JPWO2005085416A1 - 糸状菌特異的抗菌剤のスクリーニング方法及びそのためのキット - Google Patents
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Abstract
本願発明は、農薬候補又は医薬候補の効率的なスクリーニング方法を提供することを課題としている。具体的には、農薬については、植物体を用いることなく、しかも、植物など他の生物に弊害を及ぼすことのない農薬候補化合物を、効率的にスクリーニングすることを課題としている。 本願発明者等は、糸状菌特異的酵素をコードする遺伝子発現ベクターで糸状菌と生物学的に近縁であるが当該酵素を有しない酵母を形質転換し、農薬候補試料をコントロール酵母(糸状菌特異的酵素を発現しない酵母)及び糸状菌特異的酵素発現形質転換体に適用し、コントロール酵母に副作用などの影響を与えず、糸状菌特異的酵素発現形質転換体のみに特異的に成長阻害又は殺菌作用を示す農薬候補試料を、農薬候補として選択するスクリーニング方法を開発することに成功し、本願発明を完成させた。 なお、本スクリーニング方法は、医薬候補のスクリーニングにも同様に用いることができる。
Description
本願発明は、糸状菌特異的抗菌剤、例えば、糸状菌特異的農薬又は抗糸状菌医薬の新たなスクリーニング法に関する。より具体的には、本願発明は、糸状菌特異的酵素をターゲットとした薬剤をスクリーニングする方法に関する。
従来からの、農薬として有用な物質の探索を目的として行われる試験としては、実験室内での培地上で一次試験とすることが通常である。培地上での標的病害菌に対するこのような試験では、標的病害菌に対して効果がある様々な薬剤が全て引っかかってくる。そのため、非ターゲット生物に対しても殺菌性を示してしまう薬剤を拾ってしまう可能性が高い。
他方、作物体の一部又は温室内での植木鉢を用いた病害防除試験は、作物の育成、調製が欠かせず、費用及び労力を要するところ、現在新機能薬となる化合物は、供試化合物の1万分の1程度といわれており(非特許文献1;)、非常に多数の供試化合物の検査には、不適切であった。
さらに、このような方法では、植物体、人体への副作用などについては、十分検討できないものであった。
たとえば、有機水銀剤は、イネいもち病の重要な防除剤として使用されてきたが、動物への毒性に鑑み、使用が中断されている。
また、農薬の植物毒性を簡便に調査する方法としては、植物培養細胞を用いる方法が提案されている(特許文献1:特開平5−294995)。さらに、特許文献2(特開平9−124411)では、いもち病害防除剤のためのファイアトレキシンのスクリーニングを、試験試料をイネの葉先端に滴下施用後、1週間後に、葉を裁断し抽出してファイアトレキシンの生成の有無をHPLCで確認する方法が記載されている。
一方、各種糸状菌病に有効な農薬として知られているフェニルピロールphenylpyrroles、ジカルボキシイミドdicarboximides、芳香族炭化水素aromatichydrocarbonsの薬剤の作用点の解析から(非特許文献2−7:Pillonel and Meyer,1997;Zhang et al.,1999;Fujimura et al.,2000;Ochiai et al.,2001;Ochiai et al.,2002;Oshima et al.,2002)、多くの糸状菌特異的農薬のターゲットが糸状菌特異的ヒスチジンキナーゼ(ここではOs−1ファミリーヒスチジンキナーゼと呼ぶ)であることが解明されつつある。本願明細書中ではOs−1ファミリーヒスチジンキナーゼ(Os−1ファミリーとも表記する。Os−1サブファミリーとも表記された。)は、菌糸型生長を行う菌類(糸状菌)由来の、ヒスチジンキナーゼドメインとレスポンスレギュレータードメインを持つハイブリッド型ヒスチジンキナーゼであって、アカパンカビのハイブリッド型ヒスチジンキナーゼOs−1(配列番号17;Nik−1とも言う;非特許文献8:Alex et al.,1996 Proc.Natl.Acad.Sci.U S A 93:3416−3421)に存在するお互いに相同性を示す6つのアミノ酸リピート(アミノ酸リピート1(171−260,90 aa)、アミノ酸リピート2(261−352,92 aa)、アミノ酸リピート3(353−444,92 aa)、アミノ酸リピート4(445−536,92 aa)、アミノ酸リピート5(537−628,92 aa)、アミノ酸リピート6(629−700,72 aa))を含む領域の全長と50%以上の相同性を示す領域を有するものを意味する。
医薬のスクリーニングについても同様の問題が存在している。
特開平5−294995 特開平9−124411 植物病理学事典 養賢堂 1995年3月30日、P.783−784 Pillonel,C.,and Meyer,T.1997.Effect of phenylpyrroles on glycerol accumulation and protein kinase activity of Neurospora crassa.Pestic.Sci.49:229−236 Ochiai,N.,Fujimura,M.,Oshima,M.,Motoyama,T.,Ichiishi,A.,Yamada−Okabe,H.and Yamaguchi,I.2002.Effects of iprodione and fludioxonil on glycerol synthesis and hyphal development in Candida albicans.Biosci.Biotechnol.Biochem.66:2209−2215. Zhang,Y.,Lamm,R.,Pillonel,C.,Xu,J.−R.,and Lam,S.1999.The hyper−osmotic stress response pathway of Neurospora crassais the target of phenylpyrrole fungicides.Proc.20th Fungal Genetics Conference,Asilomar,USA,p.72 Fujimura,M.,Ochiai,N.,Ichiishi,A.,Usami,R.,Horikoshi,K.,and Yamaguchi,I.2000.Sensitivity to phenylpyrrole fungicides and abnormal glycerol accumulation in os and cut mutant strains of Neurospora crassa.J.Pestic.Sci.25:31−36 Ochiai,N.,Fujimura,M.,Motoyama,T.,Ichiishi,A.,Usami,R.,Horikoshi,K.,and Yamaguchi,I.2001.Characterization of mutations in the two−component histidine kinase gene that confer fludioxonil resistance and osmotic sensitivity in the os−1 mutants of Neurospora crassa.Pest Manag.Sci.57:437−442. Oshima,M.,Fujimura,M.,Banno,S.,Hashimoto,C.,Motoyama,T.,Ichiishi,A.,and Yamaguchi,I.2002.A point mutation in the two−component histidine kinase BcOS−1 gene confers dicarboximide resistance in field isolates of Botrytis cinerea.Phytopathology,92,75−80. Alex et al.,1996 Proc.Natl.Acad.Sci.U S A 93:3416−3421
他方、作物体の一部又は温室内での植木鉢を用いた病害防除試験は、作物の育成、調製が欠かせず、費用及び労力を要するところ、現在新機能薬となる化合物は、供試化合物の1万分の1程度といわれており(非特許文献1;)、非常に多数の供試化合物の検査には、不適切であった。
さらに、このような方法では、植物体、人体への副作用などについては、十分検討できないものであった。
たとえば、有機水銀剤は、イネいもち病の重要な防除剤として使用されてきたが、動物への毒性に鑑み、使用が中断されている。
また、農薬の植物毒性を簡便に調査する方法としては、植物培養細胞を用いる方法が提案されている(特許文献1:特開平5−294995)。さらに、特許文献2(特開平9−124411)では、いもち病害防除剤のためのファイアトレキシンのスクリーニングを、試験試料をイネの葉先端に滴下施用後、1週間後に、葉を裁断し抽出してファイアトレキシンの生成の有無をHPLCで確認する方法が記載されている。
一方、各種糸状菌病に有効な農薬として知られているフェニルピロールphenylpyrroles、ジカルボキシイミドdicarboximides、芳香族炭化水素aromatichydrocarbonsの薬剤の作用点の解析から(非特許文献2−7:Pillonel and Meyer,1997;Zhang et al.,1999;Fujimura et al.,2000;Ochiai et al.,2001;Ochiai et al.,2002;Oshima et al.,2002)、多くの糸状菌特異的農薬のターゲットが糸状菌特異的ヒスチジンキナーゼ(ここではOs−1ファミリーヒスチジンキナーゼと呼ぶ)であることが解明されつつある。本願明細書中ではOs−1ファミリーヒスチジンキナーゼ(Os−1ファミリーとも表記する。Os−1サブファミリーとも表記された。)は、菌糸型生長を行う菌類(糸状菌)由来の、ヒスチジンキナーゼドメインとレスポンスレギュレータードメインを持つハイブリッド型ヒスチジンキナーゼであって、アカパンカビのハイブリッド型ヒスチジンキナーゼOs−1(配列番号17;Nik−1とも言う;非特許文献8:Alex et al.,1996 Proc.Natl.Acad.Sci.U S A 93:3416−3421)に存在するお互いに相同性を示す6つのアミノ酸リピート(アミノ酸リピート1(171−260,90 aa)、アミノ酸リピート2(261−352,92 aa)、アミノ酸リピート3(353−444,92 aa)、アミノ酸リピート4(445−536,92 aa)、アミノ酸リピート5(537−628,92 aa)、アミノ酸リピート6(629−700,72 aa))を含む領域の全長と50%以上の相同性を示す領域を有するものを意味する。
医薬のスクリーニングについても同様の問題が存在している。
本願発明は、農薬候補又は医薬候補の効率的なスクリーニング方法を提供することを課題としている。具体的には、農薬については、植物体を用いることなく、しかも、植物など他の生物に弊害を及ぼすことのない農薬候補化合物を、効率的にスクリーニングすることを課題としている。
本願発明者等は、植物病害を起こす病害菌に特異的に作用する農薬をスクリーニングする方法を鋭意研究した結果、植物病害菌にのみ存在する酵素又は該酵素が関与する情報伝達経路を標的とする農薬候補をスクリーニングすることで、植物病害菌を特異的に抑え、他の生物に影響をしない、農薬を探査できると考えた。
