併症である 、本発明のベクター;に関する。
[0008] 別の観点において、本発明は、
a)色素上皮由来因子;
b)色素上皮由来因子 (a)と機能的に同等な性質を有する該因子の変異体;および c)該因子 (a)または該変異体 (b)をコードする核酸分子を含むベクター
より成る群カゝら選択される活性成分を、 NADPHォキシダーゼに起因する疾患の予 防または治療を必要とする患者に投与することを含む、 NADPHォキシダーゼに起因 する疾患を予防または治療するための方法に関する。
[0009] さらに別の観点において、本発明は、
a)色素上皮由来因子;
b)色素上皮由来因子 (a)と機能的に同等な性質を有する該因子の変異体;および c)該因子 (a)または該変異体 (b)をコードする核酸分子を含むベクター
より成る群カゝら選択される活性成分の、 NADPHォキシダーゼに起因する疾患を予 防または治療するための医薬組成物の製造のための使用に関する。
図面の簡単な説明
[0010] [図 1]HUVECにおける細胞内 ROS生成に対する PEDFの効果を示す。図 1Aは、
HUVECにおける細胞内 ROS生成に対する TNF- αの効果を示すグラフである: *, P < 0.01 (TNF- α抜きの値と比較)。図 1Bは、 HUVECにおける細胞内 ROS生成に対す る PEDF、 DPI,または抗 PEDF抗体 (Abs)の効果を示すグラフである: *, P〈0.01 ( TNF- α単独の値と比較)。図 1Cは、 HUVECにおける ROS生成に対する
DN- RacT17Nを示すグラフである: *, P〈0.01 (TNF- αを処理した偽トランスフエタト 細胞の値と比較)。図 1Dは、 TNF- α誘発 Rac- 1 mRNAレベルに対する PEDFの効 果を示すグラフである。図 1Eは、 TNF- o;誘発 Rac活性に対する PEDFの効果を示す グラフである: *, P〈0.01 (TNF- a単独の値と比較)。
[図 2]HUVECにおける NADPHォキシダーゼ活性に対する PEDFの効果を示すグラフ である。図 2Aは、 TNF- α -誘発 NADPHォキシダーゼ活性に対する PEDFの効果を 示すグラフである: *, Pく 0.01 (TNF- o;単独の値と比較)。図 2Bは、共焦点顕微鏡 下での細胞の典型的顕微鏡写真を示す。
[図 3]HUVECにおける NF- κ B活性に対する PEDFの効果を示すグラフである: *, P < 0.05 (TNF- α単独の値と比較)。図3Aは、PEDFぉょびNACが、TNF- αの誘発する NF- κ Βプロモーター活性の上昇を抑制することを示すグラフである。図 3Βは、 TNF- αが NF- κ Β ρ65活性を上昇させ、それが PEDFによって有意に阻害されることを示 すグラフである: *, P〈0.05 (TNF- α単独の値と比較)。
[図 4]HUVECにおける IL-6 mRNAおよびタンパク質レベルに対する PEDFの効果を 示す。図 4Aは、 IL-6遺伝子の誘導を定量的に示すグラフである。データは |8 -ァク チン mRNA由来シグナルの強度によってノーマライズし、対照の値と対比させた: *, P 〈0.05; **, P〈0.01 (TNF- α単独の値と比較)。図 4Bは、 IL-6タンパク質の誘導を定 量的に示すグラフである: *, P〈0.01 (TNF- o;単独の値と比較)。
[図 5]HUVECにおける PEDF遺伝子発現に対する TNF- aの効果を示す。下のパネ ルは PEDF遺伝子の誘導を定量的に示したものである。データは 13 -ァクチン mRNA 由来シグナルの強度によってノーマライズし、対照の値と対比させた。 Unpaired t test を行った; pく 0.05を有意であると判断した: *, Pく 0.01 (対照細胞の値と比較)。
[図 6]HUVECに対する精製 PEDFタンパク質 (Aおよび B)および TNF- a (C)の結合 を示す。図 6Aはフルオレセン標識 PEDFによるリガンドブロットである。図 6Bは、
PEDF結合プロファイルを示すグラフである。図 6Cは、 HUVECにおける TNF- α結合 に対する PEDFの効果を示すグラフである。
[図 7]HUVECにおけるアンジォテンシン II (Angll)誘発性 NF- κ Β活性に対する PEDF の効果を示すグラフである: *印は、 Angll単独処理群に対して、 Pく 0.05で有意であ ることを示す。
[図 8]HUVECにおける Angll誘発性 MCP-1 mRNAおよびタンパク質レベル上昇に対 する PEDFの効果を示すグラフである: *印は、 Angll単独処理群に対して、 P〈0.01で 有意であることを示す。図 8Aは MCP-1 mRNAに対する PEDFの効果を、図 8Bは
MCP-1タンパク質に対する PEDFの効果をそれぞれ示すグラフである。
[図 9]HUVECにおける Angll誘発性分子内 ROS発生に対する PEDFの効果を示すダラ フである。図 9Aは Angllにより ROSが発生することを示し( *印は Angll無処理群に対 して、 P< 0.01にて有意であることを示す)、図 9Bはその ROS発生を PEDFが抑制する ことを示している(*、 * *印は Angllでの値に比べて、それぞれ P〈0.05、 P〈0.01で有 意であることを示す)。
[図 10]HUVECにおける Angll誘発性 NADPHォキシダーゼ活性に対する PEDFの効果 を示すグラフである( *、 * *印は Angllでの値に比べて、それぞれ P〈0.05、 P〈0.01 で有意であることを示す)。
[図 11]微小血管内皮細胞での細胞内活性酸素種の生成および NADPHォキシダー ゼ活性に対する PEDFの作用を示すグラフである(*は AGE-BSA処置群 (図では AGEs と表記されて 、る)に対して Pく 0.01にて有意であることを示す)。
[図 12]微小血管内皮細胞における血清 AGE分画に対する効果を示すグラフである (* は DM- HD群に対して PEDF投与群が P〈0.01にて有意であることを示す)。
[図 13]AGE灌流ラットでの網膜血管浸透性に対する静脈投与での効果を示すグラフ である (*は PEDF投与群は非投与群に比べ、 Pく 0.01にて有意であることを示す)。 発明を実施するための最良の形態
[0011] (1) NADPHォキシダーゼ活性を抑制するための医薬組成物
本発明者らは、後述する実施例に示す 2つの異なる方法(図 2)によって、 PEDFが TNF- a誘発 NADPHォキシダーゼ活性を抑制することを示した。正確な分子機構は 明らかでないが、本発明者らの本研究は、 PEDFが HUVECにおいて Rac活性化を抑 制することにより TNF- a誘発 NADPHォキシダーゼ活性を阻害して 、る可能性がある ことが示唆する。
[0012] 本発明の医薬組成物は、 NADPHォキシダーゼ障害を予防または治療するために 使用することができる。本発明において、予防には再発防止も含む。 NADPHォキシ ダーゼは活性酸素種 (ROS)の生成を仲介する。 ROSは、過酸化水素のような分子、 次亜塩素酸イオンまたはスーパーオキサイドァ-オンのようなイオン、ヒドロキシルラ ジカルのようなラジカルなどであり、殺菌に関与する。し力しながら、 ROSは網膜症お
よびァテローム性動脈硬化症において主要な役割を果たす酸ィ匕的ストレスを引き起 こす場合がある。
[0013] 従って本発明者らは、 TNF- a暴露 HUVECにおける活性酸素種 (ROS)生成、 NF- κ B活性ィ匕および IL-6発現に対する PEDFの効果について検討した。 TNF- aは細胞 内 ROS生成を有意に上昇させ、それは PEDFまたは NADPHォキシダーゼ阻害物質で あるジフ -レン'ョードニゥム (以下、 DPIと表記する)により完全に抑制された。さらに 、 PEDFは TNF- aが誘発する NADPHォキシダーゼ活性の上昇を完全に阻害した。
