以下に、添付図面を参照して、本発明に係る紙葉類処理装置について説明する。本発明に係る紙葉類処理装置は、紙幣、小切手、商品券等の紙葉類を処理対象とすることができるものであるが、以下では、紙幣を処理対象とする紙幣処理装置を例に説明することとする。
[装置の外観構成]
図1は、紙幣処理装置1の外観を示す斜視図である。側面にホッパ20及びリジェクト部50を有し、前面に2つの紙幣集積部30、40を有する紙幣処理装置1は、紙幣を抜き取るための開口を有する紙幣集積部30、40内部で紙幣を傾斜した立位状態で集積すると共に、装置側面からのリジェクト部50の突出を最小限に抑えることにより、装置の横幅を縮小して小型化を実現した点に1つの特徴を有している。
なお、本実施形態では、装置の四側面のうち操作表示部70が設けられた装置手前側を前面として、紙幣処理装置1の前面側から操作表示部70を操作する操作者から見て右手側の側面を右側面、左手側の側面を左側面、裏面側を背面と呼ぶ。また、本実施形態では、図1に示すように、装置左側面から右側面へ至る方向をX軸方向、装置前面から背面へ至る方向をY軸方向、装置底面から上面へ至る方向をZ軸方向として示す。
紙幣処理装置1の前面側は、上部ユニット11及び下部ユニット12から成る。紙幣処理装置1は、横幅(X軸方向)450mm、奥行き(Y軸方向)450mm、高さ(Z軸方向)400mmの空間に設置可能な小型の装置である。右側面でリジェクト部50の一部が突出しているため設置面の横幅はさらに小さく400mm以下となっている。
紙幣処理装置1の前面左右下端には、例えば紙幣処理装置1を机上に設置した際に、机と装置筐体との間に手を入れる隙間ができるように、凹部36、46が形成されている。この凹部36、46は装置背面側にも設けられており、これら底面四隅の凹部36、46に手を入れて紙幣処理装置1を運搬できるようになっている。
上部ユニット11の前面略中央に、各種情報の入力操作及び各種情報の出力表示を行うことができる大型の操作表示部70が配置されている。操作表示部70は、上側が装置前面と略同一の位置にあるのに対して、下側は装置前面よりも手前に突出しており、操作者が表示内容を見やすいように上向きに傾斜した状態で固定されている。操作表示部70の左側には、背面側に向けて押し込むことにより前面側へ飛び出してくるプッシュオープン式のゴミトレイ71が配置されている。装置内部で紙幣を搬送する際に発生する紙粉等のゴミをゴミトレイ71に集めて装置外へ取り出せるようになっている。
上部ユニット11の右側面には、識別計数処理の処理対象となる紙幣を載置するホッパ20が設けられている。ホッパ20の下側には、リジェクト紙幣を排出するリジェクト部50が配置されている。リジェクト部50は、リジェクト紙幣が集積される集積空間の上面が上部ユニット11側にあり底面は下部ユニット12側にある。上部ユニット11の上面には開閉可能な上蓋13が設けられている。上蓋13と上部ユニット11との間には係合部材が設けられており、通常はこの係合部材によって上蓋13と上部ユニット11とが固定されている。図1に示すように、上蓋13の右側で前後方向略中央の位置に、係合部材による係合を解除するためのレバーが設けられており、このレバーに指を掛けた状態で上蓋13を上方へ開く動作を行うことにより、係合部材による係合を解除する操作と、係合が解除された上蓋13を開く操作とを一連の動作として行えるようになっている。上蓋13を開くことにより、上部ユニット11内にある識別部や搬送路を露出させて点検やメンテナンス等を行えるようになっている。
ホッパ20には、紙幣短手を前面側(Y軸負方向側)、紙幣長手を搬送方向前方側(X軸負方向)に向けた紙幣を、積層状態で載置することができる。ホッパ20のステージ上に積層された紙幣は、一番下の紙幣から順に1枚ずつ装置内の搬送路上に繰り出される。搬送路上の各紙幣は紙幣長手を搬送方向前方として搬送される。ホッパ20には、積層状態で載置された紙幣を短手側(Y軸方向)から支持するガイド部材21が設けられている。ガイド部材21は透明の樹脂製で、ホッパ20に載置された紙幣を外側から確認できるようになっている。XZ面に対して対称な形状を有する2つのガイド部材21は、連動してY軸方向にスライド移動させることができる。紙幣の長手長さに応じて2つのガイド部材21の位置を調整することにより、ホッパ20の前後方向(Y軸方向)略中央に紙幣を載置して、搬送路の幅方向(Y軸方向)略中央に紙幣を繰り出せるようになっている。ホッパ20で紙幣が載置されるステージは、前後方向(Y軸方向)略中央部が右方向(X軸負方向)に窪んだ形状を有している。この窪みから、ホッパ20の下側にあるリジェクト部50の集積空間内が見えるようになっており(図2(B)参照)、ステージ上の全ての紙幣が装置内に繰り出された後、リジェクト部50に排出されたリジェクト紙幣の有無を容易に確認できるようになっている。
図1に示すように、リジェクト部50には、装置内の搬送路からリジェクト部50の集積空間内に排出されるリジェクト紙幣が外部へ飛び出さないように停止させる2つのストッパ部材52と、集積空間内に停止したリジェクト紙幣を上から抑える抑え部材53とが設けられている。ストッパ部材52は、バネ部材によって図1に示す通常位置を維持されているが、Y軸周りに装置外側方向に回動可能に支持されている。装置右側からリジェクト部50内に集積されたリジェクト紙幣を取り出す際には、ストッパ部材52が時計回りに回動して、リジェクト紙幣を容易に取り出せるようになっている。上部ユニット11の前面右下には筐体前面から背面側に向かって窪んだ凹部51が形成されている。また、リジェクト部50内の集積空間でリジェクト紙幣を短手側から支持する側壁は、手前側の側壁の右側が左側に向かって切り欠かれた形状となっており、この側壁の切り欠きによって、リジェクト部50の集積空間と凹部51内の空間とが、筐体外側面よりも内側に入った所で接続されている。筐体前面の凹部51内の空間が、右側面にあるリジェクト部50内の集積空間と接続されていることにより、紙幣処理装置1の操作者は、装置前面側に居ながら、リジェクト部50内のリジェクト紙幣の有無確認やリジェクト部50からのリジェクト紙幣の取り出しを容易に行えるようになっている。
凹部51内には、左斜め上方の位置に、上部ユニット11と下部ユニット12を係合する係合部材の係合を解除するレバーが設けられている。このレバーは、上部ユニット11の右側面側を上方向へ引き上げようとして凹部51内に右手を入れた際に、指が掛かる位置に設けられている。これにより、凹部51に手を入れてレバーに指が掛かった状態で上部ユニット11を上方へ開く動作を行うことにより、係合部材による係合を解除する操作と、係合が解除された上部ユニット11を開く操作とを一連の動作として行えるようになっている。
下部ユニット12の左右両外側には、前面側に開口を有する2つの紙幣集積部30、40が設けられている。ホッパ20から装置内に繰り出された紙幣は、装置内で識別部によって識別計数される。紙幣集積部30、40への集積対象であると識別された紙幣は、識別結果に応じて第1紙幣集積部30又は第2紙幣集積部40に集積される。第1紙幣集積部30で右上部から紙幣集積部内に排出された紙幣は、Y軸周りに反時計回りに回転する羽根車33によって紙幣集積部内の左側壁へ向けて送られる。左側壁は、その上部を左側、下部を右側とする形で傾斜している。羽根車33によって左側壁へ送られた紙幣は、傾斜した左側壁の壁面と紙幣面とが並行となるように積層され、傾斜した立位状態で集積される。同様に、第2紙幣集積部40で左上部から紙幣集積部内に排出された紙幣は、Y軸周りに時計回りに回転する羽根車43によって紙幣集積部内の右側壁へ送られる。右側壁は、その上部を右側、下部を左側とする形で傾斜している。羽根車43によって右側壁へ送られた紙幣は、傾斜した右側壁の壁面と紙幣面とが並行となるように積層され、傾斜した立位状態で集積される。すなわち、紙幣集積部の集積空間内に集積された紙幣は、短手を前方に向けて長手を底面に接した状態で、短手の下側よりも短手の上側を装置の外側方向とする傾斜した立位状態で集積される。なお、羽根車33、43は、第1紙幣集積部30及び第2紙幣集積部40の集積空間で紙幣を整列した状態で集積させるために回転する集積車である。
紙幣処理装置1では、左右に2つの紙幣集積部30、40を有しながら、各紙幣集積部内で紙幣を傾斜した立位状態で集積することにより、紙幣面を水平にして集積する場合に比べて、紙幣の集積に必要な集積空間の横幅が小さくなっている。
下部ユニット12の左側面前方側には、左側面を前面側から背面側へ向けて曲線状に切り欠いて設けられた切り欠き31が形成されている。同様に、下部ユニット12の右側面前方側にも、右側面を前面側から背面側へ向けて曲線状に切り欠いた切り欠き41が形成されている。また、下部ユニット12の前面には、左右の紙幣集積部30、40の間に、背面側に向けて窪んだ窪み60が形成されている。
第1紙幣集積部30の集積空間を形成する左側の側壁前端は、筐体左側面の切り欠き31よりもさらに背面側にあり、切り欠き31と集積空間の左側壁前端との間が開口左側面35によって接続されている。また、第1紙幣集積部30の集積空間を形成する右側の側壁前端は、第1紙幣集積部30と第2紙幣集積部40との間に形成された窪み60よりも背面側かつ羽根車33より前面側にあり、窪み60と集積空間の右側壁前端との間が開口右側面32によって接続されている。同様に、第2紙幣集積部40の集積空間を形成する右側の側壁前端と切り欠き41との間は開口右側面45によって接続されている。また、第2紙幣集積部40の集積空間を形成する左側の側壁前端と窪み60との間が開口左側面42によって接続されている。
前面側に居る操作者は、下部ユニット12前面の窪み60と、左右の開口側面32、42とによって、第1紙幣集積部30及び第2紙幣集積部40の内部に集積された紙幣の有無を容易に目視確認できるようになっている。また、第1紙幣集積部30では、筐体左側面の切り欠き31及び切り欠き31から集積空間左側壁へ続く開口左側面35と、集積空間右側壁から窪み60へ続く開口右側面32とがあることにより、集積空間の左側壁に沿って傾斜した立位状態で集積された紙幣を左右から挟むようにつかんで抜き取る動作を容易に行えるようになっている。同様に、第2紙幣集積部40でも、筐体右側面の切り欠き41及び切り欠き41から集積空間右側壁へ続く開口右側面45と、集積空間左側壁から窪み60へ続く開口左側面42とがあることにより、集積空間の右側壁に沿って傾斜した立位状態で集積された紙幣を容易に抜き出せるようになっている。
第1紙幣集積部30及び第2紙幣集積部40では、側面に切り欠き31、41が形成される一方で、底面は装置筐体前面まで続いている。このため、傾斜した立位状態で、長手縁部を底面に沿わせた状態で集積される紙幣を安定した状態で集積することができる。
第1紙幣集積部30の開口部に形成された開口右側面32及び開口左側面35は、集積空間に向けて開口面積が狭くなるように傾斜した曲面によって形成されているが、これらの傾斜曲面を取り除いて、集積空間の左右の側壁前端が露出した状態のままとしても構わない。同様に、第2紙幣集積部40の開口部に形成された開口左側面42及び開口右側面45は、集積空間に向けて開口面積が狭くなるように傾斜した曲面によって形成されているが、これらについても、集積空間の左右の側壁前端が露出した状態であっても構わない。
このように、紙幣処理装置1では、下部ユニット12の筐体左右側面の切り欠き31、41と、第1紙幣集積部30と第2紙幣集積部40の間に形成された窪み60と、第1紙幣集積部30の傾斜した開口側面32、35と、第2紙幣集積部40の傾斜した開口側面42、45とが形成されている。これにより、装置右側から、第1紙幣集積部30及び第2紙幣集積部40の集積空間に集積された紙幣の有無を容易に確認することができる。また、同様に、装置左側からも、第1紙幣集積部30及び第2紙幣集積部40の内部に集積された紙幣の有無を容易に確認することができる。
例えば、銀行窓口のカウンターで、ホッパ20及びリジェクト部50が設けられた装置右側面を窓口の外に居る顧客の方へ向けて設置する。そして、窓口係は、装置前面側から紙幣処理装置1を操作する。このとき、顧客は、窓口係に手渡した紙幣がホッパ20に載置されて1枚ずつ装置内に繰り出される様子や、リジェクト部50へリジェクト紙幣が排出される様子を見ることができる。また、下部ユニット12に切り欠き31、41と、窪み60と、開口側面32、35、42、45とを設けることにより、装置右側で窓口係と対面する位置に居る顧客は、第1紙幣集積部30及び第2紙幣集積部40に紙幣が集積される様子を見ることができる。このように、ホッパ20、第1紙幣集積部30、第2紙幣集積部40及びリジェクト部50を顧客から見やすいように紙幣処理装置1に配置して、窓口係が、顧客から受け取った紙幣を顧客の目の前で処理することにより、紙幣処理に関する窓口係の動作及び紙幣処理装置1における紙幣処理に関する疑義が生ずることを回避することができる。
[ポート類の配置位置]
図2は、紙幣処理装置1の外観を示す平面図である。図2(A)は紙幣処理装置1の前面、同図(B)は上面、同図(C)は右側面、同図(D)は左側面を示している。なお、図2(B)は、二方を壁面とする場所に、背面及び左側面を壁面に向けて紙幣処理装置1を設置した例を示しており、上面から見た壁面の断面を斜線で示している。
紙幣処理装置1では、ホッパ20及びリジェクト部50が設けられた右側面の背面側に、可搬型記憶媒体であるメモリカードを挿入するスロット、USBケーブルやLANケーブルを接続するポート、電源ケーブルを接続するインレット等を集中配置することにより、図2(B)に示すように、装置左側面及び背面を壁で壁面との間に隙間を設けることなく紙幣処理装置1を設置することができる点に1つの特徴を有している。
図2(C)に示すように、上部ユニット11及び下部ユニット12は装置前面側にあり、背面側は上下一体の背面ユニット14になっている。すなわち、紙幣処理装置1の筐体は、前面側の上部ユニット11と、前面側の下部ユニット12と、背面側の背面ユニット14との3つのユニットによって構成されている。
紙幣処理装置1では、図2(C)に示すように、背面ユニット14の右側面に、メモリカードスロット62と、USBポート63と、LANポート64と、プリンター等の専用の外部機器を接続するための専用ポート65と、主電源スイッチ66と、電源インレット67とが設けられ、縦方向に一列に配置されている。すなわち、ポート類は、筐体右側面で、背面側に設けられた縦長形状の一部領域に集中配置されている。
