JPWO2018151135A1 - 精神疾患モデル動物およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
[1]精神疾患の非ヒトモデル動物を製造する方法であって、(a)非ヒト動物のカリオフェリンα(KPNA)1遺伝子またはそのホモログの全部または一部の機能を喪失させる段階を含む、方法;
[2](b)段階(a)で得られた非ヒト動物にストレスを与える段階をさらに含む、[1]に記載の方法;
[3]ストレスが社会孤立ストレスである、[2]に記載の方法;
[4]ストレスが薬物によるストレスである、[2]に記載の方法;
[5]薬物がフェンシクリジン、ジゾシルピン(MK801)、メタンフェタミン、アンフェタミン、コカイン、モルヒネ、カンナビノイド、Δ9−テトラヒドロカンナビノール(Δ9−THC)である、[4]に記載の方法;
[6]精神疾患が、統合失調症、双極性障害、多動性障害、学習障害、認知症、およびうつ病から選択される1つ以上の疾患である、[1]〜[5]のいずれか一つに記載の方法;
[7]精神疾患が薬物依存症である、[4]または[5]に記載の方法;
[8]段階(a)が、KPNA1遺伝子またはそのホモログをホモでノックアウトすることによって実施される、[1]〜[7]のいずれか一つに記載の方法;
[9]非ヒト動物が非ヒト哺乳動物である、[1]〜[8]のいずれか一つに記載の方法;
[10]非ヒト哺乳動物が、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ、イヌ、ネコ、ヤギ、ミニブタ、ブタ、ヒツジ、ウシ、サルおよびチンパンジーからなる群から選択される動物である、[9]に記載の方法;
[11][1]〜[10]のいずれか一つに記載の方法によって製造された、精神疾患の非ヒトモデル動物またはそれらの子孫動物;
[12][11]に記載の動物から単離された組織または細胞;
[13]精神疾患の予防または治療薬のスクリーニング方法であって、
(a)[11]に記載の動物に被験物質を投与する段階、
(b)段階(a)で得られた動物に行動課題を課す段階、および
(c)該被験物質の投与前後において、行動課題の結果を比較する段階
を含む、方法;
[14]被験物質の精神疾患への効能および/または有害性を評価する方法であって、
(a)[11]に記載の動物に被験物質を投与する段階、
(b)段階(a)で得られた動物に行動課題を課す段階、および
(c)該被験物質の投与前後において、行動課題の結果を比較する段階
を含む、方法;ならびに
[15]精神疾患のバイオマーカーのスクリーニング方法であって、
(a)[11]に記載の動物、および当該動物と同種の野生型動物のそれぞれから生体試料を採取する段階、
(b)段階(a)で得られた生体試料中の核酸、タンパク質、代謝産物、または脂質を調べ、それぞれの動物における核酸、タンパク質、代謝産物、または脂質の転写または発現パターンを比較する段階、および
(c)段階(b)における比較の結果に基づいて、精神疾患の指標となる核酸、タンパク質、代謝産物、または脂質を選択する段階
を含む、方法。
[1’]非ヒト動物に精神疾患に関連する症状および/または障害を起こさせる方法であって、(a’)該非ヒト動物のカリオフェリンα(KPNA)1遺伝子またはそのホモログの全部または一部の機能を喪失させる段階を含む、方法;
[2’](b’)段階(a’)で得られた非ヒト動物にストレスを与える段階をさらに含む、[1’]に記載の方法;
[3’]ストレスが社会孤立ストレスである、[2’]に記載の方法;
[4’]ストレスが薬物によるストレスである、[2’]に記載の方法;
[5’]薬物がフェンシクリジン、ジゾシルピン(MK801)、メタンフェタミン、アンフェタミン、コカイン、モルヒネ、カンナビノイド、Δ9−テトラヒドロカンナビノール(Δ9−THC)である、[4’]に記載の方法;
[6’]精神疾患が、統合失調症、双極性障害、多動性障害、学習障害、認知症、およびうつ病から選択される1つ以上の疾患である、[1’]〜[5’]のいずれか一つに記載の方法;
[7’]精神疾患が薬物依存症である、[4’]または[5’]に記載の方法;
[8’]段階(a’)が、KPNA1遺伝子またはそのホモログをホモでノックアウトすることによって実施される、[1’]〜[7’]のいずれか一つに記載の方法;
