JPWO2005078093A1 - プリオン遺伝子の発現を抑制するsiRNA分子 - Google Patents
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Abstract
本発明は、プリオン遺伝子の発現を抑制するためのsiRNA分子に関する。本発明によるsiRNA分子は、細胞内でプリオン遺伝子の発現をRNAiにより抑制しうる二本鎖RNA分子であって、該二本鎖RNA分子を構成するアンチセンス鎖が、配列番号1で表されるマウスプリオン遺伝子mRNA配列中の第66〜85残基もしくは第513〜532残基からなる標的配列、または他の生物においてこれに相当する標的配列に特異的にハイブリダイズする配列を含んでなるものである、二本鎖RNA分子である。
Description
本特許出願は、先に出願された日本国における特許出願である特願2004−41157号(出願日:2004年2月18日)に基づく優先権の主張を伴うものである。この先の特許出願における全開示内容は、引用することにより本明細書の一部とされる。
発明の分野
本発明は、RNAi現象による遺伝子サイレンシングに関するものであり、より詳細には、プリオン遺伝子の発現を抑制するためのsiRNA分子、およびこれを用いたプリオン遺伝子の発現抑制法に関するものである。
本発明は、RNAi現象による遺伝子サイレンシングに関するものであり、より詳細には、プリオン遺伝子の発現を抑制するためのsiRNA分子、およびこれを用いたプリオン遺伝子の発現抑制法に関するものである。
背景技術
RNAi(RNA干渉)は、二本鎖RNA(dsRNA)によって誘導される配列特異的な遺伝子転写後抑制機構である。この現象は、ハエ、昆虫、原生動物、脊椎動物、高等植物などの様々な種において観察されている。RNAiの分子レベルでの作用機序に関し、ショウジョウバエ(Drosophila)および線虫(Caenorhabditis elegans)における多くの研究により、siRNA(短鎖干渉RNA)と呼ばれる21〜25ヌクレオチド長のRNA断片がRNAiにとって必須の配列特異的メディエーターであること(Hammond, S.M. et al., Nature 404, 293-296, 2000;Parrish, S. et al., Mol. Cell. 6, 1077-1087, 2000;Zamore, P.D. et al., Cell 101, 25-33, 2000)、ならびにこのsiRNAが長い二本鎖RNAから、Dicerと呼ばれるRNアーゼIII様ヌクレアーゼにより生成すること(Brenstein, E. et al., Nature 409, 363-366, 2001;Elbashir, S.M. et al., Genes Dev. 15, 188-200, 2001)がわかっている。
RNAi(RNA干渉)は、二本鎖RNA(dsRNA)によって誘導される配列特異的な遺伝子転写後抑制機構である。この現象は、ハエ、昆虫、原生動物、脊椎動物、高等植物などの様々な種において観察されている。RNAiの分子レベルでの作用機序に関し、ショウジョウバエ(Drosophila)および線虫(Caenorhabditis elegans)における多くの研究により、siRNA(短鎖干渉RNA)と呼ばれる21〜25ヌクレオチド長のRNA断片がRNAiにとって必須の配列特異的メディエーターであること(Hammond, S.M. et al., Nature 404, 293-296, 2000;Parrish, S. et al., Mol. Cell. 6, 1077-1087, 2000;Zamore, P.D. et al., Cell 101, 25-33, 2000)、ならびにこのsiRNAが長い二本鎖RNAから、Dicerと呼ばれるRNアーゼIII様ヌクレアーゼにより生成すること(Brenstein, E. et al., Nature 409, 363-366, 2001;Elbashir, S.M. et al., Genes Dev. 15, 188-200, 2001)がわかっている。
