JPWO2013002311A1 - 幹細胞培養用基材及びそれを用いた培養方法 - Google Patents

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Abstract

病原体感染の危険性や好ましくない副作用がない幹細胞培養用基材及びその利用方法を提供する。本発明は、環状骨格構造を有する細胞接着性ペプチドが高分子基材に結合されている幹細胞培養用基材及びこれを用いる幹細胞培養方法である。本発明の環状骨格構造を有する細胞接着性ペプチドとしては、フィブロネクチンに見出されるArg-Gly-Asp配列を含むものを用いることができる。高分子基材としては、例えばポリペプチド及び/又は多糖類をもちいることができる。

Description

本発明は、病原体感染の危険性や好ましくない副作用がない幹細胞培養用基材及びその利用方法に関する。さらに詳しくは、幹細胞の増殖や分化に有用でかつ安全性の高い培養用基材及びその培養方法に関する。
胚性幹細胞(ES細胞)や誘導多能性幹細胞(iPS細胞)等の幹細胞は、組織や臓器を生体内外で再構築し、失われた組織や臓器の代わりに移植をする再生医療を実現するために不可欠である。現在、多能性を維持したまま幹細胞を増殖させるために、動物やヒト由来の線維芽細胞をフィーダー細胞として用いるか、ゼラチンやマトリゲル等の動物由来材料を被覆した培養容器が用いられている。これらの手法は、動物やヒト由来の線維芽細胞や動物由来材料にプリオン等の病原体あるいは未知のウイルス等が混入する危険性があり、再生医療の実現を妨げる一つの要因となっている。
発明者らは、動物やヒト由来の材料の代替手段となる安全性の高い生体適合性材料の創成を目指して鋭意研究を重ね、これまでにそのような性質を備えた完全化学合成のポリペプチドの合成技術を完成させている。例えば、特許文献1には、病原体の感染や病原性因子の伝達を生じる危険性や望ましくない副作用を生じる虞がなく、種々の生理活性物質やアパタイト類の担体として有用な新規なポリペプチドとして、-Pro-X-Gly-(Xは、Pro又はHypを表す)で表されるアミノ酸配列を有するペプチドユニットと、-Pro-Hyp(O-Y-Z)-Gly-(Yは、カルボニル基、カルボニル基を有するか又は有しない飽和又は不飽和の炭化水素基、又は芳香族基を含む、カルボニル基を有するか又は有しない飽和又は不飽和の炭化水素基を表し、Zはカルボキシル基を表す)で表されるアミノ酸配列を有するペプチドユニットとを含むポリペプチドが開示されている。
一方、非特許文献2には、フィブロネクチンに見出される細胞接着配列Gly-Arg-Gly-Asp-Serと Pro-His-Ser-Arg-Asnをポリペプチドpoly(Pro-Hyp-Gly)に結合した材料がマウス線維芽細胞株NIH3T3の細胞接着と移動を促進すること、及びウサギ角膜上皮細胞株の重層化を促進することが報告されている。
特許文献2には、フィーダーフリーの培養環境で、分化多能性を保持したままヒト多能性幹細胞を維持するために、ヒトラミニンのフラグメントがコーティングされているヒト多能性幹細胞培養用基材とこれを用いる培養方法が提案されている。
特許文献3には、胚性幹細胞から肝細胞を効率良く分化誘導させる方法及びその素材を提供することを目的に、スポンジ形態の架橋多糖を主成分とする胚性幹細胞の培養用基材が提案されている。
特許文献4には、フィーダー細胞及びフィーダー細胞由来成分非存在下で、大量にかつ安全に未分化な胚性幹細胞を維持する培養基材及び培養方法を提供することを目的に、不織布等の多孔質体よりなる培養用基材を提案している。
特許文献5には、幹細胞を、その分化能を維持したまま効率良く増殖させるための培養基材を提供することを目的として、細胞接着活性物質を含有してなることを特徴とする幹細胞培養用基材が提案されている。
非特許文献3には、細胞接着配列Arg-Gly-Aspを、ポリ乳酸を含む高分子表面に結合する方法及びこれを用いて骨組織を構築する方法が報告されている。
国際公開特許WO2009/035092公報 特許公開2011−78370公報 特許公開2006−42758公報 国際公開特許WO2003/038070公報 特許公開2002−315567公報
Biopolymers 2005;79(3):163-172 Biopolymers Peptide Science 2011;96(3):302-315 Biomacromolecule 2011;12,2667-2680
このような現状の下、本発明は、幹細胞との接着性に優れ、病原体の感染や病原性因子の伝達を生じる危険性や好ましくない副作用のおそれがない幹細胞培養用基材及びこれを用いる幹細胞の培養方法を提供することを目的とする。また、本発明は、培養基材に接着した幹細胞を安全且つ簡便に基材から分離することが可能な培養基材及びそれを用いて幹細胞を培養する方法を提供することを更なる目的とする。
本発明者は前記課題を解決するため鋭意検討を行い、化学合成で得られる培養基材と幹細胞との細胞接着性を高めるために、合成培養基材に細胞接着性ペプチドを結合させるという構想に至った。しかしながら、後述する試験例1に示す通り、実際に、細胞接着性ペプチドとして知られるGly-Arg-Gly-Asp-Ser(配列番号1)を合成培養基材に結合させて、幹細胞を培養させたところ、幹細胞以外の細胞では接着性の改善が報告されているにも拘わらず(特許文献1)、幹細胞の合成培養基材に対する接着性に改善は見られなかった。この結果は、幹細胞のインテグリンは、幹細胞以外の細胞とは異なり、細胞接着性ペプチドとして知られるペプチド配列を認識しないことを示すものであった。このような知見が得られたにも拘わらず、本発明者等は更に日夜検討に励み、細胞接着性ペプチドとして環状構造を有するものを培養基材に結合させ、幹細胞を培養することを試みたところ、驚くべきことにその接着性が飛躍的に向上し、幹細胞を未分化な状態で培養することが可能であることを見出した。
このようにして本発明者らは、環状骨格構造をする細胞接着性ペプチドを合成培養基材に結合させることによって、幹細胞の培養基材に対する接着性を向上させ、より効率的に幹細胞を多分化能を維持した状態で培養できることを見出した。このような知見を踏まえ、本発明者等は、幹細胞の培養とその利用の改良ついて更に検討したところ、培養した幹細胞をその使用目的に応じて分化させるためには、培養した細胞を基材から遊離させる必要があるが、従来の酵素等を使用する方法では、細胞に対するダメージが大きく、生存率の低下を引き起こすという問題の存在を見出した。そして、この問題を解決する手段として、本発明者等は、環状骨格構造を有する細胞接着性ペプチドを、光分解性リンカーを介して結合させることにより、酵素等の細胞傷害性のある試薬を利用することなく、光の照射により簡便に細胞を基材から遊離させることが可能であることを見出した。
