JPWO2003104804A1 - 抗糖尿病作用を有する物質の探索方法 - Google Patents
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Abstract
本発明によれば、[1]被験物質の存在下、膵臓β細胞のカリウム−ATPチャンネルの活性を阻害する物質と膵臓β細胞とを接触させたときの該細胞の細胞応答を測定する工程、[2]被験物質の非存在下、該細胞のカリウム−ATPチャンネルの活性を阻害する物質と該細胞とを接触させたときの該細胞の細胞応答を測定する工程、[3]該測定値を比較し、該細胞の細胞応答を変化させる被験物質を選択する工程、を含む抗糖尿病作用を有する物質の探索方法、および[1]高グルコース濃度下において、被検物質とスルフオニルウレア構造を有する化合物に脱感作した膵臓β細胞とを接触させたときの該細胞の細胞応答を測定する工程、[2]高グルコース濃度下における該細胞の該細胞応答を測定する工程、[3]該測定値を比較し、被験物質より該細胞応答を変化させる物質を選択する工程、を含む抗糖尿病作用を有する物質の探索方法が提供される。
Description
技術分野
本発明は、抗糖尿病作用を有する物質の探索方法に関する。
背景技術
スルフォニルウレア構造を有する化合物(以下、スルフォニルウレア化合物と略す)は、膵臓β細胞からのインスリン分泌を促進し、血糖値を低下させる2型糖尿病の治療薬として用いられており、血糖降下作用の強弱や作用持続時間などの異なる多くの種類のスルフォニルウレア化合物が知られている[Joslin’s Diabetes Mellitus,Lea and Febiger Ltd.(1994)]。
ナテグリニドは、スルフォニルウレア構造を有さない化合物であるが、スルフォニルウレア化合物と同様に、カリウム−ATPチャンネルの活性を阻害してインスリン分泌を促進する化合物として知られている[Journal of Pharmacology & Experimental Therapeutics.,293,444(2000)]。
スルフォニルウレア化合物には、共通の副作用や合併症、およびスルフォニルウレア化合物に対する無効症があることが認められている[Joslin’s Diabetes Mellitus,Lea and Febiger Ltd.(1994)]。スルフォニルウレア化合物の使用に際する主たる合併症としては、低血糖症があげられる[Br.Med.J.Clin.Res.Ed.,296,949(1988)、Joslin’s Diabetes Mellitus,Lea and Febiger Ltd.(1994)、Acta.Med.Scand.Suppl.,605,7(1977)]。
また、2型糖尿病と診断された患者の約20%に対してスルフォニルウレア化合物は無効である(一次無効)ことも知られている[Multi−centre study,24,404(1983)、Berhhard,H.Diabetes,14,59(1965)、Joslin’s Diabetes Mellitus,Lea and Febiger Ltd.(1994)]。
さらに、治療初期には、スルフォニルウレア化合物により血糖のコントロールが良好であった患者でも、治療の継続に伴い血糖をコントロールに必要なスルフォニルウレア化合物の用量が上昇すること[Joslin’s Diabetes Mellitus,Lea and Febiger Ltd.(1994)]、および該患者の3〜5%において、スルフォニルウレア化合物が無効になる(二次無効)ことが知られている[Diabetes Care,9,129(1986)、Metabolism,15,957(1966)、Non−insulin−dependent diabetes mellitus,52(1989)]。
スルフォニルウレア化合物による治療により血糖コントロールを続けることで、治療を中断しても正常に近い血糖コントロールが得られるような寛解がもたらされる症例もあるが、その数はごく少数である[Eur.J.Clin.Pharmacol.,22,459(1982)、Medicine,69,176(1990)]ことから、大半の2型糖尿病患者は、糖尿病と診断されてから一生の間、何らかの治療を受ける必要がある。
従って、スルフォニルウレア化合物に対して二次無効となった患者にも有効な糖尿病治療剤の開発が望まれている。
スルフォニルウレア化合物に対して二次無効となった患者では、スルフォニルウレア化合物の投与だけでなく、糖負荷に対するインスリン分泌促進が得られなくなっていることが知られている[Diabetes,35,1314(1986)]。
一方、このような二次無効となった患者でも、グルカゴンには反応してインスリン分泌が促進される例が知られている[Diabetes,35,1314(1986)]ことから、スルフォニルウレア化合物に対して二次無効になった膵臓でも、β細胞中にはインスリンが存在し、スルフォニルウレア化合物とは異なる機構によってインスリン分泌を促す作用を有する化合物に反応してインスリンを分泌することが知られている。
同様の現象は、ex vivoあるいはin vitroの実験によっても観察することができる。すなわち、スルフォニルウレア化合物を長期間投与したラットから調製した膵臓ランゲルハンス氏島、あるいは、スルフォニルウレア化合物を含む培地中にて長期間前培養した膵臓ランゲルハンス氏島は、高濃度のグルコース、あるいは、スルフォニルウレア化合物に対するインスリン分泌能は低下するのに対して、グルカゴンやテオフィリンなどのスルフォニルウレア化合物とは異なる機構によってインスリン分泌を促す作用を有する化合物に反応してインスリンを分泌することが知られている[Diabetes,19,603(1970)、Endocrinology,113,1972(1983)、Diabetologia,10,27(1974)、Metabolism,26,9(1977)、Endocrinology,131,1815(1992)、J.Clin.Endocrinol.Metabol.,74,790(1992)、Endocrinol.Invest.,14,287(1991)、Endocrinology,125,281(1989)]。
このような現象は、長期のスルフォニルウレア化合物を用いた治療による膵臓β細胞のスルフォニルウレア化合物に対する脱感作として知られており、この脱感作が、スルフォニルウレア化合物に対して二次無効となる原因の少なくとも一つであると考えられている[Joslin’s Diabetes Mellitus,Lea and Febiger Ltd.(1994)]。
従って、スルフォニルウレア化合物に対して脱感作した膵臓β細胞であっても、該細胞に作用し、インスリン分泌を促進する作用を有する化合物を効率よく探索する方法が求められている。
スルフォニルウレア化合物に対して脱感作した膵臓β細胞を用いて低グルコース濃度下、該細胞のインスリン分泌を促進する作用を有する物質を選択することを特徴とするインスリン分泌促進作用を有する物質の探索方法は知られている[Biochemical Pharmacology,61,527(2001)]。しかしながら、該探索方法で得られる物質は低濃度のグルコース存在下においてもインスリン分泌を促進することから、低血糖症を引き起こす可能性が考えられる。
スルフォニルウレア化合物に対して無効である患者に有効であり、かつスルフォニルウレア化合物の副作用の一つである低血糖症を引き起こさない抗糖尿病作用を有する物質を、効率よく探索する方法は知られていない。
発明の開示
本発明は、スルフォニルウレア化合物に対して二次無効となった患者にも有効な抗糖尿病作用を有する物質の探索方法を提供することにある。
本発明は以下の(1)〜(14)に関する。
