JPWO2019228510A5 - - Google Patents

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本願は、2018年5月31日出願の米国仮特許出願第62/678,300号の優先権を主張するものであり、本参照をもって当該仮出願の全内容を本明細書の一部を構成するものとする。
本開示は、アルギナーゼアルブミン結合ドメイン(ABD)融合タンパク質、及びその調製方法と使用方法に関する。また、肥満、代謝障害、及び/又は関連する合併症及び/又は併存症を治療するためにアルギニン枯渇を行う方法も提供される。
アルギナーゼは、アルギニンからオルニチン及び尿素への異化を触媒する加水分解酵素であり、殆どの生物に存在する。ヒトにおいては、アルギナーゼの2種のアイソフォーム、即ち、アルギナーゼI型とII型が存在し、これらは組織分布と分子特性が異なる。
アルギナーゼIは主に肝臓の細胞質で見られ、三量体として存在する35kDのタンパク質である。約38.5kDのタンパク質であるアルギナーゼIIは通常、細胞のミトコンドリアに存在し、細胞内のアルギニン/オルニチン濃度の調節に関与していると考えられる。
腫瘍のうち幾つかのタイプでは、アルギニン合成に必要なアルギニノコハク酸シンテターゼ(ASS)及び/又はオルニチントランスカルバモイラーゼ(OTC)が欠乏しているか又はその産生レベルが低いため、このような腫瘍はアルギニン栄養要求性である。アルギニンを欠乏させることによって、このような腫瘍細胞の著しい脆弱性を利用して腫瘍細胞の急速な死をもたらす。従って、酵素媒介のアルギニン枯渇は、腫瘍細胞を選択的に破壊するための潜在的な戦略として検討されてきた。
癌治療として、酵素媒介によるアルギニン枯渇を発生させる上での主な障害は、アルギナーゼの分子量が低い(<50kDa)ためにその循環半減期が短い(数分~数時間)ことであり、そのため腎クリアランスによって迅速に排出される。体循環において有効な治療濃度を維持するために、頻繁な投薬スケジュールが必要となる場合があり、それは患者のコンプライアンスの問題を引き起こす可能性がある。
この問題を考慮し、治療用タンパク質の薬物動態特性を改善するために様々な戦略が展開されてきた。種々の治療用タンパク質にポリエチレングリコール(PEG)を結合させること(即ち、PEG化)によって、タンパク質の流体力学的半径が増加し、腎クリアランスによる排出を遅らせることが示されている。Fc新生児受容体(FcRn)のリサイクリング機序に基づく融合タンパク質戦略も検討されており、免疫グロブリン、アルブミン又はアルブミン結合ペプチドの断片結晶化可能(Fc)領域のタンパク質への融合によってタンパク質の循環半減期が増加することが示されている。しかし、薬物動態が改善されたアルギニン枯渇タンパク質の開発ニーズが依然として存在する。
肥満、代謝障害、及び関連する合併症と併存症は、21世紀で最も深刻な世界規模の公衆衛生問題の一部と見なされており、大きな社会経済的負担となっている。更に、肥満の代謝結果は他の障害、例えば、2型糖尿病、耐糖能異常、インスリン抵抗性、高コレステロール血症、脂質異常症、高血圧、心血管疾患及び癌の原因となる。従って、肥満、代謝障害、及び関連する合併症と併存症の予防及び/又は治療のための安全で有効な方法が大いに必要とされている。肥満はエネルギーの摂取と消費の不均衡の結果である。生活習慣介入だけでは、個人が十分に減量したり、減量を持続させたりして健康を改善する上で有効とはなり得ない。オルリスタット(ゼニカル)、ロルカセリン(ベルビック)、フェンテルミンとトピラマートの合剤(クシミア)等の抗肥満薬を服用して、食欲を減らしたり脂肪吸収を減らしたりして減量することができる。しかし、このような薬物には、脂溶性ビタミンの吸収低下、頭痛、疲労、めまい、下痢及び便失禁等、様々な副作用がある。肥満外科手術、例えば、胃バンディング術を用いると、重度の肥満を治療して長期的な減量を果たすことができ、また、不要な局所性脂肪沈着物を除去するための脂肪吸引は、美容上の理由から人気を得ている。しかし、この種の侵襲的手法もかなりのリスクを伴う。従って、肥満、代謝障害、及び関連する合併症と併存症を治療する改良方法を開発する必要がある。
上述の必要性の1以上に対処するために提供されるのは、インビボ半減期とアルギニン異化活性が改善されたアルギナーゼABD融合タンパク質である。本明細書に記載の融合タンパク質は、アルギニン枯渇が治療効果を有する疾患又は病態の治療、例えば、癌、ウイルス感染症、多発性硬化症、関節リウマチ、自己免疫疾患、先天性高アルギニン血症、移植片対宿主病(GvHD)、炎症、肥満及び代謝障害、及び関連する合併症と併存症の治療に有用である。融合タンパク質は粗タンパク質から迅速に生成及び精製することができる。融合タンパク質は単独で使用することもでき、少なくとも1種の他の剤と併用して疾患の治療又は予防に相乗効果を与えることもできる。
また、対象のアルギニン濃度を枯渇させること(例えば、対象にアルギニン枯渇剤を投与すること)によって、肥満、代謝障害、及び/又は関連する合併症及び/又は併存症を治療する方法も提供される。
第1の様相において提供されるのは、アルブミン結合ドメイン(ABD)ポリペプチドおよびアルギナーゼポリペプチドを含む融合タンパク質である。
第1の様相の第1の実施形態において提供されるのは、ABDポリペプチドが配列番号66、配列番号67又は配列番号68と少なくとも93%の配列相同性を有するポリペプチド配列を含む、第1の様相の融合タンパク質である。
第1の様相の第2の実施形態において提供されるのは、アルギナーゼポリペプチドが配列番号69、配列番号70、配列番号71又は配列番号72と少なくとも95%の配列相同性を有するポリペプチド配列を含む、第1の様相の融合タンパク質である。
第1の様相の第3の実施形態において提供されるのは、ABDポリペプチドが配列番号66、配列番号67又は配列番号68と少なくとも93%の配列相同性を有するポリペプチド配列を含み、アルギナーゼポリペプチドが配列番号69、配列番号70、配列番号71又は配列番号72と少なくとも95%の相同性を有するポリペプチド配列を含む、第1の様相の融合タンパク質である。
第1の様相の第4の実施形態において提供されるのは、ABDポリペプチドが配列番号66と少なくとも93%の配列相同性を有するポリペプチド配列を含み、アルギナーゼポリペプチドが配列番号69と少なくとも95%の配列相同性を有するポリペプチド配列を含む、第1の様相の第3の実施形態の融合タンパク質である。
第1の様相の第5の実施形態において提供されるのは、ABDポリペプチドのC末端とアルギナーゼポリペプチドのN末端を接続するペプチドリンカーを更に含み、ペプチドリンカーは1~20個のアミノ酸を有する直鎖状ポリペプチドである、第1の様相の第4の実施形態の融合タンパク質である。
第1の様相の第6の実施形態において提供されるのは、ペプチドリンカーが配列番号73又は配列番号74と少なくとも90%の配列相同性を有するポリペプチド配列を含む、第1の様相の第5の実施形態の融合タンパク質である。
第1の様相の第7の実施形態において提供されるのは、ABDポリペプチドが配列番号67と少なくとも93%の配列相同性を有するポリペプチド配列を含み、アルギナーゼポリペプチドが配列番号72と少なくとも95%の相同性を有するポリペプチド配列を含む、第1の様相の第6の実施形態の融合タンパク質である。
第1の様相の第8の実施形態において提供されるのは、ペプチドリンカーが4~8個のヒスチジンアミノ酸を有するポリヒスチジンリンカーである、第1の様相の第7の実施形態の融合タンパク質である。
第1の様相の第9の実施形態において提供されるのは、配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号52、配列番号53、配列番号54、配列番号55、配列番号56、配列番号75又は配列番号76と少なくとも98%の配列相同性を有するポリペプチド配列を含む、第1の様相の融合タンパク質である。
第1の様相の第10の実施形態において提供されるのは、配列番号49、配列番号50、配列番号75及び配列番号76と少なくとも98%の配列相同性を有するポリペプチド配列を含む、第1の様相の融合タンパク質である。
第1の様相の第11の実施形態において提供されるのは、配列番号49、配列番号50、配列番号75及び配列番号76から成る群から選択されるポリペプチドを含む、第1の様相の融合タンパク質である。
第2の様相において提供されるのは、第1の様相の融合タンパク質と、薬学的に許容し得る担体、賦形剤又はそれらの組み合わせとを含む医薬組成物である。
第3の様相において提供されるのは、癌の治療を必要とする対象において癌を治療する方法であって、第1の様相の融合タンパク質の治療有効量を対象に投与する工程を含む方法である。
第4の様相において提供されるのは、肥満、代謝障害及び関連する合併症から成る群から選択される少なくとも1種の病態の治療を必要とする対象においてその病態を治療する方法であって、アルギニン枯渇剤の治療有効量を対象に投与する工程を含む方法である。
第4の様相の第1の実施形態において提供されるのは、代謝障害が肥満、耐糖能異常、高血糖症及び真性糖尿病から成る群から選択され、関連する合併症が糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症、糖尿病性脈管障害、糖尿病性神経障害、高コレステロール血症、脂質異常症、高トリグリセリド血症、高レプチン血症、脂肪症、脂肪性肝炎、線維症、肝硬変、慢性低悪性度炎症、高血圧、循環器疾患及び褐色脂肪の白色化から成る群から選択される1種以上の病態である方法である。
第4の様相の第2の実施形態において提供されるのは、代謝障害がインスリン抵抗性である方法である。
第4の様相の第3の実施形態において提供されるのは、肥満の治療が脂肪量の増加を防ぐことと脂肪量を減少させることの内の少なくとも一を含む方法である。
第4の様相の第4の実施形態において提供されるのは、代謝障害が脂肪肝、腎脂肪症、膵臓脂肪症及び心臓脂肪症から成る群から選択される方法である。
第4の様相の第5の実施形態において提供されるのは、対象の血清中のアルギニン濃度を50μM未満に維持する方法である。
第4の様相の第6の実施形態において提供されるのは、アルギニン枯渇剤がアルギニン異化酵素である方法である。
第4の様相の第7の実施形態において提供されるのは、アルギニン異化酵素がアルギナーゼタンパク質、アルギニンデイミナーゼタンパク質又はアルギニンデカルボキシラーゼタンパク質である、第4の様相の第6の実施形態の方法である。
第4の様相の第8の実施形態において提供されるのは、アルギナーゼタンパク質、アルギニンデイミナーゼタンパク質又はアルギニンデカルボキシラーゼタンパク質が1個以上のポリエチレングリコール(PEG)基を更に含む、第4の様相の第7の実施形態の方法である。
第4の様相の第9の実施形態において提供されるのは、アルギナーゼタンパク質が配列番号101、配列番号102、配列番号103又は配列番号104を有するポリペプチドを含む、第4の様相の第8の実施形態の方法である。
第4の様相の第10の実施形態において提供されるのは、アルギナーゼタンパク質、アルギニンデイミナーゼタンパク質又はアルギニンデカルボキシラーゼタンパク質が、アルブミン結合ドメイン又はヒト血清アルブミン、又はヒトIgGFcドメインを更に含む、第4の様相の第7の実施形態の方法である。
第4の様相の第11の実施形態において提供されるのは、アルギニン異化酵素がABDポリペプチドとアルギナーゼポリペプチド、ABDポリペプチドとアルギニンデイミナーゼポリペプチド、又はABDポリペプチドとアルギニンデカルボキシラーゼポリペプチドを含む融合タンパク質である、第4の様相の第10の実施形態の方法である。
第4の様相の第12の実施形態において提供されるのは、アルギニン異化酵素が第1の様相の融合タンパク質である、第4の様相の第11の実施形態の方法である。
第4の様相の第13の実施形態において提供されるのは、アルギニン異化酵素が、配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号52、配列番号53、配列番号54、配列番号55、配列番号56、配列番号75又は配列番号76と少なくとも98%の配列相同性を有するポリペプチドを含む、第4の様相の第12の実施形態の方法である。
第5の様相において提供されるのは、ウイルス感染症、多発性硬化症、関節リウマチ、自己免疫疾患、先天性高アルギニン血症、移植片対宿主病(GvHD)及び炎症から成る群から選択される少なくとも1種の病態の治療を必要とする対象においてその病態を治療する方法であって、第1の様相の融合タンパク質の治療有効量を対象に投与する工程を含む方法である。
本開示の上述及び他の目的や特徴は、添付の図面と併せて本発明の以下の説明から明らかになるであろう。
ドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)による、アルブミン結合ドメイン(ABD)組換えヒトアルギナーゼ(rhArg)融合タンパク質N-ABD094-rhArg(配列番号50)の精製を示す。レーン1:SDS-PAGE低域マーカー(Bio-rad社)、レーン2:N-ABD094-rhArg(配列番号50)20倍希釈、レーン3:N-ABD094-rhArg(配列番号50)10倍希釈。 プライマーの結合位置を示した、例示的なN-ABD094-rhArg遺伝子(配列番号38)を示す。 理論的pI/Mwが6.07/42555.38のN-ABD094-rhArg(配列番号50)融合タンパク質のタンパク質配列を示す。 セリンからシステインへの単一部位変異とC末端ヒスチジンタグを有する、遺伝子操作したBacillus caldoveloxアルギナーゼBCA(S161C)-His(配列番号89)のタンパク質配列を示す。161位のシステイン残基と6×Hisタグをハイライトした。 CLUSTALWによるBCA(S161C)-His(配列番号89)、BCA-6×His-ABD融合タンパク質BHA(配列番号75)及びBCA-ABD-6×His融合タンパク質BAH(配列番号76)のタンパク質配列のアラインメントを示す。アラインメントスコア: BCA対BHA:99.6721、BCA対BAH:98.0328、BHA対BAH:97.5138。 ニッケル充填した5mLのHiTrapキレーティングHPカラムクロマトグラフィー(一工程)による、500mLの振盪フラスコ培養で増殖させた大腸菌からのBHA(配列番号75)精製の溶出プロファイルを示す。mAU:ミリ吸収単位、100%B=0.5Mイミダゾール。 BHA(配列番号75)用のニッケルアフィニティークロマトグラフィーからのカラム画分のSDS-PAGE分析を示す。M:SDS-PAGE分子量マーカー、低域(Bio-Rad社)、FT:フロースルー、F2~F10:カラムからの溶出画分。 ニッケル充填した5mLのHiTrapキレーティングHPカラムクロマトグラフィー(一工程)による、500mLの振盪フラスコ培養で増殖させた大腸菌菌体からのBAH(配列番号76)精製の溶出プロファイルを示す。mAU:ミリ吸収単位、100%B=0.5Mイミダゾール。 BAH(配列番号76)用のニッケルアフィニティークロマトグラフィーからのカラム画分のSDS-PAGE分析を示す。M:SDS-PAGE分子量マーカー、低域(Bio-Rad社)、FT:フロースルー、F2~F14:カラムからの溶出画分。 総容積が196mLのXK50ニッケルアフィニティーカラムを使用した、遺伝子操作したBCA(S161C)-His(配列番号89)の大規模精製を示すクロマトグラムを示す。小規模精製と同様に、4セグメント溶出勾配を採用し、溶出プロファイルを280nmにおける吸光度でモニターした。 遺伝子操作したBCA(S161C)-His(配列番号89)の大規模精製からの選択画分のSDS-PAGE分析を示す。レーン1は低分子量マーカーである。レーン2は細胞可溶化物からの総タンパク質である。レーン3は熱処理後に採取した可溶性タンパク質を表す。レーン4はXK50ニッケルアフィニティーカラムからのタンパク質フロースルーを示す。レーン5は非特異的結合タンパク質(A6~C3からのプールされた画分)である。レーン6~10はそれぞれ画分E2、E3、F7、G3及びA’5を表す。 非変性PAGEにおけるN-ABD-rhArg融合タンパク質(配列番号49)とHSAとの結合を示す。30ピコモルのHSAを、レーン5~9にそれぞれ示すように7.5、15、30、60及び120ピコモルのN-ABD-rhArg(配列番号49)と混合した。非変性PAGEでの30ピコモルのHSAおよびN-ABD-rhArg(配列番号49)の移動度を、それぞれレーン2とレーン3に示す。レーン1は空又はブランクである。レーン10は120ピコモルのN-ABD-rhArg(配列番号49)を示す。 非変性PAGEにおけるBHA融合タンパク質(配列番号75)とHSAとの結合を示す。60ピコモルのHSAを、レーン1~5にそれぞれ示すように6、12、60、300及び600ピコモルのBHA融合タンパク質(配列番号75)と混合した。非変性PAGEでの60ピコモルのHSAおよびBHA融合タンパク質(配列番号75)の移動度をそれぞれレーン6とレーン7に示す。「BCA-ABD」と表示されたバンドはBHA(配列番号75)である。 マウスの血漿アルギニンに対するBCA(S161C)-His(配列番号89)とBHA融合タンパク質(配列番号75)の薬力学を示す。各BALB/cマウスに250UのBCA(S161C)-His(配列番号89)又はBHA融合タンパク質(配列番号75)を静脈内注射(i.v.)又は腹腔内注射(i.p.)によって投与した。血漿の採取は注射後の図示の時点で行った。時間0は注射前に採取した血漿試料を指す。各試料中のアルギニンの量はBiochrom30アミノ酸分析計によって求める。これらのプロットでは、検出限界(3μM)未満のアルギニン濃度を0μMと見なす。各点は3匹のマウスの平均±SDを表す。 N-ABD-rhArg(配列番号49)の単一用量((A)125U、(B)250U、及び(C)500U)を腹腔内注射した後にBiochrom30アミノ酸分析計で測定したBALB/cマウスの血漿中アルギニン濃度を示す。N-ABD-rhArg(配列番号49)を0日目に注射した。 PEG化されたHis-rhArg(配列番号101)の生成のSDS-PAGE分析を示す。レーン1及び8:SDS-PAGE低分子量マーカー(Bio-rad社)、レーン2及び3:His-rhArg(配列番号101)、レーン4及び5:60%溶出、レーン6及び7:30%溶出、レーン9及び10:PEG化His-rhArg(配列番号101)。PEGの分子量は5000である。使用したPEGは、メトキシポリエチレングリコール-スクシンイミジルプロピオネート(mPEG-SPA 5000)である。His-rhArg(配列番号101)のタンパク質表面リジン残基は、プロピオンアミジル(SPA)リンカーを介してPEG(5000amu)に共有結合している(米国特許第8,679,810号に記載、本参照をもってこの特許を本明細書の一部を構成するものとする)。 N-ABD094-rhArg(配列番号50)の調製の結果を示す。レーン1:SDS-PAGE分子量マーカー、レーン2:細胞可溶化物、レーン3:熱処理後、レーン4:フロースルー、レーン5:30%溶出、レーン6:60%溶出、レーン7:接線フロー濾過(TFF)後。レーン6又はレーン7の主要なタンパク質バンドは精製されたN-ABD094-rhArg(配列番号50)である。 固形飼料を給餌したC57BL/6J雄性マウスの血漿中アルギニン濃度を示す。この濃度測定は、Agilent6460液体クロマトグラフィー/エレクトロスプレーイオン化三連四重極型質量分析計(検出限界:0.3μMアルギニン)を使用し、単一用量500UのN-ABD094-rhArg(配列番号50)の生理食塩水溶液を腹腔内注射した後の様々な時点で行ったが、この結果から、血漿中アルギニン濃度が10日間に亘って1μM未満まで枯渇し得ることが分かった。各時点は5匹のマウスの平均±SEMを表す。 単一用量500UでN-ABD094-rhArg(配列番号50)をC57BL/6J雄性マウスに注射した後の様々な時点でのN-ABD094-rhArgの血漿中濃度を示す。この測定はELISAによって行いヒトアルギナーゼを検出した(n=5)。この薬物の循環半減期は約4日である。各時点は5匹のマウスの平均±SEMを表す。 固形飼料を給餌し、N-ABD094-rhArg(配列番号50)で処理した正常な痩せたC57BL/6J雄性マウス[固形飼料(rhArg)群]における有意な脂肪減少を示す。(A)ベヒクル(生理食塩水)処理対照[固形飼料(ベヒクル)群]と比較して、500UのN-ABD094-rhArg(配列番号50)によって10日間隔で4週間に亘って処理した後の内臓脂肪量と皮下脂肪量の有意な減少。P<0.05、独立t検定。データは±SEMで表し、各群n=5である。(B)N-ABD094-rhArg(配列番号50)で処理したマウスの内臓白色脂肪組織(WAT)のヘマトキシリン及びエオシン(H&E)染色パラフィン切片では、脂肪細胞サイズの顕著な減少が示された。 リアルタイムqRT-PCRを使用して測定した様々な組織における数種の重要な脂質生成関連遺伝子の発現レベルを示す。ベヒクル処理対照[固形飼料(ベヒクル)群]と比較して、500UのN-ABD094-rhArg(配列番号50)によって10日間隔で4週間に亘って処理[固形飼料(rhArg)群]した後の(A)内臓白色脂肪組織(WAT)と(B)肝臓における脂質生成関連遺伝子の有意なダウンレギュレーション。遺伝子発現レベルはベヒクル処理マウス[固形飼料(ベヒクル)群](1に設定)と比較して表す。P<0.05、独立t検定。データは平均±SEMで表し、各群n=5である。 N-ABD094-rhArg(配列番号50)による処理がインスリン感受性を有意に改善することを示す。(A)インスリン負荷試験によって、10日間隔で500UのN-ABD094-rhArg(配列番号50)を注射したマウス[固形飼料(rhArg)群]では、ベヒクル処理対照[固形飼料(ベヒクル)群]と比較して、処理後2週間ですぐにインスリンの血糖降下作用に対する感受性が有意に増加したことが分かった。P<0.05対固形飼料(rhArg)群、独立t検定。データは平均±SEMで表し、各群n=5である。(B)MTTアッセイによって、マウス初代肝細胞を5U/mLのN-ABD094-rhArg(配列番号50)で48時間処理しても、処理を行わなかった対照(con)と比較して細胞生存率に影響を及ぼさなかったことが分かった。(C)100nMのインスリンへ20分間曝露する前に5U/mLのN-ABD094-rhArg(配列番号50)を用いて24時間アルギニン枯渇させたマウス初代肝細胞におけるリン酸化Akt(pAkt)(インスリンシグナル伝達のマーカー)のタンパク質濃度のウエスタンブロット分析。N-ABD094-rhArg(配列番号50)で処理した肝細胞では、インスリンによる刺激時にAktのリン酸化レベルがより高くなったが、これはインスリンシグナル伝達の増強を示唆した。レーン1:con、レーン2:5U/mLのN-ABD094-rhArg(配列番号50)、レーン3:100nMインスリン、レーン4:5U/mLのN-ABD094-rhArg(配列番号50)+100nMインスリン。 60kcal%脂肪含有の高脂肪食(HFD)を給餌したベヒクル処理C57BL/6J雄性マウス(8週齢から12週間)[HFD(ベヒクル)群]では(A)体重と(B)サイズが顕著に増加した一方、HFD給餌雄性マウス(8週齢から12週間)に対して同時に行った300UのN-ABD094-rhArg(配列番号50)による処理[HFD(rhArg)群](週1回)によって、体重増加を効果的に防止することができたことを示す。その体重は、10kcal%脂肪含有の対応低脂肪食(LFD)を給餌したベヒクル処理の痩せた対照マウス[LFD(ベヒクル)群]と同等のままであった。データは平均±SEMで表し、各群n=5である。 HFD給餌雄性マウスに対して同時に行った300UのN-ABD094-rhArg(配列番号50)による処理[HFD(rhArg)群](週1回、12週間)によって、HFD誘発性の白色脂肪組織(WAT)の増大を効果的に防止することができたことを示す。(A)主な内臓(性腺周囲、腎周囲及び腸間膜)貯蔵と皮下(鼠径部)貯蔵の脂肪体の重量。(B)内臓WATのH&E染色切片から、同時に行ったN-ABD094-rhArgによる処理がHFD誘発性の白色脂肪細胞の肥大を防止したことが分かった。(C)WATにおける数種の重要な脂質生成関連遺伝子の発現レベルを痩せた対照[LFD(ベヒクル)群](1に設定)と比較して表す。これらの遺伝子は、N-ABD094-rhArgで処理したHFD給餌マウスで劇的にダウンレギュレートされた。P<0.05、一元ANOVAに続いてフィッシャーのLSDを行った。データは平均±SEMで表し、各群n=5である。 脂質生成の転写調節因子(PpargとSrebp1c)のHFD誘発性アップレギュレーションの抑制と、同時に起こる、300UのN-ABD094-rhArg(配列番号50)で処理したマウス[HFD(rhArg)群](週1回、12週間)の骨格筋における重要な脂質生成酵素(Acc1とScd1)のダウンレギュレーションを示す。P<0.05、一元ANOVAに続いてフィッシャーのLSDを行った。データは平均±SEMで表し、各群n=5である。 同時に行った300UのN-ABD094-rhArg(配列番号50)による処理[HFD(rhArg)群](週1回)によって、C57BL/6J雌性マウスにおけるHFD誘発性肥満を効果的に防止することができたことを示す。(A)8週齢から12週間に亘ってHFDを給餌すると共にN-ABD094-rhArg又はベヒクルで処理したマウスの体重。LFDを給餌したベヒクル処理雌性マウスを痩せた対照[LFD(ベヒクル)群]とした。(B)主な内臓(性腺周囲、腎周囲及び腸間膜)貯蔵と皮下(鼠径部)貯蔵の脂肪体の重量。P<0.05、一元ANOVAに続いてフィッシャーのLSDを行った。データは平均±SEMで表し、各群n=5である。 同時に行った300UのN-ABD094-rhArg(配列番号50)による処理[HFD(rhArg)群](週1回)によって、C57BL/6J雌性マウスにおけるHFD誘発性のインスリン抵抗性と耐糖能障害を効果的に防止することができたことを示す。(A)HFDの給餌7週目に行ったインスリン負荷試験(ITT)。(B)HFDの給餌11週間目に行ったブドウ糖負荷試験(GTT)。ITTとGTTの結果は曲線下面積(AUC)で表す。P<0.05、一元ANOVAに続いてフィッシャーのLSDを行った。データは平均±SEMで表し、各群n=5である。 N-ABD094-rhArg(配列番号50)(rhArg)、ウシアルギナーゼ又は天然アルギニンデイミナーゼ(ADI)を培地に添加することによるアルギニン枯渇、又はアルギニンを含まない培地を使用することによるアルギニン枯渇がマウス3T3-L1前脂肪細胞から脂肪細胞への分化を阻害したことを示す。アルギナーゼ代謝産物であるL-オルニチン又は尿素、又はADI代謝産物であるL-シトルリンを培地に添加しても、脂肪生成及び脂質生成に対する阻害効果はなかった。(培地は0.4mMのL-アルギニンを含んでおり、アルギナーゼによって0.4mMのL-オルニチンと0.4mMの尿素に、ADIによって0.4mMのL-シトルリンに転化される)。アルギニン枯渇剤又はアルギナーゼ/ADIの代謝産物を添加せずに培地で増殖させた細胞を対照とした。培地に添加した特定の分化誘導因子へ曝露させてから6日後にオイルレッドOで細胞中の脂質を染色した。 N-ABD094-rhArg(配列番号50)が3T3-L1前脂肪細胞における脂肪生成及び脂質生成遺伝子を抑制することができたことを示す。マウス3T3-L1前脂肪細胞を特定の因子を添加した培地で6日間培養し、脂肪細胞への分化を誘導した(分化させた)。このような因子を含まない培地で増殖した細胞は未分化のままであった。培地に2U/mLのN-ABD094-rhArg(配列番号50)(rhArg)を添加した。N-ABD094-rhArgを添加せずに培地で増殖させた細胞を対照とした。数種の重要な(A)脂肪生成の転写調節因子と(B)脂質生成経路における酵素のmRNA発現レベルをリアルタイムqRT-PCRによって求め、未分化(対照)群(1に設定)と比較して表した。P<0.05、一元ANOVAに続いてフィッシャーのLSDを行った。データは平均±SEMで表し、各群n=3である。 各種濃度のアルギニンに対する3T3-L1前脂肪細胞の応答を示す。アルギニンを含まない培地内で、各種濃度のL-アルギニンを添加するか又は添加せずにマウス3T3-L1前脂肪細胞を6日間培養した。分化誘導因子を補充した通常のアルギニン含有培地で培養した細胞を分化の陽性(+ve)対照とし、分化誘導因子を補充しない通常のアルギニン含有培地で培養した細胞を分化の陰性(-ve)対照とした。分化誘導因子を補充した通常のアルギニン含有培地で細胞の1群を培養し、5U/mLのN-ABD094-rhArg(配列番号50)(rhArg)で処理して分化を阻害した。(A)細胞の脂質をオイルレッドOで染色し、光学濃度を測定して染色強度を定量化した(+ve対照群に対する百分率で表す)。(B)数種の重要な脂質生成関連遺伝子のmRNAレベルは、アルギニンを含まない培地で培養した細胞(1に設定)と比較して表す。データは平均±SEMで表し、各群n=3である。 HFD給餌雄性マウスに対して同時に行った300UのN-ABD094-rhArg(配列番号50)による処理[HFD(rhArg)群](週1回)によって、HFD誘発性インスリン抵抗性を効果的に防止することができたことを示す。インスリン負荷試験(ITT)はHFDの給餌(A)6週目と(B)11週目に行ったが、結果を曲線下面積(AUC)で表す。P<0.05、一元ANOVAに続いてフィッシャーのLSDを行った。データは平均±SEMで表し、各群n=5である。 HFD給餌雄性マウスに対して同時に行った300UのN-ABD094-rhArg(配列番号50)による処理[HFD(rhArg)群](週1回)によって、HFD誘発性耐糖能障害を効果的に防止することができたことを示す。ブドウ糖負荷試験(GTT)はHFDの給餌(A)5週目と(B)10週目に行ったが、結果を曲線下面積(AUC)で表す。P<0.05、一元ANOVAに続いてフィッシャーのLSDを行った。データは平均±SEMで表し、各群n=5である。 HFD給餌雄性マウスに対して同時に行った300UのN-ABD094-rhArg(配列番号50)による処理[HFD(rhArg)群](週1回)によって、HFD誘発性の空腹時(A)血糖(血糖値測定器を使用して測定)及び(B)血漿中インスリン濃度(ELISAを使用して測定)の上昇を効果的に防止することができたことを示す。(C)HOMA-IRスコア(インスリン抵抗性の測定値として標準式によって計算)から、同時に行ったN-ABD094-rhArgによる処理がHFD誘発性インスリン抵抗性の発症を防止したことが分かった。P<0.05、一元ANOVAに続いてフィッシャーのLSDを行った。データは平均±SEMで表し、各群n=5である。 HFD給餌雄性マウスに対して同時に行った300UのN-ABD094-rhArg(配列番号50)による処理[HFD(rhArg)群](週1回)によって、HFD誘発性の空腹時血漿中(A)レプチン濃度、(B)総コレステロール濃度、(C)トリグリセリド濃度、及び(D)遊離脂肪酸濃度の上昇が防止/抑制されたことを示す。