JPWO2002157760A1 - バクテリアのタイプiii分泌機構およびその分泌蛋白質の機能を阻害する物質の検出法 - Google Patents
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Abstract
本発明は、動物の感染実験に依存することなく、タイプIII分泌機構ならびにそれから分泌されるタイプIII分泌蛋白質の機能を特異的に阻害する物質を大量にしかも短時間で簡単に検出することができる検出法である。即ち、タイプIII分泌機構を有するバクテリアと赤血球懸濁液を混合し、これにタイプIII分泌機構阻害物質を加えることによって生ずる溶血活性の変化を検出することを特徴とする、バクテリアのタイプIII分泌機構を阻害する物質の検出法である。本検出法は、バクテリアのタイプIII分泌機構またはタイプIII分泌蛋白質の機能を阻害する物質を、赤血球の溶血活性を指標として数値化し、短時間に多くの試料の処理が可能であることから、医薬品の開発等に有利である。
Description
技術分野
本発明は、例えばサルモネラ属、エルシニア属、シュードモナス属、赤痢菌、病原血清型大腸菌、腸管出血性大腸菌、またはボルデテラ属、に属するバクテリアに高度に保持されるタイプIII分泌機構およびそれから分泌される分泌蛋白質の機能を阻害する物質を短時間でかつ大量に検出する検出法に関する。
背景技術及び従来の技術
バクテリアの病原因子を菌体外に放出する機能を持つタイプIII分泌機構は、例えばサルモネラ(Salmonella)属、エルシニア(Yersinia)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、赤痢菌(Shigella)、病原血清型大腸菌(Enteropathogenic E.coli、以下EPECと略称することもある)、腸管出血性大腸菌(Enterohaemorrhagic E.coli)、そしてボルデテラ(Bordetella)属に高度に保存されていることが既に報告されている(Microbiology and molecular biology reviews,June,1998,p381)。
前述のタイプIII分泌機構を保持するバクテリアは、この分泌機構を通して病原因子を菌体外に放出し、放出された病原因子の一部は宿主細胞へと移行することが知られている(Microbiology and molecular biology reviews,June 1998,p389〜)。そして、宿主細胞に移行した病原因子は細菌の病原性に大きく関与していることも既に報告されている(Microbiology and molecular biology reviews,June 1998,p382〜)。
一方、タイプIII分泌機構によって分泌される蛋白質(以下タイプIII分泌蛋白質と略称することもある)を欠損させたEPEC株においては、病原性を消失することがウサギの感染実験(J.Exp.Med.Volume 188,Number 10,November 16,1998 p1907−1916)、及びヒトをボランティアとした感染実験(Infection and immunity,June 2000,p3689−3695)により明らかにされている。このような事実から、タイプIII分泌機構ならびにその分泌蛋白質の機能を阻害する物質は、新たな抗感染治療薬、予防薬としてその効果が期待されると考えられる。
しかしながら、従来、バクテリアのタイプIII分泌機構を阻害する物質の検出法に関しては未だ確立されておらず、抗菌性を主体とした物質の検出法が行われているのが現状である。抗菌活性を持つ物質、すなわち、抗生物質の検出法は、主にバイオアッセイにより行われていた。バイオアッセイには拡散法(微生物薬品化学改訂第3版、南江堂、上野芳夫、大村智編)等が挙げられる。拡散法は試験菌を含む寒天平板上におかれた濾紙に抗生物質を含ませると抗生物質が寒天中を拡散し、試験菌の発育を阻止した部分が透明帯として観察される。この阻止帯の直径と抗生物質の濃度から抗生物質の力価を算出する検出法である。
このような拡散法は、操作が簡単であり、多数の試料を短時間に処理することが可能であることから、抗生物質の検出に広く用いられていた。しかしながら、この方法によって得られる物質は、標的細菌だけではなく、正常な腸内細菌叢までも殺菌してしまうことから、菌交代症や多剤耐性菌の出現など、さまざまな社会問題を引き起こしているのが現状である。従って、このような検出法をバクテリアのタイプIII分泌機構を阻害する物質の検出に適用するには問題があった。このような事実から、タイプIII分泌機構およびそれから分泌されるタイプIII分泌蛋白質を特異的に阻害する物質の検出法は、未だ確立されていなかったため、現状ではタイプIII分泌機構およびそれから分泌されるタイプIII分泌蛋白質の機能を阻害する物質の検出は、動物の感染実験に頼らざる得ず、従って操作が複雑で大量の試料を短時間で評価することは極めて困難となる問題があった。
本発明者らはタイプIII分泌機構ならびにそれから分泌されるタイプIII分泌蛋白質の機能を特異的に阻害する物質を大量にしかも短時間で検出する簡単な手法を確立することは、タイプIII分泌機構を標的とした医薬品の開発ならびに評価に極めて重要であることに鑑みて研究を行った。その結果、本発明者らは動物の感染実験に依存することのない新規な検出法を見出した。
本発明の目的は、動物の感染実験に依存することなく、タイプIII分泌機構およびそれから分泌されるタイプIII分泌蛋白質の機能を特異的に阻害する物質を大量にしかも短時間で簡単に検出することができる、バクテリアのタイプIII分泌機構およびそれから分泌されるタイプIII分泌蛋白質の機能を阻害する物質の検出法である。
本発明の更なる目的は、バクテリアのタイプIII分泌機構ならびにそれから分泌されるタイプIII分泌蛋白質の機能を阻害する物質を、赤血球の溶血活性を指標として数値化し、短時間に多くの試料の処理を可能にする、バクテリアのタイプIII分泌機構およびそれから分泌されるタイプIII分泌蛋白質の機能を阻害する物質の検出法である。
発明の開示
タイプIII分泌機構を保持するバクテリアと赤血球を混合させると、タイプIII分泌機構に依存した溶血活性を示す。この溶血活性はタイプIII分泌蛋白質が赤血球に作用して惹起することが明らかにされている[Infect.Immun.(1999)第67巻、p5538−5540]。本発明は、タイプIII分泌機構を保持するバクテリアが起こす溶血活性に着目してなされたものであり、これにタイプIII分泌機構を阻害する物質を加えると溶血活性が阻害されることに特徴づけられている。
本発明は赤血球の溶血活性を指標として、試験管内にて簡便にタイプIII分泌機構およびそれから分泌されるタイプIII分泌蛋白質の機能を阻害する物質を検出する方法である。すなわち、タイプIII分泌機構を有するバクテリアと赤血球懸濁液を混合し、これにタイプIII分泌機構阻害物質を加えることによって生ずる溶血活性の変化を検出することを特徴とする、バクテリアのタイプIII分泌機構を阻害する物質の検出法である。また本発明はタイプIII分泌機構を有するバクテリアと赤血球懸濁液を混合し、これにタイプIII分泌機構によって分泌される蛋白質の機能を阻害する物質を加えることによって生ずる溶血活性の変化を検出することを特徴とする、タイプIII分泌機構の分泌蛋白質機能を阻害する物質の検出法である。更に本発明による溶血活性は比色定量によって検出される検出法である。
本発明に用いられる溶血活性を誘導するための試験菌としてはタイプIII分泌機構を保持する全てのバクテリアが含まれる。バクテリアの種類としては、例えばサルモネラ属、エルシニア属、シュードモナス属、赤痢菌、病原血清型大腸菌(または腸管病原性大腸菌)、腸管出血性大腸菌、及びボルデテラ属に属する細菌が挙げられる。また、これらのバクテリアに加えて、タイプIII分泌機構とそれによって分泌される蛋白質をコードする35.4kbpのLeeと呼ばれる遺伝子群を含む領域を他のバクテリアに人為的に組み込んだ組換えバクテリア[Molecular Micro.(1997)第27巻、p399−407]、あるいはこれに類似した組換えバクテリアも本発明に含まれる。
試験菌の成育には栄養に富む培地よりも、M9培地のような比較的栄養の少ない培地が適している。また、試験菌の培養条件は37℃が好ましく、培養は振盪培養よりも静置培養が適している。溶血活性の測定の原理は、赤血球膜が破壊されるとヘモグロビンが赤血球外へ放出されて反応溶液が赤色を呈することを利用し、この赤色を目視で判定する。この溶血活性に使用される赤血球はヒト由来のもののみに限定されるものではなく、例えばウサギ、ウマ、ヒツジなどの全ての種属の赤血球の利用が可能である。
発明を実施するための最良の形態
以下に説明する実施例は、本発明をより完全に理解させるものであり、本発明に何ら制限を加えるものではない。
本発明の実施例に使用した菌株の性状および培地の性状は以下の参考例に示す通りである。
参考例1
病原血清型大腸菌
Enteropathogenic Escherichia coli(EPEC)E2348/69(野性株):[(Cell(1997)第91巻、p511−520);ATCC12740;American Type Culture Collection,1080 University Boulevard,Manassas,VA,20110−2209,USA)より入手可能]
参考例1−1
EPEC cesT欠損株
EPEC cesT欠損株:[Tir特異的シャペロンの欠損株(Molecular Microb.(1999)第33巻、p1162−1175);日本国東京都港区白金5丁目9番1号、社団法人北里研究所、阿部章夫より入手可能]
欠損株の作製は既に確立されている手法[Molecular Micro.(1999)第33巻、p1162−1175]を用いて行った。第1図はEPEC cesT欠損株の作製に使用されるプラスミドの構築の概略であり、第2図はその組換えプラスミドの構築に際して用いられる遺伝子を増幅するためのプライマーセット、第3図はその組換えプラスミドの構築に際して用いられるリバースPCR法によって終止コドンとBamHI部位を挿入するためのプライマーセットである。
EPEC cesT欠損株の取得に用いられる組換えプラスミドの作製
EPEC E2348/69染色体DNA0.5μgを100μlの25mM TAPS緩衝液(pH9.3、25℃)、50mM KCl、2mM MgCl2、1mM 2−メルカプトエタノール、0.2mM dNTP、0.5μM プライマーセット(第2図参照)、2.5ユニットTakara EX Taq(宝酒造社製、日本国)の溶液に加えた。この混合液をMastercycler gradient(エッペンドルフ社製、独国)を用いてPCR法を行った。PCR法の条件は、94℃で5分間加熱後、94℃で1分間、58℃で1分間、72℃で2分間のインキュベーションを30回繰り返した。30回の増幅後、さらに72℃で5分間インキュベーションした。PCR法によって増幅された1.0kbpのcesT遺伝子断片をエタノール沈殿法によって集めた後、50μlの50mM NaCl、10mM Tris−HCl(pH7.9、25℃)、10mM MgCl2、1mMジチオスレイトールを含む溶液に加え、これに制限酵素SacI 5ユニットを加え、37℃で2時間反応させた。
反応後、5M NaClを1μlと制限酵素SalIを5ユニット加え、さらに37℃で2時間反応させた。制限酵素処理後、DNA断片をアガロース電気泳動で精製した。精製されたDNA断片の0.1μgと制限酵素SalIとSacIで切断したpBluescript IISK−(ストラタジーン社製、米国)0.2μgを、20μlの50mM Tris−HCl(pH7.6)、10mM MgCl2、1mM ATP、5mMジチオスレイトール、5%(w/v)ポリエチレングリコール8000、1ユニットのT4 DNAリガーゼの溶液に加え、16℃で16時間反応させた。このリガーゼ溶液で大腸菌を形質変換させ、遺伝子断片が組み込まれた組換えプラスミドを得た。
得られた組換えプラスミドはリバースPCR法[Molecular Micro.(1999)第33巻、p1162−1175]にてcesT遺伝子の中心部分に終止コドンを挿入した。組換えプラスミド0.05μgを100μlの25mM TAPS緩衝液(pH9.3、25℃)、50mM KCl、2mM MgCl2、1mM 2−メルカプトエタノール、0.2mM dNTP、0.5μMプライマーセット(第3図参照)、2.5ユニットTakara EX Taq(宝酒造社製、日本国)の溶液に加えた。この混合液をMastercycler gradient(エッペンドルフ社製、独国)を用いてPCR法を行った。PCR法の条件は、94℃で5分間加熱後、94℃で1分間、58℃で1分間、72℃で5分間のインキュベーションを30回繰り返した。30回のサイクル後、さらに72℃で5分間インキュベーションした。PCR法によって増幅された遺伝子断片をエタノール沈殿法によって集めた。
これを50μlの50mM NaCl、10mM Tris−HCl(pH7.9、25℃)、10mM MgCl2、1mMジチオスレイトールを含む溶液に加え、これに制限酵素BamHI 5ユニットを加え、37℃で2時間反応させ、アガロース電気泳動にて精製した。これを、20μlの50mM Tris−HCl(pH7.6)、10mM MgCl2、1mM ATP、5mM ジチオスレイトール、5%(w/v)ポリエチレングリコール8000、1ユニットのT4 DNAリガーゼの溶液に加え、16℃で16時間反応させた。このリガーゼ溶液にて大腸菌を形質転換させ、遺伝子断片の翻訳領域に終止コドンが挿入された組換えプラスミドを得た。
終止コドンを含む遺伝子断片が組み込まれた組換えプラスミド1μgを50μlの50mM NaCl、10mM Tris−HCl(pH7.9、25℃)、10mM MgCl2、1mMジチオスレイトールを含む溶液に加え、これに制限酵素SacI 5ユニットを加え、37℃で2時間反応させた。反応後、5M NaClを1μlと制限酵素SalIを5ユニット加え、さらに37℃で2時間反応させた。制限酵素処理後、各DNA断片をアガロース電気泳動で精製した。精製されたDNA断片の0.1μgと制限酵素SalIとSacIで切断したpCVD442[Infect.Immun.(1991)第59巻、P4310−4317]0.2μgを、20μlの50mM Tris−HCl(pH7.6)、10mM MgCl2、1mM ATP、5mMジチオスレイトール、5%(w/v)ポリエチレングリコール8000、1ユニットのT4DNAリガーゼの溶液に加え、16℃で16時間反応させた。このリガーゼ溶液にて大腸菌Sm10λpir(Bio/Technology、(1983)第1巻、p784−791)を形質転換させ、遺伝子断片が組み込まれた組換えプラスミドを得た。
EPEC cesT欠損株の作製
EPEC E2348/69を20mlのLB培地に植菌し、37℃で一夜振とう培養を行った。一夜培養液を遠心して菌体を集め、それを1mlのLB培地に懸濁し、懸濁液を0.1mlずつナリジキス酸(30μg/ml)含有LB寒天培地に植菌し、37℃で一夜培養した。得られたコロニーをさらにナリジキス酸(30μg/ml)含有LB寒天培地に塗布し、ナリジキス酸耐性菌株を確立した。このナリジキス酸耐性菌株を用いて欠損株を作製した。欠損株の作製は既に確立されている手法を用いて行った[Molecular Microb.(1999)第33巻、p1162−1175)。すなわち、遺伝子に終止コドンが挿入された遺伝子断片を含む組換えプラスミドで大腸菌Sm10λpirを形質転換し、この形質転換体をLB寒天培地に綿棒で塗布した。さらに塗布された菌体上に、ナリジキス酸耐性のEPEC E2348/69を塗布した。二つの菌体が塗布されたLB寒天培地を37℃で6時間培養した。
これら二菌体の混合物をナリジキス酸(30μg/ml)とアンピシリン(50μg/ml)を含むLB寒天培地に塗布して、37℃で一夜静置培養することにより、組換えプラスミドが変異を起こす菌体の染色体上に挿入されたものを選択した。出現した菌のコロニーはさらにナリジキス酸(30μg/ml)とアンピシリン(50μg/ml)を含むLB寒天培地に塗布し、ナリジキス酸とアンピシリンの両者に対して耐性であることを確認した。確認した菌体コロニーをナリジキス酸(30μg/ml)含有LB液体培地に植菌して、37℃で3.5時間振とう培養した。振とう培養後、菌体をナリジキス酸(30μg/ml)含有のシュクロース寒天培地に塗布する。得られたコロニーから染色体DNAを調製し、EPEC cesT欠損株の確認を行った。
EPEC cesT欠損株の確認
欠損株より染色体DNAを調製し、その0.5μgを100μlの25mM TAPS緩衝液(pH9.3、25℃)、50mM KCl、2mM MgCl2、1mM 2−メルカプトエタノール、0.2mM dNTP、0.5μMプライマーセット(第2図参照)、2.5ユニットTakara EX Taq(宝酒造社製、日本国)の溶液に加えた。この混合液をMastercycler gradient(エッペンドルフ社製、独国)を用いてPCR法を行った。PCR法の条件は、94℃で5分間加熱後、94℃で1分間、58℃で1分間、72℃で2分間のインキュベーションを30回繰り返した。30回のサイクル後、さらに72℃で5分間インキュベーションした。PCR法によって増幅された遺伝子断片をエタノール沈殿法によって集めた後、50μlの50mM NaCl、10mM Tris−HCl(pH7.9、25℃)、10mM MgCl2、1mMジチオスレイトールを含む溶液に加え、これに制限酵素BamHI 5ユニットを加え37℃で2時間反応させアガロース電気泳動を行った。PCR法で増幅されたDNA断片が、終止コドンの直下流に挿入された制限酵素BamHIにて消化され、断片が二つに分断されるか否で欠損株を判定した。
参考例1−2
EPEC sepB欠損株
EPEC sepB欠損株:[タイプIII分泌機構の欠損株(Proc.Natl.Acad.Sci.,USA(1995)第92巻、p7996−8000);米国、Center for Vaccine Development and Department of Microbiology and Immunology,University of Maryland School of Medicine,James B Kaperまたは日本国東京都港区白金5丁目9番1号、社団法人北里研究所、阿部章夫より入手可能]
EPEC sepB欠損株の取得に用いられる組換えプラスミドの作製
第4図はEPEC sepB欠損株の作製に使用されるプラスミドの構築の概略である、第5図はその組換えプラスミドの構築に際して用いられる遺伝子を増幅するためのプライマーセット、第6図はその組換えプラスミドの構築に際して用いられるリバースPCR法によって終止コドンとBglII部位を挿入するためのプライマーセットである。
EPEC E2348/69染色体DNA0.5μgを100μlの25mM TAPS緩衝液(pH9.3、25℃)、50mM KCl、2mM MgCl2、1mM 2−メルカプトエタノール、0.2mM dNTP、0.5μMプライマーセット(第5図参照)、2.5ユニットTakara EX Taq(宝酒造社製、日本国)の溶液に加えた。この混合液をMastercycler gradient(エッペンドルフ社製、独国)を用いてPCR法を行った。PCR法の条件は、94℃で5分間加熱後、94℃で1分間、58℃で1分間、72℃で2分間のインキュベーションを30回繰り返した。30回の増幅後、さらに72℃で5分間インキュベーションした。PCR法によって増幅された1.3kbpのsepB遺伝子断片をエタノール沈殿法によって集めた後、50μlの50mM NaCl、10mM Tris−HCl(pH7.9、25℃)、10mM MgCl2、1mMジチオスレイトールを含む溶液に加え、これに制限酵素SacI 5ユニットを加え、37℃で2時間反応させた。
反応後、5M NaClを1μlと制限酵素SalIを5ユニット加え、さらに37℃で2時間反応させた。制限酵素処理後、DNA断片をアガロース電気泳動で精製した。精製されたDNA断片の0.1μgと制限酵素SalIとSacIで切断したpBluescript IISK−(ストラタジーン社製、米国)0.2μgを、20μlの50mM Tris−HCl(pH7.6)、10mM MgCl2、1mM ATP、5mMジチオスレイトール、5%(w/v)ポリエチレングリコール8000、1ユニットのT4 DNAリガーゼの溶液に加え、16℃で16時間反応させた。このリガーゼ溶液で大腸菌を形質変換させ、遺伝子断片が組み込まれた組換えプラスミドを得た。
得られた組換えプラスミドはリバースPCR法にてsepB遺伝子の中心部分に終止コドンを挿入した。組換えプラスミド0.05μgを100μlの25mM TAPS緩衝液(pH9.3、25℃)、50mM KCl、2mM MgCl2、1mM 2−メルカプトエタノール、0.2mM dNTP、0.5μMプライマーセット(第6図参照)、2.5ユニットTakara EXTaq(宝酒造社製、日本国)の溶液に加えた。この混合液をMastercycler gradient(エッペンドルフ社製、独国)を用いてPCR法を行った。PCR法の条件は、94℃で5分間加熱後、94℃で1分間、58℃で1分間、72℃で5分間のインキュベーションを30回繰り返した。30回のサイクル後、さらに72℃で5分間インキュベーションした。PCR法によって増幅された遺伝子断片をエタノール沈殿法によって集めた。
これを50μlの100mM NaCl、10mM Tris−HCl(pH7.9、25℃)、10mM MgCl2、1mMジチオスレイトールを含む溶液に加え、これに制限酵素BglII 5ユニットを加え、37℃で2時間反応させ、アガロース電気泳動にて精製した。これを、20μlの50mM Tris−HCl(pH7.6)、10mM MgCl2、1mM ATP、5mMジチオスレイトール、5%(w/v)ポリエチレングリコール8000、1ユニットのT4 DNAリガーゼの溶液に加え、16℃で16時間反応させた。このリガーゼ溶液にて大腸菌を形質転換させ各遺伝子断片の翻訳領域に終止コドンが挿入された組換えプラスミドを得た。
終止コドンを含む遺伝子断片が組み込まれた組換えプラスミド1μgを50μlの50mM NaCl、10mM Tris−HCl(pH7.9、25℃)、10mM MgCl2、1mMジチオスレイトールを含む溶液に加え、これに制限酵素SacI 5ユニットを加え、37℃で2時間反応させた。反応後、5M NaClを1μlと制限酵素SalIを5ユニット加え、さらに37℃で2時間反応させた。制限酵素処理後、各DNA断片をアガロース電気泳動で精製した。精製されたDNA断片の0.1μgと制限酵素SalIとSacIで切断したpCVD442[Infect.Immun.(1991)第59巻、p4310−4317]0.2μgを、20μlの50mM Tris−HCl(pH7.6)、10mM MgCl2、1mM ATP、5mMジチオスレイトール、5%(w/v)ポリエチレングリコール8000、1ユニットのT4DNAリガーゼの溶液に加え、16℃で16時間反応させた。このリガーゼ溶液にて大腸菌Sm10λpir(Bio/Technology、(1983)第1巻、p784−791)を形質転換させ、各遺伝子断片が組み込まれた組換えプラスミドを得た。
EPEC sepB欠損株の作製
欠損株の作製は参考例1−1と同様の手法を用いて行った。EPEC E2348/69を20mlのLB培地に植菌し、37℃で一夜振とう培養を行った。一夜培養液を遠心して菌体を集め、それを1mlのLB培地に懸濁し、懸濁液を0.1mlずつナリジキス酸(30μg/ml)含有LB寒天培地に植菌し、37℃で一夜培養した。得られたコロニーをさらにナリジキス酸(30μg/ml)含有LB寒天培地に塗布し、ナリジキス酸耐性菌株を確立した。このナリジキス酸耐性菌株を用いて欠損株を作製した。欠損株の作製は、既に確立されている手法を用いて行った[Molecular Microb.(1999)第33巻、p1162−1175)。すなわち、遺伝子に終止コドンが挿入された遺伝子断片を含む組換えプラスミドで大腸菌Sm10λpirを形質転換し、この形質転換体をLB寒天培地に綿棒で塗布した。さらに塗布された菌体上に、ナリジキス酸耐性のEPEC E2348/69を塗布した。二つの菌体が塗布されたLB寒天培地を37℃で6時間培養した。
