従来、たとえばフライスカッターおよびドリルのような切削工具が開発されている。
[本開示が解決しようとする課題]
切削工具にセンサを取り付けることにより、切削工具による加工の状態を示す物理量を計測することができる。このような計測を用いた優れた技術が望まれる。
本開示は、上述の課題を解決するためになされたもので、その目的は、切削工具による加工の状態を計測する際に、計測の精度を高めるとともに計測範囲を拡大することが可能な切削工具、切削システム、処理方法および処理プログラムを提供することである。
[本開示の効果]
本開示によれば、切削工具による加工の状態を計測する際に、計測の精度を高めるとともに計測範囲を拡大することができる。
[本開示の実施形態の説明]
最初に、本開示の実施形態の内容を列記して説明する。
(1)本開示の実施の形態に係る切削工具は、シャフト部と、前記シャフト部に取り付けられる複数のセンサとを備え、前記複数のセンサは、加速度センサであり、前記複数のセンサは、各々の位置が前記シャフト部の軸方向および前記シャフト部の径方向の少なくともいずれか一方において異なるように前記シャフト部に取り付けられる。
このように、複数の加速度センサの各々の位置がシャフト部の軸方向およびシャフト部の径方向の少なくともいずれか一方において異なるように各センサがシャフト部に取り付けられる構成により、シャフト部への複数のセンサの取付位置の違いに応じて、あるセンサの感度を高めるとともに他のセンサの計測範囲を拡大し、工具全体としてセンシング性能を高めることができる。したがって、切削工具による加工の状態を計測する際に、計測の精度を高めるとともに計測範囲を拡大することができる。
(2)好ましくは、前記複数のセンサは、計測範囲および感度が同じである。
このような構成により、同一のセンサを複数準備すればよいため、切削工具の製造コストを低減することができる。
(3)本開示の実施の形態に係る切削工具は、シャフト部と、前記シャフト部に取り付けられる複数のセンサとを備え、前記複数のセンサ各々の計測範囲は異なり、前記複数のセンサ各々の感度は異なり、前記複数のセンサ各々の計測対象は同じ種類の物理量である。
このように、計測範囲および感度が異なり、かつ計測対象が同じ種類の物理量である複数のセンサがシャフト部に取り付けられる構成により、たとえば、感度が高いセンサおよび計測範囲が広いセンサを用いて、各センサの特性を活かした全体としてセンシング性能の高い切削工具を実現することができる。したがって、切削工具による加工の状態を計測する際に、計測の精度を高めるとともに計測範囲を拡大することができる。
(4)好ましくは、前記複数のセンサは、第1のセンサおよび第2のセンサを含み、前記第1のセンサの感度は、前記第2のセンサの感度より高く、前記第1のセンサの計測範囲は、前記第2のセンサの計測範囲より狭い。
このような構成により、第1のセンサの高い感度および第2のセンサの広い計測範囲を活かした計測を行うことができる。
(5)より好ましくは、前記第1のセンサの感度は、前記第2のセンサの感度の2倍以上であり、前記第2のセンサの計測範囲は、前記第1のセンサの計測範囲の2倍以上である。
このような構成により、特性差のより大きな複数のセンサを用いてより高いセンシング性能の切削工具を実現することができる。
(6)より好ましくは、前記複数のセンサの位置は、前記シャフト部の軸方向および前記シャフト部の径方向の少なくともいずれか一方において異なる。
このような構成により、シャフト部への各センサの取付位置の違いに応じた感度の違いおよび計測範囲の違いと、各センサ自体の計測範囲および感度の違いとを組み合わせて、計測の精度をより高めるとともに計測範囲をより拡大することができる。
(7)好ましくは、前記複数のセンサは、加速度センサであり、前記加速度センサの計測方向は、前記シャフト部の回転軸を法線とする平面に沿った方向であって、前記加速度センサと前記回転軸とを結ぶ直線に対して直交する方向に沿う。
このような構成により、切削対象物との接触に伴う振動等の加速度を計測することができる。
(8)より好ましくは、前記切削工具は、さらに、前記複数のセンサとは別に、歪センサ、温度センサおよび音センサのうちの少なくともいずれか1つを備える。
このような構成により、たとえば、シャフト部に発生する歪の異常な増大、ならびにシャフト部に異常な振動が発生した場合の摩擦熱および異音、のうちの少なくともいずれか1つを検出することができる。
(9)好ましくは、前記切削工具は、さらに、無線通信装置を備え、前記無線通信装置は、前記センサの計測結果を示すセンサ情報を送信する。
このような構成により、たとえば、受信側の装置において、各センサの計測結果を用いた異常検知等の処理を行うことができる。
(10)好ましくは、前記切削工具は転削工具である。
このような構成により、たとえば、転削対象物の転削時に転削工具に発生する加速度の計測の精度を高めるとともに計測範囲を拡大することができる。
(11)本開示の実施の形態に係る切削システムは、上記(9)に記載の切削工具と、管理装置とを備え、前記管理装置は、前記切削工具から前記センサ情報を受信する。
このように、複数の加速度センサの各々の位置がシャフト部の軸方向およびシャフト部の径方向の少なくともいずれか一方において異なるように各センサがシャフト部に取り付けられる構成により、シャフト部への複数のセンサの取付位置の違いに応じて、あるセンサの感度を高めるとともに他のセンサの計測範囲を拡大し、工具全体としてセンシング性能を高めることができる。したがって、切削工具による加工の状態を計測する際に、計測の精度を高めるとともに計測範囲を拡大することができる。
(12)本開示の実施の形態に係る処理方法は、切削工具を管理する管理装置における処理方法であって、前記切削工具は、シャフト部と、前記シャフト部に取り付けられる複数のセンサとを備え、前記複数のセンサは、加速度センサであり、前記複数のセンサは、各々の位置が前記シャフト部の軸方向および前記シャフト部の径方向の少なくともいずれか一方において異なるように前記シャフト部に取り付けられ、前記処理方法は、工作機械に取り付けられた前記切削工具により切削対象物の切削が行われた際に、前記複数のセンサの計測結果を記憶部に書き込むステップと、前記記憶部に書き込まれた前記複数のセンサの計測結果を処理するステップとを含む。
このような方法により、シャフト部への複数のセンサの取付位置の違いに応じて、あるセンサの感度を高めるとともに他のセンサの計測範囲を拡大し、工具全体としてセンシング性能を高めることができる。したがって、切削工具による加工の状態を計測する際に、計測の精度を高めるとともに計測範囲を拡大することができる。
(13)本開示の実施の形態に係る処理プログラムは、切削工具を管理する管理装置において用いられる処理プログラムであって、前記切削工具は、シャフト部と、前記シャフト部に取り付けられる複数のセンサとを備え、前記複数のセンサは、加速度センサであり、前記複数のセンサは、各々の位置が前記シャフト部の軸方向および前記シャフト部の径方向の少なくともいずれか一方において異なるように前記シャフト部に取り付けられ、コンピュータを、工作機械に取り付けられた前記切削工具により切削対象物の切削が行われた際に、前記複数のセンサの計測結果を記憶部に書き込む保存処理部と、前記保存処理部によって書き込まれた前記複数のセンサの計測結果を処理する制御部、として機能させるためのプログラムである。
このような構成により、シャフト部への複数のセンサの取付位置の違いに応じて、あるセンサの感度を高めるとともに他のセンサの計測範囲を拡大し、工具全体としてセンシング性能を高めることができる。したがって、切削工具による加工の状態を計測する際に、計測の精度を高めるとともに計測範囲を拡大することができる。
以下、本開示の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。また、以下に記載する実施の形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
<第1の実施の形態>
図1は、本開示の第1の実施の形態に係る切削工具の構成を示す側面図である。
