以下、一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
[レーザ加工装置の構成]
図1に示されるように、レーザ加工装置1は、複数の移動機構5,6と、支持部7と、1対のレーザ加工ヘッド(第1レーザ加工ヘッド、第2レーザ加工ヘッド)10A,10Bと、光源ユニット8と、制御部9と、を備えている。以下、第1方向をX方向、第1方向に垂直な第2方向をY方向、第1方向及び第2方向に垂直な第3方向をZ方向という。本実施形態では、X方向及びY方向は水平方向であり、Z方向は鉛直方向である。
移動機構5は、固定部51と、移動部53と、取付部55と、を有している。固定部51は、装置フレーム1aに取り付けられている。移動部53は、固定部51に設けられたレールに取り付けられており、Y方向に沿って移動することができる。取付部55は、移動部53に設けられたレールに取り付けられており、X方向に沿って移動することができる。
移動機構6は、固定部61と、1対の移動部(第1移動部、第2移動部)63,64と、1対の取付部(第1取付部、第2取付部)65,66と、を有している。固定部61は、装置フレーム1aに取り付けられている。1対の移動部63,64のそれぞれは、固定部61に設けられたレールに取り付けられており、それぞれが独立して、Y方向に沿って移動することができる。取付部65は、移動部63に設けられたレールに取り付けられており、Z方向に沿って移動することができる。取付部66は、移動部64に設けられたレールに取り付けられており、Z方向に沿って移動することができる。つまり、装置フレーム1aに対しては、1対の取付部65,66のそれぞれが、Y方向及びZ方向のそれぞれに沿って移動することができる。
支持部7は、移動機構5の取付部55に設けられた回転軸に取り付けられており、Z方向に平行な軸線を中心線として回転することができる。つまり、支持部7は、X方向及びY方向のそれぞれに沿って移動することができ、Z方向に平行な軸線を中心線として回転することができる。支持部7は、X方向及びY方向に沿って対象物100を支持する。対象物100は、例えば、ウェハである。
図1及び図2に示されるように、レーザ加工ヘッド10A(例えば第1レーザ加工ヘッド)は、移動機構6の取付部65に取り付けられている。レーザ加工ヘッド10Aは、Z方向において支持部7と対向した状態で、支持部7に支持された対象物100にレーザ光(第1レーザ光)L1を照射するためのものである。レーザ加工ヘッド10B(例えば第2レーザ加工ヘッド)は、移動機構6の取付部66に取り付けられている。レーザ加工ヘッド10Bは、Z方向において支持部7と対向した状態で、支持部7に支持された対象物100にレーザ光(第2レーザ光)L2を照射するためのものである。
光源ユニット8は、1対の光源81,82を有している。光源81は、レーザ光L1を出力する。レーザ光L1は、光源81の出射部81aから出射され、光ファイバ2によってレーザ加工ヘッド10Aに導光される。光源82は、レーザ光L2を出力する。レーザ光L2は、光源82の出射部82aから出射され、別の光ファイバ2によってレーザ加工ヘッド10Bに導光される。
制御部9は、レーザ加工装置1の各部(複数の移動機構5,6、1対のレーザ加工ヘッド10A,10B、及び光源ユニット8等)を制御する。制御部9は、プロセッサ、メモリ、ストレージ及び通信デバイス等を含むコンピュータ装置として構成されている。制御部9では、メモリ等に読み込まれたソフトウェア(プログラム)が、プロセッサによって実行され、メモリ及びストレージにおけるデータの読み出し及び書き込み、並びに、通信デバイスによる通信が、プロセッサによって制御される。これにより、制御部9は、各種機能を実現する。
以上のように構成されたレーザ加工装置1による加工の一例について説明する。当該加工の一例は、ウェハである対象物100を複数のチップに切断するために、格子状に設定された複数のラインのそれぞれに沿って対象物100の内部に改質領域を形成する例である。
まず、対象物100を支持している支持部7がZ方向において1対のレーザ加工ヘッド10A,10Bと対向するように、移動機構5が、X方向及びY方向のそれぞれに沿って支持部7を移動させる。続いて、対象物100において一方向に延在する複数のラインがX方向に沿うように、移動機構5が、Z方向に平行な軸線を中心線として支持部7を回転させる。
続いて、一方向に延在する一のライン上にレーザ光L1の集光点が位置するように、移動機構6が、Y方向に沿ってレーザ加工ヘッド10Aを移動させる。その一方で、一方向に延在する他のライン上にレーザ光L2の集光点が位置するように、移動機構6が、Y方向に沿ってレーザ加工ヘッド10Bを移動させる。続いて、対象物100の内部にレーザ光L1の集光点が位置するように、移動機構6が、Z方向に沿ってレーザ加工ヘッド10Aを移動させる。その一方で、対象物100の内部にレーザ光L2の集光点が位置するように、移動機構6が、Z方向に沿ってレーザ加工ヘッド10Bを移動させる。
続いて、光源81がレーザ光L1を出力してレーザ加工ヘッド10Aが対象物100にレーザ光L1を照射すると共に、光源82がレーザ光L2を出力してレーザ加工ヘッド10Bが対象物100にレーザ光L2を照射する。それと同時に、一方向に延在する一のラインに沿ってレーザ光L1の集光点が相対的に移動し(レーザ光L1がスキャンされ)且つ一方向に延在する他のラインに沿ってレーザ光L2の集光点が相対的に移動する(レーザ光L2がスキャンされる)ように、移動機構5が、X方向に沿って支持部7を移動させる。このようにして、レーザ加工装置1は、対象物100において一方向に延在する複数のラインのそれぞれに沿って、対象物100の内部に改質領域を形成する。
続いて、対象物100において一方向と直交する他方向に延在する複数のラインがX方向に沿うように、移動機構5が、Z方向に平行な軸線を中心線として支持部7を回転させる。
続いて、他方向に延在する一のライン上にレーザ光L1の集光点が位置するように、移動機構6が、Y方向に沿ってレーザ加工ヘッド10Aを移動させる。その一方で、他方向に延在する他のライン上にレーザ光L2の集光点が位置するように、移動機構6が、Y方向に沿ってレーザ加工ヘッド10Bを移動させる。続いて、対象物100の内部にレーザ光L1の集光点が位置するように、移動機構6が、Z方向に沿ってレーザ加工ヘッド10Aを移動させる。その一方で、対象物100の内部にレーザ光L2の集光点が位置するように、移動機構6が、Z方向に沿ってレーザ加工ヘッド10Bを移動させる。
