以下、実施形態に係るアンテナ装置及び電子機器について、図面を参照して説明する。なお、明細書及び図面に記載された構成要素について、明細書及び図面に記載された大きさ及び厚さ、並びにそれらの寸法関係は例示であり、これらの構成要素は、明細書及び図面に記載された例示には限定されない。例えば、図面によっては、給電コイルにおいて磁性体の厚さに対するコイル導体の厚さの比率は、実際の比率と異なる場合がある。
各実施形態に示す「アンテナ装置」は、外部機器のアンテナ装置(通信相手)と、磁界結合による無線伝送を行う無線伝送システムに用いられるコイルアンテナである。ここで、「伝送」は、信号の送受信および電力の送受信の意味を含む。また、無線伝送システムには、近距離無線通信システムおよび無線給電システムが含まれる。コイルアンテナの大きさは、使用する周波数における波長λに比べて十分に小さく、使用周波数帯においては、電磁波の放射効率は低い。コイルアンテナの大きさはλ/10以下である。より具体的には、コイルアンテナの電流経路の長さ、つまり、後述のコイル導体の線路長がλ/10以下である。なお、ここでいう波長とは、導体が形成される基材の誘電性や透磁性による波長短縮効果を考慮した実効的な波長である。コイルアンテナが有するコイル導体の両端は、給電回路に接続される。コイルアンテナには、電流経路、つまり、コイル導体に沿って、ほぼ一様な大きさの電流が流れる。
各実施形態に示す「アンテナ装置」は、電子機器に搭載され、例えば、電子機器における近接無線通信および無線給電システムに用いられる。
各実施形態に示す「アンテナ装置」を備える電子機器は、例えば、スマートフォンを含む携帯電話、ウェアラブル機器、腕時計型端末、ヘッドフォン又は補聴器である。
(実施形態1)
図1〜図7を参照して、実施形態1に係るアンテナ装置1について説明する。
実施形態1に係るアンテナ装置1は、外部機器と無線通信を行う電子機器に搭載されて用いられ、外部機器のアンテナ装置と磁界結合による無線通信を行う。アンテナ装置1は、図1及び図2に示すように、基材2と、第1コイルアンテナ3と、第2コイルアンテナ4と、第1〜第4パッド部P1〜P4と、第1カバー層6と、第2カバー層7とを備えている。
基材2は、各コイルアンテナ3,4、カバー層6,7及びパッド部P1〜P4が設けられる部材である。第1コイルアンテナ3は、第1無線伝送システム(本実施形態においては、近距離無線通信システム)で用いられるコイルアンテナである。第2コイルアンテナ4は、第2無線伝送システム(本実施形態においては、無線給電システム)で用いられるコイルアンテナである。第1無線伝送システム及び第2無線伝送システムは、互いに伝送方式が異なっている。第1パッド部P1及び第2パッド部P2は、第1コイルアンテナ3の外部端子として機能する部分である。第3パッド部P3及び第4パッド部P4は、第2コイルアンテナ4の外部端子として機能する部分である。第1カバー層6及び第2カバー層7は、基材2の両側の主面2S,2Tを覆う保護層である。
基材2は、例えば略矩形のシート状である。基材2の厚さは、例えば10μm〜50μmであってもよく、望ましくは12.5μmであってもよい。基材2は、電気絶縁材料により形成されている。電気絶縁材料は、例えば樹脂であり、より詳細には、例えば、ポリイミド、PET(Poly Ethylene Terephthalate:ポリエチレンテレフタレート)、又は、液晶ポリマー(Liquid Crystal Polymer:LCP)である。
基材2は、第1主面2S(図1参照)及び第2主面2T(図2参照)を有する。第1主面2Sは、基材2の表側の主面である。第2主面2Tは、基材2の裏側の主面である。なお、図1〜図5において、「表側」は、紙面の垂直方向の手前側であり、「裏側」とは、紙面の垂直方向の奥側である。なお、基材2の表側及び裏側は、説明のために便宜上使用しているに過ぎず、実施形態に係るアンテナ装置1の使用方向を規定する趣旨ではない。以後、第1主面2Sを表側の主面2Sとも記載し、第2主面2Tを表側の主面2Tとも記載する。
基材2は、図1及び図2に示すように、基材本体9(本体部)と、引出部10とを有する。基材本体9は、第1コイルアンテナ3及び第2コイルアンテナ4が設けられる部分である。引出部10は、各コイルアンテナ3,4から引き出された配線部(第1〜第4配線部16,17,21,22)が集められる部分であり、集められた配線部を外部の回路基板に電気的に接続する部分である。基材本体9は、基材2のうちの引出部10以外の部分である。本願に示す実施形態では、引出部10は基材本体9の外縁から外側に延長しており、該延長方向の垂直方向において、引出部10の幅D1は基材本体9の幅D2よりも小さい(図1参照)。引出部10は、基材本体9に繋がっており、例えば、基材本体9と一体的に形成されている。
基材本体9は、図1及び図2に示すように、例えば略矩形のシート状である。また、基材本体9は、平面状に形成されている。基材本体9は、第1本体主面9Sと第2本体主面9Tとを有する。第1本体主面9Sは、基材2の第1主面(表側の主面)2Sと同じ側の主面である。第2本体主面9Tは、基材2の第2主面(裏側の主面)2Tと同じ側の主面である。以後、第1本体主面9Sを表側の主面9Sとも記載し、第2本体主面9Tを裏側の主面9Tとも記載する。基材本体9は、凹部11を有する。凹部11は、引出部10が配置される部分であり、基材本体9の平面視で例えば矩形状である。凹部11は、基材本体9の一辺9aから基材本体9の内部に向かって窪んでいる。
基材本体9の表側の主面9S及び裏側の主面9Tは、例えば平坦である。これにより、基材本体9の表側の主面9S又は裏側の主面9Tを電子機器内の所定箇所(筐体の内面またはバッテリの表面)に固定する際に、基材本体9の表側の主面9S又は裏側の主面9Tを上記の所定箇所に密着して固定できる。
基材本体9は、1つ又は複数(本実施形態では2つ)の孔30を有する。2つの孔30は、基材本体9が固定される部材に設けられた突起が嵌る孔である。2つの孔30は、基材本体9の一辺9aに沿って凹部11の両側に配置されている。
引出部10は、図3〜図5に示すように、例えば平面視L字形状のシート状である。引出部10は、第1引出主面10S(図1参照)と第2引出主面10T(図2参照)とを有する。第1引出主面10Sは、基材2の第1主面(表側の主面)2Sと同じ側の主面である。第2引出主面10Tは、基材2の第2主面(裏側の主面)2Tと同じ側の主面である。以後、第1引出主面10Sを表側の主面10Sとも記載し、第2引出主面10Tを裏側の主面10Tとも記載する。
