JPWO2020121982A1 - イオン分離装置、水処理システムおよび淡水の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
また、従来のシステムでは、フッ化物イオンなどの低減や除去が困難なイオン種もあり、その種類によらずイオン種を低減することが可能な水処理システムが求められていた。
<1> 磁場および/または電場を発生させる筒状体と、前記筒状体の外周面の少なくとも一部に密着するように設けられた、通水用の中空部を有する絶縁性の微小流路部材と、前記微小流路部材の終端部に設けられた二又分岐部と、を有するイオン分離装置。
<2> 前記筒状体が、パルス電場発生能を有する筒状体を備えた、前記<1>に記載のイオン分離装置。
<3> 前記パルス電場発生能を有する筒状体が、絶縁性材料で形成された筒状体の表面に自己起電力を有する微粒子が配向固定されたものである、前記<2>に記載のイオン分離装置。
<4> 前記自己起電力を有する微粒子が、カルシウムおよび炭素を主たる構成成分として含む、メゾスコピック構造体である、前記<3>に記載のイオン分離装置。
<5> 前記筒状体が、ドーナツ型コイルを備えた、前記<1>から<4>のいずれかに記載のイオン分離装置。
<6> 前記微小流路部材が、前記筒状体の外周面に密着するように巻き回された絶縁性チューブである、前記<1>から<5>のいずれかに記載のイオン分離装置。
<7> 前記<1>から<6>のいずれかに記載のイオン分離装置を備えた、水処理システム。
<8> 前記水処理システムは、海水から淡水を得るための淡水化システムである、前記<7>に記載の水処理システム。
<9> さらに、前記イオン分離装置の二又分岐部の分岐点の直前に電圧を印加する電圧印加手段を備えた、前記<7>または<8>に記載の水処理システム。
<10> 前記イオン分離装置を複数備え、第1の前記イオン分離装置の前記二又分岐部の一方の流出部に、第2の前記イオン分離装置の前記微小流路部材の始端部を連通させた、前記<7>から<9>のいずれかに記載の水処理システム。
<11> 第3の前記イオン分離装置の前記微小流路部材の始端部を、第1の前記イオン分離装置の前記二又分岐部の他方の流出部に連通させた、前記<10>に記載の水処理システム。
<12> 前記<7>から<11>のいずれかに記載の水処理システムを用いて、海水から淡水を製造する淡水の製造方法。
<13> 下記工程(A)と、工程(B1)および/または工程(B2)と、を有する淡水の製造方法。
工程(A):海水を、前記海水の陽イオン濃度よりも陽イオン濃度が高い陽イオン濃縮水と、前記海水の陰イオン濃度よりも陰イオン濃度が高い陰イオン濃縮水とに分離する工程
工程(B1):工程(A)にて分離された前記陽イオン濃縮水を、前記陽イオン濃縮水の陽イオン濃度よりも陽イオン濃度が高い陽イオン超濃縮水と、淡水とに分離する工程
工程(B2):工程(A)にて分離された前記陰イオン濃縮水を、前記陰イオン濃縮水の陰イオン濃度よりも陰イオン濃度が高い陰イオン超濃縮水と、淡水とに分離する工程
<14> 絶縁性基材と、前記絶縁性基材の表面に自己起電力を有する微粒子が配向固定された層とを有する極性配向シート。
本発明は、磁場および/または電場を発生させる筒状体と、前記筒状体の外周面の少なくとも一部に密着するように設けられた、通水用の中空部を有する絶縁性の微小流路部材と、前記微小流路部材の終端部に設けられた二又分岐部と、を有するイオン分離装置(以下、「本発明のイオン分離装置」と記載する場合がある。)に関するものである。
本発明のイオン分離装置を構成する微小流路部材は、長手方向に連続する中空部を有し、この中空部が流路となる。また、中空部(内部)を流れる被処理水の流れ方向が筒状体の周方向と垂直にならないように、微小流路部材は設けられる。
通常、流体が、絶縁性チューブなどの微小流路部材の内部を通過する場合、流体内は微小流路部材の接触面に由来する電場によりイオンの電気二重層を形成する。本発明のイオン分離装置で生じる、筒状体と接する面方向への引力または斥力は、微小流路部材を流れる被処理水の電気二重層内のイオンの極性分布に電磁気的影響を与え、微小流路部材の内部を流れる陰陽イオンの分流水流層を作ることができる。そのため、イオン分離装置の微小流路部材の内部を流れる被処理水は、微小流路部材を流れるに従い、陽イオンが高濃度な陽イオン濃縮層と、陰イオンが高濃度な陰イオン濃縮層との2層に分かれた流体となる。
