以下、本発明を適用してなる超音波診断装置、弾性画像の保存/再生方法、及び弾性画像の保存/再生プログラムの実施形態を説明する。なお、以下の説明では、同一機能部品については同一符号を付して重複説明を省略する。
図1は、本実施形態の超音波診断装置の全体構成を示す図である。図1に示すように、超音波診断装置100は、被検体10に当接させて用いる超音波探触子12と、超音波探触子12を介して被検体10に時間間隔をおいて超音波を繰り返し送信する送信部14と、被検体10から発生する時系列の反射エコー信号を受信する受信部16と、送信部14と受信部16を制御する超音波送受信制御部17と、受信された反射エコーを整相加算してRF信号フレームデータを時系列に生成する整相加算部18と、整相加算部18で整相加算されたRF信号フレームデータに対して各種信号処理を行ない濃淡断層像例えば白黒断層像を生成する断層画像構成部20と、断層画像構成部20の出力信号を画像表示器26の表示に合うように変換する白黒スキャンコンバータ22が備えられている。
また、超音波診断装置100は、整相加算部18から出力されるRF信号フレームデータについて、取得時刻の異なる一対のRF信号フレームデータを選択するRF信号フレームデータ選択部28と、一対のRF信号フレームデータに基づいて被検体10の生体組織に生じた変位を計測し変位フレームデータを生成する変位計測部30と、変位計測部30で計測された変位フレームデータに基づいて連続的な圧迫過程における被検体の生体組織の硬さ又は軟らかさを表す弾性情報(歪み又は弾性率)を求めて弾性フレームデータを生成する弾性情報演算部32と、弾性情報演算部32で演算した歪み又は弾性率から弾性画像を構成する弾性画像構成部34と、弾性画像構成部34の出力信号を画像表示器26の表示に合うように変換するカラースキャンコンバータ36が備えられている。
また、超音波診断装置100は、超音波探触子12の超音波送受信面の圧力を計測する圧力センサなどの圧力計測部46と、弾性画像構成部34で生成された弾性画像が格納される超音波診断装置内に設けられたシネメモリ48と、弾性画像構成部34で生成された弾性画像が格納されるVCR又はDVDなどの記録媒体50と、変位計測部30で生成された変位フレームデータ、弾性情報演算部32で生成された弾性フレームデータ、及び圧力計測部46で計測された圧力の少なくともいずれかに基づいて、被検体10に対する圧迫状態が適正か否かを評価する本実施形態の特徴構成となる圧迫評価部52が備えられている。圧迫評価部52の詳細については後述する。なお本明細書では、シネメモリ48とVCR又はDVDなどの記録媒体50とを総称してメモリという。したがって、本明細書において単にメモリという場合はシネメモリ48及びVCR又はDVDなどの記録媒体50の両方或いはいずれか一方を指すものとする。
また、上記の各構成要素を制御する例えばCPU(Central Processing Unit)からなる制御部54と、制御部54に例えば弾性画像の色合いやROI(Region Of Interest:関心領域)やフレームレート等を制御する指示を与えるマウス、キーボード、タッチパネル、或いはトラックボールなどのインターフェース部56が備えられている。
超音波探触子12は、複数の振動子を配設して形成されており、電子的にビーム走査を行って被検体10に振動子を介して超音波を送受信する機能を有している。送信部14は、超音波探触子12を駆動して超音波を発生させるための送波パルスを生成するとともに、送信される超音波の収束点をある深さに設定する機能を有している。また、受信部16は、超音波探触子12で受信した反射エコー信号について所定のゲインで増幅してRF信号すなわち受波信号を生成するものである。整相加算部18は、受信部16で増幅されたRF信号を入力して位相制御し、複数の収束点に対し収束した超音波ビームを形成してRF信号フレームデータを生成するものである。
断層画像構成部20は、整相加算部18からのRF信号フレームデータに基づいて被検体の濃淡断層画像、例えば白黒断層画像を構成する。白黒スキャンコンバータ22は、フレームメモリに格納された被検体10内の断層フレームデータを1画像として取得し、取得された断像フレームデータをテレビ同期で読み出すためのものである。