[9’]非ヒト動物が非ヒト哺乳動物である、[1’]〜[8’]のいずれか一つに記載の方法;
[10’]非ヒト哺乳動物が、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ、イヌ、ネコ、ヤギ、ミニブタ、ブタ、ヒツジ、ウシ、サルおよびチンパンジーからなる群から選択される動物である、[9’]に記載の方法;
[11’][1’]〜[10’]のいずれか一つに記載の方法によって製造された、精神疾患の非ヒトモデル動物またはそれらの子孫動物;
[12’][11’]に記載の動物から単離された組織または細胞;
[13’]精神疾患の予防または治療薬のスクリーニング方法であって、
(a’)[11’]に記載の動物に被験物質を投与する段階、
(b’)段階(a’)で得られた動物に行動課題を課す段階、および
(c’)該被験物質の投与前後において、行動課題の結果を比較する段階
を含む、方法;
[14’]被験物質の精神疾患への効能および/または有害性を評価する方法であって、
(a’)[11’]に記載の動物に被験物質を投与する段階、
(b’)段階(a’)で得られた動物に行動課題を課す段階、および
(c’)該被験物質の投与前後において、行動課題の結果を比較する段階
を含む、方法;ならびに
[15’]精神疾患のバイオマーカーのスクリーニング方法であって、
(a’)[11’]に記載の動物、および当該動物と同種の野生型動物のそれぞれから生体試料を採取する段階、
(b’)段階(a’)で得られた生体試料中の核酸、タンパク質、代謝産物、または脂質を調べ、それぞれの動物における核酸、タンパク質、代謝産物、または脂質の転写または発現パターンを比較する段階、および
(c’)段階(b’)における比較の結果に基づいて、精神疾患の指標となる核酸、タンパク質、代謝産物、または脂質を選択する段階
を含む、方法。
[16’]カリオフェリンα(KPNA)1遺伝子またはそのホモログの全部または一部の機能を喪失している、精神疾患の非ヒトモデル動物;
[17’]ストレスを与えられた、[16’]に記載の動物;
[18’]ストレスが社会孤立ストレスである、[17’]に記載の動物;
[19’]ストレスが薬物によるストレスである、[17’]に記載の動物;
[20’]薬物がフェンシクリジン、ジゾシルピン(MK801)、メタンフェタミン、アンフェタミン、コカイン、モルヒネ、カンナビノイド、Δ9−テトラヒドロカンナビノール(Δ9−THC)である、[19’]に記載の動物;
[21’]精神疾患が、統合失調症、双極性障害、多動性障害、学習障害、認知症、およびうつ病から選択される1つ以上の疾患である、[16’]〜[20’]のいずれか一つに記載の動物;
[22’]精神疾患が薬物依存症である、[19’]または[20’]に記載の動物;
[23’]KPNA1遺伝子またはそのホモログがホモでノックアウトされている、[16’]〜[22’]のいずれか一つに記載の動物;
[24’]非ヒト哺乳動物である、[16’]〜[23’]のいずれか一つに記載の動物;
[25’]マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ、イヌ、ネコ、ヤギ、ミニブタ、ブタ、ヒツジ、ウシ、サルおよびチンパンジーからなる群から選択される動物である、[24’]に記載の動物;
[26’][16’]〜[25’]のいずれか一つに記載の動物の子孫動物;
[27’][16’]〜[26’]のいずれか一つに記載の動物から単離された組織または細胞;
[28’]精神疾患の予防または治療薬のスクリーニング方法であって、
(a’)[16’]〜[26’]のいずれか一つに記載の動物に被験物質を投与する段階、
(b’)段階(a’)で得られた動物に行動課題を課す段階、および
(c’)該被験物質の投与前後において、行動課題の結果を比較する段階
を含む、方法;
[29’]被験物質の精神疾患への効能および/または有害性を評価する方法であって、
(a’)[16’]〜[26’]のいずれか一つに記載の動物に被験物質を投与する段階、
(b’)段階(a’)で得られた動物に行動課題を課す段階、および
(c’)該被験物質の投与前後において、行動課題の結果を比較する段階
