JPWO2012144631A1 - 生体分子検出用電極チップ、及び、生体分子検出方法 - Google Patents

生体分子検出用電極チップ、及び、生体分子検出方法 Download PDF

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Abstract

【解決手段】基板(10)と、電極基板(32)、及び、前記電極基板の前記基板が設けられている側とは反対側の最表面に設けられた金属塩および金属酸化物の少なくとも一方(34)、並びに、前記最表面に設けられた生体分子プローブ(38)が固定化された生体分子プローブ固定化材料(38)を有する電極とを備える生体分子検出用電極チップ(100)である。

Description

本発明は、生体分子検出用電極チップ、及び、生体分子検出方法に関する。
近年、ヒトゲノムをはじめ各種生物のゲノム塩基配列の解読が急速に進展し、膨大な塩基配列情報が蓄積されつつある。生体中の遺伝子の機能を明らかにすることにより、各種疾病の診断、医薬品の開発、農作物の品種改良など、広範囲な分野で、遺伝子関連技術の開発が飛躍的に進むことが期待されている。このような遺伝子関連技術の開発においては、塩基配列情報ならびに遺伝子の発現および機能情報を、高精度で解析することが重要である。
遺伝子の機能及び発現解析を大規模に行い、遺伝子検査へ発展させる技術は、既に、DNAチップまたはDNAマイクロアレイとして、市販されている。しかし、現状のDNAチップ及びDNAマイクロアレイの多くは、蛍光物質などの標識分子を用いて、光学的に生体分子を検出する蛍光検出を基本原理としているため、レーザや複雑な光学系が必要となり、システムが大型化し高価である。
かかる問題を解決するために、酸化還元標識を用いた電流検出方式のDNAチップが報告されている。例えば、分子ワイヤーと称する分子の一端を金属電極上に固定化して、前記分子の他端にDNAプローブを結合させ、ターゲット遺伝子とのハイブリダイゼ−ションに基づく酸化還元標識と金属電極の電子の授受を、電流変化として検出し、ターゲット遺伝子を検出する方式が知られている(例えば、Nature Biotechnology,vol.16,(1998)p27,p40参照)。
また、医療診断の分野、すなわち遺伝子診断の分野では、高い精度および定量性が求められる。かかる要求に対して、例えば、電界効果トランジスタのゲート電極に接続されたフローティング電極の表面にDNAプローブを固定化し、ターゲット遺伝子とフローティング電極の表面でハイブリダイゼーションを行わせ、その際に生ずる表面電荷密度の変化を、電界効果を利用して検出する方法が開示されている(例えば、特開2005−077210号公報参照)。
しかしながら、Nature Biotechnology,vol.16,(1998)p27,p40に記載の方式では、金属電極上での酸化還元反応を検出の基本原理としているため、試料中に酸化物質あるいは還元物質(例えばアスコルビン酸)が存在すると、酸化又は還元に基づく電流が流れ、遺伝子検出の妨害となって検出精度が劣化することがあった。また、電流計測に伴い、金属電極上で電極反応が進行し易い。さらには、電極反応が不可逆で非平衡反応であるため、電極の腐食、ガスの生成などが生じ、電流測定の安定性が損なわれることがあり、特に繰返し測定する場合に検出精度が劣化することがあった。
特開2005−077210号公報に記載の方式によれば、低コストで、酸化還元反応を用いた生体分子の検出方法に比べ、精度の高い検出方法ではあるが、安定した電位が得られにくく、より高い水準の精度が求められていた。
上記事情に鑑み、液体と電極との固液界面における電位の安定性に優れた生体分子検出用電極チップ、及び、生体分子を精度良く検出する生体分子検出方法が必要とされる。
前記課題を達成するための具体的手段は以下の通りである。
<1> 基板と、電極基板、及び、前記電極基板の前記基板が設けられている側とは反対側の最表面に設けられた金属塩および金属酸化物の少なくとも一方、並びに、前記最表面に設けられた生体分子プローブが固定化された生体分子プローブ固定化材料を有する電極とを備える生体分子検出用電極チップである。
<2> 前記金属塩が、金属塩化物である前記<1>に記載の生体分子検出用電極チップである。
<3> 前記金属塩を構成する金属が、銀である前記<1>または前記<2>に記載の生体分子検出用電極チップである。
<4> 前記金属酸化物を構成する金属が、タンタルである前記<1>に記載の生体分子検出用電極チップである。
<5> 前記生体分子プローブが、核酸、ポリヌクレオチド、合成オリゴヌクレオチド、抗体、または抗原である前記<1>〜前記<4>のいずれか1つに記載の生体分子検出用電極チップである。
<6> 基板と、電極基板、及び、前記電極基板の前記基板が設けられている側とは反対側の最表面に設けられた金属塩および金属酸化物の少なくとも一方、並びに、前記最表面に設けられた生体分子プローブが固定化された生体分子プローブ固定化材料を有する電極とを備える生体分子検出用電極チップを、少なくとも1種の生体分子を含有する水溶液に接触する水溶液接触工程と、前記電極の固液界面電位の変化を検出する検出工程とを有する生体分子検出方法である。
<7> 前記金属塩が、金属塩化物である前記<6>に記載の生体分子検出方法である。
<8> 前記金属塩を構成する金属が、銀である前記<6>または前記<7>に記載の生体分子検出方法である。
<9> 前記金属酸化物を構成する金属が、タンタルである前記<6>に記載の生体分子検出方法である。
<10> 前記生体分子プローブが、核酸、ポリヌクレオチド、合成オリゴヌクレオチド、抗原、または抗体である前記<6>〜前記<9>のいずれか1つに記載の生体分子検出方法である。
<11> 前記水溶液接触工程は、1本鎖である核酸を前記生体分子プローブとして用い、前記生体分子プローブと前記水溶液中の前記生体分子である核酸との相補的な複合体を形成する工程、または、抗原−抗体反応を形成する工程である前記<6>〜前記<10>のいずれか1つに記載の生体分子検出方法である。
本発明によれば、液体と電極との固液界面における電位の安定性に優れた生体分子検出用電極チップ、及び、生体分子を精度良く検出する生体分子検出方法を提供することができる。
図1は、本発明の生体分子検出用電極チップの構成例を示す断面模式図である。 図2の(A)側は、基板及び電極基板の積層体の構成例を示す上面模式図であり、図2の(B)側は、基板及び電極基板の積層体の構成例を示す側面模式図である。 図3の(A)側は、基板及び電極基板の積層体の他の構成例を示す上面模式図であり、図3の(B)側は、基板及び電極基板の積層体の他の構成例を示す側面模式図である。 図4の(A)側は、トランジスタの構成例を示す側面模式図であり、図4の(B)側は、トランジスタの構成例を示す上面模式図である。 図5の(A)側は、トランジスタの構成例を示す側面模式図であり、図5の(B)側は、トランジスタの構成例を示す上面模式図である。 図6は、本発明の生体分子検出方法における測定システムの構成例を示す模式図である。 図7は、本発明の生体分子検出方法における核酸の一塩基伸長反応の概略図である。 図8は、実施例で用いたSAM積層体の層構成を示す断面模式図である。 図9は、比較例で用いた電極基板の表面のAFM写真である。 図10は、実施例で用いた電極基板の表面のAFM写真である。 図11は、実施例で用いた電極基板の表面のAFM写真である。 図12は、実施例で用いた電極基板の表面のAFM写真である。 図13は、実施例で用いた電極基板の表面のAFM写真である。 図14は、実施例で用いたSAM積層体のCV曲線を示すグラフである。 図15は、実施例および比較例で用いたSAM積層体のXPSスペクトルを示すグラフである。 図16は、実施例で用いたSAM積層体のXPSスペクトルを示すグラフである。 図17は、実施例および比較例で用いたSAM積層体のXPSスペクトルから得られた検出原子の割合を示す表である。 図18は、比較例で用いたSAM積層体の電極基板表面における表面電位の時間変化を示すグラフである。 図19は、実施例で用いたSAM積層体の電極基板表面における表面電位の時間変化を示すグラフである。 図20は、実施例及び比較例で用いたSAM積層体の電極基板表面における表面電位の電位安定性を示すグラフである。 図21の(A)側は、実施例で用いた電極基板の表面のAFM写真であり、図21の(B)側は、実施例で用いた電極基板の表面の凹凸状態を示す曲線である。 図22は、実施例で用いた電極基板の表面電位の電位安定性を示すグラフである。 図23は、実施例で用いた電極基板の表面電位の電位安定性を示すグラフである。 図24は、本発明の生体分子検出用電極チップの他の構成例を示す断面模式図である。 図25は、参考例で用いた電極基板の表面電位差を示すグラフである。 図26は、参考例で用いた電極基板の表面電位差を示すグラフである。 図27は、参考例で用いた電極基板の表面電位差を示すグラフである。 図28は、参考例で用いた電極基板のエピ蛍光顕微鏡画像である。 図29は、参考例で用いた電極基板のエピ蛍光顕微鏡画像である。 図30は、参考例で用いた電極基板のエピ蛍光顕微鏡画像である。 図31は、実施例で用いた電極基板の表面電位の経時変化を示すグラフである。 図32は、実施例で用いた電極基板の表面電位を表す棒グラフである。
本発明の生体分子検出用電極チップは、基板と、電極基板、及び、前記電極基板の前記基板が設けられている側とは反対側の最表面に設けられた金属塩および金属酸化物の少なくとも一方、並びに、前記最表面に設けられた生体分子プローブが固定化された生体分子プローブ固定化材料を有する電極とを備えて構成される。
生体分子検出用電極チップを上記構成とすることで、液体と電極との固液界面(固/液界面とも表現される)における電位の安定性に優れた生体分子検出用電極チップとすることができる。
生体分子の検出については、溶液中の生体分子の濃度を電気信号として捕らえ、生体分子の存在を定量的に検出することが知られている。例えば、目的とする生体分子を捕捉する生体分子プローブが固定化された電極を、生体分子が含まれている溶液中に浸すと、生体分子プローブが生体分子を捕捉し、捕捉した生体分子の電気信号を捕らえることが知られている。電気信号を捕らえる方法としては、生体分子の存在を、電流の変化で捕らえる電流方式と、電位の変化で捕らえる電位方式とが知られている。
電流方式としては、例えば、金属電極上での酸化還元反応を利用することが知られている。しかし、生体分子を含む溶液中に、酸化物質または還元物質(例えば、アスコルビン酸)が存在すると、酸化または還元に基づく電流が流れ、生体分子の検出が妨げられ、検出精度が劣化することがあった。また、電流計測に伴い、金属電極上で電極反応が進行する。電極反応は不可逆で非平衡反応であるため、金属電極の腐食、ガスの生成等が生じ、電流測定の安定性が損なわれ、特に繰返し測定する場合に検出精度が劣化することがあった。
一方、電位方式としては、既述の生体分子プローブが、電荷を有する生体分子を捕捉することにより生じる電極と溶液との固液界面の電位の変化(表面電荷密度の変化)を検出することが知られている。既述の特開2005−077210号公報に記載の方法によれば、かかる電位の変化を、電界効果を利用してトランジスタにより検出することが知られている。しかしながら、トランジスタを用いると、半導体製造のための設備が必要となり、低コスト化を求める要望に応え難い。
さらに、電極材料として、一般に金属が用いられるところ、溶液による腐食が生じないとの理由から、従来は、金が用いられていた。しかし、金は分極を起こすため、固液界面の電位が安定せず、生体分子の存在に基づく電位の変化を、精度良く検出することができなかった。このように電位が不安定になること(「電位ドリフト」とも称する)は、電極が浸されている溶液中のイオン濃度が増減することによっても生ずる。
従って、生体分子の存在に基づく電位の変化を、精度良く検出するには、電位ドリフトを抑制すればよいと考えられる。すなわち、分極を起こしにくい電極材料を用い、電極を、溶液中のイオン濃度が増減しにくい環境におくことで、電極と溶液との固液界面での電位が安定し、電位ドリフトが生じにくくなると考えられる。
ここで、本発明に係る生体分子検出用電極チップは、基板と、電極基板、及び、前記電極基板の前記基板が設けられている側とは反対側の最表面に設けられた金属塩および金属酸化物の少なくとも一方、並びに、前記最表面に設けられた生体分子プローブが固定化された生体分子プローブ固定化材料を有する電極とを備えて構成される。すなわち、電極材料として、金属塩および金属酸化物の少なくとも一方を含んでいる。
金属塩をMXと表すと、金属塩は、水溶液中で、金属イオン(M)と塩イオン(X)とに解離し、下記式(1)に示す式のごとく平衡状態になる。
また、金属酸化物も水溶液中で解離し、平衡状態になると考えられる。すなわち、金属酸化物をMOと表すと、金属酸化物MOは、水溶液中で水酸化物(MOH)と平衡状態となり、さらに、水溶液の液性(pH)に応じて、MOH となる。MOと、MOHと、MOH とは、下記式(2)に示す式の如く、平衡状態になると考えられる。
従って、本発明に係る生体分子検出用電極チップは、金属塩を含有する場合はXイオンを含む水溶液、金属酸化物を有する場合はHイオンを含む水溶液中に浸されることで、イオンが平衡状態となり、電極と溶液との固液界面での電位が安定すると考えられる。すなわち、電位ドリフトが生じ難いと考えられる。また、電極材料となる金属塩および金属酸化物は、金と異なり、分極を生じないため、かかる観点からも、電位ドリフトが生じ難いと考えられる。
以上より、本発明の生体分子検出用電極チップは、液体と電極との固液界面における電位の安定性に優れると考えられる。
