JPWO2020004671A1 - 分離剤 - Google Patents

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Abstract

本発明の課題は、アルカリ性pH条件でCIP処理され続けても、目的物質に対する動的結合量(DBC)が顕著に小さくならない分離剤の提供であり、該課題を、担体とタンパク質とを含む分離剤であって、該タンパク質は所定のタンパク質であり、該担体の表面と該タンパク質における該リジン残基とが化学結合によって結合している、分離剤で解決する。

Description

本発明は、分離剤に関する。
アフィニティークロマトグラフィー用カラムの性能を改良するために、これまでに様々な技術開発がなされてきた。例えば、プロテインAにおいて、イムノグロブリン結合領域であるヘリックス1およびへリックス2のタンパク質表面に存在するリジン残基数を可能な限り減少させるとともに、へリックス3およびその周辺のタンパク質表面に可能な限りリジン残基数を増加させるアミノ酸置換等を行ったイムノグロブリン結合タンパク質等が開発されている。この改変体は、イムノグロブリン結合活性が高く、かつ、通常にはタンパク質の機能が失われてしまう酸性pHおよびアルカリ性pH条件においても安定であることが報告されている(特許文献1)。
一方で、抗体の可変領域を単鎖抗体(single chain Fv, scFv)としてファージディスプレイ法によりファージの表面に提示させ、所望の抗原に結合するファージを選択する方法が知られている。選択されたファージの遺伝子を解析すれば、抗原に結合する単鎖抗体をコードするDNA配列を決定することができる。そして、抗原に結合する単鎖抗体を用いて、該抗原の分離剤を製造することができるようになる。単鎖抗体を用いて抗原の分離剤とするには、単鎖抗体を分離剤の担体に結合させて製造するのが一般的である(特許文献2、3)。
特開2007−252368号公報 国際公開第2017/082213号 国際公開第2017/082214号
本発明者らは、二種以上の水溶性物質の混合液から目的物質を分離する分離剤として用いられる、単鎖抗体を担体の表面に結合した分離剤は、アルカリ性pH条件で定置洗浄(Cleaning-in-place, CIP)処理され続けると、単鎖抗体が含むアミノ酸配列によっては、目的物質に対する分離剤の動的結合量(Dynamic Binding Capacity, DBC)が顕著に小さくなってしまうことを見出した。
本発明は、アルカリ性pH条件でCIP処理され続けても、目的物質に対する動的結合量(DBC)が顕著に小さくならない分離剤の提供を課題とする。また、本発明は、好ましくは、これに加えて、目的物質に対する動的結合量(DBC)が向上した分離剤の提供を課題とする。
本発明者らは、前記分離剤として下記構成(1)〜(2)が採用されることにより前記課題が解決できることを見出した。
(1) 分離剤が含む単鎖抗体が立体構造を構成したときの目的物質認識部位の近傍に存在するリジン残基をリジン残基以外のアミノ酸残基に置換する。
(2) 分離剤が含む単鎖抗体が立体構造を構成したときの目的物質認識部位から遠方に存在するリジン残基以外のアミノ酸残基をリジン残基に置換する。
具体的には、下記の通りである。
本発明は、担体とタンパク質とを含む分離剤であって、
該タンパク質は、
N末端から順に並ぶ、配列番号1で表されるアミノ酸配列、配列番号2で表されるアミノ酸配列、及び配列番号3で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質、又は、
N末端から順に並ぶ、配列番号3で表されるアミノ酸配列、配列番号16で表されるアミノ酸配列、及び配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質であって、
下記(a)〜(j)で表される領域のうちの2以上の領域に存在する、1以上のリジン残基が保存され、及び/又は、1以上のリジン残基以外のアミノ酸残基がリジン残基に置換されており、
下記(e)、(f)及び(j)で表される領域では、それぞれにおいて、1のリジン残基又は連続していてもよい2以上12以下のリジン残基を含む1以上12以下のアミノ酸残基が挿入又は付加されていてもよく、
該保存されたリジン残基と、該置換後のリジン残基と、該挿入又は付加されたリジン残基とを除いたすべてのリジン残基は、システイン残基以外のアミノ酸残基に置換されており、
該配列番号3で表されるアミノ酸配列における、IMGTナンバリングで指定される96位のシステイン残基がシステイン残基以外のアミノ酸残基に置換されているタンパク質であり、
該担体の表面と該タンパク質における該リジン残基とが化学結合によって結合している、分離剤である。
(a)配列番号1で表されるアミノ酸配列における、IMGTナンバリングで指定される14〜18位の領域
(b)配列番号1で表されるアミノ酸配列における、IMGTナンバリングで指定される45〜50位の領域
(c)配列番号1で表されるアミノ酸配列における、IMGTナンバリングで指定される72〜75位の領域
(d)配列番号1で表されるアミノ酸配列における、IMGTナンバリングで指定される92〜96位の領域
(e)配列番号1で表されるアミノ酸配列における、C末端から1〜12のアミノ酸残基領域
(f)配列番号2又は16で表されるアミノ酸配列における、N末端から1〜12のアミノ酸残基領域
(g)配列番号3で表されるアミノ酸配列において、IMGTナンバリングで指定される14〜18位の領域
(h)配列番号3で表されるアミノ酸配列において、IMGTナンバリングで指定される45〜50位の領域
(i)配列番号3で表されるアミノ酸配列において、IMGTナンバリングで指定される82〜86位の領域
(j)配列番号3で表されるアミノ酸配列において、C末端から1〜12のアミノ酸残基領域
また、本発明の他の態様は、前記分離剤を用いて、二種以上の水溶性物質の混合液から前記タンパク質が結合する水溶性物質を分離する方法である。
また、本発明の他の態様は、N末端から順に並ぶ、配列番号1で表されるアミノ酸配列、配列番号2で表されるアミノ酸配列、及び配列番号3で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質、又は、
N末端から順に並ぶ、配列番号3で表されるアミノ酸配列、配列番号16で表されるアミノ酸配列、及び配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質であって、
下記(a)〜(j)で表される領域のうちの2以上の領域に存在する、1以上のリジン残基が保存され、及び/又は、1以上のリジン残基以外のアミノ酸残基がリジン残基に置換されており、
下記(e)、(f)及び(j)で表される領域では、それぞれにおいて、1のリジン残基又は連続していてもよい2以上12以下のリジン残基を含む1以上12以下のアミノ酸残基が挿入又は付加されていてもよく、
該保存されたリジン残基と、該置換後のリジン残基と、該挿入又は付加されたリジン残基とを除いたすべてのリジン残基は、システイン残基以外のアミノ酸残基に置換されており、
該配列番号3で表されるアミノ酸配列における、IMGTナンバリングで指定される96位のシステイン残基がシステイン残基以外のアミノ酸残基に置換されているタンパク質である。
(a)配列番号1で表されるアミノ酸配列における、IMGTナンバリングで指定される14〜18位の領域
(b)配列番号1で表されるアミノ酸配列における、IMGTナンバリングで指定される45〜50位の領域
(c)配列番号1で表されるアミノ酸配列における、IMGTナンバリングで指定される72〜75位の領域
(d)配列番号1で表されるアミノ酸配列における、IMGTナンバリングで指定される92〜96位の領域
(e)配列番号1で表されるアミノ酸配列における、C末端から1〜12のアミノ酸残基領域
(f)配列番号2又は16で表されるアミノ酸配列における、N末端から1〜12のアミノ酸残基領域
