JPWO2017119410A1 - リチウム銅系複合酸化物 - Google Patents

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Abstract

リチウムイオン二次電池用正極活物質として有用な新規化合物を提供する。
組成式(1):
LiCu
[組成式(1)中、Xは、Si又はGeを示す。yは、0.8〜1.2を示す。mは、1.5〜2.5を示す。nは、3.9〜4.1を示す。]
で表されるリチウム銅系複合酸化物。

Description

本発明は、リチウム銅系複合酸化物に関する。
リチウムイオン二次電池は、エネルギー貯蔵デバイスの中で最も重要な位置を占めるものであり、近年では、プラグインハイブリッド用自動車電池等、その用途が拡大しつつある。
リチウムイオン二次電池の正極に関し、現在、LiCoO、LiNi1/3Co1/3Mn1/3などの正極活物質が主流となっている(非特許文献1及び2)。しかしながら、これらの正極活物質を含む正極材料には、コバルト、ニッケルなどの希少金属が大量に含まれているため高価であり、さらに、助燃性も強いため発熱事故等を引き起こす要因となっている。
そこで、現在では、このような問題を解決可能な正極活物質として、自然界に豊富に存在する元素である鉄を利用し、強固なポリアニオン酸骨格により助燃性を大幅に抑制した鉄系ポリ(オキソ)アニオン材料、特にLiFePOが注目されている(非特許文献3)。
Solid State Ionics,3−4,171−174,1981 Electrochem.Soc.,151(6),A914−A921,2004 Electrochem.Soc.,144(4),1188−1194,1997
しかしながら、上記したLiFePO等の正極材料は、構造中に充放電反応に関与しないポリアニオンユニットを有していることから、理論容量が274mAh/gのLiCoOなどの単純酸化物系正極材料よりも低く、また、実用化に際しては微粒子化、カーボンとの複合化などを行うため、タップ密度も必然的に低下する。
本発明は、このような現状に鑑みてなされたものであり、リチウムイオン二次電池用正極活物質として有用な新規化合物を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記した本発明の課題を解決すべく鋭意検討を重ねてきた。その結果、特定の組成を有するリチウム銅系複合酸化物の合成に成功した。さらに、当該リチウム銅系複合酸化物は、リチウムイオンの挿入及び脱離が可能であり、リチウムイオン二次電池用正極活物質として使用できる程度に高い理論充放電容量を示すことを見出した。本発明者らは、これらの知見に基づいてさらなる研究を重ねることにより本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明は、代表的には以下の項に記載の主題を包含する。
項1.
組成式(1):
LiCu
[組成式(1)中、XはSi又はGeを示す。yは0.8〜1.2を示す。mは1.5〜2.5を示す。nは3.9〜4.1を示す。]
で表されるリチウム銅系複合酸化物。
項2.
単斜晶構造を有する、上記項1に記載のリチウム銅系複合酸化物。
項3.
平均粒子径が0.1〜100μmである、上記項1又は2に記載のリチウム銅系複合酸化物。
項4.
リチウムと、銅と、ケイ素又はゲルマニウムと、酸素とを含む混合物を加熱する工程を含む、上記項1〜3のいずれかに記載のリチウム銅系複合酸化物の製造方法。
項5.
加熱温度が600℃以上である、上記項4に記載の方法。
項6.
組成式(2):
LiCu
[組成式(2)中、XはSi、Ti又はGeを示す。yは0.8〜1.2を示す。mは1.5〜2.5を示す。nは3.9〜4.1を示す。]
で表されるリチウム銅系複合酸化物を含む、リチウムイオン二次電池用正極活物質。
項7.
上記項6に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質を含む、リチウムイオン二次電池用正極。
項8.
さらに、導電助剤を含む、上記項7に記載のリチウムイオン二次電池用正極。
項9.
上記項7又は8に記載のリチウムイオン二次電池用正極を含む、リチウムイオン二次電池。
本発明のリチウム銅系複合酸化物は、リチウムイオンを挿入及び脱離することができるため、リチウムイオン二次電池用正極活物質として使用することができる。特に、本発明のリチウム銅系複合酸化物を正極活物質として用いることにより、高い充放電容量を発揮するリチウムイオン二次電池とすることができる。
実施例1で得られたLiCuSiOのX線回折パターンを示す図である。 実施例1において焼成温度を900℃とした場合に得られたLiCuSiOのX線回折パターンと、原料化合物であるCuO、並びに原料化合物であるLiCO及びSiOから生成されるLiSiOのX線回折パターンとを比較した結果を示す図である。 実施例1において焼成温度を900℃とした場合に得られたLiCuSiOの走査型電子顕微鏡(SEM)による観察結果を示す図である。 実施例2で得られたLiCuGeOのX線回折パターンを示す図である。 実施例2において焼成温度を900℃とした場合に得られたLiCuGeOの走査型電子顕微鏡(SEM)による観察結果を示す図である。 実施例3及び4で用いた試験用セルの断面図である。 実施例3で行った開回路電位の測定結果を示す図である。 実施例3で行った充放電特性の測定結果(C/20レート)を示す図である。 実施例3で行った充放電特性の測定結果(C/50レート)を示す図である。 カーボンとPVdFのみの充放電結果を示す図である。 実施例4で行った開回路電位の測定結果を示す図である。 実施例4で行った充放電特性の測定結果(C/50レート)を示す図である。
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において、数値範囲を示す場合、当該数値範囲はいずれも両端の数値を含む。
1.リチウム銅系複合酸化物
本発明のリチウム銅系複合酸化物は、組成式(1):
LiCu
[組成式(1)中、XはSi又はGeを示す。yは0.8〜1.2を示す。mは1.5〜2.5を示す。nは3.9〜4.1を示す。]