紙幣処理装置1の使用時に、電源ケーブルが接続される電源インレット67は一番下側に配置されている。また、電源インレット67の上側には、LANケーブルが接続される可能性があるLANポート64と、外部機器接続用のケーブルが接続される可能性がある専用ポート65とを配置して、さらにこれらのポート64、65の上側に、USBケーブルが接続される可能性があるUSBポート63を配置している。そして、ケーブル類が接続されることがないメモリカードスロット62が一番上に配置されている。このように、ケーブル類が接続される可能性が高いポートほど、下側に配置することにより、各ポートへのケーブル類の接続や、メモリカードやUSBメモリ等の可搬型記憶媒体の挿入の動作を容易に行うことができる。
メモリカードスロット62は、紙幣識別用の新たなテンプレートデータ、紙幣処理装置1の機能更新用の新たなファームウェア等が記録されたメモリカードを挿入して、識別用テンプレートデータ、ファームウェア等を更新するために利用する。また、メモリカードスロット62に挿入したメモリカードに、紙幣処理に関するデータ、紙幣処理装置1内の各部の動作記録等のログデータを記録することも可能となっている。また、USBポート63は、USBメモリを利用した識別用テンプレートデータの更新、ファームウェアの更新、ログデータの記録等を行うために利用することができる。また、USBポート63は、USBケーブルによるデータ通信に対応した機器を接続する際に、USBケーブルを接続するために利用する。
LANポート64は、LANケーブルにより紙幣処理装置1をネットワークに接続するために利用する。紙幣処理装置1をネットワークに接続することにより、上位ターミナルや管理サーバ等の外部装置との間でデータ通信を行ったり、外部装置から紙幣処理装置1を制御したりすることが可能となっている。また、紙幣処理装置1の識別用テンプレートデータの更新、ファームウェアの更新、ログデータの収集等を、上位ターミナル等の他の装置からネットワークを介して行うこともできる。
専用ポート65は、プリンターや表示装置等、専用の機器を接続するためのインターフェイスである。電源インレット67は、紙幣処理装置1に電力を供給するための電源ケーブルを接続するためのポートである。主電源スイッチ66は、電源ケーブルから供給される電力のオン及びオフを制御するためのスイッチである。図2(C)に示すように、紙幣処理装置1の下部ユニット12右側面には副電源スイッチ61が設けられており、主電源スイッチ66及び副電源スイッチ61の両方をオンにすることで、紙幣処理装置1が起動するようになっている。主電源スイッチ66をオフにした状態では、副電源スイッチ61をオンにしても紙幣処理装置1で紙幣処理を行うことはできず、主電源スイッチ66をオンにし副電源スイッチ61をオフにした状態で装置が待機状態となる。
ホッパ20及びリジェクト部50が設けられた紙幣処理装置1の右側面では、ホッパ20への紙幣の載置、リジェクト部50からの紙幣の抜き取りを行う必要がある。このため、通常、右側面を壁面に密着させるように紙幣処理装置1を設置することはできない。同様に、第1紙幣集積部30及び第2紙幣集積部40の開口部が設けられた前面では、内部に集積された紙幣の抜き取りを行う必要がある。このため、通常、前面を壁面に密着させるように紙幣処理装置1を設置することはできない。紙幣処理装置1では、このように通常壁面に向けることができない筐体面上にポート類が設けられている。
具体的には、紙幣処理を行う際に、紙幣処理の様子を顧客から見えるようにするため、壁面に対向させることができない右側面に、メモリカードスロット62、USBポート63、LANポート64、外部機器接続用の専用ポート65、主電源スイッチ66、電源インレット67の全てを集中的に配置している。これにより、ポート類が設けられていない左側面及び背面については、図2(B)に示すように、これらの面を壁面に密着させるようにして設置することが可能であるため、設置時に壁面との間に無駄なスペースが生ずることがない。また、紙幣処理装置1を、図2(B)に示すように設置した場合でも、ポート類が設けられた右側面側が開放されているため、紙幣処理装置1を移動させることなくポート類を利用することができる。
図3は、上部ユニット11、下部ユニット12及び背面ユニット14の開閉の様子を示す図である。上部ユニット11と下部ユニット12との間には係合部材が設けられており、通常はこの係合部材によって上部ユニット11と下部ユニット12とが固定されている。紙幣処理装置1はこの係合部材のロックを解除することにより、図3(A)に示すように、下部ユニット12に対して、上部ユニット11右側を上方に開くことができる。また、図2(C)に示すようにポート類が集中配置された背面ユニット14の右側を、図3(B)に示すように、上部ユニット11及び下部ユニット12に対して後方に開くことができる。
紙幣処理中に紙幣詰まり(ジャム)等のエラーが発生して装置内部の搬送路に紙幣が詰まった場合に、上部ユニット11を上方に開いて、詰まった紙幣を搬送路から取り除いたり、装置内各部の点検や修理等を行ったりすることができる。
背面ユニット14の内部には、メモリカードスロット62、USBポート63、LANポート64、外部機器用の専用ポート65、主電源スイッチ66、電源インレット67等が接続された基板、電源ユニット等が収められている。また、紙幣処理装置1内で紙幣の金種等を識別する識別部の制御、搬送路による紙幣の搬送制御等を行う基板も背面ユニット14内部に収められている。例えば、図2(B)に示すように設置した紙幣処理装置1で故障が発生した場合には、紙幣処理装置1を前方側へ移動させて背面ユニット14を後方に開くことにより、上部ユニット11及び下部ユニット12内で搬送路のローラを駆動するモータ等を点検することができる。
[リジェクト部の構造]
図4は、リジェクト部50及びリジェクト部50装置前面側に設けられた筐体凹部51の構造を示す図である。図4(A)はリジェクト部50の外観の斜視図を示し、同図(B)はリジェクト部50を上方から見た平面図を示している。紙幣処理装置1では、リジェクト部50の前面側側壁11aの右側が切り欠かれ、筐体前面に、この切り欠き51aによってリジェクト部50の集積空間と接続された凹部51が形成されている点に1つの特徴を有している。凹部51は、上部ユニット11の前面11bから背面側に向かって窪んだ形状を有しており、凹部51内の前面51bと連続して形成された側壁11aの切り欠き51aによって、凹部51とリジェクト部50内の集積空間とが接続されている。
このような構造とすることにより、装置前面側からもリジェクト紙幣を取り出しやすくなっている。図4(A)に示すように、リジェクト部50に集積されたリジェクト紙幣15の短手右側の角部15aは、リジェクト部50の集積面より前方右側へはみ出しており、この角部15aを上下から挟むようにつかんでリジェクト紙幣15を取り出すことができる。
凹部51内には、上部ユニット11を開くためのレバー51cが設けられている。このレバー51cを、上方に持ち上げるように握ることにより上部ユニット11と下部ユニット12との間で係合部材による係合が解除される。そして、レバー51cをさらに上方へ持ち上げることにより、係合が解除された上部ユニット11を上方へ持ち上げて、図3(A)に示すように開くことが可能となっている。
図4(B)に示すように、リジェクト部50の集積空間では、破線で示すようにしてリジェクト紙幣15が集積される。リジェクト紙幣15が集積される集積面では、2つのストッパ部材52の間の集積面50bが、装置左方向(X軸負方向)に切り欠かれた位置にあり、この切り欠き部分で上下から挟むようにしてリジェクト紙幣15をつかんで抜き出せるようになっている。
リジェクト部50の背面側集積面50cは、装置左方向(X軸負方向)に、ストッパ部材52の間の集積面50bと同じ位置まで切り欠かれた位置にある。一方、リジェクト部50の前面側集積面50aは、装置左方向に向けて、ストッパ部材52の間の集積面50b及び背面側集積面50cよりも深く切り欠かれた位置にある。また、装置前面側のリジェクト部50の側壁の切り欠き51aは、前面側集積面50aよりもさらに装置左方向に後退した位置にある。装置前面側では、他の集積面50b、50cよりも一段深く切り欠かれた位置に集積面50aが形成され、この集積面50aからさらにもう一段深く切り欠かれた位置に側壁の切り欠き51aがある。すなわち、装置前面側には、前面側集積面50a及び側壁の切り欠き51aによる二段の切り欠きが形成されている。
[操作表示部]
図5は、2つの紙幣集積部30、40及び操作表示部70の位置関係を示す図である。紙幣処理装置1は、小型の装置でありながら多数の情報を表示可能な大型の操作表示部70を有し、この操作表示部70上に、各紙幣集積部に関する情報を、表示された情報と各紙幣集積部との関係を容易に認識できるように表示する点に1つの特徴を有している。
操作表示部70は、縦107mm、横142mmの7インチの液晶画面から成るタッチパネル式の液晶表示装置で、文字、静止画像及び動画像等の情報をカラー表示すると共に、タッチパネルによる情報入力を受け付けることも可能となっている。上部ユニット11及び下部ユニット12から成る紙幣処理装置1前面の大きさは縦が約390mm、横が約350mmとなっており、操作表示部70の表示画面の大きさは、面積比で装置前面の約11%となっている。
図5に示すように、第1紙幣集積部30及び第2紙幣集積部40は、下部ユニット12の左右両外側に配置されている。前面側から見て左右方向略中央、紙幣集積部の中心線を含む位置に操作表示部70が配置されている。また、紙幣集積部30、40を下部ユニット12に配置して、操作表示部70を上部ユニット11に配置することにより、左右の紙幣集積部30,40の間の距離(D2)よりも液晶から成る表示画面の横幅(D1)が広い操作表示部70を利用することが可能となっている。
操作表示部70の表示画面左端は第1紙幣集積部30右端より装置外側(左側)にあり、表示画面右端は第2紙幣集積部40の左端より装置外側(右側)にある。このため、操作表示部70の表示画面左下に第1紙幣集積部30に関する情報を表示する専用の第1表示領域201を設け、表示画面右下に第2紙幣集積部40に関する情報を表示する専用の第2表示領域202を設けることにより、各紙幣集積部に対応する情報を容易に認識することができる。例えば、図5に示すように、第1紙幣集積部30に集積されている紙幣枚数を第1表示領域201に表示して、第2紙幣集積部40に集積されている紙幣枚数を第2表示領域202に表示して、これらの紙幣枚数を合計した合計枚数を操作表示部70の略中央に表示する。これにより、第1表示領域201及び第2表示領域202に表示された各情報がいずれの紙幣集積部30、40に関するものであるかを示す文字情報を表示せずとも、紙幣処理装置1の操作者は、表示された情報と紙幣集積部30、40との関係を容易に認識することができる。
このように、操作表示部70の表示画面の上辺を紙幣処理装置1の上面、表示画面の左右の辺を紙幣処理装置1の左右側面、表示画面の下辺を紙幣処理装置1の底面に対応させて、操作表示部70の表示画面を装置前面に見立てて、表示画面を複数の部分領域に分割した場合に、第1紙幣集積部30の配置位置に対応する画面左下の第1表示領域201に第1紙幣集積部30に集積された紙幣に関する情報を表示して、第2紙幣集積部40に対応する画面右下の第2表示領域202に第2紙幣集積部40に集積された紙幣に関する情報を表示する。これにより、第1紙幣集積部30に集積された紙幣に関する情報は、操作表示部70の表示画面上で第1紙幣集積部30に近接する第1表示領域201に表示され、第2紙幣集積部40に集積された紙幣に関する情報は、表示画面上で第2紙幣集積部40に近接する第2表示領域202に表示される。
操作表示部70の表示画面上に紙幣処理装置1に関する情報を表示する際に、表示する情報の位置と、この情報と関連する紙幣処理装置1の構成部の位置とを対応させて表示することにより、操作者は、表示された各情報と紙幣処理装置1の構成部との関係を容易に認識することができる。
なお、図5では、操作表示部70の表示画面に、各紙幣集積部に集積された紙幣枚数を表示する例を示したが、この他、表示情報に係る設定を変更することにより、金種や正損等の紙幣の種類、各紙幣集積部に集積されている紙幣の合計金額、所定枚数に達するまでに残り何枚かを示す情報等を表示することもできる。また、例えば、紙幣集積部からの紙幣の抜き取りを指示する情報等、各紙幣集積部に対して行う操作に関する情報を表示することもできる。また、例えば金種及び枚数の両方を表示する等、各表示領域201、202に複数の情報を表示させることも可能となっている。また、画面上には、バッチ処理を行う際に、バッチ枚数やバッチ成立回数を表示することもできるが詳細は後述する。
[装置の内部構造]
次に、紙幣処理装置1の内部構造について説明する。図6は、正面から見た紙幣処理装置1の内部構造概略を示す断面模式図である。装置右上にあるホッパ20に積層状態で載置された複数紙幣のうち一番下にある紙幣がキッカローラ23によって装置内部へ向けて送り出される。そして、対向して設けられたフィードローラ25及び逆転ローラ24によって紙幣が1枚ずつに分離され、一番下の紙幣のみが搬送路へ繰り出されるようになっている。装置内に繰り出された紙幣は、上側の搬送ガイド26と下側の搬送ガイド27とによって形成された搬送路を左方向へ搬送される。搬送路では、多数のローラと、複数のローラに巻回された搬送ベルト90〜95が、搬送ガイド26、27から搬送路内へ露出しており、ローラ又は搬送ベルト90〜95によって紙幣が搬送されるようになっている。
搬送ベルト91〜95は、両端のローラに巻回された上下の搬送ベルトを平行な状態とせず、搬送路を形成する側の搬送ベルトがローラによって押し上げられたり押し下げられたりした状態となっている。これにより、搬送路の上下でローラを対向して設けずとも、搬送される紙幣と搬送ベルトとの間のグリップ力を確保して、安定した搬送を行うことが可能となっている。
紙幣処理装置1内の搬送路は、上部ユニット11内で左方向(X軸負方向)へ搬送する上部搬送路と、下部ユニット12内で紙幣を右方向(X軸正方向)へ搬送する下部搬送路と、上部搬送路及び下部搬送路を接続して紙幣を下方向(Z軸負方向)へ搬送する中間搬送路とによって構成されている。ホッパ20から繰り出されて上部搬送路を左方向へ搬送された紙幣は、識別部100を通過した後、向きを変えて中間搬送路を下方向へ搬送され、その後さらに向きを変えて下部搬送路を右方向へ搬送される。
