JPWO2017154991A1 - 温度応答性化合物 - Google Patents

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Abstract

【課題】良好な自己集合機能を発現する新規な温度応答性化合物を提供すること【解決手段】下記式(1)で表される温度応答性化合物。【化1】[式中、Rは、それぞれ独立して、下記式(2)又は式(3):【化2】(式中、※は結合位置を表し、aは1乃至20を表し、bは1乃至20を表し、cは1乃至20を表し、dは1乃至20を表し、eは1乃至20を表す。)で表される基を表し、Aは単結合を表すか、又は下記式(4)、式(5)若しくは式(6):【化3】(式中、※は結合位置を表し、fは1乃至20を表し、gは1乃至20を表し、hは1乃至20を表し、iは1乃至20を表し、mは0乃至10を表し、nは0乃至10表す。)で表される基を表し、Xは、機能性官能基を表す。]【選択図】なし

Description

本発明は、温度応答性化合物に関し、詳細には、温度応答性の新規な低分子化合物に関する。
近年、材料科学の分野では、光、熱、pH、磁場及び電気的刺激等の環境変化を感知して、それ自体が有する機能をコントロールするような刺激応答性化合物の研究開発が盛んに行われている。その中でも、低温では親水性で水によく溶解するが、ある温度以上になると疎水性となって水に溶解し難くなる現象(相転移現象)を示す温度応答性化合物は、薬物送達システム(drug delivery system:DDS)や医療用材料等への応用が期待されている。
しかしながら、温度応答性能を示す化合物の大多数は高分子化合物であり、代表的なものとして、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)(PNIPAAm)(非特許文献1)やエラスチン様ポリペプチド(elastin−like polypeptides:ELPs)(非特許文献2)等の高分子化合物が知られている。
一方、低分子化合物に温度応答性能を発現させるためには、低温領域でナノサイズの両親媒性集合体を形成させ、さらに高温領域で疎水性集合体へと転移するような分子設計が必要であると考えられる。しかし、そのような分子設計は難しく、例えば、ベンゼン−1,3,5−トリウレア誘導体が温度応答性能を示すことは報告されているが(非特許文献1)、温度応答性能を示す低分子化合物の報告例は極めて少ない。
H.G.Schild,Prog.Polym.Sci.1992,17,163. D.Urry,J.Phys.Chem.B1997,101,11007. H.Hayashi,K.Ohkubo,S.Karasawa,N.Koga,Langmuir,2011,27,12709.
温度応答性能を発現する低分子化合物は、温度変化により形態を変化させることができる。従って、該低分子化合物は、例えば、ヒトを含む哺乳類の体内に注入されたとき、体内でゲル又は固体になって、がん細胞を検出又は捕捉することが期待できる。
さらに、温度応答性能を有する低分子化合物が自己集合機能も発現することができれば、該低分子化合物は自己集合してある程度の大きさになり、そして、ERP効果によってがん細胞に選択的に集積することが期待できる。
すなわち、温度応答性能及び自己集合機能を発現する低分子化合物は、例えば、がん細胞の検出、捕捉又は選択的治療用ツール等の医療用材料として用いることが期待できる。
しかしながら、上述したように、温度応答性能を示す低分子化合物は極めて少なく、その上、温度応答性能を示すことが報告されている、上記のベンゼン−1,3,5−トリウレア誘導体でさえも、自己集合機能はほとんど発現しなかった。
そこで、本発明の目的は優れた温度応答性能と自己集合機能とを発現する新規な低分子化合物を提供することである。
本明細書では、「温度応答性能」とは、一般に化合物の水溶液が下限臨界溶液温度(Lower Critical Solution Temperature:LCST)を境にして、可逆的に水溶性から水不溶性に変化する性能をいう。具体的には、LCST未満の温度では水によく溶解するが、LCST以上の温度になると水に溶解し難くなり、LCST未満の温度にすると再び水に溶解するという性能をいう。
また、「自己集合機能」とは、当初ランダムな状態にある物質(分子)群において、分子が適切な温度条件下で分子間の非共有結合性相互作用等により自発的に会合することにより、マクロな機能性集合体に成長する機能をいう。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、2つのウレア基と、連結基を介して又は連結基を介さずに機能性官能基とをベンゼン環に置換した構造を有する化合物が、非特許文献3に開示されたような、3つのウレア基がベンゼン環に置換された構造を有する化合物に比べて、優れた温度応答性能と自己集合機能とを発現することを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、第1観点として、下記式(1)で表される温度応答性化合物に関する。
[式中、
Rは、それぞれ独立して、下記式(2)又は式(3):
(式中、※は結合位置を表し、aは1乃至20を表し、bは1乃至20を表し、cは1乃至20を表し、dは1乃至20を表し、eは1乃至20を表す。)で表される基を表し、
Aは単結合を表すか、又は下記式(4)、式(5)若しくは式(6):
(式中、※は結合位置を表し、fは1乃至20を表し、gは1乃至20を表し、hは1乃至20を表し、iは1乃至20を表し、mは0乃至10を表し、nは0乃至10表す。)で表される基を表し、
Xは、機能性官能基を表す。]
第2観点として、前記機能性官能基がキノリン構造を有する化合物から誘導される基、常磁性金属と配位子とからなるキレート錯体から誘導される基、及び有機ラジカル構造を分子内に有する化合物から誘導される基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基である、第1観点に記載の化合物に関する。
第3観点として、前記Aが単結合又は上記式(6)で表される基を表す、第1観点又は第2観点に記載の化合物に関する。
第4観点として、前記機能性官能基が下記式(X1)乃至式(X6)で表される基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基である、第1観点乃至第3観点のいずれか1つに記載の化合物に関する。
(式中、※は結合位置を表し、kは0乃至20を表し、lは0乃至20を表す。)
第5観点として、第1観点乃至第4観点のいずれか1つに記載の化合物を含む医療用材料に関する。
第6観点として、第1観点乃至第4観点のいずれか1つに記載の化合物を含むMRI造影剤に関する。
本発明の化合物は、優れた温度応答性能と自己集合機能とを発現するという効果を奏する。
本発明の化合物は、優れた温度応答性能と自己集合機能とを発現するという効果により、がん細胞の検出薬等の医療用材料として利用することができるという効果を奏する。
本発明の化合物は、大きな常磁性体緩和促進効果により高い緩和能を有するMRI造影剤として利用することができるという効果を奏する。
図1は実施例2のESR測定結果を示す図である。 図2は実施例3の濃度依存性の検討結果を示す図である。 図3は実施例4の温度応答性の検討結果を示す図である。 図4は実施例5の動的光散乱法(DLS)による測定結果を示す図である。 図5は実施例6の透過型電子顕微鏡(TEM)による観察結果を示す図である[(a)1mMを25℃で調製したサンプル、(b)5mMを60℃で調製したサンプル。(c)(a)における球状ナノ微粒子のサイズと数を目視でカウントし、その結果を棒グラフとして示したもの]。 図6は実施例7のゼータ電位測定結果を示す図である。 図7は実施例8の水プロトン緩和能におけるT1緩和時間の測定結果を示す図である[(a)7Tで測定したpH7.0のサンプルの測定結果、(b)7Tで測定したpH5.0のサンプルの測定結果、(c)7Tで測定したpH9.0のサンプルの測定結果、(d)1Tで測定したpH7.0のサンプルの測定結果、(e)左は1Tで測定したpH7.0のサンプルのファントム画像、右はサンプル配置]。 図8は実施例8の水プロトン緩和能におけるT2緩和時間の測定結果を示す図である[(a)7Tで測定したpH7.0のサンプルの測定結果、(b)左は1Tで測定したpH7.0のサンプルのファントム画像、右はサンプル配置]。 図9はピレンの蛍光強度とGd−Eg−UBDの濃度との関係を示す図である[(a)0〜10μM、(b)15〜200μM)]。 図10はGd−Eg−UBDの濃度変化に対するピレンの蛍光強度比I3/I1を示す図である。 図11はピレンの蛍光強度とGd−AL−UBDの濃度との関係を示す図である[(a)0〜10μM、(b)15〜200μM)]。 図12はGd−AL−UBDの濃度変化に対するピレンの蛍光強度比I3/I1を示す図である。 図13はGd−Eg−UBDを用いた動的光散乱法(DLS)による測定結果を示す図である。 図14はGd−AL−UBDを用いた動的光散乱法(DLS)による測定結果を示す図である。 図15は実施例13の走査型電子顕微鏡(SEM)による観察結果を示す図である。 図16は実施例14のT1強調画像を示す図である[(a)Gd−DOTAのT1強調画像、(b)Gd−AL−UBDのT1強調画像、(c)Gd−Eg−UBDのT1強調画像)]。 図17はT1強調画像から算出したT1緩和時間の逆数と濃度との関係を示す図である。
