JPWO2013047372A1 - Ncl法に適した、ポリペプチド断片の効率的な製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
ペプチド鎖を化学合成する方法としては、主に固相合成法が用いられる。しかし固相合成法によって得られるペプチド鎖は、一般的に短鎖であり、長くとも50残基程度である。このため長鎖のペプチド鎖を合成するためには、生合成を用いることが好ましい。
この方法は、無保護のペプチドを用い緩衝溶液中で混合するのみで、ペプチド結合を介して二つのペプチド鎖を連結することのできる手法である。NCL法はペプチドのように数多くの官能基を有した化合物同士の反応であっても、選択的に一方のペプチドC末端と他方のペプチドN末端を連結することができる。このような点から、タンパク質を化学合成するためにはいかにNCL法を利用するかが重要になる。
第1のポリペプチド断片と第2のポリペプチド断片とを特定の配列を介在させて、1つのポリペプチドとして作製することにより、NCL法に適した、N末端がシステインである第1のポリペプチド断片とC末側が修飾された第2のポリペプチド断片とを効率的に製造できることを見出した。
即ち、本発明は、
(1)以下の構造を有するポリペプチド:
(N末側) 第2のポリペプチド断片−Cys−W−(His)n−Z−Met−第1のポリペプチド断片 (C末側)
[ここでnは、0〜10の整数を意味し、Cysはシステイン、Wは任意の1、2又は3個のアミノ酸を意味し、Zは、任意の0、1、又は2個のアミノ酸を意味し、Hisはヒスチジンを意味し、Metはメチオニンを意味する。また、第1のポリペプチド断片のN末端はシステインである。]
にCNBrを反応させ、以下のポリペプチド断片を得るステップ;
(A)N末端がシステインである第1のポリペプチド断片
(B)以下の構造を有する第3のポリペプチド断片:
(N末側) 第2のポリペプチド断片−Cys−W−(His)n−Z−Met’ (C末側)
[ここで、Met’は、Metの誘導体を意味する。]
(2)前記第3のポリペプチド断片に、下記式(I)で表わされる化合物:
Xは硫黄原子または酸素原子であり、
R1及びR2は、脱離基である。]
を反応させ、続いて、有機溶媒中で、下記式(II)で表わされる化合物:
Yは、酸素原子、硫黄原子、または、=NHであり、
R3は、水素原子、アシル基、または、アルコキシカルボニル基である。]
を反応させることにより、以下の構造を有するC末側が修飾された第2のポリペプチド断片:
(N末側) 第2のポリペプチド断片−C(=O)−NH−C(=Y)NHR3 (C末側)
を得るステップ、を含む、NCL法に適した、N末端がシステインである第1のポリペプチド断片とC末側が修飾された第2のポリペプチド断片とを効率的に製造する方法に関する。
前記(2)のステップにおいて得られたC末側が修飾された第2のポリペプチド断片に、さらに下記式で表されるチオール
R4−SH
[式中、R4は、置換もしくは非置換のベンジル基、置換もしくは非置換のアリール基、および、置換もしくは非置換のアルキル基からなる群から選択されるいずれか一つの基である。]
を反応させ、C末側の−NH−C(=Y)NHR3基とチオール基とを交換させることにより、以下の構造を有するC末側が修飾された第2のポリペプチド断片:
(N末側) 第2のポリペプチド断片−C(=O)−SR4 (C末側)
を得るステップをさらに含むことを特徴とする。
また、本発明の製造方法の一実施態様においては、前記式(I)で表わされる化合物におけるXが硫黄原子であることを特徴とする。
また、本発明の製造方法の一実施態様においては、前記式(I)で表わされる化合物中におけるR1が、−O−C6アリール基であることを特徴とする。
また、本発明の製造方法の一実施態様においては、前記式(I)で表わされる化合物におけるR2が、ハロゲン原子、または、置換もしくは非置換の−S−C6−10アリール基であることを特徴とする。
また、本発明の製造方法の一実施態様においては、前記式(II)で表わされる化合物におけるYが=NHであることを特徴とする。
また、本発明の製造方法の一実施態様においては、前記式(II)で表わされる化合物におけるR3が、アセチル基であることを特徴とする。
また、本発明の製造方法の一実施態様においては、前記、以下の構造を有するポリペプチド:
(N末側) 第2のポリペプチド断片−Cys−W−(His)n−Z−Met−第1のポリペプチド断片 (C末側)
が、細胞によって発現された組換えポリペプチド断片であることを特徴とする。
また、本発明の製造方法の一実施態様においては、前記細胞が大腸菌であることを特徴とする。
また、本発明の製造方法の一実施態様においては、Wが1個のアミノ酸であり、かつ、Val、Ile、Leu、Trpからなる群より選択されるいずれか一つのアミノ酸であることを特徴とする。
また、本発明の製造方法の一実施態様においては、nが6〜10であることを特徴とする。
以下の構造を有するポリペプチド:
(N末側) 第2のポリペプチド断片−P−Met−第1のポリペプチド断片 (C末側)
[ここでPは、任意の0〜10個のアミノ酸であり、Metはメチオニンを意味し、第1のポリペプチド断片のN末側はシステインである。]
にCNBrを反応させることを特徴とする方法に関する。
(1)製造しようとする所望の糖鎖付加ポリペプチドのペプチド配列を、少なくとも、
・糖鎖が付加されたアミノ酸を含むポリペプチドからなる糖鎖含有ポリペプチド断片、
・糖鎖含有ポリペプチド断片よりもN末側にあり所望の糖鎖付加ペプチドのN末側を含むポリペプチドからなる第2のポリペプチド断片、
・糖鎖含有ポリペプチド断片よりもC末側にあり所望の糖鎖付加ペプチドのC末側を含むポリペプチドからなる第1のポリペプチド断片、
・存在し得る場合には、糖鎖含有ポリペプチド断片と第2のポリペプチド断片との間のポリペプチド断片、
・存在し得る場合には、糖鎖含有ポリペプチド断片と第1のポリペプチド断片との間のポリペプチド断片、
に分類して設計するステップ;
ここで、第1のポリペプチド断片のN末端はシステインであるように設計されており、
(2)以下の構造を有するポリペプチド:
(N末側) 第2のポリペプチド断片−Cys−W−(His)n−Z−Met−第1のポリペプチド断片 (C末側)
[ここでnは、0〜10の整数を意味し、Cysはシステイン、Wは任意の1、2又は3個のアミノ酸を意味し、Zは、任意の0、1、又は2個のアミノ酸を意味し、Hisはヒスチジンを意味し、Metはメチオニンを意味する。また、第1のポリペプチド断片のN末端はシステインである。]
をコードするヌクレオチド配列を含む発現ベクターを用いて、大腸菌によって発現させ、前記構造を有するポリペプチドを取得するステップ;
(3)ステップ(2)で得られたポリペプチドにCNBrを反応させ、以下のポリペプチド断片を得るステップ;
(A)N末端がシステインである第1のポリペプチド断片
(B)以下の構造を有する第3のポリペプチド断片:
