JPWO2011049200A1 - 掻痒抑制剤 - Google Patents

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Abstract

本発明は、副作用が少なく、アトピー性皮膚炎等の強い掻痒を伴う皮膚疾患の治療に有効な速効性のある掻痒抑制剤として、下記の配列番号1で表されるアミノ酸配列を有するペプチドのC末端側から7個以上の部分アミノ酸配列と相同なアミノ酸配列を有するペプチド等のコレシストキニン2受容体アゴニストを有効成分として含有することを特徴とする掻痒抑制剤を提供する。Val-Ser-Gln-Arg-Thr-Asp-Gly-Glu-Ser-Arg-Ala-His-Leu-Gly-Ala-Leu-Leu-Ala-Arg-Tyr-Ile-Gln-Gln-Ala-Arg-Lys-Ala-Pro-Ser-Gly-Arg-Met-Ser-Ile-Val-Lys-Asn-Leu-Gln-Asn-Leu-Asp-Pro-Ser-His-Arg-Ile-Ser-Asp-Arg-Asp-Tyr(SO3H)-Met-Gly-Trp-Met-Asp-Phe-NH2[配列番号1]

Description

本発明は、皮膚疾患に伴う掻痒を抑制する掻痒抑制剤に関するものである。
アトピー性皮膚炎、接触皮膚炎、じんましん、痒疹等の皮膚疾患は掻痒(かゆみ:皮膚を掻きたくなるような不快な皮膚の感覚)を伴うことが多い。掻痒は、それが誘発する掻破行動により病変の増悪および掻痒の増大という悪循環を引き起こすのみならず、日常生活や就業における作業効率を低下させ、また睡眠を阻害しQOLの低下をもたらす。そのため、掻痒の抑制は、皮膚における炎症反応の抑制と共に皮膚疾患の治療において重要である。
皮膚疾患の治療には、各種合成ステロイドを含む薬剤が広く用いられており、著明な治療効果を挙げている。しかし、ステロイド外用薬は、掻痒に対する直接的な抑制効果は有しておらず、炎症反応を抑制することにより間接的に掻痒を抑制していると考えられる。
アトピー性皮膚炎等における掻痒は、I型アレルギー反応による肥満細胞(マスト細胞)由来のヒスタミンに起因する現象であると考えられていたことから、掻痒の抑制のために、抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬が内服薬または外用薬として投与されることも多い。
近年は、免疫抑制薬であるタクロリムスを含む外用薬も用いられるようになっている(例えば、非特許文献1参照)。タクロリムスも、ステロイド外用薬同様、炎症反応の抑制を主要な作用機序とするものであるが、皮膚疾患のアトピー性皮膚炎の病態モデルマウスを用いた実験より、タクロリムスによる掻破行動の抑制が観察されている(例えば、非特許文献2参照)。
また、従来の一般的治療によるコントロールがつかない重症アトピー性皮膚炎患者や、最近の風潮としてのステロイド外用薬を使用することの困難な患者に対する薬剤として、免疫抑制薬であるシクロスポリンの内服が検討されており(例えば、非特許文献3参照)、わが国においても、一定の条件下、重症アトピー性皮膚炎患者への使用が認可された。
別のアプローチとして、掻痒や皮膚の炎症反応を遺伝子レベルで調節する方法や薬剤が検討されている。例えば、特許文献1には、ニューロペプチドの一種であるコレシストキニン又はその類縁体を含有してなる、特定のタンパク質を含有する細胞の再生、増殖又は分化調節剤およびそれを投与することにより、肥満、糖尿病、免疫系疾患、肝臓疾患、消化器系疾患または美容整形時の組織の損傷等の細胞の再生、増殖または分化が関与する疾患を治療する方法が開示されており、その具体例として、アトピー性皮膚炎等の免疫系疾患の予防および/または治療剤としてのコレシストキニンの使用が開示されている。
また、特許文献2には、有効成分としての少なくとも1つの医薬剤と、少なくとも1つの医薬剤のインビボ取り込みを高めるために配合されたナノ構造と、液体とを含む医薬組成物に関する発明が開示されており、発明の実施の形態のひとつとして、ニューロペプチドを用いたかゆみ症の治療剤が開示されている。
国際公開第2006/006722号パンフレット(請求項26、34、再公表公報第27ページ18〜25行目) 特表2009-526754号公報(明細書段落0052〜53)
中川秀巳他著,「Tacrolimus ointment for atopic dermatitis(アトピー性皮膚炎用タクロリムス軟膏剤)」,Lancet,エルゼビア(Elsevier)社(英国),第344巻(1994年),p.883 稲垣直樹他著,「アトピー性皮膚炎治療薬の薬効評価」,日本薬理学雑誌,社団法人日本薬理学会,第127巻(2006年),p.109〜115 Camp, R. D.他著,「Cyclosporin A in severe, therapy-resistant atopic dermatitis(重症の難治性アトピー性皮膚炎に対するシクロスポリンA)」: report of an international workshop,April 1993,British Journal of Dermatology,英国皮膚科医会(British Association of Dermatologists),第129巻,第2号(1993年),p.217〜220
