JPWO2005035765A1 - インターフェロン応答を抑制する方法 - Google Patents
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Abstract
本発明は、オルトミクソウイルス科ウイルスのNP蛋白質によりインターフェロン応答を抑制する方法を提供する。インターフェロン応答を抑制する作用は、インフルエンザウイルスA/PR/8/34株由来のNP蛋白質で特に強かった。NP蛋白質を用いれば、IFN応答を抑制することにより宿主防御反応および免疫応答を減弱させることが可能である。例えば、ウイルスを遺伝子治療用ベクターとして利用する場合、ベクター搭載治療用遺伝子の発現を持続させる或いはベクター自身の免疫原性を減弱するために、NP蛋白質を発現させることによって、宿主の抗ウイルス活性を減弱させることができる。このようなベクターは、インビボにおける遺伝子治療用ベクターとして有用である。
Description
本発明は、オルトミクソウイルス科ウイルスのNP蛋白質によりインターフェロン応答を抑制する方法に関する。本発明の方法は、遺伝子導入ベクターなどに対する宿主防御作用を抑制するために利用できる。
インフルエンザウイルス及びセンダイウイルスなどのRNAウイルス等の感染によって、細胞は多くの因子の発現を誘導し、抗ウイルス活性を示すようになる(Sen G.C. Annu. Rev. Microbiol. 55, 255-281 (2001)、Bose S. & Banerjee A.K. J. Interferon Cytokine Res. 23, 401-412 (2003))。これらの因子はウイルス感染により直接発現誘導されるものもあれば、I型インターフェロン(IFN-alpha 及びIFN-beta)などにより間接的に発現誘導されるものもある。ウイルス感染細胞で発現したインターフェロン(IFN)は、分泌され、オートクライン (autocrine) 或いはパラクライン (paracrine) にIFN特異的受容体(type I IFN receptor)に結合し、細胞内においてはJak-Statシグナル伝達カスケードを活性化し、抗ウイルス活性を示す蛋白を含むIFN応答性蛋白の発現を誘導する。Type I IFN receptorによる細胞内シグナル伝達については詳細に調べられており、Jak1及びTyk2の細胞内チロシンキナーゼの活性化により、Stat1及びStat2の転写因子がリン酸化され、二量体化後核移行し、DNA結合蛋白であるinterferon-stimulated gene factor 3(ISGF3)とISGF3 complexを形成し転写活性を誘導する(Darnell J.E. Science 277, 1630-1635 (1997))。
これらの宿主側の抗ウイルス活性に対して、ウイルス側も防御機構を有している場合がある(Gotoh B. et al., Rev. Med. Virol. 12, 337-357 (2002))。例えば、hepatitis C virusのcore蛋白(Bode J.G. et al., FASEB J. 17, 488-490 (2003)、Hosui A. et al., J. Biol. Chem. 278, 28562-28571 (2003))、bovine respiratory syncytial virusのNS1及びNS2蛋白(Bossert B. et al., J Virol. 77, 8661-8668 (2003))、及びSendai virusのC蛋白(Kato A. et al., J. Virol. 75, 3802-3810 (2001)、Takeuchi K. et al., Genes Cells 6, 545-557 (2001)、Garcin D. et al., Virology 295, 256-265 (2002))などが報告されている。
Sen G.C. Annu. Rev. Microbiol. 55, 255-281 (2001) Bose S. & Banerjee A.K. J. Interferon Cytokine Res. 23, 401-412 (2003) Darnell J.E. Science 277, 1630-1635 (1997) Gotoh B. et al., Rev. Med. Virol. 12, 337-357 (2002) Bode J.G. et al., FASEB J. 17, 488-490 (2003) Hosui A. et al., J. Biol. Chem. 278, 28562-28571 (2003) Bossert B. et al., J Virol. 77, 8661-8668 (2003) Kato A. et al., J. Virol. 75, 3802-3810 (2001) Takeuchi K. et al., Genes Cells 6, 545-557 (2001) Garcin D. et al., Virology 295, 256-265 (2002)
