JPWO2017200089A1 - 移植用の肝臓の灌流装置、および、当該装置を用いた肝臓摘出方法および肝臓移植方法 - Google Patents

移植用の肝臓の灌流装置、および、当該装置を用いた肝臓摘出方法および肝臓移植方法 Download PDF

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Abstract

この灌流装置(1)および灌流方法では、移植用の肝臓(9)に対して2系統の灌流液流入経路(30)と2系統の灌流液流出経路(40)を確保できる。灌流液流入経路(30)はそれぞれ、門脈または肝動脈に接続される灌流液流入用カニューレ(32)を有する。灌流液流入経路(40)はそれぞれ、肝上部下大静脈または肝下部下大静脈に接続される灌流液流出カニューレ(42)を有する。灌流液流入用カニューレ(32)から肝臓(9)へ灌流液が流入し、肝臓(9)内の灌流液が灌流液流出カニューレ(42)から流出する。これにより、肝臓(9)の摘出または移植を行う際に、移植用の肝臓(9)が阻血状態におかれる時間を大幅に短縮できる。すなわち、移植用の肝臓(9)に障害が生じるのを抑制できる。それにより、肝臓移植の成功率を向上させることができる。したがって、長時間を要する臓器移植手術において、手術中の移植用の臓器の劣化を防止できる。

Description

本発明は、ドナーから移植用の肝臓を摘出する際に用いるための、または、移植用の肝臓をレシピエントに移植する際に用いるための、移植用の肝臓の灌流装置に関する。また、本発明は、ドナーから移植用の肝臓を摘出する方法、および、移植用の肝臓をレシピエントに移植する方法にも関する。
病気や事故による臓器の不可逆的な機能不全に対する治療として、現在は主に臓器移植が行われている。免疫抑制剤や移植技術の進展によって、移植件数が増加し、その成功率は飛躍的に上昇しているものの、慢性的な臓器不足が移植医療の深刻な問題となっている。この臓器不足に対応するために、移植動物の臓器を移植する方法や免疫学的な拒絶反応が起こりにくい遺伝子改変動物の開発、さらに臓器の機能を人工物で代替することを目指した人工臓器の開発が進められているものの、どの技術開発も成体臓器の機能を代替するまでには至っていない。
移植に供するドナー臓器が不足するのは、提供される臓器の数だけではなく、摘出した臓器を移植可能な状態で保存できる時間が短いことも大きな原因の1つとなっている。そのため摘出した臓器を生体外で長期間移植可能な状態で保存するための技術の開発が進められている。現在もっとも広く用いられている方法は、細胞の代謝を抑制するために臓器内血液を低温の臓器保存液に置き換えてから、低温の保存液に浸漬する単純冷却法である。また、保存している臓器内の老廃物の除去を目的として、臓器内血管網に低温の臓器保存液を灌流させながら低温で浸漬保存する灌流冷却保存法があり、最近欧米で治験が進められている(例えば、非特許文献1)。しかし、これらの方法で保存した臓器の安全使用限界は、一般に腎臓が60時間、肝臓が20時間と考えられており、更なる保存期間の延長技術が求められている。
また、上記の問題の他に、ドナー臓器数の不足が生じる他の要因としては、ドナー登録者の過半数が心停止により死亡してしまうために、提供できる臓器が限られる点がある。心停止ドナーからの臓器移植は、脳死ドナーからの臓器移植と異なり、心停止から臓器の摘出保存までに、臓器への血流が停止する期間、すなわち「温虚血」の期間が生じる。温虚血状態の臓器又は組織では、ATPの枯渇による細胞の膨化障害やヒポキサンチンをはじめとした老廃物の蓄積が生じる。細胞内に蓄積したヒポキサンチンは、臓器又は組織への血流再開時には酸素化された灌流液によって急速に代謝される。この過程で、大量の活性酸素が生じることで組織障害を引き起こすとともに、細胞から分泌されるサイトカイン等によって、臓器移植を受けたレシピエントに全身性の急性ショックを惹起することもある。
温虚血状態となった臓器または組織を移植に用いるための、臓器または組織の長期維持方法として、例えば特許文献1に記載の方法が提案されている。
WO2014/038473
Moers C.et al.:N.Engl.J.Med.360(1):7,2009
一般的に、臓器摘出および臓器移植のための手術には長時間を要する(心臓移植では5〜10時間、腎臓移植では3〜4時間程度、肝臓移植では8〜15時間程度)。臓器摘出および臓器移植手術を行っている最中において、移植用の臓器は虚血状態となり、劣化していく。そのため、移植用の臓器の劣化防止技術、あるいは、虚血によってダメージを受けた移植用の臓器の蘇生技術が求められている。特に肝臓移植に関しては、移植用肝臓の保存可能時間が短いにもかかわらず、移植手術に要する時間が長いため、上記のような技術がさらに強く望まれている。
そこで、本発明は、長時間を要する臓器摘出手術および臓器移植手術において、手術中の移植用の臓器の劣化を防止し、移植用の臓器の保存可能時間を延長するための技術を提供することを課題とした。さらに、本発明は、虚血状態によってダメージを受けた移植用の臓器の蘇生技術を提供することも課題とした。
本発明者らは、肝臓特有の血管構造に着目し、門脈および肝動脈から灌流液を流入させ、肝上部下大静脈および肝下部下大静脈から灌流液を流出させる灌流方法(すなわち、2系統の血管から灌流液を流入させ、2系統の血管から灌流液を流出させる灌流方法)を用いることにより、肝臓移植手術中の肝臓の虚血状態を回避することができることを見出し、本発明を完成させるに到った。
すなわち本発明の第1発明は、ドナーから移植用の肝臓を摘出する際に用いるための、または、移植用の肝臓をレシピエントに移植する際に用いるための、移植用の肝臓の灌流装置であって、
前記装置は、下記(A)〜(D)を備え、
(A)下記のカニューレ(i)〜(iv):
(i)前記移植用の肝臓の門脈に接続される灌流液流入用カニューレ
(ii)前記移植用の肝臓の肝動脈に接続される灌流液流入用カニューレ
(iii)前記移植用の肝臓の肝上部下大静脈に接続される灌流液流出用カニューレ
(iv)前記移植用の肝臓の肝下部下大静脈に接続される灌流液流出用カニューレ
(B)灌流液を含む1または複数の灌流液容器、
(C)1または複数のポンプ、および、
(D)配管
ここで、前記(A)〜(D)は、前記移植用の肝臓を灌流する際に、前記1または複数のポンプの少なくともいずれかにより、前記1または複数の灌流液容器の少なくともいずれかに含まれる灌流液が、前記配管を介して、前記灌流液流入用カニューレ(i)および/または(ii)から前記移植用の肝臓へ流入し、前記移植用の肝臓内の灌流液が、前記灌流液流出用カニューレ(iii)および/または(iv)から流出するように構成されることを特徴とする、装置に関する。
また、本発明の第2発明は、第1発明の灌流装置であって、前記移植用の肝臓を灌流する際に、前記灌流液流入用カニューレ(i)および/または(ii)と、前記移植用の肝臓と、前記灌流液流出用カニューレ(iii)および/または(iv)と、前記灌流液容器との間で、前記配管を介した灌流回路が形成されることを特徴とする。
また、本発明の第3発明は、第1発明または第2発明の灌流装置であって、前記装置を、ドナーから移植用の肝臓を摘出する際に用いる場合には、以下のステップ(1)〜(4):(1)ドナーの肝動脈および門脈のいずれか一方を切開または切断して、切開部位または切断部位に第1の灌流液流入用カニューレを接続し、かつ、ドナーの肝上部下大静脈および肝下部下大静脈のいずれか一方を切開または切断して、切開部位または切断部位に第1の灌流液流出用カニューレを接続するステップ、(2)前記第1の灌流液流入用カニューレから灌流液を流入させ、かつ、前記第1の灌流液流出用カニューレから灌流液を流出させることによる、前記移植用の肝臓の灌流液による灌流を開始するステップ、(3)ステップ(1)で切開または切断を行わなかった肝動脈および門脈の他方を切開または切断して、切開部位または切断部位に第2の灌流液流入用カニューレを接続し、かつ、ステップ(1)で切開または切断を行わなかった肝上部下大静脈および肝下部下大静脈の他方を切開または切断して、切開部位または切断部位に第2の灌流液流出用カニューレを接続するステップ、および、(4)前記第1および第2の灌流液流入用カニューレから灌流液を流入させ、かつ、前記第1および第2の灌流液流出用カニューレから灌流液を流出させることによる、前記移植用の肝臓の灌流液による灌流を維持しながら、ドナーから肝臓を摘出するステップ、を含む用法で用いられることを特徴とする。
また、本発明の第4発明は、第1発明または第2発明の灌流装置であって、前記装置を、移植用の肝臓をレシピエントに移植する際に用いる場合には、以下のステップ(5)〜(7):(5)門脈に灌流液流入用カニューレ(i)が接続されており、肝動脈に灌流液流入用カニューレ(ii)が接続されており、肝上部下大静脈に灌流液流出用カニューレ(iii)が接続されており、肝下部下大静脈に灌流液流出用カニューレ(iv)が接続されており、前記灌流液流入用カニューレ(i)および(ii)から灌流液が流入され、かつ、前記灌流液流出用カニューレ(iii)および(iv)から灌流液が流出されている状態の、移植用の肝臓を準備するステップ、(6)前記移植用の肝臓の門脈および肝動脈のいずれか一方の灌流液流入用カニューレ、および、前記移植用の肝臓の肝上部下大静脈および肝下部下大静脈のいずれか一方の灌流液流出用カニューレを除去し、前記移植用の肝臓の灌流液による灌流を維持しながら、灌流液流入用カニューレが除去された前記血管と、レシピエント側の対応する血管とを吻合し、灌流液流出用カニューレが除去された前記血管と、レシピエント側の対応する血管とを吻合するステップ、および、(7)前記移植用の肝臓の門脈または肝動脈の他方から未除去の灌流液流入用カニューレを除去し、かつ、前記移植用の肝臓の肝上部下大静脈または肝下部下大静脈の他方から未除去の灌流液流出用カニューレを除去し、灌流液流入用カニューレが除去された前記血管と、レシピエント側の対応する血管とを吻合し、灌流液流出用カニューレが除去された前記血管と、レシピエント側の対応する血管とを吻合するステップ、を含む用法で用いられることを特徴とする。
また、本発明の第5発明は、第1発明ないし第4発明のいずれかの灌流装置であって、前記移植用の肝臓の少なくとも一部を液体に浸漬させることができる容器をさらに備えることを特徴とする。
また、本発明の第6発明は、第1発明ないし第5発明のいずれかの灌流装置であって、前記配管の少なくとも一部が伸縮性のある素材または構造を有することを特徴とする。
また、本発明の第7発明は、第6発明の灌流装置であって、前記伸縮性のある構造が、蛇腹構造であることを特徴とする。
また、本発明の第8発明は、第1発明ないし第7発明のいずれかの灌流装置であって、は、一実施形態において、前記配管において、灌流液の流量を測定するための流量計、および、灌流液の流圧を測定するための圧力計が設けられ、前記ポンプは動作制御機構を有し、前記移植用の肝臓を灌流する際に、前記流量計および/または前記圧力計の測定値に応じて前記ポンプの動作制御機構が作動することにより、灌流中の灌流液の流速および/または流圧が所定の範囲内に保たれることを特徴とする。
また、本発明の第9発明は、第1発明ないし第8発明のいずれかの灌流装置であって、は、一実施形態において、前記灌流液容器と、前記灌流液流入用カニューレ(i)または(ii)とを接続する前記配管において、灌流液中の気泡を除去するための脱気ユニットが設置されることを特徴とする。
また、本発明の第10発明は、第1発明ないし第9発明のいずれかの灌流装置であって、前記灌流液容器が、灌流液の温度を調節するための温度調節機構、および/または、灌流液中の溶存酸素、溶存二酸化炭素および/または溶存窒素の量を調節するためのガス交換機構を備えることを特徴とする。