(1) [1]被験物質の存在下、膵臓β細胞のカリウム−ATPチャンネルの活性を阻害する物質と膵臓β細胞とを接触させたときの該細胞の細胞応答を測定する工程、[2]被験物質の非存在下、該細胞のカリウム−ATPチャンネルの活性を阻害する物質と該細胞とを接触させたときの該細胞の該細胞応答を測定する工程、[3]該測定値を比較し、該細胞の該細胞応答を変化させる被験物質を選択する工程、を含む抗糖尿病作用を有する物質の探索方法。
(2) [1]被験物質の存在下、スルフォニルウレア構造を有する化合物に脱感作した膵臓β細胞の高グルコース濃度下における細胞応答を測定する工程、[2]被験物質の非存在下、該細胞の該高グルコース濃度下における該細胞応答を測定する工程、[3]該測定値を比較し、該細胞の細胞応答を変化させる被験物質を選択する工程、を含む抗糖尿病作用を有する物質の探索方法。
(3) 膵臓β細胞のカリウム−ATPチャンネルの活性を阻害する物質が、スルフォニルウレア構造を有する化合物またはナテグリニドである上記(1)の探索方法。
(4) 抗糖尿病作用を有する物質が、インスリン分泌促進活性を有する物質である上記(1)〜(3)のいずれか1つの探索方法。
(5) 細胞応答が、膵臓β細胞からのインスリン分泌であって、細胞応答の変化が膵臓β細胞からのインスリンの分泌促進である上記(1)〜(4)のいずれか1つの探索方法。
(6) 細胞応答が、膵臓β細胞のインスリン分泌の促進に関わる細胞応答であって、細胞応答の変化が、膵臓β細胞のインスリン分泌の促進に関わる細胞応答の増加である上記(1)〜(4)のいずれか1つの探索方法。
(7) 細胞応答が、膵臓β細胞のインスリン分泌の抑制に関わる細胞応答であって、細胞応答の変化が、膵臓β細胞のインスリン分泌の抑制に関わる細胞応答の減少である上記(1)〜(4)のいずれか1つの探索方法。
(8) インスリン分泌の促進に関わる細胞応答が、細胞膜容量、細胞内カルシウムイオン濃度、細胞膜電位、細胞内サイクリックAMP濃度、またはカルシウムイオンチャンネル活性である上記(6)の探索方法。
(9) インスリン分泌の抑制に関わる細胞応答が、細胞内カリウムイオン濃度、またはカリウムイオンチャンネル活性である上記(7)の探索方法。
(10) スルフォニルウレア構造を有する化合物が、グリベンクラミドまたはトルブタミドである上記(2)〜(9)のいずれか1つの探索方法。
(11) スルフォニルウレア構造を有する化合物に脱感作した膵臓β細胞が、高濃度のグルコース存在下におけるインスリン分泌能力、またはインスリン分泌の促進に関わる細胞応答が、親株である該化合物に脱感作していない膵臓β細胞に比べ、減少している細胞である上記(2)および(4)〜(9)から選ばれるいずれか1つに記載の探索方法。
(12) スルフォニルウレア構造を有する化合物に脱感作した膵臓β細胞が、高濃度のグルコース存在下におけるインスリン分泌の抑制に関わる細胞応答が、親株である該化合物に脱感作していない膵臓β細胞に比べ、増大している細胞である上記(2)および(4)〜(9)から選ばれるいずれか1つに記載の探索方法。
(13) 膵臓β細胞がMIN6細胞である上記(1)〜(9)のいずれか1つの探索方法。
(14) 膵臓β細胞がMIN6細胞であり、スルフォニルウレア構造を有する化合物がグリベンクラミドまたはトルブタミドである上記(1)〜(9)のいずれか1つの探索方法。
上記(1)に係る発明で用いられる膵臓β細胞としては、スルフォニルウレア構造を有する化合物(以下、スルフォニルウレア化合物と称す)またはナテグリニドに反応して細胞応答する細胞であれば、いずれも用いることができ、例えば、膵臓から調製される膵臓β細胞、または膵臓β細胞由来の膵臓β細胞株をあげることができる。膵臓β細胞株としては、RINm5F細胞[Diabetes,31,521(1982)]、BRIN−BD11細胞[Diabetes,45,1132(1996)]、INS−1細胞[Endocrinology,130,167(1992)]、βTC細胞[Proc.Natl.Acad.Sci.USA.,85,9037(1988)]、およびMIN6細胞[Endocrinology,127,126(1990)]等をあげることができる。
上記(2)に係る発明で用いられるスルフォニルウレア化合物に脱感作した膵臓β細胞としては、スルフォニルウレア化合物と接触させたとき、同濃度の該化合物により誘導される▲1▼インスリン分泌活性が、親株である該化合物に脱感作していない膵臓β細胞より低下している細胞、▲2▼インスリン分泌の促進に関わる細胞応答が、親株である該化合物に脱感作していない膵臓β細胞より減少している細胞、または▲3▼インスリン分泌の抑制に関わる細胞応答が、親株である該化合物に脱感作していない膵臓β細胞より増加している細胞、などをあげることができ、好ましくは、脱感作状態における形質が、膵臓から調製されるスルフォニルウレア化合物に脱感作した膵臓β細胞と同等である細胞をあげることができる。
膵臓から調製されるスルフォニルウレア化合物に脱感作した膵臓β細胞の形質としては、例えば、低濃度および高濃度のグルコース存在下のいずれの場合においても、インスリン分泌活性が脱感作前より低下している形質などをあげることができる。
上記の高濃度のグルコースの濃度としては、例えば、5〜20mmol/L、好ましくは8〜18mmol/L、より好ましくは9〜16mmol/L、さらに好ましくは12〜15mmol/L、特に好ましくは14.5mmol/Lをあげることができ、低濃度のグルコースの濃度としては、5mol/L未満、好ましくは1mmol/L以上〜5mmol/L未満、より好ましくは2mmol/L以上〜5mmol/L未満の濃度をあげることができる。
上記の親株とは、以下に記載するスルフォニルウレア化合物に脱感作した膵臓β細胞の作製に供した元の膵臓β細胞のことをいい、該元株としては、例えば、膵臓から調製される膵臓β細胞、膵臓β細胞由来の膵臓β細胞株であるRINm5F細胞、BRIN−BD11細胞、INS−1細胞、βTC細胞、およびMIN6細胞等をあげることができ、好ましくはMIN6細胞をあげることができる。
スルフォニルウレア化合物に脱感作した膵臓β細胞は、スルフォニルウレア化合物存在下で、膵臓β細胞を培養して得ることができる。
該培養に用いられる膵臓β細胞としては、上記した膵臓から調製される膵臓β細胞、膵臓β細胞株であるRINm5F細胞、BRIN−BD11細胞、INS−1細胞、βTC細胞、およびMIN6細胞等をあげることができ、好ましくはMIN6細胞をあげることができる。
スルフォニルウレア化合物存在下で膵臓β細胞を培養して得られる細胞が、該化合物に脱感作したことは、該化合物存在下で培養した膵臓β細胞の培養細胞を該化合物で刺激したときに、該化合物非存在下で培養した親株である膵臓β細胞の培養細胞を該化合物で刺激した場合に比べ、▲1▼インスリン分泌量が少ない、▲2▼インスリン分泌の促進に関わる細胞応答が小さい、または▲3▼インスリン分泌の抑制に関わる細胞応答が大きい、等のことにより確認することができる。
本発明で用いられるスルフォニルウレア化合物としては、抗糖尿病作用を有するスルフォニルウレア化合物であればいずれの化合物でもよく、例えば、グリベンクラミド、トルブタミドなどをあげることができる。
本発明で用いられるナテグリニドには、ナテグリニドの誘導体であって、かつ膵臓β細胞のインスリン分泌を促進する活性有する化合物も含まれる。
上記(1)に係る発明の方法において用いられるスルフォニルウレア化合物、およびナテグリニドの濃度としては、用いられるスルフォニルウレア化合物またはナテグリニドがその濃度において、本発明の方法で用いられる膵臓β細胞に細胞応答を生じさせ、かつ該細胞に対して毒性を示さない濃度であれば、いずれの濃度であってもよい。