これら二菌体の混合物をナリジキス酸(30μg/ml)とアンピシリン(50μg/ml)を含むLB寒天培地に塗布して、37℃で一夜静置培養することにより、組換えプラスミドが変異を起こす菌体の染色体上に挿入されたものを選択した。出現した菌のコロニーはさらにナリジキス酸(30μg/ml)とアンピシリン(50μg/ml)を含むLB寒天培地に塗布し、ナリジキス酸とアンピシリンの両者に対して耐性であることを確認した。確認した菌体コロニーをナリジキス酸(30μg/ml)含有LB液体培地に植菌して、37℃で3.5時間振とう培養した。振とう培養後、菌体をナリジキス酸(30μg/ml)含有のシュクロース寒天培地に塗布する。得られたコロニーから染色体DNAを調製し、EPEC cesT欠損株を作製した。
EPEC sepB欠損株の確認
欠損株より染色体DNAを調製し、その0.5μgを100μlの25mM TAPS緩衝液(pH9.3、25℃)、50mM KCl、2mM MgCl2、1mM 2−メルカプトエタノール、0.2mM dNTP、0.5μMプライマーセット(第5図参照)、2.5ユニットTakara EX Taq(宝酒造社製、日本国)の溶液に加えた。この混合液をMastercycler gradient(エッペンドルフ社製、独国)を用いてPCR法を行った。PCR法の条件は、94℃で5分間加熱後、94℃で1分間、58℃で1分間、72℃で2分間のインキュベーションを30回繰り返した。30回のサイクル後、さらに72℃で5分間インキュベーションした。PCR法によって増幅された遺伝子断片をエタノール沈殿法によって集めた後、50μlの100mM NaCl、10mM Tris−HCl(pH7.9、25℃)、10mM MgCl2、1mM ジチオスレイトールを含む溶液に加え、これに制限酵素BglII 5ユニットを加え37℃で2時間反応させアガロース電気泳動を行った。PCR法で増幅されたDNA断片が、終止コドンの直下流に挿入された制限酵素BglIIにて消化され、断片が二つに分断されるか否で欠損株を判定した。
参考例1−3
EPEC espA欠損株
EPEC espA欠損株[タイプIII分泌蛋白質espAの欠損株(Molecular Microb.(1996)第20巻、p313−323);カナダ国、Biotechnology Laboratory,University of British Columbia,B Brett Finlayまたは日本国東京都港区白金5丁目9番1号、社団法人北里研究所、阿部章夫より入手可能]
EPEC espA欠損株の取得に用いられる組換えプラスミドの作製
第7図はEPEC espA欠損株の作製に使用されるプラスミドの構築の概略である、第8図はその組換えプラスミドの構築に際して用いられる遺伝子を増幅するためのプライマーセット、第9図はその組換えプラスミドの構築に際して用いられるリバースPCR法によって終止コドンとBglII部位を挿入するためのプライマーセットである。
EPEC E2348/69染色体DNA0.5μgを100μlの25mM TAPS緩衝液(pH9.3、25℃)、50mM KCl、2mM MgCl2、1mM 2−メルカプトエタノール、0.2mM dNTP、0.5μMプライマーセット(第8図参照)、2.5ユニットTakara EX Taq(宝酒造社製、日本国)の溶液に加えた。この混合液をMastercycler gradient(エッペンドルフ社製、独国)を用いてPCR法を行った。PCR法の条件は、94℃で5分間加熱後、94℃で1分間、58℃で1分間、72℃で2分間のインキュベーションを30回繰り返した。30回の増幅後、さらに72℃で5分間インキュベーションした。PCR法によって増幅された1.0kbpのespA遺伝子断片をエタノール沈殿法によって集めた後、50μlの50mM NaCl、10mM Tris−HCl(pH7.9、25℃)、10mM MgCl2、1mMジチオスレイトールを含む溶液に加え、これに制限酵素SacI 5ユニットを加え、37℃で2時間反応させた。
反応後、5M NaClを1μlと制限酵素SalIを5ユニット加え、さらに37℃で2時間反応させた。制限酵素処理後、DNA断片をアガロース電気泳動で精製した。精製されたDNA断片の0.1μgと制限酵素SalIとSacIで切断したpBluescript IISK−(ストラタジーン社製、米国)0.2μgを、20μlの50mM Tris−HCl(pH7.6)、10mM MgCl2、1mM ATP、5mMジチオスレイトール、5%(w/v)ポリエチレングリコール8000、1ユニットのT4 DNAリガーゼの溶液に加え、16℃で16時間反応させた。このリガーゼ溶液で大腸菌を形質変換させ、各遺伝子断片が組み込まれた組換えプラスミドを得た。
得られた組換えプラスミドはリバースPCR法にてespA遺伝子の中心部分に終止コドンを挿入した。組換えプラスミド0.05μgを100μlの25mM TAPS緩衝液(pH9.3、25℃)、50mM KCl、2mM MgCl2、1mM 2−メルカプトエタノール、0.2mM dNTP、0.5μM プライマーセット(第9図参照)、2.5ユニットTakara EX Taq(宝酒造社製、日本国)の溶液に加えた。この混合液をMastercycler gradient(エッペンドルフ社製、独国)を用いてPCR法を行った。PCR法の条件は、94℃で5分間加熱後、94℃で1分間、58℃で1分間、72℃で5分間のインキュベーションを30回繰り返した。30回のサイクル後、さらに72℃で5分間インキュベーションした。PCR法によって増幅された遺伝子断片をエタノール沈殿法によって集めた。
これを50μlの100mM NaCl、10mM Tris−HCl(pH7.9、25℃)、10mM MgCl2、1mM ジチオスレイトールを含む溶液に加え、これに制限酵素BglII 5ユニットを加え、37℃で2時間反応させ、アガロース電気泳動にて精製した。これを、20μlの50mM Tris−HCl(pH7.6)、10mM MgCl2、1mM ATP、5mMジチオスレイトール、5%(w/v)ポリエチレングリコール8000、1ユニットのT4 DNAリガーゼの溶液に加え、16℃で16時間反応させた。このリガーゼ溶液にて大腸菌を形質転換させ遺伝子断片の翻訳領域に終止コドンが挿入された組換えプラスミドを得た。
終止コドンを含む遺伝子断片が組み込まれた組換えプラスミド1μgを50μlの50mM NaCl、10mM Tris−HCl(pH7.9、25℃)、10mM MgCl2、1mMジチオスレイトールを含む溶液に加え、これに制限酵素SacI 5ユニットを加え、37℃で2時間反応させた。反応後、5M NaClを1μlと制限酵素SalIを5ユニット加え、さらに37℃で2時間反応させた。制限酵素処理後、DNA断片をアガロース電気泳動で精製した。精製されたDNA断片の0.1μlと制限酵素SalIとSacIで切断したpCVD442[Infect.Immun.(1991)第59巻、p4310−4317]0.2μgを、20μlの50mM Tris−HCl(pH7.6)、10mM MgCl2、1mM ATP、5mM ジチオスレイトール、5%(w/v)ポリエチレングリコール8000、1ユニットのT4 DNAリガーゼの溶液に加え、16℃で16時間反応させた。このリガーゼ溶液にて大腸菌Sm10λpir(Bio/Technology、(1983)第1巻、p784−791)を形質転換させ、遺伝子断片が組み込まれた組換えプラスミドを得た。
EPEC espA欠損株の作製
欠損株の作製は参考例1−1と同様の手法を用いて行った。バクテリアを20mlのLB培地に植菌し、37℃で一夜振とう培養を行った。一夜培養液を遠心して菌体を集め、それを1mlのLB培地に懸濁し、懸濁液を0.1mlずつナリジキス酸(30μg/ml)含有LB寒天培地に植菌し、37℃で一夜培養した。得られたコロニーをさらにナリジキス酸(30μg/ml)含有LB寒天培地に塗布し、ナリジキス酸耐性菌株を確立した。このナリジキス酸耐性菌株を用いて欠損株を作製した。欠損株の作製は、既に確立されている手法を用いて行った[Molecular Microb.(1999)第33巻、p1162−1175)。すなわち、各遺伝子に終止コドンが挿入された遺伝子断片を含む組換えプラスミドで大腸菌Sm10λpirを形質転換し、この形質転換体をLB寒天培地に綿棒で塗布した。さらに塗布された菌体上に、ナリジキス酸耐性のEPEC E2348/69を塗布した。二つの菌体が塗布されたLB寒天培地を37℃で6時間培養した。
これら二菌体の混合物をナリジキス酸(30μg/ml)とアンピシリン(50μg/ml)を含むLB寒天培地に塗布して、37℃で一夜静置培養することにより、組換えプラスミドが変異を起こす菌体の染色体上に挿入されたものを選択した。出現した菌のコロニーはさらにナリジキス酸(30μg/ml)とアンピシリン(50μg/ml)を含むLB寒天培地に塗布し、ナリジキス酸とアンピシリンの両者に対して耐性であることを確認した。確認した菌体コロニーをナリジキス酸(30μg/ml)含有LB液体培地に植菌して、37℃で3.5時間振とう培養した。振とう培養後、菌体をナリジキス酸(30μg/ml)含有のシュクロース寒天培地に塗布する。得られたコロニーから染色体DNAを調製し、EPEC espA欠損株を作製した。
EPEC espA欠損株の確認
欠損株より染色体DNAを調製し、その0.5μgを100μlの25mM TAPS緩衝液(pH9.3、25℃)、50mM KCl、2mM MgCl2、1mM 2−メルカプトエタノール、0.2mM dNTP、0.5μMプライマーセット(第8図参照)、2.5ユニットTakara EX Taq(宝酒造社製、日本国)の溶液に加えた。この混合液をMastercycler gradient(エッペンドルフ社製、独国)を用いてPCR法を行った。PCR法の条件は、94℃で5分間加熱後、94℃で1分間、58℃で1分間、72℃で2分間のインキュベーションを30回繰り返した。30回のサイクル後、さらに72℃で5分間インキュベーションした。PCR法によって増幅された遺伝子断片をエタノール沈殿法によって集めた後、50μlの100mM NaCl、10mM Tris−HCl(pH7.9、25℃)、10mM MgCl2、1mMジチオスレイトールを含む溶液に加え、これに制限酵素BgIII 5ユニットを加え37℃で2時間反応させアガロース電気泳動を行った。PCR法で増幅されたDNA断片が、終止コドンの直下流に挿入された制限酵素BglIIにて消化され、断片が二つに分断されるか否で欠損株を判定した。
参考例1−4
EPEC espB欠損株
EPEC espB欠損株:[タイプIII分泌蛋白質espBの欠損株(J.Bacteriolo.(1993)第175巻、p4670−4680);米国、Center for Vaccine Development and Department of Microbiology and Immunology,University of Maryland School of Medicine,James B Kaperまたは日本国東京都港区白金5丁目9番1号、社団法人北里研究所、阿部章夫より入手可能]
EPEC espB欠損株の取得に用いられる組換えプラスミドの作製
第10図はEPEC espB欠損株の作製に使用されるプラスミドの構築の概略である、第11図はその組換えプラスミドの構築に際して用いられる遺伝子を増幅するためのプライマーセット、第12図はその組換えプラスミドの構築に際して用いられるリバースPCR法によって終止コドンとBglII部位を挿入するためのプライマーセットである。
EPEC E2348/69染色体DNA0.5μgを100μlの25mM TAPS緩衝液(pH9.3、25℃)、50mM KCl、2mM MgCl2、1mM 2−メルカプトエタノール、0.2mM dNTP、0.5μMプライマーセット(第11図参照)、2.5ユニットTakara EX Taq(宝酒造社製、日本国)の溶液に加えた。この混合液をMastercycler gradient(エッペンドルフ社製、独国)を用いてPCR法を行った。PCR法の条件は、94℃で5分間加熱後、94℃で1分間、58℃で1分間、72℃で2分間のインキュベーションを30回繰り返した。30回の増幅後、さらに72℃で5分間インキュベーションした。PCR法によって増幅された1.0kbpのespB遺伝子断片をエタノール沈殿法によって集めた後、50μlの50mM NaCl、10mM Tris−HCl(pH7.9、25℃)、10mM MgCl2、1mMジチオスレイトールを含む溶液に加え、これに制限酵素SacI 5ユニットを加え、37℃で2時間反応させた。
反応後、5M NaClを1μlと制限酵素SalIを5ユニット加え、さらに37℃で2時間反応させた。制限酵素処理後、DNA断片をアガロース電気泳動で精製した。精製されたDNA断片の0.1μgと制限酵素SalIとSacIで切断したpBluescript IISK−(ストラタジーン社製、米国)0.2μgを、20μlの50mM Tris−HCl(pH7.6)、10mM MgCl2、1mM ATP、5mMジチオスレイトール、5%(w/v)ポリエチレングリコール8000、1ユニットのT4 DNAリガーゼの溶液に加え、16℃で16時間反応させた。このリガーゼ溶液で大腸菌を形質変換させ各遺伝子断片が組み込まれた組換えプラスミドを得た。
得られた組換えプラスミドはリバースPCR法にてespB遺伝子の中心部分に終止コドンを挿入した。組換えプラスミド0.05μgを100μlの25mM TAPS緩衝液(pH9.3、25℃)、50mM KCl、2mM MgCl2、1mM 2−メルカプトエタノール、0.2mM dNTP、0.5μMプライマーセット(第12図参照)、2.5ユニットTakara EX Taq(宝酒造社製、日本国)の溶液に加えた。この混合液をMastercycler gradient(エッペンドルフ社製、独国)を用いてPCR法を行った。PCR法の条件は、94℃で5分間加熱後、94℃で1分間、58℃で1分間、72℃で5分間のインキュベーションを30回繰り返した。30回のサイクル後、さらに72℃で5分間インキュベーションした。PCR法によって増幅された遺伝子断片をエタノール沈殿法によって集めた。
これを50μlの100mM NaCl、10mM Tris−HCl(pH7.9、25℃)、10mM MgCl2、1mMジチオスレイトールを含む溶液に加え、これに制限酵素BglII 5ユニットを加え、37℃で2時間反応させ、アガロース電気泳動にて精製した。これを、20μlの50mM Tris−HCl(pH7.6):10mM MgCl2、1mM ATP、5mM ジチオスレイトール、5%(w/v)ポリエチレングリコール8000、1ユニットのT4 DNAリガーゼの溶液に加え、16℃で16時間反応させた。このリガーゼ溶液にて大腸菌を形質転換させ、遺伝子断片の翻訳領域に終止コドンが挿入された組換えプラスミドを得た。
終止コドンを含む遺伝子断片が組み込まれた組換えプラスミド1μgを50μlの50mM NaCl、10mM Tris−HCl(pH7.9、25℃)、10mM MgCl2、1mMジチオスレイトールを含む溶液に加え、これに制限酵素SacI 5ユニットを加え、37℃で2時間反応させた。反応後、5M NaClを1μlと制限酵素SalIを5ユニット加え、さらに37℃で2時間反応させた。制限酵素処理後、DNA断片をアガロース電気泳動で精製した。精製されたDNA断片の0.1μlと制限酵素SalIとSacIで切断したpCVD442[Infect.Immun.(1991)第59巻、p4310−4317]0.2μgを、20μlの50mM Tris−HCl(pH7.6)、10mM MgCl2、1mM ATP、5mM ジチオスレイトール、5%(w/v)ポリエチレングリコール8000、1ユニットのT4 DNAリガーゼの溶液に加え、16℃で16時間反応させた。このリガーゼ溶液にて大腸菌Sm10λpir(Bio/Technology、(1983)第1巻、p784−791)を形質転換させ、各遺伝子断片が組み込まれた組換えプラスミドを得た。
EPEC espB欠損株の作製
欠損株の作製は参考例1−1と同様の手法を用いて行った。EPEC E2348/69を20mlのLB培地に植菌し、37℃で一夜振とう培養を行った。一夜培養液を遠心して菌体を集め、それを1mlのLB培地に懸濁し、懸濁液を0.1mlずつナリジキス酸(30μg/ml)含有LB寒天培地に植菌し、37℃で一夜培養した。得られたコロニーをさらにナリジキス酸(30μg/ml)含有LB寒天培地に塗布し、ナリジキス酸耐性菌株を確立した。このナリジキス酸耐性菌株を用いて欠損株を作製した。欠損株の作製は、既に確立されている手法を用いて行った[Molecular Microb.(1999)第33巻、p1162−1175)。すなわち、各遺伝子に終止コドンが挿入された遺伝子断片を含む組換えプラスミドで大腸菌Sm10λpirを形質転換し、この形質転換体をLB寒天培地に綿棒で塗布した。さらに塗布された菌体上に、ナリジキス酸耐性のEPEC E2348/69を塗布した。二つの菌体が塗布されたLB寒天培地を37℃で6時間培養した。
これら二菌体の混合物をナリジキス酸(30μg/ml)とアンピシリン(50μg/ml)を含むLB寒天培地に塗布して、37℃で一夜静置培養することにより、組換えプラスミドが変異を起こす菌体の染色体上に挿入されたものを選択した。出現した菌のコロニーはさらにナリジキス酸(30μg/ml)とアンピシリン(50μg/ml)を含むLB寒天培地に塗布し、ナリジキス酸とアンピシリンの両者に対して耐性であることを確認した。確認した菌体コロニーをナリジキス酸(30μg/ml)含有LB液体培地に植菌して、37℃で3.5時間振とう培養した。振とう培養後、菌体をナリジキス酸(30μg/ml)含有のシュクロース寒天培地に塗布する。得られたコロニーから染色体DNAを調製し、EPEC espB欠損株を作製した。
EPEC espB欠損株の確認
欠損株より染色体DNAを調製し、その0.5μgを100μlの25mM TAPS緩衝液(pH9.3、25℃)、50mM KCl、2mM MgCl2、1mM 2−メルカプトエタノール、0.2mM dNTP、0.5μMプライマーセット(第11図参照)、2.5ユニットTakara EX Taq(宝酒造社製、日本国)の溶液に加えた。この混合液をMastercycler gradient(エッペンドルフ社製、独国)を用いてPCR法を行った。PCR法の条件は、94℃で5分間加熱後、94℃で1分間、58℃で1分間、72℃で2分間のインキュベーションを30回繰り返した。30回のサイクル後、さらに72℃で5分間インキュベーションした。PCR法によって増幅された遺伝子断片をエタノール沈殿法によって集めた後、50μlの100mM NaCl、10mM Tris−HCl(pH7.9、25℃)、10mMMgCl2、1mMジチオスレイトールを含む溶液に加え、これに制限酵素BglII 5ユニットを加え、37℃で2時間反応させ、アガロース電気泳動を行った。PCR法で増幅されたDNA断片が、終止コドンの直下流に挿入された制限酵素BglIIにて消化され、断片が二つに分断されるか否で欠損株を判定した。
参考例1−5
EPEC espD欠損株
EPEC espD欠損株[(タイプIII分泌蛋白質espDの欠損株):(Infect.Immun.(1997)第65巻、p2211−2217);米国、Devisions of Gastroenterology,University of Maryland School of Medicine,Michael S.Donnenbergまたは日本国東京都港区白金5丁目9番1号、社団法人北里研究所、阿部章夫より入手可能]
EPEC espD欠損株の取得に用いられる組換えプラスミドの作製
第13図はEPEC espD欠損株の作製に使用されるプラスミドの構築の概略である、第14図はその組換えプラスミドの構築に際して用いられる遺伝子を増幅するためのプライマーセット、第15図はその組換えプラスミドの構築に際して用いられるリバースPCR法によって終止コドンとBamHI部位を挿入するためのプライマーセットである。
EPEC E2348/69染色体DNA0.5μgを100μlの25mM TAPS緩衝液(pH9.3、25℃)、50mM KCl、2mM MgCl2、1mM 2−メルカプトエタノール、0.2mM dNTP、0.5μMプライマーセット(第14図参照)、2.5ユニットTakara EX Taq(宝酒造社製、日本国)の溶液に加えた。この混合液をMastercycler gradient(エッペンドルフ社製、独国)を用いてPCR法を行った。PCR法の条件は、94℃で5分間加熱後、94℃で1分間、58℃で1分間、72℃で2分間のインキュベーションを30回繰り返した。30回の増幅後、さらに72℃で5分間インキュベーションした。PCR法によって増幅された1.1kbpのespD遺伝子断片をエタノール沈殿法によって集めた後、50μlの50mM NaCl、10mM Tris−HCl(pH7.9、25℃)、10mM MgCl2、1mMジチオスレイトールを含む溶液に加え、これに制限酵素SacI 5ユニットを加え、37℃で2時間反応させた。
反応後、5M NaClを1μlと制限酵素SalIを5ユニット加え、さらに37℃で2時間反応させた。制限酵素処理後、DNA断片をアガロース電気泳動で精製した。精製されたDNA断片の0.1μgと制限酵素SalIとSacIで切断したpBluescript IISK−(ストラタジーン社製、米国)0.2μgを、20μlの50mM Tris−HCl(pH7.6)、10mM MgCl2、1mM ATP、5mMジチオスレイトール、5%(w/v)ポリエチレングリコール8000、1ユニットのT4 DNAリガーゼの溶液に加え、16℃で16時間反応させた。このリガーゼ溶液で大腸菌を形質変換させ、各遺伝子断片が組み込まれた組換えプラスミドを得た。
得られた組換えプラスミドはリバースPCR法にてespD遺伝子の中心部分に終止コドンを挿入した。組換えプラスミド0.05μgを100μlの25mM TAPS緩衝液(pH9.3、25℃)、50mM KCl、2mM MgCl2、1mM 2−メルカプトエタノール、0.2mM dNTP、0.5μM プライマーセット(第15図参照)、2.5ユニットTakara EX Taq(宝酒造社製、日本国)の溶液に加えた。この混合液をMastercycler gradient(エッペンドルフ社製、独国)を用いてPCR法を行った。PCR法の条件は、94℃で5分間加熱後、94℃で1分間、58℃で1分間、72℃で5分間のインキュベーションを30回繰り返した。30回のサイクル後、さらに72℃で5分間インキュベーションした。PCR法によって増幅された遺伝子断片をエタノール沈殿法によって集めた。
これを50μlの50mM NaCl、10mM Tris−HCl(pH7.9、25℃)、10mM MgCl2、1mMジチオスレイトールを含む溶液に加え、これに制限酵素BamHI 5ユニットを加え、37℃で2時間反応させ、アガロース電気泳動にて精製した。これを、20μlの50mM Tris−HCl(pH7.6)、10mM MgCl2、1mM ATP、5mMジチオスレイトール、5%(w/v)ポリエチレングリコール8000、1ユニットのT4 DNAリガーゼの溶液に加え、16℃で16時間反応させた。このリガーゼ溶液にて大腸菌を形質転換させ、遺伝子断片の翻訳領域に終止コドンが挿入された組換えプラスミドを得た。
終止コドンを含む遺伝子断片が組み込まれた組換えプラスミド1μgを50μlの50mM NaCl、10mM Tris−HCl(pH7.9、25℃)、10mM MgCl2、1mMジチオスレイトールを含む溶液に加え、これに制限酵素SacI 5ユニットを加え37℃で2時間反応させた。反応後、5M NaClを1μlと制限酵素SalIを5ユニット加え、さらに37℃で2時間反応させた。制限酵素処理後、DNA断片をアガロース電気泳動で精製した。精製されたDNA断片の0.1μlと制限酵素SalIとSacIで切断したpCVD442[Infect.Immun.(1991)第59巻、p4310−4317]0.2μgを、20μlの50mM Tris−HCl(pH7.6)、10mM MgCl2、1mM ATP、5mMジチオスレイトール、5%(w/v)ポリエチレングリコール8000、1ユニットのT4 DNAリガーゼの溶液に加え16℃で16時間反応させた。このリガーゼ溶液にて大腸菌Sm10λpir(Bio/Technology、(1983)第1巻、p784−791)を形質転換させ、各遺伝子断片が組み込まれた組換えプラスミドを得た。