(g)配列番号3で表されるアミノ酸配列において、IMGTナンバリングで指定される14〜18位の領域
(h)配列番号3で表されるアミノ酸配列において、IMGTナンバリングで指定される45〜50位の領域
(i)配列番号3で表されるアミノ酸配列において、IMGTナンバリングで指定される82〜86位の領域
(j)配列番号3で表されるアミノ酸配列において、C末端から1〜12のアミノ酸残基領域
本発明によれば、アルカリ性pH条件でCIP処理され続けても、目的物質に対する動的結合量(DBC)が顕著に小さくならない分離剤が提供できる。また、本発明によれば、好ましくは、これに加えて、目的物質に対する動的結合量(DBC)が向上した分離剤が提供できる。
本発明の一実施態様に係る、アフィニティークロマトグラフィー用カラムへ固定したタンパク質の量と10%動的結合量(DBC)との関係を示すグラフである。 本発明の一実施態様に係る、アフィニティークロマトグラフィー用カラムへ固定したタンパク質の量と10%動的結合量(DBC)との関係を示すグラフである。 本発明の一実施態様に係る、CIP処理をしない場合の10%動的結合量を100%としたときの、各CIP処理後の相対10%動的結合量(%)を示すグラフである。 本発明の一実施態様に係る、配列番号1で表されるアミノ酸配列及びそれと実質的に同一のアミノ酸配列を示す図である。 本発明の一実施態様に係る、配列番号3で表されるアミノ酸配列及びそれと実質的に同一のアミノ酸配列を示す図である。
本発明は、分離剤に係る発明(第一の発明)、及び、該分離剤を用いた、二種以上の水溶性物質の混合液から前記タンパク質が結合する水溶性物質を分離する方法に係る発明(第二の発明)を含む。
単鎖抗体は、当該技術分野では、低分子抗体の一つとして一本鎖Fv(single chain Fv, scFv)などと称されることがある。また、本明細書に記載される単鎖抗体にはウサギ由来の単鎖抗体もあるが、これは単鎖抗体がウサギ由来である場合の一例に過ぎず、本明細書に記載される単鎖抗体がウサギ由来の単鎖抗体に限定されるものではない。
<1.第一の発明>
本発明の第一の発明は、担体とタンパク質とを含む分離剤であって、
該タンパク質は、
N末端から順に並ぶ、配列番号1で表されるアミノ酸配列、配列番号2で表されるアミノ酸配列、及び配列番号3で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質、又は、
N末端から順に並ぶ、配列番号3で表されるアミノ酸配列、配列番号16で表されるアミノ酸配列、及び配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質であって、
下記(a)〜(j)で表される領域のうちの2以上の領域に存在する、1以上のリジン残基が保存され、及び/又は、1以上のリジン残基以外のアミノ酸残基がリジン残基に置換されており、
下記(e)、(f)及び(j)で表される領域では、それぞれにおいて、1のリジン残基又は連続していてもよい2以上12以下のリジン残基を含む1以上12以下のアミノ酸残基が挿入又は付加されていてもよく、
該保存されたリジン残基と、該置換後のリジン残基と、該挿入又は付加されたリジン残基とを除いたすべてのリジン残基は、システイン残基以外のアミノ酸残基に置換されており、
該配列番号3で表されるアミノ酸配列における、IMGTナンバリングで指定される96位のシステイン残基がシステイン残基以外のアミノ酸残基に置換されているタンパク質であり、
該担体の表面と該タンパク質における該リジン残基とが化学結合によって結合している、分離剤である。
(a)配列番号1で表されるアミノ酸配列における、IMGTナンバリングで指定される14〜18位の領域
(b)配列番号1で表されるアミノ酸配列における、IMGTナンバリングで指定される45〜50位の領域
(c)配列番号1で表されるアミノ酸配列における、IMGTナンバリングで指定される72〜75位の領域
(d)配列番号1で表されるアミノ酸配列における、IMGTナンバリングで指定される92〜96位の領域
(e)配列番号1で表されるアミノ酸配列における、C末端から1〜12のアミノ酸残基領域
(f)配列番号2又は16で表されるアミノ酸配列における、N末端から1〜12のアミノ酸残基領域
(g)配列番号3で表されるアミノ酸配列において、IMGTナンバリングで指定される14〜18位の領域
(h)配列番号3で表されるアミノ酸配列において、IMGTナンバリングで指定される45〜50位の領域
(i)配列番号3で表されるアミノ酸配列において、IMGTナンバリングで指定される82〜86位の領域
(j)配列番号3で表されるアミノ酸配列において、C末端から1〜12のアミノ酸残基領域
[担体]
本発明の第一の発明に用いる担体は、水不溶性担体であることが好ましい。水不溶性担体としては、ガラスビーズ、シリカゲルなどの無機担体、架橋ポリビニルアルコール、架橋ポリアクリレート、架橋ポリアクリルアミド、架橋ポリスチレンなどの合成高分子や結晶性セルロース、架橋セルロース、架橋アガロース、架橋デキストランなどの多糖類からなる有機担体、さらにはこれらの組み合わせによって得られる有機−有機、有機−無機などの複合担体などが挙げられるが、中でも親水性担体は非特異吸着が比較的少なく、本発明の第一の発明に用いるタンパク質の選択性が良好であるため好ましい。ここでいう親水性担体とは、担体を構成する化合物を平板状にしたときの水との接触角が60度以下の担体を示す。この様な担体としてはセルロース、キトサン、デキストラン等の多糖類、ポリビニルアルコール、エチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸グラフト化ポリエチレン、ポリアクリルアミドグラフト化ポリエチレン、ガラスなどが挙げられる。
市販品としては多孔質セルロースゲルであるGCL2000、GC700、アリルデキストランとメチレンビスアクリルアミドを共有結合で架橋したSephacryl S-1000、アクリレート系の担体であるToyopearl、アガロース系の架橋担体であるSepharoseCL4B、エポキシ基で活性化されたポリメタクリルアミドであるオイパーギットC250L等を例示することができる。ただし、本発明の第一の発明においてはこれらの担体、活性化担体のみに限定されるものではない。上述の担体はそれぞれ単独で用いてもよいし、任意の2種類以上を混合してもよい。また、本発明の第一の発明に用いる水不溶性担体としては、本分離剤の使用目的および方法からみて、表面積が大きいことが望ましく、適当な大きさの細孔を多数有する、すなわち、多孔質であることが好ましい。
担体の形態としては、ビーズ状、繊維状、膜状(中空糸も含む)など何れも可能であり、任意の形態を選ぶことができる。特定の排除限界分子量を持つ担体作製の容易さからビーズ状が特に好ましく用いられる。ビーズ状の平均粒径は10〜2500μmのものが使いやすく、とりわけ、リジン残基を介して本発明の第一の発明で用いられるタンパク質を担体表面へ固定化しやすい点から、25〜800μmの範囲が好ましい。
さらに担体表面には、本発明の第一の発明で用いられるタンパク質におけるリジン残基との化学結合反応に用いうる官能基が存在していると好都合である。これらの官能基の代表例としては、水酸基、アミノ基、アルデヒド基、カルボキシル基、チオール基、シラノール基、アミド基、エポキシ基、サクシニルイミド基、酸無水物基、ヨードアセチル基などが挙げられる。
[タンパク質におけるリジンと担体表面との化学結合]