PEDFまたは抗酸化剤である N-ァセチルシスティンは、 TNF- a誘発 NF- κ Β活性ィ匕 を有意に阻害した。 PEDFは、 TNF- α誘発 IL-6発現を mRNAおよびタンパク質レベル の両者において阻害した。さらに、 TNF- αは PEDF mRNAレベルを減少させた。リガ ンドブロット解析により、 HUVECが PEDFに対して結合親和性を有する膜タンパク質を 有することが明ら力となった。これらの結果は、 PEDFが HUVECにおいて NADPHォキ シダーゼ仲介 ROS生成を抑制することにより、 TNF- a誘発 NF_ κ Β活性化およびそ の後の IL-6過剰発現を阻害することを示して 、る。
[0014] さらに、アンジォテンシン II (Angll)が HUVECにおいて、酸化還元に感受性を有す る転写因子である NF- κ Bの活性化、ついで MCP- 1 (Monocyte Chemoattractant protein-1)の発現を顕著に誘発し、これらが抗酸化剤である N-ァセチルシスティン( 以下、 NACと表記する)同様、 PEDFによって完全に阻害されること、および HUVECに おいて Angllにて誘発された ROSの発生を NADPHォキシダーゼ阻害剤である DPIと 同様に阻害することを見出した。
[0015] また、終末糖化産物 (AGE)は、微小血管内皮細胞での分子内活性酸素種の活性 を顕著に刺激するが、これらが PEDFによって完全に抑制されること、また、 PEDFは、 NADPHォキシダーゼ活性における増加と同様に終末糖ィ匕産物 (AGE)にて誘発され た NADPHォキシダーゼを阻害すること、さらに PEDFは、血液透析糖尿病患者
(DM-HD)血清からの AGE分画で処理した細胞に対し、有意な抗酸化活性を示すこと を明らかにした。さらに、 AGE灌流ラットでの網膜血管浸透性に対し、有効性を示した 。以上の一連の事象を本明細書にお!、ては「終末糖化産物 (AGE)情報伝達」 t 、う
以上の知見より、本発明はまた、 NADPHォキシダーゼ活性を抑制することにより、 NF- κ B活性化、 IL-6発現、 TNF-ひ活性、アンジォテンシン II活性および Zまたは終 末糖化産物 (AGE)情報伝達を阻害する医薬組成物を提供する。
[0016] 本発明が目的とする対象疾患は NADPHォキシダーゼに起因する疾患であり、これ には例えば血管障害、 NF- κ B活性化一関連疾患、 IL-6発現一関連疾患、 TNF- a 活性一関連疾患、アンジォテンシン Π活性一関連疾患、および終末糖化産物 (AGE) 情報伝達 関連疾患が包含される。
血管障害には、脈管炎、ァテローム性動脈硬化症、血管炎、ァテローム性動脈硬 化症、急性冠動脈イベント、高血圧、インシュリン抵抗性、肥満、糖尿病性血管合併 症、癌、炎症、関節リウマチ、肝疾患、腎疾患、脳梗塞などが含まれる。
[0017] NF- κ B活性ィ匕—関連疾患の例には、血管炎、ァテローム性動脈硬化症、急性冠 動脈イベント、高血圧、インシュリン抵抗性、肥満、糖尿病性血管合併症、癌、炎症、 関節リウマチ、肝疾患、腎疾患、および脳梗塞が含まれる。
転写因子である NF- κ Bは、炎症誘発性サイト力インおよび成長因子の遺伝子発現 を調節し、血管機能障害およびァテローム性動脈硬化症の発症において中心的役 割を果たす (文献 34)。本発明者らは本発明において、 TNF- aが IL- 6発現を NF- κ Β の活性ィ匕を介して mRNAおよびタンパク質レベルで有意に誘導することを発見した。
PEDFまたは抗酸化物質 NACは、 TNF- a誘発 NF- κ Β活性化およびそれに続く IL-6 mRNA発現上昇を有意に阻害するので、 PEDFはその抗酸ィ匕特性を介して IL-6発現 を減少させた可能性があり、本明細書で述べるように本発明者らはそれに関して多く の証拠を示した。
[0018] IL-6発現一関連疾患の例には、冠動脈イベント、血管炎、ァテローム性動脈硬化 症、急性冠動脈イベント、高血圧、インシュリン抵抗性、肥満、糖尿病性血管合併症 、癌、炎症、関節リウマチ、肝疾患、腎疾患、脳梗塞、および悪性骨髄腫が含まれる。 ァテローム性動脈硬化症における全身性炎症反応のほとんど力 IL-6の作用によつ て説明できる。 IL-6は C-反応性タンパク質 (CRP)の肝合成の主要な誘導因子であり、 また、不安定狭心症の患者における IL-6および CRPの血清レベルの上昇は予後不 良と関連がある (文献 35, 36)。さらに、最近幾つかの研究により、 CRPがー見健康な
中年男性における心血管疾患の独立した予測危険因子であり得ることが示された (文 献 37)。それ故 PEDFは、 IL-6および CRP産生を弱めることによって、ァテローム性動 脈硬化症の進行に対して有利な効果を示し得るであろう。以上のことから、 PEDFは、 ァテローム性動脈硬化症の発達および進行にぉ 、て重要な役割を果たして 、る可 能性がある。
[0019] TNF- a活性一関連疾患の例には、血管炎、ァテローム性動脈硬化症、急性冠動 脈イベント、高血圧、インシュリン抵抗性、肥満、糖尿病性血管合併症、癌、炎症、関 節リウマチ、肝疾患、腎疾患、および脳梗塞が含まれる。 TNF- αは、 ROSの生成を 介して複数の細胞機能に対し多面的作用を発揮する (文献 8, 13, 14)。事実、以下に 示す実施例は、 TNF- aが ROS生成、 NF- κ Β活性化および IL-6発現を誘発すること を示す。それに対して、以下に示す実施例はまた、 TNF- o;によって誘発されるこれら 機能が実際に PEDFによって抑制または阻害されたことを示す。即ち PEDFは、 TNF- a活性、特に NADPHォキシダーゼ活性に基づく TNF- a活性—関連疾患を予防ま たは治療するのに使用できると考えられる。
[0020] アンジォテンシン II活性一関連疾患には、血管炎、ァテローム性動脈硬化症、急性 冠動脈イベント、高血圧、インシュリン抵抗性、肥満、糖尿病性血管合併症、および 脳梗塞が含まれる。アンジォテンシン II (Angll)は、レニン-アンジォテンシン系の支配 的なエフェクターであり、血管壁細胞での数多くの炎症性増殖性応答を調整し、その ことにより動脈硬化症を惹起しうることが知られている。本発明者らは、以下の実施例 試験結果以外の試験結果も合わせて、 PEDFが、 Angllが誘発された血管内皮細胞 の活性ィ匕を試験管内で阻害し、その機序が NADPHォキシダーゼにより媒介された ROSの発生を抑制することによるものであることを見出した。このことにより、 PEDFは 動脈硬化症の発症および悪化に重要な予防、治療効果を示すことが判明した。この 知見により、本発明は、さら〖こ、 PEDFの NADPHォキシダーゼ活性阻害作用によるァ ンジォテンシン II活性を抑制し、このことからアンジォテンシン II由来の疾患、たとえ ば、血管障害、特に動脈硬化症等の循環器系疾患の予防または治療剤を提供する ことができる。
[0021] 本発明は、さらに NADPHォキシダーゼ活性を抑制することにより終末糖ィ匕産物(
AGE)生成に伴う糖尿病性血管合併症、即ち終末糖化産物 (AGE)情報伝達 関連 疾患を予防または治療するための医薬組成物を提供する。
終末糖化産物 (AGE)情報伝達一関連疾患には、糖尿病性血管合併症、例えば増 殖性糖尿病網膜症等が含まれる。
[0022] また、本発明者らは本研究にお!、て、 PEDF単独では TNF- aに暴露されて!、な!/ヽ HUVECにおける NADPHォキシダーゼ活性、 NF- κ Βプロモーター活性または IL-6 mRNAレベルに影響しないことを発見した。つまり、 PEDFは基本状態では ECに対し て有害な作用を示さないようである。従って本発明の組成物およびベクターは、本明 細書記載の数多くの疾患を、より安全に、より都合良ぐそして副作用の問題を懸念 することなく、予防または治療するのに使用可能である。