上部搬送路に設けられた識別部100は、透過画像、紙幣上面の反射画像及び紙幣下面の反射画像を取得するためのラインセンサ101と、UV光(紫外光)を照射して励起される発光を検知するためのUVセンサ102と、紙幣の厚みを検知するための厚み検知センサ103と、紙幣の磁気特性を検知するための磁気検知センサ104とを有している。これらのセンサによって得られた紙幣の光学特性、磁気特性及び厚みに基づいて、紙幣の金種、真偽、正損、表裏、方向等を識別することができる。
搬送路には、紙幣の通過を検知する複数の搬送紙幣検知センサ80〜85が配置されている。搬送紙幣検知センサ80〜85は投光部及び受光部によって構成され、紙幣通過による透遮光の変化に基づいて紙幣を検知する。上部搬送路では、搬送紙幣検知センサ81による検知結果に基づいて紙幣の通過タイミングを認識した識別部100が、通過する紙幣の識別処理を行う。
下部搬送路では、第1分岐点に第1分岐部材111が設けられ、第1分岐点より下流側の第2分岐点に第2分岐部材112が設けられている。第1分岐点では、第1分岐部材111により、紙幣が下部搬送路下流又は第1紙幣集積部30へ振り分けられる。同様に、第2分岐点では、第2分岐部材112により、紙幣がリジェクト部50又は第2紙幣集積部40へ振り分けられる。
具体的には、識別部100による識別結果と、中間搬送路の搬送紙幣検知センサ83で検知された紙幣の通過タイミングとに基づいて、第1分岐部材111が制御される。そして、搬送紙幣検知センサ83で検知された紙幣が第1紙幣集積部30の集積対象でない場合には、第1分岐部材111は図6に示す状態となり、紙幣は第1紙幣集積部30へ分岐されることなく第1分岐点を通過して右方向へ搬送される。一方、紙幣が第1紙幣集積部30の集積対象となる紙幣であれば、第1分岐部材111が時計回りに回動して、この紙幣は搬送路から分岐された後、第1紙幣集積部30へ向けて搬送される。同様に、識別結果と、下部搬送路の搬送紙幣検知センサ84で検知された紙幣の通過タイミングとに基づいて、第2分岐部材112が制御される。そして、第2紙幣集積部40の集積対象となる紙幣は、搬送路から分岐された後、第2紙幣集積部40へ向けて搬送される。一方、紙幣がリジェクト紙幣である場合は、第2紙幣集積部40へ向けて分岐されることなく、第2分岐点を通過してさらに右方向へ搬送され、リジェクト部50へ搬送される。リジェクト部50では、高速搬送されるリジェクト紙幣が勢いよく排出されるが、リジェクト紙幣先端がストッパ部材52で受け止められると共に、このリジェクト紙幣の後端が、回転する札叩きゴム54によって下方へ叩かれるようになっている。また、抑え部材53によって下方へ抑えられることにより、リジェクト紙幣がリジェクト部50内へ集積される。
第2分岐部材112の下流側は、下流に向かうほど高くなるように傾斜した、上り傾斜の傾斜搬送路となっている。そして、この傾斜搬送路の下側で、左方向へもぐり込ませるようにリジェクト部50を配置して、傾斜搬送路で上斜め方向に搬送したリジェクト紙幣を、リジェクト部50の左上方からリジェクト部50内の集積空間へ排出するようになっている。搬送路を傾斜させて、リジェクト部50をなるべく装置内側に配置した結果、ホッパ20のキッカローラ23の回転軸の位置よりも、札叩きゴム54の回転軸の位置が、水平方向(X軸方向)で装置内部方向(X軸負方向)になっている。紙幣処理装置1では、紙幣集積部30、40の紙幣を傾斜した立位姿勢で集積することに加えて、このようにリジェクト部50の一部を装置内に埋め込んだ構造とすることにより紙幣処理装置1の小型化を実現している。
なお、第2分岐部材112より下流側に搬送紙幣検知センサ85が設けられ、第1分岐部材111から第1紙幣集積部30へ分岐された分岐搬送路と第2分岐部材112から第2紙幣集積部40へ分岐された分岐搬送路にもそれぞれ搬送紙幣検知センサ86、87が設けられており(図11参照)、搬送路に存在する紙幣を検知できるようになっている。これらの搬送紙幣検知センサ80〜87は、搬送される紙幣の有無を検知する他、エラーが発生して紙幣の搬送を停止した際に、搬送路に残留する残留紙幣の有無検知にも利用される。
また、第1紙幣集積部30及び第2紙幣集積部40の背面側には押出部材34、44が設けられている。ホッパ20に載置された紙幣の処理が完了して、全ての紙幣が、第1紙幣集積部30、第2紙幣集積部40及びリジェクト部50のいずれかに集積された後、押出部材34、44が前方へ移動することにより、集積空間内に集積された全ての紙幣が前面開口部へ向けて押し出されるようになっているが、これについての詳細は後述する。
[装置上部の開閉]
次に、紙幣処理装置1の上部ユニット11の開閉及び上部ユニット11の識別部100の開閉について説明する。図3(A)に示すように上部ユニット11を上方に開く際に、回動の中心となる支持軸19は、図6に示すように下部ユニット12に固定されたフレーム106に設けられている。また、上部ユニット11を閉じた状態のまま、上部ユニット11内の識別部100を上方に開く際に、回動の中心となる支持軸18は、上部ユニット11に固定されたフレームに設けられている。
また、筐体の上蓋13は前蓋13aと後蓋13bとに分割されている。後蓋13bは、前蓋13a後端の支持軸17によって、支持軸17を中心として時計回りに上方に回動可能に支持されている。
図7は、識別部100を上方に開いた状態を示す断面模式図である。識別部100は、搬送路の上下で2つに分かれている。識別部100の搬送路上側部分と、識別部100の上流側及び下流側で搬送路の上側にある一部のローラとが、識別部上部ユニット105を構成している。この識別部上部ユニット105が、支持軸18を中心として回動して上方へ開くようになっている。これにより、識別部100に設けられた各センサ101〜104の点検やメンテナンスを行ったり、上部搬送路に詰まった紙幣やゴミを取り除いたりすることができる。
識別部上部ユニット105が、前蓋13aと共に、図7に実線矢印で示したように上方へ開くと、後蓋13bは、破線矢印で示したように支持軸17周りに回動する。後蓋13bが、後方下端を筐体左側面12aに沿って下側へ移動させながら回動することにより、前蓋13aと後蓋13bとが一体成形されている場合のように、後蓋13bの後方下端が他の部材と干渉して識別部上部ユニット105の回動を制限することがない。このため、識別部上部ユニット105を上方に大きく開けるようになっている。
図8は、上部ユニット11を上方に開いた状態を示す断面模式図である。上部ユニット11が、支持軸19を中心として、図8に実線矢印で示したように回動して上方へ開くと、後蓋13bが、破線矢印で示したように支持軸17周りに回動する。後蓋13bが、後方下端を筐体左側面12aに沿って下側へ移動させながら回動することにより、上蓋13が他の部材と干渉して上部ユニット11の回動を制限することがなく、上部ユニット11を上方に大きく開けるようになっている。
識別部100を含む上部搬送路は、図8に示すように上部ユニット11を上方へ開いた際に、上方へ移動する上部ユニット11に含まれている。また、中間搬送路は、搬送路の右側と左側とに分かれ、右側の構成部が上部ユニット11に含まれ、左側の構成部は下部ユニット12に含まれる。下部搬送路は、搬送路の上側と下側とに分かれ、上側の構成部が上部ユニット11に含まれ、下側の構成部は下部ユニット12に含まれる。このように、中間搬送路及び下部搬送路が、上部ユニット11と下部ユニット12とに分かれることにより、上部ユニット11を開いて中間搬送路及び下部搬送路を開放して、搬送路に詰まった紙幣やゴミ等を取り除けるようになっている。
ホッパ20とリジェクト部50で紙幣を抑える抑え部材53とは、上部ユニット11に含まれ、リジェクト部50の本体部は下部ユニット12に含まれている。装置を小型化するため、紙幣処理装置1では、リジェクト部50が装置右側面から外側へ大きく突出することがないように、リジェクト部50の本体部をなるべく装置内へ埋め込む形で各部の配置位置が設定されているが、図8に示すように上部ユニット11を開くことにより、リジェクト部50へ至る下部搬送路やリジェクト部50に詰まった紙幣やゴミ等を容易に取り除けるようになっている。
下部ユニット12では、下部搬送路から第1紙幣集積部30へ向けて紙幣を分岐する第1分岐点から第1紙幣集積部30へ至る分岐搬送路の長さが、搬送方向の紙幣長さ、すなわち紙幣の短手長さよりも短くなっている。このため、第1分岐点で分岐された紙幣が第1紙幣集積部30へ搬送される途中で詰まってしまった場合でも、紙幣前端が第1紙幣集積部30の集積空間内に露出した状態又は紙幣後端が下部搬送路上に露出した状態のいずれかの状態となる。同様に、下部搬送路から第2紙幣集積部40へ向けて紙幣を分岐する第2分岐点から第2紙幣集積部40へ至る分岐搬送路の長さも、紙幣の短手長さより短くなっており、この位置で紙幣の搬送が停止した場合でも、第2紙幣集積部40の集積空間内の紙幣前端又は下部搬送路上の紙幣後端のいずれかを確認できるようになっている。
このように、紙幣処理装置1では、紙幣詰まり等により搬送が停止した場合には、図7及び図8に示すように、識別部上部ユニット105及び上部ユニット11を上方に開くことにより、上部搬送路、中間搬送路及び下部搬送路にある紙幣、第1分岐点及び第2分岐点を通過して停止した紙幣等を確実に取り除くことができる。
[ゴミ受け部]
図1に示したように、上部ユニット11の前面には、背面側に向けて押し込むことにより前面側へ飛び出してくるプッシュオープン式のゴミトレイ71が配置されている。このゴミトレイ71は、図6に示すように、識別部100の下方に固定されたゴミ受けプレート72に形成された溝内を前後方向へスライドするようになっており、ゴミトレイ71の背面側にプッシュオープン機構が設けられている。ゴミトレイ71及びゴミ受けプレート72によって、ゴミ受け部が形成されている。
識別部100の厚み検知センサ103は、固定された軸上に回転可能に支持された搬送路下側の基準ローラと、搬送路上側で上下方向に変位可能かつ回転可能に支持された検知ローラとを密着させてローラ対を形成し、このローラ対の間を紙幣が通過して上下方向に変位する検知ローラの動きに基づいて紙幣の厚みが検知される。基準ローラ及び検知ローラから成るローラ対は、搬送方向に垂直な方向(Y軸方向)に多数設けられており、密着した複数のローラ対の間を通過する間に紙幣に付着していたゴミが剥がれて落ちやすくなっている。また、紙幣自体から紙粉が剥がれて落ちることもある。磁気検知センサ104では、搬送路下側に配置した毛ローラによって、搬送路上側に配置した磁気検出センサに紙幣を密着させるが、ここでもゴミや紙粉が発生しやすい。このため、厚み検知センサ103及び磁気検知センサ104の下方にゴミトレイ71を配置して、紙粉やゴミをゴミトレイ71で受けるようになっている。
図9は、ゴミトレイ71及びゴミ受けプレート72の形状を示す模式図である。図9(A)は、ゴミトレイ71及びゴミ受けプレート72を上方から見た図を示しており、同図(B)は前方から見た図を示している。また、図9(C)は、図8に示すように上部ユニット11を開いた際に、前方から見たゴミトレイ71及びゴミ受けプレート72を示している。なお、図9(A)では、識別部100の搬送路より下側の部分を示しているため、厚み検知センサ103の位置には基準ローラが示されており、磁気センサ104の位置には毛ローラが示されている。
図9(A)に示すように、ゴミトレイ71及びゴミ受けプレート72の装置前後方向(Y軸方向)の長さが、搬送ガイド26、27によって形成される搬送路の幅(Y軸方向の長さ)よりも長く、識別部100よりも長くなっている。
図9(B)に示すように、前方から見たゴミ受けプレート72の形状は、ゴミトレイ71より左側で、磁気検知センサ104の下方に位置する左端からゴミトレイ71に向かって下方へ傾斜した形状となっている。これにより、図9(B)に矢印で示したように、傾斜部分で受けた紙粉やゴミがゴミトレイ71内へ滑り落ちるようになっている。
また、ゴミ受けプレート72の形状は、ゴミトレイ71より右側では水平になっているが、図8に示すように上部ユニット11の右側面を上方に開くと、上部ユニット11と共に、ゴミトレイ71及びゴミ受けプレート72から成るゴミ受け部も図9(C)に示すように右側を上方に上げた状態に傾く。このため、図9(C)に矢印で示したように、ゴミ受けプレート72右側の水平部分に貯まった紙粉やゴミが滑り落ちてゴミトレイ71に集まるようになっている。
こうして、紙粉やゴミが内部に集められたゴミトレイ71を背面側に向けて押し込むと、背面側に設けられたプッシュオープン機構により、ゴミトレイ71の一部が前面側へ飛び出してくる。筐体前面から一部が飛び出したゴミトレイ71を装置から抜き出すことにより、ゴミトレイ71に集められた紙粉やゴミを廃棄することができる。
なお、ゴミ受け部の構造については、ゴミ受けプレート72が、ゴミトレイ71をスライドさせる溝部分とゴミを集めるプレート部分とを一体成形した形状に限定されるものではなく、スライド移動するゴミトレイ71と、ゴミを集めるプレート部分とを別々に設けて、ゴミを集めるプレート部分をゴミ受けプレート72とする態様であっても構わない。また、ゴミ受けプレート72は、単数のプレートで構成される態様であってもよいし、複数のプレートで構成される態様であっても構わない。また、ゴミトレイ71の左側だけでなく、右側、背面側等に、ゴミトレイ71にゴミが滑り落ちる傾斜したプレートを設けて、これをゴミ受けプレート72とする態様であっても構わない。なお、ゴミ受け部の構成によらず、ゴミトレイ71又はゴミ受けプレート72の少なくともいずれか一方を、識別部100の厚み検知センサ103及び磁気検知センサ104の下側に配置する。
[紙幣集積部の構造]
図10は、第1紙幣集積部30の構造を説明するための図である。なお、第2紙幣集積部40は第1紙幣集積部30と同様の構造を有し、図10に示す第1紙幣集積部30を左右反転すれば第2紙幣集積部40を示す構造となるため、第2紙幣集積部40の説明は省略して、第1紙幣集積部30について説明する。
なお、第1紙幣集積部30の集積空間は、側壁部材等の複数の部材で形成されるが、図10では底面及び左右の側壁を第1紙幣集積部30の一部として符号30a、30b、30cで示している。左側の側壁30bの前端にはXZ平面に平行な三角形状の平面が形成され、右側の側壁30cの前端にもXZ平面に平行は略三角形状の平面が形成されている。左側壁30bの前端平面部の底辺と、右側壁30cの前端平面部の底辺とは異なる高さにあり、左側壁30b及び右側壁30cは、底面30aに比べて背面方向に後退した位置にある。左側壁30bの三角形状の平面の底辺からXY平面に平行に前方に突出した面(図15の符号130a参照)の上に図1に示す開口左側面35が形成され、右側壁30cの略三角形状の平面の底辺からXY平面に平行に前方に突出した面(図15の131a参照)の上に図1に示す開口右側面32が形成される。具体的には、図1に示す開口左側面35は、左側壁30bの前端にある三角形状の平面部を覆う形で左側壁30bと筐体左側面の切り欠き31を接続して形成され、図1に示す開口右側面32は、右側壁30cの前端にある略三角形状の平面部を覆う形で右側壁30cと窪み60を接続して形成される。