担体表面と本発明の第一の発明で用いられるタンパク質を、該タンパク質におけるリジン残基を介して化学結合させる方法(固定化方法)としては、該リジン残基のεアミノ基を介して化学結合させる方法が挙げられ、例えば、従来のカップリング法により担体に共有結合させる方法等が挙げられる。カップリング法としては、一般にタンパク質やペプチドを担体に固定化する場合に採用される方法が挙げられる。例えば、担体を臭化シアン、エピクロロヒドリン、ジグリシジルエーテル、トシルクロライド、トレシルクロライド、ヒドラジン、過ヨウ素酸ナトリウム等と反応させて活性化し(または、担体表面に反応性官能基を導入し)、リジン残基とカップリング反応を行う方法や、担体とリジン残基とが存在する系にカルボジイミドのような縮合試薬、または、グルタルアルデヒドのように分子中に複数の官能基を持つ試薬を加えて縮合、架橋することによる方法が挙げられる。ただし、分離剤の滅菌時または利用時に、リジン残基が担体より容易に脱離しない結合方法を用いることがより好ましい。また、リジン残基と担体との間に複数の原子からなるスペーサー分子を導入してもよいし、リジン残基を担体に直接固定化してもよい。
担体表面と本発明の第一の発明で用いられるタンパク質とを、該タンパク質におけるリジン残基を介して化学結合させる方法の具体例としては、実施例に記載するような、HiTrap NHS-activated HP Columns(GEヘルスケア)を用いた固定化方法が挙げられる。
[タンパク質]
本発明の第一の発明に用いるタンパク質は、
N末端から順に並ぶ、配列番号1で表されるアミノ酸配列、配列番号2で表されるアミノ酸配列、及び配列番号3で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質、又は、
N末端から順に並ぶ、配列番号3で表されるアミノ酸配列、配列番号16で表されるアミノ酸配列、及び配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質であって、
下記(a)〜(j)で表される領域のうちの2以上の領域に存在する、1以上のリジン残基が保存され、及び/又は、1以上のリジン残基以外のアミノ酸残基がリジン残基に置換されており、
下記(e)、(f)及び(j)で表される領域では、それぞれにおいて、1のリジン残基又は連続していてもよい2以上12以下のリジン残基を含む1以上12以下のアミノ酸残基が挿入又は付加されていてもよく、
該保存されたリジン残基と、該置換後のリジン残基と、該挿入又は付加されたリジン残基とを除いたすべてのリジン残基は、システイン残基以外のアミノ酸残基に置換されており、
該配列番号3で表されるアミノ酸配列における、IMGTナンバリングで指定される96位のシステイン残基がシステイン残基以外のアミノ酸残基に置換されているタンパク質である。
(a)配列番号1で表されるアミノ酸配列における、IMGTナンバリングで指定される14〜18位の領域
(b)配列番号1で表されるアミノ酸配列における、IMGTナンバリングで指定される45〜50位の領域
(c)配列番号1で表されるアミノ酸配列における、IMGTナンバリングで指定される72〜75位の領域
(d)配列番号1で表されるアミノ酸配列における、IMGTナンバリングで指定される92〜96位の領域
(e)配列番号1で表されるアミノ酸配列における、C末端から1〜12のアミノ酸残基領域
(f)配列番号2又は16で表されるアミノ酸配列における、N末端から1〜12のアミノ酸残基領域
(g)配列番号3で表されるアミノ酸配列において、IMGTナンバリングで指定される14〜18位の領域
(h)配列番号3で表されるアミノ酸配列において、IMGTナンバリングで指定される45〜50位の領域
(i)配列番号3で表されるアミノ酸配列において、IMGTナンバリングで指定される82〜86位の領域
(j)配列番号3で表されるアミノ酸配列において、C末端から1〜12のアミノ酸残基領域
前記配列番号1で表されるアミノ酸配列は、特許文献2、3に記載された単鎖抗体R3−26における重鎖(H鎖)の可変領域(Vドメイン)のアミノ酸配列である。
前記配列番号3で表されるアミノ酸配列は、特許文献2、3に記載された単鎖抗体R3−26における軽鎖(L鎖)の可変領域(Vドメイン)のアミノ酸配列である。
前記配列番号2で表されるアミノ酸配列、前記配列番号16で表されるアミノ酸配列は、特許文献2、3に記載された単鎖抗体R3−26におけるVドメインとVドメインとを繋ぐリンカー配列である。
特許文献2、3を参照すれば、単鎖抗体R3−26は、ヒト血清由来IgGポリクローナル抗体を認識して結合することが理解できる。さらに、特許文献2、3を参照すれば、単鎖抗体R3−26は、そのサブタイプである、ヒト血清由来IgG1ポリクローナル抗体、ヒト血清由来IgG2ポリクローナル抗体、ヒト血清由来IgG3ポリクローナル抗体、及びヒト血清由来IgG4ポリクローナル抗体からなる群から選択される一以上の抗体を認識して結合することが理解できる。単鎖抗体R3−26は、ウサギに由来する単鎖抗体であるが、単鎖抗体が由来する動物に特に制限はない。単鎖抗体が由来する動物としては、例えば、ヒト、ラット、マウス、ウサギ、ニワトリ、ヤギ、ヒツジ、ウシ、ウマ、イヌ、ネコ、サルなどが挙げられる。
本発明の第一の発明に用いるタンパク質は、前記「該保存されたリジン残基と、該置換後のリジン残基と、該挿入又は付加されたリジン残基とを除いたすべてのリジン残基」が、システイン残基以外のアミノ酸残基に置換されている。該システイン残基以外のアミノ酸残基としては、好ましくは、アルギニン残基、セリン残基、スレオニン残基、グルタミン酸残基である。
また、本発明の第一の発明に用いるタンパク質は、上記配列番号3で表されるアミノ酸配列における、IMGTナンバリングで指定される96位のシステイン残基がシステイン残基以外のアミノ酸残基に置換されている。該システイン残基以外のアミノ酸残基としては、好ましくは、アルギニン残基、セリン残基、スレオニン残基、グルタミン酸残基である。
また、本発明の第一の発明に用いるタンパク質の前記領域(e)は、前記の通り、「配列番号1で表されるアミノ酸配列における、C末端から1〜12のアミノ酸残基領域」であるが、「配列番号1で表されるアミノ酸配列における、C末端から1〜5のアミノ酸残基領域」であってもよい。
また、当該領域(e)において、前記「1のリジン残基又は連続していてもよい2以上12以下のリジン残基を含む1以上12以下のアミノ酸残基が挿入又は付加されていてもよい」の「1のリジン残基又は連続していてもよい2以上12以下のリジン残基を含む1以上12以下のアミノ酸残基」は、配列番号1で表されるアミノ酸配列における、C末端から1のアミノ酸残基のC末端側に付加されることが好ましい。これは、タンパク質の高次構造形成に関わる可能性のあるアミノ酸から当該リジン残基が遠方に存在した方が、元のタンパク質の構造の保存に有利なためである。
また、本発明の第一の発明に用いるタンパク質の前記領域(f)は、前記の通り、「配列番号2又は16で表されるアミノ酸配列における、N末端から1〜12のアミノ酸残基領域」であるが、「配列番号2又は16で表されるアミノ酸配列における、N末端から1〜5のアミノ酸残基領域」であってもよい。
また、本発明の第一の発明に用いるタンパク質の前記領域(j)は、前記の通り、「配列番号3で表されるアミノ酸配列において、C末端から1〜12のアミノ酸残基領域」であるが、「配列番号3で表されるアミノ酸配列において、C末端から1〜5のアミノ酸残基領域」であってもよく、「配列番号3で表されるアミノ酸配列において、C末端から1〜3のアミノ酸残基領域」であってもよい。
また、当該領域(j)において、前記「1以上のリジン残基以外のアミノ酸残基がリジン残基に置換されている」の「1以上のリジン残基以外のアミノ酸残基」は、配列番号3で表されるアミノ酸配列において、C末端から1〜3のアミノ酸残基領域に存在するアミノ酸残基であることが好ましい。
また、当該領域(j)において、前記「1のリジン残基又は連続していてもよい2以上12以下のリジン残基を含む1以上12以下のアミノ酸残基が挿入又は付加されていてもよい」の「1のリジン残基又は連続していてもよい2以上12以下のリジン残基を含む1以上12以下のアミノ酸残基」は、配列番号3で表されるアミノ酸配列において、C末端から1〜3のアミノ酸残基領域に挿入されること、又は、配列番号3で表されるアミノ酸配列において、C末端から1のアミノ酸残基のC末端側に付加されることが好ましい。
