以下、本発明の実施形態について、詳細に説明する。なお、説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては同一の符号を付して、重複する説明は省略する。また、図面における各部材の縮尺は実際とは異なる場合がある。本明細書では、3軸方向(X軸方向、Y軸方向、Z軸方向)の3次元直交座標系を用い、生体情報測定用電極の中心軸Jに平行な方向をZ軸方向とし、中心軸Jに直交する面において、互いに直交する2つの方向のうち一方をX軸方向とし、他方をY軸方向とする。以下の説明において、+Z軸方向を上といい、−Z軸方向を下という場合がある。
本発明の実施形態に係る導電材料は、生体と接触可能な領域を有する生体情報測定用電極の、少なくとも領域の表面に設けられ、ファイバと、導電性高分子とを含むものである。一実施形態に係る導電部材によれば、生体情報を安定して測定することができる。導電材料は、第1の実施形態では導電材として用いられ、第2〜第7の実施形態では導電層として用いられる。以下、各実施形態について説明する。
[第1の実施形態]
<導電材>
第1の実施形態に係る導電材について説明する。本実施形態では、一例として、生体に接触させて生体情報の測定を行う生体情報測定用電極の電極脚の先端部に取り付けられる場合について説明する。なお、生体とは、人体、又は人体以外の生物等をいい、電極脚の先端部を頭皮、額、皮膚などに接触させる。
図1は、本実施形態に係る導電材の斜視図であり、図2は、図1のI−I断面図である。図3は、導電材をカーボン基材CF上に設置した状態を示す光学顕微鏡写真であり、図4は、導電材を拡大して見たSEM写真である。なお、図1および図2中の一点鎖線は、導電材の中心軸Jを示す。中心軸Jとは、導電材を生体に設置した際の中心となる軸である。
図1および図2に示すように、本実施形態に係る導電材10は、生体情報測定用電極の電極脚13の生体と接触可能な領域である先端部131の表面に形成されている。電極脚13の先端部131は、先端に丸みがある曲面形状に形成されており、図1および図2では、ドーム形状に形成されている。導電材10は、先端部131の形状に対応するように、ドーム形状に形成されている。
本実施形態において、先端部とは、生体と接触する先端と、導電材10を傾斜させた時などに生体と接触する可能性のある、先端の周辺領域のことを意味し、図1および図2では、導電材10の外側表面の全体である。本明細書では、先端部を、「生体と接触可能な領域A(以下、「領域A」という)」とする。
導電材10は、ファイバとバインダとを含んで形成され、多数の細孔11を有する。導電材10は、その表面および内部に多数の細孔11を有し、スポンジ状に形成されている。なお、図1および図2では、導電材10を被膜状に模式化して図示しているが、導電材10は、図3に示すように、弾性を有したスポンジ状に形成されている。また、図1および図2では、細孔11を黒点で模式化して図示しているが、図4に示すように、無数の細かい空隙になっている。
導電材10は、細孔11を有することで、細孔11内に水分を含む液体を保持することができる。なお、細孔11内に含まれる液体は、水の他に、電解液(食塩水)など生体に害を与えない液体であれば用いることができる。
導電材10のファイバとしては、Au、Pt、Ag、Cu、Al、Ni、Si、Co、Zr、Ti、W、またはスチールなどの金属により構成された金属ファイバ;Al2O3、NiO、SiO2、TiO2、Ti2O3、ZnO、ZrO2、WO3、またはY2O3などの金属酸化物により構成された金属酸化物ファイバ;カーボンファイバ;SiC、ZrC、Al4C3、CaC2、WC、TiC、HfC、VC、TaC、またはNbCなどの炭化物により構成された炭化物系ファイバ;ポリエステル繊維などの有機繊維などを用いることができる。
本明細書では、ファイバとは、ファイバの太さを円相当直径で表した場合、一般に、平均太さ(平均径)が1nm〜100μm、好ましくは1nm〜30μm、より好ましくは1nm〜5μmのものである。ファイバの太さは、光散乱装置、レーザー顕微鏡、走査型電子顕微鏡(SEM)などを用いて求めることができる。例えば、SEMなどでファイバを観察し、任意に選んだ所定の数(例えば、10〜200本)のファイバの長手方向に対して直交する方向の長さ(ファイバの径方向の長さ)を測定し、その平均値を算出することで、平均径が求められる。
ファイバは、ナノファイバであることが好ましい。ナノファイバは、ファイバよりも、ナノファイバー同士がよく絡み合い、バインダで結着されたものに、より細かい細孔11が形成される。このため、水分を含む液体を細孔11内により多く保持することができる。本明細書では、ナノファイバとは、ナノファイバの太さを円相当直径で表した場合、一般に、平均径は、1nm〜1000nm、好ましくは5nm〜100nm、より好ましくは10nm〜50nmのものである。ナノファイバの平均径は、ファイバの太さを測定する場合と同様の方法を用いて測定することで求められる。
ナノファイバのアスペクト比は、1:100〜1:1000であることが好ましく、より好ましくは1:100〜1:300である。ナノファイバのアスペクト比が1:100〜1:1000の範囲内であれば、導電材10を形成する塗布層(後述する塗布工程を参照)中における分散不良を抑制することができる。この結果、導電材10中のナノファイバが均一に存在することとなり、導電材10の強度が高められる。
ナノファイバは、例えば、上述の金属ファイバに用いられる金属と同じ種類の金属により構成される金属ナノワイヤ;上述の金属酸化物ファイバに用いられる金属と同じ種類の金属により構成される金属酸化物ナノファイバ;カーボンナノファイバ、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン;セルロースナノファイバ;ポリエステルナノファイバなどにより構成されたプラスチックナノファイバを用いて形成することができる。中でも、本実施形態では、セルロースナノファイバを用いることが好ましい。
セルロースナノファイバは、水に不溶な天然セルロース繊維を機械的に解繊処理して得られたセルロースナノファイバ、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル(TEMPO)の存在下、次亜塩素酸のような酸化剤を作用させて酸化反応を進行させることにより得られたセルロースナノファイバ(TEMPO酸化セルロースナノファイバ)、または天然セルロース繊維の表面を疎水化処理して得られたセルロースナノファイバ(表面疎水化セルロースナノファイバ)などがある。本実施形態では、機械的に解繊処理して得られたセルロースナノファイバが好ましい。例えば、TEMPO酸化セルロースナノファイバの場合は、セルロースナノファイバの水酸基の一部がカルボキシル基に置換されており、水に触れると膨潤し、導電材10の強度が保てないことが考えられる。また、表面疎水化セルロースナノファイバの場合、疎水化が進行しすぎると、水や電解液との親水性が失われ、測定が不安定になる虞が考えられる。
機械的に解繊処理して得られたセルロースナノファイバとしては、水中対向衝突(Aqueous Counter Collision:ACC)法を用いて、天然セルロース繊維を解裂して得られるセルロースナノファイバ(ACCセルロースナノファイバ)が好ましい。
ACC法は、天然セルロース繊維を、水中でナノレベルから分子レベルにいたるまで迅速に微細化・ナノ分散させ、半透明な水分散液を調製する方法である。ACC法では、天然セルロース繊維の分散液を対向する一対のノズルから同時に一点に向かって高圧(例えば、70〜250MPa程度)で噴射して、噴射流を互いに高速で対向衝突させる。これにより、天然セルロース繊維の表面を引き剥がしてナノフィブリル化(ナノ微細化)し、キャリアーである水との親和性を向上させることにより、最終的には溶解に近い状態にする。ACC法を用いることで、天然セルロース繊維の繊維間の相互作用のみを解裂させてナノ微細化を行うため、セルロース分子の構造変化がなく、解裂に伴う重合度低下を最小限にした状態で、セルロースナノファイバが得られる。ACCセルロースナノファイバは、ファイバ表面の水酸基が親水性を示し、セルロース分子間を結合する酸素が疎水性を示す。よって、ACCセルロースナノファイバは、ファイバ表面に、親水性部位と疎水性部位との両方が露出し、両親媒性を有する。ACCセルロースナノファイバは、上記のような特性を有するため、水分散液中により均一に分散させることができる。その結果、ACCセルロースナノファイバが均一に存在する導電材10を得ることができると共に、水分を過剰に吸収して膨潤することが無い安定した導電材10を得ることができる。従って、ACCセルロースナノファイバを含む導電材10は、より安定して導電性を発揮することができると共に、強度を有することができる。
天然セルロース繊維としては、竹、藁、または麻などのパルプ繊維や、針葉樹や広葉樹などの木質のパルプ繊維を使用できる。ACCセルロースナノファイバの場合、用いる天然セルロース繊維の種類によってファイバ表面に露出する親水性部位と疎水性部位との割合が異なる。天然セルロース繊維の中でも、竹由来の天然セルロース繊維は、ファイバ表面に露出する疎水性部位の割合が親水性部位よりも高く、両親媒性の特徴が強く表れると考えられる。そのため、ACCセルロースナノファイバの原料として用いる天然セルロース繊維としては、竹由来の天然セルロース繊維を用いることが好ましい。
セルロースナノファイバは、溶液中に分散させた状態で使用してもよいし、粉末状にした状態で使用してもよい。
導電材10のバインダは、ファイバ同士を結着するための結合材として機能し、導電性高分子と、合成樹脂(バインダ樹脂)とを含む。なお、バインダが導電性高分子だけでもファイバ同士を十分結着でき、導電材10の形状を保持できる場合などにおいては、バインダ樹脂は含まれていなくてもよい。
バインダの導電性高分子としては、例えば、ポリ3、4−エチレンジオキシチオフェン(PEDOT)にポリスチレンスルホン酸(ポリ4−スチレンサルフォネート;PSS)をドープしたPEDOT/PSS、ポリアセチレン、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリフェニレンビニレン、またはポリピロールなどを用いることができる。中でも、生体との接触インピーダンスがより低く、高い導電性を有する点から、PEDOT/PSSを用いることが好ましい。
バインダのバインダ樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂などの各種樹脂を用いることができる。本実施形態では、熱硬化性樹脂が用いられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、スチレン−アクリロニトリル樹脂、スチレン−マレイン酸樹脂、アクリル酸系樹脂、スチレン−アクリル酸樹脂、ポリエチレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、アイオノマー樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル樹脂、アルキド樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂、ポリスルホン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエステル樹脂、またはポリエーテル樹脂などが挙げられる。熱硬化性樹脂としては、例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、またはメラミン樹脂が挙げられる。光硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ−アクリル酸系樹脂(より具体的には、エポキシ化合物のアクリル酸誘導体付加物など)、またはウレタン−アクリル酸系樹脂(より具体的には、ウレタン化合物のアクリル酸誘導体付加物)などが挙げられる。これらの樹脂の中で、硬化収縮が小さい樹脂がよく、例えばシリコーン樹脂が好ましい。これらのバインダ樹脂は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本実施形態では、ファイバとしてセルロースナノファイバを用い、導電性高分子としてPEDOT/PSSを用い、バインダ樹脂としてシリコーン樹脂を用いるとする。この場合、導電材10は、セルロースナノファイバおよびPEDOT/PSSを含んで形成されたセルローススポンジ体として用いることができる。
バインダとファイバとの混合比は、3:7〜9:1の範囲内であることが好ましい。この範囲内であれば、導電材10は、導電性を保つことができると共に、導電性高分子の使用量を低減できる。
ファイバがセルロースナノファイバである場合、バインダとセルロースナノファイバとの混合比は、3:7〜9:1の範囲内であることが好ましく、5:5〜8:2の範囲内であることがより好ましい。この範囲内であれば、導電材10は、導電性を保つことができると共に、導電性高分子の使用量を低減できる。また、導電性高分子がPEDOT/PSSの場合、セルロースナノファイバの費用は、PEDOT/PSSの費用の1/10以下であるため、導電材10の単位厚みで使用されるPEDOT/PSSの比率が下げられる。
導電材10の平均厚さは、1μm〜30μmであることが好ましい。この範囲内であれば、導電性を有することができ、導電材10を電極脚13の先端部131に設けた場合、生体から伝達される電気信号を安定して通電させることができる。また、導電材10にファイバが含有されているので、導電材10の平均厚さを10μm以上にすることも容易にできる。導電材10の平均厚さが厚ければ厚いほど、導電性が高くなると共に、耐摩耗性の耐久性がより向上する。一方、導電材10の平均厚さが厚ければ厚いほど、材料費および工程費がよりかかり、そのバランスを考慮して上限の平均厚さを決めるのがよい。例えば、平均厚さは5μm〜27μmであることがより好ましく、10μm〜25μmであることがさらに好ましく、20μm程度に収めるのが最も好適である。なお、導電材10の平均厚さとは、導電材10の厚さの平均値をいう。例えば、導電材10の断面において、任意の場所で数カ所(例えば、6か所)測定した時、これらの測定箇所の厚さの平均値をいう。また、本実施形態において、厚さとは、導電材10の接触面に対して垂直方向の層の長さをいう。
以上のように構成された導電材10は、ファイバと、バインダ樹脂および導電性高分子を含むバインダとにより形成されている。多数のファイバはバインダで固定され、網目状につながると共に、導電材10の表面および内部には複数の細孔11が形成され、導電材10は、いわゆるスポンジ状に形成されている。そのため、導電材10は、細孔11に溶液を含むことができる。
また、導電材10を生体情報測定用電極の電極脚13の先端部131の表面に設け、細孔11内に溶液を含ませた状態で、導電材10を生体の表面に接触させると、導電材10の細孔11内に保持された溶液が、導電材10と接触する生体の表面に流れて広がる。そして、導電材10と生体の表面とを溶液を介して導通させることで、生体と導電材10との間の接触インピーダンスを下げることができるので、生体からの電気信号が取得し易くなる。よって、導電材10は、生体と電気的に接続を維持できる。したがって、導電材10を生体情報測定用電極の電極脚13に用いることで、生体情報を安定して測定することができる。
