JPWO2020027217A1 - がんの治療及び/又は予防のための医薬 - Google Patents

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Abstract

本発明は、免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせて用いるための、IL-34に対する特異抗体及びその誘導体並びにIL-34に対する阻害性核酸よりなる群から選択される少なくとも1つを、又は免疫チェックポイント阻害剤と前記物質との組み合わせを有効成分として含有する、がん、特に治療耐性がんではないがんの治療及び/又は予防のための医薬に関する。【選択図】図1

Description

本発明は、免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせて用いるための、IL-34の発現を抑制する、IL-34の活性を阻害する及び/若しくはIL-34に結合することでCSF-1RとIL-34との結合を阻害する物質を、又は免疫チェックポイント阻害剤と前記物質との組み合わせを有効成分として含有する、がん、特に治療耐性がんではないがんの治療及び/又は予防のための医薬に関する。
がんにおける免疫応答の抑制に関与する生体分子として、免疫チェックポイントタンパク質と称されるタンパク質が注目を集めている。例えば、免疫チェックポイントタンパク質の一種であるProgrammed-cell Death 1(PD-1)は、活性化T細胞の表面に発現し、抗原提示細胞やがん細胞の表面上に発現するPD-L1/PD-L2と結合することで、T細胞活性化の下方調節に関与している。PD-L1は、これを高発現するがん、例えば肺がん、胃がん、食道がん、大腸がん、腎がん、膀胱がん、子宮頸がん、子宮体がん、頭頸部がん、悪性黒色腫といった様々な固形腫瘍を含む多くのがんにおいて、がん免疫監視機構を回避してがん細胞を増殖させるものと考えられている。
がん免疫回避の阻害によるT細胞免疫抑制の解除及びがん免疫応答の増強というコンセプトは、幅広い種類のがんへの適応が可能な新たながん免疫療法を提供するものとして大いに期待されている。免疫チェックポイントタンパク質、例えばPD-1を標的とした抗PD-1抗体等の免疫チェックポイント阻害剤の研究開発が精力的に行われており、その一部は既に臨床で用いられている。
一方、がん組織自身がその周囲に集積した腫瘍随伴マクロファージ(Tumor Associated Macrophage、TAM)によってがん免疫応答を抑制することが明らかにされている。TAMは、細胞増殖因子の産生及び新生血管の誘導に加えて、免疫抑制性サイトカイン産生を介したがん免疫応答の抑制によって、がん細胞の増殖促進に関与すると考えられている。
M-CSF(Macrophage Colony Stimulating Factor、CSF-1とも呼ばれる)は、骨代謝関連サイトカインの一種であり、単球等により産生され、マクロファージコロニーの形成を刺激する。M-CSFはまた、多くの種類のがん細胞において産生され、がん組織におけるM-CSFの発現レベルは当該組織におけるTAMの集積レベルと相関することが知られている。M-CSFと特異的に結合する受容体がCSF-1R(Colony Stimulating Factor-1 Receptor)であることから、抗CSF-1R抗体を様々ながん、例えば白血病、乳がん、子宮内膜がん、前立腺がん、卵巣がん、結腸直腸がん、肝細胞がん、腎臓がん、多発性骨髄腫等の治療に用いることが提唱されている(特許文献1)。
本発明者らの研究により、CSF-1Rの別のリガンドであるInterleukin-34(IL-34)が、CSF-1Rとの結合を介してがんの治療耐性に関与していることが明らかにされた。この知見に基づき、IL-34に対するsiRNAや抗IL-34抗体といったIL-34を阻害する物質を有効成分とする、治療耐性がんに対する治療耐性低減剤が提供されている(特許文献2)。
特表2013-529183号公報 国際公開WO2016/204216号パンフレット
本発明は、免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせて用いることでがんを効果的に治療することができる医薬を提供することを目的とする。
本発明者らは、IL-34の阻害を免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせることで、治療耐性がんではないがんを包含するがんに対して、特にIL-34受容体であるCSF-1Rを発現していないがんに対しても、免疫チェックポイント阻害剤を単独で用いた場合の治療効果を上回る優れた治療効果を発揮し得ることを見出し、下記の各発明を完成させた。
(1)免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせて用いるための、IL-34に対する特異抗体及びその誘導体並びにIL-34に対する阻害性核酸よりなる群から選択される少なくとも1つを有効成分として含有する、がんの治療及び/又は予防のための医薬。
(2)免疫チェックポイント阻害剤と、IL-34に対する特異抗体及びその誘導体並びにIL-34に対する阻害性核酸よりなる群から選択される少なくとも1つとの組み合わせを有効成分として含有する、がんの治療及び/又は予防のための医薬。