配列番号1で表されるアミノ酸配列は、本発明の効果を奏することができる限り、それと実質的に同等のアミノ酸配列であってもよい。
配列番号1で表されるアミノ酸配列と実質的に同等のアミノ酸配列とは、配列番号1で表されるアミノ酸配列ではないが、本発明の効果を奏することができるアミノ酸配列であり、VドメインのCDR領域を除いたアミノ酸配列を比較して、次第に好ましくなる順に、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上の相同性を有するアミノ酸配列である。
このようなアミノ酸配列としては、例えば、配列番号21(相同性:79.3%)、配列番号22(相同性:79.3%)、配列番号23(相同性:88.6%)、配列番号24(相同性:86.2%)、配列番号25(相同性:81.6%)、配列番号26(相同性:81.8%)、配列番号27(相同性:80.5%)、配列番号28(相同性:81.6%)が挙げられる。また、これらの各アミノ酸配列と、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上の相同性を有するアミノ酸配列も、配列番号1で表されるアミノ酸配列と実質的に同等のアミノ酸配列に含まれる。
また、配列番号3で表されるアミノ酸配列は、本発明の効果を奏することができる限り、それと実質的に同等のアミノ酸配列であってもよい。
配列番号3で表されるアミノ酸配列と実質的に同等のアミノ酸配列とは、配列番号3で表されるアミノ酸配列ではないが、本発明の効果を奏することができるアミノ酸配列であり、VドメインのCDR領域を除いたアミノ酸配列を比較して、次第に好ましくなる順に、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上の相同性を有するアミノ酸配列である。
このようなアミノ酸配列としては、例えば、配列番号29(相同性:78.0%)、配列番号30(相同性:89.0%)、配列番号31(相同性:86.4%)、配列番号32(相同性:81.3%)、配列番号33(相同性:87.9%)、配列番号34(相同性:85.7%)、配列番号35(相同性:82.4%)、配列番号36(相同性:92.3%)が挙げられる。また、これらの各アミノ酸配列と、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上の相同性を有するアミノ酸配列も、配列番号3で表されるアミノ酸配列と実質的に同等のアミノ酸配列に含まれる。
また、配列番号1で表されるアミノ酸配列と実質的に同等のアミノ酸配列、配列番号3で表されるアミノ酸配列と実質的に同等のアミノ酸配列は、配列番号1で表されるアミノ酸配列と配列番号3で表されるアミノ酸配列を連結した場合を想定したときに、その連結されて成したアミノ酸配列全体との間で、VドメインのCDR領域のアミノ酸配列、及びVドメインのCDR領域のアミノ酸配列を除外して算出した、NCBIのBLOSUM62による相同性スコア値が、次第に好ましくなる順に、500以上、550以上、600以上、650以上、700以上のアミノ酸配列であってもよい。また、その連結されて成したアミノ酸配列全体との間で、VドメインのCDR領域のアミノ酸配列、及びVドメインのCDR領域のアミノ酸配列を除外して算出した相同性が、次第に好ましくなる順に、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上のアミノ酸配列であってもよい。
このようなアミノ酸配列としては、例えば、
配列番号1で表されるアミノ酸配列と実質的に同等のアミノ酸配列として配列番号21、配列番号3で表されるアミノ酸配列と実質的に同等のアミノ酸配列として配列番号29(相同性スコア値:718、同一性:78.70%)、
配列番号1で表されるアミノ酸配列と実質的に同等のアミノ酸配列として配列番号22、配列番号3で表されるアミノ酸配列と実質的に同等のアミノ酸配列として配列番号30(相同性スコア値:762、同一性:84.30%)、
配列番号1で表されるアミノ酸配列と実質的に同等のアミノ酸配列として配列番号23、配列番号3で表されるアミノ酸配列と実質的に同等のアミノ酸配列として配列番号31(相同性スコア値:807、同一性:87.50%)、
配列番号1で表されるアミノ酸配列と実質的に同等のアミノ酸配列として配列番号24、配列番号3で表されるアミノ酸配列と実質的に同等のアミノ酸配列として配列番号32(相同性スコア値:737、同一性:80.90%)、
配列番号1で表されるアミノ酸配列と実質的に同等のアミノ酸配列として配列番号25、配列番号3で表されるアミノ酸配列と実質的に同等のアミノ酸配列として配列番号33(相同性スコア値:763、同一性:84.80%)、
配列番号1で表されるアミノ酸配列と実質的に同等のアミノ酸配列として配列番号26、配列番号3で表されるアミノ酸配列と実質的に同等のアミノ酸配列として配列番号34(相同性スコア値:766、同一性:83.80%)、
配列番号1で表されるアミノ酸配列と実質的に同等のアミノ酸配列として配列番号27、配列番号3で表されるアミノ酸配列と実質的に同等のアミノ酸配列として配列番号35(相同性スコア値:740、同一性:81.50%)、
配列番号1で表されるアミノ酸配列と実質的に同等のアミノ酸配列として配列番号28、配列番号3で表されるアミノ酸配列と実質的に同等のアミノ酸配列として配列番号36(相同性スコア値:744、同一性:87.10%)である。
また、これらの各アミノ酸配列と、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上の相同性を有するアミノ酸配列も、それぞれ、配列番号1で表されるアミノ酸配列と実質的に同等のアミノ酸配列、配列番号3で表されるアミノ酸配列と実質的に同等のアミノ酸配列に含まれる。
配列番号2で表されるアミノ酸配列は、本発明の効果を奏することができる限り、それと実質的に同等のアミノ酸配列であってもよい。
配列番号2で表されるアミノ酸配列と実質的に同等のアミノ酸配列とは、配列番号2で表されるアミノ酸配列ではないが、本発明の効果を奏することができるアミノ酸配列であり、配列番号2で表されるアミノ酸配列と、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上の相同性を有するアミノ酸配列である。
このことは、配列番号16で表されるアミノ酸配列であっても同様である。
図4−1に配列番号1で表されるアミノ酸配列及びそれと実質的に同一のアミノ酸配列を、図4−2に配列番号3で表されるアミノ酸配列及びそれと実質的に同一のアミノ酸配列示した。各図中のクローン番号は、特許文献2、3に記載された各単鎖抗体のクローン番号であり、各配列は該各単鎖抗体におけるVドメインとVドメインの配列である。各ドメインにおけるCDR領域とFR領域も分かるように記載した。
また、配列番号1で表されるアミノ酸配列においては、本発明の効果を奏することができる限り、その1〜複数個のアミノ酸が、置換、欠失、挿入及び/又は付加されたアミノ酸配列であってもよい。1〜複数個とは、次第に好ましくなる順に、1〜12個、1〜10個、1〜5個、1〜3個である。
また、配列番号3で表されるアミノ酸配列においては、本発明の効果を奏することができる限り、その1〜複数個のアミノ酸が、置換、欠失、挿入及び/又は付加されたアミノ酸配列であってもよい。1〜複数個とは、次第に好ましくなる順に、1〜12個、1〜10個、1〜5個、1〜3個である。
また、配列番号2で表されるアミノ酸配列においては、本発明の効果を奏することができる限り、その1〜複数個のアミノ酸が、置換、欠失、挿入及び/又は付加されたアミノ酸配列であってもよい。1〜複数個とは、次第に好ましくなる順に、1〜3個、1〜2個、1個である。