白黒スキャンコンバータ22は、運動組織を含む被検体10内のRF信号フレームデータを超音波周期で取得し、そのフレームデータを画像に変換して表示するためのものである。
切替加算部24は、フレームメモリと、画像処理部と、画像選択部とを備えて構成されている。ここで、フレームメモリは、白黒スキャンコンバータ22からの断層画像とカラースキャンコンバータ36からの弾性画像とを格納するものである。また、画像処理部は、フレームメモリに確保された断層画像と弾性画像を制御部54の指令に応じて設定割合で加算して合成するものである。合成画像の各画素の輝度情報及び色相情報は、白黒断層画像とカラー弾性画像の各情報を設定割合で加算したものとなる。さらに、画像選択部は、フレームメモリ内の断層画像と弾性画像及び画像処理部の合成画像のうちから画像表示器26に表示する画像を制御部54の指令に応じて選択するものである。なお、断層画像と弾性画像とを合成せずに別々に表示させてもよい。
RF信号フレームデータ選択部28は、フレームメモリと、選択部とを含んで構成されている。そのRF信号フレームデータ選択部28は、整相加算部18からの複数のRF信号フレームデータをフレームメモリに格納し、格納されたRF信号フレームデータ群から選択部により1組すなわち2つのRF信号フレームデータを選び出すものである。例えば、RF信号フレームデータ選択部28は、整相加算部18から時系列すなわち画像のフレームレートに基づいて生成されるRF信号データをフレームメモリ内に順次確保し、制御部54からの指令に応じて現在確保されたRF信号フレームデータ(N)を第1のデータとして選択部で選択すると同時に、時間的に過去に確保されたRF信号フレームデータ群(N-1、N-2、N-3・・・N-M)の中から1つのRF信号フレームデータ(X)を選択するものである。なお、ここでN、M、XはRF信号フレームデータに付されたインデックス番号であり、自然数とする。
変位計測部30は、1組のRF信号フレームデータから生体組織の変位などを求めるものである。例えば、変位計測部30は、RF信号フレームデータ選択部28により選択された1組のデータすなわちRF信号フレームデータ(N)及びRF信号フレームデータ(X)から1次元或いは2次元相関処理を行って、断層像の各点に対応する生体組織おける変位や移動ベクトルすなわち変位の方向と大きさに関する1次元又は2次元変位分布を求める。ここで、移動ベクトルの検出にはブロックマッチング法を用いる。ブロックマッチング法とは、画像を例えばN×N画素からなるブロックに分け、関心領域内のブロックに着目し、着目しているブロックに最も近似しているブロックを前のフレームから探し、これを参照して予測符号化すなわち差分により標本値を決定する処理を行うものである。
弾性情報演算部32は、変位計測部30で計測された変位フレームデータに基づいて連続的な圧迫過程における被検体の生体組織の硬さ又は軟らかさを表す弾性情報(歪み又は弾性率)を求めて弾性フレームデータを生成する。このとき、歪みのデータは、生体組織の移動量例えば変位を空間微分することによって算出される。また、弾性率のデータは、圧力の変化を移動量の変化で除することによって計算される。例えば、変位計測部30により計測された変位をΔL、圧力計測部46により計測された圧力をΔPとすると、歪み(S)は、ΔLを空間微分することによって算出することができるから、S=ΔL/ΔXという式を用いて求められる。また、弾性率データのヤング率mは、m=(ΔP)/(ΔL/L)という式によって算出される。このヤング率mから断層像の各点に相当する生体組織の弾性率が求められるので、2次元の弾性画像データを連続的に得ることができる。なお、ヤング率とは、物体に加えられた単純引張り応力と、引張りに平行に生じるひずみに対する比である。
弾性画像構成部34は、フレームメモリと画像処理部とを含んで構成されており、弾性情報演算部32から時系列に出力される弾性フレームデータをフレームメモリに確保し、確保されたフレームデータを画像処理部により画像処理を行うものである。
カラースキャンコンバータ36は、弾性画像構成部34からの弾性画像のデータに基づいて色相情報に変換するものである。つまり、弾性画像のデータに基づいて光の3原色すなわち赤(R)、緑(G)、青(B)に変換するものである。例えば、歪みが大きい弾性画像のデータを赤色コードに変換すると同時に、歪みが小さい弾性画像のデータを青色コードに変換する。なお、赤(R)緑(G)青(B)の階調は256段階有し、255は最大輝度で表示すること、逆に0は全く表示されないことを意味する。