P<0.05、一元ANOVAに続いてフィッシャーのLSDを行った。データは平均±SEMで表し、各群n=5である。 HFD給餌雄性マウスに対して同時に行った300UのN-ABD094-rhArg(配列番号50)による処理[HFD(rhArg)群](週1回、12週間)によって、HFD誘発性の肝臓肥大が防止されたことを示す。(A)新鮮な肝臓全体の代表的な画像。(B)肝臓の重量。P<0.05、一元ANOVAに続いてフィッシャーのLSDを行った。データは平均±SEMで表し、各群n=5である。 HFD給餌雄性マウスに対して同時に行った300UのN-ABD094-rhArg(配列番号50)による処理[HFD(rhArg)群](週1回、12週間)によって、HFD誘発性の脂肪肝を効果的に防止することができたことを示す。(A)オイルレッドOを用いた肝臓切片の染色によって、HFD給餌のベヒクル処理マウス[HFD(ベヒクル)群]では脂質の広範な蓄積が示されたが、これはN-ABD094-rhArgで処理したマウスには存在しなかった。(B)N-ABD094-rhArg処理によって、HFD給餌マウスの肝臓におけるトリグリセリド濃度の上昇が防止された。(C)N-ABD094-rhArgは、肝臓における脂質生成関連遺伝子のHFD誘発性アップレギュレーションを抑制した。P<0.05、一元ANOVAに続いてフィッシャーのLSDを行った。データは平均±SEMで表し、各群n=5である。 HFD給餌雄性マウスに対して同時に行った300UのN-ABD094-rhArg(配列番号50)による処理[HFD(rhArg)群](週1回、12週間)によって、HFD誘発性の血清中アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)濃度(通常、肝損傷のバイオマーカーとして測定)の上昇が防止されたことを示す。P<0.05、一元ANOVAに続いてフィッシャーのLSDを行った。データは平均±SEMで表し、各群n=5である。 HFD給餌雄性マウスに対して同時に行った300UのN-ABD094-rhArg(配列番号50)による処理[HFD(rhArg)群](週1回、12週間)によって、HFD誘発性の(A)腎臓、(B)膵臓、及び(C)心臓の重量の増加が防止されたことを示す。P<0.05、一元ANOVAに続いてフィッシャーのLSDを行った。データは平均±SEMで表し、各群n=5である。 HFD給餌雄性マウスに対して同時に行った300UのN-ABD094-rhArg(配列番号50)による処理[HFD(rhArg)群](週1回、12週間)によって、(A)内臓WATにおける炎症誘発性アディポカインのmRNAレベル(痩せた対照マウス[LFD(ベヒクル)群](1に設定)と比較して表す)のHFD誘発性アップレギュレーションを効果的に抑制することができ、(B)HFD誘導性の炎症性サイトカイン血清濃度の上昇を抑制することができたことを示す。P<0.05、一元ANOVAに続いてフィッシャーのLSDを行った。データは平均±SEMで表し、各群n=5である。 雄性マウスに対して同時に行った300UのN-ABD094-rhArg(配列番号50)による処理[HFD(rhArg)群](週1回、12週間)によって、褐色脂肪組織(BAT)のHFD誘発性白色化を効果的に防止することができたことを示す。(A)新鮮な肩甲骨間BAT全体の代表的な画像。(B)肩甲骨間BATの重量。(C)H&E染色パラフィン切片によって、大きな単一孔(脂質小球)を有する細胞(白色脂肪細胞の典型的な組織学的特徴である)がベヒクル処理のHFD給餌マウス[HFD(ベヒクル)群]のBATでは豊富にある一方、N-ABD094-rhArg処理のHFD給餌マウスのBATでは殆ど見られないことが分かった。P<0.05、一元ANOVAに続いてフィッシャーのLSDを行った。データは平均±SEMで表し、各群n=5である。 雄性マウスに対して同時に行った300UのN-ABD094-rhArg(配列番号50)による処理[HFD(rhArg)群](週1回、12週間)によって、BATにおける熱発生の主要な調節因子(Ucp1とPgc1a)のmRNAレベルが有意にアップレギュレートされ、BATにおける脂肪酸酸化遺伝子Acox1のHFD誘発性ダウンレギュレーションが抑制されたことを示す。P<0.05、一元ANOVAに続いてフィッシャーのLSDを行った。データは平均±SEMで表し、各群n=5である。 HFDの給餌(5週齢から12週間)によって誘発された既存の肥満を有するC57BL/6J雄性マウスにおいて、N-ABD094-rhArg(配列番号50)による処理後に体重が顕著に減少したことを示す。(A)600UのN-ABD094-rhArgで処理したマウス[HFD(rhArg)群](週1回、12週間)の体重。(B)12週間の処理後のマウスの代表的な画像。データは平均±SEMで表し、各群n=5である。 既存のHFD誘発性肥満を有する雄性マウスに週1回、12週間に亘って600UのN-ABD094-rhArg(配列番号50)を投与する[HFD(rhArg)群]ことによって白色脂肪組織を効果的に減少させることができたことを示す。(A)肥満マウスの主な内臓(性腺周囲、腎周囲及び腸間膜)貯蔵と皮下(鼠径部)貯蔵の脂肪体の重量は、N-ABD094-rhArgによる処理後の痩せた対照マウス[LFD(rhArg)群]とほぼ同等であった。P<0.05、一元ANOVAに続いてフィッシャーのLSDを行った。データは平均±SEMで表し、各群n=5である。(B)内臓WATのH&E染色切片から、N-ABD094-rhArgによる処理が肥満マウスの脂肪細胞サイズを著しく減少させることが分かった。 既存のHFD誘発性肥満を有する雄性マウスに週1回、600UのN-ABD094-rhArg(配列番号50)を投与する[HFD(rhArg)群]ことによってインスリン抵抗性を効果的に逆行させることができたことを示す。インスリン負荷試験(ITT)は、N-ABD094-rhArgによる処理の前と処理の4週間後、8週間後及び12週間後に行った。ITTの結果は曲線下面積(AUC)で表す。P<0.05、一元ANOVAに続いてフィッシャーのLSDを行った。データは平均±SEMで表し、各群n=5である。 既存のHFD誘発性肥満を有する雄性マウスに週1回、600UのN-ABD094-rhArg(配列番号50)を投与する[HFD(rhArg)群]ことによって耐糖能障害を効果的に逆行させることができたことを示す。ブドウ糖負荷試験(GTT)は、N-ABD094-rhArgによる処理の前と処理の3週間後、7週間後及び11週間後に行った。GTTの結果は曲線下面積(AUC)で表す。P<0.05、一元ANOVAに続いてフィッシャーのLSDを行った。データは平均±SEMで表し、各群n=5である。 既存のHFD誘発性肥満を有する雄性マウスに週1回、600UのN-ABD094-rhArg(配列番号50)を投与する[HFD(rhArg)群]ことによって高血糖、高インスリン血症及びインスリン抵抗性を効果的に逆行させることができたことを示す。(A)空腹時血糖、(B)空腹時血漿インスリン、及び(C)肥満マウスのHOMA-IRスコアは、N-ABD094-rhArgによる処理後に正常に近いレベルまで補正された。P<0.05、一元ANOVAに続いてフィッシャーのLSDを行った。データは平均±SEMで表し、各群n=5である。 既存のHFD誘発性肥満を有する雄性マウスに週1回、600UのN-ABD094-rhArg(配列番号50)を投与する[HFD(rhArg)群]ことによって高レプチン血症と高コレステロール血症を効果的に逆行させることができたことを示す。肥満マウスの(A)空腹時血漿レプチンおよび(B)空腹時血漿総コレステロールは、N-ABD094-rhArgによる処理後に正常に近いレベルまで補正された。P<0.05、一元ANOVAに続いてフィッシャーのLSDを行った。データは平均±SEMで表し、各群n=5である。 既存のHFD誘発性肥満を有する雄性マウスに週1回、12週間に亘って600UのN-ABD094-rhArg(配列番号50)を投与する[HFD(rhArg)群]ことによって肝臓肥大を効果的に逆行させることができたことを示す。(A)新鮮な肝臓全体の代表的な画像から、N-ABD094-rhArgの処理後に肥満マウスの肝臓が正常なサイズに戻ったことが分かった。(B)肥満マウスの肝臓重量は、N-ABD094-rhArgによる処理後に劇的に減少し、痩せた対照マウス[LFD(rhArg)群]と同等であった。P<0.05、一元ANOVAに続いてフィッシャーのLSDを行った。データは平均±SEMで表し、各群n=5である。 既存のHFD誘発性肥満を有する雄性マウスに週1回、12週間に亘って600UのN-ABD094-rhArg(配列番号50)を投与する[HFD(rhArg)群]ことによって脂肪肝を効果的に逆行させることができたことを示す。N-ABD094-rhArgで処理した肥満マウスの肝臓では、(A)肝臓切片のオイルレッドO染色によって脂質の劇的なクリアランスが示され、(B)トリグリセリド濃度は痩せた対照マウス[LFD(ベヒクル)]と同等のレベルまで低下し、(C)数種の重要な脂質生成関連遺伝子のmRNAレベルが有意にダウンレギュレートされた。発現レベルは痩せた対照(1に設定)と比較して表す。P<0.05、一元ANOVAに続いてフィッシャーのLSDを行った。データは平均±SEMで表し、各群n=5である。 既存のHFD誘発性肥満を有する雄性マウスに週1回、12週間に亘って600UのN-ABD094-rhArg(配列番号50)を投与する[HFD(rhArg)群]ことによって肝損傷の一般的なバイオマーカーであるアラニントランスアミナーゼ(ALT)とアスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)の血清中濃度を有意に低下させることができたことを示す。P<0.05、一元ANOVAに続いてフィッシャーのLSDを行った。データは平均±SEMで表し、各群n=5である。 既存のHFD誘発性肥満を有する雄性マウスに週1回、12週間に亘って600UのN-ABD094-rhArg(配列番号50)を投与する[HFD(rhArg)群]ことによって腎脂肪症を逆行させることができたことを示す。N-ABD094-rhArgで処理した肥満マウスでは、(A)腎臓の重量、(B)腎臓中のトリグリセリド濃度、(C)H&E染色した腎臓切片の腎尿細管内の空胞化構造、及び(D)オイルレッドO染色した腎臓切片の糸球体内の脂肪滴の異所性蓄積が顕著に低下した。P<0.05、一元ANOVAに続いてフィッシャーのLSDを行った。データは平均±SEMで表し、各群n=5である。 既存のHFD誘発性肥満を有する雄性マウスに週1回、12週間に亘って600UのN-ABD094-rhArg(配列番号50)を投与する[HFD(rhArg)群]ことによって膵臓脂肪症を逆行させることができたことを示す。N-ABD094-rhArgで処理した肥満マウスでは、(A)膵臓の重量、(B)膵臓のH&E染色切片に見られる白色脂肪組織の過剰な小葉間蓄積と小葉内蓄積、及び(C)膵臓中のトリグリセリド濃度が顕著に低下した。P<0.05、一元ANOVAに続いてフィッシャーのLSDを行った。データは平均±SEMで表し、各群n=5である。 既存のHFD誘発性肥満を有する雄性マウスに週1回、12週間に亘って600UのN-ABD094-rhArg(配列番号50)を投与する[HFD(rhArg)群]ことによって心臓脂肪症を逆行させることができたことを示す。N-ABD094-rhArgで処理した肥満マウスでは、(A)心臓の重量、(B)心臓内の脂肪滴の過剰な蓄積、及び(C)心臓中のトリグリセリド濃度が顕著に低下した。P<0.05、一元ANOVAに続いてフィッシャーのLSDを行った。データは平均±SEMで表し、各群n=5である。 既存のHFD誘発性肥満を有する雄性マウスに週1回、12週間に亘って600UのN-ABD094-rhArg(配列番号50)を投与する[HFD(rhArg)群]ことによって骨格筋中のトリグリセリド濃度を有意に低下させることができたことを示す。P<0.05、一元ANOVAに続いてフィッシャーのLSDを行った。データは平均±SEMで表し、各群n=5である。 既存のHFD誘発性肥満を有する雄性マウスに週1回、12週間に亘って600UのN-ABD094-rhArg(配列番号50)を投与する[HFD(rhArg)群]ことによって(A)内臓WATにおける炎症誘発性アディポカインMcp1のmRNAレベル(痩せた対照マウス[LFD(ベヒクル)群](1に設定)と比較して表す)を有意にダウンレギュレートでき、(B)炎症誘発性サイトカインMcp1の血清中濃度を有意に低下させることができたことを示す。P<0.05、一元ANOVAに続いてフィッシャーのLSDを行った。データは平均±SEMで表し、各群n=5である。 既存のHFD誘発性肥満を有する雄性マウスに週1回、12週間に亘って600UのN-ABD094-rhArg(配列番号50)を投与する[HFD(rhArg)群]ことによって肝臓内の炎症と線維症を抑制することができたことを示す。N-ABD094-rhArgで処理した肥満マウスの肝臓では、(A)炎症誘発性遺伝子と(B)線維化促進性遺伝子の有意なダウンレギュレーションが見られたが、(C)抗炎症性遺伝子のアップレギュレーションが見られた。mRNAレベルは痩せた対照[LFD(ベヒクル)](1に設定)と比較して表す。P<0.05、一元ANOVAに続いてフィッシャーのLSDを行った。データは平均±SEMで表し、各群n=5である。 既存のHFD誘発性肥満を有する雄性マウスに週1回、12週間に亘って600UのN-ABD094-rhArg(配列番号50)を投与する[HFD(rhArg)]ことによって腎臓内の炎症と線維症を抑制することができたことを示す。N-ABD094-rhArgで処理した肥満マウスの腎臓では、(A)炎症誘発性遺伝子と(B)線維化促進遺伝子の有意なダウンレギュレーションが見られ、(C)腎尿細管と糸球体周辺でのコラーゲン線維の過剰沈着の有意な抑制が見られた。mRNAレベルは痩せた対照[LFD(ベヒクル)群](1に設定)と比較して表す。P<0.05、一元ANOVAに続いてフィッシャーのLSDを行った。データは平均±SEMで表し、各群n=5である。 既存のHFD誘発性肥満を有する雄性マウスに週1回、12週間に亘って600UのN-ABD094-rhArg(配列番号50)を投与する[HFD(rhArg)群]ことによって膵臓内の炎症と線維症を抑制することができたことを示す。N-ABD094-rhArgで処理した肥満マウスの膵臓では、(A)炎症誘発性遺伝子と(B)線維化促進性遺伝子の有意なダウンレギュレーションが見られた。mRNAレベルは痩せた対照[LFD(ベヒクル)群]と比較して表す。P<0.05、一元ANOVAに続いてフィッシャーのLSDを行った。データは平均±SEMで表し、各群n=5である。 既存のHFD誘発性肥満を有する雄性マウスに週1回、12週間に亘って600UのN-ABD094-rhArg(配列番号50)を投与する[HFD(rhArg)群]ことによって褐色脂肪(BAT)の白色化を効果的に逆行させることができたことを示す。N-ABD094-rhArgで処理した肥満マウスでは、(A)肩甲骨間BATの重量、(B)肩甲骨間BATの形態とサイズ、及び(C)BATのH&E染色切片に示される組織学的特徴は痩せた対照マウスと同様であった。P<0.05、一元ANOVAに続いてフィッシャーのLSDを行った。データは平均±SEMで表し、各群n=5である。 既存のHFD誘発性肥満を有する雄性マウスに週1回、600UのN-ABD094-rhArg(配列番号50)を投与する[HFD(rhArg)群]ことによって(A)収縮期及び拡張期血圧と(B)肥満マウスの心拍数を薬物処理後5週間までに痩せた対照マウス[LFD(ベヒクル)群]と同等のレベルまで有意に低下させることができたことを示す。P<0.05、一元ANOVAに続いてフィッシャーのLSDを行った。データは平均±SEMで表し、各群n=10である。 LFDを給餌し、500UのN-ABD094-rhArg(配列番号50)の腹腔内注射を行ったC57BL/6J雄性マウス[LFD(rhArg)群](週1回、5週齢から開始して8ヶ月間)では非中和抗薬物抗体が発生したことを示す。(A)ELISAアッセイを使用して、平均抗体価が10の抗rhArg抗体をN-ABD094-rhArgで処理したLFD給餌マウスの血漿で検出することができた。(B)血漿を1000U/mLのN-ABD094-rhArg(rhArg)と共に1時間インキュベートした後、アルギナーゼ活性を測定した。アルギナーゼ活性の低下は見られなかったが、これはマウスで生成した薬物に対する抗体が中和抗体ではなかったことを示す。データは平均±SEMで表し、各群n=3である。 LFD給餌のC57BL/6J雄性マウスに500UのN-ABD094-rhArg(配列番号50)を投与[LFD(rhArg)群](週1回、5週齢から開始して8ヶ月間)しても肝臓と腎臓に有害作用を誘発しなかったことを示す。N-ABD094-rhArgで処理したLFD給餌マウスは、ベヒクルで処理したLFD給餌マウス[LFD(ベヒクル)群]に対し(A)アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)とアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)の血清中濃度(通常、肝機能又は肝疾患を評価するためのバイオマーカーとして使用される)、及び(B)血清中クレアチニン濃度と尿中アルブミン/クレアチニン(通常、腎機能又は腎疾患を評価するためのバイオマーカーとして使用される)において何ら有意差を示さなかった。データは平均±SEMで表し、各群n=3である。 LFD給餌のC57BL/6J雄性マウスに500UのN-ABD094-rhArg(配列番号50)を投与[LFD(rhArg)群](週1回、5週齢から開始して8ヶ月間)しても血管への有害作用を誘発しなかったことを示す。N-ABD094-rhArgで処理したLFD給餌マウスは、ベヒクルで処理したLFD給餌マウス[LFD(ベヒクル)群]に対し(A)フェニレフリンによって引き起こされる血管平滑筋の収縮、(B)アセチルコリン誘発性の内皮依存性弛緩、及び(C)一酸化窒素ドナーであるニトロプルシドナトリウムに応答した内皮非依存性弛緩において何ら有意差を示さなかった。データは平均±SEMで表し、各群n=3である。 既存のHFD誘発性肥満を有するC57BL/6J雄性マウスに週1回、4週間に亘って300UのPEG化His-rhArg(配列番号101)を投与する[HFD(PEG-rhArg)群]ことによって、マウスの体重を固形飼料給餌のベヒクル処理の痩せた対照マウス[固形飼料(ベヒクル)群]と同等の重量まで効果的に減少させることができたことを示す。データは平均±SEMで表し、各群n=6である。 既存のHFD誘発性肥満を有する雄性マウスに週1回、4週間に亘って300UのPEG化His-rhArg(配列番号101)を投与する[HFD(PEG-rhArg)群]ことによって、主な内臓(性腺周囲、腎周囲及び腸間膜)貯蔵と皮下(鼠径部)貯蔵の脂肪量を効果的に減少でき、肝臓、腎臓、膵臓及び心臓の重量を減少させることができたことを示す。P<0.05、一元ANOVAに続いてフィッシャーのLSDを行った。データは平均±SEMで表し、各群n=4である。 既存のHFD誘発性肥満を有する雄性マウスに週1回、300UのPEG化His-rhArg(配列番号101)を投与する[HFD(PEG-rhArg)群]ことによって、薬物処理の2週間後に行ったインスリン負荷試験(ITT)で(A)空腹時血糖を有意に低下させ、(B)インスリン感受性を有意に上昇させることができたことを示す。ITTの結果は曲線下面積(AUC)で表す。P<0.05、一元ANOVAに続いてフィッシャーのLSDを行った。データは平均±SEMで表し、各群n=6である。 既存のHFD誘発性肥満を有するC57BL/6J雄性マウスに週1回、5週間に亘って25~100UのN-ABD094-rhArg-Co2+[配列番号50(コバルト置換)]を投与することによって、マウスの体重を効果的に減少させることができたことを示す。データは平均±SEMで表し、n=3である。 MKN45胃癌細胞株に対するBHA融合タンパク質(配列番号75)の抗癌効果を示す。MKN45の増殖は用量依存的に阻害された。生存率はMTTエンドポイント比色アッセイによって求めた。データは平均±SDで表し、n=3である。 4T1乳癌異種移植ヌードマウスにおける腫瘍体積に対するN-ABD-rhArg(配列番号49)の効果を示す。「実験群」の曲線は、500UのN-ABD-rhArg(配列番号49)を週に1回注射した実験群を表し、「対照群」の曲線は、PBSを週に1回注射した対照群を表す。P<0.05、**P<0.01対実験群、t検定、n=4~6。 4T1乳癌異種移植ヌードマウスにおける相対腫瘍体積に対するN-ABD-rhArg(配列番号49)の効果を示す。「実験群」の曲線は、500UのN-ABD-rhArg(配列番号49)を週に1回注射した実験群を表す。「対照群」の曲線は、PBSを週に1回注射した対照群を表す。P<0.05対実験群、t検定、n=4~6。 実験群と対照群の腫瘍重量の有意差を示す。実験群には500UのN-ABD-rhArg(配列番号49)を週に1回注射した。対照群にはPBSを週に1回投与した。P<0.05対実験群、t検定、n=4~6。 対照群とN-ABD-rhArg(配列番号49)処理群のヌードマウスから採取した腫瘍の写真を示す。 4T1乳癌同種移植片における相対腫瘍体積に対するN-ABD-rhArg(配列番号49)の効果を示す。「500U ABD-rhArg」の曲線は、500UのN-ABD-rhArg(配列番号49)を週に1回注射した実験群を表す。「250U ABD-rhArg」の曲線は、250UのN-ABD-rhArg(配列番号49)を週に1回注射した実験群を表す。「500U PEG-rhArg」の曲線は、500UのPEG化His-rhArg(配列番号101)を週に1回注射した実験群を表す。「対照群」の曲線は、PBSを週に1回投与した対照群を表す。**P<0.01、***P<0.001対実験群、t検定、n=6~8。 実験群と対照群の腫瘍重量の有意差を示す。「500U ABD-rhArg」のデータは、500UのN-ABD-rhArg(配列番号49)を週に1回注射した群を表す。「250U ABD-rhArg」のデータは、250UのN-ABD-rhArg(配列番号49)を週に1回注射した群を表す。「500U PEG-rhArg」のデータは、500UのPEG化His-rhArg(配列番号101)を週に1回注射した群を表す。「対照群」のデータは、PBSを週に1回投与した対照群を表す。P<0.05、**P<0.01対実験群、t検定、n=6~8。 4T1同種移植片の肺からの転移性小結節の平均数を示す。(A)「500U ABD-rhArg」のデータは、500UのN-ABD-rhArg(配列番号49)を週に1回注射した群を表す。「250U ABD-rhArg」のデータは、250UのN-ABD-rhArg(配列番号49)を週に1回注射した群を表す。「500U PEG-rhArg」のデータは、500UのPEG化His-rhArg(配列番号101)を週に1回注射した群を表す。「対照群」のデータは、PBSを週に1回投与した対照群を表す。P<0.05、**P<0.01対実験群、t検定、n=6~8。(B)図70Aに示す4T1同種移植片の肺からの転移性小結節の数の散布図。
本開示は一般に、アルギナーゼポリペプチドとABDポリペプチドを含む融合タンパク質、その使用方法及びその調製方法に関する。本明細書に記載の融合タンパク質は非常に有効なアルギニン枯渇剤であり、ABDポリペプチドとの融合により、既知のアルギナーゼ及びアルギナーゼ誘導体と比較して半減期が大きく延長されている。開示された融合タンパク質は、アルギニン枯渇が治療効果をもたらす疾患及び病態の治療、例えば、癌、ウイルス感染症、多発性硬化症、関節リウマチ、自己免疫疾患、先天性高アルギニン血症、移植片対宿主病(GvHD)、炎症、肥満、代謝障害、及び関連する合併症と併存症の治療に有用である。
また、本開示は一般に、肥満、代謝障害、及び関連する合併症と併存症の治療を必要とする対象において、対象のアルギニン濃度を枯渇させることによってその治療を行う方法にも関する。対象におけるアルギニンの枯渇は、体重及び脂肪量の減少、耐糖能及びインスリン応答性の改善、血糖値、内分泌及び代謝プロファイルの正常化、及び炎症、脂肪症及び線維症の軽減をもたらす。対象のアルギニンを枯渇させることが可能な任意の薬剤を、本明細書に記載の肥満、代謝障害、及び関連する合併症と併存症を治療する方法で使用することができる。
用語の定義
本明細書で使用される用語の定義には、バイオテクノロジーの分野で各用語について認識されている現在の技術水準の定義が組み込まれることが意図される。該当する場合には例示を記載する。個別の事例で限定されていない限り、これら定義は本明細書全体で使用される用語の個々に、或いは下位概念(サブクラス)としてのそれら用語に適用される。
本明細書で使用される「半減期」又は「1/2期」という用語は、薬剤、例えば、本明細書に記載の融合タンパク質又はアルギニン枯渇剤の濃度がインビトロ又はインビボで、例えば、哺乳動物への注射後に半分に低下するのに要する時間を意味する。特定の場合には、注射後の血漿中アルギニン濃度を薬剤の半減期の代理的指標として本明細書で使用する。そのような場合、「治療期間」という用語は、特定の投与量のアルギニン枯渇剤によって、血漿中アルギニン濃度が所望の治療効果が観察される特定の閾値濃度未満に維持できる時間の長さを指すのに使用される。特定の実施形態では、血漿中アルギニンの閾値濃度は50μM未満、40μM未満、30μM未満、20μM未満、10μM未満、5μM未満、3μM未満、又は従来の分析機器の検出限界未満の濃度である。例えば、本明細書に記載のアルギニン異化酵素を注射して7日間で血漿中アルギニンがBiochrom30アミノ酸分析計の検出限界(検出限界は3μM)未満の濃度まで枯渇した場合、治療期間は7日間であり、半減期は、例えば、約7日程度である。
本明細書で使用される「結合する」又は「結合した」という用語は、2個以上の化合物を共に保つための結合又は非結合相互作用によって連結又は一体化させることを意味し、この用語は、例えば、第1のポリペプチドを第2のポリペプチド又は他の分子に結合させるような直接的又は間接的結合を包含すると共に、ポリペプチド等の1個以上の中間化合物(例えば、リンカー)が第1のポリペプチドと第2のポリペプチド又は他の分子との間に配置される実施形態を包含する。
本明細書で使用される「タンパク質」又は「ポリペプチド」という用語は、2個以上のアミノ酸モノマー及び/又はその類似体で構成される有機ポリマーを示す。「ポリペプチド」という用語は、全長タンパク質及びペプチド、及びそれらの類似体及び断片を含む任意の長さのアミノ酸ポリマーを包含する。3個以上のアミノ酸のポリペプチドはオリゴペプチドとも称される。本明細書で使用される「アミノ酸」、「アミノ酸モノマー」又は「アミノ酸残基」という用語は、20種の天然に存在するアミノ酸(非天然側鎖を有する合成アミノ酸を含み、D及びL光学異性体の両方を含む)のいずれかを意味する。「アミノ酸類似体」という用語は、1個以上の個々の原子が異なる原子、同位元素又は異なる官能基のいずれかで置換されてはいるが、それ以外はその天然アミノ酸類似体と同一であるアミノ酸を意味する。
本明細書で使用される「非天然アミノ酸」という用語は、20種の一般的な天然アミノ酸の1種、セレノシステイン又はピロリジンではない任意のアミノ酸、修飾アミノ酸及び/又はアミノ酸類似体を意味する。
本明細書で使用される「融合タンパク質」という用語は、例えば、アミド、エステル、尿素、カルバメート、エーテル及び/又はジスルフィド結合によって共有結合された、異なる起源を有するタンパク質又は機能性タンパク質断片(例えば、アルギナーゼ又はその変異体)を含むキメラタンパク質を意味する。
本明細書で使用される「変異体」という用語は、参照核酸又はポリペプチドとは異なるが、その本質的な特性を保持しているポリヌクレオチド又は核酸を意味する。一般に、変異体は全体的に参照核酸又はポリペプチドと非常に類似しており、多くの領域で参照核酸又はポリペプチドと同一である。
変異体は、例えば、少なくとも1個の保存的アミノ酸が置換された親ポリペプチド配列のアミノ酸配列を含むことができる。或いは又は更には、変異体は、少なくとも1個の非保存的アミノ酸が置換された親ポリペプチド配列のアミノ酸配列を含むことができる。この場合、非保存的アミノ酸置換が機能性変異体の生物活性を妨害又は阻害しないことが好ましい。非保存的アミノ酸置換は変異体の生物活性を増強することができ、それによって変異体の生物活性は親ポリペプチドと比較して高くなる。
ポリペプチドに関して使用される場合の「機能的断片」という用語は、対象のポリペプチドの任意の部分を意味し、その部分は、それが一部を構成するポリペプチド(親ポリペプチド)の生物活性を保持する。機能的断片は、その生物活性が依然として親ポリペプチドの少なくとも40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%又は99%であるか、或いは実質的に同等又はそれよりも高い場合には、機能的断片が一部を構成するポリペプチドの隣接アミノ酸を含む任意の断片とすることができる。親ポリペプチドに関して、機能的断片は、例えば、親ポリペプチドの約10%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%又はそれ以上を含むことができる。
機能的断片はアミノ末端又はカルボキシ末端、又は両方の末端に更なるアミノ酸、例えば、親ポリペプチドのアミノ酸配列に見られないアミノ酸を含むことができる。
記載されたポリペプチドのアミノ酸置換は保存的アミノ酸置換とすることができる。保存的アミノ酸置換は当技術分野で知られており、例えば、特定の物理的及び/又は化学的特性を有する1個のアミノ酸を同一又は類似の化学的又は物理的特性を有する他のアミノ酸と交換するアミノ酸置換が挙げられる。例えば、保存的アミノ酸置換は、酸性/負に荷電した極性アミノ酸を他の酸性/負に荷電した極性アミノ酸(例えば、Asp又はGlu)に置換すること、非極性側鎖を有するアミノ酸を他の非極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、Ala、Gly、Val、Ile、Leu、Met、Phe、Pro、Trp、Cys、Val等)に置換すること、塩基性/正に荷電した極性アミノ酸を他の塩基性/正に荷電した極性アミノ酸(例えば、Lys、His、Arg等)に置換すること、極性側鎖を有する非荷電アミノ酸を他の極性側鎖を有する非荷電アミノ酸(例えば、Asn、Gln、Ser、Thr、Tyr等)に置換すること、β分岐側鎖を有するアミノ酸を他のβ分岐側鎖を有するアミノ酸(例えば、Ile、Thr、Val)に置換すること、芳香族側鎖を有するアミノ酸を他の芳香族側鎖を有するアミノ酸(例えば、His、Phe、Trp、Tyr)に置換すること等とすることができる。