しかしながら、ステロイド外用薬やタクロリムス外用薬には、重篤な副作用発現が懸念されるため、長期間の使用や、掻痒に伴う掻破行動が病態発現に大きく関与しているとされる小児への使用が制限されており、顕著な効果を有するにもかかわらず使用しにくい状況にある。
また、抗ヒスタミン薬には、眠気や口渇等の副作用があること、効用に個人差があること、アトピー性皮膚炎患者等の一部の掻痒が抗ヒスタミン薬に対する抵抗性を有すること等から、強い掻痒を伴うアトピー性皮膚炎等に対する有効性が疑問視されるようになっている。
更に、シクロスポリン内服薬についても、長期服用に伴う腎機能障害や高血圧等の副作用が懸念される。
特許文献1、2には、掻痒の抑制剤としての利用の可能性については記載されているものの、実験例、具体的や有効成分や有効量、および効果については何ら記載がない。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、副作用が少なく、アトピー性皮膚炎等の強い掻痒を伴う皮膚疾患の治療に有効な速効性のある掻痒抑制剤を提供することを目的とする。
本発明者は、掻痒誘発ペプチドであるP物質(substance P)で刺激した正常ヒト表皮角質細胞(NHEK)においてコレシストキニン2受容体(CCK2R)が高発現しているという新たな知見に基づき、CCK2Rシグナリングを介した掻痒抑制作用について鋭意検討した結果、コレシストキニン2受容体アゴニストによる掻痒の抑制効果を見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、コレシストキニン2受容体(CCK2R)アゴニストを有効成分として含有することを特徴とする掻痒抑制剤を提供する。
コレシストキニン(Cholecystokinin,CCK)は、消化管ホルモンとして知られているのに加え、中枢神経において神経ペプチドとして作用している。神経ペプチドのうち、CCKは中枢神経系で最も豊富に存在し、不安、抑うつ、記憶、食行動等の様々な生理機能に関与していることが知られている。コレシストキニンは、同一の遺伝子産物(プリプロコレシストキニン)から誘導され、C末端側のアミノ酸配列が共通で種々のアミノ酸残基長を有するペプチドの総称であり、通常は、そのアミノ酸残基数により、CCK58、CCK39、CCK33、CCK22、CCK8、CCK7等と呼ばれている。
これまで、コレシストキニンおよびその受容体の皮膚における機能についてはほとんど知られていなかったが、P物質等の掻痒誘発物質の刺激により表皮細胞においてコレシストキニン2受容体(以下、「CCK2R」と略称することがある。)が高発現すること、およびこのようにして発現したCCK2Rに対しアゴニスト(作動薬)を作用させることにより、動物実験において掻破行動が抑制されることが確認された。
本発明の掻痒抑制剤において、前記コレシストキニン2受容体アゴニストが、
(1)下記の配列番号1で表されるアミノ酸配列を有するペプチド(CCK58)のC末端側から7個以上の部分アミノ酸配列と相同なアミノ酸配列を有するペプチド、および
Val-Ser-Gln-Arg-Thr-Asp-Gly-Glu-Ser-Arg-Ala-His-Leu-Gly-Ala-Leu-Leu-Ala-Arg-Tyr-Ile-Gln-Gln-Ala-Arg-Lys-Ala-Pro-Ser-Gly-Arg-Met-Ser-Ile-Val-Lys-Asn-Leu-Gln-Asn-Leu-Asp-Pro-Ser-His-Arg-Ile-Ser-Asp-Arg-Asp-Tyr(SO3H)-Met-Gly-Trp-Met-Asp-Phe-NH2 [配列番号1]
(なお、配列番号1で表されるアミノ酸配列において、Tyr(SO3H)はO−硫酸化チロシンまたはその塩を表す。以下において同じ。)
(2)上記(1)のアミノ酸配列において、1もしくは複数のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつCCK2Rアゴニスト活性を有するペプチドからなる群より選択される1または複数であることが好ましい。
上記のコレシストキニン2受容体アゴニストは、経皮投与された場合にも皮膚を通して体内に吸収され、掻痒抑制効果を発揮できると共に、ステロイド外用薬やタクロリムス外用薬に比べ、副作用のおそれを大幅に低減できる可能性がある。
この場合において、前記コレシストキニン2受容体アゴニストが、下記の配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるペプチドおよび/または下記の配列番号3で表されるアミノ酸配列からなるペプチドであることが特に好ましい。
Asp-Tyr(SO3H)-Met-Gly-Trp-Met-Asp-Phe-NH2 [配列番号2]
Tyr(SO3H)-Met-Gly-Trp-Met-Asp-Phe-NH2 [配列番号3]
本発明の掻痒抑制剤は、肥満細胞の脱顆粒を抑制するものであってもよい。このような作用により、肥満細胞による信号伝達に媒介される掻痒や炎症反応の発現を抑制できると考えられる。
本発明の掻痒抑制剤は、注射剤、軟膏剤、クリーム剤、外用液剤、スプレー剤、貼付剤およびゲル剤のいずれかであってもよい。
これらはいずれも局所への皮下および経皮投与に好適な剤型である。
本発明によれば、副作用が少なく、アトピー性皮膚炎等の強い掻痒を伴う皮膚疾患の治療に有効な速効性のある掻痒抑制剤が提供される。