また、配列番号16で表されるアミノ酸配列においては、本発明の効果を奏することができる限り、その1〜複数個のアミノ酸が、置換、欠失、挿入及び/又は付加されたアミノ酸配列であってもよい。1〜複数個とは、次第に好ましくなる順に、1〜3個、1〜2個、1個である。
上記の配列番号1で表されるアミノ酸配列における1〜複数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入及び/又は付加は、配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質の機能が正常に維持される保存的変異である。
保存的変異の代表的なものは、保存的置換である。保存的置換とは、置換部位が芳香族アミノ酸である場合には、Phe、Trp、Tyr間で、置換部位が疎水性アミノ酸である場合には、Leu、Ile、Val間で、極性アミノ酸である場合には、Gln、Asn間で、塩基性アミノ酸である場合には、Lys、Arg、His間で、酸性アミノ酸である場合には、Asp、Glu間で、ヒドロキシル基を持つアミノ酸である場合には、Ser、Thr間でお互いに置換する変異である。
保存的置換としては、具体的には、AlaからSer又はThrへの置換、ArgからGln、His又はLysへの置換、AsnからGlu、Gln、Lys、His又はAspへの置換、AspからAsn、Glu又はGlnへの置換、CysからSer又はAlaへの置換、GlnからAsn、Glu、Lys、His、Asp又はArgへの置換、GluからGly、Asn、Gln、Lys又はAspへの置換、GlyからProへの置換、HisからAsn、Lys、Gln、Arg又はTyrへの置換、IleからLeu、Met、Val又はPheへの置換、LeuからIle、Met、Val又はPheへの置換、LysからAsn、Glu、Gln、His又はArgへの置換、MetからIle、Leu、Val又はPheへの置換、PheからTrp、Tyr、Met、Ile又はLeuへの置換、SerからThr又はAlaへの置換、ThrからSer又はAlaへの置換、TrpからPhe又はTyrへの置換、TyrからHis、Phe又はTrpへの置換、及び、ValからMet、Ile又はLeuへの置換が挙げられる。
このことは、配列番号2で表されるアミノ酸配列、配列番号16で表されるアミノ酸配列、配列番号3で表されるアミノ酸配列であっても同様である。
また、本発明の効果を奏する限り、本発明の第一の発明に用いるタンパク質のC末端には、Hisタグ、GSTタグ、FLAGタグなどのタグが付されていてよい。また、これらのタグのN末端側には、1〜複数個のリンカーアミノ酸配列が付加されていてもよい。1〜複数個のアミノ酸とは、好ましくは1〜25個、より好ましくは1〜15個、さらに好ましくは1〜5個である。
リンカー配列としては、例えば、AAALE(配列番号17)、AAAGGGGSKIE(配列番号18)、AAALE(配列番号19)、AAAGGGGSKKKKKIE(配列番号20)などが挙げられる。
単鎖抗体R3−26は、特許文献2、3に記載された方法により取得することができるし、公知の遺伝子工学的手法やタンパク質工学的手法等により取得することもできる。
また、単鎖抗体R3−26のアミノ酸配列と実質的に同等のアミノ酸配列からなるタンパク質も、特許文献2、3に記載された方法により取得することができるし、単鎖抗体R3−26のアミノ酸配列を、公知の遺伝子工学的手法やタンパク質工学的手法等により改変して取得することもできる。
いずれについても、結果的に、単鎖抗体R3−26、又は単鎖抗体R3−26のアミノ酸配列と実質的に同等のアミノ酸配列からなるタンパク質が得られればよく、その手法は限られない。
さらに、本発明の第一の発明に用いるタンパク質は、単鎖抗体R3−26のアミノ酸配列、又は単鎖抗体R3−26のアミノ酸配列と実質的に同等のアミノ酸配列を、公知の遺伝子工学的手法やタンパク質工学的手法等により改変して取得できるが、結果的に、目的のアミノ酸配列からなるタンパク質が得られればよく、その手法は限られない。
[動的結合量(Dynamic Binding Capacity, DBC)]
担体へのタンパク質の固定量や流速等の条件が同一である場合において、本発明の第一の発明に係る分離剤の動的結合量(DBC)は、単鎖抗体R3−26のアミノ酸配列における元来のリジン残基を介して担体の表面に該単鎖抗体を結合させた分離剤の動的結合量(DBC)よりも小さくない、すなわち、大きい又は同一である。
本発明の第一の発明に係る分離剤の動的結合量(DBC)は、[流速1.0 mL/minにおける10% DBC (mg/mL)] / [カラムへのタンパク質の固定化量(mg)]の値として、単鎖抗体R3−26のアミノ酸配列における元来のリジン残基を介して担体の表面に該単鎖抗体を結合させた分離剤のそれの、好ましくは1.00倍以上、より好ましくは1.02倍以上、さらに好ましくは1.04倍以上、よりさらに好ましくは1.05倍以上である。
また、本発明の第一の発明に係る分離剤がアルカリ性pH条件でCIP処理され続けても、その動的結合量(DBC)は、単鎖抗体R3−26のアミノ酸配列における元来のリジン残基を介して担体の表面に該単鎖抗体を結合させた分離剤の動的結合量(DBC)よりも小さくない、すなわち、大きい又は同一である。
この場合の本発明の第一の発明に係る分離剤の動的結合量(Dynamic Binding Capacity, DBC)は、例えば、アルカリ性pH条件のCIP処理として実施例に記載のCIP処理を10回行った後の[流速1.0 mL/minにおける10% DBC (mg/mL)] / [カラムへのタンパク質の固定化量(mg)]の値として、単鎖抗体R3−26のアミノ酸配列における元来のリジン残基を介して担体の表面に該単鎖抗体を結合させた分離剤のそれの、好ましくは1.01倍以上、より好ましくは1.05倍以上、さらに好ましくは1.10倍以上である。
本発明の第一の発明に係る分離剤の動的結合量(DBC)は、公知の方法で測定することができ、例えば、実施例に記載される方法で測定することができる。
<2.第二の発明>
本発明の第二の発明は、本発明の第一の発明に係る分離剤を用いて、二種以上の水溶性物質の混合液から前記タンパク質が結合する水溶性物質を分離する方法である。
二種以上の水溶性物質のうちの一種は、好ましくはヒト血清由来IgGポリクローナル抗体であり、より好ましくは、そのサブタイプである、ヒト血清由来IgG1ポリクローナル抗体、ヒト血清由来IgG2ポリクローナル抗体、ヒト血清由来IgG3ポリクローナル抗体、及びヒト血清由来IgG4ポリクローナル抗体からなる群から選択される一以上の抗体である。
本発明の第二の発明に係る方法は、担体に抗体を固定した通常のアフィニティークロマトグラフィーと同様の操作により、試料の分析や、試料からの前記タンパク質が結合する水溶性物質の分離ができる。
<3.第三の発明>
本発明の他の態様は、
N末端から順に並ぶ、配列番号1で表されるアミノ酸配列、配列番号2で表されるアミノ酸配列、及び配列番号3で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質、又は、
N末端から順に並ぶ、配列番号3で表されるアミノ酸配列、配列番号16で表されるアミノ酸配列、及び配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質であって、
下記(a)〜(j)で表される領域のうちの2以上の領域に存在する、1以上のリジン残基が保存され、及び/又は、1以上のリジン残基以外のアミノ酸残基がリジン残基に置換されており、
下記(e)、(f)及び(j)で表される領域では、それぞれにおいて、1のリジン残基又は連続していてもよい2以上12以下のリジン残基を含む1以上12以下のアミノ酸残基が挿入又は付加されていてもよく、
該保存されたリジン残基と、該置換後のリジン残基と、該挿入又は付加されたリジン残基とを除いたすべてのリジン残基は、システイン残基以外のアミノ酸残基に置換されており、
