JPWO2004087208A1 - 熱ショックタンパク質と磁性微粒子からなる悪性腫瘍の温熱治療剤 - Google Patents
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Abstract
熱ショックタンパク質又は熱ショックタンパク質を悪性腫瘍細胞内で発現できるように熱ショックタンパク質遺伝子を組み込んだベクターと磁性微粒子とを含む悪性腫瘍の温熱治療剤。この治療剤は、従来の温熱治療剤に比べ、各種の悪性腫瘍に対して高い治療効果を示す。
Description
本発明は、悪性腫瘍の温熱治療剤、さらに詳しくは、熱ショックタンパク質と磁性微粒子とを含む悪性腫瘍の温熱治療剤に関する。
これまで悪性腫瘍を治療するために、外科療法、放射線療法、抗ガン剤による化学療法が主として用いられてきた。診断技術や臨床技術も大きく進歩し悪性腫瘍の治療は不可能ではなくなってきている。
しかし、現在でも死亡原因に占める悪性腫瘍の割合は3割を越えており、悪性腫瘍に対する新しい治療法の開発が求められている。そのため新たな治療法として遺伝子療法、免疫療法、温熱療法などの方法の開発も始まっている。
上記した悪性腫瘍の新たな治療法の中で、温熱療法は、古代ギリシャから行われてきた古い治療法で、悪性腫瘍細胞が正常細胞に比べて熱に弱いという性質を利用した治療法である。温熱療法として広く用いられているのは、悪性腫瘍の組織がある部位を全体的に加温し、熱に弱い悪性腫瘍細胞を殺す方法である。
悪性腫瘍の温熱療法として、内部発熱体として磁性微粒子を用い、この磁性微粒子を電磁波により加熱する方法が知られている。悪性腫瘍組織の均一な加温による治療効果の向上のため、磁性微粒子として磁性マグネタイトを用いること、および、悪性腫瘍細胞へのマグネタイトの取り込み効率を高めるため、悪性腫瘍細胞の表面が負に帯電していることから、正の電荷をもった脂質膜(リポソーム)でマグネタイトを被覆することによりマグネタイトカチオニックリポソーム(MCL)を作り、これを用いることが知られている(新海ら、Jpn.J.Hyperthermic Oncol.,10,168−177(1994)および新海ら、Biotech.Appl.Biochem.,21,125−137(1994))。
悪性腫瘍の温熱療法は、それが非侵襲的な治療法であるために注目を集めているが、この温熱療法も、その単独使用では、種々の悪性腫瘍を完全に治療するのは困難である場合が多い。
したがって、種々の悪性腫瘍をより効果的に治療できる改良された温熱療法が求められている。
しかし、現在でも死亡原因に占める悪性腫瘍の割合は3割を越えており、悪性腫瘍に対する新しい治療法の開発が求められている。そのため新たな治療法として遺伝子療法、免疫療法、温熱療法などの方法の開発も始まっている。
上記した悪性腫瘍の新たな治療法の中で、温熱療法は、古代ギリシャから行われてきた古い治療法で、悪性腫瘍細胞が正常細胞に比べて熱に弱いという性質を利用した治療法である。温熱療法として広く用いられているのは、悪性腫瘍の組織がある部位を全体的に加温し、熱に弱い悪性腫瘍細胞を殺す方法である。
悪性腫瘍の温熱療法として、内部発熱体として磁性微粒子を用い、この磁性微粒子を電磁波により加熱する方法が知られている。悪性腫瘍組織の均一な加温による治療効果の向上のため、磁性微粒子として磁性マグネタイトを用いること、および、悪性腫瘍細胞へのマグネタイトの取り込み効率を高めるため、悪性腫瘍細胞の表面が負に帯電していることから、正の電荷をもった脂質膜(リポソーム)でマグネタイトを被覆することによりマグネタイトカチオニックリポソーム(MCL)を作り、これを用いることが知られている(新海ら、Jpn.J.Hyperthermic Oncol.,10,168−177(1994)および新海ら、Biotech.Appl.Biochem.,21,125−137(1994))。
悪性腫瘍の温熱療法は、それが非侵襲的な治療法であるために注目を集めているが、この温熱療法も、その単独使用では、種々の悪性腫瘍を完全に治療するのは困難である場合が多い。
したがって、種々の悪性腫瘍をより効果的に治療できる改良された温熱療法が求められている。
本発明は、悪性腫瘍の温熱療法、特に、磁性微粒子を使用する悪性腫瘍の温熱療法において、熱ショックタンパク質を用いると、その治療効果が飛躍的に改善することを見出すことにより達成されたものである。
したがって、本発明は、熱ショックタンパク質と磁性微粒子とを含む悪性腫瘍の温熱治療剤である。
また、熱ショックタンパク質は、熱ショックタンパク質遺伝子を悪性腫瘍細胞内で発現させたものであっても、上記と同様な効果が得られることが知見された。
したがって、さらに、本発明は、熱ショックタンパク質を悪性腫瘍細胞内で発現できるように熱ショックタンパク質遺伝子を組み込んだベクターと磁性微粒子とを含む悪性腫瘍の温熱治療剤である。
本発明の温熱治療剤は、熱ショックタンパク質と磁性微粒子とを、あるいは、熱ショックタンパク質遺伝子を組み込んだベクターと磁性微粒子とを、一緒に含んでも、別々に含んでいても良い。
本発明に用いる熱ショックタンパク質は、本発明の効果を奏するものであれば特に限定されないが、好ましくは、HSP90、HSP70、HSP60、HSP40、HSP27、HSP110、gp96から選択された1つ以上の熱ショックタンパク質であり、特に好ましくは、HSP70、HSP90、gp96である。
また、本発明に用いる熱ショックタンパク質の製造法は特に限定されず、該熱ショックタンパク質は、天然由来のもの、遺伝子組換えによるもの、化学合成によるものなどを含む。
本発明に用いる磁性微粒子としては、電磁波を吸収して発熱し、人体に無害なものであれば、使用することができるが、特に人体に吸収されにくい周波数の電磁波を吸収して発熱するものが有利であり、なかでも強磁性微粒子は、電磁波の吸収効率が良好であることから好ましく使用でき、例えば、マグネタイト、フェライトなどのセラミックあるいはパーマロイなどの強磁性金属等を例示できる。
なお、前記磁性微粒子は、5μm以下、特に1μm以下の粒径であることが望ましい。
本発明に用いる磁性微粒子として好ましいのは、正の電荷をもった脂質膜(リポソーム)を利用して、これで磁性マグネタイトを被覆することにより調製したマグネタイトカチオニックリポソーム(MCL)である。悪性腫瘍細胞の表面が負に帯電していることから、MCLは、悪性腫瘍細胞に選択的に集中する。MCLは、これを悪性腫瘍に直接注入すると、エンドサイトーシスによって悪性腫瘍細胞内に取り込まれることが確認された。
また、本発明に用いる磁性微粒子として好ましいのは、表面に悪性腫瘍細胞に選択的に結合する抗体を結合した磁性微粒子である。抗体を結合した磁性微粒子は、悪性腫瘍細胞の付近に選択的に集中するので、悪性腫瘍細胞以外を過熱することなく温熱療法を行うことができる。
本発明の治療剤に使用する熱ショックタンパク質を悪性腫瘍細胞内で発現できるように熱ショックタンパク質遺伝子を組み込んだベクターは、熱ショックタンパク質遺伝子を適当な調節遺伝子とともに、プラスミドやウィルス等のベクターに発現可能なように組み込むことによって得られる。
本発明は、悪性腫瘍の温熱療法における熱ショックタンパク質の使用にも関する。すなわち、本発明は、熱ショックタンパク質を悪性腫瘍に投与した後、該悪性腫瘍を温熱治療することを含む、悪性腫瘍の温熱治療法、特に、熱ショックタンパク質と磁性微粒子とを悪性腫瘍に投与した後、該悪性腫瘍を電磁場におくことを含む、悪性腫瘍の温熱治療方法である。熱ショックタンパク質と磁性微粒子とは、同時にまたは時間をおいて、悪性腫瘍に投与することができるが、同時に投与するのが望ましい。熱ショックタンパク質と磁性微粒子は、悪性腫瘍組織およびその近傍に投与するのが望ましい。
