JPWO2018073974A1 - 精神疾患の治療用具および治療装置 - Google Patents

精神疾患の治療用具および治療装置 Download PDF

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Abstract

人間関係に関連した精神疾患の治療を効果的に行う。シート中央には、自己と相手についての特定のシーンを描かせる図描画エリア(140)が配置される。シート左側には、患者に自己の感情に丸印をつけさせる自己感情リスト(121)および相手への期待やその意図を記入させる自己メッセージ記入欄(122)が配置される。シート右側には、患者に相手の感情を想像して丸印をつけさせる相手感情リスト(131)および相手から自己への期待やその意図を想像して記入させる相手メッセージ記入欄(132)が配置される。シート下方には、上記シーンに第三者が存在したと仮定して、当該第三者のコメントを想像して記入させる第三者コメントエリア(150)が配置される。患者自身が各欄への記入を行うことにより、疾患が改善する。

Description

本発明は、精神疾患の治療用具および治療装置に関し、特に、自己と特定の相手との間の人間関係に関連した精神疾患の治療に用いる精神疾患の治療用具および治療装置に関する。
現代社会において、精神疾患や精神障害と呼ばれる症状をもつ患者は、今後も益々増加する傾向にあると予想されており、副作用のない効果的な治療法が望まれている。特に、心因性の精神疾患の典型例というべき鬱病は、社会活動の中枢をなす若年層から現役引退後の老年層に至るまで、幅広い年齢層で患者が発生しており、大きな社会問題になっている。鬱病患者は、強い悲しみ、失望感、意欲や集中力の低下、大きな不安感などを抱いており、不眠、食欲減退、頭痛などの症状を訴えることも少なくない。
このような鬱病の診断には、様々な方法が提案されている。たとえば、下記の特許文献1には、患者にカード状の質問票を渡して回答させ、得られた回答結果に基づいてファジィ推論を適用することにより、症状を正確に評価する技術が開示されている。一方、鬱病の治療方法も、種々の方法が提案され、実際に施術されている。たとえば、化学的な治療方法としては、様々な抗鬱薬が処方されている。また、物理的な治療方法も研究されており、たとえば、下記の特許文献2には、高周波パルス列の低周波シーケンスによって、脳のニューロンに対して電気的な刺激を与える精神疾患の治療装置が開示されている。また、特許文献3には、患者の目に対して左右に移動する発光点を提示することにより精神疾患を治療する顔面装着型の治療装置が開示されている。
国際公開第WO2004/080312号公報 国際公開第WO2006/063558号公報 国際公開第WO2009/142380号公報
現在、鬱病の治療法としては、投薬による化学的な治療法と、専門医によるカウンセリングによる方法が一般的である。ただ、薬物投与には副作用の問題があり、専門医によるカウンセリングだけでは、必ずしも効果的な治療を行うことができないという問題がある。特に、現代人の鬱病は、患者を取り巻く他人との人間関係に関連するものが多いが、専門医によるカウンセリングだけでは、患者の内的感情を正確に聞き出すことが困難であり、十分な治療効果を奏することができない。
そこで、本発明は、人間関係に関連した精神疾患の治療を効果的に行うことが可能な精神疾患の治療用具および治療装置を提供することを目的とする。
(1) 本発明の第1の態様は、自己と特定の相手との間の人間関係に関連した精神疾患の治療に用いる精神疾患の治療用シートにおいて、
任意の図を描画するための空白部分を有する図描画エリアと、自己の気持ちに関する情報を記入するための自己情報記入エリアと、相手の気持ちに関する情報を記入するための相手情報記入エリアと、第三者のコメントを記入するための第三者コメントエリアと、を設け、
自己情報記入エリアには、自己の感情を記入するための自己感情記入欄を設け、相手情報記入エリアには、相手の感情を記入するための相手感情記入欄を設けるようにし、
自己感情記入欄および相手感情記入欄には、それぞれ、感情を示す単語を複数列挙した感情リストを配置するようにしたものである。
(2) 本発明の第2の態様は、上述した第1の態様に係る精神疾患の治療用シートにおいて、
自己感情記入欄および相手感情記入欄に、罫線で囲まれた複数のセルにそれぞれ感情を示す単語が記載された感情リストを配置したものである。
(3) 本発明の第3の態様は、上述した第1または第2の態様に係る精神疾患の治療用シートにおいて、
図描画エリアには、図を描くエリアであることを示す表題が記載されており、自己情報記入エリアには、自己の情報を記入するエリアであることを示す表題が記載されており、相手情報記入エリアには、相手の情報を記入するエリアであることを示す表題が記載されており、第三者コメントエリアには、第三者のコメントを記入するエリアであることを示す表題が記載されているようにしたものである。
(4) 本発明の第4の態様は、上述した第1〜第3の態様に係る精神疾患の治療用シートにおいて、
シートを縦方向に貫く中心線を定義したときに、自己情報記入エリアは中心線よりも左側に配置され、相手情報記入エリアは中心線よりも右側に配置され、図描画エリアおよび第三者コメントエリアは中心線を跨いで、中心線が中心となるように配置されているようにしたものである。
(5) 本発明の第5の態様は、上述した第1〜第4の態様に係る精神疾患の治療用シートにおいて、
自己情報記入エリアは、更に、自己から相手に伝えたいメッセージを記入するための自己メッセージ記入欄を含んでおり、
相手情報記入エリアは、更に、相手から自己に伝えたいメッセージを記入するための相手メッセージ記入欄を含んでいるようにしたものである。
(6) 本発明の第6の態様は、上述した第5の態様に係る精神疾患の治療用シートにおいて、
図描画エリア、自己感情記入欄、自己メッセージ記入欄、相手感情記入欄、相手メッセージ記入欄、第三者コメントエリアの順序で記入を行うことを示すための記入順序符号が各エリアもしくは各欄に記載されているようにしたものである。
(7) 本発明の第7の態様は、上述した第5の態様に係る精神疾患の治療用シートを3組用いて精神疾患の治療用具を構成するようにし、
第1の治療用シートには、当該第1の治療用シートが第1番目の記入対象となるシートであることを示すシート種別記号が表示されたシート種別表示エリアが設けられており、
第2の治療用シートには、当該第2の治療用シートが第2番目の記入対象となるシートであることを示すシート種別記号が表示されたシート種別表示エリアが設けられており、
第3の治療用シートには、当該第3の治療用シートが第3番目の記入対象となるシートであることを示すシート種別記号が表示されたシート種別表示エリアが設けられており、
第2の治療用シートには、第1の治療用シートの自己情報記入エリアに記入された内容が相手に伝えられ、第1の治療用シートの相手情報記入エリアに記入された内容が自己に伝えられたという想定で、当該第2の洽療用シートへの記入を行う旨の指示が記載されており、
第3の治療用シートには、第2の治療用シートの自己情報記入エリアに記入された内容が相手に伝えられ、第2の治療用シートの相手情報記入エリアに記入された内容が自己に伝えられたという想定で、当該第3の治療用シートへの記入を行う旨の指示が記載されているようにしたものである。
(8) 本発明の第8の態様は、上述した第7の態様に係る精神疾患の治療用具において、
第3の治療用シートの第三者コメントエリアには、特定の人物の感情およびアドバイスを記入する特定人物欄と、一般第三者のコメントを記入するための一般第三者欄と、が設けられており、
第1の治療用シートおよび第2の治療用シートには、図描画エリア、自己感情記入欄、自己メッセージ記入欄、相手感情記入欄、相手メッセージ記入欄、第三者コメントエリアの順序で記入を行うことを示すための記入順序符号が各エリアもしくは各欄に記載されており、
第3の治療用シートには、図描画エリア、特定人物欄、自己感情記入欄、自己メッセージ記入欄、相手感情記入欄、相手メッセージ記入欄、一般第三者欄の順序で記入を行うことを示すための記入順序符号が各エリアもしくは各欄に記載されているようにしたものである。
(9) 本発明の第9の態様は、上述した第7または第8の態様に係る精神疾患の治療用具において、
第1の治療用シート、第2の治療用シート、第3の治療用シートに加えて、更に、総括用シートを設け、
総括用シートには、当該総括用シートが第4番目の記入対象となるシートであることを示すシート種別記号が表示されたシート種別表示エリアが設けられており、第1〜第3の治療用シートの記入内容の変遷を振り返ったときの感想を記入する旨の指示が記載されているようにしたものである。
(10) 本発明の第10の態様は、自己と特定の相手との間の人間関係に関連した精神疾患の治療に用いる精神疾患の治療装置において、
治療を受けるユーザからの指示操作を入力する指示入力ユニットと、ユーザに対する提示情報をディスプレイ画面上に表示する情報表示ユニットと、指示入力ユニットが入力した指示操作に基づいて所定の提示情報を作成し、これを情報表示ユニットに与える情報処理ユニットと、を設け、
情報処理ユニットが、
ユーザに対して、自己と相手についての特定のシーンを示す図を描く旨の指示を与え、ユーザの指示操作に基づいてシーン図を作成し、これをディスプレイ画面上に表示する処理を行う描画処理部と、
シーン図と、感情を示す単語を複数列挙した感情リストと、をディスプレイ画面上に表示させ、シーン図についてユーザ自身が抱く感情を、表示中の感情リストの中から選択する旨の指示をユーザに対して与えることにより、特定の感情を自己感情として選択させる処理を行う自己感情選択部と、
シーン図と、自己感情と、をディスプレイ画面上に表示させ、シーン図について自己が相手に伝えたいメッセージを入力する旨の指示をユーザに対して与えることにより、特定のメッセージを自己メッセージとして入力する処理を行う自己メッセージ入力部と、
シーン図と、感情を示す単語を複数列挙した感情リストと、をディスプレイ画面上に表示させ、シーン図について相手が抱くであろうと思われる感情を、表示中の感情リストの中から選択する旨の指示をユーザに対して与えることにより、特定の感情を相手感情として選択させる処理を行う相手感情選択部と、
シーン図と、相手感情と、をディスプレイ画面上に表示させ、シーン図について相手が自己に伝えたいであろうと思われるメッセージを入力する旨の指示をユーザに対して与えることにより、特定のメッセージを相手メッセージとして入力する処理を行う相手メッセージ入力部と、
シーン図と、自己感情および自己メッセージと、相手感情および相手メッセージと、をディスプレイ画面上に表示させ、シーン図に描かれているシーンに第三者が存在したと仮定した場合に、当該第三者が言及するであろうと思われるコメントを入力する旨の指示をユーザに対して与えることにより、特定のコメントを第三者コメントとして入力する処理を行う第三者コメント入力部と、
描画処理部、自己感情選択部、自己メッセージ入力部、相手感情選択部、相手メッセージ入力部、第三者コメント入力部が、所定の順序で順番に処理を行うように制御する統括制御部と、
を有するようにしたものである。
(11) 本発明の第11の態様は、上述した第10の態様に係る精神疾患の治療装置において、
描画処理部、自己感情選択部、自己メッセージ入力部、相手感情選択部、相手メッセージ入力部、第三者コメント入力部が、同一の表示画面を利用してユーザからの指示操作を入力し、当該指示操作によって入力された情報を当該同一の表示画面に表示させる一巡の情報入力機能を有するようにし、
統括制御部が、第1の表示画面を利用した第1巡目の情報入力、第2の表示画面を利用した第2巡目の情報入力、第3の表示画面を利用した第3巡目の情報入力が順に行われるよう制御を行うようにしたものである。
(12) 本発明の第12の態様は、上述した第10または第11の態様に係る精神疾患の治療装置を、コンピュータにプログラムを組み込むことにより構成したものである。
本発明に係る精神疾患の治療用シートには、自己と相手についての特定のシーンを描くための図描画エリアと、自己の感情や相手へのメッセージを記入するための自己情報記入エリアと、相手の感情や自己へのメッセージを推察して記入するための相手情報記入エリアと、第三者のコメントを記入するための第三者コメントエリアと、が設けられている。したがって、この治療用シートに記入を行う患者は、ある特定のシーンを思い浮かべながら、その時の自分の感情や相手に伝えたい内容を整理することができ、更に、これに応じて相手から返されるであろう相手の感情やメッセージを思い浮かべることができ、更に、当該シーンに第三者が居た場合を想定して、当該第三者のコメントを推察することができる。このため、相手に対する自分の気持ちを整理することができ、相手の立場や第三者の目を通じた客観的な状況把握を行うことができるようになり、患者自身の自発的な精神活動により、鬱病の効果的な治療が可能になる。
また、本発明に係る精神疾患の治療用具は、上記治療用シートを3組有しており、患者に対して、これら3組のシートに順次記入する操作を行わせることができる。しかも、3組のシートには、時系列的な順番が定められており、前のシートに記入した内容が相手方に伝えられたものとして、次のシートへの記入が促されるため、相手に対する感情に変化を誘発させる効果が得られるため、より効果的な治療が可能になる。
一方、本発明に係る精神疾患の治療装置は、コンピュータの画面を利用して、患者からの入力を受け付け、その結果をコンピュータの画面に表示することにより、上記治療用シートや上記治療用具と同等の効果を、コンピュータの画面上で奏することが可能になる。
図1は、本発明に係る精神疾患の治療用シートの基本的なエリア構成を示す平面図である。
図2は、本発明に係る精神疾患の治療用シートの具体的な実施例を示す平面図である。
図3は、図2に示す治療用シートを含む精神疾患の治療用具の構成を示す図である。
図4は、図3に示す精神疾患の治療用具の構成要素となる第1の治療用シート100の平面図である。
図5は、図3に示す精神疾患の治療用具の構成要素となる第2の治療用シート200の平面図である。
図6は、図3に示す精神疾患の治療用具の構成要素となる第3の治療用シート300の平面図である。
図7は、図3に示す精神疾患の治療用具の構成要素となる総括用シート400の平面図である。
図8は、図4に示す第1の治療用シート100に対して患者が記入作業を完了した状態を示す平面図である。
図9は、図5に示す第2の治療用シート200に対して患者が記入作業を完了した状態を示す平面図である。
図10は、図6に示す第3の治療用シート300に対して患者が記入作業を完了した状態を示す平面図である。
図11は、図7に示す総括用シート400に対して患者が記入作業を完了した状態を示す平面図である。
図12は、図4に示す第1の治療用シート100のより具体的な実施例の一例を示す平面図である。
図13は、図5に示す第2の治療用シート200のより具体的な実施例の一例を示す平面図である。
図14は、図6に示す第3の治療用シート300のより具体的な実施例の一例を示す平面図である。
図15は、図7に示す総括用シート400のより具体的な実施例の一例を示す平面図である。
図16は、本発明に係る精神疾患の治療装置600の基本構成を示すブロック図である。
図17は、図16に示す治療装置600における情報表示ユニット620によって表示される画面の一例を示す図である。
図18は、図16に示す治療装置600における描画処理部631による処理によってシーン図の入力が行われた状態を示す図である。
図19は、図16に示す治療装置600における自己感情選択部632による処理によって自己感情の入力が行われた状態を示す図である。
図20は、図16に示す治療装置600における自己メッセージ入力部633による処理によって自己メッセージの入力が行われた状態を示す図である。
図21は、図16に示す治療装置600における相手感情選択部634による処理によって相手感情の入力が行われた状態を示す図である。
図22は、図16に示す治療装置600における相手メッセージ入力部635による処理によって相手メッセージの入力が行われた状態を示す図である。
図23は、図16に示す治療装置600における第三者コメント入力部636による処理によって第三者コメントの入力が行われた状態を示す図である。
図24は、図16に示す治療装置600において、第2巡目の情報入力が行われている状態をを示す図である。
図25は、図16に示す治療装置600において、第3巡目の情報入力が行われている状態を示す図である。
図26は、図16に示す治療装置600において、最後の総括情報入力が行われている状態を示す図である。
以下、本発明を図示する実施形態に基づいて説明する。
<<< §1.精神疾患の治療用シートの基本構成 >>>
はじめに、本発明に係る精神疾患の治療用シートの基本構成を説明する。図1は、この治療用シート100の基本的なエリア構成を示す平面図である。この治療用シート100には、図1に太線の輪郭で囲って示すように、シート種別表示エリア110、自己情報記入エリア120、相手情報記入エリア130、図描画エリア140、第三者コメントエリア150という5つのエリアが設けられている。図には、説明の便宜上、各エリアの名称を、円弧状の括弧(parenthesis)内に記載した。以下、これら各エリアの構成および役割を順に説明する。
まず、シート100の上部に配置されているシート種別表示エリア110は、当該シート100が何番目のシートであるかを示すシート種別記号を表示するためのエリアである。この§1で述べる例は、単一の治療用シート100についての実施例であり、1枚の治療用シート100のみを用いて治療を行うことができる。ただ、治療効果をより高める上では、§4で述べる治療用具を用いるのが好ましい。§4で述べる例は、3種類の治療用シートを用いた実施例であるため、3枚の治療用シートを相互に区別する必要がある。シート種別表示エリア110は、シートを区別するためのシート種別記号を表示するために利用される。
シート100の中央に配置されている図描画エリア140は、任意の図を描画するための空白部分を有するエリアである。後述するように、この図描画エリア140には、患者が、自己と相手についての特定のシーンを示す図を描くことになるので、そのようなシーン図を描くのに適したエリアになるようにする。
シート100の左側に配置されている自己情報記入エリア120は、患者が自己の気持ちに関する情報を記入するためのエリアであり、この実施例の場合、図示のとおりL字型をしている。破線で分離して示すとおり、この自己情報記入エリア120には、自己の感情を記入するための自己感情記入欄121(上段)と、自己から相手に伝えたいメッセージを記入するための自己メッセージ記入欄122(下段)とが設けられている。図には、説明の便宜上、各欄の名称を、角型の括弧(bracket)内に記載した。
一方、シート100の右側に配置されている相手情報記入エリア130は、患者が相手の気持ちに関する情報を記入するためのエリアであり、この実施例の場合、図示のとおりL字型をしている。破線で分離して示すとおり、この相手情報記入エリア130には、相手の感情を記入するための相手感情記入欄131(上段)と、相手から自己に伝えたいメッセージを記入するための相手メッセージ記入欄132(下段)とが設けられている。図には、説明の便宜上、各欄の名称を、角型の括弧(bracket)内に記載した。
そして、シート100の下部に配置されている第三者コメントエリア150は、第三者のコメントを記入するためのエリアである。
図2は、本発明に係る精神疾患の治療用シート100の具体的な実施例を示す平面図である。既に図1を参照して説明したとおり、この精神疾患の治療用シート100には、シート種別表示エリア110、自己情報記入エリア120、相手情報、記入エリア130、図描画エリア140、第三者コメントエリア150という5つのエリアが設けられている。なお、図1では、説明の便宜上、これら5つのエリアの境界を太線で示したが、実際には、各エリアの境界は必ずしも太線にする必要はない。
この治療用シート100は、自己と特定の相手との間の人間関係に関連した精神疾患の治療に用いるシートであり、所定の指示に基づいて患者自身にシートの所定箇所に所定事項を記入させることにより治療効果が得られる。したがって、治療用シート100自体の材質は、記入作業に適したものであればどのようなものであってもかまわない。実用上は、一般的な紙のシートを用いるのが好ましい。
図1が、治療用シート100上に設けられる各エリアの構成を示すための図であるのに対して、図2は、この治療用シート100の具体例を示す平面図である。図示のとおり、この治療用シート100の実体は、紙のシート上に罫線や文字を印刷した印刷物であるが、その印刷された内容および配置に特徴がある。このため、患者に対して、後述する方法によって適切な指示を与え、所定の記入作業を行わせることにより、自己と特定の相手との間の人間関係に関連した精神疾患に対して有意な治療効果が得られる。
図2に示す治療用シート100の場合、シート種別表示エリア110の右端には、「ワークシート1」なるシート種別記号が表示されている。この記号は、当該シート100が第1番目のシートである旨を示している。上述したとおり、この治療用シート100を単独で用いた治療を行う際には、シート種別表示エリア110は不要であるが、§2で述べる例のように、複数枚の治療用シートを用いた治療を行う場合には、各シートについての記入順序を示すため、シート種別記号を表示するのが好ましい。なお、図示の例では、シート種別表示エリア110の左端に、「シーン名」を記入する欄が設けられている。この欄は、図描画エリア140に描くシーンの表題を記入するための欄であり、本発明を実施する上で必ずしも必要なものではない。
図描画エリア140は、矩形の枠で囲まれた部分であり、図示の例の場合、「シーンの図示」という表題、すなわち、当該エリアが、図を描くエリアであることを示す表題が記載されている。図描画エリア140の内部は、その大部分が図を描画するための空白部分になっており、後述するように、患者は、ここに自己と相手についての特定のシーンを示す図を描くことになる。シート種別表示エリア110の「シーン名」欄には、ここに描いたシーンの表題が記入される。
自己情報記入エリア120の上段に配置された自己感情記入欄121には、「あなた自身『 』」という表示がなされている。この表示は、自己情報記入エリア120が、自己の情報を記入するエリアであることを示す表題であり、患者は、「 」の部分に自分の名前を記入するよう指示される。その下には、感情を示す単語を複数列挙した感情リストが配置されている。図示の例の場合、3行3列に配置された各セルに、「喜び」,「寂しさ」,「心配」,「怒り」,「憎悪」,「失望」,「悲しみ」,「軽蔑」、「恐怖」という9種類の感情を示す単語が記載されている。患者は、図描画エリア140に描いたシーンを思い浮かべながら、その時に抱いた感情に丸印をつけるよう指示される。
また、自己情報記入エリア120の下段に配置された自己メッセージ記入欄122は、「相手への期待」と記載された記入欄と「期待の意図」と記載された記入欄によって構成されており、自己から相手に伝えたいメッセージを記入するために利用される。患者は、図描画エリア140に描いたシーンに関連して、相手への期待とその意図を記入するよう指示される。
