JPWO2014141821A1 - 電子デバイス及び電子デバイスの製造方法 - Google Patents

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Abstract

本発明の課題は、ガスバリアー性、耐久性(平面性及び故障耐性(ダークスポット耐性))に優れた電子デバイスを提供することである。本発明の電子デバイスは、樹脂基材上に、ガスバリアー層と保護層とがこの順で積層されたガスバリアー性フィルムを具備した電子デバイスであって、前記ガスバリアー層は、炭素原子、ケイ素原子及び酸素原子を含有し、層厚方向に組成が連続的に変化し、かつ特定の元素プロファイルを有し、前記保護層は、ナノインデンテーション法で測定した膜硬度が、2.0〜8.0GPaの範囲内であることを特徴とする。

Description

本発明は、ガスバリアー性フィルムを具備した電子デバイス及びその製造方法に関するものである。さらに詳しくは、ガスバリアー性、平面性及び故障耐性(ダークスポット耐性)に優れた電子デバイス及びその製造方法に関するものである。
従来、プラスチック基板やフィルムの表面に、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ケイ素等の金属酸化物を含む複数の薄膜を積層して作製したガスバリアー性フィルムが、水蒸気や酸素等の各種ガスの遮断を必要とする物品の包装、例えば、食品や工業用品及び医薬品等の上記各種ガスによる変質を防止するための包装材料として広く用いられている。
上記の包装用途以外にも、太陽電池素子、有機エレクトロルミネッセンス(以下、有機ELともいう。)素子、液晶表示素子等のフレキシブル性が求められる電子デバイスへの展開が要望され、それに対する様々な検討がなされている。しかし、これらフレキシブル性を有する電子デバイスにガスバリアー性フィルムを適用する際には、従来用いられてきたガラス基材と同等の非常に高いガスバリアー性が要求されているが、現状では、十分なガスバリアー性を有するガスバリアー性フィルムはいまだ得られていないのが現状である。
この様なガスバリアー性フィルムを作製する方法としては、テトラエトキシシラン(以下、TEOSと略記する。)に代表される有機ケイ素化合物を用いて、減圧下、酸素プラズマで酸化しながら基板上に成膜する化学堆積法(プラズマCVD法:Chemical Vapor Deposition)や、半導体レーザーを用いて金属Siを蒸発させ酸素の存在下で基板上に堆積する物理堆積法(真空蒸着法やスパッタ法)といった気相法が知られている。
特許文献1には、プラズマCVD装置を用い、ロールtoロール方式で1×10-4g/m2・dayレベル(水蒸気透過率)のガスバリアー性積層フィルムを製造する製造方法が開示されている。特許文献1に記載された方法で製造されたガスバリアー性フィルムは、炭素原子を基材近傍に多く配向させることができるプラズマCVD法を適用することにより、基材との密着性及び屈曲性を向上させている。
特許文献1で開示されているような元素分布プロファイルを有するガスバリアー性フィルムを装着した電子デバイスの中には、例えば、日中野外に設置されるものや、自動車などの移動体に搭載されるもの等がある。例えば、自動車などの移動体で、夏場の長時間にわたる移動中では、高温環境に曝されることになり、このような高温環境下の場合、電子デバイスを構成している上記のようなガスバリアー性フィルムにおいては、平面性及び故障耐性(ダークスポット耐性)に問題が発生することが分かった。
国際公開第2012/046767号
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、ガスバリアー性、耐久性(平面性及び故障耐性(ダークスポット耐性))に優れた電子デバイス及びその製造方法を提供することである。
本発明者は、上記課題を解決すべく、鋭意検討を進めた結果、樹脂基材上にガスバリアー層と保護層をこの順で積層し、前記ガスバリアー層は、炭素原子、ケイ素原子及び酸素原子を含有し、層厚方向に組成が連続的に変化し、特定の各元素の含有プロファイルを有し、前記保護層が、ナノインデンテーション法で測定した膜硬度が、2.0〜8.0GPaの範囲内であるガスバリアー性フィルムを具備したことを特徴とする電子デバイスにより、電子デバイス用途に必要なガスバリアー性に優れたガスバリアー性フィルムを具備し、耐久性(平面性(カール特性)及びダークスポット耐性)に優れた電子デバイスを実現することができることを見出し本発明に至った。
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
1.樹脂基材上に、ガスバリアー層と保護層とがこの順で積層されたガスバリアー性フィルムを具備した電子デバイスであって、
前記ガスバリアー層は、炭素原子、ケイ素原子及び酸素原子を含有し、層厚方向に組成が連続的に変化し、下記(1)及び(2)で規定する要件を満たし、
かつ前記保護層は、ナノインデンテーション法で測定した膜硬度が、2.0〜8.0GPaの範囲内であることを特徴とする電子デバイス。
(1)前記ガスバリアー層のX線光電子分光法による深さ方向の元素分布測定に基づく各構成元素の分布曲線において、当該ガスバリアー層の層厚方向における表面からの距離と、ケイ素原子、酸素原子及び炭素原子の合計量(100at%)に対する炭素原子の量の比率(「炭素原子比率(at%)」という。)との関係を示す炭素分布曲線が、極値を有し、かつ前記炭素原子比率の最大の極値(極大値)と最小の極値(極小値)との差が5.0at%以上である。
(2)前記ガスバリアー層の全層厚の90%以上の領域において、ケイ素原子、酸素原子及び炭素原子の合計量(100at%)に対する各原子の平均原子比率が、下記式(A)又は(B)で表される序列の大小関係を有する。
式(A)
(炭素平均原子比率)<(ケイ素平均原子比率)<(酸素平均原子比率)
式(B)
(酸素平均原子比率)<(ケイ素平均原子比率)<(炭素平均原子比率)
2.前記ガスバリアー層の全層厚の90%以上の領域におけるケイ素原子、酸素原子及び炭素原子の平均原子比率が、前記式(A)で表される序列の大小関係を有することを特徴とする第1項に記載の電子デバイス。
3.前記保護層のナノインデンテーション法で測定した膜硬度が、3.0〜5.5GPaの範囲内であることを特徴とする第1項又は第2項に記載の電子デバイス。
4.前記保護層の膜密度が、1.40〜2.18g/cm3の範囲内であることを特徴とする第1項から第3項までのいずれか一項に記載の電子デバイス。
5.樹脂基材上に、ガスバリアー層と保護層とをこの順で積層したガスバリアー性フィルムを具備する電子デバイスの製造方法であって、
前記ガスバリアー性フィルムが、炭素原子、ケイ素原子及び酸素原子を含有し、層厚方向に組成が連続的に変化し、下記(1)及び(2)で規定する要件を満たすガスバリアー層を形成する工程と、ナノインデンテーション法で測定した膜硬度が、2.0〜8.0GPaの範囲内である保護層を形成する工程を経て製造されることを特徴とする電子デバイスの製造方法。
(1)前記ガスバリアー層のX線光電子分光法による深さ方向の元素分布測定に基づく各構成元素の分布曲線において、当該ガスバリアー層の層厚方向における表面からの距離と、ケイ素原子、酸素原子及び炭素原子の合計量(100at%)に対する炭素原子の量の比率(「炭素原子比率(at%)」という。)との関係を示す炭素分布曲線が、極値を有し、かつ前記炭素原子比率の最大の極値(極大値)と最小の極値(極小値)との差が5.0at%以上である。
(2)前記ガスバリアー層の全層厚の90%以上の領域において、ケイ素原子、酸素原子及び炭素原子の合計量(100at%)に対する各原子の平均原子比率が、下記式(A)又は(B)で表される序列の大小関係を有する。
式(A)
(炭素平均原子比率)<(ケイ素平均原子比率)<(酸素平均原子比率)
式(B)
(酸素平均原子比率)<(ケイ素平均原子比率)<(炭素平均原子比率)
6.前記ガスバリアー層が、有機ケイ素化合物を含む原料ガスと酸素ガスを用いて、磁場を印加したローラー間に放電空間を有する放電プラズマ化学気相成長法により形成されることを特徴とする第5項に記載の電子デバイスの製造方法。
7.前記保護層が、前記ガスバリアー層上にポリシラザン含有液を塗布、乾燥した後、表面改質処理を施して形成された層であることを特徴とする第5項又は第6項に記載の電子デバイスの製造方法。
8.前記保護層の形成に用いる前記表面改質処理が、波長が200nm以下の真空紫外光を照射する方法であることを特徴とする第7項に記載の電子デバイスの製造方法。
本発明の上記手段により、ガスバリアー性に優れたガスバリアー性フィルムを具備し、耐久性(平面性(カール特性)及びダークスポット耐性)に優れた電子デバイス及びその製造方法を提供することができる。
本発明で規定する構成により、本発明の目的とする効果が得られる技術的理由に関しては、その機構の詳細の全てについて解明はされていないが、以下のように推測している。
本発明に係るガスバリアー性フィルムは、主には、樹脂基材と、層厚方向で酸素原子と炭素原子が連続的に変化している組成からなるガスバリアー層と、特定の範囲の膜硬度を備えた保護層から構成されている。
樹脂基材上に、層厚方向で組成(構成する元素組成)が連続的に変化しているガスバリアー層を形成した場合には、密着性及び屈曲性と、ガスバリアー性とを両立するガスバリアー層を形成することができるが、層内での収縮率の不均一性に伴い、樹脂基材に対し、ガスバリアー層の伸び率が相対的に大きくなるため、当該ガスバリアー性フィルムを具備した電子デバイスでは平面性に問題があった。特に、樹脂基材の膜厚が40〜150μmという薄膜基材において平面性の問題が大きくなる。また、平面性の乱れは、特に、高温高湿環境下に長期間にわたり曝された際、顕著に発現する。さらに、当該ガスバリアー性フィルムを具備した電子デバイスとして、有機エレクトロルミネッセンス素子を例にとると、平面性の乱れによっては、ダークスポットが発生する場合があり、そのような場合、最終的には、有機エレクトロルミネッセンス素子として満足する機能が得られなくなるといった問題がある。
このような問題に対し、本発明者は、当該ガスバリアー性フィルムを構成するガスバリアー層上に、特定の範囲の膜硬度を有する保護層を積層することによって、平面性の乱れを抑制することができ、かつ故障耐性に優れた電子デバイスを実現することができることを見出した。
本発明で規定する構成に対し、例えば、平板電極(水平搬送)タイプのプラズマ放電装置を用いて製造されたガスバリアー層では、樹脂基材周辺の炭素原子成分の濃度勾配の連続的な変化が起こらず、ガスバリアー層としては、全層がほぼ均一の組成から形成される。このような均一の元素プロファイルを有するガスバリアー層を具備した電子デバイスでも、上記と同様、平面性に問題があり、有機エレクトロルミネッセンス素子に当該ガスバリアー層を適用した場合には、ダークスポットが発生してしまっていた。
しかしながら、全層がほぼ均一の組成から形成されるガスバリアー層上に、上記と同様に特定の範囲内の膜硬度を有する保護層を積層したとしても、平面性の乱れを抑制するまでには至らず、平面性や故障耐性(ダークスポット耐性)が非常に低下した。
本発明者は、上記のような状況を踏まえ、層厚方向での膜組成(構成する元素組成)が連続的に変化しているガスバリアー層と、特定の範囲内の膜硬度を有する保護層とを積層することにより、平面性の乱れを抑制でき、かつ故障耐性に優れた電子デバイスを実現できたものと推測している。特に、高温高湿環境下で長期間にわたり保存した際にも、優れた平面性及び故障耐性(ダークスポット耐性)を維持することができる。
本発明に係るガスバリアー性フィルムの基本構成の一例を示す概略断面図 本発明に係る磁場を印加したローラー間放電プラズマCVD装置を用いたガスバリアー性フィルムの製造方法の一例を示す概略図 本発明のガスバリアー層のケイ素分布曲線、酸素分布曲線及び炭素分布曲線の一例を示すグラフ 比較例のガスバリアー層のケイ素分布曲線、酸素分布曲線及び炭素分布曲線の一例を示すグラフ ナノインデンテーション法による膜硬度の測定装置の一例を示す模式図 本発明に係るガスバリアー性フィルムを具備した電子デバイスの模式図
本発明の電子デバイスは、樹脂基材の少なくとも一方の面側に、ガスバリアー層と保護層とがこの順で積層されたガスバリアー性フィルムを具備した電子デバイスであって、前記ガスバリアー層は、炭素原子、ケイ素原子及び酸素原子を含有し、層厚方向に組成が連続的に変化し、前記(1)及び(2)で規定する要件を満たし、前記保護層は、ナノインデンテーション法で測定した膜硬度が、2.0〜8.0GPaの範囲内であることを特徴とする。
この特徴は、請求項1から請求項8までの請求項に係る発明に共通する技術的特徴である。
本発明の実施態様としては、本発明の効果発現の観点から、前記ガスバリアー層の全層厚の90%以上の領域におけるケイ素原子、酸素原子及び炭素原子の平均原子比率が、前記式(A)で表される序列の大小関係、すなわち、(炭素平均原子比率)<(ケイ素平均原子比率)<(酸素平均原子比率)の関係を有することが、より平面性に優れ、所望のガスバリアー性を備えたガスバリアー性フィルムを具備した電子デバイスを得ることができる。
また、前記保護層のナノインデンテーション法で測定した膜硬度が、3.0〜5.5GPaの範囲内であることが、より優れた平面性、ガスバリアー性及び故障耐性(ダークスポット耐性)を得ることができる点から好ましい。
また、本発明においては、特定の膜硬度を備えた保護層の膜密度が、1.40〜2.18g/cm3の範囲内であることが好ましい。
また、本発明の電子デバイスの製造方法は、樹脂基材上に、ガスバリアー層と保護層とをこの順で積層したガスバリアー性フィルムを具備する電子デバイスの製造方法であって、前記ガスバリアー性フィルムが、炭素原子、ケイ素原子及び酸素原子を含有し、層厚方向に組成が連続的に変化し、前記(1)及び(2)で規定する要件を満たすガスバリアー層を形成する工程と、ナノインデンテーション法で測定した膜硬度が、2.0〜8.0GPaの範囲内である保護層を形成する工程を経て製造されることを特徴とする。
更に、本発明の電子デバイスの製造方法においては、ガスバリアー層が、有機ケイ素化合物を含む原料ガスと酸素ガスを用いて、磁場を印加したローラー間に放電空間を有する放電プラズマ化学気相成長法により形成されることが、より高い精度で所望の各元素プロファイルを有するガスバリアー層を実現することができる観点から好ましい。
また、本発明に係る特定の膜硬度を備えた保護層が、前記ガスバリアー層上にポリシラザン含有液を塗布、乾燥した後、表面改質処理を施して形成することが、所望の膜硬度を有する保護層を高精度で実現することができ、より優れた平面性、ガスバリアー性及び故障耐性(ダークスポット耐性)を得ることができる点から好ましい。
また、上記保護層の形成に用いる前記表面改質処理が、波長が200nm以下の真空紫外光を照射する方法であることが、より高品位の保護層を、効率的に形成することができる観点から好ましい。
なお、本発明でいう「ガスバリアー性」とは、JIS K 7129−1992に準拠した方法で測定された水蒸気透過率(温度:60±0.5℃、相対湿度(RH):90±2%)が3×10-3g/m2・24h以下であり、JIS K 7126−1987に準拠した方法で測定された酸素透過度が1×10-3ml/m2・24h・atm以下であることを意味する。
また、本発明において、「真空紫外線」、「真空紫外光」、「VUV」、「VUV光」とは、具体的には波長が100〜200nmの範囲内にある光を意味する。
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
《電子デバイスの概要》
本発明の電子デバイスは、樹脂基材の少なくとも一方の面側に、ガスバリアー層と保護層とがこの順で積層されたガスバリアー性フィルムを具備した電子デバイスであって、前記ガスバリアー層は、炭素原子、ケイ素原子及び酸素原子を含有し、層厚方向に組成が連続的に変化し、前記(1)及び(2)で規定する要件を満たし、前記保護層は、ナノインデンテーション法で測定した膜硬度が、2.0〜8.0GPaの範囲内であることを特徴とする。
以下、本発明の電子デバイスを構成するガスバリアー性フィルムの詳細について説明する。
《ガスバリアー性フィルム》
図1は、本発明に係るガスバリアー性フィルムの基本構成の一例を示す概略断面図である。
図1に示すように、本発明に係るガスバリアー性フィルムFは、支持体としての樹脂基材1と、樹脂基板1上に、ガスバリアー層2を有し、ガスバリアー層2上に、保護層3を積層した構成を有している。
本発明に係るガスバリアー層2は、炭素原子、ケイ素原子及び酸素原子を含有し、層厚方向に組成が連続的に変化し、前記(1)及び(2)で規定する要件を同時に満たす元素分布プロファイルを有していることを特徴とする。また、本発明に係る保護層3は、ナノインデンテーション法で測定した膜硬度が、2.0〜8.0GPaの範囲内であることを特徴とする。
〔1〕樹脂基材
本発明に係るガスバリアー性フィルムFを構成する樹脂基材1としては、ガスバリアー性を有するガスバリアー層2及び保護層3を保持することができる有機材料で形成されたものであれば、特に限定されるものではない。
本発明に適用可能な樹脂基材としては、例えば、メタクリル酸エステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート、ポリスチレン(PS)、芳香族ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド等の各樹脂から構成されるフィルム、更には上記樹脂を2層以上積層して構成される積層フィルム等を挙げることができる。コストや入手の容易性の点では、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)などのフィルムが好ましく用いられる。
樹脂基材の厚さは、特に制限はなく、5〜500μmの範囲内で選択することができるが、本発明の効果をより発現することができる観点からは、40〜150μmの範囲内であることが好ましい。
また、本発明に係る樹脂基材は、透明であることが好ましい。樹脂基材が透明であり、樹脂基材上に形成する層も透明であることにより、透明なガスバリアー性フィルムとすることが可能となり、電子デバイス(例えば、有機EL素子等)等の透明基板として適用することができる。
また、上記の樹脂等を用いた樹脂基材は、未延伸フィルムでもよく、延伸フィルムでもよい。強度向上、熱膨張抑制の点から延伸フィルムが好ましい。また、延伸により位相差等を調整することもできる。
本発明に係る樹脂基材は、従来公知の一般的なフィルム成膜方法により製造することが可能である。例えば、材料となる樹脂を押出し機により溶融し、環状ダイやTダイにより押出して急冷することにより、実質的に無定形で配向していない未延伸のフィルム状の樹脂基材を製造することができる。また、材料となる樹脂を溶媒に溶解し、無端の金属樹脂支持体上に流延(キャスト)して乾燥、剥離することにより、実質的に無定形で配向していない未延伸のフィルム状の樹脂基材を製造することもができる。