引出部10は、基材2の厚さ方向から見て例えば略L字形であり、基材本体9の長手方向(基材本体9の一辺に直交する方向)に延びて、その先端部が基材本体9の幅方向(基材本体9の一辺9aに平行な方向)の一方側に屈曲して延びている。引出部10は、基端部10aを有する。基端部10aは、基材本体9の凹部11の底部11aと一体的に連結されている。
引出部10は、1つ又は複数(本実施形態では2つ)の孔31を有する。2つの孔31は、引出部10が固定される部材に設けられた突起が嵌る孔である。2つの孔31は、引出部10において長手方向に沿って配置されている。
引出部10は、基端部10aを支点として基材2の表側及び裏側に撓むことが可能である。引出部10の幅方向(短手方向)の両端10a,10bと基材本体9との間には、隙間が確保されている。これにより、引出部10が基材2の表側及び裏側に撓む際に、引出部10と基材本体9との干渉が防止される。
第1パッド部P1及び第2パッド部P2は、引出部10の表側の主面10Sに設けられている。より詳細には、第1パッド部P1及び第2パッド部P2は、例えば、引出部10の先端から屈曲して延びた部分(延設部分)において、その延設部分の長手方向に沿って互いに間隔を空けて並んでいる。
第3パッド部P3及び第4パッド部P4は、引出部10の表側の主面10Sに設けられている。より詳細には、第3パッド部P3及び第4パッド部P4は、例えば、引出部10において、引出部10の幅方向(短手方向)に沿って互いに間隔を空けて並んでいる。
第1〜第4パッド部P1〜P4は、例えば平面視矩形で形成されている。第1〜第4パッド部P1〜P4の厚さは、例えば18μm〜100μmであってもよく、望ましくは60μmであってもよい。第1〜第4バッド部P1〜P4は、導電性を有する材料(例えば銅、銅合金、又はアルミニウム)で形成されている。また、これらの第1〜第4パッド部の代わりに、4つの端子を有するコネクタ部品を設けても良い。
第1コイルアンテナ3は、例えば本実施形態においては近距離無線通信システム(第1無線伝送システム)に使用されるアンテナである。近距離無線通信システムは、例えば、NFC(Near field Communication、近傍界通信)を用いた無線通信システムである。例えば、近距離無線通信システムは、HF帯、特に13.56MHz付近の搬送周波数で用いられる。また、近距離無線通信システムは、磁界結合により通信相手と通信を行う。ただし、第1コイルアンテナ3は、例えば無線給電システム等の他の無線伝送システムに用いるものであってもよい。
第1コイルアンテナ3は、図1及び図2に示すように、平面コイルであり、第1コイル導体15(図1参照)と、第1配線部16(図2参照)と、第2配線部17(図2参照)とを有する。第1コイル導体15は、通信相手と磁界結合する部分である。第1配線部16は、第1コイル導体15の一端部15aと第1パッド部P1とを電気的に接続する部分である。また、第2配線部17は、第1コイル導体15の他端部15bと第2パッド部P2とを電気的に接続する部分である。
第1コイル導体15は、基材本体9の表側の主面9Sに設けられている。第1コイル導体15は、基材本体9の平面視で、例えば、内側から外側に向かって左回りに複数回(例えば4回)巻回された矩形スパイラル状で薄膜状の導体である。第1コイル導体15の厚さは、例えば18μm〜100μmであってもよく、望ましくは60μmであってもよい。第1コイル導体15は、導電性を有する材料(例えば銅、銅合金又は、アルミニウム)で形成されている。
第1コイル導体15は、その中央に、例えば矩形のコイル開口15kを有する。コイル開口15kは、第1コイル導体15の最内周によって囲まれた領域である。第1コイル導体15は、基材本体9の表側の主面9Sの領域91bの周縁に沿って設けられている(図1参照)。領域91bは、主面9Sのうち、一辺9a側の縁部91a以外の領域である。縁部91aは、凹部11が設けられた領域である。
第1コイル導体15の両端部15a,15bは、第1配線部16及び第2配線部17の長さを短くする観点から、第1コイル導体15の周方向の位置のうち、引出部10に近い位置に配置されることが望ましい。より詳細には、両端部15a,15bは、引出部10の両辺10bの延長線10c(図3及び図4参照)の内側の範囲内に配置されることが望ましく、その範囲外に配置される場合はその範囲の近くに配置されることが望ましい。
第1配線部16は、図3及び図5に示すように、第1コイル導体15の一端部15aと第1パッド部P1とを電気的に接続するための配線部である。なお、「電気的に接続する」とは、物理的に間接であっても導通するものを含む。第2配線部17は、図3及び図5に示すように、第1コイル導体15の他端部15bと第2パッド部P2とを電気的に接続するための配線部である。第1配線部16及び第2配線部17は、基材2の裏側の主面2Tに設けられている(図2参照)。第1配線部16及び第2配線部17の一部は、引出部10の裏側の主面10Tに設けられている(図2参照)。第1配線部16及び第2配線部17は、例えば帯形で薄膜状である。第1配線部16及び第2配線部17の厚さは、例えば18μm〜100μmであってもよく、望ましくは60μmであってもよい。第1配線部16及び第2配線部17は、導電性を有する材料(例えば銅、銅合金又は、アルミニウム)で形成されている。
第1配線部16及び第2配線部17は、図3及び図5に示すように、第1コイル導体15の端部15a,15bから一方向Q1に沿って引出部10に引き出されている。言い換えれば、引出部10は基材本体9の外縁から外側に延長している。なお、一方向Q1は、引出部10の長手方向に平行な方向であり、換言すれば、基材本体9の一辺9aに直交する方向である。第1配線部16は、基材本体9の平面視で、第1コイル導体15を横切って引出部10に引き出されている。第1配線部16及び第2配線部17は、引出部10において、引出部10に沿って第1パッド部P1及び第2パッド部P2まで引き出されている。
第1配線部16及び第2配線部17は、互いに隣接して配置されている。各配線部16,17に流れる電流は互いに逆向きであることを考慮すると、上記のように、各配線部16,17が互いに隣接することで、各配線部16,17に流れる電流が発生する磁界を或る程度互いに相殺して低減できる。この結果、上記の磁界が周囲に与える影響を低減できる。
