明細書 濾過推移シミュレーション方法および濾過推移シミュレ一ション装置 関連出願の参照
日本国特許出願 2 0 0 2— 1 0 4 3 2 2号 (平成 1 4年 4月 5日出願) の明 細書、 請求の範囲、 図面および要約を含む全開示内容は、 これら全開示内容を 参照することによって本出願に合体される。 技術分野
この発明は、 濾過推移シミュレ一ション方法および濾過推移シミュレ一ショ ン装置に関するものであり、 特に、 シミュレーションの正確性の向上に関する。 背景技術
微小粒子や菌体等を液体から除去するためのメンブランフィルタ等を用いた 閉塞濾過は、 種々の工業分野で使用されている。 濾過を実施する際には、 一般 的に、 フィルタの目詰まりによる流速低下を防ぐために、 ファイナルフィルタ より? L径の大きなプレフィルタを直列に繋ぐことによって、 2段以上の複数の フィルタを組み合わせた濾過システムが利用されている。
生産スケールの濾過システムでは、 必要とされる条件での濾過を所定の時間 内で行うことが要求される。 そして、 そのような濾過時間等の結果は、 フィル 夕の組み合わせ等のシステム設定に依存する。 生産スケールにおける濾過シス テムのフィルタの組み合わせの設定は、 平膜のフィルタを用いた小実験 (通常、
1 L (リットル) 以下のスケール) で得られる圧力損失、 最小濾過流量等の値 を利用したシミュレーションに基づいて行われるのが一般的である。
なお、 膜濾過システムの分野においては、 被処理水の濁質量等に基づいて濾過 差圧の推移を予測し、 その予測した濾過差圧に基づいて濾過時間等を予測する技 術がある (特許文献:特開 2. 0 0 1 _ 3 2 7 9 6 7参照) 。
小実験で得られたデータを利用して濾過システムの生産スケール (通常、 数 百〜数千 Lのスケール) での所要濾過時間やフィル夕の組み合わせの設定のシ ミュレーションを行うものとして、 一般的に次のような方法が採られている。 シミュレーションの第 1の方法は、 小実験において複数のフィルタを組み合 わせた濾過システムを作成し、 このシステムを一つの系としてとらえて所要濾 過時間等のデータを取得し、 それらのデータに基づいてスケールアップシミュ レーションを行う方法である。
しかし、 この方法では、 組み合わせるフィル夕の本数の比率を変更する場合 には再度小実験をしなければならず、 最適なフィル夕の組み合わせを設定する には複数の小実験を行わなければならないという不都合がある。
シミュレーションの第 2の方法は、 まず、 濾過流量が初期値と比べてある一 定値以上減少した時点 (通常 80〜90%) で濾過が終了するのに必要な濾過 面積を算出する。 この方法では、 プレフィルタ、 ファイナルフィル夕のそれぞ れの小実験を別々に行う。 そして、 小実験と生産スケールの両者の初期濾過流 量比に基づいて比例計算を行い、 必要とされる所要濾過時間で濾過が終了する ためのフィルタ必要本数を求める (参考文献: F o r r e s t B a dm i n g t o n e t . a 1. "Vm a x Te s t i ng f o r P r a c t i c a 1 M i c r o f i l t r a t i on Tr a i n S c a l e— Up i n B i oph a rmac eu t i c a l P r o c e s s i ng P h a rma c eu t i c a l Te c hno l ogy, S e p t. 1995, p. 64-76) 。
しかし、 この方法では、 プレフィル夕、 ファイナルフィルタをそれぞれ別々 に切り離して考えているから、 濾過中の各々のフィルタの差圧の変化等の相互 関係を推定することができず、 経時的なシミュレ一ションを行うことができな い。 その結果、 この方法によるシミュレーション結果は、 実測値と比較した場 合に大きな誤差が生ずる場合もある。 そのため、 この第 2の方法を採用する際 には、 生産スケールでの濾過を適切に行うために、 シミュレーションによって 演算されたフィルタ本数等に対して更に安全率をかける必要があるのが現状で
ある。 したがって、 この第 2の方法では、 結果として過剰設計 (過剰なフィル 夕本数等) となる傾向があり、 余分なコストがかかってしまうことも懸念され る。 発明の開示
この発明は、 上記のような問題に鑑みて、 複数のフィルタを直列に繫いだ場 合であっても、 濾過中の各フィル夕の差圧、 濾過流量等の推移を正確にシミュ レートすることができる方法およびその装置を提供することを目的とする。
1 ) 2段以上のフィルタを用いる濾過システムにおける所要濾過時間をシミ ュレートする所要濾過時間シミュレ一ション方法であって、
濾過流量を、 少なくとも、 濾過液量と前記濾過システム全体の差圧とを用い た関数で表現し、
シミュレ一ション対象となる前記濾過システムの全濾過液量 Vを設定し、 当該全濾過液量 Vを n個の微小区間△ Vに分割し、
濾過液量 A V、 2 Δ ν、 · · · n A Vを濾過した各時点での濾過流量結果 Q を、 当該各時点での濾過液量と前記濾過システム全体の差圧とに基づいて演算 し、
前記 Δ Vを前記各時点での濾過流量結果 Qで割ることによって、 前記微小区 間△ V毎の濾過に要したそれぞれの濾過時間を演算し、
当該微小区間 Δ V毎の濾過に要したそれぞれの濾過時間を積算することによ つて前記所要濾過時間を演算すること、
を特徴としている。
これにより、 前記濾過液量 (液体の体積、 または液体の容積) と前記濾過流 量結果 (単位時間当たりに濾過される液量) とに基づいて前記所要濾過時間を 求めることができる。
2 ) 本発明の所要濾過時間シミュレーション方法は、
2段以上のフィルタを用いる濾過システムにおける所要濾過時間をシミュレ 一卜する所要濾過時間シミュレーション方法であって、
シミュレ一ション対象となる前記濾過システムに関する所定のシステム因子 を設定し、
濾過流量を前記濾過システム全体の差圧との関連で表現し、
前記システム因子と前記濾過システム全体の差圧とに基づいて所定の濾過液 量を濾過した各時点での濾過流量結果を演算し、
前記所定の濾過液量と前記濾過流量結果とに基づいて前記所要濾過時間を演 算すること、
を特徴としている。