ISCマウス由来表皮角質細胞(Keratinocyte)およびマウス胎児皮膚由来肥満細胞(FSMC)におけるCCK1R、CCK2RおよびNK1Rの発現レベル(β−アクチンの発現レベルにより規格化)を示すグラフである。 P物質(SP)(10-6M)への暴露時間がISCマウス由来表皮角質細胞におけるCCK2RおよびCCK1Rの発現レベルに及ぼす影響を示すグラフである。 AはSPによる刺激で掻痒を誘導したICRマウスにおける、CCK2Rアゴニストの経皮投与が掻破行動に及ぼす影響を示すグラフであり、BはCCK8Sの皮内投与の有無がSPによる刺激で掻痒を誘導したICRマウスの掻破行動に及ぼす影響を示すグラフである。 ヒト表皮角質細胞(NHEK)、FSMCおよびラット褐色細胞腫由来細胞(PC12)におけるCCK2RおよびNK1Rの発現レベルを示すグラフである。 Aは、CCK8Sの投与濃度とNHEKにおけるIL−8の産生量の減少率との関係を示すグラフであり、BはCCK8Sの投与濃度とFSMCの脱顆粒の減少率との関係を示すグラフであり、CはCHSモデルマウスにおける惹起の有無およびCCK8Sの投与の有無と耳翼の厚さとの関係を示すグラフである。 FSMCにおけるCCK8Sの投与後の細胞内Ca濃度の変化を示すグラフである。
本発明の実施の形態に係る掻痒抑制剤は、コレシストキニン2受容体(CCK2R)アゴニスト(作動薬)を有効成分として含有している。掻痒抑制剤の製造に使用できるCCK2Rアゴニストとしては、掻痒発現物質により選択的に発現が増大したCCK2Rに結合し、掻痒の低減に関連する生理機能を発現させる任意の物質を使用することができる。CCK2Rアゴニストの一例としては、CCKファミリーに属するいずれかのペプチドおよびその類縁体が挙げられ、投与経路、治療対象となる皮膚疾患の種類等に応じて適当なものを適宜選択して使用することができるが、その一例として、(1)コレシストキニンのC末端を含む全長アミノ酸配列もしくは3以上のアミノ酸残基からなるその一部と相同なアミノ酸配列を含むペプチド、または(2)前記(1)のペプチドのアミノ酸配列において1もしくは複数のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつCCK2Rアゴニスト活性を有するペプチド(以下、総称して「コレシストキニンペプチド」ともいう。)が挙げられる。これらのペプチドのうち1種類のみを掻痒抑制剤の製造に使用してもよく、アミノ酸鎖長の異なる任意の2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
使用するコレシストキニンペプチドの分子量は、CCK2Rに対するアゴニスト活性、投与経路等に応じて適宜選択される。一般に、皮膚から体内に吸収される物質の分子量の上限が3000程度であるが、皮膚疾患の発症等により角層が障害されている場合には、それ以上の分子量の化合物も経皮吸収されうる。したがって、経皮投与用の掻痒抑制剤の製造に使用するコレシストキニンペプチドの分子量は必ずしも3000以下である必要はない。そのため、掻痒抑制剤の製造に使用できる好ましいCCK2Rアゴニストとしては、
(1)下記の配列番号1で表されるアミノ酸配列を有するペプチド(CCK58)のC末端側から7個以上の部分アミノ酸配列と相同なアミノ酸配列を有するペプチド、および
Val-Ser-Gln-Arg-Thr-Asp-Gly-Glu-Ser-Arg-Ala-His-Leu-Gly-Ala-Leu-Leu-Ala-Arg-Tyr-Ile-Gln-Gln-Ala-Arg-Lys-Ala-Pro-Ser-Gly-Arg-Met-Ser-Ile-Val-Lys-Asn-Leu-Gln-Asn-Leu-Asp-Pro-Ser-His-Arg-Ile-Ser-Asp-Arg-Asp-Tyr(SO3H)-Met-Gly-Trp-Met-Asp-Phe-NH2 [配列番号1]
(2)上記(1)のアミノ酸配列において、1もしくは複数のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつCCK2Rアゴニスト活性を有するペプチドからなる群より選択されるペプチドが挙げられる。
例えば、アミノ酸の置換の例としては、配列番号1のアミノ酸配列中、C末端側から7番目のO−硫酸化チロシンが通常のチロシンに置換されたもの、C末端のアミド化されたフェニルアラニンが通常の(アミド化されていない)フェニルアラニンに置換されたもの等が挙げられる。
これらのペプチドのうち1種類のみを掻痒抑制剤の製造に使用してもよく、任意の2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
より好ましいコレシストキニンペプチドの具体例としては、下記の配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるペプチドまたは下記の配列番号3で表されるアミノ酸配列からなるコレシストキニンペプチドが挙げられる。
Asp-Tyr(SO3H)-Met-Gly-Trp-Met-Asp-Phe-NH2 [配列番号2]
Tyr(SO3H)-Met-Gly-Trp-Met-Asp-Phe-NH2 [配列番号3]
これらのコレシストキニンペプチドのうち1種類のみを掻痒抑制剤の製造に使用してもよく、任意の2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
