JPWO2006123392A1 - 植物の深根性評価方法 - Google Patents

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Abstract

本発明は、複数の個体あるいは系統の植物を、同じ培地水分含量の条件で、深根性について評価する方法に関する。本発明の方法は、複数の植物個体を、植物が根を伸ばすのに十分な深さがある栽培容器にいっしょに植えて、徐々に培地水分含量を下げることにより、複数の植物個体について同じ培地水分条件下で深根性を評価する方法である。本発明の方法はまた、栽培容器を水槽に設置することにより、培地水分含量の調整が容易であり、したがって栽培条件の管理が容易で効率のよい植物の深根性評価方法である。本発明の方法によれば、乾燥し、地下水位が低い環境でも生育できる植物を、効率良く評価・選抜できるため、乾燥地での栽培に適する作物や砂漠緑化に使用できる樹木類の品種育成に役立てることができる。

Description

本発明は、植物の根がより深くまで伸びる形質、すなわち、植物の深根性について評価する方法に関する。本発明はまた、乾燥条件下で根が長く伸長する植物を簡便に選抜する方法に関する。
植物の生長は土壌の水分条件に大きく影響される。植物は、土壌の水分が欠乏した条件にも適応して生育を維持するために、乾燥回避性又は生理学的耐性により耐乾性を獲得して適応する戦略をとっている。乾燥回避性とは、例えば、土壌の水分の欠乏に対して、根を深くまで伸ばしたり休眠したりすることにより乾燥ストレスを回避する性質である。乾燥についての生理学的耐性とは、乾燥している環境でも生育可能な性質である。
現在、地球上の農地の大半は半乾燥地帯であり、作物の生産は水によって大きく制限されている。土壌の乾燥は土の表面から下方に向かって進行するので、土壌表面近くが乾いていても、下方では水分含量が比較的高い場合が多い。そのため、植物の乾燥に対する適応戦略の中でも、根がより深くまで伸びる形質、すなわち深根性による乾燥回避は、干ばつ地帯における植物の生育維持、そして収量増加、さらには地球環境の保全にも大きく貢献すると期待されている。深根性を有する植物を育成するためには、非常に多数の植物を評価する必要があるが、根は土の中にあるので多数の個体の根を直接観察して評価することは難しく、簡便で効率の良い検定方法が求められている。
植物の深根性を調査する公知の方法には、塹壕法や円筒法など、いくつかの方法がある。
塹壕法は圃場で植物を栽培し、土を深さ0.5mから2m程度掘りあげて、深さ別に根の太さと数を調査する方法である(Nemoto, H., Suga, R., et al., Breeding Science 48: 321-324, 1998)。塹壕法は、土の掘りあげのために非常に労力がかかり、多数の植物を評価することは困難である。また、圃場で栽培するので、土壌の水分条件は自然の天候に左右される。土壌の水分条件、すなわち水分含量によって根の伸長速度が異なることは十分に考えられるので、土壌水分が十分な条件下で根の伸長が早いと評価された個体、系統、又は品種が必ずしも乾燥条件下でも伸長が早いとは限らない。したがって、このように多大な労力をかけて調査しても、干ばつ条件下で根の伸長が良くない品種/系統を選抜する危険性がある。
円筒法は、プラスチック製などの筒を用いて植物を栽培し、根の生育を調査する方法である。
円筒法のひとつとして、透明のプラスチック製円筒に植物を植えて、根が側面に現れるように円筒を傾斜させて栽培し、根の伸長速度や最大到達深度を測定する方法がある(Mia, M. W., Yamauchi, A., et al., Japanese Journal of Crop Science, 13: 131-140, 1996)。この方法は根を直接観察できる利点はあるが、ひとつの円筒に複数の個体を植えるとどの根がどの個体から発生したものか分からなくなるので、ひとつの円筒につき1個体しか調査できない。
また、Trillanaらは、長さ1mの塩化ビニール製ポットにイネの種子を播き、播種後14日間は土の上面2、3cm湛水状態に保ち、播種後62日目から一部の水を抜き、水位を底から30cm(土の表面から60cm)に下げて6日間栽培した後、再度土の上面2、3cmまで湛水状態で栽培し、根の密度や茎葉の乾物重などを比較している(Trillana, N., Inamura, T., et al., Plant Production Science 4: 155-159, 2001)。Trillanaらの方法では、乾燥処理後の水位を一定に保つために、毎日各容器に水を補給して調整しているが、この調整にはかなりの労力を必要とすると考えられるので、大量検定には不適である。さらに、Trillanaらの方法では、乾燥処理の排水のために4時間を必要としている。この試験では水位を1回だけ下げているが、数回に分けて徐々に水位を低下させる場合には非常に不便である。また、長い容器に土をつめてそれに水を満たす場合、水を上から加えると土壌中の空気が抜けにくく、水が土にしみこむまでにはかなり時間がかかる。このように、Trillanaらの方法は、小数の検体を扱う基礎的な研究には適しているが、大量の個体を扱う必要がある品種育成には不適である。