該配列番号3で表されるアミノ酸配列における、IMGTナンバリングで指定される96位のシステイン残基がシステイン残基以外のアミノ酸残基に置換されているタンパク質である。
(a)配列番号1で表されるアミノ酸配列における、IMGTナンバリングで指定される14〜18位の領域
(b)配列番号1で表されるアミノ酸配列における、IMGTナンバリングで指定される45〜50位の領域
(c)配列番号1で表されるアミノ酸配列における、IMGTナンバリングで指定される72〜75位の領域
(d)配列番号1で表されるアミノ酸配列における、IMGTナンバリングで指定される92〜96位の領域
(e)配列番号1で表されるアミノ酸配列における、C末端から1〜12のアミノ酸残基領域
(f)配列番号2又は16で表されるアミノ酸配列における、N末端から1〜12のアミノ酸残基領域
(g)配列番号3で表されるアミノ酸配列において、IMGTナンバリングで指定される14〜18位の領域
(h)配列番号3で表されるアミノ酸配列において、IMGTナンバリングで指定される45〜50位の領域
(i)配列番号3で表されるアミノ酸配列において、IMGTナンバリングで指定される82〜86位の領域
(j)配列番号3で表されるアミノ酸配列において、C末端から1〜12のアミノ酸残基領域
本態様に係るタンパク質についての詳細は、本発明の第一の発明の説明における「タンパク質」欄の説明を援用する。
したがって、本態様に係るタンパク質は、ヒト血清由来IgGポリクローナル抗体に結合する活性を有している。さらに、そのサブタイプである、ヒト血清由来IgG1ポリクローナル抗体、ヒト血清由来IgG2ポリクローナル抗体、ヒト血清由来IgG3ポリクローナル抗体、及びヒト血清由来IgG4ポリクローナル抗体からなる群から選択される一以上の抗体に結合する活性を有している。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を逸脱しない限り、下記の実施例に限定されるものではない。
[製造例1]
特許文献2、3を参考にして、N末端から順に並ぶ、配列番号1で表されるアミノ酸配列、配列番号2で表されるアミノ酸配列、及び配列番号3で表されるアミノ酸配列を含むタンパク質(特許文献2、3に記載された単鎖抗体R3-26)をコードしたDNA(配列番号8)から該タンパク質を発現するためのベクターを構築した。
この、N末端から順に並ぶ、配列番号1で表されるアミノ酸配列、配列番号2で表されるアミノ酸配列、及び配列番号3で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質からなるアミノ酸配列を配列番号4とする。尚、当該配列番号4で表されるアミノ酸配列には、後述する配列番号12で表されるアミノ酸配列を含めていない。
尚、構築した単鎖抗体発現ベクターは、N末端にペリプラズム移行シグナル(pelB Leader signal) 配列、C末端にAAALEHHHHHH(配列番号12)が融合された形で発現される。発現後、タンパク質はペリプラズムに移行し、pelB Leader signal配列はシグナルペプチダーゼによって切断される。
構築した発現ベクターで大腸菌Rosetta (DE3)を形質転換し、該形質転換後の大腸菌をLBアガープレート(50mg/Lアンピシリン)上で培養した。得られたシングルコロニーをLB培地10mL(50mg/Lアンピシリン)中で一晩培養した。得られた培養液を50mL Overnight Express TB培地(メルクミリポア)中に植菌し、37℃、200rpmで24時間培養した。
得られた培養液を遠心分離(10000rpm、4℃、15分)し、培養上清を得た。この培養上清を孔径0.45μmの親水性デュラポアメンブレン(メルクミリポア)を通すことでろ過し、そのろ液をHisTrap FF crudeカラム(GE Healthcare)にアプライし、タンパク質をカラムに捕捉させた。捕捉させたタンパク質は0.4Mイミダゾールを用いて溶出させた。また、溶出後のタンパク質濃度をDC Protein assay (Biorad)によって定量した。さらに、SDS-PAGEにより溶離液中のタンパク質の純度を確認した。回収したタンパク質溶液の溶媒をPBSTへと置換し、後述するように、BiacoreX-100で解離定数Kを測定した。
[製造例2]
製造例1で用いた配列番号4で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質を次のように改変した。改変タンパク質を「R3-26 repCK+K」と称し、そのアミノ酸配列を配列番号5とする。尚、当該配列番号5で表されるアミノ酸配列には、後述する配列番号13で表されるアミノ酸配列を含めていない。
・配列番号1で表されるアミノ酸配列においては、IMGTナンバリングで指定される14位のリジン残基をスレオニン残基に、IMGTナンバリングで指定される48位のリジン残基をグルタミン酸残基に、IMGTナンバリングで指定される72位と80位と90位のリジン残基をアルギニン残基に置換した。
・配列番号2で表されるアミノ酸配列においては、アミノ酸残基の置換をしなかった。
・配列番号3で表されるアミノ酸配列においては、IMGTナンバリングで指定される22位のリジン残基をアスパラギン残基に、IMGTナンバリングで指定される51位のリジン残基をアルギニン残基に、IMGTナンバリングで指定される77位のリジン残基をセリン残基に、IMGTナンバリングで指定される96位のシステイン残基をセリン残基に置換した。
尚、配列番号3で表されるアミノ酸配列のC末端には、N末端側からC末端側の順に、AAAGGGGSKIEHHHHHH(配列番号13)を存在させた。
また、R3-26 repCK+Kのアミノ酸配列をコードするDNAの塩基配列を配列番号9とする。
[製造例3]
製造例1で用いた配列番号4で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質を次のように改変した。改変タンパク質を「R3-26 repCK+ori6K」と称し、そのアミノ酸配列を配列番号6とする。尚、当該配列番号6で表されるアミノ酸配列には、後述する配列番号14で表されるアミノ酸配列を含めていない。
・配列番号1で表されるアミノ酸配列においては、IMGTナンバリングで指定される14位と48位のリジン残基を保存し、IMGTナンバリングで指定される72位と80位と90位のリジン残基をアルギニン残基に置換し、C末端のセリン残基をリジン残基に置換した。
・配列番号2で表されるアミノ酸配列においては、アミノ酸残基の置換をしなかった。
・配列番号3で表されるアミノ酸配列、IMGTナンバリングで指定される14位のアラニン残基をリジン残基に、IMGTナンバリングで指定される22位のリジン残基をアスパラギン残基に、IMGTナンバリングで指定される45位のアルギニン残基をリジン残基に、IMGTナンバリングで指定される51位のリジン残基をアルギニン残基に、IMGTナンバリングで指定される77位のリジン残基をセリン残基に、IMGTナンバリングで指定される96位のシステイン残基をセリン残基に、C末端から3残基目のチロシン残基をリジン残基に置換した。
尚、配列番号3で表されるアミノ酸配列のC末端には、N末端側からC末端側の順に、AAALEHHHHHH(配列番号14)を存在させた。
また、R3-26 repCK+ori6Kのアミノ酸配列をコードするDNAの塩基配列を配列番号10とする。
[製造例4]
製造例1で用いた配列番号4で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質を次のように改変した。改変タンパク質を「R3-26 repCK+K5」と称し、そのアミノ酸配列を配列番号7とする。尚、当該配列番号7で表されるアミノ酸配列には、後述する配列番号15で表されるアミノ酸配列を含めていない。