哺乳動物においては、当初、RNAiは卵母細胞および着床前の胚においてのみ見られる現象と考えられていた。一般に、哺乳動物細胞は、配列非特異的RNアーゼであるRNアーゼLによる迅速かつ非特異的なRNA分解経路、およびインターフェロンにより誘導される二本鎖RNA依存的タンパク質キナーゼ(PKR)による迅速な翻訳阻害経路を有しており、これらは共に、30ヌクレオチド以上の二本鎖RNAによって活性化される。従って、未分化細胞およびPKRを欠く分化細胞などを除く哺乳動物細胞においては、30ヌクレオチド以上の二本鎖RNAへの前記応答により、配列特異的なRNAi活性が遮蔽されることがある。最近になって、合成した21ヌクレオチドのsiRNA二重鎖が、哺乳動物細胞培養物において内因性遺伝子の発現を特異的に阻害しうることが報告されている(Elbashir, S.M. et al., Nature 411, 494-498, 2001)。
RNAiによる遺伝子発現抑制の原理は、次のように考えられている。まず、siRNAが細胞に導入されると、これがマルチタンパク質複合体と結合し、RISC(RNA誘導型サイレンシング複合体)が形成される。次いで、このRISCは標的遺伝子からのmRNAに結合し、そのヌクレアーゼ活性によりmRNA中のsiRNAが結合した部分を切断する。これにより、標的遺伝子によるタンパク質の発現が阻害される。
一方で、様々な神経変性疾患を引き起す原因物質として、プリオンタンパク質が知られている。異常型のプリオンタンパク質は、ヌクレアーゼおよびプロテアーゼに抵抗性の非核酸構成成分を有する小型の感染性タンパク性粒子である。プリオンタンパク質によって引き起されるヒトの疾患としては、クールー海綿状脳症、クロイツフェルト‐ヤーコプ病、ゲルストマン‐シュトロイスラー症候群、致死的家族性不眠症等が知られている。
プリオン遺伝子(PrP遺伝子)ノックアウトマウスにプリオン病原体を接種しても、プリオン病を発病しないことが報告されている(Nature 356, 577-582, 1992)。これは、異常型プリオンタンパク質の増幅に必要な正常型プリオンタンパク質が発現しないことにより、プリオン病の発病に必要な量の異常型プリオンタンパク質が細胞内に蓄積しないためであると考えられている。また、前記ノックアウトマウスは、形態学的に正常マウスとほとんど変わらないことが知られている。従って、プリオン遺伝子をノックアウトまたはノックダウンすることにより、プリオン病の治療または予防が可能になると考えられる。
本発明者は、プリオン遺伝子のmRNAにおける特定の領域を標的配列として設計されたsiRNAを用いることにより、細胞内でのプリオン遺伝子の発現を顕著に抑制しうることを見出した。本発明は、この知見に基づくものである。
従って、本発明の目的は、プリオン遺伝子の発現を抑制するためのsiRNA分子を提供することにある。
そして、本発明によるsiRNA分子は、細胞内でプリオン遺伝子の発現をRNAiにより抑制しうる二本鎖RNA分子であって、該二本鎖RNA分子を構成するアンチセンス鎖が、以下の標的配列:(a)配列番号1で表されるマウスプリオン遺伝子mRNA配列中の第66〜85残基からなる標的配列、(b)マウス以外の生物に由来するプリオン遺伝子mRNA配列において、前記(a)の標的配列に対応する配列からなる標的配列、(c)配列番号1で表されるマウスプリオン遺伝子mRNA配列中の第513〜532残基からなる標的配列、または(d)マウス以外の生物に由来するプリオン遺伝子mRNA配列において、前記(c)の標的配列に対応する配列からなる標的配列に特異的にハイブリダイズする配列を含んでなるものである、二本鎖RNA分子である。
本発明によれば、RNAi現象を利用して、プリオン遺伝子の発現を顕著に抑制することが可能となる。
本明細書において「二本鎖RNA」とは、二本の一本鎖RNA分子が、全体にわたって、または部分的にハイブリダイズして得られるRNA分子を意味する。それぞれの一本鎖RNAを構成するヌクレオチドの数は互いに異なっていてもよい。また、二本鎖RNAを構成する一方または両方のヌクレオチド鎖は、一本鎖の部分(オーバーハング)を含んでいてもよい。
本明細書において「二本鎖部分」とは、二本鎖RNAにおいて、両鎖のヌクレオチドが対合している部分、すなわち、二本鎖RNA中の一本鎖の部分を除いた部分を意味する。
本明細書において、「センス鎖」とは、遺伝子のコード鎖と相同な配列を有するヌクレオチド鎖を意味し、「アンチセンス鎖」とは、遺伝子のコード鎖と相補的な配列を有するヌクレオチド鎖を意味する。
本明細書において「相補的」とは、2つのヌクレオチドがハイブリダイゼーション条件下において対合しうるものであることを意味し、例えば、アデニン(A)とチミン(T)またはウラシル(U)との関係、およびシトシン(C)とグアニン(G)との関係をいう。