該濃度としては、例えば、スルフォニルウレア化合物としてグリベンクラミドを用いる場合、0.1〜1000nmol/L、好ましくは10〜500nmol/Lの濃度をあげることができる。また、スルフォニルウレア化合物としてトルブラミドの場合、該濃度としては、50〜500μmol/L、好ましくは100〜200μmol/Lの濃度をあげることができる。ナテグリニドを用いる場合、該濃度としては、1〜100μmol/L、好ましくは5〜20μmol/Lの濃度をあげることができる。
また、スルフォニルウレア化合物を用いて膵臓β細胞を脱感作させる際のスルフォニルウレア化合物の濃度は、用いられるスルフォニルウレア化合物がその濃度において、用いられる膵臓β細胞を脱感作し、かつ該細胞に対して毒性を表さない濃度であれば、いずれの濃度であってもよい。
該濃度としては、例えば、スルフォニルウレア化合物としてグリベンクラミドを用いる場合、0.1〜1000nmol/L、好ましくは10〜500nmol/Lの濃度をあげることができる。また、スルフォニルウレア化合物としてトルブラミドを用いる場合、50〜500μmol/L、好ましくは100〜200μmol/Lの濃度をあげることができる。
上記(1)に係る本発明の探索方法に用いられる膵臓β細胞は、該細胞の生育に適した培地で培養することにより調製することができる。
上記(2)に係る本発明の探索方法に用いられる膵臓β細胞を培養する培地および培養条件としては、該細胞の生育に適した培地であり、かつスルフォニルウレア化合物を該培地に添加して培養した際に該細胞が該化合物に対して脱感作する培養条件であれば、いずれの培地、培養条件であってもよい。
該培地としては、例えば、ウシ胎児血清等の血清成分を添加したDMEM培地(日水製薬社製)をあげることができる。また、培養条件としては、4〜6%、好ましくは5%の炭酸ガスの存在下、36〜38℃、好ましくは37℃で、6〜72時間、好ましくは18時間培養する条件をあげることができる。
被検物質の存在下、上記により調製した膵臓β細胞、および膵臓β細胞のカリウム−ATPチャンネルの活性を阻害する物質を適当な培地または緩衝液中で接触させた場合、および被験物質の非存在下、該膵臓β細胞と該膵臓β細胞のカリウム−ATPチャンネルの活性を阻害する物質とを該培地または該緩衝液中で接触させた場合における、該細胞の細胞応答を測定、比較し、該被験物質より該細胞の細胞応答を変化させる被験物質を選択することにより、抗糖尿病作用を有する物質を取得することができる。
上記の細胞応答を測定する際の培地、または緩衝液は、該細胞応答を測定できる培地、または緩衝液であれば、どのような組成の培地、または緩衝液であってもよいが、例えば、培地としてはDMEM培地など、緩衝液としては生理的な塩を含むHEPES緩衝液などをあげることができる。
細胞応答を測定する際の培地、または緩衝液中には、被検物質の有無により、その細胞応答の違いが測定できる濃度であればグルコースが含まれていてもよく、グルコースが含有される場合の好ましい濃度は、1〜20mmol/L、より好ましくは1〜5mmol/L、さらに好ましくは2〜4mmol/Lである。
また、被験物質の存在下、高濃度のグルコースを含有する適当な培地または緩衝液中におけるスルフォニルウレア化合物に脱感作した膵臓β細胞の細胞応答と、被験物質の非存在下、該培地または該緩衝液中における該細胞の該細胞応答を、測定、比較し、該細胞の細胞応答を変化させる被験物質を選択することにより、抗糖尿病作用を有する物質を取得することができる。
上記の細胞応答の測定は、高濃度のグルコース存在下、スルフォニルウレア化合物に脱感作した膵臓β細胞の細胞応答を測定することが可能な方法であればいずれの方法であってもよく、例えば、該細胞を、被検物質を添加した高濃度のグルコースを含有する培地中で一定時間培養した後、または高濃度のグルコースを含有する緩衝液中で該培養細胞と被検物質とを一定時間接触させた後、該細胞応答を測定する方法をあげることができる。
細胞応答を測定する際の培地、または緩衝液は、該細胞応答を測定できる培地、または緩衝液であれば、どのような組成の培地、または緩衝液であってもよく、例えば、培地としてはDMEM培地など、緩衝液としては生理的な塩を含むHEPES緩衝液などをあげることができる。
細胞応答を測定する際の培地、または緩衝液中の高濃度のグルコースとは、その濃度のグルコース存在下においても被検物質とスルフォニルウレア化合物に脱感作した膵臓β細胞を接触させた際に惹起される該細胞のインスリン分泌または細胞応答を検出することができる程度に高いグルコース濃度のことであり、該グルコース濃度としては、例えば、5〜20mmol/L、好ましくは8〜18mmol/L、より好ましくは9〜16mmol/L、さらに好ましくは12〜15mmol/L、特に好ましくは14.5mmol/Lをあげることができる。
本発明の探索方法で測定対象とする細胞応答は、糖尿病の病態の抑制に関わる細胞応答であればいずれの細胞応答であってもよく、糖尿病の病態の抑制に関わる細胞応答としては、例えば、インスリンの分泌、およびインスリン分泌に関わる細胞応答をあげることができる。
インスリン分泌に関わる細胞応答としては、インスリン分泌の促進に関わる細胞応答の増加、およびインスリン分泌の抑制に関わる細胞応答の減少をあげることができる。
インスリン分泌の促進に関わる細胞応答の増加としては、例えば、細胞膜容量[J.Physiol.,472,665(1993)]の上昇、細胞内カルシウムイオン濃度の上昇、細胞膜電位の上昇、細胞内サイクリックAMP濃度の上昇、カルシウムイオンチャンネル活性の活性化、細胞内カリウムイオン濃度の上昇[いずれもJoslin’s Diabetes Mellitus,Lea and Febiger Ltd.(1994)に記載]などをあげることができる。
インスリン分泌の抑制に関わる細胞応答の減少としては、例えば、カリウムイオン濃度の減少、およびカリウムイオンチャンネルの活性低下[いずれもJoslin’s Diabetes Mellitus,Lea and Febiger Ltd.(1994)に記載]などをあげることができる。
インスリン分泌は、培養液または緩衝液中に分泌されるインスリンを検出、定量することにより確認することができる。インスリンの検出、および定量方法は、公知の方法であればいずれの方法も用いることができ、例えば、放射標識した抗インスリン抗体を用いたラジオイムノアッセイ法をあげることができる。
本発明の方法により選択された物質が、低濃度グルコース存在下において膵臓β細胞およびスルフォニルウレア化合物に脱感作した膵臓β細胞のインスリン分泌を促進しない物質であることは、低濃度グルコース存在下、膵臓β細胞またはスルフォニルウレア化合物に脱感作した膵臓β細胞と該物質とを適当な培地または緩衝液中で接触させたときのインスリン分泌、インスリン分泌の促進に関わる細胞応答、またはインスリン分泌の抑制に関わる細胞応答を測定することにより確認することができる。
低濃度グルコースとしては、5mol/L未満、好ましくは1mmol/L以上〜5mmol/L未満、より好ましくは2mmol/L以上〜5mmol/L未満の濃度をあげることができる。上記測定に用いられる膵臓β細胞、培地、緩衝液等は、上記した本発明の探索方法に用いられるものであればいずれも用いることができる。インスリン分泌、インスリン分泌の促進に関わる細胞応答またはインスリン分泌の抑制に関わる細胞応答は、上記した方法により測定することができる。
発明を実施するための最良の形態
以下に実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1 MIN6細胞を用いたインスリン分泌促進作用を有する物質の探索法(1)
