JPWO2006118167A1 - 圧縮二酸化炭素を用いて抽出されたキノン化合物を利用したキノンプロファイル法等 - Google Patents

圧縮二酸化炭素を用いて抽出されたキノン化合物を利用したキノンプロファイル法等 Download PDF

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Abstract

【課題】 環境中微生物を簡便かつ迅速に分析可能な方法、および装置を提供すること。【解決手段】 キノン化合物の抽出装置には、環境由来試料を投入可能な抽出容器9と、この抽出容器9に超臨界二酸化炭素を挿通させる送液ライン6と、送液ライン6に超臨界二酸化炭素を送るポンプ3,5と、抽出容器9内を所定の圧力に保持する背圧レギュレータ11と、抽出容器9を所定の温度に保持するヒータ10と、抽出されたキノン化合物を吸着する吸着用部材12が備えられている。抽出工程を実施するには、抽出容器9の内部に環境由来試料を投入し、ヒータ10を所定の温度に制御しつつ、ポンプ3,5を駆動させて、ライン6から二酸化炭素およびメタノールを所定の流量で挿通させる。【選択図】 図2

Description

本発明は、環境中微生物群集の解析手法であるキノンプロファイル法に関するものであり、圧縮二酸化炭素(特に、超臨界二酸化炭素)を用いた簡便かつ迅速な方法等に関するものである。
環境中の微生物を群集として把握し、ある時点における微生物の量と種類に関する解析、及びそれら微生物が時間によって如何なる変化を行うかという動態解析の研究が進んでいる。この研究は、環境の汚染状況を把握するのみならず、環境水・土壌・コンポスト・農地あるいは活性汚泥のキャラクタリゼイジョンやそれらの評価、微生物を用いた環境修復・環境浄化(バイオリメディエーション)、生物学的水処理における活性汚泥やメタン発酵の制御にも応用することができる。また、微生物を同定する際の一次スクリーニングに有効的な方法となる。
従来、環境中(例えば、土壌中)に存在する微生物の99%以上は、実験室で培養することができない難培養性の微生物であることが知られている。このため、微生物群集を単離・培養するという古典的な方法では、全微生物群集の1%以下しか解析することができない。この困難を解決するために、環境中の微生物から直接に核酸を抽出するという方法が開発されている(特許文献1)。しかし、この方法は高価かつ煩雑であることに加え、現地において迅速な分析を行うことが難しい。
微生物群集を解析するためには、上記核酸分析方法の他に、キノン化合物を解析するというキノンプロファイル法がある。これは、ユビキノン、メナキノン及びプラストキノンというキノン化合物が、各微生物について、主として一種類のみが使用されているという事実に基づいて提案された方法である。すなわち、環境中微生物から各種キノン化合物を抽出し、各キノン化合物について、定量的な分析を行うことにより、微生物の量および種類を解析しようとする方法である。
キノンプロファイル法を実施するには、環境から採取した試料(例えば、土壌、水、大気)にクロロホルム・メタノールなどの有機溶媒を加え、振盪・抽出という抽出工程を行った後に、前処理を行い、液体クロマトグラフを用いた分析工程を行っていた。しかし、この方法では、抽出工程に約2時間、前処理に約0.5時間、分析工程に約2時間という長時間が必要であった。このため現地において、簡便かつ迅速に分析を行うことが難しかった。更に、抽出工程に大量の有機溶媒を用いることから、環境に対する負荷が大きかった。加えて、操作が煩雑であり、定量性に乏しく、感度的にも良好でないことから、微量サンプルの定量・大気中の微生物の分析には不向きであった。加えて、自動化および小型化を図りつつ、円滑に実施可能な装置を開発することは困難であった。
従来の研究においても、圧縮二酸化炭素を用いて、キノン化合物を抽出する方法が開発されている(特許文献2)。しかしながら、この方法で得られた抽出サンプルをキノンプロファイル法に用いる研究は行われていない。また、米国の研究者であるテネシー大学ホワイト博士は、SFE(Supercritical fluid extraction)法を用いて環境試料より三種のユビキノンのみを抽出した結果が学会に報告されている。しかし、この報告には抽出効率に関する記述はなく、キノンプロファイル法には適用されていなかった。本発明者の聞き取り調査によれば、ホワイト博士は、SFE法は上手くいかなかったので、研究を中止したとのことであった。
また、近年になって、コエンザイムQ10(ユビキノン10)の効用が認められつつあり、その使用量が急増している。これに対応するために、簡便かつ迅速なユビキノン10の抽出、精製方法の確立が望まれている。
本発明は、上記した問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、環境サンプルからキノン化合物を簡便かつ迅速に抽出し、このキノン化合物を用いて微生物群集を調査するためのキノンプロファイル法を実施できる方法等を提供することにある。また、別の目的は、ユビキノン10を簡便かつ迅速に抽出、精製する方法を提供することにある。
特開2005−65605号公報 ドイツ特許公報第294280号(DD294280 A5)
本発明者らは、圧縮二酸化炭素(特に、超臨界二酸化炭素)を用いることにより、環境由来試料から微生物由来のキノン化合物を簡便かつ迅速に抽出でき、かつこうして抽出したキノン化合物をキノンプロファイル法に供することにより、環境中の微生物群集を調査できることを見出し、基本的には本発明を完成するに至った。
