本発明は、血液処理装置及び血液処理装置に血液を導入する方法に関する。詳細には、本発明は、血漿に含まれるタンパク成分の電気化学的分析のような血液成分の分析や、血球・血漿分離のような血液に対する種々の操作を実行するために、定量的に血液試料が導入されるチャンバを備える血液処理装置に関する。また、本発明は、そのような血液処理装置のチャンバに血液試料を導入する方法に関する。
近年、様々な健康診断チップが開発されている。これら健康診断チップの殆どは、マイクロタス(μ−TAS:Micro Total Analysis System)と呼ばれる微小流路構造を持つカード型のデバイスである。流路を微細化すると、生体から抽出するサンプル量は微量でよい点等で非常に有用である。また、流路の微細化により健康診断チップを含む装置全体を小型化できれば、比較的大規模の病院だけでなく、診療所や家庭での診断を行うPOCT(Point of care test:その場診断)用途に用いることが可能となる。
通常、この種のデバイスの分析対象は血液である。血液は、粒状成分である血球と液体成分である血漿から構成される高粘度の液体である。高粘度の血液試料を微小流路に導入することは困難であるので、血液の微小流路への導入に関して種々の試みがなされている。
図20は、特許文献1に開示された血液中の血糖値を電気化学的に測定するためのバイオセンサを示す。このバイオセンサは、2枚の基板101,103間にスペーサ102を挟んだ構造を有する。スペーサ102に形成された血液導入用のスリット104は、親水化されている。測定用の電極106、107、108はスリット104の導入口104a付近に配置されている。また、スリット104の閉鎖端104b付近に空気穴105が設けられている。導入口104a、電極106〜108、及び空気穴105は、スリット104が延びる方向に沿ってこの順に並んでいる。
導入口104aから導入された血液試料は、親水化されたスリット104内を毛細管現象により電極106〜108に向けて流れる。スリット104内に存在する空気は、導入口104とは反対側へ逃げて空気穴105から排出されるので、スリット104の閉鎖端104bまで血液試料を充填することができる。従って、スリット104の電極106〜108と対応する部位に空気泡の残留(エア噛み)が生じない。また、スリット104に導入される血液試料の容積を定量的に見積もることができる。この2つの理由により、電極106〜108により得られる電気信号の再現性が良好であり、血液中に含有される血糖値を定量的に把握することができる。このスリット104に空気穴104aを設ける構造は、マイクロリットル程度、もしくは少なくとも一つの代表長さが数100マイクロメートルから数ミリメートルである微小流路や微小スリットへの微量溶液の導入において極めて重要である。
図20に示すバイオセンサでは、電極106〜108はスリット104上に位置するので血液試料を送液する必要はない。しかしながら、ある種の測定では血液の送液や前処理が必要となる。例えば、血液中に含有されるCRP(C反応性タンパク)を電気化学的に計測する場合、血球が測定の阻害要因となるため、血球・血漿分離を行い、分離した血漿成分溶液を計測する必要がある。POCT用途に適した送液方法の一つに遠心力を利用する方法がある。
特許文献2に開示されたバイオセンサは、基板を回転させることで発生する遠心力を送液の駆動源とし、溶液をチャンバから別のチャンバへとマイクロ流路を介して送液することができる。送液の原理は、基板の非回転時にはチャンバとマイクロ流路の界面に発生する表面張力によりチャンバ内に液体を保持し、基板の回転により生じる遠心力によって力の釣り合いを崩し、別のチャンバへと送液するものである。この送液方法は、ポンプによる送液と異なり、チューブを接続する必要がないため、溶液の駆動に必要なデッドボリュームが発生しない。また、基板に多数の流路を設けておけば、複数の送液を同時に並列処理できる。さらに、前述の血球・血漿分離も遠心力で実現することができる。詳細には、粒状成分である血球と液体成分である血漿は密度の差があるので、遠心力によって互いに分離することができる。従って、特許文献2に開示されている遠心力を駆動源とする送液方法は、血球・血漿分離と統合することができる。詳細には、一つのチャンバでの血球・血漿分離と、分離した血漿成分溶液のマイクロ流路を介した別のチャンバへの送液の両方を、遠心力で実現できる。特許文献3、4、及び5にも、遠心力を利用する送液方法が開示されている。
しかし、遠心力を血液・血漿分離や送液に利用するには、前述の血液試料導入時の空気の排出に関して以下の問題がある。
図21を参照すると、血液試料が導入されるチャンバ200に空気穴(図20の符号105参照)を設けず、図示しない他のチャンバへの送液用のマイクロ流路201を空気穴として機能させる場合、チャンバ200に対するマイクロ流路201の接続位置は限定される。まず、基板202の回転中に発生する遠心力は矢印で示すように回転軸203から遠ざかる方向に作用するので、チャンバ200への血液試料の注入口204は遠心力により血液試料が飛散するのを防止するために、チャンバ200の内周側(求心性の方向)に設ける必要がある。空気穴として機能するマイクロ流路201は、前述のエア噛みを防止するために、注入口204とは反対側、すなわち外周側の部位200aでチャンバ200に接続する必要がある。しかし、遠心力により血漿205と血球206を分離すると、血液試料に約40%〜50%含まれる血球206がチャンバ200aの最外周側の部位200aに溜まりチャンバ200に対するマイクロ流路201の開口部を閉塞させるので、送液が不可能となる。この血球206による閉塞を回避するために、図22に示すようにマイクロチャンバ200に対するマイクロ流路201の接続位置を内周よりに設定すると、注入口204から血液試料を導入時にマイクロチャンバ200内の空気をマイクロ流路201から完全に排出することができず、マイクロチャンバ200の最外周側の部位200aに空気泡208が残留してエア噛みが起こり、血液試料の定量的な導入が不可能となる。
以上の理由から、血液試料の定量的な導入のためにチャンバ内の空気を確実に排出するには、マイクロ流路とは別に、チャンバの注入口とは反対側に空気穴を設ける必要がある。しかし、チャンバの両端部に開口、すなわち注入口と空気穴を設けた構造では、遠心力によっていずれかの開口から血液試料が飛散する。よって、少なくともいずれか一方の開口を血液試料の導入後に封止する作業が必要となる。例えば、遠心力に打ち勝つ粘着性を持ったシート片を貼り付ける作業が必要となる。
特開平2000−065778号公報
特表2001−503854号公報
特表2002−503331号公報
特許3356784号公報
特許3469585号公報
本発明は、チャンバに血液試料を定量的に導入可能で、かつ血液試料の導入後にチャンバに連通する開口を閉鎖する作業を行うことなく、そのまま血液試料の操作を行うことができる血液処理装置及び血液導入方法を提供することを課題とする。
本発明の第1の態様は、基板(2)と、前記基板内に形成された第1のチャンバ(6)と、前記基板に形成され、かつ前記第1のチャンバと前記基板の外部を連通させる、血液試料(9)を前記第1のチャンバ内に導入するための注入口(11)と、前記基板に形成され、かつ前記第1のチャンバと前記基板の外部を連通させる空気穴(12)と、前記空気穴(12)の穴壁面及び/又は前記基板の表面の前記空気穴が開口する部分の周囲に保持された血液凝固剤(13)とを備えることを特徴とする血液処理装置を提供する。
注入口から血液試料を導入する際には、第1のチャンバ内に存在する空気を空気穴から排出しつつ、血液試料を第1のチャンバ内に導入することができる。従って、第1のチャンバ内でエア噛みを生じることなく、第1のチャンバの全体に血液試料を導入することができる。これにより第1のチャンバに一定量の血液試料の量を導入することができる。この点で第1の発明の血液処理装置は、定量性が要求される測定、分析等の処理に適している。
血液凝固剤は第1のチャンバに導入された血液試料と接触すると反応し、血液試料を凝固させる。凝固した血液試料により空気穴が封止される。従って、第1のチャンバへの血液試料導入後に、血球と血漿の遠心分離や送液等の第1のチャンバ内の血液試料に遠心力が作用する処理を実行しても、血液試料が空気穴から基板の外部に飛散することがない。また、空気穴を封止するためにシート片の貼り付け等の特別な作業を行う必要がない。
前記空気穴の直径は、10μm以上3mm以下であることが好ましい。空気穴の直径をこの範囲に設定することで、血液試料の導入時に第1のチャンバ内の空気を確実に基板外に排出できる。また、血球と血漿の遠心分離や送液等の処理の際に作用する遠心力により血液試料が空気穴から飛散しないように、血液中の血小板凝固によって確実に空気穴を封止できる。
前記血液凝固剤は、前記血液試料の凝固又は前記血液試料中の血小板の凝集を開始させる少なくとも1種類の物質を含む。
具体的には、血液凝固剤は、0.2μmol以上2mmol以下のカルシウムイオン又はイオノマイシンを含むことが好ましい。血液中の血小板凝固を開始させることができ、それによって空気穴を封止することができる。
さらに具体的には、前記血液凝固剤は、組織トロンボプラスチン、部分トロンボプラスチン、活性化部分トロンボプラスチン、及び活性化セファロプラスチンのうちの少なくとも一つを含むことが好ましい。これらの物質を含むことで、血液中の血小板凝固を迅速に開始させることができる。
また、前記血液凝固剤は、トロンビン、エピネフリン、血小板活性化因子、リストセチン、トロンビン受容体感受性ペプチド、及びアラキドン酸のうちの少なくとも一つを含むことが好ましい。これらの物質も、血液中の血小板凝固を迅速に開始させる。
前記血液凝固剤は、親水性を有することが好ましい。第1のチャンバに導入された血液試料が空気穴の周囲に保持された血液凝固剤に接触すると、毛細管現象によって迅速に空気穴の穴壁面を濡らす。従って、血液試料導入から血液試料の凝固による空気穴の封止までに要する時間を短縮することができる。
血液処理装置は、前記基板の表面に形成され、底壁が前記前記空気穴と連通し、かつ前記底壁の面積が前記空気穴の面積よりも大きい保持凹部をさらに備え、前記血液凝固剤は、少なくとも前記保持凹部の前記底壁の前記空気穴の周囲に保持されていてもよい。血液凝固剤の表面積が増加するので、血液凝固剤と血液試料の接触面積が増加する。これによって血液中の血小板凝固がより迅速に起こり、かつ凝固した血液により空気穴をより強固に封止できる。従って、第1のチャンバへの血液試料の導入から空気穴の封止までに要する時間を短縮し、かつ遠心分離等の血液操作の際に第1のチャンバ内の血液試料が遠心力によって空気穴から基板の外部に飛散するのをより確実に防止できる。保持凹部の底壁の面積は、0.015mm2以上30mm2以下であることが好ましい。
前記基板は回転中心線(S)まわりに回転可能であり、前記基板を前記回転中心線まわりに回転駆動可能な回転駆動部(4)をさらに備え、前記注入口は前記第1のチャンバの前記回転中心線側の部位に形成され、かつ前記空気穴は前記第1のチャンバの前記注入口よりも前記回転中心線から離れた部位に形成されていることが好ましい。空気穴を注入口よりも基板の回転中心線から離れた位置に配置することで、注入口から第1のチャンバに血液試料を導入する際のエア噛みを確実に防止できる。また、回転駆動部による基板の回転駆動時には、血液凝固剤により凝固した血液が空気穴を封止することで、遠心力によって第1のチャンバ内の血液試料が基板の外部に飛散するのを確実に防止できる。
血液処理装置は、前記基板内に形成された第2のチャンバ(7)と、前記基板内に形成され、前記第1のチャンバと前記第2のチャンバとを連通させる流路(8)をさらに備え、前記第1のチャンバと接続する前記流路の流路端部(8a)は、前記空気穴よりも前記基板の前記回転中心側に配置されていてもよい。
第1のチャンバと第2のチャンバを連通させる流路が空気穴よりも回転中心側で第1のチャンバに接続するので、回転駆動部が回転中心線回りに基板を回転させることで血球・血漿分離を実行しても、流路端部は血球により閉塞されず開放状態を維持する。従って、血球・血漿分離後に流路を介して第1のチャンバから第2のチャンバへ血漿を送液することができる。
前記第1のチャンバに接続する前記流路の前記流路端部は、前記基板の回転方向に沿って延び、かつ前記第1のチャンバ内の液体試料を毛細管力(Fc)によって保持し、かつ
前記回転駆動部は、前記毛細管力を上回る慣性力(Fi)が前記流路端部の前記血液試料に作用するように、前記基板を前記回転中心線まわりに回転駆動可能であることが好ましい。
ここで回転方向は、回転中心線に対して直交する仮想の線に対して直交し、かつこの仮想の線と同一の平面上にある方向として定義する。例えば、基板が回転軸に固定される場合、この回転軸の半径方向に対して直交する接線方向が回転方向である。回転方向は、平面視で回転中心線に対して時計方向及び反時計方向のいずれでもよい。
注入口から注入された第1のチャンバ内の血液試料は、毛細管力により流路端部で保持される。回転駆動部により基板が回転することにより、流路端部で保持されている血液試料に対して回転方向に慣性力が作用する。この慣性力が毛細管力を上回ると、第1のチャンバ内の血液試料が流路に流れ込み、第2のチャンバに送液される。
前記第2のチャンバ内に血液成分を分析するための検出電極(61,62,63)を設けてもよい。
第1のチャンバへの血液試料の導入及び血球・血漿の遠心分離の後に、血漿成分のみを流路を介して第2のチャンバへ送液し、第2のチャンバにおいて検出電極による電気化学測定が可能できる。例えば、第2のチャンバに測定用のバッファ成分や検出用の酵素や電子授受体を保持させておくと、第2のチャンバに送液された血漿成分はこれらの物質と反応を起こし、検出電極で測定される電流値から血液中に含まれる成分の量を推定することができる。従って、疾患の予測、健康状態の把握等のために必要な情報が得られる。
例えば、前記基板は、前記注入口及び前記空気穴が厚み方向に貫通するように形成された第1の基体(21)と、前記第1のチャンバ、前記第2のチャンバ、及び前記流路が形成され、かつ前記第1の基体に接合された第2の基体(22)とを備える。