Sen G.C. Annu. Rev. Microbiol. 55, 255-281 (2001) Bose S. & Banerjee A.K. J. Interferon Cytokine Res. 23, 401-412 (2003) Darnell J.E. Science 277, 1630-1635 (1997) Gotoh B. et al., Rev. Med. Virol. 12, 337-357 (2002) Bode J.G. et al., FASEB J. 17, 488-490 (2003) Hosui A. et al., J. Biol. Chem. 278, 28562-28571 (2003) Bossert B. et al., J Virol. 77, 8661-8668 (2003) Kato A. et al., J. Virol. 75, 3802-3810 (2001) Takeuchi K. et al., Genes Cells 6, 545-557 (2001) Garcin D. et al., Virology 295, 256-265 (2002)
本発明は、オルトミクソウイルス科ウイルスのNP蛋白質によりインターフェロン応答を抑制する方法を提供する。また本発明は、インターフェロン応答性が低下した遺伝子導入用ベクターを提供する。
本発明者らは、オルトミクソウイルス科ウイルスに抗インターフェロン(IFN)活性があることを見出し、その分子機構を解析することを通して、この活性がオルトミクソウイルス科ウイルスのNP蛋白に由来することを突き止めた。そしてオルトミクソウイルス科ウイルスのNP蛋白質が、IFNの細胞内シグナル伝達を直接抑制する作用を示すことを明らかにした。インフルエンザウイルスA/PR/8/34株由来のNP蛋白を単独で発現することによって、インターフェロンによる細胞内シグナル伝達のJAK-STAT系Stat1のリン酸化は有意に阻害された。インターフェロン及びその下流のJAK-STAT系は自然免疫のトリガーとなる重要な経路の一つであり、NP蛋白を利用してインターフェロン活性を抑制できれば、例えば遺伝子治療用ベクターの免疫原性抑制が可能になり、搭載遺伝子の発現持続或いは繰返し投与後の発現が可能になると期待される。この場合、ウイルスの防御機構は単一ではないので、ウイルスが有する防御機構を複数組み合わせることによって、より効果を上げることができる。
すなわち本発明は、オルトミクソウイルス科ウイルスのNP蛋白質によりインターフェロン応答を抑制する方法、およびインターフェロン応答性が低下した遺伝子導入用ベクター等に関し、より具体的には、請求項の各項に記載の発明に関する。なお同一の請求項を引用する請求項に記載の発明の1つまたは複数の組み合わせからなる発明は、それらの請求項に記載の発現に既に意図されている。すなわち本発明は、
(1)オルトミクソウイルス科ウイルスのNP蛋白質を細胞に導入または発現させる工程を含む、インターフェロン応答を抑制する方法、
(2)オルトミクソウイルス科ウイルスがインフルエンザウイルスである、(1)に記載の方法、
(3)NP蛋白質が配列番号:2に記載のアミノ酸配列を含む、(1)または(2)に記載の方法、
(4)宿主防御を抑制する他の蛋白質をさらに細胞に導入または発現させる工程を含む、(1)から(3)のいずれかに記載の方法、
(5)他の蛋白質が、ヘパティティスCウイルスのコア蛋白質、ウシおよびヒトレスピラトリーシンシチアルウイルスのNS1蛋白質およびNS2蛋白質、レスピロウイルス属ウイルスのC蛋白質、ルブラウイルス属ウイルスおよび麻疹ウイルスのV蛋白質からなる群より選択される1つまたは任意の組み合わせを含む、(4)に記載の方法、
(6)ベクターに対する宿主防御作用を抑制するために用いる、(1)から(5)のいずれかに記載の方法、
(7)オルトミクソウイルス科ウイルスのNP蛋白質をコードする遺伝子を外来的に保持する、抗インターフェロン応答性ベクター、
(8)ベクターがウイルスベクターである、(7)に記載のベクター、
(9)さらに他の外来遺伝子を保持する、(7)または(8)に記載のベクター、
(10)オルトミクソウイルス科ウイルスがインフルエンザウイルスである、(7)から(9)のいずれかに記載のベクター、
(11)NP蛋白質が配列番号:2に記載のアミノ酸配列を含む、(7)から(10)のいずれかに記載のベクター、
(12)宿主防御を抑制する他の蛋白質をコードする遺伝子をさらに保持する、(7)から(11)のいずれかに記載のベクター、
(13)他の蛋白質が、ヘパティティスCウイルスのコア蛋白質、ウシおよびヒトレスピラトリーシンシチアルウイルスのNS1蛋白質およびNS2蛋白質、レスピロウイルス属ウイルスのC蛋白質、ルブラウイルス属ウイルスおよび麻疹ウイルスのV蛋白質からなる群より選択される1つまたは任意の組み合わせを含む、(12)に記載のベクター、に関する。
(1)オルトミクソウイルス科ウイルスのNP蛋白質を細胞に導入または発現させる工程を含む、インターフェロン応答を抑制する方法、
(2)オルトミクソウイルス科ウイルスがインフルエンザウイルスである、(1)に記載の方法、
(3)NP蛋白質が配列番号:2に記載のアミノ酸配列を含む、(1)または(2)に記載の方法、