(N末側) 第2のポリペプチド断片−Cys−W−(His)n−Z−Met’ (C末側)
(ここで、Met’は、Metの誘導体を意味する。)
(4)前記第3のポリペプチド断片に、下記式(I)で表わされる化合物:
を反応させ、続いて、有機溶媒中で、下記式(II)で表わされる化合物:
Yは酸素原子、硫黄原子、または、NH基であり、
R3は、水素原子、アシル基、または、アルコキシカルボニル基である。]
を反応させることにより、以下の構造を有するC末側が修飾された第2のポリペプチド断片:
(N末側) 第2のポリペプチド断片−C(=O)−NH−C(=Y)NHR3 (C末側)
を得るステップ;
(5)任意に、前記(4)のステップにおいて得られたC末側が修飾された第2のポリペプチド断片に、さらに下記式で表されるチオール
R4−SH
[式中、R4は、置換もしくは非置換のベンジル基、置換もしくは非置換のアリール基、および、置換もしくは非置換のアルキル基からなる群から選択されるいずれか一つの基である。]
を反応させ、C末側の−NH−C(=Y)NHR3基とチオール基とを交換させることにより、以下の構造を有するC末側が修飾された第2のポリペプチド断片:
(N末側) 第2のポリペプチド断片−C(=O)−SR4 (C末側)
を得るステップ;
(6)化学的に合成することにより別に調製された、
・前記糖鎖含有ポリペプチド断片、
・存在し得る場合には、糖鎖含有ポリペプチド断片と第2のポリペプチド断片との間の前記ポリペプチド断片、
・存在し得る場合には、糖鎖含有ポリペプチド断片と第1のポリペプチド断片との間の前記ポリペプチド断片、
と、
ステップ(3)によって得られたN末端がシステインである第1のポリペプチド断片
ステップ(4)又は(5)によって得られたC末側が修飾された第2のポリペプチド断片
とを、所望の糖鎖付加ポリペプチドが得られるような順序により、ライゲーション法により結合するステップ、を含む、糖鎖付加ポリペプチドの製造方法に関する。
また、本発明の糖鎖付加ポリペプチドの製造方法の一実施態様においては、前記式(I)で表わされる化合物におけるXが硫黄原子であることを特徴とする。
また、本発明の糖鎖付加ポリペプチドの製造方法の一実施態様においては、前記式(I)で表わされる化合物中におけるR1が、−O−C6アリール基であることを特徴とする。
また、本発明の糖鎖付加ポリペプチドの製造方法の一実施態様においては、前記式(I)で表わされる化合物におけるR2が、ハロゲン原子、または、置換もしくは非置換の−S−C6−10アリール基であることを特徴とする。
また、本発明の糖鎖付加ポリペプチドの製造方法の一実施態様においては、前記式(II)で表わされる化合物におけるYが=NHであることを特徴とする。
また、本発明の糖鎖付加ポリペプチドの製造方法の一実施態様においては、前記式(II)で表わされる化合物におけるR3が、アセチル基であることを特徴とする。
また、本発明の糖鎖付加ポリペプチドの製造方法の一実施態様においては、Wが1個のアミノ酸であり、かつ、Val、Ile、Leu、Trpからなる群より選択されるいずれか一つのアミノ酸であることを特徴とする。
また、本発明の糖鎖付加ポリペプチドの製造方法の一実施態様においては、nが6〜10であることを特徴とする。
以上のように、本発明のペプチドチオエステル化方法は、タンパク質の合成全般において有用である。
(N末側) 第2のポリペプチド断片−Cys−W−(His)n−Z−Met−第1のポリペプチド断片 (C末側)・・・・(i)
[ここでnは、0〜10の整数を意味し、Cysはシステイン、Wは任意の1、2又は3個のアミノ酸を意味し、Zは、任意の0、1、又は2個のアミノ酸を意味し、Hisはヒスチジンを意味し、Metはメチオニンを意味する。また、第1のポリペプチド断片のN末端はシステインである。]
にCNBrを反応させ、以下のポリペプチド断片を得るステップを含む。
(A)N末端がシステインである第1のポリペプチド断片
(B)以下の構造を有する第3のポリペプチド断片(ii):
(N末側) 第2のポリペプチド断片−Cys−W−(His)n−Z−Met’ (C末側)・・・・(ii)
[ここで、Met’は、Metの誘導体を意味する。]
なお、第1のポリペプチドは、そのN末端にシステインを含むように設計されるポリペプチドである。これにより、最終的に、第1のポリペプチド断片として切り出された際に、N末側で他のペプチド断片とライゲーションをすることが可能となる。また、第2のポリペプチド断片は、最終的に第2のポリペプチドとして切り出された際に、C末側がライゲーションに適した形に修飾されており、C末側において他のポリペプチド断片とライゲーションをすることが可能となる。
ここで、nは、0〜10の整数を意味し、Cysはシステイン、Wは任意の1、2又は3個のアミノ酸を意味し、Zは、任意の0、1、又は2個のアミノ酸を意味し、Hisはヒスチジンを意味し、Metはメチオニンを意味する。また、第1のポリペプチド断片のN末端はシステインである。
また、ポリペプチド(i)は、そのN末側および/またはC末側において、上記介在配列を介して、さらに別のポリペプチド断片と連結していてもよい。
なお、上記介在配列においてヒスタグを有さない場合(n=0の場合)に、ヒスタグを、ポリペプチド(i)のN末側またはC末側に付加させて、発現させることも可能である。介在配列がヒスタグを有する場合、nは、好ましくは、6〜10の整数である。
生合成したポリペプチド(i)をMetの位置にて、切り離す際には、例えば、CnBr、70%HCOOH水溶液を用いて、室温にて処理することができる。なお、処理するペプチド配列中において、側鎖にOH基を有するSerやThrが多く含まれる場合、側鎖のギ酸エステルが問題となる。このような場合には、エステル化を避けるために、反応溶液のギ酸の含有量を下げる、無機酸を使用する、容易に除去可能なトリフルオロ酢酸エステルを生じさせるためにTFAを使用する等の対応をすることが好ましい。
上記反応において使用される好ましい酸としては、例えば、ギ酸、リン酸、トリフルオロ酢酸(TFA)、トリブロモ酢酸、メタンスルホン酸を挙げることができるがこれらに限定されない。これらの酸は、0.1%〜50%の濃度で加えることが好ましく、より好ましくは1%〜20%、さらに好ましくは1%〜5%である。
また上記反応において水混和性溶剤を使用することもできる。水混和性溶剤は、水混和性を有する溶剤である限り特に限定されないが、例えば、アセトニトリル、トリフルオロエタノール、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド(DMSO)、塩化メチレン等を挙げることができ、中でも、アセトニトリル、トリフルオロエタノール、ジメチルホルムアミドが好ましい。このような溶剤は、1%〜70%の濃度で加えることが好ましく、より好ましくは20%〜60%、さらに好ましくは、35%〜50%である。
