JPWO2005019451A1 - Pdk−1の活性阻害物質の発現用核酸構築物 - Google Patents
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Abstract
PDK−1によるリン酸化活性の制御手段、及び該活性の異常に起因する疾患の治療手段を提供すること。生体内において、該ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼ1の活性を阻害しうる活性阻害物質をコードする核酸を含有した。3−ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼ1の活性阻害物質の発現用核酸構築物;該発現用核酸構築物を保持した、哺乳動物細胞における3−ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼ1の活性阻害物質の発現用担体;該発現用核酸構築物又は該発現用担体を有効成分として含有した、3−ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼ1によるリン酸化活性の異常に起因する疾患の治療剤及び治療方法;並びに該疾患の治療用医薬組成物の製造のための該発現用核酸構築物又は発現用担体。
Description
本発明は、リン酸化酵素である3−ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼPDK−1の活性阻害物質に関する。さらに詳しくは、本発明は、生体内において、前記PDK−1によるタンパク質リン酸化を抑制する活性阻害物質を発現させうる発現用核酸構築物、該PDK−1の活性阻害物質の発現用担体、PDK−1によるリン酸化活性の異常に起因する疾患の治療剤、該疾患の治療方法等に関する。
癌の治療には、例えば、抗癌剤等を用いて、癌細胞そのものを殺すことなどが試みられている。
前記抗癌剤によれば、種々の細胞においてアポトーシスが引き起こされることが知られている〔グンジ(Gunji,H.)ら著、キャンサー リサーチ(Cancer Res.),第51巻,741−743頁,1991;カウフマン(Kaufmann,S.H.)著,キャンサー リサーチ(Cancer Res.),第49巻,5870−5878頁,1989〕。しかしながら、例えば、スタウロスポリン等のタンパク質リン酸化酵素阻害剤は、標的となる癌細胞以外にも非特異的にアポトーシスを引き起こす場合があり、抗癌剤としての使用は困難である場合があるという欠点がある。
前記抗癌剤によれば、種々の細胞においてアポトーシスが引き起こされることが知られている〔グンジ(Gunji,H.)ら著、キャンサー リサーチ(Cancer Res.),第51巻,741−743頁,1991;カウフマン(Kaufmann,S.H.)著,キャンサー リサーチ(Cancer Res.),第49巻,5870−5878頁,1989〕。しかしながら、例えば、スタウロスポリン等のタンパク質リン酸化酵素阻害剤は、標的となる癌細胞以外にも非特異的にアポトーシスを引き起こす場合があり、抗癌剤としての使用は困難である場合があるという欠点がある。
本発明の1つの側面は、3−ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼのリン酸化活性を阻害しうる活性阻害物質を発現させること、生体内で該活性阻害物質を発現させること、3−ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼによるリン酸化活性の異常に起因する疾患の治療を必要とする個体内で、該活性阻害物質を発現させること、該活性阻害物質を大量かつ簡便に製造すること等の少なくとも1つを可能にする、3−ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼの活性阻害物質の発現用核酸構築物を提供することにある。また、本発明の他の側面は、前記活性阻害物質を安定して供給すること、該活性阻害物質を生体内で高い効率で発現させること、該活性阻害物質を生体内で高い効率で発現させること、該活性阻害物質を所望の細胞等に特異的に発現させること等の少なくとも1つを可能にする、3−ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼの活性阻害物質の発現用担体を提供することにある。さらに、本発明の他の側面は、3−ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼの活性の異常に起因する疾患、具体的には、癌等に罹患した個体において、所望の細胞、特に、癌細胞において、3−ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼの活性阻害物質を発現させ、該3−ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼのリン酸化活性を阻害すること、所望の細胞、特に、癌細胞にアポトーシスを引き起こさせること等の少なくとも1つを可能にする治療剤を提供することにある。また、本発明のさらに他の側面は、3−ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼの活性の異常に起因する疾患を治療することを可能にする、治療方法を提供することにある。さらに、本発明のさらに別の側面は、3−ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼの活性の異常に起因する疾患の治療用医薬組成物の製造のための、3−ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼの活性阻害物質の発現用核酸構築物又は発現用担体の使用に関する。
本発明の要旨は、
〔1〕 (A)配列番号:1又は2に示されるアミノ酸配列、
(B)配列番号:1又は2に示されるアミノ酸配列において、少なくとも1個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入又は付加を有するアミノ酸配列、及び
(C)配列番号:1又は2に示されるアミノ酸配列に対し、BLASTアルゴリズム(Cost to open gap 11,Cost to extend gap 1,expect value 10,wordsize 3)によりアラインメントされ、算出された配列同一性が、少なくとも26%であるアミノ酸配列、
からなる群より選ばれたアミノ酸配列と、
(a)配列番号:3に示されるアミノ酸配列、
(b)配列番号:3に示されるアミノ酸配列において、少なくとも1個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入又は付加を有するアミノ酸配列、及び
(c)配列番号:3に示されるアミノ酸配列に対し、BLASTアルゴリズム(Cost to open gap 11,Cost to extend gap 1,expect value 10,wordsize 3)によりアラインメントされ、算出された配列同一性が、少なくとも26%であるアミノ酸配列、
からなる群より選ばれたアミノ酸配列とを含有し、かつ生体内において、ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼ1の活性を阻害しうる活性阻害物質をコードする核酸を含有してなる、3−ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼ1の活性阻害物質の発現用核酸構築物、
〔2〕 活性阻害物質をコードする核酸が、
(i)配列番号:4に示されるアミノ酸配列、
(ii)配列番号:4に示されるアミノ酸配列において、少なくとも1個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入又は付加を有するアミノ酸配列、及び
(iii)配列番号:4に示されるアミノ酸配列に対し、BLASTアルゴリズム(Cost to open gap 11,Cost to extend gap 1,expect value 10,wordsize 3)によりアラインメントされ、算出された配列同一性が、少なくとも26%であるアミノ酸配列、
からなる群より選ばれたアミノ酸配列
をコードする核酸の下流に作動可能に連結されてなる、前記〔1〕記載の発現用核酸構築物、
〔3〕 活性阻害物質をコードする核酸が、テロメラーゼプロモーター支配下に発現する、前記〔1〕又は〔2〕記載の発現用核酸構築物、
〔4〕 前記〔1〕〜〔3〕いずれか1項記載の発現用核酸構築物を保持してなる、哺乳動物細胞における3−ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼ1の活性阻害物質の発現用担体、
〔5〕 前記〔1〕〜〔3〕いずれか1項に記載の発現用核酸構築物又は前記〔4〕記載の発現用担体を有効成分として含有してなる、3−ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼ1によるリン酸化活性の異常に起因する疾患の治療剤、
〔6〕 疾患が、癌又はウイルス感染症である、前記〔5〕記載の治療剤、
〔7〕 前記〔1〕〜〔3〕いずれか1項に記載の発現用核酸構築物の発現産物を有効成分として含有してなる、3−ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼ1によるリン酸化活性の異常に起因する疾患の治療剤、
〔8〕 発現産物が、
(I)配列番号:5又は配列番号:7に示されるアミノ酸配列、
(II)配列番号:5又は配列番号:7に示される配列において、少なくとも1個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入又は付加を有するアミノ酸配列、及び
(III)配列番号:5又は配列番号:7に示されるアミノ酸配列に対し、BLASTアルゴリズム(Cost to open gap 11,Cost to extend gap 1,expect value 10,wordsize 3)によりアラインメントされ、算出された配列同一性が、少なくとも26%であるアミノ酸配列、
からなる群より選ばれたアミノ酸配列を含有したポリペプチドである、前記〔7〕記載の治療剤、
〔9〕 前記〔1〕〜〔3〕いずれか1項に記載の発現用核酸構築物又は前記〔4〕記載の発現用担体を、3−ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼ1によるリン酸化活性の異常に起因する疾患に罹患した個体に、治療上有効量投与する、3−ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼ1によるリン酸化活性の異常に起因する疾患の治療方法、並びに
〔10〕 3−ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼ1によるリン酸化活性の異常に起因する疾患の治療用医薬組成物の製造のための、前記〔1〕〜〔3〕いずれか1項に記載の発現用核酸構築物又は前記〔4〕記載の発現用担体の使用、
