本発明は、ワイアレス・ローカル・エリア・ネットワークの技術分野に関し、特に、ヘテロジニアスな環境(heterogeneous environment)におけるワイアレス・ローカル・エリア・ネットワークの動作に関する。
ワイアレス・ローカル・エリア・ネットワーク(WLAN)は、消費者と産業界の両方から多大な関心を得てきた。現在最も一般的なWLANは、[非特許文献1]による標準化に基づいている。こうした標準化は、WLANの初期の導入段階では役に立つものの、大規模な環境下では、WLANエンティティのコスト及び制御が複雑になってしまうため、現在の形式では、大規模ワイアレス・ネットワークへの適用には適していない。
現在、WLAN装置の製造者は、新たな分割構成を導入することによって、大規模な環境への適用を模索している。[非特許文献1]に詳述されているWLANの制御の態様は、制御ノード(CN)への集中化である一方、多数のワイアレス・アクセス・ポイント(WAP)への分散化という他の態様も存在している。そして、様々な製造者が存在し、分散構成が実施される中で、異なる製造者によるWLANエンティティ間における相互接続が不可能になる。
現在、IETF(Internet Engineering Task Force)のCAPWAP(Control And Provisioning of Wireless Access Points)ワーキンググループにおいて、大規模なWLANを管理するための標準化手段を提供しようとする努力が行われており、[非特許文献2]には、CAPWAPワーキングにおける成果が記載されている。しかしながら、これらの成果では、異なる機能に係る能力(functionality capability)を有するWAPが単一のWLANに存在する場合の調整に係る問題点は考慮されていない。このような問題点は、WLANのマーケットの発展を妨げるものである。
さらに、将来的には、WLANは、動的なワイアレス・ネットワークとして展開されることが期待されている。このような適用では、優れたアプリケーションやサービスの使用が許可されるように、WLANが運用されている間にネットワーク・トポロジが変化することが予想される。このようなネットワークにおけるWLAN構成要素には、有線又は無線による接続性が提供され、動的なトポロジの変化が許可されることとなる。しかしながら、WLAN(及びCAPWAP)における現在の前提条件としては、静的なネットワーク・トポロジしか考慮されていない。現在のWLANは、無線媒体との動的な接続を調節する機能はあるものの、動的なトポロジの変化による影響を調整することはできない。
例えば、現在のWLANシステムは、信号送信電力を増加させることによって、無線媒体のSIR(Signal−to−Interference Ratio:信号対干渉雑音比)の低下を調節することができない。しかしながら、このような些細な補正は、WLANトポロジの変化によって発生する遅延やオーバヘッドの変動の調整に、十分に対応できるものではない。さらに、分散された動作の性質上、分散構成は遅延に敏感であり、これらの遅延やオーバヘッドの変動によって、CAPWAPの分散構成における動作が妨げられることになる。また、動的なCAPWAPトポロジにおける中間的なWAPによって実行されるWLANやCAPWAPの処理は、物理的なオーバヘッドと共に、CAPWAPの分散動作に対して悪影響を及ぼすものである。
このようなシナリオにおいて、様々な製造者による現在のWLANエンティティは、単一のWLAN内で相互動作を行うことはできず、さらに、動的なトポロジを持つWLAN内で動作することも不可能である。
これらの問題点は、基本的な設計の違いによるものであり、WLANエンティティ間の静的な違いであると言える。また、さらに、WLANエンティティ間の動的な違いに関連した問題点も存在する。
特に、WLANの機能に関して、実質的に、WAPの処理負荷が、WAPの処理能力を超えるほど高くなってきている。これは、例えば、モバイル端末(MT)の接続数の増加や、接続するMTからのトラフィック量の増加によるものである。こうした時間当たりに処理できる負荷の違いは、MTの動きに依存するものであり、動的な要因の1つとなっている。
このような、WLANを構成するWAP間における負荷の処理に係る動的な違いは、MTが、接続している処理負荷の高いWAPから、処理負荷の相対的に低いWAPに再接続するようなMTのハンドオーバにおける影響などによって、以前から言及されてきたものである。
[特許文献1]には、接続しているMTの積極的なハンドオーバによって、WAP間における処理負荷レベルの動的な違いを処理するための手段が開示されている。
また、[特許文献1]では、WAP間における処理負荷の動的な違いに関する問題点が言及されている。しかしながら、この方法では、あるWAPに接続されているMTが、ハンドオーバ及び再接続を実施可能とするように、さらに、他のWAPのカバー・エリア内に存在する必要がある。MTが、他の1つ以上のWAPのカバー・エリア内に存在していない場合には、ある処理負荷を有する最初のWAPの負荷低下のために、このようなカバー・エリアに物理的に移動することが望まれる。これらの制約は厳しいものであり、[特許文献1]に開示された方法の効果は制限されている。なお、こうした制限は、すべてのハンドオーバ・ベースの方法に共通して存在している。
また、[特許文献2]には、WAPが、主な処理負荷レベルに基づいて、MTの接続を誘引又は解離するために送信するビーコン信号間のインターバルを変更する方法が提案されている。しかしながら、この方法も、MTが処理負荷の低い別のWAPのカバー・エリア内に存在することや、このようなエリアに移動できることが要求されるという制約を伴っている。
また、[特許文献3]は、MTが積極的に接続の決定を行うMTに焦点が置かれている。しかしながら、この方法も前述の要因に制約を受けている。
このような方法は、負荷の処理に係る動的な違いの問題点の解決を図っているが、厳しい必要条件の導入や、こうした必要条件の導入による更なる問題点によるものである。
また、[特許文献1]、[特許文献2]、[特許文献3]の別の欠点や、WAPの動的な違いに対処する別のハンドオーバ・ベースの方法は、通信セッションの大量シフトに関係している。実際に、MTは、接続しているWAPと多数の通信セッションを維持している。その結果、ただ1つのMT又は数台のMTの通信セッションによって、WAPに、かなりの量の処理負荷が作られる可能性が高い。WAPが、前記MTに対して、ハンドオーバ及び別のWAPとの再接続を促した場合には、最初のWAPの処理負荷は減少するが、逆に、他のWAPに影響を与える。このとき、他のWAPは過剰負荷になり、逆に、最初のWAPへのハンドオーバを促す。これは、WLAN全体の利益をもたらさずに連続して行われるかもしれない。すなわち、ハンドオーバの方法では、処理負荷が精密に分散されないことが分かる。言い換えれば、動的な違いが精密に管理されていない。
Institute of Electrical and Electronics Engineers Standard 802.11−1999(R2003) "CAPWAP Problem Statement",draft−ietf−capwap−problem−statement−02.txt “Method and apparatus for facilitating handoff in a wireless local area network”,US 2003/0035464 A1 “Dynamically configurable beacon intervals for wireless LAN access points”,US 2003/0163579 A1 “Method and apparatus for selecting an access point in a wireless network”,US 6,522,881 B1
上述の問題点に鑑み、本発明は、例えば、単一のLAN内におけるWLANトポロジの動的な変化などのような、WLANエンティティ間における静的及び動的な違いを調整できるようにするためのポリシーに基づいて、WLANの制御ノード(CN)とワイアレス・アクセス・ポイント(WAP)との間で折衝を行うための装置及び方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、システム設計、処理負荷、ネットワーク・トポロジの変化を調整するために、WLANエンティティのそれぞれにおいて処理されるべき、選択された機能のサブセット、負荷や、他のコンポーネントを決定することを図り、WLANエンティティ間で折衝を行う方法及びポリシーを提供することを別の目的とする。
また、本発明は、単一のLAN内における様々なWLANエンティティの処理負荷レベルの違いなどのような、WLANエンティティ間の動的な違いを調整できるようにするためのポリシーに基づいて、WLANエンティティ間で折衝を行う装置及び方法を提供することを別の目的とする。
さらに、本発明は、ネットワーク・トポロジの動的な変化が起こる分割構成のWLANの動作を調整するための手段を提供することを別の目的とする。
開示された発明は、ワイアレス・ローカル・エリア・ネットワーク(WLAN)、特に、WLANエンティティ間の静的及び動的な違いに係る課題を解決するための手段に関連している。本発明では、これらの違いを調節するために、WLANエンティティ間における折衝のためのポリシーが導入される。
本発明のある態様では、WAP間の静的な違いの調節を可能にするポリシーに基づいて、WLANの制御ノード(CN)とワイアレス・アクセス・ポイント(WAP)との間の折衝が取り扱われる。特に、折衝を行うエンティティ間において、WLAN機能の柔軟な分割を決定する手段が提示される。本発明では、WLANエンティティの機能に係る能力の分類が、まず行われる。そして、エンティティは、他のエンティティの能力を決定して、エンティティ間の機能分割の最良の方法について折衝を行う。WLANエンティティの更なる動作は、機能に関して決定された分割に基づいて行われる。本発明の本態様では、WLANエンティティの相互動作性が向上される。
また、本発明の別の態様では、WLANエンティティ間の動的な違いの調節を可能にするポリシーに基づくWLANエンティティ間の折衝が取り扱われる。特に、接続されているモバイル端末(MT)の物理的な移動を要求せずに、WAP間で処理負荷を配分する課題が意図されている。ここでは、あるWAPにおける処理負荷の部分を分散する必要性が、まず決定される。この後、MTとWAPとの間の既存の接続関係を維持しながら、同時に、処理負荷のどの部分を分散するかについての決定が行われる。次に、過剰負荷のWAPは、どのようにして、処理負荷の決定部分をWAP間で配分するかについて決定するために、他のWAPとの折衝に入る。本発明の本態様によれば、WLANエンティティ間の動的な違いを管理するハンドオーバ・ベースの方法の限界が克服される。
また、本発明の最も広い態様によれば、制御ノードがWAPと折衝を行い、各WAPに対して同様又は異なる補完機能を提供して、WLANで定義される完全な機能を実現することによって、WLANでサービスを提供するシステムが提供される。
また、本発明の好ましい形式によれば、制御ノードが、各ワイアレス・アクセス・ポイントで使用される機能コンポーネントのサブセットを記述する記述子の連続したリストによって構成される単一又は複数の処理スケジュールを持てるようにするためのコントローラ・モジュールが提供される。
また、本発明の別の好ましい形式によれば、制御ノードが、WAPに対して、モバイル端末から送信されるデータ・ユニットをエミュレートするセクションを有する単一又は複数のメッセージを送信することによって、WAPの能力を動的に探索し、前記メッセージを受信したWAPが、モバイル端末から受信するデータ・ユニットの処理手順と同一のものを用いて、前記セクションの処理を行って、前記制御ノードに回答メッセージによって送り返し、制御ノードが、この回答メッセージ内の処理後のデータ・ユニットを調べることによって、前記WAPの機能に係る情報を取得する、WLANでサービスを提供する方法が提供される。
また、本発明の別の好ましい形式によれば、WAPのサブセットが、WLANで定義される機能のサブセット全体の処理を行い、制御ノードが、WAPのサブセットごとに、それぞれ異なる補完機能のサブセットを提供することにより、WAP及び1つ以上の制御ノード間で、所定のWLAN機能の分割を可能とするWLANでサービスを提供する方法が提供される。
さらに、本発明の別の好ましい形式によれば、折衝エンティティ間でWLAN機能の柔軟な分割を決定する手段が許容される。まず、本発明では、WLANエンティティの機能に係る能力の分類が行われる。続いて、これらのエンティティは、それぞれの間において、どのような機能分割が最良かに関する折衝を行って、他のエンティティの機能を決定する。さらに、WLANエンティティは、決定された機能分割に基づいて動作を行う。
また、本発明の別の態様によれば、モバイル端末に関するデータ・ユニットは、完全なWLAN機能を用いて処理されるが、この完全なWLAN機能は単一又は複数のWAPから構成されており、各WAPは、このデータ・ユニットを完全なWLAN機能のサブセットのみを用いて処理する。これにより、モバイル端末における接続ハンドオーバを必要とすることなく、WLANにおける負荷分散を図るシステムが提供される。
また、本発明の好ましい形式によれば、WAPがモバイル端末に提供する処理機能を、接続固有部分と非接続固有部分とに分けて、WLANにおいて、モバイル端末がWAPとの接続関係を変えることなく負荷分散を図る手段が提供される。WAPは、非接続固有部分で処理を行うために、別のWAPと折衝を行い、別のWAPとの間にセキュアなトンネルを確立し、機能の接続固有部分によるデータ・ユニットの処理後に、このトンネルを通じて、モバイル端末からのデータ・ユニットを別のWAPにトンネリングする。別のWAPは、このトンネルを通じて、処理後のデータ・ユニットを受信し、非接続固有部分によって、そのデータ・ユニットの処理を行う。
また、本発明の別の好ましい形式によれば、処理されるデータ・ユニットのサイズや、データ・ユニットの処理について予想される平均時間や、データ・ユニットを処理するためのオーバヘッド時間や、上記の情報に関して重み付けされた総計を含む情報に基づいて、非接続固有機能の分配を決定する方法が提供される。
また、本発明の別の態様によれば、ワイアレス・ネットワーク・トポロジの少なくとも1つのネットワーク・エンティティの処理ロジックを動的に調節して、1つ以上の機能サブ・コンポーネントを変更するステップを有し、ワイアレス・ネットワーク・トポロジの変化に対応する方法が提供される。
また、本発明の好ましい形式によれば、選択された機能サブ・コンポーネントをバイパスして処理する手段を用いて、少なくとも1つのネットワーク・エンティティに、選択された機能サブ・コンポーネントの処理を変更することによって、WLANにおける変化に対応する方法が許可される。
また、本発明の好ましい形式によれば、選択された機能サブ・コンポーネントを選択的に処理する手段を用いて、少なくとも1つのネットワーク・エンティティに、選択された機能サブ・コンポーネントの処理を変更することによって、WLANにおける変化に対応する方法が許可される。
また、本発明の別の好ましい形式によれば、ワイアレス・ネットワーク全体において、動作させる機能サブ・コンポーネントの和集合がワイアレス・ネットワークの完全な機能サブ・コンポーネントに対応するように、選択されたネットワーク・エンティティの機能サブ・コンポーネントを選択的に動作させることによって、ローカル・レベル機能のセマンティックス(semantics)を変更しながら、ワイアレス・ネットワークのシステム全体の機能のセマンティックスを維持する方法が提供される。
また、さらに、動作させる機能サブ・コンポーネントの処理を第1のネットワーク・エンティティから第2のネットワーク・エンティティに移すことによって、本発明の別の好ましい形式によれば、ローカル・レベル機能のセマンティックスを変更しながら、ワイアレス・ネットワークのシステム全体の機能のセマンティックスを維持する方法が提供される。
本発明の態様及び好ましい形式に基づいて、異なる機能に係る能力のWAPによる、相互接続不可の問題点は解決される。また、本発明によれば、動的なトポロジ環境におけるWLANの動作に関する問題点も解決される。さらに、本発明の別の態様によれば、時間当たりに処理される負荷が異なる量の場合に、この調整に関する問題点が解決される。
WLANエンティティ間、特に制御ノード(CN)とワイアレス・アクセス・ポイント(WAP)との間で、折衝のためのポリシーを取り扱う本発明の第1の態様を説明するために用いられるワイアレス・ローカル・エリア・ネットワーク(WLAN)の動作を示す図
CNとWAPとの間の折衝のためのポリシーを取り扱う本発明の第1の態様に含まれる主要な動作ステップを示す図
CN及びWAPの能力が1つのエンティティに統合されている、本発明の第1の態様の一実施例を示す統合化されたWLANエンティティを示す図
WLANエンティティ間、特にWAP間の動的な違いを調節するために、折衝のためのポリシーを取り扱う本発明の第2の態様を単純化したフレームワークを示す図
WLANエンティティ間の動的な違いを調節する折衝のためのポリシーを取り扱う本発明の第2の態様に含まれる主要な動作ステップを示し、特に、種々のエンティティに係る負荷の処理が行われることを示す図
本発明の第2の態様の一実施例に係る、WAPが、接続されているMTから受信するプロトコル・データ・ユニット(PDU)のサイズを負荷処理の定義とする根拠を説明するための図
セントラル・コントローラがWLANエンティティ間の動的な違いを調節する折衝の監視機能を担っている、本発明の第2の態様の一実施例を示す図
動的なWLANトポロジにおけるCAPWAPの分配動作を可能とする折衝方法に係る本発明の第1の実施の形態の一例を示す図
IEEE802.11WLAN仕様に関する本発明の第1の実施の形態の詳細な一例を示す図
動的なWLANトポロジを可能とする本発明の第1の実施の形態の処理シーケンスを示す図
ワイアレス・ローカル・エリア・ネットワーク(WLAN)のエンティティ間の折衝のためのポリシーに関する本発明は、2つの主な態様で記述される。第1の態様では、WLANエンティティ間における静的な違いを調節し、更にWLANトポロジの変化を調整する折衝に焦点が置かれ、第2の態様では、特に処理負荷のレベルにおいて、動的な違いに対処する手段が示されている。
下記において、説明のために、指定番号、時間、構造、他のパラメータが、本発明を十分に理解するために記されている。しかし、本発明は、これらの特定の詳細事項なしに実施可能であることは、当業者には自明のことである。
静的な違いを調節する折衝:
図1には、WLANエンティティの静的な違いの調節に対処する、本発明の第1の態様を具体化するWLANシステムが例示されている。この図では、コントローラ・ノード(CN)101、多数のワイアレス・アクセス・ポイント(WAP)105、107、複数のモバイル端末(MT)113、ネットワーク・バックボーン117を具備するWLANシステム100が示されている。単純化のために、単一のCNを有するWLANシステム100が図示されている。また、本発明を具体化するシステムは、任意の数のCNを含むことができる。また、図では、CN101とWAP105、107との間の直接的な接続が示されているが、代わりに、それらの間に多くの中間ノードがあってもよい。同様に、CN101とネットワーク・バックボーン117との間の接続も、多くの中間ノードを含むことができる。このようなケースのすべてにおいて、開示された発明の趣旨は保たれている。
CN101は、接続するWAP105、107のサポート及び制御を行う。WLANシステム100の新規WAPは、1つ又は複数のCNからのサポート及び制御を受ける前に、1つ又は複数のCNとの接続関係を最初に選択して設定しなければならない。このように、WAPは、1つ又は複数のCNと2つ以上の接続関係を同時に保持することができる。同様に、MT113は、MTにサービスを順に提供するWAPとの接続を選択して維持する。これらのサービスには、無線送受信、セキュアな搬送、移動性が含まれる。MTは、1つ又は複数のWAPと多数の接続を維持することができるが、図1では、各MTが1つのWAPと、1つの接続のみを行っている状態に単純化されている。
WAPがCN101を経由してネットワーク・バックボーン117に接続されていることが、WLANシステム100から分かる。この代わりに、他の中間ノードを経由する可能性のある他の手段でネットワーク・バックボーンに接続するWAPもある。このようなケースでは、CNは、接続するWAPの制御及び管理を担うだけであるが、外部ネットワークとの接続は他のエンティティでも扱うことができる。
図1には、ある確立されたWLANスタンダードで指定されるような、WLANの機能に係る動作の完全なセットを実施できるCN101が示されている。それは、他の制御及び管理の機能動作も可能である。各機能の動作は、機能コンポーネント115の1つによって論理的に表される。機能コンポーネントのそれぞれによって示される動作には、暗号化、復号、媒体アクセス制御プロトコル・データ・ユニット(MAC PDU)処理、認証、接続、サービス品質(QoS)の処理、インターネット・プロトコル(IP)処理などが含まれる。
