JPWO2017073694A1 - 対象動物の睡眠状態を判定するためのコンピュータプログラムおよび睡眠状態判定装置 - Google Patents

対象動物の睡眠状態を判定するためのコンピュータプログラムおよび睡眠状態判定装置 Download PDF

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Abstract

対象動物の睡眠状態を判定するための、コンピュータプログラムと装置である。第f指標計算部(fは1〜Fの整数である)が、〔対象脳波セグメントSから得られた対象脳波サブセグメントSbのパワースペクトルを表す曲線Q〕と〔参照セグメントRf(m(f))のパワースペクトルを表す1以上の曲線Pf(m(f))〕とをそれぞれに比較し、類似度を示す各指標df(m(f))を計算する。そして、睡眠状態判定部が、全ての指標df(m(f))に基づいて、対象脳波セグメントSの脳波が睡眠状態E1〜EFのいずれの時の脳波であるのかを決定し、それにより、対象脳波セグメントSに対応する期間における睡眠が、睡眠状態E1〜EFのいずれのものであるのかを判定する。好ましい態様では、これらの演算に先立って、睡眠−覚醒判定部が、筋電信号に基づいて、覚醒下の対象脳波セグメントSを除去する。

Description

本発明は、対象動物(とりわけ、哺乳動物)の睡眠状態を判定するためのコンピュータプログラムおよび睡眠状態判定装置に関する。
従来より、ヒト用およびげっ歯類用の睡眠自動判定システムの報告および特許出願が多数ある(非特許文献1、特許文献1および2)。
マウスを用いて睡眠の大規模な遺伝学的解析を行う場合の最も大きな障害は、脳波(Electroencephalogram、EEG)/筋電図(Electromyography、EMG)ベースの解析の処理能力の低さである。
マウスでの睡眠解析において時間を要するのは、長時間のEEG/EMGの記録を人間が目視によりマニュアル作業(全て人間による判定)で睡眠状態判定するステップであり、熟練者であっても24時間のEEG/EMGデータから睡眠状態を判定するために平均で2時間以上を要する。
げっ歯類用の自動化された睡眠状態判定システムが既にいくつか発表されているが(非特許文献2〜6)、これらのコンピュータプログラムは、多数のマウスを効率的かつ頑強に処理することができないため、大規模解析のためには実質的に役に立たない。
例えば、閾値の設定を伴う従来の睡眠状態判定プログラムでは、ユーザーはEEG/EMGの各パラメータの閾値をマウス毎に設定した上で、計算結果に満足がいくまでこれらの閾値の修正を繰り返さなければならず、これでは「卵が先か鶏が先か」分からない。更に、これらの閾値に依存するタイプのパターン認識では、数日の記録期間の間にEEG/EMGの各パラメータが変動することに起因して、1匹のマウスについてさえうまくいかないことが多い。
米国特許公開公報US2007/0270706 特許第5011555号
Pan et al., Biomed Eng. Online. 11: 52 (2012) Doman et al., Int. J. Biomed. Comput. 38: 277-290 (1995) Veasey et al., Sleep 23: 1025-1040 (2000) Berthomier et al., Sleep 30: 1587-1595 (2007) Brankack et al., Brain Res. 1322: 59-71 (2010) Sunagawa et al., Genes Cells 18: 502-518 (2013)
上述のことから、ヒトやげっ歯類などの哺乳動物における睡眠状態の判定は、依然として、臨床検査技師など専門的知識を持った技官による目視での判定が主流である。
近年、自動判定化の技術として上記特許文献1、2を含め多数が報告、公表されているが、ほぼ全ての技術で動物種間共通の閾値設定やクラスタリング手法などを用いて自動判定を行っている為、脳波特性の個体差を考慮できず、実際の運用に耐えられる精度のものは未だ市販されていない。
また、本発明者らの研究によれば、睡眠を正しく判定するためには、微弱な生体信号である脳波と筋電図を用いることがより好ましいが、記録データが外部ノイズの影響を受けやすく、ノイズが混入した記録部分は自動判定精度の低下を容易に引き起こすことがわかった。
本発明の主たる構成は、次のとおりである。
[1]対象動物の睡眠状態を判定するためのコンピュータプログラムであって、当該コンピュータプログラムは、対象動物の所与の期間における睡眠が、2以上の予め定められた睡眠状態E〜E(Fは睡眠状態の個数を示す2以上の整数である)のうちのいずれであるのかを判定するために、コンピュータを、睡眠状態E〜Eのそれぞれに対応するF個の指標計算部である第1指標計算部から第F指標計算部として、および睡眠状態判定部として機能させるためのものであり、
第f指標計算部(fは1〜Fの整数である)は、下記(B)の睡眠状態Eに関する参照セグメントR(m(f))(m(f)は1〜Nの整数である)のそれぞれについて、
下記(A1)の対象脳波セグメントSから得られた下記(A2)の対象脳波サブセグメントSbのパワースペクトルを表すグラフの曲線Qと、当該参照セグメントR(m(f))のパワースペクトルを表すグラフの曲線P(m(f))とを比較し、曲線Qと曲線P(m(f))との間の周波数ごとのパワー値の差異に基づいて曲線Qと曲線P(m(f))との間の距離を計算し、
前記の距離の計算を、対象脳波セグメントSからの全ての対象脳波サブセグメントSbについて行い、
全ての対象脳波サブセグメントSbについて得られた距離に基づいて、当該参照セグメントR(m(f))を睡眠状態Eの基準期間とした場合に、対象脳波セグメントSの脳波と睡眠状態E時の脳波との間の類似度を表す指標d(m(f))を計算するように構成されており、
睡眠状態判定部は、睡眠状態E〜Eのそれぞれについて得られた全ての指標d(m(f))(fは1〜Fの整数であり、m(f)は1〜Nの整数である)に基づいて、対象脳波セグメントSの脳波が睡眠状態E〜Eのいずれの時の脳波であるのかを決定し、それにより、対象脳波セグメントSに対応する期間における睡眠が、睡眠状態E〜Eのいずれのものであるのかを判定するように構成されている、
前記コンピュータプログラム。
(A1)対象動物から得られた脳波であって、所定の時間長t1の期間にわたる脳波である、対象脳波セグメントS。
(A2)対象脳波セグメントSの全体にわたるか、または、該対象脳波セグメントSを所定数に分割した、時間長tb(tb≦t1)にわたる対象脳波サブセグメントSb。
(B)前記対象動物のための参照脳波として利用可能な該対象動物自体のまたはそれと同種の動物の脳波であって、睡眠状態が睡眠状態Eであることが確定しておりかつ所定時間長の期間にわたる脳波であるN個(Nは1以上の整数である)の参照セグメントR(m(f))。ここで、fは睡眠状態E〜Eのいずれかに対応する1〜Fの整数であり、m(f)は1〜Nの整数である。
[2]対象動物がヒトであり、かつ、
ヒトの睡眠状態の4つまたは5つのステージへの分類基準に従って、(i)睡眠状態の個数Fが4であり、かつ睡眠状態E〜Eがノンレム睡眠のステージI、II、およびIIIならびにレム睡眠のそれぞれに対応しているか、または、(ii)睡眠状態の個数Fが5であり、かつ睡眠状態E〜Eがノンレム睡眠のステージI、II、III、およびIVならびにレム睡眠のそれぞれに対応している、
上記[1]に記載のコンピュータプログラム。
[3]睡眠状態の個数Fが2であり、かつ睡眠状態EおよびEがノンレム睡眠およびレム睡眠にそれぞれ対応している、上記[1]に記載のコンピュータプログラム。
[4]上記曲線Qと各曲線P(m(f))(fは睡眠状態E〜Eのいずれかに対応する1〜Fの整数であり、m(f)は1〜Nの整数である。)との間の距離が、所定の間隔をおいた周波数ごとの曲線Qと曲線P(m(f))との間の距離の大きさを2乗し、前記2乗した各値を合算し、前記合算した値の平方根をとることによって算出された値である、
上記[1]〜[3]のいずれかに記載のコンピュータプログラム。
[5]睡眠状態E〜Eの全てについて参照セグメントR(m(f))が、それぞれ複数であり、かつ、同一個数であって、
前記睡眠状態判定部では、
(I)第1指標計算部から第F指標計算部により計算された全ての指標d(m(f))(fは1〜Fの整数であり、m(f)は1〜Nの整数である)に対して、類似度の最も高い指標の順位を1として類似度の順序付けをし、睡眠状態Eのそれぞれについて指標の順位の総和を計算し、前記総和が最も小さい睡眠状態を、対象脳波セグメントSの睡眠状態と判定するか、または、
(II)第1指標計算部から第F指標計算部により計算された全ての指標d(m(f))(fは1〜Fの整数であり、m(f)は1〜Nの整数である)に対して、類似度の最も低い指標の順位を1として類似度の順序付けをし、睡眠状態Eのそれぞれについて指標の順位の総和を計算し、前記総和が最も大きい睡眠状態を、対象脳波セグメントSの睡眠状態と判定する、
上記[1]〜[4]のいずれかに記載のコンピュータプログラム。
[6]対象脳波セグメントSが、対象動物から得られた所定の時間長T1(t1<T1)の期間にわたる対象脳波のうちの一部であり、
睡眠状態E〜Eに関する参照セグメントR(m(f))(fは睡眠状態E〜Eのいずれかに対応する1〜Fの整数であり、m(f)は1〜Nの整数である)のそれぞれが、前記対象脳波から無作為に選択されたものであり、
前記の第1指標計算部から第F指標計算部、および、睡眠状態判定部は、前記対象脳波の一端側から、時間長t1の期間の脳波を対象脳波セグメントSとして、順次、全体にわたって処理するように構成されている、
上記[1]〜[5]のいずれかに記載のコンピュータプログラム。
[7]さらに、コンピュータを、
下記(C)の筋電信号セグメントに基づいて、前記対象脳波セグメントSが、睡眠状態下における脳波であるか覚醒状態下における脳波であるかを判定するよう構成された睡眠−覚醒判定部、
として機能させるための、コンピュータプログラム部分を有し、
該睡眠−覚醒判定部は、
前記の第1指標計算部から第F指標計算部、および、睡眠状態判定部の前段に位置し、かつ、
下記(C)の筋電信号セグメントを複数の小区間に分割し、各小区間ごとに、その小区間内での筋電信号波形のパワー値の変動幅を示す分散値を計算し、全ての小区間の分散値のうちの中央値に基づいて、前記の対象脳波セグメントSが、睡眠状態下における脳波であるか覚醒状態下における脳波であるかを判定するように構成されており、
前記の第1指標計算部から第F指標計算部、および、睡眠状態判定部は、睡眠−覚醒判定部において睡眠状態下と判定された対象脳波セグメントSだけを、計算の対象および判定の対象とするように構成されている、
上記[1]〜[6]のいずれかに記載のコンピュータプログラム。
(C)対象動物から得られた筋電信号であって、前記対象脳波セグメントSに同期した、所定の時間長t1の期間にわたる信号である、筋電信号セグメント。
[8]対象動物の睡眠状態を判定するための睡眠状態判定装置であって、当該装置は、対象動物の所与の期間における睡眠が、2以上の予め定められた睡眠状態E〜E(Fは睡眠状態の個数を示す2以上の整数である)のうちのいずれであるのかを判定するためのものであり、
当該装置は、睡眠状態E〜Eのそれぞれに対応するF個の指標計算部である第1指標計算部から第F指標計算部と、睡眠状態判定部とを少なくとも有して構成されており、
第f指標計算部(fは1〜Fの整数である)は、下記(B)の睡眠状態Eに関する参照セグメントR(m(f))(m(f)は1〜Nの整数である)のそれぞれについて、