この知見により、本発明は、 NADPHォキシダーゼに起因する疾患から予防または 治療させる医薬組成物および Zまたはそのためのベクターを提供する。この態様に おいて、本発明は、 NADPHォキシダーゼに起因する疾患力 予防または治療させる のみであり、過剰の作用を示さない。
[0023] (2)本発明の医薬組成物に含まれる活性成分
活性成分は、以下より成る群力 選択することができる:
a)色素上皮由来因子;
b)色素上皮由来因子 (a)と機能的に同等な性質を有する該因子の変異体;および c)該因子 (a)または該変異体 (b)をコードする核酸分子を含むベクター。
[0024] (2)-1.色素上皮由来因子
色素上皮由来因子 (PEDF)のアミノ酸配列および核酸配列は、 Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 90 (4), 1526-1530 (1993)に記載されており(本文献は引用により本明細 書の一部を成す)、ジーンバンクァクセシヨン番号 M76979で登録されている。参考の ため、ヒト PEDFのアミノ酸配列および核酸配列をそれぞれ配列番号: 1および 2にお いて示す。本発明によれば、 PEDFには、ヒト、ィヌ、ネコ、ゥシ、およびゥマのような哺 乳類由来の全種類の PEDFが含まれる力 ヒト由来の PEDFが好ましい。
[0025] PEDFは、 Molecular Cloning, 2nd ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989) のような多くの出版物および参考文献に従って、該タンパク質をコードする DNAを発
現させること〖こより産生することができる。特に、発現プラスミドは、本発明の DNAを適 切な発現ベクター (例えば pBK-CMV)に挿入することによって構築する。そして、その 発現プラスミドを適切な宿主細胞に導入し形質転換細胞を得る。宿主細胞の例には 、大腸菌のような原核生物、酵母のような単細胞性真核生物、および昆虫並びに動 物のような多細胞性真核生物の細胞が含まれる。発現プラスミドは、リン酸カルシウム 法、電気穿孔法、リポフ クチン法等のような常套的方法により宿主細胞へ導入する ことができる。所望のタンパク質は、該形質転換体を通常の方法に従い適切な培地 中で培養することにより産生される。このようにして得られたタンパク質は、標準的生 化学的手法に従って単離精製することができる。
[0026] 本明細書で用いる場合、「PEDFと機能的に同等の性質を有する PEDFの変異体」 には、ヒト PEDFと機能的に同等の性質を有するすべての種類の PEDF変異体が含ま れる。例えば PEDFの変異体は、 US6319687、 WO03059248, W09324529等に記載さ れている(各文献の記載内容は引用より本願の内容の一部を成す)。
PEDF変異体の好ましい例には、ヒト PEDFのアミノ酸配列に対して置換、欠失およ び/または付加である 1つもしくはそれ以上、または幾つかのアミノ酸残基の変化を 有するアミノ酸配列を含み、かつヒト PEDFと機能的に同等の性質を有する PEDFの変 異体が含まれる。
ヒト PEDFと機能的に同等の性質とは、ヒト PEDFと同等の NADPHォキシダーゼ活性 の抑制を意味する。
本発明の変異体もまた、前述の組換え技術によって調製することができる。 前述のように調製した変異体が機能的に同等の性質を有する力否かは、本明細書 で後述する実施例に従って証明することができる。
[0027] PEDFまたはその変異体を含有する本発明の医薬組成物はまた、要すれば、常套 的な担体を含むことができる。
PEDFまたはその変異体を含有する本発明の医薬組成物は、例えば、皮内、皮下ま たは静脈内注射によって投与することができる。好ましくは、このような PEDFまたはそ の変異体は、注射によって病変が存在する部位に直接投与する。そのような製剤中 のタンパク質の量は、治療する疾患、患者の年齢および体重等に依存して適宜変化
するであろうが、典型的には、毎日(1回または数回に分けて投与することができる)、 数日から数ケ月ごとに PEDFまたはその変異体を O.OOOlmg-1000 mg、好ましくは O.OOlmg- 100 mg、より好ましくは O.Olmg- 10mg投与する。
[0028] (2)-2.核酸およびベクター
本発明の医薬組成物が含有する活性成分は、色素上皮由来因子、または色素上 皮由来因子のアミノ酸配列に対して置換、欠失および Zまたは付加である 1つまたは 幾つかのアミノ酸残基の変化を含み、かつ色素上皮由来因子と機能的に同等の性 質を有するその変異体をコードする核酸を含むベクターであってよい。
[0029] 本明細書で用いる場合、「核酸」には DNAおよび RNAが含まれ、それらは一本鎖ま たは二本鎖であってよい。核酸は、典型的 DNA合成または遺伝子工学的方法に従 ヽ、 f列 XJ Molecular Cloning , 2nd ed., し old Spring Harbor Laboratory Press (1989)のような標準的テキストの記載に従 、容易に調製することができる。
[0030] また、ベクターに組み込まれた核酸を癌患者に投与することにより、 PEDFまたはそ の変異体は患者の癌細胞において高発現する。つまり、これらベクターは、常套的に 用いられるように遺伝子治療に有用である。ベクターの例には、前述の核酸を DNAま たは RNAウィルス、例えばレトロウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウィルス、ヘルべ スウィルス、ヮクチ-ァウィルス、ボックスウィルス、ポリオウイルス、またはシンドビスウイ ルスに組み込んで細胞に導入するウィルスベクターが含まれる。これら方法のうち、 レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウィルスまたはヮクチ-ァウィルスを用いる ものが特に好ましい。該ベクターの具体例には、 pAd/CMV/V5-DEST Gateway Vector (Invitrogen)が含まれる。
[0031] 本発明のベクターを含有する医薬組成物はまた、要すれば、常套的な担体を含ん でも良い。
このようなベクターを含む医薬組成物は、例えば、皮内投与、皮下投与または静脈 注射により投与することができる。好ましくは、このような PEDFまたはその変異体は、 病変の存在する部位に直接投与する。そのような製剤中のベクターの量は、予防ま たは治療する疾患、患者の年齢および体重等に依存して変化するであろうが、典型 的には、毎日(1回または数回に分けて投与することができる)、数日力も数ケ月ごとに
核酸を 0.0001mg-100 mg、好ましくは O.OOlmg-10 mg投与する。
本発明はまた、前述のベクター自身を包含する。
[0032] (3)結合タンパク質
本発明者らはさらに、 HUVECが PEDFに対する結合親和性を有する膜タンパク質を 有するかについて研究した。
前述のように、 PEDF力 α誘発性 ROS生成を阻害することは、 TNF- α暴露 HUVECにおける PEDFの抗酸化機能を示唆する。しかしながら、 PEDF力TNF- αの 受容体との相互作用を介してその効果を発揮して 、な 、かにつ 、て調べなければな らな 、。本発明者らは培養 HUVECの細胞膜に PEDF特異的結合タンパク質が存在 することを初めて明らかにしたので(図 6A)、その可能性はなさそうである。該結合デ 一タのスキャッチヤード解析により、シングルクラスの高親和性受容体であることがわ 力つた(図 6B)。 PEDFの受容体結合領域のペプチドに対する抗体 (文献 15)は、 PEDFの抗酸ィ匕特性を完全に中和した(図 1B)。さらに、図 6Cに示すように、 PEDFは TNF- αとその受容体との結合を妨げな力つた。これらを総合すると、本発明者らの結 果は、 HUVECにおいて TNF- o;誘発性 ROS生成の阻害に関与する PEDF特異的結 合タンパク質が存在することを示唆する。なお、文献 30によると、網膜芽細胞腫上に Kd値 1.7-3.6 nM、 80-85 kDaの異なるタイプの PEDF結合タンパク質が存在すること を報告されて 、て、細胞タイプ特異的な PEDF受容体が存在して 、る可能性があるこ とを示唆している。
