JPWO2007097205A1 - 点眼剤 - Google Patents
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Abstract
新たな作用機構に基づき、眼圧降下作用及び降圧作用を有する点眼剤を提供する。本発明の点眼剤は筋弛緩薬を有効成分として含有することからなり、有効成分である筋弛緩剤としてはダントロレンナトリウムが好適に使用される。本発明の点眼剤剤は、外眼筋の緊張緩和に基づき、眼圧を降下させ、また交感神経の緊張を低下させることにより血圧を降下させるもので、顕著な眼圧降下作用及び降圧作用を発現する。
Description
本発明は点眼剤に関する。より詳細には、新規な作用機構に基づき、眼圧亢進に起因する疾患(緑内障、高眼圧症、正常眼圧緑内症など)及び高血圧の予防・治療に有用な点眼剤に関する。
眼圧亢進に起因する疾患において、緑内障とは眼圧調整機構の障害により眼圧が正常範囲を越えて上昇し、視覚機能(視野、視力など)に異常の起こる疾患である。また、高眼圧症は、眼圧が上昇(21mmHg以上)しているが視覚機能に異常が認められない疾患であり、その状態が継続すると緑内障を惹起すると考えられている。更に、正常眼圧緑内障も知られており、眼圧が正常範囲にもかかわらず視覚機能に異常の起こる疾患であり、この疾患においても眼圧を降下させる治療が行われている。このような疾患の治療には、眼圧をコントロールすることが肝要である。
そこで、先ずこれまで考えられてきた眼圧変動のメカニズムから説明をする。眼球の眼房(後房、前房)は房水と称される細胞外液で満たされている。房水は、主に毛様体で産生された血清由来の清澄な液体で、水晶体や毛様体、虹彩、角膜などの組織の栄養や老廃物を運ぶ媒体として働いていると考えられている。そのため房水は循環システムを有しており、毛様体突起の上皮細胞で造られた後、虹彩内側と水晶体前面の間を通り瞳孔を経由して前房に至り、その大部分は角膜内面と虹彩根部が形成する隅角に存在する線維柱帯網を通り、シュレム管経由で静脈に合流する。
このような循環経路をもって房水は循環しており、またこの循環している房水の圧力こそが眼圧をもたらしている。房水は前述したようにダイナミックに循環しており、その圧力は一定ではなく日内変動を有している。この房水圧(眼圧)は、(1)房水産生量、(2)房水流出抵抗、(3)流出点の静脈圧より決定される。健常眼においては通常2〜4mmHg程度の日内変動幅を持ちながら15±5mmHgの間の眼圧値を示している。何らかの原因で眼圧の異常亢進が持続するとき視神経の血液循環や神経軸索流は障害を受け、その結果視神経は重大な障害を来すことがある。これが緑内障の病態のあらましである。
前述したように異常な眼圧亢進は緑内障の進行を招くため、眼圧のコントロールは緑内障の治療や予防には必要不可欠の事柄である。最近では眼圧の測定法が進歩して、電子眼圧計の普及と相まって高眼圧症(異常な眼圧)を発見する事自体は難しくなくなっている。高眼圧を有する眼には可及的速やかに眼圧の正常化を図るための治療が必要である。
現在、眼圧降下法には点眼薬をはじめとして内服薬、注射薬、外科的手法など様々あるが、どれも房水循環に着目して眼圧降下が図られており、その効果は房水産生量を減少させるか、又は房水流出抵抗を低下させるかのいずれかの方法論により獲得されている。
現在臨床で使用されている代表的な眼圧降下剤を以下に紹介する。
(1)交感神経遮断剤:毛様体突起の上皮細胞からの房水産生を抑制し、眼圧降下作用を現す。交感神経受容体の亜分類にはα1、α2とβ1、β2があり、どの受容体をブロックするかにより数種類の点眼薬が開発されている。一般的には副作用の少ないβ遮断薬が良く用いられている。例:マレイン酸チモロール(β遮断薬)、塩酸カルテオロール(β遮断薬)、塩酸ベタキソロール(β1選択的遮断薬)、ニプラジロール(α・β遮断薬)、塩酸レボブノロール(α1・β遮断薬)
(2)プロスタグランジン系:プロスタグランジン受容体に作用し、ブドウ膜強膜流出路からの房水流出量を増加させる。交感神経遮断薬と併用すると効果的に眼圧を低下させることができる。しかし、プロスタグランジン系点眼薬と交感神経遮断点眼薬との併用は角膜に障害を与える危険性が高いことが指摘されている。例:イソプロピルウノプロストン、ラタノプロスト
(3)炭酸脱水酵素阻害剤:毛様体にある炭酸脱水酵素を阻害することにより房水の産生を抑制し眼圧を低下させる効果を持つ。例:塩酸ドルゾラミド
(4)交感神経刺激剤:交感神経刺激剤の点眼により房水産生と房水流出抵抗が低下して眼圧降下作用を現すと言われているが詳細は不明である。副作用が極めて強く、場合によっては眼圧上昇をもたらすことがあり、交感神経遮断薬などに比較すると眼圧降下作用は不十分なため現在ではあまり使用されることがなくなっている。例:塩酸ジピベフリン(エピネフリン前駆物質)