本発明は、本発明のイオン分離装置を備えた、水処理システム(以下、「本発明の水処理システム」と記載する場合がある。)に関するものである。
本発明の水処理システムを用いることで、低減対象となるイオン種(陽イオンまたは/および陰イオン)を含む被処理水から、前記イオン種を低減させた水を得ることができる。
本発明の水処理システムを淡水化システムとして用いることで、電気透析法に比べて、副生成物の発生を抑制でき、処理のために必要な電気エネルギーも少なくできる。また、RO膜では除去されにくい、フッ化物イオンなどのイオンも低減できる。さらに、被処理水をRO膜などの濾過膜に通過させる必要がないため、目詰まりなどが発生しにくく、メンテナンスが容易である。そのため、被処理水を安定して処理することができる。また、システムが簡素であるため、安価であり、大規模設備にも対応しやすい。
電圧印加手段により二又分岐部付近に電圧を印加することで、流路内を流れる被処理水中の電場バランスをより偏らせることができる。
このような構成とすることで、第2のイオン分離装置および第3のイオン分離装置において、陽イオン濃縮水と陰イオン濃縮水とを同時に処理することができ、イオン種の濃度が低い水をより効率的に得ることができる。
また、パルス電場発生能を有する筒状体と、前記筒状体の外周面に密着するように巻き回された通水用の絶縁性チューブと、前記絶縁性チューブの終端部に連結された二又分岐管と、を有するイオン分離装置を複数備え、第1の前記イオン分離装置の前記二又分岐管の一方の流出部に、第2の前記イオン分離装置の前記絶縁性チューブの始端部を連通させ、第1の前記イオン分離装置の前記二又分岐管の他方の流出部に、第3の前記イオン分離装置の前記絶縁性チューブの始端部を連通させた水処理システムとすることができる。
本発明は、本発明の水処理システムを用いて、海水から淡水を製造する淡水の製造方法に関するものである。
工程(A):海水を、前記海水の陽イオン濃度よりも陽イオン濃度が高い陽イオン濃縮水と、前記海水の陰イオン濃度よりも陰イオン濃度が高い陰イオン濃縮水とに分離する工程
工程(B1):工程(A)にて分離された前記陽イオン濃縮水を、前記陽イオン濃縮水の陽イオン濃度よりも陽イオン濃度が高い陽イオン超濃縮水と、淡水とに分離する工程
工程(B2):工程(A)にて分離された前記陰イオン濃縮水を、前記陰イオン濃縮水の陰イオン濃度よりも陰イオン濃度が高い陰イオン超濃縮水と、淡水とに分離する工程
図1は、本発明の水処理システム100の模式図である。本発明の水処理システム100は、第1のイオン分離装置であるイオン分離装置10aと、第2のイオン分離装置であるイオン分離装置20aと、を備えている。イオン分離装置10aの二又分岐管13aの一方の流出部に、イオン分離装置20aの絶縁性チューブ1bの始端部が連通されており、被処理水Wは、イオン分離装置10aで処理された後、イオン分離装置20aでさらに処理される構成となっている。イオン分離装置10aの二又分岐管13aの他方の流出部には、絶縁性チューブ3aが連通されている。また、イオン分離装置20aの二又分岐管13bの一方の流出部は、絶縁性チューブ2bの始端部が連結されており、二又分岐管13bの他方の流出部は、絶縁性チューブ3bの始端部が連通されている。
次いで、分離された陽イオン濃縮水をイオン分離装置20aで処理することで、陽イオン濃度がより高い陽イオン超濃縮水と、陽イオン濃度が低い水に分離することができる。この陽イオン濃度が低い水は、陰イオンも低減されているので、イオン種の濃度の低い水であり、陽イオン濃度が低い水を貯水槽(図示せず)などに収容することで、イオン種の濃度の低い水を得ることができる。
本発明の水処理システム100において、イオン分離装置10aは、筒状体12と、筒状体12の外周面に密着するように巻き回された絶縁性チューブ1aと、絶縁性チューブ1aの終端部に連結された二又分岐管13aと、を備えている。
イオン分離装置10aは、上記の通り、被処理水Wを、被処理水W中の陽イオン濃度よりも陽イオン濃度が高い陽イオン濃縮水と、被処理水W中の陰イオン濃度よりも陰イオン濃度が高い陰イオン濃縮水とに分離する部分となる。
筒状体12は、パルス電場発生能を有する部材であり、巻き回された絶縁性チューブ1aの内部に流れる被処理水W中のイオン種に対して、筒状体12の方向へ斥力または引力を与え続けるために、パルス電場を発生させる部分である。