特に、導電材10を生体として頭皮や額に接触させる場合、導電材10は溶液を含むことで、頭皮や額の表面が乾燥していても、導電材10は、接触インピーダンスを脳波測定が可能な値(例えば、200kΩ未満)に低下させることができる。そのため、導電材10は、生体情報測定用電極の電極脚13に用いれば、脳波を安定して得ることができるので、脳波測定用として好適に用いることができる。
また、ファイバは、バインダよりも高い強度を有し、耐摩耗性が高い。そのため、導電材10を生体情報測定用電極の電極脚13の先端部131に装着して使用する際に、導電材10の表面が使用時または洗浄時に繰り返し擦られても、導電材10の表面が削られるのを抑制することができる。
さらに、導電材10では、多数のファイバが網目状につながっていると共に、導電材10の表面および内部には複数の細孔11が形成されているため、導電材10は、高い弾性を有する。導電材10を生体情報測定用電極の電極脚13の先端部131に装着して使用する際、導電材10が生体に接触すると、導電材10は弾性変形する。これにより、生体への押圧力が緩和されるので、導電材10は生体にソフトに接触することができ、被験者に痛みが生じるのを緩和することができる。また、導電材10が生体に接触した際、導電材10は弾性変形することで、導電材10は生体と確実に接触することができる。
導電材10は、多数の細孔11を有し、スポンジ状に形成されている。導電材10に含まれるファイバ同士は、導電性高分子の他に、バインダ樹脂の硬化物で補助的に接合されている。そのため、導電材10は、バインダ樹脂を含まない場合に比べてより強固とすることができる。よって、導電材10は、耐摩耗性を向上させつつ、適度な硬さを有する弾性体とすることができる。
導電材10は、ファイバを含んでいる。導電材10はファイバを含むことで、ファイバを含まない場合に比べて、単位厚み当たりの導電性高分子の量を減らすことができるため、単位層当たりの必要な費用を低減することができる。そのため、導電材10の製造費用を抑えることができる。
また、金属で形成されている導電材を備える生体情報測定用電極は、金属アレルギーを持つ被験者には用いることはできない。本実施形態では、導電材10はバインダを含んで形成しているため、導電材10を生体情報測定用電極の電極脚13の先端部131に装着して生体に接触させても、使用者に金属アレルギーを生じさせることはなく、安全である。よって、導電材10は、被験者に安心して使用することができる。
導電材10に含まれるファイバがナノファイバである場合、ナノファイバ同士はより短い距離で細かく多数つながることで、ナノファイバ同士の間により小さい隙間が形成され易くなる。そのため、導電材10は、より小さい細孔を多数有することができる。これにより、導電材10は、その内部に溶液をより含み易くすることができるので、生体との電気的な接続を安定して維持することができる。
また、ナノファイバは、ファイバよりも、導電材10中により細かく均一に存在させることができる。そのため、ナノファイバはファイバよりも導電材10中によりいっそう細かく多数つながる(絡み合う)ことができるため、導電材10の強度をより高くすることができる。そのため、導電材10の耐摩耗性をより向上させることができる。
導電材10に含まれるファイバがセルロースナノファイバである場合、導電材10を生体情報測定用電極の電極脚13の先端部131に装着しても、セルロースナノファイバは高い親水性を有するため、導電材10の内部に溶液をより一層含み易くすることができる。よって、ファイバとしてセルロースナノファイバを用いることで、生体との電気的な接続をより安定して維持することができる。また、セルロースナノファイバはアルコールに対して高い耐性を有するため、導電材10の洗浄時にアルコール洗浄することができる。
<第1の実施形態に係る導電材の製造方法>
次に、第1の実施形態に係る導電材の製造方法について説明する。図5は、本実施形態に係る導電材の製造方法を示すフローチャートである。図5に示すように、本実施形態に係る導電材の製造方法は、混合工程(ステップS11)と、固化工程(ステップS12)と、硬化工程(ステップS13)とを含む。以下、各工程について説明する。
まず、混合工程(ステップS11)では、ファイバと、ファイバ同士を結着するバインダ(導電性高分子およびバインダ樹脂である熱硬化性樹脂)と、ファイバが分散する溶媒としての溶剤と、を含む混合溶液を作製する。混合溶液は、ファイバ、導電性高分子、および熱硬化性樹脂を溶剤に添加して混合させ、ファイバ、導電性高分子、および熱硬化性樹脂を溶剤中に分散させることにより調整される。混合溶液の調整には、例えば、ビーズミル、ロールミル、ボールミル、または超音波分散器などを用いることができる。
溶剤は、水のみからなる分散媒、または水と有機溶剤とからなる分散媒を用いることができる。有機溶剤としては、例えば、ベンゼン、メタノールなどのアルコールが挙げられる。また、分散媒には、上記の有機溶剤のうちの一種のみが含有されていてもよいし、二種以上が含有されていてもよい。
混合溶液中の溶剤の含有量は、80〜95質量%の範囲とすることが好ましい。混合物中における溶剤の含有量を上記範囲内に調整することにより、得られる多孔質体における細孔11の大きさ(細孔径)の分布を調整することができる。
ファイバ、導電性高分子、熱硬化性樹脂、および溶剤の混合時間は、ファイバ、導電性高分子、および熱硬化性樹脂の溶剤中における分散性を確保する点から、長い方が好ましいが、生産性との兼ね合いを考慮して適宜設定される。
次に、固化工程(ステップS12)では、混合溶液を凍結乾燥法を用いて乾燥させることで、多数の細孔を有する多孔質体を得る。固化工程(ステップS12)は、冷凍工程(ステップS121)と、脱水工程(ステップS122)とを含む。なお、凍結乾燥とは、混合溶液を凍結し、凍結状態のまま減圧して混合溶液中の溶剤を昇華させることによって、混合溶液を乾燥させる手法である。
固化工程(ステップS12)の冷凍工程(ステップS121)では、混合溶液を金型に流した後、混合溶液を金型に入れた状態で冷凍し、混合溶液に含まれる水分を凍らせる(冷結させる)。混合溶液を含む金型を減圧下であって低温雰囲気下に置いて、溶剤を凍結させる。
混合溶液の凍結温度は、混合溶液中の溶剤の凝固点以下としなければならず、−40℃以下であることが好ましく、−80℃以下であることがより好ましい。
圧力は、100Pa以下であることが好ましく、10Pa以下であることがより好ましく、真空状態であることがさらに好ましい。圧力が100Paを超えると、凍結した混合溶液中の溶剤が融解してしまう可能性がある。
混合溶液の冷凍時間は、混合溶液に含まれる水分を確実に冷結させると共に、多孔質体の生産性を図る点から、約12〜48時間であることが好ましい。
固化工程(ステップS12)の脱水工程(ステップS122)では、凍結した混合溶液中の溶剤を減圧下で昇華させる。これにより、ファイバ同士が導電性高分子で結着された状態で溶剤が除去され、溶剤が抜けた箇所は、多数の細かい空間となる。これにより、多数の細孔を有すると共に、未硬化のバインダ樹脂を含む多孔質体が得られる。
硬化工程(ステップS13)では、孔質体を加熱して、多孔質体に含まれている未硬化のバインダ樹脂を硬化させる。多孔質体を加熱する温度としては、バインダ樹脂である熱硬化性樹脂が硬化可能な温度であればよく、例えば、80〜200℃が好ましく、100〜150℃とすることがより好ましく、120〜130℃とすることがさらに好ましい。
以上のようにして、多数の細孔11を有する導電材10が得られる。
本実施形態では、混合溶液を凍結乾燥法を用いて乾燥させることで、内部および表面に多数の細孔11を有する導電材10を容易に得ることができる。
[第1の実施形態に係る導電材の製造方法の変形例]
なお、本実施形態では、バインダ樹脂が熱硬化性樹脂であるため、硬化工程(ステップS13)では、多孔質体を加熱しているが、バインダ樹脂が光硬化性樹脂である場合には、硬化工程(ステップS13)では、多孔質体に紫外線を照射する。バインダ樹脂が熱可塑性樹脂である場合には、固化工程(ステップS12)で多孔質体が得られるのと同時にバインダ樹脂は硬化するため、硬化工程(ステップS13)は省略する。
[第2の実施形態]
<電極脚>
第2の実施形態に係る電極脚20Aについて説明する。本実施形態に係る電極脚20Aは、上記の第1の実施形態に係る導電材10を導電層(第1導電層)22として、電極脚20Aの先端部に取り付けたものである。図6は、第2の実施形態に係る電極脚20Aの斜視図であり、図7は、図6のII−II断面図である。
本実施形態に係る電極脚20Aは、図6および図7に示すように、電極基体(ベース体)21Aと、電極基体21Aの領域Aである先端部211の表面に導電層22と、を有する。
電極脚20Aの電極基体21Aは、生体情報測定用電極に着脱可能に取り付けられる。
電極基体21Aは、円柱状に形成されており、その先端に頭皮と接触可能な先端部211を有する。電極基体21Aの先端部211は、先端に丸みがある曲面形状に形成されており、本実施形態では、ドーム形状に形成されている。先端部211の形状は、他の曲面形状として丸みがある円錐形状でもよいし、生体に接触できる端面を有する平坦形状であってもよい。
先端部312aとは、上述の通り、生体である頭皮と接触する先端と、電極脚20Aを傾斜させた時などに生体と接触する可能性のある、先端の周辺領域のことを意味する。
電極基体21Aは、導電性エラストマー、または絶縁材料を用いて形成することができる。なお、絶縁材料とは、導電性がないか導電性が極めて小さい材料をいう。本実施形態では、電極基体21Aは、導電性エラストマーで一体に形成されている。
導電性エラストマーは、その種類は特に限定されるものではない。導電性エラストマーは、例えば、導電性フィラーと非導電性エラストマーとを溶融混合することで得られる。電極基体21Aは、ゴム弾性を有する非導電性エラストマーを含んで成形されることで、低い弾性率を有する。そのため、電極脚20Aを生体情報測定用電極に用いる際、電極基体21Aは生体の表面の凹凸形状に合わせて変形し易いので、生体への接触を確実にできると共に、生体への押圧力を緩和できる。
上述の導電性フィラーとしては、導電性を有していれば、その種類は特に限定されるものではない。例えば、導電性フィラーとしては、グラファイト、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーンまたはカーボンファイバ(炭素繊維)などのカーボン材料;アルミニウム、金、銀、銅、鉄、白金、クロム、スズ、インジウム、アンチモン、チタン、またはニッケルなどの金属;いわゆるABO3型のペロブスカイト型複合酸化物などの導電性セラミックスなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの導電性フィラーは1種単独で用いられてもよいし、2種以上併用してもよい。耐久性の点から、カーボン材料を用いることが好ましい。
上述の非導電性エラストマーとしては、例えば、シリコーンゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、アクリルニトリルブタジエンゴム、ブチルゴム、ウレタンゴム、またはフッ素ゴムなどが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中では、耐久性などの点から、シリコーンゴムを用いることが好ましい。
また、導電性エラストマーではない絶縁材料としては、上記の非導電性エラストマー、ポリプロピレン(PP)、ポリカーボネート(PC)、ABS樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリアミド(PA)、または液晶ポリマー(LCP)などを用いることができる。
導電層22は、電極基体21Aの先端部211の表面に設けられている。導電層22は、領域Aである先端部211の表面に設けられていれば、その形成される領域は限定されない。電極基体21Aが導電性エラストマーを用いて形成されている場合には、電極基体21Aは導通を確保できるため、導電層22は、先端部211の表面にのみ形成されていればよい。電極基体21Aが絶縁材料で形成されている場合には、導電層22は、電極基体21Aの導通を確保するため、電極基体21Aの全面に設けられてもよい。
導電層22は、上記の第1の実施形態に係る導電材10で形成されるものであり、その表面および内部に、複数の細孔221を有する。
上記のような構成を有する電極脚20Aでは、電極基体21Aの先端部211に導電層22を形成し、導電層22の細孔221内に溶液を含ませる。導電層22を生体の表面に接触させると、導電層22の細孔221内に保持された溶液が生体の表面に流れる。導電層22と生体の表面とを溶液を介して導通させることで、生体と電極脚20Aとの間の接触インピーダンスを大幅に下げることができるので、生体からの電気信号が取得し易くなり、生体の電気信号をより高感度で検出できる。よって、電極脚20Aは、生体との電気的接続を安定して維持できるので、生体情報を安定して測定することができる。
また、導電層22は、上述の第1の実施形態に係る導電材10で形成されているので、高い耐摩耗性を有する。そのため、電極脚20Aの使用時や洗浄時に、電極脚20Aの先端部211の表面の導電層22が擦られても、導電層22が削られるのを抑制することができる。よって、電極脚20Aを生体情報測定用電極に用いても、導電層22は、生体との接触部において生体と安定して接触できるので、導電層22と生体との導通を安定して維持することができる。したがって、電極脚20Aを用いれば、電極脚20Aの先端部211と生体との電気的接続を維持できるため、生体からの電気信号を安定して得ることができる。
[第2の実施形態に係る電極脚の変形例]
導電層22は、電極基体21Aの先端部211に形成されているが、少なくとも先端部211に形成されていればよく、電極基体21Aの他の部分に形成されていてもよいし、電極基体21Aの全面に形成されていてもよい。例えば、電極基体21Aが絶縁材料で形成されている場合には、導電層22を電極基体21Aの全面に形成する。
また、電極基体21Aが絶縁材料で形成されている場合には、他の構成も考えられる。図8は、第2の実施形態に係る電極脚20Aの変形例を説明した図であって、図6のII−II断面図に対応した電極脚の部分断面図である。図8に示すように、電極基体21Aの全面に、導電層22と電気的に接続された下地導電層(第2導電層)23を形成することが好ましい。これにより、電極基体21Aの表面全体に導通を取ることができる。下地導電層23に含まれる導電性高分子には、導電層22と同様の導電性高分子を使用することができる。下地導電層23の厚さは、導通が取れればよく、例えば、200nm〜1μm程度であればよい。なお、図8では、下地導電層23は電極基体21Aが連結される生体測定用電極と導通が取れればよく、電極基体21Aの先端部211とは反対側の端面に形成しなくてもよい。
<第2の実施形態に係る電極脚の製造方法>