MIN6細胞を、細胞培養用マルチウェルプレート(24ウェルプレート、コーニング社製)中にて、37℃、5%炭酸ガスの存在下、15%ウシ胎児血清と5g/Lのグルコースを含むDMEM培地(Dulbecco’s Modified Eagle Medium、日水製薬株式会社製)を用いて集密的になる直前まで培養した後、2mmol/Lのグルコースを含むHBKRPB緩衝液(119mmol/L塩化ナトリウム、4.74mmol/L塩化カリウム、2.54mmol/L塩化カルシウム、1.19mmol/L硫酸マグネシウム、1.19mmol/Lリン酸二水素カリウム、10mmol/L2−[4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジニル]エタンスルフォン酸、0.1%ウシ血清アルブミン、pH7.3)を用いて洗浄し、さらに2mmol/Lのグルコースを含むHBKRPB緩衝液中にて、37℃で45分間インキュベートした。その後、緩衝液を、1mLの100nmol/Lのグリベンクラミドおよび2mmol/Lのグルコースを含むHBKRPB緩衝液、該緩衝液に1μmol/Lの下式(I)
で表される化合物1(WO00/01388)を添加した溶液、および該緩衝液に10μmol/Lグリベンクラミドを添加した溶液にそれぞれ交換し、該細胞を37℃で45分間インキュベートした後、サンプリングした。該上清は、0.1%のウシ血清アルブミンおよび0.01%のアジ化ナトリウムを含むリン酸緩衝液で適当に希釈し、インスリン濃度の測定に供した。
希釈した上清のインスリン濃度は、3−[125I]iodotyrosylA14インスリン(アマシャムファルマシアバイオテク社製)、抗ラットインスリン抗体(コスモバイオ社製)を用いたラジオイムノアッセイ法に基づいて、ラットインスリン(コスモバイオ社製)をスタンダードとして測定した。測定結果を第1図に示す。
第1図より、化合物1は、スルフォニルウレア化合物であるグリベンクラミド存在下においてもインスリン分泌促進活性を有することが確認された。
実施例2 MIN6細胞を用いたインスリン分泌促進作用を有する物質の探索法(2)
MIN6細胞を、細胞培養用マルチウェルプレート(24ウェルプレート、コーニング社製)中にて、37℃、5%炭酸ガスの存在下で、15%のウシ胎児血清と5g/Lのグルコースを含むDMEM培地(Dulbecco’s Modified Eagle Medium;日水製薬株式会社製)を用いて集密的になる直前まで培養した後、10nmol/Lのグリベンクラミド(シグマ社製)を含む培地に交換して、さらに、18時間培養した。
このようにグリベンクラミドを含む培地中にて前培養したMIN6細胞を、2mmol/Lのグルコースを含むHBKRPB緩衝液を用いて洗浄した後、2mmol/Lのグルコースを含むHBKRPB緩衝液中にて、37℃で45分間インキュベートした。
その後、以下の方法によりインスリン分泌試験を行った。
まず、2mmol/Lのグルコースを含むHBKRPB緩衝液を、10μmol/Lの下式(I)
で表される化合物1(WO00/01388)および2mmol/Lのグルコースを含むHBKRPB緩衝液に交換し、該細胞を37℃で15分間処理した。ここへ、127mmol/Lのグルコースを含むHBKRPB緩衝液を上記交換溶液の9分の1容量加えることにより、グルコースの終濃度を14.5mmol/Lとした。その後、該細胞を37℃で45分間インキュベートし、分泌されたインスリンを含む上清をサンプリングした。また、このインスリン分泌試験終了後の細胞に3mol/Lの酢酸を添加することにより細胞内に残されているインスリンを抽出し、上清をサンプリングした。該上清は、それぞれ0.1%のウシ血清アルブミンおよび0.01%のアジ化ナトリウムを含むリン酸緩衝液で適当に希釈し、インスリン量の測定に供した。インスリン量は、3−[125I]iodotyrosylA14インスリン(アマシャムファルマシアバイオテク社製)、抗ラットインスリン抗体(コスモバイオ社製)を用いたラジオイムノアッセイ法に基づいて、ラットインスリン(コスモバイオ社製)をスタンダードとして測定した。分泌されたインスリン量に分泌後に細胞内に残ったインスリン量を加算することにより、分泌試験前に細胞内に含有されていたインスリン量を求めた。
また、分泌試験前に細胞内に含有されていたインスリン量に対するインスリン分泌量の割合を百分率にて表した値を、インスリン分泌%とした。
第2図は、本発明の探索方法により、スルフォニルウレア化合物に脱感作した膵臓β細胞のインスリン分泌を促進させる物質が、選択可能であることを示している(第2図Bの右カラム群)。また、本発明の方法により選択された化合物1は、スルフォニルウレア化合物に脱感作していない膵臓β細胞に対して、スルフォニルウレア化合物と同等のインスリン分泌促進作用を有することも確認された(第2図Bの左カラム群)。
さらに化合物1は、低濃度グルコース存在下において膵臓β細胞のインスリン分泌を促進しないことも確認された。
産業上の利用可能性
本発明により、膵臓β細胞のカリウム−ATPチャンネルの活性を阻害する物質の存在下における膵臓β細胞の細胞応答の変化、およびスルフォニルウレア化合物に脱感作した膵臓β細胞の細胞応答の変化を指標にして、スルフォニルウレア化合物に無効である患者にも有効な抗糖尿病作用を有する物質を効率よく探索することができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は、化合物1が有する、グリベンクラミド存在下におけるMIN6細胞からのインスリン分泌促進効果を示す図である。白抜きカラムは100nmol/Lのグリベンクラミドのみを添加、黒色カラムは100nmol/Lのグリベンクラミドと1μmol/Lの化合物1を添加、斜線カラムは100nmol/Lのグリベンクラミドにさらに10μmol/Lのグリベンクラミドを添加した試験区を表し、縦軸は上清中のインスリン濃度を表す。エラーバーは、3連で行った実験における標準誤差を示す。
第2図は、グリベンクラミドに脱感作した細胞に対する、化合物1のインスリン分泌促進効果を示す図である。Aは2mmol/Lのグルコース存在下でのインスリン分泌量、Bは14.5mmol/Lのグルコース存在下でのインスリン分泌量の測定結果である。エラーバーは、3連で行った実験の標準誤差を示す。カラムは、白抜きは被検物質無添加区、散点は化合物1添加区、斜線はグリベンクラミド添加区を表し、縦軸は、分泌されたインスリン量に分泌後に細胞内に残ったインスリン量を加算すること算出した分泌試験前に細胞内に含有されていたインスリン量に対するインスリン分泌量の割合を百分率にて表した値(インスリン分泌%)を表す。
また、図中各カラムを結ぶ線は、それぞれのカラム間の有意差を示し、N.S.は有意差なし、★はp<0.05、★★はp<0.01、★★★はp<0.001を表す。
本発明は、抗糖尿病作用を有する物質の探索方法に関する。
背景技術
スルフォニルウレア構造を有する化合物(以下、スルフォニルウレア化合物と略す)は、膵臓β細胞からのインスリン分泌を促進し、血糖値を低下させる2型糖尿病の治療薬として用いられており、血糖降下作用の強弱や作用持続時間などの異なる多くの種類のスルフォニルウレア化合物が知られている[Joslin’s Diabetes Mellitus,Lea and Febiger Ltd.(1994)]。
ナテグリニドは、スルフォニルウレア構造を有さない化合物であるが、スルフォニルウレア化合物と同様に、カリウム−ATPチャンネルの活性を阻害してインスリン分泌を促進する化合物として知られている[Journal of Pharmacology & Experimental Therapeutics.,293,444(2000)]。