切削工具101は、たとえば、フライス盤等において使用される切削工具であり、具体的には、たとえば、エンドミルである。切削工具101は、金属等からなる切削対象物を切削するために使用される。切削工具101は、アーバ等の工具ホルダ210に保持された状態で使用される。
工具ホルダ210は、工具ホルダ210に回転力を与える柱状の主軸220に取り付けられる。工具ホルダ210は、主軸220の延長線上に配置される柱状の部材である。具体的には、工具ホルダ210の上端部が、主軸220に保持される。また、工具ホルダ210の下端部が、切削工具101を保持する。
図1を参照して、切削工具101は、シャフト部11と、刃取付部12と、図示しない刃部と、複数の加速度センサ14と、位置変更部50とを備える。シャフト部11の上部は、シャンク111を構成し、工具ホルダ210に保持される。なお、切削工具101は、刃部を備えない構成であってもよい。また、刃部は、刃取付部12に一体に固定されたものであってもよいし、刃取付部12に着脱可能に取り付けられるものであってもよい。以下、一例として、加速度センサ14の数が2つである場合について説明する。
図1に示す例では、シャフト部11と刃取付部12との境界を二点鎖線41により示している。
シャフト部11は、後述する拡径部15を除き、シャフト部11の中心軸17に垂直な断面において、円形または多角形の周面を持つ棒形状である。シャフト部11の基材は、たとえば、切削工具用の超硬合金または金型用鋼により構成されている。
図2は、本開示の第1の実施の形態に係る切削工具の構成を示す矢視図である。詳細には、図2は、図1におけるA方向から見た矢視図である。図3は、本開示の第1の実施の形態に係る切削工具の構成を示す図である。詳細には、図3は、図1におけるB方向から見た矢視図である。
図2を参照して、各加速度センサ14は、たとえば、一方向の加速度を計測する、いわゆる一軸の加速度センサである。各加速度センサ14の計測方向141は、たとえば、切削工具101による切削に伴う振動が発生する方向である。すなわち、各加速度センサ14は、切削工具101による切削に伴う振動の加速度を計測することができる。
具体的には、各加速度センサ14の計測方向141は、シャフト部11の回転軸である中心軸17を法線とする平面18に沿った方向であって、加速度センサ14と中心軸17とを結ぶ直線143に対して直交する方向に沿う。
各加速度センサ14は、加速度の計測可能な範囲(以下、加速度の計測範囲とも称する)、および感度すなわち分解能が同じである。具体的には、各加速度センサ14は、計測方向141の加速度の計測範囲が同じである。また、各加速度センサ14は、計測方向141の加速度の分解能が同じである。
なお、各加速度センサ14は、遠心加速度を計測してもよい。この場合、各加速度センサ14の計測方向は、たとえば、シャフト部11の中心軸17と加速度センサ14とを結ぶ方向(以下、遠心方向とも称する)に沿う。
また、この場合、各加速度センサ14は、遠心加速度の計測可能な範囲(以下、遠心加速度の計測範囲とも称する)および感度が同じである。具体的には、各加速度センサ14は、遠心方向における遠心加速度の計測範囲が同じである。また、各加速度センサ14は、遠心方向における遠心加速度の分解能が同じである。
また、各加速度センサ14は、たとえば、三方向の加速度を計測する、いわゆる三軸の加速度センサであってもよい。また、加速度センサ14の代わりに、他の種類のセンサがシャフト部11に取り付けられてもよい。
図1〜図3を参照して、シャフト部11は、シャフト部11のうちの他の部位よりも径が太く、加速度センサ14を取り付け可能な拡径部15を含む。
詳細には、シャフト部11は、切削工具101の軸方向、具体的には長手方向である方向Xに沿った一部の領域に、方向Xに対して直交する方向である径方向Yにおいてシャフト部11の径を拡大する拡径部15を含む。
具体的には、拡径部15の径は、シャフト部11における拡径部15以外の部位の径よりも大きい。換言すれば、拡径部15は、シャフト部11における拡径部15以外の部位よりも太い。
切削工具101の方向Xは、シャフト部11の中心軸17に沿っている。たとえば、切削工具101の方向Xおよびシャフト部11の中心軸17は、互いに平行である。
拡径部15は、円柱状に形成されている。図1〜図3に示す例では、拡径部15は、円柱の一部が除去された形状である。本明細書においては、円柱だけでなく、円柱の一部が除去された形状についても円柱状と称する。具体的には、拡径部15は、円柱内におけるシャフト部11の中心軸17に対して平行でかつ平坦な表面55を有する。拡径部15は、表面55に対して中心軸17の反対側の部分が円柱から除去された形状である。なお、拡径部15の径は、中心軸17方向視で、中心軸17を通り、拡径部15の周面上に両端がある線分のうち最大のものを言う。図1〜図3に示す例では、拡径部15の径は、円柱の一部が除去される前の当該円柱の直径に相当する。
また、拡径部15は、表面55の一部において開口し、かつ中心軸17側に凹む凹部16を有する。凹部16は、長方形状に開口している。凹部16の底面161は、表面55に対して平行な平面である。底面161は、中心軸17に沿って延びるように長方形状に形成されている。表面55には、複数のねじ穴57が形成されている。
なお、図1〜図3に示す例では、拡径部15は1つの表面55を有しているが、これに限定されるものではない。たとえば、拡径部15は、中心軸17に対して互いに反対側に位置する2つの表面55を有する構成であってもよい。このような構成により、拡径部15のバランスがよくなるため、切削工具101の回転時に異常な振動が発生することを防止することができる。
位置変更部50は、シャフト部11における各加速度センサ14の取り付け位置を変更可能である。
具体的には、たとえば、位置変更部50は、シャフト部11の軸方向、すなわち、中心軸17に沿った方向に加速度センサ14の位置を変更することが可能である。
図1〜図3に示す例では、方向Xに沿って並ぶセンサ位置A1、センサ位置A2、センサ位置A3、およびセンサ位置A4が、加速度センサ14を取り付けることが可能な4つの位置となっている。センサ位置A1、センサ位置A2、センサ位置A3、およびセンサ位置A4は、刃取付部12に近い側から遠い側へこの順に並んでいる。
位置変更部50は、センサ位置A1からセンサ位置A4の範囲において、加速度センサ14の位置を変更できるように構成されている。
具体的には、位置変更部50は、加速度センサ14を支持する台座部51と、凹部16の底面161に形成された複数のねじ穴53と、ねじ穴53と螺合する複数の雄ねじ部材54とを含む。ねじ穴53の数は、たとえば10個である。雄ねじ部材54の数は、1つの加速度センサ14ごとに4つである。したがって、雄ねじ部材54の数は、加速度センサ14の数が2つである場合には8個である。
台座部51は、板状の部材である。台座部51には、雄ねじ部材54の脚部を挿通可能な、図示しない複数の貫通孔が形成される。台座部51には、たとえば4つの貫通孔が形成される。
ねじ穴53は、方向Xに沿った2つの列において、それぞれ、4つずつ形成されている。各列において、刃取付部12に近い側から1つ目のねじ穴53と2つ目のねじ穴53とが、センサ位置A1に加速度センサ14を取り付けるために用いられる。
また、各列において、刃取付部12に近い側から2つ目のねじ穴53と3つ目のねじ穴53とが、センサ位置A2に加速度センサ14を取り付けるために用いられる。
また、各列において、刃取付部12に近い側から3つ目のねじ穴53と4つ目のねじ穴53とが、センサ位置A3に加速度センサ14を取り付けるために用いられる。
また、各列において、刃取付部12に近い側から4つ目のねじ穴53と5つ目のねじ穴53とが、センサ位置A4に加速度センサ14を取り付けるために用いられる。
たとえば、センサ位置A1に加速度センサ14を取り付ける場合には、方向Xに沿った各列における、刃取付部12に近い側から1つ目のねじ穴53および2つ目のねじ穴53に、台座部51の4つの貫通孔を位置合わせした状態において、4つの雄ねじ部材54と4つのねじ穴53とを螺合することにより、センサ位置A1に加速度センサ14が取り付けられる。