これらのコレシストキニンペプチドの起源について特に制限はなく、生体由来のもの、遺伝子組み換え法によりE.Coli等の微生物に産生させたもの、化学合成法により合成したもののいずれも使用できる。
掻痒抑制剤は、上記のコレシストキニンペプチド等のCCK2Rアゴニストを、医薬用途に許容される製剤添加物と所定の混合比で混合することにより製造される。掻痒抑制剤は、局所への皮下および経皮投与に好適な任意の剤型に製剤することができ、このような剤型の具体例としては、注射剤、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、酒精剤、リニメント剤、ローション剤等の外用液剤、スプレー剤(外用エアゾール剤)、テープ剤、パップ剤等の貼付剤等が挙げられる。
なお、経皮投与の場合、CCK2Rアゴニストの吸収率を向上させるために、テープストリッピング等により角質層の少なくとも一部を除去してもよい。
使用される製剤添加物の種類および量は、剤型や有効成分として添加されるCCK2Rアゴニストの種類(構造、分子量等)、添加量等に応じて適宜選択される。製剤添加物の具体例としては、下記のものが挙げられる。
(a)注射剤の場合:注射用水、生理的食塩水、リンゲル液等の水性溶液、植物油等の非水性溶媒、界面活性剤または乳化剤(懸濁性または乳濁性注射剤の場合)
(b)軟膏剤の場合:ワセリン、パラフィン、プラスチベース、シリコーン、蜜ろう、動植物油等の疎水性基剤、親水軟膏、親水ワセリン、精製ラノリン、マクロゴール剤等の親水性基剤
(c)ローション剤の場合:エタノール、グリセリン等の溶剤、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、メチルセルロース等の懸濁化剤、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリソルビン酸エステル等の乳化剤
(d)外用エアゾール剤の場合:LPG、ジメチルエーテル、フルオロカーボン類等の液化ガス、窒素、炭酸ガス等の圧縮ガス、各種溶剤、懸濁化剤および乳化剤(乳化型の場合)
その他、必要に応じて、安定剤、殺菌剤、保存料、香料等の成分を適宜添加してもよい。また、皮膚疾患の治療用の他の薬剤と組み合わせて使用してもよい。
これらの製剤中に有効成分として添加されるCCK2Rアゴニストの量は、製剤の用法および用量等に応じて適宜決定され、例えば液剤の場合には、0.1〜0.5nmol/13μL(皮膚1cm2あたりに塗布するために必要な液剤の量)、好ましくは0.2〜0.35nmol/13μLのCCK2Rアゴニストを含むように調剤される。CCK2Rアゴニストの投与量は、化合物の種類、投与方法、患者の症状、年齢等の要因に依存するため一義的に決定することは困難であるが、例えば、1回の塗布あたり0.1〜0.5nmol/cm2、好ましくは0.2〜0.35nmol/cm2である。
次に、本発明の作用効果を確認するために行った実施例について説明する。
[1]物質および実験動物
本実施例において使用したコレシストキニンペプチドは、下記の配列番号2〜6で表されるアミノ酸配列からなる5種類のペプチドである。
CCK8S Asp-Tyr(SO3H)-Met-Gly-Trp-Met-Asp-Phe-NH2 [配列番号2]
CCK7S Tyr(SO3H)-Met-Gly-Trp-Met-Asp-Phe-NH2 [配列番号3]
CCK8 Asp-Tyr-Met-Gly-Trp-Met-Asp-Phe-NH2 [配列番号4]
CCK7 Tyr-Met-Gly-Trp-Met-Asp-Phe-NH2 [配列番号5]
CCK6 Met-Gly-Trp-Met-Asp-Phe-NH2 [配列番号6]
なお、本実施例において、「CCKm(mは7または8)S」は、C末端側から7番目のTyrが硫酸化を受けた「天然型」のコレシストキニンを表し、「CCKn(nは6、7または8)」は、C末端側から7番目のTyrが硫酸化を受けていないコレシストキニン類縁体を表す。
CCK8S、CCK8、CCK7S、CCK6は株式会社ペプチド研究所より、CCK7はフナコシ株式会社より購入した。
P物質(SP)は株式会社ペプチド研究所より、肥満細胞を刺激して脱顆粒を起こさせる試験物質であるCompound 48/80は米国Sigma社より、ヒスタミンは和光純薬株式会社より、プロテアーゼ活性化受容体2(PAR−2)アゴニストであるヘキサペプチドSer-Leu-Ile-Gly-Arg-Leu-NH2は米国Tocris社より、それぞれ購入した。
ICR雌性マウスおよびC57BL/6J雌性マウスは、株式会社KBTオリエンタルより購入した。これらのマウスは、産業医科大学動物研究センターにおいて特定病原微生物を持たない(SPF)状態で飼育され、6〜8週齢に達したものを使用した。
動物実験は、産業医科大学動物管理使用規程に準拠して行った。
細胞および細胞培養
1)正常ヒト表皮角質細胞(NHEK)
正常ヒト表皮角質細胞(NHEK)の初代培養細胞は、Lonza社より購入した。NHEKをKeratinocyte Growth Medium-2(KGM-2、Lonza社)で培養し、実験の際には、Keratinocyte Basal Medium-2(KBM-2、Lonza社)を用いた。培養および実験のいずれも、37℃、5%CO2のインキュベータ中で行った。
2)ICRマウス由来表皮角質細胞