第1紙幣集積部30では、下部搬送部から第1分岐部材111によって分岐された紙幣が分岐搬送路を搬送されて、右上部から集積空間内へ排出される。紙幣集積部内へ排出された紙幣は、反時計回りに回転する羽根車33によって左方向へ送られて、傾斜した側壁30bに紙幣面が沿うように積層され、紙幣長手縁部が底面30aに接する形で集積される。
図10に示す水平面と側壁30bとの間の角度aは70度、水平面と底面30aとの間の角度bは15度、底面30aと側壁30bとの間の角度cは95度となっている。角度aを小さくすると紙幣集積部の横方向(X軸方向)のサイズが大きくなって紙幣処理装置1が大型化する。また、角度aを大きくすると傾斜した立位状態にある紙幣が安定せず、集積済みの紙幣が羽根車33の方へ倒れて、新たに紙幣集積部内に侵入してきた紙幣と干渉して集積不良が生ずる。このため角度aは60度以上かつ80度以下であることが好ましい。
例えば、紙幣がない状態から集積された1枚目の紙幣は、上側の長手縁部が側壁30bに接する一方で、下側の長手縁部は側壁30bから離れた位置で底面30aに接する状態で集積されることが多い。その後、後続の紙幣が順次集積されるうちに、底面30aに接する紙幣下側の長手縁部が側壁30bの方へ押されて移動し、やがて1枚目に集積されていた紙幣の紙幣面が側壁30bに沿うようになる。後続の紙幣も同様に移動して1枚目の紙幣の上に積層された状態となる。先に集積されている紙幣の下側長手縁部が後続の紙幣に押されて底面30aを側壁30bの方へ移動しやすいように、底面30aの成す角度bは0度より大きいことが好ましい。一方、角度bを大きくしすぎると、これに伴って角度aを小さくする必要が生じて紙幣集積部の横方向のサイズが大きくなり装置が大型化してしまう。このため、角度bは0度より大きく30度以下であることが好ましい。
角度a及び角度bの上記範囲設定に伴い、底面30aと側壁30bの間の角度cは、70度より大きくかつ120度より小さいことが好ましい。また、側壁30bの長さdは、処理対象とする紙幣のうち短手長さが最も長い最大紙幣に合わせて設定される。例えば、最大紙幣の短手長さが85mmである場合は側壁30bの長さdを93mmにする。
羽根車33の回転軸中心から集積空間上面までの高さeは、処理対象とする紙幣のうち短手長さが最も長い最大紙幣に合わせて設定される。集積空間右上から進入してきた紙幣が、反時計回りに回転する羽根車33によって左方向へ送られる間に集積空間上面に衝突すると、紙幣を整列状態で集積することができず集積不良が生ずる。このため、最大紙幣が羽根車33の羽根の間に侵入して、最大紙幣の一方の長手縁部が羽根の根元部分に接した状態で羽根車33が回転する間に、最大紙幣の他方の長手縁部が描く軌跡が、集積空間上面より低い位置となるように高さeが設定される。
紙幣処理装置1では、回転軸を中心とする外径50mmの基体部の外周面に30度間隔で16枚の羽根が設けられ、各羽根の先端は羽根車33の回転方向とは逆方向へ延びて、外径100mmの羽根車33が形成されている。羽根車33の中心から見て各羽根の根元から各羽根の先端までの間の中心角は60度となっている。紙幣処理装置1では、この羽根車33によって、短手長さが85mmの最大紙幣を、集積不良を生じさせることなく集積できるように、高さeを71.5mmに設定している。
底面30aの長さfは、紙幣集積部に集積する紙幣枚数に応じて設定される。処理対象とする紙幣の中には折れや皺があるものも含まれるため、これを考慮して長さfが設定される。紙幣処理装置1では、200枚の紙幣を集積するために長さfを33mmに設定している。
[紙幣搬送路の構造]
図11は、前方から見た下部ユニット12内の下部搬送路の形状を説明する模式図である。図11(A)は、図6に示す紙幣処理装置1の下部搬送路の形状を示し、同図(B)では下部搬送路の形状が異なる例を示している。なお、図11では、下部搬送路の形状を理解しやすくするため、搬送ベルトやローラは省略して、搬送ガイド26、27により搬送路の形状を示している。紙幣は、搬送ガイド26、27の間を搬送される。また、図6では図示を省略したが、図11に示すように、下部搬送路から第1紙幣集積部30へ分岐した後の分岐搬送路には搬送紙幣検知センサ86が設けられ、下部搬送路から第2紙幣集積部40へ分岐した後の分岐搬送路にも搬送紙幣検知センサ87が設けられている。
図11(A)に示すように、中間搬送路を下向きに搬送された紙幣15が向きを変えて右方向へ搬送される下部搬送路では、第1分岐部材111が設置された第1分岐点111aを通過する位置までは搬送路が水平に形成されている。紙幣処理装置1では、紙幣を第2紙幣集積部40へ分岐する第2分岐点112aでも、第1分岐部材111と同一形状の分岐部材を第2分岐部材112として利用している。
第2分岐部材112を揺動させて紙幣を第2紙幣集積部40又はリジェクト部50へ搬送するためには、第2紙幣集積部40への搬送方向112bとリジェクト部50への搬送方向112cとの間の角度を所定角度以上確保する必要がある。言い換えれば、第2分岐点112aの搬送路を水平方向とすると、この水平搬送路と、搬送方向112bに分岐する搬送路との間の角度が狭くなり、第2分岐部材112を利用できなくなる。このため、紙幣処理装置1では、第2分岐点112aの搬送路を下流側の高さが高くなるように上向きに傾斜させて、第2紙幣集積部40への搬送方向112bとリジェクト部50への搬送方向112cとの間の角度を拡大することにより、第1分岐部材111と部品を共通化した第2分岐部材112を利用できるようになっている。この結果、第1分岐点111aを第2紙幣集積部40へ向けて通過する紙幣の搬送方向と、第2分岐点112aをリジェクト部50へ向けて通過する紙幣の搬送方向とが異なる方向となっている。
また、紙幣が、第1分岐点111aで分岐された後、分岐搬送路を第1紙幣集積部30へ向けて搬送される方向と、第2分岐点112aで分岐された後、分岐搬送路を第2紙幣集積部40へ向けて搬送される方向とが異なる方向となっている。具体的には、第1分岐点111aと第1紙幣集積部30の羽根車33の回転軸を結ぶ直線と、前記第2分岐点112aと第2紙幣集積部40の羽根車43の回転軸を結ぶ直線とが異なる方向となる。
また、上述したように、紙幣の搬送が停止した場合でも、紙幣の搬送方向前端が紙幣集積部内の集積空間に露出した状態となるか、又は紙幣の搬送方向後端が下部搬送路上に露出した状態となるように、下部搬送路から集積空間までの距離を紙幣の短手長さより短くする必要がある。これを、第1分岐部材111と第2分岐部材112を同じ高さに設けて、同一形状の第1紙幣集積部30及び第2紙幣集積部40で実現しようとすると、第2紙幣集積部40の位置が第1紙幣集積部30より高い位置になってしまう。このため、紙幣処理装置1では、第2分岐部材112の設置高さを第1分岐部材111の設置高さより下げることにより、搬送距離に係る条件を満たしかつ同一形状の第1紙幣集積部30及び第2紙幣集積部40を同じ高さとする位置関係を実現している。
そして、第1分岐点111aの水平な搬送路と、第2分岐点112aの上向き傾斜した搬送路とを接続するため、第1分岐点111aの下流側で搬送路の高さが低くなるように下向きに傾斜させてから、向きを変えて、上向きに傾斜した搬送路と接続するように下部搬送路を形成している。
このように、紙幣処理装置1の下部搬送路では、第1分岐点111aを水平方向に通過した紙幣が、水平方向から下向きに傾斜した搬送路を搬送された後、向きを変えて、上り傾斜した搬送路を搬送されて第2分岐点112aに至り、その後、上り傾斜した搬送路をさらにリジェクト部50へ向けて搬送される。このように湾曲した形状の搬送路で紙幣を確実に搬送するため、紙幣処理装置1では、図6に示すように、下部搬送部を紙幣搬送ベルト91〜95によって構成している。
なお、紙幣処理装置1の下部搬送路は、第1分岐部材111と第2分岐部材112の部品を共通化するために図11(A)に示す形状としているが、下部搬送路の形状がこれに限定されるものではなく、図11(B)に示す形状であっても構わない。具体的には、水平に延びる搬送路を、第1分岐部材111の下流側で、第1分岐部材111とは異なる形状の第2分岐部材113を利用して、第2紙幣集積部40又はリジェクト部50へ搬送する態様であってもよい。
紙幣処理装置1の内部には制御部が設けられている。上述したホッパ20からの繰り出し、搬送路での紙幣の搬送、識別部100による紙幣の識別、識別結果に基づく紙幣の搬送先の決定、この決定に基づく分岐部材111、112の制御等は制御部によって行われる。また、以下に説明する押出部材34の移動、紙幣集積部30、40からの紙幣の抜き取り検知、操作表示部70への各種情報の表示、操作者に対する各種情報の報知、複数の紙幣集積部の優先度を設定した優先度設定に基づいて行う紙幣集積部の選択、紙幣集積部の優先度設定と過去に処理された紙幣の種類別処理枚数に基づく各紙幣集積部への紙幣の種類の割り当て等についても、制御部が各部を制御することによって実現される。これらの制御は、制御部が、記憶部に保存された各種の設定内容を参照しながら該記憶部に保存された各プログラムを実行することによって行われるが、制御を実現するための方法は従来技術と同様であるため、以下では、制御部によって実現される各部の機能及び動作を主として説明することとする。
[紙幣押出機構]
次に、紙幣処理装置1の第1紙幣集積部30及び第2紙幣集積部40の集積空間内で、背面側に設けられた押出部材34、44について説明する。ホッパ20に載置された紙幣の処理が完了して、全ての紙幣が第1紙幣集積部30、第2紙幣集積部40及びリジェクト部50のいずれかへ集積された後、第1紙幣集積部30及び第2紙幣集積部40では、押出部材34、44が前方へ移動することにより、紙幣集積部内に集積された全ての紙幣が前方の開口部へ向けて押し出されるようになっている。押出部材34、44の構造及び押出部材34、44を移動させるための駆動機構は、第1紙幣集積部30と第2紙幣集積部40とで同じであるため、以下では、第1紙幣集積部30について説明する。
図12は、第1紙幣集積部30の内部に設けられた押出部材34の構造及び押出部材34を移動させる駆動機構を示す斜視図である。図12では、第1紙幣集積部30の集積空間内で羽根車33によって送られた紙幣が紙幣面を接触するようにして集積される装置外側(X軸負方向側)の外側側壁部材130と、装置に固定された外側側壁部材130に沿って前後方向(Y軸方向)にスライド移動可能に設けられた押出部材34と、押出部材34を駆動する駆動機構とを示している。図12(A)は紙幣集積時の退避位置を示し、同図(B)は内部に集積された紙幣を押出部材34によって前方へ押し出すときの押出位置を示している。
押出部材34は、背面板34a、底面板34b及び側面板34cを一体化した構造を有している。背面板34a、底面板34b、側面板34cは薄板形状を有しており、紙幣集積部の集積空間内を表側として、背面板34a、底面板34b、側面板34cの裏側には、強度を保つためのリブが設けられている。紙幣処理装置1では、例えば、背面板34a、底面板34b、側面板34cを樹脂材で一体成形した押出部材34が利用される。
背面板34aの外周縁部には、鋸歯状の突起が複数設けられており、この突起と噛み合うように、集積空間を形成する壁面の対応する位置に、前後方向に溝が設けられている。押出部材34が移動する際に、背面板34aの突起が壁面の溝内を移動することにより、押出部材34と壁面との間の隙間に紙幣が入りこまないようになっている。また、側面板34cの面形状を背面板34aの突起に合わせて段差を有する形状として、外側側壁部材130をこの面形状に合わせた形状とすることで、押出部材34が移動する際に、側面板34cと外側側壁部材130との間の隙間に紙幣が入り込まないようになっている。
第1紙幣集積部30には、集積空間内の紙幣の有無を検知するための複数の集積紙幣検知センサが配置されている。集積紙幣検知センサは集積空間内を横切る光を投受光する2つのユニットから成り、例えば、紙幣集積部の一方の外側に設置された投光部から照射した光が集積空間内を通過して、紙幣集積部の他方の外側に設置された受光部によって受光されるようになっている。紙幣集積部に集積されたの紙幣によって投光部からの光が遮られると、受光部で光が受光できなくなることにより紙幣の有無が検知される。紙幣集積部内の紙幣を確実に検知できるように投光部及び受光部の位置を調整して、複数の集積紙幣検知センサが配置されている。なお、押出部材34には、押出部材34が移動する際に、集積紙幣検知センサをクリーニングするためのセンサブラシ140a、140bが設けられているが、これらについての詳細は後述する。
図12(A)に示すように、押出部材34の側面板34cには集積紙幣検知センサ用の3つの貫通孔37a〜37cが設けられ、外側側壁部材130にも集積紙幣検知センサ用の2つの貫通孔137a、137bが設けられている。退避位置にある側面板34cの貫通孔37cに対応して、側面板34cの裏側、すなわち紙幣集積部の外側に集積紙幣検知センサが配置されている。また、固定された外側側壁部材130の貫通孔137a、137bに対応して、外側側壁部材130の裏側に、集積紙幣検知センサが配置されている。
押出部材34が図12(A)に示す退避位置にあるときには、側面板34cの貫通孔37a、37bに対応する位置には集積紙幣検知センサは配置されていないが、これらの貫通孔37a、37bは、図12(B)に示すように、押出部材34が押出位置に移動したときに外側側壁部材130の貫通孔137a、137bと重なるように設けられている。これにより、押出部材34が押出位置に移動した際にも、外側側壁部材130裏側にある集積紙幣検知センサの光が側面板34cによって遮られることがなく、これらの集積紙幣検知センサを利用できるようになっている。
押出部材34を前後にスライド移動させる駆動機構は、モータ120と、モータ120によって回転するカムプレート121と、カムプレート121によって駆動されるリンクプレート122とによって構成されている。カムプレート121の回転が、リンクプレート122によって押出部材34の前後運動に変換される。