この場合、第1のチャンバと注入口及び空気穴とを一体形成する必要がない。また、第2の基体に適切な形状の凹部を形成することで第1のチャンバ、第2のチャンバ、及び流路として機能させることができる。さらに、単に第1の基体に貫通孔を形成することで注入口及び空気穴として機能させることができる。従って、基板の効率的な生産が可能であり、血液処理装置の製造コストを低減できる。
基板を第1及び第2の基体を接合する構造とすることで、より複雑な流路構造を容易に実現できる。例えば、第1の基板の接合面側に蒸着やスパッタのような薄膜堆積技術を適用することで、第2のチャンバ内に検出電極を設けることができる。
空気穴を設けた第1の基体は、第1のチャンバを設けた第2の基板とは別体である。従って、第1の基体の空気穴の穴壁面、空気穴の周囲、及び保持凹部の底壁のような必要な箇所に血液凝固剤を含む溶液を滴下することで、容易にこれら必要な箇所にのみ局所的に血液凝固剤を保持させることができる。
前記基板に、前記第1のチャンバ、第2のチャンバ、及び前記流路を備える流路部位(5)が複数個形成されていることが好ましい。単一の基板に設けられた複数の第1のチャンバ内の血液試料に対し、遠心分離、送液、成分分析等の操作を同時に並列して実行することができる。従って、これらの操作の効率化を図ることができる。また、単一の基板に集積化して複数の流路部位を設けることで、製造コストを低減できる。
本発明の第2の態様は、注入口(11)、空気穴(12)、及び前記空気穴の周辺に保持された血液凝固剤(13)を備えるチャンバ(6)に血液試料を導入する方法であって、前記注入口からチャンバ内に血液を導入し、前記空気穴を介して前記チャンバ内に存在する空気をチャンバ外に排出させ、かつ前記チャンバ内に導入した血液試料と前記血液凝固剤を接触させ、前記血液凝固剤により凝固した前記血液試料で前記空気穴を封止することを特徴とする血液導入方法を提供する。
注入口からチャンバ内に血液試料を導入すると、チャンバ内に存在する空気は空気穴から排出される。従って、チャンバ内でエア噛みを生じることなく、チャンバ全体に血液試料を導入することができる。これによりチャンバに一定量の血液試料の量を導入することができる。チャンバに導入された血液試料は血液凝固剤と接触して凝固し、それによって空気穴が封止される。従って、チャンバへの血液試料導入後に、血球と血漿の遠心分離や送液等のチャンバ内の血液試料に遠心力が作用する処理を実行する際に、血液試料が空気穴から飛散することがない。また、空気穴を封止するためにシート片の貼り付け等の特別な作業を行う必要がない。
本発明の第3の態様は、前記血液処理装置が備える前記チャンバに前記血液凝固剤を保持させる方法であって、予め定められた濃度に前記血液凝固剤を溶解した溶液を作製し、前記溶液を前記穴壁面及び/又は前記基板の表面の前記空気穴が開口する部分の周囲に滴下し、前記滴下した溶液を乾燥させることを特徴とする、血液凝固剤を保持させる方法を提供する。
前記滴下した溶液を凍結乾燥により乾燥させることが好ましい。血液凝固剤が室温以上の温度で不安定であっても、血液凝固剤を安定してチャンバに保持させることができる。
本発明の血液処理装置によれば、空気穴を設けたことにより、エア噛みを起こすことなく、チャンバ全体に血液試料を導入できる。これによりチャンバに導入する血液試料の量を毎回一定にできるので、定量性が必要な測定に適している。換言すれば、血液に含有される成分の量を再現良く、定量的に、高精度で把握することができる。
また、空気穴を設けるため、チャンバにつながる流路の配置の自由度も大きくなる。これは、より複雑な送液挙動を簡単な操作で実現することが可能となる。
さらに、空気穴はチャンバに導入された血液試料が血液凝固剤と接触して硬化することにより封止されるので、例えば、血球と血漿を遠心分離する場合においても、血液が開口から飛散しない。また、空気穴を封止するためのシート片の貼り付け等の特別な作業を行うことなく血液の操作を行うことができる。これにより分析等の血液の処理に要する時間を短縮できる。しかも、人間の手を煩わせることがなく、簡便であり、感染性の可能性のある血液を扱う際にも、操作者の安全を確保できる。
本発明の第1実施形態に係る血液分析装置を示す模式的な構成図。
本発明の第1実施形態に係る血液分析装置の回転基板の部分拡大平面図。
図2のIII−III線での部分断面図。
本発明の第1実施形態に係る回転基板の分解斜視図。
空気穴から供給チャンバ内の空気が排出されている状態を示す回転基板の部分拡大断面図。
凝固した血液により空気穴が封止された状態を示す回転基板の部分拡大断面図。
血球・血漿分離後の状態を示す回転基板の部分拡大平面図。
本発明の第1実施形態に係る血液分析装置の送液動作の第1の例の速度波形及び回転方向を示す線図。
回転基板の回転開始前に流路端部の血漿に作用する力を説明するための概略平面図。
回転基板の回転開始中に流路端部の血漿に作用する力を説明するための概略平面図。
回転基板の急停止時に流路端部の血漿に作用する力を説明するための概略平面図。
送液時に流路端部の血漿に作用する力を説明するための概略平面図。
本発明の第1実施形態に係る血液分析装置の送液動作の第2の例の速度波形及び回転方向を示す線図。
回転基板の回転開始前に流路端部の血漿に作用する力を説明するための概略平面図。
回転基板の急回転時に流路端部の血漿に作用する力を説明するための概略平面図。
送液時に流路端部の血漿に作用する力を説明するための概略平面図。
回転基板の第1の代案を示す分解斜視図。
回転基板の第2の代案を示す分解斜視図。
本発明の第2実施形態に係る血液分析装置の回転基板の部分拡大平面図。
図13のXIV−XIV線での部分断面図。
本発明の第3実施形態に係る血液分析装置の回転基板の部分拡大平面図。
図15のXVI−XVI線での部分断面図。
本発明の第4実施形態に係る血液分析装置を示す模式的な構成図。
図17のXVIII−XVIII線での部分拡大断面図。
本発明の第4実施形態に係る血液分析装置の回転基板の部分拡大平面図。
従来の血液分析装置の一例であるバイオセンサを示す分解斜視図。
微小流路を空気穴として使用する場合の問題点を説明するための模式図。
微小流路をチャンバの回転軸側に接続する場合の問題点を説明するための模式図。
符号の説明
1 血液処理装置
2 回転基板
3 回転軸
4 回転駆動部
5 流路部位
6 導入チャンバ
7 下流側チャンバ
8 流路
8a 入口端部
8b 出口端部
9 液体試料
9A 血球
9B 血漿
11 注入口
12,14 空気穴
12a 穴壁面
18 保持凹部
18a 底壁
61 作用電極
62 対極
63 参照電極
64,65,66 リード線
67,68,69 電極端子
70 絶縁膜
S 回転中心線
次に、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
(第1実施形態)
図1から図4は、本発明の第1実施形態に係る血液処理装置1を示す。
この送液装置1は、回転基板2、この回転基板2が固定される回転軸3、及び回転軸3を回転駆動する回転駆動部4を備える。回転軸3はその軸線(回転中心線)Sが鉛直方向に延びる姿勢で配置されており、その上端側に回転基板2が固定されている。回転基板2は平面視で円形であり、回転基板2の中心は回転中心線Sと一致している。一方、回転軸3の下端側は後述するモータ31に連結されている。
回転基板2は回転軸3と共に回転する。以下の説明では、図2において矢印R1,R2で示すように、回転軸3の回転方向を回転軸3の半径方向rに対して直交する方向として定義する。換言すれば、回転方向は回転軸3の回転中心線Sに対して直交する仮想の線に対して直交し、かつこの仮想の線と同一の平面上にある方向として定義する。回転基板2は2方向、すなわち平面視で時計方向R1及び反時計方向R2に回転可能である。
図1に示すように、回転基板2には複数の流路部位5が回転軸3の周囲に放射状に配置されている。図2及び図3を併せて参照すると、流路部位5は、血液試料が導入される導入チャンバ(第1のチャンバ)6、導入チャンバ6から血液試料が送液される下流側チャンバ(第2のチャンバ)7、及び導入チャンバ6と下流側チャンバ7を流体的に連通させる微細な流路8を備える。複数の流路部位5を一つの回転基板2に集積化して設けることにより、複数の血液試料に対して後述する操作を動じに並列して実行して操作の効率化を図ることができる。また、単一の回転基板2に集積化して複数の流路部位5を設けることで、製造コストを低減できる。
導入チャンバ6は回転基板2の内部に形成され、空間的に閉じられている。ただし、回転基板2には導入チャンバ6の上壁から回転基板2の表面2aに貫通し、導入チャンバ6の内部を回転基板2の外部と連通させる断面円形の注入口11が形成されている。この注入口11は導入チャンバ6への血液試料9の注入に使用される。また、回転基板2には導入チャンバ6の上壁から回転基板2の表面2aに貫通し、導入チャンバ6の内部を回転基板2の外部と連通させる断面円形の空気穴12が形成されている。さらに、導入チャンバ6に流路8の入口端部8aが接続されている。導入チャンバ6の寸法及び体積は、血液試料9の液量に従って決定する必要があるが、好適には、体積が0.1μL以上100μL以下であることが好ましい。
図2を参照すると、導入チャンバ6は平面視で略長方形状である。注入口11は導入チャンバ6の回転軸3側の側壁付近に配置されている。また、注入口11の平面視での面積は、導入チャンバ6の平面視での面積よりも十分小さく設定されている。注入口11の位置及び面積をこのように設定することで、回転基板2の回転中に作用する半径方向rで外向きの遠心力によって血液試料9が注入口11から漏れないしは飛散せず、流路8に流れる。一方、空気穴12は導入チャンバ6の回転軸3から最も離れた側壁付近に配置されている。換言すれば、空気穴12は注入口11よりも回転軸3から離れた部位に配置されている。また、導入チャンバ6の図において右側の側壁に流路8の入口端部8aが開口している。入口端部8aは空気穴12よりも回転軸3側に配置されている。従って、回転軸3の半径方向外向きに、注入口11、流路8の入口端部8a、及び空気穴12が順に配置されている。
図3及び図5Aに示すように、空気穴12の穴壁面12a及び回転基板12の表面12aの空気穴12が開口する部分の周囲には血液凝固剤13が保持されている。後に詳述するように、この血液凝固剤13は導入チャンバ6に導入された血液試料9を硬化させ、それによって空気穴12を封止する機能を有する。空気穴12の穴壁面12a及び回転基板12の表面12aの空気穴12が開口する部分の周囲のうちのいずれか一方にのみ血液凝固剤13を保持させてもよい。
血液凝固剤13は、血液を凝固させることができ、カルシウムイオン又はイオノマイシンを含む。血液凝固剤13中のカルシウムイオン又はイオノマイシンの含有量は、0.2μmol以上2μmol以下が好ましい。血液の凝固過程では、血小板の細胞内でカルシウムイオンが情報伝達を担う。よって、カルシウムイオンが細胞内に過剰に存在させることができれば、血液は素早く凝固する。また、イオノマイシンは、細胞膜透過性を有するカルシウムイオンキレーターであるので、効率的より血液の凝固させることができる。
血液凝固剤13は他の物質を含有していてもよい。この種の物質は、血小板の細胞内に存在するカルシウムストア(貯蔵庫)を活性化する物質と、プロトロンビン変換の内因性又は外因性の信号伝達経路を活性化する物質に大別できる。プロトロンビン変換の内因性又は外因性の経路を活性化させる血液凝固剤は、組織トロンボプラスチン、部分トロンボプラスチン、活性化部分トロンボプラスチン、活性化セファロプラスチンを含む。また、血液凝固剤13が、トロンビン、エピネフリン、血小板活性化因子(RAF)、リストセチン、トロンビン受容体感受性ペプチド(TRAP)、アラキドン酸を含むことで、血液中の血小板凝固を迅速に開始させることができる。さらに、血液凝固剤13としては、例えば特表平9−504614号公報に開示されたもののような、当業者に公知の血液凝固剤を採用できる。
さらに、血液凝固剤13は、例えば親水性を付与する物質を含有することにより、親水性を有することが好ましい。導入チャンバ6に導入された血液試料9が親水性を有する血液凝固剤13に接触すると、毛細管現象によって迅速に空気穴12の穴壁面12aを濡らす。従って、血液試料9の導入から血液試料9の凝固による空気穴12の封止までに要する時間を短縮し、迅速に血液試料9の操作に移ることができる。
下流側チャンバ7は、回転基板2の内部に形成され、空間的に閉じられている。ただし、回転基板2には下流側チャンバ7の上壁から回転基板2の上面に貫通し、下流側チャンバ7の内部を回転基板2の外部と連通させる断面円形の空気穴14が形成されている。この空気穴14は下流側チャンバ7に血液試料9が流入する際に、下流側チャンバ7内の空気を回転基板2の外部に排出する機能を有する。また、下流側チャンバ7には流路8の出口端部8bが接続されている。回転基板2の回転時に作用する遠心力によって下流側チャンバ7内の血液試料9が飛散するのを防止するために、空気穴14は出口端部8bよりも回転軸3側に配置されている。下流側チャンバ7の寸法及び体積は、血液試料9の液量に従って決定する必要があるが、好適には、体積が0.1μL以上100μL以下であることが好ましい。
流路8は回転基板2の内部に形成され、空間的に閉じられている。流路8を通って導入チャンバ6から下流側チャンバ7に血液試料9が確実に送液されるためには、流路8は微細な流路である必要がある。具体的には、流路8は導入チャンバ6及び下流側チャンバ7の体積と同等もしくはそれよりも少ない体積を有することが好ましい。流路8は、1μm以上2000μm以下の流路幅を有し、1μm以上2000μm以下の流路深さを有することが好ましい。また、流路8は50μm以上500μm以下の流路幅を有し、10μm以上100μm以下の流路深さを有することがさらに好ましい。さらに、流路8は幅及ぶ深さが導入チャンバ6及び下流側チャンバ7よりも小さいことが好ましい。
導入チャンバ6と接続している流路8の入口端部8aは、導入チャンバ6内に蓄えられた血液試料9を解除可能に保持するバルブとしての機能を有する。入口端部8aは導入チャンバ6から回転基板2の2つの回転方向のうち反時計方向R1に延びている。
