JPWO2018074588A1 - 熱電変換材料、熱電変換モジュールおよび熱電変換材料の製造方法 - Google Patents

熱電変換材料、熱電変換モジュールおよび熱電変換材料の製造方法 Download PDF

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Abstract

電気伝導度およびゼーベック係数が改善された熱電変換材料を提供する。本発明の一実施形態に係る熱電変換材料は、(a)熱化学的イオン半径が195〜300pmであるアニオン、(b)アンモニウムまたはピリジニウムを母骨格とする有機カチオン、および(c)カーボンナノチューブを含んでいる。

Description

本発明は、熱電変換材料、上記熱電変換材料の製造方法および上記熱電変換材料を用いた熱電変換モジュールに関する。より具体的には、カーボンナノチューブに特定のアニオンおよびカチオンを添加した熱電変換材料に関する。
物体に温度差を与えると電位差が生じる、というゼーベック効果を利用し、熱を電力に変換する技術が熱電変換技術である。熱電変換技術に用いられる熱電変換材料(例えば、熱電変換モジュールの電極)の原料として、カーボンナノチューブ(CNT)が注目を集めている。更に、炭素系熱電変換材料(カーボンナノチューブもその一例である)は、軽量であり、しなやかな構造を有している。このため、従来型の熱電変換モジュールとは異なる、持ち運び可能でフレキシブルな熱電変換モジュール素子の材料候補と考えられている。
例えば、特許文献1には、導電性高分子のHOMO(最高被占有軌道)のエネルギー準位と熱励起アシスト剤のLUMO(最低空軌道)のエネルギー準位とが、特定の関係を有している熱電変換材料が開示されている。特許文献2には、多環構造および単環構造の共役系繰り返し単位を有する共役高分子を、カーボンナノチューブに添加した熱電変換材料が開示されている。
また、非特許文献1は、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)フィルムを作製したことを報告している。非特許文献2は、カーボンナノチューブに、メソ−テトラ(4−カルボキシフェン−イル)ポルフィン(TCPP)およびポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン):−ポリ(スチレンスルホナート)(PEDOT:PSS)を添加したp型カーボンナノチューブ(すなわち、導電性高分子複合体)を作製し、その熱電特性について報告している。
国際公開第2013/047730号パンフレット(2013年4月4日公開) 国際公開第2013/065631号パンフレット(2013年5月10日公開)
Park, T. et al. Flexible PEDOT electrodes with large thermoelectric power factors to generate electricity by the touch of fingertips. EnergyEnviron. Sci. 6, 788-792 (2013) Moriarty, G. P. et al. Fully organic nanocomposites with high thermoelectric power factors by using a dual-stabilizer preparation. Energy Technol. 1, 265-272 (2013)
しかしながら、上述のような従来技術は、これらを実際に発電モジュールの設計に利用するという観点からは改善の余地があった。具体的には、熱電変換材料を発電モジュールに適用するために、電流量および電圧を改善し(すなわち電気伝導度およびゼーベック係数を改善し)、出力を増大させる必要があった。
本発明の一態様は、電気伝導度およびゼーベック係数が改善された熱電変換材料を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、特定のアニオンおよびカチオンをカーボンナノチューブに添加することにより、電気伝導度およびゼーベック係数が改善された熱電変換材料となりうることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下の構成からなるものである。
<1>(a)熱化学的イオン半径が195〜300pmである、アニオン;(b)アンモニウムまたはピリジニウムを母骨格とする、有機カチオン;および(c)カーボンナノチューブを含んでいる、熱電変換材料。
<2>上記アニオンは、SCN、ClO 、MnO 、BF 、IO 、PF 、トリフルオロメタンスルホナートアニオンおよびビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミンアニオンからなる群より選択される1種以上である、<1>に記載の熱電変換材料。
<3>上記有機カチオンは、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウム)、[2−(メタクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウム、1−メチルピリジニウム、1−ブチルピリジニウム、10−メチルアクリジニウムおよび10−エチルアクリジニウムからなる群より選択される1種以上である、<1>または<2>に記載の熱電変換材料。
<4>上記熱電変換材料100重量%における上記カーボンナノチューブの含有量は、30〜95重量%である、<1>〜<3>のいずれか1つに記載の熱電変換材料。
<5>上記カーボンナノチューブは、直径が1.5〜4nmの単層カーボンナノチューブである、<1>〜<4>のいずれか1つに記載の熱電変換材料。