すなわち、第1の発明に係るキノン化合物の抽出方法は、環境由来試料に圧縮二酸化炭素を接触させる抽出工程を備えることを特徴とする。
「キノン化合物」とは、微生物の細胞膜に脂溶成分として存在し、電子伝達系物質のひとつとして、呼吸鎖・光合成電子伝達に関与する物質である。キノン化合物には、ユビキノン(UQ)、メナキノン(MK)、プラストキノン(PQ)などがある。但し、本発明によれば、ビタミンK1(VK1)などのビタミン類が良好に抽出されることから、特に本発明においては、キノン化合物は、広義には、各種ビタミン類が含まれ得る。
キノン化合物は、各骨格およびイソプレン側鎖の長さによって、構造が異なる。n個のイソプレン側鎖を持つユビキノンおよびメナキノンは、それぞれUQ−n、MK−nと称される。更に、水素飽和度xの相違によって、UQ−n(Hx)、MK−n(Hx)と称される(図1を参照)。各キノン化合物は、骨格型、イソプレン側鎖数、および側鎖の飽和度などの違いによって、特有の酸化還元電位を示すので、微生物におけるエネルギー代謝の違いによって、キノン分子種が異なってくる。このため、各キノンを分離、定量することにより、環境由来試料中の微生物群集の特徴(すなわち、微生物の量および種類)を解析することができる。この解析方法をキノンプロファイル法という。また、キノン化合物の中には、単独で産業上の利用性が認められるものがある。例えば、ユビキノン10は、コエンザイムQ10として、大量に製造・販売が行われている。本発明では、そのようなキノン化合物を迅速かつ簡便に抽出することもできる。このため、本発明においては、キノン化合物がユビキノン10であることが好ましい。
「環境由来試料」とは、土壌、水、大気、または微生物発酵層から採取された試料を意味している。
より具体的には、土壌としては、例えば河川・海・湖・池の沿岸部、河川底部、湖沼底部、干潟、農耕地、森林、湿地帯、草地、堆肥、生物排水処理の汚泥などが例示される。本発明を土壌に対して適用するには、土壌そのものを環境由来試料として用いることができる。また、土壌から適当な抽出物(水、有機溶媒、分離用カラムなど)を用いて抽出した試料(液体、あるいは固体)を環境由来試料として用いることもできる。
水としては、例えば河川、湖沼、干潟、農耕地、森林、湿地帯、草地、生物排水などが例示される。本発明を水に対して適用するには、水そのものを環境由来試料として用いることができる。また、水から適当な抽出物(有機溶媒、分離用カラムなど)を用いて抽出した試料(液体、あるいは固体)を環境由来試料として用いることもできる。
大気としては、一般の大気の他に、閉鎖された空間(例えば、呼気、建物、地下道、洞窟など)内の大気などが例示される。本発明を大気に対して適用するには、大気そのものを環境由来試料として用いるほかに、大気をコンプレッサーで圧縮しつつ、微生物を捕獲するフィルタ、カラムに通すことにより、微生物を濃縮したものを環境由来試料として用いることができる。
微生物発酵層としては、特定のユビキノン化合物(例えば、ユビキノン10)を含有する微生物について、そのユビキノン化合物を抽出するために培養した発酵層を意味している。そのような微生物としては、天然にユビキノン10を含有するものを単離した微生物、或いはユビキノン10を生産させるための遺伝子を組み込んだ微生物(例えば、特開2002−345469、特開2002−191367、特開2001−61478、特開2000−228987、WO2002/040682)が例示される。
「圧縮二酸化炭素」とは、超臨界二酸化炭素または液体二酸化炭素を意味している。二酸化炭素は、臨界温度(Tc)が31℃、臨界圧力(Pc)が7.39MPaの物質である。TcおよびPcを越えた温度および圧力領域は、超臨界状態と呼ばれており、液体と気体の両方の特徴を示す。本発明では、超臨界二酸化炭素または液体二酸化炭素が、キノン化合物を抽出するための良好な溶媒として作用することを見出したものである。なお、本発明においては、圧縮二酸化炭素のうち、超臨界二酸化炭素を好ましく用いることができる。
「接触させる」とは、圧縮二酸化炭素を用いることにより、環境由来試料中からキノン化合物を抽出可能な状態で触れさせることを意味している。具体的な態様としては、圧縮二酸化炭素中に環境由来試料を添加して撹拌抽出する方法、環境由来試料中に圧縮二酸化炭素を通過させて抽出する方法などが挙げられる。また、抽出の際に、超音波やマイクロ波を利用することもできる。
キノン化合物を抽出するための条件としては、二酸化炭素が圧縮状態(つまり、液体または超臨界状態)にあれば良い。より具体的には、温度が約−56℃、圧力が約5MPaの三重点以上であれば、液体二酸化炭素となることから、実施可能となる。しかしながら、温度が約31℃以上、圧力が約7.39MPa以上の超臨界状態を満足する条件で実施することが好ましい。この場合に、温度が高くなりすぎると、キノン化合物の安定性が減少する懸念があることから、約70℃以下で抽出することが好ましい。
なお、本発明においては、圧縮二酸化炭素の極性のために、抽出されるキノン化合物が限定されてしまうことがあり得る。これを回避するには、圧縮二酸化炭素に加えて、適当な有機溶媒を添加することにより、極性の異なる様々なキノン化合物を抽出することが可能となる。このとき用いられる有機溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、アセトン、クロロホルム、ヘキサン、ジエチルエーテルなどが例示される。これらのうち、好ましくは、メタノール、エタノール、アセトン、クロロホルムであり、更に好ましくは、メタノール、エタノール、アセトンであり、最も好ましくはメタノールである。また、有機溶媒の混合比率は、圧縮二酸化炭素と有機溶媒とを加えた全量に対して、1%以上、好ましくは3%以上、更に好ましくは5%以上である。