次に、流路部位5を構成する壁面の濡れ性について説明する。まず、流路8の入口端部8aの流路壁は、疎水性材料により構成されているか、疎水性を付与する処理が施されている。入口端部8aが疎水性を有することにより、導入チャンバ6に蓄えられた液体を毛細管力により確実に入口端部8aで保持することができる。一方、流路部位5の残りの部分、すなわち導入チャンバ6の壁面、下流側チャンバ7の壁面、及び流路8の入口端部8aを除く全体(出口端部8bを含む)の壁面は親水性材料により構成されているか、親水性を付与する処理が施されている。これらの部分が親水性を有することにより、導入チャンバ6から流路8に流入した液体は、湿潤効果と毛細管現象によって確実に下流側チャンバ7へ流れる。
疎水性材料の例としては、単結晶シリコン、アモルファスシリコン、炭化ケイ素、酸化ケイ素、窒化ケイ素等に代表される半導体材料、アルミナ、サファイア、フォルステライト、炭化ケイ素、酸化ケイ素、窒化ケイ素の群から選ばれる無機絶縁材料、ポリエチレン、エチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、不飽和ポリエステル、含フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、アセタール樹脂、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド、フェノール樹脂、ユリア樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、スチレン・アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体、シリコン樹脂、ポリフェニレンオキサイド及びポリスルホン等の群から選ばれる有機材料がある。好適に用いられる材料は、PET,PCである。疎水性を付与できる材料としては、フッ素樹脂系の塗布剤、シリコン系の塗布剤等がある。好適には、フッ素樹脂系の塗布剤が用いられる。
親水性材料の例としては、ガラス、石英ガラス、アルミ、銅、ステンレスなどの金属材料等がある。ただし、金属材料は事前に表面に付着する有機物を取り除いた清純な表面を持つ。親水性を付与できる材料しては、TritonXに代表される界面活性剤、水酸基、スルホン酸基、カルボキシル基等の親水基を持つ高分子化合物等がある。好適には、界面活性剤が用いられる。
図3及び図4を参照すると、本実施形態における回転基板2は注入口11と空気口12,14を設けた上部基板21と、導入チャンバ6、下流側チャンバ7、及び流路8を設けた下部基板22を積層状態で接合した2層構造を有する。上部基板21と下部基板22の接合は、当業者に知られた種々の方法を採用できる。例えば、基板間に接着性材料又は接着性を有するシートを介在させてもよく、超音波接合、熱圧着接合、ラミネータ加工等の他の接合方法を採用してもよい。チャンバ及び流路の形成方法も、当業者に知られた種々の方法を採用できる。例えば、半導体微細加工技術に代表されるフォトリソグラフィー加工、プラスチック成型に代表されるインジェクションモールド、切削加工、マスター基板から複製をつくる転写加工等が挙げられる。特に、フォトリソグラフィー加工が好ましい。
回転基板2の製作方法の一例を説明する。この製作方法は、概ね下部基板22にフォトレジストを塗布し、リソグラフィーにより流路8を形成する工程、導入チャンバ6及び下流側チャンバ7を形成する工程、上部基板21に流体出入口(注入口11、空気穴12,14)を形成する工程、及び上部基板21と下部基板22を接合して流路部位5の上部を上部基板21で閉鎖する工程からなる。以下、流路8を形成する工程から順に説明する。
まず、清浄に処理されたガラス基板にネガ型厚膜フォトレジストを塗布する。ここで、用いるフォトレジストは流路のサイズに適したレジストを選択する。例えば、KMPR1030(化薬マイクロケム)等が厚膜形成度合い、アスペクト比の面から優れている。スピンコーターなど回転塗布型のものなどが用いられる。スピンコーターにてKMPR1030を回転塗布する場合には、プレ回転500rpmで10秒、本回転1000rpmで30秒間塗布を実行する。本回転の回転速度を変化させることにより、膜厚を変化させることが可能となる。一例を示すと、本回転1000rpmで57μm、1070rpmで48μmなどが可能である。その後、95℃で20分プレベークを行い、流路8とチャンバ6,7が描かれたマスクを露光する。露光強度と露光時間は膜厚によって適性に補正するものとする。一例を挙げると、露光強度は1700mJ/cm2程度が望ましい。次に95℃で6分PEB(Post Exposure Bake)を行って現像し、流路8とチャンバ6,7のパターンをフォトリソグラフィーにより形成させる。次に、下部基板22のチャンバ6,7の部位を切削加工により形成させる。最後に、注入口11と空気穴12,14を開けた上部基板22を下部基板22に貼り付ける。
上部基板22を下部基板22と接合する前に、血液凝固剤13を空気穴12の穴壁面12a及び回転基板12の表面12aの空気穴12が開口する部分の周囲に担持させる必要がある。この血液凝固剤13の担持には、以下に説明する乾燥担持法が用いられる。
乾燥担持法は、予め定められた濃度に血液凝固剤13を溶解した溶液を作製する工程、溶液を穴壁面12aと回転基板2の表面2aの空気穴12が開口する部分の周囲に滴下する工程、及び滴下した溶液を乾燥させる工程からなる。血液凝固剤13を含有する溶液を乾燥させる工程は、凍結乾燥により行ってもよい。凍結乾燥を行うことにより、血液凝固剤13が室温以上の温度で不安定であっても、血液凝固剤13を安定して担持させることができる。
乾燥担持法により、空気穴12の周囲にのみ血液凝固剤13を保持させ、導入チャンバ6、下流側チャンバ7、及び流路8には血液凝固剤13が付着しないようにする上で、前述の回転基板2の積層構造が重要できる。図3及び図4を参照すると、空気穴12が形成された上部基板21には、導入チャンバ6、下流側チャンバ7、及び流路8は形成されていない。従って、上部基板21の空気穴12が形成された部位にのみ血液凝固剤13の溶液を滴下し、乾燥後に上部基板21と下部基板22を接合することで、空気穴12の周囲にのみ血液凝固剤13を保持させることができる。
一例を挙げると、導入チャンバ6の容積が30μL、空気穴12の直径が1mmの場合、10μLの25mM CaCl2溶液を空気穴12の周囲に滴下して、そのまま常温にて6時間放置して乾燥させた。このように保持させた血液凝固剤13により、30秒から1分30秒の間に血液の凝固が完了し、フィブリンの析出が起こる。また、10倍希釈の組織トロンボプラスチン溶液と10mM CaCl2混和溶液を10μL滴下し、凍結乾燥させた。この場合、血液が血液凝固剤13に接触後の5秒から10秒以内で凝固が完了した。さらに、導入チャンバ6を37℃に保ち、同様に血液を導入した際の凝固時間は、約2秒間であった。さらに、市販されている部分トロンボプラスチンでは30秒以内、活性化部分トロンボプラスチンでは50秒以内で、空気穴12の領域の血液の凝固が完了した。
次に、図1を参照して回転駆動部4について説明する。回転駆動部4は、回転軸3に機械的に連結され、回転軸3及び回転軸3に固定された回転基板を回転させるモータ31と、このモータ31の駆動回路32を備える。また、回転駆動部4は制御信号を出力する制御信号出力部33と、制御信号出力部33から入力される制御信号に基づいて、例えば図7に示すような所望の速度特性をモータ31の駆動回路32に与える速度特性印加部34を備える。制御信号出力部33は、送液装置1とは別の外部のコンピュータであってもよい。
モータ31には、DCモータ、DCブラシレスモータ、ACモータ、ステッピングモータ等を採用することができる。ステッピングモータは、回転基板2の急回転と急制動を外部の駆動信号を印加するだけで、容易に実現することができるため好適である。また、DCモータは駆動回路32を特に必要としない。モータ31としてDCブラシレスモータを採用する場合、駆動回路32が逆回転電圧を印加する機能を有していればより素早い急制動を実現できる。
また、回転駆動部4は、回転中の回転基板2の回転速度を検出する回転速度検出器35と、速度特性印加部34を補正する回転速度制御部36を備えている。回転速度検出器36が検出した回転基板2の実際の回転速度は回転速度制御部36に送られる。回転速度制御部36は検出された実際の回転速度と速度特性印加部34によりモータ31に与えるべき速度特性にずれがあれば、速度特性印加部34が与える速度特性を補正する。このように実際の回転基板2の回転速度をフィードバックして速度特性を補正しつつ回転基板2を駆動することにより、安定した送液を実現し、かつ送液の繰り返し再現性を向上することができる。
次に、本実施形態の血液処理装置1の動作の一例を説明する。
まず、導入チャンバ6へ血液試料9が導入される。血液試料9は注入口11から導入チャンバ6内に導入される。図5Aにおいて矢印Aで示すように、導入チャンバ6内の血液試料9の体積が増加するのに伴い、導入チャンバ6内の空気は空気穴12を介して回転基板2の外部に排出される。前述のように空気穴12は導入チャンバ6の回転軸3から最も離れた側壁付近に配置されている。従って、空気泡(図22の符号208参照)の残留ないしはエア噛みを起こすことなく、導入チャンバ6の全体に血液試料9を導入することができる。従って、導入チャンバ6内に確実に一定量の血液試料9の量を導入することができる。この点で本実施形態の血液処理装置1は、定量性が要求される測定、分析等に適している。
導入チャンバ6内に導入された血液試料9が血液凝固剤13と接触すると、前述のように血液凝固剤13が反応して血液試料9を凝固させる。その結果、図5Bに示すように凝固した血液試料9’により空気穴12が封止される。
導入チャンバ6の空気穴12の封止後、血液試料9に対して種々の操作を行うことができる。例えば、回転駆動部4が回転基板2を時計方向R1又は反時計方向R2に所定速度で回転させ、それによって図6に示すように血液試料9を粒状成分である血球9Aと液体成分である血漿9Bに遠心分離できる。前述のように流路8の入口端部8aは、導入チャンバ6の回転軸3の半径方向外側の部位ではなく、半径方向で注入口11と空気穴12の間の部位で導入チャンバ6に接続している。従って、流路8の入口端部8aは遠心分離によって導入チャンバ6の外側の部位に溜まった血球9Aで閉塞されることなく開放状態を維持する。
遠心分離により得られた血漿9Bを導入チャンバ6から下流側チャンバ7へ送液できる。図7は、導入チャンバ6から下流側チャンバ7への送液を実行するために、回転駆動部4が回転基板2を回転駆動するシーケンスの一例を示す。
図8Aを参照すると、前述のように導入チャンバ6と接続する流路8の入口端部8aは疎水性を有し、かつ流路8は微細な流路であるので、血漿9Bは表面張力による毛細管力Fcにより入口端部8aで保持され、流路8内は血漿9Bで濡れない。入口端部8aの流路壁面が疎水性を有するので血漿9Bで濡れず、血漿9Bと流路壁面の接触角θcが鈍角となるので血漿9Bを供給層6A内に保持する方向の毛細管力Fcが発生する。詳細には、流路壁面と血漿9Bの界面には表面張力T1〜Tnが生じ、その合力である毛細管力Fcは時計方向R1、すなわち入口端部8aから導入チャンバ6の内部に向かう方向に発生する。毛細管力Fcの大きさは、以下の式(1)で表される。
ここで、符号Tは水の表面張力、θcは液体の流路壁面に対する接触角、cは流路の周囲長をそれぞれ表す。
図7の時刻0から時刻t1まで回転基板2を反時計方向R2(入口端部8aが導入チャンバ6から延びる方向)に緩やかな一定の加速度a1を有する速度特性41で回転駆動する。回転基板2の回転速度は加速度a1で上昇し、時刻t1には回転速度RV1に達する。図8Bを併せて参照すると、入口端部8aで毛細管力Fcにより保持されている血漿9Bに対して半径方向rで外向きに遠心力Fgが作用する。しかし、入口端部8aは反時計方向R2に延びており、遠心力Fgが作用する方向は入口端部8aが延びる方向と直交する。従って、遠心力Fgが作用しても入口端部8aの血漿9Bは毛細管力Fcで保持された状態で維持される。
次に、図7の時刻t1から時刻t2において、回転基板2を一定の加速度a2を有する速度特性42で急制動する(工程C)。図8Cを併せて参照すると、回転基板2を急制動することにより入口端部8aの血液試料9には慣性力Fiが作用する。詳細には、反時計方向R2に回転している回転基板2を急制動すると、導入チャンバ6に蓄えられて入口端部8aに保持されている血漿9Bは、慣性の法則により反時計方向R2に運動し続けようとする。その結果、入口端部8aに保持されている血漿9Bに反時計方向R1の慣性力Fiが作用する。慣性力Fiの大きさは回転基板2の回転を急制動する際の加速度a2の絶対値に比例する。慣性力Fiと加速度a2の間には以下の式(2)の関係がある。
ここでmは入口端部8aに保持されている液体の質量を示す。また、右辺のマイナス符号は慣性力Fiの向きが加速度a2の向きと逆向きであることを示す。
前述のように入口端部8aは導入チャンバ6から反時計方向R2へ延び、毛細管力Fcは時計方向R1に作用する。従って、慣性力Fiは毛細管力Fcを相殺して入口端部8aの血漿9Bが流路8を濡らす方向に作用する。慣性力Fiが毛細管力Fcを上回ると、入口端部8aに保持されていた血漿9Bは流路8内に流入する。
図8Dに示すように、親水性を有する流路8の流路壁面が濡れると、血漿9Bと流路壁面の接触角θcが鋭角になる。流路壁面と血液試料9の界面には表面張力S1〜Snが図の方向に生じ、その合力である毛細管力Fc’は反時計方向R2、すなわち導入チャンバ6から入口端部8aが延びる方向に生じる。従って、いったん入口端部8aによる保持が解除されて流路8に流入した血液試料9に作用する毛細管力Fc’は、血液試料9が流路8を充たす方向に作用する。毛細管力Fc’の大きさは前述の式(1)と同様に表される。
血液試料9が流路8を介して下流側チャンバ7に流入すると、下流側チャンバ7内の血液試料9の体積が増加するのに伴い、下流側チャンバ7内の空気は空気穴14を介して回転基板2の外部に排出される。
図9は導入チャンバ6から下流側チャンバ7への送液を実行するために、回転駆動部4が回転基板2を回転駆動するシーケンスの他の例を示す。図10Aを併せて参照すると、入口端部8aは疎水性を有するので、入口端部8aが延びる方向(反時計方向R2)と逆向きの時計方向R1の毛細管力Fcが入口端部8aの血漿9Bに作用する。この毛細管力Fcにより導入チャンバ6内の血漿9Bは入口端部8aで保持される。