下記(A1)の対象脳波セグメントSから得られた下記(A2)の対象脳波サブセグメントSbのパワースペクトルを表すグラフの曲線Qと、当該参照セグメントR(m(f))のパワースペクトルを表すグラフの曲線P(m(f))とを比較し、曲線Qと曲線P(m(f))との間の周波数ごとのパワー値の差異に基づいて曲線Qと曲線P(m(f))との間の距離を計算し、
前記の距離の計算を、対象脳波セグメントSからの全ての対象脳波サブセグメントSbについて行い、
全ての対象脳波サブセグメントSbについて得られた距離に基づいて、当該参照セグメントR(m(f))を睡眠状態Eの基準期間とした場合に、対象脳波セグメントSの脳波と睡眠状態E時の脳波との間の類似度を表す指標d(m(f))を計算するように構成されており、
睡眠状態判定部は、睡眠状態E〜Eのそれぞれについて得られた全ての指標d(m(f))(fは1〜Fの整数であり、m(f)は1〜Nの整数である)に基づいて、対象脳波セグメントSの脳波が睡眠状態E〜Eのいずれの時の脳波であるのかを決定し、それにより、対象脳波セグメントSに対応する期間における睡眠が、睡眠状態E〜Eのいずれのものであるのかを判定するように構成されている、
前記睡眠状態判定装置。
(A1)対象動物から得られた脳波であって、所定の時間長t1の期間にわたる脳波である、対象脳波セグメントS。
(A2)対象脳波セグメントSの全体にわたるか、または、該対象脳波セグメントSを所定数に分割した、時間長tb(tb≦t1)にわたる対象脳波サブセグメントSb。
(B)前記対象動物のための参照脳波として利用可能な該対象動物自体のまたはそれと同種の動物の脳波であって、睡眠状態が睡眠状態Eであることが確定しておりかつ所定時間長の期間にわたる脳波であるN個(Nは1以上の整数である)の参照セグメントR(m(f))。ここで、fは睡眠状態E〜Eのいずれかに対応する1〜Fの整数であり、m(f)は1〜Nの整数である。
[9]対象動物がヒトであり、かつ、
ヒトの睡眠状態の4つまたは5つのステージへの分類基準に従って、(i)睡眠状態の個数Fが4であり、かつ睡眠状態E〜Eがノンレム睡眠のステージI、II、およびIIIならびにレム睡眠のそれぞれに対応しているか、または、(ii)睡眠状態の個数Fが5であり、かつ睡眠状態E〜Eがノンレム睡眠のステージI、II、III、およびIVならびにレム睡眠のそれぞれに対応している、
上記[8]に記載の睡眠状態判定装置。
[10]睡眠状態の個数Fが2であり、かつ睡眠状態EおよびEがノンレム睡眠およびレム睡眠にそれぞれ対応している、上記[8]に記載の睡眠状態判定装置。
[11]上記曲線Qと各曲線P(m(f))(fは睡眠状態E〜Eのいずれかに対応する1〜Fの整数であり、m(f)は1〜Nの整数である。)との間の距離が、所定の間隔をおいた周波数ごとの曲線Qと曲線P(m(f))との間の距離の大きさを2乗し、前記2乗した各値を合算し、前記合算した値の平方根をとることによって算出された値である、
上記[8]〜[10]のいずれかに記載の睡眠状態判定装置。
[12]睡眠状態E〜Eの全てについて参照セグメントR(m(f))が、それぞれ複数であり、かつ、同一個数であって、
前記睡眠状態判定部では、
(I)第1指標計算部から第F指標計算部により計算された全ての指標d(m(f))(fは1〜Fの整数であり、m(f)は1〜Nの整数である)に対して、類似度の最も高い指標の順位を1として類似度の順序付けをし、睡眠状態Eのそれぞれについて指標の順位の総和を計算し、前記総和が最も小さい睡眠状態を、対象脳波セグメントSの睡眠状態と判定するか、または、
(II)第1指標計算部から第F指標計算部により計算された全ての指標d(m(f))(fは1〜Fの整数であり、m(f)は1〜Nの整数である)に対して、類似度の最も低い指標の順位を1として類似度の順序付けをし、睡眠状態Eのそれぞれについて指標の順位の総和を計算し、前記総和が最も大きい睡眠状態を、対象脳波セグメントSの睡眠状態と判定する、
上記[8]〜[11]のいずれかに記載の睡眠状態判定装置。
[13]対象脳波セグメントSが、対象動物から得られた所定の時間長T1(t1<T1)の期間にわたる対象脳波のうちの一部であり、
睡眠状態E〜Eに関する参照セグメントR(m(f))(fは睡眠状態E〜Eのいずれかに対応する1〜Fの整数であり、m(f)は1〜Nの整数である)のそれぞれが、前記対象脳波から無作為に選択されたものであり、
前記の第1指標計算部から第F指標計算部、および、睡眠状態判定部は、前記対象脳波の一端側から、時間長t1の期間の脳波を対象脳波セグメントSとして、順次、全体にわたって処理するように構成されている、
上記[8]〜[12]のいずれかに記載の睡眠状態判定装置。
[14]下記(C)の筋電信号セグメントに基づいて、前記対象脳波セグメントSが、睡眠状態下における脳波であるか覚醒状態下における脳波であるかを判定するよう構成された睡眠−覚醒判定部を、さらに有し、
該睡眠−覚醒判定部は、
前記の第1指標計算部から第F指標計算部、および、睡眠状態判定部の前段に位置し、かつ、
下記(C)の筋電信号セグメントを複数の小区間に分割し、各小区間ごとに、その小区間内での筋電信号波形のパワー値の変動幅を示す分散値を計算し、全ての小区間の分散値のうちの中央値に基づいて、前記の対象脳波セグメントSが、睡眠状態下における脳波であるか覚醒状態下における脳波であるかを判定するように構成されており、
前記の第1指標計算部から第F指標計算部、および、睡眠状態判定部は、睡眠−覚醒判定部において睡眠状態下と判定された対象脳波セグメントSだけを、計算の対象および判定の対象とするように構成されている、
上記[8]〜[13]のいずれかに記載の睡眠状態判定装置。
(C)対象動物から得られた筋電信号であって、前記対象脳波セグメントSに同期した、所定の時間長t1の期間にわたる信号である、筋電信号セグメント。
[15]前記の第1指標計算部から第F指標計算部、および、睡眠状態判定部が、コンピュータを用いて構成されており、
該コンピュータが、コンピュータプログラムを実行することによって、第1指標計算部から第F指標計算部、および、睡眠状態判定部として作動する、上記[8]〜[14]のいずれかに記載の睡眠状態判定装置。
[16]前記の第1指標計算部から第F指標計算部、睡眠状態判定部、および、睡眠−覚醒判定部が、コンピュータを用いて構成されており、
該コンピュータが、コンピュータプログラムを実行することによって、第1指標計算部から第F指標計算部、睡眠状態判定部、および、睡眠−覚醒判定部として作動する、上記[14]に記載の睡眠状態判定装置。
本発明はまた、以下の構成を有し得る。
[1’]対象動物の睡眠状態を判定するためのコンピュータプログラムであって、コンピュータを、
下記(A1)の対象脳波セグメントSから得られた下記(A2)の対象脳波サブセグメントSbのパワースペクトルを表すグラフの曲線Qと、下記(B1)の参照レムセグメントR1(m1)の各パワースペクトルを表すグラフの曲線P1(m1)とをそれぞれに比較し、曲線Qと各曲線P1(m1)との間の周波数ごとのパワー値の差異に基づいて曲線Qと各曲線P1(m1)との間の距離を計算し、全ての対象脳波サブセグメントSbの距離に基づいて、対象脳波セグメントSのレム睡眠に関する類似度を示す指標d1(m1)を計算するよう構成された、レム指標計算部、
下記(A1)の対象脳波セグメントSから得られた下記(A2)の対象脳波サブセグメントSbのパワースペクトルを表すグラフの曲線Qと、下記(B2)の参照ノンレムセグメントR2(m2)の各パワースペクトルを表すグラフの曲線P2(m2)とをそれぞれに比較し、曲線Qと各曲線P2(m2)との間の周波数ごとのパワー値の差異に基づいて曲線Qと各曲線P2(m2)との間の距離を計算し、全ての対象脳波サブセグメントSbの距離に基づいて、対象脳波セグメントSのノンレム睡眠に関する類似度を示す指標d2(m2)を計算するよう構成された、ノンレム指標計算部、および、
前記の類似度を示す全ての指標d1(m1)と指標d2(m2)に基づいて、対象脳波セグメントSのパワースペクトルが、曲線P1(m1)から構成されるグループと曲線P2(m2)から構成されるグループのどちらに属するかを判定し、該対象脳波セグメントSのパワースペクトルが属する方のグループの曲線に関する睡眠状態を、対象脳波セグメントSの睡眠状態と判定するよう構成された、睡眠状態判定部、
として機能させるための、前記コンピュータプログラム。
(A1)対象動物から得られた脳波であって、所定の時間長t1の期間にわたる脳波である、対象脳波セグメントS。
(A2)対象脳波セグメントSの全体にわたるか、または、該対象脳波セグメントSを所定数に分割した、時間長tb(tb≦t1)にわたる対象脳波サブセグメントSb。
(B1)前記対象動物のための参照脳波として利用可能な該対象動物自体のまたはそれと同種の動物の脳波であって、睡眠状態がレム睡眠であることが確定しておりかつ所定時間長の期間にわたる脳波であるN1個(N1は1以上の整数である)の参照レムセグメントR1(m1)。ここで、m1は、1〜N1の整数である。
(B2)前記対象動物のための参照脳波として利用可能な該対象動物自体のまたはそれと同種の動物の脳波であって、睡眠状態がノンレム睡眠であることが確定しておりかつ所定時間長の期間にわたる脳波であるN2個(N2は1以上の整数である)の参照ノンレムセグメントR2(m2)。ここで、m2は、1〜N2の整数である。
[2’]上記曲線Qと各曲線P1(m1)との間の距離が、所定の間隔をおいた周波数ごとの曲線Qと曲線P1(m1)との間のパワー値の差異を2乗し、前記2乗した各値を合算し、前記合算した値の平方根をとることによって算出された値であり、かつ、
上記曲線Qと各曲線P2(m2)との間の距離が、所定の間隔をおいた周波数ごとの曲線Qと曲線P2(m2)との間のパワー値の差異を2乗し、前記2乗した各値を合算し、前記合算した値の平方根をとることによって算出された値である、
上記[1’]記載のコンピュータプログラム。
[3’]参照レムセグメントR1(m1)、および、参照ノンレムセグメントR2(m2)が、それぞれ複数であり、かつ、同一個数であって、
前記睡眠状態判定部では、
(I)全ての指標d1(m1)と全ての指標d2(m2)とを加えた組の全ての指標に対して、類似度の最も高い指標の順位を1として類似度の順位付けをし、指標d1(m1)に付けられた順位の総和と、指標d2(m2)に付けられた順位の総和とを比較し、曲線P1(m1)から構成されるグループと曲線P2(m2)から構成されるグループのうち、前記総和の小さい方のグループの曲線に関する睡眠状態を、対象脳波セグメントSの睡眠状態と判定するか、または、
(II)全ての指標d1(m1)と全ての指標d2(m2)とを加えた組の全ての指標に対して、類似度の最も低い指標の順位を1として類似度の順位付けをし、指標d1(m1)に付けられた順位の総和と、指標d2(m2)に付けられた順位の総和とを比較し、曲線P1(m1)から構成されるグループと曲線P2(m2)から構成されるグループのうち、前記総和の大きい方のグループの曲線に関する睡眠状態を、対象脳波セグメントSの睡眠状態と判定する、
上記[1’]または[2’]記載のコンピュータプログラム。
[4’]対象脳波セグメントSが、対象動物から得られた所定の時間長T1(t1<T1)の期間にわたる対象脳波のうちの一部であり、
参照レムセグメントR1(m1)、および、参照ノンレムセグメントR2(m2)が、前記対象脳波から無作為に1以上選択されたものであり、
前記のレム指標計算部、ノンレム指標計算部、および、睡眠状態判定部は、前記対象脳波の一端側から、時間長t1の期間の脳波を対象脳波セグメントSとして、順次、全体にわたって処理するように構成されている、