[温度応答性化合物]
本発明の化合物は、2つのウレア基と、連結基を介して又は連結基を介さずに機能性官能基とがベンゼン環に置換された構造を有することを特徴としており、具体的には、下記式(1)で表される温度応答性化合物である。
[式中、
Rは、それぞれ独立して、下記式(2)又は式(3):
(式中、※は結合位置を表し、aは1乃至20を表し、bは1乃至20を表し、cは1乃至20を表し、dは1乃至20を表し、eは1乃至20を表す。)で表される基を表し、
Aは単結合を表すか、又は下記式(4)、式(5)若しくは式(6):
(式中、※は結合位置を表し、fは1乃至20を表し、gは1乃至20を表し、hは1乃至20を表し、iは1乃至20を表し、mは0乃至10を表し、nは0乃至10表す。)で表される基を表し、
Xは、機能性官能基を表す。]
本発明の化合物は温度応答性能及び自己集合機能を発現させるために、Rが表す上記式(2)で表される基において、アルキル基を導入してある程度の疎水性を持たせ、これにより、ファンデルワールス力による自己集合機能をより発現させる観点から、アルキル鎖の長さを表すaとしては、好ましくは4乃至10であり、より好ましくは6乃至8である。
また、温度応答性能を発現させるために、低温では水分子が分子の周りに強く付着し、高温では脱水和させる必要があるので、超分子的な相互作用が働くこと、特に水素結合部位を有する必要があることから、水との水素結合部位であるエチレングリコール鎖の長さを表すbとしては、好ましくは2乃至15であり、より好ましくは3乃至6であり、またcとしては、好ましくは2乃至15であり、より好ましくは3乃至6である。
また、Rが表す上記式(3)で表される基においても、上記式(2)で表される基と同様に、アルキル鎖の長さを表すdとしては、好ましくは4乃至10であり、より好ましくは6乃至8である。また水との水素結合部位であるエチレングリコール鎖の長さを表すeとしては、好ましくは3乃至15であり、より好ましくは4乃至6である。
Aは単結合又は上記式(4)、式(5)若しくは式(6)で表される基を表す。
前記式(4)及び式(5)で表される基は上記式(2)及び(3)で表される基と同様に、水との水素結合部位であるエチレングリコール鎖を有する。fとしては、好ましくは3乃至15であり、より好ましくは4乃至6であり、またgとしては、好ましくは3乃至15であり、より好ましくは4乃至6である。またhとしては、好ましくは1乃至5であり、より好ましくは1乃至2である。またiとしては、好ましくは2乃至10であり、より好ましくは3乃至6である。
また、前記式(6)で表される基において、mとしては、好ましくは0乃至5であり、より好ましくは0乃至3である。またnとしては、好ましくは0乃至5であり、より好ましくは0乃至3である。
温度応答性能及び自己集合機能をより発現させる観点から、Aが単結合を表す場合、本発明の化合物としては、Rが上記式(2)で表される基を表し且つXが機能性官能基を表す化合物が好ましい。なお、斯かる場合、Xが表す機能性官能基はベンゼン環に直接結合する。
Aが上記式(4)で表される基を表す場合、本発明の化合物としては、Rが上記式(3)で表される基を表し且つXが機能性官能基を表す化合物が好ましい。
Aが上記式(6)で表される基を表す場合、本発明の化合物としては、Rが上記式(3)で表される基を表し且つXが機能性官能基を表す化合物が好ましい。
また、上記式(4)、式(5)若しくは式(6)で表される基としては、下記式(4’)、式(5’)若しくは式(6’)で表される基が好ましい。
(式中、※1はウレア基との結合位置を表し、※2は機能性官能基との結合位置を表す。f、g、h、i、m及びnの定義は上記と同じである。)
Xが表す機能性官能基としては、キノリン構造を有する化合物から誘導される基、常磁性金属と配位子とからなるキレート錯体から誘導される基、及び有機ラジカル構造を分子内に有する化合物から誘導される基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基が好ましく、その中でも、Xとしては、常磁性金属と配位子とからなるキレート錯体から誘導される基及び有機ラジカル構造を分子内に有する化合物から誘導される基が特に好ましい
具体的には、キノリン構造を有する化合物としては、2,4−ジ(トリフルオロメチル)キノリンが挙げられる。
また、上記キレート錯体としては、Gd−DTPA[ジエチレントリアミン五酢酸のガドリニウム錯体]、Gd−DOTA[1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸のガドリニウム錯体]、Gd−DTPA−BMA[ジエチレントリアミノ五酢酸ビスメチルアミドのガドリニウム錯体]、Gd−HPDO3A{[10−(2−ヒドロキシプロピル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン]−1,4,7−三酢酸のガドリニウム錯体}及びGd−DO3A[1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−三酢酸のガドリニウム錯体]などのガドリニウム錯体;マンガン−ポルフィリン誘導体錯体が挙げられる。
さらに、上記有機ラジカル構造としては下記の基が挙げられる。
(式中、※は結合位置を表す。kは0乃至20を表し、好ましくは0乃至10を表し、より好ましくは1乃至3を表す。lは0乃至20を表し、好ましくは0乃至10を表し、より好ましくは1乃至3を表す。)
その中でも、上記機能性官能基としては、下記式(X1)乃至(X6)で表される基が好ましく、下記式(X1)又は(X6)で表される基が特に好ましい。
(式中、※は結合位置を表し、k及びlの定義は上記と同じである。)
[温度応答性化合物の製造方法]
本発明の温度応答性化合物の製造方法としては特に限定されないが、例えば、Rが上記式(2)で表される基である本発明の化合物は、次のように製造することができる。
該式(2)で表される基に対応する両親媒性側鎖は、水溶性部位のエチレングリコール鎖と疎水性部位のアルキル鎖を連結させることで、末端に一級アミンを有する両親媒性側鎖として合成する。該両親媒性側鎖がウレア基を介してベンゼン環と連結するために、イソシアン酸ベンゼンと上記で得られた一級アミンとをカップリングさせることで、二つの両親媒性側鎖がウレア基で連結したベンゼン環を合成する。そして、機能性官能基Xと上記ベンゼン環を連結させることで、本発明の温度応答性化合物が得られる。
具体的には、2−アミノエタノールを出発物質として、塩基性条件下トシル保護したトリエチレングリコールメチルエーテルと混合することで、アミノ基にトリエチレングリコールメチルエーテルが付加した11−(2−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)エチル)−2,5,8−トリオキサ−11−アザトリデカン−13−オール(TEG2EA)を合成する。得られたTEG2EAを塩基性条件下1,6−ジブロモヘキサンとカップリングすることで、2−((6−ブロモヘキシル)オキシ)−N,N−ビス(2−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)エチル)エタン−1−アミン(Eg3NEg36Br)を得て、更にフタルイミドカリウムとのカップリング後、ヒドラジン一水和物の存在下加熱還流することで、両親媒側鎖の一級アミン体6−((11−(2−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)エチル)−2,5,8−トリオキサ−11−アザトリデカン−13−イル)オキシ)ヘキサン−1−アミン(Eg3NEg36NH2)を合成する。