(5)副交感神経刺激剤:瞳孔を収縮させ(縮瞳)房水の流出抵抗を低下させることにより眼圧降下作用を示す薬剤である。交感神経刺激剤と同様に副作用が強く、眼圧降下作用が弱いため、閉塞隅角緑内障など特殊なケースを除いて使用されることがなくなってきている。例:塩酸ピロカルピン
上述のように種々の薬剤が使用され、現在においても多くの薬剤が眼圧降下剤として提案されている(例えば、特開2004−26710公報など)。
従来から使用されてきた薬剤において、交感神経遮断剤、特にβ遮断剤を含む点眼薬は、副作用が少なく且つ簡便に使用し得ることから汎用されてきた。このような眼圧降下を目的にした点眼剤は房水産生を抑制させることだけに注目して開発されてきた経緯を持つ。そのため同様な作用機構(房水産生を抑制する)を持つ眼圧降下点眼薬同士の併用では相加又は相乗効果が得られ難いものであった。加えて房水産生を抑制して眼圧降下を目的とした点眼剤では急速な眼圧降下が難しく、また必ずしも必要且つ十分な眼圧降下作用が得られないことが多い。そのため、最終的には外科的手法に頼らざるを得なくなることも頻度として決して少なくないのが現状である。
このような問題から、本願発明者は、従来の眼圧降下薬とは異なった作用機構に基づく眼圧降下薬を検討した。その結果、眼圧は房水循環の変動だけではなく、外眼筋の緊張度(トーヌス)の変化により変動することが明らかとなった。眼球は眼窩の中にあって外眼筋(4つの直筋と2つの斜筋)により支えられている。様々な原因により眼球を支えている外眼筋のトーヌスが亢進するとき、眼球が外眼筋から受ける圧迫応力も大きくなり眼圧が亢進してくることが判明した。
即ち、外眼筋が弛緩した状態から緊張(収縮)状態に移行すると、眼球は後方に牽引される。そのため、眼球後方にある軟部組織(球後円錐床)は眼球底から圧迫を受ける。内圧の高まった球後円錐床は同じ大きさの圧力で眼球底を押し返すことになり、調節強膜は前方に向けて大きく伸展され眼球軸も同様に伸展されることになる。何らかの原因で過剰な外眼筋の収縮が起こり、その状態が持続すると眼球内圧を持続的に亢進させることになると考えられる。従って、外眼筋の過剰な且つ継続的な緊張により生じた眼圧亢進は、房水循環を改善するだけではコントロールすることが困難であり、外眼筋の緊張を緩和・抑制することが効果的であると考えられる。
以上の知見に基づき、亢進している眼圧を効果的、且つ迅速に降下させるためには、亢進している外眼筋の緊張度(トーヌス)を低下させることが極めて効果的であり、本発明者は外眼筋の緊張を低下させるには筋弛緩薬(特に骨格筋弛緩薬)を使用することが有効であることを見出した。即ち、従来の房水循環の改善による眼圧降下とは全く異なった作用機構に基づく眼圧降下が可能となった。
上述のように、本発明者は、外眼筋のトーヌスを低下させることによる眼圧亢進に起因する疾患の治療法を検討してきたが、外眼筋のトーヌスを低下させると交感神経の緊張度が低下し、結果的に血圧降下作用が現れるという、現在まで医学的に知られていない事実が判明した。これまで血圧制御に関する様々なメカニズムが解明されてきた。それらの理解の上に立って多種多様な薬物が開発され、血圧をコントロールする試みがなされている。本発明者が見出した上記の知見は、これまで知られていなかった血圧の制御メカニズムである。
より具体的には、交感神経が緊張すると神経性又は体液性(ホルモン性)に骨格筋の緊張が強くなることが知られている。眼球を取り巻いて付着し、眼球運動を司っている外眼筋は骨格筋に分類される組織構造を持つため、交感神経の緊張が強くなると他の骨格筋同様に外眼筋のトーヌスは強くなることが知られている。しかし外眼筋にはこれ以外に他の骨格筋にはない固有の特徴を持つことが判明した。つまり外眼筋の緊張度が低下すると、上述した現象とは逆行性に交感神経の緊張度が低下する現象が発見されたのである。これまで眼と心臓の間には眼心臓反射(oculo−cardiac reflex、又はアシュネル反射)と呼ばれる反射回路が存在することが知られており、この度発見された外眼筋のトーヌスと交感神経のトーヌスの間にある相関関係は、未知の神経反射回路によるものである可能性もあるが、眼心臓反射回路の影響によるものである可能性も残る。いずれにせよ過剰な外眼筋の緊張を特異的、また持続的に低下させることにより、過剰な交感神経の緊張度を緩徐に低下させることができることが判明した。その結果として血圧が正常化(低下)する現象が起こることが確認された。
興味深いことに過剰な交感神経の緊張が存在しないか、又は存在しても外眼筋の緊張度が亢進していない場合には上記の反応は起こらないことも判明した。つまり健常人に対しては血圧を過剰に低下させるなどの悪影響を及ぼすことがない。また通常の降圧剤と異なり、血圧降下の代償作用としての脈拍数の増加が観察されない。これはCa拮抗剤などのように血管に直接作用するものではなく、交感神経の緊張度を低下させることを介した血圧降下作用であることを意味している。また収縮期血圧と共に拡張期血圧も効果的に低下させることもその特徴の一つである。
