JPWO2005010185A1 - Klf5遺伝子の発現を抑制するrna - Google Patents

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Abstract

クルッペル様因子5(KLF5)cDNAの塩基配列から設計した、KLF5mRNAの連続する15〜30塩基の配列および該配列を含みKLF5遺伝子の発現を抑制するRNA。特に、配列番号2〜16のいずれか1つの配列の鎖および該配列と相補的な配列の鎖からなる二本鎖RNAのそれぞれの鎖の3’端に2個のウリジル酸を付加した二本鎖RNA。該RNAまたは該RNAを発現するベクターを細胞に導入することにより、該細胞中のKLF5遺伝子の発現を抑制することができる。該RNAまたは該RNAを発現するベクターは、心血管系疾患または癌の治療薬に用いることができる。

Description

本発明は、KLF5遺伝子の発現を抑制するRNAに関する。
クルッペル様因子(Kruppel−like factor、以下KLFと略す)ファミリーは、C末端のジンク・フィンガー(zinc finger)モチーフを特徴とする、転写因子のファミリーであり、KLF1、KLF2、KLF3、KLF4、KLF5、KLF6、KLF7、KLF8、KLF9、KLF10、KLF11、KLF12、KLF13、KLF14、KLF15、KLF16等が知られている。哺乳類において、KLFファミリーは、様々な組織や細胞、例えば赤血球、血管内皮細胞、平滑筋、皮膚、リンパ球等の分化に重要であること、また癌、心血管疾患、肝硬変、腎疾患、免疫疾患等の各種疾患の病態形成に重要な役割を果たしていることが報告されている(J.Biol.Chem.,276,34355−34358,2001;Genome Biol.,,206,2003)。
KLFファミリーのうちのKLF5は、BTEB2(basic transcriptional element binding protein 2)あるいはIKLF(intestinal−enriched Kruppel−like factor)ともよばれる。血管平滑筋におけるKLF5の発現は、発生段階で制御を受けており、胎児の血管平滑筋では、高い発現を示すのに対し、正常な成人の血管平滑筋では発現が見られなくなる。また、バルーンカテーテルによる削剥後に新生した血管内膜の平滑筋では、KLF5の高い発現がみられ、動脈硬化や再狭窄の病変部の平滑筋でもKLF5の発現がみられる(Circulation,102,2528−2534,2000)。
動脈硬化巣や経皮的冠動脈形成術後の再狭窄部位などの病変部位の血管平滑筋は、活性化しており、筋フィラメントの消失、蛋白合成の亢進、増殖能や遊走能を示し、胎児の血管平滑筋と同様の形質(胎児型)へ形質転換している。平滑筋細胞にはSM1、SM2、SMembという3種類のミオシン重鎖のアイソフォームが存在するが、胎児型への形質転換に伴い、SM2が消失し、SMembの発現誘導が認められる。KLF5は、SMemb遺伝子の転写制御配列と結合し、その転写を活性化する(非特許文献4参照)。さらに、血小板由来増殖因子A鎖(以下PDGF−Aとよぶ)、トランスフォーミング増殖因子(TGF)−β、血管内皮増殖因子(VEGF)リセプター、誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)、プラスミノーゲンアクチベーターインヒビター(PAI)−1および転写因子Egr(early growth response)−1など、血管の形質や血管新生に関与する遺伝子の転写を活性化することが報告されている(Nat.Med.,,856−863,2002;Ann.N.Y.Acad.Sci.,947,56−66,2001)。
また、KLF5遺伝子のヘテロノックアウトマウスにおいて、心血管系への物理的負荷やアンジオテンシンIIにより引き起こされる血管平滑筋増殖と血管内膜肥厚、血管新生、血管外膜の肉芽形成、心肥大および心筋線維化等が著明に抑制されていることが報告されている(Nat.Med.,,856−863,2002)。
このように、KLF5遺伝子は平滑筋形質変換に関わるだけでなく、広く心血管系の病態形成に関わる転写因子であり、その機能発現には遺伝子発現量がきわめて重要である。KLF5は、動脈硬化や、心肥大等の心血管系の疾患あるいは癌等の血管新生が関与する疾患の病態形成に関与するので、KLF5遺伝子の発現を抑制することでこれらの疾患の治療または予防に有用な薬剤となりうることが予想される。しかし、現在のところKLFファミリー遺伝子の発現を効果的に抑制する薬剤は知られていない。
一方、RNA干渉(RNA interference、以下、RNAiとよぶ)は、線虫において標的とする遺伝子と同一の配列を有する二本鎖RNAを導入することにより、標的遺伝子の発現が特異的に抑制される現象として報告された(Nature,391,806−811,1998)。
RNAiは、導入した二本鎖RNAが、21〜23塩基の長さの二本鎖RNAに分解された後、蛋白質複合体がこの短い二本鎖RNAと結合し、同じ配列を有するmRNAを認識し切断することによって起こると考えられている。Tuschlらは、ショウジョウバエにおいて長い二本鎖RNAの代わりに、21〜23塩基の長さの二本鎖RNAを導入することによっても、標的遺伝子の発現が抑制されることを見いだし、これをshort interfering RNA(siRNA)と名づけた(WO 01/75164)。siRNAの配列と標的遺伝子とのミスマッチがあると非常に発現抑制の効果が弱まること、長さは21塩基が最も効果が高く、平滑末端よりも、両方の鎖の3’末端にヌクレオチドが付加して、末端が突出した構造の方が効果が高いことが示された(WO 02/44321)。
哺乳類細胞では、長い二本鎖RNAを導入した場合、ウイルス防御機構により遺伝子全体の発現抑制とアポトーシスが起こり、特定の遺伝子の抑制をすることができなかったが、20〜29塩基のsiRNAであれば、このような反応がおこらず、特定の遺伝子の発現を抑制をすることができることが見いだされた。なかでも21〜25塩基のものが発現抑制効果が高い(Nature,411,494−498,2001;Nat.Rev.Genet.,,737−747,2002;Mol.Cell,10,549−561,2002;Nat.Biotechnol.,20,497−500,2002)。
RNAiでは、二本鎖RNAは一本鎖アンチセンスRNAに比べ、標的遺伝子に対する発現抑制効果が飛躍的に高いことが報告されている(Nature,391,806−811,1998;Mol.Cell,10,549−561,2002)。また、二本鎖RNAでなく、分子内ハイブリダイズにより、ヘアピン構造を形成する一本鎖RNAも、siRNAと同様にRNAiを示すことが報告されている(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,99,6047−6052,2002)。
RNAiはin vitroのみならず、in vivo試験においても多く検証されており、50bp以下のsiRNAを用いた胎児の動物での効果(WO 02/132788)、成体マウスでの効果(WO 03/10180)が報告されている。また、siRNAをマウス胎児に静脈内投与した場合に、腎臓、脾臓、肺、膵臓、肝臓の各臓器で発現抑制効果が確認されている(Nat.Genet.32,107−108,2002)。さらに、脳細胞においてもsiRNAを直接投与することで作用することが報告されている。(Nat.Biotechnol.,20,1006−1010,2002)しかし、これまでのところKLF5あるいは他のKLFファミリー遺伝子に対するsiRNAを用いたRNAiに関しては報告例がない。