本発明者等は、以上のような知見に更なる検討と改良を重ねることにより本発明を完成するに至った。代表的な本発明は以下の通りである。
項1. 環状骨格構造を有する細胞接着性ペプチドが高分子基材に結合されている幹細胞培養用基材。
項2. 前記環状骨格構造を有する細胞接着性ペプチドがArg-Gly-Asp配列を含む項1記載の幹細胞培養用基材。
項3. 前記環状骨格構造を有する細胞接着性ペプチドがcyclo(Arg-Gly-Asp-(D)Phe-Lys)(配列番号2)である項1記載の幹細胞培養用基材。
項4. 前記高分子基材がポリペプチド及び/又は多糖類である項1記載の幹細胞培養用基材。
項5. 前記高分子基材が下記式(1)で表されるアミノ酸配列を有するペプチドユニット(1)と、下記式(2)で表されるアミノ酸配列を有するペプチドユニット(2)とを含むポリペプチドである項1記載の幹細胞培養用基材。
-Pro-X-Gly- (1)
-Pro-Hyp(O-Y-Z)-Gly- (2)
(式中、XはPro又はHypを示し、Yはカルボニル基、又はカルボニル基を有するか若しくは有しない飽和又は不飽和の炭化水素基を示し、Zはカルボキシル基を示す)
項6. Yが、-(C=O)-(CH2)n- (式中nは0又は1〜18の整数を示す);-(C=O)-(CH2)n-(CH=CH)m-(CH2)k- (式中n及びkは独立に0又は1〜18の整数を示し、mは1〜18の整数を示す);及び-(C=O)-(CH2)n-(C6H4)-(CH2)k- (式中n及びkは独立に0又は1〜18の整数を示し、C6H4はフェニレン基を示す)からなる群より選択される1種以上である項5記載の幹細胞培養用基材。
項7. ペプチドユニット(1)とペプチドユニット(2)との割合(モル比)が、(1)/(2)=99.9/0.1〜1/99である項5記載の幹細胞培養用基材。
項8. 前記高分子基材が、円二色性スペクトルにおいて、波長220〜230nmに正のコットン効果を示し、波長195〜205nmに負のコットン効果を示す項5記載の幹細胞培養用基材。
項9. 前記高分子基材が、ポリペプチドの少なくとも一部が3重らせん構造を形成している項5記載の幹細胞培養用基材。
項10. 前記高分子基材が、分子量5×10〜5×10の範囲にピークを示す項5記載のポリペプチドである幹細胞培養用基材。
項11. 前記環状骨格構造を有する細胞接着性ペプチドが光分解性リンカーを介して高分子基材に結合されている、項1記載の幹細胞培養基材。
項12. 光分解性リンカーが2−ニトロベンゼン骨格、2−ニトロフェノール骨格、ニトロインドール骨格、又はクマリン骨格を有する項11記載の幹細胞培養基材。
項13. 項1から12のいずれか記載の幹細胞培養用基材上で幹細胞を培養する工程を含む幹細胞の培養方法。
項14. 幹細胞が胚性幹細胞及び/又は誘導多能性幹細胞(iPS細胞)である項13記載の培養方法。
項15. 項11又は12に記載の幹細胞培養基材上で幹細胞を培養する工程、及び、
前記培養後の培養基材に光を照射することにより、幹細胞を幹細胞培養基材から分離する工程
を含む、幹細胞の培養方法。
項16. 項5記載の高分子基材のポリペプチドが有するカルボキシル基と、環状骨格構造を有する細胞接着性ペプチドが有するアミノ基とを脱水縮合して得られるアミド結合により、環状骨格構造を有する細胞接着性ペプチドと高分子基材とが結合することを含む幹細胞培養基材の製造方法。
本発明の幹細胞培養用基材を用いることにより、胚性幹細胞(ES細胞)や誘導多能性幹細胞(iPS細胞)等の幹細胞の基材への接着率が飛躍的に向上するため、幹細胞をその多分化能を維持した状態で効率的に培養することが可能となる。また、本発明の幹細胞培養基材は、動物由来の材料を用いていないため、病原体感染の危険性や他の好ましくない副作用(例えば、動物由来タンパク質によるアレルギー反応のおそれ)が低減されており、安全性に優れている。更に、本発明の好適な一実施形態では、培養基材に接着した幹細胞を幹細胞に対するダメージを抑制しつつ、簡便且つ効率的に培養基材から遊離させることが可能である。よって、本発明の幹細胞培養基材を用いることにより、培養した幹細胞を効率的に分化誘導に供することができるため、幹細胞の培養から分化誘導までの一連の作業の操作性を大幅に向上させることができる。
試験例2で作製した幹細胞培養用基材上で30時間培養したマウス胚性幹細胞(EB3)を示す顕微鏡写真を示す。 製造例4において、高分子基材に光分解性リンカーを結合した手順を示す。 試験例5で光照射したパターンを示す。 試験例5における光照射によって解離した色素のパターンを示す。
以下に本発明を詳細に説明する。
[定義等]
本明細書では、各種アミノ酸残基を次の略号で記述する。
Ala :L−アラニン残基
Arg :L−アルギニン残基
Asn :L−アスパラギン残基
Asp :L−アスパラギン酸残基
Cys :L−システイン残基
Gln :L−グルタミン残基
Glu :L−グルタミン酸残基
Gly :グリシン残基
His :L−ヒスチジン残基
Hyp :L−ヒドロキシプロリン残基
Ile :L−イソロイシン残基
Leu :L−ロイシン残基
Lys :L−リジン残基
Met :L−メチオニン残基
Phe :L−フェニルアラニン残基
(D)Phe:D−フェニルアラニン残基
Pro :L−プロリン残基
Sar :サルコシン残基
Ser :L−セリン残基
Thr :L−トレオニン残基
Trp :L−トリプトファン残基
Tyr :L−チロシン残基
Val :L−バリン残基
(D)Val:D−バリン残基
本明細書においては、別段の表記をした場合を除き、常法に従って、N末端のアミノ酸残基を左側に位置させ、C末端のアミノ酸残基を右側に位置させて、ペプチド鎖のアミノ酸配列を記述する。
[環状骨格構造を有する細胞接着性ペプチド]
細胞接着性ペプチドとは、細胞との接着に関与し、基材との細胞接着を促進する機能を有するペプチドである。本発明に使用される細胞接着性ペプチドは、そのような機能を有するペプチドであれば特に制限されず、天然に存在するペプチド及び人工的に設計されたものを広く用いることができる。好ましい細胞接着性ペプチドとしては、細胞膜上のインテグリン分子と結合する細胞外マトリクス中のインテグリン認識配列が挙げられる。現在知られている細胞接着性ペプチドとして、例えば、Arg-Gly-Asp、Pro-His-Ser-Arg-Asn(配列番号3)、Tyr-Ile-Gly-Ser-Arg(配列番号4)、Ile-Lys-Val-Ala-Val(配列番号5)、Leu-Asp-Val、Arg-Glu-Asp-Val(配列番号6)、及びLeu-Arg-Glu配列等を挙げることができ、これらをを含むペプチド好適に使用することができる。これらの中でもフィブロネクチンに見出されるArg-Gly-Asp配列を含む細胞接着性ペプチドが好ましい。