ICRマウス新生仔の皮膚を生後24時間以内に剥離し、37℃、5%CO2の雰囲気下、0.05%コラゲナーゼ(clostridium histolyticum由来、タイプ2、Sigma社)中で2日間インキュベートした。表皮シートを回収し、培地中に懸濁した。細胞懸濁液を6ウェルプレート(Corning Glass Works社)上に播種し、CnT−07培地(フナコシ株式会社)中でサブコンフルエントで培養した。
3)マウス胎児皮膚由来肥満細胞(FSMC)
14日齢マウス胎児の皮膚を、ハンクス平衡塩溶液(HBSS、Gibco社)中37℃で20分間トリプシン消化した。RBC lysing buffer (Sigma社)を用いて赤血球を溶解させ、洗浄後、5%ウシ胎児血清(FBS)、1%非必須アミノ酸、1%ピルビン酸ナトリウム、抗生/抗真菌剤、0.1%メルカプトエタノールを添加したcomplete RPMI培地(RPMI-1640:Gibco社)中に細胞を再懸濁させた。細胞懸濁液50mLを細胞培養フラスコに取り、組み換えマウスIL−3(Invitrogen社、20ng/mL)および組み替えマウス幹細胞因子(Biosource社、20ng/mL)を加え、培地を交換せずに37℃で培養した。非接着性細胞および軽く付着した細胞を回収した。細胞を遠心分離後、再度RPMI中に懸濁させ、40%パーコール(GE Healthcare社)上に載せ、室温で遠心分離した。細胞ペレットをFSMCとして使用した。
4)ラット褐色細胞腫由来細胞(PC12)
PC12(JCRB0733)は、HS研究資源バンクより入手した。PC12細胞を、10%FBSを添加したダルベッコ変法イーグル培地(DMEM、Sigma社)中で培養した。実験に用いる際には、フィブロネクチンでコーティングしたカバーガラス上にPC12細胞を播種し、組み換えラットβ−NGFで24時間以上処理した後に使用した。
[2]分析法
統計解析
データの解析には、対応のないt検定(unpaired-Student's-t-test)を用いた。P<0.05である場合を有意とした。
マイクロアレイ
DNAマイクロアレイ分析のために、RNeasy Mini Kit(Qiagen社)を用いてNHEKから全RNAを抽出した。DNASIS Array(日立ソフトウェアエンジニアリング株式会社)を用いて、プレートリーダより得られた画像データの解析を行った。
リアルタイム定量RT−PCR分析
PureLink RNA Mini Kit (Invitrogen社)を用いて、細胞ペレットより全RNAを抽出した。Taqman逆転写試薬(Applied Biosystems社)を用いて全RNAサンプルよりcDNAを生成した。SYBR Green Dye (PE Biosystems社)およびABI PRISM 7000配列検出システム(Applied Biosystems社)を用いて、mRNA発現量の定量を行った。プライマーの設計には、ヒトおよびマウス用のものについてはPrimer Bank、ラット用のものについてはPrimer 3をそれぞれ用いた。プライマー配列(Invitrogen社)は下記のとおりである。
ヒトβ−アクチン:GGGAAATCGTGCGTGACATT および GGAGTTGAAGGTAGTTTCGTG、
ヒトCCK2R:GGGACACGAGAATTGGAGCTG および CGGTGCCAAAGATGAATGTGC、
ヒトNK1R:CTCAGACCTCTCCCCAAACAT および CCACAATGACCGTGTAGGCAG、
マウスβ−アクチン:GGGAAATCGTGCGTGACATT および GGAGTTGAAGGTAGTTTCGTG、
マウスCCK2R:GATGGCTGCTACGTGCAACT および CGCACCACCCGCTTCTTAG、
マウスCCK1R:CACGCTGGTTATCACGGTG および GCCCATGAAGTAGGTGGTAGTC、
マウスNK1R:CTCCACCAACACTTCTGAGTC および TCACCACTGTATTGAATGCAGC、
ラットβ−アクチン:AGCCATGTACGTAGCCATCC および CTCTCAGCTGTGGTTGGTGAA、
ラットCCK2R:TCTCCCGCGAACTCTACCTA および ACACAGCAGCCATCACTGTC、
ラットNK1R:TGGGCAACGTAGTGGTGATA および CACGGCTGTCATGGAGTAGA。
リアルタイムPCRの条件は以下のとおりである。
50℃2分間、95℃10分間、次いで95℃15秒間および60℃1分間の増幅サイクルを50サイクル。
加熱および冷却工程における昇温および降温速度は、全て20℃/分であった。相対発現量はΔCt法を用いて計算した。
ウェスタンブロッティング
