JPWO2019208724A1 - 所定の化合物に対する膜タンパク質のスクリーニング方法及び所定の化合物の生産方法 - Google Patents

所定の化合物に対する膜タンパク質のスクリーニング方法及び所定の化合物の生産方法 Download PDF

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Abstract

【課題】比較的少ない労力で、かつ放射性化合物が不要な方法で、種々の対象物質、種々の膜タンパク質について網羅的にスクリーニングできる新規方法を提供すること。細胞外への物質の排出能が不十分か不能であることに原因する当該物質の生産性が低下する又はその生産ができない等という微生物による物質生産に関するボトルネック問題を解消する方法を提供すること。所定の化合物の生産方法であって、フュージョンパートナーをコードする遺伝子と、前記所定の化合物の輸送に関わる膜タンパク質をコードする遺伝子とが発現するように組み込んだ微生物を培養する工程を含む、方法。

Description

[関連出願の相互参照]
本出願は、2018年4月27日に出願された、日本国特許出願第2018−087700号明細書(その開示全体が参照により本明細書中に援用される)に基づく優先権を主張する。本発明は、所定の化合物に対する膜タンパク質のスクリーニング方法及び所定の化合物の生産方法に関する。
微生物を用いた物質生産は、一般的に、化学合成等と比較して、生産性、コスト等の面からメリットがあることが多く、様々な分野において利用されている。典型的には、環境中から取り込まれた基質が微生物の細胞内で代謝されて代謝産物となり、細胞外に排出され、排出された当該代謝産物が回収される。ここで、基質の細胞内への取り込みを行う輸送体(インポーター)及び代謝産物の細胞外への排出を行う輸送体(エクスポーター)、目的化合物が多糖などの高分子化合物の場合、生合成と生産物の排出を同時に担っている生合成酵素が重要である。具体的には、例えば、一次代謝産物の生産等の場合、所定の化合物のエクスポーター及び基質のインポーターは既に当該微生物が有していることが通常であるが、特に代謝改変により菌体内生産を強化し代謝産物の菌体内濃度が上がった場合、フィードバック阻害がかかり、生産物の排出輸送が律側段階となり得る(非特許文献1)。また、二次代謝産物、新規化合物の生産等の場合、そもそも使用する微生物が輸送体を有していない場合、基質が取り込まれないか、代謝産物が細胞外に排出されずに継続的に生産ができない等といった問題が生じ得る。こうした細胞外への物質の排出能が不十分か不能であることに原因する当該物質の生産性が低下する又はその生産ができないという問題を本発明者らは排出ボトルネックと呼んでいる。排出ボトルネックは現行の微生物を利用した物質の工業生産、又は微生物利用による工業生産が期待される新たな物質の生産に向けた技術開発おける潜在課題であるといえる。そのため、基質または代謝産物となり得る所定の化合物に対する輸送体がどのようなタンパク質であるかを特定することは物質生産の系を設計するために非常に有用である。
従来は、遺伝学的手法(例えば、ジペプチド耐性相補遺伝子を利用したC.glutamicumグルタミン酸排出輸送体の探索)、生化学的手法(例えば、リポソーム再構成法による輸送活性測定を用いたアスパラギン酸輸送体の探索)等が報告されている(非特許文献1)しかし、上述の遺伝学的手法は、種々の遺伝子を欠損した株の作成が必要であること、同時に複数種の輸送体の探索は困難であること等の問題があった。また、上記の生化学的手法は、トランスポーターの精製・再構成が困難であること、放射性同位体が必要で、入手困難な化合物があること、特に排出輸送体(エクスポーター)は、取込み輸送体(インポーター)と比較して基質に対するKm値が非常に大きく探索が困難であること等の問題があった。
また、インポーター、エクスポーター、生合成酵素などの膜タンパク質は、機能を保持した状態で細胞膜上で発現させることが重要であるが、膜タンパク質の細胞膜上での安定的な発現が困難であるため、膜タンパク質を安定的に発現し、生産を効率化することは困難であった。
Appl Microbiol Biotecnol (2015) 99:9381-9393 Trends Biotechnol. (2015) 33:237-246 J Mol Biol. 2015 Feb 27;427(4):943-54 Mol Pharmacetics (2008) 5, 212-225 Appl Microbiol Biotechnol (2002) 58, 265-274 Micobiol Cell Factoryies (2013) 12, 113 、発酵ハンドブック(財団法人 バイオインダストリー協会 発酵と代謝研究会)初版、目次ix〜目次xii頁(2001年7月25日発行) 微生物機能を活用した革新的生産技術の最前線(シーエムシー出版)普及版、1〜8頁(2012年6月6日発行) J Mol Biol (2012) 418, 21-31 BMC Biochem (2012) 13, 2 Appl Environ Microbiol (2010) 76, 5669-5675
本発明は、微生物を用いた物質生産における上記ボトルネックを解決する新規方法を提供することを課題とする。また、本発明は、比較的少ない労力で、かつ放射性化合物が不要な方法で、種々の対象物質、種々の膜輸送体候補タンパク質について網羅的にスクリーニングできる新規方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、フュージョンパートナーをコードする遺伝子と、前記所定の化合物の輸送に関わる膜タンパク質又はその候補タンパク質をコードする遺伝子とが発現するように組み込んだ微生物を物質生産方法又はスクリーニング方法に用いることにより上記課題を解決し得ることを見出した。本発明は、上記新たな知見に基づくものである。