さらに、液体と電極との固液界面における電位の安定性に優れた本発明の生体分子検出用電極チップを少なくとも1種の生体分子を含有する水溶液に接触(例えば、チップを水溶液中に浸漬)し、前記電極の固液界面電位の変化を検出すれば、生体分子の存在に基づく電位の変化を、より正確に検出することができ、生体分子を精度良く検出することができると考えられる。
以下、本発明の生体分子検出用電極チップ、および生体分子検出方法について詳細に説明する。
<生体分子検出用電極チップ>
本発明の生体分子検出用電極チップは、基板と、電極基板、及び、前記電極基板の前記基板が設けられている側とは反対側の最表面に設けられた金属塩および金属酸化物の少なくとも一方、並びに、前記最表面に設けられた生体分子プローブが固定化された生体分子プローブ固定化材料を有する電極とを備えて構成される。
生体分子検出用電極チップは、さらに、基板と、電極との間に、1層以上の中間層を備えていてもよい。
生体分子検出用電極チップが、電極の最表面に、金属塩及び金属酸化物の少なくとも一方を有することで、生体分子検出用電極チップを、生体分子を含有する水溶液中に浸したときに、金属塩及び金属酸化物の少なくとも一方が、水溶液と接触することになる。これによって、金属塩ないし金属酸化物が解離して、水溶液中のイオンが平衡状態になり、電極と水溶液との固液界面の電位を安定化することができる。
また、生体分子検出用電極チップが、電極の最表面に、生体分子プローブが固定化された生体分子プローブ固定化材料を有することで、生体分子検出用電極チップを、生体分子を含有する水溶液中に浸したときに、生体分子プローブが水溶液と接触することになる。これによって、生体分子プローブが水溶液中の生体分子を捕捉し、生体分子が有する電荷によって変化した電位の変化を検出することができる。
本発明の生体分子検出用電極チップの構成例を、図1を用いて説明する。
図1には、基板10と、基板10の上に位置し、基板10と隣接する中間層20と、中間層20の上に位置し、中間層20と隣接する電極30とを備えた生体分子検出用電極チップ100が示されている。電極30は、金属の電極基板32を有し、電極30の最表面に、電極基板32を金属要素とする金属塩及び金属酸化物の少なくとも一方で構成された無機層34、並びに、生体分子プローブ固定化材料を用いて構成される生体分子プローブ固定化層36が形成されている。電極基板32は、無機層34と生体分子プローブ固定化層36とで覆われ、露出していない。また、生体分子プローブ固定化層36には、生体分子プローブ38が固定化されている。
生体分子検出用電極チップ100を、生体分子を含有する水溶液中に浸したときに検出される電位の変化量は、電極基板32とリード線等を介して連結された図示しない電位測定器により測定することができる。
以下、符号を省略して説明する。
〔電極〕
(金属塩、金属酸化物)
電極は、電極基板の前記基板が設けられている側とは反対側の最表面に設けられた金属塩および金属酸化物の少なくとも一方を有する。
すなわち、電極は、最表面に金属塩のみを有する電極基板を含んでいてもよいし、金属酸化物のみを有する電極基板を含んでいてもよいし、金属塩および金属酸化物の両方を有する電極基板を含んでいてもよい。
金属塩としては、特に制限されず、例えば、塩化銀、塩化カルシウム、塩化バリウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、硝酸カルシウム、硫酸アルミニウム、硫化銀、臭化銀、ヨウ化銀、塩化白金等が挙げられる。金属塩は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
以上の中でも、血清等の生体分子を含有する水溶液は、塩化物イオンを多く含むことから、金属塩は、金属塩化物であることが好ましい。また、金属塩を構成する金属は、後述する生体分子プローブ固定化材料との親和性が良いものが好ましい。生体分子プローブ固定化材料として、例えば、アルカンチオールを用いる場合には、金属塩を構成する金属が、硫黄原子との親和性が良い金属であることが好ましく、具体的には、銀、白金、または亜鉛であることが好ましく、銀であることがより好ましい。
金属酸化物としては、特に制限されず、例えば、タンタル酸化物(Ta)、酸化チタン(TiO)、酸化アルミニウム(Al)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化シリコン、酸化錫、酸化白金、酸化金等が挙げられる。金属酸化物は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
以上の中でも、金属塩を構成する金属が、後述する生体分子プローブ固定化材料との親和性が良いものが好ましい。生体分子プローブ固定化材料として、例えば、アルカンチオールを用いる場合には、金属塩を構成する金属が、硫黄原子との親和性が良い金属であることが好ましく、具体的には、タンタル(Ta)、白金、金、またはチタンであることが好ましく、タンタルであることがより好ましい。
金属塩ないし金属酸化物を有する電極基板は、ガラス、金属、ITO(Indium Tin Oxide;酸化インジウムスズ)等の無機材料でも、ポリエステル、ポリオレフィン等の有機材料でもよい。
金属塩ないし金属酸化物で構成される無機層を、後述する表面処理により形成する場合には、電極基板は金属であることが好ましく、電極基板は、金属塩を構成する金属または金属酸化物を構成する金属であることがより好ましい。
ただし、電極基板が金属である場合は、生体分子を含む水溶液と電極との固液界面の電位の安定性の観点から、電極基板表面は、金属塩および金属酸化物の少なくとも一方を含んで構成される無機層と、生体分子プローブ固定化材料を用いて構成される生体分子プローブ固定化層とで被覆され、露出していないことが好ましい。
金属塩ないし金属酸化物は、電極基板上に有ればよく、例えば、電極基板の表面に形成された金属塩ないし金属酸化物で構成された無機層として存在していればよい。電極基板の表面に金属塩ないし金属酸化物で構成された無機層を形成する方法としては、電極基板上に、別途用意した金属塩ないし金属酸化物を接着する方法、金属である電極基板の表面を化学反応により表面処理する方法等が挙げられる。
基板上に、別途用意した金属塩ないし金属酸化物を接着する方法としては、電極基板または金属塩ないし金属酸化物に、エポキシ化合物等の接着剤を付与して、電極基板と金属塩ないし金属酸化物とを張り合わせる方法や、金属塩ないし金属酸化物を、電子ビーム等を用いて電極基板上に蒸着する方法やスパッタリングにより形成する方法が挙げられる。
例えば、ITOを電極基板とし、ITO上にタンタル酸化物で構成された金属酸化物層を形成するには、ITO表面にタンタル酸化物を蒸着すればよい。蒸着時間を調整することにより、タンタル酸化物層の層厚を制御することができる。
金属である電極基板の表面を化学反応により表面処理する方法としては、金属である電極基板の表面に塩酸、硝酸、塩イオンを含むキレート剤溶液等の溶液や、酸素ガス、オゾンガス等の気体を付与する方法が挙げられる。
金属である電極基板の表面に、金属塩で構成される無機層を形成するためには、金属である電極基板の表面を、目的の金属塩とし得る溶液等で表面処理すればよい。例えば、銀板表面に塩化銀で構成された層を形成するには、銀板表面に、Fe3+を配位子とするキレート剤(例えば、PDTA;1,3-Propanediamine Tetraacetic Acid)に塩化ナトリウムを溶解したキレート溶液を付与すればよい。キレート溶液中の塩化ナトリウムの濃度を調整したり、キレート溶液と銀板との接触時間を調整することにより、無機層たる塩化銀層の層厚を制御することができる。
金属である電極基板の表面に、金属酸化物で形成された無機層を形成するためには、金属である電極基板の表面を酸化すればよく、例えば、金属である電極基板表面に、過酸化水素等の酸化剤を含有する溶液を付与したり、酸素ガス、オゾンガス等を吹き付ける等して、電極基板を酸化すればよい。
電極基板上に、金属塩で構成された無機層を形成する方法は、上記の中でも、金属である電極基板の表面を化学反応により表面処理する方法を用いることが好ましい。また、 電極基板上に、金属酸化物で構成された無機層を形成する方法は、金属である電極基板の表面に、金属酸化物を蒸着することもできる。
金属塩ないし金属酸化物を含んで構成される無機層の層厚は、1nm〜100nmであることが好ましく、1nm〜10nmであることがより好ましい。
電極基板上に、金属塩ないし金属酸化物で構成された無機層が存在していることは、例えば、電極基板表面を、AFM(原子間力顕微鏡;Atomic Force Microscope)、TEM(透過型電子顕微鏡;Transmission Electron Microscope)等の顕微鏡を用いた写真観察等によって確認することができる。
(生体分子プローブ、生体分子プローブ固定化材料)
電極は、電極基板の最表面に設けられた生体分子プローブが固定化された生体分子プローブ固定化材料を有する。
生体分子プローブとしては、核酸、ポリヌクレオチド、合成オリゴヌクレオチド、抗体、または抗原が挙げられる。これらは、断片等であってもよい。例えば、オリゴヌクレオチド、cDNAの断片等は、通常、300個以下の塩基から構成されている。オリゴヌクレオチドを用いる場合は、80個以下の塩基長の核酸断片であることが望ましい。
生体分子プローブは、一端が生体分子プローブ固定化材料に結合(固定化)し、生体分子を含有する水溶液中の生体分子と特異的に結合、または反応する。また、生体分子プローブを、一本鎖プローブ(例えば、一本鎖DNA)とし、ターゲットDNAと相補鎖結合させた後、そのターゲットDNAの塩基と相補的に反応する一塩基伸長反応を用いて、特定の生体分子を精度良く検出することもできる。生体分子の検出方法の詳細については後述する。
生体分子プローブ固定化材料は、電極に生体分子プローブを固定化するための材料である。電極が、生体分子が有する電荷を正確に検出するためには、生体分子を捕捉する生体分子プローブと、電極基板とが結合していること(固定化していること)が重要である。
生体分子プローブ固定化材料としては、含硫黄化合物、シリル基含有化合物、ストレプトアビジン(以下、単に「アビジン」とも称する)等が挙げられる。
含硫黄化合物としては、アルキル鎖を有するアルカンチオールやアルカンジスルフィド類などが挙げられる。シリル基含有化合物としては、アルキル鎖を有するアルキルアルコキシシランなどが挙げられる。
含硫黄化合物、シリル基含有化合物とも、アルキル鎖に代えて、ポリエチレングリコール(PEG)に代表されるポリマー鎖を有する含硫黄化合物またはシリル基含有化合物であってもよい。
硫黄は、金、銀、白金等の貴金属との親和性が高い。電極の最表面に金属塩が存在するとき、電極最表面には、金属塩の塩イオン(AgClの場合、Cl)が露出しており、電極の最表面に金属酸化物が存在するとき、電極最表面には、金属酸化物の酸素イオン(O)が露出している。このような状況下、電極の金属塩ないし金属酸化物に対して、チオール基含有化合物を作用させると、電極の最表面に金属塩が存在する場合は、塩イオン(例えばCl)が硫黄と置換し、また、電極の最表面に金属酸化物が存在する場合は、酸素イオン(O)が硫黄と置換して、金属と硫黄とが結合する。
シリル(Si)基は、酸素イオンとの親和性が高い。電極の最表面にガラスや金属酸化物などの酸化物が存在するとき、電極最表面には、金属酸化物の酸素イオン(O)が露出している。このような状況下、電極の酸化物に対して、シリル基含有化合物を作用させると、酸素イオン(O)と硫黄原子とが結合する。
また、金属電極表面にまずチオール基含有化合物を作用させると、金属表面に硫黄が結合してチオール基含有化合物が固定化される。その後、上記電極表面を例えばPDTAのような反応溶液と接触させると、チオール基含有化合物が形成されていない金属電極表面に塩化銀のような金属塩が形成される。チオール基含有化合物の濃度を調節することにより、金属表面に結合する硫黄原子の密度、すなわちチオール基含有化合物の密度を調節でき、電極表面において、金属塩の占める面積とチオール基含有化合物が固定化される面積の割合を制御して変えることができる。この方法において、PDTAのような反応溶液との接触時間を調節することにより、金属塩(塩化銀)の層の厚さを制御することができ、チオール含有化合物の大きさ、例えばアルキル基の長さを調節することにより、チオール基含有化合物の官能基(アミノ基、カルボキシル基、アルデヒド基など)と金属塩表面との相対位置、距離、チオール基含有化合物の柔軟性を制御し、最適化することができる。
アビジンは、分子の一部を、アルカンチオール等の含硫黄化合物、または、アルキルアルコキシシランなどのシリル基含有化合物で修飾することにより、電極にアビジンを固定化すればよい。
一方、生体分子プローブ固定化材料と、生体分子プローブとの結合(固定化)は、例えば、生体分子プローブの一端および生体分子プローブ固定化材料の一端のいずれか一方をアミノ基で修飾し、他方をカルボキシ基で修飾して、両者をアミド結合等により結合することが考えられる。なお、分子内に、既に、アミノ基またはカルボキシ基を有する場合には、アミノ基またはカルボキシ基の修飾を行なわなくてもよい。また、カルボキシ基による修飾に代えて、前記一端をアルデヒド基で修飾し、アミノ基と結合させてもよい。
生体分子プローブ固定化材料がアビジンである場合には、アビジンとの親和性の高いビオチンを用いることが考えられる。アビジンは、4つのサブユニットから構成されており、それぞれにビオチン結合部位を有するため、1分子あたり4つのビオチンと結合することができる。従って、ビオチンを生体分子プローブの一端に修飾することで、アビジン−ビオチン結合を利用して、生体分子プローブ固定化材料と生体分子プローブとを結合(固定化)することができる。
生体分子プローブ固定化材料は、上記の中でも、含硫黄化合物が好ましい。