一方、相手情報記入エリア130の上段に配置された相手感情記入欄131には、「相手『 』さん」という表示がなされている。この表示は、相手情報記入エリア130が、相手の情報を記入するエリアであることを示す表題であり、患者は、「 」の部分に相手の名前を記入するよう指示される。その下には、やはり3行3列に配置された各セルに9種類の感情を示す単語を記載した感情リストが配置されている。患者は、図描画エリア140に描いたシーンを思い浮かべながら、その時に相手が抱いたであろうと思われる感情に丸印をつけるよう指示される。
また、相手情報記入エリア130の下段に配置された相手メッセージ記入欄132は、「自己への期待」と記載された記入欄と「期待の意図」と記載された記入欄によって構成されており、相手が自己に伝えたいと推定されるメッセージを記入するために利用される。患者は、図描画エリア140に描いたシーンに関連して、相手が自己に対して抱いたであろうと思われる期待とその意図を記入するよう指示される。
第三者コメントエリア150には、「第三者『 』さんのコメント」という表示がなされている。この表示は、第三者コメントエリア150が、第三者のコメントを記入するエリアであることを示す表題であり、患者は、「 」の部分に、上記シーンに存在したと仮定する第三者の名前を記入し、更に、当該第三者が上記シーンを目撃していたと仮定した場合に、当該第三者が言及するであろうと思われるコメントを記入するよう指示される。
<<< §2.精神疾患の治療用シートの使用方法 >>>
続いて、図2に示す治療用シート100の具体的な使用方法、すなわち、当該シートを用いた具体的な治療方法の手順を説明する。はじめに、当該治療用シート100を患者に手渡し、指示にしたがって、各欄に順次記入を行うように指示する。具体的には、施術者は、次の(1)〜(9)の指示を順番に患者に与えるようにすればよい。なお、以下の(1)〜(9)の指示は、図2に示す治療用シート100に丸数字1〜9が付された各欄についての記入指示に対応している。本願では、図において丸数字x(x=1〜10)が記されている部分を、便宜上、「第x欄」と呼ぶことにする。図2に示す治療用シート100の場合、「第1欄」〜「第9欄」が設けられている。
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(1) いま、あなたが不快感をもっている相手を1人だけ特定し、あなたとその相手が登場するシーンを思い浮かべ、そのシーンにタイトルをつけて「第1欄」の「シーン名」の部分に記入して下さい。
(2) 上記シーンの様子を「第2欄」の「シーンの図示」の空白部分に簡単な図として描いて下さい。
(3) 「第3欄」の「あなた自身『 』」の部分に、あなた自身のお名前を記入してください。そして、その下のリストに列挙されている感情の中から、「第2欄」に描いたシーンにおいてあなたが抱いた感情に丸印をつけてください(複数可)。そして、その中で最も強い感情に二重丸をつけ、上記シーンにおいて経験した二重丸の感情を、心の中で再現してみてください。
(4) 「第4欄」の「相手への期待」の部分に、上記シーンにおいて、相手に期待すること(相手にはどうして欲しかったか)を記入して下さい。
(5) 「第5欄」の「期待の意図」の部分に、「第4欄」に記入した「相手への期待」の意図(なぜ、そのような期待をもったか、その期待が叶ったら何が得られるか)を記入して下さい。
(6) 「第6欄」の「相手『 』」の部分に、相手のお名前(ニックネームやイニシャルでも可)を記入してください。そして、その下のリストに列挙されている感情の中から、「第2欄」に描いたシーンにおいて相手が抱いていたと思われる感情に丸印をつけてください(複数可)。そして、その中で最も強い感情に二重丸をつけ、上記シーンにおいて相手が経験したと思われる二重丸の感情を、あなたが相手の立場に立って心の中で再現してみてください。
(7) 「第7欄」の「自己への期待」の部分に、上記シーンにおいて、相手があなたに期待すること(相手は、あなたにどうして欲しかったか)を記入して下さい。
(8) 「第8欄」の「期待の意図」の部分に、「第7欄」に記入した「自己への期待」の意図(相手は、なぜ、そのような期待をもったか、その期待が叶ったら、相手には何が得られるか)を記入して下さい。
(9) 「第2欄」に描いたシーンに全く利害関係のない第三者が居たと仮定して、この第三者を「第2欄」の絵に追加して下さい。そして、「第9欄」の「第三者『 』さんのコメント」の部分に、上記第三者のお名前を記入して、この第三者が、このシーンを客観的に眺めていたら、どんなコメントをするかを想定して記入して下さい。また、この第三者が、「第4欄」,「第7欄」の期待や、「第5欄」,「第8欄」の意図を認識していたとしたら、どのようなコメントをするかも想定して記入して下さい。
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もちろん、上記(1)〜(9)の指示文言は、ほんの一例を示すものであり、同趣旨の指示であれば、どのような文言による指示でもかまわない。また、指示は、施術者が患者に対して口頭で伝えるようにしてもよいし、別に手渡す作業説明書に記載しておくようにしてもよい。後者の場合、患者は、作業説明書を読みながら、治療用シート100への記入作業を進めてゆくことになる。
なお、図2に示す実施例では、感情リストとして9種類の感情を示す単語が記載されたリストを示したが、実用上は、より多数の感情を掲載しておくのが好ましい。たとえば、後述する図12〜図14に示す実施例では、32種類の感情を示す単語を掲載した感情リストが用いられている。また、必要に応じて、患者には、リストに掲載されていない感情を手書きで追加してもらうようにしてもかまわない。
<<< §3.精神疾患の治療用シートの使用効果 >>>
本発明に係る治療方法の特徴は、治療用シート100への記入を、すべて患者自身が行う点である。すなわち、相手情報記入エリア130には、相手に関する情報が記入されることになるが、実際には、相手が記入するわけではなく、あくまでも患者自身が、相手の立場に立って、相手の気持ちを記入することになる。同様に、第三者コメントエリア150には、第三者のコメントが記入されることになるが、実際には、第三者が記入するわけではなく、あくまでも患者自身が、第三者の立場に立って、第三者としての客観的なコメントを記入することになる。
そもそも、人間関係に関連した精神疾患は、相手の立場に立った思考や、客観的な第三者の立場に立った思考を行い、相手に対する「受容」の気持ちを高めることにより、改善されるものと考えられている。本発明に係る治療用シートは、このような観点に基づく治療を行う上で、非常に有益な道具として機能する。
本発明に係る治療用シートの第1の特徴は、図描画エリア140を設けた点にある。一般に、対人関係についての悩みは、自己と相手に共通する特定の経験に根ざしていることが多く、患者の脳裏には、当該経験が不快なシーンとして刻み込まれている。別言すれば、このような不快なシーンに対する不快感を払拭することができれば、精神疾患の症状に対する根本的な改善が期待できる。本発明に係る治療用シートを利用すれば、図描画エリア140に不快なシーンを図として描かせることにより、当該シーン図に描かれている事実を、自分の立場、相手の立場、そして第三者の立場から再検証するきっかけを作ることができる。
本発明に係る治療用シートの第2の特徴は、自己の気持ちに関する情報を記入するための自己情報記入エリア120と、相手の気持ちに関する情報を記入するための相手情報記入エリア130とを、図描画エリア140と同じシート上に設けた点にある。患者は、図描画エリア140に描かれた図を見ながら、特定のシーンを頭に思い浮かべ、そのときの自己の気持ちに関する情報を自己情報記入エリア120に記入し、そのときの相手の気持ちに関する情報を想像して、相手情報記入エリア130に記入することができる。
具体的には、当該シーンにおいて自己が抱いた感情を自己感情記入欄121に記入し、相手が抱いたと想像される感情を相手感情記入欄131に記入することができる。しかも、これらの感情の記入は、感情を示す単語を複数列挙した感情リストからの選択という簡単な作業によって行うことができる。特に、図2に示す実施例のように、自己感情記入欄121および相手感情記入欄131に、罫線で囲まれた複数のセルにそれぞれ感情を示す異なる単語が記載された同一の感情リストを配置するようにすれば、患者の選択作業は、丸印の付与という簡単な作業で済む。
また、図2に示す実施例のように、自己から相手に伝えたいメッセージを記入するための自己メッセージ記入欄122を設け、相手への期待やその意図を記入させるようにし、相手から自己に伝えたいメッセージを記入するための相手メッセージ記入欄132を設け、相手の自己に対する期待やその意図を記入させるようにすれば、自己や相手の感情だけでなく、期待やその意図についても検証することができる。
このように、本発明に係る治療用シートを用いれば、精神疾患の症状に対する根本原因となる特定のシーンに関して、自己の立場から自己の気持ちを再考した後、相手の立場から相手の気持ちを推考することができ、相手に対する「受容」の気持ちを高めることが可能になる。
そして、本発明に係る治療用シートの第3の特徴は、第三者のコメントを記入するための第三者コメントエリア150を、図描画エリア140と同じシート上に設けた点にある。患者は、図描画エリア140に描かれた図を見ながら、特定のシーンを頭に思い浮かべ、当該シーンを、利害関係のない第三者の客観的な目を通して見た場合に、第三者であれば、どのようなコメントを行うかを想像して、第三者のコメントを第三者コメントエリア150に記入することができる。このような客観的なコメントに接することにより、相手に対する「受容」の気持ちを更に高めることが可能になる。
なお、図2に示す実施例の場合、上記3つの特徴をより効果的に機能させるための工夫が施されている。すなわち、図1に示すように、シート100を縦方向に貫く中心線Cを定義したときに、自己情報記入エリア120は中心線Cよりも左側に配置され、相手情報記入エリア130は中心線Cよりも右側に配置されている。一方、図描画エリア140および第三者コメントエリア150は中心線Cを跨いで、中心線Cが中心となるように配置されている。その結果、図1に示す各エリアの構成および配置は、中心線Cに関して線対称になっている。
このような配置は、自己と相手との関係を客観的に見る上で重要である。すなわち、中心線Cを挟んで、左側に自己情報記入エリア120が配置され、右側に相手情報記入エリア130が配置されており、両者は線対称のエリアになっているため、患者には、自己と相手とが対等な関係にあることを暗示することができる。すなわち、患者は、図描画エリア140に描かれたシーンにおいて、自己が特定の感情を抱き、自己が相手に対して特定の期待を抱くのと全く同様に、相手も特定の感情を抱き、相手が自己に対して特定の期待を抱くことを、直感的に把握できる。
また、図描画エリア140が左右に偏在しない中央に配置されていることにより、患者は、そこに描かれたシーンが、自己にとっても相手にとっても対等な経験であることを直感的に把握できる。同様に、第三者コメントエリア150が左右に偏在しない中央に配置されていることにより、患者は、そこに記入されたコメントが、自己にとっても相手にとっても対等なコメントであることを直感的に把握できる
なお、この治療用シート100に対する記入作業を行う場合、各エリアに対する記入順序は非常に重要である。すなわち、最大限の治療効果を得るためには、上述したとおり、ます、図描画エリア140にシーンの図を描かせ、続いて、シーン図を参照させながら自己情報記入エリア120に自己感情および期待等を記入させ、その後で、シーン図を参照させながら相手情報記入エリア130に相手感情および期待等を記入させ、最後に、シーン図を参照させながら第三者コメントエリアに第三者コメントを記入させる、という順序で、各エリアへの記入が行われるようにするのが好ましい。
そこで、図2に示す治療用シート100では、「第1欄:シート種別表示エリア」,「第2欄:図描画エリア」,「第3欄:自己感情記入欄」,「第4欄:自己メッセージ記入欄(相手への期待)」,「第5欄:自己メッセージ記入欄(期待の意図)」,「第6欄:相手感情記入欄」,「第7欄:相手メッセージ記入欄(自己への期待)」,「第8欄:相手メッセージ記入欄(期待の意図)」,「第9欄:第三者コメントエリア」の順序で記入を行うことを示すための記入順序符号(図の例の場合は、丸数字1〜9)を、各エリアもしくは各欄に記載するようにしている。患者は、この丸数字1〜9の順序で記入を行えばよい。
<<< §4.精神疾患の治療用具の基本構成 >>>
これまで、§1〜§3において、本発明に係る精神疾患の治療用シート100についての説明を行ってきた。この治療用シート100は、単独で使用してもある程度の治療効果が得られるものであるが、実用上は、以下に説明するように、3組の治療用シートを組み合わせて用いるのが好ましい。本願では、この3組の治療用シートを組み合わせたものを「治療用具」と呼ぶことにする。
図3は、図2に示す治療用シート100を含む精神疾患の治療用具の構成を示す図である。図示のとおり、ここに示す治療用具は、第1の治療用シート100,第2の治療用シート200,第3の治療用シート300,総括用シート400という4枚のシートと、作業説明書500によって構成されている。
第1の治療用シート100は、§1で述べた治療用シート100(図2参照)と全く同じシートである。第2の治療用シート200および第3の治療用シート300は、治療用シート100の一部の文言を若干変更したシートであり、総括用シート400は、記入作業の最後に、まとめとして記入するシートである。また、作業説明書500は、これら各シートの各欄への記入作業を行う際の指示を記載した小冊子である。以下、これら各構成要素について、個別の説明を行う。
図4は、図3に示す精神疾患の治療用具の構成要素となる第1の治療用シート100の平面図である。上述したとおり、この図4に示す第1の治療用シート100は、図2に示す治療用シート100と全く同じシートであり、ここでは、各欄についての詳しい説明は省略する。
図示のとおり、シート種別表示エリア110(丸数字1が記載された「第1欄」)の右端には、「ワークシート1」なる記号が表示されているが、これは4枚のシートを区別するためのシート種別記号であり、この第1の治療用シート100が、第1番目の記入対象となるシートであることを示すものである。なお、図2では、説明の便宜上、治療用シート100の各エリアの境界が太線で示されているが。実際には、図4に示すように、各エリアの境界や各欄の境界線は、すべて同じ線でかまわない。
図5は、図3に示す精神疾患の治療用具の構成要素となる第2の治療用シート200の平面図である。図4に示す第1の治療用シート100と同様に、図5に示す第2の治療用シート200は、シート種別表示エリア210、自己情報記入エリア220、相手情報記入エリア230、図描画エリア240、第三者コメントエリア250の5つのエリアによって構成されており、自己情報記入エリア220には、自己感情記入欄221と自己メッセージ記入欄222とが設けられ、相手情報記入エリア230には、相手感情記入欄231と相手メッセージ記入欄232とが設けられている(図1のエリア構成参照)。
この図5に示す第2の治療用シート200と図4に示す第1の治療用シート100との相違点は、次のとおりである。まず、シート種別表示エリア210の右端には、「ワークシート2」なる記号が表示されている。これは4枚のシートを区別するためのシート種別記号であり、この第2の治療用シート200が、第2番目の記入対象となるシートであることを示すものである。また、シート種別表示エリア210の左側には、「前頁の感情・期待・意図を相互に伝えた想定で記入」なる説明文が記載されている。そして、図描画エリア240に、「相互に伝えた後のシーン図示」なる説明文が記載されている。更に、第三者コメントエリア250に、「両者が感情・期待・意図を再度伝えた後の第三者『 』さんのコメント」なる説明文が記載されている。以上の4点を除いて、図5に示す第2の治療用シート200の内容は、図4に示す第1の治療用シート100の内容と同じである。
要するに、第2の治療用シート200には、第1の治療用シート100の自己情報記入エリア120(図4において丸数字3,4,5が記載された「第3,4,5欄」)に記入された内容が相手に伝えられ、第1の治療用シート100の相手情報記入エリア130(図4において丸数字6,7,8が記載された「第6,7,8欄」)に記入された内容が自己に伝えられたという想定で、当該第2の治療用シート200への記入を行う旨の指示が記載されていることになる。
図6は、図3に示す精神疾患の治療用具の構成要素となる第3の治療用シート300の平面図である。図4に示す第1の治療用シート100と同様に、図6に示す第3の治療用シート300は、シート種別表示エリア310、自己情報記入エリア320、相手情報記入エリア330、図描画エリア340、第三者コメントエリア350の5つのエリアによって構成されており、自己情報記入エリア320には、自己感情記入欄321と自己メッセージ記入欄322とが設けられ、相手情報記入エリア330には、相手感情記入欄331と相手メッセージ記入欄332とが設けられている(図1のエリア構成参照)。また、この第3の治療用シート300に固有の特徴として、第三者コメントエリア350には、特定人物欄351と一般第三者欄352とが設けられている。
この図6に示す第3の治療用シート300の構成は、次のとおりである。まず、シート種別表示エリア310の右端には、「ワークシート3」なる記号が表示されている。これは4枚のシートを区別するためのシート種別記号であり、この第3の治療用シート300が、第3番目の記入対象となるシートであることを示すものである。
この第3の治療用シート300の大きな特徴は、各エリアや各欄への記入順序が変更されている点である。このため、各エリアや各欄に丸数字として記載された記入順序符号が大幅に変更されている。具体的には、図4に示す第1の治療用シート100および図5に示す第2の治療用シート200の場合、図描画エリア(丸数字2)、自己感情記入欄(丸数字3)、自己メッセージ記入欄(丸数字4,5)、相手感情記入欄(丸数字6)、相手メッセージ記入欄(丸数字7,8)、第三者コメントエリア(丸数字9)の順序で記入を行うことを示すための記入順序符号(上記各丸数字)が各エリアもしくは各欄に記載されている。
これに対して、図6に示す第3の治療用シート300の場合、図描画エリア(丸数字1)、特定人物欄(丸数字2,3)、自己感情記入欄(丸数字4)、自己メッセージ記入欄(丸数字5,6)、相手感情記入欄(丸数字7)、相手メッセージ記入欄(丸数字8,9)、一般第三者欄(丸数字10)の順序で記入を行うことを示すための記入順序符号(上記各丸数字)が各エリアもしくは各欄に記載されている。以下、各部分を上記記入順(丸数字の順)に説明する。
はじめに、シート種別表示エリア310の左側には、「丸数字1の絵へ」との説明文が記載されており、「丸数字1」が記載された図描画エリア340には、「前頁の感情・期待・意図を相互に伝えた後のシーンを想像して描く」なる説明文が記載されている。そして、特定人物欄351には、「丸数字2」に続く「特定人物『 』の感情」なる説明文と「丸数字3」に続く「特定人物のアドバイス」なる説明文とが記載されている。
また、自己感情記入欄321には、「丸数字4」に続いて「アドバイス後のあなたの感情」なる説明文が記載されており、その下には、9種類の感情を選択するための感情リストが配置されている。自己メッセージ記入欄322には、「丸数字5」に続く「頭の中の声」なる説明文と「丸数字6」に続く「相手に伝えたいこと」なる説明文が記載されている。一方、相手感情記入欄331には、「丸数字7」に続いて「あなたの発言を聴いた後の相手の感情」なる説明文が記載されており、その下には、9種類の感情を選択するための感情リストが配置されている。相手メッセージ記入欄332には、「丸数字8」に続く「頭の中の声」なる説明文と「丸数字9」に続く「相手に伝えたいこと」なる説明文が記載されている。
最後に、一般第三者欄350には、「丸数字10」に続いて、「第三者『 』さんのコメント」なる説明文が記載されている。
要するに、第3の治療用シート300には、第2の治療用シート200の自己情報記入エリア220(図5において丸数字3,4,5が記載された「第3,4,5欄」)に記入された内容が相手に伝えられ、第2の治療用シート200の相手情報記入エリア230(図5において丸数字6,7,8が記載された「第6,7,8欄」)に記入された内容が自己に伝えられたという想定で、当該第3の治療用シート300への記入を行う旨の指示が記載されていることになる。
図7は、図3に示す精神疾患の治療用具の構成要素となる総括用シート400の平面図である。図示のとおり、この総括用シート400には、シート種別表示エリア410と総括質問エリア490が設けられている。シート種別表示エリア410の右端には、「ワークシート4」なる記号が表示されている。これは4枚のシートを区別するためのシート種別記号であり、この総括用シート400が、第4番目の記入対象となるシートであることを示すものである。
一方、総括質問エリア490には、第1〜第3の治療用シート100,200,300の記入内容の変遷を振り返ったときの感想を記入する旨の指示が記載されている。図示の例の場合、4つの質問が列挙されているが、その質問の前に「ワークシート1〜3の記載内容を振り返って記入して下さい。」との指示が記載されており、各質問に対する回答は、いずれも、第1〜第3の治療用シートの記入内容の変遷を振り返ったときの感想を求める内容になっている。
図3に示す精神疾患の治療用具の構成要素となる作業説明書500は、上述した第1〜第3の治療用シート100,200,300および総括用シート400に対する記入作業を行う上での指示を記載したものである。この作業説明書500に記載すべき具体的な指示内容については、§5で説明する。なお、このような指示を施術者が患者に対して口頭で伝える場合は、作業説明書500は不要である。ただ、教室などに集めた多数の患者に対して、同時進行で記入作業を行わせる場合には、個々の患者ごとに、記入作業に要する時間が異なるため、口頭による指示を与える形式ではなく、作業説明書500を配布して、各自が作業説明書500を読みながら作業を進める形式をとるのが好ましい。
なお、本発明に係る精神疾患の治療用具は、上述した第1〜第3の治療用シート100,200,300のみによって構成し、総括用シート400を省略する構成にしてもかまわない。ただ、実用上は、最後のまとめを記入させるために、総括用シート400を用意しておくのが好ましい。
<<< §5.精神疾患の治療用具の使用方法および効果 >>>
続いて、図3に示す治療用具の具体的な使用方法および効果、すなわち、当該シートを用いた具体的な治療方法の手順とその効果を説明する。はじめに、当該治療用具(第1〜第3の治療用シート100,200,300および総括用シート400、ならびに、作業説明書500)を患者に手渡し、作業説明書500に記載された指示にしたがって、各シートの各欄に順次記入を行うように指示する。もちろん、作業説明書500を用いる代わりに、施術者が患者に対して口頭で指示を伝えるようにしてもよい。以下、患者に与える具体的な指示の内容を要点だけ説明する。