本発明の目的はKLF5遺伝子の発現を抑制するRNAを見出すことである。このようなRNAは、KLF5遺伝子の発現を抑制することにより、KLF5の転写因子としての機能を阻害し、心血管性疾患や癌等のKLF5が病態の形成に関与する疾患に対する、副作用の少ない治療薬または予防薬に用いることができる。
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、以下に記載する発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下の(1)〜(13)に関する。
(1)KLF5 mRNAの連続する15〜30塩基の配列および該配列と相補的な配列を含み、KLF5遺伝子の発現を抑制するRNA。
(2)KLF5 mRNAがヒトまたはマウスのKLF5 mRNAである、(1)に記載のRNA。
(3)RNAが、KLF5 mRNAの連続する15〜30塩基の配列の鎖および該配列と相補的な配列の鎖からなる二本鎖RNAのそれぞれの鎖の3’端に1〜6個のヌクレオチドを付加した二本鎖RNAである、(1)または(2)に記載のRNA。
(4)RNAが、KLF5 mRNAの連続する15〜30塩基の配列からなるRNAおよび該配列と相補的な配列からなるRNAを、スペーサーオリゴヌクレオチドでつなぎ、3’端に1〜6個のヌクレオチドを付加した、ヘアピン構造を形成するRNAである、(1)または(2)に記載のRNA。
(5)以下の(a)〜(c)からなる群から選ばれるKLF5遺伝子の発現を抑制するRNA。
(a)配列番号2〜16のいずれか1つの配列の鎖および該配列と相補的な配列の鎖からなる二本鎖RNAのそれぞれの鎖の3’端に2〜4個のウリジル酸またはデオキシチミジル酸を付加した二本鎖RNA。
(b)配列番号2〜16のいずれか1つの配列からなるRNAおよび該配列と相補的な配列からなるRNAを2個のウリジル酸を5’端に有するスペーサーRNAでつなぎ、3’端に2〜4個のウリジル酸を付加した、ヘアピン構造を形成するRNA。
(c)配列番号2〜11のいずれか1つの配列の鎖および該配列と相補的な配列の鎖からなる二本鎖RNAのそれぞれの鎖の3’端に2個のウリジル酸を付加した二本鎖RNA。
(6)(1)〜(5)のいずれか1項に記載のRNAを発現するベクター。
(7)(1)〜(5)のいずれか1項に記載のRNAまたは(6)に記載のベクターを細胞に導入することにより、該細胞中のKLF5遺伝子の発現を抑制する方法。
(8)(1)〜(5)のいずれか1項に記載のRNAまたは(6)に記載のベクターを細胞に導入することにより、該細胞中のKLF5により転写が活性化される遺伝子の発現を抑制する方法。
(9)KLF5により転写が活性化される遺伝子が血小板由来増殖因子A鎖遺伝子または平滑筋ミオシン重鎖SMemb遺伝子である(8)に記載の方法。
(10)(1)〜(5)のいずれか1項に記載のRNAまたは(6)に記載のベクターを有効成分として含有する医薬組成物。
(11)(1)〜(5)のいずれか1項に記載のRNAまたは(6)に記載のベクターを有効成分として含有する、血管新生を阻害するための医薬組成物。
(12)(1)〜(5)のいずれか1項に記載のRNAまたは(6)に記載のベクターを有効成分として含有する、心血管系疾患もしくは癌の治療薬または予防薬。
(13)心血管系疾患が動脈硬化、冠動脈インターベンション後の再狭窄または心肥大である(12)に記載の治療薬または予防薬。
本発明のRNAにより、KLF5遺伝子およびKLF5により転写が活性化される遺伝子の発現を抑制することができる。本発明のRNAまたは該RNAを発現するベクターの投与により、KLF5遺伝子およびKLF5により転写が活性化される遺伝子の発現が抑制され、平滑筋の増殖や血管新生を抑制できるので、本発明のRNAまたは該RNAを発現するベクターは、動脈硬化、冠動脈インターベンション後の再狭窄、心肥大等の心血管系疾患、あるいは癌の治療剤または予防剤の有効成分として使用することができる。
1.KLF5遺伝子の発現を抑制するRNA
本発明のRNAは、KLF5 mRNAの連続する15〜30塩基、好ましくは17〜25塩基、より好ましくは19〜23塩基の配列(以下配列Xとする)および該配列と相補的な配列(以下、相補配列X’とする)を含み、KLF5遺伝子の発現を抑制するRNAである。該RNAとしては、(a)配列Xの鎖(センス鎖)および相補配列X’の鎖(アンチセンス鎖)からなる二本鎖RNAのそれぞれの鎖の3’端に1〜6個、好ましくは2〜4個のヌクレオチドを付加した二本鎖RNA(以下、このような構造のRNAをsiRNAとよぶ)であってKLF5遺伝子の発現を抑制するRNA、(b)配列XからなるRNAおよび相補配列X’からなるRNAを、スペーサーオリゴヌクレオチドでつなぎ、3’端に1〜6個、好ましくは2〜4個のヌクレオチドを付加した、ヘアピン構造を形成するRNA(以下、このようなRNAをshRNAとよぶ)であって、KLF5遺伝子の発現を抑制するRNAがあげられる。これらのRNAにおいて付加するヌクレオチドの塩基はグアニン、アデニン、シトシン、チミン、ウラシルのいずれでもよく、またRNAでもDNAでもよいが、ウリジル酸(U)またはデオキシチミジル酸(dT)が好ましい。またスペーサーオリゴヌクレオチドは6〜12塩基のRNAが好ましく、その5’端の配列は2個のUが好ましい。スペーサーオリゴヌクレオチドの例として、UUCAAGAGAの配列からなるRNAをあげることができる。スペーサーオリゴヌクレオチドによってつながれる2つのRNAの順番はどちらが5’側になってもよい。
配列Xは、KLF5 mRNAの連続する15〜30塩基の配列、好ましくは17〜25塩基、より好ましくは19〜23塩基の配列であれば、いずれの配列でもよいが、以下の(1)に記載の方法で設計した19塩基の配列が最も好ましい。以上の構造を有するRNAであって、KLF5遺伝子の発現を抑制するものであれば、本発明のRNAに含まれる。
本発明のRNAは、上記の構造のRNAをKLF5遺伝子が発現している細胞に導入してKLF5遺伝子の発現を測定し、KLF5遺伝子の発現を抑制するRNAを選択することより取得できる。
(1)配列Xの設計
遺伝子の発現を抑制したい動物のKLF5 cDNAの塩基配列から、AAではじまる21塩基の部分配列を取り出す。取り出した配列のGC含量を計算し、GC含量が20〜80%、好ましくは30%〜70%、より好ましくは40〜60%の配列を複数個選択する。
配列は、好ましくは、コード領域内の配列で、開始コドンから75塩基以上下流の配列を選択する。KLF5 cDNAの塩基配列の情報は、GenBank等の塩基配列データベースから得ることができる。例えば、マウスKLF5 cDNAの配列はGenBank登録番号NM_009769(配列番号49)、ヒトKLF5 cDNAの配列はGenBank登録番号AF287272(配列番号50)で、配列情報が得られる。
選択した配列の5’末端のAAを除き、配列中のTをUに変えた19塩基の配列を配列Xとする。
(2)本発明のRNAの調製
(1)で選択した配列Xを元に、以下のようにしてRNAを調製することができる。以下には付加するオリゴヌクレオチドとして2個のUまたはdTの場合を記載するが、他のヌクレオチドの場合も同様にして調製することができる。
(a)siRNAの場合