「相同性(%)」及び「配列同一性(%)」という用語は、ポリペプチド又はポリヌクレオチド配列に関して使用する場合、本明細書では、ポリヌクレオチド及びポリペプチド間の比較に言及するために交換可能に使用し、比較ウィンドウ上で2個の最適に整列された配列を比較することによって決定するが、この場合、比較ウィンドウ内のポリヌクレオチド又はポリペプチド配列の部分には、参照配列(付加又は欠失を含まない)に対して付加又は欠失(即ち、ギャップ)を含めて2個の配列のアラインメントを最適にすることができる。パーセンテージは、両方の配列で同一の核酸塩基又はアミノ酸残基が存在する位置の数を決定して一致する位置の数を得、一致する位置の数を比較ウィンドウ内の位置の総数で割り、結果に100を掛けて配列同一性のパーセンテージを得ることによって計算する。相同性は、当技術分野で知られている様々な配列比較アルゴリズム及びプログラムのいずれかを使用して評価する。このようなアルゴリズム及びプログラムとしては、TBLASTN、BLASTP、FASTA、TFASTA及びCLUSTALW[Pearson and Lipman, 1988, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85(8):2444-2448; Altschul et al., 1990, J. Mol. Biol. 215(3):403-410; Thompson et al., 1994, Nucleic Acids Res. 22(2):4673-4680; Higgins et al. 1996, Methods Enzymol. 266:383-402; Altschul et al., 1990, J. Mol. Biol. 215(3):403-410; Altschul et al., 1993, Nature Genetics 3:266-272]が挙げられるが、決してこれらに限定されない。特定の実施形態では、タンパク質及び核酸配列の相同性は当技術分野で周知の基本的なローカルアラインメント検索ツール(「BLAST」)を使用して評価する(例えば、Karlin and Altschul, 1990, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:2267-2268; Altschul et al., 1990, J. Mol. Biol. 215:403-410; Altschul et al., 1993, Nature Genetics 3:266-272; Altschul et al., 1997, Nuc. Acids Res. 25:3389-3402を参照)。
本明細書で使用される「治療する」、「治療している」、「治療」等の用語は、障害/疾患及び/又はそれに関連する症状を軽減又は改善することを意味する。不可能ではないとはいえ、障害又は病態を治療することが障害、病態又はそれに関連する症状を完全に排除する必要がないことが理解されるであろう。特定の実施形態では、治療は障害又は病態、及び/又はそれに関連する症状の予防を包含する。本明細書で使用される「予防」又は「予防する」という用語は、障害、病態又はそれに関連する症状の発症を阻害するか、又はその発症を少なくとも遅らせるいずれかの措置を意味する。予防としては、一次、二次及び三次の予防レベルを挙げることができ、a)一次予防では疾患の発症を回避し、b)二次予防活動は早期の疾患の治療を目的としているため、疾患の進行と症状の出現を防ぐための介入の機会が増え、c)三次予防では、機能を回復し、疾患に関連する合併症を軽減することによって既に確立された疾患の悪影響を抑制する。
本明細書で使用される「異化作用」又は「異化」という用語は、ある分子が他の、例えば、より小さな分子になる化学反応を意味する。例えば、アルギニン異化酵素は、アルギニンと反応してアルギニンをオルニチン、シトルリン及びアグマチン等の他の分子に変換することができる任意の酵素を意味する。
本明細書で使用される「対象」という用語は、任意の動物(例えば、哺乳動物)(例えば、ヒト、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ及び齧歯類が挙げられるが、これらに限定されない)を意味する。
本明細書で使用される「肥満度指数」又は「BMI」という用語は、体重(Kg)を身長(メートル)の二乗で割ることで得られる割合を意味する。
本明細書で使用される「過体重」という用語は、成人における25~30のBMIを意味する。20歳未満の人の場合、「過体重」は同じ年齢の人と比較して85~95パーセントのBMIとして定義される。
本明細書で使用される「肥満」という用語は、成人における30~40のBMIを意味する。20歳未満の人の場合、「肥満」は同じ年齢の人と比較して95パーセントを超えるBMIとして定義される。本明細書で使用される場合、この用語は肥満と病的肥満の両方を包含し得る。
本明細書で使用される「病的肥満」という用語は、成人における40を超えるBMIを意味する。
本明細書で使用される「脂肪症」という用語は、脂肪が肝組織、腎組織、膵臓組織、心筋組織又は他の筋組織等の組織に蓄積する状態を意味する。
本明細書で使用される「線維症」という用語は、肝組織、腎組織、膵臓組織又は心臓組織等の器官又は組織において、コラーゲンを含む線維性結合組織の過剰な沈着が存在する状態を意味する。
本明細書で使用される「高コレステロール血症」という用語は、同じ民族的背景、年齢及び性別の各参照対象における血中コレステロールの正常な平均値と比較して血中コレステロール値が上昇している状態を意味する。ヒトに関しては、この用語は特に、約200mg/dLを超える、特に約240mg/dLを超える血中総コレステロール値を意味する。
本明細書で使用される「脂質異常症」及び「高脂血症」という用語は、血流中のコレステロール、コレステロールエステル、リン脂質、トリグリセリド及び/又はリポタンパク質等の脂質/脂肪の値がそれぞれ異常であり、同じ民族的背景、年齢、性別の各参照対象における血中脂質/脂肪の正常な平均値と比較して上昇している状態を意味する。
本明細書に記載の融合タンパク質はアルギナーゼポリペプチドを含む。アルギナーゼポリペプチドは、アルギナーゼを発現する任意の生物によって発現されるアルギナーゼタンパク質に由来することができる。アルギナーゼの例としては、桿菌、アグロバクテリウム、シアノバクテリア及びマイコバクテリア等の細菌、及びウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、齧歯類及びヒト等の哺乳動物によって産生されるものが挙げられる。アルギナーゼポリペプチドがヒトアルギナーゼに由来する場合、アルギナーゼ1型(ARG1)又はアルギナーゼ2型(ARG2)とすることができる。
アルギナーゼポリペプチドは全長アルギナーゼポリペプチド又はその機能的断片及び/又は変異体を含むことができる。
アルギナーゼはマンガン含有酵素である。実施例32に示すように、本明細書に記載の融合タンパク質に存在する1個以上のマンガンイオンを、1個以上のCo2+又はNi2+等の二価カチオン性金属で置換すると、融合タンパク質の触媒活性を高めることができる。従って、特定の実施形態では、本明細書に記載の融合タンパク質はCo2+又はNi2+等のマンガン以外の二価金属を1個以上含む。特定の実施形態では、融合タンパク質はCo2+及びNi2+から選択される1個以上の金属を含む。特定の実施形態では、融合タンパク質は、2個のCo2+イオン又は2個のNi2+イオンを含む。他の実施形態では、融合タンパク質は2個のMn2+イオンを含む。
特定の実施形態では、アルギナーゼポリペプチドは野生型ヒトARG1である。特定の実施形態では、アルギナーゼポリペプチドは配列番号69と少なくとも95%の配列相同性を有する配列を含む。例えば、アルギナーゼポリペプチドは配列番号69と少なくとも96%、97%、98%、99%、99.1%、99.4%又は99.7%の相同性を有するポリペプチド配列を含むことができる。特定の実施形態では、アルギナーゼポリペプチドの配列は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25又は30個のアミノ酸修飾(例えば、挿入、置換、欠失等)によって配列番号69と異なっていてもよい。特定の実施形態では、アルギナーゼポリペプチドは、保存的アミノ酸置換、非保存的アミノ酸置換、又はそれらの組み合わせを有するポリペプチドを含む。
特定の実施形態では、アルギナーゼポリペプチドはBacillus caldoveloxアルギナーゼ(BCA)である。特定の実施形態では、アルギナーゼポリペプチドは配列番号70と少なくとも95%の配列相同性を有する配列を含む。例えば、アルギナーゼポリペプチドは配列番号70と少なくとも96%、97%、98%、99%、99.3%又は99.7%の相同性を有するポリペプチド配列を含むことができる。特定の実施形態では、アルギナーゼポリペプチドの配列は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25又は30個のアミノ酸修飾(例えば、挿入、置換、欠失等)によって配列番号70と異なっていてもよい。特定の実施形態では、アルギナーゼポリペプチドは、保存的アミノ酸置換、非保存的アミノ酸置換、又はそれらの組み合わせを有するポリペプチドを含む。
特定の実施形態では、アルギナーゼポリペプチドはBCAであり、セリン161は配列番号71と配列番号72に示すようにシステインで置換されている。セリンをシステインで置換することによって、融合タンパク質の特性を更に改善することができる化学部分の部位特異的な取り込みが可能になる。例えば、システイン161の側鎖は適切に活性化されたPEG部分と反応させることができ、それによって、得られる融合タンパク質に組み込むことができるPEG化アルギナーゼを形成することができる。融合タンパク質のPEG化により、組織又は細胞内で活性な様々な分解機序から本明細書に記載の融合タンパク質を更に保護することによって、融合タンパク質の保持時間を更に増すことができ、その結果、融合タンパク質の治療可能性を改善する。従って、特定の実施形態では、アルギナーゼポリペプチドは配列番号71又は配列番号72と少なくとも95%の配列相同性を有する配列を含む。例えば、アルギナーゼポリペプチドは配列番号71又は配列番号72と少なくとも96%、97%、98%、99%、99.3%又は99.7%の相同性を有するポリペプチド配列を含むことができる。特定の実施形態では、アルギナーゼポリペプチドの配列は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25又は30個のアミノ酸修飾(例えば、挿入、置換、欠失等)によって配列番号71又は配列番号72と異なっていてもよい。特定の実施形態では、アルギナーゼポリペプチドは、保存的アミノ酸置換、非保存的アミノ酸置換、又はそれらの組み合わせを有するポリペプチドを含む。
本明細書に記載の融合タンパク質がPEG化されている場合、PEG基の分子量は、約5000~約20000amu、約5000~約15000amu、約5000~約12000amu、約7000~約12000amu、又は約7000~約10000amuとすることができる。特定の実施形態では、PEG基の分子量は約4000amu~10000amuである。特定の実施形態では、PEG基はPEG4000又はPEG7000である。
PEG基を融合タンパク質に直接、又はリンカーを介して共有結合させることができる。融合タンパク質に存在するシステイン又はリジン側鎖とPEG化試薬との反応によってPEG基を融合タンパク質に共有結合させることができる。或いは、PEG基をタンパク質のN末端アミンに共有結合させることができる。
特定の実施形態では、融合タンパク質はプロピオン酸リンカーを介してPEGに共有結合している。他の実施形態では、融合タンパク質はC-C10、C-C、C-C、C-C、C-C、C-C、又はC-C直鎖又は分岐鎖カルボン酸リンカーを介してPEGに共有結合している。特定の実施形態では、PEG基はアルギナーゼポリペプチドに結合している。
本明細書に記載の融合タンパク質はアルブミン結合ドメイン(ABD)ポリペプチドも含む。多くの研究によって、治療用タンパク質の半減期をより長くするためのアルブミン結合の可能性が示されている。しかし、ABDポリペプチドのタンパク質治療薬への融合は、タンパク質治療薬の有効性、ABDポリペプチドの結合親和性、及び融合タンパク質の溶解性に影響を及ぼす可能性があるため、ABDポリペプチドを含む融合タンパク質の設計は困難な場合がある。従って、ABDポリペプチドの選択、その結合部位の選択、及び必要なリンカーの構築は単純なプロセスではなく、所望の特性を有する融合特性を得るための試行錯誤に時間を要することが多い。例えば、図9、10及び13は、N-ABD094-rhArg(配列番号50)の治療期間(及び半減期)がBHAやBAHよりも予想外に遥かに長いことを示す。BHA、BAH及びN-ABD094-rhArgの全てが驚くほど長い治療期間(及び半減期)を示すが、N-ABD094-rhArgがそのような長い治療期間(及び半減期)を有するとは予測できなかった。
一般に、薬物の作用は長いことが望ましい。リンカーの種類、長さ、可動性、及び半減期延長モジュールのC又はN末端への生物活性ペプチド又はタンパク質の融合は、融合タンパク質の活性に大きな影響を及ぼす可能性がある。本開示では、様々なアルギナーゼを適切なリンカーを介してABD分子に融合し、ABDのアルブミン結合能力とアルギナーゼ酵素活性の両方を保持できるようにした。良好な安定性と溶解性も不可欠である。これを達成するのは非常に困難且つ挑戦的である。一般的なHSA又はFc融合物とは異なり、ABD融合物については殆ど知られていない。本開示は、機能的なアルギナーゼ-ABD融合物を生成するのに使用することができるリンカー設計の例を提供する。遺伝子操作されたアルギナーゼ融合タンパク質(N-ABD094-rhArg、N-ABD-rhArg等)の活性は、リンカーエンジニアリング又は半減期延長モジュール(ABD)に対する生物活性タンパク質(アルギナーゼ)の位置のいずれか又はその両方によって本開示で最適化されている。
多くの場合、タンパク質工学を利用して活性の損失を克服することができる。一例では、リンカーエンジニアリングを利用してIFN-α2bをHSAへ融合する際に損失した活性を回復させた[Prot Exp Purif. 2008; 61:73-7]。IFN-α2bをHSAに直接融合させると、生物活性が殆どない不安定なタンパク質が生成された。融合形式では、IFN-α2bの活性に対する様々なリンカーの効果を試験した。ペプチドリンカーは融合タンパク質の発現、活性及び薬物動態に影響を及ぼすことが知られている[Adv Drug Deliv Rev. 2013; 65:1357-69]。ペプチドリンカーの主な2種は次の通りである。(i)可動性リンカー(例えば、(GS)、n=1~4、配列番号107)。(ii)α-ヘリカルリンカー[A(EAAAK)A](n=2~4及びx=1又は2、配列番号108)、及びXP(XはA、K又はEのいずれかであり、n=1~10)等の剛性リンカー。可動性リンカーの場合、利点の1つは、同族の受容体に関して分子の生物活性部分の適切な配向を得るのに可動性が必要となり得ることである。しかし、可動性リンカーの場合、融合パートナーと生物活性タンパク質の間に大きいスペースが得られない。一方、剛性リンカーの場合には、より大きいスペースが得られるが、可動性に欠ける。IFN-α2b-HSA融合タンパク質の場合、可動性リンカーでは天然IFN-α2bと比較して約39%の活性となった一方、剛性XPリンカーとα-ヘリカルリンカーではそれぞれ天然IFN-α2bの活性の68%と115%となった[Prot Exp Purif. 2008;61:73-7]。
特定のリンカーは融合タンパク質の特性に悪影響を及ぼす場合がある。例えば、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)をトランスフェリン(Tf)に融合した短いロイシン-グルタミン酸(LE)リンカーを使用すると、天然G-CSFの活性の約10%しか得られなかった。(GS) (配列番号109)又はα-ヘリカルリンカー[A(EAAAK)A](n=2~4、m=1又は2、配列番号108)の挿入によって、G-CSF-LE-Tfよりも融合タンパク質の活性が大幅に増加した。リンカー(A(EAAAK)ALEA-(EAAAK)A)(配列番号105)で構築された融合タンパク質の場合、天然G-CSFに近い生物活性が得られた[Pharm Res. 2006;23:2116-21]。他の例では、Fc部分のC末端をペプチド結合を介してIFN-β部分のN末端に直接結合できるが、Gillies et al[US7,670,595B2]はリンカーペプチドを介してFc部分とIFN-β部分とを更に連結させる。リンカーペプチドはFc部分のC末端と成熟IFN-β部分のN末端との間に位置している。この場合、リンカーペプチドは、アミノ酸配列GSGSGSG(配列番号106)等のセリン及びグリシン残基で構成されることが好ましい。このような知見は全て、融合タンパク質の研究開発プログラムを成功させるにはリンカー技術の試験が重要であることを示している。
別のアプローチを使用して活性に関する融合位置の重要性が実証されている[Curr Pharmaceut Biotechnol. 2014;15:856-63]。脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)を様々な形式でHSAのN末端又はC末端に融合させた。その結果から、BNP-HSA、BNP2-HSA(BNPの2個のコピー)及びBNP4-HSA(全てHSAのN末端に融合した)は不活性であることが分かった。しかし、HSAのC末端に融合したHSA-BNP2は天然BNPと同等な活性があり、持続性があった。
これらの例は、リンカーエンジニアリング、半減期延長モジュールに対する生物活性タンパク質又はペプチドの位置のいずれか、或いはその両方を通じて、融合タンパク質のリード最適化に多大な努力を払って活性を最適化することの重要性を示している。重要なのは、本発明で新しいABD融合アプローチを使用してABDとアルギナーゼを互いに結合させ、アルギナーゼ活性を保持できるようにしたことである。pH依存的にFcRnに結合可能な安定で可溶性のアルギナーゼ-ABD融合分子の生成に成功し、効率的なエンドソームのリサイクルが可能になった。例えば、本開示では驚くべきことに、ABDに融合したrhArgの場合、タンパク質の循環における終末半減期がマウスにおいて数分間から4日間へと劇的に延長したことを見出した。まとめると、アルギナーゼの薬物動態特性を微調整し、様々な病態に対して循環中の適切な滞留時間を確保するのに様々な異なるアプローチが利用可能である。治療用タンパク質の開発における他の重要な課題は、免疫原性を最小限に抑えて有害作用を回避することである。従って、ヒトアルギナーゼの低い免疫原性が観察されたこと、及びインビボ半減期を延長するための遺伝子融合パートナーとして本開示でも使用されたABD(例えば、ABD094)の脱免疫化が成功したことが重要である。
アルブミン結合タンパク質は、グラム陽性菌によって発現される様々な表面タンパク質に見られる3個のらせん状タンパク質のドメインである。連鎖球菌タンパク質Gに由来するアルブミン結合タンパク質は214個のアミノ酸を有し、ヒト血清アルブミンに結合して宿主の免疫系を回避するのに使用する3個のアルブミン結合ドメイン(ABD1~3)を含む。ABD3は46アミノ酸配列に相当し、ヒト血清アルブミンに結合することが実証されており、様々な特性(例えば、結合親和性や結合選択性)を有するABDポリペプチドを開発する上でヒト血清アルブミンに関する多くの研究と親和性成熟の対象となっている。このような研究によって、様々な特性を有する相当数のABDポリペプチドが生成された。
アルブミン結合タンパク質は他の細菌で見出される。例えば、天然に存在するアルブミン結合タンパク質としては、グラム陽性菌由来の特定の表面タンパク質、例えば、連鎖球菌Mタンパク質(例えば、M1/Emm1、M3 Emm3、M12/Emml2、EmmL55/Emm55、Emm49/EmmL49及びタンパク質H)、連鎖球菌タンパク質G、MAG及びZAG、及びFinegoldia magnaの特定の菌株由来のPPLとPABが挙げられる。
特定の実施形態では、本明細書に記載の融合タンパク質は、連鎖球菌タンパク質Gアルブミン結合ドメインに由来するABDポリペプチドを含む。特定の実施形態では、ABDポリペプチドは、完全連鎖球菌タンパク質Gアルブミン結合ドメイン3又はその機能的断片及び/又は変異体である。
特定の実施形態では、融合タンパク質は、配列番号66と少なくとも93%の配列相同性を有するポリペプチド配列を含むABDポリペプチドを含む。例えば、ABDポリペプチドは、配列番号66と少なくとも94%、96%又は98%の相同性を有するポリペプチド配列を含むことができる。特定の実施形態では、ABDポリペプチドの配列は、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個のアミノ酸修飾(例えば、挿入、置換、欠失等)によって配列番号66と異なっていてもよい。特定の実施形態では、ABDポリペプチドは、保存的アミノ酸置換、非保存的アミノ酸置換、又はそれらの組み合わせを有するポリペプチドを含む。
特定の実施形態では、融合タンパク質は、配列番号67と少なくとも93%の配列相同性を有するポリペプチド配列を含むABDポリペプチドを含む。例えば、ABDポリペプチドは、配列番号67と少なくとも94%、96%又は98%の相同性を有するポリペプチド配列を含むことができる。特定の実施形態では、ABDポリペプチドの配列は、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個のアミノ酸修飾(例えば、挿入、置換、欠失等)によって配列番号67と異なっていてもよい。特定の実施形態では、ABDポリペプチドは、保存的アミノ酸置換、非保存的アミノ酸置換、又はそれらの組み合わせを有するポリペプチドを含む。
特定の実施形態では、融合タンパク質は、配列番号68と少なくとも93%の配列相同性を有するポリペプチド配列を含むABDポリペプチドを含む。例えば、ABDポリペプチドは、配列番号68と少なくとも93%、95%又は97%の相同性を有するポリペプチド配列を含むことができる。特定の実施形態では、ABDポリペプチドの配列は、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個のアミノ酸修飾(例えば、挿入、置換、欠失等)によって配列番号68と異なっていてもよい。特定の実施形態では、ABDポリペプチドは、保存的アミノ酸置換、非保存的アミノ酸置換、又はそれらの組み合わせを有するポリペプチドを含む。
ABDポリペプチドとアルギナーゼポリペプチドの相対位置は様々となり得る。例えば、ABDポリペプチドはアルギナーゼポリペプチドに先行することができ(例えば、アルギナーゼポリペプチドはABDポリペプチドのC末端から直接的又は間接的に結合することができる)、又はアルギナーゼポリペプチドはABDポリペプチドに先行することができる(例えば、ABDポリペプチドはアルギナーゼポリペプチドのC末端から直接的又は間接的に結合することができる)。
特定の実施形態では、融合タンパク質は1個以上のアルギナーゼポリペプチド及び/又は1個以上のABDポリペプチドを含むことができる。例えば、融合タンパク質は一般構造ABD-rhArg-ABD、ABD094-rhArg-ABD094、ABD-BCA-ABD、ABD094-BCA-ABD094、rhArg-ABD-rhArg、rhArg-ABD094-rhArg、BCA-ABD-BCA、又はBCA-ABD094-BCAを有することができる。
ABDポリペプチドとアルギナーゼポリペプチドは、直接共有結合によって結合することもでき、ペプチドリンカーを介して間接的に結合することもできる。
ペプチドリンカー又はリンカーは、アミノ酸長さが通常約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20又はそれ以上の範囲のポリペプチドであり、これはABDポリペプチドとアルギナーゼポリペプチドを連結融合タンパク質にする機能的結合を容易にするように設計されている。機能的結合という用語は、ポリペプチドが三次元構造へ適切に折り畳まれることを容易にする結合を表し、この三次元構造によって、連結融合タンパク質がポリペプチド構成要素の由来元であるタンパク質の機能的側面又は生物活性の一部又は全てを示すことが可能になる。
ポリペプチドリンカーは、ABDポリペプチドのN末端とアルギナーゼポリペプチドのC末端との間に配置するか、或いはアルギナーゼポリペプチドのN末端とABDポリペプチドのC末端との間に配置することができる。
ペプチドリンカーは、天然に存在するアミノ酸、非天然アミノ酸、及びそれらの組み合わせを含むことができる。
特定の実施形態では、ペプチドリンカーはグリシン、セリン、アスパラギン又はそれらの組み合わせを含むことができる。ペプチドリンカーの例としては、ポリグリシン、(GS) (配列番号110)及び(GGS) (配列番号111)(nは1~30)を含むリンカーが挙げられる。更なるペプチドリンカーの例としては、可動性リンカー(例えば、(GS)(n=1~4、配列番号107))、又は剛性リンカー(例えば、αヘリカルリンカー[A(EAAAK)A](n=2~4及びx=1又は2(配列番号108)、及びXP(XはA、K又はEのいずれかであり、n=1~10))が挙げられる。特定の実施形態では、ペプチドリンカーは、(A(EAAAK)ALEA-(EAAAK)A)(配列番号105)、GSGSGSG(配列番号106)、GS(N)GSG(n=1~10)(配列番号112)、及びGS(Q)GSG(n=1~10)(配列番号113)等である。特定の実施形態では、ペプチドリンカーは配列番号73と少なくとも90%の配列相同性を有するポリペプチド配列を含む。例えば、ペプチドリンカーは、配列番号73と少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列相同性を有するか又は配列番号73と同一であるポリペプチドを含むことができる。
特定の実施形態では、ペプチドリンカーはグリシン、セリン、アスパラギン又はそれらの組み合わせを含むことができる。特定の実施形態では、ペプチドリンカーは配列番号74と少なくとも90%の配列相同性を有するポリペプチド配列を含む。例えば、ペプチドリンカーは、配列番号74と少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列相同性を有するか又は配列番号74と同一であるポリペプチドを含むことができる。
精製タグを使用して、アフィニティークロマトグラフィー等による融合タンパク質の精製の容易さを改善することができる。よく知られている精製タグは、6個のヒスチジン残基の配列であるヘキサヒスチジン(6×His)タグである。従って、特定の実施形態では、融合タンパク質は4~8個のヒスチジンアミノ酸を含むポリヒスチジン、例えば、6×Hisタグを更に含む。ポリヒスチジンは融合タンパク質のC末端、融合タンパク質のN末端に存在するか、又はABDポリペプチドとアルギナーゼポリペプチドとの間に配置することができる。
ポリヒスチジンがABDポリペプチドとアルギナーゼポリペプチドとの間に配置されている場合、ポリヒスチジンはペプチドリンカーとして作用するか、或いはペプチドリンカーに加えて含ませることができる。例えば、配列番号75の融合タンパク質は300~305位に6個のヒスチジンから成るポリペプチドリンカーを含むが、これはABDポリペプチドとアルギナーゼポリペプチドを連結させるのに役立ち、アフィニティークロマトグラフィーによって融合タンパク質を精製するのに有利に使用することができる。
ポリヒスチジンタグは、当技術分野で一般に知られている技術を用いて精製が完了した後に必要に応じて除去することができる。例えば、エキソペプチダーゼを使用してN末端ポリヒスチジンタグを除去することができ(例えば、Qiagen TAGZyme)、エンドペプチダーゼを使用したポリヒスチジンタグの除去を容易にする適切なアミノ酸配列をC末端ポリヒスチジンタグの前に置くことができる。従って、N末端及び/又はC末端ポリヒスチジンタグを除く融合タンパク質は本開示の範囲内に含まれる。
特定の実施形態では、ABDポリペプチドは、配列番号66、配列番号67又は配列番号68と少なくとも93%の配列相同性を有するポリペプチド配列を含み、アルギナーゼポリペプチドは、配列番号69、配列番号70、配列番号71又は配列番号72と少なくとも95%の相同性を有するポリペプチド配列を含む。例えば、ABDポリペプチドは、配列番号66、配列番号67又は配列番号68と少なくとも94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列相同性を有するか、又は配列番号66、配列番号67又は配列番号68と同一であるポリペプチド配列を含み、アルギナーゼポリペプチドは、配列番号69、配列番号70、配列番号71又は配列番号72と少なくとも96%、97%、98%又は99%の配列相同性を有するか、又は配列番号69、配列番号70、配列番号71又は配列番号72と同一であるポリペプチド配列を含む。
特定の実施形態では、ABDポリペプチドは、配列番号66と少なくとも93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列相同性を有するか、又は配列番号66と同一であるポリペプチド配列を含み、アルギナーゼポリペプチドは、配列番号69と少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%の配列相同性を有するか、又は配列番号69と同一であるポリペプチド配列を含む。
特定の実施形態では、融合タンパク質は、配列番号73又は配列番号74と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列相同性を有するか、又は配列番号73又は配列番号74と同一であるポリペプチド配列を含むペプチドリンカーを更に含む。
融合タンパク質の例としては、配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号52、配列番号53、配列番号54、配列番号55、配列番号56、配列番号75及び配列番号76と少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%の相同性を有するか、又はこれらの配列番号と同一である融合タンパク質が挙げられる。
血漿中アルギニン濃度に対する融合タンパク質の効果の治療期間は投与する融合タンパク質の量に依存し、約1日、約2日、約3日、約4日、約5日、約6日、約7日、約8日、約9日、約10日、約11日、約12日、約13日、約14日、又は約15日又はそれ以上となり得る。特定の実施形態では、融合タンパク質の治療期間は、約5日~約20日、約5日~約19日、約5日~約18日、約5日~約17日、約5日~約16日、約5日~約15日、約6日~約15日、約7日~約15日、約7日~約14日、約7日~約13日、約7日~約12日、約7日~約11日、又は約8日~約11日である。