本発明による二本鎖RNA分子は、細胞内でプリオン遺伝子の発現をRNAiにより抑制しうる二本鎖RNA分子であり、該二本鎖RNA分子は、プリオン遺伝子のmRNA配列中の特定の配列を標的として設計されたものである。本発明に用いられる標的配列は、配列番号1で表されるマウスプリオン遺伝子mRNA配列中の第66〜85残基からなる配列および第513〜532残基からなる配列である。さらに、本発明に用いられる標的配列はマウスに由来するものに限定されるものではなく、他の生物に由来するプリオン遺伝子mRNA配列において、マウスにおける前記標的配列に対応する配列からなるものとすることができる。マウス以外の生物における標的配列は、マウスプリオン遺伝子mRNA配列と、目的とする生物に由来するプリオン遺伝子mRNA配列とを比較し、マウスにおける上記標的配列と相同な領域を特定することによって決定される。複数の配列を比較することによる相同領域の特定は、当技術分野において周知の標準的な方法によって行なうことができる。例えば、図1には、マウスおよびヒトに由来するプリオン遺伝子mRNA配列のアラインメントが示されており、これによれば、ヒトにおける標的配列は、配列番号2で表されるヒトプリオン遺伝子mRNA配列中の第66〜85残基からなる配列および第516〜535残基からなる配列であることが明らかである。
本発明による二本鎖RNA分子を構成するアンチセンス鎖は、上述の標的配列に特異的にハイブリダイズする配列を含んでなるものである。ここで、「特異的にハイブリダイズする」とは、そのアンチセンス鎖が、プリオン遺伝子の発現抑制を行なう細胞内において、プリオン遺伝子およびその転写産物以外の核酸分子にはハイブリダイズしないことを意味する。前記アンチセンス鎖は、前記標的配列に対応する配列を含むものとされるが、前記標的配列に完全に相補的な配列を有する必要はなく、その標的配列に特異的にハイブリダイズしうる限り、相補的でないヌクレオチドを含んでいてもよい。しかしながら、前記アンチセンス鎖は、好ましくは前記標的配列に相補的な配列を含んでなるものとされる。
本発明による二本鎖RNA分子を構成するセンス鎖は、プリオン遺伝子の発現を抑制しようとする細胞内において前記アンチセンス鎖との二本鎖を形成しうる配列を含むものであればよい。二本のリボヌクレオチド鎖が細胞内において二本鎖を形成するか否かは、当業者であれば容易に調べることができる。例えば、目的とする細胞内におけるハイブリダイゼーション条件をin vitroにおいて再現し、そこに二本のリボヌクレオチド鎖を添加して、これらがハイブリダイズするか否かを調べればよい。
本発明の好ましい実施態様によれば、前記センス鎖は、前記標的配列の5’末端から3’側に向けて1〜7番目および9〜18番目に位置するヌクレオチド残基に対応する位置において、アンチセンス鎖に相補的なヌクレオチド残基を含んでなるものとされる。従って、この実施態様によれば、前記センス鎖は、前記標的配列の5’末端から3’側に向けて8番目および19〜20番目に位置するヌクレオチド残基に対応する位置において、アンチセンス鎖に相補的でないヌクレオチド残基を含んでいてもよい。
本発明の他の好ましい実施態様によれば、前記センス鎖は、前記標的配列の5’末端から3’側に向けて1〜18番目に位置するヌクレオチド残基に対応する位置において、アンチセンス鎖に相補的なヌクレオチド残基を含んでなるものとされる。従って、この実施態様によれば、前記センス鎖は、前記標的配列の5’末端から3’側に向けて19〜20番目に位置するヌクレオチド残基に対応する位置において、アンチセンス鎖に相補的でないヌクレオチド残基を含んでいてもよい。
本発明の他の好ましい実施態様によれば、前記センス鎖は、前記標的配列に対応する位置において、アンチセンス鎖に相補的なヌクレオチド残基を含んでなるものとされる。
本発明による二本鎖RNA分子を構成するアンチセンス鎖は、センス鎖のヌクレオチドと対合した二本鎖部分の3’末端側に突出部分(オーバーハング)を有していてもよい。この突出部分のヌクレオチド配列は、プリオン遺伝子に関連する配列または関連しない配列のどちらであってもよく、その長さも特に制限されないが、好ましくは2ヌクレオチド長の配列、より好ましくは2つのウラシル残基(UU)とされる。センス鎖もまた、アンチセンス鎖のヌクレオチドと対合した二本鎖部分の3’末端側に同様の突出部分を有するものとしてもよい。しかしながら、本発明の好ましい実施態様によれば、前記センス鎖は、その3’末端において突出部分を含まないものとされる。