スルフォニルウレア化合物には、共通の副作用や合併症、およびスルフォニルウレア化合物に対する無効症があることが認められている[Joslin’s Diabetes Mellitus,Lea and Febiger Ltd.(1994)]。スルフォニルウレア化合物の使用に際する主たる合併症としては、低血糖症があげられる[Br.Med.J.Clin.Res.Ed.,296,949(1988)、Joslin’s Diabetes Mellitus,Lea and Febiger Ltd.(1994)、Acta.Med.Scand.Suppl.,605,7(1977)]。
また、2型糖尿病と診断された患者の約20%に対してスルフォニルウレア化合物は無効である(一次無効)ことも知られている[Multi−centre study,24,404(1983)、Berhhard,H.Diabetes,14,59(1965)、Joslin’s Diabetes Mellitus,Lea and Febiger Ltd.(1994)]。
さらに、治療初期には、スルフォニルウレア化合物により血糖のコントロールが良好であった患者でも、治療の継続に伴い血糖をコントロールに必要なスルフォニルウレア化合物の用量が上昇すること[Joslin’s Diabetes Mellitus,Lea and Febiger Ltd.(1994)]、および該患者の3〜5%において、スルフォニルウレア化合物が無効になる(二次無効)ことが知られている[Diabetes Care,9,129(1986)、Metabolism,15,957(1966)、Non−insulin−dependent diabetes mellitus,52(1989)]。
スルフォニルウレア化合物による治療により血糖コントロールを続けることで、治療を中断しても正常に近い血糖コントロールが得られるような寛解がもたらされる症例もあるが、その数はごく少数である[Eur.J.Clin.Pharmacol.,22,459(1982)、Medicine,69,176(1990)]ことから、大半の2型糖尿病患者は、糖尿病と診断されてから一生の間、何らかの治療を受ける必要がある。
従って、スルフォニルウレア化合物に対して二次無効となった患者にも有効な糖尿病治療剤の開発が望まれている。
スルフォニルウレア化合物に対して二次無効となった患者では、スルフォニルウレア化合物の投与だけでなく、糖負荷に対するインスリン分泌促進が得られなくなっていることが知られている[Diabetes,35,1314(1986)]。
一方、このような二次無効となった患者でも、グルカゴンには反応してインスリン分泌が促進される例が知られている[Diabetes,35,1314(1986)]ことから、スルフォニルウレア化合物に対して二次無効になった膵臓でも、β細胞中にはインスリンが存在し、スルフォニルウレア化合物とは異なる機構によってインスリン分泌を促す作用を有する化合物に反応してインスリンを分泌することが知られている。
同様の現象は、ex vivoあるいはin vitroの実験によっても観察することができる。すなわち、スルフォニルウレア化合物を長期間投与したラットから調製した膵臓ランゲルハンス氏島、あるいは、スルフォニルウレア化合物を含む培地中にて長期間前培養した膵臓ランゲルハンス氏島は、高濃度のグルコース、あるいは、スルフォニルウレア化合物に対するインスリン分泌能は低下するのに対して、グルカゴンやテオフィリンなどのスルフォニルウレア化合物とは異なる機構によってインスリン分泌を促す作用を有する化合物に反応してインスリンを分泌することが知られている[Diabetes,19,603(1970)、Endocrinology,113,1972(1983)、Diabetologia,10,27(1974)、Metabolism,26,9(1977)、Endocrinology,131,1815(1992)、J.Clin.Endocrinol.Metabol.,74,790(1992)、Endocrinol.Invest.,14,287(1991)、Endocrinology,125,281(1989)]。
このような現象は、長期のスルフォニルウレア化合物を用いた治療による膵臓β細胞のスルフォニルウレア化合物に対する脱感作として知られており、この脱感作が、スルフォニルウレア化合物に対して二次無効となる原因の少なくとも一つであると考えられている[Joslin’s Diabetes Mellitus,Lea and Febiger Ltd.(1994)]。
従って、スルフォニルウレア化合物に対して脱感作した膵臓β細胞であっても、該細胞に作用し、インスリン分泌を促進する作用を有する化合物を効率よく探索する方法が求められている。
スルフォニルウレア化合物に対して脱感作した膵臓β細胞を用いて低グルコース濃度下、該細胞のインスリン分泌を促進する作用を有する物質を選択することを特徴とするインスリン分泌促進作用を有する物質の探索方法は知られている[Biochemical Pharmacology,61,527(2001)]。しかしながら、該探索方法で得られる物質は低濃度のグルコース存在下においてもインスリン分泌を促進することから、低血糖症を引き起こす可能性が考えられる。
スルフォニルウレア化合物に対して無効である患者に有効であり、かつスルフォニルウレア化合物の副作用の一つである低血糖症を引き起こさない抗糖尿病作用を有する物質を、効率よく探索する方法は知られていない。
発明の開示
本発明は、スルフォニルウレア化合物に対して二次無効となった患者にも有効な抗糖尿病作用を有する物質の探索方法を提供することにある。
本発明は以下の(1)〜(14)に関する。
(1) [1]被験物質の存在下、膵臓β細胞のカリウム−ATPチャンネルの活性を阻害する物質と膵臓β細胞とを接触させたときの該細胞の細胞応答を測定する工程、[2]被験物質の非存在下、該細胞のカリウム−ATPチャンネルの活性を阻害する物質と該細胞とを接触させたときの該細胞の該細胞応答を測定する工程、[3]該測定値を比較し、該細胞の該細胞応答を変化させる被験物質を選択する工程、を含む抗糖尿病作用を有する物質の探索方法。
(2) [1]被験物質の存在下、スルフォニルウレア構造を有する化合物に脱感作した膵臓β細胞の高グルコース濃度下における細胞応答を測定する工程、[2]被験物質の非存在下、該細胞の該高グルコース濃度下における該細胞応答を測定する工程、[3]該測定値を比較し、該細胞の細胞応答を変化させる被験物質を選択する工程、を含む抗糖尿病作用を有する物質の探索方法。
(3) 膵臓β細胞のカリウム−ATPチャンネルの活性を阻害する物質が、スルフォニルウレア構造を有する化合物またはナテグリニドである上記(1)の探索方法。
(4) 抗糖尿病作用を有する物質が、インスリン分泌促進活性を有する物質である上記(1)〜(3)のいずれか1つの探索方法。
(5) 細胞応答が、膵臓β細胞からのインスリン分泌であって、細胞応答の変化が膵臓β細胞からのインスリンの分泌促進である上記(1)〜(4)のいずれか1つの探索方法。
(6) 細胞応答が、膵臓β細胞のインスリン分泌の促進に関わる細胞応答であって、細胞応答の変化が、膵臓β細胞のインスリン分泌の促進に関わる細胞応答の増加である上記(1)〜(4)のいずれか1つの探索方法。
(7) 細胞応答が、膵臓β細胞のインスリン分泌の抑制に関わる細胞応答であって、細胞応答の変化が、膵臓β細胞のインスリン分泌の抑制に関わる細胞応答の減少である上記(1)〜(4)のいずれか1つの探索方法。
(8) インスリン分泌の促進に関わる細胞応答が、細胞膜容量、細胞内カルシウムイオン濃度、細胞膜電位、細胞内サイクリックAMP濃度、またはカルシウムイオンチャンネル活性である上記(6)の探索方法。
(9) インスリン分泌の抑制に関わる細胞応答が、細胞内カリウムイオン濃度、またはカリウムイオンチャンネル活性である上記(7)の探索方法。
(10) スルフォニルウレア構造を有する化合物が、グリベンクラミドまたはトルブタミドである上記(2)〜(9)のいずれか1つの探索方法。