本発明において使用される細胞接着性ペプチドは、環状骨格構造を有する。ここで、環状骨格構造を有するとは、上述の細胞接着性ペプチドが環状骨格構造を形成していることを意味する。環状骨格構造は、細胞接着性ペプチドのみで構成されていてもよく、その他のペプチドとの組合せで構成されていてもよい。環状骨格構造を形成するアミノ酸の数は、幹細胞に対する接着性を維持している限り特に制限されないが、例えば、下限は3個以上又は4個以上であり、上限は7個以下又は6個以下である。環状骨格構造を形成するアミノ酸の数がこのように制限されることにより、細胞接着ペプチドの立体構造(即ち、構成アミノ酸が形成する角度)が、幹細胞の表面に存在する受容体であるインテグリン分子による認識に適した構造になると考えられる。フィブロネクチンは細胞外マトリックスの代表的な接着タンパク質であり、細胞の接着、増殖、遊走及び分化を制御する重要な役割を有することが知られている。フィブロネクチンには複数の細胞/細胞外マトリクス結合ドメインが存在する。そのうち、III-10は「細胞結合ドメイン」に対応しており、Arg-Gly-Asp配列を有し、この部分が細胞膜上に存在するインテグリン分子と結合して細胞接着を行う。
環状骨格構造を有する細胞接着性ペプチドは、例えば、上述の細胞接着性ペプチド単独又はそれと他の1又は2個以上のアミノ酸との組合せで構成された、環状ペプチドであり得る。好ましい環状骨格構造を有する細胞接着性ペプチドは、フィブロネクチンに見られるArg-Gly-Asp配列を含む環状ペプチドであり、例えば、一般式(I):cyclo(Arg-Gly-Asp-B-J)(ここで、B及びJは、互いに独立した任意のアミノ酸であり、いずれか一方はD型である)で表示される5個のアミノ酸で構成される環状ペプチドである。尚、一般式(I)は、Argのα-アミノ基とJのα-カルボキシル基とがペプチド結合を形成し、全体として環を形成することを示す。より好ましい環状骨格構造を有する細胞接着性ペプチドは、前記一般式(1)において、Bが(D)PheでJが任意のアミノ酸であるか、Bが任意のアミノ酸でJが(D)Valである。より具体的な好適な環状骨格構造を有する細胞接着性ペプチドとしては、例えば、cyclo(Arg-Gly-Asp-(D)Phe-Lys)(配列番号7)、cyclo(Arg-Gly-Asp-(D)Phe-Val(配列番号8)cyclo(Arg-Gly-Asp-Phe-(D)Val)(配列番号9)、cyclo(Arg-Gly-Asp-(D)-Phe-Ser)(配列番号10)、及びcyclo(Cys-Arg-Gly-Asp-(D)Phe-Cys)(配列番号11)、等を挙げることができる。環状骨格構造を有する細胞接着性ペプチドは、幹細胞との細胞接着性を維持している限り、他のペプチド又は糖鎖等によって修飾されていてもよい。
本発明で使用される環状骨格構造を有するペプチドは、公知ペプチド合成方法を用いて製造することができる。例えば、固相合成法又は液相合成法によって調製されるが、固相合成法が操作上簡便である〔例えば、日本生化学会編「続生化学実験講座2 タンパク質の化学(下)」(昭和62年5月20日 株式会社東京化学同人発行)、第641−694頁参照〕。
本発明の環状骨格構造のペプチドの固相合成法による調製は、例えば、次の手順で行うことができる。まず、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体等の反応溶媒に不溶性である重合体に、目的とするペプチドのC末端に対応するアミノ酸をそれが有するα−COOH基を介して結合させる。次いで、該アミノ酸に目的とするペプチドのN末端の方向に向かって、対応するアミノ酸又はペプチド断片を該アミノ酸又はペプチド断片が有するα−COOH基以外のα−アミノ基等の官能基を保護した上で縮合させて結合させる。そして、この操作と該結合したアミノ酸又はペプチド断片におけるα−アミノ基等のペプチド結合を形成するアミノ基が有する保護基を除去する操作を順次繰り返すことによってペプチド鎖を伸長させる。目的とするペプチドに対応するペプチド鎖が形成されると、該ペプチド鎖を重合体から脱離させた後、環化させる。得られた環状ペプチドの保護されている官能基から保護基を除去する。最後に得られたペプチドを精製する。ここで、ペプチド鎖の重合体からの脱離及び保護基の除去は、トリフルオロ酢酸を用いて行うのが副反応を抑制する観点から好ましい。また、得られたペプチドの精製は逆相液体クロマトグラフィーで行うことが効果的である。
[高分子基材]
本発明で使用される高分子基材の種類は、病原体感染の危険性や他の好ましくない副作用が低減されている限り特に制限されないが、通常ポリペプチド及び/又は多糖類である。ポリペプチドであることが好ましく、中でも、式(1)-Pro-X-Gly-で表されるアミノ酸配列を有するペプチドユニットを含むポリペプチドであることが特に好ましい。-Pro-X-Gly-で表される配列は、ポリペプチド全体を安定な3重らせん構造にすることに寄与する。よって、このユニット(1)は、3重らせん構造の安定性の点から、ポリペプチド中において、-(Pro-X-Gly)n-で表される繰返し構造(オリゴ又はポリペプチドユニット構造)を形成してもよい。この配列の繰返し数nは、例えば、1〜5000、好ましくは2〜3000程度である。Xは、Pro又はHypのいずれであってもよいが、3重らせん構造の安定性からHypであるのがより好ましい。なお、Hypは、通常、4Hyp(例えば、trans−4−ヒドロキシ−L−プロリン)残基である。
また、該ポリペプチドは、式(2)-Pro-Hyp(O-Y-Z)-Gly-で表されるアミノ酸配列を有するペプチドユニットを含む。このようなペプチドユニット(2)を有することにより、ポリペプチドに環状骨格構造を有する細胞接着性ペプチドを結合することができる。前記式(2)において、Yはカルボニル基、又はカルボニル基を有するか又は有しないアルキル基を示し、Zはカルボキシル基を示す。
式(2)中のY−Zはポリペプチドに環状骨格構造を有する細胞接着性ペプチドを結合するためのリンカー基の役割を果たす。Zはリンカー末端であってカルボキシル基を表す。Yが-(C=O)-(CH2)n-である場合のnは好ましくは0又は1〜18、より好ましくは1〜15、最も好ましくは2〜12の整数を表す。また、Yが-(C=O)-(CH2)n-(CH=CH)m-(CH2)k-である場合のn及びkは独立して、好ましくは0又は1〜18、より好ましくは1〜15、最も好ましくは2〜12の整数を表し、mは好ましくは0又は1〜18、より好ましくは1〜12、最も好ましくは1〜8の整数を表す。さらに、Yが-(C=O)-(CH2)n-(C6H4)-(CH2)k-である場合のn及びkは独立して、好ましくは0又は1〜18、より好ましくは0〜12、最も好ましくは0〜8の整数を表し、C6H4はフェニレン基を表す。