(3)免疫チェックポイント阻害剤がPD-1、PD-L1、PD-L2、CTLA-4、CD80及びCD86よりなる群から選択される少なくとも1つを標的とする、(1)又は(2)に記載の医薬。
(4)免疫チェックポイント阻害剤が抗PD-1抗体及び抗CTLA-4抗体よりなる群から選択される少なくとも1つである、(1)〜(3)のいずれか一項に記載の医薬。
(5)がんが治療耐性がんではない、(1)〜(4)のいずれか一項に記載の医薬。
(6)がんが免疫チェックポイント阻害療法に対する治療耐性を有するがんではない、(1)〜(5)のいずれか一項に記載の医薬。
(7)がんがCSF-1R陰性がんである、(1)〜(6)のいずれか一項に記載の医薬。
本発明によれば、免疫チェックポイント阻害剤を単独で用いた場合の治療効果を上回る優れた治療効果を得ることができる。また、本発明の一実施形態によると、CSF-1Rを発現していないがんに対しても、効果的な治療が可能となる。
卵巣がん細胞株HM-1、そのIL-34ノックアウト株及びIL-34過剰発現株の培養上清中のIL-34及びM-CSF濃度を示すグラフである。 卵巣がん細胞株HM-1、そのIL-34ノックアウト株及びIL-34過剰発現株におけるCSF-1Rの発現を示すヒストグラムである。 卵巣がん細胞株HM-1又はそのIL-34ノックアウト株を移植し、抗PD-1抗体又はコントロール抗体を投与したマウスの生存率を示すグラフである。 大腸がん細胞株CT26、そのIL-34ノックアウト株及びIL-34過剰発現株におけるIL-34遺伝子の発現量を示すグラフである。 大腸がん細胞株CT26、そのIL-34ノックアウト株及びIL-34過剰発現株の培養上清中のM-CSF濃度を示すグラフである。 大腸がん細胞株CT26、そのIL-34ノックアウト株及びIL-34過剰発現株におけるCSF-1Rの発現を示すヒストグラムである。 大腸がん細胞株CT26のIL-34ノックアウト株又はそのIL-34過剰発現株を移植し、抗PD-1抗体又はコントロール抗体を投与したマウスにおける腫瘍体積の変化を示すグラフである。 大腸がん細胞株CT26のIL-34ノックアウト株又はそのIL-34過剰発現株を移植し、抗PD-1抗体又はコントロール抗体を投与したマウスにおける、抗体投与開始後28日目の腫瘍体積を表すグラフである。 卵巣がん細胞株HM-1、そのIL-34ノックアウト株又は当該ノックアウト株にIL-34を過剰発現させた株を移植し、抗PD-1抗体を投与したマウスにおけるM2マクロファージの存在率を示すグラフである。 大腸がん細胞株CT26のIL-34ノックアウト株又はそのIL-34過剰発現株を移植し、コントロール抗体、抗PD-1抗体、抗CTLA-4抗体を単独で投与又は抗PD-1抗体及び抗CTLA-4抗体を併用投与したマウスにおける腫瘍体積の変化を示すグラフである。グラフ右の表記は、上から下に向けて、8日目の時点で腫瘍体積が大きい順にマウス群を列記したものである。 大腸がん細胞株CT26のIL-34ノックアウト株又はそのIL-34過剰発現株を移植し、コントロール抗体、抗PD-1抗体、抗CTLA-4抗体を単独で投与又は抗PD-1抗体及び抗CTLA-4抗体を併用投与したマウスにおける、抗体投与開始後8日目の腫瘍体積を表すグラフである。 大腸がん細胞株CT26のIL-34過剰発現株を移植したマウスに対する、コントロール抗体、抗IL-34抗体、抗PD-1抗体、抗CTLA-4抗体の投与計画を示した図である。 大腸がん細胞株CT26のIL-34過剰発現株を移植し、コントロール抗体、抗IL-34抗体、抗PD-1抗体、抗CTLA-4抗体を単独で投与又は抗IL-34抗体、抗PD-1抗体及び抗CTLA-4抗体を組み合わせて投与したマウスにおける腫瘍体積の変化を示すグラフである。 大腸がん細胞株CT26のIL-34過剰発現株を移植し、コントロール抗体、抗IL-34抗体、抗PD-1抗体、抗CTLA-4抗体を単独で投与又は抗IL-34抗体、抗PD-1抗体及び抗CTLA-4抗体を組み合わせて投与したマウスにおける、抗体投与開始後13日目の腫瘍体積を表すグラフである。
本発明の第1の態様は、免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせて用いるための、IL-34の発現を抑制する、IL-34の活性を阻害する及び/又はIL-34に結合することでCSF-1RとIL-34との結合を阻害する物質を有効成分として含有する、がんの治療及び/又は予防のための医薬に関する。また、本発明の第2の態様は、免疫チェックポイント阻害剤と、IL-34の発現を抑制する、IL-34の活性を阻害する及び/又はIL-34に結合することでCSF-1RとIL-34との結合を阻害する物質との組み合わせを有効成分として含有する、がんの治療及び/又は予防のための医薬に関する。以下、特に断らない限り、本発明の詳細は、IL-34その他の生体高分子及び分子生物学的機構を含め、ヒトを代表例として説明される。
免疫チェックポイント阻害剤