上記のMiaら、及びTrillanaらが開示する2つの円筒法では、異なる品種を別々の容器で栽培しているので、同じ土壌水分条件下で、複数品種の根の生育を比較したものではない。栽培容器内の土壌水分含量は植物の吸水により常に変化する。植物の吸水量は環境条件や生育ステージなどとともに植物体の大きさにより変動するので、土壌水分含量はこれらの影響を大きく受ける。異なる品種を別々の容器に植えた場合は、温度や光条件が同じでも、植物体が大きい品種は小さい品種よりも強い乾燥ストレスをより早く受けることになり、同じ土壌水分条件下での比較はできない。事実、Trillanaらの報告では乾燥処理終了時の土壌水分含有率が栽培した品種により異なっていたことが示され、これは地上部の生育の差によると述べられている。また、先に述べたとおり、彼らは乾燥処理後の水位を一定に保つために、毎日各容器に水を補給して乾燥処理後の水位を一定に保ったが、この作業の労力は大きく、仮にこの水位調整をしなかった場合は、容器間の土壌水分含有率がさらに広がっていたことは確実で、この差は試験結果に大きく影響すると考えられる。このように、複数の品種あるいは系統を別々の容器で栽培した場合は容器間で土壌水分条件が異なってくるので、同じ土壌水分条件での深根性を比較することはできない。
なお、深根性の評価方法ではないが、プラスチック製の鉢を用いた植物の耐乾性評価法がある(特開2003−230318号)。この方法は、検定植物を複数の鉢に植えて、好適栽培条件下で短期間育成した後に潅水を停止して乾燥処理を行い、次に1鉢ずつ期間を変えながら再び十分に潅水して所定期間栽培後、乾燥処理期間に対応した生存率を調査する方法である。この耐乾性評価法においても1つの鉢に1種類(品種)の植物のみを植えるので、乾燥処理を行うと時間の経過とともに容器間で土壌水分含量が異なったことが示されている。このために、耐乾性の限界が同じであると述べられている二つの品種において、乾燥処理日数が同じであっても生存率は大きく異なっている。同じ土壌水分含量時の生存率を比較するために、検体植物ごとに複数の鉢を用意して、期間ごとに土壌水分含量を測定する必要が生じ、非常に煩雑な方法となっている。このように、鉢を用いた耐乾性の試験であっても、異なる植物を別々の容器で栽培すると土壌水分含量に差が生じ植物間の耐乾性の比較は困難となる。
また、比較的浅いポットを用いた植物の耐乾性評価法(和田・鈴木ら、日本作物学会紀事(Jpn. J. Crop Sci.)70: 580-587, 2001)が報告されている。この方法は、複数の検定植物を同一のポットに植えて、好適栽培条件下で短期間育成した後に潅水を停止して乾燥処理を行い、そして、再び十分に潅水して所定期間栽培し、各時点における各植物の生育状況を調査する方法である。この方法は多大な労力は必要とせず、複数の植物を同一の土壌水分含量下で比較することができるものの、「土壌水分が少ない条件下での耐乾性の比較」をするものであり、根が土中深くまで伸びて乾燥を回避する形質(すなわち、深根性)との関連性は低く(Nemoto, H., Suga, R., et al., (1998) Breeding Science 48: 321-324)、この方法により選抜された植物が必ずしも深根性とは限らない。
深根性の植物を開発するためには、多数の個体あるいは系統を検定する必要があるが、上述のような植物の深根性を評価する従来の方法では、同じ土壌水分含量の条件で大量の検体の検定を行うことに対しては不適である。多数の植物について同じ土壌水分含量の条件でその深根性を評価し、選抜することが可能で、かつ、土壌水分含量の調整が容易であるなど栽培条件の管理が容易な、効率的で簡便な評価・選抜方法が求められている。
特開2003−230318号 Nemoto, H., Suga, R., et al., Breeding Science 48: 321-324, 1998 Mia, M. W., Yamauchi, A., et al., Japanese Journal of Crop Science, 13: 131-140, 1996 Trillana, N., Inamura, T., et al., Plant Production Science 4: 155-159, 2001 和田・鈴木ら、日本作物学会紀事(Jpn. J. Crop Sci.)70: 580-587, 2001
本発明の課題は、深根性の植物を簡便に効率よく評価し、選抜する方法を提供することを目的とする。
本発明の課題はまた、複数の個体あるいは系統の植物を、同じ培地水分含量の条件で、根の長さを実際に測定することなく、深根性について評価する方法を提供することである。
本発明の課題はさらに、培地水分含量の調整などの試験条件の管理が容易な、植物の深根性を効率よく評価できる方法を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するために、深さが十分にある栽培容器に、複数の植物個体を植えることにより、同じ培地水分条件下で植物の深根性を効率よく評価する方法を考案した。本発明者らはまた、底が開放された栽培容器を、水を溜める水槽内に設置することにより、水槽の水位を変えることにより栽培容器中の培地水分含量を容易に調整することができる方法を考案した。その結果、本発明の方法を完成させるに至った。
