JPWO2003000286A1 - 好酸球増多性疾患治療薬 - Google Patents
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Abstract
CD30及び/又はCD30のシグナル伝達に関与する分子を介して好酸球アポトーシスを誘導する物質を有効成分とする好酸球増多性疾患治療剤。該治療剤はアレルギー疾患、呼吸器疾患、皮膚疾患、自己免疫疾患、免疫不全疾患、消化器疾患、腫瘍性疾患及び寄生虫感染性疾患に有効である。
Description
技術分野
本発明は、CD30及び/又はCD30のシグナル伝達に関与する分子を介して好酸球アポトーシスを誘導する物質を有効成分とする、末梢血中又は組織中に増加した好酸球に起因する好酸球増多性疾患の治療薬又は治療方法等に関する。
背景技術
炎症の病態では、肥満細胞、リンパ球、好酸球、好塩基球等複数の炎症性細胞が複数のメディエーターを介して、複雑なネットワークを形成し組織障害をもたらしている。従来の炎症治療、特にアレルギー炎症治療は特異的IgEによる肥満細胞・好塩基球の脱顆粒/ケミカルメディエーター放出による組織反応、即ち炎症性細胞の遊走・浸潤・活性化をいかに阻止するかに主眼を置いてきた。また、減感作療法、脱顆粒阻害・ケミカルメディエーター遊離抑制薬、ケミカルメディエーター拮抗薬はアレルギー炎症治療に大きく貢献してきた。このIgE依存性メカニズムの抑制は、アレルギー治療の中心であり、現在でも新しいケミカルメディエーターとくにエイコサノイド合成阻害薬・拮抗薬が盛んに開発されている。
一方、近年の研究により、好酸球顆粒タンパクが直接組織障害や炎症を誘導することから、好酸球が炎症反応とくにアレルギー性炎症の中心的な役割を担っていることが明らかとなってきた。即ち、炎症病態における好酸球については、「骨髄での産生亢進」、「病変組織への選択的浸潤及び活性化」、そして「生存期間の延長」が知られている。その結果、生き延びた活性化好酸球の増加に伴い、細胞毒性のある好酸球顆粒タンパクの継続的な放出により重篤な組織障害がもたらされる。また、臨床所見からも、例えば慢性気管支喘息患者の末梢血好酸球増多が観察される。さらに、末梢血好酸球数又は肺胞洗浄液中好酸球数と気道過敏症とは相関すること、症状の改善とともに末梢血好酸球数が正常化することが報告されている。従って、アレルギー疾患、寄生虫感染症、自己免疫疾患など様々な疾患の基本病態は炎症反応であることから、好酸球の制御も炎症の重要な治療目標の一つである。
現在まで、好酸球を標的とした炎症治療の研究としては、「骨髄での産生亢進抑制」、「組織への選択的浸潤抑制」、「遊走阻害」、「活性化(脱顆粒)抑制」、「顆粒タンパク(MBP,EPO,ECP,EDN)又は活性酸素種の不活化」等が挙げられ、eosinophilopoietic cytokineであるIL−5のシグナル阻止(IL−5R抗体、soluble IL−5R又はIL−5抗体)によるアレルギー性炎症に対する臨床応用も進められている。しかし、現在まで、好酸球を標的とする治療法は臨床的には確立されていない。
さらに、炎症局所においてアポトーシスの抑制により好酸球の生存が延長され、増加した活性化好酸球がネクローシス(壊死)にいたり顆粒タンパクが流出することにより炎症が遷延化されること、及びアポトーシス抑制を担うBcl−2をほとんど発現していない好酸球は、生存を支えるサイトカイン(IL−3,IL−5,GM−CSF,IFN−γ等)の除去により容易にアポトーシスに誘導されることから、炎症の制御終息における好酸球のアポトーシス誘導が大変魅力ある課題となっている。換言すれば、炎症を終息させるためにはいかに好酸球のアポトーシスを誘導するかが重要である。
以前より好酸球にアポトーシスを誘導できるTGF−β、抗Fas抗体、FasLの治療への応用が考えられている。また、ステロイドの抗炎症作用の一部は好酸球に対するアポトーシス誘導であることが示唆されている(J.Clin.Invest.88:1982−1987,1991)。しかしながら、抗Fas抗体投与は劇症肝炎を誘発し副作用が問題である(Cell,88:355−365,1997)、又はステロイドの好酸球に対するアポトーシス誘導はIL−5等により減殺される等の報告がある(J.Clin.Invest.88:1982−1987,1991)。即ち、現在まで好酸球に対するアポトーシス誘導による好酸球増多性疾患に有効な治療剤や治療方法はない。
一方、CD30は1982年に、ホジキン病由来のReed−Sternberg細胞株L428を抗原として作製された単クローン抗体Ki−1に認識される細胞表面分子として同定され、ホジキン病細胞特異的な抗原として報告された(Nature,299:65,1982)。その後、一部の非ホジキンリンパ腫、anaplastic large cell lymphoma、悪性黒色腫及び間葉系腫瘍等の腫瘍細胞、各種細胞株、マイトージェンで活性化されたT、B細胞、ウイルス(HIV、HTLV−I,−II、EBV)によって形質転換したT、B細胞、活性化マクロファージ、活性化NK細胞、子宮脱落膜細胞等に発現していることが知られている。これまでの解析によりCD30からのシグナルは、T細胞の増殖や細胞死、サイトカイン産生の亢進等多岐に渡る作用を示すことが報告されている(Blood,83:2045,1994)がまだ不明な点も多い。CD30欠損マウスでは、胸腺のCD4,8 double positive細胞数の劇的な増加が観測され、胸腺細胞(自己反応性T細胞)に対するネガティブセレクションが阻害されていることが示唆されている(J.Exp.Med.,187:427−432,1998)。CD30リガンド結合部位を認識するある種の単クローン抗体自体がanaplastic large cell lymphomaに対する抗腫瘍効果を示すことが報告されている。従って、CD30を介するシグナルはある種の細胞に対してアポトーシスを誘導することが示唆されている(臨床免疫,34:67−71,2000)。また、CD30分子は細胞外ドメインの構造からTNFレセプター(TNFR)スーパーファミリーのメンバーに属し、CD30リガンド(CD153)はTNFスーパーファミリーのメンバーであることが示された。CD30の細胞内ドメインはFasなどに認められるdeath domainをもたず、2ヶ所のTNFR associated factor(TRAF)結合部位をもち、TRAF分子を介してNF−kBを活性化することが報告されている(Int.Immunol.10:203,1998)。
さらに最近、CD30のシグナルはリガンドだけでなく、その発現レベルにも依存していること、即ち過剰発現自体により自己活性化を起こしリガンド非依存的にNF−kBを活性化することも報告された(臨床免疫,34:812−819,2000)。CD30の発現レベルは細胞種、活性化、分化段階でかなり異なることから、CD30の多様な作用の一因は発現レベルの差異によるものと考えられるが、単に発現レベルだけでは説明が付かない場合も多く、それ以外にも細胞内の刺激伝達系などの差違が細胞に与える作用を修飾していることが示唆されている。CD30と疾患の関連としては、ホジキン病、AIDS、B型肝炎、アトピー性疾患、Omenn症候群の患者、又は慢性関節リウマチや全身性エリテマトーデスなどの自己免疫疾患患者で可溶型CD30の血清レベルの上昇が挙げられる(Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,94:8670−8674,1997,J.Neuroimmunol.,97,182−190,1999,J.Neurol.Sci.,171:49−55,1999,Clin.Endocrinol.,49:609−613,1998,Br.J.Dermatol.,140:73−78,1999)。とくに、ホジキン病患者血清中の可溶型CD30レベルが上昇していること、アトピー性皮膚炎における血清ECP(Eosinophil Cationic Protein)レベル、又はAIDSのステージや予後と血清可溶型CD30レベルが相関していることから、これらの疾患へのCD30の関与が示唆されている。
一方、ホジキン病では好酸球が増加していることも報告されている(Ann.Oncol.,8:89−96,1997,Blood,95:1207−1213,2000)が、その原因、メカニズムは不明であり、好酸球にCD30が発現しているという報告はない。したがって、好酸球の増多と可溶型CD30レベルの上昇とを結びつけた報告は現在までに全くなされていない。
炎症を終息させるには、好酸球の新たな産生や病変組織への浸潤・活性化の抑制及び活性化好酸球の死滅が必要である。しかし、ネクローシス(壊死)による好酸球の死滅では、細胞膜破壊による顆粒タンパクの漏出により組織がさらに障害を受け炎症が悪化する。従って、本発明は好酸球に対し迅速で強力なアポトーシスを誘導する物質を用いる好酸球増多性疾患に対する治療剤又は治療方法等を提供することを目的とする。
発明の開示
本発明者はかかる課題を解決するべく鋭意検討した結果、抗ヒトCD30単クローン抗体等によるCD30を介するシグナルが好酸球に対し迅速で強力なアポトーシスを誘導し、アレルギー疾患を含む好酸球増多性疾患を有効に治療し得ることを新規に見出して、本発明を完成させるに至った。
今日まで、ヒトの末梢血好酸球にCD30分子が発現していること、及びCD30を介するシグナルが好酸球に対しアポトーシスを誘導するという生理活性はまったく知られておらず、本発明によって初めて明らかにされたものである。
本発明者は、CD30は好酸球のアポトーシスを制御しており、可溶型CD30によりアポトーシス誘導が阻害された場合、好酸球増多に起因する疾患や好酸球増多症を発症するとの仮説に基づき鋭意研究を進めた。その結果、CD30を介するシグナルがヒト末梢血好酸球に対し選択的にアポトーシスを誘導し、しかも既知のシグナルよりも迅速で強力にアポトーシスを誘導でき、単にIL−5による生存シグナルに対する拮抗ではなくIL−5のシグナル伝達とは独立した経路によるという知見を得て本発明は完成された。詳細は実施例に示すが、CD30リガンド結合部位を認識するある種の抗ヒトCD30単クローン抗体を固相化したプレートにて、IL−5の共存下ヒト末梢血好酸球を培養すると、50%以上の好酸球が1−4時間という短時間でアポトーシスに導かれることを見いだした。
従って、CD30及び/又はCD30のシグナル伝達に関与する分子を介して好酸球アポトーシスを誘導する物質が好酸球増多性疾患治療剤になりうるという知見を得て本発明を完成した。
すなわち、本発明としては以下のものを挙げることができる。
(1)CD30及び/又はCD30のシグナル伝達に関与する分子を介して好酸球アポトーシスを誘導する物質を有効成分とする好酸球増多性疾患治療剤。
(2)CD30及び/又はCD30のシグナル伝達に関与する分子を介して好酸球アポトーシスを誘導する物質が、Ber−H8又はHRS−4が認識する部位を認識する免疫グロブリン若しくはその活性フラグメント、ペプチド又は低分子化合物である上記(1)記載の好酸球増多性疾患治療剤。
(3)CD30及び/又はCD30のシグナル伝達に関与する分子を介して好酸球アポトーシスを誘導する物質が、免疫グロブリン又はその活性フラグメント(これらは天然由来又は遺伝子組換え技術により得られるものを含む)である上記(1)記載の好酸球増多性疾患治療剤。
(4)少なくとも配列番号1記載のアミノ酸配列(CD30のアミノ酸配列のうち、112−412位のアミノ酸配列)の一部又は全部を認識する免疫グロブリン又はその活性フラグメントである上記(2)記載の好酸球増多性疾患治療剤。
(5)免疫グロブリンがBer−H8又はHRS−4である上記(4)記載の好酸球増多性疾患治療剤。
(6)CD30及び/又はCD30のシグナル伝達に関与する分子を介して好酸球アポトーシスを誘導する物質が、CD30リガンド又はその活性フラグメント(これらは天然由来又は遺伝子組換え技術により得られるものを含む)である上記(1)記載の好酸球増多性疾患治療剤。
(7)CD30リガンドがCD153である上記(6)記載の好酸球増多性疾患治療剤。
(8)CD30及び/又はCD30のシグナル伝達に関与する分子を介して好酸球アポトーシスを誘導する物質が、CD30リガンド又はその活性フラグメントをコードする核酸である上記(1)記載の好酸球増多性疾患治療剤。
(9)核酸が配列番号2(CD153のアミノ酸配列)記載のアミノ酸をコードするDNAである上記(8)記載の好酸球増多性疾患治療剤。
(10)CD30及び/又はCD30のシグナル伝達に関与する分子を介して好酸球アポトーシスを誘導する物質が、CD30リガンドの発現及び/又は分泌している貪食能を有する細胞である上記(1)記載の好酸球増多性疾患治療剤。
(11)CD30及び/又はCD30のシグナル伝達に関与する分子を介して好酸球アポトーシスを誘導する物質が、貪食能を有する細胞にCD30リガンドを発現及び/又は分泌させる物質である上記(1)記載の好酸球増多性疾患治療剤。
(12)CD30及び/又はCD30のシグナル伝達に関与する分子を介して好酸球アポトーシスを誘導する物質が、CD30発現調節及び/又は凝集調節能を有する物質である上記(1)記載の好酸球増多性疾患治療剤。
(13)好酸球増多性疾患が、アレルギー疾患、呼吸器疾患、皮膚疾患、自己免疫疾患、免疫不全疾患、消化器疾患、腫瘍性疾患、奇生虫感染性疾患又は特発性好酸球増加症候群から成る群から選ばれた疾患である上記(1)乃至(12)記載の好酸球増多性疾患治療剤。
(14)アレルギー疾患が、薬剤アレルギー、気管支喘息、アレルギー性鼻炎から成る群から選ばれた疾患である上記(13)記載の好酸球増多性疾患治療剤。
(15)呼吸器疾患が、好酸球肺浸潤症である上記(13)記載の好酸球増多性疾患治療剤。
(16)皮膚疾患が、アトピー性皮膚炎、蕁麻疹、血管浮腫、乾癬、木村氏病、Episodic angioedema with eosinophilia、好酸球性膿胞毛胞炎、リンパ腫瘍丘診から成る群から選ばれた疾患である上記(13)記載の好酸球増多性疾患治療剤。
(17)自己免疫疾患が、多発性動脈炎、慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデスから成る群から選ばれた疾患である上記(13)記載の好酸球増多性疾患治療剤。
(18)免疫不全疾患が、高IgE症候群、Wiscott−Aldrich症候群、Omenn症候群から成る群から選ばれた疾患である上記(13)記載の好酸球増多性疾患治療剤。