これにより、 前記所定の濾過液量 (液体の体積、 または液体の容積) と前記 濾過流量結果 (単位時間当たりに濾過される液量) とに基づいて前記所要濾過 時間を求めることができる。
3 ) 本発明の濾過推移シミュレーション方法は、
2段以上のフィル夕を用いる濾過システムにおける濾過推移結果をシミュレ 一卜する濾過推移シミュレ一ション方法であって、
シミュレ一ション対象となる前記濾過システムに関する所定のシステム因子 を設定し、
濾過推移を、 前記濾過システム全体の差圧との関連で表現される差圧関連特 性を用いて表し、
前記システム因子と前記差圧関連特性とに基づいて前記濾過推移結果を演算 すること、
を特徴としている。
これにより、 前記濾過システム全体の差圧との関連で表現される差圧関連特 性を用いることにより、 その差圧関連特性に影響して変動する前記濾過推移を 表現することができる。 したがって、 前記 2段以上のフィルタを用いる濾過シ ステムにおいて、 前記濾過推移を正確かつ簡易にシミュレートすることができ る。
4 ) 本発明の濾過推移シミュレーシヨン方法は、
2段以上のフィルタを用いる濾過システムにおける濾過推移結果を、 実験に
よって得られる実験情報を用いてシミュレートする濾過推移シミュレ一ション 方法であって、
シミュレーション対象となる前記濾過システムに関する所定のシステム因子 を設定し、
前記濾過推移を、 前記濾過システム全体の差圧との関連で表現される差圧関 連特性を用いて表し、
前記実験情報と、 前記システム因子と、 前記差圧関連特性とに基づいて前記 濾過推移結果を演算すること、
を特徴としている。
これにより、 前記濾過システム全体の差圧との関連で表現される差圧関連特 性を用いることにより、 その差圧関連特性に影響して変動する前記濾過推移を 表現することができる。 したがって、 前記 2段以上のフィルタを用いる濾過シ ステムにおいて、 前記濾過推移を正確かつ簡易にシミユレ一トすることができ る。
また、 前記実験情報を利用して前期濾過推移結果を演算するから、 実行に手 間のかかるスケ一ルでの濾過実験を行わない場合であっても、 容易に行える小 実験等で得られる情報を用いることで、 前記濾過推移を正確、 かつ、 より一層 簡易にシミュレートすることができる。
5 ) 本発明の濾過推移シミュレ一ション方法において、
前記濾過推移は、 さらに、
前記実験で利用するフィルタの濾過面積に関する特性とシミュレーション対 象となるフィル夕の濾過面積に関する特性との関連で表現される濾過面積比特 性、
または、
前記実験で利用するフィルタの基準濾過流量に関する特性とシミュレ一ショ ン対象となるフィルタの基準濾過流量との関連で表現される基準濾過流量比特 性、
の少なくともいずれかに依存することに基づいて表されること、
を特徴としている。
これにより、 前記実験情報を利用して前記濾過推移を演算する際に、 濾過初 期段階での濾過流量は濾過面積に依存することに関する物理的特性、 および、 前記濾過流量は濾過抵抗 (圧力損失) に依存することに関する物理的特性、 の 少なくともいずれかを考慮にいれることができる。 したがって、 前記 2段以上 のフィルタを用いる濾過システムにおいて、 前記シミュレ一ション対象のフィ ル夕と前記実験で利用するフィルタの両者のサイズゃ物理的性質が異なる場合 であっても、 前記濾過推移をより一層正確、 かつ簡易にシミュレートすること ができる。
6 ) 本発明の濾過推移シミュレーション方法は、
2段以上のフィルタを用いる濾過システムにおける濾過推移結果をシミュレ 一卜する濾過推移シミュレーション方法であって、
シミュレ一ション対象となる前記濾過システムに関する所定のシステム因子 を設定し、
濾過推移を、 前記 2段以上のフィルタにおける各フィルタの差圧の総和は前 記濾過システム全体の差圧と等しいという関係を利用して表し、
前記システム因子と、 前記各フィル夕の差圧の総和は前記濾過システム全体 の差圧と等しいという関係とに基づいて前記濾過推移結果を演算すること、 を特徴としている。
これにより、 前記各フィルタの差圧の総和は前記濾過システム全体の差圧と 等しいという関係に基づき、 前記 2段以上のフィルタにおける各フィルタの差 圧の変化に影響して変動する前記濾過推移を表現することができる。
7 ) 本発明の濾過推移シミュレーション装置は、
2段以上のフィルタを用いる濾過システムにおける濾過推移結果情報をシミ ユレ一卜する濾過推移シミュレーション装置であって、
シミュレーション対象となる前記濾過システムに関する所定のシステム因子 情報を入力する入力手段、
前記濾過システム全体の差圧との関連で表現される差圧関連特性情報を用い
て表した濾過推移情報と、 前記システム因子情報とに基づいて前記濾過推移結 果情報を演算する演算手段、
前記濾過推移結果情報を出力する出力手段、
を備えたことを特徴としている。
これにより、 前記濾過システム全体の差圧との関連で表現される差圧関連特 性情報を用いることにより、 その差圧関連特性情報に影響して変動する前記濾 過推移情報を表現することができる。 したがって、 前記 2段以上のフィルタを 用いる濾過システムにおいて、 前記濾過推移を正確かつ簡易にシミュレートす ることができる。
以下、 用語の定義について説明する。
「2段以上のフィル夕」 とは、 被濾過液の進行方向に対して 2本以上のフィ ル夕が配置されているフィルタの状態を含むものとする。 実施形態では、 プレ フィルタ 1 0 0、 または、 ファイナルフィルタ 2 0 0のそれぞれのことを 1段 のフィル夕と表現する。 したがって、 閉塞濾過システム 3 0 0は、 全体として 2段のフィルタを用いる。
「濾過推移結果」 とは、 濾過流量、 または濾過液量、 またはフィルタ差圧等 の物理量の濾過中の経時的変動の内容、 あるいは、 それら物理量に基づいて演 算される所要濾過時間等の値を含むものとする。 なお、 「濾過推移結果を演 算」 とは、 それら物理量等の中の一つ、 または一部、 または全部を演算する場 合も含むものとする。
「システム因子」 とは、 シミュレーション対象となる濾過システムにおいて、 濾過推移を演算する際に必要となる物理量を含むものとする。 実施形態では、 閉塞濾過システム 3 0 0の全差圧、 または濾過液量、 または全濾過スラリー液 量 (全濾過液量) 、 または圧損効率、 または濾過面積等がこれに対応する。
