JPWO2002102833A1 - 新規エンドモルフィン誘導体 - Google Patents

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Abstract

エンドモルフィン−1およびエンドモルフィン−2の、2位のアミノ酸Proを1−アミノシクロプロパンカルボン酸と置換することにより、オピオイド受容体に強い親和性と選択性を有し、鎮痛、抗不安、緊張緩和などの生理活性と、タンパク質分解酵素抵抗性を有する新規エンドモルフィン誘導体を得ることに成功した。

Description

技術分野
本発明は、鎮痛、抗不安、緊張緩和などの生理活性を有する新規エンドモルフィン誘導体又はその生理学的に許容される塩並びにその誘導体およびその生理学的に許容される塩を含有してなる医薬に関する。
背景技術
モルヒネをはじめとするアヘンアルカロイドについては古くから鎮痛作用や陶酔感などの精神作用を有することが知られていた。
1971年Goldsteinらは、哺乳動物の神経組織中にモルヒネと特異的に結合する受容体、オピオイド受容体が存在することを明らかにした〔A.Goldstein,L.I.Lowney and B.K.Pal,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,68,1742(1971)〕。
そして、1975年には、Hughesらにより、脳内のモルヒネ受容体と特異的に結合する内因性リガンド、メチオニンエンケファリンおよびロイシンエンケファリンの2種のペンタペプチドが発見された〔J.Hughes,T.W.Smith,H.W.Kosterlitz,L.A.Fothergill,B.A.Morgan and R.H.Morris,Nature,258,577(1975)〕。1979年には、Goldsteinらが、ブタの下垂体からオピオイド受容体と特異的に結合するダイノルフィンを単離した〔A.Goldstein,S.Tachibana,L.I.Lowney,M.Hunkapiller and L.Hood,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,76,6666(1979)〕。それ以来多くの内因性オピオイドペプチドが、下垂体、脳、副腎髄質、消化管を含む末梢組織などに存在することが明らかにされた。
オピオイド受容体は主として、μ、δ、κのサブタイプに分類されている。δ受容体はエンケファリン、κ受容体はダイノルフィンが内因性アゴニストとして同定されている。
μ受容体のアゴニストとしてはモルヒネが最強のものであるが、その内因性アゴニストが1997年、Zadinaらによってウシの脳から発見され、エンドモルフィン−1(Tyr−Pro−Trp−Phe−NH)とエンドモルフィン−2(Tyr−Pro−Phe−Phe−NH)と命名された〔J.E.Zadina,L.Hackler,L.J.Ge and A.J.Kastin,Nature,386,499(1997)〕。
これらのエンドモルフィンは同年、同グループによりヒトの脳からも単離された〔L.Hackler,J.E.Zadina,L.J.Ge and A.J.Kastin,Peptides,18,1635(1997)〕。
エンドモルフィン−1のμ受容体に対する選択性はκ受容体に比べ15000倍以上であり、また、エンドモルフィン−2はδ受容体に比べ13000倍以上であり、マウスにおける鎮痛作用も強力で長時間持続すると報告され〔J.E.Zadina,L.Hackler,L.J.Ge and A.J.Kastin,Nature,386,499(1997)〕、非常に注目されると同時に活発な研究が展開されている。
エンドルモルフィン−1とエンドモルフィン−2はともに類似した鎮痛活性を持ち、動脈の血圧を減少させる〔H.C.Champion,J.E.Zadina,A.J.Kastin,L.Hackler,L.J.Ge,P.J.Kadowitz.Biochem.Biophys.Res.Commun.,235,567(1997);Y.R.Yang,T.H.Chiu,C.L.Chen,Eur.J.Pharmacol.,372,229(1999)〕。
DMSO中と水中で、エンドモルフィン−1がとっている構造は、Proのアミド部分が、シス型:トランス型=25:75で存在している〔B.L.Podlogar,M.G.Paterlini,D.M.Ferguson,G.C.Leo,D.A.Demeter,F.K.Brown,A.B.Reita,FEBS Lett.,439,12(1998)〕。
エンドモルフィン−2のアナローグとしては、岡田らにより、H−Tyr−Pro−Phe−NH−2−アダマンチルが報告されている。
これはμ受容体に対する親和性が、Ki=6.59±0.06nM、δ受容体の親和性のμ受容体に対する選択性、Ki(δ)/Ki(μ)=844という高い値を示している(Y.Shimizu,M.Takahashi,A.Fukumizu,Y.Tsuda,S.D.Bryant,L.H.Lazarus and Y.Okada,Peptide Science 1998,197(1999))。
同グループは、Tyr−Pro−Phe−NH−1−ナフチルがさらに高活性、高選択性を示すことを明らかにした。即ち、μ受容体に対する親和性が、Ki=2.41±0.5nM、δ受容体に対する親和性が、Ki=3634±1265nMであり、δ受容体の親和性のμ受容体に対する選択性が、Ki(δ)/Ki(μ)=1507というさらに高い値を示した(M.Takahashi,A.Fukumizu,Y.Shimizu,Y.Tsuda,T.Yokoi,S.D.Bryant,L.H.Lazarus and Y.Okada,Peptide Science 1999,437(2000))。
下東らは、エンドモルフィン−1およびエンドモルフィン−2アナローグのオピオイド受容体との結合における芳香環の寄与について検討した。エンドモルフィン−2の3位のフェニル基を種々の置換基に換えて検討した結果、2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニルアラニン((F)Phe)に置換したアナローグ[(F)Phe−エンドモルフィン−2]が、天然物に匹敵する高い受容体結合活性を維持していることを見出した(T.Honda,D.Shigehiro,N.Shirasu,Y.Chuman,T.Fujita,T.Nose and Y.Shimohigashi,Peptide Science 1999,429(2000))。また、佐々木らは、エンドモルフィン−2の3位のPheをL−Dmp(2′,6′−ジメチルフェニルアラニン)に置換したアナローグを合成し、μ受容体に対する親和性が天然物の約20倍強くなったと報告した(Y.Sasaki,A.Ambo,H.Murase,M.Hirabuki,H.Ouchi and Y.Yamamoto,Peptide Science 2000,117(2001))。
ところで、異常アミノ酸であるα,α−二置換グリシンは、立体配座固定因子として様々な生理活性ペプチドに導入する研究が行われている。
すなわち、生理活性ペプチドの作用機構は、受容体との結合において、ある特定のコンホメーションが保たれ、複合体を形成し、活性を発現すると考えられており、その活性型コンホメーションを固定するビルディング・ブロックとしてα,α−二置換グリシンの立体配座固定因子としての性質を利用することが試みられているのである。
発明の開示
本発明者は、このα,α−二置換グリシン及びそれを含むペプチドの合成と、その立体化学及びペプチドの生理活性への影響について研究を重ねてきたが、今回エンドモルフィン−1及びエンドモルフィン−2にα,α−二置換グリシンを導入し、得られたペプチドのコンホメーション、タンパク質分解酵素に対する抵抗性、生理活性の強弱、オピオイド受容体の各サブタイプへの親和性、選択性などについて綿密な検討を行い、それらの医薬としての可能性を探った。
さらに、エンドモルフィン−2にα,α−二置換グリシンを導入するとともに3位のPheをD体またはL体(D/L)の2′,6′−ジメチルフェニルアラニン(D/L−Dmpと表記することがある。)に置換したものについても医薬としての可能性を検討した。