また、本発明の第11発明は、第1発明ないし第10発明のいずれかの灌流装置であって、前記灌流液容器と、前記灌流液流入用カニューレ(i)または(ii)とを接続する前記配管において、灌流液の温度を調節するための温度調節ユニットが設置されることを特徴とする。
また、本発明の第12発明は、第10発明または第11発明の灌流装置であって、前記移植用の肝臓を灌流する際に、前記灌流液容器の温度調節機構、および/または、前記配管に設置された温度調節ユニットによって、前記移植用の肝臓に流入する灌流液の温度が20〜25℃の範囲に制御されることを特徴とする。
また、本発明の第13発明は、第1発明ないし第12発明のいずれかの灌流装置であって、前記移植用の肝臓を灌流する際に、前記灌流液が、酸素運搬体を含むことを特徴とする。
また、本発明の第14発明は、第13発明の灌流装置であって、前記酸素運搬体が赤血球であることを特徴とする、
装置。
また、本発明の第15発明は、ドナーから移植用の肝臓を摘出する方法であって、ドナーから移植用の肝臓を摘出する方法であって、(1)ドナーの肝動脈および門脈のいずれか一方を切開または切断して、切開部位または切断部位に第1の灌流液流入用カニューレを接続し、かつ、ドナーの肝上部下大静脈および肝下部下大静脈のいずれか一方を切開または切断して、切開部位または切断部位に第1の灌流液流出用カニューレを接続するステップ、(2)前記第1の灌流液流入用カニューレから灌流液を流入させ、かつ、前記第1の灌流液流出用カニューレから灌流液を流出させることによる、前記移植用の肝臓の灌流液による灌流を開始するステップ、(3)ステップ(1)で切開または切断を行わなかった肝動脈および門脈の他方を切開または切断して、切開部位または切断部位に第2の灌流液流入用カニューレを接続し、ステップ(1)で切開または切断を行わなかった肝上部下大静脈および肝下部下大静脈の他方を切開または切断して、切開部位または切断部位に第2の灌流液流出用カニューレを接続するステップ、および、(4)前記第1および第2の灌流液流入用カニューレから灌流液を流入させ、かつ、前記第1および第2の灌流液流出用カニューレから灌流液を流出させることによる、前記移植用の肝臓の灌流液による灌流を維持しながら、ドナーから肝臓を摘出するステップ、を含むことを特徴とする、方法に関する。
また、本発明の第16発明は、第15発明の方法であって、前記ステップ(1)〜(4)を、前記移植用肝臓が20〜25℃の範囲内におかれた状態で実施することを特徴とする。
また、本発明の第17発明は、第15発明または第16発明の方法であって、前記ステップ(1)〜(4)において用いられる灌流液が、酸素運搬体を含むことを特徴とする。
また、本発明の第18発明は、第17発明の方法であって前記酸素運搬体が赤血球であることを特徴とする。
また、本発明の第19発明は、移植用の肝臓をレシピエントに移植する方法であって、(5)門脈に第1の灌流液流入用カニューレが接続されており、肝動脈に第2の灌流液流入用カニューレが接続されており、肝上部下大静脈に第1の灌流液流出用カニューレが接続されており、肝下部下大静脈に第2の灌流液流出用カニューレが接続されており、前記第1および第2の灌流液流入用カニューレから灌流液が流入され、かつ、前記第1および第2の灌流液流出用カニューレから灌流液が流出されている状態の、移植用の肝臓を準備するステップ、および、(6)前記移植用の肝臓の門脈および肝動脈のいずれか一方の灌流液流入用カニューレ、および、前記移植用の肝臓の肝上部下大静脈および肝下部下大静脈のいずれか一方の灌流液流出用カニューレを除去し、前記移植用の肝臓の灌流液による灌流を維持しながら、灌流液流入用カニューレが除去された前記血管と、レシピエント側の対応する血管とを吻合し、灌流液流出用カニューレが除去された前記血管と、レシピエント側の対応する血管とを吻合するステップ、を含むことを特徴とする、方法に関する。
また、本発明の第20発明は、第19発明の方法であって、(7)前記移植用の肝臓の門脈および肝動脈の他方から未除去の灌流液流入用カニューレを除去し、前記移植用の肝臓の肝上部下大静脈および肝下部下大静脈の他方から未除去の灌流液流出用カニューレを除去し、灌流液流入用カニューレが除去された前記血管と、レシピエント側の対応する血管とを吻合し、灌流液流出用カニューレが除去された前記血管と、レシピエント側の対応する血管とを吻合するステップ、をさらに含むことを特徴とする。
また、本発明の第21発明は、第19発明の方法であって、(8)前記移植用の肝臓の門脈および肝動脈の他方から未除去の灌流液流入用カニューレを除去し、前記移植用の肝臓の肝上部下大静脈および肝下部下大静脈の他方から未除去の灌流液流出用カニューレを除去し、灌流液流入用カニューレが除去された前記血管を、結紮、または、レシピエント側の対応する血管とを吻合し、灌流液流出用カニューレが除去された前記血管を、結紮、または、レシピエント側の対応する血管とを吻合するステップ、をさらに含むことを特徴とする。
また、本発明の第22発明は、第19発明ないし第21発明のいずれかの方法であって、各ステップを、前記移植用肝臓が20〜25℃の範囲内におかれた状態で実施することを特徴とする。
また、本発明の第23発明は、第19発明ないし第22発明のいずれかの方法であって、各ステップにおいて用いられる灌流液が、酸素運搬体を含むことを特徴とする。
また、本発明の第24発明は、第23発明の方法であって、前記酸素運搬体が赤血球であることを特徴とする。
なお、上記に挙げた本発明の一または複数の特徴を任意に組み合わせた発明も、本発明の範囲に含まれる。
本願の第1発明ないし第14発明によれば、移植用の肝臓に対して2系統の灌流液流入経路と、2系統の灌流液流出経路を確保することができる。これにより、ドナーから移植用の肝臓9を摘出する際、または、移植用の肝臓をレシピエントに移植する際において、移植用の肝臓9が阻血状態におかれる時間を大幅に短縮することができる。すなわち、移植用の肝臓9に障害が生じるのを抑制できる。それにより、肝臓移植の成功率を向上させることができる。
また、2系統の灌流液流入経路および2系統の灌流液流出経路を用いて灌流を行う場合、1系統の灌流液流入経路および1系統の灌流液流出経路を用いて灌流を行う場合と比べて、生体内における血流状態に近い灌流液の流れを得ることができる。これにより、生体から摘出後、灌流保存中に、肝臓に障害が生じるのを抑制できる。さらに、灌流保存中に肝臓の機能が回復する可能性がある。
本願の第15発明ないし第18発明によれば、ステップ(1)において、ドナーの肝動脈および門脈の他方と、肝上部下大静脈および肝下部下大静脈の他方とにおいて、血流が継続している状態で、ドナーの肝動脈および門脈の一方と、肝上部下大静脈および肝下部下大静脈の一方とをカニューレと接続させる。これにより、ドナーの肝動脈および門脈の一方と、肝上部下大静脈および肝下部下大静脈の一方とをカニューレと接続させる作業中に、摘出する肝臓9が阻血状態となることを抑制できる。したがって、摘出する肝臓に障害が生じるのを抑制できる。
また、ステップ(3)において、ドナーの肝動脈および門脈の一方と、肝上部下大静脈および肝下部下大静脈の一方とを用いたシングルフロー灌流がなされている。このため、ステップ(3)において、ドナーの肝動脈および門脈の他方と、肝上部下大静脈および肝下部下大静脈の他方とをカニューレと接続させる作業中に、摘出する肝臓9が阻血状態となることを抑制できる。したがって、摘出する肝臓9に障害が生じるのをより抑制できる。
本願の第19発明ないし第24発明によれば、ステップ(6)において、ドナーの肝動脈および門脈の一方と、肝上部下大静脈および肝下部下大静脈の一方とを遮断し、先行してレシピエントの血管と吻合する。この2つの血管の吻合作業中においても、肝動脈および門脈の他方と、肝上部下大静脈および肝下部下大静脈の他方とを用いたシングルフロー灌流は継続される。これにより、移植手術中の移植用の肝臓9が阻血状態となることを抑制できる。このため、先行してレシピエントの血管と縫合する2つの血管の吻合に十分な時間を掛けることができる。
図1は、本発明の一実施形態である、移植用の肝臓の灌流装置の設計例を示した概略図である。 図2は、本発明の灌流装置を用いてドナーから移植用の肝臓を摘出する工程の流れを示したフローチャートである。 図3は、本発明の灌流装置を用いてレシピエントへ移植用の肝臓を移植する工程の流れを示したフローチャートである。 図4は、本発明の灌流装置を用いてレシピエントへ移植用の肝臓を移植する工程の異なる例の流れを示したフローチャートである。 図5は、ドナーから摘出された後、本発明の装置を用いて灌流されている状態の移植用の肝臓を示す図である。 図6は、図2に示した移植用の肝臓を、移植に供している途中の状態を示す図である。 図7は、本発明の装置および方法を用いて移植用の肝臓を摘出および灌流した場合の、温度制御による障害抑制効果について実験を行った結果を示す図である。 図8は、本発明の装置および方法を用いて移植用の肝臓を摘出および灌流した場合の、灌流液への赤血球の添加による障害抑制効果について実験を行った結果を示す図である。 図9は、本発明の装置および方法を用いて灌流を行った肝臓が生体内での十分な機能性を維持していることを確認するための実験の結果を示す図である。 図10は、本発明の装置および方法が、心停止ドナー(DCDドナー)から提供される肝臓にも利用可能であることを示すための実験の結果を示す図である。 図11は、本発明の装置および方法を用いて灌流を行った虚血肝臓を移植したレシピエントの生存率を示す図である。 図12は、2in1out灌流を用いてドナーから移植用の肝臓を摘出する工程の流れを示したフローチャートである。 図13は、2in1out灌流を用いてレシピエントへ移植用の肝臓を移植する工程の流れを示したフローチャートである。
以下に、本発明の灌流装置の設計例、灌流装置を用いた肝臓の摘出方法および移植方法、ならびに、肝臓移植実験の実施例について説明する。本願において「ドナー」および「レシピエント」は、ヒトであってもよいし、非ヒト動物であってもよい。また、非ヒト動物は、マウスおよびラットを含む齧歯類、ブタ、ヤギおよびヒツジを含む有蹄類、チンパンジーを含む非ヒト霊長類、その他の非ヒトほ乳動物であってもよいし、ほ乳動物以外の動物であってもよい。
<1.灌流装置の設計例>
本発明の一実施形態である、移植用の肝臓9の灌流装置1の設計例である図1を参照しながら、本発明に係る装置を説明する。
図1の例の灌流装置1は、移植用の肝臓9を収納するバイオリアクター領域10と、灌流液リザーバー20と、2つの灌流液流入経路30と、2つの灌流液流出経路40とを有する。
バイオリアクター領域10には、移植用の肝臓9の少なくとも一部を灌流液等の液体に浸漬させることができる容器が配置される。灌流液リザーバー20は、灌流液が貯留される灌流液容器である。また、灌流液リザーバー20は、温度調節機構21およびガス交換機構22を有する。
灌流液流入経路30はそれぞれ、配管31と、灌流液流入用カニューレ32と、配管32に介挿されたポンプ33、温度調整ユニット34、脱気ユニット35、圧力計36および流量計37とを含む。配管31は、灌流液リザーバー20と灌流液流入用カニューレ32とを繋ぐ。灌流液流入用カニューレ32は、移植用の肝臓9の血管に接続される。ポンプ33は、配管31内に灌流液リザーバー20から灌流液流入用カニューレ32へと向かう灌流液の流れを発生させる。