6ウェルプレート(Corning社)上に播種したICRマウス由来の表皮角質細胞を、SP(10−8M)で0.5〜24時間刺激し、ゴム製のポリスマンで回収後、RIPAバッファー(和光純薬株式会社、Tris-HCl [pH8.0]、150 mM塩化ナトリウム、0.5 w/v%デオキシコール酸ナトリウム、0.1 w/v%硫酸ドデシルナトリウム、および1.0 w/v% NP-40代替品)で抽出した。タンパク質サンプル20μgを8%SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法を用いて電気泳動(180mA、2時間)させ、ポリフッ化ビニリデンメンブレン上に転写した。スキムミルク溶液でブロッキング後、ウサギ由来抗マウスCCK1Rポリクローナル抗体(SC-33220;1:1000、Santa Cruz社)またはウサギ由来抗マウスCCK2Rポリクローナル抗体(SC-33221;1:1000,Santa Cruz社)とインキュベートし、西洋ワサビペルオキシダーゼを結合させた抗ウサギIgG(1:3000、Bio-Rad社)を用いて反応を検出した。ECL Plus Western Blotting Detection Reagents (GE Healthcare社)を用いて免疫ブロットを可視化した。CS Analyzer version 2.0(アトー株式会社)を用いて、吸光度分析法によりバンドを定量した。NIH/3T3全細胞溶解物(Santa Cruz社)を溶性対照として用いた。
サイトメトリックビーズアレイ
培地上清中のIL−8濃度は、ベクトン・ディッキンソン社FACSCantoフローサイトメーターおよび同社のCytometric Bead Array (CBA) Flex Set Systemを用いて定量した。
フローサイトメトリー
フィコエリスリン(PE)と結合した抗マウスFcεRI(eBionics社)およびAlexa Fluor 700と結合した抗マウスCD117(c-kit)(eBionics社)を用い、氷浴上で20分間細胞を染色し、2回洗浄後、FACSバッファー中に再度懸濁させた。ベクトン・ディッキンソン社FACSCantoフローサイトメーターおよびFlowJoソフトウェア(TreeStar社)を用いて、フローサイトメトリー分析を行った。
(1)表皮角質細胞および肥満細胞におけるCCK2Rの発現
表皮角質細胞および肥満細胞は、共にCCKによるSPに誘発される掻痒の抑制における標的である可能性を有している。表皮角質細胞が掻痒関連分子の受容体を発現していることが知られており、SP受容体はNK1R、ヒスタミン受容体はH1受容体、トリプターゼ(合成アゴニスト、SLIGRL−NH2)受容体はプロテアーゼ活性化受容体2(PAR−2)と表記される。肥満細胞がNK1Rを有していることはよく知られている。
ICRマウス由来表皮角質細胞およびマウス胎児皮膚由来肥満細胞(FSMC)についてCCK受容体(CCK1RおよびCCK2R)の発現を検討すると共に、後者についてはNK1Rの発現も検討した。ICRマウス由来表皮角質細胞およびFMSCの初代培養物を回収し、リアルタイムPCR分析により、CCK1R、CCK2RおよびNK1RをコードするmRNAの発現量を半定量的に決定した。
図1に示すように、両者の細胞においてCCK1RおよびCCK2Rの発現量は、NK1Rの発現量とほぼ同程度であった。β−アクチンの発現レベルを用いて発現レベルを規格化すると、FSMCにおける3つの受容体の発現レベル(図1b)は、表皮角質細胞(図1a、「Keratinocyte」)における発現レベルよりも高かった。
(2)正常ヒト表皮角質細胞(NHEK)におけるSPの刺激によるCCK2Rの発現
表皮角質細胞が、NK1受容体(SP)、H1受容体(ヒスタミン)、PAR2受容体(トリプターゼ、合成アゴニストSLIGRL−NH2(Ser-Leu-Ile-Gly-Arg-Leu-NH2))等の、掻痒に関連する分子の受容体を発現していることが知られている(カッコ内は、それぞれの受容体に対するアゴニストを示す。)。
DNAマイクロアレイ法を用いた正常ヒト表皮角質細胞(NHEK)の予備的分析において、高カルシウム濃度(0.6mM)下で、SP(10-6M)、ヒスタミン(10μg/mL)、またはSLIGRL−NH2(100nM)で刺激した場合における遺伝子発現レベルを検討した。
表1は、SP刺激時に発現が増強した上位20の遺伝子について、その他ヒスタミン(histamine)、SLIGRL−NH2刺激時の値と合わせて示したものである。値は、Log2(各刺激によるmRNA発現量/コントロールの発現量)を示す。正常ヒト角化細胞をサブスタンスP(10-6M)、ヒスタミン(10μg/mL)、SLIGRL−NH2(100nM)で培養し、刺激していない正常ヒト角化細胞と比較して各々のmRNAの発現比(2n)を算出した。マイクロアレイを用いてmRNAの発現レベルを解析すると、SPに刺激されたNHEKではCCK2Rが高発現し、その発現比は28.67であった。しかし、ヒスタミンおよびSLIGRLで刺激したNHEKではCCK2Rの発現レベルに変化はなかった。これらの結果から、CCK2RはSPで選択的に正に制御されることが示唆された。
Figure 2011049200
(3)ICRマウス由来表皮角質細胞におけるSPの刺激によるCCK2Rの発現
表皮角質細胞に対するSPの効果を決定するために、ICRマウス由来表皮角質細胞をSPの存在下で30分間〜24時間培養し、ウェスタンブロッティング法を用いてCCK2RおよびCCK1Rの発現レベルを分析した。CCK2Rは、抗体によって78kDaのバンドとして検出され、SPに5〜6時間暴露された表皮角質細胞において、その発現レベルが増大することが観測された(図2a参照)。一方、CCK1R(抗体によって50kDaのバンドとして検出された。)の発現レベルはSPへの暴露によっては増大しないことが観測された(図2b参照)。
(4)SPに誘発される掻破行動に対するCCKの効果