更に、未延伸の樹脂基材を、一軸延伸、テンター式逐次二軸延伸、テンター式同時二軸延伸、チューブラー式同時二軸延伸などの公知の延伸方法により、樹脂基材の搬送方向(縦軸方向、長手方向あるいはMD方向ともいう。)、又は樹脂基材の搬送方向と直角方向(横軸方向、幅手方向あるいはTD方向ともいう。)に延伸することにより、延伸樹脂基材を製造することができる。この場合の延伸倍率は、樹脂基材の原料となる樹脂に合わせて適宜選択することできるが、縦軸方向(MD方向)及び横軸方向(TD方向)にそれぞれ2〜10倍の範囲内で延伸することが好ましい。
また、本発明において、樹脂基材は、寸法安定性の点で、弛緩処理、オフライン熱処理を行ってもよい。弛緩処理は、前述の成膜方法における延伸成膜工程中の熱固定した後、横延伸のテンター内、又はテンターを出た後の巻き取りまでの工程で行われるのが好ましい。弛緩処理は、処理温度が80〜200℃の範囲内で行われることが好ましく、より好ましくは、処理温度が100〜180℃の範囲内である。オフライン熱処理の方法としては、特に限定されないが、例えば、複数の熱ローラー群によるローラー搬送方法、空気をフィルムに吹き付けて浮揚させるエアー搬送などにより搬送させる方法(この時、複数のスリットから加熱空気をフィルム面の片面あるいは両面に吹き付ける方法)、赤外線ヒーターなどによる輻射熱を利用する方法、フィルムを自重で垂れ下がらせ、加熱させながら下方で巻きとる等の方法を挙げることができる。熱処理の搬送張力は、できるだけ低くし、熱収縮を促進することで、良好な寸法安定性を備えた樹脂基材となる。処理温度としては、(Tg+50℃)〜(Tg+150℃)の温度範囲内が好ましい。ここでいうTgとは、樹脂基材のガラス転移温度をいう。
本発明に係る樹脂基材は、フィルム成膜の過程で、片面又は両面にインラインで下引層塗布液を塗布することができる。本発明において、このような成膜工程中での下引層塗布方法をインライン下引という。本発明に有用な下引層塗布液の調製に使用する樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、アクリル変性ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリエチレンイミンビニリデン樹脂、ポリエチレンイミン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、変性ポリビニルアルコール樹脂及びゼラチン等を挙げることができ、いずれも好ましく用いることができる。これらの下引層塗布液には、従来公知の添加剤を加えることもできる。そして、上記下引層は、ローラーコート、グラビアコート、ナイフコート、ディップコート、スプレーコート等の公知のコーティング方法を用いて形成することができる。上記の下引層の塗布量としては、0.01〜2g/m2(乾燥状態)の範囲内が好ましい。
〔2〕ガスバリアー層
本発明に係るガスバリアー層は、炭素原子、ケイ素原子及び酸素原子を含有し、層厚方向に組成が連続的に変化し、下記要件(1)及び(2)で規定する条件を満たす構成であることを特徴とする。
すなわち、
(1)ガスバリアー層についてのX線光電子分光法による深さ方向の元素分布測定に基づいて作成した各構成元素の分布曲線において、当該ガスバリアー層の層厚方向における前記ガスバリアー層の表面からの距離と、ケイ素原子、酸素原子及び炭素原子の合計量(100at%)に対する炭素原子の量の比率(「炭素原子比率(at%)」という。)との関係を示す炭素分布曲線が、極値を有し、かつ炭素原子比率の最大の極値(極大値)と最小の極値(極小値)との差が5.0at%以上である。
(2)ガスバリアー層の全層厚の90%以上の領域において、ケイ素原子、酸素原子及び炭素原子の合計量(100at%)に対する平均原子比率が、下記式(A)又は(B)で表される序列の大小関係を有する。
式(A)
(炭素平均原子比率)<(ケイ素平均原子比率)<(酸素平均原子比率)
式(B)
(酸素平均原子比率)<(ケイ素平均原子比率)<(炭素平均原子比率)
なお、基材界面領域における測定精度は、樹脂基材の構成原子のノイズ等でやや精度が低下するため、上記式(A)又は式(B)で規定する関係を満たす領域としては、ガスバリアー層の全層厚のうち、90〜95%の範囲内の領域であることが好ましい。
また、より好ましい態様としては、本発明に係るガスバリアー層の層厚が、50〜1000nmの範囲内である。また、本発明に係るガスバリアー層の形成方法としては、本発明で規定する元素プロファイルを実現することができる薄膜形成方法であれば特に制限はないが、緻密に元素分布が制御したガスバリアー層を形成することができる観点からは、有機ケイ素化合物を含む原料ガスと酸素ガスとを用いて、磁場を印加したローラー間に放電空間を有する放電プラズマ化学気相成長法により形成する方法が好ましい。
以下、本発明に係るガスバリアー層の詳細について説明する。
本発明において、本発明に係るガスバリアー層内における各原子の含有比率の平均値は、後述するXPSデプスプロファイルの測定によって求めることができる。
(2.1)ガスバリアー層における炭素元素プロファイル
本発明に係るガスバリアー層は、ガスバリアー層の構成元素として炭素原子、ケイ素原子及び酸素原子を含み、層厚方向に組成が連続的に変化し、X線光電子分光法による深さ方向の元素分布測定に基づき作成した各構成元素の分布曲線において、当該ガスバリアー層の層厚方向における前記ガスバリアー層の表面からの距離と、ケイ素原子、酸素原子及び炭素原子の合計量(100at%)に対する炭素原子の量の比率(「炭素原子比率(at%)」という。)との関係を示す炭素分布曲線が、極値を有し、かつ前記炭素原子比率の最大の極値(極大値)と最小の極値(極小値)との差が5.0at%以上であることを特徴の一つとする。
また、本発明に係るガスバリアー層においては、炭素原子比率がガスバリアー層の特定の領域において、濃度勾配を有して連続的に変化する構成を有することが、ガスバリアー性と屈曲性を両立する観点から好ましい態様である。
このような炭素原子分布プロファイルを有する本発明に係るガスバリアー層においては、層内における炭素分布曲線が少なくとも一つの極値を有することを特徴とし、更に、少なくとも2つの極値を有することがより好ましく、特には、少なくとも三つの極値を有することが好ましい。炭素分布曲線において極値を有さない場合には、得られるガスバリアー性フィルムを屈曲させた場合、ガスバリアー性が不十分となる。また、このように少なくとも二つ又は三つの極値を有する場合は、前記炭素分布曲線が有する一つの極値及び該極値に隣接する極値における前記ガスバリアー層の層厚方向における前記ガスバリアー層の表面からの距離の差の絶対値がいずれも200nm以下であることが好ましく、100nm以下であることがより好ましい。
なお、本発明における分布曲線の極値とは、ガスバリアー層の層厚方向における、ガスバリアー層の表面からの距離に対する元素の原子比率の極大値又は極小値の測定値のことをいう。
本発明における極大値とは、ガスバリアー層の表面からの距離を変化させた場合に元素の原子比率の値が増加から減少に変わる点であって、かつその点の元素の原子比率の値よりも、該点からガスバリアー層の層厚方向におけるガスバリアー層の表面からの距離を更に20nm変化させた位置の元素の原子比率の値が3.0at%以上減少する点のことをいう。
また、本発明における極小値とは、ガスバリアー層の表面からの距離を変化させた場合に元素の原子比の値が減少から増加に変わる点であり、且つその点の元素の原子比率の値よりも、該点からガスバリアー層の層厚方向におけるガスバリアー層の表面からの距離を更に20nm変化させた位置の元素の原子比の値が3.0at%以上増加する点のことをいう。
本発明に係るガスバリアー層は、極値を有し、前記炭素原子比率の最大の極値(極大値)と最小の極値(極小値)との差が5.0at%以上であることを特徴とする。
(2.2)ガスバリアー層における各元素プロファイル
本発明に係るガスバリアー層においては、構成元素として炭素原子、ケイ素原子及び酸素原子を含有することを特徴とするが、それぞれの原子の比率と、最大値及び最小値についての好ましい態様について、以下に説明する。
〈2.2.1〉炭素原子比率の最大値と最小値の関係
本発明に係るガスバリアー層では、炭素分布曲線における炭素原子比率の最大の極値(極大値)と最小の極値(極小値)の差が5.0at%以上であることを特徴の一つとする。また、このようなガスバリアー層においては、炭素原子比率の最大値及び最小値の差の絶対値が6.0at%以上であることがより好ましく、7.0at%以上であることが特に好ましい。炭素原子比率の最大値及び最小値の差を5.0at%以上とすることにより、作製したガスバリアー性フィルムを屈曲させた際、膜の破断を生じることがなく、ガスバリアー性を十分に維持することができる。
〈2.2.2〉酸素原子比率の最大値と最小値の関係
本発明に係るガスバリアー層においては、酸素分布曲線における最大値及び最小値の差の絶対値が5.0at%以上であることが好ましく、6.0at%以上であることがより好ましく、7.0at%以上であることが特に好ましい。前記絶対値が5.0at%以上では、得られるガスバリアー性フィルムを屈曲させた際、膜の破断を生じることがなく、ガスバリアー性が十分となる。
〈2.2.3〉ケイ素原子比率の最大値と最小値の関係
本発明に係るガスバリアー層においては、ケイ素分布曲線における最大値及び最小値の差の絶対値が5.0未満であることが好ましく、4.0at%未満であることがより好ましく、3.0at%未満であることが特に好ましい。前記絶対値が5.0at%未満であれば、得られるガスバリアー性フィルムのガスバリアー性及び機械的強度が十分となる。
〈2.2.4〉酸素原子+炭素原子の合計量の比率
本発明に係るガスバリアー層においては、層厚方向における該層の表面からの距離と、ケイ素原子、酸素原子及び炭素原子の合計量に対する酸素原子及び炭素原子の合計量の比率(酸素−炭素合計の原子比率という。)である酸素−炭素合計の分布曲線(酸素炭素分布曲線ともいう。)において、前記酸素−炭素合計の原子比率の最大値及び最小値の差の絶対値が5.0at%未満であることが好ましく、4.0at%未満であることがより好ましく、3.0at%未満であることが特に好ましい。前記絶対値が5.0at%未満であれば、得られるガスバリアー性フィルムのガスバリアー性が十分となる。
なお、後述する図3及び図4に示すような炭素原子分布プロファイル(ケイ素分布曲線、酸素分布曲線及び炭素分布曲線)に関する説明において、「ケイ素原子、酸素原子及び炭素原子の合計量」とは、ケイ素原子、酸素原子及び炭素原子の合計at%(原子数%、原子数比率ともいう。)を意味し、「炭素原子の量」とは、炭素原子数を意味する。本発明でいうat%とは、ケイ素原子、酸素原子及び炭素原子の総原子数を100%としたときの各原子の原子数比率を意味する。また、図3及び図4に示すようなケイ素分布曲線、酸素分布曲線及び酸素炭素分布曲線における「ケイ素原子の量」及び「酸素原子の量」についても同様である。
〈2.2.5〉表面から層厚方向の全層厚領域における元素分布
本発明に係るガスバリアー層においては、ガスバリアー層の全層厚の90%以上の領域において、ケイ素原子、酸素原子及び炭素原子の合計量(100at%)に対する各原子の平均原子比率が、下記式(A)又は(B)で表される序列の大小関係を有することを特徴の一つとし、更に好ましくは、ガスバリアー層の全層厚の90%以上の領域におけるケイ素原子、酸素原子及び炭素原子の平均原子比率が、下記式(A)で表される序列の大小関係を有することである。
式(A)
(炭素平均原子比率)<(ケイ素平均原子比率)<(酸素平均原子比率)
式(B)
(酸素平均原子比率)<(ケイ素平均原子比率)<(炭素平均原子比率)
(2.3)X線光電子分光法による深さ方向の元素分布測定
本発明に係るガスバリアー層の層厚方向におけるケイ素分布曲線、酸素分布曲線、及び炭素分布曲線、及び酸素−炭素合計の分布曲線等は、X線光電子分光法(XPS:Xray Photoelectron Spectroscopy)の測定とアルゴン等の希ガスイオンスパッタとを併用することにより、試料内部を露出させつつ順次表面組成分析を行う、いわゆるXPSデプスプロファイル測定により作成することができる。このようなXPSデプスプロファイル測定により得られる分布曲線は、例えば、縦軸を各元素の原子比(単位:at%)とし、横軸をエッチング時間(スパッタ時間)として作成することができる。なお、横軸をエッチング時間とする元素の分布曲線においては、エッチング時間は、前記ガスバリアー層の層厚方向における表面からの距離におおむね相関することから、「ガスバリアー層の層厚方向におけるガスバリアー層の表面からの距離」とすることができ、XPSデプスプロファイル測定の際に採用したエッチング速度とエッチング時間との関係から算出されるガスバリアー層の表面からの距離として採用することができる。また、このようなXPSデプスプロファイル測定に採用するスパッタ法としては、エッチングイオン種としてアルゴン(Ar+)を用いた希ガスイオンスパッタ法を採用し、そのエッチング速度(エッチングレート)を0.05nm/sec(SiO2熱酸化膜換算値)とすることが好ましい。
また、本発明においては、膜面全体において均一で、かつ優れたガスバリアー性を有するガスバリアー層を形成するという観点から、ガスバリアー層が膜面方向(ガスバリアー層の表面に平行な方向)において実質的に一様であることが好ましい。本発明において、ガスバリアー層が膜面方向において実質的に一様とは、XPSデプスプロファイル測定によりガスバリアー層の膜面の任意の2箇所の測定箇所について前記酸素分布曲線、前記炭素分布曲線及び前記酸素−炭素合計の分布曲線を作成した場合に、その任意の2箇所の測定箇所において得られる炭素分布曲線が持つ極値の数が同じであり、それぞれの炭素分布曲線における炭素の原子比率の最大値及び最小値の差の絶対値が、互いに同じであるか若しくは5.0at%以内の差であることをいう。
本発明に係るガスバリアー性フィルムは、樹脂基材上に、本発明に係る前記(1)及び(2)で規定する要件を同時に満たすガスバリアー層を少なくとも1層有していることが必須の要件であるが、そのような条件を満たす層を、2層以上を有していてもよい。さらに、このようなガスバリアー層を2層以上有する場合には、複数のガスバリアー層の材質は、同一であってもよく、異なっていてもよい。また、このようなガスバリアー層を2層以上形成する場合には、このようなガスバリアー層は、前記樹脂基材の一方の表面上に形成されていてもよく、前記樹脂基材の両方の面上に形成されていてもよい。また、このような複数のガスバリアー層としては、その中には、ガスバリアー性を必ずしも有しないガスバリアー層を含んでいてもよい。
また、前記ケイ素分布曲線、前記酸素分布曲線及び前記炭素分布曲線において、ケイ素原子、酸素原子及び炭素原子の合計量に対するケイ素原子比率は、19〜40at%の範囲内であることが好ましく、30〜40at%の範囲内であることがより好ましい。また、前記ガスバリアー層中におけるケイ素原子、酸素原子及び炭素原子の合計量に対する酸素原子比率は、33〜67at%の範囲内であることが好ましく、41〜62at%の範囲内であることがより好ましい。さらに、前記ガスバリアー層中におけるケイ素原子、酸素原子及び炭素原子の合計量に対する炭素原子比率は、1〜19at%の範囲内であることが好ましく、3〜19at%の範囲内であることがより好ましい。
(2.4)ガスバリアー層の層厚
本発明に係るガスバリアー層の層厚は、50〜1000nmの範囲内であることが好ましく、100〜1000nmの範囲内であることより好ましく、100〜500nmの範囲内であることが特に好ましい。
ガスバリアー層の層厚の合計値が上記範囲内であれば、所望の平面性を実現することができるとともに、酸素ガスバリアー性、水蒸気バリアー性等のガスバリアー性が十分であり、屈曲によりガスバリアー性も低下しにくい傾向にある。
(2.5)ガスバリアー層の形成方法
本発明に係るガスバリアー層の形成方法としては、本発明で規定する層内における元素プロファイルを実現することができる薄膜形成方法であれば特に制限はないが、緻密に各元素プロファイルが制御させたガスバリアー層を形成することができる観点からは、有機ケイ素化合物を含む原料ガスと酸素ガスとを用いて、磁場を印加したローラー間に放電空間を有する放電プラズマ化学気相成長法により形成する方法を用いることが好ましい。
より詳しくは、本発明に係るガスバリアー層は、磁場を印加したローラー間放電プラズマ処理装置を用い、樹脂基材を一対の成膜ローラーに巻き回し、一対の成膜ローラー間に成膜ガスを供給しながらプラズマ放電してプラズマ化学気相成長法により形成される層である。また、このように一対の成膜ローラー間に磁場を印加しながら放電する際には、一対の成膜ローラー間の極性を交互に反転させることが好ましい。更に、このようなプラズマ化学気相成長法に用いる成膜ガスとしては、有機ケイ素化合物を含む原料ガスと酸素ガスとを用い、その成膜ガス中の酸素ガスの含有量は、成膜ガス中の有機ケイ素化合物の全量を完全酸化するのに必要な理論酸素量以下であることが好ましい。また、本発明に係るガスバリアー性フィルムにおいては、ガスバリアー層が連続的な成膜プロセスにより形成された層であることが好ましい。
次に、本発明に係るガスバリアー層の具体的な形成方法について説明する。
本発明に係るガスバリアー性フィルムは、磁場を印加したローラー間放電プラズマ処理装置を用い、樹脂基材表面上(下地層等の中間層を設けた樹脂基材を採用する場合は、当該中間層上)に、ガスバリアー層を形成させることにより作製する。
本発明に係るガスバリアー層においては、炭素原子比率が濃度勾配を有し、かつ層内で連続的に変化する元素プロファイルを形成するため、磁場を印加したローラー間放電プラズマ化学気相成長法を用いることが好ましい態様である。
本発明に係る磁場を印加したローラー間放電プラズマ化学気相成長法(以下、プラズマCVD法、あるいはローラーCVD法ともいう。)は、プラズマを発生させる際に、複数の成膜ローラー間に磁場を印加しながら、形成した放電空間にプラズマ放電を発生させることが好ましく、本発明では一対の成膜ローラーを用い、その一対の成膜ローラーのそれぞれに樹脂基材を巻き回して、当該一対の成膜ローラー間に、磁場を印加した状態で放電してプラズマを発生させることが好ましい。このようにして、一対の成膜ローラーを用い、その一対の成膜ローラー上に樹脂基材を巻き回して、かかる一対の成膜ローラー間にプラズマ放電することにより、樹脂基材と成膜ローラーとの間の距離が変化することによって、前記炭素原子比率が濃度勾配を有し、かつ層内で連続的に変化するようなガスバリアー層を形成することができる。
また、成膜時に一方の成膜ローラー上に存在する樹脂基材の表面部分を成膜しつつ、もう一方の成膜ローラー上に存在する樹脂基材の表面部分も同時に成膜することが可能となるため、効率よく薄膜を製造できるばかりか、成膜レートを倍にでき、なおかつ、同じ構造の膜を成膜できるので前記炭素分布曲線における極値を少なくとも倍増させることが可能となり、効率よく本発明で規定する(1)及び(2)の要件を同時に満たすガスバリアー層を形成することが可能となる。
また、本発明に係るガスバリアー性フィルムの製造方法としては、優れた生産適性を付与する観点から、ロールtoロール方式で前記樹脂基材の表面上に本発明に係るガスバリアー層を形成させる方法が好ましい。