を含む、方法;ならびに
[30’]精神疾患のバイオマーカーのスクリーニング方法であって、
(a’)[16’]〜[26’]のいずれか一つに記載の動物、および当該動物と同種の野生型動物のそれぞれから生体試料を採取する段階、
(b’)段階(a’)で得られた生体試料中の核酸、タンパク質、代謝産物、または脂質を調べ、それぞれの動物における核酸、タンパク質、代謝産物、または脂質の転写または発現パターンを比較する段階、および
(c’)段階(b’)における比較の結果に基づいて、精神疾患の指標となる核酸、タンパク質、代謝産物、または脂質を選択する段階
を含む、方法。
[31’]精神疾患の非ヒトモデル動物としての、カリオフェリンα(KPNA)1遺伝子またはそのホモログの全部または一部の機能を喪失している非ヒト動物の使用;
[32’]精神疾患の予防または治療薬の製造のための、カリオフェリンα(KPNA)1遺伝子またはそのホモログの全部または一部の機能を喪失している非ヒト動物の使用;
[33’]精神疾患の予防または治療薬のスクリーニングのための、カリオフェリンα(KPNA)1遺伝子またはそのホモログの全部または一部の機能を喪失している非ヒト動物の使用;
[34’]被験物質の精神疾患への効能および/または有害性の評価のための、カリオフェリンα(KPNA)1遺伝子またはそのホモログの全部または一部の機能を喪失している非ヒト動物の使用;
[35’]精神疾患のバイオマーカーのスクリーニングのための、カリオフェリンα(KPNA)1遺伝子またはそのホモログの全部または一部の機能を喪失している非ヒト動物の使用;
[36’]非ヒト動物がストレスを与えられている、[31’]〜[35’]のいずれか一つに記載の使用;
[37’]ストレスが社会孤立ストレスである、[36’]に記載の使用;
[38’]ストレスが薬物によるストレスである、[36’]に記載の使用;
[39’]薬物がフェンシクリジン、ジゾシルピン(MK801)、メタンフェタミン、アンフェタミン、コカイン、モルヒネ、カンナビノイド、Δ9−テトラヒドロカンナビノール(Δ9−THC)である、[38’]に記載の使用;
[40’]精神疾患が、統合失調症、双極性障害、多動性障害、学習障害、認知症、およびうつ病から選択される1つ以上の疾患である、[31’]〜[39’]のいずれか一つに記載の使用;
[41’]精神疾患が薬物依存症である、[38’]または[39’]に記載の使用;
[42’]非ヒト動物においてKPNA1遺伝子またはそのホモログがホモでノックアウトされている、[31’]〜[41’]のいずれか一つに記載の使用;
[43’]非ヒト動物が非ヒト哺乳動物である、[31’]〜[42’]のいずれか一つに記載の使用;ならびに
[44’]非ヒト哺乳動物が、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ、イヌ、ネコ、ヤギ、ミニブタ、ブタ、ヒツジ、ウシ、サルおよびチンパンジーからなる群から選択される動物である、[43’]に記載の使用。
Kpna1−Hetマウスを以下の手法で作成した。
マウスKPNA1遺伝子は16番染色体上にあり、14個のエキソンから構成される。そして、2番目のエキソンにKPNA1タンパク質の開始コドンが存在している。そこで、2番目のエキソンと3番目のエキソンをCre/loxPシステムを利用して脱落させることにより、KPNA1タンパク質の発現を欠損したマウスを得た。
マウスを、生後5週から8週にかけて、通常の飼育ケージ(21×32×13 cm)にて集団飼育を続ける群と、小ケージ(12.5×20×11 cm)の周囲に白い紙を巻き、孤立飼育を行う群に分けた。
薬物ストレスを与えるマウスに、フェンシクリジン塩酸塩[1−(1−phenylcyclohexyl) piperidine hydrochloride:PCP](10mg/kg、10mL/kg、皮下投与)を生後5週から6週にかけて7日間皮下注射により、1日1回投与した。対照群にはPCPに代えて生理食塩水を同じスケジュールで投与した。7日目にオープンフィールド試験を行った。