前述のように、眼球は眼窩の中にあって外眼筋(4つの直筋と2つの斜筋)により支えられている。様々な原因により眼球を支えている外眼筋のトーヌスが亢進するとき、上記のように交感神経の緊張も同時に起こることが判明した。また過剰な交感神経の緊張とその持続は血圧を上昇させることも知られている。これらのことを理解した上で亢進している交感神経の緊張を効果的、且つ迅速に降下させ、血圧を正常化(低下)させるためには亢進している外眼筋のトーヌスを低下させることは極めて効果的である。そして、その方法として、筋弛緩薬(特に骨格筋弛緩薬)を含有する点眼剤を点眼し、外眼筋の緊張を緩和することは極めて合理的である。
そこで、先ずこれまで考えられてきた眼圧変動のメカニズムから説明をする。眼球の眼房(後房、前房)は房水と称される細胞外液で満たされている。房水は、主に毛様体で産生された血清由来の清澄な液体で、水晶体や毛様体、虹彩、角膜などの組織の栄養や老廃物を運ぶ媒体として働いていると考えられている。そのため房水は循環システムを有しており、毛様体突起の上皮細胞で造られた後、虹彩内側と水晶体前面の間を通り瞳孔を経由して前房に至り、その大部分は角膜内面と虹彩根部が形成する隅角に存在する線維柱帯網を通り、シュレム管経由で静脈に合流する。
このような循環経路をもって房水は循環しており、またこの循環している房水の圧力こそが眼圧をもたらしている。房水は前述したようにダイナミックに循環しており、その圧力は一定ではなく日内変動を有している。この房水圧(眼圧)は、(1)房水産生量、(2)房水流出抵抗、(3)流出点の静脈圧より決定される。健常眼においては通常2〜4mmHg程度の日内変動幅を持ちながら15±5mmHgの間の眼圧値を示している。何らかの原因で眼圧の異常亢進が持続するとき視神経の血液循環や神経軸索流は障害を受け、その結果視神経は重大な障害を来すことがある。これが緑内障の病態のあらましである。
前述したように異常な眼圧亢進は緑内障の進行を招くため、眼圧のコントロールは緑内障の治療や予防には必要不可欠の事柄である。最近では眼圧の測定法が進歩して、電子眼圧計の普及と相まって高眼圧症(異常な眼圧)を発見する事自体は難しくなくなっている。高眼圧を有する眼には可及的速やかに眼圧の正常化を図るための治療が必要である。
現在、眼圧降下法には点眼薬をはじめとして内服薬、注射薬、外科的手法など様々あるが、どれも房水循環に着目して眼圧降下が図られており、その効果は房水産生量を減少させるか、又は房水流出抵抗を低下させるかのいずれかの方法論により獲得されている。
現在臨床で使用されている代表的な眼圧降下剤を以下に紹介する。
(1)交感神経遮断剤:毛様体突起の上皮細胞からの房水産生を抑制し、眼圧降下作用を現す。交感神経受容体の亜分類にはα1、α2とβ1、β2があり、どの受容体をブロックするかにより数種類の点眼薬が開発されている。一般的には副作用の少ないβ遮断薬が良く用いられている。例:マレイン酸チモロール(β遮断薬)、塩酸カルテオロール(β遮断薬)、塩酸ベタキソロール(β1選択的遮断薬)、ニプラジロール(α・β遮断薬)、塩酸レボブノロール(α1・β遮断薬)
(2)プロスタグランジン系:プロスタグランジン受容体に作用し、ブドウ膜強膜流出路からの房水流出量を増加させる。交感神経遮断薬と併用すると効果的に眼圧を低下させることができる。しかし、プロスタグランジン系点眼薬と交感神経遮断点眼薬との併用は角膜に障害を与える危険性が高いことが指摘されている。例:イソプロピルウノプロストン、ラタノプロスト
(3)炭酸脱水酵素阻害剤:毛様体にある炭酸脱水酵素を阻害することにより房水の産生を抑制し眼圧を低下させる効果を持つ。例:塩酸ドルゾラミド
(4)交感神経刺激剤:交感神経刺激剤の点眼により房水産生と房水流出抵抗が低下して眼圧降下作用を現すと言われているが詳細は不明である。副作用が極めて強く、場合によっては眼圧上昇をもたらすことがあり、交感神経遮断薬などに比較すると眼圧降下作用は不十分なため現在ではあまり使用されることがなくなっている。例:塩酸ジピベフリン(エピネフリン前駆物質)
(5)副交感神経刺激剤:瞳孔を収縮させ(縮瞳)房水の流出抵抗を低下させることにより眼圧降下作用を示す薬剤である。交感神経刺激剤と同様に副作用が強く、眼圧降下作用が弱いため、閉塞隅角緑内障など特殊なケースを除いて使用されることがなくなってきている。例:塩酸ピロカルピン
上述のように種々の薬剤が使用され、現在においても多くの薬剤が眼圧降下剤として提案されている(例えば、特開2004−26710公報など)。
従来から使用されてきた薬剤において、交感神経遮断剤、特にβ遮断剤を含む点眼薬は、副作用が少なく且つ簡便に使用し得ることから汎用されてきた。このような眼圧降下を目的にした点眼剤は房水産生を抑制させることだけに注目して開発されてきた経緯を持つ。そのため同様な作用機構(房水産生を抑制する)を持つ眼圧降下点眼薬同士の併用では相加又は相乗効果が得られ難いものであった。加えて房水産生を抑制して眼圧降下を目的とした点眼剤では急速な眼圧降下が難しく、また必ずしも必要且つ十分な眼圧降下作用が得られないことが多い。そのため、最終的には外科的手法に頼らざるを得なくなることも頻度として決して少なくないのが現状である。