このように構成される超音波診断装置100の動作について説明する。超音波診断装置100は、被検体10に当接させた超音波探触子12を介して被検体10に時間間隔をおいて送信部14により超音波を繰り返し送信し、被検体10から発生する時系列の反射エコー信号が受信部16により受信されて整相加算されてRF信号フレームデータが生成される。そのRF信号フレームデータに基づいて断層画像構成部20により濃淡断層像例えば白黒Bモード像が得られる。このとき、超音波探触子12を一定方向走査すると、一枚の断層像が得られる。一方、整相加算部18により整相加算されたRF信号フレームデータに基づいて弾性画像構成部34により弾性画像が得られる。そして、得られた白黒断層像とカラー弾性画像を切替加算部24により加算して合成画像を作成する。
ところで、このような弾性画像を生成可能な超音波診断装置100では、シネメモリ48に断層画像と弾性画像とが自動的に時系列に格納保存されたり、或いはVCR又はDVDなどの外部の記録媒体50に断層画像と弾性画像とを時系列に格納保存したりすることができる。そして、例えばシネメモリ48に格納保存された断層画像と弾性画像とを超音波診断装置で再生したり、記録媒体50に格納保存された断層画像と弾性画像とをPCなどで再生したりしながら診断することができる。
ここで、図2は従来の超音波診断装置における弾性画像のメモリへの保存状態を示す概念図である。図2(A)は超音波診断装置100にて生成されたリアルタイムの弾性画像の概念を示しており、図2(B)はメモリに格納された弾性画像の概念を示す図である。図2(A)に示すように、例えば2フレーム目,5フレーム目は圧迫状態が適切でなかったことに起因して診断に有効でない弾性画像が生成されているとする。
すなわち、診断に有効な弾性画像を得るためには、例えば超音波探触子12の超音波送受信面で適切に被検体を圧迫して断層部位の組織に適切な変位を与える必要がある。ところが、被検体10に対する圧迫の大きさ、圧迫速度が適切でない、被検体10の体表面に対して超音波探触子12がビームライン方向に傾いた状態(偏押し状態)で圧迫が行なわれている、或いは圧迫動作自体が行なわれていないなどの要因により診断に有効でない弾性画像が生成される場合がある。従来の超音波診断装置では、図2(B)に示すように、生成された弾性画像が全てメモリに格納保存されるため、その中には診断に有効でない弾性画像も含まれている。
その結果、検者が再生された弾性画像を見ながら行なう診断の効率が悪化したり、診断に有効でない弾性画像が連続する場合には、検者が手動でコマ送り或いはスキップなどをして診断に有効な弾性画像を選択する必要が生じたりするなど、検者の使い勝手を考えると好ましくない。
そこで、本実施形態の超音波診断装置は圧迫評価部52を設けている。図3は圧迫評価部52の処理内容の概念を示す図である。図3(A)は超音波診断装置100にて生成されたリアルタイムの弾性画像の概念を示しており、図3(B)はメモリに格納された弾性画像の概念を示す図である。図2の場合と同様に、例えば2フレーム目,5フレーム目は圧迫状態が適切でなかったことに起因して診断に有効でない弾性画像が生成されているとする。
まず、圧迫評価部52は、被検体10の断層部位の組織の変位フレームデータ、弾性フレームデータ、及び圧力計測部46により計測された圧力の少なくともいずれか1つに基づいて、被検体10に対する圧迫状態が適切か否かを評価する。具体的な評価手法については後に詳細に述べる。そして、図3(B)に示すように、適切な圧迫状態における弾性画像つまり図3(A)における1,3,4,6フレーム目の弾性画像を選択的に、メモリにおける1-4フレーム目の弾性画像として格納する。
これによれば、被検体10に対して適切な圧迫がなされている状態で生成された弾性画像が選択的にメモリに格納されるので、検者がメモリに格納された弾性画像を再生して診断を行う際には、診断に適した弾性画像が選択的に再生される。したがって、診断に適さない弾性画像が連続している場合にコマ送りしたりスキップしたりする手間が必要ないので、検者にとって使い勝手がよく、かつ診断効率を向上させて診断時間の短縮を図ることができる。