EPEC espD欠損株の作製
欠損株の作製は参考例1−1と同様の手法を用いて行った。EPEC E2348/69を20mlのLB培地に植菌し、37℃で一夜振とう培養を行った。一夜培養液を遠心して菌体を集め、それを1mlのLB培地に懸濁し、懸濁液を0.1mlずつナリジキス酸(30μg/ml)含有LB寒天培地に植菌し、37℃で一夜培養した。得られたコロニーをさらにナリジキス酸(30μg/ml)含有LB寒天培地に塗布し、ナリジキス酸耐性菌株を確立した。このナリジキス酸耐性菌株を用いて欠損株を作製した。欠損株の作製は、既に確立されている手法を用いて行った[Molecular Microb.(1999)第33巻、p1162−1175)。すなわち、各遺伝子に終止コドンが挿入された遺伝子断片を含む組換えプラスミドで大腸菌Sm10λpirを形質転換し、この形質転換体をLB寒天培地に綿棒で塗布した。さらに塗布された菌体上に、ナリジキス酸耐性のEPEC E2348/69を塗布した。二つの菌体が塗布されたLB寒天培地を37℃で6時間培養した。
これら二菌体の混合物をナリジキス酸(30μg/ml)とアンピシリン(50μg/ml)を含むLB寒天培地に塗布して、37℃で一夜静置培養することにより、組換えプラスミドが変異を起こす菌体の染色体上に挿入されたものを選択した。出現した菌のコロニーはさらにナリジキス酸(30μg/ml)とアンピシリン(50μg/ml)を含むLB寒天培地に塗布し、ナリジキス酸とアンピシリンの両者に対して耐性であることを確認した。確認した菌体コロニーをナリジキス酸(30μg/ml)含有LB液体培地に植菌して、37℃で3.5時間振とう培養した。振とう培養後、菌体をナリジキス酸(30μg/ml)含有のシュクロース寒天培地に塗布する。得られたコロニーから染色体DNAを調製し、EPEC espD欠損株を作製した。
EPEC espD欠損株の確認
欠損株より染色体DNAを調製し、その0.5μgを100μlの25mM TAPS緩衝液(pH9.3、25℃)、50mM KCl、2mM MgCl2、1mM 2−メルカプトエタノール、0.2mM dNTP、0.5μM プライマーセット(第14図参照)、2.5ユニットTakara EX Taq(宝酒造社製、日本国)の溶液に加えた。この混合液をMastercycler gradient(エッペンドルフ社製、独国)を用いてPCR法を行った。PCR法の条件は、94℃で5分間加熱後、94℃で1分間、58℃で1分間、72℃で2分間のインキュベーションを30回繰り返した。30回のサイクル後、さらに72℃で5分間インキュベーションした。PCR法によって増幅された遺伝子断片をエタノール沈殿法によって集めた後、50μlの50mM NaCl、10mM Tris−HCl(pH7.9、25℃)、10mM MgCl2、1mMジチオスレイトールを含む溶液に加え、これに制限酵素BamHI 5ユニットを加えて37℃で2時間反応させ、アガロース電気泳動を行った。PCR法で増幅されたDNA断片が、終止コドンの直下流に挿入された制限酵素BamHIにて消化され、断片が二つに分断されるか否で変異株を判定した。
参考例2
赤痢菌
Shigella flexneri 2a YSH6000(野性株):[(Infect.Immun.(1986)第51巻、p470−475);ATCC25875;American Type Culture Collection,10801 University Boulevard,Manassas,VA20110−2209,USA)より入手可能]
参考例2−1
赤痢菌ipaC欠損株
Shigella flexneri TK001:[(Ipac欠損株、タイプIII分泌蛋白質の欠損株);日本国東京都港区白金5丁目9番1号、社団法人北里研究所、阿部章夫より入手可能]
赤痢菌ipaC欠損株の取得に用いられる組換えプラスミドの作製
第16図はipaC欠損株の作製に使用されるプラスミドの構築の概略である、第17図はその組換えプラスミドの構築に際して用いられる遺伝子を増幅するためのプライマーセット、第18図はその組換えプラスミドの構築に際して用いられるリバースPCR法によって終止コドンとBamHI部位を挿入するためのプライマーセットである。
Shigella flexneri 2a染色体DNA0.5μgを100μlの25mM TAPS緩衝液(pH9.3、25℃)、50mM KCl、2mM MgCl2、1mM 2−メルカプトエタノール、0.2mM dNTP、0.5μMプライマーセット(第17図参照)及び2.5ユニットTakara EX Taq(宝酒造社製、日本国)の溶液に加えた。この混合液をMastercycler gradient(エッペンドルフ社製、独国)を用いてPCR法を行った。PCR法の条件は、94℃で5分間加熱後、94℃で1分間、58℃で1分間、72℃で2分間のインキュベーションを30回繰り返した。30回の増幅後、さらに72℃で5分間インキュベーションした。PCR法によって増幅された1.1kbpのipaC遺伝子断片をエタノール沈殿法によって集めた後、50μlの50mM酢酸カリウム、10mM Tris−acetate(pH7.9、25℃)、10mM酢酸マグネシウム、1mMジチオスレイトールを含む溶液に加え、これに制限酵素SmaIとXbaIをそれぞれ5ユニットを加え、37℃で2時間反応させた。
制限酵素処理後、DNA断片をアガロース電気泳動で精製した。精製されたDNA断片の0.1μgと制限酵素SmaIとXbaIで切断したpBluescript IISK−(ストラタジーン社製、米国)0.2μgを、20μlの50mM Tris−HCl(pH7.6)、10mM MgCl2、1mM ATP、5mM ジチオスレイトール、5%(w/v)ポリエチレングリコール8000、1ユニットのT4 DNAリガーゼの溶液に加え、16℃で16時間反応させた。このリガーゼ溶液で大腸菌を形質変換させ遺伝子断片が組み込まれた組換えプラスミドを得た。
得られた組換えプラスミドはリバースPCR法にてipaC遺伝子の中心部分に終止コドンを挿入した。組換えプラスミド0.05μgを100μlの25mM TAPS緩衝液(pH9.3、25℃)、50mM KCl、2mM MgCl2、1mM 2−メルカプトエタノール、0.2mM dNTP、0.5μMプライマーセット(第18図参照)、2.5ユニットTakara EX Taq(宝酒造社製、日本国)の溶液に加えた。この混合液をMastercycler gradient(エッペンドルフ社製、独国)を用いてPCR法を行った。PCR法の条件は、94℃で5分間加熱後、94℃で1分間、58℃で1分間、72℃で5分間のインキュベーションを30回繰り返した。30回のサイクル後、さらに72℃で5分間インキュベーションした。PCR法によって増幅された遺伝子断片をエタノール沈殿法によって集めた。
これを50μlの50mM NaCl、10mM Tris−HCl(pH7.9、25℃)、10mM MgCl2、1mM ジチオスレイトールを含む溶液に加え、これに制限酵素BamHI 5ユニットを加え、37℃で2時間反応させ、アガロース電気泳動にて精製した。これを、20μlの50mM Tris−HCl(pH7.6):10mM MgCl2、1mM ATP、5mMジチオスレイトール、5%(w/v)ポリエチレングリコール8000、1ユニットのT4 DNAリガーゼの溶液に加え、16℃で16時間反応させた。このリガーゼ溶液にて大腸菌を形質転換させ、遺伝子断片の翻訳領域に終止コドンが挿入された組換えプラスミドを得た。
終止コドンを含む遺伝子断片が組み込まれた組換えプラスミド1μgを50μlの50mM酢酸カリウム、10mM Tris−acetate(pH7.9、25℃)、10mM 酢酸マグネシウム、1mMジチオスレイトールを含む溶液に加え、これに制限酵素SmaIとXbaIをそれぞれ5ユニットを加え、37℃で2時間反応させた。制限酵素処理後、各DNA断片をアガロース電気泳動で精製した。精製されたDNA断片の0.1μlと制限酵素SmaIとXbaIで切断したpCVD442[Infect.Immun.(1991)第59巻、p4310−4317]0.2μgを、20μlの50mM Tris−HCl(pH7.6)、10mM MgCl2、1mM ATP、5mMジチオスレイトール、5%(w/v)ポリエチレングリコール8000、1ユニットのT4 DNAリガーゼの溶液に加え16℃で16時間反応させた。このリガーゼ溶液にて大腸菌Sm10λpir(Bio/Technology、(1983)第1巻、p784−791)を形質転換させ、遺伝子断片が組み込まれた組換えプラスミドを得た。
赤痢菌ipaC欠損株の作製
欠損株の作製は参考例1−1と同様の手法を用いて行った。Shigella flexneri 2aを20mlのBHI培地(Difco社、米国)に植菌し、37℃で一夜振とう培養を行った。一夜培養液を遠心して菌体を集め、それを1mlのBHI培地に懸濁し、懸濁液を0.1mlずつナリジキス酸(30μg/ml)含有LB寒天培地に植菌し、37℃で一夜培養した。得られたコロニーをさらにナリジキス酸(30μg/ml)含有LB寒天培地に塗布し、ナリジキス酸耐性菌株を確立した。このナリジキス酸耐性菌株を用いて欠損株を作製した。欠損株の作製は、既に確立されている手法を用いて行った[Molecular Microb.(1999)第33巻、p1162−1175)。すなわち、各遺伝子に終止コドンが挿入された遺伝子断片を含む組換えプラスミドで大腸菌Sm10λpirを形質転換し、この形質転換体をLB寒天培地に綿棒で塗布した。さらに塗布された菌体上に、ナリジキス酸耐性のShigella flexneri 2aを塗布した。二つの菌体が塗布されたLB寒天培地を37℃で6時間培養した。
これら二菌体の混合物をナリジキス酸(30μg/ml)とアンピシリン(50μg/ml)を含むLB寒天培地に塗布して、37℃で一夜静置培養することにより、組換えプラスミドが変異を起こす菌体の染色体上に挿入されたものを選択した。出現した菌のコロニーはさらにナリジキス酸(30μg/ml)とアンピシリン(50μg/ml)を含むLB寒天培地に塗布し、ナリジキス酸とアンピシリンの両者に対して耐性であることを確認した。確認した菌体コローをナリジキス酸(30μg/ml)含有LB液体培地に植菌して、37℃で3.5時間振とう培養した。振とう培養後、菌体をナリジキス酸(30μg/ml)含有のシュクロース寒天培地に塗布する。得られたコロニーから染色体DNAを調製し、赤痢菌ipaC欠損株を作製した。
赤痢菌ipaC欠損株の確認
欠損株より染色体DNAを調製し、その0.5μgを100μlの25mM TAPS緩衝液(pH9.3、25℃)、50mM KCl、2mM MgCl2、1mM 2−メルカプトエタノール、0.2mM dNTP、0.5μMプライマーセット(第17図参照)、2.5ユニットTakara EX Taq(宝酒造社製、日本国)の溶液に加えた。この混合液をMastercycler gradient(エッペンドルフ社製、独国)を用いてPCR法を行った。PCR法の条件は、94℃で5分間加熱後、94℃で1分間、58℃で1分間、72℃で2分間のインキュベーションを30回繰り返した。30回のサイクル後、さらに72℃で5分間インキュベーションした。PCR法によって増幅された遺伝子断片をエタノール沈殿法によって集めた後、50μlの50mMNaCl、10mM Tris−HCl(pH7.9、25℃)、10mM MgCl2、1mMジチオスレイトールを含む溶液に加え、これに制限酵素BamHI 5ユニットを加えて37℃で2時間反応させ、アガロース電気泳動を行った。PCR法で増幅されたDNA断片が、終止コドンの直下流に挿入された制限酵素BamHIにて消化され、断片が二つに分断されるか否で変異株を判定した。
参考例3
サルモネラ菌
Salmonella typhimurium SR11(野性株):[(J.Bacteriolo.(1992)第174巻、p4338−4349;ATCC14028;American Type Culture Collection,10801 University Boulevard,Manassas,VA20110−2209,USA)より入手可能]
参考例3−1
サルモネラinvA欠損株
Salmonella typhimurium SB147:[(invA欠損株、タイプIII分泌機構の欠損株(J.Bacteriolo.(1992)第175巻、p4338−4349;米国、Boyer Center for Molecular Medicine,Yale School of Medicine,Jorge E Galanまたは日本国東京都港区白金5丁目9番1号、社団法人北里研究所、阿部章夫)より入手可能]
サルモネラinvA欠損株の取得に用いられる組換えプラスミドの作製
第19図はinvA欠損株作製に使用されるプラスミドの構築の概略である、第20図はその組換えプラスミドの構築に際して用いられる遺伝子を増幅するためのプライマーセット、第21図はその組換えプラスミドの構築に際して用いられるリバースPCR法によって終止コドンとXbaI部位を挿入するためのプライマーセットである。
Salmonella typhimurium染色体DNA0.5μgを100μlの25mM TAPS緩衝液(pH9.3、25℃)、50mM KCl、2mM MgCl2、1mM 2−メルカプトエタノール、0.2mM dNTP、0.5μMプライマーセット(第20図参照)、2.5ユニットTakara EX Taq(宝酒造社製、日本国)の溶液に加えた。この混合液をMastercycler gradient(エッペンドルフ社製、独国)を用いてPCR法を行った。PCR法の条件は、94℃で5分間加熱後、94℃で1分間、58℃で1分間、72℃で2分間のインキュベーションを30回繰り返した。30回の増幅後、さらに72℃で5分間インキュベーションした。PCR法によって増幅された2.0kbpのinvA遺伝子断片をエタノール沈殿法によって集めた後、50μlの50mM NaCl、10mM Tris−HCl(pH7.9、25℃)、10mM MgCl2、1mMジチオスレイトールを含む溶液に加え、これに制限酵素SacI 5ユニットを加え、37℃で2時間反応させた。
反応後、5M NaClを1μlと制限酵素SalIを5ユニット加え、さらに37℃で2時間反応させた。制限酵素処理後、DNA断片をアガロース電気泳動で精製した。精製されたDNA断片の0.1μgと制限酵素SalIとSacIで切断したpBluescript IISK−(ストラタジーン社製、米国)0.2μgを、20μlの50mM Tris−HCl(pH7.6)、10mM MgCl2、1mM ATP、5mMジチオスレイトール、5%(w/v)ポリエチレングリコール8000、1ユニットのT4DNAリガーゼの溶液に加え、16℃で16時間反応させた。このリガーゼ溶液で大腸菌を形質変換させ、遺伝子断片が組み込まれた組換えプラスミドを得た。
得られた組換えプラスミドはリバースPCR法にてinvA遺伝子の中心部分に終止コドンを挿入した。組換えプラスミド0.05μgを100μlの25mM TAPS緩衝液(pH9.3、25℃)、50mM KCl、2mM MgCl2、1mM 2−メルカプトエタノール、0.2mM dNTP、0.5μMプライマーセット(第18図参照)、2.5ユニットTakara EX Taq(宝酒造社製、日本国)の溶液に加えた。この混合液をMastercycler gradient(エッペンドルフ社製、独国)を用いてPCR法を行った。PCR法の条件は、94℃で5分間加熱後、94℃で1分間、58℃で1分間、72℃で5分間のインキュベーションを30回繰り返した。30回のサイクル後、さらに72℃で5分間インキュベーションした。PCR法によって増幅された遺伝子断片をエタノール沈殿法によって集めた。
これを50μlの50mM NaCl、10mM Tris−HCl(pH7.9、25℃)、10mM MgCl2、1mMジチオスレイトールを含む溶液に加え、これに制限酵素XbaI 5ユニットを加え、37℃で2時間反応させ、アガロース電気泳動にて精製した。これを、20μlの50mM Tris−HCl(pH7.6)、10mM MgCl2、1mM ATP、5mMジチオスレイトール、5%(w/v)ポリエチレングリコール8000、1ユニットのT4 DNAリガーゼの溶液に加え、16℃で16時間反応させた。このリガーゼ溶液にて大腸菌を形質転換させ、遺伝子断片の翻訳領域に終止コドンが挿入された組換えプラスミドを得た。
終止コドンを含む遺伝子断片が組み込まれた組換えプラスミド1μgを50μlの50mM NaCl、10mM Tris−HCl(pH7.9、25℃)、10mM MgCl2、1mMジチオスレイトールを含む溶液に加え、これに制限酵素SacI 5ユニットを加え、37℃で2時間反応させた。反応後、5M NaClを1μlと制限酵素SalIを5ユニット加え、さらに37℃で2時間反応させた。制限酵素処理後、各DNA断片をアガロース電気泳動で精製した。精製されたDNA断片の0.1μlと制限酵素SalIとSacIで切断したpCVD442[Infect.Immun.(1991)第59巻、p4310−4317]0.2μgを、20μlの50mM Tris−HCl(pH7.6)、10mM MgCl2、1mM ATP、5mMジチオスレイトール、5%(w/v)ポリエチレングリコール8000、1ユニットのT4 DNAリガーゼの溶液に加え、16℃で16時間反応させた。このリガーゼ溶液にて大腸菌Sm10λpir(Bio/Technology、(1983)第1巻、p784−791)を形質転換させ、遺伝子断片が組み込まれた組換えプラスミドを得た。
サルモネラinvA欠損株の作製
欠損株の作製は参考例1−1と同様の手法を用いて行った。Salmonella typhimuriumを20mlのLB培地に植菌し、37℃で一夜振とう培養を行った。一夜培養液を遠心して菌体を集め、それを1mlのLB培地に懸濁し、懸濁液を0.1mlずつナリジキス酸(30μg/ml)含有LB寒天培地に植菌し、37℃で一夜培養した。得られたコロニーをさらにナリジキス酸(30μg/ml)含有LB寒天培地に塗布し、ナリジキス酸耐性菌株を確立した。このナリジキス酸耐性菌株を用いて欠損株を作製した。欠損株の作製は、既に確立されている手法を用いて行った[Molecular Microb.(1999)第33巻、p1162−1175)。すなわち、各遺伝子に終止コドンが挿入された遺伝子断片を含む組換えプラスミドで大腸菌Sm10λpirを形質転換し、この形質転換体をLB寒天培地に綿棒で塗布した。さらに塗布された菌体上に、ナリジキス酸耐性のSalmonella typhimuriumを塗布した。二つの菌体が塗布されたLB寒天培地を37℃で6時間培養した。
これら二菌体の混合物をナリジキス酸(30μg/ml)とアンピシリン(50μg/ml)を含むLB寒天培地に塗布して、37℃で一夜静置培養することにより、組換えプラスミドが変異を起こす菌体の染色体上に挿入されたものを選択した。出現した菌のコロニーはさらにナリジキス酸(30μg/ml)とアンピシリン(50μg/ml)を含むLB寒天培地に塗布し、ナリジキス酸とアンピシリンの両者に対して耐性であることを確認した。確認した菌体コロニーをナリジキス酸(30μg/ml)含有LB液体培地に植菌して、37℃で3.5時間振とう培養した。振とう培養後、菌体をナリジキス酸(30μg/ml)含有のシュクロース寒天培地に塗布する。得られたコロニーから染色体DNAを調製し、サルモネラinvA欠損株を作製した。
サルモネラinvA欠損株確認
欠損株より染色体DNAを調製し、その0.5μgを100μlの25mM TAPS緩衝液(pH9.3、25℃)、50mM KCl、2mM MgCl2、1mM 2−メルカプトエタノール、0.2mM dNTP、0.5μMプライマーセット(第17図参照)、2.5ユニットTakara EX Taq(宝酒造社製、日本国)の溶液に加えた。この混合液をMastercycler gradient(エッペンドルフ社製、独国)を用いてPCR法を行った。PCR法の条件は、94℃で5分間加熱後、94℃で1分間、58℃で1分間、72℃で2分間のインキュベーションを30回繰り返した。30回のサイクル後、さらに72℃で5分間インキュベーションした。PCR法によって増幅された遺伝子断片をエタノール沈殿法によって集めた後、50μlの50mM NaCl、10mM Tris−HCl(pH7.9、25℃)、10mM MgCl2、および1mMジチオスレイトールを含む溶液に加え、これに制限酵素XbaI 5ユニットを加え、37℃で2時間反応させ、アガロース電気泳動を行った。PCRで増幅されたDNA断片が、終止コドンの直下流に挿入されたXbaIにて消化され、断片が二つに分断されるか否で変異株を判定した。
参考例4
緑膿菌
Psuedomaonas aeruginosa PAO1:[ATCC15692;(American Type Culture Collection,10801 University Boulevard,Manassas,VA20110−2209,USA)より入手可能]
参考例5
ボルデテラ属
Bordetella bronchiseptica S798(野性株):[ATCC780;(American Type Culture Collection,10801 University Boulevard,Manassas,VA20110−2209,U.S.A.)より入手可能]
参考例5−1
ボルデテラbscN欠損株
Bordetella bronchiseptica S798 BscN欠損株:[日本国東京都港区白金5丁目9番1号、社団法人北里研究所、阿部章夫より入手可能]
ボルデテラbscN欠損株の取得に用いられる組換えプラスミドの作製
第22図はbscN欠損株の作製に使用されるプラスミドの構築の概略である、第23図はその組換えプラスミドの構築に際して用いられる遺伝子を増幅するためのプライマーセット、第24図はその組換えプラスミドの構築に際して用いられるリバースPCR法によって終止コドンとBglII部位を挿入するためのプライマーセットである。
Bordetella bronchiseptica染色体DNA0.5μgを100μlの25mM TAPS緩衝液(pH9.3、25℃)、50mM KCl、2mM MgCl2、1mM2−メルカプトエタノール、0.2mM dNTP、0.5μMプライマーセット(第22図参照)、2.5ユニットTakara EX Taq(宝酒造社製、日本国)の溶液に加えた。この混合液をMastercycler gradient(エッペンドルフ社製、独国)を用いてPCR法を行った。PCR法の条件は、94℃で5分間加熱後、94℃で1分間、58℃で1分間、72℃で2分間のインキュベーションを30回繰り返した。30回の増幅後、さらに72℃で5分間インキュベーションした。PCR法によって増幅された1.3kbpのbscN遺伝子断片をエタノール沈殿法によって集めた後、50μlの50mM酢酸カリウム、10mM Tris−acetate(pH7.9、25℃)、10mM酢酸マグネシウム、1mMジチオスレイトールを含む溶液に加え、これに制限酵素SacIとSmaIをそれぞれ5ユニットを加え、37℃で2時間反応させた。
制限酵素処理後、DNA断片をアガロース電気泳動で精製した。精製されたDNA断片の0.1μgと制限酵素SacIとSmaIで切断したpBluescript IISK−(ストラタジーン社製、米国)0.2μgを、20μlの50mM Tris−HCl(pH7.6)、10mM MgCl2、1mM ATP、5mMジチオスレイトール、5%(w/v)ポリエチレングリコール8000、1ユニットのT4DNAリガーゼの溶液に加え、16℃で16時間反応させた。このリガーゼ溶液で大腸菌を形質変換させ、遺伝子断片が組み込まれた組換えプラスミドを得た。
