JPWO2015111248A1 - 単位dna組成物の調製方法及びdna連結体の作製方法 - Google Patents

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Abstract

複数の単位DNAのモル数がより揃えられた単位DNA組成物の調製方法及びDNA連結体の作製方法を提供する。単位DNA組成物の調製方法は、付加配列が連結された複数の単位DNAを該単位DNAの種類毎に含む溶液を準備する工程と、各々の溶液の準備後、単位DNAに付加配列が連結された状態で、各々の溶液中の単位DNAの濃度を測定し、その結果に基づいて、各々の溶液を分取して、各々の溶液中の単位DNAのモル数を互いに同一に近づける工程と、を有する。DNA連結体の作製方法は、単位DNA組成物を調製する工程と、ベクターDNAを準備する工程と、調製後の溶液中の付加配列が連結された単位DNAから制限酵素を用いて各々の付加配列を除去する工程と、除去工程後、ベクターDNA及び各々の単位DNAを互いに連結する工程とを有する。

Description

本発明は、単位DNA組成物の調製方法及びDNA連結体の作製方法に関する。
近年、ゲノムレベルの長鎖DNAの構築等を目的とする、DNA合成技術の開発が盛んに行われている。DNAの合成技術としては、化学合成DNAやPCR法により増幅した単位DNAを集積する技術が知られている。しかし、化学合成DNAの合成過程や、PCR法においては、合成されたDNAにランダムに変異が導入されることが知られている。そのため、遺伝子集積においては、最終段階までのいずれかの段階で必ずDNAの配列を確認し、望ましい配列のものを選択する過程が必要となる。
塩基配列の確認のためには、通常、サンガー法を用いた自動蛍光シーケンサーによって塩基配列決定をするが、この方法によると、1回の塩基配列決定で連続800塩基程度の長さ塩基配列を確認することが可能である。化学合成やPCR法により合成した単位DNAを遺伝子集積前に塩基配列に確認する場合、塩基配列決定の回数が少なければ、時間的、金銭的コストを削減できることになる。そのため、遺伝子集積に用いる化学合成やPCR法により合成した単位DNAは、短い方が好ましい。
しかしながら、遺伝子集積に用いる単位DNAが短いと、多くの単位DNAを集積する必要がある。
現在、複数の単位DNAを集積する方法の1つとして、枯草菌のプラスミド形質転換系を利用した遺伝子集積法(OGAB法)が知られている。例えば、特許文献1には、OGAB法を用いた枯草菌細胞形質転換用プラスミドDNAの作製方法が開示されている。
OGAB法では、プラスミド分子間で相同組み換えすることにより1つのDNA分子中に複数のプラスミドの単位が存在する、いわゆるマルチマープラスミドを用いる。OGAB法によると、形質転換用のDNA分子は、環状のDNAである必要はなく、同じ方向にプラスミドの1単位と、集積に用いる各単位DNAとが繰り返し現れるようにタンデムリピート状になっていれば、プラスミドの形質転換は可能である。
OGAB法では、上記のとおり、タンデムリピート状にライゲーションされたDNA分子を調製する必要があるため、複数の単位DNAを使用する場合、これらとプラスミドとを連結する必要がある。しかし、単位DNAの種類が多くなるほど、これらを連結してタンデムリピートを作製するのが困難になり、多数の単位DNAを連結させるためには、ライゲーション時の各単位DNAのモル比を1に近づけることが望ましい。
特許第4479199号公報
しかしながら、現実に各単位DNAのモル数を精密に制御することは困難である。これは、SYBRGeenI等の蛍光の二本鎖DNAインターカレーターを利用したDNA測定法では、測定時の蛍光物質の退色等により分子数を±20%程度の再現性でしか測定することができないことがその一因である。また、これらの測定方法は、DNAの単位体積当たりの重量を測定するものであるが、OGAB法では、単位体積あたりのモル数を基準に単位DNA量を算出するため、上記測定方法による測定値のDNAの重量からモル濃度への変換が必要となる。そのため、単位DNA分子の長さの分布が広い場合には、同じモル数のDNA分子であっても、重量が単位DNAの長さに比例し、特に重量の測定値が数倍以上異なる場合は、測定値に基づいて算出される値に大きな誤差が含まれる場合が多い。上記特許文献1の方法においても、各単位DNAのモル比が1となるように調整することが試みているが、各単位DNAの長さの分布が広いため、厳密にモル比を制御することができない。
本発明は以上の実情に鑑みてなされたものであり、複数の単位DNAのモル数がより揃えられた単位DNA組成物の調製方法及びDNA連結体の作製方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、各単位DNAのそれぞれに付加配列が連結した状態で、単位DNAのモル数を測定することによって、測定結果における誤差が少なくなることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明は、より具体的には以下のようなものを提供する。
(1)付加配列が連結された複数の単位DNAを該単位DNAの種類毎に含む溶液を準備する工程と、
前記各々の溶液の準備後、前記単位DNAに付加配列が連結された状態で、前記各々の溶液中の単位DNAの濃度を測定し、その結果に基づいて、前記各々の溶液を分取して、各々の溶液中の単位DNAのモル数を互いに同一に近づける工程と、を有する単位DNA組成物の調製方法。
(2)前記付加配列が連結された単位DNAが環状構造を有し、前記付加配列が複製開始点を有するプラスミドDNA配列である(1)記載の単位DNA組成物の調製方法。
(3)前記単位DNAの各々の塩基長と、各々の単位DNAに連結された付加配列の塩基長との合計長さの分布の標準偏差が、平均の前記合計長さに対して±20%以内である(1)又は(2)記載の単位DNA組成物の調製方法。
(4)前記各々の単位DNAに連結された付加配列の平均塩基長が、前記単位DNAの平均塩基長の2倍以上である、(1)から(3)いずれか記載の単位DNA組成物の調製方法。
(5)前記単位DNAの各々の長さが1600bp以下である(1)から(4)いずれか記載の単位DNA組成物の調製方法。
(6)前記単位DNAは、該単位DNAによって構成される集積DNAを含むDNA連結体を作製するために用いられるものであり、
前記単位DNAを含む溶液を準備する工程は、前記集積DNAの配列の塩基長を前記単位DNAの種類の数で割った場合に各々の塩基長が等しくなるように、前記集積DNAを等分した位置にある配列近傍の非回文配列を境界として、端部に非回文配列を有する前記単位DNAを設計する工程を含む、(1)から(5)いずれか記載の単位DNA組成物の調製方法。
(7)宿主微生物中で有効な複製開始点を含むベクターDNAと集積DNAとからなる集積DNAユニットを、1を超えて含む微生物細胞形質転換用DNA連結体の作製方法であって、
(1)から(6)いずれかに記載の方法によって、単位DNA組成物を調製する工程と、
前記ベクターDNAを準備する工程と、
調製後の前記溶液中の付加配列が連結された単位DNAから制限酵素を用いて各々の付加配列を除去する工程と、
前記除去工程後、前記ベクターDNA及び前記各々の単位DNAを互いに連結する工程と、を有し、
前記ベクターDNA及び前記各々の単位DNAは互いに順序を保ったまま繰り返し連結し得る構造を有し、
前記集積DNAは、前記各々の単位DNAが互いに連結したDNAからなる、DNA連結体の作製方法。
(8)集積ユニットを構成する単位DNAの数と集積ユニットの数との積で表される標的連結数のDNA断片の収率と、該DNA断片の濃度の変動係数との関係式に基づいて、前記連結工程における前記ベクターDNA及び前記各々の単位DNAの濃度の変動係数を調節する工程を含む、(7)記載のDNA連結体の作製方法。
(9)前記制限酵素は、タイプII制限酵素である(7)又は(8)記載のDNA連結体の作製方法。
(10)前記除去工程の前に、調製後の単位DNAを含む溶液のうち、2種以上の単位DNAを含む溶液を混合する工程を更に有する、(7)から(9)いずれかに記載のDNA連結体の作製方法。
(11)前記除去工程後、前記連結工程の前に、前記制限酵素を失活させる工程を更に有する、(7)から(10)いずれかに記載のDNA連結体の作製方法。
(12)前記微生物が枯草菌である(7)から(11)いずれか記載のDNA連結体の作製方法。
本発明によれば、複数の単位DNAのモル数がより揃えられた単位DNA組成物の調製方法及びDNA連結体の作製方法を提供することができる。
本発明の一実施例に係るベクターDNAを示す図である。 本発明の実施例1における単位DNAのうち、第10断片の同義語コドン変異体の構造を示す図である。 本発明の実施例1における単位DNAのうち、第01断片又は第21断片を含む粗プラスミドと、該粗プラスミドの精製後の高純度プラスミドの制限酵素処理後の電気泳動の写真を示す図である。 本発明の実施例1における精製後の単位DNAを含むプラスミドのうち、BbsIで処理するグループと、AarIで処理するグループと、BsmBIで処理するグループについて、それぞれの制限酵素により一括で処理した後の電気泳動の写真を示す図である。 本発明の実施例1における精製後の単位DNAを含むプラスミドのうち、BbsIで処理するグループと、AarIで処理するグループと、BsmBIで処理するグループについて、それぞれの制限酵素により一括で制限酵素処理し、各グループを統合した後の電気泳動の写真を示す図である。 本発明の実施例1における単位DNAを含むプラスミドのうち、BbsIで処理するグループと、AarIで処理するグループと、BsmBIで処理するグループについて、それぞれの制限酵素により一括で処理し、各グループを統合した後の、サイズ分画前後の、各単位DNAの分子数の分布を示す図である。 本発明の実施例1における単位DNAを含むプラスミドのうち、BbsIで処理するグループと、AarIで処理するグループと、BsmBIで処理するグループについて、それぞれの制限酵素により一括で処理し、各グループを統合した後の、サイズ分画前後の、各単位DNAの分子数の変化率を示す図である。 本発明の実施例1における、単位DNAとベクターDNAとをライゲーションした後の電気泳動の写真を示す図である。 本発明の実施例1における、単位DNAとベクターDNAとをライゲーションした後のDNA連結体を枯草菌に形質転換した後に、該形質転換後の複数の枯草菌からプラスミドを抽出し、該プラスミドを制限酵素処理した後の電気泳動の写真を示す図である。 本発明の実施例1における、形質転換後の複数の枯草菌からプラスミドを抽出し、該プラスミドを制限酵素処理した後の電気泳動の写真の結果から、目的とする集積DNAを含む枯草菌のクローンを選別し、制限酵素処理を行った後の電気泳動の写真を示す図である。 本発明の実施例1における、選別された集積DNAがラムダファージDNAのプラークを形成したことを示す図である。 本発明の実施例1における、選別された集積DNAのゲノムと、野生型ラムダファージをAvaIで制限酵素処理を行った後の写真を示す図である。 本発明の実施例2における、精製後の単位DNAを含むプラスミドをAarIにより一括で制限酵素処理した後の電気泳動の写真を示す図である。 本発明の実施例2における、単位DNAとベクターDNAとをライゲーションした後の電気泳動の写真を示す図である。 本発明の実施例2における、単位DNAとベクターDNAとをライゲーションした後のDNA連結体を枯草菌に形質転換した後に、該形質転換後の複数の枯草菌からプラスミドを抽出し、該プラスミドを制限酵素処理した後の電気泳動の写真を示す図である。 本発明の実施例2における、形質転換後の複数の枯草菌からプラスミドを抽出し、該プラスミドを制限酵素処理した後の電気泳動の写真の結果から、目的とする集積DNAを含む枯草菌のクローンを選別し、制限酵素処理を行った後の電気泳動の写真を示す図である。 試験例1において用いた(A)〜(H)のDNAの電気泳動の写真を示す図である。 試験例1において用いた(A)〜(H)のDNAが形質転換された枯草菌コンピテントセルの形質転換体出現数を示すグラフである。 シミュレーション1の各遺伝子集積規模における、単位DNA断片濃度のバラつきCV(%)と、各単位DNA断片の相対量の関係を示すグラフである。(a)は、6断片集積についてのグラフを示し、(b)は、13断片集積についてのグラフを示し、(c)は26断片についてのグラフを示し、(d)は51断片集積についてのグラフを示す。 シミュレーション1の6断片集積において、CV=20%である場合における、N(1ライゲーション産物に含まれる単位DNAの数)と、ライゲーション産物分子数との関係を示すグラフである。 (a)は、シミュレーション1における指数分布曲線へのフィッティングから導き出した、単位DNA断片の濃度のバラつきCV(%)についてのλ関数のグラフであり、(b)は、仮想ライゲーション産物のN値の平均値から求めた、単位DNA断片の濃度のバラつきCV(%)についてのλ関数のグラフである。 シミュレーション1におけるλファージゲノム再構成の実験において得られた集積体のうち、#1、#2、#5、#7、#8、#9、#10、#11についてのミスライゲーションサイトを示す図である。 シミュレーション1における、λファージゲノムの再構成の実験におけるCV=6.6%の断片数のバラつきの単位DNA51断片のライゲーション産物についてのパルスフィールドゲル電気泳動の写真を示す図である。 シミュレーション1における、実際のライゲーションした効率と、ライゲーションシミュレーションによるライゲーション効率とを比較したグラフである。(a)は、ライゲーション可能数95%のシミュレーションと比較したグラフを、(b)は、ライゲーション可能数96%のシミュレーションと比較したグラフを、(c)は、ライゲーション可能数97%のシミュレーションと比較したグラフを、(d)は、ライゲーション可能数98%のシミュレーションと比較したグラフを、(e)は、ライゲーション可能数99%のシミュレーションと比較したグラフを、(f)は、ライゲーション可能数100%のシミュレーションと比較したグラフを、それぞれ示す。 一般式f(N)=0.0058CV(%)exp(−0.058CV(%)N)を用いて得られた、シミュレーション1の各遺伝子集積規模における、単位DNA濃度断片のバラつきCV(%)と、各単位DNA断片の相対量の関係を示すグラフである。 一般式f(N)=0.0058CV(%)exp(−0.0058CV(%)N)を用いて得られた、単位DNA断片の濃度のバラつきと1ライゲーション産物の平均単位DNA断片数との関係を示すグラフである。