含硫黄化合物は、自己組織化膜(SAM;Self-Assembled Membrane)として機能する。自己組織化膜(SAM)とは、外からの細かい制御を加えていない状態で、膜材料そのものがもつ機構によって形成される一定の秩序をもつ組織をもった薄膜のことをいう。この自己組織化により、非平衡の状況で長距離にわたって秩序がある構造やパターンが形成される。アルカンチオールやアルカンジスルフィド類などの含硫黄化合物は、金、銀等の貴金属、貴金属で構成される金属塩、または貴金属で構成される酸化物等、貴金属を含む基板上に、自発的に吸着し単分子サイズの薄膜を与える。従って、電極に高密度で生体分子プローブを固定化することができ、生体分子の検出の精度をより高くすることができる。
ところで、検出対象の生体分子であるターゲット遺伝子は、生体分子プローブ(例えば、DNAプローブ)とのハイブリダイゼーションにより検出される。このとき、生体分子の周りが過密であると構造障害により生体分子が生体分子プローブに吸着し難くなる場合がある。既述のアルカンチオール等の疎水基を有する生体分子プローブ固定化材料は、アルキル基の疎水鎖相互作用により集まり、ドメイン状になり易い。たんぱく質等の生体分子は疎水性の面に吸着し易い特徴を有しているため、生体分子が集まり、過密になる傾向にある。
そこで、例えば、スルホベタイン(SB)の如き、親水基を有する成分(親水性成分)を、疎水基を有する生体分子プローブ固定化材料と混合して用いてもよい。スルホベタインは、プラスのチャージとマイナスのチャージとの両方を有する親水性の高い分子であるため、例えば、アルカンチオール等の疎水性の分子と混合してSAMを形成することで、SAM表面の疎水性と親水性を調整することができる。その結果、生体分子の構造障害を抑制することができる。SBとしては、具体的には、例えば、Sulfobetaine3-undecanethiolが挙げられる。
SAM表面の疎水性と親水性の調整は、親水性成分と疎水基を有する生体分子プローブ固定化材料との混合比を変えることにより行うことができる。
DNAプローブとスルホベタイン(SB)のモル比〔DNAプローブ:SB〕は1:1から1:10の範囲であることが好ましい。高いハイブリダイゼーション効率を得るためには1:1であることがさらに好ましい。モル比1:1で形成したとき、電極表面のDNAプローブ密度は0.04プローブ/(nm)、すなわち、1平方ナノメーター当たり0.04本のDNAプローブが存在する。このとき、隣り合うDNAプローブ間の距離は約5nmである。二本鎖DNAの直径は2nmであることを考慮すると、程よいプローブ間距離であるといえる。100%のハイブリダイゼーション効率を達成するためにはDNAプローブ密度が0.1プローブ/(nm)以下であることが望ましい。
生体分子プローブ固定化材料を用いて構成される生体分子プローブ固定化層を、電極に形成する場合は、生体分子プローブ固定化材料が溶解している生体分子プローブ固定化材料溶液を、電極基板に直接、または、金属塩ないし金属酸化物で構成される層上に付与し、乾燥すればよい。
生体分子プローブは、生体分子プローブ固定化層を形成した後に、生体分子プローブ固定化材料に結合すればよい。また、生体分子プローブと生体分子プローブ固定化材料とを予め結合してから、生体分子プローブが結合した生体分子プローブ固定化材料を溶媒に溶かし、溶液として、電極基板、または、金属塩ないし金属酸化物で構成される層の上に付与してもよい。
電極基板、または、金属塩ないし金属酸化物で構成される無機層の上への溶液の付与方法としては、スピン塗布、エアナイフ塗布、バー塗布、ブレード塗布、スライド塗布、カーテン塗布等の塗布により溶液を付与する方法、さらには、滴下法、スプレー法、蒸着法、キャスト法、浸漬法等により付与する方法が挙げられる。
生体分子プローブ固定化材料、または、生体分子プローブが結合した生体分子プローブ固定化材料を溶解した溶液は、電極基板上、または、金属塩ないし金属酸化物で構成される層上に、ランダム状に付与してもよいし、アレイ状に配列させて付与してもよいし、ドメイン状に一塊に付与してもよい。また、パターン状に付与してもよい。
生体分子プローブ固定化材料、または、生体分子プローブが結合した生体分子プローブ固定化材料を溶解する溶媒としては、水、アルコール、または、これらの混合溶媒が用いられる。生体分子プローブ固定化材料のみを溶解する場合は、非水溶性有機溶媒を用いてもよいが、生体分子プローブが結合した生体分子プローブ固定化材料を溶解する場合は、生体分子を扱う観点から、水、アルコール等の水溶性溶媒、または、これらの混合溶媒が用いられる。中でも、水、エタノール、または、これらの混合溶媒が好ましい。
以上のようにして、電極に生体分子プローブを固定化することができる。生体分子プローブ固定化材料または生体分子プローブが結合した生体分子プローブ固定化材料を溶解した溶液を用いることで、パターン状、アレイ状等の様々な形状で、生体分子プローブを固定化することができる。図1においては、無機層34と生体分子固定化層36はドメイン状に形成された状態が示されている。これは、例えば生体分子固定化層36を構成する分子がアルカンチオールのアルキル鎖のように疎水性である場合、分子間の疎水性相互作用を駆動力とする自己組織化によりドメイン状に凝集するため、図1のような形態が形成される。また、リソグラフィー技術により、人工的に図1のようなパターン構造を形成することもできる。一方、生体分子固定化層36を形成する分子がポリエチレングリコールのように親水性である場合、分子間の凝集は起こらないため、無機層34と生体分子固定化層36はランダムに混合させることができる。これは、生体分子固定化層36表面に生体分子38を固定化する場合、生体分子同士間の距離や反応効率を制御するのに有効であり、生体分子の大きさ、反応様式により図1のようなドメイン配置あるいはランダム配置を選択することが望ましい。
パターン状、アレイ状等の生体分子プローブの固定化は、電極基板を、予め所望の形状にしておき、かかる形状の電極基板上に、生体分子プローブ固定化材料または生体分子プローブが結合した生体分子プローブ固定化材料を溶解した溶液を付与する態様であってもよい。
図2及び図3に、パターン状の電極基板の構成例を示す。
図2には、ガラス基板110上にパターン状の電極基板130が設けられた積層体200が示されている。図2の(A)側は、積層体200の上面模式図であり、図2の(B)側は積層体200の側面模式図である。図2の(A)側に示す積層体200には、ガラス基板110上に、長方形の電極基板130aと、円形状の電極基板130cとが、線状の電極基板130bによって連結した電極基板130が示されている。図2の(A)側には、長方形の電極基板130aと、線状の電極基板130bと、円形状の電極基板130cとの組み合わせにより構成される電極130のほかに、同様の構成の符号を付けていない電極が、他に9つ示されている。
例えば、円形状の電極基板130cに、金属塩ないし金属酸化物で構成される層と、生体分子プローブが固定化した生体分子プローブ固定化層を形成し、線状の電極基板130bを配線として、長方形の電極基板130aに、電位測定器を連結することで、生体分子の電位を検出することができる。
円形状の電極基板130cに、金属塩ないし金属酸化物で構成される層と、生体分子プローブが固定化した生体分子プローブ固定化層を形成する場合は、ガラス基板110上に、レジスト(例えば、日本化薬社製、SU−8)を塗布するとよい。
図3に、図2に示す積層体200上にレジストを付与した積層体202を示す。
図3の(A)側は、積層体202の上面模式図であり、図3の(B)側は、図3の(A)側に示すXとYとを結ぶ一点鎖線(−・−・−)における積層体202の側面模式図である。
長方形の電極基板130aと、円形状の電極基板130cとのみ以外の電極基板130上およびガラス基板110上に、レジスト150を付与することで、図3の(A)側および図3の(B)側に示すように、長方形の電極基板130aと、円形状の電極基板130cとが露出した積層体202が形成される。例えば、露出した円形状の電極基板130cに、塩酸等の表面処理のための溶液等を付与することで、金属塩ないし金属酸化物で構成される層を形成することができる。また、露出した円形状の電極基板130cに、生体分子プローブが結合した生体分子プローブ固定化材料を溶解した溶液を付与することで、生体分子プローブが固定化した生体分子プローブ固定化層を形成することができる。
電極基板上に、生体分子プローブ固定化材料が固定化されていることは、例えば、電極基板表面について、XPS(X-ray Photoelectron Spectroscopy)、ESCA (Electron Spectroscopy for Chemical Analysis)等のX線光電子分光分析を行うことで確認することができる。例えば、生体分子プローブ固定化材料としてアルカンチオールを用いた場合、アルカンチオールが電極基板上に固定化されているときは、硫黄原子に由来するピークが検出される。
また、生体分子プローブが、生体分子プローブ固定化材料に固定化されていることは、例えば、螢光分子で生体分子を標識し、螢光検出を行なうことで確認することができる。
〔基板〕
生体分子検出用電極チップは、電極基板を支えるための基板を備える。
基板としては、特に制限されず、ガラス基板、ITO基板、金属基板等に代表される無機材料でも、ポリエステル基板、ポリオレフィン基板等に代表される有機材料でもよい。また、FET(Field effect transistor;電界効果トランジスタ)等の電子デバイスが設けられた半導体を基板としてもよい。
基板と電極基板との間には、更に、1層以上の中間層を有していてもよい。中間層は、基板と電極基板との密着性を上げるための接着層の如き機能層とすることができる。中間層を接着層として用いる場合、基板と電極基板との両者との親和性がよい材料を用いることが好ましい。例えば、基板としてガラス基板を用い、電極基板として銀を用いる場合、ガラスとも銀とも親和性の良いチタン(Ti)を中間層とすることが好ましい。
基板としてFETが形成された半導体を用いると、生体分子検出用電極チップの電極と、生体分子を含有する水溶液との固液界面における細かな電位の変化を測定することができる。
FETとしては、例えば、Floatingゲート型、Extended型などが挙げられる。これらのFETの構造の一構成例を、図4および図5を用いて説明する。
図4には、Floatingゲート型FETの模式図が示してあり、図5には、Extended型FETの模式図が示してある。図4および図5とも、(A)側が断面図、(B)側が上面図である。
図4の(A)側には、Floatingゲート型のFET(以下、「F−FET」と称する)が示されている。図4の(A)側において、F−FETは、シリコン基板12と、シリコン基板12上に、離間して設けられているドレイン14Dおよびソース14Sと、シリコン基板12、ドレイン14Dおよびソース14Sの上に設けられているゲート絶縁膜16と、ゲート電極17と、フローティング電極18とを備えている。
トランジスタにおいては、一般に、ドレイン14D−ソース14S間のチャネル領域上にフローティング電極18を形成し、フローティング電極18によって電位を検出する。従って、F−FETでは、図4の(B)側に示すように、フローティング電極18の垂直下方の領域に、ドレイン14Dおよびソース14Sの間のチャネル領域が位置している。
一方、図5の(A)側には、Extended型のFET(以下、「E−FET」と称する)が示されている。図5の(A)側において、E−FETは、シリコン基板12と、シリコン基板12上に、離間して設けられているドレイン14Dおよびソース14Sと、シリコン基板12、ドレイン14Dおよびソース14Sの上に設けられているゲート絶縁膜16と、ゲート電極17と、フローティング電極18とを備えている。また、絶縁膜16の内部に、取り出し電極15を備えている。
このように、取り出し電極15を備えることで、ドレイン14Dおよびソース14Sの間のチャネル領域を、フローティング電極18の垂直下方の領域に位置づける必要がなく、フローティング電極18を、位置にとらわれず自由に形成することができる。
E−FETでは、図4の(B)側に示すように、フローティング電極18の垂直下方の領域に、ドレイン14D−ソース14S間のチャネル領域が位置しておらず、フローティング電極18の垂直下方の領域に、取り出し電極15の一端が位置している。また取り出し電極15の他端の垂直下方の領域にドレイン14D−ソース14S間のチャネル領域が位置している。
Floatingゲート型のFET(F−FET)及びExtended型のFET(E−FET)において、ゲート絶縁膜16は、酸化シリコン(SiO)、窒化シリコン(SiN)、酸化アルミニウム(Al)、酸化タンタル(Ta)などの材料を単独または組み合わせて用い、通常はトランジスタ動作を良好に保つため、酸化シリコン(SiO)の上に窒化シリコン(SiN)、酸化アルミニウム(Al)あるいは酸化タンタル(Ta)を積層した二層構造とする。
ゲート電極17は、ポリシリコン(Poly−Si)が望ましく、ポリシリコンゲートを通してイオン注入によるソース14S、ドレイン14Dを形成する、いわゆるセルフアラインプロセスとの整合性がよい。
フローティング電極18は、電極基板との親和性の高い材料が望ましく、金、白金、銀、パラジウムなどの貴金属を用いることができる。
Extended型のFETにおいて、取り出し電極15は、配線として用いるため、低抵抗でエッチングなど加工性の良い材料が好ましく、その材料としてはポリシリコン(Poly−Si)、アルミニウム、モリブデンなどを用いることができる。
また、リフトオフ法などフローティング電極18のパターン形成方法を用いることにより、取り出し電極15とフローティング電極18とを、例えば金のような同じ材料で形成することもできる。
<生体分子検出方法>
