明 細 書 c h f rタンパク質により触媒されるオーロラキナ一ゼ A及びオーロラキナ —ゼ Bのポリュビキチン化反応 技術分野
本発明は、 オーロラキナーゼ A及び/又はオーロラキナーゼ Bと c h f r タンパク質を含む、 オーロラキナーゼ A及び/又はオーロラキナーゼ Bのポ リュビキチン化を測定するための組成物、 及び該組成物を用いるオーロラキ ナーゼのポリュビキチン化阻害剤及び促進剤をスクリーニングする方法に関 する。
分裂状態にある真核細胞の細胞周期は、 第 1間期 (G 1期) 、 D NA合成 期 (S期) 、 第 2間期 (G 2期) 及び分裂期 (M期) とよばれる 4種類の状 態に分類される。 生体を構成するの細胞の多くは、 静止期 (G O期) にある が、 増殖刺激を受けると、 G O期から G 1期そして S期へ移行し、 染色体 D N Aの複製を開始する。 複製が完了すると G 2期から M期へ進行し、 細胞分 裂がおこり、 細胞分裂終了後に再び G 1期に戻る。
正常細胞では、 細胞周期進行を秩序正しく進行させるためのチェックボイ ン卜機構がいくつか存在する。 チェックポイントとは、 細胞の複製や分裂課 程におけるゲノムの安定性を保っための監視機構であり、 G l、 S、 G 2、 M期といった細胞周期の主要な節目に設置されている。 チェックポイント機 構が異常を感知した場合、 細胞周期の進行を一時的に停止させて修復を行う。 例えば、 G 2チェックポイントは、 細胞分裂前の最後のチェックポイントで あり、 D NA損傷や D N A複製中途状態を感知して作動し、 細胞周期の M期 への進入を防ぐ。
癌は、 組織によって又は症例によって、 その発癌及び悪性化に関与する遺 伝子が異なる。 そこで、 チヱックポイントの機能の破綻こそが癌細胞が有す る共通の性質であるという事実に着目して、 チェックポイントを標的とした
治療が考案されてきている。
しかし、 チェックポイント機構は非常に複雑であり、 その機序は完全には 解明されていない。 そのため、 この機能を利用した制癌剤の治療有効性は、 癌患者によって異なり、 さらに、 治療開始当初は有効であっても、 治療の過 程において癌が制癌剤に耐性となり、 制癌剤の有効性が失われるケースも数 多く認められるという欠点があつた。
G 2期チェックポイント機構の 1つとして、 C H F Rの役割が知られて いる。 C H F Rとは、 フォークヘッド結合ドメイン (Forkhead- associated (FHA) domain) 及びリングフィンガードメインを有するタンパク質として見 出され、 Checkpoint wi th FHA and ring f ingerの略称として命名されたタン パク質である。 c h f rタンパク質は 6 6 4アミノ酸からなり、 N末端領域 にフォークヘッド結合ドメイン、 中央にリングフィンガードメイン、 C末端 領域にシスティンに富むドメインを有することを特徴とする (図 1 A)。
Scolnick等は、 c h f r遺伝子は各組織で偏在的に発現されており、 正 常細胞においてタキソ一ル及びノコダゾール等の G 2期に作用する薬剤の存 在下で細胞周期は G 2.期で停止するが、 薬剤の除去によって再びその進行を 開始すること、 これとは対照的に、 c h f r遺伝子が不活化されている癌細 胞では、 細胞周期が G 2期で停止することなく進行するために、 染色体分離 異常を生じ、 細胞の生存率が低下することを報告している (D. M. Scolnick et al. , Nature, 406, 430-435, 2000 : chfr def ines a mitot ic stress checkpoint that delays entry into metaphase. ) 。
また、 Kang等は、 ュビキチン化を触媒する E 3リガ一ゼがリングフィンガ 一を有するタンパク質であることに着目し検討した結果、 c h f rタンパク 質は、 ポロ様キナーゼ (Polo- l ike kinase 1: Plkl) をポリュビキチン化す ることを見出した。 その結果、 ポリュビキチン化した P 1 k lがプロテアソ —ムの作用により分解を受けると、 C d c 2 5 Cホスファターゼの活性化及 び W e e 1キナーゼの不活化を遅延させ、 G 2期から M期への進行に必要な C d c 2の活性化を遅延させることを報告している (J. Cel l. Biol. , 156,
249-260, 2002: The checkpoint protein chfr is a ligase that ubiauitinates Plkl and inhibits Cdc2 at the G2 to M transition. ) 。 彼 等は、 組換型 c h f rタンパク質、 インビトロで翻訳された P 1 k 1タンパ ク質、 ュビキチン及びゼノプス間期エキストラクト (Xenopus interphase extracts) をインキュベートすることによりポリュビキチン化した P 1 k 1 の生成を検出している。 しかし、 本願発明者は、 部分精製された E l、 E 2 (UbcH5) , ch f rタンパク質、 P 1 k 1及びュビキチンをインキュベート してもポリュビキチン化 P 1 k 1の生成を検出できなかったことから、 ヒト を含む哺乳類においては、 c h f rタンパク質が効率良く P 1 k 1のポリュ ビキチン化を触媒するかどうか不明である (未発表データ) 。