免疫チェックポイント阻害剤は、自己に対する免疫応答や過剰な免疫応答を抑制する作用を持つ免疫チェックポイント分子と称される生体分子を標的とし、その分子の発現又は生理活性を阻害又は抑制することができる物質である。免疫チェックポイント分子としては、PD-L1/PD-L2とその受容体であるPD-1、CD80/CD86とその受容体であるCTLA-4、galectin-9とその受容体であるTIM-3、HVEMとその受容体であるBTLA等が知られており、本発明においては、PD-1、PD-L1、PD-L2、CTLA-4、CD80及びCD86よりなる群から選択される少なくとも1つを阻害の標的とすることが好ましい。免疫チェックポイント阻害剤の例としては、免疫チェックポイント分子の生理活性を阻害する低分子化合物、免疫チェックポイント分子に特異的に結合する抗体、免疫チェックポイント分子の発現を抑制する阻害性核酸等を挙げることができる。本発明において好ましい免疫チェックポイント阻害剤は、免疫チェックポイント分子に対する特異抗体、好ましくは抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗PD-L2抗体、抗CTLA-4抗体等であり、これらの典型例はニボルマブ(抗PD-1抗体、商品名:オプジーボ)、イピリムマブ(抗CTLA-4抗体、商品名:ヤーボイ)、ペムブロリズマブ(抗PD-1抗体、商品名:キイトルーダ)等の臨床で既に使用されている抗体である。免疫チェックポイント阻害剤は1種類を単独で使用してもよいが、2種以上の併用がより好ましい。
IL-34の発現を抑制する、IL-34の活性を阻害する及び/又はIL-34に結合することでCSF-1RとIL-34との結合を阻害する物質
本発明の医薬は、IL-34の発現を抑制する、IL-34の活性を阻害する及び/又はIL-34に結合することでCSF-1RとIL-34との結合を阻害する物質を含有する。これらの物質は、核酸、抗体、抗体誘導体及び化合物よりなる群から選択することができる。
IL-34の発現を抑制する物質としては、IL-34をコードする遺伝子からのmRNA転写を抑制することができる物質、当該mRNAを分解することができる物質及び当該mRNAからのタンパク質翻訳を抑制することのできる物質を挙げることができる。これらの物質の典型例は、NCBI GeneにGene ID:146433として登録されているヒトIL-34の遺伝子及びタンパク質に翻訳されるmRNAの塩基配列を基にして、当業者が設計、作製することができるアンチセンスRNA又はsiRNA等の阻害性核酸である。阻害性核酸の例としては、MyBioSourceから市販されているsiRNA(IL34 siRNA (Human), Cat.#: MBS8239554)又はこれが標的とするIL-34 mRNA上の塩基配列にハイブリダイズしてIl-34 mRNAを分解することができる核酸を挙げることができる。
また、siRNAの塩基配列を含むshRNA、適当な発現プロモーターの支配下に置かれることで上記アンチセンスRNA又はsiRNA等を転写誘導することのできるDNA、及び上記アンチセンスRNA又はsiRNA等の塩基配列の一部が修飾されてヌクレアーゼによる分解に対する安定性が高められたRNAも、上記アンチセンスRNA又はsiRNAと機能的に等価な核酸として、本発明にいう発現を抑制する物質に包含される。ヌクレアーゼによる分解に対する安定性を向上させるための修飾としては、2'O-メチル化、2'-F化、4'-チオ化等を挙げることができる。
さらに、上記RNAのリボヌクレオチドの一部が、対応するデオキシリボヌクレオチド又はヌクレオチド類似体に置き換えられたキメラRNAもまた、本発明にいう発現を抑制する物質に包含される。ヌクレオチド類似体としては、例えば、5位修飾ウリジン又はシチジン、例えば5-(2-アミノ)プロピルウリジン、5-ブロモウリジン等;8位修飾アデノシン又はグアノシン、例えば8-ブロモグアノシン等;デアザヌクレオチド、例えば7-デアザ-アデノシン等;O-又はN-アルキル化ヌクレオチド、例えばN6-メチルアデノシン等を挙げることができる。
上記阻害性核酸において、修飾される又は置換される塩基の種類又は個数は、そのIL-34の発現を抑制する能力を失わない限り、特に制限は無い。
上記阻害性核酸は、遺伝子組み換え技術又は化学合成技術を利用して人工的に合成することができる。遺伝子組み換え方法、核酸の化学合成方法、また非天然型の塩基の合成手法又はこれを含む核酸の合成手法としては、当業者に周知である手法を採用することができる。またいわゆるDNAシンセサイザー等の機器を用いることで、核酸を合成してもよい。
IL-34の活性を阻害する物質及びIL-34に結合することでCSF-1RとIL-34との結合を阻害する物質としては、IL-34に結合してその活性を阻害する低分子化合物又は特異抗体若しくは抗体誘導体、IL-34に結合することでCSF-1RとIL-34との結合を阻害する低分子化合物又は特異抗体若しくは抗体誘導体を挙げることができる。そのような物質の例は、IL-34上のCSF-1R結合部位をブロックすることでIL-34とCSF-1Rとの結合を阻害する抗IL-34抗体、前記結合部位とは異なる部位でIL-34に結合するが立体障害的にIL-34とCSF-1Rとの結合を阻害する抗IL-34抗体、及びこれらの誘導体等を挙げることができる。
上記抗体は、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体若しくはヒト抗体であり得て、また抗体誘導体は、上記抗体に由来するFab、Fab’、F(ab’)2、scFv若しくはF(ab’)2等の抗体断片、ダイアボディ(diabody)、dsFv、CDRを含むペプチド等であり得る。