(4)宿主防御を抑制する他の蛋白質をさらに細胞に導入または発現させる工程を含む、(1)から(3)のいずれかに記載の方法、
(5)他の蛋白質が、ヘパティティスCウイルスのコア蛋白質、ウシおよびヒトレスピラトリーシンシチアルウイルスのNS1蛋白質およびNS2蛋白質、レスピロウイルス属ウイルスのC蛋白質、ルブラウイルス属ウイルスおよび麻疹ウイルスのV蛋白質からなる群より選択される1つまたは任意の組み合わせを含む、(4)に記載の方法、
(6)ベクターに対する宿主防御作用を抑制するために用いる、(1)から(5)のいずれかに記載の方法、
(7)オルトミクソウイルス科ウイルスのNP蛋白質をコードする遺伝子を外来的に保持する、抗インターフェロン応答性ベクター、
(8)ベクターがウイルスベクターである、(7)に記載のベクター、
(9)さらに他の外来遺伝子を保持する、(7)または(8)に記載のベクター、
(10)オルトミクソウイルス科ウイルスがインフルエンザウイルスである、(7)から(9)のいずれかに記載のベクター、
(11)NP蛋白質が配列番号:2に記載のアミノ酸配列を含む、(7)から(10)のいずれかに記載のベクター、
(12)宿主防御を抑制する他の蛋白質をコードする遺伝子をさらに保持する、(7)から(11)のいずれかに記載のベクター、
(13)他の蛋白質が、ヘパティティスCウイルスのコア蛋白質、ウシおよびヒトレスピラトリーシンシチアルウイルスのNS1蛋白質およびNS2蛋白質、レスピロウイルス属ウイルスのC蛋白質、ルブラウイルス属ウイルスおよび麻疹ウイルスのV蛋白質からなる群より選択される1つまたは任意の組み合わせを含む、(12)に記載のベクター、に関する。
NP蛋白質を用いれば、IFN応答を抑制することにより宿主防御反応および免疫応答を減弱させることが可能である。例えば、ウイルスを遺伝子治療用ベクターとして利用する場合、ベクター搭載治療用遺伝子 (Gene of Interest:GOI) の発現を持続させる或いはベクター自身の免疫原性を減弱するために、NP蛋白質を発現させることによって、宿主の抗ウイルス活性を減弱させることができる。これにより、ベクターからの搭載遺伝子の発現の持続性を高めることが可能となる。このようなベクターは、インビボにおける遺伝子治療用ベクターとして有用である。
本発明は、オルトミクソウイルス科ウイルスのNP蛋白質を細胞に導入または発現させる工程を含む、インターフェロン応答を抑制する方法に関する。本発明者らは、オルトミクソウイルスは抗インターフェロン活性を有しており、その作用はNP蛋白質により発揮されることを突き止めた。NP蛋白質を単独で発現させるだけでも、インターフェロンの細胞内シグナル伝達は顕著に抑制された。NP蛋白質を細胞に導入または発現させることにより、インターフェロンによる作用を阻害することが可能である。
オルトミクソウイルス科(Orthomyxoviridae)ウイルスには、インフルエンザ A ウイルス属(Genus:Infleuenzavirus A)、インフルエンザ B ウイルス属(Genus:Infleuenzavirus B)、インフルエンザ C ウイルス属(Genus:Infleuenzavirus C)、およびトゴトウイルス属(Genus:Thogotovirus)が含まれる。インフルエンザ A ウイルス属としては、A型インフルエンザウイルス (Infleuenza A virus (FLUAV))、インフルエンザ B ウイルス属としては、B型インフルエンザウイルス (Infleuenza B virus (FLUBV))、インフルエンザ C ウイルス属としては、C型インフルエンザウイルス (Infleuenza C virus (FLUCV))、トゴトウイルス属としては、Thogoto virus(THOV)などが挙げられる。
NP蛋白質 (Neucleoprotein) は、オルトミクソウイルス科ウイルスに保存された蛋白質の1つである。このNP蛋白質を哺乳動物細胞に導入または発現させることにより、インターフェロンの作用を抑制することができる。本発明においては、所望のオルトミクソウイルス科ウイルスNP蛋白質を用いてインターフェロン作用を抑制してよいが、好ましくはインフルエンザウイルス(インフルエンザ A、B、または Cウイルス属ウイルス)のNP蛋白質が用いられる。より好ましくは、インフルエンザAウイルス属のNP蛋白質が用いられる。オルトミクソウイルス科ウイルスのNP蛋白質は、自然界から単離された任意の株に由来するものであってよく、あるいは変異株、ラボ継代株、および人為的に構築された株などに由来してもよい。また、インターフェロンシグナルを阻害する活性を保持する限り、天然または人為的に変異したNP蛋白質も本発明におけるNP蛋白質に含まれる。変異の導入は、公知の変異導入方法に従って実施することができる。例えば目的の変異を入れたオリゴヌクレオチドを用いて変異蛋白質をコードする核酸を構築することができる。