続いて、光源81がレーザ光L1を出力してレーザ加工ヘッド10Aが対象物100にレーザ光L1を照射すると共に、光源82がレーザ光L2を出力してレーザ加工ヘッド10Bが対象物100にレーザ光L2を照射する。それと同時に、他方向に延在する一のラインに沿ってレーザ光L1の集光点が相対的に移動し(レーザ光L1がスキャンされ)且つ他方向に延在する他のラインに沿ってレーザ光L2の集光点が相対的に移動する(レーザ光L2がスキャンされる)ように、移動機構5が、X方向に沿って支持部7を移動させる。このようにして、レーザ加工装置1は、対象物100において一方向と直交する他方向に延在する複数のラインのそれぞれに沿って、対象物100の内部に改質領域を形成する。
なお、上述した加工の一例では、光源81は、例えばパルス発振方式によって、対象物100に対して透過性を有するレーザ光L1を出力し、光源82は、例えばパルス発振方式によって、対象物100に対して透過性を有するレーザ光L2を出力する。そのようなレーザ光が対象物100の内部に集光されると、レーザ光の集光点に対応する部分においてレーザ光が特に吸収され、対象物100の内部に改質領域が形成される。改質領域は、密度、屈折率、機械的強度、その他の物理的特性が周囲の非改質領域とは異なる領域である。改質領域としては、例えば、溶融処理領域、クラック領域、絶縁破壊領域、屈折率変化領域等がある。
パルス発振方式によって出力されたレーザ光が対象物100に照射され、対象物100に設定されたラインに沿ってレーザ光の集光点が相対的に移動させられると、複数の改質スポットがラインに沿って1列に並ぶように形成される。1つの改質スポットは、1パルスのレーザ光の照射によって形成される。1列の改質領域は、1列に並んだ複数の改質スポットの集合である。隣り合う改質スポットは、対象物100に対するレーザ光の集光点の相対的な移動速度及びレーザ光の繰り返し周波数によって、互いに繋がる場合も、互いに離れる場合もある。
[レーザ加工ヘッドの構成]
図3及び図4に示されるように、レーザ加工ヘッド10Aは、筐体(例えば第1筐体)11と、入射部12と、調整部13と、集光部(例えば第1集光部)14と、を備えている。
筐体11は、第1壁部21及び第2壁部22、第3壁部23及び第4壁部24、並びに、第5壁部25及び第6壁部26を有している。第1壁部21及び第2壁部22は、X方向において互いに対向している。第3壁部23及び第4壁部24は、Y方向において互いに対向している。第5壁部25及び第6壁部26は、Z方向において互いに対向している。
第3壁部23と第4壁部24との距離は、第1壁部21と第2壁部22との距離よりも小さい。第1壁部21と第2壁部22との距離は、第5壁部25と第6壁部26との距離よりも小さい。なお、第1壁部21と第2壁部22との距離は、第5壁部25と第6壁部26との距離と等しくてもよいし、或いは、第5壁部25と第6壁部26との距離よりも大きくてもよい。
レーザ加工ヘッド10Aでは、第1壁部21は、移動機構6の固定部61側に位置しており、第2壁部22は、固定部61とは反対側に位置している。第3壁部23は、移動機構6の取付部65側に位置しており、第4壁部24は、取付部65とは反対側であってレーザ加工ヘッド10B側に位置している(図2参照)。すなわち、第4壁部24は、レーザ加工ヘッド10Bの筐体(第2筐体)にY方向に沿って対向する対向壁部である。第5壁部25は、支持部7とは反対側に位置しており、第6壁部26は、支持部7側に位置している。
筐体11は、第3壁部23が移動機構6の取付部65側に配置された状態で筐体11が取付部65に取り付けられるように、構成されている。具体的には、次のとおりである。取付部65は、ベースプレート65aと、取付プレート65bと、を有している。ベースプレート65aは、移動部63に設けられたレールに取り付けられている(図2参照)。取付プレート65bは、ベースプレート65aにおけるレーザ加工ヘッド10B側の端部に立設されている(図2参照)。筐体11は、第3壁部23が取付プレート65bに接触した状態で、台座27を介してボルト28が取付プレート65bに螺合されることで、取付部65に取り付けられている。台座27は、第1壁部21及び第2壁部22のそれぞれに設けられている。筐体11は、取付部65に対して着脱可能である。
入射部12は、第5壁部25に取り付けられている。入射部12は、筐体11内にレーザ光L1を入射させる。入射部12は、X方向においては第2壁部22側(一方の壁部側)に片寄っており、Y方向においては第4壁部24側に片寄っている。つまり、X方向における入射部12と第2壁部22との距離は、X方向における入射部12と第1壁部21との距離よりも小さく、Y方向における入射部12と第4壁部24との距離は、X方向における入射部12と第3壁部23との距離よりも小さい。
入射部12は、光ファイバ2の接続端部2aが接続可能となるように構成されている。光ファイバ2の接続端部2aには、ファイバの出射端から出射されたレーザ光L1をコリメートするコリメータレンズが設けられており、戻り光を抑制するアイソレータが設けられていない。当該アイソレータは、接続端部2aよりも光源81側であるファイバの途中に設けられている。これにより、接続端部2aの小型化、延いては、入射部12の小型化が図られている。なお、光ファイバ2の接続端部2aにアイソレータが設けられていてもよい。
調整部13は、筐体11内に配置されている。調整部13は、入射部12から入射したレーザ光L1を調整する。調整部13は、筐体11内において、仕切壁部29に対して第4壁部24側に配置されている。調整部13は、仕切壁部29に取り付けられている。仕切壁部29は、筐体11内に設けられており、筐体11内の領域を第3壁部23側の領域と第4壁部24側の領域とに仕切っている。仕切壁部29は、筐体11と一体となっている。調整部13が有する各構成は、第4壁部24側において仕切壁部29に取り付けられている。仕切壁部29は、調整部13が有する各構成を支持する光学ベースとして機能している。調整部13が有する各構成の詳細については後述する。
集光部14は、第6壁部26に配置されている。具体的には、集光部14は、第6壁部26に形成された孔26aに挿通された状態で、第6壁部26に配置されている。集光部14は、調整部13によって調整されたレーザ光L1を集光しつつ筐体11外に出射させる。集光部14は、X方向においては第2壁部22側(一方の壁部側)に片寄っており、Y方向においては第4壁部24側に片寄っている。すなわち、集光部14は、Z方向からみて、筐体11における第4壁部(対向壁部)24側に偏って配置されている。つまり、X方向における集光部14と第2壁部22との距離は、X方向における集光部14と第1壁部21との距離よりも小さく、Y方向における集光部14と第4壁部24との距離は、X方向における集光部14と第3壁部23との距離よりも小さい。