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
<単位DNA組成物の調製方法>
本発明の単位DNA組成物の調製方法は、付加配列が連結された複数の単位DNAを該単位DNAの種類毎に含む溶液を準備する工程と、各々の溶液の準備後、単位DNAに付加配列が連結された状態で、各々の溶液中の単位DNAの濃度を測定し、その結果に基づいて、各々の溶液を分取して、各々の溶液中の単位DNAのモル数を互いに同一に近づける工程とを有する。本明細書において、「単位DNA」の種類は、それぞれの塩基配列毎に区別する。また、「単位DNA」には、制限酵素認識部位を付加したものと、付加していないもののいずれも含むものとする。
本発明においては、単位DNAを含む溶液において、それぞれの単位DNAの濃度を測定する際に、それぞれの単位DNAには、付加配列が連結されている。すると、付加配列が連結されている分、溶液の濃度の測定時においては塩基配列の長さの分布が小さくなる。そのため、測定結果に基づいて算出される各単位DNAのモル数の誤差が少なくなる。よって、この測定結果に基づいて各々の溶液を分取し、各々の溶液中の単位DNAのモル数を互いに同一となるように調整することによって、各々の溶液中のモル比を1に近づけやすい。なお、上記測定する「溶液中の単位DNAの濃度」とは、単位DNAのモル濃度を指す。溶液中の単位DNAのモル濃度を測定する方法は、特に限定されないが、例えば、溶液中の単位DNAの質量%を測定し、測定された溶液中の単位DNAの質量%の数値から、溶液中の単位DNAのモル濃度を算出してもよい。溶液中の単位DNAのモル濃度を測定する方法は、DNA重量濃度を±20%以内の正確さで測定可能な手段を用いて測定するのが好ましく、より具体的には、微量分光光度計による紫外線吸収スペクトルを用いるのが好ましい。
付加配列が連結された単位DNAを含む溶液を準備する工程は、特に限定されず、例えば、単位DNAを準備し、その後に付加配列を単位DNAに連結することによって行ってよい。
単位DNAの準備は、予め合成されたものを用いることにより行ってもよく、また、単位DNAを作製することによって行ってもよい。単位DNAは従来の公知の方法によって作製でき、例えば、ポリメラーゼチェインリアクション(PCR)や化学合成により作製することができる。また、単位DNAに制限酵素認識配列を付加する場合は、例えば、鋳型DNA上の塩基配列に各突出末端を生成する制限酵素認識配列を付加したプライマーを用い、PCRにより作製するか、あるいは、予め末端に任意の突出配列を生成するように制限酵素認識配列を組み込んで化学合成を行うことによって作製することができる。作製した単位DNAは、従来の公知の方法により塩基配列を確認することができ、例えば、単位DNAをプラスミドに組みこみ、サンガー法を用いた自動蛍光シーケンサーによって塩基配列決定をすることによって確認することができる。
付加配列は、特に限定されず、直鎖状DNAであってもよく、環状のプラスミドであってもよい。環状のプラスミドDNA配列を使用すると、付加配列が連結された単位DNAが環状構造を有するため、例えば、大腸菌等の宿主に形質転換することができる。
プラスミドDNAの種類は、特に限定されないが、形質転換した宿主中でプラスミドDNAを複製するためには、プラスミドDNA配列が複製開始点を有するのが好ましい。具体的には、大腸菌の高コピープラスミドベクターであるpUC19、又はその派生プラスミドが好ましい。また、付加配列が連結されたDNA間の長さの分布を小さくし、より単位DNAのモル数を互いに同一に近づけることができる点で、全ての単位DNAが同一種類のプラスミドベクターにクローニングされていることが好ましい。
単位DNAへの付加配列の連結は、例えば、DNAリガーゼを用いたライゲーションにより行ってもよく、プラスミドDNAに連結する場合は、TAクローニング法により行ってもよい。
単位DNAの各々の塩基長と、各々の単位DNAに連結された付加配列の塩基長との合計長さの分布の標準偏差は、特に限定されないが、少ない方が、溶液中のDNAの濃度の測定結果に基づいて算出される各単位DNAのモル数の誤差が少なくなるので、各々の溶液中の単位DNAのモル数を互いにより同一近づけることができる。具体的には、各々の単位DNAに連結された付加配列の塩基長との合計長さの分布の標準偏差は、平均の合計長さに対して±20%以内であるのが好ましく、±15%以内であるのがより好ましく、±10%以内であるのがより一層好ましく、±5%以内であるのが更に好ましく、±1%以内であるのがなお更に好ましく、±0.5%以内であるのが最も好ましい。
各々の単位DNAに連結された付加配列の平均塩基長は、特に限定されないが、単位DNAの平均塩基長と比較して長い方が、溶液中のDNAの濃度の測定結果に基づいて算出される各単位DNAのモル数の誤差が少なくなるので、各々の溶液中の単位DNAのモル数を互いにより同一近づけることができる。具体的には、各々の単位DNAに連結された付加配列の平均塩基長は、単位DNAの平均塩基長に対して、2倍以上であるのが好ましく、5倍以上であるのが更に好ましく、10倍以上であるのが更に好ましく、20倍以上であるのが最も好ましい。また、単位DNAに連結された付加配列の平均塩基長が長すぎると、付加配列が連結された単位DNAの操作を行いにくくなる。そのため、各々の単位DNAに連結された付加配列の平均塩基長は、単位DNAの平均塩基長に対して、10000倍以下(具体的には、5000倍以下、3000倍以下、1000倍以下、500以下、250以下、100倍以下等)等であるのが好ましい。
単位DNAの各々の長さは、特に限定されないが、単位DNAの塩基配列を確認する際に、塩基配列決定の回数が少ない方が、時間的、金銭的コストを削減できることになるのが好ましい。そのため、単位DNAの各々の長さは、短い方が好ましく、具体的には、1600bp以下であるのが好ましく、1200bp以下であるのが更に好ましい。特に、サンガー法を用いた自動蛍光シーケンサーによって塩基配列決定をする場合、1回の塩基配列決定で連続800塩基程度の長さ塩基配列を確認することが可能であるので、単位DNAの各々の長さは、800bp以下(具体的には、600bp以下、500bp以下、400bp以下、200bp以下、100bp以下等)であるのが最も好ましい。このように、単位DNAの各々の長さが短いと、これを後述するDNA連結体の作製に用いる場合、多数の単位DNAを必要とする。しかし、本発明の方法で調製した単位DNAを用いると、後述のとおり、多数の単位DNAの連結が可能である。また、単位DNAの各々の長さが短すぎると、単位DNA数が多くなり、作業効率が落ちる。そのため、単位DNAの各々の長さは、20bp以上であるのが好ましく、30bp以上であるのがより好ましく、50bp以上であるのが更に好ましい。
本発明の調製方法により、単位DNA組成物の用途は、特に限定されないが、本発明の方法により調製方法によって調製された単位DNA組成物は、該単位DNAによって構成される集積DNAを含むDNA連結体を作製するために用いることができる。本発明の方法により調製方法によって調製された単位DNA組成物を用い、後述の方法によりDNA連結体を作製した場合、多くの単位DNA(例えば50種以上)を連結することができる。これは、本発明の方法により調製方法によって調製された単位DNA組成物において、各々の単位DNAのモル数がより正確に同一に近いためであると考えられる。
本発明において、単位DNAを含む溶液を準備する工程は、単位DNAを設計する工程を含んでもよい。単位DNAの設計は、特に限定されないが、例えば、単位DNA組成物を、集積DNAを含むDNA連結体を作製するために用いる場合、集積DNAの配列の塩基長を単位DNAの種類の数で割った場合に各々の塩基長が等しくなるように、集積DNAを等分した位置にある配列近傍の非回文配列を境界として行ってもよい。このように単位DNAの設計を行った場合、それぞれの単位DNAの長さが略同一の長さとなる。そのため、後述のDNA連結体の作製に用いる場合、制限酵素により付加配列を除去した後の電気泳動後のサイズ分画において、略同一の位置のバンドとして現れるため、1回のサイズ分画で単位DNAを回収でき、作業効率が向上する点で好ましい。「集積DNAを等分した位置にある配列近傍」は、特に限定されないが、塩基配列の長さから適宜設定してもよい。例えば、各々の単位DNAの塩基長が1000bpである場合、「集積DNAを等分した位置」から、100bp以内(具体的には、90bp以内、80bp以内、70bp以内、60bp以内、50bp以内、30bp以内、20bp以内、10bp以内、5bp以内等)であってもよい。
また、上記のとおりに単位DNAの設計を行う場合、目的とする集積DNAを含むDNA連結体の作製を行う場合、単位DNAの端部に非回文配列(パリンドローム配列でない配列)を有するように設計するのが好ましい。このように設計された単位DNAは、その非回文配列を突出配列にした場合、後述の互いに順序を保ったまま繰り返し連結し得る構造となる。
<DNA連結体の作製方法>
本発明は、DNA連結体の作製方法も包含する。本発明のDNA連結体の作製方法は、上述の方法による、単位DNA組成物を調製する工程と、ベクターDNAを準備する工程と、調製後の溶液中の付加配列が連結された単位DNAから制限酵素を用いて各々の付加配列を除去する工程と、除去工程後、ベクターDNA及び各々の単位DNAを互いに連結する工程と、を有する。
DNA連結体は、集積DNAユニットを1を超えて含み、微生物細胞形質転換用である。集積DNAユニットは、ベクターDNAと集積DNAとからなる。DNA連結体の集積DNAユニット数は、1超であれば特に限定されないが、形質転換効率を上げるためには、好ましくは1.5以上であり、より好ましくは2以上であり、更に好ましくは3以上であり、最も好ましくは4以上である。
ベクターDNAは、形質転換の対象となる宿主微生物中で有効な複製開始点を含む。ベクターDNAは、DNA連結体が形質転換されうる微生物中で、DNAの複製を可能とする配列を有するものであれば、特に限定されず、例えば、後述するBacillus属細菌(枯草菌)中で有効な複製開始点の配列が挙げられる。枯草菌中で有効な複製開始点の配列は、特に限定されないが、例えば、θ型の複製機構を有するものとしては、pTB19(Imanaka,T., et al. J. Gen. Microbioi. 130, 1399−1408. (1984))やpLS32(Tanaka, T and Ogra, M. FEBS Lett. 422, 243−246. (1998))、pAMβ1(Swinfield, T. J., et al. Gene 87, 79−90. (1990))等のプラスミドに含まれる複製開始点等の配列が挙げられる。
集積DNAは、上述の各々の単位DNAが互いに連結したDNAからなる。本発明におけるDNAとは、クローニングの対象となるDNAであり、その種類や大きさは特に限定されない。具体的には、原核生物、真核生物、ウイルス等の天然由来配列、人工設計配列等であってよい。本発明の方法においては、上述のとおり、プラスミド上に多数の単位DNAを連結できるので、塩基長の長いDNAを用いるのが好ましい。塩基長の長いDNAとしては、例えば、一連の代謝経路を構成する遺伝子群や、ファージ等のゲノムDNA全体又はゲノムDNAの一部分等が挙げられる。
集積DNAユニットは、ベクターDNAや集積DNA以外にも、必要に応じて適当な塩基配列を含んでもよく、含まなくてもよい。例えば、集積DNAに含まれる遺伝子を発現するためのプラスミドを作製する場合、プロモーター、オペレーター、アクチベーター、ターミネーター等の転写翻訳を制御する塩基配列を含んでもよい。枯草菌を宿所とした場合のプロモーターとしては、具体的には、IPTG(isopropyl s−D−thiogalactopyranoside)で発現制御可能なPspac(Yansura, D. and Henner, D. J. Pro. Natl. Acad. Sci, USA 81, 439−443.(1984.))、あるいはPrプロモーター(Itaya, M. Biosci. Biotechnol. Biochem. 63, 602−604. (1999))等が挙げられる。
ベクターDNA及び各々の単位DNAは、互いに順序を保ったまま繰り返し連結し得る構造を有する。本明細書において、「互いにその順序を保ったまま連結する」とは、集積DNAユニット上で隣り合う配列を有する単位DNA又はベクターDNAとがその順序及び向きを保って結合することをいう。また、「繰り返し連結する」とは、5’末端の塩基配列を有する単位DNA又はベクターDNAの5’末端と、3’末端の塩基配列を有する単位DNA又はベクターDNAの3’末端が結合することをいう。このような単位DNAとして、具体的には、例えば、断片の突出末端の塩基配列の相補性を利用して、お互いに順序を保ったまま繰り返し連結し得るような末端を有するものが挙げられる。この突出の構造は、非回分配列であれば、5’末端突出、3’末端突出の形状の違いも含めて、特に制限はない。
上記突出末端は、単位DNAから制限酵素を用いて各々の付加配列を除去する工程によって、作製されるのが好ましい。したがって、本発明の方法によりDNA連結体を作製する場合、単位DNAは、該制限酵素によって付加配列を除去するために、制限酵素認識配列を有するのが好ましい。ベクターDNAの準備は、例えば、ベクターDNAが、単位DNAとお互いに順序を保ったまま繰り返し連結するための突出末端を設けるように、制限酵素処理を行うことよってすることができる。