オーロラキナーゼは、 酵母では 1種類 (出芽酵母で Ipll と命名) 、 線虫 (C. elegans) 及びショウジヨウバエ (Drosophila) では 2種類、 哺乳類で は 3種類存在することが知られている。 また、 A I R (Aurora/Ipl related) 、 A I RK (AIR Kinase) 、 A I M (Aurora and Ipl 1-1 ike midbody associated protein) 、 IAL、 au r o r a, I AK及び A I K 等とも呼ばれている。
ヒトオーロラキナ一ゼ A (human aurora A; GenBank Accession number: AF008551) は、 aurora 2、 BTAK (breast-tumor- activated kinase) 、 STK15、 A I K及び ARK 1としても知られており、 403アミノ酸残 基からなり、 推定分子量が 45. 8kDaのタンパク質である。 ヒトオーロラキ ナーゼ Aの mRNAレベル、 タンパク質レベル及びキナーゼ活性は、 G1Z S期で低く、 G2ZM期で集積され、 M期の終了と同時に急速に減少する。 ヒトオーロラキナーゼ Aタンパク質は、 間期の細胞では中心体に、 M期の細 胞では紡錘体に局在している。 ヒトオーロラキナーゼ A遺伝子が高レベルで 発現すると、 中心体数の増加、 及び染色体の増加又は減少をもたらす。 その 結果、 細胞死又は腫瘍化細胞の出現という結果にいたる。 実際に、 本遺伝子 は、 大腸癌、 乳癌等の悪性腫瘍において高レベルで発現していることが報告 されている (S. Sen et. al., Oncogene 14, 2195-2200, 1997; H. Zhou et
al., Nat. Genet., 20, 189-193, 1998; J. R. Bisc off et. al. , EMBO J, 17, 3052-3065, 1998; M. Kimura et. al. , J. Biol. Chem. , 272, 13766- 13771, 1997) 。 一方、 ヒトオーロラキナーゼ A欠失細胞は、 2極性の分裂紡 錘体を形成することはできるが、 その紡錘体を分裂中期プレートに配向する ことができない。
線虫で RN A干渉 (RNA interference) を用いてオーロラキナーゼ Aの m RN Aの特異的分解を誘導すると、 M期における核膜の消失後、 分離した中 心体が崩壊し、 微小菅の形成が起こらない (E. Hannak, M. Kirk am, A. A. Hyman, K. Oegema: Aurora- A kinase is re uired for centrosome maturation in Caenorhabditis elegans, J. Cell Biol. , 155, 1109-1116, 2001) 。 さらに、 染色体数は、 極端な異数性を示し、 胎性致死 (embryonic lethal) となることが報告されている (JM Schumacher, N Ashcroft, PJ Donovan and A. Golden: A highly conserved centrosomal kinase, AIR - 1 is reauired for accurate cell cycle progression and segregation of developmental factors in Caenorhabditis elegans embryos, Development, 125, 4391-4402, 1998) 。 したがって、 オーロラキナ一ゼ Aは、 染色体分離 (chromosome segregation) に必須なセリン/スレオニンキナーゼであると 考えられる。
ヒトォ一ロラキナーゼ B (Human Aurora B; GenBank Accession number: AF008552) は、 aurora 1、 A I K2、 A IM1、 STK— 12とも呼ばれ、 344アミノ酸残基からなり、 推定分子量が 39. 3kDaのタンパク質である。 ヒトオーロラキナーゼ Aとヒトオーロラキナ一ゼ Bとの間のアミノ酸配列の 同一性は、 全配列で 57%、 キナーゼ領域で 74%であり、 両者は、 非常に 類似したタンパク質である。
オーロラキナーゼ Bは、 分裂前期では動原体に局在し、 分裂まで I NCE NP (Inner centromere protein: 染色体分離及び細胞質分離に必要) と共 に中心体に濃縮され、 分裂終期に中央紡錘体に移動する。 オーロラキナーゼ Bを欠失した細胞は、 ヒストン H3の 10番目のセリンのリン酸化を欠失し、
クロモソ一ム縮合 (cliromosome condensation) を部分的にしか示さない。 ォ 一口ラキナ一ゼ Bは、 ォ一口ラキナーゼ Aと同様に G 2 /M期で発現レベル が高く、 種々の癌細胞で発現が亢進されている。 動物細胞でリン酸化部位を 不活化した変異体の発現実験により、 ォ一口ラキナーゼ Bは細胞質分裂に必 要であることが判明した (Υ· Terada, M. Tatska, F. Suzuki, Y. Yasuda, S. Fujita, M. Otsu: AIM - 1: a mammalian midbody-associated protein required for細胞質分裂, EMBO J. , 17, 667-676, 1998) 。