図5に示されるように、調整部13は、アッテネータ31と、ビームエキスパンダ32と、ミラー33と、を有している。入射部12、並びに、調整部13のアッテネータ31、ビームエキスパンダ32及びミラー33は、Z方向に沿って延在する直線(第1直線)A1上に配置されている。アッテネータ31及びビームエキスパンダ32は、直線A1上において、入射部12とミラー33との間に配置されている。アッテネータ31は、入射部12から入射したレーザ光L1の出力を調整する。ビームエキスパンダ32は、アッテネータ31で出力が調整されたレーザ光L1の径を拡大する。ミラー33は、ビームエキスパンダ32で径が拡大されたレーザ光L1を反射する。
調整部13は、反射型空間光変調器34と、結像光学系35と、を更に有している。調整部13の反射型空間光変調器34及び結像光学系35、並びに、集光部14は、Z方向に沿って延在する直線(第2直線)A2上に配置されている。反射型空間光変調器34は、ミラー33で反射されたレーザ光L1を変調する。反射型空間光変調器34は、例えば、反射型液晶(LCOS:Liquid Crystal on Silicon)の空間光変調器(SLM:Spatial Light Modulator)である。結像光学系35は、反射型空間光変調器34の反射面34aと集光部14の入射瞳面14aとが結像関係にある両側テレセントリック光学系を構成している。結像光学系35は、3つ以上のレンズによって構成されている。
直線A1及び直線A2は、Y方向に垂直な平面上に位置している。直線A1は、直線A2に対して第2壁部22側(一方の壁部側)に位置している。レーザ加工ヘッド10Aでは、レーザ光L1は、入射部12から筐体11内に入射して直線A1上を進行し、ミラー33及び反射型空間光変調器34で順次に反射された後、直線A2上を進行して集光部14から筐体11外に出射する。なお、アッテネータ31及びビームエキスパンダ32の配列の順序は、逆であってもよい。また、アッテネータ31は、ミラー33と反射型空間光変調器34との間に配置されていてもよい。また、調整部13は、他の光学部品(例えば、ビームエキスパンダ32の前に配置されるステアリングミラー等)を有していてもよい。
レーザ加工ヘッド10Aは、ダイクロイックミラー15と、測定部16と、観察部17と、駆動部18と、回路部19と、を更に備えている。
ダイクロイックミラー15は、直線A2上において、結像光学系35と集光部14との間に配置されている。つまり、ダイクロイックミラー15は、筐体11内において、調整部13と集光部14との間に配置されている。ダイクロイックミラー15は、第4壁部24側において仕切壁部29に取り付けられている。ダイクロイックミラー15は、レーザ光L1を透過させる。ダイクロイックミラー15は、非点収差を抑制する観点では、例えば、キューブ型、又は、ねじれの関係を有するように配置された2枚のプレート型とすることができる。
測定部16は、筐体11内において、調整部13に対して第1壁部21側(一方の壁部側とは反対側)に配置されている。測定部16は、第4壁部24側において仕切壁部29に取り付けられている。測定部16は、対象物100の表面(例えば、レーザ光L1が入射する側の表面)と集光部14との距離を測定するための測定光L10を出力し、集光部14を介して、対象物100の表面で反射された測定光L10を検出する。つまり、測定部16から出力された測定光L10は、集光部14を介して対象物100の表面に照射され、対象物100の表面で反射された測定光L10は、集光部14を介して測定部16で検出される。
より具体的には、測定部16から出力された測定光L10は、第4壁部24側において仕切壁部29に取り付けられたビームスプリッタ20及びダイクロイックミラー15で順次に反射され、集光部14から筐体11外に出射する。対象物100の表面で反射された測定光L10は、集光部14から筐体11内に入射してダイクロイックミラー15及びビームスプリッタ20で順次に反射され、測定部16に入射し、測定部16で検出される。
観察部17は、筐体11内において、調整部13に対して第1壁部21側(一方の壁部側とは反対側)に配置されている。観察部17は、第4壁部24側において仕切壁部29に取り付けられている。観察部17は、対象物100の表面(例えば、レーザ光L1が入射する側の表面)を観察するための観察光L20を出力し、集光部14を介して、対象物100の表面で反射された観察光L20を検出する。つまり、観察部17から出力された観察光L20は、集光部14を介して対象物100の表面に照射され、対象物100の表面で反射された観察光L20は、集光部14を介して観察部17で検出される。
より具体的には、観察部17から出力された観察光L20は、ビームスプリッタ20を透過してダイクロイックミラー15で反射され、集光部14から筐体11外に出射する。対象物100の表面で反射された観察光L20は、集光部14から筐体11内に入射してダイクロイックミラー15で反射され、ビームスプリッタ20を透過して観察部17に入射し、観察部17で検出される。なお、レーザ光L1、測定光L10及び観察光L20のそれぞれの波長は、互いに異なっている(少なくともそれぞれの中心波長が互いにずれている)。
駆動部18は、第4壁部24側において仕切壁部29に取り付けられている。駆動部18は、例えば圧電素子の駆動力によって、第6壁部26に配置された集光部14をZ方向に沿って移動させる。
回路部19は、筐体11内において、仕切壁部29に対して第3壁部23側に配置されている。つまり、回路部19は、筐体11内において、調整部13、測定部16及び観察部17に対して第3壁部23側に配置されている。回路部19は、仕切壁部29から離間している。回路部19は、例えば、複数の回路基板である。回路部19は、測定部16から出力された信号、及び反射型空間光変調器34に入力する信号を処理する。回路部19は、測定部16から出力された信号に基づいて駆動部18を制御する。一例として、回路部19は、測定部16から出力された信号に基づいて、対象物100の表面と集光部14との距離が一定に維持されるように(すなわち、対象物100の表面とレーザ光L1の集光点との距離が一定に維持されるように)、駆動部18を制御する。なお、筐体11には、回路部19を制御部9(図1参照)等に電気的に接続するための配線が接続されるコネクタ(図示省略)が設けられている。
レーザ加工ヘッド10Bは、レーザ加工ヘッド10Aと同様に、筐体(例えば第2筐体)11と、入射部12と、調整部13と、集光部(例えば第2集光部)14と、ダイクロイックミラー15と、測定部16と、観察部17と、駆動部18と、回路部19と、を備えている。ただし、レーザ加工ヘッド10Bの各構成は、図2に示されるように、1対の取付部65,66間の中点を通り且つY方向に垂直な仮想平面に関して、レーザ加工ヘッド10Aの各構成と面対称の関係を有するように、配置されている(なお、後述するように一例である)。