従って、本発明は以下の項を提供する:
項1.所定の化合物の生産方法であって、
フュージョンパートナーをコードする遺伝子と、前記所定の化合物の輸送に関わる膜タンパク質をコードする遺伝子とがポリシストロニックmRNAの翻訳により発現するように連結された遺伝子を組み込んだ微生物を培養する工程を含み、
前記連結された遺伝子が、前記フュージョンパートナーをコードする遺伝子の終止コドンを構成するヌクレオチドの一部が前記所定の化合物の輸送に関わる膜タンパク質をコードする遺伝子の開始コドンの一部となるように連結された遺伝子である、方法。
項2.前記微生物を培養する工程で得られた培養液から前記所定の化合物を回収する工程をさらに含む、項1に記載の方法。
項3.前記微生物がバクテリアである項1又は2に記載の方法。
項4.前記微生物に、当該微生物のレアコドンに対応するtRNAをコードする遺伝子がさらに組み込まれている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
項5.膜タンパク質が、エクスポータータンパク質、インポータータンパク質、合成酵素タンパク質、タンパク質分泌装置の構成要素であるタンパク質である、項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
項6.下記工程(1)〜(4)を含む、所定の化合物に対する膜タンパク質をスクリーニングするための方法:
(1)フュージョンパートナーをコードする遺伝子と、膜タンパク質候補をコードする遺伝子とがポリシストロニックmRNAの翻訳により発現するように連結された遺伝子であって、前記フュージョンパートナーをコードする遺伝子の終止コドンを構成するヌクレオチドの一部が前記膜タンパク質をコードする遺伝子の開始コドンの一部となるように連結された遺伝子を組み込んだ微生物のライブラリーを作成する工程、
(2)前記微生物を培養する工程
(3)培養前に比べて前記所定の化合物の量に変動が認められる培養液またはその上清を特定する工程、
(4)前記特定された培養液またはその上清を得た微生物に組み込まれ発現する膜タンパク質候補が、前記所定の化合物の膜内外の輸送能を有する膜タンパク質であると特定する工程。
項7.膜タンパク質が、エクスポータータンパク質、インポータータンパク質、合成構想タンパク質、タンパク質分泌装置を構成要素であるタンパク質である、項6〜96に記載の方法。
項8.前記微生物がバクテリアである項6又は7に記載の方法。
項9.前記微生物に、当該微生物のレアコドンに対応するtRNAをコードする遺伝子がさらに組み込まれている、項6〜8のいずれか1項に記載の方法。
本発明は、上記排出ボトルネックを解決する新規方法を提供することができる。本発明によれば、比較的少ない労力で、かつ放射性化合物が不要な方法で、種々の対象物質、種々の膜輸送体候補タンパク質について網羅的にスクリーニングすることができる新規方法を提供することができる。
実施例1に記載のプラスミドの概略を示す。 実施例1の結果を示す。 実施例2の結果を示す。 実施例3の結果を示す。 実施例3の結果を示す。 実施例4の結果を示す。 実施例5の結果を示す。 実施例6の結果を示す。
本発明において、用語「遺伝子」には、特に言及しない限り、タンパク質、tRNA、rRNA等の一次構造を規定している構造遺伝子だけでなく、プロモーター、オペレーター等の特定の制御機能を有する核酸上の領域も包含される。従って、本発明において「遺伝子」とは、特に言及しない限り、調節領域、コード領域、エクソン、及びイントロンを区別することなく示すものとする。また、「構造遺伝子」には、元のDNA配列にサイレント変異が施されたサイレントDNAも包含される。また、本発明においては、遺伝子発現に干渉するsiRNA等の核酸分子も「遺伝子」に包含される。
本明細書中において、「核酸」は、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド及びポリヌクレオチドと同義であって、DNA、RNA、DNA−RNAハイブリッドのいずれであってもよい。また、これらは2本鎖であっても1本鎖であってもよく、ある配列を有する核酸分子といった場合、特に言及しない限り、これに相補的な配列を有する核酸分子(またはヌクレオチド、オリゴヌクレオチド及びポリヌクレオチド)も包括的に意味するものとする。また、これらの核酸分子は環状でも直鎖状であってもよく、また合成及び生物由来のいずれであってもよい。
本発明において、用語「タンパク質(タンパク)」及び「ペプチド」は、特に言及しない限り、オリゴペプチド及びポリペプチドを含む意味で用いられる。また、本明細書において、「タンパク質」及び「ペプチド」は、特に言及しない限り、糖鎖などによって修飾されているタンパク質及び非修飾のタンパク質の両方を包含するものとする。このことは、タンパク質であることが明記されていないタンパク質についても同様である。
本明細書中において、「膜タンパク質」は、特に言及しない限り、細胞膜に局在する形で発現し、所定の化合物の細胞内外の輸送能を有するタンパク質を含む意味で用いられる。所定の化合物の細胞内外の輸送に関わる膜輸送体タンパク質、細胞膜に局在し、所定の化合物への触媒作用で作り出すのみならず細胞内外の輸送にも関わる合成酵素タンパク質、または細胞膜において機能するタンパク質分泌装置と呼ばれる、細胞内外のタンパク質の輸送に関わる複数のタンパク質により構成される複合体を含むものとする。膜輸送体タンパク質はさらにエクスポータータンパク質、インポータータンパク質を含むものとする。
膜タンパク質のスクリーニング方法
本発明は、下記工程(1)〜(4)を含む、所定の化合物に対する膜タンパク質をスクリーニングするための方法を提供する:
(1)フュージョンパートナーをコードする遺伝子と、膜タンパク質候補をコードする遺伝子とがポリシストロニックmRNAの翻訳により発現するように連結された遺伝子であって、前記フュージョンパートナーをコードする遺伝子の終止コドンを構成するヌクレオチドの一部が前記膜タンパク質候補をコードする遺伝子の開始コドンの一部となるように連結された遺伝子を組み込んだ微生物のライブラリーを作成する工程、
(2)前記微生物を培養する工程
(3)培養前に比べて前記所定の化合物の量に変動が認められる培養液またはその上清を特定する工程、
(4)前記特定された培養液またはその上清を得た微生物に組み込まれ発現する膜タンパク質候補が、前記所定の化合物の膜内外の輸送能を有するタンパク質であると特定する工程。
本発明の対象となる「所定の化合物」としては、特に限定されないが、例えば、アメリカ合衆国エネルギー省(DOE)が公表している微生物による工業生産が期待されている物質(https://energy.gov/eere/bioenergy)をはじめとして、非特許文献4〜8などにまとめられている微生物による工業生産がおこなわれている物質が挙げられ、それは低分子化合物、高分子化合物、その他の有用物質と非常に多岐にわたる。典型的には、所定の化合物は、有機化合物である。具体例としては、当該所定の化合物には、例えば、アミノ酸類、有機酸類、核酸類、炭水化物類(単糖類、二糖類等の糖類等)、ビタミン類、アルコール類等の低分子化合物;抗生物質類、多糖類、ポリペプチド、ポリフェノール類、酵素・タンパク質等の高分子化合物等も含まれる。また有用物質としては、上記以外にも、生理活性物質、二次代謝産物各種物質も含まれる。
一方、本発明の対象となる「所定の化合物」に、膜タンパク質は想定しない。本発明の対象となる「所定の化合物」は、前記膜タンパク質を介して微生物の細胞内外へ輸送される物質となる。
膜タンパク質がエクスポータータンパク質の場合、本発明の対象となる「所定の化合物」として、当該化合物の存在下で宿主に用いる微生物を生育できるような化合物だけでなく、宿主に用いる微生物細胞内への蓄積によってその生育を阻害する作用を有する化合物も挙げることができ、例えば宿主が大腸菌の場合、モノアラニン(L-アラニン)、非リボソームペプチド、テルペノイドといった大腸菌の生育を阻害することが知られている物質も本発明では「所定の化合物」とすることができる。
工程(1)
本発明のスクリーニング方法は、フュージョンパートナーをコードする遺伝子と、膜タンパク質候補をコードする遺伝子とがポリシストロニックmRNAの翻訳により発現するように連結された遺伝子であって、前記フュージョンパートナーをコードする遺伝子の終止コドンを構成するヌクレオチドの一部が前記膜タンパク質候補をコードする遺伝子の開始コドンの一部となるように連結された遺伝子を組み込んだ微生物のライブラリーを作成する工程を含む。本工程は、フュージョンパートナーをコードする遺伝子及び膜タンパク質候補をコードする遺伝子を微生物に導入する操作を、種々の膜タンパク質候補をコードする遺伝子について行い、複数種類の組み替え微生物を製造することにより行うことができる。
本発明において、フュージョンパートナーとは、発現させるタンパク質のN末端側に結合させるタンパク質で、膜蛋白質のmRNAの安定化や膜タンパク質の細胞膜上での発現量の向上といった効果を発揮するもので(非特許文献3)、発現させるタンパク質を精製する際にも利用される。代表的なものにはmstX、ybeLなどがある。尚、非特許文献3には、フュージョンパートナーであるmstX、ybeLをProW、MscL、LacY、GltPといった膜タンパク質に連結してin vivoで発現させたことが記載されている。しかし、非特許文献3では、膜タンパク質の構造生物学において十分な量の、構造が保存されたタンパク質を得られるかどうかが今なお主要なボトルネックであると課題設定している。本文献では、フュージョンパートナーを利用して生産した膜タンパク質の発現の発現量を確認し、無細胞評価系で機能を評価した結果を開示するにとどまる。当該構造生物学における膜タンパク質の質/量的向上をさらに求めるにあたり、議論の中心はどのフュージョンパートナーを選択するのがよいか、および遺伝子の構造に置かれており、mstXよりybeLのほうが好ましいという結論を開示するにとどまる。また、Y4 GPCRを発現させた場合は、フュージョンパートナーの不使用時に比べればあるていどの質/量的向上は確認できるものの、まだまだ不十分である旨が述べられる。フュージョンパートナーを用いて発現させた膜タンパク質がin vivo(細胞)において機能すること、発現させた膜タンパク質の精製を行わずに簡便に基質の探索ができること、発現させた膜タンパク質が有用物質生産代謝系と共同して機能し、物質生産の効率化に寄与するかどうかの検討結果に関する開示はない。本発明において、mstXとは、Genbank accession No.YP_003097778.1に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド又は当該アミノ酸配列と70%以上(好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは97%以上、より好ましくは99%以上)の同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチド(典型的には上記ポリペプチドとの機能的等価物)を示す。また、本発明において、ybeLとは、Genbank accession No.NP_415176.1に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド又は当該アミノ酸配列と70%以上(好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは97%以上、より好ましくは99%以上)の同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチド(典型的には上記ポリペプチドとの機能的等価物)を示す。