その結果、エンドモルフィン−1及びエンドモルフィン−2の2位のアミノ酸であるProをα,α−二置換グリシンの1種である1−アミノシクロプロパンカルボン酸(Acと表記することがある。)に置換した新規ペプチドが、強い生理活性、μ受容体に対する高い親和性及び選択性を示し、且つタンパク質分解酵素に対して強い抵抗性を示すことが判明した。本発明はこれらの知見を基にして完成されたものである。
すなわち、本発明は、
(1)一般式〔I〕
Figure 2002102833
(式中YはTrp、PheまたはD/L−2′,6′−ジメチルフェニルアラニンを示す。)
で表されるエンドモルフィン誘導体又はその生理学的に許容される塩、
(2)一般式〔I〕中、YがTrpである(1)記載のエンドモルフィン誘導体又はその生理学的に許容される塩、
(3)一般式〔I〕中、YがPheである(1)記載のエンドモルフィン誘導体又はその生理学的に許容される塩、
(4)一般式〔I〕中、YがD/L−2′,6′−ジメチルフェニルアラニンである(1)記載のエンドモルフィン誘導体又はその生理学的に許容される塩、
(5)(1)記載の一般式〔I〕で表されるエンドモルフィン誘導体又はその生理学的に許容される塩を含有してなる医薬、
(6)鎮痛剤である(5)記載の医薬、および
(7)上記(1)〜(4)のいずれかに記載のエンドモルフィン誘導体又はその生理学的に許容される塩および製薬学的に許容される担体を含有する医薬組成物である。
一般式〔I〕で表される化合物の1つは、
(1)Tyr−Acc−Trp−Phe−NH
で示される新規化合物で、本明細書において[Ac]−エンドモルフィン−1と表記する。
他の1つの化合物は、
(2)Tyr−Acc−Phe−Phe−NH
で示される新規化合物で、本明細書において[Ac]−エンドモルフィン−2と表記する。
さらに他の化合物は、
(3)Tyr−Acc−D/L−Dmp−Phe−NH
で示される新規化合物である。なお本明細書において実施例の製造工程で分離されたジアステレオマーの結晶AおよびBから生成されるものを、それぞれ[Ac,Dmp(A)]−エンドモルフィン−2および[Ac,Dmp(B)]−エンドモルフィン−2とも表記する。
本発明の化合物は、公知のペプチド合成法に準じて製造する事ができる。例えば、下記一般反応式により液相法を用いてN端伸張法で製造することができる。
Figure 2002102833
なお上記反応式および本明細書における各記号の意義は次の通りである。
Y:Trp、PheまたはD/L−2′,6′−ジメチルフェニルアラニン
A:アミノ基の保護基(ベンジルオキシカルボニル(Z)、tert−ブトキシカルボニル(Boc))
Bzl:ベンジル基
EDC:1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド
EDC・HCl:1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸塩
HOBt:1−ヒドロキシベンゾトリアゾール
Z−OSu:N−(ベンジルオキシカルボニル)スクシンイミド
TEA:トリエチルアミン
DMF:N,N−ジメチルホルムアミド
MeOH:メタノール
EtOH:エタノール
BuOH:1−ブタノール
AcOEt:酢酸エチル
EtO:ジエチルエーテル
THF:テトラヒドロフラン
AcOH:酢酸
CHCl:クロロホルム
HCl:塩酸
HBr:臭化水素酸
Pd−C:パラジウム−炭素
TFA:トリフルオロ酢酸
DMSO:ジメチルスルホキシド
上記式中、カップリングには例えばEDC−HOBt法などを、脱保護には例えばHBr/AcOHまたは接触水素化分解法などを用いることができる。
本発明の新規エンドモルフィン誘導体は、そのまま、あるいは、生理学的に許容される塩として、使用することができる。生理学的に許容される塩としては、例えば、塩酸、硫酸、炭酸などの鉱酸の塩、酢酸、クエン酸などの有機酸の塩が挙げられる。
本発明の新規エンドモルフィン誘導体及び生理学的に許容される塩は、オピオイド受容体のアゴニストであり、したがって、鎮痛、抗不安、緊張緩和などモルヒネが使用される全ての医薬用途への使用が可能である。
本発明のエンドモルフィン誘導体及び生理学的に許容される塩を含有する医薬は、全身的または局所的に投与され得る。全身的には経口投与の他、静脈内注射、皮下注射、筋肉内注射などの非経口法で投与され得る。局所的には鼻内、眼内などに投与される。
本発明のエンドモルフィン誘導体及び生理学的に許容される塩を含有する医薬の製剤形態としては、粉末、顆粒、錠剤、カプセル剤、坐剤などの固形剤、およびシロップ剤、注射剤、点眼剤、点鼻剤などの液剤などが挙げられる。
ヒトに経口的に投与される製剤としては、たとえば粉、顆粒、錠剤、カプセル剤、シロップ剤および液剤などが挙げられる。製剤が粉末、顆粒、錠剤などとして製造される場合、固形製剤を製造するのに好適な任意の製薬担体、たとえば賦形剤(デンプン、トウモロコシデンプン、ブドウ糖、果糖、白糖など)、滑沢剤(ステアリン酸マグネシウムなど)、崩壊剤(デンプン、結晶セルロースなど)、結合剤(デンプン、アラビアゴムなど)などを用いることができ、適当なコーティング剤(ゼラチン、白糖、アラビアゴム、カルナバロウなど)、腸溶性コーティング剤(例えば酢酸フタル酸セルロース、メタアクリル酸コポリマー、ヒドロキシプロピルセルロースフタレート、カルボキシメチルエチルセルロースなど)などで剤皮を施してもよい。さらに、持続性製剤のためのコーティング剤として、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリオキシエチレングリコール、ツイーン80、プルロニックF68、セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシメチルセルロースアセテートサクシネート、オイドラギット(ローム社製、ドイツ,メタアクリル酸・アクリル酸共重合)などが用いられる。カプセル剤とする場合には、適当な賦形剤、例えば流動性と滑沢性を向上させるためのステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、軽質無水ケイ酸など、また加圧流動性のための結晶セルロースや乳糖などの他、上記崩壊剤などを適宜添加したものを均等に混和または、粒状、若しくは粒状としたものに適当な上記コーティング剤で剤皮を施したものを充填するか、適当なカプセル基剤(ゼラチンなど)にグリセリンまたはソルビトールなど加えて塑性を増したカプセル基剤で被包成形することもできる。
これらカプセル剤には必要に応じて、着色剤、保存剤〔二酸化イオウ、パラベン類(パラオキシ安息香酸メチル、エチル、プロピルエステル)など〕などを加えることができる。カプセル剤は通常のカプセルの他、腸溶コーティングカプセル、胃内抵抗性カプセル、放出制御カプセルとすることもできる。腸溶性カプセルとする場合、腸溶性コーティング剤でコーティングした顆粒等を通常のカプセルに充填または、カプセル自身を腸溶性コーティング剤でコーティング、もしくは腸溶性高分子を基剤として成形することができる。また、製剤がシロップや液剤として製造される場合、たとえば安定剤(エデト酸ナトリウムなど)、懸濁化剤(アラビアゴム、カルメロースなど)、矯味剤(単シロップ、ブドウ糖など)、芳香剤などを適宜に選択して使用することができる。
非経口的に製造される製剤としては、注射剤、点眼剤、点鼻剤、坐剤などが挙げられる。製剤が注射剤として製造される場合、たとえば溶剤(注射用蒸留水など)、安定化剤(エデト酸ナトリウムなど)、等張化剤(塩化ナトリウム、グリセリン、マンニトールなど)、pH調整剤(塩酸、クエン酸、水酸化ナトリウムなど)、懸濁化剤(メチルセルロース、カルボキシルメチルセルロースナトリウムなど)を用いることができ、坐剤として製造される場合、たとえば坐剤基剤(カカオ脂、マクロゴールなど)などを適宜に選択して使用することができる。局所用製剤としては、たとえば点眼剤、点鼻剤および眼軟膏などが挙げられる。これら局所用製剤には本発明化合物に加えて、たとえば溶剤(生理食塩水、精製水など)、緩衝剤(ホウ酸、ホウ砂、酢酸ナトリウム、クエン酸緩衝剤、リン酸緩衝剤など)、等張化剤(塩化ナトリウム、グリセリン、マンニトールなど)、安定化剤(エデト酸ナトリウム、クエン酸など)、保存剤(塩化ベンザルコニウムなどの4級アンモニウム塩類、パラベン類、クロロブタノール、ソルビン酸など)pH調整剤(塩酸、水酸化ナトリウムなど)、懸濁化剤(ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロースなど)、界面活性剤(ポリソルベート80、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油など)、乳化剤(ポリビニルピロリドンなど)、軟膏基剤(ワセリン、ラノリンなど)などの公知の化合物を適宜に選択して使用することができる。