(19)消化器疾患が、アレルギー性胃腸炎、好酸球性胃腸炎、潰瘍性大腸炎、膵炎から成る群から選ばれた疾患である上記(13)記載の好酸球増多性疾患治療剤。
(20)腫瘍性疾患が、ホジキン病である上記(13)記載の好酸球増多性疾患治療剤。
(21)寄生虫感染性疾患が、アニサキス症、旋毛虫症、糞線虫症、日本住血吸虫症、肺吸虫症から成る群から選ばれた疾患である上記(13)記載の好酸球増多性疾患治療剤。
(22)CD30及び/又はCD30のシグナル伝達に関与する分子を介して好酸球アポトーシスを誘導する物質を投与することからなる好酸球増多性疾患治療方法。
(23)CD30及び/又はCD30のシグナル伝達に関与する分子を介して好酸球アポトーシスを誘導する物質が、Ber−H8又はHRS−4が認識する部位を認識する免疫グロブリン若しくはその活性フラグメント又は低分子化合物を投与することからなる上記(22)記載の好酸球増多性疾患治療方法。
(24)CD30及び/又はCD30のシグナル伝達に関与する分子を介して好酸球アポトーシスを誘導する物質が、免疫グロブリン又はその活性フラグメント(これらは天然由来又は遺伝子組換え技術により得られるものを含む)である上記(22)記載の好酸球増多性疾患治療方法。
(25)少なくとも配列番号1記載のアミノ酸配列(CD30のアミノ酸配列のうち、112−412位のアミノ酸配列)の一部又は全部を認識する免疫グロブリン又はその活性フラグメントである上記(23)記載の好酸球増多性疾患治療方法。
(26)免疫グロブリンがBer−H8又はHRS−4である上記(24)記載の好酸球増多性疾患治療方法。
(27)CD30及び/又はCD30のシグナル伝達に関与する分子を介して好酸球アポトーシスを誘導する物質が、CD30リガンド又はその活性フラグメント(これらは天然由来又は遺伝子組換え技術により得られるものを含む)である上記(22)記載の好酸球増多性疾患治療方法。
(28)CD30リガンドがCD153である上記(27)記載の好酸球増多性疾患治療方法。
(29)CD30及び/又はCD30のシグナル伝達に関与する分子を介して好酸球アポトーシスを誘導する物質が、CD30リガンド又はその活性フラグメントをコードする核酸である上記(22)記載の好酸球増多性疾患治療方法。
(30)核酸が配列番号2(CD153のアミノ酸配列)記載のアミノ酸をコードするDNAである上記(29)記載の好酸球増多性疾患治療方法。
(31)CD30及び/又はCD30のシグナル伝達に関与する分子を介して好酸球アポトーシスを誘導する物質が、CD30リガンドの発現及び/又は分泌している貪食能を有する細胞である上記(22)記載の好酸球増多性疾患治療方法。
(32)CD30及び/又はCD30のシグナル伝達に関与する分子を介して好酸球アポトーシスを誘導する物質が、貪食能を有する細胞にCD30リガンドを発現及び/又は分泌させる物質である上記(22)記載の好酸球増多性疾患治療方法。
(33)CD30及び/又はCD30のシグナル伝達に関与する分子を介して好酸球アポトーシスを誘導する物質が、CD30発現調節及び/又は凝集調節能を有する物質である上記(22)記載の好酸球増多性疾患治療方法。
(34)好酸球増多性疾患が、アレルギー疾患、呼吸器疾患、皮膚疾患、自己免疫疾患、免疫不全疾患、消化器疾患、腫瘍性疾患、寄生虫感染性疾患又は特発性好酸球増加症候群から成る群から選ばれた疾患である上記(22)乃至(33)記載の好酸球増多性疾患治療方法。
(35)アレルギー疾患が、薬剤アレルギー、気管支喘息、アレルギー性鼻炎から成る群から選ばれた疾患である上記(34)記載の好酸球増多性疾患治療方法。
(36)呼吸器疾患が、好酸球肺浸潤症である上記(34)記載の好酸球増多性疾患治療方法。
(37)皮膚疾患が、アトピー性皮膚炎、蕁麻疹、血管浮腫、乾癬、木村氏病、Episodic angioedema with eosinophilia、好酸球性膿胞毛胞炎、リンパ腫瘍丘診から成る群から選ばれた疾患である上記(34)記載の好酸球増多性疾患治療方法。
(38)自己免疫疾患が、多発性動脈炎、慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデスから成る群から選ばれた疾患である上記(34)記載の好酸球増多性疾患治療方法。
(39)免疫不全疾患が、高IgE症候群、Wiscott−Aldrich症候群、Omenn症候群から成る群から選ばれた疾患である上記(34)記載の好酸球増多性疾患治療方法。
(40)消化器疾患が、アレルギー性胃腸炎、好酸球性胃腸炎、潰瘍性大腸炎、膵炎から成る群から選ばれた疾患である上記(34)記載の好酸球増多性疾患治療方法。
(41)腫瘍性疾患が、ホジキン病である上記(34)記載の好酸球増多性疾患治療方法。
(42)寄生虫感染性疾患が、アニサキス症、旋毛虫症、糞線虫症、日本住血吸虫症、肺吸虫症から成る群から選ばれた疾患である上記(34)記載の好酸球増多性疾患治療方法。
(43)血中の可溶性CD30を測定し、その濃度の増減を指標とすることからなる好酸球増多性疾患の診断方法。
(44)CD30を介する好酸球アポトーシス誘導物質の選別方法であって、以下のステップ:(ア)CD30発現細胞に対する抗CD30抗体結合の阻害に基づく一次選別、(イ)末梢血、臍帯血又は骨髄由来培養好酸球のアポトーシス誘導に基づく二次選別、及び(ウ)末梢血好酸球のアポトーシス誘導に基づく三次選別、からなる当該選別方法。
発明を実施するための最良の形態
本発明において、CD30のシグナル伝達に関与する分子とは、好酸球表面で発現するCD30に直接又は間接に作用する分子のみならず、CD30の細胞内シグナル伝達に関わる分子を意味し、細胞表面から核までの細胞シグナル伝達の各ステップに関与する分子をも意味する。従って、本発明において、CD30及び/又はCD30のシグナル伝達に関与する分子を介して好酸球アポトーシスを誘導する物質とは、細胞外であっても、あるいは細胞内であっても、このような種々のステップにおける各分子に直接又は間接に作用して好酸球アポトーシスを誘導する物質をいう。
CD30及び/又はCD30のシグナル伝達に関与する分子を介して好酸球アポトーシスを誘導する物質としては、抗CD30抗体のみならず、好酸球にアポトーシスを誘導できて臨床適用し得る条件を満たす限りにおいてどのような物質であってもよい。例えば、CD30リガンド、CD30リガンドを発現及び/又は分泌している貪食能を有する細胞、CD30発現調節及び/又は凝集調節能を有する物質、貪食能を有する細胞にCD30リガンドを発現及び/又は分泌させる物質又は後述する選別法で得られるCD30を介する好酸球アポトーシス誘導物質が挙げられる。
CD30リガンドを発現及び/又は分泌している貪食能を有する細胞、CD30発現調節及び/又は凝集調節能を有する物質、貪食能を有する細胞にCD30リガンドを発現及び/又は分泌させる物質も、CD30及び/又はCD30のシグナル伝達に関与する分子を介して好酸球アポトーシスを誘導することが期待できる。なお、CD30リガンドを発現及び/又は分泌している貪食能を有する細胞、CD30発現調節及び/又は凝集調節能を有する物質、貪食能を有する細胞にCD30リガンドを発現及び/又は分泌させる物質を選別するには、例えば抗CD30リガンド抗体により、貪食細胞の免疫染色、貪食細胞の培養上清中のCD30リガンドのELISAを用いることができる。
CD30及び/又はCD30のシグナル伝達に関与する分子を介して好酸球アポトーシスを誘導する物質として好ましいのは、抗CD30抗体であるBer−H8又はHRS−4が認識する部位を認識する免疫グロブリン若しくはその活性フラグメント、ペプチド又は低分子化合物である。Ber−H8及びHRS−4はマウス抗ヒトCD30単クローン抗体として文献(Hybridoma 19,43−48,2000)に記載されており、また市販されている(Ber−H8についてはPharMingen,San Diego,CAから、HRS−4については、Immunotech,Marseilles,Franceから入手できる)。
また、CD30及び/又はCD30のシグナル伝達に関与する分子を介して好酸球アポトーシスを誘導する物質として特に好ましいのは、少なくとも配列番号1記載のアミノ酸配列(CD30のアミノ酸配列のうち、112−412位のアミノ酸配列)の一部又は全部を認識する免疫グロブリン又はその活性フラグメントである。特に好ましい免疫グロブリンは抗CD30単クローン抗体である。
抗CD30単クローン抗体としては、高純度に精製された抗CD30単クローン抗体であれば全て使用でき、その由来および種類を問わないが、特に哺乳動物由来の単クローン抗体が好ましい。
単クローン抗体の産生細胞の動物種は哺乳類であれば特に制限されず、ヒト抗体またはヒト以外の哺乳動物由来であってよい。ヒト以外の哺乳動物由来の単クローン抗体としては、その作製の簡便さからウサギあるいはげっ歯類由来の単クローン抗体が好ましい。げっ歯類としては、特に制限されないが、マウス、ラット、ハムスターなどが好ましく例示される。さらに、トランスジェニック動物を用いて作製したヒト抗体も好ましい例である。
このような抗CD30単クローン抗体としては、Ber−H8又はHRS−4を例示することができるが、これに限定されない。抗CD30単クローン抗体は、基本的には公知技術を使用して作製できる。すなわち、CD30を感作抗原として使用して、これを通常の免疫方法にしたがって免疫し、得られる免疫細胞を通常の細胞融合法によって公知の親細胞と融合させ、通常のスクリーニング法により、単クローン抗体産生細胞をスクリーニングすることによって作製できる。
本発明に使用される単クローン抗体は、ハイブリドーマが産生する単クローン抗体に限られるものではなく、ヒトに対する異種抗原性を低下させること等を目的として人為的に改変したものであってもよい。例えば、ヒト以外の哺乳動物、例えば、マウスの単クローン抗体の可変領域とヒト抗体の定常領域と<TXFFR=0002 HE=250 WI=080 LX=1100 LY=0300>からなるキメラ抗体を使用することができ、このようなキメラ抗体は、既知のキメラ抗体の製造方法、特に遺伝子組換技法を用いて製造することができる。さらに、再構成(reshaped)したヒト型化抗体を本発明に用いることもできる。これはヒト以外の哺乳動物、たとえばマウス抗体の相補性決定領域によりヒト抗体の相補性決定領域を置換したものであり、その一般的な遺伝子組換手法も知られている。その既知方法を用いて、本発明に有用な再構成ヒト型化抗体を得ることができる。
また、本発明では、CD30及び/又はCD30のシグナル伝達に関与する分子を介して好酸球アポトーシスを誘導する物質として、CD30リガンド又はその活性フラグメントであってもよい。好ましいCD30リガンドとしては、例えば配列番号2のアミノ酸配列を有するヒト由来CD153や配列番号5のアミノ酸配列を有するマウス由来CD153を挙げることができるが、これらに限定されない。さらに、CD30及び/又はCD30のシグナル伝達に関与する分子を介して好酸球アポトーシスを誘導する物質は、CD30リガンド又はその活性フラグメントをコードする核酸であってもよい。好ましいCD30リガンドをコードする核酸としては、例えば配列番号2(ヒト由来CD153のアミノ酸配列)記載のアミノ酸をコードするDNAや配列番号5(マウス由来CD153のアミノ酸配列)記載のアミノ酸をコードするDNAを挙げることができるが、これらに限定されない。
CD30及び/又はCD30のシグナル伝達に関与する分子を介する好酸球アポトーシス誘導物質の選別法の一例としては、CD30発現細胞(例えば、Lurkat、K562、RDなど)に対する抗CD30抗体(例えば、HRS−4、Ber−H8、YMSM636.4.10など)結合の阻害に基づく一次選別、末梢血、臍帯血又は骨髄由来培養好酸球のアポトーシス誘導に基づく二次選別、及び末梢血好酸球のアポトーシス誘導に基づく三次選別による選別法が挙げられるが、これに限定されるものではない。
アポトーシス誘導効果を有しているか否かについては、好酸球細胞がアポトーシス特有の特徴を呈しているか否かを指標にして判断することができる。具体的には、細胞容積の減少、DNAの断片化、アポトーシス小体の形成などの形態学的特徴の透過電子顕微鏡による観察、あるいは好酸球細胞の生存率を指標にすることができる。細胞容積は、例えばCoulter型細胞サイズ解析機による電子的サイズ決定技術により測定できる。ヌクレオソーム間のDNAの断片化はDNAラダーとして検出することができ、アポトーシス検出用の市販のラダー検出キット(例えば、Wako Pure Chemical Industries,Ltd.,Osaka,Japan)を用いることができる。細胞生存率は、例えば比色MTTアッセイを用いるミトコンドリアデヒドロゲナーゼ活性により評価することができる。MTTに代えて、WAT−1やWST−8などのホルマザン試薬を用いることもできる。さらには、生存細胞がトリパンブルーを排除することを用いて細胞生存率を測定できる。あるいは、MEBCYTO−Apoptosis Kit(Medical Biological Laboratories,Nagoya,Japan)などの市販キットを用いて、FITC標識AnnexinVの結合したアポトーシス細胞をフローサイトメーター(例えば、FACScan Becton Dickinson)にて計測することもできる。
顆粒蛋白の漏出を伴う細胞のネクローシスの場合と異なり、アポトーシス後の好酸球細胞は、細胞膜破壊による顆粒タンパク漏出前にマクロファージ等の食細胞の貪食により無毒化処理を受け、周囲の組織・細胞に障害を生じさせずに除去される。
一般に、アポトーシス細胞に対する食細胞による貪食排除には以下の4つの過程があると考えられている。
1.アポトーシス細胞周辺への食細胞の遊走:炎症局所ではすでに食細胞はアポトーシス細胞と隣接している。
2.食細胞によるアポトーシス細胞の認識:食細胞は貪食受容体を介して、アポトーシス細胞表面上の貪食目印分子を認識する。貪食目印分子としては、フォスファチジルセリン(PS)が最もよく知られている。貪食受容体としては、PSを認識するクラスBスカベンジャーレセプタータイプI(SR−BI)やLOX−1(lectin−like oxiddized low−density lipoprotein receptor−1)が同定されている。
3.食細胞によるアポトーシス細胞の取り込み(貪食):貪食受容体からのシグナルにより食細胞は貪食するが、シグナル伝達機構は不明である。
4.貪食されたアポトーシス細胞のリソゾームなど細胞内器官への輸送、処理。