に関する。
本発明の要旨は、
〔1〕 (A)配列番号:1又は2に示されるアミノ酸配列、
(B)配列番号:1又は2に示されるアミノ酸配列において、少なくとも1個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入又は付加を有するアミノ酸配列、及び
(C)配列番号:1又は2に示されるアミノ酸配列に対し、BLASTアルゴリズム(Cost to open gap 11,Cost to extend gap 1,expect value 10,wordsize 3)によりアラインメントされ、算出された配列同一性が、少なくとも26%であるアミノ酸配列、
からなる群より選ばれたアミノ酸配列と、
(a)配列番号:3に示されるアミノ酸配列、
(b)配列番号:3に示されるアミノ酸配列において、少なくとも1個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入又は付加を有するアミノ酸配列、及び
(c)配列番号:3に示されるアミノ酸配列に対し、BLASTアルゴリズム(Cost to open gap 11,Cost to extend gap 1,expect value 10,wordsize 3)によりアラインメントされ、算出された配列同一性が、少なくとも26%であるアミノ酸配列、
からなる群より選ばれたアミノ酸配列とを含有し、かつ生体内において、ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼ1の活性を阻害しうる活性阻害物質をコードする核酸を含有してなる、3−ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼ1の活性阻害物質の発現用核酸構築物、
〔2〕 活性阻害物質をコードする核酸が、
(i)配列番号:4に示されるアミノ酸配列、
(ii)配列番号:4に示されるアミノ酸配列において、少なくとも1個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入又は付加を有するアミノ酸配列、及び
(iii)配列番号:4に示されるアミノ酸配列に対し、BLASTアルゴリズム(Cost to open gap 11,Cost to extend gap 1,expect value 10,wordsize 3)によりアラインメントされ、算出された配列同一性が、少なくとも26%であるアミノ酸配列、
からなる群より選ばれたアミノ酸配列
をコードする核酸の下流に作動可能に連結されてなる、前記〔1〕記載の発現用核酸構築物、
〔3〕 活性阻害物質をコードする核酸が、テロメラーゼプロモーター支配下に発現する、前記〔1〕又は〔2〕記載の発現用核酸構築物、
〔4〕 前記〔1〕〜〔3〕いずれか1項記載の発現用核酸構築物を保持してなる、哺乳動物細胞における3−ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼ1の活性阻害物質の発現用担体、
〔5〕 前記〔1〕〜〔3〕いずれか1項に記載の発現用核酸構築物又は前記〔4〕記載の発現用担体を有効成分として含有してなる、3−ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼ1によるリン酸化活性の異常に起因する疾患の治療剤、
〔6〕 疾患が、癌又はウイルス感染症である、前記〔5〕記載の治療剤、
〔7〕 前記〔1〕〜〔3〕いずれか1項に記載の発現用核酸構築物の発現産物を有効成分として含有してなる、3−ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼ1によるリン酸化活性の異常に起因する疾患の治療剤、
〔8〕 発現産物が、
(I)配列番号:5又は配列番号:7に示されるアミノ酸配列、
(II)配列番号:5又は配列番号:7に示される配列において、少なくとも1個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入又は付加を有するアミノ酸配列、及び
(III)配列番号:5又は配列番号:7に示されるアミノ酸配列に対し、BLASTアルゴリズム(Cost to open gap 11,Cost to extend gap 1,expect value 10,wordsize 3)によりアラインメントされ、算出された配列同一性が、少なくとも26%であるアミノ酸配列、
からなる群より選ばれたアミノ酸配列を含有したポリペプチドである、前記〔7〕記載の治療剤、
〔9〕 前記〔1〕〜〔3〕いずれか1項に記載の発現用核酸構築物又は前記〔4〕記載の発現用担体を、3−ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼ1によるリン酸化活性の異常に起因する疾患に罹患した個体に、治療上有効量投与する、3−ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼ1によるリン酸化活性の異常に起因する疾患の治療方法、並びに
〔10〕 3−ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼ1によるリン酸化活性の異常に起因する疾患の治療用医薬組成物の製造のための、前記〔1〕〜〔3〕いずれか1項に記載の発現用核酸構築物又は前記〔4〕記載の発現用担体の使用、
に関する。
図1は、緑色蛍光タンパク質(GFP)を結合したPDK−1活性阻害物質の一次構造の概略図を示す。パネルAは、PKBAL−PIF−GFPを示し、パネルBは、Lynsig−PKBAL−PIF−GFPを示し、パネルCは、δAL−PIF−GFPを示し、パネルDは、Lynsig−δAL−PIF−GFPを示す。
図2は、細胞におけるδAL−PIF−GFP及びLynsig−δAL−PIF−GFPそれぞれの発現分布を示す。パネルAは、δAL−PIF−GFPの発現分布を示し、パネルBは、Lynsig−δAL−PIF−GFPの発現分布を示す。図中、スケールバーは、10μmを示す。
図3は、細胞におけるδAL−PIF−GFPによる細胞の形態変化を示す。パネルAは、GFPによる蛍光像を示し、パネルBは、核染色を行なった結果を示す。図中、スケールバーは、10μmを示す。
図4は、PKBのアクチベーションループのリン酸化におけるδALPIF−GFPの影響を調べた結果を示す図である。図中、パネルAは、抗GFP抗体を用いたウエスタンブロット解析、パネルBは、抗リン酸化PKB(Thr308)抗体を用いたウエスタンブロット解析を行なった結果を示す。また、各パネルにおいて、レーン1は、PKBα−GFPとGFPとを共発現させたCOS−7細胞から調製したタンパク質試料(20μg)を用いた場合、レーン2は、PKBα−GFPとδALPIF−GFPとを共発現させたCOS−7細胞から調製したタンパク質試料(20μg)を用いた場合を示す。
図2は、細胞におけるδAL−PIF−GFP及びLynsig−δAL−PIF−GFPそれぞれの発現分布を示す。パネルAは、δAL−PIF−GFPの発現分布を示し、パネルBは、Lynsig−δAL−PIF−GFPの発現分布を示す。図中、スケールバーは、10μmを示す。
図3は、細胞におけるδAL−PIF−GFPによる細胞の形態変化を示す。パネルAは、GFPによる蛍光像を示し、パネルBは、核染色を行なった結果を示す。図中、スケールバーは、10μmを示す。
図4は、PKBのアクチベーションループのリン酸化におけるδALPIF−GFPの影響を調べた結果を示す図である。図中、パネルAは、抗GFP抗体を用いたウエスタンブロット解析、パネルBは、抗リン酸化PKB(Thr308)抗体を用いたウエスタンブロット解析を行なった結果を示す。また、各パネルにおいて、レーン1は、PKBα−GFPとGFPとを共発現させたCOS−7細胞から調製したタンパク質試料(20μg)を用いた場合、レーン2は、PKBα−GFPとδALPIF−GFPとを共発現させたCOS−7細胞から調製したタンパク質試料(20μg)を用いた場合を示す。
本発明は、1つの側面では、
(A)配列番号:1又は2に示されるアミノ酸配列、
(B)配列番号:1又は2に示されるアミノ酸配列において、少なくとも1個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入又は付加を有するアミノ酸配列、及び
(C)配列番号:1又は2に示されるアミノ酸配列に対し、BLASTアルゴリズム(Cost to open gap 11,Cost to extend gap 1,expect value 10,wordsize 3)によりアラインメントされ、算出された配列同一性が、少なくとも26%であるアミノ酸配列、
からなる群より選ばれたアミノ酸配列と、
(a)配列番号:3に示されるアミノ酸配列、
(b)配列番号:3に示されるアミノ酸配列において、少なくとも1個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入又は付加を有するアミノ酸配列、及び
(c)配列番号:3に示されるアミノ酸配列に対し、BLASTアルゴリズム(Cost to open gap 11,Cost to extend gap 1,expect value 10,wordsize 3)によりアラインメントされ、算出された配列同一性が、少なくとも26%であるアミノ酸配列、
からなる群より選ばれたアミノ酸配列とを含有し、かつ生体内において、該PDK−1の活性を阻害しうる活性阻害物質をコードする核酸を含有する、3−ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼ1(以下、「PDK−1」という)の活性阻害物質の発現用核酸構築物である。
本発明の発現用核酸構築物は、前記(A)〜(C)のいずれかのアミノ酸配列と前記(a)〜(c)のいずれかのアミノ酸配列とをコードする核酸を含有しているため、PDK−1の活性阻害物質を発現させることができる。したがって、かかる発現用核酸構築物を、PDK−1の活性の異常に起因する疾患の患部に供給することにより、PDK−1の活性の異常を是正することができる。また、PDK−1によるリン酸化活性の異常に起因する疾患の治療を必要とする個体内、細胞内等において、PDK−1のリン酸化活性を阻害しうる活性阻害物質を発現させ、大量かつ簡便に製造することができるという優れた効果を発揮する。
なお、本明細書において、「PDK−1によるリン酸化活性の異常に起因する疾患」とは、PDK−1の活性の異常により引き起こされる疾患を意味し、例えば、癌、ウイルス感染症等が挙げられる。前記癌としては、具体的には、例えば、PDK−1により活性化されるPKBの活性の上昇に基づき、細胞増殖が促進している癌等が挙げられる。なお、本明細書において、「PDK−1によるリン酸化活性の異常」とは、健常個体、罹患していない個体、罹患していない状態にあった個体等と比較した場合、PDK−1によるリン酸化活性の平均値から逸脱した状態を意味する。
また、本明細書において、「PDK−1の活性阻害物質」は、PDK−1によりリン酸化される性質を示す物質をいう。