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明は、複数の植物個体を、該植物が根を伸ばすための深さが十分にある容器に植えた後、培地の表面から下方に向けて徐々に水分含量を下げて、植物の深根性による乾燥回避性を評価することを特徴とする。
したがって、本発明の方法は、複数の植物個体について同じ培地水分条件下で深根性を評価できる方法であって、以下の工程:
(1)植物が根を伸ばすために十分な深さのある栽培容器に培地を詰めて、複数の植物個体を植え;
(2)徐々に培地の水分含量を下げて、該植物に乾燥ストレスを与え;そして、
(3)該植物において現れた乾燥ストレス症状から、該植物の深根性を評価する;
を含む方法である。
別の態様において本発明の方法は、複数の植物個体について同じ培地水分条件下で深根性を評価する方法であって、以下の工程:
(1)植物が根を伸ばすために十分な深さのある、底が開放された栽培容器に培地を詰め、該栽培容器を水槽に設置し;
(2)複数の植物個体を該栽培容器に植え;
(3)水槽の水位を下げることにより培地の水分含量を徐々に下げて、該植物に乾燥ストレスを与え;そして、
(4)該植物において現れた乾燥ストレス症状から、該植物の深根性を評価する;
を含む方法である。
上記の本発明の深根性評価方法を用いて、深根性の植物を選抜することも可能である。そのような深根性の植物を選抜する方法もまた、本発明の範囲内である。本発明の深根性の植物を選抜する方法は、本発明の深根性評価方法の最後の工程において、該植物において現れた乾燥ストレス症状が軽い個体を深根性の植物として選抜することを含む方法である。
本発明の方法においては、栽培容器の底は開放されており、水槽と栽培容器の水は流通可能になっているので、水槽の水位を下げることにより栽培容器の水位も下がり、栽培容器中の培地は表面から下方に向かって徐々に乾燥していく。栽培容器により培地の乾燥の進み具合は多少異なるであろうが、同じ容器に栽培されている植物はどれも同じ培地水分条件下にある。培地の乾燥よりも早く下方に根を伸ばすことができる植物、すなわち深根性の植物は水を吸うことができるので乾燥ストレスを受けない。一方、根の伸長が遅い植物は、根の周りの土が乾燥していくので、乾燥ストレス症状を示す。
乾燥ストレスとは、植物が生育している環境における水分含量が減少した場合に植物が受ける影響をいう。本明細書において、乾燥ストレスを受けることにより生じる植物の症状を、乾燥ストレス症状という。乾燥ストレス症状には、例えば、生育の停止、葉の巻き、萎れ、枯れなどの外観症状のほか、気孔の閉鎖や光合成の低下などが含まれる。
このように、複数の植物個体を同じ容器で栽培することにより、同じ培地水分条件を与えることができ、それらの乾燥ストレス症状を比較することにより、深根性の植物を容易に選抜できる。
ここで、本発明の方法において深根性を評価する複数の植物個体は、互いに同種であってもよく、また異種であってもよい。好ましくは、当該複数の植物個体は、互いに同種の植物個体であるが、系統が同じであってもよく、又は異なる系統であってもよい。本明細書において同種であるとは、2以上の植物個体において、互いに植物分類学的に同じ種に属することをいう。本明細書において系統が同じであるとは、2以上の植物個体において、互いに遺伝子レベルで実質的に同一にある関係であることをいう。本明細書において系統が異なるとは、2以上の植物個体において、互いに遺伝子レベルで1以上の異なる点が存在するために形質が異なる株の関係にあることをいう。したがって、植物個体が互いに異なる系統である関係は、限定されるわけではないが、例えば、品種が異なる植物同士の関係、野生型植物と当該野生型植物について遺伝子組換えにより形質転換した植物の関係、交配実験におけるF0世代の植物とFn世代(nは1以上の整数)の植物の関係、交配実験において互いに異なる遺伝子を受け継いだF1世代の植物の関係、などを含む。異なる系統の複数の植物個体について、深根性を評価し、深根性の植物を選抜する本発明の方法は、耐乾性を有する植物の品種育成において有効なツールとなる。
本発明の方法により、深根性を評価することができる植物は、根が比較的長く且つ栽培容器で生育させうる大きさである限り、限定されるものではないが、好ましくは、種子植物、さらに好ましくは被子植物、さらに好ましくは草本性植物、さらに好ましくは根の長さが10cm以上になる草本性植物である。具体的にはイネ、トウモロコシ、コムギ、オオムギ、ソルガム、パールミレット、イタリアンミレット、サトウキビ、イタリアンライグラス、タバコ、ナタネ、ワタ、ナス、トマト、キュウリ、ステビア、ダイズ、シロイヌナズナ、花卉からなる群から選択される植物であってよく、さらに好ましくは、イネ、トウモロコシ、タバコからなる群の植物である。ただし、根が非常に長く伸びる植物、たとえば樹木であっても、若木の時に本発明の方法を用いることは勿論可能である。