まず、全体的な作業手順として、第1の治療用シート100、第2の治療用シート200、第3の治療用シート300、総括用シート400の順番に記入を行い、必要に応じて、記入済みのシートの内容を適宜参照して振り返る旨の指示を与える。
続いて、図4に示す第1の治療用シート100の丸数字1〜9が付された「第1欄」〜「第9欄」に、それぞれ必要事項を記入するよう指示する。具体的な指示内容は、既に§2で説明したとおりである。図8は、図4に示す第1の治療用シート100に対して患者が記入作業を完了した状態を示す平面図である。
図示の例の場合、「第1欄」にシーン名として「業務報告」なる名称が記入されており、「第2欄」に患者が上司に業務報告をしている場面の絵が記入されている。これは、患者が不快感をもっている相手として上司を選び、両者が登場するシーンとして、「業務報告」のシーンを思い浮かべたことを示している。「第3欄」には患者自身の名前「Mr.X」が記入され、感情リストの欄には「怒り」と「憎悪」に丸印がつけられており、「怒り」は二重丸になっている。そして、「第4欄」には「相手への期待」として「正しい評価を」との記入がなされ、「第5欄」には「期待の意図」として「業務環境の改善」との記入がなされている。これは、「第2欄」に描いたシーンに関して、患者自身が現在抱いている感情と、相手に対して伝えたいメッセージを表現したものになる。
一方、「第6欄」には相手(患者の上司)の名前「Mr.Y」が記入され、感情リストの欄には「失望」と「軽蔑」に丸印がつけられており、「失望」は二重丸になっている。そして、「第7欄」には「自己への期待」として「営業努力」との記入がなされ、「第8欄」には「期待の意図」として「実績改善」との記入がなされている。これは、「第2欄」に描いたシーンに関して、相手が抱いているであろうと想像される感情と、相手が自分に対して伝えたいと考えているであろうメッセージを表現したものになる。
もちろん、この「第6欄」,「第7欄」,「第8欄」に記入した内容は、相手(Mr.Y)が実際に抱いている本当の気持ちを示しているものではなく、あくまでも、患者自身(Mr.X)による想像における相手の気持ちになる。本発明に係る治療法の根源は、患者自身に相手の気持ちを思いやる行動を誘発させる点にあり、「第2欄」に記入したシーンを思い浮かべながら、「第3欄」,「第4欄」,「第5欄」に自己の気持ちを記入させた上で、今度は、相手の立場に立って、やはり「第2欄」に記入したシーンを思い浮かべ、相手が抱く気持ちを想像しながら、「第6欄」,「第7欄」,「第8欄」に記入させることは非常に重要である。
特に、ここに示す実施例の場合、中央に配置された図描画エリア140に描かれた図を見ながら、左側の自己情報記入エリアに、自己の立場から見た自己の気持ちを記入し、続いて、右側の相手情報記入エリアに、相手の立場から見た相手の気持ちを想像して記入する作業を行うことになる。しかも、左側の自己情報記入エリアと右側の相手情報記入エリアとは左右対称になっているため、自己と相手とを対等な人間として捉え、自分サイドの見方と相手サイドの見方とを、できるだけ中立的な立場に立って客観的に把握するきっかけを与える効果が得られる。
そして、最後の「第9欄」には、第三者の名前「Mr.Z」が記入され、当該第三者のコメントとして「相互に相手を理解する努力を」との記入がなされている。ここで、第三者「Mr.Z」は、「第2欄」に描いたシーンに全く利害関係のない者として、患者自身が想定した人物であり、たとえば、患者自身の会社の同僚などを「Mr.Z」として設定することができる。そして、「第9欄」には、もし当該第三者が、このシーンに居合わせたと仮定した場合に、どのようなコメントをするかが記入される。
もちろん、この「第9欄」に記入した内容は、当該第三者(Mr.Z)による実際のコメントではなく、あくまでも、患者自身(Mr.X)による想像における第三者のコメントになるが、当該コメントを記入させることによって、患者は、第三者の視点に立って、「第2欄」に描いたシーンを評価することができる。通常、心因性の精神疾患は、患者が自分自身の視野で、物事を主観的に観察しているために生じることが多い。「第9欄」への記入作業は、患者に対して、第三者の視野で、物事を客観的に観察するきっかけを与えることができ、心因性の精神疾患の改善には非常に効果的である。
特に、ここに示す実施例の場合、「第9欄」の第三者コメントエリアは、「第2欄」の図描画エリアと同様に左右に跨った位置に配置されているため、患者は、描かれたシーンも、「第9欄」に記入された第三者コメントも、自己および相手に対して対等なものとして把握することができ、第三者コメントを両者に対等なコメントとして受け入れることができる。
こうして、第1の治療用シート100への記入作業が完了すると、続いて、図5に示す第2の治療用シート200への記入を行うよう指示がなされる。§4で説明したとおり、第2の治療用シート200の各欄の構成は、実質的には第1の治療用シート100の各欄の構成と同じである。したがって、各欄への記入指示も、基本的には、第1の治療用シート100への記入指示と同じでよい。
ただ、第2の治療用シート200には、第1の治療用シート100の自己情報記入エリア120に記入された内容が相手に伝えられるとともに、第1の治療用シート100の相手情報記入エリア130に記入された内容が自己に伝えられたという想定で、当該第2の治療用シート200への記入を行う旨の指示が記載されている。具体的には、図5に示す第2の治療用シート200の場合、シート種別表示エリア210の左側に「前頁の感情・期待・意図を相互に伝えた想定で記入」なる説明文が記載されている。また、図描画エリア240には「相互に伝えた後のシーン図示」なる説明文が記載されており、第三者コメントエリア250には「両者が感情・期待・意図を再度伝えた後の第三者『 』さんのコメント」なる説明文が記載されている
したがって、この第2の治療用シート200への記入を行うにあたり、口頭もしくは作業説明書500によって患者に伝達する指示には、記入要領は、第1の治療用シート100の記入要領と同じであるが、第1の治療用シート100の自己情報記入エリア120に記入した内容を相手に伝え、逆に、相手情報記入エリア130に記入された内容が自己に伝えられたという前提で、自己および相手に起こるべき心境の変化を考慮した上で、第2の治療用シート200への記入を行う旨を明確にしておくようにする。
図9は、図5に示す第2の治療用シート200に対して患者が記入作業を完了した状態を示す平面図である。上述したとおり、この第2の治療用シート200については、図8に示す記入済の第1の治療用シート100における「第3欄」,「第4欄」,「第5欄」の内容を相手に伝え、更に、図8に示す記入済の第1の治療用シート100における「第6欄」,「第7欄」,「第8欄」の内容が相手から自己に伝えられたと想定した上で、各欄へ記入が行われることになる。通常、両者で実際に感情、期待、意図を言い合うと、心象の変化が生じる。ここでは、実際に言い合いが行われるわけではないが、患者の内心において、言い合った後の状態が想像されることになる。したがって、患者ごとに個人差はあるものの、通常は、第1の治療用シート100の記入内容と第2の治療用シート200の記入内容との間に、何らかの変化が生じることになる。
図9に示す実施例の場合、図描画エリアに描かれたシーンの図には若干の変化が見られる。また、自己情報記入エリアには、感情として「失望」、相手への期待として「時間的猶予」、期待の意図として「営業結果に期待あり」との記入がなされ、相手情報記入エリアには、感情として「心配」、自己への期待として「方針改善」、期待の意図として「時間節約」との記入がなされており、やはり若干の変化が見られる。更に、第三者コメントエリアには「歩み寄り」との記入がなされており、やはり若干の変化が見られる。これは、患者の内心に何らかの変化が生じたためであり、精神疾患が改善している兆候を示すものである。
こうして、第2の治療用シート200への記入作業が完了すると、続いて、図6に示す第3の治療用シート300への記入を行うよう指示がなされる。§4で説明したとおり、第3の治療用シート300の各欄の構成は、第1の治療用シート100や第2の治療用シート200の各欄の構成と比べて、大きな相違はないが、新たに特定人物欄351が設けられたり、各欄の記入順序が異なったりする点が相違する。
また、第3の治療用シート300には、第2の治療用シート200の自己情報記入エリア220に記入された内容が相手に伝えられるとともに、第2の治療用シート200の相手情報記入エリア230に記入された内容が自己に伝えられたという想定で、当該第3の治療用シート300への記入を行う旨の指示が記載されている。具体的には、図6に示す第3の治療用シート300の場合、図描画エリア340に「前頁の感情・期待・意図を相互に伝えた後のシーンを想像して描く」なる説明文が記載されている。
したがって、この第3の治療用シート300への記入を行うにあたり、口頭もしくは作業説明書500によって患者に伝達する指示には、記入要領は、基本的には、これまでの各治療用シート100,200の記入要領と同じであるが、第2の治療用シート200の自己情報記入エリア220に記入した内容を相手に伝え、逆に、相手情報記入エリア230に記入された内容が自己に伝えられたという前提で、自己および相手に起こるべき心境の変化を考慮した上で、第3の治療用シート300への記入を行う旨を明確にしておくようにする。
図10は、図6に示す第3の治療用シート300に対して患者が記入作業を完了した状態を示す平面図である。上述したとおり、この第3の治療用シート300については、図9に示す記入済の第2の治療用シート200における「第3欄」,「第4欄」,「第5欄」の内容を相手に伝え、更に、図9に示す記入済の第2の治療用シート200における「第6欄」,「第7欄」,「第8欄」の内容が相手から自己に伝えられたと想定した上で、各欄へ記入が行われることになる。上述したとおり、両者での言い合いは、それが仮想的なものであっても心象の変化を誘発するため、通常は、第2の治療用シート200の記入内容と第3の治療用シート300の記入内容との間には、何らかの変化が生じる。しかも、第3の治療用シート300の場合、特定人物欄にアドバイスの記入も行われているため、心象の変化をより誘発しやすい。
図10に示す実施例の場合、「第1欄」に描かれたシーンの図には更に変化が見られる。また、「第2欄」には、特定人物として「Mr.S」が記入され、この特定人物の感情として「満足」との記入がなされている。また、「第3欄」には、この特定人物のアドバイスとして「密接なコミュニケーション」との記入がなされている。
ここで、「特定人物」はこれまでの一般第三者「Mr.Z」と同様に、自己および相手以外の第三者であることに違いはないが、これまでの一般第三者「Mr.Z」が、「第1欄」に描かれたシーンに居たであろうと想定される人物であるのに対して、第3の治療用シート300で初めて登場する「特定人物」は、このシーンの場にいてくれると良さそうに思える「愛にあふれた人物」という設定である。
したがって、第3の治療用シート300の「第2欄」および「第3欄」の記入にあたっての指示としては、たとえば、次のような文言を用いるのが好ましい。「これまでの第三者とは別に、このシーンの場にいてくれると良さそうに思える『愛にあふれた人物』を想定してみて下さい。あなたが実際に会った人である必要はなく、また、実在の人物である必要もありません。歴史上の偉人、ドラマの主人公、漫画等の架空のキャラクターでもかまいません。そのような特定人物を想定したら、その特定人物の名前を記入し、その特定人物が図示したシーンを見たときの感情と、その特定人物からのあなたへのアドバイスを想像して記入してみて下さい。」
続く「第4欄」には、「アドバイス後のあなたの感情」との説明文が記載されており、上記アドバイスを聴いた後の自己の気持ちを記入するよう指示されている。図示の例の場合、「第4欄」には感情として「心配」と「寂しさ」に丸印がつけられており、「第5欄」には頭の中の声として「誠実な対応」との記入がなされ、「第6欄」には相手に伝えたいこととして「一層の努力」との記入がなされている。ここで、「第5欄」の「頭の中の声」に記入してもらう事項は、これまでのシートにおける「相手への期待」に記入してもらう事項とほぼ同じであり、「第6欄」の「相手に伝えたいこと」に記入してもらう事項は、これまでのシートにおける「期待の意図」に記入してもらう事項とほぼ同じである。ただ、特定人物のアドバイスを聴いた後の気持ちとして、若干、表現を変えている。
したがって、第3の治療用シート300の「第5欄」および「第6欄」の記入にあたっての指示としては、たとえば、次のような文言を用いるのが好ましい。「二重丸をつけた感情に十分に浸ってから、特定人物からのアドバイスを受け止め、そのときに頭に浮かんだ声を記入して下さい。また、このアドバイスを受け止めた上で、相手に伝えたいことを記入して下さい。」
一方「第7欄」には、「あなたの発言を聴いた後の相手の感情」との説明文が記載されており、「第4欄」,「第5欄」,「第6欄」の内容を相手に伝えた後の相手の気持ちを想像して記入するよう指示されている。図示の例の場合、「第7欄」には感情として「喜び」に二重丸がつけられており、「第8欄」には頭の中の声として「信頼回復」との記入がなされ、「第9欄」には相手に伝えたいこととして「適切な評価」との記入がなされている。ここで、「第8欄」の「頭の中の声」に記入してもらう事項は、これまでのシートにおける「自己への期待」に記入してもらう事項とほぼ同じであり、「第9欄」の「相手(ここでは「相手にとっての相手」、すなわち、患者自身を指す)に伝えたいこと」に記入してもらう事項は、これまでのシートにおける「期待の意図」に記入してもらう事項とほぼ同じである。ただ、「第5欄」,「第6欄」に合わせて、同じ表現を用いている。
したがって、第3の治療用シート300の「第8欄」および「第9欄」の記入にあたっての指示としては、たとえば、次のような文言を用いるのが好ましい。「相手が、二重丸をつけた感情に十分に浸り、更に、第4欄,第5欄,第6欄に記入した事項をあなたから聴いたときに、相手の頭に浮かぶであろう声を想像して記入して下さい。また、相手があなたに伝えたいことを記入して下さい。」
最後の「第10欄」には、第三者「Mr.Z」さんのコメントとして、「今後も協力」との記入がなされている。このように、ここに示す実施例の場合、図8に示す第1の治療用シート100、図9に示す第2の治療用シート200、図10に示す第3の治療用シート300の記入内容は、少しずつ変化してきている。前述したとおり、これは、患者の内心に何らかの変化が生じたためであり、精神疾患が改善している兆候を示すものである。
こうして、第3の治療用シート300への記入作業が完了すると、最後に、図7に示す総括用シート400への記入を行うよう指示がなされる。§4で説明したとおり、この総括用シート400の総括質問エリア490には、第1〜第3の治療用シート100,200,300の記入内容の変遷を振り返ったときの感想を記入する旨の指示が記載されている。
図示の実施例の場合、「第1欄」の「ワークシート1〜3における自己・相手の感情の変遷を見返した時、何を感じますか?」との設問に対して、「立場の違う人間だから仕方がない」との回答が記入されており、「第2欄」の「相手に対して、何を感じますか?相手への感情はどのように変化しましたか?」との設問に対して、「相手への怒りの気持ちはなくなった。」との回答が記入されている。また、「第3欄」の「特定人物のアドバイスに対し、どのように感じますか?」との設問に対して、「よりコミュニケーションを深めよう」との回答が記入されており、「第4欄」の「相手を受容することについて、どのように感じますか?」との設問に対して、「今後も、仕事を続けられそう」との回答が記入されている。
このように、本発明に係る精神疾患の治療用具によれば、3組の治療用シートに順次記入する操作を行わせることができ、しかも、これら3組の治療用シートには、時系列的な順番が定められている。そして、前のシートに記入した内容が相手方に伝えられたものとして、次のシートへの記入が促されるため、相手に対する感情に変化を誘発させる効果が得られる。このように、本発明に係る精神疾患の治療用具は、患者の内心において、相手に対する気持ちの変化を生じさせることができ、精神疾患の改善を図ることができる。また、第4のシートとして総括用シート400を用意して記入させれば、患者自身に3組の治療用シートに記入した内容の変遷を振り返らせることができ、より効果的な治療が可能になる。
<<< §6.精神疾患の治療用具のより具体的な実施例 >>>
§4では、図4〜図7を参照して、本発明に係る精神疾患の治療用具を構成する3枚の治療用シート100,200,300および総括用シート400の基本構成を説明した。
ここでは、これらの各シートについて、より具体的な実施例を図12〜図15として示しておく。図12は、図4に示す第1の治療用シート100のより具体的な実施例の一例を示す平面図であり、図13は、図5に示す第2の治療用シート200のより具体的な実施例の一例を示す平面図であり、図14は、図6に示す第3の治療用シート300のより具体的な実施例の一例を示す平面図である。また、図15は、図7に示す総括用シート400のより具体的な実施例の一例を示す平面図である。
これら4枚の具体的な実施例は、本願発明者が特定の被験者に対して行った試験に実際に利用したシートであり、試験の結果、多数の被験者について、悩みの改善などの治癒効果が見られた。
図12〜図15に示す各シートの基本構成は、図4〜図7に示す各シートの基本構成と同様であり、対応する記入欄には同一の丸数字を付してある。したがって、図12〜図15に示す各シートの具体的な構成の説明や使用方法についての説明は、ここでは省略する。
<<< §7.精神疾患の治療装置の基本構成および動作 >>>
これまで、本発明の基本思想を、シートという物理的な印刷物として実現する実施例を述べてきた。ここでは、本発明の基本思想を、コンピュータを利用して実現する実施例を述べる。
図16は、本発明に係る精神疾患の治療装置600の基本構成を示すブロック図である。この治療装置600は、コンピュータの画面を利用して、患者からの入力を受け付け、その結果をコンピュータの画面に表示することにより、これまで述べてきた治療用シートや治療用具と同等の効果を、コンピュータの画面上で奏するためのものであり、自己と特定の相手との間の人間関係に関連した精神疾患の治療に用いることができる。
図示のとおり、この治療装置600は、治療を受けるユーザ(患者)からの指示操作を入力する指示入力ユニット610と、当該ユーザに対する提示情報をディスプレイ画面上に表示する情報表示ユニット620と、指示入力ユニット610が入力した指示操作に基づいて所定の提示情報を作成し、これを情報表示ユニット620に与える情報処理ユニット630と、を備えている。
実際には、この治療装置600は、コンピュータ(タブレットやスマートフォンなどの電子機器も含む)に所定のプログラムを組み込むことによって構成することができる。すなわち、指示入力ユニット610は、キーボード、マウス、タッチパネルなどのコンピュータ用入力機器によって構成することができ、情報表示ユニット620は、このコンピュータ用のディスプレイ装置によって構成することができる。また、情報処理ユニット630は、このコンピュータおよびそこにインストールされたアプリケーションプログラムの協働体として実現することができる。
ここでは、説明の便宜上、情報処理ユニット630を、描画処理部631、自己感情選択部632、自己メッセージ入力部633、相手感情選択部634、相手メッセージ入力部635、第三者コメント入力部636、統括制御部637という7つの機能要素の集合体として把握した説明を行うが、実際には、この情報処理ユニット630は、コンピュータのハードウェアとソフトウェアとの協働体として実現されることになる。
図17は、情報表示ユニット620によって表示された第1の表示画面710を示す図である。この第1の表示画面710は、図4に示す第1の治療用シート100に対応する画面であり、第1の治療用シート100上に印刷されている情報を、ディスプレイ画面上に表示したものである。
第1の表示画面710は、図示のとおり、表題パート711(シート種別表示エリア110に対応)、シーン図パート712(図描画エリア140に対応)、インストラクションパート713(この装置に固有のパート)、コマンドパート714(この装置に固有のパート)、自己感情パート715(自己感情記入欄121に対応)、相手感情パート716(相手感情記入欄131に対応)、自己メッセージパート717(自己メッセージ記入欄122に対応)、相手メッセージパート718(相手メッセージ記入欄132に対応)、第三者パート719(第三者コメントエリア150に対応)、感情リストパートLの各パートを有している。
インストラクションパート713は、ユーザの入力操作に対する指示を文字列として表示するためのパートであり、ユーザに対して次に行うべき指示が表示される。図示の例の場合、「シーン名を入力して下さい。」との指示が表示されている。これは、表題パート711の「シーン名」欄にシーン名の入力を促す指示である。このインストラクションパート713の表示は、ユーザが入力操作を行うたびに変遷してゆくことになる。
一方、コマンドパート714は、ユーザに、固有のコマンドを入力させるためのパートである。具体的には、「線」,「円」,「矩形」と記されたボタンは、シーン図パート712に絵を描くためのツールを選択するためのボタンであり、ユーザは、シーン図として線画を描く際には「線」ボタンを押して「線ツール」を選択する操作を行い、円を描く際には「円」ボタンを押して「円ツール」を選択する操作を行い、矩形を描く際には「矩形」ボタンを押して「矩形ツール」を選択する操作を行えばよい。このような各ツールを用いた描画機能は、既に種々の描画プログラムで公知であるため、ここでは詳細な説明は省略する。
その下の「取消」ボタンは、直前の操作を取り消すためのボタンであり、「完了」ボタンは、所定の操作が完了したことを指示するボタンである。また、左矢印ボタンは、表示を直前の頁に戻すボタンであり、右矢印ボタンは、表示を次の頁に送るボタンである。図示の例は、「ワークシート1」と記載された第1の治療用シート100に相当する第1の表示画面(第1頁の画面)であるので、右矢印ボタンを押すと、後述する「ワークシート2」と記載された第2の治療用シート200に相当する第2の表示画面(第2頁の画面)に移行することになり、左矢印ボタンを押すと、この前の頁(たとえば、初期説明頁)に移行することになる。このような種々の制御ボタンも、一般的なプログラムで公知であるため、ここでは詳細な説明は省略する。
描画処理部631は、図2に示す第1の治療用シートにおける図描画エリア140の機能をディスプレイ画面上で実現する役割を果たす構成要素であり、情報表示ユニット620を利用して、ユーザに対して、自己と相手についての特定のシーンを示す図を描く旨の指示を与え、指示入力ユニット610から与えられるユーザの指示操作に基づいてシーン図を作成し、これをディスプレイ画面上に表示する処理を行う。