基材本体9の平面視で、第1配線部16の一端部16aは、第1コイル導体15の一端部15aに重なる位置に配置されており、複数(例えば2つ)のスルーホールTH1を介して、第1コイル導体15の一端部15aと電気的に接続されている。複数のスルーホールTH1は、基材本体9の厚さ方向に貫通している。複数のスルーホールTH1は、例えば、第1配線部16の延伸方向に沿って並んでいる。また、基材本体9の平面視で、第1配線部16の他端部16bは、第1パッド部P1に重なる位置に配置されており、複数(例えば2つ)のスルーホールTH2を介して、第1パッド部P1と電気的に接続されている。複数のスルーホールTH2は、引出部10の厚さ方向に貫通している。複数のスルーホールTH2は、例えば、第1配線部16の延伸方向に沿って並んでいる。複数のスルーホールTH1、複数のスルーホールTH2は貫通孔内部に導体が形成されている。
基材本体9の平面視で、第2配線部17の一端部17aは、第1コイル導体15の他端部15bに重なる位置に配置されており、複数(例えば2つ)のスルーホールTH3を介して、第1コイル導体15の他端部15bと電気的に接続されている。複数のスルーホールTH2は、基材本体9の厚さ方向に貫通している。複数のスルーホールTH2は、第2配線部17の延伸方向に沿って並んでいる。また、基材本体9の平面視で、第2配線部17の他端部17bは、第2パッド部P2に重なる位置に配置されており、複数(例えば2つ)のスルーホールTH4を介して、第2パッド部P2と電気的に接続されている。複数のスルーホールTH4は、引出部10の厚さ方向に貫通している。複数のスルーホールTH4は、第2配線部17の延伸方向に沿って並んでいる。
第2コイルアンテナ4は、本実施形態においては無線給電システム(第2無線伝送システム)に使用されるアンテナである。無線給電システムは、例えば電磁誘導電力伝送システム、又は、磁界共鳴電力伝送システムである。磁界共鳴電力伝送システムは、HF帯、特に6.78MHz付近の搬送周波数で用いられる。無線給電システムは、例えば磁界結合により電力伝送相手と結合して電力伝送を行う。この無線給電システムは、例えば、スマートフォン等の電子機器を充電するために使用される。
なお、本実施形態において、無線給電システム(第2無線伝送システム)の搬送周波数は、近距離無線通信システム(第1無線伝送システム)の搬送周波数よりも低い。
第2コイルアンテナ4は、図1及び図2に示すように、平面コイルであり、2つの第2コイル導体19,20と、第3配線部21と、第4配線部22とを有する。
第2コイル導体19は、図1に示すように、基材本体9の表側の主面9Sに設けられている。第2コイル導体19は、第1コイル導体15のコイル開口15k内に配置されている。第2コイル導体19は、基材本体9の表側からの平面視で、例えば、外側から内側に向かって右回りに複数回(例えば11回)巻回された円形スパイラル状で薄膜状の導体である。第2コイル導体19の厚さは、例えば18μm〜100μmであってもよく、望ましくは60μmであってもよい。第2コイル導体19は、導電性を有する材料(例えば銅、銅合金、又はアルミニウム)で形成されている。
第2コイル導体19は、端部19a,19bを有する。端部19a,19bは、第2コイル導体19の外周に配置されている。後述するように、端部19aには第3配線部21が接続されており、端部19bには第4配線部22が接続されている。第2コイル導体19の両端部19a,19bは、第3配線部21及び第4配線部22の長さを短くする観点から、第2コイル導体19の周方向の位置のうち、引出部10に近い位置に配置されることが望ましい。より詳細には、両端部19a,19bは、引出部10の両辺10bの延長線10c(図3及び図4参照)の間の範囲内に配置されることが望ましく、その範囲外に配置される場合はその範囲の近くに配置されることが望ましい。本実施形態では、図3及び図4に示すように、端部19bは、2つの延長線10cの間の範囲に配置され、端部19aは、上記の範囲の近くに配置されている。
第2コイル導体20は、図2に示すように、基材本体9の裏側の主面9Tに設けられている。第2コイル導体20は、基材本体9の表側から透視して裏側を見た平面視で、例えば、外側から内側に向かって右回りに複数回(例えば11回)巻回された円形スパイラル状で薄膜状の導体である。第2コイル導体20の厚さは、例えば18μm〜100μmであってもよく、望ましくは60μmであってもよい。第2コイル導体20は、導電性を有する材料(例えば銅、銅合金、又はアルミニウム)で形成されている。
第2コイル導体20の一端部20aは、最内周巻回導体20pの端部から他の巻回導体20qを横切って最外周巻回導体20rの外周に引き出されている。なお、最外周巻回導体20rとは、第2コイル導体20の最外周を巻回された1巻回分の導体である。最内周巻回導体20pとは、第2コイル導体20の最内周を巻回された1巻回分の導体である。他の巻回導体20qとは、最外周巻回導体20rと最内周巻回導体20pとの間を巻回された1巻回分の各導体である。
後述するように、第2コイル導体20の端部20aには、第3配線部21が接続されており、第2コイル導体20の端部20bには、第4配線部22が接続されている。第3配線部21及び第4配線部22は、抵抗損失を抑制する観点から極力短くすることが望ましい。このために、第2コイル導体20の両端部20a,20bは、第2コイル導体20の周方向の位置のうち、引出部10に一番近い位置に配置されることが望ましい。また、両端部20a,20bは、引出部10の両辺10bの延長線10c(図3参照)の間の範囲内に配置されることが望ましく、その範囲外に配置される場合はその範囲の近くに配置されることが望ましい。本実施形態では、図3及び図4に示すように、端部20bは、2つの延長線10cの間の範囲に配置され、端部20aは、上記の範囲の近くに配置されている。
