JPWO2019004054A1 - 低カロリー化飲料およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

本発明は、飲料本来のコクや濃厚感を有する低カロリー化果汁飲料、野菜汁飲料およびミックスジュースと、その製造方法の提供を目的とする。本発明によれば、糖類濃度およびBrix値が所定の数式を満たすことを特徴とする、果汁飲料、野菜汁飲料およびミックスジュース飲料が提供される。本発明によればまた、果汁、野菜汁またはミックスジュースを、スクロースを基質とする糖転移酵素で酵素処理し、該酵素処理と同時におよび/または該酵素処理の後に、膜濾過処理に付す工程を含んでなる、低カロリー化果汁飲料、野菜汁飲料またはミックスジュース飲料の製造方法が提供される。

Description

関連出願の参照
本願は、先行する日本国出願である特願2017−129398(出願日:2017年6月30日)の優先権の利益を享受するものであり、その開示内容全体は引用することにより本明細書の一部とされる。
本発明は、低カロリー化処理された果汁飲料、野菜汁飲料およびミックスジュース飲料並びにそれらの製造方法に関する。
近年の健康志向の高まりに伴って飲食品摂取の際の糖質摂取量の低減が望まれており、糖質摂取量の削減は今後の社会課題ともいわれている。果汁飲料や野菜汁飲料は手軽に果実や野菜を摂取できるため、健康維持を目的として消費者に広く親しまれているが、これらの飲料には果実や野菜由来の糖質が含まれていることから、糖質摂取量の低減の観点からはできる限り糖質含量を低減することが望ましいといえる。
果汁飲料に関してはこれまでに、果汁を膜処理することにより果汁から単糖や二糖を除去し、低カロリー化する技術が提案されている(特許文献1および2)。また、野菜汁飲料に関しては、糖質含量の少ない野菜を原料として使用すると味わいが淡白になるという問題があるが、このような問題を解決するために、低糖質野菜飲料の味わいを濃厚にする技術が提案されている(特許文献3)。
特表2010−520743号公報 国際公開第2006/004106号 特開2015−223167号公報
しかしながら、上記の果汁を膜処理する技術については、糖類除去の際に果汁のコクや濃厚感も失われてしまうという問題があった。また、上記の低糖質野菜飲料については、糖質含量の少ない野菜を原料とするため使用する野菜に制限があった。
本発明者らは、上記問題に鑑みて鋭意検討を行ったところ、ペクチナーゼ活性を実質的に有さないフラクトシルトランスフェラーゼ粗酵素剤をオレンジ果汁に作用させ、オレンジ果汁に含まれるスクロースからフラクトオリゴ糖を生成させるとともに、得られた酵素処理サンプルをさらに膜濾過処理に付すことにより、オレンジ果汁本来のコクや濃厚感を維持したまま低カロリー化を図ることができることを見出した。本発明者らはまた、他の果汁や野菜汁についても同様の結果が得られることを確認した。本発明はこれらの知見に基づくものである。
本発明は、飲料本来のコクや濃厚感を有する低カロリー化果汁飲料、野菜汁飲料およびミックスジュース飲料と、その製造方法を提供することを目的とする。
本発明によれば以下の発明が提供される。
[1]下記(A)、(B)および(C)から選択される飲料またはそれらの一部若しくは全部からなるミックスジュース飲料(以下、「本発明の果汁飲料、野菜汁飲料およびミックスジュース飲料」あるいは「本発明の飲料」ということがある):
(A)糖類濃度X(g/100mL)およびBrix値Yが下記式(1)および(2)を満たす、オレンジ果汁飲料
1.232X+0.120<Y≦1.313X+2.141・・・(1)
0<Y<11・・・(2)
(B)糖類濃度X(g/100mL)およびBrix値Yが下記式(3)および(4)を満たす、パイナップル果汁飲料
1.106X+0.162<Y≦1.153X+2.264・・・(3)
0<Y<11・・・(4)
(C)糖類濃度X(g/100mL)およびBrix値Yが下記式(5)および(6)を満たす、ニンジン野菜汁飲料