植物を栽培する容器(以下、本明細書において「栽培容器」という。)の形状は特に限定はされないが、円筒形や立方形が扱い易いため好ましい。栽培容器の深さは、評価対象の植物が根を伸ばすのに十分な深さがあれば特に制限はなく、評価対象植物によっても異なるが、一般的には、好ましくは30cm以上300cm以下、さらに好ましくは40cm以上で250cm以下、さらに好ましくは50cm以上200cm以下である。栽培容器の断面積は、評価対象植物を栽培する大きさがあれば特に制限はないが、一般的には、20cm2から25m2が好ましく、30cm2から10m2が好ましく、さらに40cm2から5m2が好ましい。
栽培容器の好ましい深さ及び断面積は、評価対象植物の大きさによって異なるが、より具体的には以下のようになるであろう。シロイヌナズナなどの比較的小さい植物では30cm以上100cm以下の深さで、20cm2から1m2の断面積の栽培容器が好ましい。また、イネ、コムギ、ナタネ又はダイズなどの中程度の植物では50cm以上200cm以下の深さで20cm2から1m2の断面積の栽培容器が好ましい。さらに、トウモロコシやタバコなどの大きく育つ植物では50cm以上300cm以下の深さで、400cm2から25m2の断面積の栽培容器が好ましい。
栽培容器の下部は給水と排水のために開放された状態とする。開放の状態は、培地が容器内に保持されつつ、栽培容器内と水槽内の水が流通可能な任意の状態であってよい。このために、一般的には底又は底近くの側壁に水が十分に通る穴を少なくとも1つ設ける(以下、本明細書において「底穴」という)。栽培容器の側面に吸水又は排水用の穴を設けることは必須ではないが、根への酸素補給のための通気孔を兼ねるなど必要に応じて設けてもよい。栽培容器の素材は、塩化ビニールやポリカーボネートなどのプラスチック、ステンレス合金やアルミニウムなどの非腐食性または耐腐食性の金属、あるいは陶器などが好ましく、そして、栽培中に腐食したり、有害物質を放出したりするものは好ましくない。また、根が非常に長く伸びる植物を栽培する場合には、栽培容器をプラスチック製や金属製のチューブをコイル状に巻いた状態に形成することにより、必要な長さを確保してもよい。
栽培容器には栽培する植物に適する培地を詰める。培地の種類は特に限定されるものではなく、適度に水と空気とを含むことができ、水槽の水位を変えたときに緩やかに培地の水分含有量が変化し、かつ評価する植物の栽培に適するものであれば、天然物のほか、パーライト、バーミキュライトやロックウールのような人工物でもよい。このような培地として、例えば、砂土、砂壌土、埴壌土、黒ボク土やこれらの混合物あるいは市販の園芸用肥土などを好ましく用いることができる。培地には植物の生育に必要な肥料を加えることが好ましい。また、培地は大きな隙間ができないようになるべく均一に栽培容器に詰めることが好ましい。さらに、栽培容器の底穴から培地が流出しないように底穴の上に網や不織布などを入れることが好ましい。底穴の上に入れる網などの形状は任意に選択でき、そして、材質は腐食または腐敗や目詰まりしないものを使用する。
栽培容器は水を溜めることができる容器(以下、本明細書において「水槽」という。)内に設置する。設置の方法については、水槽の内底と栽培容器の底穴とが密着しないようにすることにより水槽から栽培容器の底穴を通して培地に給水できる形態であれば特に制限はないが、例えば、水槽の底にある程度の厚みのあるプラスチックなどでできた網を敷き、その上に栽培容器を置いてやれば、容易に設置することができる。この場合、水槽の水は網の隙間を通じて栽培容器の底面に充分入り込むことができる。水槽の深さは、栽培容器より浅くても深くても構わないが、水槽を満水にした場合に栽培容器の培地表面が乾くことがなく、また栽培容器より深い場合には側壁の影が植物の生育が悪影響を与えない範囲が好ましい。また、栽培容器を水槽に設置した際、水槽と栽培容器との高さの差が50cm以内、又は30cm以内、さらには10cm以内であることが好ましい。ただし、培地表面が乾かない深さを確保できない場合は、乾燥処理開始まで容器の上から潅水して、必要な培地水分を保つことも考えられる。水槽の間口は限定されるものではないが、栽培容器を10本以上設置できるものが作業効率の点から好ましい。水槽の材質は、限定されるものではないが、プラスチック、金属、コンクリートなどが強度を確保でき、入手しやすい点で好ましい。
水槽に水を張り、培地を湿らせる。水槽から栽培容器の底穴を通して給水することができるので、培地中の空気が抜けやすく、培地全体を確実にかつ短時間に湿らせることができる。水槽の水位は特に限定されるものではないが、植物を栽培する前に培地の表面が湿る高さまで水を張ることが好ましい。高い培地水分を好まない植物の場合でも、水槽に水を十分に張り、一旦培地全体を確実に湿らせてから水位を下げ、栽培開始前に適度な培地水分条件とすることが好ましい。水槽の水位を培地の表面が湿る程度にまで高くせず、培地の上から潅水して培地を湿らせてもよいが、この場合は培地に湿らない部分ができないように数日間にわたり何回も入念に潅水する必要がある。
なお、本発明においては、水槽内に栽培容器を設置する方法のほかに、例えば水槽と栽培容器とを別々に設置し、栽培容器の底穴と水槽の底又は下部をチューブなどで連結して水位を調整する方法を利用してもよい。このようにしても、水槽の水位あるいは位置を上下させることによって、栽培容器の水位を調整することができる。
