JPWO2010026738A1 - 酵素活性をコンピュータを用いたシミュレーションにより予測する方法 - Google Patents
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Abstract
Description
生体内の酵素に、UDP−グルクロン酸転移酵素(EC 2.4.1.17)(以下「UGT」と称する)がある。UGTはグルクロン酸抱合を触媒する。グルクロン酸抱合により、内因性物質、生体外から投与された薬剤、食物中の化学物質、環境汚染物質などの排出パスウェイが提供されるため、UGTは一次代謝産物の排泄において重要な酵素である。UGTのうち、UGT1A1はビリルビンのグルクロン酸抱合に関与する主要な酵素であることが知られている。UGT1A1遺伝子に変異が生じた場合には、UGT1A1のビリルビンに対する酵素活性が消失または深刻に低下し、黄疸を主症状とするGilbert症候群やCrigler−Najjar症候群の原因となる。UGT1A1の変異型は多数あり、変異部位によって、ビリルビンに対する酵素活性のレベルが異なっている(非特許文献7,8)。また、同じ変異部位を持つ場合でも、変異型UGT1A1の抱合活性は、薬剤によって異なる。
1.タンパク質Aの酵素活性をコンピュータを用いたシミュレーションにより予測する方法であって、
酵素活性がタンパク質Aへの基質の進入の向きにより規定されるようなタンパク質であり、
タンパク質Aの酵素活性fが以下の式1により算出される方法;
2.タンパク質Aの立体構造データが、タンパク質Aとは別のタンパク質Bの立体構造データに基づいて計算されるものであり、βが以下の式2によって算出される前項1に記載の方法:
3.タンパク質Bの酵素活性に対するタンパク質Aの相対的な酵素活性をコンピュータを用いたシミュレーションにより予測する方法であって、
酵素活性がタンパク質Aへの基質の進入の向きにより規定されるようなタンパク質であり、
タンパク質Aの相対的な酵素活性f’が以下の式3により算出される方法;
4.Eが、下記の式16または式17により表される、前項1〜3のいずれか1に記載の方法:
5.式1または式3において、
6.2以上のタンパク質Aについてドッキングシミュレーションを行い、
gとaが、ドッキングシミュレーションにより得られた計算値yと、測定された値y’との二乗誤差を最小にする値であり、下記の式4を用いて算出される、前項2〜5のいずれか1に記載の方法。
7.タンパク質と基質とのドッキングシミュレーションが以下の工程を含む前項1〜6のいずれか1に記載の方法:
(a)タンパク質Bの立体構造データを入手し、タンパク質Aの立体構造データをタンパク質Bの立体構造データに基づいて計算し、
(b)タンパク質AまたはBと補酵素とのドッキングシミュレーションを行い、熱力学的に安定なドッキングモデルを決定し;
(c)タンパク質AまたはBと基質とのドッキングのグリッドを設定し;
(d)タンパク質Bと基質とのドッキングシミュレーションをNw回行い、Nwは2以上であり、酵素反応を受け得る向きで基質がタンパク質Bに進入した回数nwを計数し、
(e)タンパク質Aと基質とのドッキングシミュレーションをN回行い、Nは2以上であり、酵素反応を受け得る向きで基質がタンパク質Aに進入した回数nを計数する。
8.工程(b)の後に次の工程(b−1)を行い;
工程(b−1)タンパク質AまたはBと補酵素とのドッキングモデルをクラスタリングし、クラスタリングして得られたクラスタ内の2以上のモデルについてinduced fitを行い、
工程(d)において、induced fit後の各モデルについて、基質とのドッキングシミュレーションを行う、
前項1〜7のいずれか1に記載の方法。
9.タンパク質Aが変異型タンパク質である前項1〜7のいずれか1に記載の方法。
10.タンパク質AがUDP−グルクロン酸転移酵素であり、補酵素がUDP−グルクロン酸である、前項4〜9のいずれか1に記載の方法。
11.タンパク質Aがgとaの算出のために用いた変異型タンパク質以外の変異型タンパク質であり、算出されたgとaの値を用いて酵素活性の予測を行う、前項6〜10のいずれか1に記載の方法。