本発明は、さらに、悪性腫瘍の温熱治療における熱ショックタンパク質遺伝子の使用に関する。すなわち、熱ショックタンパク質を悪性腫瘍細胞内で発現できるように熱ショック遺伝子を組み込んだベクターを悪性腫瘍に注入して悪性腫瘍内で熱ショックタンパク質を発現させた後、悪性腫瘍を温熱治療にすることを含む悪性腫瘍の温熱治療法、特に、本発明は、熱ショックタンパク質を悪性腫瘍細胞内で発現できるように熱ショックタンパク質遺伝子を組み込んだベクターを悪性腫瘍に注入して悪性腫瘍細胞内で熱ショックタンパク質を発現させ、次いで、磁性微粒子を該悪性腫瘍に投与した後、該悪性腫瘍を電磁場におくことを含む、悪性腫瘍の温熱治療方法である。磁性微粒子の悪性腫瘍への投与は、悪性腫瘍細胞内で熱ショックタンパク質が十分に発現した後に行うのが好ましい。
本発明における悪性腫瘍には、あらゆる種類の悪性腫瘍が含まれ得るが、例えば、悪性黒色腫等の皮膚ガン、肺ガン、大腸ガン、乳ガン、脳腫瘍、悪性組織球腫、骨肉腫、肝ガン、前立腺ガン、膵臓ガン、食道ガン、膀胱ガン、肺ガン、卵巣ガン、子宮ガン、胃ガンがあげられ、特に、悪性黒色腫、肝ガン、前立腺ガン、大腸ガンがあげられる。
本発明の治療法で使用する電磁場としては、高周波磁場を用いることが好ましく、特に、周波数が1KHz〜10MHzの電磁波による高周波磁場であることが好ましい。1KHzより高い周波数の高周波磁場が好ましい理由は、磁気ヒステリシス加熱の効率が高いからであり、10MHzより低い周波数の高周波磁場が好ましい理由は、誘導電流による生体の発熱を生起させることなく磁性微粒子を加熱することができるからである。
したがって、本発明は、熱ショックタンパク質と磁性微粒子とを含む悪性腫瘍の温熱治療剤である。
また、熱ショックタンパク質は、熱ショックタンパク質遺伝子を悪性腫瘍細胞内で発現させたものであっても、上記と同様な効果が得られることが知見された。
したがって、さらに、本発明は、熱ショックタンパク質を悪性腫瘍細胞内で発現できるように熱ショックタンパク質遺伝子を組み込んだベクターと磁性微粒子とを含む悪性腫瘍の温熱治療剤である。
本発明の温熱治療剤は、熱ショックタンパク質と磁性微粒子とを、あるいは、熱ショックタンパク質遺伝子を組み込んだベクターと磁性微粒子とを、一緒に含んでも、別々に含んでいても良い。
本発明に用いる熱ショックタンパク質は、本発明の効果を奏するものであれば特に限定されないが、好ましくは、HSP90、HSP70、HSP60、HSP40、HSP27、HSP110、gp96から選択された1つ以上の熱ショックタンパク質であり、特に好ましくは、HSP70、HSP90、gp96である。
また、本発明に用いる熱ショックタンパク質の製造法は特に限定されず、該熱ショックタンパク質は、天然由来のもの、遺伝子組換えによるもの、化学合成によるものなどを含む。
本発明に用いる磁性微粒子としては、電磁波を吸収して発熱し、人体に無害なものであれば、使用することができるが、特に人体に吸収されにくい周波数の電磁波を吸収して発熱するものが有利であり、なかでも強磁性微粒子は、電磁波の吸収効率が良好であることから好ましく使用でき、例えば、マグネタイト、フェライトなどのセラミックあるいはパーマロイなどの強磁性金属等を例示できる。
なお、前記磁性微粒子は、5μm以下、特に1μm以下の粒径であることが望ましい。
本発明に用いる磁性微粒子として好ましいのは、正の電荷をもった脂質膜(リポソーム)を利用して、これで磁性マグネタイトを被覆することにより調製したマグネタイトカチオニックリポソーム(MCL)である。悪性腫瘍細胞の表面が負に帯電していることから、MCLは、悪性腫瘍細胞に選択的に集中する。MCLは、これを悪性腫瘍に直接注入すると、エンドサイトーシスによって悪性腫瘍細胞内に取り込まれることが確認された。
また、本発明に用いる磁性微粒子として好ましいのは、表面に悪性腫瘍細胞に選択的に結合する抗体を結合した磁性微粒子である。抗体を結合した磁性微粒子は、悪性腫瘍細胞の付近に選択的に集中するので、悪性腫瘍細胞以外を過熱することなく温熱療法を行うことができる。
本発明の治療剤に使用する熱ショックタンパク質を悪性腫瘍細胞内で発現できるように熱ショックタンパク質遺伝子を組み込んだベクターは、熱ショックタンパク質遺伝子を適当な調節遺伝子とともに、プラスミドやウィルス等のベクターに発現可能なように組み込むことによって得られる。
本発明は、悪性腫瘍の温熱療法における熱ショックタンパク質の使用にも関する。すなわち、本発明は、熱ショックタンパク質を悪性腫瘍に投与した後、該悪性腫瘍を温熱治療することを含む、悪性腫瘍の温熱治療法、特に、熱ショックタンパク質と磁性微粒子とを悪性腫瘍に投与した後、該悪性腫瘍を電磁場におくことを含む、悪性腫瘍の温熱治療方法である。熱ショックタンパク質と磁性微粒子とは、同時にまたは時間をおいて、悪性腫瘍に投与することができるが、同時に投与するのが望ましい。熱ショックタンパク質と磁性微粒子は、悪性腫瘍組織およびその近傍に投与するのが望ましい。
本発明は、さらに、悪性腫瘍の温熱治療における熱ショックタンパク質遺伝子の使用に関する。すなわち、熱ショックタンパク質を悪性腫瘍細胞内で発現できるように熱ショック遺伝子を組み込んだベクターを悪性腫瘍に注入して悪性腫瘍内で熱ショックタンパク質を発現させた後、悪性腫瘍を温熱治療にすることを含む悪性腫瘍の温熱治療法、特に、本発明は、熱ショックタンパク質を悪性腫瘍細胞内で発現できるように熱ショックタンパク質遺伝子を組み込んだベクターを悪性腫瘍に注入して悪性腫瘍細胞内で熱ショックタンパク質を発現させ、次いで、磁性微粒子を該悪性腫瘍に投与した後、該悪性腫瘍を電磁場におくことを含む、悪性腫瘍の温熱治療方法である。磁性微粒子の悪性腫瘍への投与は、悪性腫瘍細胞内で熱ショックタンパク質が十分に発現した後に行うのが好ましい。
本発明における悪性腫瘍には、あらゆる種類の悪性腫瘍が含まれ得るが、例えば、悪性黒色腫等の皮膚ガン、肺ガン、大腸ガン、乳ガン、脳腫瘍、悪性組織球腫、骨肉腫、肝ガン、前立腺ガン、膵臓ガン、食道ガン、膀胱ガン、肺ガン、卵巣ガン、子宮ガン、胃ガンがあげられ、特に、悪性黒色腫、肝ガン、前立腺ガン、大腸ガンがあげられる。
本発明の治療法で使用する電磁場としては、高周波磁場を用いることが好ましく、特に、周波数が1KHz〜10MHzの電磁波による高周波磁場であることが好ましい。1KHzより高い周波数の高周波磁場が好ましい理由は、磁気ヒステリシス加熱の効率が高いからであり、10MHzより低い周波数の高周波磁場が好ましい理由は、誘導電流による生体の発熱を生起させることなく磁性微粒子を加熱することができるからである。
図1は、実施例1に記載したrmHSP70を使用する温熱免疫療法の実験の流れを示す。
図2は、実施例1において、ELISPOTによりIFN−γ産生能をアッセイした結果を示す。ex vivo処理後の脾臓細胞集団がIFN−γを分泌する能力をELISPOTアッセイで評価した。HSP70を投与し、磁場照射(温熱処理)したマウスからの脾臓細胞:○;磁場照射(温熱処理)したマウス:△;*p<0.01である。
図3は、実施例1における、磁場照射中の腫瘍(○)および直腸内(●)の温度変化を示す。データ点及びバーは、5匹のマウスの平均値及びSDを示す。
図4は、実施例1における、rmHSP70の投与と温熱療法の組合せによる腫瘍体積の変化を示す。A群:MCL注入後、温熱処理なし;B群:MCL注入後、温熱処理あり;C群:rmHSP70を80μg投与後、温熱処理なし;D群:MCLと20μgのrmHSP70を投与後、温熱処理あり;E群:MCLと80μgのrmHSP70を投与後、温熱処理あり。
図5は、実施例1における温熱療法後90日間の担癌マウスの生存率を示す。A群(n=10):■;B群(n=10):□;C群(n=10):●;D群(n=10):○;E群(n=10):△。
図6は、実施例1における、B16メラノーマ細胞に対する脾臓細胞の細胞毒性活性を示す。脾臓細胞は、温熱治療の2週間後にE群のマウス(○)およびナイーブマウス(●)からのものであった。エフェクター:ターゲット(E:T)比は、100:1〜25:1であった。データポイントおよびバーは、3つの独立した実験の平均値およびSDを示す。