1.170X+1.093<Y≦2.1326X+1.8611・・・(5)
0<Y<6・・・(6)。
[2]フラクトオリゴ糖を1g/100mL以上含有する、上記[1]に記載の飲料。
[3]フラクトオリゴ糖が原料として添加されていない、上記[1]または[2]に記載の飲料。
[4]混濁状態の飲料である、上記[1]〜[3]のいずれかに記載の飲料。
[5]上記[1]〜[4]のいずれかに記載の飲料の濃縮物または希釈物。
[6]容器詰め形態である、上記[1]〜[5]のいずれかに記載の飲料またはその濃縮物若しくは希釈物。
[7]果汁、野菜汁またはミックスジュースを、スクロースを基質とする糖転移酵素で酵素処理し、該酵素処理と同時におよび/または該酵素処理の後に、膜濾過処理に付す工程を含んでなる、果汁飲料、野菜汁飲料またはミックスジュース飲料の製造方法。
[8]スクロースを基質とする糖転移酵素がフラクトシルトランスフェラーゼである、上記[7]に記載の製造方法。
[9]果汁、野菜汁またはミックスジュースの酵素処理が、果汁、野菜汁またはミックスジュースに含まれるスクロースからフラクトシルトランスフェラーゼによりフラクトオリゴ糖を生成することによる低カロリー化処理である、上記[8]に記載の製造方法。
[10]果汁、野菜汁またはミックスジュースが、オレンジ果汁、パイナップル果汁およびニンジン汁からなる群から選択される1種または2種以上の果汁および/または野菜汁を含む、上記[7]〜[9]のいずれかに記載の製造方法。
本発明によれば、果汁飲料、野菜汁飲料およびミックスジュース飲料の本来のコクや濃厚感を失うことなく、これら飲料において低カロリー化を図ることができる点で有利である。
発明の具体的説明
<<本発明の飲料>>
本発明の果汁飲料および野菜汁飲料は糖類濃度およびBrix値が所定の数式を満たすことを特徴とする。本発明のミックスジュース飲料は本発明の果汁飲料および野菜汁飲料からなる群から選択される2種以上から構成されるものである。果汁飲料がオレンジ果汁飲料であるときは、当該飲料の糖類濃度およびBrix値は前記式(1)および(2)を満たす。果汁飲料がパイナップル果汁飲料であるときは、当該飲料の糖類濃度およびBrix値は前記式(3)および(4)を満たす。野菜汁飲料がニンジン汁飲料であるときは、当該飲料の糖類濃度およびBrix値は前記式(5)および(6)を満たす。なお、以後の記載において、前記式(1)〜(6)を「本発明の数式」ということがある。
前記式(1)の右側の不等式は、後記例1のサンプル番号1およびサンプル番号3の糖類濃度およびBrix値から導きだされるものであり、前記式(1)の左側の不等式は、後記例1のサンプル番号2およびサンプル番号4の糖類濃度およびBrix値から導きだされるものである。前記式(3)の右側の不等式は、後記例2のサンプル番号5およびサンプル番号7の糖類濃度およびBrix値から導きだされるものであり、前記式(3)の左側の不等式は、後記例2のサンプル番号6およびサンプル番号8の糖類濃度およびBrix値から導きだされるものである。前記式(5)の右側の不等式は、後記例3のサンプル番号9およびサンプル11の糖類濃度およびBrix値から導きだされるものであり、前記式(5)の左側の不等式は、後記例3のサンプル番号10およびニンジン汁原液の糖類濃度およびBrix値から導きだされるものである。
本発明において「糖類」とは、単糖および二糖の糖質を意味し、例えば、グルコース、フラクトース、ガラクトース、スクロース、マルトース、ラクトースが挙げられる。糖類濃度は、高速液体クロマトグラフィー法(HPLC法)により測定することができる。
本発明において「Brix値」(本明細書中、単に「Brix」ということがある)とは、溶液中に含まれる可溶性固形分(例えば、糖、タンパク質、ペプチド等)の総濃度を表す指標であり、20℃で測定された当該溶液の屈折率を、ICUMSA(国際砂糖分析法統一委員会)の換算表を使用して、純ショ糖溶液の質量/質量%に換算した値である。20℃における屈折率の測定は、アタゴ社製糖度計などの市販の糖用屈折計を使用して行うことができる。