本発明による二本鎖RNA分子における二本鎖部分は、上記標的配列に対応する配列を含んでなるものであればよい。従って、この二本鎖部分は、さらに別の配列を含むことができ、例えば、プリオン遺伝子mRNAにおいて上記標的配列の周辺に位置する配列に対応するヌクレオチド残基を含むことができる。しかしながら、本発明の好ましい実施態様によれば、前記二本鎖部分は、上記標的配列に対応する配列からなるもの、すなわち、上記標的配列に対応する配列のみを含むものとされる。
哺乳動物の細胞に長い二本鎖RNA分子を導入すると、二本鎖RNA依存的タンパク質キナーゼや2’−5’−オリゴアデニル酸合成酵素が誘導され、ひいては細胞死につながることが知られている。従って、本発明による二本鎖RNA分子は、哺乳動物の細胞内において、二本鎖RNA依存的タンパク質キナーゼまたは2’−5’−オリゴアデニル酸合成酵素を誘導しないものであることが好ましい。この条件を満たす二本鎖RNA分子の鎖長は、当業者には容易に理解される。一般的には、30ヌクレオチド以上の二本鎖RNA分子によって上記の細胞死が起こることが知られており、従って、本発明による二本鎖RNA分子は、好ましくは29ヌクレオチド以下、より好ましくは25ヌクレオチド以下の鎖長を有するものとされる。ここで用いられる「鎖長」は、二本鎖RNA分子の二本鎖部分だけでなく、一本鎖部分をも含めた場合のヌクレオチド長を意味する。
本発明による二本鎖RNA分子は、細胞内において、プリオン遺伝子の発現を抑制することができる。従って、本発明によれば、本発明による二本鎖RNA分子を細胞に導入する工程を含んでなる、細胞におけるプリオン遺伝子の発現を抑制する方法が提供される。
細胞は、siRNAによるRNAi現象を起こすことが可能であり、かつプリオン遺伝子を発現する細胞であればいかなるものであってもよいが、好ましくは哺乳動物細胞とされる。哺乳動物細胞としては、例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、イヌ、サル、ヒトなどに由来するものが挙げられる。また、好適な培養細胞としては、例えば、HeLa細胞、NIH/3T3細胞、COS−7細胞、293細胞などが挙げられる。
本発明による二本鎖RNA分子を細胞に導入する方法は、二本鎖核酸分子を細胞中に導入しうるものであればいかなる方法であってもよく、特に制限されない。本発明による方法において、特に好適な二本鎖RNA分子の細胞中への導入法は、リポソーム、好ましくはカチオン性リポソームを用いたトランスフェクション法であり、これは、Lipofectamine2000トランスフェクション試薬(Invitrogen社製)、Oligofectaminトランスフェクション試薬(Invitrogen社製)、jetSIトランスフェクション試薬(Polyplus-transfection社製)、TransMessenger(Qiagen社製)などの市販のトランスフェクション試薬を用いて容易に行なうことができる。
あるいは、本発明による二本鎖RNA分子を利用したプリオン遺伝子の発現抑制は、本発明による二本鎖RNA分子を細胞中において発現するベクターを目的とする細胞に導入することによって行なうこともできる。この方法においては、本発明による二本鎖RNA分子のセンス鎖およびアンチセンス鎖のそれぞれを発現する2種のベクターを用いてもよいし、または本発明による二本鎖RNA分子のセンス鎖をコードするDNAおよびアンチセンス鎖をコードするDNAの両方を含んでなるベクターを用いてもよい。従って、本発明の他の態様によれば、本発明による二本鎖RNA分子のセンス鎖をコードするDNAを含んでなるベクターと、該二本鎖RNA分子のアンチセンス鎖をコードするDNAを含んでなるベクターとの組み合わせ、または本発明による二本鎖RNA分子のセンス鎖をコードするDNAおよびアンチセンス鎖をコードするDNAの両方を含んでなるベクター、を細胞に導入する工程を含んでなる、細胞におけるプリオン遺伝子の発現を抑制する方法が提供される。
上記のベクターは、本発明による二本鎖RNA分子の一方の鎖または両方の鎖を細胞内において発現しうるものであればよい。従って、上記のベクターは、二本鎖RNA分子の鎖をコードするDNAを、細胞内でのその転写を可能とする形で含んでなる。このようなベクターは、当業者であれば容易に構築することができ、例えば、必要に応じて、プロモーター、ターミネーターなどの要素を機能しうる形で連結することができる。プロモーターとしては、目的とする細胞内において機能しうるものであればよく、例えば、構成的プロモーター、誘導性プロモーターなどのいずれのものを用いてもよい。また、プリオン遺伝子プロモーターを用いることもでき、これにより、プリオン遺伝子の転写産物が生成すると同時に、該転写産物を分解するための本発明による二本鎖RNA分子を生成させることができる。構築されたベクターの目的とする細胞中への導入は、当技術分野において知られている方法により、当業者であれば適切に行なうことができる。