上述の付加配列の除去に用いる制限酵素は、特に限定されないが、好ましくはタイプII制限酵素、より好ましくはAarI、BbsI、BbvI、BcoDI、BfuAI、BsaI、BsaXI、BsmAI、BsmBI、BsmFI、BspMI、BspQI、BtgZI、FokI、SfaNI等の、認識配列の外側の定まった長さ離れた場所に任意の配列の突出末端を作製可能であるタイプIIS制限酵素である。タイプIIS制限酵素を用いると、単位DNAの突出末端が各連結部位で異なるものにできるため、その連結する順序が保たれる。また、ベクターDNAの準備においても、単位DNAの準備と同様に、単位DNAとお互いに順序を保ったまま繰り返し連結するための突出末端を設けるように、タイプIIS制限酵素を用いて準備するのが好ましい。
各単位DNAについて、付加配列の除去に使用する制限酵素の種類毎にグループに分類した場合、除去工程の前に、各グループ毎に、2種以上の単位DNAを含む溶液を混合することができる。これにより、単位DNA毎に制限酵素処理を行う必要がなく、制限酵素のグループ毎に一回で制限酵素処理ができ、更に、例えば電気泳動により単位DNAの分画を行う場合、一回の分画で単位DNAを回収可能であるので、作業の効率が向上する。また、複数の単位DNAのグループがある場合、グループ毎に分画を行い、単位DNAを回収した際に、グループ間で回収量に誤差が生じうるため、単位DNA間で揃えられたモル数に誤差が生じうる。そのため、付加配列の除去に使用する制限酵素の種類毎にグループに分類した場合、そのグループは少ない方が好ましく、すなわち、付加配列の除去に使用する制限酵素の種類は少ない方が好ましい。よって、使用する制限酵素の種類は、好ましくは5種以下であり、より好ましくは3種以下であり、最も好ましくは1種である。すなわち、使用する制限酵素が一種であれば、全ての単位DNAを含む溶液を混合することができるので、作業の効率が飛躍的に向上し、更に、単位DNA間で揃えられたモル数に誤差が生じにくい。なお、制限酵素は、略等モルの状態で混合されるので、このように混合したものを用いても、多数の単位DNAが連結可能である。
単位DNAにタイプIIS制限酵素認識配列を付加する場合、各単位DNAが有する配列を認識しないように、単位DNAの制限酵素認識配列の設計を行う。すなわち、あるタイプIIS制限酵素を用いようとした場合、そのタイプIIS制限酵素が一方の単位DNAの配列を認識しなくても、他方の単位DNAの配列を認識する場合、該他方の単位DNAについてはそのタイプIIS制限酵素とは異なるタイプIIS制限酵素を使用するように、それぞれの単位DNAの制限酵素認識配列の設計を行う。このように設計した場合、単位DNA毎に使用するタイプIIS制限酵素が異なるが、このタイプIIS制限酵素の種類によって、単位DNAを上記グループの分類に使用できる。各単位DNAのいずれの配列も認識しないタイプIIS制限酵素があれば、その制限酵素認識配列を付加して単位DNAを設計することにより、1つのタイプIIS制限酵素によってまとめて単位DNAから付加配列を除去できる。
ベクターDNA及び各々の単位DNAを互いに連結する工程は、特に限定されないが、制限酵素処理を行った後に、制限酵素処理後の付加配列と単位DNAとを分画し、分画した単位DNAとベクターDNAとDNAリガーゼ等を用いて連結(ライゲーション)することにより行うことができる。これにより、微生物形質転換用DNA連結体を作製することができる。なお、連結工程における単位DNAは、制限酵素認識配列が付加されていないものである。
付加配列と単位DNAとの分画法は、特に限定されないが、制限酵素処理後の各単位DNAのモル比率の関係が崩れない方法であるのが好ましく、具体的には、アガロースゲル電気泳動によるのが好ましい。
単位DNAとベクターDNAとの連結方法は、特に限定されないが、ポリエチレングリコールと塩の存在下で行うことが好ましい。塩としては、より好ましくは、1価のアルカリ金属の塩である。より具体的には、10%のポリエチレングリコール6000と250mMの塩化ナトリウムを含むライゲーション反応液で行うのが更に好ましい。また、各単位DNAのライゲーション反応液中の濃度は、特に限定されない、好ましくは、各々1fmol/μl以上の濃度であるのが好ましい。ライゲーションの反応温度、時間は、特に限定されないが、好ましくは、37℃で30分以上である。なお、ライゲーション反応液中のベクターDNAは、反応前にベクターDNAを含む溶液のDNA濃度を測定し、単位DNAと等モルになるように調整するのが好ましい。
本発明に係るDNA連結体の調製方法は、集積ユニットを構成する単位DNAの数と集積ユニットの数との積で表される標的連結数のDNA断片の収率と、該DNA断片の濃度の変動係数(以下、本明細書において「変動係数1」という)との関係式(以下、本明細書において「関係式」という)に基づいて、連結工程におけるベクターDNA及び各々の単位DNAの濃度の変動係数(以下、本明細書において「変動係数2」という)を調節する工程を含んでもよく、含まなくてもよいが、含むことが好ましい。なお、変動係数1は、関係式において便宜的に使用される変動係数であり、変動係数2は、実際の連結工程における単位DNA及びベクターDNAの濃度の変動係数である。この調節工程を含むことにより、連結工程において、所望の数の単位DNAの数(例えば、50断片数の単位DNA)を連結させることを試みる場合に、変動係数2を、上記関係式が示す範囲に調節することで、その連結を達成することができる。
標的連結数は、連結工程において連結させたい所望のDNA断片の数を指し、より具体的には、連結集積ユニットを構成する単位DNAの数と集積ユニットの数との積で表される。「標的連結数のDNA断片の収率」とは、連結に使用されるDNAの全断片数に対する、連結後の集積DNAユニットを構成するDNAの断片数の割合を意味する。
本発明に係る関係式は、標的連結数のDNA断片の収率と変動係数1との関係を示した式であり、例えば、コンピュータによるライゲーションシミュレーションから求めた式を使用することができる。より具体的には、関係式は、例えば変動係数1を0〜20%の1%毎に変化させた単位DNA断片集団(例えば、10〜30集団)において、ライゲーションシミュレーションを行い、DNA連結体の単位DNA断片数の分布(例えば、指数分布)を調べ、この分布に対するフィッティングカーブを作製し、そのフィッティングカーブを用いて、設定することができる。具体的なライゲーションシミュレーションに用いるツールとしては、特に限定されず、従来の公知の手段を用いることができるが、例えば、表計算ソフトExcel(登録商標)2007のVBA(Visual Basic for Applications)を用いることができ、これを用いてプロミングを行い、所要のアルゴリズムを設定することによって、シミュレーションを行うことができる。また、フィッテイングカーブは、例えば表計算ソフトExcel(登録商標)2007ソフトウェアの指数近似曲線機能により作製することができる。関係式に基づく変動係数2の調整は、例えば、関係式を設計した後、所望のDNA断片の収率を関係式に代入し、連結時のDNA断片が算出された変動係数1になるように、連結前の各工程における操作を調整することによって行うことができる。その調整方法は、特に限定されないが、例えば、ベクターDNAを準備する工程、単位DNAを調製する工程、ベクターDNA及び各々の単位DNAを互いに連結する工程等の各工程において、ベクターDNA又は各単位DNAの濃度を測定する場合、その測定に使用する測定機器(分光光度計、分光蛍光光度計、リアルタイムPCR装置等)を選択する際に、変動係数2が所望の変動係数となるように、予め測定誤差が判明している測定機器を選択してもよい。
変動係数2は、特に限定されないが、連結される際の単位DNAの濃度の誤差が少ない方が、より多くの単位DNAを連結することができる。このことから、変動係数2は、20%以下であることが好ましく、15%以下であることがより好ましく、10%以下であることが更に好ましく、8%以下であることがより一層好ましく、5%以下であることが最も好ましい。
本発明のDNA連結体の調製方法は、除去工程後、連結工程の前に、制限酵素を失活させる工程を更に有してもよい。単位DNA内部に、他の単位DNAの付加配列の切り離しに用いる制限酵素切断部位が存在すると、制限酵素失活前においては、付加配列を持つ単位DNA集団を混合することが困難な関係にある。そのため、これらを統合することで一括して単位DNAの分画をすることができない。しかし、制限酵素を失活させることにより、失活後に、付加配列を持つ単位DNA集団を統合することが可能であるため、一括して単位DNAの分画が可能である。これにより、連結工程の際に、より多くの集積DNAユニット含むDNA連結体を作製しやすくなり、結果として、枯草菌の形質転換を行いやすくなる。制限酵素の失活は、従来の公知の方法に行うことができ、例えば、フェノール・クロロフォルム処理により行うことができる。
形質転換の対象となる宿主微生物としては、自然形質転換能を有するものであれば、特に限定されない。自然形質転換能としては、例えば、DNAを取り込む際に一本鎖DNAに処理して取り込むもの等が挙げられる。具体的には、Bacillus属細菌、Streptococcus属細菌、Haemophilus属細菌、及びNeisseria属等が挙げられる。また、Bacillus属細菌としては、B.subtilis(枯草菌)、B.megaterium(巨大菌)、B.stearothermophilus(中度高熱菌)等が挙げられる。このうち最も好ましい微生物としては、自然形質転換能及び組換え能に優れた枯草菌が挙げられる。
本発明の方法により作製したDNA連結体は、微生物細胞の形質転換に使用することができるが、形質転換の対象とする微生物をコンピテントとする方法は、それぞれの微生物に適した公知の方法を選択することができる。具体的には、例えば、枯草菌の場合には、Anagnostopoulou, C. and Spizizen, J. J. Bacteriol., 81, 741−746(1961)に記載の方法を用いることが好ましい。また、形質転換の方法もそれぞれの微生物に適した公知の方法を用いることができる。コンピテント細胞に与えるライゲーション産物の液量も特に制限はない。好ましくは、コンピテント細胞培養液に対し、1/20の量から等量であり、より好ましくは、半量である。形質転換体からプラスミドを精製する方法としても公知の方法を用いることができる。
形質転換体から精製したプラスミドが集積DNAを有していることは、制限酵素切断により発生する断片のサイズパターンや、PCR法、塩基配列決定法により確認することができる。また、挿入DNAが物質生産等の機能を有する場合は、その機能を検出することにより確認することが可能である。
以下に示す実施例により、本発明を更に具体的に説明するが、以下の実施例は本発明の一例を示すものに過ぎず、本発明の範囲は以下の実施例に限定されるものではない。
(材料)
形質転換の対象となる微生物細胞として枯草菌を使用した。枯草菌としては、RM125株(Uozumi, T., et al. Moi. Gen. Genet., 152, 65−69(1977))と、その派生株のBUSY9797株を用いた。枯草菌で複製可能なベクターDNAとして、pGET118(Kaneko, S., et al. Nucleic Acids Res. 31, e112 (2003))を用い、後述のとおりに構築したpGETS118−AarI−pBR(配列番号1を参照)、pGETS151−pBR(配列番号2を参照)を使用した。集積DNAとしては、ラムダファージDNA(東洋紡社製)(配列番号3を参照)と、後述するメバロン酸経路人工オペロン(配列番号4を参照)を用いた。単位DNAを組み込んだプラスミドDNAを有する大腸菌の選択には、抗生物質カルベニシリン(和光純薬工業社)を用いた。枯草菌の選択には、抗生物質テトラサイクリン(シグマ社)を用いた。タイプIIS制限酵素は、AarI(Thermo社)、BbsI(NEB社)、BsmBI(NEB社)、SfiI(NEB社)を用いた。制限酵素HindIII、PvuII、T4 DNA Ligaseは、タカラバイオ社製のものを使用した。大腸菌のプラスミド構築用の一般的なライゲーションには、Takara Ligation Kit (Mighty)(タカラバイオ社)を用いた。単位DNA調製用のPCR反応には、東洋紡社製のKOD plus polymeraseを使用した。プラスミドにクローニングされたDNAの塩基配列決定のためのコロニーPCRには、タカラバイオ社製のEx−Taq HSを用いた。単位DNAを組み込む付加配列であるプラスミドDNAとしては、pMD−19(simple)(タカラバイオ社)を用いた。環状プラスミド精製用酵素Plasmid Safeは、EPICENTER社製のものを使用した。電気泳動用アガロースゲルは、DNA電気泳動用の低融点アガロースゲルである2−Hydroxyethyl agarose(シグマ社)、又はUltraPure Agarose(インビトロジェン社)を使用した。制限酵素の失活には、フェノール:クロロフォルム:イソアミルアルコール 25:24:1と、TE飽和フェノール(8−キノリノール含有)は、ナカライテスク社製のものを使用した。ラムダターミアーゼは、EPICENTER社製のものを使用した。ラムダファージのパッケージングには、アジレント・テクノロジーズ社のGigapack III Plus Packaging Extractを用いた。リゾチームは和光純薬工業社製のものを使用した。LB培地の培地成分及び寒天には、ベクトンディッキントン社製のものを使用した。IPTG(isopropyl s−D−thiogalactopyranoside)は、和光純薬工業社製のものを使用した。上記以外の他の全ての培地成分及び生化学試薬は、和光純薬工業社製のものを使用した。特記以外のプラスミドの構築には、大腸菌DH5α株、JM109株又はTOP10株のいずれかを使用した。構築したプラスミドの大腸菌からの少量精製には、キアゲン社のQIAprep Spin Miniprep Kitを用い、大量精製には、同社のQIAfilter Midi Kitを用いた。酵素反応液からのDNAのクリーンアップには、キアゲン社のMinElute Reaction Cleanup Kit、又はキアゲン社のQIAquick PCR purification Kitを用いた。通常のアガロースゲル電気泳動で分離して得られたゲルブロックを精製する場合は、キアゲン社のMinElute Gel Extraction Kitを用いた。超微量分光光度計は、Thermo社のnano−drop 2000を用いた。塩基配列決定には、アプライドバイオシステムズ社製の蛍光自動シーケンサーの3130xlジェネティックアナライザーを用いた。他の一般的なDNAの操作については、標準プロトコール(Sambrook, J., et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual. Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York (1989))にしたがって行った。枯草菌の形質転換とプラスミド抽出は、既法のとおり行った(Tsuge, K., et al., Nucleic Acids Res. 31, e133.(2003))。