12.前項1〜11のいずれか1に記載の方法を実行するために、コンピュータを下記の手段として機能させるプログラムを担持する記録媒体:
(1)入力されたアミノ酸配列情報に基づいて、タンパク質Aの立体構造データを計算する手段、
(2)タンパク質Aの立体構造データと、ドッキングシミュレーションの対象となる基質の立体構造データを記憶する手段、
(3)前記記憶された、タンパク質Aの立体構造データと基質の立体構造データを用いて、タンパク質Aと基質とのドッキングシミュレーションを行うシミュレーション手段、
(4)シミュレーションにより得られた結果を記憶する手段、
(5)記憶されたシミュレーション結果に基づいて、タンパク質Aの酵素活性を算出する手段、
(6)算出された酵素活性を表示する手段。
13.前項1〜11のいずれか1に記載の方法を実行するために、下記の手段を担持する装置;
(1)入力されたアミノ酸配列情報に基づいて、タンパク質Aの立体構造データを計算する手段、
(2)タンパク質Aの立体構造データと、ドッキングシミュレーションの対象となる基質の立体構造データを記憶する手段、
(3)前記記憶された、タンパク質Aの立体構造データと基質の立体構造データを用いて、タンパク質Aと基質とのドッキングシミュレーションを行うシミュレーション手段、
(4)シミュレーションにより得られた結果を記憶する手段、
(5)記憶されたシミュレーション結果に基づいて、タンパク質Aの酵素活性を算出する手段、
(6)算出された酵素活性を表示する手段。
14.前項1〜11のいずれか1に記載の方法、前項12に記載の記録媒体、または前項13に記載の装置を用いて、2以上の基質について、基質ごとのタンパク質Aの酵素活性を予測し、得られた2以上の予測結果に基づいて目的の基質を選択する、基質適合性の判定方法。
15.前記基質が生体に投与される薬剤であって、前項14に記載の方法を用いて、薬剤の投与量および/または投与間隔、投与頻度を評価する方法。
まず、タンパク質Aの立体構造データを入手する。タンパク質Aの立体構造データは、公知のデータベースからダウンロードする、X線結晶構造解析、核磁気共鳴法などにより入手する、または、公知のタンパク質Bの立体構造データに基づいて計算して入手することができる。公知のタンパク質Bの立体構造データは、公知のデータベースからダウンロードする、または、X線結晶構造解析などにより入手することができる。データベースとしては、PDB(http://www.pdbj.org/)、MODBASE(http://modbase.compbio.ucsf.edu/modbase-cgi/index.cgi, Morris GM et al.: J Comput Chem 1998, 19:1639-1662)が例示される。
UGTはグルクロン酸抱合に関与する酵素であり、補酵素であるUDP−グルクロン酸(以下「UDPGA」と称する)から、基質(例えば、生体内物質であるビリルビンや、薬剤であるイリノテカン)にグルクロン酸を転移させる機能を持つ。UGT1A1と基質とのドッキングシミュレーションを行うために、まず、UGT1A1とUDPGAのドッキングシミュレーションを行う。
以下にAutoDockを用いてドッキングシミュレーションを行った例を用いて説明する。まず、UDPGAの配置を探索するマップを、グリッド間隔0.375Å、60×60×60ポイントの立方体としてAutoGridプログラムを用いて生成する。グリッド探索アルゴリズムは、ラマルク型遺伝アルゴリズムを使用すればよい。その他のパラメータはAutoDock 4のデフォルト値を使用すればよい。
ここで、最も安定な集合Cの至適な粒度を決定することで、グループ化が可能である。クラスタXの粒度G(X)を、抱合反応可能なUDPGA全体の集合をSとした次式8により計算する。