このような問題から、本願発明者は、従来の眼圧降下薬とは異なった作用機構に基づく眼圧降下薬を検討した。その結果、眼圧は房水循環の変動だけではなく、外眼筋の緊張度(トーヌス)の変化により変動することが明らかとなった。眼球は眼窩の中にあって外眼筋(4つの直筋と2つの斜筋)により支えられている。様々な原因により眼球を支えている外眼筋のトーヌスが亢進するとき、眼球が外眼筋から受ける圧迫応力も大きくなり眼圧が亢進してくることが判明した。
即ち、外眼筋が弛緩した状態から緊張(収縮)状態に移行すると、眼球は後方に牽引される。そのため、眼球後方にある軟部組織(球後円錐床)は眼球底から圧迫を受ける。内圧の高まった球後円錐床は同じ大きさの圧力で眼球底を押し返すことになり、調節強膜は前方に向けて大きく伸展され眼球軸も同様に伸展されることになる。何らかの原因で過剰な外眼筋の収縮が起こり、その状態が持続すると眼球内圧を持続的に亢進させることになると考えられる。従って、外眼筋の過剰な且つ継続的な緊張により生じた眼圧亢進は、房水循環を改善するだけではコントロールすることが困難であり、外眼筋の緊張を緩和・抑制することが効果的であると考えられる。
以上の知見に基づき、亢進している眼圧を効果的、且つ迅速に降下させるためには、亢進している外眼筋の緊張度(トーヌス)を低下させることが極めて効果的であり、本発明者は外眼筋の緊張を低下させるには筋弛緩薬(特に骨格筋弛緩薬)を使用することが有効であることを見出した。即ち、従来の房水循環の改善による眼圧降下とは全く異なった作用機構に基づく眼圧降下が可能となった。
上述のように、本発明者は、外眼筋のトーヌスを低下させることによる眼圧亢進に起因する疾患の治療法を検討してきたが、外眼筋のトーヌスを低下させると交感神経の緊張度が低下し、結果的に血圧降下作用が現れるという、現在まで医学的に知られていない事実が判明した。これまで血圧制御に関する様々なメカニズムが解明されてきた。それらの理解の上に立って多種多様な薬物が開発され、血圧をコントロールする試みがなされている。本発明者が見出した上記の知見は、これまで知られていなかった血圧の制御メカニズムである。
より具体的には、交感神経が緊張すると神経性又は体液性(ホルモン性)に骨格筋の緊張が強くなることが知られている。眼球を取り巻いて付着し、眼球運動を司っている外眼筋は骨格筋に分類される組織構造を持つため、交感神経の緊張が強くなると他の骨格筋同様に外眼筋のトーヌスは強くなることが知られている。しかし外眼筋にはこれ以外に他の骨格筋にはない固有の特徴を持つことが判明した。つまり外眼筋の緊張度が低下すると、上述した現象とは逆行性に交感神経の緊張度が低下する現象が発見されたのである。これまで眼と心臓の間には眼心臓反射(oculo−cardiac reflex、又はアシュネル反射)と呼ばれる反射回路が存在することが知られており、この度発見された外眼筋のトーヌスと交感神経のトーヌスの間にある相関関係は、未知の神経反射回路によるものである可能性もあるが、眼心臓反射回路の影響によるものである可能性も残る。いずれにせよ過剰な外眼筋の緊張を特異的、また持続的に低下させることにより、過剰な交感神経の緊張度を緩徐に低下させることができることが判明した。その結果として血圧が正常化(低下)する現象が起こることが確認された。
興味深いことに過剰な交感神経の緊張が存在しないか、又は存在しても外眼筋の緊張度が亢進していない場合には上記の反応は起こらないことも判明した。つまり健常人に対しては血圧を過剰に低下させるなどの悪影響を及ぼすことがない。また通常の降圧剤と異なり、血圧降下の代償作用としての脈拍数の増加が観察されない。これはCa拮抗剤などのように血管に直接作用するものではなく、交感神経の緊張度を低下させることを介した血圧降下作用であることを意味している。また収縮期血圧と共に拡張期血圧も効果的に低下させることもその特徴の一つである。
前述のように、眼球は眼窩の中にあって外眼筋(4つの直筋と2つの斜筋)により支えられている。様々な原因により眼球を支えている外眼筋のトーヌスが亢進するとき、上記のように交感神経の緊張も同時に起こることが判明した。また過剰な交感神経の緊張とその持続は血圧を上昇させることも知られている。これらのことを理解した上で亢進している交感神経の緊張を効果的、且つ迅速に降下させ、血圧を正常化(低下)させるためには亢進している外眼筋のトーヌスを低下させることは極めて効果的である。そして、その方法として、筋弛緩薬(特に骨格筋弛緩薬)を含有する点眼剤を点眼し、外眼筋の緊張を緩和することは極めて合理的である。