押出部材34は横方向(X軸方向)及び上下方向(Z軸方向)の動きが規制され、前後方向にのみスライド移動可能に支持されている。押出部材34の底面板34bの裏側に突出して設けられた軸に、リンクプレート122の一端が回転可能に取り付けられている。また、リンクプレート122の他端は装置に固定された回転軸122bに回転可能に取り付けられている。リンクプレート122には、細長い貫通孔122aが設けられており、この貫通孔122aには、一端がモータ120の回転軸に接続されたカムプレート121の他端側の軸が挿入されている。モータ120によってカムプレート121を回転させると、リンクプレート122の貫通孔122a内で、カムプレート121の軸が往復移動する。この往復移動によって、回転軸122bで支持されたリンクプレート122の他端が前後に移動し、この他端に接続された押出部材34が前後に移動するようになっている。
また、リンクプレート122の軸122cには、図12に矢印で示した方向に引張力を作用させる図示しないバネ部材が取り付けられており、モータ120の停止時には、バネ部材の引張力によってリンクプレート122が動いて、押出部材34が退避位置に戻るようになっている。
なお、外側側壁部材130の前端は、第1紙幣集積部30の左側面に設けられた切り欠き31より背面側にあり、この前端部でXZ面に平行な三角形状の平面が形成されている(図10参照)。この前端部の平面から先の装置前面側の部分130aに、図1に示した開口左側面35が形成される。
図13は、駆動機構により押出部材34を移動させる方法を示す模式図である。図13は上方から見た図を示しており、図13(A)は図12(A)に対応する退避位置を示し、図13(B)は図12(B)に対応する押出位置を示している。図13に示すように、押出部材34には、図12に示したセンサブラシ140a、140bの他に、3つのセンサブラシ140c〜140eが設けられているが、センサブラシ140a〜140eについての詳細は後述する。
押出部材34の底面板34bは裏側にリブを有しており、このリブには貫通孔が設けられている。棒状のスライドガイド123が、押出部材34のリブの貫通孔を貫通した状態で装置に固定されている。このスライドガイド123が、押出部材34の前後方向のスライド移動をガイドすると共に、他の方向への移動を規制している。
また、押出部材34の底面板34bは裏側に突出した軸122dを有しており、この軸122dに、リンクプレート122の一端側が回転可能に取り付けられている。装置に固定されたモータ120がカムプレート121を回転させることにより、リンクプレート122が、他端の回転軸122bを中心として揺動し、この揺動に伴って押出部材34が装置前後方向(Y軸方向)に移動する。
紙幣処理装置1には、押出部材34が退避位置にあることを検知するための退避位置検知センサ124が設けられている。また、押出部材34の背面板34aの裏側には、退避位置検知センサ124によって利用される遮光板38が設けられている。図13(A)に示すように、押出部材34が退避位置にあるときには、退避位置検知センサ124の投光部と受光部の間で投受光される光が遮光板38によって遮光される。押出部材34が退避位置にある状態でモータ120が回転を開始して、押出部材34が前方への移動を開始すると、退避位置検知センサ124の投光部と受光部の間が透光状態となる。モータ120が回転を続けると、前方へ移動する押出部材34は押出位置に到達する。その後も、モータ120は停止することなく回転を続け、この回転に伴って今度は押出部材34が押出位置から退避位置へ向けて後退を開始する。そして、後退する押出部材34の背面側にある遮光板38が退避位置検知センサ124の位置に到達すると、再び遮光状態となることにより、退避位置検知センサ124は押出部材34が退避位置に戻ったことを検知する。そして、退避位置検知センサ124による検知結果を受けて、モータ120の回転が停止する。
このように、紙幣処理装置1では、回転角度等を検知できない安価なモータ120を利用して、モータ120の回転軸を同じ方向に回転させながらリンク機構によって押出部材34を前後に往復移動させることができる。また、押出部材34に遮光板38を設けて退避位置検知センサ124によって押出部材34の退避位置を検知することにより、モータ120を適切なタイミングで停止させることができる。また、図示しないバネ部材によって、リンクプレート122の軸122cを、図13に矢印で示す方向で引っ張ることにより、モータ120を停止した後、押出部材34が確実に退避位置に戻るようになっている。
図14は、紙幣集積部内での押出部材34、44の退避位置及び押出位置を説明するための模式図である。図14は紙幣処理装置1を右側から見た図を示しており、上部ユニット11を外観で示し、下部ユニット12を断面模式図で示している。図14(A)は第2紙幣集積部40の押出部材44が退避位置にある状態を示し、同図(B)は押出部材44が押出位置にある状態を示している。なお、図14では、第2紙幣集積部40の押出部材44を例に説明するが、第1紙幣集積部30の押出部材34でも同様に動作する。
図14(A)に示すように、第2紙幣集積部40内には2つの羽根車43a、43bが設けられている。ホッパ20から装置内に繰り出されて装置内を搬送され、紙幣集積部内に排出された紙幣15は、羽根車43a、43bによって装置右外側へ向けて送られて、傾斜した立位状態で、図中に破線で示したように集積される。
ホッパ20に載置された紙幣を識別部100によって識別して、全ての紙幣を第1紙幣集積部30、第2紙幣集積部40及びリジェクト部50のいずれかへ集積し終えると、制御部による制御によって、押出部材44による押出動作が自動的に開始される。押出部材44は、図14(B)に示すように、背面側にある羽根車43aより背面側で押出位置まで移動する。これにより、集積された紙幣15の前方側短手が、第2紙幣集積部40の側面の切り欠き41より前方に突出した状態となり、傾斜した立位状態にある紙幣の前端を左右からつかんで容易に抜き取ることができる。
なお、押出部材44は、押出位置に達した後、図14(A)に示す退避位置まで戻って自動的に停止する。また、図14(A)に示すように、第2紙幣集積部40では、側面に切り欠き41が形成される一方で、底面は装置前面まで続いている。このため、押出部材44によって紙幣を押し出した際に、紙幣15の前方側の短手一部が切り欠き41から露出する一方で、紙幣15の底面側の長手は全体が底面に接したままとなる。また、切り欠き41は、押し出された紙幣15の短手の一部のみを露出させる形状となっており、押し出された紙幣15は露出した短手の下側が図1に示す開口右側面45によって支持されると共に、その後方では紙葉面が集積空間を形成する側壁によって支持された状態となる。これにより、押出部材34、44によって押し出された紙幣15が開口から前方へ落下することがなく、押し出した後も、安定した紙幣15の集積状態を維持することができる。
[センサブラシ]
図15は、第1紙幣集積部30の押出部材34を背面側から見た斜視図である。図15(A)は、第1紙幣集積部30の紙幣集積部内部で装置外側(X軸負方向側)の側壁を形成する外側側壁部材130と、装置内側(X軸正方向側)の側壁を形成する内側側壁部材131との間で、押出部材34が退避位置にある状態を示しており、同図(B)は押出部材34が押出位置にある状態を示している。
押出部材34の裏側リブに設けられた2つの貫通孔39a、39bをスライドガイド123が貫通しており、このスライドガイド123が、押出部材34の前後方向のスライド移動をガイドしている。内側側壁部材131に設けられた2つの溝133a、133bは2つの羽根車33が設けられる溝を示しており、図15(A)には示していないが、回転する2つの羽根車33が、内側側壁部材131の上部から進入してくる紙幣を外側側壁部材130の方へ送るようになっている。
第1紙幣集積部30には、紙幣集積部の内部を通過する光の遮光によって集積された紙幣の有無を検知する4つの集積紙幣検知センサ151〜154が設けられている。集積紙幣検知センサ151は、押出部材34の側面板34cの裏側に配置されたユニット151aと、内側側壁部材131の裏側に配置されたユニット151bとによって構成される。集積紙幣検知センサ152は、外側側壁部材130の裏側に配置されたユニット152aと、内側側壁部材131の裏側に配置されたユニット152bとによって構成される。集積紙幣検知センサ153は、外側側壁部材130の裏側に配置されたユニット153aと、内側側壁部材131の裏側に配置されたユニット153bとによって構成される。集積紙幣検知センサ154は、紙幣集積部上面裏側に配置されたユニット154aと、紙幣集積部底面裏側に配置されたユニット154bとによって構成される。
第1紙幣集積部30の集積空間を形成する外側側壁部材130、内側側壁部材131、上面及び底面と、押出部材34の側面板34cとには、集積紙幣検知センサ151〜154に対応する位置に貫通孔が設けられている。例えば、図15(A)に示すように、集積紙幣検知センサ153を構成するユニット153aに対応して外側側壁部材130に貫通孔137bが設けられ、ユニット153bに対応して内側側壁部材131に貫通孔138bが設けられている。
また、押出部材34には、集積紙幣検知センサ151〜154の一部のユニットの投受光面をクリーニングするセンサブラシ140a〜140eが設けられている。具体的には、図15(A)に示すように、押出部材34の背面板34aの裏側で内側側壁部材131側にセンサブラシ140aが設けられており、同図(B)に示すように、押出部材34が紙幣を押し出すために押出位置に移動する際に、集積紙幣検知センサ151のユニット151bをクリーニングする。また、押出部材34が押出位置から退避位置へ戻る際に、再度、センサブラシ140aが集積紙幣検知センサ151のユニット151bをクリーニングする。
図16は、押出部材34に設けられたセンサブラシ140b〜140eによるセンサクリーニングについて説明する図である。押出部材34の底面板34bの裏側にセンサブラシ140bが設けられている。押出部材34が図16(A)に示す退避位置と同図(B)に示す押出位置の間を往復する間に、センサブラシ140bが、集積紙幣検知センサ154のユニット154bをクリーニングする。
センサブラシ140c〜140eは、押出部材34の側面板34cの裏側に設けられている。押出部材34が図16(A)に示す退避位置と同図(B)に示す押出位置の間を往復する間に、センサブラシ140cが集積紙幣検知センサ151のユニット151aを、センサブラシ140dが集積紙幣検知センサ152のユニット152aを、センサブラシ140eが集積紙幣検知センサ153のユニット153aをクリーニングする。これらのセンサブラシ140c〜140eについても、押出部材34が図16(A)に示す退避位置と同図(B)に示す押出位置の間を往復する間に、集積紙幣検知センサ151〜153の各ユニット151a〜153aをクリーニングする。
図15に示す集積紙幣検知センサ152のユニット152bと、集積紙幣検知センサ153のユニット153bと、集積紙幣検知センサ154のユニット154aとについては、これらをクリーニングするセンサブラシが存在しない。ユニット153bは第1紙幣集積部30の開口部に近い位置にあるため、開口部から手を入れて、内側側壁部材131の貫通孔138bからクリーニングすることができる。ユニット154aは、投受光面が下向きになるように設置されているため、他のユニットに比べて埃やゴミが付着し難くクリーニングの頻度が少なくて済む。ユニット152bは2つの羽根車33の間にあり、他のユニットに比べてクリーニング作業を行い難い。このため、ユニット152bに対応して内側側壁部材131を左右方向(X軸方向)に貫通した貫通孔138aを、上下方向(Z軸方向)に貫通した形状とすることにより、埃やゴミが貯まりにくいようにしている。
なお、内側側壁部材131では、集積空間を形成する側壁部分の前端が、装置前面の窪み60より背面側にあり、この前端部でXZ面に平行な略三角形状の平面が形成されている(図10参照)。この前端部の平面から先の装置前面側の部分131bに、図1に示した開口右側面32が形成される。
図17は、図15及び図16に示した集積紙幣検知センサ151〜154の配置角度を示す模式図である。図17に示すように、第1紙幣集積部30内では、紙幣15の長手縁部が底面に接し、紙幣面が外側側壁部材130に沿うようにして、傾斜した立位状態で紙幣15が集積される。
集積紙幣検知センサ154は、ユニット154a、154bが集積空間を形成する上面及び底面の貫通孔に対応する位置で、鉛直方向に対向するように設けられている。同じ高さで装置前後方向にずらして配置されている2つの集積紙幣検知センサ151、153は、ユニット151a及び151bと、ユニット153a及び153bとが、水平方向に対向して設けられている。また、装置前後方向で、集積紙幣検知センサ151と153との間に配置されている集積紙幣検知センサ152を構成するユニット152a、152bは、外側側壁部材130の壁面に垂直な方向に対向して設けられている。
[羽根車の設置位置]
図18は、紙幣処理装置1の搬送路を平面図に展開して、搬送路を構成するローラと羽根車33、43の配置関係を示した模式図である。図6に示したように、紙幣処理装置1内の搬送路は、ホッパ20から装置内に繰り出された紙幣が左方向に搬送される上部搬送路と、識別部100を通過した紙幣が搬送方向を変えて下方向に搬送される中間搬送路と、さらに搬送方向を変えて右方向に搬送される紙幣が識別部100による識別結果に基づいて第1紙幣集積部30、第2紙幣集積部40及びリジェクト部50のいずれかへ搬送される下部搬送路とを含んでいる。図18には、左側から上部搬送路、中間搬送路及び下部搬送路を示し、右端に、第1紙幣集積部30の羽根車33及び第2紙幣集積部40の羽根車43を示している。
図8に示したように上部ユニット11を上方へ開いたときに、上部ユニット11側に含まれる搬送路部分は、図18に示すように幅190mmであるのに対し、下部ユニット12側に残る搬送路部分は幅200mmとなっている。上部ユニット11を上方へ開いたときには、上部搬送路は上部ユニット11側に含まれる。縦方向に紙幣を搬送する中間搬送路は左側と右側とに分離され、上部ユニット11を開いた際には、右側部分が上部ユニット11に含まれ、左側部分は下部ユニット12側に残る。また、下部搬送路も上側と下側とに分離され、上部ユニット11を開いた際には、上側部分が上部ユニット11に含まれ、下側部分は下部ユニット12側に残る。