抗体は、好ましくは遺伝子組換え手法で作製されたIL-34を抗原として、ウサギ、マウス、ラット等の適当な実験動物を免疫することを含む一般的な抗体作製方法によって調製することができる。あるいは、公知文献、例えば特表2015-510510及びWO2013/119716(これらの文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。)に記載されている抗IL-34抗体、R&D systemsから市販されているHuman IL-34 Antibody(Clone:578416, Cat.#:MAB5265)、Thermo Fisher Scientificから市販されているIL-34 Monoclonal Antibody(Clone:578416, Product #:MA5-24259)、ミリポアから市販されているAnti-IL-34, clone 1D12 Antibody(Clone:1D12, Cat.#:MABT493)、BioLegendから市販されているanti-human IL-34 Antibody(Clone:E033B8, Cat. #:361401, 361402)、その他の既存の抗IL-34抗体、又はこれらの抗体のCDR配列と同じアミノ酸配列をCDR配列として含む抗体を使用してもよい。
本発明の医薬は、上記核酸、抗体又は抗体誘導体以外の、IL-34の発現を抑制する、IL-34の活性を阻害する及び/又はCSF-1RとIL-34との結合を阻害することのできる物質を含んでもよい。そのような物質は、IL-34を発現する適当な細胞を用いたIL-34発現抑制能のスクリーニング、又はCSF-1RとIL-34とを用いたIL-34の活性阻害能若しくは結合阻害能のスクリーニングを通じて探索することができる。
本発明の好ましい実施形態において、IL-34の発現を抑制する、IL-34の活性を阻害する及び/又はIL-34に結合することでCSF-1RとIL-34との結合を阻害する物質は、IL-34に対する特異抗体及びその誘導体並びにIL-34に対する阻害性核酸よりなる群から選択される少なくとも1つである。
医薬又は医薬組成物
本発明の医薬は、上記のIL-34の発現を抑制する、IL-34の活性を阻害する及び/若しくはIL-34に結合することでCSF-1RとIL-34との結合を阻害する物質を、又は免疫チェックポイント阻害剤と前記物質との組み合わせを有効成分として含有し、がんの治療及び/又は予防のための医薬として使用することができる。ここで「有効成分として含有する」とは、有効量のかかる物質又はこれを含む組み合わせを含有することを意味する。
本発明の医薬における前記物質の有効量は、免疫チェックポイント阻害剤と組み合わされたときに、免疫チェックポイント阻害剤が単独で用いられた場合に発揮するがんの治療及び/又は予防の効果を上回る強さの効果を発揮する量を意味し、前記物質及び組み合わされる免疫チェックポイント阻害剤の種類、用法、対象の年齢、性別、体重、がんの種類その他の条件等に応じて適宜決定される。
本明細書において用いられる用語「治療」は、疾患の治癒、一時的寛解等を目的とする医学的に許容される全てのタイプの治療的介入を包含する。また用語「予防」は、疾患の罹患又は発症の防止若しくは抑制等を目的とする医学的に許容される全てのタイプの予防的介入を包含する。すなわち、がんの治療及び/又は予防とは、がんの進行の遅延又は停止、病変の退縮又は消失、発症の予防又は再発の防止等を含む、種々の目的の医学的に許容される介入を包含する。
本発明の医薬は、がんに罹患した又は罹患するおそれのある対象、例えばマウス、ラット、ハムスター、モルモットを含むげっ歯類、ヒト、チンパンジー、アカゲザルを含む霊長類、ブタ、ウシ、ヤギ、ウマ、ヒツジを含む家畜、イヌ、ネコを含む愛玩動物といった哺乳動物に投与される。好ましい対象は、ヒトである。
本発明の医薬により治療及び/又は予防することができるがんは、任意の種類のがんであり得て、例としては、肺がん、胃がん、食道がん、大腸がん、腎がん、膀胱がん、卵巣がん、乳がん、子宮頸がん、子宮体がん、頭頸部がん、悪性黒色腫等を挙げることができる。また、本発明の医薬により治療及び/又は予防することができるがんは、任意のステージのがんであり得る。
本発明の一実施形態において、治療及び/又は予防することができるがんは、IL34発現陽性かつM-CSF発現陰性の骨髄腫細胞を有する多発性骨髄腫を含まない。したがって、この実施形態は、免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせて用いるための、IL-34の発現を抑制する、IL-34の活性を阻害する及び/又はIL-34に結合することでCSF-1RとIL-34との結合を阻害する物質を、又は免疫チェックポイント阻害剤と前記物質との組み合わせを有効成分として含有する、がん(ただしIL34発現陽性及びM-CSF発現陰性の骨髄腫細胞を有する多発性骨髄腫を除く。)の治療及び/又は予防のための医薬と表すこともできる。
本発明の一実施形態において、治療及び/又は予防することができるがんは、化学療法、放射線療法、免疫療法等に対する治療耐性を有する治療耐性がんではない。したがって、この実施形態は、免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせて用いるための、IL-34の発現を抑制する、IL-34の活性を阻害する及び/又はIL-34に結合することでCSF-1RとIL-34との結合を阻害する物質を、又は免疫チェックポイント阻害剤と前記物質との組み合わせを有効成分として含有する、がん(ただし治療耐性がんを除く。)の治療及び/又は予防のための医薬と表すこともできる。また、さらなる特定の実施形態において、前記物質又は組み合わせを有効成分として含有する、治療耐性を有さないがんの治療及び/又は予防のための医薬も提供される。これらの実施形態において、治療耐性は、好ましくは、免疫チェックポイント阻害療法に対する治療耐性であり、また獲得性の治療耐性である。