灌流液流出経路40はそれぞれ、配管41と、灌流液流出用カニューレ42と、配管41に介挿されたポンプ43、圧力計44および流量計45とを含む。配管41は、灌流液流出用カニューレ42と灌流液リザーバー20とを繋ぐ。灌流液流出用カニューレ42は、移植用の肝臓9の血管に接続される。ポンプ43は、配管41内に灌流液流出用カニューレ42から灌流液リザーバー20へと向かう灌流液の流れを発生させる。
図1の例において、移植用の肝臓9はバイオリアクター領域10に収納されている。移植用の肝臓9の門脈および肝動脈に、それぞれ、灌流液流入用カニューレ32が接続されている。また、肝臓9の肝上部下大静脈(SH−IVC)および肝下部下大静脈(IH−IVC)に、それぞれ、灌流液流出用カニューレ42が接続されている。
それぞれのカニューレ32,42はさらに配管31,41に接続されている。そして、ポンプ33の駆動により、灌流液リザーバー20(灌流液容器)中の灌流液が、配管31から灌流液流入用カニューレ32を通じて肝臓9へ流入する。一方、ポンプ43の駆動により、肝臓9内に流入した灌流液は、灌流液流出用カニューレ42から配管41へ流出し、灌流液リザーバー20へ戻る。
上記のように、この灌流装置1は、下記(A)〜(D)を備える。
(A)下記のカニューレ(i)〜(iv):
(i)移植用の肝臓9の門脈に接続される灌流液流入用カニューレ32
(ii)移植用の肝臓9の肝動脈に接続される灌流液流入用カニューレ32
(iii)移植用の肝臓9の肝上部下大静脈に接続される灌流液流出用カニューレ42
(iv)移植用の肝臓9の肝下部下大静脈に接続される灌流液流出用カニューレ42
(B)灌流液を含む1または複数の灌流液リザーバー20(灌流液容器)
(C)1または複数のポンプ33,43
および、
(D)配管31,41
そして、移植用の肝臓9を灌流する際に、ポンプ33,43の少なくともいずれかにより、灌流液リザーバー20の少なくともいずれかに含まれる灌流液が、配管31,41を介して、2つの灌流液流入用カニューレ32の一方または両方から移植用の肝臓9へ流入し、移植用の肝臓9内の灌流液が、灌流液流出用カニューレ42の一方または両方から流出するように構成される。
図1においては、灌流液流入用カニューレ32と、移植用の肝臓9と、灌流液流出用カニューレ42と、単一の灌流液リザーバー20との間で、配管31,41を介した灌流回路が形成される例が示されている。つまり、図1の例では、移植用の肝臓9を灌流する際には、灌流液流入用カニューレ(i)および/または(ii)と、移植用の肝臓と、灌流液流出用カニューレ(iii)および/または(iv)と、灌流液リザーバーとの間で、配管を介した灌流回路が形成されている。
しかし、本発明の装置は灌流回路を形成せずともよい。例えば、肝臓9を通過した灌流液が、廃棄される構成、または、肝臓9を通過する前の灌流液が保存されていた灌流液リザーバーとは異なる灌流液リザーバーへと流れ込む構成としてもよい。
上述のように、本発明の灌流装置では、移植用の肝臓9に対して2系統の灌流液流入経路30と、2系統の灌流液流出経路40を確保することを特徴とする。灌流装置をこのように構成することにより、ドナーから移植用の肝臓9を摘出する際、または、移植用の肝臓9をレシピエントに移植する際において、移植用の肝臓9が阻血状態におかれる時間を大幅に短縮することができる。すなわち、移植用の肝臓9に障害が生じるのを抑制できる。それにより、肝臓9移植の成功率を向上させることができる。
また、2系統の灌流液流入経路30および2系統の灌流液流出経路40を用いて灌流を行う場合、1系統の灌流液流入経路および1系統の灌流液流出経路を用いて灌流を行う場合と比べて、生体内における血流状態に近い灌流液の流れを得ることができる。これにより、生体から摘出後、灌流保存中に、肝臓9に障害が生じるのを抑制できる。さらに、灌流保存中に肝臓9の機能が回復する可能性がある。
<2.灌流装置を用いた肝臓移植>
次に、本発明の灌流装置1を用いた肝臓移植の流れについて、以下に説明する。
<2−1.灌流装置を用いたドナー肝臓摘出の流れ>
まず、本発明の灌流装置1を用いたドナー肝臓の摘出の流れについて、図2を参照しつつ説明する。図2は、本発明の灌流装置1を用いてドナーから移植用の肝臓9を摘出する工程の流れを示したフローチャートである。本発明の灌流装置1を用いて、ドナーから移植用の肝臓9を摘出する場合には、例えば、以下のステップ(1)〜(4)のように実施することができる。
ステップ(1)では、まず、ドナーの肝動脈および門脈のいずれか一方を切開または切断する(ステップ(11))。そして、切開部位および切断部位に第1の灌流液流入用カニューレ32を接続する(ステップ(12))。次に、ドナーの肝上部下大静脈および肝下部下大静脈のいずれか一方を切開または切断する(ステップ(13))。そして、切開部位または切断部位に第1の灌流液流出用カニューレ42を接続する(ステップ(14))。
次に、ステップ(2)では、第1の灌流液流入用カニューレ32から灌流液を流入させ、かつ、第1の灌流液流出用カニューレ42から灌流液を流出させる。これにより、移植用の肝臓9の灌流液による灌流を開始する。これにより、1系統の灌流液流入経路30と、1系統の灌流液流出経路40とを用いたシングルフロー灌流が開始される。
続いて、ステップ(3)では、まず、ステップ(1)で切開または切断を行わなかった肝動脈および門脈の他方を切開または切断する(ステップ(31))。そして、切開部位または切断部位に第2の灌流液流入用カニューレ32を接続する(ステップ(32))。続いて、ステップ(1)で切開または切断を行わなかった肝上部下大静脈および肝下部下大静脈の他方を切開または切断する(ステップ(33))。そして、切開部位または切断部位に第2の灌流液流出用カニューレ42を接続する(ステップ(34))。
その後、ステップ(4)では、第1および第2の灌流液流入用カニューレ32から灌流液を流入させ、かつ、第1および第2の灌流液流出用カニューレ42から灌流液を流出させる。すなわち、デュアルフロー灌流が開始される(ステップ(41))。その後、移植用の肝臓9の灌流液による灌流を維持しながら、ドナーから肝臓9を摘出する(ステップ(42))。
上記ステップ(1)において切開または切断する血管の組み合わせ(すなわち、先行して切開または切断される血管の組み合わせ)は限定されず、それぞれの血管の血流量や臓器の状態等を考慮して、当業者が適宜選択することができる。例えば、肝動脈と肝上部下大静脈の組み合わせ、肝動脈と肝下部下大静脈の組み合わせ、門脈と肝上部下大静脈の組み合わせ、および、門脈と肝下部下大静脈の組み合わせのうち、いずれの組み合わせであってよい。
また、それぞれの組み合わせにおいて、切開または切断する血管の順番は限定されず、それぞれの血管の血流量や臓器の状態等を考慮して、当業者が適宜選択することができる。ステップ(1)において、ステップ(12)は少なくともステップ(11)の後であればよいし、ステップ(14)は少なくともステップ(13)の後であればよい。また、ステップ(3)において、ステップ(32)は少なくともステップ(31)の後であればよいし、ステップ(34)は少なくともステップ(33)の後であればよい。
上記のステップ(1)〜(4)において、ドナーからの移植用の肝臓9の摘出手順において通常実施される処置(例えば、結合組織の除去、血管の剥離、血管切断のための血管の一時的な結紮またはクランプ、胆管の遮断および切断、移植用の肝臓9への血液凝固剤の適用、手術部位の止血処置、等)は、当業者が必要に応じて適宜行うことができる。
上記のステップ(1)において、ドナーの肝動脈および門脈の他方と、肝上部下大静脈および肝下部下大静脈の他方とにおいて、血流が継続している状態で、ドナーの肝動脈および門脈の一方と、肝上部下大静脈および肝下部下大静脈の一方とをカニューレと接続させる。これにより、ドナーの肝動脈および門脈の一方と、肝上部下大静脈および肝下部下大静脈の一方とをカニューレと接続させる作業中に、摘出する肝臓9が阻血状態となることを抑制できる。したがって、摘出する肝臓9に障害が生じるのを抑制できる。
また、上記のステップ(3)において、ドナーの肝動脈および門脈の一方と、肝上部下大静脈および肝下部下大静脈の一方とを用いたシングルフロー灌流がなされている。このため、ステップ(3)において、ドナーの肝動脈および門脈の他方と、肝上部下大静脈および肝下部下大静脈の他方とをカニューレと接続させる作業中に、摘出する肝臓9が阻血状態となることを抑制できる。したがって、摘出する肝臓9に障害が生じるのをより抑制できる。
なお、上記のステップ(1)〜(4)を、ドナーの肝臓9ができる限り20〜25℃の範囲内におかれた状態で実施することが好ましい。このため、上記のステップ(2)〜(4)では、肝臓9を灌流する際に、灌流液リザーバー20の温度調節機構21および/または配管31に設置された温度調整ユニット34によって、肝臓9に流入する灌流液の温度が20〜25℃の範囲に制御することが好ましい。
また、上記のステップ(1)〜(4)において用いられる灌流液が、酸素運搬体を含むことが好ましい。酸素運搬体には、例えば、赤血球や人工赤血球が用いられる。
<2−2.灌流装置を用いた肝臓のレシピエントへの移植の流れ>
続いて、本発明の灌流装置1を用いたドナー肝臓のレシピエントへの移植の流れについて、図3を参照しつつ説明する。図3は、本発明の灌流装置1を用いてレシピエントへ移植用の肝臓9を移植する工程の流れを示したフローチャートである。本発明の灌流装置1を用いて、移植用の肝臓9をレシピエントに移植する際に用いる場合には、例えば、以下のステップ(5)〜(7)のように実施することができる。
なお、以下では、肝臓9の門脈に接続される灌流液流入用カニューレ32を灌流液流入用カニューレ32(i)、肝臓9の肝動脈に接続される灌流液流入用カニューレ32を灌流液流入用カニューレ32(ii)、肝臓9の肝上部下大静脈に接続される灌流液流出用カニューレ42を灌流液流出用カニューレ42(iii)、肝臓9の肝下部下大静脈に接続される灌流液流出用カニューレ42を灌流液流出用カニューレ42(iv)と称する。
まず、ステップ(5)では、門脈に灌流液流入用カニューレ32(i)が接続されており、肝動脈に灌流液流入用カニューレ32(ii)が接続されており、肝上部下大静脈に灌流液流出用カニューレ42(iii)が接続されており、肝下部下大静脈に灌流液流出用カニューレ42(iv)が接続されており、灌流液流入用カニューレ32(i)および(ii)から灌流液が流入され、灌流液流出用カニューレ42(iii)および(iv)から灌流液が流出されている状態の、移植用の肝臓9を準備する。すなわち、全体灌流がなされている肝臓9を準備する。
次に、ステップ(6)では、移植用の肝臓9の門脈および肝動脈のいずれか一方の灌流液流入用カニューレ32を除去する(ステップ(61))。また、移植用肝臓9の肝上部下大静脈および肝下部下大静脈のいずれか一方の灌流液流出用カニューレ42を除去する(ステップ(62))。そして、移植用の肝臓9の灌流液による灌流を維持しながら、灌流液流入用カニューレ32が除去された血管と、レシピエント側の対応する血管とを吻合する(ステップ(63))する。また、灌流液流出用カニューレ42が除去された血管と、レシピエント側の対応する血管とを吻合する(ステップ(64))。このように、ステップ(6)の工程中において、未除去の灌流液流入用カニューレ32と、未除去の灌流液流出用カニューレ42とを用いて、シングルフロー灌流が行われている。これにより、ステップ(6)において移植用の肝臓9が虚血状態とならない。
続いて、ステップ(7)では、移植用の肝臓9の門脈および肝動脈の他方から未除去の灌流液流入用カニューレ32を除去する(ステップ(71))。また、移植用肝臓9の肝上部下大静脈および肝下部下大静脈の他方から未除去の灌流液流出用カニューレ42を除去する(ステップ(72))。そして、灌流液流入用カニューレ32が除去された血管と、レシピエント側の対応する血管とを吻合する(ステップ(73))。また、灌流液流出用カニューレ42が除去された血管と、レシピエント側の対応する血管とを吻合する(ステップ(74))。