配列Xの3’端に2個のUまたはdTを付加した配列からなるRNA、および相補配列X’の3’端に2個のUまたはdTを付加した配列からなるRNAの2本のRNAを調製する。この2本のRNAは、化学合成あるいはインビトロ転写により調製できる。化学合成は、DNA合成機を用いて行うことができる。またアンビオン(Ambion)社、日本バイオサービス株式会社、キアゲン(QIAGEN)社等のメーカーに化学合成を依頼することもできる。化学合成した互いに相補的な配列を含む2本のRNAをアニーリングすることにより、配列Xの鎖および相補配列X’の鎖からなる二本鎖RNAのそれぞれの鎖の3’端に2個のUまたはdTを付加した二本鎖RNAを調製することができる。アニーリングは、2本のRNAを適当なバッファー中で90〜95℃で1〜5分加熱後、45〜60分間かけて室温にまで冷却することにより行うことができる。
インビトロ転写によるRNAの調製は、以下のようにして行うことができる。まず、(i)T7 RNAポリメラーゼのプロモーター配列を有するDNA(T7プライマー)、(ii)相補配列X’のUをTに変え、その5’端には2個のAを付加し、3’端にはT7プライマーの3’端8塩基と相補的な配列を付加した配列を有するDNA、(iii)配列XのUをTに変え、その5’端には2個のAを付加し、3’端にはT7プライマーの3’端8塩基と相補的な配列を付加した配列を有するDNA、をそれぞれ調製する。
T7プライマーと(ii)のDNAとをアニールさせた後、DNAポリメラーゼ反応により、二本鎖DNAにする。得られた二本鎖DNAを鋳型として、T7 RNAポリメラーゼを用いたインビトロ転写反応を行うことにより、配列Xの3’端に2個のUが付加し、5’端にはリーダー配列が付加した配列を有するRNAを合成することができる。同様にT7プライマーと(iii)のDNAとを用いて同様の反応を行うことにより、相補配列X’の3’端に2個のUが付加し、5’端にはリーダー配列が付加した配列を有するRNAを合成することができる。
2つの反応液を混ぜて、さらにインビトロ転写反応を続けることにより、互いに相補的な配列を含む2本のRNAをアニールさせる。その後、デオキシリボヌクレアーゼおよび一本鎖RNA特異的なリボヌクレアーゼにより、鋳型の二本鎖DNAおよび各RNA鎖の5’側のリーダー配列を分解して除去する。各RNA鎖の3’端の2個のUは分解を受けずに付加したまま残る。
以上の反応は、サイレンサーsiRNA作製キット(Silencer・siRNA Construction Kit、アンビオン社製)等のキットを用いて行うことができる。T7プライマーとアニールさせるDNAは、DNA合成機により化学合成することができる。またアンビオン社、日本バイオサービス株式会社、北海道システムサイエンス株式会社、キアゲン社等のメーカーに化学合成を依頼することもできる。
(b)shRNAの場合
配列XからなるRNAおよび相補配列X’からなるRNAを、スペーサーオリゴヌクレオチドでつなぎ、3’端に1〜6個、好ましくは2〜4個のヌクレオチドを付加した、ヘアピン構造を形成するRNAは、DNA合成機を用いた化学合成によって調製できる。また、2.に後述するsiRNA発現ベクターを細胞に導入することにより、細胞内にshRNAが合成される。このshRNAは、細胞内でsiRNAに変換される。ベクターを導入して細胞内で合成させた場合は、shRNAの単離と(3)に記載した細胞への導入の操作は不要であり、ベクターを導入した細胞についてKLF5遺伝子の発現を解析すればよい。
(3)KLF5遺伝子の発現抑制
KLF5遺伝子を発現する細胞株に(2)で調製したsiRNAまたはshRNAを導入する。細胞株は、(1)の配列Xの設計のもとにしたKLF5 cDNAと同じ動物種の細胞を用いる。KLF5遺伝子を発現する細胞株としては、平滑筋、繊維芽細胞または血管内皮細胞に由来する細胞株、例えばマウス胎児繊維芽細胞株C3H/10T1/2(ATCC番号:CCL−226)、ヒト臍帯血管内皮細胞等をあげることができる。RNAの導入は、動物細胞へのトランスフェクション用試薬、例えばポリフェクト(Polyfect)トランスフェクション試薬(キアゲン社製)、トランスメッセンジャー(TransMessenger)トランスフェクション試薬、オリゴフェクトアミン(Oligofectamine)試薬(インビトロジェン社製)、リポフェクトアミン(Lipofectamine)2000(インビトロジェン社製)等を利用して、これらの試薬とRNAを混合して複合体を形成させた後、細胞に添加することにより行うことができる。
本発明のRNAまたは2.で後述するsiRNA発現ベクターを導入した細胞のKLF5遺伝子の発現は、RT−PCRにより解析することができる。RNAまたはsiRNA発現ベクターを導入した細胞および導入しなかった細胞から総RNAを調製し、このRNAからcDNAを合成する。合成したcDNAを鋳型にして、KLF5遺伝子に特異的なプライマーを用いたPCRを行い、KLF5 cDNAに由来する増幅産物の量を、アガロースゲル電気泳動によって定量することにより、KLF5遺伝子の発現量を測定することができる。RNAまたはsiRNA発現ベクターを導入しなかった細胞のKLF5遺伝子の発現量と比較して、KLF5遺伝子の発現量が減少した細胞に導入したRNAを、KLF5遺伝子の発現を抑制するRNAとして選択する。
このようにして選択された、KLF5遺伝子の発現を抑制するRNAとしては、配列番号2〜11のいずれか1つの配列の鎖および該配列と相補的な配列の鎖からなる二本鎖RNAのそれぞれの鎖の3’端に2個のウリジル酸を付加した二本鎖RNAをあげることができる。該RNAはマウスcDNAの配列に基づいて設計されたものであり、マウスKLF5遺伝子の発現を抑制する。このうち、配列番号4、8および10の配列はそれぞれマウスとヒトのぞれぞれのKLF5 mRNAで共通する配列であるので、配列番号4、8および10のいずれか1つの配列の鎖および該配列と相補的な配列の鎖からなる二本鎖RNAのそれぞれの鎖の3’端に2個のウリジル酸を付加した二本鎖RNAは、マウスKLF5遺伝子だけでなくヒトKLF5遺伝子の発現も抑制する。
(1)の配列Xの設計のもとにしたある動物種AのKLF5 cDNAと、異なる動物種BのKLF5 cDNAを配列の相同性に基づいてアライメントすることにより、動物種Aで選択された配列Xと対応する動物種Bの配列Yを得ることができる。上記の方法で、動物種AのKLF5遺伝子の発現を抑制するRNAが得られた場合、該RNAの配列Xおよびその相補配列X’の領域をそれぞれ配列Yとその相補配列Y’に置換したRNAは、動物種BのKLF5遺伝子を抑制すると考えられる。
例えば、マウスKLF5 cDNAの配列に基づく配列番号2、3、7、9および11のいずれか1つの配列の鎖および該配列と相補的な配列の鎖からなる二本鎖RNAのそれぞれの鎖の3’端に2個のウリジル酸を付加した二本鎖RNAは、マウスKLF5遺伝子の発現を抑制するので、ヒトKLF5 cDNAにおいて対応する配列である配列番号12〜16のいずれか1つの配列の鎖および該配列と相補的な配列の鎖からなる二本鎖RNAのそれぞれの鎖の3’端に2個のウリジル酸を付加した二本鎖RNAは、ヒトKLF5遺伝子の発現を抑制すると考えられる。
2.KLF5遺伝子の発現を抑制するRNAを発現するベクター
(1)プラスミドベクター