好適なNP蛋白質の一例としては、配列番号:2に記載のアミノ酸配列を含む蛋白質が挙げられる。この蛋白質はインフルエンザA/PR/8/34株のNP蛋白質であり、非常に強い抗インターフェロン活性を示す。また、Genbank accession number (protein ID) CAA91084、P31609、CAA91086、CAA91085、NP_040982、P03466、P15682 などに記載されたアミノ酸配列を含む蛋白質であってもよい。また好適なNP蛋白質としては、上記の任意のNP蛋白質に記載のアミノ酸配列の1または複数のアミノ酸を置換、欠失、および挿入の任意の組み合わせにより改変したアミノ酸配列を含む蛋白質が挙げられる。改変されるアミノ酸数に特に制限はないが、例えば100以内、好ましくは50以内、より好ましくは30以内、より好ましくは20以内、より好ましくは10以内(5以内、3以内、2以内、または1)である。アミノ酸を置換する場合は、側鎖の性質が似たアミノ酸に置換することにより蛋白質の活性を維持することが期待できる。このような置換は、本発明において保存的置換という。保存的置換は、例えば塩基性アミノ酸(例えばリジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性アミノ酸 (例えばアスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性アミノ酸 (例えばグリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性アミノ酸 (例えばアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β分岐アミノ酸 (例えばスレオニン、バリン、イソロイシン)、および芳香族アミノ酸 (例えばチロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)などの各グループ内のアミノ酸間の置換などが挙げられる。より好ましくは、BLOSUM62置換マトリックス(S. Henikoff and J.G. Henikoff, 1992, Proc. Acad. Natl. Sci. USA 89: 10915-10919)において、正の値の関係にあるアミノ酸間の置換が挙げられる。例えば、配列番号:2に記載のアミノ酸配列を置換、欠失、および挿入の任意の組み合わせにより改変するときに、保存的置換以外の改変(欠失、挿入、および非保存的置換)を行うアミノ酸数を、例えば50以内、より好ましくは30以内、より好ましくは20以内、より好ましくは10以内にする。より好ましくは、6以内、5以内、4以内、3以内、2以内、または1以内にする。
また、好適なNP蛋白質としては、上記のNP蛋白質(配列番号:2など)に記載のアミノ酸配列と高いホモロジーを示すアミノ酸配列を含む蛋白質が挙げられる。高いホモロジーとしては、例えば70%以上、より好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは93%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは96%以上の同一性(identity)を有するアミノ酸配列が挙げられる。アミノ酸配列の同一性は、例えばBLASTPプログラム(Altschul, S. F. et al., 1990, J. Mol. Biol. 215: 403-410)を用いて決定することができる。例えばNCBI(National Center for Biothchnology Information)のBLASTのウェブページにおいてLow complexityを含むフィルターは全てOFFにして、デフォルトのパラメータを用いて検索を行う(Altschul, S.F. et al. (1993) Nature Genet. 3:266-272; Madden, T.L. et al. (1996) Meth. Enzymol. 266:131-141; Altschul, S.F. et al. (1997) Nucleic Acids Res. 25:3389-3402; Zhang, J. & Madden, T.L. (1997) Genome Res. 7:649-656)。例えば2つの配列の比較を行うblast2sequencesプログラム(Tatiana A et al. (1999) FEMS Microbiol Lett. 174:247-250)により、2配列のアライメントを作成し、配列の同一性を決定することができる。ギャップはミスマッチと同様に扱い、例えば配列番号:2のアミノ酸配列全体に対する同一性の値を計算する。この場合、配列番号:2の範囲内のアライメントのみを考慮し、その外側にあるギャップは計算から除外する。
また、アライメントにおいて同一のアミノ酸および側鎖の性質が似たアミノ酸の合計の割合を計算したホモロジーにおいては、好適なNP蛋白質としては、上記のNP蛋白質(配列番号:2など)に記載のアミノ酸配列と例えば85.0%以上、より好ましくは90.0%以上、より好ましくは95.0%以上、より好ましくは97.0%以上、より好ましくは98.0%以上、より好ましくは98.5%以上、より好ましくは99.0%以上のホモロジーを有するアミノ酸配列を含む蛋白質が挙げられる。このような割合の値は、例えば上記のBLASTPにおける「Positives」の数値として決定することができる。