以下、圧迫評価部52の具体的な評価手法について各実施例を用いて説明する。なお以下の説明では、適切な圧迫状態における弾性画像を選択的にメモリに格納する場合を例に説明するが、一旦メモリに格納された弾性画像を再生する際に適切な圧迫状態における弾性画像を選択的に読み出して再生するよう構成することもできる。この場合も同様に、検者にとって使い勝手がよく、かつ診断効率を向上させて診断時間の短縮を図ることができる。
また、圧迫評価部52が適切な圧迫状態における弾性画像を選択的にメモリに格納或いはメモリから読み出して再生する場合、断層画像についても同様に、適切な圧迫状態における弾性画像に対応するフレームの断層画像をメモリに格納或いはメモリから読み出して再生することもできる。本明細書において、圧迫評価部52が適切な圧迫状態における弾性画像を選択的にメモリに格納或いはメモリから読み出して再生するという場合には、適切な圧迫状態における弾性画像に対応するフレームの断層画像も併せてメモリに格納或いはメモリから読み出して再生することも含むものとする。以下の説明では適切な圧迫状態における断層画像及び弾性画像を選択的にメモリに格納保存する場合を例に挙げて説明する。
第1実施例は、変位フレームデータの複数計測点の変位の分散又は偏差及び弾性フレームデータの複数計測点の弾性情報の分散又は偏差の少なくとも一方が、あらかじめ設定された閾値より小さい場合に、圧迫状態が適切であると評価するものである。すなわち、一般に診断に有効な弾性画像を得るためには、微細な圧迫操作が必要であり、過大な圧迫を行うと診断には適さない弾性画像が構成される。そこで本実施例は不適切な弾性画像を変位の乱れから推測するために、各フレームにおける変位、歪み或いは弾性率などの統計的特徴を用いて圧迫状態が適切か否かを判断し、適切な圧迫状態における断層画像及び弾性画像を選択的に保存、再生する。
例えば、変位計測部30により出力される、ある変位フレームデータのピクセル(i,j)(0≦i≦M,0≦j≦N)における変位量をl(i,j)とする。すると変位フレームデータの変位の分散ukは下記の数1式で表される。
l(i,j)aveは、l(i,j)をフレーム全域にわたって平均したものである。微細な圧迫を繰り返した場合、変位の変化は小さくなり、その分散は小さくなる。逆に、過大な圧迫をした場合は変位の変化が大きくなり、分散が大きくなる。そこで、あらかじめ設定された閾値をuthとすると、圧迫評価部52は、uk<uthとなったときのみ断層画像及び弾性画像をシネメモリ48やVCR又はDVDの記録媒体50に保存する。uthは例えば診断部位に応じてインターフェース部56を介して検者が最適な値を設定することができる。
上記では、フレーム全体にわたって分散を求めたが、例えばピクセル(i,j)に隣接する8点の変位の分散をuk(i,j)として求め、フレーム全域にわたってuk(i,j)を平均化したukaveがuthよりも小さくなったときのみ弾性画像を保存することもできる。またuk(i,j)<uthとなるピクセル数がある割合以上になった場合のみ断層画像及び弾性画像を保存することもできる。
また上記では変位を圧迫評価の基準パラメータとして用いたが、弾性情報演算部32から出力される弾性フレームデータの歪み或いは弾性率を基準パラメータとして用いてもよいし、それら複数を組み合わせてもよい。なぜなら、歪み或いは弾性率は変位を用いて計算され、弾性フレームデータは変位フレームデータの局所的な離散生を反映しているからである。また統計的特徴として分散だけでなく、平均値、偏差などを用いてもよい。
次に第2の実施例について説明する。本実施例の圧迫評価部は、変位フレームデータの複数計測点の変位の平均値及び弾性フレームデータの複数計測点の弾性情報の平均値の少なくとも一方の絶対値が、あらかじめ設定された閾値より大きい場合に、圧迫状態が適切であると評価するものである。