「PDK−1の活性の阻害」は、例えば、PDK−1によりリン酸化されたアミノ酸残基を特異的に認識する抗体を用いて、この抗体が認識するPDK−1の基質タンパク質の量が減少することを確認することにより評価されうる。
なお、PDK−1の活性阻害物質の親和性は、生体内で、PDK−1によるPKBの活性化を抑制し、細胞にアポトーシスを誘導する活性を十分に発揮させる程度であればよい。
PDK−1による前記活性阻害物質のリン酸化は、例えば、PDK−1によりリン酸化されたアミノ酸残基(主に、スレオニン残基等)を特異的に認識する抗体を用いて、前記活性阻害物質がこの抗体で認識されるかどうかをイムノブロット法等により測定されうる。
また、PDK−1と活性阻害物質との親和性は、結合活性によっても評価されうる。前記結合活性は、特に限定されないが、two−hybrid法、共免疫沈降法、表面プラズモン共鳴測定等により測定されうる。
具体的には、two−hybrid法の場合、
(1) 活性阻害物質をコードする核酸を、preyベクターに組込み、preyプラスミドを得るステップ;
(2) 得られたpreyプラスミドを酵母〔EGY48[p80p lacZ]〕に導入して、preyプラスミド保持クローンを得るステップ;
(3) PDK−1遺伝子を、baitベクターに組込み、baitプラスミドを得るステップ;
(4) 得られたbaitプラスミドを、前記ステップ(2)で得られたpreyプラスミド保持クローンに導入し、クローンを得るステップ;並びに
(5) 前記(4)で得られたクローンを、ロイシン欠失プレート上で3日間培養し、酵母細胞内における前記活性阻害物質との相互作用をロイシン欠失プレート上でのコロニー形成能により評価するステップ;
を行ない、ロイシン欠失プレート上でコロニーが形成されることを、PDK−1と前記活性阻害物質とが結合することの指標として評価されうる。
また、共免疫沈降法の場合、
(1) シグナル配列の下流にFLAG配列を有するPDK−1を発現するPDK−1−FLAG発現プラスミドを得るステップ;
(2) N末側にHA配列を有する前記活性阻害物質を発現しうるHA−活性阻害物質発現プラスミドを得るステップ;
(3) 細胞に、前記ステップ(1)で得られたPDK−1−FLAG発現プラスミドと前記ステップ(2)で得られたHA−活性阻害物質発現プラスミドとを、一過的にコトランスフェクトして、トランスフェクタントを得るステップ;
(4) 前記ステップ(3)で得られたコトランスファクタントを培養して、培養細胞を得るステップ;
(5) 前記ステップ(4)で得られた培養細胞から、細胞抽出液を得るステップ;
(6) 前記ステップ(5)で得られた細胞抽出液に抗FLAG抗体又は抗HA抗体を加えて共免疫沈降を行なうステップ;並びに
(7) 共免疫沈降を、ウエスタンブロット解析により検出するステップ;
を行ない、抗FLAG抗体及び抗HA抗体のいずれを用いた場合においても、複合体の沈降が検出されることを、PDK−1と前記活性阻害物質とが結合することの指標として評価されうる。
表面プラズモン共鳴解析の場合、PDK−1を固定化したチップに、活性阻害物質を含有した溶液を一定の流速で、送液し、光学的(蛍光度、蛍光偏向度等)検出手段、質量分析計(マトリックス支援レーザー脱離イオン化−飛行時間型質量分析計:MALDI−TOF MS、エレクトロスプレー・イオン化質量分析計:ESI−MS)等の検出手段により、該PDK−1と活性阻害物質とからなる複合体の形成を示すセンサーグラムが呈示された場合、該PDK−1と活性阻害物質とが結合することの指標として評価されうる。かかる表面プラズモン共鳴解析によれば、反応速度等も併せて評価されうる。
「生体内で、PDK−1によるPKBの活性化を抑制し、細胞にアポトーシスを誘導する活性」(アポトーシス誘導活性ともいう)は、クロマチンの凝縮、細胞核の断片化、アポトーシス小体の形成等の形態的変化に基づく検出、細胞死に伴い細胞から漏出する酵素(乳酸脱水素酵素等)の活性の増加の測定、トリパンブルー等による染色、TUNEL法等により評価されうる。
前記(A)において、配列番号:1に示されるアミノ酸配列は、PKB/Aktのactivation loopの配列であり、配列番号:2に示されるアミノ酸配列が、δPKCのアミノ酸配列である。本発明の発現用核酸構築物を用いることにより得られる活性阻害物質は、前記配列番号:1又は2に示されるアミノ酸配列を有するため、生体内で、PDK−1によるPKBの活性化を抑制するという驚くべき性質を発現する。
なお、本発明においては、前記activation loopと実質的に同等の機能、すなわち、PDK−1との親和性、アポトーシス誘導活性等を示し、PDK−1によりリン酸化され、PDK−1の偽基質として働き、PDK−1のリン酸化機能を抑えるものであれば、前記配列番号:1又は2に示されるアミノ酸配列の誘導体配列〔例えば、前記(B)又は(C)のアミノ酸配列〕であってもよい。
前記(B)のアミノ酸配列において、アミノ酸残基の置換、欠失、挿入又は付加の数は、前記activation loopと実質的に同等の機能、すなわち、PDK−1との親和性、アポトーシス誘導活性等を示し、かつPDK−1によりリン酸化される範囲で適宜設定されうる。
なお、本明細書において、「少なくとも1個」とは、1若しくは複数個、好ましくは1若しくは数個をいう。
前記(C)のアミノ酸配列において、配列同一性の算出に用いられるアルゴリズムにおける条件は、例えば、Cost to open gap 11,Cost to extend gap 1,expect value 10,wordsize 3が挙げられる。他の値は、通常用いられるデフォルト値であってもよい。
前記(C)のアミノ酸配列と、配列番号:1又は2に示されるアミノ酸配列との間の配列同一性は、前記activation loopと実質的に同等の機能、すなわち、PDK−1との親和性、アポトーシス誘導活性等を示し、かつPDK−1によりリン酸化される範囲であればよく、前記条件にて、BLASTアルゴリズムにより適切にアライメントし、算出した場合、少なくとも26%、好ましくは、50%以上、より好ましくは、60%以上、さらに好ましくは、70%以上、よりさらに好ましくは、80%以上、一層好ましくは、90%以上、より一層好ましくは、95%以上であることが望ましい。
なお、前記(B)及び(C)のアミノ酸配列においては、配列番号:9に示されるアミノ酸配列(Thr Phe Cys Gly Thr)が保存されていることが望ましい。
また、本発明の発現用核酸構築物を用いることにより得られる活性阻害物質は、前記(A)〜(C)からなる群より選ばれたアミノ酸配列に加え、前記(a)〜(c)からなる群より選ばれたアミノ酸配列を有しているため、生体内で、PDK−1によるPKBの活性化をより効率よく抑制し、細胞にアポトーシスを誘導するという優れた効果を発揮する。
前記(a)のアミノ酸配列において、配列番号:3に示されるアミノ酸配列は、PDK−1相互作用断片(PIF)の配列である。
前記配列番号:3に示されるアミノ酸配列は、該アミノ酸配列を有するポリペプチドが、PDK−1の本来の基質であるAGCキナーゼの1つであるプロテインキナーゼC関連キナーゼ−2(PRK2)と結合する活性を呈するものであれば、該配列番号:3に示されるアミノ酸配列の誘導体配列〔例えば、前記(b)又は(c)のアミノ酸配列〕であってもよい。
前記(b)のアミノ酸配列において、アミノ酸残基の置換、欠失、挿入又は付加の数は、前記PIFと実質的に同等の機能、すなわち、PDK−1との親和性等を示す範囲で適宜設定されうる。
前記(c)のアミノ酸配列において、配列同一性は、前記PIFと実質的に同等の機能、すなわち、PDK−1との親和性等を示す範囲であればよい。
また、本発明の発現用核酸構築物は、
(i)配列番号:4に示されるアミノ酸配列、
(ii)配列番号:4に示されるアミノ酸配列において、少なくとも1個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入又は付加を有するアミノ酸配列、及び
(iii)配列番号:4に示されるアミノ酸配列に対し、BLASTアルゴリズム(Cost to open gap 11,Cost to extend gap 1,expect value 10,wordsize 3)によりアラインメントされ、算出された配列同一性が、少なくとも26%であるアミノ酸配列、
からなる群より選ばれたアミノ酸配列
をコードする核酸をさらに含有してもよい。かかる発現用核酸構築物としては、活性阻害物質をコードする核酸が、前記(i)〜(iii)からなる群より選ばれたアミノ酸配列の下流に作動可能に連結された構築物が挙げられる。前記(i)〜(iii)からなる群より選ばれたアミノ酸配列を含有した発現用核酸構築物によれば、細胞膜に前記活性阻害物質を発現させることができる。
前記(i)のアミノ酸配列において、配列番号:4に示されるアミノ酸配列は、細胞膜に存在するチロシンリン酸化酵素LynのN末端配列であり、該配列番号:4に示されるアミノ酸配列からなる部分がパルミチン化されることにより、かかるアミノ酸配列を有するポリペプチドが細胞膜に局在化する。
したがって、本発明においては、パルミチン化され、細胞膜への局在化能を呈するものであれば、前記配列番号:4のアミノ酸配列の誘導体配列〔前記(ii)又は(iii)のアミノ酸配列〕であってもよい。
前記(ii)のアミノ酸配列において、アミノ酸残基の置換、欠失、挿入又は付加の数は、前記LynのN末端配列と同様に、パルミチン化されることにより、細胞膜への局在化能を発揮する範囲で適宜設定されうる。
前記(iii)のアミノ酸配列において、配列同一性は、前記LynのN末端配列と同様に、パルミチン化されることにより、細胞膜への局在化能を発揮する範囲であればよい。
前記パルミチン化は、細胞を細胞膜成分と細胞質成分とに分画し、細胞膜成分に多くPDK−1活性阻害物質が発現していることをイムノブロット法により検出することにより評価されうる。また、細胞膜への局在化能は、GFPを融合したLyn付加PDK−1活性阻害物質がLyn付加しているかPDK−1物質に比べ、細胞膜に、より多く局在することを蛍光顕微鏡下で観察することにより評価されうる。
本発明の発現用核酸構築物に用いられる活性阻害物質をコードする核酸は、配列表に記載のアミノ酸配列を基に、対応する核酸を合成すること、PKB又はPKC deltaをコードする核酸を鋳型としてPCRを行なうこと等により得られうる。
また、本発明の発現用核酸構築物においては、テロメラーゼプロモーター等のプロモーターの支配下に、前記活性阻害物質をコードする核酸を発現させることにより、癌細胞に特異的に前記活性阻害物質を発現させることができる。具体的には、例えば、
1. 活性阻害物質をコードする核酸が、テロメラーゼプロモーター等の下流に作動可能に連結された構築物、
2. テトラサイクリントランスアクチベーターをコードする核酸が、テロメラーゼプロモーター等のプロモーターの下流に作動可能に連結された構築物と、前記活性阻害物質をコードする核酸が、前記トランスアクチベーターに活性化されるプロモーターの下流に作動可能に連結された構築物との組み合わせ
等が挙げられる。