第2コイル導体20は、図3及び図4に示すように、基材本体9の厚さ方向において、第2コイル導体19と重なるように配置されている。より詳細には、2つの第2コイル導体19,20は、基材本体9の厚さ方向から見て、例えば、同心状に配置されている。さらに詳細には、2つの第2コイル導体19,20は、基材本体9の表側から見て、例えば、巻き数及び巻回方向が同じであり、第2コイル導体19の輪郭と第2コイル導体20の輪郭とが互いに重なっている。したがって、第2コイル導体20は、基材本体9の平面視で、第1コイル導体15のコイル開口15k内に配置されている。基材本体9の厚さ方向において、2つの第2コイル導体19,20の各々の一端部19a,20aは、互いに重なっている。2つの第2コイル導体19,20の各々の他端部19b,20bは、互いに重なっている。
第2コイル導体19,20は、スルーホールで互いに電気的に接続されている。図示は省略するが、より詳細には、第2コイル導体19,20の導体が、例えば端部10b,20bから一定角度(例えば90度)巻回する毎に複数(例えば3つ)のスルーホールで互いに電気的に接続されている。上記の複数のスルーホールは導体の延伸方向に沿って並んでいる。
なお、本実施形態では、第2コイルアンテナ4は、基材本体9の両側の主面9S,9Tに第2コイル導体19,20を備えている。これにより、第2コイルアンテナ4の抵抗成分を低減でき、第2コイルアンテナ4の通信特性を向上できる。
第3配線部21は、図3及び図5に示すように、2つの第2コイル導体19,20の各々の一端部19a,20aと第3パッド部P1とを電気的に接続するための配線部である。第4配線部22は、図3及び図5に示すように、2つの第2コイル導体19,20の各々の他端部19b,20bと第4パッド部P4とを電気的に接続するための配線部である。第3配線部21及び第4配線部22は、基材2の裏側の主面2Tに設けられている。第3配線部21及び第4配線部22の一部は、引出部10の裏側の主面10Tに設けられている。
第3配線部21及び第4配線部22は、例えば帯形で薄膜状である。第3配線部21及び第4配線部22の厚さは、例えば18μm〜100μmであってもよく、望ましくは60μmであってもよい。第3配線部21及び第4配線部22は、導電性を有する材料(例えば銅、銅合金、又はアルミニウム)で形成されている。
第3配線部21及び第4配線部22は、第2コイル導体20の端部20a,20bから例えば一方向Q1に沿って引出部10に引き出されている。なお、第2コイル導体19,20の一端部19a,20aは、2つの延長線10cの間の範囲の外に配置されているため、第3配線部21は、配索の途中で一方向Q1に直交する方向に曲げられて、2つの延長線10c内の範囲内に引き込まれている。
第3配線部21及び第4配線部22は、基材本体9の平面視で、第1コイル導体15を横切って引出部10に引き出されている。第3配線部21及び第4配線部22は、引出部10において、引出部10に沿って第3パッド部P3及び第4パッド部P4まで引き出されている。
基材2の裏側の主面2Tの平面視で、第3配線部21及び第4配線部22の間に、第1配線部16及び第2配線部17が配置されている。これにより、第3配線部21及び第4配線部22で、第1配線部16及び第2配線部17を流れる電流が発生する高周波の磁界が周囲に拡がることを低減できる。なお、本実施形態では、第1配線部16及び第2配線部17は、近距離無線通信システムで用いられ、第3配線部21及び第4配線部22は、無線給電システムで用いられる。近距離無線通信システムの搬送周波数は、無線給電システムの搬送周波数よりも高い。このため、第1配線部16及び第2配線部17に流れる電流が発生する磁界の周波数は、第3配線部21及び第4配線部22に流れる電流が発生する磁界の周波数よりも高いことを想定している。
図2に示すように、第3配線部21の一端部21aは、第2コイル導体20の一端部20aと電気的に接続され、第4配線部22の他端部22aは、第2コイル導体20の他端部20bと電気的に接続されている。
図3及び図5に示すように、第3配線部21の一端部21aは、基材本体9の厚さ方向において、第2コイル導体19の一端部19aに重なる位置に配置されている。第3配線部21の一端部21aは、複数(例えば2つ)のスルーホールTH5を介して、第2コイル導体19の一端部19aと電気的に接続されている。複数のスルーホールTH5は、基材本体9の厚さ方向に貫通している。複数のスルーホールTH5は、第3配線部21の延伸方向に沿って並んでいる。
また、第3配線部21の他端部21bは、引出部10の厚さ方向において、第3パッド部P3に重なる位置に配置されており、複数(例えば2つ)のスルーホールTH6を介して、第3パッド部P3と電気的に接続されている。複数のスルーホールTH6は、引出部10の厚さ方向に貫通している。複数のスルーホールTH6は、第3配線部21の延伸方向に沿って並んでいる。
図3及び図5に示すように、第4配線部22の他端部22bは、基材本体9の厚さ方向において、第2コイル導体19の端部19bに重なる位置に配置されている。第4配線部22の他端部22bは、複数(例えば2つ)のスルーホールTH7を介して、第2コイル導体19の他端部19bと電気的に接続されている。複数のスルーホールTH7は、基材本体9の厚さ方向に貫通している。複数のスルーホールTH7は、第4配線部22の延伸方向に沿って並んでいる。
また、図3及び図5に示すように、第4配線部22の他端部22bは、引出部10の厚さ方向において、第4パッド部P4に重なる位置に配置されており、複数(例えば2つ)のスルーホールTH8を介して、第4パッド部P4と電気的に接続されている。複数のスルーホールTH8は、引出部10の厚さ方向に貫通している。複数のスルーホールTH8は、第4配線部22の延伸方向に沿って並んでいる。
第1カバー層6は、基材2のうち、引出部10以外の基材本体9の表側の主面9Sに設けられており、第1〜第4パッド部P1〜P4を覆わず、第1コイル導体15及び第2コイル導体19を覆っている。第2カバー層7は、基材2(すなわち基材本体9及び引出部10の両方)の裏側の主面2T(9T,10T)に設けられており、第2コイル導体20、及び第1〜第4配線部16,17,21,22を覆っている。
第1カバー層6及び第2カバー層7は、例えばシート状である。第1カバー層6及び第2カバー層7の厚さは、例えば10μm〜50μmであってもよく、望ましくは12.5μmであってもよい。第1カバー層6及び第2カバー層7は、電気絶縁材料により形成されている。電気絶縁材料は、例えば樹脂であり、より詳細には、例えば、ポリイミド、PET(Poly Ethylene Terephthalate:ポリエチレンテレフタレート)、液晶ポリマー(Liquid Crystal Polymer:LCP)、又はレジストである。