・配列番号1で表されるアミノ酸配列においては、IMGTナンバリングで指定される14位のリジン残基をスレオニン残基に、IMGTナンバリングで指定される48位のリジン残基をグルタミン酸残基に、IMGTナンバリングで指定される72位と80位と90位のリジン残基をアルギニン残基に置換した。
・配列番号2で表されるアミノ酸配列においては、アミノ酸残基の置換をしなかった。
・配列番号3で表されるアミノ酸配列においては、IMGTナンバリングで指定される22位のリジン残基をアスパラギン残基に、IMGTナンバリングで指定される51位のリジン残基をアルギニン残基に、IMGTナンバリングで指定される77位のリジン残基をセリン残基に、IMGTナンバリングで指定される96位のシステイン残基をセリン残基に置換した。
尚、配列番号3で表されるアミノ酸配列のC末端には、N末端側からC末端側の順に、AAAGGGGSKKKKKIEHHHHHH(配列番号15)を存在させた。
また、R3-26 repCK+K5のアミノ酸配列をコードするDNAの塩基配列を配列番号11とする。
[製造例5]
製造例1で用いた配列番号4で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質を次のように改変した。改変タンパク質を「R3-26 repCK+ori6K+VH4KVL4K」と称し、そのアミノ酸配列を配列番号37とする。尚、当該配列番号37で表されるアミノ酸配列には、後述する配列番号14で表されるアミノ酸配列を含めていない。
・配列番号1で表されるアミノ酸配列においては、IMGTナンバリングで指定される14位と48位のリジン残基を保存し、IMGTナンバリングで指定される72位と80位と90位のリジン残基をアルギニン残基に置換し、C末端のセリン残基をリジン残基に置換し、さらに4つの連続したリジン残基をC末端に付加した。
・配列番号2で表されるアミノ酸配列においては、アミノ酸残基の置換をしなかった。
・配列番号3で表されるアミノ酸配列、IMGTナンバリングで指定される14位のアラニン残基をリジン残基に、IMGTナンバリングで指定される22位のリジン残基をアスパラギン残基に、IMGTナンバリングで指定される45位のアルギニン残基をリジン残基に、IMGTナンバリングで指定される51位のリジン残基をアルギニン残基に、IMGTナンバリングで指定される77位のリジン残基をセリン残基に、IMGTナンバリングで指定される96位のシステイン残基をセリン残基に、C末端から3残基目のチロシン残基をリジン残基に置換し、さらに4つの連続したリジン残基をC末端から2残基目と3残基目との間に挿入した。
尚、配列番号3で表されるアミノ酸配列のC末端には、N末端側からC末端側の順に、AAALEHHHHHH(配列番号14)を存在させた。
また、R3-26 repCK+ori6K+VH4KVL4Kのアミノ酸配列をコードするDNAの塩基配列を配列番号38とする。
前記製造例1〜3、5で得たタンパク質を用いた解離定数Kの測定は、以下の測定条件で行った。
Sensor Chip: human IgG1-coupled CM5
Running buffer: PBST
Binding time: 180 sec
Dissociation time: 600-800 sec
Elution: 10mM Glycine, pH1.5
Mode: Single cycle kinetics mode
表1に、製造例1〜3、5で得られたタンパク質の調製時の収量と解離定数Kの測定結果をまとめた。製造例1で得られたタンパク質と比較して、製造例2〜3で得られたタンパク質のいずれにも生産量の低下はみられず、また、製造例5においても1/10以下とはならず、解離定数Kは同じオーダー又はそれ以下であった。
以上の結果より、アミノ酸配列の改変は、その生産性と解離定数Kに示される結合能とに顕著な低下を招かないことが分かった。
Figure 2020004671
[参考例1−1]
(単鎖抗体の調製)
製造例1と同様の手順に従って進め、限外ろ過により回収したタンパク質溶液の溶媒を0.5M NaClを含む0.2M炭酸水素ナトリウムバッファー(pH8.3)に置換した。
(担体へのタンパク質の固定化)
HiTrap NHS-activated HPカラム1mL(GE Healthcare)に、精製したタンパク質を供給し、該タンパク質が含むリジン残基のアミノ基を介して固定化した。未反応のNHSエステルはトリスヒドロキシメチルアミノメタンを加えてブロックした。カラムへの前記タンパク質の固定化量は4.0mgとした。
(動的結合量の測定)
タンパク質を固定した上記カラムをクロマトグラフィーシステムAKTA Purifier UPC 10 (GH Healthcare)にセットし、PBSで平衡化した。そこへ1mg/mLに調製したヒト血清由来IgGポリクローナル抗体(WAKO)を1mL/minの流速で供給し続け、破過曲線を得た。得られた破過曲線の10%破過点の溶出容量から10%動的結合量(DBC)を算出した。
[参考例1−2]
カラムへのタンパク質の固定化量を34.4mgとしたこと以外は、参考例1−1と同様にした。
[比較例1]
タンパク質として、製造例2で製造したタンパク質「R3-26 repCK+K」を用いたこと以外は参考例1−1と同様にした。
[実施例1]
タンパク質として、製造例3で製造したタンパク質「R3-26 repCK+ori6K」を用い、その固定化量を33.6mgとしたこと以外は、参考例1−1と同様にした。
[結果]
表2に結果をまとめた。尚、表中の参考例の結果は、参考例1−1と参考例1−2の結果の平均値である。
実施例1を用いた場合の方が、参考例を用いた場合よりも、固定化タンパク質の量あたりのDBC値が増大した。
一方、比較例1を用いた場合の方が、参考例を用いた場合よりも、固定化タンパク質の量あたりのDBC値が小さかった。
以上の結果は、分離剤が含むタンパク質が立体構造を構成したときの目的物質認識部位の近傍に存在するリジン残基をリジン残基以外のアミノ酸残基に置換し、目的物質認識部位から遠方に存在するリジン残基以外のアミノ酸残基をリジン残基に置換することで、担体上での目的物質の捕捉効率が向上することを示している。
また、目的物質の捕捉効率を向上するためには、タンパク質のC末端にリジン残基を1つ含むようなリンカーアミノ酸配列を存在させるくらいの改変では実現できず、リジン残基の適当な数と適当な位置を選択する必要があることが分かった。
Figure 2020004671
[参考例2]
カラムへのタンパク質の固定化量を幅広い量に変更したこと以外は、参考例1−1と同様にした。
[実施例2]
製造例3で製造したタンパク質「R3-26 repCK+ori6K」の、カラムへの固定化量を幅広い量に変更したこと以外は、参考例2と同様にした。
[結果]
図1に結果を示す。破線は、得られたプロットの近似直線である。
この結果から、幅広い固定化量範囲で、実施例2の方が参考例2よりも目的物質の捕捉効率が高いことが分かった。
[参考例3]
カラムへのタンパク質の固定化量を幅広い量に変更したこと、動的結合容量測定時にクロマトグラフィーシステムAKTA pure 25 M1 (GH Healthcare)を用いたこと、抗体サンプルとしてγ-Globulin from Human Blood(Sigma-Aldrich)を用いたこと以外は、参考例1−1と同様にした。
[実施例3]
タンパク質として、製造例5で製造したタンパク質「R3-26 repCK+ori6K+VH4KVL4K」を用いたこと以外は参考例3と同様にした。
[結果]
図2に結果を示す。破線は、得られたプロットの近似直線である。
この結果から、幅広い固定化量範囲で、実施例3の方が参考例3よりも目的物質の捕捉効率が高いことが分かった。
(アルカリ性pH条件での安定性の評価)
[参考例4]
カラムへのタンパク質の固定化量を8.5mgとしたこと以外は、参考例1−1と同様にした。このカラムに0.1N NaOH溶液を1mL/minで10分供給し、PBSで平衡化する操作(CIP処理)を繰り返した。所定回数だけCIP処理したカラムを用いて10%動的結合量を測定した。