上記[1’]〜[3’]のいずれかに記載のコンピュータプログラム。
[5’]さらに、コンピュータを、
下記(C)の筋電信号セグメントに基づいて、前記対象脳波セグメントSが、睡眠状態下における脳波であるか覚醒状態下における脳波であるかを判定するよう構成された睡眠−覚醒判定部、
として機能させるための、コンピュータプログラム部分を有し、
該睡眠−覚醒判定部は、
前記のレム指標計算部、ノンレム指標計算部、および、睡眠状態判定部の前段に位置し、かつ、
下記(C)の筋電信号セグメントを複数の小区間に分割し、各小区間ごとに、その小区間内での筋電信号波形のパワー値の変動幅を示す分散値を計算し、全ての小区間の分散値のうちの中央値に基づいて、前記対象脳波セグメントSが、睡眠状態下における脳波であるか覚醒状態下における脳波であるかを判定するように構成されており、
前記のレム指標計算部、ノンレム指標計算部、および、睡眠状態判定部は、睡眠−覚醒判定部において睡眠状態下と判定された対象脳波セグメントSだけを、計算の対象および判定の対象とするように構成されている、
上記[1’]〜[4’]のいずれかに記載のコンピュータプログラム。
(C)対象動物から得られた筋電信号であって、前記対象脳波セグメントSに同期した、所定の時間長t1の期間にわたる信号である、筋電信号セグメント。
[6’]対象動物の睡眠状態を判定するための睡眠状態判定装置であって、
下記(A1)の対象脳波セグメントSから得られた下記(A2)の対象脳波サブセグメントSbのパワースペクトルを表すグラフの曲線Qと、下記(B1)の参照レムセグメントR1(m1)の各パワースペクトルを表すグラフの曲線P1(m1)とをそれぞれに比較し、曲線Qと各曲線P1(m1)との間の周波数ごとのパワー値の差異に基づいて曲線Qと各曲線P1(m1)との間の距離を計算し、全ての対象脳波サブセグメントSbの距離に基づいて、対象脳波セグメントSのレム睡眠に関する類似度を示す指標d1(m1)を計算するよう構成された、レム指標計算部と、
下記(A1)の対象脳波セグメントSから得られた下記(A2)の対象脳波サブセグメントSbのパワースペクトルを表すグラフの曲線Qと、下記(B2)の参照ノンレムセグメントR2(m2)の各パワースペクトルを表すグラフの曲線P2(m2)とをそれぞれに比較し、曲線Qと各曲線P2(m2)との間の周波数ごとのパワー値の差異に基づいて曲線Qと各曲線P2(m2)との間の距離を計算し、全ての対象脳波サブセグメントSbの距離に基づいて、対象脳波セグメントSのノンレム睡眠に関する類似度を示す指標d2(m2)を計算するよう構成された、ノンレム指標計算部と、
前記の類似度を示す全ての指標d1(m1)と指標d2(m2)に基づいて、対象脳波セグメントSのパワースペクトルが、曲線P1(m1)から構成されるグループと曲線P2(m2)から構成されるグループのどちらに属するかを判定し、該対象脳波セグメントSのパワースペクトルが属する方のグループの曲線に関する睡眠状態を、対象脳波セグメントSの睡眠状態と判定するよう構成された、睡眠状態判定部とを、
有することを特徴とする、前記睡眠状態判定装置。
(A1)対象動物から得られた脳波であって、所定の時間長t1の期間にわたる脳波である、対象脳波セグメントS。
(A2)対象脳波セグメントSの全体にわたるか、または、該対象脳波セグメントSを所定数に分割した、時間長tb(tb≦t1)にわたる対象脳波サブセグメントSb。
(B1)前記対象動物のための参照脳波として利用可能な該対象動物自体のまたはそれと同種の動物の脳波であって、睡眠状態がレム睡眠であることが確定しておりかつ所定時間長の期間にわたる脳波であるN1個(N1は1以上の整数である)の参照レムセグメントR1(m1)。ここで、m1は、1〜N1の整数である。
(B2)前記対象動物のための参照脳波として利用可能な該対象動物自体のまたはそれと同種の動物の脳波であって、睡眠状態がノンレム睡眠であることが確定しておりかつ所定時間長の期間にわたる脳波であるN2個(N2は1以上の整数である)の参照ノンレムセグメントR2(m2)。ここで、m2は、1〜N2の整数である。
[7’]上記曲線Qと各曲線P1(m1)との間の距離が、所定の間隔をおいた周波数ごとの曲線Qと曲線P1(m1)との間の距離の大きさを2乗し、前記2乗した各値を合算し、前記合算した値の平方根をとることによって算出された値であり、かつ、
上記曲線Qと各曲線P2(m2)との間の距離が、所定の間隔をおいた周波数ごとの曲線Qと曲線P2(m2)との間の距離の大きさを2乗し、前記2乗した各値を合算し、前記合算した値の平方根をとることによって算出された値である、
上記[6’]記載の睡眠状態判定装置。
[8’]参照レムセグメントR1(m1)、および、参照ノンレムセグメントR2(m2)が、それぞれ複数であり、かつ、同一個数であって、
前記睡眠状態判定部では、
(I)全ての指標d1(m1)と全ての指標d2(m2)とを加えた組の全ての指標に対して、類似度の最も高い指標の順位を1として類似度の順位付けをし、指標d1(m1)に付けられた順位の総和と、指標d2(m2)に付けられた順位の総和とを比較し、曲線P1(m1)から構成されるグループと曲線P2(m2)から構成されるグループのうち、前記総和の小さい方のグループの曲線に関する睡眠状態を、対象脳波セグメントSの睡眠状態と判定するか、または、
(II)全ての指標d1(m1)と全ての指標d2(m2)とを加えた組の全ての指標に対して、類似度の最も低い指標の順位を1として類似度の順位付けをし、指標d1(m1)に付けられた順位の総和と、指標d2(m2)に付けられた順位の総和とを比較し、曲線P1(m1)から構成されるグループと曲線P2(m2)から構成されるグループのうち、前記総和の大きい方のグループの曲線に関する睡眠状態を、対象脳波セグメントSの睡眠状態と判定する、
上記[6’]または[7’]記載の睡眠状態判定装置。
[9’]対象脳波セグメントSが、対象動物から得られた所定の時間長T1(t1<T1)の期間にわたる対象脳波のうちの一部であり、
参照レムセグメントR1(m1)、および、参照ノンレムセグメントR2(m2)が、前記対象脳波から無作為に1以上選択されたものであり、
前記のレム指標計算部、ノンレム指標計算部、および、睡眠状態判定部は、前記対象脳波の一端側から、時間長t1の期間の脳波を対象脳波セグメントSとして、順次、全体にわたって処理するように構成されている、
上記[6’]〜[8’]のいずれかに記載の睡眠状態判定装置。
[10’]下記(C)の筋電信号セグメントに基づいて、前記対象脳波セグメントSが、睡眠状態下における脳波であるか覚醒状態下における脳波であるかを判定するよう構成された睡眠−覚醒判定部を、さらに有し、
該睡眠−覚醒判定部は、
前記のレム指標計算部、ノンレム指標計算部、および、睡眠状態判定部の前段に位置し、かつ、
下記(C)の筋電信号セグメントを複数の小区間に分割し、各小区間ごとに、その小区間内での筋電信号波形のパワー値の変動幅を示す分散値を計算し、全ての小区間の分散値のうちの中央値に基づいて、前記の対象脳波セグメントSが、睡眠状態下における脳波であるか覚醒状態下における脳波であるかを判定するように構成されており、
前記のレム指標計算部、ノンレム指標計算部、および、睡眠状態判定部は、睡眠−覚醒判定部において睡眠状態下と判定された対象脳波セグメントSだけを、計算の対象および判定の対象とするように構成されている、
上記[6’]〜[9’]のいずれかに記載の睡眠状態判定装置。
(C)対象動物から得られた筋電信号であって、前記対象脳波セグメントSに同期した、所定の時間長t1の期間にわたる信号である、筋電信号セグメント。
[11’]前記のレム指標計算部、ノンレム指標計算部、および、睡眠状態判定部が、コンピュータを用いて構成されており、
該コンピュータが、上記[1’]〜[4’]のいずれかに記載のコンピュータプログラムを実行することによって、レム指標計算部、ノンレム指標計算部、および、睡眠状態判定部として作動する、上記[6’]〜[9’]のいずれかに記載の睡眠状態判定装置。
[12’]前記のレム指標計算部、ノンレム指標計算部、睡眠状態判定部、および、睡眠−覚醒判定部が、コンピュータを用いて構成されており、
該コンピュータが、上記〔5’〕に記載のコンピュータプログラムを実行することによって、レム指標計算部、ノンレム指標計算部、睡眠状態判定部、および、睡眠−覚醒判定部として作動する、上記[10’]記載の睡眠状態判定装置。
以下、本発明のコンピュータプログラムを、当該プログラムともいう。また、本発明の睡眠状態判定装置を、当該判定装置ともいう。
当該プログラムおよび当該判定装置によれば、
(1)対象動物の脳波特性に最適化されたパラメータで自動判定することで、個体差を考慮した判定が可能になり、同時に、
(2)計算式がノイズに耐性を有するので、ノイズ混入時と覚醒時の筋電図を判別し、ノイズが混入しても判定精度の低下を抑制することが可能になる。
また、本発明によれば、判定すべき対象脳波のデータが24時間に渡るものであっても、95%以上の精度を維持しながら、従来30分から数時間かかっていた睡眠判定作業を数分以下で完了することができる。よって、例えば、マウスにおける大規模な睡眠スクリーニングをより効率的に行うことも可能になる。
図1−1は本発明のコンピュータプログラムの主要部分の構成を示すプログラムフロー図である。 図1−2は、判定すべき睡眠状態がレム睡眠およびノンレム睡眠である実施形態における当該プログラムの主要部分の構成を示すプログラムフロー図である。 図2−1は、本発明の睡眠状態判定装置の構成の一例を模式的に示すブロック図である。図2−1(a)は、当該判定装置の主要部分の接続関係を示している。図2−1(b)は、判定すべき睡眠状態がレム睡眠およびノンレム睡眠である実施形態における当該判定装置の主要部分の接続関係を示している。 図2−2は、当該判定装置の好ましい態様を示しており、コンピュータに当該プログラムを実行させることによって、当該判定装置が構成されている。 図3(a)は、本発明の第f指標計算部における曲線Qと各曲線P(m(f))との間の距離の計算の概要を示すグラフ図である。図3(b)は、本発明のレム指標計算部における曲線Qと各曲線P1(m1)との間の距離の計算、および、ノンレム指標計算部における曲線Qと各曲線P1(m1)との間の距離の計算の概要を示すグラフ図である。図3(c)に示した式を用いて、対象EEGスペクトルと各参照曲線との間の類似度を計算する。2つの曲線がほぼ同一であれば距離の値d(P,Q)は0に近くなる。 図4は、本発明のレム指標計算部およびノンレム指標計算部において、自動化された睡眠状態判定のためのパターンマッチングアルゴリズムを示す図である。 図5は、筋電信号のパワー値の分散値の算出による睡眠/覚醒状態の判定の概要を示す図である。同図では、各0.5秒の微小区間における筋電信号のパワー値を用いて、各4秒の小エポックについて筋電信号のパワー値の分散値を算出する。図に示す通り、次に20秒のエポックについての筋電信号のパワー値の分散値をノンパラメトリックなメジアンフィルターを用いて算出する。 図6−1は、本発明において、筋電信号による判定部をさらに加えたときの、判定の流れを示すフロー図である。 図6−2は、判定すべき睡眠状態がレム睡眠およびノンレム睡眠である本発明の実施態様において、筋電信号による判定部をさらに加えたときの、判定の流れを示すフロー図である。 図7−1は、睡眠ステージを連続的に、マニュアル作業で訂正するために、当該プログラムにおいて2つのウインドウを瞬時に切り替える様子を示す図である。 図7−2は、睡眠ステージを連続的に、マニュアル作業で訂正するために、当該プログラムにおいて2つのウインドウを瞬時に切り替える様子を示す図である。 図8は、本発明の実施例1において、明期12h/暗期12hの周期の24時間の基礎EEG/EMG記録を当該プログラムを用いて睡眠状態判定した結果を示す表1である。 図9は、実施例1において、野生型マウスの同じ24時間EEG/EMG記録を用いた、当該プログラムおよびマニュアル作業での睡眠状態判定によるサンプルのヒプノグラムを示す図である。 図10は、実施例2において、本発明がorexin欠損マウスのカタプレキシーの発作を正しくステージ決定できることを示す図である。自動化された睡眠状態判定の結果およびマニュアル作業での睡眠状態判定の結果の両方について、矢印で示す暗期中のカタプレキシーのエピソードに注目されたい。 図11は、実施例3において、Gscl欠損マウスにおけるレム睡眠中の異常なEEGマイクロアーキテクチャを示す図である。 図12は、実施例4の大規模スクリーニングの解析結果を示すグラフ図である。 図13は、実施例4と同様の大規模スクリーニングを、同じマウス系統(C57BL/6J系統)を用いて別の施設(テキサス大学)にて行った実験の解析結果を示すグラフ図である。 図14は、実施例4と同様の大規模スクリーニングを、異なるマウス系統(C57BL/6JとC57BL/6Nとの混合系統)を用いて同じ施設(筑波大学)にて行った実験の解析結果を示すグラフ図である。