また、キノン化合物として、ユビキノン10を対象として抽出する場合には、ヒトに対する投与が考慮されることから、安全性への配慮から考えると、エタノールを用いることが好ましい。但し、安全性への配慮が十分になされる場合には、抽出効率の点からは、メタノールを使うことが好ましい。
本発明においては、圧縮二酸化炭素を用いたキノン化合物の抽出工程の後に、抽出されたキノン化合物を吸着させる吸着工程を設けることが好ましい。そのようにすれば、キノン化合物を迅速に分離精製することができるからである。
吸着工程とは、キノン化合物を圧縮二酸化炭素、およびその他の化合物から分離するために、適当な吸着物質に吸着させることを意味している。ここで、吸着物質とは、キノン化合物を適当な条件下で吸着する能力を有する物質を意味しており、例えばシリカ、アルミナなどの吸着能を有する無機吸着剤を用いることができる。
また、本発明の方法によって抽出されたキノン化合物を用いて、環境中の微生物群集をモニタリングするキノンプロファイル法に適用することが好ましい。キノンプロファイル法とは、環境中の微生物群集を解析するための方法の一つであり、ユビキノン、メナキノン及びプラストキノンというキノン化合物が、各微生物について、主として一種類のみが使用されているという事実に基づいて提案された方法である。環境中微生物から各種キノン化合物を抽出し、各キノン化合物について、定量的な分析を行うことにより、微生物の量および種類を解析することができる。キノンプロファイル法については、従来は有機溶媒を用いた冗長なキノン化合物の抽出方法が使用されていたため、現場での迅速な微生物群集解析には用いられていなかった。本発明者らの研究によれば、圧縮二酸化炭素を用いたキノン化合物の抽出方法を応用することにより、迅速かつ的確にキノンプロファイル法に適用する抽出サンプルを得ることに成功した。また、本発明の方法によるキノンプロファイル法では、従来の抽出方法で得られたキノンプロファイル法の結果との間で良好な非類似度が得られるだけでなく、より小さな微生物相の相違を見分けられることも分かった。
第2の発明に係るキノン化合物の抽出装置は、環境由来試料を投入可能な抽出容器と、この抽出容器に圧縮二酸化炭素を挿通させる送液ラインと、この送液ラインに圧縮二酸化炭素を送るポンプと、前記抽出容器内を所定の圧力に保持する圧力調節器と、抽出されたキノン化合物を吸着させる吸着用部材とを備えていることを特徴とする。
第2の発明において、複数の抽出容器と複数の吸着用部材を前記送液ラインに対して並列に設け、一つの抽出容器に対して一つの吸着用部材を対応させるように移動制御させつつ環境由来試料からの抽出及び吸着を行わせる構成とすることが好ましい。そのような構成とすれば、複数の環境由来試料からのキノン化合物の抽出及び吸着を自動化させることができるので、簡易かつ迅速なキノン化合物の抽出装置を提供できる。
本発明によれば、圧縮二酸化炭素(特に、超臨界二酸化炭素)を用いることで、有機溶媒をほとんど用いることなく、操作が簡便で、かつ迅速(従来法の約1/5程度)に環境中微生物に由来するキノン化合物を抽出することができる。こうして得られたキノン化合物は、キノンプロファイル法に適用することができるので、従来法では不可能であった現地での微生物群集調査を行うことも可能となる。
また、本発明によれば、自動化および小型化を図りつつ、円滑に実施可能な装置を開発することができる。
次に、本発明の実施形態について、図表を参照しつつ詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は、下記の実施形態によって限定されるものではなく、その要旨を変更することなく、様々に改変して実施することができる。また、本発明の技術的範囲は、均等の範囲にまで及ぶものである。
<活性汚泥サンプル>
活性汚泥サンプルは、豊橋技術科学大学における排水処理場のエアレーションタンクから採取した。汚泥サンプルは、24時間の凍結乾燥処理を行い、500μm以下の細粒を篩い集めた。
<超臨界二酸化炭素を用いた抽出工程>
図2には、本実施形態に用いたキノン化合物抽出装置の概要を示した。図中左方向(上流)には、二酸化炭素ボンベ1が設けられている。ボンベ1の下流側には、二酸化炭素を冷却することで、液体状態を維持させるクーラ2がポンプ3(SCF−201ポンプ(日本分光株式会社製))を介して連結されている。更に下流側には、有機溶媒タンク4がポンプ5(SCF−201ポンプ(日本分光株式会社製))を介して連結されている。送液ライン6の途中には、液体状二酸化炭素と有機溶媒とを混合するジョイント部7が設けられている。混合された溶媒は、混合カラム8を通過して、抽出容器9に送られる。混合カラム8及び抽出容器9の外方には、ヒータ10(353B GCオーブン(GLサイエンシーズ社製))が設けられており、混合カラム8と抽出容器9を所定の温度に保持しておくことができる。抽出容器9の下流には、高圧セルを有する多波調型UV検出器13(MD−1510(日本分光株式会社製))が設けられており、サンプルから抽出された物質の有無を検出できる。UV検出器13の下流には、背圧レギュレータ11(880−81背圧レギュレータ(日本分光株式会社製))が設けられており、抽出容器9の内部圧力を制御するようになっている。また、図示右方向のライン最下流には、吸着用カートリッジ12が装着されており、ここにキノン化合物が吸着される。