本明細書において、「作動可能に連結された」とは、所望の機能を発揮するポリペプチドが、正常に発現するように、連結された状態をいう。例えば、「核酸が、プロモーターの下流に作動可能に連結された」とは、プロモーターの制御下に核酸から発現産物が生じることを意味する。
前記トランスアクチベーター及び該トランスアクチベーターにより活性化されるプロモーターとしては、テトラサイクリントランスアクチベーター及びTetOpプロモーター等が挙げられる。前記テトラサイクリントランスアクチベーター及びTetOpプロモーターを用いた場合、発現用核酸構築物による活性阻害物質の発現を停止させることができるため、活性阻害物質の時期特異的発現制御、例えば、適度に働くように、発現を停止させる場合、ある一定の期間のみに発現させる場合等に好適である。
なお、前記発現用核酸構築物により発現される活性阻害物質としては、特に限定されないが、
(I)配列番号:5又は配列番号:7に示されるアミノ酸配列、
(II)配列番号:5又は配列番号:7に示される配列において、少なくとも1個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入又は付加を有するアミノ酸配列、及び
(III)配列番号:5又は配列番号:7に示されるアミノ酸配列に対し、BLASTアルゴリズム(Cost to open gap 11,Cost to extend gap 1,expect value 10,wordsize 3)によりアラインメントされ、算出された配列同一性が、少なくとも26%であるアミノ酸配列、
からなる群より選ばれたアミノ酸配列を含有したポリペプチド等が挙げられる。
本発明の発現用核酸構築物は、細胞等への核酸の導入に適した担体に保持させることにより、安定して活性阻害物質を発現させることができる。したがって、本発明の発現用核酸構築物によれば、活性阻害物質を安定して供給することができるという優れた効果を発揮する。また、本発明の発現用核酸構築物によれば、より効率よく、個体、細胞等に導入し、前記活性阻害物質を個体内、細胞内等で高い効率で発現させることができ、該活性阻害物質を所望の細胞等により特異的に発現させることができるという優れた効果を発揮する。
したがって、本発明の他の側面は、前記発現用核酸構築物を保持した、哺乳動物細胞におけるPDK−1の活性阻害物質の発現用担体である。
細胞等への核酸の導入に適した担体としては、ウイルスベクター、例えば、アデノウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、シンドビスウイルスベクター、レトロウイルスベクター等の哺乳動物細胞用ベクター、プラスミドベクターを含有するリポソーム、プラスミドベクターを付着した金粒子等が挙げられる。なかでも、細胞における発現効率の観点から、好ましくは、一過性発現能を有するウイルスベクターが望ましい。
また、本発明の発現用核酸構築物及び発現用担体は、PDK−1によるリン酸化活性の異常に起因する疾患の治療に用いられうる。
したがって、本発明の別の側面は、PDK−1によるリン酸化活性の異常に起因する疾患の治療剤である。
本発明の治療剤は、前記発現用核酸構築物又は前記発現用担体を有効成分として含有することに1つの大きな特徴がある。本発明の治療剤は、前記発現用核酸構築物又は前記発現用担体を含有するため、PDK−1によるリン酸化活性の異常に起因する疾患に罹患した個体において、所望の細胞内で前記活性阻害物質を発現させ、該PDK−1のリン酸化活性を阻害し、PDK−1によるターゲティング機構を抑制し、所望の細胞にアポトーシスを引き起こさせることができるという優れた効果を発揮する。
したがって、本発明の治療剤は、PDK−1によるリン酸化活性の異常に起因する疾患、より具体的には、アポトーシス誘導が治療効果につながる疾患の治療に好適である。
PDK−1によるリン酸化活性の異常に起因する疾患としては、前記と同様であり、例えば、癌、例えば、癌、特に、PDK−1により活性化されるPKBの活性の上昇に基づき、細胞増殖が促進している癌、ウイルス感染症等が挙げられる。前記癌としては、例えば、特に、PDK−1により活性化されるPKBの活性の上昇に基づき、細胞増殖が促進されうる乳癌等が挙げられる。
本発明の治療剤は、標的細胞、標的組織、標的臓器等に応じた投与経路により投与されうる。前記投与経路としては、例えば、静脈、動脈、皮下、皮内、筋肉内、局所等が挙げられる。
本発明の治療剤における前記発現用核酸構築物又は前記発現用担体の含有量は、疾患、患者の年齢及び体重等に応じて適宜設定することができるが、生体内で、前記活性阻害物質が発現して、PDK−1によるターゲティング機構をより効率よく抑制し、細胞にアポトーシスを誘導するに十分な量(治療上有効量)であればよい。
本発明の治療剤は、前記発現用核酸構築物又は前記発現用担体の他、薬理学的に許容されうる助剤、例えば、核酸を安定に保持しうる緩衝液、賦形剤、結合剤、安定剤、溶解補助剤、等張剤等をさらに含有してもよい。
本発明の治療剤の投与法としては、リン酸−カルシウム共沈法、微小ガラス管を用いた直接注入法、リポソームによる遺伝子導入法、パーティクル銃で細胞に移入する方法、正電荷ポリマーによる導入法等が挙げられる。
本発明の治療剤について、例えば、癌の場合、以下のような動物実験により薬理評価を行なうことができる。腫瘍の形成が確認されたヌードマウスの癌モデルに適切な用量の治療剤を適切な投与回数投与し、同時に、腫瘍径の変化を観察する。なお、対照群として、治療剤を投与しなかったマウス、又は他の治療法を用いて治療したマウス等が挙げられる対照群に比べ、投与群において、より腫瘍の退縮が見られた場合、動物実験レベルで癌の治療ができたことを示す指標となる。また、組織、細胞等について、アポトーシスの検出を行なってもよい。さらに、本発明の治療剤によるヒトへの臨床試験は、例えば、癌細胞の場合、腫瘍の定期的な観察(写真撮影等)、CTスキャン、MRI等での記録により、腫瘍径を測定し、直交する長径と短径から推定腫瘍体積を算出し腫瘍の増殖を計算する。治療効果は、腫瘍の種類に応じた評価指標に基づき評価されうる。また、アポトーシスの有無を組織、細胞等の形態学的観察により評価してもよい。
さらに、本発明は、さらに他の側面では、前記発現用核酸構築物又は前記発現用担体を、3−ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼ1によるリン酸化活性の異常に起因する疾患に罹患した個体に、治療上有効量投与することを特徴とする、3−ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼ1によるリン酸化活性の異常に起因する疾患の治療方法である。
本発明の治療方法は、前記治療剤を個体に投与する場合と同様に行なわれる。また、かかる治療方法による治療効果の評価は、前記治療剤の薬理評価及び臨床試験と同様に行なわれうる。
また、本発明によれば、3−ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼの活性の異常に起因する疾患の治療用医薬組成物の製造のための、3−ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼの活性阻害物質の発現用核酸構築物又は発現用担体の使用も提供される。本発明の発現用核酸構築物又は発現用担体によれば、3−ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼの活性の異常に起因する疾患の治療方法の開発が可能になる。
以下、本発明を、実施例により詳細に説明するが、本発明は、下記実施例により何ら限定されるものではない。
(A)配列番号:1又は2に示されるアミノ酸配列、
(B)配列番号:1又は2に示されるアミノ酸配列において、少なくとも1個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入又は付加を有するアミノ酸配列、及び
(C)配列番号:1又は2に示されるアミノ酸配列に対し、BLASTアルゴリズム(Cost to open gap 11,Cost to extend gap 1,expect value 10,wordsize 3)によりアラインメントされ、算出された配列同一性が、少なくとも26%であるアミノ酸配列、
からなる群より選ばれたアミノ酸配列と、
(a)配列番号:3に示されるアミノ酸配列、
(b)配列番号:3に示されるアミノ酸配列において、少なくとも1個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入又は付加を有するアミノ酸配列、及び
(c)配列番号:3に示されるアミノ酸配列に対し、BLASTアルゴリズム(Cost to open gap 11,Cost to extend gap 1,expect value 10,wordsize 3)によりアラインメントされ、算出された配列同一性が、少なくとも26%であるアミノ酸配列、
からなる群より選ばれたアミノ酸配列とを含有し、かつ生体内において、該PDK−1の活性を阻害しうる活性阻害物質をコードする核酸を含有する、3−ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼ1(以下、「PDK−1」という)の活性阻害物質の発現用核酸構築物である。
本発明の発現用核酸構築物は、前記(A)〜(C)のいずれかのアミノ酸配列と前記(a)〜(c)のいずれかのアミノ酸配列とをコードする核酸を含有しているため、PDK−1の活性阻害物質を発現させることができる。したがって、かかる発現用核酸構築物を、PDK−1の活性の異常に起因する疾患の患部に供給することにより、PDK−1の活性の異常を是正することができる。また、PDK−1によるリン酸化活性の異常に起因する疾患の治療を必要とする個体内、細胞内等において、PDK−1のリン酸化活性を阻害しうる活性阻害物質を発現させ、大量かつ簡便に製造することができるという優れた効果を発揮する。
なお、本明細書において、「PDK−1によるリン酸化活性の異常に起因する疾患」とは、PDK−1の活性の異常により引き起こされる疾患を意味し、例えば、癌、ウイルス感染症等が挙げられる。前記癌としては、具体的には、例えば、PDK−1により活性化されるPKBの活性の上昇に基づき、細胞増殖が促進している癌等が挙げられる。なお、本明細書において、「PDK−1によるリン酸化活性の異常」とは、健常個体、罹患していない個体、罹患していない状態にあった個体等と比較した場合、PDK−1によるリン酸化活性の平均値から逸脱した状態を意味する。
また、本明細書において、「PDK−1の活性阻害物質」は、PDK−1によりリン酸化される性質を示す物質をいう。
「PDK−1の活性の阻害」は、例えば、PDK−1によりリン酸化されたアミノ酸残基を特異的に認識する抗体を用いて、この抗体が認識するPDK−1の基質タンパク質の量が減少することを確認することにより評価されうる。
なお、PDK−1の活性阻害物質の親和性は、生体内で、PDK−1によるPKBの活性化を抑制し、細胞にアポトーシスを誘導する活性を十分に発揮させる程度であればよい。
PDK−1による前記活性阻害物質のリン酸化は、例えば、PDK−1によりリン酸化されたアミノ酸残基(主に、スレオニン残基等)を特異的に認識する抗体を用いて、前記活性阻害物質がこの抗体で認識されるかどうかをイムノブロット法等により測定されうる。