図9の時刻0から時刻t1において、停止状態の回転基板2を時計方向R1(入口端部8aが導入チャンバ6から延びる方向と逆向き)に一定の加速度b1を有する速度特性43で急激に回転駆動する。時刻t1には回転速度RV2に達する。図10Bに示すように、この時計方向R1の急回転により入口端部8aの血漿9Bに慣性力Fiが作用する。詳細には、回転基板2が時計方向R1の回転を開始しても、導入チャンバ6に蓄えられて入口端部8aに保持されている血漿9Bは、慣性の法則により停止した状態を維持しようとする。その結果、入口端部8aに保持されている血漿9Bに反時計方向R2の慣性力Fiが作用する。慣性力Fiの大きさは回転基板2を急回転させる際の加速度b1の絶対値に比例する。この慣性力Fiは毛細管力Fcを相殺して入口端部8aの血漿9Bが流路8を濡らす方向に作用し、慣性力Fiが毛細管力Fcを上回ると、入口端部8aに保持されていた血漿9Bは流路8内に流入する。流路8及び導入チャンバ6は親水性を有するので、いったん入口端部8aでの保持が解除されると図10Cに示すように血液試料9には下流側チャンバ7に向かう毛細管力Fc’が作用し、流路8を介して下流側チャンバ7に血漿9Bが流入する。
次に、図9の時刻t1から時刻(実線)において、回転基板2を緩やかな一定の加速度b2を有する速度特性44で制動する。
以上のように、血液試料9を導入チャンバ6内に保持する毛細管力Fcを上回る慣性力Fiが流路8の入口端部8aの血漿9Bに作用するように、回転駆動部4が回転基板2を急制動又は急回転させることにより、流路8を介して導入チャンバ6内の血漿9Bを下流側チャンバ7に送液できる。
本実施形態の血液処理装置1は、血液に含有されるタンパク質などの生体構成成分を分析する分析装置として有用である。特に、血液試料は、前段階で血球・血漿分離を行い、血漿に含まれるタンパク質を被測定試料とできる。しかも、血球・血漿分離は遠心力を用いた遠心分離であるため、回転基板2の急回転又は急制動による流路8を介した送液と容易に組み合わせることができ、さらに、各チャンバに試薬等を担持、または、各チャンバ上で加温などの物理的操作をすることで、反応や精製や検出などの機能を持たせることができる。従って、本実施形態の血液処理装置1は血液試料中に含まれるタンパクや健康指標物質を分離、精製、反応、検出するPOCT診断バイオセンサ等の用途にも応用できる。さらにまた、導入チャンバ6の空気穴11はチャンバに導入された血液試料が血液凝固剤と接触して硬化することにより封止されるので、空気穴11を封止するためのシート片の貼り付け等の特別な作業を行うことなく血液の操作を行うことができる。これにより分析等の血液の処理に要する時間を短縮できる。しかも、人間の手を煩わせることがなく、簡便であり、感染性の可能性のある血液を扱う際には、操作者の安全を確保できる。
血液処理装置1の構造に関する種々の代案を以下に説明する。これらの代案は第1実施形態に限定されず、後述する第2から第4実施形態についても適用可能である。
回転基板2の外形形状は円盤形に限定されず、立方体、直方体、五角形等の多角形、星形等であってもよい。
導入チャンバ6の空気穴12の形状は、円柱形状だけに限定されず、円すい形状、もしくは直方体であってもよい。ただし、空気穴12の大きさは、直径、もしくは、代表長さが10μm以上3mm以下の範囲に設定することが好ましい。空気穴12は1箇所であることが望ましく、100μm以上1000μm以下の直径を有する円柱形状が望ましい。この場合、注入口11から血液試料9の注入を開始してから10秒から12秒後に血液中の血小板凝固が実施され、回転による血液の飛散を防止し、遠心力に耐えうるように空気穴12を確実に封止できる。
個々の流路部位5の導入チャンバ6、下流側チャンバ7、及び流路8の個数や配置は図2のものに限定されない。
以下は、回転基板2の積層構造の代案である。
図11に示す第1の代案の回転基板2は、上部基板21、流路基板23、及び底基板24からなる3層構造を有する。上面基板21には注入口11と空気口12,14が設けられている。流路基板22には、導入チャンバ6、下流側チャンバ7、及び流路8に対応する形状の溝孔23aが設けられている。底基板24には導入チャンバ6及び下流側チャンバ7の底部を構成する有底の窪み24a,24bが形成されている。かかる構成では、容易に流路8と導入チャンバ6及び下流側チャンバ7の深さを変えることができる。また、導入チャンバ6及び下流側チャンバ7の底部は底基板24に独立して形成されるので、基板の接合前に底部基板の定められた位置に血液試料9と反応する反応試薬等を担持させるだけで、簡単に導入チャンバ6及び下流側チャンバ7の底部に反応試薬等を担持させることができる。
図12に示す第2の代案の回転基板2は、上部基板21、流路基板25、チャンバ基板26、及び底面基板27を積層状態で接合した4層構造を有する。上部基板21には、注入口11と空気口12,14が板厚方向に貫通するように設けられている。流路基板25には、導入チャンバ6、下流側チャンバ7、及び流路8に対応する形状であり、かつ板厚方向に貫通する溝孔25aが設けられている。チャンバ基板26には、導入チャンバ6及び下流側チャンバ7に対応する形状であり、かつ板厚方向に貫通する溝孔26a,26bが設けられている。底面基板27は導入チャンバ6及び下流側チャンバ7の底面を構成し、溝や孔は設けられていない。この多層構造の回転基板2は各基板を接合することで製作できるので、生産性が優れている。また、流路8の深さは流路基板22の厚みで決まり、導入チャンバ6及び下流側チャンバ7の深さは流路基板22とチャンバ基板26を合わせた厚みで決まる。従って、流路8の深さが導入チャンバ6及び下流側チャンバ7の深さよりも浅い構造を容易に製作することができ、かつ流路8の深さと導入チャンバ6及び下流側チャンバ7の深さを互いに独立に設定することができる。例えば、流路8の深さが100μm程度である場合、流路8、導入チャンバ6、及び下流側チャンバ7の形状を切断したシート状の流路基板25を使用できるため、生産性の面から好ましい。さらに、導入チャンバ6及び下流側チャンバ7の底壁となる底面基板27は他の基板とは別体であるので、接合前に下面基板24に反応試薬等を担持させることも容易である。
次に、導入チャンバ6、下流側チャンバ7、及び流路8の壁面の濡れ性の代案を説明する。
第1の代案としては、生産性を考慮して入口端部8aのみでなく流路8の全体が疎水性を有していてもよい。
第2の代案としては、流路部位5全体が疎水性を有していてもよい。流路部位5全体を疎水性材料により構成するか、流路部位5全体に疎水性を付与する処理する処理を施せばよいので、生産性をより向上することができる。
第3の代案としては、回転基板2全体が疎水性を有していてもよい。回転基板2全体を疎水性材料により構成するか、回転基板2全体に疎水性を付与する処理する処理を施せばよいので、生産性がさらに向上する。
(第2実施形態)
図13及び図14に示す本発明の第2実施形態に係る血液処理装置1では、空気穴12の回転基板2の表面2a側に段差を設けている。詳細には、回転基板2の表面2aに、底壁18aに空気穴12が開口し、かつ底壁18aの面積が空気穴12の面積よりも大きい保持凹部18が形成されている。本実施形態では保持凹部18の平面視での形状は円形である。血液凝固剤13は、空気穴12の穴壁面12aと空気穴12が開口する部分の周囲、すなわち保持凹部18の底壁18aに保持されている。
保持凹部18の底壁18aに血液凝固剤13を保持することにより、血液凝固剤13の表面積が増加し、血液凝固剤13と血液試料9の接触面積が増加する。これによって血液中の血小板凝固がより迅速に起こり、かつ凝固した血液により空気穴12をより強固に封止できる。従って、導入チャンバ6への血液試料9の導入から空気穴12の封止までに要する時間を短縮し、血球と血漿の遠心分離等の次段の血液操作により速やかに移行できる。また、遠心分離等の血液操作の際に導入チャンバ6内の血液試料9が遠心力によって空気穴12から飛散するのをより確実に防止できる。
保持凹部18は底壁18aの面積が空気穴12の面積よりも大きい限り、その形状は特に限定されない。しかし、図13に示すような平面視で円形の形状が好ましい。また、保持凹部18の底壁18aの面積は、0.015mm2以上30mm2以下であることが好ましく、この面積であれば導入チャンバ6に血液試料9を導入後、速やかに空気穴12が封止されるので、時間を置かずに直ちに回転基板2を回転させることが可能である。この場合、最初の3秒間は、回転速度が1000rpm以下に設定することがより好ましい。本実施形態のように底壁18aが円形である場合、この好適な面積に対応する直径は、50μmから3mm程度である。
第2実施形態のその他の構成及び作用は、第1実施形態と同様である。
(第3実施形態)
図15及び図16は本発明の第3実施形態に係る血液処理装置1は血液試料9の電気化学的分析を行うための血液成分分析装置である。
検出用チャンバとして機能する下流側チャンバ7内には3種類の検出電極、すなわち作用電極61、対極62、及び参照電極63が配置されている。詳細には、これら作用電極61、対極62、及び参照電極63は上部基板21の下流側チャンバ7の上壁を構成する部位に設けられている。作用電極61、対極62、及び参照電極63は、それぞれリード線64,65,66により電極端子67,68,69に電気的に接続されている。下流側チャンバ7内には反応試薬が担持されている。上部基板21と下部基板22の間には絶縁膜70が介在している。
本実施形態では、蒸着やスパッタに代表される薄膜形成技術により作用電極61、対極62、及び参照電極63を形成している。作用電極61は円形であり、対極62は円弧形状、対極62は矩形状である。ただし、作用電極61、対極62、及び参照電極63の形状は任意である。例えば、これらの電極は下流側チャンバ7内に電極線材を挿入したものでもよい。
作用電極61、対極62、及び参照電極63の材質は、電気化学的な物性が安定な材料が好ましく、主に、金、白金、カーボン、タングステン、銀、銅等が適している。電圧の基準となる参照電極63は、銀、又は銀/塩化銀電極として構成されることが望ましい。作用電極61、対極62を構成する電極材料への銀ペーストの塗布、銀による再被膜、及び電解めっき等により、参照電極63を銀、又は銀/塩化銀電極とできる。
絶縁膜70はリード線67〜69を被覆し、作用電極61、対極62、及び参照電極63の面積を規定する機能を有する。特に、作用電極61は面積が正確に規定されている必要がある。また、絶縁膜70は下部基板21下面の作用電極61、対極62、及び参照電極63が形成されている部位と、これらが形成されてない部位との間の段差を相殺し、下部基板21の下面を平坦にする機能を有する。
注入口11から導入チャンバ6内に血液試料9を導入すると、空気穴12から導入チャンバ6内の空気が排出され、導入チャンバ6の全体に血液試料9が導入される。また、血液試料9が血液凝固剤13により凝固し、空気穴12が閉鎖される。その後、遠心分離により血液試料9を血球9Aと血漿9Bに分離する。その遠心分離の際、空気穴12は凝固した血液試料9で封止されているので、血漿9Bは飛散しない。次に、回転駆動部4が回転基板2を急制動又は急回転し、流路8の端部8aが導入チャンバ6内の血漿9Bを保持する毛細管力Fcに打ち勝つ慣性力Fiを生じさせると、導入チャンバ6内の血漿9Bは流路8を介して下流側チャンバ7内に送液される。下流側チャンバ7に送液された血漿9Bは下流側チャンバ7内に保持されている試薬と反応し、その際に生じる電気化学(酸化還元)反応を作用電極61、対極62、及び参照電極63で測定することができる。
本実施形態の血液処理装置1を実際に製作して血液試料の分析を行った。下流側チャンバ7に、電子授受体4−aminophenyl phosphate(以下、pAPP)、ALP(アルカリフォスファターゼ)標識抗CRP抗体と、Trisバッファ(pH8.0)を予め乾燥担持させた。注入口11から導入チャンバ6に導入された血液試料9は、血液凝固剤13により凝固して空気穴12を自発的に閉口した。2500rpmの回転速度で10分間回転基板を回転させたところ、血球9Aと血漿9Bが明瞭に分離した。また、回転基板2の急制動により、約30μLの血漿9Bが流路8を介して導入チャンバ6から下流側チャンバ7に送液された。下流側チャンバ7に流入した血漿9Bは前述の試薬と以下の反応式に示す反応を5分間起こし、pAPPはALPによる脱リン酸化作用を受け、4−aminophenol(以下、pAP)となる。
その後、作用電極61に+400mVの電位を与えた。この電位により、pAPは還元体から酸化体へと変化する。この際に、電極に電子を受け渡す。そのときに作用電極61に流れる電流を計測したところ、血漿に含まれるCRP抗原量に依存した電流応答が1nMから1μMまで得られた。このように第3実施形態の血液処理装置1により疾患の予測、もしくは健康状態の把握を判断するに足る情報が得られることが確認できた。
本実施形態では、検出電極は作用電極61、対極62、及び参照電極63からなる3極式であり、電圧又は電圧の変化値だけでなく、絶対値を測定可能である。しかし、検出電極は、作用電極と対極の2極式でもよい。2極式は、電圧又は電圧の絶対値は測定できないが、製造が容易である。
第3実施形態のその他の構成及び作用は、第2実施形態と同様である。
(第4実施形態)
図17から図19に示す本発明の第4実施形態の血液分析装置1は、回転基板2の構造が第1実施形態と相違する。具体的には、回転基板2は、回転基板本体51と、この回転基板本体51に対して着脱可能なチップ体52を備える。回転基板本体51には流路部位5は形成されておらず、各チップ体52に流路部位5が形成されている。回転基板本体51の上面側にはそれぞれチップ体52が収容される複数の収容孔53が形成されている。収容孔53は回転軸3に対して放射状に配置されている。収容孔53の外側の壁面には凹部53aが形成されている。チップ体52の一部がこの凹部53a内に配置されることにより、チップ体52が収容孔53内に保持される。特に、回転基板2の回転時には遠心力によってチップ体52が凹部53aに向かって付勢されるので、チップ体52は収容孔53から脱落することなく確実に回転基板本体51に保持される。
第4実施形態のその他の構成及び作用は、第1実施形態と同様である。