変異型UGT1A1と基質とのドッキングシミュレーションにおいて、基質の大きさに合わせて、グリッドの最奥の位置を決定すればよい。基質が、アセトアミノフェンなどの比較的小さな化合物である場合は、グリッドは1つ設定すればよいが、ビリルビンなどの比較的大きな化合物である場合は、グリッドを複数、例えば3つ設定すればよい。グリッドの個数は、基質の大きさだけではなく、タンパク質の反応の場の立体構造も加味して決定される。
まず、AAP、E2、ビリルビンについて、各々gとaを算出する。G71R変異型UGT1A1、F83L変異型UGT1A1、I322V変異型UGT1A1の各々について、組換えタンパク質の酵素活性を測定することにより、測定された値y’を得ることができる。組換えタンパク質の作製方法、および酵素活性の測定方法は自体公知の方法により行うことができる。例えば、実施例に記載の方法により行えばよい。また、ビリルビンに対する測定された値y’として、文献報告のビリルビン抱合活性(例えば、Yamamoto K et al.: Biochem Biophys Acta 1998, 1406:267-273, Udomuksorn W et al: Pharmacogenetics & Genomics 2007, 17:1017-1029, Ciotti M et al: Biochimica et Biophysica Acta 1998, 1407:40-50)を使用することもできる。
(1)入力されたアミノ酸配列情報に基づいて、タンパク質Aの立体構造データを計算する手段、
(2)タンパク質Aの立体構造データと、ドッキングシミュレーションの対象となる基質の立体構造データを記憶する手段、
(3)前記記憶された、タンパク質Aの立体構造データと基質の立体構造データを用いて、タンパク質Aと基質とのドッキングシミュレーションを行うシミュレーション手段、
(4)シミュレーションにより得られた結果を記憶する手段、
(5)記憶されたシミュレーション結果に基づいて、タンパク質Aの酵素活性を算出する手段、
(6)算出された酵素活性を表示する手段。
野生型UGT1A1の立体構造データを、MODBASEからダウンロードした(accession number: Q5DT03)。PyMOLプログラムを用いて水素原子を追加し、SWISS-PDB Viewerプログラムを用いて、G71R変異型UGT1A1、F83L変異型UGT1A1、I322V変異型UGT1A1の各変異型のデータを作成した。これらのデータを用いて、TINKERパッケージのminimizeプログラムとAMBER99力場パラメータによるエネルギー最小化計算をRMS勾配が0.3になるまで行い、各変異型の立体構造を求めた。計算された各変異型の三次元構造を図1に示す。
AutoDock 4プログラムを用いて、各種UGT1A1(野生型UGT1A1、G71R変異型UGT1A1、F83L変異型UGT1A1、I322V変異型UGT1A1)とUDPGAのドッキングシミュレーションを行った。UDPGAの立体構造データは、ChemIDPlusに登録されている5個のデータを用いた(registry number: 2616-64-0)。UDPGAの配置を探索するマップを、グリッド間隔0.375Å、60×60×60ポイントの立方体としてAutoGridプログラムを用いて生成した。グリッド探索アルゴリズムは、ラマルク型遺伝アルゴリズムを使用した。その他のパラメータはAutoDock 4のデフォルト値を使用した。
各種UGT1A1と5個のUDPGAの組み合わせ毎に、10回ずつドッキングシミュレーションを実行した。計算結果は、1種の変異型UGT1A1について、50個得られた。各々の変異型UGT1A1について、得られた50個の計算結果のうち、抱合反応可能な向きのUDPGAのドッキングエネルギーの平均値を計算した。なお、ドッキングエネルギーΔGは下記の式6で計算した。
UGT1A1と基質とのドッキングシミュレーション条件のうち、グリッドを決定するために、まずドッキングモデルのうちからドッキングエネルギーが低い一群のシミュレーション結果を、群平均法(2つのクラスタを順次統合していく階層型クラスタリングの一種)によるクラスタリングで、グループ化して定義した。群平均法では、全てのクラスタ間の距離を計算し、最も距離の小さい2つのクラスタを統合する。クラスタXとYの間の距離d(X,Y)は以下の式7のように定義された。