<6><1>〜<5>のいずれか1つに記載の熱電変換材料を含む、熱電変換モジュール。
<7>(a)熱化学的イオン半径が195〜300pmである、アニオン;および(b)アンモニウムまたはピリジニウムを母骨格とする、有機カチオンを、(c)カーボンナノチューブと接触させる接触工程を含んでいる、熱電変換材料の製造方法。
<8>上記アニオンは、SCN、ClO 、MnO 、BF 、IO 、PF 、トリフルオロメタンスルホナートアニオンおよびビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミンアニオンからなる群より選択される1種以上である、<7>に記載の熱電変換材料の製造方法。
<9>上記有機カチオンは、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウム)、[2−(メタクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウム、1−メチルピリジニウム、1−ブチルピリジニウム、10−メチルアクリジニウムおよび10−エチルアクリジニウムからなる群より選択される1種以上である、<7>または<8>に記載の熱電変換材料の製造方法。
<10>上記熱電変換材料100重量%における上記カーボンナノチューブの含有量は、30〜95重量%である、<7>〜<9>のいずれか1つに記載の熱電変換材料の製造方法。
<11>上記カーボンナノチューブは、直径が1.5〜4nmの単層カーボンナノチューブである、<7>〜<10>のいずれか1つに記載の熱電変換材料の製造方法。
本発明の一態様によれば、電気伝導度およびゼーベック係数が改善された熱電変換材料が提供される。
本発明の一実施形態に係る熱電変換材料をp型材料として用いた、熱電変換モジュールを表す模式図である。 (a)カーボンナノチューブに各種のアニオンを添加した際の、ゼーベック係数を表す棒グラフである。(b)添加に用いたアニオンの熱化学的イオン半径と、ゼーベック係数との関係を表す散布図である。 (a)ドーパントの含有量と、電気伝導度との関係を表したグラフである。(b)ドーパントの含有量と、ゼーベック係数との関係を表したグラフである。(c)ドーパントの含有量と、出力因子との関係を表したグラフである。 (a)カーボンナノチューブの含有量と、電気伝導度との関係を表したグラフである。(b)カーボンナノチューブの含有量と、ゼーベック係数との関係を表したグラフである。(c)カーボンナノチューブの含有量と、出力因子との関係を表したグラフである。
以下、本発明の実施の形態の一例について詳細に説明するが、本発明は、これらに限定されない。
本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A〜B」は、「A以上、B以下」を意味する。
〔1.熱電変換材料の性能に関する指標〕
本発明の実施の形態の説明に当たり、まず、熱電変換材料の性能に関する指標について説明する。
[1−1.出力因子]
熱電変換材料の性能に関する指標の一種として、出力因子(パワーファクター)が挙げられる。出力因子は、以下の式(1)によって求められる。
P=ασ (1)
式(1)中で、Pは出力因子、αはゼーベック係数、σは電気伝導度を示す。現在の技術水準を考慮すると、一般的に、310Kにおける出力因子は、10μW/mK以上であることが好ましく、15μW/mK以上であることがより好ましく、20μW/mK以上であることが特に好ましい。310Kにおける出力因子が10μW/mK以上であれば、本発明の一態様に係る効果を得られるため好ましい。
[1−2.ゼーベック係数]
ゼーベック係数とは、ゼーベック効果を示す回路の、高温接合点と低温接合点の間の温度差に対する、開放回路電圧の比をいう(「ゼーベック係数」『マグローヒル科学技術用語大辞典 第3版』、日刊工業新聞社、1996年、969頁)。ゼーベック係数は、例えば、後述する実施例で用いたゼーベック効果測定装置(MMR Technologies社製、SB−200)等を用いて測定することができる。ゼーベック係数の絶対値が大きいほど、熱起電力は大きい。
ゼーベック係数は、ゼーベック効果によって発生する電位差の方向により、正負が決定される。つまり、ゼーベック係数が正の値を示すp型導電性と、ゼーベック係数が負の値を示すn型導電性が存在する。そして、p型導電性を有する物質(p型材料)は高温側が低電圧になり、n型導電性を有する物質(n型材料)は高温側が高電圧になる。このように、ゼーベック係数の正負もまた、電子材料の性質を表す指標である。本発明の一実施形態に係る熱電交換材料は、p型導電性を示すp型熱電変換材料である。
p型熱電変換材料においては、ゼーベック係数が30μV/K以上であることが好ましく、40μV/K以上であることがより好ましく、50μV/K以上であることが更に好ましく、70μV/K以上であることが特に好ましい。ただし、低温熱源などの微小エネルギーを用いて発電を行う場合には、熱起電力の増大は好ましいが、一方で、電気伝導度を増大させ過ぎると昇圧回路に要求されるインピーダンスも増大してしまう。この場合は、ゼーベック係数が60〜120μW/Kであることがより好ましい。
ゼーベック係数は、より詳しくは、下記式(2)によって表される。式(2)において、kはボルツマン定数、Tは絶対温度、eは電荷、Nは状態密度、Dはキャリア拡散係数、Eはエネルギー、Eはフェルミ準位におけるエネルギーを表す。大括弧の中に含まれる項のうち、第1項はキャリア(正孔または自由電子)の濃度、第2項はキャリアの拡散に関係している。本発明の一態様は、従来注目されていたキャリアの濃度ではなく、キャリアの拡散を改善することにより、より絶対値の大きなゼーベック係数を得ることを可能にするものである。
Figure 2018074588
[1−3.電気伝導度]
