JPWO2018055880A1 - 近赤外線カットフィルタ、固体撮像素子、カメラモジュールおよび画像表示装置 - Google Patents

近赤外線カットフィルタ、固体撮像素子、カメラモジュールおよび画像表示装置 Download PDF

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Abstract

耐熱衝撃性に優れた近赤外線カットフィルタを提供する。また、耐熱衝撃性に優れた近赤外線カットフィルタを有する固体撮像素子、カメラモジュールおよび画像表示装置を提供する。この近赤外線カットフィルタは、銅錯体と樹脂とを含む樹脂膜を有する。樹脂膜は、25℃における引っ張り弾性率が0.5〜10GPaであり、周波数1Hz、昇温速度5℃/分の条件で測定した動的粘弾性特性における損失正接tanδのピークを80〜160℃の範囲内に有し、かつ、ピークの半値幅が1〜50℃である。

Description

本発明は、近赤外線カットフィルタ、固体撮像素子、カメラモジュールおよび画像表示装置に関する。
ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、カメラ機能付き携帯電話などには、カラー画像の固体撮像素子である電荷結合素子(CCD)や、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)などが用いられている。これら固体撮像素子は、その受光部において近赤外線に感度を有するシリコンフォトダイオードを使用しているために、視感度補正を行うことが必要であり、近赤外線カットフィルタを用いることが多い。
特許文献1には、透明樹脂と波長600〜800nmに極大吸収波長がある吸収剤とを含有する、近赤外線カットフィルタ形成用樹脂組成物を用いて近赤外線カットフィルタを製造することが記載されている。特許文献1では透明樹脂としてノルボルネン系樹脂を用いている。
特開2014−44431号公報
本発明者が、赤外線吸収剤と樹脂とを含む組成物を用いて形成した近赤外線カットフィルタについて検討したところ、このような近赤外線カットフィルタを寒暖差の大きい環境下で使用すると、近赤外線カットフィルタにひび、曇り、はがれなどの異常が生じることがあることが分かった。以下、近赤外線カットフィルタの寒暖差における耐久性を、耐熱衝撃性ともいう。
また、特許文献1に記載された近赤外線カットフィルタにおいても、耐熱衝撃性は十分ではなかった。
よって、本発明の目的は、耐熱衝撃性に優れた近赤外線カットフィルタを提供することにある。また、耐熱衝撃性に優れた近赤外線カットフィルタを有する、固体撮像素子、カメラモジュールおよび画像表示装置を提供することにある。
本発明者らが鋭意検討を行った結果、後述する特性の近赤外線カットフィルタは、耐熱衝撃性に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明は、以下を提供する。
<1> 銅錯体と樹脂とを含む樹脂膜を有し、
樹脂膜は、25℃における引っ張り弾性率が0.5〜10GPaであり、周波数1Hz、昇温速度5℃/分の条件で測定した動的粘弾性特性における損失正接tanδのピークを80〜160℃の範囲内に有し、かつ、そのピークの半値幅が1〜50℃である、近赤外線カットフィルタ。
<2> 波長800〜1000nmの範囲において、赤外線カットフィルタが有する樹脂膜面に対して垂直方向から照射した光の透過率の平均値が5%以下である、<1>に記載の近赤外線カットフィルタ。
<3> 波長800〜1000nmの範囲において、前記近赤外線カットフィルタの反射率の平均値が20%以下である、<1>または<2>に記載の近赤外線カットフィルタ。
<4> 樹脂膜の線膨張係数が75〜200ppm/℃である、<1>〜<3>のいずれか1つに記載の近赤外線カットフィルタ。
<5> 樹脂膜の25℃におけるビッカース硬度が5〜30である、<1>〜<4>のいずれか1つに記載の近赤外線カットフィルタ。
<6> 樹脂膜の25℃における引っ張り強度が20〜60MPaである、<1>〜<5>のいずれか1つに記載の近赤外線カットフィルタ。
<7> 樹脂膜の架橋基価が1〜4mmol/gである、<1>〜<6>のいずれか1つに記載の近赤外線カットフィルタ。
<8> 樹脂膜は架橋性基を有する樹脂由来の架橋物を含む、<1>〜<7>のいずれか1つに記載の近赤外線カットフィルタ。
<9> 架橋性基を有する樹脂の架橋基価が0.5〜4mmol/gである、<8>に記載の近赤外線カットフィルタ。
<10> 架橋性基がアルコキシシリル基であり、架橋性基を有する樹脂のSi価が0.5〜4mmol/gである、<8>に記載の近赤外線カットフィルタ。
<11> 樹脂膜は架橋性基を有するモノマー由来の架橋物を含む、<1>〜<10>のいずれか1つに記載の近赤外線カットフィルタ。
<12> 架橋性基を有するモノマーの架橋基価が5〜20mmol/gである、<11>に記載の近赤外線カットフィルタ。
<13> 架橋性基を有するモノマーは、1分子中にSi原子を2〜5個含む、<11>または<12>に記載の近赤外線カットフィルタ。
<14> 架橋性基を有するモノマーは、1分子中の2個のSi原子が2〜10個の原子を隔てて結合している、<11>〜<13>のいずれか1つに記載の近赤外線カットフィルタ。
<15> 架橋性基がアルコキシシリル基であり、架橋性基を有するモノマーのSi価が5〜20mmol/gである、<11>〜<14>のいずれか1つに記載の近赤外線カットフィルタ。
<16> 樹脂膜は銅錯体を2種類以上含む、<1>〜<15>のいずれか1つに記載の近赤外線カットフィルタ。
<17> 樹脂膜は自己支持膜である、<1>〜<16>のいずれか1つに記載の近赤外線カットフィルタ。
<18> <1>〜<17>のいずれか1つに記載の近赤外線カットフィルタを有する固体撮像素子。
<19> <1>〜<17>のいずれか1つに記載の近赤外線カットフィルタを有するカメラモジュール。
<20> <1>〜<17>のいずれか1つに記載の近赤外線カットフィルタを有する画像表示装置。
本発明によれば、耐熱衝撃性に優れた近赤外線カットフィルタを提供することができる。また、耐熱衝撃性に優れた近赤外線カットフィルタを有する、固体撮像素子、カメラモジュールおよび画像表示装置を提供することができる。
本発明の実施形態に係る、近赤外線カットフィルタを有するカメラモジュールの構成を示す概略断面図である。 カメラモジュールにおける近赤外線カットフィルタ周辺部分の一例を示す概略断面図である。 カメラモジュールにおける近赤外線カットフィルタ周辺部分の一例を示す概略断面図である。 カメラモジュールにおける近赤外線カットフィルタ周辺部分の一例を示す概略断面図である。 本発明の実施形態に係る、近赤外線カットフィルタを有するカメラモジュールの構成を示す概略断面図である。
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。
本明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートおよびメタクリレートを表し、「(メタ)アリル」は、アリルおよびメタリルを表し、「(メタ)アクリル」は、アクリルおよびメタクリルを表し、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイルおよびメタクリロイルを表す。
本明細書における基(原子団)の表記において、置換および無置換を記していない表記は置換基を有さない基(原子団)と共に置換基を有する基(原子団)をも包含する。
本明細書において、化学式中のMeはメチル基を、Etはエチル基を、Prはプロピル基を、Buはブチル基を、Phはフェニル基をそれぞれ示す。
本明細書において、近赤外線とは、波長領域が700〜2500nmの光(電磁波)をいう。
本明細書において、全固形分とは、組成物の全成分から溶剤を除いた成分の総質量をいう。
本明細書において、重量平均分子量および数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)測定によるポリスチレン換算値として定義される。
<近赤外線カットフィルタ>
本発明の近赤外線カットフィルタは、銅錯体と樹脂とを含む樹脂膜を有し、樹脂膜は、25℃における引っ張り弾性率が0.5〜10GPaであり、周波数1Hz条件下での動的粘弾性特性における損失正接tanδのピークを80〜160℃の範囲内に有し、かつ、そのピークの半値幅が1〜50℃であることを特徴とする。
本発明の近赤外線カットフィルタによれば、樹脂膜の耐熱衝撃性が良好であり、温度差の大きい環境下であっても、ひび割れなどが生じにくい。このような効果が得られる理由としては以下によるものであると推測する。まず、本発明者は、樹脂膜の耐熱衝撃性を向上させるに当たり、樹脂膜の強度を高めつつ、適度な柔軟性を付与させることが望ましいと考えた。すなわち、樹脂膜は低温時に収縮し、高温時に膨張する。このため、温度差の大きい環境下においては、樹脂膜は収縮と膨張とが繰り返される。樹脂膜の硬度が高すぎると、柔軟性が不足する傾向にあるが、樹脂膜の柔軟性が不足すると、樹脂膜の収縮や膨張に伴うひずみが樹脂膜に残留しやすく、ひび割れなどが発生しやすいと考えられる。また、硬度が低すぎると、樹脂膜の収縮や膨張に伴って発生するひずみに樹脂膜が耐え切れず、ひび割れなどが発生しやすいと考えられる。一方、樹脂膜における上記損失正接tanδのピークの半値幅は、樹脂膜における架橋の均一性と関連性があることが知られている。そして、上記損失正接tanδのピークの半値幅が狭い(すなわち、ピークがシャープである)ほど、樹脂膜全体で架橋が均一に進行している傾向にあることを見出した。樹脂膜の架橋がほぼ均一に進行していることで、樹脂膜の機械強度が良好で、硬度が高い傾向にある。そして、樹脂膜の25℃における引っ張り弾性率が0.5〜10GPaであり、かつ、樹脂膜が上記損失正接tanδのピークを80〜160℃の範囲内に有していることにより、樹脂膜の硬度と柔軟性のバランスが良好で、樹脂膜の耐熱衝撃性を向上することができたと推測する。
また、上記の機械物性を有する樹脂膜は、自己支持膜としての特性も有している。このため、本発明の近赤外線カットフィルタによれば、支持体を省略することもでき、樹脂膜のみを近赤外線カットフィルタとして用いることができる。なお、樹脂膜の表面には各種機能層が形成されていてもよい。支持体を省略できるため、近赤外線カットフィルタの厚みを従来よりもさらに薄くすることができる。ここで、自己支持膜とは、膜自体が自立性を有している膜のことであり、支持体が存在していなくても、膜としての形状を保つことができる膜を意味する。より具体的には、膜の自重によって発生する鉛直下向きの力に対抗して、膜の強度によってその形状を保つことができる膜を意味する。
樹脂膜の上記機械物性は、いかなる手段によって達成されてもよいが、樹脂膜の製造において、近赤外線吸収組成物の樹脂などの成分の種類、含有量、および、成膜条件(例えば、乾燥条件、硬化条件、架橋率の調整)などを適宜調整することで達成できる。
例えば、架橋性基(好ましくはアルコキシシリル基)を有する樹脂、および/または、架橋性基(好ましくはアルコキシシリル基)を有するモノマーを含有する近赤外線吸収組成物を用いて、樹脂膜を製造する方法が一例として挙げられる。架橋性基(好ましくはアルコキシシリル基)を有する樹脂と、架橋性基(好ましくはアルコキシシリル基)を有するモノマーとを併用することが好ましい。この場合においては、近赤外線吸収組成物が架橋性基を有する樹脂100質量部に対して架橋性基を有するモノマーを1〜30質量部含有することが好ましく、3〜20質量部含有することがより好ましく、5〜15質量部含有することが更に好ましい。また、近赤外線吸収組成物の乾燥温度、硬化条件などを適宜調整して、樹脂膜の架橋率を50〜90%とすることも好ましい。ここで、架橋率とは、架橋した架橋基の数/架橋基の総数のことであり、NMR(核磁気共鳴)などの方法で測定することができる。
樹脂膜における上記損失正接tanδのピークが発現する温度(ピーク温度ともいう)は、樹脂やモノマーの種類で調整できる。例えば、ガラス転移温度の高い樹脂やモノマーを用いたり、架橋基価の高い樹脂やモノマーを用いることで、ピーク温度を高めることができる。また、ガラス転移温度の低い樹脂やモノマーを用いたり、架橋基価の低い樹脂やモノマーを用いることで、ピーク温度を下げることができる。
また、上記のピークの半値幅は、樹脂とモノマーの比率を変更するなどの方法で調整できる。例えば、モノマーに対する樹脂の量を適点から外すことで、ピークの半値幅を広げることができ、モノマーに対する樹脂の量を適点に近付けるとすることで、ピークの半値幅を狭めることができる。
また、樹脂膜の上記引っ張り弾性率は、樹脂やモノマーの種類で調整できる。例えば、ガラス転移温度の高い樹脂やモノマーを用いたり、架橋基価の高い樹脂やモノマーを用いることで樹脂膜の上記引っ張り弾性率を高めることができる。また、ガラス転移温度の低い樹脂やモノマーを用いたり、架橋基価の低い樹脂やモノマーを用いることで、樹脂膜の上記引っ張り弾性率を下げることができる。
本発明の近赤外線カットフィルタにおいて、25℃における樹脂膜の引っ張り弾性率は、0.5〜20GPaであり、1.0〜3.0GPaであることが好ましい。下限は、1.1GPa以上であることが好ましく、1.2GPa以上であることがより好ましく、1.3GPa以上であることが更に好ましい。上限は、2.9GPa以下であることが好ましく、2.5GPa以下であることがより好ましく、2.0GPa以下であることが更に好ましい。この態様によれば、樹脂膜の耐熱衝撃性を向上することができる。更には、樹脂膜の支持体などからの剥離性を高めることもできる。
本発明の近赤外線カットフィルタにおいて、樹脂膜の上記損失正接tanδのピークは、80〜160℃の範囲内であり、85〜150℃の範囲内にあることが好ましく、90〜140℃の範囲内にあることがより好ましい。また、上記のピークの半値幅は、5〜60℃であることが好ましく、8〜50℃であることがより好ましく、10〜40℃であることが更に好ましい。この態様によれば、樹脂膜の耐熱衝撃性を向上することができる。更には、樹脂膜の支持体などからの剥離性も高めることができる。
本発明の近赤外線カットフィルタにおいて、樹脂膜の線膨張係数は、75〜200ppm/℃であることが好ましい。下限は、76ppm/℃以上であることが好ましく、80ppm/℃以上であることがより好ましく、85ppm/℃以上であることが更に好ましい。上限は、190ppm/℃以下であることが好ましく、150ppm/℃以下であることがより好ましく、120ppm/℃以下であることが更に好ましい。この態様によれば、樹脂膜の耐熱衝撃性を向上することがでる。更には、樹脂膜の支持体などからの剥離性も高めることができる。なお、樹脂膜の線膨張係数の値は、−20〜70℃の温度範囲における値である。
本発明の近赤外線カットフィルタにおいて、25℃における樹脂膜のビッカース硬度は、5〜30であることが好ましい。下限は、5以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましく、15以上であることが更に好ましい。上限は、30以下であることが好ましく、25以下であることがより好ましく、20以下であることが更に好ましい。この態様によれば、樹脂膜の耐熱衝撃性を向上することがでる。更には、樹脂膜の支持体などからの剥離性も高めることができる。
本発明の近赤外線カットフィルタにおいて、25℃における樹脂膜の引っ張り強度は、20〜60MPaであることが好ましい。下限は、21MPa以上であることが好ましく、25MPa以上であることがより好ましく、30MPa以上であることが更に好ましい。上限は、55MPa以下であることが好ましく、50MPa以下であることがより好ましく、40MPa以下であることが更に好ましい。この態様によれば、樹脂膜の耐熱衝撃性を向上することがでる。更には、樹脂膜の支持体などからの剥離性も高めることができる。
樹脂膜の上述した物性値は後述する実施例に記載の方法で測定した値である。
本発明の近赤外線カットフィルタにおいて、樹脂膜の架橋基価は、0.5〜4mmol/gであることが好ましい。樹脂膜のSi価の上限は、3.5mmol/g以下であることが好ましく、3mmol/g以下であることがより好ましく、2mmol/g以下であることが更に好ましい。樹脂膜のSi価の下限は、0.6mmol/g以上であることが好ましく、0.8mmol/g以上であることがより好ましく、1mmol/g以上であることが更に好ましい。樹脂膜のSi価が上記範囲であれば、樹脂膜の耐熱衝撃性が良好である。なお、架橋基価とは、樹脂1g中に含まれる架橋基の等量のことであり、架橋基価は滴定等の方法で測定することができる。
本発明の近赤外線カットフィルタにおいて、樹脂膜中の銅錯体の含有量としては、5〜90質量%であることが好ましい。下限は10質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましく、20質量%以上が更に好ましい。上限は、70質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましく、50質量%以下が更に好ましい。銅錯体の詳細については後述する。なかでも、銅錯体は、銅に対して4個または5個の配位部位を有する化合物を配位子として有することが好ましい。この態様によれば、近赤外線カットフィルタの可視透明性および赤外線遮蔽性をより向上できる。
本発明の近赤外線カットフィルタにおいて、樹脂膜は、架橋性基を有する樹脂由来の架橋物、および/または架橋性基を有するモノマー由来の架橋物を含むことが好ましく、架橋性基を有する樹脂由来の架橋物、および、架橋性基を有するモノマー由来の架橋物を含むことがより好ましい。また、上述の樹脂およびモノマーが有する架橋性基は、アルコキシシリル基であることが好ましい。架橋性基を有する樹脂、および、架橋性基を有するモノマーの詳細については後述する。
本発明の近赤外線カットフィルタにおける樹脂膜においては、樹脂(架橋性基を有する樹脂由来の架橋物を含む)の含有量が、30〜90質量%であることが好ましい。下限は35質量%以上が好ましく、40質量%以上がより好ましく、50質量%以上が更に好ましい。上限は、85質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましく、70質量%以下が更に好ましい。
また、樹脂膜中の樹脂(架橋性基を有する樹脂由来の架橋物を含む)と、架橋性基を有するモノマー由来の成分(未架橋モノマーおよび架橋物)との合計量は、35〜95%であることが好ましい。下限は40質量%以上が好ましく、45質量%以上がより好ましく、55質量%以上が更に好ましい。上限は、90質量%以下が好ましく、85質量%以下がより好ましく、80質量%以下が更に好ましい。
本発明の近赤外線カットフィルタにおける樹脂膜においては、銅錯体を2種類以上含むことが好ましい。この態様によれば、赤外線遮蔽性に優れた近赤外線カットフィルタとすることができる。
本発明の近赤外線カットフィルタは、波長800〜1000nmの範囲において、近赤外線カットフィルタが有する樹脂膜面に対して垂直方向から照射した光の透過率の平均値が20%以下であることが好ましく、15%以下であることがより好ましく、10%以下であることが更に好ましく、5%以下であることが特に好ましく、1%以下であることがより特に好ましい。また、本発明の近赤外線カットフィルタは、波長800〜1000nmの全範囲において、近赤外線カットフィルタが有する樹脂膜面に対して垂直方向から照射した光の透過率が20%以下であることが好ましく、15%以下であることがより好ましく、10%以下であることが更に好ましく、5%以下であることが特に好ましく、1%以下であることがより特に好ましい。本発明の近赤外線カットフィルタは、波長800〜1000nmの範囲において、近赤外線カットフィルタが有する樹脂膜面に対して垂直方向から照射した光の透過率の平均値は、0%以上であることが好ましい。この態様によれば、赤外線遮蔽性に優れた近赤外線カットフィルタとすることができる。
本発明の近赤外線カットフィルタは、波長800〜1000nmの範囲における反射率の平均値が20%以下であることが好ましく、10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましい。また、本発明の近赤外線カットフィルタは、波長800〜1000nmの全範囲において反射率が20%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましく、5%以下であることが更に好ましい。本発明の近赤外線カットフィルタは、波長800〜1000nmの範囲における反射率の平均値が0%以上であることが好ましい。この態様によれば、視野角が広く、赤外線遮蔽性に優れた近赤外線カットフィルタとすることができる。上記反射率は、U−4100(日立ハイテクノロジーズ社製)を用い、近赤外線カットフィルタの表面法線方向を0°として、入射角度を5°に設定して測定した値である。