ここで、最も安定な集合Cの至適な粒度を決定することで、グループ化が可能である。クラスタXの粒度G(X)を、抱合反応可能なUDPGA全体の集合をSとした次の式8により計算した。
粒度の決定のために、野生型、G71R変異型UGT1A1、F83L変異型UGT1A1、I322V変異型UGT1A1と、UDPGAのドッキングシミュレーション結果を使って、群平均法によるクラスタリングを行い、全てのクラスタの粒度を計算してその分布を解析した。5%水準で、平均と比して有意に大きい粒度を除外するものとしたので、棄却域の値は0.56であった。つまり、粒度0.56以下のクラスタのうち最大のものを、グループとして定義可能であった。
表1に向きIおよび向きIIの各々でドッキングした回数を示す。
E2では、野生型、I322V変異型では大部分のドッキング結果において、向きIであった。G71R変異型、F83L変異型では、大部分のドッキング結果が、向きIIであった。
ヒト肝臓cDNAライブラリーから、PCR増幅によりヒトUGT1A1 cDNAを抽出し、pENTERTM/D-TOPOベクター(Invitrogen, Carlsbad, CA, USA)に挿入した。Site-directed mutagenesis法を用いて、遺伝子変異をクローンcDNAに導入した。正常型および各変異型のcDNA配列を、組み換えを用いて発現ベクターpcDNA-DEST40 GatewayTM(Invitrogen, Carlsbad, CA, USA)に移植した。各種UGT1A1の発現ベクターをルシフェラーゼレポーターベクター(pGL3-vector)とともにLipofectamineTM2000を用いてCOS−7細胞に導入した。48時間後に細胞を採取し、0.1M Tri-HCl 70μl で均質化し、ルシフェラーゼとUGT1A1のアッセイの酵素ソースとして使用した。TD-20/20 luminometer(Promega, Madison, WI, USA)を用いてルシフェラーゼ活性を計測し、UGT1A1の酵素活性の標準化に供した。E2のグルクロン酸抱合反応を、UGT Reaction Mix (BD Gentest, Franklin Lakes, NJ, USA)を使用して分析した。反応生成物を遠心した後、LC/MS/MS解析に供し、E2とグルクロン酸の抱合体(E2G)の量を測定した。AAPについても同様の手法を用いて抱合体(AAPG)の測定を行った。
Analyst 1.3.1ソフトウェアでAPI-3000TMLC/MS/MSシステム (Applied Biosystems-MDS Sciex, Tronto, Canada)を操作し、データ取得と解析を行った。
UGT1A1の酵素活性は、(i)UGT1A1とUDPGAのドッキング、と(ii)UGT1A1の抱合反応空間への基質の進入、の積で規定され、プロセス(i)をE、プロセス(ii)をRと定義することで、抱合活性fは次式10で表される。
上記実施例5の式により算出された計算値yと、野生型およびG71R変異型、F83L変異型、I322V変異型のUGT1A1の各基質に対する抱合活性の実験値y’(実施例4)を用いて、二乗誤差を最小化するg,aを次式5で計算することができる。
ビリルビンを基質とした時の抱合活性を式3を用いて算出した。
まず、ビリルビンとUGT1A1のドッキングシミュレーションを行った。基質(ビリルビン)の分子が大きいため、基質進入方向のグリッドとして、グリッドA〜Cの3つを設定した。3つのグリッドを図8に示す。野生型、およびG71R変異型、F83L変異型、I294T変異型とビリルビンとのドッキングシミュレーションを行い、基質の進入の向きを解析した。グリッドA〜Cのそれぞれについて100回ずつドッキングシミュレーションを行った。各グリッドについてNとnは、各々NA,NB,NC,nA,nB,nCとして計数した。NをNAとNBとNCの和(すなわち300回)、nをnAとnBとnCの和として算出した。その結果を表2に示す。