このように、酸と水混和性溶剤の存在下で切断することにより、目的ポリペプチドの産生率を上昇させることが可能である。
なお、Met’は、Metの誘導体を意味し、上記のような切断反応により生成されるMetの誘導体を示す。
また、これらのタグは、ポリペプチド(i)とMet(メチオニン)を介して連結させておくこともできる。このようにメチオニンを介してタグをポリペプチド(i)に連結させて作製することにより、第1のポリペプチド断片と第2のポリペプチド断片とをメチオニンを標的として切り離す際に、同時にタグを切り離すことができる。
(A)N末側がシステインである第1のポリペプチド断片
(B)以下の構造を有する第3のポリペプチド断片(ii)
(N末側) 第2のポリペプチド断片−Cys−W−(His)n−Z−Met’ (C末側)・・・・(ii)
[ここで、Met’は、Metの誘導体を意味する。]
なお、ポリペプチド(i)のN末側および/またはC末側において、上記介在配列を介して、さらに別のポリペプチド断片が連結している場合には、例えば、さらに下記ポリペプチド断片を得ることができる。
(B’)(N末側) ポリペプチド断片−Cys−W−(His)n−Z−Met’ (C末側)
上記のようにして得られた(A)N末側がシステインである第1のポリペプチド断片は、C末端にチオエステルを有するペプチドとライゲーションすることができる。したがって、本発明は、本発明の方法により得られたN末端がシステインである第1のポリペプチド断片と、C末端にチオエステルを有するペプチドとをライゲーション法により結合する工程を含む、ポリペプチドの製造方法もまた、提供する。
ポリペプチド(i)を切り離すことにより得られた第3のポリペプチド断片(ii)に、下記式(I)で表わされる化合物:
を反応させ、続いて、有機溶媒中で、下記式(II)で表わされる化合物:
(N末側) 第2のポリペプチド断片−C(=O)−NH−C(=Y)NHR3 (C末側)
を得るステップを含む。
反応(a)において、使用される化合物は以下の式(I)で示される。
R1及びR2は、脱離基として、反応(a)の条件下において、置換される原子又は原子団よりも求核性が低く、脱離される機能を有するものであれば特に限定されないが、R1及びR2はそれぞれ異なる脱離基であることが好ましい。R1及びR2として具体的には、ハロゲン原子、置換もしくは非置換の−O−アルキル基、置換もしくは非置換の−O−アルケニル基、置換もしくは非置換の−O−アルキニル基、置換もしくは非置換の−O−アリール基、置換もしくは非置換の−O−ヘテロアリール基、置換もしくは非置換の−S−アルキル基、置換もしくは非置換の−S−アルケニル基、置換もしくは非置換の−S−アルキニル基、置換もしくは非置換の−S−アリール基、または、置換もしくは非置換の−S−ヘテロアリール基が挙げられる。R1及びR2としてより好ましくは、R1が置換もしくは非置換の−O−C6−10アリール基、および、置換もしくは非置換の−S−C1−8アルキル基からなる群より選ばれる脱離基、および、R2が、ハロゲン原子、置換もしくは非置換の−S−C1−8アルキル基、置換もしくは非置換の−S−C6−10アリール基からなる群より選ばれる脱離基、である組み合わせが挙げられる。
また、上記の、
また、「C2−nアルコキシカルボニル基」とは、C1−(n−1)のアルコキシ基を有するカルボニル基であることを意味する。本発明のアルコキシカルボニル基として、好ましくは炭素原子数が2から15のアルコキシカルボニル基を挙げることができる。具体的には、例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロピルオキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、2−メチル−2−プロピルオキシカルボニル基、n−ペンチルオキシカルボニル基、n−へキシルオキシカルボニル基等を挙げることができる。
反応(c)に用いる第2中間体は、反応(b)の後に単離されていても、単離されていなくてもよい。
R4−SH (式IV)
R4は、チオール交換反応を阻害せず、カルボニル炭素上での置換反応において脱離基となる基であれば特に限定されない。好ましくは、R4は、置換もしくは非置換のベンジル基、置換もしくは非置換のアリール基および置換もしくは非置換のアルキル基から選択されるいずれか一つの基であり、より好ましくは置換もしくは非置換のベンジル基、置換もしくは非置換のC6−10アリール基、および、置換もしくは非置換のC1−8アルキル基から選択されるいずれか一つの基である。より具体的には、ベンジルメルカプタン等のベンジル型の脱離基、チオフェノール、4−(カルボキシメチル)−チオフェノール等のアリール型の脱離基、2−メルカプトエタンスルホン酸基、3−メルカプトプロピオン酸アミド等のアルキル型の脱離基等から選択することができる。これらの脱離基が有する置換基の種類、個数、置換位置は特に限定されない。
また、上記ペプチドチオエステル体の代わりに、前記工程(b)で得られた第2中間体を、そのままライゲーション法に使用することも可能である。この場合、チオエステル体への変換工程を省略できる点において好ましい。
本発明の実施態様は模式図を参照しつつ説明される場合があるが、模式図である場合、説明を明確にするために、誇張されて表現されている場合がある。
第一の、第二のなどの用語が種々の要素を表現するために用いられるが、これらの要素はそれらの用語によって限定されるべきではないことが理解される。これらの用語は一つの要素を他の要素と区別するためのみに用いられているのであり、例えば、第一の要素を第二の要素と記し、同様に、第二の要素は第一の要素と記すことは、本発明の範囲を逸脱することなく可能である。
具体的には、製造しようとする所望の糖鎖付加ポリペプチドである、インターロイキン13誘導体を以下に分類して設計した。
・IL13における1〜27番目のアミノ酸配列を有するポリペプチド断片A(これは、「糖鎖含有ポリペプチド断片よりもN末側にあり所望の糖鎖付加ペプチドのN末側を含むポリペプチドからなる第2のポリペプチド断片」に相当する。)
・IL13における28〜43番目のアミノ酸配列を有するポリペプチド断片B(これは、「糖鎖含有ポリペプチド断片と第2のポリペプチド断片との間のポリペプチド断片」に相当する。)
・IL13における44〜55番目のアミノ酸配列を有するポリペプチド断片C(この断片には、糖鎖が付加されたアミノ酸が含まれている。したがって、この断片は、「糖鎖が付加されたアミノ酸を含むポリペプチドからなる糖鎖含有ポリペプチド断片」に相当する。)
・IL13における56〜112番目のアミノ酸配列を有するポリペプチド断片D(これは、「糖鎖含有ポリペプチド断片よりもC末側にあり所望の糖鎖付加ペプチドのC末側を含むポリペプチドからなる第1のポリペプチド断片」に相当する。)
図6は、かかる設計(デザイン)を示す模式図である。
後述するとおり、上記ポリペプチド断片Aと上記ポリペプチド断片Dは、大腸菌発現法により発現させ、所定のステップを経ることにより調製する。