特定の実施形態では、融合タンパク質の半減期は約1日~約10日、約1日~約9日、約1日~約8日、約1日~約7日、約1日~約6日、約1日~約5日、約1日~約4日、約1日~約3日、又は約1日~約2日である。他の実施形態では、融合タンパク質の半減期は約6時間~約30時間である。
本明細書に記載の融合タンパク質のアルギナーゼ活性は、その由来元であるアルギナーゼポリペプチドの活性と実質的に同じであるか、より低いか又はより高くなり得る。アルギナーゼ活性の1単位は、標準的なアッセイ条件下で1分間当たり1μmolの尿素の生成を触媒する融合タンパク質[例えば、BHA(配列番号75)、BAH(配列番号76)、N-ABD-rhArg(配列番号49)、又はN-ABD094-rhArg(配列番号50)]又はアルギナーゼ[例えば、BCA(配列番号70)]の量で定義される。酵素の比活性はタンパク質1mg当たりの活性単位で表す。標準的なジアセチルモノオキシム(DAMO)アッセイ条件下(37℃、pH7.4)では、融合タンパク質は、それに組み込む対応アルギナーゼポリペプチドよりも比活性が約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%又は約40%低いか又は高くなり得る。特定の実施形態では、融合タンパク質は、それに組み込む対応アルギナーゼポリペプチドよりも比活性が約5%~約40%、約10%~約40%、約10%~約35%、約10%~約30%、約20%~約30%、約20%~約35%、約15%~約30%、約15%~約25%、又は約10%~約20%低いか又は高くなり得る。
特定の実施形態では、融合タンパク質のアルギナーゼ活性はHSAの存在には実質的に影響を受けない。これが有利なのは、ABD融合タンパク質のHSAへの結合が融合タンパク質の活性に有害な影響を及ぼす可能性があるためである。
単離ポリヌクレオチドとして、又は発現ベクターの一部として、又は線状DNA配列(例えば、インビトロ転写/翻訳に使用される線状DNA配列、原核生物又は真核生物の発現、分泌及び/又は組成物の表示に適合するベクター)の一部として、本明細書に記載の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列も提供される。特定の例示的なポリヌクレオチドを本明細書で開示するが、所与の発現系でのコドン選択又は遺伝暗号の縮重を考慮すると、本明細書に記載の融合タンパク質をコードする他のポリヌクレオチドも本開示の範囲内である。
本明細書に記載のポリヌクレオチドは、自動ポリヌクレオチド合成機での固相ポリヌクレオチド合成等の化学合成によって生成し、完全な一本鎖又は二本鎖分子に構築することができる。或いは、本発明のポリヌクレオチドは、PCRとそれに続く通常のクローニング等の他の技術によって生成することができる。所与の既知の配列のポリヌクレオチドを生成又は取得するための技術は当技術分野で周知である。
本明細書に記載のポリヌクレオチドは少なくとも1個の非コード配列、例えば、プロモーター又はエンハンサー配列、イントロン、ポリアデニル化シグナル等を含むことができる。また、ポリヌクレオチド配列は、例えば、マーカー又はタグ配列(例えば、タンパク質の精製又は検出を容易にするポリヒスチジン(6×His)又はHAタグ)、シグナル配列、融合タンパク質パートナー(例えば、生物活性剤をコードするcDNA)等をコードする追加のアミノ酸をコードする追加の配列も含むことができる。
他の実施形態において提供されるのは、本明細書に記載のポリヌクレオチドの少なくとも1種を含むベクターである。そのようなベクターは、プラスミドベクター、ウイルスベクター、バキュロウイルス発現用ベクター、トランスポゾンベースのベクター、又は任意の手段によって所与の生物又は遺伝的背景に本発明のポリヌクレオチドを導入するのに適した他の任意のベクターとすることができる。そのようなベクターは、そのベクターによってコードされるポリペプチドの発現を制御し、調節し、引き起こし又は可能にすることができる核酸配列要素を含む発現ベクターとすることができる。そのような要素は、転写エンハンサー結合部位、RNAポリメラーゼ開始部位、リボソーム結合部位、及び所与の発現系においてコードされたポリペプチドの発現を促進する他の部位を含むことができる。そのような発現系は、当技術分野で周知の細胞ベースの系又は無細胞系とすることができる。
多くの細菌発現系では、開始コドンは通常メチオニンをコードし、その結果、このような発現系においてN末端メチオニンで開始するタンパク質を生成する。しかし、メチオニンアミノペプチダーゼ(MetAP)等の特定の細菌酵素が、新たに合成されたポリペプチドからのN末端メチオニンの加水切断を触媒できることはよく知られている。これは隣のアミノ酸が、例えば、Gly、Ala、Ser又はThrである場合に一般に観察される[In vivo processing of N-terminal methionine in E. coli, FEBS Lett. 1990 Jun 18;266(1-2):1-3]。従って、本明細書に記載の融合タンパク質の特定の実施形態では、タンパク質のN末端メチオニンが存在しない変異体が含まれる。
本明細書に記載の融合タンパク質は、捕捉、固定化、分配又は沈降に関して当技術分野で周知の分離手順を使用して単離することができ、商業的利用に必要な程度まで精製することができる。
治療的使用の場合、本明細書に記載の融合タンパク質は、薬学的に許容し得る担体中に有効成分として本明細書に記載の融合タンパク質の治療有効量を含む医薬組成物として調製することができる。「担体」という用語は、有効化合物の投与に使用する希釈剤、アジュバント、賦形剤又はベヒクルを意味する。このようなベヒクルとしては、液体、例えば、水及び石油、動物、植物又は合成起源等の油(例えば、ピーナッツ油、大豆油、鉱油、ゴマ油等)を挙げることができる。例えば、0.9%生理食塩水と0.3%グリシンを使用することができる。このような溶液は無菌であり、一般に粒子状物質を含まない。このような溶液は、従来周知の滅菌技術(例えば、濾過)によって滅菌することができる。組成物は、生理学的条件に近似させるのに必要とされる薬学的に許容し得る補助物質、例えば、pH調整剤及び緩衝剤、安定剤、増粘剤、潤滑剤及び着色剤等を含むことができる。このような医薬製剤中の融合タンパク質の濃度は、例えば、約0.5重量%未満(通常は少なくとも約1重量%)から最大15又は20重量%まで大きく変動することがあり、主に選択した特定の投与方法に応じて必要な用量、液量、粘度等に基づいて選択される。適切なベヒクル及び製剤は、例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 21st Edition, Troy, D. B. ed., Lipincott Williams and Wilkins, Philadelphia, Pa. 2006, Part 5, Pharmaceutical Manufacturing pp 691-1092(特にpp. 958-989参照)に記載されている。
当技術分野で周知のように、本明細書に記載の融合タンパク質の治療的使用のための投与方法は薬剤を宿主に送達させる任意の適切な経路とすることができ、例えば、非経口投与(例えば、皮内投与、筋肉内投与、腹腔内投与、静脈内投与又は皮下投与、経肺投与)、経粘膜投与(経口投与、鼻腔内投与、膣内投与、直腸投与)、錠剤、カプセル、溶液、懸濁液、粉末、ゲル、粒子の製剤の使用、注射器、埋め込み型デバイス、浸透圧ポンプ、カートリッジ、マイクロポンプへの含有、又は当業者に認められた他の手段とすることができる。部位特異的投与は、例えば、関節内送達、気管支内送達、腹腔内送達、嚢内送達、軟骨内送達、腔内送達、腹腔内送達、脳内送達、脳室内送達、結腸内送達、子宮頸内送達、胃内送達、肝内送達、心臓内送達、骨内送達、骨盤内送達、心膜内送達、腹腔内送達、胸膜内送達、前立腺内送達、肺内送達、直腸内送達、腎内送達、網膜内送達、脊髄内送達、滑膜内送達、胸腔内送達、子宮内送達、血管内送達、膀胱内送達、病巣内送達、膣送達、直腸送達、頬側送達、舌下送達、鼻腔内送達、又は経皮送達によって行うことができる。
本明細書に記載の融合タンパク質はアルギニン枯渇剤として使用することができる。このような剤は、対象においてアルギニン枯渇が治療効果を有する疾患又は病態の治療、例えば、癌、特定のウイルス感染症、多発性硬化症、関節リウマチ、自己免疫疾患、先天性高アルギニン血症、移植片対宿主病(GvHD)、及び本明細書で詳述のように、肥満、代謝障害、及び関連する合併症と併存症の治療に有用である。
アルギニン栄養要求性腫瘍はASS又はOTCのダウンレギュレーションによって細胞外アルギニンに依存しており、生存のために細胞外アルギニン源に依存している。アルギニン枯渇剤は、アルギニン栄養要求性腫瘍に対して細胞毒性があることが示されており、癌治療におけるその使用は現在、臨床試験で検討されている。
従って、本明細書に記載の融合タンパク質は癌の治療、例えば、膵臓癌、白血病、黒色腫、頭頸部癌、結腸直腸癌、肺癌、乳癌、前立腺癌、子宮頸癌、肝癌、鼻咽頭癌、食道癌、肉腫、胃癌、中皮腫、リンパ腫、膀胱癌、骨癌、子宮内膜癌、卵巣癌、腎臓癌、眼癌、神経芽細胞腫、神経膠芽腫、悪性末梢神経鞘腫瘍(MPNST)、及び脳癌の治療に使用することができる。癌はアルギニン栄養要求性癌、例えば、ASS及びOTCの内の少なくとも1種のダウンレギュレーションを特徴とする癌とすることができる。
本明細書に記載の融合タンパク質はウイルス感染症の治療、例えば、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、単純ヘルペスウイルス(HSV)、ヒトパピローマウイルス(HPV)、エプスタイン・バーウイルス(EBV)、ヘルペスウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、及びインフルエンザの治療にも使用することができる。
本明細書で詳述するように、本明細書に記載の融合タンパク質は、肥満、代謝障害、及び関連する合併症及び/又は併存症から成る群から選択される少なくとも1種の病態の治療に使用することもできる。
以下の実験で示すように、アルギニン枯渇は脂肪症を劇的に抑制することができる。本明細書では、N-ABD094-rhArg(配列番号50)、PEG化His-rhArg(配列番号101)、及びN-ABD094-rhArg-Co2+[配列番号50(コバルト置換)]等のABDアルギナーゼ融合タンパク質又はPEG化アルギナーゼを肥満及び関連する代謝障害の治療に使用して、アルギニン欠乏症の治療可能性を検討した。本明細書に提示のデータによって、例えば、N-ABD094-rhArg(配列番号50)によるアルギニン枯渇が、正常な痩せたマウスと肥満マウスにおいて脂肪量を有意に減少させ、脂質生成を抑制し、インスリン感受性を高めることが示されている。例えば、N-ABD094-rhArg(配列番号50)によるアルギニン欠乏によって、肥満、代謝障害、及び関連する合併症と併存症(例えば、インスリン抵抗性)を予防及び軽減できることが見出された。
本明細書に示すアルギニン枯渇の効果は驚くべきものであり、予想外であるが、それは、アルギニンを含む幾つかのアミノ酸(AA)の食事摂取を増やすと、グルコースと脂質の代謝に大きく影響を及ぼし、AAの補給によって体重を減少できることが多くの研究で示されているためである。更に、アルギニンは半必須アミノ酸であるため、その枯渇は対象に悪影響を及ぼさない。
高脂肪食誘発性肥満(DIO)のマウスモデルを使用した。高脂肪食を開始した痩せたマウスを同時にN-ABD094-rhArg(配列番号50)で処理して、DIO及び関連する代謝障害の発症の予防に対するその有効性を試験した。既存のDIOを有するマウスをN-ABD094-rhArg(配列番号50)で処理して、肥満、代謝障害、及び関連する合併症と併存症の軽減に対するその有効性を試験した。
以下の実施例に示すように、N-ABD094-rhArg(配列番号50)による処理によって、体重と脂肪量が減少し、耐糖能とインスリン反応性が改善し、内分泌及び代謝プロファイルが正常化し、炎症、脂肪症及び線維症が緩和し、褐色脂肪の白色化を防止又は逆行させた。
本明細書で提供されるのは、肥満及び/又は代謝障害の治療を必要とする対象においてそれを治療する方法であって、アルギニン枯渇剤の治療有効量を対象に投与する工程を含む方法である。
アルギニン枯渇剤は、対象における血漿中及び/又は細胞中アルギニン濃度を低下させることが可能な、当技術分野で知られている任意のアルギニン枯渇剤とすることができる。アルギニン枯渇剤は小分子又はタンパク質とすることができる。
タンパク質は、融合タンパク質及び/又は化学的に修飾されたタンパク質(例えば、PEG化タンパク質)とすることができる。タンパク質の例としては、アルギニンの他の生成物への異化を触媒することが可能なタンパク質、例えば、アルギナーゼ活性、アルギニンデイミナーゼ活性、アルギニンデカルボキシラーゼ活性、又はアルギニン2モノオキシゲナーゼ活性を有するタンパク質が挙げられる。
アルギナーゼは、当技術分野で知られている任意のアルギナーゼ、例えば、細菌、真菌、魚、ヒト、ウシ、ブタ、ウサギ、齧歯類、霊長類、ヒツジ及びヤギによって産生されるものとすることができる。例えば、Bacillus caldoveloxアルギナーゼ、Thermus thermophilusアルギナーゼ、Capra hircusアルギナーゼI、Heterocephalus glaberアルギナーゼI、Bos taurusアルギナーゼI、Sus scrofaアルギナーゼI、Plecoglossus altivelisアルギナーゼI、Salmo salarアルギナーゼI、Oncorhynchus mykissアルギナーゼI、Osmerus mordaxアルギナーゼI、Hyriopsis cumingiiアルギナーゼI、Rattus norvegicusアルギナーゼI、Mus musculusアルギナーゼI、Homo sapiens(ヒト)アルギナーゼI、Pan troglodytesアルギナーゼI、Oryctolagus cuniculusアルギナーゼI、Rattus norvegicusアルギナーゼII、Mus musculusアルギナーゼII、Homo sapiens(ヒト)アルギナーゼII、BostaurusアルギナーゼII、Heterocephalus glaberアルギナーゼII、Pan troglodytesアルギナーゼII、Oryctolagus cuniculusアルギナーゼII、Delftiaアルギナーゼ、Bacillus coagulansアルギナーゼ、Hoeflea phototrophicaアルギナーゼ及びRoseiflexus castenholziiアルギナーゼが挙げられる。他の例としては、Bacillus methanolicus、Bacillus sp. NRRL B-14911、Planococcus donghaensis、Paenibacillus dendritiformis、Desmospora sp.、Methylobacter tundripaludum、Stenotrophomonas sp.、Microbacterium laevaniformans、Porphyromonas uenonis、Agrobacterium sp.、Octadecabacter arcticus、Agrobacterium tumefaciens、Anoxybacillus flavithermus、Bacillus pumilus、Geobacillus thermoglucosidasius、Geobacillus thermoglucosidans、Brevibacillus laterosporus、Desulfotomaculum ruminis、Geobacillus kaustophilus、Geobacillus thermoleovorans、Geobacillus thermodenitrificans、Staphylococcus aureus、Halophilic archaeon DL31、Halopigerxanaduensis、Natrialba magadii、Plasmodium falciparum、Helicobacter pylori等由来のアルギナーゼが挙げられる。
アルギニンデイミナーゼは、当技術分野で知られている任意のアルギニンデイミナーゼ、例えば、マイコプラズマ、ラクトコッカス、シュードモナス、ストレプトコッカス、エシェリキア、マイコバクテリウム又はバチルス微生物から産生されるものとすることができる。アルギニンデイミナーゼの例としては、Mycoplasma hominis、Mycoplasma arginini、Mycoplasma arthritidis、Clostridium perfringens、Bacillus licheniformis、Borrelia burgdorferi、Borrelia afzellii、Enterococcus faecalis、Lactococcus lactis、Bacillus cereus、Streptococcus pyogenes、Steptococcus pneumoniae、Lactobacillus sake、Giardia intestinalis、Mycobacterium tuberculosis、Pseudomonas plecoglossicida、Pseudomonas putida、Pseudomonas aeruginosa等によって産生されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
アルギニンデカルボキシラーゼは、当技術分野で知られている任意のアルギニンデカルボキシラーゼ、例えば、Escherichia coli.、Salmonella typhimurium、Chlamydophila pneumoniae、Methanocaldococcus jannaschii、Paramecium bursaria Chlorella virus 1、Vibrio vulnificus YJ016、Campylobacter jejuni subsp.、Trypanosoma cruzi、Sulfolobus solfataricus、Bacillus licheniformis、Bacillus cereus、Carica papaya、Nicotianatobacum、Glycine max、Lotus coniculata、Vibrio vulnificus、Vibrio cholerae、Mus musculus、Thermotoga、Rattus norvegicus、Homo sapiens、Bos taurus、Susscrofa、Thermus thermophiles、Thermus parvatiensis、Thermus aquaticus、Thermus thermophilus、Thermus islandicus、Arabidopsis thaliana、Avena sativa等によって産生されるものとすることができる。
アルギニン2-モノオキシゲナーゼは、当技術分野で知られている任意のアルギニン2-モノオキシゲナーゼ、例えば、Arthrobacter globiformisIFO12137、Arthrobacter simplexIFO12069、Brevibacterium helvolumIFO12073、Helicobacter cinaediCCUG18818、Streptomyces griseus等から産生されるものとすることができる。
アルギニンデカルボキシラーゼ、アルギニンデイミナーゼ、アルギニン2-モノオキシゲナーゼ及びアルギナーゼは、完全タンパク質又はその機能的断片及び/又は変異体とすることができる。アルギニンデカルボキシラーゼ、アルギニンデイミナーゼ、アルギニン2-モノオキシゲナーゼ及びアルギナーゼは、例えば、タンパク質又はその機能的断片及び/又は変異体とヒト血清アルブミン、アルブミン結合ドメイン、免疫グロブリンのFc領域、PEG基、又はこれらの組み合わせとの融合によって修飾して薬物動態特性を改善することができる。
本明細書に記載のアルギニン異化酵素を遺伝子操作して、PEGが選択的に結合できる酵素の特定の部位を含むようにすることができる。選択したPEG化部位は、酵素の活性部位から除去された部位に位置することが好ましく、通常は溶媒に曝露してPEG化試薬との反応を可能にさせる。
例えば、Cys45-ヒトアルギナーゼI(HAI)とCys161-Bacillus caldoveloxアルギナーゼ(BCA)はチオール特異的PEG分子と反応するように生成することができる。修飾アルギナーゼの単一の遊離システイン残基とPEG化合物に結合したマレイミド基(MAL)との結合によって、PEG化合物と修飾アルギナーゼの遊離システインとの間に共有結合を形成することができる。配列番号102及び104はCys45部位特異的PEG化用に設計した変異体(C168S/C303S)を含んでいるため、必要に応じてPEG化することができる。配列番号89もCys161部位特異的PEG化用に設計した変異体(S161C)を含んでいるため、必要に応じてPEG化することができる。
特定の実施形態では、アルギナーゼは配列番号101、配列番号102、配列番号103又は配列番号104を含むことができ、配列番号102と配列番号104は必要に応じてポリエチレングリコール基(PEG)を含む。
当技術分野で知られている任意のPEG化試薬を使用して、本明細書に記載のアルギニン異化酵素にPEGを共有結合させることができる。PEG化試薬の例としては、mPEG-ALD(メトキシポリエチレングリコール-プロピオンアルデヒド)、mPEG-MAL(メトキシポリエチレングリコール-マレイミド)、mPEG-NHS(メトキシポリエチレングリコール-N-ヒドロキシ-スクシンイミド)、mPEG-SPA(メトキシポリエチレングリコール-スクシンイミジルプロピオネート)、及びmPEG-CN(メトキシポリエチレングリコール-塩化シアヌル)が挙げられるが、これらに限定されない。
PEG基の分子量は、約5000~約20000amu、約5000~約15000amu、約5000~約12000amu、約7000~約12000amu、又は約7000~約10000amuとすることができる。特定の実施形態では、PEG基の分子量は約2000amu~10000amuである。特定の実施形態では、PEG基はPEG4000、PEG5000、PEG6000、又はPEG7000である。
PEG基はアルギナーゼに直接又はリンカーを介して共有結合させることができる。特定の実施形態では、アルギナーゼはプロピオン酸リンカーを介してPEGに共有結合している。他の実施形態では、アルギナーゼは、C-C10、C-C、C-C、C-C、C-C、C-C又はC-C直鎖又は分枝鎖カルボン酸リンカーを介してPEGに共有結合している。
別の実施形態では、肥満、代謝障害、及び関連する合併症及び/又は併存症から成る群から選択される少なくとも1種の病態の治療を必要とする対象においてその病態を治療する方法は、低アルギニン食又は実質的にアルギニンを含まない食を対象に投与することを含む。
肥満、代謝障害、及び関連する合併症及び/又は併存症から成る群から選択される少なくとも1種の病態を治療する方法は、肥満、代謝障害、及び関連する合併症及び/又は併存症から成る群から選択される少なくとも1種の病態の予防を含むこともできる。
代謝障害としては、肥満、高コレステロール血症、脂質異常症、脂肪症、インスリン抵抗性、耐糖能異常、高血糖症、及び糖尿病又はそれらの組み合わせを挙げることができ、関連する合併症及び/又は併存症としては、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病性血管障害、糖尿病性神経障害、脂肪性肝炎、線維症、肝硬変、炎症、高血圧、心血管疾患、及び褐色脂肪の白色化又はそれらの組み合わせを挙げることができる。
特定の実施形態では、代謝障害は、例えば、I型又は特にII型糖尿病を有する対象におけるインスリン抵抗性の治療及び/又は予防である。以下の実施例で示すように、アルギニン枯渇は対象のインスリン感受性の上昇をもたらす。
肥満を治療する方法は、対象において脂肪量を減らすこと又は脂肪量の増加を防ぐことを含むことができる。アルギニン枯渇剤による対象の治療によって、高脂肪食で未治療の対象と比較して、内臓白色脂肪組織(WAT)、肝臓及び骨格筋における数種の脂肪生成転写因子及び脂質生成酵素(例えば、Pparg、Srebp1c、Acc及びScd1)のmRNA発現レベルを低下させることができる。特定の実施形態では、脂質生成調節因子のmRNA発現レベルの低下の発現レベルは、高脂肪食で未治療の対象における対応するmRNA発現レベルに対して、例えば、少なくとも約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%又は約90%低下する。特定の実施形態では、アルギニン枯渇剤による対象の治療によって、対象のWAT、肝臓及び/又は骨格筋におけるPparg、Srebp1c、Acc及びScd1から成る群から選択される1種以上の遺伝子のmRNA発現が抑制される。
肥満は、代謝障害(例えば、高血糖症、高インスリン血症)及び/又は過食、運動不足等の他の要因の結果であるか、及び/又はそれと関連する可能性がある。
代謝障害は、対象における脂肪症、例えば、心臓脂肪症、脂肪肝、腎脂肪症、膵臓脂肪症及び筋肉脂肪症の治療及び/又は予防を含む可能性もある。
代謝障害は、対象における線維症、例えば、肝線維症、腎線維症、膵線維症及び心臓線維症の治療及び/又は予防を含む可能性もある。
代謝障害は、例えば、血漿中総コレステロール、LDLコレステロール、アポリポタンパク質B及び/又はトリグリセリドの濃度を低下させることによる高コレステロール血症、脂質異常症の治療を含むこともある。
アルギニン枯渇剤による対象の治療によって、血漿中レプチン濃度をHFDの未治療対象の対応する血漿中レプチン濃度に対し、例えば、少なくとも約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、又は約70%低下させることができる。特定の実施形態では、血漿中レプチン濃度をHFDの未治療対象の対応する血漿中レプチン濃度に対し、約10%~約70%、約10%~約60%、約10%~約50%、約10%~約40%、約10%~約30%低下させることができる。
アルギニン枯渇剤による対象の治療によって、血漿中トリグリセリド濃度をHFDの未治療対象の対応する血漿中トリグリセリド濃度に対し、例えば、少なくとも約20%、約30%又は約40%低下させることができる。特定の実施形態では、血漿中トリグリセリド濃度をHFDの未治療対象の対応する血漿中トリグリセリド濃度に対し、約5%~約40%、約5%~約30%、又は約5%~約20%低下させることができる。
アルギニン枯渇剤による対象の治療によって、血漿中総コレステロール濃度をHFDの未治療対象の対応する血漿中総コレステロール濃度に対し、例えば、少なくとも約5%、約10%、又は約15%低下させることができる。特定の実施形態では、血漿中総コレステロール濃度をHFDの未治療対象の対応する血漿中総コレステロール濃度に対し、約5%~約15%、約5%~約10%、又は約10%~約15%低下させることができる。
アルギニン枯渇剤による対象の治療によって、血漿中遊離脂肪酸濃度をHFDの未治療対象の対応する血漿中遊離脂肪酸濃度に対し、例えば、少なくとも約5%、約10%、約15%、又は約20%低下させることができる。特定の実施形態では、血漿中遊離脂肪酸濃度をHFDの未治療対象の対応する血漿中遊離脂肪酸濃度に対し、約5%~約20%、約5%~約15%、又は約5%~約10%低下させることができる。
治療効果を観察する必要がある対象の血漿中アルギニン濃度は、対象の病態、及び疾患の種類と重症度及び/又は病状及び/又は食事組成等の多くの要因に基づいて変動し得る。標的となる血漿中アルギニン濃度の選択は、十分に当業者の技能の範囲内である。特定の実施形態では、血漿中アルギニン濃度は、約100μM未満、約90μM未満、約80μM未満、約70μM未満、約60μM未満、約50μM未満、約40μM未満、約30μM未満、約20μM未満、約10μM未満、又は約5μM未満である。特定の実施形態では、血漿中アルギニン濃度は、約0.1μM~約100μM、約0.1μM~約90μM、約0.1μM~約80μM、約0.1μM~約70μM、約0.1μM~約60μM、約0.1μM~約50μM、約0.1μM~約40μM、約0.1μM~約30μM、約0.1μM~約20μM、又は約0.1μM~約10μMである。特定の実施形態では、アルギニン濃度は、Biochrom30アミノ酸分析計の検出限界未満(例えば、約3μM未満)及び/又はAgilent6460液体クロマトグラフィー/エレクトロスプレーイオン化三連四重極型質量分析計の検出限界未満(例えば、約0.3μM未満)である。
治療期間(例えば、血漿中アルギニン濃度が対象において枯渇状態に維持される期間)の決定は十分に当業者の技能の範囲内である。特定の実施形態では、治療期間は、約1週間、約2週間、約3週間、約4週間、約8週間、約12週間、約16週間、約20週間、約24週間、約28週間、約32週間、約36週間、約40週間、約44週間、約48週間、約52週間、約56週間又はそれ以上である。
アルギニンの枯渇は多くの病態で有効な治療法であることが示されており、病態の例としては、ウイルス感染症(米国特許第8,507,245号、本参照をもってその全内容を本明細書の一部を構成するものとする)、多発性硬化症、関節リウマチ、自己免疫疾患(米国特許第9,789,169号、本参照をもってその全内容を本明細書の一部を構成するものとする)、先天性高アルギニン血症(ClinicalTrials.gov Identifier: NCT02488044)、移植片対宿主病(GvHD)(Hallet W., et al., Exploiting arginase to prevent GVHD, Blood 2010 116:5440-5441)、炎症(Sahin E., et al., Macrophage PTEN regulates expression and secretion of arginase I modulating innate and adaptive immune responses, J Immunol. 2014 Aug 15;193(4):1717-27)、及び網膜神経血管変性(Fouda AY. et al., Arginase 1 promotes retinal neurovascular protection from ischemia through suppression of macrophage inflammatory responses Cell Death Dis. 2018 Sep 25;9(10):1001)が挙げられるが、これらに限定されない。
従って、本明細書で更に提供されるのは、ウイルス感染症、多発性硬化症、関節リウマチ、自己免疫疾患、先天性高アルギニン血症、移植片対宿主病(GvHD)及び炎症から成る群から選択される少なくとも1種の病態の治療を必要とする対象においてその病態を治療する方法であって、本明細書に記載の融合タンパク質の治療有効量を投与する工程を含む方法である。
本開示の更なる目的、利点、及び新規の特徴は、限定することを意図していない以下の実施例を検討すれば、当業者には明らかになるであろう。
ABD及びABD094融合遺伝子の構築