電気伝導度は、単位長さ当たりの抵抗率の逆数として与えられる。電気伝導度は、例えば、抵抗率計(三菱化学アナリテック社製、ロレスタGP)を用いた4探針法により測定することができる。
p型熱電変換材料においては、電気伝導度が40S/cm以上であることが好ましく、45S/cm以上であることがより好ましく、50S/cm以上であることがさらに好ましい。電気伝導度が40S/cm以上であれば、本発明の一態様に係る効果を得られるため好ましい。
〔2.熱電変換材料〕
本発明の一実施形態に係る熱電変換材料は、(a)熱化学的イオン半径が195〜300pmであるアニオン、(b)アンモニウムまたはピリジニウムを母骨格とする有機カチオン、および(c)カーボンナノチューブを含んでいる。上記熱電変換材料においては、これらの構成要素の間の弱い相互作用により、熱電変換特性が改善されると考えられる。なお、上記熱電変換材料は、(a)〜(c)以外の構成要素を含んでいてもよいし、(a)〜(c)からなるものであってもよい。以下、上述の構成要素を順に説明する。
[2−1.アニオン]
本発明の一実施形態に係る熱電変換材料は、熱化学的イオン半径が195〜300pmであるアニオンを含んでいる。
熱化学的イオン半径とは、イオン結晶の結晶格子中においてイオンを剛体球と仮定することにより算出される、推定上のイオン半径である。本発明の一実施形態によれば、アニオンの熱化学的イオン半径は195〜300pmであることが好ましく、200〜300pmであることがより好ましく、250〜300pmであることが更に好ましい。アニオンの熱化学的イオン半径が195〜300pmの範囲にある場合には、十分なゼーベック係数が得られる。
熱化学的イオン半径が上述の範囲にあるアニオンの例としては、チオシアン酸イオン(SCN:209pm)、過塩素酸イオン(ClO :225pm)、過マンガン酸イオン(MnO :220pm)、テトラフルオロホウ酸イオン(BF :205pm)、ヨウ素酸イオン(IO :218pm)、ヘキサフルオロリン酸イオン(PF :242pm)、トリフルオロメタンスルホナートアニオン(TfO:230pm)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミンアニオン(TFSI:262pm)がある(括弧内の数値は、それぞれのイオンの熱化学的イオン半径を表す)。
熱化学的イオン半径が大きいほどゼーベック係数が増加する傾向にあるため、上に例示したアニオンの中では、TfOおよびTFSIがより好ましい。
[2−2.有機カチオン]
本発明の一実施形態に係る熱電変換材料は、アンモニウムまたはピリジニウムを母骨格とする有機カチオンを含んでいる。
アンモニウムを母骨格とする有機カチオンの構造は、下記一般式(I)により表される。
Figure 2018074588
一般式(I)中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜16のアルキル基、炭素数1〜16のアルケニル基、炭素数1〜16のアリール基、−S−Rおよび−S−O−Rから選択される。上記−S−Rおよび−S−O−Rにおいて、Sはスペーサー基であって炭素数1〜16のアルキレン基であり、Rは(メタ)アクリロイル基またはエポキシ基である。上記アンモニウムを母骨格とする有機カチオンは、上記R〜Rのうち2つ以上が、環を形成している構造であってもよい。また、アンモニウムを母骨格とする有機カチオンは、上記一般式(I)で表される構造を有する単量体を重合してなる重合体であってもよい。
アンモニウムを母骨格とする有機カチオンの具体例としては、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウム)(PDDA)、[2−(メタクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウムが挙げられる。
ピリジニウムを母骨格とする有機カチオンの構造は、下記一般式(II)により表される。
Figure 2018074588
一般式(II)中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜16のアルキル基、および−S−Rから選択される。上記−S−Rにおいて、Sはスペーサー基であって炭素数1〜16のアルキレン基であり、Rは(メタ)アクリロイル基またはエポキシ基である。上記ピリジニウムを母骨格とする有機カチオンは、上記R〜Rのうち2つ以上が、環を形成している構造であってもよい。
ピリジニウムを母骨格とする有機カチオンの例としては、1−メチルピリジニウム、1−ブチルピリジニウム、10−メチルアクリジニウム、10−エチルアクリジニウムが挙げられる。
本発明の一実施形態に係る熱電変換材料においては、電子吸引性(酸化力;他の物質から電子を奪う傾向)の比較的小さいカチオンを採用することが、出力因子を増大させられるために好ましい。したがって、上記カチオンとしては、金属イオン(例えば、カリウムイオン、銀イオン)ではなく、極めて弱いルイス酸を採用することが好ましい。カチオンとして極めて弱いルイス酸を採用することにより、カーボンナノチューブの緩やかな酸化、および当該カチオンと正電荷との相互作用が生じ、結果としてゼーベック係数を大きくすることができる。
上述の条件を踏まえると、上に例示した有機カチオンの中では、PDDA(下記式(III)で表される。nは2以上の整数を表す)または[2−(メタクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウム(下記式(IV)で表される)が好ましい。
Figure 2018074588
[2−3.カーボンナノチューブ]
本発明の一実施形態に係る熱電変換材料は、カーボンナノチューブを含んでいる。