がんの治療耐性は、当業者に公知の方法によって確認することができ、一例として、患者から採取したがん細胞に、適切な処理、例えば治療耐性がんに対しては奏功しないが治療耐性がんでないがんに対しては効果が期待できる用量の抗がん剤若しくは免疫療法剤又は放射線照射を施し、そのがん細胞の生存又は増殖の程度を観察することによって確認することができる。
別の実施形態において、本発明の医薬により治療及び/又は予防することができるがんは、CSF-1R陰性がんである。ここでCSF-1R陰性がんとは、CSF-1Rが実質的に発現していないがんであり、例えばRT-PCRや免疫学的検出法等の分子生物学的手法によってCSF-1Rの発現を検出することができないか、又はその発現量が僅かであるがんである。
さらに別の実施形態において、本発明の医薬により治療及び/又は予防することができるがんは、M-CSF陽性がんである。ここでM-CSF陽性がんとは、M-CSFが実質的に発現しているがんであり、例えばRT-PCRや免疫学的検出法等の分子生物学的手法によってM-CSFの発現を検出することができるがんである。
本発明の医薬は、上記の有効成分に加えて、有効成分以外の薬物又は緩衝剤、抗酸化剤、保存剤、タンパク質、親水性ポリマー、アミノ酸、キレート化剤、非イオン性界面活性剤、賦形剤、安定化剤、担体等の薬学的に許容される成分と医薬組成物を形成し又は製剤化して、使用することができる。薬学的に許容される成分は当業者において周知であり、当業者が通常の実施能力の範囲内で、例えば第十七改正日本薬局方その他の規格書に記載された成分から製剤の形態に応じて適宜選択して使用することができる。
本発明の医薬又はこれを含む医薬組成物の剤形は任意であり、標的部位やがんの種類等に応じて適宜選択することができる。剤形は、一般に非経口製剤であることが好ましく、例えば注射剤、経皮剤、経腸剤、点滴剤等であることができる。また本発明の医薬の投与経路は、特に制限されないが、非経口製剤である場合は、例えば血管内投与(好ましくは静脈内投与)、腹腔内投与、腸管内投与、皮下投与、標的部位への局所投与等を挙げることができる。好ましい実施形態の一つにおいて、本発明の医薬は、静脈内投与又は局所投与により生体に投与される。また、本発明の医薬又はこれを含む医薬組成物の投与量は、用法、対象の年齢、性別、体重、がんの種類その他の条件等に応じて適宜選択される。
本発明の第一の態様の医薬又はこれを含む医薬組成物は、免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせて用いるためのものである。「免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせて用いるための」医薬とは、免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせて用いることが意図される限り、実際に組み合わせられる前の状態の医薬であってよく、すなわち組み合わせ医薬の製造に用いられる医薬、組み合わせて用いるために製造又は販売されている医薬等も、本発明の範囲内にある。また、ここで「免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせて用いる」とは、その必要がある、すなわちがんの治療及び/又は予防が望まれる患者に対して、免疫チェックポイント阻害剤と一緒に又は別々に、同時に又は逐次的に投与することを意味する。
本発明の第二の態様の医薬又はこれを含む医薬組成物は、免疫チェックポイント阻害剤と前記物質との組み合わせを有効成分として含有する。「組み合わせを有効成分として含有する」医薬は、免疫チェックポイント阻害剤と前記物質とを一緒に又は別々に、同時に又は逐次的に、その必要がある対象に投与することを目的として調製される医薬であればよく、それぞれ独立に製剤化された免疫チェックポイント阻害剤と前記物質とを含む併用剤、又は製剤化可能である限り免疫チェックポイント阻害剤と前記物質とを含む合剤であってもよい。
本発明において、免疫チェックポイント阻害剤の量は、前記物質と組み合わされたときにがんを治療及び/又は予防することができる量であればよく、一般に、単独で用いられる場合の量と同等であるか、又はこれより少ない。単独で用いられる場合の量と同等の量の免疫チェックポイント阻害剤を用いることで、がんに対するより強力な効果が発揮され、より短期間に、又は単独で用いても効果が確認できなかった対象において、がんを治療及び/又は予防することができる。また、単独で用いられる場合の量よりも少ない量の免疫チェックポイント阻害剤を用いることは、がんに対する効果を維持しながら、免疫チェックポイント阻害剤の量を減らすことができるという利点を有する。
本発明の医薬において、免疫チェックポイント阻害剤は1種類を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。「組み合わせて用いる」とは、その必要がある、すなわちがんの治療及び/又は予防が望まれる患者に対して、2種以上の免疫チェックポイント阻害剤を一緒に又は別々に、同時に又は逐次的に投与することを意味する。
がんの治療及び/又は予防のための方法
本発明はまた、免疫チェックポイント阻害剤、並びにIL-34の発現を抑制する、IL-34の活性を阻害する及び/又はIL-34に結合することでCSF-1RとIL-34との結合を阻害する物質のそれぞれの有効量を、一緒に又は別々に、同時に又は逐次的に、その必要がある対象に投与することを含む、がんの治療及び/又は予防のための方法を別の態様として提供する。