本発明は上記の知見に基づくものであり、本発明は、筋弛緩薬を有効成分として含有する点眼剤を提供するものであり、また当該点眼剤からなる眼圧降下剤又は降圧剤である。上記の筋弛緩薬としては骨格筋弛緩剤が好ましく、更に骨格筋弛緩薬としてはダントロレンナトリウムが好適に使用される。
また、本発明は、筋弛緩薬を有効成分として含有する点眼剤の有効量を点眼することからなる眼圧亢進に起因する疾患又は高血圧症の治療方法を提供する。
更に、本発明は、眼圧降下作用又は降圧作用を有する点眼剤を製造するための筋弛緩薬の使用に関する。
また、本発明は、筋弛緩薬を有効成分として含有する点眼剤の有効量を点眼することからなる眼圧亢進に起因する疾患又は高血圧症の治療方法を提供する。
更に、本発明は、眼圧降下作用又は降圧作用を有する点眼剤を製造するための筋弛緩薬の使用に関する。
図1は、試験例1における各被験者の眼圧変化を示す図である。
図2は、試験例2における各被験者の拡張期血圧の変化を示す図である。
図3は、試験例2における各被験者の収縮期血圧の変化を示す図である。
図4は、試験例2における各被験者の1分間当りの心拍数(bpm)の変化を示す図である。
図2は、試験例2における各被験者の拡張期血圧の変化を示す図である。
図3は、試験例2における各被験者の収縮期血圧の変化を示す図である。
図4は、試験例2における各被験者の1分間当りの心拍数(bpm)の変化を示す図である。
本発明の点眼剤は筋弛緩薬を有効成分として含有することからなる。本発明において、筋弛緩薬とは、外眼筋の弛緩(緊張緩和)を図ることができる薬物を意味する。当該筋弛緩薬としては、外眼筋の緊張緩和を図ることができるものであればいずれの薬物でも使用することができ、例えば、骨格筋弛緩薬、Ca拮抗薬、抗コリン薬などが例示される。係る薬物は既に市販されている薬物を使用してもよい。
上記の筋弛緩薬としては骨格筋弛緩薬が好ましく、例えば、ダントロレンナトリウム、バクロフェン、ボツリヌス毒素、ツボクラリン、スキサメトニウムなどが例示できる。様々な骨格筋弛緩剤が外眼筋の緊張度を低下させるために使用されることが考えられるが、外眼筋(骨格筋)にのみ作用を持ち内眼筋(平滑筋)に作用を及ぼし難い薬物が好ましい。係る観点からすると、骨格筋の筋小胞体からCa++放出を抑制しトポロニンへのCa++結合を阻害させ、骨格筋収縮を抑制するという作用機構を持つダントロレンナトリウムは、外眼筋の緊張を緩和する目的で使用される筋弛緩薬としては最も理想的な薬物の一つと考えられる。
本発明の点眼剤は、前記の筋弛緩薬を慣用の製剤担体と混合し、製剤上の常法に準じて製造することができる。なお、点眼剤には、眼軟膏剤なども包含される。
点眼剤における有効成分の含量としては、0.001%〜2.000%(w/v、以下同様)、好ましくは0.002%〜1.000%、より好ましくは0.005%〜0.2%、更に好ましくは0.01%〜0.1%程度に調整される。
点眼剤の調製に際しては、この分野で慣用の種々の添加剤を添加することができ、例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化セチルピリジウム等の保存剤、ホウ砂、ホウ酸、リン酸二水素カリウム等の緩衝剤、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、コンドロイチン硫酸等の増粘剤、ポリソルベート等の溶解補助剤などを例示することができる。また、必要に応じて、等張化剤を用いて等張化するのが好ましく、液性としてはpH6〜8程度に調整される。また徐放効果を発揮させる添加剤を添加することも出来る。
本発明の点眼剤は、剤形に応じて、適宜な投与ルートにより投与することができ、その用量も適宜調整することができる。例えば、上記の点眼剤の場合、その用量・用法は、患者の症状、体重、年令等により適宜調整することができ、通常1日1〜5回、1回当り1〜3滴を点眼すればよい。
本発明の点眼剤は、眼圧をコンロール(降下)させることにより症状が緩和・治癒する種々の疾患の予防・治療に有用であり、係る疾患としては、高眼圧症、緑内障、正常眼圧緑内障などが挙げられる。また、本発明の点眼剤は、高血圧症の予防・治療に有用である。
上記の筋弛緩薬としては骨格筋弛緩薬が好ましく、例えば、ダントロレンナトリウム、バクロフェン、ボツリヌス毒素、ツボクラリン、スキサメトニウムなどが例示できる。様々な骨格筋弛緩剤が外眼筋の緊張度を低下させるために使用されることが考えられるが、外眼筋(骨格筋)にのみ作用を持ち内眼筋(平滑筋)に作用を及ぼし難い薬物が好ましい。係る観点からすると、骨格筋の筋小胞体からCa++放出を抑制しトポロニンへのCa++結合を阻害させ、骨格筋収縮を抑制するという作用機構を持つダントロレンナトリウムは、外眼筋の緊張を緩和する目的で使用される筋弛緩薬としては最も理想的な薬物の一つと考えられる。
本発明の点眼剤は、前記の筋弛緩薬を慣用の製剤担体と混合し、製剤上の常法に準じて製造することができる。なお、点眼剤には、眼軟膏剤なども包含される。