そして、加速度センサ14の取付位置を、センサ位置A1からセンサ位置A2へ移動させる場合には、方向Xに沿った各列における、4つの雄ねじ部材54と4つのねじ穴53との螺合を解除した後、刃取付部12に近い側から2つ目のねじ穴53および3つ目のねじ穴53に、台座部51の4つの貫通孔を位置合わせした状態において、4つの雄ねじ部材54と4つのねじ穴53とを螺合することにより、センサ位置A2に加速度センサ14が取り付けられる。
図1に示す例では、2つの加速度センサ14が、センサ位置A1〜センサ位置A4のうちの2つの位置に取り付けられる。具体的には、たとえば、2つの加速度センサ14が、センサ位置A1およびセンサ位置A4に取り付けられる。
位置変更部50は、たとえば、シャフト部11の径方向に加速度センサ14の位置を変更することが可能である。
図4は、本開示の第1の実施の形態に係る切削工具の構成を示す側面図である。詳細には、図4は、位置変更部50がシャフト部11の径方向等に加速度センサ14の位置を変更することが可能であることを示す図である。
図5は、本開示の第1の実施の形態に係る切削工具の構成を示す矢視図である。詳細には、図5は、図4におけるA方向から見た矢視図である。図6は、本開示の第1の実施の形態に係る切削工具の構成を示す矢視図である。詳細には、図6は、図4におけるB方向から見た矢視図である。
図4〜図6を参照して、位置変更部50は、さらに、位置変更板56と、雄ねじ部材58とを含む。位置変更板56は、図1に示す拡径部15の表面55に固定される。位置変更板56が表面55に固定されることにより、拡径部15の凹部16が塞がれる。
図4〜図6に示す位置変更板56は、たとえば、長方形状に形成された板状部材である。位置変更板56は、図1に示す拡径部15の表面55のサイズに一致したサイズを有し、かつ所定の厚みを有する。
図4〜図6に示す例では、方向Xに沿って並ぶセンサ位置A5、センサ位置A6、センサ位置A7、およびセンサ位置A8は、位置変更板56に対して拡径部15の反対側の領域における、加速度センサ14の新たな4つの取付位置となっている。センサ位置A5、センサ位置A6、センサ位置A7、およびセンサ位置A8は、刃取付部12に近い側から遠い側へこの順に並んでいる。
位置変更板56には、図1に示す表面55に形成された複数のねじ穴57に対応する位置に形成された、図示しない複数の貫通孔が形成されている。図4に示す例では、当該貫通孔の数は4つである。当該貫通孔は、雄ねじ部材58の脚部を挿通可能に形成されている。
雄ねじ部材58は、ねじ穴57と螺合する。図4に示す例では、雄ねじ部材58の数は4つである。
また、位置変更板56には、複数のねじ穴60が形成されている。雄ねじ部材54は、ねじ穴60と螺合する。ねじ穴60の数は、たとえば10個である。
各ねじ穴60は、方向Xに沿った2つの列をなすように並んでいる。ねじ穴60は、各列において、それぞれ、5つずつ形成されている。当該各列において、刃取付部12に近い側から1つ目のねじ穴60と2つ目のねじ穴60とが、センサ位置A5に加速度センサ14を取り付けるために用いられる。
また、当該各列において、刃取付部12に近い側から2つ目のねじ穴60と3つ目のねじ穴60とが、センサ位置A6に加速度センサ14を取り付けるために用いられる。
また、当該各列において、刃取付部12に近い側から3つ目のねじ穴60と4つ目のねじ穴60とが、センサ位置A7に加速度センサ14を取り付けるために用いられる。
また、当該各列において、刃取付部12に近い側から4つ目のねじ穴60と5つ目のねじ穴60とが、センサ位置A8に加速度センサ14を取り付けるために用いられる。
たとえば、加速度センサ14の設置位置を、センサ位置A1からセンサ位置A5へ移動させる場合には、まず、方向Xに沿った各列における、4つの雄ねじ部材54と4つのねじ穴53との螺合を解除する。
次に、拡径部15の表面55上に位置変更板56を配置する。次に、表面55に形成された4つのねじ穴57と、位置変更板56の図示しない貫通孔とを位置合わせした状態において、各ねじ穴57と雄ねじ部材58とを螺合することにより、表面55に位置変更板56を固定する。
次に、位置変更板56上に台座部51を配置する。次に、台座部51の4つの貫通孔を位置合わせした状態において、刃取付部12に近い側から1つ目のねじ穴60および2つ目のねじ穴60に、4つの雄ねじ部材54と4つのねじ穴60とを螺合することにより、センサ位置A5に加速度センサ14が取り付けられる。
また、加速度センサ14の設置位置を、センサ位置A5からセンサ位置A6へ移動させる場合には、方向Xに沿った各列における、4つの雄ねじ部材54と4つのねじ穴60との螺合を解除する。
次に、刃取付部12に近い側から2つ目のねじ穴60および3つ目のねじ穴60に、台座部51の4つの貫通孔を位置合わせした状態において、4つの雄ねじ部材54と4つのねじ穴60とを螺合することにより、センサ位置A6に加速度センサ14が取り付けられる。
図4〜図6に示す例では、2つの加速度センサ14が、センサ位置A5〜センサ位置A8のうちの2つの位置に取り付けられる。具体的には、たとえば、2つの加速度センサ14が、センサ位置A5およびセンサ位置A8に取り付けられる。
また、図4〜図6に示す例では、加速度センサ14が、センサ位置A1〜センサ位置A4には取り付けられていない。
すなわち、図4〜図6に示す例では、各加速度センサ14の位置は、図1〜図3に示される例と比べて、シャフト部11の径方向Yにおいてずれている。
具体的には、センサ位置A5に取り付けられている加速度センサ14およびセンサ位置A8に取り付けられている加速度センサ14と中心軸17との距離は、センサ位置A1に取り付けられている加速度センサ14およびセンサ位置A4に取り付けられている加速度センサ14と中心軸17との距離よりも大きい。
図7は、本開示の第1の実施の形態に係る切削工具を模式的に示す側面図である。具体的には、図7は、図1に示す切削工具101を片持ち梁とみなした場合の切削工具の模式的側面図である。
図7を参照して、切削工具101の端部に位置する刃取付部12または刃部に、荷重すなわち切削抵抗F[N]が加えられる場合を想定する。
また、切削工具101の、方向Xにおける異なる2つの取付位置A,Bに加速度センサ14を取り付ける場合を想定する。具体的には、取付位置Aは、取付位置Bと比べて刃取付部12または刃部に近い。取付位置Aに取り付けられる加速度センサ14を加速度センサ14aと称し、取付位置Bに取り付けられる加速度センサ14を加速度センサ14bと称する。
図8は、本開示の第1の実施の形態に係る切削工具についてシミュレーションを行った結果を示すグラフである。詳細には、図8は、図7に示す切削工具についてシミュレーションを行った結果を示すグラフである。図8における横軸および縦軸は、それぞれ、切削工具101すなわち片持ち梁の支点からの距離、および変位量を示している。
図8は、図7に示す切削工具101の刃取付部12または刃部に切削抵抗Fが加えられた場合における、切削工具101の変形の度合いを示している。
図8に示すシミュレーション結果から、切削工具101の刃取付部12または刃部に近いほど、切削工具101の変位量が大きくなることが分かる。すなわち、取付位置Aに発生する変位量Da[m]は、取付位置Bに発生する変位量Db[m]と比べて大きい。
このため、切削工具101における加速度センサ14の取付位置が、刃取付部12または刃部に近いほど、加速度センサ14の感度が高くなる。すなわち、取付位置Aに発生する加速度[m/s^2]は、取付位置Bに発生する加速度[m/s^2]と比べて大きい。なお、演算子「^」は、べき乗を表す。
図9は、本開示の第1の実施の形態に係る切削工具における加速度センサの特性を示す表である。詳細には、図9は、図7に示す取付位置Aに取り付けられる加速度センサ14aおよび取付位置Bに取り付けられる加速度センサ14bの特性を示している。
図9を参照して、「計測範囲」の行には、加速度センサ14aの計測範囲Ra[m/s^2]、および加速度センサ14bの計測範囲Rb[m/s^2]が示されている。
「分解能」の行には、加速度センサ14aの分解能ra[m/s^2]、および加速度センサ14bの分解能rb[m/s^2]が示されている。