N末端融合用N-ABD遺伝子の構築は、表1に記載のプライマー01~08(配列番号1~8)(各プライマー:20nMまでの濃度)をiProof DNAポリメラーゼ(Bio-rad社)の1×反応バッファー、0.2mMのdNTP、及び0.5ユニットのiProof DNAポリメラーゼ(Bio-rad社)と共に50μLの反応体積で混合し、PCR反応によって行った。PCRプログラムは次のように設定した。(1)98℃、10秒間、(2)50℃、20秒間、(3)72℃、15秒間、(4)(1)~(3)を35回反復。次に、1μLのPCR反応生成物をiProof DNAポリメラーゼ(Bio-rad社)の1×反応バッファー、0.2mMのdNTP、0.2μMのプライマー(N-ABDNde-F):5’-GATCTTAAGCATATGCATCATCACCATC-3’(配列番号9)、プライマー(N-ABDHind-R):5’-ACAGCTAAAAGCTTATCAGCCTAGGATCCGCCGCTACCATTG-3’(配列番号93)及び0.5ユニットのiProof DNAポリメラーゼと共に50μLの反応体積で新しいPCR反応に供した。PCRプログラムは次のように設定した。(1)98℃、10秒間、(2)50℃、20秒間、(3)72℃、15秒間、(4)(1)~(3)を35回反復、(5)72℃、5分間。N-ABD094遺伝子の構築は、表1に記載のプライマー01~08(配列番号1~8)の代わりに表1に記載のプライマー09~16(配列番号9~16)を使用したこと以外はN-ABD遺伝子構築の手順と同様であった。
C末端融合用C-ABD遺伝子の構築は、表1に記載のプライマー17~24(各プライマー:20nMまでの濃度)をiProof DNAポリメラーゼの1×反応バッファー、0.2mMのdNTP、及び0.5ユニットのiProof DNAポリメラーゼと共に50μLの反応体積で混合し、PCR反応によって行った。PCRプログラムは次のように設定した。(1)98℃、10秒間、(2)50℃、20秒間、(3)72℃、15秒間、(4)(1)~(3)を35回反復。次に、1μLのPCR反応生成物をiProof DNAポリメラーゼの1×反応バッファー、0.2mMのdNTP、0.2μMのプライマー(C-ABDNde-F):5’-TAGCTGATCATATGTTATGCGATGGATCCAGTAACAAC-3’(配列番号91)、0.2μMのプライマー(C-ABDHind-R):5’-GACCCTAAAAGCTTAATGGTGATGGTGATGATG-3’(配列番号92)及び0.5ユニットのiProof DNAポリメラーゼと共に50μLの反応体積で新しいPCR反応に供した。PCRプログラムは次のように設定した。(1)98℃、10秒間、(2)50℃、20秒間、(3)72℃、15秒間、(4)(1)~(3)を35回反復、(5)72℃、5分間。C-ABD094遺伝子の構築は、表1に記載のプライマー17~24(配列番号17~24)の代わりに表1に記載のプライマー25~32(配列番号25~32)を使用したこと以外はC-ABD遺伝子構築の手順と同様であった。
PCR断片N-ABD、N-ABD094、C-ABD又はC-ABD094を制限酵素NdeI及びHindIIIで消化し、同じ酵素で前もって消化したベクターpRSET-lacに連結させ、大腸菌Top10に形質転換してプラスミドpN-ABD、pN-ABD094、pC-ABD及びpC-ABD094をそれぞれ生成した。プラスミドpRSET-lacは、T7プロモーターをpGEMT-Easy Vector(Promega社)のlacプロモーターに置換することによってpRSET-A(Invitrogen社)から改変した。
ヒトアルギナーゼI遺伝子のN-ABD又はN-ABD094融合物の構築は、0.2μMのプライマーHARGBam-F(5’-TTAGCTGGGGATCCGCCAAGTCCAGAACCATAGG-3’)(配列番号93)、0.2μMプライマーHARGHind-R(5’-GAGATCAAAGCTTACTTAGGTGGGTTAAGGTAGTC-3’)(配列番号94)と共にiProof DNAポリメラーゼの1×反応バッファー、0.2mMのdNTP、100ngのヒトアルギナーゼIcDNA、及び0.5ユニットのiProof DNAポリメラーゼを50μLの反応体積で混合して行った。PCRプログラムは次のように設定した。(1)98℃、10秒間、(2)50℃、20秒間、(3)72℃、30秒間、(4)(1)~(3)を35回反復、(5)72℃、5分間。PCR断片ヒトアルギナーゼI遺伝子を制限酵素BamHI及びHindIIIで消化し、同じ酵素で前もって消化したベクターpN-ABD又はpN-ABD094に連結させ、大腸菌ER2566(NEB)に形質転換してプラスミドpN-ABD-rhArg及びpN-ABD094-rhArgをそれぞれ生成した。
ヒトアルギナーゼI遺伝子のC-ABD又はC-ABD094融合物の構築は、0.2μMのプライマーHARGNde-F(5’-TAGGCTGCATATGAGCGCCAAGTCCAGAACCATAG-3’)(配列番号95)、0.2μMのプライマーHARGBam-R(5’-ATCAGCTAGGATCCCTTAGGTGGGTTAAGGTAGTCAATAGG-3’)(配列番号96)と共にiProof DNAポリメラーゼ(Bio-rad社)の1×反応バッファー、0.2mMのdNTP、100ngのヒトアルギナーゼIcDNA、及び0.5ユニットのiProof DNAポリメラーゼ(Bio-rad社)を50μLの反応体積で混合して行った。PCRプログラムは次のように設定した。(1)98℃、10秒間、(2)50℃、20秒間、(3)72℃、30秒間、(4)(1)~(3)を35回反復、(5)72℃、5分間。PCR断片ヒトアルギナーゼI遺伝子を制限酵素NdeI及びBamHIで消化し、同じ酵素で前もって消化したベクターpC-ABD又はpC-ABD094に連結させ、大腸菌ER2566(NEB)に形質転換してプラスミドpC-ABD-rhArg及びpC-ABD094-rhArgをそれぞれ生成した。
Bacillus caldoveloxアルギナーゼ(BCA)遺伝子のN-ABD又はN-ABD094融合物の構築は、0.2μMのプライマーBCABam-F(5’-ATGCTAGTGGATCCATGAAGCCAATTTCAATTATCG-3’)(配列番号97)、0.2μMのプライマーBCAHind-R(5’-TCAGCCTAAAGCTTACATGAGTTTTTCACCAAACAACG-3’)(配列番号)と共にiProof DNAポリメラーゼの1×反応バッファー、0.2mMのdNTP、100ngのBacillus caldoveloxゲノムDNA、及び0.5ユニットのiProof DNAポリメラーゼを50μLの反応体積で混合して行った。PCRプログラムは次のように設定した。(1)98℃、10秒間、(2)50℃、20秒間、(3)72℃、30秒間、(4)(1)~(3)を35回反復、(5)72℃、5分間。PCR断片Bacillus caldoveloxアルギナーゼ遺伝子を制限酵素BamHI及びHindIIIで消化し、同じ酵素で前もって消化したベクターpN-ABD又はpN-ABD094に連結させ、大腸菌ER2566(NEB)に形質転換してプラスミドpN-ABD-BCA及びpN-ABD094-BCAをそれぞれ生成した。
Bacillus caldoveloxアルギナーゼ(BCA)遺伝子のC-ABD又はC-ABD094融合物の構築は、0.2μMのプライマーBCANde-F(5’-ATGCTAGCCATATGAAGCCAATTTCAATTATCGGG-3’)(配列番号99)、0.2μMのプライマーBCABam-R(5’-TCAGCTAAGGATCCCATGAGTTTTTCACCAAACAACG-3’)(配列番号100)と共にiProof DNAポリメラーゼの1×反応バッファー、0.2mMのdNTP、100ngのBacillus caldoveloxゲノムDNA、及び0.5ユニットのiProof DNAポリメラーゼを50μLの反応体積で混合して行った。PCRプログラムは次のように設定した。(1)98℃、10秒間、(2)50℃、20秒間、(3)72℃、30秒間、(4)(1)~(3)を35回反復、(5)72℃、5分間。PCR断片Bacillus caldoveloxアルギナーゼ遺伝子を制限酵素NdeI及びBamHIで消化し、同じ酵素で前もって消化したベクターpC-ABD又はpC-ABD094に連結させ、大腸菌ER2566(NEB)に形質転換してプラスミドpC-ABD-BCA及びpC-ABD094-BCAをそれぞれ生成した。
Figure 2019228510000001
Figure 2019228510000002
Figure 2019228510000003
発酵によるABD-rhArg又はABD094-rhArg融合タンパク質の発現と精製
N-ABD-rhArg(配列番号49)融合タンパク質を生成するため、pN-ABD-rhArgで形質転換した大腸菌ER2566を50mLの種培地(1.5gの酵母エキス、0.25gのNaCl及び5mgのアンピシリン)中、30℃でオービタルシェーカーにて250rpmで16時間増殖させた。次に、種培養物を1Lの発酵培地(10gの酵母エキス、16gのトリプトン、6.7gのNaHPO.7HO、3.41gのKHPO、2.41gのNHCl、0.67gの(NHSO、10gのグリセロール、1gのグルコース、MgSO.7HO、1mMのCaCl及び0.1gのアンピシリン)に移し、1L/分で空気を供給して最低速度500rpmにて28℃で増殖させ、pHを7.4に維持した。攪拌速度を自動的に上昇させて最小溶存酸素pOを少なくとも20%に維持した。培養物の600nm波長での吸光度が光学濃度(OD)で15に達した際に、500mLの培地(10gの酵母エキス、16gのトリプトン、2.41gのNHCl、0.67gの(NHSO、20gのグリセロール)を31.25mL/時の速度で16時間に亘って連続供給した。遠心分離によって細胞を回収し、Ni-IDAセファロースカラムによってタンパク質を精製した。通常、1g/Lを超える精製タンパク質の培養物を得た。次に、TritonX-114法[Aida Y. and Pabst M.J. (1990) Journal of Immunological Methods. 132: 191-195、本参照をもって本明細書の一部を構成するものとする]によって精製タンパク質から内毒素を除去した。融合タンパク質N-ABD094-rhArg(配列番号50)、C-ABD-rhArg(配列番号51)、C-ABD094-rhArg(配列番号52)、N-ABD-BCA(配列番号53)、N-ABD094-BCA(配列番号54)、C-ABD-BCA(配列番号55)及びC-ABD094-BCA(配列番号56)を生成する手順は、細胞をそれに応じて各プラスミドで形質転換したこと以外はN-ABD-rhArg(配列番号49)の生成手順と同様であった。図1及び表2は、上述のアルブミン結合ドメイン組換えヒトアルギナーゼ(rhArg)、即ち、N-ABD094-rhArg(配列番号50)のタンパク質精製の例を示す。
Figure 2019228510000004
図12は調製の結果を示す。709mgのN-ABD094-rhArg(配列番号50)が得られ、比活性は205U/mg、タンパク質濃度は10.5mg/mLであった。
N-ABD094-rhArg遺伝子(配列番号38)の構築及びクローニング
N-ABD094-rhArg(配列番号38)遺伝子は、N-ABD-rhArg遺伝子(配列番号37)に基づく重複伸長PCRによって合成した。2種のPCR反応を行った。先ず、N-ABD094-rhArg遺伝子(配列番号38)を有するpRSET/lacプラスミドを使用した。ABD094-0F(配列番号57)とHuArgHinBam-R(配列番号64)による最初のPCR反応でrhArg領域を単離し、増幅した。PCR生成物の単離と精製は、0.7%アガロースゲル(Biorad社)(100Vで30分間)とゲルバンド精製キット(GE Healthcare Life Science社)によって行った。次に、2回目のPCR反応によってABD094をPCR生成物に添加した。ABD094-0F、ABD094-1F、ABD094-2F、ABD094-3F、ABD094-4F及びABD094-5F(配列番号57~62)を含む20倍希釈プライマー混合物を最初に滅菌ミリQ水で調製した。プライマー混合物とabdNde-Fは互いに重複している。2回目のPCR反応は、abdNde-F(配列番号63)、HuArgHinBam-R(配列番号64)及び20倍希釈プライマー混合物によって行った。PCR生成物を上述と同じ方法で単離及び精製した。プライマーの配列を表3に示す。プライマーの結合位置を図2Aに示す。得られたN-ABD094-rhArg融合遺伝子(配列番号38)のDNA配列とそのタンパク質配列を図2Bに示す。
Figure 2019228510000005
PCR生成物とpRSET/lacベクターをBamHI-HFとNdeI(New England BioLabs社)によって37℃で2時間二重消化した。インサートとベクターの両方の単離と精製は、0.7%アガロースゲル(Biorad社)(100Vで30分間)とゲルバンド精製キット(GE Healthcare Life Science社)によって行った。次に、インサートとベクターをT4リガーゼ(New England BioLabs社)によって室温で20分間連結させた。コンピテント細胞を組換えDNAで形質転換し、50μg/mLのカナマイシンを含むLBプレートに広げた。LBプレートを37℃で一晩インキュベートした。8個のコロニーを選択し、abdNde-FとHuArgHinBam-Rを用いたPCRによってN-ABD094-rhArgの存在を確認した。PCRで陽性の結果が得られたコロニーを、50μg/mLカナマイシンを含む5mLの2×TY中、30℃で一晩更に増殖させた。細菌ブロスを1.7mLの微量遠心機チューブ中、16100×gで1分間遠心分離した。細菌ペレットを可溶化バッファー(50mMのTris-HCl、0.1MのNaCl、1mMのMnCl、pH7.4)に再懸濁させ、液体窒素中で凍結と融解を繰り返すことにより破壊した。細胞可溶化物を遠心分離してタンパク質溶液を得た。DAMOによるアルギナーゼ活性アッセイを行ってアルギナーゼの存在を試験した。
BCA発現ベクターの構築
BCA(Pubmed受入番号:U48226)をコードする遺伝子はGenScript社(そこで新規に合成されpUC57クローニングベクターに挿入)から入手した。単一のシステイン残基を部位特異的変異誘発によって導入し、6ヒスチジンタグをC末端に付加してタンパク質精製プロセスを容易にした。遺伝子操作したBCA遺伝子をpET-3aベクターにサブクローニングし、BCA発現用BL21(DE3)コンピテント細胞に形質転換した。BCA(PDB:2CEV)の結晶構造はタンパク質データバンクから検索することができる。遺伝子操作したBCA(S161C)-His(配列番号89)のタンパク質配列を図3に示す。
BCA-ABD発現ベクターの構築
重複PCRによってアルブミン結合ドメイン(ABD)をコードする一対のプライマーを構築し、増幅した。即ち、200ngのプライマーを鋳型として使用し、1ユニットのiProof高忠実度DNAポリメラーゼ(Bio-Rad社)で増幅した。プライマーを98℃で30秒間インキュベートし、98℃で10秒間の熱変性、60℃で30秒間のアニーリング、及び72℃で15秒間の伸長を含む15サイクルの増幅を行った。
5’-センス-ABD
GCGCAGCATGATGAAGCCGTGGATGCGAACAGCTTAGCTGAAGCTAAAGTCTTAGCTAACAGAGAACTTGACAAATATGGAGTAAGTGACTATTACAAGAACC(配列番号77)
5’-アンチセンス-ABD
TTAAGGTAATGCAGCTAAAATTTCATCTATCAGTGCTTTTACACCTTCAACAGTTTTGGCATTGTTGATTAGGTTCTTGTAATAGTCACTTACTCCAT(配列番号78)
この一対のプライマーによって構築したABDコード遺伝子を2種の異なるプライマーセットによって増幅し、BCA-6×His-ABD(BHAとも称する)(配列番号75)とBCA-ABD-6×His(BAHとも称する)(配列番号76)を構築した。BHAを構築するため、ABDを先ず以下の一対のプライマーで増幅したが、順方向プライマーを6-ヒスチジンタグを介したBCAとの重複PCR用に設計し、逆方向プライマーを使用したpET-3aベクターとの連結用にBamHI制限部位と終止コドンを導入した。
ABDクローニング用順方向プライマー:
5’-GCATCACCATCACCATCACGCGCAGCATGATGAAG-3’(配列番号79)
ABDクローニング用逆方向プライマー:
5’-cgGGATCCTTAAGGTAATGCAGCTAAAATTTCATCTAT-3’(配列番号80)
ABDの増幅によって得たPCR生成物を1.5%アガロースゲル電気泳動に供し、PCR生成物を精製した。一方、余分な変異(V20P)を有する遺伝子操作されたBCAを、終止コドンを除去した以下の一対のプライマーを使用してクローン化した。
BCAクローニング用順方向プライマー:
5’-ggaattccCATATGAAGCCAATTTCAATTATCG-3'(配列番号81)
BCAクローニング用逆方向プライマー:
5’-GTGATGGTGATGGTGATGCA-3’(配列番号82)
上述のプライマーによって増幅したBCAを1%アガロースゲル電気泳動に供し、PCR生成物を精製した。上述のBCAとABDのPCR生成物を重複PCRによって繋留した。同様に、200ngのBCAとABDを鋳型として使用し、1ユニットのiProof高忠実度DNAポリメラーゼで増幅した。BCAとABDを98℃で30秒間インキュベートし、98℃で10秒間の熱変性、60℃で30秒間のアニーリング、及び72℃で30秒間の伸長を含む15サイクルの増幅を行った。重複PCRによって得た生成物を鋳型として使用し、以下の一対のプライマーを使用して更なる増幅を行った。
BHAクローニング用順方向プライマー:
5’-ggaattccCATATGAAGCCAATTTCAATTATCG-3’(配列番号83)
BHAクローニング用逆方向プライマー:
5’-cgGGATCCTTAAGGTAATGCAGCTAAAATTTCATCTAT-3’(配列番号84)
PCR生成物を1%アガロースゲル電気泳動に供し、BHAに相当するバンドをゲルから切除して精製した。
BAHを構築するため、ABDを先ず以下の一対のプライマーで増幅したが、順方向プライマーをBCAとの直接重複PCR用に設計し、逆方向プライマーを介してBamHI制限部位、6-ヒスチジンタグ及び終止コドンを導入した。
ABDクローニング用順方向プライマー:
5’-CGTTGTTTGGTGAAAAACTCATGGCGCAGCATGATGAAG-3’(配列番号85)
ABDクローニング用逆方向プライマー:
5’-cgGGATCCTTAGTGATGGTGATGGTGATGAGGTAATGCAGCTAAAATTTCATCTAT-3’(配列番号86)
ABDの増幅によって得たPCR生成物を1.5%アガロースゲル電気泳動に供し、PCR生成物を精製した。余分な変異(V20P)を有する遺伝子操作されたBCAを、終止コドンと6-ヒスチジンタグを除去した以下の一対のプライマーを使用してクローン化した。
BCAクローニング用順方向プライマー:
5’-ggaattccCATATGAAGCCAATTTCAATTATCG-3’(配列番号81)
BCAクローニング用逆方向プライマー:
5’-GTGATGGTGATGGTGATGCA-3’(配列番号82)
上述のプライマーによって増幅したBCAを1%アガロースゲル電気泳動に供し、PCR生成物を精製した。上述のBCAとABDのPCR生成物を重複PCRによって繋留した。同様に、200ngのBCAとABDを鋳型として使用し、1ユニットのiProof高忠実度DNAポリメラーゼで増幅した。BCAとABDを98℃で30秒間インキュベートし、98℃で10秒間の熱変性、60℃で30秒間のアニーリング、及び72℃で30秒間の伸長を含む15サイクルの増幅を行った。重複PCRによって得た生成物を鋳型として使用し、以下の一対のプライマーを使用して更なる増幅を行った。
BAHクローニング用順方向プライマー:
5’-ggaattccCATATGAAGCCAATTTCAATTATCG-3’(配列番号87)
BAHクローニング用逆方向プライマー:
5’-cgGGATCCTTAGTGATGGTGATGGTGATGAGGTAATGCAGCTAAAATTTCATCTAT-3’(配列番号88)
PCR生成物を1%アガロースゲル電気泳動に供し、BHAに相当するバンドをゲルから切除して精製した。BHAとBAHをコードするPCR生成物とpET-3aベクターをNdeIとBamHIで二重消化した。BHAとBAHをpET-3aベクターに連結させ、TOP10コンピテント大腸菌細胞に形質転換した。BHAとBAHのヌクレオチド配列はDNA配列決定によって確認した。BHA又はBAHインサートを含むpET-3aベクターをタンパク質発現用BL21(DE3)ベクターに形質転換した。
BHAとBAHのタンパク質構築物
この研究で使用したBCAのタンパク質配列は、C末端の6×HisタグとS161C変異を含む以外は、Bewley et al.(Structure 7, 435-448, 1999)によって使用されたもの(PDB ID:2CEV、本参照をもって本明細書の一部を構成するものとする)と同様である。BCA-6×His-ABD(BHA)およびBCA-ABD-6×His(BAH)の両方の構築物を設計したが、大腸菌細胞ストックはBHAおよびBAHを発現することができる。BHAおよびBAHの両方において、BCA部分は20位のバリン残基がプロリンに変異したBCAの変異型(V20P)であり、ABD部分はリンカー配列(AQHDEAVDANS)を有するABDの野生型である(Jonsson et al., 2008, Protein Eng. Des. Sel. 21, 515-527)。ABD部分は融合タンパク質のまさしくC末端に位置する(BHAの場合)か、BCAと6×ヒスチジンタグの間に融合されている(BAHの場合)。この研究で使用したBCA、BHA及びBAHのタンパク質配列のアラインメントを図4に示す。
BCA(野生型)アミノ酸配列(PDB ID:2CEV):
MKPISIIGVPMDLGQTRRGVDMGPSAMRYAGVIERLERLHYDIEDLGDIPIGKAERLHEQGDSRLRNLKAVAEANEKLAAAVDQVVQRGRFPLVLGGDHSIAIGTLAGVAKHYERLGVIWYDAHGDVNTAETSPSGNIHGMPLAASLGFGHPALTQIGGYSPKIKPEHVVLIGVRSLDEGEKKFIREKGIKIYTMHEVDRLGMTRVMEETIAYLKERTDGVHLSLDLDGLDPSDAPGVGTPVIGGLTYRESHLAMEMLAEAQIITSAEFVEVNPILDERNKTASVAVALMGSLFGEKLM(配列番号70)
BCA(S161C)-Hisアミノ酸配列:
MKPISIIGVPMDLGQTRRGVDMGPSAMRYAGVIERLERLHYDIEDLGDIPIGKAERLHEQGDSRLRNLKAVAEANEKLAAAVDQVVQRGRFPLVLGGDHSIAIGTLAGVAKHYERLGVIWYDAHGDVNTAETSPSGNIHGMPLAASLGFGHPALTQIGGYCPKIKPEHVVLIGVRSLDEGEKKFIREKGIKIYTMHEVDRLGMTRVMEETIAYLKERTDGVHLSLDLDGLDPSDAPGVGTPVIGGLTYRESHLAMEMLAEAQIITSAEFVEVNPILDERNKTASVAVALMGSLFGEKLMHHHHHH(配列番号71)
BHAアミノ酸配列:
MKPISIIGVPMDLGQTRRGPDMGPSAMRYAGVIERLERLHYDIEDLGDIPIGKAERLHEQGDSRLRNLKAVAEANEKLAAAVDQVVQRGRFPLVLGGDHSIAIGTLAGVAKHYERLGVIWYDAHGDVNTAETSPSGNIHGMPLAASLGFGHPALTQIGGYCPKIKPEHVVLIGVRSLDEGEKKFIREKGIKIYTMHEVDRLGMTRVMEETIAYLKERTDGVHLSLDLDGLDPSDAPGVGTPVIGGLTYRESHLAMEMLAEAQIITSAEFVEVNPILDERNKTASVAVALMGSLFGEKLMHHHHHHAQHDEAVDANSLAEAKVLANRELDKYGVSDYYKNLINNAKTVEGVKALIDEILAALP(配列番号75)
BAHアミノ酸配列:
MKPISIIGVPMDLGQTRRGPDMGPSAMRYAGVIERLERLHYDIEDLGDIPIGKAERLHEQGDSRLRNLKAVAEANEKLAAAVDQVVQRGRFPLVLGGDHSIAIGTLAGVAKHYERLGVIWYDAHGDVNTAETSPSGNIHGMPLAASLGFGHPALTQIGGYCPKIKPEHVVLIGVRSLDEGEKKFIREKGIKIYTMHEVDRLGMTRVMEETIAYLKERTDGVHLSLDLDGLDPSDAPGVGTPVIGGLTYRESHLAMEMLAEAQIITSAEFVEVNPILDERNKTASVAVALMGSLFGEKLMAQHDEAVDANSLAEAKVLANRELDKYGVSDYYKNLINNAKTVEGVKALIDEILAALPHHHHHH(配列番号76)
BHAとBAHの生成
BHAとBAHを発現する大腸菌細胞ストックを使用した。種培養物を調製するため、100μg/mLのアンピシリンを補充した10mLのLB培地に少量の大腸菌BL21(DE3)グリセロールストックを播種した。種培養物を700rpmで振盪させながら37℃で一晩(約16時間)増殖させた。次に、一晩種培養物を2.5mL使用し、100μg/mLのアンピシリンを含む250mLのLB培地に播種した。接種した細胞を280rpmで2~4時間振盪させながら37℃で増殖させ、これを波長600nmでの光学濃度(OD600)が0.6~0.8になるまで行った。次に、IPTG(0.2mM)を培地に添加し、標的タンパク質の過剰発現を誘発した。細胞を更に4時間増殖させ、4500rpmで遠心分離を行って回収した。
ニッケルアフィニティークロマトグラフィーによるタンパク質精製
大腸菌細胞ペレットを50mMのTris-HCl、100mMのNaCl(pH7.4)を含むバッファーに再懸濁させ、超音波処理により破砕した。次に、遠心分離を10000rpmで40分間行って細胞片を除去した。Ni2+を充填し、AKTAピュリファイアを使用してバッファーA(20mMのリン酸ナトリウム、0.5MのNaCl、pH7.4)で平衡化させた5mLのHiTrapキレーティングカラム(GE Healthcare社)に上清を添加した。0~0.5Mのイミダゾール勾配を用いてタンパク質を溶出させたが、これはバッファーAとバッファーBを各種比率で組み合わせて行った(バッファーA中0.5Mイミダゾール)。12%ポリアクリルアミドゲルを使用したドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)によって画分を分析し、標的タンパク質を含むものをプールした。プールした画分を濃縮し、遠心濾過装置(Amicon社)又は接線流濾過(TFF)装置(Millipore社)を使用して、濃縮且つプールした画分のバッファーを20mMのリン酸ナトリウム(pH7.4)と置換した。BHAとBAHの場合、膜のカットオフ値は30000MWであった。次に、残余分を所望の濃度に希釈し、0.2μmシリンジフィルターで滅菌濾過し、4℃で保存した。
BHA精製のクロマトグラムによれば、イミダゾールの濃度を上昇させた溶出プロセス中に3個のピークが観察される(図5A)。最初の2個のピークは融合し、イミダゾール濃度が約0.13Mに達した際に発生する3番目のピークがそれに続く(図5A)。SDS-PAGEで分析すると、3番目のピークは主に約40kDaの標的タンパク質で構成されていることが分かる(図5B、レーンF4~F8)。アミノ酸配列に基づいて計算したBHAモノマーの分子量は39.44kDaであるため、この標的タンパク質はBHAである可能性が高い。従って、BHAの発現と精製に成功したことが示唆される。比較的純粋なBHAを含む画分を共にプールして更なるプロセスに備えた。
BAH精製のクロマトグラムによれば、イミダゾールの濃度を上昇させた溶出プロセス中に3個のピークが観察される(図5C)。2番目と3番目のピークは融合し、イミダゾール濃度が約0.18Mに達した際に発生する(図5C)。SDS-PAGEで分析すると、この融合したピークは主に、BAHである可能性が高い約40kDaの標的タンパク質(図5D、レーンF6~F14)で構成されることが分かる。約0.13Mのイミダゾールで溶出するBHAと比較して、BAHはニッケルアフィニティーカラムにより強く結合すると思われる。これは恐らく、ABDドメインをBCAと6×ヒスチジンタグの間に挿入すると6×ヒスチジンタグがより露出するように作用し、BAHがBHAよりも効果的にカラム内のニッケルイオンと相互作用できるためである。比較的純粋なBAHを含む画分を共にプールし、遠心濾過装置の代わりに接線流濾過(TFF)装置(Millipore社)を使用してバッファーを交換した。
酵素活性の1単位は、標準的なアッセイ条件下で1分間当たり1μmolの尿素の生成を触媒する酵素(BCA、BHA又はBAH)の量で定義される。酵素の比活性はタンパク質1mg当たりの活性単位で表す。標準的なDAMOアッセイ条件下(37℃、pH7.4)では、新たに精製したBHA(配列番号75)の比活性値は220.6±15.8U/mgであり、これはBCA(S161C)-His(配列番号89)の値(243.30U/mg)に近い。
BCAポリペプチドとABDポリペプチドを含む融合タンパク質の場合、振盪フラスコ培養物1L当たり約290mgのタンパク質という非常に高いタンパク質収量がBHA(配列番号75)の場合に得られた。ABD融合タンパク質の収量は使用する発現系に大きく依存する。sCR1と融合したABDの収量は、チャイニーズハムスター卵巣細胞培養物1mL当たり24時間毎に0.4~1.1μgの範囲であることが報告されている(Makrides et al., 1996, J. Pharmacol. Exp. Ther. 277, 534-542)。どのHEK293細胞培養物1Lからも約2~15mgの一本鎖二重特異性抗体-ABD融合タンパク質を得ることができる(Hopp et al., 2010, Protein Eng. Des. Sel. 23, 827-834; Stork et al., 2007, Protein Eng. Des. Sel. 20, 569-576)。大腸菌BL21宿主で発現したABD-TolA融合タンパク質の収量は20mg/L(LBブロス培地)である(Ahmad et al., 2012, Proteins 80, 774-789)。比較すると、BHAの収量は遥かに高い。我々の結果から、BHA(配列番号75)の生成が簡単であり、費用対効果が高いことが分かった。