オーロラキナーゼ Aと Bは、 G2期の初期に分裂の開始に重要なヒストン H 3のリン酸化を触媒し、 その後の M期のクロモソ一ム縮合をもたらす (C. Crosio, G. M. Fimia, R. Loury, M. Kimura, Y. Okano, H. Zhou, S. Sen, C. D. All is, P. Sassone - Corsi : Mitotic phosphorylation of histone H3: Spatio-temporal regulation by mammalian Aurora kinases, Mol. Cell. Biol., 22, 8-74-885, 2002) 。
ヒトォ一ロラキナーゼ C (Human Aurora C; GenBank Accession number: AB017332) は、 STK13、 A I K3とも呼ばれ、 309アミノ酸残基より なり、 M期の後期においてのみ中心体で検出される (M. Kimura, Y. Matsuda, T. Yoshioka, Y. Okano: Cell cycle-dependent expression and centrosome localization of a third human Aurora/Ipト related protein kinase, AIK3, J. Biol. Chem. , 274, 7334-7340, 1999)
オーロラキナーゼ A及び Bは、 有糸分裂及び減数分裂を進行させるために G 2 /M期おいてそれらのタンパク質レベルの厳密な制御が必要な、 重要な キナーゼであることが知られている。 しかし、 かかるオーロラキナーゼ A及 び Bの機能の亢進及び抑制を制御することができる手段は、 開発されてなか つた。 例えば、 オーロラキナーゼ A及び Bのリン酸化阻害剤は、 まだ知られ ていないが、 特異性の高い阻害剤を発見することは困難であると予測され、 また、 この阻害剤を実用化するための具体的手段は示されていなかった。
本発明者は、 上記問題点を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、 オーロラキ ナーゼ A及び Bがポリュビキチン化されること、 さらに、 c h f rタンパク
質がオーロラキナーゼ A及び Bのポリュビキチン化を触媒することを見出し、 本発明を完成させた。 発明の開示
本発明は、 癌化学療法の分野において、 c h f rタンパク質によるォ一口 ラキナーゼ A及び Bのポリュビキチン化の阻害剤及び促進剤を発見すること ができるという新たな知見をもたらす。 c h f r遺伝子が正常に機能してい る癌細胞は、 タキソール及びノコダゾ一ル等の G 2期に作用する制癌剤に抵 抗性を示すが、 c h 'f r遺伝子が変異している癌細胞ではこれらの制癌剤に 感受性を示す。 したがって、 c h f r遺伝子が正常に機能している癌細胞を 対象に、 これらの制癌剤とオーロラキナーゼのポリュビキチン化阻害剤とを 併用することにより、 癌細胞を効率良く死滅させることが可能となる。 この 場合、 正常細胞への影響を低く抑えるために、 本阻害剤が癌細胞でのみ活性 を示すような化合物に修飾する必要がある。
一方、 癌組織及び癌細胞においてオーロラキナーゼ遺伝子が高レベルで発 現している例も数多く知られている。 このような場合には、 c h f r遺伝子 は正常であるが、 オーロラキナーゼが著しく高レベルであるために、 c h f rタンパク質は M期終了と同時にオーロラキナーゼの大部分をポリュビキチ ン化し、 分解に至らせることができない。 このような癌細胞においてォ一口 ラキナーゼのポリュビキチン化促進剤は、 ポリュビキチン化を促進し、 そし て、 プロテアソ一ムによるオーロラキナーゼの分解を促進する。 その結果、 オーロラキナ一ゼのレベルを G 1 / S期で低く、 G 2 ZM期で高く、 そして M期の終了と同時に低くさせることが可能となり、 癌細胞の増殖を阻止する ことが期待される。
また、 本発明は、 オーロラキナーゼ A及び/又は Bと c h f rタンパク質 を含むオーロラキナーゼのポリュビキチン化を測定するための組成物及び該 組成物を用いるオーロラキナーゼのポリュビキチン化阻害剤及び促進剤をス クリーニングする方法を提供する。 本発明の組成物及びスクリーニング方法
を用いることによって、 オーロラキナ一ゼのポリュビキチン化の特異的阻害 剤及び促進物質を探索することができる。 図面の簡単な説明 図 1Aは、 c h f rタンパク質の構造を示す。 Ch f r (Checkpoint with FHA and Ring finger) タンパク質は、 664アミノ酸残基からなる。 31位 から 103位までがフォークへッド結合ドメイン (Forkhead- associated domain) であり、 303位から 346位までがリングフィンガードメイン (Ring finger domain) であり、 476位から 641位までがシスティンリ ツチドメイン (Cysteine- rich domain) でめる。 図 1 Bは、 c h f rタンパク質のリングフィンガ一ドメインのアミノ酸配 列 ( 303— 346位) を示す。 図 1 Cは、 リングフィンガー領域の 303位— 315位の間のアミノ酸配 列を示す。 突然変異型 c h f rタンパク質は、 307位のアミノ酸残基がシ スティンからァラニンに置換されている (矢印で表示) 。 WT :野生型 ch f rタンパク質、 MT:突然変異型 c h f rタンパク質 図 2は、 c h f rタンパク質の自己ュビキチン化を示す。 ュビキチン活性 化酵素 (E 1) 、 ュビキチン共役酵素 Ub cH5 (E2) 、 ピオチン化ュビ キチン及び野生型 c h f rタンパク質 (WT- ch f r) の存在下で反応させ るとポリュビキチン化 c h f rタンパク質が検出されることを示す (レーン 4) 。 矢印は、 197kDaのマーカータンパク質とモノュビキチン化 c h f r タンパク質の位置を示す。 図 3 Aは、 GST- c h f rタンパク質と 6 H i s一オーロラキナーゼ A又