「入力に対する計測範囲」の行には、加速度センサ14aの、入力に対する計測範囲Fma[N]、すなわち、加速度センサ14aが計測可能な加速度に対応する切削抵抗Fの最大値と、加速度センサ14bの、入力に対する計測範囲Fmb[N]、すなわち、加速度センサ14bが計測可能な加速度に対応する切削抵抗Fの最大値が示されている。
「入力に対する分解能」の行には、加速度センサ14aの、入力に対する分解能Ua、すなわち、加速度センサ14aの、切削抵抗Fに対する分解能Ua[N]と、加速度センサ14bの、入力に対する分解能Ub、すなわち、加速度センサ14bの、切削抵抗Fに対する分解能Ub[N]とが示されている。
図8に示すように、変位量Daは、変位量Dbと比べて大きい。したがって、以下の式(1)が成り立つ。
Ab=α×Aa (0<α<1) ・・・(1)
式(1)において、Aaは取付位置Aにおいて発生する加速度[m/s^2]であり、Abは取付位置Bにおいて発生する加速度[m/s^2]であり、αは比例係数である。
まず、取付位置Aについて考える。切削抵抗F[N]によって発生する加速度Aaを計測範囲Ra[m/s^2]において計測することから、入力に対する計測範囲Fma[N]は、以下の式(2)で表される。
取付位置Bについても、取付位置Aと同様の式(3)が成り立つ。
式(1)〜式(3)により、以下の式(4)が成り立つ。式(4)は、入力に対する計測範囲Fmb[N]と、入力に対する計測範囲Fma[N]との関係を表す式である。
また、取付位置Aについて考える。切削抵抗F[N]によって発生する加速度Aa[m/s^2]を分解能ra[m/s^2]によって計測することから、入力に対する分解能Ua[N]は、以下の式(5)で表される。
取付位置Bについても、取付位置Aと同様の式(6)が成り立つ。
式(1)、式(5)および式(6)により、以下の式(7)が成り立つ。式(7)は、入力に対する分解能Ub[N]と、入力に対する分解能Ua[N]との関係を表す式である。
図10は、本開示の第1の実施の形態に係る切削工具における加速度センサの特性を示す表である。具体的には、図10は、図7に示す取付位置Bについての入力に対する計測範囲Fmb、および取付位置Bについての入力に対する分解能Ubを、それぞれ式(4)および式(7)により置き換えた表である。
ここで、切削工具101の、方向Xにおける異なる2つの取付位置A,Bに加速度センサ14を取り付ける場合を想定する。
この場合、取付位置A,Bに同じ性能の加速度センサを取り付けているため、以下の式(8)および式(9)が成り立つ。
Rb/Ra=1 ・・・(8)
rb/ra=1 ・・・(9)
式(8)および式(9)を、それぞれ式(4)および式(7)に代入する。αは1より小さいことから、以下の式(10)および式(11)が成り立つ。
Fmb>Fma ・・・(10)
Ub>Ua ・・・(11)
式(10)および式(11)から、加速度センサ14bは、加速度センサ14aと比べて、入力値すなわち切削抵抗Fの計測範囲が広く、かつ分解能が粗いことが分かる。したがって、加速度センサ14の取付位置によって、入力値に対する加速度センサ14の感度が変わることが分かる。
以上のことから、負荷の大きい加工条件下において加速度を計測する場合には、切削工具101の支点すなわち根本部に近い側の加速度センサ14により加速度を計測する一方で、負荷の小さい加工条件下において加速度を計測する場合には、切削工具101の端部に近い位置の加速度センサ14により加速度を計測する。これにより、負荷が大きい場合と小さい場合とで、加速度等の計測対象の大きさに適した計測を行うことができる。
したがって、切削工具101に加えられる負荷の程度に応じて、計測を行う加速度センサ14を変更することにより、多様な加工条件下において加速度を計測することができる。
図11は、本開示の第1の実施の形態に係る切削システムの構成を示す図である。詳細には、図11は、切削工具が、図1に示す構成要素に加えて、さらに、電池および無線通信装置を備えた状態を示す図である。なお、図11においては、電池および無線通信装置を想像線である二点鎖線により示している。
図11を参照して、切削工具101は、図1に示す構成に加えて、さらに、電池22、無線通信装置23およびハウジング24を備える。
電池22は、図示しない電力線を介して、加速度センサ14および無線通信装置23と接続されている。電池22は、電力線を介して、加速度センサ14および無線通信装置23へ電力を供給する。電力線には、電力供給のオンおよびオフを切り替えるスイッチが設けられている。
無線通信装置23は、図示しない信号線を介して、加速度センサ14と接続されている。加速度センサ14は、シャフト部11において生じる加速度を示す計測信号を信号線経由で無線通信装置23へ出力する。
無線通信装置23は、加速度センサ14から計測信号を受けると、受けた計測信号の示す計測結果を無線信号に含めて外部のパーソナルコンピュータ等の管理装置301へ送信する。管理装置301は、たとえば、受信した計測結果を蓄積し、蓄積した計測結果を処理する。具体的には、たとえば、管理装置301は、受信したセンサ情報が示す計測結果を解析する。
また、無線通信装置23は、加速度センサ14と刃取付部12または刃部との位置関係、すなわち、切削工具101における計測位置と切削位置との位置関係を示す第1の位置情報を、図示しない記憶部から取得して管理装置301へ送信する。上記計測位置は、たとえば、加速度センサ14の位置である。また、上記切削位置は、たとえば、刃取付部12または刃部の特定の位置である。
切削工具101は、さらに、図示しない操作入力部を備える。当該操作入力部は、ユーザにおいて加速度センサ14の取付位置を入力可能に構成されている。具体的には、たとえば、当該操作入力部は、ユーザが、センサ位置A1〜A8のうち、加速度センサ14が取り付けられたセンサ位置を選択することができる操作ボタンである。
第1の位置情報は、上記操作入力部において入力された加速度センサ14の取付位置に対応する。
管理装置301は、たとえば、受信した第1の位置情報を蓄積し、蓄積した第1の位置情報を解析する。
第1の位置情報の示す位置関係は、たとえば、計測位置と切削位置との距離である。なお、第1の位置情報は、これに限定されるものではなく、当該計測位置と当該切削位置との距離、および当該計測位置に対する当該切削位置の方向または当該切削位置に対する当該計測位置の方向を示してもよい。
また、無線通信装置23は、加速度センサ14とシャフト部11の中心軸17との位置関係、すなわち、切削工具101における計測位置と中心軸17との位置関係を示す第2の位置情報を、上記記憶部から取得して管理装置301へ送信する。第2の位置情報は、上記操作入力部において入力された加速度センサ14の取付位置に対応する。
管理装置301は、たとえば、受信した第2の位置情報を蓄積し、蓄積した第2の位置情報を解析する。
第2の位置情報の示す位置関係は、たとえば、計測位置と中心軸17との距離である。なお、第2の位置情報は、これに限定されるものではなく、当該計測位置と中心軸17との距離、および中心軸17に対する当該切削位置の方向または当該切削位置に対する中心軸17の方向を示してもよい。
ハウジング24は、加速度センサ14、電池22、無線通信装置23、電力線および信号線を収容した状態、具体的には、加速度センサ14等をこれらの下方および側方から覆った状態において、電池22および無線通信装置23を保持する。
図12は、本開示の第1の実施の形態に係る切削システムにおける管理装置の構成を示す図である。
図11および図12を参照して、切削システム201は、フライス盤等の工作機械202と、管理装置301とを備える。
工作機械202は、切削工具101と、切削工具101を保持する工具ホルダ210と、工具ホルダ210を保持する主軸220と、主軸220に回転力を与える図示しない駆動部と、当該駆動部を制御する図示しない制御部とを備える。駆動部は、主軸220および工具ホルダ210を介して切削工具101を駆動するモータ等である。制御部は、駆動部の回転数等を制御する。
切削工具101は、加速度センサ14の計測結果を示すセンサ情報を含む無線信号を送信する。
管理装置301は、切削工具101からセンサ情報を含む無線信号を受信し、受信したセンサ情報が示す計測結果を処理する。
具体的には、管理装置301は、無線通信部31と、制御部32と、表示部33と、記憶部35と、操作入力部36とを含む。