各機能コンポーネントは、機能コンポーネント・コードで表される。図解のために、図1の機能コンポーネントの一部は、機能コンポーネント・コード‘a’、‘b’、‘c’で表される。例えば、機能コンポーネント‘a’は、あるタイプの暗号化に必要な処理、例えば、Wi−Fi保護アクセス(WPA)又は高度暗号化基準(AES)を示しており、機能コンポーネント‘b’はQoS処理、例えば、優先順位の取り扱いを示しており、機能コンポーネント‘c’は無線送受信の最中のパワー制御を示している。機能コンポーネントは、論理ユニットであり、異なる機能コンポーネントのための命令及びコンテキストの異なるセットを用いる単一のプロセッサで構成されてもよい。また、代わりに、各機能コンポーネントは、異種のエンティティにおいて可能な個々の処理エンティティで構成されてもよい。機能コンポーネントの実際の構成は、製造者及びそれらの構成において様々であると考えられるが、あるWLANエンティティから別のWLANエンティティに対して、コントロール又はデータ・ユニットのシームレス処理を可能とするように、異なるコンポーネントとリンクするインタフェースは共通であるか、又は互換性を有している。
WAPは、異なる製造者によって製造されたもの、又は異なる構成のものなので、様々な程度のWLAN機能コンポーネントを有することになる。これらは、CNとWAPとの間で機能の分割が異なっていることに対応している。例えば、WAP105は機能コンポーネント‘a’、‘b’、‘c’の処理が可能であるよう図示されているが、WAP107は機能コンポーネント‘b’、‘c’を処理できるだけである。それらのWLAN動作及び制御に必要な残りの機能コンポーネントは切り離されて、CN101で処理される。これらのWAPとCNとのエンティティ間の違いは、開示された折衝のための方法を用いて、WLANエンティティが相互に調整を行うべき静的な違いを表している。
本発明の適切な動作のために、異なる製造者によるCN及びWAPは、包含及び認識する機能コンポーネントに対して、あらかじめ定められた命名規定に準じる必要がある。これにより、折衝しているエンティティが、どの機能コンポーネントが同じエンティティ構成であるかを正確に区別できることが保証される。そのために、機能コンポーネント・コードは、種々の機能コンポーネントを表す際に一致している必要がある。この規定は、しかし、厳密に文字に準じる必要はない。例えば、この規定によって、折衝しているエンティティがそれらの特性を見分けることができる種々の機能コンポーネントの標準記述子が提供されてもよい。一例として、“IEEE802.11i”はセキュリティ機能を有するIEEE WLANスタンダードを記している。このような記述子に基づいて、記述子が表す機能コンポーネントの特質が推定可能となるように、折衝しているCN及びWAPは、名前の一部又はすべてを他の記述子に一致させてもよい。
前述のように、機能コンポーネント間のインタフェースもWLANエンティティで一致する必要がある。これにより、コントロール又はデータ・ユニットの処理が、あるWLANエンティティから別のWLANエンティティに対して、シームレスに実施できることが保証される。例えば、WAPは、適切な機能コンポーネントでデコードし、デコードしたデータ・ユニットを更なる処理に適したフォーム、すなわち、CNの復号機能コンポーネントが容易に復号可能なフォームでCNに送ることができる。異なるWLANエンティティに異なる機能コンポーネントがある場合でも、それらの間のインタフェースは、シームレスな処理が提供されるように相互に認識することができる。
各WLANエンティティは、通常、コントローラ・エンティティによって制御される。したがって、CNコントローラ103及びWAPコントローラ109、111は、それぞれ、CN101及びWAP105、107の全体的な運用を担っている。WLANシステム100は、コントローラがWLANエンティティに統合されて図示されているが、コントローラは別のエンティティでもよい。このように、コントローラは、各WLANエンティティに対して異種のままでも、又は多数のWLANエンティティと組み合わされていてもよい。また、特殊化したコントローラが、各タイプのエンティティに対して存在することも考えられる。
コントローラは、特に、コントローラが管理するエンティティと接続するエンティティのそれぞれに対して、処理スケジュールを設定することを担っている。これに合わせて、CNコントローラ103はWAP105、107用の処理スケジュールを保持するのに対し、WAPコントローラ109、111は、それぞれに接続するMT113用の処理スケジュールを順に保持する。
処理スケジュールは、前述のコントローラが管理するエンティティによって接続されたデバイスから受信したコントロール及びデータ・ユニットに関して処理されるべき機能コンポーネントのシーケンスである。例えば、WAP105のWAPコントローラ109は、その機能コンポーネント・コード‘a’、‘b’、‘c’のシーケンスを具備する処理スケジュールを維持する。コントロール又はデータ・ユニットが、接続されているMT113から到着すると、WAP105は、設定された処理スケジュールに基づいて機能コンポーネント・コード‘a’、‘b’、‘c’の処理を行う。すべてのMTが同一の機能を含む場合には、WAPの処理スケジュールは、すべての接続されているMTに対して同一となる。しかし、MTに異なる程度の機能が構成されている場合には、WAPは、異なるMTからのコントロール及びデータ・ユニットを処理するための別の処理スケジュールも保持できる。
本発明に係るこの第1の態様における実施例では、WAP105、107のWAPコントローラ109、111は、それぞれCNを探索する、図中のステップ201を行う。探索すべきCNはWAPと同一の管轄ドメイン内にあってもよく、CNは異なる管轄ドメインに属していてもよい。この探索ステップは、任意のノード探索プロトコルに基づいて実施されてもよく、利用可能なCNからの応答を呼び出す特定の相互認識可能なメッセージのブロードキャスト/マルチキャスト/エニキャストによって実施されてもよい。
次に、WAPコントローラは、ステップ203において、探索されたCNの中から、接続すべきCNを選択する。この選択のために考えられる判断基準の1つは、WAPとCNとの間の往復時間(round−trip latency)である。この判断基準は、WLANエンティティ間の制御メッセージの迅速な交換を可能にするという長所を有している。CN選択に使用できる他の判断基準として、ネットワーク状態、輻輳、CNが呈するWLAN機能のサブセット、CNを使用した場合のコスト、CNのベンダ、CNへの接続に係る特徴、リンク状態、ランダム選択、リンクの使用コスト、製造者の識別情報、これらの判断基準が重み付けされた総計がある。接続すべきCN101を選択すると、WAPコントローラ109、111は、CNとの接続段階に入る。この段階には、相互認証、セキュリティ情報の交換、更なる交換のための通信プロトコルの設定が含まれている。
そして、ステップ205において、WAPコントローラ109、111は、それぞれの機能に係る能力に起こり得る違いを調節する手段を設定するために、CNコントローラ103との折衝段階に入る。特に、折衝は、折衝を行うエンティティの能力に見合ったWLAN機能の分割を設定するものであり、WLAN全体の動作および管理を最適化するものである。
ステップ207に示すように、折衝は、WAPコントローラ又はCNコントローラのいずれかが始動できる。WAPコントローラは、選択したCNに対して、接続されているWAPの機能に係る能力に関する情報を送って始動する。この情報には、WAPが処理できる機能コンポーネントに対応する適切なコードと、それらの処理スケジュールとが含まれている。CNコントローラは、接続されているWAPからの機能に係る能力に関する情報をリクエストして折衝を開始する。
接続されているWAPから能力に関する情報を受信すると、設定ポリシーに基づいて、CNコントローラ103は、WLAN機能の初期分割を決定する。この分割は、ステップ209において、接続されているWAP105、107とCN101との間で行われる。機能分割では、WAPが処理できる機能コンポーネントのうちのどれが、WAPが自ら処理するために作動(active)する必要があるか、及び、CNが処理するために非作動(inactive)とする必要があるかについて特定される。
ある実施例では、機能の初期分割は、それぞれ接続されたWAPが、可能なすべての機能コンポーネントを処理できるようにするというポリシーに基づいている。このような分割により、接続されたWAPがもともと処理できない機能コンポーネントだけが、CNに残され、このような機能コンポーネントが、CNコントローラの処理スケジュールに含められる。WAPは同等程度の機能に係る能力を有していないかもしれず、CNコントローラは、接続されているWAPごとに別の処理スケジュールを設定するように要求される。このように、本実施例は、各WAPに完全な能力が搭載されるようにするポリシーを提示する。しかし、これは、異なるWAPに対してCNコントローラが異なる処理スケジュールを実行するという犠牲が払われて行われる。
別の実施例では、機能の初期分割は、CNコントローラが、接続されたすべてのWAPに共通する機能コンポーネントのサブセットを最初に決定するというポリシーに基づいている。接続されたWAPは、他の機能コンポーネントを処理できても、機能コンポーネントに関して決定されたサブセットのみを処理しなければならない。したがって、接続された各WAP用に処理されるべき機能コンポーネントの残りのセットは、すべてのWAPに共通になる。このとき、この共通セットがCNで処理され得る。本実施例は、CNコントローラが、接続されたすべてのWAPに対して単一の処理スケジュールを維持できるというポリシーを提示する。従来の処理スケジュールで特定されるものと適合しないか、又は少ない機能コンポーネントを含んでいる新しいWAPがCNと接続する場合に、CNコントローラは、現在接続されているすべてのWAPに共通の機能コンポーネントのサブセットを決定するステップを繰り返す。なお、新しいWAPが、単一の既に設定済みの処理スケジュールで特定されるものより多くの機能コンポーネントを有する場合には、このステップを実施する必要がないことに注意すべきである。
代わりに、CNに新しいWAPが接続すると、2つの処理スケジュールが同時に維持される猶予期間(grace period)が実施されることになる。第1のものは、新しいWAPの接続前に設定されていた従来の処理スケジュールに対応し、第2のものは、新たに接続したWAPの機能を考慮した処理スケジュールに対応している。このとき、猶予期間中に処理されたデータ・ユニットは、最適の処理スケジュールに基づいて行われる。本実施例は、CNに新しいWAPが接続した場合でも、既存のMTに対するサービスが中断されないようにする。
別の実施例では、機能の初期分割は、ポリシーの組み合わせに基づいており、接続したWAPのサブセットが、可能なすべての機能コンポーネントを処理できるようにする。また、接続されたWAPの別のサブセットは、より大きな能力を有する場合でも、WAPが処理可能な機能コンポーネントの共通サブセットのみに関する処理を行う。CNコントローラは、接続されているWAPのサブセットのすべてに共通する機能コンポーネントのサブセットを決定する。接続されているWAPごとに処理が要求される機能コンポーネントの残りのセットは、CNで処理される。したがって、機能コンポーネントの残りのセットは、接続されているWAPのあるサブセットに関しては、WAPのそれぞれに対して独自のものとなり、接続されているWAPの他のサブセットに関しては、WAPのそれぞれに対して同一のものとなる。
次に、WLAN機能の初期分割が決まると、ステップ209において、確認のために接続されたWAPに対して、その分割が通知される。WAPコントローラは、分割が実行可能なことを順に検証し、検証した場合には、ステップ211と213において、肯定的な承認(ACK)をCNに返す。
例えば、ハードワイア・システムのように、あるWAPが非分割状態で機能コンポーネントを構成した場合、このようなWAPは、特定の初期機能分割を実行することができない。これらのケースでは、ステップ215において、WAPは、機能コンポーネント間の動作上の依存関係を示す更新された処理スケジュールと共に、否定的な承認(NACK)をCNに対して送る。このとき、CNコントローラは、この新しい処理スケジュールを考慮して、WAPに適合可能な別の機能分割を定める。新たな分割が可能な場合には、WAPはACKを返すが、そうでない場合には、同様のやり方で折衝が継続される。ある所定の回数だけ非成功の折衝が交換された場合には、CNは、WAPがすべての機能コンポーネントを処理することが可能となるようにする。
初期折衝段階中に、CN又は接続されたWAPは、折衝段階完了前でも所定のポリシー及びルールに基づいて、更なる折衝を強制的に終了することを選択できる。これらのポリシーは、ステップ219、221において、更なる折衝が未定であることが推定されるときに、CN又はWAPによって実行される。例えば、WLAN機能の初期分割間の違いがWAPの能力と大きく異なっている場合に、WAPは、更に処理を進めることが無駄かもしれず、WAPは折衝の終了を選択することができる。また、いずれかのエンティティが、他者が不正であると決定した場合に、折衝が終了となってもよい。さらに他の多数のポリシーを用いて、折衝を強制終了することもできる。
いったん機能分割が、関与するすべてのWLANエンティティに受け入れられるようになった場合には、CNコントローラ103は、ステップ217において、接続されたWAP105、107に適切な処理スケジュールを設定する。これらのスケジュールによって、接続されたWAP105、107から受信したコントロール及びデータ・ユニットに対して、CN101が処理する機能コンポーネントのシーケンスが定められる。そして、CNコントローラ103は、処理スケジュールに矛盾のない方法で、接続されたWAPのそれぞれを管理する。
ある実施例では、WLAN機能は、機能コンポーネント・コード1、2、3、4で表される4つの機能コンポーネント・コードに分割できる。コード1に対応する機能コンポーネントは、無線の態様に関するWLAN機能の一部に関連している。これは、無線送受信、コーディング、変調、パワー制御、ビーコン信号制御を含んでいる。無線インタフェースに関する態様の組み合わせを分割することによって、より単純な設計が可能となる。コード2の機能コンポーネントは、認証、接続、暗号化、復号を含むセキュリティ態様に関連している。この分割の基本は、セキュリティの処理が、統合や最適化のために数学的な計算を伴うことにある。続いて、コード3の機能コンポーネントは、コントロール及びデータのプロトコル・データ・ユニット(PDU)に必要な処理を扱う。これは、ブリッジング、ルーティング、再送信、及び特殊化ネットワーク・プロセッサが開発されたインターネット・プロトコル(IP)レイヤ処理を含んでいる。次に、コード4の機能コンポーネントは、WLANの一般的な制御及び管理に関連している。サービス品質(QoS)コントロール、構成、ポリシー管理が、この機能コンポーネントの態様の一部である。本実施例では、WAN機能に対して、単純、かつ実践的な区分けが提示される。種々のWLANエンティティ間の折衝は、これらの区分けに基づいて行われてもよく、さらに、区分けは、異なるエンティティを記載するために使用可能である。例えば、WLANの無線の態様のみを構成するWAPは、タイプ1エンティティと呼ばれ、残りの機能コンポーネント2、3、4が可能となるCNを必要とする。
第1の態様の別の実施例では、WAPコントローラは、その機能に係る能力に関する情報をCNコントローラに明示的に送る必要がなく、CNコントローラが、接続されたWAPの能力を推定する。このような自動化された能力探索手段によれば、接続されたWAPとCNとの間の機能コンポーネント・コードの明示的な交換を要求せずに、機能コンポーネントを容易に決定することが可能となる。本実施例では、CNコントローラが、WAPに対して特別なコマンドを送信する。WAPは、データ・ユニットを生成して、それをその機能コンポーネントに基づいて処理することによって、この特別なコマンドに対して応答を行う。エミュレートされたデータ・ユニットは、WAPで処理された後にCNに送られる。CNコントローラは、エミュレートされた受信データ・ユニットに基づいて、接続されたWAPの機能に係る能力を推定する。この後の動作は図2のステップ209から始まる。本実施例では、接続されたWAPが、CNコントローラによって発せられた特別なコマンドを認識して応答できることが要求される。
実施例の代替形態では、CNコントローラが、モバイル端末のように、データ・ユニットを擬似化し、擬似データ・ユニットを接続されたWAPに送る。擬似データ・ユニットの宛先アドレスは、CN自体に設定される。データ・ユニットを受信すると、WAPは、その能力に基づいて処理を実施し、処理されたデータ・ユニットをCNに送り返す。CNコントローラは、処理されたデータ・ユニットから、接続されたWAPの機能に係る能力を推定する。この後、CNコントローラは、WLAN機能の初期分割を行って、これを接続されたWAPに送る。後の動作は図2のステップ209から始まる。
本発明の別の実施例では、WLANの動作機能と制御及び管理機能との両方を統合する単一のエンティティが提示されている。図3には、このように統合化されたWLANエンティティ301が図示された本実施例が例示されている。統合化されたWLANエンティティ301は、WAPコントローラ303とCNコントローラ305とがそれぞれ存在することによって、WAP動作及びCN制御管理動作の両方を行うことができる。WAP及びCNの各機能動作が、各機能コンポーネント・コードで示される機能コンポーネント307の1つによって論理的に表されている。これらの機能コンポーネントは、WLAN監視や構成管理のようなCN動作に加えて、無線送受信のようなWLAN動作を含んでいる。
機能コンポーネント307のセットはWAP及びCNの両方のコントローラに共通なので、各コントローラの処理スケジュールは任意の機能コンポーネントを含んでいる。各コントローラは、機能コンポーネントの完全なセットがそのスケジュールのために利用できることを把握して、それぞれ独立した方法で動作する。このように、WAPコントローラ303とCNコントローラ305との間の折衝段階において、WAPコントローラは、機能コンポーネント307のすべてに対応するコードの完全なセットが含まれるように、その能力に関する情報を送る。
統合化されたWLANエンティティ301には、多数のMT309が接続されている。WLANシステム300では、MT309が、統合化されたWLANエンティティ301を介してネットワーク・バックボーン311に接続する様子が示されている。この接続は、他の中間ノードを介するように、代替手段を介しても実施できる。しかしながら、接続されたMTにとっては、本来のWAPと統合化されたWLANエンティティとの間に違いはない。
本実施例では、動作上、まず、統合化されたWLANエンティティのWAPコントローラが、CNの探索を行う。基本的に、この探索結果は、自らをCNとみなすものになる。探索では、接続段階に続いて、CNコントローラ及びWAPコントローラが折衝段階に入る。探索及び接続は、WAP及びCNが共に単一エンティティ内に存在するので、内部動作である。
次に、WAPコントローラ及びCNコントローラは、それらの間で機能の適正な分割を定めるために折衝を始める。WAPコントローラは、まず、その能力に関する情報をCNコントローラに送る。この情報は、統合化されたWLANエンティティ内で利用可能な機能コンポーネントのすべてに対応する機能コンポーネント・コードと、全コードを伴う処理スケジュールとを含むことになる。能力に関する情報に応じて、CNコントローラは、機能分割のために設定されたポリシーに基づいて、機能の初期分割を行い、これをWAPコントローラに送る。機能の初期分割は、分割を順に定めるCNコントローラによって実行可能であり、WAPコントローラにとっても実行可能、かつ受け入れ可能となる。その結果、WAPコントローラは、ACKをCNコントローラに送る。両方のコントローラは、承諾された機能の分割に基づいて処理スケジュールを設定し、これに基づいて動作を行う。本実施例では、どのように折衝のプロセスが統合化されたWLANエンティティ内で行われるかについて示されている。このように、開示された発明は、これらのエンティティのための種々のデザインと調和することになる。
本発明の第1の態様の別の実施例では、別のCNが、異なる程度の機能を含んでいる。このように、CN及び接続されたWAPは、接続されたCN及び自らの両方で使用できない機能の処理を要求する。本実施例では、WLANの種々のCNが、それらの機能に係る能力の違いを調節するために、CN間で折衝することを可能として、このような状態を解決する。CNは、図2で述べたステップに基づいて、それらの機能の静的な違いをどのように管理するかについて定める。例えば、第1のCNは、機能コンポーネントのうちの2つのタイプを含んでいるだけであり、不可能ではあるが、第3のコンポーネントにおいて、接続されたWAPにサービスを提供することが要求されている。このようなケースでは、第1のCNは、WLANの第2のWAPを発見して折衝する。この折衝は、CN間において機能を分割するためのものである。その結果、第1のCNでは、第3の機能コンポーネントの処理が第2のCNにおいて行われるようになる。