KLF5遺伝子の発現を抑制するRNAを発現するプラスミドベクターを、培養細胞または生体内の細胞に導入することにより、細胞内で該RNAが産生され、導入した細胞でのKLF5遺伝子の発現を抑制することができる。該ベクターは、U6プロモーターあるいはH1プロモーター等RNAポリメラーゼIIIのプロモーターを含む動物細胞用プラスミドベクター等のsiRNA発現用ベクターのプロモーターの下流に、1.で選択された配列Xおよびその相補配列X’(それぞれUはTに変換する)を、2個のTを5’端に有するスペーサー配列でつなぎ、3’端にRNAポリメラーゼIIIターミネーターとなる4〜6個のTからなる配列を含むDNA(以下、KLF5 siRNA用DNAとよぶ)を挿入して作製することができる。スペーサー配列としては、2個のTを5’端に有する6〜12塩基の配列が好ましく、例えば、TTCAAGAGAをあげることができる。配列Xと相補配列X’の順序は、どちらが5’側でもよい。siRNA発現用ベクターとしては、pSilencer1.0−U6(アンビオン社製)、pSilencer3.0(アンビオン社製)、pSUPER〔オリゴエンジン(OligoEngine)社製〕、pSIREN−DNR〔BDバイオサイエンシズ・クロンテック(BD Biosciences Clontech)社製〕等をあげることができる。
上記のKLF5 siRNA用DNAを挿入して作製した組換えベクターを導入した細胞では、U6プロモーターからのRNAポリメラーゼIII反応により、1.(1)に記載したshRNAが合成され、このshRNAが細胞内で切断を受けてsiRNAに変換される。組換えベクターの細胞への導入は、通常の動物細胞へのベクターの導入と同様に、リン酸カルシウム法(特開平2−227075)、リポフェクション法(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,84,7413−7417,1987)等により行うことができる。
(2)ウイルスベクター
siRNA発現ベクターとして、レトロウイルスベクターやレンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター等のウイルスベクターを利用したsiRNA発現用ベクターを用いることもできる。このようなウイルスベクターを利用したsiRNA発現用ベクターとして、pSUPER.retro(オリゴエンジン社製)、pSIREN−RetroQ(BDバイオサイエンシズ・クロンテック社製)、文献(Proc.Natl.Acad.Sci USA,100,1844−1848,2003;Nat.Genet.,33,401−406,2003)に記載のベクターなどをあげることができる。
ウイルスベクターを利用したsiRNA発現用ベクターに上記と同様のKLF5 siRNA用DNAを挿入して作製した組換えベクターを、用いたウイルスベクターに応じたパッケージング細胞に導入することにより、該組換えベクターを含む組換えウイルスを生産させる。組換えベクターのパッケージング細胞への導入は、上記と同様に、リン酸カルシウム法、リポフェクション法等により行うことができる。得られた組換えウイルスを細胞に接触させて感染させることにより、組換えベクターが細胞に導入され、1.(1)に記載したshRNAが合成され、このshRNAが細胞内で切断を受けてKLF5遺伝子の発現を抑制するsiRNAに変換される。
3.KLF5遺伝子の発現を抑制するRNAの利用法
(1)KLF5により転写が活性化される遺伝子の発現の抑制
KLF5は転写因子として、種々の遺伝子の発現を活性化している。KLF5遺伝子の発現を抑制するRNAにより、KLF5遺伝子の発現が抑制される結果、KLF5により転写が活性化される遺伝子の発現も抑制することができる。KLF5により転写が活性化される遺伝子としては、SMemb、PDGF−A、TGF−β、VEGFリセプター、PAI−1、Egr−1等の遺伝子をあげることができる。
(2)KLF5の機能の解析
KLF5遺伝子の発現を抑制するRNAを、種々の細胞に作用させ、その細胞の形質の変化や、各種遺伝子の発現量の変動を調べることにより、それぞれの細胞におけるKLF5の機能を解析することができる。また、該RNAは、胎児から成体まで、さまざまな発育段階の動物でKLF5遺伝子の発現抑制をすることができるので、ヘテロノックアウトマウスの解析だけではわからないKLF5の機能の解明をすることが可能となる。
4.本発明のRNAまたはベクターを有効成分として含有する医薬組成物
本発明のKLF5遺伝子の発現を特異的に抑制するRNA、または該RNAを発現するベクターを投与することにより、KLF5および、KLF5が転写を活性化する遺伝子の発現が抑制され、平滑筋の増殖や血管新生が阻害されるので、動脈硬化、冠動脈インターベンション後の再狭窄や心肥大等の心血管系の疾患あるいは癌の治療または予防をすることができる。
本発明のRNAまたは該RNAを発現するベクターは、医薬品として使用する場合、単独で投与することも可能ではあるが、通常は薬理学的に許容される添加剤(例えば担体、賦形剤、希釈剤等)、安定化剤または製薬上必要な成分と混合し、製剤学の技術分野においてよく知られる任意の方法により製造した医薬製剤として提供するのが望ましい。また、ウイルスベクターの場合は、組換えウイルスの形態でウイルスベクターを投与することが望ましい。
投与経路は、治療に際し最も効果的なものを使用するのが望ましく、口腔内、気道内、直腸内、皮下、筋肉内および静脈内などの非経口投与または経口投与をあげることができ、望ましくは静脈内投与、筋肉内投与をあげることができる。静脈内投与、筋肉内投与に適当な製剤としては、注射剤があげられる。
本発明のRNAまたは該RNAを発現するベクターを、注射剤の形態に成形するに際しては、担体として、たとえば、水、エチルアルコール、マクロゴール、プロピレングリコール、クエン酸、酢酸、リン酸、乳酸、乳酸ナトリウム、硫酸および水酸化ナトリウム等の希釈剤、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウムおよびリン酸ナトリウム等のpH調整剤および緩衝剤、ピロ亜硫酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸、チオグリコール酸およびチオ乳酸等の安定化剤等が使用できる。なお、この場合等張性の溶液を調製するに十分な量の食塩、ブドウ糖、マンニトールまたはグリセリンを医薬製剤中に含有せしめてもよい。安定化剤としては、グルコース等の単糖類、サッカロース、マルトース等の二糖類、マンニトール、ソルビトール等の糖アルコール、塩化ナトリウム等の中性塩、グリシン等のアミノ酸、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体(プルロニック)、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(トゥイーン)等の非イオン系界面活性剤、ヒトアルブミン等が例示される。また、細胞内への取り込みを促進するため、本発明のRNAまたは該RNAを発現するベクターを、該RNAまたはベクターを含むリポソームとして調製して用いてもよい。
第1図 KLF5遺伝子特異的なsiRNAによるKLF5遺伝子の発現抑制を示す。左から、100bpマーカー、siRNAを導入しなかった細胞、SEAP−siRNA、siRNA No.2、siRNA No.3、siRNA No.4、siRNA No.5、siRNA No.6をそれぞれ導入した細胞でのPCRによる測定で、KLF5は、KLF5 mRNA由来の増幅産物、18Sは、18S rRNA由来の増幅産物の位置を示す。
第2図 KLF5遺伝子特異的なsiRNAによるKLF5遺伝子の発現抑制を示す。左から、100bpマーカー、siRNAを導入しなかった細胞、SEAP−siRNA、siRNA No.7、siRNA No.8、siRNA No.9、siRNA No.10、siRNA No.11、siRNA No.4、siRNA No.1をそれぞれ導入した細胞でのPCRによる測定で、KLF5は、KLF5 mRNA由来の増幅産物、18Sは、18S rRNA由来の増幅産物の位置を示す。