好酸球増多性疾患の具体例としては、例えば、アレルギー疾患、呼吸器疾患、皮膚疾患、自己免疫疾患、免疫不全疾患、消化器疾患、特発性好酸球増加症候群、腫瘍性疾患(例えば、ホジキン病)及び寄生虫感染性疾患等を挙げることができる。
本発明の好酸球増多性疾患治療剤には、上記のようにして選別されたCD30及び/又はCD30のシグナル伝達に関与する分子を介して好酸球アポトーシスを誘導する物質を有効成分として含み、さらに通常の製剤化の際に用いられる担体や賦形剤、その他の添加剤を用いて調製される。
製剤用の担体や賦形剤としては、例えば、乳糖、ステアリン酸マグネシウム、デンプン、タルク、ゼラチン、寒天、ペクチン、アラビアゴム、オリーブ油、ゴマ油、カカオバター、エチレングリコールなどやその他常用されるものをあげることができる。
経口投与のための固体組成物としては、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤などが用いられる。このような固体組成物においては、少なくともひとつの有効成分が少なくともひとつの不活性な希釈剤、例えば、乳糖、マンニトール、ブドウ糖、ヒドロキシプロピルセルロース、微結晶性セルロース、デンプン、ポリビニルピロリドン、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムなどと混合される。組成物は、常法にしたがって不活性な希釈剤以外の添加物、例えば、ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、繊維素グリコール酸カルシウムのような崩壊剤、グルタミン酸またはアスパラギン酸のような溶解補助剤を含んでいてもよい。錠剤または丸剤は、必要によりショ糖、ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートなどの糖衣や胃溶性または腸溶性物質のフィルムで被覆してもよいし、2つ以上の層で被覆してもよい。さらに、ゼラチンのような吸収されうる物質のカプセルも含まれる。
経口投与のための液体組成物は、薬剤的に許容される乳濁剤、溶液剤、懸濁剤、シロップ剤、エリキシル剤などを含み、一般的に用いられる不活性な希釈剤、例えば精製水、エタノールなどを含んでいてもよい。この組成物は、不活性な希釈剤以外に湿潤剤、懸濁剤のような補助剤、甘味剤、風味剤、芳香剤、防腐剤などを含んでいてもよい。
非経口投与のための注射剤としては、無菌の水性または非水性の溶液剤、懸濁剤、乳濁剤が含まれる。水性の溶液剤、懸濁剤としては、例えば、注射用水および注射用生理食塩液が含まれる。非水性の溶液剤、懸濁剤としては、例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油のような植物油、エタノールのようなアルコール類、ポリソルベート80(登録商標)などが含まれる。このような組成物は、さらに防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、安定化剤(例えば、乳糖)、溶解補助剤(例えば、グルタミン酸、アスパラギン酸)のような補助剤を含んでいてもよい。これらは、例えば、精密ろ過膜によるろ過滅菌、高圧蒸気滅菌のような加熱滅菌、あるいは、殺菌剤の配合などの通常の滅菌方法によって無菌化することが可能である。注射剤は溶液製剤であっても、使用前に溶解再構成するために凍結乾燥したものであってもよい。凍結乾燥のための賦形剤としては例えばマンニトール、ブドウ糖などの糖アルコールや糖類を使用することが出来る。
また、本発明の治療剤を遺伝子治療に用いる場合にはウイルスベクター、好ましくはレンチウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、更に好ましくはアデノウイルスベクター、又は化学合成リポソーム、ウイルスエンベロープ、若しくはウイルスエンベロープと合成リポソームの複合体等公知の遺伝子治療に適した媒体に、宿主細胞内で機能するようなプロモーター配列、例えばサイトメガロウイルスプロモーター(CMVpromoter)等、の下流に、CD30及び/又はCD30のシグナル伝達に関与する分子を介して好酸球アポトーシスを誘導する物質に係る核酸を組み込んだものを用いることができる。
本発明の好酸球増多性疾患治療剤は、医薬に一般に使用されている投与方法、例えば、経口投与方法、又は非経口投与方法によって投与するのが好ましい。有効成分が抗体である場合には通常非経口投与経路で、例えば注射剤(皮下注、静注、筋注、腹腔内注など)、経皮、経粘膜、経鼻、経肺などで投与されるが、経口投与も可能である。
本発明の製剤中に含まれる有効成分であるCD30及び/又はCD30のシグナル伝達に関与する分子を介して好酸球アポトーシスを誘導する物質の量は、治療すべき疾患の種類、疾患の重症度、患者の年齢などに応じて決定できるが、一般には最終投与濃度で0.01〜500mg/ml、好ましくは0.1〜200mg/mlである。
産業上の利用可能性
本発明は、CD30及び/又はCD30のシグナル伝達に関与する分子を介し好酸球アポトーシスを誘導する物質は好酸球増多性疾患の治療薬として有用であり、また、CD30を介した好酸球アポトーシス誘導は新たな機序に基づく、好酸球増多性疾患に対する治療方法として有用である。このような疾患としては、好酸球が中心的な役割を担っている基本病態が炎症反応である、アレルギー疾患、寄生虫感染症、自己免疫疾患等が例示される。
本発明の好酸球増多性疾患治療薬は、従来好酸球のアポトーシスを誘導するとされている抗Fas抗体と比較して、ヒト末梢血好酸球に対してはるかに迅速かつ強力にアポトーシスを誘導することができる。また、好酸球に対するアポトーシス誘導の細胞特異性が極めて高く、好中球、リンパ球、マスト細胞にはアポトーシスを誘導しない。さらには、本発明の好酸球増多性疾患治療薬の好酸球に対するアポトーシス誘導はIL−5等により減殺されない。従って、本発明の好酸球増多性疾患治療薬は臨床的に極めて有用な治療薬として期待できる。
実施例
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲をこれらの実施例に限定するものではない。
実施例1:ヒト末梢血好酸球におけるCD30発現解析
ヘパリン採血したヒト末梢血をPBSで希釈し、Percoll(比重1.090g/ml、Pharmacia,Uppsala,Sweden)に重層後、遠心分離(1500rpm,30分間)した。最下層の顆粒球画分に低温精製水を加え溶血させた。ついで、抗CD16抗体固相化magnetic beads(MACS CD16 micro beads、Miltenyi Biotec,Bergish Gladbach,Germany)を用いたnegative selectionにより好酸球画分を得た。好酸球の生存率(trypan blue dye exclusion法、ナカライ社製)及び純度(DIFF−QUICK染色、国際試薬株式会社製)はそれぞれ99%以上であった。
分離したヒト好酸球を2×105cells/tubeに調製し、1次抗体として、6種のマウス抗ヒトCD30単クローン抗体又はコントロールマウスIgG(10μg/ml)を4℃にて30分反応させた。洗浄後、2次抗体としてFITC標識ヤギ抗マウスIgGF(ab’)2を用いて染色(4℃にて30分反応)し、1%パラホルムアルデヒドにて固定後、フローサイトメーター(FACScan Becton Dickinson)にて検出した。IL−5(1ng/ml,R&D systems,Inc.,Mineeapolis,MN)で活性化(37℃,30分)した好酸球について同様に検討した。マウス抗ヒトCD30単クローン抗体としては、HRS−4(Immunotech,Marseilles,France)、Ber−H2(DAKO,Glostrup,Denmark)、Ber−H8(PharMingen,San Diego,CA)、AC−10(Ancel,Bayport,MN)、1G12(YLEM Avezzano,Roma,Italy)及びKi−1(YLEM Avezzano,Roma,Italy)を、コントロールマウスIgGとしてはMOPC−21(Sigma Chemical Co.,St.Louis,MO)を用いた。
6人の末梢血提供者の好酸球をフローサイトメトリーにより解析した結果、ヒト末梢血好酸球はHRS−4およびAC10により有意に染色され、CD30発現が確認された(図1)。なお、AC10染色による平均蛍光強度は8.9±3.2であり、好酸球におけるCD30発現はIL−5受容体α鎖の発現と同程度であることが判明した。IL−5により活性化した場合は、AC−10により有意な発現が観察され、またHRS−4又はBer−H8により、発現増加傾向が認められた(図2)。
実施例2:ヒト末梢血好酸球におけるCD30 mRNA発現解析
ヒト末梢血好酸球をIsogen(Nippon Gene,Osaka,Japan)により溶解し、RNAを抽出後、Invitrogen Corp(San Diego,CA)のキットを用いてcDNAへ逆転写した。ヒトCD30遺伝子の3’−非翻訳領域を認識する上流域センスプライマー(5’−GCC CAG GAT CAA GTC ACT CAT−3’)(配列番号3)及び下流域アンチセンスプライマー(5’−TAC ACG TCT GAA GGC CCT AGG−3’)(配列番号4)を用い、サーマルサイクラー(Gene Amp PCR System 9700;PE Biosystem)により501bpの断片をPCR反応(94℃1分1サイクルで変性、94℃1分/55℃1分/72℃2分40サイクル、最後に72℃10分1サイクルで伸長)により増幅した。反応終了後、0.05% ethidium bromide(Sigma)を含む0.8%アガロースゲル(BRL Life Technologies Inc.)で電気泳動したところ、約500bpのバンドとして目的のPCR産物を確認した。ヒト末梢血好酸球にはCD30 mRNAが発現していることが示された(図3)。
実施例3:ヒト末梢血好酸球に対する抗ヒトCD30単クローン抗体によるアポトーシス誘導の検討
抗ヒトCD30単クローン抗体をPBSにより種々の濃度(0.01,0.1,1及び10μg/ml)に調製し、24穴マイクロプレート(Costar Corp.,Cambridge,MA)に1ml添加後、4℃にて12時間静置し固相化した。洗浄後、1%ヒト血清アルブミン(Sigma Chemical Co.,St.Louis,MO)2mlを添加し、37℃にて2時間ブロッキングした。洗浄後、10%FCS,10−5M 2−メルカプトエタノール(GIBCO),Penicillin/Streptomycin(GIBCO)及び1ng/mlヒト組換えIL−5(R&D systems,Inc.,Minneapolis,MN)を含むIMDM(Iscove’s modified Dulbecco’s medium、GIBCO)培地にて1x106cells/mlに調製した分離ヒト末梢血好酸球を加えた。37℃、4時間培養後、細胞を集め洗浄後、アポトーシス細胞をMEBCYTO−Apoptosis Kit(Medical Biological Laboratories,Nagoya,Japan)にて検出した。FITC標識AnnexinVの結合したアポトーシス細胞をフローサイトメーター(FACScan Becton Dickinson)にて計測した。
その結果、抗ヒトCD30単クローン抗体HRS−4及びBer−H8は濃度依存的にヒト末梢血好酸球に対してアポトーシスを誘導した。HRS−4は1及び10μg/mlの濃度で固相化した場合、それぞれ16.3%及び78.8%の好酸球に、Ber−H8は0.01,0.1,1及び10μg/mlの濃度で固相化した場合、それぞれ7.8%,11.4%,44.8%及び71.9%の好酸球にアポトーシスを誘導した(図4)。なお、抗ヒトCD30単クローン抗体Ber−H2,AC10,1G12及びKi1,ならびにコントロールマウスIgGはヒト末梢血好酸球に対してアポトーシスをまったく誘導しなかった。
実施例4:抗ヒトCD30単クローン抗体によるヒト末梢血好酸球アポトーシス誘導における好酸球提供者の個人差の検討
3人の末梢血から分離した好酸球に対する抗ヒトCD30単クローン抗体のアポトーシス誘導能を検討した。抗ヒトCD30単クローン抗体は10μg/mlの濃度で固相化した。いずれの提供者の末梢血好酸球に対しても、抗ヒトCD30単クローン抗体HRS−4及びBer−H8は強力にアポトーシスを誘導した(図5:3人の平均値を示す)。従って、HRS−4及びBer−H8の末梢血好酸球アポトーシス誘導能には、好酸球提供者による個人差はないことが示された。なお、抗ヒトCD30単クローン抗体Ber−H2,AC10,1G12及びKi1,ならびにコントロールマウスIgGはいずれの提供者の好酸球に対してもアポトーシスを誘導しなかった。
実施例5:抗ヒトCD30単クローン抗体HRS−4及びBer−H8によるヒト末梢血好酸球アポトーシス誘導の経時変化
分離ヒト末梢血好酸球に対する抗ヒトCD30単クローン抗体HRS−4及びBer−H8のアポトーシス誘導の経時変化を検討した。HRS−4及びBer−H8を10μg/mlの濃度で固相化したプレートに好酸球を添加して培養した場合、いずれの抗体も1時間後にはほぼ50%の好酸球にアポトーシスを誘導し、4時間後までにはアポトーシス好酸球は70%まで増加した(図6)。従って、HRS−4及びBer−H8は末梢血好酸球に対して非常に迅速にアポトーシスを誘導することが判明した。
実施例6:抗ヒトCD30単クローン抗体HRS−4及びBer−H8によるヒト末梢血好酸球アポトーシス誘導(DNA断片化を指標)
分離ヒト末梢血好酸球に対する抗ヒトCD30単クローン抗体HRS−4及びBer−H8のアポトーシス誘導をDNA断片化を指標として検討した。HRS−4及びBer−H8を10μg/mlの濃度で固相化したプレートに好酸球を添加して24時間培養後、細胞を回収し、アポトーシスラダー検出キット(Wako Pure Chemical Industries,Ltd.,Osaka,Japan)を用いてDNAを抽出し、アガロース電気泳動にてDNA断片化を検討した。
HRS−4及びBer−H8はいずれも好酸球DNAの断片化を誘導した(図7)。なお、抗ヒトCD30単クローン抗体Ber−H2及びコントロールマウスIgGはいずれも好酸球DNAの断片化を誘導しなかった。従って、HRS−4及びBer−H8のヒト末梢血好酸球に対するアポトーシス誘導はDNA断片化を指標とした場合でも確認できた。