前記式(2)および(4)において、Brix値Yは、0<Y<11の範囲であり、好ましくは1<Y<11の範囲あるいは2<Y<11の範囲とすることができる。また、前記式(6)において、Brix値Yは、0<Y<6の範囲であり、好ましくは1<Y<6の範囲あるいは1.5<Y<6の範囲とすることができる。
本発明の飲料は、糖類濃度が低減されているため低カロリー化された飲料である。本発明において「低カロリー化飲料」とは、原料となる果汁および/または野菜汁と比べてカロリーが低減されている飲料を意味する。低カロリー化飲料としては、例えば、30kcal/100mL以下、25kcal/100mL以下または20kcal/100mL以下の飲料が挙げられる。飲料のカロリーは、アトウォーター係数に基づいて算出することができる。なお、低カロリー化は、後述するように、原料果汁または野菜汁の加工処理、すなわち、酵素処理および膜濾過処理により達成することができる。
本発明の飲料は、フラクトオリゴ糖を含有するものとすることができる。本発明において「フラクトオリゴ糖」とは、スクロースにフラクトースが1〜3分子結合したオリゴ糖であり、1−ケストース、ニストース、フラクトフラノシルニストースが含まれる。
本発明の飲料は、フラクトオリゴ糖を1g/100mL以上(例えば、1〜3g/100mL)含有するものとすることができ、好ましくは1.5g/100mL以上(例えば、1.5〜2.5g/100mL)含有するものである。フラクトオリゴ糖濃度は、高速液体クロマトグラフィー法(HPLC法)により測定することができる。
本発明の飲料に含まれるとされるフラクトオリゴ糖は、果汁、野菜汁またはミックスジュースにおいて、酵素処理によりスクロースをフラクトオリゴ糖へインサイチュ(in situ)変換した生成物である。すなわち、飲料中におけるフラクトオリゴ糖の生成は、後述するように、原料果汁または野菜汁の加工処理、すなわち、酵素処理により達成することができる。従って、本発明の飲料は、フラクトオリゴ糖が原料として添加されていないものとすることができる。
本発明の飲料は好ましい態様において、混濁状態の飲料である。混濁状態の飲料では、果汁または野菜汁が本来持つ混濁した色調と濃厚感が維持されるため好ましい。本発明の飲料の濁度は、例えば、200〜600とすることができ、好ましくは300〜500である。飲料の濁度は、市販の分光光度計によりOD650を測定した後、カオリン濁度標準液1000度(和光純薬工業社)の希釈液のOD測定から得られたOD-濁度補正式に基づき濁度に変換して求めることができる。なお、混濁状態の本発明の飲料は、後述するように、原料果汁または野菜汁の酵素処理においてペクチナーゼ活性を実質的に有さないフラクトシルトランスフェラーゼを使用することにより製造することができる。
本発明の飲料には通常の飲料の処方設計に用いられている飲料用添加剤を配合してもよい。このような添加剤としては、甘味料(高甘味度甘味料を含む)、酸味料、調味料、香辛料、香料、着色料、増粘剤、安定剤、乳化剤、栄養強化剤、pH調整剤、酸化防止剤、保存料などが挙げられる。上記飲料用添加剤は、後述する調合工程において他の原材料と混合することができる。
本発明の飲料は、前述の通り、その糖類濃度およびBrix値が所定の数式を満たすことを特徴とするものであるが、希釈すれば本発明の数式を満たすことになる飲料や、濃縮すれば本発明の数式を満たすことになる飲料も本発明の範囲内である。本発明においては、希釈すれば本発明の数式を満たすことになる飲料を「濃縮物」といい、濃縮すれば本発明の数式を満たすことになる飲料を「希釈物」という。すなわち、本発明において「濃縮物」とは、本発明の飲料との関係で水分量でのみ相違し、希釈すれば本発明の飲料となる物を意味し、本発明の飲料を濃縮して得られた物に限定されない。また、本発明において「希釈物」とは、本発明の飲料との関係で水分量でのみ相違し、濃縮すれば本発明の飲料となる物を意味し、本発明の飲料を希釈して得られた物に限定されない。
<<本発明の製造方法>>