(11) スルフォニルウレア構造を有する化合物に脱感作した膵臓β細胞が、高濃度のグルコース存在下におけるインスリン分泌能力、またはインスリン分泌の促進に関わる細胞応答が、親株である該化合物に脱感作していない膵臓β細胞に比べ、減少している細胞である上記(2)および(4)〜(9)から選ばれるいずれか1つに記載の探索方法。
(12) スルフォニルウレア構造を有する化合物に脱感作した膵臓β細胞が、高濃度のグルコース存在下におけるインスリン分泌の抑制に関わる細胞応答が、親株である該化合物に脱感作していない膵臓β細胞に比べ、増大している細胞である上記(2)および(4)〜(9)から選ばれるいずれか1つに記載の探索方法。
(13) 膵臓β細胞がMIN6細胞である上記(1)〜(9)のいずれか1つの探索方法。
(14) 膵臓β細胞がMIN6細胞であり、スルフォニルウレア構造を有する化合物がグリベンクラミドまたはトルブタミドである上記(1)〜(9)のいずれか1つの探索方法。
上記(1)に係る発明で用いられる膵臓β細胞としては、スルフォニルウレア構造を有する化合物(以下、スルフォニルウレア化合物と称す)またはナテグリニドに反応して細胞応答する細胞であれば、いずれも用いることができ、例えば、膵臓から調製される膵臓β細胞、または膵臓β細胞由来の膵臓β細胞株をあげることができる。膵臓β細胞株としては、RINm5F細胞[Diabetes,31,521(1982)]、BRIN−BD11細胞[Diabetes,45,1132(1996)]、INS−1細胞[Endocrinology,130,167(1992)]、βTC細胞[Proc.Natl.Acad.Sci.USA.,85,9037(1988)]、およびMIN6細胞[Endocrinology,127,126(1990)]等をあげることができる。
上記(2)に係る発明で用いられるスルフォニルウレア化合物に脱感作した膵臓β細胞としては、スルフォニルウレア化合物と接触させたとき、同濃度の該化合物により誘導される▲1▼インスリン分泌活性が、親株である該化合物に脱感作していない膵臓β細胞より低下している細胞、▲2▼インスリン分泌の促進に関わる細胞応答が、親株である該化合物に脱感作していない膵臓β細胞より減少している細胞、または▲3▼インスリン分泌の抑制に関わる細胞応答が、親株である該化合物に脱感作していない膵臓β細胞より増加している細胞、などをあげることができ、好ましくは、脱感作状態における形質が、膵臓から調製されるスルフォニルウレア化合物に脱感作した膵臓β細胞と同等である細胞をあげることができる。
膵臓から調製されるスルフォニルウレア化合物に脱感作した膵臓β細胞の形質としては、例えば、低濃度および高濃度のグルコース存在下のいずれの場合においても、インスリン分泌活性が脱感作前より低下している形質などをあげることができる。
上記の高濃度のグルコースの濃度としては、例えば、5〜20mmol/L、好ましくは8〜18mmol/L、より好ましくは9〜16mmol/L、さらに好ましくは12〜15mmol/L、特に好ましくは14.5mmol/Lをあげることができ、低濃度のグルコースの濃度としては、5mol/L未満、好ましくは1mmol/L以上〜5mmol/L未満、より好ましくは2mmol/L以上〜5mmol/L未満の濃度をあげることができる。
上記の親株とは、以下に記載するスルフォニルウレア化合物に脱感作した膵臓β細胞の作製に供した元の膵臓β細胞のことをいい、該元株としては、例えば、膵臓から調製される膵臓β細胞、膵臓β細胞由来の膵臓β細胞株であるRINm5F細胞、BRIN−BD11細胞、INS−1細胞、βTC細胞、およびMIN6細胞等をあげることができ、好ましくはMIN6細胞をあげることができる。
スルフォニルウレア化合物に脱感作した膵臓β細胞は、スルフォニルウレア化合物存在下で、膵臓β細胞を培養して得ることができる。
該培養に用いられる膵臓β細胞としては、上記した膵臓から調製される膵臓β細胞、膵臓β細胞株であるRINm5F細胞、BRIN−BD11細胞、INS−1細胞、βTC細胞、およびMIN6細胞等をあげることができ、好ましくはMIN6細胞をあげることができる。
スルフォニルウレア化合物存在下で膵臓β細胞を培養して得られる細胞が、該化合物に脱感作したことは、該化合物存在下で培養した膵臓β細胞の培養細胞を該化合物で刺激したときに、該化合物非存在下で培養した親株である膵臓β細胞の培養細胞を該化合物で刺激した場合に比べ、▲1▼インスリン分泌量が少ない、▲2▼インスリン分泌の促進に関わる細胞応答が小さい、または▲3▼インスリン分泌の抑制に関わる細胞応答が大きい、等のことにより確認することができる。
本発明で用いられるスルフォニルウレア化合物としては、抗糖尿病作用を有するスルフォニルウレア化合物であればいずれの化合物でもよく、例えば、グリベンクラミド、トルブタミドなどをあげることができる。
本発明で用いられるナテグリニドには、ナテグリニドの誘導体であって、かつ膵臓β細胞のインスリン分泌を促進する活性有する化合物も含まれる。
上記(1)に係る発明の方法において用いられるスルフォニルウレア化合物、およびナテグリニドの濃度としては、用いられるスルフォニルウレア化合物またはナテグリニドがその濃度において、本発明の方法で用いられる膵臓β細胞に細胞応答を生じさせ、かつ該細胞に対して毒性を示さない濃度であれば、いずれの濃度であってもよい。
該濃度としては、例えば、スルフォニルウレア化合物としてグリベンクラミドを用いる場合、0.1〜1000nmol/L、好ましくは10〜500nmol/Lの濃度をあげることができる。また、スルフォニルウレア化合物としてトルブラミドの場合、該濃度としては、50〜500μmol/L、好ましくは100〜200μmol/Lの濃度をあげることができる。ナテグリニドを用いる場合、該濃度としては、1〜100μmol/L、好ましくは5〜20μmol/Lの濃度をあげることができる。
また、スルフォニルウレア化合物を用いて膵臓β細胞を脱感作させる際のスルフォニルウレア化合物の濃度は、用いられるスルフォニルウレア化合物がその濃度において、用いられる膵臓β細胞を脱感作し、かつ該細胞に対して毒性を表さない濃度であれば、いずれの濃度であってもよい。
該濃度としては、例えば、スルフォニルウレア化合物としてグリベンクラミドを用いる場合、0.1〜1000nmol/L、好ましくは10〜500nmol/Lの濃度をあげることができる。また、スルフォニルウレア化合物としてトルブラミドを用いる場合、50〜500μmol/L、好ましくは100〜200μmol/Lの濃度をあげることができる。
上記(1)に係る本発明の探索方法に用いられる膵臓β細胞は、該細胞の生育に適した培地で培養することにより調製することができる。
上記(2)に係る本発明の探索方法に用いられる膵臓β細胞を培養する培地および培養条件としては、該細胞の生育に適した培地であり、かつスルフォニルウレア化合物を該培地に添加して培養した際に該細胞が該化合物に対して脱感作する培養条件であれば、いずれの培地、培養条件であってもよい。
該培地としては、例えば、ウシ胎児血清等の血清成分を添加したDMEM培地(日水製薬社製)をあげることができる。また、培養条件としては、4〜6%、好ましくは5%の炭酸ガスの存在下、36〜38℃、好ましくは37℃で、6〜72時間、好ましくは18時間培養する条件をあげることができる。
被検物質の存在下、上記により調製した膵臓β細胞、および膵臓β細胞のカリウム−ATPチャンネルの活性を阻害する物質を適当な培地または緩衝液中で接触させた場合、および被験物質の非存在下、該膵臓β細胞と該膵臓β細胞のカリウム−ATPチャンネルの活性を阻害する物質とを該培地または該緩衝液中で接触させた場合における、該細胞の細胞応答を測定、比較し、該被験物質より該細胞の細胞応答を変化させる被験物質を選択することにより、抗糖尿病作用を有する物質を取得することができる。