式(2)において(Y-Z)で表されるジカルボン酸リンカーは、無水ジカルボン酸をポリペプチド主鎖に付加することにより形成することができる。すなわち、Yが-(C=O)-(CH2)n- の場合は、無水シュウ酸、無水マロン酸、無水コハク酸、無水4-カルボキシ酪酸、無水5-カルボキシ吉草酸、無水6-カルボキシカプロン酸、無水7-カルボキシヘプタン酸、無水8-カルボキシカプリル酸、無水9-カルボキシペラルゴン酸等をポリペプチド主鎖のヒドロキシプロリン残基のヒドロキシル基と反応させて付加することができる。同様に、Yが-(C=O)-(CH2)n-(CH=CH)m-(CH2)k-の場合は、無水マレイン酸、ペンタ−2−エン二酸無水物、ヘキサ−3−エン二酸無水物、シトラコン酸無水物等を、-(C=O)-(CH2)n-(C6H4)-(CH2)k-の場合は、フタル酸無水物等をポリペプチド主鎖のヒドロキシプロリン残基のヒドロキシル基と反応させて付加することができる。
該ポリペプチドにおいて、前記ペプチドユニット(1)と前記ペプチドユニット(2)との割合(モル比)は、例えば、(1)/(2)=99.9/0.1〜1/99であり、好ましくは0.5/99.5〜2/98、さらに好ましくは99/1〜5/95程度である。前記ペプチドユニット(1)及び前記ペプチドユニット(2)の合計量と、他のペプチドユニットとの割合(モル比)は、前者/後者=100/0〜50/50、好ましくは100/0〜60/40、さらに好ましくは100/0〜70/30程度である。
また、該ポリペプチドは、水系ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定される球状蛋白質換算で、例えば、分子量5×10〜5×10、好ましくは分子量1×10〜3×10、好ましくは3×10〜2×10、さらに好ましくは5×10〜1×10程度の範囲にピークを示す。
さらに、該ポリペプチドは、円二色性スペクトルにおいて、波長220〜230nmに 正のコットン効果を示し、波長195〜205nmに負のコットン効果を示す。そのため、ポリペプチドの少なくとも一部(すなわち、一部又は全部)が3重らせん構造を形成しており、コラーゲン様ポリペプチドを形成する。なお、コットン効果とは、旋光性物質において特定の波長で左右の円偏光に対する吸収係数が異なるために起こる現象をいう。
該ポリペプチド(複合体も含む)は、純粋な試薬から化学的に合成されるため、病原体や病原性因子[例えば、病原性に転化したタンパク質(例えば、異常型プリオン等)等]の感染や伝達の危険性がない。そのため、該ポリペプチドは、安全性が高い。また、細胞親和性や生体適合性にも優れている。
該ポリペプチドは、公知の方法に従って製造することができる。例えば、式(1)に対応するアミノ酸又はペプチドフラグメントと、下記式(3)に対応するアミノ酸又はペプチドフラグメントとを少なくとも含むアミノ酸成分又はペプチドフラグメント成分を縮合させて得られるポリペプチドに、下記式(4)で示される化合物を反応させてポリペプチドを得るのが好ましい。
-Pro-Hyp-Gly- (3)
HO-Y-Z (4)
(式中、Yはカルボニル基、又はカルボニル基を有するか又は有しないアルキル基を示し、Zはカルボキシル基を示す)
高分子基材としての使用に好適である上述のポリペプチド及びその製造方法は、WO2009/035092に詳細に説明されているため、それを参照して製造することができる。WO2009/035092は援用によってその全体が本書に取り込まれる。
[幹細胞培養用基材]
本発明の幹細胞培養用基材は、上記の高分子基材に上記環状骨格構造を有する細胞接着性ペプチドが結合されたものであり、通常の細胞の培養に用いられるプラスティックディッシュ等の培養容器内に設けて製品化することができる。このような本発明の幹細胞培養用基材が設けられた培養容器は、例えば、高分子基材をプラスティックディッシュ等の培養面にコーティングした後に環状骨格構造を有する細胞接着性ペプチドを結合して得ることができる。また、高分子基材と環状骨格構造を有する細胞接着性ペプチドを結合した後、該溶液を用いて、プラスティックディッシュ等の培養面にコーティングして当該培養容器を作成しても良い。このような製造工程において、高分子基材を予めフィルム状、スポンジ状、繊維状、ロッド状、ビーズ状、ゲル上等の様々な形状に加工した上で、環状骨格構造を有する細胞接着性ペプチドを結合しても良い。また高分子基材と環状骨格構造を有する細胞接着性ペプチドを結合した溶液を上記形状に加工しても良く、金属やセラミックス、半導体、プラスティック等の種々の形態の加工品表面又は内面をコーティングしても良い。
本発明の高分子基材あるいは環状骨格構造を有する細胞接着性ペプチドを結合した高分子基材は、用途に応じて、慣用の方法により所望の形態に成形することができる。例えば、高分子基材の溶液又は懸濁液を、剥離性基材(例えば、フッ素樹脂(具体的には、ポリテトラフルオロエチレン))シート上に流延して、乾燥し、前記剥離性基材から剥離することによりシート又はフィルム状の高分子基材を得ることができる。また、高分子基材に対する貧溶媒(又は高濃度の塩を含む溶液等)中に、高分子基材の溶液又は懸濁液をノズルから押出すことにより繊維状の高分子基材を得ることができる。さらに、高分子基材の水溶液又は懸濁液を静置したり、必要により多価架橋性試薬(グルタルアルデヒド等)を添加して静置することによりゲル状の高分子基材を得ることができる。このようにして生成したゲル状高分子基材を凍結乾燥することによりスポンジ状の多孔質体とすることもできる。高分子基材の水溶液又は懸濁液に撹拌等により泡立て(発泡させて)、乾燥することによって多孔質体である高分子基材を得ることもできる。尚、上記において、高分子基材は、環状骨格構造を有する細胞接着性ペプチドが結合していても良い。
さらに、環状骨格構造を有する細胞接着性ペプチドが結合した高分子基材はコーティングとして利用することも出来る。例えば、当該高分子基材の溶液又は懸濁液を、各種の成形体の表面に塗布又は散布した後、乾燥することにより、成形体の表面を高分子基材で被覆することができる。ここで成形体としては、種々の材料、例えば、金属、セラミックス、高分子(合成又は天然高分子等)等で形成された成形体等が挙げられる。なお、高分子成形体等の基材は、生分解性又は生体内分解性を有していてもよい。
成形体並びに高分子基材の形態は、特に制限されず、粉粒状、一次元的形状の基材(繊維状又は糸状基材、線状基材、ロッド状基材等)、二次元的形状の基材(フィルム(又はシート)又は板状基材等)、及び三次元的形状の基材(チューブ状基材等)等であってもよい。さらに成形体及び高分子基材は、非多孔質体であってもよく多孔質体(例えば、粉粒状多孔質体、セルロース繊維紙、不織布や織布等の二次元的多孔質体、円筒状等の三次元的多孔質体)であってもよい。このような多孔質体では、高分子基材の溶液又は懸濁液を含浸させ、高分子基材を保持させてもよい。なお、前記成形体は、必要であれば、表面処理剤(例えば、生理学的に許容可能な表面処理剤)で表面処理してもよい。
[細胞接着性ペプチドと高分子基材との結合]