次に、第2の実施形態に係る電極脚20Aの製造方法について説明する。図9は、本実施形態に係る電極脚20Aの製造方法を示すフローチャートである。
本実施形態に係る電極脚20Aの製造方法は、図9に示すように、導電性を有する電極基体21Aを作製する脚基体作製工程(ステップS21A)と、電極基体21Aの先端部211に導電層22を形成する導電層形成工程(ステップS22A)とを含む。
以下、各工程について説明する。
脚基体作製工程(ステップS21A)では、電極基体21Aを形成する材料を用いて、電極基体21Aを成形する。成形法を用いる際、電極基体21Aの形状に対応した金型が用いられる。前記金型を用いることで、電極基体21Aを成形できる。
導電層形成工程(ステップS22A)は、塗布工程(ステップS221)と、固化工程(ステップS222)とを含む。
導電層形成工程(ステップS22A)の塗布工程(ステップS221)では、ファイバと、ファイバ同士を結着する導電性高分子およびバインダ樹脂である熱硬化性樹脂と、ファイバが分散する溶媒として溶剤とを含む混合溶液を先端部211に塗布して塗布層を形成する。
導電層形成工程(ステップS22A)の固化工程(ステップS222)は、上述の、図5に示す第1の実施形態の導電材の製造方法の固化工程(ステップS12)と同様に行うことができる。固化工程(ステップS222)では、多数の細孔221を有する導電層22を電極基体21Aの先端部211に形成できる。
以上のようにして、導電層22を電極基体21Aの先端部211に形成した電極脚20Aが得られる。
本実施形態では、電極基体21Aの先端部211に形成した塗布層を凍結乾燥法を用いて乾燥させることで、内部および表面に多数の細孔221を有する導電層22を備えた電極脚20Aを容易に得ることができる。
また、本実施形態では、導電層形成工程(ステップS22A)の塗布工程(ステップS221)において、混合溶液を先端部211に1回塗布した時に形成される塗布層の膜厚は、ファイバを含まない溶液を1回塗布した時に形成される塗布層の膜厚よりも厚くすることができる。導電層22の所望の厚さは、混合溶液の少ない塗布回数で得られるため、塗布工程(ステップS221)で塗布層を形成するために要する費用を低減できる。また、導電層22の厚さを厚くすることで、電極脚20Aを生体情報測定用電極に使用する際や電極脚20Aの洗浄時に導電層22の表面が擦られて磨耗しても、導電層22がすり減って先端部211の表面から剥がれてしまうまでの時間を遅らせることができる。この結果、導電層22の寿命をより伸ばすことができる。
導電層22に含まれるファイバがセルロースナノファイバである場合、セルロースナノファイバと導電性高分子とを含む混合溶液は、電極基体21Aへの濡れ性が良く、高いチクソ性を有する。そのため、セルロースナノファイバと導電性高分子とを含む混合溶液を用いて導電層22を形成する場合、前記混合溶液を先端部211に一回塗布した時に形成される塗布層の厚みをより厚くすることができる。前記混合溶液の1回の塗布で形成される塗布層の膜厚は、セルロースナノファイバを含まない溶液を塗布して形成される塗布層の膜厚よりも、例えば、1.3〜4倍くらい厚くすることができる。
[第2の実施形態に係る電極脚の製造方法の変形例]
なお、本実施形態では、導電層形成工程(ステップS22A)は、電極基体21Aの先端部211にのみ導電層22を形成しているが、先端部211の他に電極基体21Aの側面の一部または全部に導電層22を形成してもよい。
また、本実施形態では、導電層形成工程(ステップS22A)は、電極基体21Aの先端部211に塗布した塗布層を凍結乾燥して導電層22を形成しているが、これに限定されない。導電層形成工程(ステップS22A)では、例えば、予め作製した導電層22を電極基体21Aの先端部211に取り付けるようにしてもよい。この場合における電極脚の製造方法の一例を図10に示す。図10は、本実施形態に係る電極脚の製造方法を示す他のフローチャートである。図10に示すように、本実施形態に係る電極脚の製造方法は、脚基体作製工程(ステップS21A)と、導電層形成工程(ステップS22B)とを含む。導電層形成工程(ステップS22B)は、電極基体21Aの先端部211に、上記の第1の実施形態に係る導電材10からなる導電層22を取り付ける。導電層22は、上記の第1の実施形態に係る導電材の製造方法より得られる。導電層22は、例えば、先端部211に接着剤を用いて取り付けてもよいし、先端部211に嵌め込んで固定してもよい。電極基体21Aの先端部211に導電層22を取り付けることで、電極脚20Aが得られる。
また、電極基体21Aは、導電性を有する材料を用いて作製しているが、絶縁材料を用いて電極基体21Aを作製する際、絶縁材料を用いて作製した電極基体21Aの表面を表面処理した後、導電層22を形成するようにする。この場合における電極脚の製造方法の一例を図11に示す。図11は、本実施形態に係る電極脚の製造方法を示す他のフローチャートである。図11に示すように、本実施形態に係る電極脚の製造方法は、脚基体作製工程(ステップS21B)と、導電層形成工程(ステップS22A)とを含む。脚基体作製工程(ステップS21B)は、電極基体21Aを成形する脚基体成形工程(ステップS211)と、電極基体21Aの先端部211の表面を活性化処理する表面処理工程(ステップS212)とを含む。脚基体成形工程(ステップS211)では、電極基体21Aを形成する材料を用いて、電極基体21Aを形成する。表面処理工程(ステップS212)では、先端部211の表面を活性化処理して、導電層22との密着性を向上させる。表面処理工程(ステップS212)の詳細については、後述する、図24に示す第3の実施形態に係る電極脚20Bの製造方法の表面処理工程(ステップS32)において説明する。電極基体21Aの先端部211に導電層22を形成する前に予め電極基体21Aの先端部211を表面処理しておくことで、導電層22を電極基体21Aの先端部211に、安定して形成できる。
また、電極基体21Aは、導電性を有する材料を用いて作製されているが、絶縁材料を用いて電極基体21Aを作製する場合には、図8に示すように、電極基体21Aと導電層22との間に、下地導電層23を形成することが好ましい。この場合、本実施形態に係る生体情報測定用電極の製造方法は、電極基体21Aの表面に、導電性高分子を含有する下地導電層23を形成する。図12に示すように、本実施形態に係る生体情報測定用電極の製造方法は、脚基体作製工程(ステップS21A)と、電極基体21Aの表面に、導電性高分子を含有する下地導電層23を形成する下地導電層形成工程(ステップS22C)と、導電層形成工程(ステップS23)とを含む。導電層形成工程(ステップS23)は、塗布工程(ステップS231)および固化工程(ステップS232)を含む。導電層形成工程(ステップS23)は、上述の、図9に示す導電層形成工程(ステップS22A)と同様である。塗布工程(ステップS231)および固化工程(ステップS232)は、いずれも、上述の、図9に示す導電層形成工程(ステップS22A)の塗布工程(ステップS221)および固化工程(ステップS222)と同様である。電極基体21Aが絶縁材料で形成されていても、電極基体21Aの表面に下地導電層23を形成することで、電極基体21Aは、導電層22と下地導電層23との間で導通を確保することができる。
[第3の実施形態]
<電極脚>
第3の実施形態に係る電極脚について、図面を参照して説明する。本実施形態に係る電極脚は、上記の第2の実施形態に係る電極脚20Aの電極基体21Aに、領域Aである先端部211に設けられる溝部(先端溝部)24Aと、先端部211以外の部分である電極脚20Bの側面212に設けられる補助溝部(側面溝部)25とを形成したものである。
図13は、第3の実施形態に係る電極脚の外観を示す斜視図であり、図14は、第3の実施形態に係る電極脚の正面図であり、図15は、図13のIII−III断面図である。図13〜図15に示すように、本実施形態に係る電極脚20Bは、図6および図7に示す電極基体21Aに代えて、電極基体21Bを備えたものである。電極基体21Bは、図6および図7に示す電極基体21Aに、領域Aである先端部211に設けられる溝部(先端溝部)24Aと、先端部211以外の部分である電極脚20Bの側面212に設けられる補助溝部(側面溝部)25とを形成したものである。導電層22は、先端部211の表面に形成されるものであるため、先端溝部24Aの表面にも形成されている。電極脚20Bは、先端溝部24Aおよび側面溝部25を備えることで、先端溝部24Aおよび側面溝部25内に液体を保持することができる。
なお、先端溝部24Aおよび側面溝部25内に含まれる液体は、細孔11内に含まれる液体と同様の液体を用いることができる。
先端溝部24Aは、電極基体21Bの先端部211の表面に形成されている。本実施形態では、先端溝部24Aは、電極脚20Bの先端部211を先端部211から+Z軸方向に向かって見たとき、十字型に形成されている。
先端溝部24Aの断面形状は、図16に示すように、断面視において略U字状に形成されている。なお、先端溝部24Aの断面形状は、断面視において略V字状に形成されていてもよい。
先端溝部24Aの幅W1(図16参照)は、10μm〜120μmであることが好ましい。先端溝部24Aの幅W1が上記範囲内であれば、先端溝部24Aに導電層22が形成された後でも、先端溝部24A内に液体を保持することができる。また、先端溝部24Aに導電層22が形成されていれば、例えば、アルコールを含んだキムワイプなどで電極脚20Bの先端部211を強く拭いても、キムワイプの繊維が先端溝部24A内に侵入するのを低減できる。また、幅W1が上記範囲内であれば、毛髪の平均の太さよりも小さいため、先端溝部24A内に毛髪が侵入するのを低減できる。先端溝部24Aの幅W1は、より好ましくは20μm〜70μmであり、さらに好ましくは30μm〜50μmである。
なお、本実施形態では、幅W1(図16参照)とは、先端溝部24Aの底部から表面側までの幅の最大値(最大幅)をいう。先端溝部24Aの断面形状が、断面視において略V字状に形成されている場合でも、幅W1とは、最大幅、すなわち、先端部211の表面における幅の値をいう。
先端溝部24Aの最大深さH1(図16参照)は、10μm〜500μmであることが好ましい。先端溝部24Aの最大深さH1が上記範囲内であれば、電極脚20Bの先端部211に、導電層22を形成しても先端溝部24Aは所定の深さを有することができる。先端溝部24Aの最大深さH1は、20μm〜300μmであり、さらに好ましくは30〜150μmである。
側面溝部25は、図13〜図15に示すように、先端部211以外の部分である、電極脚20Bの側面212の表面に複数形成されており、先端溝部24Aの少なくとも一部と連通している。
側面溝部25の幅W2(図17参照)は、先端溝部24Aの幅W1と同様、10μm〜120μmであることが好ましい。側面溝部25の幅W2が10μm〜120μmであれば、図17に示すように、側面溝部25に導電層22が形成されても、側面溝部25内に液体を保持することができる。また、側面溝部25に導電層22が形成されていれば、例えば、アルコールを含んだキムワイプなどで電極脚20Bの側面212を強く拭いても、キムワイプの繊維が側面溝部25内に侵入するのを低減できる。また、幅W2が上記範囲内であれば、毛髪の太さを超えないため、毛髪が側面溝部25内に侵入するのを低減できる。側面溝部25の幅W2は、より好ましくは20μm〜70μmであり、さらに好ましくは30〜50μmである。なお、側面溝部25の幅W2の定義は、上述の幅W1と同様であるため、説明は省略する。
側面溝部25の最大深さH2(図17参照)は、先端溝部24Aと同様、10μm〜500μmであることが好ましい。側面溝部25の最大深さH2が上記範囲内であれば、電極脚20Bの側面212に導電層22を形成しても先端溝部24Aは所定の深さを有することができる。先端溝部24Aの最大深さH2は、より好ましくは20μm〜300μmであり、さらに好ましくは30μm〜150μmである。
以上のように構成された電極脚20Bは、領域Aである先端部211の表面に複数の先端溝部24Aを有すると共に、先端部211の表面に導電層22を有する。電極脚20Bを生体情報測定用電極に取り付けて、生体情報測定用電極を繰り返し長期間使用すると、例えば、図18に示すように、先端部211の表面の導電層22の一部が徐々に擦り減り、先端部211が部分的に露出する状態になるまで導電層22の一部が剥がれてしまう可能性がある。このような場合でも、電極脚20Bでは、先端溝部24Aの表面に形成された導電層22は残っている。そのため、導電層22の導通が、先端溝部24Aの表面に形成された導電層22と生体との接触部において維持できるため、導電層22と生体との導通を安定して維持することができる。よって、電極脚20Bによれば、電極基体21Bの先端部211と生体との電気的接続を維持できるため、生体からの電気信号を安定して得ることができ、生体情報を安定して測定することができる。
また、電極脚20Bを液体に浸漬すると、先端部211の表面に設けた先端溝部24A内に毛細管現象により液体を保持することができる。そのため、生体情報を測定する際に、先端部211を生体に接触させると、図19に示すように、先端溝部24Aで保持されていた液体が先端部211と接触する生体26の表面に流れて広がる。生体26を液体を介して導電層22と導通させることで、生体26から導電層22に導通する面積が大きくなるため、生体26と電極脚20Bとの間の接触インピーダンスをより下げることができる。これにより、電極脚20Bを備えた生体情報測定用電極は、生体情報をより安定して測定することができる。
さらに、電極脚20Bは、電極基体21Bの側面に側面溝部25を複数有しており、側面溝部25は先端溝部24Aの少なくとも一部と連通している。そのため、生体情報の測定時に、先端溝部24Aで保持されていた液体が先端部211と接触する生体の表面に流れ、先端溝部24Aで保持されていた液体が消費される。その際、側面溝部25に保持されていた液体が先端溝部24Aに流れて生体の表面に供給される。これにより、生体と電極脚20Bとの間の接触インピーダンスを低く抑えたまま、生体と電極脚20Bとの接触を維持することができる。よって、電極脚20Bを生体情報測定用電極に用いれば、生体情報をより安定して継続的に測定することができる。
[第3の実施形態に係る電極脚の変形例]
電極脚20Bの一例を示したが、これに限定されない。以下に、電極脚20Bの変形例をいくつか示す。
本実施形態では、先端溝部24Aは、電極基体21Bの先端部211を+Z軸方向に向かって見たとき、十字型に形成されているが、先端溝部24Aは、溝内に液体を保持することができる形状であればよい。例えば、図20に示すように、電極基体21Bの先端部211には、網目状に形成された先端溝部24Bが設けられていてもよいし、図21に示すように樹枝状に形成された先端溝部24Cが設けられていてもよい。図20および図21に示すように、先端部211に網目状に形成された先端溝部24Bまたは樹枝状に形成された先端溝部24Cを設けることで、先端部211の表面の先端溝部24Bおよび24Cに液体をより効率よく保持することができる。そのため、導電層22と生体との導通をより安定して維持することができる。また、先端部211が生体に接触した際、先端部211は、あらゆる方向に対して先端溝部24Bおよび24Cの表面の導電層22と生体との導通を安定して維持することができる。そのため、先端部211を生体に沿ってあらゆる方向に移動させても、生体情報をより安定して測定することができる。