図18に中間搬送路として示した範囲には、上部ユニット11を開いた際に下部ユニット側に残る中間搬送路の左側部分を示している。また、下部搬送路として示した範囲には、上部ユニット11を開いた際に下部ユニット側に残る下部搬送路の下側部分を示している。ただし、中間搬送路の右側部分のローラと左側部分のローラとは対向配置されており、下部搬送路でも上側部分のローラと下側部分のローラとは対向配置されているので、各搬送路を形成する全てのローラの配置位置が図18に示す通りとなる。
図18に示したように、上部搬送路の各ローラは、幅190mmの搬送路の幅方向の中心線C1に対して対称に配置されている。また、中間搬送路及び下部搬送路でも、各ローラは、幅200mmの搬送路の幅方向の中心線C1に対して対称に配置されている。なお、中心線C1は、上部搬送路、中間搬送路及び下部搬送路とで共通する直線となっているので、図18に示す紙幣搬送用の全てのローラは、各ローラの軸方向中心線が、中心線C1に対して対称な直線Ca又はCb上に重なる位置に配置されている。
第1紙幣集積部30の2つの羽根車33a、33bは、背面側の羽根車33aの回転軸方向の中心線が、搬送路で紙幣を搬送するローラと同じ直線Ca上となるように配置されている。これに対して、開口側の羽根車33bは、回転軸方向の中心線が、搬送路で紙幣を搬送するローラが配置された直線Cbよりも搬送路の中心線C1から離れた位置、すなわち紙幣集積部の開口に近い位置となるように配置されている。同様に、第2紙幣集積部40の2つの羽根車43a、43bについても、背面側の羽根車43aが、回転軸方向の中心線が直線Ca上となるように配置されているのに対して、開口側の羽根車43bは、回転軸方向の中心線が直線Cb上よりも開口に近い位置となるように配置されている。具体的には、紙幣集積部内部にある開口側の羽根車33b、43bは、回転軸方向の中心線が、搬送路の中心線C1から距離L2(L1<L2)離れた直線C2上となるように配置されている。
図19は、搬送路の中心線C1に対する開口側の羽根車33bの配置位置を説明するための模式図である。図19は、搬送路及び第1紙幣集積部30を上方から見た位置関係を模式的に示している。なお、第2紙幣集積部40の開口側にある羽根車43bについては、図19に示す配置を左右反転したものと同一となるため、第2紙幣集積部40の羽根車43bに関する説明は省略して、第1紙幣集積部30の羽根車33bについて説明する。
搬送路の中心線C1から開口側の羽根車33aの回転軸方向の中心線C2までの距離L2は、長手の長さが最も短い最小紙幣に基づいて設定されている。具体的には、最小紙幣の長手長さがL4である場合に、図19に示すように、最小紙幣の短手が搬送路の開口側側壁に接した状態で、この開口側側壁からの距離L3がL4の半分より短くなるように、距離L2が設定されている。言い換えれば、紙幣集積部の開口側の羽根車33bの配置位置は、最小紙幣が紙幣集積部の開口側に最も近い位置に寄った状態で搬送されてきた場合でも、この最小紙幣の長手方向の中心線上よりも開口側になるように設定されている。
搬送路を搬送されて紙幣集積部内に排出された紙幣は、羽根車33a、33bによって受け止められるが、このとき、羽根車33bが紙幣の長手方向の中心線よりも背面側で紙幣を受けると、紙幣が開口部側へ傾いて紙幣集積部開口から装置外側へ飛び出してしまう可能性がある。このため、羽根車33a、33bで受けた紙幣が開口側へ傾くことがないように、処理対象とする大半の紙幣を長手方向中心よりも開口側で受けるように、羽根車33bが配置されている。
なお、羽根車33a、33bによって確実に紙幣を受け止めるためには、2つの羽根車33a、33bを搬送路の中心線C1に対して対称に中心線C1から離して設置すればよいが、背面側の羽根車33aを中心線C1から離して設置すると、押出部材34の前面側への移動量が制限される。このため、紙幣処理装置1では、開口側の羽根車33bを中心線C1から離して設置する一方で、背面側の羽根車33aは中心線C1に近い位置に設置している。このように、紙幣処理装置1は、搬送路の中心線C1に対して、2つの羽根車33a、33bを非対称に配置することにより、第1紙幣集積部30から紙幣が飛び出すのを防止しながら、押出部材34による押出量を確保する構造となっている。
また、図19に示したように、第1紙幣集積部30の外側側壁部材130の前端より前面側の部分130aに図1に示した開口左側面35が形成され、内側側壁部材131の前端より前面側の部分131aに図1に示した開口右側面32が形成される。
[操作表示部の表示内容]
紙幣処理装置1では、大型の操作表示部70を利用して、紙幣処理に関する情報を容易に認識できるように表示する点に1つの特徴を有している。なお、図20〜図22では各文字を白又は黒で示すが、実際の操作表示部70では各情報が色分けされてカラーで表示される。
図20は、紙幣処理時に操作表示部70に表示される画面例を示す図である。まず、図20(A)を参照しながら、画面の基本構成及び表示内容について説明する。タッチパネル式の液晶表示装置から成る操作表示部70は、各種情報を入力する操作部としても利用されるため、画面上部の帯状領域及び画面下部の帯状領域に、図20(A)に示すように各種ボタン類204、205を表示するようになっている。
操作用のボタン204、205を表示する上下の帯状領域を除いた情報表示領域で、左下に第1表示領域201が設けられ、右下に第2表示領域202が設けられている。第1表示領域201は、第1紙幣集積部30に集積された紙幣に関する情報を表示するための領域で、第2表示領域202は、第2紙幣集積部40に集積された紙幣に関する情報を表示するための領域である。第1表示領域201と第2表示領域202の間で、第1表示領域201及び第2表示領域202の上側に、第1紙幣集積部30及び第2紙幣集積部40に集積された紙幣の合計に関する情報を表示する合計表示領域203が設けられている。
例えば、第1紙幣集積部30に集積された紙幣枚数が第1表示領域201に表示され、第2紙幣集積部40に集積された紙幣枚数が第2表示領域202に表示される。そして、合計表示領域203には、下側に第1紙幣集積部30に集積された紙幣と第2紙幣集積部40に集積された紙幣の合計枚数が表示され、上側に第1紙幣集積部30に集積された紙幣と第2紙幣集積部40に集積された紙幣の合計金額が表示される。
第1表示領域201の右側には、第1紙幣集積部30で行われるバッチ処理のバッチ枚数及びバッチ成立回数から成るバッチ情報が表示される。第2表示領域202の左側でも、同様に、第2紙幣集積部40で行われるバッチ処理のバッチ枚数及びバッチ成立回数を示すバッチ情報が表示される。具体的には、図20(A)に示すバッチ情報の「100×0」は、「100」がバッチ枚数を示し、「0」がバッチ成立回数を示しているが詳細は後述する。
なお、図20(A)では、第1表示領域201及び第2表示領域202の領域内部と外部の境界と、合計表示領域203の上部で合計金額を表示する領域の領域内部と外部の境界とを黒線で示しているが、実際の画面上では、これらの境界は色の違いによって表れている。具体的には、例えば、第1表示領域201及び第2表示領域202では、白色の背景に青色の文字が表示される。また、合計表示領域203の上側では灰色の背景に青色の文字が表示され、下側では青色の背景に白色の文字が表示される。また、第1表示領域201、第2表示領域202及び合計表示領域203の外側を薄い灰色で表示する。この結果、第1表示領域201の領域内部と外部との間に色の違いによる境界が表れる。同様に、第2表示領域202及び合計表示領域203でも領域内部と外部との間に色の違いによる境界が表れる。
また、図20(A)に示すように、画面上で、第1表示領域201及び第2表示領域202内の文字が最も大きく表示され、第1紙幣集積部30に集積された紙幣に関する情報及び第2紙幣集積部40に集積された紙幣に関する情報を容易に認識できるようになっている。
以下では、千円札の束をホッパ20に載置して、第1紙幣集積部30では100枚の千円札正券が集積される度にこれを装置外へ抜き取るバッチ処理を行い、第2紙幣集積部40では千円札損券が集積される度にこれを装置外へ抜き取るバッチ処理を行う場合を例に説明する。まず、操作表示部70を操作して、バッチ枚数及びバッチ完了通知回数を設定する。バッチ完了通知回数とは、バッチ処理が所定回数に達したことを通知するための設定である。
バッチ処理の処理対象とする紙幣の種類、バッチ枚数、バッチ完了通知回数等の設定は、記憶部にパターンとして記憶させることが可能となっており、次に同じ処理を行う際には、設定済パターンを呼び出すだけでよい。なお、紙幣の種類、バッチ枚数及びバッチ完了通知回数は、第1紙幣集積部30及び第2紙幣集積部40で同じ設定とすることもできるし、異なる設定とすることもできる。例えば、第1紙幣集積部30では一万円札50枚のバッチ処理が5回成立する度に通知するよう設定して、第2紙幣集積部40では千円札100枚のバッチ処理が10回成立する度に通知するといった設定を行うことも可能である。
操作表示部70を操作して、第1紙幣集積部30では、集積する紙幣の種類を千円札正券、バッチ枚数を100枚、バッチ完了通知回数を5回に設定する。そして、第2紙幣集積部40では、集積する紙幣の種類を千円札損券、バッチ枚数を100枚、バッチ完了通知回数を5回に設定する。これらの設定操作を終えると、操作表示部70の画面では、図20(A)に示すように、第1表示領域201、第2表示領域202及び合計表示領域203に表示された枚数及び金額が0(ゼロ)にリセットされて待機状態となる。また、第1表示領域201の右側には、第1紙幣集積部30でのバッチ枚数が「100」に設定され、第1紙幣集積部30での現在のバッチ成立回数が「0」であることを示す「100×0」のバッチ情報が表示される。同様に、第2表示領域202の左側には、第2紙幣集積部40でのバッチ枚数が「100」に設定され、第2紙幣集積部40での現在のバッチ成立回数が「0」であることを示す「100×0」のバッチ情報が表示される。
ホッパ20に多数の千円札を載置してバッチ処理を開始して、第1紙幣集積部30に集積された千円札正券の枚数がバッチ枚数の100枚に達すると、紙幣処理装置1内での紙幣の搬送が停止される。このとき、操作表示部70の画面は、図20(B)に示す表示となる。合計表示領域203には、第1紙幣集積部30に集積された紙幣と、第2紙幣集積部40に集積された紙幣の合計金額及び合計枚数が表示される。
また、画面上の第1表示領域201では、領域内の背景を青色で表示して、第1紙幣集積部30に集積された紙幣の枚数である「100」の文字が白色で表示される。すなわち、集積された紙幣枚数がバッチ枚数に達すると、枚数表示の表示態様が変化する。また、バッチ処理が成立したことにより、第1表示領域201の右側に表示されたバッチ情報が更新されて「100×1」の表示となる。なお、バッチ処理が成立したとみなしてバッチ情報を更新するタイミングについては、バッチ枚数分の紙幣が集積されたタイミングであってもよいし、集積されたバッチ枚数分の紙幣の抜き取りを検知したタイミングのいずれかに設定できるようになっている。
紙幣処理装置1の第1紙幣集積部30及び第2紙幣集積部40の内部には、第1表示領域201及び第2表示領域202での表示に対応して発光するLED等の発光素子が設けられている。バッチ処理により、第1紙幣集積部30に集積された100枚の紙幣の抜き取りを待つ状態になると、操作者に紙幣の抜き取りを促すと共に、抜き取り操作の対象となる紙幣集積部が第1紙幣集積部30であることを報知するため、第1紙幣集積部30内の発光素子が点滅する。
このとき、操作表示部70の第1表示領域201の背景を青色で表示して、第1紙幣集積部30内の発光素子を同じ青色で点滅させる。操作者は、操作表示部70の表示と第1紙幣集積部30内での発光素子の点滅により、第1紙幣集積部30に集積された紙幣の枚数がバッチ枚数に達したことを認識することができる。操作者が、第1紙幣集積部30に集積された100枚の紙幣を抜き取ると、紙幣処理装置1では、集積紙幣検知センサ151〜154によって第1紙幣集積部30内の紙幣が抜き取られたことが認識され、自動的に、紙幣処理が再開される。
こうして、第1紙幣集積部30又は第2紙幣集積部40に集積された紙幣の枚数が100枚に達する度に、操作表示部70の画面上では、対応するバッチ情報に含まれるバッチ成立回数が1ずつカウントアップされる。
そして、例えば、第1紙幣集積部30でのバッチ成立回数が、バッチ完了通知回数として設定された5回に達すると、図20(C)に示す画面表示となる。第1紙幣集積部30のバッチ情報が「100×5」に更新されて、バッチ情報の表示の上側に、バッチ完了通知回数に達したことを示すアイコンが表示される。また、第1紙幣集積部30内の発光素子が点滅するが、バッチ完了通知回数に達した場合には、通常のバッチ成立時とは異なる態様で点滅する。具体的には、例えば、通常のバッチ成立時と、バッチ完了通知回数に達したときとで、1秒間の点滅回数を変更したり、点滅する発光素子の発光色を変更したりする。
なお、画面上の第1表示領域201には第1紙幣集積部30に集積されている紙幣枚数が表示されるが、合計表示領域203では、バッチ処理を開始してから、第1紙幣集積部30及び第2紙幣集積部40に集積された紙幣全ての合計金額及び合計枚数が表示される。図20(C)の例では、第2紙幣集積部40に集積された紙幣が存在しないため、第1紙幣集積部30で成立した5回分のバッチの合計金額と合計枚数とが表示されている。
バッチ成立回数がバッチ完了通知回数に到達すると、図20(D)に示すように、第1表示領域201の右側に表示されたバッチ情報のバッチ成立回数が「0」にリセットされて「100×0」の表示となる。そして、バッチ回数をカウントして、5回に達する度にこれを通知する処理が繰り返される。なお、合計表示領域203では、バッチ成立回数がリセットされた後も、リセット前に処理された紙幣を含む情報が表示される。
なお、バッチ情報を更新するタイミングが、紙幣の抜き取りタイミングに設定されている場合は、集積枚数が100枚に達した後、紙幣が抜き取られたタイミングでバッチ成立回数がカウントアップされる。そして、バッチ成立回数がバッチ完了通知回数に到達した際には、紙幣が抜き取られたタイミングでバッチ成立回数がカウントアップして「100×5」の表示となる。紙幣が抜き取られると、これが検知されて、自動的に紙幣処理が開始されるが、画面上では「100×5」の表示が所定時間(例えば5秒間)維持された後、バッチ成立回数がリセットされて「100×0」の表示となる。
このように、紙幣処理装置1では、予め設定したバッチ回数に達したことが通知されるので、例えば、100枚の紙幣の束を5束ずつ梱包するといった作業を行う際も、操作者は、紙幣集積部に集積された100枚の紙幣を抜き取る作業を続けるだけでよい。バッチ成立回数を数えなくても5束に達したことが通知されるので、この通知を受けて梱包作業を行えばよい。これにより操作者は作業を容易に進めることができる。