(集積に用いたベクターDNAの構築)
ラムダファージDNAの集積に用いたベクターDNAであるpGETS118−AarI−pBR(配列番号1)は、大腸菌のF因子の複製開始点oriSと、枯草菌で機能する複製開始点repAを有する大腸菌―枯草菌間シャトルプラスミドベクターpGETS118(Kaneko, et. al., Nucleic Acids Res., 31,e112. (2003).)を元に多段階の過程を経て構築されたプラスミドであり、図1に示す構造である。集積遺伝子のクローニングサイトは、2つのAarI切断部位間となっており、集積の際に取り除くこの2つのAarI切断部位間には、大腸菌中でのベクターの取得を容易にする目的で大腸菌の多コピープラスミドのpBR322の複製開始点と、アンピシリン耐性遺伝子が導入されている。また、pGETS118内部のテトラサイクリン耐性遺伝子中に存在する天然のAarI切断部位については、テトラサイクリン耐性遺伝子(tetL)のアミノ酸配列に影響を与えないような1塩基の変異を導入することにより認識部位を消失させた。メバロン酸経路人工オペロンの集積に用いたベクターDNAであるpGETS151−pBR(配列番号2)は、上述のpGETS118−AarI−pBRのDNAを鋳型に、3組のプライマーPartA(5’−TAGGGTCTCAaagcggccgcaagctt−3’(配列番号5を参照)と5‘−TAGGGTCTCAGCggccaagaaggcc−3’(配列番号6を参照))、PartB(5’−TAGGGTCTCAccGCCCTTCCCGGTCGATAT−3’(配列番号7を参照)と5’−TAGGGTCTCAtaTTAGCTTAATTGTTATCCGCTCACAATTCC−3’(配列番号8を参照))、PartC(5’−TAGGGTCTCAAAtaactggaaaaaattagtgtctcatggttcg−3’(配列番号9を参照)と5’−TAGGGTCTCAgcttaagtggtgggtagttgacc−3’(配列番号10を参照))により増幅した断片を連結することにより作製したベクターDNAであり、元のプラスミドに比較して大腸菌中でしか機能しない遺伝子領域(cat〜oriS間、parA〜parC間)を除去している(図1)。このベクターDNAは、遺伝子を集積した際には、枯草菌中でしか複製できないが、遺伝子集積においては、pGETS118−AarI−pBRと同一の性質を示す。これらのプラスミド溶液約10μl(5μg相当)に、滅菌水29μl、制限酵素に付属する10×Buffer_for_AarIを5μlと、同じく制限酵素に付属する切断活性化用の50×Oligoncleotideを1μl、制限酵素AarI(Thermo社)5μlを添加し37℃で2時間反応を行った。得られた液体を、低融点アガロースゲル電気泳動により分離後、ベクター本体の約15kbの断片(pGETS118−AarI−pBRの場合)、又は4.3kbの断片(pGETS151−pBRの場合)をゲルから切り出し、目的のベクターDNAを精製し、20μlのTEに溶解した。ベクターDNAの濃度の測定は、このTE溶液1μlを取り、超微量分光光度計により測定することにより行った。
(単位DNA分割領域の設定)
4塩基の突出の多様性は、4の4乗で、256とおり存在する。これらのうち本発明に使用する突出配列を以下の基準で選定した。まず、パリンドロームとなる全16配列(グループ0)(AATT,ATAT,TATA,TTAA,CCGG,CGCG,GCGC,GGCC,ACGT,AGCT,TCGA,TGCA,CATG,CTAG,GATC,GTAC)は、これらの配列の相補配列も同一配列となり、同一種断片同士の連結が可能となるため、本発明では使用できない為除外した。残りの240配列については、一方の配列(例えば、CCTA)に対して、その相補配列(TAGG)を包含するため、DNA連結に使用可能な突出配列の組み合わせは理論上、240÷2=120組合せである。これらのうち、GC含量の違いとそのGC塩基の出現順序の違いから、以下の基準で突出組合せのグループ化を行った。
(グループI)突出がAとTのみからなる突出6組合せ(AAAA/TTTT,TAAA/TTTA,ATAA/TTAT,AATA/TATT,AAAT/ATTT,ATTA/TAAT)。
(グループII)AとTの合計が3個でCとGの合計が1個となる全32組合せ(CAAA/TTTG,ACAA/TTGT,AACA/TGTT,AAAC/GTTT,GAAA/TTTC,AGAA/TTCT,AAGA/TCTT,AAAG/CTTT,CAAT/ATTG,ACAT/ATGT,AACT/AGTT,AATC/GATT,GAAT/ATTC,AGAT/ATCT,AAGT/ACTT,AATG/CATT,CATA/TATG,ACTA/TAGT,ATCA/TGAT,ATAC/GTAT,GATA/TATC,AGTA/TACT,ATGA/TCAT,ATAG/CTAT,CTTA/TAAG,TCTA/TAGA,TTCA/TGAA,TTAC/GTAA,GTTA/TAAC,TGTA/TACA,TTGA/TCAA,TTAG/CTAA)。
(グループIII)AとTの合計が2つでCとGの合計が2つとなる全52組合せ中パリンドロームの8組合せを除く44組合せ(AACC/GGTT,AACG/CGTT,AAGC/GCTT,AAGG/CCTT,ACAC/GTGT,ACAG/CTGT,ACCA/TGGT,ACCT/AGGT,ACGA/TCGT,ACTC/GAGT,ACTG/CAGT,AGAC/GTCT,AGAG/CTCT,AGCA/TGCT,AGGA/TCCT,AGTC/GACT,AGTG/CACT,ATCC/GGAT,ATCG/CGAT,ATGC/GCAT,ATGG/CCAT,CAAC/GTTG,CAAG/CTTG,CACA/TGTG,CAGA/TCTG,CATC/GATG,CCAA/TTGG,CCTA/TAGG,CGAA/TTCG,CGTA/TACG,CTAC/GTAG,CTCA/TGAG,CTGA/TCAG,CTTC/GAAG,GAAC/GTTC,GACA/TGTC,GAGA/TCTC,GCAA/TTGC,GCTA/TAGC,GGAA/TTCC,GGTA/TACC,GTCA/TGAC,GTGA/TCAC,TCCA/TGGA)。
(グループIV)AとTの合計が1個でCとGの合計が3個となる全32組合せ中、CとGが3連続で並ばない全16組合せ(CACC/GGTG,CCAC/GTGG,CTCC/GGAG,CCTC/GAGG,CACG/CGTG,CCAG/CTGG,CTCG/CGAG,CCTG/CAGG,CAGC/GCTG,CGAC/GTCG,CTGC/GCAG,CGTC/GACG,GAGC/GCTC,GGAC/GTCC,GTGC/GCAC,GGTC/GACC)。
(グループV)AとTの合計が1個でCとGの合計が3個となる全32組合せ中、CとGが3連続する全16組合せ(ACCC/GGGT,CCCA/TGGG,TCCC/GGGA,CCCT/AGGG,ACCG/CGGT,CCGA/TCGG,TCCG/CGGA,CCGT/ACGG,ACGC/GCGT,CGCA/TGCG,TCGC/GCGA,CGCT/AGCG,AGGC/GCCT,GGCA/TGCC,TGGC/GCCA,GGCT/AGCC)。
(グループVI)突出がCとGのみからなる全6組合せ(CCCC/GGGG,GCCC/GGGC,CGCC/GGCG,CCGC/GCGG,CCCG/CGGG,CGGC/GCCG)。
以上に分割したグループの中から、実施例1及び2では、ベクターDNAと単位DNAとの境界をグループ1から選んだ。また、単位DNA間の境界は、グループIII(44組合せ)とグループIV(16組合せ)の合計60の突出組合せを候補に選定した。各突出組合せの指定は、集積対象の配列の完成塩基配列をまず決定してから、この全長を等分する理想分割境界を設定した。以下、実施例1で用いた塩基配列を具体例に挙げて説明する。
実施例1では、ラムダファージゲノム全長48502bpにcosサイト16bpと集積に必要な突出配列4bpを付加した48522bpを再構成の対象とした。以下の表1は、実施例1における集積DNAの理想分割単位、実際の分割単位及び突出塩基配列を示す表である。集積用プラスミドベクターを除く単位DNAを50個のほぼ同一のサイズに分割して準備し、これらを連結することで再構成を試みた。全50個の断片は、理想的には均等な長さになるように分割することが望ましいが、集積対象の配列に一切の塩基の変更を導入しないためには、元から存在する配列に依存して集積に用いる4塩基の5’末端突出を作製する必要がある。しかしながら、全ての理想的な分割境界上に上記記載の突出配列が過不足なく存在する可能性は0に等しく、理想的な分割境界で単位DNAを等分割することは不可能である。本実施例では、出来るだけ理想的な分割単位に近い長さとなるように、突出組合せの割り当てシミュレーションを行った。まず、全長(48522bp)を50で割って得られる970bpを理想分割単位とし、絶対塩基番号の小さい領域の単位DNAから第01断片、第02断片、第03断片、…、第50断片と命名した。この理想分割境界の絶対位置(すなわち、970と971塩基の間、1940と1941塩基の間、2910と2911塩基の間、…、47530と47531塩基の間)の位置からこの理想分割境界を中心に、4塩基、6塩基、8塩基、10塩基、12塩基、14塩基、16塩基、18塩基、20塩基、22塩基、24塩基と順次左右に1塩基ずつ拡大して、上記の突出候補となる4塩基配列の存在の有無を調べた。具体的な一例を挙げて説明する(表1)。第01断片と第02断片の理想分割境界は、970と971塩基の間である。この理想分割境界を中心とした16塩基(963塩基から988塩基までの塩基配列5‘−ATGCTGCTGGGTGTTT−3’)については、上記突出組合せ候補が7個(ACAC/GTGT,AGCA/TGCT,ATGC/GCAT,CACC/GGTG,CAGC/GCTG,CCAG/CTGG,CTGC/GCAG)存在する。この操作を指定した幅で抜き出した全49本の理想分割単位周辺の塩基配列に対して、その内部に最低1つでも突出候補の配列が存在するか否かを調べた。その結果、抜き出しの幅を24bpまで拡大すると全ての抜き出し塩基配列について最低1個は突出候補の4塩基が存在することが確認された。各配列に存在する突出候補からの特定の突出の選抜は、まず、上記のように突出組合せ候補の総数が少ない抜き出し配列から、全抜き出し配列中での出現頻度の低い突出組合せ配列から優先的に割り当てるようにすることで、全ての分割単位に対して唯一となる突出組合せを割り振った。
(実施例1、50の単位DNA及びベクターDNAの集積によるラムダファージの点突然変異体の作製)
<ラムダファージ>
ラムダファージは、大腸菌に感染するバクテリオファージで、分子生物学的に最も良く研究されているファージである。ゲノムは全長48502bpの二本鎖DNAからなり、全ての塩基配列が明らかになっている。また、様々な変異体の存在も明らかになっている。本実施例では、1kb程度の短い単位DNAからラムダファージ点突然変異体の作製を行うことを試みた。
<ラムダファージゲノムの分断化デザイン>
ラムダファージは、東洋紡社製のλphageDNAを使用した。本製品は、cosサイトで直鎖状になっている。ファージゲノムの全長の塩基配列を調べたところ、データベースに登録されている塩基配列(アクセッションナンバーJ02459.1)に対して6か所(g.138delG,g.14266_14267insG,g.37589C>T,g.37743C>T,g.43082G>A,g.45352G>A)が異なっていた(配列番号3)(配列番号3の全長は、上記48522pbに更にもう一方の突出末端4塩基を含む全長48526bp)。得られた塩基配列を用いて、全長48522bp(cosサイトの重複を含む)をほぼ均等の長さに分割するために、理想分割境界を970bp毎に設定し、上述の(単位DNA分割領域の設定方法)により行った結果、表1に示す切断部位の右側4塩基により構成される5’末端突出が単位DNA集団中でそれぞれ特異的になるように割り振ることができた。
<突出を生成する制限酵素の種類の選定>