また、このようなプラズマ化学気相成長法によりガスバリアー性フィルムを製造する際に用いることが可能な装置としては、特に制限されないが、少なくとも一対の磁場を印加する装置を具備した成膜ローラーと、プラズマ電源とを備え、かつ一対の成膜ローラー間において放電することが可能な構成となっている装置であることが好ましく、例えば、図2に示す製造装置を用いた場合には、プラズマ化学気相成長法を利用しながらロールtoロール方式で、本発明で規定する元素プロファイルを有するガスバリアー性フィルムを得ることができる。
以下、図2を参照しながら、本発明に係るガスバリアー性フィルムのガスバリアー層の具体的な製造方法について、その詳細を説明する。なお、図2は、本発明に係るガスバリアー性フィルムの製造において好適に利用することができる磁場を印加したローラー間放電プラズマCVD装置の一例を示す模式図であり、ここで例示する装置にのみ限定されるものではない。
図2に示す磁場を印加したローラー間放電プラズマCVD装置(以下、プラズマCVD装置ともいう。)は、主には、送り出しローラー11と、搬送ローラー21、22、23及び24と、成膜ローラー31及び32と、成膜ガス供給管41と、プラズマ発生用電源51と、成膜ローラー31及び32の内部に設置された磁場発生装置61及び62と、巻取りローラー71とを備えている。また、このようなプラズマCVD製造装置においては、少なくとも成膜ローラー31及び32と、成膜ガス供給管41と、プラズマ発生用電源51と、磁場発生装置61及び62とが、図示を省略した真空チャンバー内に配置されている。更に、このようなプラズマCVD製造装置において、真空チャンバー(不図示)は、真空ポンプ(不図示)に接続されており、この真空ポンプにより真空チャンバー内の圧力を適宜調整することが可能となっている。
このようなプラズマCVD製造装置においては、一対の成膜ローラー(成膜ローラー31と成膜ローラー32)を一対の対向電極として機能させることが可能となるように、各成膜ローラーがそれぞれプラズマ発生用電源51に接続されている。一対の成膜ローラー(成膜ローラー31と成膜ローラー32)に対し、プラズマ発生用電源51より電力を供給することにより、成膜ローラー31と成膜ローラー32との間の空間で放電することが可能となり、これにより成膜ローラー31と成膜ローラー32との間の空間(放電空間ともいう。)にプラズマを発生させることができる。なお、このように、成膜ローラー31と成膜ローラー32を電極として利用することになるため、電極として適用可能な材質の選択や、その構成を適宜変更すればよい。また、このようなプラズマCVD製造装置においては、一対の成膜ローラー(成膜ローラー31及び成膜ローラー32)は、図2に示すように、その中心軸が同一平面上にほぼ平行となるようにして配置することが好ましい。このようにして、一対の成膜ローラー(成膜ローラー31及び成膜ローラー32)を配置することにより、成膜レートを倍にでき、なおかつ、同じ構造の膜を成膜できるので前記炭素分布曲線における極値を少なくとも倍増させることが可能となる。
また、成膜ローラー31及び成膜ローラー32の内部には、それぞれの成膜ローラーが回転しても、それ自身は回転しないようにして固定された磁場発生装置61及び磁場発生装置62がそれぞれ設けられていることが好ましい構成である。
上記説明した成膜ローラー31及び成膜ローラー32としては、適宜公知のローラーを用いることができる。成膜ローラー31及び32としては、より効率よく薄膜を形成することができる観点から、直径が同一のものを使うことが好ましい。また、成膜ローラー31及び成膜ローラー32の直径としては、放電条件、チャンバーのスペース等の観点から、直径として100〜1000mmφの範囲内、特に100〜700mmφの範囲内が好ましい。直径が100mmφ以上であれば、プラズマ放電空間が小さくなりすぎることがないため、生産性の劣化もなく、短時間でプラズマ放電の全熱量がフィルムにかかることを回避でき、残留応力が大きくなりにくく好ましい。一方、直径が1000mmφ以下であれば、プラズマ放電空間の均一性等も含めて装置設計上、精緻なガスバリアー層の形成条件を保持することができるため好ましい。
また、このようなプラズマCVD製造装置に用いる送り出しローラー11及び搬送ローラー21、22、23及び24としては、公知のローラーを適宜選択して用いることができる。また、巻取りローラー71としても、ガスバリアー層を形成した樹脂基材1を巻き取ることが可能なものであればよく、特に制限されず、適宜公知のローラーを用いることができる。
成膜ガス供給管41は、ガスバリアー層形成用の原料ガス及び酸素ガスを所定の速度で、放電空間に供給又は、放電空間より排出することが可能なものを適宜用いることができる。さらに、プラズマ発生用電源51としては、従来公知のプラズマ発生装置の電源を用いることができる。このようなプラズマ発生用電源51は、これに接続された成膜ローラー31と成膜ローラー32に電力を供給して、これらを放電のための対向電極として利用することを可能とする。このようなプラズマ発生用電源51としては、より効率よくプラズマCVD法を実施することが可能となることから、一対の成膜ローラーの極性を交互に反転させることが可能な交流電源などを利用することが好ましい。また、このようなプラズマ発生用電源51としては、印加電力を100W〜10kWの範囲内とすることができ、かつ交流の周波数を50Hz〜500kHzの範囲内とすることが可能な電源がより好ましい。また、磁場発生装置61及び磁場発生装置62としては、適宜公知の磁場発生装置を用いることができる。
図2に示すようなプラズマCVD装置を用いて、例えば、原料ガスの種類、プラズマ発生装置の成膜ローラー(電極ドラム)の電力、磁場発生装置の強度、真空チャンバー内の圧力、成膜ローラーの直径、並びに、樹脂基材の搬送速度を適宜調整することにより、本発明に係る元素プロファイルを有するガスバリアー性フィルムを製造することができる。すなわち、図2に示すプラズマCVD装置を用いて、成膜ガス(原料ガス等)を真空チャンバー内の放電空間に供給しつつ、一対の成膜ローラー(成膜ローラー31及び成膜ローラー32)間に、磁場を発生させながらプラズマ放電を行うことにより、成膜ガス(原料ガス等)がプラズマによって分解され、成膜ローラー31が保持している樹脂基材1の表面上並びに成膜ローラー32が保持している樹脂基材1の表面上に、本発明に係るガスバリアー層をプラズマCVD法により形成することができる。なお、このような成膜に際しては、樹脂基材1が送り出しローラー11や成膜ローラー31等により搬送されることにより、ロールtoロール方式の連続的な成膜プロセスで、樹脂基材1の表面上に前記ガスバリアー層が形成される。
〈2.5.1〉原料ガス
本発明に係るガスバリアー層の形成に用いる成膜ガスを構成する原料ガスは、少なくともケイ素を含む有機ケイ素化合物を用いることが好ましい。
本発明に適用可能な有機ケイ素化合物としては、例えば、ヘキサメチルジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、ビニルトリメチルシラン、メチルトリメチルシラン、ヘキサメチルジシラン、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、ジエチルシラン、プロピルシラン、フェニルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサン等が挙げられる。これらの有機ケイ素化合物の中でも、成膜での取扱い性及び得られるガスバリアー層のガスバリアー性等の観点から、ヘキサメチルジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンが好ましい。また、これらの有機ケイ素化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
また、前記成膜ガスは、原料ガスの他に反応ガスとして、酸素ガスを含有することが好ましい。酸素ガスは、前記原料ガスと反応して酸化物等の無機化合物を形成する役割を果たすガスである。
前記成膜ガスには、上記説明した原料ガスを真空チャンバー内に供給するため、必要に応じて、キャリアガスを用いてもよい。さらに、前記成膜ガスには、プラズマ放電を発生させるため、必要に応じて、放電用ガスを用いてもよい。このようなキャリアガス及び放電用ガスとしては、適宜公知のものを使用することができ、例えば、ヘリウム、アルゴン、ネオン、キセノン等の希ガスや水素ガスを用いることができる。
このような成膜ガスが、ケイ素を含有する有機ケイ素化合物を含む原料ガスと酸素ガスを含有する場合、原料ガスと酸素ガスの比率としては、原料ガスと酸素ガスとを完全に反応させるために理論上必要となる酸素ガスの量の比率よりも、酸素ガスの比率を過剰にし過ぎないことが好ましい。酸素ガスの比率を過剰にし過ぎてしまうと、本発明で目的とする元素プロファイルを備えたガスバリアー層が得られにくい。よって、所望のバリアー性フィルムとしての性能を得る観点からは、酸素濃度としては、前記成膜ガス中の前記有機ケイ素化合物の全量を完全酸化するのに必要な理論酸素量以下とすることが好ましい。
以下、代表例として、原料ガスとしてのヘキサメチルジシロキサン(有機ケイ素化合物、略称:HMDSO、組成式:(CH36Si2:)と、反応ガスである酸素(O2)の系について説明する。
原料ガスとしてのヘキサメチルジシロキサン((CH36Si2O)と、反応ガスである酸素(O2)とを含有する成膜ガスを、プラズマCVD法により反応させてケイ素−酸素系の薄膜を形成する場合、その成膜ガスがプラズマ放電処理により、下記反応式(1)で示される反応が起こり、二酸化ケイ素SiO2からなる薄膜が形成される。
反応式(1)
(CH36Si2O+12O2→6CO2+9H2O+2SiO2
反応式(1)で示す反応においては、ヘキサメチルジシロキサン1モルを完全酸化するのに必要な酸素量は12モルである。そのため、成膜ガス中に、ヘキサメチルジシロキサン1モルに対し、酸素を12モル以上含有させて完全に反応させた場合には、均一な二酸化ケイ素膜が形成されてしまうため、酸素のガス流量比を理論比である完全反応の原料比(1モル:12モル)以下の流量に制御して、非完全反応を遂行させる。すなわち、ヘキサメチルジシロキサン1モルに対して酸素量を化学量論比の12モルより少なく設定する必要がある。
なお、実際のプラズマCVD装置のチャンバー内の反応では、原料のヘキサメチルジシロキサンと反応ガスである酸素は、ガス供給部から成膜領域(放電空間)へ供給されて成膜されるので、反応ガスの酸素のモル量(流量)が原料のヘキサメチルジシロキサンのモル量(流量)の12倍のモル量(流量)であったとしても、現実には完全に反応を進行させることはできず、酸素の含有量を化学量論比に比して大過剰に供給して初めて反応が完結すると考えられる。例えば、CVD法により完全酸化させて酸化ケイ素を得るためには、酸素のモル量(流量)を原料のヘキサメチルジシロキサンのモル量(流量)の20倍以上程度とする場合もある。そのため、原料のヘキサメチルジシロキサンのモル量(流量)に対する酸素のモル量(流量)は、化学量論比である12倍量以下(より好ましくは、10倍以下)の量に設定することが好ましい。このような比でヘキサメチルジシロキサン及び酸素を含有させることにより、完全に酸化されなかったヘキサメチルジシロキサン中の炭素原子や水素原子がガスバリアー層中に取り込まれ、所望の元素プロファイルを有するガスバリアー層を形成することが可能となり、得られるガスバリアー性フィルムに優れたバリアー性及び屈曲耐性を付与させることが可能となる。なお、成膜ガス中のヘキサメチルジシロキサンのモル量(流量)に対する酸素のモル量(流量)が少なすぎると、酸化されなかった炭素原子や水素原子がガスバリアー層中に過剰に取り込まれることになる。この場合、バリアー膜の透明性が低下し、このようなガスバリアー性フィルムは、電子デバイス、例えば、有機ELデバイスや有機薄膜太陽電池などのように、透明性を必要とする電子デバイス用のフレキシブル基板(ガスバリアー性フィルム)には利用できなくなってしまう。このような観点から、成膜ガス中のヘキサメチルジシロキサンのモル量(流量)に対する酸素のモル量(流量)の下限は、ヘキサメチルジシロキサンのモル量(流量)の0.1倍より多い量とすることが好ましく、0.5倍より多い量とすることがより好ましい。
〈2.5.2〉真空度
プラズマCVD装置の真空チャンバー内の圧力(真空度)は、原料ガスの種類等に応じて適宜調整することができるが、0.5〜100Paの範囲内とすることが好ましい。
〈2.5.3〉ローラー成膜
図2に示すようなプラズマCVD装置等を用いたプラズマCVD法においては、成膜ローラー31及び成膜ローラー32間に放電するために、プラズマ発生用電源51に接続された電極ドラム(図2においては、成膜ローラー31及び成膜ローラー32内に設置されている。)に印加する電力は、原料ガスの種類や真空チャンバー内の圧力等に応じて適宜調整することができるものであり、一概にいえるものでないが、おおむね0.1〜10kWの範囲内とすることが好ましい。このような範囲の印加電力であれば、パーティクル(不正粒子)の発生も見られず、成膜時に発生する熱量も制御範囲内となるため、成膜時の基材表面温度の上昇による、樹脂基材の熱変形、熱による性能劣化や成膜時の皺の発生も防止することができる。また、熱で樹脂基材が溶融し、露出した成膜ローラー間に大電流の放電が発生することによる成膜ローラーの損傷等を防止することができる。
樹脂基材1の搬送速度(ライン速度ともいい、成膜速度にも関連する。)は、原料ガスの種類や真空チャンバー内の圧力等に応じて適宜調整することができるが、0.25〜100m/minの範囲内とすることが好ましく、0.5〜20m/minの範囲内とすることがより好ましい。ライン速度が上記範囲内であれば、樹脂基材の熱に起因する皺も発生し難く、形成されるガスバリアー層の膜厚も十分に制御可能な範囲となる。
以上のような方法に従って形成した本発明に係るガスバリアー層について、XPSデプスプロファイルにより測定した層の厚さ方向に対する各元素プロファイルの一例を、図3に示す。
図3は、本発明に係るガスバリアー層のケイ素分布曲線、酸素分布曲線及び炭素分布曲線の一例を示すグラフである。
図3において、符号A〜Dは、Aが炭素分布曲線、Bがケイ素分布曲線、Cが酸素分布曲線、Dが酸素・炭素分布曲線を表す。
図3に示すグラフにおいては、本発明に係るガスバリアー層が、極値を有し、炭素原子比率の最大の極大値と最小の極大値との差が5.0at%以上であり、かつガスバリアー層の全層厚の90%以上の領域において、ケイ素原子、酸素原子及び炭素原子の合計量(100at%)に対する各原子の平均原子比率が、前式(A)で規定する序列の大小関係を満たしていることが分かる。
図4は、比較例の元素プロファイルを有する、ガスバリアー層の炭素分布曲線A、ケイ素分布曲線B及び酸素分布曲線の一例を示すグラフである。
図4に示す元素プロファイルからなるガスバリアー層は、平型電極(水平搬送)タイプのプラズマCVD放電法で形成したガスバリアー層における炭素原子プロファイルA、ケイ素原子プロファイルB及び酸素原子プロファイルCであり、特に、炭素原子成分Aの濃度勾配の連続的な変化が生じていない構成であることが分かる。
〔3〕保護層
本発明に係るガスバリアー性フィルムにおいては、ガスバリアー層上に形成した保護層のナノインデンテーションにより測定される膜硬度が、2.0〜8.0GPaの範囲内であることを特徴とし、好ましくは3.0〜5.5GPaの範囲内である。
本発明に係る保護層のナノインデンテーション法により測定した膜硬度を2.0GPa以上とすることにより、表面に耐傷性を付与することはもちろんであるが、加えて、平面性に優れ、かつ電子デバイスに適用した際の故障耐性(ダークスポット耐性)に優れた特性を発現するガスバリアー性フィルムを得ることができる。また、膜硬度を10.0GPa以下とすることにより、ガスバリアー性フィルムにフレキシビリティー性を付与するとともに、優れた平面性に維持することができる。
(3.1)ナノインデンテーション法
本発明に係る保護層の膜硬度は、ナノインデンテーション法によって測定するものであり、先端形状がダイヤモンドチップからなる圧子を薄膜である保護層表面に押し込み、その時の圧子にかかる荷重Pと圧子の下の射影面積Aから求められる硬さである。
詳細なナノインデンテーション法による硬度の測定方法は、微小なダイヤモンド圧子を薄膜(保護層)に押し込みながら荷重と押し込み深さ(変位量)の関係を測定し、測定値から塑性変形硬さを算出する方法である。
特に、この測定方法は、1μm以下の薄膜の測定に対して、基材の物性の影響を受けにくく、また、押し込んだ際に薄膜に割れが発生しにくいという特徴を有している。一般に非常に薄い膜の物性測定に用いられている測定方法である。
図5は、ナノインデンテーション法による測定装置の一例を示す模式図である。
図5に記載のナノインデンテーション測定装置Nにおいて、101はトランスデューサー、102は先端形状が正三角形のダイヤモンドBerkovich圧子、Fはガスバリアー性フィルム、1は樹脂基材、2はガスバリアー層、3は保護層を示す。
このナノインデンテーション測定装置Nは、トランスデューサー101と先端形状が正三角形のダイヤモンドBerkovich圧子102を用いて、保護層3にμNオーダーの荷重を加えながらナノメートル(nm)の精度で変位量を測定することができる。この測定には、例えば、市販の「NANO Indenter XP/DCM」(MTS Systems社/MST NANO Insturuments社製)を用いることができる。
上記ナノインデンテーション測定装置Nを用いて、樹脂基材1上に形成した保護層3の膜硬度を測定する。本発明における測定条件は、以下の通りである。
〈測定条件〉
測定機:NANO Indenter XP/DCM(MTS Systems社製)
測定圧子:先端形状が正三角形のダイヤモンドBerkovich圧子
測定環境:23℃、55%RH
測定試料:5cm×5cmの大きさにガスバリアー性フィルムを切断して測定試料を作製
最大荷重設定:25μN
押し込み速度:最大荷重25μNに5secで達する速度で、時間に比例して加重を印加する。
なお、膜硬度の測定は、試料についてランダムに10点測定し、その平均値をナノインデンテーション法により測定した膜硬度とする。
(3.2)保護層の形成方法
本発明に係るガスバリアー性フィルムにおいて、ナノインデンテーション法で測定した膜硬度が2.0〜8.0GPaの範囲内である保護層を実現する手段としては、従来公知の金属酸化物薄膜の形成方法、あるいは従来から用いられているガスバリアー層の形成方法を適宜選択して適用することができる。
本発明に係る保護層の形成方法については、特に限定はなく、後述する各金属化合物を用いたドライ製膜法としては、例えば、スターイオンビーム法、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、分子線エピタキシー法、クライオンプレーティング法、プラズマ重合法、大気圧プラズマ重合法、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、コーティング法等、特開2004−68143号公報に記載されているような大気圧プラズマ重合法等を挙げることができる。一方で、生産性に優れるウェット製膜法としては、スプレーコート法、スピンコート法、ブレードコート法、ディップコート法、キャスト法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法等のウェット塗布方式を用いた方法で、例えば、金属アルコキシド体の加水分解重縮合物の溶液を塗布、乾燥して無機酸化物膜である保護層を形成するゾル−ゲル法や、特開2011−121298号公報に記載されているような、ポリシラザン含有液を塗布、乾燥した後、エキシマ照射等の表面改質処理を施して保護層を形成する方法を挙げることができる。