実施例
[0033] 本発明を以下の実施例によってさらに説明するが、いかなる意味おいてもこれら実 施例に限定されるものではない。全ての値を平均士 SEMで示した。特に示さない限 り、統計学的比較のため、 one-way ANOVAに続いて Scheffe F testを行った。
本参考例および実施例において用いた TNF- α、 DPI,ルシゲニン、 NADH、 NADPH、 NACおよびピロリジンジチォ力ルバメート (PDTC)は、 Sigma (St. Louis, MO) より購入した。 CDP- Star化学発光システムおよび125 HTNF- α は、 Amersham Pharmacia Biotech (Buckinghamshire , United !Mngdom)より購入し 7こ。 IL—り ELI¾Aン スアムは、 Biosource (Camarillo, CA)より得た。
[0034] 以下の実施例において本発明者らは、 TNF- aによって誘発される ROS (活性酸素 種)産生について調べるため HUVECを使用した。 TNF- αは、多くの細胞機能に対し て ROSの生成を介して多面的作用を発揮する (文献 8, 13, 14)。そこで本発明者らは 初めに TNF— aを用いて、 HUVECにお!/、て PEDF力 TNF— a誘発細胞内 ROS生成を 阻害できるか、およびどのように阻害するかについて調べた。次に本発明者らは、 TNF- a暴露 HUVECにおける NF- κ Β活性化およびそれに続く IL_6発現に対する PEDFの効果にっ 、て検討した。
[0035] 参考例 1 PEDFタンパク質の精製
PEDFタンパク質は既報のようにして精製した (文献 15)。精製 PEDFタンパク質の SDS-PAGE解析により分子量約 50kDaの一本のバンドが示され、それは抗ヒト PEDF モノクローナル抗体と陽性反応を示した (文献 15)。ヒト PEDFに対するポリクローナル 抗体もまた、既報のように調製した (文献 15)。
[0036] PEDF-発現ベクターおよび PEDF精製のための発現ベクターの調製につ!、て簡単 に説明する。
PEDF cDNAは、初めにヒト胎盤 cDNAライブラリー (Clontech, Palo Alto, CA)より単 離し、既報のように哺乳類発現ベクターである pBK- CMV(Stratagene, La Jolla, CA) に挿入した (文献 35)。
簡単に説明すると、該 cDNAライブラリーから PEDFをコードする遺伝子を以下の条 件の PCRにより単離した:
PCRプライマー
Fw: 5 ' -CTCAGTGTGCAGGCTTAGAG-3 ' (配列番号: 3)
Rev: 5 ' -CCTTCGTGTCCTGTGGAATC-3 ' (配列番号: 4)
X 10 pfuノ ッファー 4 μ 1
dNTP (各 2mM) 4 μ \
プライマー(Fw) (10 μ Μ) 4 μ \
プライマー(Rev) (10 μ Μ) 4 μ \
铸型 (200 mg)
pfoポリメラーゼ (STRATAGENE) 0.5 μ
蒸留水 /合計 40 1
PCR条件 (Parkin Elmer 2400)
(ステップ 1 X 1)
9o C 5mm
(ステップ 2 x 30)
95°C 0.5min
60°C 0.5min
72°C 1.5min
(ステップ 3 x 1)
72°C lOmin
4°C ∞min
増幅確認後、 PCR産物を pBluescript II KSの Sma Iサイトにライゲートした。制限酵素 消化およびシークェンスによって構造を確認し、また、 5'側に Xba Iサイトを含むことも 確認した。
Xba Iおよび Hind ΠΙ(ブラント)で切断した PEDF PCR産物を、 pBK- CMV
(STRATAGENE)の Nhe 1(ブラント)および Xba Iサイトの間に挿入し、 PEDF-発現べクタ 一であるプラスミド pBK- CMV- PEDFを得た。
次に、 PEDF精製のための発現ベクターを以下の手順に従い構築した。
His- Tag用オリゴ DNA、
5, -AATTCCATCATCATCATCATCATTAAT-3,(配列番号: 5)および
5, -CTAGATTAATGATGATGATGATGATGG -3,(配列番号: 6)を合成し、互!ヽに ァニールさせた。 PEDFのストップコドンを取り除き 3'末端に Eco RIサイトを挿入する ため、 5,- CGGAATTCGGGGCCCCTGGGGTCC -3,(配列番号: 7)並びに前述の Fwプライマー(配列番号: 4)、および铸型として pBK-CMV-PEDFを用いて PCRによ りオリゴ DNAを合成した。増幅産物を Bgl IIおよび Eco RIで切断し、切断産物を前述 のァニール済 His Tag用オリゴ DNAにライゲートした。ライゲート産物を Bgl IIおよび Xba Iで切断した精製 pBK-CMV-PEDFに挿入した。構造を制限酵素消化およびシ ークエンスによって確認した
[0038] 翻訳ェンハンサーを挿入するため、 pcDNA4- HisMax (Invitrogen)から Sac Iおよび Xba Iを用いて単離したェンハンサ一部分を pBluescript II KSの同じ制限酵素サイト にライゲートした。クローンの単離後、該ベクターを Nco Iサイト(ブラント)および Bam HIサイトで切断し、ベクターバックボーンを得た。
[0039] PEDFの 5 '末端を修飾するため、 5 ' - GCATGCAGGCCCTGGTGCTACTCC -3 ' ( 配列番号: 8) (PEDF 5'末端に Sph Iサイトを挿入)並びに 5 '
- TTAGGTACCATGGATGTCTGGGCT - 3,(配列番号: 9)、および铸型として pBK- CMV- PEDFを用いてオリゴ DNAを合成し、合成産物を pGEM- T easy
(Promega)に挿入した。クローンを単離し、そして Sph Iサイト (ブラント)および Bam HIサ イトで切断した。その結果生じた断片を前述のベクターバックボーンに挿入した。 得られたベクターを Sac Iサイト (ブラント)および Bam HIサイトで切断して翻訳ェンノヽ ンサ一— PEDF5,部分を取り出した。翻訳ェンハンサ一— PEDF5,部分を含む断片を 、 Nhe Iサイト (ブラント)および Bam HIサイトで切断した 3, His- Tag含有
pBK- CMV-PEDFにライゲートし、 PEDF精製のための発現ベクターを得た。得られた ベクターを制限酵素消化および配列決定によって確認した。
[0040] 参考例 2 HUVECストックの調製
HUVEC(Clonetics, CC- 2517)を、 2 %ゥシ胎児血清、 0.4 %ゥシ脳抽出物、 10 ng/mlヒト上皮細胞増殖因子および 1 μ g/mlヒドロコルチゾンを添加した EBM培地中 で培養した。実施例において、 TNF- o;処理は上皮細胞増殖因子およびヒドロコルチ ゾンを含まな!/、培地中で行った。
[0041] 実施例 1 HUVECにおける ROS生成に対する PEDFの効果(1)
本発明者らは初めに、 PEDF力 に暴露された HUVECにおいて ROS (活性酸 素種)生成を阻害できるかにつ!/、て検討した。
HUVECを 10 ng/ml TNF- αで示した時間処理し、その後細胞内の ROS生成を蛍光 プローブ CM- H DCFDA (Molecular Probes Inc. , Eugene, OR)を用いて既報のよう
2
にして検出した (文献 18, 19)。図 1Aに示すように、 ROS生成は 4時間で上昇し始め、 24時間で最大に達した; 10 ng/ml TNF- αで 24時間インキュベートすると、細胞内 ROS生成が約 1.4倍増加した。 10 ng/mUり高い濃度の TNF- αは HUVECに対して毒