上記ステップ(6)において、吻合に用いるドナー肝臓9の血管の組み合わせ(すなわち、先行して吻合される血管の組み合わせ)は限定されず、それぞれの血管の血流量や臓器の状態等を考慮して、当業者が適宜選択することができる。例えば、肝動脈と肝上部下大静脈の組み合わせ、肝動脈と肝下部下大静脈の組み合わせ、門脈と肝上部下大静脈の組み合わせ、および、門脈と肝下部下大静脈の組み合わせのうち、いずれの組み合わせであってよい。また、それぞれの組み合わせにおいて、吻合する血管の順番は限定されず、それぞれの血管の血流量や臓器の状態等を考慮して、当業者が適宜選択することができる。
このため、ステップ(1)〜(4)における「一方」「他方」の定義と、ステップ(5)〜(7)における「一方」「他方」の定義とは、同じでもよいし、異なっていてもよい。すなわち、ステップ(6)においてカニューレ32,42が除去される血管は、ステップ(1)においてカニューレ32,42が接続される血管であってもよいし、ステップ(2)においてカニューレ32,42が接続される血管であってもよい。
また、上記ステップ(6)において、ドナー肝臓9の血管と吻合するレシピエント血管は、吻合に用いるドナー血管と同じ種類の血管であってもよく、異なる血管であってもよい。例えば、肝臓9の同所性移植を行う場合には、ドナー肝臓9の血管と吻合するレシピエント血管は、吻合に用いるドナー肝臓9の血管と同じ種類の血管であってよい。また、例えば、肝臓9の異所性移植を行う場合には、ドナー肝臓9の血管と吻合するレシピエント血管は、吻合に用いるドナー肝臓9の血管と異なる種類の血管であってよい。肝臓9の異所性移植を行う場合に用いるレシピエント血管の種類は、当業者が技術常識に基づいて適宜選択することができる。
上記のステップ(5)〜(7)において、移植用の肝臓9をレシピエントに移植する手順において通常実施される処置(例えば、結合組織の除去、血管の剥離、血管の切断および吻合のための血管の一時的な結紮またはクランプ、血管の吻合、胆管の吻合、手術部位の止血処置、等)は、当業者が必要に応じて適宜行うことができる。
上記のステップ(6)において、ドナーの肝動脈および門脈の一方と、肝上部下大静脈および肝下部下大静脈の一方とを遮断し、先行してレシピエントの血管と吻合する。この2つの血管の吻合作業中においても、肝動脈および門脈の他方と、肝上部下大静脈および肝下部下大静脈の他方とを用いたシングルフロー灌流は継続される。これにより、移植手術中の移植用の肝臓9が阻血状態となることを抑制できる。このため、先行してレシピエントの血管と縫合する2つの血管の吻合に十分な時間を掛けることができる。
なお、上記のステップ(5)〜(7)を、移植用の肝臓9ができる限り20〜25℃の範囲内におかれた状態で実施することが好ましい。このため、上記のステップ(5)〜(6)では、肝臓9を灌流する際に、灌流液リザーバー20の温度調節機構21および/または配管31に設置された温度調整ユニット34によって、肝臓9に流入する灌流液の温度が20〜25℃の範囲に制御することが好ましい。
また、上記のステップ(5)〜(7)において用いられる灌流液が、酸素運搬体を含むことが好ましい。酸素運搬体には、例えば、赤血球や人工赤血球が用いられる。
なお、上記のステップ(7)において、カニューレ32,42が挿入されていた4つの血管の全てが、レシピエント側の血管と吻合されている。しかしながら、本発明はこれに限られない。4つの血管のうちの1つまたは2つが、レシピエント側の血管と吻合されず、結紮されてもよい。図4は、本発明の灌流装置1を用いてレシピエントへ移植用の肝臓9を移植する工程の異なる例の流れを示したフローチャートである。
まず、ステップ(5A)では、上記のステップ(5)と同様に、全体灌流がなされている肝臓9を準備する。すなわち、門脈に灌流液流入用カニューレ32(i)が接続されており、肝動脈に灌流液流入用カニューレ32(ii)が接続されており、肝上部下大静脈に灌流液流出用カニューレ42(iii)が接続されており、肝下部下大静脈に灌流液流出用カニューレ42(iv)が接続されており、灌流液流入用カニューレ32(i)および(ii)から灌流液が流入され、灌流液流出用カニューレ42(iii)および(iv)から灌流液が流出されている状態の、移植用の肝臓9を準備する。
次に、ステップ(6A)では、移植用肝臓9の肝動脈から灌流液流入用カニューレ32を除去する(ステップ(61A))。また、移植用肝臓9の肝下部下大静脈から灌流液流出用カニューレ42を除去する(ステップ(62A))。そして、移植用の肝臓9の灌流液による灌流を維持しながら、灌流液流入用カニューレ32が除去された肝動脈と、レシピエント側の対応する血管とを吻合する(ステップ(63A))。また、灌流液流出用カニューレ42が除去された肝下部下大静脈と、レシピエント側の対応する血管とを吻合する(ステップ(64A))。このように、ステップ(6A)の工程中において、未除去の灌流液流入用カニューレ32と、未除去の灌流液流出用カニューレ42とを用いて、シングルフロー灌流が行われている。これにより、ステップ(6A)において移植用の肝臓9が虚血状態とならない。
続いて、ステップ(8A)では、移植用の肝臓9の門脈から灌流液流入用カニューレ32を除去する(ステップ(81A))。また、移植用肝臓9の肝上部下大静脈から灌流液流出用カニューレ42を除去する(ステップ(82A))。そして、灌流液流入用カニューレ32が除去された門脈と、レシピエント側の対応する血管とを吻合する(ステップ(83A))。また、灌流液流出用カニューレ42が除去された肝上部下大静脈を、結紮する(ステップ(84A))。
このように、カニューレ32,42が挿入されていた4つの血管のうちの一部が、レシピエント側の血管と吻合されず、結紮されてもよい。特に、レシピエント側の臓器の一部または全部を温存した異所性移植の場合には、このような方法を用いる場合がある。
図5は、ドナーから摘出された後、本発明の灌流装置1を用いて灌流されている状態の移植用の肝臓9を例示する。肝動脈91および門脈92は、灌流液流入用カニューレ32を介して蛇腹構造の配管31に接続されており、肝上部下大静脈93および肝下部下大静脈94は灌流液流出用カニューレ42を介して蛇腹構造の配管41に接続されている。そして、肝動脈91および門脈92から灌流液が肝臓9へ流入し、肝上部下大静脈93および肝下部下大静脈94から灌流液が流出している。
図5の例では、配管31,41の少なくとも一部が蛇腹構造であることにより、当該部分が伸縮性を有する。このように、配管31,41の少なくとも一部が伸縮性のある素材または構造を有することが好ましい。これにより、移植用の肝臓9の摘出手術や移植手術を行う際に、肝臓9の位置や姿勢を自由に変更させやすい。
図6は、図5に例示した移植用の肝臓9を、移植に供している途中の状態を例示する。図6の例示においては、まず、移植用の肝臓9の肝動脈91および肝上部下大静脈93を遮断し、先行してレシピエントの血管との吻合に供している。肝動脈91および肝上部下大静脈93の2つの血管の吻合作業中においても、移植用の肝臓9の門脈92および肝下部下大静脈94を用いた肝臓9の灌流は継続される。これにより、移植手術中の移植用の肝臓9の阻血状態を回避することができる。このため、肝動脈91および肝上部下大静脈93の2つの血管の吻合に十分な時間をかけることができる。
<3.灌流装置の設計バリエーション>
本発明の灌流装置1は、移植用の肝臓9の少なくとも一部を液体に浸漬させることができる容器(すなわち、バイオリアクター用の容器)を備えてもよい。移植用の肝臓9を液体に浸漬させることにより、移植用の肝臓9の乾燥を防ぐとともに、浸漬させる液体の温度を制御することにより、移植用の肝臓を最適な温度に維持することができる。移植用の肝臓を浸漬させる液体は、例えば灌流液と同様の組成の液体であってよく、生理食塩水であってもよい。また、本願明細書において、肝臓9を浸漬させるための「液体」には、液状のもの、ゲル状またはゾル状のもの、寒天状のもの、等も含む。
本発明において用いられるカニューレ32,42の形状、構造、サイズ、素材は限定されず、血管の種類に応じて当業者が適宜選択することができる。
本発明の灌流装置1に使用される配管31,41は、少なくとも一部が伸縮性のある素材または構造を有するものであることが好ましい。配管31,41を伸縮性のある素材または構造とすることにより、ドナーの生体から摘出した移植用の肝臓9の灌流状態を維持しながらスムーズにバイオリアクター領域10へ移動させることができる。また同様に、肝臓9の灌流状態を維持しながら、移植用の肝臓9をバイオリアクター領域10からレシピエントの生体(あるいは移植準備用の作業台)へスムーズに移動させることができる。本発明の配管31,41に使用することができる伸縮性のある素材の例としては、シリコン、ウレタン、エラストマー、フッ素樹脂等を挙げることができる。また、本発明の配管31,41に使用することができる伸縮性のある構造の例としては、蛇腹構造、巻取り構造等を挙げることができる。
本発明の灌流装置1に用いられるポンプ33,43は、その駆動により配管31,41中の灌流液を移動させ得るものであれば、その構造は限定されず、当業者が技術常識に基づいて公知の構造のポンプを適宜使用することができる。本発明の灌流装置1に用いられるポンプは、灌流液流入用カニューレ32に接続される配管31のみに設置されてもよく、灌流液流出用カニューレ42に接続される配管41のみに設置されてもよく、また、配管31および配管41の両方に設置されてもよい。
本発明の灌流装置1に用いられるポンプ33,43は、配管31,41中の灌流液の流量および/または流圧の変化に応じて、自動的に駆動が制御されるように構成されてよい。例えば、図1に例示されるように、装置の配管31,41において灌流液の流量を測定するための流量計37,45、および、灌流液の流圧を測定するための圧力計36,44が設けられていてよい。そして、ポンプ33,43は動作制御機構を有し、流量計37,45および/または圧力計36,44の測定値に応じてポンプ33,43の動作制御機構が作動することにより、灌流中の灌流液の流速および/または流圧が所定の範囲内に保たれるように構成してよい。
また、移植用の肝臓9のそれぞれの血管に流入する、あるいはそれぞれの血管から流出する灌流液の流速および/または流圧は、それぞれ異なる適切な値の範囲内(例えば、生体においてそれらの血管を流れる血液の流速および/または流圧の上限値と下限値の間)に保たれるように設定されることが好ましい。このように、配管を流れる灌流液の流速および/または流圧を自動制御することにより、肝臓9の摘出作業中または肝臓9の移植作業中において、灌流液の流速および/または流圧が急激に変化することを防ぎ、移植用の肝臓9への傷害を回避することができる。
本発明の灌流装置1においては、図1に例示されるように、灌流液リザーバー20(灌流液容器)と灌流液流入用カニューレ32とを接続する配管31において、灌流液中の気泡を除去するための脱気ユニット35が設置されてよい。移植用の肝臓9へ流入する灌流液から気泡を除去することにより、気泡による移植用の肝臓9内の血管の栓塞を防ぐことができる。
本発明の灌流装置1においては、図1に例示されるように、灌流液リザーバー20(灌流液容器)が、灌流液の温度を調節するための温度調節機構21、および/または、灌流液中の溶存酸素、溶存二酸化炭素および/または溶存窒素の量を調節するためのガス交換機構22を備えていてよい。これにより、移植用の肝臓9へ流入する灌流液の状態を最適に保つことができる。