(3.3)ゾル−ゲル法による保護層形成
以下、ゾル−ゲル法を用いた保護層の形成方法について説明する。
ゾル−ゲル法により保護層を形成する方法としては、金属アルコキシドや加水分解重縮合触媒等の種類や量を適宜選択して、塗布及び乾燥を行い、必要に応じ後述のエネルギー照射処理を行うことで、所望の膜硬度を有する保護層を形成することができる。
金属アルコキシドにおける「金属」とは、一般に周期律表等で定義されている「金属(Metals)」の他に、「遷移金属(TransitionMetals)」の元素、「ランタノイド」の元素、「アクチノイド」の元素、及び「非金属(NonMetals)」として定義されるホウ素、ケイ素(シリコン)を含んだものとして定義することができるが、ゾル−ゲル法で使用することができる好ましい金属アルコキシドとしては、アルコキシシランや、アルコキシシラン以外の金属アルコキシドを使用することができる。アルコキシシラン以外の金属アルコキシドとしては、例えば、ジルコニウムアルコキシド、チタンアルコキシド、アルミニウムアルコキシド等が好ましい。
アルコキシシランの例としては、以下の一般式(Si)で表されるアルコキシシランを挙げることができる。
一般式(Si)
Si(OR1x(R24-x
上記一般式(Si)において、R1としては、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜4のアシル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、アセチル基等が挙げられる。また、R2としては、炭素数1〜10の有機基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−オクチル基、tert−オクチル基、n−デシル基、フェニル基、ビニル基、アリル基などの無置換の炭化水素基、γ−クロロプロピル基、CF3CH2−、CF3CH2CH2−、C25CH2CH2−、C37CH2CH2CH2−、CF3OCH2CH2CH2−、C25OCH2CH2CH2−、C37OCH2CH2CH2−、(CF32CHOCH2CH2CH2−、C49CH2OCH2CH2CH2−、3−(パーフルオロシクロヘキシルオキシ)プロピル、(CF24CH2OCH2CH2CH2−、H(CF24CH2CH2CH2−、γ−グリシドキシプロピル基、γ−メルカプトプロピル基、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル基、γ−メタクリロイルオキシプロピル基などの置換炭化水素基が挙げられる。xは2〜4の整数のものが好ましい。
これらのアルコキシシランの具体例を以下に示す。
x=4のアルコキシランとしては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラn−プロポキシシラン、テトラ−iso−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−アセトキシシランなどを挙げることができる。
x=3のアルコキシシランとしては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、iso−プロピルトリメトキシシラン、iso−プロピルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3,4−エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン、3,4−エポキシシクロヘキシルエチルトリエトキシシラン、CF3CH2CH2Si(OCH33、C25CH2CH2Si(OCH33、C25OCH2CH2CH2Si(OCH33、C37OCH2CH2CH2Si(OC253、(CF32CHOCH2CH2CH2Si(OCH33、C49CH2OCH2CH2CH2Si(OCH33、H(CF24CH2OCH2CH2CH2Si(OCH33、3−(パーフルオロシクロヘキシルオキシ)プロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
x=2のアルコキシシランとしては、例えば、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジ−n−プロピルジエトキシシラン、ジ−iso−プロピルジメトキシシラン、ジ−iso−プロピルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジビニルジエトキシシラン、(CF3CH2CH22Si(OCH32、(C37OCH2CH2CH22Si(OCH32、〔H(CF26CH2OCH2CH2CH22Si(OCH32、(C25CH2CH22Si(OCH32などを挙げることができる。
ジルコニウムアルコキシドの例としては、ジルコニウムエトキサイド、ジルコニウムイソプロポキサイド、ジルコニウムn−プロポキサイド、ジルコニウムn−ブトキサイド、ジルコニウムt−ブトキサイド、ジルコニウム2−エチルヘキシルオキサイド、ジルコニウム2−メチル−2−ブトキサイド、テトラキス(トリメチルシロキシ)ジルコニウム、ジルコニウムジn−ブトキサイド(ビス−2,4−ペンタンジオネート)、ジルコニウムジイソプロポキサイドビス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート、ジルコニウムジメタクリレートジブトキサイド、ジルコニウムヘキサフルオロペンタンジオネート、ジルコニウムメタクリルオキシエチルアセトアセテートトリn−プロポキサイド、ジルコニウム2,4−ペンタンジオネート、ジルコニウム2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート、ジルコニウムトリフルオロペンタンジオネート等が挙げられる。
チタンアルコキシドの例としては、チタンn−ブトキサイド、チタンメトキサイド、チタンエトキサイド、チタンn−プロポキサイド、チタンイソプロポキサイド、チタンt−ブトキサイド、チタンn−ノニルオキサイド、チタンi−ブトキサイド、チタンメトキシプロポキサイド、チタンクロロトリイソプロポキサイド、チタンジクロライドジエトキサイド、チタンヨードイソプロポキシド、チタンジn−ブトキサイド(ビス−2,4−ペンタジオネート)、チタンジi−プロポキサイド(ビス−2,4−ペンタジオネート)、チタンジイソプロポキサイドビス(テトラメチルヘプタンジオネート)、チタンジイソプロポキサイドビス(エチルアセトアセテート)、チタン2−エチルヘキシオキシド、チタンオキシドビス(ペンタジオネート)、チタンオキシビス(テトラメチルヘプタンジオネート)、テトラキス(トリメチルシロキシ)チタン、チタンアリルアセトアセテートトリイソプロポキシド、チタンビス(トリエタノールアミン)ジイソプロポキシド、チタンメタクリレートトリイソプロポキシド、(2−メタクリルオキシエトキシ)トリイソプロポキシチタネート、チタンメタクリルオキシエチルアセトアセテートトリイソプロキサイド、チタンメチルフェノキサイド等が挙げられる。
また、アルミニウムアルコキシドの例としては、アルミニウム(III)n−ブトキサイド、アルミニウム(III)s−ブトキサイド、アルミニウム(III)t−ブトキサイド、アルミニウム(III)エトキサイド、アルミニウム(III)イソプロポキサイド、アルミニウム(III)s−ブトキサイドビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウム(III)ジ−s−ブトキサイドエチルアセトアセテート、アルミニウム(III)ジイソプポキサイドエチルアセトアセテート、アルミニウム(III)エトキシエトキシエトキサイド、アルミニウムヘキサフルオロペンタジオネート、アルミニウム(III)3−ヒドロキシ−2−メチル−4−ピロネート、アルミニウム(III)9−オクタデセニルアセトアセテートジイソプロポキサイド、アルミニウム(III)2,4−ペンタンジオネート、アルミニウム(III)フェノキサイド、アルミニウム(III)2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネートが、チンアルコキシドの例としては、スズ(II)メトキサイド、スズ(II)エトキサイド、テトライソプロポキシスズ、テトラ−t−ブトキシスズ、テトラ−n−ブトキシスズ、ビス(2,4−ペンタンジオネート)ジクロスズ、スズ(II)2,4−ペンタンジオネート、ナトリウムスズエトキサイド、等が挙げられる。
ゾル−ゲル反応時には、水及び有機溶媒中で、前記金属アルコキシドを加水分解及び縮重合させるが、この時、触媒を用いることが好ましい。加水分解の触媒としては、一般に酸が用いられる。酸は、無機酸又は有機酸が用いられる。無機酸としては、塩酸、臭化水素、ヨウ化水素、硫酸、亜硫酸、硝酸、リン酸など、有機酸化合物としてはカルボン酸類(例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、コハク酸、トリフルオロ酢酸、パーフルオロオクタン酸、安息香酸、フタル酸など)、スルホン酸類(例えば、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸)、p−トルエンスルホン酸、ペンタフルオロベンゼンスルホン酸など)、リン酸・ホスホン酸類(例えば、リン酸ジメチルエステル、フェニルホスホン酸など)、ルイス酸類(例えば、三フッ化ホウ素エーテラート、スカンジウムトリフレート、アルキルチタン酸、アルミン酸など)、ヘテロポリ酸(例えば、リンモリブデン酸、リンタングステン酸など)などを挙げることができる。
酸の使用量は、金属アルコキシド1モル当たり、0.0001〜0.05モルであり、好ましくは0.001〜0.01モルである。
加水分解後、無機塩基やアミンなどの塩基性化合物を添加して溶液のpHを中性付近にし、縮重合を促進してもよい。
無機塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、アンモニアなど、有機塩基化合物としてはアミン類(例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、トリエチルアミン、ジブチルアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、エタノールアミン、ジアザビシクロウンデセン、キヌクリジン、アニリン、ピリジンなど)、ホスフィン類(例えば、トリフェニルホスフィン、トリメチルホスフィンなど)を用いることができる。
また、他のゾル−ゲル触媒も併用することができ、以下に併用可能な例を挙げる。
例えば、トリ−n−ブトキシエチルアセトアセテートジルコニウム、ジイソプロポキシビス(アセチルアセトナート)チタニウム、ジイソプロポキシエチルアセトアセテートアルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム等の金属キレート化合物、(C492Sn(OCOC11232、Sn(OCOCC8172などのカルボン酸型有機スズ化合物、(C492(C492SnO、(C8172SnOなどの有機スズオキサイドとエチルシリケートマレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、フタル酸ジオクチルなどのエステル化合物との反応生成物などの有機スズ化合物等の有機金属化合物などを挙げることができる。また、例えばナフテン酸ナトリウム、ナフテン酸カリウム、オクタン酸ナトリウム、2−エチルヘキサン酸ナトリウム、ラウリル酸カリウムなどの金属塩類も好ましく用いられる。
ゾル−ゲル触媒化合物の組成物中の割合は、ゾル液の原料であるアルコキシシランに対し、0.01〜50質量%、好ましくは0.1〜50質量%、さらに好ましくは0.5〜10質量%である。
次に、ゾル−ゲル反応に用いられる溶媒について述べる。
溶媒はゾル液中の各成分を均一に混合させ、本発明の組成物の固形分を調整すると同時に、種々の塗布方法に適用できるようにし、組成物の分散安定性及び保存安定性を向上させるものである。これらの溶媒は上記目的の果たせるものであれば特に限定されない。これらの溶媒の好ましい例として、例えば、水や、水との混和性の高い有機溶媒が挙げられる。
有機溶媒の例としては、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ギ酸、酢酸、酢酸メチル、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール、tert−ブチルアルコール)、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、アセトン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドなどを挙げることができる。
ゾル−ゲル反応の速度を調節する目的で、多座配位可能な有機化合物を添加して、金属アルコキシドを安定化してもよい。その例としては、アセチルアセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチルのようなβ−ジケトン又はβ−ケトエステル類、並びにアルカノールアミンが挙げられる。
次に、ゾル−ゲル法による本発明に係る保護層の塗設方法について説明する。
本発明において、ゾル−ゲル法による保護層の形成方法は、湿式法を用いて形成されるものであり、ゾル液は、スプレー法やスピンコート法、ロールコート法、ダイコート法、ブレードコート法、ディップコート法のいずれの湿式方式を用いて塗布してもよい。これらの塗布法により、金属アルコキシドより調製したゾル液を、樹脂フィルム基材のガスバリアー層上に塗布、乾燥して、保護層を形成する。
加水分解のタイミングは製造工程中のいかなる時期であっても構わない。例えば、あらかじめ必要な組成の液を加水分解部分縮合して目的のゾル液を調製し、それを塗布−乾燥する方法、必要な組成の液を調製し塗布と同時に加水分解部分縮合させながら乾燥する方法、塗布及び一次乾燥後、加水分解に必要な水含有液を重ねて塗布し加水分解させる方法等を好適に採用できる。
塗布後の乾燥温度は、支持体である樹脂フィルム基材の変形を起こさない範囲であれば特に制限はないが、好ましくは150℃以下、より好ましくは30〜150℃の範囲内であり、特に好ましくは50〜130℃の範囲内である。
塗布、乾燥後の樹脂フィルム基材をさらに高密度化し、緻密にするため、前記のようにエネルギー処理を施すことが好ましい。
これらエネルギー処理温度は、室温から樹脂フィルム基材の変形温度の間を制限なく採用することが可能であり、好ましくは30〜150℃の範囲内であり、特に好ましくは50〜130℃の範囲内である。
特に、エネルギー処理により樹脂フィルム基材が高温化する場合、樹脂フィルム基材をバックアップロール等で密着保持して保温してもよい。
(3.4)ポリシラザン含有液を用いた保護層の形成方法
本発明においては、本発明で規定する保護層の膜硬度を安定して得ることができる観点から、特に、ガスバリアー層上にポリシラザン含有液を塗布、乾燥した後、表面改質処理を施して保護層を形成する方法が好ましい。更には、表面改質処理が、波長が200nm以下の真空紫外光を照射する方法であることが好ましい態様である。
以下、ポリシラザン含有液を用いた本発明に係る保護層の形成方法について、その詳細を説明する。
本発明に係るガスバリアー性フィルムにおいては、例えば、磁場を印加したローラー間放電プラズマCVD法により形成したガスバリアー層上に保護層を設けることにより、高温高湿処理を施した後での優れた平面性を得ることができるとともに、既に形成されているガスバリアー層の形成時に生じた微小な欠陥部分を、その上面に付与するポリシラザンより構成される保護層成分で埋めることができ、ガスパージ等を効率的に防止することができ、その結果、高度のガスバリアー性を実現することができるとともに、平面性及びダークスポット耐性を向上できる。
本発明に係る保護層の膜厚としては、50〜500nmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは50nm〜300nmの範囲内である。保護層の厚さが50nm以上であれば、所望の平面性やダークスポット耐性を得ることができ、500nm以下であれば、所望の平面性を達成することができるとともに、緻密な酸窒化ケイ素膜により、クラックの発生等の膜質劣化を防止することができる。
ポリシラザン含有液を用いた本発明に係る保護層の形成方法において、保護層の膜硬度を本発明で規定する範囲に制御する方法としては、後述するポリシラザンの種類(構造、分子量等)、触媒の種類と添加量、エキシマ処理で使用する真空紫外線の照度、照射エネルギー量、照射時間等を適宜選択して設定及び組み合わせることにより、所望の膜硬度を得ることができる。
本発明に係るガスバリアー性フィルムにおいては、膜硬度が、2.0〜8.0GPaの範囲内である保護層を少なくとも1層有していればよいが、本発明の目的効果を損なわない範囲で、2層以上保護層を積層してもよく、あるいは本発明に係る保護層と他の機能層とを積層した構成であってもよい。
〈3.4.1〉ポリシラザン
本発明に係る保護層の形成に適用するポリシラザンとは、分子構造内にケイ素−窒素結合を有するポリマーで、酸窒化ケイ素の前駆体となるポリマーであり、適用するポリシラザンとしては、特に制限はないが、下記一般式(1)で表される構造を有する化合物であることが好ましい。
Figure 2014141821
上記一般式(1)において、R1、R2及びR3は、各々水素原子、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルシリル基、アルキルアミノ基、又はアルコキシ基を表す。
本発明では、得られる保護層としての緻密性の観点からは、R1、R2及びR3の全てが水素原子で構成されているパーヒドロポリシラザン(略称:PHPS)が特に好ましい。
パーヒドロポリシラザンは、直鎖構造と6員環及び8員環を中心とする環構造が存在した構造と推定されており、その分子量は、数平均分子量(Mn)で約600〜2000程度(ゲルパーミエーションクロマトグラフィによるポリスチレン換算)であり、液体又は固体の物質である。
本発明に係る保護層に適用可能なポリシラザンとしては、鎖状、環状、あるいは架橋構造を有するもの、あるいは分子内にこれら複数の構造を同時に有するものがあり、これら単独でもあるいは混合物でも利用できる。用いるポリシラザンの代表例としては、下記のようなものがあるが、これらに限定されるものではない。
上記一般式(1)において、R1、R2及びR3に水素原子を有するものは、パーヒドロポリシラザンであり、その製造法は、例えば、特公昭63−16325号公報、D.SeyferthらCommunication of Am.Cer.Soc.,C−13,January 1983.に報告されている。