本実施形態では、側面溝部25が電極基体21Bの側面212の表面に形成されているが、先端溝部24Aで十分、液体を保持することができる場合などには、側面溝部25は形成されていなくてもよい。これにより、先端部211に複数の先端溝部24Aが形成された電極脚を製造することができる。
<第3の実施形態に係る電極脚の製造方法>
次に、第3の実施形態に係る電極脚20Bの製造方法について説明する。図22は、本実施形態に係る電極脚20Bの製造方法を示すフローチャートである。図22に示すように、本実施形態に係る電極脚20Bの製造方法は、導電性を有する電極基体を成形すると共に、領域Aである先端部211の表面に複数の先端溝部24Aを形成し、側面212に側面溝部25を形成し、電極基体21Bを作製する脚基体作製工程(ステップS31A)と、電極基体21Bの先端部211の表面を活性化処理する表面処理工程(ステップS32)と、電極基体21Bの先端部211に導電層22を形成する導電層形成工程(ステップS33)とを含む。以下、各工程について説明する。
脚基体作製工程(ステップS31A)では、電極基体21Bを形成する材料を用いて、電極基体21Bを成形すると共に、領域Aである先端部211の表面に複数の先端溝部24Aを形成し、側面212に側面溝部25を形成する。
電極基体21Bは、図9に示す第2の実施形態に係る電極脚20Aの製造方法における成形工程(ステップS21A)と同様に成形することができる。成形法を用いる際、電極基体21Bの形状に対応した金型が用いられる。金型には、先端溝部24Aおよび側面溝部25に対応した突部を設ける。前記金型を用いることで、電極基体21Bを成形すると共に、先端溝部24Aおよび側面溝部25を同時に形成することができる。
表面処理工程(ステップS32)では、エキシマによる真空紫外光(エキシマUV光)を照射する方法、またはArおよび酸素を含む混合ガス中でプラズマ処理する方法を用いて、先端部211の表面を活性化処理する。先端部211の表面を活性化処理することで、後述する導電層形成工程(ステップS33)において、先端部211と導電層22との密着性が向上させることができる。これにより、先端部211の洗浄や拭き取り等により物理的な力が加わった際に、導電層22が電極基体21B(主に、先端部211)から容易に剥がれることを防止できる。
エキシマUV光を照射する方法を用いる場合、先端部211の表面にエキシマUV光を照射する。エキシマUV光は、大気中で波長が240nm以下のUV光であり、放電性ガスの種類により、所定の波長(中心波長)を有する。放電性ガスとして、Ar2(波長126nm)、Kr2(波長146nm)、ArBr(波長165nm)、Xe2(波長172nm)、KrI(波長191nm)、またはKrCl(波長222nm)などを用いることができる。エキシマUV光を放射する照射ランプが、例えば、Xeガスを封入した誘電体バリヤ放電ランプであるとする。この場合、誘電体バリヤ放電ランプは、Xe原子が励起されたエキシマ状態(Xe2 *)となり、このエキシマ状態から再びXe原子に解離するときに波長約172nmの光を発生する。この波長172nmの光を酸素に照射することで、高濃度のオゾンが発生する。このオゾンの作用により、電極基体21BのうちエキシマUV光が照射される箇所の表面が改質され、親水性の高い基(例えば、水酸基(OH基)、アルデヒド基(CHO基)、カルボキシル基(COOH基)が形成される。これにより、電極基体21Bの先端部211の表面を活性化処理することができ、先端部211の表面を親水性に変化させることができる。この結果、先端部211の表面の水に対する濡れ性を高めることができる。そのため、先端部211のみを簡易に活性化処理することができるので、電極基体21Bが導電性材料で形成されている場合に有効に用いることができる。なお、少なくとも先端部211の表面を活性化処理できればよく、電極基体21Bの先端部211以外の部分や、電極基体21Bの全体にエキシマUV光を照射してもよい。
Arおよび酸素を含む混合ガス中でプラズマ処理する方法を用いる場合、電極基体21Bの全体の表面がプラズマで活性化処理される。これにより、先端部211の表面以外に、電極基体21Bの全体の表面を親水性に変化させることができる。この結果、先端部211含め、電極基体21Bの全体の表面の水に対する濡れ性を高めることができる。そのため、電極基体21Bが導電性材料または絶縁材料のいずれで形成されている場合でも有効に用いることができる。
導電層形成工程(ステップS33)は、塗布工程(ステップS331)および固化工程(ステップS332)を含む。導電層形成工程(ステップS33)は、上述の、図9に示す導電層形成工程(ステップS22A)と同様であり、塗布工程(ステップS331)および固化工程(ステップS332)は、いずれも、上述の、図9に示す導電層形成工程(ステップS22A)の塗布工程(ステップS221)および固化工程(ステップS222)と同様である。そのため、導電層形成工程(ステップS33)では、先端部211の表面に、導電層22を形成する。
以上のようにして、先端部211の表面に導電層22を形成した電極脚20Bが得られる。
[第3の実施形態に係る電極脚の製造方法の変形例]
なお、本実施形態では、脚基体作製工程(ステップS31A)において、先端溝部24Aおよび側面溝部25に対応した突起を設けた金型を用いて、電極基体21Bを同時に形成しているが、これに限定されない。例えば、電極基体21Bを成形した後に、先端溝部24Aおよび側面溝部25を同時にまたは別々に形成してもよい。先端溝部24Aおよび側面溝部25を別々に形成する場合、本実施形態に係る電極脚20Bの製造方法は、図23に示すように、脚基体作製工程(ステップS31B)と、表面処理工程(ステップS32)と、導電層形成工程(ステップS33)とを含む。脚基体作製工程(ステップS31B)は、電極基体を準備する準備工程(ステップS311)と、前記電極基体に複数の先端溝部24Aおよび側面溝部25を形成する溝部形成工程(ステップS312)とを含む。準備工程(ステップS311)では、電極基体を成形法などを用いて作製し、電極基体を準備する。溝部形成工程(ステップS312)では、準備した電極基体に先端溝部24Aおよび側面溝部25を形成する。これにより、電極基体と、先端溝部24Aおよび側面溝部25を別々に形成することができる。
また、先端溝部24Aおよび側面溝部25は別々に形成してもよい。この場合、本実施形態に係る電極脚20Bの製造方法は、図24に示すように、脚基体作製工程(ステップS31C)と、表面処理工程(ステップS32)と、導電層形成工程(ステップS33)とを含む。脚基体作製工程(ステップS31C)は、電極基体を準備する準備工程(ステップS311)と、複数の先端溝部24Aを形成する先端溝部形成工程(ステップS312)と、側面溝部25を形成する側面溝部形成工程(ステップS313)とを含む。これにより、電極基体に、先端溝部24Aおよび側面溝部25を別々に形成することができる。
[第4の実施形態]
<生体情報測定用電極>
第4の実施形態に係る生体情報測定用電極について説明する。本実施形態に係る生体情報測定用電極は、生体の一部に接触させて生体情報の測定を行うものである。本実施形態に係る生体情報測定用電極は、上記の第2の実施形態に係る電極脚20Aを有するものである。
図25は、第4の実施形態に係る生体情報測定用電極の外観を示す斜視図であり、図26は、第4の実施形態に係る生体情報測定用電極の外観を示す他の斜視図であり、図27は、図25のIV−IV断面図である。図25〜図27に示すように、本実施形態に係る生体情報測定用電極30Aは、基体部31と、端子部33とを有する。なお、図25〜図27中の一点鎖線は、上述の通り、導電材10(図1等参照)の中心軸Jであり、この中心軸Jは、生体情報測定用電極30Aの中心軸をも意味し、生体情報測定用電極30Aを生体に設置した際の中心となる軸となる。
基体部31および端子部33は、上述の第2の実施形態に係る電極脚20Aの電極基体21Aの形成に用いられる、導電性エラストマーまたは絶縁材料を用いて形成することができる。基体部31と端子部33とは、同一の材料で形成されていてもよいし、異なる材料で形成されていてもよい。本実施形態では、基体部31および端子部33は、同一の導電性エラストマーで一体に形成されている。そのため、電極脚20Aの先端部312a(後述する)側から端子部33まで導通している。
基体部31および端子部33が導電性エラストマーを用いて形成される場合、導電性エラストマーは、例えば、導電性フィラーと非導電性エラストマーとを溶融混合することで得られる。基体部31と端子部33は、ゴム弾性を有する非導電性エラストマーを含んで成形されることで、低い弾性率を有する。そのため、生体情報測定用電極30Aの使用時に、基体部31と端子部33は生体の表面の凹凸形状に合わせて変形し易いので、生体への接触を確実にできると共に、生体への押圧力を緩和できる。
[基体部]
基体部31は、基部311と、複数の電極脚312Aとを有する。
基部311は、電極脚312Aの他方側に設けられている。基部311は、平面視(+Z軸方向から見たとき)において、略円形に形成されている。基部311は、基部311の裏面(−Z軸方向)に突設部311aを有する。突設部311aは、基部311の裏面に環状に複数(図25〜図27では、8本)設けられている。突設部311aの端部に電極脚312Aが一体に成形されている。突設部311aの数は、電極脚312Aの数に合うように設計される。
電極脚312Aは、基部311の突設部311aから−Z軸方向に向けて延設されている。電極脚312Aは、上記の第2の実施形態に係る電極脚20Aが用いられる。電極脚312Aは、基部311から分離可能である。
[端子部]
端子部33は、図25〜図27に示すように、基体部31の基部311の上面であって、平面視において基部311の略中央部(中心軸Jが通る位置)から+Z軸方向に突出して設けられている。端子部33の中央部分には、金属層35が設けられている。金属層35としては、金、銀、または銅などの金属が用いられる。この金属層35が設けられた部分に、後述する検査装置40(図28参照)の配線42(図28参照)が接続される。端子部33は、電極脚312Aが一体に形成されている基体部31と電気的に接続される。そのため、端子部33は、電極脚312Aの領域Aである先端部312aと電気的に接続されることとなり、領域Aからの情報信号を取り出すことができる。なお、端子部33の中央部分には、金属以外の導電性を有する材料により形成された層を設けてもよい。
端子部33は、測定部43(図28参照)と接続されている。具体的には、端子部33は、配線42(図28参照)などに接続され、この配線42(図28参照)と測定部43(図28参照)とが接続されている。端子部33は、電極脚312Aの先端部211から基体部31を介して得られた生体(例えば、頭皮や額)からの電気信号を測定部43(図28参照)に伝え、生体情報(例えば、脳波)として測定される。
次に、本実施形態に係る生体情報測定用電極30Aを備えた検査装置を用いて被験者の生体情報として脳波を測定する場合の一例について説明する。図28は、生体情報測定用電極30Aを備えた検査装置を用いて被験者の脳波を測定する一例を示す図である。図28に示すように、検査装置40は、生体情報測定用電極30Aと、被験者の頭部にかぶせるキャップ41と、配線42と、測定部43と、表示部44とを有する。キャップ41は、被験者の頭部を覆うように帽子またはヘルメットの形状を有し、合成樹脂や布などで形成される。生体情報測定用電極30Aが、キャップ41に所定間隔で複数カ所(例えば、21か所)に設けられ、被験者の頭皮45の任意の場所に取り付けられる。配線42は、例えば、リード線などであり、一端が端子部33に接続され、他端が測定部43に接続される。測定部43は、電源部431、および電気信号を解析して、生体情報として脳波を測定する信号解析部432を有する。表示部44は、モニターであり、信号解析部432で解析された脳波を表示する。脳波は、その周波数により、例えば、α波(8〜13Hz)、β波(14〜30Hz)、θ波(4〜7Hz)、δ波(0.5〜3Hz)に分類される。
生体情報測定用電極30Aをキャップ41に固定して、電極脚312Aの先端部211を導電層22を介して頭皮45に接触させる。電源部431を入れて、測定を開始すると、頭皮45からの電気信号が頭皮45から導電層22を介して電極脚312Aの先端部312aに伝えられる。伝達された電気信号は、先端部312aから基体部31を介して、端子部33、配線42、および測定部43の順に伝えられる。信号解析部432は、伝えられた電気信号を解析して、表示部44に脳波(例えば、α波、β波、θ波など)441を表示する。
以上のように構成された、生体情報測定用電極30Aは、電極脚312Aの領域Aである先端部312aの表面に導電層22を有する。導電層22は、第1の実施の形態に係る導電材10(図1および図2参照)で形成されている。そのため、導電層22は、細孔221(図6参照)に溶液を含むことができる。導電層22は、生体情報測定用電極30Aの電極脚312Aの先端部312aの表面に設けることができる。導電層22が生体の表面に接触すると、導電層22の細孔221(図6および図7参照)内に保持された溶液が、導電層22と接触する生体の表面に流れて広がる。そして、導電層22と生体の表面とを溶液を介して導通させることで、生体と導電層22との間の接触インピーダンスを下げることができるので、生体からの電気信号が取得し易くなる。よって、生体情報測定用電極30Aは、生体と電気的に接続を維持できるため、生体情報を容易に安定して測定することができる。
また、導電層22は、高い耐摩耗性を有する。そのため、生体情報測定用電極30Aを繰り返し使用して、先端部211の表面の導電層22が擦られても、先端部312aの表面の導電層22が削られるのを抑制することができる。よって、先端部312aの表面の導電層22は、生体との接触部において生体と安定して接触できるので、導電層22と生体との導通を安定して維持することができる。したがって、生体情報測定用電極30Aによれば、電極脚312Aの先端部312aと生体との電気的接続を維持できるため、生体からの電気信号を安定して得ることができ、生体情報を安定して測定することができる。
電極脚312Aは、基部311から分離可能であるため、導電層22を取り付けた電極脚312Aを容易に交換することができる。これにより、電極脚312Aの先端部312aの導電層22が磨耗などにより測定が不安定になっても、正常に生体情報の測定を取得できる電極脚312Aに交換することができる。
[第4の実施形態に係る生体情報測定用電極の変形例]
生体情報測定用電極30Aの一例を示したが、これに限定されない。以下に、生体情報測定用電極30Aの変形例について説明する。