上記カーボンナノチューブは、単層の構造を有していても、多層(二層、三層、四層、またはそれよりも多層)の構造を有していてもよい。すなわち、上記カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブ(single-wall carbon nanotube:SWNT)であってもよいし、多層カーボンナノチューブ(multi-wall carbon nanotube:MWNT)であってもよい。母材の比表面積が大きいことが、添加分子の吸着および相互作用に重要であるため、単層カーボンナノチューブを用いることが好ましい。
上記カーボンナノチューブの純度は、90重量%以上であることが好ましく、95重量%以上であることがより好ましく、99.9重量%以上であることが更に好ましい。純度が上述の範囲にあるカーボンナノチューブを用いることにより、出力因子を増大させることができる。なお、カーボンナノチューブの純度とは、当該カーボンナノチューブに含まれている不純物の少なさを意味する。上記カーボンナノチューブの純度は、例えば、蛍光X線を用いる元素分析によって計測することができる。
上記カーボンナノチューブが未開口である場合、上記カーボンナノチューブの比表面積は、600〜1500m/gであることが好ましく、800〜1500m/gであることがより好ましい。未開口時の比表面積が上述の範囲にあるカーボンナノチューブを用いることにより、出力因子を増大させることができる。
上記カーボンナノチューブが開口している場合、上記カーボンナノチューブの比表面積は、1600〜2500m/gであることが好ましく、1800〜2300m/gであることがより好ましい。開口時の比表面積が上述の範囲にあるカーボンナノチューブを用いることにより、出力因子を増大させることができる。
上記カーボンナノチューブの直径は、1〜10nmであることが好ましく、1.5〜4nmであることがより好ましい。直径が上述の範囲にあるカーボンナノチューブを用いることにより、出力因子を増大させることができる。
上述した物性を有するカーボンナノチューブは、例えば、国際公開第2006/011655号(参照により、当該文献の全体は本明細書に組み込まれる)に開示されている製造方法(スーパーグロース法)により製造される。スーパーグロース法は、カーボンナノチューブ成長用の触媒層を表面に有する基材上に、原料化合物およびキャリアガスを供給してカーボンナノチューブを合成する、化学的気相成長法の一種である。そして、スーパーグロース法は、系内に微量の酸化剤を存在させることで、触媒層の触媒活性を飛躍的に向上させている。スーパーグロース法によって製造されたカーボンナノチューブであれば、電気伝導度および熱伝導度が制御可能であるため、より好ましい。
本発明の一実施形態に係る熱電変換材料は、上記熱電変換材料の重量を100重量%とした場合に、カーボンナノチューブを60重量%以上含んでいてもよく、75重量%以上含んでいてもよく、90重量%以上含んでいてもよい。
本発明の一実施形態に係る熱電変換材料は、上記熱電変換材料の重量を100重量%とした場合に、カーボンナノチューブを30〜95重量%含むことが好ましく、35〜90重量%含むことがより好ましく、45〜80重量%含むことが更に好ましい。カーボンナノチューブの含有量が上述の範囲にある場合、十分な電気伝導度得られるという利点がある。
以上の点は、カーボンナノチューブの含有量が遥かに低かった(10重量%程度)従前の研究では、見出すことができなかった利点である。
また、本発明の一実施形態に係る熱電変換材料は、上記熱電変換材料の重量を100重量%とした場合に、ドーパントを5重量%以上含むことが好ましく、10重量%以上含むことがより好ましく、15〜40重量%含むことが更に好ましい。
〔3.熱電変換材料の製造方法〕
以下に、本発明の一実施形態に係る熱電変換材料の製造方法を示す。ただし、〔2.熱電変換材料〕で説明されている熱電変換材料の製造方法は、本項で説明されている製造方法に限定されない。
[3−1.接触工程]
本発明の一実施形態に係る熱電変換材料の製造方法は、(a)熱化学的イオン半径が195〜300pmであるアニオン、および(b)アンモニウムまたはピリジニウムを母骨格とする有機カチオンを、(c)カーボンナノチューブと接触させる接触工程を含んでいる。
アニオン、有機カチオンおよびカーボンナノチューブに関しては、〔2.熱電変換材料〕の項目で説明した通りである。
アニオンおよび有機カチオンと、カーボンナノチューブとの接触は、どのような順序で行われてもよい。すなわち、(1)先にアニオンを接触させた後に有機カチオンを接触させてもよく、(2)先に有機カチオンを接触させた後にアニオンを接触させてもよく、(3)アニオンおよび有機カチオンを同時に接触させてもよい。
接触工程は、アニオンおよび有機カチオンと、カーボンナノチューブとを接触させることができればよく、具体的な方法は特に限定されない。例えば、アニオンまたは有機カチオンを溶媒中に溶解させた溶液に、カーボンナノチューブを添加し、懸濁することによって両者を接触させることができる。アニオンおよび有機カチオンと、カーボンナノチューブとを十分に接触させる観点から、アニオンまたは有機カチオンを溶媒中に溶解させた溶液を、カーボンナノチューブに含浸させる方法が好ましい。同様の観点に基づくと、アニオンまたは有機カチオンを溶媒中に溶解させた溶液中に、カーボンナノチューブを剪断分散させる方法もまた好ましい。
上記接触工程においては、均質化装置を用いてカーボンナノチューブを溶液中に分散させながら、アニオンまたは有機カチオンと接触させることが好ましい。均質化装置を用いてカーボンナノチューブを溶液中に分散させることにより、アニオンまたは有機カチオンがカーボンナノチューブに接触し易くなる。結果として、アニオンおよび有機カチオンと、カーボンナノチューブとの十分な接触が得られる。
