JPWO2017068931A1 - 電磁波吸収遮蔽体及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

金属板等の導電体を使用することによる重量の増大、黒鉛の粒子分散性の難しさに起因する均一性の問題などを解決し、更に低周波域から高周波域まで広帯域の電磁波を効率良く吸収遮蔽する。
電磁波吸収遮蔽体10は、支持体11の表面に、層数n(ただし、nは2より多く、60以下の実数)の原子層121〜12nが積層された厚さのグラフェン膜12が形成された構造である。ここで、原子層121〜12nのうち最表面の原子層12nは完全に膜になっていない場合も本発明に含まれ、その場合のグラフェン膜12の原子層数nは自然数ではなく小数点で表される原子層数となる。

Description

本発明は電磁波吸収遮蔽体及びその製造方法に係り、特に電磁波を広周波域にわたって吸収遮蔽(シールド)する電磁波吸収遮蔽体及びその製造方法に関する。
内部が高度に集積化されたスマートフォンや、コンピュータなどに使用されているCPU(Central Processing Unit: 中央処理装置)などの電子部品では、広帯域のスペクトル分布のパルスによって、高周波の電磁波が外部に放射されたり、伝導したりして周辺機器に影響を与えるEMI(Electromagnetic interference;電磁波障害)が問題になっている。
これまで電子機器の筐体には金属板が使われていたが、軽量化や意匠性の観点からプラスチック材料が多く用いられるようになってきた。しかし、プラスチック材料は電磁波を遮蔽することができないため、電磁波障害の懸念が高まっている。そのためノイズ源を取り囲み、電磁波を外部へ漏洩させず一定領域に閉じ込めるために遮蔽材が設けられている。あるいは、外部のノイズ源から放射される電磁波を電子機器に侵入させないために遮蔽材が設けられている。
プラスチックに関すれば、電磁波を遮蔽する手段としてプラスチックの中に導電性物質を混合して導電性プラスチックとする方法や、プラスチックの表面に導電性の層を形成する方法などがある。前者の方法は、形成品そのものに導電性を持たせるために、金属製の糸、塊、粉あるいはメタライズドガラス繊維、カーボンファイバー、カーボンブラックなどをプラスチックに混合したものである。後者の方法は、形成品の表面に電気伝導体層として、導電性塗料、例えば銅、ニッケル、銀あるいはグラファイトなどを、アクリル、アクリル‐ウレタン、ウレタンなどのバインダーとしての樹脂と共に、表面に塗布あるいは吹付けて固化させる方法、あるいは、蒸着、スパッタリング、イオン化蒸着、めっき等により電気伝導性の層を表面に形成する方法である。
電波を使った電子機器の電磁波吸収手段の一例として、ETC装置(起動周波数5.8GHz)等の誤作動防止用電波吸収シートの技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。この技術は、黒鉛とバインダーを含むペーストを塗工、乾燥させてシートを得て、それを積層することにより電波吸収シートを作製するものである。また、電子機器の電磁波吸収手段の他の例として、粒径の小さな黒鉛粉末を含む塗工液を塗布乾燥させて形成した誘電体シートを用いた電磁波吸収体の技術が開示されている(例えば、特許文献2参照)。この技術は薄く軽量の誘電体シートを作製するものである。
一方、通信、高周波加熱、レーダーなどに用いられる、極超短波とも言われる波長約数十cm以下の電波に対して使用される電波吸収材料には、(1)導電性電波吸収材料、(2)誘電性電波吸収材料、(3)磁性電波吸収材料などがある。導電性電波吸収材料は、抵抗線や抵抗被膜に流れる高周波電流によって電波を吸収させるもので、導電性繊維による織物などで適切な抵抗値を有するものがある。誘電性電波吸収材料には、カーボン、カーボン含有発泡ウレタン、黒鉛含有発泡スチロール等がある。この種の電波吸収材料では、広帯域特性を得るために、多層構造にして表面近くの減衰を少なくして内部に入るに従って減衰を大きくしている。磁性電波吸収材料の代表的なものにフェライトがある。金属板と重ね合わせたフェライト板は、比較的広い周波数にわたって電波吸収特性を示す。整合する周波数は材質によって決まり、およそ0.3〜1.5GHzの範囲にある。しかしながら、(1)〜(3)の電磁波吸収材料の殆どのものは周波数に関係なく5〜8mmであり、小型化が難しいという問題がある。
ところで、最近、従来の黒鉛に代わる新たな炭素材料として、カーボンナノチューブ(例えば、非特許文献1参照)や樹脂材料を炭化焼成して得られるグラファイトシートやグラフェン類等が黒鉛同様の高導電性材料として幅広い用途に活用されつつある。特に、グラフェン類については、天然黒鉛よりも薄い、1μm以下の単層グラフェンあるいは多層グラフェンが、高い導電性と非常に薄い特性の両方を有するとともに、高強度/高弾性率、高い移動度など多くの優れた特性を有する材料として知られつつある。このため、グラフェン類を新材料として利用する研究開発が活発化している。
また、グラフェン膜は多くの合成方法が例示されている。この合成方法は、結晶性グラファイトの機械的剥離法、酸化グラフェンの還元法、炭化ケイ素の熱的分解法、そして化学気相成長(CVD;Chemical Vapor Deposition)法である。CVD法は多くの場合、炭化水素ガスを分解して炭素原子や分子を生成させ、金属の触媒上にグラフェン膜として成長させる方法である。炭化水素ガスを分解する手段として熱を用いるもの、プラズマを用いるものなどがあり、それぞれ熱CVD法、プラズマCVD法(例えば、特許文献3参照)と呼ばれる。さらに、これらを併用する方法(例えば、特許文献4参照)もある。このような方法で生成されるグラフェン膜には、電磁波のシールド効果があることが知られている(例えば、非特許文献2参照)。
特許文献1;特開2006−80352号公報
特許文献2;国際公開第2011/149039号
特許文献3;特許第5692794号公報
特許文献4;特開2015−013797号公報
非特許文献1;Ning Li,et al.,“Electromagnetic Interference(EMI) Shielding of Single-Walled Carbon Nanotube Epoxy Composites”,Nano Letters 6 (2006) pp.1141-1145.