抽出工程を実施するには、抽出容器9の内部に約0.1gの汚泥サンプルを投入した後、ヒータ10を所定の温度に制御しつつ、ポンプ3、5を駆動させて、ライン6から二酸化炭素および有機溶媒を所定の流量で挿通させることにより行った。
抽出工程の条件は、次の通りであった。抽出容器温度は25℃〜65℃、圧力は10MPa〜35MPa、二酸化炭素流量及び有機溶媒の合計流量を3.0mL/minとした。また、汚泥サンプルからのキノン化合物の抽出には、特にことわらない限り、15分間の抽出時間とした。装置の最下流には、吸着工程を実施するためのカートリッジ12として、シリカゲルカラム(二個のセップパックカートリッジ(Sep-Pak Plus Silica cartridge、ウォーターズ社製)を取り付けておき、抽出されたキノン化合物を捕捉した。
抽出工程、及び吸着工程が完了した後に、シリカゲルカラムをアセトンで洗浄することにより、捕捉されたキノン化合物を溶出させた。さらに、アセトン中のキノン化合物を別のシリカゲルカラム(二個のセップパックカラム)に吸着させた後、まず2%ジエチルエーテル・ヘキサン溶液を通すことで、メナキノン化合物を溶出分離した。次に、10%ジエチルエーテル・ヘキサン溶液をセップパックカラムに通すことで、ユビキノン化合物を溶出させた。各溶出溶液をエバポレータで蒸発濃縮させた後、アセトンで洗浄回収した。こうして、メナキノン化合物とユビキノン化合物を分離精製し、HPLCにより分析した。
<有機溶媒を用いた抽出工程:従来法>
比較対象として、従来の有機溶媒法による抽出工程を行った(J. Biosci. Bioeng., 87, 378 - 382)。抽出工程は次の通りであった。すなわち、約0.1gの汚泥サンプルに有機溶媒(クロロホルム:メタノール=2:1(v/v))を添加し、シェーカーにより30分間振盪し、9000rpm、10分間遠心分離した後、キノン化合物を含むクロロホルム層を分取した。この抽出操作を3回繰り返した。
次に、クロロホルム層に、ヘキサンと水の混合物(ヘキサン:水=25:15(v/v))を加えて振盪した後、7000rpm、10分間遠心し、クロロホルム層からヘキサン層にキノン化合物を再抽出した。ヘキサン層を適当にエバポレータを用いて蒸発濃縮した後、ヘキサン層をセップパックカートリッジに通して、キノン化合物を吸着させた。次いで、2%ジエチルエーテル・ヘキサン溶液を通してメナキノン化合物を溶出分離し、10%ジエチルエーテル・ヘキサン溶液を通してユビキノン化合物を溶出させた。各溶液をエバポレータで蒸発濃縮させた後、アセトンで洗浄回収した。こうして、メナキノン化合物とユビキノン化合物を分離精製し、HPLCにより分析した。
<HPLCによる分析>
分離精製したキノン化合物は、HPLC(島津製作所製)により分析した。カラムには、ODSカラム(Zorbax-ODS, 4.6mmI.D.x250mm, Agilent Technologies, USA)を用い、検出器には、UV−Vis検出器(Model SPD-10A, 島津製作所製)およびフォトダイオード検出器(SPD-M10A, 島津製作所製)を用いた。カラムオーブンは、35℃に保持した。移動相として、メタノール:イソプロパノール=9:2(v/v)を使用し、流量を1.0mL/minとした。各キノン化合物は、保持時間と、各ピークのUVスペクトルパターンにより同定した。各ユビキノンとメナキノンの定量のために、ユビキノン10(UQ-10)とビタミンK1を用いた。ユビキノン化合物の定量には275nmによる吸光度データを、メナキノン化合物の定量には270nmによる吸光度データを用いた。
<試験結果>
1.抽出溶媒を変化させたときの結果
図3には、抽出溶媒を変化させたときに抽出されたキノン化合物の濃度を示した。なお、抽出時の温度は35℃、圧力は25MPaであった。始めに、抽出溶媒を二酸化炭素のみ(流速3.0mL/min)としたところ、グラフ図の左端に示すように、活性汚泥サンプルからキノン化合物を抽出することができた。しかしながら、抽出されたキノン化合物の濃度は低かった。このとき、マイナーなキノン化合物(例えば、MK−10、MK−5(H4),MK−10(H4)、及びMK−10(H8)など)は、抽出されなかった。この結果より、二酸化炭素のみでは、極性物質を溶解するために十分ではないものと考えた。そこで、極性有機溶媒(すなわち、メタノール、エタノール、アセトン、及びクロロホルム)を二酸化炭素に混合することにより、キノン化合物の抽出効率を向上させることを試みた。
各有機溶媒の混合比率は、全抽出溶媒の10%とした。すなわち、二酸化炭素流量を2.7mL/minとし、有機溶媒流量を0.3mL/minとした。図3に示すように、極性有機溶媒を混合することにより、抽出されるキノン量が増加した。このとき、メタノール、アセトン、エタノール、及びクロロホルムの順で、抽出されるキノン化合物の全量が減少した。
次に、メタノールの混合比率を変化させたときのキノン化合物の抽出量の変化を確認した。図4には、メタノールの混合比率を1%、5%、10%、および20%としたときのキノン化合物の抽出量の変化を示した。なお、全例において、二酸化炭素とメタノールの合計流量を3.0mL/minとした。混合比率が5%以上では、十分良好にキノン化合物の抽出が可能であった。但し、混合比率が10%までは、混合比率の上昇につれて、抽出されるキノン量も増加した。また、混合比率が20%と10%とでは、結果には差違が認められなかった。そこで、以下の実験においては、メタノールの混合比率を10%として(すなわち、二酸化炭素流量を2.7mL/min、メタノール流量を0.3mL/minとした)、キノン化合物の抽出を実施した。