すなわち本明細書において、「栽培容器を水槽に設置する」とは、水槽の水位の調整により栽培容器の水位の調整が可能となるよう、水槽と栽培容器を設置することを意味し、水槽の中に栽培容器を設置することのほか、栽培容器と水槽の底又は下部を連結することなどを含む。
栽植密度は、植物が通常生育できる密度であれば、特に限定されるものではないが、例えば、イネでは栽培容器の植え付け部の面積100cm2当たり1個体から100個体、さらに好ましくは5個体から30個体である。また、トウモロコシなど大きな植物の場合は、より栽植密度が小さいことが好ましく、栽培容器の植え付け部の面積1m2当たり1個体から200個体、さらに好ましくは10個体から100個体である。
評価対象植物の栽培容器への植え付けは、栽培容器に直接播種してもよいし、育苗箱などで育成した苗を移植してもよい。また、植物の根が通るよう底に穴などをあけた容器に苗を育て、容器ごと栽培容器に乗せる方法を利用してもよい。
なお、栽培容器に直接播種した場合には、発芽した後しばらく栽培し、ある程度生育してから本発明の方法を行うことが好ましい。また、苗を栽培容器に定植した場合には、根が活着した後に本発明の方法を行うことが好ましい。
本発明の方法において、栽培初期はその植物の生育に好ましい水分条件で栽培し、根がある程度伸びてから水槽の水位を徐々に下げて植物に乾燥ストレスを与えることが好ましい。
栽培容器と水槽の水は底穴を通して連絡しているので、水槽の水位を下げることにより栽培容器の水位を容易に下げることができる。
水位を下げ始める時期や下げ方については、評価対象植物によって異なるが、根が少なくとも約10cm伸びる程度の期間の後、栽培容器の深さの半分に達する前までの間が好ましい。この期間の決定については、予備実験などで評価対象植物の根の伸長特性を大まかに調査しておくことが好ましい。また、透明なプラスチックなどで作製した栽培容器を使用して根の伸長を観察してもよい。水位の下げ幅は特に限定されるものではないが、気温や光量に注意し、植物の状態を観察しながら行うことが好ましく、具体的には1週間当たり10cmから100cmが好ましい。例えば、3〜4葉期のイネの苗を定植した場合は、水位を下げ始める時期は定植後1週目から5週目の間が好ましく、さらに好ましくは1週目から4週目の間であり、水位の下げ幅は1週間当たり10cmから100cmが好ましく、さらに好ましくは20cm〜70cmである。従って、イネを例にすると、定植後1週目から4週目に水位を下げ始め、その後1週間から5週間かけて全体で80cmから150cm下げるのが好ましい。また、例えば1週間に水位を50cm下げる場合、一度に50cm下げてもよいし、数日おきに数回に分けて50cm下げてもよい。
水槽の水位を下げる方法としては、ポンプで水を汲み出す、水槽の底付近に設けた排水口から排水する、水槽の側壁に例えば10cmごとに設けた排水口から排水するなどの方法がある。
水槽の水位低下にともない栽培容器の水位も下がるので、植物の吸水と培地表面からの蒸発により、培地は表面から下方に向かって徐々に乾燥していく。培地の乾燥の進行より早く、深くまで根を伸長し、水分が十分にある層に根の先端を保持できる個体は乾燥ストレスを受けない。一方、根の伸長が遅い個体は根の周りに利用できる水分が少なくなるので生育を停止し、葉を巻くなどの乾燥ストレス症状を示し、さらに培地の乾燥が進むと葉が枯れ始め、最終的には枯死する。
適切な時期に茎葉の状態を調査して、深根性個体を選抜する。乾燥ストレスを早く受けた個体、すなわち根の伸長が遅い個体ほど重い乾燥ストレス症状を示しているので、症状が軽いものを深根性個体として選抜する。各容器に対照となる系統の植物を1〜数個体植えておくと、これら対照植物と検定植物とのストレス症状の程度を比較して評価できるので選抜が容易である。
本発明の方法は、複数の植物個体についてそれらの深根性を簡便かつ効率的に評価及び選抜することができるので、深根性による耐乾性を有する植物の品種育成を行うためのツールとして用いることができる。これは、複数系統の植物について本発明の方法により深根性の植物を評価及び/又は選抜することにより行う。例えば、品種育成の過程において、育種素材の中から深根性を有する個体や系統を育種母本として選抜する工程、育種素材や育種母本を交配させた後代の中から深根性を有する個体や系統を選抜する工程に、本発明の方法を用いることができる。このようにして選抜された個体や系統は、さらなる育種母本として使用することもできる。また、深根性に関係すると考えられる遺伝子を導入した形質転換体を、本発明の方法を用いて検定し、該遺伝子の評価を行うことができる。さらに、任意のDNA断片を導入した多数の形質転換体について、本発明の方法で検定・評価し、深根性に関係する遺伝子を探索することも可能である。