本発明の灌流装置1においては、図1に例示されるように、灌流液リザーバー20(灌流液容器)と、灌流液流入用カニューレ32とを接続する配管31において、灌流液の温度を調節するための温度調節ユニット34が設置されていてよい。これにより、移植用の肝臓9へ流入する灌流液の状態をより最適に保つことができる。
本願の実施例において示されるとおり、移植用の肝臓9は20〜25℃の状態で保存されることが好ましい。したがって、本発明の灌流装置においては、上記の灌流液リザーバー20(灌流液容器)の温度調節機構21、および/または、配管に設置された温度調節ユニット34によって、移植用の肝臓9に流入する灌流液の温度が20〜25℃の範囲に制御されることが好ましい。また、移植用の肝臓9を浸漬させる液体(すなわち、バイオリアクター領域10用の容器の中の液体)の温度を制御することによって、移植用の肝臓9の温度を20〜25℃に保つこともできる。
本発明の灌流装置において用いられる灌流液は、通常移植用の肝臓の灌流に用いられる灌流液であればその組成は限定されず、市販の灌流液(例えばL−15培地等)を用いることができる。本発明の灌流装置において用いられる灌流液は、酸素運搬体が添加されたものであることが好ましい。灌流液中に酸素運搬体を含むことにより、移植用の肝臓の障害を抑えることができ、肝臓移植の成功率を向上させることができる。本発明に用いることができる酸素運搬体の例としては、赤血球または人工赤血球を挙げることができる。本発明の灌流液に添加する赤血球は、ドナーまたはレシピエントに輸血可能な血液型の赤血球であることが好ましく、ドナーまたはレシピエント由来の赤血球であることがさらに好ましい。また、本発明の灌流液に添加する人工赤血球は、酸素を運搬する機能を有する分子であればよく、例えばパーフルオロカーボン、ヘモグロビン小胞体等を例示することができる。
本発明において、灌流液中の酸素運搬体の濃度は、使用する酸素運搬体の種類に応じて、当業者は適宜設定することができる。例えば、「赤血球」を酸素運搬体として用いる場合には、灌流液中の赤血球濃度は、灌流液1L(リットル)あたり0.5×10^11cells〜50.0×10^11cellsであることが好ましく、灌流液1Lあたり1.0×10^11cells〜50.0×10^11cellsであることがさらに好ましく、灌流液1Lあたり2.0×10^11cells〜50.0×10^11cellsであることが最も好ましい。灌流液中の赤血球濃度が、灌流液1Lあたり0.5×10^11cells未満であると臓器の酸素供給量が足りず、臓器内の細胞の壊死が起こり、灌流液1Lあたり50.0×10^11cellsを越えると灌流時に赤血球の梗塞により臓器障害が起こりうる。
本発明において、「移植用の肝臓9」は、ドナーから摘出された肝臓9に限定されない。移植用の肝臓9は、例えば、iPS細胞等の幹細胞から誘導された人工肝臓であってもよい。
本明細書において用いられる用語は、特に定義されたものを除き、特定の実施態様を説明するために用いられるのであり、発明を限定する意図ではない。
また、本明細書において用いられる「含む」との用語は、文脈上明らかに異なる理解をすべき場合を除き、記述された事項(部材、ステップ、要素、数字など)が存在することを意図するものであり、それ以外の事項(部材、ステップ、要素、数字など)が存在することを排除しない。
異なる定義が無い限り、ここに用いられるすべての用語(技術用語及び科学用語を含む。)は、本発明が属する技術の当業者によって広く理解されるのと同じ意味を有する。ここに用いられる用語は、異なる定義が明示されていない限り、本明細書及び関連技術分野における意味と整合的な意味を有するものとして解釈されるべきであり、理想化され、又は、過度に形式的な意味において解釈されるべきではない。
<4.実験の実施例>
以下において、本発明を、実験の実施例を参照してより詳細に説明する。しかしながら、本発明はいろいろな態様により具現化することができ、ここに記載される実施例に限定されるものとして解釈されてはならない。
以下の実施例1〜実施例5では、本発明の装置および方法を用いてラット肝臓の他家異所性移植を行った例を示す。また、以下の実施例6では、本発明の装置および方法を用いてブタ肝臓の他家異所性移植を行った例を示す。なお、これらの実施例では、移植用の肝臓をレシピエントへ移植する際に本発明の装置および方法を用いた例を示しているが、ドナー動物からの移植用の肝臓の摘出の際にも本発明の装置を適用可能であることは本願明細書の開示からも明らかである。
<4−1.実施例1:本発明を用いたラット肝臓の他家異所性移植>
以下の実験は、摘出したラット肝臓を、本発明の方法を用いて別個体へ異所的に移植し、生体における肝機能を評価することを目的としている。実施例1では、本発明を用いたラット肝臓の他家異所性移植の詳細な手順について説明する。
材料として、以下の動物を用いる。
ドナー動物:系統wister 性別♂
レシピエント動物:系統wister 性別♂
以下に、ドナー肝の摘出、移植用肝臓の準備、および移植用肝臓のレシピエントへの移植の各工程を、詳述する。
≪A.ドナー肝の摘出≫
以下の手順により、ドナー動物から移植用の肝臓を摘出した。(1)あらかじめ生食(生理食塩水)を氷上で冷やしておく。(2)吸入麻酔器を用いてドナーラットに麻酔をかける(Isoflurane 3% 400ml/min)。(3)ドナーラットの腹部の毛を剃り、開腹する。(4)正中線の結合膜を切断し、左横隔膜静脈を結紮する。(5)肝下部下大静脈、右腎静脈を単離する。(6)総肝動脈から大動脈にかけて剥離し、大動脈にループをかける。(7)陰茎静脈よりヘパリン40unit注射したのち、腹部大動脈にカニュレーションを行う。(8)胸部大動脈を鉗子で遮断し、胸部大静脈を半切した後に冷生食でフラッシュする。(9)肝下部下大静脈を左腎静脈より下で切開し、肝右側背部結合組織を切断する。(10)右副腎静脈を結紮し、切離し右腎静脈直上で大静脈を切断する。(11)固有肝動脈以外の分岐2か所大動脈の分岐1か所を結紮し大動脈のループを結紮する。(12)胆管にステント挿入し、胴体側から切離する。(13)幽門静脈、脾静脈の順に結紮し、切離し脾静脈直下で門脈を切断する。(14)胃、食道周辺の結合膜を切断し、肝臓を単離後、肝−食道間血管叢を結紮切離する。(15)周囲組織より横隔膜ごと胸腔側の肝上部下大静脈を単離する。(16)大動脈を切離し、肝臓を単離後、冷生食中で保存する。
≪B.移植用肝臓の準備≫
以下の手順により、摘出した移植用の肝臓をレシピエントへ移植するための準備を行った。(1)移植用肝臓の灌流用の灌流液(L−15+RBC:500ml)を準備する。 (2)移植用肝臓の門脈に挿入された門脈カニューレに移植灌流用チューブ(門脈用)を接続する。 (3)横隔膜を肝上部下大静脈(SHIVC)の周囲で切離する。 (4)肝下部下大静脈(IHIVC)を結紮部位近傍で切離し、灌流液のOutカニューレ(肝上部下大静脈用カニューレおよび肝下部下大静脈用カニューレ)を挿入し、結紮固定する。(5)肝動脈に、肝動脈用カニューレを介して移植灌流用チューブ(動脈用)を接続し、結紮固定する。(6)門脈に挿入したカニューレおよび肝動脈に挿入したカニューレから灌流液を流入させ、肝上部下大静脈に挿入したカニューレおよび肝下部下大静脈に挿入したカニューレから灌流液を流出させることにより、灌流を行う。なお、灌流は1つ以上のカニューレを移植用肝臓へ挿入した段階から開始してもよく、全てのカニューレを挿入してから開始してもよい。また、各カニューレの挿入および灌流は、ドナーからの肝臓摘出工程と並行して行われてもよい。
≪C.本発明の方法で灌流を行っている移植用肝臓の、レシピエントへの移植≫
以下の手順により、灌流を行っている移植用の肝臓をレシピエントへ移植した。(1)吸入麻酔器を用いてレシピエントラットに麻酔をかける(Isoflurane 3% 200ml/min)。(2)Isoflurane 2%に設定し、レシピエントラットの腹部の毛を剃る。(3)レシピエントラットの皮膚、腹膜を切開、開腹する。(4)右腎周囲を露出させ視野を確保する。
(5)肝下部下大静脈を肝臓から右腎静脈直下まで剥離する。(6)右腎動脈を露出させ、右腎静脈から剥離した後、クリッピング、切断をし、カフを装着する。(7)肝下部下大静脈をハーフクランプし右腎静脈を切断、右腎の摘出を行う。(8)右わき腹に肝臓設置用のガーゼを置く。(9)門脈カニューレ、Outカニューレ(肝上部下大静脈用カニューレおよび肝下部下大静脈用カニューレ)がねじれないようにドナー肝を設置する(デュアルフロー移植開始)。(10)レシピエントの右腎静脈およびドナーの肝下部下大静脈の端端吻合を行う。(11)レシピエントの右腎動脈とドナーの肝動脈をカフ法により吻合する。(12)ドナー肝からOutカニューレ(肝上部下大静脈用カニューレ)を抜き取り、肝上部下大静脈(SHIVC)結紮と同時にドナー肝門脈をクランプする。(13)肝動脈のクランプを外して、肝動脈から肝下部下大静脈の経路で血液灌流を行う。(14)移植灌流用門脈チューブを切離し、レシピエント門脈をクランプする。(15)レシピエントおよびドナーの門脈の端側吻合を行う。(16)門脈のクランプを解除し血液再灌流を行う(デュアルフロー移植終了)。(17)輸液2mlを陰茎静脈から実施する。(18)胆管ステントを空腸に挿入し縫合する。(19)腸を腹腔内に戻し温生食で洗浄する。(20)腹膜、皮膚を縫合し閉腹する。回復まで保温静置する。
<4−2.実施例2:移植用肝臓の低体温灌流、赤血球添加の効果>
本発明の装置および方法を用いて移植用の肝臓を摘出および灌流する場合の、温度制御による障害抑制効果、および、灌流液への赤血球の添加による障害抑制効果について実験を行った。
≪実験方法と結果≫
ペントバルビタールにより麻酔をかけた150‐200gのWisterラットの門脈、肝上部下大静脈にカニュレーションを行い、本発明の方法を用いて肝臓を灌流しながら摘出した。培養容器に肝臓を設置し培養液中に浮遊させた状態で灌流を継続した。4時間おきに培養液のサンプリングを行い遠心分離により上清を回収後、解析用サンプルとして4℃下に保存した。培養終了後回収した解析用サンプルをWakoトランスアミナーゼCIIテストワコーを用いて555nmの吸光度を測定した。
実験結果を図7および図8に示した。図7は、温度制御による障害抑制効果について実験を行った結果を示す図である。具体的には、図7は、灌流培養時の温度を37℃、33℃、22℃、10℃および4℃とした場合の、培養時間と肝障害マーカー(ALT活性値)との関係を示したグラフである。なお、このとき、赤血球を5x10^11cells/Lの濃度で灌流液に添加している。図7に示されるとおり、37、33℃の温度下において灌流培養した肝臓は培養の比較的早期に肝障害マーカーの上昇が確認された。一方、22℃以下の温度帯により培養した肝臓は肝障害マーカーの上昇がほとんど認められなかった。
図8は、灌流液への赤血球の添加による障害抑制効果について実験を行った結果を示す図である。具体的には、図8は、赤血球を5x10^11cells/Lの濃度で灌流液に添加した場合と、赤血球を灌流液に添加しなかった場合とについて、培養時間と肝障害マーカー(ALT活性値)との関係を示したグラフである。なお、このとき、灌流培養時の温度を22℃としている。図8に示されるとおり、同じ22℃で灌流培養を行った場合であっても、赤血球非添加の場合には、肝障害マーカーの上昇が確認された。一方、赤血球添加の場合には、肝障害マーカーの上昇がほとんど認められなかった。このように、赤血球を5x10^11cells/Lの濃度で添加することによって肝障害マーカーの上昇を抑制可能なことが明らかとなった。