BCA(S161C)-His(配列番号89)の発現と精製
プラスミドpET-3a-BCA(S161C)-Hisで形質転換した大腸菌株BL21(DE3)pLysSのオーバーナイト種培養物を100μg/mLのアンピシリンを含む5mLのLB培地で調製し、振盪フラスコ中、280rpmで振盪させながら37℃で16時間増殖させた。100μg/mLのアンピシリンを含む250mLのLB培地の場合、2.5mLの一晩培養物を添加し、光学濃度(OD600)が600nmで0.8~0.9に達するまで280rpmで振盪させながら37℃で培養した。イソプロピルβ-D-チオ-ガラクトピラノシド(IPTG)を最終濃度が0.2mMとなるように添加した。誘発を4時間行った後、12000×gで20分間、4℃で遠心分離して細胞を回収した。細胞ペレットは、超音波処理によって破砕して精製まで進めるか、又は必要になるまで-20℃で保存することができた。10mMのMnClを含む20mLの可溶化バッファー(50mMのTris-HCl、100mMのNaCl、pH7.4)に細胞ペレットを懸濁させた。先ず、40%の振幅で30秒毎にパルスを発生させた超音波処理を氷上で10分間行って細胞を破砕した。12000×g、4℃で20分間遠心分離を行って細胞片を除去した。上清を70℃で15分間インキュベートし、熱処理工程中に形成した沈殿物を遠心分離によって除去した。可溶性画分を0.22μmフィルターで濾過した後、5mLのHisTrapキレーティングHPカラムにロードした。試料ローディング中にフロースルー画分を回収し、未結合のタンパク質を5カラム体積(CV)の開始バッファーによって、又はベースラインが安定するまで洗い流した。イミダゾール(開始バッファー中の0.5Mイミダゾール)を使用した競合勾配溶出によってカラムに結合した標的タンパク質を溶出させた。カットオフ値が10kDaMWのAmicon Ultra-15遠心濾過ユニットを使用し、製造元の指示に従って、pH7.4の20mMリン酸ナトリウムでバッファー交換する標的画分を特定して合一してプールした。試料を滅菌条件下で0.22μmフィルターによって濾過し、必要になるまで4℃で保存した。
流加バッチ発酵からのBCA(S161C)-His(配列番号89)の精製
5Lのバイオリアクター内でのBCA(S161C)-His発現大腸菌細胞の発酵によって湿細胞重量が248.86gとなった。デオキシリボヌクレアーゼとリボヌクレアーゼを含む可溶化バッファーに細胞ペレットを再懸濁させ、均質化によって放出された大量のDNAとRNAをこれらの酵素によって分解し、細胞可溶化物の粘度を低下させた。細胞可溶化物をホモジナイザーを3回通過させた後、37℃で15分間インキュベートして粘度を更に低下させ、続いて遠心分離を行って可溶性画分を得た。精製の最初の工程では、熱処理を70℃で15分間行って非標的不純物を除去し、熱不安定性のタンパク質を沈殿させ、熱安定性BCA(S161C)-His(配列番号89)を遠心分離によって回収した。
XK50カラムに充填された総容積が196mLのNiアフィニティーカラムによって標的タンパク質を含む可溶性画分を更に精製した。即ち、4セグメント溶出プログラムを使用してBCA(S161C)-His(配列番号89)をNiアフィニティーカラムから溶出させた。溶出バッファーの0~30%の第1の溶出勾配は、カラムに非特異的に結合したタンパク質を除去することを目的とした。第2のセグメントを30%に維持し、これによって非特異的な結合タンパク質を完全に溶出させた。溶出バッファーの濃度を30%から70%に上げることによって第3のセグメントでは標的タンパク質を溶出させた。70~100%の溶出バッファーである第4のセグメントでは、カラムに依然として結合している残りのタンパク質を溶出させた。UV波長280nmに吸光度を有する画分をSDS-PAGEによって分析し、標的タンパク質を含むE1~A’5の24個の画分(各50mL)を共にプールした(図6A及び6B)。BCA(野生型)(配列番号70)の六量体構造の理解に基づき、高濃度のイミダゾールを含むプールした画分を接線流濾過(TFF)システムによって脱塩し、30kDaのNMWCの膜をTFFに使用した。精製したBCA(S161C)-His(配列番号89)をPBSバッファー中に保持し、滅菌条件下で0.2μmフィルターによって濾過し、使用するまで4℃で保存した。2工程のパイロット規模精製によって約1096mgのBCA(S161C)-His(配列番号89)タンパク質が得たが、比活性は264U/mgであることが確認された。
アルギナーゼ酵素活性の確認
酵素反応における生成物である尿素の量を決定するジアセチルモノオキシム(DAMO)を使用した直接比色法によって、BCA(S161C)-His(配列番号89)の活性をアッセイした。即ち、0.3mLのBCA溶液と0.15mLの水及び720mMのアルギニン基質(pH7.4)の工程希釈液を37℃で10分間、別々にプレインキュベートした。0.3mLのアルギニン基質をプレインキュベートした酵素溶液に添加して酵素反応を行った。反応混合物を37℃で正確に5分間インキュベートし、反応停止試薬[50%トリクロロ酢酸(TCA)]を添加して反応を停止させた。試料ブランクを同様の方法で調製したが、同量の酵素溶液をTCA溶液の後に添加した。
上述の反応で形成された尿素は、世界保健機関(WHO)によって記載されたDAMO直接比色法を用いて定量化した。このプロトコルは、血中尿素濃度を測定するための標準操作手順(SOP)としてWHOによって採用されている。SOPに従って数種の試薬を調製し、混合酸試薬の調製は、100mLの濃硫酸を400mLの蒸留水にゆっくりと添加した後、0.3mLの酸試薬原液(15mLの蒸留水に0.5gの塩化第二鉄六水和物を溶解し、濃リン酸によって25mLとしたもの)を添加して行った。混合発色試薬の調製は、35mLの発色試薬原液A(50mLの蒸留水に1gのDAMOを溶解)と35mLの発色試薬原液B(50mLの蒸留水に0.25gのチオセミカルバジドを溶解)を混合し、蒸留水で500mLにすることによって行った。作業用尿素標準液の調製は、5mLの尿素標準原液(50mLの安息香酸に0.5gの尿素を溶解)を45mLの安息香酸に添加して行った(1g/dL)。DAMOアッセイは、100μLの20倍希釈反応混合物をガラス製試験管に添加した後、蒸留水、混合発色試薬及び混合酸試薬を1:1:1の比率で混合して新たに調製した発色試薬を3mL添加して行った。試験管を100℃で15分間インキュベートし、室温まで5分間冷却させた。540nmにおける吸光度を測定した。アルギナーゼの1単位は、37℃、pH7.4で1分間当たり1マイクロモルのアルギニンをオルニチンと尿素に転換する酵素の量として定義される。以下の式を使用して酵素活性を計算し、試料の吸光度値をブランクから差し引いた。
ΔA540nm試料=A540nm試料-A540nm試料ブランク
生成した尿素の量は標準曲線から計算する。
単位/mL酵素=(遊離した尿素のμmol)(df)/(5)(0.3)
df=酵素の希釈係数
0.3=使用した酵素の体積(mL)
5=単位定義当たりのアッセイ時間(min)
タンパク質濃度の測定
タンパク質濃度はブラッドフォードアッセイによって求めた。タンパク質アッセイ色素試薬濃縮物(Bio-rad社)を使用前に5倍希釈した。20μLの試料を1mLの希釈色素試薬と混合し、室温で10分間インキュベートした。タンパク質濃度を求めるため、クイックスタートウシ血清アルブミン標準セット(Bio-rad社)を標準品として0~1mg/mLの範囲で用い、混合物を595nmで測定した。
BHA(配列番号75)融合タンパク質の酵素活性
酵素活性がHSAの存在下で影響を受けるかどうか見出すため、BHA(配列番号75)のアルギニン異化活性をアッセイした。結果から、BHA(配列番号75)の活性が活性アッセイに添加した各量のHSAに影響を受けないことが分かった。結合に関する研究で試験したBHA:HSAのモル比は1:10、1:5、1:1、5:1及び10:1であった。これら全ての条件下で、BHA(配列番号75)単独とBHA-HSA複合体の測定した比活性は非常に類似しており、約200U/mgであった。
非変性PAGE分析によって明らかになったHSAへのN-ABD-rhArg(配列番号49)又はBHA(配列番号75)の結合
ABDをrhArg又はBCAに融合させる場合、融合タンパク質がアルブミン結合能と酵素活性の両方を保持することが重要である。融合タンパク質におけるABDの結合能を実証するため、一定量のヒト血清アルブミン(HSA)をN-ABD-rhArg(配列番号49)又はBHA(配列番号75)と共に各種モル比でインキュベートした。反応混合物の分析は、タンパク質をサイズと立体構造によって分離する非変性PAGEによって天然状態で行った。
図7では、HSAとN-ABD-rhArg(配列番号49)の各々の移動度のみが非変性PAGEのレーン2及び3にそれぞれ示されている(図7)。一定量のHSA(30ピコモル)をN-ABD-rhArg(配列番号49)に対して各種モル比で滴定したが、結果をレーン5~9に示す。結合反応におけるN-ABD-rhArg(配列番号49)の量を増加させることによって遊離HSAの量は比例して減少したが、これはN-ABD-rhArg(配列番号49)のHSAへの特異的結合を示す。図8では、HSAとBHA(配列番号75)の各々の移動度のみが非変性PAGEのレーン6及び7にそれぞれ示されている(図8)。一定量のHSA(60ピコモル)をBHA(配列番号75)に対して各種モル比で滴定したが、結果をレーン1~5に示す。結合反応におけるBHA(配列番号75)の量を増加させることによって遊離HSAの量は比例して減少したが、これはBHA(配列番号75)のHSAへの特異的結合を示す。
BHA(配列番号75)のインビボ研究
8週齢の6匹のBALB/cマウスをBHA(配列番号75)のインビボ研究に使用した。BHA(配列番号75)を注射する前に血液試料を各マウスから採取し、対照として使用した(0時間)。マウスを無作為に2群に分け、それぞれ腹腔内(i.p.)注射用及び静脈内(i.v.)注射用とした。BHA(配列番号75)(250U)を各マウスに注射し、注射から6時間後、24時間後、72時間後、及び120時間後に血液試料を採取した。各血液試料の血漿(16μL)をアミノ酸分析計(Biochrom社)で分析し、アルギニンとオルニチンの含有量を得た。
図9に示すように、BHA(BHA配列番号75)のインビボアルギニン枯渇効果をBALB/cマウスで研究し、BCA(S161C)-His(配列番号89)の場合と比較した。この結果によれば、BCA(S161C)-His(配列番号89)の注射後24時間以内に血漿中アルギニン濃度は迅速に正常に戻る(図9)。これに対し、BHA(配列番号75)の注射後少なくとも24時間は、血漿中アルギニン濃度は検出不可能なレベルに維持されている(図9)。この結果から、ABDの融合がインビボでのBCA(S161C)-His(配列番号89)の循環半減期を延長させたことが分かる。この結果から、ABD融合がアルギニン枯渇酵素の薬力学的特性を改善するのに実現可能で有望な戦略であることが分かる。投与経路はインビボでのBHA(配列番号75)のアルギニン枯渇効果に影響を及ぼさないように思われる(図9)。更に、明らかな副作用が観察されておらず、全てのマウスはBHA(配列番号75)の投与に対して良好な耐性を示した。まとめると、BHA(配列番号75)等の本明細書に記載の融合タンパク質は、天然BCA(S161C)-His(配列番号89)をABD融合なしで使用した場合(8時間)と比べて遥かに長い期間(少なくとも24時間)に亘って血漿中アルギニンを検出不可能なレベルまで低下させることによって、ABD融合戦略の実現可能性を証明した。
N-ABD-rhArg(配列番号49)のインビボ薬力学研究
アルギナーゼの抗癌効果はかなり昔から検討されていた(Greenberg and Sassenrath, 1953, Cancer Res. 13, 709-715)。アルギナーゼはインビトロで非常に良好な抗癌効果があることが分かった。しかし、血漿中半減期が短いため、インビボでは効果が殆ど観察されなかった。血漿中アルギニンは、C3Hマウスに天然アルギナーゼを注射してから3時間後に最低レベルまで低下した。同じモデルで注射から5時間後にアルギニンは正常な基礎レベルまで上昇した(Greenberg and Sassenrath, 1953, Cancer Res. 13, 709-715)。従って、アルギナーゼは血漿中半減期が短いため、無効な抗癌剤と見なされていた。これは、血漿中半減期がインビボでの酵素薬の効力に影響を及ぼし得ることを示唆した。N-ABD-rhArg(配列番号49)とN-ABD094-rhArg(配列番号50)は同様の比活性を示した。我々は、ABDとの融合によるrhArg(配列番号103)の血漿中半減期の延長が効果的な方法であることを見出した。血漿中半減期が延長したrhArg(配列番号103)の製造コストを削減するため、N-ABD-rhArg(配列番号49)とN-ABD094-rhArg(配列番号50)を開発した。
この研究では15匹の雌性BALB/cマウス(10週齢)を使用した。1ケージ当たり5匹の群に保った。単一用量のN-ABD-rhArg(配列番号49)(それぞれ500U、250U及び125U)を腹腔内注射によってマウスに投与した。ヘパリン処理した毛細管を使用して伏在静脈から血液試料を採取し、800×gで遠心分離して血漿を得た。Biochrom30アミノ酸分析計を使用し、16マイクロリットルの血漿試料をL-アルギニン濃度測定に供した。結果を図10に示す。血漿中アルギニン濃度を測定すると、BALB/cマウスにおいて、500UのN-ABD-rhArg(配列番号49)が血漿中アルギニンをBiochrom30アミノ酸分析計の検出限界(3μM)未満のレベルまで少なくとも9日間枯渇させることができ、250UのN-ABD-rhArg(配列番号49)が血清中アルギニンをBiochrom30アミノ酸分析計の検出限界未満のレベルまで少なくとも7日間枯渇させることができ、125UのN-ABD-rhArg(配列番号49)が血清中アルギニンをBiochrom30アミノ酸分析計の検出限界未満のレベルまで少なくとも3日間枯渇させることができることが分かった。これらの結果は、ABDとの融合によってrhArgの血漿中半減期が延長できることを明確に示唆する。BHA(配列番号75)(図9)と比較して、N-ABD-rhArg(配列番号49)は、かなり長期間に亘ってマウスでアルギニンを非常に低いレベルまで枯渇させることができるが、これは融合タンパク質の合理的設計の要件の重要性を強調している。
N-ABD094-rhArg(配列番号50)のインビボ薬力学及び薬物動態研究
この研究では50匹のC57BL/6J雄性マウス(10~12週齢)を使用した。500UのN-ABD094-rhArg(配列番号50)を単一用量腹腔内注射によってマウスに投与した。ヘパリン処理した毛細管を使用して伏在静脈から血液試料を採取し、800×gで遠心分離して血漿を得た。Agilent6460液体クロマトグラフィー/エレクトロスプレーイオン化三連四重極型質量分析計(検出限界:0.3μM L-アルギニン)を使用し、5マイクロリットルの血漿試料を液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析によるL-アルギニン濃度の測定に供した。ヒトアルギナーゼを特異的に検出し、マウスアルギナーゼとは反応しないヒトアルギナーゼI ELISA(酵素結合免疫吸着測定法)キット(Abcam社)を使用して、5マイクロリットルの血漿試料をN-ABD094-rhArg(配列番号50)濃度の測定に供した。
注射後、血清の採取を2時間目、4時間目、8時間目、16時間目、24時間目(1日目)、2日目~12日目は24時間間隔で、12日目~30日目は72時間間隔で行った。使用するマウスの数のバランスを取り、採血の結果としてマウスからN-ABD094-rhArg(配列番号50)を除去することに起因する薬物動態及び薬力学研究の結果への影響を最小限に抑えるため、マウスを10群(各群でn=5)に分け、以下の括弧内に示す時点での採血に供した。群1(2時間目)、群2(4時間目)、群3(8時間目)、群4(16時間目)、群5(24時間目)、群6(2日目、7日目、12日目)、群7(3日目、8日目、18日目)、群8(4日目、9日目、21日目)、群9(5日目、10日目、15日目、24日目)、群10(0日目、6日目、11日目、27日目、30日目)。薬力学及び薬物動態の結果をそれぞれ図13と図14に示す。
血漿中アルギニン濃度の測定結果から、500UのN-ABD094-rhArg(配列番号50)を腹腔内注射によって投与すると、注射後2時間以内に血漿中アルギニン濃度を1μMまで枯渇させることができたことが分かった(図13)。血漿中アルギニン濃度は1μM以下で10日間維持された後、数日間で徐々に上昇した(表4)。血漿中アルギニン濃度は18日目~21日目の間に基礎レベルの半分まで戻った。これらの結果は、N-ABD094-rhArg(配列番号50)が、かなり長期間に亘ってマウスで血漿中アルギニンを非常に低いレベル(1μM以下)に維持できることを示唆する。
Figure 2019228510000006
薬物動態パラメータは2コンパートメントモデルで計算する。
排出速度定数keは次の式で計算する。
Figure 2019228510000007
血漿中半減期t1/2は次の式で計算する。
Figure 2019228510000008
曲線下面積(AUC)は次の式を使用し、台形公式によって計算する。
Figure 2019228510000009
比較のために、文献で報告されている天然rhArgの半減期を使用する。融合タンパク質N-ABD094-rhArg(配列番号50)の排出半減期は3.9±0.3日であり(図14)、これは、半減期が非常に短い非融合タンパク質rhArgよりも遥かにゆっくりと排除されることを意味する。具体的に比較すると、ヒトアルギナーゼは循環中の半減期が僅か数分であり(Georgiou et al.、US8440,184B2)、これは結合によって循環時間が劇的に延長することを示す。これらの結果は、rhArgの血漿中半減期がABDとの融合によって大幅に延長できることを明確に示唆する。天然ADIの循環半減期(数時間)はPEG化によって延長された(Ensor et al., Cancer Res 2002, 62:5443-5450)。PEG化ADIの循環半減期は2~3日であり、PEG化ADI(天然ADIではない)のみがインビボでの腫瘍の増殖を阻害するのに有効であった。腹腔内注射によってラットに投与した天然rhArgとPEG化rhArgを比較した場合、ラット1匹当たり1500UのPEG化rhArg(6U/gラット)により、6日間に亘って循環アルギニンをアミノ酸分析計の検出限界(3μM)未満のレベルまで枯渇させることができたのに対し、天然rhArgは高用量(7500U/ラット)でも注射3時間以内で循環アルギニンは約20μMまでにしか低下せず、注射後約2日でアルギニンは基礎レベルに戻った(Tsui et al., Cancer Cell Int. 2009 Apr 17;9:9)。天然アルギナーゼは数分以内に循環から排除される(Savoca et al., Cancer Biochem. Biophy's. 7:261-268, 1984)。臨床使用の場合、循環中に何日間又は何週間も持続されるようにアルギナーゼを設計することが不可欠である。何ら修飾を施さなければ、ヒトアルギナーゼの半減期は循環中僅か数分であるが、これはアルギナーゼのサイズが腎臓による濾過を回避するのに十分な大きさではないためである(Georgiou et al.、US8440,184B2)。従って、本発明では、治療的使用のために循環持続性が劇的に改善された、完全に新しく高度に改良されたアルギナーゼ形態を開発した。
N-ABD094-rhArg(配列番号50)による処理は、正常な痩せたマウスにおいて脂肪量を減らし、脂質生成を抑制し、インスリン感受性を改善する。
マウスモデルに関する我々のデータから、500UのN-ABD094-rhArg(配列番号50)を8週齢の正常な痩せたC57BL/6J雄性マウスに単独腹腔内注射すると、血漿中アルギニン濃度を1μM以下に少なくとも10日間維持することができたが、これはN-ABD094-rhArg(配列番号50)の循環半減期が長いことを示す(図13)。従って、通常の固形飼料を給餌した正常な痩せたC57BL/6J雄性マウスを500UのN-ABD094-rhArg(配列番号50)の腹腔内注射によって10日間隔で4週間処理した。4週間処理した後、ベヒクル(生理食塩水)を注射した対照マウスと比較して、内臓(性腺周囲、腎周囲及び腸間膜脂肪体)と皮下(鼠径部脂肪体)の脂肪量が25%超減少した(図15A)。内臓白色脂肪組織(WAT)の組織学的検査によって、脂肪細胞のサイズが顕著に減少したことが分かった(図15B)。更に脂質生成を分析したところ、N-ABD094-rhArg(配列番号50)で処理したマウスでは、アセチル-CoAカルボキシラーゼ1(Acc1)、脂肪酸シンターゼ(Fasn)及びステアロイル-CoAデサチュラーゼ1(Scd1)等、数種の重要な脂質生成酵素のmRNAレベルが内臓WAT(図16A)及び肝臓(図16B)で劇的に抑制されたことが分かった。
肥満はインスリン抵抗性と非常に関連している。従って、インビボとインビトロの両方で研究を行い、N-ABD094-rhArg(配列番号50)処理がインスリン感受性に影響を及ぼすかどうか確認した。インスリン負荷試験(ITT)の結果から、N-ABD094-rhArg(配列番号50)で処理したマウスにおいて、2週間の薬物処理後にインスリン感受性が有意に上昇したことが分かった(図17A)。次に、C57BL/6J雄性マウスから調製した初代肝細胞を5U/mLのN-ABD094-rhArg(配列番号50)を含む培地で処理することによって、肝臓のインスリン感受性を具体的に検討したが、この濃度では細胞生存率に影響を及ぼさなかった(図17B)。N-ABD094-rhArg(配列番号50)又は対照(N-ABD094-rhArgを添加しない)培地で培養してから24時間後に、初代肝細胞を100nMのインスリンで20分間刺激した。次に、細胞を回収してウエスタンブロット分析を行い、インスリンシグナル伝達マーカーとして通常使用されるリン酸化プロテインキナーゼB(pAkt)を検出した。結果から、対照群と比較してN-ABD094-rhArg(配列番号50)処理群ではAktのリン酸化が顕著に増加したことが分かったが、これは肝臓インスリンシグナル伝達の増強を示す(図17C)。
正常な痩せたマウスでの知見から、N-ABD094-rhArg(配列番号50)は長い循環半減期を有し、脂肪量を減らし、脂質生成を抑制し、インビボとインビトロの両方でインスリン感受性を改善できることが分かった。これらの結果は、ABD-rhArg融合タンパク質が肥満及び関連する代謝障害(例えば、インスリン抵抗性や肝脂肪変性(脂肪肝))の予防と治療に使用可能であることを裏付けている。
N-ABD094-rhArg(配列番号50)による処理はHFD誘発性肥満を効果的に予防する
組換えヒトアルギナーゼ[N-ABD094-rhArg(配列番号50)]による処理によって、正常な痩せたマウスの脂肪量を大幅に減らし、脂質生成を抑制し、インスリン感受性を改善することができる。
肥満動物の脂肪症及び様々な代謝パラメータに対するN-ABD094-rhArg(配列番号50)の効果を試験した。高脂肪食誘発性肥満(DIO)マウスモデル[Wang and Liao, 2012, Methods Mol. Biol. 821:421-433](このモデルはヒトの肥満と多くの特徴を共有し、将来の抗肥満剤の試験に広く使用されている[Vickers et al., 2011, Br. J. Pharmacol. 164(4):1248-1262])を使用した。具体的には、多遺伝子性肥満モデルで最も一般的に使用されているマウス株であるC57BL/6Jを研究に使用した。高脂肪食給餌のC57BL/6Jマウスは顕著な体重増加を示し、肥満になり、高インスリン血症、高血糖症、耐糖能障害及びインスリン抵抗性を発症することがよく報告されている[Gallou-Kabani et al., 2007, Obesity 15(8):1996-2005]。
マウスを食餌誘発性肥満及び関連する代謝障害から予防するN-ABD094-rhArg(配列番号50)の有効性を確認するため、C57BL/6J雄性マウスに60kcal%脂肪含有の高脂肪食(HFD、Research Diets社、D12492)を給餌し(8週齢から12週間)、同時に200~300UのN-ABD094-rhArg(配列番号50)又はベヒクル対照としての生理食塩水を7日間隔で腹腔内注射した。10kcal%脂肪含有の対応する低脂肪食(LFD、Research Diets社、D12450J)を給餌し、生理食塩水を注射したC57BL/6Jマウスを各種測定の痩せた対照とした。
2個のコホート(各群n=5)で別々に行った。マウスを5匹の群に収容した。2個の独立したコホートで同様の結果が得られた。マウスの1個のコホートのデータを実施例18~22に要約した。
LFDを給餌し、ベヒクルで処理した痩せた対照[LFD(ベヒクル)群と称する]と比較して、HFD給餌のベヒクル処理雄性マウス[HFD(ベヒクル)群と称する]では体重(図18A)とサイズ(図18B)で顕著な増加を示し、主な内臓(性腺周囲、腎周囲及び腸間膜)貯蔵と皮下(鼠径部)貯蔵で白色脂肪組織(WAT)量が有意に増加した(図19A)。しかし、HFDを給餌したが同時にN-ABD094-rhArg(配列番号50)で処理したマウス[HFD(rhArg)群と称する]では、HFD摂取に起因する体重増加とWATの肥大を効果的に防ぐことができた。WATの組織学的検査によって、N-ABD094-rhArg(配列番号50)処理が脂肪細胞肥大を顕著に抑制したことが明らかになった(図19B)。gWATにおけるリアルタイムqRT-PCRを使用したmRNA発現レベルの分析によって、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(Pparg)及びステロール調節エレメント結合タンパク質1c(Srebp1c)、及び脂質生成酵素(Acc1とScd1)等の数種の重要な脂肪生成転写因子の劇的なダウンレギュレーションが更に示された(図19C)。また、これらの遺伝子はN-ABD094-rhArg(配列番号50)で処理したHFD給餌マウスの骨格筋でも有意にダウンレギュレートされた(図20)が、これはN-ABD094-rhArg(配列番号50)の抗脂質生成効果がWATに限定されないことを示唆する。
雄性マウスに対するN-ABD094-rhArg(配列番号50)の抗肥満効果を確認した後、雌性マウス(各群n=5)に対するN-ABD094-rhArg(配列番号50)の効果を研究して性差があるかどうか確認した。結果から、同時に行ったN-ABD094-rhArg(配列番号50)による処理は、HFD給餌の雌性マウス(8週齢から開始して12週間)の体重増加(図21A)及び主な内臓(性腺周囲、腎周囲及び腸間膜)貯蔵と皮下(鼠径部)貯蔵でWATの過剰蓄積(図21B)から保護するのに同様に有効であり、インスリン感受性(図22A)と耐糖能(図22B)を改善することができたことが分かった。
脂肪細胞に対するN-ABD094-rhArg(配列番号50)の効果を試験するため、脂肪生成を研究するための細胞ベースのモデルとして通常使用される[Green and Meuth, 1974, Cell 3:127-133]マウス3T3-L1前脂肪細胞を使用した。N-ABD094-rhArg(配列番号50)は3T3-L1細胞における脂肪生成と脂質生成を効果的に阻害し(図23)、数種の脂肪生成転写因子(図24A)と脂質生成酵素(図24B)のmRNAレベルを有意に抑制できることが分かった。3T3-L1前脂肪細胞をウシアルギナーゼ、又は他のアルギニン枯渇酵素-アルギニンデイミナーゼ(ADI)、又はアルギニンを含まない培地で培養した場合にも同様の阻害効果が観察された(図23)。アルギナーゼはL-アルギニンをL-オルニチンと尿素に変換するが、ADIはL-アルギニンをL-シトルリンに変換する。しかし、L-オルニチン、尿素又はL-シトルリンは、3T3-L1細胞における脂肪生成と脂質生成を阻害することができなかった(図23)。
更に、アルギニンを含まない培地に各種濃度のL-アルギニンを補充すると、脂肪生成と脂質生成に対するアルギニンの用量依存的効果が実証され(図25A)、Cebpa及びPparg及び脂質生成酵素Scd1等の重要な脂肪生成転写因子を活性化のためのアルギニン閾値濃度は10~40μMであった(図25B)。
即ち、これらの知見から、N-ABD094-rhArg(配列番号50)の抗脂肪生成及び抗脂質生成効果がアルギニン欠乏を介してもたらされることが分かる。
まとめると、これらの知見は、ABD-rhArg融合タンパク質又は他のアルギナーゼ形態(例えば、rhArg-PEG、BCA-PEG又はBCA-ABD)又はアルギニン枯渇酵素(例えば、ADI-PEG、ADI-ABD、ADC-PEG又はADC-ABD)によるアルギニン枯渇が予防的な抗肥満療法として使用できることを裏付ける。
N-ABD094-rhArg(配列番号50)による処理はHFD誘発性のインスリン抵抗性、耐糖能障害及び代謝障害を予防する
肥満は一般にインスリン抵抗性、耐糖能障害及び代謝障害に関連している。実際、LFD給餌でベヒクル処理の痩せた対照マウスと比較して、HFD給餌のベヒクル処理マウスでは、HFDの給餌から6週間後に行ったインスリン負荷試験(ITT)において、注射したインスリンの血糖低下効果に対する感受性で有意な低下を示し(図26A)、11週目で更に悪化した(図26B)。インスリン感受性の低下に伴い、これらマウスでは、HFDの給餌から5週間後までに耐糖能試験(GTT)でD-グルコースを注射した後、血糖値を基礎レベルまで戻す効率が有意に低下した(図27A)が、これは耐糖能障害の発症を意味しており、HFD消費の10週間後に更に悪化した(図27B)。実際、空腹時(5時間)血糖(図28A)と空腹時血漿中インスリン濃度(図28B)は有意に上昇し、インスリン抵抗性の測定値であるHOMA-IRスコア(図28C)は、痩せた対照マウスと比較してベヒクル処理のHFD給餌マウスの方が高かった。空腹時血漿中レプチン濃度(図29A)、総コレステロール濃度(図29B)、トリグリセリド濃度(図29C)、及び遊離脂肪酸濃度(図29D)は、HFD給餌から12週間後に測定した際に有意に上昇した。注目すべきことに、同時に行ったN-ABD094-rhArg(配列番号50)による処理によって、HFDによって誘発されるインスリン抵抗性、耐糖能障害、高血糖症、高インスリン血症、高レプチン血症、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、及び高遊離脂肪酸血症の発症を完全に防ぐことができた。
即ち、これらの結果から、N-ABD094-rhArg(配列番号50)は2型糖尿病発症の前兆であるインスリン抵抗性と耐糖能障害を効果的に予防できることが分かる。また、レプチン抵抗性や肥満に関連する脂質異常症等の他の代謝障害を予防することもできる。