実施例7:抗ヒトCD30単クローン抗体HRS−4及びBer−H8と抗ヒトFas単クローン抗体とのヒト末梢血好酸球アポトーシス誘導能の比較検討
分離ヒト末梢血好酸球に対する抗ヒトCD30単クローン抗体HRS−4及びBer−H8と抗ヒトFas単クローン抗体(CH−11,Medical Biological Laboratories,Nagoya,Japan)とのアポトーシス誘導能を比較検討した。単クローン抗体を10μg/mlの濃度で固相化したプレートに好酸球を添加し、培養した。
HRS−4及びBer−H8は培養1時間後にはほぼ50%の好酸球にアポトーシスを誘導し、4時間後までにはアポトーシス好酸球は70%まで増加した。一方、抗ヒトFas単クローン抗体では培養24時間後からアポトーシス好酸球が出現したが、72時間後でもあまり増加しなかった(図8)。従って、抗ヒトCD30単クローン抗体HRS−4及びBer−H8は、抗ヒトFas単クローン抗体に比べて、ヒト末梢血好酸球に対して非常に迅速で、強力にアポトーシスを誘導することが判明した。
実施例8:抗ヒトCD30単クローン抗体HRS−4及びBer−H8のアポトーシス誘導能の細胞選択性の検討
ヘパリン採血したヒト末梢血をPBSで希釈し、Percoll(比重1.090g/ml、Pharmacia,Uppsala,Sweden)に重層後、遠心分離(1500rpm,15分間)した。最下層の顆粒球画分に低温精製水を加え溶血させた。ついで、抗CD16抗体固相化magnetic beads(MACS CD16 micro beads、Miltenyi Biotec,Bergish Gladbach,Germany)を用いたpositive selectionにより好中球画分を得た。好中球の生存率は99%であった。分離ヒト末梢血好中球に対する固相化抗ヒトCD30単クローン抗体のアポトーシス誘導能をフローサイトメーターにて計測した。
上述した6種の抗ヒトCD30単クローン抗体はいずれも、好中球に対してアポトーシスを誘導しなかった(図9)。6人の末梢血好中球を用いてさらに検討したが、6種の抗ヒトCD30単クローン抗体はいずれもアポトーシスを誘導しなかった。
次いで、ヘパリン採血したヒト末梢血にシリカゲル(免疫生物研究所)を添加し、37℃で1時間作用させマクロファージを除去し、PBSで希釈後、LSM(比重1.077g/ml,ICN社製)に重層後、遠心分離(1500rpm,15分間)し、リンパ球画分を得た。リンパ球の生存率は99%であった。同様に分離ヒト末梢血リンパ球に対する固相化抗ヒトCD30単クローン抗体のアポトーシス誘導能をフローサイトメーターにて計測した。好酸球に対してアポトーシスを誘導するHRS−4及びBer−H8はいずれも、リンパ球に対してはアポトーシスを誘導しなかった(図10)。
さらに、培養ヒトマスト細胞に対する固相化抗ヒトCD30単クローン抗体のアポトーシス誘導能をフローサイトメーターにて計測した。好酸球に対してアポトーシスを誘導するHRS−4及びBer−H8はいずれも、培養ヒトマスト細胞に対してはアポトーシスを誘導しなかった(図11)。培養ヒトマスト細胞としては、斎藤らの方法(J.Immunol.157,343−350,1996及びJ.Allergy Clin.Immunol.106,321−328,2000)に準じて得た末梢血由来成熟マスト細胞(P−Mast)及び臍帯血由来成熟マスト細胞(C−Mast)を用いた。
なお、CD30陽性ヒト細胞株Jurkat(T cell lymphoma)、K562(erythroleukemia)及びRD(rhabdomyosarcoma)に対しても、HRS−4及びBer−H8はいずれも、アポトーシスを誘導しなかった。
従って、抗ヒトCD30単クローン抗体HRS−4及びBer−H8はヒト末梢血好酸球に選択的にアポトーシスを誘導することが判明した。
実施例9:抗ヒトCD30単クローン抗体HRS−4及びBer−H8によるヒト末梢血好酸球アポトーシス誘導に対する高濃度IL−5の影響
これまで、抗ヒトCD30単クローン抗体HRS−4及びBer−H8は、10ng/mlのヒト組換えIL−5存在下、ヒト末梢血好酸球に対してアポトーシスを誘導することを確認した。しかし、高濃度のIL−5が存在していれば好酸球自体の生存能が増強され、HRS−4及びBer−H8のアポトーシス誘導能は減殺される可能性がある。そこで、0,1,10及び100ng/mlのIL−5存在下、HRS−4及びBer−H8によるヒト末梢血好酸球アポトーシス誘導能を検討した。また、好酸球提供者の個人差を考慮し、4人の末梢血好酸球を用いて実施した。
HRS−4はIL−5の濃度依存的にアポトーシスを誘導し、IL−5非存在下ではアポトーシスをまったく誘導せず、100ng/ml存在下でも誘導した。一方、Ber−H8は、IL−5の有無に関わらずアポトーシスを誘導した(図12)。
従って、CD30を介するヒト末梢血好酸球アポトーシスのシグナルにはIL−5が関与する経路としない経路が存在していることが示唆された。しかし、少なくとも高濃度のIL−5が存在していてもHRS−4及びBer−H8のアポトーシス誘導は減殺されないことが判明した。
実施例10:ヒト末梢血好酸球に対する抗マウスCD30単クローン抗体のアポトーシス誘導の検討
分離ヒト末梢血好酸球に対する抗マウスCD30単クローン抗体YMSM636.4.10(Serotec Ltd,Oxford UK)及び2SH12−5F−2D(BD PharMingen,San Diego,USA)のアポトーシス誘導を検討した。YMSM636.4.10を10μg/mlの濃度で固相化したプレートにヒト好酸球を添加して培養した場合、4時間後にはほぼ30%の好酸球にアポトーシスを誘導した(図13)。なお、2SH12−5F−2DならびにラットコントロールIgGはアポトーシスをまったく誘導しなかった。
実施例11:ヒト末梢血好酸球に対するマウスCD30リガンドのアポトーシス誘導の検討
分離ヒト末梢血好酸球に対するリコンビナントマウスCD30リガンド(R&D Systems Inc.Minneapolis,USA)のアポトーシス誘導を検討した。リコンビナントマウスCD30リガンドを10及び100μg/mlの濃度で固相化したプレートにヒト好酸球を添加して培養した場合、4時間後にはそれぞれ28%及び35%の好酸球にアポトーシスを誘導した(図14)。
実施例12:ヒト末梢血好酸球に対するポリスチレンマイクロビーズ固相化抗ヒトCD30単クローン抗体HRS−4及びBer−H8によるアポトーシス誘導の検討
分離ヒト末梢血好酸球に対するポリスチレンマイクロビーズ固相化抗ヒトCD30単クローン抗体HRS−4及びBer−H8によるアポトーシス誘導を検討した。紀太らの方法(Am.J.Respir.Cell.Mol.Biol.,18,:675−686,1998)に準じ、0.1Mホウ酸緩衝液にて洗浄した直径1.444μMのポリスチレンマイクロビーズ(2.56% solid Latex,Sigma)0.5mlに、200μgの抗ヒトCD30単クローン抗体を添加後、4℃12時間静置し固相化した。洗浄後、2.5%ヒト血清アルブミン0.5mlを添加し、4℃にて2時間ブロッキングした。洗浄後、0.5mlPBSに懸濁し、ポリスチレンマイクロビーズ固相化抗ヒトCD30単クローン抗体とした。分離ヒト末梢血好酸球2x105cells及びポリスチレンマイクロビーズ固相化HRS−4及びBer−H8(10μl)を96穴U底マイクロプレート(NUNC社)に加えた。37℃、4時間培養後、アポトーシス細胞をフローサイトメーターにて計測した。なお、ポリスチレンマイクロビーズは前方散乱光及び側方散乱光のドットブロットにおけるゲーティングにより除外した。
ポリスチレンマイクロビーズ固相化HRS−4は27.9%の好酸球に、Ber−H8は44.0%の好酸球にアポトーシスを誘導した(図15)。なお、ポリスチレンマイクロビーズ固相化抗ヒトCD30単クローン抗体Ber−H2ならびにコントロールマウスIgGはヒト末梢血好酸球に対してアポトーシスを誘導しなかった。従って、抗ヒトCD30単クローン抗体HRS−4及びBer−H8はマイクロプレートへの固相化と同様に、ポリスチレンマイクロビーズに固相化した場合でもヒト好酸球に対してアポトーシスを誘導することが判明した。
実施例13:ポリスチレンマイクロビーズ固相化抗ヒトCD30単クローン抗体HRS−4及びBer−H8によりアポトーシスを誘導されたヒト末梢血好酸球に対する食細胞による貪食試験
ポリスチレンマイクロビーズ固相化抗HRS−4及びBer−H8によりアポトーシスを誘導された分離好酸球に対する食細胞による貪食試験を実施した。まず、Brownらの方法(J.Biol.Chem.,275:5987−5996,2000)に準じ、ヒト臍帯血単核球画分からCD34陰性細胞を分画し、10ng/mlのヒト組換えM−CSF(Macrophage−corony stimulating factor、R&D社)存在下、7日間培養し、成熟マクロファージを調製した。次いで、ポリスチレンマイクロビーズ固相化抗HRS−4及びBer−H8を30分間反応させアポトーシス誘導途上にある好酸球を、Fadokらの方法(J.Biol.Chem.,276:1071−1077,2001)に準じ、あらかじめチャンバースライド(NUNC社)上で24時間培養した臍帯血由来マクロファージによる貪食試験に供した。好酸球単独培養及び好酸球/マクロファージ共培養による4時間後のそれぞれの培養上清中に漏出した好酸球顆粒タンパクEDN(Eosinophil−derived neurotoxin)濃度の差を貪食作用の指標とした。EDN濃度はELISAキット(MBL社)を用いて測定した。
ポリスチレンマイクロビーズ固相化HRS−4及びBer−H8によりアポトーシスを誘導された好酸球は臍帯血由来マクロファージとの共培養により貪食された結果、培養上清中に漏出したEDNは減少した。とくに、HRS−4によりアポトーシスを誘導した好酸球に対して、臍帯血由来マクロファージは顕著な貪食作用を示した(図16)。なお、ポリスチレンマイクロビーズ固相化抗ヒトCD30単クローン抗体Ber−H2ならびにコントロールマウスIgGを反応させた好酸球の場合、単独培養、共培養に関わらずEDN漏出は非常に少なかった。また、ヒト単球系細胞株U937(例えば、ATCCから購入可能:ATCC No.CRL−1593.2)のマクロファージとしての機能を顕在化させて貪食能を引き出す目的で、10ng/ml PMA(Phorbol 12−Myristate 13−Acetate、Sigma社)を用いて当該細胞を1時間刺激し、活性化した当該細胞を食細胞とした貪食試験でも同様の結果が得られた(図17)。
従って、HRS−4及びBer−H8によりアポトーシスを誘導されたヒト末梢血好酸球は、細胞膜破壊による顆粒タンパク漏出前にマクロファージ等の食細胞の貪食により無毒化処理を受けることが示唆された。
【配列表】
【図面の簡単な説明】
図1は、6種のマウス抗ヒトCD30単クローン抗体又はコントロールマウスIgGを用いたヒト末梢血好酸球におけるCD30発現解析の結果を示すグラフである。
図2は、IL−5により活性化した好酸球を用いた場合の、6種のマウス抗ヒトCD30単クローン抗体又はコントロールマウスIgGを用いたヒト末梢血好酸球におけるCD30発現解析の結果を示すグラフである。
図3は、ヒト末梢血好酸球におけるCD30 mRNAの発現解析の結果を示す電気泳動の図である。
図4は、ヒト末梢血好酸球に対する抗ヒトCD30単クローン抗体によるアポトーシス誘導の試験結果を示すグラフである。
図5は、抗ヒトCD30単クローン抗体によるヒト末梢血好酸球アポトーシス誘導における好酸球提供者の個人差の検討結果を示すグラフである。
図6は、抗ヒトCD30単クローン抗体HRS−4及びBer−H8によるヒト末梢血好酸球アポトーシス誘導の経時変化を示すグラフである。
図7は、抗ヒトCD30単クローン抗体HRS−4及びBer−H8によるヒト末梢血好酸球アポトーシス誘導をDNA断片化を指標として試験した結果を示す電気泳動の図である。
図8は、抗ヒトCD30単クローン抗体HRS−4及びBer−H8と抗ヒトFas単クローン抗体とのヒト末梢血好酸球アポトーシス誘導能を比較検討した結果を示すグラフである。
図9は、抗ヒトCD30単クローン抗体HRS−4及びBer−H8の好中球に対するアポトーシス誘導能の検討結果を示すグラフである。
図10は、抗ヒトCD30単クローン抗体HRS−4及びBer−H8のリンパ球に対するアポトーシス誘導能の検討結果を示すグラフである。
図11は、抗ヒトCD30単クローン抗体HRS−4及びBer−H8の培養ヒトマスト細胞に対するアポトーシス誘導能の検討結果を示すグラフである。
図12は、抗ヒトCD30単クローン抗体HRS−4及びBer−H8によるヒト末梢血好酸球アポトーシス誘導に対する高濃度IL−5の影響を示すグラフである。
図13は、ヒト末梢血好酸球に対する抗マウスCD30単クローン抗体(YMSM636.4.10)のアポトーシス誘導の検討結果を示すグラフである。
図14は、ヒト末梢血好酸球に対するマウスCD30リガンドのアポトーシス誘導の検討結果を示すグラフである。
図15は、ヒト末梢血好酸球に対するポリスチレンマイクロビーズ固相化抗ヒトCD30単クローン抗体HRS−4及びBer−H8によるアポトーシス誘導の検討結果を示すグラフである。
図16は、ポリスチレンマイクロビーズ固相化抗ヒトCD30単クローン抗体HRS−4及びBer−H8によりアポトーシスを誘導されたヒト末梢血好酸球に対する、ヒト臍帯血由来マクロファージによる貪食試験の結果を示すグラフである。
図17は、ポリスチレンマイクロビーズ固相化抗ヒトCD30単クローン抗体HRS−4及びBer−H8によりアポトーシスを誘導されたヒト末梢血好酸球に対する、PMA刺激ヒト単球系細胞株U937細胞による貪食試験の結果を示すグラフである。
本発明は、CD30及び/又はCD30のシグナル伝達に関与する分子を介して好酸球アポトーシスを誘導する物質を有効成分とする、末梢血中又は組織中に増加した好酸球に起因する好酸球増多性疾患の治療薬又は治療方法等に関する。
背景技術
炎症の病態では、肥満細胞、リンパ球、好酸球、好塩基球等複数の炎症性細胞が複数のメディエーターを介して、複雑なネットワークを形成し組織障害をもたらしている。従来の炎症治療、特にアレルギー炎症治療は特異的IgEによる肥満細胞・好塩基球の脱顆粒/ケミカルメディエーター放出による組織反応、即ち炎症性細胞の遊走・浸潤・活性化をいかに阻止するかに主眼を置いてきた。また、減感作療法、脱顆粒阻害・ケミカルメディエーター遊離抑制薬、ケミカルメディエーター拮抗薬はアレルギー炎症治療に大きく貢献してきた。このIgE依存性メカニズムの抑制は、アレルギー治療の中心であり、現在でも新しいケミカルメディエーターとくにエイコサノイド合成阻害薬・拮抗薬が盛んに開発されている。