性を示す。
[0042] 1または 10 nMの PEDF、 50 nM DPI,または 5 μ g/ml抗 PEDF抗体(Abs)の存在ま たは非存在下、 10 ng/ml TNF- αで、またはそれ抜きで HUVECを 24時間処理し、そ の後細胞内 ROS生成を前述のように検出した。 ROS生成の比率は無添加の対照の 値に対するものであり、縦軸に示している。結果は図 1Bに示す。 PEDFまたは DPIは、 TNF- aが誘発する ROS生成の上昇を完全に阻害することがわ力つた。
PEDFに対するポリクローナル抗体を PEDFと組み合わせて添加すると、 TNF- a暴 露 HUVECにおける PEDFの抗酸化効果は完全に消失した。 10 nM PEDFは、無細胞 系におけるキサンチン/キサンチンォキシダーゼ反応によるスーパーオキサイド生成 を阻害しない。これらの結果は、 PEDF自身がフリーラジカル除去作用を有するので はないことを示唆する。
[0043] 実施例 2 HUVECにおける ROS生成に対する PEDFの効果(2)
実施例 1において、 PEDFは DPIと同様に、 TNF- αが誘発する ROS生成の上昇を完 全に阻害することが示された。しかし、 DPIのような薬理学的阻害物質はある標的細 胞に対して完全に特異的ではないので、ここでは、 PEDFの ROS生成阻害の機序に ついて調べた。本発明者らは、 TNF- α暴露 HUVECにおける ROS生成が NADPHォ キシダーゼによるものであることをさらに検討するため、 DN-RacTl 7N (ドミナント ネ ガティブ ·ヒト Rac-1変異体)過剰発現技術を用いて実験を行った。 DN-RacT17は、 NADPHォキシダーゼに不可欠な構成要素である GTPase Rac-1(文献 28)の作用が完 全に遮断されている。
[0044] 既報のように (文献 17)、 DN-RacT17N発現ベクター(堀口博士から供与) (文献 16) または空のベクターを、 HUVECに一過性にトランスフエタトした。 DN- RacT17N-トラン スフェクトおよび模擬トランスフエタト HUVECを、 10 ng/ml TNF- αで 24時間処理し、 ROSを定量的に解析した。 ROS生成の比率は、 TNF- αなしでの模擬トランスフエタト 対照細胞の値に対するものである。図 1Cに示すように、 DN-RacT17Nの過剰発現に より、 TNF- a誘発性の ROS生成上昇は完全に阻害された。
[0045] 本発明者らは次に、 TNF- aが HUVECにおいて Rac-1発現および活性化を介して ROS生成を誘導し得るかにつ 、て検討した。
10 nM PEDFの存在または非存在下、 10 ng/ml TNF- αで、またはそれ抜きで HUVECを 4時間で処理し、その後逆転写ポリメラーゼ連鎖反応 (RT-PCR)により解析 した。下のパネルは、 Rac-1遺伝子誘導を定量的に表したものを示す。データは j8 - ァクチン mRNA由来シグナルの強度によってノーマライズし、対照と対比している。図 1Dに示すように、 TNF- αは、中程度に、しかし有意に Rac-1 mRNAレベルを上昇さ せ、それは 10 nM PEDFによって完全に抑制された。その後、 Rac Activation Assay Kit (Upstate Biotechnology Inc., Lake Placid, NY)を用いて Rac活性を測定した。 10 nM PEDFの存在または非存在下、 10 ng/ml TNF- αで、またはそれ抜きで HUVECを 24時間で処理した。図 1Eに示すように、 Rac-GTPプルダウンアツセィにより、 TNF- aは有意に Racを活性ィ匕し、それはまた、 PEDF処理によって完全に阻害されることが わかった。
[0046] これらの知見は、 NADPHォキシダーゼの重要な構成要素の 1つである Rac-1が
TNF- a誘発性 ROS生成に直接関与し、また PEDFの分子標的であることを示唆する 。一方、一酸化窒素合成酵素阻害物質である Ν- ω -二トロ- L-アルギニンメチルエス テル、キサンチンォキシダーゼ阻害物質であるォキシプリノール、またはミトコンドリア NADPHデヒドロゲナーゼ阻害物質であるロテノンは、 HUVECにおける TNF- a誘発 性 ROS生成に影響しない。本発明者らはまた、 PEDFは TNF- α暴露 HUVECにおけ るアポトーシス性細胞死を増加させないことを見出している。これらの結果は、 TNF- a暴露 HUVECに対する PEDFの抗酸化効果が、単純にそのアポトーシス促進性に 起因するものではな 、ことを示唆して 、る。
[0047] 実施例 3 HUVECにおける NADPHォキシダーゼ活性に対する PEDFの効果
本発明者らは次に、 PEDFが実際に NADPHォキシダーゼ活性を抑制できるかにつ いて検討した。
10 nM PEDFの存在または非存在下、 10 ng/ml TNF- αで、またはそれ抜きで HUVECを 24時間で処理し、その後、 1 mM EGTA、 150 mMスクロース、電子受容体 として 5 μ Μルシゲニン、および基質として 100 μ M NADPHを含有するリン酸緩衝 液(50 mM, pH 7.0)における発光アツセィにより、 NADPHォキシダーゼ活性を測定し た(文献 20)。図 2Aに示すように、 TNF- αは NADPHォキシダーゼ活性を有意に上昇
させ、それは 10 nM PEDFによって完全に抑制された。 TNF- αによって誘発される NADPHォキシダーゼ活性の上昇度は、 ROS生成の上昇度と近似していた。 TNF- a は NADPHォキシダーゼ活性を約 1.3倍に上昇させた。 PEDF単独では HUVECにおけ る NADPHォキシダーゼ活性には影響しな 、。
[0048] 10 nM PEDFの存在または非存在下、 10 ng/ml TNF- aで、またはそれ抜きで
HUVECを 24時間で処理した。その後、 2 Mジヒドロェチジゥムを含有するフエノー ルレッド不含ダルベッコ改変イーグル培地で細胞をインキュベートした。 30分後、共 焦点レーザー顕微鏡によって細胞を画像ィ匕した。図 2Bに示すように、ジヒドロェチジ ゥムによる細胞染色によっても、 PEDFが HUVECにおいて TNF- α誘発 NADPHォキ シダーゼ活性を阻害することが明ら力となった。 TNF- αは、 HUVECにおける NADPH ォキシダーゼの重要な構成要素の 1つである p22phoxまたは gp91phoxの mRNAレべ ルを上昇させな力つた。
[0049] 実施例 4 HUVECにおける NF- κ Βプロモーター活性に対する PEDFの効果
ROS (活性酸素種)は、転写因子 NF- κ Bの活性化を介して数多くの遺伝子発現を 調節する (文献 29)。それ故本発明者らは、 PEDFが HUVECにおいて TNF- αが誘発 する NF- κ B転写活性を減弱することができるかについて調べた。
ルシフェラーゼレポーター遺伝子の上流に連結された NF- κ Bプロモーターを含む プフス^ド【ま、 Dr. Fujita T (Department of Tumorし ell Biology, Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science)より提供していただいた (文献 21)。 1または 10 nMの PEDFまたは抗酸化物質である 1 mM NACの存在または非存在下、 10 ng/ml TNF- aで、またはそれ抜きで HUVECを 4時間処理し、その後既報のように NF- κ Βルシフ エラーゼ活性を測定した (文献 17)。ルシフェラーゼ活性の比率は対照の値に対するも のである。図 3Αに示すように、 TNF- aは NF- κ Βプロモーター活性を有意に上昇さ せた。 PEDFおよび抗酸化物質 NACは、部分的ではあるものの有意に TNF- α誘発 性の NF- κ Bプロモーター活性上昇を抑制することがわかった。