上記一般式(1)において、R1及びR2に水素原子、R3にメチル基を有するポリシラザンの製造方法は、D.SeyferthらPolym.Prepr.,Am.Chem.Soc.,Div.Polym.Chem.,25,10(1984)に報告されている。この方法により得られるポリシラザンは、繰り返し単位が−(SiH2NCH3)−の鎖状ポリマーと環状ポリマーであり、いずれも架橋構造を有しない。
上記一般式(1)において、R1及びR3に水素原子、R2に有機基を有するポリオルガノ(ヒドロ)シラザンの製造方法は、D.SeyferthらPolym.Prepr.,Am.Chem.Soc.,Div.Polym.Chem.,25,10(1984)、特開昭61−89230号公報に報告されている。これらの方法により得られるポリシラザンには、−(R2SiHNH)−を繰り返し単位として、主として重合度が3〜5の環状構造を有するものや(R2SiHNH)X〔(R2SiH)1.5N〕1-X(0.4<x<1)の化学式で表される鎖状構造と環状構造を同時に有するものがある。
一般式(1)において、R1に水素原子、R2及びR3に有機基を有するポリシラザン、またR1及びR2に有機基、R3に水素原子を有するものは、−(R12SiNR3)−を繰り返し単位として、主に重合度が3〜5の環状構造を有している。用いるポリシラザンは、上記のごとく、一般式(1)で表される単位からなる主骨格を有するが、一般式(1)で表される単位は、上記にも明らかなように環状化することがあり、その場合にはその環状部分が末端基となり、このような環状化がされない場合には、主骨格の末端はR1、R2、R3と同様の基又は水素原子であることができる。
本発明に適用可能なポリシラザンとしては、その他に、特開昭62−195024号公報に報告されているような繰り返し単位が〔(SiH2n(NH)m〕及び〔(SiH2rO〕(これらの式中、n、m、rはそれぞれ1,2又は3である)で表されるポリシロキサザン、特開平2−84437号公報に報告されているようなポリシラザンにボロン化合物を反応させて製造する耐熱性に優れたポリボロシラザン、特開昭63−81122号公報、同63−191832号公報、特開平2−77427号公報に報告されているようなポリシラザンとメタルアルコキシドとを反応させて製造するポリメタロシラザン、特開平1−138108号公報、同1−138107号公報、同1−203429号公報、同1−203430号公報、同4−63833号公報、同3−320167号公報に報告されているような分子量を増加させ(上記公報6件のうち、前4者)、耐加水分解性を向上させた(上記公報6件のうち、後2者)、無機シラザン高重合体や改質ポリシラザン、特開平2−175726号公報、同5−86200号公報、同5−331293号公報、同3−31326号公報に報告されているようなポリシラザンに有機成分を導入した厚膜化に有利な共重合シラザン、特開平5−238827号公報、特開平4−272020号公報、同5−93275号公報、同5−214268号公報、同5−30750号公報、同5−338524号公報に報告されているようなポリシラザンにセラミック化を促進するための触媒的化合物を付加又は添加したプラスチックスやアルミニウムなどの金属への施工が可能で、より低温でセラミックス化する低温硬化タイプポリシラザンなども同様に使用できる。
また、ポリシラザンは、有機溶媒に溶解した溶液の状態で市販されており、市販品をそのままポリシラザン含有塗布液として使用することができる。ポリシラザン溶液の市販品としては、例えば、AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製のNN120−20、NAX120−20、NL120−20などが挙げられる。
本発明に係る保護層は、本発明の好ましい態様である磁場を印加したローラー間放電プラズマCVD法で形成したガスバリアー層上に、ポリシラザンを含む塗布液を、湿式塗布方法により塗布及び乾燥した後、真空紫外線を照射して改質処理を施すことにより形成することができる。
ポリシラザン含有塗布液の調製に用いる有機溶媒としては、ポリシラザンと容易に反応してしまうようなアルコール系や水分を含有するものの使用は避けることが好ましい。適用可能な有機溶媒としては、例えば、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素等の炭化水素溶媒、ハロゲン化炭化水素溶媒、脂肪族エーテル、脂環式エーテル等のエーテル類が使用でき、具体的には、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、ソルベッソ、ターベン等の炭化水素、塩化メチレン、トリクロロエタン等のハロゲン炭化水素、ジブチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類等がある。これらの有機溶媒は、ポリシラザンの溶解度や有機溶媒の蒸発速度等の目的にあわせて選択し、必要に応じ複数種の有機溶媒を混合しても良い。
ポリシラザンを含有する保護層形成用塗布液中のポリシラザン濃度は、形成する保護層の層厚や塗布液のポットライフによっても異なるが、好ましくは0.2〜35質量%の範囲内である。
酸窒化ケイ素への変性を促進するために、保護層形成用塗布液には、アミン触媒や、Ptアセチルアセトナート等のPt化合物、プロピオン酸Pd等のPd化合物、Rhアセチルアセトナート等のRh化合物等の金属触媒を添加することもできる。本発明においては、アミン触媒を用いることが特に好ましい。具体的なアミン触媒としては、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、3−モルホリノプロピルアミン、N,N,N′,N′−テトラメチル−1,3−ジアミノプロパン、N,N,N′,N′−テトラメチル−1,6−ジアミノヘキサン等が挙げられる。
ポリシラザンに対するこれら触媒の添加量は、保護層形成用塗布液全質量に対して0.1〜10質量%の範囲内であることが好ましく、0.2〜5質量%の範囲内であることがより好ましく、0.5〜2質量%の範囲内であることが更に好ましい。触媒添加量を上記に記載の範囲内とすることにより、反応の急激な進行よる過剰なシラノール形成、及び膜密度の低下、膜欠陥の増大のなどを避けることができる。
ポリシラザンを含有する保護層形成用塗布液を塗布する方法としては、任意の適切な湿式塗布方法を採用することができる。具体例としては、スライドホッパー法、ローラーコート法、フローコート法、インクジェット法、スプレーコート法、プリント法、ディップコート法、流延成膜法、バーコート法、カーテンコート法、グラビア印刷法等が挙げられる。
塗膜の厚さは、目的に応じて適宜設定することができる。例えば、塗膜の厚さは、乾燥後の厚さとしては、50nm〜2μmの範囲内にあることが好ましく、より好ましくは70nm〜1.5μmの範囲内にあり、100nm〜1μmの範囲内にあることが更に好ましい。
〈3.4.2〉エキシマ処理
本発明に係る保護層は、形成したポリシラザンを含む層に真空紫外線(VUV)を照射する工程により、ポリシラザンの少なくとも一部が酸窒化ケイ素へと改質される。
真空紫外線の照射処理により、ポリシラザンを含む塗膜が、SiOxyの特定組成に改質される推定メカニズムについて、パーヒドロポリシラザンを一例として説明する。
パーヒドロポリシラザンは、「−(SiH2−NH)n−」の組成で示すことができる。上記組成をSiOxyで示す場合、x=0、y=1となり、x>0とするためには外部からの酸素源の供給が必要となるが、
(i)ポリシラザン塗布液に含まれる酸素や水分、
(ii)塗布乾燥過程で、雰囲気中から塗膜に取り込まれる酸素や水分、
(iii)真空紫外線照射工程で、雰囲気中から塗膜に取り込まれる酸素や水分、オゾン、一重項酸素、
(iv)真空紫外線照射工程で印加される熱等により基材側からアウトガスとして塗膜中に移動してくる酸素や水分、
(v)真空紫外線照射工程が非酸化性雰囲気で行われる場合には、その非酸化性雰囲気から酸化性雰囲気へと移動した際に、その雰囲気から塗膜に取り込まれる酸素や水分、
などが酸素源となる。
一方、yについては、Siの酸化よりも窒化が進行する条件は非常に特殊であると考えられるため、基本的には1が上限である。
また、Si、O、Nの結合手の関係から、基本的には、x、yは2x+3y≦4の範囲にある。酸化が完全に進んだy=0の状態においては、塗膜中にシラノール基を含有するようになり、2<x<2.5の範囲となる場合もある。
真空紫外線照射工程でパーヒドロポリシラザンから酸窒化ケイ素、さらには酸化ケイ素が生じると推定される反応機構について、以下に説明する。
(1)脱水素と、それに伴うSi−N結合の形成
パーヒドロポリシラザン中のSi−H結合やN−H結合は、真空紫外線照射による励起等で比較的容易に切断され、不活性雰囲気下ではSi−Nとして再結合すると考えられる(Siの未結合手が形成される場合もある)。すなわち、酸化することなくSiNy組成として硬化する。この場合、ポリマー主鎖の切断は生じない。Si−H結合やN−H結合の切断は、触媒の存在や加熱によって促進される。切断されたHは、H2として膜外に放出される。
(2)加水分解及び脱水縮合によるSi−O−Si結合の形成
パーヒドロポリシラザン中のSi−N結合は水により加水分解され、ポリマー主鎖が切断されてSi−OHを形成する。二つのSi−OHが脱水縮合してSi−O−Si結合を形成して硬化する。この反応は大気中でも生じる反応であるが、不活性雰囲気下での真空紫外線照射中では、照射の熱によって樹脂フィルム基材からアウトガスとして生じる水蒸気が主な水分源となると考えられる。水分が過剰になると、脱水縮合しきれないSi−OHが残存し、SiO2.1〜SiO2.3の組成で示されるガスバリアー性の低い硬化膜となる。
(3)一重項酸素の直接酸化によるSi−O−Si結合の形成
真空紫外線照射中、雰囲気下に適当量の酸素が存在すると、酸化力の非常に強い一重項酸素が形成される。パーヒドロポリシラザン中のHやNは、Oと置き換わってSi−O−Si結合を形成して硬化する。ポリマー主鎖の切断により結合の組み換えが生じる場合もあると考えられる。
(4)真空紫外線照射及び励起によるSi−N結合切断を伴う酸化
真空紫外線のエネルギーは、パーヒドロポリシラザン中のSi−Nの結合エネルギーよりも高いため、Si−N結合は切断され、周囲に酸素、オゾン、水等の酸素源が存在すると、酸化されてSi−O−Si結合やSi−O−N結合が生じると考えられる。ポリマー主鎖の切断により、結合の組み換えが生じる場合もあると考えられる。
ポリシラザンを含有する塗膜に真空紫外線照射を施した保護層における酸窒化ケイ素の組成の調整は、上述の(1)〜(4)の酸化機構を適宜組み合わせて酸化状態を制御することで行うことができる。
本発明における真空紫外線照射工程において、ポリシラザン層塗膜(保護層)が受ける塗膜面での真空紫外線の照度は、30〜200mW/cm2の範囲内であることが好ましく、50〜160mW/cm2の範囲内であることがより好ましい。30mW/cm2以上であれば、改質効率の低下の懸念がなく、200mW/cm2以下であれば、塗膜にアブレーションを生じることがなく、かつ基材にダメージを与えないため好ましい。
ポリシラザン含有塗膜面における真空紫外線の照射エネルギー量は、200〜10000mJ/cm2の範囲内であることが好ましく、500〜5000mJ/cm2の範囲内であることがより好ましい。200mJ/cm2以上であれば、改質を十分に行うことができ、10000mJ/cm2以下であれば、過剰改質にならずクラックの発生や、樹脂基材の熱変形を防止することができる。
本発明に係る真空紫外光としては、波長が200nm以下であることが好ましい。
真空紫外光源としては、希ガスエキシマランプが好ましく用いられる。Xe、Kr、Ar、Neなどの希ガスの原子は、化学的に結合して分子を作らないため、不活性ガスと呼ばれる。
しかし、放電などによりエネルギーを得た希ガスの励起原子は他の原子と結合して分子を作ることができる。希ガスがキセノンの場合には、
e+Xe→Xe*
Xe*+2Xe→Xe2 *+Xe
Xe2 *→Xe+Xe+hν(172nm)
となり、励起されたエキシマ分子であるXe2 *が基底状態に遷移するときに172nmのエキシマ光を発光する。
エキシマランプの特徴としては、放射が一つの波長に集中し、必要な光以外がほとんど放射されないので効率が高いことが挙げられる。また、余分な光が放射されないので、対象物の温度を低く保つことができる。さらには始動及び再始動に時間を要さないので、瞬時の点灯及び点滅が可能である。
エキシマ発光を得るには、誘電体バリアー放電を用いる方法が知られている。誘電体バリアー放電とは、両電極間に透明石英などの誘電体を介してガス空間を配し、電極に数10kHzの高周波高電圧を印加することによりガス空間に生じ、雷に似た非常に細いマイクロ ディスチャージ(micro discharge)と呼ばれる放電であり、マイクロ ディスチャージのストリーマが管壁(誘導体)に達すると誘電体表面に電荷が溜まるため、マイクロ ディスチャージは消滅する。
このマイクロ ディスチャージが管壁全体に広がり、生成・消滅を繰り返している放電である。このため、肉眼でも確認できる光のチラツキを生じる。また、非常に温度の高いストリーマが局所的に直接管壁に達するため、管壁の劣化を早める可能性もある。
効率よくエキシマ発光を得る方法としては、誘電体バリアー放電以外に、無電極電界放電でも可能である。容量性結合による無電極電界放電で、別名RF放電とも呼ばれる。ランプと電極及びその配置は基本的には誘電体バリアー放電と同じで良いが、両極間に印加される高周波は数MHzで点灯される。無電極電界放電はこのように空間的にまた時間的に一様な放電が得られるため、チラツキがない長寿命のランプが得られる。
誘電体バリアー放電の場合は、マイクロ ディスチャージが電極間のみで生じるため、放電空間全体で放電を行わせるには外側の電極は外表面全体を覆い、かつ外部に光を取り出すために光を透過するものでなければならない。
このため、細い金属線を網状にした電極が用いられる。この電極は、光を遮らないようにできるだけ細い線が用いられるため、酸素雰囲気中では真空紫外光により発生するオゾンなどにより損傷しやすい。これを防ぐためには、ランプの周囲、すなわち照射装置内を窒素などの不活性ガスの雰囲気にし、合成石英の窓を設けて照射光を取り出す必要が生じる。この合成石英の窓は高価な消耗品であるばかりでなく、光の損失も生じる。
二重円筒型ランプは、外径が25mm程度であるため、ランプ軸の直下とランプ側面では照射面までの距離の差が無視できず、照度に大きな差を生じる。したがって、仮にランプを密着して並べても、一様な照度分布が得られない。合成石英の窓を設けた照射装置にすれば、酸素雰囲気中の距離を一様にでき、一様な照度分布が得られる。
無電極電界放電を用いた場合には、外部電極を網状にする必要はない。ランプ外面の一部に外部電極を設けるだけでグロー放電は放電空間全体に広がる。外部電極には通常アルミのブロックで作られた光の反射板を兼ねた電極がランプ背面に使用される。しかし、ランプの外径は誘電体バリアー放電の場合と同様に大きいため一様な照度分布にするためには合成石英が必要となる。
細管エキシマランプの最大の特徴は、構造がシンプルなことにある。石英管の両端を閉じ、内部にエキシマ発光を行うためのガスを封入しているだけである。
細管ランプの管の外径は6〜12mm程度であり、過度に太いと始動に高い電圧が必要になる。
放電の形態は、誘電体バリアー放電及び無電極電界放電のいずれも使用できる。電極の形状はランプに接する面が平面であっても良いが、ランプの曲面に合わせた形状にすればランプをしっかり固定できるとともに、電極がランプに密着することにより放電がより安定する。また、アルミで曲面を鏡面にすれば光の反射板にもなる。
Xeエキシマランプは、波長の短い172nmの紫外線を単一波長で放射することができ、発光効率に優れている。このエキシマ光は、酸素の吸収係数が大きいため、微量な酸素でラジカルな酸素原子種やオゾンを高濃度で発生することができる。
また、波長の短い172nmの光のエネルギーは、有機物の結合を解離させる能力が高いことが知られている。この活性酸素やオゾンと紫外線放射が持つ高いエネルギーによって、短時間でポリシラザン層の改質を実現できる。
したがって、Xeエキシマランプは、波長185nm、254nmの紫外光を発する低圧水銀ランプやプラズマ洗浄と比べ、高スループットに伴うプロセス時間の短縮や設備面積の縮小、熱によりダメージを受けやすい有機材料やプラスチック基板などへの照射を可能としている。
エキシマランプは光の発生効率が高いため、低い電力の投入で点灯させることが可能である。また、光による温度上昇の要因となる波長の長い光は発せず、紫外線領域、すなわち短い波長でエネルギーを照射するため、解射対象物の表面温度の上昇が抑えられる特徴を持っている。このため、熱の影響を受けやすいとされるポリエチレンテレフタレート(PET)などのフレシキブルフィルム基材に適している。
紫外線照射時の反応では酸素が必要となるが、真空紫外線では、酸素による吸収があるため、酸素が存在すると紫外線照射工程での効率が低下しやすいことから、真空紫外線の照射は、可能な限り酸素濃度の低い状態で行うことが好ましい。すなわち、真空紫外線照射時の酸素濃度は、10〜10000ppmの範囲内とすることが好ましく、より好ましくは50〜5000ppmの範囲内であり、更に好ましく1000〜4500ppmの範囲内である。
真空紫外線照射時に用いられる、照射雰囲気を満たすガスとしては乾燥不活性ガスとすることが好ましく、特に、コストの観点から乾燥窒素ガスにすることが好ましい。酸素濃度の調整は照射庫内へ導入する酸素ガス、不活性ガスの流量を計測し、流量比を変えることで調整可能である。
(3.5)保護層の膜密度
本発明に係る保護層は、膜密度が、1.40〜2.18g/cm3の範囲内であることが好ましい。
膜密度が1.40g/cm3以上であれば、所望の膜硬度を得ることができ、緻密な構造で、平面性に優れた保護層を構成することができる。また、膜密度が2.18g/cm3以下であれば、クラックの発生を防止でき、硬度に優れた保護層とすることができる。
本発明で規定する膜密度を達成するための手段としては、上述したポリシラザンの種類(構造、分子量等)、触媒の種類と添加量、エキシマ処理で使用する真空紫外線の照度、照射エネルギー量、照射時間等を適宜選択して設定及び組み合わせることにより、所望の膜密度を得ることができる。
本発明で規定する保護層の膜密度は、公知の分析手段を用いて求めることができるが、本発明においては、X線反射率法により求めた値を用いている。
X線反射率法の概要は、例えば、X線回折ハンドブック 151ページ(理学電機株式会社編 2000年 国際文献印刷社)や化学工業1999年1月No.22を参照して行うことができる。
本発明に有用な測定方法の具体例を以下に示す。
測定装置としては、マックサイエンス社製のMXP21を用いて行う。X線源のターゲットには銅を用い、42kV、500mAで作動させる。インシデントモノクロメーターには多層膜パラボラミラーを用いる。入射スリットは0.05mm×5mm、受光スリットは0.03mm×20mmを用いる。2θ/θスキャン方式で0から5°をステップ幅0.005°、1ステップ10秒のFT法にて測定を行う。得られた反射率曲線に対し、マックサイエンス社製のReflectivity Analysis Program Ver.1を用いてカーブフィッティングを行い、実測値とカーブフッティングの残差平方和が最小になるように各パラメーターを求める。得られた各パラメーターから、保護層の厚さ及び膜密度を求めることができる。