すなわち、図4は弾性画像を取得するときの検者の手技と圧迫量の関係を表す図である。図4のように、超音波診断装置を用いて弾性画像を撮像する場合、検者は超音波探触子12を用いて被検体10を圧迫し、それを繰り返すことで弾性画像を得ることができる。そのため、変位計測部30で得られる変位や弾性情報演算部32で得られる歪みのフレーム毎の平均を圧迫量とすると、圧迫量の時間的変化は図4のグラフ(以下、圧迫グラフ60という。)のようになる。図4のように、超音波探触子12を被検体10に押し付けるとき又は引くとき、つまり圧迫速度が速いとき、変位や歪みが正の方向と負の方向に大きくなり(圧迫量の絶対値が大きくなり)、逆に超音波探触子12を止めたとき、つまり圧迫速度が0になったとき、圧迫量も0となる。
そこで本実施例では図5で説明する手法を用いて圧迫状態の評価を行うものである。図5は圧迫評価部52の処理内容を示す概念図である。弾性画像は変位や歪みにより構成されるので、変位や歪みの大きさを圧迫量として測定し、圧迫量により圧迫状態が適切か否かを評価することが可能となる。そこで図5のように圧迫量の絶対値が、あらかじめ設定された閾値より大きい場合の一例として、圧迫グラフの最大値、又は最小値をとる時間を圧迫評価部52で検出することにより、その時間の断層画像及び弾性画像を選択的にシネメモリ48やVCR又はDVDの記録媒体50に保存する。
図6は圧迫評価部52の処理内容の一例を示す図である。例えば図6(A)(B)のように、ある時間tnにおける圧迫量pnが得られたとする。pn×p(n-1)≦0のとき、圧迫グラフでは0と交差する点を表す。pn×p(n-1)≦0となるtnと次にpm×p(m-1)≦0(m>n)となるtmの間で最大値かつ0以上の値をとる圧迫量をpmaxとし、最小値かつ0以下の値をとる圧迫量をpminとする。pmaxのときの時間をtmax,pminのときの時間をtminとする。圧迫評価部52は時系列に上記の計算を繰り返し行い、tmax,tmin時の断層画像及び弾性画像を選択的にシネメモリ48やVCR又はDVDの記録媒体50に記憶する。
なお、tmin,tmaxのいずれにおける画像をシネメモリ48に保存するかはキーボードなどの入力インターフェースを介した外部制御により検者が任意に選択できる。このように、周期的な圧迫量の時間的変化の中で圧迫量が最大値或いは最小値となったときの断層画像及び弾性画像を選択的にシネメモリ48やVCR又はDVDの記録媒体50に保存することができる。また、tmax,tmin時の断層画像及び弾性画像を選択的に記録するのではなく、圧迫量の絶対値が、あらかじめ設定された閾値より大きい時の断層画像及び弾性画像を選択的に記録することもできる。
また上記では、圧迫量をもとに評価を行ったが、圧力計測部46で得られた圧力データの時間的変化を用いてもよい。すなわち、圧力計測部46で得られた圧力の変化率の絶対値が、あらかじめ設定された閾値より大きい場合に、圧迫状態が適切であると評価することができる。図7は圧力データの時間的変化を表したグラフ(以下、圧力グラフ62という。)である。圧力データの平均値を基準とすると、図のように、超音波探触子12を押し付けるとき、つまり圧迫速度が速いとき、圧力グラフ62は平均線と交差する。そこで周期的な時間変化の中で圧力が、圧力の平均と等しくなったときのみ、断層画像及び弾性画像を選択的にシネメモリ48やVCR又はDVDの記録媒体50に保存してもよい。また、圧力が、圧力の平均を基準に上下方向にあらかじめ設定された閾値に挟まれる範囲内である時の断層画像及び弾性画像を、選択的にシネメモリ48やVCR又はDVDの記録媒体50に保存することもできる。
次に本発明の第3の実施例について説明する。本実施例は、超音波探触子12の超音波送受信面の少なくともビームライン方向の両端部を含む複数箇所の圧力の分散又は偏差が、あらかじめ設定された閾値より小さい場合に、圧迫状態が適切であると評価するものである。
すなわち、前述のように弾性画像を得るためには超音波探触子12で被検体10を圧迫することが必要となるが、均一な圧迫を行わなければ有益な弾性画像は得られない。図8(A)は超音波探触子12で均一な圧迫が行なわれている状態を示す模式図である。この場合、超音波探触子12の超音波送受信面のビームライン方向の両端部の圧力差は小さくなる。
一方、図8(B)は超音波探触子12がビームライン方向に傾いた状態(横ぶれ状態)で圧迫が行なわれている状態を示す模式図である。この場合、超音波探触子12の超音波送受信面のビームライン方向の両端部の圧力差が大きくなるので、横ぶれ状態を検出することができる。そこで圧迫評価部は、図8(C)に示すように、超音波探触子12と被検体10間の圧力分布によって均一な圧迫を検出し、均一な圧迫であった場合のみ、シネメモリ48やVCR又はDVDの記録媒体50に保存する。