別途5−ヨードイソフタル酸を出発物質として得られたジイソシアン酸とEg3NEg36NH2を混合することで、1位にヨード基、3と5位に両親媒性側鎖が連結したジウレアベンゼン体を合成する。これにパラジウム触媒下、機能性官能基である2,2,6,6−テトラメチル−4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3−ジオキサボロラン−2−イル)−3,6−ジヒドロピリジン−1(2H)―イルオキシルラジカルをカップリングすることで、機能性官能基であるTEMPOラジカルが連結した温度応答性化合物である1,1’−(5−(1−オイル−2,2,6,6−テトラメチル−3−ジヒドロピリジン−4−イル)ベンゼン−1,3−ジイル)ビス(3−(11−(2−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)エチル)−2,5,8,14−テトラオキサ−11−アザイコサン−20−イル)ウレア)が得られる。
なお、上記の各合成に用いられる方法は、公知の方法を適宜選択して用いることができる。
[医療用材料]
上述したように、本発明の化合物は温度応答性能及び自己集合機能を発現するので、検出、捕捉又は選択的治療用ツール等の医療用材料として用いることができる。そのような医療用材料としては、例えば、がん検出薬、がん細胞の捕捉チップ及びがん細胞の選択的治療のための薬剤等が挙げられる。
[MRI造影剤]
本発明の化合物は、種々の分野への応用が期待されるが、中でも常磁性部位を高密度に担持できる性質や大きさから、高い常磁性体緩和促進効果やガン細胞選択性などを有することが期待され、MRI造影剤として有用である。
すなわち、本発明の温度応答性化合物を含むMRI造影剤もまた本発明の対象である。
本発明のMRI造影剤は、通常注射用蒸留水、生理食塩水、リンゲル液等の溶媒に分散、懸濁又は溶解等の状態で用いられ、さらに必要に応じて、薬理学的に許容され得る担体、賦形剤等の添加剤を含めることができる。
本発明の上記MRI造影剤は、細胞などに適用し得るほか、血管(静脈、動脈)内投与、経口投与、直腸内投与、腟内投与、リンパ管内投与、関節内投与等によって生体内に投与することができ、好ましくは、水剤、乳剤又は懸濁液等の形態で静脈内投与や経口投与によって投与する。
上記MRI造影剤に含められ得る添加剤としては、その投与形態、投与経路等によっても異なるが、具体的には、注射剤の場合には緩衝剤、抗菌剤、安定化剤、溶解補助剤、賦形剤等が単独又は組み合わせて用いられ、経口投与剤(具体的には水剤、シロップ剤、乳剤、懸濁液等)の場合、着色剤、保存剤、安定化剤、懸濁化剤、乳化剤、粘稠剤、甘味剤、芳香剤等が単独又は組み合わせて用いられる。各種添加剤は、通常当分野で用いられるものが使用される。
本発明の上記MRI造影剤は、従来のMRI用造影剤に準じて投与、造影することができる。また上記MRI造影剤は、ヒト以外にも各種動物用の造影剤としても好適に用いることができ、その投与形態、投与経路、投与量等は対象となる動物の体重や状態によって適宜選択する。
本発明のMRI造影剤の使用方法の一例として、体温を42℃以上まで加温した後、造影剤を投与する方法が挙げられる。加熱すると正常細胞は血管拡張によって放熱することで平温に戻るのに対して、がん細胞はLCST以上の温度を維持しているため、造影剤は凝集しがん細胞への集積が促進され造影が可能となる。
次に実施例を挙げ本発明の内容を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、実施例において、試料の調製及び物性の分析に用いた装置は下記の通りである。
(1)赤外分光光度計(IR)
装置:日本分光社製 420FT−IR
(2)核磁気共鳴装置(NMR)
装置:ブルカーバイオスピン社製AVANCE III 500
(3)質量分析装置(ESI−MS)
装置:ブルカーダルトニクス社製 microTOF
(4)高分解能質量分析装置[HRMS(ESI)]
装置:ブルカーダルトニクス社製 microTOF
(5)電子スピン共鳴装置(ESR)
装置:ブルカーバイオスピン社製EMX EPR X−band(9.4GHz)
(6)透過度
装置:日本分光社製 V570
(7)動的光散乱光度計(DLS)とゼータ電位測定装置
装置:マルバーン社製ゼーターサイザーナノ
(8)透過型電子顕微鏡(TEM)
装置:FEI社製 Tecnai20
(9)MRI装置
装置:ブルカーバイオスピン社製1.0 T−MRI Scanner
(10)分光蛍光光度計
装置:JASCO FP8500
(11)走査電子顕微鏡(SEM)
装置:日本電子社製JSM−6701F
下記の反応スキーム1に従って、両親媒性側鎖を有する一級アミン体である6−((11−(2−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)エチル)−2,5,8−トリオキサ−11−アザトリデカン−13−イル)オキシ)ヘキサン−1−アミン(Eg3NEg36NH2)を合成した。そして、下記の反応スキーム2に従って、目的物質である1,1’−(5−(1−オイル−2,2,6,6−テトラメチル−3−ジヒドロピリジン−4−イル)ベンゼン−1,3−ジイル)ビス(3−(11−(2−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)エチル)−2,5,8,14−テトラオキサ−11−アザイコサン−20−イル)ウレア)(TEMPO−Eg3NEg36U)を合成した。
以下、上記の反応スキーム1及び2の各反応について、詳細に説明する。
[合成例1]11−(2−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)エチル)−2,5,8−トリオキサ−11−アザトリデカン−13−オール(TEG2EA)の合成
トシル保護したトリエチレングリコールメチルエーテル(TEG−TS)33g(0.10mol)、2−アミノエタノール2.5g(40mmol)をMeCN 50mLに溶解させ、K2CO3 25g(0.18mol)を加えた後、6時間加熱還流した。室温に戻した後、吸引ろ過を行い、溶媒留去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(CHCl3:MeOH)により精製後、無色透明液体10.8g(30.6mmol)を得た。
収率:75%
IR(NaCl)3472,2873,1456,1352,1294,1245,1200,1108,1045cm-1
1H−NMR(CDCl3,500MHz)δ3.67−3.60(m,12H),3.59−3.51(m,10H),3.38(s,6H),2.79(t,J=5.7Hz,4H),2.72(t,J=5.0Hz,2H)
ESI−MS m/z 354.25[M+H]+
HRMS(ESI) Calcd for C1636NO7[M+H]+:354.2486,Found:354.2519
[合成例2]2−((6−ブロモヘキシル)オキシ)−N,N−ビス(2−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)エチル)エタン−1−アミン(Eg3NEg36Br)の合成
1,6−ジブロモヘキサン14.5g(59.4mmol)を蒸留したテトラヒドロフラン(dist.THF)25mLに溶解させ、氷浴で撹拌した。この溶液に、NaH1.5g(64mmol)をdist.THF 5mLに溶解させた溶液を滴下した後、TEG2EA 7.3g(21mmol)をdist.THF 10mLに溶解させた溶液を滴下した。その後、徐々に室温まで昇温しながら一晩撹拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液を加えて反応を停止させた後、ジエチルエーテルで抽出を行った。MgSO4で乾燥し、溶媒留去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(CHCl3:MeOH)により精製を行い、無色透明液体7.22g(14.0mmol)を得た。
収率:68%
IR(NaCl)2932,2864,1457,1352,1300,1245,1199,1114,1029cm-1
1H−NMR(CDCl3,500MHz)δ3.66−3.63(m,8H),3.62−3.59(m,4H),3.56−3.52(m,8H),3.48(t,J=6.2Hz,2H),3.42−3.39(m,4H),3.38(s,6H),2.80−2.75(m,6H),1.86(quin,J=7.1Hz,2H),1.57(quin,J=7.0Hz,2H),1.45(quin,J=6.9Hz,2H),1.36(quin,J=6.9Hz,2H)