図18は、図16に示す治療装置600における描画処理部631による処理によってシーン図の入力が行われた状態を示す図である。具体的には、描画処理部631は、図17のインストラクションパート713に表示されているように、「シーン名を入力して下さい。」との指示を提示し、ユーザが表題パート711の「シーン名」欄に「業務報告」なるシーン名を入力すると、図18のインストラクションパート713に表示されているように「左の空欄にシーンを描いて下さい。」との指示を提示し、ユーザにシーン図を描かせる処理を行う。すなわち、描画処理部631は、ユーザが入力するコマンドやマウス操作などに応じて、図示のような絵を作成し、シーン図パート712に表示する処理を行う。図18には、図8に示す例と同じシーン図が描かれた状態が示されている。
自己感情選択部632は、ユーザが描いたシーン図を、ディスプレイ画面上のシーン図パート712に表示し、感情を示す単語を複数列挙した感情リストを、ディスプレイ画面上の感情リストパートLに表示させた状態で、表示されたシーン図についてユーザ自身が抱く感情を、表示中の感情リストの中から選択する旨の指示をユーザに対して与えることにより、特定の感情を自己感情として選択させる処理を行う。
図19は、図16に示す治療装置600における自己感情選択部632による処理によって自己感情の入力が行われた状態を示す図である。具体的には、自己感情選択部632は、まず、インストラクションパート713に所定の指示を提示することにより、ユーザ自身の名前を自己感情パート715の空欄に入力させた後、図19のインストラクションパート713に表示されているように、「あなたの感情を選択して下さい。」との指示を提示し、ユーザに感情リストパートLに表示されている9つの感情の中から任意の感情を選択させる処理を実行する。
感情の選択は、たとえば、感情リストの任意のセルをクリックさせる操作によって行わせることができる。また、自己感情パート715の空欄に文字入力を行わせることにより、リストにない任意の感情を入力させることもできる。図19には、ユーザ(患者)の名前として「Mr.X」が入力され、感情として「怒り」と「憎悪」を選択させた例が示されている。
自己メッセージ入力部633は、ユーザが描いたシーン図を、ディスプレイ画面上のシーン図パート712に表示し、ユーザが選択した自己感情を、ディスプレイ画面上の自己感情パート715に表示させた状態で、このシーン図について自己が相手に伝えたいメッセージを入力する旨の指示をユーザに対して与えることにより、特定のメッセージを自己メッセージとして入力する処理を行う。
図20は、図16に示す治療装置600における自己メッセージ入力部633による処理によって自己メッセージの入力が行われた状態を示す図である。具体的には、自己メッセージ入力部633は、インストラクションパート713に表示されているように、「あなたのメッセージを入力して下さい。」との指示を提示し、ユーザに対して、自己メッセージパート717の空欄に文字列を入力させる処理を行う。図20には、期待として「正しい評価を」なる文字列が入力され、意図として「業務環境の改善」なる文字列が入力された例が示されている。
一方、相手感情選択部634は、ユーザが描いたシーン図を、ディスプレイ画面上のシーン図パート712に表示し、感情を示す単語を複数列挙した感情リストを、ディスプレイ画面上の感情リストパートLに表示させた状態で、表示されたシーン図について相手が抱くであろうと思われる感情を、表示中の感情リストの中から選択する旨の指示をユーザに対して与えることにより、特定の感情を相手感情として選択させる処理を行う。
図21は、図16に示す治療装置600における相手感情選択部634による処理によって相手感情の入力が行われた状態を示す図である。具体的には、相手感情選択部634は、まず、インストラクションパート713に所定の指示を提示することにより、相手の名前を相手感情パート716の空欄に入力させた後、図21のインストラクションパート713に表示されているように、「相手の感情を選択して下さい。」との指示を提示し、ユーザに感情リストパートLに表示されている9つの感情の中から任意の感情を選択させる処理を実行する。
上述したとおり、感情の選択は、感情リストの任意のセルをクリックさせる操作で行わせることができるが、相手感情パート716の空欄に文字入力を行わせることにより、リストにない任意の感情を入力させるようにしてもよい。図21には、相手の名前として「Mr.Y」が入力され、感情として「軽蔑」と「失望」を選択させた例が示されている。
相手メッセージ入力部635は、ユーザが描いたシーン図を、ディスプレイ画面上のシーン図パート712に表示させ、ユーザが選択した相手感情を、ディスプレイ画面上の相手感情パート716に表示させた状態で、このシーン図について相手が自己に伝えたいであろうと思われるメッセージを入力する旨の指示をユーザに対して与えることにより、特定のメッセージを相手メッセージとして入力する処理を行う。
図22は、図16に示す治療装置600における相手メッセージ入力部635による処理によって相手メッセージの入力が行われた状態を示す図である。具体的には、相手メッセージ入力部635は、インストラクションパート713に表示されているように、「相手のメッセージを入力して下さい。」との指示を提示し、ユーザに対して、相手メッセージパート718の空欄に文字列を入力させる処理を行う。図22には、期待として「営業努力」なる文字列が入力され、意図として「実績改善」なる文字列が入力された例が示されている。
第三者コメント入力部636は、ユーザが描いたシーン図を、ディスプレイ画面上のシーン図パート712に表示させ、ユーザが選択した自己感情を、ディスプレイ画面上の自己感情パート715に表示させ、ユーザが入力した自己メッセージを、ディスプレイ画面上の自己メッセージパート717に表示させ、ユーザが選択した相手感情を、ディスプレイ画面上の相手感情パート716に表示させ、ユーザが入力した相手メッセージを、ディスプレイ画面上の相手メッセージパート718に表示させた状態で、このシーン図に描かれているシーンに第三者が存在したと仮定した場合に、当該第三者が言及するであろうと思われるコメントを入力する旨の指示をユーザに対して与えることにより、特定のコメントを第三者コメントとして入力する処理を行う。
図23は、図16に示す治療装置600における第三者コメント入力部636による処理によって第三者コメントの入力が行われた状態を示す図である。具体的には、第三者コメント入力部636は、インストラクションパート713に表示されているように、「第三者のコメントを入力して下さい。」との指示を提示し、ユーザに対して、第三者パート719の空欄に文字列を入力させる処理を行う。図23には、第三者の名前として「Mr.Z」が入力され、第三者コメントとして「相互に相手を理解する努力を」なる文字列が入力された例が示されている。
統括制御部637は、描画処理部631、自己感情選択部632、自己メッセージ入力部633、相手感情選択部634、相手メッセージ入力部635、第三者コメント入力部636が、所定の順序で順番に処理を行うように制御する役割を果たす。すなわち、上例の場合は、まず、描画処理部631に処理を実行させ、続いて、自己感情選択部632に処理を実行させ、以下同様に、自己メッセージ入力部633、相手感情選択部634、相手メッセージ入力部635、第三者コメント入力部636の順に処理を実行させる制御を行う。
以上述べた処理は、§2で述べた治療用シート100の使用方法に基づく処理であり、基本的には、図17に示す第1の表示画面710に対する入力操作で完了する処理である。
もちろん、図16に示す治療装置600を用いて、§5で述べた精神疾患の治療用具と同等の治療法を施すことも可能である。この場合は、描画処理部631、自己感情選択部632、自己メッセージ入力部633、相手感情選択部634、相手メッセージ入力部635、第三者コメント入力部636が、同一の表示画面(たとえば、図17に示す第1の表示画面710)を利用してユーザからの指示操作を入力し、当該指示操作によって入力された情報を当該同一の表示画面に表示させる一巡の情報入力機能を果たすことができるようにしておき、統括制御部637によって、第1の表示画面710を利用した第1巡目の情報入力、第2の表示画面720を利用した第2巡目の情報入力、第3の表示画面730を利用した第3巡目の情報入力が順に行われるよう制御すればよい。
ここで、第1の表示画面710は、図4に示す第1の治療用シート100に対応する画面になるようにし、第2の表示画面720は、図5に示す第2の治療用シート200に対応する画面になるようにし、第3の表示画面730は、図6に示す第3の治療用シート300に対応する画面になるようにする。また、総括用シート400に対応する画面として、第4の表示画面740を用いた総括用の情報入力を最後に行うようにしてもよい。
図24は、図16に示す治療装置600において、第2の表示画面720上で第2巡目の情報入力が行われている状態を示す図である。第2の表示画面720は、図5に示す第2の治療用シート200に対応する画面であり、図示のとおり、表題パート721(シート種別表示エリア210に対応)、シーン図パート722(図描画エリア240に対応)、インストラクションパート723(この装置に固有のパート)、コマンドパート724(この装置に固有のパート)、自己感情パート725(自己感情記入欄221に対応)、相手感情パート726(相手感情記入欄231に対応)、自己メッセージパート727(自己メッセージ記入欄222に対応)、相手メッセージパート728(相手メッセージ記入欄232に対応)、第三者パート729(第三者コメントエリア250に対応)、感情リストパートLの各パートを有している。
これら各パートの内容および入力要領は、前述した第1の表示画面710の各パートの内容および入力要領と同様である。ただ、この第2の表示画面720上での入力を行うにあたり、第1の表示画面710の自己感情パート715および自己メッセージパート717に入力した内容を相手に伝え、逆に、第1の表示画面710の相手感情パート716および相手メッセージパート718に入力した内容が自己に伝えられたという前提で、自己および相手に起こるべき心境の変化を考慮した上で、第2の表示画面720上での入力を行う旨の指示を明確に与えるようにする。
前述したとおり、コマンドパート724には、左右の矢印ボタンが設けられており、この矢印ボタンにより、表示画面を前頁へ戻したり、次頁に送ったりすることができるので、ユーザは、第1の表示画面710と第2の表示画面720とを適宜切り替えることができ、第1の表示画面710上での入力内容を確認することができる。図24は、ユーザがこのような方法で、第2の表示画面720への入力操作を行っている途中(相手メッセージパート728への入力途中)の状態を示している(入力内容は、図9に示す例と同じである)。
図25は、図16に示す治療装置600において、第3の表示画面730上で第3巡目の情報入力が行われている状態を示す図である。第3の表示画面730は、図6に示す第3の治療用シート300に対応する画面であり、図示のとおり、表題パート731(シート種別表示エリア310に対応)、シーン図パート732(図描画エリア340に対応)、インストラクションパート733(この装置に固有のパート)、コマンドパート734(この装置に固有のパート)、自己感情パート735(自己感情記入欄321に対応)、相手感情パート736(相手感情記入欄331に対応)、自己メッセージパート737(自己メッセージ記入欄322に対応)、相手メッセージパート738(相手メッセージ記入欄332に対応)、第三者パート739a,739b(特定人物欄351,一般第三者欄352に対応)、感情リストパートLの各パートを有している。
これら各パートの内容および入力要領は、前述した第2の表示画面720の各パートの内容および入力要領とほぼ同じである。実際には、各欄の入力順序や、表題に若干の相違があるが、この点については、§5において、第3の治療用シート300の構成および記入方法として既に説明済みであるので、ここでは説明は省略する。なお、この第3の表示画面730上での入力を行うにあたっては、第2の表示画面720の自己感情パート725および自己メッセージパート727に入力した内容を相手に伝え、逆に、第2の表示画面720の相手感情パート726および相手メッセージパート728に入力した内容が自己に伝えられたという前提で、自己および相手に起こるべき心境の変化を考慮した上で、第3の表示画面730上での入力を行う旨の指示を明確に与えるようにする。
図示のとおり、コマンドパート734には、左右の矢印ボタンが設けられており、この矢印ボタンにより、表示画面を前頁へ戻したり、次頁に送ったりすることができるので、ユーザは、第2の表示画面720と第3の表示画面730とを適宜切り替えることができ、第2の表示画面720上での入力内容を確認することができる。図25は、ユーザがこのような方法で、第3の表示画面730への入力操作を行っている途中(自己感情パート735への入力途中)の状態を示している(入力内容は、図10に示す例と同じである)。
図26は、図16に示す治療装置600において、第4の表示画面740上で最後の総括情報入力を開始する状態を示す図である。第4の表示画面740は、図7に示す総括用シート400に対応する画面であり、図示のとおり、表題パート741(シート種別表示エリア410に対応)、シーン図パート742(総括用シート400には対応エリアは存在しない)、インストラクションパート743(この装置に固有のパート)、コマンドパート744(この装置に固有のパート)、総括質問パート745(総括質問エリア490に対応)の各パートを有している。
これら各パートの内容および入力要領は、図7に示す総括用シート400についての内容および記入要領とほぼ同じである。なお、シーン図パート742には、図25のシーン図パート732に描かれた絵と同じ絵を表示するようにしている。このシーン図パート742に対しては、描画作業を行う必要がないので、コマンドパート744には、描画に必要なコマンドボタンは設けられていない。また、この第4の表示画面740が最終頁になるので、矢印ボタンとしては、前頁に送る左矢印ボタンのみが設けられている。
ユーザが、総括質問パート745への入力を終えて、コマンドパート744の終了ボタンを押すと、すべての作業を完了することができる。この実施例の場合、コマンドパート744にはプリントボタンが設けられており、ユーザがプリントボタンを押すことにより、これまで入力作業を行ってきた第1の表示画面710、第2の表示画面720、第3の表示画面730、第4の表示画面740の内容を紙面上にプリントアウトすることも可能である。
以上、図16に示す精神疾患の治療装置600の処理動作を具体例を示しながら説明したが、もちろん、これらの具体例は一実施例を示すものであり、本発明に係る精神疾患の治療装置は、これらの具体例に限定されるものではない。特に、インストラクションパート713,723,733,743に例示した指示は、説明の便宜上、極めて簡単な文字列による指示になっているが、実用上は、より詳しい指示を行うのが好ましい。もちろん、文字列による指示の代わりに、音声による指示や動画による指示を行うようにしてもよい。
また、上例の場合、1つの画面には、1組の感情リストパートLのみを設けているが、もちろん、自己感情選択用の感情リストと相手感情選択用の感情リストを別々に設けてもかまわない。ただ、治療用シートという物理的な媒体を用いる実施例の場合は、感情リストに丸印を記入して選択を行うことになるため、自己感情選択用の感情リストと相手感情選択用の感情リストとを別々に設けているが、コンピュータを利用して構築される精神疾患の治療装置の場合は、上例のように、選択操作を受け付けるための共用の感情リストを1組だけ設けておけば十分である。
なお、図16に示す精神疾患の治療装置600は、インターネットなどのネットワークを介して接続されたサーバコンピュータとクライアントコンピュータ(タブレットやスマートフォンなどの電子機器も含む)とによって構成することも可能である。たとえば、指示入力ユニット610と情報表示ユニット620をクライアントコンピュータによって構成し、情報処理ユニット630の一部分をクライアントコンピュータで構成し、残りの一部分をサーバコンピュータで構成することも可能である。
本発明に係る精神疾患の治療用シート、精神疾患の治療用具、精神疾患の治療装置は、人間関係に関連した精神疾患の治療の用に供することができ、医療用具や医療機器を提供する産業に広く利用することが可能である。なお、本願では、「治療」という文言を広義で用いており、資格を有する医師によって施術される法律的な医療行為だけに限定されず、様々な企業や団体に所属するコンサルタントや相談員によって施術される行為も広く含むものである。要するに、本発明にいう「治療」とは、精神的に落ち込んだ状態を快方に向かわせるための行為を広く意味するものである。また、本発明にいう「精神疾患」とは、広く精神的に落ち込んだ状態を指す。一般に心因性の精神疾患と健常者の落ち込んだ状態との間には明確な境目はなく、両者の相違は、あくまでスペクトラム状の分類であるとされている。そこで本願では、精神的に落ち込んでおり何かしらの「治療」を必要とするもの、あるいは理想的な精神状態に対し、現状の精神状態にギャップがあり改善を望むものを、広く「精神疾患」と呼ぶことにする。
本発明は、精神疾患の治療用具および治療装置に関し、特に、自己と特定の相手との間の人間関係に関連した精神疾患の治療に用いる精神疾患の治療用具および治療装置に関する。
現代社会において、精神疾患や精神障害と呼ばれる症状をもつ患者は、今後も益々増加する傾向にあると予想されており、副作用のない効果的な治療法が望まれている。特に、心因性の精神疾患の典型例というべき鬱病は、社会活動の中枢をなす若年層から現役引退後の老年層に至るまで、幅広い年齢層で患者が発生しており、大きな社会問題になっている。鬱病患者は、強い悲しみ、失望感、意欲や集中力の低下、大きな不安感などを抱いており、不眠、食欲減退、頭痛などの症状を訴えることも少なくない。
このような鬱病の診断には、様々な方法が提案されている。たとえば、下記の特許文献1には、患者にカード状の質問票を渡して回答させ、得られた回答結果に基づいてファジィ推論を適用することにより、症状を正確に評価する技術が開示されている。一方、鬱病の治療方法も、種々の方法が提案され、実際に施術されている。たとえば、化学的な治療方法としては、様々な抗鬱薬が処方されている。また、物理的な治療方法も研究されており、たとえば、下記の特許文献2には、高周波パルス列の低周波シーケンスによって、脳のニューロンに対して電気的な刺激を与える精神疾患の治療装置が開示されている。また、特許文献3には、患者の目に対して左右に移動する発光点を提示することにより精神疾患を治療する顔面装着型の治療装置が開示されている。
国際公開第WO2004/080312号公報 国際公開第WO2006/063558号公報 国際公開第WO2009/142380号公報
現在、鬱病の治療法としては、投薬による化学的な治療法と、専門医によるカウンセリングによる方法が一般的である。ただ、薬物投与には副作用の問題があり、専門医によるカウンセリングだけでは、必ずしも効果的な治療を行うことができないという問題がある。特に、現代人の鬱病は、患者を取り巻く他人との人間関係に関連するものが多いが、専門医によるカウンセリングだけでは、患者の内的感情を正確に聞き出すことが困難であり、十分な治療効果を奏することができない。
そこで、本発明は、人間関係に関連した精神疾患の治療を効果的に行うことが可能な精神疾患の治療用具および治療装置を提供することを目的とする。
(1) 本発明の第1の態様は、自己と特定の相手との間の人間関係に関連した精神疾患の治療に用いる精神疾患の治療用シートにおいて、
任意の図を描画するための空白部分を有する図描画エリアと、自己の気持ちに関する情報を記入するための自己情報記入エリアと、相手の気持ちに関する情報を記入するための相手情報記入エリアと、第三者のコメントを記入するための第三者コメントエリアと、を設け、
自己情報記入エリアには、自己の感情を記入するための自己感情記入欄を設け、相手情報記入エリアには、相手の感情を記入するための相手感情記入欄を設けるようにし、
自己感情記入欄および相手感情記入欄には、それぞれ、感情を示す単語を複数列挙した感情リストを配置するようにしたものである。
(2) 本発明の第2の態様は、上述した第1の態様に係る精神疾患の治療用シートにおいて、
自己感情記入欄および相手感情記入欄に、罫線で囲まれた複数のセルにそれぞれ感情を示す単語が記載された感情リストを配置したものである。
(3) 本発明の第3の態様は、上述した第1または第2の態様に係る精神疾患の治療用シートにおいて、
図描画エリアには、図を描くエリアであることを示す表題が記載されており、自己情報記入エリアには、自己の情報を記入するエリアであることを示す表題が記載されており、相手情報記入エリアには、相手の情報を記入するエリアであることを示す表題が記載されており、第三者コメントエリアには、第三者のコメントを記入するエリアであることを示す表題が記載されているようにしたものである。
(4) 本発明の第4の態様は、上述した第1〜第3の態様に係る精神疾患の治療用シートにおいて、
シートを縦方向に貫く中心線を定義したときに、自己情報記入エリアは中心線よりも左側に配置され、相手情報記入エリアは中心線よりも右側に配置され、図描画エリアおよび第三者コメントエリアは中心線を跨いで、中心線が中心となるように配置されているようにしたものである。
(5) 本発明の第5の態様は、上述した第1〜第4の態様に係る精神疾患の治療用シートにおいて、
自己情報記入エリアは、更に、自己から相手に伝えたいメッセージを記入するための自己メッセージ記入欄を含んでおり、
相手情報記入エリアは、更に、相手から自己に伝えたいメッセージを記入するための相手メッセージ記入欄を含んでいるようにしたものである。
(6) 本発明の第6の態様は、上述した第5の態様に係る精神疾患の治療用シートにおいて、
図描画エリア、自己感情記入欄、自己メッセージ記入欄、相手感情記入欄、相手メッセージ記入欄、第三者コメントエリアの順序で記入を行うことを示すための記入順序符号が各エリアもしくは各欄に記載されているようにしたものである。
(7) 本発明の第7の態様は、上述した第5の態様に係る精神疾患の治療用シートを3組用いて精神疾患の治療用具を構成するようにし、
第1の治療用シートには、当該第1の治療用シートが第1番目の記入対象となるシートであることを示すシート種別記号が表示されたシート種別表示エリアが設けられており、
第2の治療用シートには、当該第2の治療用シートが第2番目の記入対象となるシートであることを示すシート種別記号が表示されたシート種別表示エリアが設けられており、
第3の治療用シートには、当該第3の治療用シートが第3番目の記入対象となるシートであることを示すシート種別記号が表示されたシート種別表示エリアが設けられており、