図7は、実施例2で使用したプラスミドの構造を示す。
図8は、実施例2における、hsp70遺伝子を用いる温熱免疫療法の実験の流れを示す。
図9は、実施例2における、hsp70遺伝子の投与と温熱療法の組合せによる抗腫瘍効果を示す。MCLの注入後、温熱治療なし:(F);MCLの投与後、温熱治療:(G);hsp70投与:(H);nullおよびMCL投与後、温熱治療:(I);hsp70とMCLの投与後、温熱処理(J)。
図10は、実施例2における温熱療法後90日間の担癌マウスの生存率を示す。F(無治療)群(n=10):■;B(温熱)群(n=10):□;C(hsp70)群(n=10):●;D(null+温熱)群(n=10):○;E(hsp70+温熱)群(n=10):△。
図11は、実施例2における、B16メラノーマ細胞に対する脾臓細胞の細胞毒性活性を示す。脾臓細胞は、温熱治療の2週間後にJ群のマウス(○)およびナイーブマウス(●)からのものであった。エフェクター:ターゲット(E:T)比は、100:1〜25:1であった。データポイントおよびバーは、3つの独立した実験の平均値およびSDを示す。
図12は、実施例2における、in vivo温熱治療の24時間後の誘導型HSP70の濃度を示す。腫瘍における誘導型HSP70濃度をELISA法により決定した。無治療群(白色バー);温熱群(灰色バー);rmHSP70(80μg)+温熱群(点バー);hsp70遺伝子+温熱群(黒色バー)。
図2は、実施例1において、ELISPOTによりIFN−γ産生能をアッセイした結果を示す。ex vivo処理後の脾臓細胞集団がIFN−γを分泌する能力をELISPOTアッセイで評価した。HSP70を投与し、磁場照射(温熱処理)したマウスからの脾臓細胞:○;磁場照射(温熱処理)したマウス:△;*p<0.01である。
図3は、実施例1における、磁場照射中の腫瘍(○)および直腸内(●)の温度変化を示す。データ点及びバーは、5匹のマウスの平均値及びSDを示す。
図4は、実施例1における、rmHSP70の投与と温熱療法の組合せによる腫瘍体積の変化を示す。A群:MCL注入後、温熱処理なし;B群:MCL注入後、温熱処理あり;C群:rmHSP70を80μg投与後、温熱処理なし;D群:MCLと20μgのrmHSP70を投与後、温熱処理あり;E群:MCLと80μgのrmHSP70を投与後、温熱処理あり。
図5は、実施例1における温熱療法後90日間の担癌マウスの生存率を示す。A群(n=10):■;B群(n=10):□;C群(n=10):●;D群(n=10):○;E群(n=10):△。
図6は、実施例1における、B16メラノーマ細胞に対する脾臓細胞の細胞毒性活性を示す。脾臓細胞は、温熱治療の2週間後にE群のマウス(○)およびナイーブマウス(●)からのものであった。エフェクター:ターゲット(E:T)比は、100:1〜25:1であった。データポイントおよびバーは、3つの独立した実験の平均値およびSDを示す。
図7は、実施例2で使用したプラスミドの構造を示す。
図8は、実施例2における、hsp70遺伝子を用いる温熱免疫療法の実験の流れを示す。
図9は、実施例2における、hsp70遺伝子の投与と温熱療法の組合せによる抗腫瘍効果を示す。MCLの注入後、温熱治療なし:(F);MCLの投与後、温熱治療:(G);hsp70投与:(H);nullおよびMCL投与後、温熱治療:(I);hsp70とMCLの投与後、温熱処理(J)。
図10は、実施例2における温熱療法後90日間の担癌マウスの生存率を示す。F(無治療)群(n=10):■;B(温熱)群(n=10):□;C(hsp70)群(n=10):●;D(null+温熱)群(n=10):○;E(hsp70+温熱)群(n=10):△。
図11は、実施例2における、B16メラノーマ細胞に対する脾臓細胞の細胞毒性活性を示す。脾臓細胞は、温熱治療の2週間後にJ群のマウス(○)およびナイーブマウス(●)からのものであった。エフェクター:ターゲット(E:T)比は、100:1〜25:1であった。データポイントおよびバーは、3つの独立した実験の平均値およびSDを示す。
図12は、実施例2における、in vivo温熱治療の24時間後の誘導型HSP70の濃度を示す。腫瘍における誘導型HSP70濃度をELISA法により決定した。無治療群(白色バー);温熱群(灰色バー);rmHSP70(80μg)+温熱群(点バー);hsp70遺伝子+温熱群(黒色バー)。
本発明で使用する、表面に悪性腫瘍細胞に選択的に結合する抗体を結合した磁性微粒子は、たとえば、特開平3−128331号公報に記載されている方法、すなわち、磁性微粒子に二官能性架橋剤を結合させた後、これに悪性腫瘍細胞に選択的に結合する抗体を反応させることにより製造できる。
前記悪性腫瘍細胞に選択的に結合する抗体としては、例えば、肺癌に対するモノクロナール抗体(HB4C5)、大腸癌に対するモノクロナール抗体(17−1A)、乳癌に対するモノクロナール抗体(H15F2)等を使用することができる。
前記磁性微粒子が、強磁性金属である場合には、前記強磁性金属に酸化処理を施して表面に酸化被膜を形成した後、二官能性架橋剤を結合させることが有利である。
前記二官能性架橋剤を結合させる方法としては、例えば、磁性微粒子にγ−アミノプロピルトリエトキシシランおよびグルタルアルデヒドを順に結合させる方法、ビニルアルデヒドおよびアクリルアルデヒドを順に結合させる方法、あるいはアミノシランおよびポリエチレングリコールを順に結合させる方法等を使用することが有利である。
本発明で使用する熱ショックタンパク質は、原核生物、真核生物と広範囲に存在し、細胞内全タンパク質の約5%を占めている分子シャペロンタンパク質である。熱ショックタンパク質は、その名前の通り、熱などのストレスによって高発現し、細胞内タンパク質に占める割合も15%まで上昇する。このように多く細胞内で発現している熱ショックタンパク質の働きは多様である。
本発明者は、熱ショックタンパク質が“抗原の運び手”として働き、悪性腫瘍細胞を加温することによって細胞表面のMHCクラス1の発現量が増えることを確認している。
前記悪性腫瘍細胞に選択的に結合する抗体としては、例えば、肺癌に対するモノクロナール抗体(HB4C5)、大腸癌に対するモノクロナール抗体(17−1A)、乳癌に対するモノクロナール抗体(H15F2)等を使用することができる。
前記磁性微粒子が、強磁性金属である場合には、前記強磁性金属に酸化処理を施して表面に酸化被膜を形成した後、二官能性架橋剤を結合させることが有利である。
前記二官能性架橋剤を結合させる方法としては、例えば、磁性微粒子にγ−アミノプロピルトリエトキシシランおよびグルタルアルデヒドを順に結合させる方法、ビニルアルデヒドおよびアクリルアルデヒドを順に結合させる方法、あるいはアミノシランおよびポリエチレングリコールを順に結合させる方法等を使用することが有利である。
本発明で使用する熱ショックタンパク質は、原核生物、真核生物と広範囲に存在し、細胞内全タンパク質の約5%を占めている分子シャペロンタンパク質である。熱ショックタンパク質は、その名前の通り、熱などのストレスによって高発現し、細胞内タンパク質に占める割合も15%まで上昇する。このように多く細胞内で発現している熱ショックタンパク質の働きは多様である。
本発明者は、熱ショックタンパク質が“抗原の運び手”として働き、悪性腫瘍細胞を加温することによって細胞表面のMHCクラス1の発現量が増えることを確認している。
1 実験材料と実験方法
1−1 悪性腫瘍細胞と実験動物
悪性腫瘍細胞はマウス悪性黒色腫B16メラノーマ細胞(Riken Cell Bank)を用いた。この細胞は、10%仔牛血清、抗生物質(100U/mlペニシリンGナトリウム、0.1μg/mlストレプトマイシン硫酸塩)を含むDMEM培地(Gibco BRL)で、37℃、5%CO2および95%空気の二酸化炭素インキュベーターで培養した。