「実験」 とは、 濾過推移を演算する目的でシミュレーション対象以外の濾過 を実施することを含む概念である。 実施形態では、 小実験を実施することがこ れに対応する。
本発明の特徴は、 上記のように広く示すことができるが、 その構成や内容は、
それらの特徴および効果とともに、 図面を考慮に入れた上で以下の開示により さらに明らかになるであろう。 図面の簡単な説明
図 1は、 プレフィル夕およびファイナルフィル夕を組み合わせた閉塞濾過シ ステムの模式図である。
図 2は、 実施形態による閉塞濾過シミユレ一ション装置の機能プロック図で める。
図 3は、 閉塞濾過シミュレータのハードウェア構成例を示す図である。 図 4は、 閉塞濾過シミュレーション処理のプログラムのフローチヤ一トであ る。
図 5は、 閉塞濾過シミュレ一ション処理におけるュ一ザ入力画面を示す図で ある。
図 6は、 閉塞濾過シミュレ一ション処理の出力画面を示す図である。
図 7は、 閉塞濾過シミュレータ 5 0 0によるシミュレーション結果 (濾過時 間—濾過液量) と実測値の比較を示す図である。
図 8は、 閉塞濾過シミュレータ 5 0 0によるシミュレーション結果 (濾過時 間一フィルタ差圧) と実測値の比較を示す図である。
図 9は、 閉塞濾過シミュレータ 5 0 0によるシミュレ一シヨン結果 (濾過時 間一濾過流量) と実測値の比較を示す図である。
図 1 0は、 閉塞濾過シミュレータ 5 0 0による最適システム設定の決定手法 を説明する図である。 発明を実施するための最良の形態
以下、 本発明の一実施形態としての閉塞濾過シミュレーション方法の概略説 明を行い、 次に、 その方法を利用してシミュレーションを行う閉塞濾過シミュ レー夕について説明する。
目次
1 . 閉塞濾過シミュレーション方法の概略
2 . 閉塞濾過シミュレーション装置のハードウェア構成等
3 . 特許請求の範囲に記載した用語と実施形態との対応
4. 閉塞濾過シミュレーション処理の説明
5 . 実施形態による効果
6 . その他の実施形態等 一一 1 . 閉塞濾過シミュレーション方法の概略—一
図 1に、 プレフィルタおよびファイナルフィルタを組み合わせた生産スケ一 ルでの閉塞濾過システム 3 0 0の模式図を示す。 この閉塞濾過システム 3 0 0 は、 プレフィル夕 1 0 0とファイナルフィル夕 2 0 0の組み合わせによるもの である。 プレフィルタ 1 0 0およびファイナルフィルタ 2 0 0のそれぞれのハ ウジングには、 1本または複数本のカートリッジフィル夕が装着される。 プレ フィルタ 1 0 0へ入る流量は Qで示し、 プレフィル夕 1 0 0の濾過流量は Q Pで 示し、 一方のファイナルフィルタ 2 0 0の濾過流量は Q Fで示す。 また、 プレフ ィル夕 1 0 0の差圧 (プレ差圧) は Δ Ρ Ρで示し、 一方のファイナルフィルタ 2 0 0の差圧 (ファイナル差圧) は A P Fで示す。 フィルタの差圧とは、 フィルタ —の出口および入口の圧力差のことをいう。
実施形態は、 小実験を実施することによって得られるフィルタの閉塞係数等 のデ一夕を用いることにより、 生産スケールでの濾過システムにおける種々の システム設定について、 濾過流量等の経時変化、 所要濾過時間等のシミュレ一 シヨンを行う方法および装置を説明するものである。 ここで、 システム設定と は、 プレフィル夕 1 0 0およびファイナルフィルタ 2 0 0のそれぞれに装着す る各カートリッジフィルタの濾過面積と、 装着する力一トリッジフィルタの本 数のことをいう。
以下、 閉塞濾過シミュレーション方法の概略を説明する。
1 - 1 . 小実験データによる各フィル夕の閉塞係数 Ksの演算
一般に、 1本のフィルタに関する定圧での閉塞濾過は、 演算式 (1 ) (H e
rman s -B r e de e -Gr a c eの閉塞式 (標準閉塞濾過式) ) での整 理が行われている。
Θ K s 1
Θ +
V 2 Qo
• · · (1)
Θ :濾過時間
Ks:閉塞係数
V:濾過液量 (濾過液の体積、 または濾過液の容積)
Qo:初期濾過流量 (単位時間当たりに濾過される液量の初期値)
演算式 (1) に表すように、 横軸に濾過時間 0、 縦軸に をプロットし たときの直線の傾きから閉塞係数 Ks 、 縦軸の切片の逆数から初期濾過流量 Q 。を演算することができる。 なお、 小実験は、 プレフィル夕 100のハウジング に装着するカートリッジフィルタに対応する平膜 (以下、 「プレフィルタ用平 膜」 とする) 、 および、 ファイナルフィルタ 200のハウジングに装着する力 —トリッジに対応する平膜 (以下、 「ファイナルフィルタ用平膜」 とする) の それぞれについて実施する。 したがって、 演算式 (1) により、 定圧 (濾過圧 力一定) での小実験のデータに基づいてプレフィルタ用平膜およびファイナル フィル夕用平膜のそれぞれの閉塞係数 Ksを演算することができる。
1 -2. 小実験における濾過流量式
小実験における各フィルタの濾過液量 Vの段階での濾過流量 Qは、 演算式 (2) 、 (3) で表される。 それぞれの演算式は、 流量式と呼ばれるものであ り、 濾過流量 Qの経時変化を表現することができる。 閉塞係数 Ksは、 演算式 (1) で演算される値を用いる。
演算式 (2) は、 プレフィルタ用平膜を用いた場合の濾過流量式である。
(2)
QPS:プレフィルタ用平膜を用いた場合の濾過流量
QPS。:プレフィル夕用平膜を用いた場合の初期濾過流量
KSPS:プレフィル夕用平膜の閉塞係数
ここで、 添字 Sは、 小実験での各因子の値を示す。
演算式 (3) は、 ファイナルフィル夕用平膜を用いた場合の濾過流量式であ る。
• · · (3)
QFS:ファイナルフィルタ用平膜を用いた場合の濾過流量
QFS。:ファイナルフィルタ用平膜を用いた場合の初期濾過流量
KSFS:ファイナルフィルタ用平膜の閉塞係数
1 - 3. 複数のフィル夕における濾過推移の表現
複数のフィルタを直列に繋いだ場合の濾過推移のシミュレーション法を考え る。 実施形態でのシミュレーション方法は、 濾過中の各々のフィル夕の相互関 係の概念を導入することを 1つの特徴としている。 今回、 この相互関係の概念 を導入して各フィル夕の濾過中の関係付けを行い、 濾過中の正確なシミュレ一 ションを行うことを考えた。 本シミュレ一ション方法では次の 2つの式を用い る。