本発明は、血液処理装置及び血液処理装置に血液を導入する方法に関する。詳細には、本発明は、血漿に含まれるタンパク成分の電気化学的分析のような血液成分の分析や、血球・血漿分離のような血液に対する種々の操作を実行するために、定量的に血液試料が導入されるチャンバを備える血液処理装置に関する。また、本発明は、そのような血液処理装置のチャンバに血液試料を導入する方法に関する。
近年、様々な健康診断チップが開発されている。これら健康診断チップの殆どは、マイクロタス(μ−TAS:Micro Total Analysis System)と呼ばれる微小流路構造を持つカード型のデバイスである。流路を微細化すると、生体から抽出するサンプル量は微量でよい点等で非常に有用である。また、流路の微細化により健康診断チップを含む装置全体を小型化できれば、比較的大規模の病院だけでなく、診療所や家庭での診断を行うPOCT(Point of care test:その場診断)用途に用いることが可能となる。
通常、この種のデバイスの分析対象は血液である。血液は、粒状成分である血球と液体成分である血漿から構成される高粘度の液体である。高粘度の血液試料を微小流路に導入することは困難であるので、血液の微小流路への導入に関して種々の試みがなされている。
図20は、特許文献1に開示された血液中の血糖値を電気化学的に測定するためのバイオセンサを示す。このバイオセンサは、2枚の基板101,103間にスペーサ102を挟んだ構造を有する。スペーサ102に形成された血液導入用のスリット104は、親水化されている。測定用の電極106、107、108はスリット104の導入口104a付近に配置されている。また、スリット104の閉鎖端104b付近に空気穴105が設けられている。導入口104a、電極106〜108、及び空気穴105は、スリット104が延びる方向に沿ってこの順に並んでいる。
導入口104aから導入された血液試料は、親水化されたスリット104内を毛細管現象により電極106〜108に向けて流れる。スリット104内に存在する空気は、導入口104とは反対側へ逃げて空気穴105から排出されるので、スリット104の閉鎖端104bまで血液試料を充填することができる。従って、スリット104の電極106〜108と対応する部位に空気泡の残留(エア噛み)が生じない。また、スリット104に導入される血液試料の容積を定量的に見積もることができる。この2つの理由により、電極106〜108により得られる電気信号の再現性が良好であり、血液中に含有される血糖値を定量的に把握することができる。このスリット104に空気穴104aを設ける構造は、マイクロリットル程度、もしくは少なくとも一つの代表長さが数100マイクロメートルから数ミリメートルである微小流路や微小スリットへの微量溶液の導入において極めて重要である。
図20に示すバイオセンサでは、電極106〜108はスリット104上に位置するので血液試料を送液する必要はない。しかしながら、ある種の測定では血液の送液や前処理が必要となる。例えば、血液中に含有されるCRP(C反応性タンパク)を電気化学的に計測する場合、血球が測定の阻害要因となるため、血球・血漿分離を行い、分離した血漿成分溶液を計測する必要がある。POCT用途に適した送液方法の一つに遠心力を利用する方法がある。
特許文献2に開示されたバイオセンサは、基板を回転させることで発生する遠心力を送液の駆動源とし、溶液をチャンバから別のチャンバへとマイクロ流路を介して送液することができる。送液の原理は、基板の非回転時にはチャンバとマイクロ流路の界面に発生する表面張力によりチャンバ内に液体を保持し、基板の回転により生じる遠心力によって力の釣り合いを崩し、別のチャンバへと送液するものである。この送液方法は、ポンプによる送液と異なり、チューブを接続する必要がないため、溶液の駆動に必要なデッドボリュームが発生しない。また、基板に多数の流路を設けておけば、複数の送液を同時に並列処理できる。さらに、前述の血球・血漿分離も遠心力で実現することができる。詳細には、粒状成分である血球と液体成分である血漿は密度の差があるので、遠心力によって互いに分離することができる。従って、特許文献2に開示されている遠心力を駆動源とする送液方法は、血球・血漿分離と統合することができる。詳細には、一つのチャンバでの血球・血漿分離と、分離した血漿成分溶液のマイクロ流路を介した別のチャンバへの送液の両方を、遠心力で実現できる。特許文献3、4、及び5にも、遠心力を利用する送液方法が開示されている。
しかし、遠心力を血液・血漿分離や送液に利用するには、前述の血液試料導入時の空気の排出に関して以下の問題がある。
図21を参照すると、血液試料が導入されるチャンバ200に空気穴(図20の符号105参照)を設けず、図示しない他のチャンバへの送液用のマイクロ流路201を空気穴として機能させる場合、チャンバ200に対するマイクロ流路201の接続位置は限定される。まず、基板202の回転中に発生する遠心力は矢印で示すように回転軸203から遠ざかる方向に作用するので、チャンバ200への血液試料の注入口204は遠心力により血液試料が飛散するのを防止するために、チャンバ200の内周側(求心性の方向)に設ける必要がある。空気穴として機能するマイクロ流路201は、前述のエア噛みを防止するために、注入口204とは反対側、すなわち外周側の部位200aでチャンバ200に接続する必要がある。しかし、遠心力により血漿205と血球206を分離すると、血液試料に約40%〜50%含まれる血球206がチャンバ200aの最外周側の部位200aに溜まりチャンバ200に対するマイクロ流路201の開口部を閉塞させるので、送液が不可能となる。この血球206による閉塞を回避するために、図22に示すようにマイクロチャンバ200に対するマイクロ流路201の接続位置を内周よりに設定すると、注入口204から血液試料を導入時にマイクロチャンバ200内の空気をマイクロ流路201から完全に排出することができず、マイクロチャンバ200の最外周側の部位200aに空気泡208が残留してエア噛みが起こり、血液試料の定量的な導入が不可能となる。
以上の理由から、血液試料の定量的な導入のためにチャンバ内の空気を確実に排出するには、マイクロ流路とは別に、チャンバの注入口とは反対側に空気穴を設ける必要がある。しかし、チャンバの両端部に開口、すなわち注入口と空気穴を設けた構造では、遠心力によっていずれかの開口から血液試料が飛散する。よって、少なくともいずれか一方の開口を血液試料の導入後に封止する作業が必要となる。例えば、遠心力に打ち勝つ粘着性を持ったシート片を貼り付ける作業が必要となる。
特開平2000−065778号公報
特表2001−503854号公報
特表2002−503331号公報
特許3356784号公報
特許3469585号公報
本発明は、チャンバに血液試料を定量的に導入可能で、かつ血液試料の導入後にチャンバに連通する開口を閉鎖する作業を行うことなく、そのまま血液試料の操作を行うことができる血液処理装置及び血液導入方法を提供することを課題とする。
本発明の第1の態様は、基板(2)と、前記基板内に形成された第1のチャンバ(6)と、前記基板に形成され、かつ前記第1のチャンバと前記基板の外部を連通させる、血液試料(9)を前記第1のチャンバ内に導入するための注入口(11)と、前記基板に形成され、かつ前記第1のチャンバと前記基板の外部を連通させる空気穴(12)と、前記空気穴(12)の穴壁面及び/又は前記基板の表面の前記空気穴が開口する部分の周囲に保持された血液凝固剤(13)とを備えることを特徴とする血液処理装置を提供する。
注入口から血液試料を導入する際には、第1のチャンバ内に存在する空気を空気穴から排出しつつ、血液試料を第1のチャンバ内に導入することができる。従って、第1のチャンバ内でエア噛みを生じることなく、第1のチャンバの全体に血液試料を導入することができる。これにより第1のチャンバに一定量の血液試料の量を導入することができる。この点で第1の発明の血液処理装置は、定量性が要求される測定、分析等の処理に適している。
血液凝固剤は第1のチャンバに導入された血液試料と接触すると反応し、血液試料を凝固させる。凝固した血液試料により空気穴が封止される。従って、第1のチャンバへの血液試料導入後に、血球と血漿の遠心分離や送液等の第1のチャンバ内の血液試料に遠心力が作用する処理を実行しても、血液試料が空気穴から基板の外部に飛散することがない。また、空気穴を封止するためにシート片の貼り付け等の特別な作業を行う必要がない。
前記空気穴の直径は、10μm以上3mm以下であることが好ましい。空気穴の直径をこの範囲に設定することで、血液試料の導入時に第1のチャンバ内の空気を確実に基板外に排出できる。また、血球と血漿の遠心分離や送液等の処理の際に作用する遠心力により血液試料が空気穴から飛散しないように、血液中の血小板凝固によって確実に空気穴を封止できる。
前記血液凝固剤は、前記血液試料の凝固又は前記血液試料中の血小板の凝集を開始させる少なくとも1種類の物質を含む。
具体的には、血液凝固剤は、0.2μmol以上2m mol以下のカルシウムイオン又はイオノマイシンを含むことが好ましい。血液中の血小板凝固を開始させることができ、それによって空気穴を封止することができる。
さらに具体的には、前記血液凝固剤は、組織トロンボプラスチン、部分トロンボプラスチン、活性化部分トロンボプラスチン、及び活性化セファロプラスチンのうちの少なくとも一つを含むことが好ましい。これらの物質を含むことで、血液中の血小板凝固を迅速に開始させることができる。
また、前記血液凝固剤は、トロンビン、エピネフリン、血小板活性化因子、リストセチン、トロンビン受容体感受性ペプチド、及びアラキドン酸のうちの少なくとも一つを含むことが好ましい。これらの物質も、血液中の血小板凝固を迅速に開始させる。
前記血液凝固剤は、親水性を有することが好ましい。第1のチャンバに導入された血液試料が空気穴の周囲に保持された血液凝固剤に接触すると、毛細管現象によって迅速に空気穴の穴壁面を濡らす。従って、血液試料導入から血液試料の凝固による空気穴の封止までに要する時間を短縮することができる。
血液処理装置は、前記基板の表面に形成され、底壁が前記前記空気穴と連通し、かつ前記底壁の面積が前記空気穴の面積よりも大きい保持凹部をさらに備え、前記血液凝固剤は、少なくとも前記保持凹部の前記底壁の前記空気穴の周囲に保持されていてもよい。血液凝固剤の表面積が増加するので、血液凝固剤と血液試料の接触面積が増加する。これによって血液中の血小板凝固がより迅速に起こり、かつ凝固した血液により空気穴をより強固に封止できる。従って、第1のチャンバへの血液試料の導入から空気穴の封止までに要する時間を短縮し、かつ遠心分離等の血液操作の際に第1のチャンバ内の血液試料が遠心力によって空気穴から基板の外部に飛散するのをより確実に防止できる。保持凹部の底壁の面積は、0.015mm2以上30mm2以下であることが好ましい。
前記基板は回転中心線(S)まわりに回転可能であり、前記基板を前記回転中心線まわりに回転駆動可能な回転駆動部(4)をさらに備え、前記注入口は前記第1のチャンバの前記回転中心線側の部位に形成され、かつ前記空気穴は前記第1のチャンバの前記注入口よりも前記回転中心線から離れた部位に形成されていることが好ましい。空気穴を注入口よりも基板の回転中心線から離れた位置に配置することで、注入口から第1のチャンバに血液試料を導入する際のエア噛みを確実に防止できる。また、回転駆動部による基板の回転駆動時には、血液凝固剤により凝固した血液が空気穴を封止することで、遠心力によって第1のチャンバ内の血液試料が基板の外部に飛散するのを確実に防止できる。
血液処理装置は、前記基板内に形成された第2のチャンバ(7)と、前記基板内に形成され、前記第1のチャンバと前記第2のチャンバとを連通させる流路(8)をさらに備え、前記第1のチャンバと接続する前記流路の流路端部(8a)は、前記空気穴よりも前記基板の前記回転中心側に配置されていてもよい。
第1のチャンバと第2のチャンバを連通させる流路が空気穴よりも回転中心側で第1のチャンバに接続するので、回転駆動部が回転中心線回りに基板を回転させることで血球・血漿分離を実行しても、流路端部は血球により閉塞されず開放状態を維持する。従って、血球・血漿分離後に流路を介して第1のチャンバから第2のチャンバへ血漿を送液することができる。
前記第1のチャンバに接続する前記流路の前記流路端部は、前記基板の回転方向に沿って延び、かつ前記第1のチャンバ内の液体試料を毛細管力(Fc)によって保持し、かつ
前記回転駆動部は、前記毛細管力を上回る慣性力(Fi)が前記流路端部の前記血液試料に作用するように、前記基板を前記回転中心線まわりに回転駆動可能であることが好ましい。
ここで回転方向は、回転中心線に対して直交する仮想の線に対して直交し、かつこの仮想の線と同一の平面上にある方向として定義する。例えば、基板が回転軸に固定される場合、この回転軸の半径方向に対して直交する接線方向が回転方向である。回転方向は、平面視で回転中心線に対して時計方向及び反時計方向のいずれでもよい。
注入口から注入された第1のチャンバ内の血液試料は、毛細管力により流路端部で保持される。回転駆動部により基板が回転することにより、流路端部で保持されている血液試料に対して回転方向に慣性力が作用する。この慣性力が毛細管力を上回ると、第1のチャンバ内の血液試料が流路に流れ込み、第2のチャンバに送液される。
前記第2のチャンバ内に血液成分を分析するための検出電極(61,62,63)を設けてもよい。
第1のチャンバへの血液試料の導入及び血球・血漿の遠心分離の後に、血漿成分のみを流路を介して第2のチャンバへ送液し、第2のチャンバにおいて検出電極による電気化学測定が可能できる。例えば、第2のチャンバに測定用のバッファ成分や検出用の酵素や電子授受体を保持させておくと、第2のチャンバに送液された血漿成分はこれらの物質と反応を起こし、検出電極で測定される電流値から血液中に含まれる成分の量を推定することができる。従って、疾患の予測、健康状態の把握等のために必要な情報が得られる。
例えば、前記基板は、前記注入口及び前記空気穴が厚み方向に貫通するように形成された第1の基体(21)と、前記第1のチャンバ、前記第2のチャンバ、及び前記流路が形成され、かつ前記第1の基体に接合された第2の基体(22)とを備える。
