JPWO2011118582A1 - アルギン酸の分解方法 - Google Patents

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Abstract

本発明により、アルギン酸リアーゼ活性を有するポリペプチドおよび当該酵素を使用するアルギン酸の分解方法が提供される。

Description

本発明は、アルギン酸リアーゼ活性を有するポリペプチドおよび当該酵素を使用するアルギン酸の分解方法に関する。
アルギン酸は褐藻類などの藻類と一部の細菌類が生産する多糖類であり、特にコンブ類やジャイアントケルプ類に多く含有されている。褐藻類から抽出されたアルギン酸はそのまま食品としてだけでなく、食品添加物、化粧品、医薬品、工業用品など様々な用途で活用されている。一方、アルギン酸は水に溶解すると極めて高粘性を示すため、食品、食品添加物、化粧品、医薬品、工業用品など様々な用途に適用するためには、アルギン酸リアーゼによりアルギン酸を分解することにより、アルギン酸水溶液の粘度を低下させることが有効である。また、アルギン酸分解によって生じるオリゴ糖には植物の根の生長促進効果、抗腫瘍効果などの様々な生理活性作用が報告されており、近年注目されている。また、褐藻類を用いる食品加工工場の排水にはアルギン酸が多量に含有され高い粘性を示すことから、アルギン酸分解による粘性の低下技術の構築も求められている。さらに、Pseudomonus属などのアルギン酸をバイオフィルムとして生産する細菌類の除去は、界面活性剤や熱処理だけでは困難であり、アルギン酸分解が必須と考えられている。
アルギン酸の分解は大量のエネルギーを消費する熱による方法や廃液処理が煩雑な酸による方法よりは、酵素の利用が有効と考えられる。主に陸上あるいは海洋に棲息する細菌類や褐藻類を摂餌する海産軟体動物(アワビ、サザエ、巻貝類など)を対象にアルギン酸分解酵素であるアルギン酸リアーゼが探索されており、酵素の基質特異性、切断様式などの特性が詳細に検討され、いくつかの酵素については立体構造が明らかにされている。加えて、それらの酵素はオリゴ糖の生産や褐藻類からのプロトプラスト細胞の作出への利用が試みられているが実用化されている例はほとんど無い。このようにアルギン酸の分解や分解物であるオリゴ糖は有用であるが、分解酵素であるアルギン酸リアーゼは主に陸上の土壌細菌由来のものが市販されているにすぎない。
アルギン酸分解酵素に限らず、一般に酵素を工業的および産業的に利用するには、酵素の安定性が重要である。温度、pH、イオン強度などの様々な要因に対して、酵素活性が持続的に維持され、容易に失活や変性を起こさないことが要求される。例えば、セルラーゼなどの糖質加水分解酵素やプロテアーゼでは様々な生息環境からそれらを生産する菌類が単離され、有用酵素が見出され実用化されている。しかしながら、これまでに知られているアルギン酸リアーゼを生産する生物種は上記の酵素に比べて少ないため、実用化のための様々な要因を克服したアルギン酸分解酵素についての報告例はほとんど無い。
現在までにアルギン酸リアーゼを産生する生物としては主に土壌細菌、海藻、海藻付着細菌、藻食性軟体動物などが対象とされてきた(非特許文献1〜6)。
Inoue, A. et al., Phycologia, 48:48 (2009) Kawamoto, H. et al., Mar. Biotechnol., 8:481-490 (2006) Yamasaki, M. et al., J. Biol. Chem., 279:31863-31872 (2004) Miyake, O. et al., J. Bacteriol., 186:2891-2896 (2004) Matsubara, Y. et al., J. Protein Chem., 17:29-36 (1998) Kobayashi, T. et al., Extremophiles, 13:121-129 (2009)
しかし、これらは陸上と海洋の区別はあるものの特異な環境に棲息しているとは言い難く、実際、得られた酵素活性に及ぼす温度、pHなどの影響に大きな差異は認められない。本発明の目的は、より安定な酵素活性を有し、実用化に適している、アルギン酸リアーゼ活性を有するポリペプチドおよび当該酵素を使用するアルギン酸の分解方法を提供することにある。
本発明は、
[1]配列番号1のアミノ酸配列からなるか、または配列番号1のアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつアルギン酸リアーゼ活性を有するポリペプチド;
[2]配列番号1のアミノ酸配列と20%以上の同一性を有するアミノ酸配列において、配列番号1のアミノ酸配列の80位および232位に相当する位置にシステイン残基を有するアミノ酸配列からなり、かつアルギン酸リアーゼ活性を有するポリペプチド;
[3]配列番号1のアミノ酸配列と20%以上の同一性を有するアミノ酸配列において、配列番号1のアミノ酸配列の80位および/または232位に相当する位置におけるシステイン残基以外のアミノ酸残基をシステイン残基に置換して、これらの位置の両方にシステイン残基が存在するようにすることを含む、温度特性が向上したアルギン酸リアーゼ活性を有するポリペプチドの製造方法;
[4][1]または[2]のポリペプチドをアルギン酸に作用させることを含む、アルギン酸の分解方法;
[5][1]または[2]のポリペプチドを含む、アルギン酸分解用組成物、
に関する。
本発明により、広範な条件下で高い酵素活性および安定性を示し、実用化に適している、アルギン酸リアーゼ活性を有するポリペプチドおよび当該酵素を使用するアルギン酸の分解方法が提供される。