そこで、糸状菌防除を例とし、糸状菌にのみ存在する酵素又は酵素を介する情報伝達系を利用できないか検討した。上述したように、糸状菌を防除するための農薬である三種のグループ(フェニルピロールphenylpyrroles、ジカルボキシイミドdicarboximides、芳香族炭化水素aromatic hydrocarbons)(図1)の薬剤の作用点の解析から、フェニルピロールに属するフルジオキソニルをはじめとする多くの糸状菌特異的農薬のターゲットが糸状菌特異的ヒスチジンキナーゼ(Os−1ファミリー)を介した情報伝達系であることが明らかになりつつある。本発明者らは、まず、この情報伝達系を利用し、農薬候補スクリーニング方法及びキットを開発した。
具体的には、本願発明者等は、これら糸状菌特異的酵素をコードする遺伝子発現ベクターで糸状菌と生物学的に近縁であるが当該酵素を有しない酵母を形質転換し、農薬候補試料をコントロール酵母(糸状菌特異的酵素を発現しない酵母)及び糸状菌特異的酵素発現形質転換体に適用し、コントロール酵母に副作用などの影響を与えず、糸状菌特異的酵素発現形質転換体のみに特異的に成長阻害又は殺菌作用を示す農薬候補試料を、農薬候補として選択するスクリーニング方法を開発することに成功し、本願発明を完成させたものである。
なお、本スクリーニング方法は、医薬候補のスクリーニングにも同様に用いることができる。
本明細書は本願の優先権の基礎である日本国特許出願2004−061273号の明細書および/または図面に記載される内容を包含する。
本願発明者等は、植物病害を起こす病害菌に特異的に作用する農薬をスクリーニングする方法を鋭意研究した結果、植物病害菌にのみ存在する酵素又は該酵素が関与する情報伝達経路を標的とする農薬候補をスクリーニングすることで、植物病害菌を特異的に抑え、他の生物に影響をしない、農薬を探査できると考えた。
そこで、糸状菌防除を例とし、糸状菌にのみ存在する酵素又は酵素を介する情報伝達系を利用できないか検討した。上述したように、糸状菌を防除するための農薬である三種のグループ(フェニルピロールphenylpyrroles、ジカルボキシイミドdicarboximides、芳香族炭化水素aromatic hydrocarbons)(図1)の薬剤の作用点の解析から、フェニルピロールに属するフルジオキソニルをはじめとする多くの糸状菌特異的農薬のターゲットが糸状菌特異的ヒスチジンキナーゼ(Os−1ファミリー)を介した情報伝達系であることが明らかになりつつある。本発明者らは、まず、この情報伝達系を利用し、農薬候補スクリーニング方法及びキットを開発した。
具体的には、本願発明者等は、これら糸状菌特異的酵素をコードする遺伝子発現ベクターで糸状菌と生物学的に近縁であるが当該酵素を有しない酵母を形質転換し、農薬候補試料をコントロール酵母(糸状菌特異的酵素を発現しない酵母)及び糸状菌特異的酵素発現形質転換体に適用し、コントロール酵母に副作用などの影響を与えず、糸状菌特異的酵素発現形質転換体のみに特異的に成長阻害又は殺菌作用を示す農薬候補試料を、農薬候補として選択するスクリーニング方法を開発することに成功し、本願発明を完成させたものである。
なお、本スクリーニング方法は、医薬候補のスクリーニングにも同様に用いることができる。
本明細書は本願の優先権の基礎である日本国特許出願2004−061273号の明細書および/または図面に記載される内容を包含する。
図1は、糸状菌を標的とした三種のグループの薬剤:薬剤の構造と、その薬剤が病原糸状菌防除に用いられる生物を示す。
図2は、バクテリア及び真核生物のヒスチジンキナーゼの概念図。
図3は、Os−1ファミリーのヒスチジンキナーゼ及び出芽酵母のヒスチジンキナーゼの概念図。
図4は、糸状菌と出芽酵母の情報伝達系の比較 出芽酵母とアカパンカビで共通と推定される部分を網掛けした。アカパンカビのタンパク質で括弧に入っているのは酵母のタンパク質と相同性はあるが相補性が確認されていないものである。
図5は、イネいもち病菌のHIK1を導入した出芽酵母の薬剤感受性試験結果:A. HIK1をGAL1プロモーターの制御下で発現させることができるプラスミドを酵母に導入して、発現誘導条件で各種薬剤への感受性をみた。:B. 各種薬剤を含む90mm径プレート上に、プレートの上段にはpYES2−HIK1を導入した酵母細胞懸濁液、下段にはpYES2を導入した酵母細胞(コントロール)、それぞれを9mm間隔で(左から107、106、105、104/ml)5μlずつ滴下後30°Cで60時間培養した。左プレートより、プレートごとに、SG培地のみ、Fludioxonil,Iprodine,Chloroneb,又はCycloheximideが添加されている。薬剤濃度は、Fludioxonil,Iprodine,及びChloronebについては、最上段のプレートが5ppm、2段目のプレートが25ppm,更に、Iprodine及びChloronebについては、3段目が50ppm、4段目が100ppmである。Cycloheximideについては、0.25ppmで、240時間培養した。
図6は、HIK1による薬剤感受性とヒスチジンキナーゼドメインとレスポンスレギュレータードメインの有無:A. ヒスチジンキナーゼドメインが機能しないHik1−H736Vあるいはレスポンスレギュレータードメインが機能しないHik1−D1153Eを発現する酵母を作成した。:B. 各種薬剤を含む90mm径プレート上に、最上段にはpYES2を導入した酵母細胞懸濁液、上から2段目にはpYES2−HIK1を導入した酵母細胞懸濁液、上から3段目にはpYES2−hik1−H736Vを導入した酵母細胞懸濁液、最下段にはpYES2−hik1−D1153Eを導入した酵母細胞懸濁液それぞれを9mm間隔で(左から107、106、105、104/ml)5μlずつ滴下後30°Cで72時間培養した。なお、各プレートには、左のプレートから順に、SG培地のみ、25ppm Fludioxonil、25ppm Iprodione、50ppm Chloroneb、又は0.5M NaClとなるように薬剤が含有されている。
図7は、HIK1による薬剤感受性とSSK1とHOG1の有無:A. ssk1変異株とhog1変異株ではHIK1を導入しても薬剤感受性を示さない。各種薬剤を含む90mm径プレート上に、上段から、順に、(最上段)コントロール酵母にpYES2−HIK1を導入した細胞懸濁液、(2段目)hog1変異株にpYES2−HIK1を導入した細胞懸濁液、(3段目)ssk1変異株にpYES2−HIK1を導入した細胞懸濁液、(4段目)ste11変異株にpYES2−HIK1を導入した細胞懸濁液、(5段目)コントロール酵母にpYES2を導入した細胞懸濁液、(6段目)hog1変異株にpYES2−HIK1を導入した細胞懸濁液、(7段目)ssk1変異株にpYES2−HIK1を導入した細胞懸濁液、又は(最下段)ste11変異株にpYES2−HIK1を導入した細胞懸濁液それぞれを9mm間隔で(左から107、106、105、104/ml)5μlずつ滴下後30°Cで60時間(NaClのみ96時間)培養した。なお、左のプレートから順に、各プレートには、SG培地のみ、25ppm Fludioxonil、25ppm Iprodione、50ppm Chloroneb、又は0.5M NaClとなるように薬剤が含有されている。:B. ssk1変異株とhog1変異株にそれぞれSSK1とHOG1を導入するとHIK1存在下で薬剤感受性を示すようになった。各種薬剤を含む90mm径プレート上に、上段から順に、(最上段)hog1変異株にpCLΔ−HOG1及びpYES2−HIK1を導入した細胞懸濁液、(2段目)hog1変異株にpCLΔ及びpYES2−HIK1を導入した細胞懸濁液、(3段目)ssk1変異株にpCLΔ−SSK1及びpYES2−HIK1を導入した細胞懸濁液、又は(最下段)ssk1変異株にpCLΔ及びpYES2−HIK1を導入した細胞懸濁液それぞれを9mm間隔で(左から107、106、105、104/ml)5μl滴下後30°Cで60時間(NaClのみ96時間)培養した。なお、左のプレートから順に、各プレートには、SG培地のみ、25ppm Fludioxonil、25ppm Iprodione、50ppm Chloroneb、又は0.5M NaClとなるように薬剤が含有されている。
図8は、イネいもち病菌のHik1と出芽酵母のYpd1との相互作用 A. CytoTrap two−hybrid systemの概要。ターゲットと餌(bait)の間で相互作用があるとhSosが細胞膜に移行しRasを活性化して、cdc25H株が37°Cでも生育できるようになる。ここでは、餌のYpd1あるいはSsk1にターゲットのHik1が「食いつくかどうか」をみた。 B. Hik1とYpd1の相互作用。細胞懸濁液(左から107、106、105、104/ml)を5μl滴下後それぞれの温度で5日間培養した。
図2は、バクテリア及び真核生物のヒスチジンキナーゼの概念図。
図3は、Os−1ファミリーのヒスチジンキナーゼ及び出芽酵母のヒスチジンキナーゼの概念図。
図4は、糸状菌と出芽酵母の情報伝達系の比較 出芽酵母とアカパンカビで共通と推定される部分を網掛けした。アカパンカビのタンパク質で括弧に入っているのは酵母のタンパク質と相同性はあるが相補性が確認されていないものである。
図5は、イネいもち病菌のHIK1を導入した出芽酵母の薬剤感受性試験結果:A. HIK1をGAL1プロモーターの制御下で発現させることができるプラスミドを酵母に導入して、発現誘導条件で各種薬剤への感受性をみた。:B. 各種薬剤を含む90mm径プレート上に、プレートの上段にはpYES2−HIK1を導入した酵母細胞懸濁液、下段にはpYES2を導入した酵母細胞(コントロール)、それぞれを9mm間隔で(左から107、106、105、104/ml)5μlずつ滴下後30°Cで60時間培養した。左プレートより、プレートごとに、SG培地のみ、Fludioxonil,Iprodine,Chloroneb,又はCycloheximideが添加されている。薬剤濃度は、Fludioxonil,Iprodine,及びChloronebについては、最上段のプレートが5ppm、2段目のプレートが25ppm,更に、Iprodine及びChloronebについては、3段目が50ppm、4段目が100ppmである。Cycloheximideについては、0.25ppmで、240時間培養した。
図6は、HIK1による薬剤感受性とヒスチジンキナーゼドメインとレスポンスレギュレータードメインの有無:A. ヒスチジンキナーゼドメインが機能しないHik1−H736Vあるいはレスポンスレギュレータードメインが機能しないHik1−D1153Eを発現する酵母を作成した。:B. 各種薬剤を含む90mm径プレート上に、最上段にはpYES2を導入した酵母細胞懸濁液、上から2段目にはpYES2−HIK1を導入した酵母細胞懸濁液、上から3段目にはpYES2−hik1−H736Vを導入した酵母細胞懸濁液、最下段にはpYES2−hik1−D1153Eを導入した酵母細胞懸濁液それぞれを9mm間隔で(左から107、106、105、104/ml)5μlずつ滴下後30°Cで72時間培養した。なお、各プレートには、左のプレートから順に、SG培地のみ、25ppm Fludioxonil、25ppm Iprodione、50ppm Chloroneb、又は0.5M NaClとなるように薬剤が含有されている。