また、本発明の第1の態様の更に別の実施例では、WLANトポロジの動的変化について言及される。図8には、動的なWLANシステム800に基づくCAPWAPの一般的な態様が図示されている。ここでは、WLAN機能(機能コンポーネント1〜5で表される)が、セントラル・コントロール・ノード801と、ワイアレス・アクセス・ポイント(WAP1 803、WAP2 805)の組との間で分割されている。なお、セントラル・コントロール・ノード801は、異なる能力を有するWAP(WAP1 803、WAP2 805)を管理することが可能である。
トポロジに係る第1の例807では、動作が静的な場合を表している。ここでは、WLANシステム800において、WAP1 803及びWAP2 805の接続が固定されている。続いて、WLANシステム800がトポロジに係る第2の例809に変形する遷移813が起こる。この例では、WAP1 803が別の位置に移動し、WAP2 805を通じて、制御ノード801への新たな接続815を確立する。遷移813は、動的な変化を表しており、第2の例809は、依然としてWAP1 803からモバイル・クライアント811に対してサービスが提供される新たなWLANトポロジを表している。また、同時に、WAP1 803は、WAP2 805にとって、別のモバイル・クライアントとして動作する。
トポロジに係る第2の例809では、通信ユニット823によって、モバイル・クライアント811からの通信トラフィックが例示されている。通信ユニット823は、まず、ステップ817に示すように、WAP1 803によって処理される。ここでは、3つすべてのWLAN機能コンポーネントとCAPWAP制御コンポーネントの処理が行われる。なお、このステップ817では、WAP2 805への送信に必要なヘッダを加えたCAPWAPプロトコル・ヘッダの形式で物理的なオーバヘッドが付加されている。これは、ステップ817の‘C1’サブ・フィールドによって例示されている。次に、WAP2 805において、ステップ819が実行され、再び、別のセットのWLAN機能及びCAPWAP制御コンポーネントの処理が行われる。次に、ステップ821において、セントラル・コントローラ801が、ステップ817及び819のそれぞれの補完機能を実行する。ステップ821のサブ・フィールドに基づけば、セントラル・コントローラ801が、いくつかの補完機能を重複させてしまうことは明白であり、本発明は、こうした処理の重複や送信オーバヘッドを避けることを目的としている。
また、図10には、各ステップに関する本発明の動作が記載されている。ステップ1001及び1003において、ネットワーク構成のあらゆる変化を確定できるように、ワイアレス・ネットワークのトポロジの監視が行われる。これらのステップを実現する手段は、受信した通信ユニットのヘッダフィールドを分析して、それらと、あらかじめ設定されているネットワーク・トポロジの表現との比較を行うことである。例えば、WLANに基づくIEEE802.11の仕様では、制御ノード801が、WAP1 803に対応した信頼のあるモバイル・クライアントに関して、WAP2 805から接続要求(Association Request)を受信する場合に、制御ノード801とWAP1 803との間の現在のトポロジにWAP2 805が含まれていることが推測される。また、トポロジの変化を確立する別の手段は、隣接ネットワーク・エンティティに関する情報を周期的に交換することによる。これらの交換される情報の変化は、トポロジの変化を意味する。
ネットワーク・トポロジの変化が決まった場合、その変化を調整するネットワークエンティティ(WAP2 805)は、ステップ1005に示すように、‘オペレーショナル・アソシエーション’信号によるトリガを受ける。この信号は、トポロジの変化に影響を受けるネットワーク・エンティティ(WAP1 803、WAP1 803によって管理されているモバイル・クライアント811)に関する予備状態情報を有している。IEEE802.11の仕様に基づく一例では、予備状態情報は、WAP1 803によって管理されているモバイル・クライアント811の数、モバイル・クライアント811の接続に係る識別情報、モバイル・クライアント811の送信元MACアドレスを含んでいる。また、さらに、予備状態情報は、トポロジの変化をもたらすネットワーク・エンティティ(WAP1 803)のMACアドレスなどの付加的な状態情報を含んでいてもよい。次に、ステップ1007において、トポロジの変化を調整するネットワーク・エンティティ(WAP2 805)は‘オペレーション・アップデート’信号によるトリガを受け、トポロジの変化に係る処理を行うために、その機能の調節を行う。IEEE802.11の仕様に基づく一例では、‘オペレーション・アップデート’信号は、‘送信ブロックへのフレーム転送’動作に対応するコード値と、前述の動作が取られる‘データ・フレーム’のタイプに対応するコード値とを含んでいる。また、さらに、‘オペレーション・アップデート’信号は、‘BSSID(Basic Service Set Identification)’、‘送信元MACアドレス‘、‘送信先MACアドレス’などの追加パラメータを有していてもよい。IEEE802.11の仕様に基づく別の一例では、‘オペレーショナル・アップデート’信号は、WAP2 805の媒体アクセス制御(MAC)管理と制御ロジックに影響を与える。特に、トポロジの変化をもたらすネットワーク・エンティティ(WAP1 803)によって管理されるモバイル・クライアント811からの通信フレームが、通常の接続及び認証のフェーズを実行することなく、WAP2 805によって管理されるように、ロジックの変更が行われてもよい。さらに、別の一例では、このロジック変更は、モバイル・クライアント811から受信するすべての通信フレームを、通常の一連の処理に渡すように、WAP2 805の‘受信’ブロックの‘Filter#MPDU’処理を変更することによって実現される。その代わりに、接続及び認証の処理は、制御ノード801において、あらかじめ確立されている可能性がある。
トポロジの変化を調整するネットワーク・エンティティ(WAP2 805)がアップデートされた後、トポロジの変化をもたらすネットワーク・エンティティ(WAP1 803)は、ステップ1009に示すように、‘オペレーショナル・アソシエーション・リクエスト’信号によるトリガを受ける。IEEE802.11の仕様に基づく一例では、‘オペレーショナル・アソシエーション・リクエスト’信号は、どの対応する情報の値がリクエストされたかに応じて、‘セキュリティ・アルゴリズム・タイプ’、‘セキュリティ・キー’、‘セッション識別情報’、又は‘アソシエーション識別情報’のパラメータに対応するコード値を有している。リクエスト信号は、管理するWAP1 803と、モバイル・クライアント811に関する特定の状態情報を得るためのものである。このとき、ステップ1011に示すように、WAP2 805は、‘オペレーショナル・アソシエーション・アップデート’信号を受け取ることにより、この状態情報を認識し、今後使われる機能に関する準備を行う。IEEE802.11の仕様に基づく一例では、‘オペレーショナル・アソシエーション・アップデート’信号は‘セキュリティ・アルゴリズム・タイプ’、‘セキュリティ・キー’、‘セッション識別情報‘又は‘アソシエーション・識別情報’のパラメータに対応する情報の値を含んでいる。
次に、ステップ1013において、トポロジの変化をもたらすネットワーク・エンティティ(WAP1 803)が、その機能ロジックを変更するように‘オペレーション・アップデート’信号によるトリガを受ける。特に、この信号は、WAP2 805で重複してしまう可能性のある任意の処理をWAP2 805にバイパス(WAP1 803での処理を無視し、WAP2 805でのみ処理を行わせる)するように、WAP1 803に指示するものである。ステップ1013の意図は、WAP1 803及びWAP2 805の両方で、WLAN及びCAPWAP処理が重複してしまうことを防ぐことにある。さらに、WAP1 803における処理のバイパスによって、新たに確立された無線接続815上において、送信に係る物理的なオーバヘッドが減少し、その結果、伝送の遅延が減少する。なお、これら2つの態様の組み合わせることによって、確実に、WAP1 803と制御ノード801との間のタイミングの制約が、初期のトポロジ状態に応じて維持されるようにすることができる。
IEEE802.11の仕様及びCAPWAPのフレームワークに基づく一例では、オペレーショナル・アソシエーション状態情報が、セントラル・コントロール・ノードを通じて、トポロジの変化や、トポロジの変化をもたらすネットワーク・エンティティを調整するネットワーク・エンティティ間で交換される。
なお、上述のオペレーショナル・アソシエーション状態情報の交換の一例の代わりに、トポロジの変化や、トポロジの変化をもたらすネットワーク・エンティティを調整するネットワーク・エンティティ間で、明示的なオペレーショナル・アソシエーションが設定されることなく、上述の交換が実施されるようにすることも可能である。トポロジの変化をもたらすネットワーク・エンティティ(WAP1 803)は、状態情報を含む通信フレームに、特定の‘フレームタイプ’コードを使用するように指示されている。次に、トポロジの変化を調整するネットワーク・エンティティ(WAP2 805)が、‘オペレーション・アップデート’信号によるトリガを受け、これにより、交換手段を用いて、特定の‘フレームタイプ’コードを用いた通信フレームの処理が可能となる。例えば‘サブタイプ’や‘持続時間/ID’コードが代わりに使用される。特に、交換手段は、前述の通信フレームのデカプセル機能を有しており、状態情報として、ペイロードを使用する。一具体例としては、制御ノード801によって様々なトリガ信号が管理される。
動的なCAPWAPのフレームワークでは、トポロジの変化をもたらすネットワーク・エンティティ(WAP1 803)は、トポロジの変化を調整するネットワーク・エンティティ(WAP2 805)を通じて、制御ノード801との通信を行う。
ステップ1007、1013において、WLANのローカル・レベルやCAPWAPの機能セマンティックス(機能セマンティックスは、WLAN動作において必要とされる処理のセットやシーケンスに対応している)が壊れ、その結果、上述の処理のうちの選択されたサブ・コンポーネントは、選択されたネットワーク・エンティティ、トポロジの変化を調整するネットワーク・エンティティや、トポロジの変化をもたらすネットワーク・エンティティでバイパスされる。しかしながら、各ステップの組み合わせ1000において、本発明によれば、制御ノード801、WAP1 803、WAP2 805の中で、選択された処理に係るサブ・コンポーネントを分割することによって、WLANのシステム全体のセマンティックスや、CAPWAPの機能における処理が達成される。したがって、各ステップ1000は、選択的にサブ・コンポーネントの様々な処理を動作させて、これによって、システム全体の機能セマンティックスを達成する。なお、各ステップ1000が組み合わされたり、分けられたり、本発明の本質から逸脱せずに、最適化、実施、他の目的のために変更が加えられたりすることは、当業者にとっては明白である。このように、本発明の範囲は、特定の各ステップ1000に制限されるものではない。
また、図9には、WAP1 901における各ステップ1000に関する動作の一実施例が示されている。WAP1 901のロジック動作は、IEEE802.11のWLAN仕様に基づいているが、他の無線に係る仕様に関しても容易に示すことが可能である。WAP1 901は、一般的な動作に加えて、様々なデータ(D)、管理(M)、コントロール(C)フレームを処理することによって、モバイル・クライアント903の管理を行う。また、処理としては、‘受信’905、‘WAP処理’909、‘送信’911のブロックが論理的に含まれている。さらに、‘受信’ブロック905には、論理がフィルタ907に基づくロジックを有する‘Filter#MPDU’処理を有している。フィルタ907は、フレームが様々な判断基準に基づいて、到着フレームの比較を行い、適切な処理を行うために使用される。
ステップ1013の‘オペレーション・アップデート’信号に応じて、フィルタ・ロジックは、フィルタ・ロジック・アップデート913の変更が含まれるように、アップデートされる。具体的には、データ・フレームは直接‘送信’ブロック911に送られて、‘WAP処理’ブロック909は完全にバイパスされる。その結果、大部分のデータ・フレームに関する処理時間はWAP1 901において、かなり短縮される。そして、これらのデータ・フレームは、ステップ1007に従って、動作がアップデートされたWAP2 915によって処理される。管理及び制御フレームは、WAP1 901とモバイル・クライアント903との間の接続に直接関連しており、WAP1 901で局所的に処理される。このように、本発明では、WAP1 901の受信ロジックに影響を与えることによって、選択的に処理を動作させる。
ある具体例では、トポロジの変化を調整するネットワーク・エンティティと、トポロジの変化をもたらすネットワーク・エンティティが、異なった無線の仕様に従って動作する。図8に関しては、IEEE802.11の仕様に従って、WAP1 803が動作しており、IEEE802.16に従って、WAP2 805が動作している。そして、ローカル・レベルの機能セマンティックスを適用する一方で、システム全体の機能セマンティックスを維持するという原則が、異なった無線の仕様に従って動作するネットワーク・エンティティに対して適用される。なお、ブルートゥースの接続性、IEEE802.20、携帯電話や、その他の無線の仕様では、動作における相違点が含まれる可能性がある。
なお、動的なWLANトポロジに係る本発明には、数多くのシナリオや応用が含まれている。例えば、将来のホーム・ネットワークは、即座にカバー・エリアを拡張することができるようになる可能性がある。また、輸送システムが、送信コンポーネント及び受信コンポーネントを有しており、一時的な停止場所、駅、港などで、ネットワーク・トポロジが変化する可能性もある。また、製造が容易となることによって、様々な時間の様々な位置に対して接続性を提供する通信ネットワークが提供されることになる。以上に説明した本発明によれば、動的なトポロジ環境における遅延やオーバヘッドに係る課題に取り組むために、これらのシナリオを具体化することが可能である。
以上、説明された本発明の第1の態様の実施例では、WLANエンティティが、各エンティティに含まれる様々な程度の静的な違いを調節するために互いに折衝を行う際のポリシーが示されている。さらに、この実施例では、ローカル・レベルの機能セマンティックスを破ることによって、システム全体の機能セマンティックスを維持しながら、WLANトポロジにおける動的な変化を可能にするという、本発明の第1の態様の応用が示されている。そこでは、様々な程度のWLAN機能を有するWAPを制御ノードがどのように統合的に管理するかについて記載されている。折衝のための開示された方法によれば、異なる製造者によるエンティティ又は異なる構成のエンティティを有するWLANを設ける際の柔軟性が提供される。従来の技術ではWLANエンティティ間において機能を分割する適切な手段の配備に焦点が置かれているが、本発明では、異なる程度の機能のエンティティの調整を行っている。その結果、制御ノードとワイアレス・アクセス・ポイントとの間のWLAN機能の分割を柔軟に実施することができる。
動的な違いを調節する折衝
本発明に係るこの態様では、開示された発明を具体化するWLANエンティティが、動的な違いを調節するために互いに折衝する際のポリシーについて記載されている。ここでは、異なるWLANエンティティ、特にWAPにおける処理負荷の変動レベルを利用することによって例示が行われる。
本発明の本態様を具体化するWLANシステム400が、図4に単純化して図示されている。ここでは、サービスを提供するとともに多数の接続されたWAPに関連した処理を実施できるWAP401、403が図示されている。WAP及びMTは、互いに多数の接続を維持しているが、単純化のために、WLANシステム400は、単一のMT405がWAP401との間で1つの接続を有している状態のみが図示されている。MT405は、WAP401に接続して、ワイアレス・コネクション427上でWAP401からのサービスを受ける。また、WAP401、403は、ネットワーク・バックボーン407に接続している様子が図示されているが、直接又は中間スイッチング又はルーティング・デバイスを経由して他のネットワーク及び相互に通信することが可能である。さらに、WAPは、多数の中間ノードを経由してネットワーク・バックボーン又は相互に接続している。
WLANシステム400の動作中に、WAPの処理負荷は、通信の動的特性のために変動する。例えば、多数の新しいMTが、WAPとの接続を選択して、WAPでの更なる処理の際に折衝を行う。また、別の例では、MTが更に多数の通信セッションを選択し、接続されているWAPにとっては過剰な処理となる。そして、結果的に、WLANシステムの種々のWAPの処理負荷は、時間と共に変動する。開示された発明では、MTとの既存の接続関係を維持しながら、比較的軽負荷のWAPに重負荷のWAPから処理負荷を移すために、互いに折衝することをWAPに要求することによって、この動的な構成の問題を取り扱う。
図4では、WAP401、403は、あるタイプの処理を自ら実施して、接続されているMTにサービスを提供する。この処理は、接続固有(ASP:Association Specific)及び非接続固有(nASP:non−Association Specific)処理のように、WAP401、403のそれぞれにおいて、ライン419、421により論理的に分割できる。ASP処理411、413は、MTとWAPとの間の接続に直接依存するものを伴っている。このような処理は、WAP及び接続されているMTの間において、ワイアレス・インタフェースの相互作用を要求する。ASP処理の例としては、データ・ユニットの送受信、パワー制御、コーディング、変調がある。
nASP処理415、417は、WAP401、403及び接続されているMT405の間の接続の無線の態様に直接依存しない処理を意味する。nASP処理の例としては、ブリッジング、フィルタリング、プロトコル・データ・ユニット(PDU)処理、PDU伝送がある。
WAPコントローラ423、425は、それぞれ、WAP401、403における全体的な処理を管理して制御する。
本発明の本態様に関連する動作を、図5を参照しながら説明する。WLANシステムのWAPのそれぞれにおけるWAPコントローラは、WAPのnASP処理負荷をモニタリング(監視)するステップ501を行う。これは、接続されたMTのすべてに対して通信セッションごとにnASP処理負荷を監視することを含んでいる。処理負荷を監視する方式の例として、通信セッションに対してプロセッサの活動期間又はプロセッサの利用状態を監視して、これを全通信セッションに対して合計する手段を含んでいる。別の例は、通信セッションに対してメモリの使用量を監視する手段である。同様に、WAPにおける全体的なnASP処理負荷を監視するために、他の多数の要因を、個別に又は任意の組み合わせで監視することができる。さらに、他の監視手段を使用することも可能である。
本発明のある実施例では、WAP401のWAPコントローラ423は、接続されているMTの通信セッションごとに監視したnASP処理負荷の種々の要因に基づいて、WAPのリソース特性を導く。リソース特性は、通信セッションにサービスを提供するために必要なリソース又は処理負荷の表現形態である。
次に、接続されたすべてのMTの全通信セッションのリソース特性を組み合わせて、WAP401の総計のnASP負荷ファクタを得る。ステップ503において、総計のnASP負荷ファクタがnASP負荷閾値と比較されて、WAP401で管理できないおそれがある切迫したnASP処理過剰負荷条件の見極めが行われる。なお、総計のnASP負荷ファクタがWAP401で管理可能であることが決定された場合には、ステップ501のモニタリングが繰り返し行われる。
しかし、nASP処理過剰負荷条件が切迫していることが決定された場合には、ステップ505において、WAPコントローラ423は、例えばMT405のような接続されているMTとの既存の接続関係を維持しながら、同時に、WAP401の全体的な処理負荷を低減するために、WAP401のnASP処理負荷のどの部分が、WLANシステムの他のWAPに分散可能であるかについて決定する。このようなメカニズ厶は、MTが別のWAPのカバー・エリアに物理的に移ることが必要なハンドオーバを指示して、処理負荷を分散する従来の方法と比べて独自のものである。ステップ505は、WAP401及び接続されているMTの通信セッションのリソース特性に基づいている。例えば、WAPコントローラは、最大のリソース特性を持つ処理負荷の部分、又は最小のリソース特性を持つ部分を分散するように選択できる。この選択は、リソース特性の将来の変化予測のような他のファクタに基づいてもよい。