本発明はさらに、免疫チェックポイント阻害剤と、IL-34の発現を抑制する、IL-34の活性を阻害する及び/又はIL-34に結合することでCSF-1RとIL-34との結合を阻害する物質との組み合わせの有効量を、その必要がある対象に投与することを含む、がんの治療及び/又は予防のための方法をさらなる別の態様として提供する。
免疫チェックポイント阻害剤の効果の増強
本発明の一実施形態において、IL-34の発現を抑制する、IL-34の活性を阻害する及び/又はIL-34に結合することでCSF-1RとIL-34との結合を阻害する物質は、組み合わされる免疫チェックポイント阻害剤の効果を増強する作用を有するものと考えられる。したがって、本発明は、IL-34の発現を抑制する、IL-34の活性を阻害する及び/又はIL-34に結合することでCSF-1RとIL-34との結合を阻害する物質を有効成分として含有する、免疫チェックポイント阻害剤の増強剤;並びにIL-34の発現を抑制する、IL-34の活性を阻害する及び/又はIL-34に結合することでCSF-1RとIL-34との結合を阻害する物質の有効量を、免疫チェックポイント阻害剤が投与された又は投与が予定される対象に投与することを含む、免疫チェックポイント阻害剤のがんの治療及び/又は予防の効果を増強する方法を、それぞれ別の態様として提供する。ここで、「免疫チェックポイント阻害剤の効果を増強する」及び「免疫チェックポイント阻害剤の増強剤」とは、免疫チェックポイント阻害剤が単独で用いられた場合に発揮するがんの治療及び/又は予防の効果を上回る強さの効果を発揮させること、並びにそのための剤をいい、その有効量は前記物質及び組み合わされる免疫チェックポイント阻害剤の種類、用法、対象の年齢、性別、体重、がんの種類その他の条件等に応じて適宜決定される。本態様におけるその他の各用語の意義は先行する別の態様において説明したとおりである。
以下の実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
実施例1
1)マウスIL-34遺伝子をノックアウトするためのガイドRNAをpCas-ガイドベクター中に組み込んだIL34-gene knockout kit via CRISPR, Mouse (-) (SantaCruz, SC-429354) を、卵巣がん細胞株HM-1(RIKEN RBCより入手)に、FuGENE (登録商標) 6 Transfection Reagent (Promega) を用いてトランスフェクションし、IL-34遺伝子がノックアウトされた卵巣がん細胞株(HM1/IL34KO)を作製した。また、マウスIL-34遺伝子(Gene ID: 76527)をプラスミドベクターpLenti-EF1a-C-Myc-DDK-IRES-PURO(Origene, PS100085)に組み込むことにより作製したIL-34発現ベクターをHM1/IL34KOに導入し、IL-34を過剰発現する卵巣がん細胞株(HM1/IL34OE)を作製した。
HM-1(以下、WT HM-1とも表す)、HM1/IL34KO及びHM1/IL34OEを、10% FBS supplemented Mem-alpha(Wako, 135-15175)を用いて、37℃、5% CO2下で培養した。培養後の上清を回収し、ELISA kit(Legend MAX mouse IL-34 ELISA kit, catalog no. 439107)及びMouse HSC Panel (13-plex)(Legendplex 740677)を用いて上清中のIL-34及びM-CSFの濃度を定量した。WT HM-1培養上清で観察されたIL-34産生はHM1/IL34KO培養上清では認めなかった一方、HM1/IL34OE培養上清ではIL-34発現量の大幅な増加が観察されたことから、HM1/IL34KOにおけるIL-34のノックアウト及びHM1/IL34OEにおけるIL-34過剰発現が確認された。また、いずれの細胞株ともM-CSFを検出上限以上に産生していた(図1)。
さらに、培養後の細胞をAPC標識した抗CSF-1R抗体(Biolegend、135510)及びアイソタイプコントロール抗体(Rat IgG2a、400512)で染色し、フローサイトメトリー(FACS Aria II, Beckman Coulter)により解析した。いずれの細胞株もCSF-1Rの発現は陰性であった(図2)。
2)B6C3F1マウス(雌、6-8週齢)を4群(WT IgG (n=7)、KO IgG (n=6)、WT αPD-1 (n=7)、KO αPD-1 (n=8))に分けて、2つの群(WT IgG、WT αPD-1)にWT HM-1を、残り2つの群(KO IgG、KO αPD-1)にHM-1/IL34KOを、それぞれ1 × 105個/匹ずつ腹腔内に移植した。移植後2日目から、2つの群(WT IgG、KO IgG)にコントロールIgG(ChromePure Rat IgG, whole molecule, Jackson ImmunoResearch)を、残り2つの群(WT αPD-1、KO αPD-1)に抗PD-1抗体(RMP1-14、順天堂大学医学部免疫講座・八木田秀雄先生より分与)を、それぞれ100μg/200μl/mouseずつ週2回腹腔内投与し、通常の飼育環境下で飼育した。がん細胞移植後55日目まで飼育したときの各群のマウスの生存率を図3に示す。