本発明の新規エンドモルフィン誘導体及び生理学的に許容される塩を含む医薬は、低毒性で、動物とりわけ哺乳動物(例えば、ヒト、イヌ、ウサギ、ラット、マウスなど)のモルヒネが使用される全ての疾患の予防または治療に有利に使用される。
人への投与量は、年令、体重、一般的健康状態、性別、食事、投与時間、投与方法、排泄速度、薬物の組み合わせ、患者のその時に治療を行っている病状の程度に応じ、それらあるいはその他の要因を考慮して決められる。
例えば、本発明の化合物を鎮痛剤として成人(体重50Kg)に経口投与または静脈注射する場合は、1回0.1〜20mg、好ましくは、1〜10mgを1日1〜3回、経口持続製剤の場合は、1日1〜20mg程度である。
なお、本明細書において、アミノ酸を略号で表示する場合、IUPAC−IUB Commision on Biochemical Nomenclatureによる略号あるいは当該分野における慣用略号に基づいており、その例を下記する。またアミノ酸に関し光学異性体があり得る場合は、特に明示しなければL体を示すものとする。
Phe:フェニルアラニン
Tyr:チロシン
Trp:トリプトファン
Pro:プロリン
Xaa:1−アミノシクロプロパンカルボン酸またはD/L−2′,6′−ジメチルフェニルアラニン
本願明細書の配列表の配列番号は、以下の配列を示す。
〔配列番号:1〕エンドモルフィン−1のアミノ酸配列。
〔配列番号:2〕エンドモルフィン−2のアミノ酸配列。
〔配列番号:3〕[Ac]−エンドモルフィン−1のアミノ酸配列。
〔配列番号:4〕[Ac]−エンドモルフィン−2のアミノ酸配列。
〔配列番号:5〕[Ac,Dmp]−エンドモルフィン−2のアミノ酸配列。
発明を実施するための最良の形態
以下に実施例、製剤例、試験例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
実施例1
[Ac]−エンドモルフィン−2の合成
1−1 Z−Accの合成
Acc 3.04g(30mmol)を水15mLに溶解させ、TEA 6.16g(61mmol)を加え、ジオキサン30mLに溶解させたZ−OSu 10.0g(40mmol)を加え、常温で攪拌した。4日後TLC[展開溶媒;CHCl−MeOH−AcoH(95:15:3)]で反応終了を確認した。減圧濃縮後、AcOEt 100mLを加え、6N−HClで水層をpH2にし、AcOEt(50mLx2)で抽出を行った。水(50mLx1)、飽和食塩水(40mLx2)で順次洗浄を行い、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、これを濾別、減圧濃縮し白色粗結晶8.34g(118%)を得た。AcOEtから再結晶し、Z−Accを得た。
収量5.98g,収率84.5%,融点152−153℃.
H−NMR(300MHz,DMSO−d):δ(ppm)=0.99(q,2H,J=4.5Hz,Acc−βCH),1.30(q,2H,J=4.4Hz,Acc−βCH),5.00(s,2H,Z−CH),7.34(s,5H,Z−arom),7.88(s,1H,Acc−NH),12.4(br,1H,Acc−OH).
1−2 Z−Phe−NHの合成
滴下漏斗と温度計を備えた二口フラスコにZ−Phe 29.9g(0.10mol)および無水THF 300mLを入れ、TEA 11.6g(0.11mol)を加え攪拌し、氷−食塩浴で−15〜−10℃を保ちながらエチルクロロホルメート12.4g(0.11mol)を滴下した。その後も−15℃を30分間保った。次に25%アンモニア水40mLを少しずつ加え、常温下で22時間攪拌した。これを減圧濃縮し、水200mLを加え、結晶を濾別し、水洗を行い、乾燥させ、白色粗結晶30.2g(101%)を得た。これをMeOH−EtOから再結晶して、Z−Phe−NHを得た。
収量20.4g,収率68.5%,融点164−165℃,[α] 25−5.9°(c1.0,MeOH).
H−NMR(300MHz,DMSO−d):δ(ppm)=2.73(dd,1H,J=10.5Hz,J=13.8Hz,Phe−βCH),2.98(dd,1H,J=4.4Hz,J=13.6Hz,Phe−βCH),4.13−4.21(m,1H,Phe−αCH),4.93(s,2H,Z−CH),7.06−7.46(m,13H,Z−arom,Phe−arom,Phe−NH,amide).
1−3 Z−Phe−NHのZ基の除去
Z−Phe−NH 11.4g(38mmol)に25%HBr/AcOH 40.4gを加えた。10分後、TLC[展開溶媒;CHCl−MeOH−AcOH(95:15:3)]によりZ基の除去を確認後、無水EtOを加えて一晩おき、無水EtOで洗浄してから乾燥させ、白色粗結晶11.4g(99.8%)を得た。これを無水MeOH−無水EtOから再結晶をし、Phe−NH・HBrを得た。
収量8.57g,収率91.6%,融点238℃(dec),[α] 25+18.8°(c1.0,MeOH).
H−NMR(300MHz,DMSO−d):δ(ppm)=2.97(dd,1H,J=7.6Hz,J=14.0Hz,Phe−βCH),3.09(dd,1H,J=6.0Hz,J=13.8Hz,Phe−βCH),3.96(q,1H,J=6.3Hz,Phe−αCH),7.23−7.36(m,5H,Phe−arom),7.56(s,1H,amide),7.90(s,1H,amide),8.10(s,3H,BrNH).
1−4 Z−Phe−Phe−NHの合成
Z−Phe 9.55g(32mmol)、Phe−NH・HBr 7.80g(32mmol)およびHOBt 4.4g(32mmol)をDMF 96mLに溶解し、TEA 4.0g(40mmol)を加え、氷冷し、EDC・HCl 6.8g(35mmol)を加え、1時間攪拌後常温に戻して、さらに2日間攪拌した。減圧濃縮後、AcOEt 300mLを加えた。この際結晶が析出するが、懸濁したまま洗浄操作をした。1N−HCl(30mLx5)、1N−炭酸水素ナトリウム水溶液(30mLx5)、水(30mLx1)、飽和食塩水(30mLx2)で順次洗浄を行い、析出している白色結晶を濾別し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、これを濾別、減圧濃縮し、得られた結晶を先に析出していた結晶とあわせて[15.7g(110%)]、MeOHから再結晶して、Z−Phe−Phe−NHを得た。
収量11.4g,収率80.1%,融点225−226.5℃,[α] 25−31.7°(c1.0,DMF).
H−NMR(300MHz,DMSO−d):δ(ppm)=2.62−3.04(m,4H,Phe−βCHx2),4.18−4.25(m,1H,Phe−αCH),4.42−4.49(m,1H,Phe−αCH),4.92(s,2H,Z−CH),7.10−7.32(m,17H,Z−arom,Phe−aromx2,amide),7.48(d,1H,J=8.4Hz,Phe−NH),8.02(d,1H,J=8.1Hz,Phe−NH).
1−5 Z−Phe−Phe−NHのZ基の除去
Z−Phe−Phe−NH 7.05g(16mmol)に25%HBr/AcOH 23.2gを加えよく混ぜ合わせた。1.5時間後、TLC[展開溶媒;CHCl−MeOH−AcOH(95:15:3)]によりZ基の除去を確認し、無水EtOを加えてデカンテーションを行い、得られた固体を一端乾燥させ、これを無水MeOH−無水EtOで再沈殿して、Phe−Phe−NH・HBrを得た。
収量6.16g,収率99.6%,融点245℃(dec).
H−NMR(300MHz,DMSO−d):δ(ppm)=2.82−3.16(m,4H,Phe−βCHx2),4.02(br,1H,Phe−αCH),4.47−4.54(m,1H,Phe−αCH),7.16(s,1H,amide),7.18−7.33(m,10H,Phe−aromx2),7.55(s,1H,amide),8.04(s,3H,BrNH),8.75(d,1H,J=8.1Hz,Phe−NH).