無線通信部31は、切削工具101の無線通信装置23と無線による通信を行う。具体的には、無線通信部31は、切削工具101の無線通信装置23から、センサ情報を含む無線信号を受信して、当該無線信号に含まれるセンサ情報の示す計測結果を記憶部35に保存する(書き込む)。
操作入力部36は、キーボードおよびマウス等のユーザインタフェースを含む。操作入力部36は、ユーザからの指示およびデータ入力を受け付ける。
記憶部35は、たとえば、HDD(Hard Disk Drive)等の記憶装置を含む。また、たとえば、記憶部35は、CD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD−ROM(Digital Versatile Disk Read Only Memory)またはBD−ROM(Blu−ray(登録商標) Disc Read Only Memory)等の補助記憶装置を含む。また、たとえば、記憶部35は、RAM(Random Access Memory)およびROM(Read Only Memory)等の半導体メモリを含む。
記憶部35には、制御部32を動作させるためのプログラムおよびデータ、無線通信部31が切削工具101から受信した計測結果、ならびに制御部32の解析結果等が保存される。なお、記憶部35は、管理装置301の外部に設けられてもよい。
制御部32は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)を含む。制御部32は、記憶部35に書き込まれた加速度センサ14の計測結果を解析し、解析結果を記憶部35に保存する。また、制御部32は、管理装置301における無線通信部31および表示部33等の各ユニットの制御を行う。
表示部33は、たとえば、ディスプレイである。表示部33は、記憶部35に書き込まれた制御部32の解析結果を表示する。なお、表示部33は、管理装置301の外部に設けられてもよい。
また、切削システム201は、工作機械202および管理装置301間の距離が長い等の理由により、両者の間において無線信号の送受信を直接行うことが困難である場合には、両者の間に中継装置を備えてもよい。この場合、工作機械202は、無線信号を中継装置経由で管理装置301へ送信する。
[処理方法]
本開示の第1の実施の形態に係る切削工具101等の切削工具を用いる処理方法について説明する。以下では、一例として、管理装置301が切削工具101を管理する場合の処理方法について説明する。
本開示の第1の実施の形態に係る切削システム201の管理装置301における無線通信部31は、工作機械202に取り付けられた切削工具101により切削対象物の切削が行われた際に、各センサの計測結果を記憶部35に書き込む(蓄積する)。
制御部32は、無線通信部31によって記憶部35に書き込まれた各センサの計測結果を処理する。
管理装置301は、記憶部35の一部または全部を含むコンピュータを備え、当該コンピュータにおけるCPU等の演算処理部は、以下のシーケンス図またはフローチャートの各ステップの一部または全部を含むプログラムを記憶部35等のメモリから読み出して実行する。この装置のプログラムは、外部からインストールすることができる。この装置のプログラムは、記録媒体に格納された状態で流通する。
図13は、本開示の第1の実施の形態に係る処理方法の手順を定めたフローチャートである。
図13を参照して、本開示の第1の実施の形態に係る処理方法Mは、切削工具101等の切削工具を管理する管理装置301における処理方法である。図11〜図13を参照して、処理方法Mについて説明する。
まず、ユーザは、切削工具101のシャフト部11を、たとえば、工作機械202における工具ホルダに固定する。
次に、電力線に設けられたスイッチをオフからオンへ切り替えることにより、電池22から各加速度センサ14および無線通信装置23へ電力を供給する(ステップS101)。
次に、切削工具101を回転駆動し、切削対象物を切削することにより、シャフト部11に切削に伴う加速度が生じる。
加速度センサ14は、シャフト部11において生じた加速度を示す計測信号を無線通信装置23へ出力する(ステップS103)。
次に、無線通信装置23は、加速度センサ14から受けた計測信号の示す計測結果および加速度センサ14の位置情報を無線信号に含めて外部の管理装置301へ送信する(ステップS105)。
管理装置301において、無線通信部31は、無線通信装置23から加速度センサ14の計測結果を示すセンサ情報を含む無線信号を受信し、受信したセンサ情報を記憶部35に保存する(ステップS107)。
制御部32は、ユーザから操作入力部36を介して入力された指示に応じて、記憶部35に書き込まれた計測結果を解析する。なお、制御部32は、計測結果の解析に限らず、他の種類の処理を行ってもよい(ステップS109)。
表示部33は、制御部32の解析結果を表示する(ステップS111)。
図14は、本開示の第1の実施の形態に係る切削工具における加速度センサの取り付けの例を示す図である。
図14に示す例では、2つの加速度センサ14のうちの1つが、センサ位置A1〜センサ位置A4のうちの1つの位置に取り付けられ、残りの1つが、センサ位置A5〜センサ位置A8のうちの1つの位置に取り付けられる。具体的には、たとえば、2つの加速度センサ14が、センサ位置A1およびセンサ位置A5にそれぞれ取り付けられる。
すなわち、図14に示す例では、各加速度センサ14の位置は、互いに、シャフト部11の径方向Yにおいて異なっている。
具体的には、センサ位置A5に取り付けられている加速度センサ14と中心軸17との距離は、センサ位置A1に取り付けられている加速度センサ14と中心軸17との距離よりも大きい。
図14を参照して、たとえば、加速度センサ14によって遠心加速度を計測する場合、加速度センサ14は、計測方向142がシャフト部11の中心軸17と加速度センサ14とを結ぶ方向に沿った方向となるように、拡径部15に取り付けられる。
遠心加速度a[m/s^2]は、以下の式(12)で表される。
a=r×ω^2 ・・・(12)
ここで、rはシャフト部11の中心軸17および加速度センサ14間の距離[m]、ωはシャフト部11の角速度[rad/sec]である。また、演算子「^」は、べき乗を表す。
すなわち、遠心加速度aは、距離rが大きいほど、大きくなる。このため、加速度センサ14の取付位置がシャフト部11の中心軸17から遠いほど、加速度センサ14の感度が高くなる。
以上のことから、シャフト部11の回転速度が大きい加工条件下において遠心加速度を計測する場合には、シャフト部11の中心軸17から近い位置に取り付けられた加速度センサ14により計測を行う一方で、シャフト部11の回転速度が小さい加工条件下において遠心加速度を計測する場合には、シャフト部11の中心軸17から遠い位置に取り付けられた加速度センサ14により計測を行う。これにより、前者の場合には意図的に加速度センサ14の感度を低下させ、後者の場合には意図的に加速度センサ14の感度を高めることができる。
したがって、切削工具101の回転速度に応じて、計測を行う加速度センサ14を変更することにより、多様な加工条件下において遠心加速度を計測することができる。
図15は、本開示の第1の実施の形態に係る切削工具における加速度センサの取り付けの例を示す図である。
図15に示す例では、4つの加速度センサ14がシャフト部11に取り付けられている。具体的には、4つの加速度センサ14のうちの2つが、センサ位置A1〜センサ位置A4のうちの2つの位置に取り付けられ、残りの2つが、センサ位置A5〜センサ位置A8のうちの2つの位置に取り付けられる。
たとえば、4つの加速度センサ14が、それぞれ、センサ位置A1、センサ位置A4、センサ位置A5およびセンサ位置A8に取り付けられる。
すなわち、図15に示す例では、センサ位置A1に取り付けられた加速度センサ14およびセンサ位置A4に取り付けられた加速度センサ14の位置が、方向Xにおいて異なっている。また、センサ位置A5に取り付けられた加速度センサ14およびセンサ位置A8に取り付けられた加速度センサ14の位置が、方向Xにおいて異なっている。