より具体的には、超音波探触子12の被検体への接触面に設けられた数箇所の圧力センサで計測した圧力は圧力計測部46で演算される。各箇所で得られた圧力をp(x,y)とする。(0≦x≦X,0≦y≦)x,yは超音波探触子12と被検体10の接触表面の座標を表す。すると接触表面における圧力の平均値pmと分散値pv(pressure variance)は下記の数2式,数3式で得られる。
分散値と偏差が大きい場合、箇所によって圧力の大きさに偏りが生じているものと考えられる。一方分散値と偏差が小さい場合、箇所による圧力の大きさの偏りは小さなものと考えられる。よって、あらかじめ設定された閾値となる分散値をvth、標準偏差をσthとすると、圧迫評価部52はpv<vth、又はpσ<σthのときの断層画像及び弾性画像を選択的にシネメモリ48やVCR又はDVDの記録媒体50に記憶する。なお、超音波探触子接触面の圧力分布を定量的に評価可能な統計値ならば、分散値、偏差以外の値を用いてもよい。
また上記では圧力計測部46から得られる圧力によって圧力の偏りを検出しているが、超音波探触子12が傾いて押し付けられていることを検出できる要素であれば、圧力以外の要素を用いてもよい。例えば、超音波探触子12を傾けて被検体10に押し付けた場合、図9(A)に示すように被検体10の表在における変位は不均一なものになる。そのため、例えば図9(B)のように、被検体10の表在において深度方向に3つに分割された各領域(1)〜(3)において、ビームラインd0-dnごとに変位計測部30から得られる変位を平均化する。そして、図9(C)に示すように、変位平均の勾配の大きさがあらかじめ設定された閾値より小さい場合に、圧迫が適切であると判断することができる。変位平均の勾配の大きさの代わりに、変位平均の分散或いは偏差をビームラインの方向にとり、分散或いは偏差がある既定の値より小さくなったときのみ弾性画像の保存、再生を行うとしてもよい。
次に第4の実施例について説明する。本実施例は、超音波探触子12の超音波送受信面の圧力の経時変化を表すグラフ、断層部位の組織の変位の経時変化を表すグラフ、及び断層部位の組織の弾性情報の経時変化を表すグラフの少なくともいずれか1つと、それぞれに対してあらかじめ設定された最適圧力グラフ、最適変位グラフ、最適弾性情報グラフとの相関を演算し、相関があらかじめ設定された閾値より大きい場合に、圧迫状態が適切であると評価するものである。
すなわち、有益な弾性画像を得るためには最適な圧迫の繰り返しを行う必要があり、図4の圧迫グラフ60はその指針ともなりうる。そこで図10のようにあらかじめ採取した診断に最適な圧迫操作を行ったときの圧迫グラフ(以下最適圧迫グラフ64という。)と、実際の操作における圧迫グラフ60との相関をとり、相関の大きい部分のみシネメモリ48等に保存する。この手法により、最適な圧迫操作に近い弾性画像を選択的にシネメモリ48やVCR又はDVDの記録媒体50に保存することができる。
より具体的には、前述のように、図11に示すように圧迫グラフがp=0と交差する点ではp(tn)×p(tn-1)≦0となる。この点をN点とし、N点の次に交差する点をM、M点の次に交差する点をL点とする。このとき、N-L間が圧迫グラフの一周期となる。そこでNからLまでの圧迫量データを母集団P(t)とし、あらかじめ設定された最適圧迫グラフの一周期分の圧迫量データを母集団Po(t)とする。
P(t)とPo(t)との相関Coとすると、以下の数5式で計算される。
なおPave,P0aveはL-Nの区間でP(t)、Po(t)を平均化したものである。このCoが予め定められた基準値Cstdよりも高いときのみ圧迫評価部52は断層画像及び弾性画像をシネメモリ48やVCR又はDVDの記録媒体50に保存する。また、超音波探触子12の超音波送受信面の圧力の経時変化を表す圧力グラフ62と、あらかじめ設定された最適圧力グラフとの相関を演算し、相関があらかじめ設定された閾値より大きい場合のみ、断層画像及び弾性画像をシネメモリ48やVCR又はDVDの記録媒体50に保存することもできる。