一方、近年の研究により、好酸球顆粒タンパクが直接組織障害や炎症を誘導することから、好酸球が炎症反応とくにアレルギー性炎症の中心的な役割を担っていることが明らかとなってきた。即ち、炎症病態における好酸球については、「骨髄での産生亢進」、「病変組織への選択的浸潤及び活性化」、そして「生存期間の延長」が知られている。その結果、生き延びた活性化好酸球の増加に伴い、細胞毒性のある好酸球顆粒タンパクの継続的な放出により重篤な組織障害がもたらされる。また、臨床所見からも、例えば慢性気管支喘息患者の末梢血好酸球増多が観察される。さらに、末梢血好酸球数又は肺胞洗浄液中好酸球数と気道過敏症とは相関すること、症状の改善とともに末梢血好酸球数が正常化することが報告されている。従って、アレルギー疾患、寄生虫感染症、自己免疫疾患など様々な疾患の基本病態は炎症反応であることから、好酸球の制御も炎症の重要な治療目標の一つである。
現在まで、好酸球を標的とした炎症治療の研究としては、「骨髄での産生亢進抑制」、「組織への選択的浸潤抑制」、「遊走阻害」、「活性化(脱顆粒)抑制」、「顆粒タンパク(MBP,EPO,ECP,EDN)又は活性酸素種の不活化」等が挙げられ、eosinophilopoietic cytokineであるIL−5のシグナル阻止(IL−5R抗体、soluble IL−5R又はIL−5抗体)によるアレルギー性炎症に対する臨床応用も進められている。しかし、現在まで、好酸球を標的とする治療法は臨床的には確立されていない。
さらに、炎症局所においてアポトーシスの抑制により好酸球の生存が延長され、増加した活性化好酸球がネクローシス(壊死)にいたり顆粒タンパクが流出することにより炎症が遷延化されること、及びアポトーシス抑制を担うBcl−2をほとんど発現していない好酸球は、生存を支えるサイトカイン(IL−3,IL−5,GM−CSF,IFN−γ等)の除去により容易にアポトーシスに誘導されることから、炎症の制御終息における好酸球のアポトーシス誘導が大変魅力ある課題となっている。換言すれば、炎症を終息させるためにはいかに好酸球のアポトーシスを誘導するかが重要である。
以前より好酸球にアポトーシスを誘導できるTGF−β、抗Fas抗体、FasLの治療への応用が考えられている。また、ステロイドの抗炎症作用の一部は好酸球に対するアポトーシス誘導であることが示唆されている(J.Clin.Invest.88:1982−1987,1991)。しかしながら、抗Fas抗体投与は劇症肝炎を誘発し副作用が問題である(Cell,88:355−365,1997)、又はステロイドの好酸球に対するアポトーシス誘導はIL−5等により減殺される等の報告がある(J.Clin.Invest.88:1982−1987,1991)。即ち、現在まで好酸球に対するアポトーシス誘導による好酸球増多性疾患に有効な治療剤や治療方法はない。
一方、CD30は1982年に、ホジキン病由来のReed−Sternberg細胞株L428を抗原として作製された単クローン抗体Ki−1に認識される細胞表面分子として同定され、ホジキン病細胞特異的な抗原として報告された(Nature,299:65,1982)。その後、一部の非ホジキンリンパ腫、anaplastic large cell lymphoma、悪性黒色腫及び間葉系腫瘍等の腫瘍細胞、各種細胞株、マイトージェンで活性化されたT、B細胞、ウイルス(HIV、HTLV−I,−II、EBV)によって形質転換したT、B細胞、活性化マクロファージ、活性化NK細胞、子宮脱落膜細胞等に発現していることが知られている。これまでの解析によりCD30からのシグナルは、T細胞の増殖や細胞死、サイトカイン産生の亢進等多岐に渡る作用を示すことが報告されている(Blood,83:2045,1994)がまだ不明な点も多い。CD30欠損マウスでは、胸腺のCD4,8 double positive細胞数の劇的な増加が観測され、胸腺細胞(自己反応性T細胞)に対するネガティブセレクションが阻害されていることが示唆されている(J.Exp.Med.,187:427−432,1998)。CD30リガンド結合部位を認識するある種の単クローン抗体自体がanaplastic large cell lymphomaに対する抗腫瘍効果を示すことが報告されている。従って、CD30を介するシグナルはある種の細胞に対してアポトーシスを誘導することが示唆されている(臨床免疫,34:67−71,2000)。また、CD30分子は細胞外ドメインの構造からTNFレセプター(TNFR)スーパーファミリーのメンバーに属し、CD30リガンド(CD153)はTNFスーパーファミリーのメンバーであることが示された。CD30の細胞内ドメインはFasなどに認められるdeath domainをもたず、2ヶ所のTNFR associated factor(TRAF)結合部位をもち、TRAF分子を介してNF−kBを活性化することが報告されている(Int.Immunol.10:203,1998)。
さらに最近、CD30のシグナルはリガンドだけでなく、その発現レベルにも依存していること、即ち過剰発現自体により自己活性化を起こしリガンド非依存的にNF−kBを活性化することも報告された(臨床免疫,34:812−819,2000)。CD30の発現レベルは細胞種、活性化、分化段階でかなり異なることから、CD30の多様な作用の一因は発現レベルの差異によるものと考えられるが、単に発現レベルだけでは説明が付かない場合も多く、それ以外にも細胞内の刺激伝達系などの差違が細胞に与える作用を修飾していることが示唆されている。CD30と疾患の関連としては、ホジキン病、AIDS、B型肝炎、アトピー性疾患、Omenn症候群の患者、又は慢性関節リウマチや全身性エリテマトーデスなどの自己免疫疾患患者で可溶型CD30の血清レベルの上昇が挙げられる(Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,94:8670−8674,1997,J.Neuroimmunol.,97,182−190,1999,J.Neurol.Sci.,171:49−55,1999,Clin.Endocrinol.,49:609−613,1998,Br.J.Dermatol.,140:73−78,1999)。とくに、ホジキン病患者血清中の可溶型CD30レベルが上昇していること、アトピー性皮膚炎における血清ECP(Eosinophil Cationic Protein)レベル、又はAIDSのステージや予後と血清可溶型CD30レベルが相関していることから、これらの疾患へのCD30の関与が示唆されている。
一方、ホジキン病では好酸球が増加していることも報告されている(Ann.Oncol.,8:89−96,1997,Blood,95:1207−1213,2000)が、その原因、メカニズムは不明であり、好酸球にCD30が発現しているという報告はない。したがって、好酸球の増多と可溶型CD30レベルの上昇とを結びつけた報告は現在までに全くなされていない。
炎症を終息させるには、好酸球の新たな産生や病変組織への浸潤・活性化の抑制及び活性化好酸球の死滅が必要である。しかし、ネクローシス(壊死)による好酸球の死滅では、細胞膜破壊による顆粒タンパクの漏出により組織がさらに障害を受け炎症が悪化する。従って、本発明は好酸球に対し迅速で強力なアポトーシスを誘導する物質を用いる好酸球増多性疾患に対する治療剤又は治療方法等を提供することを目的とする。
発明の開示
本発明者はかかる課題を解決するべく鋭意検討した結果、抗ヒトCD30単クローン抗体等によるCD30を介するシグナルが好酸球に対し迅速で強力なアポトーシスを誘導し、アレルギー疾患を含む好酸球増多性疾患を有効に治療し得ることを新規に見出して、本発明を完成させるに至った。
今日まで、ヒトの末梢血好酸球にCD30分子が発現していること、及びCD30を介するシグナルが好酸球に対しアポトーシスを誘導するという生理活性はまったく知られておらず、本発明によって初めて明らかにされたものである。
本発明者は、CD30は好酸球のアポトーシスを制御しており、可溶型CD30によりアポトーシス誘導が阻害された場合、好酸球増多に起因する疾患や好酸球増多症を発症するとの仮説に基づき鋭意研究を進めた。その結果、CD30を介するシグナルがヒト末梢血好酸球に対し選択的にアポトーシスを誘導し、しかも既知のシグナルよりも迅速で強力にアポトーシスを誘導でき、単にIL−5による生存シグナルに対する拮抗ではなくIL−5のシグナル伝達とは独立した経路によるという知見を得て本発明は完成された。詳細は実施例に示すが、CD30リガンド結合部位を認識するある種の抗ヒトCD30単クローン抗体を固相化したプレートにて、IL−5の共存下ヒト末梢血好酸球を培養すると、50%以上の好酸球が1−4時間という短時間でアポトーシスに導かれることを見いだした。
従って、CD30及び/又はCD30のシグナル伝達に関与する分子を介して好酸球アポトーシスを誘導する物質が好酸球増多性疾患治療剤になりうるという知見を得て本発明を完成した。
すなわち、本発明としては以下のものを挙げることができる。
(1)CD30及び/又はCD30のシグナル伝達に関与する分子を介して好酸球アポトーシスを誘導する物質を有効成分とする好酸球増多性疾患治療剤。
(2)CD30及び/又はCD30のシグナル伝達に関与する分子を介して好酸球アポトーシスを誘導する物質が、Ber−H8又はHRS−4が認識する部位を認識する免疫グロブリン若しくはその活性フラグメント、ペプチド又は低分子化合物である上記(1)記載の好酸球増多性疾患治療剤。
(3)CD30及び/又はCD30のシグナル伝達に関与する分子を介して好酸球アポトーシスを誘導する物質が、免疫グロブリン又はその活性フラグメント(これらは天然由来又は遺伝子組換え技術により得られるものを含む)である上記(1)記載の好酸球増多性疾患治療剤。
(4)少なくとも配列番号1記載のアミノ酸配列(CD30のアミノ酸配列のうち、112−412位のアミノ酸配列)の一部又は全部を認識する免疫グロブリン又はその活性フラグメントである上記(2)記載の好酸球増多性疾患治療剤。
(5)免疫グロブリンがBer−H8又はHRS−4である上記(4)記載の好酸球増多性疾患治療剤。
(6)CD30及び/又はCD30のシグナル伝達に関与する分子を介して好酸球アポトーシスを誘導する物質が、CD30リガンド又はその活性フラグメント(これらは天然由来又は遺伝子組換え技術により得られるものを含む)である上記(1)記載の好酸球増多性疾患治療剤。
(7)CD30リガンドがCD153である上記(6)記載の好酸球増多性疾患治療剤。
(8)CD30及び/又はCD30のシグナル伝達に関与する分子を介して好酸球アポトーシスを誘導する物質が、CD30リガンド又はその活性フラグメントをコードする核酸である上記(1)記載の好酸球増多性疾患治療剤。
(9)核酸が配列番号2(CD153のアミノ酸配列)記載のアミノ酸をコードするDNAである上記(8)記載の好酸球増多性疾患治療剤。
(10)CD30及び/又はCD30のシグナル伝達に関与する分子を介して好酸球アポトーシスを誘導する物質が、CD30リガンドの発現及び/又は分泌している貪食能を有する細胞である上記(1)記載の好酸球増多性疾患治療剤。
(11)CD30及び/又はCD30のシグナル伝達に関与する分子を介して好酸球アポトーシスを誘導する物質が、貪食能を有する細胞にCD30リガンドを発現及び/又は分泌させる物質である上記(1)記載の好酸球増多性疾患治療剤。
(12)CD30及び/又はCD30のシグナル伝達に関与する分子を介して好酸球アポトーシスを誘導する物質が、CD30発現調節及び/又は凝集調節能を有する物質である上記(1)記載の好酸球増多性疾患治療剤。
(13)好酸球増多性疾患が、アレルギー疾患、呼吸器疾患、皮膚疾患、自己免疫疾患、免疫不全疾患、消化器疾患、腫瘍性疾患、奇生虫感染性疾患又は特発性好酸球増加症候群から成る群から選ばれた疾患である上記(1)乃至(12)記載の好酸球増多性疾患治療剤。
(14)アレルギー疾患が、薬剤アレルギー、気管支喘息、アレルギー性鼻炎から成る群から選ばれた疾患である上記(13)記載の好酸球増多性疾患治療剤。
(15)呼吸器疾患が、好酸球肺浸潤症である上記(13)記載の好酸球増多性疾患治療剤。
(16)皮膚疾患が、アトピー性皮膚炎、蕁麻疹、血管浮腫、乾癬、木村氏病、Episodic angioedema with eosinophilia、好酸球性膿胞毛胞炎、リンパ腫瘍丘診から成る群から選ばれた疾患である上記(13)記載の好酸球増多性疾患治療剤。
(17)自己免疫疾患が、多発性動脈炎、慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデスから成る群から選ばれた疾患である上記(13)記載の好酸球増多性疾患治療剤。
(18)免疫不全疾患が、高IgE症候群、Wiscott−Aldrich症候群、Omenn症候群から成る群から選ばれた疾患である上記(13)記載の好酸球増多性疾患治療剤。
(19)消化器疾患が、アレルギー性胃腸炎、好酸球性胃腸炎、潰瘍性大腸炎、膵炎から成る群から選ばれた疾患である上記(13)記載の好酸球増多性疾患治療剤。
(20)腫瘍性疾患が、ホジキン病である上記(13)記載の好酸球増多性疾患治療剤。
(21)寄生虫感染性疾患が、アニサキス症、旋毛虫症、糞線虫症、日本住血吸虫症、肺吸虫症から成る群から選ばれた疾患である上記(13)記載の好酸球増多性疾患治療剤。
(22)CD30及び/又はCD30のシグナル伝達に関与する分子を介して好酸球アポトーシスを誘導する物質を投与することからなる好酸球増多性疾患治療方法。
(23)CD30及び/又はCD30のシグナル伝達に関与する分子を介して好酸球アポトーシスを誘導する物質が、Ber−H8又はHRS−4が認識する部位を認識する免疫グロブリン若しくはその活性フラグメント又は低分子化合物を投与することからなる上記(22)記載の好酸球増多性疾患治療方法。
(24)CD30及び/又はCD30のシグナル伝達に関与する分子を介して好酸球アポトーシスを誘導する物質が、免疫グロブリン又はその活性フラグメント(これらは天然由来又は遺伝子組換え技術により得られるものを含む)である上記(22)記載の好酸球増多性疾患治療方法。