<4−3.実施例3:低体温灌流臓器保存による移植後生存率>
≪実験方法と結果≫
本発明の装置および方法を用いて灌流を行った肝臓が生体内での十分な機能性を維持していることを確認するために、22℃の温度条件下において赤血球濃度を5.0x10^11cells/Lに設定した灌流液を用いて灌流を行った移植用の肝臓を、レシピエントの生体に異所的に移植した。controlとして、UW液を用いて24時間の単純冷却保存を行った肝臓、および、赤血球を添加しないL−15培地を用いて22℃の温度条件下において灌流を行った肝臓のそれぞれをレシピエントへ移植した。
実験結果を図9に示した。なお、図9において、「培養肝」とは、本発明の方法を用いて灌流を行った肝臓を意味する。また、「従来保存肝」とは、UW液を用いて24時間の単純冷却保存を行った肝臓を意味する。具体的には、図9において、UW液を用いて24時間の単純冷却保存を行った肝臓を移植した群(従来保存肝)が破線で示されている。赤血球を添加しないL−15培地を用いて22℃の温度条件下において灌流を行った肝臓を移植した群(培養肝赤血球無し)が二点鎖線で示されている。また、赤血球を添加したL−15培地を用いて22℃の温度条件下において灌流を行った肝臓を移植した群(培養肝赤血球有り)が実線で示されている。
これら3つの群について、まず、移植後1週間(移植経過時間7日)の経過観察を行った。図9に示されるように、UW液を用いて24時間の単純冷却保存を行った肝臓を移植した群、および、赤血球を添加しないL−15培地を用いて22℃の温度条件下において灌流を行った肝臓を移植した群では、レシピエントは比較的低い生存率を示した。具体的には、UW液を用いて24時間の単純冷却保存を行った肝臓を移植した群では、移植当日における生存率は100%である。しかしながら、移植経過時間1日における生存率は60%に低下した。また、赤血球を添加しないL−15培地を用いて22℃の温度条件下において灌流を行った肝臓を移植した群では、移植当日における生存率が約57%である。また、移植経過時間1日における生存率は約29%までさらに低下した。一方、赤血球を添加したL−15培地を用いて24時間の培養を行った肝臓を生体へ移植した群では、100%の生存率を示した。
また、移植後1週間(移植経過時間7日)の経過観察の後、臓器の生着が認められた個体に対して、移植経過7日となる日に、レシピエント本来の肝臓を部分肝切除するとともに門脈血の切り替えを行った。そして、さらに1週間の経過観察を行った。UW液を用いて24時間の単純冷却保存を行った肝臓を移植した群では、移植経過時間9日において生存率が60%から40%へと低下し、移植経過時間10日においてさらに20%へと低下した。また、赤血球を添加しないL−15培地を用いて22℃の温度条件下において灌流を行った肝臓を移植した群では、移植経過時間9日において生存率が約29%から約14%へと低下した。一方、赤血球を添加したL−15培地を用いて24時間の培養を行った肝臓を移植した群では、移植経過時間14日に至るまで、生存率100%を維持した。
さらに、赤血球を添加したL−15培地を用いて24時間の培養を行った肝臓を移植した群では、移植した培養肝臓が個体本来の肝臓の重量まで再生し、灌流培養により保存された肝臓は生体への移植後においても個体の生存に必要な機能を保持していた。すなわち、本発明の方法によって灌流された移植用の肝臓は、レシピエント個体の肝機能低下を補填することが可能な肝再生能を有していることが明らかとなった。
<4−4.実験例4:低体温灌流による、心停止ドナーから提供された肝臓の蘇生>
本発明の装置および方法が、心停止ドナー(DCDドナー)から提供される肝臓にも利用可能であることを示すために、本発明の装置および方法を用いて、重度の温虚血障害を受けた肝臓の生体外培養を行った。
≪実験方法と結果≫
心停止させたLuciferase発現ラットから肝臓を摘出し、心停止から90分の温阻血後、本発明の装置および方法を用いて100分間の生体外灌流(蘇生処置)を行った。なお、22℃の温度条件下において赤血球濃度を5.0x10^11cells/Lに設定した灌流液(L−15培地)を用いて100分間の生体外灌流を行った。図10には、摘出された肝臓におけるATPの相対強度(Relative intensity)が示されている。図10の上段には、肝臓のATP濃度を0〜5の数値範囲を示す相対強度に変換した図が示されている。図10の下段には、肝臓の所定の各部の相対強度の平均値が示されている。
図10に示すように、温虚血後の肝臓は、ATPの相対強度が約1.0である。そして、本発明の灌流装置を用いた生体外灌流(蘇生処理)により、ATPの相対強度は、50分後に約3.1、80分後に約3.9、100分後に約4.9となった。すなわち、虚血処置中に消費されたATPが回復することが確認された。したがって、本発明の装置および方法を用いることにより、虚血肝臓の障害を抑制しながら、肝臓のエネルギー代謝状態を回復させることが可能であることが示された。
<4−5.実施例5:蘇生臓器の移植後生存率>
実施例4に記載の方法で生体外灌流(蘇生処理)を行った虚血肝臓をレシピエントへ移植し、移植後の経過を観察した。
≪実験方法と結果≫
実施例4に記載の方法により、心停止から90分の温阻血後、22℃の温度条件下において赤血球濃度を5.0x10^11cells/Lに設定した灌流液(L−15培地)を用いて100分間の生体外培養を行った肝臓をレシピエントの生体に移植した。controlとして、UW液を用いて単純冷却保存を行った肝臓、および、赤血球を含まない灌流液(L−15培地)を用いて蘇生処置を行った肝臓を、それぞれレシピエントへ移植した。また、実施例3と同様に、移植から1週間後に、臓器の生着が認められた個体に対して、レシピエント本来の肝臓9を部分肝切除するとともに門脈血の切り替えを行った。
実験結果を図11に示した。なお、図11において、「蘇生肝」とは、本発明の方法を用いて蘇生処置を行った虚血肝臓を意味する。また、「従来保存肝」とは、UW液を用いて100分間の単純冷却保存を行った虚血肝臓を意味する。具体的には、図11において、UW液を用いて100分間の単純冷却保存を行った肝臓を移植した群(従来保存肝)が破線で示されている。赤血球を含まない灌流液(L−15培地)を用いて蘇生処理を行った肝臓を移植した群(蘇生肝赤血球無し)が二点鎖線で示されている。また、赤血球を添加した灌流液(L−15培地)を用いて蘇生処理を行った肝臓を移植した群(蘇生肝赤血球有り)が実線で示されている。
これら3つの群について経過観察を行った。図11に示されるように、UW液を用いて蘇生処置を行った肝臓を移植した群では、移植当日の生存率が80%であり、移植経過時間6日において生存率が40%まで低下した。また、赤血球を含まない灌流液(L−15培地)を用いて蘇生処理を行った肝臓を移植した群では、移植当日の生存率が80%であり、移植経過時間1日において生存率が60%となった。一方、赤血球を含む灌流液(L−15培地)を用いて蘇生処理を行った肝臓を移植した群では、移植経過時間7日まで生存率100%を維持した。このように、移植後1週間(移植経過時間7日)までの間、本発明の装置および方法を用いて蘇生処置を行った虚血肝臓を移植したレシピエントは、いずれも比較的高い生存率を示した。
しかし、UW液を用いて蘇生処置を行った肝臓を移植した群、および、赤血球を含まない灌流液(L−15培地)を用いて蘇生処置を行った肝臓を移植した群では、レシピエント肝の部分肝切除後に、生存率が低下した。具体的には、UW液を用いて蘇生処理を行った肝臓を移植した群では、部分肝切除を行った移植経過時間7日において生存率が20%に低下し、さらに移植経過時間8日において生存率が0%に達した。また、赤血球を含まない灌流液(L−15培地)を用いて蘇生処理を行った肝臓を移植した群では、移植経過時間8日において生存率が40%に低下し、さらに移植経過時間10日において生存率が0%に達した。一方、赤血球を添加した灌流液(L−15培地)を用いて生体外培養を行った虚血肝臓を移植した群では、移植経過時間14日に至るまで、生存率が100%であった。
これにより、本発明の装置および方法を用いることにより、これまで移植不適応と考えられてきた虚血肝臓が移植可能となることが示された。
<4−6.実施例6:本発明を用いたブタ肝臓の他家異所性移植>
本発明の装置および方法を用いて移植用の肝臓を摘出および灌流する場合の、ブタ肝臓の生着の可否について実験を行った。
≪実験方法と結果≫
実験の具体的な手順は、実施例1に示すラットについての実験手順とほぼ同様である。実施例6におけるブタでの実験と、実施例1におけるラットでの実験との手順の相違点については、以下の通りである。まず、ドナー肝臓の摘出後、レシピエントへの移植に至るまで、実施例1においては肝下部下大静脈と肝上部下大静脈の双方に灌流液のOutカニューレが接続されていた。しかしながら、実験例6においては、肝下部下大静脈にはカニューレは接続されず、肝上部下大静脈のみにOutカニューレが接続された。また、実施例1においてはドナー肝臓の設置場所にガーゼを配置したが、実施例6ではガーゼを配置せず、レシピエントの腹腔内に直接ドナー肝臓を配置した。また、実施例1においては、右腎を摘出したが、実施例6においては腎臓の摘出は行わない。このため、実施例1においてはドナーの肝下部下大静脈をレシピエントの右腎静脈と端端吻合したが、実施例6においてはドナーの肝下部下大静脈をレシピエントの右腎静脈と端側吻合した。その他の手順については、同様である。
この実験では、ドナー肝臓を摘出後、本発明の装置および方法を用いて、機械灌流保存を90分間行った。灌流液には、FBS、ヘパリンおよび赤血球を添加したL−15培地を用いた。灌流液の流速は、0.5ml/min/gとした。その後、ドナー肝臓をレシピエント体内へ設置した(移植開始)。約60分かけて、洗い流しおよび血管吻合を行った。洗い流し液には、赤血球を添加したL−15培地を用いた。また、洗い流し液の流速は、0.5ml/min/gとした。血管吻合後、血液再灌流を行った(移植終了)。
当該実験を1件行ったところ、レシピエントは意識を回復し、生着が成功したことを確認した。これにより、ラットだけでなく、ブタにおいてもデュアルフロー移植が有効であることが確認できた。
上記のように、この実施例6では、ドナー肝臓の摘出後、レシピエントへの移植に至るまで、2つの灌流液流入用カニューレと1つの灌流液流出用カニューレ(Outカニューレ)とを用いて灌流を行う、2in1out灌流を行っている。
ここで、灌流液の流入が行われる肝動脈と門脈とは、肝臓の別の箇所から肝臓に灌流液を供給する。このため、肝動脈と門脈との双方から灌流液の供給を行うと、肝動脈および門脈のいずれか一方のみから灌流液の供給を行った場合と比べて、肝臓内の隅々まで灌流液を供給できる。したがって、灌流工程において肝臓の障害が生じるのを抑制し、ひいては肝臓の機能回復の可能性を向上できる。
一方、肝下部下大静脈と肝上部下大静脈との双方から灌流液の排出を行った場合、肝下部下大静脈と肝上部下大静脈のいずれか一方のみから灌流液の排出を行った場合と比べて、灌流液の排出効率が若干向上する。しかしながら、肝下部下大静脈と肝上部下大静脈とは、いずれも肝臓内を通る単一の血管の一部である。このため、肝下部下大静脈と肝上部下大静脈のいずれか一方のみから灌流液の排出を行った場合であっても、肝下部下大静脈と肝上部下大静脈との双方から灌流液の排出を行った場合と比べて、排出効率の向上率はわずかである。