本実施形態では、基体部31と端子部33とは一体に形成されているが、基体部31と端子部33とは別々の部材で構成されていてもよい。基体部31と端子部33とを別々の部材で構成した時の生体情報測定用電極30Aの一例を図29および図30に示す。図29は、生体情報測定用電極30Aの他の構成の一例を示す斜視図であり、図30は、図29のV−V断面図である。図29および図30に示すように、端子部33は、円板形状の基部331と、基部331の中央部から突出した凸部332とを有する。端子部33は、金属材料等の導電性を有する材料により形成されている。端子部33は、基体部31の基部311が電極脚312Aと連続している側とは反対側の端部311bと、例えば、不図示の導電性接着剤や導電性ペーストなどにより固定して接続されている。これにより、端子部33は、電極脚312Aと一体で形成されている基体部31と電気的に接続される。従って、電極脚312Aの先端部312aは、基体部31の基部311を介して、端子部33と電気的に接続される。
本実施形態では、基部311は、その裏面(−Z軸方向側)に突設部311aを有するが、突設部311aを設けず、電極脚312Aが円板部分の基部311に連続して形成されてもよい。
本実施形態では、基体部31は、基部311と電極脚312Aとを一体に成形しているが、基部311と電極脚312Aとを別々の部材で構成してもよい。このとき、基部311と電極脚312Aとは、合成樹脂からなる結着部材により結着する。なお、結着部材は、エポキシ樹脂、またはウレタン樹脂などの合成樹脂が硬化したものである。また、結着部材として、前記合成樹脂の他に、ゴムなどの弾性を有した合成樹脂でもよい。
導電層22は、領域Aである電極脚312Aの先端部312aに形成されているが、少なくとも先端部211に形成されていればよく、基体部31の他の部分に形成されていてもよいし、基体部31および端子部33の全面に形成されていてもよい。例えば、基体部31および端子部33が絶縁材料で形成されている場合には、基体部31と端子部33の全面に形成する。
この場合、図31に示すように、基体部31と端子部33の全面に、導電層22と電気的に接続された下地導電層51を形成することが好ましい。これにより、先端部211と端子部33との間の導通を取ることができる。下地導電層51に含まれる導電性高分子には、導電層22と同様の導電性高分子を使用することができる。導電性高分子は、導電層22と同様の導電性高分子が使用されるため、導電性高分子の説明は省略する。下地導電層51の厚さは、導通が取れればよく、例えば、200nm〜1μm程度であればよい。
<第4の実施形態に係る生体情報測定用電極の製造方法>
次に、第4の実施形態に係る生体情報測定用電極の製造方法について説明する。図32は、本実施形態に係る生体情報測定用電極の製造方法を示すフローチャートである。図32に示すように、本実施形態に係る生体情報測定用電極の製造方法は、基体部31および端子部33を成形する成形工程(ステップS41A)と、先端部312aの表面を活性化処理する表面処理工程(ステップS42)と、先端部312aの表面に、導電層22を形成する導電層形成工程(ステップS43A)とを含む。以下、各工程について説明する。
成形工程(ステップS41A)では、基体部31および端子部33を形成する材料を用いて、基体部31および端子部33を一体に成形する。なお、成形工程は、脚基体作製工程ともいう。
基体部31および端子部33は、圧縮成形(コンプレッション成形)、射出成形(インジェクション成形)、または押出成形(トランスファー成形)など公知の成形方法で、所望の形状を有する基体部31および端子部33を成形することができる。これらの成形法を用いる際、基体部31および端子部33の形状に対応した金型が用いられる。前記金型を用いることで、基体部31および端子部33を同時に成形することができる。
射出成形法などを用いる場合、射出成形後、基体部31および端子部33を成形する原料(樹脂や金属など)が供給される原料供給通路(例えば、スプール、ランナーなど)が基体部31または端子部33に連結されている。例えば、図33に示すように、原料供給通路52が端子部33に連結されている場合、原料供給通路52の少なくともその一部は、基体部31および端子部33の成形後も、端子部33に連結しておくことが好ましい。後述する導電層形成工程(ステップS13)で、基体部31および端子部33の少なくとも一部を、導電性高分子を含む溶液に浸漬する際に、原料供給通路52は、基体部31の掴み手として用いることができる。なお、原料供給通路52は、好適な成形を行うために製品のどの位置にするか決まるもので、図33に示す端子部33以外に、基体部31の基部311などに連結されていてもよい。
表面処理工程(ステップS42)は、図22に示す、上述の第3の実施形態に係る電極脚の製造方法の表面処理工程(ステップS32)と同様に行うことができる。
導電層形成工程(ステップS43A)は、図9に示す、上述の第2の実施形態に係る電極脚の製造方法の導電層形成工程(ステップS22A)と同様に行うことができる。
導電層形成工程(ステップS43A)では、先端部312aの表面に、ファイバ同士が導電性高分子および熱硬化性樹脂で結着された状態で形成され、多数の細孔を有する導電層22を形成する。導電層形成工程(ステップS43)は、塗布工程(ステップS431)と、固化工程(ステップS432)とを含む。
塗布工程(ステップS431)では、少なくとも先端部312aに、ファイバおよび導電性高分子を含む混合溶液を塗布して塗布層を形成する。前記混合溶液を少なくとも先端部211に塗布する方法としては、前記混合溶液に少なくとも先端部312aを浸漬する浸漬法、前記混合溶液を少なくとも先端部312aに吹き付けるスプレー法などを用いることができる。
固化工程(ステップS432)では、先端部312aに形成された塗布層を、例えば、120〜130℃で加熱して乾燥させ、塗布層を硬化させる。これにより、先端部312aおよび先端溝部24Aの表面に導電層22が形成される。本実施形態では、基体部31および端子部33が導電性エラストマーで形成されているため、導電層22は、先端部312aの表面に形成すればよい。
以上のようにして、先端部312aの表面に導電層22が形成された生体情報測定用電極30Aが得られる。
本実施形態では、導電層形成工程(ステップS43)の塗布工程(ステップS431)において、混合溶液を先端部211に1回塗布した時に形成される塗布層の膜厚は、導電性高分子のみを含む溶液を1回塗布した時に形成される塗布層の膜厚よりも厚くすることができる。そのため、塗布工程(ステップS131)で塗布層を作製するために要する費用を低減することができる。また、導電層22はより厚くなるため、導電層22の寿命をより伸ばすことができる。
導電層22に含まれるファイバがセルロースナノファイバである場合、セルロースナノファイバと導電性高分子とを含む混合溶液は、基体部31および端子部33への濡れ性が良く、高いチクソ性を有する。そのため、セルロースナノファイバと導電性高分子とを含む混合溶液を用いて導電層22を形成する場合、前記混合溶液の1回の塗布で形成される塗布層の膜厚は、セルロースナノファイバを含まない溶液を塗布して形成される塗布層の膜厚よりも、例えば、1.3〜4倍くらい厚くすることができる。
[第4の実施形態に係る生体情報測定用電極の製造方法の変形例]
なお、本実施形態では、成形工程(ステップS41A)において、基体部31および端子部33を同時に一体で形成しているが、これに限定されない。例えば、基体部31および端子部33を、それぞれ、別々に成形して一体化させてもよい。この場合、本実施形態に係る生体情報測定用電極の製造方法は、図34に示すように、成形工程(ステップS41B)と、表面処理工程(ステップS42)と、導電層形成工程(ステップS43A)とを含む。成形工程(ステップS41B)は、基体部31および端子部33を成形する脚基体成形工程(ステップS411)と、基体部31および端子部33を結着して一体化する結着工程(ステップS412)とを含む。なお、結着工程(ステップS412)において、基体部31と端子部33とを結着するために使用する結着部材は、公知の結着部材を用いることができる。例えば、エポキシ樹脂、またはウレタン樹脂などの合成樹脂、ゴムなどの弾性を有した合成樹脂などを用いることができる。
本実施形態では、基体部31および端子部33が導電性エラストマーで形成されているため、導電層22は、少なくとも先端部312aの表面に形成すればよい。しかし、基体部31および端子部33が絶縁材料で形成されている場合には、導電層22は、基体部31および端子部33の全面に形成する。これにより、生体から得られる電気信号は、導電層22を介して、電極脚312Aの先端部312aから端子部33まで伝えられる。
基体部31および端子部33が絶縁材料で形成される場合には、図31に示すように、基体部31および端子部33と導電層22との間に、下地導電層51を形成することが好ましい。この場合、本実施形態に係る生体情報測定用電極の製造方法は、基体部31および端子部33の表面に、導電性高分子を含有する下地導電層51を形成する。図35に示すように、本実施形態に係る生体情報測定用電極の製造方法は、成形工程(ステップS41A)と、表面処理工程(ステップS42)と、基体部31および端子部33の表面に、導電性高分子を含有する下地導電層51を形成する下地導電層形成工程(ステップS43B)と、導電層形成工程(ステップS44)とを含む。
下地導電層形成工程(ステップS43B)では、基体部31および端子部33の表面に、導電性高分子を含む溶液を塗布して塗布層を形成する。下地導電層51を形成する方法は、上述の図12の導電層形成工程(ステップS22C)と同様に行うことができる。
導電層形成工程(ステップS44)は、塗布工程(ステップS441)および固化工程(ステップS442)を含む。導電層形成工程(ステップS44)は、上述の、図34に示す導電層形成工程(ステップS43A)と同様であり、塗布工程(ステップS441)および固化工程(ステップS442)は、いずれも、上述の、図34に示す導電層形成工程(ステップS43A)の塗布工程(ステップS431)および固化工程(ステップS432)と同様に行う。
本実施形態では、導電層形成工程(ステップS43A)は、電極基体21Aの先端部211に塗布した塗布層を凍結乾燥して導電層22を形成しているが、これに限定されない。例えば、予め作製した電極脚312Aを基部311の突設部311aに取り付けるようにしてもよい。この場合における生体情報測定用電極の製造方法の一例を図36に示す。図36は、本実施形態に係る生体情報測定用電極の製造方法を示す他のフローチャートである。図36に示すように、本実施形態に係る生体情報測定用電極の製造方法は、基体部31の基部311と、端子部33とからなる電極本体を作製する電極本体作製工程(ステップS51)と、電極脚312Aを基部311に連結する連結工程(ステップS52)とを含む。
電極本体作製工程(ステップS51)は、成形工程(ステップS41A)において基体部31および端子部33を成形する場合と同様の方法を用いて、基体部31の基部311と、端子部33とを、一体で成形することで、電極本体を作製できる。また、基体部31の基部311と、端子部33とを別体として成形した後、基部311の端部311b(図30参照)と端子部33とを、例えば、不図示の導電性接着剤や導電性ペーストなどにより接続し、電極本体を作製してもよい。
連結工程(ステップS52)では、予め、電極基体の先端部312aに導電層22を形成した電極脚312Aを作製する。電極脚312Aは、上記の第2の実施形態に係る電極脚20Aを用いることができる。基部311の突設部311aに電極脚312Aを連結することで、生体情報測定用電極30Aが得られる。
[第5の実施形態]
<生体情報測定用電極>
第5の実施形態に係る生体情報測定用電極について、図面を参照して説明する。本実施形態に係る生体情報測定用電極は、図25〜図27に示す第4の実施形態に係る生体情報測定用電極30Aの基体部31の電極脚312Aとして、図13〜図15に示す第3の実施形態に係る電極脚20Bを用いたものである。
図37は、第5の実施形態に係る生体情報測定用電極の外観を示す斜視図であり、図38および図39は、第5の実施形態に係る生体情報測定用電極の外観を示す他の斜視図であり、図40は、図37のVI−VI断面図である。図37〜図40に示すように、本実施形態に係る生体情報測定用電極30Bは、図25〜図27に示す生体情報測定用電極30Aの基体部31の電極脚312Aに代えて、図13〜図15に示す第3の実施形態に係る電極脚312Bを備えたものである。すなわち、生体情報測定用電極30Bは、先端部312aに先端溝部24Aを備え、側面312bに側面溝部25を備えた電極脚312Bを有する。
本実施形態に係る生体情報測定用電極30Bを備えた検査装置40(図28参照)を用いて被験者の脳波を測定する場合の一例について説明する。本実施形態では、生体情報測定用電極30Bは、予め、電極脚312Bの少なくとも先端部312aを容器中の液体に浸漬して、導電層22の先端溝部24Aおよび側面溝部25に液体を含有させる。液体中に浸漬状態から電極脚312Bを引き上げた後、先端溝部24Aおよび側面溝部25に液体が含有された状態で、生体情報測定用電極30Bをキャップ41(図28参照)に固定することで、図41に示すように、電極脚312Bの先端部312aを導電層22を介して頭皮45に接触させる。測定時には、頭皮45からの電気信号が頭皮45から導電層22を介して電極脚312Bの先端部312aに伝えられる。伝達された電気信号は、先端部312aから基体部31を介して、端子部33、配線42(図28参照)、および測定部43(図28参照)の順に伝えられ。信号解析部432(図28参照)は、伝えられた電気信号を解析して、表示部44(図28参照)に脳波(例えば、α波、β波、θ波など)441(図28参照)を表示する。
よって、本実施の形態による生体情報測定用電極30Bは、領域Aである先端部312aの表面に複数の先端溝部24Aを有すると共に、先端部312aの表面に導電層22を有する。そのため、上述の、第2の実施形態に係る電極脚20Aにおいて説明した通り、生体情報測定用電極30Bを繰り返し使用することで、例えば、図18に示すように、先端部312aに設けた導電層22の一部が徐々に擦り減り、先端部312aが部分的に露出する状態になるまで削られてしまう可能性がある。このような場合でも、生体情報測定用電極30Bは、先端溝部24Aの表面に形成された導電層22と生体(例えば、頭皮や額)との接触部において生体との導通を維持することができるので、導電層22と生体との導通を安定して維持することができる。よって、生体情報測定用電極30Bによれば、電極脚312Bの先端部312aと生体との電気的接続を維持できるため、生体からの電気信号を安定して得ることができ、生体情報として、例えば脳波を安定して測定することができる。
また、上述の、第3の実施形態に係る電極脚20Bにおいて説明した通り、生体情報測定用電極30Bを液体に浸漬すると、領域Aである先端部312aの表面に設けた先端溝部24A内に毛細管現象により液体を保持することができる。そのため、例えば、脳波を測定する際に、先端部312aを頭皮に接触させると、図19に示すように、先端溝部24Aで保持されていた液体が先端部211と接触する頭皮の表面に流れて頭皮に広がる。この結果、頭皮から導電層22に導通する面積が大きくなるため、頭皮と生体情報測定用電極30Bとの間の接触インピーダンスをより下げることができる。これにより、脳波をより安定して測定することができる。