得られた組換えプラスミドはリバースPCR法にて遺伝子の中心部分に終止コドンを挿入した。組換えプラスミド0.05μgを100μlの25mM TAPS緩衝液(pH9.3、25℃)、50mM KCl、2mM MgCl2、1mM 2−メルカプトエタノール、0.2mM dNTP、0.5μMプライマーセット(第24図参照)、2.5ユニットTakara EX Taq(宝酒造社製、日本国)の溶液に加えた。この混合液をMastercycler gradient(エッペンドルフ社製、独国)を用いてPCR法を行った。PCR法の条件は、94℃で5分間加熱後、94℃で1分間、58℃で1分間、72℃で5分間のインキュベーションを30回繰り返した。30回のサイクル後、さらに72℃で5分間インキュベーションした。PCR法によって増幅された遺伝子断片をエタノール沈殿法によって集めた。
これを50μlの100mM NaCl、10mM Tris−HCl(pH7.9、25℃)、10mM MgCl2、1mMジチオスレイトールを含む溶液に加え、これに制限酵素BglII 5ユニットを加え、37℃で2時間反応させ、アガロース電気泳動にて精製した。これを20μlの50mM Tris−HCl(pH7.6)、10mM MgCl2、1mM ATP、5mMジチオスレイトール、5%(w/v)ポリエチレングリコール8000、1ユニットのT4 DNAリガーゼの溶液に加え、16℃で16時間反応させた。このリガーゼ溶液にて大腸菌を形質転換させ、遺伝子断片の翻訳領域に終止コドンが挿入された組換えプラスミドを得た。
終止コドンを含む遺伝子断片が組み込まれた組換えプラスミド1μgを50μlの50mM酢酸カリウム、10mM Tris−acetate(pH7.9、25℃)、10mM酢酸マグネシウム、1mMジチオスレイトールを含む溶液に加え、これに制限酵素SacIとSmaIをそれぞれ5ユニットを加え、37℃で2時間反応させた。制限酵素処理後、DNA断片をアガロース電気泳動で精製した。精製されたDNA断片の0.1μlと制限酵素SmaIとSacIで切断したpCVD442[Infect.Immun.(1991)第59巻、p4310−4317]0.2μgを、20μlの50mM Tris−HCl(pH7.6)、10mM MgCl2、1mM ATP、5mM ジチオスレイトール、5%(w/v)ポリエチレングリコール8000、1ユニットのT4 DNAリガーゼの溶液に加え、16℃で16時間反応させた。このリガーゼ溶液にて大腸菌Sm10λpir(Bio/Technology、(1983)第1巻、p784−791)を形質転換させ、遺伝子断片が組み込まれた組換えプラスミドを得た。
ボルデテラbscN欠損株の作製
欠損株の作製は参考例1−1と同様の手法を用いて行った。Bordetella bronchisepticaを20mlのLB培地に植菌し、37℃で一夜振とう培養を行った。一夜培養液を遠心して菌体を集め、それを1mlのLB培地に懸濁し、懸濁液を0.1mlずつナリジキス酸(30μg/ml)含有LB寒天培地に植菌し、37℃で一夜培養した。得られたコロニーをさらにナリジキス酸(30μg/ml)含有LB寒天培地に塗布し、ナリジキス酸耐性菌株を確立した。このナリジキス酸耐性菌株を用いて欠損株を作製した。欠損株の作製は、既に確立されている手法を用いて行った[Molecular Microb.(1999)第33巻、p1162−1175)。すなわち、各遺伝子に終止コドンが挿入された遺伝子断片を含む組換えプラスミドで大腸菌Sm10λpirを形質転換し、この形質転換体をLB寒天培地に綿棒で塗布した。さらに塗布された菌体上に、ナリジキス酸耐性のBordetella bronchisepticaを塗布した。二つの菌体が塗布されたLB寒天培地を37℃で6時間培養した。
これら二菌体の混合物をナリジキス酸(30μg/ml)とアンピシリン(50μg/ml)を含むLB寒天培地に塗布して、37℃で一夜静置培養することにより、組換えプラスミドが変異を起こす菌体の染色体上に挿入されたものを選択した。出現した菌のコロニーはさらにナリジキス酸(30μg/ml)とアンピシリン(50μg/ml)を含むLB寒天培地に塗布し、ナリジキス酸とアンピシリンの両者に対して耐性であることを確認した。確認した菌体コロニーをナリジキス酸(30μg/ml)含有LB液体培地に植菌して、37℃で3.5時間振とう培養した。振とう培養後、菌体をナリジキス酸(30μg/ml)含有のシュクロース寒天培地に塗布する。得られたコロニーから染色体DNAを調製し、ボルデテラbscN欠損株を作製した。
ボルデテラbscN欠損株の確認
欠損株より染色体DNAを調製し、その0.5μgを100μlの25mM TAPS緩衝液(pH9.3、25℃)、50mM KCl、2mM MgCl2、1mM 2−メルカプトエタノール、0.2mM dNTP、0.5μM プライマーセット(第23図参照)、2.5ユニットTakara EX Taq(宝酒造社製、日本国)の溶液に加えた。この混合液をMastercycler gradient(エッペンドルフ社製、独国)を用いてPCR法を行った。PCR法の条件は、94℃で5分間加熱後、94℃で1分間、58℃で1分間、72℃で2分間のインキュベーションを30回繰り返した。30回のサイクル後、さらに72℃で5分間インキュベーションした。PCR法によって増幅された遺伝子断片をエタノール沈殿法によって集めた後、50μlの100mM NaCl、10mM Tris−HCl(pH7.9、25℃)、10mM MgCl2、1mMジチオスレイトールを含む溶液に加え、これに制限酵素BglII 5ユニットを加え、37℃で2時間反応させ、アガロース電気泳動を行った。PCRで増幅されたDNA断片が、終止コドンの直下流に挿入されたBglIIにて消化され、断片が二つに分断されるか否で変異株を判定した。
参考例6
シュクロース寒天培地
上記の組成のものを121℃で15分間、高圧蒸気滅菌をかける。
参考例7
M9培地
上記組成のものを121℃で15分間、高圧蒸気滅菌をかけた後、以下の組成のものを無菌的に加える。
参考例8
LB培地
水酸化ナトリウムにてpHを7.2に調整した後、蒸留水にて全量1000mlにする。121℃で15分間、高圧蒸気滅菌をかける。
参考例9
LB寒天培地
上記組成のものを121℃で15分間、高圧蒸気滅菌をかける。
参考例10
シュタイナー・ショルト培地
上記組成のものを塩酸にてpHを7.4に調整した後、蒸留水にて全量1000mlにする。121℃で15分間、蒸気滅菌をかけた後、以下の組成に調整したものを1000mlにつき10mlを無菌的に加える。
蒸留水にて全量1000mlにした後、ろ過滅菌する。
実施例1−(1)
試験菌液の培養方法
菌株としてEPEC cesT欠損株をLB培地に植菌し、37℃で一夜(約16時間)培養する。得られた菌の集落を一白金耳採取し、3mlのLB培地に植菌後、37℃で一夜静置培養した。菌の一夜培養液0.5mlを50mlのM9培地に植菌して、さらに37℃で4時間、静置培養した。培養後、菌の培養液を遠心分離機(ベックマンGS−6KR、ベックマン社製、米国)にて3500rpm、15分間の遠心で集菌して菌体沈渣を得た。この菌体沈渣を新鮮なM9培地の5mlに懸濁し、これを試験菌液とした。
実施例1−(2)
試験菌液の培養方法
菌株としてEPEC株を用いてLB寒天培地に植菌し、37℃で一夜(約16時間)培養する。得られた菌の集落を一白金耳採取し、3mlのLB培地に植菌後、37℃で一夜静置培養した。菌の一夜培養液0.5mlを50mlのM9培地に植菌して、さらに37℃で4時間、静置培養した。培養後、菌の培養液を遠心分離機(ベックマンGS−6KR、ベックマン社製、米国)にて3500rpm、15分間の遠心で集菌して菌体沈渣を得た。この菌体沈渣を新鮮なM9培地の5mlに懸濁し、これを試験菌液とした。
実施例2
赤血球懸濁液の作製
ウサギ保存血(日本生物材料センターより入手可能)8mlを50mlの遠心管に移し、40mlのPBS(0.8% NaCl、0.02% KCl、0.115% Na2HPO4、0.02% KH2PO4)を加えて、静かに混和した。混和後、9℃で遠心分離機(ベックマンGS−6KR、ベックマン社製、米国)にて2500rpm、5分間の遠心を行い、上清を捨て赤血球沈渣を得た。この赤血球沈渣をさらに40mlのPBS(0.8% NaCl、0.02% KCl、0.115% Na2HPO4、0.02% KH2PO4)で洗浄後、同様な操作にて遠心し、赤血球沈渣を得た。この操作をもう一度行った。遠心によって得られた赤血球沈渣の湿重量を測定し、これと同じ重量のM9培地を加えて赤血球の沈渣を懸濁し、赤血球懸濁液を得た。
実施例3
評価する試料の準備
96穴のマイクロプレート(3799、コースター社製、米国)に予め10μlのM9培地を入れておき、精製水あるいはメタノール溶液に溶かした評価試料5μlをこれに加え、混和した。この評価試料の乾燥を防ぐために、マイクロプレートは赤血球懸濁液と試験菌液[実施例1−(1)あるいは(2)]の混液を加えるまで、水をしみ込ませたキムワイプ(クレシア社製、日本国)を敷き詰めた密閉型の箱に入れておいた。
実施例4
マイクロプレートを用いた評価方法
前記の実施例2で調製しておいた赤血球懸濁液に等量の試験菌液[実施例1−(1)あるいは(2)]を加えた後、この混合液を100μlずつ実施例3で準備した評価試料を入れておいたマイクロプレートの各穴に加えた。赤血球懸濁液50μlに等量のM9培地を加えて、これを陰性の対照とした。また、赤血球懸濁液50μlに等量の試験菌液[実施例1−(1)あるいは(2)]を加えて、これを陽性の対照とした。陰性と陽性の対照を評価試料の含まないマイクロプレートの穴に入れ対照群とした。このマイクロプレートを9℃で、遠心分離機(ベックマンGS−6KR、ベックマン社製、米国)にて1500rpm、10分間の遠心を行うことにより、試験菌液と赤血球懸濁液の接触を高めた。
遠心後のマイクロプレートを37℃で約90分間反応後、このマイクロプレートの各穴に150μlのPBS(0.8% NaCl、0.02% KCl、0.115% Na2HPO4、0.02% KH2PO4)を加え、穏やかに懸濁後、9℃で、遠心分離機(ベックマンGS−6KR、ベックマン社製、米国)にて1500rpm、10分間の遠心を行った。遠心によって得られた上清100μlを新たなマイクロプレート(3799、コースター社製、米国)に移して、上清中に現れたヘモグロビンの赤色をマイクロプレートリーダー(マルチスキャンプラスMkII、大日本製薬社製、日本国)を用いて、550nmの波長で吸光度を測定した。
評価試料が、どの程度タイプIII分泌機構を阻害したのかについての阻害率は、次式にて求めた。
阻害率(%)=100−[(A−B)/(C−B)×100]
ただし、式中、
A:評価試料を含んだものの波長
B:陰性対照の波長550nm値
C:陽性対照の波長550nm値
実施例5
本検出法がタイプIII分泌機構に特異的であることの証明
現時点においてはタイプIII分泌機構の阻害剤は存在せず、従ってこの検出法をタイプIII分泌機構の阻害剤にて検証することはできない。しかしながら、本検出法がタイプIII分泌機構に特異的であるか否かについては、タイプIII分泌機構の欠損した菌株を試験菌株として使用することによって証明が可能である。試験菌株にはEPECのタイプIII分泌機構に変異を持つEPEC sepB欠損株を用いた。このEPEC sepB欠損株はタイプIII分泌機構に変異を持つために、タイプIII分泌蛋白質を菌体外に放出することができない。
一方、タイプIII分泌蛋白質の変異株として、EPEC espA欠損株、EPEC espB欠損株およびEPEC espD欠損株を用いた。これら4つの欠損株、sepB欠損株、espA欠損株、espB欠損株、及びespD欠損株は溶血活性を持たないことが既に報告されている(Infect.Immun.(1999)第67巻、p5538−5540)。EPEC野性株とEPEC sepB欠損株、EPEC espA欠損株、EPEC espB欠損株、及びEPEC espD欠損株を試験菌株として、実施例1から4と同様な操作にて溶血活性を惹起させ、550nmの波長で吸光度を測定した。EPEC野性株の溶血活性を100%として、各欠損株の溶血活性の百分率を前述の阻害率の式によって算出した。その結果は第25図に示した。
第25図の結果から明らかなように、タイプIII分泌機構の欠損株であるEPEC sepB欠損株は、EPEC野性株と比較して溶血活性が著しく減少した。更にタイプIII分泌蛋白質の変異株であるEPEC espA欠損株、EPEC espB欠損株およびEPEC espD欠損株においても、EPEC野性株と比較して溶血活性が極度に低下した。一方、タイプIII分泌機構に関与していないTir特異的シャペロンのEPEC cesT欠損株では第25図から明らかなように溶血活性になんら影響を与えなかった。
以上のことから、本発明の検出法の原理となる溶血活性は、タイプIII分泌機構およびそれから分泌されるタイプIII分泌蛋白質に完全に依存していることを示すものである。
尚、本発明において、前記の実施例1−(1)の培養方法における溶血活性の試験菌株として、EPEC cesT欠損株を使用した。このEPEC cesT欠損株はTirの特異的シャペロンであり、この欠損によりTirが不安定になりタイプIII分泌機構を介したTirの宿主細胞への移行に支障をきたすことが報告されている(Molecular Microb.(1999)第33巻、p1162−1175)。更に、感染実験の検討からTirは病原因子として働くことが明らかにされている(Infect.Immun.(2000)第68巻、p2171−2182)。それ故、Tirの宿主細胞内移行に障害を持つEPEC cesT欠損株は、EPEC野性株に比べて病原性が低下していると考えられるため、本検出法に使用される試験菌株には、野性株と比較して病原性が減少したEPEC cesT欠損株の使用が好ましいと考えられる。
実施例6
本検出法がEPECだけではなく、タイプIII分泌機構を持つ他のバクテリアを試験菌として用いても有効であることの証明
前記の実施例5において、本検出法はタイプIII分泌機構とタイプIII分泌蛋白質に依存することを示した。しかしながら、実施例5ではEPEC株以外のタイプIII分泌機構を持つバクテリアを試験菌として用いても有効であることの証明にはならない。そこで、タイプIII分泌機構を保持する赤痢菌(Shigella flexneri)、サルモネラ菌(Salmonella typhimurium)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、並びにボルデテラ ブロンヒセプチカ(Bordetella bronchiseptica)を試験菌として、溶血活性を持つのか否かを確認した。但し、Bordetella bronchisepticaに関しては、LB培地では成育が遅いのでシュタイナー・ショルト培地で一夜培養した菌液を、直接溶血活性の試験に使用した。
溶血活性の試験は、実施例1から4と同様な操作にて溶血活性を惹起させ、550nmの波長で吸光度を測定した。その測定結果を第26図に示した。第26図から明らかなように、EPEC野性株の溶血活性を100%として、各菌株の溶血活性を求めると、EPEC野性株に比較して赤痢菌、サルモネラ菌、緑膿菌、及びBoretella bronchisepticaにおいても、それぞれ溶血活性を持つことが明らかにされた。このことから、本検出法には、EPEC野性株だけではなく、他のタイプIII分泌機構を保持するバクテリアも試験菌として使用できることを示すものである。
実施例7
異なったバクテリアを使用して得られた溶血活性がタイプIII分泌機構に依存しているか否かの証明
前記の実施例6において、試験菌としてEPEC野性株だけではなく、他のタイプIII分泌機構を保持するバクテリアも使用できることを証明した。しかしながら、上記実施例6で異なったバクテリアを使用して得られた溶血活性がタイプIII分泌機構に依存しているか否かに関しては不明である。そこで、赤痢菌、サルモネラ菌及びボルデテラ菌の各菌株におけるタイプIII分泌機構ならびにそれの分泌によるタイプIII分泌蛋白質の欠損株を用いて、前記実施例6と同様の溶血試験によって溶血活性を求め、各菌株の親株と比較した。その結果を第27図に示した。
第27図に示されるように、赤痢菌、サルモネラ菌およびボルデテラ菌(Bordetella bronchiseptica)の親株を100%としたとき、各菌株におけるタイプIII分泌機構とタイプIII分泌機構の欠損株の溶血活性は極度に阻害された。すなわち、赤痢菌においてタイプIII分泌蛋白質の欠損株である赤痢菌ipaC欠損株では、溶血活性が著しく減少した。また、サルモネラ菌のタイプIII分泌機構の欠損株である、サルモネラinvA欠損株およびボルデテラ菌のタイプIII分泌機構の欠損株である、ボルデテラbscN欠損株においても、前記赤痢菌ipaC欠損株と同様に溶血活性が著しく減少した。これらのことから、サルモネラ菌、赤痢菌、並びにBordetella bronchisepticaにおいても、検出の根幹となる溶血活性は、タイプIII分泌機構およびそのタイプIII分泌蛋白質に依存していることを示すものである。これらの結果より本検出法は、EPECのタイプIII分泌機構に限定されるものではなく、他のタイプIII分泌機構を保持する細菌を試験菌として使用可能であることを示すものである。
実施例8
本検出法の評価
前記の実施例7から明らかなように、本検出法はタイプIII分泌機構およびそれから分泌するタイプIII分泌蛋白質に依存していることを示すものであり、かつ、試験菌としてEPEC株に限定されないことを示した。前述したようにタイプIII分泌機構を阻害する物質は、これまで効率的な検出法が確立されていないことから開発がなされていない。このような理由から、現在使用されている抗生物質を本検出法に適用して、その評価を行った。
使用した抗生物質はテトラサイクリンである。テトラサイクリンは細菌のリボソームの30Sサブユニットに結合することによって蛋白質合成を阻害する。このような蛋白質合成阻害により、タイプIII分泌機構を構成する蛋白質も合成されないことから、テトラサイクリンはタイプIII分泌機構を介した溶血活性を阻害するものと推定された。
そこで、メタノール溶液にテトラサイクリンを125μg/mlとなるように調製して、これを評価試料として実施例1から5までの一連の検出法を実施した。すなわち、試験菌としてEPEC cesT欠損株を用いて、バクテリアと赤血球懸濁液の混合液を作製した。この混合液100μlに対してメタノール溶液に溶かしたテトラサイクリン溶液を5μl加えて、赤血球とバクテリアの接触を高めるために遠心した。遠心後、マイクロプレートを37℃で約90分間反応後、実施例4に従って阻害率を求めた。
試験菌にテトラサイクリンを加えていない無添加の溶血活性を100%とし、テトラサイクリンを添加したものの溶血活性の試験結果を第28図に示した。第28図から明らかなように、テトラサイクリンは顕著に溶血活性を阻害した。更に、実施例4における阻害率の算出法によりテトラサイクリンの阻害率を求めたところ下記の結果が得られた。
100−[(0.13−0.07)/(1.30−0.07)×100]
=95.1%。
尚、テトラサイクリンの反応溶液中の終濃度は、6μg/mlという低濃度にも関わらず、溶血活性をほぼ100%まで阻害する結果が得られた。このように細菌の蛋白質合成阻害剤の添加で、タイプIII分泌機構の構成蛋白質の合成が阻害されると、溶血活性が著しく阻害されたことが確認された。
以上の結果より、本検出法にてタイプIII分泌機構ならびにタイプIII分泌機構によって分泌される蛋白質の機能を阻害する物質の評価検定が可能であることを示すものである。しかしながら、前記したように、テトラサイクリンは正常な腸内細菌叢まで殺菌してしまうという欠点があることはいうまでもまい。
産業上の利用可能性
本発明は、バクテリアのタイプIII分泌機構ならびにそれから分泌されるタイプIII分泌蛋白質の機能を阻害する物質を、動物の感染実験を行わずに、赤血球の溶血活性を指標として数値化し、短時間に多くの試料の処理が可能であることから、医薬品の開発等に有利な方法である。
【図面の簡単な説明】
第1図はEPEC cesT欠損株の作製に用いられる組換えプラスミドの構築図である。
第2図は第1図の組換えプラスミドの構築に際して用いられる遺伝子を増幅するためのプライマーセットである。
第3図は第1図の組換えプラスミドの構築に際して用いられるリバースPCR法によって終止コドンとBamHI部位を挿入するためのプライマーセットである。
第4図はEPEC sepB欠損株の作製に用いられる組換えプラスミドの構築図である。
第5図は第4図の組換えプラスミドの構築に際して用いられる遺伝子を増幅するためのプライマーセットである。
第6図は第4図の組換えプラスミドの構築に際して用いられるリバースPCR法によって終止コドンとBglII部位を挿入するためのプライマーセットである。
第7図はEPEC espA欠損株の作製に用いられる組換えプラスミドの構築図である。
第8図は第7図の組換えプラスミドの構築に際して用いられる遺伝子を増幅するためのプライマーセットである。
第9図は第7図の組換えプラスミドの構築に際して用いられるリバースPCR法によって終止コドンとBglII部位を挿入するためのプライマーセットである。
第10図はEPEC espB欠損株の作製に用いられる組換えプラスミドの構築図である。
第11図は第10図の組換えプラスミドの構築に際して用いられる遺伝子を増幅するためのプライマーセットである。
第12図は第10図の組換えプラスミドの構築に際して用いられるリバースPCR法によって終止コドンとBglII部位を挿入するためのプライマーセットである。
第13図はEPEC espD欠損株の作製に用いられる組換えプラスミドの構築図である。
第14図は第13図の組換えプラスミドの構築に際して用いられる遺伝子を増幅するためのプライマーセットである。
第15図は第13図の組換えプラスミドの構築に際して用いられるリバースPCR法によって終止コドンとBamHI部位を挿入するためのプライマーセットである。
第16図は赤痢菌ipaC欠損株の作製に用いられる組換えプラスミドの構築図である。
第17図は第16図の組換えプラスミドの構築に際して用いられる遺伝子を増幅するためのプライマーセットである。
第18図は第16図の組換えプラスミドの構築に際して用いられるリバースPCR法によって終止コドンとBamHI部位を挿入するためのプライマーセットである。
第19図はサルモネラinvA欠損株の作製に用いられる組換えプラスミドの構築図である。
第20図は第19図の組換えプラスミドの構築に際して用いられる遺伝子を増幅するためのプライマーセットである。
第21図は第19図の組換えプラスミドの構築に際して用いられるリバースPCR法によって終止コドンとXbaI部位を挿入するためのプライマーセットである。
第22図ボルデテラbscN欠損株の作製に用いられる組換えプラスミドの構築図である。
第23図は第22図の組換えプラスミドの構築に際して用いられる遺伝子を増幅するためのプライマーセットである。
第24図は第22図の組換えプラスミドの構築に際して用いられるリバースPCR法によって終止コドンとBglII部位を挿入するためのプライマーセットである。
第25図はEPEC野性株とEPEC cesT欠損株、EPEC sepB欠損株、EPEC espA欠損株、EPEC espB欠損株、EPECespD欠損株における溶血活性を百分率にて比較したものである。
第26図はEPEC野性株とタイプIII分泌機構を有する他の菌属の赤痢菌、サルモネラ菌、緑膿菌ならびにボルデテラ菌における溶血活性をEPEC野性株の溶血活性を100%として比較したものである。
第27図はタイプIII分泌機構を保持する赤痢菌と赤痢菌ipaC欠損株、サルモネラ菌とサルモネラinvA欠損株、ボルデテラ菌とボルデテラbscN欠損株における溶血活性の比較である。
第28図は試験菌に抗生物質を加えない無添加の溶血活性と抗生物質添加における溶血活性の阻害をあらわした比較である。
本発明は、例えばサルモネラ属、エルシニア属、シュードモナス属、赤痢菌、病原血清型大腸菌、腸管出血性大腸菌、またはボルデテラ属、に属するバクテリアに高度に保持されるタイプIII分泌機構およびそれから分泌される分泌蛋白質の機能を阻害する物質を短時間でかつ大量に検出する検出法に関する。
背景技術及び従来の技術