生後8週齢より、京都大学大学院医学研究科メディカルイノベーションセンター動物施設において、新規物体認識試験、オープンフィールド試験、高架式十字迷路試験、Y字型迷路試験、プレパルスインヒビション(PPI)試験、受動回避試験、強制水泳試験を行った。すべての行動実験は京都大学動物実験委員会の承認を受け、京都大学における動物実験の実施に関する規程に従った。
幅40cm×奥行き40cm×高さ27cmの箱を用いた。マウスを3日間連続で、5分間、物体のない箱内を探索させ、馴化させた。4日目に、まず、同一の形状、色および大きさの2つの物体を箱内に置き、5分間探索させた(training)。trainingの終了後すぐに、ホームケージに戻した。15分後に、2つの物体の内1つが異なる新規物体に置き換えられた箱内にマウスを入れ、5分間探索させた(retention)。trainingとretentionの各5分間の行動をビデオ撮影した。撮影した5分間の行動をEthoVision XT 8.5で追跡、解析した。2つの物体を探索する時間の差を求めた。
幅40cm×奥行き40cm×高さ27cmの箱の中心にマウスを置いた。直後から60分間の行動をビデオ撮影した。60分間の総移動距離(cm/1時間)をビデオ解析システムEthoVision XT 8.5(Noldus)で解析し、新規環境における自発行動量を測定した。
長さ30cm×幅7cmの4本のアームを十字迷路として、床から30cmの高さに設置した。4本のアームのうち、2本は壁の無いopen arm、2本は高さ20cmの壁があるclosed armとした。この高架式十字迷路の中心にマウスを置いた。直後から15分間の行動をビデオ撮影した。十字迷路内の15分間の行動をEthoVision XT 8.5で解析し、総移動距離(total distance、cm/15分)、マウスがclosed armとopen armに滞在した合計の時間の内open armに滞在した時間(Time in open arm、%)およびopen armに進入した回数(Entries to open arm)を測定した。
3本のアームが長さ42cm、深さ15cm、アーム間の角度が120°のY字型迷路を設置した。Y字型迷路の中心にマウスを置いた。直後から15分間の行動をビデオ撮影した。撮影した15分間の行動をEthoVision XT 8.5で追跡、解析した。総移動距離(cm/15分)を測定した。加えて、マウスが全てのアームに侵入した回数と、続けて3回異なるアームに入った回数(交替行動数)を数え、alternation(%)を算出した。alternation(%)は以下の式で表される:
[式1]
alternation(%)=交替行動数÷(総侵入回数−2)×100
The SR−LAB(商標) Startle Response System(San Diego Instruments)により音刺激に対する驚愕反応を測定した。アクリル製の筒に対象の動物を入れ、70dBのホワイトノイズによる30分間の馴らしを行った。その後、40ミリ秒のホワイトノイズの後に、6種類のプレパルスのいずれか(ホワイトノイズのみ、74dB、78dB、82dB、86dB、90dB)を20ミリ秒与えた。続けて100ミリ秒の無音時間の後に、40ミリ秒間、120dBの驚愕音刺激を与え、驚愕刺激音時の驚愕反応を測定した。各プレパルスと驚愕音刺激の組み合わせは各7回ランダムに提示した。驚愕音刺激後のインターバル時間は25ミリ秒から60ミリ秒の間でランダムに与えた。測定したデータからプレパルスインヒビション(PPI,%)を算出した。PPI(%)は以下の式で表される:
[式2]
{1−(プレパルスありでの驚愕反応の大きさ)/(プレパルスなしでの驚愕反応の大きさ)}×100
照明で明るくした明室と、電気ショック発生装置とつなげたグリッドを備える床が設置された暗室とが連結されている装置を用いた。1日目にマウスを明室に入れ、暗室に入室するまでの時間を測定した。暗室に入室後、明室と暗室の間の扉を閉め、0.3mA、60Hzの電気ショックを1秒間与えた。その後、ホームケージに戻した。24時間後に、明室に入れ、暗室に入室するまでの時間を測定した。
直径13.5cm×高さ20cmの筒に室温の水を高さ14cmまで入れ、その中心にマウスを置いた。直後から6分間の行動をビデオ撮影した。6分間の不動時間(秒)をストップウォッチで測定し、水中環境における不動時間を測定した。