例えば、レーザ加工ヘッド10Aの筐体11は、第4壁部24が第3壁部23に対してレーザ加工ヘッド10B側に位置し且つ第6壁部26が第5壁部25に対して支持部7側に位置するように、取付部65に取り付けられている。これに対し、レーザ加工ヘッド10Bの筐体11は、第4壁部24が第3壁部23に対してレーザ加工ヘッド10A側に位置し且つ第6壁部26が第5壁部25に対して支持部7側に位置するように、取付部66に取り付けられている。すなわち、レーザ加工ヘッド10Bにおいても、第4壁部24は、レーザ加工ヘッド10Aの筐体にY方向に沿って対向する対向壁部である。またレーザ加工ヘッド10Bにおいても、集光部14は、Z方向からみて、その筐体11における第4壁部(対向壁部)24側に偏って配置されている。
レーザ加工ヘッド10Bの筐体11は、第3壁部23が取付部66側に配置された状態で筐体11が取付部66に取り付けられるように、構成されている。具体的には、次のとおりである。取付部66は、ベースプレート66aと、取付プレート66bと、を有している。ベースプレート66aは、移動部63に設けられたレールに取り付けられている。取付プレート66bは、ベースプレート66aにおけるレーザ加工ヘッド10A側の端部に立設されている。レーザ加工ヘッド10Bの筐体11は、第3壁部23が取付プレート66bに接触した状態で、取付部66に取り付けられている。レーザ加工ヘッド10Bの筐体11は、取付部66に対して着脱可能である。
[レーザ加工ヘッドの作用及び効果]
レーザ加工ヘッド10Aでは、レーザ光L1を出力する光源が筐体11内に設けられていないため、筐体11の小型化を図ることができる。更に、筐体11において、第3壁部23と第4壁部24との距離が第1壁部21と第2壁部22との距離よりも小さく、第6壁部26に配置された集光部14がY方向において第4壁部24側に片寄っている。これにより、集光部14の光軸に垂直な方向に沿って筐体11を移動させる場合に、例えば、第4壁部24側に他の構成(例えば、レーザ加工ヘッド10B)が存在したとしても、当該他の構成に集光部14を近付けることができる。よって、レーザ加工ヘッド10Aは、集光部14をその光軸に垂直な方向に沿って移動させるのに適し得る。
また、レーザ加工ヘッド10Aでは、入射部12が、第5壁部25に設けられており、Y方向において第4壁部24側に片寄っている。これにより、筐体11内の領域のうち調整部13に対して第3壁部23側の領域に他の構成(例えば、回路部19)を配置する等、当該領域を有効に利用することができる。
また、レーザ加工ヘッド10Aでは、集光部14が、X方向において第2壁部22側に片寄っている。これにより、集光部14の光軸に垂直な方向に沿って筐体11を移動させる場合に、例えば、第2壁部22側に他の構成が存在したとしても、当該他の構成に集光部14を近付けることができる。
また、レーザ加工ヘッド10Aでは、入射部12が、第5壁部25に設けられており、Y方向において第4壁部24側に片寄っていると共に、X方向において第2壁部22側に片寄っている。これにより、筐体11内の領域のうち調整部13に対して第3壁部23側の領域に他の構成(例えば、回路部19)を配置する等、当該領域を有効に利用することができる。更に、筐体11内の領域のうち調整部13に対して第1壁部21側の領域に他の構成(例えば、測定部16及び観察部17)を配置する等、当該領域を有効に利用することができる。
また、レーザ加工ヘッド10Aでは、測定部16及び観察部17が、筐体11内の領域のうち調整部13に対して第1壁部21側の領域に配置されており、回路部19が、筐体11内の領域のうち調整部13に対して第3壁部23側に配置されており、ダイクロイックミラー15が、筐体11内において調整部13と集光部14との間に配置されている。これにより、筐体11内の領域を有効に利用することができる。更に、レーザ加工装置1において、対象物100の表面と集光部14との距離の測定結果に基づいた加工が可能となる。また、レーザ加工装置1において、対象物100の表面の観察結果に基づいた加工が可能となる。
また、レーザ加工ヘッド10Aでは、回路部19が、測定部16から出力された信号に基づいて駆動部18を制御する。これにより、対象物100の表面と集光部14との距離の測定結果に基づいてレーザ光L1の集光点の位置を調整することができる。
また、レーザ加工ヘッド10Aでは、入射部12、並びに、調整部13のアッテネータ31、ビームエキスパンダ32及びミラー33が、Z方向に沿って延在する直線A1上に配置されており、調整部13の反射型空間光変調器34、結像光学系35及び集光部14、並びに、集光部14が、Z方向に沿って延在する直線A2上に配置されている。これにより、アッテネータ31、ビームエキスパンダ32、反射型空間光変調器34及び結像光学系35を有する調整部13をコンパクトに構成することができる。
また、レーザ加工ヘッド10Aでは、直線A1が、直線A2に対して第2壁部22側に位置している。これにより、筐体11内の領域のうち調整部13に対して第1壁部21側の領域において、集光部14を用いた他の光学系(例えば、測定部16及び観察部17)を構成する場合に、当該他の光学系の構成の自由度を向上させることができる。
以上の作用及び効果は、レーザ加工ヘッド10Bによっても同様に奏される。
[レーザ加工ヘッドの変形例]
図6に示されるように、入射部12、調整部13及び集光部14は、Z方向に沿って延在する直線A上に配置されていてもよい。これによれば、調整部13をコンパクトに構成することができる。その場合、調整部13は、反射型空間光変調器34及び結像光学系35を有していなくてもよい。また、調整部13は、アッテネータ31及びビームエキスパンダ32を有していてもよい。これによれば、アッテネータ31及びビームエキスパンダ32を有する調整部13をコンパクトに構成することができる。なお、アッテネータ31及びビームエキスパンダ32の配列の順序は、逆であってもよい。
また、光源ユニット8の出射部81aからレーザ加工ヘッド10Aの入射部12へのレーザ光L1の導光、及び光源ユニット8の出射部82aからレーザ加工ヘッド10Bの入射部12へのレーザ光L2の導光の少なくとも1つは、ミラーによって実施されてもよい。図7は、レーザ光L1がミラーによって導光されるレーザ加工装置1の一部分の正面図である。図7に示される構成では、レーザ光L1を反射するミラー3が、Y方向において光源ユニット8の出射部81aと対向し且つZ方向においてレーザ加工ヘッド10Aの入射部12と対向するように、移動機構6の移動部63に取り付けられている。