マウスは、C57Bl/6メス、4週齢のものを使用した(Charles River Japan)。
1−2 担癌マウス作製方法
B16メラノーマ細胞2×106個を50μlのリン酸バッファー(PBS、0.05Mリン酸ナトリウム、0.15M塩化ナトリウム)に懸濁させた。細胞懸濁液をマウス右大腿部の皮内に29Gのシリンジ(Becton Dickinson)を用いて移植した。
1−3 マグネタイトカチオニックリポソーム(MCL)の作製方法
磁性微粒子として、粒径10nmのマグネタイト(戸田工業製)を用いた。マグネタイトを水で十分に洗浄して余分なイオン成分を取り除き、超音波処理を行うことにより水に分散したマグネタイトコロイド溶液にした。リン脂質として、TMAG(N−(α−トリメチルアンモニオアセチル)−ジドデシル−D−グルタマートクロリド)(相互薬工製)、DLPC(ジラウロイルホスファチジルコリン)(Sigma製)、DOPE(ジオレイルホスファチジルエタノールアミン)(Sigma製)をモル比1:2:2(TMAG:DLPC:DOPE)でクロロホルムに溶かし、この溶液をナス型フラスコに入れ、ロータリーエバポレータで溶媒を除去し、フラスコの内壁にリン脂質膜を作製した。このリン脂質膜に上記の方法で作成したマグネタイトコロイド溶液(20mg/ml)2mlを加えボルテックス撹拌しながらリン脂質膜を膨潤させた。膨潤させたリン脂質膜とマグネタイトに15分間の超音波処理を施し(28W)、その後、10倍濃度の生理食塩水を加え、生理食塩水中に分散している状態にした。さらに超音波処理を15分間行い(28W)、マグネタイトカチオニックリポソーム(MCL)を得た。
1−4 ex vivo HSP70タンパク質による免疫賦活(加温方法と腫瘍移植)
HSP70タンパク質を悪性腫瘍細胞に投与し、磁場照射を行ってから、C57Bl/6の皮内に移植した。
タンパク質は組替えマウスHSP70(rmHSP70、BioDynamics Laboratory製)を使用した。磁場を照射する装置はトランジスタインバーター(LGH−100−05;第一高周波工業製)と縦型コイル(内径7cm、長さ7cm)を使用した。磁場照射は細胞塊がコイルの中心にくるようにして行った。温度は交番磁場に影響されない光ファイバー温度計(FX−9030;安立計器)を用いて測定した。B16メラノーマ細胞を100mmのディッシュに4×106個ずつ播種し、細胞が接着した後、MCLを培地に加えた(100pg/細胞)。さらに12時間後、遠心してペレット状に集めた。ここでrmHSP70群の細胞には、PBSに溶解したHSP70タンパク質を加えた(80μg/1×107細胞)。コントロール群には同量のPBSを加えた。
磁場照射を開始して細胞塊の温度が43℃に達したら、磁場照射装置の出力を調整し、細胞塊の温度を43℃に保った。磁場処理は30分間とした。
磁場照射終了後、B16メラノーマ細胞1×107個を上清と一緒にマウスの皮下に移植した。
1−5 脾臓細胞のインターフェロン−γ(IFN−γ)産生能評価
ex vivoでB16メラノーマ細胞を加温し、移植したマウスの脾臓細胞のIFN−γ産生能をELISPOT法で測定した。測定にはマウスインターフェロン−γ ELISPOT(MABTECH)を用いた。
抗IFN−γ抗体i(AN18;15μg/ml)を親水性混合セルロースエステル膜装着プレート(Millipore製)に100μlずつ入れコートした。4℃で一夜放置でした。PBSで洗浄し、5%BSA入りのPBSでブロッキングした(2時間,37℃)。ブロッキング終了後、マウスの脾臓細胞(1.0×105個)を入れた。脾臓細胞は、移植から2週間後にマウスから脾臓を取り出し、Mediamachine System(DAKO A/S)を使用し、細胞を分離した。その後0.75%NH4Clを用いて溶血し、RPMI培地(Gibco製)に懸濁させ細胞浮遊液(5.0×105個/ml)にした。これを37℃で40時間培養した。PBSで洗浄後、抗IFN−γ抗体ii(R4−6A2;1μg/ml)を100μlずつ入れ、2時間室温で培養した。PBSで洗浄後、1000倍希釈したストレプトアビジン−アルカリ性ホスファターゼを100μl加え1時間室温で培養した。培養後、基質(BCIP/NBT;Moss)を100μl加え1時間培養し、スポットが確認できたら水道水を入れ、反応をストップした。プレートが乾燥したら実体顕微鏡(SZH10;オリンパス製)を用いてスポット数を数えた。
1−6 MCL投与と高周波磁場照射
MCL(20mg/ml)は腫瘍内に0.1ml注入した。MCL注入は26Gシリンジ(テルモ製)を用いて直接、腫瘍部分に注入した。注入スピードは0.2ml/hとした。
磁場を照射する装置はトランジスタインバーター(LGH−100−05;第一高周波工業製)と横型コイル(内径7cm、長さ7cm)を使用した。磁場照射は麻酔下のマウスの腫瘍部分がコイルの中心にくるようにした。磁場照射中の腫瘍表面と直腸内の温度は交番磁場に影響されない光ファイバー温度計(FX−9030;安立計器製)を用いて測定した。腫瘍表面の温度が43℃に達したら、磁場照射装置の出力を調整し、その温度を43℃に保った。磁場処理は30分間とした。
1−7 HSP70タンパク質との併用
タンパク質として、組換えマウスHSP70(rmHSP70、Bio Dynamics Laboratory製)を使用した。マウス1匹分のタンパク質を20μlのPBSに溶解し、MCL(20mg/ml)0.1mlと混合し、26Gシリンジを用いて直接、腫瘍部分に注入した。注入スピードは0.24ml/hとした。
1−8 治療スキーム
腫瘍組織移植の後、実験動物を5グループに分けた。A群は、MCL投与のみで高周波磁場は照射しなかった(無治療群)。B群は、MCL投与後に高周波場を照射した(温熱群)。C群は、1匹あたりrmHSP70タンパク質を80μgずつ投与した(HSP投与群)。D群は、1匹あたり20μgのrmHSP70タンパク質とMCLを投与し、高周波磁場を照射した(HSP(20μg)+温熱群)。E群は、1匹あたり80μgのrmHSP70タンパク質とMCLを投与し、高周波磁場を照射した(HSP(80μg)+温熱群)。どのグループも腫瘍部分の直径が平均6mmに達した時点で治療を開始した。実験の流れを図1に示す。
治療効果を評価するため、腫瘍体積の計測を治療開始から3日おきに行った。
腫瘍体積(cm3)は、
(長径cm)×(短径cm)2×0.5
の計算式により算出した。
1−9 脾臓細胞による細胞傷害活性測定
治療開始から2週間後に脾臓を摘出し、HSP(80μg)+温熱併用群のマウス脾臓細胞をエフェクター細胞として細胞傷害活性の測定を行った。コントロールとしてナイーブマウス(C57Bl/6、7週齢のメス)の脾臓を用いた。脾臓から、Medimachine System(DAKO A/S)を使用し、細胞を分離した。その後0.75%NH4Clを用いて溶血し、RPMI培地(Gibco製)に懸濁させ細胞浮遊液にした。ターゲット細胞として、B16メラノーマ細胞(1×106個/ml)を用いた。エフェクター細胞(50μl)とターゲット細胞(50μl)を同時に96穴プレートに播種し、500rpmで4分間遠心した。4時間、二酸化炭素インキュベーターで培養したのち、CytoTox−ONETM Homogenous Membrane Integrity Kit(Progema製)を用いて、LDH(ラクテートデヒドロゲナーゼ)を指標として、ターゲット細胞中の死細胞の割合を計算した。計算式は以下の通りである。
細胞毒性(%)=(エフェクターとターゲット細胞を混合した蛍光強度)÷(全てのターゲット細胞をリシスバッファーで溶解した蛍光強度)×100
なお、全てのターゲット細胞を溶解するために、キットに含まれるリシスバッファーを用いた。
1−10 統計分析方法
治療開始から30日後の腫瘍体積を比較し、Mann−Whitney U検定を用いて有意性を評価した。生存率の有意性はKaplan−Meier曲線のログランク検定によって評価した。