また、上記ポリペプチド断片Bと上記ポリペプチド断片Cは、化学合成により調製する。
そしてこれら調製された4つのポリペプチド断片をライゲーションにより連結させてIL−13誘導体を製造する。
なお、例えば、ポリペプチド断片C・Dと記載する場合、ポリペプチド断片Cとポリペプチド断片Dが連結したものを意味する。
2つの糖鎖非結合部分(ポリペプチド断片A(化合物1)(配列番号2)およびポリペプチド断片D(化合物4)(配列番号3)は、大腸菌発現系を用いて融合タンパク質(化合物6)(配列番号4)として作製した。
(1)LB培地A(H2O 1l中、バクトトリプトン 10g、酵母エキス 5g、NaCl 10g、寒天 15gを含む)を5ml入れた試験管に、大腸菌(BL21)懸濁液を100μl加え、ボルテックス処理後一晩37℃でインキュベートした。
(2)LB培地Aが5ml入った試験管に、(1)の培養液を200μl加えたものを2本作製し、37℃でインキュベートした。濁度(OD600)を測定し、50分後にOD600=0.4になった時点で試験管を氷中に入れた。
(3)(2)の試験管内容物をコニカルチューブに移し、0℃、2,000rpmで20分遠心した。
(4)デカントで上清を捨て沈殿物を砕き、0.1M CaCl2を3ml加え、氷中で20分放置した。
(5)(4)のチューブを0℃、2,000rpmで20分遠心した。
(6)デカントで上清を捨て沈殿物を砕き、0.1M CaCl2を0.5ml加え、ボルテックス処理後、別途用意したチューブに移した。
(7)(6)のチューブに、IL13の1〜27番目のアミノ酸配列、介在配列(Cys−Val−His−His−His−His−His−His−Met)、および、56〜112番目のアミノ酸配列が連結された配列をコードする核酸分子(配列番号5)を含むpET32aベクターを2ml加え、軽く混ぜた後、氷中で1時間静置した。なお、当該ベクターはその発明者らより、第三者に自由に配布されている。前記核酸分子は、pET32aベクター(Novagen社)のチオレドキシンの下流のNcoI/BamHI部位に挿入されている(図1参照)。
(8)(7)のサンプルを42℃の水浴に3分浮かべ(ヒートショック法)、続いて氷中で1分間冷却した。
(9)(8)に、LB培地Aを5ml加え、37℃で45分インキュベートした後、室温、3,000rpmで10分遠心した。
(10)上清(濾液)を捨て、沈殿物を砕いた後、沈殿物に対しLB培地Aを1ml加え、ボルテックス処理後全量を100μl、900μlの2つに分けてそれぞれをLB培地B(H2O 1l中、バクトトリプトン 10g、酵母エキス 5g、NaCl 5gおよびブドウ糖 5gを混合し、これに1.5%の寒天(15g/l)を加え、20分間オートクレーブ処理し、50〜60℃に放冷して100mgのアンピシリンを加えたもの)を30mlプレーティングしたシャーレーにコンラージを用いて散布した。
(11)(10)のシャーレーを37℃で10時間静置した。
(12)(11)によって形成されたコロニーを、試験管(LB培地Aに10%アンピシリンを1000:1の比で含むLBamp培地を3ml入れたもの)に滅菌済みの爪楊枝を用いてピックアップし、ボルテックス処理後37℃で一晩インキュベートした。
2−1.プラスミドDNA取り出し
(1)上記1−1.(12)のサンプルの1.5mlをエッペンドルフチューブに移した。
(2)室温にて7,000rpmで3分遠心後、上清を除去し沈殿物を砕いた。
(3)沈殿物に対し、100mlのGTE(50mM ブドウ糖、25mM Tris・HCl、10mM EDTA)を加え、ボルテックス処理後、シェーカーを使用して5分懸濁し、さらにアルカリSDS溶液(0.2N NaOH、1%SDS)を200ml加えて転倒混和した後、氷中で5分冷却した。
(4)5M酢酸カリウム溶液を150ml加え転倒混和した後、氷中で5分冷却した。
(5)クロロホルムを15ml加えてボルテックス処理し、4℃、13,000rpmで15分遠心した後、上清を別のエッペンドルフチューブに移し、この上清に対して10mg/ml RNaseを3ml加え、37℃で1時間放置した。
(6)(5)のサンプルに対し、フェノール:クロロホルム:イソアミルアルコール=25:24:1)を500ml加え、室温、13,000rpmで10分遠心した。
(7)上清を別のエッペンドルフチューブに移し、3M NaOAc 40ml、EtOH 1mlを加えて転倒混和し、ボルテックス処理後−80℃で30分静置した。
(8)(7)のエッペンドルフチューブを4℃、13,000rpmで30分遠心した。
(9)上清を除去し、沈殿物に対して70%EtOH 1mlを加えてボルテックス処理後、室温、13,000rpmで5分遠心した。
(10)上清を除去し、デシケーターで乾燥させた。
(11)オートクレーブ処理した純水(aH2O)を15ml加え、シェーカーで10分攪拌した。
(1)上記2−1.(11)のサンプルの5mlをとり、BamHIおよびNcoIを含む制限酵素処理液A(10×Kバッファー(Tris・HCl pH8.5 200mM、MgCl2 100mM、DTT 10mM、KCl 1M)2.25ml、0.1%BSA 2.25ml、NcoI 0.85ml、BamHI 0.85ml、aH2O 10.76ml)を15ml添加混合し、37℃で2時間放置した。
(2)室温に戻し、反応停止液(H2O中の、50%グリセロール、0.5%SDS、2mM EDTA、0.25%キシレンシアノール、0.25%ブロモフェノールブルー)を5ml加えた。
(3)4%ポリアクリルアミドゲル(30%アクリル溶液1.995ml、10×TBE(H2O1l中、Trisma base 108g、ホウ酸55g、0.25M EDTA 80ml)1.5ml、10%APS(H2O 1l中、過硫酸アンモニウム0.1g)75ml、TEMED 10ml、aH2O 15ml)に(2)のサンプルをロードし、50V(定電圧)で泳動した。(ランニングバッファーは、1×TBE(10×TBEを10倍希釈したもの)を、分子量マーカーはΦ×174を用いた。)
(4)エチジウムブロマイドで15分染色し、300nmで試料を評価したところ、759bp程度のバンドを認めた。発現させるタンパク質は253アミノ酸長であるため、これに相当する長さのDNAが切り出されたことが確認された。
(1)試験管2本にそれぞれ2×YTamp(aH2O 1l中、バクトトリプトン16g、バクト酵母エキス10g、NaCl 5g、アンピシリン100mg)を5ml入れ、そこに上記1−1.(12)の液(4℃で2週間保存していたサンプル)の30mlをそれぞれ加えた後、37℃で一晩インキュベートした。
(2)2×YTamp 1lに(1)で作製した溶液10mlを加え、37℃でインキュベーションを開始した。
(3)濁度(OD600)を測定して、2時間後にOD=0.6になったところで1M イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)を1ml加え、3時間誘導を行った。