(25)少なくとも配列番号1記載のアミノ酸配列(CD30のアミノ酸配列のうち、112−412位のアミノ酸配列)の一部又は全部を認識する免疫グロブリン又はその活性フラグメントである上記(23)記載の好酸球増多性疾患治療方法。
(26)免疫グロブリンがBer−H8又はHRS−4である上記(24)記載の好酸球増多性疾患治療方法。
(27)CD30及び/又はCD30のシグナル伝達に関与する分子を介して好酸球アポトーシスを誘導する物質が、CD30リガンド又はその活性フラグメント(これらは天然由来又は遺伝子組換え技術により得られるものを含む)である上記(22)記載の好酸球増多性疾患治療方法。
(28)CD30リガンドがCD153である上記(27)記載の好酸球増多性疾患治療方法。
(29)CD30及び/又はCD30のシグナル伝達に関与する分子を介して好酸球アポトーシスを誘導する物質が、CD30リガンド又はその活性フラグメントをコードする核酸である上記(22)記載の好酸球増多性疾患治療方法。
(30)核酸が配列番号2(CD153のアミノ酸配列)記載のアミノ酸をコードするDNAである上記(29)記載の好酸球増多性疾患治療方法。
(31)CD30及び/又はCD30のシグナル伝達に関与する分子を介して好酸球アポトーシスを誘導する物質が、CD30リガンドの発現及び/又は分泌している貪食能を有する細胞である上記(22)記載の好酸球増多性疾患治療方法。
(32)CD30及び/又はCD30のシグナル伝達に関与する分子を介して好酸球アポトーシスを誘導する物質が、貪食能を有する細胞にCD30リガンドを発現及び/又は分泌させる物質である上記(22)記載の好酸球増多性疾患治療方法。
(33)CD30及び/又はCD30のシグナル伝達に関与する分子を介して好酸球アポトーシスを誘導する物質が、CD30発現調節及び/又は凝集調節能を有する物質である上記(22)記載の好酸球増多性疾患治療方法。
(34)好酸球増多性疾患が、アレルギー疾患、呼吸器疾患、皮膚疾患、自己免疫疾患、免疫不全疾患、消化器疾患、腫瘍性疾患、寄生虫感染性疾患又は特発性好酸球増加症候群から成る群から選ばれた疾患である上記(22)乃至(33)記載の好酸球増多性疾患治療方法。
(35)アレルギー疾患が、薬剤アレルギー、気管支喘息、アレルギー性鼻炎から成る群から選ばれた疾患である上記(34)記載の好酸球増多性疾患治療方法。
(36)呼吸器疾患が、好酸球肺浸潤症である上記(34)記載の好酸球増多性疾患治療方法。
(37)皮膚疾患が、アトピー性皮膚炎、蕁麻疹、血管浮腫、乾癬、木村氏病、Episodic angioedema with eosinophilia、好酸球性膿胞毛胞炎、リンパ腫瘍丘診から成る群から選ばれた疾患である上記(34)記載の好酸球増多性疾患治療方法。
(38)自己免疫疾患が、多発性動脈炎、慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデスから成る群から選ばれた疾患である上記(34)記載の好酸球増多性疾患治療方法。
(39)免疫不全疾患が、高IgE症候群、Wiscott−Aldrich症候群、Omenn症候群から成る群から選ばれた疾患である上記(34)記載の好酸球増多性疾患治療方法。
(40)消化器疾患が、アレルギー性胃腸炎、好酸球性胃腸炎、潰瘍性大腸炎、膵炎から成る群から選ばれた疾患である上記(34)記載の好酸球増多性疾患治療方法。
(41)腫瘍性疾患が、ホジキン病である上記(34)記載の好酸球増多性疾患治療方法。
(42)寄生虫感染性疾患が、アニサキス症、旋毛虫症、糞線虫症、日本住血吸虫症、肺吸虫症から成る群から選ばれた疾患である上記(34)記載の好酸球増多性疾患治療方法。
(43)血中の可溶性CD30を測定し、その濃度の増減を指標とすることからなる好酸球増多性疾患の診断方法。
(44)CD30を介する好酸球アポトーシス誘導物質の選別方法であって、以下のステップ:(ア)CD30発現細胞に対する抗CD30抗体結合の阻害に基づく一次選別、(イ)末梢血、臍帯血又は骨髄由来培養好酸球のアポトーシス誘導に基づく二次選別、及び(ウ)末梢血好酸球のアポトーシス誘導に基づく三次選別、からなる当該選別方法。
発明を実施するための最良の形態
本発明において、CD30のシグナル伝達に関与する分子とは、好酸球表面で発現するCD30に直接又は間接に作用する分子のみならず、CD30の細胞内シグナル伝達に関わる分子を意味し、細胞表面から核までの細胞シグナル伝達の各ステップに関与する分子をも意味する。従って、本発明において、CD30及び/又はCD30のシグナル伝達に関与する分子を介して好酸球アポトーシスを誘導する物質とは、細胞外であっても、あるいは細胞内であっても、このような種々のステップにおける各分子に直接又は間接に作用して好酸球アポトーシスを誘導する物質をいう。
CD30及び/又はCD30のシグナル伝達に関与する分子を介して好酸球アポトーシスを誘導する物質としては、抗CD30抗体のみならず、好酸球にアポトーシスを誘導できて臨床適用し得る条件を満たす限りにおいてどのような物質であってもよい。例えば、CD30リガンド、CD30リガンドを発現及び/又は分泌している貪食能を有する細胞、CD30発現調節及び/又は凝集調節能を有する物質、貪食能を有する細胞にCD30リガンドを発現及び/又は分泌させる物質又は後述する選別法で得られるCD30を介する好酸球アポトーシス誘導物質が挙げられる。
CD30リガンドを発現及び/又は分泌している貪食能を有する細胞、CD30発現調節及び/又は凝集調節能を有する物質、貪食能を有する細胞にCD30リガンドを発現及び/又は分泌させる物質も、CD30及び/又はCD30のシグナル伝達に関与する分子を介して好酸球アポトーシスを誘導することが期待できる。なお、CD30リガンドを発現及び/又は分泌している貪食能を有する細胞、CD30発現調節及び/又は凝集調節能を有する物質、貪食能を有する細胞にCD30リガンドを発現及び/又は分泌させる物質を選別するには、例えば抗CD30リガンド抗体により、貪食細胞の免疫染色、貪食細胞の培養上清中のCD30リガンドのELISAを用いることができる。
CD30及び/又はCD30のシグナル伝達に関与する分子を介して好酸球アポトーシスを誘導する物質として好ましいのは、抗CD30抗体であるBer−H8又はHRS−4が認識する部位を認識する免疫グロブリン若しくはその活性フラグメント、ペプチド又は低分子化合物である。Ber−H8及びHRS−4はマウス抗ヒトCD30単クローン抗体として文献(Hybridoma 19,43−48,2000)に記載されており、また市販されている(Ber−H8についてはPharMingen,San Diego,CAから、HRS−4については、Immunotech,Marseilles,Franceから入手できる)。
また、CD30及び/又はCD30のシグナル伝達に関与する分子を介して好酸球アポトーシスを誘導する物質として特に好ましいのは、少なくとも配列番号1記載のアミノ酸配列(CD30のアミノ酸配列のうち、112−412位のアミノ酸配列)の一部又は全部を認識する免疫グロブリン又はその活性フラグメントである。特に好ましい免疫グロブリンは抗CD30単クローン抗体である。
抗CD30単クローン抗体としては、高純度に精製された抗CD30単クローン抗体であれば全て使用でき、その由来および種類を問わないが、特に哺乳動物由来の単クローン抗体が好ましい。
単クローン抗体の産生細胞の動物種は哺乳類であれば特に制限されず、ヒト抗体またはヒト以外の哺乳動物由来であってよい。ヒト以外の哺乳動物由来の単クローン抗体としては、その作製の簡便さからウサギあるいはげっ歯類由来の単クローン抗体が好ましい。げっ歯類としては、特に制限されないが、マウス、ラット、ハムスターなどが好ましく例示される。さらに、トランスジェニック動物を用いて作製したヒト抗体も好ましい例である。
このような抗CD30単クローン抗体としては、Ber−H8又はHRS−4を例示することができるが、これに限定されない。抗CD30単クローン抗体は、基本的には公知技術を使用して作製できる。すなわち、CD30を感作抗原として使用して、これを通常の免疫方法にしたがって免疫し、得られる免疫細胞を通常の細胞融合法によって公知の親細胞と融合させ、通常のスクリーニング法により、単クローン抗体産生細胞をスクリーニングすることによって作製できる。
本発明に使用される単クローン抗体は、ハイブリドーマが産生する単クローン抗体に限られるものではなく、ヒトに対する異種抗原性を低下させること等を目的として人為的に改変したものであってもよい。例えば、ヒト以外の哺乳動物、例えば、マウスの単クローン抗体の可変領域とヒト抗体の定常領域と<TXFFR=0002 HE=250 WI=080 LX=1100 LY=0300>からなるキメラ抗体を使用することができ、このようなキメラ抗体は、既知のキメラ抗体の製造方法、特に遺伝子組換技法を用いて製造することができる。さらに、再構成(reshaped)したヒト型化抗体を本発明に用いることもできる。これはヒト以外の哺乳動物、たとえばマウス抗体の相補性決定領域によりヒト抗体の相補性決定領域を置換したものであり、その一般的な遺伝子組換手法も知られている。その既知方法を用いて、本発明に有用な再構成ヒト型化抗体を得ることができる。
また、本発明では、CD30及び/又はCD30のシグナル伝達に関与する分子を介して好酸球アポトーシスを誘導する物質として、CD30リガンド又はその活性フラグメントであってもよい。好ましいCD30リガンドとしては、例えば配列番号2のアミノ酸配列を有するヒト由来CD153や配列番号5のアミノ酸配列を有するマウス由来CD153を挙げることができるが、これらに限定されない。さらに、CD30及び/又はCD30のシグナル伝達に関与する分子を介して好酸球アポトーシスを誘導する物質は、CD30リガンド又はその活性フラグメントをコードする核酸であってもよい。好ましいCD30リガンドをコードする核酸としては、例えば配列番号2(ヒト由来CD153のアミノ酸配列)記載のアミノ酸をコードするDNAや配列番号5(マウス由来CD153のアミノ酸配列)記載のアミノ酸をコードするDNAを挙げることができるが、これらに限定されない。
CD30及び/又はCD30のシグナル伝達に関与する分子を介する好酸球アポトーシス誘導物質の選別法の一例としては、CD30発現細胞(例えば、Lurkat、K562、RDなど)に対する抗CD30抗体(例えば、HRS−4、Ber−H8、YMSM636.4.10など)結合の阻害に基づく一次選別、末梢血、臍帯血又は骨髄由来培養好酸球のアポトーシス誘導に基づく二次選別、及び末梢血好酸球のアポトーシス誘導に基づく三次選別による選別法が挙げられるが、これに限定されるものではない。
アポトーシス誘導効果を有しているか否かについては、好酸球細胞がアポトーシス特有の特徴を呈しているか否かを指標にして判断することができる。具体的には、細胞容積の減少、DNAの断片化、アポトーシス小体の形成などの形態学的特徴の透過電子顕微鏡による観察、あるいは好酸球細胞の生存率を指標にすることができる。細胞容積は、例えばCoulter型細胞サイズ解析機による電子的サイズ決定技術により測定できる。ヌクレオソーム間のDNAの断片化はDNAラダーとして検出することができ、アポトーシス検出用の市販のラダー検出キット(例えば、Wako Pure Chemical Industries,Ltd.,Osaka,Japan)を用いることができる。細胞生存率は、例えば比色MTTアッセイを用いるミトコンドリアデヒドロゲナーゼ活性により評価することができる。MTTに代えて、WAT−1やWST−8などのホルマザン試薬を用いることもできる。さらには、生存細胞がトリパンブルーを排除することを用いて細胞生存率を測定できる。あるいは、MEBCYTO−Apoptosis Kit(Medical Biological Laboratories,Nagoya,Japan)などの市販キットを用いて、FITC標識AnnexinVの結合したアポトーシス細胞をフローサイトメーター(例えば、FACScan Becton Dickinson)にて計測することもできる。
顆粒蛋白の漏出を伴う細胞のネクローシスの場合と異なり、アポトーシス後の好酸球細胞は、細胞膜破壊による顆粒タンパク漏出前にマクロファージ等の食細胞の貪食により無毒化処理を受け、周囲の組織・細胞に障害を生じさせずに除去される。
一般に、アポトーシス細胞に対する食細胞による貪食排除には以下の4つの過程があると考えられている。
1.アポトーシス細胞周辺への食細胞の遊走:炎症局所ではすでに食細胞はアポトーシス細胞と隣接している。
2.食細胞によるアポトーシス細胞の認識:食細胞は貪食受容体を介して、アポトーシス細胞表面上の貪食目印分子を認識する。貪食目印分子としては、フォスファチジルセリン(PS)が最もよく知られている。貪食受容体としては、PSを認識するクラスBスカベンジャーレセプタータイプI(SR−BI)やLOX−1(lectin−like oxiddized low−density lipoprotein receptor−1)が同定されている。
3.食細胞によるアポトーシス細胞の取り込み(貪食):貪食受容体からのシグナルにより食細胞は貪食するが、シグナル伝達機構は不明である。
4.貪食されたアポトーシス細胞のリソゾームなど細胞内器官への輸送、処理。
好酸球増多性疾患の具体例としては、例えば、アレルギー疾患、呼吸器疾患、皮膚疾患、自己免疫疾患、免疫不全疾患、消化器疾患、特発性好酸球増加症候群、腫瘍性疾患(例えば、ホジキン病)及び寄生虫感染性疾患等を挙げることができる。
本発明の好酸球増多性疾患治療剤には、上記のようにして選別されたCD30及び/又はCD30のシグナル伝達に関与する分子を介して好酸球アポトーシスを誘導する物質を有効成分として含み、さらに通常の製剤化の際に用いられる担体や賦形剤、その他の添加剤を用いて調製される。
製剤用の担体や賦形剤としては、例えば、乳糖、ステアリン酸マグネシウム、デンプン、タルク、ゼラチン、寒天、ペクチン、アラビアゴム、オリーブ油、ゴマ油、カカオバター、エチレングリコールなどやその他常用されるものをあげることができる。