先ず、本発明のコンピュータプログラムを、図を参照しながら具体的に説明する。当該プログラムは、対象動物の睡眠状態を判定するためのコンピュータプログラムであって、対象動物の所与の期間における睡眠が、2以上の予め定められた睡眠状態E〜E(Fは睡眠状態の個数を示す2以上の整数である)のうちのいずれであるのかを判定するために、図1−1のプログラムフローに示すように、コンピュータを、睡眠状態E〜Eのそれぞれに対応するF個の指標計算部である第1指標計算部から第F指標計算部として、および、睡眠状態判定部として機能させるためのコンピュータプログラムである。換言すると、当該プログラムは、睡眠状態E〜Eのそれぞれに対応する指標を計算するF個のステップ、および、睡眠状態判定を行うステップを、コンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムである。ここで、睡眠状態の個数Fは、本発明による睡眠状態の判定の目的に応じて適宜決定されるが、通常、2〜30程度の整数である。
以下の第1指標計算部から第F指標計算部、睡眠状態判定部、さらには、好ましい態様における睡眠−覚醒判定部についてのそれぞれの説明は、後述の本発明による睡眠状態判定装置における第1指標計算部から第F指標計算部、睡眠状態判定部、睡眠−覚醒判定部のそれぞれの説明でもある。
図1−1のプログラムフローでは、説明のために、第1指標計算部、第2指標計算部、・・・、第F指標計算部の順に配置している。しかし、第1指標計算部から第F指標計算部の配置順序(プログラムの実行順序)は限定されず、複数の演算処理装置を用いた同時処理であってもよく、また、2以上の異なる指標計算部の計算を、交互に、または、ランダムに行ってもよい。
対象動物は、特に限定はされないが、睡眠状態中にノンレム睡眠とレム睡眠が存在する哺乳動物が挙げられる。とりわけ、本発明の有用性が特に顕著となる哺乳動物としては、霊長類(例、ヒト、サル)、げっ歯類(例、マウス、ラット、モルモット)の他、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、ブタなどといったペットや家畜となる動物などが挙げられる。
2以上の予め定められた睡眠状態E〜Eは、脳波パターンに基づいて互いに識別および分類できる睡眠状態である限り、特に限定されない。一つの実施形態において、睡眠状態の個数Fは2であり、かつ睡眠状態EおよびEはノンレム睡眠およびレム睡眠にそれぞれ対応している。この場合、当該プログラムは、対象動物の所与の期間における睡眠が、ノンレム睡眠またはレム睡眠のいずれであるのかを判定するために用いられるコンピュータプログラムである。
2以上の予め定められた睡眠状態E〜Eは、ノンレム睡眠および/またはレム睡眠の1以上のステージを含んでいてもよい。例えば、ヒトの場合、ノンレム睡眠は3つまたは4つのステージに分類できることが知られている。具体的には、"Iber C, Ancoli-Israel S, Chesson A, Quan SF for the American Academy Sleep Medicine. The AASM Manual for the Scoring of Sleep and Associated Events: Rules, Terminology and Technical Specifications. Westchester: American Academy of Sleep Medicine, 2007."には、脳波パターンに従ってヒトの睡眠を、ノンレム(NREM)睡眠の3つのステージN1、N2およびN3と、レム(REM)睡眠の計4つの睡眠状態に分類する基準が提案されている(AASM分類)。一方、"Rechtschaffen A, Kales A, eds. A Manual of Standardized Terminology, Techniques and Scoring System for Sleep Stages of Human Subjects. Washington: Public Health Service, US Government Printing Office, 1968."には、脳波パターンに従ってヒトの睡眠を、ノンレム(NREM)睡眠の4つのステージ1、2、3および4と、レム(REM)睡眠の計5つの睡眠状態に分類する基準が提案されている(R&K分類)。
従って、対象動物がヒトである場合、
(i)AASM分類の基準に従って、睡眠状態の個数Fは4であり、かつ睡眠状態E〜Eは、NREM睡眠のステージN1、N2およびN3、ならびにREM睡眠にそれぞれ対応しているか、または、
(ii)R&K分類の基準に従って、睡眠状態の個数Fは5であり、かつ睡眠状態E〜Eは、NREM睡眠のステージ1、2、3および4、ならびにREM睡眠にそれぞれ対応していてもよい。
第1指標計算部から第F指標計算部は、対象とする睡眠状態(それぞれE〜E)が互いに異なるが、基本的な構成は同じである。従って、以下では、fを1〜Fの整数として第f指標計算部についてその構成を説明する。
第f指標計算部は、次の演算ステップを行うように構成される。
先ず、下記(A1)の対象脳波セグメント(実施例では「エポック」とも呼ぶ)Sを取得し、そこから下記(A2)の対象脳波サブセグメント(実施例では「サブエポック」とも呼ぶ)Sbを得る。
(A1)対象脳波セグメントS:
対象脳波セグメントSは、対象動物から得られた脳波であって、所定の時間長t1の期間にわたる脳波である。ここで、時間長t1は、好ましくは4秒〜60秒であり、より好ましくは4秒〜20秒であり、実施例では、20秒を採用している。時間長t1は、後述の対象脳波サブセグメントSbに対して適切に設定された時間長であって、4秒より短いと、周波数成分の計算結果が不安定となり、60秒より長いと、短期間の睡眠状態遷移を見逃す結果となる。
(A2)対象脳波サブセグメントSb:
対象脳波サブセグメントSbは、対象脳波セグメントSの全体にわたるか、または、該対象脳波セグメントSを所定数に分割した、時間長tb(tb≦t1)にわたるサブセグメント(サブエポックともいう)である。
対象脳波サブセグメントSbは、対象脳波セグメントSを分割せずにそのまま用いてもよいが(tb=t1)、2以上に細分化することが好ましく、2以上に等分割することがより好ましい。対象脳波サブセグメントSbの時間長tbは、好ましくは2秒〜10秒であり、より好ましくは4秒〜5秒であり、実施例では、対象脳波セグメントSを5分割した4秒を採用している。時間長tbは、上述の対象脳波セグメントSに対して適切に設定された時間長であって、2秒より短いと、周波数成分の計算結果が不安定となり、10秒より長いと、睡眠状態が遷移しているセグメントでの解析精度の低下となる。
対象脳波セグメントS、対象脳波サブセグメントSbは、それぞれ、コンピュータがアクセス可能な適切な記憶装置に格納しておくことが好ましい。
次に、第f指標計算部では、上記で得た対象脳波サブセグメントSbの各パワースペクトルを表すグラフの曲線Qと、下記(B)の参照セグメントR(m(f))の各パワースペクトルを表すグラフの曲線P(m(f))とをそれぞれに比較する。
ここで、パワースペクトルの波形が同じでもパワー値が異なる場合があるので、上記の曲線Qおよび各曲線P(m(f))は標準化されたものであることが好ましい。標準化は、例えば、解析に用いる周波数帯にわたる積分値が全ての曲線について同一となるよう、曲線毎に決定される定数を各曲線のパワー値に掛けることにより行うことができる。
また、所与のセグメントまたはサブセグメントのパワースペクトルは、通常、該セグメントまたはサブセグメント全体にわたる波形信号に基づいて算出されたものであるが、実質的に同じパワースペクトルを取得し得る限り、該パワースペクトルは該セグメントまたはサブセグメントの一部分に基づいて算出されたものであってもよい。
(B)参照セグメントR(m(f)):
参照セグメントR(m(f))は、前記対象動物のための参照脳波として利用可能な該対象動物自体のまたはそれと同種の動物の脳波であって、睡眠状態が睡眠状態Eであることが確定しておりかつ所定時間長の期間にわたる、N個(Nは1以上の整数である)の参照用の脳波である。ここで、m(f)は、1〜Nの整数である。
「睡眠状態が睡眠状態Eであることが確定している」とは、特に好ましい態様では、訓練された臨床検査技師など専門的知識を持った技官による目視での判定によって、睡眠状態が睡眠状態Eであると認定を受けたことを意味する。代替的には、当該プログラム自体または従来公知の自動判定プログラムを用いた多重の判定の結果、睡眠状態Eであると判定されたものを参照セグメントR(m(f))として代用することもできる。しかし、現時点では、専門的知識を持った技官による目視での判定が最も正確である。専門的知識を持った技官による所定数の参照セグメントR(m(f))を用いるだけで、大規模な自動判定が可能になることは、当該プログラムの特徴の1つでもある。
参照セグメントR(m(f))の所定時間長の期間は、特に限定はされないが、好ましくは4秒〜60秒であり、より好ましくは4秒〜20秒であり、実施例では、対象脳波セグメントSと同じ、20秒を採用している。
参照セグメントR(m(f))の数(N)は、好ましくは1個〜30個であり、より好ましくは10個〜15個であり、実施例では、15個を採用している。Nが少ないと解析精度の低下を引き起こす原因となり、多すぎると解析時間の増大を引き起こす原因となる。
が15の場合、m(f)は1〜15の整数となり、
(m(f))=R(1)、R(2)、R(3)、....、R(15)
と表される。
参照セグメントR(m(f))は、コンピュータがアクセス可能な適切な記憶装置に格納しておけばよい。
図3(a)に示すように、パワースペクトルを表す曲線Qと曲線P(m(f))との比較では、曲線Qと曲線P(m(f))との間の周波数ごとのパワー値の差異に基づいて曲線Qと曲線P(m(f))との間の距離を計算する。
距離の計算のために用いられる周波数帯としては、対象動物の脳波において有意なパワー値が観察され得る周波数帯とすることができる。例えば、ヒトを含む霊長類やげっ歯類の場合、0〜30Hzの周波数帯を用いることができる。また、曲線Qと曲線P(m(f))との間のパワー値の差異は、0.5Hz〜2Hz程度のサンプリング間隔をおいて比較され得る。実施例では、1Hzのサンプリング間隔で0〜30Hzの周波数成分を計算に用いている。