本発明の近赤外線カットフィルタは、近赤外線カットフィルタが有する樹脂膜面に対して垂直方向から照射した光の透過率が以下の(1)〜(9)のうちの少なくとも1つの条件を満たすことが好ましく、以下の(1)〜(8)のすべての条件を満たすことがより好ましく、(1)〜(9)のすべての条件を満たすことがさらに好ましい。
(1)波長400nmでの透過率は80%以上が好ましく、90%以上がより好ましく、92%以上がさらに好ましく、95%以上が特に好ましい。
(2)波長450nmでの透過率は80%以上が好ましく、90%以上がより好ましく、92%以上がさらに好ましく、95%以上が特に好ましい。
(3)波長500nmでの透過率は80%以上が好ましく、90%以上がより好ましく、92%以上がさらに好ましく、95%以上が特に好ましい。
(4)波長550nmでの透過率は80%以上が好ましく、90%以上がより好ましく、92%以上がさらに好ましく、95%以上が特に好ましい。
(5)波長700nmでの透過率は20%以下が好ましく、15%以下がより好ましく、10%以下がさらに好ましく、5%以下が特に好ましい。
(6)波長750nmでの透過率は20%以下が好ましく、15%以下がより好ましく、10%以下がさらに好ましく、5%以下が特に好ましい。
(7)波長800nmでの透過率は20%以下が好ましく、15%以下がより好ましく、10%以下がさらに好ましく、5%以下が特に好ましい。
(8)波長850nmでの透過率は20%以下が好ましく、15%以下がより好ましく、10%以下がさらに好ましく、5%以下が特に好ましい。
(9)波長900nmでの透過率は20%以下が好ましく、15%以下がより好ましく、10%以下がさらに好ましく、5%以下が特に好ましい。
本発明の近赤外線カットフィルタは、波長400〜550nmの全ての範囲での透過率が85%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、95%以上であることが更に好ましい。可視領域の透過率は高いほど好ましい。
近赤外線カットフィルタにおいて、樹脂膜の厚みは、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、500μm以下が好ましく、300μm以下がより好ましく、250μm以下がさらに好ましく、200μm以下が特に好ましい。樹脂膜の厚み下限は、例えば、0.1μm以上が好ましく、0.2μm以上がより好ましく、0.5μm以上がより好ましい。
本発明の近赤外線カットフィルタは、170℃で90分間加熱して耐熱試験を行った場合における、下記式で表される波長400nmにおける吸光度の変化率が10%以下であることが好ましく、6%以下であることがより好ましく、3%以下であることが更に好ましい。吸光度の変化率が上記範囲であれば、耐熱性に優れ、加熱による着色が抑制された近赤外線カットフィルタとすることができる。
波長400nmにおける吸光度の変化率(%)=|(耐熱試験前における波長400nmの吸光度−耐熱試験後における波長400nmの吸光度)/耐熱試験前における波長400nmの吸光度|×100(%)
本発明の近赤外線カットフィルタは、85℃、相対湿度85%の環境下で500時間静置して耐湿試験を行った場合における、下記式で表される波長400nmにおける吸光度の変化率が10%以下であることが好ましく、6%以下であることがより好ましく、3%以下であることが更に好ましい。吸光度の変化率が上記範囲であれば、耐湿性に優れた近赤外線カットフィルタとすることができる。
波長400nmにおける吸光度の変化率(%)=|(耐湿試験前における波長400nmの吸光度−耐湿試験後における波長400nmの吸光度)/耐湿試験前における波長400nmの吸光度|×100(%)
本発明の近赤外線カットフィルタは、−40℃の環境下で500時間静置して耐低温試験を行った場合における、下記式で表される波長400nmにおける吸光度の変化率が10%以下であることが好ましく、6%以下であることがより好ましく、3%以下であることが更に好ましい。吸光度の変化率が上記範囲であれば、耐低温性に優れた近赤外線カットフィルタとすることができる。
波長400nmにおける吸光度の変化率(%)=|(耐低温験前における波長400nmの吸光度−耐低温験後における波長400nmの吸光度)/耐低温験前における波長400nmの吸光度|×100(%)
本発明の近赤外線カットフィルタは、上述した樹脂膜の他に、誘電体多層膜、紫外線吸収層などの機能層を有していてもよい。これらの機能層は、樹脂層上に形成されていてもよい。近赤外線カットフィルタが、更に、誘電体多層膜を有することで、赤外線遮蔽性に優れた近赤外線カットフィルタが得られ易い。また、近赤外線カットフィルタが、更に、紫外線吸収層を有することで、紫外線遮蔽性に優れた近赤外線カットフィルタとすることができる。紫外線吸収層としては、例えば、国際公開WO2015/099060号公報の段落番号0040〜0070、0119〜0145に記載の吸収層を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。誘電体多層膜としては、特開2014−41318号公報の段落番号0255〜0259の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
本発明の近赤外線カットフィルタにおいて、樹脂膜自体が自己支持性(自立性)を有しているので、本発明の近赤外線カットフィルタは支持体を有さないものであってもよい。すなわち、支持体は任意で省くこともできる。
本発明の近赤外線カットフィルタは、CCD(電荷結合素子)やCMOS(相補型金属酸化膜半導体)などの固体撮像素子や、赤外線センサ、画像表示装置などの各種装置に用いることができる。
<近赤外線吸収組成物>
次に、本発明の近赤外線カットフィルタにおける樹脂膜の形成に好ましく用いることができる近赤外線吸収組成物について説明する。
<<銅錯体>>
近赤外線吸収組成物は、銅錯体を含有する。銅錯体としては、銅と、銅に対する配位部位を有する化合物(配位子)との錯体が好ましい。銅に対する配位部位としては、アニオンで配位する配位部位、非共有電子対で配位する配位原子が挙げられる。銅錯体は、配位子を2つ以上有していてもよい。配位子を2つ以上有する場合は、それぞれの配位子は同一であってもよく、異なっていてもよい。銅錯体は、4配位、5配位および6配位が例示され、4配位および5配位がより好ましく、5配位がさらに好ましい。また、銅錯体は、銅と配位子によって、5員環および/または6員環が形成されていることが好ましい。このような銅錯体は、形状が安定であり、錯体安定性に優れる。
本発明において、銅錯体は、フタロシアニン銅錯体以外の銅錯体であることも好ましい。ここで、フタロシアニン銅錯体とは、フタロシアニン骨格を有する化合物を配位子とする銅錯体である。フタロシアニン骨格を有する化合物は、分子全体にπ電子共役系が広がり、平面構造を取る。フタロシアニン銅錯体は、π−π*遷移で光を吸収する。π−π*遷移で赤外領域の光を吸収するには、配位子をなす化合物が長い共役構造をとる必要がある。しかしながら、配位子の共役構造を長くすると、可視透明性が低下する傾向にある。このため、フタロシアニン銅錯体以外の銅錯体が、可視透明性の観点で好ましい。
また、銅錯体は、400〜600nmの波長領域に極大吸収波長を有さない化合物を配位子とする銅錯体であることも好ましい。400〜600nmの波長領域に極大吸収波長を有さない化合物を配位子とする銅錯体は、可視領域(例えば、400〜600nmの波長領域)に吸収を有するため、可視透明性の観点で好ましい。400〜600nmの波長領域に極大吸収波長を有する化合物としては、長い共役構造を有し、π−π*遷移の光の吸収の大きい化合物が挙げられる。具体的には、フタロシアニン骨格を有する化合物が挙げられる。
銅錯体は、例えば銅成分(銅または銅を含む化合物)に対して、銅に対する配位部位を有する化合物(配位子)を混合・反応等させて得ることができる。銅に対する配位部位を有する化合物(配位子)は、低分子化合物であってもよく、ポリマーであってもよい。両者を併用することもできる。
銅成分は、2価の銅を含む化合物が好ましい。銅成分は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。銅成分としては、例えば、酸化銅や銅塩を用いることができる。銅塩は、例えば、カルボン酸銅(例えば、酢酸銅、エチルアセト酢酸銅、ギ酸銅、安息香酸銅、ステアリン酸銅、ナフテン酸銅、クエン酸銅、2−エチルヘキサン酸銅など)、スルホン酸銅(例えば、メタンスルホン酸銅など)、リン酸銅、リン酸エステル銅、ホスホン酸銅、ホスホン酸エステル銅、ホスフィン酸銅、アミド銅、スルホンアミド銅、イミド銅、アシルスルホンイミド銅、ビススルホンイミド銅、メチド銅、アルコキシ銅、フェノキシ銅、水酸化銅、炭酸銅、硫酸銅、硝酸銅、過塩素酸銅、フッ化銅、塩化銅、臭化銅が好ましく、カルボン酸銅、スルホン酸銅、スルホンアミド銅、イミド銅、アシルスルホンイミド銅、ビススルホンイミド銅、アルコキシ銅、フェノキシ銅、水酸化銅、炭酸銅、フッ化銅、塩化銅、硫酸銅、硝酸銅がより好ましく、カルボン酸銅、アシルスルホンイミド銅、フェノキシ銅、塩化銅、硫酸銅、硝酸銅が更に好ましく、カルボン酸銅、アシルスルホンイミド銅、塩化銅、硫酸銅が特に好ましい。
銅錯体は、波長700〜1200nmの範囲に極大吸収波長を有する化合物が好ましい。銅錯体の極大吸収波長は、波長720〜1200nmの範囲に有することがより好ましく、波長800〜1100nmの範囲に有することがさらに好ましい。銅錯体の極大吸収波長は、例えば、Cary 5000 UV−Vis−NIR(分光光度計 アジレント・テクノロジー株式会社製)を用いて測定することができる。
銅錯体の上述した波長領域における極大吸収波長でのモル吸光係数は、120(L/mol・cm)以上が好ましく、150(L/mol・cm)以上がより好ましく、200(L/mol・cm)以上がさらに好ましく、300(L/mol・cm)以上がよりさらに好ましく、400(L/mol・cm)以上が特に好ましい。上限は、特に限定はないが、例えば、30000(L/mol・cm)以下とすることができる。銅錯体の上記モル吸光係数が、100(L/mol・cm)以上であれば、薄膜であっても、赤外線遮蔽性に優れた近赤外線カットフィルタとすることができる。
銅錯体の波長800nmでのグラム吸光係数は、0.11(L/g・cm)以上が好ましく、0.15(L/g・cm)以上がより好ましく、0.24(L/g・cm)以上がさらに好ましい。
なお、本発明において、銅錯体のモル吸光係数およびグラム吸光係数は、銅錯体を測定溶媒に溶解させて1g/Lの濃度の溶液を調製し、銅錯体を溶解させた溶液の吸収スペクトルを測定して求めることができる。測定装置としては、島津製作所製UV−1800(波長領域200〜1100nm)、Agilent製Cary 5000(波長領域200〜1300nm)などを用いることができる。測定溶媒としては、水、N,N−ジメチルホルムアミド、プロピレングリコールモノメチルエーテル、1,2,4−トリクロロベンゼン、アセトンが挙げられる。本発明では、上述した測定溶媒のうち、測定対象の銅錯体を溶解できるものを選択して用いる。プロピレングリコールモノメチルエーテルに溶解する銅錯体の場合は、測定溶媒としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルを用いることが好ましい。なお、溶解するとは、25℃の溶媒100gに対する、銅錯体の溶解度が0.01gを超える状態(0.01g/100gSolvent)を意味する。
本発明において、銅錯体のモル吸光係数およびグラム吸光係数は、上述した測定溶媒のいずれか1つを用いて測定した値であることが好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルでの値であることがより好ましい。
(低分子タイプの銅錯体)
銅錯体としては、例えば、式(Cu−1)で表される銅錯体を用いることができる。この銅錯体は、中心金属の銅に配位子Lが配位した銅錯体であり、銅は、通常2価の銅である。この銅錯体は、例えば銅成分に対して、配位子Lとなる化合物またはその塩を反応等させて得ることができる。
Cu(L)n1・(X)n2 式(Cu−1)
上記式中、Lは、銅に配位する配位子を表し、Xは、対イオンを表す。n1は、1〜4の整数を表す。n2は、0〜4の整数を表す。
Xは、対イオンを表す。銅錯体は、電荷を持たない中性錯体のほか、カチオン錯体、アニオン錯体になることもある。この場合、銅錯体の電荷を中和するよう、必要に応じて対イオンが存在する。
対イオンが負の対イオン(対アニオン)の場合、例えば、無機陰イオンでもよく、有機陰イオンでもよい。例えば、対イオンとしては、水酸化物イオン、ハロゲン陰イオン(例えば、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン等)、置換または無置換のアルキルカルボン酸イオン(酢酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン等)、置換または無置換のアリールカルボン酸イオン(安息香酸イオン等)、置換もしくは無置換のアルキルスルホン酸イオン(メタンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン等)、置換もしくは無置換のアリールスルホン酸イオン(例えばp−トルエンスルホン酸イオン、p−クロロベンゼンスルホン酸イオン等)、アリールジスルホン酸イオン(例えば1,3−ベンゼンジスルホン酸イオン、1,5−ナフタレンジスルホン酸イオン、2,6−ナフタレンジスルホン酸イオン等)、アルキル硫酸イオン(例えばメチル硫酸イオン等)、硫酸イオン、チオシアン酸イオン、硝酸イオン、過塩素酸イオン、ホウ素酸イオン(例えば、テトラフルオロホウ酸イオン、テトラアリールホウ酸イオン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸イオン(B-(C654)等)、スルホネートイオン(例えば、p−トルエンスルホネートイオンなど)、イミドイオン(例えば、スルホンイミドイオン、N,N−ビス(フルオロスルホニル)イミドイオン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオン、ビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミドイオン、N,N−ヘキサフルオロ−1,3−ジスルホニルイミドイオン等)、ホスフェートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、ピクリン酸イオン、アミドイオン(アシル基やスルホニル基で置換されたアミドを含む)、メチドイオン(アシル基やスルホニル基で置換されたメチドを含む)が挙げられ、ハロゲン陰イオン、置換もしくは無置換のアルキルカルボン酸イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、テトラアリールホウ酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、アミドイオン(アシル基やスルホニル基で置換されたアミドを含む)、メチドイオン(アシル基やスルホニル基で置換されたメチドを含む)が好ましい。
また、対アニオンは、低求核性アニオンであることが好ましい。低求核性アニオンとは、一般的に超酸(super acid)と呼ばれるpKaの低い酸がプロトンを解離してなるアニオンである。超酸の定義は、文献によっても異なるがメタンスルホン酸よりpKaが低い酸の総称であり、J.Org.Chem.2011,76,391−395 Equilibrium Acidities of Super acidsに記載される構造が知られている。低求核性アニオンのpKaは、例えば、−11以下が好ましく、−11〜−18が好ましい。pKaは、例えば、J.Org.Chem.2011,76,391−395に記載の方法により測定することができる。本明細書におけるpKa値は、特に断りがない場合、1,2−ジクロロエタン中でのpKaである。対アニオンが、低求核性アニオンであると、銅錯体や樹脂の分解反応が生じにくく、耐熱性が良好である。低求核性アニオンは、テトラフルオロホウ酸イオン、テトラアリールホウ酸イオン(ハロゲン原子やフルオロアルキル基で置換されたアリールを含む)、ヘキサフルオロホスフェートイオン、イミドイオン(アシル基やスルホニル基で置換されたアミドを含む)、メチドイオン(アシル基やスルホニル基で置換されたメチドを含む)がより好ましく、テトラアリールホウ酸イオン(ハロゲン原子やフルオロアルキル基で置換されたアリールを含む)、イミドイオン(スルホニル基で置換されたアミドを含む)、メチドイオン(スルホニル基で置換されたメチドを含む)が特に好ましい。
また、本発明において、対アニオンは、ハロゲン陰イオン、カルボン酸イオン、スルホン酸イオン、ホウ素酸イオン、スルホネートイオン、イミドイオンであることも好ましい。具体例としては、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、酢酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、ホルメートイオン、ホスフェートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、p−トルエンスルホネートイオン、テトラフルオロホウ素酸イオン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸イオン、N,N−ビス(フルオロスルホニル)イミドイオン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオン、ビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミドイオン、ノナフルオロ−N−[(トリフルオロメタン)スルホニル]ブタンスルホニルイミドイオン、N,N−ヘキサフルオロ−1,3−ジスルホニルイミドイオン等が挙げられ、トリフルオロ酢酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフルホウ素酸イオン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸イオン、N,N−ビス(フルオロスルホニル)イミドイオン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオン、ビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミドイオン、ノナフルオロ−N−[(トリフルオロメタン)スルホニル]ブタンスルホニルイミドイオン、N,N−ヘキサフルオロ−1,3−ジスルホニルイミドイオンが好ましく、トリフルオロ酢酸イオン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸イオン、N,N−ビス(フルオロスルホニル)イミドイオン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオン、ビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミドイオン、ノナフルオロ−N−[(トリフルオロメタン)スルホニル]ブタンスルホニルイミドイオン、N,N−ヘキサフルオロ−1,3−ジスルホニルイミドイオンがより好ましい。
対イオンが正の対イオン(対カチオン)の場合、例えば、無機もしくは有機のアンモニウムイオン(例えば、テトラブチルアンモニウムイオンなどのテトラアルキルアンモニウムイオン、トリエチルベンジルアンモニウムイオン、ピリジニウムイオン等)、ホスホニウムイオン(例えば、テトラブチルホスホニウムイオンなどのテトラアルキルホスホニウムイオン、アルキルトリフェニルホスホニウムイオン、トリエチルフェニルホスホニウムイオン等)、アルカリ金属イオンまたはプロトンが挙げられる。
また、対イオンは金属錯体イオン(例えば銅錯体イオンなど)であってもよい。