次に、紙幣処理装置1でリジェクト紙幣が発生した際の操作表示部70の画面表示について説明する。図20に示したように、操作表示部70で紙幣処理を開始する際に表示される画面には、リジェクト部50に関する情報を表示する領域は含まれていない。紙幣処理を進めるうちに、リジェクト紙幣が発生すると、画面上に、リジェクト紙幣に関する情報を表示するための部分領域が設定される。
図21は、リジェクト紙幣が発生した場合に操作表示部70に表示される画面例を示す図である。例えば、第1紙幣集積部30に23枚の千円札の正券を集積して、第2紙幣集積部40に10枚の千円札の損券を集積して、合計枚数が33枚となった後に識別された紙幣がリジェクト紙幣であった場合に、図21(A)に示す画面表示となる。
画面上には、第1紙幣集積部30に関する情報を表示する第1表示領域201と、第2紙幣集積部40に関する情報を表示する第2表示領域202と、リジェクト部50に関する情報を表示するリジェクト表示領域206とが、前面から見た紙幣処理装置1の第1紙幣集積部30、第2紙幣集積部40及びリジェクト部50の配置位置に対応する位置関係で表示される。具体的には、図1等に示すように、紙幣処理装置1では、前面下部の左側に第1紙幣集積部30、前面下部の右側に第2紙幣集積部40、第2紙幣集積部40の上側にリジェクト部50が設けられているので、操作表示部70で情報を表示する領域の左下に第1表示領域201、右下に第2表示領域202、第2表示領域202の上側にリジェクト表示領域206が設けられる。なお、図21では、リジェクト表示領域206の領域内部と外部の境界を黒線で示しているが、第1表示領域201及び第2表示領域202と同様に、実際の画面上では、周囲の色との違いによって境界が表れている。
リジェクト表示領域206は、第1表示領域201及び第2表示領域202に比べて小さく表示される。また、第1表示領域201及び第2表示領域202では、領域内部に表示された情報が紙幣集積部30、40に集積された紙幣の情報であることを示す表示はないが、リジェクト表示領域206では、領域の下側に、リジェクト紙幣に関する情報であることを示すために「REJECT」の文字が表示される。
リジェクト紙幣の中には、異なるリジェクト要因によってリジェクトされた紙幣が含まれる。例えば、ホッパ20から搬送路に繰り出された1枚の紙幣を識別部100によって識別した結果、識別できないと判定された紙幣、真の紙幣ではないと判定された偽札、偽札の可能性があると判定された紙幣、斜行された状態で搬送されているために紙幣集積部への分岐及び集積を正常に行えないと判定された紙幣等がリジェクト紙幣としてリジェクト部50へ搬送される。また、識別部100又は搬送紙幣検知センサ80〜84によって、複数の紙幣が重なった状態で搬送されている重送、連続して搬送される紙幣の搬送方向の間隔が所定値以下の状態で搬送されている連鎖等が検知された場合にも、これらの紙幣がリジェクト紙幣としてリジェクト部50へ搬送される。この他、紙幣のサイズや厚みが所定範囲内にない場合にも、リジェクト紙幣としてリジェクト部50へ搬送される。
紙幣処理装置1では、識別部100及び搬送紙幣検知センサ80〜84によって、搬送路を搬送される紙幣のサイズや厚みを検知することにより、複数の紙幣が一部又は全部が重なった状態で搬送される重送の他、1枚の紙幣が複数に分離されたうちの一部の紙片が搬送されていることを検知することもできる。すなわち、搬送される紙幣が1枚の紙幣であるか否かを判定することができる。このため、リジェクト紙幣の枚数を確定できる間は、リジェクト表示領域206に、リジェクト部50に集積されたリジェクト紙幣の合計枚数を表示する。
一方、重送、連鎖、厚み異常、サイズ異常等、搬送される紙幣が1枚の紙幣であると判定できない場合、すなわち枚数を確定できないリジェクト紙幣が発生すると、リジェクト表示領域206の表示内容を変更する。具体的には、リジェクト枚数に代えて、リジェクト件数を表示する。例えば、重送が検知された場合には、リジェクト件数が1回とカウントされる一方で、この重送が、何枚の紙幣が重なった状態で搬送されているのかを判定することができず紙幣枚数を確定することができない。このため、紙幣処理装置1では、リジェクト枚数に代えてリジェクト件数を表示する。
また、紙幣処理装置1では、リジェクト表示領域206に表示する情報が、リジェクト枚数及びリジェクト件数のいずれを表示したものであるかを認識できるように、リジェクト枚数とリジェクト件数とが異なる表示態様で表示される。
図21(B)は、リジェクト件数が表示された画面例を示している。このように、リジェクト件数を表示する際には、リジェクト表示領域206内に、エクスクラメーションマーク(感嘆符)を表示すると共に、リジェクト件数を括弧内に表示する。リジェクト表示領域206内での表示態様を変更して、リジェクト枚数を図21(A)のように表示して、リジェクト件数を同図(B)のように表示することにより、操作者は、リジェクト表示領域206に表示された情報が、リジェクト枚数及びリジェクト件数のいずれであるかを容易に認識することができる。
なお、紙幣枚数を確定できるリジェクトと、紙幣枚数を確定できないリジェクトの両方が発生した場合には、確定したリジェクト枚数と、紙幣枚数を確定できないリジェクト件数との合計がリジェクト件数として表示される。
具体的には、例えば、第1紙幣集積部30に23枚の紙幣が集積されて、第2紙幣集積部40に10枚の紙幣が集積された後、紙幣枚数を確定できるリジェクトが発生した場合には、図21(A)に示すように、リジェクト表示領域206には、リジェクト枚数の「1」が表示される。そして、続けてリジェクトが発生して、このリジェクトが、重送等、枚数を確定できないものであった場合には、図21(B)に示すように、リジェクト表示領域206にエクスクラメーションマークを表示すると共に、先のリジェクト枚数「1」に、続いて検知されたリジェクト件数「1」を加算した「2」の表示を括弧内に表示する。
このように、リジェクト紙幣の枚数が確定できる場合にはリジェクト枚数を表示することにより、処理完了後に、合計表示領域203に表示された合計枚数と、リジェクト表示領域206に表示されたリジェクト枚数とによって、処理された紙幣の合計枚数を確認することができる。また、リジェクト枚数が確定できない場合には、リジェクト件数の表示となり、処理された紙幣の合計枚数を正確に算出することはできないが、紙幣の合計枚数の目安となる情報を得ることができる。
リジェクト部50でも、操作者にリジェクト紙幣の抜き取りを促す場合には、操作表示部70の画面上で、リジェクト表示領域206の表示が変化する。具体的には、図21(C)に示すように、第1紙幣集積部30の紙幣の集積枚数及び第2紙幣集積部40の紙幣の集積枚数がバッチ枚数に達した場合と同様に、リジェクト表示領域206の領域内の背景が青色で表示されて文字が白色で表示される。
また、リジェクト部50の集積空間内にも、リジェクト表示領域206の表示に対応して発光するLED等の発光素子が設けられている。リジェクト部50からリジェクト紙幣が抜き取られるのを待つ待機状態になると、リジェクト部50内の発光素子を点滅させる。このとき、操作表示部70のリジェクト表示領域206の背景を青色で表示して、リジェクト部50内の発光素子を同じ青色で点滅させる。操作者は、操作表示部70の表示とリジェクト部50内での発光素子の点滅により、リジェクト部50からリジェクト紙幣を抜き取る必要があることを認識することができる。
なお、操作表示部70で第1紙幣集積部30、第2紙幣集積部40及びリジェクト部50に関する情報の表示態様を変更することにより紙幣の抜き取りを促す報知処理と、第1紙幣集積部30、第2紙幣集積部40及びリジェクト部50で発光素子を点滅させることにより紙幣の抜き取りを促す報知処理とは、集積枚数が、バッチ枚数、集積上限枚数(フル又はニアフル枚数)等の所定枚数に達した場合の他、紙幣処理が完了した際にも行われる。
紙幣処理装置1では、紙幣処理を行っている途中でエラーが発生した場合に、戻し処理が行われる場合がある。戻し処理とは、エラーからの復旧後に、第1紙幣集積部30及び第2紙幣集積部40に集積されていた紙幣をエラー発生時の状態に戻すための処理である。
具体的には、エラーが発生して装置が停止すると、図7及び図8に示したように、装置内の搬送路を露出させて、搬送路に残留する全ての紙幣を取り除く。そして、紙幣処理装置1で紙幣処理を再開できる状態になると、装置内の搬送路から取り出した紙幣と、エラー発生時に第1紙幣集積部30及び第2紙幣集積部40に集積されていた紙幣とをホッパ20に載置して、戻し処理を開始する。紙幣処理装置1では、エラー発生時に第1紙幣集積部30及び第2紙幣集積部40のそれぞれに集積されていた紙幣に関する情報が保存されている。この情報を利用して、ホッパ20に載置された紙幣を第1紙幣集積部30及び第2紙幣集積部40に分類して集積することによりエラー発生時の集積状態を再現する。
図22は、戻し処理の実行時に操作表示部70に表示される画面例を示す図である。例えば、エラー発生時に、第2紙幣集積部40に21枚の紙幣が集積されていた場合に、操作表示部70で戻し処理を開始する操作を行うと、画面上の第2表示領域202には、図22に示すように、第2紙幣集積部40に集積されていた紙幣枚数「21」が表示される。ただし、通常の紙幣処理時とは異なる表示態様で表示される。
具体的には、例えば、第2表示領域202の領域内部と外部との境界線を赤色の線で強調表示すると共に、領域内の文字を赤色で表示する。このように、通常の紙幣処理時には表示されない色で境界線を表示したり、異なる色で文字を表示したりすることにより、操作者は通常の紙幣処理ではないことを容易に認識することができる。
図22に示す画面表示の状態から戻し処理を開始して、第2紙幣集積部40へ順に紙幣が集積されると、これに伴って、第2表示領域202の枚数表示が1ずつカウントダウンされて、第2紙幣集積部40に集積された紙幣の枚数がエラー発生時の21枚に達した所で、枚数表示が「0」となる。戻し処理が完了すると、続いて、エラーによって中断していた紙幣処理が再開されて、第2表示領域202の表示が通常表示に戻る。そして、紙幣処理再開後に、第2紙幣集積部40に、22枚目となる次の紙幣が集積された所で、第2表示領域202の枚数表示が「0」から「22」に変化する。
このように、紙幣処理装置1では、実行中の紙幣処理に関する情報を、容易に認識できるように操作表示部70に表示するので、操作者は、操作表示部70の情報を確認しながら紙幣処理を容易に進めることができる。例えば、紙幣集積部30、40に集積された枚数だけでなく、バッチ枚数及びバッチ成立回数等を表示して、バッチ成立回数が所定回数に達した場合には、これが通知されるので、容易にバッチ処理を進めることができる。また、識別計数された紙幣に関する情報だけではなく、リジェクト紙幣に関する情報を表示することができるので、紙幣処理の完了時に、処理された紙幣の合計枚数に関する情報を認識することができる。
また、操作表示部70では、複数の紙幣集積部に関する情報が、操作表示部70を操作する操作者から見た各紙幣集積部の位置関係に合わせて、画面上の対応する位置に表示されるので、操作者は、画面上の情報がいずれの紙幣集積部に関する情報であるかを容易に認識することができる。
また、各紙幣集積部には発光素子が設けられており、例えば、紙幣集積部に集積された紙幣の枚数が所定枚数に達して紙幣の抜き取りが必要になったタイミングで、抜き取り作業が必要な紙幣集積部の発光素子が点滅するので、操作者は、紙幣の抜き取りが必要になったことや、抜き取りが必要な紙幣集積部の位置を容易に認識することができる。また、操作表示部70の画面上で紙幣の抜き取りが必要な紙幣集積部の情報を表示する表示領域の背景色と同じ色で、紙幣の抜き取りが必要な紙幣集積部の発光素子を発光させるので、画面上の情報と紙幣集積部との対応を容易に認識することができる。
[紙幣集積部の優先度設定]
紙幣処理装置1では、第1紙幣集積部30及び第2紙幣集積部40の優先度を設定することができる。例えば、識別部100によって識別された紙幣が、第1紙幣集積部30及び第2紙幣集積部40のいずれに集積してもよい紙幣である場合に、予め設定された優先度設定に基づいて紙幣の搬送先が決定される。
図23は、紙幣処理装置1に設けられた複数の紙幣集積部30、40の優先度設定を示す図である。このように、第1紙幣集積部30及び第2紙幣集積部40の優先度をパターンとして設定して保存しておくことにより、紙幣処理時にパターンを選択して優先度を設定することができる。なお、図23には示していないが、優先度の他に、金種、正損、新旧、真偽等の情報をパターンに登録することも可能となっている。
例えば、銀行の窓口で、ホッパ20及びリジェクト部50が設けられた装置右側面を窓口の外に居る顧客へ向けて紙幣処理装置1を設置する場合に、図23に示すパターン2を選択する。この結果、紙幣の搬送先として、顧客に近い位置にある第2紙幣集積部40が優先されるので、顧客は、紙幣が集積される様子を容易に確認することができる。また、例えば、紙幣処理装置1の操作者が左利きである場合には、図23に示すパターン1を選択して、第1紙幣集積部30を優先するように切り換えて紙幣処理を行うことで、操作者は、第1紙幣集積部30に集積された紙幣を、利き手である左手で抜き取ることが可能となる。
紙幣処理装置1が多数の紙幣集積部を有する場合には、紙幣集積部の優先度設定による顕著な効果を得ることができる。以下では、16個の紙幣集積部を有する紙幣処理装置で、優先度設定に基づいて、各紙幣集積部に集積する紙幣の種類を割り当てる例を説明する。
図24は、16個の紙幣集積部を有する紙幣処理装置の例を示している。装置前方側に紙幣を抜き取るための開口を有する16個の紙幣集積部があり、左端から4つの紙幣集積部の上側に、ホッパ、リジェクト部、操作表示部等が設けられている。
例えば、優先度設定に、1人の操作者が紙幣処理を行う1人作業用パターンを設定する。この1人作業用パターンで、紙幣集積部の位置が左側にあるほど優先度が高くなるように設定する。この結果、ホッパや操作表示部が設けられた装置左側の紙幣集積部が優先されるので、操作者は、ホッパへの紙幣の載置や操作表示部の操作を行いながら、紙幣集積部から紙幣を抜き取る際に、右端の紙幣集積部の所まで移動する必要がなく作業を容易に進めることができる。