2.抽出時の圧力を変化させたときの結果
抽出時の圧力を変化させたときのキノン化合物の抽出量の変化を確認した。図5には、圧力を10MPa、15MPa、20MPa、25MPa、および30MPaとしたときのキノン化合物の抽出量の変化を示した。なお、その他の条件としては、温度35℃、二酸化炭素流量2.7mL/min、メタノール流量0.3mL/min、処理時間15分間であった。
いずれの圧力においても、十分良好にキノン化合物の抽出が可能であった。但し、圧力が10MPa〜25MPaの間では、圧力の上昇につれて、抽出されるキノン量も徐々に増加した。また、圧力が30MPaと25MPaとでは、結果には差違が認められなかった。そこで、以下の実験においては、圧力を25MPaとして、キノン化合物の抽出を実施した。
3.抽出時の温度を変化させたときの結果
抽出時の温度を変化させたときのキノン化合物の抽出量の変化を確認した。図6には、温度を25℃、35℃、45℃、55℃、65℃、および75℃としたときのキノン化合物の抽出量の変化を示した。なお、その他の条件としては、圧力25MPa、二酸化炭素流量2.7mL/min、メタノール流量0.3mL/min、処理時間15分間であった。
いずれの温度においても、十分良好にキノン化合物の抽出が可能であった。但し、温度が25℃〜55℃の間では、温度の上昇につれて、抽出されるキノン量も徐々に増加した。また、温度が65℃および75℃では、キノン化合物の抽出量がやや減少する傾向が認められた。キノン化合物には、熱に弱いものがあることから、分解が発生するのかも知れないと考えた。そこで、以下の実験においては、温度を55℃として、キノン化合物の抽出を実施した。
4.抽出時間を変化させたときの結果
抽出時間を変化させたときのキノン化合物の抽出量の変化を確認した。図7には、抽出時間を5分間、10分間、15分間、20分間、25分間、および30分間としたときのキノン化合物の抽出量の変化を示した。なお、その他の条件としては、圧力25MPa、温度55℃、二酸化炭素流量2.7mL/min、メタノール流量0.3mL/minであった。
いずれの抽出時間においても、十分良好にキノン化合物の抽出が可能であった。但し、抽出時間が5分間〜15分間の間では、時間の延長につれて、抽出されるキノン量も徐々に増加した。また、抽出時間が15分間、20分間、25分間、および30分間では、抽出されるキノン化合物には差違が認められなかった。
5.本実施形態の方法と従来法とにおけるキノンプロファイルの比較(1)
次に、本実施形態の方法(以下には、「SFE法」と言うことがある)と従来法とにおいて、活性汚泥サンプルからキノン化合物を抽出したときのキノンプロファイルの相違を確認した。本実施形態の方法における抽出条件は、圧力25MPa、温度55℃、二酸化炭素流量2.7mL/min、メタノール流量0.3mL/min、抽出時間15分間とした。
図8および図9には、本実施形態の方法と、従来法とのそれぞれの方法において、ユビキノンおよびメナキノンを抽出した後のHPLCパターンを示した。図8のチャート中のピーク1〜4は、それぞれUQ−7、UQ−8、UQ−9、およびUQ−10を示している。また、図9のチャート中のピーク1〜12は、それぞれMK−6,MK−7,MK−8,MK−8(H2),MK−8(H4),MK−9,MK−9(H2),MK−9(H4),MK−10,MK−10(H2),MK−10(H4),およびMK−10(H6)を示している。これらのチャートを比較することにより、本実施形態の方法と従来法とでは、抽出されたキノン化合物の種類および量について、定性的に同等の結果が得られているように考えられた。
表1には、本実施形態の方法を用いた場合の上記16種類のキノン化合物(4種類のユビキノン、および12種類のメナキノン)の抽出再現性を5回の試験によって確認した結果を示した。
Figure 2006118167
この結果は、本実施形態の方法によれば、いずれのキノン化合物についても良好な再現性を持って抽出が行えることを示している。
図10には、本実施形態の方法(SFE Method)と従来法(Conventional Method)とで、活性汚泥サンプルから抽出された全キノン化合物量、全メナキノン化合物量、および全ユビキノン化合物量を比較したグラフを示した。両方法のデータを比較すると、いずれも良好にキノン化合物が抽出されていることが示された。また、全キノン量および全メナキノン量/全ユビキノン量についても、両方法において良好な類似性を備えているように思われた。
図11には、本実施形態の方法と従来法とで、活性汚泥サンプルから抽出された各キノン化合物のモル比を比較したグラフを示した。図に示すように、両方法において抽出された各キノン化合物の比率については、非常に類似しているように思われた。両方法において、抽出されたメナキノン化合物のうち、主たるものは、MK−10(H4)、MK−9(H2)、MK−6、およびMK−7であった。また、ユビキノン化合物のうち、主たるものは、UQ−8、UQ−10、およびUQ−9であった。
次に、両方法による結果を定量的に比較するために、非類似性インデックス(dissimilarity index)Dを定義した。すなわち、得られたキノンプロファイル(すなわち各キノン化合物(iおよびj)の割合)データを下記式(1)に当てはめ、その数値Dを求めた。
Figure 2006118167