非特許文献2;Seul Ki Hong,et al.,“Electromagnetic interference shielding effectiveness of monolayer graphene”, Nanotechnology 23 (2012) pp.445704-445708.
しかしながら、前記のプラスチック材料のEMIシールド方法は、金属の導電性材料を用いており、金属は誘電率が小さいため、充分な遮蔽効果を得るためには、非常に厚い遮蔽材を使用しなければ効果がないという問題がある。例えば、プラスチック材料のEMIシールド方法は、図18に示すように厚い導電体201でもって被遮蔽物202を囲んで遮蔽しなければ遮蔽効果が得られない。また、電波波吸収材料としての、前記導電性材料、誘電性材料、磁性材料は重く光学的に不透明であるばかりでなく、均一性に問題があり、製作するのに工数を要し、コスト的に高くなるという問題がある。
また、特許文献1記載の誤作動防止用電波吸収シートでは、用いる黒鉛は数十μmレベルの粒径があり樹脂中の分散性が極めて悪く、薄いシートを作るのは実際には難しい。このため、誤作動防止用電波吸収シートは、特に塗布用に用いるのは極めて困難である。また、上記電波吸収シートは黒鉛に由来する粗粒がシート表面に顕在して表面粗度が高くなる傾向にあり、結果として電磁波吸収性能のばらつきが大きい。更に高濃度の黒鉛を含有した誤作動防止用電波吸収シートは脆くて扱いづらく施工性が悪いものであった。
また、特許文献2記載の電磁波吸収体では、ミクロンレベルの小粒径の天然黒鉛が極めて疎水性でバインダー樹脂との親和性が低く、高い凝集性を示すため、誘電体シートを形成させる塗布乾燥(溶媒除去)工程で、バインダー樹脂から分離して天然黒鉛粒子同士が凝集しやすい。結果として一定の誘電特性を有する誘電体シートの作製は非常に難しいものであった。更に、特許文献1及び特許文献2に記載された従来の電磁波吸収遮蔽体は透明性に乏しいため、意匠性が高く内部が確認できるような透明な電磁波吸収遮蔽体を得ることができない。
一方、グラフェンを電磁波吸収遮蔽体として用いる場合、非特許文献2に記載されているように、誘導結合型プラズマ(ICP)で合成した単層グラフェンでは、2.2GHzから7GHzまでの周波数帯で2.27dBの遮蔽効果がある。しかし、グラフェンに欠陥が多く含まれていると遮蔽効果が0.01dBで全く効果が得られない。また、3層に積み重ねたものは6.91dBまでは電磁波吸収遮蔽効果が増すことが示されている。しかし、上記の遮蔽効果の2.27dBは約4割、6.91dBは約8割しか電磁波を遮蔽しないことを意味しており、これは電磁波吸収遮蔽体としての効果がほとんど無いレベルといえる。また、非特許文献2記載の電磁波吸収遮蔽体は電磁波吸収遮蔽効果が得られる電磁波の周波数帯が2.2GHz〜7GHz程度と狭く限られており、0.1MHz〜1000MHzというような広周波数帯域の周波数の電磁波の吸収遮蔽効果が求められている。更に、金薄膜は同じ厚さのグラフェン膜に比べてさらに7分の1ほどのシールド効果しかないことも示されている。
また、電磁波シールド材料としてより軽い材料が求められている。表1は、金属の電磁波シールド材料としての適正値一覧表を示す。
Figure 2017068931
表1において、比誘電率(a)/比透磁率(b)は電磁波の反射損失の度合い(※1)を示し、この値が大きいほど電磁波の反射損失量が大きいことを示す。比誘電率(a)×比透磁率(b)は電磁波の吸収損失の度合い(※2)を示し、この値が大きいほど電磁波の吸収損失量が大きいことを示す。表1に示した一般的なシールド材料の中でアルミニウムが最も比重(密度)の小さな金属である(出典:東京都立工業技術センター「電磁波妨害に対する規制とシールド技術」)。よって、アルミニウムより軽い電磁波シールド材料が求められている。
本発明は以上の点に鑑みなされたもので、従来の電磁波吸収遮蔽体の課題である、金属板等の導電体を使用することによる重量の増大、黒鉛の粒子分散性の難しさに起因する均一性の問題などを解決し、更に低周波域から高周波域まで広帯域の電磁波を効率良く吸収遮蔽できる電磁波吸収遮蔽体及びその製造方法を提供することを目的とする。
課題を解決するための手段
本発明の電磁波吸収遮蔽体は上記の目的を達成するため、支持体と、前記支持体上に形成された、炭素を含む電磁波吸収遮蔽特性を有する固体薄膜とを備えることを特徴とする。
また、上記の目的を達成するため、本発明の電磁波吸収遮蔽体の製造方法は、成膜用基板に対して化学的気相成長法を適用して、前記成膜用基板上に炭素を含む電磁波吸収遮蔽特性を有する固体薄膜を形成する薄膜形成工程と、前記薄膜形成工程により前記成膜用基板上に形成された前記固体薄膜を、支持体上に転写する転写工程と、を含むことを特徴とする。
本発明によれば、金属板を使用することによる重量の増大、黒鉛の粒子分散性の難しさに起因する均一性の問題を解決し、更に低周波域から高周波域まで従来に比べて広帯域の電磁波を効率良く吸収遮蔽できる。