1) 流量連続の式
閉塞濾過システム 3 0 0の途中に液の漏れがない限り、 プレフィルタ 1 0 0 およびファイナルフィルタ 2 0 0を通過する被濾過液の濾過流量は等しい。 し
たがって、 両フィルタの濾過流量を等号でつないだ流量連続の式 (式 (4) ) をたてることができる。
2) 全差圧一定の式
被濾過液がプレフィルタ 100およびファイナルフィルタ 200で濾過され る場合、 プレ差圧 ΔΡΡとファイナル差圧 APFのそれぞれは変ィヒするが、 それ らの和である全差圧 ΔΡは、 濾過を行っている時間中、 一定である。 したがつ て、 次式で示される全差圧一定の式 (式 (5) ) をたてることにより、 各フィ ル夕のそれぞれの差圧の変化をシミユレ一ションに導入することができる。
これらの関係を用いることにより、 濾過中の各々のフィル夕の差圧変化や流量 変化、 所要時間を算出する方法を考えた。
また、 スケールアップ時 (生産スケール) の濾過流量を、 各フィルタの差圧と、 後述するスケールアップ係数 k、 1との積を用いて式 (6) で表した。
Q = APP ' k = APF · 1 · ■ · (6) 式 (5) 、 (6) から、 例えばプレフィルタの差圧は、 全差圧との関係で式 (7) で表すことができる。
• · · (7)
ここで、 添字 Lは、 生産スケール (スケールアップ時) での各因子の値を示す。
1一 4. スケールアップ係数とシミュレーション
式 (6) に示すように、 濾過途中時点での濾過流量を、 生産スケールでの各 フィルタの差圧にスケールアップ係数 kまたは 1を掛けた値で表した。
このときのスケールアップ係数 k:、 1の中身について以下に述べる。
スケールアップ時 (生産スケール) の濾過流量も、 本来、 式 (2) 、 (3) のように、 スケールアップした際の初期濾過流量 (イニシャル流量) 、 閉塞係 数等を用いて算出することができると考えられる。
さらに、 スケールアップ時の濾過流量、 初期濾過流量については、 以下の関 係が成り立つと考えられる。
1) ある範囲の濾過圧力では、 各フィル夕の濾過流量は、 そのフィルタの差 圧 (濾過圧力) にほぼ比例する。 したがって、 スケールアップ係数 k、 1には、 小実験での各フィルタの差圧のファクタを導入する。
2) 初期濾過流量は、 フィルタ濾過面積に比例する。 したがって、 スケール アップ係数には、 濾過面積比のファクタを導入する。 濾過面積比は、 (生産ス ケ一ルのフィル夕濾過面積 AZ小実験のフィル夕濾過面積 As) で求まる (小実 験のフィルタ濾過面積 Asに対する生産スケ一ルのフィル夕濾過面積 Aの割合) 。 これらより、 スケールアップ時 (生産スケール) のプレフィルタに関するス ケ一ルアップ係数 k、 ファイナルフィル夕に関するスケールアップ係数 1は、 次の各因子 (ファクタ) を変数 (説明変数、 または独立変数) とした関数で表 される。 (fは、 関数を表す。 )
:プレフィルタに関する濾過面積比 (上記 2) のファクタ
β ファイナルフィル夕に関する濾過面積比 (上記 2) のファクタ
ここで、 小実験での各フィルタの濾過圧力 (ΔΡΡ3、 APFS) 、 スケールァ ップ前後の濾過面積比 (ひ、 i3) が分かっていれば、 係数 k、 1は、 濾過液量 Vのみを変数とした関数で表される。
したがって、 式 (6) (7) (8) (9) を連立して解くことにより、 濾過 途中時点での濾過流量や各フィル夕の差圧を算出することが可能となる。
1 - 5. 微小区間 Δ Vにおける濾過流量の演算
本シミユレ一ション方法では、 目的とする全濾過液量 Vを微小区間 Δ Vに区 切り、 各微小区間毎の濾過流量 Qを演算することを 1つの特徴としている。 す なわち、 Δν、 2Δν、 . · ·、 ηΔν (=V) の濾過を行う各時点での瞬時 濾過流量 Q ( 「濾過流量結果」 に対応) を演算することになる。
この濾過流量 Qは、 上述したように、 式 (6) 〜式 (9) を連立して解くこ
とによって求めることができる。 具体的には、 濾過液量 Vを式 (8) (9) に 代入してスケールアップ係数 k、 1を求める。 スケールアップ係数 k、 1およ び全差圧 ΔΡを式 (7) 等に代入して、 各フィルタの差圧 (ΔΡΡまたは ΔΡ F) を求める。 各フィル夕の差圧を式 (6) に代入して、 濾過流量 Qを求める。 なお、 濾過流量 Qを演算するために用いる上述した各演算式、 関数等は例示 であって、 当業者は、 シミュレーション対象となる被濾過液やフィルタの性質 に応じ、 各演算式、 関数等を周知の手段によって変形することが可能である。
1 -6. 所要濾過時間 0の演算
各微小区間 Δνでの濾過時間は、 AVZQで求めることができるから、 所要 濾過時間 (濾過に要する全時間) 0は、 次の演算式 (1 0) によって演算する ことができる。 ただし、 濾過流量 Qは、 各微小区間毎の濾過流量を用いる。
• · · (10)
具体的には、 例えば、 全濾過液量を 200L、 Δνを 10 Lとした場合には、 各区間毎の濾過流量として、 ¥=1 0のときの<31、 V=20のときの Q2、 '· • · V= 190のときの Q19、 V=200のときの Q2。をそれぞれ求める。 次 に、 各区間毎の濾過時間 1 OZQn (n: 1〜20) をそれぞれ算出する。 こ のとき、 所要濾過時間 0は、 全ての区間の濾過時間を積算したもの、 すなわち、 θ = 10/Qi+ - · ' + 10ZQ2。によって算出することができる。
以上より、 所定のシステム設定 (プレフィルタ 1 00およびファイナルフィ ル夕 200のそれぞれのフィル夕濾過面積) に対する所要濾過時間 0のシミュ レーション結果を得ることができる。
1 -7. 最適システム設定の決定
プレフィルタ 100およびファイナルフィルタ 200のそれぞれに装着する 各力一トリッジフィルタの濾過面積および本数の最適なパターンを決定する場 合に一般的に考慮すべき点は、 所要濾過時間 0が条件時間以内であるかという
点と、 過剰設定によりフィルタのランニングコストに無駄は生じていないかと いう点である。