図6、図7A及び図7Bを参照して、引出部10の形状について詳しく説明する。
図6に示すように、引出部10は、段差部10wと、基部10vとを有する。段差部10wは、引出部10の基端部である。基部10vは、例えば平板状である。段差部10wは、基材本体9の端部から基材本体9の表側に向かって延びている。基部10vは、段差部10wの端部から、基材本体9の主面9Sと平行な方向でかつ基材本体9から離れる方向(すなわち基材本体9の外側)に延びている。
基部10vは、基材本体9よりも基材2の表側に配置されている。基部10v及び基材本体9は、例えば互いに平行である。段差部10wは、基材本体9と基部10vとを連結する。段差部10wにおける基部10vとの連結部付近R1は、円弧状に湾曲しており、段差部10wにおける基材本体9との連結部付近R2も円弧状に湾曲している。このように、引出部10が段差部10wを有することで、基材本体9に対して基材2の表側に突出するように形成されている。すなわち、基材本体9及び引出部10は、同じ平面内に配置されていない。この結果、基材本体9と引出部10とを高さの異なる箇所に配置可能となり、基材本体9と引出部10との配置の自由度を向上できる。また、連結部付近R1,R2が湾曲していることで、引出部10及び基材本体9は、互いに異なる部材に固定された場合に生じる応力による引出部10及び基材本体9に生じる歪みを抑制し、引出部10及び基材本体9の破損を防止できる。段差部10wは、図6の断面図において、基部10v及び基材本体9に対して交差(図6では直交)するように連結している。以後、連結部付近R1,R2を湾曲部R1,R2とも記載する。
基部10vの表側の主面及び裏側の主面は、例えば平坦である。これにより、引出部10の基部10vの表側の主面又は裏側の主面を電子機器内の所定箇所(筐体の内面またはバッテリの表面等)に固定する際に、基部10vの表側の主面又は裏側の主面を上記の所定箇所に密着して固定できる。
なお、段差部10wと基材本体9との連結部が引出部10の基端部10aである。
また、図7Aに示すように、段差部10wの湾曲部R2には、その両側の主面10S,10Tのうち、表側の主面10Sには、配線部及びカバー層が設けられず、裏側の主面10Tだけに、第1〜第4配線部16,17,21,22(図7Aでは第4配線部22のみ図示))及び第2カバー層7が設けられている。このように、表側の主面10Sの配線部及びカバー層が配置されていないことで、引出部10の湾曲部R2をより薄く構成できる。この結果、引出部10の可撓性を向上できる。特に段差部10wの可撓性を向上できる。
図7Bは、比較例のアンテナ装置100の断面図である。比較例のアンテナ装置100は、引出部101の両側の主面101S,101Tに、配線部104,105及びカバー層106,107を備えている。すなわち、比較例のアンテナ装置100は、本実施形態のアンテナ装置1において、引出部10の表側の主面10Sに配線部及びカバー層を更に備えたアンテナ装置である。本実施形態のアンテナ装置1の湾曲部R2での厚さD10(図7A参照)は、引出部10の表側の主面10Sに配線部及びカバー層が無い分、比較例のアンテナ装置100の湾曲部R3での厚さD11(図7B参照)よりも小さい。よって、本実施形態のアンテナ装置1の引出部10は、比較例のアンテナ装置100の引出部101よりも可撓性が高い。
以上、実施形態1に係るアンテナ装置1によれば、引出部10の両側の主面10S,10Tのうちの裏側の主面10Tだけに配線部(第1〜第4配線部16,17,21,22)及びカバー層(第2カバー層7)を設けることができる。これにより、引出部10の表側の主面10Sに配線部及びカバー層を設けない分、引出部10の厚さより薄くできる。この結果、引出部10(特に段差部10w)の可撓性を向上できる。
なお、実施形態1では、第2コイルアンテナ4は、2つの第2コイル導体19,20を備えるが、2つの第2コイル導体19,20のうち少なくとも一方を備えていればよい。
また、実施形態1では、引出部10の裏側の主面10Tに配線部16,17,21,22及びカバー層7を設け、引出部10の表側の主面10Sに配線部及びカバー層を設けないことで、引出部1(特に段差部10w)0の可撓性が向上される。ただし、引出部10の表側の主面10Sに配線部及びカバー層を設け、引出部10の裏側の主面10Tに配線部及びカバー層を設けないことで、引出部10(特に段差部10w)の可撓性が向上されてもよい。
(変形例)
以下、実施形態1の変形例を説明する。以下の変形例は、組み合わせて実施されてもよい。なお、以下の変形例の説明では、実施形態1と同じ構成要素については、同じ符号を付して説明を省略する場合がある。
(変形例1)
図8に示すように、本変形例では、第3パッド部P3から配線部25が延ばされ、配線部25の端部25aと第3配線部21との端部21bとが複数(図7では2つ)のスルーホールTH16で電気的に接続されている。複数のスルーホールTH16は、第3配線部21の長手方向に沿って並んでいる。複数のスルーホールTH6のうち引出部10の基端部10aに一番近いスルーホールTH16の中心と引出部10の基端部10aとの間隔(一定距離)L2は、一定間隔(例えばピッチL1の3倍)以上の間隔である。ピッチL1は、隣合うスルーホールTH16の中心間の間隔である。
複数のスルーホールTH16で配線部21,25を互いに電気的に接続すると、その複数のスルーホールTH16の近傍は、その近傍以外の配線部よりも可撓性が低くなる。したがって、複数のスルーホールTH16が配線部21の長手方向に並ぶと、スルーホールTH16によって硬くなる領域が、配線部21の長手方向に沿って或る程度広くなる。このため、その広くなった領域の周囲に応力が集中し易くなる。本変形例のように、複数のスルーホールTH16のうち引出部10の基端部10aに一番近いスルーホールTH16の中心と基端部10aとの間隔L2を一定間隔(例えば3ピッチ)以上の間隔とすることで、引出部10の基端部10aに応力が集中することを低減できる。この結果、引出部10(特に段差部10w)の可撓性を更に向上できる。