点眼剤における有効成分の含量としては、0.001%〜2.000%(w/v、以下同様)、好ましくは0.002%〜1.000%、より好ましくは0.005%〜0.2%、更に好ましくは0.01%〜0.1%程度に調整される。
点眼剤の調製に際しては、この分野で慣用の種々の添加剤を添加することができ、例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化セチルピリジウム等の保存剤、ホウ砂、ホウ酸、リン酸二水素カリウム等の緩衝剤、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、コンドロイチン硫酸等の増粘剤、ポリソルベート等の溶解補助剤などを例示することができる。また、必要に応じて、等張化剤を用いて等張化するのが好ましく、液性としてはpH6〜8程度に調整される。また徐放効果を発揮させる添加剤を添加することも出来る。
本発明の点眼剤は、剤形に応じて、適宜な投与ルートにより投与することができ、その用量も適宜調整することができる。例えば、上記の点眼剤の場合、その用量・用法は、患者の症状、体重、年令等により適宜調整することができ、通常1日1〜5回、1回当り1〜3滴を点眼すればよい。
本発明の点眼剤は、眼圧をコンロール(降下)させることにより症状が緩和・治癒する種々の疾患の予防・治療に有用であり、係る疾患としては、高眼圧症、緑内障、正常眼圧緑内障などが挙げられる。また、本発明の点眼剤は、高血圧症の予防・治療に有用である。
本発明の点眼剤は眼圧降下作用に優れ、高眼圧症、緑内障、正常眼圧緑内障などの予防・治療に有用である。特に、従来の房水循環の改善に基づく眼圧降下作用とは全く異なった作用機構に基づき眼圧降下を図るものであることから、従来の眼圧降下剤と併用することにより、相乗的又は相加的に効果を発現でき、眼圧の迅速且つ効果的な降下を達成することができる。
また、本発明の点眼剤は血圧降下作用を有し、拡張期血圧及び収縮期血圧を効果的に低下させることができるので、降圧剤として有用である。特に、外眼筋に局所的に作用させることにより血圧降下作用を得ることができ、従来の降圧剤のように、全身投与で危惧される不都合な副作用をほとんど観察することがないという利点を有する。また健常人に対しては血圧を過剰に低下させるなどの悪影響を及ぼすことなく、更に通常の降圧剤と異なり、血圧降下の代償作用としての脈拍数の増加が観察されないという利点を有する。
また、本発明の点眼剤は血圧降下作用を有し、拡張期血圧及び収縮期血圧を効果的に低下させることができるので、降圧剤として有用である。特に、外眼筋に局所的に作用させることにより血圧降下作用を得ることができ、従来の降圧剤のように、全身投与で危惧される不都合な副作用をほとんど観察することがないという利点を有する。また健常人に対しては血圧を過剰に低下させるなどの悪影響を及ぼすことなく、更に通常の降圧剤と異なり、血圧降下の代償作用としての脈拍数の増加が観察されないという利点を有する。
以下、実施例及び試験例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれの例に限定されるものではない。
実施例1
点眼剤の調製
ダントロレンナトリウム(商品名:ダントリウム注、アステラス製薬社製)を食塩水に溶解し、有効成分含量として0.01%となるように調整した(以下、点眼剤1という)。また、同様な方法により、有効成分含量0.1%の点眼剤を調製した(以下、点眼剤2という)。
試験例1
眼圧降下試験
事前に了解を得て、5名の被験者(症例1〜5)の一方の眼に、実施例1で調製した点眼剤1を2滴点眼した。一回目の点眼後、5分して2回目の点眼を同様に行った。2回目の点眼後、空圧圧平式電子眼圧計(Topcon社製)で眼圧を10分ごとに測定した。
上記の結果を図1に示す。図1に示されるように、本発明の点眼剤を点眼することにより、点眼直後から顕著な眼圧降下が認められ、外眼筋の緊張緩和により眼圧降下を図れることが明らかとなった。
試験例2
降圧試験
事前に了解を得て、5名の被験者(症例‐1〜5)の両眼に、実施例1で調製した点眼剤2の3滴を5分間隔で3回点眼した。3回目の点眼後、拡張期血圧、収縮期血圧及び心拍数を経時的に測定した。その結果を、図2(拡張期血圧)、図3(収縮期血圧)及び図4(心拍数)に示した。
なお、5名の被験者は下記のとおりである。
症例‐1:59歳男性、高血圧症/未治療
症例‐2:45歳男性、高血圧症/未治療
症例‐3:46歳男性、高血圧症/未治療
症例‐4:51歳男性、高血圧症/未治療
症例‐5:46歳女性、健常者
図2に示されるように、本発明の点眼剤を点眼すると、症例‐1〜4においては、拡張期血圧が緩やかに低下した。一方、健常者(症例‐5)の血圧は変化が認められなかった。
また、図3に示されるように、本発明の点眼剤を点眼すると、症例‐1〜4においては、収縮期血圧が顕著に低下した。一方、健常者(症例‐5)の血圧は変化が認められなかった。