したがって、 演算式 (10) で演算した所要濾過時間 0が、 生産スケールで 許容される許容濾過時間 0OP以下であるか否かを次式 (1 1) によって確認す る。
θ≤θο? · · · (11)
次に、 式 (11) の条件に合致するシステム設定について、 フィルタのコス 卜 (経費) (Co s t) を次式 (12) により演算する。
m:プレフィル夕 100に装着する力一トリッジフィルタの本数
n :ファイナルフィルタ 200に装着するカートリッジフィル夕の本数 CP:プレフィルタ 100に装着するカートリッジフィル夕の単価
CF:ファイナルフィルタ 200に装着する力一トリッジフィルタの単価 以上のようにして、 さまざまなシステム設定について、 ランニングコストの 情報を得ることができる。 例えば、 ランニングコストが最小となるようにする には、 式 (1 1) に合致し、 かつ、 式 (12) における Co s tが最小値とな るシステム設定を採用すればよい。
以上、 実施形態による閉塞濾過シミュレーション方法の概略を説明した。 次 に、 その閉塞濾過シミュレーション方法を利用して閉塞濾過のシミュレーショ ンを行う閉塞濾過シミュレ一夕について説明する。
--2. 閉塞濾過シミュレータのハードウェア構成等—一
図 2に、 本発明にかかる濾過推移シミユレ一ション装置の実施例の機能プロ ック図を示す。
濾過推移シミュレーション装置は、 入力手段 2、 演算手段 4、 出力手段 6を 備えている。 入力手段 2には、 小実験データ、 システム因子情報等が入力され る (入力手段 2は、 小実験デ一夕、 システム因子情報等を取得する手段 (取得 手段) として機能する) 。 演算手段 4は、 入力された情報等と、 濾過推移特性 情報とに基づき、 濾過推移シミュレーション情報を演算する。 出力手段 6は、
この濾過推移シミュレーション情報を出力する。 このようにして、 濾過推移シ ミュレ一ション情報が得られる。
図 3は、 本発明にかかる濾過推移シミュレーション装置を、 CPUを用いて 実現した閉塞濾過シミュレ一夕 500のハードウェア構成である。 閉塞濾過シ ミュレ一夕は、 CPU10、 R〇M12、 RAM 14, キ一ボード 16、 ディ スプレイ 18、 プリンタ 20を備えている。
CPU10は、 後述する閉塞濾過シミュレーションプログラムの実行のほか、 閉塞濾過シミュレータ 500全体を制御する。 ROM 12は、 閉塞濾過シミュ レ一タ 500を制御するためのプログラムを記録する。 RAMI 4は、 CPU 10のワーク領域等を提供する。 キーボード 16は、 ユーザの操作にしたがつ て入力情報を受けつける。 ディスプレイ 18、 プリン夕 20は、 CPU 10の 命令にしたがって情報を出力する。
閉塞濾過シミュレータ 500のオペレーティングシステム (OS) は、 例え ば、 マイクロソフト社の W i n d ows (登録商標) XP等を用いることとす る。 また、 閉塞濾過シミュレーションプログラムは、 マイクロソフト社のアブ リケ一シヨンソフトウェアであるマイクロソフト ェクセル (商標) を用いて 作成してもよい。 なお、 閉塞濾過シミュレーション装置は、 CPUを用いるこ となくハ一ドウエアロジックによって構成してもよい。 その他、 装置のハード ウェア構成、 CPUの構成も、 当業者に周知の手段によって変形可能である。 一一 3. 特許請求の範囲に記載した用語と実施形態との対応——
特許請求の範囲に記載した用語と実施形態との対応は以下の通りである。 「濾過システム」 は、 図 1の閉塞濾過システム 300に対応する。 「濾過シ ステム全体の差圧」 は、 図 1の "全差圧 ΔΡ" に対応し、 「差圧関連特性」 は、 各フィル夕の差圧を全差圧 ΔΡとの関係で表現する式 (7) の内容に対応する。 「濾過推移」 は、 その全差圧 ΔΡとの関係で表現する濾過流量 Qを求める式に 対応する。 これら 「差圧関連特性」 および 「濾過推移」 は、 上述した式 (6) 〜式 (9) を連立して解くことによって求めることができる。
「実験情報」 は、 図 5に示す "小実験データ入力" の項目で入力される濾過
面積、 または閉塞係数、 初期濾過流量に対応する。 「濾過面積に関する特性」 は、 フィルタ濾過面積に対応し、 「濾過面積比特性」 は、 濾過面積比 (生産ス ケールのフィルタ濾過面積 A/小実験のフィル夕濾過面積 As) に対応する。
「入力手段」 は、 図 4のステップ S 4 0 1、 または S 4 0 3、 または S 4 0 5、 または S 4 0 7、 または S 4 0 9、 または S 4 1 1の処理を行う閉塞濾過 シミュレータ 5 0 0の C P U 1 0に対応する。 「演算手段」 は、 図 4のステツ プ S 4 1 3、 または S 4 1 5の処理を行う C P U 1 0に対応する。 「出力手 段」 は、 図 4のステップ S 4 1 7の処理を行う C P U 1 0に対応する。
——4. 閉塞濾過シミュレーション処理の説明——
次に、 実施形態による閉塞濾過シミュレーション処理の内容を、 図 4に示す 閉塞濾過シミュレ一ションプログラムのフローチャート、 および図 5に示すュ 一ザ入力画面、 図 6に示す出力画面を参照しながら説明する。 なお、 この閉塞 濾過シミュレーション処理に利用する小実験デ一夕は、 既に取得しているもの とする。
以下に説明する閉塞濾過シミュレーション処理は、 1つのシステム設定、 す なわち、 プレフィルタ 1 0 0に装着するカートリッジフィル夕の濾過面積と本 数、 および、 ファイナルフィルタ 2 0 0に装着するカートリッジフィルタの濾 過面積と本数の組み合わせの 1パターンについて行われるものである。 したが つて、 最終的なシミュレーション結果を出力するまでに、 閉塞濾過シミュレ一 夕 5 0 0の C P U 1 0は、 図 4に示す閉塞瀘過シミュレ一ション処理 (所要濾 過時間 0の演算) を複数のシステム設定パターン (フィル夕濾過面積およびフ ィルタ本数のバリエーション) について行い、 それらのパターンの中から所要 濾過時間条件以下であるシステム設定パターンを抽出して出力することになる。 実施形態では、 システム設定パターンのうち、 「フィル夕濾過面積」 はュ一 ザ入力項目として所定の値に設定している。 したがって、 以下の閉塞濾過シミ ユレーシヨン処理は、 例示として、 複数の 「フィルタ本数」 のバリエーション に対して行うこととする。 「フィルタ本数」 のバリエーションとは、 プレフィ ルタ 1 0 0に装着するカートリッジフィルタの本数、 および、 ファイナルフィ