式中、fkiおよびfkjは、キノン化合物k(つまり、ユビキノン化合物、またはメナキノン化合物)における各キノンの割合を示している。Dが大きくなるほど、二つのキノンプロファイルは相違していることを示している。また、Dが0であれば、両キノンプロファイルが一致することを示している。従来法と本実施形態の方法とでは、D値は0.09と十分に小さかった。このことより、両方法は、実質的に同じ結果を示すことが示された。更に、下記式(2)により、キノンプロファイルによる微生物多様性度(microbial diversity of quinone profiles)DQを定義した。
Figure 2006118167
式中、fk はキノン化合物kの割合を示し、nは微生物の割合が0.001以上であったものの数を示している。本実施形態の方法の結果では、DQ値は11.99であった。一方、従来法の結果では、DQ値は11.95であった。このことより、両方法は、よく似た微生物多様性度を示すことがわかった。
6.本実施形態の方法と従来法とにおけるキノンプロファイルの比較(2)
次に、大学排水処理後の活性汚泥と機械工場排水処理(好気槽)後の活性汚泥とについて、従来法と本実施形態の方法によるキノン化合物抽出操作を行い、その抽出サンプルについてキノンプロファイル法を行った。本実施形態の方法の抽出条件は、前述と同じとした。それぞれの抽出方法により、各活性汚泥から3回ずつキノン化合物を抽出し、キノン化合物を測定した。
結果を図12〜図14に示した。図12に示すように、2種類の活性汚泥において、本実施形態の方法と従来法とでは、菌体からのキノン化合物の全抽出量に大きな違いは見られなかった。また、図13及び図14に示すように、両方法において、抽出されたキノン化合物の種類とその数も同じであった。
両方法で抽出されたキノン化合物を用いて行ったキノンプロファイル法の結果の非類似度は、それぞれ0.057(大学排水処理後の活性汚泥)、0.068(機械工場排水処理後の活性汚泥)であった。すなわち、従来法と本実施形態の方法で得られたキノン化合物で実施したキノンプロファイル法の結果が、同程度であったことから、本実施形態の方法が、従来の抽出方法を代替できることが分かった。
7.各種汚泥に対する本実施形態の方法に基づくキノンプロファイル
次に、大学排水処理後の汚泥(好気槽)、一般下水排水処理後の汚泥(好気槽、及び嫌気槽)、機械工場排水処理後の汚泥(好気槽、及び嫌気槽)、及び食品加工場排水処理後の汚泥(好気槽、及び嫌気槽)の7種類の汚泥について、本実施形態の方法によりキノン化合物を抽出し、その抽出サンプルについてキノンプロファイル法を実施した。
結果を図15に示した。図15に示すように、いずれの汚泥についても、菌体からのキノン化合物を良好に抽出することが可能であった。また、好気槽、及び嫌気槽の汚泥について得られたキノンプロファイルについては、非類似度の差はほとんど見られなかった。この結果は、従来法により得られている既存の研究結果と一致していた。なお、排水特性により微生物群集構造が違うことから、それぞれの排水については、各特性に基づく適切な汚泥処理操作を用いなければならないことが分かった。これらのことより、本実施形態の方法は、活性汚泥中の菌体を解析するためのキノンプロファイル法に好適に適用できることが分かった。
図16には、図15の結果において、各汚泥試料を三回ずつ分析して、一つの試料に対してそれぞれの非類似度を示した結果を示した。この図より、各試料のいずれについても、非類似度のバラツキが非常に小さく、良好な再現性を示すことが分かった。得られた非類似度の最大値は、機械工場排水処理後の汚泥(嫌気槽)であり、0.066であった。
この結果について、図17を参照しつつ、さらに説明する。図16において、本実施形態の抽出方法で得たサンプルから得られたキノンプロファイル法の非類似度が対数正規分布に従うと仮定する。図17には、その場合の各非類似度の値の累積確立密度をプロットした。この図は、本実施形態の抽出方法と従来法で得られた抽出サンプルについて、キノンプロファイル法を実施したときの非類似度の累積密度を示したものである。従来法の累積分布関数は、これまでに従来法で得られたものである(横浜国立大学大学院工学研究科物質工学専攻、胡洪営氏の博士論文「好気性バイオフィルターの性能解析」、第180頁、平成5年12月)。図より、従来法では、累積確率密度が97%に達するのは、非類似度が0.1のときであった(平石明; ポピュレーションダイナミックスと環境浄化、水環境学会誌、15(9)、 pp.558-563)。一方、本実施形態の抽出方法では、非類似度が0.07のときに累積確率密度が97%に達した。
つまり、従来の抽出方法では、非類似度が0.1程度の微生物相の違いを比較することが困難であった(同じ微生物相であると見なしてしまう)が、本実施形態の抽出方法を用いることにより、より小さな微生物相の違いを見分けることができることが分かった。言い換えれば、従来法では、非類似度が0.1以下であれば、その二つの試料における微生物相は同じであると判断せざるを得なかった。一方、本実施形態の方法では、非類似度が0.07以下でないと、同じ微生物相であると判断できないことが分かった。