で表される化合物である。なお、以下において、当該化合物を「組成式(1)で表される化合物」と記載する場合がある。
上記組成式(1)において、Xは、ケイ素(Si)又はゲルマニウム(Ge)である。
上記組成式(1)において、yは0.8〜1.2であり、高容量化の観点からは0.8〜1.0が好ましい。
上記組成式(1)において、mは1.5〜2.5であり、リチウムイオンの挿入及び脱離のし易さ、並びに容量及び電位の観点からは1.75〜2.25が好ましい。また、上記一般式(1)において、nは3.9〜4.1であり、リチウムイオンの挿入及び脱離のし易さ、並びに容量及び電位の観点からは3.95〜4.05が好ましい。
上記組成式(1)で表される化合物としては、具体的には、LiCuSiO、LiCuGeOなどが挙げられる。中でも、後述するリチウムイオン二次電池用正極活物質として用いる場合、性能(特に、容量向上)の観点からは、LiCuSiOが好ましい。
上記組成式(1)で表される化合物の結晶構造は、単斜晶構造であることが好ましい。特に、上記組成式(1)で表される化合物は、単斜晶構造が主相であることが好ましい。上記組成式(1)で表される化合物において、主相である結晶構造の存在量は特に限定的ではなく、上記組成式(1)で表される化合物全体を基準として80mol%以上であることが好ましく、90mol%以上であることがより好ましい。このため、上記組成式(1)で表される化合物は、単相の結晶構造からなる材料とすることもできるし、本発明の効果を損なわない範囲で、他の結晶構造を有する材料とすることもできる。なお、上記組成式(1)で表される化合物の結晶構造は、X線回折測定により確認することができる。
上記組成式(1)で表される化合物は、CuKα線によるX線回折図において、種々の位置にピークを有する。
例えば、LiCuSiOは、回折角2θが18.3〜19.3°、26.3〜27.0°、27.1〜28.0°、28.8〜29.6°、29.9〜30.5°、32.3〜32.9°、35.5〜36.7°、38.6〜39.9°、40.8〜42.0°、43.6〜45.2°、45.7〜46.8°、47.1〜48.3°、48.5〜49.8°、50.8〜52.7°、53.7〜55.2°、55.6〜58.2°、62.3〜63.4°、63.8〜65.1°、及び68.6〜71.0°等にピークを有することが好ましい。
また、例えば、LiCuGeOは、回折角2θが17.9〜19.2°、24.9〜27.0°、31.6〜33.4°、35.0〜39.2°、41.2〜43.4°、49.2〜51.5°、53.2〜55.4°、56.9〜58.7°、60.1〜62.7°、63.7〜65.2°、66.5〜68.5°、69.9〜71.7°、72.7〜75.5°、及び76.9〜78.4°等にピークを有することが好ましい。
上記組成式(1)で表される化合物の平均粒子径は特に限定的ではなく、Li拡散経路の短縮化の観点から、0.1〜100μmであることが好ましく、0.1〜50μmであることがより好ましい。なお、上記組成式(1)で表される化合物の平均粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)により確認することができる。
2.リチウム銅系複合酸化物の製造方法
上記組成式(1)で表される化合物の製造方法において、リチウムと、銅と、ケイ素又はゲルマニウムと、酸素とを含む混合物を得るための原料化合物としては、最終的に混合物中にリチウムと、銅と、ケイ素又はゲルマニウムと、酸素とが所定の比率で含まれていればよく、例えば、リチウム含有化合物、銅含有化合物、ケイ素含有化合物又はゲルマニウム含有化合物、酸素含有化合物等を用いることができる。
リチウム含有化合物、銅含有化合物、ケイ素含有化合物、ゲルマニウム含有化合物、酸素含有化合物等の各化合物の種類については特に限定的ではなく、リチウム、銅、ケイ素又はゲルマニウム、及び酸素の各元素を1種類ずつ含む4種類又はそれ以上の化合物を混合して用いることもでき、また、リチウム、銅、ケイ素又はゲルマニウム、及び酸素のうち、2種類又はそれ以上の元素を同時に含む化合物を原料の一部として用い、4種類未満の化合物を混合して用いることもできる。
これらの原料化合物としては、リチウム、銅、ケイ素又はゲルマニウム、及び酸素以外の金属元素(特に、希少金属元素)を含まない化合物が好ましい。また、原料化合物中に含まれるリチウム、銅、ケイ素又はゲルマニウム、及び酸素の各元素以外の元素については、後述する加熱処理により離脱又は揮発していくものであることが好ましい。
このような原料化合物の具体例としては以下の化合物が挙げられる。
リチウム含有化合物としては、金属リチウム(Li);臭化リチウム(LiBr);シュウ酸リチウム(Li);フッ化リチウム(LiF);ヨウ化リチウム(LiI);硫酸リチウム(LiSO);メトキシリチウム(LiOCH);エトキシリチウム(LiOC);水酸化リチウム(LiOH);硝酸リチウム(LiNO);塩化リチウム(LiCl);炭酸リチウム(LiCO)などが挙げられる。
銅含有化合物としては、金属銅(Cu);酸化銅(CuO);水酸化銅(Cu(OH));炭酸銅(CuCO);シュウ酸銅(CuC);硫酸銅(CuSO);塩化銅(CuCl);ヨウ化銅(CuI);酢酸銅(Cu(CHCOO))等が挙げられる。
ケイ素含有化合物としては、ケイ素(Si);酸化ケイ素(SiO);テトラエトキシシラン(SiOC);テトラメトキシシラン(SiOCH);四臭化ケイ素(SiBr);四塩化ケイ素(SiCl)等が挙げられる。
ゲルマニウム化合物としては、ゲルマニウム(Ge);酸化ゲルマニウム(GeO);四塩化ゲルマニウム(GeCl);四臭化ゲルマニウム(GeBr);四ヨウ化ゲルマニウム(GeI);四フッ化ゲルマニウム(GeF);二硫化ゲルマニウム(GeS)等が挙げられる。
酸素含有化合物としては、水酸化リチウム(LiOH);炭酸リチウム(LiCO);酸化銅(CuO);水酸化銅(Cu(OH));炭酸銅(CuCO);シュウ酸銅(CuC);酸化ケイ素(SiO);酸化ゲルマニウム(GeO)等が挙げられる。
なお、これらの原料化合物は水和物を使用することもできる。