本発明の飲料は、果汁、野菜汁またはミックスジュースを、スクロースを基質とする糖転移酵素で処理し、次いで、膜濾過処理に付すことにより製造することができる。
本発明の製造方法に用いられるスクロースを基質とする糖転移酵素としては、フラクトシルトランスフェラーゼ、デキストランスクラーゼ、レバンスクラーゼ、イヌロスクラーゼが挙げられ、これらの1種または2種以上を用いることができ、好ましくはフラクトシルトランスフェラーゼである。
本発明の製造方法に用いられるフラクトシルトランスフェラーゼは、スクロースからフラクトオリゴ糖を生成させる活性を有する酵素である。本発明においては市販のフラクトシルトランスフェラーゼを用いることができる。本発明においてはまた、フラクトシルトランスフェラーゼを生産する微生物を培養し、培養物から当該酵素を精製あるいは粗精製して得てもよい。
本発明においては、好ましくはペクチナーゼ活性を実質的に有さないフラクトシルトランスフェラーゼを用いることができる。ここで、「ペクチナーゼ活性を実質的に有さない」とは、果汁、野菜汁またはミックスジュースを処理した場合に顕著な清澄化作用または粘度低下作用を引き起こす活性を有さないことを指し、例えば、オレンジ果汁を用いた酵素処理試験を行った場合に、フラクトオリゴ糖を糖組成比10%以上生成し、かつ、処理後濁度が処理前に対して35%以上維持される場合にペクチナーゼ活性を実質的に有さないとする。
本発明の製造方法において、ペクチナーゼ活性を実質的に有さないフラクトシルトランスフェラーゼを酵素処理に用いた場合、製造された飲料はその濁度または粘度が高く維持されるという特徴を有する。酵素処理前の果汁、野菜汁またはミックスジュースの濁度に対する酵素処理後の濁度の比率、すなわち濁度維持率は、35%以上とすることができ、好ましくは50%以上、特に好ましくは70%以上である。
本発明においては、フラクトシルトランスフェラーゼは、好ましくは粗酵素剤の形態のものを用いることができる。ここで「粗酵素剤」とは、食品の工業生産用に販売される酵素剤で一般的に採用される、比較的安価且つ安全な試薬や濾過膜分離等の分離抽出手段により得られる酵素剤を意味し、液体クロマトグラフィー等による分画精製といった高度且つ高コストな分離精製手段を用いて調製された酵素剤は含まない。
本発明において、フラクトシルトランスフェラーゼによる酵素処理は、果汁、野菜汁またはミックスジュース中のスクロース1gあたり1U以上を目安に添加することができ、好ましくは5U/1gスクロース、特に好ましくは10U/1gスクロースである。酵素添加後、25℃で24時間を目安に反応させるが、温度と時間は果汁、野菜汁またはミックスジュースの種類や酵素添加量にあわせ適宜調整が可能であり、高温での長時間反応は糖の分解を招くことに留意する。ミックスジュースなどのように2種以上の果汁または野菜汁を用いる場合にはそれぞれを酵素処理したのちに混合する場合、それぞれを混合したのちにまとめて酵素処理する場合のいずれの方法も用いることができる。濃縮果汁、濃縮野菜汁または濃縮ミックスジュースを処理する場合には、濃縮前、濃縮中、濃縮後のいずれのタイミングで処理しても良い。
本発明において、膜濾過処理は、スクロースを基質とする糖転移酵素による酵素処理がなされた果汁、野菜汁またはミックスジュースに対して実施することができ、あるいはスクロースを基質とする糖転移酵素による酵素処理と同時に実施してもよい。使用できる濾過膜としては、例えば、ナノ濾過膜、透析膜、限外濾過膜、逆浸透膜が挙げられ、好ましくはナノ濾過膜である。本発明に使用する濾過膜は、三糖以上の糖質の透過率が単糖および二糖の透過率よりも低い膜を選択することができ、好ましくは、三糖以上の糖質の透過率が単糖および二糖の透過率よりも低く、透過率の差が10%以上ある膜を、より好ましくは、分画分子量が100〜1000Da程度の膜を選択することができる。