(4)(3)のサンプルを氷につけ、4℃、3,500rpmで10分遠心した。
(5)上清を捨て、集菌した。
(6)−20℃で保存した。
4.発現したタンパクの精製
(1)上記3.(6)で得たサンプルを室温で解凍後、100mlのバッファーA(100mM NaH2PO4、10mM Tris・HCl、6M 塩酸グアニジン、5mM イミダゾール、pH8.0)に溶かし、氷中でソニケーションし、細胞壁を破砕した。
(2)Ni−NTAアガロース(50%EtOH)を10mlとり、固相合成チューブ(カラム)に充填した後バッファーAで置換し、(1)のサンプルをロードしてNi−NTAアガロースと十分混和した後に溶出した。
(3)溶出液を回収し、再度カラムにロードした。この操作を10回繰り返し、最終的な溶出液を回収した。(透過液(1))
(4)(3)のNi−NTAアガロースを、バッファーB(100mM NaH2PO4、10mM Tris・HCl、6M 塩酸グアニジン、250mM イミダゾール、pH8.0)100mlで洗浄し、洗液を回収した。(透過液(2))
(5)バッファーC(100mM NaH2PO4、10mM Tris・HCl、6M 塩酸グアニジン、400mM イミダゾール、pH8.0)10mlを用いて溶出した(溶出液)。CBBG液(Coomassie Brilliant Blue G250)を用いて、タンパクの溶出を確認した。
(6)透析チューブに(5)の溶出液を入れ、純水が入った5lビーカーに透析チューブを浮かべ、4℃で一晩攪拌し、透析を行った。
(7)透析チューブの内容物を遠沈管に回収し、4℃、3,500rpmで10分遠心後、上清を捨て、チオレドキシンタンパク質が結合したポリペプチド断片A−Cys−Val−Hisタグ−Met−ポリペプチド断片D融合ポリペプチド(化合物6)を約25mg得た(図2および図3参照)。
(なお、CはCysを示し、VはValを示し、HはHisを示し、MはMetを示す。以下、同じ。)
(1)4.(7)で得られた融合ポリぺプチド(化合物6)をHPLCで精製した後凍結乾燥したサンプル100mgに対し、アルゴン下にて20mlの2%TFA及び40%アセトニトリル含有水溶液を加え、さらに76mgのCNBrを加え遮光して一晩攪拌した。この処理により、融合タンパク質であるチオレドキシン部及びHisタグと糖鎖非結合部分であるポリペプチド断片Dとの間のメチオニンのC末側のアミド結合が加水分解され、ポリペプチド断片Aに介在配列が付加したものと、ポリペプチド断片Dとを分離することができる。
(2)HPLCを用いて分析し、保持時間12分に所望のポリペプチド断片A−C−Val−His−His−His−His−His−His−Met誘導体(化合物10)(配列番号6)2.3mg、およびポリぺプチド断片D(化合物4)4.2mgを得たことを質量分析により確認した(図4および図5参照)。
上記5.で得られたポリペプチド断片A−C−Val−His−His−His−His−His−His−Met誘導体(化合物10)6mgを、ジメチルホルムアミド(DMF)680μLに溶解させた後、溶液にN,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIEtN)2.6μL(10eq)、及びBoc−OSu3.2mg(10eq)を加え約1時間反応させ、ポリペプチド断片A−C−Val−His−His−His−His−His−His−Met誘導体(化合物10)のN末端のアミノ基および配列中のLys残基の側鎖のアミノ基の計2か所がBoc化された37残基の部分保護されたポリペプチド断片(化合物100)(配列番号7)を得た。この37残基ペプチドを、リン酸緩衝溶液(pH=5.0、100nM)に溶かし、クロロチオノフォルメート(5等量)を加え、システインのチオール基をチオ炭酸型として修飾し、そのままHPLCを用いて精製した。得られたポリペプチド断片(化合物101)(配列番号8)を凍結乾燥することで1.7mg獲得した。この全量をDMSOに溶かし、アセチルグアニンジン(0.5M in DMSO)を加え、常温で8時間反応させた。生成物をHPLCで精製し、IL−13の1〜27番目のアミノ酸配列を有するポリペプチド断片AのC末端のカルボキシル基がグアニジノ基で修飾されたポリペプチド断片(化合物102)(配列番号9)0.3mgを得た。
このペプチド−グアニンジン誘導体は、メルカプトエチル硫酸等のアルキルチオールで処理してチオエステル誘導体に変換することもできるが、グアニジノ基のまま、ネイティブケミカルライゲーションに用いることもできる。
(なお、M’はMetの誘導体を示す。以下、同じ。)
ポリペプチド断片B(化合物2)の伸張は一般的なFmoc法あるいはBoc法による固相合成法を用い合成した。
固相合成チューブにBoc−Leu−PAM樹脂94.34mg(50μmol)を入れ、蒸留DMFおよび蒸留DCMで十分に洗浄後に乾燥させたものを用いた。縮合に用いるアミノ酸のアミノ基はBoc基によって保護されているものを用いた。また、反応は特に記載が無い限り固相合成チューブ内で行った。
DMF、DCMでよく洗浄し、その後、10%硫酸/dioxane溶液(1.0ml)を樹脂に加え30分撹拌することによりBoc基を脱保護し、DCM,DMFで樹脂を洗浄した。
その後、リンカーとしてS−trityol−3−mercaptopropionic acid 5等量(87.1mg、250μmol)、DIPEA 10等量(87.3μl、500μmol)、およびHBTU5等量(94.8mg、250μmol)をDMF(1.0ml)に溶解し、前記で調製した樹脂が充填された固相合成用チューブに入れ、室温で0.5時間攪拌した。攪拌後、樹脂をDCM及びDMFで数回洗い、続いてDCM、DMFでよく洗浄した。その後、TFAを樹脂に加え30分撹拌することによりtrityl基を脱保護し、DCM、DMFで樹脂を洗浄した。
縮合後は樹脂をDMFで洗浄後、カイザー試験で樹脂上にアミノ酸が縮合されていることを確認し、順次Boc−Leu−PAM−Resinと同様にBoc基を脱保護した。2残基目以降も同様に縮合を行った。16残基目までは、全て各1回の縮合(single coupling)で終えた。
なお、IL−13のアミノ酸配列における28番目のアミノ酸に相当するCysはチアゾリジン型で保護されたものを縮合させた。
縮合が終了した樹脂をDMFおよびDCMでよく洗浄し、TFA:DMS:m−cresol:EDT:TfOH=5:3:0.8:0.2:1のカクテル1mlを樹脂に加え氷上で1時間攪拌し、樹脂から側鎖の脱保護をおこなった。これを、ジエチルエーテルでしっかりと洗い乾燥させた。