本発明はまた、本発明の方法により植物の深根性を評価するための装置であって、植物が根を伸ばすために十分な深さのある、底が開放された栽培容器及び該栽培容器を設置する水槽を含んでなり、該栽培容器には培地を詰めて水槽に設置して植物を培養し、そしてその際、該水槽の水位を調節することで、該栽培容器中の培地の水分含量を調節することが可能な、前記装置を提供する。また、本発明の装置は、本発明の方法の説明において上述したような様々な修飾や変更が加えられてもよく、それら修飾または変更された態様もまた、本発明の範囲内であることは当業者に理解されるであろう。本発明の装置の概略図を図1に示す。図1は、本発明の概念を示すためのものであり、本発明を概略図に示された態様に限定するものではない。
本発明の方法により選抜育成される、深根性を有する植物は、主に乾燥環境での栽培に適した植物であり、穀物、野菜、花卉その他商業作物は勿論のこと、さらには森林資源として、あるいは砂漠緑化のために植林されている樹木類も本発明を適用し、選抜、育成することができる。このような樹木類としては、例えばブナ、ツバキ、クスノキ、モクセイ、サクラ、ヤナギ、モクレン、ウメ、クヌギ、アオキ、ツツジ、スギ、ヒノキ、ナツメヤシ、タマリスク、ミモザ、ナツメヤシ、ユーカリ、マツ、ポプラ、ニレ、スナナツメなどが挙げられる。本発明をこういった樹木類に適用する場合には、根の長さがまだ短い若木の時に行うことが好ましい。
本発明の方法は、根の伸長を実際に測定しなくても深根性の個体を選別できるので、塹壕法のように、圃場で土を掘りあげるような多大な労力を必要とする工程は含まず、必要な労力は塹壕法に比べてはるかに少なくて済むため、大量検定に適している。また、従来知られていた円筒法では、異なる品種を別々の容器で栽培するので、同じ培地水分条件下で複数品種の根の生育を比較することはできなかったが、本発明の方法では、複数の植物を同じ栽培容器で培養できるので、同じ培地水分条件下で深根性を比較できる。さらに、本発明の方法は従来の方法と比較して、水位の調整などの栽培条件の管理が非常に容易である。
このように、本発明の方法は、複数の植物を同一の水分条件で栽培して比較できることに加え、水位の調整などの栽培条件の管理も非常に容易であり、深根性植物の大量検定を可能にする実用的な方法である。本発明の方法により、植物の深根性を簡便、効率的、かつ確実に評価することができる。
図1は、本発明の装置の縦断面の概略図である。 図2−1は、本発明の方法による、各タンク(タンク1、2)の栽培容器ごとの各品種の乾燥ストレス症状の評点の平均値の経過を示すグラフである。a.タンク1−栽培容器A、b.タンク1−栽培容器B、c.タンク1−栽培容器C、d.タンク2−栽培容器A、e.タンク2−栽培容器B、f.タンク2−栽培容器C、の結果をそれぞれ示す。 図2−2は、本発明の方法による、各タンク(タンク3、4)の栽培容器ごとの各品種の乾燥ストレス症状の評点の平均値の経過を示すグラフである。g.タンク3−栽培容器A、h.タンク3−栽培容器B、i.タンク3−栽培容器C、j.タンク4−栽培容器A、k.タンク4−栽培容器B、l.タンク4−栽培容器C、の結果をそれぞれ示す。 図3は、和田ら(日本作物学会紀事、70: 580-587, 2001)の方法による耐乾性試験の結果を示す図である。a.定植後37日目に乾燥処理を開始した場合、b.定植後44日目に乾燥処理を開始した場合、の結果をそれぞれ示す。
符号の説明
1・・・栽培容器
2・・・底穴
3・・・水槽
4・・・培地
5・・・水(水面)

以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例
供試材料としてイネ(Oryza sativa L.)の4品種を用いた。すなわち、日本の水稲品種「ゆきひかり」、日本の陸稲品種「ゆめのはたもち」、改良インディカ品種「IR36」及び日印交雑品種「水原287」の4品種である。ゆめのはたもちは深根性で圃場において高度の耐乾性を発揮すること(平澤・根本ら、育種学雑誌48: 415-419, 1998)、またIR36と水原287はポット試験において耐乾性が高いこと(和田・鈴木ら、日本作物学会記事70: 580-587, 2001)が報告されている。
種子をヘルシードスターナフロアブル200倍希釈液で4日間消毒、催芽処理をし、水稲用ポット苗箱(61×31×高さ2.5cm、セルの直径約15mm、セル32列×14穴)に1穴当たり1粒ずつ播種し、育苗した。
栽培には塩化ビニール製のパイプ(以下、「塩ビ管」、という。)で作成した3種類の容器を使用した。容器本体には長さ1mに切断したJIS規格K6741のVU50(外径60mm、内径56mm)、VU75(外径89mm、内径83mm)及びVU100(外径114mm、内径107mm)の3種類の塩ビ管を用いた。VU50は径が小さく、少数の植物体しか植え付けられないので、上端に径違いソケット(呼び径75×50)を取り付けてVU75やVU100と同数の植物体を植えつけられるようした。また、各塩ビ管の下端には径に応じたソケット(呼び径50×50、75×50又は100×50)を取り付け、さらに適度な長さのVU50を介して直径9.5mmの穴(以下、本実施例の中で「底穴」という。)を1つあけたキャップ(呼び径50)を取り付け、3種類の栽培容器とも全体の長さを約117cmに揃えた。容器本体にVU50、VU75、VU100を使用したものをそれぞれ栽培容器A、栽培容器B、栽培容器Cとした。