高分子基材と環状骨格構造を有する細胞接着性ペプチドとは、通常高分子基材が有するカルボキシル基と、環状骨格構造を有する細胞接着性ペプチドが有するアミノ基とを脱水縮合して得られるアミド結合により結合することができる。結合方法は、細胞接着性ペプチドの細胞接着活性が失われず固定化され得る方法であれば特に制限されず、当該技術分野に公知の任意の方法で固定化することが出来る。細胞接着性ペプチドの種類や高分子基材の種類等に応じて好ましい固定化方法は異なり得るが、例えば、高分子基材がカルボキシル基を有し、環状骨格構造を有する細胞接着性ペプチドがアミノ基を有する場合には、N−ヒドロキシコハク酸イミドを用いる活性エステル法、水溶性カルボジイミドを用いる直接縮合法等が好ましく採用される。該基材は、必要に応じて、殺菌又は滅菌して用いてもよい。特に、医療用途等においては、通常、殺菌又は滅菌を施す場合が多い。殺菌及び滅菌方法としては、慣用の方法、例えば、湿熱蒸気滅菌、ガンマ線滅菌、エチレンオキサイドガス滅菌、薬剤殺菌、紫外線殺菌等が利用できる。これらの方法のうち、ガンマ線滅菌、エチレンオキサイドガス滅菌は、滅菌効率及び材料に与える影響が少ない点で好ましい。高分子基材と結合される環状骨格構造を有するペプチドの量は、特に制限されず、使用する細胞の種類等に応じて適宜設定することができる。
環状骨格構造を有する細胞接着性ペプチドは、上記のように直接的に高分子基材に結合してもよいが、各種の機能性リンカーを介して結合させることも可能である。好適なリンカーとしては、光分解性リンカーを挙げることができる。光分解性リンカーを介して環状骨格構造を有する細胞接着性ペプチドを高分子基材に結合させることにより、当該基材上で培養した幹細胞を光の照射によって、簡便且つ幹細胞に対するダメージを最小限に抑えた態様で幹細胞培養基材から分離させることが可能となる。
上記の目的で使用することが可能な光分解性リンカーは、光の照射によって分子内の結合が切断される性質を有し、細胞接着ペプチドの接着性及び幹細胞の生育等に悪影響を与えない限り当該技術分野に公知の光分解性リンカー(例えば、ケージド化合物の作製に使用されるもの)を適宜選択して使用することができる。具体的には、2−ニトロベンゼン骨格、5−ニトロフェノール骨格、ニトロインドール骨格、又はクマリン骨格を有する光分解性リンカー等を挙げることがで、好ましくは5−ニトロフェノール骨格及びクマリン骨格を有する光分解性リンカーであり、これらはいずれも公知である。より具体的な光分解性リンカーとしては、4-[4-(1-Hydroxyethyl)-2-methoxy-5-nitrophenoxy]butanoic acid、Bis(4-(4-(1-(acryloyloxy)ethyl)-2-methoxy-5-nitrophenoxy)butanate)PEG及びN-(6-bromo-7-hydroxycoumarin-4-ylmethoxycarbonyl)-L-glutamate等を用いて形成されるリンカーを挙げることができる。
光分解性リンカーを介した高分子基材と環状骨格構造を有する細胞接着性ペプチドとの結合は、細胞接着性ペプチドの細胞接着活性に影響を及ぼさない限り、光分解性リンカーの構造や細胞接着性ペプチドの構造に応じた任意の手法で実施することができる。例えば、ヒドロキシメチル光リンカーを用いる場合、そのカルボキシ基と本発明の高分子基材のカルボキシ基とをLys-Lysを介して結合した後、ヒドロキシメチル光リンカーのヒドロキシ基と環状骨格構造を有する細胞接着性ペプチドのアミノ基またはヒドロキシ基をコハク酸を介して結合することで、光分解性リンカーを介して環状の細胞接着性ペプチドが高分子基材に結合した幹細胞培養基材を得ることが出来る。他の光分解性リンカーを用いる場合も同様にして環状構造を有する細胞接着性ペプチドと高分子基材とを光分解性リンカーを解して結合させることが出来る。
[幹細胞の培養方法]
本明細書において、幹細胞とは、胚性幹細胞(ES細胞)、誘導多能性幹細胞(iPS細胞)、造血幹細胞、間葉系幹細胞、神経幹細胞等の未分化性と多能性を合わせ持つ細胞を意味する。幹細胞の培養は、幹細胞の種類によって最適な培養方法及び条件が知られている。培養条件の中でも培養基材、フィーダー細胞、培地、継代の時期等が細胞の性質の維持のために重要と考えられている。従来、培養基材としては、通常、プラスティック製の培養フラスコやディッシュが用いられ、幹細胞の種類によりコラーゲンやゼラチン、ラミニン、マトリゲル等を該プラスティック培養面にコーティングするか、MEF等のフィーダー細胞を単層培養したものが使用されている。本発明の幹細胞培養方法は、従来の幹細胞の培養方法における動物由来材料を用いた培養基材に代えて上述する環状骨格構造を有する細胞接着性ペプチドが結合した高分子基材を用いる。これにより、異種タンパク質等の混入や病原体混入の危険性が無く安全に用いることができる。培養基材として本発明の培養基材を用いる以外の条件については、培養する各種の幹細胞について知られる適当な条件(例えば、GMEM培地等の適当な培地、37℃、5%COの条件)で培養することが出来る。
[幹細胞の光分離方法]
上述する光分解性リンカーを介して環状骨格構造を有する細胞接着性ペプチドと高分子基材とを結合させた幹細胞培養基材を用いて培養した幹細胞は、光を照射することにより、簡便に基材から分離することができる。よって、酵素処理等の幹細胞に傷害性のある処理を施す必要がないため、培養した幹細胞の生存率を低下させることなく、基材から分離することができる。また、レーザー光を照射した部位に存在する細胞のみを特異的に基材から分離させることも可能である。このようにして基材から分離した幹細胞は、そのまま使用することが可能であり、必要に応じて更なる継代培養や各種の分化誘導処理に供することも可能である。細胞を基板から分離するために必要な光の強度や波長及び照射時間は、使用する光分解性リンカーに応じて適宜設定することができる。使用する光分解性リンカーの種類によっては、350nm〜410nm付近の光を5分程度照射して実施することができる。このような光を照射する手段は特に制限されないが、共焦点レーザー顕微鏡等を用いて行うことが照射強度の制御やパターン照射も可能であるので好ましい。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
製造例1:高分子基材及びそれが設けられた培養器の作製
H-Pro-Hyp-Gly-OH((株)ペプチド研究所製)100 mg(0.35 mmol)を2 mLの10 mMリン酸塩緩衝液(pH7.4)に溶解した。この混合液に、9.5 mg(0.07 mmol)の1−ヒドロキシベンゾトリアゾールを加え、攪拌溶解した。この混合液を4℃に冷却して攪拌しながら、335 mg(1.75 mmol)の1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸塩を添加して、さらに4℃で90分間攪拌を続けた。その後、20℃に昇温し、4 mLの10 mMリン酸塩緩衝生食液(0.15 MのNaCl含有、pH7.4)で希釈し、ミリQ水に対して7日間透析して、縮合剤等の試薬と未反応モノマーを除去した。