本発明に係る電磁波吸収遮蔽体の一実施形態の断面図である。 マイクロ波表面波プラズマ処理装置の一例の概略構成図である。 成膜用基板表面に成長したグラフェンの断面図である。 熱CVD装置の一例の概略構成図である。 支持体の上にバインダーを用いることなくグラフェン膜を被覆した概略断面図である。 支持体の上にバインダーを用いてグラフェン膜を強固に被覆した概略断面図である。 成膜時間対銅箔基材上のグラフェン膜の原子層数の一例の特性図である。 支持体の上に2.2原子層厚さのグラフェン膜を被覆した概略断面図である。 支持体の上に3原子層厚さのグラフェン膜を被覆した概略断面図である。 支持体の上に30原子層厚さのグラフェン膜を被覆した概略断面図である。 KEC法治具を用いた電磁波シールド効果測定装置の一例の概略構成図である。 6原子層厚さのグラフェン膜の電界シールド効果を示す図である。 同軸線路治具を用いた電磁波シールド効果測定装置の一例の概略構成図である。 MHz帯におけるグラフェン膜の電磁波シールド効果を示す図である。 導波管型線路治具を用いた電磁波シールド効果測定装置の一例の概略構成図である。 GHz帯におけるグラフェン膜の電磁波シールド効果を示す図である。 支持体をグラフェン膜で被覆した電磁波吸収遮蔽体を用いた電磁波シールドの概略図である。 金属板を用いた従来の電磁波吸収遮蔽体を示す概略図である。
次に、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明に係る電磁波吸収遮蔽体の一実施形態の断面図を示す。同図において、本実施形態の電磁波吸収遮蔽体10は、支持体11の表面に、層数n(ただし、nは2より多く、60以下の実数)の原子層121〜12nが積層された厚さのグラフェン膜12が形成された構造である。ここで、原子層121〜12nのうち最表面の原子層12nは完全に膜になっていない場合も本発明に含まれる。よって、グラフェン膜12の原子層数nは自然数ではなく小数点で表される原子層数も含む。
なお、非特許文献2には3原子層が積層された厚みのグラフェン膜の電磁波吸収遮蔽体が開示されているが、本発明では非特許文献2には開示されていないグラフェン膜が塩化金でドーピングされた独自の構成であり、これによりグラフェン膜が3原子層よりも少ない例えば2.2原子層の厚みであっても、本実施形態の電磁波吸収遮蔽体10は非特許文献2記載の電磁波吸収遮蔽体に比べてより広帯域の周波数に対して高いシールド効果が得られ、また透明な構造である。
次に、本発明の電磁波吸収遮蔽体の製造方法に用いる処理装置について説明する。図2は、本発明に係る電磁波吸収遮蔽体の製造方法の一実施形態で用いるマイクロ波表面波プラズマ処理装置の一例の概略構成図を示す。同図において、マイクロ波表面波プラズマ処理装置20は、上端が開口した金属製の中空筐体である処理容器21と、処理容器21の上端部に支持部材22により支持され、かつ、気密に取り付けられた石英窓23と、石英窓23を通して処理容器21内にマイクロ波を導入するためのスロット付き矩形マイクロ波導波管24と、処理容器21の外部に設けられた通電加熱用直流電源25とから大略構成されている。
また、処理容器21内には、通電加熱用直流電源25に端子31を介して接続された電極26a及び26bと、それらの電極26a及び26bの間に固定された極微量の炭素を含む成膜用基板(金属性基材)27とが設置される。成膜用基板27には、銅、イリジウム又は白金あるいはこれらの金属のいずれかと炭素アロイの何れかからなる金属の箔が選ばれる。また、処理容器21内のプラズマ発生室28は図示しないポンプにより排気管29を通して空気が外部へ排気され、かつ、図示しない圧力調整バルブを用いることで所定の圧力に保持される。更に、ガス導入管30は処理容器21内にプラズマ処理用ガスである水素ガスを導入する。なお、水素ガスは水素と不活性ガスの混合ガスでもよい。不活性ガスには、ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)等がある。また、微量の炭化水素をプラズマ発生室28に導き入れてもよい。
次に、マイクロ波表面波プラズマ処理装置20の動作の概略について説明する。まず、処理容器21内を適当な圧力に排気した後、ガス導入管30から水素ガスを導入するとともに、処理容器21内の圧力を圧力調整バルブを用いて所定の圧力に保持する。続いて、水素ガスの雰囲気中において成膜用基板27に接続されている電極26a及び26b間に通電加熱用直流電源25から端子31を介して直流電圧を印加して成膜用基板27を加熱する。このとき直流電圧によって成膜用基板27の温度が変わる。成膜用基板27の温度は400〜1500℃、好ましくは850〜1000℃である。
続いて、上記の成膜用基板27を加熱している状態で、マイクロ波導波管24から石英窓23を通してマイクロ波を処理容器21内のプラズマ発生室28に導入することで、水素ガスの原子や分子を励起させてプラズマ状態としプラズマを発生させる。このとき発生したプラズマは、成膜用基板27に照射されて成膜用基板27を水素プラズマ処理する。この結果、加熱されている成膜用基板27に極微量含まれる炭素が析出され、更にその炭素及び水素ガスに含まれる微量の炭素成分が、上記水素プラズマ処理により成膜用基板27の表面に、図3の模式的断面図に示すようにグラフェン膜35の原子層として成長する。以上のようにしてマイクロ波表面波プラズマを用いたプラズマCVDにより、所望の原子層数のグラフェン膜35が表面に形成された成膜用基板27は、自然冷却の後、処理容器21から取り出される。