上記7.で調製したペプチドを樹脂から切り出すために、TFA:Thioanisol:EDT:TfOH=8:0.8:0.2:0.8のカクテル1mlを氷上で加えて、1時間撹拌した。ジエチルエーテルで沈殿させた後、室温で乾燥させた後サンプルをHPLC(カラム:Synmetory300(TM) C4、3.5μm、4.6×150mm、流速:1.0ml/分、18%〜54%CH3CNを含む0.09%TFAの18分のリニアグラジエント)で分析し、保持時間13分に、リンカーが付加することでチオエステル体の状態で切り出された、IL13のアミノ酸配列における28〜43番目のアミノ酸配列を有するペプチドチオエステル体(化合物103)を得た。このペプチドチオエステル(化合物103)(配列番号10)をHPLCを用いて精製し、分取した溶液を凍結乾燥し5mgを得た。
IL13(28〜43)チオエステル体(化合物103);ESI−MS:m/z C85H130N20O25S4についての計算値:[M+H]+ 1959.8, [M+2H]2+ 980.4、実測値:1960.8, 981.0
ポリペプチド断片C(化合物3)の伸張は一般的なFmoc法による固相合成法を用いた。
固相合成チューブに4−(4−hydroxymethyl−3−methoxyphenoxy)−butyric acid(HMPB)−poly(ethylene glycol)−poly(dimethylacrylamide)copolymer(PEGA)樹脂1.67mg(50μmol)を入れ、蒸留DMFおよび蒸留DCMで十分に洗浄後に乾燥させたものを用いた。縮合に用いるアミノ酸のアミノ基はFmoc基によって保護されているものを用いた。また、反応は特に記載が無い限り固相合成チューブ内で行った。
Fmoc−Gly−OH 5等量(74.3mg、250μmol)およびN−metylimidazole 3.75等量(14.9μl、187.5μmol)をDCM(1.0ml)に溶解し、前記で調製した樹脂が充填された固相合成用チューブに入れ、室温で2時間攪拌した。攪拌後、樹脂をDCM:MeOH:DIPEA=17:2:1で数回洗い、続いてDCM、DMFでよく洗浄した。その後、20%ピペリジン/DMF溶液(1.0ml)を樹脂に加え30分撹拌することによりFmoc基を脱保護し、DMFで樹脂を洗浄した。
すなわち、3残基目のバリンのFmoc基を脱保護後、DMFで樹脂を洗浄後、Fmoc−Asn−アシアロ糖鎖(大塚化学株式会社製、198mg、100μmol)、DEPBT 3等量(45mg、150μmol)、DIPEA 2等量(18.5μl、100μmol)をDMSO:DMF溶媒4:1(2.5ml)を加え、4残基目に糖鎖アスパラギンを導入した。その後、アミノ酸の縮合は、1−3残基目のアミノ酸と同様に行うが、用いるFmoc−保護アミノ酸の反応溶液中の濃度は、全て50mM程度になるようDMFの量を調製して行った。糖鎖アスパラギン付加後は、Fmoc保護アミノ酸は、各1回の縮合(single coupling)で終えた。
なお、N末端に位置するCys(IL−13のアミノ酸配列における45番目のアミノ酸に相当するCys)はチアゾリジン型で保護されたものを用いた。
化合物105:ESI−MS:m/z C112H187N17O63Sについての計算値:[M+2H]2+ 1406.1, [M+3H]3+ 937.7、実測値:1406.8 , 938.3
上記9.で得たアミノ酸側鎖が保護された糖鎖含有のポリペプチド断片(化合物104)をベンゼンを用いて共沸後、デシケーターで乾燥させた。このポリペプチド断片(化合物104)のうち、10.1mg(3.3μmol)をDMF 0.4mlに溶解させ、乾燥させたモレキュラーシーブス4Å(6mg)およびベンジルチオール30等量(11.6μl、99μmol)を加え、−20℃で1時間攪拌し、PyBOP 5等量(8.58mg、16.5μmol)、DIPEA 5等量(2.9μl、16.5μmol)を加え2時間反応させてC末端のチオエステル化を行った。反応終了後、ジエチルエーテル6ml中に反応溶液を滴下し、白色沈殿物を遠心分離法により回収した。数回ジエチルエーテルで沈殿物を洗浄し、乾燥させ白色固形物として糖鎖含有ポリペプチドチオエステル(化合物106)(配列番号13)を得た。この固形物に対し、TFA:H2O:TIS:EDT=90:5:2.5:2.5のカクテル1mlを加え3時間攪拌させ、ペプチド側鎖の保護基を除去した。室温で減圧濃縮後サンプルをHPLC(カラム:Synmetory300(TM) C4、3.5μm、4.6×150mm、流速:1.0ml/分、18%〜54%CH3CNを含む0.09%TFAの15分のリニアグラジエント)で分析し、保持時間9.5分にIL13のアミノ酸配列における44〜55番目のアミノ酸を有する糖鎖含有ポリペプチドチオエステル(化合物107)(配列番号14)を得た。この糖鎖含有ポリペプチドチオエステル(化合物107)をHPLCを用いて精製し、分取した溶液を凍結乾燥し7.2mgを得た。
IL13(44〜55)チオエステル体(化合物107);ESI−MS:m/z C119H193N17O62S2についての計算値:[M+2H]2+ 1459.1, [M+3H]3+973.1、実測値:1459.7, 973.5
上記10.で得たチオエステル化した糖鎖含有ポリペプチド断片(化合物107)(1.2mg、425nmol)と、上記5.で得た糖鎖非結合部分であるポリペプチド断片D(化合物4)(2.3mg、355nmol)とを、緩衝溶液(6M 塩酸グアニジン、0.2M PBS、20mM TCEP(トリス(2−カルボシキシエチル)ホスフィン)、0.04M MPAA(4−メルカプトフェニル酢酸)、pH6.8)180μlに加え、室温で3時間反応させることにより、糖鎖含有ポリペプチド断片Cとポリペプチド断片Dとが連結された糖鎖含有ポリペプチド断片(化合物108)(配列番号15)を得た。NCL終了後、そのまま、メトキシアミン塩酸塩(3.0mg、35.9μmol)を反応溶液に加え、pHを4.0に合わせN末端のチアゾリジンを分解し、システインへと変換した。12時間後、反応混合物をHPLCで分析したところ、相当するピークが観察された。また、このピークの化合物を精製し、質量分析により、糖鎖含有ポリペプチド断片(化合物109)(配列番号16)を2.3mg得たことを確認した。
化合物109:ESI−MS:m/z C402H654N102O141S3についての計算値:[M+4H]4+ 2316.7, [M+5H]5+ 1853.5, [M+6H]6+ 1544.8, [M+7H]7+ 1324.2, [M+8H]8+ 1158.8, [M+9H]9+ 1030.2、実測値:2317.7, 1854.5, 1545.7, 1325.2, 1030.9