ルタ 200に装着するカートリッジフィル夕の本数の組み合わせのことをいう。 カートリッジフィル夕の本数の変更によって、 生産スケールのフィル夕濾過面 積が変動する (式 (8) (9) 参照) 。
具体的には、 例えば、 図 4のフローチャートで示すプログラムの初期設定と して、 CPU 10は、 プレフィル夕 100に装着するカートリッジフィル夕の 本数を初期値" 1" に設定し、 一方のファイナルフィル夕 200に装着する力 —トリッジフィルタの本数を" 1" に設定する。 そして、 CPU 10は、 その システム設定パターン (フィルタ本数の組み合わせ) について、 図 4のフロー チヤ一卜のプログラムを実行してシミュレ一ション結果を RAM 14に記録す る。 次に、 CPU 10は、 ファイナルフィルタ 200に装着するカートリッジ フィルタの本数を" 2" に設定し直して (フィルタ濾過面積を変更して) 、 同 様にプログラムを実行する。 以上のような処理を、 ファイナルフィルタ 200 に装着する力一トリッジフィル夕の本数が" n (例えば、 10) " になるまで 繰り返して、 各システム設定パターンについてのシミュレ一ション結果を R A M14に記録する。 次に、 CPU10は、 ファイナルフィルタ 200に装着す る力一トリッジフィル夕の本数を" 2" に設定し、 一方のプレフィル夕 100 に装着するカートリッジフィルタの本数を" l〜n" に設定した各システム設 定パターンについて、 シミュレーション結果を RAM 14に記録する。 なお、 カートリツジフィルタ本数の初期値および nの値は、 ユーザが任意の値を指定 可能にしてもよい。
以上のように、 CPU10は、 閉塞濾過シミュレーション処理を複数のシス テム設定パターンについて行い、 RA 14に記録されたシミュレ一ション結 果の中から、 所要濾過時間条件以下であるシステム設定パターンを抽出して出 力する。
以下、 図 4に示す閉塞濾過シミュレーションプログラムのフローチャートの 内容を説明する。
閉塞濾過シミュレータ 500の CPU10は、 図 5に示すユーザ入力画面を ディスプレイ 18に表示して閉塞濾過シミュレーション処理を開始する。 CP
U10は、 スケールアップ条件データの入力があるか否かを判断し (ステップ S401) 、 入力があればその入力データ (以下、 便宜上 "A" とする) を R AM14に記録する (ステップ S 403) 。 このスケールアップ条件デ一夕と は、 図 5に示すように、 濾過システム 300全体の全差圧 ΔΡ [Kg/cm2] 、 所要濾過時間条件 0OP [mi n (分) ] 、 全濾過スラリー液量 V [L (リット ル) ] に関するデータである。
CPU10は、 プレフィルタデータの入力があるか否かを判断し (ステップ S 405) 、 入力があればその入力データ (以下、 便宜上 "B" とする) を R AM 14に記録する (ステップ S 407) 。 このプレフィルタデータとは、 図 5に示すように、 生産スケールのフィル夕条件に関するデータと小実験データ とに大きく分けることができる。 生産スケールのフィル夕条件とは、 フィルタ 仕様 (フィル夕のコード名等) 、 フィル夕コスト [万円 本] 、 濾過面積 [c m2ノ本] である。 一方、 小実験データとは、 小実験で使用したプレフィルタ用 平膜の濾過面積 [cm2 本] 、 閉塞係数 [1/L] 、 初期濾過流量 [LZmi n] である。
CPU10は、 ファイナルフィルタデータの入力があるか否かを判断し (ス テツプ S 409) 、 入力があればその入力データ (以下、 便宜上 "C" とす る) を RAM 14に記録する (ステップ S 411) 。 このファイナルフィル夕 データとは、 図 5に示すように、 生産スケールのフィルタ条件に関するデータ と小実験データとに大きく分けることができる。 生産スケールのフィルタ条件 とは、 フィルタ仕様、 フィルタコスト [万円 Z本] 、 濾過面積 [cm2Z本] で ある。 一方、 小実験データとは、 小実験で使用したファイナルフィルタ用平膜 の濾過面積 [cm2Z本] 、 閉塞係数 [1ZL] 、 初期濾過流量 [LZmi n] である。
CPU10は、 以上の処理によって RAM 14に記録された入力データ A、 B、 Cに基づき、 微小区間 Δν毎の濾過流量 Q [LZmi n] を演算して演算 結果を RAM 14に記録する (ステップ S 413) 。 なお、 区間 Δν毎の濾過 流量 Qは、 例えば、 上述した式 (6) 〜式 (9) を連立して解く処理を CPU
10が実行することによって求めることができる。 また、 微小区間 Δνの量は、 全濾過スラリー液量に応じて設定すればよく、 例えば、 液量 200 Lの濾過を 行うのであれば、 Δν= 10 Lとして設定することができる。 この場合、 区間 △ V毎の濾過流量 Qは、 式 (8) および (9) における変数 Vを、 V= 10、 20、 '30、 - - - 190, 200とした場合の、 それぞれの濾過流量 Qを算 出することによって求めることができる。
CPU10は、 AVZQを演算することによって得られる各微小区間での瀘 過時間を積算することにより、 所要濾過時間 Θを演算して演算結果を RAM 1 4に記録する (ステップ S 41 5) 。 CPU 10は、 シミュレ一シヨン結果を ディスプレイ 1 8に出力して (ステップ S 417) 、 処理を終了する。
図 6は、 ステップ S 417によって出力される閉塞濾過シミュレーション処 理の出力画面を示す図である。 スケールアップシミュレーション結果は、 スケ —ルアップ条件の表示と、 フィル夕組み合わせパターンの表示とを含む。 スケ —ルアップ条件の表示は、 所要濾過時間条件、 全濾過スラリー液量、 フィル夕 仕様の各情報が含まれる。 フィル夕組み合わせの各パターンには、 予測所要濾 過時間 [mi n] と、 各パターンのフィル夕に要するコスト [万円] の情報が 併せて表示される。