このような理由により、デュアルフロー灌流における肝臓の障害抑制および機能回復可能性向上には、2つの灌流液流入用カニューレを肝臓に接続させたことが大きく寄与している。このため、肝臓の灌流処置では、2in1out灌流においても、2つの灌流液流入用カニューレと2つの灌流液流出用カニューレとを用いたデュアルフロー灌流と同様に、1つの灌流液流入用カニューレと1つの灌流液流出用カニューレとを用いたシングルフロー灌流に比べて灌流保存中の肝臓に障害が生じるのを抑制できる。さらに、灌流保存中に肝臓の機能が回復する可能性がある。
ここで、図14および図15を参照しつつ、2in1out灌流を用いたドナー肝臓摘出の流れと、摘出された肝臓のレシピエントへの移植の流れとを以下に説明する。また、2in1out灌流を行うために、上記のデュアルフロー還流用の灌流装置1を用いてもよいし、灌流装置1の2つの灌流液流出経路40が1つに変更された灌流装置を用いてもよい。
図14は、灌流装置1を用いてドナーから移植用の肝臓を摘出し、2in1out灌流を行う工程の流れを示したフローチャートである。ステップ(1B)では、まず、ドナーの肝動脈および門脈のいずれか一方を切開または切断する(ステップ(11B))。そして、切開部位および切断部位に第1の灌流液流入用カニューレ32を接続する(ステップ(12B))。次に、ドナーの肝上部下大静脈を切開または切断する(ステップ(13B))。そして、切開部位または切断部位に灌流液流出用カニューレ42を接続する(ステップ(14B))。
次に、ステップ(2B)では、第1の灌流液流入用カニューレ32から灌流液を流入させ、かつ、第1の灌流液流出用カニューレ42から灌流液を流出させる。これにより、移植用の肝臓9の灌流液による灌流を開始する。これにより、1系統の灌流液流入経路30と、1系統の灌流液流出経路40とを用いたシングルフロー灌流が開始される。
続いて、ステップ(3B)では、まず、ステップ(1B)で切開または切断を行わなかった肝動脈および門脈の他方を切開または切断する(ステップ(31B))。そして、切開部位または切断部位に第2の灌流液流入用カニューレ32を接続する(ステップ(32B))。続いて、ステップ(1B)で切開または切断を行わなかった肝上部下大静脈および肝下部下大静脈の他方をクリッピングし、切断する(ステップ(33B))。そして、当該血管については、カニューレを挿入しない。
その後、ステップ(4B)では、第1および第2の灌流液流入用カニューレ32から灌流液を流入させ、かつ、灌流液流出用カニューレ42から灌流液を流出させる。すなわち、2in1out灌流が開始される(ステップ(41B))。その後、移植用の肝臓9の灌流液による灌流を維持しながら、ドナーから肝臓9を摘出する(ステップ(42B))。
上記ステップ(1B)において切開または切断する血管の組み合わせ(すなわち、先行して切開または切断される血管の組み合わせ)は限定されず、それぞれの血管の血流量や臓器の状態等を考慮して、当業者が適宜選択することができる。例えば、肝動脈と肝上部下大静脈の組み合わせ、肝動脈と肝下部下大静脈の組み合わせ、門脈と肝上部下大静脈の組み合わせ、および、門脈と肝下部下大静脈の組み合わせのうち、いずれの組み合わせであってよい。
例えば、同所性移植を行う場合、ステップ(1B)において肝下部下大静脈に灌流液流出用カニューレ42を接続し、後述するステップ(6B)において灌流液流出用カニューレ42が接続されていない肝上部下大静脈をレシピエント側の血管と吻合する。一方、異所性移植を行う場合、ステップ(1B)において肝上部下大静脈に灌流液流出用カニューレ42を接続し、後述するステップ(6B)において灌流液流出用カニューレ42が接続されていない肝下部部下大静脈をレシピエント側の血管と吻合する。このように、ドナー肝臓の摘出時に灌流液流出用カニューレ42と接続される血管は、レシピエントへの移植時に先行して吻合される血管ではない方を選択する。
また、それぞれの組み合わせにおいて、切開または切断する血管の順番は限定されず、それぞれの血管の血流量や臓器の状態等を考慮して、当業者が適宜選択することができる。ステップ(1B)において、ステップ(12B)は少なくともステップ(11B)の後であればよいし、ステップ(14B)は少なくともステップ(13B)の後であればよい。ステップ(3B)において、ステップ(32B)は少なくともステップ(31B)の後であればよい。また、ステップ(41B)は、ステップ(32B)の後かつステップ(33B)の後であってもよい。
上記のステップ(1B)〜(4B)において、ドナーからの移植用の肝臓9の摘出手順において通常実施される処置(例えば、結合組織の除去、血管の剥離、血管切断のための血管の一時的な結紮またはクランプ、胆管の遮断および切断、移植用の肝臓9への血液凝固剤の適用、手術部位の止血処置、等)は、当業者が必要に応じて適宜行うことができる。
上記のステップ(1B)において、ドナーの肝動脈および門脈の他方と、肝上部下大静脈および肝下部下大静脈の他方とにおいて、血流が継続している状態で、ドナーの肝動脈および門脈の一方と、肝上部下大静脈および肝下部下大静脈の一方とをカニューレと接続させる。これにより、ドナーの肝動脈および門脈の一方と、肝上部下大静脈および肝下部下大静脈の一方とをカニューレと接続させる作業中に、摘出する肝臓9が阻血状態となることを抑制できる。したがって、摘出する肝臓9に障害が生じるのを抑制できる。
また、上記のステップ(3B)において、ドナーの肝動脈および門脈の一方と、肝上部下大静脈および肝下部下大静脈の一方とを用いたシングルフロー灌流がなされている。このため、ステップ(3B)において、ドナーの肝動脈および門脈の他方と、肝上部下大静脈および肝下部下大静脈の他方とをカニューレと接続させる作業中に、摘出する肝臓9が阻血状態となることを抑制できる。したがって、摘出する肝臓9に障害が生じるのをより抑制できる。
図15は、灌流装置1を用いてレシピエントへ移植用の肝臓9を移植する工程の流れを示したフローチャートである。まず、ステップ(5B)では、門脈および肝動脈に灌流液流入用カニューレ32が接続されており、肝上部下大静脈および肝下部下大静脈のうちの1つに灌流液流出用カニューレ42が接続されており、2つの灌流液流入用カニューレ32から灌流液が流入され、灌流液流出用カニューレ42から灌流液が流出されている状態の、移植用の肝臓9を準備する。すなわち、2in1out灌流がなされている肝臓9を準備する。
次に、ステップ(6B)では、移植用の肝臓9の門脈および肝動脈のいずれか一方の灌流液流入用カニューレ32を除去する(ステップ(61B))。そして、移植用の肝臓9の灌流液による灌流を維持しながら、灌流液流入用カニューレ32が除去された血管と、レシピエント側の対応する血管とを吻合する(ステップ(62B))する。また、肝上部下大静脈および肝下部下大静脈のうち、灌流液流出用カニューレ42が挿入されていない一方の血管と、レシピエント側の対応する血管とを吻合する(ステップ(63B))。このように、ステップ(6B)の工程中において、未除去の灌流液流入用カニューレ32と、未除去の灌流液流出用カニューレ42とを用いて、シングルフロー灌流が行われている。これにより、ステップ(6B)において移植用の肝臓9が虚血状態とならない。
続いて、ステップ(7B)では、移植用の肝臓9の門脈または肝動脈の他方から未除去の灌流液流入用カニューレ32を除去する(ステップ(71B))。また、移植用肝臓9の肝上部下大静脈および肝下部下大静脈の他方から未除去の灌流液流出用カニューレ42を除去する(ステップ(72B))。そして、灌流液流入用カニューレ32が除去された血管と、レシピエント側の対応する血管とを吻合する(ステップ(73B))。また、灌流液流出用カニューレ42が除去された血管と、レシピエント側の対応する血管とを吻合する(ステップ(74B))。なお、ステップ(74B)では、ステップ(73B)で灌流液流出用カニューレ42が除去された血管が結紮されてもよい。
上記ステップ(6B)において、吻合に用いるドナー肝臓9の血管の組み合わせ(すなわち、先行して吻合される血管の組み合わせ)は限定されず、それぞれの血管の血流量や臓器の状態等を考慮して、当業者が適宜選択することができる。例えば、肝動脈と肝上部下大静脈の組み合わせ、肝動脈と肝下部下大静脈の組み合わせ、門脈と肝上部下大静脈の組み合わせ、および、門脈と肝下部下大静脈の組み合わせのうち、いずれの組み合わせであってよい。また、それぞれの組み合わせにおいて、吻合する血管の順番は限定されず、それぞれの血管の血流量や臓器の状態等を考慮して、当業者が適宜選択することができる。このため、ステップ(1B)〜(4B)における「一方」「他方」の定義と、ステップ(5B)〜(7B)における「一方」「他方」の定義とは、同じでもよいし、異なっていてもよい。
また、ドナー肝臓9の血管と吻合するレシピエント血管は、吻合に用いるドナー血管と同じ種類の血管であってもよく、異なる血管であってもよい。例えば、肝臓9の同所性移植を行う場合には、ドナー肝臓9の血管と吻合するレシピエント血管は、吻合に用いるドナー肝臓9の血管と同じ種類の血管であってよい。また、例えば、肝臓9の異所性移植を行う場合には、ドナー肝臓9の血管と吻合するレシピエント血管は、吻合に用いるドナー肝臓9の血管と異なる種類の血管であってよい。肝臓9の異所性移植を行う場合に用いるレシピエント血管の種類は、当業者が技術常識に基づいて適宜選択することができる。
上記のステップ(5B)〜(7B)において、移植用の肝臓9をレシピエントに移植する手順において通常実施される処置(例えば、結合組織の除去、血管の剥離、血管の切断および吻合のための血管の一時的な結紮またはクランプ、血管の吻合、胆管の吻合、手術部位の止血処置、等)は、当業者が必要に応じて適宜行うことができる。
上記のステップ(6B)において、ドナーの肝動脈および門脈の一方と、肝上部下大静脈および肝下部下大静脈の一方とを、先行してレシピエントの血管と吻合する。この2つの血管の吻合作業中においても、肝動脈および門脈の他方と、肝上部下大静脈および肝下部下大静脈の他方とを用いたシングルフロー灌流は継続される。これにより、移植手術中の移植用の肝臓9が阻血状態となることを抑制できる。このため、先行してレシピエントの血管と縫合する2つの血管の吻合に十分な時間を掛けることができる。
1 灌流装置
9 肝臓
10 バイオリアクター領域
20 灌流液リザーバー
21 温度調節機構
22 ガス交換機構
30 灌流液流入経路
31 配管
32 灌流液流入量カニューレ
33 ポンプ
34 温度調節ユニット
35 脱気ユニット
36 圧力計
37 流量計
40 灌流液流出経路
41 配管
42 灌流液流出用カニューレ
43 ポンプ
44 圧力計
45 流量計

Claims (24)

  1. ドナーから移植用の肝臓を摘出する際に用いるための、または、移植用の肝臓をレシピエントに移植する際に用いるための、移植用の肝臓の灌流装置であって、
    前記装置は、下記(A)〜(D)を備え、
    (A)下記のカニューレ(i)〜(iv):
    (i)前記移植用の肝臓の門脈に接続される灌流液流入用カニューレ
    (ii)前記移植用の肝臓の肝動脈に接続される灌流液流入用カニューレ
    (iii)前記移植用の肝臓の肝上部下大静脈に接続される灌流液流出用カニューレ
    (iv)前記移植用の肝臓の肝下部下大静脈に接続される灌流液流出用カニューレ
    (B)灌流液を含む1または複数の灌流液容器、
    (C)1または複数のポンプ、および、
    (D)配管
    ここで、前記(A)〜(D)は、前記移植用の肝臓を灌流する際に、前記1または複数のポンプの少なくともいずれかにより、前記1または複数の灌流液容器の少なくともいずれかに含まれる灌流液が、前記配管を介して、前記灌流液流入用カニューレ(i)および/または(ii)から前記移植用の肝臓へ流入し、前記移植用の肝臓内の灌流液が、前記灌流液流出用カニューレ(iii)および/または(iv)から流出するように構成されることを特徴とする、