4塩基の任意の突出配列を生成するタイプIIS制限酵素には、AarI(5’−CACCTGC(N)4/−3’,5’−/(N)8GCAGGTG−3’)、BbsI(5’−GAAGAC(N)2/−3’,5’−/(N)6GTCTTC−3’)、BbvI(5’−GCAGC(N)8/−3’,5’−/(N)12GCTGC−3’)、BcoDI(5’−GTCTCN/−3’,5’−/(N)5GAGAC−3’)、BfuAI(5’−ACCTGC(N)4/−3’,5’−/(N)8GCAGGT−3’)、BsaI(5’−GGTCTCN/−3’,5’−/(N)5GAGACC−3’)、BsmAI(BcoDIのイソジマー)、BsmBI(5’−CGTCTCN/−3’,5’−/(N)5GAGACG−3’)、BsmFI(5’−GGGAC(N)10/−3’,5’−/(N)14GTCCC−3’)、BspMI(BfuAIのイソジマー)、BtgZI(5’−GCGATG(N)10/−3’,5’−/(N)14CATCGC−3’)、FokI(5’−GGATG(N)9/−3’5’−/(N)13CATCC−5’)、SfaNI(5’−GCATC(N)9/−3’,5’−/(N)13GATGC−5’)等が挙げられる。これらの制限酵素のうち、遺伝子断片をサブクローニングするために使用する大腸菌プラスミドベクター(pMD19,Simple,TAKARA)に存在しないか、あるいは、存在しても発生する断片の大きさが理想分割単位よりも十分に大きい断片と十分に小さい断片とを発生させる制限酵素を調べたところ、全く切断サイトのないものが、5種類(AarI,BbsI,BfuAI,BsmFI,BtgZI)と、ベクター内部に認識配列が存在するが、理想分割単位よりも十分に大きい断片と十分に小さい断片とを発生させる制限酵素1種類(BsmBI)とが存在し、合計6種類の候補が存在した。これらの候補の制限酵素サイトについて、第01断片から第50断片のラムダファージ全体に対してその制限酵素サイトの分布を調べたところ、AarIは12か所、BbsIは24か所、BfuAIは41か所、BsmFIは38か所、BtgZIは45か所、BsmBIは14か所であり、いずれの制限酵素についても、ラムダファージゲノムに存在しない制限酵素認識部位はなかった。そこで、単位DNA毎に内部を切断しない制限酵素をそれぞれ選択して用いることにした。使用する制限酵素の種類を出来るだけ少なくするために制限酵素の組合せを検討したところ、BbsI、AarI、BsmBIの3種類のみの使用で十分であることを確認した。各単位DNAの切り出しに用いるタイプIIS制限酵素の割り振りは、以下のようになった。
BbsIで切断するグループは、第01〜08・12・16〜22・24・27・28・33〜39・43・45〜50断片の合計33断片、AarIで切断するグループは、第09〜11・13・23・25.30・32・44断片の合計9断片、BsmBIで切断するグループは、第14・15・26・29・31・40〜42断片の合計8断片とした。
<遺伝子断片のクローニング>
第01断片から第50断片までの全50断片については、PCR法を用いてラムダファージゲノム全長から増幅した。まず、上記で決定した突出組合せ間のDNA配列を増幅するためのプライマーの5’末端に上記で決定した制限酵素認識部位を望ましい突出を切り出す位置に付加し、更に5’末端にTAGの配列を付加したプライマーを使用した。これらのプライマー組を用いて、ラムダファージゲノム全長から指定領域のDNA断片を増幅した。PCRの反応条件は、1反応(50μl)につき、KOD Plus10×buffer Ver.25μl、25mM MgSO3μl、dNTP(2mM each)5μl、KOD Plus(1unit/μl)1μl、ラムダファージDNA(TOYOBO)48pg、プライマー(FプライマーとRプライマーのそれぞれ)15pmol、滅菌水を添加して作製し、GeneAmp PCR System 9700(Applied Biosystems社)により、以下のプログラムにより行った。
94℃で2minインキュベーション後、98℃で10s、55℃で30s、68℃で1minを1サイクルとしてこれを30サイクル行い、その後に68℃で7minインキュベートした。増幅した単位DNAは、2mg/mlのクリスタルバイオレッド(和光純薬工業社)を含む1×TAEバッファー(ナカライテスク社製の「トリス−酢酸−EDTA緩衝原液(50倍濃縮)pH8.3(at 25℃)」をmilliQ水で50倍に希釈して作製)で作製した1%アガロースゲル(UltraPure Agarose,Invitrogen社)で、電気泳動装置(i−MyRun.NC, コスモバイオ)を用いて印加電圧を100Vとし、10minの泳動時間により分離後、泳動ゲル中の目的のDNAのバンドをカミソリにより200mg程度のゲル断片として回収した。このゲル断片からConcert Rapid Gel Extraction System(ライフテクノロジーズ社)を用いて単位DNAを精製した。具体的には、ゲル断片にその重量の3倍容のL1 Bufferを添加して、45℃のプロックインキュベーターで10min程度溶解し、その溶液を付属のスピンカラムカートリッジ(2ml遠心チューブにスピンカラムを装着した物)に添加し、20,000×g、1min遠心してフロースルーを捨てた後、そのスピンカラムに750μlのL2 Bufferを添加して20,000×g、1min遠心してフロースルーを捨てた。スピンカラム中に残存しているL2 Buffer等の残渣をより確実に取り除く目的でカラムを再度20,000×g、1min遠心後、それまでに使用していた2ml遠心チューブを捨てて、新しい1.5ml遠心チューブにスピンカラムを移した。そのスピンカラムに30μlのTEバッファー(10mM Tris−HCl,1mM EDTA,pH8.0)を添加して2min放置後、20,000×g、1min遠心することで、DNA溶液を回収した。この回収DNAは、使用まで−20℃で保存した。得られた単位DNAは、以下に示すTAクローニング法により大腸菌プラスミドベクター中にクローニングした。
単位DNA溶液8μlに、TAKARA社のPCR反応用酵素Ex−Taqに付属する10×Ex−Taq Buffer 1μl、100mM dATP 0.5μl、Ex−Taq 0.5μlを添加して、65℃で10min恒温することで、単位DNAの3‘末端にAの突出を付加した。この単位DNA溶液1μlに、TAKARA社のpMD19−Simple 1μlと滅菌水3μlとを混合し、TAKATA Ligation(Mighty)Mix 5μlを加え、16℃で30min恒温した。このライゲーション溶液5μlを50μlの大腸菌DH5αのケミカルコンピテントセルに添加して、氷上で15min恒温後、42℃で30sec熱ショックを与え、2min氷上で放置後、LB培地を200μl添加して、37℃で1h恒温後、カルベニシリン(100μg/ml)と1.5%寒天とを含むLBプレートに塗抹し、37℃で終夜培養することによりプラスミドの形質転換体を得た。得られたコロニーを、PCR用鋳型DNA調製試薬(シカジーニアスDNA調製試薬、関東化学社)を用いて調製した。具体的には、試薬キット内の試薬aと試薬bとを1:10の比率で混合した溶液を2.5μl用意し、これにプレート上のコロニーをつまようじで少量採取したものを懸濁後、72℃、6min処理し、その後94℃で3min処理した。得られた液体に、TAKARA Ex−Taq用10×酵素2.5μl、2.5mM dNTP溶液 2μl、10pmol/μlのM13Fプライマー0.25μl、10pmol/μlのM13Rプライマー0.25μl、滅菌水17μl、Ex−TaqHS 0.5μlを添加して、94℃、5minインキュベーション後、98℃で20sec、55℃で30sec、72℃で1minを1サイクルとして、30サイクル行うことでDNAを増幅し、このPCR産物の塩基配列を調べることで、望ましい配列と完全に一致するかどうか調べた。最終的に全てのクローンから正しい配列が得られた。この過程で、第10断片について得られた変異体の1つに、遺伝子Vのコード領域内の同義語置換変異体(g.9515G>C)が存在した。この変異により、ファージゲノム中に制限酵素AvaI認識部位が新たに出現する(図2)。本実施例においては、構築したファージが人為的に作製されたものであることを明確に示す目的で、第10断片については、野生型ではなく、この同義語置換変異体(g.9515G>C)を用いることにした。
<単位DNAを有するプラスミドの高純度精製>
望ましい配列を有する第01〜50の断片をクローンするプラスミドを有する大腸菌形質転換体全50種類をそれぞれ50mlの100μg/mlのカルベニシリン入りLB培地において37℃、120spmで一晩終夜培養し、得られた菌体を、QIAfilter Plasmid Midi Kit(キアゲン社)を用い、精製した。得られた粗プラスミド溶液50μlに、5μlの3M酢酸カリウム−酢酸緩衝液(pH5.2)と、125μlのエタノールを添加して、20000×gで10min遠心し、DNAをエタノール沈殿させ、得られた沈殿を70%エタノールでリンスした後、残渣を取り除き、50μlのTE(pH8.0)に再溶解した。濃度測定のためにこの粗プラスミド溶液1μlをとり、超微量分光光度計(ND−2000、サーモ社)で、DNA濃度を測定した。この時点で粗プラスミド溶液のDNA量は、概ね0.5〜4μg/μlであった。測定値を参考に、各粗プラスミド溶液から、5μgのDNAを1.5mlチューブに採取し、これに全体積が50μlになるように滅菌水を添加した。これにPlasmid Safe(エピセンタ社)の10×反応バッファーを6μl、25mM ATP溶液を2.4μl、Plasmid Safe酵素溶液を2μl添加して混合し、プログラマブルブロックインキュベーターであるBI−526T(ASTEC社)により、37℃で1h恒温し、続いて酵素失活のために75℃、30min恒温した。得られた溶液を、PCR purification kit(キアゲン社)により精製した。本キット精製最終段階では、カラムに吸着したDNAをキット付属の溶出バッファーではなく、25μlのTEバッファー(pH8.0)により溶出することで、高純度プラスミド溶液を得た。精製前後の第01断片を有するプラスミドと、第21断片を有するプラスミドとを用いDNA電気泳動を行い(UltraPure Agarose、インビトロジェン社)、目的断片(単位DNA)が組み込まれていることを確認した(図3)。
<単位DNAを有するプラスミドの精密濃度調整と等モル統合>
得られたDNA溶液を再度、超微量分光光度計で測定することで、高純度プラスミド溶液の濃度を求めた。各サンプルの濃度は、理論上の最大値の200ng/μlに対して粗プラスミド溶液の精製度合を反映しておおよそ100ng/μl〜200ng/μlの範囲になった。測定結果に基づいて各プラスミド溶液15μlを1.5mlチューブにとり、それぞれの溶液に、それぞれのプラスミドが100ng/μlの濃度になるようにTEを添加し、得られた高純度プラスミド溶液を再度、超微量分光光度計で濃度を測定すると、目標値の100ng/μlに対して数パーセント程度の範囲でズレが存在したので、各高純度プラスミドについて、500ngのDNAの体積量を小数点以下2ケタのμlの精度で計算し、この体積量(約5μl)でそれぞれのDNA溶液を分取し、後の切り出しに用いる制限酵素の種類別(BbsIグループ、AarIグループ、BsmBIグループ)に、それぞれの単位DNAのモル数が略等モルになるように統合した。
<制限酵素による等モル統合プラスミドの一括切断>
統合した等モルプラスミド溶液の合計体積は、BbsIグループが約165μl、AarIグループが約45μl、BsmBIグループが約40μlとなった。各グループに2倍の滅菌水を添加して、それぞれ495、135、120μlの高純度プラスミド溶液を得て、制限酵素の種類毎に以下のように切断した。
BbsIグループは、10×NEBbuffer♯2を55μlと、制限酵素BbsI(NEB社)27.5μlを添加し、全約577μlを37℃で2h反応させた。AarIグループは、制限酵素に付属する10×Buffer_for_AarIを15μlと、同じく制限酵素に付属する切断活性化用の50×Oligoncleotideを3μl、制限酵素AarI(Thermo社)7.5μlを添加し、全約160μlを37℃で2h反応させた。BsmBIグループは、10×NEBBuffer♯3を13.3μlと、制限酵素BsmBI(NEB社)を6.3μl添加し、全約140μlを55℃で2h反応させた。2h経過後、各サンプルから等モルの関係を損なわないように、すなわち、BbsIグループからは33μl、AarIグループからは9μl、BsmBIグループからは8μlのプラスミド溶液を採取し、そのうちの5μlをDNA電気泳動により、各制限酵素でプラスミドが切断されていることを確認した(図4)。
<アガロースゲル電気泳動による50個の単位DNAの一括分画と精製>
確認後、各グループに等量のフェノール・クロロフォルム・イソアミルアルコール(25:24:1)(ナカライテスク社)を添加し、よく混合することで制限酵素を失活した。ここで各グループのフェノール・クロロフォルム・イソアミルアルコール(25:24:1)混合物を1つのチューブに統合したのち、遠心分離(20,000×g、10min)によりフェノール相と水相に分離し、水相(約900μl)を別の1.5mlチューブに回収した。ここに1−ブタノール(和光純薬工業社)を500μl添加し、よく混合し、遠心分離(20,000×g、1min)により分離し、水分を飽和した1−ブタノールを取り除くという操作を水相の体積が450μl以下になるまで繰り返すことで、水相の体積を減少させた。これに、3M酢酸カリウム−酢酸緩衝液(pH5.2)を50μlと、エタノール900μlを添加し、遠心分離(20,000×g、10min)することにより、DNAを沈殿させ、これを70%エタノールでリンスして、20μlのTEに溶解した。これに電気泳動用の10×Dyeを2μl添加し、その全量を0.7%の低融点アガロースゲル(2−Hydroxyethyl Agarose TypeVII,シグマ社)で、1×TAE(Tris−Acetate−EDTA Buffer)バッファー存在下で、汎用アガロースゲル電気泳動装置(i−MyRun.N 核酸用電気泳動システム、コスモバイオ社)で、35V(約2V/cm)の電圧を印加し、4h泳動することにより第01〜50断片とプラスミドベクターとを分離した(図5)。この電気泳動ゲルを、1μg/mlの臭化エチジウム(シグマ社)を含む1×TAEバッファー100mlで30min染色し、長波長の紫外線(366mn)で照らすことにより可視化することで、第01〜50断片がなすバンド(約1kb付近)をカミソリで切り出し、1.5mlチューブに回収した。回収した低融点アガロースゲル(約300mg程度)に、1×TAEバッファーを添加することにより全体積を約700μlとし、これを65℃で10min恒温することにより、ゲルを溶解した。得られたゲル溶液に、500μlの1−ブタノールを添加し、遠心分離(20,000×g、1min)により水相とブタノール相を分離し、水飽和ブタノールを捨てることを水相の体積が450μl以下になるまで繰り返した。得られた液体に、50μlの3M酢酸カリウム−酢酸緩衝液(pH5.2)と、900μlのエタノールを添加して、遠心分離(20,000×g、1min)によりDNAの沈殿を得て、これを70%エタノールでリンスした後に、20μlのTEに溶解した。そのうちの1μlを取り、超微量分光光度計で濃度を測定した。