膜タンパク質をコードする遺伝子を得る方法は特に限定されないが、例えば、後述の実施例のように、所定の微生物のゲノムDNAを鋳型にし、適当なプライマーを用いたPCRにより、膜輸送体候補タンパク質をコードする遺伝子を増幅することによりえることができる。膜タンパク質としてどの微生物に由来するものを用いるかは特に限定されないが、例えば、「遺伝子を導入する微生物」として後述する微生物等が挙げられる。当該膜タンパク質を元々有する微生物と当該膜タンパク質の遺伝子を導入する微生物とは異なる種類のものでも同一種でもよい。
これらの遺伝子を導入する微生物としては、特に限定されないが、本発明においては、真核生物、原核生物のうち、原核生物が好ましい。原核生物としては、例えば、大腸菌、放線菌(Corynebacterium属、Streptomyces属、Propionibacterium属等)、乳酸菌(Lactobacillus、Streptococcus属等)、枯草菌(Bacillus属等)等のバクテリア(真正細菌)が挙げられ、大腸菌、放線菌等が好ましい。Corynebacterium属としては、Corynebacterium glutamicum、Corymebacterium ammoniagenes、Corynebacterium lactofermentum、Corynebacterium efficiens等が挙げられる。
本発明においては、フュージョンパートナーをコードする遺伝子と、前記膜タンパク質候補をコードする遺伝子とがポリシストロニックmRNAの翻訳により発現するように連結された遺伝子として前記微生物に組み込まれていること、及び
前記フュージョンパートナーをコードする遺伝子の終止コドンを構成するヌクレオチドの一部が前記膜タンパク質候補をコードする遺伝子の開始コドンの一部となるように連結された遺伝子であることがさらに好ましい。かかる特徴に起因して、本発明によれば、膜タンパク質候補に質的又は量的に新たな機能をもたらすことができる。例えば、上記態様にてフュージョンパートナーをコードする遺伝子と前記膜タンパク質候補をコードする遺伝子とを組み合わせた場合、膜タンパク質候補について知られていなかった物質の輸送能を獲得し得る。従って、本発明にかかる、所定の化合物に対する膜タンパク質候補をスクリーニングする方法において、上記特徴は非常に重要である。上記微生物に、フュージョンパートナーをコードする遺伝子と、膜タンパク質候補をコードする遺伝子とを導入する方法としては、導入する遺伝子としてフュージョンパートナーをコードする遺伝子及び膜タンパク質候補をコードする遺伝子を上記態様で組み合わせた遺伝子を用いる以外、自体公知の方法に従い行うことができる。例えば、フュージョンパートナーをコードする遺伝性及び膜タンパク質候補をコードする遺伝子を組み込んだベクターを構築し、当該ベクターの存在下で上記微生物をインキュベートすることにより行うことができる。また、フュージョンパートナーをコードする遺伝子と、前記所定の化合物の輸送に関わる膜タンパク質候補をコードする遺伝子とが融合タンパク質として発現するように連結された遺伝子として前記微生物に組み込まれていることも好ましい。上記微生物は、典型的には、所定の化合物の産生能を有する。上記微生物には、所定の化合物を発現する遺伝子をさらに導入してもよい。また、前記微生物(好ましくは大腸菌)には、当該微生物のレアコドンに対応するtRNAをコードする遺伝子がさらに組み込まれていることが、特に当該微生物とは分類学上異なる種類の微生物由来の化合物を所定の化合物として発現する場合、tRNAレパートリーの拡充の観点から好ましい。
工程(2)
本発明は、前記工程(1)により得られた、フュージョンパートナーをコードする遺伝子と、膜タンパク質候補をコードする遺伝子とを組み込んだ微生物を培養する工程を含む。
当該工程で用いる培地としては、特に限定されず、上記微生物の培養に用いることができるものを広く使用することができる。例えば、LB培地、M9培地、MRS培地、マルツ培地、ブイヨン培地等が挙げられる。上記培地には、炭素源として、グルコース、でんぷん、可溶性でんぷん、廃糖蜜、コーンスティープリカー等を添加してもよい。膜タンパク質候補が、インポーター候補タンパク質の場合、所定の化合物を予め培地に添加しておいてもよい。培養温度は特に限定されず、20〜45℃、より好ましくは25〜37℃の範囲で適宜設定できる。培養時間も特に限定されないが、例えば、12〜72時間、より好ましくは24〜48時間の範囲で適宜設定できる。培養は、静置培養でも振盪培養でもよいが、振盪培養が好ましい。
工程(3)(4)
本発明は、培養前に比べて前記所定の化合物の量に変動が認められる培養液またはその上清を特定する工程を含む。本工程は、上記(2)培養工程の前後における培養液またはその上清中の所定の化合物の量を測定し、これらの対比することにより行うことができる。上記(2)培養工程の前に比べて、当該工程後に所定の化合物の量に変動が認められる場合、膜タンパク質候補が、前記所定の化合物の膜輸送体であるものと特定できる。すなわち、上記微生物に所望の膜タンパク質候補をコードする遺伝子が組み込まれていた場合、フュージョンパートナーの作用と相まって、当該膜タンパク質候補が上記細胞の細胞膜を貫通するように構成され、その結果、膜タンパク質候補がインポータータンパク質の場合、培養上清中の所定の化合物の量は減少し、一方、膜タンパク質候補がエクスポータータンパク質の場合、培養上清中の所定の化合物の量は増加するものと考えられる。
所定の化合物の生産方法
本発明は、所定の化合物の生産方法であって、
フュージョンパートナーをコードする遺伝子と、前記所定の化合物の輸送に関わる膜タンパク質をコードする遺伝子とがポリシストロニックmRNAの翻訳により発現するように連結された遺伝子を発現するように組み込んだ微生物を培養する工程を含み、