配位子Lは、銅に対する配位部位を有する化合物であり、銅に対しアニオンで配位する配位部位、および、銅に対し非共有電子対で配位する配位原子から選ばれる1種以上を有する化合物が挙げられる。アニオンで配位する配位部位は、解離していてもよく、非解離でも良い。配位子Lは、銅に対する配位部位を2個以上有する化合物(多座配位子)が好ましい。また、配位子Lは、可視透過性を向上させるために、芳香族などのπ共役系が連続して複数結合していないことが好ましい。配位子Lは、銅に対する配位部位を1個有する化合物(単座配位子)と、銅に対する配位部位を2個以上有する化合物(多座配位子)とを併用することもできる。単座配位子としては、アニオンまたは非共有電子対で配位する単座配位子が挙げられる。アニオンで配位する配位子としては、ハロゲンアニオン、ヒドロキシドアニオン、アルコキシドアニオン、フェノキシドアニオン、アミドアニオン(アシル基やスルホニル基で置換されたアミドを含む)、イミドアニオン(アシル基やスルホニル基で置換されたイミドを含む)、アニリドアニオン(アシル基やスルホニル基で置換されたアニリドを含む)、チオラートアニオン、炭酸水素アニオン、カルボン酸アニオン、チオカルボン酸アニオン、ジチオカルボン酸アニオン、硫酸水素アニオン、スルホン酸アニオン、リン酸二水素アニオン、リン酸ジエステルアニオン、ホスホン酸モノエステルアニオン、ホスホン酸水素アニオン、ホスフィン酸アニオン、含窒素へテロ環アニオン、硝酸アニオン、次亜塩素酸アニオン、シアニドアニオン、シアナートアニオン、イソシアナートアニオン、チオシアナートアニオン、イソチオシアナートアニオン、アジドアニオンなどが挙げられる。非共有電子対で配位する単座配位子としては、水、アルコール、フェノール、エーテル、アミン、アニリン、アミド、イミド、イミン、ニトリル、イソニトリル、チオール、チオエーテル、カルボニル化合物、チオカルボニル化合物、スルホキシド、へテロ環、あるいは、炭酸、カルボン酸、硫酸、スルホン酸、リン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸、硝酸、または、そのエステルが挙げられる。
上記配位子Lが有するアニオンは、銅原子に配位可能なものであればよく、酸素アニオン、窒素アニオンまたは硫黄アニオンが好ましい。アニオンで配位する配位部位は、以下の1価の官能基群(AN−1)、または、2価の官能基群(AN−2)から選択される少なくとも1種であることが好ましい。なお、以下の構造式における波線は、配位子を構成する原子団との結合位置である。
群(AN−1)
群(AN−2)
上記式中、Xは、NまたはCRを表し、Rは、それぞれ独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基またはヘテロアリール基を表す。
Rが表すアルキル基は、直鎖状、分岐状または環状であってもよいが、直鎖状が好ましい。アルキル基の炭素数は、1〜10が好ましく、1〜6がより好ましく、1〜4がさらに好ましい。アルキル基の例としては、メチル基が挙げられる。アルキル基は置換基を有していてもよい。置換基としてはハロゲン原子、カルボキシル基、ヘテロ環基が挙げられる。置換基としてのヘテロ環基は、単環であっても多環であってもよく、また、芳香族であっても非芳香族であってもよい。ヘテロ環を構成するヘテロ原子の数は1〜3が好ましく、1または2が好ましい。ヘテロ環を構成するヘテロ原子は、窒素原子が好ましい。アルキル基が置換基を有している場合、さらに置換基を有していてもよい。
Rが表すアルケニル基は、直鎖状、分岐状または環状であってもよいが、直鎖状が好ましい。アルケニル基の炭素数は、2〜10が好ましく、2〜6がより好ましい。アルケニル基は、無置換であってもよく、置換基を有していてもよい。置換基としては、上述したものが挙げられる。
Rが表すアルキニル基は、直鎖状、分岐状または環状であってもよいが、直鎖状が好ましい。アルキニル基の炭素数は、2〜10が好ましく、2〜6がより好ましい。アルキニル基は、無置換であってもよく、置換基を有していてもよい。置換基としては、上述したものが挙げられる。
Rが表すアリール基は、単環であっても多環であってもよいが単環が好ましい。アリール基の炭素数は6〜18が好ましく、6〜12がより好ましく、6がさらに好ましい。アリール基は、無置換であってもよく、置換基を有していてもよい。置換基としては、上述したものが挙げられる。
Rが表すヘテロアリール基は、単環であっても多環であってもよい。ヘテロアリール基を構成するヘテロ原子の数は1〜3が好ましい。ヘテロアリール基を構成するヘテロ原子は、窒素原子、硫黄原子、酸素原子が好ましい。ヘテロアリール基の炭素数は6〜18が好ましく、6〜12がより好ましい。ヘテロアリール基は、無置換であってもよく、置換基を有していてもよい。置換基としては、上述したものが挙げられる。
アニオンで配位する配位部位の例として、モノアニオン性配位部位も挙げられる。モノアニオン性配位部位は、1つの負電荷を有する官能基を介して銅原子と配位する部位を表す。例えば、酸解離定数(pKa)が12以下の酸基が挙げられる。具体的には、リン原子を含有する酸基(リン酸ジエステル基、ホスホン酸モノエステル基、ホスフィン酸基等)、スルホ基、カルボキシル基、イミド酸基等が挙げられ、スルホ基、カルボキシル基が好ましい。
非共有電子対で配位する配位原子は、酸素原子、窒素原子、硫黄原子またはリン原子が好ましく、酸素原子、窒素原子または硫黄原子がより好ましく、酸素原子、窒素原子がさらに好ましく、窒素原子が特に好ましい。非共有電子対で配位する配位原子が窒素原子である場合、窒素原子に隣接する原子が炭素原子、または、窒素原子であることが好ましく、炭素原子がより好ましい。
非共有電子対で配位する配位原子は、環に含まれる、または、以下の1価の官能基群(UE−1)、2価の官能基群(UE−2)、3価の官能基群(UE−3)から選択される少なくとも1種の部分構造に含まれることが好ましい。なお、以下の構造式における波線は、配位子を構成する原子団との結合位置である。
群(UE−1)
群(UE−2)
群(UE−3)
群(UE−1)〜(UE−3)中、R1は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基またはヘテロアリール基を表し、R2は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロアリールチオ基、アミノ基またはアシル基を表す。
非共有電子対で配位する配位原子は、環に含まれていてもよい。非共有電子対で配位する配位原子が環に含まれる場合、非共有電子対で配位する配位原子を含む環は、単環であっても多環であってもよく、また、芳香族であっても非芳香族であってもよい。非共有電子対で配位する配位原子を含む環は、5〜12員環が好ましく、5〜7員環がより好ましい。
非共有電子対で配位する配位原子を含む環は、置換基を有していてもよく、置換基としては炭素数1〜10の直鎖状、分岐状または環状のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、ハロゲン原子、ケイ素原子、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数2〜12のアシル基、炭素数1〜12のアルキルチオ基、カルボキシル基等が挙げられる。
非共有電子対で配位する配位原子を含む環が置換基を有している場合、さらに置換基を有していてもよく、非共有電子対で配位する配位原子を含む環からなる基、上述した群(UE−1)〜(UE−3)から選択される少なくとも1種の部分構造を含む基、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数2〜12のアシル基、ヒドロキシ基が挙げられる。
非共有電子対で配位する配位原子が群(UE−1)〜(UE−3)で表される部分構造に含まれる場合、R1は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基またはヘテロアリール基を表し、R2は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロアリールチオ基、アミノ基またはアシル基を表す。
非共有電子対で配位する配位原子が群(UE−1)〜(UE−3)で表される部分構造に含まれる場合のR1及びR中のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、およびヘテロアリール基は、上記アニオンで配位する配位部位で説明したアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、およびヘテロアリール基と同義であり、好ましい範囲も同様である。
アルコキシ基の炭素数は、1〜12が好ましく、3〜9がより好ましい。
アリールオキシ基の炭素数は、6〜18が好ましく、6〜12がより好ましい。
ヘテロアリールオキシ基は、単環であっても多環であってもよい。ヘテロアリールオキシ基を構成するヘテロアリール基は、上記アニオンで配位する配位部位で説明したヘテロアリール基と同義であり、好ましい範囲も同様である。
アルキルチオ基の炭素数は、1〜12が好ましく、1〜9がより好ましい。
アリールチオ基の炭素数は、6〜18が好ましく、6〜12がより好ましい。
ヘテロアリールチオ基は、単環であっても多環であってもよい。ヘテロアリールチオ基を構成するヘテロアリール基は、上記アニオンで配位する配位部位で説明したヘテロアリール基と同義であり、好ましい範囲も同様である。
アシル基の炭素数は、2〜12が好ましく、2〜9がより好ましい。
1は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基が好ましく、水素原子またはアルキル基がより好ましく、アルキル基が特に好ましい。アルキル基は、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。N原子上の置換基としてのR1をアルキル基とすることで、銅錯体の分子軌道への配位子寄与率が向上して、極大吸収波長でのモル吸光係数が向上し、赤外線遮蔽性および可視透明性がより向上する傾向にある。特に、耐熱性と、赤外線遮蔽性と可視透明性のバランスからアルキル基が好ましい。
配位子が、1分子内に、アニオンで配位する配位部位と非共有電子対で配位する配位原子とを有する場合、アニオンで配位する配位部位と非共有電子対で配位する配位原子とを連結する原子数は、1〜6であることが好ましく、1〜3であることがより好ましい。このような構成とすることにより、銅錯体の構造がより歪みやすくなるため、色価をより向上させることができ、可視透明性を高めつつ、モル吸光係数を大きくし易い。アニオンで配位する配位部位と非共有電子対で配位する配位原子とを連結する原子の種類は、1種または2種以上であってもよい。炭素原子、または、窒素原子が好ましい。
配位子が、1分子内に、非共有電子対で配位する配位原子を2以上有する場合、非共有電子対で配位する配位原子は3つ以上有していてもよく、2〜5つ有していることが好ましく、4つ有していることがより好ましい。非共有電子対で配位する配位原子同士を連結する原子数は、1〜6であることが好ましく、1〜3であることがより好ましく、2〜3が更に好ましく、3が特に好ましい。このような構成とすることにより、銅錯体の構造がより歪みやすくなるため、色価をより向上させることができる。非共有電子対で配位する配位原子同士を連結する原子は、1種または2種以上であってもよい。非共有電子対で配位する配位原子同士を連結する原子は、炭素原子が好ましい。
本発明において、配位子は、少なくとも2つの配位部位を有する化合物(多座配位子ともいう)が好ましい。配位子は、配位部位を少なくとも3つ有することがより好ましく、3〜5個有することが更に好ましく、4〜5個有することが特に好ましい。多座配位子は、銅成分に対し、キレート配位子として働く。すなわち、多座配位子が有する少なくとも2つの配位部位が、銅とキレート配位することにより、銅錯体の構造が歪んで、優れた可視透明性が得られ、更には、赤外線の吸光能力を向上でき、色価も向上すると考えられる。これにより、近赤外線カットフィルタを長期間使用しても、その特性が損なわれず、またカメラモジュールを安定的に製造することも可能となる。
多座配位子は、アニオンで配位する配位部位を1つ以上と非共有電子対で配位する配位原子を1つ以上とを含む化合物、非共有電子対で配位する配位原子を2つ以上有する化合物、アニオンで配位する配位部位を2つ含む化合物等が挙げられる。これらの化合物は、それぞれ独立に、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。また、配位子となる化合物は、配位部位を1つのみ有する化合物を用いることもできる。
多座配位子は、下記式(IV−1)〜(IV−14)で表される化合物であることが好ましい。例えば、配位子が4つの配位部位を有する化合物である場合は、下記式(IV−3)、(IV−6)、(IV−7)、(IV−12)で表される化合物が好ましく、金属中心により強固に配位し、耐熱性の高い安定な5配位錯体を形成しやすいという理由から、(IV−12)で表される化合物がより好ましい。また、例えば、配位子が5つの配位部位を有する化合物である場合は、下記式(IV−4)、(IV−8)〜(IV−11)、(IV−13)、(IV−14)で表される化合物が好ましく、金属中心により強固に配位し、耐熱性の高い安定な5配位錯体を形成しやすいという理由から、(IV−9)〜(IV−10)、(IV−13)、(IV−14)で表される化合物がより好ましく、(IV−13)で表される化合物が特に好ましい。
式(IV−1)〜(IV−14)中、X1〜X59はそれぞれ独立して、配位部位を表し、L1〜L25はそれぞれ独立して単結合または2価の連結基を表し、L26〜L32はそれぞれ独立して3価の連結基を表し、L33〜L34はそれぞれ独立して4価の連結基を表す。X1〜X42はそれぞれ独立して、非共有電子対で配位する配位原子を含む環からなる基、上述した群(AN−1)、または、群(UE−1)から選択される少なくとも1種を表すことが好ましい。
43〜X56はそれぞれ独立して、非共有電子対で配位する配位原子を含む環からなる基、上述した群(AN−2)、または、群(UE−2)から選択される少なくとも1種を表すことが好ましい。
57〜X59はそれぞれ独立して、上述した群(UE−3)から選択される少なくとも1種を表すことが好ましい。
1〜L25はそれぞれ独立して単結合または2価の連結基を表す。2価の連結基としては、炭素数1〜12のアルキレン基、炭素数6〜12のアリーレン基、−SO−、−O−、−SO2−または、これらの組み合わせからなる基が好ましく、炭素数1〜3のアルキレン基、フェニレン基、−SO2−またはこれらの組み合わせからなる基がより好ましい。
26〜L32はそれぞれ独立して3価の連結基を表す。3価の連結基としては、上述した2価の連結基から水素原子を1つ除いた基が挙げられる。
33〜L34はそれぞれ独立して4価の連結基を表す。4価の連結基としては、上述した2価の連結基から水素原子を2つ除いた基が挙げられる。
ここで、群(AN−1)〜(AN−2)中のR、および、群(UE−1)〜(UE−3)中のR1は、R同士、R1同士、あるいは、RとR1間で連結して環を形成しても良い。
たとえば、式(IV−2)の具体例として、下の化合物(IV−2A)が挙げられる。なお、X3、X4、X43は以下に示した基であり、L2、L3はメチレン基、R1はメチル基であるが、このR1同士が連結して環を形成し、(IV−2B)や(IV−2C)のようになっていても良い。
配位子をなす化合物の具体例としては、以下に示す化合物、後述する多座配位子の好ましい具体例として示す化合物、および、これらの化合物の塩が挙げられる。塩を構成する原子としては、金属原子、テトラブチルアンモニウムなどが挙げられる。金属原子としては、アルカリ金属原子またはアルカリ土類金属原子がより好ましい。アルカリ金属原子としては、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。アルカリ土類金属原子としては、カルシウム、マグネシウム等が挙げられる。また、特開2014−41318号公報の段落0022〜0042の記載、特開2015−43063号公報の段落0021〜0039の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
銅錯体は、例えば、以下の(1)〜(5)の態様が好ましい一例として挙げられ、(2)〜(5)がより好ましく、(3)〜(5)が更に好ましく、(4)または(5)が一層好ましい。
(1)2つの配位部位を有する化合物の1つまたは2つを配位子として有する銅錯体。
(2)3つの配位部位を有する化合物を配位子として有する銅錯体。
(3)3つの配位部位を有する化合物と2つの配位部位を有する化合物とを配位子として有する銅錯体。
(4)4つの配位部位を有する化合物を配位子として有する銅錯体。
(5)5つの配位部位を有する化合物を配位子として有する銅錯体。
上記(1)の態様において、2つの配位部位を有する化合物は、非共有電子対で配位する配位原子を2つ有する化合物、または、アニオンで配位する配位部位と非共有電子対で配位する配位原子とを有する化合物が好ましい。また、2つの配位部位を有する化合物の2つを配位子として有する場合、配位子の化合物は、同一であってもよく、異なっていてもよい。
また、(1)の態様において、銅錯体は、単座配位子を更に有することもできる。単座配位子の数は、0個とすることもでき、1〜3個とすることもできる。単座配位子の種類としては、アニオンで配位する単座配位子、非共有電子対で配位する単座配位子のいずれも好ましい。2つの配位部位を有する化合物が非共有電子対で配位する配位原子を2つ有する化合物の場合は、配位力が強いという理由からアニオンで配位する単座配位子がより好ましい。2つの配位部位を有する化合物がアニオンで配位する配位部位と非共有電子対で配位する配位原子とを有する化合物の場合は、銅錯体全体が電荷を持たないという理由から非共有電子対で配位する単座配位子がより好ましい。
上記(2)の態様において、3つの配位部位を有する化合物は、非共有電子対で配位する配位原子を有する化合物が好ましく、非共有電子対で配位する配位原子を3つ有する化合物が更に好ましい。また、(2)の態様において、銅錯体は、単座配位子を更に有することもできる。単座配位子の数は、0個とすることもできる。また、1個以上とすることもでき、1〜3個がより好ましく、1〜2個がさらに好ましく、2個が一層好ましい。単座配位子の種類としては、アニオンで配位する単座配位子、非共有電子対で配位する単座配位子のいずれも好ましく、上述した理由によりアニオンで配位する単座配位子がより好ましい。
上記(3)の態様において、3つの配位部位を有する化合物は、アニオンで配位する配位部位と、非共有電子対で配位する配位原子とを有する化合物が好ましく、アニオンで配位する配位部位を2つ、および、非共有電子対で配位する配位原子を1つ有する化合物が更に好ましい。さらに、この2つのアニオンで配位する配位部位が異なっていることが特に好ましい。また、2つの配位部位を有する化合物は、非共有電子対で配位する配位原子を有する化合物が好ましく、非共有電子対で配位する配位原子を2つ有する化合物が更に好ましい。なかでも、3つの配位部位を有する化合物が、アニオンで配位する配位部位を2つ、および、非共有電子対で配位する配位原子を1つ有する化合物であり、2つの配位部位を有する化合物が、非共有電子対で配位する配位原子を2つ有する化合物である組み合わせが、特に好ましい。また、(3)の態様において、銅錯体は、単座配位子を更に有することもできる。単座配位子の数は、0個とすることもでき、1個以上とすることもできる。0個がより好ましい。
上記(4)の態様において、4つの配位部位を有する化合物は、非共有電子対で配位する配位原子を有する化合物が好ましく、非共有電子対で配位する配位原子を2以上有する化合物がより好ましく、非共有電子対で配位する配位原子を4つ有する化合物が更に好ましい。また、(4)の態様において、銅錯体は、単座配位子を更に有することもできる。単座配位子の数は、0個とすることもでき、1個以上とすることもでき、2個以上とすることもできる。1個が好ましい。単座配位子の種類としては、アニオンで配位する単座配位子、非共有電子対で配位する単座配位子のいずれも好ましい。
上記(5)の態様において、5つの配位部位を有する化合物は、非共有電子対で配位する配位原子を有する化合物が好ましく、非共有電子対で配位する配位原子を2以上有する化合物がより好ましく、非共有電子対で配位する配位原子を5つ有する化合物が更に好ましい。また、(5)の態様において、銅錯体は、単座配位子を更に有することもできる。単座配位子の数は、0個とすることもでき、1個以上とすることもできる。単座配位子の数は0個が好ましい。
多座配位子は、上述した配位子の具体例で説明した化合物のうち、配位部位を2以上有する化合物や、以下に示す化合物が挙げられる。