バクテリアの病原因子を菌体外に放出する機能を持つタイプIII分泌機構は、例えばサルモネラ(Salmonella)属、エルシニア(Yersinia)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、赤痢菌(Shigella)、病原血清型大腸菌(Enteropathogenic E.coli、以下EPECと略称することもある)、腸管出血性大腸菌(Enterohaemorrhagic E.coli)、そしてボルデテラ(Bordetella)属に高度に保存されていることが既に報告されている(Microbiology and molecular biology reviews,June,1998,p381)。
前述のタイプIII分泌機構を保持するバクテリアは、この分泌機構を通して病原因子を菌体外に放出し、放出された病原因子の一部は宿主細胞へと移行することが知られている(Microbiology and molecular biology reviews,June 1998,p389〜)。そして、宿主細胞に移行した病原因子は細菌の病原性に大きく関与していることも既に報告されている(Microbiology and molecular biology reviews,June 1998,p382〜)。
一方、タイプIII分泌機構によって分泌される蛋白質(以下タイプIII分泌蛋白質と略称することもある)を欠損させたEPEC株においては、病原性を消失することがウサギの感染実験(J.Exp.Med.Volume 188,Number 10,November 16,1998 p1907−1916)、及びヒトをボランティアとした感染実験(Infection and immunity,June 2000,p3689−3695)により明らかにされている。このような事実から、タイプIII分泌機構ならびにその分泌蛋白質の機能を阻害する物質は、新たな抗感染治療薬、予防薬としてその効果が期待されると考えられる。
しかしながら、従来、バクテリアのタイプIII分泌機構を阻害する物質の検出法に関しては未だ確立されておらず、抗菌性を主体とした物質の検出法が行われているのが現状である。抗菌活性を持つ物質、すなわち、抗生物質の検出法は、主にバイオアッセイにより行われていた。バイオアッセイには拡散法(微生物薬品化学改訂第3版、南江堂、上野芳夫、大村智編)等が挙げられる。拡散法は試験菌を含む寒天平板上におかれた濾紙に抗生物質を含ませると抗生物質が寒天中を拡散し、試験菌の発育を阻止した部分が透明帯として観察される。この阻止帯の直径と抗生物質の濃度から抗生物質の力価を算出する検出法である。
このような拡散法は、操作が簡単であり、多数の試料を短時間に処理することが可能であることから、抗生物質の検出に広く用いられていた。しかしながら、この方法によって得られる物質は、標的細菌だけではなく、正常な腸内細菌叢までも殺菌してしまうことから、菌交代症や多剤耐性菌の出現など、さまざまな社会問題を引き起こしているのが現状である。従って、このような検出法をバクテリアのタイプIII分泌機構を阻害する物質の検出に適用するには問題があった。このような事実から、タイプIII分泌機構およびそれから分泌されるタイプIII分泌蛋白質を特異的に阻害する物質の検出法は、未だ確立されていなかったため、現状ではタイプIII分泌機構およびそれから分泌されるタイプIII分泌蛋白質の機能を阻害する物質の検出は、動物の感染実験に頼らざる得ず、従って操作が複雑で大量の試料を短時間で評価することは極めて困難となる問題があった。
本発明者らはタイプIII分泌機構ならびにそれから分泌されるタイプIII分泌蛋白質の機能を特異的に阻害する物質を大量にしかも短時間で検出する簡単な手法を確立することは、タイプIII分泌機構を標的とした医薬品の開発ならびに評価に極めて重要であることに鑑みて研究を行った。その結果、本発明者らは動物の感染実験に依存することのない新規な検出法を見出した。
本発明の目的は、動物の感染実験に依存することなく、タイプIII分泌機構およびそれから分泌されるタイプIII分泌蛋白質の機能を特異的に阻害する物質を大量にしかも短時間で簡単に検出することができる、バクテリアのタイプIII分泌機構およびそれから分泌されるタイプIII分泌蛋白質の機能を阻害する物質の検出法である。
本発明の更なる目的は、バクテリアのタイプIII分泌機構ならびにそれから分泌されるタイプIII分泌蛋白質の機能を阻害する物質を、赤血球の溶血活性を指標として数値化し、短時間に多くの試料の処理を可能にする、バクテリアのタイプIII分泌機構およびそれから分泌されるタイプIII分泌蛋白質の機能を阻害する物質の検出法である。
発明の開示
タイプIII分泌機構を保持するバクテリアと赤血球を混合させると、タイプIII分泌機構に依存した溶血活性を示す。この溶血活性はタイプIII分泌蛋白質が赤血球に作用して惹起することが明らかにされている[Infect.Immun.(1999)第67巻、p5538−5540]。本発明は、タイプIII分泌機構を保持するバクテリアが起こす溶血活性に着目してなされたものであり、これにタイプIII分泌機構を阻害する物質を加えると溶血活性が阻害されることに特徴づけられている。
本発明は赤血球の溶血活性を指標として、試験管内にて簡便にタイプIII分泌機構およびそれから分泌されるタイプIII分泌蛋白質の機能を阻害する物質を検出する方法である。すなわち、タイプIII分泌機構を有するバクテリアと赤血球懸濁液を混合し、これにタイプIII分泌機構阻害物質を加えることによって生ずる溶血活性の変化を検出することを特徴とする、バクテリアのタイプIII分泌機構を阻害する物質の検出法である。また本発明はタイプIII分泌機構を有するバクテリアと赤血球懸濁液を混合し、これにタイプIII分泌機構によって分泌される蛋白質の機能を阻害する物質を加えることによって生ずる溶血活性の変化を検出することを特徴とする、タイプIII分泌機構の分泌蛋白質機能を阻害する物質の検出法である。更に本発明による溶血活性は比色定量によって検出される検出法である。
本発明に用いられる溶血活性を誘導するための試験菌としてはタイプIII分泌機構を保持する全てのバクテリアが含まれる。バクテリアの種類としては、例えばサルモネラ属、エルシニア属、シュードモナス属、赤痢菌、病原血清型大腸菌(または腸管病原性大腸菌)、腸管出血性大腸菌、及びボルデテラ属に属する細菌が挙げられる。また、これらのバクテリアに加えて、タイプIII分泌機構とそれによって分泌される蛋白質をコードする35.4kbpのLeeと呼ばれる遺伝子群を含む領域を他のバクテリアに人為的に組み込んだ組換えバクテリア[Molecular Micro.(1997)第27巻、p399−407]、あるいはこれに類似した組換えバクテリアも本発明に含まれる。
試験菌の成育には栄養に富む培地よりも、M9培地のような比較的栄養の少ない培地が適している。また、試験菌の培養条件は37℃が好ましく、培養は振盪培養よりも静置培養が適している。溶血活性の測定の原理は、赤血球膜が破壊されるとヘモグロビンが赤血球外へ放出されて反応溶液が赤色を呈することを利用し、この赤色を目視で判定する。この溶血活性に使用される赤血球はヒト由来のもののみに限定されるものではなく、例えばウサギ、ウマ、ヒツジなどの全ての種属の赤血球の利用が可能である。
発明を実施するための最良の形態
以下に説明する実施例は、本発明をより完全に理解させるものであり、本発明に何ら制限を加えるものではない。
本発明の実施例に使用した菌株の性状および培地の性状は以下の参考例に示す通りである。
参考例1
病原血清型大腸菌
Enteropathogenic Escherichia coli(EPEC)E2348/69(野性株):[(Cell(1997)第91巻、p511−520);ATCC12740;American Type Culture Collection,1080 University Boulevard,Manassas,VA,20110−2209,USA)より入手可能]
参考例1−1
EPEC cesT欠損株
EPEC cesT欠損株:[Tir特異的シャペロンの欠損株(Molecular Microb.(1999)第33巻、p1162−1175);日本国東京都港区白金5丁目9番1号、社団法人北里研究所、阿部章夫より入手可能]
欠損株の作製は既に確立されている手法[Molecular Micro.(1999)第33巻、p1162−1175]を用いて行った。第1図はEPEC cesT欠損株の作製に使用されるプラスミドの構築の概略であり、第2図はその組換えプラスミドの構築に際して用いられる遺伝子を増幅するためのプライマーセット、第3図はその組換えプラスミドの構築に際して用いられるリバースPCR法によって終止コドンとBamHI部位を挿入するためのプライマーセットである。
EPEC cesT欠損株の取得に用いられる組換えプラスミドの作製
EPEC E2348/69染色体DNA0.5μgを100μlの25mM TAPS緩衝液(pH9.3、25℃)、50mM KCl、2mM MgCl2、1mM 2−メルカプトエタノール、0.2mM dNTP、0.5μM プライマーセット(第2図参照)、2.5ユニットTakara EX Taq(宝酒造社製、日本国)の溶液に加えた。この混合液をMastercycler gradient(エッペンドルフ社製、独国)を用いてPCR法を行った。PCR法の条件は、94℃で5分間加熱後、94℃で1分間、58℃で1分間、72℃で2分間のインキュベーションを30回繰り返した。30回の増幅後、さらに72℃で5分間インキュベーションした。PCR法によって増幅された1.0kbpのcesT遺伝子断片をエタノール沈殿法によって集めた後、50μlの50mM NaCl、10mM Tris−HCl(pH7.9、25℃)、10mM MgCl2、1mMジチオスレイトールを含む溶液に加え、これに制限酵素SacI 5ユニットを加え、37℃で2時間反応させた。
反応後、5M NaClを1μlと制限酵素SalIを5ユニット加え、さらに37℃で2時間反応させた。制限酵素処理後、DNA断片をアガロース電気泳動で精製した。精製されたDNA断片の0.1μgと制限酵素SalIとSacIで切断したpBluescript IISK−(ストラタジーン社製、米国)0.2μgを、20μlの50mM Tris−HCl(pH7.6)、10mM MgCl2、1mM ATP、5mMジチオスレイトール、5%(w/v)ポリエチレングリコール8000、1ユニットのT4 DNAリガーゼの溶液に加え、16℃で16時間反応させた。このリガーゼ溶液で大腸菌を形質変換させ、遺伝子断片が組み込まれた組換えプラスミドを得た。
得られた組換えプラスミドはリバースPCR法[Molecular Micro.(1999)第33巻、p1162−1175]にてcesT遺伝子の中心部分に終止コドンを挿入した。組換えプラスミド0.05μgを100μlの25mM TAPS緩衝液(pH9.3、25℃)、50mM KCl、2mM MgCl2、1mM 2−メルカプトエタノール、0.2mM dNTP、0.5μMプライマーセット(第3図参照)、2.5ユニットTakara EX Taq(宝酒造社製、日本国)の溶液に加えた。この混合液をMastercycler gradient(エッペンドルフ社製、独国)を用いてPCR法を行った。PCR法の条件は、94℃で5分間加熱後、94℃で1分間、58℃で1分間、72℃で5分間のインキュベーションを30回繰り返した。30回のサイクル後、さらに72℃で5分間インキュベーションした。PCR法によって増幅された遺伝子断片をエタノール沈殿法によって集めた。
これを50μlの50mM NaCl、10mM Tris−HCl(pH7.9、25℃)、10mM MgCl2、1mMジチオスレイトールを含む溶液に加え、これに制限酵素BamHI 5ユニットを加え、37℃で2時間反応させ、アガロース電気泳動にて精製した。これを、20μlの50mM Tris−HCl(pH7.6)、10mM MgCl2、1mM ATP、5mM ジチオスレイトール、5%(w/v)ポリエチレングリコール8000、1ユニットのT4 DNAリガーゼの溶液に加え、16℃で16時間反応させた。このリガーゼ溶液にて大腸菌を形質転換させ、遺伝子断片の翻訳領域に終止コドンが挿入された組換えプラスミドを得た。
終止コドンを含む遺伝子断片が組み込まれた組換えプラスミド1μgを50μlの50mM NaCl、10mM Tris−HCl(pH7.9、25℃)、10mM MgCl2、1mMジチオスレイトールを含む溶液に加え、これに制限酵素SacI 5ユニットを加え、37℃で2時間反応させた。反応後、5M NaClを1μlと制限酵素SalIを5ユニット加え、さらに37℃で2時間反応させた。制限酵素処理後、各DNA断片をアガロース電気泳動で精製した。精製されたDNA断片の0.1μgと制限酵素SalIとSacIで切断したpCVD442[Infect.Immun.(1991)第59巻、P4310−4317]0.2μgを、20μlの50mM Tris−HCl(pH7.6)、10mM MgCl2、1mM ATP、5mMジチオスレイトール、5%(w/v)ポリエチレングリコール8000、1ユニットのT4DNAリガーゼの溶液に加え、16℃で16時間反応させた。このリガーゼ溶液にて大腸菌Sm10λpir(Bio/Technology、(1983)第1巻、p784−791)を形質転換させ、遺伝子断片が組み込まれた組換えプラスミドを得た。
EPEC cesT欠損株の作製
EPEC E2348/69を20mlのLB培地に植菌し、37℃で一夜振とう培養を行った。一夜培養液を遠心して菌体を集め、それを1mlのLB培地に懸濁し、懸濁液を0.1mlずつナリジキス酸(30μg/ml)含有LB寒天培地に植菌し、37℃で一夜培養した。得られたコロニーをさらにナリジキス酸(30μg/ml)含有LB寒天培地に塗布し、ナリジキス酸耐性菌株を確立した。このナリジキス酸耐性菌株を用いて欠損株を作製した。欠損株の作製は既に確立されている手法を用いて行った[Molecular Microb.(1999)第33巻、p1162−1175)。すなわち、遺伝子に終止コドンが挿入された遺伝子断片を含む組換えプラスミドで大腸菌Sm10λpirを形質転換し、この形質転換体をLB寒天培地に綿棒で塗布した。さらに塗布された菌体上に、ナリジキス酸耐性のEPEC E2348/69を塗布した。二つの菌体が塗布されたLB寒天培地を37℃で6時間培養した。
これら二菌体の混合物をナリジキス酸(30μg/ml)とアンピシリン(50μg/ml)を含むLB寒天培地に塗布して、37℃で一夜静置培養することにより、組換えプラスミドが変異を起こす菌体の染色体上に挿入されたものを選択した。出現した菌のコロニーはさらにナリジキス酸(30μg/ml)とアンピシリン(50μg/ml)を含むLB寒天培地に塗布し、ナリジキス酸とアンピシリンの両者に対して耐性であることを確認した。確認した菌体コロニーをナリジキス酸(30μg/ml)含有LB液体培地に植菌して、37℃で3.5時間振とう培養した。振とう培養後、菌体をナリジキス酸(30μg/ml)含有のシュクロース寒天培地に塗布する。得られたコロニーから染色体DNAを調製し、EPEC cesT欠損株の確認を行った。
EPEC cesT欠損株の確認
欠損株より染色体DNAを調製し、その0.5μgを100μlの25mM TAPS緩衝液(pH9.3、25℃)、50mM KCl、2mM MgCl2、1mM 2−メルカプトエタノール、0.2mM dNTP、0.5μMプライマーセット(第2図参照)、2.5ユニットTakara EX Taq(宝酒造社製、日本国)の溶液に加えた。この混合液をMastercycler gradient(エッペンドルフ社製、独国)を用いてPCR法を行った。PCR法の条件は、94℃で5分間加熱後、94℃で1分間、58℃で1分間、72℃で2分間のインキュベーションを30回繰り返した。30回のサイクル後、さらに72℃で5分間インキュベーションした。PCR法によって増幅された遺伝子断片をエタノール沈殿法によって集めた後、50μlの50mM NaCl、10mM Tris−HCl(pH7.9、25℃)、10mM MgCl2、1mMジチオスレイトールを含む溶液に加え、これに制限酵素BamHI 5ユニットを加え37℃で2時間反応させアガロース電気泳動を行った。PCR法で増幅されたDNA断片が、終止コドンの直下流に挿入された制限酵素BamHIにて消化され、断片が二つに分断されるか否で欠損株を判定した。
参考例1−2
EPEC sepB欠損株
EPEC sepB欠損株:[タイプIII分泌機構の欠損株(Proc.Natl.Acad.Sci.,USA(1995)第92巻、p7996−8000);米国、Center for Vaccine Development and Department of Microbiology and Immunology,University of Maryland School of Medicine,James B Kaperまたは日本国東京都港区白金5丁目9番1号、社団法人北里研究所、阿部章夫より入手可能]
EPEC sepB欠損株の取得に用いられる組換えプラスミドの作製
第4図はEPEC sepB欠損株の作製に使用されるプラスミドの構築の概略である、第5図はその組換えプラスミドの構築に際して用いられる遺伝子を増幅するためのプライマーセット、第6図はその組換えプラスミドの構築に際して用いられるリバースPCR法によって終止コドンとBglII部位を挿入するためのプライマーセットである。
EPEC E2348/69染色体DNA0.5μgを100μlの25mM TAPS緩衝液(pH9.3、25℃)、50mM KCl、2mM MgCl2、1mM 2−メルカプトエタノール、0.2mM dNTP、0.5μMプライマーセット(第5図参照)、2.5ユニットTakara EX Taq(宝酒造社製、日本国)の溶液に加えた。この混合液をMastercycler gradient(エッペンドルフ社製、独国)を用いてPCR法を行った。PCR法の条件は、94℃で5分間加熱後、94℃で1分間、58℃で1分間、72℃で2分間のインキュベーションを30回繰り返した。30回の増幅後、さらに72℃で5分間インキュベーションした。PCR法によって増幅された1.3kbpのsepB遺伝子断片をエタノール沈殿法によって集めた後、50μlの50mM NaCl、10mM Tris−HCl(pH7.9、25℃)、10mM MgCl2、1mMジチオスレイトールを含む溶液に加え、これに制限酵素SacI 5ユニットを加え、37℃で2時間反応させた。
反応後、5M NaClを1μlと制限酵素SalIを5ユニット加え、さらに37℃で2時間反応させた。制限酵素処理後、DNA断片をアガロース電気泳動で精製した。精製されたDNA断片の0.1μgと制限酵素SalIとSacIで切断したpBluescript IISK−(ストラタジーン社製、米国)0.2μgを、20μlの50mM Tris−HCl(pH7.6)、10mM MgCl2、1mM ATP、5mMジチオスレイトール、5%(w/v)ポリエチレングリコール8000、1ユニットのT4 DNAリガーゼの溶液に加え、16℃で16時間反応させた。このリガーゼ溶液で大腸菌を形質変換させ、遺伝子断片が組み込まれた組換えプラスミドを得た。
得られた組換えプラスミドはリバースPCR法にてsepB遺伝子の中心部分に終止コドンを挿入した。組換えプラスミド0.05μgを100μlの25mM TAPS緩衝液(pH9.3、25℃)、50mM KCl、2mM MgCl2、1mM 2−メルカプトエタノール、0.2mM dNTP、0.5μMプライマーセット(第6図参照)、2.5ユニットTakara EXTaq(宝酒造社製、日本国)の溶液に加えた。この混合液をMastercycler gradient(エッペンドルフ社製、独国)を用いてPCR法を行った。PCR法の条件は、94℃で5分間加熱後、94℃で1分間、58℃で1分間、72℃で5分間のインキュベーションを30回繰り返した。30回のサイクル後、さらに72℃で5分間インキュベーションした。PCR法によって増幅された遺伝子断片をエタノール沈殿法によって集めた。
これを50μlの100mM NaCl、10mM Tris−HCl(pH7.9、25℃)、10mM MgCl2、1mMジチオスレイトールを含む溶液に加え、これに制限酵素BglII 5ユニットを加え、37℃で2時間反応させ、アガロース電気泳動にて精製した。これを、20μlの50mM Tris−HCl(pH7.6)、10mM MgCl2、1mM ATP、5mMジチオスレイトール、5%(w/v)ポリエチレングリコール8000、1ユニットのT4 DNAリガーゼの溶液に加え、16℃で16時間反応させた。このリガーゼ溶液にて大腸菌を形質転換させ各遺伝子断片の翻訳領域に終止コドンが挿入された組換えプラスミドを得た。
終止コドンを含む遺伝子断片が組み込まれた組換えプラスミド1μgを50μlの50mM NaCl、10mM Tris−HCl(pH7.9、25℃)、10mM MgCl2、1mMジチオスレイトールを含む溶液に加え、これに制限酵素SacI 5ユニットを加え、37℃で2時間反応させた。反応後、5M NaClを1μlと制限酵素SalIを5ユニット加え、さらに37℃で2時間反応させた。制限酵素処理後、各DNA断片をアガロース電気泳動で精製した。精製されたDNA断片の0.1μgと制限酵素SalIとSacIで切断したpCVD442[Infect.Immun.(1991)第59巻、p4310−4317]0.2μgを、20μlの50mM Tris−HCl(pH7.6)、10mM MgCl2、1mM ATP、5mMジチオスレイトール、5%(w/v)ポリエチレングリコール8000、1ユニットのT4DNAリガーゼの溶液に加え、16℃で16時間反応させた。このリガーゼ溶液にて大腸菌Sm10λpir(Bio/Technology、(1983)第1巻、p784−791)を形質転換させ、各遺伝子断片が組み込まれた組換えプラスミドを得た。
EPEC sepB欠損株の作製
欠損株の作製は参考例1−1と同様の手法を用いて行った。EPEC E2348/69を20mlのLB培地に植菌し、37℃で一夜振とう培養を行った。一夜培養液を遠心して菌体を集め、それを1mlのLB培地に懸濁し、懸濁液を0.1mlずつナリジキス酸(30μg/ml)含有LB寒天培地に植菌し、37℃で一夜培養した。得られたコロニーをさらにナリジキス酸(30μg/ml)含有LB寒天培地に塗布し、ナリジキス酸耐性菌株を確立した。このナリジキス酸耐性菌株を用いて欠損株を作製した。欠損株の作製は、既に確立されている手法を用いて行った[Molecular Microb.(1999)第33巻、p1162−1175)。すなわち、遺伝子に終止コドンが挿入された遺伝子断片を含む組換えプラスミドで大腸菌Sm10λpirを形質転換し、この形質転換体をLB寒天培地に綿棒で塗布した。さらに塗布された菌体上に、ナリジキス酸耐性のEPEC E2348/69を塗布した。二つの菌体が塗布されたLB寒天培地を37℃で6時間培養した。
これら二菌体の混合物をナリジキス酸(30μg/ml)とアンピシリン(50μg/ml)を含むLB寒天培地に塗布して、37℃で一夜静置培養することにより、組換えプラスミドが変異を起こす菌体の染色体上に挿入されたものを選択した。出現した菌のコロニーはさらにナリジキス酸(30μg/ml)とアンピシリン(50μg/ml)を含むLB寒天培地に塗布し、ナリジキス酸とアンピシリンの両者に対して耐性であることを確認した。確認した菌体コロニーをナリジキス酸(30μg/ml)含有LB液体培地に植菌して、37℃で3.5時間振とう培養した。振とう培養後、菌体をナリジキス酸(30μg/ml)含有のシュクロース寒天培地に塗布する。得られたコロニーから染色体DNAを調製し、EPEC cesT欠損株を作製した。
EPEC sepB欠損株の確認