筒状体12は、中空構造の筒状体であり、その外周面に自己起電力を有する微粒子が配向固定されたものである。また、筒状体12は、樹脂(ポリエステル、フッ素樹脂、シリコン、芳香族ポリエーテルケトン樹脂など)やゴム、ガラスなどの絶縁性材料で形成されている。なお、加工のしやすさからは、樹脂製の筒状体であることが好適である。
なお、極性配向シートについて詳しくは、後述する。
絶縁性チューブ1aは、その始端部から被処理水Wを導入することができ、被処理水Wの流路となる通水用のチューブである。絶縁性チューブ1aは、樹脂(ポリエステル、フッ素樹脂、シリコン、芳香族ポリエーテルケトン樹脂など)、ゴム、ガラスなどのチューブを用いることができる。なお、加工のしやすさから、絶縁性チューブ1aは、樹脂製であることが好ましく、筒状体12と同じ材質であることが好ましい。
絶縁性チューブ1aの大きさは、外径が15μm〜1000μmであり、内径が10μm〜500μmである。また、絶縁性チューブ1aの外径や内径が大きすぎると、筒状体12より発生するパルス電場による力を被処理水W中のイオン種に伝えにくくなり、パルス電場による力を被処理水W中のイオン種に伝えるために、より大きな電界が必要となる。このため、好適には、外径が15μm〜500μmであり、内径が10μm〜100μmであり、より好適には、外径が15μm〜100μmであり、内径が10μm〜50μmであり、さらに好適には、外径が15μm〜35μmであり、内径が10μm〜30μmである。
絶縁性チューブ1aの筒状体12への巻き付け回数は3回である。なお、巻き付け回数は、1〜10回であってもよく、筒状体12の内径などにもよるが、好適には3〜6回である。
また、絶縁性チューブ1aと二又分岐管13aを介して接続される絶縁性チューブ3aも絶縁性チューブ1aと同様の材質や大きさのものを用いることができる。
二又分岐管13aは、絶縁性チューブ1aの終端部に設けられた、絶縁性チューブ1aを2つに分流する部材である。二又分岐管13aは、筒状体12の外周面に接するように設けられている。二又分岐管13aの材質は、絶縁性チューブ1aと同様に、樹脂(ポリエステル、フッ素樹脂、シリコン、芳香族ポリエーテルケトン樹脂など)、ゴム、ガラスなどの絶縁性材料である。
また、二又分岐管13aの分岐角度は、筒状体12により発生するパルス電場に起因する力と被処理水の流れる力とにより、陽イオンおよび陰イオンのそれぞれの応力の向きに応じて、各応力の向きとなるように調整される。好適な分岐角度は、20〜90度(より好適には、30〜70度)である。なお、分岐角度とは、二又分岐管13aの2つ流出部のなす挟角を意味する。
イオン分離装置20aは、イオン分離装置10aに連通されたイオン分離装置であり、筒状体12と、筒状体12の外周面に密着するように巻き回された絶縁性チューブ1bと、絶縁性チューブ1bの終端部に連結された二又分岐管13bと、を備えている。絶縁性チューブ1bは、その始端部が、二又分岐管13aの一方の流出部に連通される以外は、絶縁性チューブ1aと同様の構成とすることができる。また、二又分岐管13bも、絶縁性チューブ2bおよび絶縁性チューブ3bの始端部が連通されている以外は、二又分岐管13aと同様である。絶縁性チューブ2bおよび絶縁性チューブ3bは、絶縁性チューブ1bと同様の材質や大きさのものを用いることができる。
図2は、イオン分離装置を3つ連通した構成を有する、本発明の水処理システム200の模式図である。
図2で示す本発明の水処理システム200は、第1のイオン分離装置であるイオン分離装置10aと、第2のイオン分離装置であるイオン分離装置20bと、第3のイオン分離装置であるイオン分離装置30bと、貯水槽40と、貯水槽50とを備えている。また、イオン分離装置10aの二又分岐管13aの一方の流出部に、イオン分離装置20bの絶縁性チューブ1bの始端部が連通されており、イオン分離装置10aの二又分岐管13aの他方の流出部に、イオン分離装置30bの絶縁性チューブ1cの始端部が連通されている。被処理水Wは、イオン分離装置10aで処理された後、イオン分離装置20bまたはイオン分離装置30bで処理される構成となっている。
イオン分離装置20bは、イオン分離装置10aに連通されたイオン分離装置である。イオン分離装置20bは、筒状体12と、筒状体12の外周面に密着するように巻き回された絶縁性チューブ1bと、絶縁性チューブ1bの終端部に連結された二又分岐管13bと、二又分岐管13bの分岐点の直前に電圧を印加する電圧印加手段14bとを備えている。