更に、図4に示されるように、心拍数に関しては、症例‐1〜5において、著しい変動は認められなかった。
実際に、本発明の点眼剤(ダントロレン点眼剤)を点眼すると、軽度の近視化と瞳孔運動の亢進を観察するようになる。瞳孔運動の大半は瞳孔括約筋により為されているため、軽度の瞳孔括約筋や毛様体の機能亢進時には瞳孔反応や瞳孔、毛様体機能は亢進する傾向がある。瞳孔括約筋の機能が低下すると瞳孔は散大する傾向があり、対光反射などの瞳孔反応も鈍くなる。興味深いことにダントロレン点眼剤の点眼により外眼筋のトーヌスが低下すると瞳孔反応が改善してくるのである。つまり外眼筋のトーヌスの亢進と瞳孔括約筋、及び毛様体のトーヌスとの間には負の相関関係があることを示している。更にダントロレンを高濃度で点眼すると、強い縮瞳が起こり瞳孔反応は鈍くなり、近視化も強く現れるようになる。丁度、ピロカルピンやアセチルコリンなどの副交感神経作動薬を点眼したときと同様の状態が現れるのである。この様な瞳孔括約筋の反応は短毛様体神経の興奮によるものだと推測される。つまり外眼筋のトーヌスを人工的に低下させるとき、その情報は毛様体神経節にフィードバックされ、短毛様体神経の興奮を惹起する一種の眼反射が起こるのであろう。その結果、瞳孔括約筋や毛様体機能を亢進(改善)させることになるのである。
この様に本発明の点眼剤の点眼に際して眼を観察していると、外眼筋の弛緩が神経系を介したフィードバックを眼に対して起こしていることが分かる。この眼の局所に起こるフィードバックは毛様体神経節を中心にしたショート・ループのフィードバックであるが、血圧への影響は中枢神経系へ及び、遠心路を迷走神経としたロング・ループのフィードバックによるものであると考えられる。
実施例1
点眼剤の調製
ダントロレンナトリウム(商品名:ダントリウム注、アステラス製薬社製)を食塩水に溶解し、有効成分含量として0.01%となるように調整した(以下、点眼剤1という)。また、同様な方法により、有効成分含量0.1%の点眼剤を調製した(以下、点眼剤2という)。
試験例1
眼圧降下試験
事前に了解を得て、5名の被験者(症例1〜5)の一方の眼に、実施例1で調製した点眼剤1を2滴点眼した。一回目の点眼後、5分して2回目の点眼を同様に行った。2回目の点眼後、空圧圧平式電子眼圧計(Topcon社製)で眼圧を10分ごとに測定した。
上記の結果を図1に示す。図1に示されるように、本発明の点眼剤を点眼することにより、点眼直後から顕著な眼圧降下が認められ、外眼筋の緊張緩和により眼圧降下を図れることが明らかとなった。
試験例2
降圧試験
事前に了解を得て、5名の被験者(症例‐1〜5)の両眼に、実施例1で調製した点眼剤2の3滴を5分間隔で3回点眼した。3回目の点眼後、拡張期血圧、収縮期血圧及び心拍数を経時的に測定した。その結果を、図2(拡張期血圧)、図3(収縮期血圧)及び図4(心拍数)に示した。
なお、5名の被験者は下記のとおりである。
症例‐1:59歳男性、高血圧症/未治療
症例‐2:45歳男性、高血圧症/未治療
症例‐3:46歳男性、高血圧症/未治療
症例‐4:51歳男性、高血圧症/未治療
症例‐5:46歳女性、健常者
図2に示されるように、本発明の点眼剤を点眼すると、症例‐1〜4においては、拡張期血圧が緩やかに低下した。一方、健常者(症例‐5)の血圧は変化が認められなかった。
また、図3に示されるように、本発明の点眼剤を点眼すると、症例‐1〜4においては、収縮期血圧が顕著に低下した。一方、健常者(症例‐5)の血圧は変化が認められなかった。
更に、図4に示されるように、心拍数に関しては、症例‐1〜5において、著しい変動は認められなかった。
実際に、本発明の点眼剤(ダントロレン点眼剤)を点眼すると、軽度の近視化と瞳孔運動の亢進を観察するようになる。瞳孔運動の大半は瞳孔括約筋により為されているため、軽度の瞳孔括約筋や毛様体の機能亢進時には瞳孔反応や瞳孔、毛様体機能は亢進する傾向がある。瞳孔括約筋の機能が低下すると瞳孔は散大する傾向があり、対光反射などの瞳孔反応も鈍くなる。興味深いことにダントロレン点眼剤の点眼により外眼筋のトーヌスが低下すると瞳孔反応が改善してくるのである。つまり外眼筋のトーヌスの亢進と瞳孔括約筋、及び毛様体のトーヌスとの間には負の相関関係があることを示している。更にダントロレンを高濃度で点眼すると、強い縮瞳が起こり瞳孔反応は鈍くなり、近視化も強く現れるようになる。丁度、ピロカルピンやアセチルコリンなどの副交感神経作動薬を点眼したときと同様の状態が現れるのである。この様な瞳孔括約筋の反応は短毛様体神経の興奮によるものだと推測される。つまり外眼筋のトーヌスを人工的に低下させるとき、その情報は毛様体神経節にフィードバックされ、短毛様体神経の興奮を惹起する一種の眼反射が起こるのであろう。その結果、瞳孔括約筋や毛様体機能を亢進(改善)させることになるのである。