本発明の生体分子検出方法は、基板と、電極基板、及び、前記電極基板の前記基板が設けられている側とは反対側の最表面に設けられた金属塩および金属酸化物の少なくとも一方、並びに、前記最表面に設けられた生体分子プローブが固定化された生体分子プローブ固定化材料を有する電極とを備える生体分子検出用電極チップを、少なくとも1種の生体分子を含有する水溶液に接触する水溶液接触工程と、前記電極の固液界面電位の変化を検出する検出工程とを有して構成される。
すなわち、本発明の生体分子検出方法は、既述の本発明の生体分子検出用電極チップを、少なくとも1種の生体分子を含有する水溶液に接触する水溶液接触工程と、前記電極の固液界面電位の変化を検出する検出工程とを有して構成される。
〔水溶液接触工程〕
水溶液接触工程では、本発明の生体分子検出用電極チップを、少なくとも1種の生体分子を含有する水溶液(以下、「生体分子水溶液」とも称する)に接触する。
生体分子水溶液の接触方法としては、生体分子検出用電極チップが備える金属塩および金属酸化物の少なくとも一方、並びに、生体分子プローブ固定化材料に固定化された生体分子プローブが、水溶液に接触する方法であれば特に制限されない。例えば、生体分子検出用電極チップの電極の最表面のみを生体分子水溶液に浸したり、生体分子検出用電極チップの電極の最表面に生体分子水溶液を滴下したり、生体分子水溶液中に生体分子検出用電極チップを浸漬すればよい。
かかる工程により、本発明の生体分子検出用電極チップが有する金属塩および金属酸化物の少なくとも一方により、電極と水溶液との固液界面の電位が安定化する。また、本発明の生体分子検出用電極チップが有する生体分子プローブ固定化材料に固定化された生体分子プローブが、水溶液中の生体分子を捕捉すると共に、生体分子の捕捉により生じた固液界面の電位の変化を検出することで、生体分子の存在を定量的に検出することができる。
生体分子水溶液中に、例えば、測定すべきターゲット遺伝子を含む多数の遺伝子が存在し、生体分子プローブが、ターゲット遺伝子と相補的塩基配列を有するDNAプローブである場合には、適切な反応条件の下で、ターゲット遺伝子とDNAプローブとが、相補的な複合体を形成する〔ハイブリダイゼーション(Hybridization)〕。かかる複合体を形成することで、生体分子プローブが、生体分子を捕捉する。
〔検出工程〕
検出工程では、生体分子検出用電極チップが備える電極と生体分子水溶液または検出溶液との固液界面電位の変化を検出する。
生体分子水溶液中の生体分子は、正の電荷または負の電荷を帯びている。例えば、生体分子として核酸を検出するとき、生体分子水溶液は、一般に、pH7〜8の緩衝溶液(バッファ溶液)に調製する。かかるpH環境下では、DNAは負の電荷を帯びている。このように電荷を帯びた核酸が、生体分子プローブであるDNAプローブとハイブリダイズによる複合体を形成することにより、電極と生体分子水溶液との固液界面で電荷密度が変化し、表面電位が変化する。
−洗浄工程−
本発明の生体分子検出方法では、検査工程の前に、生体分子検出用電極チップを洗浄液により洗浄する洗浄工程をとり入れてもよい。洗浄液は、生体分子検出用電極チップに付着した生体成分水溶液を除去し得る液体であれば特に制限されず、例えば、水、リン酸緩衝液、NaCl水溶液、生理食塩水等が挙げられる。
本発明の生体分子検出用電極チップと生体分子水溶液を接触させた後、洗浄液により生体分子検出用電極チップを洗浄し、非特異的に前記電極チップに吸着したターゲット以外の他の生体分子や妨害成分を除去することにより、高精度の測定を行うことができる。生体分子検出用電極チップの洗浄後、電極の固/液界面の電位変化を検出するための溶液(検出溶液)を前記電極チップ表面に導入する。固/液界面には電気二重層が形成されていて、固/液界面の電位変化は電気二重層に依存する。電気二重層の幅(厚さ)をデバイ(Debye)長といい、イオン強度の関数である。
塩濃度の高い溶液中ではデバイ長が小さく、例えば100mmol/L(以下、mMとも表す)のNaCl溶液中では約1nmである。一方、希釈溶液中ではデバイ長が大きくなり、例えば、1mmol/LのNaCl溶液中では約10nmとなる。高感度測定を行うためには、デバイ長は長い方が好ましく、生体分子検出用電極チップに付着した生体成分水溶液を洗浄して取り除いた後、最適化された濃度の検出溶液に置き換えて、固/液界面の電位変化を測定することが望ましい。例えは検出溶液として、金属酸化物表面の電極チップには1mmol/Lから10mmol/Lの濃度のリン酸緩衝液、塩化銀などの金属塩表面の電極チップには1mmol/Lから10mmol/Lの濃度の塩化ナトリウム水溶液あるいは塩化カリウム水溶液を用いることができる。
かかる電位の変化を、電極と連結した電位測定器によって測定する。電位測定器としては、例えば、Keithley社製、エレクトロメーターが挙げられる。
電極の表面電位の変化は、既述のFETによって測定してもよい。表面電位の変化が、FETのゲート電圧変化と同等の作用となり、チャネルの導電率を変化させる。ソース−ドレイン間を流れるドレイン電流変化として、ハイブリダイゼーションによる複合体の形成、すなわち、ターゲット遺伝子の存在を検出することができる。
図6に、本発明の生体分子検出方法における測定システムの構成例を、模式図によって示す。図6に示す測定システムは、生体分子検出用電極チップと、参照チップとを用い、2つのチップによる差動測定を行なうものである。
図6には、電極基板333aを用いて構成される電極を備える生体分子検出用電極チップの一部、および、電極基板333bを用いて構成される参照チップが示されている。電極基板333aおよび333bは、共に銀で構成され、それぞれ図示しないガラス基板により支えられている。
電極基板333aの表面は、一部が表面処理されて塩化銀層(無機層)を有し、残りの表面に生体分子固定化材料336aが固定化されている。塩化銀層の表面には、塩化物イオン(Cl)334aが表面に露出している。生体分子固定化材料336aは、硫黄(S)を介して電極基板333aに固定化されている。さらに、生体分子固定化材料336aは、生体分子プローブ338を固定化している。従って、電極基板333aにより構成される電極は、最表面に、塩化銀層と、生体分子プローブ338が固定化された生体分子固定化材料336aにより構成される生体分子固定化層が形成されている。
一方、電極基板333bの表面は、一部が表面処理されて塩化銀層(無機層)を有し、残りの表面に生体分子固定化材料336bが固定化されている。塩化銀層の表面には、塩化物イオン(Cl)334bが表面に露出している。生体分子固定化材料336bには、生体分子プローブは固定化されていない。従って、電極基板333bにより構成される電極は、最表面に、塩化銀層と、生体分子固定化材料336aにより構成される生体分子固定化層が形成されている。
各電極の最表面は、生体分子水溶液370に接触している。すなわち、電極基板333aの、塩化銀層及びおよび生体分子プローブ338が固定化された生体分子固定化材料336aにより構成される生体分子固定化層、ならびに、電極基板333bの、塩化銀層及びおよび生体分子固定化材料336bにより構成される生体分子固定化層が、生体分子水溶液370中に浸されている。
また、生体分子水溶液370中には、参照電極362も浸されている。
参照電極362を併用することで、生体分子検出用電極チップと参照チップの表面電位を安定に測定し易い。
電極基板333aおよび333bは、それぞれ、演算増幅器364aおよび364bに接続しており、演算増幅器364aおよび364bは、演算増幅器366に接続しており、さらに、演算増幅器366は、差動増幅出力368に通じている。
上記構成の測定システムにおいて、電極基板333aを備えた生体分子検出用電極チップは、演算増幅器364aにより表面電位を計測し、電極基板333bを備えた参照チップは、演算増幅器364bにより表面電位を計測する。各表面電位の計測信号は、演算増幅器366を介して差動増幅出力368に入力される。
このような差動測定を行うことにより、生体分子検出用電極チップと参照チップとの電気的特性の違いによる周囲の温度や、光の変化による出力値の変化を補償することができ、ターゲットとする生体分子(例えば、遺伝子)と、生体分子プローブ338(例えば、DNAプローブ)とのハイブリダイゼーションによる出力変化のみを精度良く検出することができる。
生体分子検出用電極チップと参照チップとは、電気的特性がそろっていることが望ましいので、同じ基板に集積化された一対のチップを用いることが望ましい。複数の生体分子検出用電極チップを用いて、複数種の生体分子を同時に計測する場合、参照チップを共通に使用することができ、異なる生体分子検出用電極チップと共通の参照チップとの差動測定を行う。
さらに、生体分子検出方法の他の態様について説明する。
本発明の生体分子検出方法では、DNAの一塩基伸長反応を利用することにより、特定の遺伝子配列のDNAを、精度良く検出することができる。
図7に、本発明の生体分子検出方法における核酸の一塩基伸長反応の一例を示す反応の概略図を示す。
図7の(A)部分〜(E)部分には、電極基板432と、電極基板432に固定化された一本鎖のDNAプローブであるオリゴヌクレオチドプローブ437と、遺伝子配列を検出したいターゲットとなるターゲットDNA440が示されている。電極基板432に固定化された一本鎖のDNAプローブであるオリゴヌクレオチドプローブ437は、核酸を含有する生体分子水溶液(核酸水溶液)中に浸されており、ターゲットDNA440は、当該核酸水溶液に含まれる核酸である。
電極基板432は、既述の本発明の生体分子検出用電極チップの一部であり、電極基板432の表面には、金属塩ないし金属酸化物で構成される層(無機層)も形成されているが、電極基板432およびオリゴヌクレオチドプローブ437以外の構成は、図7の(A)部分〜(E)部分には、図示していない。
図7の(A)部分において、オリゴヌクレオチドプローブ437は、ターゲットDNA440を捕捉し、ターゲットDNA440の一部と、オリゴヌクレオチドプローブ437とが、ハイブリダイゼーションにより複合体を形成している。すなわち、ターゲットDNA440の一部の塩基と、オリゴヌクレオチドプローブ437の塩基とが、相補的に結合している。
ターゲットDNA440が有する塩基配列のうち、オリゴヌクレオチドプローブ437と複合体を形成していない塩基配列(ターゲット塩基配列)440aを、DNAの一塩基伸長反応により把握することができる。
核酸が有するアデニン(A)、チミン(T)、グアニン(G)、シトシン(C)等の塩基は、特定の塩基と相補的に反応し、対をなす性質があることが知られている。かかる性質を利用し、解析すべきターゲット塩基配列440aに含まれる塩基を、端から1つずつ検出することで、ターゲット塩基配列440aの詳細を把握することができる。
図7の(A)部分では、ターゲットDNA440およびオリゴヌクレオチドプローブ437の各塩基は、電極基板432側から順に、下記配列で並んでいる。
ターゲットDNA440:TCTATATGCACGGTCCACCTC
オリゴヌクレオチドプローブ437:AGATATACGTG
ターゲットDNA440の塩基配列のうち、電極基板432側から、TCTATATGCACまでが複合体を形成し、GGTCCACCTCからなる塩基配列(ターゲット塩基配列440a)の塩基は対をなしていない。
かかる状況下において、DNAポリメラーゼ及びdCTP(デオキシシチジン三リン酸;deoxycytidine 5'-triphosphate)を核酸水溶液に投入すると、ターゲット塩基配列440aのうち、ハイブリダイゼーションにより複合体を形成している塩基(塩基C)に隣接する塩基Gと相補的に反応する塩基Cを、オリゴヌクレオチドプローブ437の末端に導入することができる。
デオキシヌクレオチドとしては、塩基Tと相補的に反応する塩基Aを核酸に導入可能なdATP(デオキシアデノシン5'-三リン酸;deoxyadenosine 5'-triphosphate)、塩基Cと相補的に反応する塩基Gを核酸に導入可能なdGTP(デオキシグアノシン5'-三リン酸;deoxyguanosine 5'-triphosphate )、塩基Aと相補的に反応する塩基Tを核酸に導入可能なdTTP(デオキシチミジン5'-三リン酸;deoxythymidine 5'-triphosphate)等がある。
図7の(A)部分に示す状況下において、ターゲットDNA440の塩基配列のうち、ハイブリダイゼーションにより複合体を形成している塩基(塩基C)に近い塩基Gは、2つある。従って、核酸水溶液にdCTPを投入することにより、図7の(B)部分に示すように、オリゴヌクレオチドプローブ437の末端に塩基Cが2つ導入される。オリゴヌクレオチドプローブ437の末端に導入された塩基Cは、ターゲット塩基配列440aの末端の塩基Gと相補的に反応し、結合して複合体となる。
また、既述のように、DNAは負の電荷を有しており、塩基対を1つ形成するごとに、負電荷が検出される。従って、検出される表面電位の変化量の大きさから、相補的反応を起こした数、すなわち、ハイブリダイゼーションにより複合体を形成した塩基の数を把握することができる。
なお、塩基Gは、塩基Cとのみ相補的な反応を示すため、図7の(A)部分に示す状況下において、dCTP以外のデオキシヌクレオチドであるdATP、dGTP、dTTP等を核酸水溶液中に投入しても、一塩基伸長反応は起こらない。
従って、図7の(A)部分に示す状況下においては、dCTPを投入した場合にのみハイブリダイゼーションが生じ、電極の表面電位が変化するため、表面電位の変化量と、表面電位の変化をもたらすデオキシヌクレオチドの種類とから、ターゲット塩基配列440aの塩基の数および種類を検出することができる。