このイオン分離装置20bは、イオン分離装置10aで分離された陽イオン濃縮水を、陽イオン濃度のより高い陽イオン超濃縮水と陽イオン濃度の低い水に分離する部分であり、二又分岐管13bの分岐点の直前に電圧を印加する電圧印加手段14bを有する点で、イオン分離装置20aと異なる構成である。
このように電圧印加手段14bを備えた構成とし、二又分岐管13bの分岐点の直前に電圧を印加することで、絶縁性チューブ1b内の電場バランスが偏り、陽イオンと水とをより分離した状態で、絶縁性チューブ2bおよび絶縁性チューブ3bへ流すことができる。
これにより、得られる陽イオン濃度の低い水は、より陽イオンが除去された水となる。
イオン分離装置30bは、イオン分離装置10aに連通されたイオン分離装置である。イオン分離装置30bは、筒状体12と、筒状体12の外周面に密着するように巻き回された絶縁性チューブ1cと、絶縁性チューブ1cの終端部に連結された二又分岐管13cと、二又分岐管13cの分岐点の直前に電圧を印加する電圧印加手段14cとを備えている。絶縁性チューブ1c、二又分岐管13c、電圧印加手段14cは、絶縁性チューブ1b、二又分岐管13b、電圧印加手段14bと同様にすることができる。なお、電圧印加手段14cでは、筒状体12により発生するパルス電場に起因する力と被処理水の流れる力とにより、陰イオンが受ける応力に応じた電界が発生するように、電圧を印加する向きは調整される。
このイオン分離装置30bは、イオン分離装置10aで分離された陰イオン濃縮水を、陰イオン濃度のよりも高い陰イオン超濃縮水と陰イオン濃度の低い水に分離する部分である。電圧印加手段14cを備えた構成とすることで、より陰イオンが除去された、陰イオン濃度の低い水が得られる。
貯水槽40は、イオン分離装置20bにて分離された陽イオン濃度が低い水およびイオン分離装置30bにて分離された陰イオン濃度の低い水を収容する部分である。
貯水槽40の内部に、絶縁性チューブ3bおよび絶縁性チューブ3cの終端部が連結された排出用配管4の終端部がくるように配置されており、排出用配管4から排出された水を、貯水槽40に収容できるようになっている。
なお、絶縁性チューブ3bおよび絶縁性チューブ3cは、その終端部が、排出用配管4を介さずに直接、貯水槽40の内部にくるように配置した構成であってもよいし、それぞれ別の貯水槽に収容する構成であってもよい。
貯水槽50は、イオン分離装置20bにて分離された陽イオン超濃縮水および陰イオン分離装置30bにて分離された陰イオン超濃縮水を収容する部分である。回収される水は、低減対象となるイオン種を含むものであるが、濃縮水となるため、被処理水の液量を削減することできる。
貯水槽50の内部に、絶縁性チューブ2bおよび絶縁性チューブ2cの終端部が連結された排出用配管5の終端部がくるように配置されており、排出用配管5から排出された水を、貯水槽50に収容できるようになっている。
なお、絶縁性チューブ2bおよび絶縁性チューブ2cは、その終端部が、排出用配管5を介さずに直接、貯水槽50の内部にくるように配置した構成であってもよいし、それぞれ別の貯水槽に収容する構成であってもよい。
図3に、イオン分離装置を3つ連通した構成を有する、本発明の水処理システムの別の態様を示す。図3に示す本発明の水処理システム300は、第1のイオン分離装置が、イオン分離装置10bである点で本発明の水処理システム200と異なる。
本発明の水処理システム300において、イオン分離装置10bは、筒状体12と、筒状体12の内部に配置されたドーナツ型コイル15と、導電線16およびDCパルス電源17とからなるドーナツ型コイル15を駆動させる駆動手段と、筒状体12の外周面に密着するように巻き回された絶縁性チューブ1aと、絶縁性チューブ1aの終端部に連結された二又分岐管13aと、を備えている。イオン分離装置10bは、イオン分離装置10aと同様に、被処理水Wを、被処理水W中の陽イオン濃度よりも陽イオン濃度が高い陽イオン濃縮水と、被処理水W中の陰イオン濃度よりも陰イオン濃度が高い陰イオン濃縮水とに分離する部分となる。イオン分離装置10bは、筒状体12の内部に配置されたドーナツ型コイル15と、導電線16およびDCパルス電源17とからなるドーナツ型コイル15を駆動させる駆動手段を有する点で、イオン分離装置10aと異なる。