図に示すように、 所要濾過時間条件を 32m i n以下、 全濾過スラリー液量 を 200 Lとした場合のスケールアップシミュレーション結果は、 例えば、 プ レフィル夕 1 00に用いる力一トリッジフィルタを 4本とし、 一方のフアイナ ルフィル夕 200に用いるカートリッジフィル夕を 4本とした場合、 予測所要 濾過時間が 29m i nであり、 フィルタにかかるコストは 28万円となる。 なお、 シミュレーション結果の出力は、 図 6に示すようにチャートで表示し てもよいし、 これに限られず、 シミュレーション結果をグラフ表示 (例えば、 図 7〜図 9等参照) するようにしてもよい。
図 7〜図 9に、 実施形態におけるスケールアップシミュレーション結果 (計 算値) と、 実測値 (実施結果) との比較をグラフで示した。 被濾過液は、 藤沢 薬品工業 (株) の "ゥロカット" の溶解液を用い、 これについて清澄濾過を行
つた。
図 7は、 閉塞濾過シミュレータ 500によるシミュレーション結果 (濾過時 間一濾過液量) と実測値の比較を示す。 濾過液量と、 その濾液量を濾過するの に要する時間との関係は次の通り求まる。 全濾過液量が Vであるとき、 それを 均等に n分割して微小濾過液量 Δ Vで考える。
まず、 イニシャルから Δνだけ濾過する際に要する濾過時間は、 式 (8) 、 (9) に、 濾過液量として Δνを代入し、 そのときの係数 k、 1を算出する。 この値を用いて式 (5) 、 (6) 、 (7) を連立して解くことにより、 式
(6) から流量 Qが求まる。 この Qを式 (10) に代入することにより、 AV を濾過するのに要する時間 0が算出される。 イニシャルから 2 Δν濾過する際 に要する時間は、 同じく濾過液量として 2 Δνを用い、 式 (5) 、 (6) 、
(7) を連立して解いた後、 式 (6) から流量 Qを求めて式 (10) を用いる ことで所要濾過時間 Θが算出される。
これらを繰り返すことで、 濾過時間と濾過液量の関係が求まる。
図 8は、 閉塞濾過シミュレータ 500によるシミュレーション結果 (濾過時 間一フィルタ差圧) と実測値の比較を示す。
具体的には、 濾過液量 Vの段階での各フィルタの差圧 ΔΡは、 式 (8) 、 (9) により、 その時点の係数 k、 1を算出し、 式 (5) 、 (6) 、 (7) を 連立させて解くことによって求めることができる。
この濾過液量 Vの濾過に要した時間 0は、 先の図 7の手順から算出されるた め、 0と ΔΡΡ、 APFが関係づけられる。 これからシミュレーション線を算出 し、 実測値をプロットしたものが図 8である。
図 9は、 閉塞濾過シミュレータ 500によるシミュレーション結果 (濾過時 間一濾過流量) と実測値の比較を示す。 先と同じく、 濾過液量 Vの段階での濾 過流量 Qは、 まず式 (8) 、 (9) により、 その時点での係数 k、 1を算出し、 式 (5) 、 (6) 、 (7) を連立させて解くことにより、 式 (6) から求める ことができる。
また、 この濾過液量 Vの濾過に要した時間 0は、 式 (10) の関係から、 先
の図 7のように求められる。 したがって、 0と Qは関係づけられ、 このシミュ レ一シヨン線を算出し、 実測値とともに示したものが図 9である。
図 7〜図 9に示すように、 実施形態によるシミュレーション結果 (計算線) は、 実測値 (実施結果) と良く一致した良好な結果を示した。
一— 5 . 実施形態による効果一—
閉塞濾過シミュレーション処理は、 濾過流量等の演算を、 (濾過中の各フィ ル夕の状態等を原因として生ずる) プレフィルタ 1 0 0およびファイナルフィ ルタ 2 0 0のそれぞれの差圧の変動を濾過システム 3 0 0の全差圧 Δ Pを用い て表現することを介して行っている。 したがって、 閉塞濾過シミュレータ 5 0 0は、 2段のフィルタを直列に繋げた濾過システム 3 0 0において、 濾過流量 等の経時的変化を正確にシミュレ一トすることができる。
一方、 従来のシミュレーション方法は、 濾過中の各フィルタの相互関係を考 慮にいれておらず、 そのために濾過流量等の経時的なシミュレ一ションを行う ことができなかった。 この点、 実施形態では、 濾過流量等を全差圧 Δ Ρを用い て表現し、 かつ、 濾過中に起こる濾過閉塞を原因とする経時的な濾過圧力およ び濾過流量等の変動を、 微小区間毎に演算したうえでその演算結果を積算する という発明者独自の知見に基づく手法により、 濾過流量等の経時的なシミュレ ーシヨンおよび所要濾過時間の演算等を可能にしている。
また、 小実験データを利用してシミュレーションを行うから、 手間のかかる 生産スケールでの濾過実験を行うことなく、 容易に行える小実験で得られるデ —夕を用いて迅速かつ簡易にシミュレートすることができる。
さらに、 濾過流量等の演算の際に用いるスケールアップ係数は、 濾過流量が 各フィル夕の差圧に依存するというファクタ、 および、 初期濾過流量がフィル 夕濾過面積に依存するというファクタを考慮している。 したがって、 本シミュ レーシヨン処理は、 小実験データに基づくスケールアップ後の濾過流量等の経 時的変化を、 より一層正確にシミュレートすることができる。
以上のように、 実施形態による閉塞濾過シミュレーション処理によれば、 濾 過流量等の経時的変化をより一層正確にシミュレー卜することができる。 した
がって、 任意のシステム設定パタ一ンに対するシミュレーションを行うことで、 それらのシステム設定の中から最適なシステム設定を選択することができる。 ここで、 最適なシステム設定の選択のために考慮にいれる一般的事項は、 シミ ユレーシヨンされた所要濾過時間は生産スケールで要求される所定の濾過時間 以内であるかという点と、 設置スペース上の制約に合致するかという点と、 低 ランニングコストであるかという点である。