まとめると、これらの結果は、ABD-rhArg融合タンパク質又は他のアルギナーゼ形態(例えば、rhArg-PEG、BCA-PEG又はBCA-ABD)又はアルギニン枯渇酵素(例えば、ADI-PEG、ADI-ABD、ADC-PEG又はADC-ABD)によるアルギニン枯渇が予防的な抗糖尿病療法、抗脂質異常症療法、抗アテローム性動脈硬化症療法、及び抗代謝障害療法として使用できることを裏付ける。
N-ABD094-rhArg(配列番号50)による処理はHFD誘発性脂肪症を予防する
脂肪症とは細胞内での脂質の異常な貯留を意味する。非アルコール性肝脂肪変性(非アルコール性脂肪肝)は肥満に関連する一般的な併存症である。初期工程では無症候性のこともあるが、肝臓が炎症を起こすと脂肪性肝炎になり、線維症に進行し、更に進行した工程では肝硬変となる場合があり、肝細胞癌になるリスクが大幅に高まる。実際、HFD給餌のベヒクル処理マウスでは、肝臓が顕著に肥大して色が薄くなり(図30A)、痩せた対照マウスに比べて重量がほぼ2倍になったことが分かった(図30B)。オイルレッドOで肝臓切片を染色すると、大きな脂肪滴が広範囲に蓄積したことが分かり(図31A)、それに応じてトリグリセリド濃度が10倍に上昇した(図31B)。これらの知見に付随するように、肝損傷のバイオマーカーとして一般に測定されるアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)の血清中濃度が有意に上昇した(図32)。注目すべきことに、同時に行ったN-ABD094-rhArg(配列番号50)による処理によって、HFD給餌マウスの肝臓における脂質の過剰な蓄積を効果的に防ぐことができ、肝臓の重量とトリグリセリド含有量、及び血清中ALT濃度は痩せた対照と同等であった。これらの知見と一致して、HFDは肝臓において数種の重要な脂肪生成転写因子と脂質生成酵素の有意なアップレギュレーションを誘発する一方、N-ABD094-rhArg(配列番号50)による処理はこれらの遺伝子のアップレギュレーションを有意に抑制できたことが分かった(図31C)。即ち、これらの結果から、N-ABD094-rhArg(配列番号50)が脂肪肝を予防する上で非常に効果的であることが分かる。
肥満は、肝臓以外にも腎臓(腎脂肪症)、膵臓(膵臓脂肪症)及び心臓(心臓脂肪症)に脂質が過剰に蓄積することと関連しており、これらの臓器の脂肪毒性と機能障害を引き起こす。実際、HFD給餌のベヒクル処理マウスでは、腎臓(図33A)、膵臓(図33B)及び心臓(図33C)の重量に有意な増加があったことが分かった。同時に行ったN-ABD094-rhArg(配列番号50)による処理によって、これらの臓器の重量増加を効果的に防ぐことができたが、これは、N-ABD094-rhArg(配列番号50)がこれらの臓器における脂質の過剰な蓄積と脂肪毒性を防ぐことができることを示唆する。
まとめると、これらの結果は、ABD-rhArg融合タンパク質が脂肪症を効果的に予防することができ、N-ABD094-rhArg(配列番号50)又は他のアルギナーゼ形態(例えば、rhArg-PEG、BCA-PEG又はBCA-ABD)又はアルギニン枯渇酵素(例えば、ADI-PEG、ADI-ABD、ADC-PEG又はADC-ABD)によるアルギニン枯渇を予防的な抗脂肪症療法として使用できることを裏付けている。
N-ABD094-rhArg(配列番号50)による処理はHFD誘発性の慢性炎症を予防する
WATが過剰に肥大すると多くのアディポカインの生成が増加し、これによってインスリン抵抗性の発症に寄与する慢性の低度の炎症が引き起こされる。単球走化性タンパク質-1(Mcp1)は、WATから分泌される主要な炎症誘発性アディポカインの1種であり、マクロファージのWATへの浸潤、肥満におけるインスリン抵抗性及び脂肪肝を制御する。実際、HFD給餌のベヒクル処理マウスの性腺周囲WATにおいてMcp1のmRNAレベルが有意にアップレギュレートされたことを見出した(図34A)。これに付随するように、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)で測定した循環Mcp1の血清中濃度は痩せた対照と比較して有意に上昇した(図34B)。インターロイキン1β(Il1b)や腫瘍壊死因子α(Tnfa)等の他の炎症誘発性アディポカインも性腺周囲WATにおいて高いmRNA発現を示した(図34A)。注目すべきことに、同時に行ったN-ABD094-rhArg(配列番号50)による処理によって、性腺周囲WATにおけるこれらのアディポカインのアップレギュレーションを抑制し、血清中Mcp1濃度の上昇を抑制することができた。
これらの結果は、N-ABD094-rhArg(配列番号50)が肥満に関連する慢性の低度の炎症を予防できることを実証し、ABD-rhArg融合タンパク質又は他のアルギナーゼ形態(例えば、rhArg-PEG、BCA-PEG又はBCA-ABD)又はアルギニン枯渇酵素(例えば、ADI-PEG、ADI-ABD、ADC-PEG又はADC-ABD)によるアルギニン枯渇の予防的な抗炎症療法としての可能性を裏付ける。
N-ABD094-rhArg(配列番号50)による処理は褐色脂肪組織におけるHFD誘発性の白色化と脂肪酸酸化の脱制御を防ぎ、非震え熱産生を高める
褐色脂肪組織(BAT)は酸化性燃料を熱に散逸する働きをする(非震え熱産生)。最近の研究から、この熱生産は肥満に対抗するエネルギー消費において大きな能力を有することが分かっている。これに対し、BATの白色化は肥満と関連しており、BATの機能を損なう。実際、HFD給餌のベヒクル処理マウスでは肩甲骨間BATが顕著に肥大し(図35A)、痩せた対照マウスに比べて重量が2倍になったことが分かった(図35B)。組織学的検査から、多葉性褐色脂肪細胞間に散在する大きな単小葉細胞が広範囲に蓄積していることが分かった(図35C)が、これは褐色脂肪細胞の白色様細胞への変換を示唆する。しかし、N-ABD094-rhArg(配列番号50)で同時に処理したHFD給餌マウスでは、BATの重量、サイズ及び組織学的外観は痩せた対照マウスと同様であった。N-ABD094-rhArg(配列番号50)による処理によって、熱産生に重要なBAT特異的遺伝子脱共役タンパク質1(Ucp1)が有意にアップレギュレートされ、褐色脂肪細胞におけるUcp1の重要な転写調節因子であるペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γコアクチベーター1-α(Pgc1α)もアップレギュレートされた一方、脂肪酸酸化に関与する主要な遺伝子であるアシル-CoAオキシダーゼ1(Acox1)のHFD誘導性ダウンレギュレーションが抑制されたことが更に分かった(図36)。N-ABD094-rhArg(配列番号50)処理はAcox1のダウンレギュレーションを阻止できたことが分かったが、これはN-ABD094-rhArg(配列番号50)が脂肪酸酸化を正常にする可能性を示す。
即ち、これらの結果から、N-ABD094-rhArg(配列番号50)処理によって、肥満に関連するBATにおける褐色脂肪の白色化と脂肪酸酸化の脱制御を効果的に防止することができ、HFDの脂肪症作用と戦うための非震え熱産生が高められることが分かる。
これらの知見は、ABD-rhArg融合タンパク質又は他のアルギナーゼ形態(例えば、ABD094-rhArg、BCA-PEG又はBCA-ABD)又はアルギニン枯渇酵素(例えば、ADI-PEG、ADI-ABD、ADC-PEG又はADC-ABD)によるアルギニン枯渇の予防的な抗肥満療法としての可能性を裏付ける。
N-ABD094-rhArg(配列番号50)による処理はHFD誘発性肥満を効果的に抑制する
同時に行ったN-ABD094-rhArg(配列番号50)による処理によってHFD誘発性肥満及び関連する合併症と併存症(例えば、インスリン抵抗性、耐糖能障害、高血糖症、脂質異常症、脂肪肝、慢性炎症、及びBATの白色化)を効果的に予防できることを確認した後、既存の食餌誘発性肥満(DIO)を有するマウスにおいて、肥満を抑制し、これらの障害を逆行させる上でのN-ABD094-rhArg(配列番号50)の有効性を研究した。C57BL/6J雄性マウスにHFDを給餌し(5週齢から12週間)、肥満及び関連する合併症と併存症を誘発させた。次に、体重に応じてマウスを2群に分類し、HFDを給餌し続けながら、600~700UのN-ABD094-rhArg(配列番号50)又はベヒクル対照として生理食塩水によって7日間隔で12週間処理を行った。1群のマウスには対応する低脂肪食(LFD)を給餌し、研究全体を通じて生理食塩水を注射して各種測定の痩せた対照とした。2個のコホート(各群n=5)で別々に行った。マウスを5匹の群に収容した。2個の独立したコホートで同様の結果が得られた。マウスの1個のコホートのデータを実施例23~28に要約した。
12週間のHFD給餌によって、雄性マウスの体重を50g超に増加させることができたが、これはLFD給餌の痩せた対照雄性マウスよりも大幅に重かった(図37A及び37B)。N-ABD094-rhArg(配列番号50)で処理した後、HFD誘発性肥満マウスの体重は徐々に減少した。5週間までに体重は30%超減少し、痩せた対照マウスと同様であった。12週間の処理が完了するまで体重はこのレベルに維持された。N-ABD094-rhArg(配列番号50)で処理したDIOマウスでは、主な内臓貯蔵(性腺周囲、腎周囲及び腸間膜WAT)と皮下貯蔵(鼠径部WAT)で脂肪体の重量は有意に減少し、痩せた対照マウスとかなり類似していた(図38A)。WATの組織学的検査によって、N-ABD094-rhArg(配列番号50)で処理したDIOマウスにおいて脂肪細胞の顕著な減少が明らかになった(図38B)。
実施例18の結果と共に、これらの知見は、ABD-rhArg融合タンパク質又は他のアルギナーゼ形態(例えば、rhArg-PEG、BCA-PEG又はBCA-ABD)又はアルギニン枯渇酵素(例えば、ADI-PEG、ADI-ABD、ADC-PEG又はADC-ABD)が肥満の治療的処理に使用できることを裏付ける。
N-ABD094-rhArg(配列番号50)による処理はHFD誘発性のインスリン抵抗性と耐糖能障害を逆行させ、代謝障害を正常化する
HFDを12週間給餌したマウスは処理前に、痩せた対照マウスと比較して、前糖尿病の特徴である末梢インスリン抵抗性(図39)と耐糖能障害(図40)を発症した。しかし、N-ABD094-rhArg(配列番号50)による処理から4週間後までに、DIOマウスはインスリン感受性の顕著な増加を示し、痩せた対照マウスに匹敵する程度になった。N-ABD094-rhArg(配列番号50)投与マウスでのインスリンに対する感受性の正常化は、HFDを継続的に給餌しながら12週間の薬物処理の終了時まで持続させることができた。更に、N-ABD094-rhArg(配列番号50)で処理したマウスでは、3週間の処理で耐糖能が有意に改善し、7週間の処理で痩せた対照マウスと同様のレベルまで完全に回復した。このような改善と一致して、N-ABD094-rhArg(配列番号50)で処理したDIOマウスの空腹時血糖(図41A)と空腹時血漿中インスリン(図41B)は、4週間のrhArg処理までに痩せた対照マウスと同様のレベルまで回復し、処理が終了するまで正常範囲内に維持された。これによって、HOMA-IRスコアが処理前のマウスの35.1から処理4週間後のマウスの1.2まで劇的に低下し(図41C)、インスリン抵抗性の回復が示唆された。空腹時血漿中レプチン濃度(図42A)と空腹時総コレステロール濃度(図42B)も正常レベルまで著しく低下した。
まとめると、我々の知見によって、処理4週間以内にインスリン抵抗性、耐糖能障害、高血糖症、高インスリン血症、高レプチン血症及び高コレステロール血症を逆行させるN-ABD094-rhArg(配列番号50)の高い有効性が実証される。
即ち、これらの知見は、ABD-rhArg融合タンパク質又は他のアルギナーゼ形態(例えば、rhArg-PEG、BCA-PEG又はBCA-ABD)又はアルギニン枯渇酵素(例えば、ADI-PEG、ADI-ABD、ADC-PEG又はADC-ABD)によるアルギニン枯渇がインスリン感受性改善剤として使用できると共に、インスリン抵抗性、耐糖能障害及び高血糖症を特徴とする前糖尿病と2型糖尿病、及びインスリン抵抗性に関連する他の障害の治療的処理に使用できることを裏付ける。また、高レプチン血症と高コレステロール血症の治療的処理にも使用することができる。
N-ABD094-rhArg(配列番号50)による処理はHFD誘発性脂肪症を逆行させる
12週間のHFD給餌によって雄性マウスで脂肪肝が誘発された(図30及び31)。HFD給餌を12週間延長した後、肝臓は更に肥大し、色が薄く見えた(図43A)。肝臓重量は痩せた対照マウスの2倍を超えた(図43B)。大量の脂質蓄積が肝臓全体に広がり(図44A)、それに応じてトリグリセリド含有量が増加した(図44B)。重要な脂肪生成転写因子Pparg及びSrebp1cの発現レベルは痩せた対照と同等のレベルまでダウンレギュレートされ、脂質生成酵素Acc1の発現レベルは更に低下し、Scd1は大幅に抑制された(図44C)。HFDを12週間給餌したマウス(実施例20、図32)と比較して、HFDを24週間給餌したマウスでは血清中アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)濃度が更に上昇し、血清中アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)濃度も有意に上昇した(図45)が、これは肝損傷の更なる進行を示す。しかし、N-ABD094-rhArg(配列番号50)で処理したDIOマウスでは、肝臓のサイズは顕著に低下し、その重量は痩せた対照と同程度となった(図43B)。更に、肝臓は赤みがかった色に回復した(図43A)が、これは脂肪滴の劇的なクリアランス(図44A)とよく相関し、トリグリセリド濃度は痩せた対照と同等のレベルまで低下した(図44B)。注目すべきことに、血漿中ALT及びAST濃度は痩せた対照と同等であったが、これはN-ABD094-rhArg(配列番号50)による処理が更なる進行を防止し、既存の肝損傷を正常化できることを示唆する。まとめると、我々の知見から、脂肪肝の逆行に対するN-ABD094-rhArg(配列番号50)の顕著な効果が明らかである。
肥満は、肝臓以外にも腎臓(腎脂肪症)、膵臓(膵臓脂肪症)及び心臓(心臓脂肪症)に脂質が過剰に蓄積することと関連しており、これらの重要な臓器の脂肪毒性と機能障害を引き起こす。実際、ベヒクル処理したDIOマウスにおいて、腎臓(図46A)、膵臓(図47A)及び心臓(図48A)の重量に有意な増加があった。組織学的検査によって腎尿細管における脂肪滴に類似する液胞の蓄積が明らかになった(図46C)。腎臓切片のオイルレッドO染色によって糸球体に脂質の異所性蓄積があったことが分かった(図46D)。膵臓においてWATパッチの広範な小葉内及び小葉間蓄積があり(図47B)、心筋線維間に白い脂肪細胞の島が見られた(図48B)。腎臓(図46B)、膵臓(図47C)、心臓(図48C)においてトリグリセリド濃度が有意に上昇した。更に、トリグリセリド濃度の有意な上昇が骨格筋でも見られた(図49)。これらの知見から、ベヒクル処理したDIOマウスのこれらの器官における脂肪症の発症が分かる。しかし、N-ABD094-rhArg(配列番号50)による処理によって、DIOマウスの腎臓(図46A)、膵臓(図47A)及び心臓(図48A)の重量を痩せた対照と同等のレベルまで有意に減少させることができた。組織学的検査から、腎尿細管の液胞(図46C)及びオイルレッドO染色で特定された腎臓の糸球体の脂質(図46D)に顕著な減少が確認された。膵臓(図47B)及び心臓(図48B)内でWATの顕著な減少が見られた。N-ABD094-rhArg(配列番号50)で処理したDIOマウスの腎臓(図46B)、膵臓(図47C)、心臓(図48C)及び骨格筋(図49)におけるトリグリセリド濃度は痩せた対照と同等のレベルまで回復した。これらの知見から、N-ABD-rhArg(配列番号50)が腎臓、膵臓及び心臓、そして恐らく他の臓器の脂肪症も効果的に逆行させることができることが分かる。
まとめると、これらの知見は、ABD-rhArg融合タンパク質又は他のアルギナーゼ形態(例えば、rhArg-PEG、BCA-PEG又はBCA-ABD)又はアルギニン枯渇酵素(例えば、ADI-PEG、ADI-ABD、ADC-PEG又はADC-ABD)が脂肪症の治療的処理に使用できることを裏付ける。
N-ABD094-rhArg(配列番号50)による処理はHFD誘発性の慢性炎症と線維症を軽減する
実施例21に示すように、HFD給餌は慢性炎症を誘発する。ベヒクル処理したDIOマウスでは、性腺周囲WATにおける炎症誘発性アディポカインMcp1の発現がアップレギュレートされた(図50A)のに伴って、血清中Mcp1濃度が有意に上昇した(図50B)。一方、N-ABD094-rhArg(配列番号50)で処理したDIOマウスでは、性腺周囲WATにおけるMcp1発現は有意にダウンレギュレートされ、血清中Mcp1濃度は痩せた対照マウスと同等のレベルまで正常化された(図50B)が、これはN-ABD094-rhArg処理がWATにおけるHFD誘発性慢性炎症を軽減できることを示唆する。
ベヒクル処理DIOマウスの肝臓では、インターロイキン1α及び1β(Il1a及びIl1b)を含む数種の炎症誘発性遺伝子の有意なアップレギュレーションがあった(図51A)。慢性炎症は線維症に関連している。実際、重要な線維化促進遺伝子であるトランスフォーミング増殖因子β(Tgfb)の有意なアップレギュレーションがあった(図51B)。N-ABD094-rhArg(配列番号50)による処理によって、これらの炎症誘発性遺伝子を有意にダウンレギュレートし、インターロイキン10(Il10)、インターロイキン22(Il22)及びインターフェロンγ(Infg)等の数種の抗炎症遺伝子を顕著にアップレギュレートすることができた(図51C)。線維化促進遺伝子Tgfbの発現は痩せた対照と同等のレベルまで回復した。肝臓と同様に、ベヒクル処理したDIOマウスの腎臓では、Mcp1、腫瘍壊死因子α(Tnfa)及びIl1b等の数種の炎症誘発性遺伝子の有意なアップレギュレーションがあった(図52A)。線維化促進遺伝子コラーゲン1型α1鎖(Col1a1)も有意にアップレギュレートされたが、これは、腎臓においてシリウスレッド染色で特定されたコラーゲン線維の過剰沈着の所見と一致している(図52C)。注目すべきことに、N-ABD094-rhArg(配列番号50)によるDIOマウスの処理によって、これらの炎症誘発性遺伝子の発現を痩せた対照と同等のレベルまでダウンレギュレートすることができた。線維化促進遺伝子Col1a1は大幅に抑制され、コラーゲン線維の量は著しく減少した。同様に、膵臓では、N-ABD094-rhArg(配列番号50)による処理によって、Mcp1等の炎症誘発性遺伝子(図52A)及び重要な線維化促進遺伝子Tgfb(図53B)を有意にダウンレギュレートすることができた。
まとめると、これらの知見から、N-ABD094-rhArg処理が慢性炎症、及び肝臓、腎臓、膵臓、そして恐らく他の臓器の線維症も効果的に軽減できることが分かる。
脂肪肝(肝脂肪変性)は初期工程では無症候性の場合がある。肝臓が炎症を起こすと脂肪性肝炎になり、線維症に進行し、更に進行した工程では肝硬変となる場合があり、肝細胞癌になるリスクが大幅に高まる。我々の知見は、N-ABD094-rhArg処理が肝疾患の進行を止め、肝損傷を逆行させることができることを示唆する。
即ち、これらの結果は、ABD-rhArg融合タンパク質又は他のアルギナーゼ形態(例えば、rhArg-PEG、BCA-PEG、BCA-ABD)又はアルギニン枯渇酵素(例えば、ADI-PEG、ABD-ADI、ADC-PEG又はADC-ABD)によるアルギニン枯渇が慢性炎症及び線維症の治療的処理に使用できることを裏付ける。
N-ABD094-rhArg(配列番号50)による処理は褐色脂肪の白色化を逆行させる
HFD給餌を長期間行った後、痩せた対照マウスと比較して、ベヒクル処理DIOマウスでは肩甲骨間BATのサイズ(図54A)と重量(図54B)が更に増加したが、これは大量の肥大した白色様単房細胞の存在(図54C)と相関した。これに対し、N-ABD094-rhArg(配列番号50)によるDIOマウスの処理によって、肩甲骨間BATを痩せた対照マウスと同等のサイズと重量まで劇的に回復させ、白色様の単房細胞をほぼ完全に寛解させることができた。まとめると、これらの知見から、褐色脂肪の白色化を逆行させるN-ABD094-rhArg(配列番号50)の優れた能力が分かる。
まとめると、これらの結果は、ABD-rhArg融合タンパク質又は他のアルギナーゼ形態(例えば、rhArg-PEG、BCA-PEG又はBCA-ABD)又はアルギニン枯渇酵素(例えば、ADI-PEG、ADI-ABD、ADC-PEG又はADC-ABD)が褐色脂肪白色化の逆行を介した肥満の治療的処理に使用できることを裏付ける。
N-ABD094-rhArg(配列番号50)による処理は血圧を低下させる
肥満は心血管疾患と高血圧に関連している。600UのN-ABD094-rhArg(配列番号50)によって7日間隔で5週間処理したDIOマウスを、CODA非侵襲性血圧システム(Kents Scientific Corporation)を使用したテールカフ法による血圧測定に供した。N-ABD094-rhArg(配列番号50)で処理したDIOマウスの収縮期血圧及び拡張期血圧(図55A)と心拍数(図55B)は、ベヒクルで処理したDIOマウスよりも有意に低く、痩せた対照マウスとかなり類似することが分かった。実施例25から、N-ABD094-rhArg(配列番号50)が腎臓及び心臓の脂肪症を効果的に逆行させることができ、これが血圧の低下に有益な効果をもたらし得ることが分かる。
まとめると、これらの知見は、ABD-rhArg融合タンパク質又は他のアルギナーゼ形態(例えば、rhArg-PEG、BCA-PEG又はBCA-ABD)又はアルギニン枯渇酵素(例えば、ADI-PEG、ADI-ABD、ADC-PEG又はADC-ABD)が高血圧の治療的処理に使用できることを裏付ける。
N-ABD0094-rhArg(配列番号50)は中和抗体を誘導せず、長期使用にも有効性を維持する
中和抗体の生成は、薬物の薬力学、薬物動態、安定性及び有効性に影響を及ぼすことがある。免疫原性応答を確認するため、LFD給餌の8週齢のC57BL/6J雄性マウスに500UのN-ABD094-rhArg(配列番号50)又はベヒクル対照としての生理食塩水を7日間隔で8ヶ月間腹腔内注射した。N-ABD094-rhArg(配列番号50)に対する抗薬物抗体の存在(図56A)にもかかわらず、これらの抗体はアルギナーゼ活性に対して中和効果を有さなかった(図56B)ことが分かったが、これは、研究期間を通じてBiochrom30アミノ酸分析計の検出限界(3μM)未満のレベルに血漿中アルギニン濃度を維持できたという知見と一致している。
長期使用の安全性を評価するため、N-ABD094-rhArg(配列番号50)で8ヶ月間処理したLFD給餌マウスから血清試料と尿試料を採取して、一般に使用される肝損傷のバイオマーカーであるALTとASTの分析、及び腎機能を評価するための血清クレアチニンと尿中アルブミン/クレアチニン比の分析を行った。薬物処理のLFD給餌マウスは、これら全てのパラメータにおいてベヒクル処理のLFD給餌マウスと有意差を示さなかった(図57A及び57B)ことが分かった。更に、ワイヤーミオグラフィーを使用して単離動脈の機能的応答と血管反応性を調べた際、フェニレフリンによって引き起こされる血管平滑筋収縮(図58A)、アセチルコリン誘発性の内皮依存性弛緩(図58B)、及び一酸化窒素ドナーであるニトロプルシドナトリウムに応答した内皮非依存性弛緩(図58C)に関してN-ABD094-rhArg(配列番号50)で処理したLFD給餌マウスとベヒクル処理したLFD給餌マウスとの間に有意差はなかった。
食餌誘発性肥満C57BL/6J雄性マウスにHFDを給餌し続けながら600UのN-ABD094-rhArg(配列番号50)で20週間処理した別の研究では、5週間までに体重が痩せた対照マウスと同等のレベルまで減少し、リバウンドすることなくこのレベルで維持し続けた。血漿中アルギニン濃度の定期的なモニタリングによって、アルギニンがBiochrom30アミノ酸分析計の検出限界(3μM)未満のレベルのままであったことが分かった。これらの結果は、N-ABD094-rhArg(配列番号50)が処理期間を通じて有効であり続けたことを裏付けている。即ち、これらの知見は、N-ABD094-rhArg(配列番号50)が安全且つ長期間の使用に効果的であることを裏付けている。
組換えヒトアルギナーゼ(rhArg)のPEG化プロトコル
組換えヒトアルギナーゼ(His-rhArg配列番号101)はアフィニティークロマトグラフィーを使用した精製によって得た。PEG化の前に、精製したHis-rhArg(配列番号101)を20mMのリン酸ナトリウム(pH8.0)に対してダイアフィルトレーションし、タンパク質濃度を2mg/mLに調整した。PEG化試薬を20mMのリン酸ナトリウム(pH8.0)で調製した。PEG試薬とrhArgのモル比を20:1とした。PEG試薬をHis-rhArg(配列番号101)に添加した後、撹拌しながら室温で4時間インキュベートした。次に、接線流濾過(TFF)によって反応混合物を20mMのリン酸ナトリウム(pH7.4)に対してダイアフィルトレーションした。アフィニティークロマトグラフィーによってフロースルーで過剰のPEGを除去し、タンパク質を0.5Mのイミダゾールで溶出させてPEG化His-rhArg(配列番号101)を回収した。非誘導体化His-rhArg(配列番号101)は、別の回のアフィニティークロマトグラフィーによって分離した。次に、反応混合物を12%ポリアクリルアミドゲル使用のSDS-PAGEで分析した。ゲルの染色は、分子量特定用のクーマシーブルー、又は遊離PEG検出用の0.1Mのヨウ素溶液で行った。
例えば、調製物において、比活性が245U/mgで濃度が7.5mg/mLのPEG化His-rhArg(配列番号101)を150mg得た。図11及び表5はPEG-rhArgの生成とその分析の例を示す。
Figure 2019228510000010
PEG化His-rhArg[配列番号101]による処理は肥満を抑制し、インスリン感受性を改善する
PEG化His-rhArg(配列番号101)の生成については実施例30に記載されている。既存の食餌誘発性肥満(DIO)を有するC57BL/6J雄性マウスに、HFD給餌を継続させながら、300UのPEG化His-rhArg[配列番号101]又はベヒクル対照としての生理食塩水を7日間隔で5週間腹腔内注射した。PEG化His-rhArg(配列番号101)で処理したマウスの体重は徐々に30gまで減少したが、これは、固形飼料を給餌したベヒクル処理の痩せた対照マウスと同等であった(図59)。主な内臓貯蔵(性腺周囲、腎周囲及び腸間膜WAT)と皮下貯蔵(鼠径部WAT)で脂肪体の重量は有意に減少し、研究終了時には痩せた対照マウスと同等であった(図60)。肝臓、腎臓、膵臓及び心臓の重量は、ベヒクルで処理したDIOマウスよりも有意に低く、痩せた対照マウスと同等であった(図60)。血漿中アルギニン濃度の定期的なモニタリングによって、アルギニンが研究全体を通じてBiochrom30アミノ酸分析計の検出限界(3μM)未満のレベルのままであったことが確認された。
PEG化His-rhArg[配列番号101]処理の2週間後、DIOマウスでは、ベヒクル処理のDIOマウスと比較して既に空腹時血糖値が低く(図61A)、インスリン感受性が有意に高かった(図61B)。
即ち、これらの知見は、PEG化His-rhArg[配列番号101]がN-ABD094-rhArg[配列番号50]と同様の抗脂肪症効果とインスリン抵抗性改善効果を有することを裏付ける。PEG化His-rhArg(配列番号101)によるアルギニン欠乏は、インスリン抵抗性に関連する肥満及び疾患を処理する治療効果を有する。
金属イオン置換
野生型アルギナーゼは通常、Mn2+金属イオンを含んでいる(D'Antonio & Christianson, 2011, Biochemistry, 50:8018-27)。金属イオン置換は、より強力な形態のABD094-rhArg(低いK値及び高いkcat/K値)を調製する方法であることが分かっている。20mMのTris-HClバッファー(pH7.4)に溶解した精製N-ABD094-rhArg(配列番号50)を20mMの異なる二価金属イオン(Mn2+、Ni2+又はCo2+)と混合し、52~55℃で15~60分間インキュベートした後、バッファーをPBSバッファー(pH7.4)と交換した。
試料を酵素活性及び酵素動態の研究に供し、比活性と触媒効率(kcat/K)を求めた。試料を誘導結合プラズマ原子発光分析(ICP-OES、Agilent700シリーズICP発光分光計)に適用して金属含有量を定量分析した。
各タンパク質試料(100~200μL)を10mLの1%w/vHNOに添加した後、ICP-OES分析用に様々な元素と波長を選択した。金属対タンパク質比は金属濃度をタンパク質濃度で割って求めた。Pierce(商標)BCAタンパク質アッセイを使用し、製造元の指示(Thermo Fisher Scientific社)に従ってタンパク質濃度を評価した。
Co2+又はNi2+金属イオンをN-ABD094-rhArg(配列番号50)に添加するとMn2+の除去とCo2+又はNi2+の取り込みが良好に行われた。
コバルト置換酵素(N-ABD094-rhArg-Co2+)は、Kmが遥かに小さく(0.27~0.35mM)、kcatが高く(250~316s-1)、触媒効率kcat/Kが高い(905~917s-1mM-1)ことが分かった。元の酵素(N-ABD094-rhArg-Mn2+)の場合、Kは1.37~1.89mM、kcatは82~98s-1、kcat/Kは44~72s-1mM-1である。金属置換法によってMn2+をCo2+に置換することができ、飽和Co2+対タンパク質比は約2~4対1になった。これらのデータは、N-ABD094-rhArg(配列番号50)又は本明細書に記載の他の融合タンパク質のより強力な形態が、他の二価金属イオン(例えば、Ni2+又はCo2+)との置換によって製造できることを示唆する。
N-ABD094-rhArg-Co2+[配列番号50(コバルト置換)]による処理は肥満を抑制する
N-ABD094-rhArg-Co2+[配列番号50(コバルト置換)]の生成については実施例32に記載されている。既存の食餌誘発性肥満(DIO)を有するC57BL/6J雄性マウスに、HFD給餌を継続させながら、25~100UのN-ABD094-rhArg-Co2+[配列番号50(コバルト置換)]を5週間腹腔内注射した。マウスの体重は、600~700UのN-ABD094-rhArgの効果(図37)と同様に、処理5週間以内で55gから30gまで徐々に減少した(図62)。この結果は、Mn2+をCo2+で置換すると、体重を減少させる上でABD-rhArg融合タンパク質の効力が著しく高まることを裏付ける。
哺乳動物細胞培養と増殖アッセイ
癌細胞株(例えば、MKN45、AGS、BGC823、HCT-15及びHCT-116)を、標準プロトコルによって10%FBSと100ユニット/mLのペニシリン/ストレプトマイシンを含むRPMI培地で保持した。