ESI−MS m/z 538.23[M+Na]+
HRMS(ESI) Calcd for C2246BrNNaO7[M+Na]+:538.2350,Found:538.2317
[合成例3]2−(11−(2−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)エチル)−2,5,8,14−テトラオキサ−11−アザイコサン−20−イル)イソインドリン−1,3−ジオン(Eg3NEg36Pht)の合成
Eg3NEg36Br 7.22g(14.0mmol)、フタルイミドカリウム3.9g(21mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)60mLに溶解させ、110℃で4時間加熱した。室温に戻した後、ジエチルエーテルで抽出を行った。MgSO4で乾燥し、溶媒留去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(CHCl3:MeOH)により精製を行い、無色透明液体6.48g(11.1mmol)を得た。
収率:80%
IR(NaCl)2932,2863,1772,1714,1467,1436,1396,1369,1301,1249,1199,1113cm-1
1H−NMR(CDCl3,500MHz)δ7.84(d,J=5.4Hz,2H),7.71(d,J=5.4Hz,2H),3.68(t,J=7.3Hz,2H),3.65−3.59(m,12H),3.56−3.53(m,8H),3.40−3.38(m,8H),2.80−2.74(m,6H),1.68(quin,J=6.8Hz,2H),1.55(quin,J=6.6Hz,2H),1.47−1.35(m,4H)
ESI−MS m/z 605.34[M+Na]+
HRMS(ESI) Calcd for C30502NaO9[M+Na]+:605.3409,Found:605.3377
[合成例4]6−((11−(2−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)エチル)−2,5,8−トリオキサ−11−アザトリデカン−13−イル)オキシ)ヘキサン−1−アミン(Eg3NEg36NH2)の合成
Eg3NEg36Pht 6.5g(11mmol)、ヒドラジン一水和物2.2g(44mmol)をEtOH 130mLに溶解させた後、4時間加熱還流した。室温に戻した後、溶媒留去した。得られた白色固体をジエチルエーテルに分散させ、セライトろ過を行い、溶媒留去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(CHCl3:MeOH+5%トリエチルアミン)により精製することで、無色透明液体3.92g(8.65mmol)を得た。
収率:78%
IR(NaCl)3371,2929,2862,1577,1458,1351,1328,1303,1249,1199,1113cm-1
1H−NMR(CDCl3,500MHz)δ3.65−3.62(m,8H),3.61−3.59(m,4H),3.56−3.52(m,8H),3.48(t,J=6.2Hz,2H),3.40(t,J=6.7Hz,2H),3.38(s,6H),2.80−2.75(m,6H),2.68(t,J=7.0Hz,2H),1.56(quin,J=6.6Hz,2H),1.44(quin,J=6.7Hz,2H),1.38−1.30(m,4H)
13C−NMR(CDCl3,126MHz)δ71.97,71.22,70.65,70.55,70.42,69.82,69.36,59.05,54.67,54.59,42.16,33.66,29.69,26.73,26.07
ESI−MS m/z 453.35[M+H]+
HRMS(ESI) Calcd for C224927[M+H]+:453.3534,Found:453.3505
[合成例5]1,1’−(5−ヨード−1,3−フェニレン)ビス(3−(11−(2−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)エチル)−2,5,8,14−テトラオキサ−11−アザイコサン−20−イル)ウレア(Iodo−Eg3NEg36U)の合成
5−ヨードイソフタル酸584mg(2mmol)をSOCl2 30mLに溶解させ、2時間加熱還流した。室温に戻した後、溶媒留去することで5−ヨードイソフタロイルジクロリドを得た。これをTHF 4mLに溶解させ、氷浴で撹拌した。そこへNaN3 860mg(13mmol)を水5mLに溶解させた溶液を滴下し、氷浴で2時間撹拌した。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液15mLを加え、トルエンで抽出を行った。MgSO4で乾燥し、溶液量が15mL程度になるまで濃縮することで、5−ヨードイソフタロイルジアジドのトルエン溶液を得た。この溶液を100℃で2時間加熱することで、1−ヨード−3,5−ジイソシアナトベンゼンのトルエン溶液を得た。5−ヨードイソフタロイルジクロリド、5−ヨードイソフタロイルジアジド及び1−ヨード−3,5−ジイソシアナトベンゼンの生成はIRで確認を行った。1−ヨード−3,5−ジイソシアナトベンゼンのトルエン溶液を氷浴で撹拌し、そこへEg3NEg36NH2 2.0g(4.4mmol)をCH2Cl2 8mLに溶解させた溶液を滴下した。徐々に室温まで昇温しながら一晩撹拌した。溶媒留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(CHCl3:MeOH)により精製を行い、黄色透明液体1.2g(0.99mmol)を得た。
収率:50%
IR(NaCl)3491,3340,2930,2864,1695,1594,1538,1449,1351,1305,1261,1201,1111,1028cm-1
1H−NMR(DMSO−d6,500MHz)δ8.44(s,2H),7.45(d,J=1.8Hz,2H),7.28(t,J=1.8Hz,1H),6.06(t,J=5.6Hz,2H),3.51−3.46(m,24H),3.44−3.41(m,16H),3.40−3.35(m,8H),3.23(s,12H),3.04(q,J=6.4Hz,4H),2.65(t,J=6.2Hz,12H),1.48(quin,J=6.7Hz,4H),1.41(quin,J=6.7Hz,4H),1.32−1.26(m,8H)
13C−NMR(DMSO−d6,126MHz)δ155.31,142.63,118.96,106.07,95.01,79.64,71.76,70.60,70.28,70.17,70.07,69.71,66.82,58.51,54.63,30.13,29.71,26.67,25.93
ESI−MS m/z 596.32[M+2H]2+
HRMS(ESI)Calcd for C52101616I[M+2H]2+:596.3154,Found:596.3154
[実施例1]1,1’−(5−(1−オイル−2,2,6,6−テトラメチル−3−ジヒドロピリジン−4−イル)ベンゼン−1,3−ジイル)ビス(3−(11−(2−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)エチル)−2,5,8,14−テトラオキサ−11−アザイコサン−20−イル)ウレア)(TEMPO−Eg3NEg36U)の合成
Iodo−Eg3NEg36U 596mg(0.5mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)[Pd(PPh34]28.9mg(0.025mmol)、2,2,6,6−テトラメチル−4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3−ジオキサボロラン−2−イル)−3,6−ジヒドロピリジン−1(2H)−イルオキシ ラジカル168mg(0.6mmol)を三頸フラスコに入れ、窒素雰囲気下、脱気した1,4−ジオキサン4mLを加えた後、30分間N2バブリングを行った。そこへ10% Na2CO3aq. 4mLを加え、90℃で6時間加熱した後、飽和食塩水を加え、CHCl3で抽出を行った。MgSO4で乾燥し、溶媒留去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(CHCl3:MeOH)により精製後、褐色蝋状固体344mg(0.28mmol)を得た。