経口投与のための固体組成物としては、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤などが用いられる。このような固体組成物においては、少なくともひとつの有効成分が少なくともひとつの不活性な希釈剤、例えば、乳糖、マンニトール、ブドウ糖、ヒドロキシプロピルセルロース、微結晶性セルロース、デンプン、ポリビニルピロリドン、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムなどと混合される。組成物は、常法にしたがって不活性な希釈剤以外の添加物、例えば、ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、繊維素グリコール酸カルシウムのような崩壊剤、グルタミン酸またはアスパラギン酸のような溶解補助剤を含んでいてもよい。錠剤または丸剤は、必要によりショ糖、ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートなどの糖衣や胃溶性または腸溶性物質のフィルムで被覆してもよいし、2つ以上の層で被覆してもよい。さらに、ゼラチンのような吸収されうる物質のカプセルも含まれる。
経口投与のための液体組成物は、薬剤的に許容される乳濁剤、溶液剤、懸濁剤、シロップ剤、エリキシル剤などを含み、一般的に用いられる不活性な希釈剤、例えば精製水、エタノールなどを含んでいてもよい。この組成物は、不活性な希釈剤以外に湿潤剤、懸濁剤のような補助剤、甘味剤、風味剤、芳香剤、防腐剤などを含んでいてもよい。
非経口投与のための注射剤としては、無菌の水性または非水性の溶液剤、懸濁剤、乳濁剤が含まれる。水性の溶液剤、懸濁剤としては、例えば、注射用水および注射用生理食塩液が含まれる。非水性の溶液剤、懸濁剤としては、例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油のような植物油、エタノールのようなアルコール類、ポリソルベート80(登録商標)などが含まれる。このような組成物は、さらに防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、安定化剤(例えば、乳糖)、溶解補助剤(例えば、グルタミン酸、アスパラギン酸)のような補助剤を含んでいてもよい。これらは、例えば、精密ろ過膜によるろ過滅菌、高圧蒸気滅菌のような加熱滅菌、あるいは、殺菌剤の配合などの通常の滅菌方法によって無菌化することが可能である。注射剤は溶液製剤であっても、使用前に溶解再構成するために凍結乾燥したものであってもよい。凍結乾燥のための賦形剤としては例えばマンニトール、ブドウ糖などの糖アルコールや糖類を使用することが出来る。
また、本発明の治療剤を遺伝子治療に用いる場合にはウイルスベクター、好ましくはレンチウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、更に好ましくはアデノウイルスベクター、又は化学合成リポソーム、ウイルスエンベロープ、若しくはウイルスエンベロープと合成リポソームの複合体等公知の遺伝子治療に適した媒体に、宿主細胞内で機能するようなプロモーター配列、例えばサイトメガロウイルスプロモーター(CMVpromoter)等、の下流に、CD30及び/又はCD30のシグナル伝達に関与する分子を介して好酸球アポトーシスを誘導する物質に係る核酸を組み込んだものを用いることができる。
本発明の好酸球増多性疾患治療剤は、医薬に一般に使用されている投与方法、例えば、経口投与方法、又は非経口投与方法によって投与するのが好ましい。有効成分が抗体である場合には通常非経口投与経路で、例えば注射剤(皮下注、静注、筋注、腹腔内注など)、経皮、経粘膜、経鼻、経肺などで投与されるが、経口投与も可能である。
本発明の製剤中に含まれる有効成分であるCD30及び/又はCD30のシグナル伝達に関与する分子を介して好酸球アポトーシスを誘導する物質の量は、治療すべき疾患の種類、疾患の重症度、患者の年齢などに応じて決定できるが、一般には最終投与濃度で0.01〜500mg/ml、好ましくは0.1〜200mg/mlである。
産業上の利用可能性
本発明は、CD30及び/又はCD30のシグナル伝達に関与する分子を介し好酸球アポトーシスを誘導する物質は好酸球増多性疾患の治療薬として有用であり、また、CD30を介した好酸球アポトーシス誘導は新たな機序に基づく、好酸球増多性疾患に対する治療方法として有用である。このような疾患としては、好酸球が中心的な役割を担っている基本病態が炎症反応である、アレルギー疾患、寄生虫感染症、自己免疫疾患等が例示される。
本発明の好酸球増多性疾患治療薬は、従来好酸球のアポトーシスを誘導するとされている抗Fas抗体と比較して、ヒト末梢血好酸球に対してはるかに迅速かつ強力にアポトーシスを誘導することができる。また、好酸球に対するアポトーシス誘導の細胞特異性が極めて高く、好中球、リンパ球、マスト細胞にはアポトーシスを誘導しない。さらには、本発明の好酸球増多性疾患治療薬の好酸球に対するアポトーシス誘導はIL−5等により減殺されない。従って、本発明の好酸球増多性疾患治療薬は臨床的に極めて有用な治療薬として期待できる。
実施例
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲をこれらの実施例に限定するものではない。
実施例1:ヒト末梢血好酸球におけるCD30発現解析
ヘパリン採血したヒト末梢血をPBSで希釈し、Percoll(比重1.090g/ml、Pharmacia,Uppsala,Sweden)に重層後、遠心分離(1500rpm,30分間)した。最下層の顆粒球画分に低温精製水を加え溶血させた。ついで、抗CD16抗体固相化magnetic beads(MACS CD16 micro beads、Miltenyi Biotec,Bergish Gladbach,Germany)を用いたnegative selectionにより好酸球画分を得た。好酸球の生存率(trypan blue dye exclusion法、ナカライ社製)及び純度(DIFF−QUICK染色、国際試薬株式会社製)はそれぞれ99%以上であった。
分離したヒト好酸球を2×105cells/tubeに調製し、1次抗体として、6種のマウス抗ヒトCD30単クローン抗体又はコントロールマウスIgG(10μg/ml)を4℃にて30分反応させた。洗浄後、2次抗体としてFITC標識ヤギ抗マウスIgGF(ab’)2を用いて染色(4℃にて30分反応)し、1%パラホルムアルデヒドにて固定後、フローサイトメーター(FACScan Becton Dickinson)にて検出した。IL−5(1ng/ml,R&D systems,Inc.,Mineeapolis,MN)で活性化(37℃,30分)した好酸球について同様に検討した。マウス抗ヒトCD30単クローン抗体としては、HRS−4(Immunotech,Marseilles,France)、Ber−H2(DAKO,Glostrup,Denmark)、Ber−H8(PharMingen,San Diego,CA)、AC−10(Ancel,Bayport,MN)、1G12(YLEM Avezzano,Roma,Italy)及びKi−1(YLEM Avezzano,Roma,Italy)を、コントロールマウスIgGとしてはMOPC−21(Sigma Chemical Co.,St.Louis,MO)を用いた。
6人の末梢血提供者の好酸球をフローサイトメトリーにより解析した結果、ヒト末梢血好酸球はHRS−4およびAC10により有意に染色され、CD30発現が確認された(図1)。なお、AC10染色による平均蛍光強度は8.9±3.2であり、好酸球におけるCD30発現はIL−5受容体α鎖の発現と同程度であることが判明した。IL−5により活性化した場合は、AC−10により有意な発現が観察され、またHRS−4又はBer−H8により、発現増加傾向が認められた(図2)。
実施例2:ヒト末梢血好酸球におけるCD30 mRNA発現解析
ヒト末梢血好酸球をIsogen(Nippon Gene,Osaka,Japan)により溶解し、RNAを抽出後、Invitrogen Corp(San Diego,CA)のキットを用いてcDNAへ逆転写した。ヒトCD30遺伝子の3’−非翻訳領域を認識する上流域センスプライマー(5’−GCC CAG GAT CAA GTC ACT CAT−3’)(配列番号3)及び下流域アンチセンスプライマー(5’−TAC ACG TCT GAA GGC CCT AGG−3’)(配列番号4)を用い、サーマルサイクラー(Gene Amp PCR System 9700;PE Biosystem)により501bpの断片をPCR反応(94℃1分1サイクルで変性、94℃1分/55℃1分/72℃2分40サイクル、最後に72℃10分1サイクルで伸長)により増幅した。反応終了後、0.05% ethidium bromide(Sigma)を含む0.8%アガロースゲル(BRL Life Technologies Inc.)で電気泳動したところ、約500bpのバンドとして目的のPCR産物を確認した。ヒト末梢血好酸球にはCD30 mRNAが発現していることが示された(図3)。
実施例3:ヒト末梢血好酸球に対する抗ヒトCD30単クローン抗体によるアポトーシス誘導の検討
抗ヒトCD30単クローン抗体をPBSにより種々の濃度(0.01,0.1,1及び10μg/ml)に調製し、24穴マイクロプレート(Costar Corp.,Cambridge,MA)に1ml添加後、4℃にて12時間静置し固相化した。洗浄後、1%ヒト血清アルブミン(Sigma Chemical Co.,St.Louis,MO)2mlを添加し、37℃にて2時間ブロッキングした。洗浄後、10%FCS,10−5M 2−メルカプトエタノール(GIBCO),Penicillin/Streptomycin(GIBCO)及び1ng/mlヒト組換えIL−5(R&D systems,Inc.,Minneapolis,MN)を含むIMDM(Iscove’s modified Dulbecco’s medium、GIBCO)培地にて1x106cells/mlに調製した分離ヒト末梢血好酸球を加えた。37℃、4時間培養後、細胞を集め洗浄後、アポトーシス細胞をMEBCYTO−Apoptosis Kit(Medical Biological Laboratories,Nagoya,Japan)にて検出した。FITC標識AnnexinVの結合したアポトーシス細胞をフローサイトメーター(FACScan Becton Dickinson)にて計測した。
その結果、抗ヒトCD30単クローン抗体HRS−4及びBer−H8は濃度依存的にヒト末梢血好酸球に対してアポトーシスを誘導した。HRS−4は1及び10μg/mlの濃度で固相化した場合、それぞれ16.3%及び78.8%の好酸球に、Ber−H8は0.01,0.1,1及び10μg/mlの濃度で固相化した場合、それぞれ7.8%,11.4%,44.8%及び71.9%の好酸球にアポトーシスを誘導した(図4)。なお、抗ヒトCD30単クローン抗体Ber−H2,AC10,1G12及びKi1,ならびにコントロールマウスIgGはヒト末梢血好酸球に対してアポトーシスをまったく誘導しなかった。
実施例4:抗ヒトCD30単クローン抗体によるヒト末梢血好酸球アポトーシス誘導における好酸球提供者の個人差の検討
3人の末梢血から分離した好酸球に対する抗ヒトCD30単クローン抗体のアポトーシス誘導能を検討した。抗ヒトCD30単クローン抗体は10μg/mlの濃度で固相化した。いずれの提供者の末梢血好酸球に対しても、抗ヒトCD30単クローン抗体HRS−4及びBer−H8は強力にアポトーシスを誘導した(図5:3人の平均値を示す)。従って、HRS−4及びBer−H8の末梢血好酸球アポトーシス誘導能には、好酸球提供者による個人差はないことが示された。なお、抗ヒトCD30単クローン抗体Ber−H2,AC10,1G12及びKi1,ならびにコントロールマウスIgGはいずれの提供者の好酸球に対してもアポトーシスを誘導しなかった。
実施例5:抗ヒトCD30単クローン抗体HRS−4及びBer−H8によるヒト末梢血好酸球アポトーシス誘導の経時変化
分離ヒト末梢血好酸球に対する抗ヒトCD30単クローン抗体HRS−4及びBer−H8のアポトーシス誘導の経時変化を検討した。HRS−4及びBer−H8を10μg/mlの濃度で固相化したプレートに好酸球を添加して培養した場合、いずれの抗体も1時間後にはほぼ50%の好酸球にアポトーシスを誘導し、4時間後までにはアポトーシス好酸球は70%まで増加した(図6)。従って、HRS−4及びBer−H8は末梢血好酸球に対して非常に迅速にアポトーシスを誘導することが判明した。
実施例6:抗ヒトCD30単クローン抗体HRS−4及びBer−H8によるヒト末梢血好酸球アポトーシス誘導(DNA断片化を指標)
分離ヒト末梢血好酸球に対する抗ヒトCD30単クローン抗体HRS−4及びBer−H8のアポトーシス誘導をDNA断片化を指標として検討した。HRS−4及びBer−H8を10μg/mlの濃度で固相化したプレートに好酸球を添加して24時間培養後、細胞を回収し、アポトーシスラダー検出キット(Wako Pure Chemical Industries,Ltd.,Osaka,Japan)を用いてDNAを抽出し、アガロース電気泳動にてDNA断片化を検討した。
HRS−4及びBer−H8はいずれも好酸球DNAの断片化を誘導した(図7)。なお、抗ヒトCD30単クローン抗体Ber−H2及びコントロールマウスIgGはいずれも好酸球DNAの断片化を誘導しなかった。従って、HRS−4及びBer−H8のヒト末梢血好酸球に対するアポトーシス誘導はDNA断片化を指標とした場合でも確認できた。
実施例7:抗ヒトCD30単クローン抗体HRS−4及びBer−H8と抗ヒトFas単クローン抗体とのヒト末梢血好酸球アポトーシス誘導能の比較検討
分離ヒト末梢血好酸球に対する抗ヒトCD30単クローン抗体HRS−4及びBer−H8と抗ヒトFas単クローン抗体(CH−11,Medical Biological Laboratories,Nagoya,Japan)とのアポトーシス誘導能を比較検討した。単クローン抗体を10μg/mlの濃度で固相化したプレートに好酸球を添加し、培養した。
HRS−4及びBer−H8は培養1時間後にはほぼ50%の好酸球にアポトーシスを誘導し、4時間後までにはアポトーシス好酸球は70%まで増加した。一方、抗ヒトFas単クローン抗体では培養24時間後からアポトーシス好酸球が出現したが、72時間後でもあまり増加しなかった(図8)。従って、抗ヒトCD30単クローン抗体HRS−4及びBer−H8は、抗ヒトFas単クローン抗体に比べて、ヒト末梢血好酸球に対して非常に迅速で、強力にアポトーシスを誘導することが判明した。
実施例8:抗ヒトCD30単クローン抗体HRS−4及びBer−H8のアポトーシス誘導能の細胞選択性の検討