第3図 KLF5遺伝子特異的なsiRNAによるPDGF−A遺伝子の発現抑制を示す。左から、100bpマーカー、siRNAを導入しなかった細胞、SEAP−siRNA、siRNA No.7、siRNA No.8、siRNA No.9、siRNA No.10、siRNA No.11、siRNA No.4、siRNA No.1をそれぞれ導入した細胞でのPCRによる測定で、PDGF−Aは、PDGF−A mRNA由来の増幅産物、18Sは、18S rRNA由来の増幅産物の位置を示す。
第4図 KLF5遺伝子特異的なsiRNAによるSMemb遺伝子の発現抑制を示す。左から、100bpマーカー、siRNAを導入しなかった細胞、SEAP−siRNA、siRNA No.7、siRNA No.8、siRNA No.9、siRNA No.10、siRNA No.11、siRNA No.4、siRNA No.1をそれぞれ導入した細胞でのPCRによる測定で、SMembは、SMemb mRNA由来の増幅産物、18Sは、18S rRNA由来の増幅産物の位置を示す。
第5図 KLF5遺伝子特異的なsiRNAはSRF遺伝子の発現は抑制しないことを示す。左から、siRNAを導入しなかった細胞、SEAP−siRNA、siRNA No.1、siRNA No.4、siRNA No.7、siRNA No.9、siRNA No.10をそれぞれ導入した細胞でのPCRによる測定で、SRFは、SRFmRNA由来の増幅産物、18Sは、18S rRNA由来の増幅産物の位置を示す。
第6図 siRNA No.4によるヒトKLF5遺伝子の発現抑制を示す。左から、100bpマーカー、siRNAを導入しなかった細胞、SEAP−siRNA、およびsiRNA No.4をそれぞれ導入した細胞でのPCRによる測定で、KLFは、KLF5 mRNA由来の増幅産物、18Sは、18S rRNA由来の増幅産物の位置を示す。
第7図 siRNA No.4による血管内皮細胞の遊走の阻害を示す。横軸は時間(時間)、縦軸は遊走した細胞数で、●はsiRNA No.4を導入した細胞、■はSEAP−siRNAを導入した細胞の結果を示す。エラーバーは例数4の標準偏差である。
第8図 siRNA No.4による抗腫瘍効果を示す。横軸は時間(日数)、縦軸は腫瘍体積(mm)で、●はKLF5 siRNA No.4を投与したマウスの腫瘍体積、■はSEAP−siRNAを投与したマウスの腫瘍体積を示す。
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
実施例1 siRNAによるKLF5遺伝子の発現抑制
(1)siRNAの調製
KLF5遺伝子の発現を抑制できるsiRNAの配列として、マウスKLF5 cDNAの配列(GenBank登録番号:NM_009769、配列番号49)から、(a)AAではじまる21塩基の配列、(b)GC含量が20〜80%の2つの条件に当てはまる、11個の部分配列を選択した。ただし、開始コドン(配列番号49の167〜169番目の配列)より75塩基以上下流の、コード領域(配列番号167〜1507番目の配列)内の配列で、GC含量が40〜60%のものをなるべく選択するようにした。選択した配列の配列番号49における配列の位置、GC含量を第1表に示した。選択した配列の5’端のAAを除いた19塩基の配列のTをUに変えた配列をそれぞれ配列番号1〜11に示した。
Figure 2005010185
配列番号1〜11のいずれかの配列および該配列と相補的な配列の3’端にそれぞれ2個のUまたはdTを付加した配列からなる11種類の二本鎖RNA(以下、それぞれsiRNA No.1〜No.11とよぶ)を以下のようにして調製した。siRNA No.1〜No.11それぞれのセンス鎖およびアンチセンス鎖の配列を第1表に示した(配列番号17〜38)。siRNA No.1は、配列番号17および18の配列からなる2本のRNAを、株式会社日本バイオサービスに依頼して化学合成し、アニーリングさせることにより調製した。siRNA No.2〜No.11はサイレンサーsiRNA作製キット(SilencerTM siRNA Construction Kit、アンビオン社製)を利用したインビトロ転写により調製した。インビトロ転写の鋳型作製に用いるDNAは、北海道システム・サイエンス株式会社に化学合成を依頼した。また、文献(Nat.Genet.,32,107−108,2002;米国特許出願公開 第2002/0132788号明細書)に基づき、配列番号39および40の配列からなる、分泌型アルカリフォスファターゼ(SEAP)遺伝子の発現を抑制するsiRNA(以下、SEAP−siRNAとよぶ)を、サイレンサーsiRNA作製キットを利用したインビトロ転写により調製し、コントロールのsiRNAとして用いた。
(2)siRNAによるKLF5遺伝子の発現抑制
マウス胎児線維芽細胞株C3H/10T1/2(入手先:アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)、ATCC番号:CCL−226)をウェルあたり4×10個になるよう6ウェル・プレート(コーニング社製)に播種した。1.5μgのsiRNA No.2、No.3、No.4、No.5、No.6およびSEAP−siRNAそれぞれに、細胞内導入試薬ポリフェクト(polyfectR、キアゲン社製)10μLを添加して混合し、室温下5〜10分保持した後、各ウェルに添加した。5%CO存在下37℃で48時間から72時間インキュベーションし、細胞にそれぞれのsiRNAを導入した。
siRNAによるKLF5遺伝子の発現抑制は、以下に示すRT−PCRにより確認した。インキュベーション終了後、回収した細胞から、細胞溶解液ホモジェナイズ用キットのQIAシュレッダー(QIAshredder、キアゲン社製)および総RNA精製用キットのRNイージー(RNeasy、キアゲン社製)を用いてRNAを単離した。単離したRNAを、30〜50μLの注射用水(大塚蒸留水、大塚製薬株式会社製)で溶解し、逆転写反応によりcDNAを合成した。逆転写反応は、上記のRNA溶液(RNA1.0μg分)と、5×緩衝液2.5μL、0.1mol/Lジチオスレイトール(DTT)2.0μL、20mmol/L dNTP(ロッシュ社製)1.0μL、50μmol/Lランダムプライマー(宝酒造株式会社製)2.0μL、ヌクレアーゼ阻害剤スーパーアーゼ・イン(SUPERase・In、アンビオン社製)1.0μLおよびパワースクリプト(PowerScript)逆転写酵素(クロンテック社製)1.0μLを含む溶液1.0μgを混合し、合計18μLになるよう注射用水を加えた反応溶液で、42℃で1.5時間実施した。5×緩衝液およびDTTはパワースクリプト逆転写酵素に付属のものを用いた。
配列番号41および42の配列それぞれからなる2本のDNAを化学合成し、それぞれマウスKLF5遺伝子特異的なフォワードプライマー、リバースプライマーとした。これらのプライマーを用いたPCRにより、KLF5 cDNAから配列番号49の1268〜1428番目の配列に相当する161bpの断片が増幅される。