NitAlyと他種アルギン酸リアーゼの一次構造比較を示す図である。 NitAlyによるアルギン酸の分解を示す図である。図中、黒丸は相対粘度を、黒三角は235nmにおける吸光度を示す。 NitAlyの基質特異性を示す図である。ポリ(M)に対する活性を100%とした相対活性を示す。 NitAlyの温度依存性を示す図である。図中、黒丸はNitAlyについての結果を、白丸はFlaAlyについての結果を示す。NitAlyについては1,390U/mgの比活性を、FlaAlyについては2,360U/mgの比活性を100%とした相対活性を示す。 NitAlyのpH依存性を示す図である。図中、黒丸はNitAlyについての結果を、白丸はFlaAlyについての結果を示す。NitAlyについては1,640U/mgの比活性を、FlaAlyについては2,120U/mgの比活性を100%とした相対活性を示す。 NitAlyのpH安定性を示す図である。1,460U/mgの比活性を100%とした相対活性を示す。 NitAlyの塩濃度依存性を示す図である。図中、黒丸はNitAlyについての結果を、白丸はFlaAlyについての結果を示す。NitAlyについては1,140U/mgの比活性を、FlaAlyについては2,000U/mgの比活性を100%とした相対活性を示す。 NitAlyの熱安定性を示す図である。図中、黒丸はNitAlyについての結果を、白丸はFlaAlyについての結果を示す。NitAlyについては1,660U/mgの比活性を、FlaAlyについては1,740U/mgの比活性を100%とした相対活性を示す。 NitAlyによる分解物の薄層クロマトグラフィー(TLC)解析を示す図である。 NitAlyの長期熱安定性を示す図である。図中、黒丸、黒三角、黒四角、黒菱形はそれぞれ20℃、30℃、40℃、50℃でインキュベートした場合の結果を示す。1,660U/mgの比活性を100%とした相対活性を示す。 NitAlyの予測立体構造を示す図である。 NitAlyのDTT存在下における温度依存性(A)および熱安定性(B)の変化を示す図である。図中、黒丸、黒菱形はそれぞれDTT非存在下(−DTT)、DTT存在下(+DTT)で得られた結果を示す。(A)−DTTについては1,660U/mgの比活性を、+DTTについては1,590U/mgの比活性を100%とした相対活性を示す。(B)−DTTについては1,580U/mgの比活性を、+DTTについては1,460U/mgの比活性を100%とした相対活性を示す。 NitAly変異体の温度依存性(A)および熱安定性(B)を示す図である。図中、黒丸、黒三角、黒四角はそれぞれ野生型(WT)、80位にGlyを有する変異体(C80G)、80位にAlaを有する変異体(C80A)についての結果を示す。(A)WTについては1,480U/mgの比活性を、C80Gについては1,320U/mgの比活性を、C80Aについては1,970U/mgの比活性を100%とした相対活性を示す。(B)WTについては1,530U/mgの比活性を、C80Gについては1,750U/mgの比活性を、C80Aについては1,530U/mgの比活性を100%とした相対活性を示す。 スサビノリ(Porphyra yezoensis)由来アルギン酸リアーゼPyAlyへのジスルフィド結合の導入による温度依存性(A)および熱安定性(B)の変化を示す図である。図中、黒丸および黒三角はそれぞれ野生型(PyAlyWT)および変異体(PyAlyCys)についての結果を示す。(A)PyAlyWTについては1,060U/mgの比活性を、PyAlyCysについては1,440U/mgの比活性を100%とした相対活性を示す。(B)PyAlyWTについては1,210U/mgの比活性を、PyAlyCysについては1,720U/mgの比活性を100%とした相対活性を示す。
[用語の説明]
本明細書において使用する「アルギン酸」という用語は、β−1,4’−マンヌロノ−1,4’−L−グルロノグリカンとも呼ばれるβ−D−マンヌロン酸(M)とα−L−グルロン酸(G)の2種のウロン酸のピラノース環が主としてβ1→4結合した多糖を指す。アルギン酸中にはβ−D−マンヌロン酸のホモポリマー(以下、「ポリ(M)」または「Mブロック」とも呼ぶ)、α−L−グルロン酸のホモポリマー(以下、「ポリ(G)」または「Gブロック」とも呼ぶ)、β−D−マンヌロン酸とα−L−グルロン酸のヘテロポリマー(以下、「ポリ(MG)」または「MGブロック」とも呼ぶ)の領域が存在する。アルギン酸の由来には限定なく、例えば、褐藻類などの藻類、細菌類などから得ることができる。
本明細書において使用する「アルギン酸リアーゼ」という用語は、アルギン酸に作用するリアーゼを指す。「リアーゼ」は、基質から加水分解や酸化によらず、ある基を脱離させ二重結合を残す反応を触媒する酵素の総称である。詳細には、アルギン酸リアーゼは、β脱離反応によってアルギン酸を分解する。本明細書において使用する「アルギン酸リアーゼ活性」という用語は、上記のような酵素の活性を意味する。
アルギン酸リアーゼはその基質特異性に基づいて、ポリ(M)に特異的に作用するもの(EC4.2.2.3)、ポリ(G)に特異的に作用するもの(EC4.2.2.11)、さらにポリ(MG)に作用するものなどに分類され得る。本発明のポリペプチドは、いずれの基質に作用するものであってもよく、1つの実施態様において、ポリ(M)選択的であり、別の実施態様において、ポリ(G)選択的である。本明細書において使用する「ポリ(M)選択的」という用語は、アルギン酸リアーゼがポリ(G)に比較してポリ(M)に優先的に作用することを指し、本明細書において使用する「ポリ(G)選択的」という用語は、アルギン酸リアーゼがポリ(M)に比較してポリ(G)に優先的に作用することを指す。いずれの場合も、さらにポリ(MG)に対する作用を有してもよい。優先的に作用する基質に対する活性と、そうでない基質に対する活性の差は、例えば、2倍、3倍、5倍、10倍、20倍またはそれ以上である。