[リン酸エステル銅錯体]
本発明において、銅錯体として、リン酸エステル銅錯体を用いることもできる。リン酸エステル銅錯体は、銅を中心金属としリン酸エステル化合物を配位子とするものである。リン酸エステル銅錯体の配位子をなすリン酸エステル化合物は、下記式(L−100)で表される化合物またはその塩が好ましい。
(HO)n−P(=O)−(OR13-n 式(L−100)
式中、R1は炭素数1〜18のアルキル基、炭素数6〜18のアリール基、炭素数1〜18のアラルキル基、または炭素数1〜18のアルケニル基を表すか、−OR1が、炭素数4〜100のポリオキシアルキル基、炭素数4〜100の(メタ)アクリロイルオキシアルキル基、または、炭素数4〜100の(メタ)アクリロイルポリオキシアルキル基を表し、nは1または2を表す。nが1のとき、R2はそれぞれ同一でもよいし、異なっていてもよい。リン酸エステル化合物の具体例としては、上述した配位子が挙げられる。また、特開2014−41318号公報の段落0022〜0042の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
[スルホン酸銅錯体]
本発明において、銅錯体として、スルホン酸銅錯体を用いることもできる。スルホン酸銅錯体は、銅を中心金属としスルホン酸化合物を配位子とするものである。スルホン酸銅錯体の配位子をなすスルホン酸化合物は、下記式(L−200)で表される化合物またはその塩が好ましい。
2−SO2−OH 式(L−200)
式中、R2は1価の有機基を表す。1価の有機基としては、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基などを挙げることができる。アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基は、無置換であってもよく、置換基を有していてもよい。スルホン酸化合物の具体例としては、上述した配位子が挙げられる。また、特開2015−43063号公報の段落番号0021〜0039の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
<<<ポリマータイプの銅錯体>>>
本発明において、銅錯体として、ポリマー側鎖に銅錯体部位を有する銅含有ポリマーを用いることができる。
銅錯体部位としては、銅と、銅に対して配位する部位(配位部位)とを有するものが挙げられる。銅に対して配位する部位としては、アニオンまたは非共有電子対で配位する部位が挙げられる。また、銅錯体部位は、銅に対して4座配位または5座配位する部位を有することが好ましい。配位部位の詳細については、上述した低分子タイプの銅化合物で説明したものが挙げられ、好ましい範囲も同様である。
銅含有ポリマーは、配位部位を含むポリマー(ポリマー(B1)ともいう)と、銅成分との反応で得られるポリマーや、ポリマー側鎖に反応性部位を有するポリマー(以下ポリマー(B2)ともいう)と、ポリマー(B2)が有する反応性部位と反応可能な官能基を有する銅錯体とを反応させて得られるポリマーが挙げられる。銅含有ポリマーの重量平均分子量は、2000以上が好ましく、2000〜200万がより好ましく、6000〜200,000がさらに好ましい。
銅含有ポリマーは、銅錯体部位を有する繰り返し単位の他に、他の繰り返し単位を含有していてもよい。他の繰り返し単位としては、架橋性基を有する繰り返し単位などが挙げられる。
近赤外線吸収組成物において、銅錯体の含有量は5〜95質量%であることが好ましい。下限は10質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましく、20質量%以上が更に好ましい。上限は、70質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましく、50質量%以下が更に好ましい。銅錯体は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用することもできる。銅錯体を2種以上併用することが好ましい。銅錯体を2種以上併用する場合は、合計量が上記範囲であることが好ましい。
<<他の赤外線吸収剤>>
近赤外線吸収組成物は、銅錯体以外の赤外線吸収剤(他の赤外線吸収剤ともいう)を含有することができる。他の赤外線吸収剤としては、シアニン化合物、ピロロピロール化合物、スクアリリウム化合物、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物、ジイミニウム化合物、チオール錯体化合物、遷移金属酸化物、クアテリレン化合物、クロコニウム化合物等が挙げられる。
ピロロピロール化合物としては、例えば、特開2009−263614号公報の段落番号0016〜0058に記載の化合物、特開2011−68731号公報の段落番号0037〜0052に記載の化合物などが挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。スクアリリウム化合物としては、例えば、特開2011−208101号公報の段落番号0044〜0049に記載の化合物が挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。シアニン化合物としては、例えば、特開2009−108267号公報の段落番号0044〜0045に記載の化合物、特開2002−194040号公報の段落番号0026〜0030に記載の化合物が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。ジイミニウム化合物としては、例えば、特表2008−528706号公報に記載の化合物が挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。フタロシアニン化合物としては、例えば、特開2012−77153号公報の段落番号0093に記載の化合物、特開2006−343631号公報に記載のオキシチタニウムフタロシアニン、特開2013−195480号公報の段落番号0013〜0029に記載の化合物が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。ナフタロシアニン化合物としては、例えば、特開2012−77153号公報の段落番号0093に記載の化合物が挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。また、シアニン化合物、フタロシアニン化合物、ジイミニウム化合物、スクアリリウム化合物及びクロコニウム化合物は、特開2010−111750号公報の段落番号0010〜0081に記載の化合物を使用してもよく、この内容は本明細書に組み込まれる。また、シアニン系化合物は、例えば、「機能性色素、大河原信/松岡賢/北尾悌次郎/平嶋恒亮・著、講談社サイエンティフィック」を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。
また、他の赤外線吸収剤として、無機微粒子を用いることもできる。無機微粒子は、赤外線遮蔽性がより優れる点で、金属酸化物微粒子または金属微粒子が好ましい。金属酸化物粒子としては、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)粒子、酸化アンチモンスズ(ATO)粒子、酸化亜鉛(ZnO)粒子、Alドープ酸化亜鉛(AlドープZnO)粒子、フッ素ドープ二酸化スズ(FドープSnO2)粒子、ニオブドープ二酸化チタン(NbドープTiO2)粒子などが挙げられる。金属微粒子としては、例えば、銀(Ag)粒子、金(Au)粒子、銅(Cu)粒子、ニッケル(Ni)粒子などが挙げられる。また、無機微粒子としては酸化タングステン系化合物が使用できる。酸化タングステン系化合物は、セシウム酸化タングステンであることが好ましい。酸化タングステン系化合物の詳細については、特開2016−006476号公報の段落番号0080を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。無機微粒子の形状は特に制限されず、球状、非球状を問わず、シート状、ワイヤー状、チューブ状であってもよい。
無機微粒子の平均粒子径は、800nm以下が好ましく、400nm以下がより好ましく、200nm以下が更に好ましい。無機微粒子の平均粒子径がこのような範囲であることによって、可視透明性が良好である。光散乱を回避する観点からは、平均粒子径は小さいほど好ましいが、製造時における取り扱い容易性などの理由から、無機微粒子の平均粒子径は、通常、1nm以上である。
近赤外線吸収組成物が他の赤外線吸収剤を含有する場合、他の赤外線吸収剤の含有量は、銅錯体100質量部に対し、0.1〜50質量部が好ましい。下限は0.1質量部以上が好ましく、0.5質量部以上がより好ましく、1質量部以上が更に好ましい。上限は、50質量部以下が好ましく、40質量部以下がより好ましく、35質量部以下が更に好ましい。
<<樹脂>>
近赤外線吸収組成物は、樹脂を含有する。樹脂の種類としては、光学材料に使用しうるものであれば特に制限されない。樹脂は透明性の高い樹脂が好ましい。具体的にはポリエチレン、ポリプロピレン、カルボキシル化ポリオレフィン、塩素化ポリオレフィン、シクロオレフィンポリマー等のポリオレフィン樹脂;ポリスチレン樹脂;(メタ)アクリル酸エステル樹脂、(メタ)アクリルアミド樹脂等の(メタ)アクリル樹脂;酢酸ビニル樹脂;ハロゲン化ビニル樹脂;ポリビニルアルコール樹脂;ポリアミド樹脂;ポリウレタン樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリアリレート(PAR)等のポリエステル樹脂;ポリカーボネート樹脂;エポキシ樹脂;ポリマレイミド樹脂;ポリウレア樹脂;ポリビニルブチラール樹脂等のポリビニルアセタール樹脂等が挙げられる。なかでも、(メタ)アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリマレイミド樹脂、ポリウレア樹脂が好ましく、(メタ)アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂がさらに好ましい。また、樹脂は、アルコキシシリル基を有する化合物のゾルゲル硬化物を用いることも好ましい。アルコキシシリル基を有する化合物としては、後述する架橋性化合物の欄で説明する材料が挙げられる。樹脂の重量平均分子量は、1000〜300,000が好ましい。下限は、2000以上がより好ましく、3000以上がさらに好ましい。上限は、100,000以下がより好ましく、50,000以下がさらに好ましい。樹脂の数平均分子量は、500〜150,000が好ましい。下限は、1000以上がより好ましく、2,000以上がさらに好ましい。上限は、200,000以下がより好ましく、100,000以下がさらに好ましい。
樹脂は、下記式(A1−1)〜(A1−7)で表される繰り返し単位の少なくとも1種を有する樹脂であることも好ましい。