この場合、第1のチャンバと注入口及び空気穴とを一体形成する必要がない。また、第2の基体に適切な形状の凹部を形成することで第1のチャンバ、第2のチャンバ、及び流路として機能させることができる。さらに、単に第1の基体に貫通孔を形成することで注入口及び空気穴として機能させることができる。従って、基板の効率的な生産が可能であり、血液処理装置の製造コストを低減できる。
基板を第1及び第2の基体を接合する構造とすることで、より複雑な流路構造を容易に実現できる。例えば、第1の基板の接合面側に蒸着やスパッタのような薄膜堆積技術を適用することで、第2のチャンバ内に検出電極を設けることができる。
空気穴を設けた第1の基体は、第1のチャンバを設けた第2の基板とは別体である。従って、第1の基体の空気穴の穴壁面、空気穴の周囲、及び保持凹部の底壁のような必要な箇所に血液凝固剤を含む溶液を滴下することで、容易にこれら必要な箇所にのみ局所的に血液凝固剤を保持させることができる。
前記基板に、前記第1のチャンバ、第2のチャンバ、及び前記流路を備える流路部位(5)が複数個形成されていることが好ましい。単一の基板に設けられた複数の第1のチャンバ内の血液試料に対し、遠心分離、送液、成分分析等の操作を同時に並列して実行することができる。従って、これらの操作の効率化を図ることができる。また、単一の基板に集積化して複数の流路部位を設けることで、製造コストを低減できる。
本発明の第2の態様は、注入口(11)、空気穴(12)、及び前記空気穴の周辺に保持された血液凝固剤(13)を備えるチャンバ(6)に血液試料を導入する方法であって、前記注入口からチャンバ内に血液を導入し、前記空気穴を介して前記チャンバ内に存在する空気をチャンバ外に排出させ、かつ前記チャンバ内に導入した血液試料と前記血液凝固剤を接触させ、前記血液凝固剤により凝固した前記血液試料で前記空気穴を封止することを特徴とする血液導入方法を提供する。
注入口からチャンバ内に血液試料を導入すると、チャンバ内に存在する空気は空気穴から排出される。従って、チャンバ内でエア噛みを生じることなく、チャンバ全体に血液試料を導入することができる。これによりチャンバに一定量の血液試料の量を導入することができる。チャンバに導入された血液試料は血液凝固剤と接触して凝固し、それによって空気穴が封止される。従って、チャンバへの血液試料導入後に、血球と血漿の遠心分離や送液等のチャンバ内の血液試料に遠心力が作用する処理を実行する際に、血液試料が空気穴から飛散することがない。また、空気穴を封止するためにシート片の貼り付け等の特別な作業を行う必要がない。
本発明の第3の態様は、前記血液処理装置が備える前記チャンバに前記血液凝固剤を保持させる方法であって、予め定められた濃度に前記血液凝固剤を溶解した溶液を作製し、前記溶液を前記穴壁面及び/又は前記基板の表面の前記空気穴が開口する部分の周囲に滴下し、前記滴下した溶液を乾燥させることを特徴とする、血液凝固剤を保持させる方法を提供する。
前記滴下した溶液を凍結乾燥により乾燥させることが好ましい。血液凝固剤が室温以上の温度で不安定であっても、血液凝固剤を安定してチャンバに保持させることができる。
本発明の血液処理装置によれば、空気穴を設けたことにより、エア噛みを起こすことなく、チャンバ全体に血液試料を導入できる。これによりチャンバに導入する血液試料の量を毎回一定にできるので、定量性が必要な測定に適している。換言すれば、血液に含有される成分の量を再現良く、定量的に、高精度で把握することができる。
また、空気穴を設けるため、チャンバにつながる流路の配置の自由度も大きくなる。これは、より複雑な送液挙動を簡単な操作で実現することが可能となる。
さらに、空気穴はチャンバに導入された血液試料が血液凝固剤と接触して硬化することにより封止されるので、例えば、血球と血漿を遠心分離する場合においても、血液が開口から飛散しない。また、空気穴を封止するためのシート片の貼り付け等の特別な作業を行うことなく血液の操作を行うことができる。これにより分析等の血液の処理に要する時間を短縮できる。しかも、人間の手を煩わせることがなく、簡便であり、感染性の可能性のある血液を扱う際にも、操作者の安全を確保できる。
次に、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
(第1実施形態)
図1から図4は、本発明の第1実施形態に係る血液処理装置1を示す。
この送液装置1は、回転基板2、この回転基板2が固定される回転軸3、及び回転軸3を回転駆動する回転駆動部4を備える。回転軸3はその軸線(回転中心線)Sが鉛直方向に延びる姿勢で配置されており、その上端側に回転基板2が固定されている。回転基板2は平面視で円形であり、回転基板2の中心は回転中心線Sと一致している。一方、回転軸3の下端側は後述するモータ31に連結されている。
回転基板2は回転軸3と共に回転する。以下の説明では、図2において矢印R1,R2で示すように、回転軸3の回転方向を回転軸3の半径方向rに対して直交する方向として定義する。換言すれば、回転方向は回転軸3の回転中心線Sに対して直交する仮想の線に対して直交し、かつこの仮想の線と同一の平面上にある方向として定義する。回転基板2は2方向、すなわち平面視で時計方向R1及び反時計方向R2に回転可能である。
図1に示すように、回転基板2には複数の流路部位5が回転軸3の周囲に放射状に配置されている。図2及び図3を併せて参照すると、流路部位5は、血液試料が導入される導入チャンバ(第1のチャンバ)6、導入チャンバ6から血液試料が送液される下流側チャンバ(第2のチャンバ)7、及び導入チャンバ6と下流側チャンバ7を流体的に連通させる微細な流路8を備える。複数の流路部位5を一つの回転基板2に集積化して設けることにより、複数の血液試料に対して後述する操作を動じに並列して実行して操作の効率化を図ることができる。また、単一の回転基板2に集積化して複数の流路部位5を設けることで、製造コストを低減できる。
導入チャンバ6は回転基板2の内部に形成され、空間的に閉じられている。ただし、回転基板2には導入チャンバ6の上壁から回転基板2の表面2aに貫通し、導入チャンバ6の内部を回転基板2の外部と連通させる断面円形の注入口11が形成されている。この注入口11は導入チャンバ6への血液試料9の注入に使用される。また、回転基板2には導入チャンバ6の上壁から回転基板2の表面2aに貫通し、導入チャンバ6の内部を回転基板2の外部と連通させる断面円形の空気穴12が形成されている。さらに、導入チャンバ6に流路8の入口端部8aが接続されている。導入チャンバ6の寸法及び体積は、血液試料9の液量に従って決定する必要があるが、好適には、体積が0.1μL以上100μL以下であることが好ましい。
図2を参照すると、導入チャンバ6は平面視で略長方形状である。注入口11は導入チャンバ6の回転軸3側の側壁付近に配置されている。また、注入口11の平面視での面積は、導入チャンバ6の平面視での面積よりも十分小さく設定されている。注入口11の位置及び面積をこのように設定することで、回転基板2の回転中に作用する半径方向rで外向きの遠心力によって血液試料9が注入口11から漏れないしは飛散せず、流路8に流れる。一方、空気穴12は導入チャンバ6の回転軸3から最も離れた側壁付近に配置されている。換言すれば、空気穴12は注入口11よりも回転軸3から離れた部位に配置されている。また、導入チャンバ6の図において右側の側壁に流路8の入口端部8aが開口している。入口端部8aは空気穴12よりも回転軸3側に配置されている。従って、回転軸3の半径方向外向きに、注入口11、流路8の入口端部8a、及び空気穴12が順に配置されている。
図3及び図5Aに示すように、空気穴12の穴壁面12a及び回転基板12の表面12aの空気穴12が開口する部分の周囲には血液凝固剤13が保持されている。後に詳述するように、この血液凝固剤13は導入チャンバ6に導入された血液試料9を硬化させ、それによって空気穴12を封止する機能を有する。空気穴12の穴壁面12a及び回転基板12の表面12aの空気穴12が開口する部分の周囲のうちのいずれか一方にのみ血液凝固剤13を保持させてもよい。
血液凝固剤13は、血液を凝固させることができ、カルシウムイオン又はイオノマイシンを含む。血液凝固剤13中のカルシウムイオン又はイオノマイシンの含有量は、0.2μmol以上2μmol以下が好ましい。血液の凝固過程では、血小板の細胞内でカルシウムイオンが情報伝達を担う。よって、カルシウムイオンが細胞内に過剰に存在させることができれば、血液は素早く凝固する。また、イオノマイシンは、細胞膜透過性を有するカルシウムイオンキレーターであるので、効率的より血液の凝固させることができる。
血液凝固剤13は他の物質を含有していてもよい。この種の物質は、血小板の細胞内に存在するカルシウムストア(貯蔵庫)を活性化する物質と、プロトロンビン変換の内因性又は外因性の信号伝達経路を活性化する物質に大別できる。プロトロンビン変換の内因性又は外因性の経路を活性化させる血液凝固剤は、組織トロンボプラスチン、部分トロンボプラスチン、活性化部分トロンボプラスチン、活性化セファロプラスチンを含む。また、血液凝固剤13が、トロンビン、エピネフリン、血小板活性化因子(RAF)、リストセチン、トロンビン受容体感受性ペプチド(TRAP)、アラキドン酸を含むことで、血液中の血小板凝固を迅速に開始させることができる。さらに、血液凝固剤13としては、例えば特表平9−504614号公報に開示されたもののような、当業者に公知の血液凝固剤を採用できる。
さらに、血液凝固剤13は、例えば親水性を付与する物質を含有することにより、親水性を有することが好ましい。導入チャンバ6に導入された血液試料9が親水性を有する血液凝固剤13に接触すると、毛細管現象によって迅速に空気穴12の穴壁面12aを濡らす。従って、血液試料9の導入から血液試料9の凝固による空気穴12の封止までに要する時間を短縮し、迅速に血液試料9の操作に移ることができる。
下流側チャンバ7は、回転基板2の内部に形成され、空間的に閉じられている。ただし、回転基板2には下流側チャンバ7の上壁から回転基板2の上面に貫通し、下流側チャンバ7の内部を回転基板2の外部と連通させる断面円形の空気穴14が形成されている。この空気穴14は下流側チャンバ7に血液試料9が流入する際に、下流側チャンバ7内の空気を回転基板2の外部に排出する機能を有する。また、下流側チャンバ7には流路8の出口端部8bが接続されている。回転基板2の回転時に作用する遠心力によって下流側チャンバ7内の血液試料9が飛散するのを防止するために、空気穴14は出口端部8bよりも回転軸3側に配置されている。下流側チャンバ7の寸法及び体積は、血液試料9の液量に従って決定する必要があるが、好適には、体積が0.1μL以上100μL以下であることが好ましい。
流路8は回転基板2の内部に形成され、空間的に閉じられている。流路8を通って導入チャンバ6から下流側チャンバ7に血液試料9が確実に送液されるためには、流路8は微細な流路である必要がある。具体的には、流路8は導入チャンバ6及び下流側チャンバ7の体積と同等もしくはそれよりも少ない体積を有することが好ましい。流路8は、1μm以上2000μm以下の流路幅を有し、1μm以上2000μm以下の流路深さを有することが好ましい。また、流路8は50μm以上500μm以下の流路幅を有し、10μm以上100μm以下の流路深さを有することがさらに好ましい。さらに、流路8は幅及ぶ深さが導入チャンバ6及び下流側チャンバ7よりも小さいことが好ましい。
導入チャンバ6と接続している流路8の入口端部8aは、導入チャンバ6内に蓄えられた血液試料9を解除可能に保持するバルブとしての機能を有する。入口端部8aは導入チャンバ6から回転基板2の2つの回転方向のうち反時計方向R1に延びている。
次に、流路部位5を構成する壁面の濡れ性について説明する。まず、流路8の入口端部8aの流路壁は、疎水性材料により構成されているか、疎水性を付与する処理が施されている。入口端部8aが疎水性を有することにより、導入チャンバ6に蓄えられた液体を毛細管力により確実に入口端部8aで保持することができる。一方、流路部位5の残りの部分、すなわち導入チャンバ6の壁面、下流側チャンバ7の壁面、及び流路8の入口端部8aを除く全体(出口端部8bを含む)の壁面は親水性材料により構成されているか、親水性を付与する処理が施されている。これらの部分が親水性を有することにより、導入チャンバ6から流路8に流入した液体は、湿潤効果と毛細管現象によって確実に下流側チャンバ7へ流れる。
疎水性材料の例としては、単結晶シリコン、アモルファスシリコン、炭化ケイ素、酸化ケイ素、窒化ケイ素等に代表される半導体材料、アルミナ、サファイア、フォルステライト、炭化ケイ素、酸化ケイ素、窒化ケイ素の群から選ばれる無機絶縁材料、ポリエチレン、エチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、不飽和ポリエステル、含フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、アセタール樹脂、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド、フェノール樹脂、ユリア樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、スチレン・アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体、シリコン樹脂、ポリフェニレンオキサイド及びポリスルホン等の群から選ばれる有機材料がある。好適に用いられる材料は、PET,PCである。疎水性を付与できる材料としては、フッ素樹脂系の塗布剤、シリコン系の塗布剤等がある。好適には、フッ素樹脂系の塗布剤が用いられる。
親水性材料の例としては、ガラス、石英ガラス、アルミ、銅、ステンレスなどの金属材料等がある。ただし、金属材料は事前に表面に付着する有機物を取り除いた清純な表面を持つ。親水性を付与できる材料しては、TritonXに代表される界面活性剤、水酸基、スルホン酸基、カルボキシル基等の親水基を持つ高分子化合物等がある。好適には、界面活性剤が用いられる。