また、本発明の製造方法において使用する原料化合物は、市販品を用いることもできるし、適宜合成して使用することもできる。各原料化合物を合成する場合の合成方法は特に限定的ではなく、公知の方法に従って行うことができる。
これら原料化合物の形状については特に制限されない。取り扱い易さ等の観点からは、粉末状であることが好ましい。また、反応性の観点からは、粒子が微細である方が好ましく、平均粒子径が1μm以下(好ましくは、10〜500nm程度、特に好ましくは60〜80nm程度)の粉末状であることがより好ましい。なお、原料化合物の平均粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)により測定することができる。
リチウムと、銅と、ケイ素又はゲルマニウムと、酸素とを含む混合物は、上記した原料化合物のうち必要な材料を混合することにより得ることができる。
各原料化合物の混合割合については特に限定的ではなく、最終生成物である上記組成式(1)で表される化合物が有する組成となるように混合することが好ましい。原料化合物の混合割合は、原料化合物に含まれる各元素の比率が、生成される上記組成式(1)で表される化合物中の各元素の比率と同一となるようにすることが好ましい。
リチウムと、銅と、ケイ素又はゲルマニウムと、酸素とを含む混合物を調製するための方法としては特に限定的ではなく、各原料化合物を均一に混合できる方法を採用することができる。例えば、乳鉢混合、メカニカルミリング処理、共沈法、各原料化合物を溶媒中に分散させた後に混合する方法、各原料化合物を溶媒中で一度に分散させて混合させる方法などを採用することができる。これらの中でも、乳鉢混合を採用することにより簡便な方法によって混合物を得ることができ、また、共沈法を採用することにより均一な混合物を得ることができる。
また、混合手段としてメカニカルミリング処理を行う場合、メカニカルミリング装置としては、例えば、ボールミル、振動ミル、ターボミル、ディスクミル等を用いることができ、中でもボールミルが好ましい。また、メカニカルミリング処理を行う場合には、混合と加熱とを同時に行うことが好ましい。
混合時及び加熱時の雰囲気は特に限定的ではなく、例えば、アルゴン、窒素等の不活性ガス雰囲気、水素ガス雰囲気などを採用することができる。また、真空等の減圧下で混合及び加熱を行ってもよい。
リチウムと、銅と、ケイ素又はゲルマニウムと、酸素とを含む混合物を加熱する際に、加熱温度としては特に限定的ではなく、得られる上記組成式(1)で表される化合物の結晶性及び電極特性(容量及び電位)をより向上させる観点から、600℃以上とすることが好ましく、700℃以上とすることがより好ましく、800℃以上とすることがさらに好ましく、900℃以上とすることが特に好ましい。なお、加熱温度の上限については特に限定的ではなく、上記組成式(1)で表される化合物の製造を容易に行うことができる程度の温度(例えば、1500℃程度)であればよい。換言すると、加熱温度としては、600〜1500℃とすることが好ましく、700〜1500℃とすることがより好ましく、800〜1500℃とすることがさらに好ましく、900〜1500℃とすることが特に好ましい。
3.リチウムイオン二次電池用正極活物質
上記組成式(1)で表される化合物は、上記した組成及び結晶構造を有しているため、リチウムイオンを挿入及び脱離できることから、リチウムイオン二次電池用正極活物質として用いることができる。従って、本発明は、上記組成式(1)で表される化合物を含むリチウムイオン二次電池用正極活物質を包含する。
また、組成式(1)で表される化合物又のみならず、組成式(2):
LiCu
[組成式(2)中、XはSi、Ti又はGeを示す。yは0.8〜1.2を示す。mは1.5〜2.5を示す。nは3.9〜4.1を示す。]
で表されるリチウム銅系複合酸化物も、リチウムイオンを挿入及び脱離できることから、リチウムイオン二次電池用正極活物質として用いることができる。なお、以下において、上記組成式(2)で表されるリチウム銅系複合酸化物を「上記組成式(2)で表される化合物」と記載する場合がある。従って、本発明は、上記組成式(2)で表される化合物を含むリチウムイオン二次電池用正極活物質を包含する。
なお、以下において、上記組成式(1)で表される化合物を含むリチウムイオン二次電池用正極活物質及び上記組成式(2)で表される化合物を含むリチウムイオン二次電池用正極活物質をまとめて、「本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質」と記載する場合がある。
上記組成式(2)において、Xは、ケイ素(Si)、チタン(Ti)又はゲルマニウム(Ge)である。
上記組成式(2)において、yは0.8〜1.2であり、高容量化の観点からは0.8〜1.0が好ましい。
上記組成式(2)において、mは1.5〜2.5であり、リチウムイオンの挿入及び脱離のし易さ、並びに容量及び電位の観点からは1.75〜2.25が好ましい。nは3.9〜4.1であり、リチウムイオンの挿入及び脱離のし易さ、並びに容量及び電位の観点からは3.95〜4.05が好ましい。
上記組成式(2)で表される化合物としては、具体的には、LiCuSiO、LiCuTiO、LiCuGeOなどが挙げられる。中でも、リチウムイオン二次電池用正極活物質として用いた場合の性能(特に容量向上)の観点からは、LiCuSiOが好ましい。
上記組成式(2)で表される化合物の結晶構造は、単斜晶構造であることが好ましい。特に、上記組成式(2)で表される化合物は、単斜晶構造が主相であることが好ましい。上記組成式(2)で表される化合物において、主相である結晶構造の存在量は特に限定的ではなく、上記組成式(2)で表される化合物全体を基準として80mol%以上であることが好ましく、90mol%以上であることがより好ましい。このため、上記組成式(2)で表される化合物は、単相の結晶構造からなる材料とすることもできるし、本発明の効果を損なわない範囲で、他の結晶構造を有する材料とすることもできる。なお、上記組成式(2)で表される化合物の結晶構造は、X線回折測定により確認することができる。
上記組成式(2)で表される化合物は、CuKα線によるX線回折図において、種々の位置にピークを有する。