図7の(B)部分において、ハイブリダイゼーションによる複合体を形成しているターゲット塩基配列における塩基(塩基G)に隣接している塩基は塩基Tである。従って、図7(B)に示す状況下においては、核酸水溶液に、dATPを投入した場合にのみ、電極の表面電位が変化し、その電位変化量から、塩基Tの数を把握することができる。図7の(C)部分に示すように、dATPの投入により生じた塩基対は、1つのみである。
なお、図7の(A)部分に示す状況下から、各種デオキシヌクレオチドを順次、核酸水溶液に投入すると、複数種のデオキシヌクレオチドが混合され、定量的検出を妨げる恐れがある。従って、電極基板432およびオリゴヌクレオチドプローブ437を備える生体分子検出用電極チップが浸っている核酸水溶液に、DNAポリメラーゼ及びデオキシヌクレオチドを投入することよりも、DNAポリメラーゼ及びデオキシヌクレオチドを含有する水溶液中に、電極基板432およびオリゴヌクレオチドプローブ437を備える生体分子検出用電極チップを浸すことが好ましい。また、DNAポリメラーゼ及びデオキシヌクレオチド含有水溶液に浸した生体分子検出用電極チップを、種類の異なる他のDNAポリメラーゼ及びデオキシヌクレオチド含有水溶液に浸し直す場合は、当該種類の異なる他のDNAポリメラーゼ及びデオキシヌクレオチド含有水溶液に浸し直す前に、生体分子検出用電極チップの、少なくとも電極を、水、緩衝溶液等で洗浄してから浸すことが好ましい。
DNAポリメラーゼ及び4種類のデオキシヌクレオチドを電極チップ表面に導入して伸長反応を行わせる際、導入するデオキシヌクレオチドがターゲットDNAの塩基と相補的な場合、ターゲットDNA上で塩基が合成され、塩基長が伸長して負電荷が増加すると同時に、ピロリン酸が生成され、水素イオンが放出される。伸長する塩基の数の分だけ水素イオンが放出される。したがって、伸長反応の場となる電極チップ表面近傍の水素イオン濃度、すなわちpHが変化する。本発明の電極チップのうち、金属酸化物を表面とする電極チップは、既述の式(2)に示した金属酸化物の解離平衡が水素イオン濃度に応じて移動し、それに応じて電極電位が変化するため良いpHセンサとなる。したがって、伸長反応の結果放出される水素イオンを検出する上で金属酸化物を表面に有する電極チップは効果的な構成である。
以上の要領で、図7の(D)部分及び図7の(E)部分に示すように、dGTP及びdTTPを順次反応させることにより、一本鎖の核酸であるオリゴヌクレオチドプローブ437は、一塩基ずつ伸長し、ターゲットの核酸であるターゲットDNA440と、順次複合体を形成する。そして、どのDNAポリメラーゼを投入しても、電極の表面電位が変化しないときは、ターゲットDNAの塩基配列を解析し終わったことを意味し、解析が終了する。
<ヘアピンアプタマープローブを備えた生体分子検出用電極チップ、及び、それを用いた生体分子検出方法>
既述の本発明の生体分子検出用電極チップ、および、本発明の生体分子検出方法を応用した他の実施形態について説明する。
インターカレーター(Intercalator)とATP(アデノシン三リン酸)を利用するヘアピンアプタマープローブを備えた生体分子検出用電極チップを用いることで、ターゲットとする生体分子を精度良く検出することができる。
ヘアピンアプタマープローブを備えた生体分子検出用電極チップは、本発明の生体分子検出用電極チップが備える生体分子プローブが、ヘアピンアプタマープローブという形態であることを除いては、既述の生体分子検出用電極チップの構成と変わりない。また、生体分子プローブが固定化された電極基板表面が、金属塩および金属酸化物の少なくとも一方を有していることにより、液体と電極との固液界面における電位の安定性に優れることについても、当然同じである。
ヘアピンアプタマープローブは、レポーター分子(インターカレーター)の存在下で標的認識の際、構造を変更することにより、大きな信号を誘発することができる。さらに、電極チップを構成する基板として、FETのごとき電子トランジスタを用いることで、トランジスタの、スイッチング、特定の電気信号の増幅といった特性を活用して、生化学的ソースからの外部刺激に応答するバイオベースの情報処理デバイスの新しいクラスを実現することが期待される。
ヘアピンアプタマープローブを備えた生体分子検出用電極チップの詳細を、図24を用いて説明する。
図24には、拡張ゲートFET基板610と、電極基板630と、生体分子プローブ固定化材料層636と、ヘアピンアプタマープローブ638(生体分子プローブ)とから構成されるヘアピンアプタマープローブを備えた生体分子検出用電極チップ、ATP640、インターカレーター670及び、参照電極662が示されている。
FET基板610と、電極基板630と、生体分子プローブ固定化材料層636とは、この順に積層され、生体分子プローブ固定化材料層636に生体分子プローブとしてヘアピンアプタマープローブ638が固定化されている。FET基板610は、ドレイン電極614D、ソース電極614S、及びゲート電極617を備えて構成され、ゲート電極617が、電極基板630接続されていることにより、電極基板630上で変化した電位変化を、FET基板610が感知する。
生体分子プローブ固定化材料層636は、既述の生体分子プローブ固定化材料が電極基板610に結合した層であり、例えば、アルカンチオールを用いることで、密集した自己組織化単分子膜(SAM)を形成することができる。SAMを用いることで、電極に高密度で生体分子プローブを固定化することができ、生体分子の検出の精度をより高くすることができることは、既述のとおりである。
生体分子プローブ固定化材料層636を形成する方法としては、例えば、6−メルカプト−1−ヘキサノール(MCH)を電極基板610に塗布すればよい。
生体分子プローブ固定化材料層636には、生体分子プローブとしてATP640と結合し得るヘアピンアプタマープローブ638が固定化されている。
ヘアピンアプタマープローブ638は、インターカレーター670が入り込み易い構造を形成可能な構造部位638aと、アデノシン5’−三リン酸(ATP)結合配列を含む構造部位638bと、を含む化合物(以下、特定プローブ化合物ともいう)を用いる。
ATP結合配列を有する構造部位は、ATPと積極的に結合し、例えば、GTP(グアノシン三リン酸)とは反応を示さない。
図24には、2つのヘアピンアプタマープローブ638が示されている。一方は、図24の左側に、構造部位638bが閉じたループとなっているショートヘアピン状のアプタマープローブ(sh−アプタマー)として示され、他方は、図24の右側に、構造部位638bが開いたループとなっているリニア状のアプタマープローブ(ln−アプタマー)として示されている。
なお、本発明において「ヘアピンアプタマープローブ」とは、ヘアピンアプタマープローブを備えた生体分子検出用電極チップの生体分子プローブを指し、sh−アプタマーのコンフォメーション及びln−アプタマーのコンフォメーションの両方のコンフォメーションを含むものとする。
sh−アプタマーは、ATP結合配列を含む構造部位638bがATPを捕捉していないときの特定プローブ化合物分子のコンフォメーションであり、ln−アプタマーは、ATP結合配列を含む構造部位638bがATPを捕捉しているときの特定プローブ化合物分子のコンフォメーションである。
特定プローブ化合物分子がsh−アプタマーとして示されるコンフォメーションをしているとき、構造部位638aは層状の分子構造を形成し、層間にインターカレーターが入り込みやすい構造をとっている。なお、sh−アプタマーにおける構造部位638aを、「幹」とも称する。
インターカレーターは、プラスの電荷を帯び、sh−アプタマーの構造部位638aと、静電的相互作用やπ−π相互作用等によって結ばれる構造をしており、例えば、下記構造のDAPIに代表される化合物が用いられる。
特定プローブ化合物分子に、インターカレーターが入り込むことで、ヘアピンアプタマープローブは、プラスの電荷を有することになる。
sh−アプタマーの構造部位638aの大きさは、SAMの大きさを含め、3nm以下(h≦3nm)であることが好ましい。
一方、ATPが存在する環境においては、特定プローブ化合物分子のコンフォメーションが変化し、ATP結合配列を含む構造部位638bが開くと共に、ヘアピンアプタマープローブ638が、ATP640を捕捉する。また、構造部位638bが開くことにより、ヘアピンアプタマープローブ638からインターカレーター670が解き放たれて、ヘアピンアプタマープローブ638はプラスの電荷を失うことになる。
このように、ヘアピンアプタマープローブ638の閉ループから開ループへのコンフォメーション変化を、電気信号として読み取ることで、DNA結合種を使用して、ラベルのない方法で、生体分子を認識することができる。
図24の下方に、sh−アプタマー及びln−アプタマーを構成する特定プローブ化合物分子の構造例を示す。なお、図24に示した構造式は、上下2つとも炭素数6のアルカンチオールと、特定プローブ化合物分子とが結合した状態であり、「HS−C6−」を除く、37merの塩基配列部位が、特定プローブ化合物分子の構造となる。構造式中、「C6」とは、炭素数6のアルキル鎖を指し、アルカンチオールの一部を表す。
27merの塩基配列で示されるsh−アプタマーのc1部分、及び、ln−アプタマーのc2部分が、特定プローブ化合物分子(ヘアピンアプタマープローブ638)の構造部位638bに相当し、ATP結合配列となっている。また、sh−アプタマーは、下線を引いた7merの塩基が、相補的に反応することにより対を形成し、構造部位638aの一部を構成する。
ヘアピンアプタマープローブ638が、sh−アプタマーの構造からln−アプタマーの構造に変化することにより失った正電荷の損失量は、FETの電界効果によって電位差信号に変換される。電位差変化(Δφ)用FET集積回路の構成では、単にΔφ=ΔQ/C、(ΔQはゲート溶液界面電気二重層容量Cの総電荷の変化)を示すように記述することができる。緩衝液濃度は電位分析のためのイオンのスクリーニングを調節する。界面電位のリアルタイム計測は、希釈バッファー(DPBSは、pH7.4、15mMのダルベッコのリン酸緩衝生理食塩水)で実行することができる。
なお、sh−アプタマーのコンフォメーションと、ln−アプタマーのコンフォメーションとの違いは、エピ蛍光(epifluorescence)顕微鏡を用いて、立体配座を同定することにより、判断することができる。立体配座の同定においては、TO-PRO-3等のインジケータ染料(蛍光標識、蛍光プローブ等ともいう)を利用する。インジケータ染料は、ベックマン−コールター社製の製品等、公知のものを用いればよい。
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」及び「部」は質量基準である。
<実施例1〜実施例3、及び、比較例1>
〔生体分子検出用電極チップの作製〕
金属電極基板上に金属塩であるAgClを有する電極を備えた生体分子検出用電極チップ1、4(それぞれ、実施例1、実施例3)、及び、金属電極基板上に金属塩および金属酸化物を有さず、金属電極基板の金属が露出した電極を備えた生体分子検出用電極チップ101(比較例1)を作製した。
また、金属塩に代えて、金属電極基板上に金属酸化物であるTaを有する電極を備えた生体分子検出用電極チップ2(実施例2)を作製した。
各生体分子検出用電極チップの作製処方は次のとおりである。
[生体分子検出用電極チップ1の作製(実施例1)]
(電極基板積層体の作製)
金属電極基板として、厚さ90nm、表面寸法5mm×5mmの銀(Ag)板を用意した。電極基板を支える基板として、厚さ1mmであり、電極基板と同じ表面寸法のガラス基板を用意した。電極基板とガラス基板との接着性を高めるため、厚さ10nmであり、電極基板と同じ表面寸法のチタン(Ti)板を用意した。
用意した銀板とチタン板とガラス基板とを、この順に積層し、接着して、電極基板積層体Aを作製した。
(金属塩層の形成)
作製した電極基板積層体Aを5枚用意した。そのうち4枚の電極基板積層体Aの電極基板表面に対して、下記のようにして調製したキレート溶液1および2にそれぞれ浸漬し、乾燥して、表面処理電極基板積層体1〜4を得た。
表面処理電極基板積層体1及び2は、銀板とキレート溶液1との接触時間を20秒とし、表面処理電極基板積層体3は、銀板とキレート溶液2との接触時間を180秒とし、表面処理電極基板積層体4は、銀板とキレート溶液2との接触時間を300秒とした。各接触時間後に、各表面処理電極基板の表面を水で洗浄した。
なお、表面処理電極基板積層体1は、電極基板積層体Aを予め100mMのNaCl水溶液に浸漬しておき、後で100mMのPDTA・Fe(III)水溶液を添加して反応を開始したものであり、表面処理電極基板積層体2は、電極基板積層体Aを先に、100mMのPDTA・Fe(III)水溶液に浸漬しておき、後で100mMのNaCl水溶液に浸漬して反応を開始したものである。表面処理電極基板積層体1及び2において、表1に示す接触時間は、PDTA・Fe(III)水溶液の接触時間を表す。
−キレート溶液1の調製−
・1,3−ジアミノプロパン四酢酸・鉄・アンモニウム・一水塩 100mmol/L
〔PDTA・Fe(III)〕
・塩化ナトリウム(NaCl) 100mmol/L
上記組成の成分を混合し、キレート溶液1を調製した。
−キレート溶液2の調製−
・1,3−ジアミノプロパン四酢酸・鉄・アンモニウム・一水塩 200mmol/L
〔PDTA・Fe(III)〕
・塩化ナトリウム(NaCl) 200mmol/L
上記組成の成分を混合し、キレート溶液2を調製した。
(自己組織化膜SAMの形成)
表面処理電極基板積層体1を6枚用意し、そのうち5枚の電極基板表面それぞれに、下記SAM形成用溶液1〜5を塗布して、電極基板積層体にSAMが積層した積層体(以下「SAM積層体」とも称する)を得た。
SAM形成用溶液1〜5を塗布して得たSAM積層体を、それぞれ、SAM積層体1〜5と称する。
SAM積層体1〜5は、図8に示す積層構成をしている。