さらに、生体情報測定用電極30Bは、上述の、第3の実施形態に係る電極脚20Bにおいて説明した通り、電極脚20Bの側面に側面溝部25を複数有しており、側面溝部25は先端溝部24Aの少なくとも一部と連通している。そのため、脳波の測定時に、先端溝部24Aで保持されていた液体が先端部211と接触する頭皮の表面に流れ、先端溝部24Aで保持されていた液体が消費される。その際、側面溝部25に保持されていた液体が先端溝部24Aに流れて頭皮に供給される。これにより、頭皮と生体情報測定用電極30Bとの間の接触インピーダンスを低く抑えたまま、頭皮と生体情報測定用電極30Bとの接触を維持することができるため、生体情報をより安定して継続的に測定することができる。
[第5の実施形態に係る生体情報測定用電極の変形例]
生体情報測定用電極30Bの一例を示したが、これに限定されない。以下に、生体情報測定用電極30Bの変形例について説明する。
本実施形態では、先端溝部24Aは、電極脚312Bの先端部312aを+Z軸方向に向かって見たとき、十字型に形成されているが、上述の第3の実施形態に係る電極脚20Bと同様、先端溝部24Aは、溝内に液体を保持することができる形状であればよい。例えば、図20に示すように、電極脚312Bの先端部312aを+Z軸方向に向かって見たとき、先端部312aには、網目状に形成された先端溝部24Bが設けられていてもよいし、図21に示すように樹枝状に形成された先端溝部24Cが設けられていてもよい。図20および図21に示すように、先端部312aに網目状に形成された先端溝部24Bまたは樹枝状に形成された先端溝部24Cを設けることで、先端部312aの表面の先端溝部24Bおよび24Cに液体をより効率よく保持することができる。そのため、導電層60と頭皮との導通をより安定して維持することができる。また、先端部312aが頭皮に接触した際、先端部312aは、あらゆる方向に対して先端溝部24Bおよび24Cの表面の導電層60と頭皮との導通を安定して維持することができる。そのため、先端部312aを頭皮に沿ってあらゆる方向に移動させても、生体情報をより安定して測定することができる。
本実施形態では、側面溝部25が電極脚312Bの側面312bの表面に形成されているが、上述の第3の実施形態に係る電極脚20Bと同様、先端溝部24Aで十分、水を保持することができる場合などには、側面溝部25は形成されていなくてもよい。
<第5の実施形態に係る生体情報測定用電極の製造方法>
次に、第5の実施形態に係る生体情報測定用電極の製造方法について説明する。図42は、本実施形態に係る生体情報測定用電極の製造方法を示すフローチャートである。図42に示すように、本実施形態に係る生体情報測定用電極の製造方法は、基体部31および端子部33を成形すると共に、領域Aである先端部312aの表面に複数の先端溝部24Aを形成し、側面312bに側面溝部25を形成する成形工程(ステップS61A)と、先端部211の表面を活性化処理する表面処理工程(ステップS62)と、先端部211の表面に、導電層22を形成する導電層形成工程(ステップS63)とを含む。以下、各工程について説明する。
成形工程(ステップS61A)は、図32に示す、上述の第4の実施形態に係る生体情報測定用電極の製造方法の成形工程(ステップS41A)と同様にして、基体部31および端子部33を成形する。また、図22に示す、上述の第3の実施形態に係る電極脚の製造方法の脚基体作製工程(ステップS31A)と同様にして、先端部312aの表面に複数の先端溝部24Aを形成し、側面312bに側面溝部25を形成することができる。
表面処理工程(ステップS62)は、図22に示す、上述の第3の実施形態に係る電極脚生体情報測定用電極の製造方法の表面処理工程(ステップS32)と同様に行うことができる。
導電層形成工程(ステップS63)は、図32に示す、上述の第4の実施形態に係る生体情報測定用電極の製造方法の導電層形成工程(ステップS43A)と同様に行うことができる。
導電層形成工程(ステップS63)は、塗布工程(ステップS631)および固化工程(ステップS632)を含む。導電層形成工程(ステップS63)は、上述の、図32に示す導電層形成工程(ステップS43A)と同様である。塗布工程(ステップS631)および固化工程(ステップS632)は、いずれも、上述の、図32に示す導電層形成工程(ステップS43A)の塗布工程(ステップS431)および固化工程(ステップS432)と同様に行うことができる。
よって、本実施形態に係る生体情報測定用電極の製造方法によれば、先端部312aの表面には先端溝部24Aが形成され、側面312bに側面溝部25が形成された電極脚312Bを備えた生体情報測定用電極30Bを得ることができる。
[第5の実施形態に係る電極脚の製造方法の変形例]
なお、本実施形態では、成形工程(ステップS61A)において、先端溝部24Aおよび側面溝部25に対応した突起を設けた金型を用いて、基体部31に先端溝部24Aおよび側面溝部25を同時に形成しているが、これに限定されない。例えば、基体部31および端子部33を成形した後に、先端溝部24Aおよび側面溝部25を同時にまたは別々に形成してもよい。
先端溝部24Aおよび側面溝部25を別々に形成する場合、本実施形態に係る生体情報測定用電極の製造方法は、図43に示すように、成形工程(ステップS61B)と、表面処理工程(ステップS62)と、導電層形成工程(ステップS63)とを含む。成形工程(ステップS61B)は、基体部31および端子部33を準備する準備工程(ステップS611)と、電極脚の先端部312aに先端溝部24Aを形成する先端溝部形成工程(ステップS612)と、電極基体の側面に側面溝部25を形成する側面溝部形成工程(ステップS613)とを含む。
成形工程(ステップS61B)は、図24に示す電極脚の製造方法の脚基体作製工程(ステップS31C)と同様に行うことができる。準備工程(ステップS611)、先端溝部形成工程(ステップS612)、および側面溝部形成工程(ステップS613)は、いずれも、上述の、図24に示す脚基体作製工程(ステップS31C)の準備工程(ステップS311)、先端溝部形成工程(ステップS312)、および側面溝部形成工程(ステップS313)と同様に行うことができる。
なお、導電層形成工程(ステップS63)において、電極脚の先端部312aにのみ導電層22を形成しているが、導電層22は少なくとも先端部312aに形成されていればよく、導電層22は、基体部31の先端部312a以外の部分、または基体部31および端子部33の全体に形成してもよい。
以上のように、上記第1〜第5の実施形態に係る導電材10、電極脚20Aおよび20B、ならびに生体情報測定用電極30Aおよび30Bは、生体との電気的接続を維持し、生体から得られる生体情報を安定して測定することができる。そのため、これらは、例えば、脳波、脈波、心電、筋電、体脂肪など様々な生体の情報を皮膚に接触させて測定するものに好適に用いることができる。また、生体とは、人体、又は人体以外の生物等を含むが、上記の各実施形態に係る導電材10、電極脚20Aおよび20B、ならびに生体情報測定用電極30Aおよび30Bは、いずれも人体用として特に好適に用いることができる。
[第6の実施形態]
<生体情報測定用電極>
第6の実施形態に係る生体情報測定用電極について説明する。本実施形態に係る生体情報測定用電極は、図25〜図27に示す第4の実施形態に係る生体情報測定用電極30Aの導電層22を、導電性高分子を含有した合成樹脂のマトリックス中にファイバが分散して含まれている導電層に変更したものである。
図44は、第6の実施形態に係る生体情報測定用電極の外観を示す斜視図であり、図44は、第6の実施形態に係る生体情報測定用電極の外観を示す他の斜視図であり、図45は、図44のVII−VII断面図である。
図44〜図46に示すように、本実施形態に係る生体情報測定用電極30Cは、基部311および複数の電極脚312Aを有する基体部31と、基部311の上側(+Z軸方向)に設けられた端子部33と、電極脚312Aの表面に設けられた導電層60とを備えている。本実施形態に係る生体情報測定用電極30Cは、上記の第4の実施形態に係る生体情報測定用電極30Aの先端部312aに形成される導電層22Aの構成を変更したこと以外は、上記の第4の実施形態に係る生体情報測定用電極30Aと同様であるため、導電層60の構成についてのみ説明する。
[導電層]
導電層60は、電極脚312Aの先端部312aの表面に設けられている。本実施形態では、基体部31および端子部33が導電性エラストマーを用いて一体に形成されているので、基体部31と端子部33との導通は確保されている。このため、導電層60は、先端部312aの表面にのみ形成している。なお、基体部31および端子部33が絶縁材料で形成されている場合には、導電層60は、基体部31と端子部33との導通を確保するため、基体部31および端子部33の全面に設けられる。
導電層60は、導電性高分子を含有した合成樹脂のマトリックス中にファイバが分散した状態で含まれている。ファイバが合成樹脂のマトリックス中に分散して含まれることで、導電層60の強度が高められると共に、導電層60の厚み(層厚)を増加させることができる。
合成樹脂のマトリックスとして、導電性高分子のみで形成することも可能だが、適宜、他の合成樹脂を混在させて形成することもできる。他の合成樹脂として、上記の、第1の実施形態の導電材10に含まれるバインダと同様の樹脂を用いることができる。そのため、合成樹脂の詳細については省略する。
また、導電層60の平均厚さは、上記の、第1の実施形態の導電材10と同様、1〜30μmであることが好ましい。導電層60の平均厚さの詳細は、上記の、第1の実施形態の導電材10と同様であるため、詳細は省略する。
導電性高分子としては、上記の、第1の実施形態の導電材10に含まれるバインダの導電性高分子と同様の導電性高分子を用いることができる。そのため、導電性高分子の種類の詳細については省略する。
ファイバとしては、上記の、第1の実施形態の導電材10に含まれるファイバと同様のファイバを用いることができる。そのため、ファイバの種類の詳細については省略する。
導電性高分子とファイバとの混合比は、用いるファイバの種類に応じて種々変わるが、2:8〜8:2の範囲内であることが好ましい。この範囲内であれば、導電層60は、導電性高分子の使用量を低減しつつ導電性を保つことができると共に、導電層の40の層強度を保つことができる。
なお、ファイバの定義は、上記の、第1の実施形態において説明した通りである。そのため、ファイバの定義についての説明は省略する。
ファイバは、ナノファイバであることが好ましい。ナノファイバは、ファイバよりも、導電性高分子を含有した合成樹脂のマトリックス中により細かく均一に分散することができるので、導電層60の強度はより高くなる。
なお、ナノファイバの定義は、上記の、第1の実施形態において説明した通りである。そのため、ナノファイバの定義についての説明は省略する。
ナノファイバのアスペクト比は、上記の、第1の実施形態において説明した通り、1:100〜1:1000であることが好ましく、より好ましくは1:100〜1:300である。ナノファイバのアスペクト比が1:100〜1:1000の範囲内であれば、塗布層中における分散不良を抑制することができる。この結果、導電層60中にナノファイバが均一に存在することとなるため、導電層60の強度を高めることができる。
ナノファイバは、上記の、第1の実施形態の導電材10に含まれるナノファイバと同様のナノファイバを用いることができる。そのため、ナノファイバの詳細については省略する。
ナノファイバとしてセルロースナノファイバを用いる場合、導電性高分子とセルロースナノファイバとの混合比は、2:8〜7:3の範囲内であることが好ましく、3:7〜6:4の範囲内であることがより好ましい。この範囲内であれば、導電層60は、導電性を保つことができると共に、導電性高分子の使用量を低減できる。また、導電性高分子がPEDOT/PSSの場合、セルロースナノファイバの費用は、PEDOT/PSSの費用の1/10以下であるため、導電層60の単位厚みで使用されるPEDOT/PSSの比率が下げられる。
生体情報測定用電極30Cを用いて被験者の脳波を測定する場合、上述の第4の実施形態において図28を用いて説明したように、生体情報測定用電極30Cを備えた検査装置40(図28参照)を用いることで、被験者の脳波を測定できる。
以上のように構成された、生体情報測定用電極30Cは、領域Aである先端部312aの表面に導電層60を有する。導電層60は、導電性高分子を含有した合成樹脂のマトリックス中にファイバを分散した状態で含んでいる。導電層60は、ファイバを含むことで、強度を高くすることができるため、耐磨耗性を向上させることができる。そのため、生体情報測定用電極30Cを繰り返し使用して、先端部312aの表面の導電層60擦られても、先端部312aの表面の導電層60が削られるのを抑制することができる。よって、先端部312aの表面の導電層60は、生体との接触部において生体と安定して接触できるので、導電層60と頭皮との導通を安定して維持することができる。したがって、生体情報測定用電極30Aによれば、上述の第4の実施形態に係る生体情報測定用電極30Aと同様、電極脚312Aの先端部312aと頭皮との電気的接続を維持できるため、頭皮からの電気信号を安定して得ることができ、生体情報として脳波を安定して測定することができる。
生体情報測定用電極30Cは、先端部312aの表面に導電層60を有することで、上述の第4の実施形態に係る生体情報測定用電極30Aと同様、先端部312aが頭皮と直接接触している場合よりも、頭皮と生体情報測定用電極30Cとの間の接触インピーダンスを下げることができる。
また、導電層60の表面に水分を含む溶液を付けた場合、生体との接触インピーダンスをより下げることができるので、頭皮からの電気信号が取得し易くなる。そのため、脳波をより安定して測定することができる。
生体情報測定用電極30Cは、導電層60にファイバを含むことで、上述の第1の実施形態に係る導電材10と同様、導電性高分子のみで構成されている導電層に比べて、単位厚み当たりの導電性高分子の量を減らすことができるため、単位層当たりに必要な費用を低減することができる。そのため、生体情報測定用電極30Cの製造費用を抑えることができる。
また、金属により形成されている生体情報測定用電極は、金属アレルギーを持つ被験者には用いることはできない。本実施形態では、生体情報測定用電極30Cは、導電層60を、導電性高分子を含んで形成しているため、導電層60が頭皮に接触しても使用者に金属アレルギーを生じさせることはなく、安全である。よって、生体情報測定用電極30Cは、上述の第1の実施形態に係る導電材10と同様、全ての被験者に安心して使用することができる。
生体情報測定用電極30Cは、導電層60含まれるファイバがナノファイバである場合、ナノファイバはファイバよりも導電層60中によりいっそう均一に分散させることができるため、導電層60の強度をより高くすることができる。そのため、導電層60の耐摩耗性をより向上させることができる。