図7は、HIK1による薬剤感受性とSSK1とHOG1の有無:A. ssk1変異株とhog1変異株ではHIK1を導入しても薬剤感受性を示さない。各種薬剤を含む90mm径プレート上に、上段から、順に、(最上段)コントロール酵母にpYES2−HIK1を導入した細胞懸濁液、(2段目)hog1変異株にpYES2−HIK1を導入した細胞懸濁液、(3段目)ssk1変異株にpYES2−HIK1を導入した細胞懸濁液、(4段目)ste11変異株にpYES2−HIK1を導入した細胞懸濁液、(5段目)コントロール酵母にpYES2を導入した細胞懸濁液、(6段目)hog1変異株にpYES2−HIK1を導入した細胞懸濁液、(7段目)ssk1変異株にpYES2−HIK1を導入した細胞懸濁液、又は(最下段)ste11変異株にpYES2−HIK1を導入した細胞懸濁液それぞれを9mm間隔で(左から107、106、105、104/ml)5μlずつ滴下後30°Cで60時間(NaClのみ96時間)培養した。なお、左のプレートから順に、各プレートには、SG培地のみ、25ppm Fludioxonil、25ppm Iprodione、50ppm Chloroneb、又は0.5M NaClとなるように薬剤が含有されている。:B. ssk1変異株とhog1変異株にそれぞれSSK1とHOG1を導入するとHIK1存在下で薬剤感受性を示すようになった。各種薬剤を含む90mm径プレート上に、上段から順に、(最上段)hog1変異株にpCLΔ−HOG1及びpYES2−HIK1を導入した細胞懸濁液、(2段目)hog1変異株にpCLΔ及びpYES2−HIK1を導入した細胞懸濁液、(3段目)ssk1変異株にpCLΔ−SSK1及びpYES2−HIK1を導入した細胞懸濁液、又は(最下段)ssk1変異株にpCLΔ及びpYES2−HIK1を導入した細胞懸濁液それぞれを9mm間隔で(左から107、106、105、104/ml)5μl滴下後30°Cで60時間(NaClのみ96時間)培養した。なお、左のプレートから順に、各プレートには、SG培地のみ、25ppm Fludioxonil、25ppm Iprodione、50ppm Chloroneb、又は0.5M NaClとなるように薬剤が含有されている。
図8は、イネいもち病菌のHik1と出芽酵母のYpd1との相互作用 A. CytoTrap two−hybrid systemの概要。ターゲットと餌(bait)の間で相互作用があるとhSosが細胞膜に移行しRasを活性化して、cdc25H株が37°Cでも生育できるようになる。ここでは、餌のYpd1あるいはSsk1にターゲットのHik1が「食いつくかどうか」をみた。 B. Hik1とYpd1の相互作用。細胞懸濁液(左から107、106、105、104/ml)を5μl滴下後それぞれの温度で5日間培養した。
本願発明は、植物又は動物に病害を起こす病原糸状菌に特異的な酵素をコードする遺伝子発現ベクターで当該病害菌と生物学的に近縁であるが当該酵素を有しない他の微生物等の生物を形質転換し、農薬又は医薬の候補試料をコントロール微生物(同じ宿主由来で糸状菌特異的酵素を発現しないものなど)及び糸状菌特異的酵素発現形質転換体に適用し、コントロール微生物に副作用等の影響を与えず、糸状菌特異的酵素発現形質転換体のみに特異的に成長阻害又は殺菌作用を示す農薬候補又は医薬候補を選択するスクリーニング方法及びそのための形質転換体並びにそのためのキットを包含する。
本願発明が対象とする病害菌には、糸状菌、例えば、植物病について言えばイネいもち病菌が、ヒトなどの動物病について言えば、カンジダ、アスペルギルス、水虫菌(白癬菌)等が包含される。糸状菌病害菌特異的酵素としては、糸状菌特異的ヒスチジンキナーゼ(Os−1ファミリー)が包含される。又、糸状菌を対象とする農薬又は医薬をスクリーニングする場合に置いては、糸状菌特異的酵素遺伝子を導入する宿主微生物としては、酵母、好適には出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)を挙げることができる。
さらに具体的には、本願発明には、糸状菌由来の糸状菌特異的ヒスチジンキナーゼ遺伝子を発現する酵母(発現酵母)と発現しない酵母(非発現酵母)の組み合わせからなるキット、及び当該キットを用いる農薬侯補スクリーニング方法が包含される。
[病害菌特異的薬剤とその標的酵素、植物病害を例として]
現在までに、植物病害菌特異的農薬として、糸状菌特異的農薬が知られている。糸状菌特異的農薬としては、フェニルピロール(phenylpyrroles)としてフルジオキソニル(Fludioxonil)及びフェンピクロニル(Fenpiclonil)が、ジカルボキシイミド(dicarboximides)としてイプロジオン(iprodione)及びビンクロゾリン(vinclozolin)が、並びに芳香族炭化水素(aromatic hydrocarbons)としてはクロロネブ(Chloroneb)及びPCNBが知られている。
最近の研究により、上記した多くの糸状菌特異的農薬のターゲットが糸状菌特異的ヒスチジンキナーゼであることが、例えば、上記非特許文献2〜7により解明されてきている。
[ヒスチジンキナーゼ及びその情報伝達系]
細胞内情報伝達には、シグナル蛋白質のセリン、スレオニン、アスパラギン酸、ヒスチジン及びチロシンの修飾を含む可逆的なリン酸化が関与している。ヒスチジンキナーゼは、バクテリアから酵母、糸状菌、植物に存在する情報伝達因子の1つである。
原核生物では、基本的な情報伝達因子として自己リン酸化ヒスチジンキナーゼ及びそこからリン酸を受け取り下流に情報を伝えるレスポンスレギュレーターの二つの成分からなり2成分情報伝達システムである。
真核生物のヒスチジンキナーゼは、ほとんどヒスチジンキナーゼドメインとレスポンスレギュレータードメインをともに持つハイブリッド型ヒスチジンキナーゼである(図2)(Ota,I.M.,and Varshavsky,A.1993.Science 262:566−569.;Urao et al.1999.Plant Cell 11:1743−1754.,;Pott et al.,2000 Fungal Genet.Biol.31:55−67.;Virginia et al.,2000 Curr.Genet.37:364−372.;West and Stock,2001 Trends Biochem.Sci.26:369−376.)。
真核生物型のヒスチジンキナーゼを介する情報伝達系は、ハイブリッド型ヒスチジンキナーゼ、含ヒスチジンリン酸転移タンパク質及びレスポンスレギュレーターの三成分からなる。
ところでハイブリッド型ヒスチジンキナーゼの一つでアパカンカビから見出されたOs−1はN−末端側に92アミノ酸から72アミノ酸のお互いに相同性を持つ繰り返し配列を6つ持つという特徴を持つ(図3)(Alex et al.,1996;Schumacher et al.,1997)。このような特徴を持つハイブリッド型ヒスチジンキナーゼ(Os−1ファミリー)はイネいもち病菌(Pyricularia oryzae:完全世代名Magnaporthe grisea)やAspergillus nidulans等の菌糸型生長を示す菌類(糸状菌)からしか見つかっていない(Alex et al.,1996 Proc.Natl.Acad.Sci.U S A 93:3416−3421.;Schumacher et al.,1997 Curr.Microbiol.34:340−347.;Alex et al.,1998 Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95:7069−7073.;Nagahashi et al.,1998 Microbiology 144:425−432.)。
[糸状菌特異的薬剤感受性酵母の調製]
Os−1ファミリーは、糸状菌でしか見つかっておらず、しかも、Os−1ファミリーが糸状菌特異的薬剤の対象酵素であると考えられている。他方、糸状菌と同じく真核微生物である酵母においては、生物学的に近縁であるにもかかわらず、Os−1ファミリーは存在しない。例えば、S.cerevisiaeにおいては全ゲノム配列が決定されているが、ヒスチジンキナーゼは一つしか存在せず、Os−1ファミリーのものとは異なる特徴を持つもの(Sln1,図3参照)である(Sln1は、N末端側の6つのアミノ酸リピートを持たず、2つの膜貫通領域を持つ)。しかしながら、興味深いことに、糸状菌のOs−1ファミリーの情報伝達系の下流因子は、出芽酵母Saccharomyces cerevisiaeでも多くが共通している(図4)(Maeda et al.,1995 Science 269:554−558;Posas et al.,1996 Cell 86:865−875.:Fujimura et al.,2003 Biosci.Biotechnol.Biochem.67:186−191(2003).)。
そこで、Os−1ファミリーに属するタンパク質の遺伝子をOs−1ファミリータンパク質の遺伝子を有しない酵母に導入して、糸状菌特異的薬剤感受性酵母を調製した。
Os−1ファミリーヒスチジンキナーゼとしては、菌糸型生長をする菌類(糸状菌)由来の、ヒスチジンキナーゼドメインと、レスポンスレギュレータードメインを持つハイブリッド型ヒスチジンキナーゼであって、アカパンカビのハイブリッド型ヒスチジンキナーゼOs−1(配列番号17)に存在するお互いに相同性を示す6つのアミノ酸リピート(アミノ酸リピート1(171−260,90 aa)、アミノ酸リピート2(261−352,92 aa)、アミノ酸リピート3(353−444,92 aa)、アミノ酸リピート4(445−536,92 aa)、アミノ酸リピート5(537−628,92 aa)、アミノ酸リピート6(629−700,72aa))を含む領域の全長と50%以上の相同性を示す領域を有するものがあげられる。
具体的には、Os−1ファミリーに属するタンパク質としては、例えば、イネいもち病菌のOs−1ファミリーヒスチジンキナーゼHik1(DDBJ/EMBL/GenBank accession number AB041647−1)、アカパンカビのOs−1ファミリーヒスチジンキナーゼNik−1/Os−1(Proc.Natl.Acd.Sci.vol.93,pp.3416−3421、accession number U50263−1)、Gibberella moniliformisのNik1(accession number AY456038−1)、Botryotinia fuckeliana(Botrytis cinerea)のBos1(Phytpathology,92,75−80、accession number AF435964−1)、Nectria haematococcaのFik(accession number U61838−1)、Emericella nidulans(Aspergillus nidulans)のHk4(accession number AY282750−1)、Cochliobolus heterostrophusのBmhk1(accession number AB095748−1)、Alternaria brassicicolaのAbNIK1p(accession number AY700092−1)、カンジダ酵母Candida albicansのCaNIK1(accession number AB006363−1)、Yarrowia lipolyticaのCaNIK1類似タンパク質(accession number CR382131−129)、Cryptococcus neoformansの推定ヒスチジンキナーゼ(accession number AE017343−338)を挙げることができる。
さらに、これらOs−1ファミリーヒスチジンキナーゼ遺伝子のコードするアミノ酸配列で表されるペプチド又は該アミノ酸配列に対して、いくつかのアミノ酸が欠失、置換、及び/又は付加されたアミノ酸配列で表されるペプチドであってヒスチジンキナーゼ活性(ヒスチジンキナーゼドメインとレスポンスレギュレータードメインが機能している)を有するポリペプチドをコードする遺伝子も含めることができる。ここで、いくつかのアミノ酸とは、1から200アミノ酸、好適には、1から100アミノ酸、さらに好適には、1から50アミノ酸、より好適には、1から20アミノ酸、さらに好適には1から9アミノ酸を意味する。