上記11.で得た糖鎖含有ポリペプチド断片(化合物109)(1.3mg、140nmol)と、上記8.で得たチオエステル化したポリペプチド断片B(化合物103)(0.40mg、209nmol)とを、緩衝溶液(6M 塩酸グアニジン、0.2M PBS、40mM TCEP(トリス(2−カルボシキシエチル)ホスフィン)、0.02M MPAA(4−メルカプトフェニル酢酸)、pH7.1)70μlに加え、室温で8時間反応させることにより、ポリペプチド断片Bと糖鎖含有ポリペプチド断片C・Dとが連結した糖鎖含有ポリペプチド断片(化合物110)(配列番号17)を得た。NCL終了後、そのまま、メトキシアミン塩酸塩(1.2mg、14μmol)を反応溶液に加え、pHを4.0に合わせN末端のチアゾリジンを分解し、システインへと変換した。12時間後、反応混合物をHPLCで分析したところ、相当するピークが観察された。また、このピークの化合物を精製し、質量分析により、糖鎖含有ポリペプチド断片(化合物111)(配列番号18)を0.6mg得たことを確認した。
化合物111:ESI−MS:m/z C477H767N121O163S6についての計算値:[M+5H]5+ 2199.1, [M+6H]6+ 1832.7, [M+7H]7+ 1571.1, [M+8H]8+ 1374.8, [M+9H]9+ 1222.2, [M+10H]10+ 1100.0, [M+11H]11+ 1000.1、実測値:2200.4, 1834.1, 1572.3, 1375.9, 1223.3, 1100.9, 1000.9
上記12.で得た糖鎖含有ポリペプチド断片(化合物111)(0.6mg、54nmol)と、上記6.で得たグアニンジン誘導体化したポリペプチド断片(化合物102)(0.2mg、62nmol)とを、緩衝溶液(6M 塩酸グアニジン、0.2M PBS、20mM TCEP(トリス(2−カルボシキシエチル)ホスフィン)、0.1M MPAA(4−メルカプトフェニル酢酸)、pH7.2)50μlに加え、室温で24時間反応させた。24時間後、反応混合物をHPLCで分析したところ、相当するピークが観察された。このピークの化合物を精製し、質量分析により、糖鎖含有ポリペプチド(化合物112)(配列番号19)を0.1mg得たことを確認した。
化合物112:ESI−MS:m/z C617H1000N156O207S6についての計算値:[M+8H]8+ 1763.4, [M+9H]9+ 1567.6, [M+10H]10+ 1410.9, [M+11H]11+ 1282.7, [M+12H]12+ 1175.9, [M+13H]13+ 1085.5, [M+14H]14+ 1008.1、実測値:1764.3, 1568.5, 1411.8, 1283.6, 1176.8, 1086.3, 1009.0
上記13.で得た112残基の糖鎖含有ポリペプチド(化合物112)0.1mgを、5%含水トリフルオロ酢酸200μLに溶解させ、室温下に1時間反応させた。反応後の溶液をアルゴンガスの吹き付けにより濃縮した後、緩衝溶液(6M 塩酸グアニジン、0.2M PBS)200μLにて希釈し、得られた溶液をHPLCにて精製した。メインピークを回収し目的とする均一な糖鎖を有するインターロイキン−13誘導体(化合物113)(配列番号1)を0.1mg得た。
介在配列(−Cys−W−(His)n−Z−Met−)におけるWを最適化するために、C末端にヒスタグを有するペプチドチオノホルメートのグアニジド化において生成するグアニジド体(下記に反応式を示す)の単離収率を比較した。
(なお、DはAsp、VはVal、AはAla、FはPhe、CはCys、XはGly、Val、Ile、Pro、Phe、Trp、Leuのいずれか一つのアミノ酸を示す。)
グアニジド化反応には、Boc−Asp−Val−Ala−Asp−Phe−Cys(C(S)OPh)−Xaa−His−His−His−His−His−His−OH (Xaa=Gly,Val,Ile,Phe,Pro,Trp)(配列番号20)のXaaにおいてアミノ酸が異なる6つのペプチドチオノホルメートを使用した。各ペプチドチオノホルメートを含むペプチドチオノホルメート/DMSO溶液(2mM)へ同じ体積量の1−アセチルグアニジン/DMSO溶液(1M)を加え、ボルテックスミキサーで撹拌した。37℃の湯浴中にて1日間静置した後、ジエチルエーテルで沈殿、洗浄した。セミ分取HPLCにて精製し、目的化合物(配列番号21)を得た。それぞれのペプチドの単離収率を表1に記載する。ESI MS calcd [M+H]+ 748.3 found,748.3.
表1に示す結果より、Val、Trp、IleをヒスタグのN末側へ挿入した場合、グアニジノ体を非常に多く得ることができた。特に、ValおよびIleは、副生成物の生成を抑えることができた。
Claims (20)
- NCL法に適した、N末端がシステインである第1のポリペプチド断片とC末側が修飾された第2のポリペプチド断片とを効率的に製造する方法であって、以下のステップを含む方法:
(1)以下の構造を有するポリペプチド:
(N末側) 第2のポリペプチド断片−Cys−W−(His)n−Z−Met−第1のポリペプチド断片 (C末側)
[ここでnは、0〜10の整数を意味し、Cysはシステイン、Wは任意の1、2又は3個のアミノ酸を意味し、Zは、任意の0、1、又は2個のアミノ酸を意味し、Hisはヒスチジンを意味し、Metはメチオニンを意味する。また、第1のポリペプチド断片のN末端はシステインである。]
にCNBrを反応させ、以下のポリペプチド断片を得るステップ;
(A)N末端がシステインである第1のポリペプチド断片
(B)以下の構造を有する第3のポリペプチド断片:
(N末側) 第2のポリペプチド断片−Cys−W−(His)n−Z−Met’ (C末側)
[ここで、Met’は、Metの誘導体を意味する。]
(2)前記第3のポリペプチド断片に、下記式(I)で表わされる化合物:
Xは硫黄原子または酸素原子であり、
R1及びR2は、脱離基である。]
を反応させ、続いて、有機溶媒中で、下記式(II)で表わされる化合物:
Yは、酸素原子、硫黄原子、または、=NHであり、
R3は、水素原子、アシル基、または、アルコキシカルボニル基である。]
を反応させることにより、以下の構造を有するC末側が修飾された第2のポリペプチド断片:
(N末側) 第2のポリペプチド断片−C(=O)−NH−C(=Y)NHR3 (C末側)
を得るステップ。 - 請求項1に記載の製造方法であって、
前記(2)のステップにおいて得られたC末側が修飾された第2のポリペプチド断片に、さらに下記式で表されるチオール
R4−SH
[式中、R4は、置換もしくは非置換のベンジル基、置換もしくは非置換のアリール基、および、置換もしくは非置換のアルキル基からなる群から選択されるいずれか一つの基である。]
を反応させ、C末側の−NH−C(=Y)NHR3基とチオール基とを交換させることにより、以下の構造を有するC末側が修飾された第2のポリペプチド断片:
(N末側) 第2のポリペプチド断片−C(=O)−SR4 (C末側)
を得るステップをさらに含む、製造方法。 - 請求項1または2に記載の製造方法であって、
前記式(I)で表わされる化合物におけるXが硫黄原子であることを特徴とする、
製造方法。 - 請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法であって、前記式(I)で表わされる化合物中におけるR1が、−O−C6アリール基であることを特徴とする、