以下、本発明の実施の態様について、詳細に説明する。なお、同様な内容については、繰り返しの煩雑を避けるために、適宜説明を省略する。
1つの実施態様において、本発明のアルギン酸リアーゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列からなるか、または配列番号1のアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなる。本実施形態に係るアルギン酸リアーゼ活性を有するポリペプチドは、公知のアルギン酸リアーゼと比較して、最も高い至適温度、最も低い至適pH、最も高い至適NaCl濃度、最も高い熱安定性を示すことが実証されており、広範な条件下で高い酵素活性および安定性を示し、実用化に適している。
アルギン酸などの多糖類に作用するリアーゼは、その配列相同性に基づいていくつかのポリサッカリドリアーゼ(PL)ファミリーに分類されており(http://www.cazy.org/Polysaccharide-Lyases.html)、アルギン酸リアーゼは、PL−5、6、7、14、15、17、18ファミリーに分類されている。この中で、PL−7ファミリーに属するアルギン酸リアーゼには3箇所の保存領域、すなわち、それぞれ配列番号1の、85〜89位に相当する位置におけるRXELR(Xは任意のアミノ酸を示す、以下同様)(保存領域I)、123〜125位に相当する位置におけるQXH(保存領域II)、220〜228位に相当する位置におけるYFKAGXYXQ(保存領域III)が存在することが知られている。
Nitratiruptor sp. SB155-2株は、中部沖縄トラフに位置する伊平屋北熱水活動域の深海約1,000mの海底熱水噴出孔のチムニーから分離された中等度好熱性ε−プロテオバクテリアであり(Nakagawa, S. et al., Environ. Microbiol., 7:1619-1632 (2005))、全ゲノム解析が行われている(Nakagawa, S. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 104:12146-12150 (2007)(GenBank accession no. AP009178)。
Nitratiruptor sp.ゲノムには、配列相同性に基づいてアルギン酸リアーゼ様ポリペプチドをコードする可能性のあるオープンリーディングフレーム(ORF)の存在が推定された(GenBank accession no. BAF69299、UniProt accession no. A6Q1E0)。このORFのヌクレオチド配列およびコードされるポリペプチドの推定アミノ酸配列を、それぞれ配列番号2および1に示す。本発明者らは、ゲノム配列情報に基づいて上記ORFを含むDNAをクローニングし、大腸菌において発現させて、この遺伝子によってコードされるポリペプチド(以下、「NitAly」という)が実際にアルギン酸リアーゼとして機能することを見出した。
配列番号1のアミノ酸配列には上記の保存領域が見出され、この配列は既知のPL−7ファミリーに属するアルギン酸リアーゼのアミノ酸配列と相同性を示した。しかし、他の生物種由来のアルギン酸リアーゼのアミノ酸配列との同一性の値は、高いものでも20〜30%程度と非常に低いので(スサビノリ(Porphyra yezoensis)(非特許文献1)、Vibrio sp. O2(非特許文献2)、Pseudomonas aeruginosa PAO1(非特許文献3)由来のアルギン酸リアーゼとのアミノ酸配列同一性はそれぞれ39%、36%、22%である(図1参照))、配列の相同性に基づいてこの遺伝子産物がアルギン酸リアーゼ活性を示すかどうかは不明であった。なお、アミノ酸配列の同一性は、DDBJのウェブサイト(http://www.ddbj.nig.ac.jp/index-j.html)において利用可能な系統解析ソフトCLUSTALWをデフォルト条件(AUTOMATIC)で使用するなどして決定することができる。
本発明のポリペプチドの一例であるNitAlyは以下のような性質を示す。NitAlyは、アルギン酸を分解する能力を有し、粘度測定とリアーゼ反応によって生じる二重結合の235nmにおける吸光度変化の測定により、エンド型の切断様式を有すると考えられる。基質としてアルギン酸、ポリ(G)、ポリ(MG)、またはポリ(M)に対する分解能を調べた結果、特にβ−D−マンヌロン酸を多く含むポリ(M)を良く分解する。ポリ(M)を基質とした場合、分解物としては、3〜5糖、特に4および5糖が生じる。NitAlyの至適温度は約70℃と決定され、40℃〜80℃で最大活性の50%以上の活性を示す。至適pHは6であり、pH4〜7の範囲で最大活性の50%以上の活性を有するが、中性以上のpHでは著しく活性は低下する。NitAlyの至適NaCl濃度は1,200mMである。NaCl要求性は高く、800〜1400mM NaCl存在下で著しく活性化される。また、0〜100℃で30分間インキュベート後の残存活性を調べた場合、62℃で30分間のインキュベート後でも約50%の活性が残存している。
従って、本発明のポリペプチドを、例えば20℃以上、30℃以上、40℃以上、50℃以上、60℃以上、および100℃以下、90℃以下、80℃以下、好ましくは70℃の温度で、4以上、5以上、および7以下、好ましくは6のpHで、800mM以上、900mM以上、1000mM以上、1100mM以上、および1400mM以下、1300mM以下、好ましくは1200mMのNaClの存在下で使用することができる。