また、これらOs−1ファミリーヒスチジンキナーゼ遺伝子は、上記したos−1ファミリー遺伝子に対して、通常のデフォルト条件で比較し、80%以上の相同性、好適には、85%以上の相同性、さらに好適には、90%の相同性、より好適には、95%以上の相同性を有するヒスチジンキナーゼ活性(ヒスチジンキナーゼドメインとレスポンスレギュレータードメインが機能している)を有するポリペプチドをコードする遺伝子も含めることができる。
好適には、イネいもち病菌由来のHIK1及び配列番号16で示されるアミノ酸配列で表されるペプチド又は配列番号16で示されるアミノ酸配列に対して、1乃至数個のアミノ酸が欠失、置換、及び/又は付加されたアミノ酸配列で表されるペプチドであってヒスチジンキナーゼ活性(ヒスチジンキナーゼドメインとレスポンスレギュレータードメインが機能している)を有するポリペプチドをコードする遺伝子を挙げることができる。
これらOs−1ファミリーヒスチジンキナーゼ遺伝子を導入する生物体としては、微生物、植物培養細胞が挙げられ、好適には、Os−1の下流の情報伝達系(含ヒスチジンリン酸転移タンパク質、レスポンスレギュレーター、MAPKKK,MAPKK,MAPkinaseからなる情報伝達系)を備えた生物体が望ましい。具体的には、含ヒスチジンリン酸転移タンパク質としてYpd1、レスポンスレギュレーターとしてSsk1、MAP kinaseとしてHog1を内生的に有する微生物、好適には酵母、特に好適には出芽酵母、サッカロミセス属に属する微生物を挙げることができる。
Os−1ファミリーに属する遺伝子、例えばHIK1は、該遺伝子を導入する対象生物における、周知の発現ベクターに組み換えて、当該対象生物に導入することができる。例えば、酵母に導入するのであれば、pYES2、pYEp51、YEp62、pBM150、pLGDSD5、pAM82、pYE4、pAAh5、pMA56、pAH9/10/21、pMA230、pMA91、pG−1/2等を用いることができる。
組み換えベクターの宿主生物(対象生物)への導入方法としては周知の手段を用いることができるが、例えば、酵母の形質転換は酢酸リチウム法(Ito et al.,1983 J Bacteriol.153:163−168.)を用いることができる。
[スクリーニング方法及びそのためのキット]
[I] 本発明の農薬候補又は医薬候補化合物スクリーング用キットとしては、
(1)Os−1ファミリーヒスチジンキナーゼ遺伝子などの糸状菌特異的遺伝子発現ベクターで酵母などの宿主生物を形質転換して調製された形質転換体および同じ宿主で糸状菌特異的遺伝子を発現しないコントロール生物を含むキット、
好適には、
(2)(1)Os−1ファミリーヒスチジンキナーゼ遺伝子発現ベクターで酵母を形質転換して調製された形質転換体および宿主酵母をベクターのみで形質転換して作成したコントロール酵母を含むキットが挙げられる。
上記キットには、更に、以下で説明するスクリーニングに用いる計測用試薬などを含めることができる。
[II] 本発明の農薬候補又は医薬候補化合物スクリーング方法は、
(1)Os−1ファミリーヒスチジンキナーゼ遺伝子などの糸状菌特異的遺伝子発現ベクターで酵母などの宿主生物を形質転換して調製された形質転換体および同じ宿主で糸状菌特異的遺伝子を発現しないコントロール生物に農薬候補試料又は医薬候補試料を投与する工程
(2)農薬候補試料又は医薬候補試料を投与された上記糸状菌特異的遺伝子発現形質転換体及びコントロール生物を一定時間培養する工程、及び
(3)一定時間培養後、糸状菌特異的遺伝子発現形質転換体及びコントロール生物の生存量(又は生存細胞数)を計測する工程を含んでいる。
好適には、
(1)Os−1ファミリーヒスチジンキナーゼ遺伝子発現ベクターで酵母を形質転換して調製された形質転換体および宿主生物をベクターのみで形質転換して作成したコントロール酵母に農薬候補試料を投与する工程
(2)農薬候補試料を投与された上記Os−1ファミリーヒスチジンキナーゼ遺伝子発現形質転換体及びコントロール酵母を一定時間培養する工程、及び
(3)一定時間培養後、Os−1ファミリーヒスチジンキナーゼ遺伝子発現形質転換体及びコントロール酵母の増殖(又は生存細胞数)を計測する工程を含んでいる。
以下具体的には、酵母を形質転換して用いる場合を例示して説明するが、他の微生物又は生物体であっても同様にスクリーニングなし得る。
Os−1ファミリーヒスチジンキナーゼ遺伝子発現形質転換酵母とコントロール酵母の増殖又は生存細胞数は、例えば、目視や、OD600を測定することにより計測することもできるが、これ以外にも、酵母の酸素消費量を計測、培地中の糖濃度減少を計測する、蛍光又は発色酵素などの標識により酵母特異的標識抗体、又はビオチン等ラベルされた酵母特異的抗体を用いて計測する等、周知の適宜の方法で計測することができる。
(i)プレート法
Os−1ファミリーヒスチジンキナーゼ遺伝子発現ベクターで形質転換した形質転換体とコントロール酵母を適当な細胞数、例えば、107細胞/ml、106細胞/ml、105細胞/ml、及び104細胞/mlとなるように希釈し、1定量の農薬候補試料を含むプレート(例えば、90mmプレート)に、同じ量の細胞含有溶液(例えば、5μリットル)を滴下し、適宜な時間、例えば、5時間以上、300時間以下、好適には、48から72時間、培養温度は25°C−37°C、好適には、30℃で培養し、プレートにおけるOs−1ファミリーヒスチジンキナーゼ遺伝子発現形質転換酵母とコントロール酵母の増殖状況を目視により確認し、コントロール酵母とOs−1ファミリーヒスチジンキナーゼ遺伝子発現形質転換体で増殖状況(生存数)が異なった農薬候補試料又は医薬候補試料を、農薬候補又は医薬候補として選抜する。
(ii)液体培養法
Os−1ファミリーヒスチジンキナーゼ遺伝子発現ベクターで形質転換した形質転換体とコントロール酵母をそれぞれ、8時間から10時間培養した後に、OD600を測定する。次に、1定量の農薬候補試料又は医薬候補試料を含む培地に例えば、OD600=0.01になるように加える。適温、例えば、27°Cで培養、好適には、振とう培養し、160rpmで旋回振とうし、適宜の時間後から、一定時間間隔、好適にはコントロール酵母の倍加時間の+−50%時間の範囲内の一定時間間隔でOD600を計測する。コントロール酵母としてATCC201388にベクターpYES2を形質転換したものを用いた場合には、例えば、3時間間隔でOD600を計測する。この計測から、増殖曲線を作り、倍化時間を計算する。コントロール酵母に対し、Os−1ファミリーヒスチジンキナーゼ遺伝子発現形質転換体で倍加時間に20%以上、好適には50%以上、更に好適には100以上の倍加時間の増加した農薬候補試料又は医薬候補試料を、農薬候補又は医薬候補として選抜する。
更に、次のような方法を採用することもできる。
(iii)それぞれの酵母をプレーティングしたプレート上でペーパーディスクにしみこませて薬剤を投与し、30°C程度で静置培養し、目視等により生育阻止部分を評価する。
なお、従来よりfludioxonilとiprodioneについては、アカパンカビ(Ochiai et al.,2001.Pest Manag Sci.57:437−442.)とイネいもち病菌以外にも、カンジダ症の病原菌Candida albicans(Ochiai et al.,2002.Biosci.Biotechnol.Biochem.66:2209−2215.)、Alternaria alternata(Dry et al.,2004.Fungal Genet Biol.41:102−108.)においてはOs−1ファミリーヒスチジンキナーゼがターゲットであることが示唆されている。同様に、ある糸状菌由来のOs−1ファミリーヒスチジンキナーゼを標的として上記方法でスクリーニングされた農薬候補又は医薬候補は、通常、Os−1ファミリーヒスチジンキナーゼを有する他の糸状菌に対しても、農薬又は医薬候補として検討対象とすることができる。
材料
使用した酵母菌株とプラスミドを以下の表1に示す。
薬剤は和光純薬から入手した。培地成分は特に断らない限りDifcoから購入したものを用いた。なお、遺伝子操作は一般的方法を用いた(Sambrook et al.,1989 Molecular Cloning:a Laboratory Manual,2nd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY.)。酵母の培養は特に断らない限り30°Cで行った。完全培地はYPD(1% yeast extract、2% peptone、2% glucose)を用い、最小培地は選択に必要な栄養源を抜いたSD(0.67% yeast nitrogen base w/o amino acids、2% glucose、1X dropout solution(Clontech))あるいはSG(0.67% yeast nitrogen base w/o amino acids、2% galactose、1% raffinose、1X dropout solution(Clontech))を用いた。プレートを作る場合は2%になるように寒天を加えた。イネいもち病菌P−2株のcDNAは以前報告した(Motoyama et al.,1998 Biosci.Biotech.Biochem.62:564−566.)のと同様にして作成した。
本願発明が対象とする病害菌には、糸状菌、例えば、植物病について言えばイネいもち病菌が、ヒトなどの動物病について言えば、カンジダ、アスペルギルス、水虫菌(白癬菌)等が包含される。糸状菌病害菌特異的酵素としては、糸状菌特異的ヒスチジンキナーゼ(Os−1ファミリー)が包含される。又、糸状菌を対象とする農薬又は医薬をスクリーニングする場合に置いては、糸状菌特異的酵素遺伝子を導入する宿主微生物としては、酵母、好適には出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)を挙げることができる。
さらに具体的には、本願発明には、糸状菌由来の糸状菌特異的ヒスチジンキナーゼ遺伝子を発現する酵母(発現酵母)と発現しない酵母(非発現酵母)の組み合わせからなるキット、及び当該キットを用いる農薬侯補スクリーニング方法が包含される。
[病害菌特異的薬剤とその標的酵素、植物病害を例として]
現在までに、植物病害菌特異的農薬として、糸状菌特異的農薬が知られている。糸状菌特異的農薬としては、フェニルピロール(phenylpyrroles)としてフルジオキソニル(Fludioxonil)及びフェンピクロニル(Fenpiclonil)が、ジカルボキシイミド(dicarboximides)としてイプロジオン(iprodione)及びビンクロゾリン(vinclozolin)が、並びに芳香族炭化水素(aromatic hydrocarbons)としてはクロロネブ(Chloroneb)及びPCNBが知られている。
最近の研究により、上記した多くの糸状菌特異的農薬のターゲットが糸状菌特異的ヒスチジンキナーゼであることが、例えば、上記非特許文献2〜7により解明されてきている。
[ヒスチジンキナーゼ及びその情報伝達系]
細胞内情報伝達には、シグナル蛋白質のセリン、スレオニン、アスパラギン酸、ヒスチジン及びチロシンの修飾を含む可逆的なリン酸化が関与している。ヒスチジンキナーゼは、バクテリアから酵母、糸状菌、植物に存在する情報伝達因子の1つである。