図 1 0は、 そのようなシステム設定の中から最適なものを決定する手法を、 例示を用いて説明する図である。 具体的には、 プレフィルタが 2本または 4本 の各設定に対して、 ファイナルフィルタを 2本から 8本の各本数で設定した場 合の、 濾過時間およびランニングコスト (フィルタの経費) をグラフにした。 図に示すように、 フィルタ本数 (カートリッジフィルタ本数) を増やせば、 フ ィルタ濾過面積が増加するので所要濾過時間は減少する。 一方、 フィル夕本数 を増やせばランニングコストは増加することになる。 したがって、 シミュレ一 シヨンの結果から、 最適なシステム設定を決定する場合には、 上記した式 (1 1 ) に合致する所要濾過時間であり、 かつ、 式 (1 2 ) におけるコストが最小 値となる組み合わせに決定するのが好ましい。 図 1 0に示す例では、 プレフィ Jレタ 1 0 0に使用するカートリッジフィルタを 4本とし、 一方、 ファイナルフ ィルタ 2 0 0に使用するカートリッジフィルタを 4本とする組み合わせが最も 好ましいシステム設定となる。
以上のようにしてシステム設定の決定を行うことにより、 コスト面およびス ペース面の両方の要求を満たす最適なシステム設定を選定することができる。 一一 6 . その他の実施形態等一一
6 - 1 . 濾過推移シミュレーション方法のバリェ一シヨン
実施形態では、 本発明にかかる濾過推移シミュレ一ション方法を利用するシ ステムとして、 プレフィルタ 1 0 0とファイナルフィルタ 2 0 0の 2段で構成 される濾過システム 3 0 0を例示したが、 これに限られるものではなく、 3段、 4段等の複数のフィルタ構成される濾過システムについても、 本発明にかかる 濾過推移シミユレ一ション方法を利用することができる。
濾過流量 Q等を演算するために用いる上述した各式、 各因子、 係数、 閉塞係 数等は例示であって、 当業者は、 シミュレーション対象となる被濾過液ゃフィ ルタの性質に応じ、 各式、 各因子、 係数等の中身、 内容を周知の手段によって 変形することが可能である。
例えば、 次のような観点によってスケールアップ係数を変形してもよい。 ス ケ一ルアップ時に利用されるプリーツ状の力一トリッジフィルタは、 小実験で 利用される平膜とは異なる構造を有している。 具体的には、 プリーツ状の力一 トリッジフィルタは、 濾過面積を増大させる等の目的で織り込まれた構造を有 しており、 平膜よりも がやや大きい。 そのため、 同じ濾過圧力で濾過を行 つても、 単位濾過面積当たりの濾過流量が減少する (一般的には、 数割程度の 減少) 。 したがって、 上述したスケールァップ係数には、 フィル夕メーカ等に よって提示されるデータを用いて、 平膜とプリーツ状カートリッジに関する、 単位濾過面積当たりの濾過流量の比率 (以下、 「圧損効率 X」 とする) に関す るファクタを導入してもよい。
具体的には、 この圧損効率 Xは、 次式 (1 3 ) で表される。
(Qz/ A)
X=
(Qsz/ As)
… (1 3 )
Q z , Q s z:生産スケ一ルで使用するカートリッジフィル夕の濾過流量、 およ び、 小実験で使用する平膜の濾過流量 (それぞれ、 同じ濾過圧力を付加したと きに得られる値)
A, As:生産スケールのフィルタ濾過面積、 および、 小実験のフィルタ濾過 なお、 フィル夕濾過面積は、 (フィルタ 1本当たりの濾過面積) X (装着す るフィル夕の本数) で求まる。 この観点を利用する場合、 特許請求の範囲に記 載した 「基準濾過流量に関する特性」 は、 単位濾過面積当たりの濾過流量に対 応し、 「基準濾過流量比特性」 は、 上述した "圧損効率" に対応する。
実施形態では、 小実験データ等の情報に基づいて閉塞濾過の濾過推移をシミ ユレ一卜する方法を例示したが、 これに限られるものではない。 その他の実施 形態として、 あるスケールにおける 1以上の実験データに基づいて、 そのスケ
—ルと同一スケールにおいてフィルタ本数等を変更した場合の濾過推移をシミ ュレートすることもできる。 このとき、 その実験と同規格のカートリッジフィ ル夕を使用するのであれば、 上記した圧損効率は 1として演算すればよい。 なお、 実施形態で説明した濾過推移シミュレーション方法のアルゴリズムや、 ユーザ入力項目の選定、 シミュレーション結果の出力項目の選定は、 当業者に 周知の手段によって変形することが可能である。
6— 2 . 閉塞濾過シミュレータ 5 0 0の適用バリエーション
実施形態では、 本発明にかかる濾過推移シミュレーション装置として、 閉塞 濾過シミュレータ 5 0 0を例示したが、 これに限られるものではない。 その他 の実施形態として、 本発明にかかる閉塞濾過シミュレータ 5 0 0の機能を備え たサーバをネットヮ一クに接続し、 閉塞濾過シミュレーションサービスサーバ として運営してもよい。 具体的には、 閉塞濾過シミュレーションサービスサ一 バは、 クライアントが入力した濾過システムの設定等を受信して、 その設定等 に応じたシミュレーション結果を送信するようにすればよい。
6 - 3 . プログラム実行方法等の実施例
本実施形態では、 C P U 1 0の動作のためのプログラムを R OM 1 2に記憶 させているが、 このプログラムは、 プログラムが記憶された C D— R OMから 読み出してハードディスク等にインス I ^一ルすればよい。 また、 C D - R OM 以外に、 フレキシブルディスク (F D) 、 I Cカード等のプログラムをコンビ ユー夕可読の記録媒体からインス! ルさせるようにしてもよい。 さらに、 通 信回線を用いてプログラムをダウンロードさせることもできる。 また、 C D— R OMからプログラムをインス! ルすることにより、 C D— R OMに記憶さ せたプログラムを間接的にコンピュータに実行させるようにするのではなく、 C D— R OMに記憶させたプログラムを直接的に実行するようにしてもよい。 なお、 コンピュータによって、 実行可能なプログラムとしては、 そのままィ
ンストールするだけで直接実行可能なものはもちろん、 一旦他の形態等に変換 が必要なもの (例えば、 デ一夕圧縮されているものを解凍する等) 、 さらには、 他のモジュ一ル部分と組合して実行可能なものも含む。
以上、 本発明の概要および本発明の好適な実施形態を説明したが、 各用語は、 限定のために用いたのではなく説明のために用いたのであって、 本発明に関連 する技術分野の当業者は、 本発明の説明の範囲内でのシステム、 装置、 及び方 法のその他の変形を認め実行することができる。 したがって、 そのような変形 は、 本発明の範囲内に入るものとみなされる。