これらの結果を用いて式3により、各変異型UGT1A1のビリルビンに対する相対抱合活性を算出した。
実施例7にて得られたgとaの値を用いて、R336L変異型、N400D変異型、W461R変異型についてビリルビンに対する活性を算出した。
まず、各変異型UGT1A1とビリルビンとのドッキングシミュレーションを行った。ドッキングシミュレーションの結果を表3に示す。
Crigler−Najjar症候群I型(CN−I)患者に見られる変異型UGT1A1のビリルビン抱合活性は、野生型の0〜10%と算出される(Yamamoto K et al.: Biochem Biophys Acta 1998, 1406:267-273)。ホモ型のW461R変異型(TA6/TA6)が、CN−I患者にて発見されている(Maruo Y, et al.: J Pediatr Gastroenterol Nutr 2003, 37(5):627-30)。よって、ホモ型のW461R変異型の酵素活性は、野生型の0〜10%と計算された。
in vitro酵素活性の値として、G71R変異型、F83L変異型、I294T変異型ではなく、G71R変異型、P229Q変異型、I294T変異型のものを用いた以外は、実施例7と同様にして、gとaを算出した。P229Q変異型の値は、Udomuksorn W et al: Pharmacogenetics and genomics 2007, 17(12):1017-29を参照した。この文献では、P229Q変異型の正常値(野生型)に対する割合(相対活性)は、61%と示されている。各変異型UGT1A1とビリルビンとのドッキングシミュレーションを行った結果を、表4に示す。
これらの結果を用いて式3により、各変異型UGT1A1のビリルビンに対する相対抱合活性を算出した。
R336L変異型、N400D変異型、W461R変異型について、実施例8にて得られたドッキングシミュレーションの結果と、実施例9にて得られたgとaの値を用いて、抱合活性を式3を用いて算出した。
R336L変異型、N400D変異型、W461R変異型について、g=29.36、a=0を代入して、抱合活性(相対活性)を式3を用いて算出した。
水分子を付加して、又は水分子を付加せず(Gas Phase)に、UGT1A1(細胞膜タンパク質)およびGタンパクであるArl6(細胞質に存在)のタンパク質2種類について、シミュレーションを行った。
水分子を付加する場合は、TINKERパッケージの代わりにMOEを用いた以外は実施例1と同様にして立体構造を計算した(野生型UGT1A1、G71R変異型UGT1A1、F83L変異型UGT1A1、I322V変異型UGT1A1:野生型Arl6、T31R変異型Arl6、G169A変異型Arl6、L170W変異型Arl6)。また、水分子を付加しない場合は、TINKERパッケージを用いて、実施例1と同様にして立体構造を計算した。
また、Arl6では水分子を付加して構造計算を行った結果、基質(GTPγSまたはGDP)と各種Arl6のドッキングシミュレーションの結果(GTPγSまたはGDPが各種Arl6に結合し得る向きで進入した回数)と、in vitroのArl6実験値(Kobayashi et.al, BBRC 381, 439-442, 2009および東京大学大学院薬学研究科機能薬学教室生理化学教室の紺谷圏二先生の実験データ)とに高い相関が見られることを確認した。なおArl6は酵素タンパク質ではないが、酵素タンパク質について酵素反応が進むためには基質との結合が必須であることから、Arl6の基質との結合能は酵素タンパク質の触媒能と同義に考えることができる。
(1)水分子を付加せずに各種UGT1A1の立体構造データの計算を行い、UDPGAとのドッキングシミュレーションを行った。構造計算にMOE又はTINKERを使用し、ドッキングシミュレーションにMOE Dock又はAutoDock4を使用して、実施例1および2と同様の手法でシミュレーションを行った。UDPGAとのドッキングモデル1つに対して、MOEを用いてinduced fitを行い、基質(AAPまたはE2)とのドッキングシミュレーションを行った。