欠損株より染色体DNAを調製し、その0.5μgを100μlの25mM TAPS緩衝液(pH9.3、25℃)、50mM KCl、2mM MgCl2、1mM 2−メルカプトエタノール、0.2mM dNTP、0.5μMプライマーセット(第5図参照)、2.5ユニットTakara EX Taq(宝酒造社製、日本国)の溶液に加えた。この混合液をMastercycler gradient(エッペンドルフ社製、独国)を用いてPCR法を行った。PCR法の条件は、94℃で5分間加熱後、94℃で1分間、58℃で1分間、72℃で2分間のインキュベーションを30回繰り返した。30回のサイクル後、さらに72℃で5分間インキュベーションした。PCR法によって増幅された遺伝子断片をエタノール沈殿法によって集めた後、50μlの100mM NaCl、10mM Tris−HCl(pH7.9、25℃)、10mM MgCl2、1mM ジチオスレイトールを含む溶液に加え、これに制限酵素BglII 5ユニットを加え37℃で2時間反応させアガロース電気泳動を行った。PCR法で増幅されたDNA断片が、終止コドンの直下流に挿入された制限酵素BglIIにて消化され、断片が二つに分断されるか否で欠損株を判定した。
参考例1−3
EPEC espA欠損株
EPEC espA欠損株[タイプIII分泌蛋白質espAの欠損株(Molecular Microb.(1996)第20巻、p313−323);カナダ国、Biotechnology Laboratory,University of British Columbia,B Brett Finlayまたは日本国東京都港区白金5丁目9番1号、社団法人北里研究所、阿部章夫より入手可能]
EPEC espA欠損株の取得に用いられる組換えプラスミドの作製
第7図はEPEC espA欠損株の作製に使用されるプラスミドの構築の概略である、第8図はその組換えプラスミドの構築に際して用いられる遺伝子を増幅するためのプライマーセット、第9図はその組換えプラスミドの構築に際して用いられるリバースPCR法によって終止コドンとBglII部位を挿入するためのプライマーセットである。
EPEC E2348/69染色体DNA0.5μgを100μlの25mM TAPS緩衝液(pH9.3、25℃)、50mM KCl、2mM MgCl2、1mM 2−メルカプトエタノール、0.2mM dNTP、0.5μMプライマーセット(第8図参照)、2.5ユニットTakara EX Taq(宝酒造社製、日本国)の溶液に加えた。この混合液をMastercycler gradient(エッペンドルフ社製、独国)を用いてPCR法を行った。PCR法の条件は、94℃で5分間加熱後、94℃で1分間、58℃で1分間、72℃で2分間のインキュベーションを30回繰り返した。30回の増幅後、さらに72℃で5分間インキュベーションした。PCR法によって増幅された1.0kbpのespA遺伝子断片をエタノール沈殿法によって集めた後、50μlの50mM NaCl、10mM Tris−HCl(pH7.9、25℃)、10mM MgCl2、1mMジチオスレイトールを含む溶液に加え、これに制限酵素SacI 5ユニットを加え、37℃で2時間反応させた。
反応後、5M NaClを1μlと制限酵素SalIを5ユニット加え、さらに37℃で2時間反応させた。制限酵素処理後、DNA断片をアガロース電気泳動で精製した。精製されたDNA断片の0.1μgと制限酵素SalIとSacIで切断したpBluescript IISK−(ストラタジーン社製、米国)0.2μgを、20μlの50mM Tris−HCl(pH7.6)、10mM MgCl2、1mM ATP、5mMジチオスレイトール、5%(w/v)ポリエチレングリコール8000、1ユニットのT4 DNAリガーゼの溶液に加え、16℃で16時間反応させた。このリガーゼ溶液で大腸菌を形質変換させ、各遺伝子断片が組み込まれた組換えプラスミドを得た。
得られた組換えプラスミドはリバースPCR法にてespA遺伝子の中心部分に終止コドンを挿入した。組換えプラスミド0.05μgを100μlの25mM TAPS緩衝液(pH9.3、25℃)、50mM KCl、2mM MgCl2、1mM 2−メルカプトエタノール、0.2mM dNTP、0.5μM プライマーセット(第9図参照)、2.5ユニットTakara EX Taq(宝酒造社製、日本国)の溶液に加えた。この混合液をMastercycler gradient(エッペンドルフ社製、独国)を用いてPCR法を行った。PCR法の条件は、94℃で5分間加熱後、94℃で1分間、58℃で1分間、72℃で5分間のインキュベーションを30回繰り返した。30回のサイクル後、さらに72℃で5分間インキュベーションした。PCR法によって増幅された遺伝子断片をエタノール沈殿法によって集めた。
これを50μlの100mM NaCl、10mM Tris−HCl(pH7.9、25℃)、10mM MgCl2、1mM ジチオスレイトールを含む溶液に加え、これに制限酵素BglII 5ユニットを加え、37℃で2時間反応させ、アガロース電気泳動にて精製した。これを、20μlの50mM Tris−HCl(pH7.6)、10mM MgCl2、1mM ATP、5mMジチオスレイトール、5%(w/v)ポリエチレングリコール8000、1ユニットのT4 DNAリガーゼの溶液に加え、16℃で16時間反応させた。このリガーゼ溶液にて大腸菌を形質転換させ遺伝子断片の翻訳領域に終止コドンが挿入された組換えプラスミドを得た。
終止コドンを含む遺伝子断片が組み込まれた組換えプラスミド1μgを50μlの50mM NaCl、10mM Tris−HCl(pH7.9、25℃)、10mM MgCl2、1mMジチオスレイトールを含む溶液に加え、これに制限酵素SacI 5ユニットを加え、37℃で2時間反応させた。反応後、5M NaClを1μlと制限酵素SalIを5ユニット加え、さらに37℃で2時間反応させた。制限酵素処理後、DNA断片をアガロース電気泳動で精製した。精製されたDNA断片の0.1μlと制限酵素SalIとSacIで切断したpCVD442[Infect.Immun.(1991)第59巻、p4310−4317]0.2μgを、20μlの50mM Tris−HCl(pH7.6)、10mM MgCl2、1mM ATP、5mM ジチオスレイトール、5%(w/v)ポリエチレングリコール8000、1ユニットのT4 DNAリガーゼの溶液に加え、16℃で16時間反応させた。このリガーゼ溶液にて大腸菌Sm10λpir(Bio/Technology、(1983)第1巻、p784−791)を形質転換させ、遺伝子断片が組み込まれた組換えプラスミドを得た。
EPEC espA欠損株の作製
欠損株の作製は参考例1−1と同様の手法を用いて行った。バクテリアを20mlのLB培地に植菌し、37℃で一夜振とう培養を行った。一夜培養液を遠心して菌体を集め、それを1mlのLB培地に懸濁し、懸濁液を0.1mlずつナリジキス酸(30μg/ml)含有LB寒天培地に植菌し、37℃で一夜培養した。得られたコロニーをさらにナリジキス酸(30μg/ml)含有LB寒天培地に塗布し、ナリジキス酸耐性菌株を確立した。このナリジキス酸耐性菌株を用いて欠損株を作製した。欠損株の作製は、既に確立されている手法を用いて行った[Molecular Microb.(1999)第33巻、p1162−1175)。すなわち、各遺伝子に終止コドンが挿入された遺伝子断片を含む組換えプラスミドで大腸菌Sm10λpirを形質転換し、この形質転換体をLB寒天培地に綿棒で塗布した。さらに塗布された菌体上に、ナリジキス酸耐性のEPEC E2348/69を塗布した。二つの菌体が塗布されたLB寒天培地を37℃で6時間培養した。
これら二菌体の混合物をナリジキス酸(30μg/ml)とアンピシリン(50μg/ml)を含むLB寒天培地に塗布して、37℃で一夜静置培養することにより、組換えプラスミドが変異を起こす菌体の染色体上に挿入されたものを選択した。出現した菌のコロニーはさらにナリジキス酸(30μg/ml)とアンピシリン(50μg/ml)を含むLB寒天培地に塗布し、ナリジキス酸とアンピシリンの両者に対して耐性であることを確認した。確認した菌体コロニーをナリジキス酸(30μg/ml)含有LB液体培地に植菌して、37℃で3.5時間振とう培養した。振とう培養後、菌体をナリジキス酸(30μg/ml)含有のシュクロース寒天培地に塗布する。得られたコロニーから染色体DNAを調製し、EPEC espA欠損株を作製した。
EPEC espA欠損株の確認
欠損株より染色体DNAを調製し、その0.5μgを100μlの25mM TAPS緩衝液(pH9.3、25℃)、50mM KCl、2mM MgCl2、1mM 2−メルカプトエタノール、0.2mM dNTP、0.5μMプライマーセット(第8図参照)、2.5ユニットTakara EX Taq(宝酒造社製、日本国)の溶液に加えた。この混合液をMastercycler gradient(エッペンドルフ社製、独国)を用いてPCR法を行った。PCR法の条件は、94℃で5分間加熱後、94℃で1分間、58℃で1分間、72℃で2分間のインキュベーションを30回繰り返した。30回のサイクル後、さらに72℃で5分間インキュベーションした。PCR法によって増幅された遺伝子断片をエタノール沈殿法によって集めた後、50μlの100mM NaCl、10mM Tris−HCl(pH7.9、25℃)、10mM MgCl2、1mMジチオスレイトールを含む溶液に加え、これに制限酵素BgIII 5ユニットを加え37℃で2時間反応させアガロース電気泳動を行った。PCR法で増幅されたDNA断片が、終止コドンの直下流に挿入された制限酵素BglIIにて消化され、断片が二つに分断されるか否で欠損株を判定した。
参考例1−4
EPEC espB欠損株
EPEC espB欠損株:[タイプIII分泌蛋白質espBの欠損株(J.Bacteriolo.(1993)第175巻、p4670−4680);米国、Center for Vaccine Development and Department of Microbiology and Immunology,University of Maryland School of Medicine,James B Kaperまたは日本国東京都港区白金5丁目9番1号、社団法人北里研究所、阿部章夫より入手可能]
EPEC espB欠損株の取得に用いられる組換えプラスミドの作製
第10図はEPEC espB欠損株の作製に使用されるプラスミドの構築の概略である、第11図はその組換えプラスミドの構築に際して用いられる遺伝子を増幅するためのプライマーセット、第12図はその組換えプラスミドの構築に際して用いられるリバースPCR法によって終止コドンとBglII部位を挿入するためのプライマーセットである。
EPEC E2348/69染色体DNA0.5μgを100μlの25mM TAPS緩衝液(pH9.3、25℃)、50mM KCl、2mM MgCl2、1mM 2−メルカプトエタノール、0.2mM dNTP、0.5μMプライマーセット(第11図参照)、2.5ユニットTakara EX Taq(宝酒造社製、日本国)の溶液に加えた。この混合液をMastercycler gradient(エッペンドルフ社製、独国)を用いてPCR法を行った。PCR法の条件は、94℃で5分間加熱後、94℃で1分間、58℃で1分間、72℃で2分間のインキュベーションを30回繰り返した。30回の増幅後、さらに72℃で5分間インキュベーションした。PCR法によって増幅された1.0kbpのespB遺伝子断片をエタノール沈殿法によって集めた後、50μlの50mM NaCl、10mM Tris−HCl(pH7.9、25℃)、10mM MgCl2、1mMジチオスレイトールを含む溶液に加え、これに制限酵素SacI 5ユニットを加え、37℃で2時間反応させた。
反応後、5M NaClを1μlと制限酵素SalIを5ユニット加え、さらに37℃で2時間反応させた。制限酵素処理後、DNA断片をアガロース電気泳動で精製した。精製されたDNA断片の0.1μgと制限酵素SalIとSacIで切断したpBluescript IISK−(ストラタジーン社製、米国)0.2μgを、20μlの50mM Tris−HCl(pH7.6)、10mM MgCl2、1mM ATP、5mMジチオスレイトール、5%(w/v)ポリエチレングリコール8000、1ユニットのT4 DNAリガーゼの溶液に加え、16℃で16時間反応させた。このリガーゼ溶液で大腸菌を形質変換させ各遺伝子断片が組み込まれた組換えプラスミドを得た。
得られた組換えプラスミドはリバースPCR法にてespB遺伝子の中心部分に終止コドンを挿入した。組換えプラスミド0.05μgを100μlの25mM TAPS緩衝液(pH9.3、25℃)、50mM KCl、2mM MgCl2、1mM 2−メルカプトエタノール、0.2mM dNTP、0.5μMプライマーセット(第12図参照)、2.5ユニットTakara EX Taq(宝酒造社製、日本国)の溶液に加えた。この混合液をMastercycler gradient(エッペンドルフ社製、独国)を用いてPCR法を行った。PCR法の条件は、94℃で5分間加熱後、94℃で1分間、58℃で1分間、72℃で5分間のインキュベーションを30回繰り返した。30回のサイクル後、さらに72℃で5分間インキュベーションした。PCR法によって増幅された遺伝子断片をエタノール沈殿法によって集めた。
これを50μlの100mM NaCl、10mM Tris−HCl(pH7.9、25℃)、10mM MgCl2、1mMジチオスレイトールを含む溶液に加え、これに制限酵素BglII 5ユニットを加え、37℃で2時間反応させ、アガロース電気泳動にて精製した。これを、20μlの50mM Tris−HCl(pH7.6):10mM MgCl2、1mM ATP、5mM ジチオスレイトール、5%(w/v)ポリエチレングリコール8000、1ユニットのT4 DNAリガーゼの溶液に加え、16℃で16時間反応させた。このリガーゼ溶液にて大腸菌を形質転換させ、遺伝子断片の翻訳領域に終止コドンが挿入された組換えプラスミドを得た。
終止コドンを含む遺伝子断片が組み込まれた組換えプラスミド1μgを50μlの50mM NaCl、10mM Tris−HCl(pH7.9、25℃)、10mM MgCl2、1mMジチオスレイトールを含む溶液に加え、これに制限酵素SacI 5ユニットを加え、37℃で2時間反応させた。反応後、5M NaClを1μlと制限酵素SalIを5ユニット加え、さらに37℃で2時間反応させた。制限酵素処理後、DNA断片をアガロース電気泳動で精製した。精製されたDNA断片の0.1μlと制限酵素SalIとSacIで切断したpCVD442[Infect.Immun.(1991)第59巻、p4310−4317]0.2μgを、20μlの50mM Tris−HCl(pH7.6)、10mM MgCl2、1mM ATP、5mM ジチオスレイトール、5%(w/v)ポリエチレングリコール8000、1ユニットのT4 DNAリガーゼの溶液に加え、16℃で16時間反応させた。このリガーゼ溶液にて大腸菌Sm10λpir(Bio/Technology、(1983)第1巻、p784−791)を形質転換させ、各遺伝子断片が組み込まれた組換えプラスミドを得た。
EPEC espB欠損株の作製
欠損株の作製は参考例1−1と同様の手法を用いて行った。EPEC E2348/69を20mlのLB培地に植菌し、37℃で一夜振とう培養を行った。一夜培養液を遠心して菌体を集め、それを1mlのLB培地に懸濁し、懸濁液を0.1mlずつナリジキス酸(30μg/ml)含有LB寒天培地に植菌し、37℃で一夜培養した。得られたコロニーをさらにナリジキス酸(30μg/ml)含有LB寒天培地に塗布し、ナリジキス酸耐性菌株を確立した。このナリジキス酸耐性菌株を用いて欠損株を作製した。欠損株の作製は、既に確立されている手法を用いて行った[Molecular Microb.(1999)第33巻、p1162−1175)。すなわち、各遺伝子に終止コドンが挿入された遺伝子断片を含む組換えプラスミドで大腸菌Sm10λpirを形質転換し、この形質転換体をLB寒天培地に綿棒で塗布した。さらに塗布された菌体上に、ナリジキス酸耐性のEPEC E2348/69を塗布した。二つの菌体が塗布されたLB寒天培地を37℃で6時間培養した。
これら二菌体の混合物をナリジキス酸(30μg/ml)とアンピシリン(50μg/ml)を含むLB寒天培地に塗布して、37℃で一夜静置培養することにより、組換えプラスミドが変異を起こす菌体の染色体上に挿入されたものを選択した。出現した菌のコロニーはさらにナリジキス酸(30μg/ml)とアンピシリン(50μg/ml)を含むLB寒天培地に塗布し、ナリジキス酸とアンピシリンの両者に対して耐性であることを確認した。確認した菌体コロニーをナリジキス酸(30μg/ml)含有LB液体培地に植菌して、37℃で3.5時間振とう培養した。振とう培養後、菌体をナリジキス酸(30μg/ml)含有のシュクロース寒天培地に塗布する。得られたコロニーから染色体DNAを調製し、EPEC espB欠損株を作製した。
EPEC espB欠損株の確認
欠損株より染色体DNAを調製し、その0.5μgを100μlの25mM TAPS緩衝液(pH9.3、25℃)、50mM KCl、2mM MgCl2、1mM 2−メルカプトエタノール、0.2mM dNTP、0.5μMプライマーセット(第11図参照)、2.5ユニットTakara EX Taq(宝酒造社製、日本国)の溶液に加えた。この混合液をMastercycler gradient(エッペンドルフ社製、独国)を用いてPCR法を行った。PCR法の条件は、94℃で5分間加熱後、94℃で1分間、58℃で1分間、72℃で2分間のインキュベーションを30回繰り返した。30回のサイクル後、さらに72℃で5分間インキュベーションした。PCR法によって増幅された遺伝子断片をエタノール沈殿法によって集めた後、50μlの100mM NaCl、10mM Tris−HCl(pH7.9、25℃)、10mMMgCl2、1mMジチオスレイトールを含む溶液に加え、これに制限酵素BglII 5ユニットを加え、37℃で2時間反応させ、アガロース電気泳動を行った。PCR法で増幅されたDNA断片が、終止コドンの直下流に挿入された制限酵素BglIIにて消化され、断片が二つに分断されるか否で欠損株を判定した。
参考例1−5
EPEC espD欠損株
EPEC espD欠損株[(タイプIII分泌蛋白質espDの欠損株):(Infect.Immun.(1997)第65巻、p2211−2217);米国、Devisions of Gastroenterology,University of Maryland School of Medicine,Michael S.Donnenbergまたは日本国東京都港区白金5丁目9番1号、社団法人北里研究所、阿部章夫より入手可能]
EPEC espD欠損株の取得に用いられる組換えプラスミドの作製
第13図はEPEC espD欠損株の作製に使用されるプラスミドの構築の概略である、第14図はその組換えプラスミドの構築に際して用いられる遺伝子を増幅するためのプライマーセット、第15図はその組換えプラスミドの構築に際して用いられるリバースPCR法によって終止コドンとBamHI部位を挿入するためのプライマーセットである。
EPEC E2348/69染色体DNA0.5μgを100μlの25mM TAPS緩衝液(pH9.3、25℃)、50mM KCl、2mM MgCl2、1mM 2−メルカプトエタノール、0.2mM dNTP、0.5μMプライマーセット(第14図参照)、2.5ユニットTakara EX Taq(宝酒造社製、日本国)の溶液に加えた。この混合液をMastercycler gradient(エッペンドルフ社製、独国)を用いてPCR法を行った。PCR法の条件は、94℃で5分間加熱後、94℃で1分間、58℃で1分間、72℃で2分間のインキュベーションを30回繰り返した。30回の増幅後、さらに72℃で5分間インキュベーションした。PCR法によって増幅された1.1kbpのespD遺伝子断片をエタノール沈殿法によって集めた後、50μlの50mM NaCl、10mM Tris−HCl(pH7.9、25℃)、10mM MgCl2、1mMジチオスレイトールを含む溶液に加え、これに制限酵素SacI 5ユニットを加え、37℃で2時間反応させた。
反応後、5M NaClを1μlと制限酵素SalIを5ユニット加え、さらに37℃で2時間反応させた。制限酵素処理後、DNA断片をアガロース電気泳動で精製した。精製されたDNA断片の0.1μgと制限酵素SalIとSacIで切断したpBluescript IISK−(ストラタジーン社製、米国)0.2μgを、20μlの50mM Tris−HCl(pH7.6)、10mM MgCl2、1mM ATP、5mMジチオスレイトール、5%(w/v)ポリエチレングリコール8000、1ユニットのT4 DNAリガーゼの溶液に加え、16℃で16時間反応させた。このリガーゼ溶液で大腸菌を形質変換させ、各遺伝子断片が組み込まれた組換えプラスミドを得た。
得られた組換えプラスミドはリバースPCR法にてespD遺伝子の中心部分に終止コドンを挿入した。組換えプラスミド0.05μgを100μlの25mM TAPS緩衝液(pH9.3、25℃)、50mM KCl、2mM MgCl2、1mM 2−メルカプトエタノール、0.2mM dNTP、0.5μM プライマーセット(第15図参照)、2.5ユニットTakara EX Taq(宝酒造社製、日本国)の溶液に加えた。この混合液をMastercycler gradient(エッペンドルフ社製、独国)を用いてPCR法を行った。PCR法の条件は、94℃で5分間加熱後、94℃で1分間、58℃で1分間、72℃で5分間のインキュベーションを30回繰り返した。30回のサイクル後、さらに72℃で5分間インキュベーションした。PCR法によって増幅された遺伝子断片をエタノール沈殿法によって集めた。
これを50μlの50mM NaCl、10mM Tris−HCl(pH7.9、25℃)、10mM MgCl2、1mMジチオスレイトールを含む溶液に加え、これに制限酵素BamHI 5ユニットを加え、37℃で2時間反応させ、アガロース電気泳動にて精製した。これを、20μlの50mM Tris−HCl(pH7.6)、10mM MgCl2、1mM ATP、5mMジチオスレイトール、5%(w/v)ポリエチレングリコール8000、1ユニットのT4 DNAリガーゼの溶液に加え、16℃で16時間反応させた。このリガーゼ溶液にて大腸菌を形質転換させ、遺伝子断片の翻訳領域に終止コドンが挿入された組換えプラスミドを得た。
終止コドンを含む遺伝子断片が組み込まれた組換えプラスミド1μgを50μlの50mM NaCl、10mM Tris−HCl(pH7.9、25℃)、10mM MgCl2、1mMジチオスレイトールを含む溶液に加え、これに制限酵素SacI 5ユニットを加え37℃で2時間反応させた。反応後、5M NaClを1μlと制限酵素SalIを5ユニット加え、さらに37℃で2時間反応させた。制限酵素処理後、DNA断片をアガロース電気泳動で精製した。精製されたDNA断片の0.1μlと制限酵素SalIとSacIで切断したpCVD442[Infect.Immun.(1991)第59巻、p4310−4317]0.2μgを、20μlの50mM Tris−HCl(pH7.6)、10mM MgCl2、1mM ATP、5mMジチオスレイトール、5%(w/v)ポリエチレングリコール8000、1ユニットのT4 DNAリガーゼの溶液に加え16℃で16時間反応させた。このリガーゼ溶液にて大腸菌Sm10λpir(Bio/Technology、(1983)第1巻、p784−791)を形質転換させ、各遺伝子断片が組み込まれた組換えプラスミドを得た。
EPEC espD欠損株の作製
欠損株の作製は参考例1−1と同様の手法を用いて行った。EPEC E2348/69を20mlのLB培地に植菌し、37℃で一夜振とう培養を行った。一夜培養液を遠心して菌体を集め、それを1mlのLB培地に懸濁し、懸濁液を0.1mlずつナリジキス酸(30μg/ml)含有LB寒天培地に植菌し、37℃で一夜培養した。得られたコロニーをさらにナリジキス酸(30μg/ml)含有LB寒天培地に塗布し、ナリジキス酸耐性菌株を確立した。このナリジキス酸耐性菌株を用いて欠損株を作製した。欠損株の作製は、既に確立されている手法を用いて行った[Molecular Microb.(1999)第33巻、p1162−1175)。すなわち、各遺伝子に終止コドンが挿入された遺伝子断片を含む組換えプラスミドで大腸菌Sm10λpirを形質転換し、この形質転換体をLB寒天培地に綿棒で塗布した。さらに塗布された菌体上に、ナリジキス酸耐性のEPEC E2348/69を塗布した。二つの菌体が塗布されたLB寒天培地を37℃で6時間培養した。