ここで、図3に示したグラフェン膜35は、水素プラズマ処理のプラズマ照射時間に応じて原子層数が変化することが知られている(例えば、特開2015−13797号公報参照)。例えば、プラズマ照射時間が所定時間に達するまでは、プラズマ照射時間に応じてグラフェン膜の原子層数が増加していき、プラズマ照射時間が上記所定時間を経過すると、プラズマ照射時間に応じてグラフェン膜の原子層数が減少する。なお、1原子層グラフェン膜あたりの透過率が例えば2.3%減少することが知られているので、グラフェン膜35の透過率を測定することで原子層数を検出することができる。上記のマイクロ波表面波プラズマ処理装置20は金属性基材等の成膜用基板27の表面にグラフェン膜35を形成する。
なお、マイクロ波表面波プラズマ処理装置20により得られるグラフェン膜35は1〜10原子層厚さ、好ましくは1.2乃至3原子層厚さのグラフェン膜であり、膜内部に欠陥が少なく、グラフェン膜のドメインサイズが大きいことが望まれる。グラフェン膜のドメインサイズは100nm以上のものが望ましく、欠陥の量的変化はラマン分光法によるDバンド(約1330cm-1)の強度により見積もることができる。
図4は、本発明に係る電磁波吸収遮蔽体の製造方法の他の実施形態で用いる熱CVD装置の一例の概略構成図を示す。グラフェン膜は図4に示す熱CVD装置40によっても形成することができる。図4において、熱CVD装置40は周囲がヒーター41で囲まれた石英管42を有し、その石英管42の両端が金属製フランジ43で封止されると共に、石英管42の内部に石英試料台46が配置された構成である。また、石英管42の両端の金属製フランジ43の一方にはガス導入管44が挿通され、他方には排気管45が設けられている。
かかる構成の熱CVD装置40において、石英試料台46の上に金属性基材として銅箔またはニッケル箔を載置した状態で、石英管42の内部をガス導入管44及び排気管45により所定減圧下の炭化水素ガス雰囲気中としてヒーター41により1000℃に加熱すると、銅箔またはニッケル箔の表面にグラフェン膜が形成される。このとき、炭素と反応しにくい銅箔を用いたときには、1原子層厚さのグラフェン膜が生成される。一方、炭素と固溶体を形成しやすいニッケル箔を用いたときには、5〜50原子層厚さ、好ましくは30原子層厚さのグラフェン膜が形成される。
ところで、図2のマイクロ波表面波プラズマ処理装置20によるプラズマCVDや図4の熱CVD装置40による熱CVDにより形成されたグラフェン膜は、成膜用基板27や金属製基材上に形成されたものであるため、そのままではデバイス用途などには使えない。そこで、本発明に係る電磁波吸収遮蔽体の製造方法では、上記のプラズマCVDや熱CVDによるグラフェン膜形成工程に加えて、更にそれにより得られた積層構造のグラフェン膜を支持体に転写する転写工程を含むものである。
支持体は軽量であることが肝要であり、前述したように金属で最も軽い電磁波シールド材がアルミニウムであるので、アルミニウムより密度が小さいことが好ましい。アルミニウムより密度が小さいものとして樹脂基材が挙げられる。樹脂基材にはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ABS樹脂、塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポロビニルアルコール樹脂、ポリ塩化ビニリデン、アセタール樹脂、ポリカーボネート、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、メラニン樹脂、エポキシ樹脂などがある。
前記転写工程には公知の転写方法のいずれかを用いることができる。公知の転写方法は種々知られているが、例えば以下のようなものがある。特開2009−298683号公報記載の転写方法では、成膜用基板や金属性基材上のグラフェン膜の上に、シロキサン系化合物、アクリル系化合物、エポキシ系化合物等のバインダー層を形成してグラフェン膜をポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等の支持体に固定する。その後、酸などのエッチング液によりグラフェン膜から成膜用基板や金属性基材を溶解除去する。また、国際公開第2012/153674号記載の転写方法では、粘着力のある面を有するフィルムを用意して、そのフィルムの粘着力のある面をグラフェン膜の表面の全部及び/又は一部に仮止めした後、成膜用基板や金属性基材をエッチング除去する。更に、特開2015−48269号公報記載の転写方法では、微粘着シート上にグラフェン膜を仮固定した後、微粘着シートと化学的に反応しないドーピング溶液を用いて直接ドーピングをグラフェン膜に施し、電気伝導性を高めた後、PETフィルムなどの支持体にグラフェン膜を転写する。