収率:57%
IR(NaCl)3516,3339,2929,2862,1696,1668,1602,1558,1453,1360,1249,1201,1114,1033,850cm-1
1H−NMR(DMSO−d6+アスコルビン酸,500MHz)δ8.34(s,2H),7.29(t,J=1.7Hz,1H),7.04(d,J=1.7Hz,2H),5.98(t,J=5.6Hz,2H),5.78(s,1H),3.52−3.47(m,44H),3.36(t,J=6.4Hz,4H),3.23(s,12H),3.05(q,J=6.4Hz,4H),2.30(s,2H),1.49(quin,J=6.7Hz,4H),1.41(quin,J=6.7Hz,4H),1.33−1.27(m,8H),1.20(s,6H),1.12(s,6H)
13C−NMR(DMSO−d6+アスコルビン酸,126MHz)δ155.63,141.57,141.27,131.82,130.22,107.76,105.88,91.77,88.35,73.72,71.74,70.66,70.19,70.04,68.41,58.51,54.28,30.23,29.63,26.67,25.90
ESI−MS m/z 609.42[M+2H]2+
HRMS(ESI)Calcd for C61116717[M+2H]2+:609.4208,Found:609.421
[実施例2]ESR測定
実施例1で得られたTEMPO−Eg3NEg36Uの1mM水溶液を調製し、XバンドのESR測定を25℃で行った。得られた結果を図1に示す。
図1に示すように、窒素の核スピンに由来する三本線がg=2.0087付近に確認された。また、一番高磁場側のスペクトル強度の低下が観測され、分子の運動性の低下が示唆された。
[実施例3]濃度依存性の検討
ホスフェートバッファー中pH5.0,7.0と9.0での濃度依存性(0.1〜5mM)について検討した。具体的には、ESRスペクトル強度と線幅から見積もった回転相関時間(τR)を算出し、濃度とτRとの相関性を求めた。得られた結果を図2に示す。
その結果、pH5.0と7.0では0.66mM付近で、pH9.0では0.76mM付近でτRの変局点が観測され、変局点以上の高濃度でτR値が大きくなった。このことから、変局点はCAC(臨界会合濃度)を示し、この濃度前後でTEMPO−Eg3NEg36Uのモノマーが会合体を形成することが示唆された。表1にpH、CACとτR値をまとめた。
[実施例4]温度応答性の検討
TEMPO−Eg3NEg36Uの水溶液中での温度応答性について、800nmの透過度から検討した。得られた結果を図3に示す。会合体を形成している濃度である2mM及び5mMでは、39℃付近で急激に透過度が低下し濁りが生じた。この温度はLCST(下限臨界溶液温度)であり、昇温によりTEMPO−Eg3NEg36Uの水和されているオリゴエチレングリコール鎖が脱水し、自己集合化が促進されたことを意味する。一方、モノマー状態である0.5mMでは、緩やかに透過度が下がり、LCST値は2mM及び5mMと比べて上昇し、45℃付近に観測された。
[実施例5]動的光散乱法(DLS)による測定
会合体を形成している5mMにおいて、動的光散乱法(DLS)による測定を20〜70℃で行った。得られた結果を図4に示す。
LCST前の温度である20〜38℃では流体力学直径(DH)が約50nm付近を極大として観測されたのに対して、LCST以上となるとマイクロメートルサイズの大きなサイズが観測された。これら結果はLCST前後での透過度変化に対応している。すなわちLCST前の透過度が高い溶液中では約50nmの微粒子が形成されているのに対して、LCST後の溶液は、マイクロメートルサイズの大きな微粒子が形成されているため透過度が低下した。
[実施例6]透過型電子顕微鏡(TEM)による観察
透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、TEMPO−Eg3NEg36Uの形態観察を行った。具体的には、25℃で調製したLCST前のサンプルと60℃で調製したLCST後のサンプル2種類について、それぞれ酢酸ウランによる陰染色したあと観察した。得られた結果を図5に示す。
LCST前では20〜80ナノメートルサイズの球状ナノ微粒子が観測された[図5(a)]。また得られたサイズ分布についてはDLSで得られたサイズとほぼ一致した。図5(c)に目視でカウントした球状ナノ微粒子のサイズを棒グラスとしてまとめた。一方、LCST後では100ナノメートル以下のサイズを有する微粒子が沢山集まって出来る大きな微粒子の形成が観測された[図5(b)]。
[実施例7]ゼータ電位測定
TEMPO−Eg3NEg36U水溶液中で得られる微粒子の表面電荷についてゼータ電位を用いて温度依存性の検討を行った。5mMサンプルについて20〜70℃まで測定した。図7にDLSで得られたサイズの温度依存性とともにゼータ電位の温度依存性の結果をそれぞれ示す。
低温から昇温するに従って−15mVであった表面電位が徐々に小さくなり、LCST値を境にプラス電荷を有する微粒子へと電荷変化が生じた。このことは低温で観測されているナノ微粒子は水和されているため、オリゴエチレングリコールが表面に位置しマイナスの電荷を示す。一方、LCST後、脱水が生じオリゴエチレングリコールが疎水性を帯びるとプロトン化した三級アミンカチオンが表面に位置することでプラスの電荷を生じたことを示唆している。
[実施例8]水プロトン緩和能の測定
TEMPO−Eg3NEg36Uの0.1〜10mMの縦緩和時間(T1)および横緩和時間(T2)を、NMRを用いてそれぞれ算出し、その値の逆数と濃度の関数から水プロトン緩和能r1とr2を見積もった。7TではpH5.0,7.0,9.0のサンプルを、また1TではpH7.0のサンプルについて緩和時間測定し、緩和能を得た。なお、対照サンプルとして低分子ラジカルのoxoTEMPOを用いた。
<T1緩和時間測定>
7Tで測定したpH7.0のサンプルについては、0.1〜1.0mMではr1=0.17mMs-1を示し、対照サンプルのr1=0.15mMs-1との間に緩和能の差は見出されなかった。一方、高濃度の1.0〜10.0mMでは対照サンプルの1.4倍の数字のr1=0.21mMs-1が得られた。このことはCAC未満の濃度では、TEMPO−Eg3NEg36Uは溶液中モノマーであるため、対照サンプルと同程度の緩和能であったのに対して、CAC以上の濃度では、約50ナノメートルサイズのナノ微粒子を形成することで緩和能(r1)が大きくなることを意味する[図7(a)]。同様にpHを変化させたpH5.0と9.0のサンプルでもCAC前後で緩和能(r1)増加が観測された[図7(b)、(c)]。
一方、pH依存性については、pH7.0が最も大きなr1を示した。このことは、酸性やアルカリ性条件ではナノ微粒子内での電荷反発が生じるのに対して、中性ではその反発が小さく最も密に分子が詰まっていることを示唆する。
1Tで得られたpH7.0のサンプルでも同様に対照サンプルに比べて1.3倍程度大きな緩和能(r1)が得られた[図7(d)]。1Tで得られたT1強調画像を図7(e)に示す。得られた緩和能とpHの関係を表2に示す。
<T2緩和時間測定>
7Tで得られたpH7.0のサンプルのr2は、対照サンプルに比べ約1.7倍の値を示した。図8(a)に得られたpH7.0の横緩和時間の逆数と濃度プロットを示す。1Tで得られたT2強調画像を図8(b)に示す。またr2のpH依存性を表3にまとめた。
下記の反応スキーム3に従って、目的物質である1,1’−(ベンゼン−1,3−ジイル)ビス(3−(2,5,8,11,14,17,20−ヘプタオキサヘキサコサン−26−イル)ウレア)−5−(5−ベンゼン−5−イル)−(4−Gd−DO3A−1−オキサブタン−1−イル)(Gd−AL−UBD)を合成した。
以下、上記の反応スキーム3の各反応について、詳細に説明する。
[合成例5]5−ヒドロキシイソフタル酸ジメチルの合成
濃硫酸を含むメタノール中に5−ヒドロキシイソフタル酸10.0g(54.9mmol)を加えて70℃で5時間攪拌した。得られた溶液を溶媒留去し白色固体を得た。残渣を酢酸エチル200mLに溶解し、炭酸水素ナトリウム水溶液200mLと水200mLで洗浄した。有機層をMgSO4で乾燥し、溶媒留去によって粗固体を得た。得られた固体をCH2Cl2/MeOH(10:1)の溶媒を用いてカラムクロマトグラフィーで精製し、5−ヒドロキシイソフタル酸ジメチルの白色固体を83%の収率で得た。
IR(KBr)3442,1700,1662,1602,1212,975.