これら二菌体の混合物をナリジキス酸(30μg/ml)とアンピシリン(50μg/ml)を含むLB寒天培地に塗布して、37℃で一夜静置培養することにより、組換えプラスミドが変異を起こす菌体の染色体上に挿入されたものを選択した。出現した菌のコロニーはさらにナリジキス酸(30μg/ml)とアンピシリン(50μg/ml)を含むLB寒天培地に塗布し、ナリジキス酸とアンピシリンの両者に対して耐性であることを確認した。確認した菌体コロニーをナリジキス酸(30μg/ml)含有LB液体培地に植菌して、37℃で3.5時間振とう培養した。振とう培養後、菌体をナリジキス酸(30μg/ml)含有のシュクロース寒天培地に塗布する。得られたコロニーから染色体DNAを調製し、EPEC espD欠損株を作製した。
EPEC espD欠損株の確認
欠損株より染色体DNAを調製し、その0.5μgを100μlの25mM TAPS緩衝液(pH9.3、25℃)、50mM KCl、2mM MgCl2、1mM 2−メルカプトエタノール、0.2mM dNTP、0.5μM プライマーセット(第14図参照)、2.5ユニットTakara EX Taq(宝酒造社製、日本国)の溶液に加えた。この混合液をMastercycler gradient(エッペンドルフ社製、独国)を用いてPCR法を行った。PCR法の条件は、94℃で5分間加熱後、94℃で1分間、58℃で1分間、72℃で2分間のインキュベーションを30回繰り返した。30回のサイクル後、さらに72℃で5分間インキュベーションした。PCR法によって増幅された遺伝子断片をエタノール沈殿法によって集めた後、50μlの50mM NaCl、10mM Tris−HCl(pH7.9、25℃)、10mM MgCl2、1mMジチオスレイトールを含む溶液に加え、これに制限酵素BamHI 5ユニットを加えて37℃で2時間反応させ、アガロース電気泳動を行った。PCR法で増幅されたDNA断片が、終止コドンの直下流に挿入された制限酵素BamHIにて消化され、断片が二つに分断されるか否で変異株を判定した。
参考例2
赤痢菌
Shigella flexneri 2a YSH6000(野性株):[(Infect.Immun.(1986)第51巻、p470−475);ATCC25875;American Type Culture Collection,10801 University Boulevard,Manassas,VA20110−2209,USA)より入手可能]
参考例2−1
赤痢菌ipaC欠損株
Shigella flexneri TK001:[(Ipac欠損株、タイプIII分泌蛋白質の欠損株);日本国東京都港区白金5丁目9番1号、社団法人北里研究所、阿部章夫より入手可能]
赤痢菌ipaC欠損株の取得に用いられる組換えプラスミドの作製
第16図はipaC欠損株の作製に使用されるプラスミドの構築の概略である、第17図はその組換えプラスミドの構築に際して用いられる遺伝子を増幅するためのプライマーセット、第18図はその組換えプラスミドの構築に際して用いられるリバースPCR法によって終止コドンとBamHI部位を挿入するためのプライマーセットである。
Shigella flexneri 2a染色体DNA0.5μgを100μlの25mM TAPS緩衝液(pH9.3、25℃)、50mM KCl、2mM MgCl2、1mM 2−メルカプトエタノール、0.2mM dNTP、0.5μMプライマーセット(第17図参照)及び2.5ユニットTakara EX Taq(宝酒造社製、日本国)の溶液に加えた。この混合液をMastercycler gradient(エッペンドルフ社製、独国)を用いてPCR法を行った。PCR法の条件は、94℃で5分間加熱後、94℃で1分間、58℃で1分間、72℃で2分間のインキュベーションを30回繰り返した。30回の増幅後、さらに72℃で5分間インキュベーションした。PCR法によって増幅された1.1kbpのipaC遺伝子断片をエタノール沈殿法によって集めた後、50μlの50mM酢酸カリウム、10mM Tris−acetate(pH7.9、25℃)、10mM酢酸マグネシウム、1mMジチオスレイトールを含む溶液に加え、これに制限酵素SmaIとXbaIをそれぞれ5ユニットを加え、37℃で2時間反応させた。
制限酵素処理後、DNA断片をアガロース電気泳動で精製した。精製されたDNA断片の0.1μgと制限酵素SmaIとXbaIで切断したpBluescript IISK−(ストラタジーン社製、米国)0.2μgを、20μlの50mM Tris−HCl(pH7.6)、10mM MgCl2、1mM ATP、5mM ジチオスレイトール、5%(w/v)ポリエチレングリコール8000、1ユニットのT4 DNAリガーゼの溶液に加え、16℃で16時間反応させた。このリガーゼ溶液で大腸菌を形質変換させ遺伝子断片が組み込まれた組換えプラスミドを得た。
得られた組換えプラスミドはリバースPCR法にてipaC遺伝子の中心部分に終止コドンを挿入した。組換えプラスミド0.05μgを100μlの25mM TAPS緩衝液(pH9.3、25℃)、50mM KCl、2mM MgCl2、1mM 2−メルカプトエタノール、0.2mM dNTP、0.5μMプライマーセット(第18図参照)、2.5ユニットTakara EX Taq(宝酒造社製、日本国)の溶液に加えた。この混合液をMastercycler gradient(エッペンドルフ社製、独国)を用いてPCR法を行った。PCR法の条件は、94℃で5分間加熱後、94℃で1分間、58℃で1分間、72℃で5分間のインキュベーションを30回繰り返した。30回のサイクル後、さらに72℃で5分間インキュベーションした。PCR法によって増幅された遺伝子断片をエタノール沈殿法によって集めた。
これを50μlの50mM NaCl、10mM Tris−HCl(pH7.9、25℃)、10mM MgCl2、1mM ジチオスレイトールを含む溶液に加え、これに制限酵素BamHI 5ユニットを加え、37℃で2時間反応させ、アガロース電気泳動にて精製した。これを、20μlの50mM Tris−HCl(pH7.6):10mM MgCl2、1mM ATP、5mMジチオスレイトール、5%(w/v)ポリエチレングリコール8000、1ユニットのT4 DNAリガーゼの溶液に加え、16℃で16時間反応させた。このリガーゼ溶液にて大腸菌を形質転換させ、遺伝子断片の翻訳領域に終止コドンが挿入された組換えプラスミドを得た。
終止コドンを含む遺伝子断片が組み込まれた組換えプラスミド1μgを50μlの50mM酢酸カリウム、10mM Tris−acetate(pH7.9、25℃)、10mM 酢酸マグネシウム、1mMジチオスレイトールを含む溶液に加え、これに制限酵素SmaIとXbaIをそれぞれ5ユニットを加え、37℃で2時間反応させた。制限酵素処理後、各DNA断片をアガロース電気泳動で精製した。精製されたDNA断片の0.1μlと制限酵素SmaIとXbaIで切断したpCVD442[Infect.Immun.(1991)第59巻、p4310−4317]0.2μgを、20μlの50mM Tris−HCl(pH7.6)、10mM MgCl2、1mM ATP、5mMジチオスレイトール、5%(w/v)ポリエチレングリコール8000、1ユニットのT4 DNAリガーゼの溶液に加え16℃で16時間反応させた。このリガーゼ溶液にて大腸菌Sm10λpir(Bio/Technology、(1983)第1巻、p784−791)を形質転換させ、遺伝子断片が組み込まれた組換えプラスミドを得た。
赤痢菌ipaC欠損株の作製
欠損株の作製は参考例1−1と同様の手法を用いて行った。Shigella flexneri 2aを20mlのBHI培地(Difco社、米国)に植菌し、37℃で一夜振とう培養を行った。一夜培養液を遠心して菌体を集め、それを1mlのBHI培地に懸濁し、懸濁液を0.1mlずつナリジキス酸(30μg/ml)含有LB寒天培地に植菌し、37℃で一夜培養した。得られたコロニーをさらにナリジキス酸(30μg/ml)含有LB寒天培地に塗布し、ナリジキス酸耐性菌株を確立した。このナリジキス酸耐性菌株を用いて欠損株を作製した。欠損株の作製は、既に確立されている手法を用いて行った[Molecular Microb.(1999)第33巻、p1162−1175)。すなわち、各遺伝子に終止コドンが挿入された遺伝子断片を含む組換えプラスミドで大腸菌Sm10λpirを形質転換し、この形質転換体をLB寒天培地に綿棒で塗布した。さらに塗布された菌体上に、ナリジキス酸耐性のShigella flexneri 2aを塗布した。二つの菌体が塗布されたLB寒天培地を37℃で6時間培養した。
これら二菌体の混合物をナリジキス酸(30μg/ml)とアンピシリン(50μg/ml)を含むLB寒天培地に塗布して、37℃で一夜静置培養することにより、組換えプラスミドが変異を起こす菌体の染色体上に挿入されたものを選択した。出現した菌のコロニーはさらにナリジキス酸(30μg/ml)とアンピシリン(50μg/ml)を含むLB寒天培地に塗布し、ナリジキス酸とアンピシリンの両者に対して耐性であることを確認した。確認した菌体コローをナリジキス酸(30μg/ml)含有LB液体培地に植菌して、37℃で3.5時間振とう培養した。振とう培養後、菌体をナリジキス酸(30μg/ml)含有のシュクロース寒天培地に塗布する。得られたコロニーから染色体DNAを調製し、赤痢菌ipaC欠損株を作製した。
赤痢菌ipaC欠損株の確認
欠損株より染色体DNAを調製し、その0.5μgを100μlの25mM TAPS緩衝液(pH9.3、25℃)、50mM KCl、2mM MgCl2、1mM 2−メルカプトエタノール、0.2mM dNTP、0.5μMプライマーセット(第17図参照)、2.5ユニットTakara EX Taq(宝酒造社製、日本国)の溶液に加えた。この混合液をMastercycler gradient(エッペンドルフ社製、独国)を用いてPCR法を行った。PCR法の条件は、94℃で5分間加熱後、94℃で1分間、58℃で1分間、72℃で2分間のインキュベーションを30回繰り返した。30回のサイクル後、さらに72℃で5分間インキュベーションした。PCR法によって増幅された遺伝子断片をエタノール沈殿法によって集めた後、50μlの50mMNaCl、10mM Tris−HCl(pH7.9、25℃)、10mM MgCl2、1mMジチオスレイトールを含む溶液に加え、これに制限酵素BamHI 5ユニットを加えて37℃で2時間反応させ、アガロース電気泳動を行った。PCR法で増幅されたDNA断片が、終止コドンの直下流に挿入された制限酵素BamHIにて消化され、断片が二つに分断されるか否で変異株を判定した。
参考例3
サルモネラ菌
Salmonella typhimurium SR11(野性株):[(J.Bacteriolo.(1992)第174巻、p4338−4349;ATCC14028;American Type Culture Collection,10801 University Boulevard,Manassas,VA20110−2209,USA)より入手可能]
参考例3−1
サルモネラinvA欠損株
Salmonella typhimurium SB147:[(invA欠損株、タイプIII分泌機構の欠損株(J.Bacteriolo.(1992)第175巻、p4338−4349;米国、Boyer Center for Molecular Medicine,Yale School of Medicine,Jorge E Galanまたは日本国東京都港区白金5丁目9番1号、社団法人北里研究所、阿部章夫)より入手可能]
サルモネラinvA欠損株の取得に用いられる組換えプラスミドの作製
第19図はinvA欠損株作製に使用されるプラスミドの構築の概略である、第20図はその組換えプラスミドの構築に際して用いられる遺伝子を増幅するためのプライマーセット、第21図はその組換えプラスミドの構築に際して用いられるリバースPCR法によって終止コドンとXbaI部位を挿入するためのプライマーセットである。
Salmonella typhimurium染色体DNA0.5μgを100μlの25mM TAPS緩衝液(pH9.3、25℃)、50mM KCl、2mM MgCl2、1mM 2−メルカプトエタノール、0.2mM dNTP、0.5μMプライマーセット(第20図参照)、2.5ユニットTakara EX Taq(宝酒造社製、日本国)の溶液に加えた。この混合液をMastercycler gradient(エッペンドルフ社製、独国)を用いてPCR法を行った。PCR法の条件は、94℃で5分間加熱後、94℃で1分間、58℃で1分間、72℃で2分間のインキュベーションを30回繰り返した。30回の増幅後、さらに72℃で5分間インキュベーションした。PCR法によって増幅された2.0kbpのinvA遺伝子断片をエタノール沈殿法によって集めた後、50μlの50mM NaCl、10mM Tris−HCl(pH7.9、25℃)、10mM MgCl2、1mMジチオスレイトールを含む溶液に加え、これに制限酵素SacI 5ユニットを加え、37℃で2時間反応させた。
反応後、5M NaClを1μlと制限酵素SalIを5ユニット加え、さらに37℃で2時間反応させた。制限酵素処理後、DNA断片をアガロース電気泳動で精製した。精製されたDNA断片の0.1μgと制限酵素SalIとSacIで切断したpBluescript IISK−(ストラタジーン社製、米国)0.2μgを、20μlの50mM Tris−HCl(pH7.6)、10mM MgCl2、1mM ATP、5mMジチオスレイトール、5%(w/v)ポリエチレングリコール8000、1ユニットのT4DNAリガーゼの溶液に加え、16℃で16時間反応させた。このリガーゼ溶液で大腸菌を形質変換させ、遺伝子断片が組み込まれた組換えプラスミドを得た。
得られた組換えプラスミドはリバースPCR法にてinvA遺伝子の中心部分に終止コドンを挿入した。組換えプラスミド0.05μgを100μlの25mM TAPS緩衝液(pH9.3、25℃)、50mM KCl、2mM MgCl2、1mM 2−メルカプトエタノール、0.2mM dNTP、0.5μMプライマーセット(第18図参照)、2.5ユニットTakara EX Taq(宝酒造社製、日本国)の溶液に加えた。この混合液をMastercycler gradient(エッペンドルフ社製、独国)を用いてPCR法を行った。PCR法の条件は、94℃で5分間加熱後、94℃で1分間、58℃で1分間、72℃で5分間のインキュベーションを30回繰り返した。30回のサイクル後、さらに72℃で5分間インキュベーションした。PCR法によって増幅された遺伝子断片をエタノール沈殿法によって集めた。
これを50μlの50mM NaCl、10mM Tris−HCl(pH7.9、25℃)、10mM MgCl2、1mMジチオスレイトールを含む溶液に加え、これに制限酵素XbaI 5ユニットを加え、37℃で2時間反応させ、アガロース電気泳動にて精製した。これを、20μlの50mM Tris−HCl(pH7.6)、10mM MgCl2、1mM ATP、5mMジチオスレイトール、5%(w/v)ポリエチレングリコール8000、1ユニットのT4 DNAリガーゼの溶液に加え、16℃で16時間反応させた。このリガーゼ溶液にて大腸菌を形質転換させ、遺伝子断片の翻訳領域に終止コドンが挿入された組換えプラスミドを得た。
終止コドンを含む遺伝子断片が組み込まれた組換えプラスミド1μgを50μlの50mM NaCl、10mM Tris−HCl(pH7.9、25℃)、10mM MgCl2、1mMジチオスレイトールを含む溶液に加え、これに制限酵素SacI 5ユニットを加え、37℃で2時間反応させた。反応後、5M NaClを1μlと制限酵素SalIを5ユニット加え、さらに37℃で2時間反応させた。制限酵素処理後、各DNA断片をアガロース電気泳動で精製した。精製されたDNA断片の0.1μlと制限酵素SalIとSacIで切断したpCVD442[Infect.Immun.(1991)第59巻、p4310−4317]0.2μgを、20μlの50mM Tris−HCl(pH7.6)、10mM MgCl2、1mM ATP、5mMジチオスレイトール、5%(w/v)ポリエチレングリコール8000、1ユニットのT4 DNAリガーゼの溶液に加え、16℃で16時間反応させた。このリガーゼ溶液にて大腸菌Sm10λpir(Bio/Technology、(1983)第1巻、p784−791)を形質転換させ、遺伝子断片が組み込まれた組換えプラスミドを得た。
サルモネラinvA欠損株の作製
欠損株の作製は参考例1−1と同様の手法を用いて行った。Salmonella typhimuriumを20mlのLB培地に植菌し、37℃で一夜振とう培養を行った。一夜培養液を遠心して菌体を集め、それを1mlのLB培地に懸濁し、懸濁液を0.1mlずつナリジキス酸(30μg/ml)含有LB寒天培地に植菌し、37℃で一夜培養した。得られたコロニーをさらにナリジキス酸(30μg/ml)含有LB寒天培地に塗布し、ナリジキス酸耐性菌株を確立した。このナリジキス酸耐性菌株を用いて欠損株を作製した。欠損株の作製は、既に確立されている手法を用いて行った[Molecular Microb.(1999)第33巻、p1162−1175)。すなわち、各遺伝子に終止コドンが挿入された遺伝子断片を含む組換えプラスミドで大腸菌Sm10λpirを形質転換し、この形質転換体をLB寒天培地に綿棒で塗布した。さらに塗布された菌体上に、ナリジキス酸耐性のSalmonella typhimuriumを塗布した。二つの菌体が塗布されたLB寒天培地を37℃で6時間培養した。
これら二菌体の混合物をナリジキス酸(30μg/ml)とアンピシリン(50μg/ml)を含むLB寒天培地に塗布して、37℃で一夜静置培養することにより、組換えプラスミドが変異を起こす菌体の染色体上に挿入されたものを選択した。出現した菌のコロニーはさらにナリジキス酸(30μg/ml)とアンピシリン(50μg/ml)を含むLB寒天培地に塗布し、ナリジキス酸とアンピシリンの両者に対して耐性であることを確認した。確認した菌体コロニーをナリジキス酸(30μg/ml)含有LB液体培地に植菌して、37℃で3.5時間振とう培養した。振とう培養後、菌体をナリジキス酸(30μg/ml)含有のシュクロース寒天培地に塗布する。得られたコロニーから染色体DNAを調製し、サルモネラinvA欠損株を作製した。
サルモネラinvA欠損株確認
欠損株より染色体DNAを調製し、その0.5μgを100μlの25mM TAPS緩衝液(pH9.3、25℃)、50mM KCl、2mM MgCl2、1mM 2−メルカプトエタノール、0.2mM dNTP、0.5μMプライマーセット(第17図参照)、2.5ユニットTakara EX Taq(宝酒造社製、日本国)の溶液に加えた。この混合液をMastercycler gradient(エッペンドルフ社製、独国)を用いてPCR法を行った。PCR法の条件は、94℃で5分間加熱後、94℃で1分間、58℃で1分間、72℃で2分間のインキュベーションを30回繰り返した。30回のサイクル後、さらに72℃で5分間インキュベーションした。PCR法によって増幅された遺伝子断片をエタノール沈殿法によって集めた後、50μlの50mM NaCl、10mM Tris−HCl(pH7.9、25℃)、10mM MgCl2、および1mMジチオスレイトールを含む溶液に加え、これに制限酵素XbaI 5ユニットを加え、37℃で2時間反応させ、アガロース電気泳動を行った。PCRで増幅されたDNA断片が、終止コドンの直下流に挿入されたXbaIにて消化され、断片が二つに分断されるか否で変異株を判定した。
参考例4
緑膿菌
Psuedomaonas aeruginosa PAO1:[ATCC15692;(American Type Culture Collection,10801 University Boulevard,Manassas,VA20110−2209,USA)より入手可能]
参考例5
ボルデテラ属
Bordetella bronchiseptica S798(野性株):[ATCC780;(American Type Culture Collection,10801 University Boulevard,Manassas,VA20110−2209,U.S.A.)より入手可能]
参考例5−1
ボルデテラbscN欠損株
Bordetella bronchiseptica S798 BscN欠損株:[日本国東京都港区白金5丁目9番1号、社団法人北里研究所、阿部章夫より入手可能]
ボルデテラbscN欠損株の取得に用いられる組換えプラスミドの作製
第22図はbscN欠損株の作製に使用されるプラスミドの構築の概略である、第23図はその組換えプラスミドの構築に際して用いられる遺伝子を増幅するためのプライマーセット、第24図はその組換えプラスミドの構築に際して用いられるリバースPCR法によって終止コドンとBglII部位を挿入するためのプライマーセットである。
Bordetella bronchiseptica染色体DNA0.5μgを100μlの25mM TAPS緩衝液(pH9.3、25℃)、50mM KCl、2mM MgCl2、1mM2−メルカプトエタノール、0.2mM dNTP、0.5μMプライマーセット(第22図参照)、2.5ユニットTakara EX Taq(宝酒造社製、日本国)の溶液に加えた。この混合液をMastercycler gradient(エッペンドルフ社製、独国)を用いてPCR法を行った。PCR法の条件は、94℃で5分間加熱後、94℃で1分間、58℃で1分間、72℃で2分間のインキュベーションを30回繰り返した。30回の増幅後、さらに72℃で5分間インキュベーションした。PCR法によって増幅された1.3kbpのbscN遺伝子断片をエタノール沈殿法によって集めた後、50μlの50mM酢酸カリウム、10mM Tris−acetate(pH7.9、25℃)、10mM酢酸マグネシウム、1mMジチオスレイトールを含む溶液に加え、これに制限酵素SacIとSmaIをそれぞれ5ユニットを加え、37℃で2時間反応させた。
制限酵素処理後、DNA断片をアガロース電気泳動で精製した。精製されたDNA断片の0.1μgと制限酵素SacIとSmaIで切断したpBluescript IISK−(ストラタジーン社製、米国)0.2μgを、20μlの50mM Tris−HCl(pH7.6)、10mM MgCl2、1mM ATP、5mMジチオスレイトール、5%(w/v)ポリエチレングリコール8000、1ユニットのT4DNAリガーゼの溶液に加え、16℃で16時間反応させた。このリガーゼ溶液で大腸菌を形質変換させ、遺伝子断片が組み込まれた組換えプラスミドを得た。
得られた組換えプラスミドはリバースPCR法にて遺伝子の中心部分に終止コドンを挿入した。組換えプラスミド0.05μgを100μlの25mM TAPS緩衝液(pH9.3、25℃)、50mM KCl、2mM MgCl2、1mM 2−メルカプトエタノール、0.2mM dNTP、0.5μMプライマーセット(第24図参照)、2.5ユニットTakara EX Taq(宝酒造社製、日本国)の溶液に加えた。この混合液をMastercycler gradient(エッペンドルフ社製、独国)を用いてPCR法を行った。PCR法の条件は、94℃で5分間加熱後、94℃で1分間、58℃で1分間、72℃で5分間のインキュベーションを30回繰り返した。30回のサイクル後、さらに72℃で5分間インキュベーションした。PCR法によって増幅された遺伝子断片をエタノール沈殿法によって集めた。
これを50μlの100mM NaCl、10mM Tris−HCl(pH7.9、25℃)、10mM MgCl2、1mMジチオスレイトールを含む溶液に加え、これに制限酵素BglII 5ユニットを加え、37℃で2時間反応させ、アガロース電気泳動にて精製した。これを20μlの50mM Tris−HCl(pH7.6)、10mM MgCl2、1mM ATP、5mMジチオスレイトール、5%(w/v)ポリエチレングリコール8000、1ユニットのT4 DNAリガーゼの溶液に加え、16℃で16時間反応させた。このリガーゼ溶液にて大腸菌を形質転換させ、遺伝子断片の翻訳領域に終止コドンが挿入された組換えプラスミドを得た。