次に、折衝段階が、第1のWAPコントローラと他のWAPコントローラとの間で開始される。この段階では、他のWAPのどれが、過剰負荷の第1のWAPのnASP処理負荷の一部を引き継いで、処理負荷における動的な違いの調節に同意できるかが決定される。折衝の最初の段階において、WAPコントローラ423は、WLANシステムの他のWAPに要請メッセージを送るステップ507を実行する。要請メッセージは、WAPコントローラによって定められた他のWAPに配分すべきWAP401のnASP処理負荷の部分に係るリソース特性を含んでいる。
要請メッセージを受け取ったWAPコントローラは、メッセージで指定された付加的な処理負荷を調節できるかどうかを決定する。これらのコントローラは、指定されたすべての負荷の引き継ぎを許諾するか又は負荷量の一部の取扱を許諾することにより、その要請を始動したWAPコントローラに対して、応答を行う。始動したWAPコントローラは、応答を用いて、初期に指定済みのnASP処理負荷の部分の受け入れに関して、他のWAPのどれが、どの程度同意しているかを決定する。なお、この折衝では、始動するWAPコントローラによって、このようなニーズが存在すると推定された場合には、初期の要請メッセージを省略することも可能である。このように、ステップ507を用いると、WLANシステムの他のWAPのどれが、WAP401の処理負荷を低減するために、WAP401のnASP処理負荷の部分に係る処理を受け入れて実行することに同意しているかどうかを見極めることができる。
次に、ステップ509において、過剰負荷の、又はまもなく過剰負荷になるWAPのWAPコントローラ423は、WAP401と、WAP401のnASP処理負荷の決定部分の受け入れ及び処理に同意しているWAP(ステップ507で決定されたWAP)との間にトンネル・コネクション409を設定する。図4では、同意しているWAPの1つがWAP403であるように図示されている。nASP処理負荷の決定部分の処理に必要な関連コンテキスト情報が、同意しているWAPに対して設定されたトンネル・コネクション409を介して送信される。次に、ステップ511において、WAPコントローラ423は、トンネル・コネクション409を介して同意しているWAPに対して、WAP401のASP処理負荷の決定部分を送って、WAPコントローラ423は、WAP401の全体的な処理負荷を低減する。これはすべて、接続されているMTとの既存の接続を維持しながら、かつ同意しているWAPとの調和を図る巧みな方式で実施可能である。
本実施例では、従来のハンドオーバ・ベースの方法における制限なしに、処理負荷の分散における本発明の本態様の効果が示される。このように、地理的位置やMT移動に関する制約はない。
また、本発明の本態様の別の実施例では、過剰負荷のWAPが、接続されているMTの通信セッションに必要な処理負荷を、同意する他のWAPに単純に中継する。この中継は、無線、有線、又は両方のタイプのリンクの組み合わせによって行われる。また、中継される処理負荷の処理を促すように、関連コンテキスト情報が中継される必要性もある。
ある実施例では、2つのWAP間のトンネル・コネクションが、WAP間の直接的なリンク上で設定される。この直接的なリンクは、ワイアレスでよく、WAPとMTとの間のリンクと似ている。このケースでは、WAPは、接続されているMTとの通信用チャネルから代用できる無線チャネルを決定し、これを用いて、nASP処理負荷の決定部分及び関連コンテキスト情報を交換する。また、代わりに、2つのWAP間のリンクを有線にして直接的に接続することもできる。本実施例では、トンネル・コネクションは、ネットワーク・バックボーンを経由する必要がなく、むしろ直接的に設定できる。
本発明の別の実施例では、nASP処理負荷は、接続されているMTとの間で送受信されるMAC PDUの暗復号化に用いられるセキュリティ・アルゴリズムのために必要な処理と定められる。セキュリティ・アルゴリズムの処理は、複雑な特性のためにコンピュータ計算の負荷が高くなる非接続固有処理のタイプである。このように、接続されているMTの数又は接続されているMTに出入りするトラフィック量の大幅な増加によって、セキュリティ・アルゴリズムの処理が対応して増加することになる。本実施例では、WAP及び接続されているMTは、設定されたセキュリティ・アルゴリズムに基づいて、ワイアレス・コネクション上の送信情報を暗号化する。送信情報を受信すると、WAP及びMTは、設定された同一のセキュリティ・アルゴリズムに基づいて復号処理を行う。
暗復号化のためのnASP処理負荷が大きくなり、そのリソース特性がnASP負荷閾値を超えて測定された場合、WAP401のWAPコントローラ423は、要請メッセージを送って、WLANシステム400における他のWAPのどれが、WAP401とMT405との間の送信に用いられるセキュリティ・アルゴリズムに対応するnASP処理負荷の部分の受け入れ及び処理に同意できるかを決定する。WAP403がnASP処理負荷の処理に同意可能な場合、そのWAPコントローラ425が要請メッセージに応答する。要請メッセージに対する応答を受信すると、WAPコントローラ423は、トンネル・コネクション409をWAP403に設定し、関連するセキュリティ・キーとコンテキスト情報とをWAP403に設定したトンネル・コネクションを介して送る。
次に、トンネル・コネクション409を設定し、セキュリティ・キー及びコンテキスト情報を交換すると、WAPコントローラ423は、接続されているMT405から受信した暗号化MAC PDUをWAP403に送る。WAPコントローラ423は、結合したMT405に送信する前に暗号化すべきMAC PDUをWAP403にも送る。WAP403は、MAC PDUの暗号化のためにnASP処理負荷を処理し、WAP401に対してトンネル・コネクションを介して暗号化MAC PDUを送る。暗号化MAC PDUを受信すると、WAP401は、接続されているMTにそれらを送信する。本実施例では、セキュリティ・アルゴリズムに関してコンピュータ計算の負荷が高くなる処理を、他のWAPに分散して、WAPの処理負荷を減らす。これはMTの再結合に関与せずに行われるので、この方法は、ハンドオーバ・ベースの方法によって制限されるものではない。
また、別の実施例では、WAPコントローラは、接続されているMTとの接続関係を維持しながら、同時に、前述のセキュリティ・アルゴリズムを把握できないためにWAPが処理できない、セキュリティ・アルゴリズムに対応するnASP処理負荷を分散する。WLANに係る能力を含むMT及び他のデバイスの数が増えており、このようなMT及びデバイスに組み込まれるセキュリティの特徴も多数存在している。接続が求められるすべてのWAPが、あらゆるセキュリティ・アルゴリズムを認識できるわけでない。このように、本実施例では、WAPに要求された処理の一部がこのWAPで不可能な場合でも、MTと他のデバイスとの接続が維持されるようにする。本実施例では、非共通のセキュリティ・アルゴリズムを利用する例が説明されているが、WAPとMTとの間で共通ではない任意の他のタイプの処理に対しても有効である。
WAPにMTが接続している状態で、2つのエンティティ間のワイアレス・コネクション上での送信を保証するために両方のエンティティが把握できるセキュリティ・アルゴリズムが折衝される。従来、MTによって利用される任意のセキュリティ・アルゴリズムをWAPが把握できない場合には、MTは、前述のWAPと接続することは不可能である。本発明の実施例では、MTによって利用される任意のセキュリティ・アルゴリズムを把握することができない場合でも、この制限を超えて、MTがWAPと接続することを可能とする。
また、本実施例では、WAPコントローラ423は、WAP401及びMT405の両方が把握できない非共通のセキュリティ・アルゴリズムが存在しても、MT405がWAP401に接続することを可能にする。折衝段階中に、WAPコントローラ423は、要請メッセージをWLANシステム400の他のWAPに送り、どのWAPが、MT405が熟知している任意のセキュリティ・アルゴリズムを把握しており、その処理に同意できるかどうかを決定する。WAP403が、MT405が熟知している任意のセキュリティ・アルゴリズムを把握して、その処理に同意可能な場合には、WAPコントローラ425は、選択されたセキュリティ・アルゴリズムを用いて、WAPコントローラ423からの要請メッセージに応答する。要請メッセージの応答を受信すると、WAPコントローラ423は、WAP403とのトンネル・コネクション409を設定する。次に、WAPコントローラ423は、設定されたトンネル・コネクション409を介してWAP403に関連するセキュリティ・キー及びコンテキスト情報を送る。そして、選択されたセキュリティ・アルゴリズムがMT405に通知されるとともに、MT405が、WAP401に接続される。
トンネル・コネクション409を設定し、セキュリティ・キー及びコンテキスト情報を交換すると、WAPコントローラ423は、選択されたセキュリティ・アルゴリズムに基づいて暗号化されている、WAP401と接続するMT405から受信したMAC PDUを、WAP403に送る。WAP403は、暗号化されたMAC PDUをトンネル・コネクション409を介して受信し、選択されたセキュリティ・アルゴリズムと設定したセキュリティ・キー及びコンテキスト情報に基づいて、それらの暗号を解読する。さらに、WAPコントローラ423は、接続されているMT405に送信する前に暗号化すべきMAC PDUを、WAP403に送る。このケースでは、WAP403は、MAC PDUをトンネル・コネクション409を介して受信し、それらを選択されたセキュリティ・アルゴリズムに基づいて暗号化し、暗号化されたMAC PDUをWAP401に送り返す。WAP401は、暗号化されたMAC PDUを、接続されているMT405に送る。本実施例では、セキュリティ・アルゴリズムについての知識に欠けていても、WAPが、MTの接続を制限しない。このように、異なる処理要求を有する数多くのMTに対してサービスを提供する際に、より大きな柔軟性が提供される。
本発明の別の実施例は、WAPが処理するPDUのサイズに関連している。プロセッサ・スケジューリングの研究から、小さなPDUの前に大きなPDUを処理することは、小さなPDUが大きなPDUの前に処理されるケースと比べると、平均処理時間が長くなることが分かっている。図6は、例を用いてこれを示すものである。第1のケースでは、プロセッサ613、615のそれぞれに対して、2つの処理スケジュール601、603が示されている。スケジュール順序605、607は、PDUのA、B、C、Dが処理される相対的な順序を示す。また、609、611は、任意の時間単位(tu)で、各PDUの処理のために必要な処理時間を示している。
スケジュール601において、大きなPDUのAとBは、小さなPDUのCとDの前に処理される。PDUの平均処理時間は21.25tuであるが、小さなPDUのCとDが大きなPDUのAとBの前に処理されるスケジュール603のPDUの場合には、わずか16.25tuである。スケジュール603では、小さなPDUが大きなPDUの前に処理されるので、明らかに、平均処理時間が大幅に短縮している。
第2のケースでは、プロセッサ・スケジューリングの処理のオーバヘッドの態様が考慮されている。各PDUの処理には、メモリ・アクセス時間及びコンテキスト転送時間が含む処理のオーバヘッドが必要になる。オーバヘッドは、実際の処理の前に必要になるので、一般的に、PDUのサイズには依存しない。図6は、小さなPDUだけのスケジュール617を示し、処理オーバヘッド時間及び実際の処理時間がそれぞれ、621、625で示されている。処理オーバヘッド時間623及び処理時間627は、スケジュール619の大きなPDUのためのものである。この図によれば、スケジュール617では、処理オーバヘッドが総時間の50%までになるが、スケジュール619では、オーバヘッドは33・1/3%を占めているにすぎないことが分かる。これは、小さなPDUのみの処理が、プロセッサが大きなPDUを扱う場合に比べて、プロセッサが、どのくらい多くのオーバヘッドを扱うことになるかを示している。
PDUのサイズに関連する本発明の実施例では、nASP処理負荷が、WAPで処理されるPDUのサイズによって定められる。WAP401のWAPコントローラ423は、接続されているMT405からワイアレス・コネクション427上で受信したPDUのサイズを監視する。WAPコントローラ423が、WAP401が任意の前述のケースのいずれかの処理を行っていると決定した場合には、コントローラは、監視した受信PDUのサブセットの処理スケジュールを決定する。この処理スケジュールの目的は、WAP401における平均処理時間及び処理オーバヘッド時間を最適化することにある。
次に、WAPコントローラ423は、処理に対して同意可能な他のWAPに分散することができるPDUのリソース特性を取得する。このように、リソース特性は、WAP401自らが処理するもの以外のPDUの処理に必要な処理負荷を表している。このとき、リソース特性は、PDUの処理に同意可能なWAPを決定するための要請メッセージの一部に記載されて、WLANシステム400の他のWAPに送られる。
WAP403が要請メッセージに記載されているPDUのnASP処理に同意可能な場合に、WAPコントローラ425は、これに応じた応答を行う。WLANシステム400のWAPは、このようなPDUの処理が自らの平均処理時間及び処理オーバヘッド時間の最適化を可能にする場合に、別のWAPからのPDUの処理に同意可能となる。応答を受信すると、WAPコントローラ423は、WAP403とのトンネル・コネクション409を設定し、関連するコンテキスト情報をWAP403に設定されたトンネル・コネクションを介して送る。
トンネル・コネクションを設定し、関連するコンテキスト情報を交換すると、WAPコントローラ423は、WAP401の処理オーバヘッド時間と平均処理時間とを最適化するために、既に送られてきているリソース特性が示すPDUを、WAP403に送る。本実施例によれば、異なるサイズのPDUに係るnASP処理は、MTとWAPとの間の接続関係を同時に維持しながら、処理の最適化を行うように分散することができる。
また、別の実施例では、処理されるデータ・ユニットのサイズ、データ・ユニットの処理について予想される平均時間、データ・ユニットを処理するためのオーバヘッド時間、上記の情報に関して重み付けされた総計を含む情報に基づいて、WAPコントローラによって、nASP処理の負荷の分配が行われる。
開示される方法の別の実施例は、第1のWAP及びそれに接続されているMTとの間の接続関係を維持しながら、第1のWAPから他のWAPに、ISO−OSIレイヤ3及びレイヤ3上のレイヤの処理の配分に関連している。WAPの多くはISO−OSIレイヤ2まで処理できるが、ISO−OSIレイヤ3を処理できるWAPを製造するベンダもいる。本実施例では、このようなデバイス及び他の同様のWAPが示唆されている。ISO−OSIレイヤ3及びレイヤ3上のレイヤの処理には、サービス品質(QoS)の提供、ルーティング、スケジューリングが含まれている。本実施例では、nASP処理負荷は、ISO−OSIレイヤ3及びレイヤ3上のレイヤに関する処理として定められる。
本実施例では、WAP401のWAPコントローラ423は、WAP401及び接続されているMT405の間の各通信セッションに対して監視されたnASP処理負荷のファクタに基づいて、ISO−OSIレイヤ3及びレイヤ3より上のリソース特性が求められる。すべての通信セッションのリソース特性は、WAP401の集計したnASP負荷ファクタが得られるように組み合わされており、切迫したnASP処理過剰負荷条件を決定するために、nASP負荷閾値と比較される。
切迫したnASP処理過剰負荷条件が決まると、WAPコントローラ423は、WAP401の全体的な処理負荷を低減するために、WLANシステム400の他のWAPに配分されるISO−OSIレイヤ3及びレイヤ3上のレイヤのnASP処理負荷の部分を決定する。次に、WAPコントローラ423は、ISO−OSIレイヤ3及びレイヤ3より上のnASP処理負荷の決定された部分に関するリソース特性を含む要請メッセージを送り、他のWAPのどれが、WAP401のためにnASP処理負荷の部分の処理を受け入れて実施することに同意可能であるかを決定する。
WAP403が要請メッセージに基づくnASP処理負荷の部分の処理に同意可能な場合、WAPコントローラ423は、肯定的な応答をWAP401に送る。応答を受信すると、WAPコントローラ423は、トンネル・コネクション409をWAP401とWAP403の間に設定し、その後、ISO−OSIレイヤ3及びレイヤ3より上のnASP処理負荷の部分の処理に必要な関連コンテキスト情報が、WAP403にトンネル・コネクション上を介して送信される。WAPコントローラ423は、コントロール・マネージャの権限の下で、MTとWAPとの間の既存の接続関係を維持しながら、他のWAPに処理負荷の部分を分散することによって、WAP401のnASP処理負荷を低減することを目的とし、WAP403に対してnASP処理負荷の決定部分を分配する。
WLANエンティティ間の動的な違いを調節する折衝を取り扱う本発明の態様の更に別の実施例では、コントローラ・エンティティが折衝を行う。概して、セントラル・コントローラ・エンティティは、関与しているWLANエンティティ間において、動的な違いの管理方法の調整を行う。ある特定の実施例では、セントラル・コントローラ・エンティティの権限の下、セントラル・コントローラ・エンティティが、WAPのnASP処理負荷の配分を調整する。
これに関して、図7を参照しながら、WAP701、703のnASP処理負荷を監視できるセントラル・コントローラ729について説明する。WAP701のnASP処理負荷がnASP処理負荷閾値を超えると、セントラル・コントローラ729は、WLANシステム700の他のWAPに対して、WAP701の処理負荷の部分の処理のサポートを要請する要請メッセージを送る。これによって、WLANシステム700のセントラル・コントローラ729と他のWAPとの間の折衝段階が始まる。要請メッセージは、WAP701の全体的な処理負荷を低減するために、他のWAPに送られるWAP701の処理負荷の部分の記述子を含んでいる。
WAP703がWAP701の処理のサポートに同意可能な場合、WAPコントローラ725が要請メッセージに応答する。セントラル・コントローラ729は、認可についてWAP701に通知し、その後、WAP701はWAP703とのトンネル・コネクション709を設定する。そして、WAP703に対して、関連コンテキスト情報と、続いて、要請メッセージで指定された処理負荷の部分とを送る。なお、代わりに、WAP701が、コンテキスト情報及び処理負荷の部分をセントラル・コントローラ729に送り、セントラル・コントローラ729が、例えば、WAP703などのような同意可能なWAPに対して、これを送ってもよい。このように、本実施例によれば、配分を調整するセントラル・コントローラによって、処理負荷が、WLANのWAPに配分される。
別の実施例では、セントラル・コントローラが、その権限の下で、WAPのWAPコントローラから、WAPのnASP処理負荷に関する定期的な情報を受信する。このように、WAPコントローラは、他のWAP又は他のWLANエンティティにnASP処理負荷の一部又はすべてを配分する必要性と過剰負荷条件とを自ら決定する。したがって、本実施例の折衝段階は、WAPコントローラによって始動され、セントラル・コントローラと他のWAPとの間で更に処理が進められる。
以上に提示した実施例では、種々のWLANエンティティ間において、開示されたポリシーに基づいて、動的な違いを調節するための折衝の利用方法が示されている。ここでは、特に、処理負荷を接続固有と非接続固有として区分けする方法が説明されている。また、ここでは、どのようにしてnASP処理負荷の部分が、第1のWAPの全体的な処理負荷を低減するためにWLANシステムの他のWAPに配分されるかについて図示されている。開示された本発明は、MTとWAPとの間の既存の接続関係を維持しながら、処理負荷の配分を可能にする点で独自のものである。このように、動的な違いを調節するための開示された方法は、従来の方法と異なり、任意のWLANエンティティの物理的な移動を必要としない。したがって、この革新的な技術は、処理負荷を配分するハンドオーバ・ベースの方法より柔軟性に富んでおり、このような方式の限界を克服するものである。
また、以上に開示された種々の態様では、WLANエンティティ間における静的及び動的な違いを調節する際に折衝する新規な方法が示されている。従来の方法ではWLANエンティティにおけるハードの機能による分割に焦点を置いているが、本発明では、機能分割を柔軟に実施できる代替手段が提示される。また、従来の方法では、再接続とハンドオーバで生じる地理的制約及び物理的制約が必要とされるが、この革新的な技術によれば、ハンドオーバ・ベースの方法の制約を伴わずに、処理負荷のアンバランスに対処する方式が提案されている。
また、開示された発明は、この開示の本質及び趣旨から逸脱せずに、WLANエンティティ間の違いを折衝して対処するための他のポリシーが、様々な多数の他の実施の形態を作ることは、当業者には自明のことである。以上のように、本発明は、このような実施例及び具体例のすべてにおいて適用可能である。
本発明は、WLANエンティティ間における違いを調整することを可能にするという効果を有しており、ワイアレス・ローカル・エリア・ネットワークの技術分野に適用可能であり、特に、ヘテロジニアスな環境におけるワイアレス・ローカル・エリア・ネットワークの技術分野に適用可能である。