[0050] NF- κ B p65活性を測定するために、核タンパク質を抽出し、それらの NF- κ Β ρ65 コンセンサス配列に対する結合活性を TansFactorキットを用いて測定した。 10 nM PEDFの存在または非存在下、 10 ng/ml TNF- αで、またはそれ抜きで HUVECを 4時
間処理した。 TransFactor抽出キット (BD Biosciences Clontech, Palo Alto, CA)を用 いて細胞から核タンパク質を抽出し、 TransFactor NF- κ Β ρ65キット (BD
Biosciences Clontech)を用いて NF- κ B p65コンセンサス配列に対するそれらの結合 活性を測定した。図 3Bに示すように、 TNF-ひは NF- κ B p65活性を上昇させ、それ は PEDFによって有意に阻害された。
実施例 5 HUVECにおける IL-6 mRNAおよびタンパク質レベルに対する PEDFの効 果
本発明者らは次に PEDFが HUVECにおいて IL-6の発現に影響し得るかについて 検討した。
10 nM PEDF, 1 mM NAC、または NF— κ Bの阻害物質である 10 μ M PDTC (ピロ リジンジチォ力ルバメート)の存在または非存在下、 10 ng/ml TNF- αで、またはそれ 抜きで 4時間処理した HUVECよりポリ (A)+RNAを単離し、既報のようにして半定量的 RT-PCRによって解析した (文献 26)。増幅のためのポリ (A)+RNA铸型量 (30 ng)および サイクル数(Rac-1遺伝子につき 28サイクル; IL-6および PEDF遺伝子につき 35サイク ル; j8 -ァクチン遺伝子につき 22サイクル)は、反応が直線的に進行する定量的範囲 (シグナル強度を铸型量およびサイクル数の関数としてプロットすることによって決定) において選択した (文献 27)。半定量的 RT-PCRにおいて用いたプライマー配列は、 ヒト Rac- 1にっき 5, -ACCCCTTCTGACTGAGCAATATGCC-3,(配列番号: 10)およ び 5, -CAATAGGCAAAGCGACTACAGGAGG-3,(配列番号: 11)(文献 22)、ヒト IL- 6 mRNAにっき 5, -CCTTCTCCACAAGCGCCTTC-3,(配列番号: 12)および 5,
- GGCAAGTCTCCTCATTGAATC- 3,(配列番号: 13)(文献 23)およびヒト PEDF mRNAにっき 5, -TCACAGGCAAACCCATCAAGCTGAC-3,(配列番号: 14)および 5 , -GCCTTCGTGTCCTGTGGAATCTGCT-3,(配列番号: 15)(文献 24)であった。ヒト IL-6および PEDF cDNAを検出するための内部オリゴデォキシリボヌクレオチドプロ一 ブは、それぞれ 5, -TCAATTCGTTCTGAAGAGGTGAGTGGCTGT-3,(配列番号: 16)および 5, -CGCCCCATCCTCGTTCCACTCAAAGCC-3,(配列番号: 17)であつ た。ヒト β -actin mRNAを検出するために半定量的 RT-PCRで使用した上流および下 流プライマーの配列は、既報のものを同じである (文献 25)。
[0052] 図 4Aに示すように、 TNF- aは IL- 6 mRNAレベルを有意に上昇させ、それは、
PEDF, NAC、または NF- κ Βの阻害物質である PDTC (ピロリジンジチォ力ルバメート) によって、部分的ではあるものの有意に阻害された。 PEDF、 NACまたは PDTC (ピロリ ジンジチォ力ルバメート)単独では IL-6 mRNAレベルには影響しなかった。
[0053] その後、 1または 10 nMの PEDFの存在または非存在下、 10 ng/ml TNF- aで、また はそれ抜きで HUVECを 24時間処理した。培地中に放出された IL-6タンパク質は、 ELISAキットを用いて製造元の説明に従 、測定した。 PEDFは、 TNF- a暴露 HUVEC 力もの IL-6タンパク質の分泌を有意に阻害することも明ら力となった(図 4B)。
[0054] 実施例 6 HUVECにおける PEDF結合タンパク質
本発明者らは次に、 HUVECが PEDFに対して結合親和性を示す細胞表面タンパク 質を有するかにつ 、て検討した。
HUVEC由来の界面活性剤溶解性細胞膜タンパク質を 15 %ポリアクリルアミドゲルで 分離し、ポリビ-リデンジフルオライドメンブランに転写した。既報のように (文献 15)、メ ンブランと 30 nMフルオレセン標識 PEDFを、分子 20倍過剰量の非標識 PEDFタンパ ク質の非存在 (レーン 1)または存在 (レーン 2)下インキュベートした。その結果生じた 免疫複合体を CDP-Star化学発光システムにより視覚化した。図 6Aに示すように、分 子量約 60 kDaの HUVEC膜タンパク質が、フルオレセン標識 PEDFタンパク質と結合し た。結合シグナルは、分子 20倍過剰量の非標識 PEDFタンパク質の存在下ではほと んど検出できず、これにより培養 HUVECの膜抽出物に対するフルオレセン標識
PEDFの結合の特異性が確認された。さら〖こ、 10 ng/ml TNF- αを処理すると、
HUVECにおける膜に対する PEDF結合が約 1.3倍上昇する。
[0055] 本発明者らは次に、 PEDF結合プロファイルを解析し、その物理ィ匕学的パラメーター を測定した。放射性標識 PEDFは、既報のようにして (文献 15)精製 PEDFタンパク質と 1251から調製した。 HUVECを示した濃度の125I-PEDFタンパク質と、分子 20倍過剰量の 分子非標識 PEDFタンパク質の非存在 (黒丸)または存在 (非特異的結合、白丸)下ィ ンキュペートした。特異的 PEDF結合は既報のように測定した (文献 15)。全結合から非 特異的結合を差し引くことにより特異的結合 (黒四角)を計算した。全ての実験ポイント を 4例の平均で示した。図 6Bに示すように、結合データのスキャッチヤード解析により
、解離定数 (K ) 84.7 ηΜのシングルクラス結合部位(HUVEC 1細胞につき Β = d max
51 ,000部位)であることがわかった。
[0056] 本発明者らは次に、 PEDFが HUVECにおいて TNF- aの受容体結合を阻害するか について検討した(125I-TNF- α結合アツセィ)。 10 nM PEDFの存在または非存在下 、 HUVECを 10 ng/ml 125I- TNF- αと 4 °Cで 90分間インキュベートし、その後細胞を 1 M NaOHで溶解し、細胞溶解物の放射活性を既報のように測定した (文献 15)。
Unpaired t testを行った; p〈0.05を有意と判断した。図 6Cに示すように、 PEDFは TNF- aの受容体に対する結合に影響しな力つた。
[0057] 実施例 7 PEDFの抗動脈硬化症作用
(l) HUVECにおける Angll誘発性 NF- κ Βプロモーター活性に対する PEDFの効果
HUVECを 10 nMの PEDFの存在下または非存在下に、 100 nMのアンジォテンシン II (Angll)にて 4時間処理し、 NF- κ Βルシフェラーゼ活性を測定した。 Angll未処理も試 験した。
すなわち、 HUVECを、 2%牛胎児血清 (FBS)、 0.4%牛脳抽出物、 10ng/mLヒト上皮 成長因子および 1 μ g/mLヒドロコルチゾンを追加した ΕΒΜ培地にて培養した。 Angll 処理は、前記培地から上皮成長因子およびヒドロコルチゾンを除!、た培地で行った。 また、ルシフェラーゼアツセィの測定は、ルシフェラーゼレポーター遺伝子の上流に NF- κ Bプロモーターを接続させたプラスミドを用いて、 Yamagishi Sらによる J.