1−6 Z−Acc−Phe−Phe−NHの合成
Z−Acc 0.825g(3.5mmol)、Phe−Phe−NH・HBr 1.39g(3.5mmol)およびHOBt 0.50g(3.7mmol)をDMF 13mLに溶解し、TEA 0.40g(3.9mmol)を加え、氷冷し、EDC・HCl 0.76g(4.0mmol)を加え、1時間攪拌後常温に戻して、さらに6日間攪拌した。減圧濃縮後、AcOEt 400mLを加え、1N−HCl(40mLx5)、1N−炭酸水素ナトリウム水溶液(40mLx5)、水(40mLx1)、飽和食塩水(40mLx2)で順次洗浄を行い、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、これを濾別、減圧濃縮し、粗生成物1.85g(99.6%)を得た。これをMeOHから再結晶し、Z−Acc−Phe−Phe−NHを得た。
収量1.38g,収率74.7%,融点202−203℃,[α] 25−29.4°(c1.0,MeOH).
H−NMR(300MHz,DMSO−d):δ(ppm)=0.83−0.93(m,2H,Acc−βCH),1.11−1.22(m,2H,Acc−βCH),2.78−3.05(m,4H,Phe−βCHx2),4.38−4.49(m,2H,Phe−αCHx2),5.02(s,2H,Z−CH),7.10−7.34(m,17H,Z−arom,Phe−aromx2,amide),7.51(d,1H,J=7.8Hz,Phe−NH),7.95(s,1H,Acc−NH),8.13(d,1H,J=8.7Hz,Phe−NH).
1−7 Z−Acc−Phe−Phe−NHのZ基の除去
Z−Acc−Phe−Phe−NH 1.03g(2.0mmol)に25%HBr/AcOH 4.0gを加え、1.5時間後、TLC[展開溶媒;CHCl−MeOH−AcOH(95:15:3)]によりZ基の除去を確認し、無水EtOを加えてデカンテーションを行い、得られた固体を一端乾燥させ、無水MeOH−無水EtOで再沈殿して、Acc−Phe−Phe−NH・HBrを得た。
収量1.03g,収率100%,融点147℃(dec).
H−NMR(300MHz,DMSO−d):δ(ppm)=1.05−1.23(m,3H,Acc−βCH),1.44−1.52(m,1H,Acc−βCH),2.69−3.03(m,4H,Phe−βCHx2),4.42−4.60(m,2H,Phe−αCHx2),7.10(s,1H,amide),7.17−7.30(m,10H,Phe−aromx2),7.45(s,1H,amide),7.70(d,1H,J=8.4Hz,Phe−NH),8.16(d,1H,J=7.8Hz,Phe−NH),8.34(t,3H,J=12.9Hz,BrNH).
1−8 Z−Tyr(Bzl)−Acc−Phe−Phe−NHの合成
Z−Tyr(Bzl)0.810g(2.0mmol)、Acc−Phe−Phe−NH・HBr 1.03g(2.0mmol)およびHOBt 0.27g(2.0mmol)をDMF 12mLに溶解し、TEA 0.22g(2.2mmol)を加え、氷冷し、EDC・HCl 0.42g(2.2mmol)を加えた。1時間攪拌後常温に戻して、さらに5日間攪拌した。減圧濃縮後、AcOEt 500mLを加え、1N−HCl(50mLx5)、1N−炭酸水素ナトリウム水溶液(50mLx5)、水(50mLx1)、飽和食塩水(50mLx2)で順次洗浄を行い、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、これを濾別、減圧濃縮し、粗結晶1.52g(97.4%)を得た。これを[MeOH−AcOEt(4:7)]から再結晶し、Z−Tyr(Bzl)−Acc−Phe−Phe−NHを得た。
収量959mg,収率61.4%,融点207−209℃,[α] 25−21.2°(c1.0,DMF).
H−NMR(300MHz,DMSO−d):δ(ppm)=0.56−0.73(m,2H,Acc−βCH),1.05−1.18(m,2H,Acc−βCH),2.68−3.03(m,6H,Tyr−βCH,Phe−βCHx2),4.02−4.11(m,1H,Tyr−αCH),4.33−4.42(m,2H,Phe−αCHx2),4.89,4.99(ABq,2H,J=12.5Hz,Z−CH),5.05(s,2H,Bzl−CH),6.88(d,2H,J=8.4Hz,Tyr−3,5−H),7.08−7.43(m,25H,Z−arom,Bzl−arom,Phe−aromx2,Tyr−2,6−H,amide,Tyr−NH),7.67(d,1H,J=6.0Hz,Phe−NH),7.96(d,1H,J=7.8Hz,Phe−NH),8.67(s,1H,Acc−NH).
1−9 Z−Tyr(Bzl)−Acc−Phe−Phe−NHのZ基とBzl基の除去
Z−Tyr(Bzl)−Acc−Phe−Phe−NH 199mg(0.26mmol)をDMF 2mLおよびBuOH 1mLに溶解し、10%Pd−C 40mgを加えて水素気流を流しながら攪拌した。6時間後、TLC[展開溶媒;CHCl−MeOH(2:1)]で反応終了を確認し、Pd−Cを濾別後、減圧濃縮し粗生成物129mg(94.2%)を得た。これをPTLC[展開溶媒;CHCl−MeOH(6:1)]により精製し、[Ac]−エンドモルフィン−2を得た。
収量90.9mg,収率66.3%,無定形固体,[α] 25−26.9°(c0.2,DMF).
H−NMR(300MHz,DMSO−d):δ(ppm)=0.69−1.22(m,4H,Acc−βCHx2),1.76(br,2H,Tyr−NH),2.42−2.48(m,1H,Tyr−βCH),2.68(dd,1H,J=5.5Hz,J=13.0Hz,Tyr−βCH),2.80−3.04(m,4H,Phe−βCHx2),3.38−3.47(m,1H,Tyr−αCH),4.34−4.42(m,2H,Phe−αCHx2),6.63(d,2H,J=8.1Hz,Tyr−3,5−H),6.93(d,2H,J=7.8Hz,Tyr−2,6−H),7.10−7.28(m,12H,Phe−aromx2,amide),7.44(d,1H,J=7.5Hz,Phe−NH),8.05(d,1H,J=8.4Hz,Phe−NH),8.30(s,1H,Acc−NH),9.17(s,1H,Tyr−OH).
実施例2
[Ac]−エンドモルフィン−1の合成
2−1 Z−Trp−Phe−NHの合成
Z−Trp 3.40g(10mmol)、Phe−NH・HBr 2.44g(10mmol)およびHOBt 1.65g(12mmol)をDMF 25mLに溶解し、TEA 1.5mL(11mmol)を加え、氷冷し、EDC 2mL(11mmol)を加え、1時間攪拌後常温に戻して、さらに一日攪拌した。減圧濃縮後、AcOEt 300mLを加えた。この際、結晶が析出するが、懸濁したまま、洗浄操作をした。1N−HCl(30mLx5)、1N−炭酸水素ナトリウム水溶液(30mLx5)、水(30mLx1)、飽和食塩水(30mLx2)の順序で洗浄を行い、析出している結晶をろ別し、これを乾燥させてZ−Trp−Phe−NHを得た。
収量4.43g,収率91.5%,融点214−214.5℃,[α] 25−48.9°(c1.0,DMF).
H−NMR(300MHz,DMSO−d):δ(ppm)=2.78−3.04(m,4H,Trp−βCH,Phe−βCH),4.20−4.27(m,1H,Trp−αCH),4.43−4.51(m,1H,Phe−αCH),4.92(s,2H,Z−CH),6.93−7.58(m,18H,Z−arom,Trp Ind−CHx5,Phe−arom,amide,Trp−NH),7.99(d,1H,J=8.4Hz,Phe−NH),10.79(s,1H,Trp Ind−NH).
2−2 Z−Trp−Phe−NHのZ基の除去
Z−Trp−Phe−NH 3.87g(8mmol)をDMF 25mLに溶解し、5%Pd−C 850mgを加えて水素気流を流しながら攪拌した。2時間後、TLC[展開溶媒;CHCl−MeOH−AcOH(95:15:3)]で反応終了を確認し、Pd−Cを濾別後、減圧濃縮し、Trp−Phe−NHを得た。
収量2.8g,収率100%,融点162℃(dec).