1H−NMR(CDCl3,500MHz)δ8.27(s,1H),7.71(s,2H),5.51(s,1H),3.94(s,6H).
ESI−MS m/z 443.0966[2M+Na]+
得られた1H−NMRスペクトルは以前報告された5−ヒドロキシイソフタル酸ジメチルの1つと一致した。
[合成例6]5−ベンジルオキシイソフタル酸ジメチルの合成
5−ヒドロキシイソフタル酸ジメチル9.5g(45.2mmol)と炭酸カリウム13.2g(95.8mmol)をアセトン190mLに溶解し、臭化ベンジル7.4mL(62.4mmol)を滴下し、3時間加熱還流を行った。析出した固体を溶解する目的でMeOH70mLを加えてさらに1時間加熱還流を続けた。吸引ろ過後、得られた溶液を留去し、白色固体を得た。固体をヘキサン/酢酸エチル(1:1)の溶媒を用いてカラムクロマトグラフィーで精製し、5−ベンジルオキシイソフタル酸ジメチル(13.3g,44.3mmol)を白色固体として98%の収率で得た。
IR(KBr)3098,2953,1718,1596,1430,1250,880.
1H−NMR(CDCl3,500MHz)δ8.29(t,J=1.5Hz,1H),7.84(d,J=1.4Hz,2H),7.45(d,J=7.4Hz,2H),7.40(t,J=7.4Hz,2H),7.35(d,J=7.3Hz,1H),5.15(s,2H),3.94(s,6H).
ESI−MS m/z 623.1792[2M+Na]+
得られた1H−NMRスペクトルは以前報告された5−ベンジルオキシイソフタル酸ジメチルの1つと一致した。
[合成例7]5−ベンジルオキシイソフタル酸の合成
5−ベンジルオキシイソフタル酸ジメチル13.3g(44.4mmol)をテトラヒドロフラン(THF)133mLに溶解し、5M塩酸水溶液を加え加熱還流を2時間行った。得られた溶液を水640mLに加え中和し15分間攪拌した。得られた固体を吸引ろ過し、真空ポンプで乾燥させた。得られた固体を再びMeOH/CH2Cl2に溶解させ、MgSO4で乾燥後溶媒留去し、5−ベンジルオキシイソフタル酸(11.4g,41.9mmol)の白色固体を94%の収率で得た。
IR(KBr)2976,1700,1594,1457,1379,950.
1H−NMR(CD3OD,500MHz)δ8.24(t,J=2.6Hz,1H),7.78(d,J=1.4Hz,2H),7.47(d,J=7.5Hz,2H)7.38(t,J=7.5Hz,2H),7.31(t,J=7.4Hz,1H),5.18(s,2H).
ESI−MS m/z 271.06[M−H]-
[合成例8]1,1’−(ベンゼン−1,3−ジイル)ビス(3−(2,5,8,11,14,17,20−ヘプタオキサヘキサコサン−26−イル)ウレア)−5−フェニルメチルオキシベンゼン(benzyl−UBD)の合成
5−ベンジルオキシイソフタル酸3.95g(14.5mmol)を60mLのチオニルクロライドへ溶解させ2時間加熱還流を行った。残渣をTHFに溶解させ氷水中で攪拌した。得られた溶液に、NaN3(6.22g,95.7mmol)を溶解した水溶液63mLを加え2時間攪拌した。得られた溶液をトルエンで抽出し、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、MgSO4で乾燥させた。得られたベンジル−1,3−ベンゼンジカルボニルトリアジン誘導体溶液を真空ポンプで100mLになるまで留去した。この溶液を100°Cで2時間加熱してベンジル−1,3−ベンゼンジイソシアナト誘導体を得た。この溶液に2,5,8,11,14,17,20−ヘプタオキサヘキサコサン−26−アミン(Eg66NH2)(13.2g,33.4mmol)を溶解したCH2Cl2溶液84mLを滴下し、氷水中で一晩攪拌した。得られた溶液を溶媒留去し、CH2Cl2:MeOH(10:1)の溶媒を用いたカラムクロマトグラフィーで精製し、13.7gのbenzyl−UBDを90%の収率で得た。
IR(neat on NaCl)3343,2926,2814,1669,1618,1550,1255,1107.
1H−NMR(CDCl3,500MHz)δ7.41(d,J=7.2Hz,2H),7.35(t,J=7.2Hz,2H),7.30(d,J=7.3Hz,1H)6.93(s,1H),7.23(s,2H),7.02(d,J=1.5Hz,2H)6.65(s,1H),5.40(s,1H),5.04(s,2H),3.65−3.61(m,40H),3.57−3.52(m,8H),3.45(t,J=6.3Hz,4H),3.35(s,6H),3.21(q,J=12,6.6Hz,4H),1.57−1.54(m,4H),1.54−1.58(m,4H),1.37−1.36(m,8H).
13C−NMR(CDCl3,126MHz)δ160.02,156.09,141.12,137.25,128.41,127.70,127.52,102.20,99.96,71.87,71.21,70.64,70.51,70.47,69.96,69.80,58.96,39.78,29.86,29.27,26.46,25.72.
HRMS(ESI): m/z calcd. for C53924Na217[M+2Na]2+:551.3121 found:551.3121.