Cardiovasc. Pharmacol. 2004; 43: 724- 730に記載の方法によった。
結果を図 7に示す。図 7から明らかなように、 Angllは NF- κ Βプロモーター活性を顕 著に増加させる力 PEDFはその作用を完全に抑制した。
[0058] (2) HUVECにおける Angll誘発性 MCP-1 mRNAおよびタンパク質レベル上昇に対す る PEDFの効果
MCP- 1は NF- κ B標的遺伝子の一つであり、 in vitroおよび in vivoにて単球に対す る走化性を誘発する。そこで、 PEDF力 HUVECにて MCP-1の発現にどのような影響 を与えるか実験した。 MCP-1 mRNAに対する効果の試験は、 HUVECから単離された Poly(A)TRNAを 10 nMの PEDFの存在下または非存在下に、 100 nMの Angllにて 4時 間処理し、 RT-PCRにて測定した。 Angll未処理も試験した。 RT-PCR法は、
Yamagishi Sらによる Diabetologia.1998; 41 : 1435- 1441に記載された方法にて行った 。 MCP-1タンパク質に対する効果の試験は、 HUVECを 10 nMの PEDFの存在下また は非存在下に、 100 nMの Angllにて 24時間処理し、培地中に生じた MCP-1タンパク 質を ELIZA法にて測定した。 Angll未処理も試験した。
結果を図 8に示す。図 8Aおよび Bに示すように、 Angllは mRNAおよびタンパク質レ ベルにて MCP-1の発現を顕著に増加させた力 これは PEDFによって完全に阻害さ れた。
(3) HUVECにおける Angll誘発性分子内 ROS発生に対する PEDFの効果
ROSは NF- κ Bの転写活性化を通して動脈硬化を誘発する遺伝子の発現を調整す ることが知られている(たとえば、 Griendling KKらによる Cir. Res. 1994; 74:
1141-1148参照)。一方、抗酸化剤である NACが Angllに暴露された HUVECでの NF- κ Bの活性ィ匕および MCP-1発現に作用することを見出している。これらから、 Angllに より発生する ROSが PEDFの分子標的となる可能性がある。そこで、 HUVECにおける 分子内 ROS発生に対する PEDFの効果を調べた。まず、 Angllの ROS発生への効果を 調べた。実験は、 HUVECを図 9Aに示された時間をかけて 100 nMの Angllで処理し、 生成した ROSを蛍光プローブである CM- H DCFDA (米国 Molecular Probe Inc.)を用
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いて定量分析した(検出手法は、たとえば、 Yamagishi S.らによる J. Biol. Chem. 2001 ; 276: 25096-25100等に記載されている)。図 9Aに示すように、 ROSは Angllにより 4時 間後から発生し始め、 24時間で最大となる。 100 nMの Angllでの 24時間培養では、 1.4倍の ROS発生が観測された。そこで、その ROS発生に対する PEDFの効果を調べ た。 HUVECを 1 nMまたは 10 nMの PEDF、 10 nMの PEDFに 50 g/mLの抗 PEDF抗体 を共存させたもの、および 50 nMの DPIの存在下または非存在下に 100 nMの Angllに て 24時間処理し、上記と同様に ROSを定量した。その結果、図 9Bに示したように、 PEDFは濃度依存的に Angllにより誘発された ROSの増加を抑制し、 10 nMの PEDFに て完全に抑制された。これに抗 PEDF抗体(たとえば、 Yamagishi S.らによる J. Mol. Cell. Cardiol. 2004; 37: 497-506参照)を共存させた系では、抑制作用が中和された ことから、 HUVECに対し、 PEDFが特異的に作用することが分かる。また、 NADPHォ キシダーゼ阻害剤として知られている DPIが、 ROS発生を抑制したことから、 PEDFの
分子作用機序は NADPHォキシダーゼの抑制であると考えられる。
[0060] (4) HUVECにおける Angll誘発性 NADPHォキシダーゼ活性に対する PEDFの効果 上記実施例等により、 PEDFが NADPHォキシダーゼ活性を阻害して、 Angllに作用 していることが示唆された力 それを本実験により確認した。
HUVECを 1 nMまたは 10 nMの PEDF、 10 nMの PEDFと 5 μ g/mLの抗 PEDF抗体との 共存系の存在下または非存在下に 100 nMの Angllにて 24時間処理し、細胞を均質 液調製用緩衝液(20 mMの Hepes、 pH7.0、 100 mMの塩化カリウム、プロテアーゼ阻 害剤カクテルを含有する 1 mMの EDTA)に懸濁し、基質としての NADPH (100 ju M)を 含有する 50 mMのリン酸緩衝液(pH7.0、さら〖こ 1 mMの EDTA、 150 nMのショ糖およ び電子受容体としての 5 μ Μのルシゲニンを含有する)中にてリン光分析にて NADPH を測定した(たとえば、 Griendling KKによる Cir. Res. 1994; 74: 1141- 1148参照)。 結果を図 10に示す。図 10から明らかなように、 PEDFは濃度依存的に Angllにより誘 発された NADPHォキシダーゼ活性を抑制し、一方、抗 PEDF抗体を共存させると、そ の抑制効果が中和されることが示された。
[0061] 実施例 8 NADPHォキシダーゼ活性を抑制することによる終末糖ィ匕産物 (AGE)生成 に伴う糖尿病性血管合併症への適用
(1) 微小血管内皮細胞での細胞内活性酸素種の生成および NADPHォキシダーゼ 活性に対する作用
(a)ヒト成人皮膚微小血管内皮細胞 (以下、血管内皮細胞という)を、 1Mまたは 10Mの PEDF, 50Mの DPIまたは終末糖ィ匕産物(AGE)の受容体 (RAGE)mRNAに対するアン チセンス DNA(10 μ Μ)の存在下または非存在下に所定濃度の AGE処理牛血清アル ブミン (AGE-BSA)または非糖ィ匕牛血清アルブミンにて 24時間処理し、その後、活性 酸素種 (ROS)を定量的に解析した。ここで、 AGE-BSAは文献 15に記載された方法に より調製した。すなわち、牛血清アルブミン (50mg/ml)を 0.2Mリン酸ナトリウム緩衝液 (PH7.4)中にて 0.1MD -ダリセルアルデヒドとともに無菌下に 7日間培養することにより 調製した。未反応還元糖は、リン酸緩衝化生理食塩水で透析することにより除去した 。対照となる非糖ィ匕牛血清アルブミンは還元糖を存在させないことを除いて同一の条 件にてインキュベーションし作製した。得られた調製物にエンドトキシンが含まれて!/ヽ
ないことを確認した(使用機器: Endospecy ES-20S,生化学工業 (株))。 RAGE mRNA に対するアンチセンス DNAは、 Yamagishi, S.らによる FEBS Lett. 1996, 384: 103-106 に記載された方法に準拠して調製した。活性酸素種の細胞内生成は、 Yamagishi, S. らによる Kidney Int. , 2003, 63:464-473に記載された方法に準拠して蛍光プローブ (CM-H2DCFDA, Molecular Probes In )を用いて測定した。その結果を図 11(a)に示 す。図中、 *は 100 /z g/mlの AGE-BSAにて処理した値に対して P〈0.01にて有意である ことを示す。 BSAは非糖ィ匕牛血清アルブミンによる処理の結果を、 AGEsは AGE処理 牛血清アルブミンによる処理の結果を示す。本図から明らかなように、 PEDFは AGEに より修飾された血清アルブミンからの ROS生成に対し、 DPIよりも優れた抑制作用を示 した。