2−3 Z−Acc−Trp−Phe−NHの合成
Z−Acc 705mg(3mmol)、H−Trp−Phe−NH 1.05g(3mmol)およびHOBt 460mg(3.4mmol)をDMF 5mLに溶解し、氷冷し、EDC 600μL(3.4mmol)を加え、1時間攪拌後常温に戻して、さらに2日間攪拌した。減圧濃縮後、AcOEt 100mLを加え、1N−HCl(10mLx5)、1N−炭酸水素ナトリウム水溶液(10mLx5)、水(10mLx2)、飽和食塩水(10mLx2)の順序で洗浄を行い、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、これを濾別、減圧濃縮し、Z−Acc−Trp−Phe−NHを得た。
収量1.61g,収率95.0%,融点115−117℃,[α] 25−37.8°(c1.0,MeOH).
H−NMR(300MHz,DMSO−d):δ(ppm)=0.84−1.25(m,4H,Acc−βCHx2),2.79−3.08(m,4H,Trp−βCH,Phe−βCH),4.37−4.50(m,2H,Trp−αCH,Phe−αCH),5.01(s,2H,Z−CH),6.92−7.39(m,16H,Z−arom,Trp Ind−CHx4,Phe−arom,amide),7.49(d,1H,J=7.8Hz,Trp Ind−CH),7.61(d,1H,J=7.8Hz,Trp−NH),7.93(s,1H,Acc−NH),8.01(d,1H,J=7.8Hz,Phe−NH),10.80(s,1H,Trp Ind−NH).
2−4 Z−Acc−Trp−Phe−NHのZ基の除去
Z−Acc−Trp−Phe−NH 1.16g(2mmol)をDMF 8mLおよびMeOH 8mLに溶解し、5%Pd−C 260mgを加えて水素気流を流しながら攪拌した。5時間後、TLC[展開溶媒CHCl−MeOH−AcOH(95:15:3)]で反応終了を確認し、Pd−Cを濾別後、減圧濃縮し、Acc−Trp−Phe−NHを得た。
収量1.2g,収率100%,油状物.
2−5 Z−Tyr(Bzl)−Acc−Trp−Phe−NHの合成
Z−Tyr(Bzl)817mg(2mmol)、H−Acc−Trp−Phe−NH 1.2g(2mmol)およびHOBt 327mg(2.4mmol)をDMF 4mLに溶解し、氷冷し、EDC 400μL(2.2mmol)を加え、1時間攪拌後常温に戻して、さらに5日間攪拌した。減圧濃縮後、AcOEt 100mLを加え、1N−HCl(10mLx5)、1N−炭酸水素ナトリウム水溶液(10mLx5)、水(10mLx2)、飽和食塩水(10mLx2)の順序で洗浄を行い、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、これを濾別、減圧濃縮し、粗生成物1.22g(73.1%)を得た。一部をPTLC[展開溶媒;トルエン−アセトン(1:1)]で精製し、Z−Tyr(Bzl)−Acc−Trp−Phe−NHを得た。
換算収量516mg,換算収率30.9%,無定形固体,[α] 25+1.9°(c1.0,MeOH).
H−NMR(300MHz,DMSO−d):δ(ppm)=0.54−0.73(m,2H,Acc−βCH),1.08−1.19(m,2H,Acc−βCH),2.74−3.13(m,6H,Tyr−βCH,Trp−βCH,Phe−βCH),3.98−4.09(m,1H,Tyr−αCH),4.33−4.41(m,2H,Trp−αCH,Phe−αCH),4.76,4.93(ABq,2H,J=12.3Hz,Z−CH),5.05(s,2H,Bzl−CH),6.88(d,2H,J=8.1Hz,Tyr−3,5−H),6.90−7.46(m,24H,Z−arom,Bzl−arom,Trp Ind−CHx5,Phe−arom,Tyr−2,6−H,amide),7.54(d,1H,J=7.5Hz,Trp−NH),7.71(d,1H,J=6.0Hz,Tyr−NH),7.84(d,1H,J=8.7Hz,Phe−NH),8.71(s,1H,Acc−NH),10.79(s,1H,Trp Ind−NH).
2−6 Z−Tyr(Bzl)−Acc−Trp−Phe−NHのZ基とBzl基の除去
Z−Tyr(Bzl)−Acc−Trp−Phe−NH 191mg(0.23mmol)をDMF 2mLに溶解させ、10%Pd−C 42mgを加えて水素気流を流しながら攪拌した。8時間後、TLC[展開溶媒;CHCl−MeOH(2:1)]で反応終了を確認し、Pd−Cを濾別後、減圧濃縮し粗生成物217mg(158%)を得た。これをPTLC[展開溶媒;CHCl−MeOH(6:1),二回反復展開]により精製し、減圧濃縮し、[Ac]−エンドモルフィン−1を得た。
収量141mg,収率99.0%,[α] 25−13.8°(c0.2,MeOH).
H−NMR(300MHz,DMSO−d):δ(ppm)=0.64−0.73(m,2H,Acc−βCH),1.12−1.18(m,2H,Acc−βCH),1.66(br,2H,Tyr−NH),2.46(dd,1H,J=5.7Hz,J=8.4Hz,Tyr−βCH),2.69(dd,1H,J=5.7Hz,J=13.5Hz,Tyr−βCH),2.81−3.09(m,4H,Trp−βCH,Phe−βCH),3.28(d,1H,J=7.2Hz,Tyr−αCH),4.34−4.41(m,2H,Trp−αCH,Phe−αCH),6.63(d,2H,J=8.4Hz,Tyr−3,5−H),6.93(d,2H,J=8.1Hz,Tyr−2,6−H),6.96−7.29(m,11H,Trp Ind−CHx4,Phe−arom,amide),7.45(d,1H,J=7.8Hz,Trp Ind−CH),7.47(d,1H,J=7.8Hz,Trp−NH),7.94(d,1H,J=8.1Hz,Phe−NH),8.30(br,1H,Acc−NH),9.15(s,1H,Tyr−OH),10.78(s,1H,Trp Ind−NH).
実施例3
AcおよびD/L−2′,6′−ジメチルフェニルアラニン(D/L−Dmp)を含むエンドモルフィン・アナローグの合成
3−1 Boc−D/L−Dmp−Phe−NHの合成
Boc−DL−Dmp 1.46g(5mmol)、Phe−NH・HBr 1.31g(5mmol)およびHOBt 792mg(5.2mmol)をDMF 12mL、TEA 780mg(5.5mmol)に溶解させ、氷冷しEDC 1.15μL(5.5mmol)を加え、1時間攪拌後常温に戻して、さらに2日間攪拌した。減圧濃縮後、AcOEt 300mLを加えた。この際、結晶が析出するが、懸濁したまま、洗浄操作をした。10%クエン酸(30mLx5)、1N−NaHCO(30mLx5)、水(30mLx2)、飽和食塩水(30mLx2)の順序で洗浄を行い、減圧濃縮して粗結晶を得た。収量1.79g、収率81.8%。それをMeOHから分別結晶することによりジアステレオマーの結晶(A)および(B)を分離した。純度は逆相HPLC(条件1)で測定した。
HPLC測定条件(条件1)
column:DEVELOSIL 100−5C18(φ4.6mmx150mm)
mobile phase:70%MeOH
column temp:30℃
flow rate:1.0mL/min
detection:UV at 254nm
結晶A.収率410mg,収量18.7%,融点164−165℃.
HPLC(条件1):t=7.82min(t=1.71min),(A:B=97.8:2.2)
H−NMR(300MHz,DMSO−d):δ(ppm)=1.24(s,9H,Boc−CHx3),2.21(s,6H,Dmp−CHx2),2.60−2.73(m,2H,Dmp−βCH),2.79(dd,1H,J=9.0Hz/J=13.6Hz,Phe−βCH),3.00(dd,1H,J=4.6Hz/J=13.6Hz,Phe−βCH),4.01−4.15(m,1H,Dmp−αCH),4.44−4.51(m,1H,Phe−αCH),6.56(d,1H,J=8.1Hz,Dmp−NH),6.91−7.29(m,10H,Dmp−arom,Phe−arom,amide),7.47(s,1H,amide),7.81(d,1H,J=8.4Hz,Phe−NH).