下記表1にNitAlyと他のアルギン酸リアーゼの性状を比較した結果を示す。Pseudomona aeruginosa(非特許文献3)、Sphingomonas sp. A1(非特許文献4)、Corynebacterium sp.(非特許文献5)、Agarivorans sp.(非特許文献6)についてのデータは文献から得、その他は本発明者らによって得られた結果である。表中、熱安定性は、括弧内に示す時間インキュベートした場合に最大活性の50%となる温度を示す。この表に示すアルギン酸リアーゼの中で、NitAlyは、最も高い至適温度、最も低い至適pH、最も高い至適NaCl濃度、最も高い熱安定性を示す。また、アミノ酸配列同一性が示されるPorphyra yezoensis、Vibrio sp. O2およびPseudomonas aeruginosa PAO1由来のアルギン酸リアーゼはそれぞれポリ(M)、ポリ(G)およびポリ(MG)に対して優先的に作用し、NitAlyはポリ(M)選択的な作用を示す。このように、NitAlyの性質は公知の他のアルギン酸リアーゼからは予想され得ないものである。
本発明者らは、配列番号1のアミノ酸配列には、他のPL−7ファミリーに属するアルギン酸リアーゼのアミノ酸配列には存在しないシステイン(Cys)残基が、配列番号1の80位および232位に存在し、そして立体構造予測に基づいてこれらが互いに近接することに着目し(図11参照)、これらのシステイン残基の間で形成されるジスルフィド結合がアルギン酸リアーゼ活性を有するポリペプチドの温度特性の向上に寄与することを示した。
本明細書において「温度特性」という用語は、ポリペプチドの示すアルギン酸リアーゼ活性の温度に関連する特性を指し、熱安定性、温度依存性を含む。従って、「温度特性が向上した」とは、例えば、熱安定性が増加すること、および/または温度依存性が上昇することを意味する。
熱安定性を、ポリペプチドを一定期間(例えば30分間)インキュベートした後の残存活性を測定することによって評価することができる。さらに、熱安定性を、一定期間インキュベートした後の残存活性が最大活性の50%に低下する温度によって表すことができる。より長い時間の熱安定性(長期安定性)を、一定温度で長時間(例えば16時間)インキュベートした後の残存活性を測定することによって評価することができる。例えば、熱安定性の増加は、30分間のインキュベーション後に最大活性の50%に活性が低下する温度の5℃、10℃、15℃、20℃、25℃、30℃の上昇として定義され得る。
温度依存性を、ポリペプチドの示すアルギン酸リアーゼ活性の至適温度、または活性を示す最高温度によって評価することができる。例えば、温度依存性の上昇は、至適温度または活性を示す最高温度の5℃、10℃、15℃、20℃、25℃、30℃の上昇として定義され得る。
1つの実施態様において、本発明は、配列番号1のアミノ酸配列と20%以上の同一性を有するアミノ酸配列において、配列番号1のアミノ酸配列の80位および232位に相当する位置にシステイン残基を有するアミノ酸配列からなり、かつアルギン酸リアーゼ活性を有するポリペプチドを提供する。別の実施態様において、本発明は、配列番号1のアミノ酸配列と20%以上の同一性を有するアミノ酸配列において、配列番号1のアミノ酸配列の80位および/または232位に相当する位置におけるシステイン残基以外のアミノ酸残基をシステイン残基に置換して、これらの位置の両方にシステイン残基が存在するようにすることを含む、温度特性が向上したアルギン酸リアーゼ活性を有するポリペプチドの製造方法を提供する。かかる実施の態様により、システイン残基をこれらのいずれか一方または両方の位置に有しない元のアミノ酸配列からなるポリペプチドに比較して向上した温度特性を有するポリペプチドを得ることができる。
これらのアミノ酸配列の位置は、それぞれ上記の保存領域Iの5残基上流、保存領域IIIの4残基下流としても特定することができる。置換は、PCR、部位特異的変異誘発など任意の組換えDNA技術を使用して導入することができる。本発明のポリペプチドを、当該ポリペプチドを産生する微生物の培養液から得ることができる。微生物は天然の微生物でもよく、または組換え微生物でもよい。組換え微生物の場合、本発明のポリペプチドをコードする核酸を宿主内で発現可能な状態で(例えば、発現ベクター中、プロモーターに作動可能に連結されて)含む宿主微生物(例えば、細菌(Escherichia coliなど)、酵母、動物細胞、植物細胞など)を使用する。このような微生物を適切な条件下で培養し、産物が細胞内に産生される場合は細胞を、産物が細胞外に分泌される場合は培養上清を回収し、そこから産物を常法に従って精製することによって目的のポリペプチドを得ることができる。これらの技術は当技術分野において公知である。
このようなポリペプチドは、システイン残基をこれらのいずれか一方または両方の位置に有しない元のアミノ酸配列からなるポリペプチドに比較して向上した温度特性を有する。元のアミノ酸配列としては、上記位置が特定できる程度の配列番号1のアミノ酸配列との相同性が存在し、そのアミノ酸配列からなるポリペプチドがアルギン酸リアーゼ活性を示す限り任意のアミノ酸配列を使用することができる。例えば、元のアミノ酸配列は、配列番号1のアミノ酸配列と20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上の同一性を有する。
このようなポリペプチドの例として、スサビノリ(Porphyra yezoensis)由来アルギン酸リアーゼのアミノ酸配列(配列番号3)の79位のグリシン残基および229位のプロリン残基をそれぞれシステイン残基に置換した変異体が挙げられる(アミノ酸配列を配列番号17に示す)。この変異体はもとのアミノ酸配列からなる野生型ポリペプチドと比較して、上昇した温度依存性を示す。詳細には、野生型では活性をほとんど示さない温度(60℃)において、変異型は最大活性の40%の値を示す。