また、PDK−1と活性阻害物質との親和性は、結合活性によっても評価されうる。前記結合活性は、特に限定されないが、two−hybrid法、共免疫沈降法、表面プラズモン共鳴測定等により測定されうる。
具体的には、two−hybrid法の場合、
(1) 活性阻害物質をコードする核酸を、preyベクターに組込み、preyプラスミドを得るステップ;
(2) 得られたpreyプラスミドを酵母〔EGY48[p80p lacZ]〕に導入して、preyプラスミド保持クローンを得るステップ;
(3) PDK−1遺伝子を、baitベクターに組込み、baitプラスミドを得るステップ;
(4) 得られたbaitプラスミドを、前記ステップ(2)で得られたpreyプラスミド保持クローンに導入し、クローンを得るステップ;並びに
(5) 前記(4)で得られたクローンを、ロイシン欠失プレート上で3日間培養し、酵母細胞内における前記活性阻害物質との相互作用をロイシン欠失プレート上でのコロニー形成能により評価するステップ;
を行ない、ロイシン欠失プレート上でコロニーが形成されることを、PDK−1と前記活性阻害物質とが結合することの指標として評価されうる。
また、共免疫沈降法の場合、
(1) シグナル配列の下流にFLAG配列を有するPDK−1を発現するPDK−1−FLAG発現プラスミドを得るステップ;
(2) N末側にHA配列を有する前記活性阻害物質を発現しうるHA−活性阻害物質発現プラスミドを得るステップ;
(3) 細胞に、前記ステップ(1)で得られたPDK−1−FLAG発現プラスミドと前記ステップ(2)で得られたHA−活性阻害物質発現プラスミドとを、一過的にコトランスフェクトして、トランスフェクタントを得るステップ;
(4) 前記ステップ(3)で得られたコトランスファクタントを培養して、培養細胞を得るステップ;
(5) 前記ステップ(4)で得られた培養細胞から、細胞抽出液を得るステップ;
(6) 前記ステップ(5)で得られた細胞抽出液に抗FLAG抗体又は抗HA抗体を加えて共免疫沈降を行なうステップ;並びに
(7) 共免疫沈降を、ウエスタンブロット解析により検出するステップ;
を行ない、抗FLAG抗体及び抗HA抗体のいずれを用いた場合においても、複合体の沈降が検出されることを、PDK−1と前記活性阻害物質とが結合することの指標として評価されうる。
表面プラズモン共鳴解析の場合、PDK−1を固定化したチップに、活性阻害物質を含有した溶液を一定の流速で、送液し、光学的(蛍光度、蛍光偏向度等)検出手段、質量分析計(マトリックス支援レーザー脱離イオン化−飛行時間型質量分析計:MALDI−TOF MS、エレクトロスプレー・イオン化質量分析計:ESI−MS)等の検出手段により、該PDK−1と活性阻害物質とからなる複合体の形成を示すセンサーグラムが呈示された場合、該PDK−1と活性阻害物質とが結合することの指標として評価されうる。かかる表面プラズモン共鳴解析によれば、反応速度等も併せて評価されうる。
「生体内で、PDK−1によるPKBの活性化を抑制し、細胞にアポトーシスを誘導する活性」(アポトーシス誘導活性ともいう)は、クロマチンの凝縮、細胞核の断片化、アポトーシス小体の形成等の形態的変化に基づく検出、細胞死に伴い細胞から漏出する酵素(乳酸脱水素酵素等)の活性の増加の測定、トリパンブルー等による染色、TUNEL法等により評価されうる。
前記(A)において、配列番号:1に示されるアミノ酸配列は、PKB/Aktのactivation loopの配列であり、配列番号:2に示されるアミノ酸配列が、δPKCのアミノ酸配列である。本発明の発現用核酸構築物を用いることにより得られる活性阻害物質は、前記配列番号:1又は2に示されるアミノ酸配列を有するため、生体内で、PDK−1によるPKBの活性化を抑制するという驚くべき性質を発現する。
なお、本発明においては、前記activation loopと実質的に同等の機能、すなわち、PDK−1との親和性、アポトーシス誘導活性等を示し、PDK−1によりリン酸化され、PDK−1の偽基質として働き、PDK−1のリン酸化機能を抑えるものであれば、前記配列番号:1又は2に示されるアミノ酸配列の誘導体配列〔例えば、前記(B)又は(C)のアミノ酸配列〕であってもよい。
前記(B)のアミノ酸配列において、アミノ酸残基の置換、欠失、挿入又は付加の数は、前記activation loopと実質的に同等の機能、すなわち、PDK−1との親和性、アポトーシス誘導活性等を示し、かつPDK−1によりリン酸化される範囲で適宜設定されうる。
なお、本明細書において、「少なくとも1個」とは、1若しくは複数個、好ましくは1若しくは数個をいう。
前記(C)のアミノ酸配列において、配列同一性の算出に用いられるアルゴリズムにおける条件は、例えば、Cost to open gap 11,Cost to extend gap 1,expect value 10,wordsize 3が挙げられる。他の値は、通常用いられるデフォルト値であってもよい。
前記(C)のアミノ酸配列と、配列番号:1又は2に示されるアミノ酸配列との間の配列同一性は、前記activation loopと実質的に同等の機能、すなわち、PDK−1との親和性、アポトーシス誘導活性等を示し、かつPDK−1によりリン酸化される範囲であればよく、前記条件にて、BLASTアルゴリズムにより適切にアライメントし、算出した場合、少なくとも26%、好ましくは、50%以上、より好ましくは、60%以上、さらに好ましくは、70%以上、よりさらに好ましくは、80%以上、一層好ましくは、90%以上、より一層好ましくは、95%以上であることが望ましい。
なお、前記(B)及び(C)のアミノ酸配列においては、配列番号:9に示されるアミノ酸配列(Thr Phe Cys Gly Thr)が保存されていることが望ましい。
また、本発明の発現用核酸構築物を用いることにより得られる活性阻害物質は、前記(A)〜(C)からなる群より選ばれたアミノ酸配列に加え、前記(a)〜(c)からなる群より選ばれたアミノ酸配列を有しているため、生体内で、PDK−1によるPKBの活性化をより効率よく抑制し、細胞にアポトーシスを誘導するという優れた効果を発揮する。
前記(a)のアミノ酸配列において、配列番号:3に示されるアミノ酸配列は、PDK−1相互作用断片(PIF)の配列である。
前記配列番号:3に示されるアミノ酸配列は、該アミノ酸配列を有するポリペプチドが、PDK−1の本来の基質であるAGCキナーゼの1つであるプロテインキナーゼC関連キナーゼ−2(PRK2)と結合する活性を呈するものであれば、該配列番号:3に示されるアミノ酸配列の誘導体配列〔例えば、前記(b)又は(c)のアミノ酸配列〕であってもよい。
前記(b)のアミノ酸配列において、アミノ酸残基の置換、欠失、挿入又は付加の数は、前記PIFと実質的に同等の機能、すなわち、PDK−1との親和性等を示す範囲で適宜設定されうる。
前記(c)のアミノ酸配列において、配列同一性は、前記PIFと実質的に同等の機能、すなわち、PDK−1との親和性等を示す範囲であればよい。
また、本発明の発現用核酸構築物は、
(i)配列番号:4に示されるアミノ酸配列、
(ii)配列番号:4に示されるアミノ酸配列において、少なくとも1個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入又は付加を有するアミノ酸配列、及び
(iii)配列番号:4に示されるアミノ酸配列に対し、BLASTアルゴリズム(Cost to open gap 11,Cost to extend gap 1,expect value 10,wordsize 3)によりアラインメントされ、算出された配列同一性が、少なくとも26%であるアミノ酸配列、
からなる群より選ばれたアミノ酸配列
をコードする核酸をさらに含有してもよい。かかる発現用核酸構築物としては、活性阻害物質をコードする核酸が、前記(i)〜(iii)からなる群より選ばれたアミノ酸配列の下流に作動可能に連結された構築物が挙げられる。前記(i)〜(iii)からなる群より選ばれたアミノ酸配列を含有した発現用核酸構築物によれば、細胞膜に前記活性阻害物質を発現させることができる。
前記(i)のアミノ酸配列において、配列番号:4に示されるアミノ酸配列は、細胞膜に存在するチロシンリン酸化酵素LynのN末端配列であり、該配列番号:4に示されるアミノ酸配列からなる部分がパルミチン化されることにより、かかるアミノ酸配列を有するポリペプチドが細胞膜に局在化する。
したがって、本発明においては、パルミチン化され、細胞膜への局在化能を呈するものであれば、前記配列番号:4のアミノ酸配列の誘導体配列〔前記(ii)又は(iii)のアミノ酸配列〕であってもよい。
前記(ii)のアミノ酸配列において、アミノ酸残基の置換、欠失、挿入又は付加の数は、前記LynのN末端配列と同様に、パルミチン化されることにより、細胞膜への局在化能を発揮する範囲で適宜設定されうる。
前記(iii)のアミノ酸配列において、配列同一性は、前記LynのN末端配列と同様に、パルミチン化されることにより、細胞膜への局在化能を発揮する範囲であればよい。
前記パルミチン化は、細胞を細胞膜成分と細胞質成分とに分画し、細胞膜成分に多くPDK−1活性阻害物質が発現していることをイムノブロット法により検出することにより評価されうる。また、細胞膜への局在化能は、GFPを融合したLyn付加PDK−1活性阻害物質がLyn付加しているかPDK−1物質に比べ、細胞膜に、より多く局在することを蛍光顕微鏡下で観察することにより評価されうる。
本発明の発現用核酸構築物に用いられる活性阻害物質をコードする核酸は、配列表に記載のアミノ酸配列を基に、対応する核酸を合成すること、PKB又はPKC deltaをコードする核酸を鋳型としてPCRを行なうこと等により得られうる。
また、本発明の発現用核酸構築物においては、テロメラーゼプロモーター等のプロモーターの支配下に、前記活性阻害物質をコードする核酸を発現させることにより、癌細胞に特異的に前記活性阻害物質を発現させることができる。具体的には、例えば、
1. 活性阻害物質をコードする核酸が、テロメラーゼプロモーター等の下流に作動可能に連結された構築物、
2. テトラサイクリントランスアクチベーターをコードする核酸が、テロメラーゼプロモーター等のプロモーターの下流に作動可能に連結された構築物と、前記活性阻害物質をコードする核酸が、前記トランスアクチベーターに活性化されるプロモーターの下流に作動可能に連結された構築物との組み合わせ
等が挙げられる。
本明細書において、「作動可能に連結された」とは、所望の機能を発揮するポリペプチドが、正常に発現するように、連結された状態をいう。例えば、「核酸が、プロモーターの下流に作動可能に連結された」とは、プロモーターの制御下に核酸から発現産物が生じることを意味する。
前記トランスアクチベーター及び該トランスアクチベーターにより活性化されるプロモーターとしては、テトラサイクリントランスアクチベーター及びTetOpプロモーター等が挙げられる。前記テトラサイクリントランスアクチベーター及びTetOpプロモーターを用いた場合、発現用核酸構築物による活性阻害物質の発現を停止させることができるため、活性阻害物質の時期特異的発現制御、例えば、適度に働くように、発現を停止させる場合、ある一定の期間のみに発現させる場合等に好適である。