生体情報測定用電極30Cは、導電層60に含まれるファイバがセルロースナノファイバである場合、導電層60はアルコールに対して高い耐性を有するため、導電層60をアルコール洗浄することができる。
[第6の実施形態に係る生体情報測定用電極の変形例]
生体情報測定用電極30Cの一例を示したが、これに限定されない。以下に、生体情報測定用電極30Cの変形例について説明する。
本実施形態では、導電層60は、領域Aである電極脚312Aの先端部312aに形成されているが、少なくとも先端部312aに形成されていればよく、基体部31の他の部分に形成されていてもよいし、基体部31および端子部33の全面に形成されてもいてもよい。例えば、基体部31および端子部33が絶縁材料で形成されている場合には、基体部31と端子部33の全面に形成する。
この場合、図47に示すように、基体部31と端子部33の全面に、導電層60と電気的に接続された下地導電層61を形成することが好ましい。これにより、先端部312aと端子部33との間の導通を取ることができる。導電性高分子は、導電層60と同様の導電性高分子が使用されるため、導電性高分子の説明は省略する。下地導電層61の厚さは、導通が取れればよく、例えば、200nm〜2μm程度であればよい。
<第6の実施形態に係る生体情報測定用電極の製造方法>
次に、第6の実施形態に係る生体情報測定用電極の製造方法について説明する。図48は、本実施形態に係る生体情報測定用電極の製造方法を示すフローチャートである。
本実施形態に係る生体情報測定用電極の製造方法は、図48に示すように、基体部31および端子部33を成形する成形工程(ステップS71)と、先端部312aの表面を活性化処理する表面処理工程(ステップS72)と、先端部312aの表面に、導電性高分子を含有する導電層60を形成する導電層形成工程(ステップS73)とを含む。以下、各工程について説明する。
まず、成形工程(ステップS71)では、基体部31および端子部33を形成する材料を用いて、基体部31および端子部33を一体に成形する。
基体部31および端子部33は、図32に示す、上述の第4の実施形態に係る生体情報測定用電極の製造方法の成形工程(ステップS41A)と同様に行うことができる。
次に、表面処理工程(ステップS72)は、図22に示す、上述の第3の実施形態に係る生体情報測定用電極の製造方法の表面処理工程(ステップS32)と同様に行うことができる。
導電層形成工程(ステップS73)では、先端部312aの表面に、導電性高分子を含有した合成樹脂のマトリックス中にファイバが分散した状態で含まれる導電層60を形成する。導電層形成工程(ステップS73)は、塗布工程(ステップS731)と、乾燥工程(ステップS732)とを含む。
導電層形成工程(ステップS73)の塗布工程(ステップS731)は、図32に示す、上述の第4の実施形態に係る生体情報測定用電極の製造方法の塗布工程(ステップS431)と同様に行うことができる。
導電層形成工程(ステップS73)の乾燥工程(ステップS732)は、図32に示す、上述の第4の実施形態に係る生体情報測定用電極の製造方法の固化工程(ステップS432)と同様に行うことができる。
このように、先端部312aの表面に導電層60が形成されることで、生体情報測定用電極30Cが得られる。導電層60は高い耐磨耗性を有するので、生体情報測定用電極30Cを繰り返し使用したり洗浄して、先端部312aの表面の導電層60を擦っても、先端部312aの表面の導電層60が削られるのを抑制することができる。よって、導電層60と頭皮との接触部において頭皮との導通を安定して維持することができるので、頭皮からの電気信号を安定して得ることができる。
また、導電層形成工程(ステップS73)の塗布工程(ステップS731)において、混合溶液を先端部312aに1回塗布した時に形成される塗布層の膜厚は、導電性高分子のみを含む溶液を1回塗布した時に形成される塗布層の膜厚よりも厚くすることができる。導電層60の所望の厚さは、混合溶液の少ない塗布回数で得られるため、塗布工程(ステップS731)で要する費用を低減することができる。また、導電層60の厚さを厚くすることで、生体情報測定用電極30Cの使用や洗浄時に導電層60の表面が擦られて磨耗しても、導電層60がすり減って先端部312aの表面から剥がれてしまうまでの時間を遅らせることができる。この結果、導電層60の寿命をより伸ばすことができる。
導電層60に含まれるファイバがセルロースナノファイバである場合、セルロースナノファイバと導電性高分子とを含む混合溶液は、基体部31および端子部33への濡れ性が良く、高いチクソ性を有する。そのため、セルロースナノファイバと導電性高分子とを含む混合溶液を用いて導電層60を形成する場合、前記混合溶液を先端部312aに一回塗布した時に形成される塗布層の厚みをより厚くすることができる。前記混合溶液の1回の塗布で形成される塗布層の膜厚は、セルロースナノファイバを含まない溶液を塗布して形成される塗布層の膜厚よりも、例えば、1.3〜4倍くらい厚くすることができる。
[第6の実施形態に係る生体情報測定用電極の製造方法の変形例]
一実施形態に係る生体情報測定用電極の製造方法の一例を示したが、これに限定されない。以下に、生体情報測定用電極の製造方法における変形例について説明する。
本実施形態では、成形工程(ステップS71)において、基体部31および端子部33を同時に形成しているが、基体部31および端子部33を、それぞれ、別々に成形して一体化させてもよい。
この場合、本実施形態に係る生体情報測定用電極の変形例の製造方法は、図49に示すように、成形工程(ステップS71)を、基体部31および端子部33を準備する準備工程(ステップS711)と、基体部31および端子部33を結着して一体化する結着工程(ステップS712)とで構成する。そして、本実施形態と同様に、先端部312aの表面を活性化処理する表面処理工程(ステップS72)と、先端部312aの表面に、導電性高分子とファイバを含有する導電層60を形成する導電層形成工程(ステップS73)とを行う。
上述の成形工程(ステップS71)の結着工程(ステップS712)においては、基体部31と端子部33とを結着部材を用いて一体化する。この結着するために使用する結着部材は、公知の結着部材を用いることができる。例えば、エポキシ樹脂、またはウレタン樹脂などの合成樹脂、ゴムなどの弾性を有した合成樹脂などを用いることができる。
また、本実施形態では、導電層形成工程(ステップS73)において、基体部31の先端部312aにのみ導電層60を形成しているが、導電層60は少なくとも先端部312aに形成されていればよく、導電層60は、基体部31の先端部312a以外の部分、または基体部31および端子部33の全体に形成してもよい。
また、本実施形態では、基体部31および端子部33が導電性エラストマーで形成されているため、導電層60は、少なくとも先端部312aの表面に形成すればよい。基体部31および端子部33が絶縁材料で形成されている場合には、導電層60は、基体部31および端子部33の全面に形成する。これにより、頭皮から得られる電気信号は、導電層60を介して、電極脚312Aの先端部312aから端子部33まで伝えられる。
また、基体部31および端子部33が絶縁材料で形成される場合には、図47に示すように、基体部31および端子部33と導電層60との間に、下地導電層61を形成することが好ましい。
この場合、本実施形態に係る生体情報測定用電極の変形例の製造方法は、図50に示すように、基体部31および端子部33の表面に、導電性高分子を含有する下地導電層61を形成する。つまり、本実施形態に係る生体情報測定用電極の変形例の製造方法は、成形工程(ステップS71)と、表面処理工程(ステップS72)と、基体部31および端子部33の表面に、導電性高分子を含有する下地導電層61を形成する下地導電層形成工程(ステップS73)と、導電層形成工程(ステップS74)とを含む。導電層形成工程(ステップS74)は、上述の図48の導電層形成工程(ステップS73)と同様である。
下地導電層形成工程(ステップS73)では、基体部31および端子部33の表面に、導電性高分子を含む溶液を塗布して塗布層を形成する。下地導電層61を形成する方法は、導電層形成工程(ステップS74)と同様の形成方法を用いることができる。
[第7の実施形態]
<生体情報測定用電極>
第7の実施形態に係る生体情報測定用電極について、図面を参照して説明する。本実施形態に係る生体情報測定用電極は、図44〜図46に示す第6の実施形態に係る生体情報測定用電極30Cの基体部31の電極脚312Aとして、図37〜図40に示す第5の実施形態に係る電極脚312Bを用いたものである。
図51は、第7の実施形態に係る生体情報測定用電極の外観を示す斜視図であり、図52および図53は、第7の実施形態に係る生体情報測定用電極の外観を示す他の斜視図であり、図54は、図51のIII−III断面図である。
図51〜図54に示すように、第7の実施形態に係る生体情報測定用電極30Dは、図44に示す生体情報測定用電極30Cの基体部31の電極脚312Aに代えて、図37〜図40に示す第6の実施形態に係る電極脚312Bを備えたものである。
電極脚312Bは、図51に示すように、領域Aである先端部312aに設けられる溝部(先端溝部)24Aと、先端部312a以外の部分である電極脚312Aの側面312bに設けられる補助溝部(側面溝部)25とを有する。導電層60は、図52に示すように、先端部312aの表面に形成されているため、先端溝部24Aの表面にも形成されている(図16参照)。電極脚312Bは、先端溝部24Aおよび側面溝部25を備えることで、先端溝部24Aおよび側面溝部25内に水分を含む液体を保持することができる。
生体情報測定用電極30Dを用いて被験者の脳波を測定する場合、上述の第4の実施形態において図28を用いて説明したように、生体情報測定用電極30Dを備えた検査装置40(図28参照)を用いることで、被験者の脳波を測定できる。
以上のように構成された、生体情報測定用電極30Dは、領域Aである先端部312aの表面に複数の先端溝部24Aを有すると共に、先端部312aの表面に導電層60を有する。生体情報測定用電極30Dを繰り返し長期間使用することにより、例えば、図17に示すように、先端部312aの表面の導電層60の一部が徐々に擦り減り、先端部312aが部分的に露出する状態になるまで導電層60の一部が剥がれてしまう可能性がある。このような場合でも、生体情報測定用電極30Dでは、先端溝部24Aの表面に形成された導電層60は残っている。そのため、導電層60の導通が、先端溝部24Aの表面に形成された導電層60と頭皮との接触部において維持できるため、導電層60と頭皮との導通を安定して維持することができる。よって、生体情報測定用電極30Dによれば、上述の第4の実施形態に係る生体情報測定用電極30Aと同様、電極脚312Bの先端部312aと頭皮との電気的接続を維持できるため、頭皮からの電気信号を安定して得ることができ、生体情報として脳波を安定して測定することができる。
また、生体情報測定用電極30Dを液体に浸漬すると、上述の第5の実施形態に係る生体情報測定用電極30Bと同様、領域Aである先端部312aの表面に設けた先端溝部24A内に毛細管現象により水を保持することができる。そのため、脳波を測定する際に、先端部312aを頭皮に接触させると、図18に示すように、先端溝部24Aで保持されていた水が先端部312aと接触する頭皮の表面に流れて頭皮に広がる。この結果、頭皮から導電層60に導通する面積が大きくなるため、頭皮と生体情報測定用電極30Dとの間の接触インピーダンスをより下げることができる。これにより、脳波をより安定して測定することができる。
さらに、生体情報測定用電極30Dは、電極脚312Bの側面に側面溝部25を複数有しており、側面溝部25は先端溝部24Aの少なくとも一部と連通している。そのため、上述の第5の実施形態に係る生体情報測定用電極30Bと同様、脳波の測定時に、先端溝部24Aで保持されていた水が先端部312aと接触する頭皮の表面に流れ、先端溝部24Aで保持されていた水が消費される。その際、側面溝部25に保持されていた水が先端溝部24Aに流れて頭皮に供給される。これにより、頭皮と生体情報測定用電極30Dとの間の接触インピーダンスを低く抑えたまま、頭皮と生体情報測定用電極30Dとの接触を維持することができるため、生体情報をより安定して継続的に測定することができる。
<第7の実施形態に係る生体情報測定用電極の製造方法>
次に、第7の実施形態に係る生体情報測定用電極の製造方法について説明する。図55は、第7の実施形態に係る生体情報測定用電極の製造方法を示すフローチャートである。
本実施形態に係る生体情報測定用電極の製造方法は、図55に示すように、基体部31および端子部33を成形すると共に、領域Aである先端部312aの表面に複数の先端溝部24Aを形成し、側面312bに側面溝部25を形成する成形工程(ステップS81)と、先端部312aの表面を活性化処理する表面処理工程(ステップS82)と、先端部312aの表面に、導電性高分子を含有する導電層60を形成する導電層形成工程(ステップS83)とを含む。以下、各工程について説明する。
まず、成形工程(ステップS81)では、基体部31および端子部33を形成する材料を用いて、基体部31および端子部33を一体に成形すると共に、領域Aである先端部312aの表面に複数の先端溝部24Aを形成し、側面312bに側面溝部25を形成する。
基体部31および端子部33は、図48に示す第6の実施形態に係る生体情報測定用電極の製造方法における成形工程(ステップS71)と同様、公知の成形方法を用いて成形することができる。これらの成形法を用いる際、基体部31および端子部33の形状に対応した金型が用いられる。金型には、先端溝部24Aおよび側面溝部25に対応した突部を設ける。前記金型を用いることで、基体部31および端子部33を同時に成形すると共に、先端溝部24Aおよび側面溝部25を同時に形成することができる。
次に、表面処理工程(ステップS82)では、先端部312aの表面を活性化処理する。先端部312aの表面を活性化処理する方法は、図48に示す第6の実施形態に係る生体情報測定用電極の製造方法における表面処理工程(ステップS72)と同様の方法を用いることができるため、説明は省略する。
最後に、導電層形成工程(ステップS83)では、先端部312aの表面に導電層50を形成する。導電層50の形成方法は、図48に示す第6の実施形態に係る生体情報測定用電極の製造方法における導電層形成工程(ステップS73)と同様の方法を用いることができるため、説明は省略する。
このように、先端部312aの表面に導電層60が形成されることで、本実施形態に係る生体情報測定用電極30Dが得られる。先端部312aの表面には先端溝部24Aが形成され、側面312bに側面溝部25が形成されている。そのため、生体情報測定用電極30Dを繰り返し使用することで、先端部312aに設けた導電層60が長期間使用することで摩耗して削られても、先端溝部24Aの表面に設けられた導電層60は残っている。そのため、先端溝部24Aの表面に形成された導電層60と頭皮との接触部において頭皮との導通を維持することができるので、導電層60と頭皮との導通を安定して維持することができる。
[第7の実施形態に係る生体情報測定用電極の製造方法の変形例]