イソフルランにより十分に麻酔をかけたマウスより血液を採取し、血漿中のコルチコステロン濃度をEIAキット(Cayman Chemical Company)を用いて測定した。
イソフルランにより十分に麻酔をかけたマウスより脳を素早く取り出し、1mm厚の冠状断スライスを調製した。スライスより大脳皮質前頭前野と側坐核を分離し、凍結保存した。凍結サンプルを、イソプロテレノールを内部標準として含む0.2M 過塩素酸溶液に入れ、超音波ホモジェナイザー(TAITEC)を用いて氷中で破砕した。30分の均質化後、得られた溶液を4℃で15分間、20,000gの遠心分離に供した。上澄み液を0.45μm Cosmospin filter H(ナカライテスク)にて濾過した。高速液体クロマトグラフィー法により、3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニルグリコール(MHPG)、ノルエピネフリン(NE)、ピネフリン(Epi)、3,4−ジヒドロキシフェニル酢酸(DOPAC)、ノルメタネフリン(NM)、ドーパミン(DA)、5−ハイドロキシインドール酢酸(5−HIAA)、ホモバニール酸(HVA)、3−メトキシチラミン(3−MT)、および5−ヒドロキシトリプタミン(5−HT)の量を測定した。
全ての統計処理はGraph pad Prism 6.0 (Graph pad software)を用いて行った。2群比較としてt検定を行った。他はANOVA解析を行い、Bonferroni多重比較により有意差を検定した。
上述した試験の結果を以下に示す。
結果を図1に示す。通常飼育したWTでは、TrainingとRetentionでの2つの物体の識別率に有意差が見られた。このことは、通常飼育したWTは新規物体を認識できることを示している。**, p<0.01。これに対して、HetとKOでは、TrainingとRetentionでの2つの物体の識別率に有意差が見られなかった(n.s.:not significant)。このことは、通常飼育したHetとKOは新規物体を認識できない、すなわち認知機能が低下していることを示している。WT, n=9;Het, n=10;KO, n=11。すなわち、HetとKOマウスはストレスを与えない状態であっても、学習障害、認知症の行動モデルとして用いることができる。
結果を図2に示す。通常飼育したWT、Het、KOは新規環境における自発行動量に差は無かった(A)。One way ANOVA p=0.8419。WT, n=9;Het, n=10;KO, n=11。社会孤立ストレスを与えたKOマウス(isolation−KO)は有意に自発行動量の低下を認めた(B)。One way ANOVA p=0.0074。*, p<0.05。WT, n=10;Het, n=14;KO, n=9。
結果を図3に示す。通常飼育したWT、Het、KOは高架式十字迷路試験における行動量、open armの滞在時間、open armに入る回数に差は無かった(A)。WT, n=9; Het, n=10; KO, n=11。社会孤立ストレスを与えたKOマウス(isolation−KO)は有意に高架式十字迷路試験における行動量の増加を認めた(B上段、One way ANOVA p=0.0383)。*, p<0.05。また、社会孤立ストレスを与えた場合、WT、Het、KOの順に、open armの滞在時間(%)が有意に増加した(B中段、One way ANOVA p=0.0003)。さらに、社会孤立ストレスを与えた場合、WT、Het、KOの順に、open armに入る回数が有意に増加した(B下段、One way ANOVA p<0.0001)。*, p<0.05、***, p<0.001、***, p<0.0001。WT, n=10;Het, n=14;KO, n=9。このことは、社会孤立ストレスを与えたHetマウス(isolation−Het)およびKOマウス(isolation−KO)で、迷路試験での落ち着きのなさと衝動性の増加がある事を示す。すなわち、社会孤立ストレスを与えたHetマウスおよびKOマウスは、統合失調症、双極性障害、多動性障害の行動モデルとして用いることができる。