前記連結された遺伝子が、前記フュージョンパートナーをコードする遺伝子の終止コドンを構成するヌクレオチドの一部が前記所定の化合物の輸送体タンパク質をコードする遺伝子の開始コドンの一部となるように連結された遺伝子である、方法を提供する。
本実施形態で用いる「フュージョンパートナーをコードする遺伝子と、前記所定の化合物の輸送に関わる膜タンパク質をコードする遺伝子とが発現するように組み込んだ微生物」についての詳細、具体的には、フュージョンパートナーの定義、所定の化合物、微生物等の例示等は、「膜タンパク質のスクリーニング方法」で説明した通りである。また、膜タンパク質をコードする遺伝子を得る方法、当該遺伝子を導入する方法等、当該遺伝子に関する事項は、「膜輸送体候補タンパク質をコードする遺伝子」について前述した通りである。また、培養工程における培地、添加物の種類、培養温度、時間等についても前述した通りである。
本発明の方法は、上記培養工程で得られた培養液から所定の化合物を回収する工程をさらに含んでいてもよい。培養培地からの所定の化合物の回収方法としては、特に限定されず、自体公知の方法(遠心分離、再結晶、蒸留法、溶媒抽出法、クロマトグラフィー等)を適宜用いることができる。
<実験方法の詳細>
(1) 膜蛋白質高発現用ベクタープラスミドの構築(全実施例共通)
(1)−1.pTrc99A_mstX_C8_Hisの作成
プラスミドベクターpTrc99A(Pharmacia Biotech)を制限酵素XbaIとHindIIIで切断処理し、リンカーとTEVプロテアーゼ認識配列、His−tagを有するオリゴDNAにXbaI及びHindIIIの認識配列を5´端及び3´端にそれぞれ付加した配列(CTAGAGGTGGCGGTGGCGGTGGCGGTGGCGAAAACCTGTACTTCCAGGGTCACCACCACCACCACCATCATCATtaaTAGCT)をライゲーションにより挿入した(pTrc99A_C8_His)。本配列は、北海道システム・サイエンス株式会社に合成を委託して取得した。
次に、pTrc99A_C8_Hisを制限酵素NcoIとKpnIで切断処理し、クローニングしたmstX遺伝子をライゲーションにより挿入した。mstX遺伝子断片は、LB培地を用いて枯草菌(Bacillus subtilis)を培養後、NucleoSpin Tissue (Takara)を付属のプロトコル通りに用いて、枯草菌(B. subtilis)からゲノムDNAを抽出し、抽出したB. subtilisゲノムDNAを鋳型とし、forward primer: AGGAAACAGACcatgttttgtacattttttgaaaaacatcaccgg、およびreverse primer: CTAGAGGATCCCCGGGTACCACTCATtctttttctccttcttcagatactg をプライマーとして用いて、PCRにより増幅することで得た。In−Fusion HD Cloning Kit (Takara)を付属のプロトコル通りに用いて、前記mstX遺伝子断片をNcoI及びKpnIで処理後、pTrc99A_C8_Hisにライゲーションした(pTrc99A_mstX_C8_His)。
(1)−2.pTrc99A_ybeL_C8_Hisの作成
pTrc99A_C8_Hisは実施例(1)−1.と同じ手順にて作成した。ybeL遺伝子断片は、実施例(1)−1.と同じ手順にて取得した大腸菌ゲノムDNAを鋳型に、forward primer(AGGAAACAGACcatgaacaaggttgctcaatattaccg)およびreverse primer (CTAGAGGATCCCCGGGTACCACTCATaccacttctccgctgtgataaac)をプライマーとして用いて、PCRにより増幅することで得た。得られた増幅断片は、実施例(1)−2.と同じ手順にてpTrc99A_C8_Hisにライゲーションし、pTrc99A_ybeL_C8_Hisを得た。
(2) 実施例1.輸送体の探索その1(コリネ)
(2)−1.コリネ膜輸送体ライブラリーの作成
培地(ポリペプトン2 g, Yeast extract 0.4 g, MgSO4 7H2O 0.2 g/ 200 ml)を用いてコリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)を培養し、菌体よりNucleoSpin Tissue (Takara)を付属のプロトコル通りに用いてゲノムDNAを抽出した。抽出したゲノムDNAを鋳型にして、表1のプライマーを用いてPCRにより3種の輸送体遺伝子をそれぞれ増幅した。pTrc99A_mstX_C8_Hisを制限酵素KpnIとXbaIで処理し、In−Fusion HD Cloning Kit (Takara)を付属のプロトコル通りに用いて各輸送体遺伝子をライゲーションし、各膜輸送体発現用プラスミドベクターを構築した。このとき、図1に示すようにmstX遺伝子の終止コドンと各輸送体遺伝子の開始コドンが互いにその一部を共有する状態となっている。
Figure 2019208724
(2)−2.輸送体発現用大腸菌の形質転換
毒性タンパク質の発現に適した大腸菌C43 (DE3)株(Lucigen社)に大腸菌のレアコドンに対応するtRNAを補充するプラスミドpRARE(メルク社)を形質転換した株(C43 (DE3) Rosetta株)を(2)−1で得た膜輸送体発現用プラスミドベクターの発現宿主とし、実施例株を得た。またコントロールとして、膜輸送体遺伝子をライゲーションしていないpTrc99A_mstX_C8_Hisを前記発現宿主に導入しコントロール株を取得した。