図4は、本発明の水処理システム400を示す模式図である。本発明の水処理システム400では、イオン分離装置10cの筒状体12に絶縁性チューブ1aが2本巻き回されており、イオン分離装置20cの筒状体12に絶縁性チューブ1bが2本巻き回されている。それぞれの絶縁性チューブ1aの終端部は、それぞれの二又分岐管13aを介して、それぞれの絶縁性チューブ1bの始端部またはそれぞれの絶縁性チューブ3aの始端部に接続されている。また、それぞれの絶縁性チューブ1bの終端部は、それぞれの二又分岐管13bを介して、それぞれの絶縁性チューブ2bの始端部またはそれぞれの絶縁性チューブ3bの始端部に接続されている。
このような構成とすることで、より多くの被処理水を1つのイオン分離装置で処理できる。
なお、筒状体12に巻き回される絶縁性チューブ1aや絶縁性チューブ1bは、3本以上であってもよい。
図5は、11個のイオン分離装置を備えた本発明の水処理システムの模式図である。本発明の水処理システム500は、タンク60と、イオン分離装置10bと、イオン分離装置20b〜24bと、イオン分離装置30b〜34bと、貯水槽40と、貯水槽50とを備えている。イオン分離装置20b〜24bは同一の構成であり、イオン分離装置30b〜34bは同一の構成である。
イオン分離装置10bの二又分岐管(図示せず)の一方の流出部にイオン分離装置20bの絶縁性チューブ1bの始端部が連通されており、二又分岐管(図示せず)の他方の流出部にイオン分離装置30bの絶縁性チューブ1cの始端部が連通されている。
イオン分離装置20b〜23bの二又分岐管(図示せず)の一方の流出部は、イオン分離装置21b〜24bの絶縁性チューブ1bの始端部と連結されており、イオン分離装置20b〜23bの二又分岐管(図示せず)の他方の流出部は、絶縁性チューブ2bと連結されている。また、イオン分離装置24bの二又分岐管(図示せず)の一方の流出部は、絶縁性チューブ2bの始端部と連結されており、二又分岐管(図示せず)の他方の流出部は、絶縁性チューブ3bと連結されている。
イオン分離装置30b〜33bの二又分岐管(図示せず)の一方の流出部は、イオン分離装置31b〜34bの絶縁性チューブ1cの始端部と連結されており、イオン分離装置30b〜33bの二又分岐管(図示せず)の他方の流出部が絶縁性チューブ2cと連結されている。また、イオン分離装置34bの二又分岐管(図示せず)の一方の流出部は、絶縁性チューブ2cの始端部と連結されており、二又分岐管(図示せず)の他方の流出部は、絶縁性チューブ3cと連結されている。
それぞれのイオン分離装置の二又分岐管のそれぞれの流出部に連通される絶縁性チューブは、直接連通された構成であってもよいし、他の絶縁チューブなどの接続管を介して連通された構成であってもよい。
水の流路となる部材(各絶縁性チューブ、各二又分岐管など)は異なる材質で構成されてもよいし、同一の材質で構成されてもよい。イオン種が受ける電場により力を制御できるため、これらの部材の材質は同一であることが好ましい。また、これらの部材は一体化した構成であってもよい。
図6で示す本発明の水処理システム600は、イオン分離装置10dを備えている。
イオン分離装置10dは、本発明の水処理システム100〜500と同様に、被処理水Wを、被処理水W中の陽イオン濃度よりも陽イオン濃度が高い陽イオン濃縮水と、被処理水W中の陰イオン濃度よりも陰イオン濃度が高い陰イオン濃縮水とに分離する部分である。
本発明の水処理システム600において、イオン分離装置10dは、ドーナツ型コイル15dと、導電線16dおよびDC電源17dとからなるドーナツ型コイル15dを駆動させる駆動手段と、終端部に二又分岐部13dを有する帯状部材1dと、電圧印加手段14dとを備えている。帯状部材1dは、長手方向に連続する中空部を有し、長手方向(被処理水Wの流れ方向)がドーナツ型コイル15dの周方向となるように設けられている。
ドーナツ型コイル15dは、被処理水W中のイオン種に対して、ドーナツ型コイル15dの方向へ斥力または引力を与えるために磁場を発生する部分である。駆動手段を駆動させることで、ドーナツ型コイル15dの外周面側には、ドーナツ型コイル15dの軸心方向に対して平行な向きの磁界が発生する。帯状部材1dの内部を被処理水Wが流れるときに、被処理水Wに含まれるイオン種は、ドーナツ型コイル15dと接する面への引力または斥力を受け、被処理水W中の陽イオンと陰イオンとが分離される。
ドーナツ型コイル15dの大きさは、外径が5cm〜100cmであり、高さが5cm〜100cmである。取り扱いのしやすさから、好適な大きさは、外径が20cm〜30cmであり、高さが40cm〜60cmである。