図18には、上記7種類の汚泥について、本実施形態の方法で抽出されたサンプルにつきキノンプロファイル法を行ったデータをクラスター分析した結果を示した。クラスター分析とは、それぞれの試料で非類似度を算出し、横軸に非類似度を取り、低い値(つまり、微生物相の類似度が高いと判断されることを意味する)を組み合わせる分析手法である。図17を参照しつつ図18を見ると、従来法を用いた場合には非類似度が0.1以下であれば微生物相が同じであると判断してしまうため、一般下水処理場の好気槽及び嫌気槽の微生物相、並びに機械系排水処理場内の嫌気槽及び好気槽の微生物相の違いを検討することは困難であった。ところが、本実施形態の抽出方法を用いた場合には、非類似度が0.07以下でなければ微生物相が同じであると判断しないため、一般下水排水における好気槽と嫌気槽の微生物相が同一ではないと判断することができる。すなわち、非類似度の判定基準が、従来法の0.1から本実施形態の方法の0.07に分析精度が向上したため、一般下水排水における好気槽と嫌気槽の微生物相は同一ではないと判断ができる。
8.従来の抽出法と本実施形態の抽出方法との比較
次に、上記1〜7の結果を総合しつつ、キノン化合物の抽出方法について、従来法と本実施形態の方法との比較を行った。図19には、両方法(SFE法は、本実施形態の抽出方法である)の特徴を比較したものを示した。
SFE法では、高圧装置が必要であり、炭酸ガスを利用するものの、装置の自動化が容易であり、有機溶媒の使用量が低減される。特に、労働安全衛生法において特定化学物質と指定されているクロロホルムを使用しない。また、抽出時間においては、従来法の1/6にまで短縮できる。これにより、試料数が多数にある場合においても、SFE法により対応することが可能となる。なお、従来法では多数の試料を迅速に処理することが困難であったため、キノンプロファイル法を様々な分野で活用することが困難であった。
9.堆肥試料に関する試験結果
次に、堆肥試料を用いて、抽出前の乾燥工程方法および抽出時間が本実施形態の方法による菌体中のキノン化合物の抽出に与える影響を調べた。キノン化合物の抽出前に、試料の乾燥を行っていないもの、オーブンを用いて37℃で24時間乾燥をしたもの、及び凍結乾燥を24時間行ったものについて比較した。それぞれの試料において、30分と60分の二つの抽出時間で得られたキノン化合物の抽出結果を図20に示した。これにより、試料中に含まれる水の量(含水率)が抽出に与える影響を検討することができる。図より、乾燥工程が異なると、本実施形態の方法によるキノン化合物の抽出効率に影響を与えることが分かった。抽出時間を30分から30分に延長すると、キノン化合物の抽出量が増加することが分かった。
10.堆肥及び土壌からのキノン化合物抽出の比較
次に、従来法と本実施形態の方法(SFE法)を用いて、(A)堆肥と、(B)土壌中の微生物からキノン化合物を抽出し、それぞれの結果を比較した。この際、抽出前には、各試料を37℃で24時間乾燥した。また、本実施形態の方法の抽出条件は、55℃、25MPa、60分とした。
結果を図21に示した。図より、従来法と同様に、堆肥や土壌からもSFE法によりキノン化合物が抽出できた。このとき、抽出されたキノン化合物の数も同じであった。ただし、SFE法で得られたキノン化合物の抽出量は、それぞれの試料において従来法のものよりも低いことが確認された。但し、これは、堆肥及び土壌については、SFE法を用いた場合のキノン化合物の抽出条件が最適化されていないからである。抽出条件を最適化した場合には、活性汚泥のときと同様に、従来法とSFE法とでは、ほぼ同等のキノン化合物量が抽出されると思われた。また、従来法とSFE法で得られたサンプルをキノンプロファイル法に適用した場合の非類似度は、(A)堆肥に対しては0.054、(B)土壌に対しては0.031であった。得られた非類似度が十分に低いことから、堆肥及び土壌についても、SFE法が従来法を代替できることが確認できた。
11.UPLCを用いたキノン化合物の測定
次に、UPLC(ウルトラパフォーマンス液体クロマトグラフィー、ウォーターズ社製)を用いて、活性汚泥からSFE法で抽出されたキノン化合物を分離測定した。図22には、クロマトグラムチャートを示した。この図より、UPLCを用いることにより、従来使用しているHPLCよりも短時間で、ユビキノンおよびメナキノンを一斉に分離できることが分かった。
HPLCでは、図8及び図9に示すように、各菌体キノンの分離に、20分程度(ユビキノン)及び50分程度(メナキノン)を必要とする。加えて、この場合には、ユビキノン類とメナキノン類とを同時に測定することが困難である。しかし、UPLCを用いることにより、ユビキノン類とメナキノン類とを同時に流した状態で、全てを30分弱で分離することができた。このようにUPLCを用いれば、セップ・パック(Sep-pak)を用いてキノン化合物の粗分画処理を行う必要がないため、キノン分析に要する時間が大幅に短縮できることが分かった。
このように本実施形態によれば、超臨界二酸化炭素および極性有機溶媒(特にメタノール)を用いることにより、従来の方法に比べて、極めて少量の有機溶媒のみで、簡便かつ迅速に環境中微生物に由来するキノン化合物を抽出することができる。この方法により得られた抽出サンプルをキノンプロファイル法に応用すると、従来法と実質的に同等以上の結果が得られた。このため、本実施形態の方法は、従来法に代わり得る簡便かつ迅速な方法である。この方法により、従来法では不可能であった現地での微生物群集調査を行うことも可能となる。
また、本実施形態の方法によれば、特定のキノン化合物(例えば、ユビキノン10)を多く含有する微生物から、そのキノン化合物を簡便かつ迅速に抽出、精製することができる。
なお、本実施形態では、カートリッジ12を一つのみ設けているが、本発明によれば、複数の抽出容器と複数の吸着用部材を前記送液ラインに対して並列に設け、一つの抽出容器に対して一つの吸着用部材を対応させるように移動制御させつつ環境由来試料からの抽出及び吸着を行わせる構成とすることができる。そのようにすれば、複数の環境由来試料からのキノン化合物の抽出及び吸着を自動化させることができるので、簡易かつ迅速なキノン化合物の抽出装置を提供できる。また、装置の小型化を図ることもできる。