例えば、LiCuSiOは、回折角2θが18.3〜19.3°、26.3〜27.0°、27.1〜28.0°、28.8〜29.6°、29.9〜30.5°、32.3〜32.9°、35.5〜36.7°、38.6〜39.9°、40.8〜42.0°、43.6〜45.2°、45.7〜46.8°、47.1〜48.3°、48.5〜49.8°、50.8〜52.7°、53.7〜55.2°、55.6〜58.2°、62.3〜63.4°、63.8〜65.1°、及び68.6〜71.0°等にピークを有することが好ましい。
また、例えば、LiCuGeOは、回折角2θが17.9〜19.2°、24.9〜27.0°、31.6〜33.4°、35.0〜39.2°、41.2〜43.4°、49.2〜51.5°、53.2〜55.4°、56.9〜58.7°、60.1〜62.7°、63.7〜65.2°、66.5〜68.5°、69.9〜71.7°、72.7〜75.5°、及び76.9〜78.4°等にピークを有することが好ましい。
上記組成式(2)で表される化合物の平均粒子径は特に限定的ではなく、Li拡散経路の短縮化の観点から0.1〜100μmであることが好ましく、0.1〜50μmであることがより好ましい。なお、上記組成式(2)で表される化合物の平均粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)により確認することができる。
上記組成式(2)で表される化合物の製造方法は、リチウムと、銅と、上記Xと、酸素とを含む混合物を加熱する工程を含む。
リチウム含有化合物、銅含有化合物、X含有化合物、酸素含有化合物等の各化合物の種類については特に限定的ではなく、リチウム、銅、X、及び酸素の各元素を1種類ずつ含む4種類又はそれ以上の化合物を混合して用いることもでき、また、リチウム、銅、X、及び酸素のうち、2種類又はそれ以上の元素を同時に含む化合物を原料の一部として用い、4種類未満の化合物を混合して用いることもできる。
これらの原料化合物としては、リチウム、銅、X、及び酸素以外の金属元素(特に、希少金属元素)を含まない化合物が好ましい。また、原料化合物中に含まれるリチウム、銅、X、及び酸素の各元素以外の元素については、後述する加熱処理により離脱又は揮発していくものであることが好ましい。
このような原料化合物の具体例としては以下の化合物が挙げられる。
リチウム含有化合物としては、シュウ酸リチウム(Li);水酸化リチウム(LiOH);硝酸リチウム(LiNO);塩化リチウム(LiCl);炭酸リチウム(LiCO)などが挙げられる。
銅含有化合物としては、金属銅(Cu);酸化銅(CuO);水酸化銅(Cu(OH));炭酸銅(CuCO);シュウ酸銅(CuC);塩化第二銅(CuCl);硫酸第二銅(CuSO);硝酸第二銅(Cu(NO);硫酸第二銅(CuSO)等が挙げられる。
チタン含有化合物としては、四塩化チタン(TiCl);水酸化チタン(Ti(OH))等が挙げられる。ケイ素含有化合物としては、ケイ素(Si);酸化ケイ素(SiO)等が挙げられる。
ゲルマニウム化合物としては、ゲルマニウム(Ge);酸化ゲルマニウム(GeO)等が挙げられる。
酸素含有化合物としては、水酸化リチウム(LiOH);炭酸リチウム(LiCO);酸化銅(CuO);水酸化銅(Cu(OH));炭酸銅(CuCO);シュウ酸銅(CuC);酸化ケイ素(SiO);酸化チタン(TiO);水酸化チタン(Ti(OH));酸化ゲルマニウム(GeO)等が挙げられる。
なお、これらの原料化合物は水和物を使用することもできる。
また、上記組成式(2)で表される化合物の製造方法において使用する原料化合物は、市販品を用いることもできるし、適宜合成して使用することもできる。各原料化合物を合成する場合の合成方法は特に限定的ではなく、公知の方法に従って行うことができる。
これら原料化合物の形状については特に制限されない。取り扱い易さ等の観点からは、粉末状であることが好ましい。また、反応性の観点からは、粒子が微細である方が好ましく、平均粒子径が1μm以下(好ましくは、10〜100nm程度、特に好ましくは60〜80nm程度)の粉末状であることがより好ましい。なお、原料化合物の平均粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)により測定することができる。
リチウムと、銅と、Xと、酸素とを含む混合物は、上記した原料化合物のうち必要な材料を混合することにより得ることができる。
各原料化合物の混合割合については特に限定的ではなく、最終生成物である上記組成式(2)で表される化合物が有する組成となるように混合することが好ましい。原料化合物の混合割合は、原料化合物に含まれる各元素の比率が、生成される上記組成式(2)で表される化合物中の各元素の比率と同一となるようにすることが好ましい。
リチウムと、銅と、Xと、酸素とを含む混合物を調製するための方法としては特に限定的ではなく、各原料化合物を均一に混合できる方法を採用することができる。例えば、乳鉢混合、メカニカルミリング処理、共沈法、各原料化合物を溶媒中に分散させた後に混合する方法、各原料化合物を溶媒中で一度に分散させて混合させる方法などを採用することができる。これらの中でも、乳鉢混合を採用することにより簡便な方法によって混合物を得ることができ、また、共沈法を採用することにより均一な混合物を得ることができる。
また、混合手段としてメカニカルミリング処理を行う場合、メカニカルミリング装置としては、例えば、ボールミル、振動ミル、ターボミル、ディスクミル等を用いることができ、中でもボールミルが好ましい。また、メカニカルミリング処理を行う場合には、混合と加熱を同時に行うことが好ましい。
混合時及び加熱時の雰囲気は特に限定的ではなく、例えば、アルゴン、窒素等の不活性ガス雰囲気、水素ガス雰囲気などを採用することができる。また、真空等の減圧下で混合及び加熱を行ってもよい。