HM-1/IL34KOを移植し抗PD-1抗体を投与した群(KO αPD-1 mAb)では、HM-1を移植しコントロールIgGを投与した群(WT Control IgG)、HM-1/IL34KOを移植しコントロールIgGを投与した群(KO Control IgG)及びHM-1を移植し抗PD-1抗体を投与した群(WT αPD-1 mAb)のいずれと比較しても有意な生存期間の延長が観察され、IL-34の阻害と抗PD-1抗体との組み合わせによる優れた抗腫瘍効果が確認された。
実施例2
1)実施例1の1)と同様にして、大腸がん細胞株CT26(遺伝子病制御研究所 北村秀光先生より分与)から、IL-34遺伝子がノックアウトされた大腸がん細胞株(CT26/IL34KO)及びCT26/IL34KOにIL-34遺伝子を組み込んだIL-34遺伝子過剰発現株(CT26/IL34OE)を作製した。
CT26、CT26/IL34KO及びCT26/IL34OEを、10% FBS supplemented RPMI-1640(Wako, 189-02025)を用いて、37℃、5% CO2下で培養した。培養後の細胞を回収し、Tripure Isolation Reagent(Roche Life Science)を用いてRNAを抽出し、ReverTra Ace qPCR RT Master Mix(TOYOBO)を用いてcDNAを合成し、KAPA SYBR Fast qPCR Kitを用いて以下のプライマーでRT-PCRを行った。
マウス Il-34
フォワードプライマー 5’- CTTTGGGAAACCAGAATTTGGAG -3’(配列番号1)
リバースプライマー 5’- GCAATCCTGTAGTTGATGGGGAA -3’(配列番号2)
野生型のCT26では弱いIL-34発現が観察された一方、CT26/IL34KOではIL-34発現は消失し、またCT26/IL34OEではIL-34発現量の大幅な増加が観察され、CT26/IL34KO におけるIL-34のノックアウト及びCT26/IL34OEにおけるIL-34過剰発現が確認された(図4)。
また、培養上清中のM-CSF濃度を実施例1の1)と同様にして定量した。いずれの細胞株ともM-CSFを検出上限以上に産生していた(図5)。さらに、培養後の細胞におけるCSF-1Rの発現を実施例1の1)と同様にしてフローサイトメトリーにより解析した。いずれの細胞株ともCSF-1Rの発現は陰性であった(図6)。
2)BALB/cマウス(雌、7週齢)を4群(KO IgG、OE IgG、KO αPD-1、OE αPD-1;いずれもn=5)に分けて、2つの群(KO IgG、KO αPD-1)にCT26/IL34KOを、残り2つの群(OE IgG、OE αPD-1)にCT26/IL34OEを、それぞれ2×105個/匹ずつ皮下移植した。移植後7日目から、2つの群(KO IgG、OE IgG)にコントロールIgG(ChromePure Rat IgG, whole molecule, Jackson ImmunoResearch)を、残り2つの群(KO αPD-1、OE αPD-1)に抗PD-1抗体(RMP1-14、順天堂大学医学部免疫講座・八木田秀雄先生より分与)を、それぞれ250μg/mouseずつ、一週間毎に腹腔内に投与し、通常の飼育環境下で飼育した。抗体投与開始後28日目までの各群のマウスの腫瘍体積(平均値)の変化を図7に、抗体投与開始後28日目の各群の腫瘍体積を図8に示す。
CT26/IL34KOを移植し抗PD-1抗体を投与した群(KO αPD-1 mAb)では、CT26/IL34OEを移植しコントロールIgGを投与した群(OE Control IgG)、CT26/IL34KOを移植しコントロールIgGを投与した群(KO Control IgG)及びCT26/IL34OEを移植し抗PD-1抗体を投与した群(OE αPD-1 mAb)のいずれと比較しても腫瘍体積が有意に小さく、IL-34の阻害と抗PD-1抗体との組み合わせによる優れた抗腫瘍効果が確認された。
試験例
B6C3F1マウスに、HM1、HM1/IL34KO及びHM1/IL34OEをそれぞれ1 × 106個/匹ずつ腹腔内に投与した。投与後7日目からPBS (ヘパリン含)でマウスの腹腔内洗浄液を回収し、単細胞懸濁液とした。これをanti-CD11b(Biolegend)、anti-F4/80(Biolegend)及びanti-CD206(Biolegend)で染色し、フローサイトメトリー解析によりM2マクロファージの含有率(CD11b陽性かつF4/80陽性細胞に対するCD206陽性細胞の割合)を測定した。
結果を図9に示す。HM1/IL34KOを投与したマウスのM2マクロファージ含有率は、野生型のHM1を投与したマウスのそれの半分強であり、一方でIL-34を過剰発現させたHM1/IL34OEを投与したマウスではM2マクロファージ含有率はHM1投与マウスのそれと同等であった。
HM-1細胞株、CT26細胞株がいずれもM-CSF陽性及びCSF-1R陰性であること、IL-34のノックアウトはM2マクロファージを劇的には低減させなかったことから、IL-34阻害による抗PD-1抗体の抗腫瘍効果の増強は、がん細胞が発現するCSF-1RとIL-34との相互作用の阻害やIL-34誘導性TAM集積の阻害以外の、未知の機構が存在するものと推察された。
実施例3