サイズ分画前後の各グループのモル数を確認するために、定量PCRを行った。図6はサイズ分画前後の、各単位DNAの分子数の分布を示し、図7は、各単位DNAの分子数の変化率を示す。これにより、50個の断片が、略等モル比率であることと、モル比を損なわずに回収されていることが確認された。
<遺伝子集積>
第01〜50断片の等モル混合物のDNA重量濃度は、98ng/μlであり、合計塩基配列は48,522bpで、一方ベクターDNA(pGETS118−AarI/AarI)は、190ng/μlで全長は15,139bpである。この長さの重量の比率にしたがって、両DNAの等モル混合物を得るために、第01〜50断片の等モル混合物6.21μlに対して、ベクターDNAを1.00μlの比率で混合した。得られた等モル混合溶液7.2μlに2×ライゲーションバッファーを8.2μl添加し、全体を37℃で5min間恒温した後、1μlのT4DNAリガーゼ(Takara)を添加して、37℃で4h恒温した。その一部を取って電気泳動することにより、ライゲーションされていることを確認した(図8)。これを8μl新しいチューブに採取し、枯草菌コンピテントセルを100μl添加し、37℃で30minダックローターで回転培養した。その後、300μlのLB培地を添加して、37℃で1hダックローターで回転培養し、その後、培養液を10μg/mlのテトラサイクリン入りLBプレートに広げ、37℃で一晩培養した。コロニーは、250個得られた。
<形質転換体のプラスミド構造確認>
ランダムに12株のコロニーを選択して、2mlの10μg/mlのテトラサイクリン入りLB培地で一晩培養し、内部のプラスミドのコピー数を増幅するためにIPTGを終濃度1mMとなるように添加して更に37℃で3h培養した。得られた菌体からプラスミドを抽出して、制限酵素HindIIIとSfiIによるダブルダイジェスチョンし、電気泳動により確認したところ、12株中4株について望ましい切断パターンを示した(図9)。この4株については、塩化セシウムーエチジウムブロマイド密度勾配超遠心法によりプラスミドを大量調製し、プラスミドの構造を13種類の制限酵素を行った後、電気泳動により確認したところ、いずれも予想される断片と一致した(図10)。更に、本プラスミドのベクター部分を除く全領域について塩基配列決定したところ、4株のプラスミドとも予想塩基配列と完全に一致した。
<集積遺伝子の機能確認>
4株のプラスミドについて、ラムダファージとしての機能を確認するために、プラーク形成能の確認を以下のように行った。まず、♯3、♯4、♯6、♯12の各集積プラスミドをラムダターミアーゼ(Lambda terminase,Epicenter社)により切断することで、ベクターと集積遺伝子部分に分割し、これをラムダパッケージングエキストラクト(Gigapack III Plus Packaging Extract、アジレント・テクノロジー社)に添加した。これを大腸菌(VCS257株)に感染させて、LBプレートに広げ37℃で一晩培養したところ、プラークが確認された。得られたプラークの形状は、並行して行ったTOYOBO社製ラムダファージDNAで得られるものと同様の形態であることが確認された(図11)。各プラスミドから得られたプラークからファージDNAを精製し、制限酵素AvaIで切断することにより導入した変異が存在するかどうかを確認したところ、図12に示すようにTOYOBO社製ラムダファージDNAとは異なる切断パターンを示し、全てのファージに予定どおりAvaIサイトが存在していることを確認した。これにより、第01〜50断片の全50断片を集積して作製したラムダファージゲノムが塩基配列とプラーク形成能においてともに完全であることが確認された。
これらの結果より、ラムダファージDNAを構成する50の単位DNAと、ベクターDNA(pGETS118−AarI/AarI)との合計51のDNA断片を連結できたことが示された。
(実施例2、55の単位DNA及びベクターDNAの集積によるメバロン酸経路人工オペロンの構築)
イソプレンの単位を骨格として持つ物質のイソプレノイドには、多くの物質が知られているが、これらはイソペンテニル二リン酸(IPP)という共通の材料から合成される。解糖系からIPPに至る経路には2つの経路、すなわち、メバロン酸経路と非メバロン酸経路とが存在することが知られており、1つの生物の中に両経路を有する生物も存在するが、大腸菌には非メバロン酸経路しか存在しない。大腸菌のIPP生産能を増強する目的で、真核生物である酵母のメバロン酸経路の一部の遺伝子について、大腸菌のコドン使用頻度に適合した人工遺伝子の構築を、合成DNA断片から集積することにより作製することを試みた。
<人工メバロン酸オペロンの配列設計>
酵母のメバロン酸経路の前半部分となるアセチルCoA〜メバロン酸までの代謝経路に必要な3つの遺伝子(ERG10(1.2kb)、ERG13(1.5kb)、HMG1(3.2kb))を大腸菌のコドン使用頻度に基づいてコドンを変換した3つの人工遺伝子を並べた人工オペロン(5,951bp)(配列番号4)(ただし配列番号4の全長は、突出に用いる4塩基の配列を含む5,955pb)の作製を試みた。酵母遺伝子の大腸菌コドンへの変換は、酵母の同義語コドン中で、酵母全遺伝子中の出現頻度に順位を付け、同様に大腸菌の同義語コドン中で大腸菌全遺伝子中の出現頻度の順位を付け、同じ順位の者同士で変換することにより行った。
<単位DNAの設計>
同義語コドン変換を行った5,951bpのDNA配列について、実施例1と同様にこれを切断しない制限酵素サイトを検索したところ、制限酵素AarIの認識配列がなく、AarIでは切断されないことが判明したので、全てのクローンはAarIを利用して調製することにした。全長5,951bpを55個の断片に分割すると、平均108bpの断片となるので、この大きさを理想分割単位とし、この分割単位近傍で特定の配列(AとTの合計が2つでCとGの合計が2つとなる全52組合せ中パリンドロームの8組合せを除く44組合せ(前述のグループIII)と、AとTの合計が1個でCとGの合計が3個となる全32組合せ中、CとGが3連続しない全16組合せ(前述のグループIV)との合計60種類)のうち全ての理想分割単位でいずれか1種類の配列が出現するかどうかを調べたところ、理想分割単位から±7bpの範囲で何れか一種の特定配列が出現することが判明した。これを元に全長を55個の98〜115bpの断片に分割した。表2は、実施例2における集積DNAの分割単位及び突出塩基配列を示す表である。なお、メバロン酸遺伝子群と遺伝子集積ベクターの境界については、AとTからのみなる突出(ATTAとAAAA)を利用した。
<合成DNAによる単位DNAの作製>
分割して得られた各断片は、Rossiらの方法(Rossi, J.J., and Itakura, K. 1982. J. Biol. Chem. 257, 9226−9229(1982))により、80塩基の化学合成DNA2本により作製した。具体的には、2つの化学合成DNAが3’末端で数10bpがハイブリダイズするようにし、5’末端には、AarI切断部位よりも5’末端側に上記で設計した突出がAarI消化により出現するように認識部位を付加した。これらの2つの合成DNAのハイブリダイゼーションと続く鋳型依存的伸長反応の結果得られる二本鎖の単位DNAをPCR法により増幅するために、両末端のAarI認識部位にハイブリダイズするように作製したPCRプライマー1種類の計3種類のDNAを添加して、PCRの反応によりAarIの切断サイトに囲まれた単位DNAを得て、これをTAクローニング法により、大腸菌プラスミドベクターpMD19に連結し、大腸菌に形質転換することによりクローニングした。これをシーケンシングすることにより各断片について塩基配列の望ましいクローンを選択した。
<単位DNAを有するプラスミドの等モル混合>
得られた望ましいクローンを持つ大腸菌55株を培養し、Plasmid mini−prep(QIAGEN社)によりそれぞれから粗プラスミド溶液50μlを得た。これから各1μlを取り超微量分光光度計によりDNA濃度を測定したところ、82〜180ng/μlであった。概ね各5μgのプラスミドを取りPlasmid Safeにより処理し、酵素の熱失活後、Mini−elute PCR purification Kit(QIAGEN社)により精製して、25μlの高純度プラスミド溶液を得た。このうちの1μlを超微量分光光度計により濃度を測定したところ、108〜213ng/μlの濃度であった。ここから各々20μlの高純度プラスミド溶液を別のチューブに取り、このチューブに各プラスミドの濃度が計算上100ng/μlになるようにTEを添加して希釈した。この精製プラスミド溶液を再度微量分光光度計で濃度を算出し、この濃度に基づいて各高純度プラスミドの重量が500ngになる体積量を小数点以下2ケタのμlの精度で算出し、その体積量(約5μl)をそれぞれのプラスミド溶液から分取し、を一本のチューブにプールした。合計で約275μlの等モルプラスミド混合溶液に2倍溶の滅菌水と137.5μlの10×Buffer_for_AarIと、67.5μlの制限酵素AarIを添加して、37℃で一晩反応させた。
<55個の単位DNAの一括サイズ分画>
この反応液に等量のフェノール・クロロフォルム・イソアミルアルコール(25:24:1)を添加してAarIを失活させた後、遠心し、その上清をエタノール沈殿により精製して、沈殿を20μlのTEに溶解した。これに電気泳動用の色素としてキシレンシアノールを添加して、2.5%アガロースゲルでTAEをバッファーとして100Vで、30分間電気泳動することにより、ベクターDNAのpMD19とインサートの単位DNAとを分離した(図13)。泳動したゲルをカミソリで分割し、その一部をエチジウムブロマイドで染色し、目的の55個の等モル混合断片のバンドの位置を確認しながら、無染色のゲルから目的のDNAのバンドを切り出した。
<等モル単位DNA集団の精製>
得られたゲル断片からDNAの精製は、MiniElute Gel Extraction Kit(QIAGEN社)を用いて以下に示すように行った。
ゲルの体積を重量により測定後、その体積の15倍容のCG Bufferを添加して、50℃で10min恒温することによりゲルを溶解した。そこに、ゲルの体積の5倍容のイソプロピルアルコールを添加して、付属のカラムにその液体を入れて遠心することによりカラムにDNAを吸着させた。このカラムを500μlのCG Bufferを添加して遠心することにより洗浄後、更に、PE Bufferを750μl添加して遠心することにより洗浄した。完全に残渣を取り除くために1回遠心後、このカラムに、10μlのTEバッファーを添加後遠心することにより55断片の単位DNAが略等モルの混合溶液を得た。
<等モル単位DNA混合溶液への複製開始点を有するDNAの添加>
このDNA濃度を超微量分光光度計により濃度測定を行ったところ、20ng/μlであった。並行して調製したpGET151/AarIの濃度は、67ng/μlであったので、これらの長さの比率(5955bp:4306bp)を考慮に入れて4.63:1の比率になるように55断片等モル混合溶液とpGETS151/AarIとを混合した。
<遺伝子集積>
得られた等モル混合溶液5.63μlに2×ライゲーションバッファーを6.63μl添加し、全体を37℃、5min間恒温した後、1μlのT4DNAリガーゼ(Takara)を添加して、37℃で4h恒温した。一部をとって電気泳動することにより、単位DNAとベクターDNAがタンデムリピート状にライゲーションされているか否かを確認した(図14)。ライゲーション後の溶液8μlを別のチューブに採取し、これに枯草菌コンピテントセルを100μl添加し、37℃で30minダックローターで回転培養した。その後、300μlのLB培地を添加して、37℃で1hダックローターで回転培養し、その後、培養液を10μg/mlのテトラサイクリン入りLBプレートに広げた。
<形質転換と集積体の構造確認>
得られたコロニー154個から、ランダムに24個のクローンを選択し、10μg/mlのテトラサイクリン入りLBに植菌した。対数増殖期に終濃度1mMとなるようにIPTGを添加して、定常期まで培養後、プラスミドDNAを抽出して制限酵素PvuIIで処理し、電気泳動により切断パターンを調べた(図15)。その結果、2クローン(♯10と#20)について予想される塩基配列と一致することが確認されたので、このプラスミドについて他の制限酵素処理を行い、電気泳動により詳細な構造確認を行ったところ、目的の構造と一致した(図16)。このプラスミドについてシーケンシングすることで、最終的にクローン10と20は、設計とおりの塩基配列を有していたことを確認した。
これらの結果より、メバロン酸経路人工オペロンを構成する55の単位DNAと、ベクターDNA(pGETS151−pBR)との合計56のDNA断片を連結できたことが示された。
以上より、本発明のDNA連結体の作製方法によると、50以上のDNA断片を連結し得ることが確認された。このように、多数のDNA断片を連結できたのは、本発明の方法により調製方法によって調製された単位DNA組成物において、各々の単位DNAのモル数がより正確に同一に近いためであると考えられる。
本発明の方法により調製方法によって調製された単位DNA組成物において、各々の単位DNAのモル数がより正確に同一に近い理由は、以下のとおりに推察される。