図7に示される構成では、移動機構6の移動部63をY方向に沿って移動させても、Y方向においてミラー3が光源ユニット8の出射部81aと対向する状態が維持される。また、移動機構6の取付部65をZ方向に沿って移動させても、Z方向においてミラー3がレーザ加工ヘッド10Aの入射部12と対向する状態が維持される。したがって、レーザ加工ヘッド10Aの位置によらず、光源ユニット8の出射部81aから出射されたレーザ光L1を、レーザ加工ヘッド10Aの入射部12に確実に入射させることができる。しかも、光ファイバ2による導光が困難な高出力長短パルスレーザ等の光源を利用することもできる。
また、図7に示される構成では、ミラー3は、角度調整及び位置調整の少なくとも1つが可能となるように、移動機構6の移動部63に取り付けられていてもよい。これによれば、光源ユニット8の出射部81aから出射されたレーザ光L1を、レーザ加工ヘッド10Aの入射部12に、より確実に入射させることができる。
また、光源ユニット8は、1つの光源を有するものであってもよい。その場合、光源ユニット8は、1つの光源から出力されたレーザ光の一部を出射部81aから出射させ且つ当該レーザ光の残部を出射部82aから出射させるように、構成されていればよい。
[レーザ加工装置の動作等について]
引き続いて、レーザ加工装置1の動作について説明する。図8は、レーザ加工装置の動作を示す模式的な上面図である。以降の図においては、図1〜7の各部の相対位置を維持しつつ、レーザ加工ヘッド10A,10Bの模式化された内部を透過して示す。図8に示されるように、支持部7には、対象物100が支持されている。なお、図中の符号Sは、上述した測定部16や観察部17といったように、改質領域を形成するためのレーザ光L1,L2の照射に係る光学系以外の光学系を代表して示している。
また、レーザ加工装置1は、倍率の異なる一対のアライメントカメラACを備えている。アライメントカメラACは、レーザ加工ヘッド10Aと共に取付部65に取り付けられている。アライメントカメラACは、例えば、対象物100を透過する光を用いたデバイスパターン等を撮像する。これにより得られる画像は、対象物100に対するレーザ光L1,L2の照射位置のアライメントに供される。
対象物100には、X方向に沿って延びると共にY方向に沿って配列された複数のラインCが設定されている。ラインCは、仮想的な線であるが、実際に描かれた線であってもよい。なお、対象物100には、Y方向に沿って延びると共にX方向に沿って配列された複数のラインも設定されているが、その図示が省略されている。
レーザ加工装置1は、制御部9の制御のもとで各ラインCに沿ったレーザ加工を実施する。制御部9は、ここでは、支持部7、取付部65、及び、取付部66の移動と、レーザ加工ヘッド10A及びレーザ加工ヘッド10Bからのレーザ光L1,L2の照射と、を制御する。レーザ加工装置1にあっては、制御部9は、第1スキャン処理と第2スキャン処理とを実行する。第1スキャン処理は、複数のラインCの一のラインCに対してレーザ加工ヘッド10Aからのレーザ光L1をX方向にスキャンする処理である。第2スキャン処理は、複数のラインCのうちの別のラインCに対してレーザ加工ヘッド10Bからのレーザ光L2をX方向にスキャンする処理である。
制御部9がレーザ光L1,L2をX方向にスキャンするとは、まず、取付部65,66を介してレーザ加工ヘッド10A,10BをY方向及びZ方向に移動させて、レーザ光L1,L2の集光点を、それぞれのラインC上であって対象物100の内部となる位置に位置させた状態とする。そして、その状態において、支持部7をX方向に移動させることにより、対象物100内をラインCに沿ってX方向にレーザ光L1,L2の集光点を移動させることである。
特に、ここでは、制御部9は、第1スキャン処理と第2スキャン処理とを、少なくとも一部の時間において重複するように実行する。すなわち、制御部9は、一のラインCに沿ってレーザ光L1がスキャンされている状態と、別のラインCに沿ってレーザ光L2がスキャンされている状態とが、同時に実現されるようにする。つまり、制御部9は、レーザ加工ヘッド10Aとレーザ加工ヘッド10Bとを同時に稼働する。これにより、1つのレーザ加工ヘッドを用いた加工に比べて明確にスループットの向上が図られる。
制御部9は、1つのラインCに沿ったレーザ光L1,L2のスキャンが完了すると、レーザ加工ヘッド10A,10Bのそれぞれを独立してラインCの間隔の分だけY方向(必要に応じてZ方向)に移動させて、次のラインCに沿ったレーザ光L1,L2のスキャン(すなわち第1スキャン処理及び第2スキャン処理)を続ける。制御部9は、概ねラインCの本数分だけこの動作を続けて行うことにより、全てのラインCに沿って改質領域を形成する。
図9及び図10に示されるように、ここでは、制御部9は、複数のラインCのうちの対象物100のY方向の一方の端部に位置するラインCからY方向の内側のラインCに向けて順に第1スキャン処理を実行する。これと共に、制御部9は、複数のラインCのうちの対象物100のY方向の他方の端部に位置するラインCからY方向の内側のラインに向けて順に第2スキャン処理を実行する(これを主加工処理と称する)。Y方向の一方の端部に位置するラインCと、Y方向の他方の端部に位置するラインCとは、X方向について互いに同一の長さを有している。
この点についてより詳細に説明する。主加工処理においては、まず、制御部9は、取付部65を介したレーザ加工ヘッド10Aの移動により、レーザ光L1の集光点を、対象物100のY方向の一方の端部に位置するラインC上であって対象物100の内部となる位置に位置させた状態とする。同時に、制御部9は、取付部66を介したレーザ加工ヘッド10Bの移動により、レーザ光L2の集光点を、対象物100のY方向の他方の端部に位置するラインC上であって対象物100の内部となる位置に位置させた状態とする。このとき、レーザ光L1の集光点のX方向の位置とレーザ光L2の集光点のX方向の位置とは一致している。
その状態において、制御部9は、支持部7をX方向に移動させることにより、対象物100内をそれぞれのラインCに沿ってX方向にレーザ光L1,L2の集光点を移動させる。これにより、それぞれのラインCに対する第1スキャン処理と第2スキャン処理とが、同時に開始されると共に同時に完了する。すなわち、ここでは、第1スキャン処理と第2スキャン処理とがその全体において重複している。これにより、ラインCに沿って対象物100の内部に改質領域Mが形成される。
続いて、制御部9は、取付部65を介したレーザ加工ヘッド10Aの移動により、レーザ光L1の集光点を、対象物100のY方向の一方の端部から1つだけ内側に位置するラインC上であって対象物100の内部となる位置に位置させた状態とする。同時に、制御部9は、取付部66を介したレーザ加工ヘッド10Bの移動により、レーザ光L2の集光点を、対象物100のY方向の他方の端部から1つだけ内側に位置するラインC上であって対象物100の内部となる位置に位置させた状態とする。このとき、レーザ光L1の集光点のX方向の位置とレーザ光L2の集光点のX方向の位置とは一致している。