特に、本発明による二本鎖RNA分子の両方の鎖を発現しうる単一のベクターを用いることが好ましい。このようなベクターは、二本鎖RNA分子の2本の鎖を独立して発現するものであっても、2本の鎖がリンカー配列によって連結されたヘアピン型二本鎖RNAとして発現するものであってもよい。本発明による二本鎖RNA分子をヘアピン型二本鎖RNAとして発現するベクターは、当業者であれば適宜構築することができ、例えば、文献の記載(Bass, B.L., Cell 101, 235-238, 2000;Tavernarakis, N. et al., Nat. Genet. 24, 180-183, 2000;Malagon, F. et al., Mol. Gen. Genet. 259, 639-644, 1998;Parrish, S. et al., Mol. Cell 6, 1077-1087, 2000)に従って構築することもできる。
本発明による二本鎖RNA分子、およびこれを利用したプリオン遺伝子の発現抑制法は、プリオン遺伝子およびプリオンタンパク質の機能解析において利用可能であるだけでなく、生体中に存在する細胞におけるプリオン遺伝子の発現抑制にも利用可能であり、これにより、クールー海綿状脳症、クロイツフェルト‐ヤーコプ病、ゲルストマン‐シュトロイスラー症候群、致死的家族性不眠症などのプリオン病を治療または予防することも可能となる。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、これら実施例は本発明を限定するものではない。
例1:各種siRNAによるN2a細胞中でのマウスPrP遺伝子の発現の抑制
マウス神経芽細胞腫に由来するN2a細胞において、内因性のマウスPrP遺伝子中の4つの領域(標的配列1〜4)を標的とする各種siRNAを設計し、これらsiRNAによる前記遺伝子の発現抑制効果を調べた。
マウス神経芽細胞腫に由来するN2a細胞において、内因性のマウスPrP遺伝子中の4つの領域(標的配列1〜4)を標的とする各種siRNAを設計し、これらsiRNAによる前記遺伝子の発現抑制効果を調べた。
設計した各種siRNAのヌクレオチド配列を下記の表1に示す。表1では、各siRNAのセンス鎖を上側とし、アンチセンス鎖を下側として整列させ、互いに相補的なヌクレオチドには、両鎖の間にコロン「:」が付されている。また、各siRNAの名称において、「PrP」の後ろに付された数字は標的としたPrP遺伝子中の領域を意味し、前記遺伝子のmRNA配列におけるそれぞれの領域の位置は図1に示すとおりである。
上記の各オリゴリボヌクレオチドのペアを合成し、それぞれの20μMをアニーリング緩衝液(30mM HEPES pH7.0、100mM酢酸カリウム、および10mM酢酸マグネシウム)中に添加し、90℃で3分間の熱変性を行なった後、37℃で一昼夜のアニーリングを行なった。これにより、各siRNAを得た。
N2a細胞は、10%ウシ胎児血清(Life Technologies社製)、100U/mlペニシリン(Life Technologies社製)および100μg/mlストレプトマイシン(Life Technologies社製)を補充したダルベッコ改変イーグル培地(Sigma社製)中において、5%CO2雰囲気下、37℃で増殖させた。
N2a細胞の各siRNA(100nM)でのトランスフェクションは、jetSIトランスフェクション試薬(Polyplus-transfection社製)を用いて行なった。
トランスフェクションの48時間後に全RNAを単離し、逆転写酵素によるcDNA合成を行なった。このcDNAを鋳型とするリアルタイムPCRにより、PrP遺伝子の発現レベルを測定した。これら一連の発現レベル測定は、SYBR green PCRキット(Molecular Probe社製)を用いて行なった。
図2は、各種siRNAによる、N2a細胞中での内因性PrP遺伝子の発現抑制効果を示す。図2では、各siRNAを用いた場合における、対照遺伝子(G3PDH遺伝子)の発現レベルに対するPrP遺伝子の発現レベルの比が示されている。この発現レベルの比は、遺伝子発現の抑制を起こさない二本鎖RNA(siCont)(Qiagen社製)を用いた対照サンプルについて得られたものを1.0として標準化されている。各データは少なくとも4回の独立した実験からの平均値であり、また、各データに付されたエラーバーは標準偏差を表す。