第2の治療用シートには、第1の治療用シートの自己情報記入エリアに記入された内容が相手に伝えられ、第1の治療用シートの相手情報記入エリアに記入された内容が自己に伝えられたという想定で、当該第2の治療用シートへの記入を行う旨の指示が記載されており、
第3の治療用シートには、第2の治療用シートの自己情報記入エリアに記入された内容が相手に伝えられ、第2の治療用シートの相手情報記入エリアに記入された内容が自己に伝えられたという想定で、当該第3の治療用シートへの記入を行う旨の指示が記載されているようにしたものである。
(8) 本発明の第8の態様は、上述した第7の態様に係る精神疾患の治療用具において、
第3の治療用シートの第三者コメントエリアには、特定の人物の感情およびアドバイスを記入する特定人物欄と、一般第三者のコメントを記入するための一般第三者欄と、が設けられており、
第1の治療用シートおよび第2の治療用シートには、図描画エリア、自己感情記入欄、自己メッセージ記入欄、相手感情記入欄、相手メッセージ記入欄、第三者コメントエリアの順序で記入を行うことを示すための記入順序符号が各エリアもしくは各欄に記載されており、
第3の治療用シートには、図描画エリア、特定人物欄、自己感情記入欄、自己メッセージ記入欄、相手感情記入欄、相手メッセージ記入欄、一般第三者欄の順序で記入を行うことを示すための記入順序符号が各エリアもしくは各欄に記載されているようにしたものである。
(9) 本発明の第9の態様は、上述した第7または第8の態様に係る精神疾患の治療用具において、
第1の治療用シート、第2の治療用シート、第3の治療用シートに加えて、更に、総括用シートを設け、
総括用シートには、当該総括用シートが第4番目の記入対象となるシートであることを示すシート種別記号が表示されたシート種別表示エリアが設けられており、第1〜第3の治療用シートの記入内容の変遷を振り返ったときの感想を記入する旨の指示が記載されているようにしたものである。
(10) 本発明の第10の態様は、自己と特定の相手との間の人間関係に関連した精神疾患の治療に用いる精神疾患の治療装置において、
治療を受けるユーザからの指示操作を入力する指示入力ユニットと、ユーザに対する提示情報をディスプレイ画面上に表示する情報表示ユニットと、指示入力ユニットが入力した指示操作に基づいて所定の提示情報を作成し、これを情報表示ユニットに与える情報処理ユニットと、を設け、
情報処理ユニットが、
ユーザに対して、自己と相手についての特定のシーンを示す図を描く旨の指示を与え、ユーザの指示操作に基づいてシーン図を作成し、これをディスプレイ画面上に表示する処理を行う描画処理部と、
シーン図と、感情を示す単語を複数列挙した感情リストと、をディスプレイ画面上に表示させ、シーン図についてユーザ自身が抱く感情を、表示中の感情リストの中から選択する旨の指示をユーザに対して与えることにより、特定の感情を自己感情として選択させる処理を行う自己感情選択部と、
シーン図と、自己感情と、をディスプレイ画面上に表示させ、シーン図について自己が相手に伝えたいメッセージを入力する旨の指示をユーザに対して与えることにより、特定のメッセージを自己メッセージとして入力する処理を行う自己メッセージ入力部と、
シーン図と、感情を示す単語を複数列挙した感情リストと、をディスプレイ画面上に表示させ、シーン図について相手が抱くであろうと思われる感情を、表示中の感情リストの中から選択する旨の指示をユーザに対して与えることにより、特定の感情を相手感情として選択させる処理を行う相手感情選択部と、
シーン図と、相手感情と、をディスプレイ画面上に表示させ、シーン図について相手が自己に伝えたいであろうと思われるメッセージを入力する旨の指示をユーザに対して与えることにより、特定のメッセージを相手メッセージとして入力する処理を行う相手メッセージ入力部と、
シーン図と、自己感情および自己メッセージと、相手感情および相手メッセージと、をディスプレイ画面上に表示させ、シーン図に描かれているシーンに第三者が存在したと仮定した場合に、当該第三者が言及するであろうと思われるコメントを入力する旨の指示をユーザに対して与えることにより、特定のコメントを第三者コメントとして入力する処理を行う第三者コメント入力部と、
描画処理部、自己感情選択部、自己メッセージ入力部、相手感情選択部、相手メッセージ入力部、第三者コメント入力部が、所定の順序で順番に処理を行うように制御する統括制御部と、
を有するようにしたものである。
(11) 本発明の第11の態様は、上述した第10の態様に係る精神疾患の治療装置において、
描画処理部、自己感情選択部、自己メッセージ入力部、相手感情選択部、相手メッセージ入力部、第三者コメント入力部が、同一の表示画面を利用してユーザからの指示操作を入力し、当該指示操作によって入力された情報を当該同一の表示画面に表示させる一巡の情報入力機能を有するようにし、
統括制御部が、第1の表示画面を利用した第1巡目の情報入力、第2の表示画面を利用した第2巡目の情報入力、第3の表示画面を利用した第3巡目の情報入力が順に行われるよう制御を行うようにしたものである。
(12) 本発明の第12の態様は、上述した第10または第11の態様に係る精神疾患の治療装置を、コンピュータにプログラムを組み込むことにより構成したものである。
本発明に係る精神疾患の治療用シートには、自己と相手についての特定のシーンを描くための図描画エリアと、自己の感情や相手へのメッセージを記入するための自己情報記入エリアと、相手の感情や自己へのメッセージを推察して記入するための相手情報記入エリアと、第三者のコメントを記入するための第三者コメントエリアと、が設けられている。したがって、この治療用シートに記入を行う患者は、ある特定のシーンを思い浮かべながら、その時の自分の感情や相手に伝えたい内容を整理することができ、更に、これに応じて相手から返されるであろう相手の感情やメッセージを思い浮かべることができ、更に、当該シーンに第三者が居た場合を想定して、当該第三者のコメントを推察することができる。このため、相手に対する自分の気持ちを整理することができ、相手の立場や第三者の目を通じた客観的な状況把握を行うことができるようになり、患者自身の自発的な精神活動により、鬱病の効果的な治療が可能になる。
また、本発明に係る精神疾患の治療用具は、上記治療用シートを3組有しており、患者に対して、これら3組のシートに順次記入する操作を行わせることができる。しかも、3組のシートには、時系列的な順番が定められており、前のシートに記入した内容が相手方に伝えられたものとして、次のシートへの記入が促されるため、相手に対する感情に変化を誘発させる効果が得られるため、より効果的な治療が可能になる。
一方、本発明に係る精神疾患の治療装置は、コンピュータの画面を利用して、患者からの入力を受け付け、その結果をコンピュータの画面に表示することにより、上記治療用シートや上記治療用具と同等の効果を、コンピュータの画面上で奏することが可能になる。
本発明に係る精神疾患の治療用シートの基本的なエリア構成を示す平面図である。 本発明に係る精神疾患の治療用シートの具体的な実施例を示す平面図である。 図2に示す治療用シートを含む精神疾患の治療用具の構成を示す図である。 図3に示す精神疾患の治療用具の構成要素となる第1の治療用シート100の平面図である。 図3に示す精神疾患の治療用具の構成要素となる第2の治療用シート200の平面図である。 図3に示す精神疾患の治療用具の構成要素となる第3の治療用シート300の平面図である。 図3に示す精神疾患の治療用具の構成要素となる総括用シート400の平面図である。 図4に示す第1の治療用シート100に対して患者が記入作業を完了した状態を示す平面図である。 図5に示す第2の治療用シート200に対して患者が記入作業を完了した状態を示す平面図である。 図6に示す第3の治療用シート300に対して患者が記入作業を完了した状態を示す平面図である。 図7に示す総括用シート400に対して患者が記入作業を完了した状態を示す平面図である。 図4に示す第1の治療用シート100のより具体的な実施例の一例を示す平面図である。 図5に示す第2の治療用シート200のより具体的な実施例の一例を示す平面図である。 図6に示す第3の治療用シート300のより具体的な実施例の一例を示す平面図である。 図7に示す総括用シート400のより具体的な実施例の一例を示す平面図である。 本発明に係る精神疾患の治療装置600の基本構成を示すブロック図である。 図16に示す治療装置600における情報表示ユニット620によって表示される画面の一例を示す図である。 図16に示す治療装置600における描画処理部631による処理によってシーン図の入力が行われた状態を示す図である。 図16に示す治療装置600における自己感情選択部632による処理によって自己感情の入力が行われた状態を示す図である。 図16に示す治療装置600における自己メッセージ入力部633による処理によって自己メッセージの入力が行われた状態を示す図である。 図16に示す治療装置600における相手感情選択部634による処理によって相手感情の入力が行われた状態を示す図である。 図16に示す治療装置600における相手メッセージ入力部635による処理によって相手メッセージの入力が行われた状態を示す図である。 図16に示す治療装置600における第三者コメント入力部636による処理によって第三者コメントの入力が行われた状態を示す図である。 図16に示す治療装置600において、第2巡目の情報入力が行われている状態をを示す図である。 図16に示す治療装置600において、第3巡目の情報入力が行われている状態を示す図である。 図16に示す治療装置600において、最後の総括情報入力が行われている状態を示す図である。
以下、本発明を図示する実施形態に基づいて説明する。
<<< §1.精神疾患の治療用シートの基本構成 >>>
はじめに、本発明に係る精神疾患の治療用シートの基本構成を説明する。図1は、この治療用シート100の基本的なエリア構成を示す平面図である。この治療用シート100には、図1に太線の輪郭で囲って示すように、シート種別表示エリア110、自己情報記入エリア120、相手情報記入エリア130、図描画エリア140、第三者コメントエリア150という5つのエリアが設けられている。図には、説明の便宜上、各エリアの名称を、円弧状の括弧(parenthesis)内に記載した。以下、これら各エリアの構成および役割を順に説明する。
まず、シート100の上部に配置されているシート種別表示エリア110は、当該シート100が何番目のシートであるかを示すシート種別記号を表示するためのエリアである。この§1で述べる例は、単一の治療用シート100についての実施例であり、1枚の治療用シート100のみを用いて治療を行うことができる。ただ、治療効果をより高める上では、§4で述べる治療用具を用いるのが好ましい。§4で述べる例は、3種類の治療用シートを用いた実施例であるため、3枚の治療用シートを相互に区別する必要がある。シート種別表示エリア110は、シートを区別するためのシート種別記号を表示するために利用される。
シート100の中央に配置されている図描画エリア140は、任意の図を描画するための空白部分を有するエリアである。後述するように、この図描画エリア140には、患者が、自己と相手についての特定のシーンを示す図を描くことになるので、そのようなシーン図を描くのに適したエリアになるようにする。
シート100の左側に配置されている自己情報記入エリア120は、患者が自己の気持ちに関する情報を記入するためのエリアであり、この実施例の場合、図示のとおりL字型をしている。破線で分離して示すとおり、この自己情報記入エリア120には、自己の感情を記入するための自己感情記入欄121(上段)と、自己から相手に伝えたいメッセージを記入するための自己メッセージ記入欄122(下段)とが設けられている。図には、説明の便宜上、各欄の名称を、角型の括弧(bracket)内に記載した。
一方、シート100の右側に配置されている相手情報記入エリア130は、患者が相手の気持ちに関する情報を記入するためのエリアであり、この実施例の場合、図示のとおりL字型をしている。破線で分離して示すとおり、この相手情報記入エリア130には、相手の感情を記入するための相手感情記入欄131(上段)と、相手から自己に伝えたいメッセージを記入するための相手メッセージ記入欄132(下段)とが設けられている。図には、説明の便宜上、各欄の名称を、角型の括弧(bracket)内に記載した。
そして、シート100の下部に配置されている第三者コメントエリア150は、第三者のコメントを記入するためのエリアである。
図2は、本発明に係る精神疾患の治療用シート100の具体的な実施例を示す平面図である。既に図1を参照して説明したとおり、この精神疾患の治療用シート100には、シート種別表示エリア110、自己情報記入エリア120、相手情報記入エリア130、図描画エリア140、第三者コメントエリア150という5つのエリアが設けられている。なお、図1では、説明の便宜上、これら5つのエリアの境界を太線で示したが、実際には、各エリアの境界は必ずしも太線にする必要はない。
この治療用シート100は、自己と特定の相手との間の人間関係に関連した精神疾患の治療に用いるシートであり、所定の指示に基づいて患者自身にシートの所定箇所に所定事項を記入させることにより治療効果が得られる。したがって、治療用シート100自体の材質は、記入作業に適したものであればどのようなものであってもかまわない。実用上は、一般的な紙のシートを用いるのが好ましい。
図1が、治療用シート100上に設けられる各エリアの構成を示すための図であるのに対して、図2は、この治療用シート100の具体例を示す平面図である。図示のとおり、この治療用シート100の実体は、紙のシート上に罫線や文字を印刷した印刷物であるが、その印刷された内容および配置に特徴がある。このため、患者に対して、後述する方法によって適切な指示を与え、所定の記入作業を行わせることにより、自己と特定の相手との間の人間関係に関連した精神疾患に対して有意な治療効果が得られる。
図2に示す治療用シート100の場合、シート種別表示エリア110の右端には、「ワークシート1」なるシート種別記号が表示されている。この記号は、当該シート100が第1番目のシートである旨を示している。上述したとおり、この治療用シート100を単独で用いた治療を行う際には、シート種別表示エリア110は不要であるが、§2で述べる例のように、複数枚の治療用シートを用いた治療を行う場合には、各シートについての記入順序を示すため、シート種別記号を表示するのが好ましい。なお、図示の例では、シート種別表示エリア110の左端に、「シーン名」を記入する欄が設けられている。この欄は、図描画エリア140に描くシーンの表題を記入するための欄であり、本発明を実施する上で必ずしも必要なものではない。
図描画エリア140は、矩形の枠で囲まれた部分であり、図示の例の場合、「シーンの図示」という表題、すなわち、当該エリアが、図を描くエリアであることを示す表題が記載されている。図描画エリア140の内部は、その大部分が図を描画するための空白部分になっており、後述するように、患者は、ここに自己と相手についての特定のシーンを示す図を描くことになる。シート種別表示エリア110の「シーン名」欄には、ここに描いたシーンの表題が記入される。
自己情報記入エリア120の上段に配置された自己感情記入欄121には、「あなた自身『 』」という表示がなされている。この表示は、自己情報記入エリア120が、自己の情報を記入するエリアであることを示す表題であり、患者は、「 」の部分に自分の名前を記入するよう指示される。その下には、感情を示す単語を複数列挙した感情リストが配置されている。図示の例の場合、3行3列に配置された各セルに、「喜び」,「寂しさ」,「心配」,「怒り」,「憎悪」,「失望」,「悲しみ」,「軽蔑」,「恐怖」という9種類の感情を示す単語が記載されている。患者は、図描画エリア140に描いたシーンを思い浮かべながら、その時に抱いた感情に丸印をつけるよう指示される。
また、自己情報記入エリア120の下段に配置された自己メッセージ記入欄122は、「相手への期待」と記載された記入欄と「期待の意図」と記載された記入欄によって構成されており、自己から相手に伝えたいメッセージを記入するために利用される。患者は、図描画エリア140に描いたシーンに関連して、相手への期待とその意図を記入するよう指示される。
一方、相手情報記入エリア130の上段に配置された相手感情記入欄131には、「相手『 』さん」という表示がなされている。この表示は、相手情報記入エリア130が、相手の情報を記入するエリアであることを示す表題であり、患者は、「 」の部分に相手の名前を記入するよう指示される。その下には、やはり3行3列に配置された各セルに9種類の感情を示す単語を記載した感情リストが配置されている。患者は、図描画エリア140に描いたシーンを思い浮かべながら、その時に相手が抱いたであろうと思われる感情に丸印をつけるよう指示される。
また、相手情報記入エリア130の下段に配置された相手メッセージ記入欄132は、「自己への期待」と記載された記入欄と「期待の意図」と記載された記入欄によって構成されており、相手が自己に伝えたいと推定されるメッセージを記入するために利用される。患者は、図描画エリア140に描いたシーンに関連して、相手が自己に対して抱いたであろうと思われる期待とその意図を記入するよう指示される。
第三者コメントエリア150には、「第三者『 』さんのコメント」という表示がなされている。この表示は、第三者コメントエリア150が、第三者のコメントを記入するエリアであることを示す表題であり、患者は、「 」の部分に、上記シーンに存在したと仮定する第三者の名前を記入し、更に、当該第三者が上記シーンを目撃していたと仮定した場合に、当該第三者が言及するであろうと思われるコメントを記入するよう指示される。
<<< §2.精神疾患の治療用シートの使用方法 >>>
続いて、図2に示す治療用シート100の具体的な使用方法、すなわち、当該シートを用いた具体的な治療方法の手順を説明する。はじめに、当該治療用シート100を患者に手渡し、指示にしたがって、各欄に順次記入を行うように指示する。具体的には、施術者は、次の(1) 〜(9) の指示を順番に患者に与えるようにすればよい。なお、以下の(1) 〜(9) の指示は、図2に示す治療用シート100に丸数字1〜9が付された各欄についての記入指示に対応している。本願では、図において丸数字x(x=1〜10)が記されている部分を、便宜上、「第x欄」と呼ぶことにする。図2に示す治療用シート100の場合、「第1欄」〜「第9欄」が設けられている。
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(1) いま、あなたが不快感をもっている相手を1人だけ特定し、あなたとその相手が登場するシーンを思い浮かべ、そのシーンにタイトルをつけて「第1欄」の「シーン名」の部分に記入して下さい。
(2) 上記シーンの様子を「第2欄」の「シーンの図示」の空白部分に簡単な図として描いて下さい。
(3) 「第3欄」の「あなた自身『 』」の部分に、あなた自身のお名前を記入してください。そして、その下のリストに列挙されている感情の中から、「第2欄」に描いたシーンにおいてあなたが抱いた感情に丸印をつけてください(複数可)。そして、その中で最も強い感情に二重丸をつけ、上記シーンにおいて経験した二重丸の感情を、心の中で再現してみてください。
(4) 「第4欄」の「相手への期待」の部分に、上記シーンにおいて、相手に期待すること(相手にはどうして欲しかったか)を記入して下さい。
(5) 「第5欄」の「期待の意図」の部分に、「第4欄」に記入した「相手への期待」の意図(なぜ、そのような期待をもったか、その期待が叶ったら何が得られるか)を記入して下さい。
(6) 「第6欄」の「相手『 』」の部分に、相手のお名前(ニックネームやイニシャルでも可)を記入してください。そして、その下のリストに列挙されている感情の中から、「第2欄」に描いたシーンにおいて相手が抱いていたと思われる感情に丸印をつけてください(複数可)。そして、その中で最も強い感情に二重丸をつけ、上記シーンにおいて相手が経験したと思われる二重丸の感情を、あなたが相手の立場に立って心の中で再現してみてください。
(7) 「第7欄」の「自己への期待」の部分に、上記シーンにおいて、相手があなたに期待すること(相手は、あなたにどうして欲しかったか)を記入して下さい。
(8) 「第8欄」の「期待の意図」の部分に、「第7欄」に記入した「自己への期待」の意図(相手は、なぜ、そのような期待をもったか、その期待が叶ったら、相手には何が得られるか)を記入して下さい。
(9) 「第2欄」に描いたシーンに全く利害関係のない第三者が居たと仮定して、この第三者を「第2欄」の絵に追加して下さい。そして、「第9欄」の「第三者『 』さんのコメント」の部分に、上記第三者のお名前を記入して、この第三者が、このシーンを客観的に眺めていたら、どんなコメントをするかを想定して記入して下さい。また、この第三者が、「第4欄」,「第7欄」の期待や、「第5欄」,「第8欄」の意図を認識していたとしたら、どのようなコメントをするかも想定して記入して下さい。
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もちろん、上記(1) 〜(9) の指示文言は、ほんの一例を示すものであり、同趣旨の指示であれば、どのような文言による指示でもかまわない。また、指示は、施術者が患者に対して口頭で伝えるようにしてもよいし、別に手渡す作業説明書に記載しておくようにしてもよい。後者の場合、患者は、作業説明書を読みながら、治療用シート100への記入作業を進めてゆくことになる。
なお、図2に示す実施例では、感情リストとして9種類の感情を示す単語が記載されたリストを示したが、実用上は、より多数の感情を掲載しておくのが好ましい。たとえば、後述する図12〜図14に示す実施例では、32種類の感情を示す単語を掲載した感情リストが用いられている。また、必要に応じて、患者には、リストに掲載されていない感情を手書きで追加してもらうようにしてもかまわない。
<<< §3.精神疾患の治療用シートの使用効果 >>>
本発明に係る治療方法の特徴は、治療用シート100への記入を、すべて患者自身が行う点である。すなわち、相手情報記入エリア130には、相手に関する情報が記入されることになるが、実際には、相手が記入するわけではなく、あくまでも患者自身が、相手の立場に立って、相手の気持ちを記入することになる。同様に、第三者コメントエリア150には、第三者のコメントが記入されることになるが、実際には、第三者が記入するわけではなく、あくまでも患者自身が、第三者の立場に立って、第三者としての客観的なコメントを記入することになる。
そもそも、人間関係に関連した精神疾患は、相手の立場に立った思考や、客観的な第三者の立場に立った思考を行い、相手に対する「受容」の気持ちを高めることにより、改善されるものと考えられている。本発明に係る治療用シートは、このような観点に基づく治療を行う上で、非常に有益な道具として機能する。
本発明に係る治療用シートの第1の特徴は、図描画エリア140を設けた点にある。一般に、対人関係についての悩みは、自己と相手に共通する特定の経験に根ざしていることが多く、患者の脳裏には、当該経験が不快なシーンとして刻み込まれている。別言すれば、このような不快なシーンに対する不快感を払拭することができれば、精神疾患の症状に対する根本的な改善が期待できる。本発明に係る治療用シートを利用すれば、図描画エリア140に不快なシーンを図として描かせることにより、当該シーン図に描かれている事実を、自分の立場、相手の立場、そして第三者の立場から再検証するきっかけを作ることができる。