また、センサ位置A1に取り付けられた加速度センサ14およびセンサ位置A5に取り付けられた加速度センサ14が、径方向Yにおいて互いの位置が異なっている。また、センサ位置A4に取り付けられた加速度センサ14およびセンサ位置A8に取り付けられた加速度センサ14が、径方向Yにおいて互いの位置が異なっている。
なお、各加速度センサ14の計測範囲は異なってもよい。また、各加速度センサ14の感度は異なってもよい。
また、切削工具101は、シャフト部11に拡径部15が形成されない構成であってもよい。この場合、拡径していないシャフト部11に凹部16が形成され、加速度センサ14は当該凹部16に取り付けられる。また、拡径していないシャフト部11の表面に加速度センサ14が取り付けられてもよい。
また、切削工具101は、シャフト部11の内部に加速度センサ14が埋め込まれる構成であってもよい。この場合、たとえば、加速度センサ14を埋め込む深さを調節することで、径方向Yにおいて各加速度センサ14の位置を異ならせてもよい。
また、加速度センサ14は、ねじ部材以外の他の固定部材によりシャフト部11に取り付けられてもよい。
また、切削工具101は、エンドミル以外の転削工具であってもよく、たとえば、ドリルまたはフライスカッター等の転削工具であってもよい。また、切削工具101は、転削工具に限らず、たとえば、バイト等の旋削工具であってもよい。
また、位置変更部50は、シャフト部11の軸方向および径方向のいずれか一方において加速度センサ14の位置を変更可能な構成であってもよい。
また、位置変更部50は、台座部51を方向Xにスライドさせることが可能な図示しないスライド機構を有する構成であってもよい。具体的には、たとえば、シャフト部11における凹部16の底面161および位置変更板56に、台座部51をX方向に沿ってスライド移動させることが可能な、図示しないレールまたは溝部が形成される。
この場合、台座部51は、レールまたは溝部に沿ってスライド移動することができる。スライド移動した台座部51は、たとえば、ねじ部材等の固定部材によりシャフト部11に固定される。
また、切削工具101は、無線通信装置23を備えない構成であってもよい。この場合、たとえば、切削工具101は、図示しない記憶部においてセンサ情報等を保存する。そして、たとえば、ユーザは、当該記憶部に保存されたセンサ情報等を、管理装置301の記憶部35に保存する操作を行う。
図16は、本開示の第1の実施の形態に係る切削工具の構成の他の例を示す図である。
拡径部15の表面55に取り付けられる位置変更板56の数は、1つに限定されるものではなく、複数であってもよい。この場合、複数の位置変更板56は、各位置変更板56が積層された状態において、拡径部15の表面55に取り付けられる。加速度センサ14は、シャフト部11の中心軸17から最も遠い位置にある位置変更板56に取り付けられる。
各位置変更板56は所定の厚みを有しているため、積層する枚数を変更することにより、加速度センサ14とシャフト部11の中心軸17との距離を変更することができる。
[変形例1]
図17は、本開示の第1の実施の形態に係る切削システムの変形例1を示す図である。
図17を参照して、変形例1に係る切削システム203は、図11に示す工作機械202の代わりに工作機械204を備える。工作機械204は、図11に示す切削工具101の代わりに切削工具102を含む。切削工具102は、図11に示す加速度センサ14の代わりに歪センサ19を有する。
すなわち、切削工具102は、複数の歪センサ19を有する。以下、たとえば、歪センサ19の数が2つである場合について説明する。
位置変更部50は、シャフト部11における歪センサ19の取付位置を変更可能である。
具体的には、たとえば、位置変更部50は、シャフト部11の軸方向、すなわち、中心軸17に沿った方向に歪センサ19の位置を変更することが可能である。
また、位置変更部50は、たとえば、シャフト部11の径方向に沿った方向に歪センサ19の位置を変更することが可能である。
位置変更部50による歪センサ19の位置の変更方法は、図11において説明した切削システム201における加速度センサ14の位置の変更方法と同様である。
切削工具102は、歪センサ19の計測結果を示すセンサ情報を含む無線信号を送信する。
管理装置301は、切削工具101からセンサ情報を含む無線信号を受信し、受信したセンサ情報が示す計測結果を処理する。具体的には、たとえば、管理装置301は、受信したセンサ情報が示す計測結果を解析する。
図18は、本開示の第1の実施の形態の変形例1に係る切削工具を模式的に示す側面図である。具体的には、図18は、図17に示す切削工具102を片持ち梁とみなした場合の切削工具の模式的側面図である。
図18を参照して、切削工具102の端部に位置する刃取付部12または刃部に、負荷すなわち切削抵抗Fが加えられる場合を想定する。
また、切削工具102の、方向Xにおける異なる2つの取付位置A,Bに歪センサ19を取り付ける場合を想定する。具体的には、取付位置Aは、取付位置Bと比べて刃取付部12または刃部に近い。取付位置Aに取り付けられる歪センサを歪センサ19aと称し、取付位置Bに取り付けられる歪センサを歪センサ19bと称する。
図19は、本開示の第1の実施の形態の変形例1における切削工具についてシミュレーションを行った結果を示すグラフである。具体的には、図19は、図18に示す切削工具についてシミュレーションを行った結果を示すグラフである。
図19における横軸および縦軸は、それぞれ、切削工具102を片持ち梁とみなした場合における片持ち梁の支点からの距離、および歪を示している。
図19に示すシミュレーション結果から、切削工具102の支点に近いほど、換言すれば、刃取付部12または刃部から遠いほど、切削工具102の歪が大きくなることが分かる。すなわち、取付位置Bに発生する歪εbは、取付位置Aに発生する歪εaと比べて大きい。
このため、切削工具102における歪センサ19の取付位置が切削工具102の支点に近いほど、歪センサ19の感度が高くなる。
図20は、本開示の第1の実施の形態に係る切削工具における歪センサの特性を示す表である。具体的には、図20は、図18に示す取付位置Aに取り付けられる歪センサ19aおよび取付位置Bに取り付けられる歪センサ19bの特性を示している。
図20を参照して、「計測範囲」の行には、歪センサ19aの計測範囲Ra、および歪センサ19bの計測範囲Rbが示されている。
「分解能」の行には、歪センサ19aの分解能ra、および歪センサ19bの分解能rbが示されている。
「入力に対する計測範囲」の行には、歪センサ19aの、入力に対する計測範囲Fma、すなわち、歪センサ19aが計測可能な歪に対応する切削抵抗Fの最大値と、歪センサ19bの、入力に対する計測範囲Fmb、すなわち、歪センサ19bが計測可能な歪に対応する切削抵抗Fの最大値が示されている。
「入力に対する分解能」の行には、歪センサ19aの、入力に対する分解能Ua、すなわち、歪センサ19aの、切削抵抗Fに対する分解能Uaと、歪センサ19bの、入力に対する分解能Ub、すなわち、歪センサ19bの、切削抵抗Fに対する分解能Ubとが示されている。
図19に示すように、歪εaは、歪εbと比べて大きい。したがって、以下の式(13)が成り立つ。
Ab=α×Aa (1<α) ・・・(13)
式(13)において、Aaは取付位置Aにおいて発生する歪[με]、Abは取付位置Bにおいて発生する歪[με]、αは比例係数である。
式(13)におけるαおよび1の大小関係は、式(1)におけるαおよび1の大小関係に対して逆になっている。また、シャフト部11に歪センサ19を取り付ける場合においても、式(2)〜式(7)が成り立つ。
したがって、シャフト部11に歪センサ19を取り付ける場合には、シャフト部11に加速度センサ14を取り付ける場合と比べて、式(10)におけるFmbおよびFmaの大小関係が逆転するとともに、式(11)におけるUbおよびUaの大小関係が逆転する。すなわち、以下の式(14)および式(15)が成り立つ。
Fmb<Fma ・・・(14)
Ub<Ua ・・・(15)
式(14)および式(15)から、歪センサ19aは、歪センサ19bと比べて、入力値すなわち切削抵抗Fの計測範囲が広く、かつ分解能が粗いことが分かる。したがって、歪センサ19の取付位置によって、入力値に対する歪センサ19の感度が変わることが分かる。