2 実験結果
2−1 HSP70タンパク質と温熱処理を併用したB16メラノーマ細胞による免疫の活性化
ELISPOT法は免疫細胞が産生する抗体分子やサイトカインを染色しここの細胞レベルで検出する技術である。今回、サイトカインの一つであるIFN−γをCTL(細胞障害性Tリンパ球)の指標として測定を行った。そこでELISPOT法を用いて脾臓内リンパ球のIFN−γ産生能を測定することにより免疫が活性化されるか実験を行った。
ex vivo実験を行ってから2週間後のマウスの脾臓細胞を取りだしELISPOTを行った。脾臓細胞1×105個あたりのスポット数を図2に示した。
HSP70を投与し温熱処理を行った場合、温熱処理だけと比べ、スポット数は多く(p<0.005)、より多くの脾臓細胞がIFN−γを産生していることが確認された。つまり、HSP70を温熱処理した細胞と混ぜることにより、免疫を活性化することが分かった。
2−1 MCLを用いた温熱治療
MCL投与直後に磁場を照射した。磁場照射中の腫瘍表面と直腸内の温度変化を図3に示した。腫瘍表面の温度は、磁場照射開始から2分後には43℃に達した。その後、装置の出力を操作することによって30分間、正確に43℃で腫瘍を加温することができた。装置の出力を切ると腫瘍表面の温度は38℃まで下がった。これに対して直腸内の温度は磁場照射中でもほとんど上昇せず、正常な値のままであった。
これらのことから、MCLを直接腫瘍に注入することによって腫瘍部分が特異的に加温されることが確認された。また、発熱量は装置の出力を調節することによって制御できた。
2−3 HSP70タンパク質と温熱治療の併用による抗腫瘍効果
図4に治療開始からの腫瘍体積変化を示した。無治療群では腫瘍体積は増え続けた。一方、温熱群、HSP投与群、HSP(20μg)+温熱群では1週間程度は腫瘍の増大は抑制されていたが、1週間以降の腫瘍体積は増え続け、30日後の腫瘍体積では無治療群と有意な差は得られなかった。
これに対し、HSP(80μg)+温熱群では30日後まで腫瘍の増大は抑えられ、10匹中2匹では完全に腫瘍がなくなった。また、HSP(80μg)+温熱群の30日後の腫瘍体積は他の4群すべてと有意な差が得られた。HSP(20μg)+温熱群では腫瘍の増大は抑えられなかったが、HSP(80μg)+温熱群では腫瘍の増大が抑えられていることから、HSP70タンパク質の投与量に依存して抗腫瘍効果が得られていることが分かる。
2−4 HSP70タンパク質と温熱治療の併用による生存期間の延長
図5に治療開始からの生存率の変化を示した。無治療群、温熱群、HSP投与群、HSP(20μg)+温熱群では50日までに全て死亡した。それに対してHSP(80μg)+温熱群では50日後でも50%のマウスが生存していた。また、腫瘍が完全に治癒した2匹のマウスは90日後でも生存しており、HSP(80μg)+温熱群と無治療群、温熱群と比べて生存率において有意な差があった。腫瘍体積と同様にHSP70タンパク質の投与量に依存して生存期間の延長が見られた。
2−5 抗腫瘍免疫の獲得
治療開始から2週間後、HSP(80μg)+温熱群のマウスに抗腫瘍免疫が獲得されているか調べるために脾臓細胞のB16メラノーマ細胞に対する細胞傷害性を測定した。結果を図6に示す。HSP(80μg)+温熱群の脾臓細胞はナイーブマウスよりも高い細胞傷害活性を示した。これらのことからHSP70タンパク質と温熱療法を併用することによってB16メラノーマ細胞に対する獲得免疫が賦活されていることが分かった。
実施例2 hsp70遺伝子を用いた温熱免疫療法
1 実験材料と実験方法
1−1 悪性腫瘍細胞と実験動物
悪性腫瘍細胞はマウス悪性黒色腫B16メラノーマ細胞(Riken Cell Bank)を用いた。培養は実施例1の1−1と同様の方法で行った。マウスはC57Bl/6メス、4週齢(Charles River Japan)を使用した。
担ガンマウスの作製は実施例1−2と同様の方法で行った。
1−2 遺伝子導入
プラスミドpCMVhygro.hsp70はCMVプロモーターの下流にヒト誘導型hsp70cDNAを持つ。pCMVhygroはXbaI、KpnIサイトでブラントエンドライゲーションによりhsp70cDNAを取り除くことで得られた(図7)。
カチオニックリポソーム法により遺伝子導入を行った。MCLと同じ組成の脂質を用いてコニカルチューブ内で溶媒を除去し脂質膜を作製した。これにPBSとプラスミド20μgを加えボルテックスし、最終濃度を0.2mg/mlとなるように遺伝子懸濁液を調製した。この遺伝子懸濁液を20μlずつ5カ所から1匹あたり20μgの遺伝子を腫瘍に直接し、注入した。注入スピードは0.2ml/hとした。
1−3 MCL投与と高周波磁場照射
MCLは実施例1の1−3と同様の方法で作製した。遺伝子導入を行った群は遺伝子導入の1日後にMCLを投与した。MCLの投与方法、高周波磁場照射は実施例1の1−4と同様の方法で行った。
1−4 治療スキーム
腫瘍組織移植の後、実験動物を5グループに分けた。F群は、MCL投与のみで高周波磁場は照射しなかった(無治療群)。G群はMCL投与後に高周波磁場を照射した(温熱群)。H群はpCMVhygro.hsp70を投与した(hsp群)。I群はpCMVhygroの導入とMCLによる温熱治療を行った(null+温熱群)。J群はpCMVhygro.hsp70の導入とMCLによる温熱治療を行った(hsp+温熱群)。どのグループも腫瘍部分の直径が平均6mmに達した時、治療を開始した。治療効果を評価するため腫瘍体積の計測を治療開始から3日おきに行った。腫瘍体積の測定は実施例1の1−6と同様の方法で行った。図8に実験の流れを示した。
1−5 腫瘍における誘導型HSP70タンパク質の染色
腫瘍部分の直径が平均6mmに達した時に、プラスミドpCMVhygro.hsp70を上記1−2の方法で遺伝子導入した。遺伝子導入から24時間後、心臓からPBSを環流する方法で脱血し、腫瘍を取りだした。腫瘍は摘出後すぐにO.C.T.Compound(サクラ精機製)に入れ、液体窒素で凍結した。組織を厚さ4μmにスライスし、アセトンで5分間、固定した。凍結した切片は誘導型HSP70に特異的に結合する抗HSP70抗体(clone:K−20,Santa Cruz Biotechnology)中で37℃で60分間培養した。次にビオチン化した2次抗体と培養し(37℃,30分)、続いてFITCラベルをした抗体とさらに培養を行った(37℃,30分)。標本は蛍光顕微鏡(Olympus)を用いて観察した。
1−6 細胞傷害活性測定
hsp+温熱群のマウス脾臓細胞をエフェクター細胞として細胞傷害活性測定を行った。測定方法、細胞傷害活性の計算方法は実施例1の1−7と同様の方法で行った。
1−7 腫瘍内における誘導型HSP70タンパク質量の測定
無治療群、温熱群、HSP(80μg)+温熱群、hsp+温熱群のマウスの腫瘍における誘導型HSP発現量の測定を行った。測定はHsp70 ELISA Kit(StressGen Biotechnologies)を用いて行った。磁場照射から24時間後に心臓からPBSを環流する方法で脱血を行い、腫瘍を摘出した。腫瘍はMedimachine System(DAKO A/S)を使用し、細胞に分離した。その後は、キットのプロトコルに従い測定を行った。
1−8 統計分析方法
治療開始から30日後の腫瘍体積を比較し、Mann−WhitneyU検定を用いて有意性を評価した。生存率の有意性はKaplan−Meier曲線をログランク検定によって評価した。
2 実験結果
2−1 腫瘍内でのhsp70遺伝子の発現
遺伝子導入してから24時間後の腫瘍における誘導型HSP70タンパク質をFITCにより検出した。null遺伝子導入、無治療の腫瘍内では蛍光は全く観察されず、誘導型HSP70は発現していない。
hsp70遺伝子を導入した腫瘍では蛍光が観察された。B16メラノーマ細胞の腫瘍においてリポソーム法によってhsp70遺伝子が導入され、誘導型HSP70タンパク質として発現していることが分かった。