リチウムと、銅と、Xと、酸素とを含む混合物を加熱する際に、加熱温度としては特に限定的ではなく、得られる上記組成式(2)で表される化合物の結晶性及び電極特性(容量及び電位)をより向上させる観点から、600℃以上とすることが好ましく、700℃以上とすることがより好ましく、800℃以上とすることがさらに好ましく、900℃以上とすることが特に好ましい。なお、加熱温度の上限については特に限定的ではなく、上記組成式(2)で表される化合物の製造を容易に行うことができる程度の温度(例えば、1500℃程度)であればよい。換言すると、加熱温度としては、600〜1500℃とすることが好ましく、700〜1500℃とすることがより好ましく、800〜1500℃とすることがさらに好ましく、900〜1500℃とすることが特に好ましい。
本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質は、上記した組成式(1)で表される化合物又は組成式(2)で表される化合物と炭素材料(例えば、アセチレンブラック等のカーボンブラックなどの材料)とが複合体を形成していてもよい。これにより、焼成時に炭素材料が粒子成長を抑制するため、電極特性に優れた微粒子のリチウムイオン二次電池用正極活物質を得ることが可能となる。この場合、炭素材料の含有量は、本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質中に好ましくは1〜30質量%、より好ましくは3〜20質量%、特に好ましくは5〜15質量%である。
本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質は、上記した組成式(1)で表される化合物又は組成式(2)で表される化合物を含有している。本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質は、上記した組成式(1)で表される化合物又は組成式(2)で表される化合物のみで構成されていてもよいし、上記した組成式(1)で表される化合物又は組成式(2)で表される化合物の他に不可避不純物を含んでいてもよい。このような不可避不純物としては、上記した原料化合物などを挙げられる。不可避不純物の含有量としては、本発明の効果を損なわない範囲で、10mol%以下、好ましくは5mol%以下、より好ましくは2mol%以下である。
4.リチウムイオン二次電池用正極及びリチウムイオン二次電池
本発明のリチウムイオン二次電池用正極質及びリチウムイオン二次電池は、上記した組成式(1)で表される化合物又は組成式(2)で表される化合物を正極活物質として使用すること以外は、基本的な構造は、公知の非水電解液(非水系)リチウムイオン二次電池用正極及び非水電解液(非水系)リチウムイオン二次電池と同様の構成を採用することができる。例えば、正極、負極、及びセパレータを、当該正極及び負極がセパレータによって互いに隔離されるように電池容器内に配置することができる。その後、非水電解液を当該電池容器内に充填した後、当該電池容器を密封することなどによって本発明のリチウムイオン二次電池を製造することができる。なお、本発明のリチウムイオン二次電池は、リチウム二次電池であってもよい。本明細書において、「リチウムイオン二次電池」は、リチウムイオンをキャリアイオンとする二次電池を意味し、「リチウム二次電池」は、負極活物質としてリチウム金属又はリチウム合金を使用する二次電池を意味する。
本発明のリチウムイオン二次電池用正極は、上記した組成式(1)で表される化合物又は組成式(2)で表される化合物を含む正極活物質を正極集電体に担持した構造を採用することができる。例えば、上記した組成式(1)で表される化合物又は組成式(2)で表される化合物、導電助剤、及び必要に応じて結着剤を含有する正極材料を、正極集電体に塗布することにより製造することができる。
導電助剤としては、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンナノチューブ、気相法炭素繊維、カーボンナノファイバー、黒鉛、コークス類等の炭素材料を用いることができる。導電助剤の形状は特に限定的ではなく、例えば、粉末状等を採用することができる。
結着剤としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂を用いることができる。
正極材料中の各種成分の含有量としては特に限定的ではなく、広い範囲内から適宜決定することができる。例えば、上記した組成式(1)で表される化合物又は組成式(2)で表される化合物を50〜95体積%(特に、70〜90体積%)、導電助剤を2.5〜25体積%(特に、5〜15体積%)、及び結着剤を2.5〜25体積%(特に、5〜15体積%)含有することが好ましい。
正極集電体を構成する材料としては、例えば、アルミニウム、白金、モリブデン、ステンレス等が挙げられる。正極集電体の形状としては、例えば、多孔質体、箔、板、繊維からなるメッシュ等が挙げられる。
なお、正極集電体に対する正極材料の塗布量は特に限定的ではなく、リチウムイオン二次電池の用途等に応じて適宜決定することが好ましい。
負極を構成する負極活物質としては、例えば、リチウム金属;ケイ素;ケイ素含有Clathrate化合物;リチウム合金;M (M:Co、Ni、Mn、Sn等、M:Mn、Fe、Zn等)で表される三元又は四元酸化物;M (M:Fe、Co、Ni、Mn等)、M (M:Fe、Co、Ni、Mn等)、MnV、M(M:Sn、Ti等)、MO(M:Fe、Co、Ni、Mn、Sn、Cu等)等で表される金属酸化物;黒鉛、ハードカーボン、ソフトカーボン、グラフェン;上記した炭素材料;Li、Li、Li16等のような有機系化合物等が挙げられる。
リチウム合金としては、例えば、リチウム及びアルミニウムを構成元素として含む合金、リチウム及び亜鉛を構成元素として含む合金、リチウム及び鉛を構成元素として含む合金、リチウム及びマンガンを構成元素として含む合金、リチウム及びビスマスを構成成分として含む合金、リチウム及びニッケルを構成元素として含む合金、リチウム及びアンチモンを構成元素として含む合金、リチウム及びスズを構成元素として含む合金、リチウム及びインジウムを構成元素として含む合金;金属(スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ハフニウム、タンタル等)とカーボンを構成元素として含むMXene系合金、M BC系合金(M:Sc、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta等)等の四元系層状炭化又は窒化化合物等が挙げられる。