CCK外用では表皮角質細胞に影響を与えると考えられることから、まず、掻痒関連掻破行動モデル(SP(100 nmol)を皮内投与したICRマウス)にCCK2Rアゴニストを経皮投与(アセトン:オリーブ油3:1溶剤を使用して調製した液剤を塗布)した。
実験の1日または2日前に、マウスの吻側背部を剃毛した。行動記録の前に、各マウス(1回の観察につき4頭)をアクリル製ケージ(18×23×11cm)に入れ、1時間以上馴致させた。SP(100nmol生理食塩水溶液)を皮内投与すると、後肢による投与部位付近への掻破行動が誘導される。コレシストキニンペプチドの投与は、経皮投与および皮内注射の2通りの経路で行った。経皮投与を行うマウスについては、実験の前日に剃毛した背部の皮膚に対しテープストリッピング(6回)を行い、SPの注射(100nmol)の3〜4分前に、アセトン/オリーブ油(3:1)に溶解したコレシストキニンペプチド(0.5nmol)20μLを塗布した。皮内注射を行うマウスについては、コレシストキニンペプチド(0.05nmol、20μL生理食塩水溶液)をSPと当時に投与した。処置直後に、マウスを元のケージに戻し、デジタルビデオカメラを用いて40分間の行動を記録した。最初の20分間について、投与部位への後肢による掻破行動の回数を計測した。
図3に示すように、CCK8S、CCK7Sを投与した場合には、掻破行動の有意な減少が観測された。一方、C末端側から7番目の硫酸化を受けたTyrが存在しないCCK8、CCK7、CCK6を投与した場合には掻破行動の有意な減少は観測されなかった。
これらの結果から、掻破行動抑制効果を有するコレシストキニンには、C末端側から7番目の硫酸化を受けたアミノ酸(Tyr)の存在が必須であることがわかる。
さらに、CCK8Sを皮下投与した場合にも掻破行動が抑制されることを確認した。
この結果から、表皮角質細胞に加え、掻痒の発現に関与する肥満細胞等の真皮に存在する細胞がCCKの標的になってことが示唆された。
(5)肥満細胞、神経細胞(培養細胞)におけるCCK2Rの発現
肥満細胞がNK1受容体(NK1R)を発現しているという事実、およびCCK8Sの皮内投与によりSPに誘導されるICRマウスの掻破行動が抑制されるという上述の観察結果を踏まえ、表皮角質細胞に加え、肥満細胞、神経細胞におけるCCK2RおよびNK1Rの発現の有無について検討した。
表皮角質細胞、肥満細胞および神経細胞の例として、それぞれ、NHEK、FSMC(マウス胎児皮膚由来肥満細胞)、およびPC12(ラット褐色細胞腫由来細胞)を選択し、これらの培養細胞より調製したサンプルにおける各受容体の発現量をリアルタイムPCRで評価したところ、図4に示すように、いずれの細胞においてもCCK2RおよびNK1Rの両者が発現しており、FSMCおよびPC12において、NHEKよりもCCK2Rの発現レベルが高いことが確認された。
(6)表皮角質細胞におけるIL−8の産生および肥満細胞の脱顆粒にCCK2Rアゴニスト投与が及ぼす効果
上述の結果は、CCK8Sは表皮角質細胞や肥満細胞の活性を抑制することにより掻痒を抑制していることを示唆している。掻痒抑制に関連するCCK8Sの標的細胞を明らかにするため、表皮角質細胞および肥満細胞におけるCCK8S投与の効果をin vitroで評価した。
NHEKを種々の濃度のCCK8S(CCK8S濃度10-9、10-8、10-7M、Ca濃度0.15mMあるいは0.6mM)で刺激した。その結果、いずれのCa濃度においても、上清中のIL−8産生はCCK8Sの濃度に依存して減少した(図5A参照)。
β−ヘキソアミニダーゼアッセイ
FSMCをTyrode's buffer(Sigma社)で洗浄後、96ウェルプレート中に、2×104個/ウェルずつ再懸濁させた。CCK8Sの共存下または非共存下、37℃で15分間、FSMCをcompound 48/80で刺激した。プレートを5分間遠心後、上清を他の96ウェルプレートに移し、細胞ペレットを0.5%Triton X-100(Sigma社)を含むTyrode's buffer中に再懸濁させた。上清および細胞溶解物(50μL)を4mM p−ニトロフェニル−N−アセチル−β−D−ガラクトキサミニド(100μL)と共に、クエン酸バッファー(pH4.5)中37℃で90分間インキュベートした。0.4Mグリシン(pH10.7、200μL)を加えて反応を停止後、マイクロプレートリーダー(Bio-Rad社)を用いて波長405nmについて読み取りを行った(595nm参照フィルタを使用)。β−ヘキソアミニダーゼの放出活性は、上清および細胞溶解物における放出活性間の比率(百分率)として決定した。
FSMCはcompound 48/80で脱顆粒する。これにCCK8S(10-8、10-7M)を加えると、FSMCの脱顆粒の抑制が観測された(図5B参照)。この結果から、CCK8Sが肥満細胞の機能を抑制することが示唆された。
(7)接触過敏マウスモデルにおけるCCK2Rアゴニスト投与の効果
またDNFBに対する接触過敏モデル(contact hypersensitivity,CHS)マウスを用いて、CCK8Sの投与効果を検討した。
CHSの感作および惹起ならびにコレシストキニンペプチドの投与