以上のプラズマCVDや熱CVDの処理工程及び転写工程を経て、図1、図5または図6の断面図に示すような本発明に係る電磁波吸収遮蔽体が製造される。図5は、本発明に係る電磁波吸収遮蔽体の一例の断面図を示す。同図に示すように、電磁波吸収遮蔽体は支持体11の表面に原子層数が少ないグラフェン膜13が被覆された構造である。グラフェン膜13は前述したプラズマCVDあるいは熱CVDにより形成されたグラフェン膜(図3の35等)を転写したものである。グラフェン膜13の原子層数が少ない場合は図5に示すように、グラフェン膜13と支持体11との間にファンデルワールス力が働き、バインダーを用いることなく被覆することが可能である。
図6は、本発明に係る電磁波吸収遮蔽体の他の例の断面図を示す。この例の電磁波吸収遮蔽体は、支持体11の表面にエポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂などのバインダー14でn原子層のグラフェン膜13を強固に固定した構造である。この例の電磁波吸収遮蔽体は、グラフェン膜の原子層数が多い場合に用いられるが、原子層数が少ない場合でも好ましい構造である。図5のグラフェン膜13、及び図6のバインダー14とグラフェン膜13の積層部分は、いずれも図1の原子層121〜12nのグラフェン膜12に相当する。
なお、グラフェン膜の電気伝導性を高めるにはグラフェン膜の表面を化学的に異種元素で吸着ドーピングすることが好ましい。化学的吸着種としては金化合物、銀化合物、窒素化合物、塩素化合物の1つ以上の化合物、さらには塩化金、塩化銀、硝酸、塩酸の一つ以上の吸着種が好ましい。その溶液をグラフェン膜の表面に塗布後、余分な溶液を表面から除去し、乾燥させることで電気伝導性向上の効果が得られる。吸着ドーピングの方法自体は公知であるが、電気伝導性向上のためにグラフェン膜の表面に吸着ドーピングすることは従来知られていない。
次に、本発明の電磁波吸収遮蔽体及びその製造方法の各実施例について説明する。
(実施例1)
本実施例では、1.2層から3層までのグラフェン膜の合成について説明する。以下マイクロ波表面波プラズマ処理装置を用いた成膜の手順を説明する。
(1)日本工業規格A4サイズの銅箔を5重量%のHSO水溶液に1分間浸して表面の不純物を除去し、イオン交換水で十分に洗浄した後、窒素で十分に乾燥したものを金属性基材として使用した。
(2)通電加熱のみで金属性基材の一例の銅箔基材を850℃、水素ガス30sccm、5Pa以下の圧力で15分間のアニール(加熱)処理を行うことにより、銅箔基材に、平均表面粗さ(Ra)10nm以下の平坦性を付与するとともに、銅のグレインサイズの増大を図った。
(3)引き続き、通電加熱(10〜12W)をしながら銅箔基材を850℃に保ち、水素流量30sccmで水素プラズマ処理(4.0kW)により、グラフェンの成膜時間を変化させた後、プラズマと通電加熱を止めて、室温に戻し、グラフェンが析出した銅箔基材を取り出した。
銅箔基材上にグラフェンが析出することで形成されたグラフェン膜は、非特許文献(Sukang Bae et.all.,“Roll-to-roll production of 30-inch graphene films for transparent electrodes”,Nature Nanotechnology.doi:10.1038/nnano.2010.132(2010))の記載に基づきポリエステルフィルムに転写した。銅箔基材のグラフェン膜の表面を粘着テープ(製造者:日東電工(株)、製品名:リバアルファ)に貼り合わせ、過硫酸アンモニウム水溶液(0.5mol/L)中で銅箔基材のみを化学的にエッチングし、除去した。これにより粘着テープに転写されたグラフェン膜を十分に洗浄し、乾燥させた。
続いて、ポリエチレンテレフタレートフィルム(製造者:三菱樹脂化学(株)、製品名:ダイアホイル)と上記粘着テープとを貼り合わせた後、100℃に加熱して粘着テープの粘着力を弱め、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に粘着テープからグラフェン膜を転写した。このようにして、本実施例によれば、銅箔基材上に形成されたグラフェン膜が、支持体であるポリエチレンテレフタレートフィルム上に転写された構成の電磁波吸収遮蔽体が得られる。
図7は、図2のマイクロ波表面波プラズマ処理装置による成膜時間対銅箔基材上のグラフェン膜の原子層数の一例の特性図を示す。グラフェン1原子層厚さあたり、可視光透過率は2.3%減少するため、原子層数に比例して透過率が減少することが文献(R. R. Nair, et al,“Fine Structure Constant Defines Visual Transparency of Graphene”,Science 2008, 320,1308.)に開示されている。グラフェン膜の透過率をヘーズメータ(製造者:日本電色(株)、型式名:NDH5000SP)で測定し、その透過率から上記の原理に基づきグラフェン膜の原子層数を算出した。
図7に示すように、5秒程度の成膜時間で1.2原子層厚さのグラフェン膜が銅箔基材上に形成される。また、30秒程度の成膜時間で2.2原子層厚さのグラフェン膜が銅箔基材上に形成され、90秒程度の成膜時間で3原子層厚さのグラフェン膜が銅箔基材上に形成される。従って、成膜時間に応じてグラフェン膜の原子層数を選択的に形成することができる。