その状態において、制御部9は、支持部7をX方向(往復動作の場合にはX方向の反対方向)に移動させることにより、対象物100内をそれぞれのラインCに沿ってX方向(往復動作の場合にはX方向の反対方向)にレーザ光L1,L2の集光点を移動させる。これにより、ここでも、それぞれのラインCに対する第1スキャン処理と第2スキャン処理とが、同時に開始されると共に同時に完了する。すなわち、ここでも、第1スキャン処理と第2スキャン処理とがその全体において重複している。この制御部9の動作を繰り返し行うことにより、対象物100のより内側のラインCに至るまで、レーザ加工ヘッド10Aとレーザ加工ヘッド10Bとを同時に稼働させて無駄なくレーザ加工ができる。
なお、図9以降の上面図においては、説明の必要上から、改質領域Mを実線として示しているが、対象物100の表面から実際に改質領域Mが見えていることを要さない。
ここで、図11に示されるように、上記の動作を繰り返すうちに、より対象物100の内側の領域において、レーザ加工ヘッド10Aとレーザ加工ヘッド10Bとの位置関係が、互いの距離がY方向にこれ以上縮まらない位置関係(例えば互いに接触している状態)となり、且つ、それぞれの集光部14の間の距離Dに相当する対象物100の領域に、未加工のラインCが残存している場合がある。この場合には、上記のように第1スキャン処理と第2スキャン処理とを同時に実行することが困難となる。したがって、制御部9は、この場合には、次のような後加工処理を実行する。
すなわち、図12に示されるように、制御部9は、主加工処理の結果、レーザ加工ヘッド10Aとレーザ加工ヘッド10BとがY方向について最接近したときに、対象物100におけるそれぞれの集光部14の間の領域に一部のラインCが残存しているときには、レーザ加工ヘッド10Aを対象物100の当該領域から退避させつつ、レーザ加工ヘッド10Bからのレーザ光L2を当該一部のラインCに対してX方向にスキャンする(第2スキャン処理を実行する)後加工処理を実行する。
なお、レーザ加工ヘッド10Aとレーザ加工ヘッド10Bとは逆でもよい。これにより、全てのラインCに対してレーザ加工が完了する。その後、必要に応じて、支持部7を回転させることによりラインCに交差するラインをX方向に沿うように設定し、上記の動作を繰り返すことができる。
[レーザ加工装置の作用及び効果]
以上説明した様に、レーザ加工装置1は、X方向に沿って移動可能とされ、X方向及びX方向に交差するY方向に沿って対象物100を支持するための支持部7と、Y方向に沿って互いに対向するように配置され、支持部7に支持された対象物100にレーザ光L1,L2を照射するためのレーザ加工ヘッド10A,10Bと、を備える。また、レーザ加工装置1は、レーザ加工ヘッド10Aが取り付けられ、X方向及びY方向に交差するZ方向とY方向とのそれぞれに沿って移動可能とされた取付部65と、レーザ加工ヘッド10Bが取り付けられ、Y方向とZ方向とのそれぞれに沿って移動可能とされた取付部66と、を備える。
レーザ加工装置1においては、対象物100を支持する支持部7上に、互に対向するようにレーザ加工ヘッド10A,10Bが配置されている。そして、レーザ加工ヘッド10A,10Bは、それぞれ、取付部65,66を介して、互に交差する2方向に独立して移動可能とされている。このため、対象物100の2つの箇所において、互に独立して、レーザ光L1,L2のスキャンによりレーザ加工を行うことが可能となる。よって、スループットの向上が図られる。
レーザ加工装置1においては、レーザ加工ヘッド10Aは、筐体11と、筐体11における支持部7側の第6壁部26に設けられ、支持部7に支持された対象物100に向けてレーザ光L1を集光するための集光部14と、を有する。また、レーザ加工ヘッド10Bも、筐体11と、筐体11における支持部7側の第6壁部26に設けられ、支持部7に支持された対象物100に向けてレーザ光L2を集光するための集光部14と、を有する。さらに、取付部65,66は、それぞれ、筐体11におけるY方向に沿って互いに対向する第4壁部24(対向壁部)と異なる壁部(ここでは、第3壁部23)に取り付けられている。そして、集光部14は、それぞれ、Z方向からみて、筐体11における第4壁部24側に偏って配置されている。
このため、レーザ加工ヘッド10Aとレーザ加工ヘッド10Bとの間に、取付部65,66が介在しない。したがって、Y方向についてレーザ加工ヘッド10Aとレーザ加工ヘッド10Bとをより接近させることができる。さらに、レーザ加工ヘッド10A,10Bのそれぞれの集光部14が、それぞれの筐体11の互いに対向する第4壁部24側に偏って配置されている。このため、レーザ加工ヘッド10Aとレーザ加工ヘッド10Bとを接近させたときに、互いの集光部14同士の距離をより小さくできる。この結果、Y方向について、より狭い領域までレーザ加工ヘッド10A,10Bの両方を用いた加工が可能となる。したがって、スループットを確実に向上可能である。
また、レーザ加工装置1は、支持部7及び取付部65,66の移動と、レーザ加工ヘッド10A,10Bからのレーザ光L1,L2の照射と、を制御する制御部9を備えている。また、対象物100には、X方向に沿って延びると共にY方向に沿って配列された複数のラインCが設定されている。そして、制御部9は、複数のラインCの一のラインCに対してレーザ加工ヘッド10Aからのレーザ光L1をX方向にスキャンする第1スキャン処理と、複数のラインCのうちの別のラインCに対してレーザ加工ヘッド10Bからのレーザ光L2をX方向にスキャンする第2スキャン処理とを、少なくとも一部の時間において重複するように実行する。このように、第1スキャン処理と第2スキャン処理とを、少なくとも一部重複して実行することにより、スループットの向上が図られる。なお、第1スキャン処理と第2スキャン処理とを同時に行うことにより、より確実にスループットを向上できる。
また、レーザ加工装置1においては、制御部9は、複数のラインCのうちの対象物100のY方向の一方の端部に位置するラインCからY方向の内側のラインCに向けて順に第1スキャン処理を実行しつつ、複数のラインCのうちの対象物100のY方向の他方の端部に位置するラインCからY方向の内側のラインに向けて順に第2スキャン処理を実行する主加工処理を実行する。このように、主加工処理において、Y方向における対象物100の対照的な位置(且つ同一の長さ)のラインCから順に第1スキャン処理及び第2スキャン処理を実行することにより、レーザ光L1,L2の集光点の対象物100に対するX方向に沿った相対移動の無駄が省かれ、スループットがより向上される。