本発明の製造方法において、上記酵素処理および膜濾過処理以外は、果実飲料、野菜汁飲料およびミックスジュース飲料について公知の製造手順に従って実施することができる。すなわち、酵素処理の前に搾汁工程を実施し、果汁、野菜汁およびミックスジュースを準備することができる。原料として市販の濃縮液や野菜のペースト等を利用する場合には搾汁工程は省略することができる。また、酵素処理および膜濾過処理に付された果汁、野菜汁およびミックスジュースは調合工程において、添加剤などの他の原料を配合することができる。調合工程で得られた調合液は殺菌工程および充填工程を経て容器詰めすることができる。容器詰めされた本発明の飲料は必要に応じて密封工程と冷却工程に付することができる。
本発明の製造方法に用いられる果汁の原料としては、スクロースを含む果汁であれば特に制限はなく、オレンジ(みかんを含む)、パイナップル、グレープフルーツ、リンゴ、ブドウ、ピーチ、イチゴ、バナナ、マンゴー、メロン、アプリコットの果汁、その他果実飲料品質表示基準に記載されている果汁を挙げることができ、特に好ましい果汁の原料としては、オレンジ、パイナップルである。また、野菜汁の原料としては、スクロースを含む野菜汁であれば特に制限はなく、ニンジン、ホウレンソウ、玉ねぎ、トマト、セロリー、パプリカ、カボチャ、コーン等の野菜汁を挙げることができ、特に好ましい野菜汁の原料としては、ニンジンである。
本発明の製造方法に用いられる原料は、果汁または野菜汁それぞれのうち2種以上のミックスジュースとしてもよく、また、1種以上の果汁と1種以上の野菜汁が混合されたミックスジュースとしてもよい。もちろん、1種以上の果汁および1種以上の野菜汁それぞれについて本発明の加工処理を実施し、得られた低カロリー化果汁および低カロリー化野菜汁を混合して、低カロリー化ミックスジュース飲料を製造してもよい。
本発明の製造方法に用いられる原料は、ストレートまたは濃縮物のいずれを用いてもよい。目的とする飲料が低濃度の場合には、水または他の飲用可能な液体と混合した希釈果汁、希釈野菜汁または希釈ミックスジュースを原料として用いることもできる。
以下の例に基づき本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
糖類濃度、糖組成、全糖濃度およびBrixの測定
以下の例においてサンプル飲料中の糖類濃度および糖組成の分析は高速液体クロマトグラフィー法(HPLC法)に従って行った。具体的には以下のように測定した。
サンプル液を水で希釈し、糖が2%程度含まれる溶液とした。遠心上清をフィルター濾過することで夾雑物を除去し、濾液をアセトニトリルと混合し、50%アセトニトリル溶液とした。これを下記条件に従ってHPLC(日本分光社製)で分析することにより糖類濃度を算出した。糖類濃度は、HPLCで測定したグルコース、フラクトース、スクロース(ショ糖)およびイヌロビオースの合計値を算出することにより求めた。全糖濃度は、グルコース、フラクトース、スクロース(ショ糖)、イヌロビオース、ネオケストース、1−ケストースおよびニストースの合計値を算出することにより求めた。
<HPLC分析条件>
カラム:YMC-Pack Polyamine II(YMC社製)
移動相:67%(v/v)アセトニトリル溶液
カラム温度:30℃
流速:1.0mL/分
検出:示差屈折率検出器
Brixは、糖度計(Rx−5000α、アタゴ社製)を用いて測定した。
例1:酵素および膜処理がオレンジ果汁の糖組成および香味に与える影響
(1)サンプル飲料の調製
(ア)酵素処理
試験サンプル飲料については、Brix20に希釈したオレンジ果汁(Brix64.5、クトラーレ社、以下「オレンジ果汁原液」という)19000gに、フラクトシルトランスフェラーゼ(アスペルギルス(Aspergillus)属由来、スミチームFTF顆粒、新日本科学社製、以下同様)を100g当たり45単位となるように添加し、25℃で21時間振とうせずに糖転移反応を行った(酵素処理オレンジ果汁)。使用したフラクトシルトランスフェラーゼは、ペクチナーゼ活性を実質的に有さない粗酵素剤であった。対照サンプル飲料については、上記オレンジ果汁原液にフラクトシルトランスフェラーゼ酵素反応を実施しなかった(酵素非処理オレンジ果汁)。酵素処理オレンジ果汁および酵素非処理オレンジ果汁をそれぞれ膜濾過装置内で膜処理せずに循環させながらBrix11となるように水を追加した。