式中、R1は水素原子またはアルキル基を表し、L1〜L4はそれぞれ独立に、単結合または2価の連結基を表し、R10〜R13はそれぞれ独立にアルキル基またはアリール基を表す。R14およびR15は、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。
1が表すアルキル基の炭素数は、1〜5が好ましく、1〜3がさらに好ましく、1が特に好ましい。R1は、水素原子またはメチル基が好ましい。
1〜L4が表す2価の連結基としては、アルキレン基、アリーレン基、−O−、−S−、−SO−、−CO−、−COO−、−OCO−、−SO2−、−NRa−(Raは水素原子あるいはアルキル基を表す)、または、これらの組み合わせからなる基が挙げられる。アルキレン基の炭素数は、1〜30が好ましく、1〜15がより好ましく、1〜10がさらに好ましい。アルキレン基は、置換基を有していてもよいが、無置換が好ましい。アルキレン基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよい。また、環状のアルキレン基は、単環、多環のいずれであってもよい。アリーレン基の炭素数は、6〜18が好ましく、6〜14がより好ましく、6〜10がさらに好ましい。
10〜R13が表すアルキル基は、直鎖、分岐または環状のいずれでもよい。アルキル基は置換基を有していてもよく、無置換であってもよい。アルキル基の炭素数は、1〜30が好ましく、1〜20がより好ましく、1〜10がさらに好ましい。R10〜R13が表すアリール基の炭素数は6〜18が好ましく、6〜12がより好ましく、6がさらに好ましい。
10は、直鎖もしくは分岐のアルキル基またはアリール基であることが好ましく、直鎖もしくは分岐のアルキル基であることがより好ましい。
11およびR12は、それぞれ独立して直鎖または分岐のアルキル基であることが好ましく、直鎖のアルキル基であることがより好ましい。
13は、直鎖もしくは分岐のアルキル基またはアリール基であることが好ましい。
14およびR15が表す置換基は、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、ヘテロアリーロキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロアリールチオ基、−NRa1a2、−CORa3、−COORa4、−OCORa5、−NHCORa6、−CONRa7a8、−NHCONRa9a10、−NHCOORa11、−SO2a12、−SO2ORa13、−NHSO2a14または−SO2NRa15a16が挙げられる。Ra1〜Ra16は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、または、ヘテロアリール基を表す。なかでも、R14およびR15の少なくとも一方は、シアノ基または−COORa4を表すことが好ましい。Ra4は、水素原子、アルキル基またはアリール基を表すことが好ましい。
式(A1−7)で表される繰り返し単位を有する樹脂の市販品としては、ARTON F4520(JSR(株)製)などが挙げられる。また、式(A1−7)で表される繰り返し単位を有する樹脂の詳細については、特開2011−100084号公報の段落番号0053〜0075、0127〜0130の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
樹脂としては、式(A1−4)で表される繰り返し単位を有する樹脂であることが好ましく、式(A1−1)で表される繰り返し単位と、式(A1−4)で表される繰り返し単位とを有する樹脂であることがより好ましい。この態様によれば、樹脂膜の耐熱衝撃性が向上する傾向にある。更には、銅錯体と樹脂との相溶性が向上し、析出物などの少ない樹脂膜が得られやすい。
樹脂は、架橋性基を有することも好ましい。架橋性基は、エチレン性不飽和結合を有する基、環状エーテル基、メチロール基、アルコキシシリル基が好ましく、エチレン性不飽和結合を有する基、環状エーテル基、アルコキシシリル基がより好ましく、環状エーテル基、アルコキシシリル基が更に好ましく、アルコキシシリル基が特に好ましい。エチレン性不飽和結合を有する基としては、ビニル基、(メタ)アリル基、(メタ)アクリロイル基などが挙げられる。環状エーテル基としては、エポキシ基(オキシラニル基)、オキセタニル基、脂環エポキシ基などが挙げられる。アルコキシシリル基としては、モノアルコキシシリル基、ジアルコキシシリル基、トリアルコキシシリル基が挙げられる。
架橋性基を有する樹脂においては、樹脂の架橋基価は0.5〜4mmol/gであることが好ましい。下限は、0.6mmol/g以上であることが好ましく、0.8mmol/g以上であることがより好ましく、1mmol/g以上であることが更に好ましい。上限は、3.5mmol/g以下であることが好ましく、3mmol/g以下であることがより好ましく、2mmol/g以下であることが更に好ましい。なお、樹脂の架橋基価は、樹脂1g中に含まれる架橋基の等量のことである。樹脂の架橋基価は、滴定等の方法で測定することができる。
樹脂が有する架橋性基がアルコキシシリル基である場合、樹脂のSi価は0.5〜4mmol/gであることが好ましい。下限は、0.6mmol/g以上であることが好ましく、0.8mmol/g以上であることがより好ましく、1mmol/g以上であることが更に好ましい。上限は、3.5mmol/g以下であることが好ましく、3mmol/g以下であることがより好ましく、2mmol/g以下であることが更に好ましい。なお、樹脂のSi価は、樹脂1g中に含まれるアルコキシシリル基の等量のことである。樹脂のSi価は、滴定等の方法で測定することができる。
架橋性基を有する樹脂としては、架橋性基を有する繰り返し単位を含む樹脂であることが好ましく、式(A1−1)および/または式(A1−4)で表される繰り返し単位と、架橋性基を有する繰り返し単位とを含む樹脂が好ましい。
架橋性基を有する繰り返し単位としては、下記式(A2−1)〜(A2−4)で表される繰り返し単位等が挙げられ、式(A2−1)〜(A2−3)で表される繰り返し単位が好ましい。
2は、水素原子またはアルキル基を表す。アルキル基の炭素数は、1〜5が好ましく、1〜3がさらに好ましく、1が特に好ましい。R2は、水素原子またはメチル基が好ましい。
51は、単結合または2価の連結基を表す。2価の連結基としては、上記式(A1−1)〜(A1−7)のL1〜L4で説明した2価の連結基が挙げられる。L51は、アルキレン基または、アルキレン基と−O−とを組み合わせてなる基が好ましい。L51の鎖を構成する原子の数は、2以上が好ましく、3以上がより好ましく、4以上がさらに好ましい。上限は、例えば200以下とすることができる。
1は、架橋性基を表す。架橋性基としては、エチレン性不飽和結合を有する基、環状エーテル基、メチロール基、アルコキシシリル基等が挙げられ、エチレン性不飽和結合を有する基、環状エーテル基、アルコキシシリル基が好ましく、環状エーテル基、アルコキシシリル基がより好ましく、アルコキシシリル基が更に好ましい。エチレン性不飽和結合を有する基、環状エーテル基、アルコキシシリル基の詳細については上述した通りである。アルコキシシリル基におけるアルコキシ基の炭素数は、1〜5が好ましく、1〜3がより好ましく、1または2が特に好ましい。
樹脂が、架橋性基を有する繰り返し単位を含む樹脂である場合、樹脂は、架橋性基を有する繰り返し単位を、樹脂の全繰り返し単位中5〜100モル%含有することが好ましい。下限は、6モル%以上が好ましく、8モル%以上がより好ましく、10モル%以上が更に好ましい。上限は、95モル%以下が好ましく、80モル%以下がより好ましく、60モル%以下が更に好ましい。この態様によれば、上述した機械物性を有する樹脂膜が得られやすい。
樹脂は、上述した繰り返し単位の他に、他の繰り返し単位を含有していてもよい。他の繰り返し単位を構成する成分については、特開2010−106268号公報の段落番号0068〜0075(対応する米国特許出願公開第2011/0124824号明細書の段落番号0112〜0118)の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
樹脂の具体例としては、以下に示す構造の樹脂が挙げられる。
近赤外線吸収組成物において、樹脂の含有量は、近赤外線吸収組成物の全固形分に対して、30〜90質量%が好ましい。下限は、35質量%以上が好ましく、40質量%以上がより好ましく、50質量%以上が更に好ましい。上限は、85質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましい。また、樹脂の全量中における架橋性基を有する樹脂の含有量は、5〜100モル%であることが好ましく、8〜100モル%であることがより好ましく、10〜100モル%であることが更に好ましい。樹脂は、1種類のみでもよく、2種類以上でもよい。2種類以上の場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
<<架橋性基を有するモノマー(架橋剤)>>
近赤外線吸収組成物は、架橋性基を有するモノマー(以下、架橋剤ともいう)を含有することが好ましい。架橋性基の種類としては、エチレン性不飽和結合を有する基、環状エーテル基、メチロール基、アルコキシシリル基等が挙げられ、エチレン性不飽和結合を有する基、環状エーテル基、アルコキシシリル基が好ましく、環状エーテル基、アルコキシシリル基がより好ましく、アルコキシシリル基が更に好ましい。エチレン性不飽和結合を有する基、環状エーテル基、アルコキシシリル基の詳細については、架橋性基を有する樹脂で説明した基が挙げられる。アルコキシシリル基としては、ジアルコキシシリル基およびトリアルコキシシリル基が好ましい。また、アルコキシシリル基におけるアルコキシ基の炭素数は、1〜5が好ましく、1〜3がより好ましく、1または2が特に好ましい。
架橋剤の分子量は、100〜3000であることが好ましい。上限は、2000以下が好ましく、1500以下が更に好ましい。下限は、150以上が好ましく、250以上が更に好ましい。
架橋剤の架橋基価は、3〜20mmol/gであることが好ましい。下限は、3.5mmol/g以上であることが好ましく、4mmol/g以上であることがより好ましく、5mmol/g以上であることが更に好ましい。上限は、19mmol/g以下であることが好ましく、17mmol/g以下であることがより好ましく、15mmol/g以下であることが更に好ましい。なお、架橋剤の架橋基価とは、架橋剤1g中に含まれる架橋基の等量のことである。架橋剤の架橋基価は、滴定等の方法で測定することができる。
架橋剤は、1分子中に架橋性基を2〜5個有する化合物であることが好ましい。架橋性基の上限は、4個以下が好ましく、3個以下がより好ましい。
架橋剤は、1分子中にSi原子を2〜5個含む化合物であることが好ましい。Si原子の上限は、4個以下が好ましく、3個以下がより好ましい。架橋剤におけるSi原子の数は2個であることが好ましい。また、架橋剤における2個のSi原子は、2〜10個の原子を隔てて結合していることが好ましく、3〜9個の原子を隔てて結合していることがより好ましく、4〜8個の原子を隔てて結合していることが更に好ましい。ここで、2個のSi原子が2〜10個の原子を隔てて結合している場合とは、Si原子どうしを結合する連結鎖を構成する原子の数が2〜10個であることを意味する。例えば、下記の化合物の場合、2個のSi原子が6個の原子を隔てて結合している。
また、2個のSi原子は、炭素数2〜10のアルキレン基を介して結合していることが好ましく、炭素数3〜9のアルキレン基を介して結合していることがより好ましく、炭素数4〜8のアルキレン基を介して結合していることが更に好ましい。
また、架橋剤は、1分子中にアルコキシシリル基を2〜5個含む化合物であることが好ましい。アルコキシシリル基の上限は、4個以下が好ましく、3個以下がより好ましい。アルコキシシリル基の数は2個であることが好ましい。アルコキシシリル基は、ジアルコキシシリル基またはトリアルコキシシリル基であることが好ましく、トリアルコキシシリル基であることがより好ましい。また架橋剤が有する2個のアルコキシシリル基は、2〜10個の原子を隔てて結合していることが好ましく、3〜9個の原子を隔てて結合していることがより好ましく、4〜8個の原子を隔てて結合していることが更に好ましい。また、2個のアルコキシシリル基は、炭素数2〜10のアルキレン基を介して結合していることが好ましく、炭素数3〜9のアルキレン基を介して結合していることがより好ましく、炭素数4〜8のアルキレン基を介して結合していることが更に好ましい。
また、架橋剤がアルコキシシリル基を有する化合物である場合においては、架橋剤のSi価は3〜20mmol/gであることが好ましい。Si価の下限は、3.5mmol/g以上であることが好ましく、4mmol/g以上であることがより好ましく、5mmol/g以上であることが更に好ましい。Si価の上限は、19mmol/g以下であることが好ましく、17mmol/g以下であることがより好ましく、15mmol/g以下であることが更に好ましい。なお、架橋剤のSi価は、架橋剤1g中に含まれる架橋基の等量のことである。架橋剤のSi価は、滴定等の方法で測定することができる。
アルコキシシリル基を有する化合物の具体例としては、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、1,6−ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩、トリス−(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。また、下記化合物を用いることもできる。
市販品としては、信越シリコーン社製のKBM−13、KBM−22、KBM−103、KBE−13、KBE−22、KBE−103、KBM−3033、KBE−3033、KBM−3063、KBM−3066、KBM−3086、KBE−3063、KBE−3083、KBM−3103、KBM−3066、KBM−7103、SZ−31、KPN−3504、KBM−1003、KBE−1003、KBM−303、KBM−402、KBM−403、KBE−402、KBE−403、KBM−1403、KBM−502、KBM−503、KBE−502、KBE−503、KBM−5103、KBM−602、KBM−603、KBM−903、KBE−903、KBE−9103、KBM−573、KBM−575、KBM−9659、KBE−585、KBM−802、KBM−803、KBE−846、KBE−9007、X−40−1053、X−41−1059A、X−41−1056、X−41−1805、X−41−1818、X−41−1810、X−40−2651、X−40−2655A、KR−513,KC−89S,KR−500、X−40−9225、X−40−9246、X−40−9250、KR−401N、X−40−9227、X−40−9247、KR−510、KR−9218、KR−213、X−40−2308、X−40−9238などが挙げられる。
本発明において、架橋剤として、エチレン性不飽和結合を有する基を有する化合物を用いることができる。エチレン性不飽和結合を有する基を有する化合物としては、(メタ)アクリレート化合物であることが好ましい。エチレン性不飽和結合を有する基を有する化合物としては、例えば下記化合物が挙げられる。エチレン性不飽和結合を有する基を有する化合物の詳細については、特開2016−006476号公報の段落番号0086〜0099の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
本発明において、架橋剤として、環状エーテル基を有する化合物を用いることもできる。環状エーテル基としては、エポキシ基、オキセタニル基が挙げられ、エポキシ基が好ましい。環状エーテル基を有する化合物の市販品としては、例えば、EHPE 3150((株)ダイセル製)などが挙げられる。また、環状エーテル基を有する化合物としては、特開2013−011869号公報の段落番号0034〜0036、特開2014−043556号公報の段落番号0147〜0156、特開2014−089408号公報の段落番号0085〜0092に記載された化合物を用いることもできる。これらの内容は本明細書に組み込まれる。
近赤外線吸収組成物が架橋剤を含有する場合、近赤外線吸収組成物は、樹脂100質量部に対して架橋剤を3〜30質量部含有することが好ましく、5〜20質量部含有することがより好ましく、7〜15質量部含有することが更に好ましい。また、近赤外線吸収組成物は、架橋性基を有する樹脂100質量部に対して架橋剤を3〜30質量部含有することが好ましく、5〜20質量部含有することがより好ましく、7〜15質量部含有することが更に好ましい。架橋剤は、1種類のみでもよく、2種類以上でもよい。2種類以上の場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
<<重合開始剤>>
近赤外線吸収組成物は重合開始剤を含有することができる。重合開始剤としては、光、熱のいずれか或いはその双方により、架橋性基を有する樹脂や架橋剤の架橋を開始する能力を有する限り、特に制限はない。光で架橋させる場合、紫外領域から可視領域の光線に対して感光性を有する重合開始剤が好ましい。また、熱で架橋させる場合には、150〜250℃で分解する重合開始剤が好ましい。
重合開始剤としては、芳香族基を有する化合物が好ましい。例えば、アシルホスフィン化合物、アセトフェノン化合物、α−ヒドロキシケトン化合物、α−アミノケトン化合物、ベンゾフェノン化合物、ベンゾインエーテル化合物、ケタール誘導体化合物、チオキサントン化合物、オキシム化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、トリハロメチル化合物、アゾ化合物、有機過酸化物、ジアゾニウム化合物、ヨードニウム化合物、スルホニウム化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物等のオニウム塩化合物、有機硼素塩化合物、ジスルホン化合物、チオール化合物などが挙げられる。重合開始剤は、特開2013−253224号公報の段落0217〜0228の記載を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。
重合開始剤は、オキシム化合物、α−ヒドロキシケトン化合物、α−アミノケトン化合物、及び、アシルホスフィン化合物が好ましい。オキシム化合物としては、後述するラジカルトラップ剤で挙げたオキシム化合物などを使用することもできる。
重合開始剤の含有量は、近赤外線吸収組成物の全固形分に対して、0.01〜30質量%が好ましい。下限は、0.1質量%以上が好ましい。上限は、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましい。重合開始剤は1種類のみでも、2種類以上でもよい。2種類以上の場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
<<溶剤>>
近赤外線吸収組成物は、溶剤を含有することが好ましい。溶剤は、特に制限はなく、各成分を均一に溶解或いは分散しうるものであれば、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、水、有機溶剤を用いることができる。有機溶剤としては、例えば、アルコール類、ケトン類、エステル類、芳香族炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類、およびジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホオキサイド、スルホラン等が好適に挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。アルコール類、芳香族炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類の具体例としては、特開2012−194534号公報の段落0136等に記載の溶剤が挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。エステル類、ケトン類、エーテル類の具体例としては、特開2012−208494号公報の段落0497(対応する米国特許出願公開第2012/0235099号明細書の段落番号0609)に記載の溶剤が挙げられる。溶剤の具体例としては、酢酸−n−アミル、プロピオン酸エチル、フタル酸ジメチル、安息香酸エチル、硫酸メチル、アセトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、1−メトキシ−2−プロパノール、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、N−メチル−2−ピロリドン、酢酸ブチル、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、3−メトキシブチルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリアセチン、3−メトキシブタノール、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、1,4−ブタンジオールジアセテート、シクロヘキサノールアセテート、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールメチル−n−プロピルエーテル、1,3−ブチレングリコールジアセテート、1,6−ヘキサンジオールジアセテートなどが挙げられる。これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、溶剤としては、沸点が150℃以下(好ましくは沸点が30〜145℃、より好ましくは50〜140℃)の溶剤(以下、低沸点溶剤ともいう)を単独で使用してもよく、沸点が150℃以上(好ましくは沸点が155〜300℃、より好ましくは160〜250℃)の溶剤(以下、高沸点溶剤ともいう)を単独で使用してもよく、低沸点溶剤と高沸点溶剤とを併用してもよい。高沸点溶剤を用いることで、近赤外線吸収組成物中の溶剤の蒸発速度が遅くなり、乾燥の安定化と残渣の析出を抑制しやすい。特に、近赤外線吸収組成物の固形分濃度の低い場合(例えば、固形分濃度が35質量%以下の場合など)においては、乾燥の安定化と残渣の析出の観点から、溶剤として高沸点溶剤と低沸点溶剤をと併用することが好ましい。また、高沸点溶剤と低沸点溶剤をと併用する場合、高沸点溶剤の沸点と、低沸点溶剤の沸点の差は20〜250℃であることが好ましく、50〜150℃であることがより好ましい。また、高沸点溶剤と、低沸点溶剤との質量比は特に限定はないが、高沸点溶剤:低沸点溶剤=99:1〜55:45であることが好ましく、95:5〜70:30であることがより好ましい。
高沸点溶剤としては、例えば、3−メトキシブチルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリアセチン、3−メトキシブタノール、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、1,4−ブタンジオールジアセテート、シクロヘキサノールアセテート、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールメチル−n−プロピルエーテル、1,3−ブチレングリコールジアセテート、1,6−ヘキサンジオールジアセテートなどが挙げられる。
低沸点溶剤としては、例えば、シクロペンタノン、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、プロピレングリコールモノメテルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメテルエーテルなどが挙げられる。
本発明において、金属含有量の少ない溶剤を用いることが好ましく、溶剤の金属含有量は、例えば10質量ppb(parts per billion)以下であることが好ましい。必要に応じて質量ppt(parts per trillion)レベルの溶剤を用いてもよく、そのような高純度溶剤は例えば東洋合成社が提供している(化学工業日報、2015年11月13日)。
溶剤から金属等の不純物を除去する方法としては、例えば、蒸留(分子蒸留や薄膜蒸留等)やフィルタを用いたろ過を挙げることができる。ろ過に用いるフィルタのフィルタ孔径としては、10nm以下が好ましく、5nm以下がより好ましく、3nm以下が更に好ましい。フィルタの材質は、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンまたはナイロンが好ましい。
溶剤は、異性体(同じ原子数で異なる構造の化合物)が含まれていてもよい。また、異性体は、1種のみが含まれていてもよいし、複数種含まれていてもよい。
溶剤の含有量は、近赤外線吸収組成物の全固形分が5〜70質量%となる量が好ましい。下限は、10質量%以上がより好ましい。上限は、65質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましく、50質量%以下がさらに好ましく、40質量%以下が一層好ましい。溶剤は1種類のみでも、2種類以上でもよく、2種類以上の場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
<<触媒>>
近赤外線吸収組成物は、触媒を含んでもよい。例えば、アルコキシシリル基等の架橋性基を有する樹脂を用いた場合や、架橋剤を用いた場合においては、近赤外線吸収組成物が触媒を含有することで、架橋性基の架橋を促進して、機械物性、耐溶剤性、耐熱性などに優れた樹脂膜が得られ易い。
触媒としては、有機金属系触媒、酸系触媒、アミン系触媒などが挙げられ、有機金属系触媒が好ましい。有機金属系触媒は、Na、K、Ca、Mg、Ti、Zr、Al、Zn、Sn、及びBiからなる群より選択される少なくとも1つの金属を含む、酸化物、硫化物、ハロゲン化物、炭酸塩、カルボン酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩、硝酸塩、硫酸塩、アルコキシド、水酸化物、及び置換基を有していてもよいアセチルアセトナート錯体からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。なかでも、上記金属の、ハロゲン化物、カルボン酸塩、硝酸塩、硫酸塩、水酸化物、及び置換基を有していてもよいアセチルアセトナート錯体からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、アセチルアセトナート錯体が更に好ましい。特に、Alのアセチルアセトナート錯体が好ましい。有機金属系触媒の具体例としては、例えば、トリス(2,4−ペンタンジオナト)アルミニウムなどが挙げられる。
近赤外線吸収組成物が、触媒を含有する場合、触媒の含有量は、近赤外線吸収組成物の全固形分に対して0.01〜5質量%が好ましい。上限は、3質量%以下が好ましく、1質量%以下が更に好ましい。下限は、0.05質量%以上が好ましい。
<<ラジカルトラップ剤>>
近赤外線吸収組成物は、ラジカルトラップ剤を含有することもできる。ラジカルトラップ剤としてはオキシム化合物が挙げられる。オキシム化合物の市販品としては、IRGACURE−OXE01、IRGACURE−OXE02、IRGACURE−OXE03、IRGACURE−OXE04(以上、BASF社製)、TR−PBG−304(常州強力電子新材料有限公司製)、アデカアークルズNCI−831((株)ADEKA製)、アデカアークルズNCI−930((株)ADEKA製)、アデカオプトマーN−1919((株)ADEKA製)等を用いることができる。
また、オキシム化合物として、フッ素原子を有するオキシム化合物を用いることもできる。フッ素原子を有するオキシム化合物の具体例としては、特開2010−262028号公報に記載の化合物、特表2014−500852号公報に記載の化合物24、化合物36〜40、特開2013−164471号公報に記載の化合物(C−3)などが挙げられる。この内容は本明細書に組み込まれる。
また、オキシム化合物として、ニトロ基を有するオキシム化合物を用いることができる。ニトロ基を有するオキシム化合物は、二量体とすることも好ましい。ニトロ基を有するオキシム化合物の具体例としては、特開2013−114249号公報の段落番号0031〜0047、特開2014−137466号公報の段落番号0008〜0012、0070〜0079に記載されている化合物、特許4223071号公報の段落番号0007〜0025に記載されている化合物、アデカアークルズNCI−831((株)ADEKA製)が挙げられる。
また、オキシム化合物として、フルオレン環を有するオキシム化合物を用いることもできる。フルオレン環を有するオキシム化合物の具体例としては、特開2014−137466号公報に記載の化合物が挙げられる。この内容は本明細書に組み込まれる。
また、オキシム化合物として、ベンゾフラン骨格を有するオキシム化合物を用いることもできる。具体例としては、国際公開WO2015/036910号公報に記載されている化合物OE−01〜OE−75が挙げられる。
ラジカルトラップ剤の含有量は、近赤外線吸収組成物の全固形分に対して、0.01〜30質量%が好ましい。下限は、0.1質量%以上が好ましい。上限は、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。
<<界面活性剤>>
近赤外線吸収組成物は、界面活性剤を含有することもできる。界面活性剤は、1種のみを用いてもよいし、2種類以上を組み合わせてもよい。界面活性剤の含有量は、近赤外線吸収組成物の全固形分に対して、0.0001〜5質量%が好ましい。下限は、0.005質量%以上が好ましく、0.01質量%以上がより好ましい。上限は、2質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましい。近赤外線吸収組成物に界面活性剤を含有させることで、例えば、近赤外線吸収組成物を塗り重ねて近赤外線カットフィルタを製造する場合において、近赤外線吸収組成物の濡れ性を高めることができ、膜厚の大きい近赤外線カットフィルタを製造しやすい。
界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤などの各種界面活性剤を使用でき、フッ素系界面活性剤およびシリコーン系界面活性剤が好ましく、フッ素系界面活性剤がより好ましい。フッ素系界面活性剤におけるフッ素含有率は、3〜40質量%が好ましい。下限は、5質量%以上が好ましく、7質量%以上が更に好ましい。上限は、30質量%以下が好ましく、25質量%以下が更に好ましい。フッ素系界面活性剤におけるフッ素含有率が上述した範囲であれば、塗布膜の厚さの均一性や省液性の点で効果的である。
フッ素系界面活性剤としては、特開2014−41318号公報の段落番号0060〜0064に記載の界面活性剤、特開2011−132503号公報の段落番号0117〜0132に記載の界面活性剤が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。フッ素系界面活性剤の市販品としては、例えば、メガファックF171、F172、F173、F176、F177、F141、F142、F143、F144、R30、F437、F475、F479、F482、F554、F780(以上、DIC(株)製)、フロラードFC430、FC431、FC171(以上、住友スリーエム(株)製)、サーフロンS−382、SC−101、SC−103、SC−104、SC−105、SC−1068、SC−381、SC−383、S−393、KH−40(以上、旭硝子(株)製)、PolyFox PF636、PF656、PF6320、PF6520、PF7002(以上、OMNOVA社製)等が挙げられる。
また、フッ素系界面活性剤としては、フッ素原子を含有する官能基を持つ分子構造を有し、熱を加えるとフッ素原子を含有する官能基の部分が切断されてフッ素原子が揮発するアクリル系化合物も好適に使用できる。このようなフッ素系界面活性剤としては、DIC(株)製のメガファックDSシリーズ(化学工業日報、2016年2月22日および日経産業新聞、2016年2月23日)、例えばメガファックDS−21が挙げられ、これらを用いることができる。
フッ素系界面活性剤としては、ブロックポリマーを用いることもできる。例えば、特開2011−89090号公報に記載された化合物が挙げられる。フッ素系界面活性剤としては、フッ素原子を有する(メタ)アクリレート化合物に由来する繰り返し単位と、アルキレンオキシ基(好ましくはエチレンオキシ基、プロピレンオキシ基)を2以上(好ましくは5以上)有する(メタ)アクリレート化合物に由来する繰り返し単位と、を含む含フッ素高分子化合物も好ましく用いることができる。下記化合物も本発明で用いられるフッ素系界面活性剤として例示される。