[合成例9]1,1’−(ベンゼン−1,3−ジイル)ビス(3−(2,5,8,11,14,17,20−ヘプタオキサヘキサコサン−26−イル)ウレア)−5−ヒドロキシベンゼン(OH−UBD)の合成
水素雰囲気下、benzyl−UBD(13.1g,12.4mmol)のEtOH溶液462mLへ1.0gのPd/C(Pd5%)を加え48時間攪拌した。ろ過後、残渣を溶媒留去しCH2Cl2:MeOH(5:1)の溶媒を用いてカラムクロマトグラフィーで精製を行い、10.1g(10.4mmol)のOH−UBDを84%の収率で得た。
IR(Neat on NaCl)3475,2930,2866,1672,1618,1556,1248,1106cm-1
1H−NMR(CDCl3,500MHz)δ8.06(s,1H),7.36(s,2H),6.75(s,1H),6.73(s,2H),5.59(t,J=5.3Hz,2H),3.64−3.62(m,40H),3.57−3.53(m,8H),3.43(t,J=6.5Hz,4H),3.36(s,6H),3.16(q,J=13,6.6Hz,4H),1.57−1.51(m,4H),1.48−1.44(m,4H),1.32−1.31(m,8H).
13C−NMR(CDCl3,126MHz)δ158.05,156.32,140.86,101.62,101.58,71.88,71.32,70.61,70.54,70.50,70.45,69.94,58.96,39.88,29.95,29.35,26.57,25.75.
HRMS(ESI): m/z calcd. for C46864Na217[M+2Na]2+:506.2886 found:506.2883.
[合成例10]1,1’−(ベンゼン−1,3−ジイル)ビス(3−(2,5,8,11,14,17,20−ヘプタオキサヘキサコサン−26−イル)ウレア)−5−(5−ベンゼン−5−イル)−(4−ブロモ−1−オキサブタン−1−イル)(Br−AL−UBD)の合成
OH−UBD900mg(931μmol)と1,3−ジブロモプロパン1.88g(9.30nmol)をアセトニトリル60mLに溶かし、炭酸カリウム1.29g(9.30mmol)を加え10時間加熱還流した。ひだ折り濾過を行い、濾液を溶媒留去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(CHCl3:MeOH=100:1〜20:1)により精製することで淡黄色液体469mgを得た。収率:46%
IR(neat on NaCl)2925,2864,1696,1611,1559,1457,1419,1349,1257,1107,947,846cm-1
1H−NMR(CDCl3,500MHz)δ7.41(s,2H),6,97(d,J=1.8Hz,2H),6.56(s,1H),5.52(t,J=5.6Hz,2H),4.07(t,J=5.8Hz,2H),3.65−3.62(m,40H),3.58−3.53(m,10H),3.46(t,J=6.4Hz,4H),3.36(s,6H),3.21(q,J=6.0Hz,4H),2.26(quin,J=6.1Hz,2H),1.57(quin,J=6.5Hz,4H),1.50(quin,J=6.8Hz,4H),1.36(m,8H).
13C−NMR(CDCl3,126MHz)δ159.9,156.1,141.1,102.0,99.6,77.3,77.0,76.8,71.9,71.2,70.7,70.5,70.0,65.3,59.0,39.8,32.5,30.2,30.0,29.3,26.5,25.7.
HRMS(ESI): m/z calc. for C4991BrN4Na217[M+2Na]2+:567.2665 Found:567.2728.
[合成例11]1,1’−(ベンゼン−1,3−ジイル)ビス(3−(2,5,8,11,14,17,20−ヘプタオキサヘキサコサン−26−イル)ウレア)−5−(5−ベンゼン−5−イル)−(4−(DO3A−(MeO)3)−1−オキサブタン−1−イル)(DO3A−AL−UBD)の合成
Br−AL−UBD198mg(182μmol)と1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−三酢酸トリメチル[DO3A−(MeO)3]77.9mg(200μmol)をアセトニトリル5mLに溶かし、炭酸カリウム27.7mg(200μmol)を加え15時間加熱還流した。ひだ折り濾過を行い、濾液を溶媒留去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(CHCl3:MeOH=100:1〜10:1)により精製することで淡黄色液体123mgを得た。収率:47%
IR(KBr)2927,2866,1735,1685,1614,1550,1457,1356,1210,1108cm-1
1H−NMR(D2O,500MHz)δ6.87(s,2H),6.84(s,1H),4.24(t,J=5.3Hz,2H),3.73−3.53(m,58H),3.57(t,J=6.7Hz,4H),3.54−3.47(m,6H),3.45−3.32(m,11H),3.21(t,J=6.8Hz,4H),3.15−2.89(m,4H),2.88−2.57(m,8H),2.24−2.13(m,2H),1.69−1.49(m,8H),1.47−1.34(m,8H).
13C−NMR(CDCl3,126MHz)δ159.9,156.1,141.1,102.0,99.6,77.3,77.0,76.8,71.9,71.2,70.7,70.5,70.0,65.3,59.0,39.8,32.5,30.2,30.0,29.3,26.5,25.7.
HRMS(ESI): m/z calc. for C66123823[M+H]+:1395.8696 Found:1395.8620.
[実施例9]1,1’−(ベンゼン−1,3−ジイル)ビス(3−(2,5,8,11,14,17,20−ヘプタオキサヘキサコサン−26−イル)ウレア)−5−(5−ベンゼン−5−イル)−(4−Gd−DO3A)−1−オキサブタン−1−イル)(Gd−AL−UBD)の合成
DO3A−AL−UBD117mg(81.4μmol)をNaOH水溶液10mL(pH=13)に溶解させ、室温下で一晩攪拌した。HCl水溶液を加えpH=7.0に調整し、GdCl3・6H2O 34.2mg(92.0μmol)を水10mLに溶かした溶液をゆっくり滴下した。滴下に伴い低下するpHをNaOH水溶液を滴下することでpH=7.0付近に維持した。pH=7.0に維持しながら一日攪拌した。凍結乾燥機を用いて乾燥することで、粘性白色化合物を得た。得られた化合物に対し透析チューブ(Mw=1000〜1500)を用いて透析を行いフリーのGdイオンを除いた。キシレノールオレンジを用いたUV測定によりGdイオンの流出完了を確認した。透析後の溶液を凍結乾燥機を用いて乾燥することで白色固体40.9mgを得た。収率:33%
IR(KBr)2922,2867,1685,1610,1557,1457,1419,1249,1103,948,840cm-1
HRMS(ESI): m/z calc. for C631138NaO23[M+Na]+:1530.7068 Found:1530.7166.
下記の反応スキーム4に従って、目的物質である1,1’−(ベンゼン−1,3−ジイル)ビス(3−(2,5,8,11,14,17,20−ヘプタオキサヘキサコサン−26−イル)ウレア)−5−(5−ベンゼン−5−イル)−(4−Gd−DO3A)−9−ブロモ−ジオキサオクタン−1−イル)(Gd−Eg−UBD)を合成した。
[合成例12]1,1’−(ベンゼン−1,3−ジイル)ビス(3−(2,5,8,11,14,17,20−ヘプタオキサヘキサコサン−26−イル)ウレア)−5−(ベンゼン−5−イル)−(9−ブロモ−4,7−ジオキサオクタン−1−イル)(Br−Eg−UBD)の合成
1,3−ジブロモプロパンの代わりに1,2−ビス(2−ブロモエトキシ)エタンを用いた以外は、合成例10と同様の手法でBr−Eg−UBDを合成した。収率:54%
IR(neat on NaCl)2927,2866,1690,1612,1558,1456,1351,1259,1109,945,848cm-1
1H−NMR(CDCl3,500MHz)δ7.29(s,2H),6.94(d,J=1.6Hz,2H),6.60(s,1H),5.44(t,J=5.3Hz,2H),4.11(t,J=4.6Hz,2H),3.83−3.82(m,4H),3.80−3.67(m,44H),3.65−3.53(m,8H),3.48−3.45(m,6H),3.36(s,6H),3.21(q,J=6.6Hz,4H),1.57(quin,J=6.6Hz,4H),1.51(quin,J=6.9Hz,4H)1.37−1.36(m,8H).