図8は、SAM積層体500の断面模式図であり、SAM積層体500は、電極基板積層体580を含んで構成されている。電極基板積層体580は、ガラス基板510と、チタン板の中間層520と、銀板の電極基板532とがこの順に積層している。電極基板積層体580の電極基板532上には、塩化銀(AgCl)で構成される塩化銀層534と、自己組織化膜SAM536とが形成されている。図8に示す断面模式図においては、塩化銀層534は2つの領域を有し、自己組織化膜SAM536は3つの領域を有している。
また、表面処理電極基板積層体1の電極基板表面に、SAM形成比較用溶液を塗布して比較用の積層体201を得た。
SAM形成用溶液1〜5、及びSAM形成比較用溶液の調製処方の詳細は次のとおりである。
−SAM形成用溶液1の調製−
・生体分子プローブ固体化材料
10−Carboxy−1−decanthiol 10μmol/L
・溶媒
エタノール
上記組成の成分を混合し、生体分子プローブ固体化材料の濃度(以下、「SAM濃度」との称する)が10μmol/LのSAM形成用溶液1を調製した。
−SAM形成用溶液2〜5、及びSAM形成比較用溶液の調製−
SAM形成用溶液1の調製において、生体分子プローブ固体化材料の添加量を変更したほかはSAM形成用溶液1と同様にして、表2に示すSAM濃度のSAM形成用溶液2〜5、及びSAM形成比較用溶液を調製した。
表3に、SAM積層体1〜5および比較用の積層体201の塗布構成を示す。また、後述する比較用のSAM積層体101およびSAM積層体102の塗布構成も示す。

(生体分子プローブの固定化)
上記のようにして作製したSAM積層体1の自己組織化膜SAMのカルボキシ基に、生体分子プローブである5’端にアミノ基を有するオリゴヌクレオチド作用させ、アミド結合形成することにより、生体分子プローブを固定化した。
以上のようにして、実施例1の生体分子検出用電極チップ1を作製した。
[生体分子検出用電極チップ101の作製(比較例1)]
(電極基板積層体の用意)
電極基板積層体Aを、表面処理せずに、そのまま電極基板積層体として用いた。従って、比較例1の生体分子検出用電極チップ101の作製に用いた電極基板積層体Aの金属電極基板の表面は、金属塩及び金属酸化物が存在せず、銀板が露出している。
(自己組織化膜SAMの形成)
SAM積層体1の作製において、電極基板積層体として表面処理電極基板積層体1を用いる代わりに、表面処理がなされていない電極基板積層体Aを用いた他は、同様にして、電極基板上に自己組織化膜SAMを形成した。得られた自己組織化膜SAM含有電極基板積層体を、SAM積層体101とする。
(生体分子プローブの固定化)
生体分子検出用電極チップ1の作製において、SAM積層体としてSAM積層体1を用いる代わりに、SAM積層体101を用いた他は、同様にして、自己組織化膜SAMに生体分子プローブを固定化した。
以上のようにして、比較例1の生体分子検出用電極チップ101を作製した。
また、別途、比較用のSAM積層体としてSAM積層体102を作製した。
SAM積層体102は、SAM濃度が3μmol/LであるSAM積層体4の作製において、電極基板積層体として表面処理電極基板積層体1を用いる代わりに、表面処理がなされていない電極基板積層体Aを用いた他は、同様にして、電極基板上に自己組織化膜SAMを形成した。
このようにして、比較用の自己組織化膜SAM含有電極基板積層体であるSAM積層体102を作製した。
生体分子検出用電極チップ1および生体分子検出用電極チップ101で用いているSAM積層体の種類およびSAM濃度の構成、並びに、SAM積層体の作製に用いた電極基板積層体Aの表面処理の種類および表面の形態(「表面種」欄)を表4にまとめた。
〔生体分子検出用電極チップ1および生体分子検出用電極チップ101の評価〕
(金属塩層の形成評価)
表面処理を施していない電極基板積層体A(比較例1)、および、表面処理電極基板積層体1〜4(実施例1)について、AFMによる写真観察を行なったところ、図9〜図13に示される写真が得られた。
図9は、電極基板積層体Aの電極基板表面、すなわち、銀板の表面のAFM写真であり、図10〜図13は、それぞれ表面処理電極基板積層体1〜4の電極基板表面および塩化銀層表面のAFM写真である。
図9に示す写真には、白い領域が観察されないが、図10〜図13には白い領域が観察される。かかる白い領域はAgClであると考えられ、塩化ナトリウム濃度が大きいほど、また、銀板とキレート溶液との接触時間が長いほど、白い領域の面積が増えており、銀板上にAgClが形成されていることがわかる。
なお、図9〜図13に示すAFM写真の縦軸および横軸は、観察領域の大きさを示し、単位はともに〔μm〕である。AFM写真の右側に位置する帯状の目盛りは、電極基板表面ないし、塩化銀層表面の凹凸の大きさを示し、白から黒のグラデーションに応じて数値が振られている。帯状の目盛りの単位は〔nm〕である。
(自己組織化膜SAMの形成評価)
−CV測定による評価−
SAM濃度が7μmol/LであるSAM形成用溶液2を用いて作製された二つのSAM積層体2について、ECO CHEMIE社製のポテンシオスタットAUTOLABを用いて、CV測定〔サイクリックボルタンメトリ測定〕を行なったところ、図14に示す曲線が得られた。参照電極には飽和塩化カリウム溶液に浸漬した銀/塩化銀電極、カウンター電極には白金、作用電極には本発明の電極チップを用い、0.1mM水酸化カリウム水溶液中で測定した。
図14に示す曲線(サイクリックボルタモグラム)は、縦軸が電流〔A〕、横軸が電位〔V〕である。実線で示す曲線Aおよび破線で示す曲線Bは、同じ条件で制作した二つの電極チップのCV特性を示す。曲線A、及び曲線Bとも、電位を正方向に掃引したときに現れる下側の曲線に、2つの極小ピークが存在している。このうち、−1100〔V〕付近に示される小さなピークが、SAM積層体のAg−S結合の存在を示している。
−XPS分析による評価−
SAM濃度が10μmol/L、5μmol/L、1μmol/LであるSAM形成用溶液1、3、及び5を用いて作製されたSAM積層体1、3、及び5、並びに、SAM濃度が0μmol/LであるSAM形成比較用溶液を用いて作製された比較用の積層体201について、ULVAC-PHI社製のPHI Quantera SXMを用いて、XPS分析(X線光電子分光分析)を行なったところ、図15および図16に示すXPSスペクトルが得られた。
図15及び図16における曲線A〜Dと、各積層体との関係を表5に示す。
図15および図16に示すXPSスペクトルの横軸は結合エネルギー〔eV〕を示し、縦軸は光電子の数〔c/s(counts/sec)〕を示す。
SAM積層体1、3、5、および比較用積層体201は、いずれも、電極基板積層体として、電極基板積層体Aの表面がキレート溶液によって表面処理された表面処理電極基板積層体1を用いているため、表面処理電極基板積層体1の表面には、塩化銀が形成されている。これを表すように、図15に示すXPSスペクトルからは、SAM積層体1、3、5、および比較用積層体201の銀電極表面に含まれる塩素原子(Cl)の存在量が示され、存在量が大きいほど、ピークの高さも大きくなる。
図15からわかるように、SAM積層体1、3、及び5において、SAM濃度が大きいSAM積層体1の曲線Aは塩素原子の存在量を示すピークが低く、SAM濃度が小さくなるほど、ピークが高くなっている。これは、SAM濃度が大きいほど銀表面に結合する硫黄の数が多くなり、基板表面のうちSAMの占める面積の割合が大きくなる。SAM形成後に化学処理により塩化銀層を形成するので、SAMが形成されていない残った部分に塩化銀層が形成されることになる。したがって、図15のようなSAM濃度依存性がみられる。
SAM積層体1、3、5、は、表面処理電極基板積層体1に、表5に示すSAM濃度のSAM形成用溶液が塗布されたものである。SAM形成用溶液には、硫黄原子を有するアルカンチオール(生体分子プローブ固体化材料)を含んでいる。一方、比較用の積層体201は、アルカンチオールを含まないSAM濃度0μmol/LのSAM形成比較用溶液が、表面処理電極基板積層体1に塗布されたものである。
これを表すように、図16に示すXPSスペクトルからは、SAM積層体1、3、および5に含まれる硫黄原子(S)の存在を示すピークを有する曲線A〜Cが示され、積層体201については、ピークを有する曲線は得られなかった。
図16からわかるように、図15とは反対に、SAM濃度が大きいSAM積層体1の曲線Aはピークが高く、SAM濃度が小さくなるほど、ピークが低くなっている。これは、SAM濃度が大きいほど、銀表面に結合する硫黄の数が多くなり、基板表面のうちSAMの占める面積の割合が大きくなるためである。
また、図17に示す表に、図15および図16に示すXPSスペクトルから得られた検出原子の割合を示す。各数値の単位は、〔%〕である。XPS分析により検出された原子としては、炭素原子(C)、塩素原子(Cl)、酸素原子(O)、及び、硫黄原子(S)がある。炭素原子は、自己組織化膜SAMを構成するアルカンチオールの炭化水素鎖に由来し、硫黄原子は、前記アルカンチオールのチオールに由来すると考えられる。前記塩素原子は、塩化銀層の塩化物イオンに由来すると考えられる。酸素原子は、電極基板に付着した空気中の水分に由来すると考えられる。
また、図17に示す表において、Sample欄に「1μM」、「5μM」、「10μM」と示してあるものは、それぞれ、SAM積層体を形成するときのSAM形成溶液の濃度である。
なお、図17に示す表において、Sample欄に「bare Ag」と示してあるものは、SAMが形成されずにAgCl表面が露出している表面処理電極基板積層体1を用いて得られた積層体201を表す。「bare Ag」において、炭素原子の存在がわずかに検出されているのは、表面処理電極基板積層体1に塗布したSAM形成比較用溶液を構成するエタノールに由来するものと考えられる。
(電極材料の電気化学特性評価)
SAM積層体4(実施例)、及びSAM積層体102(比較例)を用いて、電極基板表面における表面電位の安定性を評価した。表6に示すように、SAM積層体4及びSAM積層体102は、共に、SAM濃度が3μmol/LであるSAM形成用溶液4を用いて作製されている。しかし、SAM形成用溶液4の塗布対象である電極基板積層体は、SAM積層体4では表面処理がされてAgClが形成され、SAM積層体102では表面処理がされずAg板が露出している。
表面電位の測定は、電位測定器としてKeithley社製、6514型electrometerを用い、飽和塩化カリウム溶液に浸漬した銀/塩化銀参照電極を基準として、2.5mM、25mM、及び250mMの濃度の塩化ナトリウム溶液を用いて行った。
結果を図18〜図20に示す。
図18は、電極基板表面に塩化銀層が形成されている表面処理電極基板積層体1を用いて作製した6個の同じSAM積層体4の電極基板表面における表面電位の時間変化(A1〜A6)を示すグラフである。図19は、電極基板表面に銀板が露出している電極基板積層体Aを用いて作製した8個の同じSAM積層体102の電極基板表面における表面電位の時間変化(B1〜B8)を示すグラフである。図18及び図19共に、縦軸が表面電位〔V〕であり、横軸が経過時間〔秒〕である。浸漬している溶液を25mM塩化ナトリウムからはじめて、250mM塩化ナトリウムとの間で交互に取り換えて表面電位を測定している。
図18に示すように、電極基板表面に塩化銀層が形成されているSAM積層体4は、表面電位の測定開始から、5秒〜200秒、多くの場合30秒程度で表面電位が安定している。それに対し、図19からわかるように、電極基板に銀板が露出しているSAM積層体102は、塩化ナトリウムの濃度変化に対して、表面電位が安定するまでに500秒以上かかっている。これは電極表面に塩化銀層が形成されていると、溶液中の塩素イオン濃度が変化したときに、既述の式(1)に基づき迅速に平衡が成り立ち、新しい平衡電位が安定化するためであり、電位測定の精度向上に有効であることを示している。一方、銀が露出している電極では、平衡反応が成り立つ解離機構がないため、表面電位が安定せず、電位ドリフトが生ずる。
次に、図18及び図19から、得られたデータに基づき、SAM積層体4およびSAM積層体102の表面電位のバラツキを表すグラフを、図20に示した。図20に示すグラフは、縦軸がSAM積層体の電極基板表面における表面電位〔V〕であり、横軸が、測定に用いた塩化ナトリウム(NaCl)の濃度〔mol/L〕である。
図20からわかるように、電極基板に塩化銀層を有するSAM積層体4の表面電位を表す曲線Aは、表面電位のバラツキを示す縦線のバーの長さが小さく、表面電位の電位安定性に優れている。これは、電極基板に形成された塩化銀層の塩化銀が、解離して、水溶液中で平衡状態になっているためと考えられる。
一方、銀板が露出している電極基板を用いて構成されているSAM積層体102の表面電位を表す曲線Bは、表面電位のバラツキを示す縦線のバーの長さが大きく、表面電位が安定していないことがわかる。
また、図20によれば、浸漬している溶液の塩化ナトリウム濃度に応じて、表面電位が変化しており、塩化ナトリウム濃度が大きいほど、表面電位自体が小さくなると共に、表面電位のバラツキも小さくなっていることがわかる。ネルンスト(Nernst)の式によると電極電位は陰イオン(塩素イオン)に対して負の傾きをもち、イオン濃度の対数に比例することが示されている。図20より表面に塩化銀が形成されている電極では塩素イオン濃度の対数に対して直線性が良好であり、ネルンストの式で記述される電気化学的平衡に基づく表面電位が得られていると考えられ、表面電位の制御が可能である。一方、表面に銀が露出している電極では非線形な応答を示し、イオンの物理吸着など他の機構により、表面電位が変化していると推察される。
(生体分子プローブの固定化評価)