補酵素のドッキングエネルギーがUGT1A1の抱合能に影響をしないことを実施例2および4にて確認した。補酵素の各種UGT1A1への進入の向きが、抱合能へ影響するかについて検討を行うため、式1について3種類のin silico抱合能計算式を導出した。すなわち、E=1(補酵素の向きの寄与が皆無)、E=下記式16(補酵素が酵素反応を受け得る向きで各種UGT1A1へ進入した回数の寄与)、
Sigmoid関数とは下記式19で表されるS字型の関数であり、実数xに対して(0, 1)の値域を持つ単調増加関数である。pをゲインと呼び、関数の形状に影響する。
計算式にSigmoid関数を使用した場合、in vitroの抱合活性を良く再現可能であることがわかった(図21および図22)。よって、式10における項R(UGT1A1の抱合反応空間への基質の進入)へSigmoid関数を適用することが好ましいことが示唆された。
実施例15と同様の手法を用いて、ドッキングシミュレーションを行った。かかるドッキングシミュレーションの結果を用いて、実施例14の3種類のEのうちE=1を式3と組み合わせた計算式により、G71R変異型UGT1A1、F83L変異型UGT1A1、I322V変異型UGT1A1、R336L変異型UGT1A1、H376R変異型UGT1A1、P387S変異型UGT1A1の抱合活性(計算値)を算出した(gとaは実施例6のものを使用)。なお、各種UGT1A1(G71R変異型、F83L変異型、I322V変異型、R336L変異型、H376R変異型、P387S変異型)のin vitro抱合能は、実施例4の手法と同様にして測定した。
2 P34Q変異型
3 H39D変異型
4 G71R変異型
5 F83L変異型
6 L175Q変異型
7 C177R変異型
8 R209W変異型
9 V225G変異型
10 P229Q変異型
11 G276R変異型
12 E291V変異型
13 A292V変異型
14 I294T変異型
15 G308E変異型
16 I322V変異型
17 Q331R変異型
18 R336L変異型
19 R336Q変異型
20 R336W変異型
21 W354R変異型
22 Q357R変異型
23 R367G変異型
24 A368T変異型
25 S375F変異型
26 H376R変異型
27 G377V変異型
28 S381R変異型
29 P387S変異型
30 G395V変異型
31 N400D変異型
32 A401P変異型
33 R403C変異型
34 K428E変異型
35 W461R変異型
(A) induced fit有り、1モデル
(B) induced fit有り、クラスタ内の全モデル
(C) induced fitなし
(D) UDPGAが酵素反応を受け得る向きで各種UGT1A1に進入した回数
(E) クラスタ内のモデル数
(F) 基質が向きIで各種UGT1A1に進入した回数(向きIの回数/シミュレーションの全回数)
Claims (15)
- タンパク質Aの酵素活性をコンピュータを用いたシミュレーションにより予測する方法であって、
酵素活性がタンパク質Aへの基質の進入の向きにより規定されるようなタンパク質であり、
タンパク質Aの酵素活性fが以下の式1により算出される方法;
- タンパク質Aの立体構造データが、タンパク質Aとは別のタンパク質Bの立体構造データに基づいて計算されるものであり、βが以下の式2によって算出される請求の範囲第1項に記載の方法:
- タンパク質Bの酵素活性に対するタンパク質Aの相対的な酵素活性をコンピュータを用いたシミュレーションにより予測する方法であって、
酵素活性がタンパク質Aへの基質の進入の向きにより規定されるようなタンパク質であり、
タンパク質Aの相対的な酵素活性f’が以下の式3により算出される方法;
- Eが、下記の式16または式17により表される、請求の範囲第1項〜第3項のいずれか1に記載の方法:
- 式1または式3において、
- 2以上のタンパク質Aについてドッキングシミュレーションを行い、