は 6H i s—オーロラキナ一ゼ Bとの結合を示す。 へキサヒスチジン (6H i s) タグ付きオーロラキナーゼ A及び Bを、 マウス杭へキサヒスチジン抗 体 (1次抗体) 及び西洋ヮサビパーォキシダーゼ共役マウス抗体 (2次抗 体) と反応させ、 反応生成物を ECLキットを用いて検出した。 レーン 1と 2は、 未処理のオーロラキナーゼ A及びオーロラキナーゼ Bである。 レーン 3と 4は、 6 H i s—オーロラキナーゼ A及び Bであり、 オーロラキナ一ゼ A及びオーロラキナ一ゼ Bが、 GST- c h f rタンパク質と結合することを 示す。 47. 5 kDa は、 マーカ一タンパク質であり、 6His-AuroraAは、 6H i s—オーロラキナーゼ八、 そして、 6His- AuroraB は、 6H i s—オーロラ キナーゼ Bの位置を示す。 図 3Bは、 6H i s - c h f rタンパク質と G S T—オーロラキナーゼ A又 は GS T—ォ一ロラキナーゼ Bとの結合を示す。 矢印は 6H i s - c h f r タンパク質の位置を示す。 検出方法は図 3 Aと同様である。 レーン 1は、 6 H i s— c h f r、 レーン 2— 4は、 G S T融合オーロラキナーゼ八、 GS T融合オーロラキナーゼ B及び GST融合 PLK 1のそれぞれと結合した 6 H i s— c h f r夕ンパク質を示す。 図 3 Cは、 突然変異型 c h f rタンパク質 (307位のシスティンがァラ ニンに置換されている) が、 オーロラキナーゼ A及び Bと結合することを示 す。 47. 5 kDaのマーカータンパク質の位置を矢印で示した。 検出方法は、 図 3 Aと同様である。 レーン 1は、 未処理のオーロラキナーゼ八、 レーン 2 は、 突然変異型 GST- c h f rタンパク質と結合したオーロラキナーゼ 、 レーン 3は、 未処理のオーロラキナ一ゼ8、 レーン 4は、 突然変異型 GST - c h f rタンパク質と結合したオーロラキナーゼ Bを示す。 図 4は、 c h f rタンパク質によるオーロラキナーゼ A及び Bのポリュビ キチン化を示す。 6 H i s —オーロラキナーゼ A (Aurora A) 又は B
(Aurora B) を、 ュビキチン活性化酵素 (E l) 、 ュビキチン共役酵素 Ub cH5 (E 2) 、 ュビキチン及び GST融合野生型 c h f rタンパク質 (W T- c h f r) の存在下でインキュベーションすると、 ポリュビキチン化ォ —ロラキナーゼ A又は Bが検出される。 検出方法は、 図 3Aと同様である。 矢印は、 47. 5kDaのマーカータンパク質の位置を示す。 レーン 1 : E 1、 E 2及び WT— c h f rの存在下では、 オーロラキナーゼ Aが、 ポリュビキ チン化された。 レーン 2 : E 2の不在下では、 オーロラキナーゼ Aは、 ポリ ュビキチン化されなかった。 レーン 3 : c h f rタンパク質が突然変異型の 場合には、 オーロラキナ一ゼ Aは、 ポリュビキチン化されなかった。 レーン 4 : c h f rタンパク質が突然変異型であり、 かつ、 E 2不在下では、 ォー ロラキナーゼ Aは、 ポリュビキチン化されなかった。 レーン 5 : E 1、 E 2 及び WT— c h ί rの存在下では、 オーロラキナーゼ Bが、 ポリュビキチン 化された。 レーン 6 : E 2の不在下では、 オーロラキナーゼ Bは、 ポリュビ キチン化されなかった。 レーン 7 : c h f rタンパク質が突然変異型の場合 には、 オーロラキナーゼ Bは、 ポリュビキチン化されなかった。 レーン 8 : c h f rタンパク質が突然変異型であり、 かつ、 E 2不在下では、 オーロラ キナーゼ Bは、 ポリュビキチン化されなかった。 課題を解決するための手段
本発明者等は、 E 3リガ一ゼの特徴であるリングフィンガ一ドメインを有 する c h f rタンパク質の基質となるタンパク質を検索した。 その結果、 ォ 一口ラキナーゼ A及びオーロラキナーゼ Bが c h f rタンパク質によりポリ ュビキチン化されることを見出した。 この知見に基づいてハイスループッ卜 アツセィ系を構築することが可能となり、 c h f rタンパク質を用いるォ一 ロラキナーゼ A及びオーロラキナーゼ Bのポリュビキチン化阻害剤又は促進 剤の効率的なスクリーニングが可能となった。
癌細胞では、 c h f r遺伝子の突然変異によって c h f rタンパク質のュ ビキチン一タンパク質リガーゼ活性の消失や c h f rタンパク質の非発現が