各容器には市販の水稲用育苗土24リットル当たりに市販の配合肥料「マグアンプK(NPK=6,40,6%)」を32g混ぜた土(以下、本実施例の中で「培地」という。)を詰めた。詰めた培地の量は容器A、B、Cそれぞれ約3、6.5、10リットルであった。
高さ88cm、外径56cm、容量200リットルの円筒型水槽(以下、本実施例の中では「タンク」という。)を4個準備し、タンクの底にプラスチック製の網を敷き、各タンク内に栽培容器Aと栽培容器Bを4本ずつ、栽培容器Cを3本設置し、タンクに水を入れた。タンクの水は栽培容器の底穴を通して容器内に入り、培地を徐々に湿らせた。タンクが満水の場合でも栽培容器の上部約29cmは水面より上に出ていたが、ほとんどの栽培容器では1日以内に培地表面まで水が吸い上げられた。ただし、培地の表面まで水が吸い上がらなかった一部の容器については上から潅水して培地を湿らせた。
各栽培容器に播種後13日目の、3葉期から4葉期のイネの苗を各品種2個体ずつ、同じ品種を対角の位置として、計8個体植えた。定植後に培地の表面が乾いた場合は適宜潅水し、乾燥ストレスがかからないようにした。
定植後2週目又は3週目から、タンクの水位を2回から4回に分けて下げ、乾燥処理を行った。表1に各タンクの水位の下げ方を示した。すなわち、タンク1は定植後2週目に水位を20cm下げ、その後1週間置きに20cm、30cmずつ下げ、5週目にはタンクの底まで下げた。同様に、タンク2は定植後3週目から40cm、30cm、18cmずつ、タンク3は定植後3週間目から20cm、30cm、30cm、8cmずつ下げた。タンク1、2、3ではタンクの底まで水を吸い出してもその後に栽培容器から徐々に水が出てきたが、この水はタンクにそのまま残した。これらの水は蒸発や栽培容器への移動により1週間以内に無くなった。タンク4は定植後4週間目に50cm、5週目に30cm下げ、底から8cmまでの水を残した。タンク4では9週目でも底に水が残っていた。なお、水位はタンクの水をポンプで汲み出すことにより容易に下げることができた。
タンクの水位を下げた数日後から培地の表面は乾き始め、定植後5週目(乾燥処理開始から3週目)ごろから植物に巻き葉などの乾燥ストレス症状が現れ始めた。
乾燥ストレスを受けた個体は生育を停止し、葉が内側に巻く乾燥ストレス症状を示し始めた。培地の乾燥が進むにつれ、葉は円筒状、さらには針状とより固く巻いた。針状をしばらく保った後葉先から枯れ始め、最後は葉鞘の水分が抜けて枯死した。ただし、ゆめのはたもちでは、一部の葉が少し巻いた状態で水分が抜けることもあった。
定植後5週目から9週目の間、週に3回(又は2回)、個体毎に乾燥ストレス症状に応じた評点を付けた(表2)。
図2−1のa.ないしf.及び図2−2のg.ないしl.に、各タンクの栽培容器ごとの各品種についての評点の平均値の経過を示した。
乾燥ストレス症状が現れ始めるのは径が小さい栽培容器ほど早かったが、栽培容器BとCには大きな差はなかった。一方、タンク間では乾燥ストレス症状の発生始まりに大きな差はなかった。例えば、タンク1では、栽培容器Aは定植後35日目、栽培容器Bは47日目、栽培容器Cは49日目であった。また、水位を最も遅く下げ始めたタンク4では、栽培容器Aは37日目、栽培容器BとCはともに47日目であった。
乾燥ストレス症状の発生始まりと進行は栽培容器の径と水位の下げ方によりやや異なったが、何れの栽培容器でも、ゆきひかりと水原287の症状の進行が早く、次にIR36で、ゆめのはたもちが最も遅かった。この品種間の関係はストレス症状が出始めてから観察中はほとんど変わらなかったのでいつでも判定できることが分かった。症状が出始めてから1〜2週間後の品種間の評点差は大きいが、それ以前でも実際に見ると外観差は大きいので判定は可能である。
定植後8週目に、タンク1、2、3から栽培容器Aを取り出し、定植部を下に向けて側壁を軽くたたき、根を切らないように注意して培地を引き出し、培地の乾燥状態と根を観察した。各栽培容器の最も長い根はタンク1では73〜80cm、タンク2では62〜64cm、タンク3では70〜83cmであり、培地は最も長い根の先端から上方10〜15cm程度までは湿っていたが、それより上は乾いた状態であった。また、最も長い根を辿り、それらがゆめのはたもちの根であることを確認した。
このように、ストレス症状が最も軽かったゆめのはたもちの根が最も深く伸びていた。従って、本発明の方法により深根性の植物を効率よく、容易に選抜できることが示された。
比較例
本発明との比較のために、和田らの方法(和田・鈴木ら、日本作物学会紀事 70:580−587,2001、参照により本明細書にその全体を援用する)に準じた浅い容器を使用した試験を行い、実施例に供試した苗についての耐乾性を評価した。本実施例と同組成の培地を詰めたプラスチック鉢(直径12cm、高さ10cm)に苗を定植し、深さ3〜4cm程度水を張ったベッドで、底面から給水させて栽培した。苗は実施例に供試したものと同じで、鉢への定植方法も実施例と同様に行った。定植後37日目と44日目に2鉢ずつ給水を停止し乾燥処理を行った。一日に3、4回植物の状態を観察し、ゆきひかりの葉鞘が株元まで乾いた時に、再び鉢に給水した。乾燥処理中と再給水後3日目に茎葉の状態を観察し、乾燥処理中は表2、再給水後は下記の表3により評点をつけた。