(イ)膜処理
上記(ア)で得られた酵素処理オレンジ果汁および酵素非処理オレンジ果汁を膜濾過装置を用いた膜処理に供した。具体的には、膜処理後のオレンジ果汁がオレンジ果汁原液と比較して、糖類濃度オフ率30%(6.1g/100mL糖類濃度)および糖類濃度オフ率60%(3.5g/100mL糖類濃度)となるように以下の条件で膜処理を行った。
<膜処理条件>
サンプル温度:25℃
サンプル濃度:Brix11で開始し、目的のBrixになるまで透過した。透過液と等量の水を適宜加えた。
流量:30L/min(21Hz)
圧力:1.0MPa
処理時間:1〜2時間(目的のBrixになるまで)
膜:2.5インチNFGスパイラルモジュール(46mil)(1.95m
(ウ)充填・殺菌
上記(イ)で得られた膜処理後の酵素処理オレンジ果汁および酵素非処理オレンジ果汁をUHT殺菌した後、ホットパック充填(121℃、HTU30s)した。
上記(ア)〜(ウ)の工程に従い、糖類濃度オフ率30%の酵素・膜処理オレンジ果汁(サンプル1)、糖類濃度オフ率30%の酵素非処理・膜処理オレンジ果汁(サンプル2)、糖類濃度オフ率60%の酵素・膜処理オレンジ果汁(サンプル3)および糖類濃度オフ率60%の酵素非処理・膜処理オレンジ果汁(サンプル4)を得た。
(2)糖組成、糖類濃度およびBrixの測定
上記(1)で調製したサンプル飲料(サンプル1〜4)の糖組成、糖類濃度、全糖濃度およびBrixを測定した。糖組成は、フラクトース(Fru)、グルコース(Glc)、イヌロビオース(F2)、スクロース(Suc)、ネオケストース(FGF)、1−ケストース(GF2)、ニストース(GF3)について測定した(以下、同様)。なお、表中の「−」は検出限界以下を示す(以下、同様)。測定結果を表1および表2に示す。
Figure 2019004054
Figure 2019004054
(3)官能評価
上記(1)で調製したサンプル飲料を官能評価に供した。具体的には、「総合的なおいしさ」、「濃厚感」、「コク」、「甘さ」、「酸味」および「オレンジらしさ」の6項目について、対照サンプル(サンプル2、4)の各項目のスコアを0とし、最大スコア3、最小スコア−3とした場合(7段階)の、同等の糖類濃度オフ率の試験サンプル(サンプル1、3)のスコアを評価した。「濃厚感」とは、果汁本体の味わいの濃さをいう。「コク」とは、飲み応えをいう。「甘さ」とは、甘さの感じ具合をいう。「酸味」とは、酸味の感じ具合をいう。「オレンジらしさ」とは、オレンジ本来の味わいや香りとの類似度をいう。「総合的なおいしさ」とは、全体的なバランスをいう。官能評価は5名の訓練されたパネラーにより実施し、パネラー5名の評価スコアの平均スコアを算出した。
(4)評価結果
官能評価の結果を表3に示す。
Figure 2019004054
表3の結果より、糖類濃度オフ率30%の酵素・膜処理オレンジ果汁(サンプル1)では、酵素非処理・膜処理オレンジ果汁(サンプル2)と比べて、オレンジ果汁の濃厚感やオレンジらしい酸味などが感じられ、総合的に香味が優れていることが確認された。また、糖類濃度オフ率60%の酵素・膜処理オレンジ果汁(サンプル3)では、酵素非処理・膜処理オレンジ果汁(サンプル4)と比べて、オレンジ果汁の濃厚感やオレンジらしい酸味などが感じられ、総合的に香味が優れていることが確認された。なお、酵素・膜処理オレンジ果汁(サンプル1、3)の外観は混濁状態であった。
例2:酵素および膜処理がパイン果汁の糖組成および香味に与える影響
(1)サンプル飲料の調製
(ア)酵素処理
試験サンプル飲料については、Brix19.7に希釈したパイナップル果汁(Bix66、DELOLO社製、以下「パイン果汁原液」という)4500gに、フラクトシルトランスフェラーゼを100g当たり180単位となるように添加し、25℃で18時間振とうせずに糖転移反応を行った(酵素処理パイン果汁)。対照サンプル飲料については、上記パイン果汁原液にフラクトシルトランスフェラーゼ酵素反応を実施しなかった(酵素非処理パイン果汁)。酵素処理パイン果汁および酵素非処理パイン果汁をそれぞれ膜濾過装置内で膜処理せずに循環させながらBrix11となるように水を追加した。