また、好適なNP蛋白質としては、上記のNP蛋白質(配列番号:2など)をコードする核酸のコード領域(例えば配列番号:1またはその相補配列)の一部または全部とストリンジェントな条件でハイブリダイズする核酸がコードする蛋白質であって、インターフェロンのシグナル伝達を阻害する活性を保持している蛋白質が挙げられる。ハイブリダイゼーションにおいては、例えば配列番号:1またはその相補配列を含む核酸、またはハイブリダイズの対象とする核酸のどちらかからプローブを調製し、それが他方の核酸にハイブリダイズするかを検出することにより同定することができる。ストリンジェントなハイブリダイゼーションの条件は、例えば 5xSSC、7%(W/V) SDS、100 micro-g/ml 変性サケ精子DNA、5xデンハルト液(1xデンハルト溶液は0.2%ポリビニールピロリドン、0.2%牛血清アルブミン、および0.2%フィコールを含む)を含む溶液中、60℃、好ましくは65℃、より好ましくは68℃でハイブリダイゼーションを行い、その後ハイブリダイゼーションと同じ温度で2xSSC中、好ましくは1xSSC中、より好ましくは0.5xSSC中、より好ましくは0.1xSSC中で、振蘯しながら2時間洗浄する条件である。
上記に記載したNP蛋白質を細胞に導入、またはNP蛋白質をコードする核酸(DNAまたはRNAであってよい)を細胞に導入して発現させることにより、IFN応答を抑制することができる。IFN応答とは、IFNにより誘導される生理反応を言い、IFNが誘導するシグナル伝達が含まれる。例えばI型IFNはI型IFN受容体に結合し、細胞内においてJak-Statシグナル伝達経路を活性化し、一連のIFN応答性蛋白の発現を誘導する。I型IFN受容体による細胞内シグナル伝達については詳細に調べられており、Jak1及びTyk2の細胞内チロシンキナーゼの活性化により、Stat1及びStat2の転写因子がリン酸化され、二量体化後核移行し、DNA結合蛋白であるinterferon-stimulated gene factor 3(ISGF3)とISGF3 complexを形成し転写活性を誘導する(Darnell J.E. Science 277, 1630-1635 (1997))。本発明においてIFN応答には、このI型IFN受容体によるシグナル伝達が含まれる。IFN応答の抑制は、例えばインターフェロン処理により誘導されるJAK-STAT系の分子であるStat1のリン酸化が抑制されることを検出することにより同定することができる。例えば、抗リン酸化Stat1抗体(Biosource international Inc., California, U.S.A.)を利用したウエスタンブロッティングにより、細胞のリン酸化Stat1レベルを知ることができる。本発明は、オルトミクソウイルス科ウイルスのNP蛋白質または該蛋白質をコードするポリヌクレオチドの、IFN応答を抑制するための使用に関する。また本発明は、IFN応答を抑制する薬剤の製造におけるオルトミクソウイルス科ウイルスのNP蛋白質または該蛋白質をコードするポリヌクレオチドの使用に関する。
NP蛋白質およびNP蛋白質をコードする核酸の導入は、例えばリポソームまたは所望のトランスフェクション試薬等を用いて実施することができる。トランスフェクション試薬としては、具体的には、例えばDOSPER Liposomal Transfection Reagent(Roche, Basel, Switzerland; Cat No. 1811169)を用いることができる。あるいは、マイクロインジェクション、パーティクルガン等により物理的に導入することも可能である。核酸は、naked DNAとして、または所望の発現ベクターに組み込んで使用することができる。発現ベクターとしては特に制限はなく、プラスミドベクターおよびウイルスベクターなどが例示できる。プロモーターとしては、例えばCAGプロモーター(ニワトリβアクチンプロモーターとCMVエンハンサーとのキメラプロモーター) (Niwa, H. et al. (1991) Gene. 108: 193-199) などのプロモーターを利用することができる。ウイルスベクターとしては、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、マイナス鎖RNAウイルスベクター(オルトミクソウイルス科ウイルスベクターでも、それ以外のマイナス鎖RNAウイルスベクターであってもよい)、単純ヘルペスウイルスベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、セムリキ森林ウイルスベクター、シンドビスウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、フォウルポックスウイルスベクター、その他の所望のウイルスベクターが例示できる。