上記の化合物の重量平均分子量は、好ましくは3,000〜50,000であり、例えば、14,000である。上記の化合物中、繰り返し単位の割合を示す%は質量%である。
また、フッ素系界面活性剤としては、エチレン性不飽和基を側鎖に有する含フッ素重合体を用いることもできる。具体例としては、特開2010−164965号公報の段落番号0050〜0090および段落番号0289〜0295に記載された化合物、例えばDIC(株)製のメガファックRS−101、RS−102、RS−718K、RS−72−K等が挙げられる。フッ素系界面活性剤としては、特開2015−117327号公報の段落番号0015〜0158に記載の化合物を用いることもできる。
ノニオン系界面活性剤としては、特開2012−208494号公報の段落番号0553に記載のノニオン系界面活性剤が挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。カチオン系界面活性剤としては、特開2012−208494号公報の段落番号0554に記載のカチオン系界面活性剤が挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。アニオン系界面活性剤としては、W004、W005、W017(裕商(株)製)等が挙げられる。シリコーン系界面活性剤としては、例えば、KF6001(信越シリコーン製)や、特開2012−208494号公報の段落番号0556に記載のシリコーン系界面活性剤が挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。
<<紫外線吸収剤>>
近赤外線吸収組成物は、紫外線吸収剤を含有することができる。紫外線吸収剤としては、共役ジエン化合物、アミノジエン化合物、サリシレート化合物、ベンゾフェノン化合物、ベンゾトリアゾール化合物、アクリロニトリル化合物、ヒドロキシフェニルトリアジン化合物などを用いることができる。なかでも、銅錯体等との相溶性が良好であり、更には銅錯体と吸収波長が適し、優れた可視透明性を維持しつつ、紫外線の遮蔽性を高めることができるという理由から、ベンゾトリアゾール化合物およびヒドロキシフェニルトリアジン化合物が好ましい。これらの詳細については、特開2012−208374号公報の段落番号0052〜0072、特開2013−68814号公報の段落番号0317〜0334の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。また、ベンゾトリアゾール化合物としてはミヨシ油脂製のMYUAシリーズ(化学工業日報、2016年2月1日)を用いてもよい。紫外線吸収剤の含有量は、近赤外線吸収組成物の全固形分に対して、0.01〜10質量%が好ましく、0.01〜5質量%がより好ましい。
<<その他の成分>>
近赤外線吸収組成物は、さらに、分散剤、増感剤、硬化促進剤、フィラー、熱硬化促進剤、熱重合禁止剤、可塑剤、密着促進剤及びその他の助剤類(例えば、導電性粒子、充填剤、消泡剤、難燃剤、レベリング剤、剥離促進剤、酸化防止剤、香料、表面張力調整剤、連鎖移動剤など)を含んでいてもよい。これらの成分は、特開2008−250074号公報の段落番号0101〜0104、0107〜0109等の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。また、酸化防止剤としては、フェノール化合物、亜リン酸エステル化合物、チオエーテル化合物などが挙げられる。分子量500以上のフェノール化合物、分子量500以上の亜リン酸エステル化合物又は分子量500以上のチオエーテル化合物がより好ましい。これらは2種以上を混合して使用してもよい。フェノール化合物としては、フェノール系酸化防止剤として知られる任意のフェノール化合物を使用することができる。好ましいフェノール化合物としては、ヒンダードフェノール化合物が挙げられる。特に、フェノール性水酸基に隣接する部位(オルト位)に置換基を有する化合物が好ましい。前述の置換基としては炭素数1〜22の置換又は無置換のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピオニル基、イソプロピオニル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、t−ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、イソオクチル基、2−エチルへキシル基がより好ましい。また、同一分子内にフェノール基と亜リン酸エステル基を有する化合物(酸化防止剤)も好ましい。また、酸化防止剤は、リン系酸化防止剤も好適に使用することができる。リン系酸化防止剤としてはトリス[2−[[2,4,8,10−テトラキス(1,1−ジメチルエチル)ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン−6−イル]オキシ]エチル]アミン、トリス[2−[(4,6,9,11−テトラ−tert−ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン−2−イル)オキシ]エチル]アミン、および亜リン酸エチルビス(2,4−ジ−tert−ブチル−6−メチルフェニル)からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物が挙げられる。これらは、市販品として容易に入手可能であり、アデカスタブ AO−20、アデカスタブ AO−30、アデカスタブ AO−40、アデカスタブ AO−50、アデカスタブ AO−50F、アデカスタブ AO−60、アデカスタブ AO−60G、アデカスタブ AO−80、アデカスタブ AO−330((株)ADEKA)などが挙げられる。酸化防止剤の含有量は、近赤外線吸収組成物の全固形分に対して、0.01〜20質量%であることが好ましく、0.3〜15質量%であることがより好ましい。酸化防止剤は、1種類のみでもよく、2種類以上でもよい。2種類以上の場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
近赤外線吸収組成物の粘度は、塗布により樹脂膜を形成する場合は、1〜3000mPa・sであることが好ましい。下限は、10mPa・s以上が好ましく、100mPa・s以上が更に好ましい。上限は、2000mPa・s以下が好ましく、1500mPa・s以下が更に好ましい。
<近赤外線吸収組成物の調製方法>
上記の近赤外線吸収組成物は、各成分を混合して調製できる。近赤外線吸収組成物の調製に際しては、近赤外線吸収組成物を構成する各成分を一括配合してもよいし、各成分を溶剤に溶解および/または分散した後に逐次配合してもよい。また、配合する際の投入順序や作業条件は特に制約を受けない。
また、近赤外線吸収組成物が顔料などの粒子を含む場合は、粒子を分散させるプロセスを含むことが好ましい。粒子を分散させるプロセスにおいて、粒子の分散に用いる機械力としては、圧縮、圧搾、衝撃、剪断、キャビテーションなどが挙げられる。これらプロセスの具体例としては、ビーズミル、サンドミル、ロールミル、ボールミル、ペイントシェーカー、マイクロフルイダイザー、高速インペラー、サンドグラインダー、フロージェットミキサー、高圧湿式微粒化、超音波分散などが挙げられる。またサンドミル(ビーズミル)における粒子の粉砕においては、径の小さいビーズを使用する、ビーズの充填率を大きくする等により粉砕効率を高めた条件で処理することが好ましい。また、粉砕処理後にろ過、遠心分離などで粗粒子を除去することが好ましい。また、粒子を分散させるプロセスおよび分散機は、「分散技術大全、株式会社情報機構発行、2005年7月15日」や「サスペンション(固/液分散系)を中心とした分散技術と工業的応用の実際 総合資料集、経営開発センター出版部発行、1978年10月10日」、特開2015−157893号公報の段落番号0022に記載のプロセス及び分散機を好適に使用出来る。また粒子を分散させるプロセスにおいては、ソルトミリング工程にて粒子の微細化処理を行ってもよい。ソルトミリング工程に用いられる素材、機器、処理条件等は、例えば特開2015−194521号公報、特開2012−046629号公報の記載を参酌できる。
近赤外線吸収組成物においては、異物の除去や欠陥の低減などの目的で、フィルタでろ過することが好ましい。フィルタとしては、従来からろ過用途等に用いられているものであれば特に限定されることなく用いることができる。例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂、ナイロン(例えばナイロン−6、ナイロン−6,6)等のポリアミド系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン樹脂(高密度、超高分子量のポリオレフィン樹脂を含む)等の素材を用いたフィルタが挙げられる。これら素材の中でもポリプロピレン(高密度ポリプロピレンを含む)およびナイロンが好ましい。フィルタの孔径は、0.01〜7.0μm程度が適しており、好ましくは0.01〜3.0μm程度、さらに好ましくは0.05〜0.5μm程度である。この範囲とすることにより、微細な異物を確実に除去することが可能となる。また、ファイバ状のろ材を用いることも好ましく、ろ材としては例えばポリプロピレンファイバ、ナイロンファイバ、グラスファイバ等が挙げられ、具体的にはロキテクノ社製のSBPタイプシリーズ(SBP008など)、TPRタイプシリーズ(TPR002、TPR005など)、SHPXタイプシリーズ(SHPX003など)のフィルタカートリッジを用いることができる。
フィルタを使用する際、異なるフィルタを組み合わせてもよい。その際、第1のフィルタでのフィルタリングは、1回のみでもよいし、2回以上行ってもよい。また、上述した範囲内で異なる孔径の第1のフィルタを組み合わせてもよい。ここでの孔径は、フィルタメーカーの公称値を参照することができる。市販のフィルタとしては、例えば、日本ポール株式会社、アドバンテック東洋株式会社、日本インテグリス株式会社(旧日本マイクロリス株式会社)又は株式会社キッツマイクロフィルタ等が提供する各種フィルタの中から選択することができる。第2のフィルタは、上述した第1のフィルタと同様の材料等で形成されたものを使用することができる。第2のフィルタの孔径は、0.2〜10.0μmが好ましく、0.2〜7.0μmがより好ましく、0.3〜6.0μmが更に好ましい。
<近赤外線カットフィルタの製造方法>
本発明の近赤外線カットフィルタは、上述した近赤外線吸収組成物を用いて樹脂膜を形成して製造できる。具体的には、近赤外線吸収組成物を支持体に適用して近赤外線吸収組成物層を形成する工程、近赤外線吸収組成物層を硬化する工程を経て樹脂膜を形成して製造できる。近赤外線吸収組成物層を形成する工程と、近赤外線吸収組成物層を硬化する工程との間に、さらに、近赤外線吸収組成物層を乾燥する工程を有していてもよい。また、パターンを形成する工程を行ってもよい。パターン形成方法としては、フォトリソグラフィ法を用いたパターン形成方法、ドライエッチング法を用いたパターン形成方法などが挙げられる。本発明の近赤外線カットフィルタにおいては、支持体から樹脂膜を剥離して樹脂膜自体を近赤外線カットフィルタとして用いてもよい。また、樹脂膜と支持体の積層体を近赤外線カットフィルタとして用いてもよい。
近赤外線吸収組成物層を形成する工程において、近赤外線吸収組成物の適用方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、滴下法(ドロップキャスト);スリットコート法;スプレー法;ロールコート法;回転塗布法(スピンコーティング);流延塗布法;スリットアンドスピン法;プリウェット法(たとえば、特開2009−145395号公報に記載されている方法);インクジェット(例えばオンデマンド方式、ピエゾ方式、サーマル方式)、ノズルジェット等の吐出系印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷、反転オフセット印刷、メタルマスク印刷法などの各種印刷法;金型等を用いた転写法;ナノインプリント法;ブレードコート法;バーコート法;アプリケーター塗布法などが挙げられる。インクジェットによる適用方法としては、組成物を吐出可能な方法であれば特に限定されず、例えば「広がる・使えるインクジェット−特許に見る無限の可能性−、2005年2月発行、住べテクノリサーチ」に示された特許公報に記載の方法(特に115ページ〜133ページ)や、特開2003−262716号公報、特開2003−185831号公報、特開2003−261827号公報、特開2012−126830号公報、特開2006−169325号公報などに記載の方法を用いることができる。
滴下法(ドロップキャスト)の場合、支持体上にフォトレジストを隔壁とする近赤外線吸収組成物の滴下領域を形成することが好ましい。近赤外線吸収組成物の滴下量および固形分濃度、滴下領域の面積を調整することで、近赤外線吸収組成物層の膜厚を所望の膜厚に調整できる。近赤外線吸収組成物層の乾燥後の膜の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
支持体の態様は、特に限定はされない。例えば、支持体の材質としては、一般的なガラスの他、サファイアガラス、ゴリラガラスなどの強化ガラス、透明なセラミック、プラスチックなどが挙げられる。また、支持体として固体撮像素子を用いてもよい。また、固体撮像素子の受光側に設けられた別の基板であってもよい。また、固体撮像素子の受光側に設けられた平坦化層等の層であっても良い。また、支持体から剥離した樹脂膜を近赤外線カットフィルタとして用いる場合においては、支持体としては透明性を有さない基板を用いることもできる。たとえば、金属基板、樹脂基板、シリコン基板などが挙げられる。また、樹脂膜を支持体から剥離しやすくするため、支持体の表面には離型層が形成されていることも好ましい。
近赤外線吸収組成物層を乾燥する工程において、乾燥条件としては、近赤外線吸収組成物に含まれる各成分の種類や含有量等によっても異なる。例えば、乾燥温度としては、40〜160℃が好ましい。下限は60℃以上が好ましく、80℃以上がより好ましい。上限は140℃以下が好ましく、120℃以下がより好ましい。加熱時間としては、1〜600分が好ましい。下限は10分以上が好ましく、30分以上がより好ましい。上限は300分以下が好ましく、180分以下がより好ましい。また、室温(例えば25℃)から一定の昇温速度で所定の乾燥温度まで昇温し、その温度保持して乾燥する方法も挙げられる。昇温温度としては、0.5〜10℃/分が好ましく、1.0〜5℃/分がより好ましい。
近赤外線吸収組成物層を硬化する工程において、近赤外線吸収組成物層の硬化処理方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、露光処理、加熱処理などが挙げられ、機械物性に優れた樹脂膜が得られやすいという理由から加熱処理が好ましい。ここで、本発明において「露光」とは、各種波長の光のみならず、電子線、X線などの放射線照射をも包含する意味で用いられる。
近赤外線吸収組成物層の硬化処理においては、近赤外線吸収組成物層の架橋率が、50〜90%となる条件で行うことが好ましい。ここで、架橋率とは、架橋した架橋基の数/架橋基の総数のことであり、NMR(核磁気共鳴)等の方法で測定することができる。
露光処理としては、近赤外線吸収組成物層に対して放射線を照射して行うことが好ましい。放射線としては、電子線、KrF、ArF、g線、h線、i線等の紫外線が好ましい。露光方式としては、ステッパー露光や、高圧水銀灯を用いた露光などが挙げられる。露光量は5〜3000mJ/cm2が好ましい。上限は、2000mJ/cm2以下が好ましく、1000mJ/cm2以下がより好ましい。下限は、10mJ/cm2以上が好ましく、50mJ/cm2以上がより好ましい。露光装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、超高圧水銀灯などの紫外線露光機が挙げられる。