本発明に係る治療用シートの第2の特徴は、自己の気持ちに関する情報を記入するための自己情報記入エリア120と、相手の気持ちに関する情報を記入するための相手情報記入エリア130とを、図描画エリア140と同じシート上に設けた点にある。患者は、図描画エリア140に描かれた図を見ながら、特定のシーンを頭に思い浮かべ、そのときの自己の気持ちに関する情報を自己情報記入エリア120に記入し、そのときの相手の気持ちに関する情報を想像して、相手情報記入エリア130に記入することができる。
具体的には、当該シーンにおいて自己が抱いた感情を自己感情記入欄121に記入し、相手が抱いたと想像される感情を相手感情記入欄131に記入することができる。しかも、これらの感情の記入は、感情を示す単語を複数列挙した感情リストからの選択という簡単な作業によって行うことができる。特に、図2に示す実施例のように、自己感情記入欄121および相手感情記入欄131に、罫線で囲まれた複数のセルにそれぞれ感情を示す異なる単語が記載された同一の感情リストを配置するようにすれば、患者の選択作業は、丸印の付与という簡単な作業で済む。
また、図2に示す実施例のように、自己から相手に伝えたいメッセージを記入するための自己メッセージ記入欄122を設け、相手への期待やその意図を記入させるようにし、相手から自己に伝えたいメッセージを記入するための相手メッセージ記入欄132を設け、相手の自己に対する期待やその意図を記入させるようにすれば、自己や相手の感情だけでなく、期待やその意図についても検証することができる。
このように、本発明に係る治療用シートを用いれば、精神疾患の症状に対する根本原因となる特定のシーンに関して、自己の立場から自己の気持ちを再考した後、相手の立場から相手の気持ちを推考することができ、相手に対する「受容」の気持ちを高めることが可能になる。
そして、本発明に係る治療用シートの第3の特徴は、第三者のコメントを記入するための第三者コメントエリア150を、図描画エリア140と同じシート上に設けた点にある。患者は、図描画エリア140に描かれた図を見ながら、特定のシーンを頭に思い浮かべ、当該シーンを、利害関係のない第三者の客観的な目を通して見た場合に、第三者であれば、どのようなコメントを行うかを想像して、第三者のコメントを第三者コメントエリア150に記入することができる。このような客観的なコメントに接することにより、相手に対する「受容」の気持ちを更に高めることが可能になる。
なお、図2に示す実施例の場合、上記3つの特徴をより効果的に機能させるための工夫が施されている。すなわち、図1に示すように、シート100を縦方向に貫く中心線Cを定義したときに、自己情報記入エリア120は中心線Cよりも左側に配置され、相手情報記入エリア130は中心線Cよりも右側に配置されている。一方、図描画エリア140および第三者コメントエリア150は中心線Cを跨いで、中心線Cが中心となるように配置されている。その結果、図1に示す各エリアの構成および配置は、中心線Cに関して線対称になっている。
このような配置は、自己と相手との関係を客観的に見る上で重要である。すなわち、中心線Cを挟んで、左側に自己情報記入エリア120が配置され、右側に相手情報記入エリア130が配置されており、両者は線対称のエリアになっているため、患者には、自己と相手とが対等な関係にあることを暗示することができる。すなわち、患者は、図描画エリア140に描かれたシーンにおいて、自己が特定の感情を抱き、自己が相手に対して特定の期待を抱くのと全く同様に、相手も特定の感情を抱き、相手が自己に対して特定の期待を抱くことを、直感的に把握できる。
また、図描画エリア140が左右に偏在しない中央に配置されていることにより、患者は、そこに描かれたシーンが、自己にとっても相手にとっても対等な経験であることを直感的に把握できる。同様に、第三者コメントエリア150が左右に偏在しない中央に配置されていることにより、患者は、そこに記入されたコメントが、自己にとっても相手にとっても対等なコメントであることを直感的に把握できる
なお、この治療用シート100に対する記入作業を行う場合、各エリアに対する記入順序は非常に重要である。すなわち、最大限の治療効果を得るためには、上述したとおり、まず、図描画エリア140にシーンの図を描かせ、続いて、シーン図を参照させながら自己情報記入エリア120に自己感情および期待等を記入させ、その後で、シーン図を参照させながら相手情報記入エリア130に相手感情および期待等を記入させ、最後に、シーン図を参照させながら第三者コメントエリアに第三者コメントを記入させる、という順序で、各エリアへの記入が行われるようにするのが好ましい。
そこで、図2に示す治療用シート100では、「第1欄:シート種別表示エリア」,「第2欄:図描画エリア」,「第3欄:自己感情記入欄」,「第4欄:自己メッセージ記入欄(相手への期待)」,「第5欄:自己メッセージ記入欄(期待の意図)」,「第6欄:相手感情記入欄」,「第7欄:相手メッセージ記入欄(自己への期待)」,「第8欄:相手メッセージ記入欄(期待の意図)」,「第9欄:第三者コメントエリア」の順序で記入を行うことを示すための記入順序符号(図の例の場合は、丸数字1〜9)を、各エリアもしくは各欄に記載するようにしている。患者は、この丸数字1〜9の順序で記入を行えばよい。
<<< §4.精神疾患の治療用具の基本構成 >>>
これまで、§1〜§3において、本発明に係る精神疾患の治療用シート100についての説明を行ってきた。この治療用シート100は、単独で使用してもある程度の治療効果が得られるものであるが、実用上は、以下に説明するように、3組の治療用シートを組み合わせて用いるのが好ましい。本願では、この3組の治療用シートを組み合わせたものを「治療用具」と呼ぶことにする。
図3は、図2に示す治療用シート100を含む精神疾患の治療用具の構成を示す図である。図示のとおり、ここに示す治療用具は、第1の治療用シート100,第2の治療用シート200,第3の治療用シート300,総括用シート400という4枚のシートと、作業説明書500によって構成されている。
第1の治療用シート100は、§1で述べた治療用シート100(図2参照)と全く同じシートである。第2の治療用シート200および第3の治療用シート300は、治療用シート100の一部の文言を若干変更したシートであり、総括用シート400は、記入作業の最後に、まとめとして記入するシートである。また、作業説明書500は、これら各シートの各欄への記入作業を行う際の指示を記載した小冊子である。以下、これら各構成要素について、個別の説明を行う。
図4は、図3に示す精神疾患の治療用具の構成要素となる第1の治療用シート100の平面図である。上述したとおり、この図4に示す第1の治療用シート100は、図2に示す治療用シート100と全く同じシートであり、ここでは、各欄についての詳しい説明は省略する。
図示のとおり、シート種別表示エリア110(丸数字1が記載された「第1欄」)の右端には、「ワークシート1」なる記号が表示されているが、これは4枚のシートを区別するためのシート種別記号であり、この第1の治療用シート100が、第1番目の記入対象となるシートであることを示すものである。なお、図2では、説明の便宜上、治療用シート100の各エリアの境界が太線で示されているが。実際には、図4に示すように、各エリアの境界や各欄の境界線は、すべて同じ線でかまわない。
図5は、図3に示す精神疾患の治療用具の構成要素となる第2の治療用シート200の平面図である。図4に示す第1の治療用シート100と同様に、図5に示す第2の治療用シート200は、シート種別表示エリア210、自己情報記入エリア220、相手情報記入エリア230、図描画エリア240、第三者コメントエリア250の5つのエリアによって構成されており、自己情報記入エリア220には、自己感情記入欄221と自己メッセージ記入欄222とが設けられ、相手情報記入エリア230には、相手感情記入欄231と相手メッセージ記入欄232とが設けられている(図1のエリア構成参照)。
この図5に示す第2の治療用シート200と図4に示す第1の治療用シート100との相違点は、次のとおりである。まず、シート種別表示エリア210の右端には、「ワークシート2」なる記号が表示されている。これは4枚のシートを区別するためのシート種別記号であり、この第2の治療用シート200が、第2番目の記入対象となるシートであることを示すものである。また、シート種別表示エリア210の左側には、「前頁の感情・期待・意図を相互に伝えた想定で記入」なる説明文が記載されている。そして、図描画エリア240に、「相互に伝えた後のシーン図示」なる説明文が記載されている。更に、第三者コメントエリア250に、「両者が感情・期待・意図を再度伝えた後の第三者『 』さんのコメント」なる説明文が記載されている。以上の4点を除いて、図5に示す第2の治療用シート200の内容は、図4に示す第1の治療用シート100の内容と同じである。
要するに、第2の治療用シート200には、第1の治療用シート100の自己情報記入エリア120(図4において丸数字3,4,5が記載された「第3,4,5欄」)に記入された内容が相手に伝えられ、第1の治療用シート100の相手情報記入エリア130(図4において丸数字6,7,8が記載された「第6,7,8欄」)に記入された内容が自己に伝えられたという想定で、当該第2の治療用シート200への記入を行う旨の指示が記載されていることになる。
図6は、図3に示す精神疾患の治療用具の構成要素となる第3の治療用シート300の平面図である。図4に示す第1の治療用シート100と同様に、図6に示す第3の治療用シート300は、シート種別表示エリア310、自己情報記入エリア320、相手情報記入エリア330、図描画エリア340、第三者コメントエリア350の5つのエリアによって構成されており、自己情報記入エリア320には、自己感情記入欄321と自己メッセージ記入欄322とが設けられ、相手情報記入エリア330には、相手感情記入欄331と相手メッセージ記入欄332とが設けられている(図1のエリア構成参照)。また、この第3の治療用シート300に固有の特徴として、第三者コメントエリア350には、特定人物欄351と一般第三者欄352とが設けられている。
この図6に示す第3の治療用シート300の構成は、次のとおりである。まず、シート種別表示エリア310の右端には、「ワークシート3」なる記号が表示されている。これは4枚のシートを区別するためのシート種別記号であり、この第3の治療用シート300が、第3番目の記入対象となるシートであることを示すものである。
この第3の治療用シート300の大きな特徴は、各エリアや各欄への記入順序が変更されている点である。このため、各エリアや各欄に丸数字として記載された記入順序符号が大幅に変更されている。具体的には、図4に示す第1の治療用シート100および図5に示す第2の治療用シート200の場合、図描画エリア(丸数字2)、自己感情記入欄(丸数字3)、自己メッセージ記入欄(丸数字4,5)、相手感情記入欄(丸数字6)、相手メッセージ記入欄(丸数字7,8)、第三者コメントエリア(丸数字9)の順序で記入を行うことを示すための記入順序符号(上記各丸数字)が各エリアもしくは各欄に記載されている。
これに対して、図6に示す第3の治療用シート300の場合、図描画エリア(丸数字1)、特定人物欄(丸数字2,3)、自己感情記入欄(丸数字4)、自己メッセージ記入欄(丸数字5,6)、相手感情記入欄(丸数字7)、相手メッセージ記入欄(丸数字8,9)、一般第三者欄(丸数字10)の順序で記入を行うことを示すための記入順序符号(上記各丸数字)が各エリアもしくは各欄に記載されている。以下、各部分を上記記入順(丸数字の順)に説明する。
はじめに、シート種別表示エリア310の左側には、「丸数字1の絵へ」との説明文が記載されており、「丸数字1」が記載された図描画エリア340には、「前頁の感情・期待・意図を相互に伝えた後のシーンを想像して描く」なる説明文が記載されている。そして、特定人物欄351には、「丸数字2」に続く「特定人物『 』の感情」なる説明文と「丸数字3」に続く「特定人物のアドバイス」なる説明文とが記載されている。
また、自己感情記入欄321には、「丸数字4」に続いて「アドバイス後のあなたの感情」なる説明文が記載されており、その下には、9種類の感情を選択するための感情リストが配置されている。自己メッセージ記入欄322には、「丸数字5」に続く「頭の中の声」なる説明文と「丸数字6」に続く「相手に伝えたいこと」なる説明文が記載されている。一方、相手感情記入欄331には、「丸数字7」に続いて「あなたの発言を聴いた後の相手の感情」なる説明文が記載されており、その下には、9種類の感情を選択するための感情リストが配置されている。相手メッセージ記入欄332には、「丸数字8」に続く「頭の中の声」なる説明文と「丸数字9」に続く「相手に伝えたいこと」なる説明文が記載されている。
最後に、一般第三者欄350には、「丸数字10」に続いて、「第三者『 』さんのコメント」なる説明文が記載されている。
要するに、第3の治療用シート300には、第2の治療用シート200の自己情報記入エリア220(図5において丸数字3,4,5が記載された「第3,4,5欄」)に記入された内容が相手に伝えられ、第2の治療用シート200の相手情報記入エリア230(図5において丸数字6,7,8が記載された「第6,7,8欄」)に記入された内容が自己に伝えられたという想定で、当該第3の治療用シート300への記入を行う旨の指示が記載されていることになる。
図7は、図3に示す精神疾患の治療用具の構成要素となる総括用シート400の平面図である。図示のとおり、この総括用シート400には、シート種別表示エリア410と総括質問エリア490が設けられている。シート種別表示エリア410の右端には、「ワークシート4」なる記号が表示されている。これは4枚のシートを区別するためのシート種別記号であり、この総括用シート400が、第4番目の記入対象となるシートであることを示すものである。
一方、総括質問エリア490には、第1〜第3の治療用シート100,200,300の記入内容の変遷を振り返ったときの感想を記入する旨の指示が記載されている。図示の例の場合、4つの質問が列挙されているが、その質問の前に「ワークシート1〜3の記載内容を振り返って記入して下さい。」との指示が記載されており、各質問に対する回答は、いずれも、第1〜第3の治療用シートの記入内容の変遷を振り返ったときの感想を求める内容になっている。
図3に示す精神疾患の治療用具の構成要素となる作業説明書500は、上述した第1〜第3の治療用シート100,200,300および総括用シート400に対する記入作業を行う上での指示を記載したものである。この作業説明書500に記載すべき具体的な指示内容については、§5で説明する。なお、このような指示を施術者が患者に対して口頭で伝える場合は、作業説明書500は不要である。ただ、教室などに集めた多数の患者に対して、同時進行で記入作業を行わせる場合には、個々の患者ごとに、記入作業に要する時間が異なるため、口頭による指示を与える形式ではなく、作業説明書500を配布して、各自が作業説明書500を読みながら作業を進める形式をとるのが好ましい。
なお、本発明に係る精神疾患の治療用具は、上述した第1〜第3の治療用シート100,200,300のみによって構成し、総括用シート400を省略する構成にしてもかまわない。ただ、実用上は、最後のまとめを記入させるために、総括用シート400を用意しておくのが好ましい。
<<< §5.精神疾患の治療用具の使用方法および効果 >>>
続いて、図3に示す治療用具の具体的な使用方法および効果、すなわち、当該シートを用いた具体的な治療方法の手順とその効果を説明する。はじめに、当該治療用具(第1〜第3の治療用シート100,200,300および総括用シート400、ならびに、作業説明書500)を患者に手渡し、作業説明書500に記載された指示にしたがって、各シートの各欄に順次記入を行うように指示する。もちろん、作業説明書500を用いる代わりに、施術者が患者に対して口頭で指示を伝えるようにしてもよい。以下、患者に与える具体的な指示の内容を要点だけ説明する。
まず、全体的な作業手順として、第1の治療用シート100、第2の治療用シート200、第3の治療用シート300、総括用シート400の順番に記入を行い、必要に応じて、記入済みのシートの内容を適宜参照して振り返る旨の指示を与える。
続いて、図4に示す第1の治療用シート100の丸数字1〜9が付された「第1欄」〜「第9欄」に、それぞれ必要事項を記入するよう指示する。具体的な指示内容は、既に§2で説明したとおりである。図8は、図4に示す第1の治療用シート100に対して患者が記入作業を完了した状態を示す平面図である。
図示の例の場合、「第1欄」にシーン名として「業務報告」なる名称が記入されており、「第2欄」に患者が上司に業務報告をしている場面の絵が記入されている。これは、患者が不快感をもっている相手として上司を選び、両者が登場するシーンとして、「業務報告」のシーンを思い浮かべたことを示している。「第3欄」には患者自身の名前「Mr.X」が記入され、感情リストの欄には「怒り」と「憎悪」に丸印がつけられており、「怒り」は二重丸になっている。そして、「第4欄」には「相手への期待」として「正しい評価を」との記入がなされ、「第5欄」には「期待の意図」として「業務環境の改善」との記入がなされている。これは、「第2欄」に描いたシーンに関して、患者自身が現在抱いている感情と、相手に対して伝えたいメッセージを表現したものになる。
一方、「第6欄」には相手(患者の上司)の名前「Mr.Y」が記入され、感情リストの欄には「失望」と「軽蔑」に丸印がつけられており、「失望」は二重丸になっている。そして、「第7欄」には「自己への期待」として「営業努力」との記入がなされ、「第8欄」には「期待の意図」として「実績改善」との記入がなされている。これは、「第2欄」に描いたシーンに関して、相手が抱いているであろうと想像される感情と、相手が自分に対して伝えたいと考えているであろうメッセージを表現したものになる。
もちろん、この「第6欄」,「第7欄」,「第8欄」に記入した内容は、相手(Mr.Y)が実際に抱いている本当の気持ちを示しているものではなく、あくまでも、患者自身(Mr.X)による想像における相手の気持ちになる。本発明に係る治療法の根源は、患者自身に相手の気持ちを思いやる行動を誘発させる点にあり、「第2欄」に記入したシーンを思い浮かべながら、「第3欄」,「第4欄」,「第5欄」に自己の気持ちを記入させた上で、今度は、相手の立場に立って、やはり「第2欄」に記入したシーンを思い浮かべ、相手が抱く気持ちを想像しながら、「第6欄」,「第7欄」,「第8欄」に記入させることは非常に重要である。
特に、ここに示す実施例の場合、中央に配置された図描画エリア140に描かれた図を見ながら、左側の自己情報記入エリアに、自己の立場から見た自己の気持ちを記入し、続いて、右側の相手情報記入エリアに、相手の立場から見た相手の気持ちを想像して記入する作業を行うことになる。しかも、左側の自己情報記入エリアと右側の相手情報記入エリアとは左右対称になっているため、自己と相手とを対等な人間として捉え、自分サイドの見方と相手サイドの見方とを、できるだけ中立的な立場に立って客観的に把握するきっかけを与える効果が得られる。
そして、最後の「第9欄」には、第三者の名前「Mr.Z」が記入され、当該第三者のコメントとして「相互に相手を理解する努力を」との記入がなされている。ここで、第三者「Mr.Z」は、「第2欄」に描いたシーンに全く利害関係のない者として、患者自身が想定した人物であり、たとえば、患者自身の会社の同僚などを「Mr.Z」として設定することができる。そして、「第9欄」には、もし当該第三者が、このシーンに居合わせたと仮定した場合に、どのようなコメントをするかが記入される。
もちろん、この「第9欄」に記入した内容は、当該第三者(Mr.Z)による実際のコメントではなく、あくまでも、患者自身(Mr.X)による想像における第三者のコメントになるが、当該コメントを記入させることによって、患者は、第三者の視点に立って、「第2欄」に描いたシーンを評価することができる。通常、心因性の精神疾患は、患者が自分自身の視野で、物事を主観的に観察しているために生じることが多い。「第9欄」への記入作業は、患者に対して、第三者の視野で、物事を客観的に観察するきっかけを与えることができ、心因性の精神疾患の改善には非常に効果的である。
特に、ここに示す実施例の場合、「第9欄」の第三者コメントエリアは、「第2欄」の図描画エリアと同様に左右に跨った位置に配置されているため、患者は、描かれたシーンも、「第9欄」に記入された第三者コメントも、自己および相手に対して対等なものとして把握することができ、第三者コメントを両者に対等なコメントとして受け入れることができる。
こうして、第1の治療用シート100への記入作業が完了すると、続いて、図5に示す第2の治療用シート200への記入を行うよう指示がなされる。§4で説明したとおり、第2の治療用シート200の各欄の構成は、実質的には第1の治療用シート100の各欄の構成と同じである。したがって、各欄への記入指示も、基本的には、第1の治療用シート100への記入指示と同じでよい。
ただ、第2の治療用シート200には、第1の治療用シート100の自己情報記入エリア120に記入された内容が相手に伝えられるとともに、第1の治療用シート100の相手情報記入エリア130に記入された内容が自己に伝えられたという想定で、当該第2の治療用シート200への記入を行う旨の指示が記載されている。具体的には、図5に示す第2の治療用シート200の場合、シート種別表示エリア210の左側に「前頁の感情・期待・意図を相互に伝えた想定で記入」なる説明文が記載されている。また、図描画エリア240には「相互に伝えた後のシーン図示」なる説明文が記載されており、第三者コメントエリア250には「両者が感情・期待・意図を再度伝えた後の第三者『 』さんのコメント」なる説明文が記載されている
したがって、この第2の治療用シート200への記入を行うにあたり、口頭もしくは作業説明書500によって患者に伝達する指示には、記入要領は、第1の治療用シート100の記入要領と同じであるが、第1の治療用シート100の自己情報記入エリア120に記入した内容を相手に伝え、逆に、相手情報記入エリア130に記入された内容が自己に伝えられたという前提で、自己および相手に起こるべき心境の変化を考慮した上で、第2の治療用シート200への記入を行う旨を明確にしておくようにする。
図9は、図5に示す第2の治療用シート200に対して患者が記入作業を完了した状態を示す平面図である。上述したとおり、この第2の治療用シート200については、図8に示す記入済の第1の治療用シート100における「第3欄」,「第4欄」,「第5欄」の内容を相手に伝え、更に、図8に示す記入済の第1の治療用シート100における「第6欄」,「第7欄」,「第8欄」の内容が相手から自己に伝えられたと想定した上で、各欄へ記入が行われることになる。通常、両者で実際に感情、期待、意図を言い合うと、心象の変化が生じる。ここでは、実際に言い合いが行われるわけではないが、患者の内心において、言い合った後の状態が想像されることになる。したがって、患者ごとに個人差はあるものの、通常は、第1の治療用シート100の記入内容と第2の治療用シート200の記入内容との間に、何らかの変化が生じることになる。