1つの実施態様において、本発明は、本発明のポリペプチドをアルギン酸に作用させることを含む、アルギン酸の分解方法を提供する。別の実施態様において、本発明は、上記ポリペプチドを含む、アルギン酸分解用組成物を提供する。本発明の組成物を、本発明の分解方法に使用することができる。組成物は、ポリペプチドの安定化剤などの任意の成分をさらに含んでもよい。アルギン酸は、食品、食品添加物、化粧品、医薬品、工業用品など様々な用途で活用されている。一方、アルギン酸は水に溶解すると極めて高粘性を示すため、食品、食品添加物、化粧品、医薬品、工業用品など様々な用途に適用するためには、アルギン酸を分解することにより、アルギン酸水溶液の粘度を低下させることが有効である。従って、アルギン酸をより効果的に分解することができる本発明のポリペプチドを使用する本発明の方法、組成物は、これらに使用される材料の製造に有用である。
本発明のポリペプチドの一例であるNitAlyは、アルギン酸をエンド型で切断して、分解物(オリゴ糖)を生じる。従って、本発明のポリペプチドをアルギン酸に作用させることによってオリゴ糖を製造することができる。アルギン酸分解によって生じるオリゴ糖には植物の根の生長促進効果、抗腫瘍効果などの様々な生理活性作用が報告されている。従って、本発明の方法、組成物は、このような生理活性物質の製造に有用である。
本発明の方法、組成物を、褐藻類を用いる食品加工工場排水などのアルギン酸含有廃液の粘度を低下させるために使用することができる。本発明のアルギン酸リアーゼ活性を有するポリペプチドは、公知のアルギン酸リアーゼと比較して、最も高い至適温度、最も低い至適pH、最も高い至適NaCl濃度、最も高い熱安定性を示すことが実証されている。廃液中には高濃度の塩が含まれており、廃液のpHが酸性の場合が多く、このような環境で、本発明のポリペプチドは有効に作用する。また、本発明の方法、組成物を、アルギン酸産生微生物を除去するために使用することができる。アルギン酸産生微生物(Pseudomonas、Sphingomonasなど)はバイオフィルムとしてアルギン酸を産生して付着するので、単純な洗浄だけでは除去が困難であり、アルギン酸の分解が必要となる。
このような工業的利用のために、広範な条件下で高い活性および安定性を示す本発明のポリペプチドは特に有用である。本発明のポリペプチドをそのまま反応液に添加してもよく、例えば支持体に固定化して使用してもよい。当業者は、酵素活性を示すポリペプチドの固定化方法を適切に選択することができる。
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1:Nitratiruptor sp. SB155-2株からのアルギン酸リアーゼ遺伝子のクローニングおよび大腸菌における生産
Nitratiruptor sp. SB155-2株のゲノムDNAを鋳型とし、プライマーNitAly−F1(配列番号5)およびNitAly−R1(配列番号6)を使用したPCRによりアルギン酸リアーゼ様ポリペプチド(NitAlyと称する)をコードするDNAを得、これをE. coli DH5α(Biodynamics)を宿主としてクローニングベクターpTac−1(Biodynamics)中にクローニングした。得られたNitAly遺伝子のヌクレオチド配列およびそれにコードされるNitAlyの推定アミノ酸配列をそれぞれ配列番号2および1に示す。
図1にNitAlyと他種アルギン酸リアーゼの一次構造比較を示す。DDBJのウェブサイト(http://www.ddbj.nig.ac.jp/index-j.html)において利用可能な系統解析ソフトCLUSTALWをデフォルト条件(AUTOMATIC)で使用してこれらの相同性を解析したところ、NitAly(Nit.)はスサビノリ(Porphyra yezoensis)(Por.)、Vibrio sp. O2(Vib.)、Pseudomonas aeruginosa PAO1(Pse,)由来のアルギン酸リアーゼのアミノ酸配列とそれぞれ39%、36%、22%の同一性を示した。NitAlyのアミノ酸配列にはPL−7ファミリーに属するポリペプチドにおいて保存されている保存領域I〜IIIが見出された(85〜89位におけるRSELR、123〜125位におけるQIH、220〜228位におけるYFKAGVYLQ)。
このDNAを鋳型とし、成熟酵素(配列番号1の23位〜243位)をコードする配列の両末端にそれぞれBamHI部位およびXbaI部位を付加するためのプライマーNitAly−BamF(配列番号7)およびNitAly−XbaRを使用したPCRによりDNAを得、これをE. coli BL21(DE3)(Takara)を宿主として発現用ベクターpCold I(Takara)中に挿入した。
組換えアルギン酸リアーゼの発現は以下のように行った。形質転換された大腸菌のシングルコロニーを釣菌して、アンピシリンを含む2×TY培地500ml中で150rpm、37℃で一晩振盪した。続いて培養温度を15℃に下げ1時間培養した後、終濃度で0.1mMとなるようにIPTGを添加し、8時間培養を行って、タンパク質の発現を誘導した。発現誘導後の培養液を10,000×gで10分間の遠心分離を行い、菌体を回収し、0.01mg/mlのlysozymeを含む緩衝液(50mM NaHPO、0.5M NaCl、1%Triton−X、10mMイミダゾール(pH8.0))によく懸濁した後、氷冷下で30分間静置して溶菌させ、その後大腸菌の超音波破砕 (30秒×5回)を行った後、遠心分離(10,000×g、10分)し、その上清にNi−NTAレジン(QIAGEN)を加え、氷冷下で30分間静置した。レジンは1,400×gで2分間の遠心分離で回収し、カラム(Disposable Filter Colum、Fisher Scientific)に充填し、洗浄用緩衝液(50mM NaHPO、0.5M NaCl、40mMイミダゾール(pH8.0))で洗浄を行った。その後、タンパク質は溶出用緩衝液(0.5M NaCl、150mMイミダゾール(pH8.0))で溶出した。精製したタンパク質はpH5.0において最も安定であるため直ちに50mM酢酸(CHCOOH−CHCOONa)緩衝液(pH5.0)および1M NaClを含む溶液に氷冷下で一晩透析し、酵素溶液として使用した。