2−2 MCLを用いた温熱治療
MCL投与直後に磁場を照射した。磁場照射中の腫瘍表面と直腸内の温度変化は実施例1のHSP70タンパク質と温熱療法の併用を行った場合と同様であった。正常組織が過度の加温を受けることなく、ガン組織のみを加温することができた。
2−3 hsp70遺伝子治療と温熱治療の併用による抗腫瘍効果
治療開始からの腫瘍体積の変化を図9に示した。無治療群の腫瘍体積は増え続けた。温熱群、hsp群、null+温熱群でも腫瘍の増大が一時的に抑制されているマウスもいるが、全体として腫瘍体積は増え続け、30日後の腫瘍体積では無治療群と有意な差は得られなかった。
hsp+温熱群では30日後まで腫瘍の増大は抑えられ、10匹中3匹で腫瘍が完全に治癒した。また、hsp+温熱群の30日後の腫瘍体積は他の4群全てと有意差が得られた。
2−4 hsp70遺伝子治療と温熱治療の併用による生存期間の延長
治療開始からの生存率の変化を図10に示した。無治療群、温熱群、hsp群、null+温熱群のマウスは全て50日後までに死亡した。それに対してhsp+温熱群では50日後でも50%のマウスが生存していた。また完全に腫瘍が治癒した3匹については90日後でも生存していた。hsp+温熱群は生存率において他の4群に比べて有意な差が得られた。
2−5 抗腫瘍免疫の獲得
治療開始から2週間後、hsp+温熱群のマウスに抗腫瘍免疫が獲得されているかを調べるために脾臓細胞のB16メラノーマ細胞に対する細胞傷害性を測定した。図11に示したように、hsp+温熱群の脾臓細胞は、ナイーブマウスよりも高い細胞傷害活性を示した。
これらのことから、hsp70遺伝子による遺伝子治療と温熱療法の併用においてB16細胞に対する抗腫瘍免疫が賦活されていることが分かった。
2−6 腫瘍内における誘導型HSP70の発現
無治療群、温熱群、HSP(80μg)+温熱群、hsp+温熱群で、温熱処理から24時間後に誘導型HSP70タンパク質の発現量の測定を行った(図12)。
無治療群では、HSP70タンパク質ほとんど発現していなかった。温熱群とHSP(80μg)+温熱群では、わずかにHSP(80μg)+温熱群の方が多く発現しているが、有意な違いは見られなかった。このことから、温熱処理前に投与したHSP70タンパク質が24時間後にはほとんど残っていないことが分かる。これに対してhsp+温熱群では温熱群の2倍の誘導型HSP70があった。これは温熱処理で生き残った細胞が遺伝子を発現しているためだと考えられる。
1−1 悪性腫瘍細胞と実験動物
悪性腫瘍細胞はマウス悪性黒色腫B16メラノーマ細胞(Riken Cell Bank)を用いた。この細胞は、10%仔牛血清、抗生物質(100U/mlペニシリンGナトリウム、0.1μg/mlストレプトマイシン硫酸塩)を含むDMEM培地(Gibco BRL)で、37℃、5%CO2および95%空気の二酸化炭素インキュベーターで培養した。
マウスは、C57Bl/6メス、4週齢のものを使用した(Charles River Japan)。
1−2 担癌マウス作製方法
B16メラノーマ細胞2×106個を50μlのリン酸バッファー(PBS、0.05Mリン酸ナトリウム、0.15M塩化ナトリウム)に懸濁させた。細胞懸濁液をマウス右大腿部の皮内に29Gのシリンジ(Becton Dickinson)を用いて移植した。
1−3 マグネタイトカチオニックリポソーム(MCL)の作製方法
磁性微粒子として、粒径10nmのマグネタイト(戸田工業製)を用いた。マグネタイトを水で十分に洗浄して余分なイオン成分を取り除き、超音波処理を行うことにより水に分散したマグネタイトコロイド溶液にした。リン脂質として、TMAG(N−(α−トリメチルアンモニオアセチル)−ジドデシル−D−グルタマートクロリド)(相互薬工製)、DLPC(ジラウロイルホスファチジルコリン)(Sigma製)、DOPE(ジオレイルホスファチジルエタノールアミン)(Sigma製)をモル比1:2:2(TMAG:DLPC:DOPE)でクロロホルムに溶かし、この溶液をナス型フラスコに入れ、ロータリーエバポレータで溶媒を除去し、フラスコの内壁にリン脂質膜を作製した。このリン脂質膜に上記の方法で作成したマグネタイトコロイド溶液(20mg/ml)2mlを加えボルテックス撹拌しながらリン脂質膜を膨潤させた。膨潤させたリン脂質膜とマグネタイトに15分間の超音波処理を施し(28W)、その後、10倍濃度の生理食塩水を加え、生理食塩水中に分散している状態にした。さらに超音波処理を15分間行い(28W)、マグネタイトカチオニックリポソーム(MCL)を得た。
1−4 ex vivo HSP70タンパク質による免疫賦活(加温方法と腫瘍移植)
HSP70タンパク質を悪性腫瘍細胞に投与し、磁場照射を行ってから、C57Bl/6の皮内に移植した。
タンパク質は組替えマウスHSP70(rmHSP70、BioDynamics Laboratory製)を使用した。磁場を照射する装置はトランジスタインバーター(LGH−100−05;第一高周波工業製)と縦型コイル(内径7cm、長さ7cm)を使用した。磁場照射は細胞塊がコイルの中心にくるようにして行った。温度は交番磁場に影響されない光ファイバー温度計(FX−9030;安立計器)を用いて測定した。B16メラノーマ細胞を100mmのディッシュに4×106個ずつ播種し、細胞が接着した後、MCLを培地に加えた(100pg/細胞)。さらに12時間後、遠心してペレット状に集めた。ここでrmHSP70群の細胞には、PBSに溶解したHSP70タンパク質を加えた(80μg/1×107細胞)。コントロール群には同量のPBSを加えた。
磁場照射を開始して細胞塊の温度が43℃に達したら、磁場照射装置の出力を調整し、細胞塊の温度を43℃に保った。磁場処理は30分間とした。
磁場照射終了後、B16メラノーマ細胞1×107個を上清と一緒にマウスの皮下に移植した。
1−5 脾臓細胞のインターフェロン−γ(IFN−γ)産生能評価
ex vivoでB16メラノーマ細胞を加温し、移植したマウスの脾臓細胞のIFN−γ産生能をELISPOT法で測定した。測定にはマウスインターフェロン−γ ELISPOT(MABTECH)を用いた。
抗IFN−γ抗体i(AN18;15μg/ml)を親水性混合セルロースエステル膜装着プレート(Millipore製)に100μlずつ入れコートした。4℃で一夜放置でした。PBSで洗浄し、5%BSA入りのPBSでブロッキングした(2時間,37℃)。ブロッキング終了後、マウスの脾臓細胞(1.0×105個)を入れた。脾臓細胞は、移植から2週間後にマウスから脾臓を取り出し、Mediamachine System(DAKO A/S)を使用し、細胞を分離した。その後0.75%NH4Clを用いて溶血し、RPMI培地(Gibco製)に懸濁させ細胞浮遊液(5.0×105個/ml)にした。これを37℃で40時間培養した。PBSで洗浄後、抗IFN−γ抗体ii(R4−6A2;1μg/ml)を100μlずつ入れ、2時間室温で培養した。PBSで洗浄後、1000倍希釈したストレプトアビジン−アルカリ性ホスファターゼを100μl加え1時間室温で培養した。培養後、基質(BCIP/NBT;Moss)を100μl加え1時間培養し、スポットが確認できたら水道水を入れ、反応をストップした。プレートが乾燥したら実体顕微鏡(SZH10;オリンパス製)を用いてスポット数を数えた。
1−6 MCL投与と高周波磁場照射
MCL(20mg/ml)は腫瘍内に0.1ml注入した。MCL注入は26Gシリンジ(テルモ製)を用いて直接、腫瘍部分に注入した。注入スピードは0.2ml/hとした。
磁場を照射する装置はトランジスタインバーター(LGH−100−05;第一高周波工業製)と横型コイル(内径7cm、長さ7cm)を使用した。磁場照射は麻酔下のマウスの腫瘍部分がコイルの中心にくるようにした。磁場照射中の腫瘍表面と直腸内の温度は交番磁場に影響されない光ファイバー温度計(FX−9030;安立計器製)を用いて測定した。腫瘍表面の温度が43℃に達したら、磁場照射装置の出力を調整し、その温度を43℃に保った。磁場処理は30分間とした。