図8は、銅箔基材50上に上記の2.2原始層厚さのグラフェン膜51が形成された概略断面図を示す。また、図9は、銅箔基材50上に上記の3原子層厚さのグラフェン膜52が形成された概略断面図を示す。なお、成膜時間が5秒程度の短い場合には、1層目の上に2層目が成長するために、2層目の被覆度により小数点以下の層数が付加される。図8の2.2原始層厚さのグラフェン膜51を、便宜上後述するように実施例1で得られたグラフェン膜#1ともいうものとする。
(実施例2)
図9の概略断面図に示した銅箔基材50上に形成された3原子層厚さのグラフェン膜52を、支持体であるポリエチレンテレフタレートフィルム上に転写して得た構成の電磁波吸収遮蔽体とは別に、90秒程度の成膜時間で銅箔基材上に形成された3原子層厚さのグラフェン膜を準備する。この準備したグラフェン膜を実施例1と同じ方法で日東電工製の粘着テープ上に転写し、水洗および乾燥を経た後、先の3原子層厚さのグラフェン膜52に貼り合わせる。これを100℃に加熱して粘着テープの粘着力を弱めて粘着テープを剥離し、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に6原子層厚さのグラフェン膜#2を得た。
(実施例3)
前述したマイクロ波表面波プラズマ処理装置による5秒程度の成膜時間で得られた1.2原子層厚さのグラフェン膜を、実施例1および実施例2と同様な方法で10回転写し、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に12原子層厚さのグラフェン膜#3を得た。
(実施例4)
銅箔を金属基材に用いた熱CVD法で合成された1原子層厚さのグラフェン膜をポリエチレンテレフタレートフィルム上に転写して電磁波吸収遮蔽体を作成した。この1原子層厚さのグラフェン膜を実施例4のグラフェン膜#4とする。非特許文献2に記載された1原子層厚さのグラフェン膜は誘導結合型プラズマ(ICP)で合成されたものであるが、本実施例の1原子層厚さのグラフェン膜#4は熱CVD法で合成されたものである。
(実施例5)
ニッケル箔を金属基材に用いた熱CVD法で合成された30原始層厚さのグラフェン膜をポリエチレンテレフタレートフィルム上に転写して図10の概略断面図で示す電磁波吸収遮蔽体を作成した。図10において、ポリエチレンテレフタレートフィルム54の上に、熱CVD法により30原子層厚さのグラフェン膜55が形成されている。この30原子層厚さのグラフェン膜55を実施例5のグラフェン膜#5とする。
(実施例6)
本実施例は、30原子層厚さのグラフェン膜55を2枚用意し、それらをポリエチレンテレフタレートフィルム上に積層して60原子層厚さのグラフェン膜を作成した。この60原子層厚さのグラフェン膜を実施例6のグラフェン膜#6とする。
(実施例7)
本実施例は、図8の2.2原始層厚さのグラフェン膜51(実施例1のグラフェン膜#1)の表面を化学的に異種元素で吸着ドーピングしたものである。ここで、2.2原始層厚さのグラフェン膜51への化学的吸着ドーピングは次の方法で行った。2.2原子層厚さのグラフェン膜51を転写したポリエチレンテレフタレートフィルムを、塩化金(III)の2(mmol/L)イソプロピルアルコール溶液に5分間浸漬し、余分な溶液を表面から除去し、乾燥させることで、実施例7のグラフェン膜#7を得た。
(試験結果1)
実施例1から実施例7で作製したグラフェン膜#1から#7の透過率(ポリエチレンテレフタレートフィルムを除くグラフェン膜のみ)、抵抗値、原子層数をまとめて表2に示す。ここで、抵抗値は四探針法における四端子法測定装置(製造者:NTTアドバンステクノロジ(株))を用いて測定したシート抵抗の値である。プローブには金合金製の針を使用し、プローブ間隔は300μm、測定値は9点の平均値とした。
Figure 2017068931
表2に示すように、グラフェン膜の原子層数が少ないほど透過率が高く、グラフェン膜#1〜#4は透明のグラフェン膜といえる。また、グラフェン膜#1と#7は、同じ2.2原子層数であるが、グラフェン膜#7は表面に塩化金による化学的吸着ドーピングを施したものであり、化学的吸着ドーピングを施していないグラフェン膜#1の抵抗値1010Ωに比べて抵抗値が350Ωに低下している(電気伝導度が向上している)。更に、原子層数30のグラフェン膜#5及び原子層数60のグラフェン膜#6は、透過率が1桁台で不透明であるが、抵抗値が14Ωあるいは9Ωと極めて低いという特徴がある。
(試験結果2)
(社)KEC関西電子工業振興センター法(KEC法)における電磁波シールド効果測定装置にて100kHzから1000MHzまでの電磁波シールド性能を測定した。KEC法は電磁波の発生する場所が近いところ(近傍界)のシールド効果を評価するものである。図11は、KEC法治具を用いた電磁波シールド効果測定装置の一例の概略構成図を示す。同図に示すように、電磁波シールド効果測定装置60は、KEC法治具61及びベクトルネットワークアナライザ62から大略構成されている。電界用のKEC法治具61は、送信部(放射部)61aと受信部61bとに分かれており、それらの間にサンプル(シールド材)65をいれ、受信部61bでどれだけ信号が減衰したかを評価する。ベクトルネットワークアナライザ62は、例えばキーサイト・テクノロジー社製であり、信号発生器と受信器が内蔵されている。