図3及び図4を参照すると、本実施形態における回転基板2は注入口11と空気口12,14を設けた上部基板21と、導入チャンバ6、下流側チャンバ7、及び流路8を設けた下部基板22を積層状態で接合した2層構造を有する。上部基板21と下部基板22の接合は、当業者に知られた種々の方法を採用できる。例えば、基板間に接着性材料又は接着性を有するシートを介在させてもよく、超音波接合、熱圧着接合、ラミネータ加工等の他の接合方法を採用してもよい。チャンバ及び流路の形成方法も、当業者に知られた種々の方法を採用できる。例えば、半導体微細加工技術に代表されるフォトリソグラフィー加工、プラスチック成型に代表されるインジェクションモールド、切削加工、マスター基板から複製をつくる転写加工等が挙げられる。特に、フォトリソグラフィー加工が好ましい。
回転基板2の製作方法の一例を説明する。この製作方法は、概ね下部基板22にフォトレジストを塗布し、リソグラフィーにより流路8を形成する工程、導入チャンバ6及び下流側チャンバ7を形成する工程、上部基板21に流体出入口(注入口11、空気穴12,14)を形成する工程、及び上部基板21と下部基板22を接合して流路部位5の上部を上部基板21で閉鎖する工程からなる。以下、流路8を形成する工程から順に説明する。
まず、清浄に処理されたガラス基板にネガ型厚膜フォトレジストを塗布する。ここで、用いるフォトレジストは流路のサイズに適したレジストを選択する。例えば、KMPR1030(化薬マイクロケム)等が厚膜形成度合い、アスペクト比の面から優れている。スピンコーターなど回転塗布型のものなどが用いられる。スピンコーターにてKMPR1030を回転塗布する場合には、プレ回転500rpmで10秒、本回転1000rpmで30秒間塗布を実行する。本回転の回転速度を変化させることにより、膜厚を変化させることが可能となる。一例を示すと、本回転1000rpmで57μm、1070rpmで48μmなどが可能である。その後、95℃で20分プレベークを行い、流路8とチャンバ6,7が描かれたマスクを露光する。露光強度と露光時間は膜厚によって適性に補正するものとする。一例を挙げると、露光強度は1700mJ/cm2程度が望ましい。次に95℃で6分PEB(Post Exposure Bake)を行って現像し、流路8とチャンバ6,7のパターンをフォトリソグラフィーにより形成させる。次に、下部基板22のチャンバ6,7の部位を切削加工により形成させる。最後に、注入口11と空気穴12,14を開けた上部基板22を下部基板22に貼り付ける。
上部基板22を下部基板22と接合する前に、血液凝固剤13を空気穴12の穴壁面12a及び回転基板12の表面12aの空気穴12が開口する部分の周囲に担持させる必要がある。この血液凝固剤13の担持には、以下に説明する乾燥担持法が用いられる。
乾燥担持法は、予め定められた濃度に血液凝固剤13を溶解した溶液を作製する工程、溶液を穴壁面12aと回転基板2の表面2aの空気穴12が開口する部分の周囲に滴下する工程、及び滴下した溶液を乾燥させる工程からなる。血液凝固剤13を含有する溶液を乾燥させる工程は、凍結乾燥により行ってもよい。凍結乾燥を行うことにより、血液凝固剤13が室温以上の温度で不安定であっても、血液凝固剤13を安定して担持させることができる。
乾燥担持法により、空気穴12の周囲にのみ血液凝固剤13を保持させ、導入チャンバ6、下流側チャンバ7、及び流路8には血液凝固剤13が付着しないようにする上で、前述の回転基板2の積層構造が重要できる。図3及び図4を参照すると、空気穴12が形成された上部基板21には、導入チャンバ6、下流側チャンバ7、及び流路8は形成されていない。従って、上部基板21の空気穴12が形成された部位にのみ血液凝固剤13の溶液を滴下し、乾燥後に上部基板21と下部基板22を接合することで、空気穴12の周囲にのみ血液凝固剤13を保持させることができる。
一例を挙げると、導入チャンバ6の容積が30μL、空気穴12の直径が1mmの場合、10μLの25mM CaCl2溶液を空気穴12の周囲に滴下して、そのまま常温にて6時間放置して乾燥させた。このように保持させた血液凝固剤13により、30秒から1分30秒の間に血液の凝固が完了し、フィブリンの析出が起こる。また、10倍希釈の組織トロンボプラスチン溶液と10mM CaCl2混和溶液を10μL滴下し、凍結乾燥させた。この場合、血液が血液凝固剤13に接触後の5秒から10秒以内で凝固が完了した。さらに、導入チャンバ6を37℃に保ち、同様に血液を導入した際の凝固時間は、約2秒間であった。さらに、市販されている部分トロンボプラスチンでは30秒以内、活性化部分トロンボプラスチンでは50秒以内で、空気穴12の領域の血液の凝固が完了した。
次に、図1を参照して回転駆動部4について説明する。回転駆動部4は、回転軸3に機械的に連結され、回転軸3及び回転軸3に固定された回転基板を回転させるモータ31と、このモータ31の駆動回路32を備える。また、回転駆動部4は制御信号を出力する制御信号出力部33と、制御信号出力部33から入力される制御信号に基づいて、例えば図7に示すような所望の速度特性をモータ31の駆動回路32に与える速度特性印加部34を備える。制御信号出力部33は、送液装置1とは別の外部のコンピュータであってもよい。
モータ31には、DCモータ、DCブラシレスモータ、ACモータ、ステッピングモータ等を採用することができる。ステッピングモータは、回転基板2の急回転と急制動を外部の駆動信号を印加するだけで、容易に実現することができるため好適である。また、DCモータは駆動回路32を特に必要としない。モータ31としてDCブラシレスモータを採用する場合、駆動回路32が逆回転電圧を印加する機能を有していればより素早い急制動を実現できる。
また、回転駆動部4は、回転中の回転基板2の回転速度を検出する回転速度検出器35と、速度特性印加部34を補正する回転速度制御部36を備えている。回転速度検出器36が検出した回転基板2の実際の回転速度は回転速度制御部36に送られる。回転速度制御部36は検出された実際の回転速度と速度特性印加部34によりモータ31に与えるべき速度特性にずれがあれば、速度特性印加部34が与える速度特性を補正する。このように実際の回転基板2の回転速度をフィードバックして速度特性を補正しつつ回転基板2を駆動することにより、安定した送液を実現し、かつ送液の繰り返し再現性を向上することができる。
次に、本実施形態の血液処理装置1の動作の一例を説明する。
まず、導入チャンバ6へ血液試料9が導入される。血液試料9は注入口11から導入チャンバ6内に導入される。図5Aにおいて矢印Aで示すように、導入チャンバ6内の血液試料9の体積が増加するのに伴い、導入チャンバ6内の空気は空気穴12を介して回転基板2の外部に排出される。前述のように空気穴12は導入チャンバ6の回転軸3から最も離れた側壁付近に配置されている。従って、空気泡(図22の符号208参照)の残留ないしはエア噛みを起こすことなく、導入チャンバ6の全体に血液試料9を導入することができる。従って、導入チャンバ6内に確実に一定量の血液試料9の量を導入することができる。この点で本実施形態の血液処理装置1は、定量性が要求される測定、分析等に適している。
導入チャンバ6内に導入された血液試料9が血液凝固剤13と接触すると、前述のように血液凝固剤13が反応して血液試料9を凝固させる。その結果、図5Bに示すように凝固した血液試料9’により空気穴12が封止される。
導入チャンバ6の空気穴12の封止後、血液試料9に対して種々の操作を行うことができる。例えば、回転駆動部4が回転基板2を時計方向R1又は反時計方向R2に所定速度で回転させ、それによって図6に示すように血液試料9を粒状成分である血球9Aと液体成分である血漿9Bに遠心分離できる。前述のように流路8の入口端部8aは、導入チャンバ6の回転軸3の半径方向外側の部位ではなく、半径方向で注入口11と空気穴12の間の部位で導入チャンバ6に接続している。従って、流路8の入口端部8aは遠心分離によって導入チャンバ6の外側の部位に溜まった血球9Aで閉塞されることなく開放状態を維持する。
遠心分離により得られた血漿9Bを導入チャンバ6から下流側チャンバ7へ送液できる。図7は、導入チャンバ6から下流側チャンバ7への送液を実行するために、回転駆動部4が回転基板2を回転駆動するシーケンスの一例を示す。
図8Aを参照すると、前述のように導入チャンバ6と接続する流路8の入口端部8aは疎水性を有し、かつ流路8は微細な流路であるので、血漿9Bは表面張力による毛細管力Fcにより入口端部8aで保持され、流路8内は血漿9Bで濡れない。入口端部8aの流路壁面が疎水性を有するので血漿9Bで濡れず、血漿9Bと流路壁面の接触角θcが鈍角となるので血漿9Bを供給層6A内に保持する方向の毛細管力Fcが発生する。詳細には、流路壁面と血漿9Bの界面には表面張力T1〜Tnが生じ、その合力である毛細管力Fcは時計方向R1、すなわち入口端部8aから導入チャンバ6の内部に向かう方向に発生する。毛細管力Fcの大きさは、以下の式(1)で表される。
ここで、符号Tは水の表面張力、θcは液体の流路壁面に対する接触角、cは流路の周囲長をそれぞれ表す。
図7の時刻0から時刻t1まで回転基板2を反時計方向R2(入口端部8aが導入チャンバ6から延びる方向)に緩やかな一定の加速度a1を有する速度特性41で回転駆動する。回転基板2の回転速度は加速度a1で上昇し、時刻t1には回転速度RV1に達する。図8Bを併せて参照すると、入口端部8aで毛細管力Fcにより保持されている血漿9Bに対して半径方向rで外向きに遠心力Fgが作用する。しかし、入口端部8aは反時計方向R2に延びており、遠心力Fgが作用する方向は入口端部8aが延びる方向と直交する。従って、遠心力Fgが作用しても入口端部8aの血漿9Bは毛細管力Fcで保持された状態で維持される。
次に、図7の時刻t1から時刻t2において、回転基板2を一定の加速度a2を有する速度特性42で急制動する(工程C)。図8Cを併せて参照すると、回転基板2を急制動することにより入口端部8aの血液試料9には慣性力Fiが作用する。詳細には、反時計方向R2に回転している回転基板2を急制動すると、導入チャンバ6に蓄えられて入口端部8aに保持されている血漿9Bは、慣性の法則により反時計方向R2に運動し続けようとする。その結果、入口端部8aに保持されている血漿9Bに反時計方向R1の慣性力Fiが作用する。慣性力Fiの大きさは回転基板2の回転を急制動する際の加速度a2の絶対値に比例する。慣性力Fiと加速度a2の間には以下の式(2)の関係がある。
ここでmは入口端部8aに保持されている液体の質量を示す。また、右辺のマイナス符号は慣性力Fiの向きが加速度a2の向きと逆向きであることを示す。
前述のように入口端部8aは導入チャンバ6から反時計方向R2へ延び、毛細管力Fcは時計方向R1に作用する。従って、慣性力Fiは毛細管力Fcを相殺して入口端部8aの血漿9Bが流路8を濡らす方向に作用する。慣性力Fiが毛細管力Fcを上回ると、入口端部8aに保持されていた血漿9Bは流路8内に流入する。
図8Dに示すように、親水性を有する流路8の流路壁面が濡れると、血漿9Bと流路壁面の接触角θcが鋭角になる。流路壁面と血液試料9の界面には表面張力S1〜Snが図の方向に生じ、その合力である毛細管力Fc’は反時計方向R2、すなわち導入チャンバ6から入口端部8aが延びる方向に生じる。従って、いったん入口端部8aによる保持が解除されて流路8に流入した血液試料9に作用する毛細管力Fc’は、血液試料9が流路8を充たす方向に作用する。毛細管力Fc’の大きさは前述の式(1)と同様に表される。
血液試料9が流路8を介して下流側チャンバ7に流入すると、下流側チャンバ7内の血液試料9の体積が増加するのに伴い、下流側チャンバ7内の空気は空気穴14を介して回転基板2の外部に排出される。
図9は導入チャンバ6から下流側チャンバ7への送液を実行するために、回転駆動部4が回転基板2を回転駆動するシーケンスの他の例を示す。図10Aを併せて参照すると、入口端部8aは疎水性を有するので、入口端部8aが延びる方向(反時計方向R2)と逆向きの時計方向R1の毛細管力Fcが入口端部8aの血漿9Bに作用する。この毛細管力Fcにより導入チャンバ6内の血漿9Bは入口端部8aで保持される。
図9の時刻0から時刻t1において、停止状態の回転基板2を時計方向R1(入口端部8aが導入チャンバ6から延びる方向と逆向き)に一定の加速度b1を有する速度特性43で急激に回転駆動する。時刻t1には回転速度RV2に達する。図10Bに示すように、この時計方向R1の急回転により入口端部8aの血漿9Bに慣性力Fiが作用する。詳細には、回転基板2が時計方向R1の回転を開始しても、導入チャンバ6に蓄えられて入口端部8aに保持されている血漿9Bは、慣性の法則により停止した状態を維持しようとする。その結果、入口端部8aに保持されている血漿9Bに反時計方向R2の慣性力Fiが作用する。慣性力Fiの大きさは回転基板2を急回転させる際の加速度b1の絶対値に比例する。この慣性力Fiは毛細管力Fcを相殺して入口端部8aの血漿9Bが流路8を濡らす方向に作用し、慣性力Fiが毛細管力Fcを上回ると、入口端部8aに保持されていた血漿9Bは流路8内に流入する。流路8及び導入チャンバ6は親水性を有するので、いったん入口端部8aでの保持が解除されると図10Cに示すように血液試料9には下流側チャンバ7に向かう毛細管力Fc’が作用し、流路8を介して下流側チャンバ7に血漿9Bが流入する。
次に、図9の時刻t1から時刻(実線)において、回転基板2を緩やかな一定の加速度b2を有する速度特性44で制動する。
以上のように、血液試料9を導入チャンバ6内に保持する毛細管力Fcを上回る慣性力Fiが流路8の入口端部8aの血漿9Bに作用するように、回転駆動部4が回転基板2を急制動又は急回転させることにより、流路8を介して導入チャンバ6内の血漿9Bを下流側チャンバ7に送液できる。
本実施形態の血液処理装置1は、血液に含有されるタンパク質などの生体構成成分を分析する分析装置として有用である。特に、血液試料は、前段階で血球・血漿分離を行い、血漿に含まれるタンパク質を被測定試料とできる。しかも、血球・血漿分離は遠心力を用いた遠心分離であるため、回転基板2の急回転又は急制動による流路8を介した送液と容易に組み合わせることができ、さらに、各チャンバに試薬等を担持、または、各チャンバ上で加温などの物理的操作をすることで、反応や精製や検出などの機能を持たせることができる。従って、本実施形態の血液処理装置1は血液試料中に含まれるタンパクや健康指標物質を分離、精製、反応、検出するPOCT診断バイオセンサ等の用途にも応用できる。さらにまた、導入チャンバ6の空気穴11はチャンバに導入された血液試料が血液凝固剤と接触して硬化することにより封止されるので、空気穴11を封止するためのシート片の貼り付け等の特別な作業を行うことなく血液の操作を行うことができる。これにより分析等の血液の処理に要する時間を短縮できる。しかも、人間の手を煩わせることがなく、簡便であり、感染性の可能性のある血液を扱う際には、操作者の安全を確保できる。