なお、上記の説明では、第3配線部21の端部21bと、第3パッド部P3からの配線部25の端部25aとを、スルーホールTH16で電気的に接続する場合を例に挙げた。ただし、上記の説明は、第4配線部22の端部22bと、第4パッド部P4からの配線部26の端部26aと、をスルーホールTH18で電気的に接続する場合にも適用可能である。
(変形例2)
図9A〜図9Cを参照して、本変形例について説明する。
図9Aに示すように、本変形例では、第3パッド部P3から配線部25が延ばされている。配線部25は、引出部10の厚さ方向において第3配線部21に重なっており(図9B参照)、第3配線部21に沿って延びている。配線部25の端部25aは、引出部10の基端部10aから一定距離(間隔)L2離れた位置T1に配置されている。引出部10における基端部10aから一定距離L2までの範囲は、例えば、引出部10が撓むときに応力が集中し易い部分である。
第3配線部21の端部21bは、スルーホールTH21で第3パッド部P3と電気的に接続されている。配線部25の端部25aは、第3配線部21の長手方向の途中の位置T1付近で、スルーホールTH20で第3配線部21と電気的に接続されている。
このように、スルーホールTH20で第3配線部21の途中の位置T1と配線部25の端部25aとが互いに電気的に接続され、かつ、スルーホールTH21で第3配線部21の端部21bと第3パッド部P3とが互いに電気的に接続されている。これにより、第3パッド部P3と第2コイル導体19,20とを接続する配線部44は、第3パッド部P3と位置T1との間では、図9Bに示すように、配線部25と第3配線部21との2層構造になる。また、配線部44は、位置T1と第2コイル導体19,20との間では、図9Cに示すように、第3配線部21の一層構造となる。
このように2層構造とすることで、配線部44の電気的抵抗を低減できる。また、上記のように、位置T1と第2コイル導体19,20の間(すなわち引出部10の基端部10aから一定距離L2までの範囲を含む範囲)では、配線部44を一層構造とすることで、引出部10(特に段差部10w)の可撓性を向上させている。
図9B及び図9Cに示すように、第3配線部21のうち、第3パッド部P3と位置T1との間の配線部211の幅を幅D1とし(図9B参照)、位置T1と第2コイル導体19,20との間の配線部212の幅を幅D2とする(図9C参照)。幅D2は、幅D1よりも大きい。幅D2は、例えば幅D1の1.5〜2倍の大きさであることが望ましい。このように、幅D2が幅D1よりも大きいことで、配線部44が位置T1で2層構造から一層構造に変化しても、配線部44の電気的抵抗の低減を確保できる。この結果、引出部10(特に段差部10w)の可撓性を向上させつつ、配線部44の電気抵抗を低減できる。
図9A〜図9Cに示すように、第4パッド部P4と第2コイル導体19,20との間の配線部45も、配線部44と同様である。すなわち、配線部45は、第4パッド部P4と位置T1との間では、第4配線部22と配線部26との2層構造であり、位置T1と第2コイル導体19,20との間では、第4配線部22の一層構造である。配線部26は、第4パッド部P4から延びた配線部である。第4配線部22のうち、第4パッド部P4と位置T1との間の配線部221の幅を幅D3(図9B参照)とし、位置T1と第2コイル導体との間の配線部の幅を幅D4(図9C参照)とすると、幅D4は、幅D3よりも例えば1.5〜2倍大きいことが望ましい。この構成により、配線部45も、配線部44と同様に、引出部10(特に段差部10w)の可撓性を向上させつつ、配線部45の電気抵抗を低減できる。
なお、符号TH22は、第4配線部22の途中の位置と配線部26の端部26aとを電気的に接続するスルーホールである。符号TH23は、第4配線部22の端部22bと第4パッド部P4とを電気的に接続するスルーホールである。
(変形例3)
図10A〜図10Cを参照して、本変形例について説明する。
本変形例では、第1無線伝送システム(例えばNFC)の配線である第1配線部16及び第2配線部17を流れる電流からは、第2無線伝送システム(例えば無線電力伝送システム)の配線である第3配線部21及び第4配線部22を流れる電流よりも高周波の磁界を発生することを想定する。また、第3配線部21及び第4配線部22の各々幅D21,D22(図10C参照)は、一例として、第1配線部16及び第2配線部17の各々幅D16,D17(図10C参照)よりも大きい。
図10Aに示すように、本変形例では、第1パッド部P1(図1参照)から配線部28が延ばされており、第2パッド部P2(図1参照)から配線部29が延ばされている。配線部28の端部28a及び配線部29の端部29aは、引出部10の基端部10aから一定距離L2離れた位置T1に配置されている。引出部10における一定距離L2の範囲は、例えば、引出部10(特に段差部10w)が撓むときに応力が集中し易い部分である。第1配線部16の端部16bは、引出部10の厚さ方向において配線部28の端部28aに重なる位置に配置されており、複数(例えば2つ)のスルーホールTH24で端部28aと電気的に接続されている。第2配線部17の端部17bは、引出部10の厚さ方向において配線部29の端部29aに重なる位置に配置されており、複数(例えば2つ)のスルーホールTH25で端部29aと電気的に接続されている。
引出部10では、第3配線部21は、引出部10の基端部10aと位置T1との間では、引出部10の平面視で第1配線部16の横側に配置され、位置T1と第1パッド部P1との間では、引出部10の厚さ方向において、配線部28と重なった状態で配線部28に沿って配置されている。同様に、第4配線部22は、引出部10の基端部10aと位置T1との間では、引出部10の平面視で第2配線部17の横側に配置され、位置T1と第2パッド部P2との間では、引出部10の厚さ方向において、配線部29と重なった状態で配線部29に沿って配置されている。
すなわち、引出部10において、位置T1と第1パッド部P1及び第2パッド部P2との範囲では、図10Bに示すように、引出部10の厚さ方向において、第3配線部21及び第4配線部22はそれぞれ、配線部28(すなわち第1配線部16に接続する配線部)及び配線部29(すなわち第2配線部17に接続する配線部)と重なるように配置されている。これにより、第3配線部21及び第4配線部22で、配線部28及び配線部29を流れる電流から放射される高周波の磁界が基材2の裏側に伝搬することを抑制できる。例えば、基材2の引出部10の裏側に電子機器の回路基板が存在する場合には、高周波の磁界が回路基板に搭載された他の電子部品へ与える影響を軽減することができる。