実施例株およびコントロール株を、LB培地を用いて30℃、24 h前培養し、前培養液を得た。50 ml M9最小培地に抗生物質アンピシリン(100 μg/ml)とクロラムフェニコール(30 μg/ml)を添加し、前培養液500 μlを添加し、37℃で振盪培養した。OD660が、おおよそ0.5になった時に、終濃度が1 mM となるようにIPTGを添加し、ひきつづき37℃で、24時間振盪培養した。24時間培養後、9,000 rpm, 15 min 遠心し、実施例株培養上清およびコントロール株培養上清を得た。
(2)−3.培養液のMS分析
(2)−2における前培養液、実施例株培養上清およびコントロール株培養上清を0.22 μmのフィルターを用いてろ過した。各ろ液に含まれる成分のMS分析は株式会社島津製作所に外注して行った。
(2)−4.結果
図2に示す。実施例株1の培養上清ではリシン、オルニチンおよびプロリンが前培養液およびコントロール培養上清に比べ格段に含まれていることが分かった(図2A〜C)。実施例株1に導入されたプラスミドベクターにライゲーションしていた遺伝子はLysE遺伝子であり、LysEは本来のリシンの輸送体としての機能のほか、オルニチンの輸送体としても機能することが知られていたが、図2A及びBではそれが示す通りLysEのリシンおよびオルニチン輸送能を確認できたことから、本発明の膜輸送体の探索方法の精度と有用性が高いものであることを示している。一方で驚くべきことに、これまでLysEでは知られていなかったプロリンの輸送能を確認したことから(図2C)、本発明の新規膜輸送体およびその機能の探索方法としての有用性が示された。
また、実施例株4に導入された輸送体遺伝子は機能が明らかにされていなかったが、本発明によりグリシン特異的膜輸送体であることが示された(図2D)。さらにバリン輸送体はその輸送能の高低はあれ様々存在すること、特に実施例株14に発現した従来機能不明であった輸送体が、もっとも高い輸送能を有するバリン輸送体であることを特定した(図2E)。これらの結果も、本発明の膜輸送体の探索方法としての有用性を示すものとなった。
(3) 実施例2.輸送体の探索その2(アラニン輸送体)
本発明は、発現宿主の選択によって特定の物質の膜輸送体探索に特化した探索方法とすることができ、本実施例はその一例である。本実施例では、発現宿主に大腸菌MLA301ΔygaW株(Hori et al (2011) Appl Environ Microbiol 77: 4027−4034)を用いた。大腸菌MLA301ΔygaW株は細胞内アラニン代謝系が欠損しているためアラニン要求株となっているうえ、ジアラニン(L−アラニン―L−アラニン)存在下で培養するとジアラニンを基質に菌体内でモノアラニン(L−アラニン)を過剰蓄積し生育阻害をも起こす大腸菌株である。つまり、大腸菌MLA301ΔygaW株を発現宿主とし、膜輸送体発現用プラスミドベクターを導入後にジアラニン存在下で培養後、導入株の生育阻害が減退し菌体の増殖(菌体数の増加)が観察された場合、導入株にはアラニン排出輸送体が発現したことととなり、新規アラニン輸送体を探索・特定できることになる。
(3)−1.膜輸送体発現用プラスミドベクターの作成
(2)−1で取得した3種の輸送体遺伝子増幅産物に、新たに表2のプライマーを用いて取得した3種の輸送体遺伝子増幅産物を加えた計6種類のコリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)の輸送体遺伝子ライブラリーをpTrc99A_mstX_C8_Hisにライゲーションした。ライゲーションの具体的方法は実施例(2)−1と同じ手順で行った。
Figure 2019208724
(3)−2.膜タンパク質発現用大腸菌の形質転換
大腸菌MLA301ΔygaWを(3)−1で得た膜タンパク質発現用プラスミドベクターの発現宿主とした。またコントロールとして、輸送体遺伝子ライブラリーをライゲーションしていないpTrc99A_mstX_C8_Hisを前記発現宿主に導入しコントール株を取得した。
膜タンパク質発現用プラスミドベクターを形質転換した大腸菌MLA301ΔygaW株およびコントロール株をLB培地を用いて30℃、20h前培養し、前培養液を得た。ついで、培養後の菌体は7,500 rpm(KUBOTA 3700)で1分間、4℃で遠心し、全量を集菌した。集菌後の上清を取り除き、最少培地(Glucose 220mM、MgSO4 17mM、(NH4)2SO4 7.5mM、K2SO4 7mM、NaCl 22mM、Sodium phosphate(pH7.0)、D−Ala 50 μg/ml、Asp−K(pH7.0) 50 mM)で懸濁し、7,500 rpm(KUBOTA 3700)で1分間遠心した(菌体洗浄)。洗浄を2度行った後、3度目に懸濁した際の吸光度を測定し、最少培地にO.D.660 = 0.002となるように添加後、25℃で培養した(本培養)。経時的に培養液をサンプリングし、660 nmにおける吸光度(O.D.660)を測定した。LB 培地および最少培地には必要に応じて 0.5 mM Ala−Ala、30 μg/ml Carbenicillin、30 μg/ml Spectinomycinを添加した。
(3)−3.結果
図3に示す。コントロール株および輸送体CT035導入株は増殖が見られず、菌体内モノアラニンの増加による生育阻害が認められた。一方CT005、032各導入株は培養時間にともない菌体数の増加が認められ、これらはアラニン排出輸送体であることが特定された。本発明の新規膜輸送体およびその機能の探索方法としての有用性が示された。
(4)実施例3.物質の増産性その1