上記均質化装置は、カーボンナノチューブを溶媒中で均質に分散させることができる装置であれば特に限定されない。例えば、ホモジナイザー、超音波ホモジナイザーなどの公知の手段を用いることができる。なお、本明細書において、単に「ホモジナイザー」と表記した場合は、「撹拌ホモジナイザー」が意図される。
均質化装置の運転条件は、カーボンナノチューブを溶媒中に分散させることができる条件であれば特に限定されない。例えば、均質化装置としてホモジナイザーを用いる場合は、カーボンナノチューブと、アニオンまたは有機カチオンとを加えた溶媒を、上記ホモジナイザーの撹拌速度(回転数)を10000〜20000rpmとし、室温(23℃)にて10〜40分間懸濁することによって、カーボンナノチューブを溶媒中に分散させることができる。
アニオンまたは有機カチオンを溶解させる溶媒としては、例えば、水および有機溶媒がある。有機溶媒の具体例としては、アルコール(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなど)、ケトン(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドなどの高極性溶媒が挙げられる。ただし、用いることのできる溶媒はこれらに限定されない。
アニオンまたは有機カチオンを溶解させる濃度は、任意の濃度であってよい。また、アニオンおよび/または有機カチオンは、これらの少なくとも一方を含む電解質を溶媒へ溶解させることによって準備してもよい。
また、カーボンナノチューブに第1のアニオンを添加した後、第2のアニオンを溶解させている溶液に浸漬することにより、上記カーボンナノチューブに添加されているアニオンを交換する方法を採用してもよい。後述する実施例では、当該方法により、TFSIなどのアニオンをカーボンナノチューブに添加している。
例えば、カーボンナノチューブに、第1のカチオン(上述の有機カチオン)と第1のアニオンとを添加した後、当該カーボンナノチューブを、第2のカチオンと第2のアニオン(上述の熱化学的イオン半径が195〜300pmであるアニオン)とを含む電解質を溶解させた溶液に浸漬してもよい。これにより、第1のアニオンを第2のアニオンへと置き換えることができる。ここで、第1のアニオンは上述の熱化学的イオン半径が195〜300pmであるアニオンでなくてもよく、第2のカチオンは上述の有機カチオンでなくてもよい。
[3−2.乾燥工程]
乾燥工程は、溶媒を除去する工程である。溶媒を除去する方法は特に限定されず、例えば、真空オーブンを用いる方法が挙げられる。
本工程においては、溶媒は完全に除去される必要はない。すなわち、製造された熱電変換材料が、本発明の一態様による効果を奏する限りは、溶媒が残存していてもよい。
[3−3.成形工程]
本発明の一実施形態に係る製造方法は、カーボンナノチューブを所望の形状に成形する成形工程を包含していてもよい。成形工程において、カーボンナノチューブを、例えば、フィルム状に成形してもよい。
ここで、「フィルム状」は、シート状または膜状とも言い換えられる。本明細書において、「フィルム状に成形する」とは、カーボンナノチューブを1μm〜1000μmの厚みの膜に成形することが意図される。
カーボンナノチューブをフィルム状に成形する方法は、特に限定されない。例えば、メンブレンフィルターを用いる方法が挙げられる。具体的には、カーボンナノチューブの懸濁液を、0.1〜2μm孔のメンブレンフィルターを用いて吸引濾過して得られた膜を、真空下、50〜150℃にて、1〜24時間乾燥させることにより、フィルム状に成形することができる。
フィルム状に成形されたカーボンナノチューブに、重合開始剤(例えば、アゾビスイソブチロニトリル)を加えることによって、カチオンおよびアニオンを含む添加剤を重合させてもよい。添加剤を重合させることによって、添加剤が固定されるという利点が生じる。
成形工程で使用されるカーボンナノチューブは、アニオンまたは有機カチオンを添加される前のものであっても、添加された後のものであってもよい。すなわち、成形工程は、上述した接触工程よりも前に行われても、接触工程よりも後に行われてもよい。また、(1)有機カチオンとカーボンナノチューブとを接触させる接触工程、(2)カーボンナノチューブをフィルム状に成形する成形工程、および、(3)成形したカーボンナノチューブとアニオンとを接触させる接触工程をこの順に行ってもよい。あるいは、(1)アニオンとカーボンナノチューブとを接触させる接触工程、(2)カーボンナノチューブをフィルム状に成形する成形工程、および、(3)成形したカーボンナノチューブと有機カチオンとを接触させる接触工程をこの順に行ってもよい。
〔4.熱電変換モジュール〕
本発明の一実施形態に係る熱電変換モジュールは、〔2.熱電変換材料〕で説明されている熱電変換材料を含む。そのため、本熱電変換モジュールは、軽量であるとともに、優れた熱電変換特性を備えている。また、上記熱電変換材料は柔軟性を有しており、加工性に優れているため、様々な形状の熱電変換モジュールを製造することができる。
以上に説明した、本発明の一実施形態に係る熱電変換材料は、熱電変換モジュールに使用されるp型素子の材料として好適である。すなわち、上記熱電変換材料からp型素子(例えば、〔3.熱電変換材料の製造方法〕で説明したフィルム)を作製し、適当なn型素子(例えば、公知のn型素子を用いることができる)と組み合わせて電極と接続し、更に温度差を与えることにより、熱電変換モジュールを作製することができる(図1参照)。
また、上記熱電変換モジュールは、上記熱電変換材料のみを用いて(対応するn型素子と組み合わせずに)ユニレグ型の熱電変換モジュールとすることも可能である。この場合、上記熱電変換材料に第1の電極および第2の電極を接続することによって構成すればよい。