生じることが知られている。 これらの癌細胞では、 オーロラキナーゼ A及び Bがポリュビキチン化されないために、 オーロラキナ一ゼ A及び Bのプロテ ァゾームによる分解が起こらず、 両タンパク質のレベルが高く維持され、 細 胞周期は、 M期において異常をきたしている。 タキソール (Taxol) 及びノコ ダゾ一ル (Nocodazole) のような G 2期に作用する制癌剤はこのような癌細 胞に対して顕著な分裂ストレス (mi tot ic s t ress) を与え、 死滅率を高める。 したがって、 タキソール及びノコダゾール等の G 2期に作用する制癌剤は、 c h f r遺伝子が正常な癌細胞に対して効果が低い。 このような癌細胞に対 して、 オーロラキナーゼ A及び Bのポリュビキチン化阻害剤を併用すること により、 タキソール及びノコダゾール等の制癌剤の効果を高めることが期待 できる。 これらの阻害剤を効果的に使用するためには、 手術により取り出し た癌組織の c h f r遺伝子の変異を調べることが重要である。 c h f r遺伝 子が正常 (野生型) な場合には、 オーロラキナーゼ A及び Bのポリュビキチ ン化阻害剤とタキソ一ル及びノコダゾ一ル等の制癌剤とを併用することによ り、 術後化学療法の効果を高めることが可能である。 この場合に正常細胞に 対する影響を少なくするために、 上記阻害剤が癌組織で活性型になる誘導体 として合成することが重要である。 一方、 c h f rタンパク質によるュビキ チンリガ一ゼ活性は認められるがそのレベルが低いためにオーロラキナーゼ が集積する場合もある。 c h f rタンパク質によるオーロラキナーゼのポリ ュビキチン化促進剤は、 結果的にオーロラキナーゼの分解を促進することに なり、 ォーロラキナーゼのレベルを低下させ G 2 ZM期の細胞周期の異常を 回復する。 発明の実施するための最良の形態
本発明のュビキチン活性化酵素 (E 1 ) 、 ュビキチン共役酵素 (E 2 ) 、 ュビキチンリガ一ゼ c h f r ( E 3 ) 、 オーロラキナーゼ A及びオーロラキ ナーゼ Bタンパク質は、 大腸菌等の原核微生物の系、 酵母の系、 バキュロウ ィルスを感染させた昆虫細胞あるいは蚕の系、 動物細胞を用いた系において
組換型タンパク質として生産させ、 その抽出液を使用することができる。 さ らに、 抽出液から部分精製を行い調製したタンパク質がより好ましい。 この 場合に、 予め遺伝子に、 へキサヒスチジン又は GST (ダルタチオン一 S— トランスフェラ一ゼ) 遺伝子を組み込み、 それらのペプチド又はタンパク質 との融合型として産生したタンパク質を用いることもできる。 この手法を夕 グを付けるというが、 これら以外に Xpressタグ、 HA夕グ、 myc夕グ、 マルト —ス結合タンパク質タグ等種々のタグを使用することができる。
E l、 E 2、 c h f r、 オーロラキナーゼ A及びオーロラキナーゼ B遺伝 子はヒト由来のものが好ましい。 ヒト以外にもマウス等の動物由来の遺伝子、 酵母由来の遺伝子、 植物由来の遺伝子等も使用することができる。 E2遺伝 子は Ub c H 5が好ましいが Ub c H 2 a、 Ub cH2 b、 Ub cH3、 U b cH4、 Ub cH6、 Ub cH7、 Ub cH8、 Ub cHI O等を、 さら に、 マウス、 ラビット、 モルモット等の動物由来、 酵母由来、 植物由来の E 2遺伝子を使用することができる。
ポリュビキチン化オーロラキナーゼ A及びオーロラキナーゼ Bを、 ドデシ ル硫酸ナトリウム—ポリアクリルアミドゲル電気泳動 (SDS— PAGE) 及びィムノブロット法を用いて検出することができる。 ポリュビキチン化ォ 一口ラキナーゼを検出するための抗体としてピオチン化ュビキチンを用いた 場合にはアビジン-西洋ヮサビパ一ォキシダ一ゼを、 HAタグュピキチンを用い た場合には抗 HA抗体を、 Xpressタグの結合したュビキチンあるいはオーロラ キナ一ゼを用いた場合には抗 Xpress抗体を用いることができる。 特異的に結 合した抗体を検出するために、 ECL ウエスタンブロッテイング検出試薬 (Amersham Bioscience社) 、 AP発色キット (BioRad社) 、 HRP発色キット (BioRad社) 等を使用することができる。 また、 その他の免疫化学的手法も 用いることができる。
c h f rタンパク質によるオーロラキナーゼ A及びオーロラキナーゼ Bの ポリュビキチン化の特異的阻害剤をスクリーニングするために、 ハイスル一 プッ 卜アツセィシステム、 例えば、 シンチレ一シヨン近接アツセィ
(Scintillation Proximity Assay: SPA) 、 時間分解蛍光法 (Time-Resolved Fluorescence: TRF) 及び均質時間分解蛍光法 (Homogeneous Time-Resolved Fluorescence: HTRF) を使用することができる (N.Yabuki, S. Watanabe, T. Kudoh, S. Ni ira, C. Miyamoto: Application of Homogeneous Time - Resolved Fluorescence (HTRFTM) to Monitor Poly-ubiauitination of Wild-type p53, Combinatorial Chemistry & High Throughput Screening, 2, 279-287, 1999) 。 この他にも、 蛍光標識又は放射性同位元素標識を用いる系 を使用することができる。