1−7 HSP70タンパク質との併用
タンパク質として、組換えマウスHSP70(rmHSP70、Bio Dynamics Laboratory製)を使用した。マウス1匹分のタンパク質を20μlのPBSに溶解し、MCL(20mg/ml)0.1mlと混合し、26Gシリンジを用いて直接、腫瘍部分に注入した。注入スピードは0.24ml/hとした。
1−8 治療スキーム
腫瘍組織移植の後、実験動物を5グループに分けた。A群は、MCL投与のみで高周波磁場は照射しなかった(無治療群)。B群は、MCL投与後に高周波場を照射した(温熱群)。C群は、1匹あたりrmHSP70タンパク質を80μgずつ投与した(HSP投与群)。D群は、1匹あたり20μgのrmHSP70タンパク質とMCLを投与し、高周波磁場を照射した(HSP(20μg)+温熱群)。E群は、1匹あたり80μgのrmHSP70タンパク質とMCLを投与し、高周波磁場を照射した(HSP(80μg)+温熱群)。どのグループも腫瘍部分の直径が平均6mmに達した時点で治療を開始した。実験の流れを図1に示す。
治療効果を評価するため、腫瘍体積の計測を治療開始から3日おきに行った。
腫瘍体積(cm3)は、
(長径cm)×(短径cm)2×0.5
の計算式により算出した。
1−9 脾臓細胞による細胞傷害活性測定
治療開始から2週間後に脾臓を摘出し、HSP(80μg)+温熱併用群のマウス脾臓細胞をエフェクター細胞として細胞傷害活性の測定を行った。コントロールとしてナイーブマウス(C57Bl/6、7週齢のメス)の脾臓を用いた。脾臓から、Medimachine System(DAKO A/S)を使用し、細胞を分離した。その後0.75%NH4Clを用いて溶血し、RPMI培地(Gibco製)に懸濁させ細胞浮遊液にした。ターゲット細胞として、B16メラノーマ細胞(1×106個/ml)を用いた。エフェクター細胞(50μl)とターゲット細胞(50μl)を同時に96穴プレートに播種し、500rpmで4分間遠心した。4時間、二酸化炭素インキュベーターで培養したのち、CytoTox−ONETM Homogenous Membrane Integrity Kit(Progema製)を用いて、LDH(ラクテートデヒドロゲナーゼ)を指標として、ターゲット細胞中の死細胞の割合を計算した。計算式は以下の通りである。
細胞毒性(%)=(エフェクターとターゲット細胞を混合した蛍光強度)÷(全てのターゲット細胞をリシスバッファーで溶解した蛍光強度)×100
なお、全てのターゲット細胞を溶解するために、キットに含まれるリシスバッファーを用いた。
1−10 統計分析方法
治療開始から30日後の腫瘍体積を比較し、Mann−Whitney U検定を用いて有意性を評価した。生存率の有意性はKaplan−Meier曲線のログランク検定によって評価した。
2 実験結果
2−1 HSP70タンパク質と温熱処理を併用したB16メラノーマ細胞による免疫の活性化
ELISPOT法は免疫細胞が産生する抗体分子やサイトカインを染色しここの細胞レベルで検出する技術である。今回、サイトカインの一つであるIFN−γをCTL(細胞障害性Tリンパ球)の指標として測定を行った。そこでELISPOT法を用いて脾臓内リンパ球のIFN−γ産生能を測定することにより免疫が活性化されるか実験を行った。
ex vivo実験を行ってから2週間後のマウスの脾臓細胞を取りだしELISPOTを行った。脾臓細胞1×105個あたりのスポット数を図2に示した。
HSP70を投与し温熱処理を行った場合、温熱処理だけと比べ、スポット数は多く(p<0.005)、より多くの脾臓細胞がIFN−γを産生していることが確認された。つまり、HSP70を温熱処理した細胞と混ぜることにより、免疫を活性化することが分かった。
2−1 MCLを用いた温熱治療
MCL投与直後に磁場を照射した。磁場照射中の腫瘍表面と直腸内の温度変化を図3に示した。腫瘍表面の温度は、磁場照射開始から2分後には43℃に達した。その後、装置の出力を操作することによって30分間、正確に43℃で腫瘍を加温することができた。装置の出力を切ると腫瘍表面の温度は38℃まで下がった。これに対して直腸内の温度は磁場照射中でもほとんど上昇せず、正常な値のままであった。
これらのことから、MCLを直接腫瘍に注入することによって腫瘍部分が特異的に加温されることが確認された。また、発熱量は装置の出力を調節することによって制御できた。
2−3 HSP70タンパク質と温熱治療の併用による抗腫瘍効果
図4に治療開始からの腫瘍体積変化を示した。無治療群では腫瘍体積は増え続けた。一方、温熱群、HSP投与群、HSP(20μg)+温熱群では1週間程度は腫瘍の増大は抑制されていたが、1週間以降の腫瘍体積は増え続け、30日後の腫瘍体積では無治療群と有意な差は得られなかった。
これに対し、HSP(80μg)+温熱群では30日後まで腫瘍の増大は抑えられ、10匹中2匹では完全に腫瘍がなくなった。また、HSP(80μg)+温熱群の30日後の腫瘍体積は他の4群すべてと有意な差が得られた。HSP(20μg)+温熱群では腫瘍の増大は抑えられなかったが、HSP(80μg)+温熱群では腫瘍の増大が抑えられていることから、HSP70タンパク質の投与量に依存して抗腫瘍効果が得られていることが分かる。
2−4 HSP70タンパク質と温熱治療の併用による生存期間の延長
図5に治療開始からの生存率の変化を示した。無治療群、温熱群、HSP投与群、HSP(20μg)+温熱群では50日までに全て死亡した。それに対してHSP(80μg)+温熱群では50日後でも50%のマウスが生存していた。また、腫瘍が完全に治癒した2匹のマウスは90日後でも生存しており、HSP(80μg)+温熱群と無治療群、温熱群と比べて生存率において有意な差があった。腫瘍体積と同様にHSP70タンパク質の投与量に依存して生存期間の延長が見られた。
2−5 抗腫瘍免疫の獲得
治療開始から2週間後、HSP(80μg)+温熱群のマウスに抗腫瘍免疫が獲得されているか調べるために脾臓細胞のB16メラノーマ細胞に対する細胞傷害性を測定した。結果を図6に示す。HSP(80μg)+温熱群の脾臓細胞はナイーブマウスよりも高い細胞傷害活性を示した。これらのことからHSP70タンパク質と温熱療法を併用することによってB16メラノーマ細胞に対する獲得免疫が賦活されていることが分かった。
実施例2 hsp70遺伝子を用いた温熱免疫療法
1 実験材料と実験方法
1−1 悪性腫瘍細胞と実験動物
悪性腫瘍細胞はマウス悪性黒色腫B16メラノーマ細胞(Riken Cell Bank)を用いた。培養は実施例1の1−1と同様の方法で行った。マウスはC57Bl/6メス、4週齢(Charles River Japan)を使用した。
担ガンマウスの作製は実施例1−2と同様の方法で行った。
1−2 遺伝子導入
プラスミドpCMVhygro.hsp70はCMVプロモーターの下流にヒト誘導型hsp70cDNAを持つ。pCMVhygroはXbaI、KpnIサイトでブラントエンドライゲーションによりhsp70cDNAを取り除くことで得られた(図7)。
カチオニックリポソーム法により遺伝子導入を行った。MCLと同じ組成の脂質を用いてコニカルチューブ内で溶媒を除去し脂質膜を作製した。これにPBSとプラスミド20μgを加えボルテックスし、最終濃度を0.2mg/mlとなるように遺伝子懸濁液を調製した。この遺伝子懸濁液を20μlずつ5カ所から1匹あたり20μgの遺伝子を腫瘍に直接し、注入した。注入スピードは0.2ml/hとした。
1−3 MCL投与と高周波磁場照射
MCLは実施例1の1−3と同様の方法で作製した。遺伝子導入を行った群は遺伝子導入の1日後にMCLを投与した。MCLの投与方法、高周波磁場照射は実施例1の1−4と同様の方法で行った。