上記の細胞応答を測定する際の培地、または緩衝液は、該細胞応答を測定できる培地、または緩衝液であれば、どのような組成の培地、または緩衝液であってもよいが、例えば、培地としてはDMEM培地など、緩衝液としては生理的な塩を含むHEPES緩衝液などをあげることができる。
細胞応答を測定する際の培地、または緩衝液中には、被検物質の有無により、その細胞応答の違いが測定できる濃度であればグルコースが含まれていてもよく、グルコースが含有される場合の好ましい濃度は、1〜20mmol/L、より好ましくは1〜5mmol/L、さらに好ましくは2〜4mmol/Lである。
また、被験物質の存在下、高濃度のグルコースを含有する適当な培地または緩衝液中におけるスルフォニルウレア化合物に脱感作した膵臓β細胞の細胞応答と、被験物質の非存在下、該培地または該緩衝液中における該細胞の該細胞応答を、測定、比較し、該細胞の細胞応答を変化させる被験物質を選択することにより、抗糖尿病作用を有する物質を取得することができる。
上記の細胞応答の測定は、高濃度のグルコース存在下、スルフォニルウレア化合物に脱感作した膵臓β細胞の細胞応答を測定することが可能な方法であればいずれの方法であってもよく、例えば、該細胞を、被検物質を添加した高濃度のグルコースを含有する培地中で一定時間培養した後、または高濃度のグルコースを含有する緩衝液中で該培養細胞と被検物質とを一定時間接触させた後、該細胞応答を測定する方法をあげることができる。
細胞応答を測定する際の培地、または緩衝液は、該細胞応答を測定できる培地、または緩衝液であれば、どのような組成の培地、または緩衝液であってもよく、例えば、培地としてはDMEM培地など、緩衝液としては生理的な塩を含むHEPES緩衝液などをあげることができる。
細胞応答を測定する際の培地、または緩衝液中の高濃度のグルコースとは、その濃度のグルコース存在下においても被検物質とスルフォニルウレア化合物に脱感作した膵臓β細胞を接触させた際に惹起される該細胞のインスリン分泌または細胞応答を検出することができる程度に高いグルコース濃度のことであり、該グルコース濃度としては、例えば、5〜20mmol/L、好ましくは8〜18mmol/L、より好ましくは9〜16mmol/L、さらに好ましくは12〜15mmol/L、特に好ましくは14.5mmol/Lをあげることができる。
本発明の探索方法で測定対象とする細胞応答は、糖尿病の病態の抑制に関わる細胞応答であればいずれの細胞応答であってもよく、糖尿病の病態の抑制に関わる細胞応答としては、例えば、インスリンの分泌、およびインスリン分泌に関わる細胞応答をあげることができる。
インスリン分泌に関わる細胞応答としては、インスリン分泌の促進に関わる細胞応答の増加、およびインスリン分泌の抑制に関わる細胞応答の減少をあげることができる。
インスリン分泌の促進に関わる細胞応答の増加としては、例えば、細胞膜容量[J.Physiol.,472,665(1993)]の上昇、細胞内カルシウムイオン濃度の上昇、細胞膜電位の上昇、細胞内サイクリックAMP濃度の上昇、カルシウムイオンチャンネル活性の活性化、細胞内カリウムイオン濃度の上昇[いずれもJoslin’s Diabetes Mellitus,Lea and Febiger Ltd.(1994)に記載]などをあげることができる。
インスリン分泌の抑制に関わる細胞応答の減少としては、例えば、カリウムイオン濃度の減少、およびカリウムイオンチャンネルの活性低下[いずれもJoslin’s Diabetes Mellitus,Lea and Febiger Ltd.(1994)に記載]などをあげることができる。
インスリン分泌は、培養液または緩衝液中に分泌されるインスリンを検出、定量することにより確認することができる。インスリンの検出、および定量方法は、公知の方法であればいずれの方法も用いることができ、例えば、放射標識した抗インスリン抗体を用いたラジオイムノアッセイ法をあげることができる。
本発明の方法により選択された物質が、低濃度グルコース存在下において膵臓β細胞およびスルフォニルウレア化合物に脱感作した膵臓β細胞のインスリン分泌を促進しない物質であることは、低濃度グルコース存在下、膵臓β細胞またはスルフォニルウレア化合物に脱感作した膵臓β細胞と該物質とを適当な培地または緩衝液中で接触させたときのインスリン分泌、インスリン分泌の促進に関わる細胞応答、またはインスリン分泌の抑制に関わる細胞応答を測定することにより確認することができる。
低濃度グルコースとしては、5mol/L未満、好ましくは1mmol/L以上〜5mmol/L未満、より好ましくは2mmol/L以上〜5mmol/L未満の濃度をあげることができる。上記測定に用いられる膵臓β細胞、培地、緩衝液等は、上記した本発明の探索方法に用いられるものであればいずれも用いることができる。インスリン分泌、インスリン分泌の促進に関わる細胞応答またはインスリン分泌の抑制に関わる細胞応答は、上記した方法により測定することができる。
発明を実施するための最良の形態
以下に実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1 MIN6細胞を用いたインスリン分泌促進作用を有する物質の探索法(1)
MIN6細胞を、細胞培養用マルチウェルプレート(24ウェルプレート、コーニング社製)中にて、37℃、5%炭酸ガスの存在下、15%ウシ胎児血清と5g/Lのグルコースを含むDMEM培地(Dulbecco’s Modified Eagle Medium、日水製薬株式会社製)を用いて集密的になる直前まで培養した後、2mmol/Lのグルコースを含むHBKRPB緩衝液(119mmol/L塩化ナトリウム、4.74mmol/L塩化カリウム、2.54mmol/L塩化カルシウム、1.19mmol/L硫酸マグネシウム、1.19mmol/Lリン酸二水素カリウム、10mmol/L2−[4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジニル]エタンスルフォン酸、0.1%ウシ血清アルブミン、pH7.3)を用いて洗浄し、さらに2mmol/Lのグルコースを含むHBKRPB緩衝液中にて、37℃で45分間インキュベートした。その後、緩衝液を、1mLの100nmol/Lのグリベンクラミドおよび2mmol/Lのグルコースを含むHBKRPB緩衝液、該緩衝液に1μmol/Lの下式(I)
で表される化合物1(WO00/01388)を添加した溶液、および該緩衝液に10μmol/Lグリベンクラミドを添加した溶液にそれぞれ交換し、該細胞を37℃で45分間インキュベートした後、サンプリングした。該上清は、0.1%のウシ血清アルブミンおよび0.01%のアジ化ナトリウムを含むリン酸緩衝液で適当に希釈し、インスリン濃度の測定に供した。
希釈した上清のインスリン濃度は、3−[125I]iodotyrosylA14インスリン(アマシャムファルマシアバイオテク社製)、抗ラットインスリン抗体(コスモバイオ社製)を用いたラジオイムノアッセイ法に基づいて、ラットインスリン(コスモバイオ社製)をスタンダードとして測定した。測定結果を第1図に示す。
第1図より、化合物1は、スルフォニルウレア化合物であるグリベンクラミド存在下においてもインスリン分泌促進活性を有することが確認された。
実施例2 MIN6細胞を用いたインスリン分泌促進作用を有する物質の探索法(2)
MIN6細胞を、細胞培養用マルチウェルプレート(24ウェルプレート、コーニング社製)中にて、37℃、5%炭酸ガスの存在下で、15%のウシ胎児血清と5g/Lのグルコースを含むDMEM培地(Dulbecco’s Modified Eagle Medium;日水製薬株式会社製)を用いて集密的になる直前まで培養した後、10nmol/Lのグリベンクラミド(シグマ社製)を含む培地に交換して、さらに、18時間培養した。