上記実施例1、2では単位DNAを含む溶液において、それぞれの単位DNAの濃度を測定する際に、それぞれの単位DNAには、付加配列(具体的には環状プラスミドDNA)が連結されている。すると、単位DNAの種類間において、それぞれの塩基配列の長さの分布が大きくても、付加配列が連結されている分、溶液の濃度の測定時においては塩基配列の長さの分布が小さくなる。そのため、測定結果に基づいて算出される各単位DNAのモル数の誤差が少なくなる。これにより、この測定結果に基づいて各々の溶液を分取し、各々の溶液中の単位DNAのモル数を互いに同一となるように調整することによって、各々の溶液中のモル比を1に近づけやすくなり、より正確に、各々の単位DNAが略等モルになったものと推察される。
また、実施例1において、単位DNAの各々の塩基長と、各々の単位DNAに連結された付加配列の塩基長との合計長さの分布の標準偏差は、3691.4±6.6bpであり、平均の合計長さに対して±0.18%である。実施例2において、単位DNAの各々の塩基長と、各々の単位DNAに連結された付加配列の塩基長との合計長さの分布の標準偏差は、2828.2±4.5bpであり、平均の合計長さに対して±0.16%である。実施例1、2では、該標準偏差が、平均の合計長さに対してこのように少ないため、溶液中のDNAの濃度の測定結果に基づいて算出される各単位DNAのモル数の誤差がより少なくなったものと考えられる。
各々の単位DNAに連結された付加配列の平均塩基長の単位DNAの平均塩基長に対する比は、実施例1では約2.7、実施例2では約27である。このように、各々の単位DNAに連結された付加配列の平均塩基長が、単位DNAの平均塩基長と比較して長いため、溶液中のDNAの濃度の測定結果に基づいて算出される各単位DNAのモル数の誤差が更に少なくなり、溶液中のDNAの濃度の測定結果に基づいて算出される各単位DNAのモル数の誤差が更に少なくなったものと考えられる。
また、実施例1、実施例2では、単位DNAの設計を集積DNAの配列の塩基長を単位DNAの種類の数で割った場合に各々の塩基長が等しくなるように、集積DNAを等分した位置にある配列近傍の非回文配列を境界として行ったため、このように単位DNAの設計を行った場合、それぞれの単位DNAの長さが略同一の長さとなった。そのため、制限酵素により付加配列を除去した後の電気泳動後のサイズ分画において、略同一の位置のバンドとして現れ、1回のサイズ分画で単位DNAを回収でき、作業効率が向上することが示された。
上記実施例1では、付加配列の除去に使用する制限酵素の種類毎にグループに分類している(実施例1では3種類、実施例2では1種類)。そのため、除去工程の前に、各グループ毎に、2種以上の単位DNAを含む溶液を混合することができ、単位DNA毎に制限酵素処理を行う必要がなく、制限酵素のグループ毎に、一回で制限酵素処理ができた。すなわち、これにより、DNA連結体の作製の作業の効率が向上することが確認された。また、このように混合したものを用いても、上記のとおり、略等モルの状態で混合されるので、多数の単位DNAが連結可能であることが確認された。
(試験例1 枯草菌プラスミドDNAの形質転換において必要な集積DNAユニットの数の繰り返し単位の冗長性(リダンダンシー(r))の確認)
枯草菌プラスミド形質転換において必要とされる、集積DNAユニットの数の繰り返し数(リダンダンシー)rを確認するために、以下の試験を行った。
枯草菌において有効な複製開始点を有するプラスミドpGETS118−t0−Pr−SfiI−pBR(配列番号1)を用いて、以下の(A)〜(H)のDNAを準備した。
<(A)のDNAの調製>
(A)のDNAは、リダンダンシーr=1の環状モノマープラスミドDNAである。まず、pGETS118−t0−Pr−SfiI−pBRを大腸菌に形質転換した。この形質転換体から得られるプラスミドは、(A)のDNAが主ではあるが、若干量の多量体(マルチマー)が含まれるので、これらを除去する目的で、このプラスミドを低融点アガロースゲル電気泳動によるDNAサイズ分画により、モノマープラスミドDNAの領域のみゲルより切り出し、精製することによって、(A)のDNAを調製した。
<(B)のDNAの調製>
(B)のDNAは、リダンダンシーr=1の直線上のモノマープラスミドDNAである。この(B)のDNAは、上記(A)のDNAを制限酵素BlpI(認識部位は(5’−GC/TNAGC−3‘))により処理することで、調製した。
<(C)のDNAの調製>
(C)のDNAは、リダンダンシーr>1のタンデムリピートの直線状マルチマープラスミドDNAである。上記(B)のDNAを調製した際に使用したBlpIは、5‘末端に非パリンドロームの3塩基突出を形成する。よって、上記(B)のDNAを、DNAリガーゼにより連結することによって、プラスミド単位が同一方向に連続した直線状マルチマープラスミドDNAである(C)のDNAを調製した。
<(D)のDNAの調製>
(D)のDNAは、リダンダンシーr=1の直線上のモノマープラスミドDNAである。この(D)のDNAは、上記(A)のDNAを制限酵素EcoRI(認識部位は(5’−G/AATTC−3‘である))により処理することで、調製した。
<(E)のDNAの調製>
(E)のDNAは、部分的にリダンダンシーr>1の部分を含む、上記(D)のDNAがランダムな向きで連結した直線状マルチマープラスミドDNAである。上記(D)のDNAを調製した際に使用したEcoRIは、5’末端にパリンドロームの3塩基突出を形成する。EcoRIで切断したプラスミドDNAを連結すると、プラスミド単位が、ランダムな向きで連結したマルチマープラスミドDNAを作製することが可能となる。(E)のDNAは、上記(D)のDNAを、DNAリガーゼにより連結することによって調製した。
<(F)のDNAの調製>
(F)のDNAは、(A)のDNAを1か所のみ切断する制限酵素KasIで切断し、脱リン酸化した後にその近傍のBlpIで切断したDNA断片と、(A)のDNAを1か所でのみ切断する制限酵素AfeIで切断し、脱リン酸化した後にその近傍のBlpIで切断したDNAとを等量混合した、r≒1直鎖状準モノマー混合物である。この(F)の混合物中のいずれのDNA断片もリダンダンシーrは、1を若干下回っている。
<(G)のDNAの調製>
(G)のDNAは、上記(F)の2つのDNA断片をDNAリガーゼにより連結することによって、BlpIサイトのみで方向性を指定した連結されたリダンダンシーr=1.98の直線上の準ダイマープラスミドDNAである。
<(H)のDNAの調製>
上記(B)と(D)は、互いに切断サイトが離れている。(H)のDNAは、これら(B)と(D)のDNAを等モルとなるように、連結せずに混合した混合物である。
<(A)〜(H)のDNAの枯草菌コンピテントセルへの形質転換>
上記(A)〜(H)のDNAを、枯草菌コンピテントセルに形質転換して、得られたテトラサイクリン耐性株の出現数を指標に1μg当たりの形質転換体を求めた。(A)〜(H)のDNAはライゲーション反応の有無にかかわらず、ライゲーションバッファー中に溶解し、形質転換に用いた。(A)〜(H)のDNAの電気泳動の写真を図17に示し、(A)〜(H)のDNAの枯草菌コンピテントセルの形質転換体出現数を、図18に示す。なお、図17の電気泳動写真において、(C)と(E)のDNAは、様々なサイズのものがレーン上の広い範囲で分布しているため、バンドが判別しにくくなっている。また、図17の「G」において、上のバンドが、リダンダンシーr=1.97の(G)のDNAであり、下のバンドが、(G)のDNAに混ざっていたリダンダンシーr=0.95のDNAである。
これらの結果から、Aの環状DNAを除くと、形質転換体が得られたものは、DNAをライゲーションにより連結した(C)、(E)、(G)のDNAのみであったことが確認された。これにより、リダンダンシーr=1、又はr<1の場合、仮に切断サイトが異なっており、切断サイトの配列を補完できる関係にある2種類の直線状プラスミド分子が混合していたとしても、形質転換体が得られないことが示され、少なくとも直線状のDNAにおいては、最低限リダンダンシーは、r>1を満たす必要があることが示された。
(シミュレーション1 ライゲーションシミュレーション)
<ライゲーションシミュレーションアルゴリズムの設定>
シミュレーションプログラミングは、表計算ソフトExcel(登録商標)2007のVBAを用いて行った。仮想ライゲーション中のDNA断片Fは、3つのパラメーターF(N,L,R)を用いて表現した。ここで、「i」は断片識別番号を意味し、より具体的には、Excel上のi列セルを意味する。「N」は、仮想ライゲーション中のライゲーションDNA断片1分子中に含まれる単位DNA断片数を示し、「L」はライゲーション産物の左側の突出末端の配列を任意の自然数で数値化したものを示し、「R」は、「L」と同じくライゲーション産物の右側の突出末端の配列を任意の自然数で数値化したものを示す。ここで、L=Rである場合、2つの突出配列は相補関係にあり、L=Rは、ライゲーション可能であることを定義する。ライゲーションのシミュレーションは以下のように行った。
(N,L,R)断片に対して、i≠jを満たす乱数jを、RAND()メソッドにより発生される0〜1間の一様乱数にm(後述する)を掛けて、四捨五入で整数化することで発生させ、これによってF(N,L,R)断片を選択した。この2つ断片が連結可能かどうかを以下の判別式を用いた判別し、連結可能な場合は、断片のパラメーターを以下に示すように変更した。
=Rを満たす場合、すなわち、Fiの左末端とFjの右末端が連結可能な場合は、Fi(new)(Ni(old)+Nj(old),Lj(old),Ri(old))断片とFj(new)(0,0,0)断片に変換した。逆にR=Lを満たす場合、すなわちF断片の右末端とF断片の左末端が連結可能な場合は、Fi(new)(Ni(old)+Nj(old),Li(old),Rj(old))断片とFj(new)(0,0,0)断片を変換した。L≠RかつR≠Lの場合は、無変換(Fi(new)(Ni(old),Li(old),Ri(old))断片かつFj(new)(Nj(old),Lj(old),Rj(old))断片)とし、仮想ライゲーションは起きないものとした。仮想ライゲーションは、これらの計算をi=1→mまで行ったものを1サイクルと定義した。ここでmは、仮想ライゲーションサイクル中のDNA断片の総数を示す変数で、シミュレーション1サイクル目の場合は、初発の単位DNA断片数の合計を意味する。仮想ライゲーション1サイクルを計算後、Excel2007のVBAコマンドのソート機能(Sortメソッド)により、L値が降順になるようにF断片の並び変えを行うことで、F(0,0,0)断片以外のF断片の総数を数え、その総数を新しいmとして挿入し、次のサイクルの仮想ライゲーションを行った。仮想ライゲーションサイクルは、相補関係にある突出断片が無くなり、これ以上仮想ライゲーションを行えない最小断片数mminまで行った。ここでmmin値は、ライゲーション開始前の初発の単位DNA断片の情報を用いて、以下の計算により求めた。
min=(総単位DNA断片数)―(L=Rを満たす関係にある2種類の単位DNA断片のうち少ない単位DNAの断片数の、系全体における合計数)
<ライゲーションシミュレーション>
6断片、13断片、26断片、51断片集積までの各集積規模において、同一単位DNA断片数の平均640で、0〜20%の範囲で1%刻みに設定した変動係数(CV)を持つ仮想単位DNA断片集団は以下のように作製した。
Excelの一様乱数コマンドRAND()で発生させた各集積規模の数に相当する0〜1の乱数集団を発生させて、その乱数集団を平均値0、分散1に標準化した後、各標準化乱数に(断片平均値CV(%)/100)を掛けた値に、断片数の平均値を加えることで、各仮単位DNA断片集団を作製した。この乱数集団は、各集積規模の各CV(%)値について、独立した20集団を作製し、それぞれの乱数集団に対して上記シミュレーションにより、mminまで仮想ライゲーションを実施した。得られた20個の各仮想ライゲーション断片を統合し、N値毎にライゲーション断片数を集計し、その(N値×ライゲーション断片数)が、ライゲーションに用いた単位DNA断片総数に占める割合を求め、N値の大きい分子の値ほど下に来るように100%積み上げグラフを作製した。そのグラフを、図19に示す。この図19は、初発の単位DNA断片が最終的にどのような大きさのライゲーション産物中に取り込まれたのかについての分布を示す。図19中、(a)は6断片集積についてのグラフを示し、(b)は13断片集積についてのグラフを示し、(c)は26断片についてのグラフを示し、(d)は51断片集積についてのグラフを示す。6断片集積の場合、n=6で、リダンダンシーr=1となり、リダンダンシーr<1領域は、右上の領域を示す。この結果から、6断片集積では、そのCVの値においてもほとんどの単位DNA断片がリダンダンシーr>1領域のDNA断片に取り込まれることが示され、逆に、51断片集積においては、CVが0%に近い領域を除き、ほとんどの領域がリダンダンシー1未満の領域であることが示された。
<ライゲーションシミュレーションからのライゲーション理論式の導出>
上記のライゲーションシミュレーションの数値解析から、ライゲーションのメカニズムについて一般化された式を求めるにあたって、各集積規模の各CV値におけるライゲーション産物の分布のフィッティングカーブを算出可能か否かを検証した。6断片集積平均640断片の場合についての、CV=20%におけるライゲーション産物の単位DNA断片含有数の分布を図20に示す。図20において、各リダンダンシー(0<r<1、1<r<2、2<r<5、5<r<10)中の各棒グラフの模様は、各模様毎にそれぞれのリダンシーのNをrで割った際に区別される成分(6断片集積の場合、余りが0、1、2、3、4、5の6成分のうち、N値が0のため対数変換が出来ない余り0の成分を除いた5成分)の種類を示し、異なるリダンダンシーにおいて、同一の模様である棒グラフは、Nをrで割った際に区別される成分が同一の種類であることを示す。また、図20のグラフ中の線形近似曲線は、それぞれの模様の成分の種類毎に求められたものである。