    装置。
  2. 請求項1に記載の灌流装置であって、
    前記移植用の肝臓を灌流する際に、前記灌流液流入用カニューレ(i)および/または(ii)と、前記移植用の肝臓と、前記灌流液流出用カニューレ(iii)および/または(iv)と、前記灌流液容器との間で、前記配管を介した灌流回路が形成されることを特徴とする、
    装置。
  3. 請求項1または請求項2に記載の灌流装置であって、
    前記装置を、ドナーから移植用の肝臓を摘出する際に用いる場合には、以下のステップ(1)〜(4):
    (1)ドナーの肝動脈および門脈のいずれか一方を切開または切断して、切開部位または切断部位に第1の灌流液流入用カニューレを接続し、かつ、ドナーの肝上部下大静脈および肝下部下大静脈のいずれか一方を切開または切断して、切開部位または部位に第1の灌流液流出用カニューレを接続するステップ、
    (2)前記第1の灌流液流入用カニューレから灌流液を流入させ、かつ、前記第1の灌流液流出用カニューレから灌流液を流出させることによる、前記移植用の肝臓の灌流液による灌流を開始するステップ、
    (3)ステップ(1)で切開または切断を行わなかった肝動脈および門脈の他方を切開または切断して、切開部位または切断部位に第2の灌流液流入用カニューレを接続し、かつ、ステップ(1)で切開または切断を行わなかった肝上部下大静脈および肝下部下大静脈の他方を切開または切断して、切開部位または部位に第2の灌流液流出用カニューレを接続するステップ、および、
    (4)前記第1および第2の灌流液流入用カニューレから灌流液を流入させ、かつ、前記第1および第2の灌流液流出用カニューレから灌流液を流出させることによる、前記移植用の肝臓の灌流液による灌流を維持しながら、ドナーから肝臓を摘出するステップ、
    を含む用法で用いられることを特徴とする、
    装置。
  4. 請求項1または請求項2に記載の灌流装置であって、
    前記装置を、移植用の肝臓をレシピエントに移植する際に用いる場合には、以下のステップ(5)〜(7):
    (5)門脈に灌流液流入用カニューレ(i)が接続されており、肝動脈に灌流液流入用カニューレ(ii)が接続されており、肝上部下大静脈に灌流液流出用カニューレ(iii)が接続されており、肝下部下大静脈に灌流液流出用カニューレ(iv)が接続されており、前記灌流液流入用カニューレ(i)および(ii)から灌流液が流入され、かつ、前記灌流液流出用カニューレ(iii)および(iv)から灌流液が流出されている状態の、移植用の肝臓を準備するステップ、
    (6)前記移植用の肝臓の門脈および肝動脈のいずれか一方の灌流液流入用カニューレ、および、前記移植用の肝臓の肝上部下大静脈および肝下部下大静脈のいずれか一方の灌流液流出用カニューレを除去し、前記移植用の肝臓の灌流液による灌流を維持しながら、灌流液流入用カニューレが除去された前記血管と、レシピエント側の対応する血管とを吻合し、灌流液流出用カニューレが除去された前記血管と、レシピエント側の対応する血管とを吻合するステップ、および、
    (7)前記移植用の肝臓の門脈または肝動脈の他方から未除去の灌流液流入用カニューレを除去し、かつ、前記移植用の肝臓の肝上部下大静脈または肝下部下大静脈の他方から未除去の灌流液流出用カニューレを除去し、灌流液流入用カニューレが除去された前記血管と、レシピエント側の対応する血管とを吻合し、灌流液流出用カニューレが除去された前記血管と、レシピエント側の対応する血管とを吻合するステップ、
    を含む用法で用いられることを特徴とする、
    装置。
  5. 請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の灌流装置であって、
    前記移植用の肝臓の少なくとも一部を液体に浸漬させることができる容器をさらに備えることを特徴とする、
    装置。
  6. 請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の灌流装置であって、
    前記配管の少なくとも一部が伸縮性のある素材または構造を有することを特徴とする、装置。
  7. 請求項6に記載の灌流装置であって、
    前記伸縮性のある構造が、蛇腹構造であることを特徴とする、
    装置。
  8. 請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の灌流装置であって、
    前記配管において、灌流液の流量を測定するための流量計、および、灌流液の流圧を測定するための圧力計が設けられ、
    前記ポンプは動作制御機構を有し、
    前記移植用の肝臓を灌流する際に、前記流量計および/または前記圧力計の測定値に応じて前記ポンプの動作制御機構が作動することにより、灌流中の灌流液の流速および/または流圧が所定の範囲内に保たれることを特徴とする、
    装置。
  9. 請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の灌流装置であって、
    前記灌流液容器と、前記灌流液流入用カニューレ(i)または(ii)とを接続する前記配管において、灌流液中の気泡を除去するための脱気ユニットが設置されることを特徴とする、
    装置。
  10. 請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載の灌流装置であって、
    前記灌流液容器が、灌流液の温度を調節するための温度調節機構、および/または、灌流液中の溶存酸素、溶存二酸化炭素および/または溶存窒素の量を調節するためのガス交換機構を備えることを特徴とする、
    装置。
  11. 請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載の灌流装置であって、
    前記灌流液容器と、前記灌流液流入用カニューレ(i)または(ii)とを接続する前記配管において、灌流液の温度を調節するための温度調節ユニットが設置されることを特徴とする、
    装置。
  12. 請求項10または請求項11に記載の灌流装置であって、
    前記移植用の肝臓を灌流する際に、前記灌流液容器の温度調節機構、および/または、前記配管に設置された温度調節ユニットによって、前記移植用の肝臓に流入する灌流液の温度が20〜25℃の範囲に制御されることを特徴とする、
    装置。
  13. 請求項1ないし請求項12に記載の灌流装置であって、
    前記移植用の肝臓を灌流する際に、前記灌流液が、酸素運搬体を含むことを特徴とする、
    装置。
  14. 請求項13に記載の灌流装置であって、
    前記酸素運搬体が赤血球であることを特徴とする、
    装置。
  15. ドナーから移植用の肝臓を摘出する方法であって、
    (1)ドナーの肝動脈および門脈のいずれか一方を切開または切断して、切開部位または切断部位に第1の灌流液流入用カニューレを接続し、かつ、ドナーの肝上部下大静脈および肝下部下大静脈のいずれか一方を切開または切断して、切開部位または切断部位に第1の灌流液流出用カニューレを接続するステップ、
    (2)前記第1の灌流液流入用カニューレから灌流液を流入させ、かつ、前記第1の灌流液流出用カニューレから灌流液を流出させることによる、前記移植用の肝臓の灌流液による灌流を開始するステップ、
    (3)ステップ(1)で切開または切断を行わなかった肝動脈および門脈の他方を切開または切断して、切開部位または切断部位に第2の灌流液流入用カニューレを接続し、ステップ(1)で切開または切断を行わなかった肝上部下大静脈および肝下部下大静脈の他方を切開または切断して、切開部位または切断部位に第2の灌流液流出用カニューレを接続するステップ、および、
    (4)前記第1および第2の灌流液流入用カニューレから灌流液を流入させ、かつ、前記第1および第2の灌流液流出用カニューレから灌流液を流出させることによる、前記移植用の肝臓の灌流液による灌流を維持しながら、ドナーから肝臓を摘出するステップ、
    を含むことを特徴とする、
    方法。
  16. 請求項15に記載の方法であって、
    前記ステップ(1)〜(4)を、ドナーの肝臓が20〜25℃の範囲内におかれた状態で実施することを特徴とする、
    方法。
  17. 請求項15または請求項16に記載の方法であって、
    前記ステップ(1)〜(4)において用いられる灌流液が、酸素運搬体を含むことを特徴とする、
    方法。
  18. 請求項17に記載の方法であって、
    前記酸素運搬体が赤血球であることを特徴とする、
    方法。
  19. 移植用の肝臓をレシピエントに移植する方法であって、
    (5)門脈に第1の灌流液流入用カニューレが接続されており、肝動脈に第2の灌流液流入用カニューレが接続されており、肝上部下大静脈に第1の灌流液流出用カニューレが接続されており、肝下部下大静脈に第2の灌流液流出用カニューレが接続されており、前記第1および第2の灌流液流入用カニューレから灌流液が流入され、かつ、前記第1および第2の灌流液流出用カニューレから灌流液が流出されている状態の、移植用の肝臓を準備するステップ、および、
    (6)前記移植用の肝臓の門脈および肝動脈のいずれか一方の灌流液流入用カニューレ、および、前記移植用の肝臓の肝上部下大静脈および肝下部下大静脈のいずれか一方の灌流液流出用カニューレを除去し、前記移植用の肝臓の灌流液による灌流を維持しながら、灌流液流入用カニューレが除去された前記血管と、レシピエント側の対応する血管とを吻合し、灌流液流出用カニューレが除去された前記血管と、レシピエント側の対応する血管とを吻合するステップ、
    を含むことを特徴とする、
    方法。
  20. 請求項19に記載方法であって、
    (7)前記移植用の肝臓の門脈および肝動脈の他方から未除去の灌流液流入用カニューレを除去し、前記移植用の肝臓の肝上部下大静脈および肝下部下大静脈の他方から未除去の灌流液流出用カニューレを除去し、灌流液流入用カニューレが除去された前記血管と、レシピエント側の対応する血管とを吻合し、灌流液流出用カニューレが除去された前記血管と、レシピエント側の対応する血管とを吻合するステップ、
    をさらに含むことを特徴とする、
    方法。
  21. 請求項19に記載方法であって、
    (8)前記移植用の肝臓の門脈および肝動脈の他方から未除去の灌流液流入用カニューレを除去し、前記移植用の肝臓の肝上部下大静脈および肝下部下大静脈の他方から未除去の灌流液流出用カニューレを除去し、灌流液流入用カニューレが除去された前記血管を、結紮、または、レシピエント側の対応する血管とを吻合し、灌流液流出用カニューレが除去された前記血管を、結紮、または、レシピエント側の対応する血管とを吻合するステップ、
    をさらに含むことを特徴とする、
    方法。
  22. 請求項19ないし請求項21のいずれかに記載の方法であって、
    各ステップを、前記移植用肝臓が20〜25℃の範囲内におかれた状態で実施することを特徴とする、
    方法。
  23. 請求項19ないし請求項22のいずれかに記載の方法であって、
    各ステップにおいて用いられる灌流液が、酸素運搬体を含むことを特徴とする、
    方法。
  24. 請求項23に記載の方法であって、
    前記酸素運搬体が赤血球であることを特徴とする、
    方法。
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