なお、前記発現用核酸構築物により発現される活性阻害物質としては、特に限定されないが、
(I)配列番号:5又は配列番号:7に示されるアミノ酸配列、
(II)配列番号:5又は配列番号:7に示される配列において、少なくとも1個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入又は付加を有するアミノ酸配列、及び
(III)配列番号:5又は配列番号:7に示されるアミノ酸配列に対し、BLASTアルゴリズム(Cost to open gap 11,Cost to extend gap 1,expect value 10,wordsize 3)によりアラインメントされ、算出された配列同一性が、少なくとも26%であるアミノ酸配列、
からなる群より選ばれたアミノ酸配列を含有したポリペプチド等が挙げられる。
本発明の発現用核酸構築物は、細胞等への核酸の導入に適した担体に保持させることにより、安定して活性阻害物質を発現させることができる。したがって、本発明の発現用核酸構築物によれば、活性阻害物質を安定して供給することができるという優れた効果を発揮する。また、本発明の発現用核酸構築物によれば、より効率よく、個体、細胞等に導入し、前記活性阻害物質を個体内、細胞内等で高い効率で発現させることができ、該活性阻害物質を所望の細胞等により特異的に発現させることができるという優れた効果を発揮する。
したがって、本発明の他の側面は、前記発現用核酸構築物を保持した、哺乳動物細胞におけるPDK−1の活性阻害物質の発現用担体である。
細胞等への核酸の導入に適した担体としては、ウイルスベクター、例えば、アデノウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、シンドビスウイルスベクター、レトロウイルスベクター等の哺乳動物細胞用ベクター、プラスミドベクターを含有するリポソーム、プラスミドベクターを付着した金粒子等が挙げられる。なかでも、細胞における発現効率の観点から、好ましくは、一過性発現能を有するウイルスベクターが望ましい。
また、本発明の発現用核酸構築物及び発現用担体は、PDK−1によるリン酸化活性の異常に起因する疾患の治療に用いられうる。
したがって、本発明の別の側面は、PDK−1によるリン酸化活性の異常に起因する疾患の治療剤である。
本発明の治療剤は、前記発現用核酸構築物又は前記発現用担体を有効成分として含有することに1つの大きな特徴がある。本発明の治療剤は、前記発現用核酸構築物又は前記発現用担体を含有するため、PDK−1によるリン酸化活性の異常に起因する疾患に罹患した個体において、所望の細胞内で前記活性阻害物質を発現させ、該PDK−1のリン酸化活性を阻害し、PDK−1によるターゲティング機構を抑制し、所望の細胞にアポトーシスを引き起こさせることができるという優れた効果を発揮する。
したがって、本発明の治療剤は、PDK−1によるリン酸化活性の異常に起因する疾患、より具体的には、アポトーシス誘導が治療効果につながる疾患の治療に好適である。
PDK−1によるリン酸化活性の異常に起因する疾患としては、前記と同様であり、例えば、癌、例えば、癌、特に、PDK−1により活性化されるPKBの活性の上昇に基づき、細胞増殖が促進している癌、ウイルス感染症等が挙げられる。前記癌としては、例えば、特に、PDK−1により活性化されるPKBの活性の上昇に基づき、細胞増殖が促進されうる乳癌等が挙げられる。
本発明の治療剤は、標的細胞、標的組織、標的臓器等に応じた投与経路により投与されうる。前記投与経路としては、例えば、静脈、動脈、皮下、皮内、筋肉内、局所等が挙げられる。
本発明の治療剤における前記発現用核酸構築物又は前記発現用担体の含有量は、疾患、患者の年齢及び体重等に応じて適宜設定することができるが、生体内で、前記活性阻害物質が発現して、PDK−1によるターゲティング機構をより効率よく抑制し、細胞にアポトーシスを誘導するに十分な量(治療上有効量)であればよい。
本発明の治療剤は、前記発現用核酸構築物又は前記発現用担体の他、薬理学的に許容されうる助剤、例えば、核酸を安定に保持しうる緩衝液、賦形剤、結合剤、安定剤、溶解補助剤、等張剤等をさらに含有してもよい。
本発明の治療剤の投与法としては、リン酸−カルシウム共沈法、微小ガラス管を用いた直接注入法、リポソームによる遺伝子導入法、パーティクル銃で細胞に移入する方法、正電荷ポリマーによる導入法等が挙げられる。
本発明の治療剤について、例えば、癌の場合、以下のような動物実験により薬理評価を行なうことができる。腫瘍の形成が確認されたヌードマウスの癌モデルに適切な用量の治療剤を適切な投与回数投与し、同時に、腫瘍径の変化を観察する。なお、対照群として、治療剤を投与しなかったマウス、又は他の治療法を用いて治療したマウス等が挙げられる対照群に比べ、投与群において、より腫瘍の退縮が見られた場合、動物実験レベルで癌の治療ができたことを示す指標となる。また、組織、細胞等について、アポトーシスの検出を行なってもよい。さらに、本発明の治療剤によるヒトへの臨床試験は、例えば、癌細胞の場合、腫瘍の定期的な観察(写真撮影等)、CTスキャン、MRI等での記録により、腫瘍径を測定し、直交する長径と短径から推定腫瘍体積を算出し腫瘍の増殖を計算する。治療効果は、腫瘍の種類に応じた評価指標に基づき評価されうる。また、アポトーシスの有無を組織、細胞等の形態学的観察により評価してもよい。
さらに、本発明は、さらに他の側面では、前記発現用核酸構築物又は前記発現用担体を、3−ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼ1によるリン酸化活性の異常に起因する疾患に罹患した個体に、治療上有効量投与することを特徴とする、3−ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼ1によるリン酸化活性の異常に起因する疾患の治療方法である。
本発明の治療方法は、前記治療剤を個体に投与する場合と同様に行なわれる。また、かかる治療方法による治療効果の評価は、前記治療剤の薬理評価及び臨床試験と同様に行なわれうる。
また、本発明によれば、3−ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼの活性の異常に起因する疾患の治療用医薬組成物の製造のための、3−ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼの活性阻害物質の発現用核酸構築物又は発現用担体の使用も提供される。本発明の発現用核酸構築物又は発現用担体によれば、3−ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼの活性の異常に起因する疾患の治療方法の開発が可能になる。
以下、本発明を、実施例により詳細に説明するが、本発明は、下記実施例により何ら限定されるものではない。
3−ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼ(「PDK−1」という;配列番号:1)のアクチベーションループ(activation loop)に対応する部分と、PDK−1相互作用フラグメント(「PIF」という;配列番号:3)とをコードする核酸を2コピー有する核酸構築物(PKBAL−PIF)を作製した。また、前記核酸構築物(PKBAL−PIF)の発現産物のC末端側に、緑色蛍光タンパク質(GFP)が配置されるように、該核酸構築物の下流に、GFPをコードする核酸を配置させ、核酸構築物(PKBAL−PIF−GFP)を得た。
ついで、前記PKBAL−PIFを、哺乳動物細胞用発現ベクターpTB701のSV40プロモーターの下流に組み込み、PKBAL−PIF発現用組換えベクターを得た。また、前記PKBAL−PIF−GFPを、前記哺乳動物細胞用発現ベクターpTB701のSV40プロモーターの下流に組み込み、PKBAL−PIF−GFP発現用組換えベクターを得た。
さらに、細胞膜に存在するチロシンリン酸化酵素LynのN末端領域のアミノ酸配列(配列番号:4)からなるペプチドをコードする核酸を、該ペプチドが、核酸構築物(PKBAL−PIF)の発現産物及び核酸構築物(PKBAL−PIF−GFP)の発現産物のそれぞれのN末端側に付加されるように、各核酸構築物に連結させ、核酸構築物(Lynsig−PKBAL−PIF)及び核酸構築物(Lynsig−PKBAL−PIF−GFP)のそれぞれを得た。
また、PKB/Aktと同様にPDK−1の基質であるδPKCのアクチベーションループ(activation loop)に対応する部分とδPKCのPIFとをコードする核酸を2コピー有する核酸構築物(δAL−PIF)を作製した。また、前記核酸構築物(δAL−PIF)の発現産物のC末端側に、GFPが配置されるように、該核酸構築物の下流に、GFPをコードする核酸を配置させ、核酸構築物(δAL−PIF−GFP)を得た。
ついで、前記δAL−PIFを、前記哺乳動物細胞発現ベクターpTB701のSV40プロモーターの下流に組み込み、δAL−PIF発現用組換えベクターを得た。また、前記δAL−PIF−GFPを、哺乳動物細胞発現ベクターpTB701のSV40プロモーターの下流に組み込み、δAL−PIF−GFP発現用組換えベクターを得た。
さらに、細胞膜に存在するチロシンリン酸化酵素LynのN末端領域のアミノ酸配列(配列番号:4)からなるペプチドをコードする核酸を、該ペプチドが、核酸構築物(δAL−PIF)の発現産物及び核酸構築物(δAL−PIF−GFP)の発現産物のそれぞれのN末端側に付加されるように、各核酸構築物に連結させ、核酸構築物(Lynsig−δAL−PIF)及び核酸構築物(Lynsig−δAL−PIF−GFP)のそれぞれを得た。
得られた各組換えベクターを、エレクトロポレーション法により、それぞれ、哺乳動物細胞COS−7株(理化学研究所細胞バンク供給)に導入した。
得られた発現産物のうち、GFP結合発現産物の一次構造の概略図を図1に示す。
また、前記核酸構築物のそれぞれを用い、相同組換法により、組換えアデノウイルスを作製した。なお、組換えアデノウイルスの作製には、ストラタジーン社製、商品名:pAdEASY System、商品名:AdEasy Adenoviral Vector Systemを用いた。
HEK 293細胞(ATCC CRL−1573)を、100ユニット/ml ペニシリンGナトリウムと100μg/ml ストレプトマイシンと10重量% ウシ胎仔血清とを含むα−MEM上、60mm 培養プレートあたり細胞数2〜5×105(約100細胞/mm2)になるように接種し、5体積% CO2を含む加湿気相中、37℃で培養した。
12〜24時間後、得られた組換えアデノウイルスベクターで、HEK 293細胞をトランスフェクションした。4〜7日後、プレートから剥離した細胞を、培養液中の細胞を、1500×gで5分間遠心分離して、ウイルス上清を得た。
得られた組換えアデノウイルス上清について、ウイルスタイター値を測定した。
その結果、前記核酸構築物の発現アデノウイルスベクターを得た。