また、レーザ加工装置1においては、制御部9は、主加工処理の結果、レーザ加工ヘッド10Aとレーザ加工ヘッド10BとがY方向について最接近したときに、対象物100における集光部14の間の領域に複数のラインCのうちの一部のラインCが残存しているときには、レーザ加工ヘッド10A,10Bのうちの一方を、対象物100の当該領域から退避させつつ、レーザ加工ヘッド10A,10Bのうちの他方からのレーザ光を一部のラインCに対してX方向にスキャンする後加工処理を実行する。このため、スループットを向上させつつ、漏れなくレーザ加工が可能である。
さらに、レーザ加工装置1においては、一例として、取付部65は、レーザ加工ヘッド10Aの筐体11における第4壁部24の反対側の第3壁部23に取り付けられている。また、取付部66は、レーザ加工ヘッド10Bの筐体11における第4壁部24の反対側の第3壁部23に取り付けられている。このため、取付部65及び取付部66を、レーザ加工ヘッド10Aとレーザ加工ヘッド10Bとの間に介在しないように、容易且つ確実に、レーザ加工ヘッド10A及びレーザ加工ヘッド10Bに取り付けることが可能である。
ここで、レーザ加工装置1においては、筐体11は、X方向において互いに対向する第1壁部21及び第2壁部22と、Y方向において互いに対向する第3壁部23及び第4壁部24と、を含み、第3壁部23と第4壁部24との距離は、第1壁部21と第2壁部22との距離よりも小さい。
このため、レーザ加工ヘッド10A,10Bのそれぞれの筐体11のY方向のサイズがX方向のサイズよりも小さくなる。この結果、装置全体としてY方向に大型化される(フットプリントが大きくなる)ことが避けられる。なお、X方向は、支持部7及び対象物100の移動方向である。このため、X方向については、レーザ光L1,L2のスキャンに際した支持部7及び対象物100の移動量を考慮する必要があり、大型化の抑制の余地が小さい。よって、(スキャンの際の)支持部7及び対象物100の移動量を考慮する必要のないY方向について大型化を避けることが有効である。
また、レーザ加工ヘッド10Aでは、回路部19が、筐体11内において、調整部13に対して第3壁部23側に配置されている。これにより、筐体11内の領域のうち調整部13に対して第3壁部23側の領域を有効に利用することができる。
また、レーザ加工ヘッド10Aでは、調整部13が、筐体11内において、仕切壁部29に対して第4壁部24側に配置されており、回路部19が、筐体11内において、仕切壁部29に対して第3壁部23側に配置されている。これにより、回路部19で発生する熱が調整部13に伝わり難くなるため、回路部19で発生する熱によって調整部13に歪みが生じるのを抑制することができ、レーザ光L1を適切に調整することができる。更に、例えば空冷又は水冷等によって、筐体11内の領域のうち第3壁部23側の領域において回路部19を効率良く冷却することができる。
また、レーザ加工ヘッド10Aでは、調整部13が仕切壁部29に取り付けられている。これにより、調整部13を筐体11内において確実に且つ安定的に支持することができる。
[変形例]
以上の実施形態は、レーザ加工装置の一実施形態を例示したものである。したがって、本開示に係るレーザ加工装置は、上記のレーザ加工装置1に限定されず、任意に変形され得る。
図13〜図18は、取付部及びレーザ加工ヘッドの変形例を示す図である。図13の(a)に示されるように、取付部65をレーザ加工ヘッド10Aの筐体11の第1壁部21に設けつつ、取付部66をレーザ加工ヘッド10Bの筐体11の第1壁部21に設けてもよい。また、図13の(b)に示されるように、取付部65をレーザ加工ヘッド10Aの筐体11の第3壁部23に設けつつ、取付部66を、レーザ加工ヘッド10Bの筐体11の第3壁部23に設ける態様において、取付部65,66における移動部63,64の位置をX方向に互い違いにしてもよい。さらに、図13の(c)に示されるように、取付部65をレーザ加工ヘッド10Aの筐体11の第2壁部22に設けつつ、取付部66をレーザ加工ヘッド10Bの筐体11の第2壁部22に設けてもよい。
また、図14の(a)に示されるように、取付部65をレーザ加工ヘッド10Aの筐体11の第5壁部25に設けつつ、取付部66をレーザ加工ヘッド10Bの筐体11の第5壁部25に設けてもよい。また、図14の(b)に示されるように、取付部65をレーザ加工ヘッド10Aの筐体11の第6壁部26に設けつつ、取付部66をレーザ加工ヘッド10Bの筐体11の第6壁部26に設けてもよい。以上のように、取付部65,66は、それぞれ、Y方向に沿って互いに対向する第4壁部24と異なる壁部に取り付けられていればよい。さらに、図14の(c)に示されるように、第1壁部21と第2壁部22との間隔を拡大しつつ、X方向について筐体11の中央部に集光部14を設けてもよい。
また、以上の例のように、レーザ加工装置1においては、一対のレーザ加工ヘッドとして、レーザ加工ヘッド10Aとレーザ加工ヘッド10Bとを用いなくてもよい。すなわち、レーザ加工装置1においては、図15の(a)に示されるように、一対の(1種類の)レーザ加工ヘッド10Aを用いたり、図15の(b)に示されるように、一対の(別の1種類の)レーザ加工ヘッド10Bを用いたりすることができる。これらの場合には、一方のレーザ加工ヘッド10A,10Bに対して他方のレーザ加工ヘッド10A,10BをZ軸方向を中心に180°回転させた状態において、それぞれの集光部14のX方向の中心位置が一致するように配置される。これらの場合には、2種類のレーザ加工ヘッドを用意する必要がない。
これらのように、レーザ加工ヘッド10Aのみ(或いはレーザ加工ヘッド10Bのみ)を用いる場合であっても、取付部65,66を設ける壁部はさまざまに変更できる。例えば、図16の(a)に示されるように、1つのレーザ加工ヘッド10Aの筐体11の第1壁部21に取付部65を設けつつ、1つのレーザ加工ヘッド10Aの筐体11の第2壁部22に取付部66を設けることができる。また、図16の(b)に示されるように、1つのレーザ加工ヘッド10Bの筐体11の第2壁部22に取付部65を設けつつ、1つのレーザ加工ヘッド10Bの筐体11の第1壁部21に取付部66を設けてもよい。すなわち、これらの場合であっても、取付部65,66は、それぞれ、Y方向に沿って互いに対向する第4壁部24と異なる壁部に取り付けられていればよい。
ここで、図17の(a)に示されるように、レーザ加工ヘッド10Aとレーザ加工ヘッド10Bとを、互いがX方向に重複しない位置において、Y方向に配列してもよい。この場合、図17の(b)に示されるように、レーザ加工ヘッド10Aの集光部14と、レーザ加工ヘッド10Bの集光部14とを、X軸方向に重複させることが可能となる。よって、主加工処理において全てのラインCに対して第1及び第2スキャン処理を実行してレーザ加工を施すことが可能となる。すなわち、後加工処理が不要となる。ただし、この場合、には、レーザ加工ヘッド10Aとレーザ加工ヘッド10BとのX方向のシフト量の分だけ、第1及び第2スキャン処理の際の支持部7のX方向の移動距離が長くなる。図18に示されるように、1種類(ここでは、レーザ加工ヘッド10A)のみを用いた場合でも同様である。
