JPWO2019146279A1 - 原子炉圧力容器の冷却装置 - Google Patents
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Abstract
Description
この原子炉の冷却期間も定期検査の工程に含まれるため、原子力発電所の設備利用率の点では、冷却期間は短い方が望ましい。
≪第1実施形態≫
図1は、第1実施形態の冷却装置を備えた原子炉圧力容器1の構成を示す図である。図1は、改良型沸騰水型原子炉の原子炉圧力容器1を示し、原子炉圧力容器1の全体の高さは、約20mある。
原子炉圧力容器1は、上下に分割されており、上部は圧力容器上蓋1aであり、下部は容器としての圧力容器胴1bと圧力容器下部鏡板1cとが一体構成されている。
原子炉運転中は、原子炉圧力容器1の約3分の2の高さまで炉水があり(約14m)、炉心が水中で核熱を発して炉水を沸騰させて蒸気を作る。原子炉圧力容器1の上3分の1にはこの蒸気が溜る。発生する蒸気および炉水は約280℃の高温、かつ、約7MPaの高圧の状態にある。
圧力容器上蓋1aの外側には、熱を逃がさないように保温材2で囲まれており、圧力容器上蓋1aの外表面もほぼ280℃となっている。
実施形態の冷却装置では、ヘッドスプレイノズル4から噴霧される冷却水を、原子炉冷却材浄化系(CUW)や残留熱除去系から供給するようにしている。
原子炉冷却材浄化系(CUW)は、原子炉の運転時や停止時に、炉水の腐食生成物、核分裂生成物、溶解性無機物質などの不純物を除去する装置である。
隔離弁18は、原子炉圧力容器1と原子炉冷却材浄化系再生熱交換器13の間に設けられ、原子炉圧力容器1を隔離する。
原子炉冷却材浄化系給水弁22は、原子炉冷却材浄化系からの給水を開閉する弁であり、通常運転時に開いて、原子炉冷却材浄化系で浄化された炉水が、図示しないタービンからの復水給水系に還流され、原子炉圧力容器1に給水される。
図示しないタービンバイパス弁を開いて原子炉圧力容器1内の蒸気を逃がすことにより原子炉圧力容器1内の減圧操作が行われ、最終的に大気圧まで減圧する。このとき、炉水温度は飽和温度の低下に伴い低下するため、原子炉圧力容器1の内壁温度もそれに従って低下する。
圧力容器胴1bは、炉水に触れているため、炉水に冷やされて炉水温度に近い温度降下を呈する。
しかし、圧力容器上蓋1aは、保温材2で囲まれ、かつ、内側が蒸気で満たされているために、圧力容器上蓋1aの温度はなかなか低下しない。
第1実施形態の冷却装置は、圧力容器上蓋1aと保温材2の間に、圧力容器上蓋1aを覆うように配した冷却水配管3を設置して構成されている。
冷却水配管3は、ステンレス鋼等、機能を維持するために十分な耐食性と伝熱性を有する材料で形成され、その肉厚は、冷却水の圧力に対応する強度を確保する程度とする。
また、冷却水配管3は、圧力容器上蓋1aの外表面に密着して接触するように設けるか、あるいは、圧力容器上蓋1aの外表面から一定距離だけ離れて設ける。
例えば、すでに運転している既存プラントの圧力容器上蓋1aに冷却水配管3を装着する場合には、圧力容器上蓋1aに対する冷却水配管3の接触面の曲率と、圧力容器上蓋1aの外曲面の曲率とが、一致するように複数の配管を用意する。そして、圧力容器上蓋1aと配管の接触面とが熱伝導に優れた熱伝導材で介して接続するように取り付けるか、あるいは、圧力容器上蓋1aの外表面から一定距離だけ離れて配管を設置し、複数の配管を冷却水が通流するように接合する。
実施形態1の冷却装置は、原子炉冷却材浄化系で浄化された炉水を冷却水とするために、図1の原子炉冷却材浄化系給水弁22を閉じる。そして、ヘッドスプレイノズル給水弁21、冷却水配管分岐弁8、冷却水戻り弁9が開かれ、ヘッドスプレイノズル分岐弁11が閉じた状態となっている。