加熱処理における加熱温度としては、100〜180℃が好ましい。下限は120℃以上が好ましく、140℃以上がより好ましい。上限は170℃以下が好ましく、160℃以下がより好ましい。加熱時間としては、0.5〜48時間が好ましい。下限は1時間以上が好ましく、1.5時間以上がより好ましい。上限は24時間以下が好ましく、6時間以下がより好ましい。この態様によれば、上述した機械物性を有する樹脂膜が得られやすい。加熱装置としては、特に制限はなく、公知の装置の中から、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、熱風乾燥器、ドライオーブン、ホットプレート、赤外線ヒーター、波長制御乾燥機などが挙げられる。
また、硬化処理後の近赤外線吸収組成物層に対してエージングを行ってもよい。エージングにおいては、近赤外線吸収組成物層を高温高湿処理することが好ましい。エージング温度としては、60〜150℃が好ましい。下限は70℃以上が好ましく、80℃以上がより好ましい。上限は140℃以下が好ましく、130℃以下がより好ましい。湿度としては、30〜100%が好ましい。下限は40%以上が好ましく、50%以上がより好ましい。上限は95%以下が好ましく、90%以下がより好ましい。エージング時間としては、0.5〜100時間が好ましい。下限は1時間以上が好ましく、2時間以上がより好ましい。上限は50時間以下が好ましく、25時間以下がより好ましい。この態様によれば、上述した機械物性を有する樹脂膜が得られやすい。エージング装置としては、特に制限はなく、公知の装置の中から、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、高温高湿炉などが挙げられる。
また、近赤外線吸収組成物を支持体に適用して形成した近赤外線吸収組成物層に対し、上述した硬化工程を経ずに上述したエージングを行ってもよい。すなわち、近赤外線吸収組成物層に対し、硬化プロセスを経ずにエージングを行って樹脂膜を形成してもよい。この態様においては、エージングが硬化工程を兼ねている。また、近赤外線吸収組成物層の形成にあたり、上述した乾燥工程を行ってもよく、乾燥工程を行わなくてもよい。すなわち、塗布直後の近赤外線吸収組成物層に対して上述したエージングを行って樹脂膜を形成してもよい。この態様によっても、硬化プロセス後にエージングを行った場合と同様の性質を持つ樹脂膜を得ることができる。エージング条件(温度、湿度、時間)としては、上述した条件が挙げられる。
<固体撮像素子、カメラモジュール>
本発明の固体撮像素子は、本発明の近赤外線カットフィルタを含む。また、本発明のカメラモジュールは、本発明の近赤外線カットフィルタを含む。
図1は、本発明の実施形態に係る近赤外線カットフィルタを有するカメラモジュールの構成を示す概略断面図である。図1に示すカメラモジュール10は、固体撮像素子11と、固体撮像素子の主面側(受光側)に設けられた平坦化層12と、近赤外線カットフィルタ13と、近赤外線カットフィルタの上方に配置され内部空間に撮像レンズ14を有するレンズホルダー15と、を備える。カメラモジュール10は、外部からの入射光が、撮像レンズ14、近赤外線カットフィルタ13、平坦化層12を順次透過した後、固体撮像素子11の撮像素子部に到達するようになっている。近赤外線カットフィルタ13としては、上述した物性の樹脂膜のみを用いてもよく、樹脂膜と支持体との積層体を用いてもよい。支持体の材質としては、一般的なガラスの他、サファイアガラス、ゴリラガラスなどの強化ガラス、透明なセラミック、プラスチックなどが挙げられる。撮像レンズ14の材質としては、一般的なガラスの他、サファイアガラス、ゴリラガラスなどの強化ガラス、透明なセラミック、プラスチックなどが挙げられる。
固体撮像素子11は、例えば、基板16の主面に、フォトダイオード、層間絶縁膜(図示せず)、ベース層(図示せず)、カラーフィルタ17、オーバーコート(図示せず)、マイクロレンズ18をこの順に備えている。カラーフィルタ17(赤色のカラーフィルタ、緑色のカラーフィルタ、青色のカラーフィルタ)やマイクロレンズ18は、固体撮像素子11に対応するように、それぞれ配置されている。なお、平坦化層12の表面に近赤外線カットフィルタ13が設けられる代わりに、マイクロレンズ18の表面、ベース層とカラーフィルタ17との間、または、カラーフィルタ17とオーバーコートとの間に、近赤外線カットフィルタ13が設けられる形態であってもよい。例えば、近赤外線カットフィルタ13は、マイクロレンズ表面から2mm以内(より好ましくは1mm以内)の位置に設けられていてもよい。この位置に近赤外線カットフィルタ13を設けると、近赤外線カットフィルタを形成する工程が簡略化できる。更には、マイクロレンズへの不要な近赤外線の入射を十分にカットすることができ、赤外線遮蔽性をより高めることができる。また、図1において、撮像レンズ14は1枚であるが、撮像レンズ14は2枚以上であってもよい。
本発明の近赤外線カットフィルタは、耐熱性に優れるため、半田リフロー工程に供することができる。半田リフロー工程によりカメラモジュールを製造することによって、半田付けを行うことが必要な電子部品実装基板等の自動実装化が可能となり、半田リフロー工程を用いない場合と比較して、生産性を格段に向上することができる。更に、自動で行うことができるため、低コスト化を図ることもできる。半田リフロー工程に供される場合、250〜270℃程度の温度にさらされることとなるため、近赤外線カットフィルタは、半田リフロー工程に耐え得る耐熱性(以下、「耐半田リフロー性」ともいう。)を有することが好ましい。本明細書中で、「耐半田リフロー性を有する」とは、180℃で1分間の加熱を行った後にも近赤外線カットフィルタとしての特性を保持することをいう。より好ましくは、230℃で10分間の加熱を行った後にも特性を保持することである。更に好ましくは、250℃で3分間の加熱を行った後にも特性を保持することである。耐半田リフロー性を有しない場合には、上記条件で加熱した場合に、近赤外線カットフィルタの赤外線遮蔽性が低下したり、膜としての機能が不十分となる場合がある。
本発明のカメラモジュールは、更に、紫外線吸収層を有することもできる。この態様によれば、紫外線遮蔽性を高めることができる。紫外線吸収層は、例えば、国際公開WO2015/099060号公報の段落番号0040〜0070、0119〜0145の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれることする。
図2〜図4は、カメラモジュールにおける近赤外線カットフィルタの周辺部分の一例を示す概略断面図である。
図2に示すように、カメラモジュールは、固体撮像素子11と、平坦化層12と、紫外・赤外光反射膜19と、透明基材20と、近赤外線カットフィルタ21と、反射防止層22とをこの順に有していてもよい。紫外・赤外光反射膜19は、例えば、特開2013−68688号公報の段落番号0033〜0039、国際公開WO2015/099060号公報の段落番号0110〜0114を参酌することができ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。透明基材20は、可視領域の波長の光を透過するものであり、例えば、特開2013−68688号公報の段落番号0026〜0032を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。反射防止層22は、近赤外線カットフィルタ21に入射する光の反射を防止することにより透過率を向上させ、効率よく入射光を利用する機能を有するものであり、例えば、特開2013−68688号公報の段落番号0040の記載を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。
図3に示すように、カメラモジュールは、固体撮像素子11と、近赤外線カットフィルタ21と、反射防止層22と、平坦化層12と、反射防止層22と、透明基材20と、紫外・赤外光反射膜19とをこの順に有していてもよい。
図4に示すように、カメラモジュールは、固体撮像素子11と、近赤外線カットフィルタ21と、紫外・赤外光反射膜19と、平坦化層12と、反射防止層22と、透明基材20と、反射防止層22とをこの順に有していてもよい。
図5に本発明のカメラモジュールの他の実施形態を示す。このカメラモジュールは、図1に示したカメラモジュールにおいて、近赤外線カットフィルタ13がレンズホルダー15の外側に配置されている点が、図1に示したカメラモジュールと相違している。すなわち、図5に示したカメラモジュールにおいては、近赤外線カットフィルタ13が撮像レンズ14よりも外部からの入射光側に配置されている。このカメラモジュールにおいては、外部からの入射光が、近赤外線カットフィルタ13、撮像レンズ14、平坦化層12を順次透過した後、固体撮像素子11の撮像素子部に到達するようになっている。近赤外線カットフィルタ13を撮像レンズ14よりも外部からの入射光側に配置した場合においては、近赤外線カットフィルタ13と受光部との距離が離れることにより、近赤外線カットフィルタに欠陥があっても、これらの欠陥がぼやけて、これらの欠陥による画像への影響を小さくできる。
また、図5では、近赤外線カットフィルタ13がレンズホルダー15の外側に配置されているが、レンズホルダー15内に配置されていてもよい。また、図5では、撮像レンズ14の表面から所定の間隔をおいて近赤外線カットフィルタ13が配置されているが、撮像レンズ14の表面に近赤外線カットフィルタ13が直接形成されていてもよい。
また、図5では、撮像レンズ14は1枚であるが、撮像レンズ14は2枚以上であってもよい。また、撮像レンズ14を2枚以上有する場合においては、最も外側(入射光側)に配置された撮像レンズ14よりも外側(入射光側)に近赤外線カットフィルタ13が配置されていてもよく、撮像レンズ間に近赤外線カットフィルタ13が配置されていてもよい。例えば撮像レンズ14を2枚有する場合においては、入射光側から順に、近赤外線カットフィルタ、撮像レンズ、撮像レンズの順にそれぞれが配置されていてもよく、撮像レンズ、近赤外線カットフィルタ、撮像レンズの順にそれぞれが配置されていてもよい。
<画像表示装置>
本発明の画像表示装置は、本発明の近赤外線カットフィルタを有する。本発明の近赤外線カットフィルタは、液晶表示装置や有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)表示装置などの画像表示装置に用いることもできる。表示装置の定義や各表示装置の詳細については、例えば「電子ディスプレイデバイス(佐々木 昭夫著、(株)工業調査会 1990年発行)」、「ディスプレイデバイス(伊吹 順章著、産業図書(株)平成元年発行)」などに記載されている。また、液晶表示装置については、例えば「次世代液晶ディスプレイ技術(内田 龍男編集、(株)工業調査会 1994年発行)」に記載されている。本発明が適用できる液晶表示装置に特に制限はなく、例えば、上記の「次世代液晶ディスプレイ技術」に記載されている色々な方式の液晶表示装置に適用できる。
画像表示装置は、白色有機EL素子を有するものであってもよい。白色有機EL素子としては、タンデム構造であることが好ましい。有機EL素子のタンデム構造については、特開2003−45676号公報、三上明義監修、「有機EL技術開発の最前線−高輝度・高精度・長寿命化・ノウハウ集−」、技術情報協会、326−328ページ、2008年などに記載されている。有機EL素子が発光する白色光のスペクトルは、青色領域(430nm−485nm)、緑色領域(530nm−580nm)及び黄色領域(580nm−620nm)に強い極大発光ピークを有するものが好ましい。これらの発光ピークに加え更に赤色領域(650nm−700nm)に極大発光ピークを有するものがより好ましい。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」、「%」は、質量基準である。
<重量平均分子量(Mw)>
重量平均分子量(Mw)は、以下の方法で、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)にて測定した。
装置:HLC−8220 GPC(東ソー株式会社製)
検出器:RI(Refractive Index)検出器
カラム:ガードカラム HZ−Lと、TSK gel Super HZM−Mと、TSK gel Super HZ4000と、TSK gel Super HZ3000と、TSK gel Super HZ2000(東ソー株式会社製)とを連結したカラム
溶離液:テトラヒドロフラン(安定剤含有)
カラム温度:40℃
注入量:10μL
分析時間:26min.
流量:流速 0.35mL/min.(サンプルポンプ) 0.20mL/min.(リファレンスポンプ)
検量線ベース樹脂:ポリスチレン
<動的粘弾性特性における損失正接tanδの測定>
アイティ計測制御社製DVA−225型動的粘弾性測定機を使用し、樹脂膜に与える振動の周波数1Hz、昇温速度5℃/分の条件にて、−50℃から250℃の範囲における樹脂膜の損失正接tanδを測定して、樹脂膜の損失正接tanδのピークの温度およびピーク半値幅を求めた(試料サイズ:幅5mm×チャック間距離20mm)。2個の試料についての損失正接tanδの平均値を用いて、その樹脂膜の損失正接tanδのピークの温度およびピーク半値幅とした。
<線膨張係数の測定>
ティーエーインスツルメンツ社製Q400を用いて以下の条件で樹脂膜の線膨張係数を測定した。5個の試料の平均値を、その樹脂膜の線膨張係数として算出した。
・試料サイズ:幅4mm、チャック間距離16mm、厚み:200μm
・負荷荷重:0.01N
・測定条件:昇温速度5℃/分にて、−20℃から140℃まで昇温して測定。
<ビッカース硬度の測定>
フィッシャーインスツルメンツ製微小硬度試験装置HM2000(ビッカース圧子使用)を用いて以下の条件で樹脂膜のビッカース硬度を測定した。10個の試料のビッカーズ硬度の平均値をその樹脂膜のビッカース硬度とした。
・押し込み荷重:10mN
・負荷および除荷時間:10秒
・クリープ:5秒(最大荷重時)
・試験環境:25℃、相対湿度50%
<引っ張り弾性率、引っ張り強度の測定>
島津製作所製AG−X型引張試験機(ロードセル500N,平面チャック)を用いて、以下の条件で、樹脂膜の引っ張り弾性率、引っ張り強度を測定した。10個の試料の平均値をその樹脂膜の上記物性値とした。
・試料サイズ:幅5mm、チャック間距離50mm、厚み:200μm
・測定環境:25℃、相対湿度35%
・引張速度:5mm/分(=10%/分)
<近赤外線吸収組成物の調製>
(実施例1〜13、比較例1)
下記の表に示す材料を下記の表に示す配合量(質量部)で混合して、固形分濃度62質量%の近赤外線吸収組成物を調製した。なお、近赤外線吸収組成物の固形分濃度の調整はシクロペンタノンの配合量を調整して行った。
(実施例14〜21)
下記の表に示す材料を下記の表に示す配合量(質量部)で混合して、下記表に記載の固形分濃度の近赤外線吸収組成物を調製した。なお、実施例14〜21の近赤外線吸収組成物の固形分濃度の調整は、下記表に記載の溶剤の配合量を調整して行った。なお、実施例14においては溶剤としてCP(シクロペンタノン)を用いた。また、実施例15〜21においては、溶剤としてCP(シクロペンタノン)と、下記表に記載の溶剤とを、下記表に記載の質量比で含む混合溶剤を用いた。