一実施形態に係る生体情報測定用電極の製造方法の一例を示したが、これに限定されない。以下に、生体情報測定用電極の製造方法における変形例のいくつかについて、図56を用いて説明する。
第7の実施形態では、成形工程(ステップS21)において、先端溝部24Aおよび側面溝部25に対応した突起を設けた金型を用いて、基体部31および端子部33を同時に形成しているが、これに限定されない。例えば、基体部31および端子部33を、それぞれ、別々に成形して一体化した後に、先端溝部24Aおよび側面溝部25を形成してもよい。
この場合、本実施形態に係る生体情報測定用電極の製造方法は、図56に示すように、成形工程(ステップS81)を、基体部31および端子部33を準備する準備工程(ステップS811)と、基体部31および端子部33を結着して一体化する結着工程(ステップS812)と、先端部312aの表面に複数の先端溝部24Aおよび側面溝部25を形成する溝部形成工程(ステップS813)とで構成する。そして、第7の実施形態と同様に、先端部312aの表面を活性化処理する表面処理工程(ステップS82)と、先端部312aの表面に、導電性高分子を含有する導電層60を形成する導電層形成工程(ステップS83)とを行う。
上述の成形工程(ステップS81)の基体部31と端子部33とを結着部材を用いて一体化する。この結着するために使用する結着部材は、公知の結着部材を用いることができる。例えば、エポキシ樹脂、またはウレタン樹脂などの合成樹脂、ゴムなどの弾性を有した合成樹脂などを用いることができる。
以上のように、上記第6および第7の実施形態に係る生体情報測定用電極30Cおよび30Dは、頭皮との電気的接続を維持し、頭皮から得られる生体情報(脳波)を安定して測定することができる。そのため、生体情報測定用電極30Cおよび30Dは、脳波以外に、例えば、脈波、心電、筋電、体脂肪など様々な生体の情報を皮膚に接触させて測定する生体情報測定用電極として好適に用いることができる。また、生体とは、人体、又は人体以外の生物等を含むが、上記の各実施形態に係る生体情報測定用電極は、人体用として特に好適に用いることができる。
上記の通り、導電材料は、第1の実施形態では導電材10(図1等参照)として用いられ、第2〜第7の実施形態では導電層22(図6等参照)又は導電層60(図44参照)として用いられている。上記のそれぞれの実施形態のうち、第1の実施形態では、導電材10(図1等参照)が、ファイバと、ファイバ同士を結着する導電性高分子を有するバインダと、を含んで形成され、多数の細孔を有するものである。この導電材10(図1参照)は、第2〜第5の実施形態では電極脚20Aおよび20B(図6および図13等参照)または生体情報測定用電極30Aおよび30B(図25および図37等参照)の導電層22(図6等参照)としてそれぞれ用いられるものである。第6及び第7の実施形態では、導電層60(図44参照)が、生体情報測定用電極30Cおよび30D(図44および図51等参照)の領域Aの表面に、導電性高分子を含有した合成樹脂のマトリックス中にファイバが分散して含まれているものである。
具体的には、上記の、第1の実施形態に係る導電材は、生体と接触可能な領域を有する生体情報測定用電極の、少なくとも前記領域の表面に設けられる導電材であって、
ファイバと、前記ファイバ同士を結着する導電性高分子を有するバインダ樹脂と、を含んで形成されており、多数の細孔を有する。
上記の、第6及び第7の実施形態に係る生体情報測定用電極は、生体と接触可能な領域を有する生体情報測定用電極であって、
前記領域の表面には、導電性高分子を含有した合成樹脂のマトリックス中にファイバが分散して含まれている導電層が形成されている。
上記の、第1の実施形態に係る導電材の製造方法は、生体と接触可能な領域を有する生体情報測定用電極の、少なくとも前記領域の表面に設けられる導電材の製造方法であって、
ファイバと、該ファイバ同士を結着する導電性高分子と、前記ファイバが分散する溶媒とを含む混合溶液を作製する混合工程と、
該混合溶液を凍結乾燥して、多数の細孔を有する多孔質体を作製する固化工程と、
を含む。
上記の、導電材の製造方法は、前記混合工程では、前記混合溶液に前記ファイバ同士を結着するバインダ樹脂を混合し、
前記バインダ樹脂を含む前記混合溶液を冷結乾燥して得られた多孔質体中の該バインダ樹脂を硬化させる硬化工程を含む。
上記の、導電材の製造方法は、前記溶媒が水を含む水分であり、
前記固化工程は、前記混合溶液の中に含まれる水分を冷結させる冷結工程と、
冷結させた水分を真空下で昇華させる脱水工程と、
を含む。
上記の、第2の実施形態に係る電極脚の製造方法は、少なくとも、生体と接触可能な前記領域を有する電極脚の製造法であって、
導電性を有する電極基体を作製する脚基体作製工程と、
該電極基体の前記領域に、上記の、いずれかに記載の導電材の製造方法を用いて得られた該導電材からなる導電層を形成する導電層形成工程と、
を含む。
上記の、第3の実施形態に係る電極脚の製造方法は、少なくとも、生体と接触可能な領域を有する電極脚の製造法であって、
導電性を有する電極基体を作製する脚基体作製工程と、
該電極基体の前記領域に導電層を形成する導電層形成工程とを含み、
前記導電層形成工程は、
ファイバと、該ファイバ同士を結着する導電性高分子と、前記ファイバが分散する溶媒とが混合した混合溶液を少なくとも前記領域に塗布して塗布層を形成する塗布工程と、
該塗布層を凍結乾燥して、多数の細孔を有する多孔質体を作製する固化工程と、
を含む。
上記の、第2又は第3の実施形態に係る電極脚の製造方法では、前記脚基体作製工程は、前記領域の表面に複数の溝部を形成する。
上記の、第2又は第3の実施形態に係る電極脚の製造方法では、前記脚基体作製工程は、前記領域以外の部分の表面に複数の補助溝部を形成し、
該補助溝部が前記溝部の少なくとも一部と連通している。
上記の、第4又は第5の実施形態に係る生体情報測定用電極の製造方法は、生体と接触可能な領域を有する生体情報測定用電極の製造方法であって、
少なくとも前記領域を一方側に有する電極脚と該電極脚の他方側に設けられた基部とを備えた基体部と、
前記電極脚に対して電気的に接続された端子部と、を有し、
前記電極脚および前記基部を一体的に形成する成形工程と、
前記電極脚の前記領域に導電層を形成する導電層形成工程とを含み、
前記導電層形成工程は、
ファイバと、該ファイバ同士を結着する導電性高分子と、前記ファイバが分散する溶媒とが混合した混合溶液を少なくとも前記領域に塗布して塗布層を形成する塗布工程と、
該塗布層を凍結乾燥して、多数の細孔を有する多孔質体を作製する固化工程と、
を含む。
上記の、第4又は第5の他の実施形態に係る生体情報測定用電極の製造方法は、生体と接触可能な前記領域を有する生体情報測定用電極の製造方法であって、
上記の、のいずれかに記載の電極脚の製造方法を用いて得られた前記電極脚と該電極脚の他方側に設けられた基部とを備えた基体部と、
前記電極脚に対して電気的に接続された端子部と、を有し、
前記電極脚を前記基部に連結する連結工程を含む。
上記の、第4又は第5の実施形態に係る生体情報測定用電極の製造方法は、前記基体部の表面に前記導電層と電気的に接続された下地導電層を形成する下地導電層形成工程を含む。
上記の、第6又は第7の実施形態に係る生体情報測定用電極の製造方法は、生体と接触可能な領域を有する生体情報測定用電極の製造方法であって、
前記領域を備えた基体部を成形する成形工程と、
少なくとも前記領域の表面に、導電性高分子を含有した合成樹脂のマトリックス中にファイバが分散して含まれている導電層を形成する導電層形成工程を含む。
上記の、第6又は第7の実施形態に係る生体情報測定用電極の製造方法は、前記基体部を成形した後、少なくとも前記領域の表面を活性化処理する表面処理工程をさらに含み、
前記表面処理工程が、少なくとも前記領域の表面をArと酸素とを含む混合ガス中でプラズマ処理する工程、または少なくとも前記領域の表面にエキシマUV光を照射する工程である。
上記の、第6又は第7の実施形態に係る生体情報測定用電極の製造方法では、前記導電層形成工程が、
少なくとも前記領域に、前記導電性高分子および前記ファイバを含む混合溶液を塗布して塗布層を形成する塗布工程と、
前記塗布層が形成された前記領域を乾燥して、前記塗布層を硬化させる乾燥工程と、
を含む。
以下、実施例および比較例を示して実施形態を更に具体的に説明するが、実施形態はこれらの実施例により限定されるものではない。
<実施例1>
(生体情報測定用電極の作製)
基体部および端子部を樹脂材料(熱可塑性ポリエステルエラストマー,商品名:ハイトレル(登録商標)、東レ・デュポン社製)を用いて、射出成形法により、一体形成した後、電極脚の先端部に、導電性高分子(PEDOT/PSS、信越ポリマー社製)を含有した溶液(A)/6gとセルロースナノファイバ1(nanoforest(登録商標)、中越パルプ工業株式会社製)を含有した溶液(B)/4gとを混合した溶液を塗布して塗布層を形成した後、塗布層を乾燥して硬化させ、導電層を形成した。これにより、生体情報測定用電極を作製した。なお、溶液(A)には、導電性高分子が1.0質量%(wt%)、熱硬化性樹脂が5.0wt%含まれている。また、溶液(B)には、セルロースナノファイバ1が1.3wt%含まれている。
(耐摩耗性の評価)
生体情報測定用電極の電極脚の先端部を電解液(0.1MのNaCl水溶液)に浸漬した状態で、先端部のインピーダンスを測定し、生体情報測定用電極の測定精度を評価した。電極脚の先端部をアルコールを付けたキムワイプで拭いた後、先端部を電解液(0.1MのNaCl水溶液)に浸漬して、先端部のインピーダンスを測定した。周波数は1Hz〜1000Hzとした。このサイクルを1回(サイクル)として、100000サイクル行った。先端部のインピーダンスが低いほど、生体から得られる電気信号を高感度で検出することができるため、生体情報測定用電極の測定精度が高いことを示す。測定結果を図57に示す。
図57に示すように、先端部のインピーダンスの測定を100000サイクル繰り返しても、先端部のインピーダンスは、周波数が5Hz以上で、100Ω以下であり、殆ど変化しなかった。
よって、先端部の表面に、セルロースナノファイバを所定量含む導電層を形成すれば、導電層の耐摩耗性が向上するためで、インピーダンスは殆ど変化せず、脳波を安定して測定することができることが確認された。
<実施例2>
(生体情報測定用電極の作製)
[実施例2−1]
実施例1と同様な条件の生体情報測定用電極を作製した。
[実施例2−2]
実施例2−1において、導電性高分子(PEDOT/PSS、信越ポリマー社製)を含有した溶液(A)の添加量を3gとし、セルロースナノファイバ1(nanoforest(登録商標)、中越パルプ工業株式会社製)を含有した溶液(B)の添加量を7gに変更したこと以外は、実施例2−1と同様にして、電極脚の先端部に導電層を形成し、生体情報測定用電極を作製した。
[実施例2−3]
実施例2−1において、導電性高分子(PEDOT/PSS、信越ポリマー社製)を含有した溶液(A)の添加量を4gとし、セルロースナノファイバ1(nanoforest(登録商標)、中越パルプ工業株式会社製)を含有した溶液(B)の添加量を6gとし、セルロースナノファイバ2(cellenpia(登録商標)、日本製紙株式会社製)を含有した溶液(C)の添加量を1gに変更したこと以外は、実施例2−1と同様にして、電極脚の先端部に導電層を形成し、生体情報測定用電極を作製した。なお、溶液(C)には、セルロースナノファイバ2が1.2wt%含まれている。
[比較例2−1]
実施例2−1において、セルロースナノファイバ1(nanoforest(登録商標)、中越パルプ工業株式会社製)を含有した溶液(B)を添加せずに、導電性高分子(PEDOT/PSS、信越ポリマー社製)を含有した溶液(A)のみ(添加量10g)を含む溶液を用いたこと以外は、実施例2−1と同様にして、電極脚の先端部に導電層を形成し、生体情報測定用電極を作製した。
[比較例2−2]
実施例2−1において、導電性高分子(PEDOT/PSS、信越ポリマー社製)を含有した溶液(A)の添加量を10gとし、セルロースナノファイバ2(cellenpia(登録商標)、日本製紙株式会社製)を含有した溶液(C)の添加量を1gに変更したこと以外は、実施例2−1と同様にして、電極脚の先端部に導電層を形成し、生体情報測定用電極を作製した。
[比較例2−3]
実施例2−1において、導電性高分子(PEDOT/PSS、信越ポリマー社製)を含有した溶液(A)の添加量を1gとし、セルロースナノファイバ1(nanoforest(登録商標)、中越パルプ工業株式会社製)を含有した溶液(B)の添加量を9gに変更したこと以外は、実施例3−1と同様にして、電極脚の先端部に導電層を形成し、生体情報測定用電極を作製した。
(生体との接触性の評価)
生体情報測定用電極の皮膚(額)との接触性の評価は、インピーダンスを測定することによって行った。
接触の安定性の評価として、生体情報測定用電極の電極脚の先端部を電解液(0.1MのNaCl水溶液)に浸漬して、電解液中における先端部のインピーダンスを測定し、生体情報測定用電極の測定精度を評価した。測定の周波数は0.5Hz〜1000Hzとした。その測定結果を図58に示す。図58は、横軸が測定周波数(Hz)、縦軸がインピーダンス(Ω)で、実施例2−1〜実施例2−3、および比較例2−1〜比較例2−3の測定結果を示している。
先端部のインピーダンスが低いほど、生体から得られる電気信号を高感度で検出することができるため、生体情報測定用電極の測定精度が高いことを示す。また、周波数が低い側でインピーダンスがより低ければ、一般的に測定に用いられる周波数(10Hz〜30Hz)において、安定して精度良く測定することができる。
(生体との接触性の評価結果)
図58に示すように、実施例2−1〜実施例2−3の生体情報測定用電極は、ファイバを含有しない比較例2−1およびファイバが極めて少ない比較例2−2の生体情報測定用電極と、同等のインピーダンスが得られた。特に、実施例2−1の生体情報測定用電極は、比較例2−1および比較例2−2の生体情報測定用電極のインピーダンスと変わらない値が得られた。一方、ファイバを多く含む比較例2−3の生体情報測定用電極は、導電層自体の導電率が低くなりすぎて、インピーダンスの値が高くなり、測定に不向きであると云える。
よって、先端部の表面に導電層にセルロースナノファイバを所定量含んで形成しても、生体情報測定用電極のインピーダンスが小さくなるので、脳波を安定して測定することができることが確認された。
以上の通り、実施形態を説明したが、上記の各実施形態は、例として提示したものであり、上記実施形態により本発明が限定されるものではない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の組み合わせ、省略、置き換え、変更などを行うことが可能である。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
本出願は、2017年12月27日に日本国特許庁に出願した特願2017−252508号および2017年12月27日に日本国特許庁に出願した特願2017−252509号に基づく優先権を主張するものであり、特願2017−252508号および特願2017−252509号の全内容を本出願に援用する。