上記熱電変換モジュールは優れた熱電変換特性を有するため、例えば、環境発電(地熱発電など)、工業廃熱(配管および電気炉など)および機器廃熱(車体、エンジン周辺機器および空調設備など)の利用に適用することができる。また、上記熱電変換モジュールは軽量かつ優れた熱電変換特性を有するため、緊急時用、災害時用、医療用および航空・宇宙用の電源に利用することができる。さらに、上記熱電変換モジュールは、軽量かつ柔軟性を有し、優れた熱電変換特性を有するため、小型機器(ポータブルデバイス、ウェアラブルデバイスおよびフレキシブルデバイスなど)の電源に利用することができる。当該小型機器としては、例えば、携帯電話、腕時計および心臓ペースメーカー等が挙げられる。また、上記熱電変換モジュールは、例えば、太陽電池やトランジスタなどにも用いることができる。
[1.アニオン種の変更によるゼーベック係数の変化の測定]
(実施例1−1:TFSI(熱化学的イオン半径262pm)添加フィルムの作製)
5mgのSWNT(外径2.0nm、名城ナノカーボン社製、EC2.0)、0.0625g 80%のPDDA―Cl、および20mLの水を混合し、高速ホモジナイザー(ウルトラタラックス(登録商標)T25デジタル)を用いて、40分間、20000rpmにて撹拌した。次に、微量超音波ホモジナイザー(QSONICA社製、Q125、125W)を用いて、混合液に超音波を5分間照射した。次に、10000rpm、20分の条件で、上記混合液を遠心分離した。遠心分離後の混合液から上澄みを除去し、得られた分散液3mLを吸引濾過した。その後、80℃、1Paにて10時間減圧乾燥することにより、メンブレンフィルター(ミリポア社製、オムニポアメンブレンフィルター JGWP02500)上に、不織布状のPDDA−Cl−SWNTフィルムを得た。
上記PDDA−Cl−SWNTフィルムを、0.1mol/LのKTFSI水溶液に2時間浸漬した。上記フィルムをメタノールでリンスした後、80℃、1Paにて1時間減圧乾燥することによりフィルム中のアニオンを交換し、PDDA−TFSI−SWNTフィルムを得た。当該PDDA−TFSI−SWNTフィルムのXPS元素分析から、イオン交換に伴い上記フィルムから失われたClと、イオン交換に伴い上記フィルムに加わったTFSIとは、ほぼ同数であったことが確認された。
(実施例1−2:TfO(熱化学的イオン半径230pm)添加フィルムの作製)
PDDA−Cl−SWNTフィルムを、0.1mol/LのKOTfに2時間浸漬した以外は、実施例1−1と同様の手順により、PDDA−TfO−SWNTフィルムを得た。当該PDDA−TfO−SWNTフィルムのXPS元素分析から、イオン交換に伴い上記フィルムから失われたClと、イオン交換に伴い上記フィルムに加わったTfOとは、ほぼ同数であったことが確認された。
(実施例1−3:PF (熱化学的イオン半径242pm)添加フィルムの作製)
PDDA−Cl−SWNTフィルムを、0.1mol/LのKPFに2時間浸漬した以外は、実施例1−1と同様の手順により、PDDA−PF−SWNTフィルムを得た。当該PDDA−PF−SWNTフィルムのXPS元素分析から、イオン交換に伴い上記フィルムから失われたClと、イオン交換に伴い上記フィルムに加わったPF とは、ほぼ同数であったことが確認された。
(実施例1−4:IO (熱化学的イオン半径218pm)添加フィルムの作製)
PDDA−Cl−SWNTフィルムを、0.1mol/LのKIOに2時間浸漬した以外は、実施例1−1と同様の手順により、PDDA−IO−SWNTフィルムを得た。当該PDDA−IO−SWNTフィルムのXPS元素分析から、イオン交換に伴い上記フィルムから失われたClと、イオン交換に伴い上記フィルムに加わったIO とは、ほぼ同数であったことが確認された。
(実施例1−5:BF (熱化学的イオン半径205pm)添加フィルムの作製)
PDDA−Cl−SWNTフィルムを、0.1mol/LのNaBFに2時間浸漬した以外は、実施例1−1と同様の手順により、PDDA−BF−SWNTフィルムを得た。当該PDDA−BF−SWNTフィルムのXPS元素分析から、イオン交換に伴い上記フィルムから失われたClと、イオン交換に伴いフィルムに加わった上記BF とは、ほぼ同数であったことが確認された。
(実施例1−6:MnO (熱化学的イオン半径220pm)添加フィルムの作製)
PDDA−Cl−SWNTフィルムを、0.1mol/LのKMnOに2時間浸漬した以外は、実施例1−1と同様の手順により、PDDA−MnO−SWNTフィルムを得た。当該PDDA−MnO−SWNTフィルムのXPS元素分析から、イオン交換に伴い上記フィルムから失われたClと、イオン交換に伴いフィルムに加わった上記MnO とは、ほぼ同数であったことが確認された。
(実施例1−7:ClO (熱化学的イオン半径225pm)添加フィルムの作製)
PDDA−Cl−SWNTフィルムを、0.1mol/LのKClOに2時間浸漬した以外は、実施例1−1と同様の手順により、PDDA−ClO−SWNTフィルムを得た。当該PDDA−ClO−SWNTフィルムのXPS元素分析から、イオン交換に上記伴いフィルムから失われたClと、イオン交換に伴い上記フィルムに加わったClO とは、ほぼ同数であったことが確認された。
(実施例1−8:SCN(熱化学的イオン半径209pm)添加フィルムの作製)
PDDA−Cl−SWNTフィルムを、0.1mol/LのKSCNに2時間浸漬した以外は、実施例1−1と同様の手順により、PDDA−SCN−SWNTフィルムを得た。当該PDDA−SCN−SWNTフィルムのXPS元素分析から、イオン交換に伴い上記フィルムから失われたClと、イオン交換に伴い上記フィルムに加わったSCNとは、ほぼ同数であったことが確認された。