図17,18に示される構成は、例えば、対象物100が大判のガラスウェハである場合等、12インチウェハよりもさらに大きいウエハを加工する場合に、1つのラインCあたりの加工長さ(支持部7の移動距離の長さ)が伸びるデメリットよりも、最後まで2つのレーザ加工ヘッドで加工できる(後加工処理が不要となる)メリットが上回る場合に採用し得る。
ここで、レーザ加工装置1の後加工処理の別の例として、図19,20に示される例が挙げられる。すなわち、ここでは、まず、図19の(a)に示されるように、制御部9が、複数のラインCのうちの対象物100のY方向の一方の端部に位置するラインCからY方向の内側のラインCに向けて順に第1スキャン処理を実行する。これと共に、制御部9は、複数のラインCのうちの対象物100のY方向の他方の端部に位置するラインCからY方向の内側のラインに向けて順に第2スキャン処理を実行する(すなわち、主加工処理を実行する)。
図10,11においては、レーザ加工ヘッド10Aとレーザ加工ヘッド10Bとが最接近(例えば接触)するまで主加工処理を行う例を挙げた。このとき、集光部14同士の距離が距離Dであった。これに対して、この例においては、図19の(b)に示されるように、制御部9は、主加工処理を進めることによって、レーザ加工ヘッド10Aの集光部14とレーザ加工ヘッド10Bの集光部14とがY方向に徐々(ラインCの間隔ごと)に近接して、集光部14同士の距離が距離Dの2倍より大きな(或いは同程度の)距離E1に至ったとき、レーザ光L1,L2のスキャンを停止する。これと共に、図20の(a)に示されるように、制御部9は、レーザ加工ヘッド10A,10Bのうちの一方(ここではレーザ加工ヘッド10B)を、レーザ加工ヘッド10A,10Bの他方(ここではレーザ加工ヘッド10A)側に距離Dだけ移動させる。これにより、集光部14同士の距離は距離E1よりも小さな距離E2となる。距離E1が距離Dの概ね2倍であった場合には、距離E2は距離Dとほぼ同等である。
制御部9は、その状態において、集光部14同士の距離を距離E2に維持しながら、Y方向に順に第1スキャン処理及び第2スキャン処理を実行する。このとき、レーザ加工ヘッド10Aとレーザ加工ヘッド10Bとは、同一方向(Y方向)に移動しながら、X方向へのレーザ光L1,L2のスキャン繰り返すこととなる。そして、第1スキャン処理及び第2スキャン処理を同時に続けていったときに、最後に未加工のラインCが残存した場合にのみ、当該ラインCに対して、レーザ加工ヘッド10A,10Bの一方を用いて加工を行う。このとき、レーザ加工ヘッド10A,10Bのうちの他方は、距離E2が維持される位置に保持されていてもよいし、別の位置に移動させられてもよい。以上が、この例での後加工処理である。これによれば、一対のレーザ加工ヘッド10A,10Bのうちの一方のみでの加工時間を可能な限り減らしてスループットのさらなる向上が図られる。特に、Y方向におけるラインCの間隔が、距離Dに対して十分に小さい場合(例えば、距離Dの範囲に数百のラインCが存在する場合)に有効である。
また、レーザ加工装置1の主加工処理の別の例を挙げることもできる。すなわち、図8等においては、制御部9が、複数のラインCのうちの対象物100のY方向の一方の端部に位置するラインCからY方向の内側のラインCに向けて順に第1スキャン処理を実行すると共に、複数のラインCのうちの対象物100のY方向の他方の端部に位置するラインCからY方向の内側のラインに向けて順に第2スキャン処理を実行する主加工処理を例示した。
しかしながら、レーザ加工装置1においては、第1スキャン処理と第2スキャン処理とを少なくとも一部の時間において重複するように実行すれば、スループットの向上が図られるため、主加工処理の例は上記の例に限定されない。例えば、制御部9は、複数のラインCのうちの対象物100のY方向の一方の端部に位置するラインCからY方向の内側のラインCに向けて順に第1スキャン処理を実行すると共に、複数のラインCのうちのY方向の中央部のラインCから対象物100のY方向の他方の端部側に向けて順に第2スキャン処理を実行するようにしてもよい。この場合には、同時に実行される第1スキャン処理と第2スキャン処理との間においてラインCの長さが異なることから、相対的に長いラインCのスキャンに合わせた対象物100のX方向の移動が必要となるが、対象物100の状況に応じてメリットが生じる可能性もある。さらには、以上の例と異なるスキャンの態様であってもよい。
なお、制御部9は、レーザ加工ヘッド10Aからのレーザ光L1と、レーザ加工ヘッド10Bからのレーザ光L2とで、互に異なる波長、及びZ方向の集光位置において、対象物100を加工する処理(多波長加工)を実行するようにしてもよい。多波長加工は、例えば、シリコン(Si)とガラスとを貼り合わせたウェハを加工する場合(第1の場合)や、裏面側から入射したレーザ光L1,L2の一部がデバイスに吸収されることにより回路の破損が生じ得るウェハを加工する場合(第2の場合)等に使用できる。
第1の場合、シリコンを加工する波長(例えば1064nm)の光とガラスを加工する波長(例えば532nm)の光とがいずれも対象材料に届く必要があるため、ガラス側から加工を実施する。レーザ加工ヘッド10Aからのレーザ光L1の集光位置をガラス越しにシリコン内に合わせ、レーザ加工ヘッド10Bからのレーザ光L2の集光位置をガラス内に併せて、対応する波長にて加工を実施する。このように異なる2種類の基材が貼り合されたウェハを多波長加工で加工するためには、その波長のうち、下側の記載を加工する波長は、上側の基材を透過する波長である必要がある。ここでは、一対のレーザ加工ヘッド10A,10Bを用いて多波長加工を行うためスループットの向上が図られる。
一方、第2の場合、レーザ加工ヘッド10Aからのレーザ光L1の集光位置をデバイス近傍に設定し、且つ、レーザ加工ヘッド10Bからのレーザ光L2の集光位置をデバイスから離れた位置に設定する。レーザ光L1の波長は、デバイス側への抜け光が少なくなるように、より基材に吸収がある波長(例えば1064nm)とし、レーザ光L2の波長は、多少の抜け光が生じるとしても、より基材の加工に適したレーザ光L1の波長よりも長い波長(例えば1342nm)とすることができる。
なお、回路部19は、測定部16から出力された信号、及び/又は、反射型空間光変調器34に入力する信号を処理するものに限定されず、レーザ加工ヘッドにおいて何らかの信号を処理するものであればよい。