負極は、負極活物質から構成することもでき、また、負極活物質、導電助剤、及び必要に応じて結着剤を含有する負極材料が負極集電体上に担持する構成を採用することもできる。負極材料が負極集電体上に担持する構成を採用する場合、負極活物質、導電助剤、及び必要に応じて結着剤を含有する負極合剤を、負極集電体に塗布することで製造することができる。
負極が負極活物質から構成する場合、上記の負極活物質を電極に適した形状(板状等)
に成形して得ることができる。
また、負極材料が負極集電体上に担持する構成を採用する場合、導電助剤及び結着剤の種類、並びに負極活物質、導電助剤及び結着剤の含有量は上記した正極のものを適用することができる。負極集電体を構成する材料としては、例えば、アルミニウム、銅、ニッケル、ステンレス等が挙げられる。前記負極集電体の形状としては、例えば、多孔質体、箔、板、繊維からなるメッシュ等が挙げられる。なお、負極集電体に対する負極材料の塗布量は、リチウムイオン二次電池の用途等に応じて適宜決定することが好ましい。
セパレータとしては、電池中で正極と負極とを隔離し、かつ電解液を保持して正極と負極との間のイオン伝導性を確保することができる材料からなるものであれば制限はない。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド、ポリビニルアルコール、末端アミノ化ポリエチレンオキシド等のポリオレフィン樹脂;ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂;アクリル樹脂;ナイロン;芳香族アラミド;無機ガラス;セラミックス等の材質からなり、多孔質膜、不織布、織布等の形態の材料を用いることができる。
非水電解液は、リチウムイオンを含む電解液が好ましい。このような電解液としては、例えば、リチウム塩の溶液、リチウムを含む無機材料で構成されるイオン液体等が挙げられる。
リチウム塩としては、例えば、塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム等のハロゲン化リチウム;過塩素酸リチウム、テトラフルオロホウ酸リチウム、ヘキサフルオロリン酸リチウム、ヘキサフルオロヒ酸リチウム等のリチウム無機塩化合物;ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドリチウム、ビス(パフルオロエタンスルホニル)イミドリチウム、安息香酸リチウム、サリチル酸リチウム、フタル酸リチウム、酢酸リチウム、プロピオン酸リチウム、グリニャール試薬等のリチウム有機塩化合物等が挙げられる。
また、溶媒としては、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメトルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のカーボネート化合物;γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトンなどのラクトン化合物;テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、メトキシメタン、グライム、ジメトキシエタン、ジメトキシメタン、ジエトキシメタン、ジエトキシエタン、プロピレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル化合物;アセトニトリル;N,N−ジメチルホルムアミド;N−プロピル−N−メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド等が挙げられる。
また、上記非水電解液の代わりに固体電解質を使用することもできる。固体電解質としては、例えば、Li10GeP12、Li11、LiLaZr12、La0.51Li0.34TiO2.94等のリチウムイオン伝導体等が列挙される。
このような本発明のリチウムイオン二次電池は、組成式(1)で表される化合物又は組成式(2)で表される化合物が用いられているので、酸化還元反応(充放電反応)に際し、より高い電位及びエネルギー密度を確保することができ、しかも、安全性(ポリアニオン骨格)及び実用性に優れる。したがって、本発明のリチウムイオン二次電池は、例えば、小型化及び高性能化が求められるデバイス等に好適に用いることができる。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は下記の例に限定されるものではない。
実施例1:Li CuSiO の合成
原料粉体として、LiCO(レアメタリック社製;99.9%(3N))、CuO(高純度化学研究所社製;99.99%(4N))、及び沈降性非晶質SiO(関東化学社製;3N)を用いた。LiCO、CuO、及びSiOをリチウム:銅:ケイ素(モル比)が2:1:1となるように秤量し、ジルコニアボール(15mmΦ×10個)と共にクロム鋼製容器に入れ、アセトンを加えて遊星ボールミル(Fritsch社製、商品名:P−6)にて、400rpmで24時間粉砕混合した。その後、減圧下でアセトンを除去した後、回収した粉末を手押しでペレット成型し、アルゴン気流下にて600℃、700℃、800℃、900℃、又は1000℃で1時間焼成した。このとき、昇温速度を400℃/hとした。また、冷却速度は300℃まで100℃/hとし、以降は自然冷却により室温まで放冷した。得られた各生成物(LiCuSiO)を粉末X線回折(XRD)により確認した。結果を図1に示す。
さらに、焼成温度を900℃とした場合に得られたLiCuSiOと、原料化合物であるCuO、並びに原料化合物であるLiCO及びSiOから生成されるLiSiOとのX線回折パターンを比較した結果を図2に示す。
なお、粉末X線回折(XRD)測定には、X線回折測定装置(リガク社製、商品名:RINT2200)を使用し、X線源はモノクロメーターで単色化されたCuKαを使用した。測定条件は、管電圧を5kV、管電流を300mAとしてデータ収集を行った。このとき、強度を約10000カウントとなるよう、走査速度を設定した。また、測定に使用する試料は粒子が均一となるように十分に粉砕した。構造解析には、リートベルト解析を行い、解析プログラムにはJANA−2006を使用した。