SPA法では、 1251 _ュビキチン又は 3H_ュビキチンとピオチン化したォ 一口ラキナーゼとを反応系に加えてポリュビキチン化反応を行う。 ポリュビ キチン化オーロラキナーゼをストレブトアビジン標識の S P Aビーズを用い てトラップすると、 1251—又は 3H—標識ポリュビキチンの |6線が S PAビ一 ズに照射されることにより S P Aビーズから光が放出される。 この光量を 3 0秒間 MicroBeta (Wallac社) 等の測定装置を用いて測定する。
HTRF法では、 ユーロピウムクリプテートで標識したュビキチン及びビ ォチン化したオーロラキナーゼ A及び Bを反応系に加え、 ポリュビキチン化 オーロラキナーゼ A及び Bを生成させ、 その後、 ストレプトアビジン標識 X L 665を添加する。 ピオチン一アビジン結合により XL 665とポリュビ キチン化オーロラキナーゼ A及び Bが複合体を形成する。 この複合体に、 Discovery (Packard Instrument Company) 等の測定装置を使用して 337nm の光を照射すると、 ポリュビキチン鎖中のユーロピウムクリプテ一トが励起 され、 励起されたエネルギーが XL 665に転移する。 その結果、 XL 6 65は、 665nm の光を放出する。 この光の強度を測定し、 この測定値をポ リュビキチン化オーロラキナーゼ A及び Bの量に換算する。
このようなハイスループットスクリーニングを行うことにより、 c h f r 夕ンパク質によるォ一口ラキナ一ゼ A及び Bのポリュビキチン化の阻害剤並 びに促進物質を同定することができる。 スクリーニングのためには、 化合物 のライブラリー、 合成ペプチドライブラリー、 ペプチド発現ファージライブ
ラリー、 微生物抽出液 ·培養濾液、 生薬抽出物等のライブラリーを使用する ことができる。
一方、 c h f rタンパク質とオーロラキナーゼ A及びオーロラキナーゼ B の三次元構造からコンピューター上で阻害剤をデザィンすることもできる。 これをインシリコドラッグテサイン (in sil ico drug design) という。 デザ インされた化合物の I C5Dを上記アツセィ法を用いて算出することができる。 インビトロで同定された阻害剤を細胞レベル (in vivo) で評価することが 可能である。 即ち、 タグ付きの c h f rタンパク質、 オーロラキナーゼ、 ュ ビキチン発現プラスミドを細胞にトランスフエクシヨンし、 細胞内で生成し たポリュビキチン化オーロラキナーゼ及びオーロラキナーゼのレベルを S D S— P A G E及びィムノブロット法等により検出することができる。 また、 オーロラキナーゼのポリュビキチン化の阻害剤がオーロラキナーゼの安定化 に寄与しているかどうかについても、 細胞内でのオーロラキナーゼの蓄積を ウエスタンプロッティング解析することにより、 モニタリングできる。 さら に、 タキソール及びノコダゾール等の G 2期に作用する制癌剤と併用するこ とによる癌細胞に対する I C5flの顕著な低下を測定することができる。
阻害剤の多種類の誘導体を合成し、 細胞レベルでの評価を行うことにより、 候補化合物を同定することができる。 さらに、 この化合物を用いて担癌マウ スモデルでの評価、 マウス及び犬等の動物を用いる薬理試験、 急性及び慢性 毒性試験等の安全性試験、 安定性試験等を経て、 臨床試験に進むことができ る。 産業上の利用可能性
本発明は c h f rタンパク質によるオーロラキナーゼ A及びオーロラキナ ーゼ Bのポリュビキチン化をアツセィする系を提供する。 したがって、 本系 を用いて、 その阻害剤及び促進剤をスクリーニングすることができる。 その 阻害剤はタキソール等の G 2期に作用する制癌剤との併用により、 夕キソー ル等が有効でない癌に効果を示すことが期待される。 さらに、 その促進剤は
c h f rタンパク質のュビキチン一タンパク質リガーゼの活性が低いため又 はオーロラキナーゼ遺伝子の過剰発現のためにオーロラキナーゼが集積して いる癌細胞に有効であることが期待される。 実施例
本発明を下記の実施例においてさらに具体的に説明するが、 これに限定さ れるものではない。 実施例 1
c h f rタンパク質の自己ュビキチン化
ヒト ch f rタンパク質 (図 1Aと B) を GS T融合 pFastBac ベクタ一 (Gibco-BRL社) に挿入し製造者のプロトコールにしたがって組換えバキュ口 ウィルスを調製した。 それ等の組換えバキュロウィルスを昆虫細胞 (Spodoptera frugiperda 9: Sf9細胞と略称) に感染させることにより、 昆 虫細胞内に GST— c h f rタンパク質を産生させた。 本タンパク質の N末 端には、 GST (Glutathione- S- Transferase) を融合させた。 ヒト ch f r タンパク質の 307位のシスティンをァラニンに換えた突然変異型 c h f r タンパク質 (MT- c h f r ;図 1 C) も同様な方法で調製した。
ュビキチン活性化酵素 (E 1) をバキュロウィルスを感染させた S f 9細 胞で産生させ、 ュビキチンァフィ二ティカラムを用いて精製した。 ュビキチ ン共役酵素 (E2) である Ub cH5の cDNAを pET3ベクタ一に挿入 し、 そのプラスミドを大腸菌 (Esherichia coli) BL21 に導入し、 I PTGを 添加し Ub cH5を産生させた。 大腸菌抽出液を硫安分画及び Mo n o S カラム (Amerslmm Bioscience社) を用いたクロマトグラフィーにより精製 した。