電磁波シールド効果測定時は、まず、ベクトルネットワークアナライザ62の内部の信号発生器で発生した信号を、出力端子63から出力してKEC法治具61の送信部(放射部)61aを介して受信部61bに供給して受信させる。受信部61bで受信された信号は入力端子64を介してベクトルネットワークアナライザ62の内部の受信器で受信され、受信部61bの受信信号レベルが測定される。受信部61bの受信信号レベルは送信部(放射部)61aと受信部61bとの間にサンプル65が存在するときには存在しないときに比べて減衰する。そこで、ベクトルネットワークアナライザ62はサンプル65が存在しない状態を基準として、サンプル65を挿入した時の減衰量を、以下の式によりデシベル(dB)表示で評価する。
デシベル(dB)=20×log(シールド後の電界強度/シールド前の電界強度)
上式において「シールド後の電界強度」はサンプル65を挿入したときの受信信号レベル、「シールド前の電界強度」はサンプル65を挿入しないときの受信信号レベルである。
6原子層厚さのグラフェン膜#2の電界のシールド効果を上記の電磁波シールド効果装置により測定した。図12はその測定結果を示す。同図から分かるように、グラフェン膜#2は100kHzから1000MHzまでの広い周波数範囲内の電磁波をシールドし、特に30MHzより低周波領域では20dB以上の優れたシールド効果が得られた。6原子層厚さのグラフェン膜#2の厚さは約2nmに相当し、極めて薄い電磁波遮蔽吸収体である。なお、図12では省略したが、層数3より多く層数6より少ない原子層数のグラフェン膜についても、6原子層厚さのグラフェン膜#2と同様に、広い周波数範囲の電磁波に対して高いシールド効果が得られた。
(試験結果3)
図13は、同軸線路治具を用いた電磁波シールド効果測定装置の一例の概略構成図を示す。同図中、図11と同一構成部分には同一符号を付し、その説明を省略する。図13に示すように、電磁波シールド効果測定装置70は、同軸線路治具71、アンプ73、ベクトルネットワークアナライザ62から大略構成されている。同軸線路治具71は放射部(送信部)72aと受信部72bとの間に被測定対象のグラフェン膜74が挿入される。電磁波シールド効果測定時は、まず、ベクトルネットワークアナライザ62の内部の信号発生器で発生した信号を、出力端子63から出力して同軸線路治具71の送信部(放射部)72a及びグラフェン膜74を介して受信部72bに供給して受信させる。受信部72bで受信された信号はアンプ73で増幅された後、入力端子64を介してベクトルネットワークアナライザ62の内部の受信器で受信され、受信信号レベルに基づいてグラフェン膜74のシールド効果が測定される。
ここでは、グラフェン膜74として、グラフェン膜#3、グラフェン膜#4、グラフェン膜#5、グラフェン膜#6のシールド効果を5MHzから4GHzまでの周波数範囲で測定した。図14はその測定結果を示す。図14において、I、II、III、IVはそれぞれグラフェン膜#3、グラフェン膜#4、グラフェン膜#5、グラフェン膜#6の電磁波周波数対シールド効果特性曲線を示す。図14にIIで示すように、1原子層厚さのグラフェン膜#4は周波数100MHz以下の電磁波に対して最大14dBのシールド効果しか得られず、それ以上の周波数範囲ではシールド効果が得られない。これに対し、全ての周波数領域において12原子層厚さのグラフェン膜#3はIで示すように10dB以上、30原子層厚さのグラフェン膜#5と60原子層厚さのグラフェン膜#6については、III、IVでそれぞれ示すように20dB以上の高いシールド効果を示した。
(試験結果4)
図15は、導波管型線路治具を用いた電磁波シールド効果測定装置の一例の概略構成図を示す。同図中、図11と同一構成部分には同一符号を付し、その説明を省略する。図15に示すように、電磁波シールド効果測定装置80は、導波管型線路治具81及びベクトルネットワークアナライザ62から大略構成されており、導波管型線路治具81の中間位置に設置された被測定対象のグラフェン膜82のGHz帯のシールド効果を測定する。Sバンド(2.6GHzから3.95GHz)、Gバンド(3.95GHzから5.85GHz)、Cバンド(5.85GHzから8.20GHz)、Xバンド(8.20GHzから12.4GHz)に分けて試験結果3と同じサンプル、すなわちグラフェン膜#3、グラフェン膜#4、グラフェン膜#5、グラフェン膜#6のシールド効果を測定した。
図16は、図15の電磁波シールド効果測定装置による測定結果を示す。図16において、V、VI、VII、VIIIは、それぞれグラフェン膜#3、グラフェン膜#4、グラフェン膜#5、グラフェン膜#6の電磁波周波数対シールド効果特性曲線を示す。バンド毎に測定しているために、切り替わるところで測定値にずれが生じている。図16にVIで示すように、1原子層厚さのグラフェン膜#4はSバンドからXバンドまでの全測定領域で2dB程度とシールド効果は殆ど無い。これに対し、12原子層厚さのグラフェン膜#3はVで示すように10dB以上、30原子層厚さのグラフェン膜#5と60原子層厚さのグラフェン膜#6については、図16にVII、VIIIで示すように20dB以上の高いシールド効果を示した。