このようにして、1,000mlの培養液当たり0.8〜1.0mgのドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)で単一のバンドを示すNitAlyが得られた。
実施例2:NitAlyによるアルギン酸の分解
NitAlyによる基質の分解様式を調べるために、酵素反応中の反応混液の経過時間における粘度低下を調べた。測定はオストワルド粘度計を用いて行い、反応系(0.005mg/ml NitAly、50mM酢酸緩衝液(pH5.0)、1%アルギン酸ナトリウム、1M NaCl)は5mlとした。反応液は恒温槽を用いて30℃の一定温度に保った。また、粘度測定と併せて反応液の吸光度も測定した。同条件において480分間酵素反応を行い、経過時間ごとに反応液の235nmにおける吸光度も同時に測定した。
結果を図2に示す。図中、黒丸は相対粘度を、黒三角は235nmにおける吸光度を示す。NitAlyは、溶液の粘度を低下させることからアルギン酸を分解する能力を有し、リアーゼ反応によって生じる二重結合の生成に伴う235nmにおける吸光度の上昇を示したことから、エンド型の切断様式を有すると考えられた。
実施例3:NitAlyの基質特異性
NitAlyの基質特異性を以下のようにして調べた。アルギン酸のポリ(M)、ポリ(G)、ポリ(MG)、および解集合アルギン酸は、既報の方法(P. Gacesa et al., Appl. Environ. Microbiol, 56:2265-2267 (1990))に従い、市販のアルギン酸ナトリウム(Sigma、Macrosystis pyrifera由来)から調製した。
0.01mg/ml NitAly、50mM酢酸緩衝液(pH5.0)、1M NaCl、および0.25%の上記で調製したポリ(M)、ポリ(G)、ポリ(MG)、またはアルギン酸を含む1mlの反応液を調製し、40℃で10分間活性を測定した。235nmにおける吸光度を1分間当たり0.01上昇させる酵素量を1Uと定義した。
結果を図3に示す。NitAlyはポリ(M)を最も良く分解した(pH5、60℃で1,580U/mg)。
実施例4:NitAlyの温度依存性
NitAlyの示すアルギン酸リアーゼ活性を各種温度で測定した。対照として、市販のFlavobacterium sp.由来アルギン酸リアーゼ(FlaAly)(Sigma)を10mg/mlとなるように50mMリン酸緩衝液(pH6.0)に溶解し、酵素溶液とした。
NitAlyの活性は50mM酢酸緩衝液(pH5.0)、1M NaCl、0.25%ポリ(M)およびアルギン酸リアーゼ(0.01mg/ml NitAly)を含む1mlの反応液をスタンダードの条件として測定した(以下の実施例においても同様)。測定時間は10分間とし、235nmにおける吸光度を1分間当たり0.01上昇させる酵素量を1Uと定義した。
NitAlyの温度依存性を、上記反応液中で、10〜80℃に保ち各10分間活性測定した。
FlaAlyの温度依存性は50mMリン酸緩衝液(pH6.0)、0.25%アルギン酸ナトリウム、アルギン酸リアーゼ(0.01mg/ml FlaAly)を含む1mlの反応液中で、10〜80℃に保ち各10分間活性測定した。
結果を図4に示す。図中、黒丸はNitAlyについての結果を、白丸はFlaAlyについての結果を示す。NitAlyの至適温度は約70℃と決定され、40℃〜80℃で最大活性の50%以上の活性を示した。なお、80℃以上は使用した装置の温度限界のため測定できなかった。一方、FlaAlyは、他の菌類のアルギン酸リアーゼと良く似た40℃が至適温度であった。
実施例5:NitAlyのpH依存性
NitAlyのpH依存性は、pH3.3〜3.8の範囲では50mMグリシン−HCl緩衝液を、pH3.8〜5.9の範囲では50mM酢酸緩衝液を、pH6.0〜7.4の範囲では50mMリン酸緩衝液を、pH7.0〜8.3の範囲では50mM Tris−HCl緩衝液を、pH8.1〜10.5の範囲では50mM NaOH−グリシン緩衝液をそれぞれ使用し、1M NaCl、0.25%ポリ(M)、アルギン酸リアーゼ(0.01 mg/ml NitAly)を含む1mlの反応液中で、40℃に保ち10分間活性測定した。
FlaAlyのpH依存性は、pH5.1〜5.8では50mM酢酸緩衝液を、pH6.2〜7.9の範囲では50mMリン酸緩衝液を、pH9.0〜9.9の範囲では50mM NaOH−グリシン緩衝液をそれぞれ使用し、0.25%アルギン酸ナトリウム 、アルギン酸リアーゼ(0.01mg/ml FlaAly)を含む1mlの反応液中で、30℃に保ち10分間活性測定した。
結果を図5に示す。図中、黒丸はNitAlyについての結果を、白丸はFlaAlyについての結果を示す。NitAlyの至適pHは6であり、pH4〜7の範囲で最大活性の50%以上の活性を有していたが、中性以上のpHでは著しく活性は低下した。一方、FlaAlyは、pH6〜9で高い活性を示すがpH6以下では急激な活性の減少が見られた。
実施例6:NitAlyのpH安定性
NitAlyのpH安定性を以下のように調べた。NitAlyを精製後、直ちに1,000倍容量のpH4〜8(pH4および5は50mM酢酸緩衝液、pH6および7は50mMリン酸緩衝液、pH8は50mM Tris−HCl緩衝液を使用)の各緩衝液に対して0℃、12時間透析した後、0.01mg/ml NitAly、50mM酢酸緩衝液(pH5.0)、1M NaCl、0.25%ポリ(M)を含む1mlの反応液を調製し、40℃に保って10分間活性測定した。