図9に示す実施例の場合、図描画エリアに描かれたシーンの図には若干の変化が見られる。また、自己情報記入エリアには、感情として「失望」、相手への期待として「時間的猶予」、期待の意図として「営業結果に期待あり」との記入がなされ、相手情報記入エリアには、感情として「心配」、自己への期待として「方針改善」、期待の意図として「時間節約」との記入がなされており、やはり若干の変化が見られる。更に、第三者コメントエリアには「歩み寄り」との記入がなされており、やはり若干の変化が見られる。これは、患者の内心に何らかの変化が生じたためであり、精神疾患が改善している兆候を示すものである。
こうして、第2の治療用シート200への記入作業が完了すると、続いて、図6に示す第3の治療用シート300への記入を行うよう指示がなされる。§4で説明したとおり、第3の治療用シート300の各欄の構成は、第1の治療用シート100や第2の治療用シート200の各欄の構成と比べて、大きな相違はないが、新たに特定人物欄351が設けられたり、各欄の記入順序が異なったりする点が相違する。
また、第3の治療用シート300には、第2の治療用シート200の自己情報記入エリア220に記入された内容が相手に伝えられるとともに、第2の治療用シート200の相手情報記入エリア230に記入された内容が自己に伝えられたという想定で、当該第3の治療用シート300への記入を行う旨の指示が記載されている。具体的には、図6に示す第3の治療用シート300の場合、図描画エリア340に「前頁の感情・期待・意図を相互に伝えた後のシーンを想像して描く」なる説明文が記載されている。
したがって、この第3の治療用シート300への記入を行うにあたり、口頭もしくは作業説明書500によって患者に伝達する指示には、記入要領は、基本的には、これまでの各治療用シート100,200の記入要領と同じであるが、第2の治療用シート200の自己情報記入エリア220に記入した内容を相手に伝え、逆に、相手情報記入エリア230に記入された内容が自己に伝えられたという前提で、自己および相手に起こるべき心境の変化を考慮した上で、第3の治療用シート300への記入を行う旨を明確にしておくようにする。
図10は、図6に示す第3の治療用シート300に対して患者が記入作業を完了した状態を示す平面図である。上述したとおり、この第3の治療用シート300については、図9に示す記入済の第2の治療用シート200における「第3欄」,「第4欄」,「第5欄」の内容を相手に伝え、更に、図9に示す記入済の第2の治療用シート200における「第6欄」,「第7欄」,「第8欄」の内容が相手から自己に伝えられたと想定した上で、各欄へ記入が行われることになる。上述したとおり、両者での言い合いは、それが仮想的なものであっても心象の変化を誘発するため、通常は、第2の治療用シート200の記入内容と第3の治療用シート300の記入内容との間には、何らかの変化が生じる。しかも、第3の治療用シート300の場合、特定人物欄にアドバイスの記入も行われているため、心象の変化をより誘発しやすい。
図10に示す実施例の場合、「第1欄」に描かれたシーンの図には更に変化が見られる。また、「第2欄」には、特定人物として「Mr.S」が記入され、この特定人物の感情として「満足」との記入がなされている。また、「第3欄」には、この特定人物のアドバイスとして「密接なコミュニケーション」との記入がなされている。
ここで、「特定人物」はこれまでの一般第三者「Mr.Z」と同様に、自己および相手以外の第三者であることに違いはないが、これまでの一般第三者「Mr.Z」が、「第1欄」に描かれたシーンに居たであろうと想定される人物であるのに対して、第3の治療用シート300で初めて登場する「特定人物」は、このシーンの場にいてくれると良さそうに思える「愛にあふれた人物」という設定である。
したがって、第3の治療用シート300の「第2欄」および「第3欄」の記入にあたっての指示としては、たとえば、次のような文言を用いるのが好ましい。「これまでの第三者とは別に、このシーンの場にいてくれると良さそうに思える『愛にあふれた人物』を想定してみて下さい。あなたが実際に会った人である必要はなく、また、実在の人物である必要もありません。歴史上の偉人、ドラマの主人公、漫画等の架空のキャラクターでもかまいません。そのような特定人物を想定したら、その特定人物の名前を記入し、その特定人物が図示したシーンを見たときの感情と、その特定人物からのあなたへのアドバイスを想像して記入してみて下さい。」
続く「第4欄」には、「アドバイス後のあなたの感情」との説明文が記載されており、上記アドバイスを聴いた後の自己の気持ちを記入するよう指示されている。図示の例の場合、「第4欄」には感情として「心配」と「寂しさ」に丸印がつけられており、「第5欄」には頭の中の声として「誠実な対応」との記入がなされ、「第6欄」には相手に伝えたいこととして「一層の努力」との記入がなされている。ここで、「第5欄」の「頭の中の声」に記入してもらう事項は、これまでのシートにおける「相手への期待」に記入してもらう事項とほぼ同じであり、「第6欄」の「相手に伝えたいこと」に記入してもらう事項は、これまでのシートにおける「期待の意図」に記入してもらう事項とほぼ同じである。ただ、特定人物のアドバイスを聴いた後の気持ちとして、若干、表現を変えている。
したがって、第3の治療用シート300の「第5欄」および「第6欄」の記入にあたっての指示としては、たとえば、次のような文言を用いるのが好ましい。「二重丸をつけた感情に十分に浸ってから、特定人物からのアドバイスを受け止め、そのときに頭に浮かんだ声を記入して下さい。また、このアドバイスを受け止めた上で、相手に伝えたいことを記入して下さい。」
一方「第7欄」には、「あなたの発言を聴いた後の相手の感情」との説明文が記載されており、「第4欄」,「第5欄」,「第6欄」の内容を相手に伝えた後の相手の気持ちを想像して記入するよう指示されている。図示の例の場合、「第7欄」には感情として「喜び」に二重丸がつけられており、「第8欄」には頭の中の声として「信頼回復」との記入がなされ、「第9欄」には相手に伝えたいこととして「適切な評価」との記入がなされている。ここで、「第8欄」の「頭の中の声」に記入してもらう事項は、これまでのシートにおける「自己への期待」に記入してもらう事項とほぼ同じであり、「第9欄」の「相手(ここでは「相手にとっての相手」、すなわち、患者自身を指す)に伝えたいこと」に記入してもらう事項は、これまでのシートにおける「期待の意図」に記入してもらう事項とほぼ同じである。ただ、「第5欄」,「第6欄」に合わせて、同じ表現を用いている。
したがって、第3の治療用シート300の「第8欄」および「第9欄」の記入にあたっての指示としては、たとえば、次のような文言を用いるのが好ましい。「相手が、二重丸をつけた感情に十分に浸り、更に、第4欄,第5欄,第6欄に記入した事項をあなたから聴いたときに、相手の頭に浮かぶであろう声を想像して記入して下さい。また、相手があなたに伝えたいことを記入して下さい。」
最後の「第10欄」には、第三者「Mr.Z」さんのコメントとして、「今後も協力」との記入がなされている。このように、ここに示す実施例の場合、図8に示す第1の治療用シート100、図9に示す第2の治療用シート200、図10に示す第3の治療用シート300の記入内容は、少しずつ変化してきている。前述したとおり、これは、患者の内心に何らかの変化が生じたためであり、精神疾患が改善している兆候を示すものである。
こうして、第3の治療用シート300への記入作業が完了すると、最後に、図7に示す総括用シート400への記入を行うよう指示がなされる。§4で説明したとおり、この総括用シート400の総括質問エリア490には、第1〜第3の治療用シート100,200,300の記入内容の変遷を振り返ったときの感想を記入する旨の指示が記載されている。
図示の実施例の場合、「第1欄」の「ワークシート1〜3における自己・相手の感情の変遷を見返した時、何を感じますか?」との設問に対して、「立場の違う人間だから仕方がない」との回答が記入されており、「第2欄」の「相手に対して、何を感じますか?相手への感情はどのように変化しましたか?」との設問に対して、「相手への怒りの気持ちはなくなった。」との回答が記入されている。また、「第3欄」の「特定人物のアドバイスに対し、どのように感じますか?」との設問に対して、「よりコミュニケーションを深めよう」との回答が記入されており、「第4欄」の「相手を受容することについて、どのように感じますか?」との設問に対して、「今後も、仕事を続けられそう」との回答が記入されている。
このように、本発明に係る精神疾患の治療用具によれば、3組の治療用シートに順次記入する操作を行わせることができ、しかも、これら3組の治療用シートには、時系列的な順番が定められている。そして、前のシートに記入した内容が相手方に伝えられたものとして、次のシートへの記入が促されるため、相手に対する感情に変化を誘発させる効果が得られる。このように、本発明に係る精神疾患の治療用具は、患者の内心において、相手に対する気持ちの変化を生じさせることができ、精神疾患の改善を図ることができる。また、第4のシートとして総括用シート400を用意して記入させれば、患者自身に3組の治療用シートに記入した内容の変遷を振り返らせることができ、より効果的な治療が可能になる。
<<< §6.精神疾患の治療用具のより具体的な実施例 >>>
§4では、図4〜図7を参照して、本発明に係る精神疾患の治療用具を構成する3枚の治療用シート100,200,300および総括用シート400の基本構成を説明した。
ここでは、これらの各シートについて、より具体的な実施例を図12〜図15として示しておく。図12は、図4に示す第1の治療用シート100のより具体的な実施例の一例を示す平面図であり、図13は、図5に示す第2の治療用シート200のより具体的な実施例の一例を示す平面図であり、図14は、図6に示す第3の治療用シート300のより具体的な実施例の一例を示す平面図である。また、図15は、図7に示す総括用シート400のより具体的な実施例の一例を示す平面図である。
これら4枚の具体的な実施例は、本願発明者が特定の被験者に対して行った試験に実際に利用したシートであり、試験の結果、多数の被験者について、悩みの改善などの治癒効果が見られた。
図12〜図15に示す各シートの基本構成は、図4〜図7に示す各シートの基本構成と同様であり、対応する記入欄には同一の丸数字を付してある。したがって、図12〜図15に示す各シートの具体的な構成の説明や使用方法についての説明は、ここでは省略する。
<<< §7.精神疾患の治療装置の基本構成および動作 >>>
これまで、本発明の基本思想を、シートという物理的な印刷物として実現する実施例を述べてきた。ここでは、本発明の基本思想を、コンピュータを利用して実現する実施例を述べる。
図16は、本発明に係る精神疾患の治療装置600の基本構成を示すブロック図である。この治療装置600は、コンピュータの画面を利用して、患者からの入力を受け付け、その結果をコンピュータの画面に表示することにより、これまで述べてきた治療用シートや治療用具と同等の効果を、コンピュータの画面上で奏するためのものであり、自己と特定の相手との間の人間関係に関連した精神疾患の治療に用いることができる。
図示のとおり、この治療装置600は、治療を受けるユーザ(患者)からの指示操作を入力する指示入力ユニット610と、当該ユーザに対する提示情報をディスプレイ画面上に表示する情報表示ユニット620と、指示入力ユニット610が入力した指示操作に基づいて所定の提示情報を作成し、これを情報表示ユニット620に与える情報処理ユニット630と、を備えている。
実際には、この治療装置600は、コンピュータ(タブレットやスマートフォンなどの電子機器も含む)に所定のプログラムを組み込むことによって構成することができる。すなわち、指示入力ユニット610は、キーボード、マウス、タッチパネルなどのコンピュータ用入力機器によって構成することができ、情報表示ユニット620は、このコンピュータ用のディスプレイ装置によって構成することができる。また、情報処理ユニット630は、このコンピュータおよびそこにインストールされたアプリケーションプログラムの協働体として実現することができる。
ここでは、説明の便宜上、情報処理ユニット630を、描画処理部631、自己感情選択部632、自己メッセージ入力部633、相手感情選択部634、相手メッセージ入力部635、第三者コメント入力部636、統括制御部637という7つの機能要素の集合体として把握した説明を行うが、実際には、この情報処理ユニット630は、コンピュータのハードウェアとソフトウェアとの協働体として実現されることになる。
図17は、情報表示ユニット620によって表示された第1の表示画面710を示す図である。この第1の表示画面710は、図4に示す第1の治療用シート100に対応する画面であり、第1の治療用シート100上に印刷されている情報を、ディスプレイ画面上に表示したものである。
第1の表示画面710は、図示のとおり、表題パート711(シート種別表示エリア110に対応)、シーン図パート712(図描画エリア140に対応)、インストラクションパート713(この装置に固有のパート)、コマンドパート714(この装置に固有のパート)、自己感情パート715(自己感情記入欄121に対応)、相手感情パート716(相手感情記入欄131に対応)、自己メッセージパート717(自己メッセージ記入欄122に対応)、相手メッセージパート718(相手メッセージ記入欄132に対応)、第三者パート719(第三者コメントエリア150に対応)、感情リストパートLの各パートを有している。
インストラクションパート713は、ユーザの入力操作に対する指示を文字列として表示するためのパートであり、ユーザに対して次に行うべき指示が表示される。図示の例の場合、「シーン名を入力して下さい。」との指示が表示されている。これは、表題パート711の「シーン名」欄にシーン名の入力を促す指示である。このインストラクションパート713の表示は、ユーザが入力操作を行うたびに変遷してゆくことになる。
一方、コマンドパート714は、ユーザに、固有のコマンドを入力させるためのパートである。具体的には、「線」,「円」,「矩形」と記されたボタンは、シーン図パート712に絵を描くためのツールを選択するためのボタンであり、ユーザは、シーン図として線画を描く際には「線」ボタンを押して「線ツール」を選択する操作を行い、円を描く際には「円」ボタンを押して「円ツール」を選択する操作を行い、矩形を描く際には「矩形」ボタンを押して「矩形ツール」を選択する操作を行えばよい。このような各ツールを用いた描画機能は、既に種々の描画プログラムで公知であるため、ここでは詳細な説明は省略する。
その下の「取消」ボタンは、直前の操作を取り消すためのボタンであり、「完了」ボタンは、所定の操作が完了したことを指示するボタンである。また、左矢印ボタンは、表示を直前の頁に戻すボタンであり、右矢印ボタンは、表示を次の頁に送るボタンである。図示の例は、「ワークシート1」と記載された第1の治療用シート100に相当する第1の表示画面(第1頁の画面)であるので、右矢印ボタンを押すと、後述する「ワークシート2」と記載された第2の治療用シート200に相当する第2の表示画面(第2頁の画面)に移行することになり、左矢印ボタンを押すと、この前の頁(たとえば、初期説明頁)に移行することになる。このような種々の制御ボタンも、一般的なプログラムで公知であるため、ここでは詳細な説明は省略する。
描画処理部631は、図2に示す第1の治療用シートにおける図描画エリア140の機能をディスプレイ画面上で実現する役割を果たす構成要素であり、情報表示ユニット620を利用して、ユーザに対して、自己と相手についての特定のシーンを示す図を描く旨の指示を与え、指示入力ユニット610から与えられるユーザの指示操作に基づいてシーン図を作成し、これをディスプレイ画面上に表示する処理を行う。
図18は、図16に示す治療装置600における描画処理部631による処理によってシーン図の入力が行われた状態を示す図である。具体的には、描画処理部631は、図17のインストラクションパート713に表示されているように、「シーン名を入力して下さい。」との指示を提示し、ユーザが表題パート711の「シーン名」欄に「業務報告」なるシーン名を入力すると、図18のインストラクションパート713に表示されているように「左の空欄にシーンを描いて下さい。」との指示を提示し、ユーザにシーン図を描かせる処理を行う。すなわち、描画処理部631は、ユーザが入力するコマンドやマウス操作などに応じて、図示のような絵を作成し、シーン図パート712に表示する処理を行う。図18には、図8に示す例と同じシーン図が描かれた状態が示されている。
自己感情選択部632は、ユーザが描いたシーン図を、ディスプレイ画面上のシーン図パート712に表示し、感情を示す単語を複数列挙した感情リストを、ディスプレイ画面上の感情リストパートLに表示させた状態で、表示されたシーン図についてユーザ自身が抱く感情を、表示中の感情リストの中から選択する旨の指示をユーザに対して与えることにより、特定の感情を自己感情として選択させる処理を行う。
図19は、図16に示す治療装置600における自己感情選択部632による処理によって自己感情の入力が行われた状態を示す図である。具体的には、自己感情選択部632は、まず、インストラクションパート713に所定の指示を提示することにより、ユーザ自身の名前を自己感情パート715の空欄に入力させた後、図19のインストラクションパート713に表示されているように、「あなたの感情を選択して下さい。」との指示を提示し、ユーザに感情リストパートLに表示されている9つの感情の中から任意の感情を選択させる処理を実行する。
感情の選択は、たとえば、感情リストの任意のセルをクリックさせる操作によって行わせることができる。また、自己感情パート715の空欄に文字入力を行わせることにより、リストにない任意の感情を入力させることもできる。図19には、ユーザ(患者)の名前として「Mr.X」が入力され、感情として「怒り」と「憎悪」を選択させた例が示されている。
自己メッセージ入力部633は、ユーザが描いたシーン図を、ディスプレイ画面上のシーン図パート712に表示し、ユーザが選択した自己感情を、ディスプレイ画面上の自己感情パート715に表示させた状態で、このシーン図について自己が相手に伝えたいメッセージを入力する旨の指示をユーザに対して与えることにより、特定のメッセージを自己メッセージとして入力する処理を行う。
図20は、図16に示す治療装置600における自己メッセージ入力部633による処理によって自己メッセージの入力が行われた状態を示す図である。具体的には、自己メッセージ入力部633は、インストラクションパート713に表示されているように、「あなたのメッセージを入力して下さい。」との指示を提示し、ユーザに対して、自己メッセージパート717の空欄に文字列を入力させる処理を行う。図20には、期待として「正しい評価を」なる文字列が入力され、意図として「業務環境の改善」なる文字列が入力された例が示されている。
一方、相手感情選択部634は、ユーザが描いたシーン図を、ディスプレイ画面上のシーン図パート712に表示し、感情を示す単語を複数列挙した感情リストを、ディスプレイ画面上の感情リストパートLに表示させた状態で、表示されたシーン図について相手が抱くであろうと思われる感情を、表示中の感情リストの中から選択する旨の指示をユーザに対して与えることにより、特定の感情を相手感情として選択させる処理を行う。
図21は、図16に示す治療装置600における相手感情選択部634による処理によって相手感情の入力が行われた状態を示す図である。具体的には、相手感情選択部634は、まず、インストラクションパート713に所定の指示を提示することにより、相手の名前を相手感情パート716の空欄に入力させた後、図21のインストラクションパート713に表示されているように、「相手の感情を選択して下さい。」との指示を提示し、ユーザに感情リストパートLに表示されている9つの感情の中から任意の感情を選択させる処理を実行する。
上述したとおり、感情の選択は、感情リストの任意のセルをクリックさせる操作で行わせることができるが、相手感情パート716の空欄に文字入力を行わせることにより、リストにない任意の感情を入力させるようにしてもよい。図21には、相手の名前として「Mr.Y」が入力され、感情として「軽蔑」と「失望」を選択させた例が示されている。
相手メッセージ入力部635は、ユーザが描いたシーン図を、ディスプレイ画面上のシーン図パート712に表示させ、ユーザが選択した相手感情を、ディスプレイ画面上の相手感情パート716に表示させた状態で、このシーン図について相手が自己に伝えたいであろうと思われるメッセージを入力する旨の指示をユーザに対して与えることにより、特定のメッセージを相手メッセージとして入力する処理を行う。
図22は、図16に示す治療装置600における相手メッセージ入力部635による処理によって相手メッセージの入力が行われた状態を示す図である。具体的には、相手メッセージ入力部635は、インストラクションパート713に表示されているように、「相手のメッセージを入力して下さい。」との指示を提示し、ユーザに対して、相手メッセージパート718の空欄に文字列を入力させる処理を行う。図22には、期待として「営業努力」なる文字列が入力され、意図として「実績改善」なる文字列が入力された例が示されている。
第三者コメント入力部636は、ユーザが描いたシーン図を、ディスプレイ画面上のシーン図パート712に表示させ、ユーザが選択した自己感情を、ディスプレイ画面上の自己感情パート715に表示させ、ユーザが入力した自己メッセージを、ディスプレイ画面上の自己メッセージパート717に表示させ、ユーザが選択した相手感情を、ディスプレイ画面上の相手感情パート716に表示させ、ユーザが入力した相手メッセージを、ディスプレイ画面上の相手メッセージパート718に表示させた状態で、このシーン図に描かれているシーンに第三者が存在したと仮定した場合に、当該第三者が言及するであろうと思われるコメントを入力する旨の指示をユーザに対して与えることにより、特定のコメントを第三者コメントとして入力する処理を行う。
図23は、図16に示す治療装置600における第三者コメント入力部636による処理によって第三者コメントの入力が行われた状態を示す図である。具体的には、第三者コメント入力部636は、インストラクションパート713に表示されているように、「第三者のコメントを入力して下さい。」との指示を提示し、ユーザに対して、第三者パート719の空欄に文字列を入力させる処理を行う。図23には、第三者の名前として「Mr.Z」が入力され、第三者コメントとして「相互に相手を理解する努力を」なる文字列が入力された例が示されている。