2つの曲線間の距離(即ち、全体的なずれの大きさの指標)の計算方法は、着目している周波数帯にわたる曲線Qと曲線P(m(f))との間の周波数ごとのパワー値の差異に基づくものである限り、特に限定されない。好ましい実施形態では、曲線Qと曲線P(m(f))との間の距離は、所定の間隔をおいた周波数ごとの曲線Qと曲線P(m(f))との間のパワー値の差異を2乗し、前記2乗した各値を合算し、前記合算した値の平方根をとることによって算出された値である。図3(c)に示すように、この場合の距離を数式を用いて表すと下記式の通りである。
(上記式において、サンプリングはn個の周波数成分frq、frq、・・・、frqにおいて行われ、P(i=1〜n)は周波数frqにおける曲線Pのパワー値、Q(i=1〜n)は周波数frqにおける曲線Qのパワー値を示す。)
あるいは、曲線Qと曲線P(m(f))との間の距離は、所定の間隔をおいた周波数ごとの曲線Qと曲線P(m(f))との間のパワー値の差異の絶対値を合算した値であってもよい。
前記の距離の計算を、対象脳波セグメントSからの全ての対象脳波サブセグメントSbについて行う。曲線Qと各曲線P(m(f))との間の距離がそれぞれ計算されたら、全ての対象脳波サブセグメントSbの距離に基づいて、参照セグメントR(m(f))を睡眠状態Eの基準期間とした場合の、対象脳波セグメントSの脳波と睡眠状態E時の脳波との間の特徴的な類似度を示す指標d(m(f))を計算する。該指標は、脳波が睡眠状態E時の脳波に類似する場合に大きい値を与えるものであってもよいし、小さい値を与えるものであってもよい。
全ての対象脳波サブセグメントSbの距離に基づく指標d(m(f))の計算は、例えば、各サブセグメントSb(実施例では4秒毎の5個のサブセグメント)に関して得られた距離を単純に加算平均することにより行うことができる。あるいは、図4に示すように、脳波が睡眠状態E時の脳波に類似する場合に高い得点を与えるよう、予め定めた変換式に従って、距離が大きくなるにつれてスコアを小さくする演算を適用してもよい。
睡眠状態Eがレム睡眠またはノンレム睡眠の場合、第f指標計算部は、レム指標計算部またはノンレム指標計算部である。
〔レム指標計算部〕
レム指標計算部は、次の演算ステップを行うように構成される。
前記した対象脳波セグメントSから得られた対象脳波サブセグメントSbのパワースペクトルを表す曲線Qと、下記(B1)の参照レムセグメントR1(m1)の各パワースペクトルを表すグラフの曲線P1(m1)とをそれぞれに比較する。
(B1)参照レムセグメント(参照レムエポックともいう)R1(m1):
参照レムセグメントは、前記対象動物のための参照脳波として利用可能な該対象動物自体のまたはそれと同種の動物の脳波であって、睡眠状態がレム睡眠であることが確定しておりかつ所定時間長の期間にわたる、N1個(N1は1以上の整数である)の脳波である。ここで、m1は、1〜N1の整数である。
「睡眠状態がレム睡眠であることが確定している」の意味については、参照セグメントR(m(f))に関して説明した事項と同様である。また、参照レムセグメントの所定時間長の期間、数(N1)も、参照セグメントR(m(f))に関して説明した事項と同様である。
レム指標計算部においても、第f指標計算部について説明したように、曲線Qと各曲線P1(m1)との間の距離を計算し、全ての対象脳波サブセグメントSbの距離に基づいて、参照レムセグメントR1(m1)をレム睡眠の基準期間とした場合に、対象脳波セグメントSのレム睡眠に関する類似度を示す指標d1(m1)を計算する。曲線Qと各曲線P1(m1)との間の距離の計算方法、指標d1(m1)の計算方法の詳細は、上記した曲線Qと各曲線P(m(f))との間の距離の計算、および、指標d(m(f))の算出に関して説明した事項と同様である。
参照レムセグメントは、コンピュータがアクセス可能な適切な記憶装置に格納しておくことが好ましい。
〔ノンレム指標計算部〕
ノンレム指標計算部は、次の演算ステップを行うように構成される。
前記した対象脳波セグメントSから得られた対象脳波サブセグメントSbのパワースペクトルを表すグラフの曲線Qと、下記(B2)の参照ノンレムセグメントR2(m2)の各パワースペクトルを表すグラフの曲線P2(m2)とをそれぞれに比較する。
(B2)参照ノンレムセグメント(参照ノンレムエポックともいう)R2(m2):
参照ノンレムセグメントは、前記対象動物のための参照脳波として利用可能な該対象動物自体のまたはそれと同種の動物の脳波であって、睡眠状態がノンレム睡眠であることが確定しておりかつ所定時間長の期間にわたる、N2個(N2は1以上の整数である)の脳波である。ここで、m2は、1〜N2の整数である。
「睡眠状態がノンレム睡眠であることが確定している」の意味については、参照セグメントR(m(f))に関して説明した事項と同様である。また、参照ノンレムセグメントの所定時間長の期間、数(N2)も、参照セグメントR(m(f))に関して説明した事項と同様である。
ノンレム指標計算部においても、レム指標計算部と同様に、曲線Qと各曲線P2(m2)との間の距離を計算し、全ての対象脳波サブセグメントSbの距離に基づいて、参照ノンレムセグメントR2(m2)をノンレム睡眠の基準期間とした場合に、対象脳波セグメントSのノンレム睡眠に関する類似度を示す指標d2(m2)を計算する。曲線Qと各曲線P2(m2)との間の距離の計算方法、指標d2(m2)の計算方法の詳細は、上記した曲線Qと各曲線P(m(f))との間の距離の計算、および、指標d(m(f))の算出に関して説明した事項と同様である。
参照ノンレムセグメントは、コンピュータがアクセス可能な適切な記憶装置に格納しておくことが好ましい。
〔睡眠状態判定部〕
睡眠状態判定部は、睡眠状態E〜Eのそれぞれについて得られた全ての指標d(m(f))(fは1〜Fの整数であり、m(f)は1〜Nの整数である)に基づいて、対象脳波セグメントSの脳波が睡眠状態E〜Eのいずれの時の脳波であるのかを決定し、それにより、対象脳波セグメントSに対応する期間における睡眠が、睡眠状態E〜Eのいずれのものであるのかを判定するように構成されている。
睡眠状態E〜Eの全てについて参照セグメントR(m(f))は、それぞれ複数であり、かつ、同一個数であることが好ましい。
睡眠状態判定部における好ましい判定手順としては、次の(I)または(II)が例示されるが、対象脳波セグメントSの脳波が睡眠状態E〜Eのいずれの時の脳波であるのかを決定し得るあらゆる手法を採用することができる。
(I)第1指標計算部から第F指標計算部により計算された全ての指標d(m(f))(fは1〜Fの整数であり、m(f)は1〜Nの整数である)に対して、類似度の最も高い指標の順位を1として類似度の順序付けをし、睡眠状態Eのそれぞれについて指標の順位の総和を計算し、前記総和が最も小さい睡眠状態を、対象脳波セグメントSの睡眠状態と判定する。
(II)第1指標計算部から第F指標計算部により計算された全ての指標d(m(f))(fは1〜Fの整数であり、m(f)は1〜Nの整数である)に対して、類似度の最も低い指標の順位を1として類似度の順序付けをし、睡眠状態Eのそれぞれについて指標の順位の総和を計算し、前記総和が最も大きい睡眠状態を、対象脳波セグメントSの睡眠状態と判定する。この判定方法は、判定ロジック自体は、(I)の判定方法と実質的に同一である。
睡眠状態E〜Eがノンレム睡眠およびレム睡眠の2つである場合、睡眠状態判定部は、類似度を示す全ての指標d1(m1)と指標d2(m2)に基づいて、対象脳波セグメントSのパワースペクトルが、曲線P1(m1)から構成されるグループ(レム睡眠に関するグループ)と曲線P2(m2)から構成されるグループ(ノンレム睡眠に関するグループ)のどちらに属するかを判定し、該対象脳波セグメントSのパワースペクトルが属する方のグループの曲線に関する睡眠状態(レム睡眠かノンレム睡眠か)を、対象脳波セグメントSの睡眠状態と判定することができる。
レムセグメントR1(m1)、および、ノンレムセグメントR2(m2)は、上記したように、それぞれ複数であり、かつ、同一個数であることが好ましい。
睡眠状態判定部における好ましい判定手順としては、次の(I)または(II)が例示されるが、対象脳波セグメントSのパワースペクトルが、P1(m1)から構成されるグループ(レム睡眠に関するグループ)と曲線P2(m2)から構成されるグループ(ノンレム睡眠に関するグループ)のどちらに属するかを判定し得るあらゆる手法を採用することができる。
(I)全ての指標d1(m1)と全ての指標d2(m2)から構成される組の全ての指標に対して、類似度の最も高い指標の順位を1として類似度の順位付けをする。
そして、指標d1(m1)に付けられた順位の総和と、指標d2(m2)に付けられた順位の総和とを比較し、曲線P1(m1)から構成されるグループと曲線P2(m2)から構成されるグループのうち、前記総和の小さい方のグループの曲線に関する睡眠状態を、対象脳波セグメントSの睡眠状態と判定する。図4では、ノンレムに関する順位の総和が11であり、レムに関する順位の総和が25であり、よって、対象脳波セグメントSのパワースペクトルがノンレムに属すると判定している。
(II)全ての指標d1(m1)と全ての指標d2(m2)から構成される組の全ての指標に対して、類似度の最も低い指標の順位を1として類似度の順位付けをする。
そして、指標d1(m1)に付けられた順位の総和と、指標d2(m2)に付けられた順位の総和とを比較し、曲線P1(m1)から構成されるグループと曲線P2(m2)から構成されるグループのうち、前記総和の大きい方のグループの曲線に関する睡眠状態を、対象脳波セグメントSの睡眠状態と判定する。この判定方法は、判定ロジック自体は、(I)の判定方法と実質的に同一である。
本発明の好ましい態様では、対象脳波セグメントSは、対象動物から得られた所定の時間長T1(t1<T1)の期間にわたる対象脳波のうちの一部である。そして、対象脳波の全体にわたって、該対象脳波の一端側の区間(時間長t1の区間)を対象脳波セグメントSとし、順次、他方の端部まで、全体にわたって判定処理を行う。
対象脳波に対して前記のような順次の判定処理が行われるように、第1指標計算部から第F指標計算部、睡眠状態判定部を構成することで、高速かつ効率の良い判定処理が可能になる。
対象脳波の時間長T1は、特に限定はされないが、ほ乳類の睡眠状態は24時間のサイクルで変動している点からは、24時間〜72時間程度が好ましい範囲である。
また、睡眠状態E〜Eのそれぞれについて、参照セグメントR(m(f))(例えば、参照レムセグメントR1(m1)、および、参照ノンレムセグメントR2(m2))は、対象脳波から無作為に必要数だけ選択されることが好ましい。参照セグメントR(m(f))(例えば、参照レムセグメントR1(m1)、および、参照ノンレムセグメントR2(m2))を、対象脳波から無作為に選択することによって、1個体内での時間による脳波特徴の変化を捉え、解析精度の向上に結びつくという効果が得られる。
上記演算の具体例を示す。
図4は、本発明のレム指標計算部およびノンレム指標計算部において、自動化された睡眠状態判定のためのパターンマッチングアルゴリズムを示す図である。
当該プログラムの補助により、ユーザーはマウス個体についていくつかの代表的なノンレムエポックおよびレムエポックを参照エポックとして無作為に選択する。参照ノンレムエポックおよび参照レムエポックのそれぞれに対して、同じマウスからの所与の4秒のサブエポックについて類似度スコア(図3)を周波数ドメインにおいて算出する。