得られたポリペプチドをゲルパーミエーションクロマトグラフィー(アマシャム・バイオサイエンス(株)製、AKTApurifierシステム)に供した。Superdex 200 HR GLカラムを使用し、流速は0.5mL/分で実施した。溶離液として10 mMリン酸塩緩衝生食液(0.15 MのNaCl含有s、pH7.4))を用いた。その結果、分子量が12万以上の溶出位置にポリペプチドのピークが認められた。分子量はWaters社製のポリエチレングリコール標準品を標準物質として使用して算出した。得られたポリペプチドの円二色性スペクトルを測定したところ、225nmに正のコットン効果、197nmに負のコットン効果が観測され、3重らせん構造を形成していることが確認された。
得られたポリペプチドをミリQ水で希釈して1 mg/mLの水溶液とした。得られたポリペプチドの水溶液1 mLを直径28 mmのガラス製ディッシュに加え、底表面に均一に拡散させた後に室温で48時間静置して乾燥フィルムを得た。ガラス製ディッシュの底表面に作製したポリペプチドフィルムを、少量のジメチルホルムアミド(DMF)で2回洗浄した。洗浄後のフィルムに熱イソプロパノールから再結晶して精製した無水コハク酸(和光純薬特級)3.8 mg(0.038 mmol)とジイソプロピルエチルアミン6.5μL(0.038 mmol)を氷冷下に加えて、その後室温で終夜振盪した。反応液を除去した後、少量のDMFで5回、続いて少量のメタノールで5回、ポリペプチドのフィルムを洗浄し、減圧乾燥した。
得られたコハク酸化ポリペプチドの赤外吸収スペクトルには1735 cm-1にエステルの吸収が出現し、コハク酸化が確認された。また、1639 cm-1のアミドの吸収との強度比から、ペプチドユニット(1)と(2)の割合((1)/(2))は、25/75(モル比)であった。得られたコハク酸化ポリペプチドの円二色性スペクトルを測定したところ、225 nmに正のコットン効果、199 nmに負のコットン効果が観測され、3重らせん構造を形成していることが確認された。以上のようにしてコハク酸化ポリペプチドフィルムである高分子基材が底表面に設けられたガラスディッシュを作製した。
製造例2:直鎖細胞接着性ペプチドの結合
上記製造例1で得られたコハク酸化ポリペプチドフィルムをDMFで1回洗浄した。N−ヒドロキシコハク酸イミド4.3 mg(0.038 mmol)と1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸塩7.3 mg(0.038 mmol)を加え室温で終夜攪拌した。その後、DMFで5回洗浄し、直鎖状の細胞接着性ペプチドであるGly-Arg-Gly-Asp-Ser・1/2AcOH・2H2O 0.053 mg(95 nmol:(株)ペプチド研究所製)とジイソプロピルエチルアミン17 nL(95 nmol)を100μLのDMFに溶解して添加した。その後室温で終夜攪拌した。DMFで5回、その後エタノールで3回洗浄した後、無菌的に減圧乾燥した。このようにして直鎖状の細胞接着性ペプチドが結合した高分子基材が設けられたガラスディッシュを作製した。
試験例1:幹細胞の接着性試験1
製造例1及び2で得られた高分子基材が底表面に設けられたガラスディッシュ及び直鎖状細胞接着性ペプチドが結合した高分子基材が底表面に設けられたガラスディッシュ、並びに、ゼラチンでコーティングしたプラスティックディッシュに、マウス胚性幹細胞(CJ7)を1×10個/cm2の割合で分注した。CJ7細胞は、GMEM培地(1% FCS、0.1 mM MEM-NEAA、0.1 mM sodium pyruvate、0.1 mM 2-mercaptoethanol、10% Knockout SR、40 U/mL penicillin/streptomycin)に分散したものを用いた。37℃、5% CO2の条件下で2時間培養し、細胞接着率を測定した。細胞接着率は、培養基材フィルムに接着しなかった細胞をPBSで1回洗浄して除去し、 接着した細胞数を顕微鏡下に計数し、分注した細胞数(1×104個/cm2)に対する接着細胞数の比率(%)として算出した。その結果、ゼラチンコーティングされたディッシュにおける細胞接着率は25%であったのに対し、製造例1及び2で得られたディッシュにおける細胞接着率はいずれも5%と以下であった。これは、幹細胞が直鎖状の細胞接着性ペプチドを結合させた高分子基材及び細胞接着性ペプチドが結合していない高分子基材のいずれに対しても実質的に細胞接着性を有さないことを示す。この結果は、WO2009/035092に報告される非幹細胞であるNIH3T3細胞を用いた細胞接着性試験の結果と相違する。これは、非幹細胞と異なり、幹細胞は、細胞接着性ペプチドを認識しないことを示すと考えられた。
試験例2:幹細胞の接着性試験2
上記試験例1と同様の試験を別の幹細胞であるマウス由来幹細胞EB3(AES0139)を用いて実施した。培地には、GMEM培地(1% FCS、0.1 mM MEM-NEAA、1 mM sodium pyruvate、0.1 mM 2-mercaptoethanol、10% Knockout SR、50 U/mL penicillin/streptomycin、2000 U/mL ESGRO(ケミコン社製;登録商標)、10μg/mL blasticidin S)を用いた。37℃、5% CO2の条件下で12時間培養し、PBSで洗浄して非付着細胞を除去した後、位相差顕微鏡で観察して接着細胞数をカウントした。その結果、試験例2と同様に、EB3細胞の接着率は、ゼラチンコーティングされたディッシュを用いた場合よりも低かった。この結果から、幹細胞は非幹細胞とは異なり、細胞接着性ペプチドを認識せず、接着性を有さないことが強く示唆された。
製造例3:環状細胞接着性ペプチドの結合
上記製造例2において、直鎖状細胞性ペプチドに代えて環状骨格構造を有する細胞接着性ペプチドcyclo(Arg-Gly-Asp-(D)Phe-Lys)(AnaSpec社製)を0.057 mg(95 nmol)用いた以外は、製造例2と同様にして、環状骨格構造を有する細胞接着性ペプチドが結合した高分子基材が設けられたガラスディッシュを作製した。
試験例3:幹細胞の細胞接着性試験3
製造例1及び2で得られたガラスディッシュに代えて、製造例3で得られた環状構造骨格を有する細胞接着性ペプチドが結合した高分子基材が底表面に設けられたガラスディッシュを用いた以外は、上記試験例2と同様にして、マウス由来幹細胞EB3の接着率を測定した。比較対象として、0.1% gelatin溶液で底表面をコーティングしたIwaki社製培養用プラスティックディッシュを用いた。12時間培養した後、細胞接着率を測定した。その結果、環状構造骨格を有する細胞接着性ペプチドを結合させたディッシュでは、ゼラチンコートしたディッシュと比較して、約1.9倍の細胞接着性が認められた。これは、細胞接着性ペプチドが環状構造を有する結果、幹細胞表面上のインテグリンが認識可能な立体構造を有するようになったことが原因と考えられる。また、培養開始後30時間で増殖した幹細胞は、両基材上でコロニーを形成した(図1)。