本発明は、ワイアレス・ローカル・エリア・ネットワークの技術分野に関し、特に、ヘテロジニアスな環境(heterogeneous environment)におけるワイアレス・ローカル・エリア・ネットワークの動作に関する。
ワイアレス・ローカル・エリア・ネットワーク(WLAN)は、消費者と産業界の両方から多大な関心を得てきた。現在最も一般的なWLANは、[非特許文献1]による標準化に基づいている。こうした標準化は、WLANの初期の導入段階では役に立つものの、大規模な環境下では、WLANエンティティのコスト及び制御が複雑になってしまうため、現在の形式では、大規模ワイアレス・ネットワークへの適用には適していない。
現在、WLAN装置の製造者は、新たな分割構成を導入することによって、大規模な環境への適用を模索している。[非特許文献1]に詳述されているWLANの制御の態様は、制御ノード(CN)への集中化である一方、多数のワイアレス・アクセス・ポイント(WAP)への分散化という他の態様も存在している。そして、様々な製造者が存在し、分散構成が実施される中で、異なる製造者によるWLANエンティティ間における相互接続が不可能になる。
現在、IETF(Internet Engineering Task Force)のCAPWAP(Control And Provisioning of Wireless Access Points)ワーキンググループにおいて、大規模なWLANを管理するための標準化手段を提供しようとする努力が行われており、[非特許文献2]には、CAPWAPワーキングにおける成果が記載されている。しかしながら、これらの成果では、異なる機能に係る能力(functionality capability)を有するWAPが単一のWLANに存在する場合の調整に係る問題点は考慮されていない。このような問題点は、WLANのマーケットの発展を妨げるものである。
さらに、将来的には、WLANは、動的なワイアレス・ネットワークとして展開されることが期待されている。このような適用では、優れたアプリケーションやサービスの使用が許可されるように、WLANが運用されている間にネットワーク・トポロジが変化することが予想される。このようなネットワークにおけるWLAN構成要素には、有線又は無線による接続性が提供され、動的なトポロジの変化が許可されることとなる。しかしながら、WLAN(及びCAPWAP)における現在の前提条件としては、静的なネットワーク・トポロジしか考慮されていない。現在のWLANは、無線媒体との動的な接続を調節する機能はあるものの、動的なトポロジの変化による影響を調整することはできない。
例えば、現在のWLANシステムは、信号送信電力を増加させることによって、無線媒体のSIR(Signal-to-Interference Ratio:信号対干渉雑音比)の低下を調節することができない。しかしながら、このような些細な補正は、WLANトポロジの変化によって発生する遅延やオーバヘッドの変動の調整に、十分に対応できるものではない。さらに、分散された動作の性質上、分散構成は遅延に敏感であり、これらの遅延やオーバヘッドの変動によって、CAPWAPの分散構成における動作が妨げられることになる。また、動的なCAPWAPトポロジにおける中間的なWAPによって実行されるWLANやCAPWAPの処理は、物理的なオーバヘッドと共に、CAPWAPの分散動作に対して悪影響を及ぼすものである。
このようなシナリオにおいて、様々な製造者による現在のWLANエンティティは、単一のWLAN内で相互動作を行うことはできず、さらに、動的なトポロジを持つWLAN内で動作することも不可能である。
これらの問題点は、基本的な設計の違いによるものであり、WLANエンティティ間の静的な違いであると言える。また、さらに、WLANエンティティ間の動的な違いに関連した問題点も存在する。
特に、WLANの機能に関して、実質的に、WAPの処理負荷が、WAPの処理能力を超えるほど高くなってきている。これは、例えば、モバイル端末(MT)の接続数の増加や、接続するMTからのトラフィック量の増加によるものである。こうした時間当たりに処理できる負荷の違いは、MTの動きに依存するものであり、動的な要因の1つとなっている。
このような、WLANを構成するWAP間における負荷の処理に係る動的な違いは、MTが、接続している処理負荷の高いWAPから、処理負荷の相対的に低いWAPに再接続するようなMTのハンドオーバにおける影響などによって、以前から言及されてきたものである。
[特許文献1]には、接続しているMTの積極的なハンドオーバによって、WAP間における処理負荷レベルの動的な違いを処理するための手段が開示されている。
また、[特許文献1]では、WAP間における処理負荷の動的な違いに関する問題点が言及されている。しかしながら、この方法では、あるWAPに接続されているMTが、ハンドオーバ及び再接続を実施可能とするように、さらに、他のWAPのカバー・エリア内に存在する必要がある。MTが、他の1つ以上のWAPのカバー・エリア内に存在していない場合には、ある処理負荷を有する最初のWAPの負荷低下のために、このようなカバー・エリアに物理的に移動することが望まれる。これらの制約は厳しいものであり、[特許文献1]に開示された方法の効果は制限されている。なお、こうした制限は、すべてのハンドオーバ・ベースの方法に共通して存在している。
また、[特許文献2]には、WAPが、主な処理負荷レベルに基づいて、MTの接続を誘引又は解離するために送信するビーコン信号間のインターバルを変更する方法が提案されている。しかしながら、この方法も、MTが処理負荷の低い別のWAPのカバー・エリア内に存在することや、このようなエリアに移動できることが要求されるという制約を伴っている。
また、[特許文献3]は、MTが積極的に接続の決定を行うMTに焦点が置かれている。しかしながら、この方法も前述の要因に制約を受けている。
このような方法は、負荷の処理に係る動的な違いの問題点の解決を図っているが、厳しい必要条件の導入や、こうした必要条件の導入による更なる問題点によるものである。
また、[特許文献1]、[特許文献2]、[特許文献3]の別の欠点や、WAPの動的な違いに対処する別のハンドオーバ・ベースの方法は、通信セッションの大量シフトに関係している。実際に、MTは、接続しているWAPと多数の通信セッションを維持している。その結果、ただ1つのMT又は数台のMTの通信セッションによって、WAPに、かなりの量の処理負荷が作られる可能性が高い。WAPが、前記MTに対して、ハンドオーバ及び別のWAPとの再接続を促した場合には、最初のWAPの処理負荷は減少するが、逆に、他のWAPに影響を与える。このとき、他のWAPは過剰負荷になり、逆に、最初のWAPへのハンドオーバを促す。これは、WLAN全体の利益をもたらさずに連続して行われるかもしれない。すなわち、ハンドオーバの方法では、処理負荷が精密に分散されないことが分かる。言い換えれば、動的な違いが精密に管理されていない。
Institute of Electrical and Electronics Engineers Standard 802.11 - 1999 (R2003)
"CAPWAP Problem Statement", draft-ietf-capwap-problem-statement-02.txt
“Method and apparatus for facilitating handoff in a wireless local area network”, US 2003/0035464 A1
“Dynamically configurable beacon intervals for wireless LAN access points”, US 2003/0163579 A1
“Method and apparatus for selecting an access point in a wireless network”, US 6,522,881 B1
上述の問題点に鑑み、本発明は、例えば、単一のLAN内におけるWLANトポロジの動的な変化などのような、WLANエンティティ間における静的及び動的な違いを調整できるようにするためのポリシーに基づいて、WLANの制御ノード(CN)とワイアレス・アクセス・ポイント(WAP)との間で折衝を行うための装置及び方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、システム設計、処理負荷、ネットワーク・トポロジの変化を調整するために、WLANエンティティのそれぞれにおいて処理されるべき、選択された機能のサブセット、負荷や、他のコンポーネントを決定することを図り、WLANエンティティ間で折衝を行う方法及びポリシーを提供することを別の目的とする。
また、本発明は、単一のLAN内における様々なWLANエンティティの処理負荷レベルの違いなどのような、WLANエンティティ間の動的な違いを調整できるようにするためのポリシーに基づいて、WLANエンティティ間で折衝を行う装置及び方法を提供することを別の目的とする。
さらに、本発明は、ネットワーク・トポロジの動的な変化が起こる分割構成のWLANの動作を調整するための手段を提供することを別の目的とする。
開示された発明は、ワイアレス・ローカル・エリア・ネットワーク(WLAN)、特に、WLANエンティティ間の静的及び動的な違いに係る課題を解決するための手段に関連している。本発明では、これらの違いを調節するために、WLANエンティティ間における折衝のためのポリシーが導入される。
本発明のある態様では、WAP間の静的な違いの調節を可能にするポリシーに基づいて、WLANの制御ノード(CN)とワイアレス・アクセス・ポイント(WAP)との間の折衝が取り扱われる。特に、折衝を行うエンティティ間において、WLAN機能の柔軟な分割を決定する手段が提示される。本発明では、WLANエンティティの機能に係る能力の分類が、まず行われる。そして、エンティティは、他のエンティティの能力を決定して、エンティティ間の機能分割の最良の方法について折衝を行う。WLANエンティティの更なる動作は、機能に関して決定された分割に基づいて行われる。本発明の本態様では、WLANエンティティの相互動作性が向上される。
また、本発明の別の態様では、WLANエンティティ間の動的な違いの調節を可能にするポリシーに基づくWLANエンティティ間の折衝が取り扱われる。特に、接続されているモバイル端末(MT)の物理的な移動を要求せずに、WAP間で処理負荷を配分する課題が意図されている。ここでは、あるWAPにおける処理負荷の部分を分散する必要性が、まず決定される。この後、MTとWAPとの間の既存の接続関係を維持しながら、同時に、処理負荷のどの部分を分散するかについての決定が行われる。次に、過剰負荷のWAPは、どのようにして、処理負荷の決定部分をWAP間で配分するかについて決定するために、他のWAPとの折衝に入る。本発明の本態様によれば、WLANエンティティ間の動的な違いを管理するハンドオーバ・ベースの方法の限界が克服される。
また、本発明の最も広い態様によれば、制御ノードがWAPと折衝を行い、各WAPに対して同様又は異なる補完機能を提供して、WLANで定義される完全な機能を実現することによって、WLANでサービスを提供するシステムが提供される。
また、本発明の好ましい形式によれば、制御ノードが、各ワイアレス・アクセス・ポイントで使用される機能コンポーネントのサブセットを記述する記述子の連続したリストによって構成される単一又は複数の処理スケジュールを持てるようにするためのコントローラ・モジュールが提供される。
また、本発明の別の好ましい形式によれば、制御ノードが、WAPに対して、モバイル端末から送信されるデータ・ユニットをエミュレートするセクションを有する単一又は複数のメッセージを送信することによって、WAPの能力を動的に探索し、前記メッセージを受信したWAPが、モバイル端末から受信するデータ・ユニットの処理手順と同一のものを用いて、前記セクションの処理を行って、前記制御ノードに回答メッセージによって送り返し、制御ノードが、この回答メッセージ内の処理後のデータ・ユニットを調べることによって、前記WAPの機能に係る情報を取得する、WLANでサービスを提供する方法が提供される。
また、本発明の別の好ましい形式によれば、WAPのサブセットが、WLANで定義される機能のサブセット全体の処理を行い、制御ノードが、WAPのサブセットごとに、それぞれ異なる補完機能のサブセットを提供することにより、WAP及び1つ以上の制御ノード間で、所定のWLAN機能の分割を可能とするWLANでサービスを提供する方法が提供される。
さらに、本発明の別の好ましい形式によれば、折衝エンティティ間でWLAN機能の柔軟な分割を決定する手段が許容される。まず、本発明では、WLANエンティティの機能に係る能力の分類が行われる。続いて、これらのエンティティは、それぞれの間において、どのような機能分割が最良かに関する折衝を行って、他のエンティティの機能を決定する。さらに、WLANエンティティは、決定された機能分割に基づいて動作を行う。
また、本発明の別の態様によれば、モバイル端末に関するデータ・ユニットは、完全なWLAN機能を用いて処理されるが、この完全なWLAN機能は単一又は複数のWAPから構成されており、各WAPは、このデータ・ユニットを完全なWLAN機能のサブセットのみを用いて処理する。これにより、モバイル端末における接続ハンドオーバを必要とすることなく、WLANにおける負荷分散を図るシステムが提供される。
また、本発明の好ましい形式によれば、WAPがモバイル端末に提供する処理機能を、接続固有部分と非接続固有部分とに分けて、WLANにおいて、モバイル端末がWAPとの接続関係を変えることなく負荷分散を図る手段が提供される。WAPは、非接続固有部分で処理を行うために、別のWAPと折衝を行い、別のWAPとの間にセキュアなトンネルを確立し、機能の接続固有部分によるデータ・ユニットの処理後に、このトンネルを通じて、モバイル端末からのデータ・ユニットを別のWAPにトンネリングする。別のWAPは、このトンネルを通じて、処理後のデータ・ユニットを受信し、非接続固有部分によって、そのデータ・ユニットの処理を行う。
また、本発明の別の好ましい形式によれば、処理されるデータ・ユニットのサイズや、データ・ユニットの処理について予想される平均時間や、データ・ユニットを処理するためのオーバヘッド時間や、上記の情報に関して重み付けされた総計を含む情報に基づいて、非接続固有機能の分配を決定する方法が提供される。
また、本発明の別の態様によれば、ワイアレス・ネットワーク・トポロジの少なくとも1つのネットワーク・エンティティの処理ロジックを動的に調節して、1つ以上の機能サブ・コンポーネントを変更するステップを有し、ワイアレス・ネットワーク・トポロジの変化に対応する方法が提供される。
また、本発明の好ましい形式によれば、選択された機能サブ・コンポーネントをバイパスして処理する手段を用いて、少なくとも1つのネットワーク・エンティティに、選択された機能サブ・コンポーネントの処理を変更することによって、WLANにおける変化に対応する方法が許可される。
また、本発明の好ましい形式によれば、選択された機能サブ・コンポーネントを選択的に処理する手段を用いて、少なくとも1つのネットワーク・エンティティに、選択された機能サブ・コンポーネントの処理を変更することによって、WLANにおける変化に対応する方法が許可される。
また、本発明の別の好ましい形式によれば、ワイアレス・ネットワーク全体において、動作させる機能サブ・コンポーネントの和集合がワイアレス・ネットワークの完全な機能サブ・コンポーネントに対応するように、選択されたネットワーク・エンティティの機能サブ・コンポーネントを選択的に動作させることによって、ローカル・レベル機能のセマンティックス(semantics)を変更しながら、ワイアレス・ネットワークのシステム全体の機能のセマンティックスを維持する方法が提供される。
また、さらに、動作させる機能サブ・コンポーネントの処理を第1のネットワーク・エンティティから第2のネットワーク・エンティティに移すことによって、本発明の別の好ましい形式によれば、ローカル・レベル機能のセマンティックスを変更しながら、ワイアレス・ネットワークのシステム全体の機能のセマンティックスを維持する方法が提供される。
本発明の態様及び好ましい形式に基づいて、異なる機能に係る能力のWAPによる、相互接続不可の問題点は解決される。また、本発明によれば、動的なトポロジ環境におけるWLANの動作に関する問題点も解決される。さらに、本発明の別の態様によれば、時間当たりに処理される負荷が異なる量の場合に、この調整に関する問題点が解決される。
ワイアレス・ローカル・エリア・ネットワーク(WLAN)のエンティティ間の折衝のためのポリシーに関する本発明は、2つの主な態様で記述される。第1の態様では、WLANエンティティ間における静的な違いを調節し、更にWLANトポロジの変化を調整する折衝に焦点が置かれ、第2の態様では、特に処理負荷のレベルにおいて、動的な違いに対処する手段が示されている。
下記において、説明のために、指定番号、時間、構造、他のパラメータが、本発明を十分に理解するために記されている。しかし、本発明は、これらの特定の詳細事項なしに実施可能であることは、当業者には自明のことである。
静的な違いを調節する折衝:
図1には、WLANエンティティの静的な違いの調節に対処する、本発明の第1の態様を具体化するWLANシステムが例示されている。この図では、コントローラ・ノード(CN)101、多数のワイアレス・アクセス・ポイント(WAP)105、107、複数のモバイル端末(MT)113、ネットワーク・バックボーン117を具備するWLANシステム100が示されている。単純化のために、単一のCNを有するWLANシステム100が図示されている。また、本発明を具体化するシステムは、任意の数のCNを含むことができる。また、図では、CN101とWAP105、107との間の直接的な接続が示されているが、代わりに、それらの間に多くの中間ノードがあってもよい。同様に、CN101とネットワーク・バックボーン117との間の接続も、多くの中間ノードを含むことができる。このようなケースのすべてにおいて、開示された発明の趣旨は保たれている。
CN101は、接続するWAP105、107のサポート及び制御を行う。WLANシステム100の新規WAPは、1つ又は複数のCNからのサポート及び制御を受ける前に、1つ又は複数のCNとの接続関係を最初に選択して設定しなければならない。このように、WAPは、1つ又は複数のCNと2つ以上の接続関係を同時に保持することができる。同様に、MT113は、MTにサービスを順に提供するWAPとの接続を選択して維持する。これらのサービスには、無線送受信、セキュアな搬送、移動性が含まれる。MTは、1つ又は複数のWAPと多数の接続を維持することができるが、図1では、各MTが1つのWAPと、1つの接続のみを行っている状態に単純化されている。
WAPがCN101を経由してネットワーク・バックボーン117に接続されていることが、WLANシステム100から分かる。この代わりに、他の中間ノードを経由する可能性のある他の手段でネットワーク・バックボーンに接続するWAPもある。このようなケースでは、CNは、接続するWAPの制御及び管理を担うだけであるが、外部ネットワークとの接続は他のエンティティでも扱うことができる。
図1には、ある確立されたWLANスタンダードで指定されるような、WLANの機能に係る動作の完全なセットを実施できるCN101が示されている。それは、他の制御及び管理の機能動作も可能である。各機能の動作は、機能コンポーネント115の1つによって論理的に表される。機能コンポーネントのそれぞれによって示される動作には、暗号化、復号、媒体アクセス制御プロトコル・データ・ユニット(MAC PDU)処理、認証、接続、サービス品質(QoS)の処理、インターネット・プロトコル(IP)処理などが含まれる。
各機能コンポーネントは、機能コンポーネント・コードで表される。図解のために、図1の機能コンポーネントの一部は、機能コンポーネント・コード‘a’、‘b’、‘c’で表される。例えば、機能コンポーネント‘a’は、あるタイプの暗号化に必要な処理、例えば、Wi−Fi保護アクセス(WPA)又は高度暗号化基準(AES)を示しており、機能コンポーネント‘b’はQoS処理、例えば、優先順位の取り扱いを示しており、機能コンポーネント‘c’は無線送受信の最中のパワー制御を示している。機能コンポーネントは、論理ユニットであり、異なる機能コンポーネントのための命令及びコンテキストの異なるセットを用いる単一のプロセッサで構成されてもよい。また、代わりに、各機能コンポーネントは、異種のエンティティにおいて可能な個々の処理エンティティで構成されてもよい。機能コンポーネントの実際の構成は、製造者及びそれらの構成において様々であると考えられるが、あるWLANエンティティから別のWLANエンティティに対して、コントロール又はデータ・ユニットのシームレス処理を可能とするように、異なるコンポーネントとリンクするインタフェースは共通であるか、又は互換性を有している。
WAPは、異なる製造者によって製造されたもの、又は異なる構成のものなので、様々な程度のWLAN機能コンポーネントを有することになる。これらは、CNとWAPとの間で機能の分割が異なっていることに対応している。例えば、WAP105は機能コンポーネント‘a’、‘b’、‘c’の処理が可能であるよう図示されているが、WAP107は機能コンポーネント‘b’、‘c’を処理できるだけである。それらのWLAN動作及び制御に必要な残りの機能コンポーネントは切り離されて、CN101で処理される。これらのWAPとCNとのエンティティ間の違いは、開示された折衝のための方法を用いて、WLANエンティティが相互に調整を行うべき静的な違いを表している。