(イ)膜処理
上記(ア)で得られた酵素処理パイン果汁および酵素非処理パイン果汁を膜濾過装置を用いた膜処理に供した。具体的には、膜処理後のパイン果汁がパイン果汁原液と比較して、糖類濃度オフ率30%(6.9g/100mL糖類濃度)および糖類濃度オフ率60%(3.9g/100mL糖類濃度)となるように膜処理を行った。膜処理は、流量を20L/min(13.7Hz)とした以外は、例1(1)(イ)に記載の条件に従って行った。
(ウ)充填・殺菌
上記(イ)で得られた膜処理後の酵素処理パイン果汁および酵素非処理パイン果汁を缶に充填して、パストライザー殺菌(80℃、10分間)を行った。
上記(ア)〜(ウ)の工程に従い、糖類濃度オフ率30%の酵素・膜処理パイン果汁(サンプル5)、糖類濃度オフ率30%の酵素非処理・膜処理パイン果汁(サンプル6)、糖類濃度オフ率60%の酵素・膜処理パイン果汁(サンプル7)、糖類濃度オフ率60%の酵素非処理・膜処理パイン果汁(サンプル8)を得た。
(2)糖組成、糖類濃度およびBrixの測定
上記(1)で調製したサンプル飲料(サンプル5〜8)の糖組成、糖類濃度、全糖濃度およびBrixを測定した。測定結果を表4および表5に示す。
Figure 2019004054
Figure 2019004054
(3)官能評価
上記(1)で調製したサンプル飲料を官能評価に供した。官能評価は、「総合的なおいしさ」、「濃厚感」、「コク」、「甘さ」、「酸味」および「パインらしさ」の6項目について、例1(3)に記載の方法に従って実施した。「パインらしさ」とは、パイン本来の味わいや香りとの類似度をいい、他の5項目については、例1(3)に記載した通りである。官能評価は4名の訓練されたパネラーにより実施した。
(4)評価結果
官能評価の結果を表6に示す。
Figure 2019004054
表6の結果より、糖類濃度オフ率30%の酵素・膜処理パイン果汁(サンプル5)では、酵素非処理・膜処理パイン果汁(サンプル6)と比べて、パインらしい酸味やコクが感じられ、総合的に香味が優れていることが確認された。また、糖類濃度オフ率60%の酵素・膜処理パイン果汁(サンプル7)では、酵素非処理・膜処理パイン果汁(サンプル8)と比べて、パインらしい酸味やコクが感じられ、総合的に香味が優れていることが確認された。酵素非処理・膜処理サンプル飲料では全体的に薄く酸味と甘さが弱いぼやけた香味となるのに対して、酵素・膜処理サンプル飲料では濃厚かつ酸味が際立ち総合的に良好な香味であることが確認された。なお、酵素・膜処理パイン果汁(サンプル5、7)の外観は混濁状態であった。
例3:酵素および膜処理がニンジン汁の糖組成および香味に与える影響
(1)サンプル飲料の調製
(ア)酵素処理
試験サンプル飲料については、Brix28に希釈したニンジン汁(Brix55、湘南香料社製、以下「ニンジン汁原液」という)1780gに、フラクトシルトランスフェラーゼを100g当たり72単位となるように添加し、30℃で16時間振とうせずに糖転移反応を行った(酵素処理ニンジン汁)。対照サンプル飲料については、上記ニンジン汁原液にフラクトシルトランスフェラーゼ酵素反応を実施しなかった(酵素非処理ニンジン汁)。酵素処理ニンジン汁および酵素非処理ニンジン汁をそれぞれ膜濾過装置内で膜処理せずに循環させながらBrix6となるように水を追加した。
(イ)膜処理
上記(ア)で得られた酵素処理ニンジン汁および酵素非処理ニンジン汁を膜濾過装置を用いた膜処理に供した。具体的には、膜処理後のニンジン汁がニンジン汁原液と比較して、糖類濃度オフ率60%(1.7g/100mL糖類濃度)となるように膜処理を行った。膜処理は、サンプル濃度をBrix6で開始とした以外は、例1(1)(イ)に記載の条件に従って行った。
(ウ)充填・殺菌
上記(イ)で得られた膜処理後の酵素処理ニンジン汁および酵素非処理ニンジン汁は、例2(1)(ウ)に記載の方法に従って充填し殺菌した。