類似度スコアを比較することにより、ノンパラメトリックな順位付けにより対象小エポックの睡眠ステージを判定する。
図4では、説明のために4つのエポックを示しているが、実際のプログラムでは、好ましい態様として、15個の参照ノンレムエポックおよび参照レムエポックを用いている。このアルゴリズムは、脳波(EEG)/筋電信号(EMG)パラメータの個体間および個体内のばらつきに適応する。
核心となる判定アルゴリズム:ユーザーが選択した参照エポックに対するEEGスペクトルのノンパラメトリックフィッティング
脳波の信号は本質的に非常に弱い信号であるため、外的要因による干渉を受けやすい。
睡眠の記録における過去の豊富な経験から、本発明者らは、手術や記録の手順の標準化後でさえも、マウス個体間で脳波特性がわずかに異なるとの認識を持つに至った。そのため、自動睡眠状態判定アルゴリズムが、微妙な個体差というノイズがあっても、2つ以上の異なる睡眠ステージを正しく判別できることが非常に重要である。
当該プログラムは、簡単なパターンマッチングアルゴリズムを利用する。
先ず、人間のスコア記録員(訓練された技官)が、各マウスについて、3日間のEEG/EMG記録から、ノンレム睡眠およびレム睡眠のエピソードについて各15個の代表的な(参照)エポックを無作為に選択する。
次に、当該プログラムが、図3に示した曲線Qと曲線Pとの間の距離(ユークリッド距離)を用いて、周波数ドメインにおいてこれらの参照エポックに対する所与のエポックの「類似度」を計算する。
このユークリッド距離の計算において、0〜30Hzの全周波数帯を用いてスコアを計算する。本発明では、スコア計算において、EEGスペクトルを、デルタやシータ等のEEGスペクトルの特定周波数帯に限定しない。よって、本発明の判定アルゴリズムは、個々のマウスに対して特定のEEG特性を与えることができる。
最後に、本発明のプログラムは、これらのスコアをノンパラメトリックに評価することにより、最終の睡眠ステージを決定する。
より好ましい態様では、本発明のプログラムでは、これらの計算は4秒のサブエポック毎に行われ、20秒のエポックの最終スコアの決定は、該20秒のエポックの前後に隣接する各2つの4秒のサブエポックのスコアを更に組み込むことにより行われる(即ち、5+2+2=計9個のサブエポックからのスコアが用いられる)。
以上のように、本発明による判定アルゴリズムは、大胆かつ柔軟な手段を採ることにより、人間であっても適切に睡眠状態を判定することが難しい遷移的なエポックも含めて、所定のエポックの最終睡眠ステージを決定することができる。
本発明の好ましい態様では、コンピュータを、下記の睡眠−覚醒判定部として機能させるための、コンピュータプログラム部分をさらに有する。本発明において、筋電信号による判定部をさらに加えたときの、判定の流れを示すフロー図を図6−1に示し、判定すべき睡眠状態がレム睡眠およびノンレム睡眠である本発明の実施態様において、筋電信号による判定部をさらに加えたときの、判定の流れを示すフロー図を図6−2に示す。
この睡眠−覚醒判定部は、上記した脳波に対する睡眠状態の判定に加えて、そのときの筋電信号(Electromyographic signal:EMG信号)によって、睡眠状態であるか覚醒状態であるかを判定する部分である。
この睡眠−覚醒判定部は、下記(C)の筋電信号セグメントに基づいて、前記対象脳波セグメントSが、睡眠状態下における脳波であるか覚醒状態下における脳波であるかを判定するよう構成される。
該睡眠−覚醒判定部は、図5に示すように、下記(C)の筋電信号セグメントを複数の小区間に分割し、各小区間ごとに、その小区間内での筋電信号波形のパワー値の変動幅を示す分散値を計算する。そして、全ての小区間の分散値のうちの中央値に基づいて、対象動物が睡眠状態下にあるか覚醒状態下を判定する。即ち、対象脳波セグメントSが、睡眠状態下における脳波であるか覚醒状態下における脳波であるかが判定される。
(C)筋電信号セグメント:
筋電信号セグメントは、対象動物から得られた筋電信号であって、前記対象脳波セグメントSに同期した、所定の時間長t1の期間にわたる筋電信号である。
筋電信号セグメントの時間長t1は、対象脳波セグメントSについての説明で述べたとおりである。実際の判定では、所定の時間長T1の対象脳波を取得するときに、同時に、所定の時間長T1の筋電信号を取得し、それら1対のデータから、同じ期間における対象脳波セグメントSと筋電信号セグメントを取り出せばよい。
筋電信号セグメントは、対象脳波セグメントと対応付けて、コンピュータがアクセス可能な適切な記憶装置に格納しておくことが好ましい。
上記筋電信号セグメントの小区間の時間長は、好ましくは2秒〜10秒であり、より好ましくは4秒〜5秒であり、実施例では、4秒を採用している。
該睡眠−覚醒判定部は、上記の睡眠状態判定部の後段に配置されてもよいが、好ましい態様では、第1指標計算部から第F指標計算部、および睡眠状態判定部の前段に配置される。これによって、第1指標計算部から第F指標計算部(例えば、レム指標計算部、ノンレム指標計算部)、睡眠状態判定部は、睡眠−覚醒判定部において睡眠状態下と判定された対象脳波セグメントSだけを、計算の対象および判定の対象とすることができ、演算の無駄が無くなる。
本発明による睡眠判定のアルゴリズムは、上記したように、睡眠状態E〜E(例えば、レム睡眠またはノンレム睡眠)のいずれであるかが確定しているEEGスペクトルをそれぞれ用いることにより、対象とする睡眠が睡眠状態E〜E(例えば、レム睡眠またはノンレム睡眠)のいずれであるかを判定する。
この主たる判別方法に加えて、睡眠−覚醒判定部では、筋電信号に含まれる情報を用いることにより、覚醒状態と睡眠状態とを区別する。
本発明者らがこれまでに認識したEMG信号測定における1つの現実的な問題は、手術中に挿入するEMGワイヤの位置に依存して、常にバックグラウンドノイズがEMG信号に容易に混入してしまうことである。このことは、特定のエポックについてEMGパワー値を単純に比較することにより覚醒状態と睡眠とを分類するのは難しいことを示唆する。
そのため、本発明らは、1エポック内の小区間(サブエポック)毎のEMGパワー値の間の分散値を利用して覚醒エポックのみを特異的に検出する新規のアルゴリズムを開発した。
先ず、各小区間において、0.5秒〜2秒(実施例では時間長0.5秒)の微小区間ごとにEMGパワー値を計算する。実施例では、時間長4秒のサブエポック中に8個の微小区間が存在する。次に、個々の小区間内の微小区間のパワー値について分散値を決定する。
20秒の筋電信号セグメント(エポック)内の4秒のサブエポック(計5個)の分散値をメジアン関数によりフィルタリングした後、最終の分散値を計算する。図5に示すような睡眠エピソード中の小筋肉の収縮を伴うエポックにおける誤った計算を排除するためにメジアンフィルターは非常に有効である。
プログラムが全てのエポックについて最終のEMG分散値を計算した後、覚醒と睡眠とを判別する1つの閾値をユーザーはグラフィカルユーザーインターフェースを通じて選択する。
睡眠ステージ決定の高速修正を可能にする直感的に操作が可能なインターフェース:
自動化されたアルゴリズムでの完璧な睡眠状態判定の追及は重要なステップであるが、大量の睡眠記録を分析する場合には、直感的に操作が可能なインターフェースの構築が重要な実用的役割を果たす。
本発明は、解析日の選択やファイルの記録から解析の終了まで豊富なグラフィカルユーザーインターフェース(GUI)を用いるので、ユーザーは本発明の実施の際にマニュアルを必要とせず、直感的に睡眠状態の決定を行うことができる。
特に、睡眠ステージを手動で修正するための画面では、当該プログラムによる不可避のステージ決定の誤りをユーザーが特定し修正するのに役立つ。この画面には、デルタ波(ノンレム睡眠特異的にピークがみられる周波数帯)の強度またはシータ(レム睡眠特異的にピークがみられる周波数帯):デルタ比のグラフが、対応する睡眠状態グラフの真上に示される。関心のあるエポックをクリックすると、生のEEG/EMGデータが直ちに表示される。これにより、ユーザーは睡眠ステージを迅速に検証したり、修正したりすることができる(図7−1、図7−2)。
図7−1、図7−2に示すように、ヒプノグラム上の対応するデルタパワーグラフ(またはデルタ/シータ比)を用いて睡眠ステージを調べることにより、ユーザーは当該プログラムが誤った可能性がある疑わしいエポックを容易に見付けることができる。図7−1、図7−2に示す例では、図7−1のヒプノグラムのその部分をクリックすると、図7−2に示す第2のウインドウがただちに表示される。第2のウインドウには生のEEG/EMGデータが表示され、必要であればステージを決定し直すことができる。
睡眠状態判定が終了すると、睡眠ステージ、ヒプノグラム、および、全ての睡眠パラメータの値を含む各種睡眠データファイルが自動的に生成される。
次に、本発明による睡眠状態判定装置の構成を説明する。
当該判定装置は、図2−1(a)に概要を示すように、第1指標計算部C1、第2指標計算部C2、・・・、第F指標計算部CFと、睡眠状態判定部3とを少なくとも有する。判定すべき睡眠状態がレム睡眠およびノンレム睡眠である実施形態では、当該判定装置は、図2−1(b)に例示するように、レム指標計算部1、ノンレム指標計算部2と、睡眠状態判定部3とを少なくとも有する。また、これら当該判定装置の好ましい態様では、さらに睡眠−覚醒判定部4を有する。これらの第1指標計算部C1から第F指標計算部CF(例えば、レム指標計算部1、ノンレム指標計算部2)、睡眠状態判定部3、睡眠−覚醒判定部4の各機能の詳細な説明は、上記において本発明のプログラムの各部の説明で述べたとおりである。当該判定装置は、前記の各機能が得られるように構成されればよい。
当該プログラムの説明で述べたとおり、睡眠−覚醒判定部4は、第1指標計算部C1から第F指標計算部CF(例えば、レム指標計算部1、ノンレム指標計算部2)、睡眠状態判定部3の前段に位置することが好ましい。
前記の第1指標計算部から第F指標計算部(例えば、レム指標計算部、ノンレム指標計算部)、睡眠状態判定部、睡眠−覚醒判定部は、個別の装置であってもよい。好ましい態様では、当該判定装置は、図2−2に概要を示すとおり、コンピュータである。
図2−2の例では、表示装置23、入力装置(キーボード21、マウス22)、外部機器(脳波計30、筋電計40)が、入出力機器用のインターフェース13を介してデータバス14に接続されている。
該コンピュータは、本発明のコンピュータプログラムを実行することで、睡眠状態判定装置として機能するようになっている。該コンピュータとしての基本的なアーキテクチャ自体は、従来公知のコンピュータと同様であってよい。図2−2に示すように、当該判定装置としてのコンピュータは、中央処理装置(CPU)10とメインメモリーであるランダムアクセスメモリー(RAM)11がデータバス14によって接続された構成を有しており、好ましくはハードディスクドライブ(HDD)12が接続されてCPU10に大容量の記憶領域を与えている。
該コンピュータは、各種の記憶装置、記録媒体に対して、データの書き込み/読み書きが可能であり、プリンターなど通常のコンピュータに接続可能な周辺機器が接続可能であってよい。
当該プログラムを外部記憶装置にインストールしておき、該プログラムの全体を一度に実装メモリー(RAM)に読み込んで実行するようにする態様や、各処理部ごとにRAMに読み込んで実行するようにする態様などは、プログラムの大きさやコンピュータの仕様に応じて適宜決定すればよい。当該プログラムは、それを実行すべきコンピュータの記憶装置に格納された状態であってもよく、また、コンピュータが読み取り可能な記録媒体(磁気的なおよび/または光学的な記録媒体)や記憶装置等に格納されてなる記録物品としてユーザーに提供されてもよく、また、コンピュータがアクセス可能なインターネット上のウェブサーバーに格納され、通信回線等を通じてユーザーのコンピュータに提供されてもよい。