銀が露出した電極チップ表面にエチルアルコールに溶解したカルボキシル末端を有するアルカンチオールを1μmol/L(μM)の濃度で作用させることにより、銀表面に自己組織化膜SAMを形成した。その後、上記電極チップを100mMの1,3−ジアミノプロパン四酢酸・鉄・アンモニウム・一水塩〔PDTA・Fe(III)〕と100mM塩化ナトリウム(NaCl)の混合液に20秒間浸漬することにより、SAMが形成されていない部分の銀表面に塩化銀を形成した。該電極チップを生体分子プローブである5’端にアミノ基を有するオリゴヌクレオチド溶液に浸漬することにより、電極表面のアミノ基とオリゴヌクレオチドのカルボキシル基とでアミド結合を形成することにより、オリゴヌクレオチドを電極表面に固定化した。この電極表面にターゲットDNAを導入してハイブリダイゼーションを行わせたところ、電極電位が負の方向に約10mV変化した。これは負の電荷を有するターゲットDNAが電極表面のオリゴヌクレオチドと相補鎖結合を形成したことによると考えられる。以上のように本発明の生体分子検出用電極チップでターゲットDNAを検出できることが確認された。
[生体分子検出用電極チップ2の作製(実施例2)]
(電極基板積層体の作製)
電極基板として、厚さ100nm、表面寸法5mm×5mmのITO基板を用意した。
電極基板を支える基板として、厚さ1mmであり、電極基板と同じ表面寸法のガラス基板を用意した。
用意したITO基板とガラス板とを接着して、生体分子検出用電極チップ2用の電極基板積層体Tを作製した。
(金属酸化物層の形成)
作製した電極基板積層体Tを4枚用意し、電極基板表面に対して、酸化タンタル(Ta)を用いて電子ビーム蒸着し、蒸着膜の膜厚が20nmである金属酸化物層含有電極基板積層体5を得た。
(自己組織化膜SAMの形成)
金属酸化物層含有電極基板積層体5の電極基板表面に、γアミノプロピルトリエトキシシラン溶液を導入することにより、金属酸化物層含有電極基板積層体5の表面にアミノ基を導入し、SAM積層体6を得た。
(生体分子プローブの固定化)
生体分子検出用電極チップ1の作製において、SAM積層体としてSAM積層体1を用いる代わりに、SAM積層体6を用いた他は、同様にして、生体分子プローブを固定化した。本実施例においては生体分子として酵素ウレアーゼを用いた。
以上のようにして、実施例2の生体分子検出用電極チップ2を作製した。生体分子検出用電極チップ2で用いたSAM積層体6の構成を表7に示す。
〔生体分子検出用電極チップ2の評価〕
(金属酸化物層の形成評価)
金属酸化物層含有電極基板積層体5について、AFMによる写真観察を行なったところ、それぞれ、図21に示される写真(A)及び、電極基板表面ないし金属酸化物層表面の凹凸状態を示す曲線(B)が得られた。
図21の(A)側に示されるAFM写真の縦軸および横軸の内容、並びに、写真右横に位置する帯状の目盛りの内容は、図9〜図13に示すAFM写真と同様である。図21の(B)側に示される電極基板表面ないし金属酸化物層表面の凹凸状態を表す曲線を示すグラフは、縦軸が、表面凹凸の大きさ〔nm〕を示し、横軸は、AFM写真の横軸と同じ観察領域の大きさ〔μm〕を示す。図21には、それぞれ、(A)側に示すAFM写真の横軸と、(B)側に示す横軸とを対応させて示してある。
図21より酸化タンタル層表面の平均粗さRRMSは1.855nmであり、均一で平坦な膜が得られていることがわかった。
(pH応答性評価)
市販の緩衝溶液を用いて、pH1.68、pH4.01、pH6.86、pH7.41、pH9.18、pH10.01の、6種の異なるpHの水溶液を用意した。用意した各液性の水溶液に、金属酸化物層含有電極基板積層体5を浸し、浸した直後から約100秒間、金属酸化物層含有電極基板積層体5表面の表面電位の経時変化を測定した。
金属酸化物層含有電極基板積層体5は、pH1.68の水溶液、pH4.01の水溶液、pH6.86の水溶液、pH7.41の水溶液、pH9.18の水溶液、pH10.01の水溶液まで、順次浸すことを、3回繰り返した。また、水溶液から金属酸化物層含有電極基板積層体5を取り出し、次の水溶液に浸し変えるときは、一端、金属酸化物層含有電極基板積層体5を水で洗浄し乾燥してから次の水溶液に浸した。
以上のようにして、金属酸化物層含有電極基板積層体5が各種pH環境下に置かれたときの各金属酸化物層表面の表面電位のバラツキを評価した。
なお、表面電位測定は、金属酸化物層含有電極基板積層体5を、銀―塩化銀参照電極を基準としてKeithley社製、6514型electrometerに接続して行なった。
測定結果を図22に示す。
図22は、縦軸に表面電位〔V〕、横軸に時間変化〔秒〕をとった。
矢印(⇔)の上に示されるa1〜a3は、pH1.68の水溶液中の表面電位の変化を表し、b1〜b3は、pH4.01の水溶液中の表面電位の変化を表し、c1〜c3は、pH6.86の水溶液中の表面電位の変化を表し、d1〜d3は、pH7.41の水溶液中の表面電位の変化を表し、e1〜e3は、pH9.18の水溶液中の表面電位の変化を表し、f1〜f3は、pH10.01の水溶液中の表面電位の変化を表す。
a1〜f1、a2〜f2、及びa3〜f3のいずれも、表面電位測定開始直後から表面電位が安定し、または、表面電位の変化が小さかった。これは、電極基板上の金属酸化物が、解離して平衡状態にあるためと考えられる。
(pH特性評価)
図22におけるpHと表面電位との関係をグラフにして、図23に示す直線を得た。
図23における直線Aは、図22におけるa1〜f1のpHに対する表面電位をプロットしたものの回帰直線であり、直線Bは、図22におけるa2〜f2のpHに対する表面電位をプロットしたものの回帰直線であり、直線Cは、図22におけるa3〜f3のpHに対する表面電位をプロットしたものの回帰直線である。
図23から、pH1.68からpH10.01の広いpH範囲で良好な直線的応答を示すことがわかる。図23中に示される回帰直線A〜Cの傾きは、スロープ感度といわれ、金属酸化膜材料及びpHセンサとしての性能を評価する指標になる。表面電位とpHとの関係はネルンスト(Nernst)の式で表わされる。それによると室温でスロープ感度は約58mV/pHとなる。一方、図23中に示した3つの回帰直線の傾きはそれぞれ、−0.052V/pH、−0.050V/pH、−0.051V/pHであり、再現性及び均一性がよい。これらは、ボルトからミリボルトに単位をそろえると、それぞれ、−52mV/pH、−50mV/pH、−51mV/pHとなり、ネルンストの式から求められる理論値に近い値が得られる。したがって、実施例の金属酸化膜表面では、既述の(2)式の解離反応が効率的に起こり、理論で予測される特性に近い応答が得られていることができることがわかった。
〔生体分子の検出〕
実施例2の生体分子検出用電極チップ2を用いて、下記処方により、尿素を検出した。尿素は腎機能を評価する上で重要な生化学成分である。尿素は酵素ウレアーゼの触媒作用により下記式(3)に示す反応のように分解する。
式(3)に示す反応の際、水素イオンが消費されるので、水溶液水素イオン濃度、すなわちpHが変化する。したがって、pH変化を測定することにより測定対象である尿素濃度を知ることができる。1mMの尿素水溶液を調製し、本発明の第2の実施例である生体分子検出用電極チップ2に導入すると、上記電極チップの表面電位が導入後1分で約15mV変化した。これは電極表面に固定化されたウレアーゼと測定対象である溶液中の尿素が反応し、式(3)に従って水素イオンが消費された結果、上記電極チップ表面近傍のpHが変化し、これを金属酸化物電極で検出することができたものと考えられる。
<参考例1>
〔生体分子検出用電極チップ3(ヘアピンアプタマープローブを備えた生体分子検出用電極チップ)の作製、及び、生体分子検出用電極チップ3用いた生体分子検出〕
(SAM積層体6の作製)
金属電極基板として、厚さ90nm、表面寸法5mm×5mmの金(Au)板を用意した。用意した金板と図24に示す構成の拡張ゲートFET基板とを積層し、電極基板積層体Bを作製した。
次いで、電極基板積層体Bの表面に、下記調製方法で得たSAM形成用溶液6を塗布し、SAM積層体6を作製した。なお、SAM積層体6のSAMの総密度は、電気化学的に2.3±0.5nm−2と決定した。
SAM形成用溶液6は、表8に示すように、実施例1で用いたSAM形成用溶液1の調製において、生体分子プローブ固定化材料として、10−Carboxy−1−decanthiolを用いる代わりに、6−Mercapto−1−hexanol(MCH)を用いた他は同様にして調製した。
(生体分子プローブの固定化)
生体分子プローブを構成する分子として、図24のsh−アプタマーの構造例として示した37merの塩基配列を有するプローブ化合物を用意した。次いで、SAM積層体6の自己組織化膜SAMのヒドロキシ基に、プローブ化合物のカルボキシ基を作用させ、エステル結合を形成することにより、SAM積層体6にヘアピンアプタマープローブを固定化した。
以上のようにして、生体分子検出用電極チップ3を作製した。
〔生体分子検出用電極チップ3の評価〕
(電極の固液界面電位の測定)
次の電位測定1〜2の条件下において、生体分子検出用電極チップ3の電極の固液界面電位を測定し、測定結果を、それぞれ図25〜図26に示した。
生体分子検出用電極チップ3の電極の固液界面電位は、DPBS希釈バッファー(pH7.4、15mMのダルベッコのリン酸緩衝生理食塩水)を入れた容器に、生体分子検出用電極チップ3と、Ag/AgClの参照電極とを、DPBS希釈バッファー中に浸し、FETにより、リアルタイムで検出し、測定した。
なお、DPBS希釈バッファー中に浸された生体分子検出用電極チップ3が備えるヘアピンアプタマープローブは、ATP水溶液を添加する前は、DPBS希釈バッファー中にATPが存在していないため、sh−アプタマーのコンフォメーションをとっていると考えられる。
−電位測定1−
DPBS希釈バッファー中に生体分子検出用電極チップ3(sh−アプタマー)が浸されている容器に、DAPI(インターカレーター)を含有するDAPI水溶液を容器に添加した。その後、ATP水溶液を添加し、ATP水溶液を添加したときの電位差を測定した。
次いで、生体分子検出用電極チップ3をDPBS希釈バッファーで洗浄した後、DPBS希釈バッファー中に生体分子検出用電極チップ3(sh−アプタマー)が浸されている容器を別途用意し、DAPI水溶液を容器に添加した。その後、GTP水溶液を添加し、GTP水溶液を添加したときの電位差を測定した。
結果を図25に示した。
−電位測定2−
DPBS希釈バッファー中に生体分子検出用電極チップ3(sh−アプタマー)が浸されている容器に、DAPI水溶液を添加しなかったほかは、電位測定2と同様にして、ATP水溶液を添加したときの電位差、及び、GTP水溶液を添加したときの電位差を測定した。
結果を図26に示した。
−電位測定3−
生体分子検出用電極チップ3の作製において、SAM積層体6の自己組織化膜SAMのヒドロキシ基に、図24に示すlnアプタマーの構造を有するプローブ化合物のカルボキシ基を作用させた他は同様にして、SAM積層体6にlnアプタマーが固定化した生体分子検出用電極チップ4を作製した。
電位測定1において、生体分子検出用電極チップ3(sh−アプタマー)の代わりに、得られた生体分子検出用電極チップ4(lnアプタマー)を用いた他は同様にして、ATP水溶液を添加したときの電位差、及び、GTP水溶液を添加したときの電位差を測定した。
結果を図27に示した。
−電位測定1〜3の結果(図25〜図27)−
図25〜図27は、いずれも、横軸が、ATPまたはGTPの濃度〔mol/L〕(〔M〕)であり、縦軸が検出された電位差である。
図25において、sh−アプタマーを備えた生体分子検出用電極チップ3においては、DAPIの存在下において、ATPの添加により、約−10 mVの電位変化が観測された。対照的に、非標的グアノシン5’−三リン酸(GTP)は、調査の濃度範囲では明確な信号が得られなかった。
sh−アプタマーは、GTPのための親和性を有さないため、プローブは折り返しのままで、DAPIは、sh−アプタマーの幹にバインドされているままになっている。ATPとの培養で観察された負の変化は、sh−アプタマーのAT領域のマイナー溝から正に帯電DAPIの液層リリースで説明される。
DAPIの最大3つの分子(6の正電荷)は、sh−アプタマーごとにリリースされる。この説明は、DAPIを含まないsh−アプタマーで観察された変わらない電位と合致している(図26)。
リニア(ln)アプタマーは、ATP結合配列を有するため、標的ATPを捕捉する機能を持っているものの、lnアプタマーに接続されている電極は、ATPを検出することができなかった(図27)。
これは、pHが7.4であるDPBS希釈バッファー中においては、ATPが電気的に中性であるためと考えられ、そのため、有意な信号は、FETを使用してATPの検出によって生成されないと考えられる。したがって、sh−アプタマーの設定と、DAPIの両方は、測定信号を生成する必要がある。
原則的に、FETデバイスは、電気二重層内にある分子の本質的な電荷を変換することができる。ソリューションの特徴的なデバイスクリーニングの長さは(ξ)ξ〜I1/2としてイオン強度(I)の関数として記述することがでる。
15mMのDPBS希釈バッファーにおいて計算されたデバイの長さは2.5nmであった。これはベース塩基長(0.34nm)から換算すると、デバイ長内のsh−アプタマーの5’末端で、わずか7merの分子内の距離に該当する。したがって、FETデバイスは、特定のATPの捕捉時にDAPIの解離のための幹の荷電変化のみに敏感に応答すると考えられる。
対照的に、DAPIのインジケータがない場合には、ATPのキャプチャ時のsh−アプタマーの大規模な構造変化に起因するゲート溶液界面でのローカルイオン濃度の変化が電位差変化を誘発するには不十分である。イオンスクリーニング効果は、DAPIの存在下でのsh−アプタマーの構造相転移の区別検出のための主な理由である。