帯状部材1dは、その始端部の中空部から被処理水Wを導入することができ、被処理水Wの流路となる。帯状部材1dは、ドーナツ型コイル15dの外周面に密着するように配置されている。なお、帯状部材1dは、ドーナツ型コイル15dの外周面の少なくとも一部に接していればよい。帯状部材1dは、ドーナツ型コイル15dの外周の25%や、50%、75%と接するように配置することができる。また、帯状部材1dは、ドーナツ型コイル15dを巻き回すように配置してもよい。
帯状部材1dは、樹脂製である。帯状部材1dは、樹脂(ポリエステル、フッ素樹脂、シリコン、芳香族ポリエーテルケトン樹脂、アクリル樹脂など)の他に、ゴム製やガラス製を用いてもよい。なお、加工のしやすさから、帯状部材1dは、樹脂製であることが好ましい。
電圧印加手段14dは、針状型電圧印加棒とパルス電源(図示せず)とを備えたものであり、パルス電圧を発生させることができるものである。パルス幅や発生電圧は被処理水W中のイオン濃度等に応じて適宜設定される。例えば、パルス幅は100ns〜1000ns程度、発生電圧は1kV〜50kV程度とすることができる。2本の針状型電圧印加棒は、二又分岐部13dの分岐点直前の位置と、二又分岐部の2つの流出部のなす挟角を二分割する位置とで分岐点を挟むように配置されており、電圧を印加できるようになっている。電圧を印加する向きは、分岐点においてイオン種が受ける応力に応じた電界が発生するように調整される。これにより、イオン種がより分離される。また、パルス幅で電圧を印加することで、高い電圧を印加しも、イオン種の錯乱等を抑制して、イオン種を分離することができる。
下記工程(A)と、工程(B1)および/または工程(B2)と、を有する淡水の製造方法(以下、「本発明の淡水の製造方法」と記載する場合がある。)に関する。
工程(A):海水を、前記海水の陽イオン濃度よりも陽イオン濃度が高い陽イオン濃縮水と、前記海水の陰イオン濃度よりも陰イオン濃度が高い陰イオン濃縮水とに分離する工程
工程(B1):工程(A)にて分離された前記陽イオン濃縮水を、前記陽イオン濃縮水の陽イオン濃度よりも陽イオン濃度が高い陽イオン超濃縮水と、淡水とに分離する工程
工程(B2):工程(A)にて分離された前記陰イオン濃縮水を、前記陰イオン濃縮水の陰イオン濃度よりも陰イオン濃度が高い陰イオン超濃縮水と、淡水とに分離する工程
本発明の淡水の製造方法は、本発明の水処理システムを用いて好適に実施できる。特に、イオン分離装置を3以上有する、本発明の水処理システムを用いて好適に実施できる。
工程(A)は、海水を、前記海水の陽イオン濃度よりも陽イオン濃度が高い陽イオン濃縮水と、前記海水の陰イオン濃度よりも陰イオン濃度が高い陰イオン濃縮水とに分離する工程である。
工程(B1)は、工程(A)にて分離された前記陽イオン濃縮水を、前記陽イオン濃縮水の陽イオン濃度よりも陽イオン濃度が高い陽イオン超濃縮水と、淡水とに分離する工程である。
効率的に淡水を製造できるため、工程(B1)は、図1〜図5に示すように、複数のイオン分離装置を有する水処理システムを用いて連続式に複数回の操作を行うことが好ましい。
工程(B2)は、工程(A)にて分離された前記陰イオン濃縮水を、前記陰イオン濃縮水の陰イオン濃度よりも陰イオン濃度が高い陰イオン超濃縮水と、淡水とに分離する工程である。
タンク60に収容された海水は、配管6を通じて、イオン分離装置10bの絶縁性チューブ1aに導入される。海水の流量は、例えば0.5〜〜50cc/s、1〜10cc/sとなるように設定できる。
イオン分離装置10bでは、上記のように、その表面に自己起電力を有する微粒子が配向固定された樹脂製の筒状体に随時静電界が生じている。筒状体に巻き付けられた絶縁性チューブの内部の海水は流体運動することでゼータ電位が上昇し、陽イオンと陰イオンの二重層に分かれた流体傾向にある。さらに、二又分岐管において、陽イオンと陰イオンのそれぞれが受ける応力の違いにより、陽イオン(NaイオンやCaイオンなど)と陰イオン(塩化物イオンやフッ化物イオンなど)の海水成分に分かれて、それぞれの絶縁性チューブに流れる。
イオン分離装置20bでは、イオン分離装置10bで分離された陽イオン成分と水が、絶縁性チューブの内部を流れる。イオン分離装置20bの分岐点直前で所定の低電圧(1.0〜3.0V)を外部より印加することで、二又分岐管の流出部の一方に連通された絶縁性チューブの内部を流れる水は、陽イオンがさらに濃縮され、二又分岐管の流出部の他方に連通された絶縁性チューブの内部を流れる水は、陽イオンがさらに低減される。