図1から、焼成温度が800℃以上である場合には、少なくとも2θ値15〜70°に複数の主要ピークが見られることが確認された。また、2θ値15〜70°に見られるピークは、焼成温度が高いほど強いピークとなっていることから、焼成温度は高い方が好ましいことが分かった。
図1から、2θ値15〜70°に確認された複数の主要ピークは、単相のLiCuSiOに対応することから、生成物として単相のLiCuSiOが得られていることが分かった。さらに、図2から、原料化合物であるCuO、並びに原料化合物であるLiCO及びSiOから生成されるLiSiOに由来するピークが確認されなかったことからも、単相のLiCuSiOが得られていることが分かった。
また、図1から、焼成温度を900℃とした場合に得られたLiCuSiOの結晶は、粉末X線回折によるX線回折パターンにおいて、2θで表される回折角度が18.31〜19.24°、26.39〜26.96°、27.22〜27.39°、28.90〜29.59°、38.65〜39.82°、40.88〜41.92°、43.63〜45.12°、45.72〜46.70°、47.21〜48.23°、48.56〜49.71°、50.87〜52.69°、53.81〜55.14°、55.66〜58.17°、62.40〜63.33°、63.88〜65.04°、及び68.67〜70.90°にピークを有することが分かった。当該結果から、得られたLiCuSiOの結晶は、単斜晶構造(空間群C2/m)を有し、格子定数がa=6.457〜6.484Å、b=3.340〜3.345Å、c=9.504〜11.183Å、β=93.65〜121.78°であり、単位格子体積(V)が205.1〜206.0Åである結晶であることが分かった。
さらに、焼成温度を900℃とした場合に得られたLiCuSiOを走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。結果を図3に示す。なお、図3中、スケールバーは11.7μmを示す。図3から、粒子径約3〜10μmのLiCuSiOが得られていることが分かった。
また、ICP−AES法(測定装置:iCAP6500、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)により、焼成温度900℃の場合に得られた生成物の化学組成を測定したところ、Li2.08Cu1.05Si1.00であることが分かった。
実施例2:Li CuGeO の合成
原料粉体として、LiCO(レアメタリック社製;99.9%(3N))、CuO(高純度化学研究所社製;99.99%(4N))、及びGeO(関東化学社製;99.99%(4N))を用いた。LiCO、CuO、及びGeOをリチウム:銅:ゲルマニウム(モル比)が2:1:1となるように秤量し、ジルコニアボール(15mmΦ×10個)と共にクロム鋼製容器に入れ、アセトンを加えて遊星ボールミル(Fritsch社製、商品名:P−6)にて、400rpmで24時間粉砕混合した。その後、減圧下でアセトンを除去した後、回収した粉末を手押しでペレット成型し、アルゴン気流下にて700℃、800℃、又は900℃で1時間焼成した。このとき、昇温速度を400℃/hとした。また、冷却速度は300℃まで100℃/hとし、以降は自然冷却により室温まで放冷した。得られた各生成物(LiCuGeO)を実施例1と同様にして粉末X線回折(XRD)により確認した。結果を図4に示す。
図4から、焼成温度が700℃以上である場合には、少なくとも2θ値15〜80°に複数の主要ピークが見られることが確認された。これらのピークは、単相のLiCuGeOに対応することから、生成物として単相のLiCuGeOが得られていることが分かった。また、2θ値15〜80°に見られるピークは、焼成温度が高いほど強いピークとなっていることから、焼成温度は高い方が好ましいことが分かった。
また、図4から、焼成温度を700℃とした場合に得られたLiCuSiOの結晶は、粉末X線回折によるX線回折パターンにおいて、2θで表される回折角度が17.94〜19.15°、24.96〜26.91°、31.65〜33.32°、35.07〜39.17°、41.30〜43.39°、49.29〜51.44°、53.24〜55.30°、56.92〜58.63°、60.16〜62.63°、63.79〜65.19°、66.57〜68.44°、69.92〜71.64°、72.80〜75.41°、及び76.94〜78.33°にピークを有することが分かった。当該結果から、得られたLiCuGeOの結晶は、単斜晶構造(空間群C2/m)を有し、格子定数がa=5.491〜5.552Å、b=9.645〜9.691Å、c=5.491〜5.552Å、β=119.69〜120.75°であり、単位格子体積(V)が256.1〜256.6Åである結晶であることが分かった。
さらに、焼成温度を900℃とした場合に得られたLiCuGeOを走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。結果を図5に示す。なお、図5中、スケールバーは27.0μmを示す。図5から、粒子径約1〜50μmのLiCuGeOが得られていることが分かった。
また、EDX法(測定装置:JSM−7800F、日本電子株式会社製)により、焼成温度900℃の場合に得られた生成物の化学組成を測定したところ、CuとGeとの質量比は1:0.956であることが分かった。
実施例3:Li CuSiO の充放電特性の測定
充放電測定を行うために、上記実施例1において焼成温度900℃の場合に得られたLiCuSiO、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、及びアセチレンブラック(AB)が体積比85:7.5:7.5となるようにめのう乳鉢で混合し、得られたスラリーを正極集電体であるアルミニウム箔(厚さ20μm)上に塗布し、これを直径8mmの円形に打ち抜き、正極とした。また、試料が正極集電体から剥がれないようにするため、30〜40mPaで圧着した。