終止コドンを含む遺伝子断片が組み込まれた組換えプラスミド1μgを50μlの50mM酢酸カリウム、10mM Tris−acetate(pH7.9、25℃)、10mM酢酸マグネシウム、1mMジチオスレイトールを含む溶液に加え、これに制限酵素SacIとSmaIをそれぞれ5ユニットを加え、37℃で2時間反応させた。制限酵素処理後、DNA断片をアガロース電気泳動で精製した。精製されたDNA断片の0.1μlと制限酵素SmaIとSacIで切断したpCVD442[Infect.Immun.(1991)第59巻、p4310−4317]0.2μgを、20μlの50mM Tris−HCl(pH7.6)、10mM MgCl2、1mM ATP、5mM ジチオスレイトール、5%(w/v)ポリエチレングリコール8000、1ユニットのT4 DNAリガーゼの溶液に加え、16℃で16時間反応させた。このリガーゼ溶液にて大腸菌Sm10λpir(Bio/Technology、(1983)第1巻、p784−791)を形質転換させ、遺伝子断片が組み込まれた組換えプラスミドを得た。
ボルデテラbscN欠損株の作製
欠損株の作製は参考例1−1と同様の手法を用いて行った。Bordetella bronchisepticaを20mlのLB培地に植菌し、37℃で一夜振とう培養を行った。一夜培養液を遠心して菌体を集め、それを1mlのLB培地に懸濁し、懸濁液を0.1mlずつナリジキス酸(30μg/ml)含有LB寒天培地に植菌し、37℃で一夜培養した。得られたコロニーをさらにナリジキス酸(30μg/ml)含有LB寒天培地に塗布し、ナリジキス酸耐性菌株を確立した。このナリジキス酸耐性菌株を用いて欠損株を作製した。欠損株の作製は、既に確立されている手法を用いて行った[Molecular Microb.(1999)第33巻、p1162−1175)。すなわち、各遺伝子に終止コドンが挿入された遺伝子断片を含む組換えプラスミドで大腸菌Sm10λpirを形質転換し、この形質転換体をLB寒天培地に綿棒で塗布した。さらに塗布された菌体上に、ナリジキス酸耐性のBordetella bronchisepticaを塗布した。二つの菌体が塗布されたLB寒天培地を37℃で6時間培養した。
これら二菌体の混合物をナリジキス酸(30μg/ml)とアンピシリン(50μg/ml)を含むLB寒天培地に塗布して、37℃で一夜静置培養することにより、組換えプラスミドが変異を起こす菌体の染色体上に挿入されたものを選択した。出現した菌のコロニーはさらにナリジキス酸(30μg/ml)とアンピシリン(50μg/ml)を含むLB寒天培地に塗布し、ナリジキス酸とアンピシリンの両者に対して耐性であることを確認した。確認した菌体コロニーをナリジキス酸(30μg/ml)含有LB液体培地に植菌して、37℃で3.5時間振とう培養した。振とう培養後、菌体をナリジキス酸(30μg/ml)含有のシュクロース寒天培地に塗布する。得られたコロニーから染色体DNAを調製し、ボルデテラbscN欠損株を作製した。
ボルデテラbscN欠損株の確認
欠損株より染色体DNAを調製し、その0.5μgを100μlの25mM TAPS緩衝液(pH9.3、25℃)、50mM KCl、2mM MgCl2、1mM 2−メルカプトエタノール、0.2mM dNTP、0.5μM プライマーセット(第23図参照)、2.5ユニットTakara EX Taq(宝酒造社製、日本国)の溶液に加えた。この混合液をMastercycler gradient(エッペンドルフ社製、独国)を用いてPCR法を行った。PCR法の条件は、94℃で5分間加熱後、94℃で1分間、58℃で1分間、72℃で2分間のインキュベーションを30回繰り返した。30回のサイクル後、さらに72℃で5分間インキュベーションした。PCR法によって増幅された遺伝子断片をエタノール沈殿法によって集めた後、50μlの100mM NaCl、10mM Tris−HCl(pH7.9、25℃)、10mM MgCl2、1mMジチオスレイトールを含む溶液に加え、これに制限酵素BglII 5ユニットを加え、37℃で2時間反応させ、アガロース電気泳動を行った。PCRで増幅されたDNA断片が、終止コドンの直下流に挿入されたBglIIにて消化され、断片が二つに分断されるか否で変異株を判定した。
参考例6
シュクロース寒天培地
上記の組成のものを121℃で15分間、高圧蒸気滅菌をかける。
参考例7
M9培地
上記組成のものを121℃で15分間、高圧蒸気滅菌をかけた後、以下の組成のものを無菌的に加える。
参考例8
LB培地
水酸化ナトリウムにてpHを7.2に調整した後、蒸留水にて全量1000mlにする。121℃で15分間、高圧蒸気滅菌をかける。
参考例9
LB寒天培地
上記組成のものを121℃で15分間、高圧蒸気滅菌をかける。
参考例10
シュタイナー・ショルト培地
上記組成のものを塩酸にてpHを7.4に調整した後、蒸留水にて全量1000mlにする。121℃で15分間、蒸気滅菌をかけた後、以下の組成に調整したものを1000mlにつき10mlを無菌的に加える。
蒸留水にて全量1000mlにした後、ろ過滅菌する。
実施例1−(1)
試験菌液の培養方法
菌株としてEPEC cesT欠損株をLB培地に植菌し、37℃で一夜(約16時間)培養する。得られた菌の集落を一白金耳採取し、3mlのLB培地に植菌後、37℃で一夜静置培養した。菌の一夜培養液0.5mlを50mlのM9培地に植菌して、さらに37℃で4時間、静置培養した。培養後、菌の培養液を遠心分離機(ベックマンGS−6KR、ベックマン社製、米国)にて3500rpm、15分間の遠心で集菌して菌体沈渣を得た。この菌体沈渣を新鮮なM9培地の5mlに懸濁し、これを試験菌液とした。
実施例1−(2)
試験菌液の培養方法
菌株としてEPEC株を用いてLB寒天培地に植菌し、37℃で一夜(約16時間)培養する。得られた菌の集落を一白金耳採取し、3mlのLB培地に植菌後、37℃で一夜静置培養した。菌の一夜培養液0.5mlを50mlのM9培地に植菌して、さらに37℃で4時間、静置培養した。培養後、菌の培養液を遠心分離機(ベックマンGS−6KR、ベックマン社製、米国)にて3500rpm、15分間の遠心で集菌して菌体沈渣を得た。この菌体沈渣を新鮮なM9培地の5mlに懸濁し、これを試験菌液とした。
実施例2
赤血球懸濁液の作製
ウサギ保存血(日本生物材料センターより入手可能)8mlを50mlの遠心管に移し、40mlのPBS(0.8% NaCl、0.02% KCl、0.115% Na2HPO4、0.02% KH2PO4)を加えて、静かに混和した。混和後、9℃で遠心分離機(ベックマンGS−6KR、ベックマン社製、米国)にて2500rpm、5分間の遠心を行い、上清を捨て赤血球沈渣を得た。この赤血球沈渣をさらに40mlのPBS(0.8% NaCl、0.02% KCl、0.115% Na2HPO4、0.02% KH2PO4)で洗浄後、同様な操作にて遠心し、赤血球沈渣を得た。この操作をもう一度行った。遠心によって得られた赤血球沈渣の湿重量を測定し、これと同じ重量のM9培地を加えて赤血球の沈渣を懸濁し、赤血球懸濁液を得た。
実施例3
評価する試料の準備
96穴のマイクロプレート(3799、コースター社製、米国)に予め10μlのM9培地を入れておき、精製水あるいはメタノール溶液に溶かした評価試料5μlをこれに加え、混和した。この評価試料の乾燥を防ぐために、マイクロプレートは赤血球懸濁液と試験菌液[実施例1−(1)あるいは(2)]の混液を加えるまで、水をしみ込ませたキムワイプ(クレシア社製、日本国)を敷き詰めた密閉型の箱に入れておいた。
実施例4
マイクロプレートを用いた評価方法
前記の実施例2で調製しておいた赤血球懸濁液に等量の試験菌液[実施例1−(1)あるいは(2)]を加えた後、この混合液を100μlずつ実施例3で準備した評価試料を入れておいたマイクロプレートの各穴に加えた。赤血球懸濁液50μlに等量のM9培地を加えて、これを陰性の対照とした。また、赤血球懸濁液50μlに等量の試験菌液[実施例1−(1)あるいは(2)]を加えて、これを陽性の対照とした。陰性と陽性の対照を評価試料の含まないマイクロプレートの穴に入れ対照群とした。このマイクロプレートを9℃で、遠心分離機(ベックマンGS−6KR、ベックマン社製、米国)にて1500rpm、10分間の遠心を行うことにより、試験菌液と赤血球懸濁液の接触を高めた。
遠心後のマイクロプレートを37℃で約90分間反応後、このマイクロプレートの各穴に150μlのPBS(0.8% NaCl、0.02% KCl、0.115% Na2HPO4、0.02% KH2PO4)を加え、穏やかに懸濁後、9℃で、遠心分離機(ベックマンGS−6KR、ベックマン社製、米国)にて1500rpm、10分間の遠心を行った。遠心によって得られた上清100μlを新たなマイクロプレート(3799、コースター社製、米国)に移して、上清中に現れたヘモグロビンの赤色をマイクロプレートリーダー(マルチスキャンプラスMkII、大日本製薬社製、日本国)を用いて、550nmの波長で吸光度を測定した。
評価試料が、どの程度タイプIII分泌機構を阻害したのかについての阻害率は、次式にて求めた。
阻害率(%)=100−[(A−B)/(C−B)×100]
ただし、式中、
A:評価試料を含んだものの波長
B:陰性対照の波長550nm値
C:陽性対照の波長550nm値
実施例5
本検出法がタイプIII分泌機構に特異的であることの証明
現時点においてはタイプIII分泌機構の阻害剤は存在せず、従ってこの検出法をタイプIII分泌機構の阻害剤にて検証することはできない。しかしながら、本検出法がタイプIII分泌機構に特異的であるか否かについては、タイプIII分泌機構の欠損した菌株を試験菌株として使用することによって証明が可能である。試験菌株にはEPECのタイプIII分泌機構に変異を持つEPEC sepB欠損株を用いた。このEPEC sepB欠損株はタイプIII分泌機構に変異を持つために、タイプIII分泌蛋白質を菌体外に放出することができない。
一方、タイプIII分泌蛋白質の変異株として、EPEC espA欠損株、EPEC espB欠損株およびEPEC espD欠損株を用いた。これら4つの欠損株、sepB欠損株、espA欠損株、espB欠損株、及びespD欠損株は溶血活性を持たないことが既に報告されている(Infect.Immun.(1999)第67巻、p5538−5540)。EPEC野性株とEPEC sepB欠損株、EPEC espA欠損株、EPEC espB欠損株、及びEPEC espD欠損株を試験菌株として、実施例1から4と同様な操作にて溶血活性を惹起させ、550nmの波長で吸光度を測定した。EPEC野性株の溶血活性を100%として、各欠損株の溶血活性の百分率を前述の阻害率の式によって算出した。その結果は第25図に示した。
第25図の結果から明らかなように、タイプIII分泌機構の欠損株であるEPEC sepB欠損株は、EPEC野性株と比較して溶血活性が著しく減少した。更にタイプIII分泌蛋白質の変異株であるEPEC espA欠損株、EPEC espB欠損株およびEPEC espD欠損株においても、EPEC野性株と比較して溶血活性が極度に低下した。一方、タイプIII分泌機構に関与していないTir特異的シャペロンのEPEC cesT欠損株では第25図から明らかなように溶血活性になんら影響を与えなかった。
以上のことから、本発明の検出法の原理となる溶血活性は、タイプIII分泌機構およびそれから分泌されるタイプIII分泌蛋白質に完全に依存していることを示すものである。
尚、本発明において、前記の実施例1−(1)の培養方法における溶血活性の試験菌株として、EPEC cesT欠損株を使用した。このEPEC cesT欠損株はTirの特異的シャペロンであり、この欠損によりTirが不安定になりタイプIII分泌機構を介したTirの宿主細胞への移行に支障をきたすことが報告されている(Molecular Microb.(1999)第33巻、p1162−1175)。更に、感染実験の検討からTirは病原因子として働くことが明らかにされている(Infect.Immun.(2000)第68巻、p2171−2182)。それ故、Tirの宿主細胞内移行に障害を持つEPEC cesT欠損株は、EPEC野性株に比べて病原性が低下していると考えられるため、本検出法に使用される試験菌株には、野性株と比較して病原性が減少したEPEC cesT欠損株の使用が好ましいと考えられる。
実施例6
本検出法がEPECだけではなく、タイプIII分泌機構を持つ他のバクテリアを試験菌として用いても有効であることの証明
前記の実施例5において、本検出法はタイプIII分泌機構とタイプIII分泌蛋白質に依存することを示した。しかしながら、実施例5ではEPEC株以外のタイプIII分泌機構を持つバクテリアを試験菌として用いても有効であることの証明にはならない。そこで、タイプIII分泌機構を保持する赤痢菌(Shigella flexneri)、サルモネラ菌(Salmonella typhimurium)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、並びにボルデテラ ブロンヒセプチカ(Bordetella bronchiseptica)を試験菌として、溶血活性を持つのか否かを確認した。但し、Bordetella bronchisepticaに関しては、LB培地では成育が遅いのでシュタイナー・ショルト培地で一夜培養した菌液を、直接溶血活性の試験に使用した。
溶血活性の試験は、実施例1から4と同様な操作にて溶血活性を惹起させ、550nmの波長で吸光度を測定した。その測定結果を第26図に示した。第26図から明らかなように、EPEC野性株の溶血活性を100%として、各菌株の溶血活性を求めると、EPEC野性株に比較して赤痢菌、サルモネラ菌、緑膿菌、及びBoretella bronchisepticaにおいても、それぞれ溶血活性を持つことが明らかにされた。このことから、本検出法には、EPEC野性株だけではなく、他のタイプIII分泌機構を保持するバクテリアも試験菌として使用できることを示すものである。
実施例7
異なったバクテリアを使用して得られた溶血活性がタイプIII分泌機構に依存しているか否かの証明
前記の実施例6において、試験菌としてEPEC野性株だけではなく、他のタイプIII分泌機構を保持するバクテリアも使用できることを証明した。しかしながら、上記実施例6で異なったバクテリアを使用して得られた溶血活性がタイプIII分泌機構に依存しているか否かに関しては不明である。そこで、赤痢菌、サルモネラ菌及びボルデテラ菌の各菌株におけるタイプIII分泌機構ならびにそれの分泌によるタイプIII分泌蛋白質の欠損株を用いて、前記実施例6と同様の溶血試験によって溶血活性を求め、各菌株の親株と比較した。その結果を第27図に示した。
第27図に示されるように、赤痢菌、サルモネラ菌およびボルデテラ菌(Bordetella bronchiseptica)の親株を100%としたとき、各菌株におけるタイプIII分泌機構とタイプIII分泌機構の欠損株の溶血活性は極度に阻害された。すなわち、赤痢菌においてタイプIII分泌蛋白質の欠損株である赤痢菌ipaC欠損株では、溶血活性が著しく減少した。また、サルモネラ菌のタイプIII分泌機構の欠損株である、サルモネラinvA欠損株およびボルデテラ菌のタイプIII分泌機構の欠損株である、ボルデテラbscN欠損株においても、前記赤痢菌ipaC欠損株と同様に溶血活性が著しく減少した。これらのことから、サルモネラ菌、赤痢菌、並びにBordetella bronchisepticaにおいても、検出の根幹となる溶血活性は、タイプIII分泌機構およびそのタイプIII分泌蛋白質に依存していることを示すものである。これらの結果より本検出法は、EPECのタイプIII分泌機構に限定されるものではなく、他のタイプIII分泌機構を保持する細菌を試験菌として使用可能であることを示すものである。
実施例8
本検出法の評価
前記の実施例7から明らかなように、本検出法はタイプIII分泌機構およびそれから分泌するタイプIII分泌蛋白質に依存していることを示すものであり、かつ、試験菌としてEPEC株に限定されないことを示した。前述したようにタイプIII分泌機構を阻害する物質は、これまで効率的な検出法が確立されていないことから開発がなされていない。このような理由から、現在使用されている抗生物質を本検出法に適用して、その評価を行った。
使用した抗生物質はテトラサイクリンである。テトラサイクリンは細菌のリボソームの30Sサブユニットに結合することによって蛋白質合成を阻害する。このような蛋白質合成阻害により、タイプIII分泌機構を構成する蛋白質も合成されないことから、テトラサイクリンはタイプIII分泌機構を介した溶血活性を阻害するものと推定された。
そこで、メタノール溶液にテトラサイクリンを125μg/mlとなるように調製して、これを評価試料として実施例1から5までの一連の検出法を実施した。すなわち、試験菌としてEPEC cesT欠損株を用いて、バクテリアと赤血球懸濁液の混合液を作製した。この混合液100μlに対してメタノール溶液に溶かしたテトラサイクリン溶液を5μl加えて、赤血球とバクテリアの接触を高めるために遠心した。遠心後、マイクロプレートを37℃で約90分間反応後、実施例4に従って阻害率を求めた。
試験菌にテトラサイクリンを加えていない無添加の溶血活性を100%とし、テトラサイクリンを添加したものの溶血活性の試験結果を第28図に示した。第28図から明らかなように、テトラサイクリンは顕著に溶血活性を阻害した。更に、実施例4における阻害率の算出法によりテトラサイクリンの阻害率を求めたところ下記の結果が得られた。
100−[(0.13−0.07)/(1.30−0.07)×100]
=95.1%。
尚、テトラサイクリンの反応溶液中の終濃度は、6μg/mlという低濃度にも関わらず、溶血活性をほぼ100%まで阻害する結果が得られた。このように細菌の蛋白質合成阻害剤の添加で、タイプIII分泌機構の構成蛋白質の合成が阻害されると、溶血活性が著しく阻害されたことが確認された。
以上の結果より、本検出法にてタイプIII分泌機構ならびにタイプIII分泌機構によって分泌される蛋白質の機能を阻害する物質の評価検定が可能であることを示すものである。しかしながら、前記したように、テトラサイクリンは正常な腸内細菌叢まで殺菌してしまうという欠点があることはいうまでもまい。
産業上の利用可能性
本発明は、バクテリアのタイプIII分泌機構ならびにそれから分泌されるタイプIII分泌蛋白質の機能を阻害する物質を、動物の感染実験を行わずに、赤血球の溶血活性を指標として数値化し、短時間に多くの試料の処理が可能であることから、医薬品の開発等に有利な方法である。
【図面の簡単な説明】
第1図はEPEC cesT欠損株の作製に用いられる組換えプラスミドの構築図である。
第2図は第1図の組換えプラスミドの構築に際して用いられる遺伝子を増幅するためのプライマーセットである。
第3図は第1図の組換えプラスミドの構築に際して用いられるリバースPCR法によって終止コドンとBamHI部位を挿入するためのプライマーセットである。
第4図はEPEC sepB欠損株の作製に用いられる組換えプラスミドの構築図である。
第5図は第4図の組換えプラスミドの構築に際して用いられる遺伝子を増幅するためのプライマーセットである。
第6図は第4図の組換えプラスミドの構築に際して用いられるリバースPCR法によって終止コドンとBglII部位を挿入するためのプライマーセットである。
第7図はEPEC espA欠損株の作製に用いられる組換えプラスミドの構築図である。
第8図は第7図の組換えプラスミドの構築に際して用いられる遺伝子を増幅するためのプライマーセットである。
第9図は第7図の組換えプラスミドの構築に際して用いられるリバースPCR法によって終止コドンとBglII部位を挿入するためのプライマーセットである。
第10図はEPEC espB欠損株の作製に用いられる組換えプラスミドの構築図である。
第11図は第10図の組換えプラスミドの構築に際して用いられる遺伝子を増幅するためのプライマーセットである。
第12図は第10図の組換えプラスミドの構築に際して用いられるリバースPCR法によって終止コドンとBglII部位を挿入するためのプライマーセットである。
第13図はEPEC espD欠損株の作製に用いられる組換えプラスミドの構築図である。
第14図は第13図の組換えプラスミドの構築に際して用いられる遺伝子を増幅するためのプライマーセットである。
第15図は第13図の組換えプラスミドの構築に際して用いられるリバースPCR法によって終止コドンとBamHI部位を挿入するためのプライマーセットである。
第16図は赤痢菌ipaC欠損株の作製に用いられる組換えプラスミドの構築図である。
第17図は第16図の組換えプラスミドの構築に際して用いられる遺伝子を増幅するためのプライマーセットである。
第18図は第16図の組換えプラスミドの構築に際して用いられるリバースPCR法によって終止コドンとBamHI部位を挿入するためのプライマーセットである。
第19図はサルモネラinvA欠損株の作製に用いられる組換えプラスミドの構築図である。
第20図は第19図の組換えプラスミドの構築に際して用いられる遺伝子を増幅するためのプライマーセットである。
第21図は第19図の組換えプラスミドの構築に際して用いられるリバースPCR法によって終止コドンとXbaI部位を挿入するためのプライマーセットである。
第22図ボルデテラbscN欠損株の作製に用いられる組換えプラスミドの構築図である。
第23図は第22図の組換えプラスミドの構築に際して用いられる遺伝子を増幅するためのプライマーセットである。
第24図は第22図の組換えプラスミドの構築に際して用いられるリバースPCR法によって終止コドンとBglII部位を挿入するためのプライマーセットである。
第25図はEPEC野性株とEPEC cesT欠損株、EPEC sepB欠損株、EPEC espA欠損株、EPEC espB欠損株、EPECespD欠損株における溶血活性を百分率にて比較したものである。
第26図はEPEC野性株とタイプIII分泌機構を有する他の菌属の赤痢菌、サルモネラ菌、緑膿菌ならびにボルデテラ菌における溶血活性をEPEC野性株の溶血活性を100%として比較したものである。
第27図はタイプIII分泌機構を保持する赤痢菌と赤痢菌ipaC欠損株、サルモネラ菌とサルモネラinvA欠損株、ボルデテラ菌とボルデテラbscN欠損株における溶血活性の比較である。
第28図は試験菌に抗生物質を加えない無添加の溶血活性と抗生物質添加における溶血活性の阻害をあらわした比較である。
Claims (7)
- タイプIII分泌機構を有するバクテリアと赤血球懸濁液を混合し、これにタイプIII分泌機構阻害剤を加えることによって生ずる溶血活性の変化を検出することことを特徴とする、タイプIII分泌機構阻害剤の検出法。
- タイプIII分泌機構を有するバクテリアと赤血球懸濁液を混合し、これにタイプIII分泌機構によって分泌される蛋白質の機能を阻害する物質を加えることによって生ずる溶血活性の変化を検出することを特徴とする、タイプIII分泌機構の分泌蛋白質の機能を阻害する物質の検出法。
- 請求の範囲1によって生じる溶血活性を比色定量によって検出することを特徴とする請求の範囲第1項に記載の検出法。
- 請求の範囲2によって生じる溶血活性を比色定量によって検出することを特徴とする請求の範囲第2項に記載の検出法。
- バクテリアが、サルモネラ菌、緑膿菌、赤痢菌、病原血清型大腸菌およびボルデテラ菌である請求の範囲第1項に記載の検出法。
- バクテリアが、サルモネラ菌、緑膿菌、赤痢菌、病原血清型大腸菌およびボルデテラ菌である請求の範囲第2項に記載の検出法。
- サルモネラ菌がSalmonella typhimurium SB147、赤痢菌がShigella flexneri TK001、病原血清型大腸菌がEnteropathogenic Escherichia coli cesT変異株、Enteropathogenic Escherichia coli sepB欠損株、Enteropathogenic Escherichia coli espA欠損株、Enteropathogenic Escherichia coli espB欠損株およびEnteropathogenic Escherichia coli espD欠損株である請求の範囲第1項、第2項、第3項または第5項のいずれかに記載の検出法。
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