図2によれば、各種siRNAによってマウスPrP遺伝子の発現が抑制され、特に、標的配列1および4について設計されたsiRNAにより、同遺伝子の発現が顕著に抑制されることがわかる。
さらに、トランスフェクションの48時間後に細胞溶解液を調製し、抗PrP抗体を用いたウエスタンブロット法によりPrPタンパク質の発現量を調べた。その結果、上述のmRNA発現の抑制と同様に、タンパク質の発現量も抑制されていることがわかった。
Claims (13)
- 細胞内でプリオン遺伝子の発現をRNAiにより抑制しうる二本鎖RNA分子であって、該二本鎖RNA分子を構成するアンチセンス鎖が、以下の標的配列:
(a)配列番号1で表されるマウスプリオン遺伝子mRNA配列中の第66〜85残基からなる標的配列、
(b)マウス以外の生物に由来するプリオン遺伝子mRNA配列において、前記(a)の標的配列に対応する配列からなる標的配列、
(c)配列番号1で表されるマウスプリオン遺伝子mRNA配列中の第513〜532残基からなる標的配列、または
(d)マウス以外の生物に由来するプリオン遺伝子mRNA配列において、前記(c)の標的配列に対応する配列からなる標的配列
に特異的にハイブリダイズする配列を含んでなるものである、二本鎖RNA分子。 - 前記アンチセンス鎖が、前記標的配列に相補的な配列を含んでなるものである、請求項1に記載の二本鎖RNA分子。
- 二本鎖RNA分子を構成するセンス鎖が、前記標的配列の5’末端から3’側に向けて1〜7番目および9〜18番目に位置するヌクレオチド残基に対応する位置において、アンチセンス鎖に相補的なヌクレオチド残基を含んでなるものである、請求項1に記載の二本鎖RNA分子。
- 二本鎖RNA分子を構成するセンス鎖が、前記標的配列の5’末端から3’側に向けて1〜18番目に位置するヌクレオチド残基に対応する位置において、アンチセンス鎖に相補的なヌクレオチド残基を含んでなるものである、請求項1に記載の二本鎖RNA分子。
- 二本鎖RNA分子を構成するセンス鎖が、前記標的配列に対応する位置において、アンチセンス鎖に相補的なヌクレオチド残基を含んでなるものである、請求項1に記載の二本鎖RNA分子。
- 二本鎖RNA分子を構成するセンス鎖が、その3’末端において突出部分を含まないものである、請求項1に記載の二本鎖RNA分子。
- 哺乳動物の細胞内において、二本鎖RNA依存的タンパク質キナーゼまたは2’−5’−オリゴアデニル酸合成酵素を誘導しないものである、請求項1に記載の二本鎖RNA分子。
- 29ヌクレオチド以下の鎖長を有するものである、請求項7に記載の二本鎖RNA分子。
- 請求項1〜8のいずれか一項に記載の二本鎖RNA分子を細胞に導入する工程を含んでなる、細胞におけるプリオン遺伝子の発現を抑制する方法。
- 細胞が哺乳動物細胞である、請求項9に記載の方法。
- 請求項1〜8のいずれか一項に記載の二本鎖RNA分子のセンス鎖をコードするDNAおよびアンチセンス鎖をコードするDNAの両方を含んでなる、ベクター。
- 請求項1〜8のいずれか一項に記載の二本鎖RNA分子のセンス鎖をコードするDNAを含んでなるベクターと、該二本鎖RNA分子のアンチセンス鎖をコードするDNAを含んでなるベクターとの組み合わせ、または請求項11に記載のベクターを細胞に導入する工程を含んでなる、細胞におけるプリオン遺伝子の発現を抑制する方法。
- 細胞が哺乳動物細胞である、請求項12に記載の方法。
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JPN6010052029, J. Cell Sci., 2003, Vol.116, No.13, p.2775−2779 * |
JPN6010052030, Biochem. Biophys. Res. Commum., 2003, Vol.305, p.548−551 * |
JPN6010052031, Nat. Biotechnol., 2004.2.1, Vol.22, p.326−330 * |
JPN6010052032, FEBS Lett., Jan.2004, Vol.557, p.193−198 * |
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