以上のことから、負荷の大きい加工条件下において歪を計測する場合には、切削工具102の端部に近い位置の歪センサ19により計測を行う一方で、負荷の小さい加工条件下において歪を計測する場合には、切削工具102の支点すなわち根本部に近い位置の歪センサ19により計測を行う。これにより、負荷が大きい場合と小さい場合とで、歪等の計測対象の大きさに適した計測を行うことができる。
したがって、切削工具102に加えられる負荷の程度に応じて、計測を行う歪センサ19を変更することにより、多様な加工条件下において歪を計測することができる。
その他の構成は、上述した切削システム201と同様であるため、ここでは詳細な説明を繰り返さない。
[変形例2]
図21は、本開示の第1の実施の形態の変形例2に係る切削システムを示す図である。
図21を参照して、変形例2に係る切削システム205は、図11に示す工作機械202の代わりに工作機械206を備える。工作機械206は、図11に示す切削工具101の代わりに切削工具103を含む。切削工具103は、図11に示す加速度センサ14に加えて、さらに、温度センサ26および音センサ27を含む。
図21に示す例では、温度センサ26および音センサ27は、加速度センサ14を支持する台座部51とは別に設けられた台座部510に支持される。温度センサ26および音センサ27を支持する台座部510は、加速度センサ14を支持する台座部51とは異なる位置に取り付けられる。たとえば、温度センサ26および音センサ27を支持する台座部51は、雄ねじ部材54により、センサ位置A7に取り付けられる。
位置変更部50は、シャフト部11における加速度センサ14、温度センサ26および音センサ27の取付位置を変更可能である。
具体的には、たとえば、位置変更部50は、シャフト部11の軸方向、すなわち、中心軸17に沿った方向において加速度センサ14、温度センサ26および音センサ27の位置を変更することが可能である。
また、位置変更部50は、たとえば、シャフト部11の径方向に沿った方向において加速度センサ14、温度センサ26および音センサ27の位置を変更することが可能である。
切削工具103は、加速度センサ14、温度センサ26および音センサ27の各計測結果を示すセンサ情報を含む無線信号を送信する。
管理装置301は、切削工具101からセンサ情報を含む無線信号を受信し、受信したセンサ情報が示す各計測結果を処理する。具体的には、たとえば、管理装置301は、受信したセンサ情報が示す各計測結果を解析する。
なお、切削工具103は、温度センサ26および音センサ27のいずれか一方を含まない構成であってもよい。また、切削工具103は、歪センサ19を含む構成であってもよい。要するに、切削工具103は、加速度センサ14に加えて、歪センサ19、温度センサ26および音センサ27のうちの少なくともいずれか1つを含む構成であってもよい。
その他の構成は、上述した切削システム201と同様であるため、ここでは詳細な説明を繰り返さない。
ところで、切削工具にセンサを取り付けることにより、切削工具による加工の状態を示す物理量を計測することができる。このような計測を用いた優れた技術が望まれる。
これに対して、本開示の第1の実施の形態に係る切削工具は、シャフト部11と、シャフト部11に取り付けられる複数のセンサとを備える。各センサは、加速度センサ14である。複数のセンサは、各々の位置がシャフト部11の軸方向およびシャフト部11の径方向の少なくともいずれか一方において異なるようにシャフト部11に取り付けられる。
このように、複数の加速度センサの各々の位置がシャフト部11の軸方向およびシャフト部11の径方向の少なくともいずれか一方において異なるように各センサがシャフト部11に取り付けられる構成により、シャフト部11への複数のセンサの取付位置の違いに応じて、あるセンサの感度を高めるとともに他のセンサの計測範囲を拡大し、工具全体としてセンシング性能を高めることができる。
したがって、本開示の第1の実施の形態に係る切削工具では、切削工具101による加工の状態を計測する際に、計測の精度を高めるとともに計測範囲を拡大することができる。
また、本開示の第1の実施の形態に係る切削工具では、複数のセンサは、計測範囲および感度が同じである。
このような構成により、同一のセンサを複数準備すればよいため、切削工具101の製造コストを低減することができる。
また、本開示の第1の実施の形態に係る切削工具では、複数のセンサの位置は、シャフト部11の軸方向およびシャフト部11の径方向の少なくともいずれか一方において異なる。
このような構成により、シャフト部11への各センサの取付位置の違いに応じた感度の違いおよび計測範囲の違いと、各センサ間の計測範囲および感度の違いとを組み合わせて、計測の精度をより高めるとともに計測範囲をより拡大することができる。
また、本開示の第1の実施の形態に係る切削工具では、複数のセンサは、加速度センサ14である。加速度センサ14の計測方向は、シャフト部11の中心軸17を法線とする平面18に沿った方向であって、加速度センサ14と中心軸17とを結ぶ直線143に対して直交する方向に沿う。
このような構成により、切削対象物との接触に伴う振動等の加速度を計測することができる。
また、本開示の第1の実施の形態に係る切削工具では、切削工具101は、さらに、加速度センサ14とは別のセンサとして、歪センサ19、温度センサ26および音センサ27のうちの少なくともいずれか1つを備える。
このような構成により、たとえば、シャフト部11に発生する歪の異常な増大、ならびにシャフト部11に異常な振動が発生した場合の摩擦熱および異音、のうちの少なくともいずれか1つを検出することができる。
また、本開示の第1の実施の形態に係る切削工具では、切削工具101は、さらに、無線通信装置23を備える。無線通信装置23は、各センサの計測結果を示すセンサ情報を送信する。
このような構成により、たとえば、受信側の装置において、各センサの計測結果を用いた異常検知等の処理を行うことができる。
また、本開示の第1の実施の形態に係る切削工具は転削工具である。
このような構成により、たとえば、転削対象物の転削時に転削工具に発生する加速度の計測の精度を高めるとともに計測範囲を拡大することができる。
次に、本開示の他の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
<第2の実施の形態>
本開示の第2の実施の形態は、第1の実施の形態に係る切削工具101と比べて、複数の加速度センサの特性が互いに異なる切削工具に関する。以下で説明する内容以外は第1の実施の形態に係る切削工具101と同様である。
図22は、本開示の第2の実施の形態に係る切削システムの構成を示す側面図である。
図22を参照して、本開示の第2の実施の形態に係る切削システム207は、図11に示す工作機械202の代わりに工作機械208を備える。工作機械208は、図11に示す切削工具101の代わりに切削工具104を含む。切削工具104は、図11に示す2つの加速度センサ14のうちの1つの加速度センサ14の代わりに加速度センサ140を有する。
すなわち、切削工具104は、加速度センサ14および加速度センサ140を備える。加速度センサ14および加速度センサ140は、シャフト部11に取り付けられる。加速度センサ14および加速度センサ140各々の計測範囲は異なる。また、加速度センサ14および加速度センサ140各々の感度は異なる。さらに、加速度センサ14および加速度センサ140各々の計測対象は同じ種類の物理量である。計測対象の物理量は、たとえば切削工具104に生じる歪、切削時の音、切削工具104の温度および切削工具104の加速度等である。本実施の形態における当該計測対象の物理量は、加速度である。
加速度センサ14の感度は、たとえば、加速度センサ140の感度より高い。また、加速度センサ14の計測範囲は、たとえば、加速度センサ140の計測範囲より狭い。
また、加速度センサ140の計測範囲は、たとえば、加速度センサ14の計測範囲の2倍以上である。より詳細には、加速度センサ140の計測範囲の上限値と下限値との差分の絶対値が、加速度センサ14の計測範囲の上限値と下限値との差分の絶対値の2倍以上である。