当該判定装置によって処理すべき対象脳波(時間長T1の期間にわたる脳波データ)および筋電信号(時間長T1の期間にわたる信号データ)は、脳波計および筋電計から取得され、インターフェースを通じて、または、記憶装置や記録媒体を介して、または、インターネットやLANを通じて、当該判定装置に入力され、当該判定装置の記憶装置に格納されたデータであってもよい。また、これら対象脳波や筋電信号を対象動物から取得しながら、当該装置によってその場での処理による判定を行う構成であってもよい。
また、当該判定装置は、脳波計(対象動物に装着するよう構成された電極を含む)を有する装置またはシステムとして構成されてもよい。さらに、当該判定装置は、脳波計と筋電計(対象動物に装着するよう構成された電極を含む)とを有する装置またはシステムとして構成されてもよい。
実施例1
本実施例では、睡眠スクリーニングにおける本発明の有用性を検証および確認するため、8匹の雄性C57BL/6Jマウスから得たEEG/EMGデータを用いて、各睡眠ステージの精度、特異性および感度を求めた。
図8に示す表1は、明期12h/暗期12hの周期の24時間の基礎EEG/EMG記録を当該プログラムを用いて睡眠状態判定した結果を示している。
表中の各値は、平均±SDを表す。該表1の上側の表は、当該プログラムの自動睡眠状態判定アルゴリズムを用いた場合の各睡眠ステージについての全体的な精度、感度および特異性を示している。該表1の下側の表は、最大10分間のマニュアル操作での記録の訂正を行った後の最終的な性能を示している。
また、図9は、本実施例において、野生型マウスの同じ24時間EEG/EMG記録を用いた、当該プログラムおよびマニュアル作業での睡眠状態判定によるサンプルのヒプノグラムを示す図である。Wは覚醒状態の期間、NRはノンレム睡眠、Rはレム睡眠を表している。
表1に示す通り、当該プログラムは、自動化された睡眠状態判定において全体で約92%の精度を維持し、これは2人の熟練したスコアラー同士の間の一般的なばらつきである約95%よりわずかに低いだけであった。
しかしながら、ユーザーが最大で10分間、明らかなコンピュータのエラーを修正したところ、全てのパラメータにおいて有意な増加が認められ、特に精度は98%まで改善された。このことは、当該プログラムが、睡眠データから睡眠状態を判定して変異マウス間の正確かつ頑強な比較を行うという、本発明の目的のために有効に機能し得ることを示唆する。
実施例2
本実施例では、Orexin欠損マウス(各睡眠状態中の脳波信号の特徴は正常である一方、睡眠状態遷移の異常を示すマウス)を対象とし、当該プログラムの性能を検証した。
睡眠データを正確かつ的確に睡眠状態判定できることに加えて、順遺伝学的(forward genetic)スクリーニングにおいて睡眠状態遷移の異常を検出することもプログラムに求められている。
既知の睡眠異常を有する2つの異なるマウス系統(即ち、Orexin欠損マウス、および、goosecoid-like(Gscl)欠損マウス)のEEG/EMGデータを本発明者らの研究室では利用可能であるので、これらの記録を当該プログラムの更なる検証のために利用した。
Orexin欠損マウスは、EEG及びEMGの両方について本質的に正常なマイクロアーキテクチャを示すにもかかわらず、該マウスでは、正常マウスでは決して見られない、カタプレキシーと呼ばれる覚醒状態からレム睡眠への異常な直接的遷移が主に暗期の間に頻繁に見られる(Chemelli et al., Cell 98: 437-451 (1999))。
当該プログラムは、覚醒状態からレム睡眠への遷移を禁止するいかなるアルゴリズムも含まないので、図10に示すようにカタプレキシーを正しく検出できた。
また、全体的な精度およびレム睡眠の感度も95%超に維持されており、順遺伝学において頑強なスクリーニングが可能である。
実施例3
本実施例では、Gscl欠損マウス(レム睡眠特異的に起こる脳波信号の周波数分布異常を持つマウス)を対象とし、当該プログラムの性能を検証した。
脳波信号の周波数分布異常は、目視検査を通じたダブルチェックシステムを伴わない大規模スクリーニングにおいては看過されがちである。当該プログラムもまた、自動化された睡眠状態判定アルゴリズムを通じては、この種の異常を検出することは困難であった。これは、当該プログラムでは、対象エポックを、同じマウス個体からの15個の参照NREMおよびREMエポックと比較するからである。
しかしながら、他の完全に自動化された睡眠状態判定プログラムとは異なり、当該プログラムでは、典型的には図11に示すように、15個の参照レム睡眠を最初に選択する時に、レム睡眠の間の生のEEG特性を目視検査する機会が残されている。
従って、ある意味では、当該プログラムのユーザーは、排除する前に各マウスの睡眠特性の追加の検査を行うことを無意識に強制されているのである。
図11は、本発明において、Gscl欠損マウスにおけるレム睡眠中の異常な脳波信号の周波数分布を示す図である。野生型マウス(B)における典型的な「きれいな」レムエポックと比較して、異常なデルタパワーが見られるGscl欠損マウス(A)の典型的なレム睡眠の脳波が示されている。
各ウインドウの左下のパネルの周波数スペクトル表示を参照されたい。当該プログラムは、EEG/EMGの周波数分布の異常を自動で検出することはできないが、プログラムの実行開始時の参照エポックの選択時に、ユーザーは潜在的な信号の周波数分布の異常を調べる十分な機会を有する。
遷移異常を有するOrexin欠損マウスとは対照的に、Gscl欠損マウスは、レム睡眠において異常な脳波信号の周波数分布を示す(Funato et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 107: 18155-18160 (2010))。
実施例4
本実施例では、大規模スクリーニングによるマウスの睡眠判定の実験を行った。実験は以下の通りに行った。
・DNA塩基の変異を起こす化学物質を用いて、約1万匹のマウス(C57BL/6J系統)のゲノムDNAにランダムで突然変異を起こさせた。
・一匹ずつ脳波・筋電図の電極を手術で取りつけ、72時間の睡眠記録を取得した。
・約週100匹のペースで、記録および本発明をもちいた睡眠解析を行った。
実験の結果、図12のグラフに示すように、睡眠/覚醒時間が標準的な正規分布を示し、その中で極端な過眠を示すマウスが数匹程度存在することがわかった。
上記と同様の大規模スクリーニングを、同じマウス系統(C57BL/6J系統)を用いて別の施設(テキサス大学)にて行った実験、および、異なるマウス系統(C57BL/6JとC57BL/6Nとの混合系統)を用いて同じ施設(筑波大学)にて行った実験の結果をそれぞれ図13および図14に示す。これらの実施例の結果から、本発明はマウスの系統が違っても、また施設(環境)が変わっても安定して実施できることが示唆された。
〔考察〕
本発明のプログラムおよび睡眠状態判定装置は、独自の判定アルゴリズムと直感的なGUIを組み込むことによって、手動の睡眠状態判定よりも著しく短い時間で多くの長期睡眠記録を睡眠状態判定することを可能にした。自動化されたアルゴリズムを使用するだけで全体的な精度は90%を常に上回り、更にユーザーが10分未満の訂正を実行することで精度は98%に上昇する。
また、Orexin欠損マウスおよびGscl欠損マウスを用いた検証により、当該プログラムは、睡眠/覚醒における状態遷移の異常および睡眠中脳波の周波数分布異常を検出できることが示された。
当該プログラムのさらなる改良版では、特に強制的睡眠剥奪の後の回復の記録の間の、ノンレム睡眠デルタ波強度の減衰特性およびノンレム睡眠平均エピソード期間(睡眠断片化の指標)を抽出することによって、恒常的な睡眠の必要性の各マーカを定量的に評価するための追加機能を実装することも可能である。
本発明は、判定精度を維持しながらも睡眠判定にかかる時間を飛躍的に向上させることが可能であるので、臨床分野、研究分野を問わず、その判定方法が睡眠分野でのデファクトスタンダードとなる可能性がある。また、本発明とポータブル脳波筋電図記録計を組み合わせて、新たな一般家庭用の睡眠計の開発も期待される。
本出願は、米国特許仮出願第62/247329号(出願日:2015年10月28日)を基礎としており、その内容は本明細書に全て包含される。
C1からCF 第1指標計算部から第F指標計算部
1 レム指標計算部
2 ノンレム指標計算部
3 睡眠状態判定部
4 睡眠−覚醒判定部

Claims (16)

  1. 対象動物の睡眠状態を判定するためのコンピュータプログラムであって、当該コンピュータプログラムは、対象動物の所与の期間における睡眠が、2以上の予め定められた睡眠状態E〜E(Fは睡眠状態の個数を示す2以上の整数である)のうちのいずれであるのかを判定するために、コンピュータを、睡眠状態E〜Eのそれぞれに対応するF個の指標計算部である第1指標計算部から第F指標計算部として、および睡眠状態判定部として機能させるためのものであり、
    第f指標計算部(fは1〜Fの整数である)は、下記(B)の睡眠状態Eに関する参照セグメントR(m(f))(m(f)は1〜Nの整数である)のそれぞれについて、
    下記(A1)の対象脳波セグメントSから得られた下記(A2)の対象脳波サブセグメントSbのパワースペクトルを表すグラフの曲線Qと、当該参照セグメントR(m(f))のパワースペクトルを表すグラフの曲線P(m(f))とを比較し、曲線Qと曲線P(m(f))との間の周波数ごとのパワー値の差異に基づいて曲線Qと曲線P(m(f))との間の距離を計算し、
    前記の距離の計算を、対象脳波セグメントSからの全ての対象脳波サブセグメントSbについて行い、
    全ての対象脳波サブセグメントSbについて得られた距離に基づいて、当該参照セグメントR(m(f))を睡眠状態Eの基準期間とした場合に、対象脳波セグメントSの脳波と睡眠状態E時の脳波との間の類似度を表す指標d(m(f))を計算するように構成されており、
    睡眠状態判定部は、睡眠状態E〜Eのそれぞれについて得られた全ての指標d(m(f))(fは1〜Fの整数であり、m(f)は1〜Nの整数である)に基づいて、対象脳波セグメントSの脳波が睡眠状態E〜Eのいずれの時の脳波であるのかを決定し、それにより、対象脳波セグメントSに対応する期間における睡眠が、睡眠状態E〜Eのいずれのものであるのかを判定するように構成されている、
    前記コンピュータプログラム。
    (A1)対象動物から得られた脳波であって、所定の時間長t1の期間にわたる脳波である、対象脳波セグメントS。
    (A2)対象脳波セグメントSの全体にわたるか、または、該対象脳波セグメントSを所定数に分割した、時間長tb(tb≦t1)にわたる対象脳波サブセグメントSb。
    (B)前記対象動物のための参照脳波として利用可能な該対象動物自体のまたはそれと同種の動物の脳波であって、睡眠状態が睡眠状態Eであることが確定しておりかつ所定時間長の期間にわたる脳波であるN個(Nは1以上の整数である)の参照セグメントR(m(f))。ここで、fは睡眠状態E〜Eのいずれかに対応する1〜Fの整数であり、m(f)は1〜Nの整数である。
  2. 対象動物がヒトであり、かつ、