図3aに定植後37日目、図3bに定植後44日目に乾燥処理を始めた鉢の結果を示した。この方法では、水原287が最も耐乾性が強く、次にIR36、ゆきひかりで、ゆめのはたもちが最も弱い結果となった。この結果は、本発明の方法で評価した場合の結果、すなわち、ゆめのはたもちが最も乾燥に強く、水原287が最も弱いという結果とは全く異なるものであった。
ゆめのはたもちは深根性により高度耐乾性を示す陸稲品種である(平澤・根本ら、(1998) 育種学雑誌48:415-419)。また、Nemotoら(Nemoto,H., Suga,R. et al.,(1998) Breeding Science 48:321-324)は多数のイネ品種を、圃場で栽培することにより塹壕法で土壌深度別に根の量と深さを観察し、そして深さ10cmの容器で栽培することにより耐乾性を評価した。その結果、深根性は断水による萎凋度と有意な関係は認められず、回復力とは有意な正の関係が認められたと報告している。
しかしながら、本実施例及び本比較例の結果との比較は、浅い容器を用いた試験において回復力が高かったものが必ずしも深根性ではなかったことを示すものである。このように、上記Nemotoらの報告及び本実施例と比較試験の結果は、浅い栽培容器を用いた試験では深根性の植物が選ばれない危険性があることを示している。
以上の結果から、本発明の方法は深根性植物を簡便に、かつより確実に選抜するのに非常に非常に優れていることが示された。
本発明の方法は、複数の植物を同一の水分条件で栽培して比較できることに加え、水位の調整などの栽培条件の管理も非常に容易であり、深根性植物の大量検定を可能にする簡便かつ効率的な方法である。これらの特色により、本発明の方法の利用は深根性を有する植物を効率的に選抜することを可能にするため、乾燥回避性の植物の品種育成の効率向上に貢献する。

Claims (11)

  1. 複数の植物個体について同じ培地水分条件下で深根性を評価する方法であって、以下の工程:
    (1)植物が根を伸ばすのに十分な深さがある栽培容器に培地を詰めて、複数の植物個体を植え;
    (2)徐々に培地の水分含量を下げて、該植物に乾燥ストレスを与え;そして、
    (3)該植物において現れた乾燥ストレス症状から、該植物の深根性を評価する;
    を含む、前記方法。
  2. 複数の植物個体について同じ培地水分条件下で深根性を評価する方法であって、以下の工程:
    (1)植物が根を伸ばすのに十分な深さがあり、底が開放された栽培容器に培地を詰め、該栽培容器を水槽に設置し;
    (2)複数の植物個体を該栽培容器に植え;
    (3)水槽の水位を下げることにより培地の水分含量を徐々に下げて、該植物に乾燥ストレスを与え;そして、
    (4)該植物において現れた乾燥ストレス症状から、該植物の深根性を評価する;
    を含む、前記方法。
  3. 栽培容器の深さが、30cm以上300cm以下である、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 水槽と栽培容器の深さの差が50cm以内である、請求項2又は3に記載の方法。
  5. 培地が、砂土、砂壌土、埴壌土、黒ボク土、及びそれらの混合物、並びに園芸用肥土からなる群から選択される、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 栽培容器における植物の栽植密度が、100cm2あたり1個体から100個体である、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 栽培容器における植物の栽植密度が、1m2あたり1個体から200個体である、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の方法。
  8. 植物が種子植物である、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の方法。
  9. 複数の植物個体が、互いに異なる系統の植物個体である、請求項1ないし8のいずれか1項に記載の方法。
  10. 複数の植物個体から、深根性の植物を同じ培地水分条件下で選抜する方法であって、以下の工程:
    (1)植物が根を伸ばすのに十分な深さがあり、底が開放された栽培容器に培地を詰め、該栽培容器を水槽に設置し;
    (2)複数の植物個体を該栽培容器に植え;
    (3)水槽の水位を下げることにより培地の水分含量を徐々に下げて、該植物に乾燥ストレスを与え;そして、
    (4)該植物において現れた乾燥ストレス症状が軽い植物個体を、深根性の植物として選抜する;
    を含む、前記方法。
  11. 植物の深根性を評価するための装置であって、植物が根を伸ばすのに十分な深さを持ち、底が開放された栽培容器及び該栽培容器を設置する水槽を含んでなり、該栽培容器には培地を詰めて水槽に設置して植物を培養し、そしてその際、該水槽の水位を調節することで、該栽培容器中の培地の水分含量を調節することが可能な、前記装置。




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