1−4 治療スキーム
腫瘍組織移植の後、実験動物を5グループに分けた。F群は、MCL投与のみで高周波磁場は照射しなかった(無治療群)。G群はMCL投与後に高周波磁場を照射した(温熱群)。H群はpCMVhygro.hsp70を投与した(hsp群)。I群はpCMVhygroの導入とMCLによる温熱治療を行った(null+温熱群)。J群はpCMVhygro.hsp70の導入とMCLによる温熱治療を行った(hsp+温熱群)。どのグループも腫瘍部分の直径が平均6mmに達した時、治療を開始した。治療効果を評価するため腫瘍体積の計測を治療開始から3日おきに行った。腫瘍体積の測定は実施例1の1−6と同様の方法で行った。図8に実験の流れを示した。
1−5 腫瘍における誘導型HSP70タンパク質の染色
腫瘍部分の直径が平均6mmに達した時に、プラスミドpCMVhygro.hsp70を上記1−2の方法で遺伝子導入した。遺伝子導入から24時間後、心臓からPBSを環流する方法で脱血し、腫瘍を取りだした。腫瘍は摘出後すぐにO.C.T.Compound(サクラ精機製)に入れ、液体窒素で凍結した。組織を厚さ4μmにスライスし、アセトンで5分間、固定した。凍結した切片は誘導型HSP70に特異的に結合する抗HSP70抗体(clone:K−20,Santa Cruz Biotechnology)中で37℃で60分間培養した。次にビオチン化した2次抗体と培養し(37℃,30分)、続いてFITCラベルをした抗体とさらに培養を行った(37℃,30分)。標本は蛍光顕微鏡(Olympus)を用いて観察した。
1−6 細胞傷害活性測定
hsp+温熱群のマウス脾臓細胞をエフェクター細胞として細胞傷害活性測定を行った。測定方法、細胞傷害活性の計算方法は実施例1の1−7と同様の方法で行った。
1−7 腫瘍内における誘導型HSP70タンパク質量の測定
無治療群、温熱群、HSP(80μg)+温熱群、hsp+温熱群のマウスの腫瘍における誘導型HSP発現量の測定を行った。測定はHsp70 ELISA Kit(StressGen Biotechnologies)を用いて行った。磁場照射から24時間後に心臓からPBSを環流する方法で脱血を行い、腫瘍を摘出した。腫瘍はMedimachine System(DAKO A/S)を使用し、細胞に分離した。その後は、キットのプロトコルに従い測定を行った。
1−8 統計分析方法
治療開始から30日後の腫瘍体積を比較し、Mann−WhitneyU検定を用いて有意性を評価した。生存率の有意性はKaplan−Meier曲線をログランク検定によって評価した。
2 実験結果
2−1 腫瘍内でのhsp70遺伝子の発現
遺伝子導入してから24時間後の腫瘍における誘導型HSP70タンパク質をFITCにより検出した。null遺伝子導入、無治療の腫瘍内では蛍光は全く観察されず、誘導型HSP70は発現していない。
hsp70遺伝子を導入した腫瘍では蛍光が観察された。B16メラノーマ細胞の腫瘍においてリポソーム法によってhsp70遺伝子が導入され、誘導型HSP70タンパク質として発現していることが分かった。
2−2 MCLを用いた温熱治療
MCL投与直後に磁場を照射した。磁場照射中の腫瘍表面と直腸内の温度変化は実施例1のHSP70タンパク質と温熱療法の併用を行った場合と同様であった。正常組織が過度の加温を受けることなく、ガン組織のみを加温することができた。
2−3 hsp70遺伝子治療と温熱治療の併用による抗腫瘍効果
治療開始からの腫瘍体積の変化を図9に示した。無治療群の腫瘍体積は増え続けた。温熱群、hsp群、null+温熱群でも腫瘍の増大が一時的に抑制されているマウスもいるが、全体として腫瘍体積は増え続け、30日後の腫瘍体積では無治療群と有意な差は得られなかった。
hsp+温熱群では30日後まで腫瘍の増大は抑えられ、10匹中3匹で腫瘍が完全に治癒した。また、hsp+温熱群の30日後の腫瘍体積は他の4群全てと有意差が得られた。
2−4 hsp70遺伝子治療と温熱治療の併用による生存期間の延長
治療開始からの生存率の変化を図10に示した。無治療群、温熱群、hsp群、null+温熱群のマウスは全て50日後までに死亡した。それに対してhsp+温熱群では50日後でも50%のマウスが生存していた。また完全に腫瘍が治癒した3匹については90日後でも生存していた。hsp+温熱群は生存率において他の4群に比べて有意な差が得られた。
2−5 抗腫瘍免疫の獲得
治療開始から2週間後、hsp+温熱群のマウスに抗腫瘍免疫が獲得されているかを調べるために脾臓細胞のB16メラノーマ細胞に対する細胞傷害性を測定した。図11に示したように、hsp+温熱群の脾臓細胞は、ナイーブマウスよりも高い細胞傷害活性を示した。
これらのことから、hsp70遺伝子による遺伝子治療と温熱療法の併用においてB16細胞に対する抗腫瘍免疫が賦活されていることが分かった。
2−6 腫瘍内における誘導型HSP70の発現
無治療群、温熱群、HSP(80μg)+温熱群、hsp+温熱群で、温熱処理から24時間後に誘導型HSP70タンパク質の発現量の測定を行った(図12)。
無治療群では、HSP70タンパク質ほとんど発現していなかった。温熱群とHSP(80μg)+温熱群では、わずかにHSP(80μg)+温熱群の方が多く発現しているが、有意な違いは見られなかった。このことから、温熱処理前に投与したHSP70タンパク質が24時間後にはほとんど残っていないことが分かる。これに対してhsp+温熱群では温熱群の2倍の誘導型HSP70があった。これは温熱処理で生き残った細胞が遺伝子を発現しているためだと考えられる。
本発明の悪性腫瘍の温熱治療剤は、従来の温熱治療剤に比べ、各種の悪性腫瘍に対して高い治療効果を示す。
Claims (13)
- 熱ショックタンパク質と磁性微粒子とを含む悪性腫瘍の温熱治療剤。
- 熱ショックタンパク質を悪性腫瘍細胞内で発現できるように熱ショックタンパク質遺伝子を組み込んだベクターと磁性微粒子とを含む悪性腫瘍の温熱治療剤。
- 磁性微粒子が、表面に悪性腫瘍細胞に選択的に結合する抗体を結合した磁性微粒子である、請求項1又は2に記載の温熱治療剤。
- 磁性微粒子がマグネタイトである、請求項1又は2に記載の温熱治療剤。
- マグネタイトがカチオン性リポソームで被覆されたマグネタイトである、請求項4に記載の温熱治療剤。
- 熱ショックタンパク質がHSP90、HSP70、HSP60、HSP40、HSP27、HSP110及びgp96から選択された1つ以上の熱ショックタンパク質である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の温熱治療剤。
- 熱ショックタンパク質がHSP70である、請求項6に記載の温熱治療剤。
- 熱ショックタンパク質又は熱ショックタンパク質を悪性腫瘍細胞内で発現できるように熱ショックタンパク質遺伝子を組み込んだベクターと磁性微粒子とを一緒に又は別々に含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の温熱治療剤。
- 熱ショックタンパク質を悪性腫瘍細胞内で発現できるように熱ショックタンパク質遺伝子を組み込んだベクターがpCMVhygro.hsp70である、請求項2〜8のいずれか1項に記載の温熱治療剤。
- 悪性腫瘍の温熱療法における熱ショックタンパク質の使用。
- 熱ショックタンパク質を悪性腫瘍に投与した後、該悪性腫瘍を温熱治療することを含む、悪性腫瘍の温熱治療方法。
- 悪性腫瘍の温熱治療における熱ショックタンパク質遺伝子の使用。
- 熱ショックタンパク質を悪性腫瘍細胞内で発現できるように熱ショックタンパク質遺伝子を組み込んだベクターを悪性腫瘍に注入して熱ショックタンパク質を悪性腫瘍細胞内で発現した後、該悪性腫瘍組織を温熱治療することを含む、悪性腫瘍の温熱治療方法。
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