これにより、構造上厚みが大きく、熱容量が大きいフランジ側の冷却量が多くなるので、圧力容器上蓋1aの温度分布の均一化を図ることができる。
また、圧力容器上蓋1aのフランジ側の温度低下が大きくなるので、圧力容器胴1bと圧力容器上蓋1aのフランジ側との温度差が小さくなる。これにより、径方向の熱応力の差が小さくなり、フランジ部への熱応力差の影響を小さくできる。
このように、圧力容器上蓋1aの内面では、フランジ側より頂部側の方が温度低下は大きく、圧力容器上蓋1aの外面では、頂部側よりフランジ側の方が温度低下は大きくなっている。したがって、圧力容器上蓋1a全体では、均一に温度低下することで温度分布を均一化できるので、熱応力による歪みの発生を低減し、圧力容器上蓋1aの構造健全性を確保できる。
最終的に炉水の温度が十分に低下し、原子炉圧力容器1内の圧力が大気圧となったら、原子炉冷却材浄化系(冷却水)の流量を定格流量に戻す(上げる)。
圧力容器上蓋1aが十分に冷却された時には、ヘッドスプレイノズル給水弁21を閉じて、原子炉冷却材浄化系の冷却水による圧力容器上蓋1aの冷却を終了する。
この際、冷却水配管3の冷却水は、圧力容器上蓋1aから受熱して温度上昇するので、ヘッドスプレイノズル4から噴霧された冷却水の温度と炉水の温度(圧力容器上蓋1a内の温度)の差が小さくなり、温度差による影響が小さくなる。
図1の冷却装置では、ひとつの冷却水の流路が形成されて、圧力容器上蓋1aの外側を冷却水の顕熱で冷却し、圧力容器上蓋1aの内側を冷却液の潜熱で冷却しているので、一方の冷却能力を高めると、他方の冷却能力も高まる。
つぎに、圧力容器上蓋1aの外側の冷却能力と内側の冷却能力を調整可能な冷却装置の構成を図2により説明する。
図1の第1実施形態の冷却装置とは、冷却水を原子炉冷却材浄化系に還流する冷却水排水管7を備え、管路の途中に、弁の開閉を制御して、冷却水の一定量をヘッドスプレイノズル4に給水せずに原子炉冷却材浄化系に還流する冷却水排水弁10を設ける点が異なる。他の構成は、図1と同様であるので、ここでは説明しない。
増量する内側の冷却能力に応じてヘッドスプレイノズル分岐弁11の弁開度を増し、冷却水をヘッドスプレイノズル4に直接給水する。このとき、圧力容器上蓋1aの内側に噴霧される流量の冷却水が原子炉冷却材浄化系から供給されるように、原子炉冷却材浄化系の系統流量を調整する。
これにより、ヘッドスプレイノズル4では、直接給水された冷却水と冷却水配管3を通流した冷却水とが合わせて噴霧されるので、圧力容器上蓋1aの内側の冷却能力を増すことができる。
減量する内側の冷却能力に応じて冷却水排水弁10の弁開度を開き、冷却水配管3を通流し、ヘッドスプレイノズル4に給水される冷却水の一部を冷却水排水管7により原子炉冷却材浄化系に還流する。
これにより、ヘッドスプレイノズル4に給水される冷却水の水量が減るので、圧力容器上蓋1aの内側の冷却能力を減らすことができる。
増量する外側の冷却能力に応じて冷却水配管分岐弁8の弁開度を大きくし、冷却水配管3を通流する冷却水量を増す。そして、冷却水の増量分がヘッドスプレイノズル4に給水されないように、冷却水戻り弁9の弁開度を調整する。余剰の冷却水は、冷却水排水弁10を調整して冷却水排水管7から原子炉冷却材浄化系に還流する。
これにより、冷却水配管3を通流する冷却水量が増すので、圧力容器上蓋1aの外側の冷却能力を増すことができる。
減量する外側の冷却能力に応じて冷却水配管分岐弁8の弁開度を小さくし、冷却水配管3を通流する冷却水量を減らす。そして、冷却水配管3を通流してヘッドスプレイノズル4に給水する冷却水を補うように、ヘッドスプレイノズル分岐弁11の弁開度を調整して、冷却水をヘッドスプレイノズル4に直接給水する。