結晶B.収率830mg,収量37.9%,融点209−211℃.
HPLC(条件1):t=9.79min(t=1.72min),(A:B=0:100)
H−NMR(300MHz,DMSO−d):δ(ppm)=1.02(s,9H,Boc−CHx3),2.20(s,6H,Dmp−CHx2),2.60−2.94(m,4H,Dmp−βCH,Phe−βCH),4.08−4.19(m,1H,Dmp−αCH),4.24−4.44(m,1H,Phe−αCH),6.88−7.00(m,3H,Dmp−arom),7.06−7.20(m,7H,Phe−arom,Dmp−NH,amide),7.34(s,1H,amide),7.94(d,1H,J=8.7Hz,Phe−NH).
以下、得られたジペプチドのジアステレオマーのAおよびBに含まれるDmpを、それぞれDmp(A)およびDmp(B)と表わすことにする。
3−2 Boc−Dmp(A)/Dmp(B)−Phe−NHのBoc基の除去
A.Boc−Dmp(A)−Phe−NH 405mg(0.93mmol)に4N−HCl/AcOEt 4mLを加えよく混ぜ合わせた。10分後、寒天状となった。その後、TLC[CHCl−MeOH−AcOH(95:15:3)]により反応終了を確認し、減圧濃縮し、乾燥して目的物を得た。
収量242mg、収率104%、無定形固体。
H−NMR(300MHz,DMSO−d):δ(ppm)=2.23(s,6H,Dmp−CHx2),2.77−3.14(m,4H,Phe−βCH,Dmp−βCH),3.92−3.98(m,1H,Dmp−αCH),4.34(q,1H,J=6.8Hz,Phe−αCH),6.90−7.27(m,10H,Dmp−arom,6H,Phe−arom,amide),8.34(d,1H,J=8.1Hz,Phe−NH),8.52(s,3H,ClNH).
B.Boc−Dmp(B)−Phe−NH 568mg(1.29mmol)に4N−HCl/AcOEt 4mLを加えよく混ぜ合わせた。A.と同様の処理をした。
収量546mg、収率112%、無定形固体。
H−NMR(300MHz,DMSO−d):δ(ppm)=2.27(s,6H,Dmp−CHx2),2.77−3.14(m,4H,Phe−βCH,Dmp−βCH),3.98−4.06(m,1H,Dmp−αCH),4.41(q,1H,J=6.2Hz,Phe−αCH),6.90−7.30(m,10H,Dmp−arom,Phe−arom,amide),8.42(d,1H,J=8.7Hz,Phe−NH),8.56(s,3H,ClNH).
3−3 Acc−Dmp(A)/Dmp(B)−Phe−NHの合成
A.Z−Acc 141mg(0.70mmol)、Dmp(A)−Phe−NH・HCl 235mg(0.69mmol)、およびHOBt 102mg(0.76mmol)をDMF 3mLに溶解し、TEA 110μL(0.75mmol)を加え、氷冷し、EDC 160mg(0.75mmol)を加え、1時間攪拌後常温に戻して、さらに5日間攪拌した。減圧濃縮後、AcOEt 100mLを加え、1N−HCl(10mLx5)、1N−NaHCO(10mLx5)、水(10mLx2)、飽和食塩水(10mLx2)の順序で洗浄を行い、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、これを濾別、減圧濃縮し、粗生成物を得た。TLC[トルエン−アセトン(1:1)およびヘキサン−AcOEt(1:4)]で1スポットだったため、次の反応にそのまま利用した。
収量291mg、収率75.4%、無定形固体。
H−NMR(300MHz,DMSO−d):δ(ppm)=0.88(s,2H,Acc−βCH),1.11−1.22(m,2H,Acc−βCH),2.20(s,6H,Dmp−CHx2),2.76−3.04(m,4H,Dmp−βCH,Phe−βCH),4.36−4.40(m,2H,Dmp−αCH,Phe−αCH),5.04(s,2H,Z−CH),6.88−6.94(m,3H,Dmp−arom),7.04(s,1H,amide),7.16−7.37(m,11H,Z−arom,Phe−arom,amide),7.60(d,1H,J=8.1Hz,Dmp−NH),7.89(d,1H,J=8.1Hz,Phe−NH),7.97(s,1H,Acc−NH).
B.Z−Acc 352mg(1.50mmol)、Dmp(B)−Phe−NH・HCl 546mg(1.45mmol)、およびHOBt 202mg(1.52mmol)をDMF 2mLに溶解し、TEA 210μL(1.50mmol)を加え、氷冷し、EDC 315mg(1.50mmol)を加え、1時間撹拌後、常温に戻して、さらに4日間撹拌した。減圧濃縮後、AcOEt 100mLを加え、1N−HCl(10mLx5)、1N−NaHCO(10mLx5)、水(10mLx2)、飽和食塩水(10mLx2)の順に洗浄を行い、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。その後、乾燥剤を濾別し、減圧濃縮して、粗生成物を得た。TLC[トルエン−アセトン(1:1)およびヘキサン−AcOEt(1:4)]で1スポットだったため、次の反応にそのまま利用した。
収量797mg、収率98.6%、無定形固体。
H−NMR(300MHz,DMSO−d):δ(ppm)=0.82−1.22(m,4H,Acc−βCHx2),2.24(s,6H,Dmp−CHx2),2.69−2.80 m,2H,Dmp−βCH),2.90−3.03(m,2H,Phe−βCH),4.22−4.39(m,2H,Dmp−αCH,Phe−αCH),4.99,5.08(ABq,2H,J=12.8Hz,Z−CH),6.88−6.95(m,3H,Dmp−arom),7.11−7.38(m,12H,Z−arom,Phe−arom,amide),7.79(d,1H,J=8.4Hz,Dmp−NH),8.03(d,1H,J=9.0Hz,Phe−NH),8.09(s,1H,Acc−NH).
3−4 Z−Acc−Dmp(A)/Dmp(B)−Phe−NHのZ基の除去
A.Z−Acc−Dmp(A)−Phe−NH 291mg(0.52mmol)をMeOH 10mLに溶解し、5%Pd−C 80mgを加えて水素気流を流しながら攪拌した。4時間後、TLC[CHCl−MeOH−AcOH(95:15:3)]で反応終了を確認し、Pd−Cを濾別後、減圧濃縮し粗生成物196mgを得た。これをPTLC[CHCl−MeOH(15:1),六回反復展開]により精製した。
HPLC測定条件(条件2)
column:DEVELOSIL ODS−5(φ4.6mmx150mm)
mobile phase:50%MeOH
column temp:50℃
flow rate:1.0mL/min
detection:UV at 254nm
収量101.2mg、収率87.2%、無定形固体。
HPLC(条件2):t=8.62min(t=1.72min)。
H−NMR(300MHz,DMSO−d):δ(ppm)=0.70−1.01(m,4H,Acc−βCHx2),2.26(s,6H,Dmp−CHx2),2.67−3.31(m,4H,Dmp−βCH,Phe−βCH),4.35−4.45(m,2H,Dmp−αCH,Phe−αCH),6.89−6.95(m,3H,Dmp−arom),6.99/7.03(s/s,2H,amide),7.15−7.26(m,5H,Phe−arom),8.07(d,1H,J=8.7Hz,Dmp−NH),8.16(d,1H,J=8.4Hz,Phe−NH).
B.Z−Acc−Dmp(B)−Phe−NH 546mg(1.43mmol)をMeOH 10mLに溶解し、5%Pd−C 180mgを加えて水素気流を流しながら攪拌した。4時間後、TLC[CHCl−MeOH−AcOH(95:15:3)]で反応終了を確認し、Pd−Cを濾別後、減圧濃縮し粗生成物483mgを得た。これをPTLC[CHCl−MeOH(15:1),六回反復展開]により行った。
収量206mg、収率32.9%、無定形固体。
HPLC(条件2):t=10.75min(t=1.72min)。
H−NNR(300MHz,DMSO−d):δ(ppm)=0.64−0.83/0.93−0.96(m/m,4H,Acc−βCHx2),2.25(s,6H,Dmp−CHx2),2.62−2.76(m,3H,Dmp−βCH,Phe−βCH),2.87(dd,1H,J=4.5Hz,J=4.8Hz,Phe−βCH),4.31−4.48(m,2H,Dmp−αCH,Phe−αCH),6.89−6.98(m,3H,Dmp−arom),7.07−7.24(m,6H,amide,Phe−arom),7.36(s,1H,amide),8.21(d,1H,J=8.1Hz,Dmp−NH),8.29(d,1H,J=8.7Hz,Phe−NH).