(比較例1−1:Cl(熱化学的イオン半径168pm)添加フィルムの作製)
実施例1−1において、PDDA−TFSI−SWNTフィルムを作製する手順の途中で得られた、PDDA−Cl−SWNTフィルムを用いた。
上述の実施例1−1〜1−8および比較例1−1で作製したフィルムのゼーベック係数を、ゼーベック効果測定装置(MMR technologies社製、SB−200)を用いて測定した。上記測定は、温度310K(ゼーベック効果測定装置の表示温度による)において行った。測定されたゼーベック係数を図2の(a)に、上記測定されたゼーベック係数と添加したアニオンの熱化学的イオン半径との関係を図2の(b)に、それぞれ示した。
図2に示されているように、熱化学的イオン半径が168pmのClを添加するよりも、熱化学的イオン半径が195pm以上のアニオンを添加した方が、より大きいゼーベック係数の値が得られた。特に、熱化学的イオン半径が250pm以上のTFSIを添加したフィルムでは、顕著に高いゼーベック係数の値が得られた。
[2.カチオン種の変更によるゼーベック係数の変化の測定]
(実施例2−1 [2−(メタクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウム添加フィルムの作製)
5mgのSWNT(外径2.0nm、名城ナノカーボン社製、EC2.0)および20mLのo−ジクロロベンゼンを混合し、高速ホモジナイザー(ウルトラタラックス(登録商標)T25デジタル)を用いて、20分間、20000rpmにて撹拌した。得られた分散液を吸引濾過し、120℃、1Paにて10時間減圧乾燥することにより、メンブレンフィルター(ミリポア社製、オムニポアメンブレンフィルター JGWP02500)上に、不織布状のSWNTフィルムを得た。
1当量の[2−(メタクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウムクロリド(シグマ・アルドリッチ製)、および1.1当量のLiTFSIを、0℃の水中で撹拌した。得られた画分を、まずはジクロロメタン、次に水によって洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。その後、吸引濾過して得た残渣を60℃、1Paにて24時間減圧乾燥することで、無色透明の粘性液体を得た。得られた粘性液体は、[2−(メタクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウムとTFSIとを含む電解質である。当該電解質を以下ではmetaTFSIと称する。
metaTFSIおよびアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を溶解させたメタノール混合溶液500μLに、上記不織布状のSWNTフィルムを浸漬し、室温・大気圧下でメタノールが全て揮発するまで静置した。なお、メタノール混合溶液の組成は、metaTFSIが0.26mg(得られるフィルムにおけるmetaTFSIの濃度が3.0〜5.0重量%)、AIBNが0.013mg(metaTFSI100重量%に対して5.0重量%)であった。その後、60℃、2時間の条件で重合反応を進行させ、SWNT―metaTFSIフィルムを作製した。
(比較例2−1 カリウム添加フィルムの作製)
上記不織布上のSWNTフィルムを、KTFSIを0.20mg含むメタノール溶液に浸漬した以外は、実施例2−1と同様の手順により、SWNT―KTFSIフィルムを作製した。
(比較例2−2 銀添加フィルムの作製)
上記不織布上のSWNTフィルムを、AgTFSIを0.22mg含むメタノール溶液に浸漬した以外は、実施例2−1と同様の手順により、SWNT―AgTFSIフィルムを作製した。
(比較例2−3 無添加フィルムの作製)
実施例2−1において、SWNT―metaTFSIフィルムを作製する途中で得られたSWNTフィルムを使用した。
実施例2−1および比較例2−1〜2−3にて得られたフィルムのゼーベック係数を、ゼーベック効果測定装置(MMR technologies社製、SB−200)を用いて測定した上記測定は、温度310K(ゼーベック効果測定装置の表示温度による)において行った。また、上記フィルムの電気伝導度を、抵抗率計(三菱化学アナリテック社製、ロレスタGP)を用いた4探針法により測定した。さらに、得られたゼーベック係数および電気伝導度から、上述の式(1)を用いて出力因子を算出した。結果を表1に示す。
Figure 2018074588
表1に示されているように、カチオンとしてアンモニウムの一種である[2−(メタクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウムを添加したフィルムは、カリウムイオンまたは銀イオンを添加したフィルムよりも、大幅に高いゼーベック係数および出力因子を有した。
[3.metaTFSIまたはCNT含有量の変更による熱電特性の変化の測定]
(実施例3−1 metaTFSI含有量の変更)
使用するSWNT(外径4nm、日本ゼオン社製、ZEONANO SG101)5mgに対し、添加するmetaTFSIの量を、得られるフィルムの総重量を100重量%としたときに0重量%、4重量%、12重量%、14重量%、16重量%、23重量%、36重量%、39重量%となるように変化させながら、実施例2−1と同様の手順により、SWNT―metaTFSIフィルムを作製した。それぞれのフィルムの重合に際して用いたAIBNの量は、metaTFSI100モル%([2−(メタクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウムおよびTFSIを合計したモル数)に対し、2モル%であった。