これにより、冷却水配管3を通流する冷却水量が減るので、圧力容器上蓋1aの外側の冷却能力を減らすことができる。
これにより、周方向における冷却水の受熱量分布(流量分布)が均一になるので、圧力容器上蓋1aの周方向の温度分布が均一になる。
これにより、圧力容器上蓋1aのフランジ側から頂部の温度分布を平坦化することができる。周方向の分割数を増やせば、圧力容器上蓋1aの周方向の温度分布を平坦化することができる。
冷却水配管3a、3b、3cの複数配管のそれぞれに、冷却水配管分岐弁8a、8b、8cと冷却水戻り弁9a、9b、9cと冷却水排水弁10a、10b、10cを設けるようにした。冷却水配管3a、3b、3cは、ここでは、図5の3重の環形状の冷却水配管3に対応するものとして説明する。
図7の冷却装置は、環形状の冷却水配管3を圧力容器上蓋1aの周方向にジグザクに配設したものである。これにより、圧力容器上蓋1aに配設する配管が長くなることから、圧力容器上蓋1aの冷却効率が上昇する効果が得られる。
原子炉では、事故時の原子炉格納容器内の温度や圧力上昇を抑えるために、図示しない原子炉格納容器スプレイ装置を設けているが、圧力容器上蓋1aは、保温材2に覆われているため、原子炉格納容器スプレイ装置の噴霧に直接触れることがない。また、保温材破損時に、保温材内の高温空気が流出することで、周辺機器を破損する可能性がある。
原子炉格納容器スプレイ装置の冷却機能の補完および、保温材破損時の圧力容器上蓋1aの冷却を行うために、冷却装置の冷却水配管3に、スプレイ機構5を設ける。
原子炉格納容器スプレイ装置が作動された際に、冷却水配管3に冷却水を通流し、冷却水の一部を、圧力容器上蓋1aと保温材2の間の空間に噴霧する。この噴霧された冷却水により、圧力容器上蓋1aと保温材2の間の空気が冷却されるとともに、圧力容器上蓋1aに滴下した冷却水の蒸発により、圧力容器上蓋1aが冷却される。
これにより、保温材2(圧力容器上蓋1a)からの輻射熱が低減して、原子炉格納容器内の温度や圧力上昇を抑えることができる。
上記では、実施形態の冷却装置は、圧力容器上蓋1aと保温材2の間に、圧力容器上蓋1aを覆うように配した冷却水配管3により構成され、冷却水配管3が、圧力容器上蓋1aの外表面に密着して接触するように設けるか、あるいは、圧力容器上蓋1aの外表面から一定距離だけ離れて設けることを説明した。
しかし、これに限らず、保温材2の内面に冷却水配管3を設ける構成としてもよい。
冷却水配管3を構成する配管は、冷却水配管固定部12によって保温材2に固定され、保温材2と冷却水配管3とを一体として取り扱いを可能とする。冷却水配管3を保温材2と一体とすることで、保温材を改装すれば既設の原子炉プラントにも実施形態の冷却装置が適用可能となる。
1a 圧力容器上蓋
1b 圧力容器胴
1c 圧力容器下部鏡板
2 保温材
3、3a、3b、3c 冷却水配管
4 ヘッドスプレイノズル
5 スプレイ機構
6 ヘッドスプレイノズル給水配管
7 冷却水排水管
8、8a、8b、8c 冷却水配管分岐弁
9、9a、9b、9c 冷却水戻り弁
10、10a、10b、10c 冷却水排水弁
11 ヘッドスプレイノズル分岐弁
12 冷却水配管固定部
13 原子炉冷却材浄化系再生熱交換器
14 原子炉補機冷却系熱交換器
15 濾過脱塩装置
16 再生熱交換器バイパス弁
17 再生熱交換器バイパス配管
18 隔離弁
19 濾過脱塩装置バイパス弁
20 濾過脱塩装置バイパス配管
21 ヘッドスプレイノズル給水弁
22 原子炉冷却材浄化系給水弁
Claims (15)
- 一端から供給される冷却水が通流され、炉心を収納する原子炉圧力容器の圧力容器上蓋の外面に配設して前記圧力容器上蓋を前記冷却水により冷却し、前記圧力容器上蓋のヘッドスプレイノズルに前記冷却水を給水する冷却水配管を備える