13C−NMR(CDCl3,126MHz)δ160.0,155.9,141.0,102.3,99.9,71.9,71.2,71.3,70.8,70.7,70.6,70.5,70.0,69.8,67.4,59.0,40.0,30.4,29.8,29.2,26.3,25.7.
HRMS(ESI): m/z calc. for C52974BrNa219[M+2Na]2+:603.2857 Found:603.2907.
[合成例13]1,1’−(ベンゼン−1,3−ジイル)ビス(3−(2,5,8,11,14,17,20−ヘプタオキサヘキサコサン−26−イル)ウレア)−5−(ベンゼン−5−イル)−(4−(DO3A)−(MeO)3)−9−ブロモ−4,7−ジオキサオクタン−1−イル)(DO3A−Eg−UBD)の合成
Br−AL−UBDの代わりにBr−Eg−UBDを用いた以外は、合成例11と同様の手法でDO3A−Eg−UBDを合成した。収率:43%
IR(KBr)2925,2866,1737,1685,1614,1551,1457,1355,1210,1109,948,846cm-1
1H−NMR(D2O,500MHz)δ6.93(s,2H),6.80(s,1H),4.15(s,2H),3.88−3.47(m,77H),3.39(s,6H),3.35−3.23(m,4H),3.19(t,J=6.7Hz,4H),2.97−2.78(m,4H),2.78−2.52(m,8H),1.72−1.52(m,8H),1.44−1.32(m,8H).
13C−NMR(CDCl3,126MHz)δ159.9,156.1,141.1,102.0,99.6,77.3,77.0,76.8,71.9,71.2,70.7,70.5,70.0,65.3,59.0,39.8,32.5,30.2,30.0,29.3,26.5,25.7.
HRMS(ESI): m/z calc. for C691288Na225[M+2Na]2+:757.4388 Found:757.4399.
[実施例10]1,1’−(ベンゼン−1,3−ジイル)ビス(3−(2,5,8,11,14,17,20−ヘプタオキサヘキサコサン−26−イル)ウレア)−5−(ベンゼン−5−イル)−(4−Gd−DO3A)−9−ブロモ−4,7−ジオキサオクタン−1−イル)(Gd−Eg−UBD)の合成
DO3A−AL−UBDの代わりにDO3A−Eg−UBDを用いた以外は、実施例9と同様の手法でGd−Eg−UBDを合成した。収率:43%
IR(KBr)2925,2868,1682,1610,1556,1548,1453,1417,1249,1107,948,842cm-1
HRMS(ESI): m/z calc. for C661198Na225[M+Na]+:813.8664 Found:813.8729.
[実施例11]臨界ミセル濃度(CMC:critical micelle concentration)の測定
実施例10で得られたGd−Eg−UBDの臨界ミセル濃度を見積もるために、分光蛍光光度計を用いてピレン含有溶液中の蛍光強度変化を追跡した(図9)。ピレン1μM溶液中に、生理食塩水を用いて種々の濃度に調整したGd−Eg−UBDを滴下することで生じるピレンの1番目のピーク(I1)と3番目のピーク(I3)との蛍光強度比を濃度でプロットした。その結果、変曲点が33.3μMで観測されたことから、この濃度以上でミセルが形成されることが分かった(図10)。
また、実施例9で得られたGd−AL−UBDについてもGd−Eg−UBDと同様に、臨界ミセル濃度を求めた。その結果、変曲点が23.8μMで観測されたことから、この濃度以上でミセルが形成されることが分かった(図11及び図12)。
[実施例12]ミセルサイズの測定
Gd−Eg−UBDの自己集合化で得られたミセルのサイズを求めるために、動的光散乱法(DLS)による測定を、0.25mM生理食塩水中で37〜47℃の温度範囲で行った。その結果、37℃では、約30nmサイズのDH(流体力学直径)に対応するピークが観測され、昇温することで新たに1000nmサイズのピークが観測された。47℃では1000nmサイズのピークのみとなった(図13)。
また、Gd−Eg−UBDと同様に、Gd−AL−UBDの自己集合化で得られたミセルを用いたDLSによる測定を0.25mM生理食塩水中で行い、温度依存的なサイズ変化が観測された(図14)。
[実施例13]走査型電子顕微鏡(SEM)による観察
走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、Gd−AL−UBDの自己集合化で得られたナノ微粒子の形態観察を行った。その結果、0.25mM生理食塩水中で、30nm程度のナノ微粒子を基本とし、それらが集合化していることが明らかとなった(図15)。SEMでは、水を含んだナノ微粒子が乾燥により脱水化するためDHよりも小さくなった。
[実施例14]MRI造影剤としての有用性の検討
MRI造影剤としての有用性を検討するために、生理食塩水を用いて種々の濃度に調整したGd−Eg−UBD及びGd−AL−UBDのT1強調画像を得た。対象化合物として市販造影剤Gd−DOTAを用いて同様に画像を得た(図16)。その結果、Gd−Eg−UBDとGd−AL−UBDとは濃度依存的に輝度の上昇が観測された。しかし、濃度が2.5mM以上になると輝度の低下が観測された。これは高濃度によるT2強調増大に伴う挙動である。また、Gd−Eg−UBDとGd−AL−UBDとの0.31mMにおける輝度は、Gd−DOTA0.5mMにおける輝度に比べて高いことから、同じ濃度では、Gd−Eg−UBDとGd−AL−UBDとは、Gd−DOTAよりもより高い輝度を示した。
また、得られた画像からT1緩和時間を算出し、その逆数であるT1 -1を濃度でプロットし、傾きから水プロトン緩和能(r1)を算出した。その結果、Gd−Eg−UBDのr1は8.3mM-1-1を示し、またGd−AL−UBDのr1は20.1mM-1-1を示した。これらの水プロトン緩和能(r1)はGd−DOTAの水プロトン緩和能(r1)の数倍の大きさであるので、Gd−Eg−UBD及びGd−AL−UBDがMRI造影剤として有用であることが示された。

Claims (6)

  1. 下記式(1)で表される温度応答性化合物。
    [式中、
    Rは、それぞれ独立して、下記式(2)又は式(3):
    (式中、※は結合位置を表し、aは1乃至20を表し、bは1乃至20を表し、cは1乃至20を表し、dは1乃至20を表し、eは1乃至20を表す。)で表される基を表し、
    Aは単結合を表すか、又は下記式(4)、式(5)若しくは式(6):
    (式中、※は結合位置を表し、fは1乃至20を表し、gは1乃至20を表し、hは1乃至20を表し、iは1乃至20を表し、mは0乃至10を表し、nは0乃至10表す。)で表される基を表し、
    Xは、機能性官能基を表す。]
  2. 前記機能性官能基がキノリン構造を有する化合物から誘導される基、常磁性金属と配位子とからなるキレート錯体から誘導される基、及び有機ラジカル構造を分子内に有する化合物から誘導される基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基である、請求項1に記載の化合物。
  3. 前記Aが単結合又は上記式(6)で表される基を表す、請求項1又は請求項2に記載の化合物。
  4. 前記機能性官能基が下記式(X1)乃至式(X6)で表される基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基である、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の化合物。
    (式中、※は結合位置を表し、kは0乃至20を表し、lは0乃至20を表す。)
  5. 請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の化合物を含む医療用材料。
  6. 請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の化合物を含むMRI造影剤。
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