10×PCR緩衝液2.5μL、2.5mmol/L dNTP(ロッシュ製)2.0μL、5μmol/Lフォワードプライマー2.0μL、5μmol/Lリバースプライマー2.0μL、ホットスタータック(HotStarTaq)DNAポリメラーゼ(キアゲン社製、5単位/μL)0.125μL、18S rRNA特異的プライマー〔クォンタmRNA(QuantumRNA)クラシック18S内部標準、アンビオン社製〕2μL、注射用水13.375μL、cDNA1.0μLからなる25μLのPCR反応溶液を調製し、95℃で15分保持後、熱変性94℃で30秒間、アニーリング53℃で30秒間、伸長反応72℃で40秒間の反応を1サイクルとして、28サイクルのPCRを実施し、その後72℃で10分間保持した。10×PCR緩衝液はホットスタータックDNAポリメラーゼに付属のものを使用した。反応後の溶液の0.8%アガロースゲル電気泳動により、KLF5 mRNAに由来する増幅産物(161bp)を検出し、siRNAを導入しなかった細胞での増幅産物の量と比較した。内部標準として、18S rRNAに由来する増幅産物(488bp)を用いた。第1図に示すように、コントロールのSEAP−siRNAではKLF5遺伝子の発現の抑制が見られないのに対し、KLF5遺伝子に特異的な、siRNA No.2、No.3、No.4、No.5およびNo.6は、KLF5遺伝子の発現を抑制することが確認できた。中でも、siRNANo.3およびsiRNA No.4は強くKLF5遺伝子の発現を抑制した。
KLF5遺伝子に特異的なsiRNAとして、siRNA No.1、No.4、No.7、No.8、No.9、No.10およびNo.11を用いて、上記と同様にして、C3H/10T1/2細胞へのsiRNAの導入と、RT−PCRによるKLF5遺伝子の発現の解析を行った。第2図に示すように、コントロールのSEAP−siRNAではKLF5遺伝子の発現の抑制が見られないのに対し、KLF5遺伝子に特異的な、siRNA No.4、No.7、No.8、No.9、No.10およびNo.11は、KLF5遺伝子の発現を抑制することが確認できた。中でも、siRNA No.4、siRNA No.7、siRNA No.9およびsiRNA No.10は強くKLF5遺伝子の発現を抑制した。KLF5遺伝子に特異的であるにもかかわらず、siRNA No.1では抑制がみられなかった。
実施例2 KLF5遺伝子特異的なsiRNAによる、KLF5により転写が活性化される遺伝子の発現の抑制
(1)PDGF−A遺伝子の発現の抑制
KLF5遺伝子に特異的なsiRNAとして、siRNA No.1、No.4、No.7、No.8、No.9、No.10およびNo.11をC3H/10T1/2細胞へ導入し、RT−PCRにより、KLF5により転写が活性化される遺伝子であるPDGF−A遺伝子の発現の解析を行った。
実施例1(2)と同様にして、siRNAのC3H/10T1/2細胞への導入、cDNAの調製を行った。配列番号43および44の配列からなる2本のDNAを化学合成し、それぞれPDGF−A遺伝子特異的なフォワードプライマーおよびリバースプライマーとした。これらのプライマーを用いたPCRにより、PDGF−A cDNAから403bpの断片が増幅される。PDGF−A遺伝子特異的なフォワードプライマーおよびリバースプライマーを、KLF5遺伝子特異的なフォワードプライマーおよびリバースプライマーの代わりに用いて、実施例1(2)のKLF5遺伝子の発現解析と同様にして、PDGF−A遺伝子の発現を解析した。ただしPCRは、PCR反応溶液を95℃で15分間保持後、熱変性94℃で30秒間、アニーリング53℃で30秒間、伸長反応72℃で40秒間からなる反応を1サイクルとし、26サイクル実施し、その後72℃で10分間保持する条件で行い、電気泳動は1%アガロースゲルで行った。
第3図に示すように、コントロールのSEAP−siRNAではPDGF−A遺伝子の発現の抑制が見られないのに対し、KLF5遺伝子に特異的な、siRNA No.4、No.7、No.8、No.9、No.10およびNo.11は、KLF5により転写が活性化される遺伝子であるPDGF−A遺伝子の発現をも抑制することが確認できた。中でも、siRNA No.4、siRNA No.7、siRNA No.9およびsiRNA No.10は強くPDGF−A遺伝子の発現を抑制した。KLF5遺伝子に特異的であるにもかかわらず、siRNA No.1では抑制がみられなかった。
(2)SMemb遺伝子の発現の抑制
KLF5遺伝子に特異的なsiRNAとして、siRNA No.1、No.4、No.7、No.8、No.9、No.10およびNo.11をC3H/10T1/2細胞へ導入し、RT−PCRにより、KLF5により転写が活性化される遺伝子であるSMemb遺伝子の発現の解析を行った。
実施例1(2)と同様にして、siRNAのC3H/10T1/2細胞への導入、cDNAの調製を行った。配列番号45および46の配列からなる2本のDNAを化学合成し、それぞれSMemb遺伝子特異的なフォワードプライマーおよびリバースプライマーとした。これらのプライマーを用いたPCRにより、SMemb cDNAから235bpの断片が増幅される。SMemb遺伝子特異的なフォワードプライマーおよびリバースプライマーを、KLF5遺伝子特異的なフォワードプライマーおよびリバースプライマーの代わりに用いて、実施例1(2)のKLF5遺伝子の発現解析と同様にして、SMemb遺伝子の発現を解析した。ただしPCRは、PCR反応溶液を95℃で15分間保持後、熱変性94℃で30秒間、アニーリング53℃で30秒間、伸長反応72℃で40秒間からなる反応を1サイクルとし、26サイクル実施し、その後72℃で10分間保持する条件で行い、電気泳動は1%アガロースゲルで行った。
第4図に示すように、コントロールのSEAP−siRNAではSMemb遺伝子の発現の抑制が見られないのに対し、KLF5遺伝子に特異的な、siRNA No.4、No.7、No.8、No.9、No.10およびNo.11は、KLF5により転写が活性化される遺伝子であるSMemb遺伝子の発現をも抑制することが確認できた。中でも、siRNA No.4、siRNA No.7、siRNA No.9およびsiRNA No.10は強くSMemb遺伝子の発現を抑制した。KLF5遺伝子に特異的であるにもかかわらず、siRNA No.1では抑制がみられなかった。
(3)KLF5遺伝子特異的なsiRNAによる遺伝子発現の抑制の特異性
KLF5遺伝子に特異的なsiRNAによる遺伝子の発現の抑制が、KLF5遺伝子およびKLF5により転写が活性化される遺伝子に特異的であることを、KLF5遺伝子に特異的なsiRNAをC3H/10T1/2細胞へ導入し、RT−PCRにより血清応答因子(SRF)遺伝子の発現を解析することにより、検証した。SRF遺伝子は平滑筋細胞で多く発現する転写因子の遺伝子であり、KLF5により転写が活性化される遺伝子ではない。
KLF5遺伝子に特異的なsiRNAとして、siRNA No.1、No.4、No.7、No.9およびNo.10を用いて、実施例1(2)と同様にして、siRNAをC3H/10T1/2細胞へ導入した後、RT−PCRによる遺伝子発現の解析を行った。配列番号47および48の配列からなる2本のDNAを化学合成し、それぞれSRF遺伝子特異的なフォワードプライマーおよびリバースプライマーとした。これらのプライマーを用いたPCRにより、SRF cDNAから519bpの断片が増幅される。SRF遺伝子特異的なフォワードプライマーおよびリバースプライマーを、KLF5遺伝子特異的なフォワードプライマーおよびリバースプライマーの代わりに用いて、実施例1(2)のKLF5遺伝子の発現解析と同様にして、SRF遺伝子の発現を解析した。ただしPCRは、PCR反応溶液を95℃で15分間保持後、熱変性94℃で30秒間、アニーリング53℃で30秒間、伸長反応72℃で40秒間からなる反応を1サイクルとし、26サイクル実施し、その後72℃で10分間保持する条件で行い、電気泳動は1.2%アガロースゲルで行った。