ついで、前記PKBAL−PIFを、哺乳動物細胞用発現ベクターpTB701のSV40プロモーターの下流に組み込み、PKBAL−PIF発現用組換えベクターを得た。また、前記PKBAL−PIF−GFPを、前記哺乳動物細胞用発現ベクターpTB701のSV40プロモーターの下流に組み込み、PKBAL−PIF−GFP発現用組換えベクターを得た。
さらに、細胞膜に存在するチロシンリン酸化酵素LynのN末端領域のアミノ酸配列(配列番号:4)からなるペプチドをコードする核酸を、該ペプチドが、核酸構築物(PKBAL−PIF)の発現産物及び核酸構築物(PKBAL−PIF−GFP)の発現産物のそれぞれのN末端側に付加されるように、各核酸構築物に連結させ、核酸構築物(Lynsig−PKBAL−PIF)及び核酸構築物(Lynsig−PKBAL−PIF−GFP)のそれぞれを得た。
また、PKB/Aktと同様にPDK−1の基質であるδPKCのアクチベーションループ(activation loop)に対応する部分とδPKCのPIFとをコードする核酸を2コピー有する核酸構築物(δAL−PIF)を作製した。また、前記核酸構築物(δAL−PIF)の発現産物のC末端側に、GFPが配置されるように、該核酸構築物の下流に、GFPをコードする核酸を配置させ、核酸構築物(δAL−PIF−GFP)を得た。
ついで、前記δAL−PIFを、前記哺乳動物細胞発現ベクターpTB701のSV40プロモーターの下流に組み込み、δAL−PIF発現用組換えベクターを得た。また、前記δAL−PIF−GFPを、哺乳動物細胞発現ベクターpTB701のSV40プロモーターの下流に組み込み、δAL−PIF−GFP発現用組換えベクターを得た。
さらに、細胞膜に存在するチロシンリン酸化酵素LynのN末端領域のアミノ酸配列(配列番号:4)からなるペプチドをコードする核酸を、該ペプチドが、核酸構築物(δAL−PIF)の発現産物及び核酸構築物(δAL−PIF−GFP)の発現産物のそれぞれのN末端側に付加されるように、各核酸構築物に連結させ、核酸構築物(Lynsig−δAL−PIF)及び核酸構築物(Lynsig−δAL−PIF−GFP)のそれぞれを得た。
得られた各組換えベクターを、エレクトロポレーション法により、それぞれ、哺乳動物細胞COS−7株(理化学研究所細胞バンク供給)に導入した。
得られた発現産物のうち、GFP結合発現産物の一次構造の概略図を図1に示す。
また、前記核酸構築物のそれぞれを用い、相同組換法により、組換えアデノウイルスを作製した。なお、組換えアデノウイルスの作製には、ストラタジーン社製、商品名:pAdEASY System、商品名:AdEasy Adenoviral Vector Systemを用いた。
HEK 293細胞(ATCC CRL−1573)を、100ユニット/ml ペニシリンGナトリウムと100μg/ml ストレプトマイシンと10重量% ウシ胎仔血清とを含むα−MEM上、60mm 培養プレートあたり細胞数2〜5×105(約100細胞/mm2)になるように接種し、5体積% CO2を含む加湿気相中、37℃で培養した。
12〜24時間後、得られた組換えアデノウイルスベクターで、HEK 293細胞をトランスフェクションした。4〜7日後、プレートから剥離した細胞を、培養液中の細胞を、1500×gで5分間遠心分離して、ウイルス上清を得た。
得られた組換えアデノウイルス上清について、ウイルスタイター値を測定した。
その結果、前記核酸構築物の発現アデノウイルスベクターを得た。
前記実施例1で得られた発現ベクターのうち、δAL−PIF−GFPの発現プラスミドベクター及びLynsig−δAL−PIF−GFPの発現プラスミドベクターのそれぞれを、エレクトロポレーション法により、サル腎臓癌細胞COS−7に導入した。
導入24時間後、δAL−PIF−GFP発現細胞及びLynsig−δAL−PIF−GFPの発現細胞のそれぞれについて、GFPによる蛍光を指標として観察した。結果を図2に示す。
その結果、図2に示されるように、δAL−PIF−GFPの発現産物は、主に細胞質に発現が見られ、Lynsig−δAL−PIF−GFPの発現産物は、主に細胞膜に発現が見られた。
導入48時間後、δAL−PIF−GFPの発現細胞及びLynsig−δAL−PIF−GFPの発現細胞のそれぞれについて、GFPによる蛍光を指標として観察した。
その結果、δAL−PIF−GFPの発現細胞及びLynsig−δAL−PIF−GFPの発現細胞共に、球形に形態変化を起こした。また、それぞれの細胞について、ヘキスト33342を用いて、染色した結果、形態変化を示した細胞は、いずれもクロマチンの凝集と核の分断化を示し、アポトーシスを起こしていることがわかった。なお、図3に、代表例として、δAL−PIF−GFPの発現細胞の場合の結果を示す。
したがって、実施例1で得られた発現ベクターにより発現される核酸構築物の発現産物は、3−ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼ1の活性を阻害し、アポトーシスを誘導することがわかった。
導入24時間後、δAL−PIF−GFP発現細胞及びLynsig−δAL−PIF−GFPの発現細胞のそれぞれについて、GFPによる蛍光を指標として観察した。結果を図2に示す。
その結果、図2に示されるように、δAL−PIF−GFPの発現産物は、主に細胞質に発現が見られ、Lynsig−δAL−PIF−GFPの発現産物は、主に細胞膜に発現が見られた。
導入48時間後、δAL−PIF−GFPの発現細胞及びLynsig−δAL−PIF−GFPの発現細胞のそれぞれについて、GFPによる蛍光を指標として観察した。
その結果、δAL−PIF−GFPの発現細胞及びLynsig−δAL−PIF−GFPの発現細胞共に、球形に形態変化を起こした。また、それぞれの細胞について、ヘキスト33342を用いて、染色した結果、形態変化を示した細胞は、いずれもクロマチンの凝集と核の分断化を示し、アポトーシスを起こしていることがわかった。なお、図3に、代表例として、δAL−PIF−GFPの発現細胞の場合の結果を示す。
したがって、実施例1で得られた発現ベクターにより発現される核酸構築物の発現産物は、3−ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼ1の活性を阻害し、アポトーシスを誘導することがわかった。
テロメラーゼプロモーターの支配下にテトラサイクリントランスアクチベーターを連結させ、癌細胞特異的にテトラサイクリントランスアクチベーターを発現させるためのベクター1を作製する。
また、実施例1の核酸構築物の上流にTetOp最小プロモーターを連結し、実施例1と同様に発現ベクターを作製する(ベクター2)。
得られたベクター1とベクター2とを樹立された癌細胞及び樹立されていない癌細胞のそれぞれを導入する。
その結果、細胞が、球形に形態変化を起こし、クロマチン凝集、核の分断化を示すことを指標として、核酸構築物の発現産物の効果を評価する。
また、実施例1の核酸構築物の上流にTetOp最小プロモーターを連結し、実施例1と同様に発現ベクターを作製する(ベクター2)。
得られたベクター1とベクター2とを樹立された癌細胞及び樹立されていない癌細胞のそれぞれを導入する。
その結果、細胞が、球形に形態変化を起こし、クロマチン凝集、核の分断化を示すことを指標として、核酸構築物の発現産物の効果を評価する。
実施例3で得られたベクター1とベクター2とを、固形癌モデルに、血管内投与又は該モデルの癌細胞に局所的に注入する。
その結果、固形癌の大きさの変化を指標として、癌に対する発現産物の効果を評価する。
その結果、固形癌の大きさの変化を指標として、癌に対する発現産物の効果を評価する。
COS−7細胞において、PKBα−GFPと、δALPIF−GFP又は対照としてGFPとを共発現させた。
ついで、抗GFP抗体又はPKBのactivation loopのリン酸化スレオニンを認識する抗リン酸化PKB(Thr308)抗体を用い、ウエスタンブロット解析を行なった。結果を図4に示す。
図4のパネルAに示されるように、発現させた目的のタンパク質が、それぞれ目的のサイズを保持していることがわかる。また、PKBα−GFPの発現量は、PKBα−GFPとGFPとを共発現させたCOS−7細胞及びPKBα−GFPとδALPIF−GFPとを共発現させたCOS−7細胞の間でほぼ等しいことがわかる。
また、パネルBに示されるように、δALPIF−GFPを共発現させた場合(レーン2)、GFPを共発現させた場合(レーン1)に比べ、PKBα−GFPのバンドが薄く認識されており、δALPIF−GFPがPKBα−GFPのアクチベーションルーペのリン酸化を抑制していることがわかる。なお、この抗体は、δALPIF−GFPのリン酸化も認識している。
ついで、抗GFP抗体又はPKBのactivation loopのリン酸化スレオニンを認識する抗リン酸化PKB(Thr308)抗体を用い、ウエスタンブロット解析を行なった。結果を図4に示す。
図4のパネルAに示されるように、発現させた目的のタンパク質が、それぞれ目的のサイズを保持していることがわかる。また、PKBα−GFPの発現量は、PKBα−GFPとGFPとを共発現させたCOS−7細胞及びPKBα−GFPとδALPIF−GFPとを共発現させたCOS−7細胞の間でほぼ等しいことがわかる。
また、パネルBに示されるように、δALPIF−GFPを共発現させた場合(レーン2)、GFPを共発現させた場合(レーン1)に比べ、PKBα−GFPのバンドが薄く認識されており、δALPIF−GFPがPKBα−GFPのアクチベーションルーペのリン酸化を抑制していることがわかる。なお、この抗体は、δALPIF−GFPのリン酸化も認識している。
前記実施例1で得られた発現ベクターのうち、偽基質δAL−PIF−GFPの発現プラスミドベクター及び偽基質Lynsig−δAL−PIF−GFPの発現プラスミドベクターのそれぞれを、エレクトロポレーション法により、癌由来培養細胞(COS−7細胞及びPC−12細胞)に導入した。
また、前記偽基質の発現プラスミドベクターと、GSTとPDK−1との融合タンパク質(GST−PDK−1)の発現プラスミドベクターとを、エレクトロポレーション法により、癌由来培養細胞(COS−7細胞及びPC−12細胞)に導入した。
なお、前記GST−PDK−1の発現プラスミドベクターは、ヒトPDK−1をコードするcDNAの5’側に、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)をコードするcDNAを付加し、得られた核酸構築物を、前記実施例1の場合と同様のプラスミドベクターに連結することにより作製したベクターである。
対照として、前記偽基質の発現ベクターの代わりに、GFPの発現ベクターを、前記COS−7細胞及びPC−12細胞それぞれに導入した。
遺伝子導入48時間後に、GFPに由来する蛍光を呈する細胞のうち、アポトーシスを起こしている細胞を計数し、アポトーシス誘導率を算出した。なお、アポトーシス誘導細胞は、細胞核を慣用の方法で染色し、蛍光顕微鏡下、クロマチン凝集と核の分断化とを指標として判定した。