(3.6)保護層の形成方法
本発明に係る保護層は、ポリシラザン含有液を湿式塗布方式により塗布し、一定の温湿度の雰囲気下で乾燥させ、更に一定の低湿雰囲気下で一定時間保持し、除湿処理を行う。
次いで、上記形成したポリシラザン層に対し、真空紫外線装置を真空チャンバー内に設置して、装置内の圧力を調整して、ポリシラザン層に対し表面改質処理を施す。
代表的な真空紫外線照射装置及び表面改質処理条件の一例を、以下に示す。
〈3.6.1〉紫外線照射装置
装置:株式会社 エム・ディ・コム製エキシマ照射装置MODEL:MECL−M−1−200
照射波長:172nm
ランプ封入ガス:Xe
〈3.6.2〉表面改質処理条件
稼動ステージ上に固定したポリシラザン層を形成したガスバリアー層を有する樹脂基材に対し、以下の条件で収縮処理を行って、保護層を形成する。
エキシマランプ光強度:130mW/cm2(172nm)
試料と光源の距離:1mm
ステージ加熱温度:70℃
照射装置内の酸素濃度:1.0%
エキシマランプ照射時間:5秒。
〔4〕各機能層
本発明に係るガスバリアー性フィルムにおいては、上記説明した本発明に係るガスバリアー層及び保護層のほかに、必要に応じて、各機能層を設けることができる。
(4.1)オーバーコート層
本発明に係る保護層の上には、平面性及び屈曲性を更に向上させる目的で、オーバーコート層を形成しても良い。オーバーコート層の形成に用いられる有機物としては、有機のモノマー、オリゴマー、ポリマー等の有機樹脂、有機基を有するシロキサンやシルセスキオキサンのモノマー、オリゴマー、ポリマー等を用いた有機無機複合樹脂を好ましく用いることができる。これらの有機樹脂又は有機無機複合樹脂は、重合性基や架橋性基を有することが好ましく、これらの有機樹脂又は有機無機複合樹脂を含有し、必要に応じて重合開始剤や架橋剤等を含有する有機樹脂組成物塗布液を用いて塗布により形成した層に、光照射処理や熱処理を加えて硬化させる方法が好ましい。
(4.2)アンカー層
本発明に係るガスバリアー性フィルムにおいては、必要に応じて、樹脂基材とガスバリアー層の間に、樹脂基材とガスバリアー層との密着性改良を目的として、アンカー層(クリアハードコート層(CHC層)、あるいは平滑層ともいう。)を有してもよい。
アンカー層には、樹脂基材を加熱した際に、樹脂基材中から未反応のオリゴマー等が表面に移動して、接触する面を汚染してしまう現象(ブリードアウト)を抑制することもできる。アンカー層は、その上にガスバリアー層を設置するため、平滑であることが好ましく、その算術平均粗さRa値としては、0.3〜3nmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは0.5〜1.5nmの範囲内である。表面粗さRa値が0.3nm以上であれば、表面が適度な平滑性を有し、ローラー搬送性及びプラズマCVD法によるガスバリアー層形成に平滑性を維持することができる。一方、3nm以下であれば、ガスバリアー層形成時に、ガスバリアー層における微小な欠陥の形成を防止でき、高度なガスバリアー性や密着性等を得ることができる。
アンカー層の組成としては、平滑性が必要なことから熱硬化性樹脂あるいは光硬化性樹脂が好ましい。
アンカー層の厚さとしては、平面性を調整する観点から、0.3〜10μmの範囲内が好ましく、さらに好ましくは、0.5〜5μmの範囲内である。
《電子デバイス》
本発明に係るガスバリアー性フィルムは、電子デバイス用のフィルムとして具備することを特徴とする。
本発明の電子デバイスとしては、例えば、有機エレクトロルミネッセンスパネル(以下、有機ELパネルともいう。)、有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子ともいう。)、有機光電変換素子、液晶表示素子等が挙げられ、図1に示す構成からなる本発明に係るガスバリアー性フィルムFは、例えば、有機光電変換素子(太陽電池)、液晶表示素子、有機EL素子等を封止する封止フィルムとして用いることができる。
〔1〕有機ELパネル
このガスバリアー性フィルムFを封止フィルムとして用いた電子デバイスである有機ELパネルPの構成の一例を図6に示す。
有機ELパネルPは、図6に示すように、ガスバリアー性フィルムFと、ガスバリアー性フィルムF上に形成されたITOなどの透明電極4と、透明電極4を介してガスバリアー性フィルムF上に形成された電子デバイス本体である有機EL素子5と、その有機EL素子5を覆うように接着剤層6を介して配設された対向フィルム7等を備えている。なお、透明電極4は、有機EL素子5の一部を成すこともある。
このガスバリアー性フィルムFにおけるガスバリアー層2及び保護層3側の表面には、透明電極4と有機EL素子5が形成されるようになっている。
そして、有機ELパネルPにおいて、有機EL素子5は水蒸気に晒されないように、本発明に係るガスバリアー性フィルムFで封止されており、有機EL素子5は劣化し難くい構造になっているので、有機ELパネルPを長く使用することが可能になり、有機ELパネルPの寿命が延びる。
なお、対向フィルム7は、アルミ箔などの金属フィルムのほか、本発明に係るガスバリアー性フィルムFを用いてもよい。対向フィルム7としてガスバリアー性フィルムFを用いる場合、ガスバリアー層2が形成された面側を有機EL素子5に向けて、接着剤層6によって貼付するようにすればよい。
〔2〕有機EL素子
有機ELパネルPにおいて、本発明に係るガスバリアー性フィルムFで封止される有機EL素子5について説明する。
以下に、有機EL素子5の構成の好ましい例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されない。
(1)陽極/発光層/陰極
(2)陽極/正孔輸送層/発光層/陰極
(3)陽極/発光層/電子輸送層/陰極
(4)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(5)陽極/陽極バッファー層(正孔注入層)/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極バッファー層(電子注入層)/陰極
(2.1)陽極
有機EL素子5における陽極(透明電極4)としては、仕事関数の大きい(4eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが好ましく用いられる。このような電極物質の具体例としては、Au等の金属、CuI、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO2、ZnO等の導電性透明材料が挙げられる。また、IDIXO(In23−ZnO)等非晶質で透明導電膜の作製が可能な材料を用いてもよい。
陽極は、これらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜として形成し、その薄膜をフォトリソグラフィー法で所望のパターンに形成してもよく、あるいはパターン精度をあまり必要としない場合(100μm以上程度)には、上記電極物質の蒸着やスパッタリング時に所望の形状のマスクを介してパターン形成してもよい。
この陽極側より発光を取り出す場合には、透過率を10%より大きくすることが望ましい。また、陽極のシート抵抗としては数百Ω/□以下が好ましい。また、陽極の膜厚は材料にもよるが、通常10〜1000nmの範囲内であり、好ましくは10〜200nmの範囲内で選ばれる。
(2.2)陰極
有機EL素子5を構成する陰極としては、仕事関数の小さい(4eV以下)金属(電子注入性金属と称する)、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが用いられる。このような電極物質の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al23)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等が挙げられる。これらの中で、電子注入性及び酸化等に対する耐久性の点から、電子注入性金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第2金属との混合物、例えば、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al23)混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム等が陰極として好適である。
陰極は、これらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより作製することができる。また、陰極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましい。また、陰極の膜厚は、通常10nm〜5μmの範囲内であり、好ましくは50〜200nmの範囲内で選ばれる。なお、発光した光を透過させるため、有機EL素子5の陽極又は陰極のいずれか一方が透明又は半透明であれば、発光輝度が向上し好都合である。
また、上記説明で挙げた陰極形成用の金属を、1〜20nmの範囲の膜厚で形成した後に、陽極の説明で挙げた導電性透明材料をその上に形成することで、透明又は半透明の陰極を作製することができ、これを応用することで、陽極と陰極の両方が透過性を有する有機EL素子を作製することができる。
(2.3)注入層
注入層には電子注入層と正孔注入層があり、電子注入層と正孔注入層を必要に応じて設け、陽極と発光層又は正孔輸送層の間、あるいは陰極と発光層又は電子輸送層との間に存在させる。
注入層とは、駆動電圧低下や発光輝度向上のため、電極と有機層間に設けられる層のことで、「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の第2編第2章「電極材料」(123〜166頁)にその詳細が記載されており、正孔注入層(陽極バッファー層)と電子注入層(陰極バッファー層)とがある。
陽極バッファー層(正孔注入層)は、特開平9−45479号公報、特開平9−260062号公報、特開平8−288069号公報等にもその詳細が記載されており、具体例として、銅フタロシアニンに代表されるフタロシアニンバッファー層、酸化バナジウムに代表される酸化物バッファー層、アモルファスカーボンバッファー層、ポリアニリン(エメラルディン)やポリチオフェン等の導電性高分子を用いた高分子バッファー層等が挙げられる。
陰極バッファー層(電子注入層)は、特開平6−325871号公報、特開平9−17574号公報、特開平10−74586号公報等にもその詳細が記載されており、具体的には、ストロンチウムやアルミニウム等に代表される金属バッファー層、フッ化リチウムに代表されるアルカリ金属化合物バッファー層、フッ化マグネシウムに代表されるアルカリ土類金属化合物バッファー層、酸化アルミニウムに代表される酸化物バッファー層等が挙げられる。上記バッファー層(注入層)はごく薄い膜であることが望ましく、素材にもよるが、その層厚は0.1nm〜5μmの範囲内が好ましい。
(2.4)発光層
有機EL素子5における発光層は、電極(陰極、陽極)又は電子輸送層、正孔輸送層から注入されてくる電子及び正孔が再結合して発光する層であり、発光する部分は発光層の層内であっても発光層と隣接層との界面であってもよい。
有機EL素子5の発光層には、以下に示すドーパント化合物(発光ドーパント)とホスト化合物(発光ホスト)が含有されることが好ましい。これにより、より一層発光効率を高くすることができる。
〈2.4.1〉発光ドーパント
発光ドーパントは、大きく分けて蛍光を発光する蛍光性ドーパントとリン光を発光するリン光性ドーパントの2種類がある。
蛍光性ドーパントの代表例としては、クマリン系色素、ピラン系色素、シアニン系色素、クロコニウム系色素、スクアリウム系色素、オキソベンツアントラセン系色素、フルオレセイン系色素、ローダミン系色素、ピリリウム系色素、ペリレン系色素、スチルベン系色素、ポリチオフェン系色素、又は希土類錯体系蛍光体等が挙げられる。
リン光性ドーパントの代表例としては、元素の周期表で8属、9属、10属の金属を含有する錯体系化合物であることが好ましく、更に好ましくはイリジウム化合物、オスミウム化合物であり、中でも最も好ましいのはイリジウム化合物である。
本発明に使用できる公知のリン光性ドーパントの具体例としては、以下の文献に記載されている化合物等が挙げられる。
Nature 395,151(1998)、Appl.Phys.Lett.78,1622(2001)、Adv.Mater.19,739(2007)、Chem.Mater.17,3532(2005)、Adv.Mater.17,1059(2005)、国際公開第2009/100991号、国際公開第2008/101842号、国際公開第2003/040257号、米国特許公開第2006/835469号明細書、米国特許公開第2006/0202194号明細書、米国特許公開第2007/0087321号明細書、米国特許公開第2005/0244673号明細書等に記載の化合物を挙げることができる。
また、Inorg.Chem.40,1704(2001)、Chem.Mater.16,2480(2004)、Adv.Mater.16,2003(2004)、Angew.Chem.lnt.Ed.2006,45,7800、Appl.Phys.Lett.86,153505(2005)、Chem.Lett.34,592(2005)、Chem.Commun.2906(2005)、Inorg.Chem.42,1248(2003)、国際公開第2009/050290号、国際公開第2002/015645号、国際公開第2009/000673号、米国特許公開第2002/0034656号明細書、米国特許第7332232号明細書、米国特許公開第2009/0108737号明細書、米国特許公開第2009/0039776号、米国特許第6921915号、米国特許第6687266号明細書、米国特許公開第2007/0190359号明細書、米国特許公開第2006/0008670号明細書、米国特許公開第2009/0165846号明細書、米国特許公開第2008/0015355号明細書、米国特許第7250226号明細書、米国特許第7396598号明細書、米国特許公開第2006/0263635号明細書、米国特許公開第2003/0138657号明細書、米国特許公開第2003/0152802号明細書、米国特許第7090928号明細書等に記載の化合物を挙げることができる。
また、Angew.Chem.lnt.Ed.47,1(2008)、Chem.Mater.18,5119(2006)、Inorg.Chem.46,4308(2007)、Organometallics
23,3745(2004)、Appl.Phys.Lett.74,1361(1999)、国際公開第2002/002714号、国際公開第2006/009024号、国際公開第2006/056418号、国際公開第2005/019373号、国際公開第2005/123873号、国際公開第2005/123873号、国際公開第2007/004380号、国際公開第2006/082742号、米国特許公開第2006/0251923号明細書、米国特許公開第2005/0260441号明細書、米国特許第7393599号明細書、米国特許第7534505号明細書、米国特許第7445855号明細書、米国特許公開第2007/0190359号明細書、米国特許公開第2008/0297033号明細書、米国特許第7338722号明細書、米国特許公開第2002/0134984号明細書、米国特許第7279704号明細書、米国特許公開第2006/098120号明細書、米国特許公開第2006/103874号明細書等に記載の化合物も挙げることができる。
さらには、国際公開第2005/076380号、国際公開第2010/032663号、国際公開第第2008/140115号、国際公開第2007/052431号、国際公開第2011/134013号、国際公開第2011/157339号、国際公開第2010/086089号、国際公開第2009/113646号、国際公開第2012/020327号、国際公開第2011/051404号、国際公開第2011/004639号、国際公開第2011/073149号、特開2012−069737号公報、特開2009−114086号公報、特開2003−81988号公報、特開2002−302671号公報、特開2002−363552号公報等である。
発光ドーパントは複数種の化合物を混合して用いてもよい。
〈2.4.2〉発光ホスト
発光ホスト(単にホストともいう)とは、2種以上の化合物で構成される発光層中にて混合比(質量)の最も多い化合物のことを意味し、それ以外の化合物については「ドーパント化合物(単に、ドーパントともいう)」という。例えば、発光層を化合物A、化合物Bという2種で構成し、その混合比がA:B=10:90であれば化合物Aがドーパント化合物であり、化合物Bがホスト化合物である。更に発光層を化合物A、化合物B、化合物Cの3種から構成し、その混合比がA:B:C=5:10:85であれば、化合物A、化合物Bがドーパント化合物であり、化合物Cがホスト化合物である。
発光ホストとしては構造的には特に制限はないが、代表的にはカルバゾール誘導体、トリアリールアミン誘導体、芳香族ボラン誘導体、含窒素複素環化合物、チオフェン誘導体、フラン誘導体、オリゴアリーレン化合物等の基本骨格を有するもの、又はカルボリン誘導体やジアザカルバゾール誘導体(ここで、ジアザカルバゾール誘導体とは、カルボリン誘導体のカルボリン環を構成する炭化水素環の少なくとも一つの炭素原子が窒素原子で置換されているものを表す。)等が挙げられる。中でも、カルボリン誘導体、ジアザカルバゾール誘導体等が好ましく用いられる。
発光層に用いられるホスト化合物としては、従来公知の低分子化合物でも、繰り返し単位をもつ高分子化合物でもよく、ビニル基やエポキシ基のような重合性基を有する低分子化合物(蒸着重合性発光ホスト)でもよい。
本発明に適用可能なホスト化合物としては、例えば、特開2001−257076号公報、同2002−308855号公報、同2001−313179号公報、同2002−319491号公報、同2001−357977号公報、同2002−334786号公報、同2002−8860号公報、同2002−334787号公報、同2002−15871号公報、同2002−334788号公報、同2002−43056号公報、同2002−334789号公報、同2002−75645号公報、同2002−338579号公報、同2002−105445号公報、同2002−343568号公報、同2002−141173号公報、同2002−352957号公報、同2002−203683号公報、同2002−363227号公報、同2002−231453号公報、同2003−3165号公報、同2002−234888号公報、同2003−27048号公報、同2002−255934号公報、同2002−260861号公報、同2002−280183号公報、同2002−299060号公報、同2002−302516号公報、同2002−305083号公報、同2002−305084号公報、同2002−308837号公報、米国特許公開第2003/0175553号明細書、米国特許公開第2006/0280965号明細書、米国特許公開第2005/0112407号明細書、米国特許公開第2009/0017330号明細書、米国特許公開第2009/0030202号明細書、米国特許公開第2005/238919号明細書、国際公開第2001/039234号、国際公開第2009/021126号、国際公開第2008/056746号、国際公開第2004/093207号、国際公開第2005/089025号、国際公開第2007/063796号、国際公開第2007/063754号、国際公開第2004/107822号、国際公開第2005/030900号、国際公開第2006/114966号、国際公開第2009/086028号、国際公開第2009/003898号、国際公開第2012/023947号、特開2008−074939号公報、特開2007−254297号公報、EP第2034538号明細書等に記載されている化合物を挙げることができる。