これらの組み換えウイルスベクターは当業者に周知の方法に従って調製することができる。例えば、遺伝子治療などに最も普通に利用されるアデノウイルスベクターの作製は、斎藤らの方法および他(Miyakeら、1996、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、93巻、1320-24頁;Kanegaeら、1996、Acta Paediatr.Jpn、38巻、182-188頁;鐘ヶ江ら、バイオマニュアルシリーズ4-遺伝子導入と発現・解析法、1994、43-58頁、羊土社;鐘ヶ江ら、1994、細胞工学、13巻、8号、757-763頁)に従って製造することができる。また、例えばレトロウイルスベクター(脇本ら、1995、蛋白質核酸酵素、40巻、2508-2513頁)、およびアデノ随伴ウイルスベクター(玉寄ら、1995、蛋白質核酸酵素、40巻、2532-2538頁)なども、公知の方法により調製することができる。哺乳動物に遺伝子導入可能なその他のウイルスベクターを製造するための詳細は、組換えワクシニアウイルスを製造する方法としては、特表平6-502069、特公平6-95937、特公平6-71429が知られている。組換えパピローマウイルスを製造する方法としては特公平6-34727、特表平6-505626が知られている。組換えアデノ随伴ウイルスを製造する方法としては、特開平5-308975が知られている。組換えアデノウイルスを製造する方法としては、特表平6-508039が知られている。マイナス鎖RNAウイルスであれば、国際公開番号 WO97/16539、WO97/16538、WO00/70055、WO00/70070などに記載の方法が知られている。
特に、IFN応答を介した宿主防御反応を惹起し得るウイルスベクターにNP蛋白質をコードする核酸を組み込むことにより、IFNの作用を抑制し、ベクターに対する防御反応および免疫応答を減弱させることが可能である。ウイルスベクターは標的細胞への高い遺伝子導入能力を有するが、宿主防御反応を惹起することがベクターの持続発現および繰り返し投与の障害となっている。本発明に従ってNP遺伝子をウイルスベクターに組み込むことによって、この問題を克服することが可能となる。すなわち本発明は、NP蛋白質をコードする遺伝子を外来的に保持する抗インターフェロン応答性ベクターを提供する。また本発明は、IFN応答が抑制されたベクターの製造における、オルトミクソウイルス科ウイルスのNP蛋白質をコードするポリヌクレオチドの使用に関する。このベクターは、NP蛋白質をコードする遺伝子を保持しない対照ベクターに比べ、導入細胞におけるインターフェロン応答が低下している。本発明の抗インターフェロン応答性ベクターは、NP蛋白質をコードする遺伝子を内因的に保持しているのではなく、ベクターに組み込まれることにより該遺伝子を保持する。このようなベクターとしては、NP遺伝子を搭載するすべての非オルトミクソウイルス科のウイルスベクター、およびオルトミクソウイルス科ウイルスベクターであって、NP遺伝子が新たに組み込まれたり、または既存のNP遺伝子が他のNP遺伝子に置換されたベクターが含まれる(実施例参照)。NP遺伝子を外来的に保持する本発明のベクターは、インビボにおける遺伝子治療用ベクターとして有用である。
また本発明は、NP蛋白質と、宿主防御を抑制するNP以外の蛋白質とを組み合わせて利用する方法に関する。また本発明は、NP遺伝子に加え、他の宿主防御抑制蛋白質をさらにコードするベクターを提供する。例えば、ウイルスに対する宿主防御機構に対抗するためにウイルスが有する防御機構をNP蛋白質と組み合わせることによって、ベクターの持続発現および繰り返し投与における効果をさらに上げることができる。宿主防御を抑制する蛋白質とは、ウイルスまたは感染性微生物が有する蛋白質であって、宿主側の防御機構を阻害する活性を有する蛋白質を言い、前述のように複数の蛋白質が知られている(Gotoh B. et al., Rev. Med. Virol. 12, 337-357 (2002))。
具体的には、宿主防御を抑制する蛋白質としては、例えば、hepatitis C virusのcore蛋白(Bode J.G. et al., FASEB J. 17, 488-490 (2003)、Hosui A. et al., J. Biol. Chem. 278, 28562-28571 (2003))、ウシおよびヒト respiratory syncytial virusのNS1 及びNS2蛋白(Bossert B. et al., J Virol. 77, 8661-8668 (2003))、及びパラミクソウイルス科レスピロウイルス属ウイルス (Sendai virus およびヒトparainfluenza virus (hPIV) 3を含む) のC蛋白(Kato A. et al., J. Virol. 75, 3802-3810 (2001)、Takeuchi K. et al., Genes Cells 6, 545-557 (2001)、Garcin D. et al., Virology 295, 256-265 (2002)、Gotoh B. et al., Microbiol Immunol. 2001;45(12):787-800)などが挙げられる。また、ルブラウイルス属 (simian virus (SV)5, SV41, mumps virus および hPIV2を含む) のV蛋白質は、IFN応答を抑制することにより宿主の抗ウイルス活性を抑制することが知られている(Gotoh B. et al., Microbiol Immunol. 2001;45(12):787-800)。さらに、麻疹ウイルスのV蛋白質を用いてもよい(Takeuchi K. et al., FEBS Lett. 545, 177-182 (2003)、Palosaari H. et al., J Virol. 77, 7635-7644 (2003))。その他、抗ウイルス活性を抑制する作用を有する所望の蛋白質を、NP蛋白質と組み合わせて用いることができる。