[実施例4]
タンパク質として、製造例3で製造したタンパク質「R3-26 repCK+ori6K」を用い、その固定化量を9.8mgに変更したこと以外は、参考例4と同様にした。
[比較例3]
タンパク質として、製造例4で製造したタンパク質「R3-26 repCK+K5」を用い、その固定化量を9.9mgとしたこと以外は、参考例1−1と同様にしてカラムを製造し、それを用いて参考例4と同様にした。
[実施例5]
タンパク質として、製造例5で製造したタンパク質「R3-26 repCK+ori6K+VH4KVL4K」を用い、その固定化量を15.7mgに変更したこと、動的結合容量測定時にクロマトグラフィーシステムAKTA pure 25 M1 (GH Healthcare)を用いたこと、抗体サンプルとしてγ-Globulin from Human Blood(Sigma-Aldrich)を用いたこと以外は、参考例4と同様にした。
[結果]
図3に、CIP処理をしない場合の10%動的結合量を100%としたときの、各CIP処理後の相対10%動的結合量(%)を示した。
参考例4においてCIP処理を10回行った後の場合には、80%よりも低い相対10%動的結合量(%)であったが、実施例4および実施例5においてCIP処理を10回行った後の場合には、80%よりも大きい相対10%動的結合量(%)であった。これは、分離剤が含むタンパク質が立体構造を構成したときの目的物質認識部位の近傍に存在するリジン残基をリジン残基以外のアミノ酸残基に置換し、目的物質認識部位から遠方に存在するリジン残基以外のアミノ酸残基をリジン残基に置換することで、アルカリ性pH条件でCIP処理され続けても動的結合量(DBC)が顕著に小さくならず、アルカリ耐性が向上したことを示している。
一方で、比較例3においてCIP処理を10回行った後の場合の相対10%動的結合量(%)は、参考例4においてCIP処理を10回行った後の場合の相対10%動的結合量(%)よりも顕著に小さく、アルカリ耐性が低下したことを示している。
この結果から、アルカリ耐性を向上させるには、分離剤が含むタンパク質が立体構造を構成したときの目的物質認識部位の近傍からリジン残基を除くのみではなく、目的物質認識部位から遠方の適当な位置に適当な数のリジン残基を配置する必要があることを示している。

Claims (3)

  1. 担体とタンパク質とを含む分離剤であって、
    該タンパク質は、
    N末端から順に並ぶ、配列番号1で表されるアミノ酸配列、配列番号2で表されるアミノ酸配列、及び配列番号3で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質、又は、
    N末端から順に並ぶ、配列番号3で表されるアミノ酸配列、配列番号16で表されるアミノ酸配列、及び配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質であって、
    下記(a)〜(j)で表される領域のうちの2以上の領域に存在する、1以上のリジン残基が保存され、及び/又は、1以上のリジン残基以外のアミノ酸残基がリジン残基に置換されており、
    下記(e)、(f)及び(j)で表される領域では、それぞれにおいて、1のリジン残基又は連続していてもよい2以上12以下のリジン残基を含む1以上12以下のアミノ酸残基が挿入又は付加されていてもよく、
    該保存されたリジン残基と、該置換後のリジン残基と、該挿入又は付加されたリジン残基とを除いたすべてのリジン残基は、システイン残基以外のアミノ酸残基に置換されており、
    該配列番号3で表されるアミノ酸配列における、IMGTナンバリングで指定される96位のシステイン残基がシステイン残基以外のアミノ酸残基に置換されているタンパク質であり、
    該担体の表面と該タンパク質における該リジン残基とが化学結合によって結合している、分離剤。
    (a)配列番号1で表されるアミノ酸配列における、IMGTナンバリングで指定される14〜18位の領域
    (b)配列番号1で表されるアミノ酸配列における、IMGTナンバリングで指定される45〜50位の領域
    (c)配列番号1で表されるアミノ酸配列における、IMGTナンバリングで指定される72〜75位の領域
    (d)配列番号1で表されるアミノ酸配列における、IMGTナンバリングで指定される92〜96位の領域
    (e)配列番号1で表されるアミノ酸配列における、C末端から1〜12のアミノ酸残基領域
    (f)配列番号2又は16で表されるアミノ酸配列における、N末端から1〜12のアミノ酸残基領域
    (g)配列番号3で表されるアミノ酸配列において、IMGTナンバリングで指定される14〜18位の領域
    (h)配列番号3で表されるアミノ酸配列において、IMGTナンバリングで指定される45〜50位の領域
    (i)配列番号3で表されるアミノ酸配列において、IMGTナンバリングで指定される82〜86位の領域
    (j)配列番号3で表されるアミノ酸配列において、C末端から1〜12のアミノ酸残基領域
  2. 請求項1に記載の分離剤を用いて、二種以上の水溶性物質の混合液から前記タンパク質が結合する水溶性物質を分離する方法。
  3. N末端から順に並ぶ、配列番号1で表されるアミノ酸配列、配列番号2で表されるアミノ酸配列、及び配列番号3で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質、又は、
    N末端から順に並ぶ、配列番号3で表されるアミノ酸配列、配列番号16で表されるアミノ酸配列、及び配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質であって、
    下記(a)〜(j)で表される領域のうちの2以上の領域に存在する、1以上のリジン残基が保存され、及び/又は、1以上のリジン残基以外のアミノ酸残基がリジン残基に置換されており、
    下記(e)、(f)及び(j)で表される領域では、それぞれにおいて、1のリジン残基又は連続していてもよい2以上12以下のリジン残基を含む1以上12以下のアミノ酸残基が挿入又は付加されていてもよく、
    該保存されたリジン残基と、該置換後のリジン残基と、該挿入又は付加されたリジン残基とを除いたすべてのリジン残基は、システイン残基以外のアミノ酸残基に置換されており、
    該配列番号3で表されるアミノ酸配列における、IMGTナンバリングで指定される96位のシステイン残基がシステイン残基以外のアミノ酸残基に置換されているタンパク質。
    (a)配列番号1で表されるアミノ酸配列における、IMGTナンバリングで指定される14〜18位の領域
    (b)配列番号1で表されるアミノ酸配列における、IMGTナンバリングで指定される45〜50位の領域
    (c)配列番号1で表されるアミノ酸配列における、IMGTナンバリングで指定される72〜75位の領域
    (d)配列番号1で表されるアミノ酸配列における、IMGTナンバリングで指定される92〜96位の領域
    (e)配列番号1で表されるアミノ酸配列における、C末端から1〜12のアミノ酸残基領域
    (f)配列番号2又は16で表されるアミノ酸配列における、N末端から1〜12のアミノ酸残基領域
    (g)配列番号3で表されるアミノ酸配列において、IMGTナンバリングで指定される14〜18位の領域
    (h)配列番号3で表されるアミノ酸配列において、IMGTナンバリングで指定される45〜50位の領域
    (i)配列番号3で表されるアミノ酸配列において、IMGTナンバリングで指定される82〜86位の領域
    (j)配列番号3で表されるアミノ酸配列において、C末端から1〜12のアミノ酸残基領域
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