2,4−ジニトロフルオロベンゼン(DNFB、ナカライテスク)に対するCHSの惹起のために、剃毛した腹部に0.5%DNFB(アセトン/オリーブ油3:1で希釈。25μL)を塗布することにより、ICRマウスを2日間連続(第0日および第1日)で感作した。5日後、両耳の両則に、刺激をもたらさない濃度(0.2%)のDNFBを塗布した。チャレンジの前に、アセトン/オリーブ油(3:1)で希釈したCCK8S(各耳に対し0.5nmolずつ)またはアセトン/オリーブ油(3:1)を塗布した。チャレンジ前およびチャレンジから24時間後に、厚さゲージを用いて耳翼の厚さを測定した。チャレンジ前後の耳翼の厚さの差より、耳翼の腫脹を求めた。
CHSモデルでは、ハプテンであるDNFB(2,4−ジニトロフルオロベンゼン)で感作し、5日目にDNFBで接触過敏反応を惹起すると耳翼が腫脹する。この惹起直前にCCK8Sを外用すると、図5Cに示すように耳翼腫脹が抑制された。
CHS惹起相には、皮膚を構成する細胞である表皮角質細胞、樹状細胞、肥満細胞等が関与しており、CCK8Sがこれを抑制することを示唆された。これらの結果から、CCK8Sは表皮角質細胞、肥満細胞に影響し、CHSを抑制すると予測される。CCK8Sはかゆみ関連の反応を直接抑制するに加え、表皮角質細胞のサイトカイン・ケモカイン産生、免疫反応もCCK8Sに抑制されうると考えられた。
(8)CCK8Sによる細胞内Caの変化
CCK8Sの経皮投与および皮内投与では、掻破行動の抑制について速効性が認められることから、CCK8Sが表皮角質細胞や肥満細胞だけでなく、末梢神経に直接影響している可能性も考えられる。そこで、CCK8Sが肥満細胞あるいは神経細胞に作用するかどうか知るため、共焦点レーザー顕微鏡を用いて細胞内Caの変化を検討した。
共焦点イメージング
Zeiss LSM5 pascal(Carl Zeiss社)を用いて、蛍光染色した細胞の共焦点イメージングを行った。Fluo-4-AM(Invitrogen社)(1μM)を37℃で20分間染色し、2回洗浄後少なくとも40分間静置した。肥満細胞は、Alexa Fluor 700と結合した抗マウスCD117(c-kit)(eBionics社)を用いて染色した。LSM5高速共焦点レーザー顕微鏡を用い、細胞内Ca濃度(励起波長488nm、発光波長>505nm)およびCD117の発現量(励起波長633nm、発光波長>650nm)の同時測定を行った。共焦点イメージ(512×512ピクセル)の記録は室温で行った。SP、コレシストキニンペプチド等による刺激は、これらの物質を含む溶液(10μL)を直接培養液中に滴下することにより行った。画像データの解析は、Zeiss LSM510解析ソフトウェア(LSM Image Examiner)を用いて行った。
図6に示すように、CCK8SをFSMCに投与すると、投与1分以内に一過性の細胞内Caの上昇がみられ、これは全体の45%であった。一方で、PC12細胞ではCCK8Sへの反応が観測されなかった。これらの結果より、CCK8Sは肥満細胞のシグナリングに影響すると考えられる。
本発明は、アトピー性皮膚炎等の掻痒を伴う皮膚疾患の治療薬として利用できる。

Claims (5)

  1. コレシストキニン2受容体(CCK2R)アゴニストを有効成分として含有することを特徴とする掻痒抑制剤。
  2. 前記コレシストキニン2受容体アゴニストが、
    (1)下記の配列番号1で表されるアミノ酸配列を有するペプチドのC末端側から7個以上の部分アミノ酸配列と相同なアミノ酸配列を有するペプチド、および
    Val-Ser-Gln-Arg-Thr-Asp-Gly-Glu-Ser-Arg-Ala-His-Leu-Gly-Ala-Leu-Leu-Ala-Arg-Tyr-Ile-Gln-Gln-Ala-Arg-Lys-Ala-Pro-Ser-Gly-Arg-Met-Ser-Ile-Val-Lys-Asn-Leu-Gln-Asn-Leu-Asp-Pro-Ser-His-Arg-Ile-Ser-Asp-Arg-Asp-Tyr(SO3H)-Met-Gly-Trp-Met-Asp-Phe-NH2 [配列番号1]
    (なお、配列番号1で表されるアミノ酸配列において、Tyr(SO3H)はO−硫酸化チロシンまたはその塩を表す。)
    (2)上記(1)のアミノ酸配列において、1もしくは複数のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつCCK2Rアゴニスト活性を有するペプチドからなる群より選択される1または複数であることを特徴とする請求項1記載の掻痒抑制剤。
  3. 前記コレシストキニン2受容体アゴニストが、下記の配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるペプチドおよび/または下記の配列番号3で表されるアミノ酸配列からなるペプチドであることを特徴とする請求項2記載の掻痒抑制剤。
    Asp-Tyr(SO3H)-Met-Gly-Trp-Met-Asp-Phe-NH2 [配列番号2]
    Tyr(SO3H)-Met-Gly-Trp-Met-Asp-Phe-NH2 [配列番号3]
  4. 肥満細胞の脱顆粒を抑制することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の掻痒抑制剤。
  5. 注射剤、軟膏剤、クリーム剤、外用液剤、スプレー剤、貼付剤およびゲル剤のいずれかである請求項1から4のいずれか1項記載の掻痒抑制剤。
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