部分精製したュビキチン活性化酵素 (E1) 、 ュビキチン共役酵素 Ubc H 5 (E 2) 、 ピオチン化ュビキチン及び GST融合野生型ヒト c h f r夕 ンパク質 (WT_chir) をコードするバキュロウィルスを感染させた昆虫細胞 S
f 9抽出液、 5 OmMT r i s -HC 1 pH7. 4、 5 mMM g C 1 2 , 2mM ジチオスレィ I ル及び 2mMATPを 25°Cで 30分反応させた。 次に、 グ ルタチオン—セファロ一ス 4Bを用いて GST融合 WT— c h f rタンパク 質をプルダウンし回収した。 溶離させた試料を 5 %ポリアクリルアミド上で 電気泳動した。 ゲル上のタンパク質を P VDF (ポリビニリデンジフルオリ ド) 膜に移した。 5 %スキムミルクで PVDF膜をブロッキングした後、 ァ ビジン西洋ヮサビパーォキシダ一ゼを加え、 E C Lキット (Amersham Bioscience社) を使用して、 ポリュビキチン化 c h f rタンパク質を検出し た (図 2レーン 4) 。 E l、 E 2又は WT— c h f rを除いた場合には c h f rタンパク質のポリュビキチン化は認められなかった (図 2レーン 1— 3) 。 また、 突然変異型 c h f rタンパク質 (WT— c h f r) を用いた場 合にも、 ポリュビキチン化 c h f rタンパク質は検出されなかった (図 2レ ーン 5— 8) 。 レーン 8で検出されたバンドはモノュビキチン化 c h f r夕 ンパク質と推定された。 モノュビキチン化タンパク質は、 プロテアゾームに より分解されない。 実施例 2
c h f rタンパク質とオーロラキナーゼ A及びオーロラキナーゼ Bとの結合 ヒト野生型 c h f rの c DNA、 ヒトオーロラキナーゼ A及びヒ卜ォ一口 ラキナーゼ Bの c DNA及びヒト PLKの cDNAを GST融合又は H i s タグ付き pFastBac ベクター (Gibco- BRL社) に挿入し Gibco- BRL社のプロト コールにしたがって組換えバキュロウィルスを調製した。 それ等の組換えバ キュロウィルスを昆虫細胞 (S f 9細胞と略称) に感染させ、 昆虫細胞内に それらのタンパク質を産生させた。 それぞれのタンパク質の N末端は、 GS T (Glutathione- S- Transferase) 及び 6個のヒスチジン残基と融合したタン パク質として産生された。
GST-c h f rタンパク質を含む S f 9抽出液と 6 H i s—オーロラキ ナーゼ Aを含む S f 9抽出液、 及び、 GST_c h f rタンパク質を含む S
f 9抽出液と 6 H i s—オーロラキナーゼ Bを含む S f 9抽出液を混合し、 室温でインキュベートした。 次に、 ダルタチオンセファロース 4 Bを加えて GST-c h f rタンパク質複合体をプルダウンし、 それに lOn グル夕チォ ンを添加し、 GST_c h f rタンパク質複合体を回収した。 回収した試料 を SDS— 7. 5%ポリアクリルアミドゲル上で電気泳動した。 ポリアクリ ルアミド上のタンパク質を PVDF膜に移した。 さらに、 GST— c h f r タンパク質と結合し共沈した H i s—オーロラキナ一ゼ A及び H i sーォ一 口ラキナ一ゼ Bを検出するために、 へキサヒスチジンを認識するマウス抗体 (1次抗体) 、 次に西洋ヮサビパーォキシダーゼ共役抗マウス抗体とインキ ュペートし、 ECLキット (Amersham Bioscience社) を使用して化学発光さ せ、 X線フィルムに現像した。 この結果、 オーロラキナーゼ A及びオーロラ キナーゼ Bが GS T— c h f rタンパク質と結合することが判明した (図 3 Aレーン 3と 4) 。
次に、 この結果を再確認するために以下の実験を行った。
6 H i s - c h f rタンパク質を含む S f 9抽出液と G S T—オーロラキ ナ一ゼ Αを含む S f 9抽出液、 及び 6 H i s— c h f rタンパク質を含む S f 9抽出液と GS T—オーロラキナーゼ Bを含む S f 9抽出液を混合し、 室 温でインキュベートした。 次に、 ダルタチオンセファロース 4 Bを加え、 G S T—ォ一口ラキナーゼ A及び G S T—ォ一口ラキナーゼ B複合体をブルダ ゥンにより回収し、 その複合体を 10 mM ダルタチオン添加により、 ビ —ズより溶出させ回収した。 回収した試料を SDS— 7. 5 %P AGEに供 し、 We s t e r n B l o t t i n gによりゲル上のタンパク質を P VD F膜にトランスファ一した。 GST—オーロラキナーゼ A及び GST—才一 ロラキナーゼ Bと結合し共沈した 6H i s— c h f rタンパク質を上記と同 様 ECLキットを用いて検出した。 図 3 Bに示すように、 6H i s— c h f rタンパク質がオーロラキナーゼ A及びオーロラキナーゼ Bと結合すること が判明した (図 3 Bレーン 2と 3) 。
さらに、 ヒト PLK1 (ポロ様キナーゼ 1) 含む S f 9抽出液と GST—
オーロラキナーゼ Aを含む S f 9抽出液を室温でインキュベートし同様に処 理した結果、 ヒト 6H i s - c h f rタンパク質は GST— PLKlと結合 しないことが判明した (図 3 Bレーン 4) 。 この結果は c h f rタンパク質 が PLKlと結合せず、 ヒトでは PLK1のポリュビキチン化を触媒する可 能性が低いことを意味している。.