発光層は、上記化合物を、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法(ラングミュア・ブロジェット(Langmuir Blodgett法)、インクジェット法等の公知の薄膜形成法により成膜して作製することができる。発光層としての層厚は、特に制限はないが、通常は5nm〜5μmの範囲内であり、好ましくは5〜200nmの範囲内で設定される。この発光層は、ドーパント化合物やホスト化合物が1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、あるいは同一組成又は異種組成の複数層からなる積層構造であってもよい。
(2.5)正孔輸送層
正孔輸送層とは、正孔を輸送する機能を有する正孔輸送材料を含み、広い意味で正孔注入層、電子阻止層も正孔輸送層に包含される。正孔輸送層は、単層又は複数層設けることができる。
正孔輸送層を構成する正孔輸送材料は、正孔の注入又は輸送、電子の障壁性のいずれかの特性を備えた化合物であり、有機物、無機物のいずれであってもよい。例えば、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリン系共重合体、また導電性高分子オリゴマー、特にチオフェンオリゴマー等が挙げられる。正孔輸送材料としては上記のものを使用することができるが、ポルフィリン化合物、芳香族第3級アミン化合物及びスチリルアミン化合物、特に芳香族第3級アミン化合物を用いることが好ましい。更にこれらの材料を高分子鎖に導入した、又はこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。また、p型−Si、p型−SiC等の無機化合物も正孔注入材料、正孔輸送材料として使用することができる。
正孔輸送層は、上記正孔輸送材料を、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法を含む印刷法、LB法等の公知の方法により、薄膜塗布することにより形成することができる。正孔輸送層の層厚については、特に制限はないが、通常は5nm〜5μmの範囲内であり、好ましくは5〜200nmの範囲内である。この正孔輸送層は、上記材料の1種又は2種以上からなる1層構造であってもよい。
(2.6)電子輸送層
電子輸送層とは電子を輸送する機能を有する電子輸送材料からなり、広い意味で電子注入層、正孔阻止層も電子輸送層に包含される。電子輸送層は、単層又は複数層設けることができる。
電子輸送層を構成する電子輸送材料としては、陰極より注入された電子を発光層に伝達する機能を有していればよく、その材料としては従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることができ、例えば、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタン及びアントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体等が挙げられる。さらに、上記オキサジアゾール誘導体において、オキサジアゾール環の酸素原子を硫黄原子に置換したチアジアゾール誘導体、電子吸引基として知られているキノキサリン環を有するキノキサリン誘導体も、電子輸送材料として用いることができる。さらにこれらの材料を高分子鎖に導入した、又はこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。また、8−キノリノール誘導体の金属錯体、例えば、トリス(8−キノリノール)アルミニウム(略称:Alq)、トリス(5,7−ジクロロ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5,7−ジブロモ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(2−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、ビス(8−キノリノール)亜鉛(略称:Znq)等、及びこれらの金属錯体の中心金属がIn、Mg、Cu、Ca、Sn、Ga又はPbに置き替わった金属錯体も、電子輸送材料として用いることができる。その他、メタルフリー若しくはメタルフタロシアニン、又はそれらの末端がアルキル基やスルホン酸基等で置換されているものも、電子輸送材料として好ましく用いることができる。また、正孔注入層、正孔輸送層と同様に、n型−Si、n型−SiC等の無機半導体も電子輸送材料として用いることができる。
電子輸送層は、上記電子輸送材料を、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法を含む印刷法、LB法等の公知の方法により、薄膜化することにより形成することができる。電子輸送層の層厚については特に制限はないが、通常は5nm〜5μmの範囲内であり、好ましくは5〜200nmの範囲内である。電子輸送層は上記材料の1種又は2種以上からなる1層構造であってもよい。
(2.7)有機EL素子の作製方法
次いで、有機EL素子5の作製方法について説明する。
ここでは、有機EL素子5の一例として、陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極の構成からなる有機EL素子の作製方法について説明する。
まず、本発明に係るバリアー性フィルムF上に、所望の電極物質、例えば、陽極用物質からなる薄膜を1μm以下、好ましくは10〜200nmの範囲内の膜厚になるように、例えば、蒸着やスパッタリング、プラズマCVD法等の方法により陽極を形成する。
次に、その上に有機EL素子の構成層である正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層等の有機機能層(以下、有機機能層群ともいう。)を形成させる。この有機機能層群の成膜方法としては、蒸着法、ウェットプロセス(例えば、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法、印刷法等。)等があるが、均質な膜が得られやすく、かつピンホールが生成しにくい等の点から、真空蒸着法、スピンコート法、インクジェット法、印刷法が特に好ましい。また、有機機能層毎に異なる成膜法を適用してもよい。成膜に蒸着法を適用する場合、その蒸着条件は使用する化合物の種類等により異なるが、一般にボート加熱温度としては50〜450℃の範囲、真空度としては1×10-6〜1×10-2Paの範囲内、蒸着速度としては0.01〜50nm/秒の範囲内、基材温度としては−50〜300℃の範囲内、層厚としては0.1nm〜5μmの範囲内、好ましくは5〜200nmの範囲内で適宜選択することが好ましい。
これらの各有機機能層を形成した後、その上に陰極形成用物質からなる薄膜を1μm以下、好ましくは50〜200nmの範囲の膜厚になるように、例えば、蒸着やスパッタリング等の方法により陰極を形成することにより、所望の構成からなる有機EL素子が得られる。
この有機EL素子の作製は、一回の真空引きで一貫して陽極、各有機機能層から陰極まで作製するプロセスが好ましいが、途中で取り出して異なる成膜法を適用してもよい。その際、作業を乾燥不活性ガス雰囲気下で行う等の配慮が必要となる。また、作製順序を逆にして、陰極、電子注入層、電子輸送層、発光層、正孔輸送層、正孔注入層、陽極の順で作製することも可能である。
以上のような構成からなる電子デバイス(有機ELパネルP)において、本発明に係るガスバリアー性フィルムFを具備させることにより、ガスバリアー性フィルムの本質的な効果である優れたガスバリアー性やフレキシビリティー性を発現するとともに、高温高湿環境下で長期間にわたり保存された際に、ガスバリアー性フィルムFとして優れた平面性を発揮することにより、有機ELパネルP全体の平面性を維持することができ、その結果、平面性の乱れに伴う悪影響、例えば、膜剥がれ、振動による劣化、平面性の劣化、あるいはダークスポットの発生等を効率的に防止することができ、高品位の電子デバイスを得ることができる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。なお、下記に記載のガスバリアー性フィルムの本発明及び比較例の分類は、電子デバイスとして具備したときの分類で表示してある。
《ガスバリアー性フィルムの作製》
〔ガスバリアー性フィルム1の作製:比較例〕
(樹脂基材1の準備)
二軸延伸のポリエチレンナフタレートフィルム(PENフィルム、厚さ:100μm、幅:350mm、帝人デュポンフィルム(株)製、商品名「テオネックスQ65FA」)を、樹脂基材1として用いた。
(アンカー層の形成)
上記樹脂基材の易接着面に、JSR株式会社製 UV硬化型有機/無機ハイブリッドハードコート材 OPSTARZ7501を、乾燥後の層厚が4μmになるようにワイヤーバーで塗布した後、乾燥条件として、80℃で3分間の乾燥を行った。次いで、空気雰囲気下、高圧水銀ランプ使用、硬化条件;1.0J/cm2硬化を行い、アンカー層を形成し、アンカー層付樹脂基材1を作製した。
(ガスバリアー層1の形成:ローラーCVD法)
図2に記載の磁場を印加したローラー間放電プラズマCVD装置(以下、この方法をローラーCVD法と称す。)を用い、樹脂基材のアンカー層を形成した面とは反対側の面が成膜ローラー31、32と接触するようにして、樹脂基材を装置に装着し、下記の成膜条件(プラズマCVD条件)により、アンカー層上にガスバリアー層1を、層厚が300nmとなる条件で成膜して、ガスバリアー層のみを有するガスバリアー性フィルム1を作製した。
〈プラズマCVD条件〉
原料ガス(ヘキサメチルジシロキサン、HMDSO)の供給量:50sccm(Standard Cubic Centimeter per Minute)
酸素ガス(O2)の供給量:500sccm
真空チャンバー内の真空度:3Pa
プラズマ発生用電源からの印加電力:0.8kW
プラズマ発生用電源の周波数:70kHz
樹脂基材の搬送速度:2m/min
〈元素分布プロファイルの測定〉
上記形成したガスバリアー性フィルム1のガスバリアー層1について、下記条件にてXPSデプスプロファイル測定を行い、層厚方向の薄膜層の表面からの距離における、ケイ素元素分布、酸素元素分布、炭素元素分布及び酸素炭素分布を得た。
エッチングイオン種:アルゴン(Ar+
エッチングレート(SiO2熱酸化膜換算値):0.05nm/sec
エッチング間隔(SiO2換算値):10nm
X線光電子分光装置:Thermo Fisher Scientific社製、機種名「VG Theta Probe」
照射X線:単結晶分光AlKα
X線のスポット及びそのサイズ:800×400μmの楕円形
以上のようにして測定した全層領域におけるケイ素元素分布、酸素元素分布、炭素元素分布及び酸素炭素分布より、各元素組成における連続変化領域の有無、極値の有無、炭素の原子比率の最大値と最小値の差、全層厚の90%以上の領域において、ケイ素原子、酸素原子及び炭素原子の平均原子比率を求めた。
その結果、図3に示すように、各原子組成における連続変化領域及び極値があり、炭素の原子比率の最大値と最小値の差が16at%で、ケイ素原子、酸素原子及び炭素原子の平均原子比率が、全層厚の90%以上の領域で、式(A)で規定する関係、すなわち(炭素平均原子比率)<(ケイ素平均原子比率)<(酸素平均原子比率)の関係を満たしていることを確認した。
〔ガスバリアー性フィルム2の作製:比較例〕
(樹脂基材の準備)
上記ガスバリアー性フィルム1の作製に用いたアンカー層付樹脂基材1を使用した。
(ガスバリアー層2の形成:真空蒸着法)
真空蒸着装置を用いて、SiO2を装着した抵抗加熱ボートを通電及び加熱し、蒸着速度1〜2nm/秒で、アンカー層付樹脂基材1のアンカー層表面に、SiO2からなる厚さ300nmのガスバリアー層2を、真空蒸着法により形成した。
形成したガスバリアー層2の元素分布プロファイルを、上記と同様の方法で測定した結果、組成における連続変化領域及び極値が存在しなかった。ただし、ケイ素原子と酸素原子の平均原子比率は、全層厚の90%以上の領域で、式(A)で規定する関係を満たしている。
(保護層2の形成)
上記形成したガスバリアー層2上に、テトラエトキシシラン加水分解物(エタノールと塩酸水溶液から調製)を、ワイヤレスバーを用いて、乾燥後の平均層厚が300nmとなる条件で塗布し、60℃で24時間乾燥して、ゾルゲル法により保護層2を形成して、ガスバリアー性フィルム2を作製した。
〔ガスバリアー性フィルム3の作製:比較例〕
上記ガスバリアー性フィルム2の作製において、保護層2の形成方法を、ゾルゲル法から下記に示すポリシラザンを用いたエキシマ1に変更し、厚さ300nmの保護層3を形成した以外は同様にして、ガスバリアー性フィルム3を作製した。
(エキシマ1)
次いで、下記エキシマ法に従って、ガスバリアー層2上に、厚さ300nmの保護層3を形成した。
〈ポリシラザン層形成用塗布液の調製〉
パーヒドロポリシラザン(アクアミカ NN120−10、無触媒タイプ、AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製)の10質量%ジブチルエーテル溶液を、ポリシラザン層形成用塗布液として用いた。
〈ポリシラザン層の形成〉
上記調製したポリシラザン層形成用塗布液を、ワイヤレスバーにて、乾燥後の(平均)層厚が300nmとなるように塗布し、温度85℃、相対湿度55%の雰囲気下で1分間処理して乾燥させ、更に温度25℃、相対湿度10%(露点温度−8℃)の雰囲気下に10分間保持し、除湿処理を行って、ポリシラザン層を形成した。
〈保護層3の形成:紫外光によるポリシラザン層の収縮処理〉
次いで、上記形成したポリシラザン層に対し、下記紫外線装置を真空チャンバー内に設置して、装置内の圧力を調整して、収縮処理を実施した。
〈紫外線照射装置〉
装置:株式会社 エム・ディ・コム製エキシマ照射装置MODEL:MECL−M−1−200
照射波長:172nm
ランプ封入ガス:Xe
〈改質処理条件〉
稼動ステージ上に固定したポリシラザン層を形成した樹脂基材に対し、以下の条件で収縮処理を行って、保護層3を形成した。
エキシマランプ光強度:130mW/cm2(172nm)
試料と光源の距離:1mm
ステージ加熱温度:70℃
照射装置内の酸素濃度:1.0%
エキシマランプ照射時間:5秒
〔ガスバリアー性フィルム4の作製:本発明〕
上記ガスバリアー性フィルム1の作製において、ローラーCVD法でガスバリアー層1を形成した後、下記のゾル−ゲル法により保護層4を形成した以外は同様にして、ガスバリアー性フィルム4を作製した。
(ゾル−ゲル法)
上記形成したガスバリアー層1上に、テトラエトキシシラン加水分解物(エタノールと塩酸水溶液から調製)を、ワイヤレスバーを用いて、乾燥後の平均層厚が300nmとなる条件で塗布し、60℃で2時間乾燥した後、下記の条件にてエキシマランプによる真空紫外光処理を行った。
エキシマランプ光強度:70mW/cm2(172nm)
試料とエキシマランプの距離:1mm
ステージ加熱温度:70℃
照射装置内の酸素濃度:1.0%
エキシマランプ照射時間:10秒
〔ガスバリアー性フィルム5の作製:比較例〕
上記ガスバリアー性フィルム1の作製において、ローラーCVD法でガスバリアー層1を形成した後、下記の方法に従って、ハードコート剤を用いて保護層5を形成した以外は同様にして、ガスバリアー性フィルム5を作製した。
(保護層5の形成)
下記のハードコート剤を含む保護層形成用塗布液を、ガスバリアー層1上に塗布し、80℃で乾燥した後、さらに紫外線を1.0J/cm2の条件で照射して硬化させ、厚さ300nmの保護層5を形成した。
〈保護層形成用塗布液の調製〉
市販のハードコート剤(JSR製 オプスター(登録商標)Z7534)をメチルエチルケトンで固形分濃度が50質量%になるように希釈し、更に平均粒子径が1.5μmのアクリル系微粒子(綜研化学製 ケミスノー(登録商標)MXシリーズ)を上記ハードコート剤の固形分に対して1質量%添加して、保護層形成用塗布液を調製した。
〔ガスバリアー性フィルム6の作製:本発明〕
上記ガスバリアー性フィルム1の作製において、ローラーCVD法でガスバリアー層1を形成した後、ガスバリアー性フィルム2において、ガスバリアー層の形成に用いたのと同様の真空蒸着法により、SiO2からなる厚さ300nmの保護層6を形成した以外は同様にして、ガスバリアー性フィルム6を作製した。
〔ガスバリアー性フィルム7の作製:本発明〕
上記ガスバリアー性フィルム1の作製において、ローラーCVD法でガスバリアー層1を形成した後、下記の方法(平板CVD法)により、厚さ300nmの保護層7を形成した以外は同様にして、ガスバリアー性フィルム7を作製した。
(保護層7の形成:平板型CVD)
市販されている平板電極タイプのCVD装置を用いて、下記の成膜条件(プラズマCVD条件)により、ガスバリアー層上に保護層7を、厚さが300nmとなる条件で成膜した。
〈プラズマCVD条件〉
原料ガス(ヘキサメチルジシロキサン、HMDSO)の供給量:20sccm(Standard Cubic Centimeter per Minute)
酸素ガス(O2)の供給量:100sccm
真空チャンバー内の真空度:10Pa
プラズマ発生用電源からの印加電力:0.5kW
プラズマ発生用電源の周波数:13.56MHz
樹脂基材の搬送速度:1m/min
〔ガスバリアー性フィルム8の作製:比較例〕
上記ガスバリアー性フィルム4の作製において、ガスバリアー性フィルム3の作製に用いたのと同様のエキシマ法を用いて保護層8を形成した以外は同様にして、ガスバリアー性フィルム8を作製した。ただし、エキシマ法におけるエキシマランプ照射時間を、1秒に変更した(この方法を、エキシマ2と称す。)。
〔ガスバリアー性フィルム9の作製:本発明〕
上記ガスバリアー性フィルム4の作製において、ガスバリアー性フィルム3の作製に用いたのと同様のエキシマ法を用いて保護層9を形成した以外は同様にして、ガスバリアー性フィルム9を作製した。ただし、エキシマ法におけるエキシマランプ照射時間は、3秒に変更した(この方法を、エキシマ3と称す。)。
〔ガスバリアー性フィルム10の作製:本発明〕
上記ガスバリアー性フィルム4の作製において、ガスバリアー性フィルム3の作製に用いたのと同様のエキシマ法(エキシマ1)を用い、エキシマランプ照射時間が5秒とする条件で保護層10を形成した以外は同様にして、ガスバリアー性フィルム10を作製した。