この様に本発明の点眼剤の点眼に際して眼を観察していると、外眼筋の弛緩が神経系を介したフィードバックを眼に対して起こしていることが分かる。この眼の局所に起こるフィードバックは毛様体神経節を中心にしたショート・ループのフィードバックであるが、血圧への影響は中枢神経系へ及び、遠心路を迷走神経としたロング・ループのフィードバックによるものであると考えられる。
Claims (10)
- 筋弛緩薬を有効成分として含有する点眼剤。
- 眼圧降下剤又は降圧剤である請求項1記載の点眼剤。
- 筋弛緩剤が、骨格筋弛緩剤である請求項1又は2記載の点眼剤。
- 骨格筋弛緩剤が、ダントロレンナトリウムである請求項3記載の点眼剤。
- 筋弛緩薬を有効成分として含有する点眼剤の有効量を点眼することからなる眼圧亢進に起因する疾患の治療方法。
- 眼圧亢進に起因する疾患が、緑内障、高眼圧症又は正常眼圧緑内障である請求項5記載の治療方法。
- 筋弛緩薬が、ダントロレンナトリウムである請求項5又は6記載の治療方法。
- 筋弛緩薬を有効成分として含有する点眼剤の有効量を点眼することからなる高血圧症の治療方法。
- 筋弛緩薬が、ダントロレンナトリウムである請求項8記載の治療方法。
- 眼圧降下作用又は降圧作用を有する点眼剤を製造するための筋弛緩薬の使用。
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---|---|---|---|
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JP2006026120 | 2006-02-02 | ||
PCT/JP2007/052312 WO2007097205A1 (ja) | 2006-02-02 | 2007-02-02 | 点眼剤 |
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Publication Number | Publication Date |
---|---|
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---|---|---|---|
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---|---|
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US5922773A (en) * | 1992-12-04 | 1999-07-13 | The Children's Medical Center Corp. | Glaucoma treatment |
US5387608A (en) * | 1993-08-17 | 1995-02-07 | Allergan, Inc. | Cyclopentane(ene) heptanoic or cyclopentane(ene) heptenoic acid, 2-hydrocarbyl sulfonamidomethyl and derivatives thereof as therapeutic agents |
US5486540A (en) * | 1993-10-28 | 1996-01-23 | Allergan, Inc. | Cyclopentane heptanoic or heptenoic acid, 2-arylalkyl or arylalkenyl and derivatives as therapeutic agents |
WO1999038533A1 (fr) * | 1998-01-28 | 1999-08-05 | Senju Pharmaceutical Co., Ltd. | Mesures prophylactiques ou remedes contre les troubles de la vision |
US8557855B2 (en) * | 2002-07-03 | 2013-10-15 | Allergan, Inc. | Methods of using ryanodine antagonists in treating neural injury |
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2007
- 2007-02-02 US US12/223,526 patent/US20090197930A1/en not_active Abandoned
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Legal Events
Date | Code | Title | Description |
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Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A073 Effective date: 20110610 |