実施例1にて、バリン輸送体と特定された輸送体を、本発明を用いた増産性についての検証に供した。輸送体遺伝子を含むpTrc99A_mstX_C8_Hisプラスミドベクターを導入したC43 (DE3) Rosetta株(実施例株)、輸送体遺伝子を含むpTrc99A_C8_Hisプラスミドベクターを導入したC43 (DE3) Rosetta株(比較例株)を、実施例1の培養条件と同じ条件で培養し、培養上清を0.22μmのフィルターを用いてろ過した。それぞれの培養上清中のアミノ酸の分析は、ろ液をイオン化のために等量のマトリックス(5mg/mL CHCA(溶媒は70%アセトニトリル、0.1%TFA))と混合し、TOF/TOFTM 5800(SCIEX社製)に供し、付属のプロトコルに従って検出を行った。内部標準としてプロリンを使用、バリンのピークは、標品を用いて確認(図4B、Val(Std.))し、各ろ液のバリンのピーク強度を比較した。
結果を図4に示す。図4Aは最少培地のみのブランクである。図4B〜Fには内部標準としてプロリン(終濃度100μM)を添加し、標品のバリンのピークを確認(図4B: Std.)、pTrc99A_C8_Hisプラスミドベクターのみを導入したC43 (DE3) Rosetta株を最少培地で培養して得た培養上清(図4C)、pTrc99A_mstX_C8_Hisプラスミドベクターのみを導入したC43 (DE3) Rosetta株を最少培地で培養して得た培養上清(図4D)、比較例株を最少培地で培養して得た培養上清(図4E)、実施例株を最少培地で培養して得た培養上清(図4F)のTOF/MSデータを示す。実施例株および比較例株それぞれのバリンの産生量を内部標準のプロリン由来シグナル比で比較すると実施例株の方が顕著に(約4倍に)増加していた(図5)。このことから、本発明の物質の生産方法により、所定の物質の産生量の増加を期待でいることが実証された。
(5)実施例4.物質の増産性その2
実施例2で特定したCT005について、本発明を用いたアラニンの増産性を検証した。
実施例2にて得られたCT005をライゲーションした膜輸送体発現用プラスミドベクターを導入した大腸菌C43 (DE3)株(実施例株)、およびCT005をライゲーションしていない膜輸送体発現用プラスミドベクターを導入した大腸菌C43 (DE3)株(比較例株)を取得し、LB 液体培地 (30 μg/ml Carbenicillin) で30℃、24 時間震盪培養した。前培養液0.5 mlを50 mlの最少培地(Glucose 220mM、MgSO4 17mM、(NH4)2SO4 7.5mM、K2SO4 7mM、NaCl 22mM、Sodium phosphate(pH7.0))に添加し、37℃、振とう培養した。O. D. 660=0.5〜0.6 で、さらに22 mM D−glucose、30 μg/ml Carbenicillin、1 mM Pyridoxal−5’−phosphate、0.2mM IPTGおよび必要に応じて0〜50 mM Asp−K pH 7.0を添加し、37℃、12時間振盪培養した。集菌後の培養上清中に含まれるアミノ酸はo−フタルアルデヒドを用いて誘導化し、陽イオン交換カラム(Shim−pack AMINO NA、Shimadzu、Japan)を装備したHPLC(LC−10A、Shimadzu、Japan)で定量した。LB 培地および最少培地には必要に応じて30 μg/ml Carbenicillinを添加した。
結果を図6に示す。培養時間の経過に伴い実施例株および比較例株それぞれの培養上清中のアラニン産生量差は大きくなり、各菌株を継続培養すればこの産生量差の拡大が予想される傾向となった。培養後12時間経過時点では実施例株の産生量は比較例株のそれに比べ1.5倍量となった。このことから、本発明の物質の生産方法により、所定の物質の産生量の増加を期待できることが実証された。
(6)実施例5.物質の生産性の比較
本発明による所定の化合物の生産性を検証した。本実施例5において実施例1における実施例株14を実施例株とした。そして、本実施例5において比較例株は2種類用意した。図7に示すように、比較例株1はフュージョンパートナー遺伝子の終止コドン部とNCgl2232遺伝子の開始コドン部を別のアミノ酸をコードするコドンに置き換え、フュージョンパートナーとNCgl2232の融合タンパク質をコードする遺伝子として連結したもの(以下、融合タンパク質遺伝子という。)を、比較例株2は、フュージョンパートナー遺伝子とNCgl2232遺伝子とが互いに異なるオープンリーディングフレームにより発現するように連結したもの(以下、単シストロン遺伝子という。)を用いた。比較例株1及び2は、前記(1)−1に記載のpTrc99A_mstX_C8_Hisに、下記のプライマーセットを用いる以外前記(2)−1に記載の方法と同様にして融合タンパク質遺伝子及び単シストロン遺伝子増幅産物を得、さらにこれをライゲーションしたプラスミドベクターを、前記(2)−2と同様の方法に記載の大腸菌を宿主として遺伝子導入することで得た。
FW(融合タンパク質遺伝子):GAAAAAGAGGGACAACAGGTGCTCATG(Translational fusion)
FW(単シストロン遺伝子):GAAAAAGAGTGAGTGGATGCAACAGGTGCTCATG(:Individual)
RV(実施例株及び比較例株共通):CACCGCCACCTCTAGAAGATCCAAAGATAATGGAGACCGC(表1の実施例株14のRV)。
実施例株14、2種類の比較例株及び前記(2)−2に記載のコントロール株をいずれも前記(2)−2の培養条件と同じ条件で、培養し、(4)に記載と同様の方法でアミノ酸の検出を行った。ただし、内部標準としてプロリン(終濃度1mM)を使用、バリンのピークは標品を用いて確認(図7左上段、Val(Std.))し、各ろ液のバリンのピーク強度を比較した(図7)。
(6)−1.結果
図7に示す。TOF-MSでの分析の結果、実施例株14の培養上清にはバリンが含まれ、その量は前培養液、2種類の比較株の培養上清及びコントロール培養上清での量に比べ顕著に多いことが分かった(図7)。以上から、本発明による所定の化合物の生産性は、バリンの生産性を例に、顕著に高く有益であることが示された。
(7)実施例6.