原核生物では、基本的な情報伝達因子として自己リン酸化ヒスチジンキナーゼ及びそこからリン酸を受け取り下流に情報を伝えるレスポンスレギュレーターの二つの成分からなり2成分情報伝達システムである。
真核生物のヒスチジンキナーゼは、ほとんどヒスチジンキナーゼドメインとレスポンスレギュレータードメインをともに持つハイブリッド型ヒスチジンキナーゼである(図2)(Ota,I.M.,and Varshavsky,A.1993.Science 262:566−569.;Urao et al.1999.Plant Cell 11:1743−1754.,;Pott et al.,2000 Fungal Genet.Biol.31:55−67.;Virginia et al.,2000 Curr.Genet.37:364−372.;West and Stock,2001 Trends Biochem.Sci.26:369−376.)。
真核生物型のヒスチジンキナーゼを介する情報伝達系は、ハイブリッド型ヒスチジンキナーゼ、含ヒスチジンリン酸転移タンパク質及びレスポンスレギュレーターの三成分からなる。
ところでハイブリッド型ヒスチジンキナーゼの一つでアパカンカビから見出されたOs−1はN−末端側に92アミノ酸から72アミノ酸のお互いに相同性を持つ繰り返し配列を6つ持つという特徴を持つ(図3)(Alex et al.,1996;Schumacher et al.,1997)。このような特徴を持つハイブリッド型ヒスチジンキナーゼ(Os−1ファミリー)はイネいもち病菌(Pyricularia oryzae:完全世代名Magnaporthe grisea)やAspergillus nidulans等の菌糸型生長を示す菌類(糸状菌)からしか見つかっていない(Alex et al.,1996 Proc.Natl.Acad.Sci.U S A 93:3416−3421.;Schumacher et al.,1997 Curr.Microbiol.34:340−347.;Alex et al.,1998 Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95:7069−7073.;Nagahashi et al.,1998 Microbiology 144:425−432.)。
[糸状菌特異的薬剤感受性酵母の調製]
Os−1ファミリーは、糸状菌でしか見つかっておらず、しかも、Os−1ファミリーが糸状菌特異的薬剤の対象酵素であると考えられている。他方、糸状菌と同じく真核微生物である酵母においては、生物学的に近縁であるにもかかわらず、Os−1ファミリーは存在しない。例えば、S.cerevisiaeにおいては全ゲノム配列が決定されているが、ヒスチジンキナーゼは一つしか存在せず、Os−1ファミリーのものとは異なる特徴を持つもの(Sln1,図3参照)である(Sln1は、N末端側の6つのアミノ酸リピートを持たず、2つの膜貫通領域を持つ)。しかしながら、興味深いことに、糸状菌のOs−1ファミリーの情報伝達系の下流因子は、出芽酵母Saccharomyces cerevisiaeでも多くが共通している(図4)(Maeda et al.,1995 Science 269:554−558;Posas et al.,1996 Cell 86:865−875.:Fujimura et al.,2003 Biosci.Biotechnol.Biochem.67:186−191(2003).)。
そこで、Os−1ファミリーに属するタンパク質の遺伝子をOs−1ファミリータンパク質の遺伝子を有しない酵母に導入して、糸状菌特異的薬剤感受性酵母を調製した。
Os−1ファミリーヒスチジンキナーゼとしては、菌糸型生長をする菌類(糸状菌)由来の、ヒスチジンキナーゼドメインと、レスポンスレギュレータードメインを持つハイブリッド型ヒスチジンキナーゼであって、アカパンカビのハイブリッド型ヒスチジンキナーゼOs−1(配列番号17)に存在するお互いに相同性を示す6つのアミノ酸リピート(アミノ酸リピート1(171−260,90 aa)、アミノ酸リピート2(261−352,92 aa)、アミノ酸リピート3(353−444,92 aa)、アミノ酸リピート4(445−536,92 aa)、アミノ酸リピート5(537−628,92 aa)、アミノ酸リピート6(629−700,72aa))を含む領域の全長と50%以上の相同性を示す領域を有するものがあげられる。
具体的には、Os−1ファミリーに属するタンパク質としては、例えば、イネいもち病菌のOs−1ファミリーヒスチジンキナーゼHik1(DDBJ/EMBL/GenBank accession number AB041647−1)、アカパンカビのOs−1ファミリーヒスチジンキナーゼNik−1/Os−1(Proc.Natl.Acd.Sci.vol.93,pp.3416−3421、accession number U50263−1)、Gibberella moniliformisのNik1(accession number AY456038−1)、Botryotinia fuckeliana(Botrytis cinerea)のBos1(Phytpathology,92,75−80、accession number AF435964−1)、Nectria haematococcaのFik(accession number U61838−1)、Emericella nidulans(Aspergillus nidulans)のHk4(accession number AY282750−1)、Cochliobolus heterostrophusのBmhk1(accession number AB095748−1)、Alternaria brassicicolaのAbNIK1p(accession number AY700092−1)、カンジダ酵母Candida albicansのCaNIK1(accession number AB006363−1)、Yarrowia lipolyticaのCaNIK1類似タンパク質(accession number CR382131−129)、Cryptococcus neoformansの推定ヒスチジンキナーゼ(accession number AE017343−338)を挙げることができる。
さらに、これらOs−1ファミリーヒスチジンキナーゼ遺伝子のコードするアミノ酸配列で表されるペプチド又は該アミノ酸配列に対して、いくつかのアミノ酸が欠失、置換、及び/又は付加されたアミノ酸配列で表されるペプチドであってヒスチジンキナーゼ活性(ヒスチジンキナーゼドメインとレスポンスレギュレータードメインが機能している)を有するポリペプチドをコードする遺伝子も含めることができる。ここで、いくつかのアミノ酸とは、1から200アミノ酸、好適には、1から100アミノ酸、さらに好適には、1から50アミノ酸、より好適には、1から20アミノ酸、さらに好適には1から9アミノ酸を意味する。
また、これらOs−1ファミリーヒスチジンキナーゼ遺伝子は、上記したos−1ファミリー遺伝子に対して、通常のデフォルト条件で比較し、80%以上の相同性、好適には、85%以上の相同性、さらに好適には、90%の相同性、より好適には、95%以上の相同性を有するヒスチジンキナーゼ活性(ヒスチジンキナーゼドメインとレスポンスレギュレータードメインが機能している)を有するポリペプチドをコードする遺伝子も含めることができる。
好適には、イネいもち病菌由来のHIK1及び配列番号16で示されるアミノ酸配列で表されるペプチド又は配列番号16で示されるアミノ酸配列に対して、1乃至数個のアミノ酸が欠失、置換、及び/又は付加されたアミノ酸配列で表されるペプチドであってヒスチジンキナーゼ活性(ヒスチジンキナーゼドメインとレスポンスレギュレータードメインが機能している)を有するポリペプチドをコードする遺伝子を挙げることができる。
これらOs−1ファミリーヒスチジンキナーゼ遺伝子を導入する生物体としては、微生物、植物培養細胞が挙げられ、好適には、Os−1の下流の情報伝達系(含ヒスチジンリン酸転移タンパク質、レスポンスレギュレーター、MAPKKK,MAPKK,MAPkinaseからなる情報伝達系)を備えた生物体が望ましい。具体的には、含ヒスチジンリン酸転移タンパク質としてYpd1、レスポンスレギュレーターとしてSsk1、MAP kinaseとしてHog1を内生的に有する微生物、好適には酵母、特に好適には出芽酵母、サッカロミセス属に属する微生物を挙げることができる。
Os−1ファミリーに属する遺伝子、例えばHIK1は、該遺伝子を導入する対象生物における、周知の発現ベクターに組み換えて、当該対象生物に導入することができる。例えば、酵母に導入するのであれば、pYES2、pYEp51、YEp62、pBM150、pLGDSD5、pAM82、pYE4、pAAh5、pMA56、pAH9/10/21、pMA230、pMA91、pG−1/2等を用いることができる。
組み換えベクターの宿主生物(対象生物)への導入方法としては周知の手段を用いることができるが、例えば、酵母の形質転換は酢酸リチウム法(Ito et al.,1983 J Bacteriol.153:163−168.)を用いることができる。
[スクリーニング方法及びそのためのキット]
[I] 本発明の農薬候補又は医薬候補化合物スクリーング用キットとしては、
(1)Os−1ファミリーヒスチジンキナーゼ遺伝子などの糸状菌特異的遺伝子発現ベクターで酵母などの宿主生物を形質転換して調製された形質転換体および同じ宿主で糸状菌特異的遺伝子を発現しないコントロール生物を含むキット、
好適には、
(2)(1)Os−1ファミリーヒスチジンキナーゼ遺伝子発現ベクターで酵母を形質転換して調製された形質転換体および宿主酵母をベクターのみで形質転換して作成したコントロール酵母を含むキットが挙げられる。
上記キットには、更に、以下で説明するスクリーニングに用いる計測用試薬などを含めることができる。
[II] 本発明の農薬候補又は医薬候補化合物スクリーング方法は、
(1)Os−1ファミリーヒスチジンキナーゼ遺伝子などの糸状菌特異的遺伝子発現ベクターで酵母などの宿主生物を形質転換して調製された形質転換体および同じ宿主で糸状菌特異的遺伝子を発現しないコントロール生物に農薬候補試料又は医薬候補試料を投与する工程
(2)農薬候補試料又は医薬候補試料を投与された上記糸状菌特異的遺伝子発現形質転換体及びコントロール生物を一定時間培養する工程、及び
(3)一定時間培養後、糸状菌特異的遺伝子発現形質転換体及びコントロール生物の生存量(又は生存細胞数)を計測する工程を含んでいる。
好適には、
(1)Os−1ファミリーヒスチジンキナーゼ遺伝子発現ベクターで酵母を形質転換して調製された形質転換体および宿主生物をベクターのみで形質転換して作成したコントロール酵母に農薬候補試料を投与する工程
(2)農薬候補試料を投与された上記Os−1ファミリーヒスチジンキナーゼ遺伝子発現形質転換体及びコントロール酵母を一定時間培養する工程、及び
(3)一定時間培養後、Os−1ファミリーヒスチジンキナーゼ遺伝子発現形質転換体及びコントロール酵母の増殖(又は生存細胞数)を計測する工程を含んでいる。
以下具体的には、酵母を形質転換して用いる場合を例示して説明するが、他の微生物又は生物体であっても同様にスクリーニングなし得る。
Os−1ファミリーヒスチジンキナーゼ遺伝子発現形質転換酵母とコントロール酵母の増殖又は生存細胞数は、例えば、目視や、OD600を測定することにより計測することもできるが、これ以外にも、酵母の酸素消費量を計測、培地中の糖濃度減少を計測する、蛍光又は発色酵素などの標識により酵母特異的標識抗体、又はビオチン等ラベルされた酵母特異的抗体を用いて計測する等、周知の適宜の方法で計測することができる。