また、引出部10において、引出部10の基端部10aと位置T1との範囲では、図10Cに示すように、第3配線部21及び第4配線部22の間に第1配線部16及び第2配線部17が配置されている。これにより、第3配線部21及び第4配線部22によって、第1配線部16及び第2配線部17を流れる電流から放射される高周波の磁界が第1配線部16及び第2配線部17の並び方向に伝搬することを抑制できる。
(変形例4)
実施形態1において、基材2の表側の主面2S(すなわち同一面内)に設けられた第1コイル導体15及び第2コイル導体19は、同一材料(例えば銅、銅合金、又はアルミニウム)で形成されてもよい。これにより、1つの製造工程で第1コイル導体15及び第2コイル導体19を形成できる。これにより、製造工数を低減できる。
(変形例5)
実施形態1では、第3配線部21及び第4配線部22の間に第1配線部16及び第2配線部17が配置される。すなわち、第1配線部16及び第2配線部17の組と、第3配線部21及び第4配線部22の組とのうち、第1配線部16及び第2配線部17の組の配線部16,17が互いに隣接して配置される。ただし、配線部16,17,21,22の配列の仕方はこのように限定されない。例えば、第1配線部16及び第2配線部17の組と、第3配線部21及び第4配線部22部の組とのうちの少なくとも一方の組の配線部が、互いに隣接して配置されていればよい。
具体的には、第1配線部16と第2配線部17との間に第3配線部21及び第4配線部22が配置されてもよい。この場合は、第3配線部21及び第4配線部22の組の配線部21,22が互いに隣接して配置される。
また、基材2の表側の主面2Sの平面視で、例えば、左側から順に第1配線部16、第2配線部17、第3配線部21及び第4配線部22の順に並んでもよい。この場合は、第1配線部16及び第2配線部17の組の配線部16,17が互いに隣接して配置され、かつ、第3配線部21及び第4配線部22の組の配線部21,22が互いに隣接して配置される。
このように、同じ組の配線部に流れる電流は互いに逆向きであるため、同じ組の配線部が互いに隣接することで、同じ組の配線部に流れる電流が発生する磁界を或る程度互いに相殺して低減できる。この結果、上記の磁界が周囲に与える影響を低減できる。
実施形態1では、第2カバー層7は、引出部10の裏側の主面10Tの全体を覆わないが、引出部10の裏側の主面10Tの少なくとも一部(例えば湾曲部R2)を覆わない場合であってもよい。
(第2実施形態)
図11A及び図11Bを参照して、第2実施形態に係る電子機器80について説明する。電子機器80は、実施形態1に係るアンテナ装置1を備えた電子機器である。電子機器80は、外部装置と磁界結合を用いて無線通信を行う電子機器であり、例えば、通信機器、スマートウオッチ又はゲーム機器である。
図11A及び図11Bに示すように、電子機器80は、筐体81と、表示部82と、回路基板83と、バッテリ84と、アンテナ装置1とを備えている。
筐体81は、表示部82、回路基板83、バッテリ84、及びアンテナ装置1を収容する外郭である。筐体81は、磁束を通過する材質(例えば樹脂)で形成されている。筐体81は、例えば、平面視矩形の中空の箱状(例えば偏平な箱状)である。
表示部82は、所定の情報を表示する装置である。表示部82は、回路基板83の後述の信号処理部で行われた信号処理の結果など、電子機器80と外部機器との通信に関する情報を表示する。表示部82は、液晶形式又は有機EL(Electro Luminescence)形式の薄型の表示装置である。表示部82は、筐体81内において、筐体81の前面の裏側に配置されている。
回路基板83は、上記の信号処理部を構成する電子部品83aが実施された基板である。回路基板83は、アンテナ装置1の引出部10の第1〜第4パッド部P1〜P4(図1参照)と接続する接続部83bを実装している。すなわち、回路基板83は、接続部83bを介してアンテナ装置1の第1〜第4パッド部P1〜P4(図1参照)と電気的に接続される。接続部83bは、プローブピン又はコネクタ端子である。回路基板83は、筐体81内において、表示部82の後側において、例えば、筐体81の長手方向の一側に配置されている。回路基板83の両側の主面のうち、上記の信号処理部(電子部品83a)及び接続部83bが実装された実装面は、表示部82とは反対側に向けられている。
バッテリ84は、表示部82、回路基板83及びアンテナ装置1に電力を供給する蓄電池である。バッテリ84は、平面視矩形の偏平な板状である。バッテリ84は、例えば、表示部82の後側において、筐体81の長手方向の他側(すなわち回路基板83とは反対側)に配置されている。
アンテナ装置1は、基材2の裏側を筐体81の後面81aに向け、基材2の表側をバッテリ84に向けた状態で、バッテリ84と筐体81との間に配置されている。より詳細には、基材2のうち、引出部10が回路基板83上に配置され、基材本体9がバッテリ84と筐体81との間に配置されている。基材本体9は、筐体81の後面81a又はバッテリ84の後面84aに固定されている。また、引出部10は、回路基板83側に突出しており、回路基板83の接続部83bに固定されている。また、引出部の第1〜第4パッド部P1〜P4は、接続部83bと電気的に接続されている。この状態では、基材本体9は、筐体81の後面81a(対向面)に対向して配置されている。基材本体9は、後面81aに直交する方向において、引出部10よりも筐体81の後面81aに接近して配置されている。
このように、引出部10と基材本体9とは互いに異なる箇所に固定されている。換言すれば、引出部10と基材本体9とは同一平面内に配置されていない。引出部10及び基材本体9は、互いに異なる箇所に固定されるため、引出部10の基端部10aには、応力が集中し易いが、引出部10(特に段差部10w)の可撓性は向上されているため、引出部10(特に段差部10w)の可撓性でその応力を吸収できる。これにより、引出部10の基端部10aが応力で破損することを抑制できる。
(態様)
以上説明した実施形態及び変形例より以下の態様が開示されている。