さらに、 突然変異型 c h f rタンパク質がオーロラキナーゼ A及び Bと結 合するかどうかを検討した。 突然変異型 GST-c h f rタンパク質 (図 1 C) を含む S f 9抽出液と 6 H i s—オーロラキナーゼ Aを含む S f 9抽出 液、 及び、 突然変異型 GS T— c h f rタンパク質 (図 1 C) を含む S f 9 抽出液と 6 H i s—オーロラキナーゼ Bを含む S f 9抽出液を混合し、 室温 でインキュベートした。 次に、 グル夕チオンセファロース 4 Bを加えて GS T- c h f rタンパク質をプルダウンし上記と同様な方法で突然変異型 GS T- c h f rタンパク質と結合したオーロラキナーゼ A及び Bを検出した (図 3 Cレーン 2と 4) 。 その結果、 リングフィンガー領域が突然変異した c h f rタンパク質 (図 1 C) は、 オーロラキナーゼと結合する領域は正常 であるために、 オーロラキナーゼと結合できることが判明した。 実施例 3
c h f rタンパク質によるオーロラキナーゼ A及びオーロラキナ一ゼ Bのポ リュビキチン化
部分精製 E 1酵素及び E 2酵素を実施例 1と同様に調製した。 GST_c h f r (野生型及び突然変異型) タンパク質、 6 H i s—オーロラキナーゼ A及び Bを含む S f 9抽出液を実施例 2と同様に調製した。
E 1酵素 (E l) 、 Ub cH5 (E 2) 、 野生型 G S T— c h f rタンパ ク質を有する抽出液 (WT_c h f r) 、 ピオチン化ュビキチン、 6H i s —オーロラキナーゼ Aを有する抽出液 (Aurora A) 、 5 OmM T r i s -HC 1 H7. 4、 5mM MgC l 2、 2mM DTT、 2mMATPからなる反応 液を 25 °Cで 30分間インキュベートした。 次に、 ダル夕チオンセファロー
ス 4 Bを添加した。 ダル夕チオンセファロース 4 Bと結合した複合体に 10 mM ダルタチオンを添加し、 遠心分離によりビーズから遊離させ、 遊離した複 合体を SD S - 10 %P AGEに供し、 10% ポリァクリルアミド上の夕 ンパク質を P VD F膜に移した。 へキサヒスチジンを認識するマウス抗体
( 1次抗体) とインキュベートし、 次に西洋ヮサビパーォキシダ一ゼ共役抗 マウス抗体を加え、 ECLキットを使用してダル夕チオンセファロ一ス 4 B によりプルダウンされたポリュビキチン化 6 h i s—オーロラキナーゼ A及 び Bタンパク質を検出した。
その結果、 6 h i s—オーロラキナーゼ A及び Bタンパク質モノマーと同 時にポリュビキチン化 6 h i s—オーロラキナーゼ A及びポリュビキチン化 6 h i s—オーロラキナーゼ Bのスメァバンドが検出された (図 4レーン 1 と 5) 。 この反応液から E 2酵素である Ub c H5を除くとポリュビキチン 化オーロラキナーゼ A及び Bは検出されなかった (図 4レーン 2と 7) 。 こ の反応系で、 野生型 GST— c h f rタンパク質を有する抽出液 (WT_chir) の代わりに突然変異型 GST_ c h f rタンパク質を有する抽出液 (MT- chfr) を用いた場合には、 ポリュビキチン化オーロラキナーゼ A及び Bは、 検出されなかった (図 4レーン 3と 7) 。
以上をまとめると、 野生型 GST— c h f rタンパク質は、 オーロラキナ —ゼ A及び Bと結合し、 両者のポリュビキチン化を触媒する。 しかし、 c h f rタンパク質のリングフィンガー領域のコンセンサス配列のシスティンを ァラニンに置換するとこの活性が消失する。 さらに、 c h f rタンパク質は、 PLK1と結合せず、 PLK 1のポリュビキチン化を触媒しなかった (未発 表データ) 。 したがって、 ヒトにおける PLK 1は、 c h f rタンパク質の ポリュビキチン化の基質である可能性は低い。