結果を図4に示す。通常飼育したWT、Het、KOでは、Y字型迷路試験における行動量とalternation(%)に差は無かった(A)。WT, n=9;Het, n=10;KO, n=11。社会孤立ストレスを与えたKOマウス(isolation−KO)は有意にY字型迷路試験における行動量の増加を認めた(B上段、One way ANOVA p=0.0347)。*, p<0.05。alternation(%)には差が無かった(B下段、One way ANOVA p=0.7173)。WT, n=10;Het, n=14;KO, n=9。このことは、社会孤立ストレスを与えたKOマウス(isolation−KO)において、短期記憶に差は無いが、迷路試験で落ち着きがないことを示す。
結果を図5に示す。通常飼育したWT、Het、KOでは、プレパルスインヒビション試験における驚愕反応とPPI(%)に差は無かった。WT, n=9;Het, n=10;KO, n=11。社会孤立ストレスを与えたKOマウス(isolation−KO)では、プレパルスインヒビション試験における驚愕反応に差は無かった(B上段、One way ANOVA p=0.8297)。一方、社会孤立ストレスを与えた場合、WT、Het、KOの順に、PPI(%)の低下が見られた(B下段、Two way ANOVA p=0.0007)。*, p<0.05。WT, n=10;Het, n=14;KO, n=9。このことは、社会孤立ストレスを与えたHetマウス(isolation−Het)およびKOマウス(isolation−KO)で、感覚運動統合の障害がある事を示す。すなわち、社会孤立ストレスを与えたHetマウス(isolation−Het)およびKOマウス(isolation−KO)は統合失調症モデルとして用いることができる。
結果を図6に示す。通常飼育したWT、Het、KOは、電気ショックを受けた翌日(Day2)において、電気ショックを受けた部屋へ入るまでの時間(縦軸)が有意に増加した(A)。****, p<0.0001。これは、忌避学習できていることを示す。WT, n=10;Het, n=6;KO, n=9。社会孤立ストレスを与えたWT(isolation−WT)、Het(isolation−Het)は、電気ショックを受けた翌日(Day2)において、電気ショックを受けた部屋へ入るまでの時間(縦軸)が有意に増加した(B)。**, p<0.01、****, p<0.0001。これに対して、社会孤立ストレスを与えたKO(isolation−KO)では有意差がみられず(n.s.: not significant)、忌避学習に障害が見られた(B)。WT, n=10;Het, n=14;KO, n=9。すなわち、社会孤立ストレスを与えたKOマウス(isolation−KO)は統合失調症、学習障害、認知症の行動モデルとして用いることができる。
結果を図7に示す。通常飼育したWT、Het、KOでは、強制水泳試験における不動時間に差は無かった(A)。WT, n=11;Het, n=10;KO, n=9。社会孤立ストレスを与えたKOマウス(isolation−KO)では、有意に強制水泳試験における不動時間の増加が見られた(B)。One way ANOVA p=0.0023。*, p<0.05、**, p<0.01。WT, n=10;Het, n=14;KO, n=9。このことは、社会孤立ストレスを与えたKOマウス(isolation−KO)は、うつ傾向が強いことを示している。すなわち、社会孤立ストレスを与えたKOマウス(isolation−KO)はうつ病、統合失調症の行動モデルとして用いることができる。
結果を図8に示す。通常飼育したWT、Het、KOでは、血漿中コルチコステロン濃度に差は無かった(A)。WT, n=10;Het, n=10;KO, n=9。社会孤立ストレスを与えたKOマウス(isolation−KO)では、有意に血漿中コルチコステロン濃度の増加が見られた(B)。One way ANOVA p=0.0088。*, p<0.05。WT, n=10;Het, n=14;KO, n=9。