前記(2)−1に記載の通りに抽出したコリネバクテリウム・グルタミカムのゲノムDNAを鋳型に、下記のプライマーセットそれぞれを用いて増幅産物を得た。各増幅産物を前記(2)−1に記載の方法でpTrc99A_mstX_C8_Hisにライゲーションしたプラスミドベクターを、前記(2)−2に記載の大腸菌を宿主として遺伝子導入することで、実施例株55および68を得た。
FW-55:GAAAAAGAATGAGTGGTACCAGCGAACAACTTCAGGGTG
RV-55:CACCGCCACCTCTAGACTGAGCCGCGAGTTGG
FW-68:GAAAAAGAATGAGTGGTACCACCACAACTGATCACTCCAC
RV-68:CACCGCCACCTCTAGAGACCTCTCGGAGGTCG
実施例株55、68及び前記(2)−2に記載のコントロール株をいずれも前記(2)−2に記載のとおりに培養し、0.22μmのフィルターを用いてろ過した。
GCーMS
上記のろ液50μLに、内部標準として2-イソプロピルリンゴ酸水溶液(0.5mg/mL)を10μL加え、さらに水:メタノール:クロロホルム=1:2.5:1溶液を250μL加えて攪拌し、37℃で30分間振盪した。16,000Gで3分間遠心し、上清を225μL 回収し、超純水を200μL加えて攪拌、再度16,000Gで3分間遠心して、上清250μLを回収した。
濃縮遠心機で25分間処理して溶液中のメタノールを気化させた後、遠心エバポレーターで乾燥させた。
乾燥後のサンプルに、メトキシアミン塩酸塩ピリジン溶液(20mg/mL)を80μL加え、30℃で90分間振盪し、続いてN-メチルNトリメチルシリルトリフルオロアセトアミド(MSTFA)を40μL加え、37℃で 30分間振盪した。16,000Gで3分間遠心して溶液中の残渣を沈殿させ、上清100μLをGCーMSバイアルに回収し、GCーMSサンプルとした。分析は、以下の装置とメソッドを用いて実施し、各ろ液に含まれる化合物のピーク強度を比較した:
使用装置
ガスクロマトグラフ質量分析計:GCMS-TQ8040
分析メソッド
島津製作所 OA_TMS_DB537min_V3_Scan: 37分メソッド、スプリットレス
(7)−1.結果
図8に示す。実施例株55の培養上清では3−α−マンノビオースが前培養液およびコントロール培養上清に比べ格段に含まれていることが分かった(図8A)。実施例株55に導入された遺伝子は、コリネバクテリウム・グルタミカムのゲノム上ではシキミ酸の輸送に関与するタンパク質としてアノテーション(機能推定)されていたが、本発明により、これが3−α−マンノビオースの輸送体として特定され、本発明のスクリーニング方法の有用性が示された。また同遺伝子を本発明の方法で発現させた微生物を培養することで、3−α−マンノビオースの生産性が向上することが確認され、本発明の所定の物質の生産方法の有用性が示された。
また、同様に図8Bに示す通り、実施例株68の培養上清では乳酸が前培養液およびコントロール培養上清に比べ格段に含まれていることが分かった。実施例株68に導入された輸送体遺伝子は、コリネバクテリウム・グルタミカムのゲノム上では代謝物の輸送に関与するタンパク質としてアノテーション(機能推定)されていたが、本発明により、これが乳酸を排出する輸送体であることが特定され、本発明のスクリーニング方法の有用性が示された。また、図8Bに示すように、同遺伝子を本発明の方法で発現させた微生物を培養することで乳酸の生産性が向上することが確認され、本発明の所定の物質の生産方法の有用性が示された。

Claims (9)

  1. 所定の化合物の生産方法であって、
    フュージョンパートナーをコードする遺伝子と、前記所定の化合物の輸送に関わる膜タンパク質をコードする遺伝子とがポリシストロニックmRNAの翻訳により発現するように連結された遺伝子を組み込んだ微生物を培養する工程を含み、
    前記連結された遺伝子が、前記フュージョンパートナーをコードする遺伝子の終止コドンを構成するヌクレオチドの一部が前記所定の化合物の輸送に関わる膜タンパク質をコードする遺伝子の開始コドンの一部となるように連結された遺伝子である、方法。
  2. 前記微生物を培養する工程で得られた培養液から前記所定の化合物を回収する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
  3. 前記微生物がバクテリアである請求項1に記載の方法。
  4. 前記微生物に、当該微生物のレアコドンに対応するtRNAをコードする遺伝子がさらに組み込まれている、請求項1に記載の方法。
  5. 膜タンパク質が、エクスポータータンパク質、インポータータンパク質、合成酵素タンパク質、タンパク質分泌装置の構成要素であるタンパク質である、請求項1に記載の方法。
  6. 下記工程(1)〜(4)を含む、所定の化合物に対する膜タンパク質をスクリーニングするための方法:
    (1)フュージョンパートナーをコードする遺伝子と膜タンパク質候補をコードする遺伝子とがポリシストロニックmRNAの翻訳により発現するように連結された遺伝子であって、前記フュージョンパートナーをコードする遺伝子の終止コドンを構成するヌクレオチドの一部が前記膜タンパク質候補をコードする遺伝子の開始コドンの一部となるように連結された遺伝子を組み込んだ微生物のライブラリーを作成する工程、
    (2)前記微生物を培養する工程
    (3)培養前に比べて前記所定の化合物の量に変動が認められる培養液またはその上清を特定する工程、
    (4)前記特定された培養液またはその上清を得た微生物に組み込まれ発現する膜タンパク質候補が、前記所定の化合物の膜内外の輸送能を有する膜タンパク質であると特定する工程。
  7. 膜タンパク質が、エクスポータータンパク質、インポータータンパク質、合成構想タンパク質、タンパク質分泌装置を構成要素であるタンパク質である、請求項6に記載の方法。
  8. 前記微生物がバクテリアである請求項6に記載の方法。
  9. 前記微生物に、当該微生物のレアコドンに対応するtRNAをコードする遺伝子がさらに組み込まれている、請求項6に記載の方法。
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