(試験結果5)
2.2原子層厚さのグラフェン膜#1と塩化金による化学的吸着ドーピングを施したグラフェン膜#7について図13の同軸線路治具を用いた電磁波シールド効果測定装置によりシールド効果の測定を行った。2.2原子層厚さのグラフェン膜#1の10MHzでのシールド効果は18dBであった。これに対し、2.2原子層厚さのグラフェン膜#7の10MHzでのシールド効果は31dBと向上した。塩化金のドーピングにより電気伝導性が高まったことがシールド効果の向上につながったと判断できる。
このように、本発明によれば、化学気相成長法で合成されたN原子層(ただし、Nは2より多く、60以下の実数)厚さのグラフェン膜を、アルミニウムより密度の小さな樹脂製支持体に被覆することにより、従来の電磁波吸収遮蔽体の課題である、金属板を使用することによる重量の増大、黒鉛の粒子分散性の難しさに起因する均一性の問題を解決し、更に低周波域から高周波域まで従来に比べて広帯域の電磁波を効率良く吸収遮蔽できる。
なお、本発明は上記の実施形態及び実施例に限定されるものではなく、例えばグラフェン膜121〜12n、35以外の炭素を含む電磁波吸収遮蔽特性を有する他の固体薄膜も使用可能である。また、所要の電磁波吸収遮蔽特性を有するのであれば、固体薄膜は積層構造でなくても構わない。また、グラフェン膜の成膜には、マイクロ波プラズマ処理、高周波誘導結合プラズマ処理、容量結合高周波プラズマ処理、直流プラズマ処理などの他のプラズマ処理を用いることも可能である。
図17に示す概略図のように、支持体11の表面にn原子層のグラフェン膜12を形成した本発明の電磁波吸収遮蔽体を、被遮蔽物101を内部の閉空間内に収容するシールドボックスに用いることにより、被遮蔽物101を電磁波からシールドすることが可能になる。
10 電磁波吸収遮蔽体
11 支持体
12、13、35、74、82 グラフェン膜
121〜12n グラフェン膜の原子層
14 バインダー
20 マイクロ波表面波プラズマ処理装置
21 金属製の処理容器
22 支持部材
23 石英窓
24 スロット付き矩形マイクロ波導波管
25 通電加熱用直流電源
26a、26b 電極
27 成膜用基板(金属性基材)
28 プラズマ発生室
29 排気管
30 ガス導入管
31 端子
40 熱CVD装置
41 ヒーター
42 石英管
43 金属製フランジ
44 ガス導入管
45 排気管
46 石英試料台
50 銅箔基材
51 2.2原始層厚さのグラフェン膜
52 3原始層厚さのグラフェン膜
54 ポリエチレンテレフタレートフィルム
55 30原子層厚さのグラフェン膜
60、70、80 電磁波シールド効果測定装置
61 KEC法治具
61a、72a 放射部(送信部)
61b、72b 受信部
62 ベクトルネットワークアナライザ
63 出力端子
64 入力端子
71 同軸線路治具
73 アンプ
81 導波管型線路治具
101、202 被遮蔽物

Claims (10)

  1. 支持体と、
    前記支持体上に形成された、炭素を含む電磁波吸収遮蔽特性を有する固体薄膜とを備えることを特徴とする電磁波吸収遮蔽体。
  2. 前記固体薄膜は、層数N(ただし、Nは2より多く、60以下の実数)の原子層が積層されたグラフェン膜であることを特徴とする請求項1記載の電磁波吸収遮蔽体。
  3. 前記固体薄膜の表面は化学的に異種元素で吸着ドーピングされていることを特徴とする請求項1又は2記載の電磁波吸収遮蔽体。
  4. 前記吸着ドーピングの化学的吸着種は、金化合物、銀化合物、窒素化合物、塩素化合物のいずれか一つ以上を含むことを特徴とする請求項3記載の電磁波吸収遮蔽体。
  5. 前記支持体は、アルミニウムより小さい密度を有する樹脂基材であることを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか一項記載の電磁波吸収遮蔽体。
  6. 成膜用基板に対して化学的気相成長法を適用して、前記成膜用基板上に炭素を含む電磁波吸収遮蔽特性を有する固体薄膜を形成する薄膜形成工程と、
    前記薄膜形成工程により前記成膜用基板上に形成された前記固体薄膜を、支持体上に転写する転写工程と、を含むことを特徴とする電磁波吸収遮蔽体の製造方法。
  7. 前記固体薄膜は、層数N(ただし、Nは2より多く、60以下の実数)の原子層が積層されたグラフェン膜であることを特徴とする請求項6記載の電磁波吸収遮蔽体の製造方法。
  8. 前記転写工程により前記支持体上に転写された前記固体薄膜の表面を、化学的に異種元素で吸着ドーピングするドーピング工程を更に含むことを特徴とする請求項6又は7記載の電磁波吸収遮蔽体の製造方法。
  9. 前記ドーピング工程における化学的吸着種は、金化合物、銀化合物、窒素化合物、塩素化合物のいずれか一つ以上を含むことを特徴とする請求項8記載の電磁波吸収遮蔽体の製造方法。
  10. 前記支持体は、アルミニウムより小さい密度を有する樹脂基材であることを特徴とする請求項6乃至9のうちいずれか一項記載の電磁波吸収遮蔽体の製造方法。


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