結果を図6に示す。NitAlyはpH5でインキュベートした場合に最大活性、すなわち最も高い安定性を示した。
実施例7:NitAlyの塩濃度依存性
NitAlyの塩濃度依存性は50mM酢酸緩衝液(pH5.0)、25〜1600mM NaCl、0.25%ポリ(M)、アルギン酸リアーゼ(0.01mg/ml NitAly)を含む1mlの反応液中で、40℃に保ち10分間活性測定した。
FlaAlyの塩濃度依存性は50mMリン酸緩衝液(pH6.0)、50〜1200mM NaCl、0.25%アルギン酸ナトリウム、アルギン酸リアーゼ(0.01mg/ml FlaAly)を含む1mlの反応液中で、30℃に保ち10分間活性測定した。
結果を図7に示す。図中、黒丸はNitAlyについての結果を、白丸はFlaAlyについての結果を示す。NitAlyの分解活性はNaCl濃度依存的に上昇し、800〜1,400mM NaClが至適条件であった。一方、FlaAlyの活性は、NaCl濃度の上昇に伴って活性は減少した。
実施例8:NitAlyの熱安定性
NitAlyを50mM酢酸緩衝液(pH5.0)に対して透析して得た酵素溶液(0.5mg/ml)を様々な温度(0〜100℃)で30分間インキュベートした後に10分間の氷冷を行い、0.01mg/ml NitAly、50mM酢酸緩衝液(pH5.0)、1M NaCl、0.25%ポリ(M)を含む1mlの反応液を調製し、40℃に保って10分間活性測定した。
FlaAlyの熱安定性は以下の方法で測定した。酵素溶液(0.5mg/ml)を上記と同様にインキュベートし、10分間の氷冷を行った後に、0.01mg/ml FlaAly、50mMリン酸緩衝液(pH6.0)、0.25% アルギン酸ナトリウムを含む1 mlの反応液を調製し、30℃に保って10分間活性測定した。
結果を図8に示す。図中、黒丸はNitAlyについての結果を、白丸はFlaAlyについての結果を示す。NitAlyはFlaAlyに比べて高い熱安定性を示し、60℃で30分間インキュベートした後も70%程度の残存活性を示した。
実施例9: NitAlyによる分解物の薄層クロマトグラフィー(TLC)解析
NitAlyをアルギン酸に作用させた際に生じる分解物を以下のように調べた。薄層クロマトグラフィー(TLC)はTLC plate Silicagel-60(MERCK)を用いて行った。試料とするための酵素反応液は、50mM酢酸緩衝液(pH5.0)、600mM NaCl、0.25%アルギン酸ポリ(M)および0.02mg/ml NitAlyを含むものを用い、30℃で酵素反応させた。経時的にこの反応液の235nmにおける吸光度を測定した後に反応液を250μlずつ分取した。その後、脱塩濃縮を行うために、イソプロパノール沈殿を行った。すなわち、分取した反応液を氷冷し、同じく氷冷した750μlのイソプロパノールを加えてよく混合し、遠心分離(16,000×g、5分)して沈殿を得た。次いで1000μlのイソプロパノールを加えてよく混合し、遠心分離して得られた沈殿に室温のエタノールを1000μl加え、混合し遠心分離を行った。得られた沈殿を風乾し、10μlの蒸留水に溶解してスポット用試料とした。試料は1μlずつスポットし、乾燥後、1−ブタノール:酢酸:蒸留水(3:2:2、v/v/v)を展開溶媒としてスポットの展開を行った。プレート上に展開された糖質は、10%硫酸−エタノール溶液を噴霧し、130℃で15分間加熱することで検出した。マーカーとして、アルギン酸のアワビ粗酵素によるアルギン酸M−block分解物溶液を用いた(図9中のM)。
図9に示すように、NitAlyによって3〜5糖、特に4および5糖が生じた。
実施例10:NitAlyの長期熱安定性
NitAly(0.5mg/ml、50mM酢酸緩衝液(pH5.0))を様々な温度(20〜50℃)で0〜16時間インキュベートした後に10分間の氷冷を行い、0.01mg/ml NitAly、50mM酢酸緩衝液(pH5.0)、1M NaCl、0.25%ポリ(M)を含む1mlの反応液を調製し、40℃で10分間活性を測定した。
結果を図10に示す。図中、黒丸、黒三角、黒四角、黒菱形はそれぞれ20℃、30℃、40℃、50℃でインキュベートした場合の結果を示す。20〜30℃では16時間後も90%以上、40℃では60%以上の残存活性が見られた。
実施例11:NitAlyのDTT存在下における温度依存性および熱安定性の変化
NitAlyのアミノ酸配列を既知の他種のアルギン酸リアーゼのアミノ酸配列と詳細に比較したところ、NitAlyに特有の2個のシステイン(Cys)残基(配列番号1の80位および232位)が見出された。図11にNitAlyの予測立体構造を示す。上記2つのCys残基は立体構造において互いに近接していることが予測された。すなわち、これらのCys残基によって形成され得るジスルフィド結合がNitAlyの高い熱安定性に寄与している可能性があると考えられた。そこで、NitAlyの温度依存性および熱安定性に対する、ジスルフィド結合を切断する還元剤DTTの影響を調べた。
温度依存性および熱安定性を、それぞれ実施例4および8に記載の方法に従って調べた。DTT存在下での温度安定性は、予め酵素を5mM DTTを含む基質(ポリ(M))を除いた酵素反応溶液中で30分間氷冷した後、終濃度5mM DTTを含む反応液中で様々な温度(10〜80℃)で酵素反応を行うことによって調べた。DTT存在下での熱安定性は、5mM DTTの存在下で酵素溶液を様々な温度(0〜100℃)で30分間インキュベートした後にDTTを含まない反応液中で酵素活性を測定することによって調べた。