また、COS−7細胞での結果を表1に、PC−12細胞での結果を表2に示す。なお、表中、*は、p<0.05 vs GFP〔Bonferronimultiple comparisons test〕、#は、p<0.05 vs 偽基質のみ、##は、p<0.01 vs 偽基質のみ〔unpaired t−test〕を示す。また、結果は、3連の平均を示す。
その結果、表1及び表2に示されるように、対照であるGFPのみを発現した細胞と比較すると、COS−7細胞及びPC−12細胞のいずれにおいても、δAL−PIF−GFPの発現によりアポトーシスを示す細胞の割合(%)は有意に増加した。
また表1及び表2に示されるように、Lynsig−δAL−PIF−GFPを発現させた場合、対照であるGFPのみを発現した細胞と比較して、COS−7細胞においては、有意にアポトージスを示す細胞の割合の増加を引き起こし、PC−12細胞においても、アポトーシス誘導細胞数は増加した。
したがって、偽基質δAL−PIF−GFPの発現及び偽基質Lynsig−δAL−PIF−GFPの発現により、癌由来培養細胞において、有意にアポトーシスを誘発することがわかった。
さらに、前記偽基質とともにGST−PDK−1を発現させた場合、表1及び表2に示されるように、GST−PDK−1とδAL−PIF−GFPとの共発現により、アポトーシスはCOS−7細胞及びPC−12細胞の両方で有意に抑制された。
まかかる結果より、外因的にPDK−1を過剰発現させることにより、偽基質の効果が弱まると考えられたので、前記偽基質によるアポトーシスは、内因性のPDK−1を介して起こっていることが示唆された。
また、前記偽基質の発現プラスミドベクターと、GSTとPDK−1との融合タンパク質(GST−PDK−1)の発現プラスミドベクターとを、エレクトロポレーション法により、癌由来培養細胞(COS−7細胞及びPC−12細胞)に導入した。
なお、前記GST−PDK−1の発現プラスミドベクターは、ヒトPDK−1をコードするcDNAの5’側に、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)をコードするcDNAを付加し、得られた核酸構築物を、前記実施例1の場合と同様のプラスミドベクターに連結することにより作製したベクターである。
対照として、前記偽基質の発現ベクターの代わりに、GFPの発現ベクターを、前記COS−7細胞及びPC−12細胞それぞれに導入した。
遺伝子導入48時間後に、GFPに由来する蛍光を呈する細胞のうち、アポトーシスを起こしている細胞を計数し、アポトーシス誘導率を算出した。なお、アポトーシス誘導細胞は、細胞核を慣用の方法で染色し、蛍光顕微鏡下、クロマチン凝集と核の分断化とを指標として判定した。
また、COS−7細胞での結果を表1に、PC−12細胞での結果を表2に示す。なお、表中、*は、p<0.05 vs GFP〔Bonferronimultiple comparisons test〕、#は、p<0.05 vs 偽基質のみ、##は、p<0.01 vs 偽基質のみ〔unpaired t−test〕を示す。また、結果は、3連の平均を示す。
その結果、表1及び表2に示されるように、対照であるGFPのみを発現した細胞と比較すると、COS−7細胞及びPC−12細胞のいずれにおいても、δAL−PIF−GFPの発現によりアポトーシスを示す細胞の割合(%)は有意に増加した。
また表1及び表2に示されるように、Lynsig−δAL−PIF−GFPを発現させた場合、対照であるGFPのみを発現した細胞と比較して、COS−7細胞においては、有意にアポトージスを示す細胞の割合の増加を引き起こし、PC−12細胞においても、アポトーシス誘導細胞数は増加した。
したがって、偽基質δAL−PIF−GFPの発現及び偽基質Lynsig−δAL−PIF−GFPの発現により、癌由来培養細胞において、有意にアポトーシスを誘発することがわかった。
さらに、前記偽基質とともにGST−PDK−1を発現させた場合、表1及び表2に示されるように、GST−PDK−1とδAL−PIF−GFPとの共発現により、アポトーシスはCOS−7細胞及びPC−12細胞の両方で有意に抑制された。
まかかる結果より、外因的にPDK−1を過剰発現させることにより、偽基質の効果が弱まると考えられたので、前記偽基質によるアポトーシスは、内因性のPDK−1を介して起こっていることが示唆された。
配列番号:1は、PKB/Aktのactivation loopの配列である。
配列番号:2は、δPKCのactivation loopの配列である。
配列番号:3は、PDK−1相互作用断片(PIF)の配列である。
配列番号:4は、Lynの配列である。
配列番号:5は、PKBAL−PIFから産生したPDK−1の阻害剤の配列である。
配列番号:6は、PKBAL−PIF−GFPから産生したPDK−1のGFP結合阻害剤の配列である。
配列番号:7は、δAL−PIFから産生したPDK−1の阻害剤の配列である。
配列番号:8は、δAL−PIFから産生したGFP結合阻害剤の配列である。
配列番号:9は、activation loopの部分配列である。
配列番号:2は、δPKCのactivation loopの配列である。
配列番号:3は、PDK−1相互作用断片(PIF)の配列である。
配列番号:4は、Lynの配列である。
配列番号:5は、PKBAL−PIFから産生したPDK−1の阻害剤の配列である。
配列番号:6は、PKBAL−PIF−GFPから産生したPDK−1のGFP結合阻害剤の配列である。
配列番号:7は、δAL−PIFから産生したPDK−1の阻害剤の配列である。
配列番号:8は、δAL−PIFから産生したGFP結合阻害剤の配列である。
配列番号:9は、activation loopの部分配列である。
本発明により、3−ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼ1の活性の異常に起因する疾患、癌等への治療手段の開発を行なうことができる。
Claims (10)
- (A)配列番号:1又は2に示されるアミノ酸配列、
(B)配列番号:1又は2に示されるアミノ酸配列において、少なくとも1個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入又は付加を有するアミノ酸配列、及び
(C)配列番号:1又は2に示されるアミノ酸配列に対し、BLASTアルゴリズム(Cost to open gap 11,Cost to extend gap 1,expect value 10,wordsize 3)によりアラインメントされ、算出された配列同一性が、少なくとも26%であるアミノ酸配列、
からなる群より選ばれたアミノ酸配列と、
(a)配列番号:3に示されるアミノ酸配列、
(b)配列番号:3に示されるアミノ酸配列において、少なくとも1個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入又は付加を有するアミノ酸配列、及び
(c)配列番号:3に示されるアミノ酸配列に対し、BLASTアルゴリズム(Cost to open gap 11,Cost to extend gap 1,expect value 10,wordsize 3)によりアラインメントされ、算出された配列同一性が、少なくとも26%であるアミノ酸配列、
からなる群より選ばれたアミノ酸配列とを含有し、かつ生体内において、ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼ1の活性を阻害しうる活性阻害物質をコードする核酸を含有してなる、3−ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼ1の活性阻害物質の発現用核酸構築物。 - 活性阻害物質をコードする核酸が、
(i)配列番号:4に示されるアミノ酸配列、
(ii)配列番号:4に示されるアミノ酸配列において、少なくとも1個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入又は付加を有するアミノ酸配列、及び
(iii)配列番号:4に示されるアミノ酸配列に対し、BLASTアルゴリズム(Cost to open gap 11,Cost to extend gap 1,expect value 10,wordsize 3)によりアラインメントされ、算出された配列同一性が、少なくとも26%であるアミノ酸配列、
からなる群より選ばれたアミノ酸配列
をコードする核酸の下流に作動可能に連結されてなる、請求項1記載の発現用核酸構築物。 - 活性阻害物質をコードする核酸が、テロメラーゼプロモーター支配下に発現する、請求項1又は2記載の発現用核酸構築物。
- 請求項1〜3いずれか1項記載の発現用核酸構築物を保持してなる、哺乳動物細胞における3−ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼ1の活性阻害物質の発現用担体。
- 請求項1〜3いずれか1項に記載の発現用核酸構築物又は請求項4記載の発現用担体を有効成分として含有してなる、3−ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼ1によるリン酸化活性に起因する疾患の治療剤。
- 疾患が、癌である、請求項5記載の治療剤。
- 請求項1〜3いずれか1項に記載の発現用核酸構築物の発現産物を有効成分として含有してなる、3−ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼ1によるリン酸化活性に起因する疾患の治療剤。
- 発現産物が、
(I)配列番号:5又は配列番号:7に示されるアミノ酸配列、
(II)配列番号:5又は配列番号:7に示される配列において、少なくとも1個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入又は付加を有するアミノ酸配列、及び
(III)配列番号:5又は配列番号:7に示されるアミノ酸配列に対し、BLASTアルゴリズム(Cost to open gap 11,Cost to extend gap 1,expect value 10,wordsize 3)によりアラインメントされ、算出された配列同一性が、少なくとも26%であるアミノ酸配列、
からなる群より選ばれたアミノ酸配列を含有したポリペプチドである、請求項7記載の治療剤。 - 請求項1〜3いずれか1項に記載の発現用核酸構築物又は請求項4記載の発現用担体を、3−ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼ1によるリン酸化活性の異常に起因する疾患に罹患した個体に、治療上有効量投与する、3−ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼ1によるリン酸化活性の異常に起因する疾患の治療方法。
- 3−ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼ1によるリン酸化活性の異常に起因する疾患の治療用医薬組成物の製造のための、請求項1〜3いずれか1項に記載の発現用核酸構築物又は請求項4記載の発現用担体の使用。
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