例えばセンダイウイルスベクターにオルトミクソウイルス科ウイルスのNP遺伝子を組み込めば、センダイウイルスが内因的に有するC遺伝子とNP遺伝子の効果により、宿主の抗ウイルス活性を効果的に抑制することが期待できる。このように、既存のウイルスベクターが宿主防御を抑制する蛋白質を内因的にコードする場合に、そこにさらにNP遺伝子を組み込むことによって、そのベクターの宿主における発現持続性および繰り返し投与における発現効率を向上させることができる。また、宿主防御を抑制する別の蛋白質をコードする遺伝子をさらにベクターに組み込み、より優れたベクターを構築することも可能である。
ベクターは実質的に純粋になるよう精製することができる。精製方法はフィルトレーション(濾過)、遠心分離、吸着、およびカラム精製等を含む公知の精製・分離方法またはその任意の組み合わせにより行うことができる。「実質的に純粋」とは、ベクターを含む溶液中でベクターの成分が主要な割合を占めることを言う。例えば実質的に純粋なウイルスベクター組成物は、溶液中に含まれる全蛋白質(但しキャリアーや安定剤として加えた蛋白質は除く)のうち、ウイルスベクターの成分として含まれる蛋白質の割合が10%以上、好ましくは20% (w/w) 以上、より好ましくは50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上を占めることにより確認することができる。例えばパラミクソウィルスベクターであれば、具体的な精製方法としては、例えばセルロース硫酸エステルまたは架橋ポリサッカライド硫酸エステルを用いる方法(特公昭62-30752号公報、特公昭62-33879号公報、および特公昭62-30753号公報)、およびフコース硫酸含有多糖および/またはその分解物に吸着させる方法(WO97/32010)等を例示することができるが、これらに制限されない。
本発明のベクターは、必要に応じて薬学的に許容される担体または媒体と適宜組み合わせて組成物とすることができる。「薬学的に許容される担体または媒体」とは、ベクターと共に投与することが可能であり、ベクターによる遺伝子導入を有意に阻害しない材料である。このような担体または媒体としては、例えば滅菌水、生理食塩水、培養液、血清、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)などが挙げられ、これらとベクターを適宜組み合わせて製剤化することが考えられる。また本発明の組成物は、脱イオン水、デキストロース水溶液等の担体または媒体を含んでいてもよい。また、リポソームの膜安定化剤(例えばコレステロール等のステロール類)を含んでいてもよい。また、抗酸化剤(例えばトコフェロールまたはビタミンEなど)を含んでいてもよい。さらに、その他にも、植物油、懸濁剤、界面活性剤、安定剤、殺生物剤等が含有されていてもよい。また保存剤やその他の添加剤を添加することができる。本発明の組成物は、水溶液、カプセル、懸濁液、シロップなどの形態であり得る。また本発明の組成物は溶液、凍結乾燥物、またはエアロゾルの形態の組成物であってよい。凍結乾燥物の場合は安定化剤としてソルビトール、シュークロース、アミノ酸及び各種蛋白質等を含んでいてもよい。本組成物は試薬として、および医薬として有用である。
本発明のベクターは、所望の遺伝子を細胞、組織、臓器、および生体に投与するためのビークル (担体) として利用することができる。投与はインビトロ、エクスビボ、またはインビボで行うことができる。特に、疾患治療遺伝子をさらに組み込んだベクターは、エクスビボまたはインビボでの遺伝子治療のための医薬として有用である。患者への投与は、一般的には、例えば、動脈内注射、静脈内注射、腹腔内注射、皮下注射、経腸投与、経口投与、鼻腔内投与、エクスビボ投与など当業者に公知の方法により行いうる。投与対象としては特に制限はないが、例えば、ニワトリ、ウズラ、マウス、ラット、イヌ、ブタ、ネコ、ウシ、ウサギ、ヒツジ、ヤギ、サル、およびヒトなどを含む鳥類、哺乳動物、およびその他の脊椎動物が挙げられる。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に制限されるものではない。なお、本明細書中に引用された文献は、すべて本明細書の一部として組み込まれる。