次に本発明の第5実施例について説明する。本実施例は、変位フレームデータ及び弾性フレームデータのいずれか一方の時系列に隣り合った1対のフレーム間の相関を求め、相関があらかじめ設定された閾値より大きい場合に、圧迫状態が適切であると評価するものである。すなわち、例えば図12に示すように時系列に隣り合った1対の弾性フレームデータの各要素の相関を求め、相関の高い1対の断層画像及び弾性画像をシネメモリ48やVCR又はDVDの記録媒体50に保存するものである。
より具体的には、図13に示すように弾性情報演算部32から出力された弾性フレームデータのうち、時間tkに出力された弾性フレームデータをFrk、その弾性フレームデータの各要素をEk(i,j)とする(0≦i≦N,0≦j≦M)。圧迫評価部52は、全ての要素データにおいて、Ek(i,j)とEk-1(i,j)の相関Ckを下記の数6式を用いて演算する。
なお、Ekaveは弾性フレームデータFrk全体において各要素データEk(i,j)を平均化したものである。このCkが予め定めた基準値Cstdよりも高い場合のみ、FrkとFrk-1をシネメモリ48等に保存する。また、変位フレームデータの時系列に隣り合った1対のフレーム間の相関を求め、相関があらかじめ設定された閾値より大きい場合のみ、断層画像及び弾性画像をシネメモリ48やVCR又はDVDの記録媒体50に保存することもできる。
また上記では隣りあった1対の弾性フレームデータの相関を求めたが、あらかじめシネメモリ48やVCR又はDVDの記録媒体50に保存された弾性フレームデータから最適と思われるフレームを検者が選択し、その選択した弾性フレームデータとリアルタイムで取得された弾性フレームデータの相関を求め画像価値を評価してもよい。
また例えば、図14に示すように、フリーズオン、又はオフ後、或いは撮像開始直後の弾性フレームデータを基準の弾性フレームデータとし、この基準の弾性フレームデータとリアルタイムで取得された弾性フレームデータの相関を求め、相関があらかじめ設定された閾値より大きい場合のみ、断層画像及び弾性画像をシネメモリ48やVCR又はDVDの記録媒体50に保存することもできる。
次に第6実施例を説明する。本実施例は、所定の時間区間に属する複数の変位フレームデータの対応する複数計測点の変位、及び所定の時間区間に属する複数の弾性フレームデータの対応する複数計測点の弾性情報の少なくとも一方を平均化して平均変位フレームデータ或いは平均弾性フレームデータを求め、平均変位フレームデータ或いは平均弾性フレームデータと所定の時間区間に属する複数の変位フレームデータ或いは複数の弾性フレームデータとの相関をそれぞれ求め、相関があらかじめ設定された閾値より大きい場合に、圧迫状態が適切であると評価するものである。
すなわち、例えば図15に示すように、ある指定された時間区間に属する弾性フレームデータの各要素を平均化し、それらを要素とする平均弾性フレームデータ66を生成する。そして平均弾性フレームデータ66と各弾性フレームデータの各要素の相関を求め、相関の高い弾性フレームデータとこれに対応する断層フレームデータに基づく断層画像及び弾性画像を選択的にシネメモリ48やVCR又はDVDの記録媒体50に保存することもできる。
より具体的には、まず図16のようにある時間区間、例えば10とすると圧迫評価部52は下記の演算を行い、Em(i,j) (0≦i≦N,0≦j≦M)を要素とする平均弾性フレームデータFraveを作成する。
そして、Em(i,j)とEl(i,j)との相関Clを下記の数8式で演算する。
なお、Elaveは弾性フレームデータFrl全体において各要素データEl(i,j)を平均化したものである。同様に、Emaveは弾性フレームデータFrave全体において各要素データEm(i,j)を平均化したものである。その相関が既定の基準値Cstdより高い場合のみ断層画像及び弾性画像をシネメモリ48やVCR又はDVDの記録媒体50に保存する。なお、ある時間区間と相関の既定の基準値Cstdはキーボードなどの外部制御から検者が任意に選択できる。
次に第7実施例について説明する。本実施例は、超音波探触子12の超音波送受信面の圧力があらかじめ設定された閾値より小さい状態が所定時間以上連続した場合に、圧迫状態が不適切であると評価するものである。また、変位フレームデータの複数計測点の変位の平均値及び弾性フレームデータの複数計測点の弾性情報の平均値の少なくとも一方が、あらかじめ設定された閾値より小さい状態が所定時間以上連続した場合に、圧迫状態が不適切であると評価するものである。