イオン分離装置30bでは、イオン分離装置10bで分離された陰イオン成分と水が、絶縁性チューブの内部を流れる。イオン分離装置30bの分岐点直前で所定の低電圧(1.0〜3.0V)を外部より印加することで、二又分岐管の流出部の一方に連通された絶縁性チューブの内部を流れる水は、陰イオンがさらに濃縮され、二又分岐管の流出部の一方の他方に連通された絶縁性チューブの内部を流れる水は、陰イオンがさらに低減される。
また、本発明は、絶縁性基材と、前記絶縁性基材の表面に自己起電力を有する微粒子が配向固定された層とを有する極性配向シート(以下、「本発明のシート」と記載する場合がある。)に関するものとすることができる。
自己起電力を有する微粒子は、上述の通りである。本発明のシートは、自己起電力を有する微粒子が、その極性の向きが同一となるように固定された層を有するので、微粒子の配向電場が断続的に生じる。これがパルス電場となる。
本発明のシートは、シート上の電解質を含む水溶液(塩水など)など流体中のイオン種に対して微粒子の配向の状態によりシート面への引力或いは斥力を与えることができる。このようなシートは、上記のように、被処理水中のイオン種の分離や低減、除去に利用できる。
本発明のシートを円筒状に加工した円筒シートは、本発明の水処理システムのイオン分離装置を構成する部材として好適である。
図6に示す水処理システムを以下の手順で製造した。
まず、幅10mm、厚み2mmの溝(中空部(M))ができるように、幅20mm、厚み2mm、長さ100mmのポリエステルシート(S1)上に、幅5mm、厚み2mm、長さ90mmのポリエステルシート(S2)を介して、幅20mm、厚み2mm、長さ100mmのポリエステルシート(S1)を貼り合わせた。なお、ポリエステルシートの長手方向の両末端は開口状態で貼り合わせた。次いで、貼り合わせたポリエステルシート部材の一方の末端からアクリル製(幅20mm、厚み0.5mm)のV字形状シート(S4)を10mm程度挿入し、ポリエステルシート(S3)を用いて水がこぼれないように側面をシールして、1mm以下の間隔の2つの開口部(J,K)を有する二又分岐部を形成することで樹脂製部材(L)を作製した。図7に、樹脂製部材(L)の側縁部を示す一部省略模式図(幅方向(Y軸方向)から見た一部省略模式図)を示す。図8に、樹脂製部材(L)の平面部を示す一部省略模式図(厚さ方向(Z軸方向)から見た一部省略模式図)を示す。図9に、図8のA−A線における断面図を示す。
電圧印加手段14dとして、パルス発生電源と針状型電圧印加棒を用いた。針状型電圧印加棒は、二又分岐部の分岐点の直前の部分と、開口部(J,K)の間に設置した。なお、針状電圧印加棒の設置部位は移動調整可能とした。
DC電源装置と針状電圧印加棒を以下の条件で起動させた。
・DC24Vで、ドーナツ型コイルの軸心と平行に静電場磁界が発生する状態とした。
・一方の針状型電圧印加棒を、ポリエステルシート(S1)面と直交する姿勢を保った状態で、ポリエステルシート(S1)面内の二又分岐部の分岐点の直前部位に近づけて設置した。
・他方の針状型電圧印加棒を、試料水の流れ方向と平行となる姿勢を保ち、開口部(J)および開口部(K)と等間隔を保った状態で、二又分岐部の分岐点に近づけて配置した。
・約5mmの間隔にて挟むように、2つの針状電圧印加棒を配置した。
・高電圧パルス幅は500nsとし、発生電圧は20kVとした。
DC電源装置、パルス電源装置および針状型電圧印加棒を駆動させた状態で、樹脂製部材(L)の開口部(I)より、試料水(3%塩水)を1cc/secで注入した。分岐した2つの開口部(J)、(K)より、それぞれ分かれて出てくる水を取水し、微量塩分濃度系で濃度を分析した。塩分濃度計はナトリウムガラス電極型を使用、ナトリウムイオンに選択的に対応するものを使用した。
樹脂製部材(L)の開口部(I)から蒸留水を注入し洗浄した後、再度、開口部(J)より取水した水を開口部(I)より注入した。開口部(J)、(K)より出てくる水を取水し、微量塩分濃度系で塩分濃度を測定した。
また、樹脂製部材(L)の開口部(I)から蒸留水を注入し洗浄した後、再度、開口部(K)より取水した水を注入した。開口部(J)、(K)より出てくる水を取水し、微量塩分濃度系で塩分濃度を測定した。
試料水の塩分濃度:3%(導電率45mS/cm)