(i)プレート法
Os−1ファミリーヒスチジンキナーゼ遺伝子発現ベクターで形質転換した形質転換体とコントロール酵母を適当な細胞数、例えば、107細胞/ml、106細胞/ml、105細胞/ml、及び104細胞/mlとなるように希釈し、1定量の農薬候補試料を含むプレート(例えば、90mmプレート)に、同じ量の細胞含有溶液(例えば、5μリットル)を滴下し、適宜な時間、例えば、5時間以上、300時間以下、好適には、48から72時間、培養温度は25°C−37°C、好適には、30℃で培養し、プレートにおけるOs−1ファミリーヒスチジンキナーゼ遺伝子発現形質転換酵母とコントロール酵母の増殖状況を目視により確認し、コントロール酵母とOs−1ファミリーヒスチジンキナーゼ遺伝子発現形質転換体で増殖状況(生存数)が異なった農薬候補試料又は医薬候補試料を、農薬候補又は医薬候補として選抜する。
(ii)液体培養法
Os−1ファミリーヒスチジンキナーゼ遺伝子発現ベクターで形質転換した形質転換体とコントロール酵母をそれぞれ、8時間から10時間培養した後に、OD600を測定する。次に、1定量の農薬候補試料又は医薬候補試料を含む培地に例えば、OD600=0.01になるように加える。適温、例えば、27°Cで培養、好適には、振とう培養し、160rpmで旋回振とうし、適宜の時間後から、一定時間間隔、好適にはコントロール酵母の倍加時間の+−50%時間の範囲内の一定時間間隔でOD600を計測する。コントロール酵母としてATCC201388にベクターpYES2を形質転換したものを用いた場合には、例えば、3時間間隔でOD600を計測する。この計測から、増殖曲線を作り、倍化時間を計算する。コントロール酵母に対し、Os−1ファミリーヒスチジンキナーゼ遺伝子発現形質転換体で倍加時間に20%以上、好適には50%以上、更に好適には100以上の倍加時間の増加した農薬候補試料又は医薬候補試料を、農薬候補又は医薬候補として選抜する。
更に、次のような方法を採用することもできる。
(iii)それぞれの酵母をプレーティングしたプレート上でペーパーディスクにしみこませて薬剤を投与し、30°C程度で静置培養し、目視等により生育阻止部分を評価する。
なお、従来よりfludioxonilとiprodioneについては、アカパンカビ(Ochiai et al.,2001.Pest Manag Sci.57:437−442.)とイネいもち病菌以外にも、カンジダ症の病原菌Candida albicans(Ochiai et al.,2002.Biosci.Biotechnol.Biochem.66:2209−2215.)、Alternaria alternata(Dry et al.,2004.Fungal Genet Biol.41:102−108.)においてはOs−1ファミリーヒスチジンキナーゼがターゲットであることが示唆されている。同様に、ある糸状菌由来のOs−1ファミリーヒスチジンキナーゼを標的として上記方法でスクリーニングされた農薬候補又は医薬候補は、通常、Os−1ファミリーヒスチジンキナーゼを有する他の糸状菌に対しても、農薬又は医薬候補として検討対象とすることができる。
材料
使用した酵母菌株とプラスミドを以下の表1に示す。
[実施例1]酵母での糸状菌のヒスチジンキナーゼの発現と解析
(1) イネいもち病菌のOs−1ファミリーヒスチジンキナーゼ遺伝子HIK1(DDBJ/EMBL/GenBank accession number AB041647;配列番号1)のcDNAを酵母用発現ベクターpYES2のBamHI部位に挿入し、pYES2−HIK1を得た。pYES2−HIK1はGAL1 promoterの制御下でHik1の全長をタグなしで発現できる。GAL1 promoterの発現抑制条件での培養はウラシルを抜いたグルコースを炭素源とした合成培地(SD/−Ura)、発現誘導条件での培養はウラシルを抜いたガラクトースを炭素源とした合成培地(SG/−Ura)で行った。酵母の形質転換は酢酸リチウム法(Ito et al.,1983 ibid)を用いた。
薬剤感受性は、プレート上での培養と液体培養により解析した。プレートでの培養の場合、5ml SD/−Uraで一晩前培養し、集菌し、10ml SG/−Uraで洗浄し、10ml SG/−Uraで8時間から10時間培養した後に、OD600を測定し、107細胞/ml、106細胞/ml、105細胞/ml、104細胞/mlに希釈し、各種薬剤を加えたSG/−Uraプレート上に5μlずつ滴下し、60時間から240時間培養した。液体培養の場合、5ml SD/−Uraで一晩前培養し、集菌し、10ml SG/−Uraで洗浄し、10ml SG/−Uraで8時間から10時間培養した後に、OD600を測定し、各種薬剤を含むSG/−Uraが50ml入った300ml三角フラスコにOD600=0.01になるように加えた。27°C 160rpmで旋回振とうし、12、15、18、21、24、33、36、39時間後にサンプリングし、OD600を測定し、増殖曲線を作り、倍化時間を計算した。
(結果)
Os−1ファミリーヒスチジンキナーゼ遺伝子HIK1の酵母での発現による薬剤感受性の付与
ゲノム中にOs−1ファミリーのヒスチジンキナーゼを持たない出芽酵母S.cerevisiaeに、イネいもち病菌由来のOs−1ファミリーのヒスチジンキナーゼHik1をpYES2−HIK1を導入することによりGAL1 promoterの制御下で発現させた(図5A)。GAL1 promoterの発現誘導条件で、薬剤非存在下ではpYES2−HIK1形質転換体はpYES2形質転換体と同様の生育を示したが、本来感受性を示さない糸状菌特異的農薬(フルジオキソニル、イプロジオン、クロロネブ、図1参照)の存在下では、pYES2−HIK1形質転換体のみが生育阻害を示した(図5B)。フルジオキソニルに対する効果は5ppmで飽和し、イプロジオンに対する効果は25ppmで飽和し、クロロネブに対する効果は50ppmで飽和した。また、pYES2−HIK1形質転換体でもGAL1 promoterの発現抑制条件下では生育阻害を示さなかった(データ示さず)。なお、このような三種のグループの薬剤とは構造の違うシクロヘキシミドに対してはpYES2−HIK1形質転換体とpYES2形質転換体の間で発現誘導条件でも感受性の差は認められなかった。以上のように、pYES2−HIK1形質転換体でGAL1 promoterの発現誘導条件でのみ特異的に、3種の薬剤に対する感受性が付与されることから、この感受性は導入したHIK1によって特異的に引き起こされていると考えられる。
同様の実験を液体培養で行った場合(表2)、pYES2形質転換体のGAL1 promoter発現誘導条件では薬剤の有無(0、25ppmフルジオキソニル、25ppmイプロジオン、25ppmクロロネブ)にかかわらず同様の生育速度を示し、倍化時間は2.2時間前後になった。pYES2−HIK1形質転換体では、薬剤の影響を受け、薬剤非存在下では倍化時間が2.19時間でpYES2形質転換体の場合とほとんど変わらなかったが、25ppmフルジオキソニル存在下では4.25時間、25ppmイプロジオン存在下では3.12時間、25ppmクロロネブ存在下では2.90時間、と明らかに生育速度の低下が認められた。
(2) 変異導入したHIK1は変異導入用合成DNA(HK−H736V:5’−CCTCGCTAACATGTCCGTCGAAATCCGCACACC−3’(配列番号2),HK−D1153E:5’−GATGTGATCCTGATGGAGGTTCAAATGCCTGTCATG−3’(配列番号3))を使用し、Mutan−Express Km kit(宝酒造)により作成した。それぞれの変異導入HIK1をpYES2のBamHI部位にクローニングすることにより、pYES2−hik1−H736VとpYES2−hik1−D1153Eを作成した。
(結果) Hik1による薬剤感受性の付与にヒスチジンキナーゼの機能に必要とされるドメインが関わっているかどうかをみるため、ヒスチジンキナーゼドメインの機能に必要な自己リン酸化されるH736に変異を入れてこのドメインが機能しなくなるようにしたもの(Hik1−H736V)を発現させるためのプラスミドpYES2−hik1−H736Vと、レスポンスレギュレータードメインのリン酸リレーにおいてリン酸を受け取るD1153に変異を入れてこのドメインが機能しなくなるようにしたもの(Hik1−D1153E)を発現させるためのプラスミドpYES2−hik1−D1153Eを作成して同様にATCC201388株に導入した(図6A)。pYES2−HIK1を導入した株と異なり、pYES2−hik1−H736V導入株とpYES2−hik1−D1153E導入株はいずれも、3種の薬剤(25ppm fludioxonil、25ppm iprodione、50ppm chloroneb)にほとんど感受性を示さなくなり(図6B)、ヒスチジンキナーゼドメインとレスポンスレギュレータードメインの両方が薬剤感受性の付与に必要とされることが示唆された。なお、pYES2−hik1−H736V導入株では薬剤の有無にかかわらずやや生育阻害効果が認められた。また、浸透圧(0.5M NaCl)感受性には特に変化は認められなかった。
[参考例1] Hik1による薬剤感受性の付与には酵母のHog1 MAPKを介する経路が必要である。
(1) 糸状菌において、Os−1ファミリーヒスチジンキナーゼの下流には、出芽酵母のHog1 MAP kinaseのホモログ(アカパンカビの場合Os−2(Zhang et al.,2002 Appl.Environ.Microbiol.68:532−538.)で、イネいもち病菌の場合Osm1(Dixon et al.,1999 Plant Cell 11:2045−2058.))を介した情報伝達系が働いている(図4)。
Hik1を出芽酵母で発現させて薬剤感受性が付与された結果の解釈として最も可能性が高いのが、Hik1に薬剤が作用して、出芽酵母のHog1 MAP kinaseに至る情報伝達系を攪乱して生育阻害を引き起こすというものである。この可能性を明らかにするため、この情報伝達系の因子の変異株であるhog1変異株とssk1変異株とste11変異株を用いて、それぞれの変異株にpYES2−HIK1を導入して、発現を誘導した場合に薬剤感受性を示すかどうかをみた(図7A)。hog1変異株とssk1変異株では、pYES2−HIK1を導入して発現を誘導しても、薬剤(25ppm fludioxonil、25ppm iprodione、50ppm chloroneb)に対する感受性を示さなかった。一方、ste11変異株の場合は野生型株と同様に、pYES2−HIK1を導入して発現を誘導すると、薬剤(25ppm fludioxonil、25ppm iprodione、50ppm chloroneb)に対する感受性を示した。なお、pYES2導入株ではいずれの株も薬剤に対する感受性を示さなかったことから、ここでの薬剤感受性はHIK1特異的であることが示唆される。また、Hik1の発現は浸透圧(0.5M NaCl)感受性には影響を与えなかった。以上の結果から、Ssk1とHog1が薬剤感受性の付与に必要で、Ste11は必要でないことが示唆される。
(2) この段階では、hog1変異株とssk1変異株でpYES2−HIK1を導入して発現を誘導しても、薬剤に対する感受性を示さなかったのは、hog1変異やssk1変異とは関係がない変異のためである可能性が否定できない。そこで、hog1変異株とssk1変異株にそれぞれ、無傷のHOG1遺伝子及びSSK1遺伝子を導入した場合に薬剤感受性が回復するかどうか、言い換えると、hog1変異やssk1変異が薬剤感受性を示さなくなった原因であるかどうかを明らかにするための実験を行った(図7B)。