すなわち、実際の超音波診断の検査過程において、診断が終了後も超音波撮像を続けたまま他の業務に移り、診断画像と診断に無益な画像がシネメモリ48等に保存される場合がある。そこで本実施例は、図17に示すように、変位計測部30から出力される変位、弾性情報演算部32から出力される弾性率、歪み、圧力計測部46から出力される圧力などをもとに、圧迫評価部52が弾性画像診断を行っていない時間を検出し、弾性画像診断を行っていない間は自動的にシネメモリ48等への保存を行わないようにするものである。
より具体的には、通常診断を行っていない場合、超音波探触子12は被検体10に接触させず、フォルダーに固定されている。そのため、探触子表面圧力は0に等しく、変動もない。よって例えば、診断を行っていない時間を検出する方法として、圧力計測部46から得られる圧力が0に等しく、かつ所定期間の間変化がない場合、圧迫評価部52は圧迫判定フラグを0にし、その所定期間における断層画像及び弾性画像をシネメモリ48やVCR又はDVDの記録媒体50に保存しないようにする。
また、診断を行っていない時間を検出する方法として、弾性率がフレーム内全要素にわたって0であることや歪みがフレーム内全要素で0であること、変位がフレーム内全要素で0であることを利用してもよい。
次に第8実施例について説明する。本実施例は、上述の各手法を用いて圧迫状態が適切か否かを評価するとともに、所定の時間区間に属する弾性画像に対する適切な圧迫状態における弾性画像の割合が、あらかじめ設定された閾値より大きい場合にのみ、この適切な圧迫状態における弾性画像を選択的にメモリに格納するか、或いは一旦メモリに格納された弾性画像を再生する際に適切な圧迫状態における弾性画像を選択的に読み出して再生するものである。
すなわち、これまでに説明した方法で圧迫状態が適切か否かを判断し、シネメモリ48等に保存したとき、図18に示すように、圧迫状態が適切でないフレームが連続したとき、シネメモリ48等に保存された弾性画像68と弾性画像70との間の連続性が欠け、再生時に不自然な画像になる場合がある。そこで本実施例では、図19に示すように、圧迫状態が適切であるフレームを数え、例えば5フレーム以上圧迫状態が適切であるフレームが連続した場合のみ、断層画像及び弾性画像を保存、再生する。また連続性の判断として、例えば、10フレームごとに圧迫状態が適切であるフレーム数の割合を調べ、例えばその割合が8割以上ならば圧迫状態が適切な断層画像及び弾性画像を保存、再生することもできる。
なお上述の実施形態は、主に超音波診断装置、及び弾性画像の保存/再生方法について説明したものであるが、本発明はこれには限定されない。例えば超音波診断装置やPCなどのコンピュータにインストールして実行可能な弾性画像の保存/再生プログラムとすることができる。弾性画像の保存/再生プログラムは、あらかじめ超音波探触子で計測された反射エコー信号に基づく取得時刻の異なる一対のRF信号フレームデータに基づいて生成された断層部位の組織の変位フレームデータ、変位フレームデータに基づいて生成された断層部位の組織の硬さ又は軟らかさを表す弾性フレームデータ、及び超音波探触子の超音波送受信面の圧力の少なくともいずれか1つに基づいて、被検体に対する圧迫状態が適切か否かを評価するステップと、適切な圧迫状態における弾性画像を選択的にメモリに格納するか、或いは一旦メモリに格納された弾性画像を再生する際に適切な圧迫状態における弾性画像を選択的に読み出して再生するステップとを有して構成される。
これによれば、被検体10に対して適切な圧迫がなされている状態で生成された弾性画像が選択的にメモリに格納されるので、検者がメモリに格納された弾性画像を再生して診断を行う際には、診断に適した弾性画像が選択的に再生される。或いは一旦メモリに格納された弾性画像を再生する際に適切な圧迫状態における弾性画像が選択的に読み出されて再生される。したがって、診断に適さない弾性画像が連続している場合にコマ送りしたりスキップしたりする手間が必要ないので、検者にとって使い勝手がよく、かつ診断効率を向上させて診断時間の短縮を図ることができる。