〔ガスバリアー性フィルム11の作製:本発明〕
上記ガスバリアー性フィルム4の作製において、ガスバリアー性フィルム3の作製に用いたのと同様のエキシマ法を用いて保護層11を形成した以外は同様にして、ガスバリアー性フィルム11を作製した。ただし、エキシマ法におけるエキシマランプ照射時間は、10秒に変更した(この方法を、エキシマ4と称す。)。
〔ガスバリアー性フィルム12の作製:本発明〕
上記ガスバリアー性フィルム4の作製において、ガスバリアー性フィルム3の作製に用いたのと同様のエキシマ法を用いて保護層12を形成した以外は同様にして、ガスバリアー性フィルム12を作製した。ただし、エキシマ法におけるエキシマランプ照射時間は、20秒に変更した(この方法を、エキシマ5と称す。)。
〔ガスバリアー性フィルム13の作製:本発明〕
上記ガスバリアー性フィルム10の作製において、ガスバリアー層の層厚を100nmに変更した以外は同様にして、ガスバリアー性フィルム13を作製した。
〔ガスバリアー性フィルム14の作製:本発明〕
上記ガスバリアー性フィルム10の作製において、ガスバリアー層の層厚を600nmに変更した以外は同様にして、ガスバリアー性フィルム14を作製した。
〔ガスバリアー性フィルム15の作製:比較例〕
上記ガスバリアー性フィルム10の作製において、ガスバリアー層のローラーCVD法による成膜条件として、原料ガスと酸素ガスの供給量及び印加電力を炭素原子の最大値と最小値の差が4.0at%となる条件に調整してガスバリアー層を成膜した以外は同様にして、ガスバリアー性フィルム15を作製した。
〔ガスバリアー性フィルム16の作製:本発明〕
上記ガスバリアー性フィルム10の作製において、ガスバリアー層のローラーCVD法による成膜条件として、原料ガスと酸素ガスの供給量及び印加電力を炭素原子の最大値と最小値の差が7.0at%となる条件に調整してガスバリアー層を成膜した以外は同様にして、ガスバリアー性フィルム16を作製した。
〔ガスバリアー性フィルム17の作製:比較例〕
(樹脂基材の準備)
二軸延伸のポリエチレンナフタレートフィルム(PENフィルム、厚さ:100μm、幅:350mm、帝人デュポンフィルム(株)製、商品名「テオネックスQ65FA」)を、樹脂基材として用いた。
(アンカー層の形成)
上記樹脂基材の易接着面に、JSR株式会社製 UV硬化型有機/無機ハイブリッドハードコート材 OPSTARZ7501を乾燥後の層厚が4μmになるようにワイヤーバーで塗布した後、乾燥条件として、80℃で3分間の乾燥を行った後、空気雰囲気下、高圧水銀ランプ使用、硬化条件;1.0J/cm2硬化を行い、アンカー層を形成した。
(ガスバリアー層の形成:平板型CVD)
市販されている平板電極タイプのCVD装置を用いて、下記の成膜条件(プラズマCVD条件)により、アンカー層上にガスバリアー層を、厚さが300nmとなる条件で成膜して、ガスバリアー性フィルム17を作製した。ガスバリアー性フィルム17には、保護層は形成していない。
〈プラズマCVD条件〉
原料ガス(ヘキサメチルジシロキサン、HMDSO)の供給量:20sccm(Standard Cubic Centimeter per Minute)
酸素ガス(O2)の供給量:100sccm
真空チャンバー内の真空度:10Pa
プラズマ発生用電源からの印加電力:0.5kW
プラズマ発生用電源の周波数:13.56MHz
樹脂基材の搬送速度:1m/min
形成したガスバリアー層の元素分布プロファイルを、上記と同様の方法で測定した結果、図4に示すように、膜組成における連続変化領域及び極値が存在せず、炭素の原子比率の最大値と最小値の差が1.0at%であった。ただし、ケイ素原子、酸素原子及び炭素原子の平均原子比率は、全層厚の90%以上の領域で、式(A)で規定する関係を満たしている。
〔ガスバリアー性フィルム18の作製:比較例〕
上記ガスバリアー性フィルム17の作製において、ガスバリアー性フィルム3の作製に用いたのと同様の方法で、ガスバリアー層上にエキシマ法(エキシマ1)を用いて保護層18を形成した以外は同様にして、ガスバリアー性フィルム18を作製した。
Figure 2014141821
《電子デバイス:有機ELパネルの作製》
〔有機ELパネル1の作製〕
(第1電極層の形成)
上記作製したガスバリアー性フィルム1のガスバリアー層上に、厚さ150nmのITO膜(インジウムチンオキシド)をスパッタ法により成膜し、フォトリソグラフィー法によりパターニングを行い、第1電極層を形成した。なお、パターンは、発光面積が50mm平方になるようなパターンとして形成した。
(正孔輸送層の形成)
ガスバリアー性フィルム1の上記形成した第1電極層上に、下記の正孔輸送層形成用塗布液を用い、25℃、相対湿度50%の環境下で、押出し塗布機で塗布し、下記の条件で乾燥及び加熱処理を行って、正孔輸送層を形成した。なお、正孔輸送層形成用塗布液は、乾燥後の厚さが50nmとなる条件で塗布した。
正孔輸送層形成用塗布液を塗布する前に、ガスバリアー性フィルム1の両面に対し洗浄表面改質処理及び帯電除去処理を行った。洗浄表面改質処理としては、波長184.9nmの低圧水銀ランプを使用し、照射強度15mW/cm2、距離10mmで実施した。帯電除去処理は、微弱X線による除電器を使用して行った。
〈正孔輸送層形成用塗布液の調製〉
ポリエチレンジオキシチオフェン・ポリスチレンスルホネート(PEDOT/PSS、Bayer社製 Bytron P AI 4083)の30質量部を、純水の65質量部及びメタノールの5質量部で希釈した溶液を、正孔輸送層形成用塗布液として準備した。
〈乾燥及び加熱処理条件〉
正孔輸送層形成用塗布液を塗布した後、正孔輸送層形成面に対し、高さ100mm、吐出風速1m/s、幅手の風速分布5%、乾燥温度100℃で溶媒を除去した後、加熱処理装置を用い、温度150℃で裏面伝熱方式の熱処理を行い、正孔輸送層を形成した。
(発光層の形成)
上記で形成した正孔輸送層上に、以下に示す白色発光層形成用塗布液を、下記の条件により押出し塗布機で塗布した後、下記の条件で乾燥及び加熱処理を行い、発光層を形成した。白色発光層形成用塗布液は、乾燥後の層厚が40nmとなる条件で塗布した。
〈白色発光層形成用塗布液の調製〉
ホスト材料として、下記に示す化合物H−Aを1.0gと、第1のドーパント材料として下記化合物D−Aを100mgと、第2のドーパント材料として下記化合物D−Bを0.2mgと、第3のドーパント材料として下記化合物D−Cを0.2mgとを、100gのトルエンに溶解して、白色発光層形成用塗布液を調製した。
Figure 2014141821
〈塗布条件〉
塗布工程は、窒素ガス濃度が99%以上の雰囲気下で、塗布温度を25℃、塗布速度1m/minで行った。
〈乾燥及び加熱処理条件〉
白色発光層形成用塗布液を、押出し塗布機を用いて、正孔輸送層上に塗布した後、成膜面に向け、高さ100mm、吐出風速1m/s、幅手の風速分布5%、乾燥温度60℃で溶媒を除去した後、引き続き、温度130℃で加熱処理を行い、発光層を形成した。
(電子輸送層の形成)
上記形成した発光層上に、以下に示す電子輸送層形成用塗布液を用い、下記の条件により押出し塗布機で塗布した後、下記の条件で乾燥及び加熱処理し、電子輸送層を形成した。電子輸送層形成用塗布液は、乾燥後の層厚が30nmとなる条件で塗布した。
〈電子輸送層形成用塗布液の調製〉
電子輸送層形成用塗布液は、下記化合物E−Aを、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール中に、濃度として0.5質量%となる条件で溶解して調製した。
Figure 2014141821
〈塗布条件〉
塗布工程は、窒素ガス濃度が99%以上の雰囲気下で、電子輸送層形成用塗布液の塗布温度を25℃とし、塗布速度1m/minで行った。
〈乾燥及び加熱処理条件〉
電子輸送層形成用塗布液を、発光層上に塗布した後、成膜面に向け高さ100mm、吐出風速1m/s、幅手の風速分布5%、乾燥温度60℃で溶媒を除去した後、引き続き、加熱処理部で、温度200℃で加熱処理を行い、電子輸送層を形成した。
(電子注入層の形成)
上記形成した電子輸送層上に、下記の方法に従って、電子注入層を形成した。
電子輸送層まで形成したガスバリアー性フィルム1を減圧チャンバーに投入し、5×10-4Paまで減圧した。あらかじめ、真空チャンバー内のタンタル製蒸着ボートに装填しておいたフッ化セシウムを加熱し、層厚が3nmの電子注入層を形成した。
(第2電極の形成)
上記で形成した電子注入層上の第1電極の取り出し電極になる部分を除く領域に、5×10-4Paの真空下で、第2電極形成材料としてアルミニウムを使用し、取り出し電極を有するように蒸着法により、発光面積が50mm平方になるようにマスクパターン成膜して、厚さ100nmの第2電極を積層した。
(裁断)
以上のように、第2電極まで形成した積層体を、再び窒素雰囲気に移動し、規定の大きさに、紫外線レーザーを用いて裁断し、有機EL素子1を作製した。
(電極リード接続)
作製した有機EL素子1に、ソニーケミカル&インフォメーションデバイス株式会社製の異方性導電フィルム(ACF) DP3232S9を用いて、フレキシブルプリント基板(ベースフィルム:ポリイミド12.5μm、圧延銅箔18μm、カバーレイ:ポリイミド12.5μm、表面処理NiAuメッキ)を接続した。
圧着条件としては、圧着温度:170℃(別途熱伝対を用いて測定した異方性導電フィルム(ACF)温度:140℃)、圧力:2MPa、圧着時間:10秒で圧着を行った。
(封止)
封止部材として、厚さ30μmのアルミニウム箔(東洋アルミニウム株式会社製)に、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ12μm)をドライラミネーション用の接着剤(2液反応型のウレタン系接着剤)を用いてラミネートした(接着剤層の層厚:1.5μm)ものを用意した。
用意した封止部材のアルミニウム面に、熱硬化性接着剤を、ディスペンサーを使用してアルミ箔の接着面(つや面)に沿って厚さ20μmで均一に塗布し、接着剤層を形成した。
このとき、熱硬化性接着剤としては、下記の(A)〜(C)を混合したエポキシ系接着剤を用いた。
(A)ビスフェノールAジグリシジルエーテル(DGEBA)
(B)ジシアンジアミド(DICY)
(C)エポキシアダクト系硬化促進剤
封止部材を、取り出し電極及び電極リードの接合部を覆うようにして密着・配置して、圧着ローラーを用いて、圧着条件として、圧着ローラー温度120℃、圧力0.5MPa、装置速度0.3m/minで密着封止して、図6に記載の構成からなる有機ELパネル1を作製した。
〔有機ELパネル2〜18の作製〕
上記有機ELパネル1の作製において、ガスバリアー性フィルム1に代えて、上記作製したガスバリアー性フィルム2〜18を用いた以外は同様にして、有機ELパネル2〜18を作製した。
《有機ELパネルの評価》
上記作製した各ガスバリアーフィルム及び有機ELパネルについて、下記の方法に従って、水蒸気透過率の測定(ガスバリアーフィルム)及び耐久性(有機ELパネル)の評価を行った。
〔水蒸気透過率の測定〕
各ガスバリアー性フィルムについて、JIS K 7129−1992に準拠した方法で水蒸気透過率を測定した結果、いずれのガスバリアー性フィルムも、水蒸気透過率(温度:60±0.5℃、相対湿度(RH):90±2%)は3×10-3g/(m2・24h)以下であった。
〔耐久性の評価〕
(平面性の評価)
各有機ELパネルについて、温度60℃、相対湿度90%の環境下で400時間の加速劣化処理を施した後、下記の方法に従って平面性の評価を行った。
上記加速劣化処理を施した各有機ELパネルに対し、下記の方法に従って発光面の平面度を測定し、下記の基準に従って平面性を評価した。
〈平面度測定〉
平面度測定機;CNC画像測定機クイックビジョンQVH404(ミツトヨ社製)
〈評価ランク〉
◎:平面度が、0.05mm未満である
○:平面度が、0.05mm以上、0.10mm未満である
△:平面度が、0.10mm以上、0.50mm未満である
×:平面度が、0.50mm以上、1.00mm未満である
××:平面度が、1.00mm以上である
(ダークスポット耐性)
各有機ELパネルに、1mA/cm2の電流を印加して発光させた。次いで、印加直後と、65℃、90%RHの環境下で発光時間として、300時間及び500時間で連続発光させた。次いで、発光後の発光状態について、100倍の光学顕微鏡(株式会社モリテックス製 MS−804、レンズMP−ZE25−200)を用い、有機ELパネルの一部分を拡大して撮影した。次いで、撮影画像を2mm四方に切り抜き、それぞれの画像について、ダークスポット発生の有無を観察した。観察結果より、発光面積に対するダークスポットの発生面積比率を求め、下記の基準に従って、ダークスポット耐性を評価した。
◎:500時間発光後の試料でも、ダークスポットの発生は全く認められない
○:300時間発光後の試料では、ダークスポットの発生は全く認められないが、500時間発光後の試料において、僅かにダークスポットの発生が認められる(発生面積0.1%以上、3.0%未満)
△:300時間発光後の試料で、僅かにダークスポットの発生が認められる(発生面積0.1%以上、3.0%未満)
×:300時間発光後の試料で、明らかなダークスポットの発生が認められる(発生面積3.0%以上、6.0%未満)
××:300時間発光後の試料で、多数のダークスポットの発生が認められる(発生面積6.0%以上)
以上により得られた結果を、表2に示す。
Figure 2014141821
表2に記載の結果より明らかなように、本発明で規定する構成からなるガスバリアー性フィルムを具備した電子デバイスの一例である有機ELパネルは、比較例に対し、高温、高湿環境下で長期間にわたり加熱劣化処理を施した後の平面性に優れ、かつ平面性を維持することにより発光層へのストレスが低減され、ダークスポット耐性に対し優れた効果を発現することができることが分かる。
本発明の電子デバイスは、ガスバリアー性、耐久性(平面性及び故障耐性(ダークスポット耐性))に優れた特性を備え、有機エレクトロルミネッセンスパネル、有機エレクトロルミネッセンス素子、有機光電変換素子、液晶表示素子に好適に利用できる。
1 樹脂基材
2 ガスバリアー層
3 保護層
4 陽極(透明電極)
5 有機EL素子(電子デバイス本体)
6 接着剤層
7 対向フィルム
11 送り出しローラー
21、22、23、24 搬送ローラー
31、32 成膜ローラー
41 ガス供給管
51 プラズマ発生用電源
61、62 磁場発生装置
71 巻取りローラー
101 トランスデューサー
102 ダイヤモンドBerkovich圧子
A 炭素分布曲線
B ケイ素分布曲線
C 酸素分布曲線
D 酸素炭素分布曲線
F ガスバリアー性フィルム
N ナノインデンテーション測定装置
P 有機ELパネル(電子デバイス)

Claims (8)

  1. 樹脂基材上に、ガスバリアー層と保護層とをこの順で積層したガスバリアー性フィルムを具備した電子デバイスであって、
    前記ガスバリアー層が、炭素原子、ケイ素原子及び酸素原子を含有し、層厚方向に組成が連続的に変化し、下記(1)及び(2)で規定する要件を満たし、
    かつ前記保護層が、ナノインデンテーション法で測定した膜硬度が、2.0〜8.0GPaの範囲内であることを特徴とする電子デバイス。
    (1)前記ガスバリアー層についてのX線光電子分光法による深さ方向の元素分布測定に基づく各構成元素の分布曲線のうち、当該ガスバリアー層の層厚方向における前記ガスバリアー層の表面からの距離と、ケイ素原子、酸素原子及び炭素原子の合計量(100at%)に対する炭素原子の量の比率(「炭素原子比率(at%)」という。)との関係を示す炭素分布曲線において、極値を有し、前記炭素原子比率の最大の極値(極大値)と最小の極値(極小値)との差が5.0at%以上である。
    (2)前記ガスバリアー層の全層厚の90%以上の領域において、ケイ素原子、酸素原子及び炭素原子の合計量(100at%)に対する各原子の平均原子比率が、下記式(A)又は(B)で表される序列の大小関係を有する。
    式(A)
    (炭素平均原子比率)<(ケイ素平均原子比率)<(酸素平均原子比率)
    式(B)
    (酸素平均原子比率)<(ケイ素平均原子比率)<(炭素平均原子比率)
  2. 前記ガスバリアー層の全層厚の90%以上の領域におけるケイ素原子、酸素原子及び炭素原子の平均原子比率が、前記式(A)で表される序列の大小関係を有することを特徴とする請求項1に記載の電子デバイス。
  3. 前記保護層のナノインデンテーション法で測定した膜硬度が、3.0〜5.5GPaの範囲内であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電子デバイス。
  4. 前記保護層の膜密度が、1.40〜2.18g/cm3の範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の電子デバイス。
  5. 樹脂基材上に、ガスバリアー層と保護層とをこの順に積層したガスバリアー性フィルムを具備した電子デバイスの製造方法であって、
    炭素原子、ケイ素原子及び酸素原子を含有し、層厚方向に組成が連続的に変化し、下記(1)及び(2)で規定する要件を満たすガスバリアー層を形成する工程と、ナノインデンテーション法で測定した膜硬度が、2.0〜8.0GPaの範囲内である保護層を形成する工程を経て、製造することを特徴とする電子デバイスの製造方法。
    (1)前記ガスバリアー層についてのX線光電子分光法による深さ方向の元素分布測定に基づく各構成元素の分布曲線のうち、当該ガスバリアー層の層厚方向における前記ガスバリアー層の表面からの距離と、ケイ素原子、酸素原子及び炭素原子の合計量(100at%)に対する炭素原子の量の比率(「炭素原子比率(at%)」という。)との関係を示す炭素分布曲線において、極値を有し、前記炭素原子比率の最大の極値(極大値)と最小の極値(極小値)との差が5.0at%以上である。
    (2)前記ガスバリアー層の全層厚の90%以上の領域において、ケイ素原子、酸素原子及び炭素原子の合計量(100at%)に対する各原子の平均原子比率が、下記式(A)又は(B)で表される序列の大小関係を有する。
    式(A)
    (炭素平均原子比率)<(ケイ素平均原子比率)<(酸素平均原子比率)
    式(B)
    (酸素平均原子比率)<(ケイ素平均原子比率)<(炭素平均原子比率)
  6. 有機ケイ素化合物を含む原料ガスと酸素ガスを用いて、磁場を印加したローラー間に放電空間を有する放電プラズマ化学気相成長法により、前記ガスバリアー層を形成することを特徴とする請求項5に記載の電子デバイスの製造方法。
  7. 前記ガスバリアー層上にポリシラザン含有液を塗布、乾燥した後、表面改質処理を施して、前記保護層を形成することを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の電子デバイスの製造方法。
  8. 前記保護層の形成に用いる前記表面改質処理が、波長が200nm以下の真空紫外光を照射する方法であることを特徴とする請求項7に記載の電子デバイスの製造方法。
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