    ヒトの睡眠状態の4つまたは5つのステージへの分類基準に従って、(i)睡眠状態の個数Fが4であり、かつ睡眠状態E〜Eがノンレム睡眠のステージI、II、およびIIIならびにレム睡眠のそれぞれに対応しているか、または、(ii)睡眠状態の個数Fが5であり、かつ睡眠状態E〜Eがノンレム睡眠のステージI、II、III、およびIVならびにレム睡眠のそれぞれに対応している、
    請求項1に記載のコンピュータプログラム。
  3. 睡眠状態の個数Fが2であり、かつ睡眠状態EおよびEがノンレム睡眠およびレム睡眠にそれぞれ対応している、請求項1に記載のコンピュータプログラム。
  4. 上記曲線Qと各曲線P(m(f))(fは睡眠状態E〜Eのいずれかに対応する1〜Fの整数であり、m(f)は1〜Nの整数である。)との間の距離が、所定の間隔をおいた周波数ごとの曲線Qと曲線P(m(f))との間の距離の大きさを2乗し、前記2乗した各値を合算し、前記合算した値の平方根をとることによって算出された値である、
    請求項1〜3のいずれか1項に記載のコンピュータプログラム。
  5. 睡眠状態E〜Eの全てについて参照セグメントR(m(f))が、それぞれ複数であり、かつ、同一個数であって、
    前記睡眠状態判定部では、
    (I)第1指標計算部から第F指標計算部により計算された全ての指標d(m(f))(fは1〜Fの整数であり、m(f)は1〜Nの整数である)に対して、類似度の最も高い指標の順位を1として類似度の順序付けをし、睡眠状態Eのそれぞれについて指標の順位の総和を計算し、前記総和が最も小さい睡眠状態を、対象脳波セグメントSの睡眠状態と判定するか、または、
    (II)第1指標計算部から第F指標計算部により計算された全ての指標d(m(f))(fは1〜Fの整数であり、m(f)は1〜Nの整数である)に対して、類似度の最も低い指標の順位を1として類似度の順序付けをし、睡眠状態Eのそれぞれについて指標の順位の総和を計算し、前記総和が最も大きい睡眠状態を、対象脳波セグメントSの睡眠状態と判定する、
    請求項1〜4のいずれか1項に記載のコンピュータプログラム。
  6. 対象脳波セグメントSが、対象動物から得られた所定の時間長T1(t1<T1)の期間にわたる対象脳波のうちの一部であり、
    睡眠状態E〜Eに関する参照セグメントR(m(f))(fは睡眠状態E〜Eのいずれかに対応する1〜Fの整数であり、m(f)は1〜Nの整数である)のそれぞれが、前記対象脳波から無作為に選択されたものであり、
    前記の第1指標計算部から第F指標計算部、および、睡眠状態判定部は、前記対象脳波の一端側から、時間長t1の期間の脳波を対象脳波セグメントSとして、順次、全体にわたって処理するように構成されている、
    請求項1〜5のいずれか1項に記載のコンピュータプログラム。
  7. さらに、コンピュータを、
    下記(C)の筋電信号セグメントに基づいて、前記対象脳波セグメントSが、睡眠状態下における脳波であるか覚醒状態下における脳波であるかを判定するよう構成された睡眠−覚醒判定部、
    として機能させるための、コンピュータプログラム部分を有し、
    該睡眠−覚醒判定部は、
    前記の第1指標計算部から第F指標計算部、および、睡眠状態判定部の前段に位置し、かつ、
    下記(C)の筋電信号セグメントを複数の小区間に分割し、各小区間ごとに、その小区間内での筋電信号波形のパワー値の変動幅を示す分散値を計算し、全ての小区間の分散値のうちの中央値に基づいて、前記の対象脳波セグメントSが、睡眠状態下における脳波であるか覚醒状態下における脳波であるかを判定するように構成されており、
    前記の第1指標計算部から第F指標計算部、および、睡眠状態判定部は、睡眠−覚醒判定部において睡眠状態下と判定された対象脳波セグメントSだけを、計算の対象および判定の対象とするように構成されている、
    請求項1〜6のいずれか1項に記載のコンピュータプログラム。
    (C)対象動物から得られた筋電信号であって、前記対象脳波セグメントSに同期した、所定の時間長t1の期間にわたる信号である、筋電信号セグメント。
  8. 対象動物の睡眠状態を判定するための睡眠状態判定装置であって、当該装置は、対象動物の所与の期間における睡眠が、2以上の予め定められた睡眠状態E〜E(Fは睡眠状態の個数を示す2以上の整数である)のうちのいずれであるのかを判定するためのものであり、
    当該装置は、睡眠状態E〜Eのそれぞれに対応するF個の指標計算部である第1指標計算部から第F指標計算部と、睡眠状態判定部とを少なくとも有して構成されており、
    第f指標計算部(fは1〜Fの整数である)は、下記(B)の睡眠状態Eに関する参照セグメントR(m(f))(m(f)は1〜Nの整数である)のそれぞれについて、
    下記(A1)の対象脳波セグメントSから得られた下記(A2)の対象脳波サブセグメントSbのパワースペクトルを表すグラフの曲線Qと、当該参照セグメントR(m(f))のパワースペクトルを表すグラフの曲線P(m(f))とを比較し、曲線Qと曲線P(m(f))との間の周波数ごとのパワー値の差異に基づいて曲線Qと曲線P(m(f))との間の距離を計算し、
    前記の距離の計算を、対象脳波セグメントSからの全ての対象脳波サブセグメントSbについて行い、
    全ての対象脳波サブセグメントSbについて得られた距離に基づいて、当該参照セグメントR(m(f))を睡眠状態Eの基準期間とした場合に、対象脳波セグメントSの脳波と睡眠状態E時の脳波との間の類似度を表す指標d(m(f))を計算するように構成されており、
    睡眠状態判定部は、睡眠状態E〜Eのそれぞれについて得られた全ての指標d(m(f))(fは1〜Fの整数であり、m(f)は1〜Nの整数である)に基づいて、対象脳波セグメントSの脳波が睡眠状態E〜Eのいずれの時の脳波であるのかを決定し、それにより、対象脳波セグメントSに対応する期間における睡眠が、睡眠状態E〜Eのいずれのものであるのかを判定するように構成されている、
    前記睡眠状態判定装置。
    (A1)対象動物から得られた脳波であって、所定の時間長t1の期間にわたる脳波である、対象脳波セグメントS。
    (A2)対象脳波セグメントSの全体にわたるか、または、該対象脳波セグメントSを所定数に分割した、時間長tb(tb≦t1)にわたる対象脳波サブセグメントSb。
    (B)前記対象動物のための参照脳波として利用可能な該対象動物自体のまたはそれと同種の動物の脳波であって、睡眠状態が睡眠状態Eであることが確定しておりかつ所定時間長の期間にわたる脳波であるN個(Nは1以上の整数である)の参照セグメントR(m(f))。ここで、fは睡眠状態E〜Eのいずれかに対応する1〜Fの整数であり、m(f)は1〜Nの整数である。
  9. 対象動物がヒトであり、かつ、
    ヒトの睡眠状態の4つまたは5つのステージへの分類基準に従って、(i)睡眠状態の個数Fが4であり、かつ睡眠状態E〜Eがノンレム睡眠のステージI、II、およびIIIならびにレム睡眠のそれぞれに対応しているか、または、(ii)睡眠状態の個数Fが5であり、かつ睡眠状態E〜Eがノンレム睡眠のステージI、II、III、およびIVならびにレム睡眠のそれぞれに対応している、
    請求項8に記載の睡眠状態判定装置。
  10. 睡眠状態の個数Fが2であり、かつ睡眠状態EおよびEがノンレム睡眠およびレム睡眠にそれぞれ対応している、請求項8に記載の睡眠状態判定装置。
  11. 上記曲線Qと各曲線P(m(f))(fは睡眠状態E〜Eのいずれかに対応する1〜Fの整数であり、m(f)は1〜Nの整数である。)との間の距離が、所定の間隔をおいた周波数ごとの曲線Qと曲線P(m(f))との間の距離の大きさを2乗し、前記2乗した各値を合算し、前記合算した値の平方根をとることによって算出された値である、
    請求項8〜10のいずれか1項に記載の睡眠状態判定装置。
  12. 睡眠状態E〜Eの全てについて参照セグメントR(m(f))が、それぞれ複数であり、かつ、同一個数であって、
    前記睡眠状態判定部では、
    (I)第1指標計算部から第F指標計算部により計算された全ての指標d(m(f))(fは1〜Fの整数であり、m(f)は1〜Nの整数である)に対して、類似度の最も高い指標の順位を1として類似度の順序付けをし、睡眠状態Eのそれぞれについて指標の順位の総和を計算し、前記総和が最も小さい睡眠状態を、対象脳波セグメントSの睡眠状態と判定するか、または、
    (II)第1指標計算部から第F指標計算部により計算された全ての指標d(m(f))(fは1〜Fの整数であり、m(f)は1〜Nの整数である)に対して、類似度の最も低い指標の順位を1として類似度の順序付けをし、睡眠状態Eのそれぞれについて指標の順位の総和を計算し、前記総和が最も大きい睡眠状態を、対象脳波セグメントSの睡眠状態と判定する、
    請求項8〜11のいずれか1項に記載の睡眠状態判定装置。
  13. 対象脳波セグメントSが、対象動物から得られた所定の時間長T1(t1<T1)の期間にわたる対象脳波のうちの一部であり、
    睡眠状態E〜Eに関する参照セグメントR(m(f))(fは睡眠状態E〜Eのいずれかに対応する1〜Fの整数であり、m(f)は1〜Nの整数である)のそれぞれが、前記対象脳波から無作為に選択されたものであり、
    前記の第1指標計算部から第F指標計算部、および、睡眠状態判定部は、前記対象脳波の一端側から、時間長t1の期間の脳波を対象脳波セグメントSとして、順次、全体にわたって処理するように構成されている、
    請求項8〜12のいずれか1項に記載の睡眠状態判定装置。
  14. 下記(C)の筋電信号セグメントに基づいて、前記対象脳波セグメントSが、睡眠状態下における脳波であるか覚醒状態下における脳波であるかを判定するよう構成された睡眠−覚醒判定部を、さらに有し、
    該睡眠−覚醒判定部は、
    前記の第1指標計算部から第F指標計算部、および、睡眠状態判定部の前段に位置し、かつ、
    下記(C)の筋電信号セグメントを複数の小区間に分割し、各小区間ごとに、その小区間内での筋電信号波形のパワー値の変動幅を示す分散値を計算し、全ての小区間の分散値のうちの中央値に基づいて、前記の対象脳波セグメントSが、睡眠状態下における脳波であるか覚醒状態下における脳波であるかを判定するように構成されており、
    前記の第1指標計算部から第F指標計算部、および、睡眠状態判定部は、睡眠−覚醒判定部において睡眠状態下と判定された対象脳波セグメントSだけを、計算の対象および判定の対象とするように構成されている、
    請求項8〜13のいずれか1項に記載の睡眠状態判定装置。
    (C)対象動物から得られた筋電信号であって、前記対象脳波セグメントSに同期した、所定の時間長t1の期間にわたる信号である、筋電信号セグメント。
  15. 前記の第1指標計算部から第F指標計算部、および、睡眠状態判定部が、コンピュータを用いて構成されており、
    該コンピュータが、コンピュータプログラムを実行することによって、第1指標計算部から第F指標計算部、および、睡眠状態判定部として作動する、請求項8〜14のいずれか1項に記載の睡眠状態判定装置。
  16. 前記の第1指標計算部から第F指標計算部、睡眠状態判定部、および、睡眠−覚醒判定部が、コンピュータを用いて構成されており、
    該コンピュータが、コンピュータプログラムを実行することによって、第1指標計算部から第F指標計算部、睡眠状態判定部、および、睡眠−覚醒判定部として作動する、請求項14に記載の睡眠状態判定装置。
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