図25に示すように、センサの応答は、約3桁のダイナミックレンジ(10−8から10−11M)で、ATPの濃度に特異的であった。非常に簡単なラベルフリー技術での感度の高さで、ほとんどの電気とATPに蛍光アッセイに匹敵するか、それよりも優れていることがわかる。
(エピ蛍光顕微鏡による写真観察)
電極上におけるsh−アプタマーの構造変化を識別するために、インジケータ染料の存在下において、エピ蛍光顕微鏡による写真(epifluorescent画像)観察を行なった。
インジケータ染料として、TO−PRO−3を用いた。
図28に、SAMおよびヘアピンアプタマープローブが形成されていない電極基板の表面(AgCl表面)のepifluorescent画像を示し、図29に、生体分子検出用電極チップ3(sh−アプタマー)にATPを作用させる前のepifluorescent画像を示し、図30に、生体分子検出用電極チップ3(sh−アプタマー)にATPを作用させた後のepifluorescent画像を示した。
図29に示すように、強い蛍光発光が示され、ヘアピンアプタマープローブが閉ループのsh−アプタマーのコンフォメーションをとっていることがわかった。一方、ATP存在下の系を示す図30では、蛍光発光は見られず、ヘアピンアプタマープローブがsh−アプタマーのコンフォメーションとは異なるコンフォメーション、すなわち、ln−アプタマーのコンフォメーションをとっていることがわかる。
FETは、ラベルのない方法で、電位差信号としてイオンや荷電粒子を検出するための強力なトランスデューサである。また、拡張されたゲート構造の構成は、コスト効果の高い方法でセンサーチップの変更を容易にする。しかし、弱荷電または非荷電検体の高感度検出が大きな課題であった。
グルーヴバインディングまたはインターカレート種と組み合わせて、分子認識素子の構造化されたオリゴヌクレオチドアプタマープローブの使用は、中性分子の多種多様な検出にFETのセンサーの使用を拡大することができる。今後DAPIは、アッセイの安全性を向上させる、より発がん性が弱いDNAのバインダーを使用するなどの改良ができる。この技術の追加機能から、ゲートソリューションナノ界面での電気二重層から充電インジケータのリリースによって誘導される重要な信号が、FETバイオセンシングに充電された検体のためのイオンスクリーニングの潜在的な欠点を克服することが期待される。
本発明において示した記述の各手法では、シールドの組み込み荷電と、大きな分子カチオン性溝バインダーと、組み合わせて、ターゲット固有のsh−アプタマーを使用して検出される可能性がある。
結論としては、ATPの高感度と特異的検出は、FETデバイスに組み込まれているsh−アプタマーからの、カチオン性指標(DAPI)の放出を確認することにより、ラベルのない方法で達成することができることがわかった。
電位差信号として得られる大きな変化は、ターゲットに誘導される自己変性、および、アプタマーとATPとの複合体の形成による電気二重層のヘアピンの幹から、プリロードDAPIの解離によって誘導された。構造化されたアプタマーのコンセプトは、FETのバイオセンサーは、デバイスクリーニングの長さから、最小限の影響力を持つ中立的な検体を検出することができる。FETの機能と組み合わせたヘアピンアプタマーは、電気信号にATPの認識を伝達するための一般的なスイッチとしての役割が期待される。
[生体分子検出用電極チップ4の作製(実施例3)]
(電極基板積層体の作製)
ガラス基板、チタン膜、及び銀膜の順に積層された電極基板積層体Cを次の要領で作製した。
電極基板を支える基板として、厚さ1mmであり、100mm×100mmの合成石英ガラス基板を用意した。
次に、合成石英ガラス基板表面を(1)逆スパッタにより洗浄した後、(2)チタン(Ti)膜を蒸着により成膜し、得られたTi膜上にさらに、(3)銀(Ag)膜を蒸着により成膜した。Ti膜は、合成石英ガラス基板とAg膜との接着性を高めるために成膜した。電極基板積層体CのTi膜は10nm厚とし、Ag膜は90nm厚とした。
前記(1)〜(3)の各スパッタ条件は、次のとおりである。スパッタ装置は、いずれも、スパッタ装置「Jsputter」を用いた。
(1)逆スパッタ;RF150W、300sec、Ar10sccm
(2)Ti成膜 ;DC300W、0.1Pa、93sec
(3)Ag成膜 ;DC300W、0.1Pa、667sec
(自己組織化膜SAMの形成)
電極基板積層体Cの電極基板表面に、10-Carboxy -1-decanthiol (10-CDT)(同仁化学研究所)とSulfobetaine3-undecanethiol(SB)とを含むSAM形成用溶液7を導入することにより、電極基板表面にSAM積層体7を形成した。なお、SAM形成用溶液7の調製方法は、SAM形成用溶液1の調製において、さらにSulfobetaine3-undecanethiolを混合したほかは同様にして調製した。
(金属塩層の形成)
作製したSAM積層体7の電極基板表面に対して、PDTA・Fe(III)(キレスト キレストPD-FN Sample)(PDTA第二鉄アンモニウム錯体)を含むキレート溶液(キレート溶液1)を付与して、塩化銀層を形成した。このように、SBを含有するSAMと塩化銀とを表面に含む金属塩層含有電極基板積層体6を得た。
(生体分子プローブの固定化)
次いで、自己組織化膜SAMのカルボキシ基に、生体分子プローブ(DNAプローブ)である5’端にアミノ基を有するオリゴヌクレオチド作用させ、アミド結合形成することにより、生体分子プローブを固定化した。
以上のようにして、実施例3の生体分子検出用電極チップ4を作製した。
なお、生体分子検出用電極チップ4においては、SAMが、疎水性の10-Carboxy-1-decanthiolと親水性のSulfobetaine3-undecanethiol(SB)とを含むため、SAMの末端全てが生体分子プローブとなってはおらず、一部が生体分子プローブであり、一部がSBである構成となっている。
具体的には、DNAプローブとSBのモル比〔DNAプローブ:SB〕は1:1であり0.04プローブ/(nm)である。
なお、金属塩層含有電極基板積層体6は、既述の図2及び図3に示すパターン状の電極基板であり、表面に10個の円形状の電極基板(図2および図3における電極基板130cに相当する)と、長方形の電極基板(図2および図3における電極基板130aに相当する)とを有する。円形状の電極基板は、それぞれ、直径が500μmである。当該10個の円形状の電極基板には、上記工程で形成したSBを含有するSAMと塩化銀層とが形成されている。
また、円形状の電極基板と長方形の電極基板とは、図2および図3に示すように線状の電極基板130bによって連結している。
次いで、10個の円形状の電極基板全てを囲い、長方形の電極基板を囲いの外側とすることのできるガラス製の円筒を金属塩層含有電極基板積層体6の表面に配置し、当該表面と円筒とを、水漏れがないように糊付けして、10個の円形状の電極基板を有する面を底面とする円筒状容器を形成した。これにより、生体分子検出用電極チップ4は、円筒状容器に試料溶液を添加したときに、10個の円形状の電極基板に試料溶液が接触し、長方形の電極基板には試料溶液が接触しない構成となっている。
〔生体分子検出用電極チップ4の評価(表面電位の安定性評価)〕
生体分子検出用電極チップ4の長方形の電極基板に、既述のKeithley社製の電位差測定装置を接続し、次の操作を行って、電極表面に生体分子が吸着したときの表面電位の安定性を評価した。
まず、次の試料を用意した。
(1)DPBS希釈バッファー
・pH7.4、15mMのダルベッコのリン酸緩衝生理食塩水
(2)コントロール試料(Control)
・PCRバッファー(dNTPとTaqDNA Polymeraseとの混合液)
(3)ターゲット試料
・microRNA−143のPCR産物を1000倍に希釈した溶液
上記のように試料(2)であるコントロール試料は、PCRバッファーであり、A、G、C、T、4種の基質を含むdNTP(N=A、G、C、またはT)と、酵素であるTaqDNA Polymeraseとを含有する。
試料(3)であるターゲット試料は、PCRバッファーにmicroRNA−143を添加し、30回のサーマルサイクルを行うことにより増幅したmicroRNA−143を含むPCRプロダクト(PCR products)を千倍に希釈した液体である。
生体分子検出用電極チップ4の円筒状容器内の円形状の電極基板に、図31に示す時間間隔で、(1)、(2)、及び(3)の各試料を滴下した。具体的には、図31の(1)に試料(1)、図31の(2)に試料(2)、図31の(3)に試料(3)をそれぞれ3回滴下し、電極基板に各試料を接触させた。
また、図31の(A)時点および(B)時点で、各電極基板の表面電位を読み取った。なお、(A)時点における表面電位の読み取りは、試料(2)(コントロール試料)を電極基板に滴下し、バッファーで電極を洗浄した後に行った。また、(B)時点における表面電位の読み取りは、試料(3)(ターゲット試料)を電極基板に滴下し、バッファーで電極を洗浄した後に行った。
その結果を、図31および図32に示した。
図31は、生体分子検出用電極チップ4の表面電位の安定性評価における表面電位の経時変化を示すグラフである。
図31に示すように、(1)、(2)、および(3)の各試料添加後に、すぐに表面電位が落ち着き、また、ベースラインがほとんど変わっていないことから、生体分子検出用電極チップ4が有する電極基板を用いれば、安定した表面電位差測定を行うことができることがわかる。
なお、生体分子検出用電極チップ4には、生体分子の検出が可能な円形状の電極基板を10個有するため、10個の各電極基板において、生体分子の吸着による表面電位が測定された。図31には、そのうちの1つのデータを示したが、他の9つの電極基板においても、同様の傾向が見られた。
また、図31に示すデータおよび、他の9つの電極基板から得られたデータを、まとめて、図32に示した。
図32は、図31の(A)時点および(B))で読み取った表面電位の平均を表す棒グラフである。図31の(A)時点では、コントロール試料、すなわち、PCRバッファーの表面電位が読み取られ、図31の(B)時点では、ターゲット試料の表面電位が読み取られている。
図32において、左側の(C)に示す棒グラフが、コントロール試料(Contrrol)を電極基板に接触させたときの表面電位であり、右側の(T)に示す棒グラフが、ターゲットを含むターゲット試料を電極基板に接触させたときの表面電位である。
ターゲット試料を電極基板に接触することで、ターゲットを含まないコントロール試料を電極基板に接触した場合よりも表面電位が大きくなっている。これは、生体分子検出用電極チップ4が有する電極基板にターゲットである生体分子が吸着し、ハイブリダイゼーションが行われているためと考えられる。
また、図32の棒グラフには、測定のバラツキを表すエラーバーも示した。(C)および(T)に示すエラーバーの大きさは、いずれも1mV程度であり、バラツキが小さいことがわかる。エラーバーが小さいことは、すなわち、表面電位が安定していることを示す。
日本出願2011−094452の開示はその全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
10 :基板
12 :シリコン基板
14D:ドレイン
14S:ソース
15 :取り出し電極
16 :ゲート絶縁膜
17 :ゲート電極
18 :フローティング電極
20 :中間層
30 :電極
32 :電極基板
34 :無機層(金属塩及び金属酸化物の少なくとも一方)
36 :生体分子プローブ固定化層
38 :生体分子プローブ
100 :生体分子検出用電極チップ
110 :ガラス基板
130 :電極基板
130a:長方形の電極基板
130b:線状の電極基板
130c:円形状の電極基板
200 :積層体
202 :積層体
333a:電極基板
333b:電極基板
334a:金属塩の一部
334b:金属塩の一部
336a:生体分子プローブ固定化材料
336b:生体分子プローブ固定化材料
338 :生体分子プローブ
362 :参照電極
364a:演算増幅器
364b:演算増幅器
366 :演算増幅器
368 :差動増幅出力
370 :生体分子水溶液
432 :電極基板
437 :オリゴヌクレオチドプローブ
440 :ターゲットDNA
440a:ターゲット塩基配列

Claims (7)

  1. 基板と、
    電極基板、及び、前記電極基板の前記基板が設けられている側とは反対側の最表面に設けられた金属塩および金属酸化物の少なくとも一方、並びに、前記最表面に設けられた生体分子プローブが固定化された生体分子プローブ固定化材料を有する電極と
    を備える生体分子検出用電極チップ。
  2. 前記金属塩が、金属塩化物である請求項1に記載の生体分子検出用電極チップ。
  3. 前記金属塩を構成する金属が、銀である請求項1に記載の生体分子検出用電極チップ。
  4. 前記金属酸化物を構成する金属が、タンタルである請求項1に記載の生体分子検出用電極チップ。
  5. 前記生体分子プローブが、核酸、ポリヌクレオチド、合成オリゴヌクレオチド、抗体、または抗原である請求項1に記載の生体分子検出用電極チップ。
  6. 請求項1に記載の生体分子検出用電極チップを、少なくとも1種の生体分子を含有する水溶液に接触する水溶液接触工程と、
    前記電極と前記水溶液との固液界面電位の変化を検出する検出工程と
    を有する生体分子検出方法。
  7. 前記水溶液接触工程は、1本鎖である核酸を前記生体分子プローブとして用い、前記生体分子プローブと前記水溶液中の前記生体分子である核酸との相補的な複合体を形成する工程、または、抗原−抗体反応を形成する工程である請求項6に記載の生体分子検出方法。


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