製造方法。 - 請求項1〜4のいずれか一項に記載の製造方法であって、
前記式(I)で表わされる化合物におけるR2が、ハロゲン原子、または、置換もしくは非置換の−S−C6−10アリール基であることを特徴とする、
製造方法。 - 請求項1〜5のいずれか一項に記載の製造方法であって、
前記式(II)で表わされる化合物におけるYが=NHであることを特徴とする、
製造方法。 - 請求項1〜6のいずれか一項に記載の製造方法であって、
前記式(II)で表わされる化合物におけるR3が、アセチル基であることを特徴とする、
製造方法。 - 請求項1〜7に記載の製造方法であって、
前記、以下の構造を有するポリペプチド:
(N末側) 第2のポリペプチド断片−Cys−W−(His)n−Z−Met−第1のポリペプチド断片 (C末側)
が、細胞によって発現された組換えポリペプチド断片であることを特徴とする、
製造方法。 - 請求項8に記載の製造方法であって、
前記細胞が大腸菌であることを特徴とする、
製造方法。 - 請求項1〜9のいずれか一項に記載の製造方法であって、
Wが1個のアミノ酸であり、かつ、Val、Ile、Leu、Trpからなる群より選択されるいずれか一つのアミノ酸であることを特徴とする、
製造方法。 - 請求項1〜10のいずれか一項に記載の製造方法であって、
nが6〜10の整数であることを特徴とする、
製造方法。 - NCL法に適した、N末側がシステインである第1のポリペプチド断片を製造する方法であって、
以下の構造を有するポリペプチド:
(N末側) 第2のポリペプチド断片−P−Met−第1のポリペプチド断片 (C末側)
[ここでPは、任意の0〜10個のアミノ酸であり、Metはメチオニンを意味し、第1のポリペプチド断片のN末端はシステインである。]
にCNBrを反応させることを特徴とする方法。 - 糖鎖付加ポリペプチドの製造方法であって、以下のステップを有する製造方法:
(1)製造しようとする所望の糖鎖付加ポリペプチドのペプチド配列を、少なくとも、
・糖鎖が付加されたアミノ酸を含むポリペプチドからなる糖鎖含有ポリペプチド断片、
・糖鎖含有ポリペプチド断片よりもN末側にあり所望の糖鎖付加ペプチドのN末側を含むポリペプチドからなる第2のポリペプチド断片、
・糖鎖含有ポリペプチド断片よりもC末側にあり所望の糖鎖付加ペプチドのC末側を含むポリペプチドからなる第1のポリペプチド断片、
・存在し得る場合には、糖鎖含有ポリペプチド断片と第2のポリペプチド断片との間のポリペプチド断片、
・存在し得る場合には、糖鎖含有ポリペプチド断片と第1のポリペプチド断片との間のポリペプチド断片、
に分類して設計するステップ;
ここで、第1のポリペプチド断片のN末端はシステインであるように設計されており、
(2)以下の構造を有するポリペプチド:
(N末側) 第2のポリペプチド断片−Cys−W−(His)n−Z−Met−第1のポリペプチド断片 (C末側)
[ここでnは、0〜10の整数を意味し、Cysはシステイン、Wは任意の1、2又は3個のアミノ酸を意味し、Zは、任意の0、1、又は2個のアミノ酸を意味し、Hisはヒスチジンを意味し、Metはメチオニンを意味する。また、第1のポリペプチド断片のN末端はシステインである。]
をコードするヌクレオチド配列を含む発現ベクターを用いて、大腸菌によって発現させ、前記構造を有するポリペプチドを取得するステップ;
(3)ステップ(2)で得られたポリペプチドにCNBrを反応させ、以下のポリペプチド断片を得るステップ;
(A)N末端がシステインである第1のポリペプチド断片
(B)以下の構造を有する第3のポリペプチド断片:
(N末側) 第2のポリペプチド断片−Cys−W−(His)n−Z−Met’ (C末側)
(ここで、Met’は、Metの誘導体を意味する。)
(4)前記第3のポリペプチド断片に、下記式(I)で表わされる化合物:
を反応させ、続いて、有機溶媒中で、下記式(II)で表わされる化合物:
Yは酸素原子、硫黄原子、または、NH基であり、
R3は、水素原子、アシル基、または、アルコキシカルボニル基である。]
を反応させることにより、以下の構造を有するC末側が修飾された第2のポリペプチド断片:
(N末側) 第2のポリペプチド断片−C(=O)−NH−C(=Y)NHR3 (C末側)
を得るステップ;
(5)任意に、前記(4)のステップにおいて得られたC末側が修飾された第2のポリペプチド断片に、さらに下記式で表されるチオール
R4−SH
[式中、R4は、置換もしくは非置換のベンジル基、置換もしくは非置換のアリール基、および、置換もしくは非置換のアルキル基からなる群から選択されるいずれか一つの基である。]
を反応させ、C末側の−NH−C(=Y)NHR3基とチオール基とを交換させることにより、以下の構造を有するC末側が修飾された第2のポリペプチド断片:
(N末側) 第2のポリペプチド断片−C(=O)−SR4 (C末側)
を得るステップ;
(6)化学的に合成することにより別に調製された、
・前記糖鎖含有ポリペプチド断片、
・存在し得る場合には、糖鎖含有ポリペプチド断片と第2のポリペプチド断片との間の前記ポリペプチド断片、
・存在し得る場合には、糖鎖含有ポリペプチド断片と第1のポリペプチド断片との間の前記ポリペプチド断片、
と、
ステップ(3)によって得られたN末端がシステインである第1のポリペプチド断片
ステップ(4)又は(5)によって得られたC末側が修飾された第2のポリペプチド断片
とを、所望の糖鎖付加ポリペプチドが得られるような順序により、ライゲーション法により結合するステップ。 - 請求項13に記載の製造方法であって、
前記式(I)で表わされる化合物におけるXが硫黄原子であることを特徴とする、
製造方法。 - 請求項13または14に記載の製造方法であって、前記式(I)で表わされる化合物中におけるR1が、−O−C6アリール基であることを特徴とする、
製造方法。 - 請求項13〜15のいずれか一項に記載の製造方法であって、
前記式(I)で表わされる化合物におけるR2が、ハロゲン原子、または、置換もしくは非置換の−S−C6−10アリール基であることを特徴とする、
製造方法。 - 請求項13〜16のいずれか一項に記載の製造方法であって、
前記式(II)で表わされる化合物におけるYが=NHであることを特徴とする、
製造方法。 - 請求項13〜17のいずれか一項に記載の製造方法であって、
前記式(II)で表わされる化合物におけるR3が、アセチル基であることを特徴とする、
製造方法。 - 請求項13〜18のいずれか一項に記載の製造方法であって、
Wが1個のアミノ酸であり、かつ、Val、Ile、Leu、Trpからなる群より選択されるいずれか一つのアミノ酸であることを特徴とする、
製造方法。 - 請求項13〜19のいずれか一項に記載の製造方法であって、
nが6〜10の整数であることを特徴とする、
製造方法。
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