第5図に示すように、KLF5遺伝子に特異的な、siRNA No.1、siRNA No.4、No.7、No.9およびNo.10全てにおいて、コントロールのSEAP−siRNAと同様に、SRF遺伝子の発現の抑制がみられなかった。したがって、KLF5遺伝子に特異的なsiRNAは、非特異的に、遺伝子全体の発現を抑制するのでなく、KLF5遺伝子およびKLFにより転写の活性化をうける遺伝子の発現を特異的に抑制することが明らかとなった。
実施例3 siRNAによるヒトKLF5遺伝子の発現抑制
実施例1で作製したsiRNA No.4は、マウスKLF5 cDNAの塩基配列(配列番号49)の1303〜1323番目の配列(AAAAGCTCACCTGAGGACTCA)をもとにしたsiRNAであり、C3H/10T1/2細胞においてマウスのKLF5遺伝子の発現を強く抑制した。しかし、このAAAAGCTCACCTGAGGACTCAの配列は、ヒトKLF5 cDNAの塩基配列(配列番号50)の1481〜1501番目にも存在するため、siRNA No.4はマウスだけでなくヒトのKLF5遺伝子の発現も抑制することが期待される。以下のようにして、siRNA No.4がヒトKLF5遺伝子の発現も強く抑制をすることを確認した。
ヒトさい帯静脈血管内皮細胞(HUVEC、入手先:三光純薬、製品番号:CC−2517)を約3×10個となるように6cmディッシュ(コーニング社)に播種した。200pmolのsiRNA No.4およびSEAP−siRNAそれぞれに、細胞内導入試薬(リポフェクトアミン2000、インビトロジェン社製)10μLを添加して混合し、室温下20分保持した後、全量を各ディッシュに添加した。5%CO存在下37℃で24時間インキュベーションし、細胞にそれぞれのsiRNAを導入した。
実施例1(2)に記載した方法と同じ方法で、細胞からRNAを単離し、RT−PCRによるヒトKLF5遺伝子の発現抑制を調べた。なお、KLF遺伝子特異的なフォワードプライマー、リバースプライマーとしては、実施例1で用いた配列番号41および42それぞれの配列からなるDNAを用いた。これらのプライマーを用いたPCRにより、ヒトKLF5 cDNAから配列番号50の1446〜1606番目の配列に相当する161bpの断片が増幅される。反応後の溶液の0.8%アガロースゲル電気泳動により、KLF5 mRNAに由来する増幅産物(161bp)を検出し、siRNAを導入しなかった細胞での増幅産物の量と比較した。内部標準として、18S rRNAに由来する増幅産物(488bp)を用いた。第6図に示すように、コントロールのSEAP−siRNAではKLF5遺伝子の発現の抑制が見られないのに対し、KLF5遺伝子に特異的な、siRNA No.4は、ヒトさい帯血管内皮細胞のKLF5遺伝子の発現を抑制していた。したがって、siRNA No.4はマウスのKLF5遺伝子たけでなく、ヒトのKLF5遺伝子の発現も強く抑制できることが確認された。
第2表に、実施例1でマウスKLF5遺伝子の発現を抑制したsiRNA No.2〜4および7〜11において、設計のもとにしたマウスKLF5 cDNA上の21塩基の配列および配列番号49におけるその位置と、該マウス配列に対応するヒトcDNA上の21塩基の配列、配列番号50におけるその位置、該ヒト配列から5’端のAAを除いたRNAの配列を表す配列番号を示した。なお、siRNA No.5および6は、非コード領域の配列をもとにしているため、対応するヒト配列は示さなかった。これらのヒト配列をもとにした二本鎖RNAもヒトKLF5遺伝子の発現を抑制すると考えられる。なお、siRNA No.4、8および10は、対応するヒト配列がマウス配列と全く同じであり、siRNA No.8および10は、siRNA No.4と同様に、マウスKLF5遺伝子だけでなくヒトKLF5遺伝子の発現を抑制すると考えられた。
Figure 2005010185
実施例4 KLF5遺伝子の発現を抑制するsiRNAによる血管内皮細胞の遊走の阻害
KLF5遺伝子の発現を抑制するsiRNA No.4の、血管内皮細胞の遊走に対する阻害を、以下に示すような微小孔フィルターを用いた血管内皮細胞のインビトロ細胞遊走試験(J.Cell Biol.,147,1073−1084,1999;Becton,Dickinson and Company,Technical Bulletin,429,1998)により調べた。
ヒトさい帯静脈血管内皮細胞(HUVEC、入手先:三光純薬、製品番号:CC−2517)を約3×10個となるように6cmディッシュ(コーニング社)に播種した。siRNA No.4およびコントロールのSEAP−siRNAそれぞれ200pmolに10μLの細胞内導入試薬(リポフェクタミン2000,インビトロジェン社製)を添加、混合し、室温下20分インキュベーションした後、全量をディッシュに添加した。5%CO存在下37℃で18時間インキュベーションし、siRNAを導入した。
siRNA導入細胞を洗浄後、5μg/mLの生細胞染色用蛍光色素(カルセインAM、同仁化学社製)で細胞を蛍光標識した。得られた蛍光標識細胞は、トリプシンで細胞を剥離、洗浄後、細胞濃度5×10個/mLになるように血管内皮細胞用基礎培地(EBM−2、三光純薬社製)で再懸濁した。HTSフルオロブロック個別型インサート(24ウェルプレート用ポアサイズ3μmインサート、BDファルコン)を24ウェルセルカルチャーインサート用プレート(BDファルコン)に取り付けた後、インサート側には蛍光標識細胞の懸濁液100μLを、24ウェルプレート側には10ng/mLのヒトVEGF(RアンドDシステムズ社製)を含有する血管内皮細胞用増殖培地(ブレットキットEGM−2、三光純薬製)600μLをそれぞれ添加した。
添加後4時間まで、経時的にフィルターの微小孔を遊走してきた細胞をプレート底から蛍光顕微鏡で観察および撮影した。得られた画像から、画像解析ソフトウェア(Scion Image、Scion社製)を用いて、遊走細胞数を計測した。第7図に示すように、コントロールのSEAP−siRNAと比較して、KLF5遺伝子特異的なsiRNA No.4を導入した血管内皮細胞では、遊走細胞数が低下した。したがって、KLF5遺伝子の発現を抑制するsiRNAにより、血管内皮細胞の遊走を阻害できることが確認された。
実施例5 KLF5遺伝子の発現を抑制するsiRNAのインビボでの血管新生阻害効果
KLF5遺伝子の発現を抑制するsiRNA No.4のインビボでの血管新生阻害効果を、以下に示すようなマトリゲル(Matrigel)を用いたアッセイ(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,94,13612−13617,1997;J.Biol.Chem.,277,6667−6675,2002〕により調べた。
マトリゲル混合物は、マトリゲルマトリックス(BD バイオサイエンス製)0.5mL(5mg量)にマウスVEGF〔RアンドDシステムズ社(R & D Systems Inc.)製、カタログ番号493−MV〕0.6μg、ウシ塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF、RアンドDシステムズ社製、カタログ番号133−FB)0.6μgおよびsiRNA No.4 10μgを加え、氷上でピペッティングにより混合して調製した。コントロールとして、siRNA No.4の代わりにSEAP−siRNAを用いたマトリゲル混合物も調製した。調製したマトリゲル混合物を6週齢のオスのC57BL/6マウスの背中の皮下に注射した。注射14日後にゲル化したマトリゲルを取り出した。取り出したマトリゲルをPBSで1回洗浄し、10%ホルムアルデヒド−PBS溶液で固定した。固定したマトリゲルを5mm厚にカットしてパラフィンに包埋し、通常の組織学的手法を使用して切片化し、ヘマトキシリン−エオジンで染色した。染色したマトリゲル切片を顕微鏡で観察した。