ヘパリン採血したヒト末梢血をPBSで希釈し、Percoll(比重1.090g/ml、Pharmacia,Uppsala,Sweden)に重層後、遠心分離(1500rpm,15分間)した。最下層の顆粒球画分に低温精製水を加え溶血させた。ついで、抗CD16抗体固相化magnetic beads(MACS CD16 micro beads、Miltenyi Biotec,Bergish Gladbach,Germany)を用いたpositive selectionにより好中球画分を得た。好中球の生存率は99%であった。分離ヒト末梢血好中球に対する固相化抗ヒトCD30単クローン抗体のアポトーシス誘導能をフローサイトメーターにて計測した。
上述した6種の抗ヒトCD30単クローン抗体はいずれも、好中球に対してアポトーシスを誘導しなかった(図9)。6人の末梢血好中球を用いてさらに検討したが、6種の抗ヒトCD30単クローン抗体はいずれもアポトーシスを誘導しなかった。
次いで、ヘパリン採血したヒト末梢血にシリカゲル(免疫生物研究所)を添加し、37℃で1時間作用させマクロファージを除去し、PBSで希釈後、LSM(比重1.077g/ml,ICN社製)に重層後、遠心分離(1500rpm,15分間)し、リンパ球画分を得た。リンパ球の生存率は99%であった。同様に分離ヒト末梢血リンパ球に対する固相化抗ヒトCD30単クローン抗体のアポトーシス誘導能をフローサイトメーターにて計測した。好酸球に対してアポトーシスを誘導するHRS−4及びBer−H8はいずれも、リンパ球に対してはアポトーシスを誘導しなかった(図10)。
さらに、培養ヒトマスト細胞に対する固相化抗ヒトCD30単クローン抗体のアポトーシス誘導能をフローサイトメーターにて計測した。好酸球に対してアポトーシスを誘導するHRS−4及びBer−H8はいずれも、培養ヒトマスト細胞に対してはアポトーシスを誘導しなかった(図11)。培養ヒトマスト細胞としては、斎藤らの方法(J.Immunol.157,343−350,1996及びJ.Allergy Clin.Immunol.106,321−328,2000)に準じて得た末梢血由来成熟マスト細胞(P−Mast)及び臍帯血由来成熟マスト細胞(C−Mast)を用いた。
なお、CD30陽性ヒト細胞株Jurkat(T cell lymphoma)、K562(erythroleukemia)及びRD(rhabdomyosarcoma)に対しても、HRS−4及びBer−H8はいずれも、アポトーシスを誘導しなかった。
従って、抗ヒトCD30単クローン抗体HRS−4及びBer−H8はヒト末梢血好酸球に選択的にアポトーシスを誘導することが判明した。
実施例9:抗ヒトCD30単クローン抗体HRS−4及びBer−H8によるヒト末梢血好酸球アポトーシス誘導に対する高濃度IL−5の影響
これまで、抗ヒトCD30単クローン抗体HRS−4及びBer−H8は、10ng/mlのヒト組換えIL−5存在下、ヒト末梢血好酸球に対してアポトーシスを誘導することを確認した。しかし、高濃度のIL−5が存在していれば好酸球自体の生存能が増強され、HRS−4及びBer−H8のアポトーシス誘導能は減殺される可能性がある。そこで、0,1,10及び100ng/mlのIL−5存在下、HRS−4及びBer−H8によるヒト末梢血好酸球アポトーシス誘導能を検討した。また、好酸球提供者の個人差を考慮し、4人の末梢血好酸球を用いて実施した。
HRS−4はIL−5の濃度依存的にアポトーシスを誘導し、IL−5非存在下ではアポトーシスをまったく誘導せず、100ng/ml存在下でも誘導した。一方、Ber−H8は、IL−5の有無に関わらずアポトーシスを誘導した(図12)。
従って、CD30を介するヒト末梢血好酸球アポトーシスのシグナルにはIL−5が関与する経路としない経路が存在していることが示唆された。しかし、少なくとも高濃度のIL−5が存在していてもHRS−4及びBer−H8のアポトーシス誘導は減殺されないことが判明した。
実施例10:ヒト末梢血好酸球に対する抗マウスCD30単クローン抗体のアポトーシス誘導の検討
分離ヒト末梢血好酸球に対する抗マウスCD30単クローン抗体YMSM636.4.10(Serotec Ltd,Oxford UK)及び2SH12−5F−2D(BD PharMingen,San Diego,USA)のアポトーシス誘導を検討した。YMSM636.4.10を10μg/mlの濃度で固相化したプレートにヒト好酸球を添加して培養した場合、4時間後にはほぼ30%の好酸球にアポトーシスを誘導した(図13)。なお、2SH12−5F−2DならびにラットコントロールIgGはアポトーシスをまったく誘導しなかった。
実施例11:ヒト末梢血好酸球に対するマウスCD30リガンドのアポトーシス誘導の検討
分離ヒト末梢血好酸球に対するリコンビナントマウスCD30リガンド(R&D Systems Inc.Minneapolis,USA)のアポトーシス誘導を検討した。リコンビナントマウスCD30リガンドを10及び100μg/mlの濃度で固相化したプレートにヒト好酸球を添加して培養した場合、4時間後にはそれぞれ28%及び35%の好酸球にアポトーシスを誘導した(図14)。
実施例12:ヒト末梢血好酸球に対するポリスチレンマイクロビーズ固相化抗ヒトCD30単クローン抗体HRS−4及びBer−H8によるアポトーシス誘導の検討
分離ヒト末梢血好酸球に対するポリスチレンマイクロビーズ固相化抗ヒトCD30単クローン抗体HRS−4及びBer−H8によるアポトーシス誘導を検討した。紀太らの方法(Am.J.Respir.Cell.Mol.Biol.,18,:675−686,1998)に準じ、0.1Mホウ酸緩衝液にて洗浄した直径1.444μMのポリスチレンマイクロビーズ(2.56% solid Latex,Sigma)0.5mlに、200μgの抗ヒトCD30単クローン抗体を添加後、4℃12時間静置し固相化した。洗浄後、2.5%ヒト血清アルブミン0.5mlを添加し、4℃にて2時間ブロッキングした。洗浄後、0.5mlPBSに懸濁し、ポリスチレンマイクロビーズ固相化抗ヒトCD30単クローン抗体とした。分離ヒト末梢血好酸球2x105cells及びポリスチレンマイクロビーズ固相化HRS−4及びBer−H8(10μl)を96穴U底マイクロプレート(NUNC社)に加えた。37℃、4時間培養後、アポトーシス細胞をフローサイトメーターにて計測した。なお、ポリスチレンマイクロビーズは前方散乱光及び側方散乱光のドットブロットにおけるゲーティングにより除外した。
ポリスチレンマイクロビーズ固相化HRS−4は27.9%の好酸球に、Ber−H8は44.0%の好酸球にアポトーシスを誘導した(図15)。なお、ポリスチレンマイクロビーズ固相化抗ヒトCD30単クローン抗体Ber−H2ならびにコントロールマウスIgGはヒト末梢血好酸球に対してアポトーシスを誘導しなかった。従って、抗ヒトCD30単クローン抗体HRS−4及びBer−H8はマイクロプレートへの固相化と同様に、ポリスチレンマイクロビーズに固相化した場合でもヒト好酸球に対してアポトーシスを誘導することが判明した。
実施例13:ポリスチレンマイクロビーズ固相化抗ヒトCD30単クローン抗体HRS−4及びBer−H8によりアポトーシスを誘導されたヒト末梢血好酸球に対する食細胞による貪食試験
ポリスチレンマイクロビーズ固相化抗HRS−4及びBer−H8によりアポトーシスを誘導された分離好酸球に対する食細胞による貪食試験を実施した。まず、Brownらの方法(J.Biol.Chem.,275:5987−5996,2000)に準じ、ヒト臍帯血単核球画分からCD34陰性細胞を分画し、10ng/mlのヒト組換えM−CSF(Macrophage−corony stimulating factor、R&D社)存在下、7日間培養し、成熟マクロファージを調製した。次いで、ポリスチレンマイクロビーズ固相化抗HRS−4及びBer−H8を30分間反応させアポトーシス誘導途上にある好酸球を、Fadokらの方法(J.Biol.Chem.,276:1071−1077,2001)に準じ、あらかじめチャンバースライド(NUNC社)上で24時間培養した臍帯血由来マクロファージによる貪食試験に供した。好酸球単独培養及び好酸球/マクロファージ共培養による4時間後のそれぞれの培養上清中に漏出した好酸球顆粒タンパクEDN(Eosinophil−derived neurotoxin)濃度の差を貪食作用の指標とした。EDN濃度はELISAキット(MBL社)を用いて測定した。
ポリスチレンマイクロビーズ固相化HRS−4及びBer−H8によりアポトーシスを誘導された好酸球は臍帯血由来マクロファージとの共培養により貪食された結果、培養上清中に漏出したEDNは減少した。とくに、HRS−4によりアポトーシスを誘導した好酸球に対して、臍帯血由来マクロファージは顕著な貪食作用を示した(図16)。なお、ポリスチレンマイクロビーズ固相化抗ヒトCD30単クローン抗体Ber−H2ならびにコントロールマウスIgGを反応させた好酸球の場合、単独培養、共培養に関わらずEDN漏出は非常に少なかった。また、ヒト単球系細胞株U937(例えば、ATCCから購入可能:ATCC No.CRL−1593.2)のマクロファージとしての機能を顕在化させて貪食能を引き出す目的で、10ng/ml PMA(Phorbol 12−Myristate 13−Acetate、Sigma社)を用いて当該細胞を1時間刺激し、活性化した当該細胞を食細胞とした貪食試験でも同様の結果が得られた(図17)。
従って、HRS−4及びBer−H8によりアポトーシスを誘導されたヒト末梢血好酸球は、細胞膜破壊による顆粒タンパク漏出前にマクロファージ等の食細胞の貪食により無毒化処理を受けることが示唆された。
【配列表】
【図面の簡単な説明】
図1は、6種のマウス抗ヒトCD30単クローン抗体又はコントロールマウスIgGを用いたヒト末梢血好酸球におけるCD30発現解析の結果を示すグラフである。
図2は、IL−5により活性化した好酸球を用いた場合の、6種のマウス抗ヒトCD30単クローン抗体又はコントロールマウスIgGを用いたヒト末梢血好酸球におけるCD30発現解析の結果を示すグラフである。
図3は、ヒト末梢血好酸球におけるCD30 mRNAの発現解析の結果を示す電気泳動の図である。
図4は、ヒト末梢血好酸球に対する抗ヒトCD30単クローン抗体によるアポトーシス誘導の試験結果を示すグラフである。
図5は、抗ヒトCD30単クローン抗体によるヒト末梢血好酸球アポトーシス誘導における好酸球提供者の個人差の検討結果を示すグラフである。
図6は、抗ヒトCD30単クローン抗体HRS−4及びBer−H8によるヒト末梢血好酸球アポトーシス誘導の経時変化を示すグラフである。
図7は、抗ヒトCD30単クローン抗体HRS−4及びBer−H8によるヒト末梢血好酸球アポトーシス誘導をDNA断片化を指標として試験した結果を示す電気泳動の図である。
図8は、抗ヒトCD30単クローン抗体HRS−4及びBer−H8と抗ヒトFas単クローン抗体とのヒト末梢血好酸球アポトーシス誘導能を比較検討した結果を示すグラフである。
図9は、抗ヒトCD30単クローン抗体HRS−4及びBer−H8の好中球に対するアポトーシス誘導能の検討結果を示すグラフである。
図10は、抗ヒトCD30単クローン抗体HRS−4及びBer−H8のリンパ球に対するアポトーシス誘導能の検討結果を示すグラフである。
図11は、抗ヒトCD30単クローン抗体HRS−4及びBer−H8の培養ヒトマスト細胞に対するアポトーシス誘導能の検討結果を示すグラフである。
図12は、抗ヒトCD30単クローン抗体HRS−4及びBer−H8によるヒト末梢血好酸球アポトーシス誘導に対する高濃度IL−5の影響を示すグラフである。
図13は、ヒト末梢血好酸球に対する抗マウスCD30単クローン抗体(YMSM636.4.10)のアポトーシス誘導の検討結果を示すグラフである。
図14は、ヒト末梢血好酸球に対するマウスCD30リガンドのアポトーシス誘導の検討結果を示すグラフである。
図15は、ヒト末梢血好酸球に対するポリスチレンマイクロビーズ固相化抗ヒトCD30単クローン抗体HRS−4及びBer−H8によるアポトーシス誘導の検討結果を示すグラフである。
図16は、ポリスチレンマイクロビーズ固相化抗ヒトCD30単クローン抗体HRS−4及びBer−H8によりアポトーシスを誘導されたヒト末梢血好酸球に対する、ヒト臍帯血由来マクロファージによる貪食試験の結果を示すグラフである。
図17は、ポリスチレンマイクロビーズ固相化抗ヒトCD30単クローン抗体HRS−4及びBer−H8によりアポトーシスを誘導されたヒト末梢血好酸球に対する、PMA刺激ヒト単球系細胞株U937細胞による貪食試験の結果を示すグラフである。
Claims (9)
- CD30及び/又はCD30のシグナル伝達に関与する分子を介して好酸球アポトーシスを誘導する物質を有効成分とする好酸球増多性疾患治療剤。
- CD30及び/又はCD30のシグナル伝達に関与する分子を介して好酸球アポトーシスを誘導する物質が、Ber−H8又はHRS−4が認識する部位を認識する免疫グロブリン若しくはその活性フラグメント、ペプチド又は低分子化合物である請求項1記載の好酸球増多性疾患治療剤。
- CD30及び/又はCD30のシグナル伝達に関与する分子を介して好酸球アポトーシスを誘導する物質が、免疫グロブリン又はその活性フラグメントである請求項1記載の好酸球増多性疾患治療剤。
- 少なくとも配列番号1記載のアミノ酸配列(CD30のアミノ酸配列のうち、112−412位のアミノ酸配列)の一部又は全部を認識する免疫グロブリン又はその活性フラグメントである請求項2記載の好酸球増多性疾患治療剤。
- 免疫グロブリンがBer−H8又はHRS−4である請求項4記載の好酸球増多性疾患治療剤。
- CD30及び/又はCD30のシグナル伝達に関与する分子を介して好酸球アポトーシスを誘導する物質が、CD30リガンド又はその活性フラグメントである請求項1記載の好酸球増多性疾患治療剤。
- CD30及び/又はCD30のシグナル伝達に関与する分子を介して好酸球アポトーシスを誘導する物質が、CD30リガンド又はその活性フラグメントをコードする核酸である請求項1記載の好酸球増多性疾患治療剤。
- 好酸球増多性疾患が、アレルギー疾患、呼吸器疾患、皮膚疾患、自己免疫疾患、免疫不全疾患、消化器疾患、腫瘍性疾患又は寄生虫感染性疾患から成る群から選ばれた疾患である請求項1記載記載の好酸球増多性疾患治療剤。
- アレルギー疾患が、薬剤アレルギー、気管支喘息、アレルギー性鼻炎から成る群から選ばれた疾患である請求項8記載の好酸球増多性疾患治療剤。
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