表に記載の原料は以下である。以下に示す樹脂において、主鎖に付記した数値はモル比である。
(銅錯体)
A−1、A−2:下記構造の銅錯体

A−3:下記化合物を配位子として有する銅錯体

(樹脂)
B−1:下記構造の樹脂(Mw=15,000、Si価=1.29mmol/g、繰り返し単位に付記した数値はモル比である)
B−2:下記構造の樹脂(Mw=15,000、Si価=2.25mmol/g、繰り返し単位に付記した数値はモル比である)
B−3:下記構造の樹脂(Mw=15,000、Si価=0.86mmol/g、繰り返し単位に付記した数値はモル比である)

B−5:下記構造の樹脂(Mw=14500、繰り返し単位に付記した数値はモル比である)
B−6:下記構造の樹脂(Mw=14000、繰り返し単位に付記した数値はモル比である)

B−7:特開2011−100084号公報の段落番号0127〜0130に記載の方法に従って合成した樹脂を用いた。すなわち、8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン100質量部と、1−ヘキセン18質量部と、トルエン300質量部とを、窒素置換した反応容器に仕込み、この溶液を80℃に加熱した。次いで、反応容器内の溶液に、重合触媒として、トリエチルアルミニウムのトルエン溶液(0.6mol/リットル)0.2質量部と、メタノール変性の六塩化タングステンのトルエン溶液(濃度0.025mol/リットル)0.9質量部とを添加し、この溶液を80℃で3時間加熱攪拌することにより開環重合反応させて開環重合体溶液を得た。この重合反応における重合転化率は97%であった。このようにして得られた開環重合体溶液1,000質量部をオートクレーブに仕込み、この開環重合体溶液に、RuHCl(CO)[P(C6533を0.12質量部添加し、水素ガス圧100kg/cm2、反応温度165℃の条件下で、3時間加熱撹拌して水素添加反応を行った。
得られた反応溶液(水素添加重合体溶液)を冷却した後、水素ガスを放圧した。この反応溶液を大量のメタノール中に注いで凝固物を分離回収し、これを乾燥して、水素添加重合体(樹脂B−7)を得た。樹脂B−7の分子量は、数平均分子量(Mn)が32,000、重量平均分子量(Mw)が137,000であり、ガラス転移温度(Tg)は165℃であった。
B−8:特開2014-203044号公報の段落0079〜0088に記載の方法に従って合成したゾルゲル硬化物を用いた。すなわち、フェニルトリエトキシシランとテトラエトキシシランの配合比を50:50に設定したものをゾルゲル膜の原料とした。溶媒はいずれもシクロペンタノンを用いた。酸性触媒としては1モル/リットルの塩酸を用い、Si1モルに対し6モルの水を投与し、室温にて4時間程度撹拌してゾルゲル硬化物を得た。
(架橋剤)
M−1:下記構造(KBM−3066、信越シリコーン(株)製)

M−2:下記構造(KBM−3086、信越シリコーン(株)製)

M−4:下記化合物の混合物
M−5:下記化合物((株)ダイセル製、EHPE 3150)
(ラジカルトラップ剤)
D−1:下記構造の化合物
(触媒)
E−1:トリス(2,4−ペンタンジオナト)アルミニウム(III)(東京化成工業(株)製)
(界面活性剤)
W−1:下記化合物(重量平均分子量=14,000。繰り返し単位の割合を示す%は質量%である。)

W−2:polyfox PF6320(OMNOVA社製)
W−3:KF6001(信越シリコーン社製)
(溶剤)
CP:シクロペンタノン(沸点=130℃)
MBA:3−メトキシブチルアセテート(沸点=172℃)
EDGAC:ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(沸点=218℃)
BDGAC:ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(沸点=247℃)
DRA−150:トリアセチン(沸点=260℃)
MB:3−メトキシブタノール(沸点=158℃)
DPMA:ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(沸点=213℃)
1,4−BDDA:1,4−ブタンジオールジアセテート(沸点=232℃)
<近赤外線カットフィルタの作製>
(実施例1〜12、14、比較例1)
カプトンフィルム(厚さ100μm、東レ・デュポン社製)を貼付したガラス基材上に、近赤外線吸収組成物をスピンコートして、近赤外線吸収組成物層を形成した。次いで、ホットプレートを用いて近赤外線吸収組成物層を100℃で120秒間乾燥したのち、ホットプレートを用いて近赤外線吸収組成物層を150℃で10分間加熱して約40μmの樹脂膜を形成した。その樹脂層の上に近赤外線吸収組成物をスピンコートし、同条件で乾燥および加熱することを4回繰り返した。その後、150℃で90分間加熱して硬化処理を行い、厚さ200μmの樹脂膜を形成した。樹脂膜をガラス基材から手動で剥離して、近赤外線カットフィルタ(樹脂膜)を作製した。樹脂膜について、Si価、動的粘弾性特性における損失正接tanδのピーク温度及びピーク半値幅、引っ張り弾性率、ビッカース硬度、線膨張係数、引っ張り強度を測定した。結果を下記表に記す。なお、ガラス基材から樹脂膜を剥離した際に割れ等が生じてしまったサンプル(比較例1)については、測定に使用できるサイズのサンプルを選択して各種測定を行った。
(実施例13)
カプトンフィルム(厚さ100μm、東レ・デュポン社製)を貼付したガラス基材上に、近赤外線吸収組成物をスピンコートして、近赤外線吸収組成物層を形成した。次いで、ホットプレートを用いて近赤外線吸収組成物層を100℃で120秒間乾燥したのち、ホットプレートを用いて近赤外線吸収組成物層を150℃で10分間加熱して約40μmの樹脂膜を形成した。その樹脂層の上に近赤外線吸収組成物をスピンコートし、同条件で乾燥および加熱することを4回繰り返した。その後、150℃で90分間加熱して硬化処理を行い、厚さ200μmの樹脂膜を形成した。硬化処理後の樹脂膜を温度85℃湿度85%の高温高湿炉で72時間高温高湿処理を行った。高温高湿処理後の樹脂膜をガラス基材から手動で剥離して、近赤外線カットフィルタ(樹脂膜)を作製した。樹脂膜について、Si価、動的粘弾性特性における損失正接tanδのピーク温度及びピーク半値幅、引っ張り弾性率、ビッカース硬度、線膨張係数、引っ張り強度を測定した。結果を下記表に記す。
(実施例15〜21)
カプトンフィルム(厚さ100μm、東レ・デュポン社製)を貼付したガラス基材上に、近赤外線吸収組成物をスピンコートして、近赤外線吸収組成物層を形成した。次いで、ホットプレートを用いて近赤外線吸収組成物層を100℃で120秒間乾燥したのち、ホットプレートを用いて近赤外線吸収組成物層を150℃で10分間加熱して樹脂膜を形成した。その樹脂層の上に近赤外線吸収組成物をスピンコートし、同条件で乾燥および加熱することを10〜50回繰り返して、厚さ200μmの樹脂膜を形成した。樹脂膜をガラス基材から手動で剥離して、近赤外線カットフィルタ(樹脂膜)を作製した。樹脂膜について、Si価、動的粘弾性特性における損失正接tanδのピーク温度及びピーク半値幅、引っ張り弾性率、ビッカース硬度、線膨張係数、引っ張り強度を測定した。
<耐熱性の評価>
近赤外線カットフィルタ(樹脂膜)を、170℃で90分間加熱して耐熱試験を行った。耐熱試験前後において、近赤外線カットフィルタの波長400nmにおける吸光度を測定し、波長400nmにおける吸光度の変化率を下記式より求めた。以下の基準にて耐熱性を評価した。吸光度の測定には、分光光度計U−4100(日立ハイテクノロジーズ社製)を用いた。
波長400nmにおける吸光度の変化率(%)=|(耐熱試験前における波長400nmの吸光度−耐熱試験後における波長400nmの吸光度)/耐熱試験前における波長400nmの吸光度|×100(%)
(評価基準)
A:波長400nmにおける吸光度の変化率≦3%
B:3%<波長400nmにおける吸光度の変化率≦6%
C:6%<波長400nmにおける吸光度の変化率≦10%
D:10%<波長400nmにおける吸光度の変化率
<耐湿性>
近赤外線カットフィルタ(樹脂膜)を、85℃、相対湿度85%の環境下で500時間静置して耐湿試験を行った。耐湿試験前後において、近赤外線カットフィルタの波長400nmにおける吸光度を測定し、波長400nmにおける吸光度の変化率を下記式より求めた。以下の基準にて耐湿性を評価した。
波長400nmにおける吸光度の変化率(%)=|(耐湿試験前における波長400nmの吸光度−耐湿試験後における波長400nmの吸光度)/耐湿試験前における波長400nmの吸光度|×100(%)
(評価基準)
A:波長400nmにおける吸光度の変化率≦3%
B:3%<波長400nmにおける吸光度の変化率≦6%
C:6%<波長400nmにおける吸光度の変化率≦10%
D:10%<波長400nmにおける吸光度の変化率
<耐低温性>
近赤外線カットフィルタ(樹脂膜)を、−40℃で500時間静置して耐低温試験を行った。耐低温試験前後において、近赤外線カットフィルタの波長400nmにおける吸光度を測定し、波長400nmにおける吸光度の変化率を下記式より求めた。以下の基準にて耐湿性を評価した。
波長400nmにおける吸光度の変化率(%)=|(耐低温試験前における波長400nmの吸光度−耐低温試験後における波長400nmの吸光度)/耐低温試験前における波長400nmの吸光度|×100(%)
(評価基準)
A:波長400nmにおける吸光度の変化率≦3%
B:3%<波長400nmにおける吸光度の変化率≦6%
C:6%<波長400nmにおける吸光度の変化率≦10%
D:10%<波長400nmにおける吸光度の変化率
<耐熱衝撃性>
近赤外線カットフィルタ(樹脂膜)に対して、−40℃で10分、100℃で10分の温度昇降サイクルを500サイクル繰り返して耐熱衝撃性試験を行った。以下の基準で、近赤外線カットフィルタ(樹脂膜)の耐熱衝撃性を評価した。評価には、温度サイクル試験機(気槽式)WINTECH(楠本化成社製)を用いた。
A:500サイクルで膜面異状無し
B:100サイクル以上500サイクル未満で膜面異状(クラック及び/又は剥離)が発生した。
C:10サイクル以上100サイクル未満で膜面異状(クラック及び/又は剥離)が発生した。
D:10サイクル未満で膜面異状(クラック及び/又は剥離)が発生した
<剥離性>
上記カプトンフィルムを貼付したガラス基板から樹脂膜を手動で剥離した。以下の基準で剥離性を評価した。
A:ガラス基材から樹脂膜が剥離可能であった
D:剥離できない、または、剥離時に樹脂膜が割れてしまった。
<分光特性の評価>
近赤外線カットフィルタ(樹脂膜)の透過率を、U−4100(日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて測定した。具体的には、測定波長範囲は400〜1300nmであり、5nm毎の透過率を測定した。透過率の平均値は、5nm毎の透過率の和を波長範囲で割る事で算出した。反射率は、U−4100(日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて測定した。近赤外線カットフィルタの表面に対する法線方向を0°として、入射角度を5°に設定して測定した。
上記表から明らかなとおり、実施例は、耐熱衝撃性に優れていた。更には、耐熱性、耐湿性および耐低温性のいずれにおいても優れていた。また、実施例においては、樹脂膜の基材との剥離性が良好であった。
(実施例101)
実施例1の近赤外線カットフィルタ(樹脂膜)を図1に記載の構成のカメラモジュールに組み込んだ。このカメラモジュールを用いて画像を撮影したところ鮮明な画像が得られた。
(実施例102)
実施例1の近赤外線カットフィルタ(樹脂膜)を図5に記載の構成のカメラモジュールに組み込んだ。このカメラモジュールを用いて画像を撮影したところ鮮明な画像が得られた。
(実施例103)
実施例102において、近赤外線カットフィルタとして、実施例1の樹脂膜(近赤外線カットフィルタ)とサファイアガラスとの積層体を用いた以外は、実施例102と同様にして図5に記載の構成のカメラモジュールを製造した。このカメラモジュールを用いて画像を撮影したところ鮮明な画像が得られた。
10 カメラモジュール、11 固体撮像素子、12 平坦化層、13 近赤外線カットフィルタ、14 撮像レンズ、15 レンズホルダー、16 シリコン基板、17 カラーフィルタ、18 マイクロレンズ、19 紫外・赤外光反射膜、20 透明基材、21 近赤外線カットフィルタ、22 反射防止層

Claims (20)

  1. 銅錯体と樹脂とを含む樹脂膜を有し、
    前記樹脂膜は、25℃における引っ張り弾性率が0.5〜10GPaであり、
    周波数1Hz、昇温速度5℃/分の条件で測定した動的粘弾性特性における損失正接tanδのピークを80〜160℃の範囲内に有し、かつ、前記ピークの半値幅が1〜50℃である、近赤外線カットフィルタ。
  2. 波長800〜1000nmの範囲において、前記赤外線カットフィルタが有する樹脂膜面に対して垂直方向から照射した光の透過率の平均値が20%以下である、請求項1に記載の近赤外線カットフィルタ。
  3. 波長800〜1000nmの範囲において、前記近赤外線カットフィルタの反射率の平均値が20%以下である、請求項1または2に記載の近赤外線カットフィルタ。
  4. 前記樹脂膜の線膨張係数が75〜200ppm/℃である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の近赤外線カットフィルタ。
  5. 前記樹脂膜の25℃におけるビッカース硬度が5〜30である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の近赤外線カットフィルタ。
  6. 前記樹脂膜の25℃における引っ張り強度が20〜60MPaである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の近赤外線カットフィルタ。
  7. 前記樹脂膜のSi価が1〜4mmol/gである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の近赤外線カットフィルタ。
  8. 前記樹脂膜は架橋性基を有する樹脂由来の架橋物を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の近赤外線カットフィルタ。
  9. 前記架橋性基を有する樹脂の架橋基価が0.5〜4mmol/gである、請求項8に記載の近赤外線カットフィルタ。
  10. 前記架橋性基がアルコキシシリル基であり、架橋性基を有する樹脂のSi価が0.5〜4mmol/gである、請求項8に記載の近赤外線カットフィルタ。
  11. 前記樹脂膜は架橋性基を有するモノマー由来の架橋物を含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の近赤外線カットフィルタ。
  12. 前記架橋性基を有するモノマーの架橋基価が5〜20mmol/gである、請求項11に記載の近赤外線カットフィルタ。
  13. 前記架橋性基を有するモノマーは、1分子中にSi原子を2〜5個含む、請求項11または12に記載の近赤外線カットフィルタ。
  14. 前記架橋性基を有するモノマーは、1分子中の2個のSi原子が2〜10個の原子を隔てて結合している、請求項11〜13のいずれか1項に記載の近赤外線カットフィルタ。
  15. 前記架橋性基がアルコキシシリル基であり、前記架橋性基を有するモノマーのSi価が5〜20mmol/gである、請求項11〜14のいずれか1項に記載の近赤外線カットフィルタ。
  16. 前記樹脂膜は銅錯体を2種類以上含む、請求項1〜15のいずれか1項に記載の近赤外線カットフィルタ。
  17. 前記樹脂膜は自己支持膜である、請求項1〜16のいずれか1項に記載の近赤外線カットフィルタ。
  18. 請求項1〜17のいずれか1項に記載の近赤外線カットフィルタを有する固体撮像素子。
  19. 請求項1〜17のいずれか1項に記載の近赤外線カットフィルタを有するカメラモジュール。
  20. 請求項1〜17のいずれか1項に記載の近赤外線カットフィルタを有する画像表示装置。
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