3−5 Z−Tyr(Bzl)−Acc−Dmp(A)/Dmp(B)−Phe−NHの合成
A.Z−Tyr(Bzl)101mg(0.25mmol)、Acc−Dmp(A)−Phe−NH 99mg(0.23mmol)およびHOBt 40mg(0.30mmol)をDMF 2mLに溶解し、氷冷し、EDC 61mg(0.30mmol)を加え、1時間攪拌後常温に戻して、さらに5日間攪拌した。Z−Acc−Dmp(A)/Dmp(B)−Phe−NHの場合と同様に処理し、粗結晶202mgを得た。これをMeOHから再結晶した。
収量69.8mg、収率37.5%、mp197−198℃。
HPLC(条件1):t=11.98min(t=1.72min)。
H−NMR(300MHz,DMSO−d):δ(ppm)=0.48−0.73(m,2H,Acc−βCH),1.09−1.14(m,2H,Acc−βCH),2.14(s,6H,Dmp−CHx2),2.70−2.87(m,4H,Tyr−βCH,Dmp−βCH),2.95−3.06(m,2H,Phe−βCH),4.04−4.12(m,1H,Tyr−αCH),4.23−4.34(m,2H,Dmp−αCH,Phe−αCH),4.94,4.99(ABq,2H,J=12.6Hz,Z−CH),5.05(s,2H,Bzl−CH),6.71/6.99(s/s,2H,amide),6.85−6.94(m,5H,Tyr−3,5−H,Dmp−arom),7.11−7.43(m,15H,Z−arom,Bzl−arom,Phe−arom,Tyr−2,6−H),7.48(d,1H,J=8.1Hz,Phe−NH),7.67(d,1H,J=6.6Hz,Tyr−NH),7.80(d,1H,J=8.7Hz,Dmp−NH),8.70(s,1H,Acc−NH).
B.Z−Tyr(Bzl)203mg(0.50mmol)、Acc−Dmp(B)−Phe−NH 206mg(0.47mmol)およびHOBt 80mg(0.60mmol)をDMF 3mLに溶解し、氷冷し、EDC 120mL(0.60mmol)を加え、1時間攪拌後常温に戻して、さらに5日間攪拌した。A.の場合と同様に処理したが結晶化しなかった。
収量196mg、収率47.3%、無定形固体。
HPLC(条件1):t=16.06min(t=1.69min)。
H−NMR(300MHz,DMSO−d):δ(ppm)=0.57−0.69(m,2H,Acc−βCH),1.05−1.18(m,2H,Acc−βCH),2.20(s,6H,Dmp−CHx2),2.71−2.92(m,5H,Tyr−βCH,Dmp−βCH,Phe−βCH),2.97−3.02(m,1H,Phe−βCH),4.02−4.13(m,1H,Tyr−αCH),4.24−4.34(m,2H,Dmp−αCH,Phe−αCH),4.96,5.05(ABq,2H,J=12.5Hz,Z−CH),5.01(s,2H,Bzl−CH),6.87−6.96(m,5H,Tyr−3,5−H,Dmp−arom),7.04(s,1H,amide),7.11−7.42(m,18H,Z−arom,Bzl−arom,Phe−arom,Tyr−2,6−H,amide),7.68−7.72(m,1H,Phe−NH),7.74(d,1H,J=5.7Hz,Tyr−NH),7.81(d,1H,J=12.8Hz,Dmp−NH),8.78(s,1H,Acc−NH).
3−6 Z−Tyr(Bzl)−Acc−Dmp(A)/Dmp(B)−Phe−NHのZ基とBzl基の除去
A.Z−Tyr(Bzl)−Acc−Dmp(A)−Phe−NH 52mg(0.06mmol)をDMF 2mLおよびMeOH2mLに溶解し、10%Pd−C 20mgを加えて水素気流を流しながら攪拌した。6時間後、TLC[CHCl−MeOH(5:1)]で反応終了を確認し、Pd−Cを濾別後、減圧濃縮し粗生成物33.6mgを得た。これをPTLC[CHCl−MeOH(5:1)]により精製した。
HPLC測定条件(条件3)
column:DEVELOSIL 100−5C18(φ4.6mmx150mm)
mobile phase:50%MeOH
column temp:30℃
flow rate:1.0mL/min
detection:UV at 254nm
収量12.8mg、収率36.5%、無定形固体。[α] 25−27.3°(c0.1,DMF).
HPLC(条件3):t=5.77min(t=1.73min)。
質量分析;Found:608.265、Calcd for(C3339+Na):608.284。
H−NMR(300MHz,DMSO−d):δ(ppm)=0.63−0.88(m,2H,Acc−βCH),1.02−1.14(m,2H,Acc−βCH),1.22−1.32(m,2H,Tyr−NH),2.16(s,6H,Dmp−CHx2),2.50−2.52(m,1H,Tyr−βCH),2.72−2.86(m,3H,Tyr−βCH,Dmp−βCH),2.90−3.25(m,2H,Phe−βCH),4.23−4.37(m,2H,Dmp−αCH,Phe−αCH),6.63(d,2H,J=6.3Hz,Tyr−3,5−H),6.87−6.97(m,5H,Tyr−2,6−H,Dmp−arom),7.03(s,1H,amide),7.17−7.24(m,6H,Phe−arom,amide),7.53(d,1H,J=7.8Hz,Phe−NH),7.81(d,1H,J=8.1Hz,Dmp−NH),8.40(br,1H,Tyr−OH),9.17(s,1H,Acc−NH).
B.Z−Tyr(Bzl)−Acc−Dmp(B)−Phe−NH 180mg(0.22mmol)をDMF 2mLおよびMeOH 2mLに溶解し、10%Pd−C 64mgを加えて水素気流を流しながら攪拌した。6時間後、TLC[CHCl−MeOH(5:1)]で反応終了を確認し、Pd−Cを濾別後、減圧濃縮し粗生成物99mgを得た。これをPTLC[CHCl−MeOH(5:1)]により精製した。
収量48mg、収率37.9%、無定形固体。[α] 25−22.2°(c0.1、DMF)。
HPLC(条件3):t=10.45min(t=1.73min)。
質量分析;Found:608.261、Calcd for(C3339+Na):608.284。
H−NMR(300MHz,DMSO−d):δ(ppm)=0.53−0.73(m,2H,Acc−βCH),1.09−1.14(m,2H,Acc−βCH),1.17−1.22(m,2H,Tyr−NH),2.20(s,6H,Dmp−CHx2),2.50−2.54(m,1H,Tyr−βCH)2.72−2.82(m,3H,Tyr−βCH,Dmp−βCH),2.94−3.03(m,2H,Phe−βCH),4.23−4.30(m,2H,Dmp−αCH,Phe−αCH),6.63(d,2H,J=8.4Hz,Tyr−3,5−H)6.87−6.98(m,5H,Tyr−2,6−H,Dmp−arom),7.12−7.18(m,6H,Phe−arom,amide),7.28(s,1H,amide),7.68(d,1H,J=8.7Hz,Phe−NH),7.88(d,1H,J=8.4Hz,Dmp−NH),8.49(br,1H,Tyr−OH),9.16(s,1H,Acc−NH).