ことを特徴とする原子炉圧力容器の冷却装置。 - 請求項1に記載の原子炉圧力容器の冷却装置において、
前記冷却水配管は、前記冷却水が前記圧力容器上蓋のフランジ部から頂部に向けて通流する形状を有する
ことを特徴とする原子炉圧力容器の冷却装置。 - 請求項2に記載の原子炉圧力容器の冷却装置において、
前記冷却水配管は、圧力容器上蓋の外面に螺旋形状に配設される
ことを特徴とする原子炉圧力容器の冷却装置。 - 請求項2に記載の原子炉圧力容器の冷却装置において、
前記冷却水配管は、圧力容器上蓋の外面に放射形状に配設される
ことを特徴とする原子炉圧力容器の冷却装置。 - 請求項1に記載の原子炉圧力容器の冷却装置において、
前記冷却水配管は、前記冷却水が並行に通流する複数の環形状の配管から成り、
前記複数の環形状配管のうち、フランジ側の配管に冷却水を通流する
ことを特徴とする原子炉圧力容器の冷却装置。 - 請求項1に記載の原子炉圧力容器の冷却装置において、
前記冷却水配管は、原子炉冷却材浄化系の冷却水を通流する
ことを特徴とする原子炉圧力容器の冷却装置。 - 請求項6に記載の原子炉圧力容器の冷却装置において、
前記冷却水配管は、原子炉冷却材浄化系の再生熱交換器の通流をバイパスした冷却水を通流する
ことを特徴とする原子炉圧力容器の冷却装置。 - 請求項1に記載の原子炉圧力容器の冷却装置において、
前記冷却水配管の冷却水通流量は、炉水の温度と圧力容器上蓋の温度により変わる
ことを特徴とする原子炉圧力容器の冷却装置。 - 請求項1に記載の原子炉圧力容器の冷却装置において、
前記ヘッドスプレイノズルに冷却水を直接給水するヘッドスプレイ分岐弁を有し、
前記冷却水配管は、ヘッドスプレイ分岐弁と並列に、前記ヘッドスプレイノズルに冷却水を給水する
ことを特徴とする原子炉圧力容器の冷却装置。 - 請求項9に記載の原子炉圧力容器の冷却装置において、
前記圧力容器上蓋の内面温度と外面温度に応じて前記ヘッドスプレイ分岐弁を開いて、前記冷却水配管を通流した冷却水と前記ヘッドスプレイ分岐弁により直接給水された冷却水とを前記ヘッドスプレイノズルに給水して、前記ヘッドスプレイノズルの噴霧量を増加する
ことを特徴とする原子炉圧力容器の冷却装置。 - 請求項1に記載の原子炉圧力容器の冷却装置において、
前記冷却水配管から分岐し、前記冷却水配管の冷却水が前記ヘッドスプレイノズルに給水されないように排水する冷却水排水管
を備えることを特徴とする原子炉圧力容器の冷却装置。 - 請求項11に記載の原子炉圧力容器の冷却装置において、
前記冷却水排水管から排水する冷却水の排水量を調整する冷却水排水弁を有し、
前記圧力容器上蓋の内面温度と外面温度に応じて前記冷却水排水弁を開いて前記ヘッドスプレイノズルへの冷却水の給水量を減らし、前記ヘッドスプレイノズルの噴霧量を減少する
ことを特徴とする原子炉圧力容器の冷却装置。 - 請求項1に記載の原子炉圧力容器の冷却装置において、
前記冷却水配管は、前記圧力容器上蓋の外面と前記圧力容器上蓋の保温材との間に設けられる
ことを特徴とする原子炉圧力容器の冷却装置。 - 請求項13に記載の原子炉圧力容器の冷却装置において、
前記冷却水配管は、前記保温材の内側に設けられる
ことを特徴とする原子炉圧力容器の冷却装置。 - 請求項13に記載の原子炉圧力容器の冷却装置において、
前記冷却水配管の配管途中にスプレイノズル機構が設けられ、
前記スプレイノズル機構により、前記圧力容器上蓋に前記冷却水配管の冷却水を噴霧する
ことを特徴とする原子炉圧力容器の冷却装置。
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