BALB/cマウス(雌、7週齢、三協ラボサービス)を10群(KO-NT、OE-NT、KO IgG、OE IgG、KO αPD-1、OE αPD-1、KO αCTLA-4、OE αCTLA-4、KO αPD-1 & αCTLA-4、OE αPD-1 & αCTLA-4;いずれもn=5)に分けた。KO-NT、KO IgG、KO αPD-1、KO αCTLA-4及びKO αPD-1 & αCTLA-4に、マトリゲルに懸濁したCT26/IL34KOを2×105個/匹ずつ皮下移植し、OE-NT、OE IgG、OE αPD-1、OE αCTLA-4及びOE αPD-1 & αCTLA-4に、マトリゲルに懸濁したCT26/IL34OEを2×105個/匹ずつ皮下移植した。
腫瘍の平均長径が5mm弱となった日(移植後5〜7日目)を初回投与日として、一週間に一度、KO IgG及びOE IgGにコントロールIgG(ChromePure Rat IgG, whole molecule, Jackson ImmunoResearch)を、KO αPD-1及びOE αPD-1に抗PD-1抗体(RMP1-14)を、KO αCTLA-4及びOE αCTLA-4に抗CTLA-4抗体(UC10-4F10、順天堂大学医学部免疫講座・八木田秀雄先生より分与)を、KO αPD-1 & αCTLA-4及びOE αPD-1 & αCTLA-4に抗PD-1抗体及び抗CTLA-4抗体を、いずれも抗体合計量として250 μg/mouseずつ腹腔内に投与し、通常の飼育環境下で飼育した。抗体投与開始後8日目までの各群のマウスの腫瘍体積(平均値)の変化を図10に、抗体投与開始後8日目の各群の腫瘍体積を図11に示す。図10のグラフ右の表記は、上から下に向けて、8日目の時点で腫瘍体積が大きい順にマウス群を列記したものである。
CT26/IL34OEを移植した群では、抗PD-1抗体又は抗CTLA-4抗体を単独で投与しても腫瘍増殖はほとんど抑制されず、抗PD-1抗体及び抗CTLA-4抗体の併用投与で腫瘍増殖は抑制された。一方、CT26/IL34KOを移植した群では、抗PD-1抗体又は抗CTLA-4抗体の単独投与で腫瘍増殖は抑制され、特に抗PD-1抗体及び抗CTLA-4抗体の併用投与で腫瘍増殖は顕著に抑制された。以上から、IL-34の阻害と抗PD-1抗体又は抗CTLA-4抗体との組み合わせによる優れた抗腫瘍効果、及びIL-34の阻害と抗PD-1抗体と抗CTLA-4抗体との組み合わせによるさらに優れた抗腫瘍効果が確認された。
実施例4
BALB/cマウス(雌、7週齢、三協ラボサービス)を8群に分け、マトリゲルに懸濁したCT26/IL34OEを2×105個/匹ずつ皮下移植した。腫瘍の平均長径が5mm弱となった日(移植後5〜7日目)を初回投与日として、図12に示す投与計画でコントロールIgG(ChromePure Rat IgG, whole molecule, Jackson ImmunoResearch)、抗IL-34抗体(ミリポア、MABT493)、抗PD-1抗体(RMP1-14)、抗CTLA-4抗体(UC10-4F10、順天堂大学医学部免疫講座・八木田秀雄先生より分与)を腹腔内に投与し、通常の飼育環境下で飼育した。抗体投与開始後13日目までの各群のマウスの腫瘍体積(平均値)の変化を図13に、抗体投与開始後13日目の各群の腫瘍体積を図14に示す。図13のグラフ右の表記は、上から下に向けて、13日目の時点で腫瘍体積が大きい順にマウス群を列記したものである。
本実施例においても、抗IL-34抗体を抗PD-1抗体又は抗CTLA-4抗体と併用投与することで腫瘍増殖の抑制が観察された。特に、抗IL-34抗体、抗PD-1抗体及び抗CTLA-4抗体の3種類の抗体を併用することで、腫瘍増殖は顕著に抑制された。以上から、IL-34の阻害と抗PD-1抗体又は抗CTLA-4抗体との組み合わせによる優れた抗腫瘍効果、及びIL-34の阻害と抗PD-1抗体と抗CTLA-4抗体との組み合わせによるさらに優れた抗腫瘍効果が確認された。

Claims (7)

  1. 免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせて用いるための、IL-34に対する特異抗体及びその誘導体並びにIL-34に対する阻害性核酸よりなる群から選択される少なくとも1つを有効成分として含有する、がんの治療及び/又は予防のための医薬。
  2. 免疫チェックポイント阻害剤と、IL-34に対する特異抗体及びその誘導体並びにIL-34に対する阻害性核酸よりなる群から選択される少なくとも1つとの組み合わせを有効成分として含有する、がんの治療及び/又は予防のための医薬。
  3. 免疫チェックポイント阻害剤がPD-1、PD-L1、PD-L2、CTLA-4、CD80及びCD86よりなる群から選択される少なくとも1つを標的とする、請求項1又は2に記載の医薬。
  4. 免疫チェックポイント阻害剤が抗PD-1抗体及び抗CTLA-4抗体よりなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の医薬。
  5. がんが治療耐性がんではない、請求項1〜4のいずれか一項に記載の医薬。
  6. がんが免疫チェックポイント阻害療法に対する治療耐性を有するがんではない、請求項1〜5のいずれか一項に記載の医薬。
  7. がんがCSF-1R陰性がんである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の医薬。


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