その結果、コントロールのSEAP−siRNAを加えたマトリゲルでは、マトリゲルに添加したVEGFおよびbFGFに反応して、多数の血管内皮細胞が遊走して、マトリゲル内に浸潤しているのに対し、siRNA No.4を加えたマトリゲルではマトリゲル内への血管内皮細胞の浸潤が抑制されていた。したがってKLF5遺伝子の発現を抑制するsiRNAにより、血管新生が阻害できることが確認された。
実施例6 KLF5遺伝子の発現を抑制するsiRNAのインビボでの抗腫瘍効果
KLF5遺伝子の発現を抑制するsiRNA No.4のインビボでの抗腫瘍効果を、以下のように腫瘍の増殖抑制を指標にして調べた。
オス5週齢のC57BL/6マウスの背中の皮下に、マウスルイス肺ガン細胞株LL/2(入手先:大日本製薬株式会社、カタログ番号:09−1642)を1×10個注射した。注射2日後、ルイス肺ガンが固定されているのを確認し、ガン周辺皮下にsiRNA No.4を注射した。コントロールとしてSEAP−siRNAを同様にガン周辺に皮下投与した。siRNA No.4およびSEAP−siRNAの投与量はマウス1匹あたり1μgを50μLの注射用水(大塚蒸留水、大塚製薬株式会社製)で溶解したものを用い、投与期間は連続8日間、投与回数は1日1回で行った。投与開始後の腫瘍の体積を下記式(1)を用いて算出し、腫瘍体積の増加をコントロールと比較した。
式(1):腫瘍体積(mm)={腫瘍長さ(mm)×腫瘍幅(mm)}/2
その結果、第8図に示すように、コントロールのSEAP−siRNAを投与したマウスでの腫瘍体積は、投与開始より増加していくのに対し、siRNA No.4を投与したマウスの腫瘍体積の増加は投与後1日目より抑制された。したがってKLF5遺伝子の発現を抑制するsiRNAはインビボでの抗腫瘍効果を有し、投与により腫瘍の増殖を抑制できることが確認された。
配列番号1 −発明者:永井良三;眞鍋一郎;石原淳
発明者:鳥取恒彰
配列番号17−siRNA No.1 センス鎖
配列番号18−siRNA No.1 アンチセンス鎖
配列番号19−siRNA No.2 センス鎖
配列番号20−siRNA No.2 アンチセンス鎖
配列番号21−siRNA No.3 センス鎖
配列番号22−siRNA No.3 アンチセンス鎖
配列番号23−siRNA No.4 センス鎖
配列番号24−siRNA No.4 アンチセンス鎖
配列番号25−siRNA No.5 センス鎖
配列番号26−siRNA No.5 アンチセンス鎖
配列番号27−siRNA No.6 センス鎖
配列番号28−siRNA No.6 アンチセンス鎖
配列番号29−siRNA No.7 センス鎖
配列番号30−siRNA No.7 アンチセンス鎖
配列番号31−siRNA No.8 センス鎖
配列番号32−siRNA No.8 アンチセンス鎖
配列番号33−siRNA No.9 センス鎖
配列番号34−siRNA No.9 アンチセンス鎖
配列番号35−siRNA No.10 センス鎖
配列番号36−siRNA No.10 アンチセンス鎖
配列番号37−siRNA No.11 センス鎖
配列番号38−siRNA No.12 アンチセンス鎖
配列番号39−siRNA−SEAP センス鎖
配列番号40−siRNA−SEAP アンチセンス鎖
配列番号41−KLF5遺伝子特異的フォワードプライマー
配列番号42−KLF5遺伝子特異的リバースプライマー
配列番号43−PDGF−A遺伝子特異的フォワードプライマー
配列番号44−PDGF−A遺伝子特異的リバースプライマー
配列番号45−SMemb遺伝子特異的フォワードプライマー
配列番号46−SMemb遺伝子特異的リバースプライマー
配列番号47−SRF遺伝子特異的フォワードプライマー
配列番号48−SRF遺伝子特異的リバースプライマー
【配列表】
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Claims (13)

  1. KLF5 mRNAの連続する15〜30塩基の配列および該配列と相補的な配列を含み、KLF5遺伝子の発現を抑制するRNA。
  2. KLF5 mRNAがヒトまたはマウスのKLF5 mRNAである、請求項1に記載のRNA。
  3. RNAが、KLF5 mRNAの連続する15〜30塩基の配列の鎖および該配列と相補的な配列の鎖からなる二本鎖RNAのそれぞれの鎖の3’端に1〜6個のヌクレオチドを付加した二本鎖RNAである、請求項1または2に記載のRNA。
  4. RNAが、KLF5 mRNAの連続する15〜30塩基の配列からなるRNAおよび該配列と相補的な配列からなるRNAを、スペーサーオリゴヌクレオチドでつなぎ、3’端に1〜6個のヌクレオチドを付加した、ヘアピン構造を形成するRNAである、請求項1または2に記載のRNA。
  5. 以下の(a)〜(c)からなる群から選ばれるKLF5遺伝子の発現を抑制するRNA。
    (a)配列番号2〜16のいずれか1つの配列の鎖および該配列と相補的な配列の鎖からなる二本鎖RNAのそれぞれの鎖の3’端に2〜4個のウリジル酸またはデオキシチミジル酸を付加した二本鎖RNA。
    (b)配列番号2〜16のいずれか1つの配列からなるRNAおよび該配列と相補的な配列からなるRNAを2個のウリジル酸またはデオキシチミジル酸を5’端に有するスペーサーオリゴヌクレオチドでつなぎ、3’端に2〜4個のウリジル酸またはデオキシ体チミジル酸を付加した、ヘアピン構造を形成するRNA。
    (c)配列番号2〜11のいずれか1つの配列の鎖および該配列と相補的な配列の鎖からなる二本鎖RNAのそれぞれの鎖の3’端に2個のウリジル酸を付加した二本鎖RNA。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載のRNAを発現するベクター。
  7. 請求項1〜5のいずれか1項に記載のRNAまたは請求項6に記載のベクターを細胞に導入
    することにより、該細胞中のKLF5遺伝子の発現を抑制する方法。
  8. 請求項1〜5のいずれか1項に記載のRNAまたは請求項6に記載のベクターを細胞に導入することにより、該細胞中のKLF5により転写が活性化される遺伝子の発現を抑制する方法。
  9. KLF5により転写が活性化される遺伝子が血小板由来増殖因子A鎖遺伝子またば平滑筋ミオシン重鎖SMemb遺伝子である請求項8に記載の方法。
  10. 請求項1〜5のいずれか1項に記載のRNAまたは請求項6に記載のベクターを有効成分として含有する医薬組成物。
  11. 請求項1〜5のいずれか1項に記載のRNAまたは請求項6に記載のベクターを有効成分として含有する、血管新生を阻害するための医薬組成物。
  12. 請求項1〜5のいずれか1項に記載のRNAまたは請求項6に記載のベクターを有効成分として含有する、心血管系疾患もしくは癌の治療薬または予防薬。
  13. 心血管系疾患が動脈硬化、冠動脈インターベンション後の再狭窄または心肥大である請求項12に記載の治療薬または予防薬。
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