試験例4:未分化培養の確認
上記試験例3の幹細胞の培養を37℃、5%CO2の条件下で3日間継続した。培地は、培養開始後1日で新鮮なものと交換した。3日間の培養後、0.25% trypsinと0.02% EDTAにより細胞を基材より脱着し、再び各基材上にGMEM培地に分散したEB3を1×104 個/cm2の割合で分注した。その後更に3日間培養し、細胞のALP活性をRoche社製NBT/BCIP stock solutionを用いて測定したところ、両基材上の幹細胞がALP陽性に染色された。これにより、本発明の環状骨格構造を有する細胞接着性ペプチドを結合した高分子基材を用いることにより、幹細胞を未分化な状態で培養することが可能であることが確認された。
試験例5:環状骨格構造を有する細胞接着性ペプチドの結合量の影響
cyclo(Arg-Gly-Asp-(D)Phe-Lys)及びジイソプロピルエチルアミンの量を380nmol、190nmol、及び48nmolに変化した以外は製造例3と同様にして、環状骨格構造を有する細胞接着ペプチドが結合した高分子基材が底表面に設けられたガラスディッシュを作製した。これらを用いて上記試験例2と同様にマウス由来幹細胞EB3を12時間培養した。その後PBSで洗浄して、基材に接着していない細胞を除去し、位相差顕微鏡を用いて接着細胞数を測定した。比較対象として、ゼラチンコートしたディッシュを用いた。その結果、ゼラチンコートした培養基材を用いた場合と比較して、380nmol、190nmol、及び48nmolのcyclo(Arg-Gly-Asp-(D)Phe-Lys)を用いて作製した基材で培養した場合の接着細胞数は、各々1.6倍、1.8倍、及び1.4倍であった。
製造例4:光分解性リンカー結合型高分子基材の作製
次の手順に従って3重らせん構造を形成するポリペプチド(高分子基材)に光分解性リンカーを結合させた。まず、高分子基材にLys-Lys基を結合させた。上記製造例1において3重らせん構造を形成することが確認された高分子基材を1mg/mlの濃度で含む水溶液0.29 mlを、カバーガラス上の直径18 mmの範囲に塗布し風乾した。これをDMFで3回洗浄し、イソプロパノールから再結晶した無水コハク酸5.5 mgとジイソプロピルエチルアミン9.6 μlを含むDMF溶液80μLを加えて、氷冷上で30分間振盪し、その後室温で終夜撹拌した。DMFで5回、メタノールで5回洗浄後、減圧乾燥した。このようにして得られたフィルムのFTIRスペクトルを測定し、1,730 cm-1のカルボン酸エステルに帰属される新たな吸収ピークの出現により、コハク酸の付加を確認した。
得られたコハク酸化高分子基材をDMFで3回洗浄し、80μLのDMFに溶解した6.3 mgのHOSuと10.5 mgのEDC・HClを加え、室温で終夜撹拌した。DMFで5回、メタノールで5回洗浄後、減圧乾燥した。得られたフィルムのFTIRスペクトルを測定し1,800 cm-1付近のHOSuエステルに帰属される2本の新たな吸収ピークの出現により、HOSuエステルの生成を確認した。
得られた高分子基材のHOSuエステルをDMFで3回洗浄後、80μLの50%DMF/H2Oに溶解した2.3 mgのLys-Lys・HClと3.5μlのジイソプロピルエチルアミンを加えて、室温で終夜撹拌した。50%DMF/H2Oで5回洗浄し、メタノールで5回洗浄した後、減圧乾燥した。得られたフィルムのFTIRスペクトルを測定し、1,800 cm-1付近のHOSuエステルに帰属される2本の吸収ピークの消失により、HOSuエステルの反応を確認した。このようにして、Lys-Lysが結合した高分子基材を得た。
次に、Lys-Lys 基が結合した高分子基材に光分解性リンカーを結合させた。以降の手順を図2に示す(図2において、Rは蛍光色素又は細胞接着性ペプチドを示す)。50mgの4-[4-(1-Hydroxyethyl)-2-methoxy-5-nitrophenoxy] butanoic acid (Merck社製)を3mlの脱水THFに溶解し、23mgのHOSuと41mgのDCCを加え、遮光氷冷下1時間撹拌した。その後、遮光下室温で終夜撹拌した。析出物をろ去し、ろ液を減圧濃縮して黄色固体を得た。これをイソプロパノールで洗浄後、遮光下減圧乾燥して、57 mgの4-[4-(1-Hydroxyethyl)-2-methoxy-5-nitrophenoxy] butanoic acid HOSu esterを得た。FTIRスペクトルを測定し、1,800 cm-1付近のHOSuエステルに帰属される2本の新たな吸収ピークの出現により、HOSuエステルの生成を確認した。
Lys-Lysが結合した高分子基材をDMFで3回洗浄後、80μLのDMFに溶解した2.2mgの4-[4-(1-Hydroxyethyl)-2-methoxy-5-nitrophenoxy] butanoic acid HOSu esterと0.5μlのジイソプロピルエチルアミンを加えて、遮光下室温で終夜撹拌した。その後、DMFで5回、メタノールで5回洗浄後、減圧乾燥した。得られたフィルムのFTIRスペクトルを測定し、1,280 cm-1のニトロ基及び1,500 cm-1のフェニル基に帰属される2本の吸収ピークの新たな出現を確認した。また、得られたフィルムのUV吸収スペクトルを測定し、350 nmに新たな吸収ピークの出現を確認した。これらより高分子基材への4-[4-(1-Hydroxyethyl)-2-methoxy-5- nitrophenoxy]butanoic acidの結合を確認した。
得られた高分子基材をDMFで3回洗浄後、イソプロパノールから再結晶した無水コハク酸5.5mgとジイソプロピルエチルアミン9.5μlのDMF溶液80μLを加えて、氷冷上で30分間振盪し、その後室温で終夜撹拌した。DMFで5回、メタノールで3回洗浄後、減圧乾燥した。得られたフィルムのFTIRスペクトルを測定し、1,730 cm-1にカルボン酸エステルに帰属される吸収ピークの顕著な増大が見られたことから、コハク酸の付加を確認した。
得られたコハク酸化光分解性リンカーが結合した高分子基材をDMFで3回洗浄後、80μLのDMFに溶解した3.6mg のHOSuと6.3mgのEDC・HClを加え、室温で終夜撹拌した。DMFで5回、メタノールで3回洗浄後、減圧乾燥した。得られたフィルムのFTIRスペクトルを測定し、1,800 cm-1付近のHOSuエステルに帰属される2本の新たな吸収ピークの出現により、HOSuエステルの生成を確認した。このようにして、光分解性リンカーが結合した高分子基材を得た。