ユビキノン(UQ−n(Hx))、およびメナキノン(MK−n(Hx))の構造を示す化学式である。図中、(A)はユビキノン化合物を示し、(B)はメナキノン化合物を示している。 本実施形態における超臨界二酸化炭素抽出装置の概要を示す図である。 極性有機溶媒を二酸化炭素に混合したときに抽出されたキノン化合物の全量および各キノン化合物の比率を示すグラフである。左より、二酸化炭素のみ、メタノール10%、エタノール10%、アセトン10%、クロロホルム10%の混合溶媒で抽出した結果を示している。
メタノールの混合比率を1%、5%、10%、および20%としたときのキノン化合物の抽出量の変化を示すグラフである。 抽出時の圧力を10MPa、15MPa、20MPa、25MPa、および30MPaとしたときのキノン化合物の抽出量の変化を示すグラフである。 抽出時の温度を25℃、35℃、45℃、55℃、65℃、および75℃としたときのキノン化合物の抽出量の変化を示すグラフである。 抽出時間を5分間、10分間、15分間、20分間、25分間、および30分間としたときのキノン化合物の抽出量の変化を示すグラフである。
従来法および本実施形態の方法を用いてユビキノン化合物を抽出したときのHPLCパターンを示すチャート図である。(A)は本実施形態の方法により抽出したときのHPLCパターンを、(B)は従来法により抽出したときのHPLCパターンを示している。 従来法および本実施形態の方法を用いてメナキノン化合物を抽出したときのHPLCパターンを示すチャート図である。(A)は本実施形態の方法により抽出したときのHPLCパターンを、(B)は従来法により抽出したときのHPLCパターンを示している。 従来法と本実施形態の方法とで、活性汚泥サンプルから抽出された全キノン化合物量、メナキノン化合物量、およびユビキノン化合物量を比較した棒グラフである。左の棒は従来法による結果を示し、右の棒は本実施形態の方法による結果を示している。 従来法と本実施形態の方法とで、活性汚泥サンプルから抽出された各キノン化合物の濃度を比較した棒グラフである。左の棒は従来法による結果を示し、右の棒は本実施形態の方法による結果を示している。
従来法とSFE法とを用いて、大学排水汚泥と機械工場排水汚泥からキノン化合物を抽出し、キノンプロファイル法に適用したときの結果を示すグラフ図である。 大学排水汚泥について、従来法とSFE法とを用いてキノン化合物を抽出し、キノンプロファイル法に適用した結果に関して、各キノン類ごとの抽出量を比較したグラフである。 機械工場排水汚泥(好気槽)について、従来法とSFE法とを用いてキノン化合物を抽出し、キノンプロファイル法に適用した結果に関して、各キノン類ごとの抽出量を比較したグラフである。
各種汚泥について、SFE法を用いてキノン化合物を抽出し、キノンプロファイル法に適用したときの結果を示すグラフである。 各種汚泥について、3回のSFE法抽出を行い、非類似度を確認したグラフである。 従来法とSFE法とにおいて、非類似度と累積確率密度との関係を示すグラフである。 7種類の汚泥から得られたキノンプロファイルについて、クラスター分析を行った結果を示す図である。横軸の0.07に引かれた点線は、SFE法において、微生物相が同一であるか否かを判断する基準値を示している。
従来法とSFE法の特徴を比較する表図である。 各種の乾燥処理を施した後の堆肥からキノン化合物を抽出し、キノンプロファイル法に応用したときの結果を示すグラフである。 従来法とSFE法とについて、(A)堆肥及び(B)土壌からキノン化合物を抽出し、キノンプロファイル法に応用したときの結果を示すグラフである。 活性汚泥からSFE法で抽出されたキノン化合物をキノンプロファイル法に応用するために、UPLCで測定したときのチャート図である。
符号の説明
1…二酸化炭素ボンベ
3、5…ポンプ
6…送液ライン
9…抽出容器
10…ヒータ
11…背圧レギュレータ(圧力調節器)
12…吸着用カートリッジ(吸着用部材)

Claims (7)

  1. 環境由来試料に圧縮二酸化炭素を接触させる抽出工程を備えることを特徴とするキノン化合物の抽出方法。
  2. 前記圧縮二酸化炭素が超臨界二酸化炭素であることを特徴とする請求項1に記載のキノン化合物の抽出方法。
  3. 前記圧縮二酸化炭素には、有機溶媒が添加されていることを特徴とする請求項1または2に記載のキノン化合物の抽出方法。
  4. 前記抽出工程の後に、キノン化合物を吸着させる吸着工程を設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のキノン化合物の抽出方法。
  5. 前記キノン化合物がユビキノン10であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のキノン化合物の抽出方法。
  6. 環境由来試料を投入可能な抽出容器と、この抽出容器に圧縮二酸化炭素を挿通させる送液ラインと、この送液ラインに圧縮二酸化炭素を送るポンプと、前記抽出容器内を所定の圧力に保持する圧力調節器と、抽出されたキノン化合物を吸着させる吸着用部材とを備えていることを特徴とするキノン化合物の抽出装置。
  7. 請求項1〜4のいずれかに記載の方法によって抽出されたキノン化合物を用いて、環境中の微生物群集をモニタリングすることを特徴とするキノンプロファイル法。
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