第1の態様に係るアンテナ装置(1)は、基材(2)と、第1コイルアンテナ(3)と、第2コイルアンテナ(4)と、第1カバー層(6)及び第2カバー層(7)と、を備えている。基材(2)は、第1主面(2S)及び第2主面(2T)を有する。第1コイルアンテナ(3)は、基材(2)に設けられ、第1無線伝送システムで用いられる。第2コイルアンテナ(4)は、基材(2)に設けられ、第2無線伝送システムで用いられる。第1カバー層(6)及び第2カバー層(7)は、基材(2)に設けられる。基材(2)は、本体部(9)と、引出部(10)と、を有する。引出部(10)は、本体部(9)の平面視で、本体部(9)の外縁から外側に延長されている。本体部(9)は、第1本体主面(9S)と、第2本体主面(9T)と、を有する。第1本体主面(9S)は、第1主面(2S)と同じ側の主面である。第2本体主面(9T)は、第2主面(2T)と同じ側の主面である。引出部(10)は、第1引出主面(10S)と、第2引出主面(10T)と、を有する。第1引出主面(10S)は、第1主面(2S)と同じ側の主面である。第2引出主面(10T)は、第2主面(2T)と同じ側の主面である。第1コイルアンテナ(3)は、第1コイル導体(15)と、第1配線部(16)及び第2配線部(17)と、を有する。第1コイル導体(15)は、本体部(9)の第1本体主面(9S)に設けられ、コイル開口(15k)を有する。第1配線部(16)及び第2配線部(17)は、基材(2)の第2主面(2T)に設けられ、第1コイル導体(15)の両端部(15a,15b)にそれぞれ接続されている。第2コイルアンテナ(4)は、第2コイル導体(19,20)と、第3配線部(21)及び第4配線部(22)と、を有する。第2コイル導体(19,20)は、本体部(9)の第1本体主面(9S)及び第2本体主面(9T)のうちの少なくとも一方に設けられ、かつ本体部(9)の平面視で第1コイル導体(15)のコイル開口(15k)に配置されている。第3配線部(21)及び第4配線部(22)は、基材(2)の第2主面(2T)に設けられ、第2コイル導体(19,20)の両端部(19a,19b,20a,20b)にそれぞれ接続されている。第1配線部(16)、第2配線部(17)、第3配線部(21)及び第4配線部(22)の各々の一部は、引出部(10)の第2引出主面(10T)に設けられている。第2カバー層(7)は、本体部(9)の第2本体主面(9T)及び引出部(10)の第2引出主面(10T)を覆う。第1カバー層(6)は、本体部(9)の第1本体主面(9S)を覆いかつ引出部(10)の第1引出主面(10S)の少なくとも一部を覆わない。
この構成によれば、引出部(10)の両主面(10S,10T)のうちの第2引出主面(10T)だけに配線部(第1〜第4配線部(22))及びカバー層(第2カバー層(7))を設けることができる。これにより、引出部(10)の第1引出主面(10S)に配線部及びカバー層を設けない分、引出部(10)の厚さをより薄くできる。この結果、引出部(10)(特に段差部(10w))の可撓性を向上できる。
第2の態様に係るアンテナ装置(1)では、第1の態様において、第2コイル導体(19,20)は、本体部(9)の第1本体主面(9S)及び第2本体主面(9T)の両方に設けられている。
この構成によれば、第2コイルアンテナ(4)の受信強度を向上でき、かつ、第2コイル導体の抵抗成分を低減できる。
第3の態様に係るアンテナ装置(1)では、第1又は第2の態様において、引出部(10)は、本体部(9)と同じ平面に配置されていない。
この構成によれば、引出部(10)及び本体部(9)の配置の自由度を向上できる。
第4の態様に係るアンテナ装置(1)では、第1〜3の態様の何れか1つの態様において、第1コイル導体(15)と第2コイル導体(19)は、同一面に設けられ、かつ、同一材料で形成されている。
この構成によれば、1つの製造工程で第1コイル導体(15)及び第2コイル導体(19)を形成できる。これにより、製造工数を低減できる。
第5の態様に係るアンテナ装置(1)では、第1〜4の態様の何れか1つの態様において、第1配線部(16)及び第2配線部(17)の組と、第3配線部(21)及び第4配線部(22)の組とのうちの少なくとも一方の組の配線部は、互いに隣接している。
この構成によれば、同じ組の配線部に流れる電流は互いに逆向きである。よって、同じ組の配線部が互いに隣接することで、同じ組の配線部に流れる電流が発生する磁界を或る程度互いに相殺して低減できる。この結果、第1〜第4配線部(16,17,21,22)に流れる電流が発生する磁界が周囲に与える影響を低減できる。
第6の態様に係るアンテナ装置(1)では、第1〜5の態様の何れか1つの態様において、第1無線伝送システムの搬送周波数は、第2無線伝送システムの搬送周波数よりも高く、基材(2)の第2主面(2T)の平面視において、第1配線部(16)及び第2配線部(17)は、第3配線部(21)と第4配線部(22)との間に配置されている。
この構成によれば、第1配線部(16)及び第2配線部(17)を流れる電流が発生する高周波の磁界を第3配線部(21)及び第4配線部(22)で或る程度遮ることができる。これにより、上記の高周波の磁界が周囲に影響を与えることを低減できる。
第7の態様に係るアンテナ装置(1)では、第1〜6の態様の何れか1つの態様において、第1無線伝送システムは、近距離無線通信システムである。
第8の態様に係るアンテナ装置(1)では、第1〜7の態様の何れか1つの態様において、第2無線伝送システムは、無線給電システムである。
第9の態様に係る電子機器(80)は、第1〜8の態様の何れか1つの態様のアンテナ装置(1)と、回路基板(83)と、筐体(81)と、を備えている。回路基板(83)は、アンテナ装置(1)と電気的に接続されている。筐体(81)は、アンテナ装置(1)及び回路基板(83)が収容される。
第10の態様に係る電子機器(80)では、第9の態様において、引出部(10)は、本体部(9)と同じ平面に配置されていない。
この構成により、引出部(10)と本体部(9)との配置の自由度を向上できる。
第11の態様に係る電子機器(80)では、第9又は第10の態様において、筐体(81)は、本体部(9)が対向する対向面(81a)を有する。本体部(9)は、対向面(81a)に直交する方向において、引出部(10)よりも対向面(81a)に近接している。
この構成により、第1及び第2コイル導体(15,19,20)を外側に近づけることができるので、筐体(81)外のアンテナと通信する際の最適な配置にすることができる。