開口部(J)より取水した水の塩分濃度:2.4%
開口部(K)より取水した水の塩分濃度:3.5%
・1回目の開口部(J)より取水した水を再度注水
開口部(J)より取水した水の塩分濃度:2.0%
開口部(K)より取水した水:2.8%
・1回目の開口部(K)より取水した水を再度注水
開口部(J)より取水した水の塩分濃度:2.2%
開口部(K)より取水した水の塩分濃度:3.9%
静電界磁場と磁場及びパルス発生電圧により、イオン化したナトリウムと塩素が水中を偏在して流れることで、塩分を分離する淡水化技術の可能性を実験した。結果、開口部(J)から取水した水と開口部(K)から取水した水よりナトリウムイオンの増減の違いが確認できた。
試料塩分濃度が3%であるのに対し、2回目の分流で濃度が2.0%と3.9%に変化した。
塩素イオンも対になる偏在傾向を示すと考えられることから、繰り返し実験を行うことで、高濃度塩分水と淡水レベルに分離することの可能性が示された。
1d 帯状部材
4、5 排出用配管
6 配管
10a、10b、10c、10d、20a、20b〜24b、20c、30a、30b〜34b イオン分離装置
12 筒状体
13a、13b、13c 二又分岐管
13d 二又分岐部
14b、14c、14d 電圧印加手段
15、15d ドーナツ型コイル
16、16d 導電線
17、17d DCパルス電源
40、50 貯水槽
60 タンク
100、200、300、400、500、600 本発明の水処理システム
I、J、K 開口部
L 樹脂製部材
M 中空部
S1、S2、S3 ポリエステルシート
S4 V字形状シート
Claims (14)
- 磁場および/または電場を発生させる筒状体と、
前記筒状体の外周面の少なくとも一部に密着するように設けられた、通水用の中空部を有する絶縁性の微小流路部材と、
前記微小流路部材の終端部に設けられた二又分岐部と、
を有するイオン分離装置。 - 前記筒状体が、パルス電場発生能を有する筒状体を備えた、請求項1に記載のイオン分離装置。
- 前記パルス電場発生能を有する筒状体が、絶縁性材料で形成された筒状体の表面に自己起電力を有する微粒子が配向固定されたものである、請求項2に記載のイオン分離装置。
- 前記自己起電力を有する微粒子が、カルシウムおよび炭素を主たる構成成分として含む、メゾスコピック構造体である、請求項3に記載のイオン分離装置。
- 前記筒状体が、ドーナツ型コイルを備えた、請求項1〜4のいずれかに記載のイオン分離装置。
- 前記微小流路部材が、前記筒状体の外周面に密着するように巻き回された絶縁性チューブである、請求項1〜5のいずれかに記載のイオン分離装置。
- 請求項1〜6のいずれかに記載のイオン分離装置を備えた、水処理システム。
- 前記水処理システムは、海水から淡水を得るための淡水化システムである、請求項7に記載の水処理システム。
- さらに、前記イオン分離装置の二又分岐部の分岐点の直前に電圧を印加する電圧印加手段を備えた、請求項7または8に記載の水処理システム。
- 前記イオン分離装置を複数備え、第1の前記イオン分離装置の前記二又分岐部の一方の流出部に、第2の前記イオン分離装置の前記微小流路部材の始端部を連通させた、請求項7〜9のいずれかに記載の水処理システム。
- 第3の前記イオン分離装置の前記微小流路部材の始端部を、第1の前記イオン分離装置の前記二又分岐部の他方の流出部に連通させた、請求項10に記載の水処理システム。
- 請求項7〜11のいずれかに記載の水処理システムを用いて、海水から淡水を製造する淡水の製造方法。
- 下記工程(A)と、工程(B1)および/または工程(B2)と、を有する淡水の製造方法。
工程(A):海水を、前記海水の陽イオン濃度よりも陽イオン濃度が高い陽イオン濃縮水と、前記海水の陰イオン濃度よりも陰イオン濃度が高い陰イオン濃縮水とに分離する工程
工程(B1):工程(A)にて分離された前記陽イオン濃縮水を、前記陽イオン濃縮水の陽イオン濃度よりも陽イオン濃度が高い陽イオン超濃縮水と、淡水とに分離する工程
工程(B2):工程(A)にて分離された前記陰イオン濃縮水を、前記陰イオン濃縮水の陰イオン濃度よりも陰イオン濃度が高い陰イオン超濃縮水と、淡水とに分離する工程 - 絶縁性基材と、前記絶縁性基材の表面に自己起電力を有する微粒子が配向固定された層とを有する極性配向シート。
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