試験例6:光照射によるRhodamine 110の基材からの解離
製造例4で得られた光分解性リンカーが結合した高分子基材を10 mMリン酸塩緩衝液(pH 7.4)で3回洗浄後、200μLの10mMリン酸塩緩衝液(pH 7.4)に溶解したRhodamine 110 (53.5 nmol/ml)を加え、遮光下室温で終夜撹拌した。その後、10 mMリン酸塩緩衝液(pH 7.4)で5回洗浄してRhodamine 110が光解離性架橋剤を介して結合した高分子基材を得た。これに、共焦点レーザー顕微鏡(Zeiss LSM710:Carl Zeiss社製)を用いて、405 nmの光を図3に示すパターンの白抜き領域に照射した。照射条件は次の通りである:対物レンズ;10倍、レーザー;405 nm(30mW)、強度;5%, 10%, 30%, 60%, 90%、照射時間;1分、5分、10分。その後、蛍光色素の解離を488 nmの光照射で励起して得られる蛍光を491nm〜740nmで観察した。観察時の条件は次の通りである:対物レンズ;10倍、レーザー;488nm(250mW)、強度;2%、観察波長:491-740nm。その結果を図4に示す(縦軸の数値は、照射レーザーの強度を示し、横軸の数値はレーザーの照射時間を示す)。図4の結果から、照射領域に対応する明確なパターンが得られたことから、光照射によって本発明の培養基材に結合した光解離リンカーを高い精度で解離させることが可能であることが確認された。これにより蛍光色素に代えて環状骨格構造を有するペプチドを光解離リンカーを介して高分子基材に結合させ、それを用いて幹細胞を培養することにより、培養した幹細胞を光照射処理によって簡便且つ容易に培養基材から遊離させることが可能となる。
製造例5:光分解性リンカーを介した環状ペプチドと高分子基材との結合
試験例6において、200μLの10mMリン酸塩緩衝液(pH 7.4)に溶解したRhodamine 110 (53.5 nmol/ml)の代わりに、環状骨格構造を有する細胞接着性ペプチドcyclo(Arg-Gly-Asp-(D)Phe-Lys)(AnaSpec社製)を0.057 mg(95 nmol)用いた以外は、製造例4と同様にして、光分解性リンカーを介して環状骨格構造を有する細胞接着性ペプチドが高分子基材に結合した培養用基材を得た。
試験例7:光照射による培養後の幹細胞の基材からの解離
製造例5で得られた光分解性リンカーを介して環状骨格構造を有する細胞接着性ペプチドが高分子基材に結合した培養用基材に、試験例2と同様にして幹細胞を接着させる。幹細胞の接着を確認した後、基材の一部に405nmのレーザー(30mW)を10%の強度で5分間照射する。照射1時間後に観察すると、光照射部位特異的に幹細胞が遊離していることが確認される。
本発明の幹細胞培養用基材は、再生医療を実現するために不可欠な要素である幹細胞の未分化性と多分化能を維持したまま増殖を可能にするための、動物由来材料に頼らない安全性が高い基材である。したがって、従来基材からの異種タンパク質等の混入や病原体混入の危険性から実用化が遅れていた再生医療の実現を促進するものである。本発明の幹細胞培養用基材は、人工骨、人工歯根、骨修復剤、骨充填剤、人工皮膚、人工神経、人工肝臓、等の組織・臓器の組織工学用の担体又は支持体、再生医療用の担体又は支持体等に利用できる。

Claims (16)

  1. 環状骨格構造を有する細胞接着性ペプチドが高分子基材に結合されている幹細胞培養用基材。
  2. 前記環状骨格構造を有する細胞接着性ペプチドがArg-Gly-Asp配列を含む請求項1記載の幹細胞培養用基材。
  3. 前記環状骨格構造を有する細胞接着性ペプチドがcyclo(Arg-Gly-Asp-(D)Phe-Lys)である請求項1記載の幹細胞培養用基材。
  4. 前記高分子基材がポリペプチド及び/又は多糖類である請求項1記載の幹細胞培養用基材。
  5. 前記高分子基材が下記式(1)で表されるアミノ酸配列を有するペプチドユニット(1)と、下記式(2)で表されるアミノ酸配列を有するペプチドユニット(2)とを含むポリペプチドである請求項1記載の幹細胞培養用基材。
    -Pro-X-Gly- (1)
    -Pro-Hyp(O-Y-Z)-Gly- (2)
    (式中、XはPro又はHypを示し、Yはカルボニル基、又はカルボニル基を有するか若しくは有しない飽和又は不飽和の炭化水素基を示し、Zはカルボキシル基を示す)
  6. Yが、-(C=O)-(CH2)n- (式中nは0又は1〜18の整数を示す);-(C=O)-(CH2)n-(CH=CH)m-(CH2)k- (式中n及びkは独立に0又は1〜18の整数を示し、mは1〜18の整数を示す);及び-(C=O)-(CH2)n-(C6H4)-(CH2)k- (式中n及びkは独立に0又は1〜18の整数を示し、C6H4はフェニレン基を示す)からなる群より選択される1種以上である請求項5記載の幹細胞培養用基材。
  7. ペプチドユニット(1)とペプチドユニット(2)との割合(モル比)が、(1)/(2)=99.9/0.1〜1/99である請求項5記載の幹細胞培養用基材。
  8. 前記高分子基材が、円二色性スペクトルにおいて、波長220〜230nmに正のコットン効果を示し、波長195〜205nmに負のコットン効果を示す請求項5記載の幹細胞培養用基材。
  9. 前記高分子基材が、ポリペプチドの少なくとも一部が3重らせん構造を形成している請求項5記載の幹細胞培養用基材。
  10. 前記高分子基材が、分子量5×10〜5×10の範囲にピークを示す請求項5記載のポリペプチドである幹細胞培養用基材。
  11. 前記環状骨格構造を有する細胞接着性ペプチドが光分解性リンカーを介して高分子基材に結合されている、請求項1記載の幹細胞培養基材。
  12. 光分解性リンカーが2−ニトロベンゼン骨格、2−ニトロフェノール骨格、ニトロインドール骨格、又はクマリン骨格を有する請求項11記載の幹細胞培養基材。
  13. 請求項1から12のいずれか記載の幹細胞培養用基材上で幹細胞を培養する工程を含む幹細胞の培養方法。
  14. 幹細胞が胚性幹細胞及び/又は誘導多能性幹細胞(iPS細胞)である請求項13記載の培養方法。
  15. 請求項11又は12に記載の幹細胞培養基材上で幹細胞を培養する工程、及び、
    前記培養後の培養基材に光を照射することにより、幹細胞を幹細胞培養基材から分離する工程を含む、幹細胞の培養方法。
  16. 請求項5記載の高分子基材のポリペプチドが有するカルボキシル基と、環状骨格構造を有する細胞接着性ペプチドが有するアミノ基とを脱水縮合して得られるアミド結合により、環状骨格構造を有する細胞接着性ペプチドと高分子基材とが結合することを含む幹細胞培養基材の製造方法。
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