製剤例1 注射剤
[Ac]−エンドモルフィン−2 0.2g
塩化ナトリウム 0.9g
水酸化ナトリウム/塩酸 適量(pH5.0)
注射用蒸留水 全量 100mL
以上の成分を常法により混和溶解して注射剤とする。これを2mLのガラスアンプルに分注し、密封する。
製剤例2 錠剤
[Ac]−エンドモルフィン−1 0.8g
トウモロコシデンプン 12g
乳糖 27.2g
ステアリン酸マグネシウム 0.4g
[Ac]−エンドモルフィン−1、乳糖およびトウモロコシデンプンを加えてよく混和し、湿性錠剤調製法に準じて打錠用顆粒とする。ステアリン酸マグネシウムを加えて打錠し、錠剤400錠とする。錠剤は、腸溶性コーティング剤(メタアクリル酸コポリマー)でコーティングする。
製剤例3 点眼剤
[Ac]−エンドモルフィン−2 200mg
ホウ酸 700mg
ホウ砂 適量
塩化ナトリウム 500mg
エデト酸ナトリウム 0.05mg
塩化ベンザルコニウム 0.005mg
滅菌精製水 全量 100mL
以上の成分を常法により混和して点眼剤とする。
試験例1
カルボキシペプチターゼYによる酵素分解
エンドモルフィン−1、エンドモルフィン−2、[Ac]−エンドモルフィン−1および[Ac]−エンドモルフィン−2のカルボキシペプチターゼYによる半減期を測定した。
測定法
ペプチドを50mM Tris・HCl(pH7.4)緩衝液に溶かし、最終濃度を1mMにした。それぞれにカルボキシペプチターゼYを50mM Tris・HCl(pH7.4)緩衝液に溶かした。
1000μLの50mM Tris・HCl(pH7.4)緩衝液に200μLのペプチド溶液を加え、30分間37℃に保持した後、それぞれの酵素を加えた。
定めた時間毎に20μLずつ反応液を取り、20μLの0.1M HClを加えて反応を止めた。
これをHPLCで分析し、面積比からペプチド断片の含まれる割合を求めた。
HPLCの測定はグラジエント溶離法を用いた。移動相には、A液:0.02%TFAを含む水とB液:0.02%TFAを含むアセトニトリルを用いた。はじめはA液100%から始め、20分間でB液を50%まで増やした。固定相にODSカラム(Wakosil−II:φ4.6mmx250mm)を用い、流速0.8mL/min、検出254nm、カラム温度37℃で行った。
以上の操作で、2回の再現性を確認した。
半減期は、一次反応であるものとして求めた。
試験結果1
【表1】
Figure 2002102833
[Ac]−エンドモルフィン−2はエンドモルフィン−2の8倍の半減期を有しており[Ac]−エンドモルフィン−1はエンドモルフィン−1の3倍の半減期を示し、いずれもエンドモルフィン−2およびエンドモルフィン−1に対してかなり高い酵素分解抵抗性を示した。
試験例2
ペプチドの受容体結合試験1
エンドモルフィン−1、エンドモルフィン−2、[Ac]−エンドモルフィン−1および[Ac]−エンドモルフィン−2のそれぞれについて、放射性リガンド受容体結合分析による受容体結合試験を行った。
試験方法
よく冷えた10mM Tris−HCl緩衝液中において、ラットの脳を均質化し、4℃で15分間40,000g/minで遠心分離した。上澄みは捨てた。得られたペレットは、はじめと同量のTris−HCl緩衝液中に再び懸濁させ、均質化したのち遠心分離した。この洗浄プロセスを二回繰り返した。
生じるペレットは最後に、Tris−HCl緩衝液(24mL)に懸濁させ、この500mL膜調製液を最終体積2mLで結合試験に用いた。
Tyr−D−Ala−Gly−MePhe−Gly−ol([H]DAGO)(1.80TBq/mmol;New England Nuclear,Boston,Mass.USA),Tyr−D−Ala−Phe−Glu−Val−Val−Gly−NH([H]DEL)(1.85−3.18TBq/mmol;Amersham Pharmacia Biotech)がそれぞれ、μとδオピオイド受容体に対する選択的なトレーサーとして最終濃度0.25nMで用いた。培養は、0.1%の牛の血清アルブミンを含む50mM Tris−HCl緩衝液(pH7.5)中で25℃で60分間行った。Bacitracin(100mg/mL)を酵素阻害物質として加えた。
培養後、遊離したリガンドを、Whatmann GF/Bガラスファイバーフィルターによりろ過することによって、結合している放射性リガンド膜から分離した。フィルターは、Tris−HCl緩衝液の4mLで二回洗浄した。
投与応答曲線(Dose−response curves)を、7〜10回の投与を行って作成し、その結果をコンピュータプログラム〔A.De Lean,P.J.Munson and D.Rodbard,Am.J.Physiol.,235,E97(1978)〕により解析した。
データは、ラベル化リガンド[H]DAGOと[H]DELの結合を非ラベル化リガンド濃度と関係づけるロジスティック曲線の最小自乗法処理をおこなった。
この分析結果は、3回の独立した実験をした平均である。
試験結果2
エンドモルフィン−1、エンドモルフィン−2、[Ac]−エンドモルフィン−1および[Ac]−エンドモルフィン−2の受容体結合率の50%の値からIC50を求め、それを〔表2〕に示した。
【表2】
Figure 2002102833
[Ac]−エンドモルフィン−1および[Ac]−エンドモルフィン−2はμ受容体に対してエンドモルフィン−1およびエンドモルフィン−2より、それぞれ約3倍および約6倍強い活性を示した。[Ac]−エンドモルフィン−1および[Ac]エンドモルフィン−2のδ受容体に対するμ受容体選択性は、それぞれ約1,400倍および約700倍の選択性があった。α,α−二置換グリシン−残基のみの置換によりこのような非常に高活性、高選択性のアナローグを得ることができたことは、Accによるコンホメーションの固定化が受容体との結合に適したコンホメーションをとらせていると考えられる。
試験例3
ペプチドの受容体結合試験2
試験例2と同様にして[Ac,Dmp(A)]−エンドモルフィン−2および[Ac,Dmp(B)]−エンドモルフィン−2の受容体結合率の50%の値からIC50を求め、それを〔表3〕に示した。対照としてエンドモルフィン−2を用いた。
Figure 2002102833
[Ac,Dmp(A)]−エンドモルフィン−2はμ受容体に対しエンドモルフィン−2とほぼ同様の活性を示し、[Ac,Dmp(B)]−エンドモルフィン−2は、μ受容体に対しエンドモルフィン−2の1/3の活性を示した。
また[Ac,Dmp(A)]−エンドモルフィン−2および[Ac,Dmp(B)]−エンドモルフィン−2のδ受容体に対するμ受容体選択性は、それぞれ1220倍、167倍であった。
産業上の利用可能性
本発明の新規エンドモルフィン誘導体は、オピオイド受容体のうち、特にμ受容体に強い親和性と選択性を有しており、従って鎮痛、抗不安、緊張緩和などの生理活性を有している。しかも、その2位に1−アミノシクロプロパンカルボン酸という、立体配座固定因子が導入されているので、ペプチドに望ましいコンホメーションを採らせることができ、タンパク質分解酵素による分解に抵抗を示し、また、強い生理活性を発揮する。
【配列表】
Figure 2002102833
Figure 2002102833

Claims (7)

  1. 一般式〔I〕
    Figure 2002102833
    (式中YはTrp、PheまたはD/L−2′,6′−ジメチルフェニルアラニンを示す。)
    で表されるエンドモルフィン誘導体又はその生理学的に許容される塩。
  2. 一般式〔I〕中、YがTrpである請求項1記載のエンドモルフィン誘導体又はその生理学的に許容される塩。
  3. 一般式〔I〕中、YがPheである請求項1記載のエンドモルフィン誘導体又はその生理学的に許容される塩。
  4. 一般式〔I〕中、YがD/L−2′,6′−ジメチルフェニルアラニンである請求項1記載のエンドモルフィン誘導体又はその生理学的に許容される塩。
  5. 請求項1記載の一般式〔I〕で表されるエンドモルフィン誘導体又はその生理学的に許容される塩を含有してなる医薬。
  6. 鎮痛剤である請求項5記載の医薬。
  7. 請求項1〜4のいずれかに記載のエンドモルフィン誘導体又はその生理学的に許容される塩および製薬学的に許容される担体を含有する医薬組成物。
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