また、加速度センサ14の感度は、たとえば、加速度センサ140の感度の2倍以上である。より詳細には、加速度センサ14からのアナログ出力をA/D変換したときの計測値の最小単位すなわち1ビット分が、加速度センサ140からのアナログ出力をA/D変換したときの計測値の最小単位の2倍以上である。
加速度センサ14の位置および加速度センサ140の位置は、シャフト部11の軸方向およびシャフト部11の径方向の少なくともいずれか一方において異なる。
ここで、切削工具104を図7に示す片持ち梁であるとみなした場合を想定する。切削工具104では、加速度センサ14は、加速度センサ140と比べて、方向Xにおいて刃取付部12または刃部に近い位置にある。したがって、切削工具104における加速度センサ14は、図7に示す加速度センサ14aに対応する。また、切削工具104における加速度センサ140は、図7に示す加速度センサ14bに対応する。
加速度センサ140の計測範囲が、加速度センサ14の計測範囲よりも広く、加速度センサ140の分解能が、加速度センサ14の分解能よりも粗い場合、図10に示す計測範囲Rbは計測範囲Raと比べて大きく、分解能rbは分解能raよりも大きい。これにより、以下の式(16)および式(17)が成り立つ。
Rb/Ra>1 ・・・(16)
rb/ra>1 ・・・(17)
式(1)に示すように、αは1より小さいため、式(4)、式(16)および式(17)により、以下の式(18)および式(19)が成り立つ。
式(18)および式(19)から、加速度センサ14の取付位置の影響および加速度センサ140の取付位置の影響が、加速度センサ14および加速度センサ140の位置関係が逆または同じ位置である場合と比べてより助長されることが分かる。すなわち、たとえば、取付位置Bに取り付けられた加速度センサ140の計測範囲がより広くなるとともに、取付位置Aに取り付けられた加速度センサ14の分解能がより高くなることが分かる。
[変形例1]
図23は、本開示の第2の実施の形態に係る切削システムの変形例1を示す図である。
図23を参照して、変形例1に係る切削システム209は、図22に示す工作機械208の代わりに工作機械211を備える。工作機械211は、図22に示す切削工具104の代わりに切削工具105を含む。
切削工具105は、図22に示す加速度センサ14の代わりに加速度センサ140を有し、図22に示す加速度センサ140の代わりに加速度センサ14を有する。すなわち、図23に示す切削工具105では、切削工具104と比べて、加速度センサ14の位置および加速度センサ140の位置が入れ替わっている。
ここで、切削工具105を図7に示す片持ち梁であるとみなした場合を想定する。切削工具105では、加速度センサ14は、加速度センサ140と比べて、方向Xにおいて刃取付部12または刃部から遠い位置にある。したがって、切削工具105における加速度センサ14は、図7に示す加速度センサ14bに対応する。また、切削工具105における加速度センサ140は、図7に示す加速度センサ14aに対応する。
図10に示す計測範囲Rbと計測範囲Raとの比Rb/Raがαであり、かつ分解能rbと分解能raとの比rb/raがαである(以下、条件Jとも称する)場合、以下の式(20)および式(21)が成り立つ。
Fmb=Fma ・・・(20)
Ub=Ua ・・・(21)
式(20)および式(21)から、入力値に対する計測範囲および分解能が、取付位置Aおよび取付位置Bにおいて揃うことが分かる。このような構成は、複数の計測位置における同時計測が必要な場合において有効である。たとえば、計測対象の変形モードそのものを把握したい場合、および変形モードの節の部分にどちらかのセンサが配置されても一定の計測性能で計測を継続したい場合がある。厳密に条件Jが成立しなくても、このような条件Jに近付けることで、同様の効果を奏することができる。
以上のように、本開示の第2の実施の形態に係る切削工具は、シャフト部11と、シャフト部11に取り付けられる複数のセンサを備える。複数のセンサ各々の計測範囲は異なり、複数のセンサ各々の感度は異なり、複数のセンサ各々の計測対象は同じ種類の物理量である。
このように、シャフト部11に取り付けられる複数のセンサであって、複数のセンサ各々の計測範囲が異なり、複数のセンサ各々の感度が異なり、複数のセンサ各々の計測対象の物理量が同じである構成により、たとえば、感度が高いセンサおよび計測範囲が広いセンサを用い、各センサの特性を活かした計測を行うことができる。
したがって、本開示の第2の実施の形態に係る切削工具では、切削工具101による加工の状態を計測する際に、計測の精度を高めるとともに計測範囲を拡大することができる。
また、本開示の第2の実施の形態に係る切削工具では、複数のセンサは、第1のセンサおよび第2のセンサを含む。当該第1のセンサの感度は、当該第2のセンサの感度より高い。当該第1のセンサの計測範囲は、当該第2のセンサの計測範囲より狭い。
このような構成により、第1のセンサの高い感度および第2のセンサの広い計測範囲を活かした計測を行うことができる。
また、本開示の第2の実施の形態に係る切削工具では、第1のセンサの感度は、第2のセンサの感度の2倍以上である。第2のセンサの計測範囲は、第1のセンサの計測範囲の2倍以上である。
このような構成により、シャフト部11への各センサの取付位置の違いに応じた感度の違いおよび計測範囲の違いと、各センサ自体の計測範囲および感度の違いとを組み合わせて、計測の精度をより高めるとともに計測範囲をより拡大することができる。
また、本開示の第2の実施の形態に係る切削工具では、複数のセンサの位置は、シャフト部11の軸方向およびシャフト部11の径方向の少なくともいずれか一方において異なる。
このような構成により、たとえば、第1のセンサのより高い感度および第2のセンサのより広い計測範囲を活かした計測を行うことができる。
なお、加速度センサ14および加速度センサ140は、たとえば、図6に示すセンサ位置A5〜A8のうちのいずれかの異なるセンサ位置に取り付けられてもよい。たとえば、加速度センサ14がセンサ位置A5に取り付けられ、加速度センサ140がセンサ位置A8に取り付けられる構成であってもよい。
また、加速度センサ14および加速度センサ140のうち、いずれか一方が、たとえば図6に示すセンサ位置A1〜A4のうちのいずれかのセンサ位置に取り付けられ、かつ、他方が、たとえば図6に示すセンサ位置A5〜A8のうちのいずれかのセンサ位置に取り付けられる構成であってもよい。
また、加速度センサ14および加速度センサ140は、たとえば、図6に示すセンサ位置A1〜A8のうちのいずれかの同じセンサ位置に取り付けられてもよい。
また、加速度センサ140の計測範囲は、加速度センサ14の計測範囲の2倍未満であってもよい。また、加速度センサ14の感度は、加速度センサ140の感度の2倍未満であってもよい。
また、加速度センサ14および加速度センサ140は、切削工具101と切削対象物との接触に伴う振動等の加速度に限らず、切削工具101の回転に伴う遠心加速度を計測するセンサであってもよい。
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記説明ではなく請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
以上の説明は、以下に付記する特徴を含む。
[付記1]
シャフト部と、
前記シャフト部に取り付けられる複数のセンサとを備え、
前記複数のセンサは、加速度センサであり、
前記複数のセンサは、各々の位置が前記シャフト部の軸方向および前記シャフト部の径方向の少なくともいずれか一方において異なるように前記シャフト部に取り付けられ、
前記シャフト部は、前記シャフト部のうちの他の部位よりも径が太く、前記複数のセンサを取り付け可能な拡径部を含み、
前記位置変更部は、前記拡径部における前記センサの取り付け位置を変更可能であり、
前記拡径部は、前記シャフト部の中心軸に対して平行でかつ平坦な表面を有し、
前記拡径部は、前記表面に対して前記中心軸の反対側の部分が除去された形状であり、
前記拡径部は、前記表面の一部において開口し、かつ前記中心軸側に凹む凹部を有し、
前記凹部の底面は、前記表面に対して平行な平面である、切削工具。