酵母の変異相補用のプラスミドpCLΔ−HOG1とpCLΔ−SSK1は、pCL1(Clontech)をHindIII消化し自己連結して作成したpCLΔのHindIII部位にATCC201388株由来のHOG1あるいはSSK1をクローニングすることにより作成した。HOG1は5’−TTTAAGCTTATCGATTGAAGGAAATAAGAGGAATAGC−3’(配列番号8)と5’−TTTAAGCTTGGGTGAGACAGCTATTTAGCAAGTTC−3’(配列番号9)で増幅し、SSK1は5’−TTTAAGCTTCCCACTGCTGGATCGACCATTC−3’(配列番号10)と5’−TTTAAGCTTTAGTTGCCAGTCAAGATTTCCC−3’(配列番号11)で増幅した。なお、増幅した遺伝子に変異が入っていないことをDNA塩基配列決定により確認した。
hog1変異株にpCLΔ−HOG1を導入しHOG1遺伝子を発現させた場合、薬剤に対する感受性が回復した。同様に、ssk1変異株にpCLΔ−SSK1を導入しHOG1遺伝子を発現させた場合も、薬剤に対する感受性が回復した。なお、ベクターのみ(pCLΔ)を導入したコントロールでは両変異株とも薬剤感受性の回復は認められなかった。
以上の結果から、Hog1 MAPKを介した情報伝達系の因子の中で、Ssk1とHog1がHik1による薬剤感受性の付与に必要で、Ste11は必要でないことが示された。
[参考例2]Hik1とYpd1の相互作用の解析
CytoTrap XR library construction kit(Stratagene)を用いて、CytoTrap two−hybrid systemによるタンパク質間相互作用を解析した。このシステムは、一方のタンパク質をヒトSosとの融合蛋白として発現させるためのベクターpSosと、もう一方のタンパク質をミリスチン酸化シグナルとの融合タンパク質として発現させるためのベクターpMyrと、酵母におけるSosホモログCdc25の遺伝子に温度感受性変異が入った酵母株cdc25Hとからなる。二つのタンパク質の間で相互作用があるとヒトSosがミリスチン酸修飾部位により膜に移行し、酵母のcdc25変異を相補し、高温(37度)でも生育できるようになる(図8A)。pMyr−HIK1はpMyrのSmaI部位にHIK1 cDNAをクローニングすることにより構築した。pSos−YPD1はSrfIとSalIで消化したpSosにSmaIとXhoIで消化したATCC201388株由来のYPD1を連結することにより構築した。pSos−Ssk1はSrfIとSalIで消化したpSosにSmaIとXhoIで消化したATCC201388株由来のSSK1を連結することにより構築した。YPD1は5’−TTTCCCGGGATATGTCTACTATTCCCTCAGAAATC−3’(配列番号12)と5’−TTTCTCGAGTTATAGGTTTGTGTTGTAATATTTAGAT−3’(配列番号13)で増幅し、SSK1は5’−TTTCCCGGGATATGCTCAATTCTGCGTTACTGTGG−3’(配列番号14)と5’−TTTCTCGAGTCACAATTCTATTTGAGTGGGCG−3’(配列番号15)で増幅した。なお、増幅した遺伝子に変異が入っていないことをDNA塩基配列決定により確認した。酵母の形質転換から、形質転換酵母の滴下までは、前述の薬剤感受性の解析の場合と同様に行った。ただし、滴下までの培養は全て25°Cで行い、滴下後は25°Cと37°Cで培養した。
(結果)
Hik1は酵母のHog1の上流の情報伝達因子Ypd1と相互作用する
さらに、Hik1の酵母における作用点を明らかにするために、Hik1と酵母側の相互作用因子の候補Ypd1やSsk1との間の相互作用をyeast two−hybrid system(図8A、材料と方法参照)で解析した。本システムで用いるS.cerevisiae cdc25H株はCDC25遺伝子の温度感受性変異により高温(37°C)ではRas経路を活性化できないために生育できず、許容温度の25°Cでは生育できる。ターゲットをミリスリン酸化シグナルとの融合タンパク質、獲物(bait)をヒトSos(酵母のCdc25のホモログ)との融合タンパク質として発現させる。ターゲットと獲物との間に相互作用があるとミリスリン酸化シグナルによりヒトSosが細胞膜に移行し、Ras経路を活性化して37°Cでもcdc25H株が生育でできるようになることにより、相互作用が検出できる。
ここでは獲物をYpd1(pSos−YPD1で発現)とSsk1(pSos−SSK1で発現)にして、ターゲットのイネいもち病菌のHik1(pMyr−HIK1で発現)が結合するかどうかを解析した(図8B)。許容温度の25°Cでは全ての組み合わせで生育が認められた。ただし、相互作用を示すpositive controlの組み合わせ(pSos−MAFB+pMyr−MAFB)と相互作用を示さないnegative controlの組み合わせ(pSos−Col1+pMyr−MAFB)ではやや生育阻害が認められた。37°Cでは、positive controlの組み合わせでは生育が認められ、negative controlの組み合わせでは生育が認められず、実験系に問題がないことが示された。Hik1が相互作用を示したのはYpd1であり(pSos−YPD1+pMyr−HIK1)、Ssk1とは相互作用を示さなかった(pSos−SSK1+pMyr−HIK1)。なお、Ypd1のみでもわずかに37°Cでの生育が認められたが(pSos−YPD1+pMyr)、これはYpd1の通常の酵母内での相互作用の相手である膜結合領域を持つSln1(図3、4)との相互作用によるものと考えられる。以上の結果から、出芽酵母内において、イネいもち病菌のHik1は出芽酵母のYpd1を介して薬剤感受性を付与している可能性が高いことが示された。
(1) イネいもち病菌のOs−1ファミリーヒスチジンキナーゼ遺伝子HIK1(DDBJ/EMBL/GenBank accession number AB041647;配列番号1)のcDNAを酵母用発現ベクターpYES2のBamHI部位に挿入し、pYES2−HIK1を得た。pYES2−HIK1はGAL1 promoterの制御下でHik1の全長をタグなしで発現できる。GAL1 promoterの発現抑制条件での培養はウラシルを抜いたグルコースを炭素源とした合成培地(SD/−Ura)、発現誘導条件での培養はウラシルを抜いたガラクトースを炭素源とした合成培地(SG/−Ura)で行った。酵母の形質転換は酢酸リチウム法(Ito et al.,1983 ibid)を用いた。
薬剤感受性は、プレート上での培養と液体培養により解析した。プレートでの培養の場合、5ml SD/−Uraで一晩前培養し、集菌し、10ml SG/−Uraで洗浄し、10ml SG/−Uraで8時間から10時間培養した後に、OD600を測定し、107細胞/ml、106細胞/ml、105細胞/ml、104細胞/mlに希釈し、各種薬剤を加えたSG/−Uraプレート上に5μlずつ滴下し、60時間から240時間培養した。液体培養の場合、5ml SD/−Uraで一晩前培養し、集菌し、10ml SG/−Uraで洗浄し、10ml SG/−Uraで8時間から10時間培養した後に、OD600を測定し、各種薬剤を含むSG/−Uraが50ml入った300ml三角フラスコにOD600=0.01になるように加えた。27°C 160rpmで旋回振とうし、12、15、18、21、24、33、36、39時間後にサンプリングし、OD600を測定し、増殖曲線を作り、倍化時間を計算した。
(結果)
Os−1ファミリーヒスチジンキナーゼ遺伝子HIK1の酵母での発現による薬剤感受性の付与
ゲノム中にOs−1ファミリーのヒスチジンキナーゼを持たない出芽酵母S.cerevisiaeに、イネいもち病菌由来のOs−1ファミリーのヒスチジンキナーゼHik1をpYES2−HIK1を導入することによりGAL1 promoterの制御下で発現させた(図5A)。GAL1 promoterの発現誘導条件で、薬剤非存在下ではpYES2−HIK1形質転換体はpYES2形質転換体と同様の生育を示したが、本来感受性を示さない糸状菌特異的農薬(フルジオキソニル、イプロジオン、クロロネブ、図1参照)の存在下では、pYES2−HIK1形質転換体のみが生育阻害を示した(図5B)。フルジオキソニルに対する効果は5ppmで飽和し、イプロジオンに対する効果は25ppmで飽和し、クロロネブに対する効果は50ppmで飽和した。また、pYES2−HIK1形質転換体でもGAL1 promoterの発現抑制条件下では生育阻害を示さなかった(データ示さず)。なお、このような三種のグループの薬剤とは構造の違うシクロヘキシミドに対してはpYES2−HIK1形質転換体とpYES2形質転換体の間で発現誘導条件でも感受性の差は認められなかった。以上のように、pYES2−HIK1形質転換体でGAL1 promoterの発現誘導条件でのみ特異的に、3種の薬剤に対する感受性が付与されることから、この感受性は導入したHIK1によって特異的に引き起こされていると考えられる。
同様の実験を液体培養で行った場合(表2)、pYES2形質転換体のGAL1 promoter発現誘導条件では薬剤の有無(0、25ppmフルジオキソニル、25ppmイプロジオン、25ppmクロロネブ)にかかわらず同様の生育速度を示し、倍化時間は2.2時間前後になった。pYES2−HIK1形質転換体では、薬剤の影響を受け、薬剤非存在下では倍化時間が2.19時間でpYES2形質転換体の場合とほとんど変わらなかったが、25ppmフルジオキソニル存在下では4.25時間、25ppmイプロジオン存在下では3.12時間、25ppmクロロネブ存在下では2.90時間、と明らかに生育速度の低下が認められた。
(結果) Hik1による薬剤感受性の付与にヒスチジンキナーゼの機能に必要とされるドメインが関わっているかどうかをみるため、ヒスチジンキナーゼドメインの機能に必要な自己リン酸化されるH736に変異を入れてこのドメインが機能しなくなるようにしたもの(Hik1−H736V)を発現させるためのプラスミドpYES2−hik1−H736Vと、レスポンスレギュレータードメインのリン酸リレーにおいてリン酸を受け取るD1153に変異を入れてこのドメインが機能しなくなるようにしたもの(Hik1−D1153E)を発現させるためのプラスミドpYES2−hik1−D1153Eを作成して同様にATCC201388株に導入した(図6A)。pYES2−HIK1を導入した株と異なり、pYES2−hik1−H736V導入株とpYES2−hik1−D1153E導入株はいずれも、3種の薬剤(25ppm fludioxonil、25ppm iprodione、50ppm chloroneb)にほとんど感受性を示さなくなり(図6B)、ヒスチジンキナーゼドメインとレスポンスレギュレータードメインの両方が薬剤感受性の付与に必要とされることが示唆された。なお、pYES2−hik1−H736V導入株では薬剤の有無にかかわらずやや生育阻害効果が認められた。また、浸透圧(0.5M NaCl)感受性には特に変化は認められなかった。
[参考例1] Hik1による薬剤感受性の付与には酵母のHog1 MAPKを介する経路が必要である。