宿主因子であるMxAはインフルエンザウイルスおよび類縁ウイルスに対して抗ウイルス効果があることが知られている(Nagata K. & Mibayashi M., Nippon Rinsho 55, 2654-2659 (1997), Haller O. et al., Rev. Sci. Tech. 17, 220-230 (1980))。詳しく解析したところ、その効果にはインフルエンザウイルスの株による違いがあり、A/PR/8/34株に対しては弱く、A/duck/Pennsylvania株に対しては非常に強いことが判明した。そこで、構造遺伝子の個々の遺伝子を株間で入れ替えたキメラウイルスを作製し、その原因を解析したところ、A/PR/8/34株のNP蛋白のみをA/duck/Pennsylvania株のNP蛋白に入れ替えたキメラウイルスにおいても強い抗ウイルス効果が観察された。則ち、NP蛋白に株特異性の原因があることが明らかになった。キメラウイルスの再構成には、Kawaoka らの系(Neumann G. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 96, 9345-9350 (1999))を利用した。
宿主の抗ウイルス活性へのNP蛋白の関与を直接証明するために、A/PR/8/34株(配列番号:1)及びA/duck/Pennsylvania株のNP遺伝子を哺乳類発現ベクターのpCAGGS(Niwa H., Gene 108, 193-199 (1991))に導入し、それぞれpCAGGS-PR8-NP-Myc及びpCAGGS-dk/Pen-NP-Mycを構築した。マウス繊維芽細胞株であるSwiss 3T3細胞にそれぞれの遺伝子を導入し、遺伝子導入36時間後に、終濃度1 k unit/mlになるようにmouse interferon-alpha(HyCult biotechnology b.v., Uden, Netherlands)を添加し、interferonによる細胞内シグナルの下流にあるJAK-STAT系の活性化状況を調べた。遺伝子導入試薬には Lipofectamine2000(Invitrogen, California, U.S.A.)を利用した。
IFN処理により誘導されるJAK-STAT系の分子であるStat1のリン酸化について、NP蛋白質のインフルエンザウイルス株依存的に抑制が認められた。抗リン酸化Stat1抗体(Biosource international Inc., California, U.S.A.)を利用したウエスタンブロッティングの結果を図1に、バンドの濃さをImage Gauge(Fuji Photo Film Co. Ltd., Tokyo, Japan)ソフトウェアを用いて半定量的に数値化したものを図2に示した。その結果、NP蛋白質はStat1のリン酸化を阻害することが直接的に証明された。特に、インフルエンザウイルスのA/PR/8/34株のNP蛋白を強発現した場合に抗インターフェロン活性が非常に強く発現することが判明した。
本発明により、IFN応答を抑制することが可能となった。本発明の方法を用いれば、IFN応答の抑制により宿主防御反応および免疫応答を減弱させることが可能である。例えば、ウイルスを遺伝子治療用ベクターとして利用する場合、ベクター搭載治療用遺伝子の発現を持続させる或いはベクター自身の免疫原性を減弱するために、NP蛋白質を発現させることによって、宿主の抗ウイルス活性を減弱させることができる。このようなベクターは、インビボにおける遺伝子治療用ベクターとして有用である。
Claims (13)
- オルトミクソウイルス科ウイルスのNP蛋白質を細胞に導入または発現させる工程を含む、インターフェロン応答を抑制する方法。
- オルトミクソウイルス科ウイルスがインフルエンザウイルスである、請求項1に記載の方法。
- NP蛋白質が配列番号:2に記載のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の方法。
- 宿主防御を抑制する他の蛋白質をさらに細胞に導入または発現させる工程を含む、請求項1に記載の方法。
- 他の蛋白質が、ヘパティティスCウイルスのコア蛋白質、ウシおよびヒトレスピラトリーシンシチアルウイルスのNS1蛋白質およびNS2蛋白質、レスピロウイルス属ウイルスのC蛋白質、ルブラウイルス属ウイルスおよび麻疹ウイルスのV蛋白質からなる群より選択される1つまたは任意の組み合わせを含む、請求項4に記載の方法。
- ベクターに対する宿主防御作用を抑制するために用いる、請求項1に記載の方法。
- オルトミクソウイルス科ウイルスのNP蛋白質をコードする遺伝子を外来的に保持する、抗インターフェロン応答性ベクター。
- ベクターがウイルスベクターである、請求項7に記載のベクター。
- さらに他の外来遺伝子を保持する、請求項7に記載のベクター。
- オルトミクソウイルス科ウイルスがインフルエンザウイルスである、請求項7に記載のベクター。
- NP蛋白質が配列番号:2に記載のアミノ酸配列を含む、請求項7に記載のベクター。
- 宿主防御を抑制する他の蛋白質をコードする遺伝子をさらに保持する、請求項7に記載のベクター。
- 他の蛋白質が、ヘパティティスCウイルスのコア蛋白質、ウシおよびヒトレスピラトリーシンシチアルウイルスのNS1蛋白質およびNS2蛋白質、レスピロウイルス属ウイルスのC蛋白質、ルブラウイルス属ウイルスおよび麻疹ウイルスのV蛋白質からなる群より選択される1つまたは任意の組み合わせを含む、請求項12に記載のベクター。
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