上記(ア)〜(ウ)の工程に従い、糖類濃度オフ率60%の酵素・膜処理ニンジン汁(サンプル9)および糖類濃度オフ率60%の酵素非処理・膜処理ニンジン汁(サンプル10)を得た。
(2)糖組成、糖類濃度およびBrixの測定
上記(1)で調製したサンプル飲料(サンプル9、10)の糖組成、糖類濃度、全糖濃度およびBrixを測定した。測定結果を表7に示す。なお、膜処理をしていない酵素処理ニンジン汁(サンプル11)の糖類濃度は1.95g/100mLであり、Brixは6.02であった。
Figure 2019004054
(3)官能評価
上記(1)で調製したサンプル飲料を官能評価に供した。官能評価は、「総合的なおいしさ」、「濃厚感」、「コク」、「甘さ」、「酸味」および「ニンジンらしさ」の6項目について、例1(3)に記載の方法に従って実施した。「ニンジンらしさ」とは、ニンジン本来の味わい、香りとの類似度をいい、他の5項目については、例1(3)に記載した通りである。官能評価は4名の訓練されたパネラーにより実施した。
(4)評価結果
官能評価の結果を表8に示す。
Figure 2019004054
表8の結果より、糖類濃度オフ率60%の酵素・膜処理ニンジン汁(サンプル9)では、酵素非処理・膜処理ニンジン汁(サンプル10)と比べて、ニンジンらしいコクや濃厚感が感じられ、香味が優れていることが確認された。

Claims (10)

  1. 下記(A)、(B)および(C)から選択される飲料またはそれらの一部若しくは全部からなるミックスジュース飲料:
    (A)糖類濃度X(g/100mL)およびBrix値Yが下記式(1)および(2)を満たす、オレンジ果汁飲料
    1.232X+0.120<Y≦1.313X+2.141・・・(1)
    0<Y<11・・・(2)
    (B)糖類濃度X(g/100mL)およびBrix値Yが下記式(3)および(4)を満たす、パイナップル果汁飲料
    1.106X+0.162<Y≦1.153X+2.264・・・(3)
    0<Y<11・・・(4)
    (C)糖類濃度X(g/100mL)およびBrix値Yが下記式(5)および(6)を満たす、ニンジン野菜汁飲料
    1.170X+1.093<Y≦2.1326X+1.8611・・・(5)
    0<Y<6・・・(6)。
  2. フラクトオリゴ糖を1g/100mL以上含有する、請求項1に記載の飲料。
  3. フラクトオリゴ糖が原料として添加されていない、請求項1または2に記載の飲料。
  4. 混濁状態の飲料である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の飲料。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の飲料の濃縮物または希釈物。
  6. 容器詰め形態である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の飲料またはその濃縮物若しくは希釈物。
  7. 果汁、野菜汁またはミックスジュースを、スクロースを基質とする糖転移酵素で酵素処理し、該酵素処理と同時におよび/または該酵素処理の後に、膜濾過処理に付す工程を含んでなる、果汁飲料、野菜汁飲料またはミックスジュース飲料の製造方法。
  8. スクロースを基質とする糖転移酵素がフラクトシルトランスフェラーゼである、請求項7に記載の製造方法。
  9. 果汁、野菜汁またはミックスジュースの酵素処理が、果汁、野菜汁またはミックスジュースに含まれるスクロースからフラクトシルトランスフェラーゼによりフラクトオリゴ糖を生成することによる低カロリー化処理である、請求項8に記載の製造方法。
  10. 果汁、野菜汁またはミックスジュースが、オレンジ果汁、パイナップル果汁およびニンジン汁からなる群から選択される1種または2種以上の果汁および/または野菜汁を含む、請求項7〜9のいずれか一項に記載の製造方法。

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