なお、上記SWNTは、スーパーグロース法により製造されたものであり、純度98%以上、比表面積600〜1500m/g、直径1.5〜4nmの単層未開口カーボンナノチューブに該当する。
上述の手順により得られたフィルムのゼーベック係数を、ゼーベック効果測定装置(MMR technologies社製、SB−200)を用いて測定した。上記測定は、温度310K(ゼーベック効果測定装置の表示温度による)において行った。また、上記フィルムの電気伝導度を、抵抗率計(三菱化学アナリテック社製、ロレスタGP)を用いた4探針法により測定した。さらに、得られたゼーベック係数および電気伝導度から、上述の式(1)を用いて出力因子を算出した。結果を図3に示す。なお、図3中の近似曲線は、IgorPro(ヒューリンクス社製)を用い、多項式近似によって導出した。
[1−3]で説明したように、本発明の一実施形態に係る熱電変換材料の電気伝導度は、40S/cm以上であることが好ましく、45S/cm以上であることがより好ましく、50S/cm以上であることが更に好ましい。このことと、図3の(a)とを併せて考慮すると、添加するmetaTFSIの重量が、フィルムの総重量の5重量%以上であることが好ましく、10重量%以上であることがより好ましく、15〜40重量%であることが更に好ましい。
(実施例3−2 CNT含有量の変更)
実施例3−1と同様の手法により、カーボンナノチューブ(SWNT;外径4nm、日本ゼオン社製、ZEONANO SG101)の含有量が、25重量%、38重量%、61重量%、63重量%、77重量%、84重量%、86重量%、88重量%、96重量%、100重量%である、SWNT―metaTFSIフィルム(またはSWNTフィルム)を作製した。その後、実施例3−1と同様の方法により、それぞれのフィルムの電気伝導度、ゼーベック係数および出力因子を測定・算出した。結果を図4に示す。なお、図3中の近似曲線は、Microsoft Excel(Microsoft社製)を用い、多項式近似によって導出した。
実施例3−1と同様の理由により、図4の(a)から、フィルム中のカーボンナノチューブ含有量は、30〜95重量%が好ましく、35〜90重量%がより好ましく、45〜80重量%が更に好ましいことがわかる。
本発明の一実施形態に係る熱電変換材料は、熱電変換モジュールの材料として好適である。

Claims (11)

  1. (a)熱化学的イオン半径が195〜300pmである、アニオン;
    (b)アンモニウムまたはピリジニウムを母骨格とする、有機カチオン;および、
    (c)カーボンナノチューブ;
    を含んでいる、熱電変換材料。
  2. 上記アニオンは、SCN、ClO 、MnO 、BF 、IO 、PF 、トリフルオロメタンスルホナートアニオンおよびビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミンアニオンからなる群より選択される1種以上である、請求項1に記載の熱電変換材料。
  3. 上記有機カチオンは、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウム)、[2−(メタクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウム、1−メチルピリジニウム、1−ブチルピリジニウム、10−メチルアクリジニウムおよび10−エチルアクリジニウムからなる群より選択される1種以上である、請求項1または2に記載の熱電変換材料。
  4. 上記熱電変換材料100重量%における上記カーボンナノチューブの含有量は、30〜95重量%である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱電変換材料。
  5. 上記カーボンナノチューブは、直径が1.5〜4nmの単層カーボンナノチューブである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱電変換材料。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱電変換材料を含む、熱電変換モジュール。
  7. (a)熱化学的イオン半径が195〜300pmである、アニオン、および、
    (b)アンモニウムまたはピリジニウムを母骨格とする、有機カチオンを、
    (c)カーボンナノチューブと接触させる接触工程を含んでいる、熱電変換材料の製造方法。
  8. 上記アニオンは、SCN、ClO 、MnO 、BF 、IO 、PF 、トリフルオロメタンスルホナートアニオンおよびビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミンアニオンからなる群より選択される1種以上である、請求項7に記載の熱電変換材料の製造方法。
  9. 上記有機カチオンは、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウム)、[2−(メタクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウム、1−メチルピリジニウム、1−ブチルピリジニウム、10−メチルアクリジニウムおよび10−エチルアクリジニウムからなる群より選択される1種以上である、請求項7または8に記載の熱電変換材料の製造方法。
  10. 上記熱電変換材料100重量%における上記カーボンナノチューブの含有量は、30〜95重量%である、請求項7〜9のいずれか1項に記載の熱電変換材料の製造方法。
  11. 上記カーボンナノチューブは、直径が1.5〜4nmの単層カーボンナノチューブである、請求項7〜10のいずれか1項に記載の熱電変換材料の製造方法。
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