gとaが、ドッキングシミュレーションにより得られた計算値yと、測定された値y’との二乗誤差を最小にする値であり、下記の式4を用いて算出される、請求の範囲第2項〜第5項のいずれか1に記載の方法。
- タンパク質と基質とのドッキングシミュレーションが以下の工程を含む請求の範囲第1項〜第6項のいずれか1に記載の方法:
(a)タンパク質Bの立体構造データを入手し、タンパク質Aの立体構造データをタンパク質Bの立体構造データに基づいて計算し、
(b)タンパク質AまたはBと補酵素とのドッキングシミュレーションを行い、熱力学的に安定なドッキングモデルを決定し;
(c)タンパク質AまたはBと基質とのドッキングのグリッドを設定し;
(d)タンパク質Bと基質とのドッキングシミュレーションをNw回行い、Nwは2以上であり、酵素反応を受け得る向きで基質がタンパク質Bに進入した回数nwを計数し、
(e)タンパク質Aと基質とのドッキングシミュレーションをN回行い、Nは2以上であり、酵素反応を受け得る向きで基質がタンパク質Aに進入した回数nを計数する。 - 工程(b)の後に次の工程(b−1)を行い;
工程(b−1)タンパク質AまたはBと補酵素とのドッキングモデルをクラスタリングし、クラスタリングして得られたクラスタ内の2以上のモデルについてinduced fitを行い、
工程(d)において、induced fit後の各モデルについて、基質とのドッキングシミュレーションを行う、
請求の範囲第1項〜第7項のいずれか1に記載の方法。 - タンパク質Aが変異型タンパク質である請求の範囲第1項〜第7項のいずれか1に記載の方法。
- タンパク質AがUDP−グルクロン酸転移酵素であり、補酵素がUDP−グルクロン酸である、請求の範囲第4項〜第9項のいずれか1に記載の方法。
- タンパク質Aがgとaの算出のために用いた変異型タンパク質以外の変異型タンパク質であり、算出されたgとaの値を用いて酵素活性の予測を行う、請求の範囲第6項〜第10項のいずれか1に記載の方法。
- 請求の範囲第1項〜第11項のいずれか1に記載の方法を実行するために、コンピュータを下記の手段として機能させるプログラムを担持する記録媒体:
(1)入力されたアミノ酸配列情報に基づいて、タンパク質Aの立体構造データを計算する手段、
(2)タンパク質Aの立体構造データと、ドッキングシミュレーションの対象となる基質の立体構造データを記憶する手段、
(3)前記記憶された、タンパク質Aの立体構造データと基質の立体構造データを用いて、タンパク質Aと基質とのドッキングシミュレーションを行うシミュレーション手段、
(4)シミュレーションにより得られた結果を記憶する手段、
(5)記憶されたシミュレーション結果に基づいて、タンパク質Aの酵素活性を算出する手段、
(6)算出された酵素活性を表示する手段。 - 請求の範囲第1項〜第11項のいずれか1に記載の方法を実行するために、下記の手段を担持する装置;
(1)入力されたアミノ酸配列情報に基づいて、タンパク質Aの立体構造データを計算する手段、
(2)タンパク質Aの立体構造データと、ドッキングシミュレーションの対象となる基質の立体構造データを記憶する手段、
(3)前記記憶された、タンパク質Aの立体構造データと基質の立体構造データを用いて、タンパク質Aと基質とのドッキングシミュレーションを行うシミュレーション手段、
(4)シミュレーションにより得られた結果を記憶する手段、
(5)記憶されたシミュレーション結果に基づいて、タンパク質Aの酵素活性を算出する手段、
(6)算出された酵素活性を表示する手段。 - 請求の範囲第1項〜第11項のいずれか1に記載の方法、請求の範囲第12項に記載の記録媒体、または請求の範囲第13項に記載の装置を用いて、2以上の基質について、基質ごとのタンパク質Aの酵素活性を予測し、得られた2以上の予測結果に基づいて目的の基質を選択する、基質適合性の判定方法。
- 前記基質が生体に投与される薬剤であって、請求の範囲第14項に記載の方法を用いて、薬剤の投与量および/または投与間隔、投与頻度を評価する方法。
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