このようにグリベンクラミドを含む培地中にて前培養したMIN6細胞を、2mmol/Lのグルコースを含むHBKRPB緩衝液を用いて洗浄した後、2mmol/Lのグルコースを含むHBKRPB緩衝液中にて、37℃で45分間インキュベートした。
その後、以下の方法によりインスリン分泌試験を行った。
まず、2mmol/Lのグルコースを含むHBKRPB緩衝液を、10μmol/Lの下式(I)
で表される化合物1(WO00/01388)および2mmol/Lのグルコースを含むHBKRPB緩衝液に交換し、該細胞を37℃で15分間処理した。ここへ、127mmol/Lのグルコースを含むHBKRPB緩衝液を上記交換溶液の9分の1容量加えることにより、グルコースの終濃度を14.5mmol/Lとした。その後、該細胞を37℃で45分間インキュベートし、分泌されたインスリンを含む上清をサンプリングした。また、このインスリン分泌試験終了後の細胞に3mol/Lの酢酸を添加することにより細胞内に残されているインスリンを抽出し、上清をサンプリングした。該上清は、それぞれ0.1%のウシ血清アルブミンおよび0.01%のアジ化ナトリウムを含むリン酸緩衝液で適当に希釈し、インスリン量の測定に供した。インスリン量は、3−[125I]iodotyrosylA14インスリン(アマシャムファルマシアバイオテク社製)、抗ラットインスリン抗体(コスモバイオ社製)を用いたラジオイムノアッセイ法に基づいて、ラットインスリン(コスモバイオ社製)をスタンダードとして測定した。分泌されたインスリン量に分泌後に細胞内に残ったインスリン量を加算することにより、分泌試験前に細胞内に含有されていたインスリン量を求めた。
また、分泌試験前に細胞内に含有されていたインスリン量に対するインスリン分泌量の割合を百分率にて表した値を、インスリン分泌%とした。
第2図は、本発明の探索方法により、スルフォニルウレア化合物に脱感作した膵臓β細胞のインスリン分泌を促進させる物質が、選択可能であることを示している(第2図Bの右カラム群)。また、本発明の方法により選択された化合物1は、スルフォニルウレア化合物に脱感作していない膵臓β細胞に対して、スルフォニルウレア化合物と同等のインスリン分泌促進作用を有することも確認された(第2図Bの左カラム群)。
さらに化合物1は、低濃度グルコース存在下において膵臓β細胞のインスリン分泌を促進しないことも確認された。
産業上の利用可能性
本発明により、膵臓β細胞のカリウム−ATPチャンネルの活性を阻害する物質の存在下における膵臓β細胞の細胞応答の変化、およびスルフォニルウレア化合物に脱感作した膵臓β細胞の細胞応答の変化を指標にして、スルフォニルウレア化合物に無効である患者にも有効な抗糖尿病作用を有する物質を効率よく探索することができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は、化合物1が有する、グリベンクラミド存在下におけるMIN6細胞からのインスリン分泌促進効果を示す図である。白抜きカラムは100nmol/Lのグリベンクラミドのみを添加、黒色カラムは100nmol/Lのグリベンクラミドと1μmol/Lの化合物1を添加、斜線カラムは100nmol/Lのグリベンクラミドにさらに10μmol/Lのグリベンクラミドを添加した試験区を表し、縦軸は上清中のインスリン濃度を表す。エラーバーは、3連で行った実験における標準誤差を示す。
第2図は、グリベンクラミドに脱感作した細胞に対する、化合物1のインスリン分泌促進効果を示す図である。Aは2mmol/Lのグルコース存在下でのインスリン分泌量、Bは14.5mmol/Lのグルコース存在下でのインスリン分泌量の測定結果である。エラーバーは、3連で行った実験の標準誤差を示す。カラムは、白抜きは被検物質無添加区、散点は化合物1添加区、斜線はグリベンクラミド添加区を表し、縦軸は、分泌されたインスリン量に分泌後に細胞内に残ったインスリン量を加算すること算出した分泌試験前に細胞内に含有されていたインスリン量に対するインスリン分泌量の割合を百分率にて表した値(インスリン分泌%)を表す。
また、図中各カラムを結ぶ線は、それぞれのカラム間の有意差を示し、N.S.は有意差なし、★はp<0.05、★★はp<0.01、★★★はp<0.001を表す。
Claims (14)
- [1]被験物質の存在下、膵臓β細胞のカリウム−ATPチャンネルの活性を阻害する物質と膵臓β細胞とを接触させたときの該細胞の細胞応答を測定する工程、[2]被験物質の非存在下、該細胞のカリウム−ATPチャンネルの活性を阻害する物質と該細胞とを接触させたときの該細胞の該細胞応答を測定する工程、[3]該測定値を比較し、該細胞の該細胞応答を変化させる被験物質を選択する工程、を含む抗糖尿病作用を有する物質の探索方法。
- [1]被験物質の存在下、スルフォニルウレア構造を有する化合物に脱感作した膵臓β細胞の高グルコース濃度下における細胞応答を測定する工程、[2]被験物質の非存在下、該細胞の該高グルコース濃度下における該細胞応答を測定する工程、[3]該測定値を比較し、該細胞の細胞応答を変化させる被験物質を選択する工程、を含む抗糖尿病作用を有する物質の探索方法。
- 膵臓β細胞のカリウム−ATPチャンネルの活性を阻害する物質が、スルフォニルウレア構造を有する化合物またはナテグリニドである請求項1記載の探索方法。
- 抗糖尿病作用を有する物質が、インスリン分泌促進活性を有する物質である請求項1〜3のいずれか1項に記載の探索方法。
- 細胞応答が、膵臓β細胞からのインスリン分泌であって、細胞応答の変化が膵臓β細胞からのインスリンの分泌促進である請求項1〜4のいずれか1項に記載の探索方法。
- 細胞応答が、膵臓β細胞のインスリン分泌の促進に関わる細胞応答であって、細胞応答の変化が、膵臓β細胞のインスリン分泌の促進に関わる細胞応答の増加である請求項1〜4のいずれか1つに記載の探索方法。
- 細胞応答が、膵臓β細胞のインスリン分泌の抑制に関わる細胞応答であって、細胞応答の変化が、膵臓β細胞のインスリン分泌の抑制に関わる細胞応答の減少である請求項1〜4のいずれか1項に記載の探索方法。
- インスリン分泌の促進に関わる細胞応答が、細胞膜容量、細胞内カルシウムイオン濃度、細胞膜電位、細胞内サイクリックAMP濃度、またはカルシウムイオンチャンネル活性である請求項6記載の探索方法。
- インスリン分泌の抑制に関わる細胞応答が、細胞内カリウムイオン濃度、またはカリウムイオンチャンネル活性である請求項7記載の探索方法。
- スルフォニルウレア構造を有する化合物が、グリベンクラミドまたはトルブタミドである請求項2〜9のいずれか1項に記載の探索方法。
- スルフォニルウレア構造を有する化合物に脱感作した膵臓β細胞が、高濃度のグルコース存在下におけるインスリン分泌能力、またはインスリン分泌の促進に関わる細胞応答が、親株である該化合物に脱感作していない膵臓β細胞に比べ、減少している細胞である請求項2、および4〜9から選ばれるいずれか1項に記載の探索方法。
- スルフォニルウレア構造を有する化合物に脱感作した膵臓β細胞が、高濃度のグルコース存在下におけるインスリン分泌の抑制に関わる細胞応答が、親株である該化合物に脱感作していない膵臓β細胞に比べ、増大している細胞である請求項2、および4〜9から選ばれるいずれか1項に記載の探索方法。
- 膵臓β細胞がMIN6細胞である請求項1〜9のいずれか1項に記載の探索方法。
- 膵臓β細胞がMIN6細胞であり、スルフォニルウレア構造を有する化合物がグリベンクラミドまたはトルブタミドである請求項1〜9のいずれか1項に記載の探索方法。
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