細胞増殖アッセイでは、100μLの増殖培地中の癌細胞(5×10個)を96ウェルプレートの各ウェルに播種し、24時間インキュベートした。培養培地の補充は、アルギニンを含まない培地(AFM)に各種濃度のアルギニンを添加した培地、各種濃度の異なるアルギニン枯渇酵素を含む新鮮な培地によって行い、このような酵素をシトルリンと併用して行った。プレートを95%空気と5%COの加湿雰囲気を含む恒温器中、37℃で更に1~3日間インキュベートした。
定量的細胞増殖アッセイは、他所で広く説明されているように、MTT(3-[4,5-ジメチルチアゾール-2-イル]-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド)アッセイを使用して行った。培養物中の細胞の50%を死滅させるのに必要なアルギニン枯渇酵素の量をIC50と定義した。
各種アルギニン枯渇酵素(ADI、BCA及びADC)による様々なヒト癌細胞株の増殖の阻害
アルギニンデイミナーゼ(ADI)、細菌アルギナーゼ(BCA)及びアルギニンデカルボキシラーゼ(ADC)の細胞毒性は、5種の腫瘍細胞株(A375、HeLa、BxPC-3、PANC-1及びHCT116)における比較研究で確認した。
ADIとBCAの両方が触媒する反応は尿素回路の工程であるため、ADIとBCAの抗腫瘍効果は両方とも細胞中ASS濃度に関連している。これに対し、ADCの触媒生成物はいずれも尿素回路の中間体ではないため、ADCの抗腫瘍効果はASSの存在による影響が比較的少ない場合がある。我々の結果から、ADI、BCA及びADCは全て研究した細胞株で阻害効果を発揮することが分かる。ADIはA375、HCT116、BxPC-3、PANC-1に対して有効であるが、HeLa細胞に対しては有効ではない一方、BCAとADCの両方は、試験したこれら5種の癌細胞株全てに対して有効である(表6)。ADCは最も効力の弱いアルギニン枯渇酵素であるが、特にASS陽性癌細胞では有効性の点でADIやBCAよりも有利である(表6)。
ADIに対する腫瘍細胞の感受性は細胞中ASS濃度と明確な関係を示す(表6)。まとめると、ADCとBCAは、ADIと比較してASSに依存しない方法でヒト癌細胞株の増殖を阻害することができる。
表6. 5種のヒト癌細胞株に対するADI、BCA及びADCのIC50と最大細胞毒性。MTT分析の前に細胞を72時間処理した。データは3回行った3種の実験の平均である。IC50値は、細胞生存率を50%阻害するのに必要な酵素の量で定義される。最大細胞毒性は、各酵素によって得られた生育不能細胞の最大割合で表される。ADI耐性細胞は、試験したADIの最大用量で50%超が生存する細胞として定義される。
Figure 2019228510000011
胃癌細胞に対するBHA(配列番号75)の細胞毒性
アルブミン結合アルギナーゼBHA(配列番号75)のインビトロ有効性の試験は、MKN45胃癌細胞株を各種濃度のBHA(配列番号75)と共に72時間インキュベートし、MTTアッセイによるMKN45の生存率を確認することによって行った。図63に示すように、MKN45癌細胞の増殖はBHA(配列番号75)によって用量依存的に阻害された。これによって、培地にウシ胎仔血清(FBS)を添加し、アルブミンや他の異なるタンパク質を含む培養条件でのアルギニン枯渇融合タンパク質の細胞毒性が更に確認された。
アネキシンV-FITC及びPI二重染色によるアポトーシスの評価
BCAアルギナーゼ(配列番号71)によるアポトーシスの誘導を評価するため、様々な処理条件の1日前に3×10個の細胞を6ウェルプレートに播種した。培地を除去し、各濃度のBCA(配列番号71)を添加した完全培地で補充した。BCAに24時間、48時間及び72時間曝露した後、浮遊細胞と付着細胞の両方を回収した。即ち、培地中の浮遊細胞を100×gで3分間、室温で遠心分離して回収する一方、付着細胞をPBSで洗浄し、0.25%トリプシン溶液と共に37℃で3分間インキュベートして除去した。完全培地を添加した後、遠心分離によって細胞を回収した。細胞をPBSで洗浄し、ヨウ化プロピジウム(PI)とアネキシンV-FITCを含む0.1mLの結合バッファー(0.01MのHEPES、pH7.4、0.14MのNaCl、2.5mMのCaCl)に再懸濁させた。細胞を暗所にて室温で15分間染色し、0.4mLの結合バッファーを各チューブに添加した後、FACSAria(BD biosciences社)を使用したフローサイトメトリー分析を行った。各試料について10000個の細胞からデータを取得するように血球計算器を設定し、データをFACSAriaソフトウェアによって分析した。
フローサイトメトリーの結果によれば、BCA(配列番号71)処理(50μg/mLのBCA)の際、時間依存的にHCT116ヒト結腸癌細胞でアポトーシスが誘導された。BCA処理から24時間、48時間及び72時間後に、HCT116癌細胞の約16%、21%及び25%がそれぞれアポトーシスを起こした。
細胞生存率アッセイと併用薬物の効果
これらの研究では、乳癌細胞株(例えば、ヒトMCF-7細胞及びMDA-MB-231細胞)を使用した。癌細胞(5×10個)を100μLの完全培地を含む96ウェルプレート(TPP)に播種した。プレートを恒温器内で一晩インキュベートし、細胞をプレートに付着させた。次に、His-rhArgアルギナーゼ(配列番号101)(2U/mL~0.0032U/mL)とオートファジー阻害剤クロロキン(CQ、100μM~0.16μM)を96ウェルプレートに添加した。薬物併用群については、His-rhArg(配列番号101)(2U/mL~0.0032U/mL)を20μMのCQ(非一定比率法)と共にウェルに添加した。各投薬を3個のウェルで3回行って細胞生存率の平均変化を得た。68時間のインキュベーション後、10μLの5mg/mL MTT[3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド]溶液を添加した。プレートを恒温器に戻し、更に4時間インキュベートした。MTTによって形成された不溶性化合物であるホルマザンを溶解するため、10%SDSの0.01MHCl溶液を100μL添加した。プレートを37℃で一晩インキュベートした。色の変化は570nmで分光光度計によって測定した。対照セットアップ(薬物なし)をベースとして使用して細胞生存率を計算し、これを用いてソフトウェアPrism6.0(GraphPad社)によって用量反応曲線をプロットし、IC50値を見出した。His-rhArg(配列番号101)とCQの相互作用又は併用効果は、組み合わせ指数(CI)によって計算することができる。CalcuSynソフトウェア(Biosoft社)を使用してCI値を計算した。
MCF-7癌細胞はアルギナーゼによるアルギニン飢餓に対し72時間に亘って感受性があった(表7)。CQはMCF-7に対する細胞毒性効果も示した(表8)。薬剤併用群では、His-rhArg(配列番号101)とCQの間に相乗効果(CI<1)があった(表9)。表10は、MCF-7癌細胞に対するHis-rhArg(配列番号101)、CQ、及びrhArg+CQのIC50を示す。
Figure 2019228510000012
Figure 2019228510000013
Figure 2019228510000014
Figure 2019228510000015
実験データから、MDA-MB-231乳癌細胞はHis-rhArg(配列番号101)とCQ(表11及び表12)によるアルギニン飢餓に対して感受性があることが分かった。His-rhArg(配列番号101)とCQの併用もMDA-MB-231細胞に対して相乗的な細胞毒性を示した。CI値は1未満であった(表13)。表14は、MDA-MB-231乳癌細胞に対するHis-rhArg(配列番号101)、CQ、及びHis-rhArg(配列番号101)+CQのIC50を示す。
Figure 2019228510000016
Figure 2019228510000017
Figure 2019228510000018
Figure 2019228510000019
ヒト肝癌細胞株「RedFluHepG2」に対するHis-rhArg(配列番号101)(0.016、0.08又は0.4U/mL)とCQ(20μM)の薬剤併用についても試験した。相乗効果(CI値が1未満)も観察された。
トランスウェル遊走アッセイと浸潤アッセイ
これらの研究では、乳癌細胞株(ヒトMDA-MB-231細胞とマウス4T1細胞)を使用した。遊走アッセイと浸潤アッセイの両方を、24ウェルCostar(Corning社)トランスウェルシステム(ポリカーボネート膜インサート、孔径8.0μm)で実施した。アッセイを行う前に、細胞を適切な無血清培地で少なくとも24時間培養した。細胞を上部チャンバーに播種する1日前に、100μLの希釈マトリゲルをインサートの上部チャンバーに添加して浸潤アッセイに備えた。無血清培地(100μL)を遊走アッセイに使用する上部チャンバーに添加した。24ウェルプレートを恒温器内で一晩インキュベートした。翌日、細胞をトリプシン処理して計数した。研究では、3×10個の4T1細胞又は5×10個のMDA-MB-231細胞を200μLの適切な無血清培地と共に上部チャンバーに播種した。適切な完全培地(750μL)を下部チャンバーに添加した。薬物処理群では、1U/mLのHis-rhArg(配列番号101)を両方のチャンバーに添加した。24ウェルプレートを37℃の5%CO加湿雰囲気で20時間(4T1細胞)又は24時間(MDA-MB-231細胞)インキュベートした。
インキュベーション後、上部チャンバーの培地を除去した。トランスウェルインサートを1×PBSで2回洗浄した。冷100%メタノールを上部チャンバーと下部チャンバーの両方に10分間添加して細胞を固定した。インサートを1×PBSで2回洗浄した。その後、1%クリスタルバイオレットの1×PBS溶液を両方のチャンバーに15分間添加して細胞を染色した。インサートを1×PBSで2回洗浄した。上部チャンバー表面の細胞を綿棒で除去した。インサートを一晩風乾した。共焦点顕微鏡で写真を撮影した。結果から、細胞を1U/mLのHis-rhArg(配列番号101)で処理すると、トランスウェルインサートを介して遊走及び浸潤可能な癌細胞の数が減少することが分かったが、これはアルギナーゼによるアルギニン枯渇が癌細胞の遊走と浸潤を阻害できることを示す。
N-ABD-rhArg(配列番号49)はインビボで高悪性度の乳癌細胞の増殖と転移を阻害する
高悪性度の4T1乳癌細胞異種移植モデル研究では、10匹の雌性ヌードマウス(11~12週齢)を使用した。マウスを1ケージ当たり5匹の群に分け、食餌と水を自由に与えた。4T1癌細胞をトリプシン処理によって回収し、1×PBSで2回洗浄し、1×PBSに再懸濁させて接種に備えた。癌細胞(1×10個の4T1細胞)をマウスの左側腹部に皮下注射した。接種3日後に腫瘍の平均長さが6mmになった際、マウスを無作為に2群に分けた。500U(3.2mg、230μL)のN-ABD-rhArg(配列番号49)又は1×PBSのいずれかをマウスに週1回注射した。伏在静脈から血液試料を採取した。マウスの腫瘍サイズと体重を定期的にモニターした。腫瘍体積は次の式によって推定した。
腫瘍体積(mm)=長さ×幅/2
PBS注射の対照群では腫瘍が壊死したため、癌細胞接種の16日後(即ち、実験開始から13日後)にマウスを屠殺した。屠殺後、腫瘍をマウスから採取し、腫瘍の重量を測定した。肺も採取し、1×PBSで洗浄した。肺をブアン固定液で一晩固定し、固定後に1×PBSで洗浄した。肺転移小結節の数を測定した。
重要なのは、500Uのアルブミン結合アルギナーゼN-ABD-rhArg(配列番号49)がBALB/cマウスで少なくとも10日間、アルギニンをBiochrom30アミノ酸分析計の検出限界(3μM)未満のレベルまで枯渇させたことである(図10)。従って、500UのN-ABD-rhArg(配列番号49)を4T1乳癌異種移植ヌードマウスに週1回、腹腔内注射で投与して有効性の研究を行った。表15は、500UのN-ABD-rhArg(配列番号49)が実験中にアルギニンを検出不能なレベルまで枯渇させたことを示す。
Figure 2019228510000020
図64~67は、500UのN-ABD-rhArg(配列番号49)がヌードマウスにおける4T1乳癌異種移植片の増殖を阻害できることを示す。実験開始から12日後と13日後に対照群と実験群との間で推定腫瘍体積に有意差があった(図64及び65)。2群間で腫瘍サイズにも顕著な差があった(図66及び67)。
これらの結果は、500UのN-ABD-rhArg(配列番号49)を週1回注射することによるアルギニン枯渇が、ヌードマウスにおける4T1高悪性度乳癌の異種移植片の増殖を有意に阻害できることを示唆した。インビボ研究によって、N-ABD-rhArg(配列番号49)が安全且つ効率的にヌードマウスにおける癌の増殖を阻害できることが分かった。
更に、アルギニン飢餓が4T1乳癌細胞の転移を阻害できることを見出したが、これはインビトロの結果と一致していた。処理群のマウスを屠殺した後、これらマウスの肺を採取して転移の徴候について注意深く調べた。対照群の3個の異なる肺で3個の肺転移小結節が見られたが、N-ABD-rhArg(配列番号49)処理群では転移性小結節は見られなかった(表16)。この結果から、N-ABD-rhArg(配列番号49)によるアルギニン飢餓が腫瘍転移を阻害できることが説得力を持って示された。これは、アルギニンが細胞遊走と腫瘍転移に重要な役割を果たす可能性があることを示唆した。N-ABD-rhArg(配列番号49)によるアルギニン枯渇は、癌細胞の転移に重要な幾つかの経路を阻害することがある(Knott et al., 2018, Nature, 554:378-381)。
Figure 2019228510000021
N-ABD094-rhArg(配列番号50)融合酵素によるヒト結腸癌細胞株に対する細胞毒性
ABDとrhArgの融合タンパク質のインビトロ有効性をヒト結腸癌細胞株で試験した。ヒト結腸癌細胞株(HCT116、LOVO及びHT29)を5×10個/ウェルの密度で96ウェルプレートに播種した。インキュベーションの1日後、培地を各濃度(2、0.4、0.08、0.016及び0.0032U/mL)のN-ABD094-rhArg(配列番号50)を含む培地で置換した。3日目[N-ABD094-rhArg(配列番号50)処理の3日後]にMTTアッセイを行ってIC50値を求めた。培地をMTT溶液(1mg/mL)(Invitrogen社)で置換し、37℃で4時間インキュベートした。インキュベーション後、MTT溶液をジメチルスルホキシド(DMSO)で置換し、650nmを基準として570nmでの吸光度を測定した。N-ABD094-rhArg処理細胞の吸光度を未処理細胞の平均吸光度で割って細胞生存率を求めた。癌細胞株に対するN-ABD094-rhArg(配列番号50)のIC50値(95%信頼区間)をソフトウェアPrism6.0で分析した。3個の独立した実験セット(n=3)を各細胞株に対して行った。結果を表17に示す。
Figure 2019228510000022
試験した全ての結腸癌細胞株はインビトロでN-ABD094-rhArg(配列番号50)融合酵素に対して非常に感受性があり、IC50値は0.22~0.58U/mLであった。HCT116はIC50が0.22U/mLの最も感受性の高い腫瘍であった。LOVOとHT29のIC50値はそれぞれ0.38U/mLと0.58U/mLであった。
N-ABD094-rhArg(配列番号50)とクロロキンの併用はヒト結腸癌細胞株に対して相乗的な細胞毒性効果を発揮する
オートファジー阻害剤クロロキン(CQ)のIC50値は次のように求めた。結腸癌細胞株HCT116、LOVO及びHT29を別々に播種し、インキュベーションの1日後、培地を各濃度のCQ(100、20、4、0.8、0.16μM)を含む培地で置換した。MTTアッセイを3日目に行った。3個の独立した実験セット(n=3)を各細胞株に対して行った。結果を表18に示す。
Figure 2019228510000023
HCT116、LOVO及びHT29に対するCQのIC50値はそれぞれ>100μM、15μM及び71μMであった。薬物併用アッセイでは非一定比率分析を行った(Hastak et al., 2010, Cancer Res. 70(20):7970-7980)。結腸癌細胞を播種し、インキュベーションの1日後、培地を各濃度のN-ABD094-rhArg(配列番号50)(2、0.4、0.08、0.016、0.0032U/mL)とそのIC50に従った一定量のCQの組み合わせを含む培地で置換した。MTTアッセイを3日目に行った。N-ABD094-rhArg(配列番号50)とCQの併用処理の組み合わせ指数(CI)をソフトウェアCalcuSynバージョン2.1で分析した。3個の独立した実験セット(n=3)を各細胞株に対して行った。結果を表19に示す。
Figure 2019228510000024
結果から、0.08U/mL又は0.4U/mLのN-ABD094-rhArg(配列番号50)を20μMのCQと併用した場合、3種の結腸癌細胞株全てでCI値が<1.0であったことが分かる。これは、N-ABD094-rhArg(配列番号50)が単独でも有効であり、CQと併用すると相乗的であることを示唆する。まとめると、オートファジー阻害剤クロロキン(CQ)は、ヒト結腸癌細胞におけるN-ABD094-rhArg(配列番号50)融合タンパク質の細胞死誘導効果を増強する。
N-ABD-rhArg(配列番号49)とPEG化His-rhArg(配列番号101)は両方ともインビボで高悪性度の乳癌細胞の増殖と転移を阻害する
他の4T1乳癌同種移植研究では、雌性ヌードマウス(5~6週齢)を使用した。マウスを1ケージ当たり5匹の群に分け、食餌と水を自由に与えた。4T1乳癌細胞(1×10個)をマウスの右側腹部に皮下注射した。接種11日後に腫瘍の平均長さが8mmになった際、マウスを無作為に4群に分けた。1個の対照群(n=8)と3個の実験群、即ち、500UのPEG化His-rhArg(配列番号101)(n=8)、500UのN-ABD-rhArg(配列番号49)(n=6)及び250UのN-ABD-rhArg(配列番号49)(n=8)とした。対照群のマウスには毎週1×PBSを注射した。500UのABD-rhArg群と250UのABD-rhArg群では、マウスにそれぞれ500Uと250UのABD-rhArgを週1回注射し、1群には500UのPEG-rhArgを週1回注射した。PBS対照群では腫瘍が壊死したため、接種の24日後(即ち、実験開始から14日後)にマウスを屠殺した。屠殺した後、マウスを解剖した。マウスから腫瘍を採取し、その重量を測定した。肺も採取し、1×PBSで洗浄した。肺をブアン固定液で一晩固定し、固定後に1×PBSで洗浄した。肺転移小結節の数を測定した。
結果に関して、図68は、500UのABD-rhArgと500UのPEG-rhArgの両方が高悪性度の4T1固形腫瘍の成長を有意に阻害したことを示す。しかし、低用量250UのABD-rhArgは腫瘍の成長を阻害しなかった。この結果は異なる群での腫瘍重量の変化とも一致した(図69)。従って、ABD-rhArgは用量依存的に腫瘍成長を阻害した。重要なことに、データから、(ABD-rhArg又はPEG-rhArgのいずれかによる)アルギニン飢餓が肺への腫瘍転移を阻害又は抑制したことが明確に分かった(図70Aと図70B)。500UのPEG-rhArg群と500UのABD-rhArg群の両方の肺に由来する転移性小結節は対照群と比較して非常に有意に減少した。ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)染色による肺の組織学的切片から、小結節が一連の高密度の乳癌細胞によって形成されたことが分かった。この結果は小結節が転移巣であったことを示唆した。まとめると、長時間作用性アルギナーゼによるアルギニン枯渇はマウスモデルにおける高悪性度の癌細胞の転移を阻害する。癌の転移は患者の主な死因である(Knott et al., 2018, Nature, 554:378-381)ため、この知見はより効果的な癌療法の新しい可能性があろう。
配列番号1: ABDプライマー1、実験室で合成
配列番号2: ABDプライマー2、実験室で合成
配列番号3: ABDプライマー3、実験室で合成
配列番号4: ABDプライマー4、実験室で合成
配列番号5: ABDプライマー5、実験室で合成
配列番号6: ABDプライマー6、実験室で合成
配列番号7: ABDプライマー7、実験室で合成
配列番号8: ABDプライマー8、実験室で合成
配列番号9: ABDプライマー9、実験室で合成
配列番号10: ABDプライマー10、実験室で合成
配列番号11: ABDプライマー11、実験室で合成
配列番号12: ABDプライマー12、実験室で合成
配列番号13: ABDプライマー13、実験室で合成
配列番号14: ABDプライマー14、実験室で合成
配列番号15: ABDプライマー15、実験室で合成
配列番号16: ABDプライマー16、実験室で合成
配列番号17: ABDプライマー17、実験室で合成
配列番号18: ABDプライマー18、実験室で合成
配列番号19:: ABDプライマー19、実験室で合成
配列番号20: ABDプライマー20、実験室で合成
配列番号21: ABDプライマー21、実験室で合成
配列番号22: ABDプライマー22、実験室で合成
配列番号23: ABDプライマー23、実験室で合成
配列番号24: ABDプライマー24、実験室で合成
配列番号25: ABDプライマー25、実験室で合成
配列番号26: ABDプライマー26、実験室で合成
配列番号27: ABDプライマー27、実験室で合成
配列番号28: ABDプライマー28、実験室で合成
配列番号29: ABDプライマー29、実験室で合成
配列番号30: ABDプライマー30、実験室で合成
配列番号31: ABDプライマー31、実験室で合成
配列番号32: ABDプライマー32、実験室で合成
配列番号33: His-ABD-リンカー、実験室で合成
配列番号34: His-ABD094-リンカー、実験室で合成
配列番号35: リンカー-ABD-His、実験室で合成
配列番号36: リンカー-ABD094-His、実験室で合成
配列番号37: N-ABD-rhArg遺伝子、実験室で合成
配列番号38: N-ABD094-rhArg遺伝子、実験室で合成
配列番号39: C-ABD-rhArg遺伝子、実験室で合成
配列番号40: C-ABD094-rhArg遺伝子、実験室で合成
配列番号41: N-ABD-BCA遺伝子、実験室で合成
配列番号42: N-ABD094-BCA遺伝子、実験室で合成
配列番号43: C-ABD-BCA遺伝子、実験室で合成
配列番号44: C-ABD094-BCA遺伝子、実験室で合成
配列番号45: His-ABD-リンカー、実験室で合成
配列番号46: His-ABD094-リンカー、実験室で合成
配列番号47: リンカー-ABD-His、実験室で合成
配列番号48: リンカー-ABD094-His、実験室で合成
配列番号49: N-ABD-rhArg、実験室で合成
配列番号50: N-ABD094-rhArg、実験室で合成
配列番号51: C-ABD-rhArg、実験室で合成
配列番号52: C-ABD094-rhArg、実験室で合成
配列番号53: N-ABD-BCA、実験室で合成
配列番号54: N-ABD094-BCA、実験室で合成
配列番号55: C-ABD-BCA、実験室で合成
配列番号56: C-ABD094-BCA、実験室で合成
配列番号57: ABD094-0Fプライマー、実験室で合成
配列番号58: ABD094-1Fプライマー、実験室で合成
配列番号59: ABD094-2Fプライマー、実験室で合成
配列番号60: ABD094-3Fプライマー、実験室で合成
配列番号61: ABD094-4Fプライマー、実験室で合成
配列番号62: ABD094-5Fプライマー、実験室で合成
配列番号63: abdNde-Fプライマー、実験室で合成
配列番号64: HuArgHinBam-Rプライマー、実験室で合成
配列番号65: N-ABD094-rhArg遺伝子、実験室で合成
配列番号66: Streptococcus sp. G148に基づくABD、実験室で合成
配列番号67: Streptococcus sp. G148に基づくABD、実験室で合成
配列番号68: リンカー無しのABD094、実験室で合成
配列番号69: 1位のXaaはメチオニンまたは不存在
配列番号71: BCA (S161C)アルギナーゼ、実験室で合成
配列番号72: BCA (V20P, S161C)アルギナーゼ、実験室で合成
配列番号73: リンカー配列1、実験室で合成
配列番号74: リンカー配列2、実験室で合成
配列番号75: BHA融合タンパク質、実験室で合成
配列番号76: BAH融合タンパク質、実験室で合成
配列番号77: 5’-センス-ABDプライマー、実験室で合成
配列番号78: 5’-アンチセンス-ABDプライマー、実験室で合成
配列番号79: ABDのクローニング用のフォワードプライマー、実験室で合成
配列番号80: ABDのクローニング用のリバースプライマー、実験室で合成
配列番号81: BCAのクローニング用のフォワードプライマー、実験室で合成
配列番号82: BCAのクローニング用のリバースプライマー、実験室で合成
配列番号83: BHAのクローニング用のフォワードプライマー、実験室で合成
配列番号84: BHAのクローニング用のリバースプライマー、実験室で合成
配列番号85: ABDのクローニング用のフォワードプライマー、実験室で合成
配列番号86: ABDのクローニング用のリバースプライマー、実験室で合成
配列番号87: BAHのクローニング用のフォワードプライマー、実験室で合成
配列番号88: BAHのクローニング用のリバースプライマー、実験室で合成
配列番号89: BCA (S161C)-His、実験室で合成
配列番号90: N-ABDHind-Rプライマー、実験室で合成
配列番号91: C-ABDNde-Fプライマー、実験室で合成
配列番号92: C-ABDHind-R、実験室で合成
配列番号93: HARGBam-Fプライマー、実験室で合成
配列番号94: HARGHind-Rプライマー、実験室で合成
配列番号95: HARGNde-F、実験室で合成
配列番号96: HARGBam-Rプライマー、実験室で合成
配列番号97: BCABam-Fプライマー、実験室で合成
配列番号98: BCAHind-Rプライマー、実験室で合成
配列番号99: BCANde-Fプライマー、実験室で合成
配列番号100: BCABam-Rプライマー、実験室で合成
配列番号101: His-rhArg、実験室で合成
配列番号102: His-rhArg-mono-Cys、実験室で合成
配列番号104: rhArg-mono-Cys、実験室で合成
配列番号105: A(EAAAK)4ALEA-(EAAAK)4Aペプチドリンカー、実験室で合成
配列番号106: G4SG4SG3SGペプチドリンカー、実験室で合成
配列番号107: (G4S)nペプチドリンカー、実験室で合成
5~20位のアミノ酸は無くてもよい
配列番号108: [A(EAAAK)nA]xペプチドリンカー、実験室で合成
12~21位のアミノ酸は無くてもよい
23~44位のアミノ酸は無くてもよい
配列番号109: (G4S)3ペプチドリンカー、実験室で合成
配列番号110: (GS)nペプチドリンカー、実験室で合成
3~60位のアミノ酸は無くてもよい
配列番号111: (GGS)nペプチドリンカー、実験室で合成
4~90位のアミノ酸は無くてもよい
配列番号112: GS(N)nGSGペプチドリンカー、実験室で合成
4~12位のアミノ酸は無くてもよい
配列番号113: GS(Q)nGSGペプチドリンカー、実験室で合成
4~12位のアミノ酸は無くてもよい

Claims (15)

  1. 肥満、代謝障害及び関連する合併症から成る群から選択される少なくとも1種の病態の治療を必要とする対象においてその病態を治療するための医薬の製造におけるアルギニン枯渇剤の使用であって、前記代謝障害は、耐糖能異常、高血糖症、真性糖尿病、脂肪肝、腎脂肪症、膵臓脂肪症、心臓脂肪症、及びインスリン抵抗性から成る群から選択され、前記関連する合併症は、糖尿病性腎症、糖尿病性脈管障害、糖尿病性神経障害、高コレステロール血症、脂質異常症、高トリグリセリド血症、高レプチン血症、高インスリン血症、脂肪性肝炎、線維症、肝硬変、高血圧、循環器疾患及び褐色脂肪の白色化から成る群から選択される1種以上の病態から選択される、使用
  2. 前記代謝障害はインスリン抵抗性である、請求項1に記載の使用
  3. 肥満の治療は脂肪量の増加を防ぐことと脂肪量を減少させることの内の少なくとも一を含む、請求項1に記載の使用
  4. 前記代謝障害は脂肪肝、腎脂肪症、膵臓脂肪症及び心臓脂肪症から成る群から選択される、請求項1に記載の使用
  5. 前記医薬は、前記対象の血清中のアルギニン濃度を50μM未満に維持するためのものである、請求項1に記載の使用
  6. 前記アルギニン枯渇剤は、アルギニン異化酵素である、請求項1に記載の使用
  7. 前記アルギニン異化酵素は、アルギナーゼタンパク質、アルギニンデイミナーゼタンパク質又はアルギニンデカルボキシラーゼタンパク質である、請求項6に記載の使用
  8. 前記アルギナーゼタンパク質、アルギニンデイミナーゼタンパク質又はアルギニンデカルボキシラーゼタンパク質は、1個以上のポリエチレングリコール(PEG)基を更に含む、請求項7に記載の使用
  9. 前記アルギナーゼタンパク質は、配列番号101、配列番号102、配列番号103又は配列番号104の配列を有するポリペプチドを含む、請求項8に記載の使用
  10. 前記アルギナーゼタンパク質は、配列番号69、配列番号70、配列番号71又は配列番号72と少なくとも95%の配列相同性を有するポリペプチドを含む、請求項7に記載の使用。
  11. 前記アルギナーゼタンパク質、アルギニンデイミナーゼタンパク質又はアルギニンデカルボキシラーゼタンパク質は、アルブミン結合ドメイン(ABD)又はヒト血清アルブミン、又はヒトIgGFcドメインを更に含む、請求項7に記載の使用
  12. 前記ABDは、配列番号66、配列番号67又は配列番号68と少なくとも93%の配列相同性を有するポリペプチドを含む、請求項11に記載の使用。
  13. 前記アルギニン異化酵素は、ABDポリペプチドとアルギナーゼポリペプチド、ABDポリペプチドとアルギニンデイミナーゼポリペプチド、又はABDポリペプチドとアルギニンデカルボキシラーゼポリペプチドを含む融合タンパク質である、請求項7に記載の使用
  14. 前記アルギニン異化酵素は、ABDポリペプチド及びアルギナーゼポリペプチドを含む融合タンパク質である、請求項13に記載の使用
  15. 前記アルギニン異化酵素は、配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号52、配列番号53、配列番号54、配列番号55、配列番号56、配列番号75又は配列番号76と少なくとも98%の配列相同性を有するポリペプチドを含む、請求項14に記載の使用
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