負極には14mmφで打ち抜いた金属リチウムを使用し、セパレータは18mmφで切り抜いた多孔質膜(商品名:celgard 2500)を2枚使用した。電解液は、エチレンカーボネート(EC)及びジエチルカーボネート(DEC)を体積比1:2で混合した溶媒に支持電解質としてLiPFを1mol/dmの濃度で溶解した電解液(岸田化学社製)を使用した。電池の作製は、金属リチウムを使用すること、及び電解液に水分が混入した場合に抵抗増分増加の要因となること等の理由により、アルゴン雰囲気下のグローブブックス内で行った。セルは、図6に示すCR2032型コインセルを用いた。充放電試験に先立って、電極に電流を印加していない状態の電位(即ち、開回路電位)の測定を行った。定電流充放電測定は、電圧切り替え器を用い、C/20レート又はC/50レート、電流10mA/g、上限電圧4.8V、下限電圧1.5Vに設定し、充電より開始した。また、充放電測定は、55℃恒温槽内にセルを入れた状態で行った。開回路電位の測定結果を図7に、C/20レートでの充放電特性の測定結果(各サイクルと放電容量との関係)を図8、C/50レートでの充放電特性の測定結果を図9に示す。なお、Cレートとは電極活物質から理論容量分の充放電を1時間で行うのに必要な電流密度を意味する。
図7から、LiCuSiOの開回路電位は約3.0Vであることが分かった。また、図8から、C/20レートにおいて引き出し初期充電容量は約110mAh/gであることが分かった。なお、理論容量は316mAh/gであり、LiCuSiOの初回充放電容量は理論容量の約3分の1に相当する。また、図8に示すように、充電曲線と放電曲線との交点における電圧(平均作動電圧)は約3.3Vであったことから、LiCuSiOは、高電位及び高容量の正極材料として有用であることが分かった。
さらに、図9から、LiCuSiOの初回充電容量がC/50レートで220mAh/g (理論容量の約70%に相当する容量)が確認された。このことからも、LiCuSiOは高容量材料として期待される。
また、LiCuSiOを用いないこと以外は上記と同様にして正極を作製し、上記と同様の条件によりC/20レートで充放電試験を行った。結果を図10に示す。
図10から、LiCuSiOを用いない電極では充放電容量が得られないことが確認された。図8と図10とを比較することにより、図8において示された高い充放電容量は、LiCuSiOに由来するものであることが分かった。
実施例4:Li CuGeO の充放電特性の測定
充放電測定を行うために、上記実施例2において焼成温度900℃の場合に得られたLiCuGeO、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、及びアセチレンブラック(AB)が体積比85:7.5:7.5となるようにめのう乳鉢で混合し、得られたスラリーを正極集電体であるアルミニウム箔(厚さ20μm)上に塗布し、これを直径8mmの円形に打ち抜き、正極とした。また、試料が正極集電体から剥がれないようにするため、30〜40mPaで圧着した。
負極には14mmφで打ち抜いた金属リチウムを使用し、セパレータは18mmφで切り抜いた多孔質膜(商品名:celgard 2500)を2枚使用した。電解液は、エチレンカーボネート(EC)及びジエチルカーボネート(DEC)を体積比1:2で混合した溶媒に支持電解質としてLiPFを1mol/dmの濃度で溶解した電解液(岸田化学社製)を使用した。電池の作製は、金属リチウムを使用すること、及び電解液に水分が混入した場合に抵抗増分増加の要因となること等の理由により、アルゴン雰囲気下のグローブブックス内で行った。セルは、図6に示すCR2032型コインセルを用いた。充放電試験に先立って、電極に電流を印加していない状態の電位(即ち、開回路電位)の測定を行った。定電流充放電測定は、電圧切り替え器を用い、C/50レート、電流10mA/g、上限電圧4.8V、下限電圧1.5Vに設定し、充電より開始した。また、充放電測定は、55℃恒温槽内にセルを入れた状態で行った。開回路電位の測定結果を図11に、充放電特性の測定結果(各サイクルと放電容量との関係)を図12に示す。
図11から、LiCuGeOの開回路電位は約2.7Vであることが分かった。また、図12から、引き出し初期容量は約120mAh/gであることが分かった。なお、理論容量は250mAh/gであり、LiCuGeOの初回充放電容量は理論容量の約2分の1に相当する。以上の結果から、LiCuGeOは、高電位及び高容量の正極材料として有用であることが分かった。
1 リチウムイオン二次電池
2 負極端子
3 負極
4 電解液が含浸されたセパレータ
5 絶縁パッキング
6 正極
7 正極缶

Claims (9)

  1. 組成式(1):
    LiCu
    [組成式(1)中、XはSi又はGeを示す。yは0.8〜1.2を示す。mは1.5〜2.5を示す。nは3.9〜4.1を示す。]
    で表されるリチウム銅系複合酸化物。
  2. 単斜晶構造を有する、請求項1に記載のリチウム銅系複合酸化物。
  3. 平均粒子径が0.1〜100μmである、請求項1又は2に記載のリチウム銅系複合酸化物。
  4. リチウムと、銅と、ケイ素又はゲルマニウムと、酸素とを含む混合物を加熱する工程を含む、請求項1〜3のいずれかに記載のリチウム銅系複合酸化物の製造方法。
  5. 加熱温度が600℃以上である、請求項4に記載の方法。
  6. 組成式(2):
    LiCu
    [組成式(2)中、XはSi、Ti又はGeを示す。yは0.8〜1.2を示す。mは1.5〜2.5を示す。nは3.9〜4.1を示す。]
    で表されるリチウム銅系複合酸化物を含む、リチウムイオン二次電池用正極活物質。
  7. 請求項6に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質を含む、リチウムイオン二次電池用正極。
  8. さらに、導電助剤を含む、請求項7に記載のリチウムイオン二次電池用正極。
  9. 請求項7又は8に記載のリチウムイオン二次電池用正極を含む、リチウムイオン二次電池。
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