本発明の適切な動作のために、異なる製造者によるCN及びWAPは、包含及び認識する機能コンポーネントに対して、あらかじめ定められた命名規定に準じる必要がある。これにより、折衝しているエンティティが、どの機能コンポーネントが同じエンティティ構成であるかを正確に区別できることが保証される。そのために、機能コンポーネント・コードは、種々の機能コンポーネントを表す際に一致している必要がある。この規定は、しかし、厳密に文字に準じる必要はない。例えば、この規定によって、折衝しているエンティティがそれらの特性を見分けることができる種々の機能コンポーネントの標準記述子が提供されてもよい。一例として、“IEEE802.11i”はセキュリティ機能を有するIEEE WLANスタンダードを記している。このような記述子に基づいて、記述子が表す機能コンポーネントの特質が推定可能となるように、折衝しているCN及びWAPは、名前の一部又はすべてを他の記述子に一致させてもよい。
前述のように、機能コンポーネント間のインタフェースもWLANエンティティで一致する必要がある。これにより、コントロール又はデータ・ユニットの処理が、あるWLANエンティティから別のWLANエンティティに対して、シームレスに実施できることが保証される。例えば、WAPは、適切な機能コンポーネントでデコードし、デコードしたデータ・ユニットを更なる処理に適したフォーム、すなわち、CNの復号機能コンポーネントが容易に復号可能なフォームでCNに送ることができる。異なるWLANエンティティに異なる機能コンポーネントがある場合でも、それらの間のインタフェースは、シームレスな処理が提供されるように相互に認識することができる。
各WLANエンティティは、通常、コントローラ・エンティティによって制御される。したがって、CNコントローラ103及びWAPコントローラ109、111は、それぞれ、CN101及びWAP105、107の全体的な運用を担っている。WLANシステム100は、コントローラがWLANエンティティに統合されて図示されているが、コントローラは別のエンティティでもよい。このように、コントローラは、各WLANエンティティに対して異種のままでも、又は多数のWLANエンティティと組み合わされていてもよい。また、特殊化したコントローラが、各タイプのエンティティに対して存在することも考えられる。
コントローラは、特に、コントローラが管理するエンティティと接続するエンティティのそれぞれに対して、処理スケジュールを設定することを担っている。これに合わせて、CNコントローラ103はWAP105、107用の処理スケジュールを保持するのに対し、WAPコントローラ109、111は、それぞれに接続するMT113用の処理スケジュールを順に保持する。
処理スケジュールは、前述のコントローラが管理するエンティティによって接続されたデバイスから受信したコントロール及びデータ・ユニットに関して処理されるべき機能コンポーネントのシーケンスである。例えば、WAP105のWAPコントローラ109は、その機能コンポーネント・コード‘a’、‘b’、‘c’のシーケンスを具備する処理スケジュールを維持する。コントロール又はデータ・ユニットが、接続されているMT113から到着すると、WAP105は、設定された処理スケジュールに基づいて機能コンポーネント・コード‘a’、‘b’、‘c’の処理を行う。すべてのMTが同一の機能を含む場合には、WAPの処理スケジュールは、すべての接続されているMTに対して同一となる。しかし、MTに異なる程度の機能が構成されている場合には、WAPは、異なるMTからのコントロール及びデータ・ユニットを処理するための別の処理スケジュールも保持できる。
本発明に係るこの第1の態様における実施例では、WAP105、107のWAPコントローラ109、111は、それぞれCNを探索する、図中のステップ201を行う。探索すべきCNはWAPと同一の管轄ドメイン内にあってもよく、CNは異なる管轄ドメインに属していてもよい。この探索ステップは、任意のノード探索プロトコルに基づいて実施されてもよく、利用可能なCNからの応答を呼び出す特定の相互認識可能なメッセージのブロードキャスト/マルチキャスト/エニキャストによって実施されてもよい。
次に、WAPコントローラは、ステップ203において、探索されたCNの中から、接続すべきCNを選択する。この選択のために考えられる判断基準の1つは、WAPとCNとの間の往復時間(round-trip latency)である。この判断基準は、WLANエンティティ間の制御メッセージの迅速な交換を可能にするという長所を有している。CN選択に使用できる他の判断基準として、ネットワーク状態、輻輳、CNが呈するWLAN機能のサブセット、CNを使用した場合のコスト、CNのベンダ、CNへの接続に係る特徴、リンク状態、ランダム選択、リンクの使用コスト、製造者の識別情報、これらの判断基準が重み付けされた総計がある。接続すべきCN101を選択すると、WAPコントローラ109、111は、CNとの接続段階に入る。この段階には、相互認証、セキュリティ情報の交換、更なる交換のための通信プロトコルの設定が含まれている。
そして、ステップ205において、WAPコントローラ109、111は、それぞれの機能に係る能力に起こり得る違いを調節する手段を設定するために、CNコントローラ103との折衝段階に入る。特に、折衝は、折衝を行うエンティティの能力に見合ったWLAN機能の分割を設定するものであり、WLAN全体の動作および管理を最適化するものである。
ステップ207に示すように、折衝は、WAPコントローラ又はCNコントローラのいずれかが始動できる。WAPコントローラは、選択したCNに対して、接続されているWAPの機能に係る能力に関する情報を送って始動する。この情報には、WAPが処理できる機能コンポーネントに対応する適切なコードと、それらの処理スケジュールとが含まれている。CNコントローラは、接続されているWAPからの機能に係る能力に関する情報をリクエストして折衝を開始する。
接続されているWAPから能力に関する情報を受信すると、設定ポリシーに基づいて、CNコントローラ103は、WLAN機能の初期分割を決定する。この分割は、ステップ209において、接続されているWAP105、107とCN101との間で行われる。機能分割では、WAPが処理できる機能コンポーネントのうちのどれが、WAPが自ら処理するために作動(active)する必要があるか、及び、CNが処理するために非作動(inactive)とする必要があるかについて特定される。
ある実施例では、機能の初期分割は、それぞれ接続されたWAPが、可能なすべての機能コンポーネントを処理できるようにするというポリシーに基づいている。このような分割により、接続されたWAPがもともと処理できない機能コンポーネントだけが、CNに残され、このような機能コンポーネントが、CNコントローラの処理スケジュールに含められる。WAPは同等程度の機能に係る能力を有していないかもしれず、CNコントローラは、接続されているWAPごとに別の処理スケジュールを設定するように要求される。このように、本実施例は、各WAPに完全な能力が搭載されるようにするポリシーを提示する。しかし、これは、異なるWAPに対してCNコントローラが異なる処理スケジュールを実行するという犠牲が払われて行われる。
別の実施例では、機能の初期分割は、CNコントローラが、接続されたすべてのWAPに共通する機能コンポーネントのサブセットを最初に決定するというポリシーに基づいている。接続されたWAPは、他の機能コンポーネントを処理できても、機能コンポーネントに関して決定されたサブセットのみを処理しなければならない。したがって、接続された各WAP用に処理されるべき機能コンポーネントの残りのセットは、すべてのWAPに共通になる。このとき、この共通セットがCNで処理され得る。本実施例は、CNコントローラが、接続されたすべてのWAPに対して単一の処理スケジュールを維持できるというポリシーを提示する。従来の処理スケジュールで特定されるものと適合しないか、又は少ない機能コンポーネントを含んでいる新しいWAPがCNと接続する場合に、CNコントローラは、現在接続されているすべてのWAPに共通の機能コンポーネントのサブセットを決定するステップを繰り返す。なお、新しいWAPが、単一の既に設定済みの処理スケジュールで特定されるものより多くの機能コンポーネントを有する場合には、このステップを実施する必要がないことに注意すべきである。
代わりに、CNに新しいWAPが接続すると、2つの処理スケジュールが同時に維持される猶予期間(grace period)が実施されることになる。第1のものは、新しいWAPの接続前に設定されていた従来の処理スケジュールに対応し、第2のものは、新たに接続したWAPの機能を考慮した処理スケジュールに対応している。このとき、猶予期間中に処理されたデータ・ユニットは、最適の処理スケジュールに基づいて行われる。本実施例は、CNに新しいWAPが接続した場合でも、既存のMTに対するサービスが中断されないようにする。
別の実施例では、機能の初期分割は、ポリシーの組み合わせに基づいており、接続したWAPのサブセットが、可能なすべての機能コンポーネントを処理できるようにする。また、接続されたWAPの別のサブセットは、より大きな能力を有する場合でも、WAPが処理可能な機能コンポーネントの共通サブセットのみに関する処理を行う。CNコントローラは、接続されているWAPのサブセットのすべてに共通する機能コンポーネントのサブセットを決定する。接続されているWAPごとに処理が要求される機能コンポーネントの残りのセットは、CNで処理される。したがって、機能コンポーネントの残りのセットは、接続されているWAPのあるサブセットに関しては、WAPのそれぞれに対して独自のものとなり、接続されているWAPの他のサブセットに関しては、WAPのそれぞれに対して同一のものとなる。
次に、WLAN機能の初期分割が決まると、ステップ209において、確認のために接続されたWAPに対して、その分割が通知される。WAPコントローラは、分割が実行可能なことを順に検証し、検証した場合には、ステップ211と213において、肯定的な承認(ACK)をCNに返す。
例えば、ハードワイア・システムのように、あるWAPが非分割状態で機能コンポーネントを構成した場合、このようなWAPは、特定の初期機能分割を実行することができない。これらのケースでは、ステップ215において、WAPは、機能コンポーネント間の動作上の依存関係を示す更新された処理スケジュールと共に、否定的な承認(NACK)をCNに対して送る。このとき、CNコントローラは、この新しい処理スケジュールを考慮して、WAPに適合可能な別の機能分割を定める。新たな分割が可能な場合には、WAPはACKを返すが、そうでない場合には、同様のやり方で折衝が継続される。ある所定の回数だけ非成功の折衝が交換された場合には、CNは、WAPがすべての機能コンポーネントを処理することが可能となるようにする。
初期折衝段階中に、CN又は接続されたWAPは、折衝段階完了前でも所定のポリシー及びルールに基づいて、更なる折衝を強制的に終了することを選択できる。これらのポリシーは、ステップ219、221において、更なる折衝が未定であることが推定されるときに、CN又はWAPによって実行される。例えば、WLAN機能の初期分割間の違いがWAPの能力と大きく異なっている場合に、WAPは、更に処理を進めることが無駄かもしれず、WAPは折衝の終了を選択することができる。また、いずれかのエンティティが、他者が不正であると決定した場合に、折衝が終了となってもよい。さらに他の多数のポリシーを用いて、折衝を強制終了することもできる。
いったん機能分割が、関与するすべてのWLANエンティティに受け入れられるようになった場合には、CNコントローラ103は、ステップ217において、接続されたWAP105、107に適切な処理スケジュールを設定する。これらのスケジュールによって、接続されたWAP105、107から受信したコントロール及びデータ・ユニットに対して、CN101が処理する機能コンポーネントのシーケンスが定められる。そして、CNコントローラ103は、処理スケジュールに矛盾のない方法で、接続されたWAPのそれぞれを管理する。
ある実施例では、WLAN機能は、機能コンポーネント・コード1、2、3、4で表される4つの機能コンポーネント・コードに分割できる。コード1に対応する機能コンポーネントは、無線の態様に関するWLAN機能の一部に関連している。これは、無線送受信、コーディング、変調、パワー制御、ビーコン信号制御を含んでいる。無線インタフェースに関する態様の組み合わせを分割することによって、より単純な設計が可能となる。コード2の機能コンポーネントは、認証、接続、暗号化、復号を含むセキュリティ態様に関連している。この分割の基本は、セキュリティの処理が、統合や最適化のために数学的な計算を伴うことにある。続いて、コード3の機能コンポーネントは、コントロール及びデータのプロトコル・データ・ユニット(PDU)に必要な処理を扱う。これは、ブリッジング、ルーティング、再送信、及び特殊化ネットワーク・プロセッサが開発されたインターネット・プロトコル(IP)レイヤ処理を含んでいる。次に、コード4の機能コンポーネントは、WLANの一般的な制御及び管理に関連している。サービス品質(QoS)コントロール、構成、ポリシー管理が、この機能コンポーネントの態様の一部である。本実施例では、WLAN機能に対して、単純、かつ実践的な区分けが提示される。種々のWLANエンティティ間の折衝は、これらの区分けに基づいて行われてもよく、さらに、区分けは、異なるエンティティを記載するために使用可能である。例えば、WLANの無線の態様のみを構成するWAPは、タイプ1エンティティと呼ばれ、残りの機能コンポーネント2、3、4が可能となるCNを必要とする。
第1の態様の別の実施例では、WAPコントローラは、その機能に係る能力に関する情報をCNコントローラに明示的に送る必要がなく、CNコントローラが、接続されたWAPの能力を推定する。このような自動化された能力探索手段によれば、接続されたWAPとCNとの間の機能コンポーネント・コードの明示的な交換を要求せずに、機能コンポーネントを容易に決定することが可能となる。本実施例では、CNコントローラが、WAPに対して特別なコマンドを送信する。WAPは、データ・ユニットを生成して、それをその機能コンポーネントに基づいて処理することによって、この特別なコマンドに対して応答を行う。エミュレートされたデータ・ユニットは、WAPで処理された後にCNに送られる。CNコントローラは、エミュレートされた受信データ・ユニットに基づいて、接続されたWAPの機能に係る能力を推定する。この後の動作は図2のステップ209から始まる。本実施例では、接続されたWAPが、CNコントローラによって発せられた特別なコマンドを認識して応答できることが要求される。
実施例の代替形態では、CNコントローラが、モバイル端末のように、データ・ユニットを擬似化し、擬似データ・ユニットを接続されたWAPに送る。擬似データ・ユニットの宛先アドレスは、CN自体に設定される。データ・ユニットを受信すると、WAPは、その能力に基づいて処理を実施し、処理されたデータ・ユニットをCNに送り返す。CNコントローラは、処理されたデータ・ユニットから、接続されたWAPの機能に係る能力を推定する。この後、CNコントローラは、WLAN機能の初期分割を行って、これを接続されたWAPに送る。後の動作は図2のステップ209から始まる。
本発明の別の実施例では、WLANの動作機能と制御及び管理機能との両方を統合する単一のエンティティが提示されている。図3には、このように統合化されたWLANエンティティ301が図示された本実施例が例示されている。統合化されたWLANエンティティ301は、WAPコントローラ303とCNコントローラ305とがそれぞれ存在することによって、WAP動作及びCN制御管理動作の両方を行うことができる。WAP及びCNの各機能動作が、各機能コンポーネント・コードで示される機能コンポーネント307の1つによって論理的に表されている。これらの機能コンポーネントは、WLAN監視や構成管理のようなCN動作に加えて、無線送受信のようなWLAN動作を含んでいる。
機能コンポーネント307のセットはWAP及びCNの両方のコントローラに共通なので、各コントローラの処理スケジュールは任意の機能コンポーネントを含んでいる。各コントローラは、機能コンポーネントの完全なセットがそのスケジュールのために利用できることを把握して、それぞれ独立した方法で動作する。このように、WAPコントローラ303とCNコントローラ305との間の折衝段階において、WAPコントローラは、機能コンポーネント307のすべてに対応するコードの完全なセットが含まれるように、その能力に関する情報を送る。
統合化されたWLANエンティティ301には、多数のMT309が接続されている。WLANシステム300では、MT309が、統合化されたWLANエンティティ301を介してネットワーク・バックボーン311に接続する様子が示されている。この接続は、他の中間ノードを介するように、代替手段を介しても実施できる。しかしながら、接続されたMTにとっては、本来のWAPと統合化されたWLANエンティティとの間に違いはない。
本実施例では、動作上、まず、統合化されたWLANエンティティのWAPコントローラが、CNの探索を行う。基本的に、この探索結果は、自らをCNとみなすものになる。探索では、接続段階に続いて、CNコントローラ及びWAPコントローラが折衝段階に入る。探索及び接続は、WAP及びCNが共に単一エンティティ内に存在するので、内部動作である。
次に、WAPコントローラ及びCNコントローラは、それらの間で機能の適正な分割を定めるために折衝を始める。WAPコントローラは、まず、その能力に関する情報をCNコントローラに送る。この情報は、統合化されたWLANエンティティ内で利用可能な機能コンポーネントのすべてに対応する機能コンポーネント・コードと、全コードを伴う処理スケジュールとを含むことになる。能力に関する情報に応じて、CNコントローラは、機能分割のために設定されたポリシーに基づいて、機能の初期分割を行い、これをWAPコントローラに送る。機能の初期分割は、分割を順に定めるCNコントローラによって実行可能であり、WAPコントローラにとっても実行可能、かつ受け入れ可能となる。その結果、WAPコントローラは、ACKをCNコントローラに送る。両方のコントローラは、承諾された機能の分割に基づいて処理スケジュールを設定し、これに基づいて動作を行う。本実施例では、どのように折衝のプロセスが統合化されたWLANエンティティ内で行われるかについて示されている。このように、開示された発明は、これらのエンティティのための種々のデザインと調和することになる。
本発明の第1の態様の別の実施例では、別のCNが、異なる程度の機能を含んでいる。このように、CN及び接続されたWAPは、接続されたCN及び自らの両方で使用できない機能の処理を要求する。本実施例では、WLANの種々のCNが、それらの機能に係る能力の違いを調節するために、CN間で折衝することを可能として、このような状態を解決する。CNは、図2で述べたステップに基づいて、それらの機能の静的な違いをどのように管理するかについて定める。例えば、第1のCNは、機能コンポーネントのうちの2つのタイプを含んでいるだけであり、不可能ではあるが、第3のコンポーネントにおいて、接続されたWAPにサービスを提供することが要求されている。このようなケースでは、第1のCNは、WLANの第2のWAPを発見して折衝する。この折衝は、CN間において機能を分割するためのものである。その結果、第1のCNでは、第3の機能コンポーネントの処理が第2のCNにおいて行われるようになる。
また、本発明の第1の態様の更に別の実施例では、WLANトポロジの動的変化について言及される。図8には、動的なWLANシステム800に基づくCAPWAPの一般的な態様が図示されている。ここでは、WLAN機能(機能コンポーネント1〜5で表される)が、セントラル・コントロール・ノード801と、ワイアレス・アクセス・ポイント(WAP1 803、WAP2 805)の組との間で分割されている。 なお、セントラル・コントロール・ノード801は、異なる能力を有するWAP(WAP1 803、WAP2 805)を管理することが可能である。
トポロジに係る第1の例807では、動作が静的な場合を表している。ここでは、WLANシステム800において、WAP1 803及びWAP2 805の接続が固定されている。続いて、WLANシステム800がトポロジに係る第2の例809に変形する遷移813が起こる。この例では、WAP1 803が別の位置に移動し、WAP2 805を通じて、制御ノード801への新たな接続815を確立する。遷移813は、動的な変化を表しており、第2の例809は、依然としてWAP1 803からモバイル・クライアント811に対してサービスが提供される新たなWLANトポロジを表している。また、同時に、WAP1 803は、WAP2 805にとって、別のモバイル・クライアントとして動作する。