結果を図9−1および図9−2に示す。通常飼育したWT、Het、KOでは、順に、大脳皮質前頭前野のDA濃度が有意に増加した(A)。*, p<0.05。WT, n=8;Het, n=5;KO, n=6。社会孤立ストレスを与えたWT(isolation−WT)、Het(isolation−Het)、KO(isolation−KO)では、順に、大脳皮質前頭前野の5−HT濃度が減少する傾向が見られた(B)。WT, n=6;Het, n=7;KO, n=5。
結果を図10−1および図10−2に示す。通常飼育したWT、Het、KOでは、側坐核のモノアミン濃度に差は無かった(A)。*, p<0.05。WT, n=8;Het, n=5;KO, n=6。社会孤立ストレスを与えたWT(isolation−WT)、Het(isolation−Het)、KO(isolation−KO)では、順に、側坐核の5−HT濃度が減少する傾向が見られた(B)。WT, n=6;Het, n=7;KO, n=5。
結果を図11に示す。生理食塩水を連日投与した場合、WT、Het、KO間で投与後行動量に差は無かった(A)。WT, n=7; Het, n=6; KO, n=5。PCPを連日投与した場合、7日目の薬物投与後行動量は、WT、Het、KOの順に有意に増加した。One way ANOVA p=0.0034。*, p<0.05。WT, n=5; Het, n=6; KO, n=5。このことは、薬物ストレスを与えたKOマウス(PCP−KO)はPCPに対する感受性が増加していることを示している。すなわち、薬物ストレスを与えたKOマウス(PCP−KO)は薬物依存症、統合失調症の行動モデルとして用いることができる。
結果を図12に示す。生理食塩水を連日投与した場合においてもPCPを連日投与した場合においても、WT、Het、KO間で高架式十字迷路試験における行動量に差は無かった(A上段、B上段)。WT, n=8; Het, n=8; KO, n=5; PCP−WT, n=5; PCP−Het, n=7; PCP−KO, n=6。PCPを連日投与した場合、WT、Het、KOの順に、open armの滞在時間(%)が有意に増加した(B中段、One way ANOVA p=0.0084)。また、PCPを連日投与した場合、WT、Het、KOの順に、open armに入る回数が有意に増加した(B下段、One way ANOVA p=0.0154)。*, P<0.05。このことは、薬物ストレスを与えたKOマウス(PCP−KO)で衝動性の増加があることを示す。すなわち、薬物ストレスを与えたKOマウスは統合失調症、双極性障害、多動性障害の行動モデルとして用いることができる。
結果を図13に示す。生理食塩水を連日投与した場合、WT、Het、KOでは、Y字型迷路試験における行動量とalternation(%)に差は無かった(A)。WT, n=8; Het, n=8; KO, n=5。PCPを連日投与した場合、WT、Het、KOの順に、Y字型迷路試験における行動量が有意に増加した(B上段、One way ANOVA p=0.0013)。*, p<0.05、**, p<0.01。Alternation(%)には差が無かった(B下段、One way ANOVA p=0.2351)。WT, n=5; Het, n=7; KO, n=6。このことは、薬物ストレスを与えたKOマウス(PCP−KO)において、短期記憶に差は無いが、迷路試験で落ち着きがないことを示す。
結果を図14に示す。生理食塩水を連日投与した場合においてもPCPを連日投与した場合においても、WT、Het、KO間でプレパルスインヒビション試験における驚愕反応に差は無かった(A上段、B上段)。WT, n=9; Het, n=8; KO, n=6; PCP−WT, n=5; PCP−Het, n=7; PCP−KO, n=8。PCPを連日投与した場合、WT、Het、KOの順に、PPI(%)の低下が見られた(B下段)。PCP−WT vs PCP−KO, *, p<0.05。このことは、薬物ストレスを与えたKOマウス(PCP−KO)で、感覚運動統合の障害があることを示す。すなわち、薬物ストレスを与えたKOマウスは統合失調症の行動モデルとして用いることができる。