結果を図12に示す。図12において、AはDTTの存在による温度依存性の変化を、そしてBは熱安定性の変化を示す。図中、黒丸、黒菱形はそれぞれDTT非存在下、DTT存在下で得られた結果を示す。DTT存在下では、NitAlyの至適温度はほとんど変化しなかったが(図12A)、熱安定性は低下した(図12B)。特に60℃で30分間インキュベート後の残存活性には大きな差が見られ、NitAly内のジスルフィド結合が熱安定性に寄与している可能性が示唆された。
実施例12:NitAly変異体の温度依存性および熱安定性
配列番号1の80位および232位におけるCys残基によって形成され得るジスルフィド結合のNitAlyの温度特性(温度依存性、熱安定性)に対する影響をより詳細に調べるために、Cys残基を別のアミノ酸残基に置換したNitAly変異体を作製した。実施例1で得られたDNAを鋳型とし、NitAlyの80位のCys残基をグリシン(Gly)残基に置換するためのプライマーC80G−F(配列番号9)およびC80G−R(配列番号10)またはNitAlyの80位のCys残基をアラニン(Ala)残基に置換するためのプライマーC80A−F(配列番号11)およびC80A−R(配列番号12)を使用したPCRにより、80番目のCys残基をGly残基またはAla残基に置換した変異体(それぞれC80G、C80A)をコードするDNAを得、実施例1と同様にして精製タンパク質を調製して、その温度依存性と熱安定性を調べた。
結果を図13に示す。図13において、Aは置換による温度依存性の変化を、そしてBは熱安定性の変化を示す。図中、黒丸、黒三角、黒四角はそれぞれ野生型(WT)、80位にGly残基を有する変異体(C80G)、80位にAla残基を有する変異体(C80A)についての結果を示す。いずれの変異体も野生型NitAlyに比べて温度依存性は大きくは変わらないが(図13A)、熱安定性は野生型NitAly(WT)と比べて低下した(図13B)。これらの結果は、80位および232位のCys残基間で形成され得るジスルフィド結合がNitAlyの熱安定性に寄与していること示唆した。
実施例13:スサビノリ(Porphyra yezoensis)由来アルギン酸リアーゼPyAlyへのジスルフィド結合の導入による温度依存性および熱安定性の変化
実施例12で得られた知見をもとに、熱安定性が低いPorphyra yezoensisのアルギン酸リアーゼに、NitAlyの場合と同様にジスルフィド結合を形成するように2個のCys残基を置換により79位および229位に導入した変異体を作製した。Porphyra yezoensisのアルギン酸リアーゼ(PyAly)遺伝子のヌクレオチド配列およびPyAlyのアミノ酸配列をそれぞれ配列番号4および3に示す。配列番号3のヌクレオチド配列を有するDNAを鋳型にし、PyAlyの79位のGly残基をCys残基に置換するためのプライマーPy−G79CF(配列番号13)およびPy−G79CR(配列番号14)ならびにPyAlyの229位のプロリン(Pro)残基をCys残基に置換するためのプライマーPy−P229CF(配列番号15)およびPy−P229R(配列番号16)を使用して、79位および229位にCys残基を有する変異体(PyAlyCys)をコードするDNAを得た。PyAlyCysのアミノ酸配列を配列番号17に示す。このDNAからPyAlyCysを実施例1と同様に発現させ精製し、その温度依存性と熱安定性を調べた。
測定の際の条件は、野生型または変異体PyAly(0.01mg/ml)、0.25%ポリ(M)、0.1M NaCl、pH8.0(50mMリン酸緩衝液)を含む0.5mlの反応液中で30℃、10分間活性測定をスタンダードの条件とした。
結果を図14に示す。図14において、AはCys残基導入による温度依存性の変化を、そしてBは熱安定性の変化を示す。図中、黒丸および黒三角はそれぞれ野生型(PyAlyWT)および変異体(PyAlyCys)についての結果を示す。変異型PyAlyCysの熱安定性は野生型(PyAlyWT)のものと大きくは変わらなかったが(図14B)、野生型では活性をほとんど示さない温度(60℃)において、変異型PyAly(PyAlyCys)は最大活性の40%の値を示した(図14A)。このようにNitAlyに熱安定性をもたらす一因と考えられるCys残基の他の酵素への導入は高温で活性を示すアルギン酸リアーゼの創出にも有効であると示唆された。
本発明により、アルギン酸リアーゼ活性を有するポリペプチドおよび当該酵素を使用するアルギン酸の分解方法が提供される。

Claims (5)

  1. 配列番号1のアミノ酸配列からなるか、または配列番号1のアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつアルギン酸リアーゼ活性を有するポリペプチド。
  2. 配列番号1のアミノ酸配列と20%以上の同一性を有するアミノ酸配列において、配列番号1のアミノ酸配列の80位および232位に相当する位置にシステイン残基を有するアミノ酸配列からなり、かつアルギン酸リアーゼ活性を有するポリペプチド。
  3. 配列番号1のアミノ酸配列と20%以上の同一性を有するアミノ酸配列において、配列番号1のアミノ酸配列の80位および/または232位に相当する位置におけるシステイン残基以外のアミノ酸残基をシステイン残基に置換して、これらの位置の両方にシステイン残基が存在するようにすることを含む、温度特性が向上したアルギン酸リアーゼ活性を有するポリペプチドの製造方法。
  4. 請求項1または2記載のポリペプチドをアルギン酸に作用させることを含む、アルギン酸の分解方法。
  5. 請求項1または2記載のポリペプチドを含む、アルギン酸分解用組成物。
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