統括制御部637は、描画処理部631、自己感情選択部632、自己メッセージ入力部633、相手感情選択部634、相手メッセージ入力部635、第三者コメント入力部636が、所定の順序で順番に処理を行うように制御する役割を果たす。すなわち、上例の場合は、まず、描画処理部631に処理を実行させ、続いて、自己感情選択部632に処理を実行させ、以下同様に、自己メッセージ入力部633、相手感情選択部634、相手メッセージ入力部635、第三者コメント入力部636の順に処理を実行させる制御を行う。
以上述べた処理は、§2で述べた治療用シート100の使用方法に基づく処理であり、基本的には、図17に示す第1の表示画面710に対する入力操作で完了する処理である。
もちろん、図16に示す治療装置600を用いて、§5で述べた精神疾患の治療用具と同等の治療法を施すことも可能である。この場合は、描画処理部631、自己感情選択部632、自己メッセージ入力部633、相手感情選択部634、相手メッセージ入力部635、第三者コメント入力部636が、同一の表示画面(たとえば、図17に示す第1の表示画面710)を利用してユーザからの指示操作を入力し、当該指示操作によって入力された情報を当該同一の表示画面に表示させる一巡の情報入力機能を果たすことができるようにしておき、統括制御部637によって、第1の表示画面710を利用した第1巡目の情報入力、第2の表示画面720を利用した第2巡目の情報入力、第3の表示画面730を利用した第3巡目の情報入力が順に行われるよう制御すればよい。
ここで、第1の表示画面710は、図4に示す第1の治療用シート100に対応する画面になるようにし、第2の表示画面720は、図5に示す第2の治療用シート200に対応する画面になるようにし、第3の表示画面730は、図6に示す第3の治療用シート300に対応する画面になるようにする。また、総括用シート400に対応する画面として、第4の表示画面740を用いた総括用の情報入力を最後に行うようにしてもよい。
図24は、図16に示す治療装置600において、第2の表示画面720上で第2巡目の情報入力が行われている状態を示す図である。第2の表示画面720は、図5に示す第2の治療用シート200に対応する画面であり、図示のとおり、表題パート721(シート種別表示エリア210に対応)、シーン図パート722(図描画エリア240に対応)、インストラクションパート723(この装置に固有のパート)、コマンドパート724(この装置に固有のパート)、自己感情パート725(自己感情記入欄221に対応)、相手感情パート726(相手感情記入欄231に対応)、自己メッセージパート727(自己メッセージ記入欄222に対応)、相手メッセージパート728(相手メッセージ記入欄232に対応)、第三者パート729(第三者コメントエリア250に対応)、感情リストパートLの各パートを有している。
これら各パートの内容および入力要領は、前述した第1の表示画面710の各パートの内容および入力要領と同様である。ただ、この第2の表示画面720上での入力を行うにあたり、第1の表示画面710の自己感情パート715および自己メッセージパート717に入力した内容を相手に伝え、逆に、第1の表示画面710の相手感情パート716および相手メッセージパート718に入力した内容が自己に伝えられたという前提で、自己および相手に起こるべき心境の変化を考慮した上で、第2の表示画面720上での入力を行う旨の指示を明確に与えるようにする。
前述したとおり、コマンドパート724には、左右の矢印ボタンが設けられており、この矢印ボタンにより、表示画面を前頁へ戻したり、次頁に送ったりすることができるので、ユーザは、第1の表示画面710と第2の表示画面720とを適宜切り替えることができ、第1の表示画面710上での入力内容を確認することができる。図24は、ユーザがこのような方法で、第2の表示画面720への入力操作を行っている途中(相手メッセージパート728への入力途中)の状態を示している(入力内容は、図9に示す例と同じである)。
図25は、図16に示す治療装置600において、第3の表示画面730上で第3巡目の情報入力が行われている状態を示す図である。第3の表示画面730は、図6に示す第3の治療用シート300に対応する画面であり、図示のとおり、表題パート731(シート種別表示エリア310に対応)、シーン図パート732(図描画エリア340に対応)、インストラクションパート733(この装置に固有のパート)、コマンドパート734(この装置に固有のパート)、自己感情パート735(自己感情記入欄321に対応)、相手感情パート736(相手感情記入欄331に対応)、自己メッセージパート737(自己メッセージ記入欄322に対応)、相手メッセージパート738(相手メッセージ記入欄332に対応)、第三者パート739a,739b(特定人物欄351,一般第三者欄352に対応)、感情リストパートLの各パートを有している。
これら各パートの内容および入力要領は、前述した第2の表示画面720の各パートの内容および入力要領とほぼ同じである。実際には、各欄の入力順序や、表題に若干の相違があるが、この点については、§5において、第3の治療用シート300の構成および記入方法として既に説明済みであるので、ここでは説明は省略する。なお、この第3の表示画面730上での入力を行うにあたっては、第2の表示画面720の自己感情パート725および自己メッセージパート727に入力した内容を相手に伝え、逆に、第2の表示画面720の相手感情パート726および相手メッセージパート728に入力した内容が自己に伝えられたという前提で、自己および相手に起こるべき心境の変化を考慮した上で、第3の表示画面730上での入力を行う旨の指示を明確に与えるようにする。
図示のとおり、コマンドパート734には、左右の矢印ボタンが設けられており、この矢印ボタンにより、表示画面を前頁へ戻したり、次頁に送ったりすることができるので、ユーザは、第2の表示画面720と第3の表示画面730とを適宜切り替えることができ、第2の表示画面720上での入力内容を確認することができる。図25は、ユーザがこのような方法で、第3の表示画面730への入力操作を行っている途中(自己感情パート735への入力途中)の状態を示している(入力内容は、図10に示す例と同じである)。
図26は、図16に示す治療装置600において、第4の表示画面740上で最後の総括情報入力を開始する状態を示す図である。第4の表示画面740は、図7に示す総括用シート400に対応する画面であり、図示のとおり、表題パート741(シート種別表示エリア410に対応)、シーン図パート742(総括用シート400には対応エリアは存在しない)、インストラクションパート743(この装置に固有のパート)、コマンドパート744(この装置に固有のパート)、総括質問パート745(総括質問エリア490に対応)の各パートを有している。
これら各パートの内容および入力要領は、図7に示す総括用シート400についての内容および記入要領とほぼ同じである。なお、シーン図パート742には、図25のシーン図パート732に描かれた絵と同じ絵を表示するようにしている。このシーン図パート742に対しては、描画作業を行う必要がないので、コマンドパート744には、描画に必要なコマンドボタンは設けられていない。また、この第4の表示画面740が最終頁になるので、矢印ボタンとしては、前頁に送る左矢印ボタンのみが設けられている。
ユーザが、総括質問パート745への入力を終えて、コマンドパート744の終了ボタンを押すと、すべての作業を完了することができる。この実施例の場合、コマンドパート744にはプリントボタンが設けられており、ユーザがプリントボタンを押すことにより、これまで入力作業を行ってきた第1の表示画面710、第2の表示画面720、第3の表示画面730、第4の表示画面740の内容を紙面上にプリントアウトすることも可能である。
以上、図16に示す精神疾患の治療装置600の処理動作を具体例を示しながら説明したが、もちろん、これらの具体例は一実施例を示すものであり、本発明に係る精神疾患の治療装置は、これらの具体例に限定されるものではない。特に、インストラクションパート713,723,733,743に例示した指示は、説明の便宜上、極めて簡単な文字列による指示になっているが、実用上は、より詳しい指示を行うのが好ましい。もちろん、文字列による指示の代わりに、音声による指示や動画による指示を行うようにしてもよい。
また、上例の場合、1つの画面には、1組の感情リストパートLのみを設けているが、もちろん、自己感情選択用の感情リストと相手感情選択用の感情リストを別々に設けてもかまわない。ただ、治療用シートという物理的な媒体を用いる実施例の場合は、感情リストに丸印を記入して選択を行うことになるため、自己感情選択用の感情リストと相手感情選択用の感情リストとを別々に設けているが、コンピュータを利用して構築される精神疾患の治療装置の場合は、上例のように、選択操作を受け付けるための共用の感情リストを1組だけ設けておけば十分である。
なお、図16に示す精神疾患の治療装置600は、インターネットなどのネットワークを介して接続されたサーバコンピュータとクライアントコンピュータ(タブレットやスマートフォンなどの電子機器も含む)とによって構成することも可能である。たとえば、指示入力ユニット610と情報表示ユニット620をクライアントコンピュータによって構成し、情報処理ユニット630の一部分をクライアントコンピュータで構成し、残りの一部分をサーバコンピュータで構成することも可能である。
本発明に係る精神疾患の治療用シート、精神疾患の治療用具、精神疾患の治療装置は、人間関係に関連した精神疾患の治療の用に供することができ、医療用具や医療機器を提供する産業に広く利用することが可能である。なお、本願では、「治療」という文言を広義で用いており、資格を有する医師によって施術される法律的な医療行為だけに限定されず、様々な企業や団体に所属するコンサルタントや相談員によって施術される行為も広く含むものである。要するに、本発明にいう「治療」とは、精神的に落ち込んだ状態を快方に向かわせるための行為を広く意味するものである。また、本発明にいう「精神疾患」とは、広く精神的に落ち込んだ状態を指す。一般に心因性の精神疾患と健常者の落ち込んだ状態との間には明確な境目はなく、両者の相違は、あくまでスペクトラム状の分類であるとされている。そこで本願では、精神的に落ち込んでおり何かしらの「治療」を必要とするもの、あるいは理想的な精神状態に対し、現状の精神状態にギャップがあり改善を望むものを、広く「精神疾患」と呼ぶことにする。
100:第1の治療用シート
110:シート種別表示エリア
120:自己情報記入エリア
121:自己感情記入欄
122:自己メッセージ記入欄
130:相手情報記入エリア
131:相手感情記入欄
132:相手メッセージ記入欄
140:図描画エリア
150:第三者コメントエリア
200:第2の治療用シート
210:シート種別表示エリア
220:自己情報記入エリア
221:自己感情記入欄
222:自己メッセージ記入欄
230:相手情報記入エリア
231:相手感情記入欄
232:相手メッセージ記入欄
240:図描画エリア
250:第三者コメントエリア
300:第3の治療用シート
310:シート種別表示エリア
320:自己情報記入エリア
321:自己感情記入欄
322:自己メッセージ記入欄
330:相手情報記入エリア
331:相手感情記入欄
332:相手メッセージ記入欄
340:図描画エリア
350:第三者コメントエリア
351:特定人物欄
352:一般第三者欄
400:総括用シート
410:シート種別表示エリア
490:総括質問エリア
500:作業説明書
600:精神疾患の治療装置
610:指示入力ユニット
620:情報表示ユニット
630:情報処理ユニット
631:描画処理部
632:自己感情選択部
633:自己メッセージ入力部
634:相手感情選択部
635:相手メッセージ入力部
636:第三者コメント入力部
637:統括制御部
710:第1の表示画面
711:表題パート
712:シーン図パート
713:インストラクションパート
714:コマンドパート
715:自己感情パート
716:相手感情パート
717:自己メッセージパート
718:相手メッセージパート
719:第三者パート
720:第2の表示画面
721:表題パート
722:シーン図パート
723:インストラクションパート
724:コマンドパート
725:自己感情パート
726:相手感情パート
727:自己メッセージパート
728:相手メッセージパート
729:第三者パート
730:第3の表示画面
731:表題パート
732:シーン図パート
733:インストラクションパート
734:コマンドパート
735:自己感情パート
736:相手感情パート
737:自己メッセージパート
738:相手メッセージパート
739a:特定人物パート
739b:第三者パート
740:第4の表示画面
741:表題パート
742:シーン図パート
743:インストラクションパート
744:コマンドパート
745:総括質問パート
C:中心線
L:感情リストパート

Claims (12)

  1. 自己と特定の相手との間の人間関係に関連した精神疾患の治療に用いる精神疾患の治療用シートであって、
    任意の図を描画するための空白部分を有する図描画エリア(140)と、自己の気持ちに関する情報を記入するための自己情報記入エリア(120)と、相手の気持ちに関する情報を記入するための相手情報記入エリア(130)と、第三者のコメントを記入するための第三者コメントエリア(150)と、を有し、
    前記自己情報記入エリア(120)には、自己の感情を記入するための自己感情記入欄(121)が設けられ、前記相手情報記入エリア(130)には、相手の感情を記入するための相手感情記入欄(131)が設けられており、
    前記自己感情記入欄(121)および前記相手感情記入欄(131)には、それぞれ、感情を示す単語を複数列挙した感情リストが配置されていることを特徴とする精神疾患の治療用シート。
  2. 請求項1に記載の精神疾患の治療用シートにおいて、
    自己感情記入欄(121)および相手感情記入欄(131)には、罫線で囲まれた複数のセルにそれぞれ感情を示す単語が記載された感情リストが配置されてことを特徴とする精神疾患の治療用シート。
  3. 請求項1または2に記載の精神疾患の治療用シートにおいて、
    図描画エリア(140)には、図を描くエリアであることを示す表題が記載されており、自己情報記入エリア(120)には、自己の情報を記入するエリアであることを示す表題が記載されており、相手情報記入エリア(130)には、相手の情報を記入するエリアであることを示す表題が記載されており、第三者コメントエリア(150)には、第三者のコメントを記入するエリアであることを示す表題が記載されていることを特徴とする精神疾患の治療用シート。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の精神疾患の治療用シートにおいて、
    シートを縦方向に貫く中心線(C)を定義したときに、自己情報記入エリア(120)は前記中心線(C)よりも左側に配置され、相手情報記入エリア(130)は前記中心線(C)よりも右側に配置され、図描画エリア(140)および第三者コメントエリア(150)は前記中心線(C)を跨いで、前記中心線(C)が中心となるように配置されていることを特徴とする精神疾患の治療用シート。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の精神疾患の治療用シートにおいて、
    自己情報記入エリア(120)は、更に、自己から相手に伝えたいメッセージを記入するための自己メッセージ記入欄(122)を含んでおり、
    相手情報記入エリア(130)は、更に、相手から自己に伝えたいメッセージを記入するための相手メッセージ記入欄(132)を含んでいることを特徴とする精神疾患の治療用シート。
  6. 請求項5に記載の精神疾患の治療用シートにおいて、
    図描画エリア(140)、自己感情記入欄(121)、自己メッセージ記入欄(122)、相手感情記入欄(131)、相手メッセージ記入欄(132)、第三者コメントエリア(150)の順序で記入を行うことを示すための記入順序符号が各エリアもしくは各欄に記載されていることを特徴とする精神疾患の治療用シート。
  7. 請求項5に記載の精神疾患の治療用シートを3組有する精神疾患の治療用具であって、
    第1の治療用シート(100)には、当該第1の治療用シートが第1番目の記入対象となるシートであることを示すシート種別記号が表示されたシート種別表示エリア(110)が設けられており、
    第2の治療用シート(200)には、当該第2の治療用シートが第2番目の記入対象となるシートであることを示すシート種別記号が表示されたシート種別表示エリア(210)が設けられており、
    第3の治療用シート(300)には、当該第3の治療用シートが第3番目の記入対象となるシートであることを示すシート種別記号が表示されたシート種別表示エリア(310)が設けられており、
    前記第2の治療用シート(200)には、前記第1の治療用シート(100)の自己情報記入エリア(120)に記入された内容が相手に伝えられ、前記第1の治療用シート(100)の相手情報記入エリア(130)に記入された内容が自己に伝えられたという想定で、当該第2の治療用シート(200)への記入を行う旨の指示が記載されており、
    前記第3の治療用シート(300)には、前記第2の治療用シート(200)の自己情報記入エリア(220)に記入された内容が相手に伝えられ、前記第2の治療用シート(200)の相手情報記入エリア(230)に記入された内容が自己に伝えられたという想定で、当該第3の治療用シート(300)への記入を行う旨の指示が記載されていることを特徴とする精神疾患の治療用具。
  8. 請求項7に記載の精神疾患の治療用具において、
    第3の治療用シート(300)の第三者コメントエリア(350)には、特定の人物の感情およびアドバイスを記入する特定人物欄(351)と、一般第三者のコメントを記入するための一般第三者欄(352)と、が設けられており、
    第1の治療用シート(100)および第2の治療用シート(200)には、図描画エリア(140,240)、自己感情記入欄(121,221)、自己メッセージ記入欄(122,222)、相手感情記入欄(131,231)、相手メッセージ記入欄(132,232)、第三者コメントエリア(150,250)の順序で記入を行うことを示すための記入順序符号が各エリアもしくは各欄に記載されており、
    第3の治療用シート(300)には、図描画エリア(340)、特定人物欄(351)、自己感情記入欄(321)、自己メッセージ記入欄(322)、相手感情記入欄(331)、相手メッセージ記入欄(332)、一般第三者欄(352)の順序で記入を行うことを示すための記入順序符号が各エリアもしくは各欄に記載されていることを特徴とする精神疾患の治療用具。
  9. 請求項7または8に記載の精神疾患の治療用具において、
    第1の治療用シート(100)、第2の治療用シート(200)、第3の治療用シート(300)に加えて、更に、総括用シート(400)を有し、
    前記総括用シート(400)には、当該総括用シートが第4番目の記入対象となるシートであることを示すシート種別記号が表示されたシート種別表示エリア(410)が設けられており、前記第1〜第3の治療用シートの記入内容の変遷を振り返ったときの感想を記入する旨の指示が記載されていることを特徴とする精神疾患の治療用具。
  10. 自己と特定の相手との間の人間関係に関連した精神疾患の治療に用いる精神疾患の治療装置(600)であって、
    治療を受けるユーザからの指示操作を入力する指示入力ユニット(610)と、前記ユーザに対する提示情報をディスプレイ画面上に表示する情報表示ユニット(620)と、前記指示入力ユニットが入力した指示操作に基づいて所定の提示情報を作成し、これを前記情報表示ユニットに与える情報処理ユニット(630)と、を備え、
    前記情報処理ユニット(630)は、
    前記ユーザに対して、自己と相手についての特定のシーンを示す図を描く旨の指示を与え、前記ユーザの指示操作に基づいてシーン図を作成し、これをディスプレイ画面上に表示する処理を行う描画処理部(631)と、
    前記シーン図と、感情を示す単語を複数列挙した感情リストと、をディスプレイ画面上に表示させ、前記シーン図について前記ユーザ自身が抱く感情を、表示中の感情リストの中から選択する旨の指示を前記ユーザに対して与えることにより、特定の感情を自己感情として選択させる処理を行う自己感情選択部(632)と、
    前記シーン図と、前記自己感情と、をディスプレイ画面上に表示させ、前記シーン図について自己が相手に伝えたいメッセージを入力する旨の指示を前記ユーザに対して与えることにより、特定のメッセージを自己メッセージとして入力する処理を行う自己メッセージ入力部(633)と、
    前記シーン図と、感情を示す単語を複数列挙した感情リストと、をディスプレイ画面上に表示させ、前記シーン図について相手が抱くであろうと思われる感情を、表示中の感情リストの中から選択する旨の指示を前記ユーザに対して与えることにより、特定の感情を相手感情として選択させる処理を行う相手感情選択部(634)と、
    前記シーン図と、前記相手感情と、をディスプレイ画面上に表示させ、前記シーン図について相手が自己に伝えたいであろうと思われるメッセージを入力する旨の指示を前記ユーザに対して与えることにより、特定のメッセージを相手メッセージとして入力する処理を行う相手メッセージ入力部(635)と、
    前記シーン図と、前記自己感情および前記自己メッセージと、前記相手感情および前記相手メッセージと、をディスプレイ画面上に表示させ、前記シーン図に描かれているシーンに第三者が存在したと仮定した場合に、当該第三者が言及するであろうと思われるコメントを入力する旨の指示を前記ユーザに対して与えることにより、特定のコメントを第三者コメントとして入力する処理を行う第三者コメント入力部(636)と、
    前記描画処理部、前記自己感情選択部、前記自己メッセージ入力部、前記相手感情選択部、前記相手メッセージ入力部、前記第三者コメント入力部が、所定の順序で順番に処理を行うように制御する統括制御部(637)と、
    を有することを特徴とする精神疾患の治療装置。
  11. 請求項10に記載の精神疾患の治療装置(600)において、
    描画処理部(631)、自己感情選択部(632)、自己メッセージ入力部(633)、相手感情選択部(634)、相手メッセージ入力部(635)、第三者コメント入力部(636)が、同一の表示画面を利用してユーザからの指示操作を入力し、当該指示操作によって入力された情報を当該同一の表示画面に表示させる一巡の情報入力機能を有し、
    統括制御部(637)が、第1の表示画面(710)を利用した第1巡目の情報入力、第2の表示画面(720)を利用した第2巡目の情報入力、第3の表示画面(730)を利用した第3巡目の情報入力が順に行われるよう制御を行うことを特徴とする精神疾患の治療装置。
  12. 請求項10または11に記載の精神疾患の治療装置(600)としてコンピュータを機能させるプログラム。
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