結果を図15に示す。生理食塩水を連日投与した場合、WT、Het、KOは、電気ショックを受けた翌日(Day2)において、電気ショックを受けた部屋へ入るまでの時間(縦軸)が有意に増加した(A)。****, p<0.0001、**, p<0.01。WT, n=8; Het, n=8; KO, n=5。PCPを連日投与した場合、WT(PCP−WT)、Het(PCP−Het)は、電気ショックを受けた翌日(Day2)において、電気ショックを受けた部屋へ入るまでの時間(縦軸)が有意に増加した(B)。****, p<0.0001、**, p<0.01。これに対して、KO(PCP−KO)は有意差がみられず(n.s.: not significant)、忌避学習に障害がみられた(B)。WT, n=5; Het, n=7; KO, n=6。すなわち、薬物ストレスを与えたKOマウス(PCP−KO)は統合失調症、学習障害、認知症の行動モデルとして用いることができる。
SEQ ID NO:2: primer KPNA1-R1
SEQ ID NO:3: primer KPNA1-R2
SEQ ID NO:4: KPNA1ターゲティングベクター
Claims (15)
- 精神疾患の非ヒトモデル動物を製造する方法であって、(a)非ヒト動物のカリオフェリンα(KPNA)1遺伝子またはそのホモログの全部または一部の機能を喪失させる段階を含む、方法。
- (b)段階(a)で得られた非ヒト動物にストレスを与える段階をさらに含む、請求項1に記載の方法。
- ストレスが社会孤立ストレスである、請求項2に記載の方法。
- ストレスが薬物によるストレスである、請求項2に記載の方法。
- 薬物がフェンシクリジン、ジゾシルピン(MK801)、メタンフェタミン、アンフェタミン、コカイン、モルヒネ、カンナビノイド、Δ9−テトラヒドロカンナビノール(Δ9−THC)である、請求項4に記載の方法。
- 精神疾患が、統合失調症、双極性障害、多動性障害、学習障害、認知症、およびうつ病から選択される1つ以上の疾患である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
- 精神疾患が薬物依存症である、請求項4または5に記載の方法。
- 段階(a)が、KPNA1遺伝子またはそのホモログをホモでノックアウトすることによって実施される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
- 非ヒト動物が非ヒト哺乳動物である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
- 非ヒト哺乳動物が、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ、イヌ、ネコ、ヤギ、ミニブタ、ブタ、ヒツジ、ウシ、サルおよびチンパンジーからなる群から選択される動物である、請求項9に記載の方法。
- 請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法によって製造された、精神疾患の非ヒトモデル動物またはそれらの子孫動物。
- 請求項11に記載の動物から単離された組織または細胞。
- 精神疾患の予防または治療薬のスクリーニング方法であって、
(a)請求項11に記載の動物に被験物質を投与する段階、
(b)段階(a)で得られた動物に行動課題を課す段階、および
(c)該被験物質の投与前後において、行動課題の結果を比較する段階
を含む、方法。 - 被験物質の精神疾患への効能および/または有害性を評価する方法であって、
(a)請求項11に記載の動物に被験物質を投与する段階、
(b)段階(a)で得られた動物に行動課題を課す段階、および
(c)該被験物質の投与前後において、行動課題の結果を比較する段階
を含む、方法。 - 精神疾患のバイオマーカーのスクリーニング方法であって、
(a)請求項11に記載の動物、および当該動物と同種の野生型動物のそれぞれから生体試料を採取する段階、
(b)段階(a)で得られた生体試料中の核酸、タンパク質、代謝産物、または脂質を調べ、それぞれの動物における核酸、タンパク質、代謝産物、または脂質の転写または発現パターンを比較する段階、および
(c)段階(b)における比較の結果に基づいて、精神疾患の指標となる核酸、タンパク質、代謝産物、または脂質を選択する段階
を含む、方法。
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