(1) 糸状菌において、Os−1ファミリーヒスチジンキナーゼの下流には、出芽酵母のHog1 MAP kinaseのホモログ(アカパンカビの場合Os−2(Zhang et al.,2002 Appl.Environ.Microbiol.68:532−538.)で、イネいもち病菌の場合Osm1(Dixon et al.,1999 Plant Cell 11:2045−2058.))を介した情報伝達系が働いている(図4)。
Hik1を出芽酵母で発現させて薬剤感受性が付与された結果の解釈として最も可能性が高いのが、Hik1に薬剤が作用して、出芽酵母のHog1 MAP kinaseに至る情報伝達系を攪乱して生育阻害を引き起こすというものである。この可能性を明らかにするため、この情報伝達系の因子の変異株であるhog1変異株とssk1変異株とste11変異株を用いて、それぞれの変異株にpYES2−HIK1を導入して、発現を誘導した場合に薬剤感受性を示すかどうかをみた(図7A)。hog1変異株とssk1変異株では、pYES2−HIK1を導入して発現を誘導しても、薬剤(25ppm fludioxonil、25ppm iprodione、50ppm chloroneb)に対する感受性を示さなかった。一方、ste11変異株の場合は野生型株と同様に、pYES2−HIK1を導入して発現を誘導すると、薬剤(25ppm fludioxonil、25ppm iprodione、50ppm chloroneb)に対する感受性を示した。なお、pYES2導入株ではいずれの株も薬剤に対する感受性を示さなかったことから、ここでの薬剤感受性はHIK1特異的であることが示唆される。また、Hik1の発現は浸透圧(0.5M NaCl)感受性には影響を与えなかった。以上の結果から、Ssk1とHog1が薬剤感受性の付与に必要で、Ste11は必要でないことが示唆される。
(2) この段階では、hog1変異株とssk1変異株でpYES2−HIK1を導入して発現を誘導しても、薬剤に対する感受性を示さなかったのは、hog1変異やssk1変異とは関係がない変異のためである可能性が否定できない。そこで、hog1変異株とssk1変異株にそれぞれ、無傷のHOG1遺伝子及びSSK1遺伝子を導入した場合に薬剤感受性が回復するかどうか、言い換えると、hog1変異やssk1変異が薬剤感受性を示さなくなった原因であるかどうかを明らかにするための実験を行った(図7B)。
酵母の変異相補用のプラスミドpCLΔ−HOG1とpCLΔ−SSK1は、pCL1(Clontech)をHindIII消化し自己連結して作成したpCLΔのHindIII部位にATCC201388株由来のHOG1あるいはSSK1をクローニングすることにより作成した。HOG1は5’−TTTAAGCTTATCGATTGAAGGAAATAAGAGGAATAGC−3’(配列番号8)と5’−TTTAAGCTTGGGTGAGACAGCTATTTAGCAAGTTC−3’(配列番号9)で増幅し、SSK1は5’−TTTAAGCTTCCCACTGCTGGATCGACCATTC−3’(配列番号10)と5’−TTTAAGCTTTAGTTGCCAGTCAAGATTTCCC−3’(配列番号11)で増幅した。なお、増幅した遺伝子に変異が入っていないことをDNA塩基配列決定により確認した。
hog1変異株にpCLΔ−HOG1を導入しHOG1遺伝子を発現させた場合、薬剤に対する感受性が回復した。同様に、ssk1変異株にpCLΔ−SSK1を導入しHOG1遺伝子を発現させた場合も、薬剤に対する感受性が回復した。なお、ベクターのみ(pCLΔ)を導入したコントロールでは両変異株とも薬剤感受性の回復は認められなかった。
以上の結果から、Hog1 MAPKを介した情報伝達系の因子の中で、Ssk1とHog1がHik1による薬剤感受性の付与に必要で、Ste11は必要でないことが示された。
[参考例2]Hik1とYpd1の相互作用の解析
CytoTrap XR library construction kit(Stratagene)を用いて、CytoTrap two−hybrid systemによるタンパク質間相互作用を解析した。このシステムは、一方のタンパク質をヒトSosとの融合蛋白として発現させるためのベクターpSosと、もう一方のタンパク質をミリスチン酸化シグナルとの融合タンパク質として発現させるためのベクターpMyrと、酵母におけるSosホモログCdc25の遺伝子に温度感受性変異が入った酵母株cdc25Hとからなる。二つのタンパク質の間で相互作用があるとヒトSosがミリスチン酸修飾部位により膜に移行し、酵母のcdc25変異を相補し、高温(37度)でも生育できるようになる(図8A)。pMyr−HIK1はpMyrのSmaI部位にHIK1 cDNAをクローニングすることにより構築した。pSos−YPD1はSrfIとSalIで消化したpSosにSmaIとXhoIで消化したATCC201388株由来のYPD1を連結することにより構築した。pSos−Ssk1はSrfIとSalIで消化したpSosにSmaIとXhoIで消化したATCC201388株由来のSSK1を連結することにより構築した。YPD1は5’−TTTCCCGGGATATGTCTACTATTCCCTCAGAAATC−3’(配列番号12)と5’−TTTCTCGAGTTATAGGTTTGTGTTGTAATATTTAGAT−3’(配列番号13)で増幅し、SSK1は5’−TTTCCCGGGATATGCTCAATTCTGCGTTACTGTGG−3’(配列番号14)と5’−TTTCTCGAGTCACAATTCTATTTGAGTGGGCG−3’(配列番号15)で増幅した。なお、増幅した遺伝子に変異が入っていないことをDNA塩基配列決定により確認した。酵母の形質転換から、形質転換酵母の滴下までは、前述の薬剤感受性の解析の場合と同様に行った。ただし、滴下までの培養は全て25°Cで行い、滴下後は25°Cと37°Cで培養した。
(結果)
Hik1は酵母のHog1の上流の情報伝達因子Ypd1と相互作用する
さらに、Hik1の酵母における作用点を明らかにするために、Hik1と酵母側の相互作用因子の候補Ypd1やSsk1との間の相互作用をyeast two−hybrid system(図8A、材料と方法参照)で解析した。本システムで用いるS.cerevisiae cdc25H株はCDC25遺伝子の温度感受性変異により高温(37°C)ではRas経路を活性化できないために生育できず、許容温度の25°Cでは生育できる。ターゲットをミリスリン酸化シグナルとの融合タンパク質、獲物(bait)をヒトSos(酵母のCdc25のホモログ)との融合タンパク質として発現させる。ターゲットと獲物との間に相互作用があるとミリスリン酸化シグナルによりヒトSosが細胞膜に移行し、Ras経路を活性化して37°Cでもcdc25H株が生育でできるようになることにより、相互作用が検出できる。
ここでは獲物をYpd1(pSos−YPD1で発現)とSsk1(pSos−SSK1で発現)にして、ターゲットのイネいもち病菌のHik1(pMyr−HIK1で発現)が結合するかどうかを解析した(図8B)。許容温度の25°Cでは全ての組み合わせで生育が認められた。ただし、相互作用を示すpositive controlの組み合わせ(pSos−MAFB+pMyr−MAFB)と相互作用を示さないnegative controlの組み合わせ(pSos−Col1+pMyr−MAFB)ではやや生育阻害が認められた。37°Cでは、positive controlの組み合わせでは生育が認められ、negative controlの組み合わせでは生育が認められず、実験系に問題がないことが示された。Hik1が相互作用を示したのはYpd1であり(pSos−YPD1+pMyr−HIK1)、Ssk1とは相互作用を示さなかった(pSos−SSK1+pMyr−HIK1)。なお、Ypd1のみでもわずかに37°Cでの生育が認められたが(pSos−YPD1+pMyr)、これはYpd1の通常の酵母内での相互作用の相手である膜結合領域を持つSln1(図3、4)との相互作用によるものと考えられる。以上の結果から、出芽酵母内において、イネいもち病菌のHik1は出芽酵母のYpd1を介して薬剤感受性を付与している可能性が高いことが示された。
本願発明により、従来の方法では不可能であった、糸状菌特異的酵素をターゲットとして糸状菌に特異的に作用する薬剤の候補を選択的に得ることが出来る。更に本願発明のスクーニング方法及びキットでは、同じ菌類に属し、糸状菌に近縁である酵母をスクリーニングに用いているため、酵母にも作用する(副作用を起こす)薬剤を薬剤候補の選択と同時に除外することも可能であり、農薬及び医薬の開発を大幅に短縮できるという優れた効果を奏するものである。
本願発明は、農薬開発及び医薬開発の技術分野で利用することができる。
本明細書で引用した全ての刊行物、特許および特許出願をそのまま引用により本明細書にとり入れるものとする。
本願発明は、農薬開発及び医薬開発の技術分野で利用することができる。
本明細書で引用した全ての刊行物、特許および特許出願をそのまま引用により本明細書にとり入れるものとする。
Claims (11)
- 糸状菌のOs−1ファミリーヒスチジンキナーゼ遺伝子で形質転換した酵母。
- 糸状菌のOs−1ファミリーヒスチジンキナーゼ遺伝子が、HIK1遺伝子である請求項1記載の形質転換酵母。
- 酵母が出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)である請求項1又は2項記載の形質転換酵母。
- (1)糸状菌由来のOs−1ファミリーヒスチジンキナーゼ遺伝子発現ベクターで形質転換した酵母及び(2)コントロール酵母(糸状菌特異的酵素を発現しない酵母)を含む糸状菌特異的農薬候補又は医薬候補スクリーニングキット。
- 糸状菌由来のOs−1ファミリーヒスチジンキナーゼ遺伝子がHIK1遺伝子である請求項4記載の糸状菌特異的農薬候補又は医薬候補スクリーニングキット。
- 酵母が出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)である請求項4又は5記載の糸状菌特異的農薬候補又は医薬候補スクリーニングキット。
- 以下の(1)から(3)の工程を含む糸状菌特異的農薬候補又は糸状菌特異的医薬候補のスクリーニング方法。
(1)糸状菌由来Os−1ファミリーヒスチジンキナーゼ遺伝子組み換え発現ベクターにより酵母を形質転換した形質転換体及びコントロール酵母(Os−1ファミリーヒスチジンキナーゼを発現しない酵母)に農薬候補試料又は医薬候補試料を投与する工程
(2)農薬候補試料又は医薬候補試料を投与された上記Os−1ファミリーヒスチジンキナーゼ発現形質転換体及びコントロール酵母を一定時間培養する工程、及び
(3)一定時間培養後、Os−1ファミリーヒスチジンキナーゼ発現形質転換体及びコントロール酵母の増殖率又は生存細胞数を計測する工程。 - 形質転換体及びコントロール酵母の増殖率又は生存細胞数の計測を、Os−1ファミリーヒスチジンキナーゼ発現形質転換体及びコントロール酵母の培養液のODを計測することにより行う請求項7記載の方法。
- Os−1ファミリーヒスチジンキナーゼ発現形質転換体及びコントロール酵母の増殖率又は生存細胞数の計測を酵母特異的抗体を用いて行う請求項7記載の方法。
- 糸状菌由来Os−1ファミリーヒスチジンキナーゼ遺伝子がHIK1遺伝子である請求項7から9いずれか1項に記載のスクリーニング方法。
- 酵母が出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)である請求項7から10いずれか1項に記載のスクリーニング方法。
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