優先度設定では、紙幣集積部の位置関係に基づいて優先度を設定する他、過去に処理された紙幣処理に係る情報に基づいて優先度を設定することも可能となっている。例えば、紙幣集積部の優先度設定を「左」、優先する紙幣集積部に割り当てる紙幣金種を「多」と設定することで、左側にある紙幣集積部ほど集積される紙幣の枚数が多くなるように、各紙幣集積部に集積する紙幣の金種が自動的に割り当てられる。なお、紙幣の金種と紙幣の集積枚数との関係は、過去に処理された紙幣の金種と処理枚数との情報に基づいて判定される。
例えば、1人作業用パターンの優先度設定を、処理枚数が多い金種ほど左側の紙幣集積部に集積されるように設定する。これにより、過去の紙幣処理で蓄積されたデータを元に、左端の紙幣集積部に、処理枚数が最も多かった金種が割り当てられる。また、左端から2番目の紙幣集積部に、処理枚数が2番目に多かった金種が割り当てられるというように、左の紙幣集積部から順に、処理枚数が多い金種が割り当てられてゆく。この結果、紙幣処理を行った際には、図25(A)に示すように、紙幣集積部が左側にあるほど集積される紙幣の枚数が多くなる。なお、図25は、16個の紙幣集積部のそれぞれに集積される紙幣枚数を示す模式図である。図25(A)は、紙幣集積部が左側にあるほど紙幣の集積枚数が多くなることを示している。
例えば、1人の操作者が、紙幣集積部から抜き出した紙幣を運搬用のカセットや袋等の搬送容器に詰める作業を行う場合には、搬送容器を装置左端近傍に置いて作業を行う。操作者は、ホッパへの紙幣の載置や操作表示部の操作を行いながら、紙幣集積部から紙幣を抜き取って搬送容器に詰める作業を行う。このとき、図25(A)に示すように、紙幣集積部が左側にあるほど紙幣の集積枚数が多くなるので、紙幣を抜き取るために右端の紙幣集積部まで移動する回数が最小限に抑えられる。また、搬送容器から離れるほど紙幣の集積枚数が少なくなるので、大量の紙幣を抜き取って搬送容器の所まで長い距離を運ぶ必要がなく操作者の作業負担を軽減することができる。
例えば、2人で作業を行って、1人がホッパに紙幣を載置する作業のみを行って、別の1人が紙幣集積部から紙幣を抜き取って搬送容器に詰める作業のみを行う場合には、2人作業用パターンの優先度設定を、処理枚数が多い金種ほど右側の紙幣集積部に集積されるように設定する。
この結果、右の紙幣集積部から順に処理枚数が多い金種が割り当てられて、紙幣処理時には、図25(B)に示すような集積状態になる。装置左側で、1人がホッパに紙幣を載置する作業を連続して行い、もう1人が装置右端近傍に搬送容器を置いて、各紙幣集積部から紙幣を抜き取って搬送容器に詰める作業を行うことにより、効率よく作業を進めることができる。
また、例えば、2人で作業を行って、1人がホッパに紙幣を載置する作業と紙幣集積部から紙幣を抜き取る作業の両方を行って、別の1人は紙幣集積部から紙幣を抜き取って搬送容器に詰める作業のみを行う場合には、2人作業用パターンの優先度設定を、紙幣集積部が左右の両外側にあるほど紙幣集積枚数が多くなるように設定する。
この結果、左右両外側の紙幣集積部から順に処理枚数が多い金種が割り当てられて、紙幣処理時には、図25(C)に示すような集積状態になる。搬送容器を、紙幣集積部の配列方向略中央に置いて、1人はホッパに紙幣を載置する作業を連続して行いながら紙幣集積部に集積された紙幣を抜き取って、搬送容器に詰める作業を行う。もう1人は略中央に置かれた搬送容器より右側で、各紙幣集積部から紙幣を抜き取って搬送容器に詰める作業を行う。作業時に2人が交差して移動することがなく、1人は紙幣集積部の配列方向中央から左側のみで作業して、1人は右側のみで作業するので、効率よく作業を進めることができる。また、2人が取り扱う紙幣枚数が近い値となるので1人の作業負担のみが大きくなることがない。
また、1人がホッパに紙幣を載置する作業と紙幣集積部から紙幣を抜き取る作業の両方を行って、別の1人は紙幣集積部から紙幣を抜き取って搬送容器に詰める作業のみを行う場合に、紙幣集積部を左側の8個の紙幣集積部のグループと、右側の8個の紙幣集積部のグループとに分けて、2人作業用パターンの優先度設定を、各グループで左側にあるほど紙幣集積枚数が多くなるように設定してもよい。
この結果、左右それぞれのグループで左側の紙幣集積部から順に処理枚数が多い金種が割り当てられて、紙幣処理時には、図25(D)に示すような集積状態になる。搬送容器を紙幣集積部の配列方向略中央に置いて、1人はホッパに紙幣を載置する作業を連続して行いながら紙幣集積部に集積された紙幣を抜き取って、搬送容器に詰める作業を行う。もう1人は略中央に置かれた搬送容器より右側で、各紙幣集積部から紙幣を抜き取って搬送容器に詰める作業を行うが、右側8個の紙幣集積部では、搬送容器が置かれた位置に近い紙幣集積部で紙幣の集積枚数が多くなるので、図25(C)に比べて、紙幣を抜き取って搬送容器に詰める作業が容易になる。
このように、紙幣処理装置1では、紙幣集積部の位置に基づく優先度設定と、処理対象となる紙幣の種類別の処理枚数に基づく優先度設定とを行うことにより、各紙幣集積部に紙幣の種類が適切に割り当てられて、操作者は紙幣処理に係る作業を容易に進めることが可能となる。紙幣集積部が多数ある場合に、予め設定された優先度設定に基づいて、各紙幣集積部に集積する紙幣の種類を自動的に割り当てることができるので、操作者は、各紙幣集積部に集積する紙幣の種類を検討して設定する操作を行う必要がなく、自動設定された設定で紙幣処理を行うだけで効率よく作業を行うことができる。
なお、本実施形態では、紙幣集積部内に発光素子を設けて、紙幣の抜き取り等、所定の作業が必要な紙幣集積部を光によって報知する態様を示したが、この他、優先度設定に基づいて紙幣が優先して集積される紙幣集積部の位置を発光素子の点灯や点滅によって報知することもできる。例えば、図1に示すように2つの紙幣集積部30、40がある場合に、紙幣処理を行うための操作を検知した制御部が、予め設定された優先度設定に基づいて、2つの紙幣集積部30、40のうち優先される紙幣集積部の発光素子を点灯したり点滅させたりすることで、操作者は優先される紙幣集積部の位置を認識することができる。そして、優先度を確認した操作者は、必要に応じて優先度設定を変更することができる。同様に、図24に示すように多数の紙幣集積部がある場合には、例えば、図25(A)に示した優先度設定の例では上部に示す番号が「1」の紙幣集積部の位置を報知し、同図(B)の例では番号「16」の紙幣集積部の位置を報知し、同図(C)の例では番号「1」及び「16」の紙幣集積部の位置を報知し、同図(D)の例では番号「1」及び「9」の紙幣集積部の位置を報知する。これにより、1人又は2人の操作者は、紙幣が優先して集積される紙幣集積部の位置を認識することができる。なお、優先される紙幣集積部の位置を報知する方法は、紙幣集積部に設けた発光素子を利用する他、各紙幣集積部に表示部を設けて優先度を示す番号を表示する態様であってもよいし、優先度を示す情報を操作表示部70に表示する態様であっても構わない。
上述したように、本実施形態によれば、紙幣処理の内容、識別された紙幣の金種、正損等の種類によって、この紙幣の集積先として選択可能な紙幣集積部が複数ある場合には、予め設定された優先度設定に基づいて、紙幣の集積先を決定することができる。これにより、例えば、顧客から見やすい位置にある紙幣集積部に優先して紙幣を集積することができる。
また、優先度の設定を変更することができるので、例えば、紙幣処理装置に対する操作者及び顧客の立ち位置、操作者の利き手、操作者の行う作業内容等に応じて優先度設定を変更することができる。また、優先して紙幣が集積される紙幣集積部の位置が報知されるので、操作者は、優先される紙幣集積部の位置を容易に認識して、必要に応じて優先度設定を変更することができる。
また、優先度の設定は、操作表示部70(設定部)によって行うことができる。具体的には、紙幣処理を行う前に操作表示部70で各紙幣集積部に集積する紙幣の種類を設定する際に、複数の紙幣集積部に対して同じ種類の紙幣が設定された場合には、図23に示す優先度設定が表示される優先度設定画面に切り替わる。操作表示部70を操作することにより、この優先度設定画面上で優先度設定を行うことができる。なお、優先度設定画面では、操作表示部70によってパターンを新規作成することも可能となっている。具体的には、図23に示す優先度設定が表示される画面上にさらに新規作成用のボタンが表示され、操作者がこの新規作成用ボタンを選択することにより、表示画面は、複数の紙幣集積部の中から任意の紙幣集積部を選択すると共に選択した各紙幣集積部に自由に優先度を設定することができる画面へと遷移する。操作者は、この画面上で紙幣集積部の選択及び優先度設定を行って新たなパターンを作成した後、このパターンをすぐに紙幣処理に適用することもできるし、紙幣処理には適用せずに作成したパターンを記憶部に保存することも可能となっている。こうして新たに作成されたパターンが記憶部に保存されると、既存のパターンに追加されるので、次に図23に示す優先度設定を呼び出した際には、画面上には、先に作成して保存したパターン3が追加された優先度設定が表示されることになる。そして、この画面上でパターン3を選択すれば、パターン3の優先度設定による紙幣処理を行うことが可能となる。
また、複数の紙幣集積部をグループに分けてグループ毎に優先度を設定する場合には、操作表示時部70によって、同じグループにしたい紙幣集積部を複数選択することにより、所望の紙幣集積部をグループ化することができる。具体的には、新規作成用ボタンを選択することにより、表示画面は、複数の紙幣集積部の中からグループ化したい任意の紙幣集積部を選択すると共に選択した各紙幣集積部に優先度を自由に設定することができる画面へと遷移する。操作者が、この画面上で、同じグループにしたい紙幣集積部を複数選択して、各紙幣集積部の優先度を設定した後、画面上に表示されるグループ確定ボタンを操作することにより、グループを作成することができる。なお、同じグループに属する紙幣集積部の選択が隣り合う紙幣集積部に限定されるものではなく、複数の紙幣集積部の中から紙幣集積部を自由に選択してグループ化することも可能である。さらに、各グループ内で紙幣集積部毎に優先度を設定する態様の他、グループ毎に優先度を設定することも可能である。この場合、紙幣処理時に紙幣を集積可能な複数の紙幣集積部がある場合には、これらの紙幣集積部が属するグループの優先度に基づく判定が行われた後、優先されるグループ内でさらに各紙幣集積部の優先度に基づく判定が行われて、紙幣の集積先が決定されることになる。
なお、優先度の設定方法は、上述した操作表示部70で行う態様に限定されるものではなく、装置に設けられた個別の操作部や外部端末を利用して設定する態様であっても構わない。具体的には、各紙幣集積部の近傍に個別の操作部を設け、優先度を設定する際には、各紙幣集積部に設けられた個別の操作部を操作して選択した順番に応じて優先度が設定される態様であってもよい。また、操作部として、紙幣処理装置と通信可能に接続されたPC(コンピュータ装置)やタブレット形端末等の外部端末を利用して、この外部端末を操作することにより優先度を設定する態様であってもよい。このような態様とすることにより、複数の紙幣集積部の中から紙幣集積部を選択すると共に選択した紙幣集積部に優先度を設定する操作を容易かつ自由に行うことができる。
ホッパ20には、紙幣短手を前面側(Y軸負方向側)、紙幣長手を搬送方向前方側(X軸負方向)に向けた紙幣を、積層状態で載置することができる。ホッパ20のステージ上に積層された紙幣は、一番下の紙幣から順に1枚ずつ装置内の搬送路上に繰り出される。搬送路上の各紙幣は紙幣長手を搬送方向前方として搬送される。ホッパ20には、積層状態で載置された紙幣を短手側(Y軸方向)から支持するガイド部材21が設けられている。ガイド部材21は透明の樹脂製で、ホッパ20に載置された紙幣を外側から確認できるようになっている。XZ面に対して対称な形状を有する2つのガイド部材21は、連動してY軸方向にスライド移動させることができる。紙幣の長手長さに応じて2つのガイド部材21の位置を調整することにより、ホッパ20の前後方向(Y軸方向)略中央に紙幣を載置して、搬送路の幅方向(Y軸方向)略中央に紙幣を繰り出せるようになっている。ホッパ20で紙幣が載置されるステージは、前後方向(Y軸方向)略中央部が左方向(X軸負方向)に窪んだ形状を有している。この窪みから、ホッパ20の下側にあるリジェクト部50の集積空間内が見えるようになっており(図2(B)参照)、ステージ上の全ての紙幣が装置内に繰り出された後、リジェクト部50に排出されたリジェクト紙幣の有無を容易に確認できるようになっている。
下部ユニット12の左右両外側には、前面側に開口を有する2つの紙幣集積部30、40が設けられている。ホッパ20から装置内に繰り出された紙幣は、装置内で識別部によって識別計数される。紙幣集積部30、40への集積対象であると識別された紙幣は、識別結果に応じて第1紙幣集積部30又は第2紙幣集積部40に集積される。第1紙幣集積部30で右上部から紙幣集積部内に排出された紙幣は、Y軸周りに反時計回りに回転する羽根車33によって紙幣集積部内の左側壁へ向けて送られる。左側壁は、その上部を左側、下部を右側とする形で傾斜している。羽根車33によって左側壁へ送られた紙幣は、傾斜した左側壁の壁面と紙幣面とが平行となるように積層され、傾斜した立位状態で集積される。同様に、第2紙幣集積部40で左上部から紙幣集積部内に排出された紙幣は、Y軸周りに時計回りに回転する羽根車43によって紙幣集積部内の右側壁へ送られる。右側壁は、その上部を右側、下部を左側とする形で傾斜している。羽根車43によって右側壁へ送られた紙幣は、傾斜した右側壁の壁面と紙幣面とが平行となるように積層され、傾斜した立位状態で集積される。すなわち、紙幣集積部の集積空間内に集積された紙幣は、短手を前方に向けて長手を底面に接した状態で、短手の下側よりも短手の上側を装置の外側方向とする傾斜した立位状態で集積される。なお、羽根車33、43は、第1紙幣集積部30及び第2紙幣集積部40の集積空間で紙幣を整列した状態で集積させるために回転する集積車である。
紙幣処理装置1では、ホッパ20及びリジェクト部50が設けられた右側面の背面側に、可搬型記憶媒体であるメモリカードを挿入するスロット、USBケーブルやLANケーブルを接続するポート、電源ケーブルを接続するインレット等を集中配置することにより、図2(B)に示すように、装置左側面及び背面と壁面との間に隙間を設けることなく紙幣処理装置1を設置することができる点に1つの特徴を有している。
なお、内側側壁部材131では、集積空間を形成する側壁部分の前端が、装置前面の窪み60より背面側にあり、この前端部でXZ面に平行な略三角形状の平面が形成されている(図10参照)。この前端部の平面から先の装置前面側の部分131aに、図1に示した開口右側面32が形成される。