血液処理装置1の構造に関する種々の代案を以下に説明する。これらの代案は第1実施形態に限定されず、後述する第2から第4実施形態についても適用可能である。
回転基板2の外形形状は円盤形に限定されず、立方体、直方体、五角形等の多角形、星形等であってもよい。
導入チャンバ6の空気穴12の形状は、円柱形状だけに限定されず、円すい形状、もしくは直方体であってもよい。ただし、空気穴12の大きさは、直径、もしくは、代表長さが10μm以上3mm以下の範囲に設定することが好ましい。空気穴12は1箇所であることが望ましく、100μm以上1000μm以下の直径を有する円柱形状が望ましい。この場合、注入口11から血液試料9の注入を開始してから10秒から12秒後に血液中の血小板凝固が実施され、回転による血液の飛散を防止し、遠心力に耐えうるように空気穴12を確実に封止できる。
個々の流路部位5の導入チャンバ6、下流側チャンバ7、及び流路8の個数や配置は図2のものに限定されない。
以下は、回転基板2の積層構造の代案である。
図11に示す第1の代案の回転基板2は、上部基板21、流路基板23、及び底基板24からなる3層構造を有する。上面基板21には注入口11と空気口12,14が設けられている。流路基板22には、導入チャンバ6、下流側チャンバ7、及び流路8に対応する形状の溝孔23aが設けられている。底基板24には導入チャンバ6及び下流側チャンバ7の底部を構成する有底の窪み24a,24bが形成されている。かかる構成では、容易に流路8と導入チャンバ6及び下流側チャンバ7の深さを変えることができる。また、導入チャンバ6及び下流側チャンバ7の底部は底基板24に独立して形成されるので、基板の接合前に底部基板の定められた位置に血液試料9と反応する反応試薬等を担持させるだけで、簡単に導入チャンバ6及び下流側チャンバ7の底部に反応試薬等を担持させることができる。
図12に示す第2の代案の回転基板2は、上部基板21、流路基板25、チャンバ基板26、及び底面基板27を積層状態で接合した4層構造を有する。上部基板21には、注入口11と空気口12,14が板厚方向に貫通するように設けられている。流路基板25には、導入チャンバ6、下流側チャンバ7、及び流路8に対応する形状であり、かつ板厚方向に貫通する溝孔25aが設けられている。チャンバ基板26には、導入チャンバ6及び下流側チャンバ7に対応する形状であり、かつ板厚方向に貫通する溝孔26a,26bが設けられている。底面基板27は導入チャンバ6及び下流側チャンバ7の底面を構成し、溝や孔は設けられていない。この多層構造の回転基板2は各基板を接合することで製作できるので、生産性が優れている。また、流路8の深さは流路基板22の厚みで決まり、導入チャンバ6及び下流側チャンバ7の深さは流路基板22とチャンバ基板26を合わせた厚みで決まる。従って、流路8の深さが導入チャンバ6及び下流側チャンバ7の深さよりも浅い構造を容易に製作することができ、かつ流路8の深さと導入チャンバ6及び下流側チャンバ7の深さを互いに独立に設定することができる。例えば、流路8の深さが100μm程度である場合、流路8、導入チャンバ6、及び下流側チャンバ7の形状を切断したシート状の流路基板25を使用できるため、生産性の面から好ましい。さらに、導入チャンバ6及び下流側チャンバ7の底壁となる底面基板27は他の基板とは別体であるので、接合前に下面基板24に反応試薬等を担持させることも容易である。
次に、導入チャンバ6、下流側チャンバ7、及び流路8の壁面の濡れ性の代案を説明する。
第1の代案としては、生産性を考慮して入口端部8aのみでなく流路8の全体が疎水性を有していてもよい。
第2の代案としては、流路部位5全体が疎水性を有していてもよい。流路部位5全体を疎水性材料により構成するか、流路部位5全体に疎水性を付与する処理する処理を施せばよいので、生産性をより向上することができる。
第3の代案としては、回転基板2全体が疎水性を有していてもよい。回転基板2全体を疎水性材料により構成するか、回転基板2全体に疎水性を付与する処理する処理を施せばよいので、生産性がさらに向上する。
(第2実施形態)
図13及び図14に示す本発明の第2実施形態に係る血液処理装置1では、空気穴12の回転基板2の表面2a側に段差を設けている。詳細には、回転基板2の表面2aに、底壁18aに空気穴12が開口し、かつ底壁18aの面積が空気穴12の面積よりも大きい保持凹部18が形成されている。本実施形態では保持凹部18の平面視での形状は円形である。血液凝固剤13は、空気穴12の穴壁面12aと空気穴12が開口する部分の周囲、すなわち保持凹部18の底壁18aに保持されている。
保持凹部18の底壁18aに血液凝固剤13を保持することにより、血液凝固剤13の表面積が増加し、血液凝固剤13と血液試料9の接触面積が増加する。これによって血液中の血小板凝固がより迅速に起こり、かつ凝固した血液により空気穴12をより強固に封止できる。従って、導入チャンバ6への血液試料9の導入から空気穴12の封止までに要する時間を短縮し、血球と血漿の遠心分離等の次段の血液操作により速やかに移行できる。また、遠心分離等の血液操作の際に導入チャンバ6内の血液試料9が遠心力によって空気穴12から飛散するのをより確実に防止できる。
保持凹部18は底壁18aの面積が空気穴12の面積よりも大きい限り、その形状は特に限定されない。しかし、図13に示すような平面視で円形の形状が好ましい。また、保持凹部18の底壁18aの面積は、0.015mm2以上30mm2以下であることが好ましく、この面積であれば導入チャンバ6に血液試料9を導入後、速やかに空気穴12が封止されるので、時間を置かずに直ちに回転基板2を回転させることが可能である。この場合、最初の3秒間は、回転速度が1000rpm以下に設定することがより好ましい。本実施形態のように底壁18aが円形である場合、この好適な面積に対応する直径は、50μmから3mm程度である。
第2実施形態のその他の構成及び作用は、第1実施形態と同様である。
(第3実施形態)
図15及び図16は本発明の第3実施形態に係る血液処理装置1は血液試料9の電気化学的分析を行うための血液成分分析装置である。
検出用チャンバとして機能する下流側チャンバ7内には3種類の検出電極、すなわち作用電極61、対極62、及び参照電極63が配置されている。詳細には、これら作用電極61、対極62、及び参照電極63は上部基板21の下流側チャンバ7の上壁を構成する部位に設けられている。作用電極61、対極62、及び参照電極63は、それぞれリード線64,65,66により電極端子67,68,69に電気的に接続されている。下流側チャンバ7内には反応試薬が担持されている。上部基板21と下部基板22の間には絶縁膜70が介在している。
本実施形態では、蒸着やスパッタに代表される薄膜形成技術により作用電極61、対極62、及び参照電極63を形成している。作用電極61は円形であり、対極62は円弧形状、対極62は矩形状である。ただし、作用電極61、対極62、及び参照電極63の形状は任意である。例えば、これらの電極は下流側チャンバ7内に電極線材を挿入したものでもよい。
作用電極61、対極62、及び参照電極63の材質は、電気化学的な物性が安定な材料が好ましく、主に、金、白金、カーボン、タングステン、銀、銅等が適している。電圧の基準となる参照電極63は、銀、又は銀/塩化銀電極として構成されることが望ましい。作用電極61、対極62を構成する電極材料への銀ペーストの塗布、銀による再被膜、及び電解めっき等により、参照電極63を銀、又は銀/塩化銀電極とできる。
絶縁膜70はリード線67〜69を被覆し、作用電極61、対極62、及び参照電極63の面積を規定する機能を有する。特に、作用電極61は面積が正確に規定されている必要がある。また、絶縁膜70は下部基板21下面の作用電極61、対極62、及び参照電極63が形成されている部位と、これらが形成されてない部位との間の段差を相殺し、下部基板21の下面を平坦にする機能を有する。
注入口11から導入チャンバ6内に血液試料9を導入すると、空気穴12から導入チャンバ6内の空気が排出され、導入チャンバ6の全体に血液試料9が導入される。また、血液試料9が血液凝固剤13により凝固し、空気穴12が閉鎖される。その後、遠心分離により血液試料9を血球9Aと血漿9Bに分離する。その遠心分離の際、空気穴12は凝固した血液試料9で封止されているので、血漿9Bは飛散しない。次に、回転駆動部4が回転基板2を急制動又は急回転し、流路8の端部8aが導入チャンバ6内の血漿9Bを保持する毛細管力Fcに打ち勝つ慣性力Fiを生じさせると、導入チャンバ6内の血漿9Bは流路8を介して下流側チャンバ7内に送液される。下流側チャンバ7に送液された血漿9Bは下流側チャンバ7内に保持されている試薬と反応し、その際に生じる電気化学(酸化還元)反応を作用電極61、対極62、及び参照電極63で測定することができる。
本実施形態の血液処理装置1を実際に製作して血液試料の分析を行った。下流側チャンバ7に、電子授受体4-aminophenyl phosphate(以下、pAPP)、ALP(アルカリフォスファターゼ)標識抗CRP抗体と、Trisバッファ(pH8.0)を予め乾燥担持させた。注入口11から導入チャンバ6に導入された血液試料9は、血液凝固剤13により凝固して空気穴12を自発的に閉口した。2500rpmの回転速度で10分間回転基板を回転させたところ、血球9Aと血漿9Bが明瞭に分離した。また、回転基板2の急制動により、約30μLの血漿9Bが流路8を介して導入チャンバ6から下流側チャンバ7に送液された。下流側チャンバ7に流入した血漿9Bは前述の試薬と以下の反応式に示す反応を5分間起こし、pAPPはALPによる脱リン酸化作用を受け、4-aminophenol(以下、pAP)となる。
その後、作用電極61に+400mVの電位を与えた。この電位により、pAPは還元体から酸化体へと変化する。この際に、電極に電子を受け渡す。そのときに作用電極61に流れる電流を計測したところ、血漿に含まれるCRP抗原量に依存した電流応答が1nMから1μMまで得られた。このように第3実施形態の血液処理装置1により疾患の予測、もしくは健康状態の把握を判断するに足る情報が得られることが確認できた。
本実施形態では、検出電極は作用電極61、対極62、及び参照電極63からなる3極式であり、電圧又は電圧の変化値だけでなく、絶対値を測定可能である。しかし、検出電極は、作用電極と対極の2極式でもよい。2極式は、電圧又は電圧の絶対値は測定できないが、製造が容易である。
第3実施形態のその他の構成及び作用は、第2実施形態と同様である。
(第4実施形態)
図17から図19に示す本発明の第4実施形態の血液分析装置1は、回転基板2の構造が第1実施形態と相違する。具体的には、回転基板2は、回転基板本体51と、この回転基板本体51に対して着脱可能なチップ体52を備える。回転基板本体51には流路部位5は形成されておらず、各チップ体52に流路部位5が形成されている。回転基板本体51の上面側にはそれぞれチップ体52が収容される複数の収容孔53が形成されている。収容孔53は回転軸3に対して放射状に配置されている。収容孔53の外側の壁面には凹部53aが形成されている。チップ体52の一部がこの凹部53a内に配置されることにより、チップ体52が収容孔53内に保持される。特に、回転基板2の回転時には遠心力によってチップ体52が凹部53aに向かって付勢されるので、チップ体52は収容孔53から脱落することなく確実に回転基板本体51に保持される。
第4実施形態のその他の構成及び作用は、第1実施形態と同様である。
本発明の第1実施形態に係る血液分析装置を示す模式的な構成図。
本発明の第1実施形態に係る血液分析装置の回転基板の部分拡大平面図。
図2のIII−III線での部分断面図。
本発明の第1実施形態に係る回転基板の分解斜視図。
空気穴から供給チャンバ内の空気が排出されている状態を示す回転基板の部分拡大断面図。
凝固した血液により空気穴が封止された状態を示す回転基板の部分拡大断面図。
血球・血漿分離後の状態を示す回転基板の部分拡大平面図。
本発明の第1実施形態に係る血液分析装置の送液動作の第1の例の速度波形及び回転方向を示す線図。
回転基板の回転開始前に流路端部の血漿に作用する力を説明するための概略平面図。
回転基板の回転開始中に流路端部の血漿に作用する力を説明するための概略平面図。
回転基板の急停止時に流路端部の血漿に作用する力を説明するための概略平面図。
送液時に流路端部の血漿に作用する力を説明するための概略平面図。
本発明の第1実施形態に係る血液分析装置の送液動作の第2の例の速度波形及び回転方向を示す線図。
回転基板の回転開始前に流路端部の血漿に作用する力を説明するための概略平面図。
回転基板の急回転時に流路端部の血漿に作用する力を説明するための概略平面図。
送液時に流路端部の血漿に作用する力を説明するための概略平面図。
回転基板の第1の代案を示す分解斜視図。
回転基板の第2の代案を示す分解斜視図。
本発明の第2実施形態に係る血液分析装置の回転基板の部分拡大平面図。
図13のXIV−XIV線での部分断面図。
本発明の第3実施形態に係る血液分析装置の回転基板の部分拡大平面図。
図15のXVI−XVI線での部分断面図。
本発明の第4実施形態に係る血液分析装置を示す模式的な構成図。
図17のXVIII−XVIII線での部分拡大断面図。
本発明の第4実施形態に係る血液分析装置の回転基板の部分拡大平面図。
従来の血液分析装置の一例であるバイオセンサを示す分解斜視図。
微小流路を空気穴として使用する場合の問題点を説明するための模式図。
微小流路をチャンバの回転軸側に接続する場合の問題点を説明するための模式図。
符号の説明
1 血液処理装置
2 回転基板
3 回転軸
4 回転駆動部
5 流路部位
6 導入チャンバ
7 下流側チャンバ
8 流路
8a 入口端部
8b 出口端部
9 液体試料
9A 血球
9B 血漿
11 注入口
12,14 空気穴
12a 穴壁面
18 保持凹部
18a 底壁
61 作用電極
62 対極
63 参照電極
64,65,66 リード線
67,68,69 電極端子
70 絶縁膜
S 回転中心線