トポロジに係る第2の例809では、通信ユニット823によって、モバイル・クライアント811からの通信トラフィックが例示されている。通信ユニット823は、まず、ステップ817に示すように、WAP1 803によって処理される。ここでは、3つすべてのWLAN機能コンポーネントとCAPWAP制御コンポーネントの処理が行われる。なお、このステップ817では、WAP2 805への送信に必要なヘッダを加えたCAPWAPプロトコル・ヘッダの形式で物理的なオーバヘッドが付加されている。これは、ステップ817の‘C1’サブ・フィールドによって例示されている。次に、WAP2 805において、ステップ819が実行され、再び、別のセットのWLAN機能及びCAPWAP制御コンポーネントの処理が行われる。次に、ステップ821において、セントラル・コントローラ801が、ステップ817及び819のそれぞれの補完機能を実行する。ステップ821のサブ・フィールドに基づけば、セントラル・コントローラ801が、いくつかの補完機能を重複させてしまうことは明白であり、本発明は、こうした処理の重複や送信オーバヘッドを避けることを目的としている。
また、図10には、各ステップに関する本発明の動作が記載されている。ステップ1001及び1003において、ネットワーク構成のあらゆる変化を確定できるように、ワイアレス・ネットワークのトポロジの監視が行われる。これらのステップを実現する手段は、受信した通信ユニットのヘッダフィールドを分析して、それらと、あらかじめ設定されているネットワーク・トポロジの表現との比較を行うことである。例えば、WLANに基づくIEEE802.11の仕様では、制御ノード801が、WAP1 803に対応した信頼のあるモバイル・クライアントに関して、WAP2 805から接続要求(Association Request)を受信する場合に、制御ノード801とWAP1 803との間の現在のトポロジにWAP2 805が含まれていることが推測される。また、トポロジの変化を確立する別の手段は、隣接ネットワーク・エンティティに関する情報を周期的に交換することによる。これらの交換される情報の変化は、トポロジの変化を意味する。
ネットワーク・トポロジの変化が決まった場合、その変化を調整するネットワークエンティティ(WAP2 805)は、ステップ1005に示すように、‘オペレーショナル・アソシエーション’信号によるトリガを受ける。この信号は、トポロジの変化に影響を受けるネットワーク・エンティティ(WAP1 803、WAP1 803によって管理されているモバイル・クライアント811)に関する予備状態情報を有している。IEEE802.11の仕様に基づく一例では、予備状態情報は、WAP1 803によって管理されているモバイル・クライアント811の数、モバイル・クライアント811の接続に係る識別情報、モバイル・クライアント811の送信元MACアドレスを含んでいる。また、さらに、予備状態情報は、トポロジの変化をもたらすネットワーク・エンティティ(WAP1 803)のMACアドレスなどの付加的な状態情報を含んでいてもよい。次に、ステップ1007において、トポロジの変化を調整するネットワーク・エンティティ (WAP2 805)は‘オペレーション・アップデート’信号によるトリガを受け、トポロジの変化に係る処理を行うために、その機能の調節を行う。IEEE802.11の仕様に基づく一例では、‘オペレーション・アップデート’信号は、‘送信ブロックへのフレーム転送’動作に対応するコード値と、前述の動作が取られる‘データ・フレーム’のタイプに対応するコード値とを含んでいる。また、さらに、‘オペレーション・アップデート’信号は、‘BSSID(Basic Service Set Identification)’、‘送信元MACアドレス’、‘送信先MACアドレス’などの追加パラメータを有していてもよい。IEEE802.11の仕様に基づく別の一例では、‘オペレーショナル・アップデート’信号は、WAP2 805の媒体アクセス制御(MAC)管理と制御ロジックに影響を与える。特に、トポロジの変化をもたらすネットワーク・エンティティ(WAP1 803)によって管理されるモバイル・クライアント811からの通信フレームが、通常の接続及び認証のフェーズを実行することなく、WAP2 805によって管理されるように、ロジックの変更が行われてもよい。さらに、別の一例では、このロジック変更は、モバイル・クライアント811から受信するすべての通信フレームを、通常の一連の処理に渡すように、WAP2 805の‘受信’ブロックの‘Filter#MPDU’処理を変更することによって実現される。その代わりに、接続及び認証の処理は、制御ノード801において、あらかじめ確立されている可能性がある。
トポロジの変化を調整するネットワーク・エンティティ(WAP2 805)がアップデートされた後、トポロジの変化をもたらすネットワーク・エンティティ(WAP1 803)は、ステップ1009に示すように、‘オペレーショナル・アソシエーション・リクエスト’信号によるトリガを受ける。IEEE802.11の仕様に基づく一例では、‘オペレーショナル・アソシエーション・リクエスト’信号は、どの対応する情報の値がリクエストされたかに応じて、‘セキュリティ・アルゴリズム・タイプ’、‘セキュリティ・キー’、‘セッション識別情報’、又は‘アソシエーション識別情報’のパラメータに対応するコード値を有している。リクエスト信号は、管理するWAP1 803と、モバイル・クライアント811に関する特定の状態情報を得るためのものである。このとき、ステップ1011に示すように、WAP2 805は、‘オペレーショナル・アソシエーション・アップデート’信号を受け取ることにより、この状態情報を認識し、今後使われる機能に関する準備を行う。IEEE802.11の仕様に基づく一例では、‘オペレーショナル・アソシエーション・アップデート’信号は‘セキュリティ・アルゴリズム・タイプ’、‘セキュリティ・キー’、‘セッション識別情報’又は‘アソシエーション・識別情報’のパラメータに対応する情報の値を含んでいる。
次に、ステップ1013において、トポロジの変化をもたらすネットワーク・エンティティ(WAP1 803)が、その機能ロジックを変更するように‘オペレーション・アップデート’信号によるトリガを受ける。特に、この信号は、WAP2 805で重複してしまう可能性のある任意の処理をWAP2 805にバイパス(WAP1 803での処理を無視し、WAP2 805でのみ処理を行わせる)するように、WAP1 803に指示するものである。ステップ1013の意図は、WAP1 803及びWAP2 805の両方で、WLAN及びCAPWAP処理が重複してしまうことを防ぐことにある。さらに、WAP1 803における処理のバイパスによって、新たに確立された無線接続815上において、送信に係る物理的なオーバヘッドが減少し、その結果、伝送の遅延が減少する。なお、これら2つの態様の組み合わせることによって、確実に、WAP1 803と制御ノード801との間のタイミングの制約が、初期のトポロジ状態に応じて維持されるようにすることができる。
IEEE802.11の仕様及びCAPWAPのフレームワークに基づく一例では、オペレーショナル・アソシエーション状態情報が、セントラル・コントロール・ノードを通じて、トポロジの変化や、トポロジの変化をもたらすネットワーク・エンティティを調整するネットワーク・エンティティ間で交換される。
なお、上述のオペレーショナル・アソシエーション状態情報の交換の一例の代わりに、トポロジの変化や、トポロジの変化をもたらすネットワーク・エンティティを調整するネットワーク・エンティティ間で、明示的なオペレーショナル・アソシエーションが設定されることなく、上述の交換が実施されるようにすることも可能である。トポロジの変化をもたらすネットワーク・エンティティ(WAP1 803)は、状態情報を含む通信フレームに、特定の‘フレームタイプ’コードを使用するように指示されている。次に、トポロジの変化を調整するネットワーク・エンティティ(WAP2 805)が、‘オペレーション・アップデート’信号によるトリガを受け、これにより、交換手段を用いて、特定の‘フレームタイプ’コードを用いた通信フレームの処理が可能となる。例えば‘サブタイプ’や‘持続時間/ID’コードが代わりに使用される。特に、交換手段は、前述の通信フレームのデカプセル機能を有しており、状態情報として、ペイロードを使用する。一具体例としては、制御ノード801によって様々なトリガ信号が管理される。
動的なCAPWAPのフレームワークでは、トポロジの変化をもたらすネットワーク・エンティティ(WAP1 803)は、トポロジの変化を調整するネットワーク・エンティティ(WAP2 805)を通じて、制御ノード801との通信を行う。
ステップ1007、1013において、WLANのローカル・レベルやCAPWAPの機能セマンティックス(機能セマンティックスは、WLAN動作において必要とされる処理のセットやシーケンスに対応している)が壊れ、その結果、上述の処理のうちの選択されたサブ・コンポーネントは、選択されたネットワーク・エンティティ、トポロジの変化を調整するネットワーク・エンティティや、トポロジの変化をもたらすネットワーク・エンティティでバイパスされる。しかしながら、各ステップの組み合わせ1000において、本発明によれば、制御ノード801、WAP1 803、WAP2 805の中で、選択された処理に係るサブ・コンポーネントを分割することによって、WLANのシステム全体のセマンティックスや、CAPWAPの機能における処理が達成される。したがって、各ステップ1000は、選択的にサブ・コンポーネントの様々な処理を動作させて、これによって、システム全体の機能セマンティックスを達成する。なお、各ステップ1000が組み合わされたり、分けられたり、本発明の本質から逸脱せずに、最適化、実施、他の目的のために変更が加えられたりすることは、当業者にとっては明白である。このように、本発明の範囲は、特定の各ステップ1000に制限されるものではない。
また、図9には、WAP1 901における各ステップ1000に関する動作の一実施例が示されている。WAP1 901のロジック動作は、IEEE802.11のWLAN仕様に基づいているが、他の無線に係る仕様に関しても容易に示すことが可能である。WAP1 901は、一般的な動作に加えて、様々なデータ(D)、管理(M)、コントロール(C)フレームを処理することによって、モバイル・クライアント903の管理を行う。また、処理としては、‘受信’905、‘WAP処理’909、‘送信’911のブロックが論理的に含まれている。さらに、‘受信’ブロック905には、論理がフィルタ907に基づくロジックを有する‘Filter#MPDU’処理を有している。フィルタ907は、フレームが様々な判断基準に基づいて、到着フレームの比較を行い、適切な処理を行うために使用される。
ステップ1013の‘オペレーション・アップデート’信号に応じて、フィルタ・ロジックは、フィルタ・ロジック・アップデート913の変更が含まれるように、アップデートされる。具体的には、データ・フレームは直接‘送信’ブロック911に送られて、‘WAP処理’ブロック909は完全にバイパスされる。その結果、大部分のデータ・フレームに関する処理時間はWAP1 901において、かなり短縮される。そして、これらのデータ・フレームは、ステップ1007に従って、動作がアップデートされたWAP2 915によって処理される。管理及び制御フレームは、WAP1 901とモバイル・クライアント903との間の接続に直接関連しており、WAP1 901で局所的に処理される。このように、本発明では、WAP1 901の受信ロジックに影響を与えることによって、選択的に処理を動作させる。
ある具体例では、トポロジの変化を調整するネットワーク・エンティティと、トポロジの変化をもたらすネットワーク・エンティティが、異なった無線の仕様に従って動作する。図8に関しては、IEEE802.11の仕様に従って、WAP1 803が動作しており、IEEE802.16に従って、WAP2 805が動作している。そして、ローカル・レベルの機能セマンティックスを適用する一方で、システム全体の機能セマンティックスを維持するという原則が、異なった無線の仕様に従って動作するネットワーク・エンティティに対して適用される。なお、ブルートゥースの接続性、IEEE802.20、携帯電話や、その他の無線の仕様では、動作における相違点が含まれる可能性がある。
なお、動的なWLANトポロジに係る本発明には、数多くのシナリオや応用が含まれている。例えば、将来のホーム・ネットワークは、即座にカバー・エリアを拡張することができるようになる可能性がある。また、輸送システムが、送信コンポーネント及び受信コンポーネントを有しており、一時的な停止場所、駅、港などで、ネットワーク・トポロジが変化する可能性もある。また、製造が容易となることによって、様々な時間の様々な位置に対して接続性を提供する通信ネットワークが提供されることになる。以上に説明した本発明によれば、動的なトポロジ環境における遅延やオーバヘッドに係る課題に取り組むために、これらのシナリオを具体化することが可能である。
以上、説明された本発明の第1の態様の実施例では、WLANエンティティが、各エンティティに含まれる様々な程度の静的な違いを調節するために互いに折衝を行う際のポリシーが示されている。さらに、この実施例では、ローカル・レベルの機能セマンティックスを破ることによって、システム全体の機能セマンティックスを維持しながら、WLANトポロジにおける動的な変化を可能にするという、本発明の第1の態様の応用が示されている。そこでは、様々な程度のWLAN機能を有するWAPを制御ノードがどのように統合的に管理するかについて記載されている。折衝のための開示された方法によれば、異なる製造者によるエンティティ又は異なる構成のエンティティを有するWLANを設ける際の柔軟性が提供される。従来の技術ではWLANエンティティ間において機能を分割する適切な手段の配備に焦点が置かれているが、本発明では、異なる程度の機能のエンティティの調整を行っている。その結果、制御ノードとワイアレス・アクセス・ポイントとの間のWLAN機能の分割を柔軟に実施することができる。
動的な違いを調節する折衝
本発明に係るこの態様では、開示された発明を具体化するWLANエンティティが、動的な違いを調節するために互いに折衝する際のポリシーについて記載されている。ここでは、異なるWLANエンティティ、特にWAPにおける処理負荷の変動レベルを利用することによって例示が行われる。
本発明の本態様を具体化するWLANシステム400が、図4に単純化して図示されている。ここでは、サービスを提供するとともに多数の接続されたWAPに関連した処理を実施できるWAP401、403が図示されている。WAP及びMTは、互いに多数の接続を維持しているが、単純化のために、WLANシステム400は、単一のMT405がWAP401との間で1つの接続を有している状態のみが図示されている。MT405は、WAP401に接続して、ワイアレス・コネクション427上でWAP401からのサービスを受ける。また、WAP401、403は、ネットワーク・バックボーン407に接続している様子が図示されているが、直接又は中間スイッチング又はルーティング・デバイスを経由して他のネットワーク及び相互に通信することが可能である。さらに、WAPは、多数の中間ノードを経由してネットワーク・バックボーン又は相互に接続している。
WLANシステム400の動作中に、WAPの処理負荷は、通信の動的特性のために変動する。例えば、多数の新しいMTが、WAPとの接続を選択して、WAPでの更なる処理の際に折衝を行う。また、別の例では、MTが更に多数の通信セッションを選択し、接続されているWAPにとっては過剰な処理となる。そして、結果的に、WLANシステムの種々のWAPの処理負荷は、時間と共に変動する。開示された発明では、MTとの既存の接続関係を維持しながら、比較的軽負荷のWAPに重負荷のWAPから処理負荷を移すために、互いに折衝することをWAPに要求することによって、この動的な構成の問題を取り扱う。
図4では、WAP401、403は、あるタイプの処理を自ら実施して、接続されているMTにサービスを提供する。この処理は、接続固有(ASP:Association Specific)及び非接続固有(nASP:non-Association Specific)処理のように、WAP401、403のそれぞれにおいて、ライン419、421により論理的に分割できる。ASP処理411、413は、MTとWAPとの間の接続に直接依存するものを伴っている。このような処理は、WAP及び接続されているMTの間において、ワイアレス・インタフェースの相互作用を要求する。ASP処理の例としては、データ・ユニットの送受信、パワー制御、コーディング、変調がある。
nASP処理415、417は、WAP401、403及び接続されているMT405の間の接続の無線の態様に直接依存しない処理を意味する。nASP処理の例としては、ブリッジング、フィルタリング、プロトコル・データ・ユニット(PDU)処理、PDU伝送がある。
WAPコントローラ423、425は、それぞれ、WAP401、403における全体的な処理を管理して制御する。
本発明の本態様に関連する動作を、図5を参照しながら説明する。WLANシステムのWAPのそれぞれにおけるWAPコントローラは、WAPのnASP処理負荷をモニタリング(監視)するステップ501を行う。これは、接続されたMTのすべてに対して通信セッションごとにnASP処理負荷を監視することを含んでいる。処理負荷を監視する方式の例として、通信セッションに対してプロセッサの活動期間又はプロセッサの利用状態を監視して、これを全通信セッションに対して合計する手段を含んでいる。別の例は、通信セッションに対してメモリの使用量を監視する手段である。同様に、WAPにおける全体的なnASP処理負荷を監視するために、他の多数の要因を、個別に又は任意の組み合わせで監視することができる。さらに、他の監視手段を使用することも可能である。
本発明のある実施例では、WAP401のWAPコントローラ423は、接続されているMTの通信セッションごとに監視したnASP処理負荷の種々の要因に基づいて、WAPのリソース特性を導く。リソース特性は、通信セッションにサービスを提供するために必要なリソース又は処理負荷の表現形態である。
次に、接続されたすべてのMTの全通信セッションのリソース特性を組み合わせて、WAP401の総計のnASP負荷ファクタを得る。ステップ503において、総計のnASP負荷ファクタがnASP負荷閾値と比較されて、WAP401で管理できないおそれがある切迫したnASP処理過剰負荷条件の見極めが行われる。なお、総計のnASP負荷ファクタがWAP401で管理可能であることが決定された場合には、ステップ501のモニタリングが繰り返し行われる。
しかし、nASP処理過剰負荷条件が切迫していることが決定された場合には、ステップ505において、WAPコントローラ423は、例えばMT405のような接続されているMTとの既存の接続関係を維持しながら、同時に、WAP401の全体的な処理負荷を低減するために、WAP401のnASP処理負荷のどの部分が、WLANシステムの他のWAPに分散可能であるかについて決定する。このようなメカニズムは、MTが別のWAPのカバー・エリアに物理的に移ることが必要なハンドオーバを指示して、処理負荷を分散する従来の方法と比べて独自のものである。ステップ505は、WAP401及び接続されているMTの通信セッションのリソース特性に基づいている。例えば、WAPコントローラは、最大のリソース特性を持つ処理負荷の部分、又は最小のリソース特性を持つ部分を分散するように選択できる。この選択は、リソース特性の将来の変化予測のような他のファクタに基づいてもよい。
次に、折衝段階が、第1のWAPコントローラと他のWAPコントローラとの間で開始される。この段階では、他のWAPのどれが、過剰負荷の第1のWAPのnASP処理負荷の一部を引き継いで、処理負荷における動的な違いの調節に同意できるかが決定される。折衝の最初の段階において、WAPコントローラ423は、WLANシステムの他のWAPに要請メッセージを送るステップ507を実行する。要請メッセージは、WAPコントローラによって定められた他のWAPに配分すべきWAP401のnASP処理負荷の部分に係るリソース特性を含んでいる。
要請メッセージを受け取ったWAPコントローラは、メッセージで指定された付加的な処理負荷を調節できるかどうかを決定する。これらのコントローラは、指定されたすべての負荷の引き継ぎを許諾するか又は負荷量の一部の取扱を許諾することにより、その要請を始動したWAPコントローラに対して、応答を行う。始動したWAPコントローラは、応答を用いて、初期に指定済みのnASP処理負荷の部分の受け入れに関して、他のWAPのどれが、どの程度同意しているかを決定する。なお、この折衝では、始動するWAPコントローラによって、このようなニーズが存在すると推定された場合には、初期の要請メッセージを省略することも可能である。このように、ステップ507を用いると、WLANシステムの他のWAPのどれが、WAP401の処理負荷を低減するために、WAP401のnASP処理負荷の部分に係る処理を受け入れて実行することに同意しているかどうかを見極めることができる。