[0062] (b)血管内皮細胞を ΙΟηΜの PEDFの存在下または非存在下に 100 μ g/mlの
AGE-BSAまたは非糖ィ匕牛血清アルブミンにて 24時間処理し、 NADPHォキシダーゼ 活性をルミネッセンス法により測定した。すなわち、細胞を緩衝液 (20mM Hepes、 pH7.0、 lOOmM塩化カリウム、プロテアーゼ阻害剤カクテルを含有する ImM EDTA)に 懸濁し、細胞ホモジネートを文献 20に記載した方法により、 ImMEDTA, 150mMショ糖 、電子ァクセプターとして 5 μ Μルシジェニンおよび基質として 100 μ M NADPHを含有 する 50mMリン酸緩衝液 (ρΗ7.0)中にてルミネッセンス法により測定した。結果を図 11(b)に示す。本図から明らかなように、 PEDFは AGEにより修飾された血清アルブミン 処理細胞にぉ 、て、優れた NADPHォキシダーゼ抑制作用を示した。
本実験 (a),(b)に用いた血管内皮細胞であるヒト成人皮膚微小血管内皮細胞 (Clonetics Corp.)は、 5%牛胎児血清、 0.4%牛脳抽出物、 10ng/mlヒト上皮成長因子お よび 1 μ g/mlヒドロコルチゾンを追加したェォシン'メチレン ·ブルー培地にて培養した 。 AGE処理は、ヒト上皮成長因子およびヒドロコルチゾンを除いた培地中にて行った。
[0063] (2)微小血管内皮細胞における血清 AGE分画に対する効果
インフォームドコンセントを得た血液透析糖尿病患者 (DM-HD)血清または健康人 (Normal)血清から常法により AGE分画を得、その分画を用いて微小血管内皮細胞を lOnMPEDFの存在下または非存在下に 24時間処理した。活性酸素種であるスーパ 一オキサイドの産生を定量的に分析した結果を図 12に示す。ここで、スーパーォキサ
イド生成は、上記のように処理して得た細胞を 3 Mジヒドロェチジゥムを含むフエノー ルレッドフリーのダルベッコ変性イーグル培地 (DMEM)にて培養し、 30分後に蛍光強 度を測定し、細胞をレーザースキャニング共焦点顕微鏡にて画像ィ匕し、定量ィ匕した。 本図から明らかなように、 PEDFは血液透析糖尿病患者 (DM- HD)血清からの AGE分 画で処理した細胞力 の活性酸素種産生を有意に抑制した。
[0064] (3) AGE灌流ラットでの網膜血管浸透性に対する静脈投与での効果
Adamis, A.P.らの方法 (Invest. Ophthalmol. Vis. Sci., 2000, 44: 2155- 2162)に準じ て血液網膜関門 (Blood retinal barrier,以下、 BRBという)損傷に対する PEDFの効果 を実験した。すなわち、 SD系ラットを麻酔処置後、 FITC抱合デキストラン (4.4kDa, Sigma社)を静脈注射した。 10〜15分後、血液サンプルをとり、各ラットをリン酸緩衝ィ匕 生理食塩水にて灌流した。灌流後、網膜を採取し、重量を測定し、均質化して FITC 抱合デキストランを抽出した。 BRB損傷を [(a)/(b)]/[(C)x(d)]の式により計算した。ここ で、(a)は網膜内 FITC抱合デキストラン量^ g)を、(b)は、網膜重量 (g)を、(c)は血漿中 の FITC抱合デキストラン濃度 ( g/mL)を、(d)は循環時間 (h)を示す。図 13に示したよ うに、 AGE-BSA処置群において、 PEDF投与群は非投与群に比べ、有意な効果を発 揮した。
[0065] 実施例 8は、 PEDFが終末糖ィ匕産物 (AGE)による微小血管内皮細胞での分子内活 性酸素種を抑制し、終末糖ィ匕産物 (AGE)にて誘発された NADPHォキシダーゼ活性 を阻害し、また、 PEDFが血液透析糖尿病患者 (DM- HD)血清力もの AGE分画で処理 した細胞に対し、有意な活性を示すことを明らかにした。さらに、 AGE灌流ラットでの 網膜血管浸透性に対し、有効性を示した。
[0066] 考察
本発明にお 、て本発明者らは、 PEDF力 HUVECにお!/、て TNF- a誘発 NF- κ Β活 性化および IL-6発現を、 NADPHォキシダーゼ仲介 ROS (活性酸素種)生成から回復 させることにより阻害することを、以下の証拠に基づき示した: [1] TNF- o;は HUVEC において細胞内 ROS (活性酸素種)生成を有意に刺激し、それは、 PEDF, NADPHォ キシダーゼ阻害物質である DPI (実施例 1参照)、または DN-RacT17N (ドミナント—ネ ガテブ 'ヒト Rac-1変異体)の過剰発現 (実施例 2参照)によって完全に抑制された;
[2] PEDFは TNF- aの誘発する NADPHォキシダーゼ活性上昇を完全に抑制した (実 施例 3参照);および、
[3] PEDFまたは抗酸化剤 NACは、 TNF- α誘発 NF- κ Β活性化および IL- 6発現を有 意に阻害した (実施例 4および 5参照)。実施例 7からは、 PEDFが濃度依存的に Angll により誘発された NADPHォキシダーゼ活性を有意に抑制することが示された。また、 実施例 8からは、 PEDFが NADPHォキシダーゼ活性を抑制することによる終末糖ィ匕産 物 (AGE)生成に伴う糖尿病性血管合併症が予防または治療できる可能性が示され た。
[0067] PEDFは 10 nMで TNF- a誘発性 ROS産生を対照レベル以下に減少させる一方で、 TNF- aの非存在下では ROS生成に影響を及ぼさな 、ことは興味深 、ことであった。 本発明者らは正確なメカニズムを理解して 、な 、が、以下のように説明できるであろう 。 HUVECにおける PEDF遺伝子発現に対する TNF-ひの効果を検討するため、 10 ng/ml TNF- αで、またはそれ抜きで 4時間処理した HUVECよりポリ (A)+RNAを単離し 、 RT—PCRにより解析した。図 5に示すように、 TNF— αは HUVECにおいて PEDF mRNAレベルを減少させることがわかった。従って本発明者らは、 PEDF mRNAの減 少は、逆にその機能的結合タンパク質の上昇をもたらし、それによつて外部から投与 された PEDFの ROS生成に対する阻害効果を増強して 、る可能性があると推測して!/ヽ る。 TNF- α処理により HUVECにおける膜に対する PEDF結合は約 1.3倍増加し、この ことは本発明者らの推測を支持している。 TNF- αが誘発する PEDF mRNA減少のメ 力-ズムは本発明者らの研究からは明らかではない。本発明者らはごく最近、培養
ECおよび周皮細胞の両者において、酸化的ストレス条件下 PEDF mRNAレベルが抑 制されることを発見したので、 TNF- α誘発性 ROS生成が PEDF mRNAレベルの抑制 に関与しているの力もしれない。どのようなメカニズムにせよ、 TNF- αによる PEDF発 現の減少は、酸化的ストレス誘発細胞障害をさらに悪化させるであろう。
[0068] 関連文献の表示
下記文献は引用により本願明細書の一部を成す。
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