各N値に対するライゲーション産物の分子数のヒストグラムは、全体的にみるとN値増加に伴って指数減少傾向を示し、一見すると離散型確率分布の1種である幾何分布に近い分布を示した。しかしながら、このヒストグラムは、微視的には、遺伝子集積の規模数、あるいは1リダンダンシー(6断片集積の場合6)を周期とした周期的な構造を示し、特にN値が遺伝子集積規模の整数倍に相当する部分では、断片が全く現れないという特徴的構造を示した。この特徴は、幾何分布、あるいは、連続型確率分布と見なした場合の指数分布とは完全には一致しない。しかし、ライゲーション産物分子数軸を対数表示に変換し、その微視的周期構造の各成分、すなわち、Nを集積規模6で割った余りで区別される成分をそれぞれ各周期から取り出して、線形近似曲線を求めると極めて高い相関係数の2乗値(0.94以上)を示すため、それぞれの成分が指数分布に近似しても問題はないものと考えられる。この分布は、図20に示す6断片集積の濃度バラつきのCVが20%である例以外の他の集積規模及び他のCV値の例においても認められた。以後、本メカニズムをヒューリスティックに指数分布に近似できるものと仮定し、指数分布関数(f(n)=λexp(−λn))へのフィッティングを行った。
具体的には、(1)まず、上記で述べた各集積規模のすべてのシミュレーションにおいて、Nを集積規模で割った余りで区別される成分それぞれについて、3周期程度の対数変換した分子数値から線形近似で得られる直線の傾きを−λとして求め、この値からλを算出した。(2)次に、指数分布関数においてはパラメーターλの逆数の1/λがf(N)の平均値となるため、20の乱数集団におけるライゲーション産物のN値の平均を求め、この平均値の逆数から各CV(%)毎のλ(CV(%))を算出した。上記(1)及び(2)の結果を、横軸を単位DNA断片の濃度バラつきのCV(%)値、縦軸をλ値に設定してプロットすると、遺伝子集積規模に関わらず、全てのプロットが、ある原点を通る正比例の直線上に存在することが確認された。これらのプロットについてそれぞれ線形近似曲線を求め、そのグラフを図21に示した。図1中、(a)は、上記(1)の3周期から求めた傾きλと、単位DNA断片の濃度のバラツキとの関係を示したグラフであり、(b)は、上記(2)のN値の平均値の逆数から求めたλと、単位DNA断片の濃度のバラツキとの関係を示したグラフである。より精度の高い(2)より得られたこの線形近似曲線の一般式は、f(N)=0.0058CV(%)exp(−0.0058CV(%)N)であった。また、図21から、λ=0.0058CV(%)に相関係数の2乗値が、0.99という高い相関性で表現できることを見出した。よって、この一般式は、問題がないことが確認された。
<ライゲーションの反応速度の定性的解析>
上記のライゲーションシミュレーションは、正規な突出組合せ同士のライゲーションが全て完了した状態を想定したものである。これに対し、実際に遺伝集積する際のライゲーション反応条件がどの程度シミュレーションの反応条件に近いのかを検討するために、ライゲーション反応のキネティックスを調べた。
まず、実際に遺伝子集積する条件で行うライゲーション反応において、様々な反応時間でライゲーション産物をサンプリングし、実際にどの程度の割合で連結が行われるかをλファージ再構成の51断片連結を用い、全ての51の連結箇所について、定性解析を行った。ライゲーションに使用した単位DNA断片の平均濃度は、約0.2fmol/μlであり、この単位DNA断片の溶液にT4DNAリガーゼを添加してから、37℃、0、1.25、2.5、5、10、20、40、80、160、320分後に、それぞれの反応溶液の一部をサンプリングし、正規に連結される2つの単位DNA断片の連結部分をまたいだDNAが増幅されるように設計された定量PCR用のプライマーセットと、各単位DNA断片の内部のみが増幅されるように設計された定量PCR用のプライマーゼットとを用いて、市販のλファージゲノムDNA(東洋紡)又は既に構築された集積プラスミドを制限酵素で切断し、直鎖化したDNAの希釈系列を指標として、各断片のライゲーションの進捗度合いを調べた。その結果、本反応条件においては、どの連結部分においてもライゲーションが概ね10分程度で終了しており、実際の4時間(240分)という反応時間においては、略完全にライゲーションが完了していることが確認された。また、十分に時間が経過した後(40分以降)のほとんどの連結点の反応度合が、それぞれの単位DNA断片の少ない方を基準とした値に対して略1の割合で存在することから、ライゲーションされたDNA断片は、ほとんどがそれぞれの正しい連結相手と連結していることが確認された。
<ミスライゲーション割合の推定>
より詳細にライゲーションの状況を確認するために、上記のλファージゲノム再構成の実験において得られた集積体のうち、全塩基配列を完全決定した#3、#4、#6、#12を除く全てのクローンについて(#1、#2、#5、#7、#8、#9、#10、#11)、誤った組み合わせでライゲーションされている箇所の同定を目的として塩基配列決定を行った。それぞれのクローンについてのミスライゲーションサイトを、図22に示す。この結果から、#11クローンを除く7クローンについては、その内部に1個もしくは2個のミスライゲーションが存在していることが確認され、全てのミスライゲーションを同定できた。一方、#11クローンについては、集積DNA内に同じ単位DNA断片が繰り返し存在していることが確認され、完全な構造確認を行うことはできなかったが、全6か所のミスライゲーションサイトが存在していることが確認された。#11は、詳細な単位DNA断片数が不明であるため、#11は除外して、全てのクローンのミスライゲーション出現頻度を算出した結果、連結点46箇所に1箇所程度の割合でミスライゲーションが存在していることが確認され、2.2%程度という比較的低い割合でミスライゲーションが出現することが確認された。この結果は、上記の定量PCRの結果と矛盾しない結果であった。
<実際のライゲーション産物の大きさ分布とシミュレーションとの一致性の検証>
上記ミスライゲーション割合の推定と、ライゲーションの反応速度の定性的解析の2つの検証によって、実際のライゲーション反応においては、4時間という十分な時間が経過した後では、略全てのライゲーションが完了しており、またミスライゲーションが生じる確率は少ないと推定された。そこで、初発の単位DNA断片に濃度のバラつきが存在する実際の単位DNA断片集団について、シミュレーションによって実際のライゲーション産物の大きさ分布が予測可能か否かを以下の方法で検証した。
まず、定量PCRで7.5%のCVの単位DNA断片濃度のバラつきが観測されたλファージゲノム再構成実験で用いた集団を材料に用いた。この定量PCRの観測値は、測定誤差としてCV=3.6%の数値を含むので、真の単位DNA断片のバラつきのCVは、CV=7.5%よりも低い可能性があると推測された。そこで、真の値として可能性のあるCVをシミュレーションによって求めた結果、真のCVが6.6%であった場合に、測定誤差のCV=3.6%により観測値がCV=7.5%となる可能性が推定された。そこで、この集団の真の単位DNA断片のバラつきをCV=6.6%として、RAND()メソッドに用意した平均640断片、CV=6.6%の条件を満たす、初発の単位DNA断片51種類のライゲーションのシミュレーションを行った。このシミュレーションにおいては、100%の反応割合を示すmminのみならず、ライゲーション可能数95%、96%、97%、98%、99%におけるライゲーションした際のm値について、それぞれ100個の独立した乱数集団を準備し、それぞれ指定したm値まで反応を継続させた。得られたライゲーション産物の分布100集団分を統合して、F(N,L,R)のパラメーターを利用して、単位DNA断片各仮想ライゲーション産物のDNAの長さをbp単位で求めた。次に、CV=6.6%の断片数のバラつきの存在するλファージゲノム再構成実験の実際の単位DNA断片集団について、上記の「ライゲーションの反応速度の定性的解析」で述べたとおり、37℃で4時間反応させ、反応後、CHEF型パルスフィールドゲル電気泳動装置(バイオクラフト社製)により、DNAの実際の分子量分布がどのようになるかを0.5×TBE、5V/cm、30sec周期の泳動条件で16時間泳動した。その電気泳動の写真を図23に示す。得られた電気泳動写真のDNA密度分布をNIHimageソフトウェアにより得て、得られた図に対してシミュレーションで得られた各ライゲーション効率における予想DNA分布図を重ね合わせて比較した。その結果を、図24に示す。図24により、電気泳動によるDNAの分子量分布が、98%−100%のライゲーション効率の場合の予想DNA分布図と概ね一致したこと、特に最大の濃度を示す極大値の分子量が98%のライゲーション効率と良好に一致することが確認された。これにより、シミュレーションの結果は、4時間のライゲーションの反応で略全てのライゲーションを完了し、2%程度のミスライゲーションは起こりうるものの、概ね全体のライゲーションの様子を再現できることが示された。
<ライゲーションシミュレーションの一般化>
実際に集積に用いる単位DNA断片は、濃度のバラつきが避けられないが、実際にはどの程度の単位DNA断片の濃度のバラつきに抑えなければならないのかを、上記で求められた一般式f(N)=0.0058CV(%)exp(−0.0058CV(%)N)を用いて総括した図を、図25に示す。現在の遺伝子集積実験では、概ねDNA濃度のバラつきがCV(%)=6.6程度であるが、図25によると、CV(%)=6.6の場合、51断片の集積において、用いた単位DNA断片の約40%が、r値が1より大きいライゲーション産物に取り込まれていることが示される。また、図25によると、仮に、これの2倍の集積規模の102断片集団による新規な遺伝子集積を計画する場合、51断片と同程度の集積効率を期待するなら、CV(%)=3.3を実現する必要があることが示された。また、一般式f(N)=0.0058CV(%)exp(−0.0058CV(%)N)を用いて、単位DNA断片の濃度のバラつきと1ライゲーション産物の平均単位DNA断片数との関係を求めた。その結果を図26に示す。これにより、一般式f(N)=0.0058CV(%)exp(−0.0058CV(%)N)を用いることで、CV(%)値による、1ライゲーション産物中の平均単位DNA断片含有数を容易に推測することが可能となることが示された。

Claims (12)

  1. 付加配列が連結された複数の単位DNAを該単位DNAの種類毎に含む溶液を準備する工程と、
    前記各々の溶液の準備後、前記単位DNAに付加配列が連結された状態で、前記各々の溶液中の単位DNAの濃度を測定し、その結果に基づいて、前記各々の溶液を分取して、各々の溶液中の単位DNAのモル数を互いに同一に近づける工程と、を有する単位DNA組成物の調製方法。
  2. 前記付加配列が連結された単位DNAが環状構造を有し、前記付加配列が複製開始点を有するプラスミドDNA配列である請求項1記載の単位DNA組成物の調製方法。
  3. 前記単位DNAの各々の塩基長と、各々の単位DNAに連結された付加配列の塩基長との合計長さの分布の標準偏差が、平均の前記合計長さに対して±20%以内である請求項1又は2記載の単位DNA組成物の調製方法。
  4. 前記各々の単位DNAに連結された付加配列の平均塩基長が、前記単位DNAの平均塩基長の2倍以上である、請求項1から3いずれか記載の単位DNA組成物の調製方法。
  5. 前記単位DNAの各々の長さが1600bp以下である請求項1から4いずれか記載の単位DNA組成物の調製方法。
  6. 前記単位DNAは、該単位DNAによって構成される集積DNAを含むDNA連結体を作製するために用いられるものであり、
    前記単位DNAを含む溶液を準備する工程は、前記集積DNAの配列の塩基長を前記単位DNAの種類の数で割った場合に各々の塩基長が等しくなるように、前記集積DNAを等分した位置にある配列近傍の非回文配列を境界として、端部に非回文配列を有する前記単位DNAを設計する工程を含む、請求項1から5いずれか記載の単位DNA組成物の調製方法。
  7. 宿主微生物中で有効な複製開始点を含むベクターDNAと集積DNAとからなる集積DNAユニットを、1を超えて含む微生物細胞形質転換用DNA連結体の作製方法であって、
    請求項1から6いずれかに記載の方法によって、単位DNA組成物を調製する工程と、
    前記ベクターDNAを準備する工程と、
    調製後の前記溶液中の付加配列が連結された単位DNAから制限酵素を用いて各々の付加配列を除去する工程と、
    前記除去工程後、前記ベクターDNA及び前記各々の単位DNAを互いに連結する工程と、を有し、
    前記ベクターDNA及び前記各々の単位DNAは互いに順序を保ったまま繰り返し連結し得る構造を有し、
    前記集積DNAは、前記各々の単位DNAが互いに連結したDNAからなる、DNA連結体の作製方法。
  8. 集積ユニットを構成する単位DNAの数と集積ユニットの数との積で表される標的連結数のDNA断片の収率と、該DNA断片の濃度の変動係数との関係式に基づいて、前記連結工程における前記ベクターDNA及び前記各々の単位DNAの濃度の変動係数を調節する工程を含む、請求項7記載のDNA連結体の作製方法。
  9. 前記制限酵素は、タイプII制限酵素である請求項7又は8記載のDNA連結体の作製方法。
  10. 前記除去工程の前に、調製後の単位DNAを含む溶液のうち、2種以上の単位DNAを含む溶液を混合する工程を更に有する、請求項7から9いずれかに記載のDNA連結体の作製方法。
  11. 前記除去工程後、前記連結工程の前に、前記制限酵素を失活させる工程を更に有する、請求項7から10いずれかに記載のDNA連結体の作製方法。
  12. 前記微生物が枯草菌である請求項7から11いずれか記載のDNA連結体の作製方法。
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