次に、ステップ509において、過剰負荷の、又はまもなく過剰負荷になるWAPのWAPコントローラ423は、WAP401と、WAP401のnASP処理負荷の決定部分の受け入れ及び処理に同意しているWAP(ステップ507で決定されたWAP)との間にトンネル・コネクション409を設定する。図4では、同意しているWAPの1つがWAP403であるように図示されている。nASP処理負荷の決定部分の処理に必要な関連コンテキスト情報が、同意しているWAPに対して設定されたトンネル・コネクション409を介して送信される。次に、ステップ511において、WAPコントローラ423は、トンネル・コネクション409を介して同意しているWAPに対して、WAP401のASP処理負荷の決定部分を送って、WAPコントローラ423は、WAP401の全体的な処理負荷を低減する。これはすべて、接続されているMTとの既存の接続を維持しながら、かつ同意しているWAPとの調和を図る巧みな方式で実施可能である。
本実施例では、従来のハンドオーバ・ベースの方法における制限なしに、処理負荷の分散における本発明の本態様の効果が示される。このように、地理的位置やMT移動に関する制約はない。
また、本発明の本態様の別の実施例では、過剰負荷のWAPが、接続されているMTの通信セッションに必要な処理負荷を、同意する他のWAPに単純に中継する。この中継は、無線、有線、又は両方のタイプのリンクの組み合わせによって行われる。また、中継される処理負荷の処理を促すように、関連コンテキスト情報が中継される必要性もある。
ある実施例では、2つのWAP間のトンネル・コネクションが、WAP間の直接的なリンク上で設定される。この直接的なリンクは、ワイアレスでよく、WAPとMTとの間のリンクと似ている。このケースでは、WAPは、接続されているMTとの通信用チャネルから代用できる無線チャネルを決定し、これを用いて、nASP処理負荷の決定部分及び関連コンテキスト情報を交換する。また、代わりに、2つのWAP間のリンクを有線にして直接的に接続することもできる。本実施例では、トンネル・コネクションは、ネットワーク・バックボーンを経由する必要がなく、むしろ直接的に設定できる。
本発明の別の実施例では、nASP処理負荷は、接続されているMTとの間で送受信されるMAC PDUの暗復号化に用いられるセキュリティ・アルゴリズムのために必要な処理と定められる。セキュリティ・アルゴリズムの処理は、複雑な特性のためにコンピュータ計算の負荷が高くなる非接続固有処理のタイプである。このように、接続されているMTの数又は接続されているMTに出入りするトラフィック量の大幅な増加によって、セキュリティ・アルゴリズムの処理が対応して増加することになる。本実施例では、WAP及び接続されているMTは、設定されたセキュリティ・アルゴリズムに基づいて、ワイアレス・コネクション上の送信情報を暗号化する。送信情報を受信すると、WAP及びMTは、設定された同一のセキュリティ・アルゴリズムに基づいて復号処理を行う。
暗復号化のためのnASP処理負荷が大きくなり、そのリソース特性がnASP負荷閾値を超えて測定された場合、WAP401のWAPコントローラ423は、要請メッセージを送って、WLANシステム400における他のWAPのどれが、WAP401とMT405との間の送信に用いられるセキュリティ・アルゴリズムに対応するnASP処理負荷の部分の受け入れ及び処理に同意できるかを決定する。WAP403がnASP処理負荷の処理に同意可能な場合、そのWAPコントローラ425が要請メッセージに応答する。要請メッセージに対する応答を受信すると、WAPコントローラ423は、トンネル・コネクション409をWAP403に設定し、関連するセキュリティ・キーとコンテキスト情報とをWAP403に設定したトンネル・コネクションを介して送る。
次に、トンネル・コネクション409を設定し、セキュリティ・キー及びコンテキスト情報を交換すると、WAPコントローラ423は、接続されているMT405から受信した暗号化MAC PDUをWAP403に送る。WAPコントローラ423は、結合したMT405に送信する前に暗号化すべきMAC PDUをWAP403にも送る。WAP403は、MAC PDUの暗号化のためにnASP処理負荷を処理し、WAP401に対してトンネル・コネクションを介して暗号化MAC PDUを送る。暗号化MAC PDUを受信すると、WAP401は、接続されているMTにそれらを送信する。本実施例では、セキュリティ・アルゴリズムに関してコンピュータ計算の負荷が高くなる処理を、他のWAPに分散して、WAPの処理負荷を減らす。これはMTの再結合に関与せずに行われるので、この方法は、ハンドオーバ・ベースの方法によって制限されるものではない。
また、別の実施例では、WAPコントローラは、接続されているMTとの接続関係を維持しながら、同時に、前述のセキュリティ・アルゴリズムを把握できないためにWAPが処理できない、セキュリティ・アルゴリズムに対応するnASP処理負荷を分散する。WLANに係る能力を含むMT及び他のデバイスの数が増えており、このようなMT及びデバイスに組み込まれるセキュリティの特徴も多数存在している。接続が求められるすべてのWAPが、あらゆるセキュリティ・アルゴリズムを認識できるわけでない。このように、本実施例では、WAPに要求された処理の一部がこのWAPで不可能な場合でも、MTと他のデバイスとの接続が維持されるようにする。本実施例では、非共通のセキュリティ・アルゴリズムを利用する例が説明されているが、WAPとMTとの間で共通ではない任意の他のタイプの処理に対しても有効である。
WAPにMTが接続している状態で、2つのエンティティ間のワイアレス・コネクション上での送信を保証するために両方のエンティティが把握できるセキュリティ・アルゴリズムが折衝される。従来、MTによって利用される任意のセキュリティ・アルゴリズムをWAPが把握できない場合には、MTは、前述のWAPと接続することは不可能である。本発明の実施例では、MTによって利用される任意のセキュリティ・アルゴリズムを把握することができない場合でも、この制限を超えて、MTがWAPと接続することを可能とする。
また、本実施例では、WAPコントローラ423は、WAP401及びMT405の両方が把握できない非共通のセキュリティ・アルゴリズムが存在しても、MT405がWAP401に接続することを可能にする。折衝段階中に、WAPコントローラ423は、要請メッセージをWLANシステム400の他のWAPに送り、どのWAPが、MT405が熟知している任意のセキュリティ・アルゴリズムを把握しており、その処理に同意できるかどうかを決定する。WAP403が、MT405が熟知している任意のセキュリティ・アルゴリズムを把握して、その処理に同意可能な場合には、WAPコントローラ425は、選択されたセキュリティ・アルゴリズムを用いて、WAPコントローラ423からの要請メッセージに応答する。要請メッセージの応答を受信すると、WAPコントローラ423は、WAP403とのトンネル・コネクション409を設定する。次に、WAPコントローラ423は、設定されたトンネル・コネクション409を介してWAP403に関連するセキュリティ・キー及びコンテキスト情報を送る。そして、選択されたセキュリティ・アルゴリズムがMT405に通知されるとともに、MT405が、WAP401に接続される。
トンネル・コネクション409を設定し、セキュリティ・キー及びコンテキスト情報を交換すると、WAPコントローラ423は、選択されたセキュリティ・アルゴリズムに基づいて暗号化されている、WAP401と接続するMT405から受信したMAC PDUを、WAP403に送る。WAP403は、暗号化されたMAC PDUをトンネル・コネクション409を介して受信し、選択されたセキュリティ・アルゴリズムと設定したセキュリティ・キー及びコンテキスト情報に基づいて、それらの暗号を解読する。さらに、WAPコントローラ423は、接続されているMT405に送信する前に暗号化すべきMAC PDUを、WAP403に送る。このケースでは、WAP403は、MAC PDUをトンネル・コネクション409を介して受信し、それらを選択されたセキュリティ・アルゴリズムに基づいて暗号化し、暗号化されたMAC PDUをWAP401に送り返す。WAP401は、暗号化されたMAC PDUを、接続されているMT405に送る。本実施例では、セキュリティ・アルゴリズムについての知識に欠けていても、WAPが、MTの接続を制限しない。このように、異なる処理要求を有する数多くのMTに対してサービスを提供する際に、より大きな柔軟性が提供される。
本発明の別の実施例は、WAPが処理するPDUのサイズに関連している。プロセッサ・スケジューリングの研究から、小さなPDUの前に大きなPDUを処理することは、小さなPDUが大きなPDUの前に処理されるケースと比べると、平均処理時間が長くなることが分かっている。図6は、例を用いてこれを示すものである。第1のケースでは、プロセッサ613、615のそれぞれに対して、2つの処理スケジュール601、603が示されている。スケジュール順序605、607は、PDUのA、B、C、Dが処理される相対的な順序を示す。また、609、611は、任意の時間単位(tu)で、各PDUの処理のために必要な処理時間を示している。
スケジュール601において、大きなPDUのAとBは、小さなPDUのCとDの前に処理される。PDUの平均処理時間は21.25tuであるが、小さなPDUのCとDが大きなPDUのAとBの前に処理されるスケジュール603のPDUの場合には、わずか16.25tuである。スケジュール603では、小さなPDUが大きなPDUの前に処理されるので、明らかに、平均処理時間が大幅に短縮している。
第2のケースでは、プロセッサ・スケジューリングの処理のオーバヘッドの態様が考慮されている。各PDUの処理には、メモリ・アクセス時間及びコンテキスト転送時間が含む処理のオーバヘッドが必要になる。オーバヘッドは、実際の処理の前に必要になるので、一般的に、PDUのサイズには依存しない。図6は、小さなPDUだけのスケジュール617を示し、処理オーバヘッド時間及び実際の処理時間がそれぞれ、621、625で示されている。処理オーバヘッド時間623及び処理時間627は、スケジュール619の大きなPDUのためのものである。この図によれば、スケジュール617では、処理オーバヘッドが総時間の50%までになるが、スケジュール619では、オーバヘッドは33・1/3%を占めているにすぎないことが分かる。これは、小さなPDUのみの処理が、プロセッサが大きなPDUを扱う場合に比べて、プロセッサが、どのくらい多くのオーバヘッドを扱うことになるかを示している。
PDUのサイズに関連する本発明の実施例では、nASP処理負荷が、WAPで処理されるPDUのサイズによって定められる。WAP401のWAPコントローラ423は、接続されているMT405からワイアレス・コネクション427上で受信したPDUのサイズを監視する。WAPコントローラ423が、WAP401が任意の前述のケースのいずれかの処理を行っていると決定した場合には、コントローラは、監視した受信PDUのサブセットの処理スケジュールを決定する。この処理スケジュールの目的は、WAP401における平均処理時間及び処理オーバヘッド時間を最適化することにある。
次に、WAPコントローラ423は、処理に対して同意可能な他のWAPに分散することができるPDUのリソース特性を取得する。このように、リソース特性は、WAP401自らが処理するもの以外のPDUの処理に必要な処理負荷を表している。このとき、リソース特性は、PDUの処理に同意可能なWAPを決定するための要請メッセージの一部に記載されて、WLANシステム400の他のWAPに送られる。
WAP403が要請メッセージに記載されているPDUのnASP処理に同意可能な場合に、WAPコントローラ425は、これに応じた応答を行う。WLANシステム400のWAPは、このようなPDUの処理が自らの平均処理時間及び処理オーバヘッド時間の最適化を可能にする場合に、別のWAPからのPDUの処理に同意可能となる。応答を受信すると、WAPコントローラ423は、WAP403とのトンネル・コネクション409を設定し、関連するコンテキスト情報をWAP403に設定されたトンネル・コネクションを介して送る。
トンネル・コネクションを設定し、関連するコンテキスト情報を交換すると、WAPコントローラ423は、WAP401の処理オーバヘッド時間と平均処理時間とを最適化するために、既に送られてきているリソース特性が示すPDUを、WAP403に送る。本実施例によれば、異なるサイズのPDUに係るnASP処理は、MTとWAPとの間の接続関係を同時に維持しながら、処理の最適化を行うように分散することができる。
また、別の実施例では、処理されるデータ・ユニットのサイズ、データ・ユニットの処理について予想される平均時間、データ・ユニットを処理するためのオーバヘッド時間、上記の情報に関して重み付けされた総計を含む情報に基づいて、WAPコントローラによって、nASP処理の負荷の分配が行われる。
開示される方法の別の実施例は、第1のWAP及びそれに接続されているMTとの間の接続関係を維持しながら、第1のWAPから他のWAPに、ISO−OSIレイヤ3及びレイヤ3上のレイヤの処理の配分に関連している。WAPの多くはISO−OSIレイヤ2まで処理できるが、ISO−OSIレイヤ3を処理できるWAPを製造するベンダもいる。本実施例では、このようなデバイス及び他の同様のWAPが示唆されている。ISO−OSIレイヤ3及びレイヤ3上のレイヤの処理には、サービス品質(QoS)の提供、ルーティング、スケジューリングが含まれている。本実施例では、nASP処理負荷は、ISO−OSIレイヤ3及びレイヤ3上のレイヤに関する処理として定められる。
本実施例では、WAP401のWAPコントローラ423は、WAP401及び接続されているMT405の間の各通信セッションに対して監視されたnASP処理負荷のファクタに基づいて、ISO−OSIレイヤ3及びレイヤ3より上のリソース特性が求められる。すべての通信セッションのリソース特性は、WAP401の集計したnASP負荷ファクタが得られるように組み合わされており、切迫したnASP処理過剰負荷条件を決定するために、nASP負荷閾値と比較される。
切迫したnASP処理過剰負荷条件が決まると、WAPコントローラ423は、WAP401の全体的な処理負荷を低減するために、WLANシステム400の他のWAPに配分されるISO−OSIレイヤ3及びレイヤ3上のレイヤのnASP処理負荷の部分を決定する。次に、WAPコントローラ423は、ISO−OSIレイヤ3及びレイヤ3より上のnASP処理負荷の決定された部分に関するリソース特性を含む要請メッセージを送り、他のWAPのどれが、WAP401のためにnASP処理負荷の部分の処理を受け入れて実施することに同意可能であるかを決定する。
WAP403が要請メッセージに基づくnASP処理負荷の部分の処理に同意可能な場合、WAPコントローラ423は、肯定的な応答をWAP401に送る。応答を受信すると、WAPコントローラ423は、トンネル・コネクション409をWAP401とWAP403の間に設定し、その後、ISO−OSIレイヤ3及びレイヤ3より上のnASP処理負荷の部分の処理に必要な関連コンテキスト情報が、WAP403にトンネル・コネクション上を介して送信される。WAPコントローラ423は、コントロール・マネージャの権限の下で、MTとWAPとの間の既存の接続関係を維持しながら、他のWAPに処理負荷の部分を分散することによって、WAP401のnASP処理負荷を低減することを目的とし、WAP403に対してnASP処理負荷の決定部分を分配する。
WLANエンティティ間の動的な違いを調節する折衝を取り扱う本発明の態様の更に別の実施例では、コントローラ・エンティティが折衝を行う。概して、セントラル・コントローラ・エンティティは、関与しているWLANエンティティ間において、動的な違いの管理方法の調整を行う。ある特定の実施例では、セントラル・コントローラ・エンティティの権限の下、セントラル・コントローラ・エンティティが、WAPのnASP処理負荷の配分を調整する。
これに関して、図7を参照しながら、WAP701、703のnASP処理負荷を監視できるセントラル・コントローラ729について説明する。WAP701のnASP処理負荷がnASP処理負荷閾値を超えると、セントラル・コントローラ729は、WLANシステム700の他のWAPに対して、WAP701の処理負荷の部分の処理のサポートを要請する要請メッセージを送る。これによって、WLANシステム700のセントラル・コントローラ729と他のWAPとの間の折衝段階が始まる。要請メッセージは、WAP701の全体的な処理負荷を低減するために、他のWAPに送られるWAP701の処理負荷の部分の記述子を含んでいる。
WAP703がWAP701の処理のサポートに同意可能な場合、WAPコントローラ725が要請メッセージに応答する。セントラル・コントローラ729は、認可についてWAP701に通知し、その後、WAP701はWAP703とのトンネル・コネクション709を設定する。そして、WAP703に対して、関連コンテキスト情報と、続いて、要請メッセージで指定された処理負荷の部分とを送る。なお、代わりに、WAP701が、コンテキスト情報及び処理負荷の部分をセントラル・コントローラ729に送り、セントラル・コントローラ729が、例えば、WAP703などのような同意可能なWAPに対して、これを送ってもよい。このように、本実施例によれば、配分を調整するセントラル・コントローラによって、処理負荷が、WLANのWAPに配分される。
別の実施例では、セントラル・コントローラが、その権限の下で、WAPのWAPコントローラから、WAPのnASP処理負荷に関する定期的な情報を受信する。このように、WAPコントローラは、他のWAP又は他のWLANエンティティにnASP処理負荷の一部又はすべてを配分する必要性と過剰負荷条件とを自ら決定する。したがって、本実施例の折衝段階は、WAPコントローラによって始動され、セントラル・コントローラと他のWAPとの間で更に処理が進められる。
以上に提示した実施例では、種々のWLANエンティティ間において、開示されたポリシーに基づいて、動的な違いを調節するための折衝の利用方法が示されている。ここでは、特に、処理負荷を接続固有と非接続固有として区分けする方法が説明されている。また、ここでは、どのようにしてnASP処理負荷の部分が、第1のWAPの全体的な処理負荷を低減するためにWLANシステムの他のWAPに配分されるかについて図示されている。開示された本発明は、MTとWAPとの間の既存の接続関係を維持しながら、処理負荷の配分を可能にする点で独自のものである。このように、動的な違いを調節するための開示された方法は、従来の方法と異なり、任意のWLANエンティティの物理的な移動を必要としない。したがって、この革新的な技術は、処理負荷を配分するハンドオーバ・ベースの方法より柔軟性に富んでおり、このような方式の限界を克服するものである。
また、以上に開示された種々の態様では、WLANエンティティ間における静的及び動的な違いを調節する際に折衝する新規な方法が示されている。従来の方法ではWLANエンティティにおけるハードの機能による分割に焦点を置いているが、本発明では、機能分割を柔軟に実施できる代替手段が提示される。また、従来の方法では、再接続とハンドオーバで生じる地理的制約及び物理的制約が必要とされるが、この革新的な技術によれば、ハンドオーバ・ベースの方法の制約を伴わずに、処理負荷のアンバランスに対処する方式が提案されている。
また、開示された発明は、この開示の本質及び趣旨から逸脱せずに、WLANエンティティ間の違いを折衝して対処するための他のポリシーが、様々な多数の他の実施の形態を作ることは、当業者には自明のことである。以上のように、本発明は、このような実施例及び具体例のすべてにおいて適用可能である。
本発明は、WLANエンティティ間における違いを調整することを可能にするという効果を有しており、ワイアレス・ローカル・エリア・ネットワークの技術分野に適用可能であり、特に、ヘテロジニアスな環境におけるワイアレス・ローカル・エリア・ネットワークの技術分野に適用可能である。
WLANエンティティ間、特に制御ノード(CN)とワイアレス・アクセス・ポイント(WAP)との間で、折衝のためのポリシーを取り扱う本発明の第1の態様を説明するために用いられるワイアレス・ローカル・エリア・ネットワーク(WLAN)の動作を示す図
CNとWAPとの間の折衝のためのポリシーを取り扱う本発明の第1の態様に含まれる主要な動作ステップを示す図
CN及びWAPの能力が1つのエンティティに統合されている、本発明の第1の態様の一実施例を示す統合化されたWLANエンティティを示す図
WLANエンティティ間、特にWAP間の動的な違いを調節するために、折衝のためのポリシーを取り扱う本発明の第2の態様を単純化したフレームワークを示す図
WLANエンティティ間の動的な違いを調節する折衝のためのポリシーを取り扱う本発明の第2の態様に含まれる主要な動作ステップを示し、特に、種々のエンティティに係る負荷の処理が行われることを示す図
本発明の第2の態様の一実施例に係る、WAPが、接続されているMTから受信するプロトコル・データ・ユニット(PDU)のサイズを負荷処理の定義とする根拠を説明するための図
セントラル・コントローラがWLANエンティティ間の動的な違いを調節する折衝の監視機能を担っている、本発明の第2の態様の一実施例を示す図
動的なWLANトポロジにおけるCAPWAPの分配動作を可能とする折衝方法に係る本発明の第1の実施の形態の一例を示す図
IEEE802.11WLAN仕様に関する本発明の第1の実施の形態の詳細な一例を示す図
動的なWLANトポロジを可能とする本発明の第1の実施の形態の処理シーケンスを示す図